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1960-09-08 第35回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年九月八日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 山本 勝市君    理事 高見 三郎君 理事 山下 春江君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       植木庚子郎君    奧村又十郎君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       竹下  登君    細田 義安君       石野 久男君    石村 英雄君       加藤 勘十君    神近 市子君       久保田鶴松君    栗林 三郎君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       山本 幸一君    大貫 大八君       松尾トシ子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         通商産業大臣  石井光次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      福田  勝君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    渡邊  誠君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (管財局長)  山下 武利君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         国税庁長官   原  純夫君         通商産業事務官         (通商局長)  小室 恒夫君         日本専売公社副         総裁      石田 吉男君         日本専売公社理         事         (生産部長)  坂口  精君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月八日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  横山利秋君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  専売事業に関する件      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本委員長 これより会議を開きます。国の会計に関する件、税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び専売事業に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 ことしの三月八日の日に、私は酒の製造に関する問題につきまして少し質問をいたしました。その際、委託醸造あるいは中央保有米の問題につきましていろいろ問題があるというふうに考えお尋ねとあわせて少し要望をいたしたわけであります。三十五酒造年度がこの十月一日から始まるにあたりまして、国税庁当局としては、私が要望いたしました委託醸造あるいは中央保有米制度に対して御検討をいただいておるものと考えますけれども、三十五酒造年度に対するお考え一つ承りたいと思います。
  4. 原純夫

    原説明員 ただいまお尋ねのありました委託醸造並びに中央保有米制度につきまして、ただいま申し上げられる限りの私ども考えを申し上げます。  両件についてお尋ねになりましたのは、その根本的なお考えは、酒の生産販売というものが、米の統制というものを基盤といたしまして、そして免許制度、それからいわゆる基準指数というようなものに乗りまして、かなり強い規制を受けておる。そしていわゆる経済自由競争という働きがともすると鈍ることとなって、諸般の矛盾を起こすのではないかという、いわば基本的な哲学をもとにしておっしゃっておるというふうに私は理解しております。そこで、私ども考方は、その考え方を私どもも持っております。ただ同時に、その考え方一辺倒でいきますることは、現実において戦時中、戦後を通して非常に強い統制が行なわれ、また思わしくない面もございまするが、権利というようなものができて参っております。そして私どもとして思わしくない面がある。反面業界の安定、そして酒税の確保のために都合のいい面もあるというふうに考えておりますので、その両面をあわせ考えて、穏健着実に、方向としてはやはり競争の要素を入れるということに持って参りたいと考えております。  そういう前提で、第一の委託醸造の問題でありまするが、本件につきましては、昨年来主として国会中心に、ただいま申し上げました考え方に立ってのこの制度矛盾ということを強く指摘されまして、なるべくすみやかに整理の方向に向かうようにということであり、私どもも、今申しました考えに沿って、そういう態度で参りましょうと申し上げてございます。おいおい生産の時期にも入ります。時期的にももう迫っておりますので、大体本件につきましては今回かなりはっきりと一度に全部廃止してしまうということはできないと思いまするが、二、三年間の緩衝的な過渡的な措置を講ずる期間を置いて、そうして廃止していくという万に参りたいということで、この方針は実は本日具体的に申し上げられると非常にいいのでありますが、なお数日を要しますので、これはもうはっきりとそういう方向に参ります。しかも二、三年で原則としてはなくなる。ただ前々からいわれております災害の場合、その他やむを得ない場合、あるいは系列化する場合というようなものには、やはりこれを認めざるを得ない。その他のものはやめていく。ただし二、三年の間は、委託をしていた側も委託をされていた側も一度に全部やめるということではいかぬと思いますから、ある中間的な、過渡的な措置を講じたいというふうに思っております。  それから、第二の中央保有米制度でありますが、これにつきましては、実はただいまの委託醸造どもう数日で出すというまでの詰めをいたしておりません。これはやはり十月、十一月あたりにかけましてなお十分検討いたしたい。実は、御案内の通り、私ども基準価格制度に移ります作業で相当忙殺されております。委託醸造問題も相当大きな問題で、従いまして保有米の問題はただいまはきわめて抽象的なお答えになると思いますが、お許しいただきたいと思います。  中央保有米につきましては、大体三百五十万石をこえるものは中央保有米にするということについて、業界にはなお若干の反対があるかもしれませんけれども、その辺の線は私どもとしてはぜひやって参りたい。従いまして、この製造数量がふえますると、中央保有米ワクはその全部がふえるということになるわけで、中央保有米の割合は相当ふえるのではないかと思います。それから、そのワクの中でどういう配合をするかというのが中心の問題でありますが、これにつきましては、ただいま申しました通り方向としてより自由化方向に進めたいという気持でありまして、それは、端的に今の形をもとにして言いますれば、希望割基準指数割との比率を前者の方に傾けるというようなことは——端的にそういうことだろうというふうに私は今考えておりますが、その程度なりあるいはもっと新しい方向考えるというようなことを、もう少し時間をかして検討をさしていただきたいというふうに考えております。
  5. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっと私資料をいただいた中で承りたいのですけれども、三十四BY希望割、それから今度三十五BYにおける希望割数量はおそらくふえて参ると思うのですが、希望者——この前の割当対象者というのが大体三千六百九十八あるようですけれども、その大部分希望割を求めれば、現実には、基準指数割と希望割の比重を変えてみても、差を加えたら対象者が同じ数になれば、結局同じことになるのではないか。割り方は基準指数割でなくなるというような点の相違は出て参ると思いますけれども、結局同じになるのではないかと思うのですが、その希望割対象者の問題は大体どのようにお考えになっておりますか。
  6. 原純夫

    原説明員 対象者といたしましては、この委託出しておるとか、あるいは権利譲渡を一部やっておるとかいう方々、これはいわば経済自然の法則で、だんだん競争場裏から後退しつつあるという方々でありますから、これは御遠慮を願うという考え、それから、そのほか犯則、滞納というようなことがあります方々は、御遠慮を願うというような線で今きております。なお、今後この対象除外者を何かほかの指標を見つけてやるかどうかというようなこと、あるいはある程度以上の値くずしをするというようなことは、やはり一種の正当な値段競争できないものですから、問題じゃないかというような考えも言う人がございます。それらを含めて今後検討して参りたいというふうに思っております。
  7. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私ちょっとここで希望を申し述べたいのでありますけれども、現在は一般的な慣行としておけ売りという制度があるようです。非常にたくさんおけ売りをやっていらっしゃるというような方は、実質的に見ますと、もちろんふやしてもさらにおけ売りをやるというようなことかあるのでありますが、本来ならばやはり自分のところで作って販売する方が希望割をとるというのが大体筋道じゃないか。おけ売りをたくさん——ごく少量は別ですが、相当程度たくさんおけ売りをしておられる方々希望割についてはなるべく御遠慮を願う方が、流通の上ではうまくいくのではないか、そういうふうに感じますが、その点はどうでございましょうか。
  8. 原純夫

    原説明員 一応ごもっともなお考えだと思います。しかし、その点を私そうだというふうにお答えするには、これは非常に慎重な検討を要する問題だと思います。つまり、おけ売り、おけ買いというものを、今申した競争場裏から退くものだというふうに見てしまって——しまってといいますか、そういう見方を入れて扱うことがいいか悪いか。もちろんそういう考え方も成り立ち得ないことはないと思いまするが、その段になりますると、やはりおけ売り、おけ買いは、これだけの多数の業者、その中に中小の業者があるという業態をかかえてやっていく場合には、これはやはり一つの健康な現象とは見えないけれども、まずまずやむを得ない現象ではないかというふうに見る見方が相当強くございます。そのいずれをとるか、どっちにどういうバランスを乗せるかということを、私ここで今踏み切って申し上げる自信はございませんので、十分検討さしていただきたいと思います。
  9. 堀昌雄

    堀委員 おけ取引の問題が出ましたので、おけ取引のことでちょっと伺いたいのでありますけれども、現在おけ取引価格は一体どのくらいになっておりますでしょうか。九月現在でけっこうでございます。
  10. 原純夫

    原説明員 二十度もので取引されるわけでございますが、一升百九十五円から二百円くらいというふうに聞いております。
  11. 堀昌雄

    堀委員 現在の取引はそういうことだと思いますが、そうすると、こういうものにもやはり適正な取引価格というものがあると思いますし、庁の方でもお考えになっておると思うのです。大体のところでけっこうですが、九月現在として見て、どのくらいならおけ取引価格としてまあ適正だとお考えになりましょうか。
  12. 原純夫

    原説明員 私は、ただいま申し上げましたおけ取引価格は、ある程度高過ぎると思います。ただ、今の御質問の、おけ取引値段はどの程度が適正と考えるかというのに対しましては、なかなかこれはデリケートでございます。マル公というものはありますけれども、このおけ取引になりますと、若干通常の卸売、小売というのと違って、かなり特約的にいっておりますので、相対の両者の相談できまるということになりますので、私が長官として、それは百何十円がよろしいというようなことを申すのはいかがかというふうに思います。かなり高いように思う。三、四年前まではマル公の方は今とそう大した違いはなかったわけですが、百六十円とかいうような値段があったのを記憶しております。その時分、それで特に低いという声もなかったということを考えますと、どうも先ほど申した値段はだいぶ——だいぶと申すのもなんですが、高過ぎるようなきらいがあるというふうに考えております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 今長官も、おけ取引価格相談によってきまるのだ、こういうふうにおっしゃって、三、四年前は——マル公で百五十六円くらいでございますが、その辺であったということになりますと、先ほどおっしゃった二百円前後から見ますと、四十円近くも一升について違う。そうすると、その四十円も違うというのは一体何によって起こってくるのでございましょうか。相互の需給関係だろうと思いますが、その需給関係というところを最終的にしぼってみると、何が一番おけ取引価格影響しておるというふうにお考えになりますか。
  14. 原純夫

    原説明員 このおけ取引値段影響のあること全部を考えますのはなかなか大へんなことでありますが、今一つの筋として言われました需給事情ということ、これはやはり経済原論では価格需給できまるというくらいですから、これが一番本命の筋だろうと思いますが、やはり需給の根本において、今売手市場的な現象が起きておるというふうに私どもは見ております。それはつまり総じていって供給不足目であるということだろうと思います。
  15. 堀昌雄

    堀委員 やはりいろいろな酒類の問題につきましては、全体が合理的にならなければいけないのじゃないか。どうもこの前触れました委託醸造にしても、中央保有米割当にしても、常識で判断するとやや不合理な感じのするものがございます。今お話を伺うと、今度はおけ取引価格の中にもやや不合理な感じのする部分がある。そのやや不合理な感じのする部分のあるもとをただせば、やはり供給が少し少ないのではないか。要するに、おけ売りの側の売手市場になっておるというようなことになりますと、やはり最近おけ取引価格が上がってきたということは、供給の方が最近少し足りないような状態が続いておるということを、現実経済情勢の中で反映をして参っておる、こういうふうに私は理解をするのです。そこで、そうなりますと、結局その問題は、酒造年度として酒を一体幾ら作るかということが適正なところに参ると、今のおけ取引価格も適正なところに参るのではないかと私は思います。そこで、三十五酒造年度に対して、長官は具体的に適正な価格は幾らとはおっしゃいませんでしたけれども、私は、率直に申しますと、腹の中には大体適正な価格を持っていらっしゃると思うのです。ということは、今度基準価格をお出しになるについては、緻密な原価計算をおやりになっているわけですから、そういう原価計算の上からはじいてくるならば、そういう経済的な原則の上に立った価格というものはあるはずだと思います。それは今の需給関係の問題がありますから、多少変動もしましょうが、そういうことで考えるとするならば、一体来酒造年度はどういう方向であれば、今のおけ取引価格は適正になるというふうにお考えになるでしょうか。そこを一つ伺いたいと思います。
  16. 原純夫

    原説明員 毎年々々、清酒原料米をどれだけにするか、つまり造石量をどれだけにするかというのは、清酒業界にとっては非常に大きな問題で、おそらくこれで一年の勝負はきまるという大きな問題でございます。それを中心にしましていろいろ議論が戦わされる。その議論は、勢い冒頭に申しました競争をどの程度やらせるかということについて、業者々々の立場が違います。非常に競争的な、つまりどんどん合理化してやっていこうというグループの業者と、それから若干おくれておって、どうも自分では売れないというような業者とでは、考え方が非常に対照的になるわけです。前者は、よりよけい作れ。後者は、なるべく供給を押えて、いわば売手市場的な情勢をある程度望むということになります。私どもとしては、冒頭申しましたように、やはり従来のはどうも後者の勢いが少し強過ぎたのではないか、もう少し競争的な方向に行くべきじゃないかと思っておったわけでありまして、この三十四酒造年度、つまり今月に終わります酒造年度においても、昨年の秋、暮れにだいぶ議論をいたしましたが、率直に申して、今日このようにおけ売り値段が高いという事態を来たしましたのは、その間においても結局少し少なかったということであろうと思うわけであります。これから秋、暮れにかけてきめます生産方針においては、そういう侮いのないようにいたしたいと私は考えております。具体的には、結局それは来年度の需要量に対して見合う供給量ということでありますが、一番端的にそのしりが出ますのが、端境期の新酒に移る時期の持ち越し数量がどうなるか。持ち越しが切れてしまって、新しく作った酒を早出しせんならぬというときは、非常に売手市場である。三月の酒も、古い酒がある程度残っておるというあたりが大体いいところのようなふうに、経験的に私ども承知いたしております。その辺を考えて、生産方針生産数量に誤りないようにというふうな考え方でおります。
  17. 堀昌雄

    堀委員 これから御検討になることでしょうから、私、こまかい数字の点は触れないでおきますけれども、ただ一つだけここで非常に問題になるだろうと思います点は、今おっしゃった二月におけるみなし持ち越し数量を大体どのくらいに見るかということが、やはり最終的には非常に問題になる点ではないかと思います。そこで、最近の傾向を見ますと、予想したみなし持ち越しよりも、実際のみなし持ち越しは常に減っておるということになっておりますので、その量が非常に減ってくる。それがごく少なくなるために、どうもいろいろな問題が起きてくるのじゃないかということになると、多少減少をしても、それが実態として他に影響を及ぼさない範囲の多少の幅がその中で見られておるならば、非常にたくさんにするということは、これまた資金が寝ることになりますから、やはりこれは小さい業者の方にとって問題もありましょうけれども、適正という部分が、これまでの適正という考え方では少し少な過ぎる、消費の方が少し伸びる傾向にあるような感じがしますので、そこはもう少し伸ばして考えていただく方がいいのではないか、今酒は一年に一回しか作っておりませんから、当初の見込みだけで一年間の販売の趨勢を出すということは私は非常に困難な問題だと思います。しかし、過去のトレンドをずっとながめてみますと、大体ある一つのカーブというものが出て参っておると思いますから、そのトレンドの上で見るならば、これまでの過去二年くらいの状態は、予想するみなし持ち越しの量が少し少な過ぎたように感じておりますので、その点について最低やはり十五日分くらいは必要なのじゃないか、もう少しあってもいいくらいに最近はふえておるのじゃないか、こういうふうに思いますけれども、それについては長官はどういうふうにお考えになりましょうか。
  18. 原純夫

    原説明員 私ども部内で言い伝えてきております経験では、今の数値は十日分ないし十五日分くらいというのがまずいいところであるというふうに言ってきております。ここ一両年供給不足的な状態が続きましたので、堀委員の言われるように、十五日分を最低にしてというお話も、そういう経緯からいうとまことにごもっともに承りますけれども、私ここで最低十五日にいたしますと申すのもいかがかと思いますので、十分承って、含んで検討いたしたいと思っております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 その次に、この前もちょっと触れておりましたけれども復元の問題でございます。いろいろな状態で、まだ完全に復元をしていらっしゃらない方がだいぶあるように思います。それからもう一つは、立地調整ということが行なわれて、なおかつ全体のバランスの中で少しまだアンバランス部分が残っておるように思うのでございますが、この復元立地調整に対するお考えをちょっと伺っておきたいと思います。
  20. 原純夫

    原説明員 この両件につきましても、実はこの基準価格関係作業に追われまして、ごく概論的なことをずっとやって、参りました程度で、まだ詰めの段階に入っておりません。従いまして、はっきりとしたことは申し上げられません。また、この両件につきましては、一方に復活復元を百パーセントやらせよという声に対して、それは非常に不公平だ、かつての復活復元者は、権利値段をちゃんと払って、そして既存の残存業者から権利を買うて復活復元した。今の復活復元はもう最後のところだからただでよこせ、こういう復活復元であります。それでは一番復活復元の意欲が強くて努力を多くした人が、結局ばかを見たようなことになるというような議論もございます。立地調整にいたしましても、これは戦争中に、消費地供給地とが離れておるというような場合に、供給が多い府県から供給が少ない府県生産量を移した、それを今もとへ戻せという形での御要求であります。ごもっともな面があると同時に、この消費供給が吻合する方がいいのだというような角度から、また反対議論も出るというようなわけでありまして、両論がある。私どもとしてただいまここで言えますことは、これらについても何らか手を打たなければならないだろうというふうには考えております。ただ、その程度に至っては、相当慎重な検討を要するというふうに思っておりますので、本日のところは、その辺のところで御了承をいただきたいと思います。
  21. 堀昌雄

    堀委員 立地調整の方は三十一年、三十二年に幾分還元されておるというふうに承っておりますから、あとはほんのわずかなようであります。この問題はやはり今生産を非常にたくさんやりたいと言っておられるところが現実には減っておるということになっておるわけでありますから、やはり需給関係バランス全体から見ますならば、これは当然もとに戻すということで、全体の中であまり問題がないのじゃないか。復元については、おっしゃるように前の方と現在の問題について多少問題が残っておりますから、その点については多少問題があるかと思いますが、立地調整については私はあまり問題がないように考えますので、一つこの問題はできるだけ平準化をしていただくというふうにお願いいたします。  そこで今度は、今のお話でたびたび基準価格の問題が出ておりますので、ちょっと基準価格の問題についてお伺いいたしたいのであります。公定価格というのが今ございますが、公定価格出してくるメカニズムと現在の基準価格をお出しになるメカニズムは、一体メカニズムとしては同じなのかどうか、それを一つ承りたいと思います。
  22. 原純夫

    原説明員 ある程度相違がございます。公定価格の方は、たとえば清酒について言いますればバルクであります。乗数で七割。一番安いコストで作っておるものから累計して参りまして、七割のところの原価を調べましてそれでやる。しかし、その中でも原料費のようなものは、理論計算と申しまして、実績値からというよりも、理論的な計算をやるというようなことをいたしております。それが、今回の基準価格におきましては、各階層につきまして工場原価それから一般管理販売費というものを各項目別にずっと洗って参って、そうして実績のとるべからざるものは若干規制をいたしますが、その実績を基礎として物価修正を行ない、それから操業度が高まって参りますと、その修正を行ない、その他今まで原価に入れてない項目原価に追加しろというような項目もございます。そういうようなものについて検討を加えた上で、入れるべきものは入れるということでやって、そうしてやはりバルクというのは、政治的なといいますか、説明もなかなかむずかしいものでありますので、バルクでない方法でいくことになるのではないかと思っております。これは平均価格でございますが、どういう平均によるかということでありますが、他の酒類においても、大体基準価格のやり方は、今申したようなことで、今までのマル公は他の酒類ではバルク方法はとっておりません。何らかの平均をとっております。大業者を除いた平均であるとか、あるいは全体の平均であるというような方法をとっております。またその中で原料費などは理論計算をやっているのが多い状態でありますが、それらを今回は全部今申したような積み上げでやって参りたいという考え方でおります。そうやって出ました工場製造原価一般管理販売費、それに適正利潤を見て、そして最後の価格考えるというふうな考え方でおる次第であります。
  23. 堀昌雄

    堀委員 そうしますと、算出の方向メカニズムは多少違うということになりますと、今度きまるであろう基準価格というものは、もしマル公と同じになれば、これはたまたま偶然一致するということになるのか。私論理的にだけ考えますと、片方は要素も多少違うし、そこヘバルク・ラインという方式が入っておる。片一方は相当にきめのこまかい積み上げをやるということになると、マル公基準価格は違うのがあたりまえだというふうに理解できるのですが、そこのところはどういうふうに——やはり違うのがあたりまえだというふうにお考えになりますか。
  24. 原純夫

    原説明員 おっしゃる通り、別の方式でやるのですから、ある意味では違うのがあたりまえだということであろうと思います。ただし、それはレベルが違うのがあたりまえだという意味になりますと、どっちかが間違っておるということになるわけで、私どもとしては、レベルの大きな違いはないはずだ、ただ計算方式が違うから何円何十何銭までぴしゃっと一致するということはあり得ないという意味で、違うのがあたりまえだというふうに考えております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そこで、今度の基準価格というのは積み上げ方式でおやりになるということで、その中で私ちょっと伺いたいのですけれども中央保有米の賦課金の問題なのですが、実はこの前の委員会で私伺いましたときに、泉間税部長は、私の問いにお答えになって、これは法律的には会費のようなものですというふうにお答えになったのです。これは非常に微妙な答弁になっているのですが、「私どもは法律的性格は中央会の特別賦課金と思っております。」しかし「そこに何らか経済的にそういうふうな米の割当を受ける場合の対価的な色彩が出ていることはいなめないと思いますが、法律的性格はあくまでも特別賦課金と思っております。」こういうふうに答弁をしていらっしゃる。そこで法律的には特別賦課金、経済的には対価だという考えが現在も国税庁におありになるのか。このうしろの部分がちょっとあいまいになっておるものだから、私は、法律的にも経済的にも、これはそういうことならやはり特別賦課金、会費のようなものなのか、逆に今度は対価なのか、どっちかにはっきり区別すべき性格のものじゃないかと思うのですが、ここはいかがでしょうか。
  26. 原純夫

    原説明員 大へんむずかしい点でございます。大へん恐縮でございますが、堀さんのお考えを承らしていただきまして、なお十分検討いたしたい。ずるいようでありますけれども基準価格を十月一日からやろうということになりますと、それの酒類行政懇談会への諮問というのは実は目の前に控えております。業界は今非常に神経をとがらして、これらを中心にいろいろ要望もし、議論もしておるところでございます。私決して国会を軽んずるわけではございませんけれども、私がここで今この賦課金のことを申し上げたあと、おそらくいろいろそういう項目お尋ねがあることと思いますが、それにお答えいたしますことは、そういう情勢に照らし、また懇談会で各界の人たちの御意見も伺うという段階にあるということから考えまして、若干いかがかと思いますので、大へん恐縮でございますが、そういうふうにお願いいたしたいと考えます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 実は、私がこの前の委員会でいろいろ調べておりますと、どうもこれは何か対価的な要素があるように感じたわけです。しかし、もし対価的要素があると、食管法の関係からしまして、米が二重価格になるということが法律的にははっきり出てきますから、それで、国税庁としては、やはり食管法の建前からするならば、これは法律的にやはり賦課金なんですと言い切ってお答えになったと思うのです。そこで、私は、もし賦課金だということを言い切ってお考えになるならば、本来この賦課金なり会費というものは製造原価の中に見込まれてくるものになるのではないか。賦課金ならば製造原価に入る。対価ならば利益の中に入る。しかし賦課金ならば製造原価に入るのだ。どちらかにやはり整理をなさらないと、この国会の答弁の中では、法律的には賦課金ですと、しかし何か経済的な要素があるようなことをおっしゃって、今度はその基準価格を見るときの工場原価の中にはこれは見ませんという格好になると、私は、ロジックが通ってこないじゃないか、こういうふうに思うわけです。そこで、やはり現状の法律の建前からするならば、実際にはなるほど経済的な要素というものを私も現実に見ておりますけれども、しかし、食管法を変えない限りどうしようもないじゃないかと思いますと、これは工場原価の中に入れざるを得ないだろうというふうに、私は論理的な結論を持っておりますので、実はお伺いをいたしたわけです。それは今後酒類行政懇談会の中で——私の申し上げていることは、これは筋道だと思います。その経済的な問題ということも片面ありますが、法治国であれば、やはり法律に従ってやらざるを得ないという面があるわけですから、そう点はやはりそういう面として一つ御了解をいただいておきたいというふうに思います。  これはまあ私の意見ですから、次に酒のいろいろなものを見ておりますと、ちょっと感じますのは、古い酒倉というのが非常にたくさん業界には残っておるようでございますね。ところが、どういう手違いなのか、実はその資産再評価をやっておいでにならないということのために、帳簿価格ではほとんどなくなってしまっておる、償却が済んでしまっておるというのが実情になっておるようです。ところが、この間に非常なインフレーションがありましたから、もしその原価償却をやったものを現実に積み立てておいでになっても、そう酒倉がもういよいよ使えなくなって新たに建てるという場合には、どうしても再取得のためにはやはり相当な費用を要するようになる。ところが、現実にはこれがもうほとんど償却済みになっていて、何ら償却に対する費用は見てもらえない。もちろん、さっき申し上げた再評価の問題において、私多少手落ちがあったと思いますが、しかし、現実の問題としては、やはり何らか今の酒倉その他の原価償却といいますか、再取得価格に対する何らかの配慮といいますか、そういうものをちょっと見ておく必要があるのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  28. 原純夫

    原説明員 これもただいま申しましたような基準価格の構成の一つ項目であります。やはり論議の的になるところであります。そうして、堀委員お話のような筋合いというものが、この業界からいわれております再評価を相当程度はやっております。しかし、限度額一ぱいまでは必ずしもやっていない。その差をどうするか。もっと言いますれば、さらに再取得するベースでいろという議論も出ますが、これはちょっとほかの企業と比べても通りかねるだろう。再評価の線までというようなことについてどう考えるか、ただいまお話がありましたことを十分含んで、私ども検討いたしたいと思います。  なお、先ほどの中央保有米関係の賦課金の問題でありますが、会費ないし対価であるとすれば、どっちにしても損金、経費になるわけです。ただ言葉を濁しましたもう一つ考え方といいますのは、権利売買的な意味があるとすると、それはどうか。つまり今相当高い対価で権利を買ってやられる向きがある。権利を高いので買ったから、それをコストに入れて消費者から回収させてくれといったら、消費者は怒り出すだろうと思うのです。一体中央保有米の賦課金がそういうものかどうか。今は相当基準指数割というようなことが入っておりまするし、移出割にしてもそう大きな傾斜がついてないわけですから、権利的なものといえるかどうかが問題でありますが、かりに中央保有米の配分が、冒頭に申しました自由競争原則を非常に出したものでやる。ただしそれでよけい作れる人はある程度の金を出しなさいということになりますと、これはかなり権利の対価的なものであって、そしてそれは強い業者が、自分の超過利潤といいますか、その中から出してきなさい、それを消費者から回収することはがまんしてやりなさいという論理が出てくる。そういう面のこともあり、いろいろ議論が出るようことが入っておりますので、別段これは議論申し上げるわけではございませんが、一応問題点についての考え方のもう一つの角度を御紹介申したわけでございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 今の御答弁で私ちょっと納得がいきませんのは、やはり中央保有米というものができた根本は、今の基準指数の中に相当アンバランスが基本的にあるということですね。そのアンバランス中央保有米で多少ならそうということで、そこにプレミアムのようなものがくっつく方が実は私はおかしいと思うのです。やはりこれは経済原則からするならば、基準指数をすうっと直してしまえば、中央保有米制度なんというものは要らなくなって、そうすれば今のプレミアム的なものが本来なくなって、自然の競争の形になってくるのじゃないか。ですから、これを今の形のままで中央保有米だけをだんだんふやして、競争的要素をふやすということになると、必要以上のプレミアムのようなものがそこへ出てきて、それを超過利潤と見るかとか、損金と見るかとかという議論は、ちょっと何か逆の方から問題が入ってきておるような感じがするので、そういうことがだんだんと広がってくるというのならば、何らかの形でその基準指数の問題をより根本的に改良しないと、またそこにおかしな矛盾が出てきはしないかというふうに考えますので、その点を含めて一つ検討いただきたいと思います。  次に、ちょっと私これはいろいろ資料を見てみますと、最近のあれですが、清酒と合成清酒としょうちゅう甲類という酒造関係の皆さんの経営の実態が、どうも清酒だけが下がってきて、あとの合成清酒やしょうちゅう類というものは比較的よくなりつつある。私が拝見しているのは、昭和三十四年十月に国税庁で発表になった資料でありますけれども、これの純益率で見ますと、清酒は、三十二年の三・八一%が三十三年は三・五四で、七・一%減になっておりますが、合成清酒の場合は、一・八%の純益率が三・一%で六九・四%増になり、しょうちゅう甲類については二・八五が四・八で、やはり六七・八%ぐらい純益率が出ておる。こういう実態がある中で、ほかのビールなんというのは一体どうなのか。ちょっとおわかりなら最近のこの純益率の変化を伺いたいのですが、どうでしょうか。
  30. 原純夫

    原説明員 大へん申しわけありませんが、今手元に資料がございません。宝は別にしまして、ビール三社の半期の利益は三十億、年六十億といたしますと、大体ビールは十五億本出ておって、百二十五円でありますから千八、九百億円になるわけです。それの六十億円ですから約三・三%くらいというようなことになっているとお考えいただいてよろしいと思います。
  31. 堀昌雄

    堀委員 実は私ちょっとビールを伺いましたのは、ビールは最近売れ行きが非常に伸びておりますから、当然純益率は上がってきているだろう。これは常識的な判断で、そう思うのです。そこで実はこの基準価格の中での広告宣伝費の問題で、何か他のビール、雑酒その他のようなところは、大体二・七%くらい広告宣伝費が見られておるが、酒の場合は、実績しか見ないということになると、一・七%くらいしか出てこないのです。ところが、基準価格をおきめになる皆さんの方のいろいろの資料を見ると、食料品その他についてすらも権衡を考えて、適正利潤なりいろいろな経費は見るのだということをお出しになっている資料があるのですが、そういうものから見ますと、やはり下向きになっているところで実績だけとれば、利益率が下がっておるのに、広告をたくさんやるというわけにいかないので、実績だけ見れば、やはりだんだん先細りになってくるのじゃないか。実績も必要でございましょうが、これはビール、雑酒、そういう業種との関係というものも考慮しないことには、やはりますます下がっていきはしないか。酒が下がっても別にどうというわけではないのですが、そういうふうに下がってくるとなると、これはやはり酒税の関係としてもうまくないということになるだろうと思いますし、私はこの清酒の問題で特に関心がありますのは、最近米が非常にたくさんとれるようになりましたから、将来は、清酒というものは、米の消費源の一つとして相当なファクターになってくる時期があるのではないか。こういうふうに考えてみますと、やはりそういう点では合理的な原価計算というものをされる必要があるのじゃないか、こういうふうに大体考えるわけでございます。  そこで、現在私は、そういういろいろな問題をもとにしてやっていただく場合に、基準価格は今度皆さんの方でおきめになると思うのですが、ただ、ここで一つ申し上げておきたいことは、私どももやはり消費者の立場を第一に考えなければなりません。そうすると、消費者の立場からするならば、あまり高い基準価格をきめられては困るというのは、これは当然なことです。ところが、片面、合理的な原価計算をやってきてみると、現在のマル公よりあるいは高くなる結果が出るかもわからぬ、そういうふうになると、大衆の要求と正確な原価計算というものが競合するような格好になる。私は、そういう場合には、合理的な計算というものはやはり当然見るべきだろうと思います。出た結果はやはり尊重すべきである。たとい高くなったとしても尊重すべきである。しかし、大衆が高い酒を買うということは問題がある。当然この場合の調整は、そう大したものでないならば、酒税をある程度動かすことによってでも、大衆負担は少なくとも下げてほしい。私は、この前の委員会で大臣に、間接税、特に酒、たばこの減税について触れました。ところが、新聞で拝見をしたところによると、参議院の大蔵委員会では、ことしは直接税をやるけれども、来年は酒とたばこをやるのだとおっしゃっておりますから、私大へんけっこうだと思うのですが、しかし来年やるということは、やうてもいいんだということなんだと理解するならば、今のように厳密な原価計算をして、基準価格マル公より上がった場合には、その上がった分についてくらいは、これは私は当然減税をするのが建前じゃないかと思う。大臣がいらっしゃらないところで申してもあれですが、だからそういう含みの上で適正な原価計算するというかまえ方を国税庁の方には特にとっていただきたい。私はそういうふうに一つ考える。  それから、もう一つ、この基準価格をおきめになるについて問題があるのは、現在の流通機構が必ずしも正常でないという問題ですね。そこで基準価格をおきめになるということについて、現在混乱しておる流通機構を一体どういう形で正常化しようというふうに国税庁はお考えになっておるのか。その点を一つ承りたいと思います。
  32. 原純夫

    原説明員 流通機構につきましてどういう点が混乱しているとおっしゃるのか、もう少し伺わしていただきたいと思います。由来酒につきましては、生産だけでなく、流通面におきましても、ある程度の歩調をそろえることが望ましいという考えで、いわゆる正常取引ということを申しまして、値くずしが極端にならぬように業界相戒めてやってもらいたいということを言っております。清酒のようなものは主原料が統制されておりますから、かなりこれに乗りやすいわけですが、蒸留酒あたりでは、毎月々々仕込んで作ります原料も近ごろはかなり豊富にあるわけでございますから、ほうっておけば値くずれするわけで、そういうわけから出荷の規制を組合がやりまして、それを通じて生産規制される、そういうベースに乗っかって流通面の正常取引運動が行なわれるというようなことに相なっております。まあそれにしてもいろいろ値くずしが出て参りまして、中には極端なものがあって、あわてて手を打つというようなことも近年なきにしもあらずでありますが、できる限りの努力はしておるつもりでございます。なお、どういう点に問題をお感じになっていらっしゃるのか、伺わしていただけましたらお答えさせていただきたいと思います。
  33. 堀昌雄

    堀委員 今特に都市で問題になると思いますのは、今お話しになった値くずしといいますか、値引きの問題です。実は私は、この問題を手がけるまで、お酒の中にそういうことなどあろうなどとは知らなかった。大衆もほとんど知らないと思うのです。お酒を一本、一升ずつ買いにいっている人が——実際われわれがお酒を買うときは常にマル公なんですが、そこに入るときにはずいぶん安い値段で入っていることなどだれも知らない。大衆は知らなけれども現実にはそういうことが行なわれている。値引きされたものがそれだけ安く全体として大衆に入るというなら話は別になるのですか、最終価格において一般の消費者が買う場合に値引きをされるという例は、私は寡聞にして聞いたことがない。そうすると、料理屋とかそういうところに値引きをしたお酒が入っていくんだ、こういうことに現実はなっている。こういう点は私はやはり望ましくない現象だと思う。ところが、事実として、今最初の議論で申し上げたように、供給はちょっと少な目になっておる。ところが、価格がこういうふうにくずれるということは、部分的には供給過剰な部分が出ておるのじゃないか。こういう問題が出て参ると思いますので、その点についてやはり何らかのこれを正常化するような方法を強力に指導していただかないと、基準価格をおきめになっても何ら有効なあれを生じてこないのではないかというふうに感ずるのですが、それについてはいかがですか。
  34. 原純夫

    原説明員 御指摘の通り値引きの問題は非常に大きな問題だと思っております。表向きどんな価格制度をとりましても、その裏で極端な値引きあるいは非常に混乱した値引きの情勢が展開いたしますならば、われわれの考えているところと非常に違った形になってくるということで、私も今後十分この点については検討して、できる限りの妥当な措置をとって参りたいと考えております。
  35. 堀昌雄

    堀委員 国税庁についての質問はこれで終わりまして、大臣がお見えになりましたから、二、三大臣にお伺いしたいと思います。  実は、この前の委員会で、私減税の問題に触れましたときに、本年度は大体直接税の減税だというふうにおっしゃっただけにとどまっておりましたが、新聞で拝見しますと、まだ速記録が出ておりませんので詳しくわからないのですが、参議院の大蔵委員会においては、来年度は酒とたばこを減税するんだというふうにお答えになっておるやに報道されておるのでありますが、この点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  36. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 参議院での御質問に対して私のお答えしたことは、来年度は、つまり昭和三十六年度は直接税中心の減税を今考えておるために、そのほかの今御質問のような減税は、大体今のところ三十六年度ではなくて三十七年度に行なう減税の問題であるというふうに考えていると答弁したのでありまして、来年これをやるというふうには答えておりません。
  37. 堀昌雄

    堀委員 来年でなくて再来年というふうに承ったのです。そうすると、これは大蔵大臣がずっと再来年までいらっしゃれば話は非常に筋が通ってきますが、もしそれがないとすると、あれは前の大臣が言ったんだ、おれは知らぬということになると、私どもいかがかと思うのです。それは単に三十七年はやりたいなあという程度のことなのか、あるいは三十六年度に直接税をやるから、三十七年度は間接税として特に酒やたばこについて、一般の潤わざる大衆に対して減税の恩典に浴させるんだという確定的な方針なのか、その点をちょっと承っておきたい。
  38. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 減税は全般的にいろいろのものをやりたいと考えておりますが、これはやはり体系を乱すような減税はやりたくない、こういうことから、御承知のように今税制調査会にこの研究をしていただいておるのです。この最終結論が出ませんために、さしあたり今までの討議を基礎にして、来年度どういう減税をやったらいいかという中間の答申を求めましたところ、この答申が出て参りましたので、来年度はやはりこの答申を中心にして減税をする、そしてさらに引き続きそのほかの問題の研究を願っておりますので、この答申を待って次の年度にやりたい、こういう考えであります。
  39. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、参議院ではああいうことはおっしゃらなかったわけでしょうか。そこのところがちょっとよくわからないのです。新聞では何か三十七年には酒とたばこの減税をするんだというふうに伝えられておるのですが、そういうお答えはなさっていなかったわけでしょうね。速記録がまだ出ないものですから、私見ていないのでわからないから、ちょっと伺います。
  40. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 来年やるとは申しておりません。
  41. 堀昌雄

    堀委員 再来年、三十七年ですよ。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やるとすれば再来年になるだろうというふうに答えております。
  43. 堀昌雄

    堀委員 そのやるとすれば再来年になるだろうということは、大体やる気がないということに承るのですが、そういうことですか。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、今言ったのはちょっと間違いで、三十七年度にやるというふうに言っておると思うのですが、私もはっきりしておりません。とにかく来年やる私の予定に入っていないことだけをはっきりしております。
  45. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと佐藤さんが通産大臣に質問があるそうですから、私ここで区切りまして、終わりましたら引き続きお伺いいたします。
  46. 山本勝市

  47. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 通産大臣の時間の都合もありますから、若干の点について御質問したいと思います。  通産大臣は、先日モスクワの見木市に行かれまして、いろいろ現地の事情を見てこられて最近お帰りになったのですが、今一番問題なのは、日本の貿易の問題がいろい隘路が来ておるので、今後の日ソの問題について意見がかわされております。日ソの貿易というものはどういう方向でやっていかれるのか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  48. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 先ごろモスクワの日本見本市に行きました機会に、関係の人たちといろいろ御相談をいたしまして、最後にミコヤン第一副首相とお目にかかって、両国の貿易関係の問題を話合ったのであります。見本市が非常に成功するように見えた最初のころでございましたが、これは百万人の人がこれを見て、初めて日本の経済がどんなものであるかということをよく認識する機会を得たと思ったのであります。出ておるものも非常にりっぱなものであるし、われわれはこういうものを通して日本の工業力というものを新たに認識する。ことしの三月から開かれております長期貿易協定、これによってまず年間およそ七千万ドル程度の往復出入りが予想されておる状態であります。今は日本から行っておるものが少なくて、ソビエトから日本に入っておる分量の方が多いわけでございますが、この問題でもっと足取りを早くはかってもらえぬか、あなたの方からたくさんの人が日本にいろいろなものを見に見えるが、ごらんになっただけでそれ以上の話が進まないけれども、大いにこの話を進めようじゃないかということを申しましたら、それは日本の産業が西欧のどこの国に比しても負けないような状態のものがたくさんある、できるだけわれわれの方も買いたいという心持を持っておる、そうしてまた、それに見返るような品物をわれわれの方から出すことにおいても、日本の品物とかち合わないで、日本の需要に応じ得るようなものがたくさんあると思うのだから、ビジネス・ベースによって話がつき得れば、そうして数量の点においてうまく話がつけば、貿易はだんだん盛んになるだろうと思うが、ということをミコヤン氏も申しておりました。その通り私も思うのだと話しているうちに、今の問題は支払いの点が一つの問題である。延べ払い問題が問題になっておる。これは日本の民間の人はこれに賛成の意を表しておられるようであるが、政府は一体どう考えるか、あなたはどうお考えになっておるか聞きたいということでございました。それで、この延べ払いの問題、あなたの方は窓口が一つであるけれども、われわれの方は商社各個各個であるし、いろいろな品物によっても違うのでありますから、一がいには言えない。しかし、政府の考えはどうだと言われますと、政府としては、戦後借金生活のようにしてようやく今日までの経済の復興をやってきたのだから、品物は売りだし、金は早く払ってもらいたしというのがわれわれのほんとうの考えであるから、なるべく延べ払いはしたくないけれども、世界の各国との競争上の問題は、ビジネス・べースという点から見てのお話として、これは多少考えなくちゃならぬということもわれわれ考えておる。大体日本がほかの国にやっておる延べ払いをする場合の限度としておおよそ考えているものは、頭金を二割、それから四年ないし五年くらいな延べ払い、それ以上は持ってきたくないというのが大体の考え方であります。しかし、さっき申したように、個々の場合がいろいろありますから、これはケース・バイ・ケースで御相談をしようじゃありませんか、そうしてなるべく商売ができていくようにいたしたいということを話した。その通りだと思うから、ぜひそういうことで後刻話し合いをしようということを申し合ったわけであります。この貿易の前途につきまして、そのときいろいろほかの政治上の話も一ぺんこの機会に聞いておいてくれと言って、相談でもなく話がいろいろありましたが、それらの点で、あるいは政治上の問題あるいは文化協定の問題等でまだきまらぬものはいろいろあるが、この経済の問題、特に貿易の話し合いは、あなたの話と私の申しておることとが非常にぴったり合うのだ、このぴったり合ったものから一つ力を入れていこうじゃありませんか、ぜひこの経済の問題、特に貿易を盛んにしていくということで力を入れようじゃないですか、というような話し合いをいたしまして別れたわけであります。  それで、ことしの見本市は数日前に終わりましたが、予定されておった通りに百万人以上の人が見ることができた。大体初めから一日五万人がそこの収容限度と思っておったが、二十一日間に、約百万人と言っておりましたが、百万人をちょっと出たということでありまして、予定通りの人が見てくれたということであります。これが非常な大きな影響を今後の貿易関係等に及ぼすのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。それで、これのお返しという意味にもなるわけでありますが、来年の九、十月ごろに、東京においてソビエトだけの見本市を開きたいということを、私が行った翌日、向こうのこの問題の責任者、商工会議所の会頭に会ったとき、正式に自分の方はそういうふうにきめた、九月か十月に開きたいが、あなたの方の御都合をお聞きしたいということで、私の方は、でき得れば月島の晴海の会場で開きたい、雨が降っても見れるような状態のところがよい、しかし来年の九月だから、あるいは予約があるかもわからぬから、帰ってすぐ調べて御返事しようということで帰ってさましたら、九月は一ぱいになっておるので、十月と今押えて向こうと相談をいたしております。来年の十月には向こうの見本市が開かれるということで、お互いに知り合うということが今日の貿易の増進になるだろうと思っておる次第であります。
  49. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 日ソの国交が回復しているし、国民としては非常に国が近いのでいろいろやっていきたいと思いますが、それに関連して、御承知のように中共貿易の問題がやはり問題になってきた。今まで、岸内閣というのは、何かこわばってしまって、はれものにさわるような感じでずっときましたが、実は高碕通産大臣が前にやっておられたときにも、やはり中共貿易のことを非常に心配しておられました。石井さんは前に商工大臣をやっておられますし、中共の方のことも、ソ連と同じように見本市を開くなり、あるいは何らかの方法で貿易の打開をする方法はないのか、池田さんはきのうもいろいろ新政策を発表されておりますが、何かこういうことで新しい道を開くのに、せっかくソ連に通産大臣が行かれてそういういい感想を持たれたと同時に、中共貿易も何とかそういう方法で打開する道はないのか、そういう点について何か御意思を持っておられるのか、この際承っておきたいと思います。
  50. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 中共貿易は、御承知のように二年前に中絶をいたしました。まことに遺憾なことでございます。私どもはそのときまで貿易をいたしておったような次第で、貿易そのものは政府としてやっていくという方針を岸内閣においてもとっておったわけでございますが、政治問題からああいうふうな中絶になったのでございます。今後貿易を開くには、政治的の配慮と申しますか、政治的のある程度のアンダスタンティングがなくてはならぬというような意味のことがいろいろ伝えられておりますので、なかなかいろいろな情勢上むずかしいことであると思いながら、ただそういう声を聞いておったのでございますが、最近日中貿易促進会の鈴木君ですかが周恩来氏に会った話というものが伝えられまして、新しい内閣のもとにおいて日本がその心組みがあるならば貿易の道を開いてもよろしい、それも非常に弾力のあるような国と国との間の話し合い、民間の契約、あるいはこの間からのシナ料理の材料とかウルシとかいっておりましたような特殊なものについて、恩恵的に話し合いするというような方法でもいいということを言うておられるというのでありますが、これはただそういうふうに伝えられておるだけでありますので、これを取り上げてそのうちのどれをするというような段階にはまだいっていないのでございます。しかし、ソビエトと貿易をしており、また中共そのものとも前からやっておった事実もあるのでございまして、貿易に関する限りにおいて中共と手を握るということは、やってけっこうだというふうに私は思っておるのでございます。どういうふうな機会にどういうふうな方法でやるかということ等がこれから研究されなければならぬ問題だと思いますが、私としては日中貿易をやるという方向考えていきたいと思います。
  51. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 昨年私は、東南アジアに参って六ヵ国を回りまして、いろいろ事情を見てきましたが、東南アジアの貿易もなかなか伸展を見ていない形になっておるわけです。そういう点で、私たちは、お隣の中国それからソ連という国は何といっても近い国でもあるし、同時に、日本が貿易を発展させるのには、ただアメリカだけにたよらないで、やはり独立に経済外交をやる場合においては、池田さんが出たのは一番いいのじゃないかと思う。そういう点で、石井さんは通産大臣を長くやっておられたし、同時に民間側の方でありますから、今までのようなわずかなことでこわばって、日本の方の政治的な問題といっても、そう大したことでないのを非常に過重に考えてやられたというおそれがある。これは中国は中国の言い分がありますが、経済的に考えるとこれはばかばかしい話で、岸さんのような自分の面子のために国民が非常な難儀をする。一番問題になるのは、中共貿易の問題は議員で超党派的にやっておるわけです。何も全部が全部われわれ中国の共産党に賛成しているわけじゃないけれども、少なくとも貿易の問題についてはやはりもう少し目を大きく開いてやらないと——現にイギリスなんかは、御承知のように早くから中共を認めて、盛んに貿易をやっておる。ところが、貿易の関係で一番深かった日本が今なお足踏みしておることは非常に残念だと思うのですが、そういう点について、石井さんは今度ソ連に行かれていろいろな事情を考えられて、またそういう貿易のことについては自分も新しく考えてもいい、こういうお考えにあるならば、大蔵大臣もおられますし、積極的に一つ動かして、もう少し明るい道を開いていただきたいと思うのです。それは選挙の前だから盛んに答案を書いておられて、うまいことを宣伝されておりますけれども、その宣伝だけではだめなので、現実的に何といっても中共関係は今一種の難局に立って、国内の中共関係の仕事の部分については、あっぷあっぷやっておるわけです。こういう点についてやはりこの際思い切って、ソ連も中共も貿易のことについてはもっと積極的にやられる御意思があるのかどうか、この際あらためて承っておきたい。
  52. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、私の方としては貿易を開くという基本的な心持を持っております。いろいろな情勢がまだはっきりせぬものもありますから、よく研究をいたしまして、なるべく早い機会に開くことができるような情勢に持っていくように努力してみたいと思います。  それから、今東南アジア方面の貿易についての御感想もありました。東南アジア貿易は非常に大事なものではあるが、まだ後進国であって購買力が非常に弱いというような点等から、思うようにそう急には伸びないと私は思います。まずそこの経済力をつけることが根本だというような、非常に長い目でここらを育成し、そうしてわれわれと同じ仲間の東洋だということで貿易を盛んにするということをしなくてはならない。この間私ソビエトの帰りにイギリスとフランス、ロンドンとパリだけにちょっとでありますが寄りまして、そこの関係の官民の人たちといろいろ懇談をいたして参りました。この両国とも日本の品物を買うことについて非常に消極的なんであります。御承知のようにフランスのごときは最も消極的な状態であります。日本に対する貿易上の待遇というものは一番悪い扱いをされておるわけであります。これらの国の人たちと話をいたしまして、私は、欧州というものを、政治上でもそうでありますが、今まで貿易上においても少しほったらかし過ぎておった、アメリカ一辺倒であり過ぎたのではないかということを特に考えます。今まではそれが必要であった。これから先はもっと伸ばしていかなければならぬ。国民の収入倍増十年計画をやっていくならば、もっと盛んにしなければならぬわけであります。貿易を世界中とどんどんやらなければならぬし、欧州にもう少し力を入れたいということで、両国ともその意味において非常に共鳴してくれまして、イギリスと日本との日英通商条約もなるべく早く結ぼう、来年話し合いをしようと言っておったのを、この九月から始めようというようなこと等も言ってくれまして、そういう方面に力を向けたいと思っております。そういう心持に立ちまして、中共との貿易というものをじっくりと考えてやっていきたいと思っております。
  53. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に、石井さんもアメリカ一辺倒の貿易ではいかぬということを自覚されておるのですから、あまりくどくは言いませんが、実は私も昨年東南アジアからヨーロッパに行きまして、特にフランスやドイツなどとの貿易が可能であるというようなことをジェトロを通じていろいろ知りました。そういう点でやはりアメリカだけが日本のあれではないので、そろそろアメリカの貿易関係も頂点に達しておると思います。そういう点についてぜひ目を広く開いて、何とか狭い国の日本の貿易外交については特に注意をしていただきたい、そういうことについて希望を申し上げます。  時間がないようでありますし、同僚の石野君が関連質問一つあるそうでありますから、きょうはやめますが、この際日ソ貿易、日中貿易、また欧州の問題について大きくやっていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  54. 石野久男

    石野委員 関連しまして通産大臣に一つ聞きたいのですが、通産大臣も、ただいま申されましたように、今までの政府の貿易外交、経済外交はアメリカに片寄り過ぎておって——今度は所得倍増もしなければならぬから、各国との間にまんべんなくやろうという御趣旨はけっこうで、またそうしてもらいたいと思います。通産大臣は、今、東南アジアもさることながら、欧州との関係をもう少し深くしていきたい、こういうお話でございました。それもけっこうです。しかし、遠い親類より近い他人と言いますか、そういうこともございます。私どもは、欧州も非常にけっこうでございますが、東南アジア、それからアジアの大陸、こういうような地域と緊密に貿易をやっていくということは、従来もそうであったのですが、今も大事なことだと思います。ただいま佐藤議員からソ連、中共のお話もございましたが、やはり朝鮮の問題も一つございます。先般は小坂外務大臣が韓国に参りましてまた新しく関係を調整していこうとなさっておる。その点は私は別に悪いとは思いません。けっこうだと思います。同時にまた、北の朝鮮の方も同様につき合いをすべきじゃないかと私は思っております。ことに在日朝鮮人の諸君が多数この一年間を通じて北の朝鮮の方へ帰っておるわけであります。人的交流と同時に経済的な交流を特にこの際していくべきであり、またそうしないと実際池田総理の言う所得倍増が全般的にスムーズにいくことはできないだろうと思います。そういう点で、朝鮮の貿易の問題は北と南とのいろいろな関係もございますけれども、北朝鮮との関係について通産大臣はどういうようにお考えになっておられるか、お聞かせ願いたい。  同時に、大蔵大臣にもお聞きしたいのですが、水田大臣とは一昨年東南アジアも一諸に歩いて参りまして、東南アジアの事情等をずっと見て参りました。その当時もいろいろ話し合いをしておりまするし、御意見もよくわかっておるつもりでおりますけれども、北朝鮮との貿易の問題については、決済とか何かの問題もいろいろございます。そういう問題を通じまして、中国あるいは朝鮮等のこういう貿易関係の問題について、大蔵大臣としてどういう御所見を持っておられるか、まず一つお聞かせいただきたい。
  55. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は世界のどこの国とも貿易状態を持つということは方針として考えていきたいと思うのでございますから、今のような問題についても、できれば早く貿易状態に入ることを期待しておるわけでございますが、これは御承知のように政治上の問題が少しからみまして韓国との会談問題が断続しておる状態で、ようやく小坂大臣がおとといあたり行きまして、南の方と、李承晩氏のときと全然違った角度において話ができておるという状態でございます。これから話が進むのでございますから、これらの問題とも関連しなければ、いつからすぐ始めるように努力しようと言うわけにもいきませんけれども、全体的に私はどことも話し合いをして貿易状態を持っていきたいという心持を持って、いろいろ努力していきたいと考えております。
  56. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の考えも大体通産大臣の考えと同じでございます。
  57. 堀昌雄

    堀委員 大臣にお伺いいたします。  実は最近新聞紙上で非常に伝えられておるところでございますけれども、アメリカとの関係の中で、株式の投資の問題についてADRという問題が持ち上がってきております。新聞報道では実は一部ではもうすでにこれが間もなく実施されるやに出ておりましたところが、けさの新聞を見ますと、何か昨日次官が記者会見で、ADRを実施するかどうかについては大蔵省としても検討しているが、株の思惑の材料になっている間はこれをきめたくないと言明した、こういうことが新聞に出ておりますが、これについて大臣のお考え一つ承りたいと思います。
  58. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 為替の自由化の問題と関連しまして、特に資本取引の自由をもう一歩進めたいという考えから、お話のような問題が今討議されておることは事実でございます。こういう問題についての利害得失はいろいろございますが、しかし、今お話しの問題、また証券円の問題、幾つかの問題が出ておりますので、それらを総合的に考えて、近いうちに私どもは結論を出したいと思っております。
  59. 堀昌雄

    堀委員 総合的に考えて結論を出したいという抽象的なお答えで私全然わからないのですけれども、そういたしますと、一体ADRを実施される場合には、これは証券円と同様にやるということなのか。時期的に、今ここに書いてあるように、株の思惑の材料になっている間はこれはやらないのだということになると、これが裏側に返って、これはやることなんだということになれば、この株の思惑がずっと続いて、続いている間はやらないのだということになると、はなはだおかしな表現ではないかと私は思うのですが、ではどういう時期になればどういう形でおやりになるのか。ADRだけでやるのか、あるいは証券円を含めておやりになるのか、その点についてもう少し具体的なお考えを承りたいと思います。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいまの程度の管理をするということを前提としますと、やはり証券円という考え方もいいんではないかと思うのですが、それと関連して今の管理をもっとゆるめる、元本の送金に対してそういう制限を加えなくてもいいじゃないかという考え方になれば、また証券円についての考え方も私ども変わってきますので、できるだけそういう管理をゆるめて資本取引自由化しようという立場から、そういう問題を取り扱っているということでございます。
  61. 堀昌雄

    堀委員 為替外貨の管理の問題については、この六月一日にお変えになりましたね。大体二年据え置き、三年分割で持って帰れるということにお変えになっておる。そうすると、また引き続き外資法の側で規制をゆるめることを当面考えておいでになるのか。当面それを考えれば、もちろんそれがフリーになれば証券円というものは必要がなくなると思いますが、そこのところはどっちに比重がかかっておるのでしょうか。外資法を改める方に比重をかけておられるのですか、証券円を改める方に比重をかけておられるのですか、どっちですか。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ結論は出ておりませんが、私自身の考えは、今までの制限規定を緩和していこう、そういう形で解決していこうという考えを持っております。
  63. 堀昌雄

    堀委員 大体今までの話を聞いておりますと、ADRは大体実施をなさる、ただ時期の問題が残っておるように感ずるのでありますが、そこをちょっと伺っておきたいのは、ADRが行なわれた場合に、アメリカにおけるその株価と日本の株価と二重的な価格が出てくる可能性というものが十分あるのではないか。その場合に、今の証券円でも私は十分にそれがコントロールできないのではないかと思うのです。特に問題になるのは、アメリカの株価に日本の株価が引きずられるというような傾向が逆に出てきはしないかということで、いろいろとその点値段がさや寄せする過程の中に問題があるように思いますが、それについてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  64. 西原直廉

    ○西原説明員 これはいろいろそのときの情勢によって非常に違うだろうと思うのですが、今のお話のような意味で株価が同じになるかどうかということになると、これは必ず一緒だということはなかなか言えないのではないかと思うのです。しかし、どっちの情勢がどっちを引っぱるかということは、これは必ずしも言えないあれだろうと思います。
  65. 堀昌雄

    堀委員 どっちがどっちを引っぱるかという問題もありますが、現在の日本の経済とアメリカ経済の関連から見ますと、やはりどうもアメリカの経済の方に引っぱられる傾向が出てきはしないか。そういうことになると、国内のそういう実際上の需給の問題を離れて、アメリカ内部における投機というと語弊があるかもしれませんが、かなりそういう要素によってこの問題が影響されてくる。ということは、国内市場において必ずしもプラスにならない面が生じてくるのではないか、こういう不安があるのですが、この点についてはいかがですか。
  66. 西原直廉

    ○西原説明員 今のお話のように、株価自体の面から考えますと、アメリカの景気というものが、株の面を通じてそういう会社とかなんとかについては響きがくるだろうと思います。しかし、他面一般にADRなんかの点について利点があるのじゃないかといわれております点は、一つの意味における外資の導入というものを、これによって積極化できるのではないかという点はもちろんございますが、それ以外に、そういうようなADRの中に入った会社の、何と申しますか、宣伝的な意味の価値というものは相当あるのではないか、こういう点を今非常に買われておるように私は聞き及んでおります。
  67. 堀昌雄

    堀委員 私は、こういう政策を政府がおとりになる場合は、プラスの面は十分に評価すればよいのですが——しなくてもよいけれども、マイナスの面については特に慎重にお考えをいただかないと、それによって経済的な思わざる混乱を生ずるということは非常に困るのではないかというふうに感ずるわけです。そこで、最近株の取得率が改正をされて、制限株で一〇%、一般一五%まで引き上げられてきた。そこで、実際の今の日本の総株数の中で、もし実際にアメリカの方で一〇%なり一五%なりの株が買われて、それは証券円でも、外資法がゆるくなったにしても、証券円で考えてみても、そういう状態で証券円が実施されておるということになると、アメリカの資金というものが日本の市場へ流れ込んできて、多少投機的な様相で動き方をするということになると、これは相当比重があるんじゃないかと私は思う。東京証券市場の上場株の総数は大体二百四十億株くらいのようですが、一日に取引されておるのは七千万株。ところが、実際に一〇%ぐらいが手元にアメリカ資本としてあるとするならば、それのうちの五%が、毎日ちょっと一%なり二%ずつ動いてくるだけでも、証券市場は相当な混乱を起こす余地がある、証券円ならそれは可能だというふうに私は判断をするのです。そういう問題については大蔵省は一体どういうふうに考えておいでになりますか。
  68. 西原直廉

    ○西原説明員 今の外国人による株式の持ち分の取得認可額は、現在のところ市場を経由しておりますものは百億、今度かりにADRというものが実施されたと仮定した場合どのくらいふえるかということでございますが、これはどうということは私どもとしても推測がつかないのでございます。しかし、現在市場で売買されておりますのは八千万株から場合によりましては一億五千万くらいになることもございます。今後増資とか何かもいろいろ進むだろうと思いますから、この売買高というものは非常にふえるだろう今の時価で大体上場されているものが三兆以上、三兆五千億から約四兆近くの価額になっていますから、現在までのところの百億というようなものを考えますと、これがふえるといっても、そう非常にふえるかどうか、その点私はわかりません。しかし、そういう三兆とか四兆というような数字と比べますと、あまり大きな数字とは言えないんじゃないか、そういうふうに思うのでございます。
  69. 堀昌雄

    堀委員 現実にどれだけふえるかということは、おっしゃるように一ぺんにふえないと私は思いますが、為替自由化の問題でもホット・マネーというようなものが非常にわずかな利ざやでも動いてくるという資本主義的な原則があるとすると、取得率は一〇%、一五%まで行けるのだ。片方は証券円のようなものができ、ADRのようなものができたということになると、相当な資金が流入する可能性がないとは言えないと私は思うそうすると、限度一ぱいまで来るかもしれない。そういう場合におけるその株の移動というものが日本の国内市場に対して一体どういう影響を与えるかということも検討をされた上で、ADRや証券円をお考えになるということならばいいのですが、単にある特定の会社の宣伝に非常に好都合だろうというようなプラス面だけをお考えになってこのADR、証券円を考えていただくならば、国内のそういう善意なる投資家に対して迷惑を及ぼすこと必ずしもなきにしもあらずじゃないかという不安があるものですから、ちょっとその点を伺っておきたいと思います。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 むろん今のような影響の問題も検討してから私どもは結論を出すつもりでございます。
  71. 堀昌雄

    堀委員 もう一つだけお伺いしたいのは、最近IMFの総会が開かれるので、大蔵大臣はお出かけになるというふうに聞いておるのですが、このIMFで、あるいは最近非常に日本の外貨手持ちがふえてきて、昨日も池田総理大臣は大みえを切っていらっしゃるわけですが、大みえを切ることは、裏返して言うならば、貿易自由化はともかく、IMFの勧告としてやれということがきわめて近づいておるということに私は理解すべきじゃないかと思う。そういうふうな段階になっているときに、アメリカの方でIMFの勧告が出たら、これを一年以内に自由化をやってしまえというような提案が出ておるという問題が片面ありますし、片面にはフランス提案によるところの輸出入銀行にちょっと問題が影響するような問題、あるいは輸出所得控除についての問題、相当今度の秋のガットについては、日本は問題をたくさん背負わされておると思いますが、こういう問題に対して大蔵大臣は一体どういうように考えておりますか。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 IMFで日本に対する何らかの勧告が出るだろうということは、今のところ予想されております。しかし、その前に日本に来られて日本の実情を見て、相当日本の現状を理解して帰っておりますので、この勧告もそう私どもがこれを苦にするような勧告には大体ならないで済むような予想を私どもは今持っております。  その次の問題は、フランスの提案は、今度の第十七回の総会に、フランスは、輸出補助金の廃止の期限につき総会で検討すること、現在一部の国で行なわれている補助金を列挙して、それがガット第十六条に違反することを決議すべきであるということ。その各国の補助金について列記した内容を申し上げますと、輸出ボーナス制度を伴う外貨割当、輸出業者に対する直接補助金、輸出に関連をする直接税の軽減、輸出品に対する間接税の不当な軽減、政府が輸入した原材料の低廉な供給、商業べースによらない低率の保険料による輸出保険、コストを割る低率の輸出信用の供与または信用コストの政府肩がわり、こういうものをあげて、これを各締約国が十分に討議し、輸出補助金の全廃に踏み切るべきであるという提案をしておることは事実でございますので、十七回の総会においてこの問題が討議されると思っております。これに関連してわが国にも輸出所得控除というような問題がございますので、それとの関係が当然に出てくることと思っております。現に前回にも前々回の総会にもこの問題が出ておりますので、私どもは、各国と討議する際におきまして、日本の控除制というのは、そういう意味で趣旨は違って作られたものではありますが、しかし、一応問題になるとしますれば、各国が同様に日本と同じような効果を持った措置をみなやめるというならば賛成でございまして、日本だけがこれをやめて各国はそのままにするということでは困りますので、全部がこういう措置をやめるんだということであったら、われわれは積極的にそれに賛成する、支持する方向でいきたいと思っております。
  73. 堀昌雄

    堀委員 もう一つ輸出入銀行のコストを割る賃金の問題ですね。現在の輸出入銀行は四%とか五%くらいで、実際の運用資金は六・三%くらい、コストを割っている問題に輸出入銀行はひっかかってくるんじゃないか、こう思うのですが、それに対してはどうですか。
  74. 石野久男

    石野説明員 ただいまの御質問の点でございますが、私はまだフランスの提案というものの内容もはっきりわからないのです。私ども英語で読みましたところは、何か資金コストを割った金利にならないようにということの提案が行なわれるように読めるのでありますが、まだ具体的に提案があって御説明があったというわけではありません。それで、資金コストを割っての金利という問題なんですが、この点につきましても、輸出入銀行といたしましては、これは全体として資金コストを割っておるわけでもございません。まあ金利全体としては、市中の金利とも合わせて、国際金利程度ということでやっておりますので、具体的な問題になります前に、そういう問題はあまり詰め議論するのもいかがか、むしろ具体的提案があった場合に、輸出を伸ばすということも非常に大切なことですので、そういうようなこととも関連して、できるだけそういうことが問題にならないように、その辺のところはいろいろ説明も必要でしょうし、また各国の例も、いろいろな形でそういうようなものが行なわれているかとも思われますので、そういうようなものとの関連でうまく説明をして参りたい、そういうふうに考えております。
  75. 山本勝市

  76. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 大蔵大臣に二、三点お伺いしたいと思います。  これはほんとうは池田総理大臣に聞きたいのですが、新政策を発表されまして、骨子をなしておるのは所得倍増論、その所得倍増論の中で一番大きく問題になっておるのは——きょうは企画庁長官を呼んだのですが、来られないそうですから、大蔵大臣にお伺いしたいのですが、経済成長率九%という数字でいろいろ問題になっています。これがくずれると、今まで池田さんが幾ら考えてきておっても、これは問題がいいかげんなことになるのですが、どういう根拠で九%を持っておられるのか。これは大蔵大臣に直接責任ないとしても、重要な問題だと思いますので、その根拠をわれわれの納得のいくように一つ説明願いたい。
  77. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本経済の過去の成長率を見ましても、その平均は非常に高い成長率でございまして、たとえば昭和二十五年から三十四年と十年間の平均を見ますと、九・三%という成長率でございます。また三十年から三十四年のごく最近のこの四、五カ年をとってみましても、やはり九・三%という数字が出て参りますので、私どもは所得倍増計画として平均七・二%の伸びということを一応はきめてかかりましたが、これは将来十年間の総平均を見るとしますなら、今成長率は高くても、先に行って高くなればなるほど、その割合ではいかないので鈍化するのが当然でございますから、今後の総平均を見る場合には七・二%という見方も一応妥当ではないかと思っておりますが、少なくとも現状を見て、これから推算するということになりますと、御承知のように去年は実質一七%という異常な成長率でございますし、そうすれば、当然ことし相当の鈍化傾向が見られるのではないかと思いましたが、本年も依然として高水準の成長率でございまして、おそらく一〇%以上になるという状況でございますので、このことから推しましても、少なくとも来年、要するに将来の十年間の総平均でいくということは全く現実に合わない。今の実情から推しまして、向こう三年間ぐらい平均九%の成長率というものは当然であって、あるいはむしろ今の状況ではそれ以上になるかもしれぬという傾向にございますので、私どもは当初の七・二%を九%に直したということでございます。これは新政策の一つ中心問題でございますので、私どもは、いろんな角度から、いろんな資料に基づきまして検討を遂げましたが、今のところ九%というものは絶対高過ぎないという自信を持っている次第でございます。
  78. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 非常に楽観論で、選挙の前だからそういうことを言われると思うのですが、世界の水準は大体二%ぐらいしか上がってないじゃないですか。アメリカがそうであります。世界で平均九%以上上がったというところは一ヵ国もないということは、これは事実でございます。アメリカのケネディという四十三才の大統領候補は、アメリカは五%上げると言って物笑いになっておる。今大蔵大臣の言われる数字だと、実にたなからぼたもちでありまして、なるほど去年は一七%上がりました。しかし三十三年は三・七%、それから三十二年は七・一%という数字で、それくらい水田大蔵大臣が言われるような成長率ならば、一五%にしてもよさそうじゃないか、こういうことになるわけですが、私たちは、どうも根拠のない数字で水増しして、そして一夜つけの形があるのじゃないか、大体七%くらいだけれども、この際選挙前だから九%にしておけ、そういう安易な考え方でやっておられるのじゃないか、こういうように考えるのですが、私たちが納得のいくように、なるほどこういう事情がある、世界の事情もあるし、それから世界の大体の水準があるしするものですからそうなる、そういう点は一体考えられてやったのかどうか、この点を一つ伺ってみたいと思います。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本の経済の伸び率というのは、世界の外国の伸び率に左右されることはない内在的な別個のものを持っておりますので、私どもは、やはり過去の実績検討し、現状を検討して、そういう結論になったわけでございますので、細工をして特に作った数字ではございません。三十三年度に三・七%というような数字が出ていることは確かでございますが、これは、御承知のように、その前における引き締め政策というようなものがございましたので、その影響を受けておりますが、しかし今考えてみますと、あの当時においても、私どもは、人為的なああいう政策をやらなかったら、相当の伸び率を示しておっただろうと思っています。外貨が急に不足したためにああいう措置をとったのですが、しかし外貨があの年に減ったことは事実でございます。減った以上の原材料の蓄積があのときになされておったことも事実でございますので、あの外貨不足の三十二年度の当時においても、日本の国際収支の実体というものは悪くなかっただろうと思っていますが、その結果三十四年度のこういう成長率に現われてきているものでございまして、ことしの成長率についての見方も、各方面からたくさんございまして、一三%くらいにいくのではないかという計算も出ておりますし、一一%は確実であるということも出ておりますし、また大事をとった見方では、少なくとも八・五%ということはどこの数字をとっても一番内輪な見方として出て参りましたので、九%ということについては、これはほとんど異論の余地がございませんでした。
  80. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 非常にいい話ばかりで、まことにけっこうずくめでありますけれども、国民の生活はそれほどよくなっていない。というのは、最近物価が非常に上がってきました。これは大蔵大臣御存じだと思うのですが、そういう点で、せっかく十年に倍増しても、物価が倍になればゼロだ。こういうことの考え方はどういうふうになっておるのか。私たちは、政府の都合のいい計算については、またあらためて検討するつもりでおりますけれども、どうも一方的な話だけで、表向きは非常にいいけれども、中身はからっぽだという感じがするのですが、物価の上がる率は十年でどうなるかということについてはどういうお考えか、その点をもう一度お答え願いたい。
  81. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 所得を倍にしても、物価が倍になるならば何にもなりませんので、私どもは、物価の安定ということを一応前提としたところで、いろいろな構想を立てておるのでございます。御承知のように小売物価は若干上がっておるという傾向がありますが、これにはまたいろいろの問題がありまして、そう長い間続く現象ではないと思っております。問題はやはり卸物価でございまして、これは国際的にも関係のあることでございますし、卸物価をできるだけ上げない。これが上がるか上からないかが、やはり私どもの政策がよくいっているか、いっていないかのバロメーターになると思いますので、私どもは物価の安定ということについてはもう万全の措置をとる。今御承知の通り各国の卸物価は上がっている傾向でございますが、日本の現状は上がっておらない。むしろ弱含みぎみの横ばいということになっておりますので、この点の心配は今のところ全くないと思っております。
  82. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 選挙前でありますから、政府が宣伝するのはよいけれども、国民が飢えないようにしていただきたい。同時に、先日人事院の勧告がありまして、所得倍増論だといえば、当然一二%くらいの人事院の勧告ぐらいは実施してもいいけれども、これも実施されないということが事実なんです。だから、政府の言っておることは、所得倍増論を言っておりながら、公務員についてはすでに人事院から勧告しておるものを今でも実施しないことは、やらないという一つの証拠なんです。  もう一つお伺いしたいことは、先ほど堀委員からも酒税についてのいろいろの問題がありましたが、おそらく本年度千三百億から千五百億程度の間の自然増収が見込まれるのです。こういう点で今年度は全然減税がされておりませんけれども、一体こういう減税の問題はどういうふうに処理されるのか、少なくとも取り過ぎた税金でありますから、やはり国民に返す必要がある。少なくとも自然増収の金をよその方に回されては困るのであって、これはある程度は国民に還元する必要があるのではないかと思うのですが、本年度の自然増収の処理についてはどういう処理をされるのか、また自然増収は今どのくらいに見込まれておるかということを、一言だけ伺っておきたい。
  83. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の自然増収の見込みということは私どもはいろいろな資料から一応千三百億円くらいではないかと見込はつけておりますが、正確にはやはり自然増収の一番大きい要素となるものは法人税でございますので、九月決算の実際というものを見ないと、正確な予想ができないのではないかと思っています。その自然増収をどういうふうに処理するか、年度内に還元する処置をとるかというような問題は、先日御答弁申し上げましたように、まだその方針は今のところきめておらない状態でございます。
  84. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 一つこの点も実施をしていただきたいと思いますが、最後にもう一つお伺いをしておきたいのは、これは大臣及び主計局長お尋ねしたいのですが、大蔵大臣の管轄ではありませんけれども、わが国の工業の発展が非常におくれておることは事実であります。ソ連やアメリカの科学の進んだというのは、やはり科学技術教育の進歩だと思いますが、日本ではこの方面が非常におくれておりまして、現に大学でも、現実にやろうとしても、先生がいないというので行き詰まっております。しかし、何をいっても、やはり日本が将来所得倍増をするにいたしましても、あるいは日本の産業を発展させるには科学技術よりないわけで、そういう点についての今の教育が非常におくれておることだけはわかっていただけると思うのでございます。そういう点で、一体官公立学校でこれを補充するのか、あるいは私学でやられるのかということについては、池田内閣はどういうように考えておられるのか。特に予算編成期でありますから、私は、大蔵大臣並びに石原主計局長がこの方面についてどういうお考えを持っておられるかということを、この際伺っておきたいと思います。
  85. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先日発表しました自民党の政策にもはっきりと述べておりますように、科学技術の教育につきましては格段の力を入れる。毎年技術学科の生徒をどれだけ増員するかという計画も現にできておりまして、昨年はそれに従いましたが、本年もさらに、その方向でこの科学教育の整備を進めていく。その場合、ひとり国立大学だけではなくて、私学の学級等をなるたけ科学方面に転換させるというような措置についても、一緒にわれわれは考えていきたい。さらに、御承知のように中小企業部面におきましては、特に技術者が足らなくて困っておりますし、計算によると六万人も足らないといわれておる状況でございますので、まずさしあたり来年ごろから、高等学校をできるだけ実業高等学校という方面に変えられるものは変えるし、新設のものは新設の方向でこの事態に処したい、工業高等学校を大急ぎで充実していくという措置をあわせ考えたいというのが私の考えでございます。
  86. 石原周夫

    ○石原説明員 理工科の増部と申しますか、理工系の学科を増設いたしますことにつきましては、御承知のように三十五年度をもって終わりました計画におきまして、一学年に対して八千人の増加をいたしております。そのうちで私立大学の関係は、正確には記憶しませんが、二千人内外であります。従来の計画がそうでございます。三十六年度からは、追いかけまして文部省では案を立てておりますが、現在まで詳しい計画を聞いておりません。ただ、従来の計画から申しますと、そういうようなことで私立の方が当然入っておりますから、今回も入っておるとは思いますが、それをどういうふうにするかということはこれからの検討の問題だと思います。
  87. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に要望しておきますが、こういう科学技術のような問題は一朝一夕にはできないわけです。金があるからといって急激にできるものじゃありません。どうかそういう意味で、六万人も足らないということでございますから、できる限り予算の編成のときにはこういう問題についても十分検討されて一つ将来悔いを残さないように要望しておきます。同僚委員から質問がありますから、これで終わります。
  88. 山本勝市

    山本委員長 石村英雄君。
  89. 石村英雄

    ○石村委員 まずこの委員会に対する大蔵大臣のお考えを聞きたい。大蔵大臣は御就任になってからこの委員会にはあまり御出席になっていない。きょうもこの大蔵委員会があることは早くからきまっておって、大蔵大臣もわかっておったと思う。一月に一回しかやらない大蔵委員会で、きょうも一時ごろまでに大蔵大臣は遊説関係でどっかへ行かなければならぬ、質問なんかやめてしまえというような話ですが、一カ月にたった一回の大蔵委員会に顔を出して、一時間か二時間かで私は出ていきますというような態度はどうかと思うのです。少なくとも朝早くからなり、二日でも、あるいは晩おそくまででも、この委員会に出て、当面の大蔵大臣の関係の問題について十分われわれと話し合うという用意をしておかれる必要がある。今ごろになって、きょう——そんなこと言ったってお話になりませんが、大蔵大臣の心がけとして一つお伺いしたい。私はたくさん質問したいと思っておったのですが、そんな話を聞いて質問をする気もあまりなくなった。大蔵大臣の委員会に対するお考え、心がまえを一つ率直に聞かしていただきたい。そして今後どうするのか。あなたは御就任になってこの委員会で十分な自分方針というものをお述べになったことはないのです。この前おいでになったときは、まだわからぬ、まだわからぬと、てんで話にならぬ。今度は、もう新聞には新政策なんか発表しておられる。そうして大蔵委員会に出てろくすっぽこっちの質問もできないで、用事があります、そんなむちゃな話はないと思う。池田さんは、野党とも十分話し合いをする、こう言っていらっしゃる。この委員会を通じて国民によくお話しになる必要がある。だれがこんなおぜん立てをしたのか知りませんが、大蔵大臣は大蔵委員会を軽視していらっしゃる。一つその点の心がまえを簡単にお述べ願いたいと思います。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あるいは連絡が不十分で申しわけなかったかもしれませんが、そういう問題が各所に起こって恐縮でございますが、外国の人が来られた場合には、もう私の差しつかえることが非常に多うございます。そういうときには委員会に連絡して変更していただくというようなことを、現在でも大ていやって参っておりますが、きょうの場合は十時から御承知のように閣議でございますし、従ってそれが済んでからでなければこの委員会に出席できない。それから、きょうは党の大会で動員されておりますので、一時ぐらいまでは私が答弁に当たりますが、もしそれでいけない場合には、この所用が済んだあとなら、これは少しも出席を渋るところはございませんので、時間のやりくりに御同情願えますれば、決して委員会軽視じゃなくて、今まで組閣後五十日もかかってやっと今ごろいろいろな方針というものがきまったときでございますから、私の考え方そのほかについて、きまった範囲内においてはどんなことでもお答えいたしたいと思います。
  91. 石村英雄

    ○石村委員 きょうはそうすると今から大会か何かある、それにいらっしゃって、それが済んだら委員会に出てやってもよろしい。これは自民党の大会なんでしょう。国会の大会じゃないわけです。いろいろ党の事情もありましょうけれども——私は党の大会に顔を出しちゃいかぬなんて言うわけじゃありませんが、八日ということは早くからきまっておるわけです。また八日を九日にするということもあるいはできたでしょう。そういうことを考えておやりにならなければ困ると思うのです。大会にはおれは行くんだ、済んだら夜中でもやってやるからお前ら出てきて聞いてくれ、あんまり人をばかにした虫のいい態度だ。大体委員会に対する心がけがあまりよろしくない。  それで、そんなことを言ったって実際しようがありませんから、以後心がけていただくことにして、一つお尋ねしますが、先ほど、大蔵大臣は、昭和三十二年度かの引き締め、あんなことをしたのだからいけないのだ、あれをしなかったらもっともっと成長しただろうという御発言がありましたが、これは何かの言い間違いでなくて、ほんとにそのようにお考えになって、あのときの引き締め政策——これは日銀あるいは大蔵省と一緒になって必死になってやった政策です。自民党がおやりになった政策で、社会党のやった政策じゃありません。自民党のおやりになった政策ですが、あの政策は間違いであった、あんなことさえしなかったならば、もっと成長していい日本ができ上がっただろうというような工合の趣旨にとれたのですが、そういうお考えなんですか。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全くそういう考えであります。と申しますのは、あれをしなかったなら、さっきお話がありましたように、三十三年度の伸び率が三・七%というようなことは当然ございませんでした。あれをやったことがいいか悪いかの問題ですが、問題は、私どもが外貨の手当を怠ったということに尽きると思っています。あのときに輸入をたくさん特にさせたという政策を政府がとったわけではございませんでした。スエズ運河の問題があったり、いろいろのことで、その前年度に大きい思惑輸入をやってしまった。ですから、その支払いがその次の年に上期に立つということは大体政府関係者はわかっておりました。従って、私どもは、石橋内閣ができた早々そういう点を心配して、いろいろ綿花借款だとかなんとか、ここでできるだけの借款をして外貨の用意をしておくならば、決して今の事態は心配がない。輸入が膨大になって、原材料としての蓄積が六億ドル以上、八億ドルに近い蓄積であるといわれておりましたので、それが将来輸出の原動力になっていくし、それだけの原材料を日本が持っておる以上は、その次の期に輸入がそのままふえるということはございません。おそらくあの年の年内に輸入は全部減ってしまうだろう、こういう予想がありましたので、問題は、実態が悪くなくて、そのときの金繰りが詰まったというようなことからああいう措置になったのでありまして、私どもは、外貨借款を何かの形でしておけば、少しも心配がないという主張をしました。ところが、石橋さんが病気になられて、内閣はかわるし、それからそういう手配がいろいろおくれたというところにこれは失敗があった、今でも私はそう思っていまして、あれはもう少し政府が手当を誤まらなかったならば、もっともっと日本の経済は伸びただろう、今でもそのようにほんとうに信じております。
  93. 石村英雄

    ○石村委員 だいぶお考えがはっきりしましたが、つまり引き締め政策を——私らは引き締め政策とは考えないのですが、まあそんなことは別にして、ああいういわゆる引き締め政策をとったのは間違いだという意味ではなくて、その前に外貨を借りる処置をとらなかったことが失敗であった、失敗をしたからその次の順序で引き締め政策はやむを得なかった、こういうお話なんですが、引き締め政策は失敗であったと聞いたものですから、そういうような説明だと、必ずしも引き締め政策が失敗だとかなんとかいうことではなしに、その前の借款をやらなかったのが間違いであった、借款をやっておけばあんなことをしなくても済んだだろうというような趣旨にもとれたのです。あの引き締め政策自体は間違いか間違いでないかという意味ではなしに、お金を借りることをしなかった、外貨を借りなかったのが失敗であった、こういう意味なんですか。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはああいう思惑輸入が進んでしまったということのいろいろな問題があるかもしれませんが、すでにそういうものが行なわれてしまったという事実が出た以上は、それに対処する策を立てるべきだったと思います。現にイギリスでも、ああいう事態に面したときには、その支払いに困らぬように外貨の用意はイギリスの大蔵大臣はあのときにりっぱにして、ああいう引き締めをしないで切り抜けております。ところが、私どもは、これを怠ったというのが失敗であったと今でも思っておりますが、怠ってしまった以上は、ああいう引き締め政策をせざるを得なかった、こういう事情にはなると思いますけれども、やり方いかんによれば、ああいう引き締めはしなくても済んだと、今でも思っておるわけでございます。
  95. 石村英雄

    ○石村委員 時間がありませんからやめますが、もう一つお尋ねいたします。先ほど、九%の成長というものは一夜つけでも何でもない、今までの例から十分な資料なり何なりを整えて確信を持って九%の成長だ、こうおっしゃるわけですが、それほどちゃんとした資料があるのなら、いつも経済の見通しというときには、国民所得計算のいろいろな、国民支出がどうだとかなんとかいうようなことが発表になるのですが、ちょっとここで御発表願いたい。九%成長に対して個人消費が三十六年度には幾らになるか、個人住宅が幾らになるか、設備投資が幾らになるか、政府の消費が幾らだ、輸出入関係がどうなるという数字は経済見通しのときにはいつも発表になるわけです。今度の九%は出ておりませんが、一つここで御発表願いたい。これは私はあるはずだと思う。インスピレーションの九%ならないだろうけれども……。
  96. 山本勝市

    山本委員長 石村君に申しますが、先ほど言ったようにあなたの党の大貫さんが実は待っておるわけです。あなたはさっき一時までというのは承知して、ちゃんと質問時間を残しますというお話であったから、今後の問題は今後の問題として十分注意しますが、本日のところは一つ先ほどお話通りにお運び願いたい。
  97. 石村英雄

    ○石村委員 委員長がそんなことをおっしゃるから時間がたつ。あの数字は十行か十五行くらいでしょう。ちょっと読み上げて下さい。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今その資料をここに私は持っておりませんので、これは企画庁でも今検討しておる問題でございますから、数字が確定次第お知らせしたいと思います。
  99. 石村英雄

    ○石村委員 今ここに持っておいでにならなければそれでいいですが、私はそれはあるはずだと思う。あっての前提のように先ほど聞いたわけです。あなたは党大会においでになるのでしたら、すぐに電話をかけて印刷してこちらに回して下さい。私は資料の要求をして、これで終わります。
  100. 村上孝太郎

    ○村上説明員 石村委員は国民経済計算を出せというお話でございますけれども、ことしが一〇%以上の成長率になった場合に、一体その中の設備投資なり、それから個人消費が幾らになるという数字は、これはできておりません。ただそれではなぜ一〇%以上成長が可能だということを言うかというお話になると思うのでございますけれども、従来までの鉱工業生産指数の伸びを見ますと、今まで一番はっきりわかっておりますのは、七月の速報値でございますが、七月の速報値をそのまま横ばいと考えましても、本年度の鉱工業生産水準はおそらく昨年度の一六、七%増になるだろうと思います。鉱工業生産水準が一六、七%伸びた場合に、一体経済成長が幾らかということにつきましては、これはなかなかむずかしい弾性値の計算がございます。それも、石村委員のおっしゃるように、はっきり重要項目がきまらないと正確な計算はできませんけれども、少なくとも従来十年間の弾性値の平均を見ますと、大体一・六七くらいになります。そうなりますと、一〇%前後の成長は可能ではないかということが言えるわけでございます。それ以上にこまかい本年度の重要項目計算は、今後経済企画庁がいろいろ資料を集めて策定するわけでございます。
  101. 山本勝市

    山本委員長 ただいま石村委員から要求された資料は出ますか。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今すぐは出ません。
  103. 山本勝市

    山本委員長 すぐは出ないが、しかしいつごろまでなら出ますか。——経済企画庁の方で出させるという考えらしいのですが、石村さんどうですか。
  104. 石村英雄

    ○石村委員 私は政府に要求する。大蔵大臣が、先ほど、九%というのはこういうわけで確信がある、あらゆる資料のもと計算して九%だ、こういうような答弁をなさったのですから、そういう計算の基礎で三十六年度の計算はできているはずだろう。できなければそれは出てこないはずです。大体九%くらいに思いますという答弁なら、見当の話なら私は何も資料要求はしません。頭の中でそのように思われるくらいのことは、要求したってしょうがない。ちゃんとした計算の結果そうなっているという答弁ですから、それを一つ出していただきたい。しかし、ないのならしょうがありません。なければやむを得ません。
  105. 山本勝市

    山本委員長 大蔵省、きょうはもちろん資料は出ないでしょうけれども、できるだけ善処してもらいたい。(「あるかないかを聞いている」「はっきり言え、重要な問題だから」と呼ぶ者あり)大臣の時間があるから、さっき言ったようにいずれ善処するから……。  大貫大八君。
  106. 村上孝太郎

    ○村上説明員 今後三年間の経済成長率九%の場合に、三十六年度、三十七年度、三十八年度についてそれぞれの重要項目計算をして出すことはできますけれども、それは私は意味がないと思うのです。というのは、それにはいろいろの推定も入ります。それから、それに必要ないろいろな資料については、現在所得倍増計画で経済企画庁が計算をしているところでございます。従って、所得倍増計画の全内容というものが判明いたしますれば、先ほど大臣がおっしゃったように、三カ年九%の年率で成長して、しかもそれがだんだん成長率が鈍化した場合にどうなっていくかという、投影作業というものはできると思う。そういうことであります。
  107. 石村英雄

    ○石村委員 私は計算に意味があるかないかということを村上さんに聞いているわけではない。資料を出してくれと言っている。それが価値があるかないか、われわれが判断する。価値があるかないか、そんなよけいなことは言わなくてもいい。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 九%以上が妥当だというようなことをきめた資料というものは十分ありますが、それに基づいてかりに九%ときめた場合の国民経済計算がどういうふうになって、個人消費がどうなって、政府投資がどうなってというようなものは、これからいろいろな資料を検討して私どもが作っていく問題でございますので、その問題と成長率を九%に決定したという問題は違うと思います。九%に決定した資料というようなものは、私どもはないわけではございません。これは十分資料を持っての仕事でございます。
  109. 大貫大八

    ○大貫委員 私は専売関係についてお尋ねをするつもりでありますが、特に生産関係、タバコ耕作の関係お尋ねをいたしますので、大部分は公社関係でよろしいのですが、根本的な問題二、三について大蔵大臣にまずお尋ねをいたしておきたいと思うのです。  きょう配られたこの資料のうちで、経済企画庁の年次経済報告によりましても、農業生産が非常に上昇しておる。自画自賛のことが書いてありますが、三十四年度の農業生産は、前年度に対して三・四%ふえておる、こういうことが書いてありますが、タバコの生産だけは年々減ってきておる。なぜタバコの生産が減ってきておるか。これは問題点はいろいろある。これからいろいろ公社側に尋ねていくつもりですが、問題点は収納代金があまりにも安過ぎる。もう今日、農村の若い世代は、タバコの耕作というのは奴隷作物と称して、ほとんど敬遠しているような状態である。そこで、こういうふうに、非常に収納代金などでも農民の利益などは考えられない値段でたたいておるというのは、一つは私は機構的にまずいのだと思う。機構的に見まして、少なくとも大蔵官僚に農民的意識なんというのはないはずだ。農村の生活なんかわからない大蔵官僚が生産面まで指導監督をしているという点、ほかの農業生産は上昇しても、タバコの生産は上昇せずに、むしろ下がってくる原因は私はそこにあると思うのです。一体大蔵大臣は機構的にこれは考える余地がないかどうか、それをちょっとお伺いしたい。
  110. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは申しわけないのでございますが、タバコのそういう問題について、まだ私の勉強が十分にいっておりませんので、その関係がそういう機構上の問題であるかどうかということについても、どうも私ここで御答弁できませんので、これは事務当局から一つ答弁していただくことにいたします。
  111. 大貫大八

    ○大貫委員 事務当局からはあとで聞きますから……。私の聞きたいことは、そういう専売の問題、タバコ耕作の問題は、あなたに内容的に深く聞こうとはしないのですが、問題はこういうことです。生産という問題は、むしろ農林行政に属することだと思う。専売権は大蔵省が管掌するからといって、生産面まで、生産関係を全然知らない大蔵官僚が専売公社を指揮監督する、こういうところにあやまちが私はあると思うのです。どうですか。私の言うのはそういうところなんです。タバコの耕作というのは制度的に純粋の農業なんです。純粋な農業生産に関することを、全然しろうとの大蔵官僚に指導監督まで専売公社を通じてやらせるというところに、僕は間違いがあると思うのです。そこを聞いておるのです。重大な機構上の問題ですよ。その考え方を私は聞きたいのですよ。きょう答弁ができなければできなくてもよろしい。
  112. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今のようになっているということについては、農林行政との関係など、何かこれが大蔵省にその行政が移っているとすれば、従来のいきさつがあったのではないかと私自身は今思っておりますが、その間の事情をちょっと十分知っておりませんので……。
  113. 大貫大八

    ○大貫委員 そうおっしゃるならやむを得ませんけれども、私は実例を一つ大蔵大臣に参考までに申し上げておきますが、いかに大蔵官僚が農業生産なんというのをわからずにむちゃなことを言うかという例です。実はことしの六月六日に栃木県と茨城県一帯に大ひょう害があった。これは大へんなんで、場所によっては農作物が全滅した地区があります。そこでそのタバコ地帯の耕作者の代表がこのひょう害対策についての陳情に専売公社に参りましたが、大蔵省派遣の専売公社を指導監督しておる監理官が絶大な権力を持っておるはずです。この監理官に陳情したところが、そんな年々歳々ひょう害を受けるようなタバコは作らなければよいじゃないか、ひょう害に耐えるようなタバコを作ったらいいじゃないかという言葉だった。そこで、その陳情の代表は、しかし今年降ったひょうというものは鷄卵大、こぶし大のひょうが降ったのですから、どんなタバコを作っても、そういうひょう害に耐えられるタバコはありません、こういうように率直に農民らしい苦衷を訴えたところが、それならばタバコ耕作なんかやめたらいいという放言をしておるのであります。これは許しがたい暴言であります。こういう非常識な感覚を持って農民の生産面まで大蔵省が専売公社を指揮監督するというのでは、タバコの生産というものは上がって参りません。従って、こういう非常識な考え方であるから、農民的な感覚を持たないから、農民が引き合おうが引き合うまいが、収納代金などというものは非常識に安く専売公社にきめさせるという制度的な欠陥がある、私はこういうことを言っている。要するに、専売行政の中で大蔵省が主管するのは製造販売だけでよろしいはずです。タバコ耕作という純枠の農民の生産関係は農林行政に移すべきものである、私はこういう考え方です。それならば生産も上がって参ります。むしろこれは農林省に主管させた方がよい。タバコ耕作が年々歳々減ってくるのは、むしろしろうとの大蔵官僚によってそういう非常識な指導監督がなされるからいかぬのだ、こういうことです。専売行政は大へんなことなんですから、百姓の言うことを聞いても大蔵大臣はおわかりにならないでしょう。そういうわからないところで管掌をされる。これは農林省でやったならば、必ず農民の感覚を持っているからよくわかるのです。そういう点について大蔵大臣きょうお答えができなければ、一つ大蔵大臣として、専売事業の、特にタバコの問題について、そういう点を御研究願いたいのです。
  114. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その点はこれから十分検討いたします。
  115. 福田勝

    ○福田説明員 ただいまの御指摘の点に関しまして、専売監理官としてお答え申し上げておきます。  六月六日に御陳情に参られたときの問題につきまして、私恐縮でございますが、七月一日に新しく監理官になりましたので、その当時の状況の詳細は存じませんけれども、しかし、おっしゃいましたような言説は私もまことに不適当であると存じますし、そういう事実があったかどうかは承知いたしませんが、何かの軽い意味でそういうことを申し上げたにしても、よくないと存じます。決してそういう精神で専売公社を監督しているものでないということだけは、まず申し上げておきたいと思います。  それから、さらに機構的問題について大臣から不幸にしてお答えするまでに参りませんでしたけれども、この点については、根本的な原則的な問題でございますので、ちょっと御了解を得ておきたいと思います。それはたばこの専売制度の本質が、今のお話では販売製造という面をしっかりやったらいいのではないか、ある角度からごらんになったときには、そういうふうにお考えになることも自然ありがちかと存じますが、実は明治以来の歴史におきましても、まず葉タバコと専売というものとの関係がいろいろございまして、一番初めには葉タバコの仲買人というようなものが暗躍いたしまして、葉タバコの価格はきわめて不安定になり、その結果は農民も困り、それからまたその結果がやみたばこにもつながるというようないろいろな歴史的な経験を経まして、やはり葉タバコと専売というものは不可分の関係にあるということにだんだんなって参りまして、むしろ葉タバコの方が専売の基礎であるという関係から、現在では生産から製造販売、一貫した態勢になっているわけなのでございます。従いまして、原則的にはそういうことがきわめて重要な意味を持っているという点を、まず申し上げておきたいと思います。  その次に、農村で育ったことのない農村の感覚にうとい官僚が農村の生産面にいろいろ干渉したり、あるいは専売公社がやっていくにしても、それを監督している大蔵省の監督面における人間の感覚がそういう感覚では困るではないか、従って機構的に問題ではないかという御指摘の点につきましては、専売公社自身耕作者の方々と一年中接しましていろいろ技術的な御相談を申し上げたりしております人々は、実は農業経済その他農業関係の専門家が多いのでございまして、専売公社の生産を担当している人は、そういう農業技術のむしろ専門家の人々から大部分は構成されているというのが実情でございます。  その背後におきましての大蔵省の監督でございますが、これはしばしば各方面からの御要望もあり、専売公社全体の非常に重要な方向というような問題について、きわめて大局的な大綱についての監督というような方向に運営すべきであるということで、なるべく公社の自主性を尊重するという方向に最近は心がけておりますし、われわれ大蔵官僚がそういうこまかい生産の問題についてまであまりに専門家の意見を無視するような監督というものは、やる意図を実は私は持っておらないのでございます。しかしながら、先ほど御指摘のような現象が間々起こるといたしますと、そういう点については将来につきましてもよほど注意してやって参りたいと、こういうふうに考える次第でございます。
  116. 大貫大八

    ○大貫委員 私は、今大蔵省の監理官が、特に生産の技術面までしろうとの監理官がかれこれは言うていないと思います。それはその通りです。ただ問題は、今たとえばそういう災害を受けて陳情に来たという場合に、つまり農民的感覚にうといと、往々にして——監理官が、そういう言動があったとすれば遺憾であるということを述べられたからけっこうですが、そういう放言を知らず知らずにするということになる。同時に、そういう災害に対して応急にどうしてやるとか、そういう親切心がやはり欠けるのじゃないか、こういうことを私は言うているのです。それは今詳細な答弁がありましたからけっこうです。  そこで、これは先ほども大蔵大臣に申し上げましたように、これは公社側にお尋ねしますが、年々歳々タバコが非常に減収になっておる、こういう事実が今日の状況だと思うのです。公社の発表する統計によって見ましても、大体最近タバコ耕作面積及び耕作人員が年々減少しているのが目立っております。たとえば、宇都宮地方局だけでも、昭和三十一年度のこの管内の耕作面積が五千五百二十七町歩、耕作人員が二万八千七十人。これが、昭和三十二年度になると、耕作面積が五千三百二十町歩になり、耕作人員が二万六千九百九十八人になっておる。昭和三十三年度になると、耕作面積が四千八百七十七町歩、耕作人員が二万四千四百四十六人、さらに昨年度の昭和三十四年度は、耕作面積が四千三百三十二町歩、耕作人員二万千六百四十六人と減って参ります。今年度になりますとさらに激減しまして、耕作面積がついに四千町歩を割りまして、約三千九百七十町歩、耕作人員も二万人を割って一万九千三百十七人というふうに減少をしております。このように毎年々々逐次減少の一途をたどっていくこの原因は一体どこにあるか。公社はこのタバコ生産が減少していく原因を一体どこにあると考えておられるか。従ってその対策についてどのようなことを今までやってこられたか。その点をお伺いします。
  117. 石田吉男

    ○石田説明員 ただいま栃木県のお話がございましたが、全体の専売公社の原料生産について大づかみに最初に申し上げた方がいいかと存じます。公社が現在耕作をお願いしておりますタバコは、大きく分けますと三種類ございます。一つは黄色種、黄色い色の葉でございます。もう一つは在来種、それからもう一つはバーレー種、この三種類でございます。これにつきまして、黄色種の一反当たりの収量はここ数年来非常にふえて参りました。その他いろいろの関係もございますが、黄色種はやや過剰在庫という現象が三年ほど前から現われて参りましたので、黄色種につきましては、むしろ意識的に耕作反別を減少いたして参りました。皆様非常に耕作希望が多いところを、無理に耕作者の御了解を得ましてだんだん減反して参りましたので、ただいまのお話の中には、栃木県の在来種でありますだるま葉と黄色種と両方入っておりますが、黄色種の方は、むしろ需要と合わせるために、生産数量を減らして参ったということがございます。それから、在来種につきましては、これは過剰というほどでもございませんけれども、そうかといって非常に足らないということでもないというので、現状におきましては、大体すなおな姿で作っていただければそれで十分である、かような状況でございます。それから、バーレー種につきましては、これは栃木県にはないのでございますが、これは主として輸出用にしておりますので、輸出が可能であればふやして参る、そうでなければ大体現状維持、こういうような生産方針をとっております。それで、耕作反別の問題あるいは収納価格の問題、いずれも耕作者に関係のあります非常に重要な問題でありますので、先般来耕作審議会というものが公社の総裁の諮問機関として置かれております。約半分ぐらい耕作者の代表が入っておられまして、そのほかに学識経験者というふうな方が入っておられます。これらの方々の意見を聞きまして、その御意見に従って、面積なりあるいは収納価格なりきめて参る、こういう仕組みをとっておりますので、ただ単に今のお話ですと、収納価格が安過ぎるから反別が減るんじゃないかというようなことでございますが、ここ数年来はそういうことでかなり適正な収納価格でやっておるというふうに考えております。
  118. 大貫大八

    ○大貫委員 今適正な価格でやっておるという御答弁でございましたけれども、これはどう考えても適正でないといういろいろな資料が出て参っております。たとえばこれは栃木県のたばこ耕作組合連合会の計算した資料でありまするけれども、これは公社の方にも出ておりますが、それによると、反当たりの生産費が七万二千三百九十九円という数字が出ております。なお私自身が私の方の地方で長年タバコ耕作をやってきた篤農家について、現実に昭和三十四年に生産費に要した費用、これを良心的に算出してもらったところが、この資料によりますと、反当七万七千百六十円という数字が出ております。これは耕作者の側の数字でありますが、農林省の統計事務所の調査によりましても、これは三十三年度の調査でありますが、宇都宮地方局の鳥山出張所管内で反当五万三千九百十六円の生産費を要しておる。これに対して同年度の鳥山出張所管内の収納代金というのは、反当平均五万千三百六十九円であります。烏山管内というのは御承知と思いますが、だるま葉の非常に優秀なタバコのできる産地です。この地区でさえ五万千三百六十九円の反当収入しかない。従って、農林省の機関の生産費調査によっても、この計算からいうと、タバコ耕作をやれば反当二千五百四十七円の赤字となるという計算だ。いわんや、この耕作組合連合会の調査等によると、反当二万円をこえる赤字となる。こういうことなんですね。ほかの地区は知りません。栃木県などにおいては、この数字の上に現われたように、年々歳々、反収はどうか知らぬけれども非常な減反になる。つまり耕作を放棄する農民がふえてくるのは当然だと思う。しかも葉タバコくらい手数のかかる作物はほかにありません。農林省の統計から見ても反当たりの労働日数が百十三日となっています。米なんかは、水稲は十七日という数字を出しております。これでもって見ても非常に労働日数が長い。先ほど黄色種の話がありましたけれども、私の方でこういう笑い話がある。黄色種、米葉を作ると親の死に目に会えない、女房はとられる、だからタバコ耕作はやめにするという農民の率直な笑い話が深刻に伝わっておる。公社の方では黄色種は制限する方針だというお話ですが、これは耕作農民の方からこんな引き合わないものはやめますというのが実情だと思う。これはどう考えても御答弁のような適正な価格というのはどこをついても出てこないと思いますが、どうなんですか。
  119. 石田吉男

    ○石田説明員 価格のきめ方につきましては、これはかつては大体専売局ないし専売公社側が一方的にきめておったのでございますが、そういうことではいかぬというので、昭和三十三年にたばこ専売法が改正になりまして、それの第五条にこういう規定が挿入されております。その中には、葉タバコの収納価格をきめる基準と申しますか、考え方が入っております。ちょっと読み上げてみますと、第五条の第三項、そこに「前項の」とありますが、これは収納価格のことでございまして、収納価格は、「生産費及び物価その他の経済事情を参酌して、耕作者に適正な収益を得させることを旨として定めなければならない。」、こういう規定がございます。それからなお、それに引き続きまして、第四項に「公社が」この収納価格を定めようとするときは、「公社の総裁は、あらかじめたばこ耕作審議会にはかり、その議を経なければならない。」、こういう法律上の規定がございます。これに基づきましてただいま申し上げました耕作審議会というものがあるのでございます。この中で耕作者の審議会の委員の数は全部で十一名ございますが、この十一名の中には公社の役職員は入っておりません。この十一名のうち五名の方が耕作者の代表でございます。ここへいろいろな資料を提供いたしまして、私ども考えも述べ、従来の例によりますと耕作審議会から耕作者の代表の方々も一致した意見としていつも満場一致の意見が出ておりますが、そういうようなきめ方がよろしいという御答申を得ております。それでその御答申に基づいた価格にきめておりますので、決して公社側が一方的にきめているということはないのでございます。従って、この収納価格を幾らにするかということは、ただいま読み上げましたようにかなりいろいろな要素を彼此勘案しまして、総合的にきめるということで、むずかしい作業ではありますが、さようなことでございますので、こういう一方的なきめ方でない、そういう意味において私どもは適正に収納価格がきまっておるのだ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  120. 大貫大八

    ○大貫委員 ただいまの御答弁ですと、大へんきれいごとにはなっております。なるほど機構の上ではその通りなんです。ですが、その審議会に出ている耕作者代表のほんとうの気持から言いますと、おそらくそれは公社の出した資料には反対をされているはずなんです。これは私いろいろそういう耕作者代表の心境を聞いておりますけれども、この審議会なるものは、なるほど格好はいいのですけれども、耕作者の代表として主張したことが、まだ日も浅いですが、通ったためしはないという実情を私は聞いております。あなたのおっしゃるのは非常にきれいごとではあります。形の上ではきれいになっております。しかしながら、実情は、公社の今年度はこうだと、これを示された通りに大体落ちついておるというのが実情だと思うのですが、公社の提出した案が修正されたためしがありますか、この審議会ができてから。
  121. 石田吉男

    ○石田説明員 従来のたばこ耕作審議会では、毎年公社の出しました原案について耕作審議会が修正をいたしております。従いまして、公社の原案通りやったためしはないのでございまして、いつも耕作審議会の修正意見通り価格をきめておるというのが実情でございます。
  122. 大貫大八

    ○大貫委員 そうすると、修正されたというても、耕作者代表の希望通り修正されたことがありますか。たとえば価格の問題で耕作者代表から出してきた希望と公社の示したあれとの開きはどうなっておりますか。
  123. 石田吉男

    ○石田説明員 ただいまのお話ですと、耕作者の御希望通りきめなければけしからぬというふうに受け取れるのでございますが、耕作者の方々は、やはり売手でございまして、できるだけ高いことを希望するわけであります。それから、私どもは買手でございますので、かたがた先ほどのお話に出ておりますように、やはり財政専売の一環として、ある程度の企業的な収益というものを上げなければならない、そういう面からいろいろなことを勘案して原案を出すわけでございます。従いまして、この耕作審議会は、むしろ耕作者の代表の方と、学識経験者という、いわば中立委員と申しますか、そういう方々の審議会でございます。この修正案なり耕作審議会の答申をきめるときには、私ども参加いたしません。いろいろの説明なり意見は申し述べるのでありますが、最終的にきまる場合には、耕作者代表と学識経験者の方々が集まった意見でございまして、従来いつも耕作者代表も含めて全員一致ということで意見が出ております。さようなことでございますので、昨年の例を申し上げますと、私ども平均〇・四四%引き下げたい、こういう原案を出したのでございますが、耕作審議会としては〇・一六%引き上げろ、こういう御答申でございます。結局その御答申通りを採用いたしまして、価格修正を行ないました。
  124. 大貫大八

    ○大貫委員 その〇・一六というのは、前年度の収納代金に対して〇・一六引き上げろ、こういう要望ですか。
  125. 石田吉男

    ○石田説明員 これは全部の値段平均でございまして、現実の問題としますと、どういう種類の何等をどのくらい下げるとか上げるとか、こういう原案が出るわけでございます。従いまして、個々のものにつきましては、御必要があれば生産部長からでも詳細に説明いたさせますが、全般の平均で申しますと、そういう結果になるということでございます。
  126. 大貫大八

    ○大貫委員 副総裁の御答弁だと、いかにも耕作者代表も納得して審議会が円満にいっているような印象を受けるのですけれども、一体それじゃ各たばこ耕作地区の組合連合会から出ております生産費調査というのは、公社のきめる収納代金との関係はどうなっておりますか。先ほど私が引用いたしましたように、栃木県の場合は生産費を七万二千三百九十九円と出しておりますが、そのほかの県ではどういうふうになっておりますか。
  127. 石田吉男

    ○石田説明員 先ほど申し上げましたように、専売法で収納価格のきめ方と申しますか、それの考え方がございます。従いまして、私ども収納価格の算定をいたしますときは、単に生産費だけをもとにしておるのではないのでございまして、いろいろな計数をかみ合わせてやっております。もし具体的に御必要があれば、ただいま生産部長から、こちらの原案はこういう計算で昨年提出したということを御説明申し上げようと思いますが、いかがですか。
  128. 大貫大八

    ○大貫委員 それを一つ説明願います。
  129. 坂口精

    ○坂口説明員 葉タバコの収納価格は、農業パリティ指数と、葉タバコに特に関係の深い他の農産物、米、麦、カンショ繭、これとの価格均衡をはかりますための調整係数とを加えまして、それで価格を算定いたしております。その算式がございますけれども、ここではちょっと……。
  130. 大貫大八

    ○大貫委員 資料をあとで出していただきたいと思います。  それは出していただけますね。
  131. 坂口精

    ○坂口説明員 承知いたしました。
  132. 大貫大八

    ○大貫委員 それでは資料を出していただくとして、計算の基礎ですね。労働賃金のことについては資料に載っているでしょうが、ここで一応明らかにしておきたいのは、大体反当労働日数を、だるま葉についてでけっこうですが、幾らと見ているか。それから労働賃金を幾らと算定しておるか。それを一つお答え願います。
  133. 坂口精

    ○坂口説明員 ここに詳しい資料を持って参っておりませんので、その資料とともに提出したいと思います。
  134. 大貫大八

    ○大貫委員 それじゃその日数なんかは別として、労働賃金の算定、たとえば一日幾らということはここで明らかになりませんか。労働日数も実は私が持っておるのには明確に一一三・五日と、これは農林省の統計事務所で出した資料がございます。どうでしょうか。
  135. 坂口精

    ○坂口説明員 実は葉タバコ生産費調査につきましては、きわめて困難な、他の米麦等の作物と非常に違った点がございまして、品質によります価格差が非常に大きいものでございますから、量と収得金との間の関係が非常に一般作物と違って参ります。三百キロとりましても五万円の場合もございますし、二百キロとりましても六万円の場合もございます。そういった何人かかるかといったような点になりましても非常に地域差もございますし、また耕作技術水準と申しますか、そういったもので非常に動いて参ります。そういったことから、公社も生産費調査をいたしております。現在約三十三万人おりますが、その中から九百六十名をとりまして調査をいたしておるのでございますけれども、種類によりましては、これをもって十分なデータとすることができないというようなものもございまして、ここに詳しい資料を持って参っておりませんので、後ほど、先ほどの算式とともに提出いたしたいと思います。
  136. 大貫大八

    ○大貫委員 それじゃ後ほどその資料の提出を願って次に進みます。公社は来年度増反を計画しておるということを聞いておりますが、それは事実かどうか。事実とすれば、全国でどのくらいの増反を計画し、栃木県においてはどのくらいの増反を計画しておるか。それをちょっと伺いたい。
  137. 坂口精

    ○坂口説明員 来年度の面積につきましては、あす実は耕作審議会が開かれることになっておりまして、耕作審議会の議を経て面積あるいは価格等をきめることになっております。あすの審議会は面積だけの審議会でございまして、この答申を得ましてはっきりと反別がきまるわけでございますけれども、公社といたしまして考えておりますのは、ちょうどさっき副総裁が申し上げましたように、黄色種の過剰在庫もおおむね片づきましたし、また在来種も大体正常の在庫を現在保っておりますので、各種類を通じまして前年度の面積でいく、こういうことを考えておる次第でございます。増反も減反もなしに参りたい。ただ全国的にそういった考え方をしておるのでございまして、地方によりましては、あるいは種類によりましては多少の出入りはあろうかと思いますけれども、大体増減なしの反別で参りたい、こういう計画でおるわけでございます。
  138. 大貫大八

    ○大貫委員 それじゃどうです。栃木県の場合は、まると前年度通りなんですか。最初に公社が指示したものでなく、実績は先ほど私が申し上げた通りなんです。面積において約三千九百七十町歩、こういうわけなんです。この程度ですか。
  139. 坂口精

    ○坂口説明員 その面積につきましては、先ほど申し上げましたように、あすの審議会で答申を得まして本ぎめにいたすわけでございます。本ぎめにきまりますと、各地方の耕地反別をきめるわけでございまして、そういたしまして各府県の反別がきまることになるわけでございます。栃木県の反別がどういうふうになりますか、大体昨年と変わらないところと見込まれるわけでございますけれども、ここでどのくらいになるであろうということを申し上げられる段階ではございません。
  140. 大貫大八

    ○大貫委員 申し上げる段階でないというのは——公社の案があるはずじゃないですか。その数字が今ないというのですか。それならそれでよろしい。
  141. 坂口精

    ○坂口説明員 全体の全国的な種類別の計画は持っておるわけでございます。これを各地方局別、府県別に割りますのは、いろいろ地方の事情がございまして、やむを得ず減るというようなところには全国よりやや減らした反別を配当するとか、その適正反別は、部内でまた協議を遂げまして、耕作団体等とよくお打ち合わせいたしまして、府県別の適正反別を出して参ることになりますが、全国的な計画は、審議会に諮問いたしたいと考えておりますのは、大体前年通りということでございます。
  142. 大貫大八

    ○大貫委員 栃木県の反別についての明確なお答えがないのでいたし方ありませんけれども、かりに栃木県の場合で前年通りということであっても、これを維持するのは現状では困難です。耕作連合会の方でどういう御相談になるか知りませんけれども、耕作者の立場から私がいろいろ調査した範囲では、おそらく前年度の耕作反別の面積を維持することは困難である。困難ということは、問題は収納代金をもっと適正価格に引き上げるというのでなければ、これはいかに数字の上で今年の計画はこうだというて示しても、また耕作組合の代表が来て引き受けたとしても、実際に耕作するのは百姓であり農民なんです。その農民は今の価格ではなかなか困難だと思いますが、その見通しはどうでしょうか。
  143. 坂口精

    ○坂口説明員 先ほどは副総裁から、収納価格はどうやってきめたか概略を申し上げた次第でございますが、世の中の事情はずいぶん急激に変わって参っておりますので、建前上耕作審議会の意見を尊重いたしまして、たくさんの専門家であられる学識経験者の御意見等をお聞きして、現在の価格ができておるわけでございますけれども、現在世の中の経済事情も非常に変わって参っておりますし、現在の価格が今後の葉タバコの収納価格として十分なものであり、喜んで耕作者の方々に作っていただけるものであるかどうか、こういったような問題につきましては、やはり世の中の客観情勢と申しますか、そういったものとも関係がございますので、ここでこのままで大丈夫喜んで作っていただけるということを申し上げることはできかねるのじゃないか、こう思っております。
  144. 大貫大八

    ○大貫委員 どうも私の質問にピントが少し合わぬようです。なおお答えはできるだけ簡単に願ってけっこうです。イエス、ノーでけっこうですから、簡単にお答えを願います。  そこで、副総裁にお伺いをいたしますが、先ほど副総裁はたばこ専売法の第五条を引用された。私もこれを引用するつもりでおった。実はこの法の精神というのは、むしろ公社側がよくかみしめていただけば、こういう不当に安い収納代金をきめるということは起こり得ないと思うのです。これをごらんになっても、「生産費及び物価その他の経済事情を参酌して、耕作者に適正な収益を得させることを旨として定めなければならない。」こうなっておるのですが、少なくとも今の収納代金というのは、どう考えても、生産費の計算からいっても、適正な収益を得させる代金にはなっていないと私は思う。下の耕作者から非常に不満な声が突き上がってきておることは、これは公社自身がお認めにならざるを得ないはずです。現に各耕作団体からそういう陳情があるわけなんです。これに対して、副総裁は、現在の収納代金をいわゆる適正価格まで引き上げる意思がないかどうか、こういう点を一つ明確に……。
  145. 石田吉男

    ○石田説明員 現在耕作しておりますタバコの種類によりまして、現在の収納価格が適正かどうかという耕作者の感じ方もいろいろ違うようでございます。多少そういう感じの違うということは存じておりますが、ただいま御質問になりました点が一番問題の点でございまして、そういうことをいろいろの角度から審議をしていただくというために耕作審議会がございます。従いまして、私どもが適正と考えても、耕作審議会なり耕作者の代表が適正と考えないということであれば、耕作審議会でいろいろ意見が出て、毎年々々適正と認める価格が出て参るのでございまして、私ども、本年の収納価格がそういうことできまっておれば、これはやはりわれわれとして適正である——むしろ先ほど申し上げましたように、私たちの立場としては昨年度よりも今年度は少し下げたい、こういうふうに考えたのでありますが、少し上げたらどうかということで、皆さんの御意見に従ったというふうなことでございますので、現在の価格を適正と思うか、こうお尋ねがあれば、やはりそれだけ慎重な審議を経てやったことでございますので、私どもの意見も多少修正して、やはり適正である。かようなお答えを申し上げることになろうかと思います。
  146. 大貫大八

    ○大貫委員 そういたしますと、かりに耕作審議会が大幅な値上げを答申いたしたとすれば、専売公社は、これはもう審議会が答申してきたものは適正な価格を生み出したものと見て、大体その答申に従う御意思ですか。
  147. 石田吉男

    ○石田説明員 いつも耕作審議会を開きますときには、私どもは耕作審議会の御意見は十分尊重いたします、かようなことを申し上げているわけであります。そういうのは公社の意向の表明がありますので、耕作審議会としてもできるだけ適正な判断をしたいということでいろいろ御苦労なさるわけでありますが、私ども、耕作審議会の意見が出て参りますれば、過去と同じように、今後もまた尊重して参るつもりでございます。
  148. 大貫大八

    ○大貫委員 副総裁の御答弁だと、問題は耕作審議会にあるような御答弁でございます。しかも、耕作審議会が値上げの答申をすれば、意見を尊重するという御答弁であります。これは一つ確認しておきたい。  次に、これは生産部長でもけっこうなんですが、本年度の収納代金を、優等においてキロ当り十円ときわめてわずか値上げをしたように聞いておりますが、五等において十円値下げをしている。これはどういうわけなんですか。一キロ当たり五等を十円値下げをいたしました理由です。
  149. 坂口精

    ○坂口説明員 ずいぶん答弁が長くなりまして申しわけございませんが、実は最近の喫煙の嗜好が、非常に軽いたばこが歓迎されるようになって参りましたために、タバコは、御承知の通り下についております葉から本葉、天葉に至りますとだんだん軽くなるわけであります。それで、時代に合うように価格体系を作りたいということから、本葉をわずかに下げまして、中葉の収納価格をわずかに上げまして若干の差を設けたのでございます。それに応じまして、全体のこの等級別の平年の千分比等から、その上げるのと下げるのとの関係で、その全体の平均価格を調整いたすために、大体十円以下の価格差は、現在収納価格計算いたします上に不便でございますので、五円とか三円とかいうことができませんので、そういった調整のために変えた次第でございます。
  150. 大貫大八

    ○大貫委員 ちょっと納得がいかないのです。どうして五等を十円値下げしたのですか。その値下げの理由ですね。
  151. 坂口精

    ○坂口説明員 ただいまの御質問はだるま葉の方の御質問でございます。大へんどうも失礼いたしました。さっきのは黄色種の方であります。これは三十四年の価格改定のときで、そういうことをいたしたのでございますが、これは物価の値下がりによりまして諮問の方は一・〇六%引き下げる、こういう諮問をいたしたのでありますが、答申の方で〇・四八%の引き下げに緩和しろ、こういう答申が出て参りましたので、その結果だるま葉におきましてそういう価格改定を行なった次第でございます
  152. 大貫大八

    ○大貫委員 どうも値下げの理由が少しも納得できないのですが、そこで品質の等級の定め方です。これもばかばかしく多過ぎると思うのです。これは根本問題ですが、どうお考えですか。これは等級が非常に多過ぎて、しかも優等と二等以下の格差がひど過ぎます。優等と五等とでは三分の一になり、八等では五十円というほとんど捨て値ですね。もちろん品質の差はあるかもしれませんが、こんな格差をつけるというのはあまりにもはなはだし過ぎるので、ここらはやはり耕作農民に対するあたたかい配慮が欠けていると思う。耕作者の苦労というものはあまり見ないで、勝手に、何というか、耕作者を非常に圧迫するようなきめ方をいたしていると思うのですが、これはどうしてこんなに格差をつけ、こんなにたくさんの段階を設けなければならないのですか。
  153. 坂口精

    ○坂口説明員 実は等級の数は、戦前あるいは専売創始当初に比べますと、現在非常に少なくなってきております。約半分くらいになっているのではないかと思います。等級が一見優等から八等まで九等級があるように見えるのでございますけれども、タバコは葉分けというのがございまして、下から土葉、中葉、本葉、天葉というふうにあるわけでございまして、土葉なんかに八等、天葉なんかにも八等というのがございますけれども、中葉なんかには、まん中の方につきます良質の葉には八等なんかございませんので、大体まん中どころについております中葉というのが、非常にかおりもよく、内容成分もよく、喫味が非常によろしいので、こういったところに上位等級が出て参りますので、そういう点で一見九ヵ等のようになっておりすけれども、たとえば中葉と本葉の間の一番品質のいいところ——合い中葉と呼んでおりますが、こういうところには、もう優等と一等くらいしか出ないのでありまして、うまく作られた方は優等になり、ちょっとしくじられた方は一等になる、こういうことでありまして、そういうところからは八等なんかは出て参りません。実際の現物を見ていただきますと、このくらいの差はこれはもう当然だというふうに御理解いただけるのではないかと思います。
  154. 大貫大八

    ○大貫委員 だるま葉は買い上げてから大体二年くらい貯蔵をすると品質が一等級くらいよくなるということを聞いておりますが、これは事実でしょうね。
  155. 坂口精

    ○坂口説明員 葉タバコは全部相当期間貯蔵いたしませんと、収穫、乾燥して、公社が買いました当初は非常に火つきも悪うございますし、また舌を刺すような刺激がございます。これはすべての葉タバコに言えることでございますが、一年とか二年とか貯蔵いたしまして、私どもはこれを後発酵と呼んでおりますが、これを遂げさせませんと原料に使えないのでございます。だるま葉だけが特に大幅に良変するということではございませんで、各種類も良変いたしまして、その良変したところで、たばこの製造、原料に使っているわけであります。
  156. 大貫大八

    ○大貫委員 それではなおさらなんです。だるま葉ばかりじゃなく、すべてが貯蔵すると良変するというのですが、そういうことも考慮して、タバコを買い上げるときに等級などについてもあたたかい配慮があっていいのじゃないか。今見たならばこれは一等にちょっと劣るというような場合に、二等とせずに、むしろ優等になるかもしれぬ、一段上げて優等で買ってやる。ところが実際は、そういう場合には二等で買われるという実情だと思うのです。公社はどうせ買い上げてもすぐこれを生産に回すのじゃなくて、一年、二年と貯蔵して生産に回せるはずなんですから、そういう良質に変化するということを考慮に入れて買い上げるというようなことも考えてもらうと農民は助かると思うのですが、どうでしょうか。
  157. 坂口精

    ○坂口説明員 葉タバコの値打からいろいろ等級別に差をつけておるわけでございまして、やはり良変したところで差がついておるわけでございます。大体何年間かの蔵置というものは製造原料として使いますのには絶対必要条件でございまして、良変の結果が優等と一等にはやはりそれだけの差がある、こういうことから葉分けができておるわけでございます。
  158. 大貫大八

    ○大貫委員 だから良変することを予想して高く買ったらいいじゃないかというのです。現在ならばこれは一等かもしれぬが、良変する場合には優等を見越せるという場合には、それだけ高く買ってやったらば農民は助かるのです。そういう配慮をしたらどうかというのです。どうですか。
  159. 坂口精

    ○坂口説明員 どうもおわかりいただけなくて申しわけございませんが、収納当初そこで現われておりますいろいろな色とかそういったことではわからない発酵後の葉内の成分の変化によって良変するわけでございまして、良変したところで、優等の良変したものと一等の良変したものには、やはりそれだけの使用価値の差がございますので、そこから価格ができておるわけでございます。良変するからいいものとして買ったらいいじゃないかということでございますけれども、一等が良変したものと優等が良変したものとは、やはりそれだけの差があるわけでございます。大体製造原料に使いますのにはどうしても貯蔵ということは絶対必要なことでございますので、それが前提になっておりますから……。
  160. 大貫大八

    ○大貫委員 わかったようなわからぬような御答弁なんですが……。  そこで、良変しただるま葉は輸出しているはずなんです。輸出しておりますね。
  161. 坂口精

    ○坂口説明員 しております。
  162. 大貫大八

    ○大貫委員 そこで、輸出の数量及びキロ当たりの輸出価格、これはどのくらいでございますか。
  163. 坂口精

    ○坂口説明員 ただいま資料を持ち合わせておらないのでございますが、ごく最近に至りまして「だるま」の輸出が開けたのでございます。在来種全体の数量はございますけれども、「だるま」だけは……。
  164. 大貫大八

    ○大貫委員 在来種全体でよろしいです。
  165. 坂口精

    ○坂口説明員 在来種全体では三十四年度二百七十万キロでございます。
  166. 大貫大八

    ○大貫委員 キロ当たり幾らですか。
  167. 坂口精

    ○坂口説明員 これがただいま資料を持ち合わせておらないのでございます。
  168. 大貫大八

    ○大貫委員 それではこれもあとで明確にしておいていただきたい。  それから、アメリカからくずタバコを輸入しておるということを聞いておりますが、ほんとうですか。
  169. 坂口精

    ○坂口説明員 くずタバコは輸入いたしておりません。
  170. 大貫大八

    ○大貫委員 次に、鑑定の問題についてお話を伺いたいのですが、目下いわゆる肉眼鑑定をやっておる状況です。この肉眼鑑定がいろいろな弊害を生んでおることは公社でもいろいろお聞き及びだと思う。特にそういう弊害ばかりでなく、合理性を欠くということは昔から叫ばれてきたはずなんですが、これに対して公社として何か肉眼鑑定についての検討はなされておりますか、どうでしょうか。これでいいのか、またどうにか改善したいというのか、その点御説明願いたい。
  171. 坂口精

    ○坂口説明員 葉タバコの鑑定はただいまのところ世界各国とも肉眼鑑定でやっておるわけでございますが、ほんとうに合理的な、学理的な鑑定方法がありますなら、これにかえることがより正確にいくのじゃないかと思います。しかし、現在のところいろいろそういった方法を各国とも検討いたしておりますけれども、適当な方法がないということでやむを得ず肉眼鑑定によっておるわけであります。公社といたしましても、できるだけこの学理に基づいた品質鑑定をいたしたいということから、最近に至りまして水分測定機を鑑定に使うこと、また鑑定場が光線不足等のために雨天、曇天等のときに品質鑑定が困難だというような場合もございますので、そういった場合は、最近人工光線で非常に太陽光線に近いものができて参りましたので、こういったものもだんだん利用して参りたい、こういうことを考えております。
  172. 大貫大八

    ○大貫委員 まあそういうふうな改善をしていくという御意思は大へんけっこうなんですけれども、肉眼鑑定については今なおいろいろな忌まわしいうわさが出ております。たとえば鑑定係員のきげんを取り結ぶためにごちそうをするというような弊風は、最近は少なくなってきたようではありますけれども、事実として今なおこれはあります。跡を断たないのであります。そのような場合、農民としてはいわゆる汚職意識というのはごうもないのです。ごちそうをして不当に高い値段で買ってもらうなんという、そういう汚職意識は毛頭ないのです。ただあたりまえに買ってもらいたい、それだけなんです。係員のきげんを損じて不当に等級を下げられては困るのだ、こういうふうにつまり長い間の官僚支配、こういうことにはぐくまれてきた卑屈な隷属精神から、こういうことが今なお行なわれておる。私は残念だと思う。それが証拠には、まだ鑑定官と言う。専売公社になったのですから、鑑定官なんというのはあるはずがないのです。私は、いつどこでどういう耕作者が鑑定の係員を呼んでごちそうしてこうしたなんということを、具体的に申し上げる資料を今持っておりませんけれども、そんなことをしてもしょうがないと思う。そういう一係員をどうしたってしようがありませんから、単なるうわさとして聞き流しておくといたしましても、この肉眼鑑定の不合理性というのは否定できない。たとえばこんなことがあった。これは烏山管内で昨年あった例なんですが、たまたま午前中に収納したタバコ、それについておった等級の札が持ち運びか何かで取れてしまった。そこで、鑑定官の下にあって雑務をやる整理員が、鑑定の係員に向かって、あれは何等でしたかと聞いたら、鑑定員は午前中に自分が鑑定したのがもうわからない。何等だったかな、こういうことで、実はそれは三等だったのですが、三等の札をつけるのにしばらく迷ったという実例があるのです。このくらい肉眼鑑定というものには私は権威がないと思う。もう一つこういうことが言えるのは、これも具体的にあるのです。つまり地方局の幹部が視察に来て収納状況を見ておると、そういう偉い人が立ち会っておる場合には必ず等級が下げられると言う。私はそんなことはあるまいと思っていました。これは耕作農民のひがみかと思っていたのですが、事実上どうもそういうことがあるようであります。人間は機械じゃありませんから、どんなに豊富な経験を持っておっても、これは感情が動きますから、やはり肉眼鑑定というのはどうも合理性が乏しいと私は思うのであります。この鑑定の問題については、ぜひ先ほどいろいろ御答弁があったようなことは十二分に取り入れて改善をしていただきたい。これは要望です。  もう一つ。当分の間どうしても肉眼鑑定の方法しかないとすれば、一つ運営について改革することを研究願いたい。私の言うのは、たとえばこの鑑定に耕作者代表を加えるということがぜひ必要ではないか。鑑定係員もその方がいいのではないか。あれやこれや耕作農民の立場から見れば、その日のタバコの買い上げの価格のいかんによって、あるいはあらぬ疑惑を鑑定係員に向けるかも知らぬ。これは鑑定係員だって迷惑な話だと思う。だからやはり耕作農民の中から民主的に選ばれた代表を鑑定の中に加える、こういうことが私は幾分でも肉眼鑑定の合理性を深めることだと思うのですけれども、公社としてどうでしょうか。こういうことについて一つ検討をし考えてみる’という気がございますか。
  173. 坂口精

    ○坂口説明員 そういった民間から鑑定を入れるという問題につきましては、以前から相当研究しておる問題でございます。ただ、御承知と思いますけれども、現在収納いたしております現場での鑑定は甲乙二名おりまして、任意に等級決定をいたしまして、その針が合ったところで等級を決定いたしておるわけでございますが、民間の方でほんとうに適当な方が必要数ございますなら、これはもう入っていただいてけっこうと思います。けれども、非常に多数のタバコの品質鑑定の目ききの方がいるわけでございまして、公社としましてもこういった問題は過去において相当研究はいたしておりますが、実際問題として困難じゃなかろうかというふうに考えております。
  174. 大貫大八

    ○大貫委員 今の考え方では困難でしょう。やり方によってはそう困難でなくできると思うのですから、これは十分一つ御研究を願いたい。  どうも時間がせかれておるので、いろいろ御質問したいことがあるのですが、これは後日に譲りまして、もう一、二点お尋ねをいたしますが、タバコ耕作は、申すまでもなく許可を前提として、耕作から収穫に至るまで公社の一々指示を受けて、全収獲物を公社に売り渡さなければならぬという義務を負っているのですから、これは、ほかの農作物のように、農民の自由意思に基づく処理というのは全くできないわけです。ですから、法律的に見るとこういうやり方というのはむしろ委託栽培というようなことになるのじゃないかと思う。そこで、収納代金についてもしにわかに値上げをすることができないとすれば、この生産費の資材面等について、やはり公社が考える必要があるのじゃないか。申すまでもなくタバコの生産というのは諸資材がたくさんかかります。自由の処置というのがまるでできない委託販売のような性格から言うても、資材費の全額を——全額とまでいかなくても、何パーセントかは公社が負担する。あのような専売益金を納めているのですから、生産費の方にそのくらい専売益金の中から資材費を流すというのは当然の行き方じゃないかと思うのですが、これはどうですか。
  175. 坂口精

    ○坂口説明員 資材費と申されますと何か肥料代のようなものを公社が現物で供給しろというようなことでございましょうか。それとも何がしかの金そのものを出す、こういうことでございましょうか、どうもそこらあたりが……。
  176. 大貫大八

    ○大貫委員 今の問題は、要するに私の言うのは、そういうふうな委託栽培なんだから、耕作者の自由が制限されているのだから、これを委託栽培なら資材費まで全額やって作らせるというのがほんとうじゃないか、しかし、それができなければ、何パーセントかを、現物とか金とかじゃなくて、資材費を考える必要があるんじゃないか、タバコ耕作の形態の性質から私はそういうことが当然言えるのじゃないか、こういうことなんです。簡単に一つ
  177. 坂口精

    ○坂口説明員 御質問の趣旨が十分わかりかねますので、収納代金の中にそういったものが入っておるわけでございますけれども、資材は先に耕作者の方々が手当される。それであれば、先に収納代金の一部を払うのがいいじゃないか、こういうような御趣旨じゃないかと思いますが、これにつきましては収納代金概算払いという制度をただいまやっておりまして、植付検査が済みますと、直ちに平年の二割に当たります概算収納代金を支払っておるわけでございます。
  178. 大貫大八

    ○大貫委員 時間がないようですから、その問題は後日また明確にします。  最後に、一つだけ監視制度についてお尋ねをしますけれども、今なおタバコのくずの処理については実際は非常識な取り締まりが行なわれておる現状だ。私ども子供の当時に、一番こわいものは専売所の役人とおまわりさんだというふうに教えられてきたのですが、今日なおこの当時の監視制度が形を変えて残っておるのが現状なんです。これは収納が終わりますと、必ず監視官——と農民は言っていますけれども、監視の係員が回ってきまして、あたかも犯罪でも捜査するような態度で農民に接しているのが実際上の姿なんです。もし庭の片すみにでもはきだめになったくずを少しでも発見しますと、これは罰金を取るぞというようなことでおどかすわけですね。いかに今日農民が貧しいからというても、今日は文化性が高まっています。昔のようにそんなごみになったようなはきだめのまずい葉タバコなんかは吸う者はありません。みんな巻きたばこを全部買って吸っております。このようなやり方は封建的な弊風というか、これがそのまま残っておって、農民を罪人扱いしておるのです。ささいなことで難くせをつけて、そういう態度でもって農民に臨むということは、いわゆる民を網するものである、こういうことが言えるんじゃないか。私ははなはだけしからぬことだと思うのですけれども、こういう監視制度を将来廃止する御意思がないかどうか。
  179. 石田吉男

    ○石田説明員 このタバコの専売と申しますのは、御承知のように財政専売であるわけですが、この財政収益が、いわゆる脱税といいますか、そういうもののないようにするためには、どうしても取り締まりということが付随して参るものでございます。従いまして、終戦直後からかなり長い間は、葉タバコの横流しとか自家消費というのが非常にございまして、ある程度そのころはきつくしておりましたが、最近は、ほとんど犯意のある反則でない限りはそういうものはやらぬということで、ほとんど手を抜いております。しかし、専売制度がある以上は、やはり取り締まり制度というものは裏表をなしているということは、各国いずれもさようでございまして、専売制を置く限りは、廃止するわけには参らないというふうに考えております。
  180. 大貫大八

    ○大貫委員 それでは、最後に、廃止することはできないにしろ、運営については十二分に——農民を罪人扱いにするような態度は末端に改めさしてもらいたい。
  181. 福田勝

    ○福田説明員 今御指摘になりましたような監視の運営についての末端におきまするいささか非民主的な運営になっておる点はないかという御指摘の点、並びに先ほど御指摘になったややもすればありがちという鑑定なんかに関連する運営上改善をする余地はないか、そういう点につきましては、事実の多い少ないというような問題は別といたしまして、こういう制度を存続する上においては、非常に戒慎しなければならぬ貴重な御指摘だと存じますので、監理官といたしましては、今後もそういう行き過ぎのないように、またあやまちのないように、専売公社の方に強く要望いたしましてやって参りたいと思っております。
  182. 山本勝市

    山本委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十五分散会