○
政府委員(奧野
誠亮君) 地方
団体に
財源を与えます場合に、どういう
意味で
財源を与えるのか、その金をどういう方面に使用することを期待しているのか、そういうことによっておのずから
財源の与え方を異にしてよろしいと思うのであります。ただ
財源を与えさえすればよいんだ、それで職員の給与を上げようと、あるいは学校の改築を行なおうと、あるいは
開発事業に金を使おうと、全くどちらでもよろしいんだということでありまするならば、それはある程度地方
交付税の配分方式の改正によって、そういうような線を出すことができると思います。また、現状におきましても、
財源の乏しい
団体に対しましては、かなり傾斜的な
財源配分を行なって参ってきておるわけであります。
従いまして、一般に税
収入が多い富裕な
団体だといわれている
団体が、地方譲与税や地方
交付税を全部合わせてみますと、かえって貧弱だといわれている
団体よりも、人口一人当たりにいたしますと
財源が少ない、こういう姿になっております。しかし、これをさらにどういうような姿に持っていくことが正しいか、そういうことが大いに議論されまして、正しい方向に持っていくような配分の仕方に、たえず改正を試みて何ら差しつかえはないと思います。
しかしながら、今言われております開発促進ということは、その
団体が整備したい
港湾を整備する、その
団体が行ないたい道路を舗装するだけのことじゃございませんで、やはり
国家的に考えまして、どこの工場立地条件を整備するか、そういようなところから、そこに集中的にそれらの仕事を起こさなければならない、起こせるような財政制度をとりたい、こういうことに根本の問題があろうかと思うのであります。
そうしますと、そういう
事業を受け入れやすいような財政制度をとるべきだ。現状においては、補助
事業があまり多くなりますと、貧弱
団体に限りませんで、かなり富裕と言われている
団体でも、補助金を返上する、こういう姿になっていくことはよく御
承知の
通りであります。そこで集中的に
公共事業を起こさなければならないようなところについては、
事業分量がふえればふえるに応じて、国の援助を強くしていこう、国の負担率を上げていこう、そういうようなうまみがあるものだから、
事業分量が多くなって、持ち出し額がふえても、他の
事業をけってまでも、その
事業を受け入れようとするような、魅力のある財政制度をとるべきだ、こういう考え方が、
開発事業を促進するための国庫負担金の引き上げを提唱している方々の御
趣旨だと、かように私たちは考えているわけであります。
従いまして、どういう
意味で、金をどういうところに持っていこうとするのかというところから、
財源の持って行き方をきめればよろしいと思うのであります。その性質によりましては、地方税を
増額した方がよろしいでありましょうし、また必要によりましては、地方
交付税を
増額した方がよろしいでありましょうし、あるいは地方譲与税の配分方式を変えた方がよろしい、あるいは補助金をふやした方がよろしい、あるいは補助金の率のきめ方を変えた方がよろしい、かように私たちは考えているわけであります。
そこで今、特別態容補正を強化するための可否の問題がありました。私たちは、特別態容補正は、全く臨時的にやられた措置でありまして、一日も早く、こういうような方向は、もっと全地方
団体が納得するというような方向に切りかえるべきだ、こういう考え方を持っているわけであります。理論的に穏当でございませんし、実際的にも、また妥当な結果を来たしていないわけであります。
理論的な点をごく簡単に申し上げますと、特別態容補正は、人口一人当たりの税金が、税
収入が少ない、あるいはまた原始産業就業者の数が、全体の就業者の中に占めている割合が高い、そういう
団体につきましては、同じ長さの河川でありましても、同じ面積の田畑でありましても、その財政需要額を多く見積っていく、多く見積る場合には、総額
幾らふやそうかということから、逆算的にふやす率をきめていこう、こういう
やり方をしておるわけであります。税金が少ない
団体につきましては、基準財政需要額から基準財政
収入額を差し引きました差額が
交付税でありますから、当然そういう
団体には、
交付税が
増額になっているわけであります。それにあわせまして、さらに河川費とか、道路費とか、農業
行政の
費用を割増しするわけでありますから、全く税金を二重に使ったという格好になっておるのではなかろうかと思います。また同じ田でありますのに、原始産業人口の多いところの農業
行政費がよけいかかるのだ、これも理屈が通らないと思うのであります。そこで私たちは、理屈の通るような方向で、
財源の傾斜的配分をしたい、こういうような考え方をとって参っているわけであります。
従いまして、たとえば税
収入の少ない
団体には、
地方財政の混乱時代に借金を多くさせたわけであります。償還
能力があるから借金させるのではなくて、税
収入がないから借金をさせたのであります。そこで、特別態容補正の
方法がとられたわけでありますが、今申し上げたような方向では、
財源の与え方が全地方
団体の納得を得られませんので、その当時、発行した地方債の元利償還額の一部を基準財政需要額に算入するが、税
収入の少ない
団体には、償還
能力がないのだから、割合を多くして算入して上げよう、こういう
やり方をして参ってきておるわけであります。全地方
団体には二五%しか算入しないのでありますが、それを五〇%に引き上げ、七五%に引き上げ、来年からは九五%に引き上げようと、こう考えております。こういう方向なら私は納得が得られようと思うのであります。あるいはまた、既存の道路だけをとりませんので、これから道路を作っていかなければならない地帯については、その
費用を見るべきであって、だから、原始産業人口が多いから、同じ道路費を割増しするのではなしに、面積を測定単位とするような財政需要額の算定の仕方を示すというようなことを三十四年度から行ないまして、三十億をそれで配分をしたわけでありまして、三十五年度は、さらにそれを六十億円に高めようとしておるわけであります。
こういうような方向で、特別態容補正につきましては、三十一年度から始めたのでありますが、三十二年度、五十四億円これで配分をいたしておりまして、三十三年度から三十億円に下げたわけでございます。しかしながら、今申し上げましたような
方法で配分いたしておりますものが三十四年度で九十三億円、三十五年度で百二十三億円、合計二百十六億円を配分しょうとしているわけであります。特別態容補正どころの問題じゃございません。もっと大きな傾斜的
財源配分方式をとっておるのであります。
従いまして、今申しあげた数字よりか、もっと貧弱
団体の数字はふえておると思うのでありますが、三十三年度の決算で申し上げますと、愛知県とか、静岡県、神奈川県は、富裕な
団体といわれております。神奈川県は、
交付税が
交付されておりません。ところが、人口一人当たりの税金を見ていきますと、神奈川は四千四百二十円、愛知は三千六百二十五円、静岡は二千六百六円、非常に多いわけであります。これに反しまして、たとえば福井県は千五百五十五円、山形県は千二百五円、高知県は千百八十七円、鳥取県は千九十六円、非常な差があります。ところが、地方譲与税、地方
交付税全部合わせました
財源を見ますと、神奈川県は四千七百七十四円、愛知県は四千五十六円、静岡県は三千九百三十一円でありますが、福井県は五千八百五十四円、高知県は五千五百五十円、鳥取県は五千四百五十二円、山形県でも四千七百四円、みんな上回っております。これ以上に、もっと上回る方がよろしいか、よろしくないか、これは、もっと議論をした方が、もっと正しい方向に持っていった方がよろしいと思いますが、私は、しかしながらこういう問題と別だと思っております。未
開発地域に対しまして、まだ国がやっていないかもしれないけれども、そこの工場立地条件を整備するために港を整える、また自動車は輻湊していないけれども、道路を整備する、あるいは工業用水等を設けるためにダムを作る、そういうような先行投資を考えていく、
経済現象、社会現象をとらえて、道路をつけていく、住宅を作っていくのだということになれば、そういう
地域が、ますます発展するのじゃないか。そういう公団投資を見ますと、すでに開発された
地域に、むしろ大きな
財源を投ぜられるのが現状じゃないか、こういうあり方について是正をするのが、今日大きく言われております開発促進の問題だと、こういうような気持を持っておるわけであります。
それはそれなりの
財源の配分
方法を工夫すべきである。私は国の財政だ、地方の財政だというなわ張りで申し上げておるわけじゃありません。
財源の配分のあり方が、ねらう方向によってきめられるべきだと、かように存じておるわけであります。