○岩間正男君 まああなたは、大統領の要請を唯一の
根拠にされて、ここのところを何とか言いくるめようとされますけれ
ども、これは事実に反しておるし、今までの声明、こういうものに反しておるし、そこだけにこだわらないで……。安保の論議は盛んになって、集団的自衛権が問題になっている。こういう中で刺激すまいと思ってあなたの配慮されておる気持はわからないわけでもない。しかし、そういう格好で国会論議を展開してはまずいと思う。しかもどうです、このアメリカが集団的自衛権をたてにして軍事介入をやった。すなわち侵略をやったのは、このレバノン事件だけじゃないのです。これはほかにやろうとしたことはあります。たとえばこの前問題になりました、あのイーデンの回顧録、これはまだお読みになりませんか。これは翻訳中だという話だったが、これをごらんになれば、どうですか。一九五四年のベトナム内戦のとき、ディンエンビエンフーの陥落が迫った、それに対しましてアメリカはフランスをそそのかし、それから英国を強引に誘い込んで東南アジア諸国を道連れにして共同の介入をやろうとした。そうしてそのときアメリカが掲げたその理由は、国連憲章五十一条の集団的自衛権である。これをはっきり私は文芸春秋で見たのでありますけれ
ども、公文書ではないけれ
ども、はっきりイーデンの回顧録の中に載っております。しかしイーデンがこれに対して、非常に国際的な論争に発展することの危険を
考えて、英国がこれを押える、そういう格好の中で、これはまあ介入まではいかなかった。しかしそのときダレスが背後からこれに対して、この集団的安全保障五十一条の発動をもってこれに臨もうとしたというのも、これは事実です。こういうふうに
考えてくるというと、米国は、自国の利益のためには他国の内政に干渉し、侵略的軍事行動をとるとき常に掲げる大義名分というものは国連憲章五十一条であることは、全くこのように隠れのない事実です。だからこそ、今同じく五十一条の集団的自衛権の名によって、
〔
委員長退席、理事館哲二君着席〕
新しい安保条約を結ぼうとしてあなたは非常に苦心されている。この当のあなた、あるいは岸総理、こういう方に、私は
国民の名によってこの問題を明らかにしておかなければならぬと思うのです。この歴史的事実を見るときに、少なくも米国については、集団的自衛権の名による行動というものは、これは明白だろうと思う。しかし、集団的自衛権の実体は、自衛という名によるごまかしだ。そして内政干渉や侵略的な軍事行動ができるということ。そして、そういうことは歴史的事実の中ではっきりしている。これがアメリカの言う集団的自衛権の
中身であるということ。こういうことを、私はここで明らかにしておきたいと思うんです。あなたは先ほどから、今になって米国を擁護するために、いろいろなきれいな口をきいています。しかし、レバノン事件当時、あなたは、さっきも言ったように、最初米国の行動が間違っていると、こう思ったればこそ、米国の行動に対してこれを非難する声明にあなたは参加したはずなんです。それがどうですか。米国の決議案が出るというと、一夜のうちにころりと変わった。そして、途中で態度を変えて、今度は、条件つきとはいいながら、米国の決議案に賛成した。こういうことを
考えると、私は今、新しい安保条約の改定の締結の中で、実に心配でたまらない。米国の強権によって背後から支配されるというと、いかに正しいと思ってやったにしても、一晩にして変わってしまう。集団的自衛権というものが、今言ったような形で使われてきたならば、実に、日本の安全のためにこれは保障にはならない、こういうふうに私は
考えるんです。こういう点から、やはり私は、はっきりこの問題を明らかにしなきゃならぬと思います。
それで、以上述べたように、国連憲章五十一条の集団的自衛権は、英国がその不当な軍事行動を合理化するための、これは全くイチジクの葉です。(笑声)新安保条約に対して、
政府は今まで、あくまで国連憲章五十一条による防衛的なものであることを宣伝してきましたが、その大前提は、すでにここでくずれてしまった、私はこう
考えざるを得ないんです。これは全く侵略的なものであり、弁解のしょうがないものだ。それだけではないんです。レバノン事件の歴史的事実はさらに次のことを教えています。それは何かというと、日本に軍事基地がある限り、常に直接戦火の危険にさらされているという事実です。岸総理や藤山外相は、日本に基地があっても戦争に巻き込まれる危険はない、もし在日米軍基地に攻撃が加えられた場合、日本は当然その攻撃に対して自衛権をもってそれに対抗する、ということをしばしば言っています。そして、その
根拠としては、米軍は侵略をしないのだから、攻撃する方が常に侵略的なんだ、そのような攻撃は日本の領海、領空を侵すから自衛権を発動するのだ、というようなことを言っています。しかし、ここで私の特に
指摘したいのは、レバノン事件でも明らかなように、米国は集団的自衛権や、当該
政府の要請という名のもとに、国連決定を無視して、他国に対し侵略的軍事行動をとっている。とる危険がいつもあるからです。こういう場合に、相手国やその同盟国が、武力行動をとって米国と戦争状態に入ることは、当然あり得ることです。そういう場合を
考えるときに、交戦状態の発展としまして、当然、在日米軍基地がたたかれることも起こりかねないのです。つまり、アメリカが、このレバノンの場合のように、集団的自衛権の名によって、事実上内政干渉や侵略行動をやって、その国と戦争状態に陥った場合、これは世界のどこでも起こり得ることでありますが、特に極東において、その相手側が、正当な交戦権の発動として、国際法上これは認められることになる。この場合、日本が、岸総理や藤山外相の言うように、武力による侵略行動だとは、これは言えないわけです。従って、自衛権の発動によってこれに対抗することは、国際法上成り立たないことになるわけです。つまり、米国と戦争状態に入った国が、いわば正当な交戦権の行使として、在日米軍基地をたたいた場合、
〔理事館哲二君退席、
委員長着席〕
日本はいわゆる自衛権の名でこれに対抗し、在日米軍基地を守ることは、全く成り立たないのであります。これでは、アメリカの行動によって、日本は在日米軍基地がある限りいつでも戦争に巻き込まれる危険があります。この事実ですね、この事実を一体藤山外相はどう
考えられるか、この事態に対してはっきりした答弁をしてほしいと思う。