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帆足委員 在日
朝鮮人の
帰国のことにつきましてただいま
岩本議員から御
報告もあり、御要望もありましたが、私もそれに同
意見でございます。ただ今日すでに四万数千人の隣邦の友が、きわめて順調にそのふるさとに帰りましたことにつきまして、党派を離れた課題としてこれに協力いたしております私
ども一員といたしましても、これまでの外務省
当局並びに厚生省
当局の御努力に対して、深く感謝する次第でございまして、その意味におきまして厚生
大臣にもきょうは御
出席を願いまして、御礼も申し上げ、今後の御要望も申し上げたいと存じておる次第でございます。
日本におります
朝鮮人六十万の大部分は、不幸にして過去の歴史の伝統を受けましてきわめて不幸な
状況におりまして、民族的偏見もまだ是正されておりませんし、経済的には流離の民のような苦しい生活をしておるような人も多いのでございます。国内における
朝鮮人
対策についてもこの際再検討いたしまして、隣邦との歴史的伝統のある
関係を考慮いたしまして、
日本におる
朝鮮人の生活の改善のためにもやはり
理解のある政策が必要であると私は思っております。しかし国土狭小にして人口の多いこの国といたしまして行き届かぬことばかりでありますので、それぞれふるさとに帰るということについて政治問題を離れて
人道的に協力するということは適切なことであると思っております。
帰国する
朝鮮人の数はおそらく二十万をこえるであろうと専門家の間ではさらに予想されておる次第でございます。六十万の
朝鮮人の諸君のうち大部分が苦しい生活をしているほか、三十万は少年と青年たちでありまして、その青少年たちにも現在のところ国内においては希望がなく所を得せしむることは非常に困難な
状況でございます。六十万の
朝鮮人の諸君がおりますが、大正元年ごろはわずか三千人、日露戦争ごろはわずか二、三百人でありまして、大正十二年、あの関東大震災のときに
朝鮮人をめぐる悲劇が起りまして、まことに痛ましい反省すべき
事件でありますけれ
ども、あのときですら在日
朝鮮人の数はわずか八万人でございました。現在の六十万人という数がいかに多くかつ不自然な数であるのか、これは戦争経済及び戦時のしわ寄せがまだ残っておるという点もあるのでございます。従いましてこの大きな民族移動の仕事に対して、党派を離れて協力しようという
方々が、あるいは宗教的立場からあるいは
赤十字の立場から、その他社会運動家、それから
一般の市町村の
理解のある
方々、全国に数百の支部を作りまして
帰国協力の若干の仕事をいたしております。ただこの問題につきまして私
どもは、
岩本議員が申しましたように、南にひいきするとか北にひいきするとかいうことではございません。そのふるさとを選ぶのは彼らの自由でございまして、何ら政治的考慮は置かないことにいたしておりますが、これに対して
政府が積極的に国に帰る
朝鮮の人に財政的なりその他の援助をいたしますると、一方の側に特別にひいきするというような誤解を受けますので、
政府としてはなるべく、この問題に手を触れないことにいたしておりますという事情はわれわれも了といたしております。しかし民間団体また地方自治体等におきまして、番茶の
一つもおせんべいの
一つもつまみ合って別れを惜しむということが至るところ行なわれておりますが、それに対して地方自治体は積極的に何もしてはならぬという意味の通牒が参っておるといわれて、地方自治体、たとえば大阪の知事さんに会いましたときも、市長さんに会いましたときにもそういう通牒で困っておるということでございましたが、それは政治的に片寄った、常識をはずれた援助のようなことがあって誤解を受けてはならぬという趣旨の通牒であろうと私は思う。従いまして市長さんが来て別れの言葉を述べるとか、またはおせんべい
一つ、番茶
一つで送別会が行なわれておる、そういうことに若干の地方自治体が参加したとか援助したとかいうぐらいのことならば、すなわち人間の普通の常識で
考える範囲、そして政治的偏向のない範囲ならば、かかることは私は認められてしかるべきであろうと存じておりますが、その問題のために地方自治体で困っておるという声が非常にたくさん聞かれますから、通牒の意味するところの親心を
説明下さいまして、歓送の常識的な仕事がそのために阻害されないようなふうに、援護
局長会議とか適当な
会議のときに御相談下さって、多少
運用上修正していただきたいとお願いいたしたい次第でございます。このことを厚生
大臣にお願いいたしておきたいと思いますが、いずれこまかなことは
岩本議員と御一緒に、こまかな事例をもちまして御了解を願いたいと存じております。
先日のある新聞の漫画に、
外務大臣が
日韓会談を急がれる姿をかいてありまして、一人の青年が飛び出して——漫画というものはしばしば人生の最も切実なものを象徴的に表現するものでございまして、やっぱりこれには私は何事かあると思うのでございます。従いましてこの席において外務
委員として要望いたしたいことは、今
朝鮮が三十八度線で分断されておるという事実でございます。
岩本議員と一緒に南日
外務大臣に会いましたときに、北
朝鮮も武力的に南に進撃を加えるということはもう絶対にしないということを談話のうちに申しておりました。また南
朝鮮でも李承晩の専制
政府が倒れまして、やや常識のある新風が吹き始めましたことも御同慶の至りでございまして、総選挙のときの演説の
一端などを読みますると、南
朝鮮もまた武力をもって北と問題を
解決しようとするようなやり方はやめたということが
政府の意向としても発表されております。また南北、九州と大阪に親戚
関係が別れておるような
関係でありますから、将来は人事の交流とか文化の交流、経済の交流について話し合う
機会くらいは持ちたいということが南
朝鮮の総選挙のときの選挙演説の中にもしばしば見られておりまするし、北からもまたそれに類似の提案がございました。こういうことで、平和統一ということがだんだん日程に上り始めておりますので、今日の政治の
状況にあまり固執して、南北の緊張を激化するような方向に
日本の政策が向かう、目前のことにとらわれ過ぎて南北の対立を激化するような方向に向かうことは、私はよほど慎重な考慮を要すると思う。従いまして、それらについて慎重な考慮なくして、新内閣ができたから直ちに
外務大臣が飛び出すということについて、私はあの漫画がやはり多少
国民の不安な
気持を表わしたのではあるまいか、こう
理解いたしたのでございます。従いまして、南北それぞれに事務的
関係を持ち、親善
理解の
関係を持つことはけっこうでありますけれ
ども、緊張激化の方向に向かわないようにということを御配慮願いたいというのが、野党としての私
どもの希望でございます。それから、これはそれぞれ希望でございまして、外務
委員というものは、別に答弁引き出し係ではないわけでございまして、自分の
考えをよく述べまして、与党、野党の方に御
理解を願って、それが政策の
一端に多少なりとも取り入れられるということが私は必要なことであろうと存じますので、無理に御答弁を求めるよりも、御
理解していただきたいということを切望いたしておく次第でございます。もう
一つは、
帰国問題の
赤十字会談で、いわゆるスピード・アップということがいわれております。帰りたい人をなるべく早く帰すという点において、これは、私は道理にかなったことであると思いますけれ
ども、
朝鮮は一応廃墟となった場所でありまして、アパートも住宅もみな新しくできたばかりで、全然
日本のように余裕がないのでございます。同時に、
日本では、引揚者をただ舞鶴の港へ迎えて、あとはそれぞれ親戚なり知り合いのところに行きなさいといって、割りにほったらかしてあるのでありますが、
朝鮮では、就職先から学校、住宅から当面の家計費に至るまで、経済的に懇切な世話をしている。私は、外国で流離の民として苦しんだ同胞を迎えるに当たって、このような懇切な態度で迎えたという歴史はいまだかつて知りません。これはイデオロギーを抜きにして
一つの歴史美談ともいうべき美しい物語であると私は思っております。月に五千人以上の人を、一流の、しかも暖房
設備と水洗便所のついているアパートに迎えるという仕事は、貧しい建設の途上にある国としては、私は容易ならざる仕事であると思っております。従いまして、これを一挙に倍にするとかいうことは、五割増しでも私はなかなか困難なことではないかと実情を見て参りました。従いまして送る方はスピード・アップは楽でありますけれ
ども、迎える方は多少そういう困難があるということをよく
理解いたしまして、それぞれの事情をお互いに語り合って
相互理解の上にこの問題を
解決するというお心組みがあるならば、お互いに誠意が相手に通じて現状よりも改善される方向に向かっていくことは間違いないと思いますので、
国会の決議もいただきまして
現地を見て参りましたものといたして、この点を両
大臣に御
理解願いたいと思うのでございます。さらに
朝鮮に参りまして痛感いたしましたのは、前に池田通産
大臣の御努力によりまして、
朝鮮との貿易は輸出だけは直接貿易ができるようになっております。輸入は非常に貴重な資源がたくさんありまして、大豆、クリンカー、ホタル石、銑鉄等、それから水産物の一部等輸入することができますが、それをなんと八幡の若松の港を左の目で見ながら香港まで持っていきまして、香港で三%の手数料を払って登録して、またよたよたかついで、そして若松で陸揚げしている
状況でございます。現在の国際語
関係から多少の遠慮が必要であるという事情もわかりますけれ
ども、
朝鮮に行って驚きましたのは、英国ではもう英国船が入っております。ノルウエーの船も入っております。西ドイツも自由に貿易しております。スイッツルもオーストラリヤも東南アジア諸国も全部北
朝鮮と貿易しておりまして、北
朝鮮との貿易はある意味では中国との貿易、ソ連貿易と同じような範疇の中にヨーロッパではすでに入れられておりまして、特にアメリカの製品が西ドイツを通じて相当入っておる姿も見ました。これらのことを見まして、英国ですら、また西ドイツですらがすでに北
朝鮮と貿易しておりますので、私は政治から離れた事務的
関係として、
朝鮮との貿易はやはり輸出だけ直接でなくて、輸入も香港まで行かなくても、行ったつもりにして輸入も直接できるようにする手順をお
考えになってしかるべきでないかということを痛感いたしました。西ドイツや英国のしておることを、この人口過剰にして貿易に依存する
日本がしないということは、遠慮としても度の過ぎた遠慮である。みずから卑しめて人これを卑しむという言葉がありますが、やはりある程度は道理にかなったことはみずからの自主的立場で
主張するという観点が必要でなかろうかと思います。これらのことを御参考まで申し上げまして、漸を追うて御善処のほどお願いいたしたい。その中で積極的に今後の
打開に役立つことがありましたならば御答弁をいただきたいし、役に立たないようなことがありましたならば、むしろ御答弁いただかない方がいいと思っております。