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1960-08-31 第35回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    七月二十二日  小泉純也君委員長辞任につき、その補欠として  本名武君が議院において委員長に選任された。 ————————————————————— 昭和三十五年八月三十一日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 石坂  繁君 理事 岩本 信行君    理事 竹内 俊吉君 理事 床次 徳二君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君    理事 竹谷源太郎君       愛知 揆一君    菅家 喜六君       菊池 義郎君    小泉 純也君       野田 武夫君    福家 俊一君       森下 國雄君    黒田 寿男君       帆足  計君    森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         厚 生 大 臣 中山 マサ君  委員外出席者         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     石井 通則君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  勝俣  稔君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 七月二十二日  委員池田正之輔君及び佐々木盛雄辞任につき、  その補欠として本名武君及び三木武夫君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十三日  委員加藤精三辞任につき、その補欠として松  澤雄藏君が議長指名委員に選任された。 八月十日  委員佐々木良作辞任につき、その補欠として  中崎敏君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  理事佐々木盛雄君七月二十二日委員辞任につき、  その補欠として石坂繁君が理事に当選した。 同日  理事加藤精三君七月二十三日委員辞任につき、  その補欠として岩本信行君が理事に当選した。     ————————————— 七月二十二日  一、国際法定計量機関を設立する条約締結に    ついて承認を求めるの件(第三十四回国会    条約第九号)  二、所得に対する租税に関する二重課税の回避    及び脱税の防止のための日本国とアメリカ    合衆国との間の条約修正補足とする議定    書の締結について承認を求めるの件(第三    十四回国会条約第一一号)  三、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 これより会議を開きます。     —————————————  この際一言あいさつを申し上げます。今回、はからずも私が当外務委員会委員長の重責をになうことになりました。私は微力、非才でありますので、委員各位の絶大なる御支援をお願いいたす次第であります。まことに簡単でございますが、ごあいさつにかえさせていただきます。(拍手)     —————————————
  3. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 この際、小坂外務大臣及び勝俣外務政務次官よりそれぞれ就任につき発言の申し出がありますので、順次これを許します。小坂外務大臣
  4. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 一言あいさつを申し上げます。私、このたびの組閣に際しまして、外務大臣を拝命いたしたのでございまするが、すでに御承知のように、はなはだ若年短才でございまするので、ひたすら乏しきをおそれておるのでありまするが、どうぞ皆様方の御叱正、御鞭撻によりまして、大過なきを期したいと考えておる次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  5. 本名委員長(本名武)

  6. 勝俣説明員(勝俣稔)

    勝俣説明員 私、今回外務政務次官になりましたものでございますが、全く外交はずぶのしろうとでございます。せいぜい勉強いたしたいと思いますが、どうぞ御指導、御協力あらんことをひとえにお願いいたしまして、私の簡単なごあいさつを申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。     —————————————拍手
  7. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 この際戸叶君より発言を求められております。これを許します。戸叶
  8. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 慣例によりまして、一言委員長就任のお喜びを申し上げたいと思います。  ただいま大臣並びに政務次官からも就任のごあいさつがございまして、まことにおめでとうございます。特に私は、きょう委員長にお喜びを、慣例によって申し上げるわけでございますが、この外務委員会は御承知のように、大へんに紳士、淑女の集まりでございまして、在来は、初めのうちは大へんにうまく外務委員会運営が行なわれております。しかし、おしまいごろになりますと、その温厚な紳士的な委員長もなかなかうまくいかないような面がございますので、今度の委員長に限りましては、初めからおしまいまで、どうぞ民主的な公平な運営をなされますことを心からお願いいたしまして、お喜びの言葉にかえさしていただきます。      ————◇—————
  9. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 次に、国際情勢について調査を進めます。まず、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小坂外務大臣
  10. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 本日の委員会は私の就任以来最初の委員会でございますので、外務大臣といたしまして、その所懐一端を申し述べたいと考える次第でございます。個々の具体的な外交施策の内容につきましては、いずれまた機会を改めて御説明を申し上げる所存でございまするが、本日はまずわが外交の基本的な指針と運用上の心がまえといった点につきまして、概略申し上げますとともに、ごく最近に予定しておりまする私の韓国並び米加両国訪問国連総会への出席等につきまして、簡単に御報告を申し上げたいと存じます。  申すまでもございませんが、およそ外交国家国民の運命に直接つながる非常な国家間の重要な関係のある問題でございまする以上、内閣ないしは担当大臣交代等によりまして、軽々にその方針が改めらるべきものではございません。従いまして、私がこのたび外務大臣就任いたしましても、わが国外交基本線はもちろん変わるところはないのであります。しかしながら、国際情勢の推移は常にこれを注視する必要がございまして、他面またわが国力も漸次増大いたしておりまするので、国際社会におきまするわが国責任影響力もそれだけ重きを加えるに至っておるのであります。従いまして、外交施策を進めて参りまするにあたりましては、情勢に即応して十分にその責任を全うし得ますように、いやが上にも慎重を期して参ることが必要であると存じておるのであります。  私はこのような前提のもとに、わが国外交を行なうにあたりましては常にわが国民が自由と平和のうちに発展繁栄いたしますることを第一の目標といたすのでありまして、このようにしてつちかわれましたわが国力をもって、広く世界平和と人類の福祉に貢献いたしたいと考えておるのであります。このためには、わが国が常に自由民主主義国家といたしまして国際社会に確固たる地位を占め、この基盤の上に立って、各国との友好関係を深めて参ることが必要であると思うのであります。しこうして実際に外交運用するにあたりましては、常に国際情勢の現実を直視し、あくまでも自主的な立場に立って地道な外交施策を推し進めて参ることか肝要でありまして、またこのためには、常にわが国民大多数の良識ある声を反映した外交施策を行なうことが必要であると考えるのでありまして、かくすることによりまして、わが国国際社会の尊敬さるべき一員としての実をあげ得るように努めて参りたいと存ずる次第でございます。もとよりこれがためには、常に国民各位わが国外交問題を正確に理解されまするよう、国内啓発にも十分意を用いる所存でございますので、この点国民代表せられます各位、特に本委員会皆様方の十分な御理解と御支援とをお願い申し上げたいと存ずるのであります。私は、かねてから歴史的にも地理的にも宿縁の関係にありまする日韓関係をまずもって正常化することの意義と必要性を認めまして、日韓会談がすみやかに再開され、多年の諸懸案大局的見地から解決せられんことを念願しておるのであります。このことは単に日韓両国及び両国民繁栄福祉に貢献する道であるのみならず、世界の平和に寄与し得る第一歩であると確信いたしておるのであります。このような気持から、私は去る四月以来の韓国における新事態の発展を深い関心をもって見守って参ったのでありまするが、このたび新大統領にユン・ポソン、新国務総理張勉氏、新外務部長官鄭一亨氏がそれぞれ就任されまして、新政権が発足し、これら政府要路人々がひとしく日韓関係の改善につきまして積極的な見解を表明されましたことは、まことに喜ばしく存じた次第でございます。私といたしましては、この際日韓関係打開の糸口を開くため、尹大統領初め韓国政権要路方々にお目にかかりまして、親しく日本政府及び国民慶祝気持を伝達することは時宜に適するものと考えまして、韓国側の意向を打診しておりましたところ、去る二十六日、韓国政府より来訪を歓迎する旨の意思表示がありました。よって、私は、勝俣外務政務次官伊関外務省アジア局長らを伴って、九月六、七の両日ソウルを訪れることといたした次第でございます。今回の韓国訪問はもっぱら慶祝の意を伝えることを趣旨といたしたものでありまして、両国間の諸懸案に関する具体的な話し合いはあらためてしかるべき機会にこれを行なうつもりであります。私といたしましては、今回の訪韓が所期の目的達成に資することを衷心より希望いたしておるのであります。次に、訪米及び国連総会出席について一言報告を申し上げます。私は昨今の情勢によりまして、外交運用各国外交担当者と個人的に知り合っておくことの必要性重要性がますます増加して参った事実にかんがみまして、今後なるべく多くの友邦の首脳者と直接接触の機会を持つよう心がけたいと考えておった次第でございます。今回、九月二十日より開催せられます第十五回国際連合総会わが国代表して出席いたしまする機会に、米国カナダ訪問することといたしまして、九月十日ころ出発、九月末帰国する予定になっております。また、将来都合がつきますれば、ヨーロッパその他の主要国をも訪問いたしたいと考えております。今回の訪問は短期間ではございまするが、できる限り多くの米加盟両国指導者と接触し、胸襟を開いて相互理解を深めることを念願いたしておる次第であります。ワシントンにおきましては、ハーター国務長官その他の米国政府首脳者との間に、最近の世界情勢について意見交換を行ない、わが国今後の外交施策に資したいと考えておるのであります。特にその際わが政府の今後に処する所信を述べ、わが国に対する理解国際信用の回復に資したいと考えております。今回の会談日米ないし日加間の特定の懸案解決目的とするものではございませんが、これらの懸案をも含めまして、両国がともに関心を有する事項につきまして、広く意見交換を行なう所存でございます。特に経済基盤の拡大はわが国の平和と繁栄の根本でありまするから、経済問題につきましては、単に対米貿易問題のみならず、欧州貿易共同体の動向など広く国際経済全般の問題について話し合いたいと考えております。次いでオタワにおきましては、ディーフェンベーカー首相グリーン外相その他のカナダ政府首脳者と懇談いたし、近来ますます緊密の度を加えております日加両国友好親善関係の増進に資したいと考えております。国連におきましては、国連平和維持国際紛争平和的処理のための機関としてその重要性を加えつつある事実にかんがみまして、国連役割りを強く支持するとともに、国庫強化のために寄与するよう努力いたしたいと考えております。また、国連の当面する諸問題に関しましては、わが外交基本方針にのっとり、わが国所信を明らかにいたしまするとともに、その際出席各国首相外相等首脳とできる限り多く接触することによりまして、相互の面識を深め、また十分に意見交換いたしたいと考えております。昨年の総会が平和の総会といわれ、大国間の話し合いの空気が促進されたのに反しまして、今次総会頂上会談流会以来の東西関係を反映いたしまして、諸問題の審議に際して東西間の対立が予想されます。また、アフリカにおきまする新独立国十五カ国の国連加盟に伴いまして、アフリカ・グループの比重が増大いたしますとともに、コンゴに対する援助の問題等一般アフリカ問題が関心を集めます結果、アフリカ総会という観を呈するのではないかと予想いたしております。日本代表団といたしましては、軍縮交渉その他東西間の話し合い促進必要性を強調いたしまするとともに、核実験停止協定早期締結は特に強くこれを訴えたいと考えております。また、アフリカ問題に関しましては、コンゴ問題の処理の成否が、平和維持機構としての国連機能についての重大な試金石であることを強調いたしますとともに、国連の権威を高揚し、その機能強化発展させる上にも、全加盟国が一致協力してその活動を支持すべきことを強調し、わが平和外交の役割を十分に果たしたいと考えております。以上、所懐一端を申し述べますとともに、当面する課題について御報告申し上げた次第でございます。     —————————————
  11. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 発言の通告がありますので、順次これを許します。岩本信行君。
  12. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 ただいま外務大臣が新外務大臣としてのお考えを述べられまして、その中で世界各国との友好親善関係を深める、きわめて同感でございます。特に当面いたしました日韓関係の是正のために格別な御苦労があるということで、敬意を表します。ただ私がきょうお尋ねしたいことは、きょうの問題、差し迫っておる問題でございまして、要するに在日朝鮮帰国問題の期間の延長問題が、新潟において日本赤十字朝鮮赤十字との間において話し合いが進められておりますが、それが数日間一つの問題で停滞をいたしまして、一つも進行しない。その一つというのは、新聞報道を許すかどうか、こういう問題のようでございます。帰国の問題は、御承知のように、昨年の二月十三日に藤山前外務大臣人道上の問題として踏み切られまして、その後幾多の折衝を重ねましたが、協定が成り立ちまして、昨年の十二月十四日を第一次といたしまして、その後きわめて順調に帰国が実現して、今や四万人になんなんとする在日朝鮮人諸君が祖国に帰った。さらに協定に基づきまして延長会談が行なわれておるわけでありまして、人道上の問題としてこれはあくまで帰国希望者がありまする以上は、延長を認めることに間違いはないわけでございます。ただこの際、私どもはこの帰国問題に協力を続けておりまするけれども、それは必ずしも北へということではなく、南へ帰りたい人は南、北へ帰りたい人は北、こういうことで進めておるわけでございますが、具体的な現実問題としては、いわゆる北鮮へ帰っておるわけでございまして、その延長協定が行なわれておるのでありますが、御承知のように新聞報道の問題だけでつかえておりまして、少しも進展しない。一体これはどういうふうにお考えになっておるか、まずその点をお伺いいたしまして次に移りたい、かように存じます。
  13. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 いわゆる北送問題、北鮮帰還の問題につきまして、岩本委員が従来から非常に御奔走になっていただき、しかも帆足委員とともに現地においでになっていろいろその状況等も御視察になっていただいております経緯に関しましては、私も敬意を表しておる次第でございます。この北送問題につきましては、今お話のように十一月の十二日までには、これを今後いかに取り扱うかということをきめねばならぬわけでございますが、これに関しましてやはり人道上の問題で、居住地に帰りたいという方々に対しましては、できるだけこれを早くお帰しする方がより一そうその目的に沿うのではないかということで、スピード・アップの問題を含めてお話しをいたしたいということにしまして、新潟会談を持っておりますわけであります。ところがこの会談予備会談におきまして、今御指摘のように、北鮮における新聞社記者の入国の問題をめぐりまして、双方赤十字社意見が食い違っておるということのようでございます。そこで一応経緯を申し上げますると、北鮮側記者団をこの、代表に同行させるという主張はこれを撤回いたしまして、随員として二人の当初予定された新聞社の方がこちらへ来られたわけであります。この電報を打つ問題につきまして、赤十字規定によりますると、赤十字社が特に通信等において料金その他で特別の取り扱いを受けることはできないという旨の規定があるようでございまして、その規定からいたしまして、新聞記者としてでなくて随員として来たのであるから、その規定を守らなければならぬというようなことで、新聞電報取り扱いはいたしかねるという日本側赤十字主張と、それをやらせてもらいたいという北鮮側赤十字主張とが食い違っておる、かようなことで予備会談が進まぬということのようでございます。しかしながらその後にまたいろいろの工夫等考えて、双方から歩み寄って話し合いを進めるのではないかというふうに私は聞いておるのでありますが、この問題は赤十字社間の問題でございまして、政府があれこれと指図すべき問題でもないようでございまするから、一応その会談におまかせしておる、かようなことでございます。しかしながら必ずこの双方の善意と理解とにより、この問題が円満に解決するであろうというふうに私は確信をいたしておる次第でございます。
  14. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 赤十字規定にどういう条文があるかを承知しておりません。ただこのことがかかって人道上の問題、たとえば新聞報道といたしましても、その報道事項人道上の問題に限られる事件、こういうことでございます。既往におきまして、日本赤十字代表として井上君が平壤に参りましたときに、やはりそういう規定はあったと存じまするけれども日本新聞社の依頼ということで電報を打った、こういう事実、及び日朝記者交換の問題、この問題につきましても、朝鮮におきましては日本人記者を十数名迎え入れまして、歓迎の態勢で国じゅうを見せて通信の自由を許した、こういう実例がございます。私はこの際、たとえば平壤における日本赤十字に対する好意は、あちらの政府が格別の意味において扱われたとかように承知するものでございますが、赤十字規定を別にいたしまして、しかもこれが人道上に関するだけの通信、こういうことであってみますれば、政府自体でもこの問題の打開は可能ではないか。また可能にさせなければならぬ、かように存じますが、この点に関する政府としてのお考えをいま一応承知したいと存じます。
  15. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 政府としましては、この会談が非常に円満にいくことを期待いたしておるのであります。そこで何としても赤十字間で打開できないような状況になりまして、これではいかぬということになりましたら、政府としては考えを述べるつもりでございますが、現状では、ただいま申し上げたように、何らかの便法というような形において解決ができるのではないかと、かように聞いておりまするので、それにおまかせをしておるわけでございます。
  16. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 ただいま仰せられましたように、井上君が通信ということで通信社電報を依頼するという形でございますれば、その随員のどなたかが、その通信新聞社に依頼して、その新聞社から電報を打つという方法も同様に当方としてはあろうかと思われるのでございます。そういうことは話し合いで当事者間において話ができる、合意ができる、さような問題であるように考えておる次第でございます。
  17. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 いま一度そのことで伺いますが、赤十字間で話が円満につくであろうと思う、もしそれが不可能になった場合においては、政府は別に別段の考えを持つ、こういうふうに了承して差しつかえございませんか。
  18. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 さように御了解願ってよろしゅうございますが、現在のところでは赤十字間の話し合い解決されるものと、かように考えておる次第でございます。この赤十字の問題にいろいろ政府が容喙いたしますことは、この国際的な赤十字地位から見まして、いかがかと思いまするので、政府が容喙することは、私はできるだけ避けるべき問題であろうというふうな考え方を持っております。
  19. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 赤十字間で打開することを私どもも望みます。そこでその打開がきょうもまだできない。いずれはできようと存じますが、かかって人道上の問題で、この一点のために数日を費やしておる、この姿はきわめて残念だと存じます。ただ今新外務大臣が、もし赤十字間で追っつかぬ場合においては責任をもって考慮する、こういうお話でございますので、私はここに信頼を持ちまして、この質問をこれで打ち切っておきます。次に、安保条約というものは、私ども必要性を認めまして、この改定に賛成し、承認をしたものでございますが、これが運用にあたりましては、少なくとも相互信頼でございますので、可能最大限日本人に迷惑を与えない、こういうことが原則であるはずでございます。たまたま私の近所の厚木基地におきまして、爆音問題が大きく取り上げられました。それは六月一日より大型のジェット機が参りまして、それ以前でも問題でございましたけれども、今日は、これはほんとうに超党派の重大事件となって参りました。電話は全然聞こえない、あるいはまた病人もできる、執務はできない、また病院等は手術にも差しつかえる、こういうことで大和市、綾瀬町、その他近隣市町村が合同いたしまして、爆音対策委員会というものを作って、少なくとも夜間を避けてもらいたいとか、あるいは公共施設の上はかげんしてもらえぬかとか、あるいは極端なものは移住をしなきゃならぬということで、何百戸の人々が市や県へ移住を申し立てておる。こういう状態でございますが、これは現地等も視察願わなければわかりませんけれども、しかし超党派的な、全市民的な問題として、この不便を除こうということで立ち上がっておる次第でございますが、こういう問題について当局はどういうふうにお考えになるか、そうしてまたそれに対する対策をどういうふうにお考えになるかということを、まず承りたいと存じます。
  20. 丸山説明員(丸山佶)

    丸山説明員 厚木飛行場等大きな飛行場におきまして、ジェット機のますます発達する際において、騒音が激しくなる、そのために周辺の方々がいろいろな面で御迷惑をなさっておる実情は、私どももよく前々から存じております。従いまして、その対策をいろいろ考えまして、まず第一に、米軍側としてできる限りその騒音の軽減、減少に努める措置は何か。特に私ども現場を調査いたしまして、激しいのはエンジンテストの場合でございます。このエンジンテストをやる場合に、音を消す何らか装置がないものか。聞くところによると、米本国等においては、それらのものが付加されておるものがあると聞いておる。こういうことの最もすぐれた装置は、音が外に漏れることのないように、また漏れても、その程度を非常に少なくする、そういうような装備、設備をすべきである、こういうことの話し合い米軍当局ともいたしております。米軍当局ももっともであるというので、そのような措置に進んでおります。具体的にも、実は先般一つそのような装置を取り寄せてやりましたが、あまり効果が思わしくない、なおもっと改良された一そうの設備がないかということの検討を続けておるわけでございます。また第二には、米軍に要求いたしまして、夜間の航空を制限する、特別に飛びます場合には仕方がないが、一般の飛行機の飛ぶのは夜間を避ける、このようなことの話し合いもいたしておりまして、もっともであるということで、ただいま時間の制限等もしております。なおこの制限時間を延ばして、付近の住民の方々のやかましさを少なくする措置はないかというようなことも、米軍当局話し合いをしております。また日本側といたしましても、御承知の通ります一番迷惑をし、またそのために能率を妨げておる重要なことで、学校の教育の問題がありますので、このためには防音工事を施すその工費を政府が持って、学校の改築、改造を行なう措置を、この数年ずっと続けて参りまして、これからもなおこの方面の規模あるいは程度等を拡充いたしたいと考えております。また学校のみならず病院、あるいは保育所、あるいは図一節等にもこれを及ぼしたい、一部すでに及ぼしておるものもございますが、なおその方面の拡充もはかりたい、このように措置をいたしております。しかしながらその他の面におきましても、何としても一般の住宅あるいは農家におきまして、その騒音のために農業上の支障、あるいは家畜に及ぼす影響は、はかり知れないいろいろな問題がありまして、今お話がありましたように、厚木の近辺の町におかれましてもその対策委員会を作られ、それの対策措置に県も当たられておることは、県からもその話を私どもも承っておりまして、政府措置も要望されております。調達庁といたしましても、今までやってきた以上に、何かもっと総合的な対策はないかと考えまして、この調査措置等を、これから一そう進めていって対策を立てたい、このように考えておる次第であります。
  21. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 調達庁長官も従前から承知しておるということで、またそれに対する対策を折衝中ということでございますが、六月一日以後の大型になった騒音の姿というものは、御存じないと思うわけです。従って、今までは耐え忍んでおりましたが、全市民の声となって今大きな問題となっておるわけでございます。ただいま夜間の時間制限延長とか、公共施設対策とかはこれからも進めていく、こういうことでございますが、それはぜひ積極的にやってもらわなければならない。これからも陳情が参りますので、十分聞いて取り上げていただきたいと思うが、そのうち一点、何としても居住に耐えないということで家屋を移転する、こういう者が数百戸に及んでおりますが、それに対する政府対策というものは、今のところどう考えておられるか。この問題もすでに陳情が調達庁へいっておると存じますが、さらにその戸数がふえてきた。何としても耐えられない、こういうことでございまして、家屋移転に対する対策、それらは、かりに十分とは申さざるまでも、移転が可能な程度までは政府が補償して背負って立つ、こういうことであるかどうか、この点いま一度伺っておきます。
  22. 丸山説明員(丸山佶)

    丸山説明員 飛行場の防音対策、あるいは飛行機の事故の危険に対する対策一つの問題としまして、滑走路の延長、進入路線にある一般の住宅に関して、いわゆる住宅移転という問題を、この一年私どもも検討を続けております。従いまして、厚木の場合におきましても、すでに本年度にそのための経費を若干予算中に予定しておりますので、ことしは多分五十戸程度までのものの経費が持てると考えますので、ことしそのような実行の処置もとるということで、目下現場調査その他の措置をいたしておる次第でございます。なおこれからの問題といたしましても、あの飛行場につきましてはお話しのような状況がございますので、この集団移転に対する措置を進めていきたいという考えのもとに、目下明年度予算中にも、それらの事項を盛り込んで成立させようと考えておる次第でございます。
  23. 岩本委員(岩本信行)

    岩本委員 ただいま五十戸とおっしゃいましたが、それは従前の調べであって、今日先ほど申し上げるような事態から、全くやむを得ないという戸数がふえております。ここで戸数の総数は申し上げませんが、調達庁で実態調査をされまして、どうにもやむを得ないという戸数は何戸ということに限らず、対策を予算化してもらう、こういうことにお願いしたいと存じます。次にいま一つだけお尋ねいたしますが、先ほど申し上げましたように、私どもはいわゆる安保条約というものを認める者でございますけれども、その施設及び区域並びに地位に関する協定の第二条第三項、四項、これによりますと、遊休施設はいつでもたちどころに日本政府に返還しなければならない。それからまた一時的に使用していないときは、日本政府あるいはまた日本国民に使用させる、こういうことに協定ができておるわけでございますが、基地内にある、特に工場的な場所におきましては、御承知のように昔大ぜい使っておりました者が今は何十分の一だ、こういうところがそのまま残っておる。しかも必要性があるのだということで、もと二千人おったところに百人だけばらばらと置いて、それで留保している、こういうような形のところが全国に多いと思います。その一番の具体的の例は、私の市にありますところの元造兵廠跡、今補給廠になっておりますが、それらにおきましては全く大多数の遊休施設がある。しかしだんだんやって参りますと、追って使うのだというようなことで濁されておるという実情でございますが、これは日本の産業政策の上からいきましても、しかしてまた失業対策、こういう面においてその場所を使わせ、あるいはまた場所が不可能の場合は、あります機械を返還さす、こういうことにおいて失業対策等も立つわけでございますが、これに対するお考えをお聞きしたいと存じます。
  24. 丸山説明員(丸山佶)

    丸山説明員 米軍に使用させております施設、区域の関係は、お話の通り行政協定の二条三項によりまして米軍の必要がなくなったならば、日本側に返還しなければならない。またその必要性の有無に関しても常時検討しなければならないという条文がございますが、その条文の趣旨に従いまして日米関係当局は常時検討を進めております。具体的には合同委員会の中にありまする施設特別委員会というものを通じまして検討を加え、あるいは日米間の折衝を行なっておる次第でございます。平和条約が発効しました二十七年のときには、件数といたしまして二千八百件ぐらいございまして、ただいまのところ二百四十件ほどと存じますので、二千五百件くらいは返還になったわけでございます。これを面積にしてみますと、当時土地の面積が坪数にいたしまして四億数百坪あったと存じますが、ただいま残っております数字では一億坪弱でございます。また建物の坪数から見ますと四百余万坪あったものが、ただいま百五十万坪ほどでございます。そのようにこの八年間におきまして返還が行なわれました。しかしながら今岩本先生のお話しの通り、現在におきましても、その中に局部的あるいは局地的でもあり、従来のような米軍の使用の状況が切実ではないと見られるようなものもあるわけでございます。これに関しましては、先ほど申し上げましたように、二週間に一ぺん定時的に行なわれます施設特別委員会の議題として折衝いたしておる次第でございます。なかなかこの中で解決のおくれるものもございます。今一時的に使用が行なわれておらない状況にあるものも、実は次の予算措置を待ち、これこれのような使用の状況の計画があるので直ちにこれを返還するわけにはいかないというようなことかおもなる理由になっております。これに関しまして日本側としても、このような状況にもかかわらず、こちら側としてはこれこれこういうような事情もあり、日本側の必要の度合いというものの比較において、これは返還すべきである、このような折衝を続けておるわけでございます。また具体的にはお話しのありました相模工廠の問題につきましても、従来いわゆる特需の工場として仕事をさしておったが、この特需の仕事を米軍が打ち切ったのであるから、当然これはその建物なりあるいはその土地なりは米軍としては要らないと認める。従ってこれらの土地、建物並びにそこに施設されておるところの機械類も返還すべきであるということも、ことしの正月以来その委員会の折衝議題になっておるわけでございます。現在までのところ、米軍側が、先ほど申しましたように、あそこは御承知の通り管理補給の部隊の中心でございますが、そのようなこれからの計画にかんがみて、直ちに返還というわけには参らぬということを申しております。しかしながらそれならば機械はどうであるか、機械に関しましては考慮の余地ありということも言っております。しかしながらこれもまたこちらの要望通りに片づいておらないのが実情でございます。目下この件に関しましても一そう折衝を続けておる次第でございます。
  25. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 帆足計君。
  26. 帆足委員(帆足計)

    帆足委員 在日朝鮮人の帰国のことにつきましてただいま岩本議員から御報告もあり、御要望もありましたが、私もそれに同意見でございます。ただ今日すでに四万数千人の隣邦の友が、きわめて順調にそのふるさとに帰りましたことにつきまして、党派を離れた課題としてこれに協力いたしております私ども一員といたしましても、これまでの外務省当局並びに厚生省当局の御努力に対して、深く感謝する次第でございまして、その意味におきまして厚生大臣にもきょうは御出席を願いまして、御礼も申し上げ、今後の御要望も申し上げたいと存じておる次第でございます。  日本におります朝鮮人六十万の大部分は、不幸にして過去の歴史の伝統を受けましてきわめて不幸な状況におりまして、民族的偏見もまだ是正されておりませんし、経済的には流離の民のような苦しい生活をしておるような人も多いのでございます。国内における朝鮮対策についてもこの際再検討いたしまして、隣邦との歴史的伝統のある関係を考慮いたしまして、日本におる朝鮮人の生活の改善のためにもやはり理解のある政策が必要であると私は思っております。しかし国土狭小にして人口の多いこの国といたしまして行き届かぬことばかりでありますので、それぞれふるさとに帰るということについて政治問題を離れて人道的に協力するということは適切なことであると思っております。帰国する朝鮮人の数はおそらく二十万をこえるであろうと専門家の間ではさらに予想されておる次第でございます。六十万の朝鮮人の諸君のうち大部分が苦しい生活をしているほか、三十万は少年と青年たちでありまして、その青少年たちにも現在のところ国内においては希望がなく所を得せしむることは非常に困難な状況でございます。六十万の朝鮮人の諸君がおりますが、大正元年ごろはわずか三千人、日露戦争ごろはわずか二、三百人でありまして、大正十二年、あの関東大震災のときに朝鮮人をめぐる悲劇が起りまして、まことに痛ましい反省すべき事件でありますけれども、あのときですら在日朝鮮人の数はわずか八万人でございました。現在の六十万人という数がいかに多くかつ不自然な数であるのか、これは戦争経済及び戦時のしわ寄せがまだ残っておるという点もあるのでございます。従いましてこの大きな民族移動の仕事に対して、党派を離れて協力しようという方々が、あるいは宗教的立場からあるいは赤十字の立場から、その他社会運動家、それから一般の市町村の理解のある方々、全国に数百の支部を作りまして帰国協力の若干の仕事をいたしております。ただこの問題につきまして私どもは、岩本議員が申しましたように、南にひいきするとか北にひいきするとかいうことではございません。そのふるさとを選ぶのは彼らの自由でございまして、何ら政治的考慮は置かないことにいたしておりますが、これに対して政府が積極的に国に帰る朝鮮の人に財政的なりその他の援助をいたしますると、一方の側に特別にひいきするというような誤解を受けますので、政府としてはなるべく、この問題に手を触れないことにいたしておりますという事情はわれわれも了といたしております。しかし民間団体また地方自治体等におきまして、番茶の一つもおせんべいの一つもつまみ合って別れを惜しむということが至るところ行なわれておりますが、それに対して地方自治体は積極的に何もしてはならぬという意味の通牒が参っておるといわれて、地方自治体、たとえば大阪の知事さんに会いましたときも、市長さんに会いましたときにもそういう通牒で困っておるということでございましたが、それは政治的に片寄った、常識をはずれた援助のようなことがあって誤解を受けてはならぬという趣旨の通牒であろうと私は思う。従いまして市長さんが来て別れの言葉を述べるとか、またはおせんべい一つ、番茶一つで送別会が行なわれておる、そういうことに若干の地方自治体が参加したとか援助したとかいうぐらいのことならば、すなわち人間の普通の常識で考える範囲、そして政治的偏向のない範囲ならば、かかることは私は認められてしかるべきであろうと存じておりますが、その問題のために地方自治体で困っておるという声が非常にたくさん聞かれますから、通牒の意味するところの親心を説明下さいまして、歓送の常識的な仕事がそのために阻害されないようなふうに、援護局長会議とか適当な会議のときに御相談下さって、多少運用上修正していただきたいとお願いいたしたい次第でございます。このことを厚生大臣にお願いいたしておきたいと思いますが、いずれこまかなことは岩本議員と御一緒に、こまかな事例をもちまして御了解を願いたいと存じております。  先日のある新聞の漫画に、外務大臣日韓会談を急がれる姿をかいてありまして、一人の青年が飛び出して——漫画というものはしばしば人生の最も切実なものを象徴的に表現するものでございまして、やっぱりこれには私は何事かあると思うのでございます。従いましてこの席において外務委員として要望いたしたいことは、今朝鮮が三十八度線で分断されておるという事実でございます。岩本議員と一緒に南日外務大臣に会いましたときに、北朝鮮も武力的に南に進撃を加えるということはもう絶対にしないということを談話のうちに申しておりました。また南朝鮮でも李承晩の専制政府が倒れまして、やや常識のある新風が吹き始めましたことも御同慶の至りでございまして、総選挙のときの演説の一端などを読みますると、南朝鮮もまた武力をもって北と問題を解決しようとするようなやり方はやめたということが政府の意向としても発表されております。また南北、九州と大阪に親戚関係が別れておるような関係でありますから、将来は人事の交流とか文化の交流、経済の交流について話し合う機会くらいは持ちたいということが南朝鮮の総選挙のときの選挙演説の中にもしばしば見られておりまするし、北からもまたそれに類似の提案がございました。こういうことで、平和統一ということがだんだん日程に上り始めておりますので、今日の政治の状況にあまり固執して、南北の緊張を激化するような方向に日本の政策が向かう、目前のことにとらわれ過ぎて南北の対立を激化するような方向に向かうことは、私はよほど慎重な考慮を要すると思う。従いまして、それらについて慎重な考慮なくして、新内閣ができたから直ちに外務大臣が飛び出すということについて、私はあの漫画がやはり多少国民の不安な気持を表わしたのではあるまいか、こう理解いたしたのでございます。従いまして、南北それぞれに事務的関係を持ち、親善理解関係を持つことはけっこうでありますけれども、緊張激化の方向に向かわないようにということを御配慮願いたいというのが、野党としての私どもの希望でございます。それから、これはそれぞれ希望でございまして、外務委員というものは、別に答弁引き出し係ではないわけでございまして、自分の考えをよく述べまして、与党、野党の方に御理解を願って、それが政策の一端に多少なりとも取り入れられるということが私は必要なことであろうと存じますので、無理に御答弁を求めるよりも、御理解していただきたいということを切望いたしておく次第でございます。もう一つは、帰国問題の赤十字会談で、いわゆるスピード・アップということがいわれております。帰りたい人をなるべく早く帰すという点において、これは、私は道理にかなったことであると思いますけれども朝鮮は一応廃墟となった場所でありまして、アパートも住宅もみな新しくできたばかりで、全然日本のように余裕がないのでございます。同時に、日本では、引揚者をただ舞鶴の港へ迎えて、あとはそれぞれ親戚なり知り合いのところに行きなさいといって、割りにほったらかしてあるのでありますが、朝鮮では、就職先から学校、住宅から当面の家計費に至るまで、経済的に懇切な世話をしている。私は、外国で流離の民として苦しんだ同胞を迎えるに当たって、このような懇切な態度で迎えたという歴史はいまだかつて知りません。これはイデオロギーを抜きにして一つの歴史美談ともいうべき美しい物語であると私は思っております。月に五千人以上の人を、一流の、しかも暖房設備と水洗便所のついているアパートに迎えるという仕事は、貧しい建設の途上にある国としては、私は容易ならざる仕事であると思っております。従いまして、これを一挙に倍にするとかいうことは、五割増しでも私はなかなか困難なことではないかと実情を見て参りました。従いまして送る方はスピード・アップは楽でありますけれども、迎える方は多少そういう困難があるということをよく理解いたしまして、それぞれの事情をお互いに語り合って相互理解の上にこの問題を解決するというお心組みがあるならば、お互いに誠意が相手に通じて現状よりも改善される方向に向かっていくことは間違いないと思いますので、国会の決議もいただきまして現地を見て参りましたものといたして、この点を両大臣に御理解願いたいと思うのでございます。さらに朝鮮に参りまして痛感いたしましたのは、前に池田通産大臣の御努力によりまして、朝鮮との貿易は輸出だけは直接貿易ができるようになっております。輸入は非常に貴重な資源がたくさんありまして、大豆、クリンカー、ホタル石、銑鉄等、それから水産物の一部等輸入することができますが、それをなんと八幡の若松の港を左の目で見ながら香港まで持っていきまして、香港で三%の手数料を払って登録して、またよたよたかついで、そして若松で陸揚げしている状況でございます。現在の国際語関係から多少の遠慮が必要であるという事情もわかりますけれども朝鮮に行って驚きましたのは、英国ではもう英国船が入っております。ノルウエーの船も入っております。西ドイツも自由に貿易しております。スイッツルもオーストラリヤも東南アジア諸国も全部北朝鮮と貿易しておりまして、北朝鮮との貿易はある意味では中国との貿易、ソ連貿易と同じような範疇の中にヨーロッパではすでに入れられておりまして、特にアメリカの製品が西ドイツを通じて相当入っておる姿も見ました。これらのことを見まして、英国ですら、また西ドイツですらがすでに北朝鮮と貿易しておりますので、私は政治から離れた事務的関係として、朝鮮との貿易はやはり輸出だけ直接でなくて、輸入も香港まで行かなくても、行ったつもりにして輸入も直接できるようにする手順をお考えになってしかるべきでないかということを痛感いたしました。西ドイツや英国のしておることを、この人口過剰にして貿易に依存する日本がしないということは、遠慮としても度の過ぎた遠慮である。みずから卑しめて人これを卑しむという言葉がありますが、やはりある程度は道理にかなったことはみずからの自主的立場で主張するという観点が必要でなかろうかと思います。これらのことを御参考まで申し上げまして、漸を追うて御善処のほどお願いいたしたい。その中で積極的に今後の打開に役立つことがありましたならば御答弁をいただきたいし、役に立たないようなことがありましたならば、むしろ御答弁いただかない方がいいと思っております。
  27. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 御意見のほどはとくと承りまして、私のよく参考にしたい点が多々あるように存じますが、今この際それを非常に明確に申し上げますことはいかがかと思いますので、差し控えたいと思います。
  28. 中山国務大臣(中山マサ)

    ○中山国務大臣 ただいま帆足委員からいろいろ承ったのでございますが、御承知の通り、昨年の二月十二日の閣議決定によりまして、基本的人権であるところのすべての人間がその居住地の選択の自由という観点からこの帰還というものが行なわれておるのでございまして、私どもがかつて、われわれの同胞をイデオロギー抜きで国に帰してもらいたいという要望をいたして、この線に沿うていろいろと帆足議員もともに御努力下さった委員会に私もおりましたことをいまだに記憶をいたしておるのでございまするから、そういう線に沿うて私どももいたしておるのでございます。先ほど地方において、帰る人々に対して湯茶の接待、あるいはわずかばかりの心ばかりのお菓子などを出すことをしてはならないということが流れているのではないかという御心配でございましたが、そういうことは決していたしておりませんので、そういう通牒を流した覚えはありませんということを私どもの省は申したのでございますから、どうぞその点は御心配いただきませんように、今後そういうことが行なわれますということは、決してわれわれの省の者の考えではございません。それを妨害するようなことは全然考えておりません。これはやはり人間同士の一つの愛情の接触であろうかと私も思うのでございます。スピード・アップにつきましては、向こうはいろいろの現地の御事情で、そういうスピード・アップもそうそうはせいてはどうかというようなお話でございましたが、このスピード・アップの問題は、御承知の通り、ゼネバにおきまして、先方から、できるだけ早くできるだけ多く帰してほしいというお話し合いがあったと承知しております。そうしてまた帰る人たちが喜び勇んで乗船をしているというような情報も伺っておりますので、これは先方の御要望を私どもができるだけ御満足いただきたいということでこういう努力をいたしておりますということをどうぞ御了承いただきたいのでございます。
  29. 帆足委員(帆足計)

    帆足委員 ただいまの帰国朝鮮人に対する接待の問題につきましては、確かに問題があるのでございますけれども、今の厚生大臣のような良識のあるおやさしいお心がけならば、今後運用解決つくと思いますから、いずれこれは岩本議員と一緒に大臣、次官にお目にかかりまして、解決いたしたいと存じております。  スピード・アップの問題も私の申し上げましたことも御理解願えたことと思いますから、双方が実情を話し合って、実情に即したことに結論が参ればよいのでありまして、延長問題その他政治問題とからんでとかくこういうことはしないと赤十字も申しておりますから、そのように期待いたしております。  朝鮮との直接貿易のことについては今すぐお答えにくい事情にあろうと存じますので、一つ十分この実情を御検討願って、ぼつぼつ貿易国としてはこの程度のことは御善処する方向に向かっていただきたいのですが、ちょっと時間の残りを利用させていただきましてお尋ねいたしますが、同じく中国との関係におきましても、多少最近方向転換のきざしが双方に現われております。鈴木一雄君が周恩来首相と話し合いました結果にも、政府相互間の協定のほかに、従来のように民間の協定、また特殊の双方の配慮、三つの方式があるのであります。第二の問題についても考慮の余地があるということが出ておりまして、官房長官も、そういう方向なら、それはわれわれの側もできるだけ便宜をはかりたいという談話をけさの新聞に発表されております。しかしこれは、外務大臣の御所見が、この問題の解決に一番大きな関係がありますし、あわせて通産大臣の御理解も願わなければならぬことでありますから、私は、だれがどう言った——これは新聞報道でありますから必ずしも正確ではありませんけれども、何となしにそういう明るい方向に多少向かいつつあるのではないかという空気が各方面に察知されますから、やはりこの機を逸せずに、隣邦の人口六億を擁する国と平和貿易を開いていくという方向、その雰囲気に水をささないように外務大臣のお骨折りを願いたいと思いますので、この際、御心境のほどを伺っておきたいと思います。
  30. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 昨日新聞に報道されておりました鈴木一雄君が周恩来首相に会われました結果が電報でこちらに来ておるようでありますが、電報でございますし、まだ全文見ておりません。私の立場からとかく言うことは差し控えたいと思いますけれども、全体の方向といたしまして一般論として言いますならば、貿易というものはやはり相互に必要があってできるのでございまして、そういう必要というものの上にすべての問題を無理な形にしないで解決していくということは、私はいいことではないかというふうに思っております。ただこれにあまり政治的ないろいろな意見をからみ合わせますと、かえって問題が複雑になります場合も今まで経験をしていることであります。私としましては、外務大臣としてそれがどうであるとかというようなことは、むしろこの際控え員にしておきたいと思っております。
  31. 帆足委員(帆足計)

    帆足委員 実はこの前貿易協定が成立いたしますときは、長崎の国旗事件どもありまするし、それから岸内閣がいわゆるニュー・ルック政策で鳩山さんの時代よりまた少し傾斜が変わって、それが大きなショックを与えたということもありますし、金門、馬祖の状況が切迫して参ったというようなこともあったのですが、実務的には民間の駐在員をお互いに置こうということにおいて、その駐在員の生命、財産の保障ということについて相互理解に到達し得ないところがあって第二次貿易協定がついに決裂をいたしたのでございます。従いまして今後貿易が開かれましてさらに前の内閣よりも池田さんは低姿勢、合理主義でいこうと言われるわけですから、一歩前進ということになれば、また情勢も秋のアメリカの大統領選挙では、若い候補者ばかり出て、時代感覚を持った大統領が出られるということも期待されておりますから、そうなると前より一歩前進ということになれば、貿易をするのにはどうしてもお互いに民間の通信員、民間の商務駐在事務所のようなものが必要になって参りますから、問題のかぎの一つはそこであったということも御考慮下さって御研究のほどを願いたいと思います。  最後に、きょうの外務大臣のごあいさつの中で最近国連の権威がますます増大し、アジア・アフリカ諸国の公平な発言権が大きくなっている、小国の発言権が大きくなるということは大数法則として論理と理性に近づくというような意味のごあいさつがありまして、私は大いに共鳴いたした次第でございます。そうであるとするならば、日本もまたこうして顔の色の黄色っぽいアジアでありまして、日本は上半身はヨーロッパでありますけれども、下半身はアジアで、われわれはアジア人です。アジア民族の苦しみと悲しみは最もよく理解し得る立場にあります。従いましてそれを、従来はわれわれがアジア人であり、アジアの工業国でありますのを工業国の面だけに片寄りまして、欧米のいわば植民地政策または軍国主義政策、帝国主義政策のひそみについていったということが大東亜戦争をめぐる失敗の一つであったと思いますが、いまや植民地を全部捨てて平和の民として新出発をしたわけでありますから、アジア諸国と理解し合うことに、私は過去のよろいを捨てた現在の日本としては理解しやすい立場に立っておると思うのです。植民地という厄介なものを捨てたことは、古い財産を捨てて身軽になって、自分の見識と自分の勤労で働くという気持になったわけですから、今としては私はよかったと思うのです。そうでなければ、昔のままの満州国や朝鮮があのまま残っておれば、今ではアルジェリア問題みたいになっておったと思うのであります。従いまして、こうした身軽になりました日本といたしまして、アジア諸国とほんとうの親善をはかって参りたい、原料はあるし、製品と技術の輸出はいよいよ有望である、こういうときにそれではほんとうにアジア親善外交に徹しておるかというと、私は遺憾ながらアジアの孤児という一面があり、過去の日本帝国主義政策の残津がまだわれわれの中に残っておることを嘆くものでございます。たとえば後ほど戸叶議員が具体的に申し上げますが、オランダの軍艦がスエズでナセルに拒絶されてアフリカを回って参りましたけれども、これに対する処遇のごときもアジア諸国と悲しみと喜びを一にするというお考えならば、私はこれに対して条件を付するとかほかの方に回っていただくとか、もう少しアジア諸国の共鳴を得、理解を得るような方法があろうと思うのですが、外務大臣はどうお考えですか。  またもう一つの問題は先ほど岩本議員から御質問がありまして、基地の問題につきまして多くの興趣が今後また残っておるわけでございます。私どもはU2機の問題か政府当局の御努力によって解決がついたように仄聞いたしておりますけれども、しかし外務大臣はこの問題につきましてこれで完全に解決したとお考えであるかどうか。そのかわりの飛行機がまた来ておるということも聞いておりますし、また潜水艦に核兵器を載せておるものも立ち得るということも聞いております。またこの際明確にお伺いしたいことは、他国が国内を閉鎖しておるからといってそれを領土を侵してのぞき込むということか国際公法上認めらるべきことでないと思うのですが、アメリカほどのすぐれた国がしっぽをつかまれて——今日の時代では他国をのぞき込むのは自分の自衛上の権利であるというようなことを言われて、世界の国際公法の学者をして絶望せしめたということは、まことに残念なことであると思いますが、これについては英国やフランスの法学者もこれはアメリカの国務省の言い過ぎであった、またこれはアメリカの黒星であったということを、最後にはアメリカの外交委員長外交白書で発言しておるような状況でございますから、国連を尊重する日本外務大臣としてスパイ行為を一体国際公法上どういうふうにお考えになっておるか。それからこの問題のあと味がまだ不安が残っておるということは、そういうものが入るときにわれわれに報告する義務がアメリカ側にあるか、また調査する権利があるか、また核兵器は持ち込まないとか載せないとか言うけれども、その核兵器の定義はどうであるか、核弾頭をつけていないだけで、あとの装備が全部整っておるならば、適当なところへ核弾頭を隠しておいてさっとつけることもできるわけでありますから、非常に危険であるということを心配するわけでございます。こういうことについて正確な最近の外務省の御見解を伺っておきたい。
  32. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 最初のオランダの航空母艦、カレル・ドールマンが日本とオランダとの間の修好三百五十周年の記念に立ち寄る問題につきましては、この問題はインドネシア側から西イリアンへ日本へ参ります前に立ち寄ることによって非常に感情上おもしろくないという通報を受けておりますことはこれは皆さん御承知だと思います。そこでわれわれの立場でございまするが、今帆足委員が仰せられたように、まさにわれわれはアジア人でありまして、アジア・アフリカ諸国とも仲よくしていかなければならぬ、しかし同時に西欧の諸国とも十分緊密な連絡をとっていく、世界じゅうの国と日本が近代国家として国際社会に重きをなす上に必要な交際をしていくという立場をとることは、これまた御承知のことだと思います。そこでわれわれとして一番大事に考えますものは、そうした友邦との信頼の問題でございまするが、そこにどうしてもわれわれの基本線考えなければならぬものは、やはりわれわれはお互いに国際間の慣例というものを尊重していく、そしてその慣例というものの上に立って現実のいろいろな感情的な諸問題あるいはまた実際上の障害がありますならば、それを取り除くということに努力していく、こういうことでなければならぬと思うのであります。いかにその感情的な問題があるからこれを避けねばならぬと申しましても、さりとて日本が国際慣例をみずから破っていくという形をとることは、これまた日本国際信用の上から望ましくないことであると思いますので、この問題につきましては、いろいろオランダ、インドネシアあるいはインドネシアの当方におられる大使の方あるいはオランダの当方におる大使の方を通じておのおの話し合いを行なっておるものでありまして、これは今ここで結論的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っている問題でございます。次にU2問題その他に関連し、また先般来新聞紙上等にも出ておりましたRB47型機との関連で御質問があったのでございますが、根本的にいえますことは、国際法上許されないスパイ行為というものはわれわれは絶対に認めぬ、こういう立場に立っております。従いましてU2の問題は、アメリカも、ああいうことがあったあと、日本におりましたのはあくまで気流の調査等の目的でおったのであるけれども、任務を完了したからということで、もう日本に立ち寄らないということをはっきり言明しておるのであります。U2はそういうことでございますが、それではRB47の方はどうか、こういうことでございまするけれども、RB47というものがかりにスパイ行為をするということでありますならば、これは事前協議以前の問題といたしまして、とうてい私どもの許すべき問題でないということは明らかでありますので、この点につきましてはアメリカも全く同様に考えておるようでございますから、そういう点は問題ないように考えております。先般横須賀にグレーバックその他のミサイル潜水艦が修理に立ち寄ったということも、これまた話題になっておったのでありますけれども、これも核弾頭は明らかに積んでおりません。そうして非常に短距離のミサイルを装備し得る装置を持っておるということでございますが、われわれ事前協議の対象と考えておりまするものは、長中距離のミサイル装置並びに核装備全般ということでございまして、こうしたものをかりに日本に持ち込みまする場合は、当然事前協議の条項によりましてわが方に話があるものと考えております。それがなくてもやるのではなかろうかという心配を持てという意見も一部にはあるわけでございますけれども、そういうことはアメリカとわが国との間に安保条約を結んでおるということは、ひっきょういたしまするに、両国の間に相互信頼関係があるという前提でいたしておるのでありますから、われわれは条約上の義務を完全にアメリカ側が履行するものという確信のもとに、この点については不安ないものと考えておる次第でございます。
  33. 帆足委員(帆足計)

    帆足委員 これで最後にいたしますが、ただいまのオランダの軍艦のことにつきましてはきわめて重大な問題の一つでありますので、戸叶委員が詳細に御質問いたすと思います。それから朝鮮赤十字会談が成功いたしましたならば——実は朝鮮から日本人を引き揚げますときには日本赤十字は平壤を訪れたのでございます。また私ども国会の決議とお許しを得まして岩本議員と一緒に平壤を計れました。従いまして新潟会談が円滑に参りまして、すべての状況が順調でございましたようなときには、私は当然朝鮮赤十字代表が東京赤十字の本部にあいさつに来られるということも認められてしかるべき問題であろうと思っております。もちろん政府当局といたしましては、治安の問題とかそのときの諸環境とかいうことを御考慮なさることと思いますので、ただいまこの席で御即答はいたしにくいと思いますので、私は伺うことはできないかと思いますけれども、しかし国際儀礼から申しまして、日本赤十字も向こうの首都平壤を訪問している、日本議員の多くも向こうの首都を訪問している。しかるに日本たけは新潟の片いなかに向こうの代表を閉じ込めておいて、そうして治安が悪い、治安が悪いと四等国のようなことを言われておるということは私はまずいことであると思いますから、一つジェントルマンシップを理解されておる外務大臣といたしまして、将来適当な機会に適切なる御考慮をお払い下さることを希望いたしまして、これで質問を終わります。
  34. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 菊池義郎君。
  35. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 まず外務大臣にお伺いしたいと思いますが、新たに生まれました韓国政権はその外交の原則といたしまして東北アジア条約機構、すなわちNEATOの体制を積極的に協力的に推進するということを発表しておりまするが、日本韓国と親善を求むるに際しましてこういう問題をどう扱うか。このことにつきましては、NEATOの体制につきましては日本にも両論がありまして、これに参加すべしという議論、これに参加しないで独自の立場を堅持すべしという議論と二通りありまするが、新内閣の外交方針といたしましては、これに同調いたしますか反対いたしますか、その点を簡単にお伺いしたいと思います。
  36. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 まだ先方とも実は会っておりませんし、新聞紙上で菊池委員仰せのようなことがあったのでありますけれども、これに対しましては、ただいまお話のように、国内にも両論がある際でもありますし、私どもこれは今にわかに言明することはいかがかと思いまして差し控えたいと思います。根本的に申しますれば、わが国の憲法というものがございまして、この憲法の規定というものがありまする以上、そうした機構に参加することはきわめて困難ではなかろうか、かように考えまするけれども、しかしここで断定的に申しますことは、実は先方からも公式な申し出ももちろんございませんのでいかがかと思いまして、差し控えたいと思います。
  37. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 新政権は李承晩体制を根本的に改革するといっております。それでまず第一にその改革の一歩として日本から要求すべき問題は何であるかというと、李ラインの撤廃でなければならぬと思う。黄海から竹島を含み、韓国の沿岸から百八十海里を取り込めて李ラインを引いて、勝手なふるまいをしておる。日本の漁船に銃火を浴びせる。そうして漁夫を捕えてこれを監禁する。そういう暴虐非道をあえてしておるのでありますが、この問題について日本の新政権はどういう折衝をなさる心がまえでございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  38. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 李承晩ラインの問題につきましては、われわれは非常に残念な過去の経験を持っておるのであります。私はこうした問題につきましては、どうしても両国がほんとうに理解し合った上で、お互いの国民がそうした公海における漁業その他を通じてより繁栄することができるような立場で、しかも法律的にも疑義のあることが非常に多い問題でありまするから、よく話し合って解決して参りたいと考えておるのであります。しかしそうした着し合いは今までもしようと思ってできなかった問題でございまするから、私は根本的には両国の間に相互信頼し協力するという雰囲気ができることが必要であろうかと思うのでございます。幸いにいたしまして今度の韓国における新政権は今までの行き方はすべて水に流して、前向きの姿勢で日韓両国の協力親善の関係を進めていきたい、こう言っておられるようでありますから、先ほど御報告申し上げましたように、私もまずもって韓国に飛びまして、それから新しい親善の時代を作りたいというわが方の考え方を申し述べまして、しかる後その問題をだんだん話し合って解決に到達いたしたい、かように考える次第でございます。
  39. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 その解決の方法としてまず頭に浮かぶのは、漁業協定であるとかあるいは国際司法裁判所に持ち込んで、その審判を仰ぐとかいったようなことが考えられますが、そういう考えはいかがでありましょうか。
  40. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 国際司法裁判所に持ち出すということは、やはり両当事者間に合意がなされるという前提でございますから、私はあくまでこの問題は日韓両国の間において、お互いに今後の親善関係を築き上げるという建設的な立場において解決していくべきではなかろうかと思っております。司法裁判所は御承知のように提訴がありましても応訴がなければ取り上げられぬのでありまして、そうした問題で考えるよりも、あくまでもわれわれとして善意を持って、そして先ほど申し上げたように、両国国民が真にお互いに協力して繁栄するという基礎の上に立って、問題の解決をはかるべきではなかろうか、かように思っておる次第であります。
  41. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 韓国との懸案は、ただいまの李ライン問題、それから助産の請求権あるいは在日朝鮮人の法的地位の問題、北鮮帰還問題、いろいろありますが、これらの問題は、今苦心惨たんして解決しようとかかるよりも、私の考えではまず韓国との国交を正常化して、その上でもってこの諸問題に取りかかることが非常にスムーズに行く道ではないか、かように考えます。国交の正常化をまず第一にはかるもよし、国交の正常化と合わせ兼ねてこれらの諸問題を解決するという方法もありましょうし、この二通りの考えがありますが、これについて大臣はどういうお考えでありましょうか。
  42. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 従来懸案になっておりますうちに、今お述べになりましたような諸問題がございまして、これがやはり非常に解決までに長い期間を要すると想定される問題と、割合に早く合意に達し得るのではなかろうかと考えられる問題といろいろあるわけでございます。しかし私は根本的に申しますと、繰り返すようでございますが、やはり双方の善意、理解というものが前提にならなければ問題の解決はできない、こういうように思いますので、まずもって新しい親善の関係両国間において作っていこう、こういう気持を押し進めることによりまして、今仰せられるような国交の回復の問題もできるでございましょうし、その後における諸懸案解決の問題もできるでしょうし、同時にできる問題もありましょうし、その後にできる問題もありましょうし、いろいろございましょうと思いますが、その手順等につきまして、今私の考えをここで申し上げることは、不適当ではなかろうかと思いますので、この程度のお答えをもってお答えにさしていただきたいと考えております。
  43. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 日中貿易促進会の鈴木専務の話が新聞に載っております。周恩来の意見として、今までの政経不可分の原則は変えないとしても、条件が熟すれば貿易をやっても差しさわりはないじゃないかというようなことを言っておるということが新聞に現われておりますが、こういうときにこそ日本はこの機会に乗ずべきだと思うのでございます。政経不可分の原則を変えなくても、条件のいかんによっては貿易ができるというのは、中共の今までの考え方と心境が変化しておるのではないかと思われる点もあるのでございますが、外務省は、これに対してどういう考え方を持っておられましょうか。
  44. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 昨日新聞に伝えられましたところの問題は、電報でありますし、ようわからぬところもあるのでありますが、大観いたしますのに、あれが非常にきわ立った大きな変化であると考えるのもいかがかというような気がいたしておるのでございます。すなわち前に社会党の淺沼さんが行かれたり、その後に自民党の松村さんが行かれたりした当時の話をいろいろ聞いておるところと、そう大して本質的に変わった意見というふうにも私どもとれないのでございます。ただ先ほど申し上げましたように、私は貿易というものは、やはり両国民の間に相互にこれを欲するという現実の必要というものがない限り、これを政治的に押しつけてみたって貿易というものは実際には成り立たないと思っておるのであります。またそういうことが現実に必要なりとするならば、これを政治的に押しつけるということも、これはいかなる社会、経済の体制をとる国といえども、その国の国民繁栄福祉を願うことがその国の政府の役目でございます以上、それをことさらに押しつけることもいかがであろうかというふうに思うのであります。そうした見地からいたしまして、これは現実の必要が相互において起こるならば、それまたけっこうという態度で私どもはこれを見ておるのであります。今お話の政経可分、不可分論も一時はございましたが、この複雑した近代社会の組織の中において、一体どこまでが政治であって、どこまでが経済であるか、そう明瞭に割り切ることといういうのは、実は口では言いますが、実際問題としては困難な面があるのではなかろうか。問題はそうしたスローガンあるいは一つの標語といういうような言い方よりも、現実の必要に応じて賢明にこれに処していくということが必要ではないかと思うのであります。ただ私は、各国がいろいろな社会、経済、政治的な体制をとっておりますが、やはり世界平和というものを考えておるのでありますが、世界平和を考えます以上は他の国にそれぞれ自分の国の体制を押しつけるようなことはやめなければ、真の世界平和はできぬのではなかろうかというふうに思います。やはりその国のあるべき姿は尊重して、その国の立場は尊重して、しかもその国の内政に干渉するというようなことは避けながらお互いにやっていかなければ、世界平和というものは達成されないし、真の意味で世界各国民の幸福というものは将来望み得ないのだという考え方を持っておるのでございます。
  45. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 それからさらに、これも新聞にけさ大々的に取り上げられた記事でございますが、ソ連を訪問した日本人に対して、フルシチョフ首相の言葉として、日本米国と離れて、すなわち条約を切り離して米国と離れて中立国になるならば、南千島の問題についてもさらに新たな立場から考慮するというようなことを言っておるわけでございます。それについてわれわれが不可思議に思いますことは、どうしてソ連や中共が、これほどに根強く、執念深く日本を中立国にしようとかかっておるのであるか、彼らのその言葉の裏にひそむところの意図は一体何にあるのであるか、こういう点について外務省の、特に大臣のお考えをお伺いしてみたいと思います。
  46. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 お答えを申し上げますが、南千島の問題につきましては、自民党といわず、社会党の諸君におかれても、これは本来わが国の固有の領土であるということで、そのわが国への帰属を主張しておられるのであります。従いまして、これは全く歴史的にあるいは地理的に成り立ちの上からいって、わが国に帰属すべき諸島嶼であるということをわれわれは申しておるのでありまして、停止条件付で日本の政治体制がこうなれば日本のものになる、こういうような筋のものではなかろうと私は思うのであります。従ってそういうお話というものは、実は私どもとしては理解することに苦しむのでありますが、しからば何がゆえにそうまで中立と言ってくるのであろうかという菊池委員の御設問に対しましては、私も、今日の複雑なる国際情勢がさようにさせるのであろうし、わが国の国内においても、そういうことを誘発せしむるような問題も、若干は先方に感ぜられるようなことが、あるいはあるのかもしれぬというようなことも思うのでありますけれども、これがゆえにこうしておるのだということを、私として先方の意向をそんたくして申し上げることは差し控えたいと考えます。ただ私は、先ほども申し上げたことを繰り返すのでありますが、他の国の立場というものはそれぞれにおいてあくまで尊重して、その国の内政に干渉するということはすべきでない、そういう立場をとっていないと、世界の真の平和というものは、現状においては達成できぬのじゃなかろうかということを憂える次第でございます。
  47. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 私の考えでは、彼らがこれほどに執念深く日本の中立を主張しておるのは、結局は米国と切り離して孤立無援の立場に追い込んで、共産圏に引きずり込もうという意図であろうというように考えておりますが、大臣はこの考えを否定しますかどうですか。
  48. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 そういうお考えも傾聴すべき御意見だと思います。
  49. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 それから、モスクワの見本市に日本の商品が出ましたが、その成果について簡単に外務省の考え方をお伺いすると同時に、また日本でもその次に見本市を開くということであります。この見本市に、ソ連のミコヤン副首相を招くということが伝えられておりますが、これは事実でございましょうか、いかがでございましょうか。
  50. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 ソ連におきます見本市は、非常に好評を博しておるように聞いております。ことにおもちゃなどは非常な好評であるし、日本の機械類についても、これならまことに信頼すべきものであるというふうな点で、日本の製品というものが非常に高く評価されておるということを、現地に行って参られました石井通産大臣から報告を受けております。  なお、ミコヤン副首相招聘ということがあるということであるがという御質問でありますが、実は私はまだこの問題について何も聞いておりません。
  51. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 それから日本にある米国の軍事基地の数でありますが、社会党の淺沼委員長は去年の暮れの日比谷公会堂の演説会で、日本には米国の軍事基地が最初八百あった、それが現在まだ五百残っておるということを言っております。私は不思議に思ってアメリカ大使館に問い合わせてみたところが英国、西ドイツ、フランスその他世界の四十二カ国、米国が安保体制を結んでおるところの米国の軍事基地は、全部合わせて二百五十一だということを聞いております。さらにまた防衛庁について調べましたが、幾つあるかといって聞きましたところが、慎重に調べました結果、一番多かったときが六十、現在まだ十六残っておるということをはっきり答えました。これに間違いございませんか、どうでしょうか。どなたでもけっこうですから御答弁願います。
  52. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 何をもって基地というかということでありますが、これは条約上は、御承知のように施設及び区域という言葉を使っております。従いましてその勘定の仕方でございまして、一般に基地という概念から参りますものは、大規模な演習場であるとかあるいは大規模な兵舎であるとかあるいは飛行場であるとか、こういうことになるのでありますが、これはやはりガソリン・スタンドを一個と数える、それから便所も一カ所と数えると、これは相当の数になるわけであります。問題は非常に多い場合は、とり方になろうかと思いますが、そのとり方の問題でございます。それをどういうふうに菊池委員が仰せられますか、おそらく防衛庁でお答えしたならば、それが正確であろうと私は思うのであります。
  53. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 大臣韓国訪問について私は実はびっくりしたのでございます。まだ国交が正常化されてない国、しかも今まで李ライン問題でさんざんに踏まれてけられてなぐられて、そうして日本に対してあらゆる暴虐を働きかけておったこの韓国に対しまして、たとい政権が変わったからといって、直ちにのこのこ行って慶祝の意を表するというのは、ちょっと軽率のように考えられてならない。私はいなか者で国際儀礼のことはよくわかりませんが、韓国がもし日本に好意を寄せて日本のためにいろいろと尽くしてくれた国であったならば、たとい国交が正常化してなくても直ちに行って少しも差しつかえないのでありますが、そういうようにこれまでさんざん日本に対して、あらゆる暴戻非道の海賊的な行為を働いていた国に対して、こちらの方から直ちに乗り込んでいく、これはどんなものか。日本に池田内閣ができても、向こうからはうんともすんとも言ってこない。だれも向こうからくるなんということはない。しかもそういう国に対して、新政権ができたからといって直ちに行くということは、どうもこれは世界に対して、日本の徹底せる媚態外交の現われであるという印象を与えやすいのではないか。韓国としてはもちろん歓迎するでありましょう。それはもう日本外務大臣が親善使節としてくるならば、向こうは優越感を満足せしめるがためにも、大いに双手をあげて歓迎するでありましょう。新政権といたしましては、また日本大臣を来させるということは非常に手柄のようにも考えて、国民に対する宣伝のためにもこれは非常に好都合でありますから歓迎するにきまっております。この外務大臣外交調査会におられたときはかんかんがくがくの硬論をはかれておったものです一たん朝に立つとこれほど人間は変わるものかと思って私は驚いておるような次第なんでございます。君子豹変という言葉はここいらから出るのではないかと考えたくらいでございますが、大臣はこういうことについてどういうお考えでございましょうか、心境をお伺いしたいと思います。
  54. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 お断わり申し上げておきますが、私は決して韓国を敵視したような言動を吐いたようなことはございません。ただ李承晩ラインというものが不適当であるということについての私の見解をあるいは言ったことがあるかもしれぬと思います。しかしこの韓国との問題は、これは日本にとってこういう関係にあるということはまことに不幸なことであろうと思っております。一番近い韓国であります。この韓国日本との間がもう少し融和して正常な関係になるということはこれはやはり私は国民としてだれしもが望まれることであろうと考えるのであります。しかしながら一時的にもせよ、非常な不幸な関係が続き、しかも韓国民気持とされれば、これまで日本に対する一種のおそれといいますか、そういうような気持を持って、そうして李承晩ラインも平和ラインという名前をつけてこれを固執しておったという事情もあるのではないかとも私は一方において思うのであります。といたしますれば、幸いにして韓国において新政権ができて、しかも対日敵視策というものをもって一つの国の中心の施策としておった政権が後退いたしまして、過去のことは一切水に流して、将来のための新しい時代を作りたいと向こうは言っておられるのでありますから、私どももやはり過去にこだわりませんで、私みずから参りまして、日本側が親善を希望する気持を表明することが、私は新たなる韓国との関係を築き上げます上に必要なのではないかというふうに思っておりますので、もちろん菊池委員のようなお説もあることを私は承知いたしておりますが、しかし、これが今仰せられるような結果になりましたときには、これはもちろん私の一身において責任をとるべき問題であろうと思います。しかし私は、人間というものはやはり好意と善意をもって当たれば、必ずそこに道は開けてくるという一つの確信を持っております。少しきざっぽい話でありますが、聖書の言葉を引くまでもなく、われわれは狭き門から入る方が、これはその門を発見する人は少なくとも必ず幸福の彼岸に到達できるものと考えまして、今までそういう関係がなかっただけに、私はあえてこの問題に当たってみたいというふうに思っておるような次第でございます。決してセンチメンタルな考え方で私は言っているのではなくて、これの手順につきましては、私は私なりに十分の考え方を積み上げておるつもりでございますので、どうか一つ、しばらく成り行きをごらんいただきたいと考えております。
  55. 菊池委員(菊池義郎)

    ○菊池委員 時間が参りましたので、ちょっと希望を申し述べまして終わります。私も、もとクリスチャンでありましたが、無抵抗主義がきらいでキリスト教徒を脱却いたしました。大臣が向こうへ行かれた以上は、向こうからも親善使節として日本大臣級の人、それ以上の人が来てもらうように約束を取りつけておいでになっていただきたい。これを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  56. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 戸叶里子君。
  57. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 私はいろいろお伺いしたいこともございますが、時間がございませんので、ごく二、三点に限って質問申し上げたいと思います。先ほどから、先ごろ中共から出されましたところの貿易再開の問題、貿易三原則の問題についての質問がございました。それに対しまして外務大臣が、貿易というものは双方が希望してくれば、無理をしなくても自然にできるようなものだというふうな見解をお述べになったわけでございますけれども、もちろん安定した貿易というものは、今回の場合を考えましたときに、政府協定ということが一番望ましいことで、その方向に向かっていかなければならないことはだれでも認めると思いますけれども、その段階においての民間契約とかあるいは配慮物資というようなことも、中共側から一応言われてきているわけでございます。それに対しましても、これは大して変わった発言ではないから、もう外務大臣としてはほうっておいていいのだというような熱意のないことで片づけていいものかどうかということをもう一度お考えになっていただきたい。なぜならば、おそらく外務大臣自身も、関西等の財界人あるいはその他の人々にお会いになったときに、ぜひ中共との貿易は二年半も行き詰まっておるのだから、日本の経済の将来ということも考えてやってもらいたいという声はお聞きになっていらっしゃると思うのです。ことに新安保体制のもとに貿易の自由化というようなことに対処する意味におきましても、やはり中共との貿易というものは一日も早く正常な形にならなければいけないということを私ども考え、また多くの人がそれを望んでいるのでございますから、もう少し積極的に、政府協定にまでいかないにしても、何かお考えになっていいのじゃないかと思いますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。たとえば民間の経済人を出すとかしてやるようなお考えもない、全然このまま黙視しているのだというふうな態度をおとりになるかどうか、念のためにこの点を伺っておきたいと思います。
  58. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 貿易というものは相互の必要によって生ずるということを申し上げたのは、何もそれだからただほっておけばいいのだというようなことではもちろんないわけでございます。ただやはり問題は時期がございます。ことに中華人民共和国の関係は、非常に国際的にも注目されておるところでございますし、また一方中共側から考えましても、日本の最近の実情というものも、いろいろ先般来劉寧一尺その他来られまして認識されておることかと思うのであります。そういう関係に立って相互が賢明な判断をする、その上に無理をせぬ結論が出ていくということが、この際としてはいいのじゃないかという私の卑見を申し上げた次第でございます。ただこういう電報があったからすぐ外務大臣はどういうふうにするということになりますことが、長い目で見ていいことかどうか、そういう点について私は慎重に発言をしておるつもりでございます。
  59. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 今の御発言は、今までの外務大臣よりも一歩進んでおるように私は受け取っていいのじゃないかと思います。なぜならば、電報があったからといってすぐには飛びつけないけれども、ある程度研究をした上で考えてもいいというふうに含みのある答弁として了承したいと思いますけれども日本の今後の貿易というものを考えましたときに、中国が建設途上にあり、非常に日本からも買うものが多い。また日本も入れるものが多いというような状態でございますので、特にこの点は小坂外務大臣に御考慮願いたい。この点についていろいろ申し上げておりますと時間がなくなりますので、私はそれを要望いたしておきます。さらに、先ほど外務大臣外交演説と申しますか、国際情勢に対する御発言を伺いまして、大体小坂外務大臣外交方針というものは、今までの外務大臣と同じような態度をもって臨んでおられるということがわかったわけでございますが、せっかく期待された外務大臣がお出になったのでありますから、何かユニークな見識ある小坂外交というようなものをお持ち合わせはないかどうかということを私ちょっと承ってみたいのです。
  60. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 共の貿易の問題に対します私の発言は、私は言った通りでございますから、解釈の方は皆さん方でしかるべくお願いいたしたいと思います。それから外交の基本に関しましては、私先ほど申し上げた通りで、これは変わらないのであります。しかし世界情勢というものは常に動いておるものでございますから、その動きの中で全般の世界の大勢をよく熟考しながら、その動きを敏感に取り入れていくということは、一方においてまた必要だと思うのであります。すなわちイラスティックに弾力的にものを考えるということも一方において必要なことと思うのでありますが、私不敏にいたしましてあまりユニークな世間をあっと言わせるような知恵もございませんので、非常に平凡な外交をやっていくというふうにお考えいただく以外に、私の能力を越えていろいろ気負ってみてもいたし方のないことだと思います。その点は一つあわれみを持ってごらん願いたいと思います。
  61. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 大へん外務大臣、低姿勢にお出になりまして何とも言えないわけでございますけれども、私は、別に世間をあっと言わせるというような外交じゃなくて、やはり外交に対する基本的態度というものがもう少し小坂外務大臣らしいもの、すなわち野にあるときには非常に教養のある、そしてまた進歩的な人とされておりましただけに、そういうお考えを盛った外交方針を進めていただけるのじゃないかというような期待を持っておるわけでございます。そこでそういうようなことを伺ったわけでありますが、私がなぜそういうことを心配するかといいますと、今までの政府のとっておりましたような外交方針のもとに国連総会に臨んでいかれましたときに、いろいろな問題が出てくるのではないかと思います。たとえば今度の九月二十日から開かれますところの国連総会日本外交演説をされるようでございますが、それをされる場合の基本的な立場と申しますか、構想といいますか、そういう点をちょっと伺っておきたいと思います。
  62. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 基本的な構想と申しましても、われわれはわが国が自由陣営に立っておる、しかも世界平和をその立場から要望しておる、そして国連というものを唯一の世界平和の維持機構であるというふうに考えまして、国連中心の外交をやっていこう、しかも善隣友好と申しますか、近隣の諸国に対しましては特段に仲よくやっていこう、そしてその仲よい関係世界中に及ぼしていこう、こういうような平凡な考えであるわけであります。外交と申しますものは、戸叶委員に申し上げるまでもなく相手のある問題でございますから、自分がそう思いましてもそのまま通用するということもないわけでございますが、基本的には私どもはあくまで平和を愛好するということを基本としていきたいと思っておるのであります。われわれは実は財産も乏しいものであります。しかも武力を背景にしたような力というものも全くないといってよい状態であります。そこでわれわれの一番大きな資産と考えるべきものは信頼感であろうと思います。国際的に日本信頼するに足る、尊敬するに足る国であるという実体を日本自身において持つことが必要であろうということで考えております。なおわれわれ平和を要望する立場から申しますと、今日の科学兵器の進歩、ことに科学技術の驚異的な発展によりまして、今までに想像もできなかったような兵器が作られる、あるいは空間が大気圏外を越えて利用されるというようなことでございますので、軍縮ということは、自分で軍備を持たぬものがいいかげんな、よけいなことを言うなというような考え方も一方にあるようでありますけれども、私はそうした立場にある、力も金もない日本がほんとうに世界の平和を心から要望するという立場から国連に訴えていくという立場こそ、私はとるべき立場ではなかろうかと思っておるのであります。
  63. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 世界の平和を念願するという理想、こういうお考え方は私ども全く同感でございます。しかしそれまでに述べられました態度は、ごく平凡な態度であるように淡々と述べられましたけれども、その中にも非常に矛盾があるのではないかということを私はおそれるものでございます。なぜならば先ほどどなたかもちょっと触れられましたけれども、今度は国連総会に新しい国が十七カ国ですか、加盟しようとしておる。その中で一番多くの国々はどこかと申しますと、長い間植民地政策で苦しんで、そして戦ってきたアフリカの諸国が非常に多いわけでございます。しかも日本の国はバンドン会議ではっきりとアジア・アフリカ・グループに属するということを表明しているわけでございますから、その立場に立って国連総会に臨んでいくといたしましたならば、一方におきましてこの間のような新安保条約締結して、アメリカとだけ非常に軍事体制を強化するというような立場に立って、アジア・アフリカ・グループから一体どれだけの信頼を得ることができるか、こういうふうなことが私は大きな問題になってくると思います。しかも先ほど帆足議員が言われましたように、たとえばオランダの船が日本に寄航するということでインドネシアが非常にふんまんを述べているわけでございますけれども、これもその面だけで見れば了解を得るように努力するといって片づけられるかもしれませんけれども、私はもっと外交の根本的な考え方というものをここではっきりと立てておいていただかなければならないと思います。たとえばAAグループの立場にあるというバンドン会議を守るとするならば、どうしてもそこに国連においての日本の立場というものがむずかしくなり、日本基盤としているアジア、アフリカからも何となく不信の、あるいは疑いの目をもって見られるような結果になるのではないか、こういうことを心配するものでございますけれども、この間の調整をどういうお立場に立っておとりになろうとするかお伺いしたいと思います。
  64. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 申すまでもなく、国連世界の平和を維持するための機関でございますから、できる限り世界平和の維持のためのプリンシプルが国連の中に出てくることが一番望ましいと私は思うのであります。今お話しのように、現在国連は八十二カ国だそうでございますが、本年度十六カ国ふえるそうであります。その中の十はもとのフランス関係でございます。従って九十八になるわけでございます。この膨大な数の国々が一つのプリンシプルを立て合うということは、結局それぞれの個々の国の立場ということだけではいけないのではないか、全体に一つ信頼と協力という関係を持ち得るようなプリンシプルを立てる必要があると思うのであります。そういう立場から私は日本の立場を考えていきたいと思っております。もとより各国間のいろいろな国際的な慣例、慣習というものはございますので、国際公法というものはそうした慣習法であるわけでありますから、そうした従来の慣例を十分尊重しながら、しかも新しく出てきた諸問題を解決するにはいかにすべまかということを考えていくべきでございます。たまたま一つの問題が出たから、そのためにセクト主義であくまでも押していくということでは、国連の将来の権威が保てないのではないかというふうにも考えるのでありまして、さような立場から問題を考えたいと思います。
  65. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 今の小坂外務大臣の御答弁は、考え方としてはどこの国とも平和を願って、世界各国信頼を得るというプリンシプルを持っていくんだということで、その点はわからないでもないのですが、ただ個々のいろいろな問題にぶっつかりましたときに、どうしても東西の両陣営の意見の対立というようなこと、あるいはAAブロックできめなければならないというような問題に直面するわけでございますけれども、そういうふうなときの立場をはっきりして国連にお臨みになりませんと、日本が理想としては東西の平和のかけ橋になることはまことに必要なことではございますけれども、AAグループの中に足場を置いた立場においてやるのか、こういうような点が非常に大きな問題になってくると思うのであります。ただ理想だけで大丈夫、どこの国とも今の立場で、アメリカと軍事体制を強化しておきながら、アジア・アフリカ気持もよくわかってやれるんだというようなことでは、国連総会でおそらく行き詰まりを来たすのではないかということが心配されるわけでございますけれども、この点をもう一度念のために伺っておきたいと思います。
  66. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 私は今のプリンシプルで問題が処理できるとは考えておりませんが、個々の問題が出ましたときには、そのプリンシプルにのっとりまして解決できる、かように思っておる次第でございます。
  67. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 今までの外務大臣のときにも、そういうことはないというようなお話でありながら、実際問題としては国連で窮地に陥ったような問題も出てきておるのを知っております。今度は特にアフリカの諸国が独立して、しかも強い勢力になって、国連地位を占めるわけでございます。私は特にこの点、小坂外務大臣が何か少し考え方を変えて出ていっていただきたい、たとえばインドのネール首相の言っておるような中立的な立場をとって臨まれたらスムーズにいくのではないか、しかも中立外交は廃止するということを自民党の政策で言っておられますけれども世界の世論というものは、だんだん中立交外に耳を傾けてきているように私は感じております。たとえばマンチェスター・ガーディアンのごときも、日本の中立に対してはアメリカも考え直せというようなことをいっておりますし、それから昨年暮れアイクがインドを訪問してから、新しい視野からアジア、アフリカの中立主義国を進んで認めてこれを助けるような態度をとっておりますし、それからまたウォルター・リップマンのごときもこの安保条約を通して、その中立というものが、むしろアジアの平和に役立つのじゃないかというようなことを言っている。こういうような世論が起きてきておりますので、この中立というものも、一がいにこれはだめだというような前からの意見を踏襲されずに、もう一度考え直していただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  68. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 インドにおける中立主義というものとわが国において言われまする中立主義というものの間には、若干隔たりがあるように私は思っておるのであります。そこで一般的にわが国で言われますような無防備中立と申しますか、そうした考え方が一体わが国の安全を保障し、しかもわが国民の経済的な福祉繁栄を保障するに足るものであるかという点につきましては、私どもの今までの研究では、残念ながらそうはいかぬのじゃないかというふうに思っております。ことに国として存立の基盤を先天的に地理的に制限されておるわけでございますから、日本のような立場の国がインドと同じような考え方をとるといっても、そこになかなか簡単にいかぬ問題もたくさんあるわけでございます。あるいはまた中立ということを言いながら結局衛星国になってしまっている国の実例もあるわけでありますし、しかも東ヨーロッパの国民の経済的な状態も、われわれいろいろ調査いたしますと必ずしも幸福というところまではいってないようにも思いますので、私は世界の問題を考えると同時にやはりわが国民の繁栄福祉ということを考え、その方向にいくためにはわが国はどういう立場をとったらいいかということを考えるような立場でいきたいと思っておる次第でございます。
  69. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 この問題はあとでまたゆっくりいたしませんと時間をとりまして進みませんから、私は次に移りたいと思います。  次にお伺いしたいのは沖縄の問題であります。先ごろ沖繩の琉球政府主席が日本に来られまして、おそらく外務大臣ともお話し合って、日米琉球懇談会というものを設立して沖繩のいろいろな懸案事項解決しようというふうなことを提唱されたと聞いております。そこで時間の関係上私はまとめて申し上げますが、その内容は一体どういうふうなものであるか。たとえばこの間富士山の演習場に沖縄から海兵隊がやってきましたけれども、そういうふうなものが来るような場合にも具体的に話をするのかどうか。あるいは戸籍の単一化という問題も出ておりますし、いろいろ出ておるわけでございますけれども、どの程度にこの懇談会で話をされようという目的でお作りになったのか、ちょっと伺いたい。
  70. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 大田主席がお見えになりまして数々の問題をお持ちになりました。たとえばその中にはマイクロ・ウェーブの問題等も入っておるのでありますが、そういう点につきまして日本としてもできるだけわれわれのできる範囲の経済的な負担には応じましょうという気持お話をいたしたのであります。懇談会の構想につきましては、ラウンド・テーブルで日米琉の各国が話し合っていったらどうだろう。しかし御承知のように施政権者はアメリカであるわけでございますからそのイニシアチブはアメリカの方がとる、こういうような構想ではどうかということでございました。私はけっこうなことじゃなかろうかと思っておる次第でございます。しかしこの問題はどうも日本だけできまる問題ではございません。そうしたわれわれの意向はアメリカ側にも申しておるわけであります。
  71. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 そうしますと、あまり政治的な問題に触れないで、軽い気持で問題が起きたときに対処するというふうな程度のものに了承していいわけかどうかということを伺います。それから時間の関係で、進めていきたいのですが、私はそのときにお話が出なかったというので非常に不思議に思ったのですけれども、昨年の六月三十日に宮森小学校にジェット機が落ちまして非常に多くの死傷者を出しました。そしてなくなった方に対しましては、全体で十七名に対して相当の補償金を出しているわけでございますけれども、それも六月十三日にアイクが訪問されるというので大急ぎで出されたということも聞いております。その後負傷者に対しましては二百十名ありまして、そのうちの百二十六名が受け取っておりますけれども、それは要求額のわずか七%しか出されなかった。それまではいいにいたしましても、まだ受け取らない者、それから査定をされない者が七十八名くらいいるわけでございます。その人たちの実際の写真を見せてもらいますと、小学校の子供などがひどい傷を受けているわけでございまして、これをそのままほうっておかれるということは、私はちょっとどうかと思うわけでございますけれども、その問題につきまして実は十五日に官房長官に申し入れをいたしました。そのときにおられました南方連絡事務局長ですか、この方がおっしゃいますのには、外務省の方とよく相談してみないと、話が進んでいるはずだからあまりアメリカを刺激してはいけないというようなまことにおかしな答弁を私は受けております。そこでいろいろ申してもかえって悪いと思いまして申し上げなかったのですが、これはおそらく黙っていればそのままになって、多くの子供たちが片輪になって死ぬような場合が起きないとも限らないわけであります。アメリカの方でも軍医を出したわけですけれども、その軍医ももう引き揚げてしまったそうです。これに対して外務省の方で、私どもが十五日に申し入れたあと何らかの交渉をなさいましたかどうか、そうしてその交渉の結果はどうなっているかどうかちょっと伺いたいと思います。
  72. 伊関説明員(伊関佑二郎)

    ○伊関説明員 私が聞いております数字では、負傷者が百六十名おる。そのうちの百三十九名までは話がついて解決しておる。二十一名がまだ未解決になっておりますが、これはいろいろと資料を出す点もございましょうし、あるいは補償額についての話がつかないということもあると思います。いずれにいたしましても、大体近く解決するのではないかというふうに私どもの方は聞いておりましたけれども、ただいまお話がございましたのでもう一度詳しく調べまして、もしそういう事情でございますならば、また交渉いたしたいと思います。
  73. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 人数の点で現地から私どもが聞いたのと今の伊関さんのおっしゃったのと違うわけでございますけれども、これは一体どういうことになっておるのでしょうか。あとでお調べをいただきたいと思います。それから近くこの補償問題が解決するということでございますけれども、近くといいましてももう一年以上たっているわけで、病気の方はどんどん進んでいっているわけです。ですからもう少し近いという範囲を狭めていただいて、もうきょうあすにでも何とかお話し合いをつけていただけたらというふうに思うわけでございますけれども、その点をぜひやっていただきたい。私どもが申し入れしてからもうすでに十五日もたっているにもかかわらず、話し合いをしたいということでございますけれども、私たちが申し入れをしたあと一体アメリカ側とお話し合いになったのですかどうですか、その点も伺いたいと思います。それからもう一つお伺いしたいのは、厚生省で医療課長ですか医務局長ですか沖縄を訪問されたそうですけれども、医療関係のこととらい関係のことは視察したそうです。ところがこういうふうな特に見ていただかなければならないけがをした人たちのことは、そのままにして、見てこられなかったということですけれども、一体それはどういうわけで見てこられなかったのか。せっかくいらっしゃったのですから、やはりけがをされた人たちのことも見ていらっしゃって、そうしてなお補償の問題を考えてあげるべきではなかったかと思うのですけれども、その点もお伺いしたいと思います。
  74. 伊関説明員(伊関佑二郎)

    ○伊関説明員 厚生省の係官が参りましたことにつきましては、何も私は聞いておりません。それから先ほどお話をされましてから十五日もたっておるというお話でございますが、あるいは私の方の係官がやっておるか、その点私の耳にまだ入っておりませんが、もし調べまして何もやっておらぬとか、あるいは係官のところで解決しないならば、私がやります。
  75. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 外務大臣も今お聞きの通りでございますから、どうかその点を早く促進していただきたいと思います。もう時間がございませんから私はやめますが、委員会が今度いつ開かれるかちょっとわかりませんから、個条的に質問をしたいと思います。アメリカの国会で六百万ドルが小笠原の補償として可決されたようでございます。そこで聞くところによりますと、これは精神的、物質的な見舞金だというようなことをいわれるだけで、別に内容が説明されておらないようでございますけれども、小笠原へ帰れない人たちの身になりますと、一体これがどういうふうな補償なのかということを非常に心配をしているわけでございます。しかも沖縄が一括払い方式をアメリカでとろうといたしましたときに、島民の反対によって年次払い方式にしているのに、今度だけどうして小笠原を一括払いにしようとしているのかということも非常に不安の対象になっておるわけでございます。そこでどういうふうな考え方でこの六百万ドルというものがきめられ、そしてまたどういうふうに日本が受け取ろうとしておるかということをまず基本的に伺いたいと思います。それからもしも休会中にでも補償金の性質というものがわからないままに交換公文が取りかわされるというようなことになりますと、あとで取り返しのつかないような問題も起こるのじゃないかと思いますので、この点もどういうふうないきさつになっているかをお伺いしたいと思います。さらにアメリカ側がいっておりますのは、支払いの対象となる期間は一九五二年の四月二十八日から合衆国が同使用、利得、行使を放棄するまでの間とするということをいっているわけでございますが、そういうふうなことをいわれるとしますと、これはサンフランシスコ条約の違反になるのではないか。なぜならば、桑港条約では信託統治にする間施政権の行使をするといっておるわけでありまして、これは条約違反になるのではないか、こういうふうなことを考えるわけでございますので、これらの点をお答えいただきたいと思います。松本委員からこの問題をお聞きするはずでございましたが、時間がございませんので非常に急ぎましてまとめて質問いたしましたので、まとめてお答えをしていただければ幸いと存じます。
  76. 石井説明員(石井通則)

    ○石井説明員 小笠原の問題に関しましては、従来から小笠原の島民のさしあたっての帰島の問題と、それから島民が帰れないために生ずる損失に対する補償を要請する、二つの問題につきましてアメリカ側と外務省を通じて話しておったわけでございます。帰島の問題はさしあたりなかなかいい返事がもらえませんでしたが、補償の問題につきましては、いろいろ経過はございましたけれども、アメリカにおきまして六百万ドルの補償を日本政府に払うという法案がアメリカの議会で通過したようでございます。これに関しましては法律的な問題もいろいろございましたけれども、アメリカ側といたしましては何回も何回もということは国内の事情として非常に困難であって、これを一ぺんに支払いたいというような希望が出たわけでございます。これに関しまして小笠原島民とも十分意見を交換いたしましたが、小笠原島民もそれでけっこうであるということで、一ぺんに六百万ドルの金を受け取るということも了解がなったわけでありまして、その意向に基づいてアメリカ側では議会に法案を提案したように聞いておるのでございます。これらの性格その他についていろいろ関係者の方から意見やら希望も出ておりますが、アメリカの法案に対していろいろな議論等がありまして、これらについてアメリカ側からおそらく外務省に何らかの申し出か通告があるだろうと思います。アメリカ側から話が出まして、外務省において何らかの形で覚書といいますか文書を取りかわしまして、その上で六百万ドルが支払われますと、あと国内的な措置としての配分については総理府で担当いたしたいというように考えておりますが、まだアメリカ側の法案も通ったばかりで、大統領の署名がされておるともはっきりまだ聞いておりませんし、またそれについての詳細な日米間の話し合いもまだできておりませんので、これらの対象その他の問題につきましては、それらの話の進行状態を勘案して配分をやっていきたい、こういうふうに考えております。島民の人たちも熱望しているのでできるだけ早く慎重に検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  77. 戸叶委員(戸叶里子)

    ○戸叶委員 もうこれでやめますけれども、ただ島民が非常に賛成して喜んでおるというようなお話ですが、これに対して非常に危惧の念を持ち、不安を感じておる人たちがいるわけです。そういうふうなお話をお聞きにならないのでそういうふうな御答弁をされますけれども、一方的な意見だけで判断されては私は問題が残るのじゃないかと思います。そこで交換公文なり何なりアメリカと取りかわす前に、もし委員会が開かれませんでしたら、非公式でいいですから、交渉された内容とか、さらに向こうでどういうふうな考え方でこの補償をするんだというような議論の過程、こういうふうなもののたとえば速記とかそういうものを前もって出していただきたいということを私は要望します。それを見た上でまた政府に聞きただすべきはただす機会を作っていただきたい。これを要望いたしまして、時間がございませんので、残念ですけれどもこれで私の質問を打ち切りたいと思います。
  78. 本名委員長(本名武)

  79. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 委員会開会の冒頭に外務大臣から外交方針に関する演説がございましたが、従来の自民党の外交政策に何ら新しくつけ加えるような話はなく、抽象論に終わりました。おそらく就任早々であるからでありましょうが、追ってりっぱな新大臣外交方針を打ち出すことと思います。その上で一般的な問題は質問したいと思いますが、きょうは時間があまりありませんので、当面の外交上の問題について二、三お尋ねをいたします。新しい安保条約が自民党の一方的な単独強行採決で一応成立をして、国際法上は効力が発生したというような形になっておるのでありますが、この新安保条約を国際連合の事務局へいつ登録をしたか、またこの条約に付属する交換公文あるいは地位協定、こういうものはどうなっているか、それをお尋ねしたい。
  80. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 日にちについては、まだ手続中でございまして、さような手続を完了いたしましたらあらためて御報告申し上げます。
  81. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 そうしますと、条約も、交換公文も、協定もいずれも全部未登録であるのかどうか。それで今後政府が登録しようとする外交文書はどれどれであるか、明らかにしてもらいたい。
  82. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 関係文書は全部登録する考えでございますが、日にちのところは、今申し上げましたように、手続中でございまして、ちょっとわかりません。
  83. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 登録すべき外交文書全部といいますが、その全部の名前を一つあげていただきたい。
  84. 高橋説明員(高橋通敏)

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。どういう条約を登録するかどうかということにつきましては、これはいろいろ慣行があるわけでございます。われわれといたしましても、もちろん安保条約自体及び行政協定その他関係文書をできるだけ登録する所存でございます。しかしまだどの程度どのような手続をもってやるかというところまで進んでおりません。
  85. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 そうしますと、重ねてお尋ねしますが、新安保条約、いわゆる行政協定地位協定それから吉田・アチソンの交換公文に関するもの、それから相互防衛協定に関する交換公文、それから条約第六条の関係交換公文、こういうものですね。すなわち条約一つ交換公文が三つ、それから地位協定、この五つのように思うが、このほかにもあるのかどうか、少なくともこの五つは全部登録する方針であるかどうか、お尋ねしたい。
  86. 高橋説明員(高橋通敏)

    ○高橋説明員 この条約協定その他関係文書であるか、正確なところはこれは調べがついておりませんものですから、いずれはっきり調べましてお答え申したいと思います。と申しますのは、登録の場合は国際連合の側でどういう条約を、どの程度のものを登録するかという一般慣行ができ上がっておりますから、その慣行に従って全部処置しよう、こういうふうに考えておりますので、暫時お待ち願いたいと思います。
  87. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 その慣行に従えばどれどれになるのですか。それから同時にアメリカ側としてはアメリカの慣行上どの部分までやるのか、今の五つ全部をやるのか、そのうちの一部であるのか。
  88. 高橋説明員(高橋通敏)

    ○高橋説明員 登録の方はアメリカともちろん双方協議の上でやるわけでございますから、よく協議いたしまして、そしてたとえば今までのこれに関連する同種の条約というものがずっと登録になっておりますから、その登録の慣行に従いまして登録しよう、こういうふうに考えております。ただ、もちろん安保条約それ自体は当然やります。地位協定もそうでございますが、それ以外のどの協定までということになりますと、もっとよく協議し、調べまして、慣行を勘案しましていたしますので、ちょっと今即答するのはお待ち願いたい。
  89. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 今条約局長の答弁によれば、安保条約協定日米両方とも必ず合意の上でやる、他の三つの交換公文はどうなるかわからぬ、こういうことであるが、そのアメリカ軍隊の地位協定はアメリカの国会承認の対象になったのかどうか、もしなっていないとすれば、アメリカ側として上院の議決を経ていないものも従来国際連合事務局へ登録した例があるかどうか、なおまた交換公文、こういうものをアメリカ政府は一体登録するかどうか、すると政府は見込んでおるのか、しないと考えておるのか、それを一つお尋ねしておきたい。
  90. 高橋説明員(高橋通敏)

    ○高橋説明員 地位協定が、国内手続で国会その他憲法上の手続に従って承認を受けたかどうかということと、登録するかどうかということは、これは御承知の通り全く別問題でございます。それから国連における登録と申しますのは、これはもちろん秘密条約の廃止のため、公開のためでございますし、どの条約を登録するかというような点は非常な技術的な問題であろうと考えております。従いましてわれわれとしましては、御承知の通り秘密的なものは全然ございませんので、これはもちろん全部登録することを何ら妨げるものでも何でもない、このように考えております。ただ、それではどこまでどういうふうにしてやるかということは、これは技術的な慣行や手続の問題でございまして、私どもは実際そのように考えております。従いましてそのように考えて登録の手続をしようと考えております。もちろんどれを登録するのはやめるとか、するとかいう問題ではなくて、必要であれば全部登録することも何ら差しつかえないのでございます。この点は技術的な点でございますから、一般国連における慣行に従ってやっていこうと考えております。
  91. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 今条約局長は、技術的な手続的なものだ、こう簡単に片づけておりますが、これは単に安保条約と行政協定だけを登録したのでは問題があると思う。ことに吉田・アチソン交換公文、それから条約第六条の事前協議に関する交換公文、このようなものは、新安保条約と一体不可分のものであって、これの効力に重大な関係のあるものであるから、一つだということで御審議を願いたいというたびたびの言明があったのであります。従いまして、もし条約地位に関する行政協定だけで、事前協議に関する第六条の交換公文、あるいは吉田・アチソンの交換公文、国連の軍隊の地位に関するもの、こういう重要な、条約と一体不可分と、政府がはっきり言明しておるこれらの交換公文が登録されないということになると大へんだ。国連憲章第百二条によって、もし日米間にこういう問題に関して紛争が起きた場合には、国連解決してもらう方法がない、二国間で話し合いがつかなければこれは一体どうなる。アメリカの方はこんなものは技術的で、手続だから、こんな交換公文は必要ないと言うでしょう。しかしながら日本にとっては国家の運命に関する重大な問題である。事前協議のごとき、そういうものに関して紛争が起きて、これは事前協議にかけなければならないというのに、向こうはかけなくていい。そうして紛争が起きる、解決がつかない、国連関係に訴えることもできない、国際司法裁判所もやはり登録されない外交文書については何ら提訴を許さない、裁判もしない、こういうことになると、結局力の強いアメリカに押しつけられて条約交換公文は空文に帰するという重大な問題になるのであるが、政府はこれに対して技術的、手続的と称して、交換公文であるからどうでもいいんだという考えを持ってはこれはとんでもない、日本の運命に関する問題である。外務大臣どう考えますか、一つはっきりお答え願いたい。
  92. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 今局長が技術的と申しましたのは、その手続をやることが技術的ということで、いつになるかまだ手続中だという意味で申し上げたのでございまして、まさに竹谷委員お話の通り、交換公文あるいは往復文書に至りますまで国会に一括して御審議を願いましたものはすべて全部登録する、こういうふうにわれわれ考えております。その意味で冒頭に全部と申し上げたのでありますが、局長の申し上げました事務的手続というのは、その手続が進行中の交渉過程を事務的と申し上げた次第でございますから、さよう御了承を願いたい。
  93. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 そうしますと、今の外務大臣の答弁でいささか安心したのであるが、国会審議にかかったすべての条約協定交換公文並びに往復文書それらは一括して全部国連事務局に登録をするという方針であると言うが、これは条約局長に聞きますが、一体これはアメリカは承認しますか、これらの登録に全部賛成しますか、この見通しを承りたい。
  94. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 私からはっきり責任を持ってお答えいたします。全部登録することに私は確信を持っております。異議はもちろんないものと思います。
  95. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 この点は非常に重大な問題であり、今外務大臣からはっきりした言明がありました。すべての安保審議のために上程された交換公文まで含めた外交文書を登録することについて、アメリカと合意ができる確信を持っているということでありまするが、これはぜひ必ずそれを実行してもらうことを責任を持ってはっきりやってもらいたい。次に私は大韓民国のことをお尋ねします。日本は平和条約によって韓国の独立を承認いたしておりますが、一体日本は独立を承認した韓国という国家を、国家として承認しておるのかどうか、事実上そういう独立国家があるようだという状態でいいのかどうか、この点政府の見解をお尋ねしたいのであります。
  96. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 ただいまお話のように、わが国はサンフランシスコ平和条約におきまして朝鮮の独立を承認いたしておるのであります。ところが朝鮮に二つの政権が存在しておるのは事実でありますが、本来朝鮮一つ国家として独立を回復したものと国際的に認められておるものでございます。そこでこのような一つの国について法的に二つの政府を認め得ないという国際法上の原則がございまして、自由諸国家三十五万国が韓国を、ソ連圏十一万国が北鮮をそれぞれ朝鮮代表政府と認めておるのでありますが、いずれの国も朝鮮に二つの政府があると認めていない実情でございます。自由諸国家三十五カ国が韓国朝鮮における代表政府として認めております基礎は、一九四八年十一月十二日国連第二総会決議でございます。この決議は「大韓民国政府朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に有効な支配と管轄権を及ぼしておる政府であり、かつ右地域の人民の自由な意思の表明である選挙に基礎を有している合法政府であること、この政府朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言し、さらに国連加盟国及びその他の国が大韓民国政府との関係を樹立するにあたっては右の事実を考慮に入れるべきである」と国連として勧告をいたしておるわけでございます。さようなことでございます。
  97. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 今国連総会の決議をお読み上げになったのであるが、この国連総会というのは、今勧告するとあるようにこれは勧告するだけであって、別に国連でもって決定的にきめたというわけにはいかない、決定権があるのは理事会だけであります。それに日本は必ずしも拘束されない。日本としては代表部を交換することに約束をしながら、向こうの代表部だけは来ておるが、こっちは受け付けてくれない、いろいろ学説や何か、国際法上の著書等を調べてみましても、正式の機関である領事を派遣しても必ずしも国家承認にはならない、まして代表部というどういう性格のものかはっきりわからないものを、ただ朝鮮がこっちによこしているだけで、こっちの方は受け付けてくれないというふうな状態、しかも竹島を不法に占領したり、ことに国際法上違反である李ラインというものを設けて漁業上の公海における日本の当然の権利を制約するというようなことをあえてするこの韓国が、一体わが国にとって、これはサンフランシスコ平和条約によって独立は認めましたけれども日本として正式に一体承認しているのかどうか、わが国は一体大韓民国なるものをはっきり国家として承認をしているという考え政府外交関係をお取り扱いになっているのかどうか、その点をはっきりしていただきたい。
  98. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 韓国の問題につきましては、今申しましたように国連の決議がありまして、そうして自由選挙が南鮮において行なわれ、大韓民国というものができたわけでございます。北鮮の方はそれに従わなかった。そこでわれわれ自由諸国家韓国というものを認めておりますので、日本は自由諸国家の立場に立って韓国を認めておるわけでございます。しかしこれはあくまでその支配権の及ぶ範囲ということになろうかと思うのであります。一方北鮮においていわゆる地域的にそこに支配権が及ぶ政府があるということは、これは現実の問題であろうと思うのであります。そこで韓国との間には幾多の漁業問題その他の解決すべき問題が山積をいたしております。われわれはこういうままで放置しておいてはいけない。まず韓国との間にただいまのお話のありましたような正常な関係を持っていくということに努めて、しかもそれが国際的な緊張を増すような方向でなくこれを処理していきながら、日韓両国の間に正常な関係をもたらすようにすることがこの際急務であろう、かように考えておる次第でございます。
  99. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 外務大臣の答弁いささか不明確であるが、日本韓国を正式に国家として承認しておるというように聞き取れる。その正式に承認しておる政府が、日本代表部を受け付けない。また日本人韓国に行くことを認めない。また無法な線を引いた李ラインにおいて、平和なる漁民を抑留して帰さない、あるいは漁船を没収する。そういうような国を一体独立国家としてはっきり承認をするという態度について、私は非常なる疑問をもつ。また国際連合の勧告があったからといって、これは勧告であって拘束を受けるものではない、そういうものでありまするが、しからば代表部の問題ですが、どうなっているのです。これはたびたび外務委員会で問題になっておるが、こういうものも認めない、そういう国ですね。今外務大臣が出かけていって親善をやると言うのだが、むしろ向こうからお願いに来なければならぬ筋だと私は思う。こちらは正しくまじめに、権利を侵害されながらも黙っておる、がまんをしておる、こういうのでありまするが、私はもっとしっかりした外務大臣の自主的な見解を承りたい。
  100. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 若干不明確なところがあるとおっしゃいましたが、実は韓国承認するということは、結局国交が韓国との間に成り立ちまして、そこで正式な承認ということになるわけでございますので、われわれは韓国というものの承認を前提として交渉をしようということになろうと思うのであります。明確に申しますとそういうことになると思います。そこで現在の日韓の関係というものは、このままでいいということは竹谷委員もお考えにならないだろうと思います。そこで理屈をいいましてこれを強引に理屈のようにただ従わせるという考え方だけでは、従来の関係からしてこの問題は解決できないのじゃないかと私は思いまして、新たなる構想に立って日韓の問題を解決すべく交換ということを思い立ったわけでございます。さように御了承願います。
  101. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 この問題はなかなかむずかしい問題で、時間がないのできょうはこれで打ち切りまして、留保してあとでお尋ねしたいと思います。もう一言お尋ねしておきたいのは、先ほど小笠原の補償問題について戸叶委員から質問があり、これに対して政府の方から今までの経過について簡単な答弁がありました。私はこの問題は、本年の三月十六日安保特別委員会で六百万ドルの補償について当時の外務大臣藤山さんにお尋ねをしたのでございましたが、その後この法案が米国国会を通った。まだしかしアメリカから正式に何とも言ってこない、こういうことでありますが、聞くところによると、これは初めは千二百五十万ドルを要求しておる。それを一挙にして六百万ドル、半分以下に引き下げたというのであるが、最初に要求した千二百五十万ドルの算定の基礎を一つ政府の方から御答弁願いたい。
  102. 石井説明員(石井通則)

    ○石井説明員 初めに要求いたしました千二百五十万ドルにつきましては、小笠原における農業の収入所得それから漁業の収入所得を計算いたしまして、そしてその資本投下が行われるであろうと思われる、消化されるであろうと思われます二十年くらいの期間だったと思いますが、そういう計算をもってこまかく一応積み上げて計算いたしたのでございまして、農業、漁業等の小笠原における収益というものによって計算した、こういうことでございます。
  103. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 そういう計算をして、これは正当な要求だろうと思うのです。ところが六百万ドルに、一晩にじゃないでしょう、だが短期間に譲ったということはこっけいであり、不思議であるということを、アメリカの下院の議事録を読むと書いてある。そういうことをアメリカのある議員が言っておる。千二百五十万ドルが短日間に六百万ドルで差しつかえないと日本政府が言ってきたということを、非常に向こうはこっけいにおかしがって、また不思議に思っておるのでありますが、そうすると今度の六百万ドルはそうした漁業権その他いろいろな島民が獲得するであろう生産なり利益なりというものを全部見ないで切り捨ててしまったように思う。この六百万ドルの算定の基礎を見ると、これは土地補償だけになっておるようだが、政府は見舞金、精神的、物質的なものである、こう言っておるのであるが、この算定の基礎が土地の代金になっておる。そうなると一体これは土地所有者だけにこの六百万ドルが配当になるのである、こうも見える。しかしながら議事録を見ると七千人の小笠原島民全体に対して一人当たり九百ドル足らず、三十数万円ずついく。これは新しい農業を営んだりあるいは中小企業に携わったりそういうものに十分でなければならないし、そういうものだろうと思うということを下院の議員が言っているのですね。これは一体どうなんですか。この六百万ドルは土地の補償費だけなのか、それとも小笠原島民七千人の精神的、物質的損害の補償なのかどうか。しこうしてこの六百万ドルは、今後アメリカが小笠原を占拠するであろう期間、それは何十年であるか何百年であるかわからないが、この間全部小笠原島民が所有権も何も行使できない、そういうことになるのであるかどうか、時間がないので一緒に質問して恐縮だが、これらにはっきりした御答弁を願いたい。
  104. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 時間の都合で答弁は簡潔に願います。
  105. 石井説明員(石井通則)

    ○石井説明員 六百万ドルの補償に関しましてはいろいろ議論が行なわれておりますので、結局外務省とアメリカ側との話し合いによってアメリカ側がどういう意向であるか。それをはっきり確かめた上でその性格なり配分の方法を検討いたしたいと思っております。  なお、これが一時的なものとして出されますが、小笠原の土地の所有権その他には影響がないものとわれわれは考えております。
  106. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 竹谷君に申し上げます。申し合わせの時間をだいぶ経過しておりますから、簡潔に願います。
  107. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 所有権には関係がないと申しますが、私の聞いておるのはそうじゃない。小笠原がアメリカの管理下にある間を通じての補償になるわけか。それとも講和後現在までの補償に過ぎないのか、今後また補償がとれるものかどうか、それを聞いている。
  108. 伊関説明員(伊関佑二郎)

    ○伊関説明員 アメリカ側は今後の分も含めてという解釈をとっております。要するに日本人が帰れるときまでの補償ということになっております。
  109. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 竹谷君申し合わせの時間が参りましたから、後日にお願いいたします。
  110. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 そうしますと、これは六百万ドルで小笠原を買われてしまったような形だ。これはとんでもない話だ。事実上所有権はあると言っておるけれども、使用収益ができない。また土地などは持たなくても、小笠原におることによって、あの豊富なる漁場を利用して生産物をあげることができる。また南国の非常に快適なる島である、ハワイ以上のいいすみかかもしれぬ、そういうところから全部シャットアウトされた者が、わずか六百万ドルで全部それができなくなるということは、これは国家的に大問題なのです。それを千二百五十万ドルさきに要求して、六百万ドルに、数日であるか、短い期間に譲ってしまう日本政府は、無定見きわまりないといわなければならない。六百万ドルはこれをどういうふうに配分するのか、どういう目的であるか、アメリカから正式に通知があって初めてわかるようなことを言っておりますが、千二百五十万ドルを六百万ドルに譲ったのであるから、その交渉過程においていろいろいきさつがあり、これは何に使うということは日本政府にわかっておるはずなのです。それを今アメリカから何らかの通知がなければわからぬということは逃げ口上といわざるを得ない。そこで私は、もう時間も相当進みましたので、政府に要求しておきたいのは、藤山外務大臣の安保特別委員会における私の質問に対する答弁によれば、小笠原の補償問題は、一昨年の暮れから日米政府間において交渉が重ねられてきたということをはっきりと言明しておる。この二年間にわたる交渉の経過をもっとはっきりしてもらいたい。私が今一例をあげた千二百五十万ドル、これが六百万ドルに切り下げられた。切り下げられたについては、こうこういう点は補償が要らないではないかと、ずっと経過があって、初めて半分以下でいいということを日本政府は承諾したに違いない。従って六百万ドルは何に使われるか、どういう目的であるのかはっきりしているわけなんだ。そこで七千の小笠原島民は非常にこの問題について心配をしております。ことに重大な問題は、六百万ドルで今後いつまでかわからないアメリカの占領期間、全く日本が権利を失ってしまう、あるいは所有権を買い取られた形になるのではないか。そうすればこれはもう六百万ドルで小笠原を売ってしまった形になるという点まで心配しておる。
  111. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 簡潔にお願いいたします。
  112. 竹谷委員(竹谷源太郎)

    ○竹谷委員 それからまた島民自身の生活は非常に困っており、これが一体土地所有者だけに分配になるのか、あるいは一般の見舞金として頭割りで配分になるのかどうか、いろいろな問題を含んでおる。これが政府の話では、追って交換公文なり、覚書なりによってきまると言っておりますが、これを十分に検討せず、また今後アメリカとも必要な交渉をしてやるのでなければ、これは重大な問題を起こします。外務大臣はこの折衝の過程はまだ大臣になられていなかったときであったので、よくこれは研究されまして善処されたい。秘密のうちに変なことをされたら、これは池田内閣にとっても命取りになる大問題でございます。ことに沖縄と対比しましても、非常に不利な状況にある、沖縄は今後一括払いという案をアメリカが持ってきたのを遂にけ飛ばして、毎年なり何年分なりずつ払っていくということで妥協がついた。少なくとも今以上の有利な状況にすることが必要である。  それからもう一つ申し上げたいのは、今アメリカが使っておるのは硫黄島の飛行基地だけなんです。父島も母島も無人島なのです。そこで百五十人ばかりの白系日本人だけの居住を許してその他の者には許さない。これははなはだしい差別待遇と言わなければならない。その白系百五十人の人たちは、今後日本人がみんな帰ってこないことを希望しているという。それは白人系の人たちだけの島にしてしまおうという裏心があるのではないかという心配さえある。これは国籍は日本人だ、こういう状態であります。硫黄島だけしか今現実に使っておらぬ。ごく少数の海軍の管理官が父島にいるという話、母島なんぞは全然無人島、この天然資源の豊かな、りっぱな島を国土の狭い日本が使わないで、島民が内地で苦しんでいる。この窮状を救うために、要らない無人島にしてしまわないで早く返してもらうべきだ。これを努力すると同時に、返さなくても、これを帰還を許して、四千人の島民に安住の地を与えるべきだと私は考える。外務大臣簡潔に答弁してもらいたい。
  113. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 小坂外務大臣、簡潔に願います。これをもって質疑は打ち切りますから。
  114. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    小坂国務大臣 よく研究して考えたいと思います。      ————◇—————
  115. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 この際理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事でありました加藤精三君及び佐々木盛雄君がそれぞれ委員辞任せられました結果、理事が二名欠員となっております。この際理事補欠選任を行ないたいと存じますが、慣例によりまして委員長より指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 本名委員長(本名武)

    本名委員長 御異議なければ理事岩本信行君及び石坂繁君を御指名いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十二分散会