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曾祢益君 だめだ。時間がありませんから、さらに他の方に追及していただきますが、明確になったことは、やはり交換公文に関する有権的な——
条約の効力のある——解釈はない。
日本の同意権は、
条約上何ら明確になっていない、このことであります。
第二の問題は、この
極東の範囲の問題でありまするが、私は非常に遺憾に思うことは、
極東の範囲に関する
議論が、これはおそらく
政府は意識的にやっておられるんではないかと想像したいくらい、非常にごしゃごしゃなんです。問題は、今度の
条約の前文、第四条に言う「
極東」の範囲ですね、
極東の平和と安全の問題がありますが、この場合と、第六条に、そのために、その目的で
アメリカが
行動するという「
極東」の範囲の問題とは、これは当然に異なってくるのがあたりまえだ、これは。それから第二の問題は、
アメリカが出撃する目的は
極東の平和と安全のためである。これは非常に
日本にとってそういう場合に狭くしたいわけです、第六条の場合はね。しかし、目的地だけは狭くしてみても、すでに
行動を起こした
アメリカ軍の
行動範囲というものを、これを縛るわけにはいかなくなってくるのじゃないか。目的たる「
極東」というものと、すでに出撃した
アメリカ軍の
行動範囲の「
極東」という問題がある。この二点がごしゃごしゃになって
議論されているきらいがある。
そこで、一体その「
極東」の範囲において——まあわれわれは地理や地勢学のことをやっているのじゃございませんから、
条約上、一体その「
極東」の範囲を線を引いてやれなんかという
議論は、第四条、前文に関する限りは、私はナンセンスだと思う。
条約上、そういうものじゃないのです。この間、岩間君も指摘されたように、
日ソ共同宣言にも
極東の平和と安全というような言葉を使っております。さらに、私は古い記録を特に引き出すわけじゃありませんけれ
ども、「
極東」というようなことは、地理的の
関係なら、そんなこと言ってもだめなんです、これは、
条約上。たとえば支那に関する九カ国
条約「
極東における
事態の安定を期し、支那の権利、利益を擁護し、機会均等、」云々、非常に広い
意味で、もちろん中国の全部を含んでいるのですよ。もっと広いのです。こういうことになるのです。それからさらに古いやつで、大へん恐縮ですけれ
ども、日英同盟
条約の第一回のやつで、やはり
日本と要するにイギリスは、「
極東においては、
現状及び全局の平和を維持することを希求し、それから清国、韓国の独立を維持する」いかにそれが広いものであるかということは、もう一点の疑いもない。しかも、前文や、第四条で言う「
極東」というものを、なぜ小さくする必要あるのですか。あたありまえじゃないですか。
極東の全局について
日本が平和と安全に関心を持っているのはあたりまえでしょう。自由圏である、ない、なんかということは、どだい
議論にならぬのです。第一、あなたがお作りになった岸・アイク共同コミュニケには、「
極東」どころじゃない、アジア全体について、あなた方はこういうことを言っているのですよ。岸・アイク両者は、「この地域」——これはアジアですよ。
極東じゃありませんよ、アジア——「における将来の発展に関し密接な連絡と協議を維持すべきである」との信念を再確認した。これはアジア全体ですよ。いやしくも日米
安保条約において「
極東」と言ったときに、第四条や前文で言うように、両国がその地域の平和、安全に関心を持つべき地域という「
極東」を、そんなに小さく解釈する必要がどこにあるのですか。どだい
理屈になっていないのですよ、これは。なぜそれを小さく解釈するか。それは言うまでもなく、そっちは、幾ら広くても協議したり関心をもつのだから、かまわない。ところが、第六条で、その地域の平和と安全のために
日本から
アメリカ軍が出て行く、その地域は狭い方がいい。初めから、私が言ったように、これはない方がいいのですから……。もう出撃というものは初めからない方が
日本のためにいいのでしょう。だからそれを狭くしょうというので、かつては藤山さんのように、中国の沿岸とか沿海州を入れてしまって、これでもよほど小さくしたつもりだったのですね。それで、今度は横路君の前によろめいて、今度はさらにその
極東の自由圏場……。そういうでたらめなことでは、あなただめですよ、これは。(「気がとがめたのだよ、やっぱり」と呼ぶ者あり)これは、むしろ私をして言わしめるならば、もう一ぺん、こういう重大な問題は、これも再交渉すべきですよ。第四条、前文、これを狭くする必要は毫もありません。幾ら広くてもいい、全
世界の平和でもいいのですよ。第六条に限っては、第一に削除を私は要求します。それができなければ、せめてその「
極東」の地域は明確に、狭ければ狭い方がいい。金門、馬祖を入れるなんかということは、これは中国が同意しないからでなくて、
世界の物笑いです、金門、馬祖を入れるに至っては。それからあわせて、いかに目的の地域を狭くしても、出動した場合にどうしてこれを縛るのです。これは聞いておきたい。