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1960-03-07 第34回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月七日(月曜日)    午前十時五十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員佐野廣君、後藤義隆君及び野 坂参三君辞任につき、その補欠として 重政庸徳君、白井勇君及び岩間正男君 を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            北畠 教真君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            辻  政信君            原島 宏治君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    防衛政務次官  小幡 治和君    調達庁長官   丸山  佶君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    厚生政務次官  内藤  隆君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会開会いたします。  委員に変更がございましたから御報告申し上げます。  本日野坂参三君、佐野廣君が辞任せられ、その補欠といたしまして岩間正男君、重政庸徳君が選任せられました。
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 先刻開きました委員長及び理事打合会の経過につきまして、この際御報告申し上げます。  一つ一般質疑は七日間、分科会は四日間、締めくくりの総括質問は二日間とすること。  二つ、一般質疑の時間は一千五分とし、各会派に対する割り当ては自民党及び社会党おのおの三百五十分、他の会派につきましては総括質疑の際と同様とすること。  三、質疑の順位は総括質疑の場合と同様とすること。以上でございます。  ただいま御報告いたしました通り運営することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  5. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。
  6. 鈴木強

    鈴木強君 この際、私は議事進行について政府にただしたいことがありますが、その前段として、まず松田文部大臣お尋ねいたします。あなたは土曜日の日はどこへ行っておりましたか。
  7. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 土曜日はどこへ行ったかというお尋ねでありますが、土曜日は埼玉県長瀞の方へ参りました。当日質問者通告もありましたので、御当人に会って了解を得てかつまた委員長並びに理事の方にもその旨申し出て、その上で参ったような次第であります。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 国会においては大事な三十五年度の予算総括質問段階にあることは御存じだったでしょう。私はその公務出張の場合でももちろん事前十分日程を組んで、どうしてもその日に行かなければならないという重要な問題であれば、あえてそれを行くなとは私は申しません。ただ国会の中では関心の大きい予算審議している段階ですから、多少そこはお差し繰りを願って、少なくとも総括質問段階においては、全閣僚がこの委員会出席をしていただく、こういうのが私は建前だと思うのです。ですから、その点は一つ十分今後注意をしていただきたいと思う。  それから、けさも、もうすでに四十五分間開会がおくれている。定刻に来たのは大蔵大臣だけ。総理大臣が三十二分おくれて来ているし、ほかにも文部大臣も二十分おくれてきている。これは全部記録をとってある。一番おそいのは四十五分おくれてきている。こういう不まじめなことでは、この審議に対して私らは重大決意をしなければならぬ。皆さん衆議院が通って乾杯をして、もう何か予算がやすやすと通るような錯覚を起こしているかもしらないが、少なくともこの国会に提案をされた政府立場からすれば、十分に放送したら少なくとも……、五分か十分くらいおくれることはこれはあるとしても、二十分、三十分、四十分おくれる、そうして開会がこういうようにおくれることは国民皆さんに対して申しわけないでしょう。総理大臣内閣を統率する立場にあるのですから、国会開会中に対する閣僚の行動についてはどうお考えですか。きょうも三人の人たち事前に連絡がありましたから私は了承しておりますが、そうでなくして出席すべき人が、わが党からちゃんと通告をして一週間も前から連絡しておるにかかわらず、こういう閣僚出席がおくれて委員会がおくれるということは、非常に問題だと思います。総理大臣はどう考えますか、これでいいと思うのですか。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 閣僚出席がおそいために御審議を遅延するというようなことは、これははなはだ不都合でございますから、そういうことのないように十分注意をいたします。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 去年、一昨年もそうですが、注意をする注意をする、そうして私たちが何回言っても率直に言って閣僚出席が悪いのですよ、注意をするとはどういう注意をするのですか。今度は、あしたからはちゃんと出るように約束してくれなければ困るですよ、責任を持ってやってくれますか、閣議でも開いてちゃんと趣旨を徹底して下さい、どうです。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 時間を励行するように注意をいたします。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 委員長からも注意しなさい。
  13. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま鈴木君から発言のございました大臣諸公出席に関しましては、委員長から政府善処方を要望いたします。荒木君。
  14. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は外交問題、特に日中問題を中心にして政府の所信をただしたいと考えております。  この日中関係については、政府は従来静観するという態度をとって参りました。しかし今後もこの方針をとっていくということは、好ましくない問題であると思うのです。日中関係現状でいいというならば、それは静観という態度もいいでしょう。しかし日中関係を改善したい、こういうことであればこの際静観態度を検討する、改める必要があるのじゃないか、この点をまず総理にお伺いしたい。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日中関係現状は、私は日中両国にとりましてきわめて遺憾であると思います。従ってこれを改善する要があると、かように考えております。しかしその改善をするという場合において私は一番必要なことは、日中両国ともお互い立場なりあるいは政治的な考え方なり、その両国のとっておる外交方針なり、国の政治の体制なり、こういうものに対しては十分なお互い理解を持ち、それを尊重し、互いにそのことに対して干渉しない、そうしてお互いにこの両国友好親善を進めるという、この基本両国が十分に認め合っていくことが必要であると思うのでありまして、そういう点においてまだ基本が確立していない現状におきまして、私どもはただ無為にして静観するということではございませんが、しからば具体的にどういうふうな方法をとるかという点に関しましては、今申しました基本考え方お互いに確認し合って、そうして話し合いを進めていくというふうに進んでいかなければならぬ、かように考えております。
  16. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今のお話では、両国お互い双方立場理解する、これは当然必要なことであると思います。しかし、友好関係を立てていく、あるいは現状が非常によくない、現状打開する必要がある、こういう考えであるならば、やはり静観するということからは一歩も前進しないのじゃないか、そういう友好関係、あるいは相互に理解する、こういうところに発展していかない。やはりここに何らか打開をしようという努力政府が示す必要がある、そういう態度をきめる必要がある。総理大臣の今のお話を聞いておると、どうも静観態度からさらに一歩前進したいというふうにもとれるし、やはり依然として静観だ、こういうふうにもとれるし、この点は今後の日中関係打開する上にとって私は非常に重要な問題であると思う。この静観という問題はすでに二年近くそういう状態が続いておるわけです。この際、この問題について積極的な意思表示をする、具体的な問題は別に考究するとしてこういう基本的な態度をもう少し明確にお伺いしたいと思うのです。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答えを申しましたことに私ども考えは尽きるわけでございまして、現状は決して満足をしていない、これを改善していかなければならない。しかし、しからばといって今日何らかの具体的方法をとるような、この客観的の事態がそこまで熟しておるかというと、私はまだそこまできておるとは実は考えておりません。こういう意味において今後いろいろな客観的の情勢を熱せしめるように進めていくことが当然でございますけれども、直接に中国側に対して政府として積極的な働きかけをするということは適当でない、かように考えております。
  18. 荒木正三郎

    荒木正三君 それでは外務大臣にお伺いしたいのでありますが、日中の両国民が非常に困難の中から数年間にわたって非常な努力をした結果、日中の間には経済協力関係が確立をして参ったのであります。ところが、長崎における国旗事件、第四次貿易協定の破棄、こういう問題が起こって今日の不幸な結果を招来しておるわけですが、これは藤山さんが外務大臣をしておられたときに起こった問題であり、この取り扱いは確かに外交上相当な失敗があったと私は思うのであります。私は、藤山さんがこの問題を解決すべき責任を持っておると思うのです。こういう点について外務大臣所見を伺いたいと思います。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日中関係、特に経済の問題につきましては、今お話のように、民間におきまして経済問題について交流に対する努力は払われているわけであります。われわれといたしましてもこれに対してある援助をするような段階にまで若干来たと思ってこれらについての若干の考え方を表わしておったわけであります。それは、要するに指紋問題の解決でありますとか、あるいは代表部の問題でありますとか、そういう問題につきましてはわれわれとして、いささか努力をしてみたつもりでございます。しかし残念なことに、ただいまお話のありましたように、長崎国旗事件等につきまして、これはやはり双方で十分な何と申しますか、意思の疎通がなかったのではないか、そういうような点であれがつまづきになりましたことは、私自身としても遺憾に思っております。今後とも総理が言われましたように、日中の関係を調整して参りますということは必要なことでありますので、私としてもそういう点には非常に関心をもって外交方面を今後考えて参らなければいかぬということは考えておる次第でございます。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 重ねて外務大臣にお伺いをいたしますが、今の答弁からは、やはり静観主義か、あるいは一歩を踏み出そうとしているのか、そういう点が明瞭でないように思うのですが、その点をもう一度。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般の外交の演説におきましても、いささか気持を表わしたつもりでおりますけれども、今日終戦後の諸般の懸案というものを大体片づけて参りまして、日本国際社会に復帰して参りますための賠償その他の解決をするということは、日本外交一つの路線であったと思います。そうしたものが解決して参りますれば、おのずから日本外交が一番困難な問題に取り組んでいかなければならぬ。これは韓国の問題もそうでございますが、対中共との関係もそうでございます。そうした問題に取り組んでいかなければならぬということは十分承知いたしております。
  22. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私がこの問題をまつ先に取り上げたのは、最近中国のいろいろの文書等を見ると、岸内閣は依然として静観、何らの打開の誠意が見られない、こういうことを相当主張しておるわけであります。私は、この問題は単なる静観ということでは日中の関係打開できない、こういう考えからしつこいようですが、質問をしているわけであります。私は、中国に対する国民考えというものは、非常に岸内閣に対して批判的であると思うのです。この点は岸総理も御承知じゃないかと思うのです。ごく最近の朝日新聞の世論調査でございますが、この世論調査によりますと、第一問として、岸内閣中国経済関係は持つが、中国承認国交回復考えていない、この問題に対しては、そういう考え方はよくないというのが五〇%に達しております。よいというものはわずかに一五%です。それから日本中国国交回復することに賛成かどうかという問題については、賛成が七五%に達しておる。反対はわずかに五%にすぎない、この世論調査は、私は国民意思を知る上において非常に重要な調査である。これは本年の一月に調査されたものでございますが、私は政府にもこういう調査があるかと思って内閣調査室に問い合わせましたが、政府にはないと言っておる、これから見れば中国に対する政府方針というものは、非常に国民からきびしい批判を受けておるということが明白だと思うのです。国民意思は、日中国交回復せよというのが国民の総意であると私は思う。政府の今とっておる態度は、これは国民意思をじゅうりんする、無視している、こういうふうに、少し極端かも知れませんが判断せざるを得ないわけです。総理としては、この国民意思をどういうふうに考えておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本中国とは地理的にも非常に近い関係にあり、また歴史的にも非常な深い関係にあったわけであります。文化経済等あらゆる面において日本国民が非常に中国に対して親近感を持っておるということは、これは私は事実であると思います。従って現下のような状況にあることを不満に考えてこれを裏返して友好親善関係を作り上げていくということに対して期待し、希望を持っておるということも私は当然であると思います。ただ政府もまた従ってこれを、先ほど私が申し上げましたように、現状に対してはこれが非常に遺憾である、これを改善しなければならぬということを申しておるのもまたそういうことでありまして、そういう気持国民が広く持っておることは私は当然であると思います。ただこの問題を解決することについては、われわれがしばしば申し上げておるように、中国日本だけの関係でもってこれを処理することができない国際的な関係がいろいろあるわけでございますから、われわれとしてはそういう客観的な条件を整えていかなければ、われわれの望んでおる中国との国交を回復するというわけにいかない、その関係において、あるいは文化交流であるとか、あるいは貿易経済交流というようなことを積み重ねていくことが必要であるというのが私ども考えでございます。その国民全体が中国に対して親近感を持っており、また現状を非常に遺憾とすることは、国民の多数がそう考えておるということにつきましては、政府としても十分に認識をいたしております。
  24. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は日中問題についていろいろ問題が起こる一番の問題は、やはり政府に、長期見通しに立って究極的には中国との関係はどうなるのか、どうするのかというところの方針が明確になっていないという点にあるのじゃないかと私は思うのです。で、岸内閣安保条約が済めば退陣するのだということであればこれは別です。しかし引き続いて長期にわたって政権を担当していくのだということであれば、これは中国についても原則的な方向、原則的な方針というものが明確にされる必要があるというふうに考えるのです。この方針がないためにいろいろ問題がある、そういうものが起こってくるのじゃないかと私は考えておりますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) すべて政局を担当しておるものは、それが長期であるかいなかを問わず担当している限りにおきまして、いろいろ重要な問題について一つ見通しを持ち、一つ方針を持って進んでいかなければならぬことは、これは当然であると思うのであります。中国大陸に対しましても、先ほど私が申し上げておるように、この両方の国がおのおの立場理解し、またこれを尊重してお互いが平和的に共存する道を見出すように考えていかなければならない。しかし、そのために国交正常化するという問題については、一面国際的の関係がある。たとえば日本としては、一面においては中華民国との間に平和条約を結んでおり、これとの間に国交正常化をしておる。しかして、中国の問題としてこの中華民国中華人民共和国との間の関係がどうなるかということは、一面においてはあるいは内政問題という面もあると思いますが、一面においてやはり国際的に中華民国というものを国連においても認めており、また日本としてもそれとの間に国際条約を結んでおるという関係を、何らそれに関係することなく、ただ中華人民共和国を承認すればいいのだ、それがどういう関係を持ってもそんなことは関係ないのだというふうに割り切るわけに私は参らないと思う。従ってこれらの国際的の関係をやはり調整していくということが、今後のわれわれとして考えていかなければならぬ問題ではないかと思います。こういうものを整えることによってほんとうの正常化関係が出る。それまでの間においては先ほど申したような基本的な立場をとりながら、両国とできるだけ交流を盛んにしてそうして理解お互いに深めていくというふうに努めることが、私はだれが政局を担当しましても、日本の置かれている立場として当然やっていかなければならぬことである、かように考えております。
  26. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も中共承認の問題について、国際関係を無視して、あるいは中国台湾との関係を無視してそうして承認すべきである、こういう主張をしておるわけではないわけです。当然これらの問題は十分考慮されなければならない。しかし日本立場はどうか、こういう点を中心にして尋ねておるわけなんです。日本としては究極において日中関係はどうあるべきだ、こういうことを明確にして、そうして国際情勢の調整をやるとか、あるいは台湾の問題を解決するとかということがここから生まれてくると思う。ただ、日本立場をはっきりしておかないで、そうして国際情勢を、まず台湾問題等をあげておってはこれは前進しないのじゃないか、そういう考えを持っておるわけです。私は吉田内閣の当時において、あるいはこういう考えがあったのじゃないかと思います。台湾の蒋政権大陸反攻を企てて再び中国の主人公になるのではないか、あるいは中国大陸に大きな暴動が起こって、そのために中共政権が崩壊するのじゃないか、こういう見解吉田内閣当時には若干あったのじゃないかと思われる節があります。しかし今日においてはかようなことは断じて起こり得ないと私は確信しているわけなんですが、総理はどういう見方をしておられますか。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中国大陸における中華人民共和国が成立しましてから十数年を経ております。いろいろな国内におけるもちろん私は困難な事情もあると思います。しかしながらこの間において中国大陸におけるところの政府統制力といいますか、統治力といいますか、支配の力は漸次整えられてきつつある。私はそうこれが近い将来において崩壊するというような見通しは持っておりません。また台湾中国大陸との関係におきましても、いずれにしても、これが武力を用いてあるいは大陸反攻であるとかあるいは武力でもって解放するというような事柄は、国際平和の立場からいって私はこれは望ましくないことであるのみならず、そういうことの事態が起こらないようにしなければならぬと思います。これはやはり話し合いでもって解決されて、平和的な方向によってこの問題が解決されるというふうに進めていかなければならぬ問題である、かように考えております。
  28. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 中国台湾、この問題が平和的に解決される、これは私どももそういう方向解決されることを期待しているわけであります。全く同じ見解に立っておると私は思います。そこで台湾関電についてこの際若干お尋ねをしておきたいと思いますが、台湾は元来中国の内政問題である、私はそういうふうに考えておるわけであります。これを国際問題として大きく発展をさせてきたのは、むしろアメリカにあるのじゃないか、こういう見解をとっておるわけであります。なぜ台湾の問題が中国の内政問題であるか、これは日本サンフランシスコ条約台湾を放棄いたしておるのであります。そうして日本としての立場は非常にこれは明快になっておると思います。この放棄した台湾中国に引き渡される、そういう了解日本としてはしておると思うのです。そういう立場から考えると、この台湾問題は中国の内政問題であるというふうに考えるのですが、総理見解を私は伺いたいと思います。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が承知いたしております限りにおいて、このサンフランシスコ条約によって、台湾を放棄しておりますけれども、それを中華人民共和国に渡すということを日本は何らコミットいたしておるわけではございませんで、ただ領土権を放棄することを確認しておるだけであります。これがどこに帰属するかということは、何らサンフランシスコ条約においては、日本としてはコミットしておるわけではないと思います。
  30. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではサンフランシスコ条約締結以来の外交上の問題として台湾中国——台湾中国の一部である、これは中国に引き渡されるのだ、そういう意思表示日本政府としてはしておらないかどうか、その点を伺いたいと思います。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういうことをしたことはございません。
  32. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ここで中国という言葉が私は問題になってくると思うんですが、ここに日華条約、これは昭和二十七年に結ばれたものでありますが、この日華条約が国会の批准を求めた際に、政府の提案がある。またこの条約を審議するに当たって政府はいろいろ答弁をしておる。その中に、当時の外務大臣は岡崎外務大臣でございますが、「台湾の帰属は、日本としてはカイロ宣言を内容としたポツダム宣言を受諾しているので、台湾、澎湖島は中国に引渡されるものと了解する。」、こういうふうに答弁をいたしております。そうすると、今のこの総理の言明とは相当な食い違いがあるんじゃないかというふうに考えますが、どうでしょうか。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 条約との関係につきましては、条約局長をして答弁をさせます。
  34. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は日本としては非常に重要な問題であると私は思うんです。台湾の帰属がどういうふうになるかということは、これは日本としては非常に重要な問題であって、放棄した日本としても非常な関心を持っておる問題である。これが日華条約審議の際に、政府から、中国に引き渡たされる、そういうふうに了解しておるということを明白に言っておられる。これは条約上の問題として扱うよりも、これは岸総理がやはりどういう考えを持っておられるか、そういう点に立って解明されるべき政治的な問題であるというふうに私は考えるんですが。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 問題は、サンフランシスコ条約におきまして、日本領土権に属しておった領土を放棄するということをこの条約によって日本は承諾をいたしましたし、そうしてその帰属はどこということをこの条約自体は何らきめておらないのであります。従って他の地域におきましてもわれわれが放棄した領土がございますから、これらのものがどこに属するかということは、究極においては私はサンフランシスコ条約に加盟しておる国々によってこれが決定されるものだと、かように考えております。
  36. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 日華条約の審議の際に、政府がこういう考え方を明白にしているわけなんです。何が今の答弁を聞いておると、それを否定されるようなふうにとれるんですが、もう一度この点を明確にしていただきたいと思うんです。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日華条約審議の過程で岡崎外務大臣がそう言われましたことは、今総理も言われましたように、日本としては放棄をいたしておりますが、その前にガイロ宣言なり、あるいはいろいろな連合国側の話し合いなどがあったようでございまして、そういうことから推測して多分そうなるんじゃないかという見解を述べられたのではないか、こう思っております。
  38. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういう不明確な答弁でないど私は思う。速記録を読んでもらいたい。私は今その点を速記録を読んだわけです。その言葉の通り私は読んだわけです。ですから、多分そうなるんじゃないかと、こういう軽いものではないと思う。日本としてはそういうふうに完全な了解をしておったんじゃないか、しておると、こういうふうに見るんですが、重ねてお伺いします。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今基本的の立場から申して、サンフランシスコ条約日本の放棄しました領土というむのは、連合国がこれは決定しておることは、これは基本的なことだと御了解いただけると思います。でありますから、それに対して日本意思を連合国から特に何か確認されるか、あるいは日本がそれに対して約束をするというようなことがあり得ないことは事実だと思うのであります。でありますから、そういうような場合におきまして、過去のいろいろな連合国間の取りきめなり話し合いというものは歴史的にございますから、岡崎外務大臣としては当時そういう意味で述べられたのだと、私はそう了解しております。
  40. 鈴木強

    鈴木強君 関連して……。この点は非常に大事なことだと思いますが、ことしの二月二十八日の朝日新聞の記事の中に、ロンドン二十八日発のAP電報によりますと、その当時イギリスの外務大臣をしておったイーデン——前の首相ですが、ダレス氏と吉田前首相との間に秘密の書簡があった。その内容がイーデンの回顧録の一部として二十八日にロンドンで発行された。その中の一部に今荒木委員質問をしておるものと重大な関連のあることがあるんです。当時日本アメリカとの間の平和条約を急いでおった。で、それまでイーデンとアメリカとの間では、対日平和条約が結ばれたあとに、日本が現実にある二つの中国のどちらをとるかということは、日本政府の自由の意思にまかせると、こういう約束をイーデンと当時のアチソン国務長官、それにダレス氏が特別大使としておったんですが、そういう人たちも入って約束しておった。それを日本は吉田さんがアメリカの圧力に屈して、どうしてもアメリカ平和条約を結ぶ前に台湾政権を承認しろと、こういう圧力を加えてきたことは事実だとここに書いてある。この記事に私は誤りはないと思うんです。そう回顧録の中に書いてある。そういういきさつから見て、秘密に出したという吉田書簡の内容が、日本は国府を中国の真の政府として認める旨の約束をしたと、こういうのがダレスに渡した吉田書簡の内容なんですね。ですから、どちらが真の中国かということの論議はされるでありましょうが、荒木委員の言われたような日華条約の提案理由の説明の中にあるような、台湾を引き渡すということに対する提案理由の説明は、その経緯からいっても私はうなずけると思うんです。そういうことが過去の日本外交方針の中にあったということは事実でしょう、これは。これはイーデンの回顧録は藤山さん読んだことがあるんですか。その中を読んでみれば、ちゃんと書いてある。これは岸総理もどうですか、その点は。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イーデンの回顧録はまだ読んでおりませんけれども、(「読まなきゃだめですよ。」と呼ぶ者あり)いや、できるだけ早い機会に私も読むことにいたします。当時むろん岡崎外務大臣としては、日本が放棄した地域が、今お話のように、いわゆる中国というものがどちらの中国を指すかは別として、よその国に、いわゆる両方の中国以外のどこかにいくということは、それは想定されなかったでしょう。ですから、そういう意味において中国——それは二つの政権が存在しておるのでありますが、しかしその二つの政府のいずれにいたしましても中国であることは……それ以外の、他の連合国にいくというふうに考えておらないということは当然だと思います。
  42. 鈴木強

    鈴木強君 これはまあイーデンの回顧録をあなた読んでいないから、まだはっきりした答弁ができないと思うんですが、これはよく読んでみて下さい。その内容の中に見ると、これはいわば、何といいますか、当時の国際情勢ですから、アメリカ考え方も一がいには否定できませんけれども、しかし日本外交というものが非常にアメリカに左右されておったということです。自主性のない外交であったということは明らかです。日本に真の中国がどちらであるかを選ばせようとする自由を認めておきながら、米英間ではそういう約束ができておったのを、途中からアメリカの横やりで、平和条約の締結前に台湾政権の承認が促進されなければ、アメリカ日本との平和条約はむずかしくなる、こういう国際情勢であったのです。そこいらを考えてみても、吉田さんの当時のことですから、私は知らないと言えばそれまでかもしらぬけれども、これは日本の今までの政治というものが保守党の一貫した政策の中でやられてきているのですから、私はあなたにも責任があると思う。特に岸総理大臣もその点についてはそうお考えだと思う。だから私は——これはちょっと飛躍するかもしらぬけれども安保条約の改定一つ考えてみても、岸内閣のとっている対中共との外交政策というものは明らかにアメリカに振り回されている。だから、新安保条約の締結するまでは日中との間の交渉は静観主義で、政経不可分とかなんとかということを盛んに言っていたが、そういうことで当座国民をごまかして、そうして問題を安保条約締結だけを急いでいる。だから、今度もそういう条件がついているのじゃないか、私はそういうふうに憶測せざるを得ない。あなた方は、国会でちゃんと答弁している、速記録に残っているものを認めたらどうですか。それを今になってそれはおかしいという、そういう答弁をしたのでは、これは議事進行はできませんよ。もう少し閣内の意思を統一して、ちゃんとした答弁をして下さいよ。回顧録を持ってきて、外務省にあるだろうから、それを読んでから答弁して下さい。それまでは休憩だ。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して……。速記録を読んで御答弁願うときに、もう一つ御回答願いたいと思うのです。それはただいま鈴木委員からイーデンの回顧録について述べましたが、当時日本台湾を認めるかわりに、外資、アメリカ経済援助を要求していることが当時伝えられておる。もし日本台湾を認めれば、中華人民共和国との経済的な交流が困難になる。そこで、アメリカからそのかわりに外資援助を得た、そういう交渉をした。ところが、いつまでたっても、台湾を認めたが、アメリカの外資援助は行なわれない。そこで当時白洲氏は、——これは「文芸春秋」に書いてあるのだが、台湾を認めたけれども外資が入らない……。吉田総理は講和条約を締結するときに、国会ではっきり述べました、講和後の日本の復興はアメリカの外資に頼るほかない。だから、外資導入ということを非常に強調されたのです。そうして台湾を認める代償としてアメリカから外資導入を要望したところが、外資が入ってこない。結局入ってきたのは何かというと、MSAあるいは小麦の援助、アメリカの余剰農産物、それと朝鮮で使った中古兵器、エコノミック援助でなくミリタリー援助として中古兵器が供与されたという経緯になっている。それと関連してお答え願いたい。当時のそういう台湾を認める代償として外資をアメリカに要求したが、それはその通り来なかった。そこで日本は再軍備する場合、非常に再軍備の負担が予想以上に大きくなったという経緯がありますから、この点をあわせて御答弁願いたい。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イーデンの回顧録は今外務省で、出版されたばかりだそうでありますので、今注文をいたしておりますから、きましたら早速読むことにします。なお、今木村委員の言われました経緯等につきましては、詳細に私存じておりません。従いまして、十分当時の事情等を詳細にあれした上で、さらにお答えをいたしたいと思います。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 藤山外務大臣、イーデンの回顧録はイギリスから日本にも来て出版されているようですから、一つこれを見て下さい。岸総理大臣もその点を見ていただいて、さっきの国会の日華条約の提案理由の説明のときにはっきり読み上げたような精神というものが、この回顧録の吉田さんが当時のダレスに送った秘密書簡というものの内容と重大な関係があるんです。その点が明らかにならぬと、審議が進みませんからね。これは、もしイギリスから来ていないとすれば、電報でも打って照会してもらおうと思ったのだが、幸い来ているということですから、そう時間もかからんでしょうから、一つその書簡の内容をよく見てそれから答弁して下さい。
  46. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと外務大臣待って下さい。今の鈴木君の御発言で、イーデンの回顧録の内容を見た上で外務大臣が答弁願いたいという発言がありましたが、私は、日本外務大臣がイーデンの回顧録を見て初めて答弁をされるというそういう態度でおられるかどうかを、まず聞きたいと思います。(「そんなことは委員長要らぬことだ」と呼ぶ者あり)いやいや、外務大臣に聞いているんです。外務大臣がそういうお考えがありますか。(「妙なことを言うな」「読んでから答弁すると言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イーデンの回顧録は出たばかりでございまして今注文をいたしておりますから、来ましたら、むろんわれわれもこういう重要な外交の文書でございますれば、われわれとしても読んで十分過去のことを知っておかなければなりませんから、そういう意味で、十分読んで内容について承知いたしたいと私自身も思っておりますから、そういうことでありますから、ただ、まだ参っておりませんので、詳細に読むわけに参りませんので、その点は御了承願いたいと思います。
  48. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木委員了承されましたか。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 いや、だめですよ。
  50. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、今のあなたの御発言が、イーデンの回顧録を見なければ質疑を続行しないようなお話がありましたから私そう申し上げた。御了解になりましたか。
  51. 鈴木強

    鈴木強君 出版に回しておって本ができてきたんでしょう。そうすれば、全部を読まなくても、ちょっと秘密書簡のところだけ読んでもらえばいいんですから、これは一分か二分あればわかるんですよ。委員長、私の議事進行についての発言は、荒木委員の言われている日華条約の国会における提案理由の説明の中に、要するに放棄するという、分けるというような趣旨のものが述べられているということを言っているんですよ。そうでないと言うんだ、政府は。だから、このイーデンの回顧録と関連があってその当時の台湾に対する日本考え方というものはもうはっきりしているんだ、速記録と同じように。了解していることなんだから、それが明らかにならなければ困るから、私はそういう発言をしているんですよ。それを見なければ、荒木委員は、政府の言っていることはおかしいじゃないか、もう、一回言って、二回三回とやったんです。私はだから立ち上がった。だから、その点を今明らかにしてもらわなければ困るということを……。
  52. 小林英三

    委員長小林英三君) 今のあなたの関連質問に対する外務大臣の答弁は、了解されましたかというのです。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 それは委員長了解するのには、まだ本ができ上がってきてあなたの手元にあるのか、出版中なのか。出版中だとすれば、原稿がもうあいていると思うんですよ。原稿があいていればそれを読んでもらいたい。まだ原稿の整理をやっているというのか。そこら辺がよくわからないから、もしすぐ見られるならすぐ見ていただいてその上で答弁してもらいたい、こう言っている。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今のイーデンの回顧録は、イギリスでもって英文で最近に出版されたものであって、従って、その内容が新聞紙上等に若干抜粋的に報道されたものでございます。外務省としましても、その本をすぐに注文をするようにいたしております。でありますから、注文が到着いたしますれば、全部がわかると思います。しかし、重要なことでありますから、必要があれば、新聞紙上でなくて、大使館当局を通じてどういうことが書いてあったかというような抜粋的なものは取ることができるかと思いますから、そういうことはわれわれも過去のことでございますから、できるだけ知っておきますことが必要でありますから、十分、そういう点について私どもも怠けておるつもりはございません。努力いたしたいと思います。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 それじゃわからんのだよ。
  56. 平林剛

    ○平林剛君 関連して私は、ただいまの政府の答弁というのは非常に無責任だと思う。イーデン外相の回顧録を読む読まないというのは、これは別の問題にしても、前の岡崎外相が答弁をしたことが政府を代表して答弁をされておる。それと現在の総理大臣外務大臣の答弁とは明らかに食い違っておるわけだ。前に政府を代表して外務大臣責任者として答弁をしたことと、現在政府を代表して外交の衝に当たる責任者が答弁したということが食い違っておるということは、これは、その当時こうだろうああだろうという推測で答弁をされておるだけでは解明できないんです。政府責任として一体どっちがほんとうだということをはっきりしてもらいたい。それがなければ、議事進行できないじゃありませんか。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、イーデンの回顧録の問題が出ましたから、回顧録についてはそう申し上げたわけであります。先ほども、当時の事情は私は詳しく存じておりませんから、なお十分詳しく調べた上でもって、適当に御答弁をする機会があるだろうということを申し上げておりますので、当時の事情を私十分知らないままで御答弁をすることは、かえって適当ではないと思うのでありますから、十分調べて食い違っておりますれば……(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  58. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行について。この問題は、せんだって衆議院で問題になりました今度新安保条約における極東の範囲に金門、馬祖が入るとか入らんとかいう問題、これは最近与党の内部でも相当問題になっておるようですが、こういう問題よりも、もっともっと根本の大問題だと思う。これは大問題ですよ。ですから、今のようなあいまいなことでやり過ごすのでなしに、当時の外務大臣の発言その他は、速記録を取り寄せればすぐ間に合うわけですから。それからまた、イーデンの回顧録にしても、これは回顧録そのものはそれはまで届かんかもしらんけれども、二十八日のAP電報で相当詳しい内容が各新聞に報道されておるんですから、これは外務省にもそのコピーぐらいはあると思う。そういうものもすぐ目を通され、さらにまた、一九五一年の十二月二十四日でしたか、あの吉田書簡がダレスに送られた。あの吉田書簡等をもあらためてこの際直ちに検討をされて、そうしてはっきりとした動かない答弁をしていただきたいと思う。これは非常に重大な問題です。だから、ちょっといいかげんなことを思いつきでやり過ごすという問題でないんですから、そのためには若干の休憩時間を置いて、十分政府側で検討した上で確定的な御答弁をしていただきたい。委員長、そのようにお取り計らいを願いたいと思う。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) サンフランシスコ条約においてわれわれが放棄した領土がどこに帰属するかということは、これは終局においては、言うまでもなくサンフランシスコ条約に調印した国においてこれを決定するのであって、日本には何らの権限がない問題だと思います。根本的に。さて、問題の台湾等の帰属の問題については、日本サンフランシスコ条約に調印をして今のような根本的な態度でありますが、同時に、ポツダム宣言を受諾をいたしておりますし、それの内容になっておるカイロ宣言を見ますというと、台湾、澎湖島等は中華民国に引き渡されるということが規定されております。蒋介石総統が、そのときの代表としてそれに参加して調印しているわけでありまして、そういうことが連合国の間においてされておる。その宣言を日本は受諾しておるわけでございますから、これらの宣言等に規定されておる事柄を、結局において日本立場としては受諾せざるを得ないことを私は認めておるものだろうと思います。そういう意味において台湾、膨湖島が中国に引き渡さるべきものであるということを、岡崎当時の外務大臣が答えたのだろうと思います。しかし、このことは決して、私どもが今日、この帰属の最後の決定はサンフランシスコ条約の調印国によって決定されるべきものであってわれわれとしてはただこれを放棄しているだけであって、どこに帰属するということをこの条約においては取りきめていないということを申し上げたことと少しも矛盾していることではないと私は考えます。そういう意味において、はたして中華人民共和国中国を代表すべき正統政府であるか、あるいは中華民国が代表すべき正統政府であるかということを認めるということについては、どういうふうに認めるかということについては、これは議論のあることでありましょうけれども日本としては、今申しましたように、ポツダム宣言やカイロ宣言等にそれが明定されておって、それを受諾をしておるという意味から申しますというと、この中華民国にこれを引き渡すというような事柄については、そういう私は事情があると思うのであります。さっきのイーデンの回顧録の場合においての問題は、一体どっちを中国の代表すべき正統政府であると認めるかということのいろいろな意見であろうと思うのです。従って、台湾が広い意味において包括的に言っている中国に引き渡すということを日本が承認するということは、今申したような経緯から当然出てくることであって、私は、その間に少しも矛盾はないと考えております。
  60. 鈴木強

    鈴木強君 関連。総理大臣、あなたの御答弁を聞いておりますと、ちょっと錯覚を起こすようですが、そうではないんですよ。要するに、当時日本サンフランシスコ条約アメリカとの間に結ぼうとしたときのアメリカ考え方とイギリスの考え方、これはよその国のことですからとにかくとしても、その間において、とにかく三つの中国があるのだから、これは、日本平和条約を結んだあとに、どちらの政府を正統政府として認めるかということについては、米英間においては、話し合いによって、どちらを選ぶかは日本の自由だと、こういう前提があった。ところが、日米の平和条約を結ぶ際には、アメリカが早く中華民国を正統政府と認めろと言ってきた。それに対して、吉田がそうしますという書簡を一筆入れたのですね。入れたんですよ。だから私の言いたいのは、当時、あなたのおっしゃるように、二つの中国がどちらの中国であるかということについての論議はあったでしょう。あったでしょうが、米英というものは、少なくとも実質的に日本立場というものを認めておったにもかかわらず、日米の間でそういう秘密の書簡があって、イーデンは驚愕したとここに書いてある。だから、そういういきさつがあって日華の平和条約というものが結ばれたわけでしょう。その際に、あなた方は台湾を放棄するという、領土を放棄するということをうたっているということが荒木先生の質問なんです。ですから、日本政府の真の外交路線というものはどこにあったかということなんです。そこを私は聞いているんですよ、あなた方の。日本だってそうでしょう。何も平和条約アメリカとの間に結ぶ前に、無理に二つの中国をやりたいという気持はなかったと思うのですよ。それをアメリカの強制によってそういう書簡を書いたということは、これは吉田外交の失敗ですよ。大きな間違いであったのだ。そういう日本外交というものは、あっちに行ったりこっちに行ったり、そのときばったりによって、アメリカの強制によってばかり動かされているんじゃないかということを私は今言っているのですよ。そのために、今言った国会の答弁を考えてみても、イーデンの回顧録を見ても、われわれ国民としてはそう思うのですね。だから、その間の日本外交路線はどっちを向いていくのですか。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申しましたように、中国を代表する正統政府として、中華人民共和国を認めるか、中華民国を認めるかということについては、これは私は、当時十分議論があったことだろうと思います。各国においても、必ずしも意見が一致しておらなかったことも想像できるのであります。今日においても、その点においては、これは意見があるわけであります。ただ問題は、その中華民国を正統政府としてこれとの間に平和条約を結ぶかどうかという問題を当時の内閣が選んだのが、一体今お話のように、アメリカから何かなにされて、自主的な立場からそれを判断したものじゃなしに、アメリカから強制されたものであるのじゃないかという御質問であるかと思うのですが、これは、当時の事情、国情というものを前提として、その間においていろいろないきさつはあったろうと思います。しかし、日本としては、とにかく中華民国を、その当時これとの間に中国を代表するものとして平和条約を結び、これとの間に国際関係を開いたということは、これは国会の御承認を得て今日に来ておるわけでありますから、この事実は、これはとにかく一応その前提に立って議論しなければならぬと思います。その場合において、先ほど問題になるところの中国という領土をどうするか、台湾はどこに帰属するのかという問題が、その当時、今荒木委員の御指摘のように、問題になったと思います。その場合に、結局形式的にいえば、これは、日本としては放棄したのだから、どこへ帰属するかは調印国できめてもらう、どこにきめられてもわれわれは文句は言わないのだという立場サンフランシスコ条約日本立場であろうと思います。しかし、同時に、先ほど申しましたように、ポツダム宣言やカイロ宣言というものを考えてみるというと、日本としては、それを無条件に受諾しているわけですから、その内容をなしている中華民国に引き渡されるということについては、やはり日本としてはそれに異存を言うことはできない立場にあるから、結局は中国に帰属するものでしょうということを、帰属すべきであると思うということを岡崎外相が当時答えたということが、私はいきさつであろう、かように考えておるわけであります。少しもその間においては矛盾はない。ただ、今鈴木委員のおっしゃるように……
  62. 鈴木強

    鈴木強君 二つある。
  63. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一体、イーデンの何からいって、二つあるやつを、日本がそのときにどっちを選ぶかは自由じゃないか、自由にしようというのがイーデンの考え方であって、それに対してアメリカの方は、そうじゃない、台湾の方の中華民国の方を認めろと、こう一つの力が加わってきておる、それによって日本はそうしたのじゃないか、こういうふうな御質問でありますけれども、これは、今申したように、当時の事情からいって、それはいろいろな今日から見るというと批判はあるかもしれぬけれども、そういう状態ができ上がっておるという前提は一つ御承認を願いたい。
  64. 藤田進

    ○藤田進君 関連。ここまで混迷に陥りましたのは、荒木委員から日華条約に際しての内容を記録に基づいて指摘されたことについて岸総理が答弁せられたのに、かような中国に帰属するというようなことはきめるべき性質のものではないという答弁があり、これを受けて、そのまま藤山外務大臣も同様な答弁をされた。これについて関連その他でも追及せられた結果、藤山外務大臣は記録を調べて答弁をすると、こうなったわけです。岸総理の御答弁を聞いてみると、いわばここで言いくるめて、自己矛盾を感じながら、前言をうまくここに訂正しようという努力をしておられることは明らかにわかるが、そういうものじゃなくて、具体的にサンフランシスコ条約の問題から端を発した質疑ではなくて、日華条約についてずばりと聞いたことについて、さような帰属をきめるべき筋合いのものではないというはっきり答弁をされた。そのあなたの信念が、とやかくする間にぐらついてきて、その前言をうまくつくろおうとされているにすぎないのです、これは。私どもは、むしろその前後の、荒木委員質問のあの時点に立ちかえった記録を十分調べてそうして今のような言いくるめようとすることに、そのままそうですかというわけには参りません。その点はどうか岸総理においても、もっと率直に、言い間違ったら言い間違った、記録の記憶がなかったらなかった、ああいうふうに具体的に指摘されながらも、はっきりと帰属についてきめる性質のものではないという答弁があったことは間違いないと私は記憶しておる。こういう点をもっと答弁について注意していただきたいし、私どもも、前後の荒木委員質問に関連しての部分だけははっきりと記録に、録音もとっていると思う。十分調べてみたいと思います。委員長においてそのように取り計らってもらいたい。
  65. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行。今の藤田委員からの発言のように、私もさっき同じような趣旨で発言をしたのですが、やはりさっきの、荒木委員質問をして、それに対して総理大臣なり藤山外務大臣なりが最初に答えられた、このところまで立ち戻って、そこでストップして、そうしてさっき荒木委員から要請があったように、また鈴木理事からも要請があったように、当時の外務大臣、岡崎外務大臣の発言された速記録を取り寄せて、そうしてその内容を十分検討されて、そうして政府側でも確定した見解をここで述べてもらえば、もう荒木委員から重ねて繰り返し同じことを、質問を繰り返す必要はないのですからね。次へ進めるわけです。このままで行ったのでは、同じことをまたやりとりしなければならない。時間がその間にたってしまう。質問時間というものは限られているのですから、ですから、ちょうど十二時でもありますから、ここで若干休憩をして、そうしてちゃんと速記録等を調べて、そうしてきちっとした答弁をして下さい。どうもわれわれ納得できぬ。その方が能率的ですよ。(「その方がいい」「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  66. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後は一時から再開するといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時六分休憩    —————・—————    午後一時十四分開会
  67. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を再開いたします。午前中に引き続きまして質疑を続行いたします。総理大臣からこの際発言を求められておりますので、発言を許します。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 午前中に問題となりました台湾の帰属の問題でございますが、これは午前中お答え申し上げました通り、その最終的な帰属はサンフランシスコ条約当事国において決定されるべきものであって、日本としてはこの領土権を放棄しておる、こういうことでございます。ただ、日本といたしましては、ポツダム宣言を受諾しております以上は、その内容をなしておるカイロ宣言におきまして、この帰属を、中国に属するということは、これはそういう意味においてわれわれも承知しておるわけでございます。ただ問題は、その場合の中国を支配する政府がどこであるかということについてはいろいろな見方があるだろうと思います。そういう意味において私がお答えを申し上げたことであり、また、御質問になりました岡崎国務大臣の答弁を速記録について詳細に調べてみましたが、私が今申し上げましたことと少しも矛盾抵触しておるようなところがないと私は存じます。従って、政府見解としては一貫しておる、かように御了承願いたいと思います。
  69. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ただいまの首組の答弁は、午前中の答弁よりも相当私は明確になっておると考えております。ただ、私が先ほど総理質問しておる趣旨は、台湾の問題は中国の内政問題であるという点を明らかにしたい、こういう趣旨から私は質問をしておったわけです。なぜ内政問題であるかといえば、日本サンフランシスコ条約台湾を放棄しておる。その後政府がとってきた方針を見ても、今総理大臣から答弁があったように、台湾中国の一部であり、そうして中国に返還される、そういう了解を持っておるという観点から、これは中国の内政問題である。この点を私は質問をしておったわけです。この点について先般来から総理大臣の説明を聞くと、必ずしもそうとれない。私は今日台湾が国際問題になっておるということを否定しておるのではありません。それは大きな国際問題になっておる。それは否定しませんが、元来は、日本立場から考えれば、これは中国の内政問題だ、こういうことを申し上げておる。その点についての御答弁をお願いします。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 台湾中国大陸との間の関係につきましては、一面においては、今荒木委員お話のように、これの領土主権がどうなるかという問題に関しては、内政問題としての半面があることは私もその通りに考えます。しかし同時に、純然たる内政問題で国際的関係が全然ない問題だと、こう考えるわけにもいかぬことも、荒木委員の御質問の御趣旨にもよく表われておったように思いますから、私どもは、一面において内政問題たる性質を持っておると同時に、この問題の解決には国際関係の調整を要する国際的な問題を含んでおる、かように解釈いたしております。
  71. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ただいまの答弁では若干私との間に食い違いがあるわけですが、私は台湾の問題が国際的な問題であるということを否定はいたしません。事実大きな国際問題である。しかし元来は内政問題であるという見解をはっきり持っておるわけであります。日本としても、そういう見解を持つべき十分な理由がある。その一つは、台湾中国に引き渡される。それからもう一つは、これは吉田総理がダレスに送った書簡にも出ておるわけであります。総理は御承知のように、日本政府は、究極において、日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります、とこうはっきりいっております。これは日華条約を審議するときにも、政府の提案の中にこのことがうたわれているわけであります。私は、このことからはっきりしておきたいことは、日本としては二つの中国を認めないのだ、中国はやがて一本になるべきものだ、こういう見解をとっておると思うのですが、総理見解を伺っておきたいと思います。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私も、中国が現在二つに分かれておるごとき形を呈しておることはこれは望ましくない状況であって、中国一つになるべきものだと、かように考えております。
  73. 荒木正三郎

    荒木正三君 それでは質問を次に進めたいと思いますが、この中国、私の中国と言っているのは中華人民共和国のことです、中国の内政問題、言いかえれば中国現状に対する認識、それから中国のとっておる外交政策、こういうものについて政府はどういう判断をしておられるか、承りたい、これは外務大臣から。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 内政問題につきましては、けさほど総理も若干答弁せられておるかと思いますが、御承知の通り、共産主義の政権が樹立されましてから十数年たっております。そうして先ほども話が出ましたように、この政府というものが逐次強固になりつつある、そうして基礎が固まりつつあることは申すまでもないことであります。何か内政上の問題について政府の基礎がゆらぐというふうな状態には今日なってきてはおりません。また経済的な面におきましても、いろいろな事情のためにその経済の確立と申しますか、建設と申しますか、そういうものが五カ年計画になるか、いろいろそのときによってそごしている事実はありますけれども、しかしこれはまたいろいろ計算違いもございましょうが、どこの国でも計算違いはあるわけでありますから、逐次、しかしながらそれが進展しているということだけは明らかな事実だと思います。そういうような内政上においては逐次社会的な、あるいは政治的な、経済的な面においてその基礎が確立しつつあるということはこれは申し上げられると思いますが、また同時に、国際間の問題につきまして中共が今日までとっております態度につきましては、そのときどきいろいろのニュアンスがございます。従いまして、一概に国際間に対する中共態度を説明するわけにも参りませんけれども、しかしながら、ソ連との関係が相当緊密であって、そうしてその基礎が固くなりつつあるということは事実でございます。他のそれ以外の諸国に対しましてはいろいろそのときによってとっております態度が偉うわけでありまして、ユーゴに対する態度等はかなり強烈な態度をとっております。また東南アジア方面に対しましても、ときにいろいろな紛争を起こすような状況にもございます。しかし国際間におきましても、逐次そういうような意味においては基礎が固まりつつあるということは言えると考えております。
  75. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 大体私どもの見ておるところとそう違いはないというふうに考えるのですが、これを結論的に申しますと、中国も世界の緊張緩和に同調するという、そういう方向にあるというふうに見ておられるかどうかですね。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん私どもといたしましては、どこの国におきましても今日大戦を招致するような考え方は持っておらぬで、平和的にできるだけ共存していこうということを望んでおることは事実だと思います。ただ、今申し上げましたように、そのときどきの政治上の政策、あるいはあれによりましていろいろ強硬な態度をとるときがある、あるいは摩擦を起こすような問題が起きていることは事実でございますけれども、大体第三次世界大戦というようなものの契機となるような大きなことをどこの国でも考えておるものではない、中共またしかりと、そう考えております。
  77. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 特に中国台湾に対する考え方ですね、一昨年は金門、馬祖等で相当激しいいくさがあったことは事実です。しかしその後の情勢等から勘案して、台湾に対する態度、これはどういうふうに見ておられますか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、一昨年武力をもちまして争ったことはありますが、しかし中共の最近の態度から見ますと、台湾問題の解決は相当気長にやっていこう、性急ではいけないのではないかということを中共政府としては考えておるように思いますし、また、あれ以後の情勢から見まして特に武力をもって行動しようというふうには現状において見られないと思います。
  79. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこでさっきの質問と関連をしていくわけなんですが、台湾問題は日中問題を解決する上に非常に大きな問題である。これは私も否定しません、総理のおっしゃる通り。そこでこの台湾問題を中国の内政問題とするということによって、私はいわゆる中国台湾との間に平和的解決の端緒が開けるのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。必ずしもこれは今外務大臣も述べられたように、今の中国態度を見ると、武力によって解決しよう、そういう考えはないのじゃないか、平和的に解決しようという考えがあるのじゃないか。ですから日中問題を解決する一つの重要な問題として、台湾問題の処理はやはりこれを内政問題として両方の間に平和的に話し合いを進める、そういう方向日本としても、また国際情勢としても進めていく必要があるのじゃないか、そういうように思うのですが、総理見解をお聞きしたいと思います。
  80. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げましたように、台湾の問題の処理は一面中国の内政問題たる性格もありますと同時に、一面国際的の関係があると思います。特に日本といたしましては、正式に中華民国政府との間に条約関係があり、国交を開いておりまして、各種のこれに基づいて平和的の関係が結ばれております。従ってそれらの問題を、ただ内政問題であるという、これはまあ内政問題である以上は他から全然干渉するとか、他からタッチすべき問題でない性格のもの、内政問題である以上はそうすべきものであると思います。しかし今申しますように、台湾における中華民国政府との間に条約上の権利義務の関係もありますし、その他いろいろな関係が結ばれておりますから、これを全然日本一存でもってこれを放棄するとかあるいは破棄するというわけには参りませんから、従って一面こういった問題が持っている国際的の性格というものもこれを日本としては無視できない、こういう立場にあると思います。
  81. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 外務大臣になおお聞きしますが、私は台湾関係等の問題については大体外務大臣見解と同じです。金門、馬祖に対する政府見解ですね、中国との関係、どういうふうな見解を持っておられるか。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、今日中国としては、中華人民共和国としては台湾を含めて自分の領土と申しますか、支配権の及ぶべきところだということを主張しております。また台湾としては現実に金門、馬祖に兵を送っているというような状況であります。従って双方でもってこの点については一番争いのところになっていると思うのであります。そういう意味において、やはりこの問題の性質上、平穏な問題として全体として解決していくことが望ましいこと申すまでもないのでありまして、そういう意味において関心を持っている、こういうふうに私ども思うわけでございます。
  83. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 もうちょっとはっきりしていただきたいのですが、今後金門、馬祖をめぐる情勢は悪化しない、こういう見方を持っておられるのかどうかということです。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほども申し上げましたように、中共側においても、台湾問題というものは相当気長に解決をしていくよりほか方法ないのだろうというふうな考え方になっておるわけでありまして、そういう意味で、すぐに一昨年のような武力行使をするというような問題は考えられないのじゃないかというふうにわれわれも考えておりまして、また台湾側におきましても、特にあそこでもって何か武力的な金門、馬祖を中心にして行動をとるというようなふうには現在考えられないのであります。そういうふうに考えております。
  85. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、総理にお伺いしたいのでありますが、結局、今中国がとっている国内事情というのは相当安定し強化されつつある、こういう政府見解を持っておる。それから、外交については柔軟な平和的な方向に進んでおる、こういう見解、しかしこの日本に対する考え方というものは、これは別じゃないかと私は思います。特にこの一月に総理がワシントンで新安保条約を調印せられた。この問題から非常に日本に対しては、特に政府に対して激しい態度をとってきております。このことについては、当然重大な外交上の措置をするという場合には、これが諸外国に与える影響というのはお考えになっておることと思いますが、この問題をどういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  86. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中華人民共和国日本に対する態度につきましては、御承知のように、また午前中にも御質問がありましたように、従来、民間のベースにおいて貿易もある程度行なわれ、いろんな人事の交流も行なわれておったのでありますが、一昨々年長崎国旗事件を契機として、当時すでに民間で結ばれておりました貿易上の約束、契約等も破棄して、そうして人事の交流を一切とどめ、そして日本政府に対して相当激しい批評と非難を加えるような態度に変わってきたことは荒木委員も御承知の通りであります。自来、われわれはこの関係については、両国の間の将来を考えてみてこれは望ましくない状態であるからこれを改善しなければならないということで、常にこういう問題については、何らか中華人民共和国の面において誤解があるのじゃないか、特にわれわれが敵視政策をとっておるとか、あるいは二つの中国を作るための陰謀に加担しておるとかというふうな非難が加えられておることは、これは全く誤解であり、われわれの考えておらないところだということをあらゆる機会において明らかにして参ったのであります。私は、特にこの態度は、安保条約の改定をするからとか、しないからとかということじゃなしに、こういう態度がとられてきたいきさつを考えまして非常に遺憾に存じておる次第であります。そして安保条約の改定の問題につきましては、これは要するに新しい安保条約が純然たる国連のワク内におけるところの防衛的なものでありまして、決して中国を敵視するとかというふうな非友好的なことではございませんで、これはおのおのの国がおのおのの体制としてとるわけでございまして、われわれは、中ソの間の条約があるから、そのある限りにおいては中国と交通ができぬというふうな考えは絶対に持っておらぬわけでありまして、おのおのの国がとる外交政策と安保条約の体制というものは一応認め合って、その上に平和的な共存の道を話し合いで平和的な方法で開いていくということが、善隣友好外交の私は骨子でなければならないと思います。こういう意味において特にこの安保条約の改定以来中共側の態度が私には非常に激変したというふうには実は考えておりません。
  87. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今年に入ってからの中共側の外交当局の言明、いわゆる政府当局の言明あるいは新聞の論説等を見ますと、安保調印後の中国にはこの安保問題が非常に大きく取り上げられておる。今総理は安保に関連して格別に激しくなったのじゃない、こういうふうにおっしゃいますが、これは少し事情が違うのじゃないですか、総理
  88. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保の改定に対して中共側が強く反対しておるということは私も十分承知をいたしておりますが、先ほど申し上げましたように、日中間の関係というものは、私は何か岸内閣が敵視政策をとっており、二つの中国を作る陰謀に加担しておるということを従来しばしば公の場合におきましてもそういう非難が加えられております。これが根本をなしておるのであって、そういうふうな見方で見れば、あるいは安保条約というものも敵視政策の一つであるというような議論も出てくるのじゃないかと思いますが、根本においてわれわれが中国に対して敵視的な考えを持っておるとか、あるいはなにを持っておる。二つの中国を作ることの陰謀に加担しておるというような基本的な態度は、絶対に日本としてはとっておらないわけでございますから、この辺の誤解が解けるならば、安保条約という体制は現在もあるのでありまして、日本の自主的な立易から改定をされておる。またその内容を冷静に批判するならば、現在の安保条約よりも、かりに中共側の立場に立って見ても、私はいわゆる非常な場合の危険を想像しても、危険が少なくこそなれ多くならないように改定されておる、こういうことを考えてみても、また本質的に言って、今申し上げたような防衛的な条約でございますから、こういうことをもって特に日本を攻撃するとか、あるいは日本に対して非友好的な言動が強くなるというべき性質のものではないと考えます。この辺は基礎における、日本岸内閣の政策というものに対する私は誤解がもとをなしておるように思うのであります。そういうことを先ほど来申し上げておるわけであります。
  89. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この安保条約の調印という問題は、中国だけでなしに、ソ連に対しても非常に強い刺激を与えておるということは、これは事実です。先般来覚書の交換等がありましたが、これは単に私は誤解であるということで片づけることのできない問題を持っておるというふうに思うのです。第一に国内の状態を見ましても、現にこの新安保に対しては非常に広い、広範な層にわたって反対しておる。文化団体、あるいは学術団体、あるいは労働団体等、非常に広い範囲にわたってこれが反対しておる。反対の理由とするところは、この新安保条約は世界の平和に害があると言っておる。もう一つは、日本が再び戦争に巻き込まれる危険が起こる。こういう点を強く指摘して反対しておるわけなんです。やはりこの条約に対して、国内においても有力な反対意見があるということを岸総理は御承知であろうと思いますから、それに対してどういう見解を持っておられますか。
  90. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の改定は、しばしば申し上げておるように、その本質はあくまでも防衛的なものでありまして、一部反対論者の言っているように、これで戦争の危険に巻き込まれるというふうなものでもなければ、また私は、これによって世界の平和の促進に逆行するというふうな性格のものではないことは、しばしば国会の論議を通じて明らかにいたしております。しかし国民の間にその考え方が十分理解され徹底されるまで、十分にPRその他の点において遺憾がないかというと、その点におきましては不十分な点もまだあることを認めざるを得ないと思います。従って国民の間におきまして、これに対して反対ないし批判的な立場をとられる方も相当にあることも私は承知いたしております。と同時に、また国民の広い範囲におきまして、これを支持するところの人々がたくさんにあることも、また私どもの確信をしておるところでありまして、今後国会審議を通じて、特にこの安保問題につきましては、衆議院におきまして特別委員会というようなものが設けられまして、あらゆる面からの検討を行ない、これによって国民理解を深め、そうしてその支持を得ていくように政府としては今後努力するつもりでございます。
  91. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 総理も認めておられるように、この新安保条約については、国民の認識は十分でないと、これはいろいろな世論調査の結果にも相当はっきり表われております。総理も認めておられるところでありますが、それで、総理国会審議を通じて理解を深めると、国会を通じて十分審議し、それによって国民理解を深めていきたいとおっしゃった。しかしこれで十分理解を深め得るかどうか、相当私は問題が残るというふうに思うのです。この点どうでございましょうか。
  92. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はこの議会政治の本質に顧みまして、こういう問題について十分に審議を尽くすならば、十分私は国民理解を深め得るものと、かように考えております。
  93. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 国民理解を深めるという最も有効的な方法というのは、私は直接国民に判断を求める機会を国民に与えるという点にあると思うのですがね。国会審議を通じて理解を深めるということも当然あります。しかしこれほど重要な問題については、国民に直接判断を求めるというような方法を検討されたらいかがでしょうか。それほどの重要性を持った問題であると思いますが。
  94. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 荒木委員の御質問、あるいは具体的に言うならば、国会を解散して、国民にこれの判断を問えというふうな御意見ではないかと思います。過去最近におきまする数回の選挙、参議院の昨年の春の選挙におきましても、社会党の方面におきましては、選挙の大きな題目として、安保条約の改定の反対を唱え、また自民党におきましては、この改定を行なうんだという賛成の党議を決定して選挙が行なわれております。しかしその選挙が、はたしてこれに対して判断を下したか、あるいはそのことにおいて理解を深めたかどうか、確かに一面においては、私はこういう機会においてそういう両方の主張の点を国民の前に明らかにし、大いにお互いにその主張を国民の前に披瀝することによって国民の認識を深めた部分もあったと私は信じておりますが、しかし今日において、相当なる範囲においてこの内容について十分なる認識を持たない国民の層もあることでございますから、ただ選挙を行なうことが、直ちにそれだけでもって何だということも、これはなかなか事実問題としては、それはもちろん民主政治でございますし、最後の判断は国民が主権者として下すべきものであることは当然でございます。それを私はかれこれ申し上げるのではございませんけれども国民に事実問題として認識を深める方法としては、ただそれだけでもって、すべてがそれでいいのだと、こうはいかないので、やはり国会を通じて十分なる審議もやりますし、また野党も与党も、あらゆる面において国民に、この賛成、反対の趣旨をあらゆる機会において徹底するように努力していって、そうして国民の認識を深め、政府としてはその支持を得るように努めることが、私は民主政治の運用として必要である、かように考えております。
  95. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この安保条約の問題については、国内においても非常に重大な意見というのは対立しているわけであります。国会審議を十分にするというだけでは、これは十分でないと思いますが、この問題はさらに質問をいたしません。次に、先にも触れましたが、この安保条約がソ連、中共等を強く刺激しておる、従って両者の関係が相当悪化しているということはこれは否定できない事実である、このことは安保条約を改定する交渉を進める当時から、明白になっておったと思うのです。われわれ社会党といたしましても、この点はしばしば指摘してきたところです。この安保条約の推進によって、国際関係を相当刺激するのじゃないかということは、社会党が相当言葉を尽くして述べてきたところであります。われわれひとり社会党だけでなしに、いわゆる外交界の長老といわれるような方々、あるいは先輩というような人々、そういう人々の間にも、これは相当注意する必要がある、いわゆる日本外交関係を相当悪化せしめる心配があるということは、私は総理も聞いておられると思うのです。特に前駐英大使をしておられた西春彦氏寺は、私はたしか直接総理にもそういう見解を述べておられるように聞いておるわけです。こういうことが相当前からわかっている。しかるにもかかわらず、政府としてはこれに対する外交的な対策といいますか、そういうものは全然講じて来られなかったじゃありませんか。その点を伺いたい、これは総理大臣並びに外務大臣からお伺いいたします。
  96. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本としていかなる外交路線をとるか、言うまでもなく日本が平和外交を基調とし、あらゆる国と友好親善関係を進めていく、たとえ国の立場や、あるいは政治的な考え方、機構等を異にしておっても、それを十分に認め、これを尊重して、そうしてお互いに共存共栄の道を求めていくということにあることは、これは言うを待たないのであります。しかし、そういう世界の平和外交友好親善方法をとる基本考え方として、私は自由主義の立場を堅持していくという考え方と、あるいは国の姿を全然変えて、共産主義の立場をとっていくという考え方、あるいはどちらにも属しない中立の政策をとっていくという考え方と大分すると三つの行き方があると思います。で、私どもはあくまでも自由主義の立場を堅持していくと、これが日本の繁栄と平和に資するゆえんだという考え方をいたしておるわけです。これは国際上の情勢等の分析その他の認識の上に立って、そういう基本方針をとっておるわけです。そうして現在日本の平和と安全を保持するためには安保条約、日米の間にあるこの安保体制というものを維持することが必要である、こういう見解に立っております。しこうして、現行の安保条約というものは、成立のときの特殊の事情から、日本としての立場から申しますときわめて不合理な、アメリカが一方的にすべてのことをきめるような建前になっておることについて国民的に不満を持っております。これは最初の締結の特殊の事情から見てやむを得なかったとはいえ、日本が独立を完成していき、また国際的地位が高まっていき、国内の国力が増強してくるということになれば、当然あらゆる独立国の間に結ばれておるところの対等な、自主性のあるものに変えなければならぬということは、これは私は当然の要求であると思います。そういう要求に基づいてこれを改正するものであって、何らか一部で言っているように、あるいは安保体制というものをあらためて作るがごとく考える人がある、あるいは今度の条約において何か現行条約よりも非常に危険な文章を含んでおるというふうに考えるということは、私は内容の正当なる理解でないと思う。ただ根本の外交政策として、さっき申しましたような基本方針をとることによって、あるいは中立政策をとるべきである、あるいは共産主義の立場をとるべきであるというふうな基本的な考え方で違いがあるかもしれませんけれども、われわれの立場から言えば、これは当然なことであって、そうして少しもそれに付随しての危険はない。従って日本が従来自由主義の立場をとってきており、日米の安保体制というものを持っておる、それを合理化そうということが、特に共産主義の国々を刺激するとかあるいはこれとの外交を行き詰まらせるというような性質のものではないと思う。もしもそういうような事態が現われておるということならば、それは何らかの誤解に基づくものであるか、あるいは別に意図があるものである。それについては十分正当にこれを理解せしめるように努力することが当然である、かように考えます。
  97. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 総理の安保に対する見解はしばしば聞いておるわけですが、なかなかわれわれも納得できない問題を残しておる。われわれだけでなしに多くの人々にも同じ考えがあると思う。ただ政府は誤解である、あるいは曲解であるということで外交的な関係を処理する、こういうことだけでは済まされない。私は中立をとるとか、あるいは共産の態度をとるとか、あるいは自由主義国家の態度をとる、そういうことには関係ないと思う。どういう態度をとろうと、一つ外交上の重要な問題を決定するというに当たっては、それがどういう影響があるかということを十分検討されなければならぬ。現に主として共産圏諸国に対して、ソ連、中国に対して非常に強い刺激を与えておる、これは事実です。総理が曲解である、誤解であると言われるかもしれませんが、一がいにそう言えない問題があるんじゃないか、こういうふうに思う。私どももソ連や中国との立場とは別です。われわれも日本国民として、この条約は相当危険な条約であるというふうな考えを持っておるわけです。だから当然この安保を進めるという場合に予想される問題について、その対策を考慮しておくのが外交上の常道ではないんでしょうか、外務大臣
  98. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん外交をやります場合にいろいろな点について考えて参りますことは、これは当然なことだと思います。ただ今回の安保条約の改定は、先ほど総理もその趣旨を述べられましたように、われわれとしては現行の安保条約を改善していくという立場をとっております。特に各国を刺激するということをわれわれは考えないのであります。また数回にわたりましてソ連等からもいろいろの覚書等が参りました際に、われわれとしてはできるだけ丁寧にこれに対してわれわれのとっております態度を説明してきたわけであります。そういう点について万遺憾のないだけの回答はいたしたつもりでございますが、まだ十分な理解を得ないことは遺憾だと思います。
  99. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この政府態度を見ると、アメリカとの関係はより強化する、こういうことははっきりしておるわけです。それから共産圏諸国に対してもできるだけ友好的にいきたいというのが政府の説明だ。しかし、実質的には日ソの間にも重要な問題が残っておるわけです。平和条約締結の問題が残っておる。これについての外交的な動きというものはないんです。また日中の間にも解決すべき多くの問題があるわけです。そういうものは全然たなに上げて、一方にアメリカだけと、とにかく結んで強化していくんである、こういう政策はわれわれの立場から、国民立場から考えても、これはやはり穏当な外交をやっておるというふうには受け取れない面があるんですが、そういう点は同時に配慮されて考えていく必要のある問題であると思うのですが、どうでしょうか。
  100. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん共産圏との外交におきましても、われわれはできるだけ友好親善に共産圏との関係を調節していくことは考えておりますので、御承知の通り昨年の秋にハンガリア、ブルガリア、ルーマニア等、鉄のカーテンの中の国々とも国交回復をいたしましたし、あるいはすでに回復しておりますポーランド等は通商協定をやっておるし、また今日でもわれわれはそういう面におきましてソ連との通商協定も締結いたしたようなわけでありまして、決してそういう点をないがしろにいたしておるわけではございません。
  101. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この点は、今の外務大臣の説明はありましたけれども、日ソの重要な問題、日中の問題というのは何ら手がつけられておらない。まず放置されておると、私は極端なことかもしれませんが、感ぜざるを得ないんです。こういう点、片手落ちの外交を進めておるというところに、政府外交に反省を要する点があるんじゃないかということを私は申し上げたいのであります。その次に本筋に——もとにかえりましてこの中国問題ですが、私は安保条約に関連して、中国の所論というものを一応見まして強く感ずることは、この日本が再び軍国主義に復活するんじゃないか、こういうおそれを持っておるという問題です。陳毅外交部長の最近の論文の中に、「日米新安保条約は、日本軍国主義の復活と、日本中心とする東北アジア軍事同盟の事実上の結成を示すものである。米国に育成された日本軍国主義はアジアの平和に対する重大な脅威となっている。」こう述べておる。これが中国外務大臣の論文でありますが、この問題に関連をいたしまして、私は最近注意深く見たのでありますが、昨年松村氏一行が中国を訪問をせられた、そうして帰ってこられた、その報告書の中にこの問題にやはり触れております。総理はお読みになったかどうか知りませんが、「問題の中心は、経済的ではなくて軍事的であると思う。日本人こそ忘れたかもしれないが、日清戦争以来の日中関係を思い起す必要がある。満州事変・北支事変・支那事変・大東亜戦争の経過を見よ。日本が敗北したから国土が中国に戻ったものの、中国人が取戻したのではなく、日本の軍事力には負け通し、負け放しである。中国日本の軍国主義の復活を恐れている。ことに、これと、いうところの米帝国主義との結びつきを恐れているのである。この脅威と不安を除いて安心をえようというところに問題の核心があると思う。」さらに結びの方には、「軍国主義の復活と中国侵略を疑わせる言動こそが障碍であると思う。ここに、われわれの考究すべき問題点がある。」、こう結んでいます。これはわれわれの見解を直接述べたものではありません。総理も御承知の通り、自由民主党の有力な議員の方々の報告書である。私はそれを取り上げているわけです。ですから、今中国日本の軍国主義の復活をおそれているということについて、総理としてはどういう見解を持っておられるか。この報告書にもあるように、ほんとうに日本としては考えなければならぬ問題だということを言っておるわけです。その点について総理所見をお伺いしたい。
  102. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の軍国主義の復活というようなことは、私ども夢にも考えたことはございません。また日本の憲法の上から申して、われわれの持つ自衛力というものの限界につきましても、しばしば申し上げておる通りでございます。また、安保条約そのものも防衛的な性格のものであり、また今度の改正も、現在あるところの安保条約の不合理性を改めるというだけのことでございますから、これをもって軍国主義の復活というふうに考えるということは、全く杞憂にすぎない問題で、そういう意図は全然日本としては持っておらないことは当然のことでございます。
  103. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、この問題に関連して、日本の防衛問題について質問したいと思っておったのですが、きょうはその余裕がないと思うので……。しかし総理、憲法上の解釈ですね。これは、政府は、最近の解釈では、小型核兵器を持っても憲法上違反でないという見解を持っておられる。ただ政府としては、そういう核兵器を持たない。これは大きな問題である。もし政府が変わり、政策が変われば、憲法上持っても差しつかえない。この問題は、われわれにとって国民にとって非常に重大な問題であると思うのです。もう一つは、政府は一貫して自衛力漸増ということを言っておられる。国力に応じて自衛力を増加していく。これは際限がないのですね。国力がふえていけば自衛力はだんだんふやしていくのだ。防衛力の際限というものがなつい。こういうところは、やはり相当大きな、将来の防衛力漸増、めどがないのです。きょうは防衛庁長官おられませんが、防衛庁長官は、第二次五カ年計画が終わる昭和四十年には、あれは札幌でしたか、日本の防衛予算は約三千億と言っておられる。そういうことを言っておられるのです。こういうふうに、際限なく自衛力をふやしていくんだ、それだけしかおっしゃっておらない。憲法解釈でも、核兵器は持てるのだ。これは相当私は注意しなければならぬ問題でないかと、かように考えておるのですが、総理所見を伺いたい。
  104. 秋山長造

    ○秋山長造君 総理大臣の御答弁の前にちょっと……。防衛庁長官は、荒木委員質問でお聞きの通り、防衛庁長官を要求もしておりますし、けさは横浜へ何か公用があって、十二時までに必ず帰るからということを了承して始めたわけですが、もう二時過ぎてもまだ帰らない。しかも問題は、防衛庁長官の担当されておる問題に触れてきておるのですが、どういうことになっておりますか。
  105. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山君の御発言にお答えいたしますが、防衛庁長官は、お話しのように横須賀へ参りまして、つい先ごろヘリコプターで帰途について、二時ごろには出席の予定であります。(「もう二時だ」と呼ぶ者あり)間もなく出席できると思います。
  106. 秋山長造

    ○秋山長造君 間もなくならば、もうちょっと待ったらどうですか。質問が済んでしまって、またあとへ戻すという、そう器用なことはできません。
  107. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山君にお答えいたしますが、先ほど防衛庁長官に対する御質疑はないというお話だったのですが。
  108. 秋山長造

    ○秋山長造君 今出てきた。
  109. 小林英三

    委員長小林英三君) 間もなく到着すると思いますから。
  110. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法は、言うまでもなく、憲法で持ち得ることは自衛権を持っており、これを裏づけるため必要な最小限度の実力を持つということを申しております。その自衛権を裏づけるに必要最小限度の実力という問題の内容は、これは、言うまでもなく、科学兵器の発達等によりまして、大砲が何門だとか、あるいは小銃がどうだとか、というふうに限るわけには私はいかぬと思います。発達につれて必要な実力というものを持つことは許しておる、こう解釈すべきものだと思う。従って、その意味においていやしくも核兵器という名がついたから全部いかないのだという憲法解釈は、これは憲法の解釈としては、われわれとらないところだということを申しておる。しかしながら、いわゆる、現在ありますところの核兵器の大部分というものは、主たるものが相手方の攻撃の内容を持っており、そういうものを主たる内容としておるような実力を持ち得ないことは、自衛力という立場から、本来の解釈から、私は当然だと思います。また、自衛力を増強する限度はどうだという御質問でありますが、こういうものの防衛費の負担ということが、一般の民生や、その他、国として行なわなければならぬ各種の重要政策を防衛費で圧迫して、それができないというようなことは、私は、いかなる内閣といえどもとるべきものじゃない。国防会議において、国力と国情に応じて漸増するという方針を明らかにしたのもここにあると思います。本来、日本の置かれておる立場から、また日本が、その国が、他から侵略をされない、独立を守る自衛権というものを考えてみるというと、現在持っておるような程度では、なかなか日本の自衛力というものは十分じゃないということは、だれしも考えるわけでありますが、それを一時に、ほかのものをおいてこれをやらなければならぬというように考えるべきじゃなしに、やはり国力と国情に応じて漸増していくべきものだということでございましてその限度はどうだ、何千万円が限度である、(「何千億」と呼ぶ者あり)何千億が限度だというふうに言うことは、これはなかなかむずかしいと私は思います。ただ問題は、先ほど来お答え申したように、他の民生安定なり、あるいは国民の福祉の増進に関するところの諸政策を、この圧迫によってできなくなる、あるいはそれでもって非常に削減しなければならねというような程度にまでこれを持つべきものでないことは、これは当然の考えであります。ただ、具体的の数字で表わすということは、これはむずかしい。それから第二次防衛計画の問題でございますが、御承知のように、三十五年度を終期とするところの第一次の計画が国防会議できめられまして、三十五年度の予算にもそのなにが出ておるのですが、それ以後の防衛力をどうするかという問題については、防衛庁において第二次防衛計画というものの策定に関して研究をしております。まだ国防会議にも出ておりませんし、その内容は主官庁としての防衛庁の内部における研究の程度でありまして、国として、政府として一つ方針をきめたわけではございません。(「二、三分だというからちょっと待ったらどうですか。」と呼ぶ者あり)
  111. 小林英三

    委員長小林英三君) いずれは出席します。きょうは質問者から防衛庁長官には御質疑はないというお答えがあったそうでありますが、それでも委員長出席を要求しております。間もなく参りますから、御質疑を続行願います。
  112. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは私は時間の関係もあるので防衛庁長官が見えてからこの問題はもう少しいたします。ただ岸総理にお伺いしたいのは、さっき申しましたように、軍国主義の復活と中国侵略を疑わせる言動こそが障害であると、この点について、あなたの方の党の党員がおっしゃっておるのですが、どういうふうにお考えになっておるか、その点を聞きたいと思います。
  113. 岸信介

    国務大臣岸信介君) さっき申し上げたように、決して軍国主義の復活というようなものを、これはゆめにも考えていないということを明瞭に申し上げたのでありますが、しかし、中国の側から見ますというと、過去伝統的な事実から見て、日本の軍国主義がまた起こってきやしないかということに対しては、常に強い関心を持っておることは、私は当然であると思うのです。従ってその関心を持っておる事柄に対して何か疑いを深めるような根拠になるような言動というものは、これは避くべきものである、注意しなきゃならぬと、私はそう思います。
  114. 荒木正三郎

    荒木正三君 それでよく引用される言葉なんですが、岸総理台湾を訪問せられたときに、蒋介石の大陸反攻を支持するような言動があった、これはどういうように反省をしておられますか。
  115. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が台湾をたずねましたときに、詳細に中国大陸反攻の計画なり考えというものを、向こうの要路の人々から聞かされたことは確かに事実でございます。私はその間にこれを支持するというような事柄を決して積極的に申したのではございません。自身がそれに対して反対の意思も、あるいは賛成……、そういうような事柄を日本が支持するというようなことを申すべき筋でもございませんし、またそんなことは申しておりません。(「相づちを打っただろう、相づちを。」と呼ぶ者あり)
  116. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 次に、石橋・周共同声明について首相の所感をお聞きしたいと思うのですが、これは岸首相御存じですか。その内容は御存じであれば、私は申し上げることを省略して所見を伺いたいと思いますけれども……。
  117. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これが発表されました当時、私ももちろん見ております。しかし、これは石橋君が私的に周総理との間に出しておるものでありまして、私はこれに対しての批評は避けたいと思います。
  118. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この声明の中心をなすものは、私はこれは日中関係打開する上において、相当日本としても重要な問題だと思いますので、読みます。「日中両国民は主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存の五原則とバンドン会議の十原則にもとづいて日中両国民の友好促進に努力し、両国民相互間の信頼を深め、両国の現存の関係を改善し、また一日も早く両国の正常な関係を回復するよう努力すべきである。」、私が今読み上げた点が、これが石橋、周声明の核心をなしておるところです。この問題について岸総理所見が述べられないということは、私はおかしいと思う。この内容について岸首相に異存があるとすればどこにあるのでしょうか。これは私どもも、この日中関係打開する日本側としては、これは当然な考え方じゃないかというふうに考えるのです。これのどこが政府考えと違っておるか明かにしていただきたいと思うのですが……。
  119. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、先ほど申し上げておるように、この声明が出されましたいきさつというものは、石橋君が個人として周総理との間の話し合いでもってその結論を出しておるのでありますから、これに対してどういう感想を持っておるかというようなことは、私は申し上げることは差し控えたいとさっき申し上げたのでございます。しかし内容として、お前は内政不干渉であるとか、主権尊重をどう考えるかと言われるならば、これまたしばしばお答え申し上げておる通り、私は日中の間のこの友好親善関係を深めていくためには、お互いお互い立場を十分に認識し合って、理解し合って、それを尊重して、不干渉、お互いに侵さない、尊重していくという考え方を基礎に置き、そうして物事を話し合いによって平和的に推進していくということが望ましいと申し上げておりますから、これが政府方針であり、私の所信でございまして、今その点において、石橋君との意見の一致しておるところも非常に多いと思いますが、その声明そのものに対する感想を聞かれるということに対しては、私は差し控えたいと、こう私は申し上げておるのであります。
  120. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 じゃ次に、中国をめぐる国際情勢について政府見解をお聞きしたいと思いますが、中国の問題は、外務大臣にお聞きしたいのですが、国連において、毎回の国連総会において問題になっておる。第六回の総会から昨年の第十四回の総会に至るまで、中国の代表権問題が問題にならなかった年はないと言ってもいいのです。その内容を見ますと、これを取り上げるべきである、中国の代表権問題を国連総会において審議すべきである、こういう意見が漸次増加をいたしておる。第十回総会では十二カ国であったのが、第十四回総会には二十九カ国にふえておる。これは今後アフリカ等、あるいはアジア等の独立国等を考えますと、だんだんふえていくんじゃないか、そういう傾向にあるんじゃないかというふうに思われますが、それについての外相の所見、それから時間がありませんので、もう少しまとめて申し上げますが、私はこの国連における日本態度、これを問題にしたい。これは岸総理に私は直接お伺いしたいと思うのですが、私の気持からいえば、満州事変から太平洋戦争に至るまで、日本の主戦場は中国であった。その間にいかに多くの中国人民を殺傷しておるか、これは私は数百万あるいはそれ以上の数に上っているのじゃないかと思うのです。また、この間に中国国民に与えた財産の損害、これははかり知れないものがあると思うのです。そういう日本なのです。その日本としては、これは中国国民に対する感情からいっても、この際中国の問題を日本考えてみよう、こういう気持ちになる必要があると思うのです。私は国連において中国の問題を議題にすることにすら日本が反対をしておる、この態度考えてもらいたいと思うのです。中国問題、これは日本としては中国の五億の民衆に対してもっとあたたかい真剣な態度が必要じゃないか。もちろん、岸総理が言われるように国際情勢、いろいろあるでしょう。しかし、国連において中国問題を議題にするということに賛成する、そういう態度に変えることができないでありましょうか。この点を藤山外務大臣に伺います。
  121. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話しのありました通り、中共の代表権の問題は、最近の総会で毎回提案されておりますが、この代表権の問題というのは、国連に一国が単純加盟する問題と違いまして、実は国連においても最初予想しておらないようなケースだと思います。従いまして、これを審議するのが適当であるか、適当でないかということは、そのときのいろいろな国連内におきます各国の中華民国その他との関係もございますので、やはり今日までそれを審議して、そうしていろいろ問題といたしますことは、かえって適当でないというふうにわれわれは判断いたしておりますので、そういうような態度をとって今日まできたわけでございます。
  122. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 総理大臣どうでしょうか。
  123. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過去において中国の人民に対して戦争を通じていろいろな損害を与え、また人命を損したというような事実に対しましては、これは私どもやはり十分にそのことに対しては反省をしていかなければならぬことであると思います。また、戦争終結にあたって、当時の蒋介石総統がいわゆる恨みに報いるに徳をもってすというような宣言をして、そうして中国大陸におった日本の将兵初めそれらの引き揚げに対して非常にあたたかい態度をされたということも、日本国民の忘れ得ない一つの事柄であります。これは私は長い日本中国との歴史的な関係、また最初に御質問がありましたように日本人が中国人に対して持っておる親近感等のこの裏づけをなすものであって、一面においては、戦争中のそういう罪悪に対して、われわれが十分謙虚にこれに対して遺憾の意を持つと同時に、またそれに対してそういうあたたかい処置を講ぜられたということに対しては、やはり感謝の念を持っておるということも、これは国民的な私は日本人の感情である、こう思います。しかし、この問題と、あるいは今この国連における代表権の問題をすぐ結び合わして、そういう何があるから代表権の問題も直ちにこれに賛成してやるべきではないかという荒木委員のお言葉でありますけれども、その点は先ほど外務大臣がお答え申し上げましたように、この問題自身は相当微妙ないろいろな関係を、国際的な関係を持っておりますので、今日まで日本としてはこういう状態でもってそのことを国連の場において議論し、審議することはまだその時期でないという意味でこれに賛成を表しておらないということでございまして、これが決して、中国に対してのわれわれの今申しましたような反省や、あるいは謙虚な気持ちというものや、あるいは感謝の念とかいうものと私はすぐ結び合わすことは適当でない、かように思います。
  124. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 国連における傾向としては、中国問題を審議すべきである、代表権問題を審議すべきであるという意見が相当ふえてきた。さっきも申しましたようにこの比率は昨年度において四十四対二十九という割合になっている。棄権九。今後ふえていくと思う。四十四という数字はぎりぎりの数字。八十七カ国のうちの四十四といえば半数ぎりぎりなんです。将来において私は中国を承認するという、そういう意見が国連においてふえてきて過半数をこえるということも予想されるところの問題だと思う。そういう場合に日本中国の承認問題を踏み切るかどうか、そういう態度を明確にするかどうか、この点を一つ外務大臣にお伺いしたいと思います。
  125. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、単純加盟の問題でなくて代表権の変更の問題でございますので、国連の中におきましてもいろいろ情勢に対して非常に神経過敏な考え方を各国とも持っております。従ってイギリスでありますとか、オランダでありますとか、中共を承認しております国も、今日かえって今論議をすることは適当ではないだろうということで、反対の態度をとっているようなことでございましてむろん、今後国連等も新興独立国の加盟によりまして、それの動向その他によってはあるいは議論が変わってくる場合があろうかとも思います。そういうようなことにつきましては、国連内の動向を十分注意しながら今後ともそういう動向を把握して、そうしてこれらの問題に対して処理するのが適当だと考えております。
  126. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 まあ適当に処理する……。私の質問は国連において過半数に達する、こういう場合に日本中国を承認するのかどうか、こういうことです。
  127. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだすぐに過半数に達するとも考えておりませんけれども、しかし将来そういうような動向と申しますのは、要するに中共が先ほど来申しておりますようないろいろな国際的な地位を確保してくる、あるいは国内の状況等も健全に逐次伸展していくというような状況は、各国がこれは見ているところであります。われわれもそういうものをあわせ考えながら考えていくべき問題だと思います。
  128. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 国際的に見ても、中国の承認問題は近い将来に必ず起こってくると思うのです。すでに軍縮協定、核兵器実験禁止協定、これらが国際的な問題になってきて、これは中国を除外してこれらの問題をきめることはできない。これがすでにアメリカ等の意見に出てきている。そうすればこれはきわめて近い将来にこれらの問題が検討される。日本としてもただ単に国際情勢待ちというのじゃなしに、もう少し先を見通し態度をきめる必要があるんではないかと思うのです。そこで私は締めくくりの意味でこういうお伺いをしたいのでありますが、よく言われております吉田総理はサンフランシスコ平和条約を結んだ。鳩山元首相は日ソの国交回復をはかった。私は岸総理に期待したいのは、これは日中国交回復をはかる、私はこれは戦後の日本の処理の問題としては一番大きな問題だと思うのですよ。平和条約、そうして不完全な平和条約を補う意味で、ソ連との国交回復、さらに中国との国交回復、これで戦後の重大な問題が処理され、今後平和的に日本が発展していくという基礎ができると思うのです。この問題を未解決に残して、ほかの問題に進展していくということは、大きな政治の道筋からいって、はずれている、そういう見解を持っているのです。いろいろ具体的には困難な問題があっても、戦後の処理として平和条約を完全に結んでしまう、これが日本に課せられた一番大きな問題でないでしょうか。私はそういう意味で、岸総理に、中国の北京に行きなさい、こういうことを私は言いません、また、中、ソ両首相を日本に招待しなさいこういうことも言いませんが、中国日本の首脳が一ぺん会ってお互いに意見を交換するという機会を持ったらどうでしょうか。私は、場所あるいは時期いろいろ問題があると思います。それらの問題は、適当な場所を考究して、一ぺんとにかく会ってみる、こういうことをお考えになったらどうか。私はきょうの質問を通じて日中関係打開に、私は政府を攻撃するつもりできょうは質問をしたわけではないのです。何らか打開の道を、私の質問を通じてできないかという心持で、私は質問をしたわけです。最後の問題として、私は、そういう気持さえあればそういう機会をとらえることができると思うのです。総理大臣が直接無理であれば外務大臣、この日中の首脳がある方法で会談をする、こういう機会を持たれることを切に私は希望をして日中問題に対する質問を終おります。もし答弁がございましたらおっしゃって下さい。
  129. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最初にお答え申し上げましたように、日中関係現状は、きわめてこれは不満足な状態であります。これを改善することが日中両国にとって非常に重大な案件であることは、荒木委員と同様に私も考えております。そのために、先ほど来申し上げておるように、政府としても決してただ単に静観して事の成り行きにまかしておるというだけのつもりではございません。しかし、今お話しのような、具体的に両首脳部が会談して率直に話し合いしたらどうかというお考えも、私は一つの傾聴すべき御意見だと思います。そういう時期であるとか、方法であるとか、いろいろな点を、今のような、表面的に現われたのでは、一切肯定のできないような状態のもとに、突如としてそういうようなものを提案するというようなことは、これは私はやり方として非常にまずいと思います。そういうことは、ある程度の準備とかいろいろな方法を講ずる必要があると思いますが、考え方としてわれわれはそういう適当な時期において、適当な方法においてそういうことを話し合って誤解を解くというような機会を持つということは、きわめて適当なことだ、こういうふうに考えます。
  130. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間が終了いたしましたが、荒木君。
  131. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 だから質問しません。日韓問題、あるいは日本と朝鮮との問題、あるいは防衛問題について質問をする予定でありましたが、時間がありませんので、これは次に譲り、私の質問を以上終わります。大臣には、せっかく御出席を願った大臣もあるのですけれども、そういう関係一つ……。
  132. 小林英三

    委員長小林英三君) 荒木君の質疑は終了いたしました。佐藤芳男君……。
  133. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行。先ほど防衛庁長官はもう二、三分したら見えるということで荒木委員質問をしたわけですが、結局済む直前に見えたのですけれども荒木委員質問の順序からいえば、質問が済むまで見えなかったということになる。
  134. 小林英三

    委員長小林英三君) 違いますよ。今委員長があなたに申し上げようと思った。きょう荒木君が、防衛庁の方から、質問者に承ったところが、きょうは要らないというわけで、そこで政務次官というので政務次官を出した。それでも質問をしないということであったから……。あなたの方からそういうことがありましたけれども、それは違いますよ。それでも委員長はすみやかに帰るようにと言って、ちょうど先ほど到着したところです。
  135. 秋山長造

    ○秋山長造君 今、私の言うのは、質問者が、朝か昼か知らぬけれども、要らぬとか要るとか言ったということとは別問題ですよ。さっき委員長は、われわれに、もう二、三分で防衛庁長官は見えるからと、こういうことをはっきりおっしゃったにもかかわらず、二、三分じゃない、二、三十分ですよ。
  136. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたの発言中ですが、私が申し上げたのは、横須賀に参りましたのは、その通りでありますが、今向こうを出発しましたから間もなく見えるということを申し上げたのです。
  137. 秋山長造

    ○秋山長造君 二、三分と言った。二、三分が二、三十分になった。しかも委員部から、防衛庁の政府委員から二、三分したら到着するという書きつけが二時八分にきているから、二、三分といったら二時十分か十一分でしょう、それが二時半になった。こんなばかなことがありますか、わが議員の質問の進行というものは、そのために重大な……。
  138. 小林英三

    委員長小林英三君) そういう無理なことを言っちゃだめですよ。(「委員長、怒らないであやまれ」と呼ぶ者あり)
  139. 秋山長造

    ○秋山長造君 委員長がそう言ったのだから、何か一言あいさつしなさいよ。あいさつした上で次に進みなさい。
  140. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長は、あなたに防衛庁から出たということは申し上げません。それは委員長は知りません。そういう無理なことを言ったらだめです。
  141. 秋山長造

    ○秋山長造君 無理じゃないですよ。二、三分というのに……。
  142. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について発言いたします。秋山委員のおっしゃったのは、なるほど質問者とも了解を得て行っていることは事実でしょう。しかし、先ほどから防衛庁長官を、昼の休憩後からあなたのところへ私は言っておいたのですから、そうしたら変更かどうか知らぬが、おくれるという話をされて、荒木委員質問はだんだん時間が迫ってきますし、われわれは早く出ていただきたいということで連絡をしたわけですよ。そうしたら、二、三分で来るというのを三時八分に持ってきたのは事実です。それから約三十分たって赤城防衛庁長官が見えられた。そこで、ここで委員長とけんかしてもしょうがないですよ。要は、議事進行をしなければいかぬので、やはり、けさも問題になりましたように、閣僚委員会にできるだけ出ていただく、しかし公務その他のやむを得ざる出張は、事前了解いただければ、それでも出てこいとは言っていない。なるべく出ていただくということにして、問題はだれが連絡したか知りませんが、二時八分に、二、三分で見えるというメモが来たことは事実です。そこを秋山理事はついたわけですから。しかし現実におくれているので、これ以上ここでけんかしてもやむを得ないので、やはり荒木委員質問は残っております。防衛庁長官に対するお答えをいただくようになっておりますので、その点は一つここでお答えをいただいて、防衛庁長官にも、時間はあなたが連絡したかどうか知りませんが、一応防衛庁長官は一、三分ということで待っていたのです。その点については、済まないということを言っていただいて、そうして答弁して下さい。
  143. 小林英三

    委員長小林英三君) 私は大臣の要求につきましては、皆さんの御期待に沿うようにしているつもりであります。従って、防衛庁長官は、ヘリコプターに乗って間もなく到着しますと言った。とにかくあまりあげ足を取られたら困る。荒木君に、防衛庁長官に対する質疑を一分間許します。
  144. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 一分間では問題にならない。
  145. 小林英三

    委員長小林英三君) 防衛庁長官から釈明を願います。
  146. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 急いで出て来たわけでありますが、大へんおくれまして、まことに順序を狂わして申しわけないと思います。急いだつもりでありますから、御了承願います。
  147. 小林孝平

    小林孝平君 関連。
  148. 小林英三

    委員長小林英三君) 何の関連ですか。
  149. 小林孝平

    小林孝平君 荒木君の質問に関する……。
  150. 小林英三

    委員長小林英三君) 荒木君の質疑は終了しておる。
  151. 小林孝平

    小林孝平君 あなた、勝手にそんなことを宣言して……。今、防衛庁長官が来たから、質問せいと言ったじゃないですか。
  152. 小林英三

    委員長小林英三君) 何の関連ですか。
  153. 小林孝平

    小林孝平君 だから、荒木さんの質問の途中でやろうと思ったけれども、それは理事の申し合わせで、なるべく質問が一段落したときやれと言ったから、それまで待っていたのです。
  154. 小林英三

    委員長小林英三君) 荒木君はまだ質問していませんよ、防衛庁長官に。何の関連ですか。
  155. 小林孝平

    小林孝平君 荒木委員質問に関しての関連ですよ。
  156. 小林英三

    委員長小林英三君) 防衛庁長官ですか。
  157. 小林孝平

    小林孝平君 いや、総理大臣
  158. 小林英三

    委員長小林英三君) 荒木君の質疑は終了しているのですよ。
  159. 小林孝平

    小林孝平君 あなた、勝手に、一方的にそんな宣言をして、何です。こっちは待っていたのだ。
  160. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは、荒木君から防衛庁長官に対して質疑を、それに対して答弁を許します。
  161. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の質問内容は、事前に長官の方へお渡しをしてあるはずです。一つは、防衛庁長官は、前に北海道で、第二次五ヵ年計画が終了する昭和四十年においては、日本の防衛予算は約三千億になる、こういうことを言っている。そこで私は、政府は、従来この防衛計画については国力に応じて漸増するという方針をきめておられる。そうすると、国民立場からいえば、どんどん働いて、国力はどんどんふえていく、それだけ防衛に予算が食われていくのだ、際限がないじゃないか、こういう問題があるわけなんです。一体この防衛計画というものは、何を基準にして計画されているのか。普通の場合は、これは、岸総理も言われたように、日本の防衛、自衛力、あるいは今度の安保によってアメリカとの軍事的な協力をするということは、これは侵略を防止するためにあるのだ、しているのだと、こういうお話です。そうすれば、日本の隣邦諸国においてどういう軍備の状況であるか、それが日本を脅威するに足る軍備を現在持っておるのかどうか、そういう点が実際上問題になってくると思う。そういう意味で、第二間としては、この日本隣邦諸国、特に台湾、フィリピン、中国、韓国、こういう国々の軍備の状況はどうなっておるか。これらの軍備を持っておる国々からの侵略というものを予想して、大体日本の自衛力漸増をはかっておるのかどうか。こういう点を防衛庁長官に聞きたい。こう思っております。
  162. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 最初の昭和四十年度末における防衛費をどれくらいに見ておるか。北海道で約三千億というふうに言ったじゃないかということに対してお答えいたします。昭和四十年度が第二次防衛計画の最終年度に当たるわけでありますが、そのときに約二千九百億ぐらいの防衛費というものを必要とするのではないかということを言ったことは事実でございます。それが、第一次計画が昭和三十五年度で終わりますので、実は三十五年度を始期として昭和四十年度までの六ヵ年計画を防衛庁としていろいろ検討をして参ったわけでございます。その防衛費のワクというものはどこできめるのか、こういうことであります。これは、総理がしばしば申し上げておりますように、日本の国力、国情に応じて最小必要限度、こういう抽象的なことにはなっておりますが、しかし、それの基点をどこに置くかといえば、結局、国民所得に対して何%ぐらいにやっていくかということに落ちつくかと思います。御承知の通り、昭和三十四年度の防衛費は、所得に対しまして一・七%であったのであります。しかし、国民所得がふえましたので、それより率が減りました。三十五年度の予算でお願いしておるのは、国民所得に対する一、四八%でございます。でありますので、昭和四十年度の国民所得を想定いたしまして、その想定に対して約二%をちょっと越すぐらいの程度まではいいのではないかということで、はじき出したのが二千九百億ということであります。しかし、第二次計画は今できておるわけじゃございません。六ヵ年計画を五ヵ年に直す必要もありまするし、そういう関係から、まあ今再検討を加えております。でありますので、財政当局ともまだ打ち合わせをいたしておりません。でありますので、これが確実に二千九百億、三千億ということにはまだ相なっておりません。それから、日本の防衛、日本を取り巻く国々が侵略するという、仮想敵国というようなもとで防衛の計画を立てておるのか、こういうお尋ねでございます。これは、総理もしばしば申し上げておりますように、世界の軍備といいますか、世界の国防というものが、相手国を占領して、相手国をたたきつけるというような国防、軍備から、お互いに世界大戦を避けようじゃないか、すなわち、戦争の抑止力、戦争の抑制力としての国防、軍備というふうに、世界の大国の軍備、国防が変わってきておる。こういうふうに私ども理解しておるのであります。従って、日本の防衛というものも、相手方を仮想敵国として見て、そこに侵略するとか、あるいはこれと戦うということよりも、やはりこの世界の戦争抑制力に日本自体の国力、国情に応じて協力する、戦争を避ける。しかし、そのためには、ある程度の精鋭な装備あるいは自衛力というものを持っておらなければ、そういうふうな機能も発揮できませんので、その意味におきまして、ある程度精鋭なものを持つということは考えておりますが、根本観念といたしましては、戦争の抑制力に日本の国力、国情に応じて協力していく、これが建前だというふうに私ども考えております。なお、日本の近辺、周辺を取り巻く各国の兵力量等でありますが、この各国とも、兵力量につきましては公表しているところはありません。正式には公表しておりません。でありますので、私どもも、正式にはこれの調査を受け取っておりませんが、予算教書等とか、あるいは国防白書等、あるいは新聞、雑誌その他によりまして調査をいたした資料は持っております。それにつきまして申し上げまするならば、日本をめぐる国として、極東のソ連軍でありますが、これは、陸軍が三十五個師団以下と見ております。約四十五万であります。海軍は約六百隻、トン数にいたしまして約五十万トン、潜水艦が約百十隻をその中に含んでいる。こういうふうに見ております。空軍といたしましては、約四千二百機の飛行機。それから第二の、中共でありますが、中共は、陸軍が約百六十個師団で、数は約二百五十万人、海軍は約二百五十隻、トン数にいたしまして約十五万トン、潜水艦約二十隻を含んでおるものと見ております。空軍は約三千機であります。それから北鮮でありますが、北鮮が、陸軍が十八個師団、五個旅団、約五十四万であります。海軍は約百隻、一万七千トン、空軍は約八百五十機であります。米軍でありますが、アメリカ軍は、地上軍が約三個師団、約九万人、海兵隊を含んでおります。海軍といたしましては、百三十五隻、五十万トン、その中には空母四隻を含んでおります。空軍が約千六百機。国府の方では、陸軍が二十四個師団、約四十万五千人、海軍が百八十一隻、十二万トン、空軍が約五百機であります。韓国は、陸軍十九個師団、六十万人、海軍が七十隻、三万八千トン、空軍が約二百機と、こういうふうに私ども調査は出ております。先ほど申しましたように、公表している国はありません。しかし、国防白書とか、あるいは予算等から推算いたしまして、大体今申し上げたものが日本の近辺を回るところの諸国の軍備と言いますか、軍の様相であります。(「それを資料として出して下さい」と呼ぶ者あり)
  163. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 もう一点。
  164. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間がありませんよ。
  165. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そんな、質問が何されてもしようがないですね。
  166. 小林英三

    委員長小林英三君) もうあなたの時間は終了しましたが、もう一点許します。
  167. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、私は岸総理にお伺いするのですが、今、防衛長官のお話のように、だんだんふえていく。一応二千九百という数字を出されたが、それはまだきまっていない、こういうことですが、私は、国力に応じた漸増計画というものをやはりこの際再検討される必要があるんじゃないでしょうか。この防衛予算が、国民が働けば働くほどどんどんふえていって、天井はないんだという、これが今の政策じゃないかと思うんですね。そういうことではいけないじゃないか。もう一つは、これは、安保条約に関連をして、今度の安保条約をやれば、日本の防衛力というのはふやしていかなければならぬのか。そのことを安保条約を通じてアメリカに約束しているんだ、こういうことがやはり今の防衛庁長官の話をもって裏づけることができると思うんですがね。日本はどんどんとにかく五年の後には三千億近い防衛予算が要るんだ、ふくれ上がっていくんだ、軍備は充実していくんだ、約束をしていないと言われても、事実においてこういう計画はどんどん進んでいくということになれば、これは義務づけられているという解釈が正しいのじゃないか、こういう見解を持ってくるわけですが、この際、明らかにしてもらいたいと思います。
  168. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国防会議におきまして、防衛の方針を数カ条にわたってきめております。そのときに、今の国力、国情に応じて効果的に漸増していくということをきめております。で、その国力、国情に応じて漸増する。これは全く日本立場から、日本の自衛力の増強の方針をきめているわけでありまして、従来この方針でやってきておりますし、将来もこの方針で進んでいくつもりでございます。ただ、具体的に国力、国情に応じてするものがどれだけであるかということにつきましては、これは、年々のこの予算編成の場合におきまして、われわれは、各種日本として行なわなければならぬという政策やあるいは財源の問題等々とにらみ合わせて、年々この予算に適当に計上していく、こういう方針をとっているわけであります。ただそれは、その場限りそのときの事情という、具体的には何でありますけれども、進んでいく方向としては、今言ったように考えているわけでありまして、この点は、安保条約ができたからどうだとか、安保条約ができなければどうだというのじゃありませんで、基本的には、従来やってきていることと同じことでありまして、それ以上を加重する考えはございません。第二次防衛計画の内容につきましては、今防衛庁長官が防衛庁内において検討しているということでございます。もちん、国防会議としては、防衛庁の検討の結果に基づいて、われわれは、広くこの政治全体から見て、この方針をどの程度認めるか、どういうふうにそれを考えていくかということは、これは防衛庁の立場だけから研究されたものをうのみにするというつもりはございません。広くあらゆる面から検討していくことは当然でございます。
  169. 小林孝平

    小林孝平君 関連。
  170. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単にやって下さい。
  171. 小林孝平

    小林孝平君 簡単にやります。先ほど台湾の帰属の問題について荒木委員質問をいたしました。これは明確でなかったものですから休憩をいたしました。政府から御答弁をいただくことになっている。それで、われわれは非常にこの問題を重要視しておったのでありますが、明確なる御答弁がなかった。しかし、これは荒木委員質問関係もございますので、一応終わってから質問をしようということで、われわれは待っておったわけであります。それで、これからその問題をいたします。そこで、その質問に入る前に、関連が大いにありますが、「日本国と中華民国との間の平和条約」の交換公文の第一号がございます。この第一号は、「本全権委員は、本国政府に代ってこの条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」こういう内容の交換公文が河田、葉両全権の間で交換しております。そこで、政府お尋ねいたしますが、この条項からいたしまして、金門、馬祖はこれに入るのでありますか、どうですか。日本政府としては、この交換公文から金門、馬祖を入ると考えておるのか、入らないと考えておるのか。それをお尋ねいたします。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その交換公文から、現に領有している所及び将来領有される所というのでございますから、金門、馬祖については、現に施政権中華民国の方で持っておりますので、入ることになります。
  173. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、簡単にして下さい。
  174. 小林孝平

    小林孝平君 簡単にと言ったってわからなければやめるわけにいかない。そこで、今の外務大臣の御見解ですが、総理大臣もそうでございますか。これは、いつからそういうことに政府としては解釈されておるか。
  175. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いつからといって、今お読みになりました交換公文が、現在そこを支配しておる場所はこれが適用になる、また将来入る場所は適用になる、こういうことを交換公文で明らかにしておりますので、現実に金門、馬祖に対して、今外務大臣が答えておりますように、そこを中華民国政府の方において事実上そこを支配しておるということを前提として入る、こういうふうに解釈しておるのであります。
  176. 小林英三

    委員長小林英三君) もういいでしょう。(「関連ないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  177. 小林孝平

    小林孝平君 関連あるのをこれからやります。これは前段です。中華民国の、中国というのはこれからやるのです。
  178. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の荒木君の方と関連する質問と認めません。
  179. 小林孝平

    小林孝平君 冗談じゃないですよ。
  180. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君単独の質問でしょう。
  181. 小林孝平

    小林孝平君 単独じゃないです。全部の委員で相談をいたしまして、政府の昼からの答弁はおそらく不満であろうから、われわれはこれを明らかにしなければならぬ。こういうことはわれわれみんなの意見なんです。
  182. 小林英三

    委員長小林英三君) それはあなたの……。
  183. 小林孝平

    小林孝平君 あなたのとは何ですか。関連するのですよ。関連があるのです。(「関連がないとと呼ぶ者あり)どうして関連がない、どうしてですか。聞いてみなければわからないじゃないですか。
  184. 小林英三

    委員長小林英三君) もう一点だけ許します。
  185. 小林孝平

    小林孝平君 あたりまえなんです。そこで、岡崎外務大臣の言った、台湾中国に返還されると、この中国は何であるかという政府の答弁は、昼から聞くということになっておりましたけれども、少しも明らかになっておらない。そこで政府は、台湾は放棄をしたのだ、日本は放棄をしたが、帰属については、われわれは現に発言権はないと言われたけれども総理は先ほども、カイロ宣言を含みポツダム宣言を受諾した、そこで、カイロ宣言の中には、明らかに台湾の帰属は中華民国となっておるのです。その中華民国というのは一体、そのときは一つしかありませんでしたけれども、その後この岡崎氏の言ったときは二つあるのです。人民共和国と中華民国。従って、その中国とはそのいずれであるか。岡崎外務大臣の言った中国というのは、二つの中国のいずれであるかということをわれわれはただしたのでありますが、それについて回答がありませんから、御回答願います。
  186. 小林英三

    委員長小林英三君) 総理大臣が言われたでしょう。
  187. 小林孝平

    小林孝平君 なかったのです。
  188. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、その場合における中国政府が二つある、どちらを正統政府として認めるかということについては、これは議論があるだろう。しかしながら、日本としては、当時中華民国政府とこの平和条約を結ぶにあたって、これが中華民国政府に属すると、こういうふうに解釈をしたわけでありまして、日本としては、この中国というものを代表する政府として中華民国政府というものを認めております。これと平和条約を結んだわけでありますから、それに属すると言ったのであります。
  189. 小林英三

    委員長小林英三君) 荒木君の質疑は終了いたしました。
  190. 小林孝平

    小林孝平君 委員長、これは重大な問題だ。全然それは違うんです。
  191. 小林英三

    委員長小林英三君) もう一ぺんだけ許します。発言して下さい。
  192. 小林孝平

    小林孝平君 これは、今おっしゃった台湾とのこの平和条約の締結の趣旨からも、総理の御答弁は非常に間違っております。これは、台湾の帰属の問題よりも、さらに日本中華民国とのこの平和条約の本質的の問題に関連する重要な発言をされております。従って、私はこれからそれを追及いたそうと思うのでありますけれども委員長はこれを許さないということでありますから、こういう重大な問題を許さないような委員会の運営については非常に不満であります。従って、これはあらためてわれわれは質問をいたしますが、委員長は、こういう運営の仕方をやっていいと考えておりますか。あなたは、私の質問をよく聞いておられれば、いかに重大な発言をされたかということがおわかりになるのです。あなたは、そこで何々君と呼ぶとか、あるいはやめなさいとか、簡単にとか、そういうことが任務ではないですよ。委員とのやりとりに、どこに誤りがあるか、よく聞いておらなければならない。あなた聞いておられないから、そういうことになる。
  193. 小林英三

    委員長小林英三君) よく聞いております。荒木君の質疑は終了いたしました。次は佐藤芳男君。    〔「議事進行について」と呼ぶ者あり〕
  194. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木君。
  195. 鈴木強

    鈴木強君 さっきの答弁がもう一つ残っているやつがあるのです。午前中わが党の木村委員から、日華の平和条約を締結する際に、アメリカはこの条約を締結する場合には経済協力を、要するに外資導入等の点を含めて日本に積極的にやるという話があったんだが、これについてはどうなのかという質問があったのですが、それに対して、外務大臣は午後答弁する際に漏らしておりますから、議事進行一つその点を明らかにしていただきたいことと、それからイーデンの回顧録については、あなたは読んでみると言ったんだが、いつごろ読むんですか。そしてそのイーデンの回顧録の当時の外交政策と日華の平和条約との関係、現在の岸内閣外交政策というものがどういう関連があるか。これは重大問題ですから、それも一つ大体のめどを、いつごろあなたは読んでわれわれに答弁していただけますか。その点を二つ。
  196. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イーデンの回顧録はロンドンから取っておりますので、まだはっきりいつ来るということは……。(「来たよ」と呼ぶ者あり)いや、来たということは申し上げません。ロンドンで出版されて、そうしてそれを外務省としては取っておくからということを申し上げたのでありまして、それの期日を申し上げるわけには参りません。また、その他の点につきましては、今朝来ここにおりますので、いずれゆっくりそういうところを調べました上で申し上げます。(「委員長議事進行」「答弁がない、外務大臣」「経済協力、外資導入はどうした」と呼ぶ者あり)本村さんの御質問で、当時の事情等についてはいずれその点の事情等を調べた上で、適当な機会に御答弁申し上げますということを申したつもりでございます。
  197. 小林英三

    委員長小林英三君) 佐藤君。
  198. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私は、この機会に、総理並びに関係閣僚の諸君にお尋ねいたしたい多くのものを持っておるのでございますが、時間がだいぶ経過いたしておりますので、きわめて簡潔に質問いたしまするから、御答弁もまた的確に簡略にお願いいたしたいことを、あらかじめ申し添えておきたいと思います。最近の国際情勢の分析につきましては、同僚の高橋委員からこもごも質問を申し上げ、これに対して総理より御答弁がありましたことにおいて、私は満足するものでございます。ただ、安保条約の問題ですが、私は安保条約の賛否をめぐるその論争の背景をなすものにきわめて重大な問題があると思うのであります。すなわち、私どもは、今日までよりもさらに歩を進めて、自由諸国と緊密を重要にいたしまして、そうして日本の発展をはかろうと。ところが、これに対して、一方ではいわゆる中立政策というものを掲げて相対蒔いたしているのでございます。私は、中立政策というものは歴史の経過と現実を無視した暴論であり、軍事評論家の言葉を借りますれば、むしろ日本を戦禍のちまたとするものである、こういうように言っておる軍事評論家すらあるのであります。また、これを経済的に見ますれば、貿易の点、特需の点、あるいはまた技術援助の点、そうしたものを考えまするというと、中立政策が日本の政策として取り上げられまするということは、これはきわめて損なことで、そういたしますれば必然的に自由諸国家との連携にひびが入る。ひびが入るということは、とりもなおさず、日本経済は収縮し、国民所得は低下し、国民生活は苦しくなる、こういうように私は考えておるのでございまして、従って、何としてもこの安保の改定案はこの国会中において承認されなければならぬという固い決意と希望を私は持っておるのであります。なお、この安保の問題をめぐりまして、中ソの方面からいろいろな声明や論議が行なわれておる。昨日の曾祢委員の御質問に対して、総理は、おおむね誤解に基づくものであるという御答弁でございましたが、私は、先様の誤解もさることながら、むしろ日本外交路線を、あわよくばこれを変更せしめたいという淡い希望を持っておいでの結果のかような反論である、かようにすら思うのであります。私はかように固く信じておる。ですから、この国会におきまして批准案が決定をするということになりますれば、その淡き希望は断たるるのでありまするから、その断たれた上に立って、日本が、先ほど来お述べになりましたような方針で、ソビエトなり中共なりとむしろうまく交渉が展開されるのじゃなかろうか、こういうように私は考えるのでございます。さらにまた、国内のこれに対する世論——昨日もいろいろとお話が展開されたのでございますが、従前、御承知のように、一部の扇動によって世論にあらざる世論が展開された。これはきわめて偽装された世論で、遺憾でございましたが、私ども自民党のPRの努力によりまして、だんだんと国民は安保の問題に対して理解を持つようになってきたと、私はこれまた固く信じております。こういうような情勢に立って私は、岸総理はみずから政府を代表し、首席全権として締結をされたこの条約でございまするから、ほんとうに大きな決意を持たれて、この国会にこれが通過するように最大の努力をささげられなければならぬ、私はそう思うのであります。なお、いわゆる単独審議の問題でございますが、私は幸いに民社党の方々がその成立宣言におきまして議会主義を尊重することを明らかにされておりまするから、審議を最後まで全うされることが期待されるのでございますが、なお社会党におかれましても同様な態度に臨まれると私は考えておる。しかし、かりに一部の者が最後の段階において審議権を放棄した、かようにいたしまして、また最悪の場合自民党だけで審議をするということに相なりましても、私は、これは厳密な意味において単独審議ではない。すなわち、審議というものは採決だけがその内容をなすものではないのでありまして、質疑応答を通じ自己の意見のあるところを述べ、それに相当日数を費やし、さらに、討論いたし、採決というものはその意思の表明であります。そういたしまするならば、この安保条約というものはすでにもう非常な審議が進んでおる。しかも、正式に国会に提案をされてから審議するといたしましても、衆議院においても今後審議を尽くさるるでありましょうし、参議院に回りましても、私どもは十分なる審議をいたしたいと思うのでございますが、(「委員長質問させなさい」「ちっとも質問していない。委員長注意しなさい」と呼ぶ者あり)従って、私はこの問題については答弁をわずらわす必要はないのでございますけれども、しかしながら、この安保をどうしても今日国会に成立せしむるというその熱意がどの程度かということを、私は岸総理にお伺いをいたしたいので、自分の政治責任として、必ずこの国会に成立してもらわなければならぬのだという、気迫に満ちた私は答弁がほしいのである。しこうして、また、解散のごときは私は必要のないことで、先ほど荒木委員の御質問に対しまして、国会審議を通じての話はされましたけれども、断じて解散は必要としない、解散する意思なしと、厳然とおっしゃらなかったのでありますが、この点も、一つ厳然と御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
  199. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日までの私の質疑応答で明らかなように、私は、国会において安保条約の問題については十分な審議を尽くし、審議を通じて国民理解を深めて、必ず本国会において承認を得るように、全力をあげて努力するつもりであります。また、解散の問題につきましても、しばしばお答えを申し上げているように、私は、解散する意思は持っておりません。
  200. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 なお、最近の国際情勢は、経済的にきわめて緊迫し、経済戦争はすでに始まっておる。この情勢に手をこまねいて、大きな努力を払いませんならば、悔いを千載に残すことはきわめて必定だ。この点について、幸いにもこのたびの安保改定には経済協力の条項もうたわれておりますが、この経済協力の条項は、アクセサリーであっては相ならぬのだ。まず、私は決してアウタルキーを意味するのではございませんが、米国、カナダ、豪州と結んで、経済圏というものをよほど大きな確固たるものとするのみならず、もちろん、東南アジアとも経済行為が遺憾なく発揮されなきゃならぬと思いますが、なお、中共との貿易——しばしば本委員会にも論議されておるのでありますが、この中共との貿易文化交流は、断じてゆるがせにすべきではない。一日もすみやかに、両国間の誤解の解消を熱願いたしまするものでありますが、それには、あくまでも政経分離の方針を堅持してもらわねばならぬ。最近、中共の御招待によって周首相と会談して帰国をされる多くの人々がございます。もちろん、百聞は一見にしかずである。私は、そうした御旅行を大きな価値をもってながめるのではございまするけれども中共が意図しているところは、眼光紙背に徹するの明をもって熟考する必要がある。百聞は一見にしかずであるが、百見また一考にしかずと私は考えるのでありますが、岸総理の御所見を承りたいのであります。
  201. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際経済に非常な密接な関係を持っておる日本経済の姿を考えますというと、日本の繁栄、これによって国民生活は向上し、その福祉を増強するという上から申しまして、日本としては、いずれの国とも経済交流を盛んにすることが望ましいと思います。私は、その意味において、単に自由主義の国だけではなく、また日本に近いところの東南アジアとか、あるいは日本が面しておる太平洋地域だけではなしに、世界のあらゆる国々とこの経済交通を盛んにしていくことが望ましいことであります。そうして、その意味において、共産圏との間の経済交流につきましても、日ソの間の貿易協定を、日ソの経済交流を盛んにならしめるように改善するということもやっております。その他の共産主義国との間にも、そういう意味で開いております。ただ、一番日本としては関心が深い中共との関係が途絶しているということは、私ども非常に遺憾と思います。これを改善していくことは必要でありますが、これにはいろいろと、今朝来荒木委員との質疑応答でも明らかなように、問題が複雑でございますので、私ども従来から堅持しております、とにかく今政治上の問題を解決するということは、国際的にもいろいろな困難な問題があるのだから、この問題と従来のように切り離しても、経済の問題はまず両国の国利民福のためにやろうじゃないか、こういう態度をやはり堅持して、日中の貿易の促進に努めたい、かように思います。
  202. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 さらに、私は、こうした経済競争に直面している日本が、これに勝って、国民の生活水準を将来欧米の水準にまで高めるためには、ただ単に対外経済圏の拡大をはかるだけでなしに、原子力の産業への利用、技術革新の推進によって、新たなる富の創造を考えなければならぬし、また国内資源の開発にも意を用いるとともに、サウジ、アラビアの海中油田開発のごとく、外国の資源の利用等も喫緊の要務と思いますが、政府は、だんだんと深刻化するこの国際経済競争に対し、いかなる方途に出られんとするか。総理、通産大臣、原子力委員長、科学技術庁長官のお答えを願いたいと思うのであります。
  203. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本経済の発展を考え国民の生活の向上を期する意味からいいまして、国際関係におきましては、先ほど来申しているようなことで進んでいくと同時に、国内におきましても、科学技術の振興や、あるいは日本の資源の開発、あるいはその他日本の産業の合理化等々、あらゆる面からこれを進めていく必要があると思います。
  204. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 なお、通産大臣に、一つつけ加えてお答えを願いたいと思うのでありますが、産業革命といわれておりまするこのオートメーション化でございますが、これによって生産技術の根本的の変革に対処しなきゃならぬ。民間産業の設備の更新こそ急務といわなきゃならぬのでありますが、その方策いかんという点。それから、特に中小商工業者につきましては、この技術革新に際して、これを取り入れるにきわめて困難だと思うのでありますが、中小商工業者に対しては何か特別な手をお考えでございましょうか。これも一つつけ加えてお答えを願いたいと存じます。
  205. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日本経済をもっと拡大し、国民生活の安定と向上をはかりますためには、これ以上の産業の育成をはかっていかなければなりません。その産業の育成のためには、まずやはり技術の革新でございます。われわれはこの意味におきまして、過去七、八年間、相当の技術革新をいたして参っておるのであります。御承知の通り、最近のわが国の技術革新、設備投資は世界の各国に比べて非常に大きいのでございます。国民所得の大体二割近い設備投資をしております。ドイツ、イギリスのほとんど倍近く、アメリカの三倍近くという急速な設備投資をいたし、設備の合理化、近代化、オートメーション化をやって今日の日本の隆盛を来たしておるのであります。私は、この傾向を今後とも進めていきたいと考えるのでありますが、また、技術の革新と同時に、国内資源の保護、できればわが国との関係の多いところの海外資源も続いて開発して、そして日本経済の拡大のもとを作りたい、こういう考えでおるのであります。今回、政府の方で企画しておりまする貿易、為替の自由化も、こういう意味から進めていっておるのであります。御質問のそういう場合における中小企業の問題、これは技術革新、あるいは設備の近代化等は、中小企業の資本力、あるいはまた技術面での素養等から、いろいろの立ちおくれの点がございますので、従来、中小企業の設備近代化、あるいは組織化、あるいは金融の面で努めて参ったのでございまするが、今後とも、中小企業の設備の近代化、並びにいろんな競争力に対しましての、いわゆるお互いの共同の力でやっていく育成、そしてまた中小企業の業種別の振興をはかっていく、こういう各方面からの中小企業対策を考えておる次第であります。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第二次世界大戦後、群を抜いて伸びた国はアメリカとソ連でございますが、これをよく調べてみますと、技術者の大量養成をやっておる。それから、自国の基礎科学技術に非常な力を入れて、各国の科学技術者を自分の国に吸収する程度にまでやっておるということ、これが、大きな原因のようであります。また、会社にいたしましても、国の内外を通じて見ますと、著しく伸びた会社は、ほとんど技術の革新を最初に手がけた会社であります。そういう状況から見まして、第二次世界大戦後の状況を見ますと、国家といたしましても、科学技術の大躍進を行なうということがわれわれの急務であると考えます。現に、国が富むということは、結局、日本のような場合は貧乏でありますから、頭を使って無から有を生ぜしむるという以外にはない。具体的にそれができましたのは、たとえば、日本におきましてもビニロンとかナイロンというものを戦前から非常な研究をいたしまして、それが戦後に芽をふいて参りました。現在これがため豪州からの羊毛その他は輸入が要らなくなったわけでありますが、その数量を調べてみますと、大体羊毛の、ヒツジの四百万頭分に当たるものが日本は要らなくなったということになっております。四百万頭分のヒツジというものは、九州の南半分ぐらいの土地がないと養えないそうであります。そうすると、日本はビニロン、ナイロンをやったために、九州の南半分ぐらいの領土を拡大したという結果にもなるわけであります。こういうわけでありますから、やはり何といっても大事なことは、日本の国産の技術を作るということだろうと思います。最近の例をお目にかけますと、たとえばエザキ、ダイオード、あるいは後藤博士のパラメトロン、これは電子計算機の基礎になるものであります。あるいはラェライト。こういうふうに、日本人の発明でも非常に優秀なものが出て参りました。私はきょう、ちょっと例を持って参りましたが、稲に放射線を当てます。そうしますと、これがその例でありますが、この農林八号という原種はこれです。この原種に燐の放射線を当てたのです。つまり、燐を水溶液にしまして、その中にこれを入れておいたわけです。そうすると、そこから出るベーター線がこの中の染色体を変化させまして、遺伝の因子を変えたわけです。それで出てきたものが、このまん中のやつです。同じ千粒入っているのですが、まん中のものは粒が非常に大きくて重い。約一五%余計増収ができる。こういう新しい稲というのが出てきまして、これは農林省の非常な努力でこういうものが出てきたわけであります。従って、これが全国に普及いたしますと、約一割ぐらいの増産になりますから、八千万石あれば八百万石ふえるということになります。それだけでも農民はずいぶん所得がふえますし、またはテレビやハンド・トラクターが買えるということになって、国内市場は非常に充実してくるというわけであります。これだけ見ても、やはり技術というものは非常に重要であるということはわかろうと思います。もう一つは、ここにありますのは合成樹脂に放射線を当てたのです。そうしましたら、欽より非常にかたくて、アルミニウムの半分の比重しかないという、またおそろしいものが出てきたわけです。これは京都大学の岡村誠三という教授が最近発見しまして、アメリカの・デルリンというアメリカで発明されたものをもはるかに凌駕する優秀なものができたわけです。これはバネですけれども、合成樹脂でできておる。このもとはホルマリンです。ホルマリンにコバルト60の放射線を当てると、こういう強いものが出てくる。従って、将来は自動車の部分品なんかはこういう合成樹脂でできるかもしれない。いや、もう少し進むと、鉄道の線路なんかもこの合成樹脂でできる。そういうところまで来ているのでありまして、日本のように鉄鉱資源のない国では希望が出てくるわけです。そうすると、製鉄会社も仕事を考えなくちゃならぬというふうにまたなっていくかもしれない。(笑声)こういうわけで、今、お笑いになっておるけれども、そういうことは現にもう出てきておる。従って、国産技術を日本で開拓するということはいかに重要であるかということは、わかるわけであります。ところが、遺憾なことには、一番国産技術の開拓のもとをやっておるのは大学の研究所とか、国立研究所です。その予算が実際は足りない。だから、何としてもこの予算をふやすということが大事でありまして、岸内閣になりましてから、相当この予算をふやして参りました。しかし、それでもまだ足りません。従いまして、今後とも努力を継続していくつもりでおります。しかし、一方におきましては、最近の技術が小さな研究所で個人の独創でできるという程度でなくなりました。化学者も物理学者も、機械も電気も、全部が協力し合って国家が中心になって大規模な研究をやって初めて発明ができるというふうに、状態が変わってきたわけです。従いまして、大学の先生あたりも、今までのように、象牙の塔にこもって自分の分野だけ守っているというやり方を改めていただいて、国家が中心になって大規模に開拓して協力していくという精神に変わっていただいた方が、私はいいと思うのであります。そういう改革すべき点もいろいろございますが、ただいま科学技術庁及び科学技術会議におきまして、十年後を目標とする科学技術政策をどういうように変えていくかという長期計画を策定しております。今秋までにできますから、できましたら、それを皆様に見ていただいて、ぜひお取り上げ願いたいと思う次第でございます。
  207. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 以上のように質疑応答を重ねて参りまするというと、感ぜられまするように、政府はこの際決意を新たにして、断固安保体制を完成するとともに、経済外交においても、内政においても、時代の要請に勇敢にこたえなければならぬと思うのでありますが、こうした立場から新年度予算を通覧いたしまするというと、案並びにこれに関連する重要なる事柄について、どうしてもただすべきはたださなきゃならぬ、解かるべき誤解はこれを解いてもらわねばならぬ、善処をしていただかんきやならぬものはどうしても善処をしていただかんきやならぬということになるのであります。まず、三十五年度予算は、その総額が一兆五千六百九十六億円に上り、前年度予算に比較いたしまして一一・三%の増である点においてます注目をせなきゃならぬ。国民経済の動向は三十五年度も、基調を変えることなく上昇の一途をたどるものとは思われますが、その伸びは、政府見解では六・六%と予想しておられる。すなわち、予算の仲びは経済成長率を約二倍ほど上回っている。予算として散布される金のほか、開発銀行や電電公社等の導入する外資百八十億円、その他を含めると、前年度に比較して約一八%という急激な増加を示し、経済成長率の約三倍に上っているのであります。そこで、私は、大蔵大臣、インフレの要因を内蔵していないのか、景気の過熱のおそれはないのか、一応心配せざるを得ない。この点、佐藤大蔵大臣に伺いたいのであります。なお、参考資料を見ますと、三十五年度は一千八百億の散布超過となっている。散布超過が放任されていれば、必ずこれがインフレの要因となりますことは明らかです。しかし、この散布超過分を消すだけの措置、たとえば貯蓄が前年度よりこれだけ上回る見込みであるとかいうふうに、散布超過を消すだけの措置をお考えでありますれば、これはまず心配はない。ところが、この一千八百億の散布超過を消すだけの十分なる措置がお腹にきまっていませんというと、あとになって、インフレのきざしが現われてきたからといって、最も、従来政府がやりましたように、安易な方策をとって金融の引締めと、こう出てこられる。そうするというと、非常に弱っておるところの中小商工業者や、困っておるところの農家にこれがしわ寄せされる。これは大へんなことになる。この点について大蔵大臣はいかなる考えをお持ちでございますか、お答えを願いたいのであります。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十五年度予算は、インフレにならないように、また経済の過熱というような現象を起こさないように、特に留意したつもりでございます。従いまして、公債だとか、あるいはインフレのおそれのある金は使わない、こういうことを厳にいたしまして、通常の際に経常の原資で、予算あるいは財政投融資計画を立てたわけでございます。なお、ただいま、前年度予算に対しての三十五年度予算の増加率に触れられましたが、私どもは、一般会計予算の規模は対前年度第二次補正後に対しましては四・八%、また財政投融資計画の増加率も五・六%、政府の財貨、サービス購入の増加率、これは八・五%、GNPの増加率は七・八%であり、国民所得の増加率は八・一%と、かようになっておりますので、この規模そのものから申しますと、むしろ三十四年度よしもやや内容的には堅実な予算規模ということが言える、かように実は考えるのであります。ところで、三十五年度の国庫収支は千八百億を見積もっておる。その散超で困りやしないかということでありますが、この千八百億の散布超過の内容を、これはもうすでに佐藤委員ご存じのことだと思いますが、そのうち百七十億が一般会計の散超であります。食管会計等で約百二十億。千五百億に上りますものは外為会計でございます。言いかえますと、これは大部分は国際収支の黒字から来るわけでございます。従いまして、この散超一千八百億というものはそういう内容を持つものでありますから、特に懸念するものではない。また、日銀の市中金融機関への貸し出し、これは現在約四千億程度になっておりますが、これがございますから、ただいまの散布超過千八百億というものは、この貸し出し源、この消化の方に役立つ、かように実は思いますので、経済はもちろん健全にこれを維持することができる、かように考えるわけであります。
  209. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 次に、この予算案は、昨年の伊勢湾台風による災害復旧を中心とした治山治水を推進し、総合的な国土計画を行なうため、膨大な資金を捻出する必要に迫られ、歳入面におきましては、租税収入を、前年に比しまして約二〇%に当たるところの二千百五十三億増の一兆三千三百六十六億三千万円と見積もっていられる。この租税収入の増加率は、本年度の経済成長率の六・六%の三倍以上であって、これだけの租税収入をあげるには、徴税にあたって相当以上の御努力が必要だと思うのであります。もちろん、努力すればこれだけ税収は可能であるというお考えで見込まれたのであると思いますが、しかし、問題は、現在の担税力が国民の担税力からいって私は限度だと思われる額を計上しておられるのであります。結果は、今後の租税徴収に余力を残さない。すなわち、税源の含みを余すところなくさらけ出して支払ったことになる。財政の担税力というものが失われておるりのじゃなかろうかという懸念がある。佐藤大蔵大臣は、三十五年度は減税は見送りたい、三十六年度においてはこれを実行したいと、かようにおっしゃる。私はそうした言明を無条件に信用申し上げたいのでありますけれども、三十五年度の財政に弾力がないというこのことは、三十六年度予算編成に際し、その他事務費も相当ふえる格好でございましょう。そうすると、剰余金が繰り越されない。それでも一体減税断行の確信がほんとうにあるのか。この点を一つ承りたいのであります。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十五年度の税収の見積もりは、最近の経済界の好況、その結果でございます。で、特にこの財源確保のために、私どもは、徴収機能を強化する、そういう措置をとるつもりは毛頭ございません。また、国民負担にいたしましても、今日より以上に負担を高める、これはもちろん避けなければなりません。しかし、ことしのように景気がよろしいと、どういたしましても、いわゆる高額所得者に対する税が累進税律でございますから、総体としての税収の伸びが当然あるわけであります。今回の見積もりにいたしましても、昨年末におけるこの予算編成当時に考えられるその資料に基づいて計算いたしたものでありましてもちろん、これをとることについては確信がある。収入確保の確信はございます。しからば、同時にあとまだ余裕があるのかどうか。隠し財源でもあるのかという御意見であろうかと思うのでありますが、もちろんそういうものはございません。ございませんが、今日の経済の好況を維持して参りますれば、三十六年度におきましてもさらに相当額の増収は見積もり得る、かように実は確信をいたしておるのであります。もちろん、三十六年のことでございますから、数字をただいま御披露をいたすわけには参りません。しかし、相当の自然増収は計画し得るだろう、予定し得るだろう。そうしてまた、支出の面におきましても、経費の節減もはかりましょうし、あるいは特別な災害等がないならば、その支出の方でもこれを減らすことが可能だ。一面、御指摘のように、支出の当然増がございますから、それらのものを考えましても、国民あげての要望である税制改革と申しますか、減税計画は何としてでも考えて参りたい。さようなことには、ただいま調査を進めております税制審議会におきましても、それぞれ結論を出しつつございますから、それらの点を勘案いたしまして、三十六年度以降においてこの減税を実施して参りたい、かように実は考えておる次第でございます。
  211. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私は、ただいま御答弁の中にありましたように、財源は一応全部さらけ出したんだ。しかし、堅実な佐藤大蔵大臣のことであるから、必ず隠し財源は持っていらっしゃる。あの大津絵の歌の文句の一つにあの梅川忠兵衛を歌った文句がある。二日、三日と逗留して二十日余りに五十両、使い果たして二分残る。あれだけの金使いの荒い忠兵衛さんでも二分だけはちゃんと残しておいた。堅実な佐藤さんのことだから必ず隠し財源は持っていられると、こう思ったのだが、それは依然として隠し財源は持っていない。しかしながら、経済の成長、伸びというものが必ずあるから、たとえば、ことしまた伊勢湾台風みたいなものが起きても心配するな、こういう意味にただいまの御答弁を拝聴いたしたのでありますが、これは私はここでどうしてもくぎを打っておきたい点がある。これは増収をはかるために、自然増収をはかるために簡単な方法がある。ちょっとインフレ傾向にされればすぐに税収は増してくるんですよ。私はこの際、大蔵大臣に言明をとっておきたいことは、これから生ずることを予想されておるところの余裕財源、その確保のためにちょっと手ごころを加えて、インフレの助長などを展開したら大へんなんですが、この点は絶対そういうことはないという、こういう言明を一応承りたい。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申し上げますように、予算の規模にいたしましても、財政投融資にいたしましても、健全財政の線を貫いて参りましたことは、ただいまの御指摘になるインフレを起こしては相ならないということでございます。歳入はふえましても物価がより以上に上がっているというような事態が起これば何にもならないのですから、そういうことのないようにするためにどこまでも御協力を願っておる次第であります。
  213. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 次に、この予算との連関において、財政投融資計画についてお尋ねをいたしたいのであります。三十五年度の財政投融資は、前年に比して一四%に当たるところの七百四十三億円を増加して五千九百四十一億円となっております。まず、その金のもととなるいわゆる原資、その資金の構成を見ますというと、これはちょうだいいたしました表に明らかでございますが、私はその内容について疑問が二つある。その第一は、財政投融資としてこのような多額の民間資金を千百十五億でしょう、民間資金というものを見込むということが一体妥当であるか。民間資金は本来、民間資本として、民間の各種産業の所要資本として活用するというのが筋道である。この計画のように財政投融資に千百十五億も振り向けるということは、これは民間産業の発展をはばむという理由になりませんでしょうか。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 民間資金と国家資金と合わして使う、これが本来の財政投融資の計画になるわけでございます。従いまして、民間の資金の協力を得る額がいわゆるただいま御心配になりますように民間産業に悪影響を与えるような金額かどうか、言いかえますと適正なる規模の金額かどうかということになるわけであります。ただいま御指摘になりますように、ことしは千百十五億、昨年は一体どうだ、八百八十八億であります。しかし、災害等のあとはさらにその金額がふえて参りまして、改訂計画では九百二十八億になっております。それらの点を考えますと、今回の金額の増は八百八十八億に対しましては非常にふえたと、二百二十七億だ、かように言われますが、ただいま申し上げますように改訂後の計画に対すると、これは百八十一億程度でございます。さらにまた、この中には電電債、鉄道等の借りかえ分が百十五億もございます。さような点を考えますと、規模といたしましては、私どもは適正な規模である、かように考えておりますので、御心配のようなことはないと思います。
  215. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 次に、やはり今の原資の内容でございますが、簡易保険と郵便年金の積立金は郵政省で自主運営をしているのに、厚生年金の積立金だけなぜ大蔵省が握って厚生省にお渡しにならぬか。厚生年金の積立金は、言うまでもなく被保険者の千数百万の勤労者及び事業主の出した保険料からできております。その運用の果実というものは、これは直接に保険料を拠出した者に還元するのが筋なんであります。ところが、この積立金は資金運用部で一括運用しておるために、この積立金がかせいだ利子は今度は郵便貯金の赤字補てんにまで使用されている。厚生年金の被保険者、事業主に対して、これはあなたは良心の御苛責はございませんか。これを厚生省に移すというようなお考えはございませんか。これは大蔵大臣に伺うとともに、やはり厚生大臣にこれは御関心をお持ちだろうと思いますが、まずもって厚生大臣の御所見を承りたい。
  216. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 二十九年の厚生年金改正法の際におきまして、衆参両院の附帯決議をもちまして、これは保険者、被保険者の福祉施設に対しまして、できるだけこれを運用すべきである、こういう要望がつけられているのでございまして、今、私どももせっかく関係各省と協議中でございます。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 資金運用部資金に預託いたしまして、そうして財政資金として一体とし、また総合的に運用するということがもちろん必要なことだと思います。ただいま御指摘のような点についても、いわゆる直接還元ということはもちろん私ども考えます。ただいままでも一五%についてはこれを直接還元するという方法をとっております。その他の面は資金運用部資金に預託して、財政投融資計画として国の必要なあるいは住宅であるとか、あるいは環境衛生のものであるとか、あるいは産業基盤の強化とか、そういう方向に使うのがいわゆる還元になることだと、かように私ども考えております。
  218. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 ただいまのお答えですが、私は筋からいって、やはりこれは厚生省におまかせになるべきことだ。そうして事業主と勤労者代表と学識経験者と、そうしてあなたの部下と、それから厚生省の者、こういう者でやはり運営委員会でも作って、そこで十分審議をするということを条件にしてこれは厚生省にまかすべきものである。ただいま大蔵大臣は住宅とか医療の問題とか、こういうように還元しているじゃないかとおっしゃいますけれども、大蔵省が握っておりまする関係からしてこれはきわめて窮屈なんです。かつて小笠原君が大蔵大臣のときに、私は衆議院で厚生常任委員会において、これを徹底的にやった。そうしたら小笠原君はどうかもち屋はもち屋にまかしてくれ。そのかわり従来よりも還元するその額を増すからなんと言って、妥協させられた苦い経験がある。今度は国民年金も拠出年金がいずれは始まりましょう。そうなってくると、今のうちにここで是正しておかないと、この国民年金の問題がまた出てくる。これは今ここで御方針を変更しなさいとは申しませんが、十分一つ御研究を賜わりたい、かように思うのであります。次に、社会保障関係についてお尋ねをいたします。私は、国を強からしむるものは戦力ばかりじゃない。勤勉な国民、生活を楽しむ国民であると申したいのであります。国家によってその一定水準の生活が守られているときに、初めてすべての国民は国を愛し、国をみずから守るところの情熱を燃やすのであります。国が国民生活について最終の責任を持つこと、明らかにする制度、それがすなわち社会保障制度なんです。岸総理がかねて社会保障の推進に熱意を有されるものであることは、国民皆保険計画ないし国民年金制度の実施等によっても明らかでありますが、社会保障の使命実現の立場から、この程度で決して私は満足せないのです。私は満足はいたさぬのであります。第一に取り上げられる問題は、社会保険を含めて広義の社会保障制度のために、三十五年度の予算はいかなる考慮をはらわれたかという点であります。ところが、わが国には、社会保障を総合的に扱うところの独立の省がないので、全体としてのこの社会保障予算は、きわめてつかみにくい。すなわち、国民の生活を保障する制度は各省に分散していて、それを全部捕捉し、その数字を集計することは、なかなか容易なわざではない。厚生省の所管事項は、必ずしも全部が直接社会保障に向けられたものではないにしても、少なくとも、その大部分というものは社会保障予算を形成するものと認めて大きな誤まりはない。また次は、労働省の所管事項のうち、失業保険とか失業対策事業費等は、雇用保障として社会保障の一環をなすことは論を待たないところでありますが、一体私は、これは総理にも一つ心していただきたいと思うのでありますし、これは政府全体の問題でございますが、社会保障の予算の総額が、毎年幾らであるということが発表されますが、それはきわめて狭い意味の社会保障の各項目を取り上げた集計なんです。今、政府が集められているのは、大体項目的に申しまするというと、生活保護と、それから児童保護、その他社会福祉費、それから失業対策費、社会保険費、国民年金費、こういうものを集計して社会保障費でござるとおっしゃっておられる。ところが、当然保健衛生費、結核対策費、その他公衆衛生関係費及び国立病院の一般会計繰入金、療養所の経費等、こういう保健衛生費も社会保障の重要な内容なんです。また住宅対策費もその通り。遺家族、留守家族の援護費もその通りです。文官恩給費、軍人恩給費、共済組合の国庫負担分、これはみな社会保障費なんです。私は毎年そうした意味で計算をしている。そうしますと、私の計算によりますと、昭和三十四年度は二千九百四十七億円、新年度予算は三千三百七十三億円となっている。しかも、これは私の我流でこんな計算をしておるのじゃありません。国際連合の統計年鑑をお読み下されば、ちゃんとこの項目はきまっている。一九五九年の年鑑を一つ御一読を願いたい。私は大砲とバターの比較、すなわち、防衛費と、それから社会保障費を比較することは、歳出の一部と歳出の一部だけを比較することは、これははたして妥当かどうかは知りませんけれども、これは私の計算からいきますというと、防衛費と社会保障費の隔たりは、実に莫大な数字なんです。これは私ども政府与党として説明するのにまことに都合がいい。私は毎年それをやっている。こういうような今日の間違った仕組みは、これは答弁は要りませんが、今後是正をしていただきたいと思うのでありますが、こうした社会保障という、国の責任において国民の生活を守るところの仕組みは、それぞれの国の歴史によって、並びに経済的、社会的の条件によってもちろん違うのであります。わが国の社会保障制度というものは、戦前はドイツの制度にのっとり、戦後は英米の影響を受けて社会保障制度を作り上げ、形態としては一応整備されたかのごとく見えるのでございますけれども、その実態は、まだなかなか十分とは申しかねる。制度全体として見ますると、均衡を失っていることが非常に多く目につく。そこで、社会保障をこれから推進するその当面の目標として、私は、逐次一つ私の所見を述べつつ政府の御見解を問いたいのであります。ます第一がILO条約の批准について申し上げるのであります。百二号であります。ILOの一九五二年の条約の第百二号に盛られているところの社会保障の最低基準は、最も私は適切なものだと思うんだが、まだ批准されていない。社会保障の専門の学者、私どもの意見からいたしまするというと、政府さえその意思があれば、わが国としてもこの百二号は批准可能であると思われるのであります。政府は、失業保険、疾病による生活保障、それから厚生年金制による廃疾保障等、すでに国内の制度がこの基準に達しているものを中心としてこの条約を批准し、その他の保障、すなわち医療保障、老齢保障、遺家族保障等についても、逐次その基準にまでこれを高めるように措置をとるべきであると思うが、政府の御所見を承りたいのであります。
  219. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) ただいま佐藤委員からお申し述べになりましたように、このILO百二号は、ただいま九種類というものが問題になっております。そのうちの三種類が該当いたしますれば、ILO百二号の条約が結ばれるという、こういう運びになっておるわけでございます。今のところ、疾病給付と失業給付の三つが該当いたしております。先般来いろいろ問題になっておりまする一部階層に対するところの分娩給付というようなもの、もしもこれが話がつきまするならば、これはILO百二号条約の批准が近いうちに私どもは行なわれるのじゃないかと、かように考えております。
  220. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 ただいまの御答弁でありますが、労働省所管の失業の方、これはもうはや大丈夫。それから疾病の点に関する労災の問題については、多少これは欠くるところありという現状でございますが、これもこの国会に労災保険の改正案を出されている。これが通過すればこれまた資格あり、それからあなたの所管の方におきましては老齢と廃疾と遺族、それから健保ですが、廃疾の方はこれはもう大丈夫です。これは多少欠くるところありというのが、あなたの事務当局のお話ですけれども、これは日本におけるILOの支局におきまして、特に委員会を開いて、そしてこれはもう差しつかえないという烙印を押している。私はこの際、ILOの支局の委員会で決定したものが決してあなたの部下の方々の意見よりも頭がよくてまさっておるとは論断しませんけれども、とにかく、世界ILOの日本の支局においてこれを認めておるのを、これがもしも、私は憂えるところは、老齢とか遺族であれば目立つからいいけれども、廃疾なんぞということを一つ取り上げるのはあまりどうも問題が小さ過ぎるから、合格しておっても合格せざるがごとき言葉をお使いになる、そういうおそれはないのかということを非常に私は遺憾に実は考えておる。さらにまた、健康保険でもいい、健康保険における医療給付の方はだめでございますが、傷病手当、これもILOの日本支局におきましてこれも合格ときめているのでありますよ。だから三つそろうのです。四つもそろうのですよ。そうすると、日本のこれからの社会保障を推進していくというお気持がおありならば、合格できるものが三つでいいのに四つもある。それをまず合格さして批准をなさって、それを土台にして他の条件に満たざるものを逐次一つレベル・アップをしていくということも、社会保障推進の一つの大きなポイントでなければならぬ、かように思うのでありますが、この点は一つ御研究を願うということで、時間がありませんからけりをつけておきます。次は、総合調整の問題に触れなければならぬが、わが国現在の社会保障はまことに複雑であってその全貌は専門家といえども容易に把握しがたい。それは相互間の連絡調整ということが非常にうまくいってない。特に長期給付の年金制度にあっては、その受給に必要な期間を満たさないで職場を転じた者は、結局において年金を得られないまま放置されておる。これら複雑な各種制度を総合調整し、特に年金については、その受給資格期間を通算するということでなければならぬと思うのですが、政府は具体的にこの問題をどうお考えでございましょう。
  221. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 通算いたすこととなっております。その準備といたしましては、本年六月ごろをめどといたしまして、大体の結論を得たいと思います。そして来年の拠出年金の開始されまする四月までに立法措置を講じたいと、かように考えております。
  222. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 それでけっこうでございます。なお、総合調整に関する事務的な問題以外に大きな問題は、公的医療機関と私的医療機関の問題、社会保険と医療機関の問題であります。わが国の医療制度は自然発生的に開業医制度を基盤として発達し、そのため政府は従来何ら計画的規制または助成の挙に出でず、自由企業的な運営のままに放置され、続いて公的病院の設置を見たが、それも国立、公立や職域的病院が都市を中心として設置され、ために診療所と病院、病院相互間のせり合い、医療機関の都市集中化・無病院、無医地区の放任、医療資本の重複投資等の不合理が累積して今日に至っており、その結果、国民医療給付にはなはだしい不均衡を生じておる。そうして国民医療費の増高を来たしながら、これに対応する医療内容の向上を期し得ないという矛盾がだんだん増大しつつある。私は政府国民皆保険の画期的計画を進め、着々と実績を上げておられることに敬意を表するのでありますが、この日本の現在の医療制度をこのままに放置しておかれますというと、皆保険のごときは半身不随に陥ることをおそれる。ことに医療問題にまつわる諸情勢というものは、これを放任することを許さない状況になっている。私は政府がすみやかに国民の医療費の負担能力に応じた高度の医療を全国民に給付するために、医療機関の合理的配置と運営について新たなる方途を示すとともに、医療担当者の不安を除かなければならぬ、かように思うのでございますが、厚生省と日本医師会との間で、いわゆる例の甲表、乙表をめぐって紛争し、まだ委員の選出も見ていない。私はこの際、厚生大臣として厳然たる態度をとっていただきたい。また同時に、穏やかな態度をとっていただきたい。たとえば政府は断じて医師会とか、そうした医療担当者のためのみをはかるということであってはならぬと同時に、また、この医師会なら医師会というものを無視しては、これは医療行政を進めていくのに非常に困難を感じる。従って、この医師会に迎合しちゃならぬと同時に、また医師会の協力を得なければならぬというこの両立しがたい二つの命題から適当の結論を得るという方針のもとに、今後の医療行政を考える、すなわち公的医療機関と私的医療機関、これを併設していくのだ、未来永久に。全部医療を国営にでもされては大へんだという不安がお医者さんの中にある。日本の開業医制度の特殊性というものも、これは等閑に付し得ないのでありますから、ぜひ一つ今申し上げた二つの両立しがたい命題から適当の結論を得て、そうして当面の問題を解決され、また日本の現在の医療制度を一つ合理的にその配置と運営についてはお考えを進めていただきたいということを私は申し上げたいのでありますが、厚生大臣の御所見を承ることにいたします。
  223. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 三十一国会提出いたしました医療法の改正等によりまして、医療機関の適正配置ということも考えております。それから公的医療機関に対しまして、いわゆる還元融資であるとか、あるいは起債であるとか、あるいはまた国庫補助というものもございますが、私的医療機関に対しましては、いまだ何もなかったのでございますが、このたび幸いに私的医療機関に対しましては、国民医療金融公庫というものができましたわけでございます。この医療金融公庫によりまして、いわゆる適当な措置によりまして、国民医療の向上のためにあらゆる万全の措置を講じたいと、かように考えております。
  224. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 ただいま厚生大臣よりお話の出ました医療金融公庫の問題について一言いたしまして、そして厚生大臣の御返事をいただきたいのです。この公庫は、私なんぞ改進党所属時代であった当時から、野党でありましたが、時の吉田内閣に強く要求した問題であった。ところが、このたび岸総理の社会保障に対する熱情と、佐藤大蔵大臣理解もさることながら、これはまさに私は渡邊厚生大臣の大きな功績だと思います。これはほんとうに私は心からそう思っている。しかし、この医療金融公庫の運営を万一誤るといたしますれば、これはあなたの九仭の功を一簣に欠くということに相なる、従ってこの運営の問題はきわめて重大でございます。それで私はもう時間が迫まって参りましたから、ちょっとメモしてきたやつを読み上げますが、これから私が述べまする施設に要する資金は、原則として貸し出しの対象としない、すなわち第一が、都市偏重を助長する結果とならないため、病床数、医師数が公国平均を上回る地区の新設または増床。二、公的医療機関の配置されておる地区及び配置が予定されておる地区にして、その診療圏内にある医療機関の新設または増床及び高価な医療機械器具。三、老朽施設の建てかえについても原則として、今申し述べました二つの項を準用する。次に述べる施設に要する資金は優先的に貸し出しの対象とするということ、その第一は、無病院、無医地区及び著しく医師数、病床数の不足地区における病院、診療所の新増改築及び医療機械器具の整備。二、公的医療機関の配置されていない地区にして、地区七ンター病院としての実質を持つか、持ち得ると思われる病院の新増改築及び医療機械器具。こういうようにやってもらえば、この医療金融公庫設立の趣旨に全くかなう、なお、つけ加えて申し上げたいことは、この措置に伴って、公的医療機関に対して、大臣が医療法第三十五条の第二項に基づいてその検査設備を解放しろ、地区のお医者さん方に解放すべきことを指示してもらわねばならぬ、オープン・システムに対する指示は、今日まで一つもなされたためしはないのでありますが、これを契機として三十五条の第二項を一つ発動してもらう。こうなれば非常に工合がよくいこうと思うのでありますが、渡邊厚生大臣の御所見はどうでございますか。
  225. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) いろいろごもっともな意見でございまするが、ただいま貸し出し業務規定を検討中でございます。
  226. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 先ほど来私が申し上げておりましたことを、総理大臣も熱心にお聞き下さったようでございますが、ここで私は総理大臣に伺いたいのでございますが、日本の社会保障制度は、実に今日ばらばらの姿なんです。仕事が各省にまたがっておる、調整すべき多くのものがある。それからまた、もうやめてしまっていいものもある、足踏みをさせておかなければならぬものがある、また飛躍させたいと思うものがある、またつけ加えなければならぬものもあります。そういう大事なときに、これはばらばらで少しも統制がとれていないのです。だから岸総理のごとく、社会保障は自分の看板の大きな一つだと、こう言っているのでありますから、この際厚生省を廃止して、その所管の事項と、各省にまたがっているところのこの社会保障関係の仕事を一つにまとめて、たとえば社会保障省というがごときものを、お考えになる必要があろうと思うのでございますが、これは言うべくして実行はなかなか困難だ。これは総理大臣でなければできない、各省にまたがっていますから。従って社会保障に対して相当の熱意を有される、相当の政治力をお持ちであるところの岸総理にして初めてできる。私はこれはぜひ一つ総理大臣から、これを断行してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  227. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の社会俣障制度は、今お話のように、いろいろその間において総合的でない、またまちまちに発達したというような沿革から見まして、社会保障制度の完備を期する意味からいって、はなはだ望ましくない状態があることは、私も承知いたしております。それについて社会保障省というふうに一つの行政機構を改めて、社会保障制度をそこで総合的に統一してやっていくということが、社会保障制度を前進せしめる意味からいって、きわめて重要であるという御意見につきましては、大いにわれわれも考えなければならぬ点があると思います。従来もそういう御意見をある方面からも聞いて、政府としても研究をいたしておりますが、何分行政機構の問題につきましては、その影響するところがいろいろな点にございますので、私はこの内閣一つの大きな政策としましても、行政機構を簡素化して、そうして重点的に国策を遂行するようにしなければいかぬという意味で、行政管理庁初めそれぞれの関係において、研究を命じております。十分一つ御趣旨の方向で検討いたしまして、これが結論を得るように努力をしたいと思います。
  228. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 もうこれでやめますが、最後に一つ岸総理並びに国家公安委員長に御所見を承りたいのであります。私は今日わが国内外の青勢が最も憂慮すべき段階にあると考えております。それは国家の最も大事な基本問題を決するに当たって常に全く相反する理論によって、妥協のない、融和のない論争が繰り返され、これに大衆が動員され、大衆の威力によって、議会主義をも否定しかねない暴挙が行なわれているからであります。ある団体のごときは、合法、非合法は力関係で決定するとさえ公言してはばからない。昨年十一月二十七日に行なわれた安保改定反対の第八次統一行動の際にも、東京地評、日本共産党、全学連の三者が、秘密裏に組織したところの秘密司令部が事前に作戦を練り、その通りに行動したといわれているのであります。これにはひとり全学連のみならず、日教組のような公務員が参加していることは、大きな問題であります。去る一月十六日、岸総理初め全権団の渡米に際しましても、これを阻止しようとする学生三百名が大挙空港のターミナル・ビル内に乱入し、七十七名という検挙者を出しましたが、その後も彼らには反省の色もなく、去る二月二十八日開かれた全学連の中央委員会では、唐牛委員長の、羽田デモは正しいとの報告を支持しております。しかもこれらの法秩序を乱す過激な不法な行動や、公務員の違法行為が内にあっては公党の支持鞭撻を受け、外、ソ連、中共から激励されておる現況は、いやしくも国家の安全と国民の幸福を願う私どもにとりましては黙過し得ざるところであります。昨年十一月二十七日の国会構内不法占拠事件の際、学生の中には国会を占拠せよとか、あるいは市街戦も辞せずとか、まことに不穏な文書が組織的に流されたと聞きますが、およそ日本国憲法と、そのもとに成立した法的秩序を破壊し去るがごとき言動が平和民主の名において公々然と行なわれることは、国家、社会の基本秩序を根底からゆり動かす危険があるとともに、私はまことに憂慮すべきことだと思います。今や新安保条約が今国会に上程されまして、これが審議に入っておりますが、私の調査によりますると、安保改定阻止国民会議は、三月十九日に予定されておる第十三次統一行動には、最大の実力行使を計画しております。この機会に特に私は次の点に関して総理の御所信を伺いたいのであります。それは一つ日本国憲法及びそのもとに成立しておる政府や法的秩序を転覆する目的のもとに、指令によって活動している公共企業体職員を含む公務員が、現在各官庁及び公共企業体に八千名以上あるのであります。私はその内訳は特に申しません。しかもこの中には国立、公立大学の教職員も含まれており、これらの者は上からの命令、鉄の規律によって統制されておる。従って国家公務員であれ、地方公務員であれ、いずれに属していようとも、その機関の指示があるときは、職務上の秘密を漏洩したり、生命を越えた政治行動に出るものであって、これは民主主義の基礎を危殆に瀕せしめるものである。たとえば税務署の職員が、あの大阪の民主商工会の役員の要請によって秘密資料を提供したり、官公庁内で職務上知り得た秘密を提供して、反国家的活動に寄与し、あるいは公務員でありながら、その命令指示のもとに募金活動や、また選挙の際の投票の獲得工作などを行なう事例が多いのであります。公務員の反国家的、反民主的法秩序否認の行為について総理はどのように考えておられますか。私の聞くところによりますと、アメリカのごときは共産党員の政治活動等を規制する一連の反共立法がありまして、共産党員は公務員になれないとのことです。米国初め自由国家には——イギリス、西ドイツ——こうした規定が、法律が厳然として立案され、実施されておる。各国のこういう例を総理は御承知であろうと思いますが、どうでしょう。
  229. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最近、大衆運動等におきまして、いろいろ民主政治の基本である法秩序を守るということについて、実力でもってこれを無視するような傾向がややともすると、いろいろな方面に見受けられることは、まことに民主政治の上から申しまして憂うべき事態であると思います。政府は特に今おあげになりましたように、公務員、公共企業体等の職員が、こういう運動に際して本来の職務を、職場を離れ、また公務員としての当然行なわなければならぬ仕事から離れる、逸脱するというような事態に関しましては、それぞれの所管の大臣におきまして、厳にそういうことのないように事前に戒告もし、注意を喚起しておる次第でございます。しかし不幸にしてその注意にもかかわらず、そうした逸脱した行為が生じ、法に違反するという場合におきましては、やむなく法によるところの処置を講じておることも御承知の通りであります。私は公務員諸君がこうした戦後に見られているような逸脱した行為を一日も早くやめて、そうして本来の公務員としての地位並びに職務というものにかんがみて、大いに自制されることを特に要望してやまないのであります。また公務員制度について、もしくは共産主義等の取り締まりについて各国におけるところの立法例等も、それぞれの関係におきまして、もちろん資料として研究はいたしております。が、同時に、日本の憲法におけるところの基本的人権の擁護の問題、その他とも関連をするのでありますから、そうした問題については、私は慎重に検討を要する問題だと思います。しかし、要はやはり民主政治を守るために民主的に設けられたところの法秩序に対しては、これを順守するということが社会の動かすべからざる基準となっていかなければ、結局治安の問題と申しますか、社会のこの生活上の平和と安全というものは確保できない、こう考えます。
  230. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私は国家公安委員長にちょっと伺いたいのでありますが、破防法は今日行なわれておる。ところが、これはさっぱり活用されていない。私はきわめて遺憾に考える。全学連に対しても、ようやく一月の十八日に破壊的容疑団体としてこれをお考えになったぐらいの程度です。私はたとえば、共産主義の非合法化を、これは憲法の問題もあってなかなかめんどうでしょうが、かりに現在ございまするところの破防法でも、それに携わるところの役所の方が間違った自由に迎合せんとするのか、その法律の運用に対しって敏活な行動をとっておられない。今後どうなさるおつもりですか。これは委員長、ちょっとお答え願いたい、あなたから。
  231. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 破防法の問題でございますから、私からお答え申し上げます。破防法の適用につきましては、法律の性質自体慎重に処置しております。最近において各種反民主的活動が破防法に当たるかどうかということにつきましては、公安調査庁として十分に慎重に調査をされております。まだ今の状態において適用されるということはございませんが、今後その活動のいかんによっては厳然たる処置をもって臨むつもりでございます。
  232. 小林英三

    委員長小林英三君) 佐藤君、時間がございません。
  233. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 これで私の質疑は終了いたしました。
  234. 小林英三

    委員長小林英三君) 佐藤君の質疑は終了いたしました。次は、松澤兼人君。
  235. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちょっと議事進行について。台湾の帰属の問題について、私に対する岸総理の答弁と、小林委員に対する答弁との間に食い違いがあります。問題の重要性にかんがみ、委員長は直ちに委員長理事打合会を開き、速記録を調べ、その取り扱いを善処せられたいこう思います。
  236. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の荒木君の御発言につきましては、明朝でも調べました上で、理事会を開いて、もし相違があれば適当に善処いたしたいと思いますが、今日は予定通り、佐藤芳男君が済みましたから、松澤兼人君の御登壇を願います。(「あしたやるか、今やるか、相談しなければだめだよ」「やる必要はない」「進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)それから、速記録の点でございますが、今事務局に聞きますと、速記録がまだ調製中でございまして、今直ちに間に合いませんから、委員長が先ほど申し上げましたように取り計らいたいと思います。松澤君。(「ちょっと、今の議事進行きちっとして下さい」「進行」と呼ぶ者あり)今の委員長の申し上げたのでわかりませんか。
  237. 鈴木強

    鈴木強君 それについてですよ。ちょっと聞いて下さい。委員長のおっしゃったことの中で、ちょっとわれわれの方から見ると困る点があるのは、領土の問題で、それがどっちを向いているのか、ちょっとわれわれよくつかめないものですから、さっきの質疑打ち切りの際にも、あらためてわが党の持ち時間の中で明らかにしようと言って、質疑を打ち切っているのですよ。従って、次の松澤委員にその点をやっていただく手順になっているわけです。だから、議事録の調製がつかぬということはどういう意味かわかりませんが、おそらく午前の、午後の分に越しましても、速記録がわからぬということはないと思うのです。そういう点を明確にしていただいて、その問題について松澤委員質問をしていただこう、こういう予定でございますから……。
  238. 小林英三

    委員長小林英三君) それは、速記録を今調製中でございますから、調製した速記録を見なければわかりませんから、今日の松澤君の質疑を終えましたらば、今日理事会を開いてでもけっこうです、速記録ができておればけっこうでございます。さよう取り計らいます。
  239. 鈴木強

    鈴木強君 委員長はもう少し聞いて下さいよ。
  240. 小林英三

    委員長小林英三君) 聞いております。
  241. 鈴木強

    鈴木強君 聞いておったら、私が発言をしている間に、委員長は自分で発言できるわけだから、おやりになっていると思いますけれども、やっぱり私の最後まで聞いていただきたいと思うのですよ。松澤委員外交問題を中心にして荒木君とやることになっているわけですよ。お互いにそれは党内のことではありますけれども、そういうスケジュールを組んでおるわけですよ。従ってこれから立っていただく松澤委員に、さっきの問題点を明らかにしていただいて、それから入ろうということを考えているのですからね。ですから、質疑者の立場考えていただきたい。だから、調製が多少かかるとしても、その点を一つ明らかにするためにさっきの議事進行が出たのですから、その点を理解していただいて、質問者立場を……。
  242. 小林英三

    委員長小林英三君) それは委員長として質問者のおっしゃったことよくわかっております。ただ、速記録を見ないことには食い違っているかどうかわからぬものと思いますから、速記録を調製してそうして今日閉会後、もし調製ができておりましたら、今日直にち理事会を開いてもけっこうだと皆さんがよければ……。   —————————————
  243. 小林英三

    委員長小林英三君) 松澤兼人君。
  244. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第一に岸総理にお伺いいたしたいことは、総理も御自分でそういうことを言われておりますが、また、新聞論調などを見ましても、新しい安保条約ができて、日米の間には一つの新時代、日米新時代が来たというようなことを言われているのであります。日米新時代ということは、言葉は非常に美しい言葉でありますけれども、われわれが危惧いたしております点は、申すまでもなく、もし日米新時代というようなことが、安保条約の改定という問題にからんで、そういうことが言われ、また、そういう概念ができ上がっているとすれば、これは重大な問題であります。    〔委員長退席、理事館哲二君着席]日米修好百年という記念すべき年であるというような意味でありますならば、それ自身多少の意味を持っているかもしれません。岸・アイク共同声明の中にも、新しい時代である、新しい関係であるとかいう言葉が使われているのでありますが、まず第一に、岸総理とされて、日米新時代ということにつきましては、どういう内容であるか、あるいは総理の信念というものが那辺にあるか、お聞きいたしたいのであります。
  245. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日米新時代という言葉を私自体公式に、正式に使ったことはないように思いますが、問題は、この二年半前に私がアメリカをたずねまして、アイゼンハワー大統領と会談をいたしました。日本が亡の平和条約によって、日本の独立を回復したとは申せ、日米の関係から見ますというと、長い間の占領の時代を通じて、その後におけるいろいろな関係というものが、ほんとうに日米が対等であり、日本の自主性が完全に認められておるというふうなこの基礎から見まして、遺憾の点が多々残っておったのであります。私は、日本が国連に加盟し、さらに国力も、国民努力によって回復してきた、従って、今後日米の関係は、占領時代の考え方を一切払拭して、真に対等の国として、両国理解と信頼の上に協力関係を作っていく、こういうふうにしなければいかぬということを申し述べ、アイゼンハワー大統領もそれを了承して、そういうふうな見地から、今後日米の関係一つ考えていこうというような話し合いをいたしたことがございます。私は、これはとにかく、占領時代より残っておったところのいろいろな日米関係において、日本の自主性と日本の独立性を十分に確保するために、遺憾なものはこれは改めて、そうして日米が真に信頼と理解の上に立って協力して、両国の繁栄と世界の平和に寄与するということを念願しておるわけであります。占領時代からの関係から見るというと、それを払拭して新しい対等の関係に立つ、こういう意味で当時日米の新時代ということが言われたように記憶いたしております。そういうことが、今度の安保条約の改定におきましても、とにかく日米が対等の立場で、日本の自主性を認めるというような意味において、残っておる現行の条約を改定するということも考えておるわけであります。
  246. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 戦後処理という点からいいますならば、先ほど荒木委員からお話がありました中国関係の戦後処理、つまり国交の回復ということがやはり考えられなければならないのであります。アメリカとだけ新しい関係を出発させて、依然として中国なり、または日ソの間には、共同声明ができておりますけれども、まだ平和条約というものはできておらない、そういう全般の問題を考慮しながら、日米の間に新時代というものを出発させるということであるならば、意味があることであります。しかし、一方は何ら放置して顧みない、ただ一方だけを新しい関係を出発させるということは、いわゆる日米関係だけが強調されるわけであります。われわれは、こういう点を従属的な関係であるというように見るのであります。なぜ、それでは、戦後処理という点から考えてみるならば、日ソの関係であるとか、または日中の関係であるとか、そういうことに御努力なさらないのか。
  247. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソの関係あるいは日中問題について努力しないというふうな松澤委員の御質問でございますが、私どもは、日ソの関係をこの共同声明に基づいて進めていくように、あるいは貿易の問題であるとか、あるいは文化交流の問題であるとか、その他の点についてそれぞれ進めております。ただ平和条約ができてないじゃないか、平和条約の問題は、なるほど残っておるのであります。これは御承知の通り、領土問題に対する両方の主張が全然相反しており、そうしてこれをいろんな点から考えてみてこれをそれでは平和条約締結ということでいきなりこの領土問題を持ち出して議論していくならば、私はせっかく積み上げつつあるこの共同宣言に基づいての日ソの関係というものを——これはまだまだ、今持ち出してこの問題についての両方の意見の相違について何らかの妥結点を認めるというような状態に私はなっておると思いません。そういう際に、ただいたずらに平和条約を持ち出して、この問題について両国の主張の違いをさらに激化させるということは、決して望ましいことじゃないと思う。また、日中問題につきましては、いろいろな御意見もございますし、本朝来荒木委員に対してお答えを申し上げましたように、私どもとしては、私ども考えに基づいて現在の状況をただ放置さしておくとか、あるいは現在の状況に満足しておるのだというような意味ではございませんけれども、これにつきましてもまたいろいろな関係がございまして、私どもの期待しておるような改善が、結果として行なわれておらないということにつきましては、まことに私も遺憾に考えます。しかし、これをただ放置しておるというふうには、私ども考えておらない次第であります。
  248. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 静観するということは結局放置しているということでしょう。何か積極的に御努力をされていて、そして静観ということはあり得ないわけであります。静観ということは放置ということと同様だろうと思うのであります。そういう点考えてみますというと、私どもは、日中関係や日ソ関係というものを調整して、初めて日本が独立性を回復する、あるいは自主性を回復して戦後処理というものが完全にでき上がる。初めてそれで日本国際社会の一員として貢献することができるということになるのだろうと思うのであります。そこで、先ほど総理が言われました自主性の問題であります。しかし、今後の安保条約というものを考えてみまして、自主性あるいは独立性が回復されたというふうに言われるのであります。それはそういうPRをわれわれも聞いております。しかし、われわれの立場から申しますと、旧態依然たるものでありまして、新安保条約日本の自主性あるいは独立性を著しく回復したというふうには考えられない。もし真に総理が新しい安保条約を作るという場合に、真の日本立場からの自主性ということであるならば、とかく行政協定なりあるいは前の安保条約というものが憲法を逸脱しているという世論の批判を受けて、そこでその条約の行き過ぎを憲法のワクの中におさめるということが真のわが国の自主性と独立性を確保するゆえんである。これを放任しておいて、あるいは第三条の、能力を維持し発展させるといったような、再び憲法のワクをはみ出すような規定を盛った新しい安保条約というものを締結されるということは、真の意味における日本の自主性の回復ではない。もし真に自主性を回復するということは、今申しましたように、このはみ出しているところの前の安保条約あるいは行政協定というものを、これを憲法のワクの中におさめるということで、初めて自主性というものが回復される。そうであるならば、岸総理の言われるところの自主性と独立性というものが、新しい安保条約によって確保せられたのだということを国民自身も認めるでありましょう。その点はいかがでございますか。
  249. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは、現に日本憲法の範囲においてしばしば申し上げておる通り、今度の安保条約の改定も、国連憲章のワクと日本憲法の持っておる特殊性というものを大前提として、この中において日本の安全を確保するための防衛の条約を結んだわけでありまして、憲法の範囲を逸脱しておるとは私ども毛頭考えておりません。
  250. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先般、本会議におきまして私も質問いたしたのでありますけれども、砂川判決は、もちろん最終的な判決ではございません。しかし、裁判所の一部分には、確かに行政協定が憲法違反であるという判決がある。まだ最終判決ではございませんから、これに対しましてどうなるかということは、われわれとしましてもにわかに予測することはできませんが、一方では司法部内におきましてもそういう見解を持っておるのに、自衛隊を持つことは少しも憲法に抵触しない、あるいはまた、自衛能力というものを維持し発展させることも、あるいはまた、バンデンバーグ決議を日本が容認することも憲法違反でないというふうに言われることは、これは一方的であり独善的であって、むしろ先ほど申しましたように、憲法のワクの中に一切の日米関係をおさめるということが適切妥当である、こう考えるのであります。こういう司法部内の意見につきましては、総理としてどういうふうにお考えでございますか。
  251. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 砂川判決はこれは最高裁の判決でございますから、これを政府も尊重していかなければならぬことは言うを待ちません。それはいろいろ裁判の関係におきまして一審、二審等においてこの砂川判決と違うような趣旨の判決が行なわれたことのあることも承知いたしておりますけれども、やはり最高裁において最後の判決が下されたことに、政府としてはこれを尊重していくということでなければならぬと思います。
  252. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 なお、自主性の問題につきまして、岸総理は一九五七年六月に岸・アイク共同声明というものを発表せられております。その中にアメリカ軍の漸減、特に地上部隊のすべてを明年中に撤退させるということを共同声明としてうたっておられます。これはどの程度までこの共同声明が実行せられたのでありまするか、この点をお伺いいたします。
  253. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話の三十二年六月には、在日米軍の数は約十万人でございました。それが逐次撤退いたしまして、現在は約五万二千人でございます。ほとんど地上部隊は、管理補給部隊だけが五千人残っておるだけで、ほとんど戦闘部隊は撤退しておるという状態でございます。
  254. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この点、完全なる地上部隊あるいは陸軍の明年中における撤退ということが必ずしも実行されておらない、これに対して岸総理はさらに在日米軍の減員、減少というようなことを共同声明に基づいてアイゼンハワーに、アメリカ政府に要求されたことはございますか。
  255. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、防衛庁長官からお話を申し上げましたように、陸上部隊としては補給管理の部隊が、人員が少数残っているだけでありまして、私のあの共同宣言をいたしました際に考えました陸上部隊のように、戦闘、いわゆる戦闘部隊というものは声明通り撤退を行なっておるのであります。そのほか、海上の部隊やあるいは航空部隊の方につきましては、これも日本の自衛隊の能力の増強とにらみ合わせて、将来にわたってアメリカとしてもやりたい、漸減方式を取って参りたい、いろいろなこれらの部隊に属しておる施設等につきましても日本に返還しておるものがいろいろあることも御承知の通りでありまして、私はアメリカとしても誠意を持って、あのときの話し合いの趣旨に従って行動をいたしておる、かように考えております。
  256. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 さらにお尋ねいたしたいことは、第六条のいわゆる基地の供与の問題でありますが、これは多少その目的のうたい方において違っておる点があります。しかし、わが国の国土の全部にわたって無条件に基地がほしいと言われれば提供するということは前の安保条約と現在の安保条約とでは全然違っておらない。アメリカは自分の国を中心といたしまして、各国との間に相互防衛条約であるとかあるいはまたSEATOであるとかANZUSであるとかいったような条約を締結しているんであります。日本のように、全国どこででもアメリカ軍が駐留でき得るという、こういう条約の形式というものは、他にもたくさんございますか。
  257. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の全国に基地を置きますことは、日本政府との話し合いによって決定しているわけであります。ただアメリカが欲するからといって、そこに基地を設定できることではございません。
  258. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 条約の文面から見れば確かにそうでありましょう。しかし、実質的にアメリカの戦略的な地域に対して駐留させるということは、これは一方的な要求である。それに対して拒否したという、そういう事例がございますか。
  259. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こまかい、そういう話し合いにつきましては、政府委員から答弁申し上げますけれども、今日まででも協議をして話し合いで決定いたしておることに間違いございません。
  260. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 米軍の施設の要求に関しまして日米合同委員会にかけまして協議するわけでございますが、日本側といたしましてはその状況をよく調べました上、イエス、ノーの回答をいたすわけでございます。今までの実績から見ますと今確実の数を手元に持っておりませんが、最近二、三年の状況で見ますと、要求数のうちおそらく五分の一あるいは二くらいの程度のものが協議が整っておりまして、その他は大部分撤退を求め、あるいはそれの承諾をいたしておらない、こういうような事情でございます。
  261. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私が申しましたのは、そういう重要なる施設の提供の要求があって、これを日本政府が拒絶したという事例を聞いております。具体的にお答えできるならばしていただきます。(「資料について詳しく具体的にやれよ」「資料持っていないのか」と呼ぶ者あり)
  262. 館哲二

    理事(館哲二君) 政府委員の方でどうですか。
  263. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行について。こういう重要な問題について、事務当局に資料も何にもないで、ただ五分の一とか五分の二とかいうような答弁をして、それで済むと思ったら大間違いだと思う。そんなことは答弁にならぬです。具体的に資料はないのですか。はっきりして下さい、重要な問題です。
  264. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) ただいま直ちに、具体的な事例を調べまして、後ほど御答弁いたします。
  265. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は、こういうことは公式の問題ではないと思いますけれども質問の趣旨というものを聞かれましたときに、基地の状況ということは、政府の係りの方には言ってあるわけでありまして、基地の状況やあるいはまたそれに関連する問題は、書類を持ってきて、質問されても答弁できるような態勢を作っておられるはずである。(「きょうは打ち切りだ、こんなことで進められやせぬ」と呼ぶ者あり)
  266. 館哲二

    理事(館哲二君) 早くできますか。(「休憩々々」「無責任じゃないか」「実際ふまじめだ」と呼ぶ者あり)
  267. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行。こんなばかな状態はないですよ。事前通告してあるのに、何にも資料を持って来てないというのはふまじめきわまると思う。そんなことで質問続行せいと言ってもそれは無理ですよ。きょうはやめましょう。頭を冷やして、資料を整えて、あしたの朝出直そうじゃないですか。そんなばかなことはない。(「委員長きょうはやめなさい」と呼ぶ者あり)
  268. 館哲二

    理事(館哲二君) 今すぐに届けるそうですから、いま暫らく……。(「やめやめ」と呼ぶ者あり)暫らく……。今すぐ参りますから。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  269. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  270. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を起こして。松澤君、質問台においで下さい。
  271. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 答弁の前に申し上げておきますけれども、記憶にある二、三の事例というようなことでは私は満足いたしませんから、(「その通り」と呼ぶ者あり)具体的例、日米行政協定に基づく合同委員会の協議のととのったもの、ととのはないもの、事例をあけて説明して下さい。
  272. 小林英三

    委員長小林英三君) 松澤君に申し上げますが、松澤君も御承知のように、この間の理事会におきまして社会党の方からそういう資料を御要求になられました。理事会の決定事項といたしましては、合意に達して実施に移した事項について、関係省と協議の上、できるだけすみやかに予算委員会提出するということを理事会で決定いたしましたことを、この席上において委員長から御報告申し上げた通りであります。そこで、今承りますと、この米側の要請のうち同意したのは約五分の一か五分の二であって、同意に達しなかったものの問題について、資料ということであったように聞いておりますが、その問題につきまして丸山調達庁長官から答弁を。
  273. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 米軍の要求がありまして、当方においてこれを承諾しない、つまり向こうの要求を受け入れておらないもの、従って合同委員会の取りきめていないようなものが大部分でございます。そのうちのおもなるもの、私、今資料を取り寄せておりますが、一例をあげますと四国、徳島の海に関する訓練場の問題、また山口県の大田演習揚を空軍の飛行訓練に使う問題、これらは大きなものでございますが、いずれも断わりまして、提供の要求を撤回させております。
  274. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今、政府委員の答弁を聞きました。しかし米軍から行政協定に基づいて要求をしてくる、それを行政協定に基づく日米の合同委員会というもので話し合いをする、いいもの、悪いものというふうに分けるだろうと思うのですが、その手続きは一体どういうことになるのですか。
  275. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 基地に関する米軍の要求は、行政協定にあります通り、日米合同委員会で取りきめます。従いまして合同委員会では、基地の問題を専門に取り扱う施設特別委員会というものを設けておりまして、そこに米軍から要請が出されるわけでございます。これを受けまして日本政府は、関係機関、現地、すべての状況を調べまして、その委員会を通じて協議折衝する、その上でこれを承諾するもの、あるいは断わるものを分けまして、承諾するときまったものは合同委員会の正式の決定に移し、この決定について両国政府が提供の合意をいたすわけであります。以上のような手続きであります。
  276. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 一言お願いいたします。私は、この問題につきましていろいろ疑義があるけれども、これは質問の本質ではない。そこで、この問題に私時間をとられたら、あとの時間がなくなってしまいますから、手続き上の問題でありますから、これは別ワクとしてお許し願います。
  277. 小林英三

    委員長小林英三君) 別ワクと申しますと、時間的な問題でございますか。
  278. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうです。
  279. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間的に、この問題について別ワクをもらいたいという意味ですか。
  280. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうです。
  281. 小林英三

    委員長小林英三君) それで、程度の問題でございますが……。
  282. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先般、木村委員から、資料の提供を要求いたしまして、委員長先ほど申されました、具体的な事例であって合意に達したものは、追って資料を提供する、こういう話でありました。しかし、私は考えてみますのに、私が要求いたしました、重要なる米軍の基地提供要求というもので、合意に達しないものを、政府委員が、ここで予算委員の要求があって、そういうことを、相当多数の事例にわたって、報告ができるかどうかという点、疑問を持っている。おそらく先ほどは事例を申し上げますというふうにおっしゃったのでありますけれども、これは、やはり庁内の問題としましては相当重要な問題ではないかと思う。米軍が、どこの基地を、重要な所を要求してきた。日本政府が、それを断わった——合意に達したものは別ですよ、現実に土地の買収とか何とかということが行なわれるわけでございますから。それを断わったものまでを政府委員がここで述べるということは、果たして妥当であるかどうかという問題が一つ起きてくるだろうと思うのであります。あなたが発表できないとおっしゃれば、できないものはわれわれとしても要求できませんから、それで了承せざるを得ない。できるとおっしゃるから、具体的な事例を出してくれ、こういうふうに申した。そういう具体的な例を相当数にわたって、実際の資料に基づいて発表できますか、どうですか。
  283. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 合同委員会を通じまして基地の提供問題を協議いたします際に、日本側としていろいろな事情に基づいてこの要望に応じられない、こういうものに関しまして、これは合同委員会としてこの要求を撤回する、というような形のものは非常に少ないのでございまして、この折衝過程におきまして日本側の状況を米側が知りまして撤回していると、そういうものが大多数であります。従って、そのうちの、こういう所にも要求があったんだがこれは断わったというものを、これは何も合同委員会の合意議事録ということではなしに、お識し申し上げて差しつかえないものがあると私は思っておりますので、そのうちのおもなるものを先ほど申し上げた次第でございます。
  284. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほどの二つの問題は、どういう地域でどういう目的のためにどのくらいの広さを提供してほしいという、そういうことに対しては何ら言及がない。徳島県と山口県でこういう場所があったというだけです。これでは私は具体的な事例をお示しになったとは考えられません。そこで、一体あなたは、いつになれば書類に基づいてこの委員会にそういう資料をお出しになるお見込みを持っていらっしゃいますか。
  285. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 米軍の要求に応じていないところの事例が非常にたくさんあるのでございます。従いましてそれの一々の実情を全部と御要求されますと、私には一両日、日をかしていただきたいと存じております。
  286. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 重要なる事例でありますならば、明日朝ぐらいまでに出していただけますか。
  287. 小林英三

    委員長小林英三君) 丸山長官、はっきりとあいまいでなしに、出せないものは出せないと……。
  288. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 大きな問題のものについて出せる程度のものは明日に間に合うと存じます。ただしお断わり申し上げておきますが、先ほども申しました通り合意議事録という形のものを提出することになるのではなくして、こういう要求があったものについて、これこれのものを断わっておると、この実際の実情を私提出したいかように考えておるわけでございます。
  289. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、あした資料の提出がありましてから質問することにいたしまして、私、質問を保留しておきます。
  290. 小林英三

    委員長小林英三君) 松澤君にお伺いしますが、このあなたのきょうの御質問時間を全部保留するというお考えですか。
  291. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういうことにしたらどうですか。
  292. 小林英三

    委員長小林英三君) その他の要求大臣に対する質疑はどうですか。その点はどうなりますか。
  293. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 質問の組み立てがあります。ここを骨組みにして、いわゆる日本の自主性の問題と独立性の問題について論及しようとして、その資料を実は要求したわけであります。これがはっきりしますと、いかにも岸総理が言われるように自主性があるのだと、独立性があるのだという了解に達することはできるわけです。
  294. 小林英三

    委員長小林英三君) ただ松澤委員委員長としてお尋ねしたいと思いますことは、今の丸山長官の回答を聞いておりますと、果たして明日までにあなたの質問を御続行になるに満足すべきような資料が出るか出ないか、……(「それは委員長おかしいよ」と呼ぶ者あり)ただ全部の質疑をここで保留なさるというから聞いているのです。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  295. 小林英三

    委員長小林英三君) ただあとの質疑を御続行願いたいと思うのです。
  296. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について。それだから委員長考え方もわかるのですよ。しかし松澤委員質問の内容というのはこの問題を中心にしてほとんどこれがからまっているのですよ。だからこれが明らかにならないとできないというのが真相です。だからさっきからわれわれは執拗に資料の要求をしています。全部出すことは一両日待ってくれというのですが、大体の重要なところは明日までに間に合うと言っているのですから、一つ委員長においてここは良識ある判断をもって明日に質問を回わしてもらいたい、そう思います。
  297. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、ただ鈴木君にお答えしますが、今後の予算委員会の運営の問題にもからんできますから、きょうはこういう資料がなければどうという前もってのことがないわけで、突発的に起こった今の資料の問題だと思います。従いまして、(「事前通告してあるんですよ」と呼ぶ者あり)松澤君の要求大臣もたくさん出ていることでございますから、余った時間においてそれらの質問をやっていただいて、そうして明日今の調達庁長官の資料に基づいてお願いしたいと思っているわけです。
  298. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 せっかく張り切って質問をしようと思っておりましたのに、どうも途中から水が入りまして、しかも先ほどの続きの質問は後日に譲って、別の問題について質問してもらいたいという御意向のようでございますので、全く唐突でございますけれども貿易自由化の問題について、関係閣僚に御質問申し上げたいと思います。  そこで昨年の十月東京でガットの総会が終了しましたときに、池田通産大臣に、今回のガットの東京総会の成果についてどういうお考えを持っておられるか、ということを質問したのであります。ところがそのときは、池田通産大臣はあまりぱっとしたような成果を考えておられなかったようであります。ただ自由化の趨勢がだんだんと高まってきつつある。わが国も多少それの準備をしなければならないというふうに御答弁なすったと思うのであります。その際に、私は、ガットの三十五条の問題が、わが国の貿易の伸張のために相当に拘束をしているのではないか、これを各国及びガットに対して、この除外を話し合うべきではないかということを申し上げたのであります。池田通産大臣は、その点について努力をするとおっしゃったように記憶しております。現在におきましても、イギリスを初め十四ヵ国は、ガット三十五条の援用をしているわけであります。その後の交渉の経緯等御説明願えたらけっこうだと思うのです。
  299. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ガット三十五条の援用撤回の問題につきましては、日本としても非常に深い関係を持っておりますので、この点についていろいろガットと折衝いたさなければならぬことは当然でございます。現在国会に出しておりますスイスとのガット加入の宣言の問題、関係樹立の問題につきましても、ああいう関係を通じまして、ガット三十五条の問題を解決したい。また、英国につきましては、今日通商航海条約の問題を取り上げまして、ガット三十五条の問題をわれわれも主張をいたしております。それからマラヤとただいま通商交渉をやっておりますけれども貿易協定をやっておりますけれども、これまた最恵国約款に類するものまで設定できるように進めております。従って、これができますれば、ガット三十五条の援用撤回が行なわれることになろうかと思っております。豪州等につきましては、御承知のかうに、先般の通商協定、三ヵ年の期限でもってやっておりますので、近く三十五条の援用撤回を声明する時期がくるのではないかと思うのであります。われわれといたしましては、三十五条の援用撤回の問題については、できる限りの折衝をするつもりで努力をしております。
  300. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 岸総理は、先般旅行に際しまして、イギリスにおいてマクミラン首相とこの問題を討議し、しかも共同声明を出されたように承っているのでありますが、具体的にイギリス首相と岸首相の間にこの問題についてどういうお話し合いがございましたか、お聞かせ願いたいと思います。
  301. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、外務大臣がお答え申し上げましたように、イギリスとの間におきましては、一方、通商航海条約の締結の問題が従来話に出ておりました。ガット三十五条の援用の問題に関連して、この通商航海条約の締結の問題も、交渉が事実上進行しないという状況にあったわけでございます。そのときに私参りまして、いろいろ話し、日英両国経済関係貿易関係をスムーズにするためには、ぜひガット三十五粂の援用をやめてもらいたい。現にいわゆる英連邦諸国におきましても、われわれの主張に対して漸次これを認めて、これが撤回に踏み切るような情勢であるから、それに対しても、イギリスとの間における、ガット三十五条をイギリスが援用しているということは、日本としては、単にイギリスだけの関係でなしに、英連邦諸国との関係もあるから、ぜひこれを進めてもらいたいという話をいたしたのであります。一方、イギリスとしては、原則的にそういう考えはもっともであるけれども、同時に、イギリスの産業に対する日本商品の競争の脅威というものもあるからして、直ちにこれをいつやめるということをここで話し合うということは適当でないが、しかしながら、その精神に基づいて日本側においても、いわゆる秩序ある輸出をするというようなオーダリーー・マーケッティングの話も私からいたしたわけでありますが、そういうことも取り入れて、事務的に通商航海条約のこの折衝を続けていくようにしようじゃないか、それに関連して三十五条の撤回の問題も、一つ日本側もできるだけ要望に従がっていく建前で、通商航海条約の交渉を事務的に進行させることにしようというような話し合いをいたしまして、自来、外務大臣が申したように通商航海条約の話し合いが現在行なわれておるという状態でございます。
  302. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 貿易の問題といたしまして通産大臣にお伺いいたしたいのであります。いろいろ政府としまして外交交渉を通じてこのガット三十五条の援用撤回の問題について御努力されておることはよくわかるのであります。貿易の問題として、この改善をはかる方途というものはどういうところに置くべきか、あるいは問題はどういうところにあるか。一説によりますというと、これは日本ばかりではなく、たとえば香港辺でできますものがチープ・レーバーという点がガット三十五条の援用をいたしておる主要な原因であるというようなことも承っているのであります。日本のこういう特別な差別的な待遇というものが、真に低賃金ということに基因しておるのかどうかという点、通産大臣にお答え願いたいと思います。
  303. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 最近、ガットの会議におきましてもチープ・レーバーの問題が議題になりかけておったことは事実でございます。しかし、いかなる国がチープ・レーバーなりやという問題につきましては、なかなか困難な問題であります。私は、ガット三十五条の問題は、チープ・レーバーによってこういう結果がきているとは考えておりません。やはり今までの貿易上のいろいろな経過から申しまして、また日本貿易・為替を自由化していないのも一つの原因であろうと考えます。いろいろな点からきていると思っているのであります。
  304. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは自由化の問題の中に入って参ります。政府は三年以内、三十七年度末までに完全自由化を実現するというふうに言っておられるのであります。総合政策研究会は四年以内、三十九年までというふうに言っております。そこで、それでもなお一部の人は、為替の自由化まで入れるとすれば、四年という期間では短か過ぎるのではないか、無理ではないかというような意見もある。政府は三年で、三十八年三月までに百パーセント自由化するのだということは、非常に私は冒険のように考えます。以下いろいろ危険な現象が起こるのではないかという心配は述べますけれども、単に時期の問題をとって考えてみましても、これは少しく唐突であって、三十七年度末までに完全自由化をするということは冒険のように思うのですけれども、この点はいががでございましょうか。
  305. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 去る一月十二日の貿易・為替自由化促進閣僚会議におきまして、貿易・為替の自由化の根本方針をきめたのであります。その節には総合的に、かつ円滑に、できるだけ急速に自由化をしたいというように申し合わせしたのでありますが、急速というと大体いつごろまでかというような話が出まして、私といたしましては、まあ三年間で一つできれば非常に幸いだということで、三年間と私の希望を申したのであります。従いまして、そのときの閣僚会議におきまして、スケジュールを五月までに大体きめるということで、これによって三年以内でできる、自由化の問題をきめ、また三年でできないものは、またその後一年延ばすとか、二年延ばすとかいうようなことをきめるわけであって、まだ三年というものは、政府としては決定したものではありません。ただ私の希望を申したにすぎないのであります。
  306. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 関係閣僚といいますと、どういう閣僚が入っておられますか。しかもこれが単に経済企画庁長官の希望ということであっても、そういう自由化の閣僚懇談会において三年以内という大体の方針はきまったといたしますならば、これは世間に与える影響というものは非常に大きいのであります。しかも、これは関係閣僚でありましても、そう急速に国の態度あるいは政策というものを決定すべきではないのであります。将来起こるかもしれないあらゆる心配というものを一応は十分に検討してから、そういう期間や、あるいは方針や計画というものを立てるべきであって、わずか二回か三回、それまでも私開いているかどうかということを疑問に思うわけでありますけれども、今承れば、経済企画庁長官の個人的希望である。しかし外部の人は、政府方針は三ヵ年で、三十七年度の末までには完全自由化をやるのだというふうに受け取っているんです。それは新聞を見ても雑誌を見ても、政府方針がこうだというふうに受け取っているんであります。もし、それはそうでないとすれば、これは重大な問題であります。いかがですか。
  307. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私はこの貿易自由化の話し合いのときには、三年間で完全に自由化するということは決して言っておりません。で、三年間ででき上がったら非常に幸いだというように言っているんであります。従いまして、私の個人的な希望といたしましても、よしや三年でやるとしても、完全の自由化ということは、これは私も考えていないのでありまして、まあ三年間に九〇%くらいまで自由化できればいいというような心づもりはいたしておりますけれども、ただいまこの自由化の具体策を各所においていろいろ調査研究いたしております。その調査研究を持ち寄りまして、そうして閣僚会議で最後的に決定をするのであります。そのときに、大体どういう品目はいつごろ自由化するのかというようなことをきめ、また、今いろいろ御心配になっておられるこの自由化についての今後とるべき対策などをその節に決定いたしまして、そうして自由化による打撃はできるだけ少なくするように、いろいろ具体策を各所において目下調査研究中なのであります。
  308. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういう内閣として未定稿のものであるならば、これはやはり未定稿ということで外部に発表しないといけないと思うのであります。先ほどお尋ねいたしましたこの自由化の問題に関する閣僚懇談会、これの出席大臣、あるいは何回この懇談会が開催されたか、この点いかがですか。
  309. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 貿易・為替の自由化の促進閣僚会議というものが決定いたしましたのは、一月の五日でありまして、その第一回の閣僚会議は一月の十二日に開きまして、そのときに大体根本方針をきめたのであります。なお具体的には、対ドルの輸入制限の品目につきまして、具体的に何月から実施するというようなことは、そのときにきめたのであります。  それからなお、申し落としましたが、閣僚会議のメンバーといたしましては、内閣総理大臣が議長でありまして、関係各大臣、と申しますと、外務、大蔵、農林、通商産業、各大臣、経済企画庁長官、それから内閣官房長官、党の政調会長及び日銀総裁をもって構成しておるのであります。
  310. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それから何回……、一回だけですか。
  311. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 一回だけです。
  312. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そのときにおきめになりましたと今おっしゃられた。これは当分の間、五月までのスケジュールをおきめになったということでございますか、それから先はきめてない……。
  313. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) そのときにきめましたことは、根本の方針を大体きめまして、そして大体五月末を目途として自由化の計画を定めるということで、その根本方針をきめたのであります。なお、当面措置すべき事項としてきめましたことは、対ドル輸入制限の六品目の完全AA化について大体決定いたしたのであります。それは鉄鋼くず、牛脂、ラード、これは四月から実施する。ただし、そのラードのうちで精製ラードについてはまだ決定いたしておりません。それから原皮は上期中できるだけ早く実施する。それから銑鉄と大豆はおおむね十月から実施するということをきめたのであります。それから、その他自由化といたしましては、毛くず、コーヒー豆等、約三百品目を四月分からAA制に移行する。化学品の一部、陶磁器等、約百五十品目を四月分から自動割当品目に増加する。それから為替面につきましては、非居住者の自由円勘定の創設、それから為替集中制の緩和、海外渡航、海外送金等の緩和など、こういうことを大体決定いたしたのであります。
  314. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、衆議院予算委員会提出された自由化の資料という、ここまでが大体すでに決定し、そうしてその際決定されたものと考えてよろしゅうございますか。
  315. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) さようでございます。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  316. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 自由化の問題につきまして、七項目まで私メモをして参りましたけれども、時間が相当おそくなりましたし、先ほどの基地の問題もございますので、委員長においてこの程度で一つ本日は散会していただいて、あと明日にということはいかがでございますか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕   —————————————
  317. 小林英三

    委員長小林英三君) この際、委員の変更について御報告いたします。  後藤義隆君が辞任せられ、その補欠として白井勇君が選任されました。   —————————————
  318. 小林英三

    委員長小林英三君) 松澤君。
  319. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど菅野経企長官からお話がありました。大体これまで外に発表されている資料の点までスケジュールがおきまりになったということでありまして、今後起こるべき自由化の影響等につきましては、まだ十分に検討しておられないようであります。私は、特にそういう自由化促進の閣僚懇談会というものがもしできたといたしますならば、そこで自由化の経済、財政全般に対する総合的な対策を考えていただいて、これは国民といたしまして、あるいはわが国の経済といたしまして、極端にいえば死活の問題であろうと思うのであります。中小企業の人々に対しては、こういうことになるからこういう覚悟をしてくれとか、あるいは労働者諸君に対しても、合理化なり、あるいはまたは近代化というものが行なわれるであろうから、こういうふうな覚悟を持ってもらいたいというようなことを打ち出していただかなければ、ただ事務的にこれまでの品目をAAに移したというだけでは、これは世間として納得しませんし、また経済といたしましても非常に混乱を来たすと思うのであります。この点に対しまして、今後自由化促進閣僚懇談会が開かれます場合においては、十分に検討していただきたいと思います。どうですか。
  320. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 貿易・為替自由化促進閣僚会議の組織の中に、この閣僚会議は貿易・為替の自由化を総合的かつ円滑に実施するために設けるということが書いてあるのでありまして、従いまして、この閣僚会議におきまして、総合的にかつ円滑にこの自由化の実施を決定したい、こう考えておるのでありまして、お説の通りにやるつもりでおります。
  321. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 自由化は、原則といたしましては、これはまた必然の国際的な傾向であろうと思います。しかし、そのささえとなるものは、やはり何と申しましても外貨の保有高ということにかかってくると思うのであります。わが国の経済は非常に動揺が激しく、かつまた国際的な関係によって変動が起こることがしばしばあるのであります。現在、年間貿易額の約半額、十八億程度はぜひとも必要であるといわれているのであります。しかし、わが国の経済の特殊性あるいは脆弱性ということから考えてみますと、この十八億というものがはたして妥当であるかどうか、少なくとも外貨保有高をもう少し多い目に見ておかなければ、これはとうてい安定した自由化ということは実現困難ではないか、こう思うのであります。この点はいかがですか。
  322. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外貨保有高が多ければそれに越したことはございません。しかし、たくさん持っておりましても、国際収支が逆調の方向に向かっておるような経済状態だと、これは意味がないと思います。わが国は十三億二千万ドル持っておる、この金額は少ないという話もございますけれども、今日の経済状況は、国際収支の状況から見ますと何ら心配ないという状況でございます。
  323. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 経済企画庁も非常に楽観的であり、大蔵省も非常に楽観的であります。しかし、一般経済界は必ずしもそういうふうに楽観していない。この点は十分に御注意願いたいと思うのであります。今年の一月、米国のビジネス・インタナショナル・グループという人たちが来られまして、米国においては対日投資が非常に旺盛であるということをいわれておられたそうであります。それは結局わが国のロー・コストと申しますか、あるいはロー・ウエージといいますか、そういうものとハイ・プロフィットというものが非常にアメリカにとりましては魅力的であると思います。しかし、これを手放しで外資の導入を計画いたしますと、たとえば大きな自動車産業のようなものでも、電気機具の産業におきましても、重大な影響があることは当然考えられます。こういう外資の導入につきまして、外資の対日投資という問題につきましては、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  324. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの御意見もありましたように、資本の導入、技術を含めての資本の導入でありますから、これはよほど真剣にやらないと、おっしゃるような状態が起こるということでございます。そこで私どもが今考えております考え方は、いわゆる優良なる外資、この外資については積極的に導入を進めておる。優良な外資というのは、申すまでもないことでありますが、日本経済を拡張することに役立つ、あるいは貿易輸出を増強するのに役立つ、こういうものを考えておるわけであります。もちろん、国内産業との競合あるいは摩擦等、十分念頭に置いて資本を導入すべきである、かように考えております。そこで、しばしば誤解を招くのでございますが、為替の自由化ということを申します場合におきましても、いわゆる経常取引の面における自由化を拡大することがまず第一に容易であり、また、そういう方向にすべきでございますが、資本の導入につきましては、ただいま申し上げるように、その後において考えるべきことで、また慎重でなければならないと、かように考えております。
  325. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 自由化の問題につきましては、なおお尋ねいたしたい点もありますけれども、また一般質問その他の機会に譲ることにいたしまして、一応残りました問題は、先ほどの基地問題に関係いたします安保問題であります。これは明日に、資料を提出をしていただきましてから質問することにいたします。
  326. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は、以上をもって終了いたします。明日は、午前十時より委員会開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十二分散会