○石井国務大臣 先ごろモスクワの日本見本市に行きました機会に、
関係の人たちといろいろ御
相談をいたしまして、最後にミコヤン第一副首相とお目にかかって、両国の貿易
関係の問題を話合ったのであります。見本市が非常に成功するように見えた最初のころでございましたが、これは百万人の人がこれを見て、初めて日本の経済がどんなものであるかということをよく認識する機会を得たと思ったのであります。出ておるものも非常にりっぱなものであるし、われわれはこういうものを通して日本の工業力というものを新たに認識する。ことしの三月から開かれております長期貿易協定、これによってまず年間およそ七千万ドル
程度の往復出入りが予想されておる
状態であります。今は日本から行っておるものが少なくて、ソビエトから日本に入っておる分量の方が多いわけでございますが、この問題でもっと足取りを早くはかってもらえぬか、あなたの方からたくさんの人が日本にいろいろなものを見に見えるが、ごらんになっただけでそれ以上の話が進まないけれ
ども、大いにこの話を進めようじゃないかということを申しましたら、それは日本の産業が西欧のどこの国に比しても負けないような
状態のものがたくさんある、できるだけわれわれの方も
買いたいという心持を持っておる、そうしてまた、それに見返るような品物をわれわれの方から出すことにおいても、日本の品物とかち合わないで、日本の需要に応じ得るようなものがたくさんあると思うのだから、ビジネス・ベースによって話がつき得れば、そうして
数量の点においてうまく話がつけば、貿易はだんだん盛んになるだろうと思うが、ということをミコヤン氏も申しておりました。その
通り私も思うのだと話しているうちに、今の問題は支払いの点が
一つの問題である。延べ払い問題が問題になっておる。これは日本の民間の人はこれに賛成の意を表しておられるようであるが、政府は一体どう
考えるか、あなたはどうお
考えになっておるか聞きたいということでございました。それで、この延べ払いの問題、あなたの方は窓口が
一つであるけれ
ども、われわれの方は商社各個各個であるし、いろいろな品物によっても違うのでありますから、一がいには言えない。しかし、政府の
考えはどうだと言われますと、政府としては、戦後借金生活のようにしてようやく今日までの経済の復興をやってきたのだから、品物は売りだし、金は早く払ってもらいたしというのがわれわれのほんとうの
考えであるから、なるべく延べ払いはしたくないけれ
ども、世界の各国との
競争上の問題は、ビジネス・べースという点から見ての
お話として、これは多少
考えなくちゃならぬということもわれわれ
考えておる。大体日本がほかの国にやっておる延べ払いをする場合の限度としておおよそ
考えているものは、頭金を二割、それから四年ないし五年くらいな延べ払い、それ以上は持ってきたくないというのが大体の
考え方であります。しかし、さっき申したように、個々の場合がいろいろありますから、これはケース・バイ・ケースで御
相談をしようじゃありませんか、そうしてなるべく商売ができていくようにいたしたいということを話した。その
通りだと思うから、ぜひそういうことで後刻話し合いをしようということを申し合ったわけであります。この貿易の前途につきまして、そのときいろいろほかの政治上の話も一ぺんこの機会に聞いておいてくれと言って、
相談でもなく話がいろいろありましたが、それらの点で、あるいは政治上の問題あるいは文化協定の問題等でまだきまらぬものはいろいろあるが、この経済の問題、特に貿易の話し合いは、あなたの話と私の申しておることとが非常にぴったり合うのだ、このぴったり合ったものから
一つ力を入れていこうじゃありませんか、ぜひこの経済の問題、特に貿易を盛んにしていくということで力を入れようじゃないですか、というような話し合いをいたしまして別れたわけであります。
それで、ことしの見本市は数日前に終わりましたが、予定されておった
通りに百万人以上の人が見ることができた。大体初めから一日五万人がそこの収容限度と思っておったが、二十一日間に、約百万人と言っておりましたが、百万人をちょっと出たということでありまして、予定
通りの人が見てくれたということであります。これが非常な大きな
影響を今後の貿易
関係等に及ぼすのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。それで、これのお返しという意味にもなるわけでありますが、来年の九、十月ごろに、東京においてソビエトだけの見本市を開きたいということを、私が行った翌日、向こうのこの問題の責任者、商工
会議所の会頭に会ったとき、正式に
自分の方はそういうふうにきめた、九月か十月に開きたいが、あなたの方の御都合をお聞きしたいということで、私の方は、でき得れば月島の晴海の会場で開きたい、雨が降っても見れるような
状態のところがよい、しかし来年の九月だから、あるいは予約があるかもわからぬから、帰ってすぐ調べて御返事しようということで帰ってさましたら、九月は一ぱいになっておるので、十月と今押えて向こうと
相談をいたしております。来年の十月には向こうの見本市が開かれるということで、お互いに知り合うということが今日の貿易の増進になるだろうと思っておる次第であります。