運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-08-10 第35回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    七月二十二日  永山忠則委員長辞任につき、その補欠として  大石武一君が議院において委員長に選任された。 ————————————————————— 昭和三十五年八月十日(水曜日)     午前十一時二十七分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 齋藤 邦吉君 理事 八田 貞義君    理事 柳谷清三郎君 理事 亘  四郎君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       小澤佐重喜君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    倉石 忠雄君       藏内 修治君    河野 孝子君       志賀健次郎君    永山 忠則君       吉田 重延君    伊藤よし子君       大原  亨君    河野  正君       五島 虎雄君    山口シヅエ君       山花 秀雄君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 中山 マサ君         労 働 大 臣 石田 博英君  委員外出席者         厚生政務次官  田中 正巳君         厚生事務官         (大臣官房長) 高田 浩運君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚生事務官         (医務局次長) 黒木 利克君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (社会局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働政務次官  岡崎 英城君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君     ————————————— 七月二十二日  委員大坪保雄君及び田中正巳辞任につき、そ  の補欠として簡牛凡夫君及び吉田重延君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十三日  委員齋藤邦吉辞任につき、その補欠として吉  田茂が議長指名委員に選任された。 同日  委員吉田茂辞任につき、その補欠として齋藤  邦吉君が議長指名委員に選任された。 八月十日  委員小林進辞任につき、その補欠として山花  秀雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山花秀雄辞任につき、その補欠として小  林進君が議長指名委員に選任された。 七月三十日  理事大石武一君同月二十二日委員長就任につき、  その補欠として齋藤邦吉君が委員長指名で理  事に選任された。 同日  理事大坪保雄君及び田中正巳君同月二十二日委  員辞任につき、その補欠として柳谷清三郎君及  び亘四郎君が委員長指名理事に選任された。     ————————————— 七月二十二日  一、公共企業体等労働関係法の一部を改正する   法律案勝間田清二君外十四名提出、第三十   一回国会衆法第七号)  二、地方公営企業労働関係法の一部を改正する   法律案勝間田清一君外十四名提出、第三十   一回国会衆法第八号)  三、失業保険金給付日数に関する臨時措置法   案(多賀谷真稔君外十三名提出、第三十一回   国会衆法第九号)  四、健康保険法労働者災害補償保険法失業   保険法及び厚生年金保険法の一部を改正する   法律案多賀谷真稔君外十三名提出、第三十   一回国会衆法第六一号)  五、政府に対する不正手段による支払請求の防   止等に関する法律を廃止する法律の一部を改   正する法律案五島虎雄君外十三名提出、第   三十一回国会衆法第六二号)  六、職業訓練法の一部を改正する法律案五島   虎雄君外十三名提出、第三十一回国会衆法第   六五号)  七、労働関係訴訟における労働組合当事者適   格に関する法律案堤ツルヨ君外三名提出、   第三十四回国会衆法第一号)  八、労働基準法の一部を改正する法律案堤ツ   ルヨ君外二名提出、第三十四回国会衆法第二   号)  九、健康保険法等の一部を改正する法律案(滝   井義高君外十六名提出、第三十四回国会衆法   第四号) 一〇、最低賃金法案大原亨君外十名提出、第三   十四回国会衆法第三四号) 一一、港湾労働者雇用安定に関する法律案(五   島虎雄君外十名提出、第三十四回国会衆法第   三七号) 一二、労働組合法の一部を改正する法律案堤ツ   ルヨ君外二名提出、第三十四回国会衆法第三   八号) 一三、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正   する法律案大野伴睦君外七名提出、第三十   四回国会衆法第四八号) 一四、厚生関係及び労働関係基本施策に関する   件 一五、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉   及び人口問題に関する件 一六、労使関係労働基準及び雇用失業対策に   関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。 七月二十日  環境衛生関係営業適正化に関する法律の一部  改正に関する請願赤松勇紹介)(第九号)  同(小林正美紹介)(第一〇号)  同外一件(東海林稔紹介)(第一一号)  同(世耕弘一紹介)(第一二号)  同外四件(田中龍夫紹介)(第一三号)  同(中井徳次郎紹介)(第一四号)  同(安井吉典紹介)(第一五号)  同(横山利秋紹介)(第一六号)  同(角屋堅次郎紹介)(第二九号)  同(小林正美紹介)(第三〇号)  同(椎熊三郎紹介)(第三一号)  同(田中幾三郎紹介)(第三二号)  同(堤ツルヨ紹介)(第三三号)  同(濱地文平紹介)(第三四号)  同(松平忠久紹介)(第三五号)  同(山下榮二紹介)(第三六号)  調理師法の一部改正に関する請願外六百六十一  件(岡良一紹介)(第一七号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(寺  島隆太郎紹介)(第一八号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願外三  十六件(志賀義雄紹介)(第三七号)  精神薄弱者対策促進強化に関する請願椎熊三郎紹介)(第三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  一言あいさつ申し上げます。このたび、不肖、社会労働委員長を勤めることになりましたので、皆様の御協力によりまして、大過なく勤め上げたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  池田内閣が新しく成立しましたにつきまして、労働大臣厚生大臣、みなそれぞれおかわりになりましたので、それぞれごあいさつをお願いしたいと思います。  それでは一つ厚生大臣からごあいさつをお願いいたします。
  3. 中山マサ

    中山国務大臣 私は、今回池田内閣発足にあたりまして、厚生大臣の重任を負うことになりました。厚生行政につきましては、多少の経験を持っておりますが、何分にも不敏なものでございますので、幸いに各位の御協力、御援助を得まして、この大任を全うしたいと存じております。本日当委員会が御審議を行なわれるに先立ち、厚生省所管の諸行政に関し、所信の一端を申し述べたいと存じます。  あらためて申し上げるまでもなく、社会保障制度確立し、国民生活の安定、国民福祉向上をはかることは、福祉国家の実現を期する上に、きわめて重要な意義を有するものでありまして、わが内閣の最優先施策とされているのであります。厚生行政はこれら諸施策推進するにあたり、その中核をなすものといたしましてきわめて重要な役割を有しておるのであります。私といたしましても、全力を傾けて社会保障制度充実強化、特に当面の問題として、社会保障の二大支柱であるところの所得保障医療保障中心に、母子福祉対策、低所得層対策、その他厚生行政進展に努める所存でございます。  まず第一の問題といたしましては、国民年金の円滑なる実施であります。国民年金制度は、将来国民所得保障の分野における中核体となるべきものであり、その健全な発展いかんは、国民生活の安定にきわめて大きな影響を及ぼすものと考えるのであります。政府におきましては、昨年十一月から無拠出制福祉年金の支給を開始するとともに、昭和三十六年四月から保険料の徴収を開始する拠出制年金について鋭意諸般の準備を進めているところであり、なお今後ともその円滑、適正な実施努力して参る所存であります。なお本制度改善充実につきましては、改善を望む意見もあり、政府としてその余地のある限り改善することはもちろんで、目下慎重に検討を行なっているところであります。  第二に国民保険達成であります。医療に関する国民保険達成につきましては、昭和三十六年三月を目途に努力を重ねているところでありますが、関係各位の非常な御努力により順調な進展を見つつあり、ほぼ計画通り実現し得る見込みであります。今後は僻地医療対策の一そうの推進をはかり、本年七月発足を見た医療金融公庫と相待って公私医療機関整備等国民保険基礎条件である医療体制整備を期するとともに、皆保険内容改善充実の方向において努力いたしたいと存じております。なおこれに関連いたしまして、現在医療制度調査会に新しい情勢に適合した適切な医療制度について根本的な調査審議をわずらわしており、国民保険進展に応じた適切な医療制度の樹立に資したいと考えております。  次に母子福祉対策についてであります。母子福祉対策につきましては、第三十四国会において母子福祉団体に対する母子福祉資金の貸付が認められ、実施を見たところでありますが、今後はその有効適切な運用をはかるとともに、母子健康センター充実保育所整備等、本施策の一そうの推進全力を傾けて参る所存であります。また低所得者層対策につきましては、国民所得の著しい上昇にもかかわらず、とかく取り残されがちな階層でありますので、政府といたしましてもこれが対策にさらに努力いたしたいと存じております。  さらに健康な国民生活の基盤となる生活環境改善でありますが、四年後にオリンピックの東京開催を控え、その整備改善を要望する声が大きく盛り上がっており、今後上下水道、清掃施設等環境衛生施設整備充実につきましては一そうの努力をはかりたいと念じております。  以上のほか結核対策小児麻痺対策等公衆衛生施策強化老齢者身体障害者等援護児童健全育成等に格段の努力を傾注いたしますとともに自然公園整備同和対策推進等努力いたしたいと存じております。  以上申し上げました諸問題を中心に、厚生行政進展のために各位の御協力、御支援を得まして、できる限り努力をいたす決意でおりますので、ここに重ねて各位の御協力をお願い申し上げる次第でございます。(拍手
  4. 大石武一

    大石委員長 続いて田中厚生政務次官のごあいさつをお願しします。
  5. 田中正巳

    田中説明員 私はこのたび厚生政務次官就任を命ぜられました。現下社会保障中心とする厚生行政の曲がりかど、そしてその画期的拡充期待されている、今日中山厚生大臣を補佐いたしまして、委員各位の御指導と御鞭撻によって、社会保障中心とする厚生行政画期的拡充を望む全国民期待に沿い得るよう努力をしていきたいと思います。何とぞよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げまして、一言あいさつを申し上げる次第でございます。(拍手
  6. 大石武一

    大石委員長 石田労働大臣のごあいさつをお願いいたします。
  7. 石田博英

    石田国務大臣 このたび私は再び労働省を担当いたすことになりました。この機会に所信を申し述べ、皆様の御理解と御協力を仰ぎたいと存じます。  私は雇用改善をはかること、特に中小企業労働者生活向上すること、よき労使慣行確立をはかること、この三原則により労働行政を進めて参る所存でございます。かかる立場に立って労働政策を進めることは、わが国経済拡大発展をより円滑ならしめ、その成長を促進することに通ずると信ずるのであります。  最近のわが国雇用情勢を見ますと、労働力需給地域的、産業的不均衡が目立つようになって参りました。今後においても新規学卒者の激増、貿易の自由化産業構造の変革による需給の不均衡増大が予想され、労働力地域間、産業間で円滑に移動し得るための強力な措置をとることがますます必要になって参っております。また技術革新産業構造高度化に対処するため、技能水準の高い労働者を大量に養成することは、わが国経済発展のための重要な雇用政策の目標であります。このような見地から、雇用問題については労働力流動性増大技能水準向上二つを柱として、諸種の対策を進めて参りたいと存ずるのであります。  経済拡大の裏には、中小零細企業労働者家内工業に従事する者あるいは未亡人、孤児など不遇な人たちがややもすれば取り残されるおそれがあります。働く人々に対する政策のてこ入れを行なって大企業労働者との間の格差を縮小、是正し、経済発展の利益をこれらの恵まれぬ労働者にも享受せしめることは、また重要な事柄であります。このような労働者を対象として、その労働条件向上労働福祉の増進のため強力な施策実施することを第二の重点といたしたいと存じます。  この二つ重点施策を進めるには、わが国労働経済の的確な科学的調査分析が必要であると考えますので、統計調査資料分析の機能の整備充実をはかり、政策基礎固めを行ないたいと存ずるのであります。  最後に申し上げたいのは、よき労使慣行確立することであります。労使関係の問題の解決は、労使が忍耐と寛容の精神に基づいて平和的に話し合うための健全なルールを作り上げていくことから生まれてくることを強調いたしたいのであります。政府としては諸般施策を通じ、今後労使関係についてまず暴力を排除し、法秩序が守られるよう努力を傾注するとともに、進んで労使経済繁栄協力するよういたして参りたいと存じます。三池争議についても、このような見地から憎しみと反目の渦をしずめ、友愛と互譲によって事態解決がはかられることを期待し、その収拾に努力いたしているのであります。  労働行政の運営にあたっては、皆様の御意見を十分拝聴しながら、ただいま申し述べた方針に従い、力を尽くしたいと存ずる次第であります。よろしく御協力をお願いいたします。(拍手
  8. 大石武一

    大石委員長 続いて岡崎労働政務次官のごあいさつを願います。
  9. 岡崎英城

    岡崎説明員 私このたび労働政務次官を拝命いたしました。一生懸命努力いたすつもりでございますが、どうか皆さんの御鞭撻、御指導を心からお願いいたしまして、簡単でございますがごあいさつといたす次第でございます。      ————◇—————
  10. 大石武一

    大石委員長 次に厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の申し出がありますので、これを順次許可いたします。  なお委員室の都合、午後の視察の日相等もございますので、午後一時までに質疑を終えたいと存じますので、その点御了承願います。八木一男君。
  11. 八木一男

    八木一男委員 まず最初に、委員長の御就任並びに厚生大臣労働大臣厚生政務次官労働政務次官の新しく御就任になりましたことについて、心からお祝いを申し上げたいと思います。  厚生政策一般施策についてお伺いをいたしたいと思います。中山先生社会労働委員会の昔からの先輩として、特に日本で初めての婦人大臣として御就任になりましたことにつきまして、私ども非常にうれしく、敬意を表すものでございます。どうか一つ厚生行政をよい意味で強力に進めていただきたいと思います。御婦人大臣ということで、非常に新聞に、何といいますか、時流に乗っておいでになりますが、私は中山さんが御婦人だからということでなしに、男子、婦人を通じて、厚生大臣として最も適任な方として、自民党で選考されて大臣に御就任になったと思いますので、そういう点で確信を持って進んでいただきたいと思います。  それから田中厚生政務次官は、同僚として、最も熱心に問題を進めていただいて、非常に敬意を払っているわけでございますが、どうか一つ大いに社会保障を進めていただきたいと思います。  しかしきょう御祝辞を申し述べましたけれども、公的の立場では私どもいろいろ意見の違うところがあるのでございます。それを遠慮なしに申し上げることが、日本厚生行政なり社会保障を進めるゆえんであると思いますので、御就任早々でございますが、非常に問題が大事な時期でございますので、遠慮なしにいろいろ問題を申し上げて、御質問を申し上げて、そして相ともに問題を進めて参りたいと思いますので、その点については一つ理解を願いたいと思います。  実は、本日厚生省社会保障政策の試案でございますか、原案と申しますようなものが新聞紙上発表になったわけでございますが、それを見まして、いろいろと厚生省の方で厚生大臣厚生政務次官の御推進によって熱心に検討しておられることは一応うかがえたわけでございますが、その原案では、池田内閣社会保障を取り上げられたということを、非常にそういうことを言っておられる立場としては手ぬるいものがあると私どもは考えるわけでございます。それについて中山厚生大臣はあのくらいのことで十分だと思っておられるかどうか、まず総括的にお伺いをいたします。
  12. 中山マサ

    中山国務大臣 過分な御祝辞をいただきまして、まことに恐縮をいたしております。御期待に沿い得るかどうかは今後のことでございまして、気流に乗っておるというお言葉でございますが、気流の中にはエアポケットもございますので、このエアポケットを避けつつ、うまく一つ一つ厚生行政を進めていきたいというのが私どもの希望でございます。  けさの新聞をごらんになりまして、これでは十分でないというお話でございますが、これは何と申しましょうか、まだ厚生省が煮詰めたものでもございませんし、また党が党としての立場から煮詰めたものでもございません。むろん閣議に上ったものでもございませんので、これは、いわゆる何と申しましょうか、確定されないもの、うわさ的なものということを申し上げるよりほかに、私といたしましては言いようがないのでございます。御承知通り、これから各局がいろいろ御研さんなさいましたものが省議になって現われて、そこで決定されて、そうして今度は大蔵省とお話し合いをして、それからまた賞の立場からも御批判をいただいて、初めてコンクリートされたものが出るのでございますから、これはまだまだ御批判をいただくまでには至っていないということを申し上げるのが、私は最も正直なお答えであろう、こう考えます。
  13. 大石武一

    大石委員長 速記をとめて。     〔速記中止
  14. 大石武一

    大石委員長 速記を始めて。      ————◇—————
  15. 大石武一

    大石委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。大原君。
  16. 大原亨

    大原委員 あいさつは抜きにいたしまして、労働行政につきましてはベテランの石田労働大臣でございますので、端的に二、三の点について御質問いたしたいと思います。  これからいろいろ労働政策をお立てになります上において、池田内閣、特に池田大臣は、以前から所得倍増ということを言われておったわけです。最近はいろいろとPRの中では二倍、三倍ということも言われておるようです。そこで、私どもがいつも常任委員会におきまして議論をいたしておりましたのは、つまり上の方がこの所得が大きくなってくると、だんだんと下の方へしみわたってくるのだ、しかしながら国民各階唐の具体的な所得増大計画というものについては、遺憾ながら、今日あらゆる方面で討議いたしまして、明確に示されなかった。しかし最近のいろいろな施策発表等を見てみますと、たとえば生活保護の問題とか、あるいはその他低所得階層を引き上げるという問題が大きくなっておる。私どもはこの問題につきましては、最低賃金制の問題その他等の問題とも関連をいたしまして、底を上げていくということ、底を上げていくことによって国民生活水準が具体的に増大をしていくのだ、こういう基本的な考え方を持っておるわけです。それでない政策というのは、結局は貧乏人は麦を食えというような政策になるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけです。だから特に自由化その他の問題で弱園強食という、ほうっておけばそういう事態もあるときでございますし、それに対処いたしまして、低所得階層等の問題が提起されておりますが、最低賃金制の問題と、それからもう一つは、失対事業賃金をどういうふうに考えていくかという問題ですね。二・五、六人くらい扶養家族のある失対事業が、大体七、八千円の——地域によって違いますが、賃金ということです。これはやはり零細企業賃金水準のささえになっておると思うのです。そういう労働行政の面におきまして、低所得階層の底を上げていくという政策に、労働大臣もそういう御見解で努力になっておるようですけれども、私はそういう具体的な施策に十分しっかりした方針を立てて、将来の労働行政や予算の組み立て方その他において対処していただきたいと思うのであります。従って実のある最低賃金、国際的に評価できる最低賃金制確立の問題と失対の賃金政策、そういう問題と、いわゆる底を上げていく、こういう労働政策について、一つ大まかに労働大臣から御所見を拝聴いたしたいと思います。
  17. 石田博英

    石田国務大臣 国民所得を増加させていくことのためには、所得の低い層を上げていくことに施策重点を置かなければならない、こういう御意見であります。全くその通りだと存じます。しかし、これはもう一つ、同時、にその低所得の背景をなしておるいろいろな諸条件、それを是正していくことが必要じゃないか。たとえば大企業中小企業との賃金格差を是正いたしますために最低賃金法その他の諸立法を生かして動かしていくことも必要でありますが、同時にその中小企業生産性向上ということを一緒にやっていかなければ具体性を持たない、こういう考え方で各省と連絡をとりまして、総合的な施策を講じたいと思っております。現行の最低賃金法は、私が三年ばかり前に労働省におりましたときに立案いたしたものでありまして、もちろんそれが理想的なものとも、あるいは完全なものとも考えておりません。しかし、先ほど申しましたように、企業のその他の諸条件とにらみ合わせながら、あるいは日本経済の実情とにらみ合わせながら、現実に一歩々々低い賃金層の人の賃金水準を上げていくために、あの当時といたしましても、また現在といたしましても、まず妥当なものと考えておる次第であります。しかし問題は、法律はおかげをもって成立いたしましたが、その行政的効果というものが期待するほどまだ上がっておりません。従って現在の段階におきましては、あの法律を生かして行政効果を上げることに主力を注いで参りたい。そしてその仕事を通じまして、あるいは他の諸条件の成熟を待ちまして法律実施の完全を期していきたいと考えておる次第であります。  それから失業対策事業賃金につきましての御議論でありますが、これは御承知のように他の同種産業賃金との関係において決定されるものでございます。今回人事院の勧告等もございましたし、検討すべき時期に達しておるとは存じますが、予算案その他の関係もあり、なお調査すべき点もございますので、現在のところは以上のお答えをもって御了承いただきたいと存じます。
  18. 大原亨

    大原委員 これ以上の問題につきましては、あらためて御質問いたしたいと思います。基準法をなしくずし的に改悪するとか、そういう問題につきましては、労働大臣ははっきりした見解を持って、しばしばそういうことはすべきじゃないということを考えておる、最低の生活とそれから労働のそういう基準を守っていくということがやはり非常に大きな近代化、民主化の条件になると思いますので、労働大臣といたしましては、この点についてはただいま原則的な御答弁がありましたけれども、十分施策の上で生かしていただきたいと思います。  第二の問題でありますが、人事院の勧告が御承知通りありました。この所信の表明の中にも、よき労使の慣行を確立するということがあります。従って、人事院の勧告の問題につきましては、公務員労働者の労働基本権の問題、ILO条約の問題等と関連をいたしまして、きわめて重大な問題であると思うのであります。人事院勧告自体、内容につきましては、あらためて私どももそれぞれ関係者の御出席をいただきまして、妥当であるか、その他の問題につきましては論議をいたしたいと思いますけれも、このよき労使の慣行を作るというふうな見解を終始一貫主張されておる労働大臣——三池問題その他につきましてもそうですけれども、その労働大臣は人事院の勧告につきましてどのような原則的なお考えを持ちまして閣議や政府の態度決定等におきまして対処されんとしておるのか、一つ簡単に御答弁いただきたい。
  19. 石田博英

    石田国務大臣 これは私が前に労働省におりましたときにも繰り返して申しましたが、公共企業体いわゆる三公社五現業の労働者諸君の争議権を取った代償として公労委の仲裁裁定を労使双方が守るというのが、これが公労協における私はよき労使慣行の柱だと考えておりまして、その柱を貫いて参ったつもりでありますし、これからもその方針には変わりはございません。人事院の勧告は一般の公務員の給与に関することでありまして、直接私の所管ではありませんが、労働行政全般に対する考え方というものは、公労協に対して私がとっておる考え方と少しも変わらないのであります。従ってこれは尊重すべきものだ、こういう見解をとっておりますし、閣議においてもその立場を堅持して参りたいと存じております。
  20. 大原亨

    大原委員 最後にILO条約の問題でございますが、御承知のように前回の変則国会におきまして、ILO条約は政府の提案のままでああいうふうになっております。このILO条約の処理の問題につきましては、御承知通りILO条約自体の問題につきましては、与野党異議ないはずであります。関連法規につきましては、他のILO条約の問題や、あるいは国際的、国内的な諸問題等の関連におきまして、いろいろと日本の実情におきまして問題のあるところであります。この点につきまして、ILO条約について政府といたしましてどういうふうに将来にわたって処理されるかという問題につきまして、御用意があれば一つ簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  21. 石田博英

    石田国務大臣 お答えを申し上げます。ILO八十七号条約の批准につきましては、これも私が前におりましたときに初めて批准をするという方針を明らかにいたしたのでございます。今回もできるだけすみやかに批准をいたすという方針には少しも変わりはございません。むしろ前国会に批准ができなかったことを残念に思っておる次第であります。その関連法規につきましては、私は就任早々でありますので、よくこれを検討いたしておりません。関連法規の問題はあらためて私の責任において検討いたしたいと存じます。
  22. 五島虎雄

    五島委員 関連して。私はこの際一点について大臣所信を聞いておきたいと思います。私たちが日本国のいろいろの地域を歩いてみますと、貿易の自由化の問題について非常に恐慌を来たしておる。自由化が促進すれば産業機構の系列化が行なわれる、そうすると中小企業とか、日の当たらない産業等々については非常に不況が逆に現われてくるんじゃないか、そしてこれが労働問題に直接に関連をしてくるであろう、そうするとそれが失業問題に直接つながってくるのではないかということです。これが非常に国民の注視の的です。これは労働問題を問わず、農民の問題でも、大きな問題として影響を及ぼしております。そこで労働大臣としてこれに対してどういうように対処をしていくかということは、今後の労働行政として最も重要な一つ施策でなければならないと思う。ただいま労働大臣あいさつの中でも、自由化の問題も取り上げられておるわけですが、東京の新聞においても、朝日の八日の新聞では、「中小企業自由化のあおり」という見出しで、一部に倒産や転職ももうすでに始まっているのだ、そうして下清企業といいますか、中小産業に対しては自由化があるということを前提としてすでに買いたたきが始まっている。あるいは注文がどんどんふえているけれども、その生産のコストというものが非常に下げられておる。それから量産ができないというような問題がすでに始まって、失業、倒産したものが数を知らない、こういうように言っております。私の知る限りにおいても、ずいぶんの中小企業が倒れつつある。そうすると、政府が今景気だ景気だと言っているけれども、その景気は中だるみである。そうして将来日本の景気が持続するかどうかわからぬというように、非常に見通しが暗いような面も出てきているのじゃないかと思う。そうすると、その中から雇用問題という問題が新たに出てきやしないかと思うのです。そうすると、日経連等から雇用促進の公団ですか、そういうような構想も出てきているようでありますが、大臣のあいきつの中にも就職の流動性というようなものでうたわれておりますけれども自由化が労働問題に及ぼす将来の展望というものをどう考えておられるか。それから、景気だ景気だと言われているような反面に、事実こういうように失業、倒産というような問題が発生してきておるならば、これらについてどういうように対処されていかんとするかということについて、ただ一点質問をいたしておきます。
  23. 石田博英

    石田国務大臣 貿易の自由化が進められるに従って、それが産業界にどういう影響を及ぼしてくるか、あるいはそのことについて政府がどういう具体的施策をとるかということが全般的な御質問のようであります。私は、貿易の自由化というものがやはり貿易の正常化へ向かって進む原則的な、かつ一般的な傾向であると考えておるわけであります。従って、それによって起こって参りまするいろいろな影響をどう処理するかということに重点を置くべきであって、その影響をおそれるのあまりに、根本的な方向というものを否定すべきものでないと私は考えておるわけであります。  そこでその影響でございますが、その影響ははたして企業の規模別に、つまり中小企業と大企業という、そういう規模の分かれておることに対してのみ影響がくるかどうか、それもいろいろ大きなものがありましょうけれども、同時に産業の種類による影響もあろうと存じます。従って自由化の速度というものは、その影響をでき得る限り避け、かつ少なくしつつ進められていかなければならぬと存じておりますが、これは通産省、経済企画庁等の所管に属することであろうと存じます。私の所管は、それによって生ずる失業の問題、これをどう考えるかということでございますが、前に私が在任いたしておりましたときに、ちょうど技術革新とかあるいはオートメーションの普及というようなことによって失業が将来激増するのじゃないか、そういう予測のもとにいろいろ御議論がございました。しかし二年間経過いたしてみまして、今日調査をいたしますると、オートメーションや技術革新は進みましたが、雇用の全体の量としては、これもやっぱり進んでおるわけであります。非常に大きく伸びておるわけであります。しかし、もちろんその中にある種の産業から人が余り、ある種の産業にそれが移ってふえていくということになっているのであって、各種の産業が全然同じ形のままで伸びているということではないのであります。私はそれは結局、技術革新、オートメーションの振興ということが産業の規模全体を大きくするということに非常に役立った結果であろうと思っております。貿易の自由化についても、全体としては私はそういう見通しを持つことができるのではないかと思っております。しかしその間に、御指摘のように産業別、あるいは企業の規模別によって影響が起こり、失業が生まれてくるだろう、その失業をどう処理するかということは、一にかかって労働力の流動性をどれだけ早い時期にどれだけ広く確実に確保するかということにあるだろうと思っております。そのために考えられております一つの考えが、先ほどお話しになりました雇用促進のための積極的な施策として公団のようなものを考えておるわけであります。これは職業訓練あるいは地域的な労働力の移動を便ならしめるための住宅の問題、あるいはその他移転に必要な経費の問題等、一切を包含した事業を行なおうとするのでありますが、しかしこれはまだ具体的に固まった案ではありませんので、一つの構想としてそういうことを考えているということを申し上げておきたいと存じます。これは日経連が主張しているというお話でありますが、日経連もそういう御意見でありますが、雇用審議会におきましては、総評側委員もこの考え方に賛成の意を表しておられることでありまして、これは労使双方ともから起こっておる声でありますので、できるだけ広い規模においてこの構想をまとめて参りたい。もう一つは、そういうことによって生ずる労使間の紛争をなくしますために、経済界の大きな動き、特に各産業ごとにおける伸張というものを事前に見きわめまして、あらかじめ労使の話し合いの機会を労働省としてあっせんをして、そうして時間を置いて、つまり労働力に流動性を持たせ得る時間を置いて雇用問題が処理されるように、事前に行政上の措置をして参りたい。この二つによって、貿易自由化その他に伴う経済界の変動、それに影響される雇用の問題を処理して参りたいと考えている次第あります。
  24. 本島百合子

    ○本島委員 労働大臣に、詳しいことはまた委員会で御質問いたしますが、今日私どもが一番考えさせられている問題の一つの例として出ておるのが山谷のドヤ街で、こういうふうなことはあらゆる社会の縮図だと言われております。あそこばかりでなく、大都市というところにはほとんどあるわけで、大阪、神戸についこの間視察に参りましたけれども、その問題は低額所得層の住宅街、このところに問題があるわけであります。職安法違反であると言われているけれども、それが違反として明確にされていないで、親方が勝手に日雇い労務者になるべき人たちを連れて行って、そうしてそこには健康保険もなければ失業保険もないというようなところに立たされておるという現状があるわけであります。また一方、そういう地域におきましては麻薬と売春はつきものだ、こういう、ふうに言われております。それからそういう人たちの住宅、これはもちろん住宅がないために簡易宿泊所に泊まっておる。こういう状態をかね備えたところが大体スラム街と言われております。この問題については、もちろん労働省厚生省も大きな柱になるべき所管のところであると思いますが、同時に住宅問題が解決していかないと、こういうところの解消はなかなかむずかしいということになってくるわけであります。私どもは、今日あらゆる面で社会保障が一歩ずつ進んでいくとするならば、当然こういう問題の解決をこのときにこそやっていかなければいけないのではないか。両大臣ともに世間から非常に期待を持たれていられるだけに、この機会にその根本的な対策を立ててほしい。これは一般の人々が非常な期待を持っているところです。きょうは建設省の人はおいでになりませんが、こういう問題について総合的な施策をなさるかどうか。するとするならば、これが住宅問題にしても、あるいは労働の雇用の問題にしても、あるいは生活保護を受けられるという場合もたくさんあります。そういう面をどういうふうに考えてこの新しい内閣では柱を立てていかれるのか。その二つの柱がこちらの委員会にあるのですから、大まかな点でけっこうですから御所見を聞かしていただきたいと思います。特に労働大臣はお帰りになるそうですから申し上げますが、零細業者の中では御承知通り何の恩恵も受けられない日の当たらない場所で、労働条件が非常に悪い。賃金ばかりでなく、その待遇も悪いわけなのであります。それから職安あるいは労働基準局あたりでも把握できない場所がかなりあるわけなのです。そういう点について特に施策をなさらなくてはいけないと思いますが、そういう点についてどういうふうに考えていられるか、この二点について、労働大臣の方から先に御答弁いただきたいと思います。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 山谷の問題に限りませんが、日雇い労働者諸君の住宅の問題、これは非常に根本的な問題であると私ども考えまして、これも私前任のときに初めて日雇い労働者の住宅建設資金というものを予算化いたしました。六千万円だったと思いますが、その後年々それを予算化いたしまして、まだそれほど大規模にはなっておりませんが、大阪にはできておるはずであります。その後どこどこに作っておるか、ちょっと承知しておりませんが、あとで事務当局からお答えいたします。そういう工合に年々日雇い労働者の住宅は建設いたしておりますが、しかしその数はわずかであります。従って、これをさらに促進をするように努力をいたしたいと考えておる次第であります。住宅の問題は、特に日雇い労働者の中での家族持ちにとりましては一番大きな問題だと私は理解しております。それからいわゆるやみ職安と申しますか、職業安定法違反の行為を公然とやっておる事実があることも承知いたしております。警察その他と協力いたしまして、取り締まりに当たっているわけでありますが、実際問題としまして、なかなか公判維持の証拠が得られない。いわゆる被害届の方が出てこないということが実情であります。それから、そのやみ職安がどうして存在するかというと、いわゆるそういうところに住んでいる諸君が、職業安定所や区役所というような一般的な役所に顔を出して手続をするのをめんどうがるという習癖、めんどうがるだけでなく、いろんな他の理由によってこれを避けようとすることも一つの原因であります。これの中にも誤解の面が非常にありますので、そういう誤解を除去するように努めたい所存であります。一方、役所側といたしまして、その手続が煩埴で日にちがかかり過ぎる。一般的に職業安定所に登録いたしますのには一週間ないし十日かかるといわれております。ああいう低い所得生活している人たちに一週間も十日も日にちがかかるようでは、これは効果が上がらないのでありまして、今当局に命じまして、もっと簡便な方法で登録ができるように準備をいたさしておる次第であります。そのやみ職安の問題はなかなかデリケートな問題でありまして、急速にこれに対する処置をとりますと、職安の方に登録することと速度が合いません場合には、いわゆる立ちん坊という諸君が生活手段を一ぺんに奪われるという現象も生じますので、法の建前は建前、しかし現実に即して、実害が大きく起こらないようにやって参りたいと存じておる次第であります。
  26. 本島百合子

    ○本島委員 総合的な諸施策をなさるかどうか。
  27. 石田博英

    石田国務大臣 これは、あの地域に山谷の問題が急に大きくなっておりますし、山谷にああいう種類の人が多く集まっておるのですが、これは山谷だけでなく、大阪、神戸あるいは東京にも方々にあります。これに対しまして、先般来土地の人たちの要求や希望も聴取いたしまして、主として東京都が中心になって総合的な施策、たとえば相談所、診療所、託児所というような総合的な諸施策をも講じて参る準備を進めております。ただ、非常に特殊な社会心理の働く地域でございます。従って、この施策を進めて参る場合にも、一般的な場合のように画一般に参らないことが多いのでありまして、現状に即してすみやかなる措置を講じたい、こう考えております。
  28. 八木一男

    八木一男委員 労働政策についてたくさん伺いたいことがありますが、御用事があるそうでありますから、二、三分だけ……。  実は大臣のごあいさつの中に一つも載っていないのですが、労働省としてはいつも社会保障の問題には横を向いている形がある。今までの歴代の労働大臣の中で、石田さんが労働大臣のときがあまり横を向かないで少し縦を向かれたのですが、ほかの労働大臣はてんで話にならない。その石田さんのあいさに一つも入っていない。これも中山さんに御質問するのですが、たとえば厚生年金の問題であるとか、健康保険の問題であるとか、日雇い労働者の健康保険の問題であるとか、労働者関係のある社会保障の問題は一つもここに出ていない。これは厚生省自体がいけないけれども労働省がこういう問題に非常に不熱心であるという証拠である。この前、失業保険改正されたというけれども、黒字が出たら、失業保険なんというものは次の再就職までしなければいけないものである。今三カ月、六カ月、九カ月でとめているけれども、そんなものではいけないわけである。それから、賃金が少ないから、六割ではなく、八割とか十割に持っていかなければいけないわけである。これは労働省所管である。ところが、前大臣の黒字が出たときに、できるのにそれをしないで、保険料を下げるというようなことをした。保険料を下げてもうかるのはたれかというと、大資本である。労働省社会保障の問題で保険料を下げるのを反対しなかったかもしれない。しかし、経営者が負担を免かれて、労働者は自分の給付が上がるチャンスをそこで失なうわけである。そういうふうに、労働省社会保障の問題を知ってるのに知らぬ顔をしている傾向がある。労働省社会保障をほったらかしにする。石田さんは悪い方ではなくてよい方であったと私は思いますが、しかし、一番よい方であっても十分ではない。まだまだ不十分である。労働大臣は前からベテランでありますが、新進気鋭の気概を持っておられる石田さんが、ごあいさつ一つも述べておられない。ほかの面では意欲を持っておられるけれども、この問題はやはりぼんやりさしておこうという気ではないか。厚生省が気がつかなければ、労働省労働者のことについて助言をしたり、忠言をしたり、それを推進するために協力をする必要があると思う。その点で労働大臣の御決意を伺っておきたい。
  29. 石田博英

    石田国務大臣 私どもの方の立場として取り扱う社会保障の問題というのは、その施策を通じて経済の発展に寄与するということを基礎として取り扱う建前でございます。従って、失業保険の余剰金等の取扱いにつきましても、その余剰金の使用方法によって雇用増大し、その増大された雇用産業界、経済界の発展に寄与するという方向でこれを取り上げたい。それから、私ども取り扱う社会保障というものの一部に入るかと思いますが、失業保険、健康保険あるいは厚生年金あるいは中小企業退職金共済制度、あるいは最低賃金制度、そういう種類の立法を零細企業にまで伸ばして、そうしてその恩恵に浴さしめるというのが私どもの方で取り扱う社会保障の範囲に属する問題だと思うのですが、これは第二番目の、特に中小企業の勤労者の生活水準を高めるということに包含しておるつもりでありまして、決してのがれておるつもりではございません。今、現在行なっておりまするそういう各種の立法に行政的効果をあらしめるような具体的手段——法律が幾らたくさんできまして、いかに完全なものができましても、それに行政的効果が上がらなければしようがないのでありますから、行政的効果が上がるように、たとえば五人以下の企業失業保険適用の数がもっとうんとふえるように、あるいは中小企業退職金共済制度の利用者がうんとふえるように、そういう行政的な手段をかなり大規模に行なうつもりでありまして、目下立案中であります。それは第二番に含まれているものとお考えいただきたいと思います。
  30. 八木一男

    八木一男委員 そのまま聞いていると非常に満足するような御答弁なんですが、そう満足できない。大体言われたところの労働省の根本政策が、経済の発展に寄与するところにあると言っていられる。これではいかぬと思う。もちろん経済の発展に寄与することが労働者生活を潤し、よくなることはわかっております。しかし労働省立場としては、経済の発展に寄与するよりは労働者の福祉増進ということが先でなければならない。生産論でなしに分配論でなければいけないと思う。それが自民党の政府の場合に、両方関連しているからといって、経済の発展に寄与する方を先に持っていかれて、あらゆる労働政策がそっちが先になっている。それではいけないのであって、やはり分配の方を先に考えるべきだ。分配をすることによって購買力が上がって生産が拡充する。いろいろな関連がありますけれども労働大臣は通産大臣ではないのですから、やはり労働者生活なり福祉の増進を建前にして、それによって経済の発展をよくするというふうに、順序を逆にしないで考えていただきたい。経済の発展も労働者の福祉も関連がありますが、少なくとも労働省の場合には労働者の福祉増進をもとにして、それで経済の発展と関連をして考えられるべきであると思う。自民党内閣としてのワクを持っておられるので、そのワクが自民党の成長をとめているわけです。それが日本の政治をとめているわけです。そのワクをやはり労働大臣が破って労働行政をやっていただかなければ困る。その意味で労働大臣に非常に期待を申し上げているのですから、今までの自民党の政策の中でこういうふうに経済の興隆を先に言うというようなくせは突破して、ほんとうに日本のよい労働行政ができるように、勇敢に道を切り開いていただきたいと思う。総括的でけっこうです。
  31. 石田博英

    石田国務大臣 私が経済の発展に寄与すると申しましたのは、私どもの方の役所でやります社会保障政策と、厚生省でおやりになる社会保障政策との基本的な違いを申し上げたのであります。私どもの方は経済の発展に寄与するということを基本としての政策を行なうので、厚生省の方では、経済の発展ということと直接関係がない社会福祉事業をやられるのであるが、それは厚生省の所管に属するのである、こういう意味で申し上げたので、労働省のやるべき仕事の役割というのは、基本的に労働者の諸君の福祉の増進にあるということは言うまでもございません。
  32. 八木一男

    八木一男委員 そういう意味で一つがんばっていただきます。      ————◇—————
  33. 大石武一

    大石委員長 これで労働関係を終わりまして、続いて厚生関係基本施策に関する件について再び調査を進めます。八木一男君。
  34. 八木一男

    八木一男委員 先ほど御答弁をちょっと伺いまして、途中で切れまして先礼いたしました。ただ原案原案で、厚生省で今考えている程度だと言われますけれども、やはり情報は新聞に伝えられている。伝えられているということは、やはり厚生省もそういう傾向を現わしているということだと思う。かなり努力の跡は見えておりますけれども、全体的に不十分であって、しかも考えに抜けている点がたくさんあるわけです。今労働大臣のときに申し上げたことも一つであります。各個々の問題についてもずいぶん抜けているわけです。     〔委員長退席、亘委員長代理着席〕 時間がありませんから、遠回しに厚生大臣の御答弁を願って、それをいろいろつついていくというようなことをしませんで、単力直入に、率直に一つずつ具体的に申し上げます。  たとえば生活保護の問題でございますが、二六%ということで、非常に思い切ってやったように厚生省は考えておられるかもしれない。ところがいろいろの科学的調査で生計調査をしても、そのような二六%で人間の生活はできない。今の生活保護の基準は、自分の健康を食ってやっと露命をつないでいるにすぎない。たとえば憲法の二十五条や生活保護法でいっているような健康で文化的な生活とははるかに遠いわけで、二五、六%上げても、そんなものではなかなかそこまでいかない。そこで厚生省自体が、どうせ予算折衝でいろいろなことをやると思うが、一番原案を作る厚生省がこんないくじのないことでは、生活保護新聞で報道されているようによくなるということは非常に長い先になる。厚生大臣は厚生問題に非常に熱心であられると思います。ところが厚生省には変なワクがあります。今までのいくじのないワクがある。それを大臣や政務次官の政治力によってぶっこわさなければだめです。二六%では何ほどのこともできない。厚生省原案でこんなものだったら、予算折衝ではもっと減らされますよ。これだったら、世の中によい幻想を与えていながら、実際には問題を推進していないことになる。そういう意味で厚生大臣はほんとうに——ここはこうやってこうだと局長や部長は言うけれども、大きな政治的な立場で、二六%ではならぬ、もっと上げろと言わなければならぬ。この問題については池田内閣が取り上げているので、厚生大臣意見が通るような情勢にある。絶好のチャンスです。これをはずしたら問題はおくれるし、中山さんの人気も落ちる。これはほんとうに政治的な見方をして断じてなされなければならない。その意味でこの案は非常に貧弱でありますので、たたき破って問題を進める御意思と態度がなければならぬと思うが、一つ総括的に御答弁願いたい。
  35. 中山マサ

    中山国務大臣 八木委員のお話を聞いておりますと、なんでもかんでもきまったような話のなさり方でございますけれども、物事はやはり順序を追うていかなければなりません。この二六%が厚生省で決定を見たわけでもございません。仕事はこれからでございます。どうぞ一つ細工は粒々仕上げをころうじろという、日本人が好んで用いる言葉がございますが、しばらく御猶予を与えていただきたい。厚生省が決定的にこういうことを考えておるかどうかということすらもまだ私のところには来ていない。それでワクを破れ破れというお話でございますけれども、やはり政治というものはすべてバランスを見なければならないのでございますから、国の経済ということともにらみ合わして、いろいろな方面へ向かって社会保障推進させていかなければならないということは大きな柱でございますので、私も懸命に努力しようという意思は十分に先生と変わらないほど持っておるということを得了承いただきたいと思います。どうか一つ今後をお待ち願いたいということをお願いいたします。これは決して決定されたものではない。今後に待っていただきたい。どういう最後の結論が出てくるかは、大体八月の末ごろにならないと私どもにすらはっきりしていないのでありますから、いわゆる新聞社のお方々がいろいろ御努力なさってこれだけのことをお拾いになったのではなかろうか、こういうふうに思っております。仕事はこれからでございます。
  36. 八木一男

    八木一男委員 何といいますか、新聞社の方が情報を収集されたと言うけれども、何も原因のないところにそういう情報の収集はないと思う。やはり原局ではこれくらいのいくじのない案を考えていると思いますから、一つ激励をして推進をしていただきたいと思います。今まで言われていることが少しずつ取り上げられております。勤労控除の拡大、これはいいです。どんどんやったらいい。ところが勤労控除だけだと、たとえば商売をしたり内職した収入を差し引かれてしまう。たとえばその人のお母さんが努力して子供さんの生活を上げたいというのでこれをやっていても、これが収入から差し引かれるということで、努力のしがいがない。こういうことも考えていただきたい。もう一つ、扶養義務の点で、北海道に兄さんがいるから大阪の人が生活保護を受けられない。あるいは箱根に御存じのように脊損の患者がおられます。そこの一人の患者に伺った話で、中山さんも聞かれたことがあると思いますが、お父さんが脊損の患者で社会保障の適用を受けていないわけです。子供さんが一生懸命働いているけれども、今の扶養義務の関係で、幾ら働いてもその子供さんは生活保護の基準以上の生活ができない。その子供さんは親孝行なんですよ。これが今の扶養義務の過酷な規定のためにそういうことになる。そういうことを突破しなければならないが、そういうことが一つも出ていない。それは厚生省がほんとうにものを考えていない証拠だと思う。それは一つ考えていただかなければならないと思います。これはお聞きいただいて御努力願えばいいのですけれども、時間がありませんから、年金の問題に移ります。  年金の問題で、拠出金の問題が一つもうたわれておりません。非常に問題があることは御承知通りであります。それで前々からずいぶん年金について改正案を出すということはいわれておる。それにもかかわらず、それからそういうことが検討されていない。拠出年金については、いろいろな運動が起こっておることは御承知であろうと思います。その中には、いろいろな御説明をすれば、十分の一くらいは、政府の意向がそうであったからといって納得される向きもあるかもしれませんが、やはり大部分は政府の拠出年金の根幹がひん曲がっておるために、そういう運動が絶えないというような状況のものがあるわけです。たとえば一つ例を申し上げますと、政府案には免除という規定がある。社会党案が減免規定を出したので、その中で免除だけを幾分取り上げられたのはいいけれども、この免除が半身不随の免除です。たとえば年金になるには保険料を十年間払うという最低の要件がついておりますから、免除規定が発動するのは、前後してもいいけれども、十年間合計払った、その上に免除が十五年間あったということだったら、二十五年間保険料を払った人と同じように、六十五才から二千円になる。普通なら十年間だけ払ったら千円にしかならないけれども、二千円になる。その意味では免除は有効であります。ところが、その免除を受けるすれすれの人、免除の適用を受けるときもあるし、受けないときもあるすれすれの人が、十年間払うということは至難である。十年間は十回ではありません。月ですから百二十回、年四回くらいだったら、結局何十回ということになるわけです。そういうことでは払えない方が多いわけです。そのときには免除は役に立たないわけです。たとえば九年間払ったって、免除は何年受けても役に立たない。そんな免除規定は半身不随で、ないと同じだ。免除規定がないとすれば、保険料の払いにくい人は、一生懸命一部分払ったけれども、そこまでいかないから、十年以上にならないから、年金がもらえない。保険料を払えないような人が老齢になったり、あるいは障害を受けたり、あるいはその人がなくなった遺族の方が一番年金が必要なわけです。そういう人がもらえないような拠出年金になっておる。大体保険料の方も百五十円と、同じになっておる。松下幸之助さんも、その日暮らしの人も、同じ保険料になっておる。こんなものでは、払いにくくなることはあたりまえです。根本的に組み立てに間違いがある。そういう問題を一つも触れようとしていない。そういう問題があるから、政府年金は困る、政府の拠出年金は反対であるという運動が全国に広まりかかっておる。そういうひん曲がったものをまっすぐにすれば、みんなでこれを育て上げていこうということになる。根本的に間違いがある。たとえば、二百億円ほどの国庫負担を出します、いいじゃないですか、非常にけっこうな制度だとおっしゃるかもしれません。しかし、その五割なら外割五割、内割三割三分三厘の国庫負担というものが役に立つのは、年金が出たときです。もらえるときです。もらえるのは中間階層以上の人が保険料が払えたために年金がもらえるから役に立つ。それが払いにくい人には、その何百億円かの金が役に立たない。そんなことでは社会保障が逆転しているわけです。非常に大きな声で申し上げて恐縮でございますが、とにかく政府年金は、前から申し上げておるけれども、その組み立てで逆転をしているわけです。この社会保障をよくしようと池田内閣が決意されて、ずいぶんだくさんの費用をほうり込もうと決意された。その機会にこれを直さなければならないわけです。ところが、厚生省で小山君は非常に熱心にやられたには違いないけれども、そういう根本的な組み立ての間違いがある。今、去年やったのだからやってみてということで、ちょっと延ばして下さいといったら、その機会は逸するわけです。機会は逸するし、その間は対象者は困るわけです。この機会に組み立てをやはり直してもらわなければならぬ。特にけしからぬのは、三年未満の保険料がすべて没収される。これは生命保険的な考え方です。強制適用ですから いやおうなしに取られるわけです。取られて、差し押えはしないにしても、取られる態勢にあるわけです。ですから、政府がおっしゃることだからといって、一生懸命払い込もうという努力をする、努力をしたけれども生活が困難だからそれ以上払えないことがある、そういう非常に困難な人が払い込んだ三年未満の保険料を、生命保険会社みたいに、手数がかかったから解約金は三年未満のものは返さないというような観念で、事務費がそれだけかかったという概念で三年末満のものを没収してしまうわけです。そんなことでは全然営利会社的なやり方です。組み立てのときに営利会社の専門家が参与したから、そういうことをしなければいけないと言ったかもしれませんけれども、入りたいと思います。二、三年でやめたいと思いますということなら、営利会社では事務費がかかって迷惑するから解約金は返さない、これは営利会社なら自由契約ですからいいでてす。それも説明しないのは悪いけれども、一応建前としては……。国家が強制的にやらしておいて、それでやめたものは三年だったら没収する、年金というものはそんなものではない。三年の間払えなければ、たとえば自動車で両足切断されても障害年金が一文も入らない、母子年金でも同じような制限がついている。総体的にそんなに拠出年金がひん曲がっている。来年度から平年度二百億円ほどの国庫負担を出そう、これは前進であります。前進でありますが、それがほんとうに必要な人にいかない、ほんとうに困った人が一生懸命納めた保険料がある程度没収される、そんなものであったら、ほんとうにそれがわかったら、そういう該当者はこういう年金は困るというのはあたりまえであります。そういうことにならないように、社会党では減免を受けても、一文も払わなくても六十になったら七千円もらえるという案を作った、政府案が出る前に作っておいた。それから年金保険料を百パーセント払うことができなくても、全部ただでもらうということでは困るので、その間に減額規定を作っておいた。没収なんか一つも考えてないわけです。保険料も坂を作った。気がつかないのではなくて、そういうことを前に一つの問題として、法案として出しているのだから、反対党が出しておっても、それがいいということがわかるはずです。わかるはずなのにそれをひん曲げて、ひん曲げた法律を出された。多数だから、これから改善するからこれでがまんしてくれということで、われわれの反対はあったけれども通された。それでいいことをやっておられるように思っておられる。二百億円出すことはいいことであるけれども、それがほんとうに必要な人にいかない。ほんとうに必要な人の保険料が一部没収されるのでは、いい制度とはいえない。そういう問題を中山先生先輩で十分御承知だと思いますけれども、もう一回はっきり思い出していただくために今申し上げたわけです。ですからこの機会にそれを直す、保険料が定額であるのを坂をつける、収入の多い人から取る、松下さんからたくさん取って、その分だけその日暮らしの人の保険料を下げる、それが保険という概念に合わないといったら、概念などは人間がきめたことであります。保険料という言葉を年金料と変えたってかまわない。また国民健康保険でも保険料という形で坂のある保険料をとっているわけです。ですからそんなことはやろうと思ったら幾らでもできる。反対者が理屈をつけて、保険料というものはそういうものではないから困りますなんと言っても、大臣は断じてそういうことをどなりつけて、そんなものではないということでそういうふうに直してもらわなければ困る。そういうことについての御所見を伺いたいと思います。
  37. 中山マサ

    中山国務大臣 ただいまの第一のお話でございますが、生活扶助というものは御承知通り最低というような——これはおしかりをこうむるかもしれませんが、線が出ておりまして、足らざるところを国が補うていくという建前であるやに私は了解いたしております。それで働きがある人は、その働いても足らないところを国家が補っていくというようなものの考え方でこれが立てられた施策であると思いますので、なるほど私も一委員として、こういうことはいかぬじゃないかといって叫んだこともあります。しかし、よくよく考えてみますると、必死になって働きながら生活扶助を受けないでいる、ボーダー・ライン層の人のこともやはり考えなければならないということになって参りますると、足らないところを補って差し上げるということが考え方でございまするし、これまでもある程度は、やはり少しの収入は見のがされておったこともあるやに私も聞いておるのであります。それは大したことじゃなかろうと思います。しかし、まあこういう点もございましたが、今度ははっきりと、これだけは取らないという線を出したことは、私は進歩であろうかと思いますので、やはりこれは国民年金をも含んで言えることであろうと思います。御記憶でございましょうが、私が政務次官をしておったときかと思いますが、ニコヨンさんの保険のときも、社会党さんは、三日ぐらいのことでどうするのだ、こんな不完全なものには反対だといって反対なさったことを私は記憶しております。しかしこれも、エレベーター式ではない、エスカレーター式に一段一段上がっていくというものの考え方から三カ月が一年まで延長されているのではないか、ということでございますから、私のうろ覚えでございますけれども、おしかりを受けつつ、御鞭撻をちょうだいしつつ参る。国民年金にいたしましても、社会党さんの年金は、建前としては私どもも賛成したいほどでございますが、これを実際にやっていきますると、また金額の問題でいろいろ困る点も出てくるやに聞いております。     〔亘委員長代理退席、委員長着席〕 わずかなお金ではとてもとても済むまいという話であります。今、松下幸之助、日本一の納税者から取れというお話でございますが、いかなる金持ちでも貧乏人でも、三等の切符を買えば三等の汽車に乗るのでございます。金持ちでも貧乏人でも一等は一等というのが建前ではないかと思いまするので、なるほどそういうことも言えるかもしれません、しかし実際にはまたなかなか納得のいかれぬことも出て参りましょう。でございまするから、こういう問題も何年かごとには必ずまた検討するということが国民年金の建前であると私は記憶いたしておりますので、よく考えまして、国の経済力の上がるに従いまして、もっといいものにできるような時代が早く来ることを希望しております。
  38. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣、非常に御熱心なのはいいですけれども、もう少し考え方を変えていただきたいと思います。生活保護の問題で、あれは足りないところを補うという精神じゃないのです。またそれだったら、収入があった部分に生活保護をまるまるくれなければいけないわけです。そういうことではないのです。憲法の二十五条からいって、健康で文化的な最低生活を維持するということは生活保護法の第一条にあるわけです。全然手足がなくて生活ができない人がいる。その人に人間の生活以下、基準以下のものをやれば、自分の健康を食って、生命を縮めて、やっとその間二、三年生きているということにすぎない。そういうことではいけないので、どうしたって働けない人がいるのですから、足りないのですから、足りないところを補うという精神だったら、その精神は別な意味で、結局生活保護は全部くれっきりにならなければいけない。ところが全部もらいっきりの人と、継ぎ足してもらう人がいますね。補うのではなくてみんな引かれているわけです。そこのところを少しお考えいただきたい。足りないところを補うことではない。ほんとうに健康で文化的な最低生活をできない人にそれをしなければならないという、憲法の条項からきたことが生活保護法にあるのです。そういう意味で、足りないところを補うのだから、この程度でいいというようなことをほかの大蔵省あたりが言ったときには、そうでないのだ、ほんとうに人間の尊厳を認めて、人間の生命を尊重して、その人の仕合わせを確保するためにやるんだという概念でやっていただきたいと思います。  それから三等の切符の話が出ましたけれども、非常に上手なお話でございます。それで国民健康保険ではどうだというと、国民健康保険では非常にたくさんの収入のある人はたくさんの保険料を払え、収入の少ない人は少ない。これは一等の乗車券を買った人も三等の乗車券を買った人も給付は同じだ。そういう進歩した制度がある。それから後に進歩に逆行した制度を作ることは間違いなわけです。一応説明としては通るようですけれども、それはちょっと間違いだと思いますから、一つお考えを直していただきたいと思います。  時間がありませんから、具体的に無拠出年金のことを……。母子年金についていろいろ推進を考えておられる。これはさすがに婦人大臣で、母子の今非常に苦しいことを考えられたと思います。その点も、考えられた形跡はありますけれども、不十分です。まずその前に一番重要視しなければならないのは障害年金です。障害年金、母子年金、老齢福祉年金の順だと思います。選挙の札をかせぐには老齢福祉年金が一番得であります。ところが政府年金は限られた金ですから、一番気の毒な障害者を置きざりにして、次に母子を置きざりにして、その中の分け方は老齢にたくさんしている。ここに選挙年金のにおいが非常に明らかである。大ぜいの人の札を集めようと思ってバランスをくずして老齢の方に力を入れる。一番気の毒な障害者をほうっておる。一級しかもらえない。二級の人は一本足がない。結婚をして、足を障害で取られて、奥さんがある、子供がある、だんなさんがあるけれども、いろんな内職にしても、手がなければだめだ、足がなければだめた、それでその人自体と奥さん子供さんを養っていかなければならぬ、その人に千五百円ということでは——一人じゃない、奥さん、子供さんがありますから、こんなものはほんとうに問題にならない、二つ足が取れた、手が二つ取れたときに千五百円、片足だめなときには一文もない。お年寄りにたくさん差し上げてもけっこうですよ、ほんとうは一千億なんてけちなことを言わないで、二千億くらいつぎ込んでお年寄りに差し上げてけっこうなんです。しかし金額が限られるのだったら、両足のない人に千五百円ではいかぬ。片足の人にもたくさん上げるようにしなければならぬ。それがひっくり返っている。中山さん、田中さんは、社会保障をほんとうに考えておられると思う。ところが自民党の幹部の中には、選挙だけ考えている人がいるので、選挙だけ考えるのじゃなしに、ほんとうに国民が助かるような考え方でやっていただかなければ困る。逆転をしていると思う、これは非常に強烈に言いましたけれども、確かに私はそうだと思う。今政策を立てられるのですから、障害者の二級、三級を出す、特に障害者の問題で問題が大きいのは内科障害、これはきんざんここで論議されているので、中山先生承知通りである。一級の判定がついて、労働能力が両足のない人と同じ状態にあるのに、内科障害だということでなるべく出し惜しみをして出さない。治療をしてなおるかもしれないからそれは出せないのだという変な形式論を言う。ところが肺の四分の三を取った人、その肺が再生をするなんということは、しろうと考えでも絶対にないと思う。ただ普通の、取らないで今五度くらいの症状である、それが逆に七度くらいになるかもしれないということなら、それでもまだけしからぬけれども話がわからないでもないけれども、取ってしまったものは再生しない。それを、なおるかもしれないからそんなものはやれない、こんなことを言われている。中山さんならばそんなばかなことはないとお考えいただけると思いますが、そういう内科障害——心臓障害でも、結核の障害、精神障害でもそうです。それが一級で、両足のない人とほんとうに同じ状態なのに一文も出ない、そんなばかなことはないと思う、そういうことです。  それから老齢福祉年金の方では、政府原案では七十才の五十万が、所得制限を七十万まで広げる、広げるのはかまわないが、広げるためには、ほかの方に十分な金を出してから広げていただきたいと思う。五十万が七十万になれば月額六万円近く、五万五千円の生活のお年寄りから上げることになる。お年寄りは非常にわれわれをかわいがって下さったから、幾らでも上げていただいてけっこうでありますけれども、そういう人を、ほかのもっと上げなければならない人をほったらかしてやるところに選挙年金の気配がある。しかもまた、老齢福祉年金では、所得制限だけ考えてはいけません。年令制限ということが一番重要な問題です。六十九才で死んだ人には一文もいかない。七十万はおろか、十三万円くらいの世帯で、苦しんで苦しんでいる老人が一文ももらわないで死んでしまう。今まで長いこと苦しい生活をした人は早く老衰をする、あと命が短くなる。そういう人が一文ももらえないで、ある程度楽隠居した人、そういう人につけてもいいけれども、そっちが先になるのでは順序が逆転です。もっとも年令を下げれば金がたくさん要る。大てい年金の運動をしている人も所得制限を撤廃してくれというけれども、そういう無理解に便乗して金を出し惜しみをする人が、中山さんではないけれども原局の方にあるのです。それを六十五才に下げるなり六十三才に下げるなり、そういう点で老齢福祉年金については考えていただかなければ間違いだと思う。  母子年金も十三万円を二十二万までの世帯に上げるようにする、けっこうであります。それはどんどん上げるようにしていただきたい。ところが月に千円では役に立たない。それは三千円とか五千円に上げなければ意味をなさない。そっちの方を考えていかなければならない。準母子は前から、渡邊さんのときから御研究願って、もうすでに御実行願っておると思いますが、法的に準母子家庭に出るようにしていただきたいと思います。生別母子家庭の問題については、日本ではやはり男が横暴だ、話し合いじゃなしに、出ていけとか、あるいはおれが出ていくというようなことで、置き去りにされた母子世帯が多い。やはり理屈ではなしに、準母子と同じような状態の生別母子家庭が多い。それならば、当然生別母子家庭に対する支給の道を早く開かなければならない。ところが中山厚生大臣がこられたにかかわらず、原局は中山さんの御主張を入れることをせず、生別母子家庭の問題は一つも書かないような案をまだ考えておるということでは困る。厚生大臣は、そういう点で福祉年金についても直すことについて根本的に一つ考えていただきたい、強力に推進していただく必要がある、それについての御答弁を願いたい。
  39. 中山マサ

    中山国務大臣 ただいま老齢年金は選挙対策であるというようなお話でございますが、しかし、そういうことを考えて国民年金をやっている人はだれもいないと私は考えます。老齢者、戦争中に人生の最後において苦しんだ人たち、こういう人にはもっと上げたいくらいでございます。神奈川県から来ておりましたどの新聞かの声の欄に、千円もらったけれども、それを家庭の者が手帳も渡さないで、その金を家庭に入れる、おじいちゃまのお小づかいまで取り上げるという家庭もあるというような声も声の欄に出ておりまして、せっかくのこちらの気持も、これをおじいさんのお楽しみではなくて、その家庭への一つの援助みたいな形になったと、実はそれを見て読んだのでございます。しかし、やはり老齢になりますと、先が短いのですから、少しくらいはお慰めしょうという気持がここに現われている。十分でないことだけは、作ったときにだれもがわかっていたことであろうと思います。身体障害者の陳情も、私はこの間広島に参りましたときに十分聞かせていただきまして、おっしゃることに御無理はないという、その気持は十分私も考えております。  また母子年金は、先生のお国でございます奈良のあやめ池の近畿未亡人結成十周年母子福祉大会に参りましたときに、その母子家庭のお母さんの発言で、わずか千円とは言うてくれるな、これによってわれわれの家庭は助かったのだ、子供も学校にいけるようになったといって泣いて感謝をなさいました。ですから少ないといって、先生は国民の代表の声をここで聞かせていただいておるのですけれども、そういうように感謝しておる母子家庭もあるということを聞きまして、ますますこういう人たちのために努力しなければならぬということを私も考えておるのでございます。  拠出制年金につきましても、いろいろ御異論はあるようであります。しかし何でも初めはそう十分なことはできないと思うのでございますから、年がふえるに従って、いろいろ御指摘の点も考えて、厚生省といたしましては是正をする。福祉年金は去年の十一月に発足したばかりでございます。完全でないことは私ども承知いたしております。憲法の中にいわゆる文化的とあるじゃないか、こういう生活を保障していないじゃないかとおっしゃいますけれども、これは一つの理想を掲げたものだと思います。それに向かっていく、敗戦後わずかに十五年か十六年たった国が、いうように即時できるということは、社会党さんが天下をおとりになっても私はむずかしいだろうと思う。批判と現実というものはまたおのずから変わって参りますから、社会党さんも憲法を理想にしていらっしゃるし、私どもも理想にいたしております。一歩でも理想に近づいていくことに努力することが、現在の政府の責任であろうかと思いますから、御鞭撻の声をありがたく聞かせていただきまして、御意思を奉戴してできるだけのことをやっていきたい、こう考えております。
  40. 八木一男

    八木一男委員 今、お年寄りが千円でも助かったけれども、それは子供に使われちゃった。それならば結局千円を二千円、三千円にするという問題になるわけです。それを比較的貧しい家庭の老人にたくさん上げるということが金をふやすときのもう一つの要件です。早く死んでもらえない人のために、早くから上げるということが第一、その次には今上げなければならない人に千円じゃ少ないから、特におじいさん、おばあさんのときは一人千円じゃなしに、二人で千五百円にされてしまうわけですから、そんなことをやめて、きっちり一人千円、千五百円にする、それが先だ。それから非常に裕福な家庭の方に広げていく。五十万円以下の人は苦しいわけです。五十万円を七十万円まで上げろ、そこは五、六万円の生活の家庭です。ところが一万五千円くらいで住んでおるところのお年寄りの金額は、千円では足りないから、それを千五百円にするとか、そういうことが第二段目に考えられる。一番先に六十七、八才の人がもらえるようにする。その次には貧しい老人に千円では少ないからそれを二千円、三千円にするということが考えられる。それからもっとその次の収入の多いところのお年寄りも、御苦労願ったのだから差し上げる。そういうふうに順々に考えなければならない。ところが逆順になっておる。一番最初に障害の人、母子の人、それから老齢の人、六十才代の人にも上げられる。それから今上げている部分が少ないから、千円では足りないから、それをふやす。それだけの金を確保された上は、もっと収入の多いお年寄りにも御苦労だったから上げる。そういう順番で考えなければならない。ところがそれが逆になっておるところに、中山先生はそうじゃないかもしれないけれども、ほんとうにどこに厚味をかけるべきかということを考えないで、ふわっと上げて、自民党が社会保障しているということが言葉だけ通る。それが選挙に有利であるというふうに判定されても仕方がない。中山先生はそうじゃないかもしれないけれども、選挙年金だと私どもは断定せざるを得ない。  それからもう一つ、できないということをおっしゃいますけれども、社会党の案がこの前出たときには、これ以上できませんと言った。ところが池田さんになったら、今度はたくさんできるというわけです。その当時もいろいろ論議があって、できるじゃないかということを言ったわけですが、これ以上できません、ところがそれから一年ぐらいたったらできる。できるとわれわれは知って申し上げているわけです。今ある程度できるようになっておる。そんなことは私どもわかって言っている。いつでも今できませんからと言って断わられるけれども、われわれはできることをちゃんとわかって申し上げている。われわれに内閣を渡していただけば、われわれの案を一ぺんにやる。経済はひっくり返りやしない。国民がみんな苦労しているんだからとおっしゃるけれども、たとえばゴルフをしている人があるでしょう。高級自動車を乗り回している人もあるでしょう。それを全部きちっとやればできる。ぜいたく三昧しているのに、片一方で老齢や障害を起こして苦しんでおる人がある。だんだんにやれば、その間に死んでしまう人もある。しあわせはそこでじゅうりんされる。母子家庭でも金満家でも同じ人間です。ところがその人は、その間に人間らしい生活ではなしに、苦しんで心配してやっているわけです。片方はぜいたく三昧して、片方はまだ待ってくれ、それではその間の人があんまりかわいそうです。待ちかまえて、その間に死んでしまう人もたくさんある。しびれを切らして一家心中する人もある。そこをやるのが大事です。中山さんは御熱心だろうと思いますけれども中山さん自体からは、待っていただきたいということはおっしゃっていただきたくない。中山さんは大蔵大臣や池田さんと大げんかしてでも、これが大事だという意気込みでやっていただかなければならない。主務大臣である中山さんの方からだんだんにという声では、問題は推進しません。その点で中山さんが勇敢にやっていただきたいと思う。  時間がありませんから、あと一点だけ、具体的にすぐ御返事をいただきたいことがあるわけです。それはカナマイシンの件であります。これはストレプトマイシンの耐性菌の人にも明らかに同様にきくことがわかっているのに、今までの厚生行政の渋滞のために、これが社会保険医療扶助に使用されていない。それで助かる人が助かっていない。なおる人が早くなおらない。医学的には完成されて、ただ行政的のごちゃごちゃのためにできない。これはとんでもないと思う。即座にカナマイシンを使用してふしあわせな人が早く健康を回復してやれるようにしていただきたいと思います。この点は厚生大臣がやるとおっしゃっても、池田さんはいけないと決しておっしゃらないと思う。よく御返事になったと必ずおっしゃる。カナマイシンは即時そういう社会保険なり医療扶助に適用きせるということを、ぜひ一つきょうお答え願いたい。
  41. 中山マサ

    中山国務大臣 最後にカナマイシンの問題でございますが、これはもう片時も早く使用したいというのが私ども考え方でございます。しかし私が独裁者でございますれば、私の考えだけで、やるんだといって指令を下すこともできますけれども、民主主義の世の中でございますから、やはりこの了解を得べき人には了解を得、協議をしていただいてその結論を出していただいた上でなければ、またいろいろな点もございますので、私どもは早く使いたいので、病人のことを考えますと非常にこれについて熱意を持っているということだけは一つ御了解を願いたいのでございますが、これ以上のことはちょっと私の立場としては申し上げかねるのです。
  42. 八木一男

    八木一男委員 何日ころまでに実現されるか、あと十日くらいで委員会を開いて御返事を願えればいいけれども、開かなくてもいいことですから、厚生省が一方的に声明を発表されてもいいのですが、少なくとも十日以内くらいにそういうことをやるというくらいの決意を示していただきたい。
  43. 中山マサ

    中山国務大臣 これを使えば命が助かる人があるということを、むろん厚生省のみな存じておりますし、世間もみな知っておると思いますが、しかし十日以内にせよとか、あるいは一週間以内という、何と申しましょうかリミットをつけていただいても、私だけでこれきまることでございましたら申し上げられるのでございますけれども、これは相手があることでございますから、できるだけこのために努力をするということで一つ御了解を得たいと思います。
  44. 八木一男

    八木一男委員 今、実は政府委員の方がよけいなことを言いに来たと思うんです。厚生大臣は、あんなことを言ってこられなかったらすぱっと返事をなさったと思う。やっぱりよけいなことを言ったら困るというので言ってきたのだと私は思うんです。それが間違いであればしあわせです。しかし厚生大臣中山さんの御性格で、ほんとうに病人に対して厚い心、あたたかい考えを持っておられる厚生大臣としたら、これだけ社会保障に取り組むということを池田内閣が言われ、中山さんが閣内で重要な位置を占められているときに、即座に御返事が得られることだと思う。ところがそういうことをごちゃごちゃ言ってくるのでああいう御返事になる。これが官僚が政治を支配していることなのです。民主主義の世の中で、これは議会で民主主義で論議するのはいいんですけれども厚生行政をきめられるのは中山さんの責任だと思う。これが承認を得られるのは閣議でありますけれども、局長が何と言われてもきめられてよいのです。閣議について所管の局長が何も言う必要はない。厚生大臣が閣議できめるんだ。閣議では強力に主張する。いれられなければ辞表をたたきつけて、池田内閣社会保障をやる内閣である。反旗を翻してもやってみせる。これだけの強い決意をこの委員会で示していただきたいと思います。
  45. 中山マサ

    中山国務大臣 これは決して閣議で問題になるような問題ではございません。それで、これは厚生省の官僚が何か私にささやいたと言いますけれども、これはカナマイシンはどういうものとの関係であると、これの決定機関の名前を知らしてくれただけでございます。決してこういうことを言うなとか、ちょっとの間でそんな長たらしいことがいえるわけがないと思いますので、ただこれはこの協議機関の問題でございますよと、私存じておりましたけれども、やはり老齢のためでありますか、忘れているかもしれぬと思って向こうも老婆心から私に教えてくれたので、決して何とも申しておりませんから、どうぞ一つあまりに取り越し苦労をなさらないようにお願いいたします。
  46. 八木一男

    八木一男委員 それであれば今局長さんたちにちょっと失礼だった点はお許しを願いたいのですが、その決定機関は知っております。それをやはり一週間以内なりにすぐ開いて、十日以内くらいにでも、委員会を開くように委員長にお話しになって発表になればいいですが、委員会でなくても即時に発表になってもけっこうです。ですから決定の協議機関をできるだけ早く招集するよう、会長に要請なさって、それできめていただいて、少なくとも十日以内くらいに発表するための最大の努力をきれるというような、最大の努力の御決意だけ一つ伺いたい。
  47. 中山マサ

    中山国務大臣 これは全省をあげて努力をいたしております。
  48. 大石武一

  49. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 簡単に一つだけ御要望申し上げたいと思います。  私は今回中山先生日本におきまして初めての婦人大臣として、特に厚生大臣として御登場いただきましたことを、婦人の一人といたしまして心から喜んでおる次第でございます。先ほど八木先生もおっしゃいましたように、もちろん中山先生も女とか男とかいう立場でなくて、厚生行政をお進めになるのに一番適任者として、池田内閣によって選び出されて御登場いただいたと思うのでございます。しかし戦後日本婦人の地位が、男女同権だといわれておりますけれども、まだ婦人の地位は一般的に非常におくれております際に、婦人大臣が御登場いただきましたことは、私ども婦人といたしましては、婦人の地位の全般の向上のために非常にありがたいことだと思いまして、私は重ねてお喜びを申し上げる次第であります。特に日本が近代国家としてこれから前進していきますには、国際社会で何よりもおくれておりますのが私は社会保障制度だと思います。特に社会保障というものは、一口に申しますれば社会の弱い立場にある人たちを引き上げていくこと、つまり子供をかかえた未亡人だとか、病気になった人々だとか、あるいは失業した人人、あるいは老齢になって働けない人々、こういうような社会の弱い立場人たちを引き上げて、そしてしあわせにしていくのが社会保障制度だと思います。こういう社会保障制度につきましては、男の方たちのお気づきにならないような、きめのこまかい婦人立場からの、いろいろ考えていかなければならぬ面が非常にたくさんあると私は思います。先日ちょっと漏れ聞きましたところ、池田さんもそういうようなことを言っていらっしゃいまして、中山厚生大臣に非常に大きく期待していらっしゃるようでございますが、一つ私も婦人議員の一人といたしまして、中山厚生大臣のときに、日本の画期的な社会保障制度確立していただきますように、そして婦人としてきめのこまかい、思いやりのある社会保障母子福祉対策等を、今まで歴代の男性の厚生大臣ではできなかったような点を、一つ創意をもって厚生行政を進めていっていただきますように、私は最初に当たって強く御要望を申し上げる次第であります。特にこれからいろいろお気づきの点をお進めになるについて問題になるのは、ただいま八木先生からもおっしゃいましたように、私も大蔵省方面の予算の関係だと思います。私は野党でございますが、婦人議員といたしまして、先生がいろいろこれからお立てになる施策についいて大いにバック・アップして参りたいと思いますので、重ねて申しますが、日本の画期的な社会保障制度確立強化のために、全力をあげて、自信を持ってやっていただきますように、私どもも微力でございますがバック・アップしていきたいということを申し上げて、お祝いと御要望にかえる次第であります。
  50. 中山マサ

    中山国務大臣 超党派的に、野党の婦人の議員から特に御親切なお言葉をちょうだいいたしまして、私も非常に感激しておる次第であります。私が申しましたように、私一人の立場というのでなく、大宅壮一さんでございますか、あの方に言わしめますれば、婦人というものは今まで国内で植民地のようなものであった。中山がこういう地位についたことが植民地解放になったといって、婦人公論に書いていらっしゃるようでございます。新憲法の中には、御承知通り国民は法の前に平等であるとうたつてはございますけれども、その新憲法というものが、今日までその地位においては相当差別があった。社会党さんもまたわが党も、政務次官までは婦人が登用されましたけれども大臣といういすは今まで与えられませんでした。しかしこのたび池田総理の英断によりまして、特に社会福祉行政を腹からやりたいんだというお言葉によって、私をこういう地位につけていただきましたということは、ほんとうに社会福祉をやるということそれ自体だけでなく、同時に新憲法をも完成された、こう私は受け取っておるのでございます。どうぞ今後ともにお気づきの点はおっしゃって下さいまして、私どもの力の及ぶ限りやっていきたいと思います。私は家庭において家庭を十分うまく切り回し得る婦人厚生省行政をやれないことはないだろうと初めから思っておりました。また未来におきまして、伊藤先生がいずれは厚生大臣の地位におつきになる日もあろうかと思いますが、私が女としてこれをうまく、大過なく——というよりも、むしろよりよくやっていきませんことには、あとに続いていただけないのではないかということが、私の大きな心配の一つでございます。どうか一つ今後とも御援助、御鞭撻、御助力のほどをお願い申し上げます。ありがとうございました。
  51. 大石武一

  52. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 厚生大臣にお祝いの言葉を申し上げます。おめでとうございます。  ただいますでに社会保障のことに関しましては、同僚の伊藤議員よりいろいろと意見が述べられておるようでございましたし、また大臣の御意見も、輪郭ではございましたが承ったような気がいたします。常に大臣が御意見一つとしてお持ちになっていらっしゃる環境衛生の問題について、常日ごろ私も考えております一人でございます。大へん意を強くいたしました。御承知のように、環境衛生がまことに不備でございますために、伝染病もいまだに時期になりますと蔓延いたしております。また御承知のようにカやハエは次第に少なくなりつつはございますけれども、それに反しまして、特に都市には大きな油虫の種類のものが日々ふえて参ってきております。そのために、あのような虫が媒介をして多くの病気を蔓延させております。これはやはり常日ごろ母親や子供のおそろしい対象になっておりまして、特にお台所につながる不衛生な問題といたしまして、大都市では多くの場所におきまして話題となっております。御承知でもございましょうけれども、塵埃の問題、汚物の問題、これらがまず代表とする大都市でどう処理されておりますか、厚生大臣は長いこと厚生委員でのエキスパートでいらっしゃいますから、もうすでに御勉強も重ねていらっしゃることと思いますけれども、お願いできますならば、この処理をいたしております場所を一度回っていただきまして、どのような状態にあるかということをごらんいただければ、一そう私ども心強く存じます。この大都市、東京におきます処理のパーセンテージというものを、私が申し上げなくても、どの程度のものが近代化された施設で処理されているか、またどの程度のものが海に流されておるか、また一部深川の八号地、夢の島あたりにどういう状態で埋められておるか、それがためにいかにこの大都市の住民が迷惑をしておるかということなども、ぜひさらに掘り下げて御研究いただきたいと存じております。それで石神井あたりにございます大へんりっぱな近代化された施設でございますが、あれは塵埃で、焼却式になっております。十分の一ぐらいの灰になって出てくるという、まことに進歩的なものでございますけれども、膨大な予算がかかるということも聞いておりますし、それからまだまだ下水道あたり遅々といたしておりますので、これらのものを大都市に完全に整備するだけでも相当な予算がかかるのではないかと私は予想いたしております。よく大臣どもお耳にしたり、また新聞などでお読みになられることと存じますが、東京湾の上を飛行機で飛ぶと、必ず東京湾の中に何カ所か黄金色の美しい渦が巻いておる。外国から観光に見えたお客さんが、あの海の上の黄色い美しいもの沖何かとスチュワーデスに質問を出すのだそうでございますが、スチュワーデスは何ともこれには答えられないという記事が新聞などに載っております。あれは船に積んだわれわれの糞尿が捨て去られて、それがまた流れに乗って東京湾の中に戻ってきて渦を巻いておるということは、申し上げるまでもございません。何とぞお考えの環境衛生に対しましては、より以上の御努力と御研究を賜わりまして、家庭の主婦が一日も早く安心して生活できますように、ぜひお台所と政治を結びつけてこれが実現いたしますならば、私のこの上ない喜びでございます。まことに差し出がましい意見でございましたが、環境衛生について大臣の御所信を、大ざつぱでけっこうでございますから漏らしていただきますなら、そしてどのくらいの期間をもって、どういう程度に、大臣は理想を持って実現させたいとお考えであるかということを、一つつけ足してお答えいただければけっこうだと存じます。
  53. 中山マサ

    中山国務大臣 環境衛生の問題は、私が特に興味を持っておるものでございまして、私が政務次官をいたしておりましたのは二十八年、九年でございました。あの当時はネズミが非常にはんらんをいたしまして、千葉県の漁村では漁網を食い荒らす被害が非常なものである。またその当時まだまだ食糧が困難でございましたにもかかわりませず、米をネズミが非常に荒らして、そのために人間がいただかなければならない米までがネズミにやられているという話を伺いまして、私が提唱いたしまして、ネズミ取りをしっかりやって下さいと呼びかけたことがございまして、その当時週刊誌にもこれが盛んに出たことがございます。今御指摘になりました油虫でございますが、私はこの間も大阪の共済病院の付属施設でございます整肢学院というところに視察に参りまして、非常にかわいそうな小児麻痺の患者を見たのでございます。いろいろ説明を聞きますと、今の油虫、これは汚物の上を好んではうそうでございます。それがまた妙に台所に集結したがるものでございまして、そのきたないものをはったからだでもって食糧を食う。それが小児麻痺の原因の一つになるという話を聞きまして、私はぞうっといたしましたのでございます。私も子供を二人失ったことがございまして、いまだにその子供たちのことを忘れかねておりますが、ちょうど行きました日が両親の訪問日になっておりましたが、そこに来ておりました親の顔を見て、小児麻痺の子供を残して——いずれ親が先に死ぬんですから、死ななければならない親の悩みの方が私の悩みより大きいだろうと思いまして、これは何とかしなければならぬというので、私も厚生省にお願いをしましてぜひこの問題を大きく取り上げていただきたいと言うておりましたやさきに、これが北海道で集団発生を見たのであります。名古屋にも出ました。あちらこちらに出ておりますが、これは文明病といわれているそうでございます。とんでもない文明病だと思っておるのでございますが、これが致命傷になりまして、これから身体障害者が出てきますと、また違った意味での国家の負担にもなるかと私は思っておるのであります。それで、民間団体にも呼びかけて、何とか募金をお願いしたりしておりますが、日本で使用される注射液を作るのに——私は予研にも行って見て参りました。そうしたら、この検定ということが非常に問題になっております。ソビエトからもやろう、アメリカからも上げましょうと言って下さるのですけれども、やはり日本で使います注射液というものは、日本が検定をして責任を持てるものでなければならぬというお話でございました。今予研では、行って見ていただくとわかりますが、突貫工事をしております。人員が足りない。そこで、食堂、会議室までも何とか変えて、今は一ロット——ロットというのはどのくらいの分量か知りませんけれども、それをする能力しかないのだそうです。それをできるだけ三ロットくらいに上げて下さいと言って、今大いにこれに力を入れていただいておる最中でございますが、早くこういう注射液を出しまして、それにかからないような対策をしたい。北海道長官がマッカーサーにお頼みになりましたら、さっそくマッカーサーは空軍に言いつけて、二人の医者を先方に派遣して、レスピレーター、いわゆる蘇生器と日本では言うそうですが、それも二台持っていって、現場のお医者様を指導して今やらせておるというお手紙をマッカーサー大使が私に下さいました。私も非常に感謝いたしまして、さっそくお礼状を出しておいたのであります。努力はいたしたのでありますが、なかなか思うところまでいっていない。それで、特に御婦人の方に私は呼びかけて、今度はネズミ退治ではなくて、アブラムシ退治を婦人団体にお願いをしておるわけでございます。どうぞ一つ、有力なる社会党の先生方、御関係の団体に呼びかけてアブラムシ退治を実行していただきたいと思うのでございます。  今おっしゃいました汚物が捨てられておるというお話、これは海洋に持っていって流すことしか今できないのでございます。東京の状態は、私はまだ調査に行っておりませんからわかりませんけれども、かつて政務次官当時北海道に行きましたら、黄金の滝を見せてあげると言って連れていかれたのであります。室蘭だったと思いますが、どんなものが黄金の滝かと思って行ってみましたら、糞尿を海洋にほうり捨てている。なるほど色は黄金でありますが、とんでもない黄金だと思ったのであります。そういう状態であります。私の出ております大阪市といたしましても、五分の一しか処理ができておりません。そういうわけでこれは非常な問題だと私は思っておりますので、このためにも努力しなければならないと考えておる次第であります。塵埃の問題もございます。これは二十八年ごろからアメリカからこれを処理するものを入れましたが、それにかけますと結局最後は肥料になって出てくる。御承知通り今は農村に還元することができないのでございます。そうして農村の青年たちがこれをきらうのです。ですから、いろいろそこに隘路がございまして、昔のように円滑に参りませんところに進んだ農業ということが考えられる。その点では喜ばなければならないのですけれども、この屎尿処理ということがここに一つの壁にぶつかっておるのであります。塵埃の問題にいたしましても、つい本年の初めであったと思いますが、大阪の方でかなり大きな処理するところが一つできましたけれども一つくらいでは追いつかないだろう、こう考えますが、今後ともこの問題について善処しなければならないと考えております。特にオリンピックがもうすぐ参りますので、それを一つ目途といたしまして、何とかこういう面を整備して、日本にいらっしゃる外人に気持よくおってもらうということ、そういう人たちが帰りまして、日本の観光を一つお手伝い願って日本に行ってみるようにという話をしてもらうことが、私は誘致政策にもなるのではなかろうかというふうなことも考えておりまして、懸命にこれからやろうと思っております。一つアブラムシ退治については、男性の方がお帰りになりましたならば、奥様方とともにいやな病気の退治に手を貸していただきたい、こう思う次第でございます。
  54. 大石武一

  55. 滝井義高

    ○滝井委員 今まで歴代の厚生大臣はほとんど社会労働委員会からは出ていなかった。ところが今度中山田中両先生がわが社会労働委員会から厚生行政の責任者としておすわりになったわけであります。これは日本社会保障進展の上に中山田中バッテリーは非常に珍しいケースだと思います。社会労働委員会から二人が出られたという点で珍しいケースだと思います。これは日本社会保障推進する上に非常に有利な点です。しかし一方、近く議会が解散になって総選挙がある。十月解散、十一月の総選挙は常識であろうということを池田総理が言われておるわけであります。選挙の前に大臣や政務次官になるということは、選挙にとっては有利かもしれませんが、政策を実行する上については必ずしも有利ではない、こういう不利な面もあるわけです。そういう明暗両極を持って池田内閣厚生大臣として船出をすることになりました。今までのいろいろ御質問に対する御答弁をお聞きしておると、中山先生は非常に人生意気に感じておられます。しかし意気だけでは仕事ができないことは、大東亜戦争で必勝の信念をわれわれが持っておったけれども、アメリカの科学と物量の前に負けたと同じであります。意気だけでは厚生行政推進はできないと思います。その意気にやはり科学的な合理的な、予算的な裏づけというものを確保しないと、中山丸というものはなかなか大海をうまく渡ることができないということになりかねないのです。そういう先生の人生意気に感じておられる点に、科学性と合理性を一つおつけになっていただきたい、こういうことを冒頭にお願いをいたしておきたい。  それからもう一つの点でございますが、いよいよ行政をおやりになる場合には、中山マサ先生としての持ち味というものを当然百パーセントに生かして、そうしてここに中山厚生行政ありという点を十二分に示していただかなければならぬと思います。いろいろ新しい、中山厚生大臣が渡邊前厚生大臣にかわった意義として、当然そういうものが出てこなければならぬと思います。しかしもう一つは、政治は生きものでありますが、行政は連続をしております。従って前の渡邊厚生大臣がいろいろと施策をおやりになって、それが連続をして未解決のままで中山厚生行政に引き継がれる部面が相当たくさんあると思います。私は中山先生が持ち味をお出しになる、その持ち味についての質問は九月の十日前後に開かれるこの委員会でもう一回やらせていただきたいと思います。それは当然自民党の方で、今月じゆうにそれぞれの部会を開いて、自民党独自の新しい内閣における政策というものをお打ち出しになるだろうと思います。そのときにその根本的な問題についてはお尋ねをしたい。しかし当然事務引き継ぎとして、連続をしておる行政上の問題として、中山さんが当面直ちに解決をしなければならない問題も相当受け継がれておると思う。その受け継がれておる二、三の問題について質問をしたい。同時にその受け継いだ問題は、将来の中山厚生行政がふんまえていく土台ともなっていくものだと思うのです。そういう意味で、前の厚生大臣がいろいろわれわれとお約束をいただいておる点について、どういう工合にお引き継ぎになって——約二十日程度になりますから、もう引き継がれた問題についての腹がまえ、方向がおきまりになっておると思うのです。そのまず第一の点は、御存じの通り今年度においても二千百五十三億の税の自然増がありました。来年昭和三十六年は二千五、六百億円の自然増があるといわれております。従って池田内閣としては減税、社会保障公共投資という三本の柱を新しい政策としてはお立てになっておる。そのほかに二、三日前に公務員の給与の改訂、一二・四%の引き上げの非常に大きなものが出てきたわけです。従って三つの柱があるいはこれはゆらぐかもしれませんが、前の渡邉厚生大臣、その前の坂田厚生大臣、その前の橋本厚生大臣以来お約束をいただいておるいわゆる社会保障の長期計画です。八月までには長期計画を当委員会に示していただくということは、すでに渡邊厚生大臣に今年の初めに言明をしていただいておるはずです。防衛にはすでに防衛の第二次五カ年計画というものが、防衛庁自身ではお作りになっているのです。まだこれはそれをどういう工合に具体的に実現をし、予算の裏づけをするかということは、なおいろいろの具体的な施策関係があってできておりませんが、最終的な内閣の決定としてはまとまっていないようでございますが、防衛庁自身はお作りになっておるようでございます。もう一つは治山治水の十カ年計画というのは、すでに昭和三十五年度の予算できまったわけであります。ということになりますと、この社会保障の長期計画、物事は順序を踏んでおやりになっていかなければならぬことは、八木先生の御質問に中山大臣のお答えの通りです。そうしますと、物事は順序よく、順序を追って実施をしていくということは、やはりこれは長期の計画というものがないと、その場限りの答弁とその場限りの行政ではうまく社会保障というものはいかないと思うのです。そこで社会保障の長期計画というものを一体どういう工合にお作りになっているか、これを一つ、お引き継ぎになっておれば概要を御説明願いたいと思います。と申しますのは今四つの柱、国民年金の円滑な実施国民保険の完成と母子福祉政策の実行と生活環境改善という四つの柱をお立てになったわけです。しかしこれらのものは今まで大臣をおやりになった人はみんな同じことを言ったんです。同じことを言いましたが、たとえば皆保険昭和三十六年の四月一日からは皆保険になるし、年金も皆年金の形が一応できてくるわけです。皆保険の方は昭和三十二年から三十三年、三十四年、三十五年と、皆保険の四カ年計画が完成をするわけです。今度は第二次の四カ年計画か五ヵ年計画というものを立てなければならぬ。いわば社会保障の長期計画の一環としてそういうものが出てくるわけです。そうすると皆年金、皆保険というものは、いわばこれは車の両輪のようなものですね。この見通しについてきちっとしたものが、防衛の五カ年計画と同じような形で国民の前に発表されて出てこなければならぬ。これを一体どう——ちっともきょうのこのごあいさつの中にはそういうものが出ていないのです。長期の計画というものはない。そうすると私の方では中山さんは、これは選挙までの内閣だろうか、これはあと三カ月か四ヵ月じゃ何もできないんだが、こうなるのですが、それではいけないと思うのです。やはり意気に感じ、そしてそれに科学性と合理性をおつけになって、選挙の後にも依然として中山厚生行政が続くという、こういう姿をお作りになるためには、長期の計画というものが行政の中にきちっと出てこなければいけない、これが政治だと思います。そういう点で社会保障の長期計画についてどうお考えになり、どのように前の大臣から引き継ぎになっておられるのか、そしてあなたがどういう工合にそれをお考えになっているか、これをまず第一に御説明を願いたい。
  56. 中山マサ

    中山国務大臣 長期計画というお話でございますが、御承知通り厚生省はこの問題で取り組んでおりますので、いましばらく待っていただきませんことには、私が今この場でさっそくと、しかじかかようかようと申し上げるわけにはいかないのでございます。この点は少し日にちをちょうだいいたしまして、研究を今いたしている最中でございますから、それが完成いたしますまでお待ちを願わなければならないかと思っております。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 今から五、六年前の川崎厚生大臣のときから今のと同じ答弁なんですね。川崎君が一番初めに長期計画を言い始めたのです。そして厚生省は着々と長期計画をやっておりますから……。その後、私は大臣ができるたびごとに実は同じ質問を——中山先生委員会にしょっちゅう出られておったのでお聞きになっておったと思う。今とやはり同じことを言うんですね。検討中です。しばらく待ってくれ……。まあ百年河清を待ってもできないということでは、どうも川の水がしょっちゅう濁っておるというのでは困るんですね。やはりこういうことは社会保障の根源をなす問題ですから、もとをはっきりしてこないと末の濁りというものはとれないわけです。八月には社会保障の長期計画を作ってお示しをしますというのは、前の厚生大臣の言明なんですね。問題はやはり私はここらあたりにあるのではないかと思うのです。保守党の政治がいい政治をやってもらえば社会党は政権をとる必要はない。ずっと保守党の政権でけっこうだと思う。それはどちらがやっても国民の幸福さえ達成されればいいわけですから、それが政治ですから、やはり言明されたことは必ず実施をしていく、うそは言わないという政治が、私が百万言ここで言うよりは一番大事だと思います。だから先生が意気に感じられて、そしてふるい立たれたならば、やはり科学性と合理性、実践力というものをおつけになることが非常に必要ではないか。そういう意味で、ぜひすみやかに長期計画というものをお立てになっていただきたいと思います。これはもう一ぺん九月に私の方でお尋ねをしますから、全貌を明らかにして、経済計画の中に社会保障の長期計画というものが同時に織り込まれておるということでないと、これはナンセンスになるわけです。ぜひそうお願いしたいのですが、九月ぐらいにはどうですか、アウトラインでもできましょうか。
  58. 中山マサ

    中山国務大臣 川崎大臣のときからいつも着任早々同じことを言っているというお話でございますけれども、その当時おっしゃいましたことは、形においては私は完成された面もあると思うのでございます。たとえば保険の問題にしても、限られた年限のうちにはこれは完成しましょう。また非常に国民待望と申してもいいかと思いますが、国民年金にいたしましても、やはりこれは大きな問題でございます。まあ不完全というそしりを免れないかもしれませんけれども、一応はこういうことを形として打ち出したということは、何もただ、やります、やりますでお念仏みたいに、から念仏になっているとは私は考えません。各大臣が今日まで御努力なさいましたことが完全か不完全かはこれは問題外といたしまして、やはり形においては現われてきておる。それだから大臣方がお約束なすったことは、ある意味では私は結論は出ておる、こう考えております。また中山路線と申しましょうか、そういうものがいかようになりますか、私もこの地位につきました者としまして、私自身の希望は幾らでも持っております。しかしそれが即実施できるかどうかは、予算もございますし、いろいろな問題がございます。しかし前の大臣方の遺産として受け取りましたそういう二つの大きな柱は、私どもはやっぱりこれは継続していかなければならぬ。それをよりよくしていこう、それから国民の要望されることがあったら——いわゆる民主主義というものは国民の声を聞いてする政治なんでございまするから、民主主義というものは御承知通り非常にめんどくさいものでございます。なかなか一日や二日で完成はできません。しかむ、その根本へ向かっていくということに対しては全力を上げるつもりでおります。私もベテランの政務次官を省にお迎えしておることでございますから、一体となって新しい路線を何とかして作りたい。それがどういうものになるかは、まだここではっきり申し上げられませんし、ただうつろなことを申し上げるということは私はすべきではないと思っております。決して私はうかうかしておるつもりはございません。大臣になったから、政務次官になったから選挙が楽だろうとおっしゃいますけれども、しかし大臣になって落選した人もあるということは御承知でございましょう。こういうことが必ずこの次の選挙に最大の有利になるとは田中先生も決してお考えになっていないでしょうし、私も決して考えておりませんから、その点はあぶなっかしいものでございます。先ほどおっしゃいましたが、この聞大阪の梅田の駅でビジネス・ガールにNHKかどこか、マイクを向けましたら、中山マサを大臣にしたことはありがたいが、短期で選挙用にしたら承知せぬぞと若い娘さんが言ったというのが流れて参りまして、先生と同じように、やはりそれまででのいたならば何もならないんじゃなかろうかということを考えている人は相当あると思うのでございます。どうなりますか、先のことは私にはわかりませんです。しかし、いかになりましょうとも、自分の努力し得る点は全力を上げなければならぬということは私も考えておる次第でございます。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 実は少し中山大臣、しゃべる時間が長いものだからこうなるのですが、九月までに長期計画というのを出していただけるかどうかなんです。八月に前の厚生大臣は出すとお約束をしておるわけです。だから八月には出なければならぬ。だから私はそれを九月には出していただけますかといっておるのです。それをイエス、ノーを言って下さればけっこうなんです。
  60. 中山マサ

    中山国務大臣 時期の約束をここにいたすことは私は差し控えたいと思います。なぜならば、もしそれまでにできなかったら約束違反になりますので、時期はここではお約束いたしかねます。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう工合に、同じ政党内閣で、しょっちゅう大臣がかわるたびごとに言明が変わってくるんですね。八月に出します、ところがこれは九月にはできません、こういうことでははなかなか処置ないんです。責任内閣ですから、やはりはっきりしておかぬと、委員会でやったことが何もならぬわけなんです。  次は、これは田中政務次官でけっこうです。継続中の問題で、基金の理事です。支払い基金の理事の任期が八月の二十六日には多分切れるんです。そうすると、これは、基金の理事は一カ月前に諮問をしておかなければならぬのです。で、八月の二十六日といえば、もうすぐにくるわけです。これは一体どうなっておるのかということです。簡単に一つ要領よく御説明願いたいと思います。
  62. 田中正巳

    田中説明員 この問題については御指摘の通りのような事情になっております。そこで、他の方面については問題がないのでありまするが、ただ医療を担当する者の側について、先生も御承知通り、いろいろと従来から問題があったわけでございます。  そこで、率直に申しますると、日本医師会を一本にして推薦団体とするか、あるいは日病を一本にするか、あるいは前回のような方式をとるか、いろいろな方法がございまするが、これらについてはそれぞれの団体にそれぞれの御主張がありまして、なかなか実は両方が満足する御意見が出て参らないわけでございます。いろいろ厚生省といたしましても、この際何とか円満にこの両者の間を、一つ話し合いをつけるようにということで今日まで努力をして参りました。なかなか両者の話し合いに共通点を見出しがたいものでございまするので、今日せっかく腐心をいたしておるわけであります。できる限り早く、できる限りこの際はフリクションを起こさずに円満な形で御推薦を願うようにせっかく腐心をいたしておりますので、いま若干お待ち願いたいと思います。  なお法律上の期日は参っておるのでございまするが、これらについても、まことに不手ぎわでございまするが、やむを得ませんので、それぞれの関係筋に対しまして若干お待ちを願いたい、かようなことを申し上げまして言外に御了承を賜わっておるわけでございます。その他の推薦団体に対しては、それぞれ推薦方を期日までに出して御依頼をいたしておる次第でございます。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 基金の理事の問題は、法律的には七月二十六、七日ごろから今ごろには、すでに任命の形が出てきておらねばならぬはずですが、それができない。関係方面の御了解を得ておるんだということでございます。そうすると基金の理事にうらはらの関係にある医療協議会、さいぜん八木君からカナマイシンの問題が出ましたが、これは一体どうなっておるのですか。機能を停止することすでに久しいのです。確実には一昨年の六月以来ほとんど機能を停止しておるわけですね。法治国家ですから法律は守らなきゃいかぬとよく労働組合政府はおっしゃるわけです。ところが医療協議会は、坂田さんが厚生大臣をやめて以来実質的には開かれていない。昨年結核の治療指針の改定のためにちょっと開かれた。しかしそれ以来委員の半数がいなくなって現在に至っております。これは基金の理事の問題と無関係ではない。で、医療協議会をじんぜんこういう状態で過ごすことは許されないと思うのです。すでに四代目の大臣になるまでに、こういう問題さえ解決できないということでは、ここで幾ら大きなことを言ったところで——私は中山さんがおればもう少し言いたいところですが、これは話にならぬわけです。まず私たちは、大きいことを言う前に脚下を顧みる必要がある。法律事項でない行政でやらなきゃならない問題が解決できないのに、大きな社会保障の問題の皆保険だ、あるいは皆年金だということはおこがましいと思います。わずかに一人か二人を任命する問題を四代の大臣にわたって解決できない。こういうだらしのない厚生行政というものが一体あるだろうかということを言いたい。幸い中山田中両氏は当委員会から出て、こういう問題についても精通しておるわけです。だから、ちょうど石田労働大臣がまだ認証式も終わるか終わらない、モーニングを着たままで三井三池の問題に飛び立ったと同じくらいの情熱と意気をあなた方が示す必要があると思います。この問題については、日にちがたてばたつほどやはりまた同じことになるのです。私は渡邊さんが厚生大臣のときから、しょっちゅう口をすっぱくして言った。こういう問題は、やろうとしたならば徹夜でもやらなければだめだ。それをじんぜん、まあ待ってまあ待ってで、すでに二年を過ぎてしまった。そういうことでは、とても信頼ができないのです。で、そのうちに局長さんがかわる、局長さんはまた新しく白紙になる、こういう形ではどうにもならぬのです。役人はかわっていく、大臣はかわる、そうして困るのは療養担当者と被保険者大衆である、こういうことでは困ると思うのです。そこで田中さんとしては、あなたはわれわれ信頼しておるのですから、われわれができることがあれば御加勢も申し上げますが、医療協議会と基金の理事の問題はうらはらの関係にあるのですが、医療協議会をどうされるつもりなのか。
  64. 田中正巳

    田中説明員 この問題については、かねがね私が当委員会にいたときからいろいろ問題となりまして、そこで私も、厚生省に伺うようになりましてから、何とか一つ勇断をもってすみやかに解決いたしたい、かように思って、この種の問題については、せっかく腐心をいたしております。ところが滝井先生も御承知通り、これらの問題については、こちら立てればあちらが立たず、両方立てれば身が立たずというような格好になっているのであります。勇断をふるってこれをやりますと、その反面、大きなリアクションがくることも容易に想像ができることだろうと思います。しかし、このような状態であることは、厚生省行政のあり方としても、決して望ましいことでもございませんし、またカナマイシン等の問題を見ても、御承知通り、一般の国民に対しても非常な迷惑をかけることでもございますので、今日せっかく腐心をしておりますが、近く大臣等と相談をいたしまして、できる限りすみやかに、従来の行きがかり等を一擲いたしまして、何とか解決するように努力をいたしてみたいと思いますが、先生方も御承知通り、これについては非常に問題が複雑であり、かつ従来からの非常にこんがらがった行きがかりもありますので、めんどうだと思いますけれども、できる限り努力をして、一日も早く解決をするように決意をいたしておりますので、これまた、申しわけございませんが、若干お待ちを願いたいと思います。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 これで終わりますが、歴代の大臣が今と同じような答弁をされるわけです。そこで、私は先般来やはり指摘をしておったが、この問題の根本は、甲乙二表を作ったことにあった。従って、すみやかに甲乙二表を解消して一本化すれば、この問題の解決というものは一番早い。この問題については、あなたの就任後の談話その他を見ると、一本化というものは調査をやった後にやるのだという談話を御発表になっておるわけです。そうしますと、今一体調査の準備が進んでおるか。十月調査の準備が進んでおるか。これは厚生省は進んでいないわけです。そうすると、いつの日にか一本化ができるか、見通しがつかない。十月に基本調査をやって、その調査に基づいて一本化をします、こう言っておったが、十月調査の具体的な進行というものは、今ない。しかもなお、近く選挙が行なわれる。また内閣がかわらないとも限らない。社会党がとれば、当然池田内閣はかわってしまう。あるいはあなた方なり中山さんが大臣であるかどうかもわからないという、こういう情勢も出てくるわけです。そうしますと、しょっちゅうぐらついて、これは全く——いろいろ問題があるけれども、問題の根本はこうです。この一本化の問題も、甲乙二表をまいたのは一体だれだ。これは当時の厚生省がまいた。従って、この一本化の問題は、これは私は率直に申しますが、やはりやらざるを得ない。一本化の問題と基金の理事の問題と医療協議会の問題の三つは、それぞれ性格が異なっておるけれども、これは底流はつながっておる。これはむしろ、同時に解決するような方向で、ものを運ばなければいかぬ。とすると、根本は一本化である。一本化の上に他の二つの問題が同時的に乗っかっていくという形だと思うのです。この一本化の問題をあなたの談話の通りにあなたがおやりになるというならば、私は、前の二つの問題は解決できないと断言してはばからない。この一本化の問題をどうあなたは解決されるか。現在厚生省は準備が進んでいませんよ。
  66. 田中正巳

    田中説明員 これらの三つの問題については底流がつながっているという先生の御意見については、同感でございますが、その他にも実は問題がないわけでもないわけでございまして、いろいろとこれらの問題について詳細に申し上げることもどうかと思いますが、いずれにしても、甲乙二表に分かれているというようなことが大きなモメントであることは間違いがございません。そこで、前大臣あたりからの言明の次第もありますし、また当委員会の御決議の次第もございますので、すみやかに一本化をいたしたいと思っております。調査等が進んでおらないということも、実は就任早々内部で聞きまして、はなはだ遺憾だと思っておりますが、これらについてはすみやかに急がせまして調査をしたいと思いますが、反面また調査についての協力態勢ということも考えていかなければならないと思いますので、なかなか困難だと思いますが、努力をしていきたいと思います。なお一本化につきましては、やはり今日の診療報酬そのままでは一本化が困難であろうかと思われますので、いろいろ診療報酬の引き上げその他の問題ともからみ合わせまして、この際一つできるだけすみやかにやっていきたい、かように思っておるわけであります。決して厚生省としては一本化を怠けているわけではないのであります。できるだけ早くやっていきたい、かように思っておるわけであります。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 もう少し確認をしておきたいのですが、内閣方針としては一本化というものは調査が終わらなけばやらないのか、それとも調査がじんぜん長くなれば、調査をやらなくても政治的に一本化をやる意思があるのか、この点だけをはっきりしておいてもらえばいいです。
  68. 田中正巳

    田中説明員 やはり重要な診療報酬の問題でございますので、正確を期したい、かように考えておりますので、やはりできる限り調査をやった上でこのことを取り上げていきたいと思っております。本筋としては調査をいたし、正確な資料の上に立ってやるのがほんとうだと思っておりますから、できる限り調査を進めて、調査の上でやっていきたいと思っております。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、調査が完成するには大体二年ぐらいかかるのですね。そうすると、二年後に一本化になるということになると、これは大へんなことです。すでに人事院は、一二・四%の給与の引き上げを勧告した。特にその中で研究職と大学教授と医師ですね。これに対する給与は特に力を入れるということを言っているわけです。従ってこの問題はどこに関連をしてくるかというと、いわゆる国立病院に関係してくる。国立病院は厚生年金、労災病院、健康保険全部関係してくるわけです。そうしますとあなたの言うように、基本的な調査が終わった後に資料を整えてやるということになると、これはもう大へんなことですよ。もう少し科学的にこれは調査願わな筋と、今のでは納得ができない。
  70. 田中正巳

    田中説明員 私先ほど本筋として調査をやった上で正確を期してやりたい、こういうふうに申し上げているわけでございますが、調査の対象も実はいろいろあると思います。そこで本格的な調査をやると、先生のおっしゃる通り、正確にやりますと二年ぐらいかかるというようなことも考えられるわけでございますが、非常に急ぐ問題なのでありまして、従いまして、十全の、何と申しますか、百パーセント完全な調査をいたすとそういうふうに相なるかと思いますが、非常に急ぐ問題でもありますので、ある程度は急ぐという要素も考えましてできる調査で、しかもすみやかに終えるような調査をいたした上で取りかかるのも一つの方法であると思いますので、あれやこれや彼此勘案いたしまして、最もすみやかに、しかも最も正確にやっていきたい、そういうわけでございますので、方法その他についてはいろいろなやり方があると思いますが、目下せっかく検討をいたしております。できるだけ正確な資料の上に立って、できるだけすみやかにやる、その辺を上手に実はコンプロマイズしていきたい、かように思っておるわけでございます。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 しろうとなら田中君、それでいいのですよ。ところが厚生省は抜き取り調査ができているのですよ。われわれのところに出ているのですよ。たとえば病院については百とか、診療所については二百というように、調査の要項はできてわれわれのところにきているのですよ。あの昭和二十七年の三月、十月調査と同じ調査をやるのですよ。あの調査の集計をやってまとめるためには、一年半か二年ぐらいかかるのです。だからそういうごまかしではいけないのですよ。そのときそのときのひん曲げられる調査ならば、不確実な調査ならばやらなくてもいいのです。正確な調査でなければ、一本化の具体的なほんとうの資料というものは出てこない。そうなれば、今の甲表だって腰だめ的な十八点とか何とかだって、つまみ金で出てきたのです。高田さんがいればそういう答弁をはっきりしているわけですが……。私たち委員会をやるからには、言明したことはきちんとやってもらわなければならぬ。政務次官、あなたは大臣のかわりをやってもらっているのですよ。選挙までの大臣や政務次官では困るのです。選挙までの大臣や政務次官であっても、言明したことは次にそのまま受け継いでもらわなければならぬ。あなたがきょう言明したことを、選挙の終わった後になってきたら、これは田中さんの言われたことは私は知りませんという——今の中山さんのように、八月に渡邊さんが出すと言ったものを、いや九月という日にちは言えませんと、当時うしろで補佐した森本官房長が、今度は高田官房長になったら補佐の仕方が違っておるというのじゃ話にならない。これはどうですか田中さん。今のようなごまかしの答弁では納得できない。一番大事なところです。あなたの談話では、調査した後にやるんだ、こういう談話になっておる。今の答弁でもそうだ。そうするとこれは一年半か二年の後にしかできない。給与はことしの五月から改善をしなさいといのが人事院の勧告です。この人事院が勧告した医師の給与の問題は即甲表の基礎にもなっておる問題ですよ。人件費については……。だからそういう点もう少しはっきり、きちっとした御答弁をもらいたいのですが、今のあなたのように何かそのときの情勢によってはこれがもっと早く簡単な調査でもいけるというようなニュアンスでは困ると思う。それでよかったらそれでいいですよ。これは政治的に考慮する余地がある、根本的な調査を一応やるけれども、それができないということになれば政治的に考慮してもっと短期に一本化をやります、こういうことならそれでもいいのです。それでいいのですか。
  72. 田中正巳

    田中説明員 御承知通り非常に急ぐものでございますので、できる限り早くやっていきたい。調査の方法等についてもいろいろあると思いますが、これらについては一つその間をいろいろ考えましてすみやかにやる、しかもある程度正確を期してそういう方法でやっていきたいと思っておるわけでございます。今ここで腰だめにおざなりの答弁をするならば、これはすみやかに一つ半年くらいの間あるいは三ヵ月の間にやりますと申し上げて、おれはやめたら知らぬ、こういうようなことになると思いますが、そういうわけにいきませんので、やはり政務次官として申し上げることは、次になる人にも責任を持つような形で、実は御満足のいただけないような答弁になるわけでございますが、これらについては一つ御要望に沿うようにすみやかに、しかもなるべく正確なものに作り上げていくということで、ただいまのところはごかんべんを願いたいと思います。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 もう少し時日をかしましょう。九月にもう一ぺんきょうやったことをおさらいをしますから、それまでには一つきちんと整えてりっぱな合理的な、科学的な答弁のできるようにお願いしておきます。  これでやめます。
  74. 本島百合子

    ○本島委員 私先ほど大臣から答弁いただくのを保留になっておるのです。それで実は私ども婦人議員で招待をやって、その時間がきちゃって終わる時間になっておるのでやむを得ないと思いますが、先ほど申しましたことは、もちろん労働大臣の答弁があったように、ああしたいわゆる総合施策ということも必要なんです。同時に労働省だけじゃない、厚生省関係もあるし、それから建設省の関係もある。スラム街あるいは零細な業態の密集している地帯というものはあらゆる面で今日社会保障的な観点から取り残されている場所なんです。従ってそういうものについて労働省なり厚生省なりが中心になって、各省との総合施策をしていただけるかどうか、そういう対策的なことを聞いたわけなんです。それをどうして主張するかというと、各省がばらばらにやっていらっしゃるから、そういう町にいきますと、おれたちには住宅がないじゃないか、職業はないじゃないか、生保を受けてもそれだけの暮らしが成り立たないじゃないか、こういう総合的なものなんです。しかもそこが犯罪の巣くつになっておる。売春、麻薬の巣くつになっておる、こういうことですから、一番暗黒社会にある場所ですから、これを何とか解消するということが今皆保険化だといわれる社会保障の第一歩に入ってきたこの日本の現状からして、この次に打つべき手はそこにあるのじゃないか、だからそれに対して各省の総合対策的なものをなさるかどうか。これは新内閣で取り上げていただかなければ、いつまでたっても解決できない問題だ、こう思うから、その施策がおありになるかどうか。  それからもう一つは、厚生委員会に対しての質問はたくさん持っておりましたけれども、時間もございませんから一点だけ質問しておきますが、それは特殊児童、精薄なり、身体不自由児童、あるいはろうあ、その他のいろいろな者がある。そういう人たちが学校なら学校に入りたくてもはみ出ていく現状である。それからかりに施設に入っておりましても、御承知通り二十才になれば出なければならぬ、こういうような状態で、この人生の重い十字架を背負っておるところの子供、またその親たち、こういう人たちの苦悩というものは大へんなものだと思います。今回の大阪並びに兵庫県の視察においても特にこの施設を見て参りましたが、その人たちが口をそろえて言ろことは、とにかく現在施設に入っているということは極楽なんだ。だがこれから先出されてからどうなるんだ。子の子供たちが家庭に帰ってきたとまに、家庭ではどうしても見てやることができない。そこで自然貧困家庭では町にほうってある。これが、犯罪者になる。犯罪者の、大体青少年の非行の中で七割が精薄で、それからまた売春婦がその通りなんです。こういう人間として最も痛ましい状態にある者がそういうところに追いやられていっておるということは、大きな社会問題であろうと思うのです。ですから、そういう点についてやはり急速にその施設をふやすとか、あるいはその人々に対して安定感を与えるために便宜上何らかの方途を講じていかなければ、幾ら青少年の犯罪をなくせとか、あるいは特殊な子供たちに対しての援護を与えるのだと選挙スローガンで申されても、現実には取り残された者が非常にある、こういう現状なんです。ですから、そういう点についての何らか施策がなければいけない。中山厚生大臣はそういう点特に力を入れてやるということを就任早々発表されておる。従ってどういう機関においてなさる方針か。先ほど滝井委員が心配されて言われることは、短い期間における大臣就任じゃなかろうか。そうした場合にはこれがあとに残っていかない。そういうことが私ども政治の面に携わってみて痛切に思わせられることですから、今回は一つ腹を据えてかかってもらいたい。かかってもらいたい。そのためにどういう施策をなさるか、その点を聞かしてもらいたい。
  75. 田中正巳

    田中説明員 先生の御質問の第一点の、山谷のドヤ街その他の問題でございますが、これについては過日来新聞にいろいろ出ています通り、警察との摩擦その他の問題もございますので、政府としてはこれらについて根本的に考えていかなければならない、こういうわけで目下いろいろと検討いたしているようでございます。実はこの種のものは日本だけではないのでございまして、先進の諸外国にも、実はワシントンにも黒人のフラム街とか、こういったものがあり、またこういったものは非常に問題がめんどうでありまして、またかようなものが起きてきた社会上、経済上の発生原因等もいろいろこんがらかっておりますので、なかなか一朝一夕にいかぬと思いますが、先生のおっしゃる通りこれらについては単に厚生省の面、社会福祉の面だけで問題は解決いたしません。労働問題あるいは住宅の問題、各省にまたがるいろいろな問題を並べまして、これを一緒にやっていかなければならぬというのは先生のお考えの通りだろう、私どもさように思っております。そこであのような事件も起こりましたし、かねがねまたけっこうな情勢でもございませんので、この際、これを抜本的にやり上げていきたい、かように思っております。目下厚生省では社会福祉の面から、あるいは環境整備の面からこれを取り上げていきたい、こういうような面についても考えておるわけでありますが、とりあえず東京都としまして総合的にこれらの問題の解決策についての意見を検討させておる、こういう状態でございますので、東京都と相談いたしまして、各省間にまたがる問題についてはどういう形で今日これをなんとか調整をやっていくかについてはまだ意見がきまっておらないようでありますが、いずれにしても総合的に各省間にまたがる問題を調整的にやっていかなければならぬという問題でありますので、そういったような機関でも持てれば、こう思っております。いずれにしてもやっていかなければならぬというふうに思いまして、おくればせではございますが、今取りかかりつつあるという次第であります。  それから、第二の問題につきましては、御説の通り、こういったような不幸な児童がそれぞれ施設に入っているうちはけっこうですが、出ると非常に社会の列伍を落ちる、こういったような問題については、かねがね当委員会でもいろいろ問題になっております。そういうわけで、これらについても従来からいろいろ検討いたし、及ばずながら政府でも、また野党の皆さんの御支援を得ていろいろやって参ったわけでございます。前の国会通りました精神薄弱者福祉法の趣旨もまさにそこにあるだろう、かように思っております。精薄児だけでなしに、精薄者も取り上げていくという問題も、考え方はそういうところにあったろうと思います。しかし御承知通り発足早々でもありますので、実は法の内容等についても不満の点もいろいろあります。私ども審議をいたしましてそう思っておりますが、これは小さく生んで大きく育てるというようなことで、あれらの問題については今後だんだんと伸ばしていきたい。  それから、身体障害児の問題、大きな障害者についても社会福祉の面、労働行政の面、いろいろやっていかなければなりません。職親制度あるいは職業訓練、職業補導、こういったような面についても今後これを伸ばしていきたい。先ほど来いろいろお話がありました通り、今度の内閣社会保障をいろいろやる、こう申しておりますので、その中の一環としてこういったような従来忘れられがちな方面もやっていきたいと思っておるわけでありますが、何さまいろいろ先ほどからお話があります通り、いろいろな政策を一ぺんにやらなければなりませんので、明年度予算で直ちに御満足いただけるかどうか知りませんが、こういったような面についても忘れずに、そつなく伸ばしていきたい、かように厚生省としても考えておるわけであります。
  76. 本島百合子

    ○本島委員 最後に希望でございますが、日本で初めての婦人大臣が出られたのですから、婦人大臣の期間にこういうもとを作って、大臣が将来変わられても、受け継いで近い間に解決していく、そういう一つの迫力をかけてあげて下さらぬと、私どもは超党派的に婦人大臣の出たことは非常に富んでおります。だけれども、その実績が上がらなかったということになれば、女何しておるのだということになる。日本の国の政治は今までいびつだったのですから、婦人が出ることによって、初めて両輪が回っていくような車と同じような状態なのですから、この機会に補佐役としてのあなたですから、一つしっかりした土台を作って、それを育てていくという形をここで生み出してもらいたい。そうしてここで日本の社会現象と申しますか、社会悪といいますか、そういう悪を断っていくという基礎をここで作り上げていかれることが一番大切じゃないか、そういうふうに考えたものですから御質問したのですが、どうかそういう点をお忘れなく、一つ大臣補佐役として事をなし上げてやっていただきたいと思います。これを希望いたします。
  77. 田中正巳

    田中説明員 中山大臣は大へん実はぎめのこまかい、またやさしいセンスの持ち主のようでございまして、いろいろ従来からこの種の問題については異常に熱意を示して、実は役所内部においてもそれぞれ御指示なさっておるのを政務次官としてそばで見ておるわけでございまして、私こういった大臣のお考えを一つ補佐いたしまして、これが事務当局に行き渡って実現できるように、十分補佐役として努力をするようにしたいと思いますし、また大臣に後ほどお会いしましたら、先生の御意思を十分お伝えいたしたいと思います。
  78. 大石武一

    大石委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後二時十四分散会