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辻政信君 それはわかっておるが私の聞くのは、持ちごまが少ないのです、金が。この
相手が大
資本だから……。そういうところへ乗り込んでいくには、あなたがきれいな人格で、利権に
関係のない
菅野さんが、どっちにもとられずに采配をふるわなければ、
菅野さん、それはだめですよ。
それでは、もう
一つスマトラについて少し聞きましょう。スマトラも私は見てきた、一昨年。そこで今度できますというと、小林さんの
会社の最大の弱点はどこにあるかというと、スカルノ政権を
相手にしていこうとしている、そこにある。スカルノ政権というものは、これはもう、これは速記録に書かれると困る、国際問題として困るのだけれども、残念ながら申しましょう。この支配はスマトラに及んでおらない。スマトラの油田地帯の大部分、それは反乱軍です。スカルノ政権というのは、大体ジャワ島、これから成り立っておる。そうして金を出すところはスマトラなんです。
資源とか収入というものは、それはジャワが持っております。それをジャワの本島民の
利益のために使うから、スマトラの
現地民は金を出しながらこれは恩恵を得られないというので、このスカルノ政権に反旗を翻して、
政治家と軍隊と結託して、それを知らずに木下とか、ブリジストンとか、小林さんが行ってスカルノと会った。で、スカルノを岸さんと同じように見ておる、岸さんと同じようなところがあると、条約を結ぶのも、料理屋に行くのも好きですから……。その政権というものはきわめて安定性を欠いておる。そしてこういう後進国というものはスカルノ政権がつぶれて新しくできますと、スカルノによって結ばれた
協定というものはたちどころに破棄する。こういう政情の不安を伴う。そういうところに、
長官が知らぬのに
輸銀が出すとか出さぬとかいって交渉が行なわれておるようなことでは、これは
一つ経済閣僚会議で大いに開き直ってもらわなければならぬ。
日本の
国策を忘れて、単なる利権の結合ではいかん。そういう政情の
見通しはどうなんだ、こういうことをおやりにならなければならぬと思うのですね。私がこういう問題に深く関心を持ったということは理由があるわけなのです。それはスエズ事件のときに
石油が非常に暴騰した。幸いにして事件が拡大せずに短期間で平静になりましたからどうにか落ち着きましたが、あのスエズ運河の開通がおくれたら、あるいは中東の動乱が拡大すると、
日本の
所要の
石油資源というものの九割は中東から受けておる。それがばたっととまったときに
日本はどうなるか。バスも飛行機も船もボイラーも一ヵ月でお手上げになって、また木炭自動車を出さなければならぬ、こういうことを心配したからわざわざ行ってきた。そこでこういうことを
考えますというと、
国内のそういう突発的な事件に対抗しての国の交通、
産業を麻痺させないだけのへそくりをある
程度持たなければならぬ。こういうことが私の最大の関心事なのです。少なくもあなた方は非常に小さく見積られて三十七
年度末の
所要額を二千八百八十三万キロリットルと見ておるが、私は大体三千四、五百万キロリットルに上がると思っておる、われわれの
想像外に伸びておりますから。そうすると最悪の場合に、今あなたの方の
考えでは二ヵ月の非常用のストックを持とうというのですが、これくらいではだめなのです。最小限半年のストックがなければならない。二千万キロリットルというものを持っておらぬというと、スエズで戦争が起こったときに青息吐息をつかなければならぬ。そうして
石油業界というものは大混乱に落ち込まなければならない。その弱点に
外国資本が入ってくる、こういうことになるわけです。そういう意味におきまして、ほんとうに
考えてもらわなければならぬ。そこで半年分の額を、小さく見積っても二千万キロリットルを貯蔵するということを
考えると、これは
民間会社としてはそろばんがとれない。こうなると、国がやらなければだれがやるか。どこでも
考えておらない。
経済企画庁も
考えてないし、
通産省、
大蔵省はあしたのことしか
考えておらぬ。こういう非常事態に対して半年のストックを持つという
計画を立てるのは
経済企画庁でなければならない。そうして、こういう
方針は必要だから、
通産省はこうやれ、
大蔵省はこうやれ、
輸銀はこうせい、こうやらなければならない。人ごとじゃないと思うのです。
それでは聞きますが、太平洋戦争前の
日本国内における
石油事情はどうなっておったか。