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1960-03-22 第34回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十二日(火曜日)    午前十時二十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員具根登君及び永末英一君辞 任につき、その補欠として羽生三七君 及び東隆君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            小柳 牧衞君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            東   隆君            島   清君            辻  政信君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    労 働 大 臣 松野 頼三君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君   政府委員    法制局第二部長 野木 新一君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    外務省アメカ局    長       森  治樹君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文化財保護委員    会委員長    河井 彌八君    文化財保護委員    会事務局長   岡田 孝平君    通商産業大臣官    房長      齋藤 正年君    通商産業省鉱山    局長      福井 政男君    通商産業省公益    事業局長    小室 恒夫君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    運輸省自動車局    長       國友 弘康君    労働省労政局長 亀井  光君    郵政省電波監理    局長      甘利 省吾君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会開会いたします。  委員変更がございましたから御報告いたします。本日阿具根登君及び永末英一君が辞任せられ、その補欠として羽生三七君及び東隆君が選任せられました。   —————————————
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、分科担当委員の選定につきましては、委員長の指名によることになっておりまするので、ただいまお手元にお配りしてございます各分科担当委員表通り委員長において指名いたしました。
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算同じく特別会計予算及び政府関係機関予算。以上三件を一括して議題といたします。藤田進君。
  5. 藤田進

    藤田進君 通産大臣にお伺いいたします。石炭問題が非常に問題になっておりますので、エネルギー政策は即石炭政策というような印象を受けておるのですが、総合的エネルギー対策についてお伺いいたします。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) エネルギー総合対策につきましては、せっかく企画庁におきまして再検討を進めておられる状況でございます。われわれ所管といたしまして、石炭電気の問題がございますので、また原子力の問題もございます。通産省として一応の計画を今立てつつあるのであります。大体石炭につきましては貯炭も七百万トン程度になりました。予定通りに進んでおりますので、昭和三十五年におきましては、大体生産、消費を五千二百万トン程度と今見込んでおるわけであります。電力につきましては、御承知通り毎年相当需要増加に相なり、ただいま大体二千万キロワットでございますが、昭和三十八年までになお千万キロ程度開発を要するかと思います。大体電力の方で毎年九・五%あるいは一〇%程度増加があるのではないかという見通しのもとに作業いたしておるのであります。わが国エネルギーといたしましては、石炭電気をできるだけ活用して、そうしてそれで足らざるものを原油、重油によっていこう、こういう考え方で進んでおります。原子力につきましては、御承知通りまだほんとうのペーパー・プランの域を脱しておりません。これは今どうこうということをお答えする段階には至っておりません。
  7. 藤田進

    藤田進君 企画庁長官にお伺いいたしますが、だんだんと電源関係水主火従火主水従という傾向になりつつあります。国土総合開発の関連から、今後の企画庁としての考え方を伺いたい。
  8. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいま通産大臣からも言われました通りエネルギー部会を開いておりまして、大体三月末に私の方へ結論を出すということになっておりますが、まだ私の手元へきておりません。従いまして、私まだ結論を見ませんから、エネルギー部会でどういう結論になっているか、はっきりわかりませんからして、私としてまだはっきりお答えする時期に達していないと思っております。
  9. 藤田進

    藤田進君 ですが、昨年の十月にきめた電源開発もすでに変更せざるを得ない、こういう事態であって、需要に追っつかないので、これが変更という事態がすでに出てきているのに、企画庁はまだ検討中ということでは、少し政策がおくれて、ずれがくるように思うが、いかがですか。
  10. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 昨年の三月に発足いたしたのでありまして、御承知通り、その後いろいろ問題が出てきましたからして、部会といたしましては慎重に審議をいたしている、こう思うのであります。こういう根本問題でありますからして、やはり結論は慎重に一つ結論を出していただきたいというのが私たちの希望であります。その結論を待っているということであり、慎重に今審議していることだと、こう思っている次第であります。
  11. 藤田進

    藤田進君 慎重、慎重はいいですが、企画庁政策の方があと回しになり、事態が先に進むというのでは、企画庁の性格から私ども納得がいかないのであります。  時間がございませんので、昭和三十二年の本委員会におきまして、三江線江川開発は、この速記録を見ましても、当時の水田通産大臣は、両立でやっていけるし、絶対にこれをやるということを答弁され、岸内閣総理大臣も、この調整のために努力して、資源をむやみに放棄することのないようにしたいというはっきりした答弁が残っているわけであります。運輸大臣も、当時宮澤さんでしたが、これに関連して閣内を調整をするという、それにもかかわらず、昨年の暮、これが最終的方針決定ともいわれるものが出ているわけですが、この経過について企画庁長官から……。
  12. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話通り昭和三十二年のときにこの問題が起こりまして事務的にいろいろ折衝いたしておったのでありますが、なかなか事務的にそれが進捗しなくなりまして、その結果、三十三年の十月に当時の通産大臣それから運輸大臣経済企画庁長官とが相談いたしまして、その結論といたしまして覚書を作ったのであります。その覚書は「江川電源開発計画は、高梨地点におけるダムの最高水位の基準を一応百十メートルとして、電源開発その他一切の費用を具体的に試算し、これが経済性その他を比較検討した上で事後を措置する。」「三江線は取敢えず口羽地区までを完成する。」という覚書を作ったのであります。その後今の標高百十メートルでいろいろ電源開発会社で計算いたしておったのでありましたが、昨年になりまして、どうしても経済採算が合わないから私の方は電源開発をやめますという申し出がありましたので、そこで昨年の十二月二十五日の閣議で電源開発の方はとりやめて、そうして三江鉄道を初めての予定通りこれを貫通せしめるということに決定いたしたのであります。
  13. 藤田進

    藤田進君 両立できるものをかようにした根本理由はどこですか。
  14. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 今申し上げました通り電源開発会社経済的に採算が合わないという結論を出したのであります。であるから、私の方は電源開発をとりやめますということを私どもの方へ言ってきたのであります。
  15. 藤田進

    藤田進君 すでに調査費も一億余りのものを使い、しかも当時計算その他やっていける計画で進められてきたことは御承知通りだと思います。これをかがつの底のような渓流において五メートルのダム・ハイトを下げるということをきめて、そうして採算が合うかどうかというところに問題があったろうと思うのです。なぜ五メートル下げなければならないのか。
  16. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お答えいたします。百十五メートルということでは電源開発採算が合わない。五メートル下げた理由といたしますのは、結局水位が上がりますと水没区間が多くなります。あたりまえでございますが、その結果、鉄道の従来建設して参りました路線変更しなければならない、その費用相当かかりますのと、それから水没いたしましたために人口がそこを離散しなければならない。結局長距離、無人の地帯鉄道を敷くということになりまして、上げることによりまして鉄道を敷く意義がなくなってしまうということで、百十メートルということで三省間の協議が成り立ったわけでございます。
  17. 藤田進

    藤田進君 水没地帯水没家屋が多くなるから、五メートル下げた理由については理解ができない。電源開発の場合、いずれの場合も大小伴う補償問題があるわけです。しかも地元事情変更して、自民党出身田辺知事にかわるや島根県も賛成になった。地元の約七割の諸君がこれが開発について賛成署名をもって国会にも請願陳情がなされている状態、かさ上げすることによってその新線路線の効率というものが下がるということについても、すでに電発も諸般の調査を進めていて、若干のハイトは多少勾配に沿ったものを上に上げる事情はあったけれども、ここに非常に不明朗なものがあるように思われるわけです。地元事情、また三江線赤字路線だということについては、すでに昭和三十二年の予算委員会で問題になったときにも、こういう事態はあったにもかかわらず、これが打開し、両立して調整するということになった。これは運輸省の方の横やりから、昨日、運輸大臣電源開発その後また国土総合開発には協力するという基本的態度と、具体的にここに現われた問題とは大きな食い違いがあるように思われる。もっと詳細に御答弁いただきたい。
  18. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 三江線建設につきましては、非常に古い線でございまして、電源開発計画以前に手をつけております。これは昭和二十七年十二月の二日の鉄道審議会の議を経まして着工して、昭和三十年三月、三次━━式敷間を部分改良し、さらに工事継続中のものであります。工事継続中にこの電源開発の問題が建設審議会に当時の通産省石原委員から御提案がありまして、石原委員といたしましても、できるだけ両立してやりたい、工事を中止することなく妥結点を見出してやりたいということで、通産運輸経済企画庁三省間におきまして、その妥結点を見出すことに努力をいたしたわけでございます。それでいろいろ当時の三省間の専門家がそろいまして検討いたしました。それから三省間の大臣の間にもいろいろ検討されまして、大体百十五メーターということであれば両立する可能性はあるということで、鉄道の方でも相当費用がかさむということでございますが、さらに電源開発の方で、それで経済が成り立つかどうかということを検討されて、先ほど経済企画庁長官から御答弁になりましたように、そのあと事後を処置するという決定になったわけでございます。それで繰り返すようでございますが、鉄道といたしましては、ずっとやってきた工事でございまして、横やりを入れたというのではないわけでございますが、その工事変更によってその路線の使命が達せられるかどうかということが問題になったわけでございます。百十五メーターならば大体において所期の目的に近いものが達せられる。これが五メーター上がりますと、口羽地区の入口はほとんどなくなってしまう。この線は大体において陰陽連絡の線でございますが、やはり中間の客ということも考えておりますし、またそれぞれその地方の方方の御要望にも沿える点もございますので、それらを十分検討いたしました結果、百十五メーターであればこの線を敷く価値があるということに当時決定をいたしたわけでございます。ところが先ほど御答弁になりましたように、それでは電源開発の方はちょっと採算に合わないというので、昨年通産省の方に、電源開発計画は将来、西地域電力需要供給並びに料金水準の推移を勘案して、水資源の利用を主眼としつつこれを再検討の上着手するほかはないという結論電源開発の方で出して参りましたわけでございます。
  19. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君、時間が終わりました。
  20. 藤田進

    藤田進君 今の決定でもあるように、将来その開発については考えるということは、国鉄をすでに敷設しておいて、また引き上げてやるということを意味するわけです。いかに国政にそごがあるかということを、ことに官庁間のなわ張りということで、純技術的な見地から問題が解決されてないということは非常に遺憾だと思いますが、時間がございませんので、分科会の方へこのまま移しまして、さらに検討を加えていきたいと思います。
  21. 島清

    島清君 議事進行委員長、今は一体何ですか。外務大臣を待っているなら待っているで、外務大臣は来るから暫時このままでとか何とか宣告しなければ……。こんな委員会の運営はないでしよう。
  22. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、外務大臣出席を要求中でありますから、暫時このままで一つ御待機を願います。━━午後は一時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩    ——————————    午後一時十四分開会
  23. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  本日は一般質疑を続行し、本日中に終了する予定でありましたが、外務大臣出席に関して手違いが生じましたため、午前中の大部分を空費してしまいましたことは委員長といたしましても大へん遺憾に存じます。今後の審議日程もかなり残っておりますので、本委員会への御出席につきましては、閣僚各位も積極的な御努力をお願いいたしておきます。なお一般質疑は本日をもって終了することになっておりますので、委員各位議事進行につきまして十分御協力をお願い申し上げたいと存じます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。千田正君。
  24. 千田正

    千田正君 ただいま委員長から午前中の当委員会の問題について一応の遺憾の釈明がありましたが、私は外務大臣に特にお伺いしたいのは、本日午前中当委員会に御出席になって、私の質問並びに他の同僚諸君質問にお答えできるものだと思って午前十時かっきりにここに来ておったのでありますが、外務大臣がお見えにならない。しかも衆議院の方においても長い間大臣は御発言がなかったようであります。一体外務大臣として予算委員会審議というものと、現在問題になっておりますところの安保特別委員会との問題並びに参議院衆議院という関係の問題からして、あなたの出席が非常な影響を及ぼしてきているということを私どもは痛感するのでありますが、どういうわけで一体われわれの委員会おいでを願えないのか、またなぜ、空費した時間を、われわれからいえば非常にもったいないと、二時間もわれわれはここであなたのおいでになるのを待っておった。向うに行っては全然御発言もなさらないで十二時ころから発言されておる、こういうようなことは議会政治を軽視していると言うても差しつかえないと思うのでありますが、一応大臣釈明を求めます。
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私といたしまして、衆議院参議院いずれを軽視しておるということはございませんし、かついずれの委員会を重要視し、いずれの委員会を軽視しておるということはございません。今日の場合におきまして、国会対策その他でもって御協議の上、一応衆議院安保委員会に入って、その上で両党その他と相談の上でということでありましたので、私としてはそういうふうにいたしたわけであります。私はいずれの委員会を軽視し、あるいは衆参両院のいずれかを重く見るということは全くございません。
  26. 千田正

    千田正君 ただいまの外務大臣釈明によると、全然大臣の御意思ではなかったと、いわゆる国会対策委員会において打ち合わせた結果、衆議院の方へ先に御出席になったということであるとするならば、これは大臣の責任というよりも、両院におけるところの与党間においての話し合いが食い違いがあったと私は考えるのであります。この点についてはいずれ理事会等であらためて与党立場をよく釈明していただきますが、質問に入ります。  外務大臣にお伺いするのは、最近の新聞によりますというと、政府与党が新安保条約におけるところの、今まで岸総理並びに外務大臣がしばしば衆参委員会を通じて答弁されておりますところの極東範囲及び事前協議の問題について、岸首相以下首脳部協議した結果、新たに政府統一見解を発表するということになっておるようでありますが、極東範囲は抽象的なもので、個々の島をあげることは適当でない、あるいは日本の安全に関係しない極東事態は新条約は発動の範囲外である、従って日本の安全に直結しない在日米軍軍事行動には事前協議で同意しない、という補足説明を、安保特別委員会でなされるというような意味のことを各新聞が発表しておりますが、こういうことを本日の衆議院安保委員会におきまして大臣補足説明として御発表になったのでありますか、どうですか。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府見解としては、先般衆議院安保委員会におきまして岸総理愛知議員質問に答えまして統一見解を発表いたしておるのでございまして、それを変えるというような考え方は持っておりません。従いまして、きょう、むろんそういうことを発表したということではございません。
  28. 千田正

    千田正君 どうも私はそうなるというと、新聞で発表しておられるような、その後におけるところの極東範囲及び事前協議に対しての補足説明、今まで多少足らなかった点あるいは相当紛争をかもしておる点を集約して一応の補足説明をするというような意味のことを新聞発表しておりますが、そういう点においては本日は全然触れておられないのですか。
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 衆議院安保委員会におきましては、社会党の黒田氏から御質問がありましたが、それの主たる点は、総理三木武夫君との会談の内容等でありまして、それに対して総理統一見解を変える意思はない。むろん何かそういう点でわからないところがあって質問があれば、それは補足的な説明はするだろうけれども、あの見解を変える意思はないということを答弁しておられます。私が昨日申し上げたことと同じと存じております。
  30. 千田正

    千田正君 そうしますと、今まで大臣がしばしばここで御答弁になった極東範囲及び事前協議ということにおいては、今までの御答弁通り何ら変わりがない、かように承知してよろしゅうございますか。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) さように御承知いただいてけっこうだと思います。
  32. 千田正

    千田正君 次に、私は特にお伺いするのでありますが、これは別に私は意地悪く御質問申し上げるわけじゃありません。先般の竹島問題について私がお尋ねいたした点に対していろいろ論争があとから出て参りましたが、そのうちに竹島が、いわゆる条約区域内に入いるか入らぬか、こういう問題であります。もう一度、はっきり竹島条約区域のうちに入いるのかどうかという点を明確にお答えを願いたいと思います。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 竹島条約区域に入ると存じております。
  34. 千田正

    千田正君 そういたしますというと、米国韓国との間に結ばれておりますところの米韓条約の条文の中にも竹島ということを指定してはおりませんが、竹島の場合は、ある程度それは入っておると思いますが、韓国のいわゆる行政権が及ぶところということに含まれておるのでありまして、現在の立場においては、竹島はわれわれといたしましては、日本領土であるということを確信しておりますけれども、しかし、現在は韓国が占有している、こういう実態に関しまして、今のお話のように、日本のこの新安保条約において竹島が入っておるとするならば、米韓国における条約との間の重複した点、矛盾した点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  35. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 竹島につきましては、日本の固有の領土であり、日本施政権であるところでありまして、そうしてそれが現に行使が直接できていないということはございますけれども日本領土であり、日本施政下にある問題だという点については異議ない前提のもとにお話をいたしておる次第でございます。
  36. 千田正

    千田正君 そうしますと、外務大臣はこの竹島の問題は将来日韓間の問題の外交上の一つの、ある問題になりはせぬかというふうにおそらく考えておられただろうと思いますが、新条約条約区域竹島が含まれることについて、米国政府の合意を得ておられるかどうか、この点一つ。もう一点は一方、米韓条約に関して米韓間に竹島韓国領域としないという了解が、同様にアメリカの方との間にその了解が成り立っておるかどうか、この点はどうでありますか。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 韓国領土としないという了解の成り立っておる、あるいは日本領土であるという了解が成り立っておるとかという問題でございますけれども、この問題は、すでにわれわれは平和的紛争の問題として日本領土として主張しておるわけでございまして、それについては、国際司法裁判所に提訴したり、日本としての主張を今日までも続けておるのでありまして、そういう点について十分アメリカ了解いたしておるわけでございますから、日本のものであるということを承知いたしておるのでございます。
  38. 千田正

    千田正君 ただいま国際司法裁判所に提訴するという問題がありましたが、御承知通り国際司法裁判所に提訴する場合においては、相手方の一応の了解を得なければ、承諾を得なければ、提訴できないと私は考えておるのですが、その点はどうでございますか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その通りでございまして、日本国際司法裁判所に提訴するというときに、韓国側が応諾いたしませんから提訴できなかったわけでございますが、その事実は今、申し上げた通りであります。
  40. 千田正

    千田正君 韓国側が了承しないから当然今外務大臣のおっしゃった国際司法裁判所の提訴というものは現在のところは望みがないものと見なければなりません。そうしますと、この竹島の問題は、結局平和的に解決する以外に手がない。平和的に解決する何か方法があるかということと、もう一点、先ほどの、いわゆる事前の了解を、アメリカとの間に了解をつけておらないとするならば、これはおそらく国際条約上で有効な条約上の区域だということを明言できないと私は思うのであります。その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、過去の経緯等につきましては、アメリカは十分了承しておるのでありまして、われわれの領土であり、施政権を持っておるところであるけれども、不法な侵入を受けて今日の状態にあるのだということを了承いたしておるのでありまして、その点アメリカ承知いたしておる上で話し合いをいたしておる。特に条約の上でこの問題を論じませんけれども、過去のいきさつから、今申し上げましたような経緯をアメリカ承知いたしております。
  42. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して。今の点ですが、外務大臣は、先だってもしきりにアメリカとこの竹島の問題については話し合っておるとか、アメリカも了承しておるはずだとか、また日本としてはアメリカと十分協議をしていくのはあたりまえだとかいうようなことを、抽象的には繰り返しおっしゃっておるがただ問題は、今千田さんの提出しておる問題は、これは竹島というものが日米安全保障条約のこの条約区域にもなっておるが、同時に米韓相互防衛条約条約区域にもなっておる。つまり両方の条約区域が重なったような恰好になっておるが、きわめて微妙ではあるが、具体的な現実の問題を提出されておるのですから、それに対して、ただアメリカと抽象的な、話し合ったとか、了承したとかということだけでは、これでは問題の解決には何にもならないと思う。話し合ったら話し合ったで、それに対してアメリカ側が竹島の問題に対して具体的にどういう意思表示をされておるのか、また公式に何かアメリカがこういうように了承するというような意思表示があったのかないのか。また、今後日本としてそういう公式のアメリカ意思表示というものを要求さるべきじゃないかと思うが、それに対して、日本政府としてこういうようにお考えになったのか。側か具体的にどういうような発言、公式態度の表明をしておるのかということを、もっと明確に答弁していただきたいと思います。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 竹島の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、過去の日本の主張の経緯についてアメリカは十分了承いたしております。従って特にこの問題につきまして、アメリカが今回意思の表示をいたしませんでも、われわれの主張はアメリカも認めているということをわれわれは確信いたしておるのでございます。
  44. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して。確信というのは何回聞いても同じことですが、要するに主観的にこちらの方がそう思っておるという希望的観測をしておるということにすぎないと思うのです。何ら客観的な権威というものはないと思うのですよ。それで、いつか外務大臣はこの委員会でもこの日韓交渉で、いつか財産請求権の問題が非常にもめたときに、第三者たるアメリカから公平な解釈を出してもらって、そしてそれによってむずかしい請求権の問題が解決されたというような経験もあるので、何らかの形でそのアメリカの公式見解というようなものを出してもらって、そしてそれによって根本的に竹島の問題を解決したいというような意味のことをおっしゃったことがある。御記憶だと思うのですが、やはり千田さんの質問に対する御答弁だったと思うのです。そういう何か具体的なことがないと、ただ確信する、確信すると言うても、李承晩の方も、韓国の方もやはり同じようなことを確信しておると言うておるわけですから、結局ちっとも問題は解決に向かって前進しないことになると思うのですが、その点、もう一度はっきりお尋ねしたい。
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り竹島の問題については過去数年来日本日韓会談と並行いたしまして韓国側にその要求をいたしております。そのために国際司法裁判所に提訴するという問題も取り上げたのでございまして、今後竹島の問題は、当然日本の主張によって解決して参らねばならぬことはむろんでございます。ただ二国間でできるだけ話し合いをいたしまして、そして日韓会談と並行して、特に李ラインの関係もございますので、従って、そういう問題ともあわせて解決していくことが必要だと思っておりますが、私といたしましてはできるだけ二国間の話し合いによって解決することが望ましいと思っておりますけれども、解決できない場合には李ラインの問題でも、竹島の問題でも、他の第三国に依頼し、あるいは国連等に提訴するということも考えられるわけです。しかし、前提としてはあくまでわれわれが両国間で話し合いをして解決するということは当然やらなければならぬ、私の努力をしなければならぬことだと思うので、そうやっております。しかし、将来そういう問題が起こった場合に、われわれの常に主張していることが平素から各国に十分に理解をされておらなければならぬわけでありますから、そういう意味におきましてはアメリカばかりではございません。他の国に対しても連絡して、日本の実情等につきまして持ち出しておるわけでございます。
  46. 小林孝平

    小林孝平君 関連。私も実はこの問題を千田君のあとでやろうと思っておったのですが、ちょうど出ましたからお尋ねいたしますが、この二国間の紛争日韓両国が話し合うということはわかっておるのです。私が具体的にお聞きしたいのは、先般政府は、竹島の問題は今後これと同様なことが起これば第五条を発動する、こういうことを明言されましたから、アメリカはこれは竹島日本施政下にある領土であるということを確認しておるということははっきりしております。なおまたこれは朝鮮が、韓国がこれを占拠する前に、米軍は竹島を含む海域を演習場として日本から使うことをきめたこともあるのですから、そういう経緯からこれはアメリカははっきりとこれを認めておることはわかっております。そこで問題はアメリカ韓国の相互防衛条約との関係です。この条約の第三条は、各締約国は現在それぞれの行政的管理のもとにある領域、これを適用区域にしておるのでありますが、そこで朝鮮はこの竹島を不当に侵して自分の領土だと言っておる。従って、この条約では韓国はこれは条約の適用範囲であると考えておることはこれは当然です。そこでアメリカ日本に対しては、はっきりと今外務大臣がおっしゃったように言われておるのでありますから、この米韓条約ではこの適用区域から明らかにアメリカ竹島を除外しているかどうか、これをはっきりしなければいけません。これをはっきりしなければ、両方にいいような顔をしているということになるのです。日本施政下にある地域であるということは、これはもうはっきりしています。これがうそだということになれば大へんです。これははっきりしていますから、韓国との関係において、この第三条の条約の適用地域から竹島を除外しているということをアメリカは確認しているかどうか。それをお尋ねいたします。
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 米韓条約におきます行政下にある地域というのは、韓国が御承知のような状態にございます朝鮮半島が、そういう意味におきまして韓国の行政管轄下にあるということを言ったわけでありまして、日本領土であってそれが不法に侵されているというものを対象にいたしておるわけではございません。
  48. 千田正

    千田正君 今私も聞こうと思ったら、小林君も聞きましたが、同時に今のお答えであるというと、いわゆる日本施政下にある領域ということでありますから、当然新条約の第五条が適用になると思いますが、その点はどうですか。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日平和的に解決するいわゆる紛争の問題になっておりますので、その点においては批准書が交換をされましても、直ちに第五条の適用はないということは、それは了解をいたしております。
  50. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、あなたの持ち時間がすぐ次です。そのときゆっくりやって下さい。千田君。
  51. 小林孝平

    小林孝平君 委員長委員長……。
  52. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたの持ち時間が次に来ますから、そのときにゆっくりやって下さい。千田君に、本人にやらして下さい。(「進行、々々」と呼ぶ者あり)
  53. 千田正

    千田正君 それでは今のいわゆる第五条の適用でありますが、これは同時に日本にとっては非常に将来の問題として残ってくる問題です。現在は政府のどうも先般からの御答弁を聞いておりますというと、この数日来の御答弁においても、竹島は事実上領域区域外に置かれて、政府竹島は第五条の適用を受けないのじゃないかというような、われわれはそういう錯覚さえも起こしているのであって、この際竹島は完全に日本施政権内にあるというならば、当然第五条の適用はするのだと、起きるのだと、そういう明確なお答えはできないのでありますか、どうであります。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り竹島自身の問題は平和的に処理する紛争事件となっております。従いまして、これを話し合いであくまでも解決するという原則を続けて考えますことが必要であります。将来、竹島みたいな問題が起こった場合には、それは第五条が適用される。しかし、すぐに批准書が交換されましたからといって第五条がすぐに発動するという状態にないということはアメリカで了承いたしております。
  55. 千田正

    千田正君 どうもそれは僕らから考えますというと、大臣のお考えはどうもアメリカ側に気がねして、アメリカ米韓間におけるところの同じような条約を結んでおる、日本とも同じような条約を結んでおる、将来アメリカ立場が困るだろうというようなことをそんたくしつつお考えになっておるようであります。われわれとしましては完全に日本領土条約としての適用範囲をはっきりして国民にそれを明示するのが政府の責任である、こういうふうな考えからお尋ねしておるのでありますから、特にこの問題については明確にお答えを願いたいと思うのは、しからば韓国アメリカとの間に結ばれておるところのいわゆる韓国の行政の及ぶ範囲内という、行政の管理下にあるという点においては、全然竹島韓国の行政管理下にはないし、当然それは日本領土であり、日本施政下にあるのだということを明確にお答え願いたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれはその通りに考えているのでありまして、不法に侵入してきているのでありまして、いわゆる行政下にあるというわけではございません。従って、ここに侵入してきておりますから、それは平和的に解決する方法をとっていくということで今日まで時間をかけて、紛争処理の問題としてこれを扱っているわけなんでございます。
  57. 千田正

    千田正君 だとするならば、特に私はこういう問題が将来の紛争の種になるから、アメリカ側としましては、この竹島に対しては日本側の領土であるということを十分に再確認させることと、米韓条約に関しては、米韓間の問題についての韓国の領域外であるということを、はっきりアメリカとの了解を取りつけなければ、国内におけるこの問題に対する解決ができないと私はそう思いますので、この際アメリカとの、この問題についての了解を、はっきり取りつけるお考えがあるかどうか、この点を重ねてお伺いいたします。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この点は今まで御答弁申し上げたところでおわかりいただいておると思うのでありますけれども、私どもとしては、今申し上げましたような経緯によりまして、アメリカ側が十分了解しております。しかし、アメリカとしては、今すぐそういうことを何らかの形で表現することは、国際問題として適当ではないのではないかと、こう考えておりますので、そこまでやるということは適当でないと私は考えております。
  59. 千田正

    千田正君 農林大臣にお伺いいたしますが、今外務大臣は、竹島日本領土であるということをはっきり、われわれもそう信じておる。そうしますと、あそこで漁業権を施行して魚をとっても差しつかえないと思うのですが、どうですか。あそこで大謀網、あるいはトロール船でも、竹島の付近に水産庁から出願があったら許可をいたしますか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 漁業につきましても日本の水域でございますから、そこへ出漁しても法律的な意味におきましては一向差しつかえないわけでございます。ただ島に国民がやって行けないとかというような、同様の事情で制約を受けているというきわめて遺憾な状態にあるわけであります。
  61. 千田正

    千田正君 日本領土内に日本の国民が行って、しかも平和のうちに魚をとるということを、何ら妨害される必要はないと思うので、それを守るのがほんとうの私は自衛隊の立場であろうと思うのであります。ここに、赤城長官が見えておりませんからお尋ねできませんが、私はそういうときこそ、ほんとうに日本立場をはっきりすべきである、こう考えているのであります。  で、重ねて次の問題についてお伺いするのですが、ジュネーヴで開かれているところの国際海洋法会議において、日本が三海里説を主張する、あるいは韓国が十二海里説を主張する、そういういろいろの問題が起こってくるのでありますが、かりに日本の三海里説が受け入れられなかった場合、受け入れられた場合、現在日本韓国との間に紛争をかもしておりますところの、いわゆる彼らの言う李承晩━━われわれは認めておりませんが、そういうことを彼らは主張しているのですが、これに対する影響はどうでありますか。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回のジュネーヴの海洋法会議におきまして、領海がどうきまりますかということは、三分の二の多数をとりました説によってきまって参ると思うのでありまして、われわれとしては、御承知通り三海里説を主張しておりますけれども、大勢が必ずしも三海里に有利でないことは事実でございます。しかし、いずれにいたしましても三海里、六海里、あるいは十二海里というふうにきまって参りましても、そのこと自体は李ラインの非合法性をますますはっきりさせるということになるわけでありまして、領海の幅の問題、それは百海里とか二百海里ときまれば別でございますけれども、そういう問題でない限りは、やはり今日までわれわれが主張しておることを、さらにそういうような海洋法典の中で領海がきまりますれば、さらに強く理由つけて参れることになると思います。
  63. 千田正

    千田正君 フルチショフ・ソ連の首相がインドネシアにおいて、日本の今度の新安保条約に対して非常に強烈な演説をやっておられる、世界的にいろいろな反響を呼んでおりますが、これに対して日本の外務当局、あるいは日本政府としまして、こういうような国際的な反響を及ぼすところのフルシチョフ首相の演説その他に対して、何らか抗議的な申し入れをやっておられますか、その点を……。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のようにフルシチョフ首相がインドネシアに行かれましたときに、相当日本安保条約に対する攻撃の演説をされたとわれわれも了解いたしております。ただインドネシア政府は非常にその点を国際関係の上で注意されたとみえまして、その部分だけは放送から抜いておるようなわけでありまして、それだけの注意をインドネシア政府がいたしておりますので、特にソ連に対して何らかの意思表示をするのは適当でない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  65. 千田正

    千田正君 北洋漁業の問題についてただいま日ソ間においていろいろ論争されておりますが、最近塩見政府顧問を呼び戻す、こういうことが新聞に見えております。従来百日会議といわれているほど長い期間かかっておるのでありますが、一体どういうふうに進展しているのか、同時にまたグロムイコ覚書というものがあの条約に基づくところの漁獲量、あるいは資源論等に対して相当の影響を及ぼしておるのではないか、非常にわれわれとしては危惧の念を持っておるのですが、この間の事情はどういうふうになっておりますか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り本年度の日ソ漁業交渉は二月二十二日から開催されまして、九回にわたって本会議を開いております。そうして十六日から今日まで二十四回の科学技術小委員会を開催いたしまして、自後それらについてのいろいろな資源状態に関する審議をいたしまして、三月十九日に至りまして小委員会の報告書を作成いたしたのであります。そうしてそれを本会議の方に提出の段階になって参ったわけでございます。従いまして今日までは資源に関する調査の上に立った論争というものに、もっぱら御承知のように費やされておったわけでありまして、今後は本会議にそういう小委員会調査、あるいは検討を基礎にいたしまして、いわゆる規制の問題というような問題に入ってくる段階になっております。そういう段階に入って参ったのでありますから、政府といたしましては塩見代表を一応日本に呼び戻しまして、そうして現在までの実情等を詳しく聞きまして、また規制等の問題に関するソ連側とのまだ実際の論争にはなっておりませんけれども、空気、あるいは小委員会、あるいは開かれておりました本会議等におきまして、どういう考えをぼつぼつ述べておるかということを十分詳細に聞いた上で、われわれはそれに善処していく方策を考えていきたい、こういうことで塩見代表を呼び戻したわけであります。
  67. 千田正

    千田正君 ただいま外務大臣から一応の御説明を承りましたが、マスの問題につきましては、ことしは不漁年である。一昨年のマスの稚魚が少なかったから、ことしは少ないのである。だから不漁年である。不漁年において、日本が海上におけるところの漁獲は一切やめてもらいたいという強い意見が出ておるようでありますが、これに対しましては、どういうふうに考えておりますか。
  68. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話通り、マスはことしは不漁年に当たるわけでございます。さようなことから、ソ連側におきましても、マスは特にことしは気をつけたいという気持を持っているようでございます。資源論の段階におきまして、マスは一切取らないというようなことを言い出した段階があるのでございまするが、その後は修正いたしまして、産卵のために湖河をするというための通路をあくべきではないかというふうな意見を、資源論として述べておるということを伺っております。しかし、まだ正式なそういう提案には接しておりません。
  69. 千田正

    千田正君 その通路というような問題が出た場合においては、日本は、それに対して一応納得するのですか。
  70. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだそういう提案を受けておるわけではないのです。資源論の段階として、さような意見が述べられたということでございますので、正式の意見の提示があるという段階においては、またそれに応じまして、わが方におきましても対処しなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  71. 千田正

    千田正君 時間がありませんから、では次に、通産大臣にお伺いいたします。  三十四年度におけるところの日本の油類の輸入の量と、それからその内容を一つお伺いしたいと思います。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十四年度におきましては、原油の方は二千四百万トンほど入れております。なお、重油につきましては、百八十九万リットルを輸入いたしているのであります。
  73. 千田正

    千田正君 農林大臣にお伺いしますが、しばしば、水産関係で、いわゆる水産用重油が不足を来たしている。たとえば、三陸の沿岸で取れた場合とか、あるいは、先般のような、サバの漁が山陰地方にあったような場合というようなことで、非常に油の供給が円滑にいかなかったことがしばしばあったのであります。それでこれは、一つにおいては、輸入した油の配給制度等において多少の欠陥というよりも、突如として起きる漁やなんかに対する常の配備が十分でないのじゃないか。こういう点も考えられまするが、その点は、どういうためにああいうふうに不足を来たすのか。大臣としては、どういうふうにお考えですか。
  74. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま漁業用のA重油がやや不足逼迫ぎみであるということは、お話通りであります。私どもも、その善後措置につきまして心配をいたしております。その逼迫を来たしました原因といたしましては、サバの漁業が予想外に活発であったという点、それからもう一つは、輸入が少しおくれぎみになっておったという点でございます。ただいま通産当局とも、その需給を円滑にするようにというので、せっかく対策を相談をいたしている最中であります。
  75. 千田正

    千田正君 通産大臣にお伺いいたしますが、従来のこの石油の行政としましては、日本国内の必要なガソリンやその他の軽油を重点としまして、それに見合うような原油の輸入政策をやっておられたようであります。特に漁業、農林等の生産用の重油というものは、そういうものを作るようにというようなわけで、外貨を割り当ててあるにかかわらず、実際入れて製油した場合に、製油業者は、通産省の言う通りに作らない。むしろマージンの多いところのほかの油を作る。そういうようなことがしばしばあったようでありますが、それと勘案しまして、むしろ製品を輸入して、この生産用重油に対しては、製品輸入をある程度拡大して調整をとった方が、今のような配給方法、需要に対するところの供給の面がアンバランスにならないで済むのではないか、こういうふうに考えられますが、通産大臣としては、こういうふうな考えをお持ちでありませんかどうか、お伺いいたします。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原油を精製する場合に、A重油にするか、B重油、C重油にするか、いろいろ仕事のやり工合でありますが、特に水産用につきまして枯渇を来たさないように、国内のA重油の生産と見合って輸入重油の方でかげんすることにいたしているのであります。
  77. 千田正

    千田正君 実際はなかなかうまくいかないで、大臣の言うようにいっていれば支障を来たさないのであります。ところが、製油業者あるいは元売り業者は、油が不足になると、しばしば、価格が高くなるというので、むしろストックしてみたり、あるいは、重油を作るために輸入した原油は、逆に価格の高い軽油あるいはその他の灯油等に回される、そういうことがしばしばあるようにわれわれには考えられるのでありまして、こういう点を、やはり最初輸入する計画のうちにしっかりとした指導方針を立てていかなくちゃ、生産業者は非常に困る、こう思いますので、重ねてこの点の確立をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  78. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたような状況でやっておるのであります。ただ、今年は、先ほど農林大臣がお答えしたように、サバの漁期が非常に繰り上がったのと、そしてしかも豊漁であったこと等によりまして、急に需要が起きてきた。しかし、これに対しましては、緊急な措置をとり、考慮するようにいたしております。
  79. 千田正

    千田正君 一方いわゆる原油対策としまして、石炭の問題との関係があるのですが、石炭に対する将来の方針としまして、この石油と石炭との関連は、どういうふうにお考えになっておられますか。
  80. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国内資源開発が必要でございまするから、できるだけ石炭鉱業を合理化いたしまして、足らざるところを重油でまかなう、原油でまかなう、こういうことにいたしております。
  81. 千田正

    千田正君 石炭の推定埋蔵量等から考えますというと、これは世界的な一つの風潮でありますけれども日本の埋蔵量というものはそう多くないし、そう長い間持てるとも思いませんのですが、この辺において確立した方針を立てないというと、かえって国内に紛糾を来たすおそれがあると思うのですが、そういう点については、何か考えておられますか。
  82. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回御審議を願っておりまする石炭鉱業合理化法によりまして、国内資源をできるだけ活用していって、計画的にやるということにいたしておるわけでございます。
  83. 千田正

    千田正君 時間がありませんで、残念ですが、次に、公安委員長にお伺いしたいと思うのであります。  それは、先般各委員からもいろいろお尋ねがありました通り、最近の交通がひんぱんになるにつれて、大型の自動車あるいは道路の狭隘等に基づくいろいろな事故が発生しておる。しかも、事故発生と同時に、その補償が十分されておらない。それで、端的にお伺いいたしますが、今まで、この一カ年におけるところの事故発生と同時に、それによって死亡したもの、傷害を受けたもの、かつまた、補償が解決できないもの、そういう点におけるところの数字的な御説明を一応承りたいと思います。
  84. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 最近交通が非常に繁雑になりまして、事故もふえて参っておりますことは、御指摘の通りでございます。一例といたしまして、昨年中の警視庁管下の状況を申し上げてみたいと思うのでありますが、自動車事故による死亡者数が約九百人、負傷者数は約四万七千五百人でありまするが、このうち、賠償が解決しておりまするものは、死亡事故については五百六件、負傷事故については二万百三十三件であります。従いまして、約四〇%程度のものが解決をしているのでありまして、他は未解決のような状況でございます。未解決のものにつきましては、当事者間の話し合いによって示談といいますか、解決しようとしているようでございます。訴訟によるものはきわめて少ないように思います。大体そういう状況でございます。
  85. 千田正

    千田正君 死亡者は別としまして、四万幾らの傷害の問題があるのにかかわらず、二万幾らしか解決しておらない。私の知っているたった一つの例のうちにも、先般世田谷の私の知っている者が、飯能でバスにはねられた。それも、正当なる道を歩いて、正当なる行き方をしているにもかかわらず、道路が狭隘なためにバスにはねられた。その中には警官も乗っておりながら、実検もしない。そうしてあとからいずれ賠償はするからと言って、もう逃げるようにして行ってしまった。そのバス会社が貧弱な会社のために、なかなか賠償しない。病院にも六カ月も入っている。ところが、最近にそのバス会社が新しい大きな会社に統合された。その大きな会社は、小さい会社のときのことは知らぬと言う。こういうようなことで、被害者が泣き寝入りになっている事件が、この私が申し上げた事例ばかりでなく、相当多いと思うのであります。そこで、今度道路交通法の改正が国会に提案されるに際しまして、こういうような善良な市民のバスあるいはその他の乗りものによって事故を受けた場合において、それを補償する方法をもっと考えなければならないんじゃないか。会社が、わずかに法定の賠償としての十万円くらいで片をつけようと、片方は、六カ月も入院して、しかも不具者になっている。永久にもとのからだに戻らないというような、まことに不幸な事態が方々に行なわれている。こういう現実に対して、どういうふうにお考えになっておられるか。取り締まりの厳重ももちろん必要と思いますし、また、将来の補償という問題に対して、公安委員長としてのお考えをはっきりお伺いしたいと思います。
  86. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 御指摘になりました事件は、たしか昨年の三月、埼玉県下で起こった事故ではないかと思います。これは、ちょうど一方からバスが来ておりまして、向こうから自動二輪車で、お話の都の公務員の人が乗ってきた。そのときのバスにたまたま警察官が乗っておりまして、直ちにその現場でいろいろ事故原因の調べ等をやっているのでありまして、全然関与しなかったというのは、話が少し違うのではないかと思います。それで、その当時の認定では、やはり自動二輪車の方が少し速力を出し過ぎておりまして、大体の認定では、事故の原因は、そのオート二輪車に乗っておった人が第一原因車であるということになりました。それで、その人は、御指摘のように、数カ月病院に入っておりましたので、その人の調べといいますか、聞き取りの関係等が非常におくれて、自動車会社の方の関係調査もおくれたようであります。これは、私率直に申し上げまして、少し期間がおくれているようであります。七月ごろまでかかっている。これらの点は、今後十分注意いたしたいと思いまするが、原則として、警察官は、賠償の問題には直接にはタッチしないのであります。ただ、事件を起訴すべきか起訴すべきでないかと、いろいろ実検の場合の参考資料として調書には記録するわけでございます。この事件はそういう関係でございまして、十万円か何か出して、そうしてもその後示談が進行していないようでございまするが、これはまあたまたま、気の毒なことでありまするけれども、自動二輪車の人の方が事故原因車という認定もありましたので、そういうことになっておるのではないかと思うのであります。この自動車の事故のことにつきましては、御承知の自動車損害賠償保障法という法律が一つありまして、事故原因車がはっきりわからぬ場合には国家が保障する。あとは大体示談なり訴訟ということになって、警察は直接のタッチはしていないのであります。今後、道路交通法の整備とか、こういう問題とも関連いたしまして、警察官の教養も高め、いろいろの措置を講じて、臨機応変の処置をとるように十分気をつけて参りたいと思います。埼玉の事例はそういうことであったのでございます。
  87. 千田正

    千田正君 一点だけ。今、公安委員長からのお答えの埼玉の問題は、これは私事にわたる問題ですから、追及するのもどうかと思いますが、お答えの点は多少違っております。というのは、四メートルの所で、とうてい避けられる方法もないし、かつまた、転倒すると同時に人事不省になったために、むしろ乗り合わせておった乗客は気の毒がって介抱して、バスが、いずれあとからといってひき逃げたような格好になっておりまして、警察官が立ち会ったという問題に対しては、これは全然今のところ……先般弁護士に会って調べても、そういう報告はありませんので、そういう面につきましては、これはもう一度詳しくお調べを願いたいと、こういうように思います。  いずれにしましても、そういう被害者が、この埼玉の問題ばかりじゃなく方々に起こると思いますので、わずか十万円そこそこの法定の傷害の賠償の限定ということでなしに、現実にそういう被害者があった場合におけるところの査定という問題に対しては厳重に認定すべきだと思いますので、十分な御注意を願うと同時に、道路交通法におきましても、そういう被害者に対する方法を十分考慮していただきたい。この点を要望いたしまして、私の質問を終わります。   —————————————
  88. 小林英三

  89. 小林孝平

    小林孝平君 貿易自由化の問題は、すでに国会においても相当論議されました。しかし、これが日本経済に与える影響がきわめて大きく、特に中小企業、農業に与える深刻なる影響を考えれば、政府の態度は、この点についての十分な配慮と実行に至るまでの準備が欠けていると言わなければなりません。そこで私は、具体的な問題についてこれを指摘し、あわせて政府の所信を承りたいと存じます。  まず最初に、菅野長官にお尋ねいたしますが、一月十二日の自由化に関する閣僚会議の決定は、その後変更されましたかどうか。
  90. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その後変更しておりません。
  91. 小林孝平

    小林孝平君 それならば、大豆については、おおむね十月から実施するとありますけれども、おおむねというのでありますから、九月から実施することもありますか。
  92. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 大豆につきましては、目下農林省においてその対策を考究中であります。大体おおむね十月前後にきまると、こう思っております。
  93. 小林孝平

    小林孝平君 おおむねというのは、九月も含むかということを聞いている。
  94. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) もし農林省の方で対策が早くできれば、あるいは九月になるかもしれません。
  95. 小林孝平

    小林孝平君 これは閣僚会議の決定じゃありませんか。
  96. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それだからおおむね十月としてあるのであります。
  97. 小林孝平

    小林孝平君 じゃ九月もありますか。
  98. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) もし農林省において早くできるという対策ができれば、あるいは九月もできるかもしれません。
  99. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣にお尋ねします。おおむね十月というのは九月も含みますか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) おおむね十月と申しますのは、その場合におきましては、実際問題といたしまして十月以降になろうと思います。
  101. 小林孝平

    小林孝平君 日本語のおおむねというのは、十月を前後としていうことがあれなんです。大体閣僚会議の決定事項というのは、その内容はこのおおむね十月をもって表現されるようなあいまいなものですかどうかお尋ねいたします。菅野長官から。でたらめじゃないですか、もう初めから。
  102. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) だから十月ということが確定しておればもう十月ということにするのでありますが、十月にはたしてできるかどうかということは、はっきりいたしませんから、それでおおむね十月ということにいたした。
  103. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣は十月以降と言っている。あなたと違いますよ。菅野長官、農林大臣と違うのですよ、あなたのお話は。
  104. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君起立して下さい、立って。
  105. 小林孝平

    小林孝平君 起立をしろと言ったって……。あなた全然答弁が違うじゃないですか、おおむね十月というのは、農林大臣は十月以降と言っている。あなた農林大臣がやれば九月からやる、この閣僚会議の決定は大体この程度のあいまいなものですか、どうですか、お尋ねいたします。国民はみんな心配しているのです。あなたそんないいかげんな答弁じゃだめです。
  106. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) おおむねというのは、つまり十月を大体目標にいたしておるのでありますが、あるいは農林省の方で九月にできるという見込みが立てば九月にやるかもしれませんのです。私の方では十月ということが大体目標になっておるのであります。確定ができないから、おおむねという言葉を使ったのであります。
  107. 小林孝平

    小林孝平君 答弁になっておりませんよ、もう少しはっきりおやりなさい。農林大臣にお尋ねしますけれども、農林大臣は、この閣僚会議の決定には、完全に同意されていますか。
  108. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 完全に同意をいたしております。
  109. 小林孝平

    小林孝平君 こういうことを実施されるなら、国内大豆の対策はできておると思いますが、どういうふうな対策をお立てになっている。なぜ閣僚会議で決定したときに、国内対策をきめてなかったのですか。
  110. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、そこがおおむねというところにも該当する一点であります。時期もあるし、まだ対策もありませんからということでございますが、対策につきましては、目下関係省において協議中でございまして、協議が整いましたならば、正確に実施時期等がきまって参ると、かように御了承願います。
  111. 小林孝平

    小林孝平君 ではどの程度の話し合いになっていますか、現在。おおむね十月にやるというなら、ほんとうはこの国会関係法令を整備しなければならぬです、予算も出さなければならぬ。ちっとも出ていません。
  112. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これが対策といたしましては、特に二つの問題があるのです。一つは、国産大豆が放っておきますれば、値下がりをするということに相なりますので、その値下がりに対する対策いかんと、この問題でございますが、一つは、油の加工業者、これが相当の影響をこうむることになる、それに対する対策いかんという問題でありまするが、農林省といたしましては、この国産の大豆の値下がり対策につきまして、特に重大なる関心を払っておる次第でございます。その対策といたしまして三つの考え方が成り立つ。  一つ考え方は、国産大豆を政府または政府の代行機関にこれを買い取ってもらうという考え方でございまして、その場合、その買い取りのための財源といたしまして関税を現行の一〇%よりはさらにその倍程度に引き上げる、すなわち十割程度引き上げるということでございます。もっともこの関税と申しましても、純粋の関税によりまするか、または、いわゆる瞬間タッチと呼ばれておりまする課徴金によりまするか、これはなお検討を要する点でございまするが、いずれにいたしましても、関税または課徴金を徴収いたしまして、それを財源として値下がり差額を補てんする意味の財源に充てるという考え方、もう一つ考え方は、関税は現在の一〇%にとどめておきまして、そして自由化をすると、その場合におきましても、国産大豆は現行の価格をもって政府が買い取るか、または代行機関に買い取らせるかということになるわけでございまするが、その場合に第一に私が申し上げました考え方と違いまするのは、財源が第一案におきましては新しい財源になるわけでございまするが、ただいま申し上げました考え方によりますると、他に財源を求めるということを考えなければならないわけでございます。そういう仕組みによる考え方一つ。それからさらに折衷的な考え方といたしまして、一部は買い取り財源といたしまして瞬間タッチなり関税なりの新しい財源によるけれども、今現にかけておる一〇%の関税をもこれに引き充てるというような考え方、両者を折衷したような考え方でございます。この三案のうち共通点は、いずれも現在の価格をもちまして政府は国産大豆を買い上げるということであります。これによりまして生産農家の心配をなくしていこうという点でございます。違う点は、その財源をどこに求めるかという点でございまして、第一の国産大豆を現行価格で買い上げる点につきましては、これは関係大臣におきまして意見が一致しております。しかし、財源につきまして、大蔵大臣はもとよりまあそういう財源が要るならば、よけいに関税を取ったらいいじゃないかという主張をされる。これは当然のことでございまするが、そう主張される。それに対して、まあ手持ちの財源を回したらどうかというような意見がありまして、まだ結論が出ておりません。しかし、すみやかに結論を出しまして、出ますればそれに基づくところの予算案並びに法律案の改正という手順を踏まなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  113. 小林孝平

    小林孝平君 その案はいつごろできる見込みなんです。実施の時期は十月ときめられましたけれども、その案は一体いつごろできる見込みですか。
  114. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 十月に自由化を実行するということを考えまするならば、この国会におきまして、その予算案並びに法律案が成立することを要する、臨時国会がない限りそういうふうに相なるわけでございます。さようなことで、すみやかに結論を求めまして、本国会でさような御審議を願わなければならぬわけでございまするが、まだ意見がまとまっておらないわけでございます。いずれにいたしましても、この法律案、予算案が御審議願い、成立しない限り、まあ十月ということを言っておりまするが、それは実行できない、かようなことに相なろうかと思います。
  115. 小林孝平

    小林孝平君 それならば大蔵大臣、お尋ねしますが、補正予算を組むことになるわけですか。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 結論が出れば、財源措置を考えて参るつもりでございますが、まだ結論が出ておりません。
  117. 小林孝平

    小林孝平君 この国会中にできない場合は、臨時国会を開かなければならぬと農林大臣は言われますけれども総理おいでになりませんけれども、将来のいろいろの関係ありますが、どうですか、臨時国会は開かれるのですか。
  118. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 臨時国会を開くかどうかということは別でございますが、予備費もございますから、財源的措置は……。
  119. 小林孝平

    小林孝平君 法律を必要とするんでしょう。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは法律を必要とするかしないか、まだ結論は出ておらないのであります。
  121. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣にお尋ねしますが、これは法律を必要としないでできますか。
  122. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまのところ、私どもといたしましては、法律案と予算案が要るという見解を持っておるわけでございます。
  123. 小林孝平

    小林孝平君 従って、臨時国会を必要とするんですね。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いずれにいたしましても、結論が出てからの上に措置したいということであります。
  125. 小林孝平

    小林孝平君 臨時国会を開かなければ、今、農林大臣の言われたことは実施できないのです。この内閣は続くか続かぬかわからぬけれども、必要じゃないですか、臨時国会は、どうですか。
  126. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この国会で御審議をわずらわすことが望ましいわけでございまするが、もしこの国会で御審議を願う機会がないということでありますれば、これは臨時国会を開かない限り、十月実施ということはできない。特にこの措置を実行するために臨時国会をお願いするかどうかというと、私はさように考えるべきものではあるまい、さように考えております。
  127. 小林孝平

    小林孝平君 そんならば、あなたは臨時国会を開くか開かぬかの権限はないんですけれども、臨時国会を開くべきものでないとおっしゃっておるなら、これは十月からできないじゃないですか。こんなに全国の農業者に不安動揺を与えて、そうしてできそうもないことを言っておるのはおかしいじゃないですか農林大臣。だから河野一郎さんに、これはアメリカの圧力でやったんだと言われるんです。私はそんなことを言いたくないんですけれども、あなたのような態度だから、そういうことを言われるんです。どうなんですか。
  128. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、なるべくすみやかに意見の調整をいたしまして、御審議をお願いすべき筋かと存じまするが、もしこれが成案が得られない、また御審議もお願いできないということに相なりますれば、十月実施ということは、まあ大体においてむずかしかろう、こういうふうに考える次第であります。
  129. 小林孝平

    小林孝平君 これは大体もうできないことは確実です。そこで、これは押し問答しても仕方がありませんし、総理おいでにならぬし、この内閣は続くか続かぬかわからぬし、これ以上問答しても仕方がありませんから、農林大臣にお尋ねします。なぜ、主要農産物中、最初に大豆を取り上げたのですか。まだ取り上げるものはたくさんあるじゃないですか。大豆をなぜねらったんですか。
  130. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 自由化ということは、まあ世界の大勢でございまするが、その中で、特別な地域にあるものがあるわけでございます。それは対ドル地域差別十品目という問題でございます。まあ自由化というものが叫ばれる際におきまして、一般には自由化をしておりながら、対ドル地域につきまして、例外的にこれを制限をいたしておるということは、これはいかにも不合理であるというような見解から、政府におきまして、差別十品目につきましては、その差別を撤廃するという方針をきめたわけでございます。その中で農林物資が六品目、通産物資が四品目あるわけでございます。それで一月に、すでにラワン材とマニラ麻の自由化を実行いたしておるわけであります。残る牛皮、ラード、皮革、それから大豆につきましても、まあこれをやるべきではないだろうか。さようなことで、対ドル地域差別撤廃という見地から、すでに各地域に対しまして自由化されておる大豆につきましてこれを実行する、こういうことになったわけでございまして、その六品目の中では、私どもは大豆につきましては特に慎重に考えまして、おおむね十月にするということにいたしておる次第でございます。
  131. 小林孝平

    小林孝平君 それは結局日本の都合でなくて、アメリカの都合でそういうことになったわけだと思うんです。それは後ほど申し上げますが、国際経済の情勢は、一寸先がわからないから、自由化をやってみても、悪ければまた元へ戻すんですか。大豆に限ってお尋ねいたします。これは菅野長官にもお尋ねいたします。
  132. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一度自由化したら、なかなかこれはあと戻りということはむずかしかろうと、実際問題としては考えます。さればこそ、慎重な事前準備が必要な次第でございまして、まあ、法律案、予算案まで御審議をお願いする、こういうふうに考えておる次第であります。
  133. 小林孝平

    小林孝平君 ちっとも慎重な準備をやっておられないじゃないですか。何も手ぶらで十月ときめられ、さればこそ予算と言われるが、当然じゃないですか。その点はあなたちっとも特別じゃありません。えらそうにおっしゃるけれども、おかしいじゃないですか。私は菅野長官にお尋ねいたします。悪ければこれは戻すんですか。
  134. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 自由化にいたしましたら、これを戻すことはいたしません。
  135. 小林孝平

    小林孝平君 第一次岸内閣のとき、自民党の党議として、大豆のAA制がほとんど決定されました。その後、これは国会でも問題になりました。当委員会においても、私からも質問をいたしました。国内の農業者に与える影響の非常に甚大であることを訴えまして、農林大臣の善処をお願いしたのでありますが、このとき、関係閣僚間の意見が結局調整がつかないで、とりやめになりましたけれども、そのときの経緯、いきさつ、そういうものはどういうふうになっているか。お尋ねいたします。
  136. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一月十二の閣僚会議で、まあ御承知のような方針が決定されたわけです。そのとき大豆につきまして、私から先ほど申し上げました三案のうち、そのいずれかの対策を必要とする、こういうことを披露したわけでございます。それについて意見の交換がありまして、ただいま申し上げましたような事情で、財源の点でまだ調整ができない。こういうことで、まだ対策としては具体的なものがきまっていない。しかし、それをただいま調整中である、こういうことでございます。
  137. 小林孝平

    小林孝平君 私はそういうことをお尋ねしたのではなくて、第一次岸内閣のとき、自民党の党議として一たん決定したけれども、これは国内農業に与える影響の甚大であることが、大問題になってとりやめになった。そのときのいきさつはどうであったか、こういうことをお尋ねしているんです。
  138. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話しの通り昭和三十三年の春、第一次岸内閣のときにおきまして、党議もきまりました。そうしてまた、関係経済閣僚会議におきましてもきまったので、三十二年の十月から行なうことに一応きまった。そうして今まで無税であった大豆につきましても、一割の関税を取ることにいたしたのであります。しかるところ、御承知通り昭和三十二年の四月ごろから、輸入の増加に伴う外貨不足のために、緊急措置をとらざるを得ないような状況になりましたために、これからは私の想像でございます、六月にやめました。そういう事情がありましたのでとりやめたと思います。しかし、そのときの決定で、片一方に一割の関税を取ることは実行したのであります。自由化はそういう事情で延ばしてきたのであります。
  139. 小林孝平

    小林孝平君 このときの事情は、結局きまりましたけれども、大蔵大臣池田さんと通産大臣の水田さんが強力に実施を主張された。農林大臣の井出さんと、それから経企長官の宇田さんが反対されて、ついにこれはまとまらないでとりやめになった。そのときに井出さんは非常に反対をされ、この予算委員会では、職を賭しても反対すると言明されているんです。そういう事情でこれはとりやめにとにかくなられました。池田さんは賛成であったけれども、政治的な立場でもって同調されたのでしょう。そこで、福田さん、あなたは、わずか数年、同じ農林大臣でも、もう大豆はやってもいい、こういう積極的な態度になられたのは、どういうことから、そういうことになったんですか。農林省の方針は大転換したのですか。
  140. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 三十二年のときのいきさつにつきまして、農林大臣賛成しなかったから、とりやめになったのだというふうなお話でございますけれども、ただいま池田通産大臣からお話がありましたように、急に外貨事情が悪化いたしまして、その結果、取りやめになったというふうに私ども承知いたしております。政策が別にかわったというわけでもないわけであります。私どもといたしましては、国産の大豆が保護において万全を期せられるというのでありますれば、これは日本全体の利益のために日本の貿易政策上、対ドル制限、差別制限というものは撤廃し、そうしてそのかわり大いに日本の輸出も伸ばすという政策をとるべきである、かように考えております。
  141. 小林孝平

    小林孝平君 それは農林大臣よく御存じないから、そういうことをおっしゃっておりますが、それはそれでいいのですが、第一の経過から見て、一たんきめておって実施されなかった。今度も実施するときめておりながら、まだ対策もできていない、ふらふらしている。こんな岸ふらふら内閣で実際できますか。農林大臣責任を持ってやれますか。こんなふうに農業界を大騒ぎにさしておいて、結局できないということになるのじゃないですか。
  142. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農業界が心配がないように万全の用意を今準備いたしております。準備が整いますればこれはやる、かように考えております。
  143. 小林孝平

    小林孝平君 そんなこと口でおっしゃっても実際はできませんよ。もし大豆をやるならなぜ砂糖をおやりにならないのです。砂糖も大豆も同じじゃないですか。むしろ砂糖の方をやるべきである、こういうふうに考えます。大豆をやるなら砂糖。私は何も砂糖をやれという説を言うものではありませんけれども、大豆をやるなら同じ砂糖をなぜおやりにならないのか。
  144. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 砂糖につきましては、ただいまも為替制限をいたしておりまして大豆とは事情が違います。大豆は、一般の国々に対しましては、これは自由にしておりまするが、ドル地域だけ差別をしておる。これが非常に日本の通商政策上支障があるというので、まず大豆のAA制は採用していこう、こういうふうに考えております。砂糖につきましては、いろいろ議論もあるところでございますが、現在不当な差益が出ないようにということで基準価格を設定いたしまして、その基準価格に見合うような高率の関税、それから消費税を賦課しておる、これは一五〇%近いものをとっておるわけでありますが、さような方向で、ただいまのところ支障はない。従いまして砂糖につきましては、国産のテンサイ糖なんかを保護するという必要ともにらみ合わせまして、自由化はしないという方針をとっておるのでありますが、確かにお話のように検討すべき問題ではある、かように考えます。
  145. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣、それは違いますよ。砂糖の関税を取っているから、国内のこの一四〇%にも相当するものをとっているから、国内のビート産業を保護できる。だからやったらどうか、そういう意見です。あなたは別のことをお考えになっておる。池田さんによく聞いてごらんなさい、これはおかしいですよ。大体これは押し問答してもつまりませんが、大豆は、大きい業者とアメリカの御機嫌をとるために、農民の反対を押し切ってAA制にしようとしておる。逆に砂糖は農民保護の名のもとに、製糖業者を保護しようとするのが現状じゃありませんか。そんなことで世間は納得しませんよ。世間は岸内閣のことを、岸、佐藤御兄弟が入っておられますので、岸・佐藤内閣というけれど、その佐藤はこの砂糖じゃないですか。世間では、岸・佐藤商会などと言ってやじっております。(笑声)そういういろいろの疑惑を払拭する意味からも、私は大豆をやるなら砂糖をやるべきだ。私は一々例はあげませんよ。あげませんけれども、当然大豆をやるなら砂糖もおやりなさい。やれないのはそういうところから岸・佐藤内閣だからだと、こういうことになりますよ。農林大臣どうですか。
  146. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林省といたしましては、自由化とは申しますが、これは主として工業生産品の問題であって、農産物につきましては、これはよほど慎重に事を運ばなければならないというふうな基本的な考え方を持っております。まあ、しばしば申し上げました米や麦や酪農製品、そういう重要農産物につきましては自由化はいたさない、こういうことを方針といたしておるわけでございまするが、しかし対ドル制限の問題だけは片付けなければいかぬというので、すでに各国に対して自由化しておりまするところの大豆につきまして、これをドル地域につきましても自由化しよう、こういうのです。ですから、砂糖と大豆は置かれておる立場が基本的に違っておる、かようなふうに考えております。
  147. 小林孝平

    小林孝平君 そういうことをおっしゃれば、ますますこれはアメリカの圧力に屈してやるのだ、安保みやげであるというようなことが言われるのです。私はもっと違う意味で、ほんとうに自信を持って、やらなければならぬという説明をされたらどうですか。おかしいじゃないですか。そこでお伺いいたしますが、ガットの規定に関連して、わが国のような国が、外貨不足の理由以外に、国内農業保護のために、どういう場合に輸入制限をすることができるか具体的にお願いします。
  148. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 輸入制限をなし得る場合は、ガットの条約上原則として輸入制限は禁止されているが、次の例外が認められている。第一は国際収支上の理由に基ずく場合、それから第二の問題は農水産物の輸入制限、これは生産制限、販売制限を行なっている場合、それから過剰処理のため無償処分または廉売が行なわれておる、この場合に輸入制限がなし得る。それから第三はハードコアの規定というのに基ずく場合でございまするが、この場合におきましては、特定の産品に対し総会の二分の一以上の賛成があった場合に、五年間を限って輸入制限をなし得る。それから第四の例外でございまするが、これは一般的義務免除の条項と呼ばれております。ガット義務から免除を受けんとするときは総会に申し出があり、三分の二の賛成があればガットの義務からの逸脱、ウェーバーと称しておりまするが、逸脱が認められる、こういうことでございます。それから第五の場合は緊急措置としての輸入制限及び関税引き上げ、外国商品の大量輸入により国内産業が破滅しそうな場合、こういう場合でございます。それから第六の例外でありまするが、これは低開発国が自国の国際収支擁護のための輸入制限という場合に認められるわけでございます。この六つの場合でございます。
  149. 小林孝平

    小林孝平君 農産物はどれによって輸入制限をするのですか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農産物はその品物々々によりましていずれの場合に当たるか……。
  151. 小林孝平

    小林孝平君 米、麦、砂糖。
  152. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 米、麦、砂糖、それらは第三第四ですね。ハードコアの規定または一般的義務免除の規定、この場合にお願いする、こういうことだと思います。
  153. 小林孝平

    小林孝平君 ところが、日本の外務省はガットに繰り返し繰り返し、日本が輸入制限をしているのはこの外貨不足の理由以外にはないということを何回も言っておるのです。そんなハードコア、ウエーバーは認めるといっても、それは理由にならぬ。日本の外務省は、繰り返し、これ以外に理由はありませんということを言っておるのです。
  154. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまのところ全面的に自由化されないのは外貨の関係日本は主張しておるのであります。今、農林大臣がお答えいたしましたのは、外貨不足という理由でなく、いわゆるドイツ、イタリアのように、最近輸入制限してはいけないという、ガットの決定を受けた国でも、今のウエーバーを援用いたしまして、農産物につきましては、ドイツ、イタリアは制限を特定の農産物にしてやっておるのでございます。それからアメリカの方につきましても、農産物の制限をやっておることは今第二に相当する農事調整法の関係で、生産の制限あるいは販売の制限をやっておる、あるいは在庫調整のために無償でこれを払い下げをやる、こういう場合におきましては、外貨の関係がなくとも輸入制限ができるというのであります。お話の点は日本は外貨不足だから何でも一応はできることになっておる、それをだんだん改めていこうとしておるのでございます。
  155. 小林孝平

    小林孝平君 通産大臣の御説明はよくわかりますけれども日本の外務省は繰り返し日本が輸入制限をしておるのは、外貨不足以外にないということを繰り返し繰り返しガットに言っておるのです。従って今度新たにハードコア、ウエーバーを求めたりあるいは一般的ウエーバーを求めようと思ってもなかなか簡単に通らないだろう、ハードコア、ウエーバーの場合は二分の一の賛成、一般的ウエーバーのときは三分の二の賛成を必要とする、こういうように非常にむずかしい条件が付いておる、農林大臣は簡単にそういうことをお読み上げになりましたけれども、実際はできないのです。非常に困難なんです。そこを私は申し上げておる。
  156. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 少しお考え方が違っているのじゃないかと思います。日本は今外貨下足のために輸入制限をしております。ガットはこれを認めております。しかし今のウエーバーの問題はルクセンブルクでもオランダでもベルギーでも認められておるのであります。だから私は、日本は外貨が十分であってほんとうに自由な姿になった場合におきましても、ウエーバーを援用して農産物につきましては私はできることを確信しております。できるものなんです、これは。
  157. 小林孝平

    小林孝平君 通産大臣は一人でできるものと非常に強く言われますが、それはこのガットの規定からできることになる、しかしそれは二分の一の賛成、三分の二の賛成を得なければならない、こちらはできるものだといっても向うが賛成しなければだめなんです。過去においてそういう例があったかもしれないけれども非常に困難であるということを申し上げておる。さらにこのウェーバーを求めるのは、五年の期間である、五年で日本の農業がそういう国際農業に対抗できるようになるかならぬかということは非常に問題だと思います。しかしこの問題はさらに将来の問題として、私は次の問題を申し上げたいと思います。  米の自由化につきまして、世間では最近朝鮮米を入れるあるいは台湾から米を入れるあるいは南方から要らない米を入れなければならぬ、こういうふうに要らない米をたくさん買わなければならないのは、日本政府が管理しているからこういうことになる、日本の外交のやり方がまずいからこういうことになるのです。従ってこれは私は反対ですけれども、世間ではこんな管理をやめたらどうか、こんなことをやっているなら管理をしない方がいいんじゃないかという意見がありますが、農林大臣はどうお考えですか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 米の管理をやめたらどうかという声が国民の一部にあることはお話通りでございます。しかしこれは私は非常な誤解に基づく理論から出発しておるのじゃないかというふうに考える次第でございまして、昨年非常に豊作だったものですから、一時の豊作に根拠をおきまして、もう管理は要らないのだ、こういうようなことでございます。しかし昨年のようなああいう大豊作が連年保証されるということは、何人もこれはそう断言できないところでございまして、ここ数カ年を見ますれば毎年五、六百万石の米の不足をしておる、そういうような状態、さらに米の管理によりまして、国民全体ひとしく生活の安定を得ておるというような点、    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕 さらに生産農家につきまして安定した価格で米が売れるという点、さようなことを考えますると、この制度は国民経済の安定上、きわめて重大な地位にあるというふうに考えまして、私といたしましてはこの制度は撤廃すべきものではない、これをどこまでも維持すべきものである、かような考えを持っております。
  159. 小林孝平

    小林孝平君 私は、それはさっきの問題なんです。輸入について申し上げておる。最近のように、抑留漁夫と引きかえに韓国から三万トン入れる、台湾との通商協定のためによけいなものを五万トン入れる、ビルマからさらに計画外のものを入れる。こういうことは、日本政府が管理しておるから押しつけられる。自由にしておったらこんなものは買わないでいいのじゃないか。こういう意見があるが、あなたはどう考えられますか。
  160. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 海外の米は内地米に比べまして非常に安いのでございますから、もし日本が管理をしないのだというようなことになりますと、逆の現象が出てくる、こういうように考えます。日本内地の需給に悪影響のないように考えながら、通商政策上必要最小限のものを輸入しておる。かような次第でございます。
  161. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。農林大臣は、米が不足すると、絶対数量が。年々歳々今お話のような豊作が続くかどうか保証できない、こういうお話なんですが、ネズミが日本の米をどのくらい食い荒らしているか調べていますか。ネズミが何億匹いるか知っておりますか。
  162. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだネズミのことまでは調べておりません。
  163. 鈴木強

    ○鈴木強君 それでは、ちょっと私の調べたところでネズミが日本には三億匹いる。それで年間に米を食い荒らすのは百万トンです。あなた方農林省でこういうネズミを退治して百万トンも米を食い荒らすというようなことをやめていけば、ビルマやタイや、台湾や、朝鮮から三万トン、五万トンという米を買わなくても済むのです。そういう対策を持っておりますか。ネズミが米を幾ら食うかわからないということでは農林大臣は勤まらないですよ。
  164. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ネズミに限らず、米の生産を阻害するものにつきましては、十分措置していきたい、かように考えます。
  165. 小林孝平

    小林孝平君 通産大臣にお尋ねしますが、肥料は自由化するのですか、しないのですか。
  166. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自由化する考えはただいまのところは持っておりません。
  167. 小林孝平

    小林孝平君 外国の肥料は非常に安い、日本は出血輸出をしておる。そこで肥料が自由化されれば農民は安い肥料が手に入る。そこで農民は大豆が自由化されるならば肥料も自由化したらどうか、こういうふうに考えておる。そこで農民の困る大豆はどんどん自由化する。農民の困るものはやる、困らないものはやらない。弱いものの好むものの自由化はなぜやらないのですか。農民は踏んだり、蹴ったりじゃないですか。
  168. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 肥料のような農業に絶対不可欠の重要産業は、長い目で見て、外国と競争のできるように育成していくことが政治であると考えます。従いまして、今、ドイツ等ヨーロッパの尿素はこっちが勝ちますが、硫安につきましては、日本が今負けておる、今負けておるからといって、硫安のダンピングを入れるということになると、今に日本が高い肥料を売りつけられる、買わざるを得ないということになるのであります。御承知通り、聞くところによりますと、ドイツは国内の肥料が輸出肥料より相当高いということを言われております。こういうような状態におきましては、もし日本が輸入したらいいというので、肥料産業を育成せずにつぶしていったならば、今にドイツの高い肥料を買わされることになることは必定でございます。私は産業政策上からいって、今のところ自由化にするよりも、彼らに勝つ方法を講じていくことが産業政策であると考えます。
  169. 小林孝平

    小林孝平君 私は通産大臣のお考えに必ずしも反対するものではありません。しかし通産大臣がそうお考えになるならば、今回の自由化についても、それだけの配慮をしていただきたいと思う。自由化については、大体自由化は大企業に有利で中小企業や農業には不利であるといわれておる。その大企業に有利で中小企業や農業には不利であると言われているのです。その大企業でも自由化によって不利になる、困るものはこれを保護する。その一つの例が肥料なんです。岸内閣には大臣就任まで肥料会社の社長をされた方がおられるのですが、そういう方に対する配慮からこういうことが行なわれていると、まさかそんなことはありませんけれども、世間ではさっきの佐藤内閣と同じように、そういう配慮がされたのじゃないかと、まさか通産大臣はそんなことをお考えになりませんけれども、今の政府のやり方はみんなちぐはぐだから……。そうして国民に納得させない。国会質問しても、通産大臣は今よくお答えになりましたけれども、その他の問題についてはちっとも国民に納得させるような議論が行なわれないから、こういう問題が起きてくるのだろうと思うのです。自由化の問題等には中小企業や農民は絶対に納得ができないのです。もっと具体的に親切な配慮があってしかるべきだと思うのです。
  170. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自由化をいたしますと、大企業がよくなって中小企業が困るのだということを一がいに言われておるようでございますが、そうでは私はないと思うのです。最近の例で申しますとまだ原綿、原毛は自由化しておりませんが、昨年の暮、昭和三十六年の四月から自由化するぞと言ったら困ったのはこれらでございます。十大紡とかあるいは新紡等の紡績会社が、どっちかと言ったらお困りになったのじゃございませんか。織屋さん等のいわゆる織物業者は非常によくなっているのじゃございませんか。そういう現象が起きてくるのを国民は見ていない。それでまた逆に織屋さんとかあるいは新々紡のようなものが困るものであれば、今御審議願っておりまする業種別振興法、あるいは繊維工業臨時措置法の改正、こういうことで助けていこうとしておるのであります。誤解があってはいけませんが、今の大豆の問題にいたしましても世界の情勢が変わってきております。前はヨーロッパ諸国いわゆるポンド地域その他が交換性がなかったわけです。日本はポンド地域、スターリング地域に輸出いたします。そうするとドル地域から輸入いたしまして、ポンドはあり余っているがドルは足らない。そのときポンドをドルに自由にかえてくれれば問題はない。ポンドはあり余っているからポンド地域から自由に輸入いたします。しかしドル地域からはドルが不足だというのでアメリカの方の輸入を制限しているわけです。しかるところ一昨年の暮からポンドの交換性が回復いたしましてポンドでもドルでも同じことになった。しからば何ゆえにアメリカの品物だけ輸入を禁止するのか、許可制にするか。これは国際的に見て、日本がそんな頭を持っていると言ったら人に笑われるわけです。だから、アメリカに対して、カナダもそうでございます、ドル地域に対して不当に制限しておったものは、国際的に日本が自由な立場に立つ以上は、そういうアメリカに対する不当な制限を撤廃すべきだということが世界の世論であり、われわれは正義をもって行く以上当然のことであります。だからこれを行なうことが日本としてあたりまえだ、正当な道だからドルの制限を撤廃しようというところから来ておるのであります。決してアメリカから言われたとか何とかいうのじゃございません、世界の思潮なんです、変化なんです。この点を一つ御了承願いたいと思います。
  171. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの問題についてさらに通産大臣にいろいろお尋ねをし、また所信をお伺いしたいと思いますけれども、本日は時間の関係もございますので、私が今申し上げたのは、こういういろいろの疑問があるから、やるなら国民の納得のいくようにおやりになったらどうか。国民だけではない、現に自民党の中でも河野一郎さんのように、これはアメリカから押し付けられたのだと言って猛烈に反対されている方もある。まず足元から固められたらどうか。これはちょっと納得させることは池田さんには困難だろうと思うけれども、まずそういうことからおやりになったらいかがですか。われわれに向かってそんなことをおっしゃるより足元を固めて出直したらどうかと、こう私は思います。  そこで去る九日、十日の両日、当委員会において私は新安保条約第五条に関連して質疑を行ないましたが、政府答弁が明確でないのでさらに一、二の点をただしたいと思います。  まず第一に竹島の問題でありますが、先ほど千田委員が言われたのでありますが、竹島日本施政下にあるということは政府が確認されております。これは当然であります。これは何ら疑問の余地がなく、さらに今後これと同様のケースがあれば、第五条を発動すべきであるというきわめて重要な御発言がありました。そこで問題は、それはよくわかりました、はっきりわかりましたが、外務大臣にお尋ねしますが、米韓相互条約の第三条で「この適用地域は、現在それぞれの行政的管理のもとにある領域」とこうなっているのです。はっきり。さっき外務大臣はいろいろのことをおっしゃいましたけれども韓国はわが領土を不当に侵しておるけれども、ともかくこれは自分の領土であると言っておるのです。従ってこの第三条の適用区域に韓国ははっきり入れているんです。従って、アメリカはこの第三条の適用区域から竹島を除くという了解韓国に与えているのかどうか。私はほかのことは必要ありません。与えているのか与えていないのか。そういうのはほおかぶりしておるのかどうか、そこをはっきりお尋ねいたします。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 米韓条約にございます、現在それぞれの行政的管理下にある領域ということでございますけれども竹島は法律上韓国の行政的管理下にはないのでありますから、当然これは除外されるものと思わなければなりません。
  173. 小林孝平

    小林孝平君 それは日本の一方的の解釈じゃないですか。韓国はこれを自分のものだと言っているんですから、この米韓条約韓国はこれに相当すると言っているんです。私は韓国立場を聞いているんです。あなたの考え方を聞いているんじゃない。韓国はどう解釈しているかということです。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 韓国がどういうふうに解釈しているかは存じませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、日本立場というもの、日本竹島に対して持っております領土あるいは施政権というものについて、過去のいきさつから申しまして、アメリカは十分了承いたしておるのでありまして、従ってその点について何らの疑問はないとわれわれは存じておるわけでございます。
  175. 小林孝平

    小林孝平君 それならば━━それはだんだん聞きますが、過去八年間日本韓国に交渉をしておるとこう言っておられますが、それを前提としてアメリカのことを言っておられるのですが、それならば、この八年間に具体的にどういうことを韓国と折衝されましたか。具体的に韓国と交渉した経緯をお尋ねいたします。それをお聞きしなければ、アメリカが了承しているかどうかわかりませんん。あなた一人でいいとおっしゃっても、ちっとも客観性がないのです。
  176. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本は過去におきましてむろん、竹島に対する不当な侵入がありましたとき以来、今日まで韓国に対してこれは日本領土であって、決して韓国が言うようなものではないということをあらゆる機会に申しております。それのみならずこの問題を解決するためには日本の正当な主張の裏づけ、そうして最終的な結論を得るために、国際司法裁判所にも提訴することを韓国側に提起もいたしたのでありますが、韓国がこれを応諾いたしませんからそれは提訴できなかったわけであります。そうした過程におきまして、われわれとしてはこの問題について国際司法裁判所に提訴します以上、各国の理解も求めなければならぬのであります。そういう点について、十分な過去に対する説明をいたしておりますので、そういう経緯から見まして、これは当然われわれの考えておる通りアメリカも了承をいたしております。
  177. 小林孝平

    小林孝平君 アメリカも了承しているなら、アメリカアメリカの態度としては、米韓条約の第三条は竹島を除くということをちゃんと韓国に申し出なければ、これはだめじゃないですか。また日本は、今回の条約の締結にあたっては、もしそういうことが過去においてやられていなければ、当然アメリカに要求しなければならない、こんな両方に足を突っ込んだような、こんな条約では困るじゃないですか。
  178. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、法律に言いまして韓国の行政管理下にある所ではないのでありますから、その点も米韓条約において含まれていないということは明らかでございます。
  179. 小林孝平

    小林孝平君 明らかであれば紛争にならぬわけなんです。日本はそういうふうに主張しているけれども韓国は聞かない。アメリカ日本立場を認めるならばアメリカにそういうことを要求しなければならない。条約局長答弁してもらいます。
  180. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 補足説明さしていただきます。ただいま大臣申し上げた通りでございます。すなわちわれわれといたしましては、申すまでもなく日本の施政のもとにある地域である、これは確認いたしております。しかしこの問題が条約の第五条の問題であるかどうかということは、施政のもとにあるということのみならず、それにプラス武力攻撃が起こりました場合に、それに対して直ちに対処する行動をとるかどうかということでございます。この点につきましては、この問題が起きまして以来、八年以来外交交渉をずっとやってきたわけでございます。すなわち第五条のそのような問題にしないという了解のもとに、これはずっと続けてきたわけでありますから、全然五条の対象にはならない、こういうわけでございます。
  181. 小林孝平

    小林孝平君 私が条約局長に特にお願いをしたのは、外務大臣がおかげんが悪いから条約局長に尋ねる。あなたもおかしいじゃないですか。何を言っておる。全然そんなことを聞いていないじゃないか。私の言っておるのは、アメリカはこれを日本領土であると認めた、アメリカは行政協定によって竹島を含むこの海域を演習場に貸してもらいたいという申し出をしたくらいですから、それは返還しましたけれども日本領土であると認めておる。従ってそれならばこの米韓条約の三条から除外しなければ日本ははっきりしませんよ。そういうことをアメリカに申し出る必要があるのじゃないですか。日本が申し出なくともアメリカは自発的にそういうことをやるのが国際信義の上で当然じゃないですか。
  182. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、法律的な解釈の上からいいましても、行政管理下にないわけでありますから、当然これは除外されておるということは認められておるわけであります。特にその点で現在確認をする必要はないと私は考えております。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  183. 小林孝平

    小林孝平君 そういう同じ答弁をやつちゃいけません。自分の領土であるといっておるのだから、韓国との関係ではこれは行政的管理下にあるということは当然じゃないですか。あなた法律的に法律的にと言うけれども日本の法律でこの米韓条約をしばるわけにいかんじゃないですか。あなたおかげんが悪いということだから、条約局長
  184. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 補足して説明申し上げさしていただきます。ただいま私が申し上げたのは、五条の問題と関連性を持ってその問題を御指摘になるわけでございますが、五条の問題とは初めからこれははずしておる、そういうことを申しておるのであります。従いまして今御指摘の点は、この条約の問題とは別の問題として、一つ領土的な紛争の問題として、韓国の問題はどうか、こういうことだと思います。それは今まで大臣が申し上げました通り、この二国間の交渉の問題として、今できるだけ手を尽してきておるわけです。こういうことを申し上げておる次第であります。
  185. 小林孝平

    小林孝平君 アメリカはどうだ。
  186. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) アメリカの問題は、一般的領土をどうするかという領土紛争の問題としては、これはアメリカと今後どういうふうに考えていくかという政策上の問題になると思いますが、現在のところ韓国との交渉で一切の手を尽くしておる、こういう御答弁をいたした次第であります。
  187. 小林孝平

    小林孝平君 そんならアメリカは両方に足を突っ込んでやっているじゃありませんか。
  188. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) そうすると条約の問題にまた返るわけでありますが、条約の問題を離れまして、一般領土紛争の問題ということでございます。
  189. 小林孝平

    小林孝平君 五条の適用地域。
  190. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 適用の問題としては、初めから五条の問題として、武力行動を起こすとか起こさないとかいう問題としては考えておりません。これははずしておる問題だと、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  191. 小林孝平

    小林孝平君 あなたはそうおっしゃいますけれども、先般ハーター国務長官が韓国に対して警告を発した際に、アメリカは異例の警告を発しておるのです。米国日韓関係の現状に対して非常に憂慮しておる。その憂慮の内容は、韓国日本の漁船を公海で捕獲し、船を押収し、漁夫を体刑に課しておること等を非常に憂慮している、こう言っている。もしこういうことを言うならば、アメリカはこの竹島の問題を取り上げて、こんなことを言うなら、竹島を武力攻撃して日本領土を侵したことを、このとき言うべきじゃないですか。言わないところを見ると、これはあまりあなた方のお考え通りアメリカは考えていないんじゃないかと思うんです。どうですか。
  192. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、日韓会談の前提として、釜山の乗組漁船員の帰還の問題についてわれわれは強い要望をいたしたわけでございます。この問題が解決いたしませんければ、日韓会談を進めてゆくわけに参らぬことも、国民の感情からいいましても当然のことでありまして、われわれはそれにつきまして最善を期さなければなりません。従ってこの原因でありまする李ラインの問題を提起いたしまして、そうして今申し上げましたような李ラインそのものが不当なラインであって、しかもそれに関して漁船員、乗組員が不当につかまっておる。しかもそれは一応刑期が済みましたあとでもなお釈放をしないという問題は、これは重要な問題でありますから、この点について国際世論に訴えて参らなければならぬのでありまして、われわれとしてはそういう点につきましてアメリカ側にも十分な理解を得るように今日まで努力をしてきたわけであります。単にアメリカだけではございません、将来この種の李ラインの問題その他を片づける意味におきまして、国際機関等に何らかの要請をいたす場合もあり得るんでありますから、あらかじめ十分各国に対してその理解を深めてもらわなければならぬので、今回さらにそういうことを重ねてやったわけであります。従って今回ハーター国務長官が韓国の大使に対しまして、この問題について警告を与えたのでありまして、日韓間の全面の問題について何らかの意思表示をされたというわけではないわけでありまして、従って今回の問題がハーター書簡に抜けているのも私は当然なことだと思います。
  193. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して。私は竹島の今までの論議を通じまして、ぜひこの際確認をしておきたいと思うんですが、新安保を批准するまでに政府はこの竹島問題を解決する、このような体決意を持っているのかどうか。これが非常に私は重大だと考えますのは、おそらく、新安保が批准された、これが発効した、そういう段階の中で一番この新安保の試金石の問題になるのは竹島問題ではないか。現に紛争が起きている問題です。これに対して論議の中でも起こってきたように、また国民の世論にもあるように、当然第五条を発動すべきだ、こういうような議論が起こってきて世論が巻き起こる、こういう中では政府もこの世論の前に屈せざるを得ないというような状況が起これば、これはアジアにおける、ことに日本の近辺におけるところの紛争のおそれが非常にある。従って当然この新安保を批准する前に、少なくとも政府の態度としては事前処理としてこの竹島問題を平和的に解決する、はっきり日本の主張を明確にしてこの問題を明らかにするという努力をしなければならぬ。この点についての政府の決意、これに対する見通し、私はこういう点をはっきりこの議場を通じて明らかにしてもらいたい。
  194. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日韓間の問題として、ただいま申し上げましたような李ラインの問題あるいは竹島の問題等につきましては、安保条約の事前でありますとか事後でありますとかいうことなく、われわれとしては常にこの問題に対して関心を持ち、強い態度をもって交渉しなければならぬことは当然のことでありまして、ただわれわれとしてはできるだけ二国間の話し合いによってこれを片づける努力をまずいたしますことが、当面当然の務めである。しかしそれがもう八年もたって長いじゃないかという御批判もあります、事実私自身もこの問題に二年半取り組んでおりまして、相当長いという感じを私自身も持ってきておるのでありまして、従って二国間でこれを解決する最大の努力はいたしますけれども、もしそうでなければ他の方法によることも考えていかなければならぬことは当然のことだと思います。従ってこれに対しては安保条約批准の事前とか事後とかいうことでなしに、われわれとしては常時努力していかなければならぬことは当然だと思って、その目標のもとに努力をいたしております。
  195. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して。今のようなあいまいな答弁ではまずいと思うのです。批准のあとであれ先であれ、努力をするなどという、こういう問題ではないと思う。私は先ほど例をあげました。これはおそらく新安保の試金石になる。そうしてまた世論も巻き起こるだろう、それに屈せざるを得ないような条件があるわけだ。この問題を、ここの論議を通じて長い間やりました。国民世論もそういう方向を指向している面が非常にうかがわれる。これは紛争のもとになるのだから、少なくとも事前処理としてこの問題をやらなければならぬというのが、私のあなたに対するこれは質問の要旨であり希望なんです。従って、私は当然批准の前の条件として、これは解決しなくちゃならないと思いますから、この問題が解決しなければ新安保の批准を延ばすべきではないか、こういう議論が成り立つ、私は少なくともそういうふうに考えるのだが、その点についてあなたはどういう決意を持っておられるか、もう一度この点について明確な答弁をしてほしいと思います。
  196. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題日韓間の問題につきましては、今申し上げましたような竹島の問題ばかりではありません。李ラインの問題につきましても、われわれはできるだけ早い機会に解決をしていくという努力を重ねていかなければならぬことは当然でございまして、今申し上げましたように、これが一日も早く解決することに向かって、最大の努力をいたすことは当然でございます。ただ、これと安保条状の批准そのものが直接に関係することはないのでありまして、われわれとしては、できるだけ日韓間の問題としてこれを解決する。もし日韓間の問題として解決しない場合には、さらに工夫をすることが必要であろう。そうして一日も早く解決することが必要であろうと考えます。
  197. 羽生三七

    羽生三七君 関連して簡単に。先ほどの小林君の質問に対する答えがちょっと不明確だったのでお伺いいたしますが、日本韓国日本アメリカとの間で、この問題でどういう交渉をしてきたかと言われましたが、私はそれを具体的に、どういうレベルの方が話をされているのか、単に事務当局がちょこちょこと事務的に話をしているのか、大臣なり、場合によったら総理大臣なり、相手のしかるべき人と、少なくともちゃんと整った形でやっている会談でなければ、この問題はあまり意味がないと思うのですが、そういうことについて、どういうレベルの方が話し合ったのか。あるいは、もう一つは、先ほど国際司法裁判所に提訴する場合に、韓国の同意がなかったからできなかったと言われますが、それ以外には、これは国連に何らかの形で日本立場を訴える方法はないのかどうか。これは国連の安保理事会へ持ち出すとか、とにかく何かそういう他の、いわゆる司法裁判所以外にこの問題を提起する他の方法は残されてないのか、この二つをお伺いいたしたい。
  198. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題につきまして、御承知通り韓国との話し合いにおきましては、こちらに代表部がございまして、われわれはその代表部をいわゆる外交官に準じて扱かっておりますので、それと折衝はいたしますけれども、これは事務レベルの折衝以上には進まない問題でございます。私といたしましては、アメリカ等に対しましては、駐日大使を通じて、話をいたします。私がワシントンに参りましたときには、日韓間の問題の経緯等につきましては、ダレス前国務長官にも、今回のハーター国務長官にも、アメリカに今すぐに仲裁を頼むのではないけれども日韓間の紛争の実情はこういうことである、日本は隣国として非常に困っているのだという立場から、十分な説明をいたしているのであります。  国連提訴等につきましては、二国間の話し合い等がいかない場合には、これは一つの方向として検討いたしております。むろん、こういうような国際紛争でございますから、いきなり安保委員会に持ち込んでも、取り上げられる可能性があるということは必ずしも確実ではございません。むしろ総会等の機会にこれを持ち込むことが適当ではないか、そういうような方法論がいろいろございます。従って、そういう点につきましての検討を十分した上でないといけないわけでありますから、二国間で話し合いができません上は、次にとるべき手について、今そういうようなことについて十分検討はいたしております。
  199. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して、ちょっと一つ大臣、そうしますとまあアメリカは、大臣がともかくも自身で話されたようですけれども韓国とは大臣自身は別に何にも話をされたことはないのですね、どうですかね。
  200. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん柳大使、現在おります柳大使に話をすることはございます。しかし、今前段に申し上げましたように、先ほど羽生委員が、高官と高官との間の話し合いということがございましたので、現状の駐日代表部と私とが話しましても、いわゆる高官と高官との話と申しますか、あるいは事務レベルの方の一話と申す方がむしろ適当であろうという意味において、そういうことを申し上げたわけであります。
  201. 小林孝平

    小林孝平君 この竹島の問題は、非常に、他の委員からも発言がありましたように重要な問題で、政府答弁は非常に明確を欠いておりますので、またいずれ安保特別委員会その他でもってお尋ねをすることにいたします。  そこで、先日も不明確でありましたが、米国は、武力攻撃という言葉を、日本政府が解釈しているように、侵略の意図をもってする組織的な大規模な攻撃というように、なるべく狭く解釈しなければならないという義務があるのかないのか。もしそういう解釈をしているというなら、それを立証する具体的な証拠を示してもらいたい。私は条約局長でいいです。
  202. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。ただいまの武力攻撃の概念でございますが、これは一国が他の国に対する組織的な計画的な武力の行使でございます。このことは、これは国連憲章第五十一条の概念をそのままとった概念でございます。従いまして、五十一条も一般にそのように解せられている次第でございます。従いまして、これはアメリカとの意見の一致またはアメリカがどう考えているかというよりも、五十一条の考え方といたしましては、そのような考え方をもって行なわれている、こういうふうに考えております。
  203. 小林孝平

    小林孝平君 これはアメリカ日本との条約なんです。そうして、米国は従来、憲章第五十一条を最も広く解釈しているんです。新安保条約についてだけきわめて狭く解釈するというようなことはとうてい考えられないのです。そういうふうにごまかしてはだめです。アメリカは非常に五十一条を広く解釈しているのですよ。だから、アメリカはあなた方と同じように狭く解釈しているのかどうか、ちっともはっきりしていないのです。そういう何か交換公文でもありますか、秘密の交換公文でもつあたら発表していただきたい。(笑声)笑いごとじゃないです。
  204. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) そのような秘密の交換公文とか、そういうものは全然ございません。これは憲章第五十一条の用語をそのままとったわけでございまして、これは当然にそのように解釈すべきものであると、私はこのように考えております。たとえば、例を申し上げますれば、アイスランドと英国の最近の事件が起きまして、アイスランドが英国の、アイスランドの近くにおりました英国の漁船を力をもって抑留しようといたしました場合に、英国が自国の武力を用いてこれを解放した、いろいろ武力事件が起きております。しかしながら、このような武力事件は、いずれも本憲章第五十一条の武力の行使という意味で取り扱われていないわけでございます。また、この侵略とか武力攻撃という概念を確定するためのそれぞれの特別委員会が開かれておりまするが、その委員会の中でも、ある国は、単なる国境紛争というものは当然これから除かれるのだと、またソ連の侵略に関する定義の原案におきましても、国境事件というものは除かれておるわけでございます。従いまして、そういうことを考えますれば、この武力攻撃というのは、当然一国が他の国に対するそのような組織的な計画的な武力の行使である。従いまして、そのように考えますがゆえに、単なる一国━━自国だけの個別的な自衛権の発動のみならず、ここに集団的な自衛権というのが新たに認められたわけでございます。
  205. 小林孝平

    小林孝平君 その英国やアイスランドのことは知りません。今アメリカ日本のことをあげている。アメリカはこの憲章五十一条のそれを広く解釈している、こういうことを言っているんです。そんなに狭く解釈していないんです、あなた方の……。ここに具体的に例をあげてもいいですけれども、時間がありませんからやりませんがね。レバノンの出兵の例を見ても、その他、アメリカは非常にこれを広く解釈している。あなた方は憲章五十一条を万能薬か何かのつもりになって、何かすれば五十一条、五十一条と言っているけれども、相手はそうじゃないんです。これはアメリカ日本条約なんです。アメリカはどう考えているか、もし、あなたがそんなことをおっしゃるなら、これはちゃんとアメリカと文書を取りかわすなり何かしなければなりません。答弁になっていないじゃないですか。首をかしげたってだめです。答弁になっていないじゃないですか。
  206. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連憲章五十一条のこの武力攻撃の解釈につきましては、国連のメンバーとして、先ほど条約局長が申し上げましたように、委員会等でも論議されているのでありまして、これをそう解釈して守っていきますことが当然のことでありまして、(「アメリカは広く解釈しているじゃないか」と呼ぶ者あり)アメリもその当然のことを当然としてやっていることは、あたりまえだというふうにわれわれは解しております。
  207. 小林孝平

    小林孝平君 それを現実にやっていないのですよ。外務大臣はそんなのんきなことを言ったって、アメリカは広く解釈しているんです、具体的に。あなたは何でもあなたのお人柄から、何でも善意に解釈されるけれども、相手はそうじゃないんです。みんなあなたのような善良な、そしてまっすぐな人ばかりじゃないです。アメリカは悪いとは言いませんけれども、そのいろいろの解釈の仕方があるんです。みんな自分と同じだと思ったら大へんです。現にわれわれはあなたと違う考え方を持っている。アメリカはなおでしょう。そんなのんきなことを言っちゃだめです。条約局長、どうなんです。
  208. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 先ほどのレバノンの問題でございます。
  209. 小林孝平

    小林孝平君 いや、それは一つの例ですよ。
  210. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) レバノンの問題で、あるいはアメリカが武力攻撃というのを広く解釈して行動に出たのではないか、こういう御指摘がございました。しかし、これはアメリカのそのときの声明その他を読んでみますと、第一にあげておりますのは、まあ私から申すまでもないことでございますが、レバノン政府の要請があったということを第一の事例にあげているわけでございます。(「要請があれば何でもいいのか」と呼ぶ者あり)要請がありましたので、これを派兵をして、決して、ここに武力攻撃が行なわれまして、その武力攻撃に対抗するために行ったのであるということは言っていないわけでございます。
  211. 小林孝平

    小林孝平君 だめだ、そんなことでは。(「五十一条を言っていじるやないか、全部言いなさい、四つの条件言いなさい」と呼ぶ者あり)
  212. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それから、五十一条のことをあげていることは確かでございます。しかしながら、あの、アメリカがあげております━━私は、別に、これを、アメリカ云々という問題は、アメリカの声明によってこれを判断しているわけでございますが、五十一条の規定に従って、この適用としてこれを履行するという意味合いにおいて派兵したのではないか、五十一条の規定に集団の自衛ということが書いてあるが、それの精神に従って行ったのであると、こういうことを申しております。その精神といいますのは、五十一条の集団的自衛権の基礎となります連帯性ではないかと思います。すなわち、アメリカはそこでレバノンとの連帯性を強調するという意味におきまして、五十一条の基礎となるところの精神をあそこで掲げたのではないか。そうすると、その基礎となる精神と、加うるにレバノンの要請ということによってこの派兵をいたした。こういうように私どもは解釈をいたしております。(「そう拡張解釈をし始めるからあぶないんだ「「五十一条さえ援用すれば何でもできると思っている」と呼ぶ者あり)
  213. 小林孝平

    小林孝平君 万能薬か何かのように言っている。これは各委員発言をお聞きになっても、いかに、条約局長、あなた━━委員発言を聞かれても、あなたの説明がいかにでたらめであるかということがおわかりになるだろうと思う。そういうことを言って、だんだん解釈を拡張する。そうして、一方的にあなた方は解釈される。アメリカはどう考えているか知らぬのに、こちらだけで言う。そういうことは、知らず知らずの間に、国民の間に反米感情をあおっているんです。あなた方の責任ですよ、こういう空気がだんだん出てきておるのは。もっと正直に、そして具体的に話し合いをしたらどうですか。あなた方の意図に反して、反米感情が国民の間にだんだん醸成されておる。これは日本のためにもあまり好ましいことではありませんよ。実際これは困った問題だと思います。
  214. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、時間がなくなりました。終わりました。
  215. 小林孝平

    小林孝平君 はい、そこでもう一つ、きわめて重大なことは、ちょっと……。
  216. 小林英三

    委員長小林英三君) じゃもう一問だけ許します。
  217. 小林孝平

    小林孝平君 だから、そこで武力攻撃であるかないかと認定するための機関及び手続が、この条約上に明示されていないのです、今回のこれには。こういうことは非常に危険で、これから安保特別委員会でいろいろ論議をされると、だんだんこれは大へんなことになるということで、あなた方、政府の意図に反してですね、これは国民的に、この条約に対する不信の念が起きてくるわけだ。だから、もしこれを通したいなら、もっと正直に国会答弁しなくちゃならぬ。さらに私がここで指摘したようなことを、アメリカと交渉して、明らかにしなくちゃならぬ。  そこで、ここでもう一つお尋ねしますが、このような認定は、今武力攻撃であるかないかという認定は、この条約の実施に関する問題として、この第四条でやるのかどうか、質問わかりましたか。おわかりにならぬか、わかりましたか。もう一度言いましょう。武力攻撃であるかないかを認定するための機関及び手続が、この条約に欠けているのです、何と言っても。そこで、このような認定は、条約の実施に関する問題として、第四条に基づく日米協議の対象になるのか、ならぬのか。
  218. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 武力攻撃そのものは、現実の事態でございますから、そのこと自体は明瞭でございます。ただ、お話のように、組織的なあるいは意図を持ってというような問題については、第四条でもって、そういう状況が起こってくる関係を常時協議をいたしておりますから、当然そういう状況が組織的であるのか、あるいは意図を持ってやってくるのかというようなことが、事前に相当に理解されるものだと、われわれは考えております。
  219. 小林孝平

    小林孝平君 従来の答弁と違いますよ。
  220. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連。先ほどレバノンの問題が出ましたが、レバノンの場合には、今の条約局長の御説明では、レバノンからの要請があったことと、派兵の要請があったことと同時に、現実には武力攻撃が行なわれていないのだけれども、第五十一条の精神からは、そうでない場合でも派兵があり得るのだというふうに拡張解釈をしてあのときには派兵をしたのだろうというような意向を、声明をアメリカがしたというふうに御説明があったように思うのですが、もしそうだとすると、今度、たとえば日本が、何か日本の安全が脅かされているというような観念に基づいて、日本から、現実にこの攻撃がないにかかわらず、アメリカに派兵を請い、従ってアメリカは、現実に武力攻撃が日本に行なわれていない場合にも、そういう点から、共同に対処するとか、あるいはは協議をするとか、第四条あるいは第五条に基づいて、日本アメリカからの派兵、戦時的な派兵という問題があり得るというふうにお考えになるのかどうか、その辺の事情を御説明を願いたい。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいましバノンの例が出ましたですけれども、レバノンの問題は、先ほど条約局長から申し上げましたように、一国の主権者が要請をいたしますれば、当然派兵ができるわけであります。それは、武力攻撃のおそれがある場合にそういう処置をとって、しかもその処置というものは、五十一条の集団安全保障によっても裏づけられるということであるわけであります。ただ、現実にアメリカは、そのときにむろん武力攻撃がないのでありますから、武力行動をいたしてはおらないのでありまして、そういう意味においては、何と申しますか、一国の主権者が要請すれば、そこに当然行って、将来そういう事態が起こることに対して対処するのだ。その場合には集団安全保障の機構の上に乗って、国連等に報告をするという状態になろうと思うのでありまして、何か国境紛争があったらすぐに出ていくというわけではございません。
  222. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 日本の場合は……。
  223. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん日本の第四条の協議の場合において、組織的な、ある意図を持つような攻撃が非常にあり得るというようなことが想定されますような場合においては、それに対処する方法をしょっちゅう考えておかなければならぬことは、これはどこの国でも当然、日本ばかりではございません、どこの国でも、私は当然のことだと思います。
  224. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君の質疑は終了いたしました。
  225. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 委員長、そこのところ非常に重大です。もう一つ関連で。
  226. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  227. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常にあいまいになってきたのですが、そういう武力攻撃が現実にあったのじゃない、しかしそれが予想されるとか、従って、日本の安全が脅されるというような、単なるそういうことで、日本としては、アメリカに大部隊の派兵を請求をする、要求をするというようなことがあり得るのかどうか。そうしてまた、もし日本が、そういうことをすれば、レバノンに対してすらああいうことをやったのだから、先の声明によれば、容易にアメリカは、そういうことをやるに違いないというふうに、非常な懸念を持つのであるが、日本政府としては、どうなのか。  それから日本政府が、そういう要請をした場合には、どうなるとお考えになるか。そういうことをどういうふうに考えながら、この新安保条約が話し合わされたのか、そこのところを明瞭に御説明を願いたい。
  228. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約を取り結びますことは、当然日本の平和と安全を維持して、日本が侵略を受けたときには、武力攻撃を受けましたときには、これに対抗する処置をとらなければなりません。従いまして日本としては、組織的な、あるいは意図を持ったような、そういうことがあり得るという予想がありますれば、そういり事態に対処するという日本としての考え方を持っていかなければならぬこことは、これは当然だと思います。  しかし、持ったからといって、何も、すぐに行動するわけではございません。そういうことが、また、そういうような何か意図を持って組織的に動いているのだけれども、それが、また消えてしまうという場合もあるわけでありまするから、そういうような問題について、しかし当然、その次には武力攻撃が起こるというような場合には、それに対処することを、日本も考えなければなりませんし、集団安全保障のこの本来の安保条約の建前からいいまして、アメリカにも、そういう状態が起こりつつあるのだということを注意をして、そうしてそれに対処するような方法を準備してもらわなければならぬことは、これは当然なことだと思います。
  229. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、対処する方法が━━攻撃がないにかかわらず、当面の危険があるからといって、アメリカからの派兵その他があり得るのかどうか。あるいはそういう場合には、日本は、派兵の要求をされるのかどうか、現実に武力攻撃がないにかかわらず……。
  230. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、現実に攻撃があれは、対処しなければなりませんけれども、(「それはない、現実にない」と呼ぶ者あり)現実にはなかった場合でも、われわれは準備しなければ日本が次に侵略をされるのだと、武力攻撃を受けるのだという段階では、日本国民こしては、当然それに対処していくここの準備をしなければならぬ。それは自然です。しかしこれが……そういうことを考えていかなければならないことは、これは当然なことだと思います。  しかしそのときに、すぐ派兵を要求するとか何とかいうようなことは、そのときの事態でなければわからぬわけであります。われわれとしては、そういうことを、今仮定の問題で、御答弁するわけには参らぬのであります。   —————————————
  231. 小林英三

    委員長小林英三君) 平林剛君。
  232. 平林剛

    ○平林剛君 私は、今国会審議の焦点となっている新安保条約の性格あるいは条約の解釈をめぐりまして、展開された質疑応答を静かに観察をいたしまして、今後の見通しを含めた政府の考えと、御答弁の底を流れる認識の中に、何となくのどもと過ぎて熱さを忘れたという印象を強く受けているのであります。そこでこの際、政府の注意を喚起する意味と、若干の疑問をただすために、賠償問題を取り上げることにいたしました。  第二次世界大戦━━当時の日本的表現によりますと、大東亜戦争によって、わが国の失ったものは、台湾、朝鮮などの領土権、沖繩、小笠原諸島、千島列島などの施政権、それに二百十八億八千万ドル、邦貨で換算をいたしますと、七兆八千七百六十八億円と推定される海外資産の喪失、またフィリピン初め四カ国、計三千六百億円をこえる賠償負担であります。私は本日、賠償問題のすべてについて、質疑をする予定も時間もありませんけれども、まずお尋ねをいたしたい点は、賠償に対する政府の基本的な態度についてであります。私と若干見解は異にいたしますけれども政府は、一応ベトナム賠償で、ひとまずけりをつけて、今後二十カ年間にわたり賠償を実施する新年度に当たるのでありますから、政府の御解見を承っておきたいと思うのであります。
  233. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 賠償は、御承知通り、戦争中に与えましたそれぞれの苦痛であるとか、損害であるとかに対して、日本国民として払うべきものを払う、損害を補償するということであることは申すまでもありません。  が、しかしながら、この賠償を通じまして、それぞれの国と友好な関係を樹立し、また円満にそれを遂行することによって、友好な関係を樹立し、また当該国の経済開発、民生の安定等に寄与することが、非常に必要だと思うのであります。  そういうことを基本的な方針として考えているわけでございます。
  234. 平林剛

    ○平林剛君 ビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、これらに対する賠償の実施状況についてお尋ねをいたします。
  235. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 詳しい点は、事務当局から御説明をいたさせることにいたしたいと思います。
  236. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) まずビルマの賠償が、一番長くなっておりますから、ビルマから申し上げますと、ビルマの賠償は、ことし━━昭和三十四年の十月一日から昭和三十五年の九月で━━第五年目になっております。これは、賠償年度と申しますものは、日本の会計年度と必ずしも一致いたしませんので、その条約が批准されたときから、大体算定いたしておりますので、ビルマに関しましては、十月一日というようなことからなっております。  そうして、そのことしの実施計画をみますと、大体、それが百九十四億円になっております。御承知通り各国の賠償をやります上において、毎年度に、その年の実施計画を大体協定によりまして、両国間で合意をするという仕組みになっております。  そこで、ことしの実施計画を見ますと百九十四億円でございまして、その計画のおもなものはバルーチャンの水力発電所計画、それからビルマの鉄道計画、それから海運、造船所の計画その他がございます。そのうちのバルーチャンの水力発電所は、大体第一期工事は完成いたしまして、三月二十八日の日に完成式を行なうことになっております。ビルマにおきましては、非常に大きい部分がこのバルーチャンの水力発電所でございまして、その他いろいろな小さいプラント類がございます。まあ大体申し上げました。  それから、フィリッピンの賠償につきましては、これは昭和三十四年の去年の七月二十三日から、ことしの七月二十二日までの期間が第四年度になっております。これは前に申し上げました通り、賠償年度は各国において異なっておるわけであります。ことしの実施の見積総額を見ますと、約百五十七億円でございまして、それで、そのうち船舶とか各種産業プラント及び設備が、この中に含まれております。  それから、さらにインドネシアの賠償を申し上げますと、これは条約の批准のときが、ちょうどよかったものでありますから、大体昭和三十四年の四月一日から昭和三十五年の三月末日までの期間が、第二年度の実施計画になっております。まだ第三年度の実施計画というものは、先方から提案してきておりませんので合意しておりません。その中には、船舶とか、造船所計画とか、道路建設資材とか、それから農業開発計画とか、その他のものが入っております。  それから、さらにベトナムでございますが、ベトナムに関しましては、ことしの一月十二日に賠償協定が批准交換によりまして効力が発生いたしましたが、まだ今年度の年度実施計画は成立しておりません。という意味は、ベトナムに関しましては、その他の国も同様でございますが、大体、賠償の使節団がこちらに来ましてから、いろいろな話をすることになっております。そこで、まだベトナムの方は、使節団が参りませんので話をしておりません。ただこれは、わが方のサイゴンの大使館に集まりましたいろいろな情報等を総合いたしますと、先方はダニムの水力発電所のみをことしは取り上げたいということをいっている模様でございます。  大体、その程度でございます。
  237. 平林剛

    ○平林剛君 わが国の賠償には、先ほどお話がありましたように、後進国開発賠償という性格と、経済協力という特殊な形で賠償に準ずる投資義務が含まれておるという点で、今後の賠償の原則、実施の方法に、いろいろ問題点がある、これが、これから私の質問しようとする焦点であります。  私は、賠償に対する政府の態度の中に、一貫して貫いてもらいたい原則は、外務大臣が先ほど述べられましたように、第一には、日本として戦争という罪悪に対する認識、第二には、求賠償国に対して再建された日本を新しい目で見直してもらいたいという建前を含めてもらいたいということなのであります。ところが、今日まで実施した賠償、主として資本財賠償の中に、軍事的性格を持つ兵器などが含まれておると承知をいたしておるのでありますけれども、これは一体、どういうわけなんだろうか、その実情は、どうであるか、具体的に御説明を願いたいのであります。
  238. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 賠償の細目については、政府委員から御答弁をいたさせます。
  239. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) お答えいたします。  まず賠償のやり方といたしましては、これは貿易のやり方とも大体、よく似ておるのでございますが、一応国際紛争があるような国に対する、ことに軍事的の色彩を持っておるものは慎重にするということでございます。ことに賠償の場合におきましては、普通の通常貿易のときとも異なりますので、この点は慎重にやっております。  ただ、しかしながら、賠償というものが、ことにビルマなどのことでわかるのでございますが、賠償そのものが一種の、たとえば政府の中で、各官庁がございますと、賠償そのものが、一種の日本に対する外貨予算というふうな感じを受けておるものでございますから、たとえばビルマからなど申し入れてきましたところの賠償計画というものを見ますと、たとえば運輸省関係の賠償がどのくらい、それから海軍省関係の賠償がどのくらいというふうになっておるわけでございます。そこで、海軍省関係のものといいましても、それが全部、海軍省が扱ったからといって、全部が軍事的性格をもったものと考えられないわけでございます。  そこで、従来賠償として軍需品というものを出しましたケースは、正確な厳密の意味における軍需品というものを出したことはございません。ただ、広義の意味の軍需品というようなものですね、これは、出しております。たとえば飛行機のハンガーとか、それからヘビー・スリップウエイ・プロジェクトとか、そういうものがございますが、ヘリコプターというものもございます。それからヘリコプターのスペア・パーツというものもございます。それからパトロール・ボートとか、そういうものもございますが、しかし、ここで一貫しておりますことは、従来におきまして、ほんとうの意味の軍需品というようなものは送っておりませんし、それからまた、広義の意味における軍需品も、ごく軍事的性格の少ないものというようなものが認証されて出ておるばかりでございます。
  240. 平林剛

    ○平林剛君 言いわけばかり多くて、中身がちっともわからない。どの程度出ておるのか、金額とか、品物の名称とか、全部入れて説明して下さい。
  241. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 申し上げます。  これは、ビルマに対しましてはプリフアブリケイテイツド・スティール・ハンガー・フォア・エアクラフトというのが九千百万円出ております。それからその次に、ビークル・リペア・ワーク・ショップというのが二千三百万円、これは、こまかい数字は二千三百二十万になりますが、大ざっぱに二千三百万円となります。それからヘビー・スリップウェイ・プロジェクト、それからヘリコプターとエンジニアと合わせまして二億九千七百万円がビルマの第二年度に出ております。  それから第三年度には、ウォーター・ピュリフィケーション・プラント、それからテレプリンター、ラジオエキップメント、ヘリコプターが六機、それからエンジニアが十というので、九千二百万円出ております。  それから第四年目には、ヘリコプターのスペア・パーツとして約一千万円出ております。  それからフィリピンにつきましては、第二年度に練習機が三十六機出ております。六億四千七百万円になっております。この場合、発動機はわが方から出しておりません。ただ外のものだけ、フレームだけを出しております。  それから、インドネシアに関しましては、第一年度にパトロール・ボートが一億三千万出ております。それからウエッビング・セットというのが七千四百万円、それからメディシン・アンド・フアーマスユーティカルス━━薬の類でございますが、一億八千万円ございます。  これが従来提供しました賠償中、軍事的色彩の比較的あるというものでございます。
  242. 平林剛

    ○平林剛君 そのほか鉄かぶととか、装甲車、軍馬、今御説明になりませんでしたが、それは除いてあるのですか。今の御説明には入っておりませんでしたが、それはどうですか。
  243. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 落としましたが、軍馬の場合は、ビルマに対しまして、まだこれをやっておりますが、軍が使うものを運ぶための軍馬というものが出ております。これはあとでお答えいたします。  それから鉄かぶとは、よしました。そういう話がありましたけれども、よしました。それからタンクというものはございません。あとで軍馬のこと調べてお答えいたします。
  244. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまお聞きの通り、資本財賠償の中に兵器や軍需品による賠償契約が含まれておるということは、私は、たとえ相手国の要請があったとしても、きわめて矛盾を感ずるのであります。戦争終結当時、ビルマとかフィリピンなどは日本の非軍事化を強硬に主張された国であります。たとえ要請があっても、政府は、賠償に対する基本的な考え方から見て、これを他の措置に振り向けるというような了解とか努力を傾けるべきでないか、こう考えるのでありますが、外務大臣に御見解を承りたい。
  245. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、純軍事的な問題については、先ほど来御説明申し上げておりますように、当然そういうものを認証いたすことはいたしておりません。ただ、非常に広い範囲のものになりまして、ある場合には軍需品と見られるというような形のもの、しかしそれは平和的にも使えるものだというような、限界の比較的わかりにくいようなものが若干含まれているということが起こりますけれども、われわれとしては今後注意すべき問題だと思っております。
  246. 平林剛

    ○平林剛君 今後注意すべき問題だとはお答えがありましたけれども、私は、わが国の賠償の中に、兵器や軍需品を含めてきたという事実は、相手国の要請という事情を勘案しても、政府の腹の中に兵器産業の育成という構想があるのではないかという疑問を感ずるのでありますが、アメリカ経済記者がネーションに寄稿した現地報告によりますと、岸内閣が、憲法上の重大な疑義にかかわらず、日米安保条約の改定を急ぐ理由の中には、日本の防衛産業の育成という目的がある、こう指摘をしておるのであります。ミサイル時代に戦闘機の効用が疑問視されているのに、ロッキードの国内生産を強引に押しつけるのは、財閥系航空機会社の救済であると断じておるのであります。防衛庁の野心的な軍事力増強六カ年計画は、財閥の作った兵器生産の輸出計画と密接に結びつけたのだと、政府と財閥のつながりを論じておるのであります。これらはアメリカ経済記者の目による批判でありますけれども日本の国民もやはり同じような疑問で政府政策をながめている者はかなり多いのではないか。まして、賠償の中に軍需品を含めるというようなことに至っては、なおさらそうだと言わざるを得ないのであります。経団連の中には重要機関の一つに防衛産業委員会までありまして、東南アジア向けの兵器生産の輸出にいろいろ計画があると伝えられておるのでありますが、これらの政府に対する働きかけあるいは要請の実情はどうでありますか、この点をお伺いいたします。
  247. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経団連の中に防衛生産━━兵器ですか、そういうものがあることは聞いておりませんが、通産大臣として兵器につきましての相談は受けたことはございません。
  248. 平林剛

    ○平林剛君 それでは、ガリオア、イロアのいわゆる対日援助の事項について、三十三年九月藤山外務大臣とダレス会談のころ、あるいは三十三年十月の佐藤大蔵大臣とアンダーソン財務長官の話し合いなどの前後に、財界では、ガリオア、イロアの返済を円払いとして日本や東南アジアの防衛力増強に利用する経団連の植村構想で、政府に働きかけたと聞いておるのであります。あなたは何も聞いておられないと、こう言われますけれども、そういう話もある。三十四年九月一日の日本経済新聞でも、ガリオア、イロアの返済金を、ミサイル等自衛隊装備の近代兵器の国産化資金に充てるか、兵器を作って東南アジアに引き渡しアジア全体の防衛力増強に資するという構想が、政府与党、防衛産業界に検討されていると報じているのであります。これは池田通産大臣が反対したとまで伝え、そう書いてある。この事実はどうですか。
  249. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、そういう申し出を受けたことはございません。新聞にそういうことが出ておるとすれば、だれかが想像で書いた。もし私が相談を受ければ、ガリオア、イロアを返すか返さぬか、きまっていないのに、その使い道なんかに相談に乗ることは私はいやです。
  250. 平林剛

    ○平林剛君 大蔵大臣はどうです。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、昨年参りまして、このガリオア、イロアをもし返すというような話になった場合に、東南アジア経済開発等にそういう金が使われるということは望ましい、こういう話はしたことはございます。しかし、いわゆる植村構想なるものは、私は新聞では見ましたが、お話を、相談を受けたことはございません。
  252. 平林剛

    ○平林剛君 私は、こういうような動きが伝えられておりますだけに、せめて賠償の中に兵器、軍需品を含めるというような措置はぜひ政府も慎んでもらいたいということを要求しまして、次の問題に移りたいと思います。  最近の報道によりますと、フィリピン議会で、日本の賠償の一環として一話し合われておるマリキナ・ダム建設計画の入札に関連いたしまして、いろいろと疑惑と批判が集中されておると聞いておるのであります。この情報の中で、私が特に注目いたしましたのは、日本とフィリピンの関係者がマリキナ・ダム計画で八百万ドルの水増しとピンはねをしようと共謀しておるという一議員の非難であります。フィリピンの政情につきましては、私も一昨年東南アジア諸国を視察いたしまして、若干の予備知識は持っておるのでありますが、マリキナ・ダム建設計画についてこういう疑惑が生まれたことはまことに遺憾なところであります。政府にお尋ねをいたしたい点は、このフィリピンのマリキナ・ダム建設計画は、一体、経済協力なのか、それとも賠償なのかという点が、どうも明らかでありません。今日までの経緯をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  253. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、マリキナ・ダム計画というものは経済協力でございまして、これが完成をいたしますれば、日本にそれを支払っていくということでございます。ただ、これがもし支払いができないような場合には、賠償を担保とするということになっておるのであります。経済協力で十分こういうような発電所等はやっていけるものではないかと、こういうふうに考えております。
  254. 平林剛

    ○平林剛君 建設計画経済協力なんですね。
  255. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げた通りでありまして、経済的な援助をフィリピンにするということでございます。それが建前でありまして、しかし、資金が回収できないというような場合には、それは賠償から差し引くという形になっておるはずでございます。
  256. 平林剛

    ○平林剛君 マリキナ・ダム建設計画の入札をめぐって、フィリピン議会の非難と疑惑については、大臣も大体御承知と思うのでありますけれども日本側においては実情をどう把握されておりますか。日本側においても何かの欠陥があったのではありませんか。
  257. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り、マリキナ・ダム建設にあたりましては、日本側の請負業者と、フィリピン側の請負業者と一体になりまして、そうして入札をするということに相なっておるわけであります。現在、日本側の推薦した業者とフィリピン側の業者とが一緒になりましたものが、三組できております。それが入札に応ずることになっておる状態でございます。
  258. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。ただいま外務大臣が、この借款を許して、もしそれが返済不能のときには賠償に振りかえるという御答弁がありましたが、これは御承知のように、昨年九月七日、借款供与に関する公換公文におきまして、藤山外務大臣がラヌーサ賠償ミッションの団長と取りかわした交換公文に記載されております。これによると、契約に基づいて満期となった金額の全部または一部の返済が行われない場合、両国政府間の取りきめに従い賠償として供与されるということになっておりますが、そのことだと思います。これは、そういうことが一体許されるか。賠償を担保として輸出入銀行から、これは三千五百五十万ドルと思いますが、それを供与したことは、非常にこれはある疑義があるのじゃないですか。  大蔵大臣に伺いたい。賠償を担保として輸出入銀行から融資をするということは、これは大蔵省においても問題になったはずであります。どういうふうにこれを解釈するか。賠償の先払いみたいになるじゃありませんか。そうなると、これは国会に賠償承認を求めたときの条件と違いますから、賠償の一種の先払いでしょう。そういうことが一体許されますか。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、賠償の先払いとおっしゃるのはどういう意味か、私にはちょっと理解しがたいのですが、これが賠償を最後には担保にしているということは事実でございます。支払い計画がいわゆる延べ払い方式で出ておりますので、この延べ払いの関係において、年次計画と合わせて賠償の当該年次の支払いを担保にするということにいたしておるわけでございます。いわゆる先払いというのは、この払いが最初に全額支払いでない、そこに何か誤解があるのじゃないか、かように私は考えます。
  260. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは大蔵省でもずいぶん問題になったはずであります。大蔵大臣も御承知のはずですよ。そこで、賠償を担保とするこの借款ということは、これは疑義があるので、延べ払いということにしたのだと思う。そのために非常に複雑になっているのですよ、そのために。なぜこれを━━最初は、このマリキナ多目的ダム建設に賠償としてこれは援助するということであったのです。それがこの賠償のワクからはずれて、融資になった。  さらに、これについてはあとで平林君から御質問があると思うのですが、非常な疑惑が持たれているのですよ、この点については。この融資をした後において、これはマニラ・タイムズに出ておりますが、三十五万ドル、この賠償のお礼として、日本の有力商社に三十五万ドル贈ったということが証言されております。これはどこへ……。その三千五百五十万ドルのお礼としてフィナンシャル・フィーといっておりますが、それはどこが受け取ったのですか、三十五万ドル。これは今フィリピン議会において問題になっているわけです。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十五万ドルの問題は別にお答えいたしますが、ただいまの賠償の先払いだという点でございますが、これを延べ払いの支払いで計画いたしました際に、政府自身が保証するということを向こうで申し出たわけでございます。しかしながら、さらにこれを確実なものにするという意味において、ただいまの賠償の年次支払いの計画がございますから、それを担保とするということにいたしたのでございます。このマリキナ・ダム建設についての賠償担保ということは、私は違法ではない、かように思います。ただ、この年限等を決定する上におきまして、いろいろフィリピン側の支払い能力等の問題がありまして、特にその条件等について折衝を数回したと、こういう事実はございますが、いわゆる賠償の先払い云々ということは当たらないのじゃないかと思います。  ただいまの三十五万ドルの話は、事務当局から御説明いたします。
  262. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 御指摘のように、フィリピンの新聞にさような記事が出たということでございますが、これは当初から、国際技術協力開発会社というのがございまして、これがマリキナ・ダムの調査設計等をいたしまして、それから契約の中にはその必要な金の融資のあっせんをすると、融資あっせんのために一%ほどとるという契約がございます。ただし、これは別にただし書きがついておりまして、この許可は「日本の適当な銀行または金融機関からの融資及びその賠償による返済を認めるものではない」、要するに契約はそうしておりますが、許可がないとそういうことはできないのでありますから、一応そういうあっせん料というので一万ドルということで、国際技術協力開発会社に渡っております三十四万ドルは技術料でございます。そのほかは一切払っておりません。
  263. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君、これ以上の関連質問はあなたの時間にやって下さい。あなたの十分時長がありますから。
  264. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 でも、今答弁しているから。
  265. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたの時間にやって下さい。
  266. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連でありますから。
  267. 小林英三

    委員長小林英三君) これ以上はあなたの時間にやって下さい。あなたは時間がありますから、大蔵大臣外務大臣もおりますから。
  268. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さっきの三十五万ドルのことがわからないじゃないですか。
  269. 小林英三

    委員長小林英三君) ですから、木村君の時間のときに質疑をやって下さい。
  270. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やりますけれども、今問題を明らかにするために関連質問をしているのですからね。
  271. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連質問ですから、あなたの時間がありますから、そのときにゆっくりやって下さい。
  272. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つだけですから。
  273. 小林英三

    委員長小林英三君) では、簡単にやって下さい。
  274. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十五万ドル、これは融資のあっせんということを言われましたが、これは非常な問題じゃないですか。大蔵省でも問題になったのでしょう。これはコンサルタントの賠償ですよ。コンサルタントの費用は賠償なんです。それで、賠償にこれを含めるときに問題があって、そうして融資のあっせんということの条件がついたのでは、大蔵省はコンサルタントを賠償に含めることに反対したはずですよ。そこで、融資のあっせんということはやらないという条件において、これを賠償に含めたと聞いているのです。そうして融資をあっせんして、そのお礼として三十五万ドル、これをもらった。コンサルタントは賠償ですよ。賠償以外なんです、三十五万ドルというのは。それは私の時間にまた御質問しますけれども、平林君の質問にあまり差しさわりがあるといけませんから。その三十五万ドルの御答弁では満足できません。
  275. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 正確に申し上げますと、会社といたしましては、いろいろ印刷物を先方のために作ってやるとか、会議費の立てかえでございますとかそういうものをすでに二十二万五千ドル払っております。それから、そのほかに、一万ドルの件は、融資等をあっせんするという契約にはなっておりますが、ただし書きがございまして「コンサルタントは、日本の適当な銀行または金融機関から、開発計画の資金融資のための措置を行なうものとし、その返済は賠償によってフィリピン政府がこれを行なうものとする」という旨の規定がありましたが、契約の許可条件として、「日本の適当な銀行または金融機関からの融資及びその賠償による返済を認めるものではない」ということをはっきり書いてございます。マリキナ・ダムの設計をいたしまして、向こうのために調査書を印刷してやる、あるいは会議費等も立てかえておりますので、そういう部分が三十五万ドルに全体としてなりまして、まあ先方との話で融資等についても多少、これがコンサルタントでございますけれども、実現するようにはかってやる、これはコンサルタントの仕事としてよくあることでございます。その報酬も一万ドル程度で受け取ったわけでございます。
  276. 平林剛

    ○平林剛君 私はこの問題が本題でけなかったのですが、ただいま疑問が出てきたのでお尋ねしたいと思いますが、国際技術協力開発会社という会社の内容、資本金、メンバー、これを明らかにしてもらいたい。
  277. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) ただいま詳しいことは覚えておりませんけれども、八田嘉明さんが社長でございましたか、会長でございましたか、中心になってやっておられる会社でございまして、単なかコンサルタント━━そういう海外に出ていっての技術協力をするコンサルタントの会社でございます。詳しいことは承知しておりませんので、これだけ申し上げます。
  278. 鈴木強

    ○鈴木強君 議事進行について。  今の問題は非常に大事なことですから、国民も木村委員の言われているように非常に疑義を持っている点でありますから、今平林委員質問にあわせて、この三十五万ドルの適否について大蔵省としてお調べになっておると思うのです。ですから、その内容について、一つ後刻資料として提出していただくように委員長から取り計らっていただきたいと思います。
  279. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長から政府に申し上げます。佐藤大蔵大臣
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) よろしゅうございます。
  281. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまの三十五万ドルの問題でありますが、フィリピンの議会で指摘されている日本とフィリピンの関係業者、これは多分鹿島建設、熊谷組、西松建設、これらの三社が入札に関係していると思うのでありますけれども、これらの関係者において八百万ドルの水増しとピンはねを共謀している、こういうことは大きな問題であります。先ほど外務大臣がお答えした程度では、これはどうも解明されません。あなたの方はどういうふうに実情を把握されておるのか。
  282. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府委員から答弁させます。
  283. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) フィリピンの国会で、たとえばダムの安全性の問題とか、それからモレノですか、金を八百万ドルだけですか、取るとか取らないとかいう問題とか、日本の業者とフィリピンの業者との談合と、こういうような問題が出たことは事実でございますが、これはこういう問題がなぜフィリピンの国会で出たかということを御説明をしないと、なかなか了解しにくいことだと思うのであります。御承知通り、今回の賠償協定は、まあ先にもございますが、何か物を日本から調達いたします場合に、日本側に対しまして業者の推薦ということを求めてくることがございます。これは協定のうちにございます。もっともその協定の中には、日本から業者が推薦されても、それによって拘束されるものではないという規定がございます。そこでこのマリキナ・ダムというのは、向こうにとっても非常に大きい問題でございますので、日本側に対して業者の推薦をフィリピン側がまず求めてきたわけでございます。それで求めてきましたが、まず最初、十月七日付で求めてきましたのでございますが、これに対して当方からは、外務省としましては、これを建設省に委嘱し、建設省としましては、海外建設協会というものに依頼をしまして、向こうの条件は、とにかく今度は大きいアーチ・ダムを作る。ですからそういう大きいダムをこしらえられるだけの能力のある者、それからまた、輸銀から融資を受けなければならないから、ある程度の信用能力がある者、それを条件に置いて推薦してくれということを申してきたのでございます。そこでわが方といたしましては、最初五社を推薦したのでございます。そしてそのうちで五社のうち二社が辞退しましたので、もう一回またこれを頼んできたのでございます。そこでわが方としては、また三社を推薦した、こういうふうなことになっておるのでございます。そこで現在のところ、鹿島と熊谷と西松とが一つのシンジケートを組みましたという情報でございます。それからあと前田と大林とが組みまして、それがおのおのフィリピン側の業者と一応タイアップする、こういうチームを作るという形になっておるようでございます。これは御承知通り、マリキナ・ダムの建設は、日本における資材と日本のサービスの調達のみならず、フィリピンにおいて仕事をする、その場合の金はもちろんフィリピン政府が払うのでございますが、フィリピンにおいて、フィリピン政府がそのいわゆるローカル・カレンシーというものを負担するわけでございます。そこで、フィリピン側の申し出によりまして、日本の業者とフィリピンの業者とが協力してやるという態勢でございます。ところが、問題が起こりましたのは、結局このシンジケートが一社と、それから前田と大林組と、あと推薦した業者は皆フィリピンの業界と話し合いの結果辞退しているのでございますが、そこでフィリピンの方としましては、ほかに業者がいて、その業者が日本と組もうと思っても組めない、しかも組めない以上はビッドの資格がない、こういう問題で、これが非常に運動をいたしまして、そうしてこういう問題が一つは起こったのだと、私らの方では観測をしております。  それから、しからばこれが幾らのリベートがあるとかないとかいう問題でございますが、実はまだやっとこの三月の十二日に資格審査というものを終わったまででございまして、現在のところの予定では四月の半ばですか、過ぎにビッドが行なわれるということでございまして、そのときにどのくらいの価格というものができるのでございまして、今そこにリベートをどうするとかこうするとかいう動きの余地は全くない問題だと、こう考えている次第でございます。
  284. 平林剛

    ○平林剛君 こまかいことはまた後にお尋ねいたしますが、私は、先ほど外務大臣がお答えした通り、賠償協定に基づく経済協力、この経済協力は、ビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナム四カ国で、二千六百億円に上っているわけです。それだけにこの両者の性格と運用を混同いたしますというと、将来日本の賠償実施のガンになる危険があるように思われるのでありましす。今度のマリキナ・ダムの建設計画につきましても、政府が賠償による償還確保の措置を講じた、認めたという理由はどうも納得ができない、この点を、どこに一体理由があるのか、これを説明していただきたいと思うのでございます。
  285. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申し上げましたように、賠償あるいは経済協力というものは、それぞれ先方側の国の要求を十分に考慮に入れて、しかもそれがその国の経済建設等に十分役に立つようなものであるということは、これはもう申すまでもなく第一義だと思います。マリキナ・ダムの問題につきましては、かねてからフィリピンの開発計画に非常に大きな貢献をする建設工事であるということを、われわれも承知いたしております。従って、それに援助をいたしますことは、フィリピンの今後の経済発展のために、また、両国親善のために適当だと思うのであります。ただ、今お話のありましたように、これが借款でありますけれども、その借款の返済の確保をいたす方法としては、日本としても十分これに対して注意をいたさなければならぬのでありまして、そういう意味において今回のような処置がとられたのでありまして、われわれは筋から言って適当な処置をとり、適当なものに対する経済協力の意味であるというふうに考えておるわけでございます。
  286. 平林剛

    ○平林剛君 そんな適当な措置であるとするならば、今後二千六百億円に及ぶ経済協力、このすべてを賠償で償還確保の措置を講じておやりになると、他の賠償協定に基づく経済協力についてもなお同様の措置を講ずる、こういうお考えをあなたはお持ちなんですか。
  287. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん全部こういう措置でやろうというように考えておるわけではございません。できるだけ経済協力でやりましたものの元本が返ってくるということは望ましいのであります。あるいは場合によって、それに対する保証を確実に得る方法の一つとしてこういうことも考えられる。全部が全部そういうことをやる、あるいはまた、全部が全部、小さいもの大きいものひっくるめて全部が全部そういう措置を取るというわけではありません。
  288. 平林剛

    ○平林剛君 これを広く適用するというようなお考えはない。こういうふうにお答えになったのですか。
  289. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこれを非常に広く一般的に適用しようという考えではございません。それぞれ関係各省とも相談いたしまして、十分今申し上げたようなプロジェクトの、有効なプロジェクト、しかもそれは相当な長期にわたるような仕事でなければそういうことはなかなか考えられないと思います。
  290. 平林剛

    ○平林剛君 フィリピンの賠償は総額で五億五千万ドルに相当する役務と生産物を二十カ年にわたってクレジットすることになっている。このため最初の十年間は九十億円、次の十年間は百八億円、こういう計算になっておるように承知をいたしておるのであります。ところが、今マリキナ・ダム計画を当面経済協力として実施をし、あとで賠償から返済するということになると、実質的には先ほど木村委員が指摘しておったように、賠償を繰り上げて実施するということになりませんか。
  291. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これが経済効果を発揮いたしますれば、むろん将来独力でも返せるという状況のもとにあるわけでありますけれども、しかし、それを確実にするためにはやはり賠償等を担保にすることが一つの方法であるのであります。必ずしもこういう方式すべてが繰り上げの方式だということではないと考えております。
  292. 平林剛

    ○平林剛君 私はこのマリキナ・ダム建設計画ともう一つフィリピンで行なわれている電信電話建設計画、この二つがいわゆる賠償の引き当てによる経済協力ということになる、ごまかしがあるのじゃないかという感じを持っておるのであります。昨年の九月の七日、日本とフィリピンとの行政取りきめによりますと、マリキナ・ダム建設計画の供与される信用の額は三千五百五十万ドル、その償還は半年払い、均等割払い、こういうふうになっておるのであります。そうすると、フィリピンの実情を見ますと、現在は外貨その他の事情からいきまして、私は初めからこれは賠償の一環として実施をされる可能性が強いというふうに見ておった。半年たつと、今経済協力だと、こう言ってるけれども、半年過ぎると賠償になっていく。こういうからくりが初めからあったのではないか。そこで、なぜ初めから賠償としないかという疑問も生まれてくるわけです。この点はどうです。
  293. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、フアリピン側としてこういうような大きな建設計画、しかも経済効果もあるということが推定されますれば、これは経済協力としてやります。その支払いを確保する方法を取りますことも不適当だとはわれわれは考えておりません。
  294. 平林剛

    ○平林剛君 半年たって、フィリピンの側では、これはどうも米ドルで償還できない、賠償に入れてくれ、こう言われたら賠償になる。それからまた、経済協力が進んでフィリピン側の事情が許せば返すということになればまた経済協力になる。こういうことを何年か繰り返す。そういうものであると理解してよろしいのですか。
  295. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういうふうに理解いただいて差しつかえないと思います。
  296. 平林剛

    ○平林剛君 実際上はどうなると思いますか。
  297. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 実際上はわれわれは、経済協力として進めていくことができることを希望いたしておるわけでございます。
  298. 平林剛

    ○平林剛君 あなたはフィリピンの事情を少しごまかしておられる。私は実際上はこれはもう賠償という形になっていく、こう見ているのであります。マリキナ・ダム建設計画は初め経済協力で出発する。あとで賠償から返済をするという手の込んだ回り道をいたしましたのは、これは南ベトナム賠償において、政府が野党の攻撃にあったダニム川水力発電所建設計画のために、ダニム川の開発交渉が賠償交渉より先行して工事を受注するための支払い手段として賠償が決定した、こういう批判を受けたくないものだから、その批判を避けようとしてこういう手の込んだやり方をとったのじゃありませんか。
  299. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういうこととは全然関係ございません。
  300. 平林剛

    ○平林剛君 私は、マリキナ・ダム建設計画については疑問が大へん残っているのでありますけれども、時間がありませんから次の質問に移ります。  賠償を実際に支払う実施の方法は、いわゆる直接方式をとり、各年度ごとに日本と賠償請求国との間で賠償実施計画を作り、その年度ごとに賠償について賠償資金を使って買いつける物資と役務の種類と金額がきめられる、こう承知いたしているのでありますが、これを検討する政府の機関はどこでありますか。昭和三十五年度における賠償実施計画はいつきまりますか。
  301. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昭和三十五年度におきますのは、先ほど政府委員から申し上げましたように、賠償年度というものは国によって変わっておりますから、一律には参らないと思います。また、賠償計画等、先方が出して参ります時間的な遅速もございます。従って、一律にいつというわけに参らぬと思います。政府としては、賠償部を中心にして各省との間の協議によってこれに認証を与えることになっております。
  302. 平林剛

    ○平林剛君 今日までの賠償協定は、賠償により通常の輸出を阻害せず、かつ賠償を通じて相手国の経済建設に寄与する目的から、賠償物資については資本財を原則とする旨の建前をとっていると承知をいたしているのでありますが、政府の考えはどうでありますか。
  303. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 原則としてその通りでございます。
  304. 平林剛

    ○平林剛君 政府の資本財賠償を中心とする原則がいいか悪いか、これは別であります。しかし、ときどきその原則が何らかの利害関係変更される事実があることは私ども大へん疑問に感じているのであります。昨年の二月、政府はインドネシアに対して賠償として繊維品、人絹織物百五十万ドル、綿織物百五十万ドルを認めておりますが、これはどういう理由でありますか。
  305. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先方側においても、賠償を受けます国が消費物資を要求することは非常に多いのでありまして、むろんわれわれは、消費物資を全面的に肯定はいたしておりません。原則として資本財を出すというのが建前でございますが、しかしながら、やはり賠償を受けます国の事情等を勘案して、若干のものは消費財で渡すということが賠償を円滑に進めて参ります上においても、あるいは両国の関係を円満に進めて参ります上においても必要な場合があるわけであります。そういう点の考慮は若干払わざるを得ないのでございます。
  306. 平林剛

    ○平林剛君 こればかりじゃありません。昨年の十月、インドネシアに対して船舶、造船施設二千万ドル、ホテルの建設用資材八百万ドルを賠償引き当ての延べ払い輸出を認める措置をとっている。これも先ほどの原則からはずれている、不可解なことであります。これについての事情説明していただきたい。
  307. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、インドネシアはたくさんの島からなっております。オランダとの関係において内外航路の船舶が引き揚げられまして、インドネシアの経済建設に対して非常なる支障を来たしているとわれわれも了承いたしております。従って、そういうものを急速に整備すとるいう必要があろうかと考えております。また、ホテルにつきましては、極東オリンピック大会をバンドンで開くというようなことで、そのための設備として性急に必要であるということでありまして、そうした特殊の事情のもとにわれわれはこれを考慮いたしたわけでございます。
  308. 平林剛

    ○平林剛君 政府は、何かというと相手国の要請があるからということで、賠償の相手国に責任を押しつけるというのは、きわめて卑怯です。答弁としてもきわめて不満足。それで賠償をめぐって汚職が騒がれたり、あるいは国民の疑惑が生じつつあるこは、これは日本の方が、フィリピンの話どころではない、日本の方が先輩格であるということは、インドネシア、ベトナム賠償で十分体験済みのことです。私はこれから約二十年、賠償が毎年毎年、賠償実施計画を中心にその実施方法が、あるいは賠償請求国の直接日本の業者を相手にするいわゆる直接方式で行なわれるということでありますだけに、今後その衝に当たる財界と、それからこれと深い関係のある政界との間に、不明朗な問題の発生はなかなか避けられないのじゃないかと思う。ただいま指摘したインドネシアのことでも、私は与党内部でも相当いろいろ批判があることは承知しているのです。で、こういう予測し得る傾向に対して、政府としては何か予防措置を講ずる考えはないかどうか、これをこの機会に聞いておきたいと思います。
  309. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれこれを扱っておりまして、賠償は国民の税金であることを十分に承知いたしております。これが正当に、一般に円滑に行なわれることを私ども承知しておりますので、そういうことが何かに動かされてやるというようなことは、私は全然ないと思っております。またそういうことにつきましては、十分今後とも注意していくことは、これは当然なことだと考えます。
  310. 平林剛

    ○平林剛君 わが国の賠償、特にその性格が経済協力を含む後進国開発的な性格を持っているだけに、これを財界や、あるいは資本財賠償に当たる業者の立場から見ると、商品を売って賠償等特別会計から日本の金を受け取る、こういう点では賠償も通常の輸出と少しも変わりがないのであります。そしてこの賠償の契約の許可権限はあなたの方が握っているわけです、政府の方が握っているわけです。そこに特権と金のかかる政党政治が結びつくという弊害は、私は絶えずこれからもつきまとってくるものだと思うのであります。そこで、私はこれら貿易賠償に当たる業界の政党献金、あなたはただ心がまえだけお話しになりましたけれども、具体的に政党献金については、これを禁止するとかあるいは制限をするという措置が心要ではないだろうか、これは自治庁長官に御見解を承りたいと思うのであります。また政界あるいは財界に対する国民的視野における相互監視制度、これはビルマなど実施しておりますけれども、相互監視制度を検討することも必要があるのではないかという意見が一部にありますが、これについてはどうか。後者の方はほんとうは総理大臣でありますが、政府を代表して賢弟である大蔵大臣からお答えを願いたい。
  311. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 前段の問題について私からお答えいたします。選挙の公明化あるいは政界の浄化をはかります見地から、政治資金について合理的な規正を行なうことは必要であると考えます。この問題は、たびたびここでも申し上げましたように、昭和一二十九年にも非常に論議されましたが、いろいろ困難な問題があって、容易に結論を得られなかったのであります。御指摘の問題のような事件、業界につきましても、今後これらの問題を検討するときに、一括して慎重に検討していきたい、かように考えております。
  312. 平林剛

    ○平林剛君 私は一般的に言っているんじゃないんですよ。公職選挙法の百九十九条でも、「国又は公共企業体と、」「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、」制限が加えられているのです。賠償などは、これは国民を代表して、国家を代表して賠償する特別の契約なんです。だから、こういう意味からいって、政治資金規正法でも、何らかの措置がとれるでないか、法律その他を検討しなくても、解釈でできるのじゃないか、こういうことを言っているのです。
  313. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 現行法の公職選挙法百九十九条にありまするのは、「請負その他特別の利益を伴う契約」と、こういうふうに請負あるいはこれに類する、こういうような形のものになっておるのでございまして、ただいまの賠償に伴う業者ということになれば、あるいはまた利子補給を受けているものはどうかとか、あるいは政府から寄付金を受けている会社その他はどうかといういろいろ関連の問題がございまして、先ほど私が一般的に答弁申し上げましたように、こういう問題は政治資金の規正とからんで、一括して、検討する場合には検討していきたい、かように思うわけであります。
  314. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御指名でありますから立ちましたが、私、大蔵大臣でございますので、お尋ねのような点について、私が政府を代表してお答えするわけに参りません。お許しを願いたい。
  315. 平林剛

    ○平林剛君 私は、日本の賠償が、その性格と現状から見まして、通常の輸出と変わらないこと、賠償に準じる経済協力の場合でも、外資導入にかなり警戒的な目を向ける地域に対しても、大手を振っていける、こういう点が東南アジアに対する今後の市場確保という点で大きな意義があるということは認めておるのであります。ただ国民にとっては一般の財政支出と同じ、財源であるものも税金、これを中心に実施をされておるのでありますから、相当の負担であるということには間違いないのであります。この意味では賠償が安定した一種の輸出として、これで利益を受けているいわゆる業界のあることは一つの矛盾を感ずるのであります。あなたもきっと感ぜられると思う。そこで、政党献金や汚職に対する疑念など、不明朗な印象を避けるということはどうしても必要なんです。そこで私は、これを避ける意味でも、何らかの総合的な機関が必要でないかということをこの際申し上げておきたいのでありますが、そこで、大蔵大臣に、今後は答弁しやすいようにお尋ねしますが、賠償輸出に対しては、そういう意味を持っているんだから、一時特別課税をしたらどうだろうか、こういう要望があったと記憶をいたしておるのでありますが、政府はこれを検討する御意思はございませんか。
  316. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法人税なり、あるいは所得税なりという制度がございますので、その税を厳重に実施するということ、それをもって足りると、かように私ども考えております。賠償で特別に利益があると申せば、必ずその利益が課税の対象になるのでございますから、特別な率を設けろということは、これはなかなか困難な問題ではないか、かように私どもは考えております。
  317. 平林剛

    ○平林剛君 困難ではあるけれども、たとえば、租税特別措置法の輸出所得特別控除においては、明らかにこれは区分しているじゃありませんか。
  318. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法律を作ればそれはできるということでございましょうが、私どもは反対でございます。ただいまの税で、所得があれば、その所得に対してはちゃんと累進課税の方法もございますから、それで事足りると、かように考えております。
  319. 平林剛

    ○平林剛君 ガソリン税をかけるときには、これを使用するところの自動車業界、これが利益を受けるのだから、特別に税を増額をする。同じ理屈じゃありませんか。
  320. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げますように、賠償物資を扱って会社が所得をすれば、そこで法人税というものがちゃんと課せられるわけでございまして、そういう意味で、私ども、特別な税を設ける必要はない、かように考えているわけであります。  先ほど来のお話を伺いまして、私、静かに聞いていたのでございますが、賠償があれば必ず汚職ありというような感じの御意見がずいぶん出ておりますが、私どもは、この賠償実施が、御指摘のように、国民の税で支払われるという観点に立っておりますので、十分これは厳正に、また適正に行なわれることを、十分、大蔵省は大蔵省の立場においてこれを監視しておりますし、また、外務省の扱い者も、そういう点においては十分適正であり、あえて、これらの点について私は疑問はないと思います。もしも疑問がありますならば、検察当局だってこれはほうってはおかない、かように私は信じております。
  321. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまのお話にかかわらず、最近の傾向が私は憂うべき現象だから、それを指摘しておるのであります。  特別課税の問題については、大蔵大臣説明にかかわらず、私は将来検討してもらいたい、検討する価値があると考えておるのであります。  これは別にいたしましても、それでは、そういうことができないならば、かつて、インドネシア賠償のときのように、通常輸出の焦げつきを今後の賠償計画の中に織りまぜて清算をするというような措置は、私は絶対に避くべきだ、こう思うのでありますが、インドネシアのときは、たしか一億七千万ドル、これは焦げつき債権になっておりましたのを、賠償支払いで棒引きにいたしましたけれども、これは国民の犠牲によって、焦げつきで困っていた貿易業者を救済し、俗に言えば、もうけさしたという結果になったと思うのであります。議論はあると思いますけれども、こういう措置は繰り返すべきでないと、こう思いますけれども、あなたの御見解を承ります。
  322. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) インドネシアの、いわゆる国際収支の決済のできなかった分を棒引きいたしましたことは、これは賠償とは別な考え方でいたしておるのでありまして、賠償の一部とは政府は絶対に考えておりません。従いまして、今後、賠償の実施に当たりましてかような問題が起ころうとは私ども考えておりません。
  323. 平林剛

    ○平林剛君 それじゃ、現在賠償決定を見た四カ国の中で、フィリピンには、昨年の九月末までに長期貸付が約十二億円、期間一年以上の長期延べ払い輸出が百七十七億円あります。外貨保有の乏しいという理由で、また貿易業者の猛烈な運動の結果、フィリピン側から、たとえ賠償の中で処理をしてもらいたいという要請があっても、政府は筋を通して、国民に疑問を持たせるようなことはせないと、こう言明できますか。
  324. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その通りでございます。
  325. 平林剛

    ○平林剛君 最後に、私はビルマの賠償に関してお尋ねをいたします。去る二十日、ビルマ連邦首相に予定されているウー・ヌー氏が、国際新聞協会総会に招かれたということで訪日をされておると聞いております。政府としては、この機会に、ビルマから賠償再検討を申し入れられている件に関し十分話し合われることを希望いたすのでありますが、昨年四月、在京ビルマ大使から申し入れがあってから今日まで、対ビルマ賠償再検討の問題についての経緯をこの機会に明らかにしてもらいたい。
  326. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ビルマから、再検討条項を援用しまして、そして昨年の五月の末でありましたか、日本に参りましてこれを要求して参ったわけであります。むろん、われわれとしては、再検討条項がありますから、それに話し合いを、一応、しないというわけには参りません。昨年の夏でありましたか、向こう側から来ました人と話し合いをいたしましたけれども、当時、向こう側としては、賠償の増額を要求しておりましたが、当方としてはそれを承諾するわけに参りません。従って、そういうことでは話し合いに応じられないということでありまして、一応その話の下話が打ちやまっていたわけであります。で、本年に入りまして、さらにビルマ側から、この問題について日本側の意向を尋ねて参っておるわけでありまして、われわれといたしましては、ただいま山田外務次官と大使との間に、数回にわたって━━三回であります、この問題について話し合いをいたしたわけであります。第一回はビルマ側の意見を聞き、第二回は日本側の意見を申し述べました。そしてさらに第三回において、何か両方の意見が対立をしているけれども、解決する方法をお互いに検討してみようじゃないかということで別れておるわけであります。今後この問題については、日本側といたしましても、賠償そのものを増額するということは非常に困難であること、申すまでもないのであります。従って、経済協力その他何らかの方法でもって問題を話し合いいたしていくことが適当ではないかと考えております。  ただ、御承知通り、先般選挙がありまして、内閣もウー・ヌー氏が、四月八日でございますか、首相になるわけでございまして、現在暫定管理内閣という形でございます。ビルマ側としては、管理内閣のうちででもなるべく話を進めたいということでございますが、ウー・ヌー氏が来日もしておりますので、私も一度ウー・ヌー氏に会って、日本側の立場というものを説明いたしたいと、こう私は考えておりますけれども、まだ来日もして数日でございますので、前回はいたしておりません。
  327. 平林剛

    ○平林剛君 私はこの機会に、政府釈明をしてもらいたいことがある。政府はフィリピンとインドネシアの賠償協定の審議のときに、ビルマが再検討条項を援用して、賠償の再検討を求めてくるようなことはないと思う、こう言明しておられたのであります。ところが、ただいまお話のような実情である。ビルマ側からは申し入ればあったわけなんです。このことについて一つ釈明をしていただきたい。
  328. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本といたしましては、ビルマが一番先に賠償の協定を締結してくれたことには、感謝をいたしておるわけでございます。同時に、当時一番最初でありましたから、再検討条項というものもついたのであろうかと思います。が、しかし、日本側としては、御承知通り、ビルマに対する賠償とバランスをとって、インドネシア、フィリピン等も考えて参ったわけでありまして、初めに岡崎外務大臣が方針として示された、ビルマ賠償との上に立ちますフィリピン、あるいはインドネシアとの賠償とのバランスというものは、必ずしも不適当で今日あるとは考えておりません。ビルマ側におきましても、インドネシア賠償、あるいはフィリピン賠償等に、当時何らの意思表示をして参っておりません。そういう関係もございまして、当時としてはそういうふうにわれわれ理解いたしておったのでありますけれども、しかしビルマ側としては、やはり最終的には再検討条項があるから、もう一ぺん再検討してもらいたいということを申し出てきたわけでございます。
  329. 平林剛

    ○平林剛君 まあとにかく政府の最初の私どもに対する言明が違っておったということだけは事実であります。ただ、このビルマの次期首相と目されるウー・ヌー氏が、今回訪日をされるときに、ラングーンの市内の自宅で、日本人記者団と会見をしたときに、ビルマと日本の貿易促進については、相互主義の立場をとって考えなくてはならぬ、対日賠償の増額問題も、岸首相らとも会って十分研究した上、これを再検討したいという言葉は、私はきわめて意味深長に読んでおるのであります。  先ほどお話のおったように、ビルマが先般対日輸出の面において提唱したり、あるいは増額問題を持ち出されてきたりする背後には、ビルマとの経済協力が進まないというような点の不満も私はあったやに聞いておるのであります。これは新聞でありますから、私はその真意、気持というのはよくわからないのでありますけれども、こういう点を、今回来日されたときによくお話をされまして、ビルマ賠償問題に対するはっきりした結論をつけて、今後の友好関係を進めてもらいたいということを私は希望するのでありますが、政府見解を最後にお伺いをいたしたいと思います。
  330. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 平林委員のただいまのお説は、まことにごもっともでありまして、賠償に伴います経済協力が進んでおりませんことも、ビルマに関しては事実であります。従って、例の紡績工場等が、できかけてできなかったという事情もございます。そんなようなことで、経済協力が少しも進んでおらないということも事実でございます。また、貿易のバランスというものが非常にビルマにとって不利であるということも、これまた事実でございます。この点については、やはり日本が売りますと同時に、ビルマ側からも十分物を買ってくるということも考えて参らなければならぬのであります。従いまして、先般貿易の関係の問題がございましたときに、ビルマ側と話をしますというと、日本がどういうものを将来買えるか、また、買うためにはビルマ側でどういう用意をすれば買えるかということを十分調査して貿易の拡大をはかっていく。しかも、アンバランスをなるべく是正しながらやっていく。御承知のように、ビルマとしては、やはり米が主でございますから、だんだん日本は米が買えなくなって参りますと、他の物資を開発し、あるいはそれを日本に入れるということを考えて参らなければならぬのであります。で、今般政府といたしましても、ビルマに経済使節団を出しまして、貿易アンバランス是正のためにどういうふうな物資が買い得るか、またビルマ側がそういう生産なりあるいは開発なりのことをやれば、日本の買い得るという品物ができるかというような調査をすることにいたしておるのであります。できるだけそういう点から十分貿易のアンバランスを是正し、あるいは民間経済協力を推進するような方向をとりますことは、やはり全般の問題について好影響を与えると思うのであります。われわれとしましてもその努力をいたしたいと考えております。
  331. 小林英三

    委員長小林英三君) 終了しましたから……、
  332. 平林剛

    ○平林剛君 まあ私は、本日は賠償問題について若干の問題に触れながら質問をいたしまして、その中には、政府において今後十分検討してもらいたい点を含めたつもりであります。岸総理大臣の施政方針演説を聞きますと、総理大臣の演説中には、平和という言葉が、私、勘定してみたら十七カ所出てきている。極東の平和、平和の外交、平和のための安保条約なんと言って、まるで魔術使のまじないのように出てくる。外務大臣の演説だって、これは負けないように、勘定してみたら二十以上出てきている。二十もあるんですよ、絶対平和という新語を含めて。これは別に機会を得て私はお尋ねしたいと思うのでありますが、二十も出てくる。しかし、あなた方の意図しているところがどういうものであるかということは、やがて国民が承知すると思うのであります。ときどき賠償についても十分頭をいたされ、今後の政策を考えてもらいたいということを要望して、私の質問を終わります。(拍手)   —————————————
  333. 小林英三

  334. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、ILO八十七号条約批准の問題について、労働大臣並びに自治庁長官、文部大臣質問をいたします。  先般来からの岸総理並びに労働大臣の言明から考えて、四月上旬にILO条約批准の手続を国会にする、こういうふうに了解して間違いないですか。
  335. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 総理の意向に沿いまして、目途として、ただいま熱心に検討調整をいたしております。
  336. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 四月上旬というと、もう二週間足らず、非常に逼迫しておるわけですが、まだ目途ということでは、どういうことになるかわからないという不安が残っておると思うんですが、もう少しその点を明瞭にするわけにいかぬですか。
  337. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 毎週各省に連絡をいたし、党の方にも、各部会を通じて、毎週実は数時間やっております。相当実は事務的には熱心にやっておりますが、いかにせん広範囲なものでございます、また画期的な影響のあるところもございますので、誠心誠意努力はいたしておりますが、あと一週間でできるかというと、まだ各省に連絡の都合上、明言はできません。
  338. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 新聞等を見ると、今労働大臣もおっしゃったように、政府部内の調整ということがなかなかはかどっていない、こういうふうに報道されているわけです。大臣もそういう答弁なんです。そうすると、政府部内の調整が手間取るというふうなことがあって、この国会でそういう批准ができない、こういうことがあれば、これは内外に与える影響は非常に重大である。私はそういう懸念をしたくないんですけれども、今の労働大臣答弁では、そういう懸念も全然ないと言い切れないと思うんです。ですから政府部内の意見調整、どういう点が今問題になっておるんですか。最も重要な点はどこにあるんですか。
  339. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 公労法、地公労法は、先般閣議に中間報告をいたしました。これはただいま各省にお示しした案でございます。あと国家公務員法に関しましては、各省とともに意見が非常に多いと聞いております。国家公務員法は労働大臣の所管でございませんので、私が直接答えるのはいかがかと存じますが、一応そういうふうな報告を受けておりますから、どこ、ここということはいろいろ議論が多いところで、どこであると一点にしぼるわけにいかないんじゃないか。国家公務員に関する問題が非常に広範囲でございます。各省に関連がございますので、意見が非常に多い、こういうふうな報告を受けております。
  340. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 重要な点。
  341. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 一番重要な点は、国家公務員法にまず触れる。八十七号条約は、国家公務員は除外はしておりませんので、触れる。触れるとなれば、国家公務員に及ぼす四条三項に匹敵する条項というものが出て参ります。それにあわせて、やはり国家公務員の労務管理とか、今日までの慣習とか、各省に実は意見がございますので、重要な点と言われましても、なかなかこれは議論の多いところじゃなかろうかというので、要するに四条三明に見合うものがやはり各省における国家公務員においても影響があるというふうなところだと私は報告を受けております。
  342. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 政府が今いろいろ議論しておる点は、われわれの方から見ると、ILO条約八十七号批准に直接関係がない問題を議論しておるんじゃないか。八十七号の趣旨に違反するような点を、これを調整するということであれば、これは私もわかると思う。しかし、今いろいろ報道されておる点を見ると、直接それに関係のない、いわゆる政府の労働政策として検討される問題です。これに便乗して考えておる。そういうためになかなか調整がむずかしいというふうに考える。で、そういう点があるから、私は今労働大臣に、どういう点が問題になっておるのかということを問うておるわけです。労働問題懇談会の答申を見ても、さしあたりこれを批准をするについて、公務員法を相当いじる必要はないんじゃないか、こういう意見もあるわけなんです。ですから、そういう点はどうなんですか。
  343. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 懇談会の答申の中にも、国家公務員に関しては非常に不明確な書き方が出ております。ことにその解釈の問題が出ております。こういう解釈ならばさしあたり触れなくてもいいというふうな条件付の条項になっているわけであります。従って、やはり四条三項という公労法の改正が起これば、国家公務員に影響するところが直ちに出て参ります。従って、まずその点は、国家公務員に関する影響を考えなければならない。それじゃ、ILOの批准は四条三項だけでいいかというと、四条三項及び地公労法五条三項は、さしあたりぜひこれは改正が必要だというので、この二つの条項でその他は要らないというものじゃございません。あとはよき労働慣行という言葉がございます。また、整備という言葉がございますので、やはりこれは政府の判断によってきめるべきだ、そういうふうに考えております。
  344. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、こういうことになりますか。政府部内の調整ができない、あるいはできる、こういうふうにお考えになっていますか。どちらですか。特に関連して聞いておきたいんですが、八十七号批准の主管責任大臣は労働大臣だろうと思うんですが、どうですか。この点をお伺いしたいと思います。
  345. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 労働問題から出ておりますので、国内的主管大臣は労働大臣、国際的な主管大臣外務大臣だと私は考えておりますが、私はもちろんできると思っておりますし、それを目途として総理発言もございましたから、政府部内はもちろんそれを焦点に今日作業をしているわけで、できないようにするとか、できるとかいうことは私は考えておりません。総理の言明通り、この国会において国内法を整備して批准手続をとるという方向で、少しも私は今日動揺はいたしておりません。
  346. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 できない場合はどういう責任をとりますか。
  347. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 今日は、できないということは私は考えずに、誠心誠意その問題に取り組んでおりますので、できなかっときというのは、今日私は考えておりません。
  348. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連して、今朝来の新聞を見ますと、大体次官会議等でいろいろ問題があった。あるいは与党ともいろいろな話をしたということで、専従者の制限等の問題が出ておりましたが、それはあげて閣内━━政府に一任する、つまり閣僚会議に一任するという趣旨の記事が出ておりましたが、大体そういう方向で進んでおるのでしょうか。
  349. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 次官会議に私は出席しておりませんから、私の聞いておるところでは、あげて閣議にまかせるという方向をまだきめたとは聞いておりません。続いて次の次官会議で、さらに事務局に進行をするという報告を私は受けておるのであります。
  350. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今お話のあった在籍専従の問題でね、これは八十七号批准とは直接関係のない問題だと私は思う。もちろん労働政策として、それはいろいろ取り上げられる問題だと思うのです。しかし、八十七号批准とは直接関係のない問題だと思いますが、どうですか、労働大臣見解は。
  351. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 八十七号条約の労懇の答申には関係がございません。労懇の答申は、国内法の整備、よりよき労働慣行ということがございますから、答申の中にはもちろん含まれておりません。
  352. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 その関係のない問題で、ごたごた国内法の調整に手間をとっておるということは、私はよろしくないと思うのです。こういうことを口実にして批准の手続をおくらすということがあってはならぬと思うのです。しかし、そういう一つ一つの問題に触れることは、私は避けます。そこで、労働大臣に伺いたい点は、先ほどこの批准の手続がとれる、そういうことは決してとれないというようなことはないと、こう考えておる、だから責任問題は考えない、こういうことであった。だから四月上旬に批准の手続をとるという言明は、その通り行なわれるというふうに了解したいと思うのですが、どうでしょうか。
  353. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) その方向に誠心誠意努力いたしております。
  354. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この公務員法の改正、特に地方公務員法の改正の問題については、自治庁長官に責任があると思いますね。で、自治庁長官は、新聞記者との会見でこれは━━八日ですが十一日の閣議までに八十七号批准に伴う地方公務員法改正の具体的方針を取りまとめる、こういうふうにおっしゃっておるのですが、この点はどうですか。
  355. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 当時、そのころまでに労働者におきましても、いろいろ公務員関係に関する考え方について一つの案を示したいというような話も出ておりましたので、新聞記者からいろいろ質問もございましたので、公務員関係についての、ことに地方公務員等について考え方をまとめなくちゃならないと、かように考えていたのでございますが、御案内のように次官会議その他におきまして、公務員の問題についても、地方公務員関係についても、各省の立場々々によっていろいろ問題がございまして、御案内のように次官会議でいろいろ検討させておる段階でございまして、従いまして、私があのとき、十一日ごろまでにと申し上げたのは、若干私の考え違いでございまして、目下次官会議でいろいろ検討されておるというのが、実情でございます。
  356. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 自治庁長官に重ねてお尋ねをいたしますが、総理も労働大臣も、四月上旬を目途にして手続をとりたい、この方針に協力するためには、最小限三月中には地方公務員法の改正点というものをきめる必要があると私は思うのです。そうでなければ、あの言明は空虚なものになってしまうわけですね。この際、私は、あらためて長官の決意というものを伺っておきたい。
  357. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 御案内のように地方公務員につきましては、大体給与の問題その他いろいろの問題は、国家公務員に準じて話をきめてやっているわけでございます。地方公務員だけ特別の体系を整えるということは、これは考えられないことで、従って、国家公務員、地方公務員を通じてILO条約批准に伴う検討がいろいろ加えられておるわけでございまして、私も、自治庁の次官その他には、でき得る限り協力をして、早く考え方をまとめるようにという指示を部内ではいつもいたしておるのでございますが、先ほど述べましたように、各省それぞれの立場がございまして、まだ論議の段階にあるわけでございます。
  358. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連して。お話を聞いておりますと、次官会議がなかなかまとまらないということで、非常にあいまいもこたる遷延策も講じておるように受け取れて、非常に残念でありますが、そこでお尋ねいたしたいのでありますが、次官会議なりそういうものがまとまらなければ、これはどうしても、今の労働大臣あるいは岸総理の本委員会における答弁を承りますと、四月上旬までに提出するということになるわけでありますが、そうなれば、閣議━━閣僚、政府で全部これを取り上げて審議しなければならぬ、こういう段階にもうそろそろ来ているのではないかと思いますが、まとまらなければ、閣議でこれをとって結論を出すという考え方があるのかないのか、あくまでも次官会議がまとまらないのでは、閣議ではやられぬという筋合いのものではないと思うのでありますが、その辺についてのお考えを承りたいということと、それからもう一つは、労働大臣の所管は、公労法、地公労法関係である、その他の関係は、公務員関係だから私の所管でないと言うが、その調整は一体閣僚の中でどなたが調整をして、それを取りまとめるのか、どういうことになっておるのか、その点もあわせて御答弁をいただきたい。
  359. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 公務員法につきましては、内閣でございます。総務長官が公務員制度の関係をやっておられますので、一応内閣で取りまとめられると、私はこう考えております。  次官会議の運営及び進行につきましては、いろいろ議論がありますが、直ちに閣議で取り上げるかどうかということは、まだ次官会議段階ではそういうものはさまっておりません。相変らず各省の一致の意見を求めるように努力しておると、私は報告を聞いております。
  360. 永岡光治

    ○永岡光治君 私の質問は、まとまらない場合を今予想して質問しているわけですが、もうその段階である、四月上旬ということになれば、先ほど荒木委員からも質問いたしましたように、二週間程度ですから、ここらあたりで閣議でこれを取り上げて意思統一する、こういう段階ではないかと思うのでありますが、まとまらない場合には、依然としてそのまま放置するのか、私はおそらくそうじゃないと思うので、そういう決意を持っておるのかどうかということです。つまり、まとまらなければまとまらないまま放置するのではなくて、閣議でそれを取り上げて、政府部内の意思統一をはかるという、そういうことをする決意をお持ちであるのかないのかということを尋ねているわけです。  それから公務員法の関係は、それは総務長官がやるでしょうが、そのためにおくれているということになるわけでありますから、労働大臣と総務長官と意見の調整は最終的にやらなければならぬような段階に来るのじゃないかと思うのですが、そういう政府部内の意思統一する調整役といいますか、それは一体だれがおとりになるということになるのか、そういうことを言っているわけです。
  361. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 内閣のことでございますから、官房長官であろうと私は思っております。
  362. 永岡光治

    ○永岡光治君 もう一つ内閣で取り上げる決意を持っているかどうか。
  363. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) それは、まだ次官会議の運営の所管が官房長官でございますから、官房長官の御判断によるものだと、私は考えております。
  364. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうすると、総体的な取りまとめは官房長官がやるのだ、こういうように受け取っていいのですね。
  365. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 国家公務員に関しては、さようだと私は考えております。  それから、あとのILOの批准の場合には、もちろん所管は労働大臣でございますから、所管の労働大臣と意見をあわせていただいて、そうして閣議で最終的にまとまるものだ、こういうふうに私は考えております。
  366. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは文部大臣にお尋ねいたしますが、文部大臣は何かこの問題について自説を固持して譲らない、そのために調整相当難渋している、こういうふうにも聞いているのですが、これはどうですか。
  367. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 大体、先刻来労働大臣からるる述べられたことと同じような考え方でおりますが、むろん文部省としては、文部省の考え方がある。それらのことを今、次官会議において各省間の調整をはかっている、こういうことでございます。
  368. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 報道するところを見ると、文部大臣が固執している、あるいは文部省が固執している重点は在籍専従の問題、これを非常に固執している、こういうふうに聞いているわけです。しかし、この問題はいろいろ意見もあると思うのです。しかし、八十七号批准には直接関係のない問題だということについてどういう見解を持っておられますか。
  369. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) それにつきましては、八十七号が批准されるならば、関係はないとは考えておらないのであります。
  370. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私が関係がないというのは、八十七号を批准するために、どうしてもその八十七号の条約の趣旨に抵触する、そういう国内法はこれは整備しなければいかぬのですよ。そういう意味において、在籍専従の問題は、これはあろうとなかろうと、かりに文部省の言う通りになろうと、また自治庁が言っているようになろうと、批准には関係がない、そう言っているのですよ。政策としてはそれは重要な問題であるかもしれません。
  371. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) ILO条約八十七号を批准した暁においては、私どもは、ILO八十七号の趣旨が貫かれておらなければならぬ、その上で各省間の調整もはかっていかなければならぬ、基本精神が貫かれずして批准してみても始まらぬ、かように考えておるわけであります。
  372. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは文部大臣の私は考え違いだと思うのです。私の言っているように、この問題は重要な問題であるということは否定しません。しかし、ILOの八十七号の趣旨に、この問題がきめられなければ批准できないとか、できるとか、そういう問題でないと思うのですよ。増子内閣公務員制度調査室長、これはやっぱりはっきり言っているのですよ。在籍専従の存廃は八十七号条約とは全然関係がない、この問題は国内政策として考えるべきだ、こう言っておる。文部大臣の考えはどうですか。これと違うように私ははっきり受け取っておるのですが。
  373. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 閣内全体の調整を得るためには、その点だけではございませんけれども、その点については、いろいろ御承知のように、御意見の方もありましょうけれども、私どもはILO条約批准については、その基本的な理念、基本的な精神というものは貫かれるのでなければだめである、批准をする必要はない、これを批准する以上は、そのILO条約の基本的精神というものは貫かれなければ意味がない、かように考えております。
  374. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、労働大臣はどういうように考えておるか、もう一度はっきりしてもらいたい。増子室長は八十七号批准とは関係がない、この問題は国内政策の問題だと言っています。これは間違いですか。
  375. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) それは、こういうことではないかと思います。批准をするということには、四条三項、五条三項が絶対必要だという方向と、同時に、国内の労働政策あるいは労働関係及び国内法を整備しろという、二つの実はあの趣旨の問題があるわけです。従って、四条三項、五条三項とは違うというのがおそらく増子君の発言ではなかろうか。しかし、国内法の整備ということは、これもあわせて第二項でありますから、この方向には当然その問題は関連がある、この二つの問題を今日国内でやっておるのですから、関連ないとは言えません。しかし、絶対必要かという問題と国内法すべてに対する関連という問題は、ともに必要でありますから、私はやはりこういう問題をともに研究するのが妥当じゃなかろうか、こういう趣旨にお考えいただければ明白じゃないかと思います。
  376. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは研究するのはいいですよ。しかし、そのためにこの国会で批准できない、こういう事態になれば、私は非常に重大だと思うのですね。これは外務大臣にも聞きたいのですが、この六月にILOの総会がある。それまでに日本が批准できないという場合に、これは日本としても大きな国際的な信用を失うという問題になるのじゃないですか、国際的には。
  377. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、国内法を早急に整備いたしまして、そうしてできるだけこの機会に、そういう労働大臣が言われておりますように批准することが、国際的にはほんとうだと思いますが、しかし、国内法を整備しないでもって批准するということは、これまた日本の情勢からも適当ではないと思います。
  378. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の状態は、この国内法の整備ということを口実にこの批准が引き延ばされる、私はそう考えたくないのです。ないが、結果としてそういう事態が来ればどうですか、外務大臣
  379. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) できるだけ早く批准されることが望ましいし、すでに総理も、あるいは内閣においても、その方針をきめておることでありますので、そのこと自体が若干おくれましょうとも、その方針が変更されざる限り、特別に国際的信用を失うということはないと考えております。しかし、早いことが望ましいことはもとよりでございます。
  380. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は非常に国際的にも国内的にも重要な問題であると私考えております。そういう意味において、早く国内法の整備について政府部内の意見の統一をはかって、そうして総理大臣が言明しておるように四月中にはその手続がとれるように、私は特に要請をしておきたい。そうして次の質問に移ります。
  381. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連して。外務大臣はただいま国際的に信用は、批准しなくても、方向さえきまっていれば落とさないという認識のようですが、決してそういうものではないのです。これは労働大臣がみずからよく情勢は把握されておると思いますが、私はそういう一つの労働法という問題から、国際的な会議の問題から見ましても重要な問題です。特にこのガット三十五条の除外をめぐりまして問題になってくる場合も、やはりこのことを口実に使って、日本の思うようなことにならぬというおそれもなきにしもあらずなのでありますから、一つ、その辺のところは、ひとり労働問題のみならず、国際的な貿易との関連も十分考えて、ぜひこれは、しばしば岸総理大臣や労働大臣が言明しておりますようにこの国会中に批准ができるように、特段の一つ決意を固めていただきたいと思いますと同時に、次官会議があまりごたごたしているようであるならば、早急の機会にこれを閣議の席上に取り上げて、早急な結論を出してもらうように特に私は要望しておきたいと思う。私のこの要望について外務大臣はどのようにお考えになっているか、最後にお尋ねいたしたい。
  382. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は長い問題でございますが、総理がすでに内閣の方針として批准をするということをはっきりきめておられるわけでありまして、従って、批准しないという立場でありますれば、労働委員会等におきましても問題があるかと思います。しかし、批准をするという立場で、若干それが国内法の整備のために、こういう事情でおくれているというなら、それは十分了承を得ることになり、特に信用を落とすという問題ではないと考えております。しかし、総理が言われた以上は、できるだけ早い機会にそういう手続がとられることを私としては希望しておる次第でございます。
  383. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、次の問題に移ります。国立劇場の問題について、大蔵大臣並びに文化財保護委員長、文部大臣にお尋ねをしたいと思います。  この国立劇場の問題は、昭和三十一年に閣議決定をして、国立劇場を建設すると、こういう方針を決定されております。自来すでに昭和三十五年…、五年を経過しようとしている。ところが、国立劇場は一向進展していない。これは、文部大臣が文化的な政策を私は軽視している現われじゃないかと思います。三十一年に閣議決定をして、その後、毎年調査費を組んでいる。しかし一向、五年たってもその目鼻がつかない、こういう状態は、これは文化国家として恥ずかしいやり方じゃないかと私は思うのです。そこで、私はこの問題をきょう取り上げたわけです。一体どういうことになっているか、初めに文化財保護委員長及び文部大臣の方から大体の説明を聞きたい。
  384. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 国立劇場が非常におくれておる、これは文化を軽視しておるのじゃないか、決してそういうことではございません。お話のように国立劇場を作るにあたりまして、せっかくこのために努力して参りましたのでありますが、その遅延した理由が幾多ある。いやしくも国際劇場を作るのでありますから、あまりあわてて━━十分いいものをこしらえなければならない。あわてて、あとでまた人の笑いを招くようなことであっては、それこそわが国の文化のために不名誉である、かように考えるのであります。そういうふうに考えております。それからまた遅延をいたしました理由といたしましては、場所の決定にも非常に手間どった。それからどういう劇場をこしらえるか、幾つこしらえるかというようなことについても、芸能人間の調整をはかるという点について、非常に多くの人々と折衝して手間どって参っておる。それからまた、その国立劇場の規模であるとか、あるいは設計であるとか、あるいはその建築費の問題、そういうようなことについて、財政当局と折衝するというようなことも手間どつた一つ理由になっておるわけであります。
  385. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) 私からお答えいたします。だたいま文部大臣説明いたしました通りでございます。まことに、この大事業がおくれますのははなはだ遺憾にたえないと、かように考えておりますが、しかし、何分にも大きな仕事でありまするし、それから適当な場所を得ること、それから相当な予算を得ることというようなことが何としても必要でありますので、今、文部大臣説明いたしましたように、敷地の決定がだいぶおくれたのであります。初めの三宅坂のパレス・ハイツということを考えておりましたけれども、それがなかなかいけないので、大蔵省の示唆もありまして、赤坂離宮の一部ということにもなったのでありますが、しかし、それもまたできないので、結局パレス・ハイツということにきまったのであります。その間に一年以上かかっております。それからまた、どういう劇場を建てて、どういうふうなものをやるかということにつきましても、これも相当長い期間を使ったのであります。と申しますのは、一応この国立劇場設立準備協議会の意見をただしまして、そうしてそれに対しまして委員会決定いたしました事柄につきまして、この演芸方面の人々からだいぶ議論が出ました。その意見もやはり十分に尊重いたしまして、そうして案を練りましたので、このことも大へんにおくれた理由になります。それからもう一つ、その決定した案につきまして、パレス・ハイツに、つまり第一劇場、第二劇場と、それから基本的の仕事をする場所、その三つでありますが、それをあの場所に建てますことにつきまして、東京都知事に対しまして建築基準法によるところの例外の許可を得なければならぬ関係ができましたので、そのことにつきまして東京都との折衝について手間どりましたわけであります。まことにこれはおくれたということは遺憾でありまするが、そういうことによりましておくれたのであります。さらにまだ今後予算等につきまして、十分な予算を得たいと考えてはおりまするが、これまた今後の折衝の問題になっております。大体そういう理由でおくれましたことを申し上げます。
  386. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 文部大臣は、こういう何はあわててやる必要はないと言う。私もあわててやって托しいとはちっとも言っておりません。これは慎重にやってもらいたい。しかし、五年間に、今の説明を聞いても、ほとんど進捗しておらぬですよ。こういう文化の殿堂という大きな問題ですね、これは慎重に衆知を集めてやることは、私も大賛成です。しかし、何もせぬで手をこまねいて遊んでいるということはないと思うのです。土地の問題一つ片づいておらぬ。五年間にですよ。これは一体どういうことですか。土地の問題一つ五年間に片づかぬということは、これは何もあわてるとかあわてぬとかいう問題ではないと思う。誠意がないのではないか。
  387. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 土地の問題は決定いたしたのであります。つまり、パレス・ハイツ、三宅坂のところが敷地に決定されておるわけであります。それで、現在のところでは、わが国の古典芸術を主とする劇場、これを第一劇場としてまずこしらえる。それから近代芸術を主とするところの第二劇場、この二つをこしらえるということが決定いたしております。今のところ、この四月、五月のうちに━━来月、再来月ぐらいの間に設計の懸賞募集をやるということも大体決定いたしております。また、その予算も、現在のところでは三十七億ということにも決定いたしておるわけでありまして、この設計懸賞募集が四、五月のうちにできますならば、それから予算も確定いたしまするならば、大体三十八年度中にはその完成を見るというところまで来ておるわけであります。以上のようなことでございます。
  388. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 文部大臣は今、敷地はすでに決定したと、こういうお話ですが、国有の土地だけでは間に合わないので、さらに一千坪余を買い足さなければこの第一期工事ができないと、こういうふうに聞いているのですがね。その買収はまだ済んでおらぬと思うのですが、どうですか。
  389. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) 三宅坂に決定いたしましたのは一万三百七十七坪ということになっております。それから、この第一劇場、第二劇場を建てますことにつきまして、東京都の建築条例の例外の許可を得る必要上、東京都と折衝いたしましたのでありますが、どうしてもまだ千三百坪ばかり足りないということがはっきりいたしました。この点は、ぜひその土地を確保したいということを考えて、今努力中であります。今の土地の問題が決定しないということは、多分その点を御指摘になったことだと、かように考えます。しかし、これにつきましては、予算の折衝その他全力をあげましてこの土地の確保に努めたいということを申し上げておきます。
  390. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは大蔵大臣に伺いますが、今保護委員長お話があったように、さらに一千坪余買い足さなければならぬ。これについて大蔵大臣としては同意を与える考えか。  もう一つは、文部大臣が第一期計画としては約三十七億円要る——この問題について大蔵大臣としてはどういうようにお考えになっておりますか。
  391. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、今年の予算で二千五百万円でしたか、あれは基本設計までの費用として予算を計上いたしたものでございます。この予算が成立いたしますれば、ただいま申しまするように、基本設計まではできるようになると思います。  ところで、今御指摘のように、土地が少し狭いというその話は、まだ私どもの方ではっきり検討はいたしておりませんがさらに必要であれば、もちろん手当をしなければならぬと思います。さように、この土地の問題はなお私ども検討するつもりでございますから、そこに折衝の余地があることを御了承願いたいと思います。  また、文部省の三十七億と言われました金額、これは文部省の案だと思います。従いまして、まだ大蔵省がその三十七億の案を了承しておるわけではございません。先ほど来申し上げますように、基本設計の予算をただいま計上した程度でございまするので、この基本設計ができまして、さらにどういうように費用がかかるかということを十分検討していかなければならぬと思います。  おそらく重ねてお尋ねがあるだろうと思いますから、次も答えておきますが、その総額がきまりました際に、この予算を支出計上いたします場合は、その年の歳出、関係費目等を十分検討いたしました上で、これを予算化する努力をいたすつもりであります。基本的には、大事な事業でございますから、その点では、大蔵省も事業の認識については絶対におくれておるわけではございません。
  392. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今大蔵大臣は、今年の予算は二千五百万円計上している、これで基本設計ができるというお話です。これは、私は文化財保護委員会等が計画している設計の方針等から考えて、この金額ではできないと思うのですが、どうですか、保護委員長
  393. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) 今おっしゃいました来年度の予算、まだ通過しておりませんけれども、二千五百万円を予定しております。実はそれだけではまだ足りないと考えます。しかし、これは三十五年度にやるべき仕事でありますが、しかし、若干は次年度に延ばしまして、そうしてそれに力を集中していきますれば大体において支障なく進行するものと考えております。
  394. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この国立劇場の問題は、私は国民のやはり総意というものによって、国民の熱意といいますか、そういうものが反映するようなやはり方法でいろいろのことが進められる必要があると思います。設計一つにしても、そういう点で相当留意されているかどうか、私は疑問に思っているのです。日本の各階層を芸能関係だけでなしに、一般の労働階級あるいは財界等、今日、日本国民こぞってがこの殿堂を建設するのだ。そういう基盤に立ってこの事業は進める必要があると思います。しかもこの事業には、これはもう永久的なものですから、相当な予算をかけてやはりやっていく、こういうことでなければならぬと思いますが、そういう点についての配慮というものが欠けているんじゃないかと私は思うのですが、文部大臣から一つ
  395. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 御承知のように、いやしくも国立劇場である以上は、国民の文化芸術に対する情熱の結晶によって、これが完成されるべきものであることに対しては、私も全く同感でございます。そうでありますれば、なおさらりっぱなものを、日本の国民全体の文化に対し、芸術に対する情熱の現われということでりっぱなものをこしらえたい。むろんその点については、先ほど申し上げたことは不十分であるということも言い得るでしょう。また、何と申しましても芸術文化人、また、一般国民の間においても、この問題に対しては、それぞれ意見が多々あることであると思います。そういう事情でありまするので、決して怠慢の状態にあるのではない。できるだけ早くこれを、その実現を見たいという考えは十分に持っておりますけれども、さて人の笑い物になるようなものはこしらえたくはない、りっぱなものをこしらえたい。こういう考え方が主となって、やはり今日までも期待をかけて、今後もまだ必ずしも予定通りりっぱなものができるかということになると、今後もなお検討しなければならぬ問題があるが、一応考え方としては、先ほど申し上げたようなことに尽きるのじゃないかということを申し上げたのであります。
  396. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 総意が反映するようなことを考える必要がある。
  397. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) もちろん国民の総意の反映がされるようなものであることが望ましいということは、私どもも同じ考えであります。しかし、それがこの国立劇場にどう結晶するかということについての過程においては、いろいろの議論があることはやむを得ないのじゃないか、そういう点において、なお検討するものがあるということを申し上げたのであります。
  398. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと先ほど二千五百万円のお話をしましたが、これはいわゆる基本設計というものでありますし、実質設計の費用はまた別に計上しなければならないものでございます。だから、この点誤解はないだろうと思いますが、一言つけ加えておきます。
  399. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) この重大な仕事でありまするから、国民がこぞってこれを支持してくれるように、そのためには多くの人のつまり助力を得るように働くということは、初めから考えておった次第でございます。第一には、あの国立劇場設立準備協議会というものには、これは閣議決定でありますが、定員が四十名、各界の代表でありますが、それにはずいぶん多数の芸能界あるいは言論界、建築界等の人も入れてあります。それからこの仕事の必要性にかんがみまして、臨時の委員というようなものをやはり四、五十名ふやしております。それからさらにまた国会議員の諸君から両院を網羅しまして、政党政派を問わず両院議員の国会議員国立劇場促進連盟というものができておりまして、これまた常にわれわれを鞭撻してやって下さっておるのでございます。それから一般の芸能界はもちろん、それからさらにまた言論界の人々等も多数ときどき集会をいたしまして、この仕事を促進してくれておるというような実情であります。われわれといたしましては、まだ努力が足りないと考えておりますが、願わくはこの力によりましてりっぱなものを作りたいということを考えておるわけでございます。先刻大蔵大臣もこの予算の支出につきましてりっぱなものを作るということの原則はお認め下さっておりますが、願わくは、そのお考えに基づきましてりっぱなものができるように努めたいということを考えておる次第でございます。
  400. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は特に国民の総意、働く者の側の意見、こういうものも反映するように特にこれは希望しておきます。  次に、南極観測の問題ですが、政府計画では南極観測は、今行っておられる越冬隊で一応打ち切る、こういう方針になっておるように聞いておるのですが、そうですが。
  401. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 大体二年間やるということで三十三年の七月十一日の閣議決定があって、そうしてまず二年間やったわけでありまして、第四次南極地域観測隊を送り込んでおります。第三次が数日前に帰ってきたわけです。これからそれでは引き続きやるかどうかということにつきましては、これまでの観測の成果、調査の結果、そういうものを十分に調査検討いたしまして、学界の意見も聴取し、その上で決定いたしたい。また明年度の予算においては、今度越冬隊を十五名送り込んだその人々を迎えに行く予算をとりたい、こういうことであります。こえは二億三千三百余万円であります
  402. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今後継続してやるかどうかということは、これは政治的な問題でなしに、純学術的な問題だと私は思うのです。ですから、ここで来年も引き続いてやりなさい、こういうふうに私は言うつもりはないのです。しかし、いわゆる学術上これが必要であるという結論が出れば、政府としてもやはり引き続いてやるべき性質のものだというふうに私は考えているのですが、その点についての御見解を伺ってみたい。
  403. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 越冬隊の観測の成果を十分検討し、学界の意見も十分に徴して、その上で決定すべきであるということは、荒木さんのおっしゃいますように、私もそのように考えておるのでありまするが、その成果が、はたして、継続するに十分なものであるということになれば、むろん文部省としても、それで学界がこれを援助いたしますならば、われわれも継続させたい、かように考えます。
  404. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは僻遠の地にいられますので、非常に私は越冬隊の方に敬意を表しながらきょうは質問をしているわけです。私の聞いておるところでは、この観測に従事される人々の身分安定ですね、身分保障、これが十分でないというふうに聞いている。特に民間からこれに参加された人々に対する扱い方というものが不十分であると聞いておるのですが、この点は今後継続してやるということになれば、相当改善する必要があると思うのですが、どうですか。
  405. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) そういうこともむろん考えなければならぬ問題だと思います。ところが、すでに越冬して帰ってきた人々の話を承りますと、なかなか皆元気でありまして、また非常に熱意を持っておることを伺いました。中にはこれはほとんど━━全員ではないかもしれませんが、多くの越冬隊員が一年だけ越冬するのがもったいない、二年もしくは三年にわたって続けてやる方がより能率的であり、効果的である、こういうふうな考えを述べておられるようです。また現にノルウエーでありますが、あるいはアメリカにおきましても、越冬隊員のうち二名とかあるいは三名とかずつ交代して、残余の隊員は残って二年なり三年引き続いて越冬しているというようなやり方をやっておるわけでありますから、それらのこともやはり十分検討いたしましていかなければならないことと考えます。
  406. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は外務大臣質問をいたしたいと思いますが、これは安保条約に関連した問題ですが、これはわれわれが一番重要な問題として考えているのは、この安保条約によって日本が外国の紛争に巻き込まれる、あるいは外国の戦争に巻き込まれる、そういう危険が非常に大きいという点をこの条約で非常に重要な問題としてあるわけです。この点について私は若干質問したいと思うのですが、この間、島委員質問に対して、政府極東以外の地域において紛争なり戦争が起きた場合には中立を守る、こういう答弁がありました。これはまあ当然だと思うのです。極東の地域内でそういう事態が起こったときに日本が中立を守ることができるのかどうか、この点について外務大臣から答弁願います。
  407. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の安保条約よりも、私ども紛争に巻き込まれることが少なくなるということを確信いたしておるわけでございます。極東に何か状態が起こったときに、日本の基地から出撃して行きます戦闘作戦のためには、事前協議をもってしばって参るわけであります。その意味において、それに巻き込まれるという形は、私は、現在の安保条約より少ないということは言えるのじゃないかと考えております。
  408. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はこの問題については、抽象的な論議ではいろいろ言い方があって、巻き込まれないんだ、そういうことで、まあ私から言えばごまかしができると思うのです。そこで、実例に基づいて、私は少し外務大臣見解をただしておきたいと思いますが、この前に朝鮮の三十八度線をはさんで南北で戦乱があったわけです。あのときは、まだ日本は占領下にあったわけです。そうして、日本に駐留しているアメリカ軍は、日本にある飛行場から前線に出撃した、これは否定することのできない事実であると思います。そこで、もし今後において、ああいう事態が起こったと仮定した場合、この場合にアメリカ軍は、米韓条約によって出動する義務を持っていると思うのです。その場合に、アメリカ軍が日本の基地を利用するということは、先例に照らしてあり得ることだと私は思うのです。そういう場合に、日本としては事前協議において日本の基地を使用させない、こういうことを明確に言い得るかどうかということ、この点を明らかにしてもらいたい。
  409. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在、御承知のように、朝鮮事変の場合における国連軍ができておるわけであります。国連軍として在日米軍が行動するということになろうと思います。国連軍であろうと、事前協議のワクはかかるわけでありますから、国連軍として行動する場合には、われわれ国連のメンバーとして、十分な支援を与えるということは、これは国連の決議に従うことでありまするから、当然そういうことは考えられると思います。そういう意味におきまして、私どもとしては、特に何か戦乱に引き込まれるというようなことが、違った状態で起こり得るということは考えておりません。
  410. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今、問題はやはり二つになると思うのですが、それは国連軍としてアメリカ軍が行動する場合もあるでしょう、また国連軍としてでなしに、米韓条約によって、アメリカ軍として単独に行動しなければならぬ事態も、私十分考えられると思うのです。その米韓条約によってアメリカが出動する場合に、日本としてはアメリカ軍にその戦闘行動に参加させないために日本の基地を使わせない、こういったことがはっきり言えるかどうか、こういう点を言っているんです。国連軍の問題はまた伺います。
  411. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もう一度いわゆる三十八度線で何か起こった場合に、現在の国連軍が出動することは、これは当然そうだろうと思います。国連軍そのものが残存いたしておるわけでありますから……。それを離れて在日のアメリカ軍がアメリカ軍として行動するということは、現状においては考えられないわけでありまして、われわれとしては、そういうことをそのときの事態に照らして考えてみなければ、今日にわかに測定はできないということであります。
  412. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういう事態が予想されないということは、私は外務大臣の独断だと思うのです。先年も、台湾海峡をはさんで、相当困難な事態が起こった、これは戦乱にまで拡大するという事態にならないで済んだ、しかし、この台湾問題にしても、アメリカが、国連の決議がなければ絶対に行動しないという保証はありますか。
  413. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカとしては、むろん個別的な、あるいは集団的な自衛権を行使する場合に、国連憲章に準拠してやることは、これは当然なことだと思います。その場合に、たとえば今御指摘のように、台湾海峡方面に何か起こったというような場合に、われわれがそれをどういうふうに事前協議で判断するかという問題については、やはり日本の平和と安全のために、あるいは日本の平和につながっておる極東の平和という問題を考えて、事前協議に臨むわけでありまして、そうした具体的な事実が起こって参りませんければ、今それをどうという、必ずイエスというか、必ずノーというかという事態に照らしてみなければ、何とも言えないことではないかと思います。
  414. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 日本の安全と平和について、そのときどきに判断をしてイエスかノーかきめる、こういう問題ですが、この日本の安全と平和に重大な関係があるかどうか、これは主観的な考え方で、少なくとも日本の憲法で、いわゆる自衛権をわれわれが認めておるというのは、日本が直接武力攻撃を受けた場合、これは明白です、こういう場合に自衛隊がその防衛のために立ち上がる、あるいは日本に駐留しているアメリカ軍が協力する。日本が武力攻撃を受けた場合、日本の自衛隊及び駐留しているアメリカ軍がこの攻撃を阻止するために防衛する、こういうことであれば、これはある意味において国民も納得すると思う。しかし、台湾に起きた紛争のためにアメリカ軍が出動する、これが日本の安全と平和に害があるのだという理由で、アメリカ軍は日本の基地を使う、それを日本が許可する、こういうことがこの安保条約ではあるわけです。これをはっきりいつの場合でもノーだと、使わないのだと、こういうことが明確になっておれば、戦争に巻き込まれる危険というものは、これは私は安心すべきものがあると思うのです。しかし、そうでなしに、そのときどきによってそれを許可するとかしないとかいうことであれば、依然としてやはり日本が戦争に巻き込まれる危険が、この条約によって起こってくるということは否定できないと思うのですが、その点どうですか。
  415. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の安保条約によりまして、たびたび申し上げておりますように、国連憲章に準拠してアメリカ軍も行動をするのでありまして、そういう場合を想定いたしますのが第一であります。それから、何か極東にそういうことが起こったときに日本の基地を使うことが適当であろうかどうかということが第二の問題になると思います。  第一の問題は、当然アメリカが国連憲章によって行動するのでありますから、その意味においては、その場合正当化されるのでありますが、しかし、それにいたしましても、日本の基地を使うという問題になりますれば、むろん日本の平和と安全、あるいは極東の平和と安全というものは日本にどう影響してくるかということを考慮して、その場合判断をするのでございまして、そういう意味において、われわれは単純に戦争に巻き込まれるということは考えられないと思います。
  416. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 外務大臣は戦争に巻き込まれる心配はない、これは重ねて言っておられますけれどもアメリカ軍に基地を提供し、そのアメリカ軍はそれぞれの条約によって戦乱になった場合出動する義務を負っている、あるいは韓国に対して、フィリピンに対して、または台湾に対して。そういう場合に、日本の基地を貸さない、そういう紛争や戦乱のためには日本の基地を貸さないということがはっきりしておれば、それはそういう紛争に巻き込まれないということは言えます。けれども、場合によっては貸すのだということであれば、これはやはりアメリカに協力しているという結果から、やはり日本が攻撃を受ける、いわゆる紛争に巻き込まれる、こういう結果になるのじゃないですか。紛争に巻き込まれないというなら、これはそういう基地の使用を認めない、こういうことをはっきりしたらどうですか。なぜはっきりできないのですか。
  417. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の場合におきまして、極東の平和と安全が日本の平和と安全にも影響してくるということは、当然考えられる場合があるわけであります。すべての場合がそうだとは申しませんが、しかし、日本の平和と安全に影響がある極東の混乱ということも考えられる場合もあります。そういう意味におきまして、日本の平和と安全が脅かされると同じような結果が出てくるような場合も考えられないわけではございません。従って、日本の防衛ということを考える上からいいましても、そういう場合の状況の判断によりまして、事前協議によってそれらのものを解決をしていくというのが一番適当な方法であろうかと考えております。
  418. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすれば、朝鮮にこの間起こったような戦乱が起こった、あるいは台湾でそういう戦乱が起こった、台湾海峡で起こったという場合に、外務大臣日本の安全と平和に直接つながる問題だ、こういうように判断しますか。
  419. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今のそういうことを想定して、その場合にイエスであるか、ノーであるかというようなことを言うことは適当でないと思います。
  420. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 しかし、日本の周囲にある問題としては、今考えられる問題はそれ以外にないのじゃないですか。それ以外にありますか。もしかりにわれわれの周辺において問題が起こるとして考えた場合に、朝鮮、台湾を除いてほかに問題が起こるというふうに考えられますか。
  421. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 地理的にそういうところに起こったというだけで問題が考えられるわけじゃないのでありまして、その規模なり、そのときの状況なり、いろいろなものを判断しなければ今からそれに対してイエスと言うか、ノーを言うかというようなことをあらかじめ申し上げるわけにはいかないと思います。
  422. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 やはり依然として戦争に巻き込まれる危険がある、この不安を解消することは、私は外務大臣説明では納得できないと思います。どうして日本が武力攻撃を受けた場合に、そういう場合に限定しないのですか。なぜそういうことを限定して、日本の自身の安全と平和の問題に限定してこの条約を考えないのですか。極東の平和だとか極東の安全だとか、いわゆる日本以外の問題について日本が介入しなければならぬ、間接的ですけれどもアメリカ軍を通じて介入しなければならぬ、そういう考えを持つ必要はどこにあるか、私は聞きたいのです。
  423. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 介入するとかしないとかでないわけでありまして、問題は、日本の平和と安全を守る上において極東の混乱が影響をするかしないかということが問題だと思います。また極東の平和を維持する上において日本の平和と安全が保持されなければならない、こういうことであると思うのであります。そういう観点からわれわれは問題を考えておるのでありまして、日本だけに限るということが必ずしも適当であろうとは考えておりません。
  424. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連。
  425. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  426. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも今の点がはっきりしないのですが、条約第六条の実施に関する交換公文によると、カッコの中に「(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)」と、現実に日本に武力攻撃があった場合には、事前協議その他を必要としない。そうすると、事前協議その他を必要とするのは、それ以外の武力攻撃が現実に行なわれていないが、先ほど荒木君がしばしば聞いておるように、日本の平和と安全が脅かされる等々のことがある場合、そういう場合に、日本国への配置における重要な変更、さきのレバノンの場合のように、日本にどんどんアメリカ軍が派兵をされてくる、あるいはただ極東の安全が脅かされているからという形において、日本から行なわれる作戦行動のために、基地として日本が使われる、こういうことになる危険性が非常に多い、むしろそれを当然のことに考えておる条約になっているのじゃないか。それならば、そのことはあなた方が繰り返し、五十一条によって現実の武力攻撃が行われた場合にそういうことがあるのだということを言っておるにかかわらず、先ほど御説明があったように、その五十一条において拡張解釈して、その精神に従って現実に攻撃がなかった場合でも、その精神をくんで軍事行動ができるのだ、戦闘行動ができるのだというふうに広げていかれる、そういうふうになるから、戦争の危機が、戦争の中に巻込きまれるのだ、こういうふうに荒木君はさっきから非常に心配をしているわけなんです。レバノンの場合でも、あのときに、レバノン自身がそれじゃ戦闘行為をやり、それに対してその国々が、たとえば中国であるとか、ソ連であるとかというようなものがあれに軍事行動を起こしたら、それこそ全面戦争になったであろうが、幸いにして、アメリカはああいうことをやったにかかわらず、世界の世論がそれを非難し、それを平和的に解決しなければならぬという態度を強く主張し、その世論の前にアメリカが屈したから、幸いにしてあれは戦争にならなかった、こういう状態であると思いますので、こういうことが当然であるように考えた前提のもとにこういう条約が結ばれ、あるいは交換公文がかわされておるという点については、戦争に巻き込まれるという危険があることは、やはり単なる危惧ではなくて、十分に考えなければならない点じゃないかと思うのですが、その点をどうお考えになりますか。
  427. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この交換公文におきまして、第五条の点を除いたのは、これは当然日本に対する軍事攻撃があった場合でありまして、これは当然なことでありますから抜いてあるわけでございます。そこで、それでは何か日本以外の土地で紛乱が起こった、その紛乱が起こったということは、要するに極東の地域に対して、アメリカに対する何かの攻撃があったというような事態が起こらなければ、アメリカは国連憲章のワクを尊重しておりますので、行動をいたさないというのが前提でございます。従って、そういうような外部からアメリカに対する攻撃が起こって、そうして、そういうことが事実に現われてきたというときでなければ、軍事行動は起こさない。そういう軍事行動を起こす場合でも、日本を基地として作戦行動をするという場合には、当然、日本に対して事前協議をするのだということになるわけでありますから、従って、その意味において、戦争に巻き込まれるということは、現在の安保条約よりももっと少なくなるということは、これは申すまでもないことであります。  先ほどレバノンの例が出ましたけれども、レバノン、主権国の主権者がアメリカに出兵を要請しましたけれども、出兵を要請したからといってアメリカが直ちにレバノンの国境でもって戦闘をいたしたわけではげざいません。そういうようなレバノンの国境に侵略が起こってきた場合には、おそらくレバノン政府と集団安全保障の立場において、国連憲章のもとに行動をするでありましょうけれども、そういう行動をレバノンに駐屯したからといってすぐにとったわけではないのであります。そういう意味において先ほど申し上げたつもりでありまして、その点を十分御理解をいただければおわかりいただけることだと存じます。
  428. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議事進行について。資料につきまして簡単に議事進行を行ないたいと思います。外務大臣、合意書につきまして資料要求いたしましたが、簡単な資料いただいたわけですね。それで衆議院安保特別委員会の方にも詳しく説明をして出されるやに聞きましたが、私が合意書について、これまで四日からずっと資料要求しておりますのは、外務大臣が、外務省が昨日出されたような資料ではないのですね。それは合同委員会に関する記録としましては大体三つあると思うのですね。その一つは、合同委員会に関する議事録です。これは非公式であって、これは速記録でありますから、これは公表しにくいと思われます。そこで、この公表をわれわれは要求したわけではない。  それからもう一つの記録としましては、一つ一つの事件処理に関する記録、まあ意見書みたいのもの、これは個個の事件処理の問題でありますから、これについて一々われわれ資料要求しているわけじゃないのですね。  もう一つの文書は、いわゆる合意書でありまして、この合意書は、行政協定を補足するための取りきめであって、いわば第二の行政協定だとか、あるいは隠れた協定とかいわれるものなんですが、われわれはこれを要求しておるわけです。政府が出されたのは、この合意書の中で、行政協定の協定本文の中ではっきりした規定に基づいて合意されたもので、それから協定には特段の規定はないけれども、実施上必要な事柄について補足的に合意した準則というものがあるわけです。この後者を要求しているわけです。ですから、この行政協定の規定に基づいて日米間で合意された準則、これはこの間出してきた資料です。これは行政協定にもう書いてあるのですから、それを要求しているのじゃないのですね。それならわかるわけです、もうすでに。ただ行政協定の中に取りきめはないが、合同委員会において実施上に必要な事柄について補足的に合意したもの、これを要求しているのです。そういう資料を要求しているのですが、それがお出しになっていないのですが、これからお出しになれるかどうか。議事進行上お伺いしたいのです。  特に具体的に申し上げますれば、きょうの新聞を見ますると、これは読売新聞ですが、に、「植竹郵政相が二十二日の閣議の席上、新行政協定によれば駐留軍がNHK施設を使用して海外放送を実施することは適法であるかどうか疑問である」、そうして「従来の行政協定では駐留軍がNHK施設を使って海外放送をしてきたが新行政協定では根拠となる条文がないためあくまで厳正な法解釈を行なう必要がある。従来通りこの海外放送を続けるためには他の方法を講ずる必要があり、今のままでは合法的に駐留軍がNHK施設を使用することは疑義があろう。」、こういうことが新聞に出ているわけです。具体的にはこういう点なんですね。それでNHKに海外放送をさせる場合に、その国内法の根拠というものは一体どこにあるか、これも問題です。それで行政協定で取りきめられている以外において、駐留軍の行動実施を規定するために合意書が作られている、これは第二の行政協定みたいなものですね、陰の、かくれた行政協定、いわゆるこれを見ないと。今度は行政協定が新しく発足するわけでしょう、新安保条約……。そして今まで通りにやはりそういうかくれた第二の協定、そういうものが続くのであるかどうか、それが続くとなると、日本の国民の権利につきまして非常な制約があるわけでありますから、それを検討しないと、今度の新安保条約というものは自主性があるということを言われますが、実質において自主性がないのではないか、そういう疑いを持たれるわけです。ですから、われわれはあくまで今申し上げた合意書ですね、これを要求しているのですが、この資料をお出しになられるのか、なられないのか、まずお伺いしてから質問をいたしたいと思うのです。
  429. 小林英三

  430. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般予算委員会理事会で御決定になりましたのを委員長からお話がありまして、さっそく用意をいたしたのが先般お出ししたものでございます。われわれとしては、いま少しく詳しいものを出すように準備はいたしております、これは衆議院安保委員会からの御意見もありますから。それがまだ間に合わないので、実は先般その方を出すつもりでこれは差し控えておったわけでありますが、きのう急いで御要求がございましたから、まだその方は一、二日かかりますから、この方を出したということでございます。ただ先般も申し上げましたように、合同委員会における議事録、あるいは合意書を含む議事録そのものを出すということはできないわけでございますけれども、その御審議に便宜なように、できるだけ趣旨を説明したものを出したい、こういうことで準備いたしておるのであります。
  431. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまお出しになる資料というのは、私が少し時間をかけて御説明いたしましたが、その内容を十分御了解になっていないのではないかと思うのです。それは合意書の中に二つある。行政協定の本文中にはっきりした規定に基づいて、日米間で合意された準則というものと、もう一つは、協定には規定がないけれども、実施上必要な事柄について補足的に合意した準則、そういうものと、二つあるわけです。私が要求しているのは後者なんですよ。どうも外務大臣がお出しになるという資料は前者なんです。それで衆議院安保特別委員会に出されるという資料も、いろいろ説明は加えられるでしょうが、前者の資料をお出しになるということだろうと思うのです。それではわれわれの要求する資料の目的に合致しないのです。資料の内容をいま少し、くどいようですが、御説明申し上げましたが、これから御説明を付して出されるというのはどっちの資料なんですか。それをはっきりさしていただきたい。
  432. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の木村委員お話のありました行政協定にはっきり書いてあるものの合意書ばかりでなく、書いてないけれども、合意している、今問題になっております、たとえば電波の関係でありますね、それについては、これにも書いてあるのであります。郵政省の第一の「米軍の電気通信施設使用」というところで出しているわけなんでございます。ですから、説明書をつければわかるのであります。
  433. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村さん、一つ質疑を……。
  434. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは簡単に一つ。それはいつごろ出していただけますか。それで今、私が申し上げた後者をやはり含んでいるわけですね。含んでいるかどうかということと、大体いつごろ出していただけるか。
  435. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の、後者を含んでおりまして、きょう出しましたものの中にも、標題として、事項としては後者は含まれております。それから総括質問までには必ずお出しいたします。
  436. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ委員長、この合意書に関する質問は他日に保留します、この分につきましては。で、質問に入りたいと思います。
  437. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、合意書に関する事項につきましては、木村委員がはたして御満足なものがいくかどうかは私は責任持ちませんが、これは理事会に御報告申し上げた通りでございますからどうか御質問を願います。
  438. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は最初に、先ほど平林委員質問されました、フィリピンのマリキナ多目的ダム建設計画に関連して、日本の輸出入銀行が三千五百五十万ドルの融資をしたことにつきまして、日本の商社、国際技術協力開発株式会社に対して三十五万ドルのいわゆるフィナンシャル・フィーというものを与えた、そういうことがフィリピンの議会で大へん問題になっておるのです。それで三月三日のマニラ・タイムスによりますと、フィリピン上院は、マリキナ計画の資金調達に関して、マリキナ多目的計画協力委員会が行なった方策に、強い反対を表明しておる。マリキナ多目的計画協力委員会の一員であり、国家電力会社の総支配人であるフィレモン・サプラン氏は、ブルー・リボン委員会委員たちの質問に対して答えて、有力なる日本の会社に対し日本輸出入銀行からの三千五百万ドルの借款獲得援助の謝礼として、三十五万ドルを支払ってきたことを認めた。さらに同氏は、同社は計画の達成と関連して、フィリピン政府から三十五万ドルをさらに受け取るはずであると述べておる。そうしてフィリピンの議会では、そういう借款はフィリピンの大使なり、あるいは在日のフィリピンの賠償ミッションとの間で話をすべきであり、第三者であるそういう会社に頼んで、そうしてフィナンシャル・フィーという手数料あるいは謝礼みたいなものを支払うことは不当である、こういう論議がされておるわけです。それで輸出入銀行は政府関係機関であります。その銀行に対して日本の商社が資金のあっせんをして、そうして三十五万ドル謝礼をもらうということは、これは私は問題があると思うのです。まずこの点大蔵大臣、どういうふうにお考えですか。
  439. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどもちょっと簡単にお答えしたわけでございますが、この三十五万ドルのうちの三十四万ドルは設計料のようでございます。その、今のフィナンシャル・フィー一万ドルというものが問題になるようでございます。三十五万ドルは、フィナンシャル・フィー一万ドルと三十四万ドルの設計料と合わして三十五万ドル、こういうことになるのです。ところでこういうものが今度は賠償から支払われる、そういうような認証を必要とするものかどうかということは一つの問題であります。輸出入銀行自身は御承知のようにこれは政府機関でございますし、特別にこういう技術協力会社が融資あっせんをするまでもなく、延べ払いとしてのプロジェクトがきまれば、いわゆるコマーシャル・ベースに乗るならば当然するものでございますので、あえて融資あっせんを必要としないもの、かように私ども考えております。しかし外国商社の場合、外国の技術設計をいたしております場合においては、多く技術設計もしますが同時に融資あっせんもする、こういうことが慣例のようでございます。そういう意味で、おそらくフィリピンの方は、ただいま申すように設計料を合わしてフィナンシャル・フィーというものを出した、かように考えます。この問題は、ただいま申し上げるような金額が、日本政府の場合から見ますと、賠償としてそういう金が払われるかどうかということが実は問題になるのだと思います。ところで先ほど事務当局が説明いたしますように、これらの金は政府が承認しない限り賠償としては要求しない、こういう条件がついておるようでございますので、別に違法なりあるいはいわゆる間違ったという状況にまで発展しておらない、かように私考えております。
  440. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この国際技術協力開発株式会社は八田嘉明氏が社長であるようでありますが、この会社がこのコンサルティングの賠償契約をやる場合に、大蔵省としては認証を与える場合に、この会社がこの資金調達に関する助言を行なうという条項がその契約にあったと、それではまだマリキナの資金供与が未決定の段階にあった当時に、大蔵省としてはあたかも本工事の賞金供与を約束するような項目を認めることができない、そこでつっぱねた、そこで国際技術協力会社の言質をとって、そういう資金の調達に関するあっせん行為はしないと、そういう言質をとって認証を与えたと伝えられておるのですが、この点はいかがですか。
  441. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あるいは事務当局から説明さした方がはっきりするかと思いますが、問題は三十五万ドルが二つあるようでございます。話が少しこんがらがっておりますから明確に申し上げますと、国際技術協力開発会社が、これが三十二年九月、このフィリピンの賠償使節団との間にコンサルティングの賠償契約をいたしておりまして、この契約に基づいての調査設計費として一億二千五百万ドルが賠償によって支払われております。これはただいま申し上げるような調査設計の費用でございます。しかしながら御質問の融資中介手数料というものにつきましては、将来融資獲得に成功した際に、その金額を契約の当事者間で決定する旨が契約にきめられているのでありまして、まだこれは具体的に金額が決定しておりません。従いまして支払いはまだ行なわれておらない、こういうことであります。だから問題は二つあるわけでありまして、それがいずれも三十五万ドル程度でございますから、話がこんがらかっておるようですが、正確にただいまのように御説明申し上げます。
  442. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このマニラ・タイムスの三月七日の新聞によりますと、こういうことが伝えられているのですね。日本においては石橋派の有力な議員である宇都宮徳馬氏が、この賠償に関するいろいろな疑問を究明するために他会派との協力を要請している。そうしてこれは日本経済新聞にこういうことが書かれている。輸出入銀行がこの融資をしたのちにおいて、日本の業者から、契約者から、━━業者ですな、業者から多額のわいろをフィリピンの政府の役人がもらった。その点についてフィリピンの議会で今究明中であるということが、このマニラ・タイムスの三月七日に出ているのですね。この融資もきまったのちなんです。今大蔵大臣はその前と言いますが、フィリピンの議会、ことにこのブルー・リボン委員会というのですか、そこで究明しているこの内容を見ますると、この融資がきまったので、そのお礼としてこの向うの原語ではプロマイズド・ヘルプと言っておりますが、その融資についての援助に対する謝礼として三十五万ドルもらっている。こういうのです。ですから今大蔵大臣お話と少し違うのですね。ですから輸出入銀行の援助は成功した。そこでそれを払っているということになっているのです。それで第一そういう一応この賠償としてコンサルティングの賠償契約を認めたが、その後フィリッピンではマリキナ・ダムの建設につきましてはフィリッピンの現地通貨と外資が必要なんであるが、外資については賠償に求めようとしたわけです、最初の計画は。賠償に求めようとしたところが、その後賠償のワクが少なくなってきたのですね、船を買ったりなんかしまして。そこで融資に求めた。融資に求めるにつきましては岸総理が、これは三十二年十二月第一次の東南アジア諸国を歴訪した際フィリッピンに立ちよって、そのときに小沢久太郎氏一行が加わって、そしてフィリピンに対してマリキナ計画日本が協力するという約束をして、その後共同声明になっているのですね。そういういきさつがあるのですね。そこで賠償を担保として融資することは違法ではないかという議論が出てきて、大蔵省では反対したはずです。それからまた法制局は賠償を担保とするダイレクト・ローンは法的に疑義がある。だから実施困難であるということになって打ち切りになったと聞いている。ところがその後岸首相の指示によって賠償担保の延べ払い方式による借款という、実に回りくどい方式をとるに至った。こうなっているのですね。この間の事情は、最初賠償でやろうと思ったけれども賠償のワクがなくなった。それで融資ということになった。それはさっきも平林委員質問しましたが、実質的には賠償の先払いということになるわけです。そこで、非常に私はその点でも疑義があると思うのです。この点いかがですか。
  443. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十五万ドルの方はよろしいのでございますね。
  444. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、これからまた質問しますがね。それは御答弁願ってけっこうです。
  445. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それで、このマリキナ並びに電電のコミュニケーションの整理、この二つをフィリピンとしては非常にやりたいということであります。また、当方といたしましても適当なクレジットだと、かように考えるわけであります。ところが、なかなか今言われるようにいわゆるコマーシャル・ベースの延べ払いということになりますと、支払いに相当困難が予想されるということでありますので、このマリキナ・ダムの建設並びに電電の工事等についてフィリピンといろいろ折衝いたしました結果、当初はこの二つはフィリピンもぜひやりたいから、ことにマリキナ・ダム建設政府機関がやっているのだから政府自身が保証する、そういうことでどうだろうという話であったのであります。しかしながら、政府の保証と申しましても十分でないとかように考えて、これを一体どうしたらいいかということでいろいろ折衝し、この支払い条件等についても、期間等につきましても向こう側からいろいろ要望が出て、まず三年間据え置き四年目から支払っていく、そうしてその支払いも七年間で支払っていく。計十年になりますが、そういうことでこの延べ払い契約が一応できたわけであります。で、従いまして、延べ払いの場合は当然のことですが、国内の業者に対しましては、ただいま申しますように輸出入銀行が融資をいたしますが、同時にその輸出入銀行が融資をした分については適当な金利をつけまして、そうして順次あとの支払いは年賦償還をして参るわけであります。で、ただいまのところこのフィリピンの場合も、この支払方法については政府が保証すると言っているが、政府の保証だけで十分にできなければ、日本は賠償を支払うことになっておるから、そういう場合には賠償の金額の方を減らしても、こちらの方を先に支払っていくと、こういう契約でございますから、いわゆる延べ払いの支払については非常な保証のある延べ払い方式をとっておるということでありますし、また、現実には賠償金額が先に支払われるわけではございません。したがって繰り上げての支払い、利子が損するというものではないということであります。これは普通の場合も、普通七年なら七年の延べ払いということをいたしますれば、船の延べ払いで輸出をいたします場合には、そのうちから頭金は二割なら二割というものを現金で支払いをし、残りの八割分について輸出入銀行が一緒になって金融をつけて、そうして買い主である外国の商社はそれを年賦で払っていく、その場合には適当な金利をつけておるわけであります。ちょうどそれと同じことをこのマリキナ・ダムでもいたしておるわけでありまして、その支払方法について賠償を担保にしておるという意味で非常に支払いは確実だ、こういう意味のものでございます。ですからやはり事態について事実をはっきり申し上げますと、御理解がいただけるのじゃないか、かように考えております。
  446. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はその点どうしてもまだ納得はできません。これは、実質的には外貨でございますから、そういうものを先に提供することになるのであって、まあ最初は賠償担保のダイレクト・ローンはこれは違法ではないかということから、そういう延べ払いという便法を考えたと思うんですけれども、やはり基本的精神については私は違法の疑いは十分ある。これは法制局の意見も聞きたいのでありますが。  それからもう一つは、輸出入銀行の融資のあっせんをしてそれに対してフィナンシャル・フィーをもらうということは、これは問題じゃないかと思うのですよ。それでさっきも私が御質問したように、この会社はそういうあっせんをしないと、そういうことで最初のコンサルタントの認証を与えたということになっているのに、あっせんをして、そうしてこのフィナンシャル・フィーをもらうということは問題じゃないか。それでは、ほかの人が今度は政府関係機関にいろいろ融資をあっせんして、そのコミッションをもらう、そうしてこの技術協力会社が自民党に献金するとか、あるいはまた、だれか関連してこの資金援助をもらうということになれば、また政治献金の方も調べてみなければなりませんが、この会社が政治献金をしているかどうかを、そこに非常に不明朗なものを感ずるのですね。政府機関を利用して、そうして金融のあっせんをしてコミッションをもらう、そういうことは許されるものかどうか、普通の会社がですよ。
  447. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もとの契約自身について、いわゆるファイナンシャル・フィーといいますか、やや成功報酬的な契約はあるようでございます。しかしながらまだ日本政府自身といたしましては、それをはっきり承認をいたしてはおりません。しかし、この会社自身が融資の計画等を立てる、いろいろの調査その他もいたしたに違いないと思いますから、そういうものは純設計ではなしに、その資金契約をやるとか、そういう実費そのものをもらうことは、これは差しつかえないだろうと思います。いわゆるコミッション・フィーというものをとることについては、私どもも多分に疑問を持ちます。従ってこれが正式に認証という段階になって参りますれば、当然私どもも十分内容を精査いたしまして、処理をいかにするか、そのとき、きめるべきことだと、かように考えております。ただいままで言われておりますものは、この技術協力会社に対して現実に支払われたものは、技術設計料一億二千五百万円、その他の成功報酬については、一応の計画はございますが、これまだ具体化しておらない、そういうように御理解をいただきたいのであります。事実その通りでございますから、将来それを具体化して参りました場合に、十分検討して参りたいと思います。
  448. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ輸出入銀行の融資はまだきまっていないのですね。
  449. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだはっきりきまっておりません。
  450. 平林剛

    ○平林剛君 ちょっと関連。先ほど私はこの問題についてどうも疑問があると申し上げたのでありますけれども、賠償の原則から見てもおかしいのじゃないか。賠償は実物賠償、こういう形をとっているのに、これは実質的には金銭賠償という形になるのじゃないか。たとえばマリキナ・ダムの計画については、初めは経済協力という形で実施をしておいて、あとで賠償の引き当てをする、こういうことになるわけですね。だから、当然対象となる役務だとか、あるいはダム建設に必要な生産物は、すでに経済協力という形でフィリピンに提供されてしまっているわけですね。あとで賠償にするということになれば、これは私は金銭賠償と同じような性格になってきてしまうのじゃないかという疑問を感ずるのです。こういう点にも大へん今度の取り扱いは疑問があるように思うのですが、いかがですか。
  451. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階は、先ほど来申し上げておりますように、賠償を担保にしているということであります。まだ実施いたしているわけじゃございません。フィリピン政府自身といたしますれば、おそらく自分の方では賠償を担保にされて、そうして賠償物資が減ることは好まないことだと思います。だからそういう意味では、この賠償担保ということについては相当難色を示したわけであります。しかし私どもの方としては、マリキナ・ダムの建設をする、あるいは電電の工事を遂行するといたしましては、そういう場合には十分担保力のあるものをとりたいということでございます。そういう意味で賠償を担保にするということにいたしたわけであります。  で、この賠償を担保にいたしたものでありますが、先ほど申し上げますように、三年据置、その後七年間に均等で支払うことになりますが、そういたしますと、一年に五百十万ドル程度がマリキナ・ダム、それからまた片一方のものが百八十万ドルという程度になりますので、これは今から賠償をその方へ割り当てた、こういうものでは私はないのであります。その点何か賠償担保という言葉を使っておりますので、またすでにもう賠償の方にそれだけの減額をしておるようだと、御指摘になりますように、それは金銭賠償じゃないかというお話があると思いますが、フィリピン政府自身も、この賠償そのものの計画変更することを賛成しておるわけではありません。ただ、この工事を遂行するためには、相当の大きな工事でありますし、また長期にわたる事柄でございますから、日本政府としては十分信用のできる担保を要求したということで、賠償を担保にしたという筋でございます。
  452. 平林剛

    ○平林剛君 もう一度……。
  453. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  454. 平林剛

    ○平林剛君 関連ですから深くお尋ねいたしませんけれども、後に私もこの疑問は解明していきたいと思いますから、一つだけお尋ねしておきます。  昨年の九月、フィリピンのマリキナ委員会の技術団が日本にたずねて参りまして……。
  455. 小林英三

    委員長小林英三君) それは関連じゃないですよ。
  456. 平林剛

    ○平林剛君 一カ月ほど滞日したのです。そこで実施の具体的な……。
  457. 小林英三

    委員長小林英三君) 平林君、それは関連じゃありませんよ。あなたの御発言は関連じゃありませんよ。
  458. 平林剛

    ○平林剛君 発言中。
  459. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連じゃないですよ。木村君の質問に対して関連じゃなくて、平林君、あなたの言うことは……。
  460. 平林剛

    ○平林剛君 発言中。
  461. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたのは自分の意見じゃありませんか。
  462. 平林剛

    ○平林剛君 いや、質問するのです、関連質問ですよ。
  463. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連質問じゃないですよ。
  464. 平林剛

    ○平林剛君 関連質問
  465. 小林英三

    委員長小林英三君) それは関連質問じゃありませんよ。(「関連しているよ」と呼ぶ者あり)
  466. 平林剛

    ○平林剛君 聞いてなさい、関連質問だ。そのときに日本側はその人たちと会ったはずですけれども、だれが会ったか、それからその中に国際技術協力開発会社も一緒に立ち会ったのかどうか、私はその点を聞きたいのです。関連でしょう、委員長、この点。
  467. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連じゃない。(笑声)
  468. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはいつどういうことがあったか、私は存じ上げません。ことに昨年の九月、向こうからの使節団が来たという事柄も私の記憶に残っておりません。どういうような民間との会合を持ったか、そういうことは私は知りません。
  469. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど大蔵大臣は、まだ金融はきまっていない、ですから、そういうコミッションは支払われていないと言いますが、フィリピンの新聞でははっきり過去のものになっている、はっきり支払われていると、こうなっております。このリボン委員会質問に答えてフィレモン・サプランという人は、日本の有力会社が三十五万ドル支払われている、はっきり過去になっている、それが輸出入銀行の融資に対してとなっている。もしこの融資がきまっていないということになれば、これは重大な問題になってくると思う。向こうでもマリキナ多目的ダムの開発の重要な資金源としているのでありますから、その資金がなくて弱っておった、技術と資金がなくて。それをまだ日本政府がきまっていないということになると、これは重大な問題になってくると思います。
  470. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申し上げました一億二千五百万円、いわゆる技術設計料、これは支払われております。これはもうはっきしております。しかしマリキナ・ダム全体についての資金は、今まだ入札をやったか、やらなかったかぐらいのところでございまして、まだ支払いはさまっておりません。これは間違いないのです。フィリピンの新聞も間違いの記事がないわけでもないのでしょうが、そういう状態でございます。だから、こちらで金融をいたしますものは、輸出入銀行でございますから、これは非常にはっきりいたしておりますし、今の関係事務当局も、絶対に輸出入銀行からは金が出ていない、かように申しております。ただ問題は、技術設計料の一億二千五百万円というものはこれはもう支払われている、これははっきりしております。
  471. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは金が現実に出ているか出ておらないかということじゃないのです。もう融資をすることを約束するということに対するフィナンシャル・フィーということになっている。フィリピンの新聞だって、それは誤まりを犯すこともあるかもしれませんが、日本新聞には一つも出ないんです、こういうことが。それで、こういう問題はどんどん明らかになってきますと、こういう非常に不明朗な問題、それから日本の業者がフィリピンの官吏に多額のプライブを贈った、わいろを贈ったということが報道されておる。そういうことになると、日比の関係にも友好関係にも非常な悪い影響を及ぼすと思います。政府はそういう実態について調べたことがあるかどうか。
  472. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本新聞が非常に正確で、まだ出ていないものを出たとは報道しておらない、これははっきりしております。ただ誤解があると困りますが、このマリキナ・ダム建設あるいは電電のこの長期計画というものは、フィリピンと日本政府の間でこれは話し合いができておりますから、その点はこれは明確にいたしておきますが、まだ金が現実には出ていない。これから入札をきめるのですから、入札のきまらない前からその金を払うわけはございません。また、その点は日本新聞が報道しないのが当然であります。  それからただいま言われます日本の役人が、フィリピンの役人に贈わいをした、こういうことは、私ども想像もつかないのであります。一体日本の役人がそういうことをするわけはないのでありますから、同時に、一体どこからそんな金が出てくるかということもございます。これは全然虚報と申す以外にはないし、それは非常に事実をしいるものだと、かように私は思います。
  473. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その業者がフィリピンの役人にわいろを贈っているというのですよ。日本の業者がですよ。そういうことが問題になっている。これは日本新聞に出ないのは、いろいろな理由があるのですが、時間がないから言いませんが、特派員がいないのですよ、そういう事情がある。今フィリピンの新聞には毎日こんなに出ているのですよ、毎日々々出ておりますよ。マニラ・タイムスにこんなに大きく問題になっているのですよ。それでは無関心でいられないでしょう。日比の関係についてですよ。
  474. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど外務大臣からお答えいたしましたように、この工事を遂行する場合に、日本の業者、これは政府で推薦をしたわけです。有力な業者を推薦をした。同時にそれは日本の業者だけでは困るということで、フィリピンの方は、フィリピンの業者とこれを結びつけて幾つもの組を作っている。ところが、当方から参りましたのが三社でありますので、フィリピンの方では、その組に入らない業者ができたということをいわれております。そこでいろいろのうわさを生んでいるというような話は聞いておりますが、私は、ただいまマニラの新聞で伝えられていることを、一々その当否を論ずるだけの材料を持っておりませんので、日本を代表してこの工事請負に入札に参加しております日本の業者の諸君も、日本の業者の名誉のためにも、さような不都合なことはしないものだと、こう確信をいたしております。
  475. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この入札の前に、この資格審査の申請がなされなければなりませんが、その締め切りですね、これはどうなっておるか。
  476. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 資格審査の締め切りは、何回も延びましたけれども、三月二十二日ですか、資格審査を締め切りまして、それで従来出ておりました一つがシンジケートを作りまして一組、それからあとの二人の日本の業者、それからフィリピンのそれに対応する業者と組んだものが、いわゆる資格審査というものに一応受け付けられたわけです。受け付けられて、その後向うが、たぶん四月の末になると思うのですが、ビッドするかしないかということをきめる段階でございます。
  477. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨年の十一月の十二日、まずですね、いわゆる資格審査ですか、プレクォリフィケーションというのですか、それ以来ずっと延期、延期されまして、本年三月二十二日になったのです。この請負については非常に混乱を招いておりまして、業界でもずいぶん問題になっておるのです。そしてフィリピン側の新聞によりますと、どうも日本の業者が談合して、それでフィリピンの契約を独占するんじゃないか、こういうことが批判にあるのですね。非常に向こうでもこれを問題にしております。それで、こういうふうにマリキナ多目的ダム計画に関する日本経済協力が非常に混乱してきた一番のもとの原因は、賠償担保の融資と、それを延べ払い方式にやるというところに端を発しているというふうにいわれておるのです。それで、私は今後まだまだいろいろ問題があろうと思う。マニラ市長ですか、マニラ市長は新しい問題を提起しているのです。フランスで今マリキナ・ダムみたいな非常に高いアーチの、ああいう設計は、フランスで決壊した例があるのです。そこでこれを中止すべきであるという議論も出ております。非常にいろいろ混乱があるのです。それで、さらにまたそれをめぐっていろいろ不明朗な問題も感じられるのです。  私はまだ一つ防衛庁に重要な質問がありますので、やがてこれは自民党内でもおそらく宇都宮徳馬氏あたりがこれを取り上げまして、新聞にそう出ておりますから、追及されると思うのです。私も、さっき平林委員の御質問もありましたので、多少調べておりましたから質問したのでありますが、今後さらにですよ、さらに私は徹底的にこれを調べまして、そうしてもし日本の輸出入銀行という政府関係機関が融資をあっせんして、業者がその手数料をもらうというようなことがあれば、さっき大蔵大臣が問題だと言われましたから、それは問題にしなければならぬと思う。あるいは輸出入銀行が約束したということだけで、すでに金が支払われて、そうしてそれがどこかにばらかれているというような疑いも抱かれないわけでもないのですが、そういう点はこれからわれわれ徹底的に調査しまして御質問申し上げたいと思う、この点は。その点について大蔵大臣の御所見ありましたら承っておきたいと思う。
  478. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申し上げるような経過をたどっておりますし、近く入札━━ヒットが行なわれるだろうと思いますし、それが行なわれ、そうして支払いが出てくるというような場合に、これはもういろいろ事前からうわさをされておることでありますだけに、十分適正な、公正な処置をとるように、一そうこの上とも注意をいたします。
  479. 平林剛

    ○平林剛君 ちょっと関連。さっき大蔵大臣が私の質問に対して、それは知らないと、こう言われたわけです。しかし、昨年フィリピンとの間にマリキナ・ダムとか、あるいは電信、電気計画について行政取りきめをやったのが、昨年の九月七日でしょう。ですから、知らないということはない。そのときに向こう側と会った日本の人たちは一体だれかということをやっぱり明らかにしてもらいたい。知らないじゃ済まないですよ。行政取りきめをやったのが九月七日でしょう。だから外務省とよく打ち合せをして、知らないということだけでは済まないです。だれかということを私は聞いておる。
  480. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大蔵大臣としては知らなかったのでございますが、外務省の方で関係賠償部長から説明をいたします。
  481. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは昨年九月ですか、交換公文が日本政府とフィリピンのミッション・ラマーサが大統領の委任を受けて調印したのでございますが、それから、この実施のいろいろな打ち合わせを、一体どういうふうに実施していっていいかというような打ち合わせをするということは、交換公文のサイド・レターの中にも書いてあります。それに基づきましてサフランですか、向こうのマリキナ・コミッティの委員長の人が来まして、日本政府の事務当局との間にも、どうしたらいいだろう、ビッドの方式は、どういうふうにしたらいいだろう、それからまた、プレクオリフィケーションとか、その他推薦とか、そういうようなことについて事務的なお話はいたしました。しかし、その事務的な話をしたうちに、われわれが会っている中に、外務省としましては、各省を呼びまして、それからサフランと会ったうちに、ハッタ外相を入れまして協議をしたという事実はございません。しかし、サフランが滞日中は、これはハッタ外相は、コンサルタントでございまして、フィリピンの本工事に関しては、いろいろなアドバイスを出す地位にはございますから、それは会ったことがあるかないかということは、何とも言えないと思います。おそらく会ったのじゃないかと思われます。
  482. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛庁長官にお伺いしますが、第二次防衛計画は、本年一月ごろでき上がるというふうに伝えられておりまして、それで、国防会議にかけられる予定だと言われておりましたが、それが、どうしておくれましたか。その事情について伺いたい。
  483. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、昨年から第二次計画検討いたしております。一月ころに、第二次計画を国防会議にかけたいと思って進めておりました。一方、三十五年度を末期とした第一次計画に関連する予算の審議をお願いしておることに相なっております。  そういう関係で、この予算が済んでからの方が適当じゃないか、こう考えておるのと、まだ防衛庁内の第二次計画が、国防会議に提案するまでの成案になっておりません。そういう二つの事情からおくれております。
  484. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、いつごろ成案を得て、国防会議に諮られる予定でございますか。
  485. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 国防会議にかける前に、関係の各省ともいろいろ打ち合わせする前提がございます。私の方の考え方としては、五、六月ごろにいたしたい、こう考えております。
  486. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この安保条約批准のあとだと思うのです。刺激してはいけないというので、延びておるのじゃないかと私は邪推をしておるのです。  次に伺いたいのですが、第一次防衛計画と第二次防衛計画のつながり、関連ですね、第一次防衛計画が済んで、それからすぐ第二次防衛計画に、きちんといくわけじゃない、その関連性ですね、どういうふうに関連性を持っておるか。
  487. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十五年度を終期とする第一次計画でございます。けれども、艦船、飛行機等におきましては、一応三十七年度までに計画が完成するという、第一次計画の目標を達成するには、三十七年というようなことに相なっております。  第一次計画と第二次計画との関連でございますが、第一次計画の中で、第二次計画に延期するものでございます。それから変更するものもあると思います。それからもう一つは、それが発展するといいますか、こういう関係のものもございます。そういう関連におきまして、第一次計画と第二次計画とのつながりを持っておるものがあるわけでございます。
  488. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、前に、だれかの委員の御質問に対して、三十五年度予算にも、第二次防衛計画の芽が出ている。芽と言っていいかどうか、そういうものも、まあ三十五年度予算に含まれているわけですね。そういうものが、全体としての第二次防衛計画というものの基本的な構想というものがなければ、そういう芽もその一環でありますから、出しようもないわけですね。ただ行き当たりばったりで出すわけじゃありません。全体の計画に基づいて、その一環として出されるのですから、そうしますと、全体のやはり構想というものは、おできになっているんじゃないかと思うんですね。その点、承りたい。
  489. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 全体の構想といたしましては、まあ三十二年の六月の防衛力整備目標というものの中に、内外情勢の推移等に伴って順次再検討するというようなこと、特に科学技術の進歩に即応して新式兵器の研究、開発の促進並びに編成及び装備の刷新をはかって防衛の質的充実をはかること、こういうことがあります。  そこで、大きな筋といたしましては、装備、兵器の近代化をはかるということ、それからまた財政的の面から見まして、その兵器等の効率化をはかるというような目標、それから新式兵器等については研究、開発、こういうことが第一次計画では主でありますけれども、その中には、それとそれの発展としまして、編成とか、装備の刷新をはかる、こういうようなことで第二次計画の中に、当然延びていくものがあると思います。  この間も御説明申し上げましたが、三十六年度以降に延長すると言いますか、尾を引くと言いますか、御承知のF104Jの国産、こういうものもありまするし、あるいはナイキ、アジャックスの訓練部隊四十五名をアメリカへ派遣する、こういうものも、三十五年度の予算に入っております。こういうのも第二次計画の中へ延びていくわけであります。あるいはターターの購入、こういうものが延びていくわけでございます。
  490. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうもそれでは全体の第二次防衛計画の性格、方向というものがよくわからないのですが、今までの各委員質問から大体うかがえることは、第二次防衛計画の性格として、空軍についてはロッキードですね、空軍についてはロッキード。それにサイドワインダーですか、そういうものを整備する。それから海軍については、潜水艦に対応する装備、それから陸軍については、北海道における原子力砲部隊というのですか、原子力砲部隊、そういうものに大体想像されるのです。そういうふうに第二次防衛計画の陸海空の織り込まれる性格、特徴というものは、そういうふうに集中的に見てよろしいのかどうか。それとアメリカ極東戦略の変化と第二次防衛計画との関係は、どういうふうになるか。アメリカ極東戦略は変わってきているはずですね。御承知だと思うんですね。もうすでに、前に昭和三十二年七月一日に極東軍司令部が廃止されまして、それで在日米軍が撤退をしている。これは、ハワイへ移っている。そこに大きなアメリカの戦略の転換があるわけです。そういうものに対応して、おのずから日本の自衛隊の装備なり、編成なり、そういうものが変わってこなければならないはずだと思うんです。  そこでアメリカの戦略の変化と、それから第一次防衛計画との関連、それと今度の新しい安保条約との関連ですけれども、その点について伺います。
  491. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 第二次計画の特徴というようなものを申し上げれば、今御指摘のようなことだと思います。ただ陸の方において、対核のペントミックというような考えではございません。北海道の部隊も、そういうことではございませんが、大体御指摘のようなものが特徴だと思います。  それからアメリカ極東の戦略との変化に対応する関係がどうかと、こういうことでありますが、この点は、やはりアメリカ極東戦略というのですか、それが発動されるというようなことになれば、私は、これは世界大戦というようなことに発展するおそれが非常に多いのではないかと思います。やはり日本の防衛態勢といたしましては、局地的な紛争、局地戦の抑制力、こういうような形で防衛力を整備していく、また世界的にも、ソ連とかアメリカとかいうような大きな大国は別といたしまして、また核を持っている国は別といたしまして、全体的に、通常兵器と申しますか、核でない通常兵器によって局地戦に対応し、戦争の抑制力として機能をしていくというようなことに変わってきているのが現状だと思います。そういう点におきましてアメリカ極東戦略というものが世界大戦に対応するような戦略に私は移っていく可能性が非常に多いと思いますので、そういうのに対して、日本が直接この世界大戦にいくようなものの中における関連というものは、非常に薄いと思います。ただアメリカ極東軍といたしましても、局地戦といいますか、地域的なものに対処する戦略というものも持っておるわけであります。そういう点につきましては日本も局地戦に対応するというような形で、日本の自衛隊の装備、訓練というものをやっていくということに相なるわけであります。  それから第三の安全保障条約との関係はどうかということでございますけれども、これは安全保障条約によって、たとえば安保条約の第三条でありますが、日本の自衛力の維持発展ということをうたっておりますが、これはやはり条約でありますから、維持発展を私は約束しているというふうに考えます。しかし、具体的に、どれだけの範囲に、どういうものを装備していくかということについては、この安全保障条約によって、強制されるとか、そういう具体的な義務というようなものは、日本もしょっておりませんし、アメリカも、そういうことを強制するというような関係には相なっておらないと思います。第五条等によって、共同の危険に対処すると、こういうようなことに相なっておりまするので、これは、もちろんそういう対応態勢をとらなければなりませんけれども日本の憲法の建前その他によって、指揮系統等は、これは別個の系統になる、こういうふうに考えております。でありますので、今度の安全保障条約によって、特に日本の自衛隊あるいは防衛力というものに、特段の変化をしいられるとか、具体的に約束する、こういう形はないと思います。
  492. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君時間がなくなりました。
  493. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単にやりますから……。私はこう考えるのですが、それは間違いかどうか。日本の自衛隊の防衛の意義というのは、アメリカがいわゆる極東戦略としていわゆる周辺作戦とかいわれたものをとっている。そしてその場合、日本アメリカの戦略の中心になっている、日本自身が。従ってかりに米ソ戦が起こった場合には、アメリカはこのアメリカの中心基地としての日本を守る。従って日本の自衛隊のいわゆる戦力ですか、防衛力というものは非常に小さくても差しつかえないわけですね。アメリカアメリカの基地としての日本を守る、それが中心であったわけです。ところが、その後アメリカ戦略の変化があって、そうして、アメリカはハワイの方へ中心が移って、日本は前衛的な防衛の役割をするようになる。そうなると今度は日本自身で日本を守らなければならぬという負担がふえてくる。そういうことが第二次防衛計画に反映され、さっきお話がありましたように、ミサイル化とか、それから潜水艦の作戦とか、そういうものに反映されてくる、第二次防衛計画はですね。それがまた予算に反映してくる。そうなると、アメリカ極東戦略の変化によって、日本日本みずからを守る負担というものは、第一次防衛計画のときよりは第二次防衛計画において大きくなる。それと、今までの安保条約は、アメリカ日本を中心とする極東戦略に対応したものだが、今度は第二次防衛計画というのは、また新しい安保条約が今度アメリカの作戦中心がハワイの方へ移動して、日本がいわゆる前衛部隊ですね、そういう性格になるのに対応して新しい安保条約が結ばれ、そうしてそれに即応するために第二次防衛計画というものが出てくる、こういう関係になるのではないかと思うわけですが、時間がございませんから、そういう点、そういうふうに私は第一次防衛計画と現在の安保条約アメリカ極東戦略とを結びつけ、それから第二次防衛計画アメリカの極「東戦略の変化と、それから新しい安保条約というものを結びつけて解釈しているのですが、これについて防衛長官はどうお考えか。私は戦略というものに対してしろうとでございますから、しかし、日本のこの防衛費なりを検討する場合、どうしてもアメリカの戦略というものを一通り勉強しなければならないのです。そこで、われわれ軍事専門家や何かの国会における公述その他をいろいろ聞きまして、参考にしてそういう結論を得たのですけれども、それに対する御所見を承りたい。  それから、もう時間がございませんから、合わせて二つ質問をしておくのですが、これは防衛庁長官と大蔵大臣に伺いたいのです。それは、今後の防衛費の見通しでありますが、それは今度国庫債務負担行為、これに約九百億以上計上しておりますが、それだけでは済まないのではないか。もっと非常にふえてくるのじゃないかという点です。そこでその具体的例として、たとえばF104CをF104Gに開発するためのわが国の予算は約五百八十七万ドル、約二十一億円と計上されておるけれども、この開発費というものは、これは非常に未確定な前提になっておるので、今後こういうものはふえてくるのではないかという点ですね。開発費というもの、これはどういうものか、これを御説明願いたいのですが、これはコストとして一体計算できるものかどうか。それで赤城長官は、これは伝えられるところによると、ロッキードに、頭金とロイアルナィを値下げさせようと努力した……。
  494. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君、簡単に願います、もうよほど時間が超過しましたから。
  495. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間がございませんから、質問だけ申し上げますが、そのかわりに、開発費を半分にしてもらった。ところが、その開発費というのは、今後、未確定なんでありますから、ふえてくるんではないかという点が一つ。  それから、ナサールですね。ナサールを、ロッキードをきめるときに、ナサールというものも一緒にロッキード社に注文するということをきめたわけですが、どうして、ロッキードのいろんな装備のうち、ナサールだけをロッキードにきめたか。しかも、それは伝えられるところによると、これは全天候ではない。これを全天候にするためには、さらに非常な費用の増額をもたらすんではないか。ですから、現在計上されている国庫債務負担行為だけではとても足りないんではないか。それから、F104Jを全天候にした場合、滑走路が非常にまた拡張されるんじゃないか。そのために、また非常に費用がかさむんではないか。それから、その次がスペアー・パーツ。スペアー・パーツを一五%と見ているけれども、少な過ぎるんじゃないかという問題ですね。それで、アメリカ空軍の長年の経験から……。
  496. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君、時間が超過しましたから、よほど。
  497. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは三〇%を必要とする……。
  498. 小林英三

    委員長小林英三君) 御中止を願います。
  499. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少しです。もう時間がないから、再質問できませんから、まとめて質問しているわけです。それで、スペアー・パーツ一五%では少ない。三〇%ぐらいかかるんじゃないか。もしそうなると、三〇%じゃなくても、かりに二五%としても、さらに防衛費はふえてくるのではないか。それから最後に、これは事故ですね。アメリカ空軍の発表によれば、空軍当局の発表によりますと、F104の訓練飛行間に……。
  500. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君、時間がよほど超過しましたから、中止を願います。
  501. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 墜落して破壊した飛行機が十七機もある。ところが、赤城防衛庁長官は、前に、事故はあまりないというお話でしたが、この事故が非常にふえる公算が大きいわけですね。そうなりますと、また国庫債務負担行為が非常にふえてくるのじゃないか。ですから、この第二次防衛計画をこれからやっていく場合に、国庫債務負担行為に計上されているよりは、さらに非常に防衛費がかさむのではないかということを、われわれは憂慮するわけです。そこで、最後にこの点をお伺いしたわけであります。まだこの第二次防衛計画の前提条件として、いろいろ伺いたいのでありますが、秘密保護法の問題とか、あるいは海外派兵の問題、志願兵制度の限界の問題等々、あるいはこの米軍との情報の交換等の問題について伺いたいのであります。ありますが、時間がありませんから、そういう点につきましても、第二次防衛計画のこの背景となるいろいろな諸条件につきましても、御答弁していただければ非常に幸いなわけです。  これで私の持ち時間は、非常に超過いたしまして、はなはだ御無礼いたしましたが、これをもって質問を終わります。
  502. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) アメリカ極東戦略の変化に対応して、日本の防衛力整備方面も、あるいは戦略的、戦術的にも変わるのじゃないか、こういうことでございますが、御承知のように、アメリカがハワイの方へ極東軍太平洋司令部等が移りましたのは三十二年でございましたか、岸・アイク声明がありまして、そのときの前後でございます。それで、そのときの声明書にもありますように、日本から戦闘部隊は引く、ことに陸の戦闘部隊を引く、そのかわり日本は、日本で充実していきたい、こういうような声明があったときからでありますので、第一次計画と第二次計画において、大へんな変化はありません、日本としては。ただ、今お話しのように、これは安保条約との関係において、やはり日本日本自体が防衛の責任に当たるといいますか、自衛の意思を持ち、そういう態勢を整えていくということは、これは当然しなければならぬ問題だと思います。先ほどから申し上げました局地的な問題解決という意味におきましてもその他にかんがみても、アメリカがただ守ってやるという前の安全保障条約と違いまして、やはり対等の形ということになれば、日本が主体性を持って、日本の国防は日本が当たるということが、これは中心になってきます。それに対してアメリカが協力する、あるいは援助するというような形でなければならぬ。そういう点におきましては、お話のように、日本の防衛費あるいは第二次計画というものも、ある程度これは増していくという公算はあると思います。ただし、安保条約等によりまして、具体的に日本の防衛力を維持、発展していくについて、どの範囲にするかというような強制、約束はいたしておりませんから、日本自体がどの程度の予算の裏づけをもって防衛力を維持、発展していくかということはきめることだと思います。そういう意味におきましては、やはり国防会議できめた方針である国力、国情に応じてというようなこの基本方針を曲げないで進めていかなければならぬと思います。ですからこの維持、発展のために、防衛費は増加する傾向にあるとは思いますが、おのずから今の方針のもとに制約していかなくてはならぬ、こう考えております。  それから、ただいま予算の審議をお願いしておりまする中の国庫債務負担行為等において、将来非常にふえる可能性を持つものがあるんじゃないか。例をF104Jにおとりになりまして、一つ開発費が今相談している以上にふえやしないかと、こういうことでございますが、これは開発費はF104Cを採用したドイツとか、カナダとか、ベルギーだとか、オランダとかといろいろ共通のものでございます。それで、これから生産していく上において、これがふえる可能性がないかということでありますけれども、これは今約束した以上にふえることは絶対にないといっても差しつかえないと思います。ふえる可能性はございません。  それからナサール等の火器管制装置を、これをロッキードと約束したかどうか、これはノース・アメリカンが開発したもので、ロッキードのものではないのでありますけれども、両方で開発をしたというような格好になっておりまして、これはこちらで生産するというよりも購入するといいますか、援助の中から買うような格好になります。これも初めに約束した以上にふえることはないと私どもは考えております。
  503. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全天候にしてもですか。
  504. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは全天候にするだけの費用を初めから見て、そうしてナサールによって全天候にするということでありますので、これも初めの契約通りにいくと信じております。  それから滑走路でありますが、滑走路はこういう議論もあります、少しばかり改装するので機体が少し重くなります。それで滑走路も八千フィートでは足らぬじゃないかというような疑問もあるようであります。しかし、これは現地においても試験いたしましたし、それから、いろいろ検討を加えまして八千フィートで間に合うということです。ただ、それが長ければ長いほど、これはいいわけであります。しかし、今の国庫債務負担行為の中に延ばすというような費用は含めておりません。直接に延ばせるものがありましたならばこれは延ばした方がいいと私どもは考えております。しかし、これは延ばさないでも間に合うということに相なろうと思います。  それからスペア等の部品一五%だけ含めておるのではないかというのでありますが、これは二〇%含めてあります。労務費、サービス等を除けば実質は二八%になるという計算になっております。これは二〇%あれば十分のようでございます。  それから事故でありますが、これはF104Aの時代、ロッキードの旧型の時代には確かにいろいろ御指摘されたような事故率があったようであります。しかし、これが104Cの方の新型になってからは事故の内容の改良が加えられましたので、事故率は非常に減って参りました。でありますので、私の方から申し上げた事故率が正しいと思います。新しくなったのでは。しかしそれにいたしましても、これはやはり事故率はないということは申し上げられません。やはりある機数は事故によって減っていくかと思います。そういう補充の点につきましては、これから先、考えなくちゃならんことだと思いますが、今そういう点までは考えておりません。
  505. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。いろいろ急がれて、あるいはお尋ねになりたい点が少し問題が多過ぎて少しぼけたかもわかりませんが、大蔵大臣が立ち上ってお答えすることは、今後の防衛費の見通しが主たる問題だろうと思います。先ほど来お話がありましたが、防衛力を持つということ、また増強するということは、それには何といいましても国民の理解と積極的な協力がなければ、どんな部隊を持ちましても、これはむだ金を使ったということになるだろうと思います。そういう点から考えますと、国防の必要なことは必ずわかっておることだと思いますが、予算化いたします場合に、他の必要な事業に対して非常な圧迫を加える、あるいは民生の向上に支障を来たすような予算を計上いたしますならば、必ず国民の支持を失うものだとかように考えております。この意味から、ただいま防衛庁長官が御説明いたしましたように、わが国の防衛力の増強方策といたしましては、国情並びに予算等の国力に相応してこれを漸増するという基本方針を立てております。この方針を堅持して参る考えであります。  ところで、三十六年度以降どういうことになるかと申してみますと、この防衛関係費用のうちで今の施設提供その他のいわゆる援助の関係のものでございますが、これは今後おそらくことし同様の金額、約六十億程度のものが続いていくんじゃないか。まあ特別の事情がない限りです、そういうように考えて参ります。三十六年度以降において債務負担行為やあるいは継続費として支出しておりますもの等が、どういうように今度予算化して参りますか。継続事業のものはそのまま予算に計上されておるのだから、差しつかえございませんが、債務負担行為の部分につきましては、これが一般の圧迫にならないように、これを予算化して参るつもりであります。三十六年度の全貌を申し上げるまだ段階でございませんけれども、この債務負担行為を予算化するものと、あるいはこの三十五年度に支出いたしましたもので、平年度化されていくものがございます。それらのものは約百億程度の金額になるのではないかと思います。いわゆる現在の勢力の維持に必要な増額分が約百億程度ではないかと思います。  さらに新しい増勢計画をいたしますならば、その金額がさらにふえていくということになるのでございます。この点については、いろいろ防衛庁には防衛庁の計画を持っておることだと思いますが、いずれにいたしましても、三十六年度の歳入並びにその他の必要なる歳出とにらみ合わせて適正な規模にこれをとどめていくということに相なるかと思うのでございます。どこまでも基本的方針を貫ぬきまして、民生の向上の圧迫にならないように十分注意して参るつもりであります。そうして国民の理解と支持を得て、りっぱな防衛力・防衛態勢を整備していくということにいたしたいと、かように考えております。
  506. 小林英三

    委員長小林英三君) 以上をもって、昭和三十五年総予算に対する一般質疑は終了いたしました。  なお、本日休憩時の委員長及び理事打合会におきまして協議決定いたしました事項を御報告申し上げます。  一、分科会は明二十三日、二十五日、二十六日、二十八日の四日間行ない、主査報告は分科会最終日の二十八日午後三時より委員会において行なうこと。  二、締めくくりの総括質疑は二十九日、三十日の二日にわたり行なうこととし、討論採決は三十日の総括質疑終了後引き続きこれを行なうこと。  以上でございます。  ただいま御報告いたしましたように委員会を運営することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  507. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十六分散会