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政府委員(
竹内寿平君) 下山
事件発生以来もう十年余りを経過しております。御
承知のように、当時三鷹
事件、現に仙台で係属中の松川
事件、あるいは福島における、それと同種の国鉄
関係のいろいろな問題が起こっておるさなかに起こった
事件でございます。私
どもとしましては、いろいろな背景を持った、その当時の日本の置かれておった社会情勢の中において発生した
事件でございましたので、この
事件の捜査取り扱いにつきましてはきわめて慎重な態度で臨んだのでございますが、当時鑑定を委嘱されました学者の間に、下山氏の死因につきましてこれは自殺であるという
考え方と、やはり他殺であるという
考え方と、二つに分かれたのでございまして、捜査の第一線を担当しておりました警視庁におきましては、まあ可能なる限りの捜査を遂げました結果、まあ自殺であるという鑑定もありまして、一応自殺ではないかというような結論に到達いたしまして、ついに捜査本部を解散するというようなことになったのでございます。
検察庁におきましては、他殺という鑑定もある次第でございますし、いろいろな事情から、まあかりに自殺であるとしても、なお他殺という嫌疑をも捨てるべきではないという考えを持ちまして、当時まあ下山
事件に対する特別の捜査本部のようなものも作りまして、鋭意、警察とはまた別個の
立場から、捜査に当たったわけでございます。
ところが、今
大臣も御
説明申し上げましたように、的確なる犯人の割り出しというようなことはできないのでございまして、その後いつまでも専従の捜査員をそれに向けておくというわけにも参りませんので、一応
検察庁におきましても、専従的に捜査に当たるというようなことはその後取りやめたのでございますが、だからといって捜査を断念したわけではなく、自来十年間の下山
事件に関連したいろんな風評が世の中に行なわれます場合には、その風評の出所あるいはその根拠等につきまして、可能なる限り
調査を進めて参っておる。ただいま御指摘がありました松本氏の文春における記事のようなものも、もちろん
検察庁におきましては詳細に検討いたしておるのでございます。で、なおこの松本氏の意見ばかりでなく、アメリカの諜報機関が
関係しているんじゃないかというようなことは、国会でも共産党の
委員からも御
質疑があって、私
どもお答えした記憶があるわけでございますが、共産党の方のお考えは、当時は自殺説であるということを強く主張しておられたのでございますが、最近に至りましては、このアメリカ諜報機関の
関係があるんではなかろうか、というような趣旨の他殺説の方に変わってきたような御意見を耳にいたすのでございます。で、いろいろ週刊誌等に出て参りますものを検討いたしますと、結局根拠はないようでございます。多くはまあ売文的な記事である、根も葉もないものになっておるということが、
調査の結果明らかになっておるのでございます。今日におきましても、
検察庁といたしましては捜査を打ち切ったわけではなく、鋭意あらゆる機会に検討を続けておるというのが現状でございます。