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佐藤芳男君 ただいまのお答えですが、私は筋からいって、やはりこれは厚生省におまかせになるべきことだ。そうして事業主と勤労者代表と学識経験者と、そうしてあなたの部下と、それから厚生省の者、こういう者でやはり運営
委員会でも作って、そこで十分
審議をするということを条件にしてこれは厚生省にまかすべきものである。ただいま
大蔵大臣は住宅とか医療の問題とか、こういうように還元しているじゃないかとおっしゃいますけれ
ども、大蔵省が握っておりまする
関係からしてこれはきわめて窮屈なんです。かつて小笠原君が
大蔵大臣のときに、私は
衆議院で厚生常任
委員会において、これを徹底的にやった。そうしたら小笠原君はどうかもち屋はもち屋にまかしてくれ。そのかわり従来よりも還元するその額を増すからなんと言って、妥協させられた苦い経験がある。今度は
国民年金も拠出年金がいずれは始まりましょう。そうなってくると、今のうちにここで是正しておかないと、この
国民年金の問題がまた出てくる。これは今ここで御
方針を変更しなさいとは申しませんが、十分
一つ御研究を賜わりたい、かように思うのであります。次に、社会保障
関係について
お尋ねをいたします。私は、国を強からしむるものは戦力ばかりじゃない。勤勉な
国民、生活を楽しむ
国民であると申したいのであります。国家によってその一定水準の生活が守られているときに、初めてすべての
国民は国を愛し、国をみずから守るところの情熱を燃やすのであります。国が
国民生活について最終の
責任を持つこと、明らかにする制度、それがすなわち社会保障制度なんです。
岸総理がかねて社会保障の推進に熱意を有されるものであることは、
国民皆保険計画ないし
国民年金制度の実施等によっても明らかでありますが、社会保障の使命実現の
立場から、この程度で決して私は満足せないのです。私は満足はいたさぬのであります。第一に取り上げられる問題は、社会保険を含めて広義の社会保障制度のために、三十五年度の
予算はいかなる考慮をはらわれたかという点であります。ところが、わが国には、社会保障を総合的に扱うところの独立の省がないので、全体としてのこの社会保障
予算は、きわめてつかみにくい。すなわち、
国民の生活を保障する制度は各省に分散していて、それを全部捕捉し、その数字を集計することは、なかなか容易なわざではない。厚生省の所管事項は、必ずしも全部が直接社会保障に向けられたものではないにしても、少なくとも、その大部分というものは社会保障
予算を形成するものと認めて大きな誤まりはない。また次は、労働省の所管事項のうち、失業保険とか失業対策事業費等は、雇用保障として社会保障の一環をなすことは論を待たないところでありますが、一体私は、これは
総理にも
一つ心していただきたいと思うのでありますし、これは
政府全体の問題でございますが、社会保障の
予算の総額が、毎年幾らであるということが発表されますが、それはきわめて狭い意味の社会保障の各項目を取り上げた集計なんです。今、
政府が集められているのは、大体項目的に申しまするというと、生活保護と、それから児童保護、その他社会福祉費、それから失業対策費、社会保険費、
国民年金費、こういうものを集計して社会保障費でござるとおっしゃっておられる。ところが、当然保健衛生費、結核対策費、その他公衆衛生
関係費及び国立病院の一般会計繰入金、療養所の経費等、こういう保健衛生費も社会保障の重要な内容なんです。また住宅対策費もその通り。遺家族、留守家族の援護費もその通りです。文官恩給費、軍人恩給費、共済組合の国庫負担分、これはみな社会保障費なんです。私は毎年そうした意味で計算をしている。そうしますと、私の計算によりますと、
昭和三十四年度は二千九百四十七億円、新年度
予算は三千三百七十三億円となっている。しかも、これは私の我流でこんな計算をしておるのじゃありません。国際連合の統計年鑑をお読み下されば、ちゃんとこの項目はきまっている。一九五九年の年鑑を
一つ御一読を願いたい。私は大砲とバターの比較、すなわち、防衛費と、それから社会保障費を比較することは、歳出の一部と歳出の一部だけを比較することは、これははたして妥当かどうかは知りませんけれ
ども、これは私の計算からいきますというと、防衛費と社会保障費の隔たりは、実に莫大な数字なんです。これは私
ども政府与党として説明するのにまことに都合がいい。私は毎年それをやっている。こういうような今日の間違った仕組みは、これは答弁は要りませんが、今後是正をしていただきたいと思うのでありますが、こうした社会保障という、国の
責任において
国民の生活を守るところの仕組みは、それぞれの国の歴史によって、並びに
経済的、社会的の条件によってもちろん違うのであります。わが国の社会保障制度というものは、戦前はドイツの制度にのっとり、戦後は英米の影響を受けて社会保障制度を作り上げ、形態としては一応整備されたかのごとく見えるのでございますけれ
ども、その実態は、まだなかなか十分とは申しかねる。制度全体として見ますると、均衡を失っていることが非常に多く目につく。そこで、社会保障をこれから推進するその当面の目標として、私は、逐次
一つ私の
所見を述べつつ
政府の御
見解を問いたいのであります。ます第一がILO条約の批准について申し上げるのであります。百二号であります。ILOの一九五二年の条約の第百二号に盛られているところの社会保障の最低基準は、最も私は適切なものだと思うんだが、まだ批准されていない。社会保障の専門の学者、私
どもの意見からいたしまするというと、
政府さえその
意思があれば、わが国としてもこの百二号は批准可能であると思われるのであります。
政府は、失業保険、疾病による生活保障、それから厚生年金制による廃疾保障等、すでに国内の制度がこの基準に達しているものを
中心としてこの条約を批准し、その他の保障、すなわち医療保障、老齢保障、遺家族保障等についても、逐次その基準にまでこれを高めるように措置をとるべきであると思うが、
政府の御
所見を承りたいのであります。