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1960-03-04 第34回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月四日(金曜日)    午前十時四十一分開会   ―――――――――――――   委員の異動 二月二十九日委員成瀬幡治辞任につ き、その補欠として荒木正三郎君を議 長において指名した。 三月三日委員岸田幸雄君及び基政七君 辞任につき、その補欠として高橋衛君 及び曾祢益君を議長において指名し た。  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            杉原 荒太君            高橋  衛君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤岡  進君            松澤 兼人君            東   隆君            曾祢  益君            辻  政信君            原島 宏治君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房長官 松本 俊一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    調達庁総務部長 大石 孝章君    経理企画庁長官    官房長     村上  一君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    外務大臣官房審    議官      下田 武三君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会開会いたします。  委員に変動がございましたから御報告申し上げます。  二月二十九日に青田源太郎君及び成瀬幡治君、三月三日に岸田幸雄君及び基政七君がそれぞれ辞任せられ、その補欠といたしまして、重政庸徳君、荒木正三郎君、高橋衛君及び曾祢益君が選任せられました。   ―――――――――――――
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、本日から総括質疑に入るわけでございますが、その質疑順位につきまして、去る二月二十九日、委員長及び理事打合会を開きましたので、その内容につきまして御報告いたします。  まず第一回目は従来の例により、社会党自民党民主社会党無所属クラブ同志会、共産党の順位でございますが、第二回目以降につきましては、右の順位のうち、社会党自民党のみについて、社会自民社会自民と二回繰り返し、その次に民主社会党以下が第一回目の順位に従って続き、自後この順位を繰り返して行なうことにいたしました。以上御報告いたします。  以上御報告いたしました通り運営することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。   ―――――――――――――
  5. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  これより総括質疑に入ります。木村禧八郎君。
  6. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について。政府にただしたいことがございますので……。三つほどありますから、逐次一つお答えを願いたいと思います。  その一つは、すでに衆議院において予算が通過をしておりますが、予算関係をする法律案提出が非常におくれております。これはまことに私は遺憾なことだと思うわけでありますが、今残っている予定法案は幾つなのか、そしてそれはいつ国会に提案するのか、その時期をはっきりしていただきたいということです。  それから二つ目には、御承知通り内閣予算編成権を持っておりますが、その毎会計年度予算提出については、財政法二十七条によって、「前年度の十二月中に、国会提出するのを常例とする。」こういうふうに規定をされておりますが、過去昭和二十八年以来の政府国会に対する予算の時期を調査してみますと、大体二月の一日がこれは一番おそいわけでありますが、一月の二十七、八日から九日、これが通例になっておるわけです。国会における審議との関係で、私たちは毎年早く国会に提案をしていただきたいということを要求して参ったのでありますが、そのつど政府から善処するという御答弁をいただいておりますにもかかわらず、もう一月の終わりに出るのが通例になっているのであって、これは財政法二十七条からいって私は明確に違反だと思うのです。どうしてこういうふうに提出の時期がおくれるのか、この点についても政府見解を承っておきたいと思います。  それから最後に、二月の二十二日、岸総理大臣衆議院予算委員会において、わが党井手以誠氏質問に答え、予算修正権について御答弁をなさっておりますが、議事録を調べてみますと、国会における予算修正権限度がある、そして新しく款項を起こすことについては、これはできないのだ、こういう御見解のように承っているのでありますが、それは憲法あるいは国会法のどこに準拠してそういうお考えを持っておられるのか、この点も一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  7. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま鈴木君から御意見のありました件につきまして、政府の御答弁を求めます。
  8. 林修三

    政府委員林修三君) 予算関係法案のことにつきまして、今官房長官がおられませんので、私からお答えをさせていただきます。  予算関係法案全部で七十六件の予定でございまして、もうほとんどのものが提出あるいは閣議決定済みになって、近く提出することになっております。なお、今のところ、閣議決定未済のものが三件ございます。それは、一つはいわゆる行政機関職員定員法の一部改正と、それから地方交付税法の一部改正、それから外務省設置法の一部改正、この三つでございます。定員法につきましては、御承知通り若干の問題がございますので、多少調整がおくれております。地方交付税法につきましては、近くこれは提出できる見込みでございます。さようなことになっております。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 予算の問題につきましては、実は予算編成して国会に提案するのは政府権限に属しております。従ってそれを害するような修正というものはできないのじゃないかという意味におきまして、具体的に款項を増設するというようなことは、これはその意味からできないのじゃないかという意見を申し上げたのであります。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 総理への質問に関連して。総理大臣修正権があるということをお認めになっているわけですね。ただし修正限度について、あなたがおっしゃるような根拠が私よくわかりませんからそこを聞いているんです。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 修正は、もちろんできる権限国会が持っていることは当然であります。今申しましたように、憲法予算編成して提案するのが政府権限になっておりますから、事実上それと矛盾するような抵触するようなことは作正権としてもできない、こういうことを申して、そこに限界があるのだろうという意味でございます。(「矛盾するとは何だ」と呼ぶ者あり)
  12. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは、昭和三十年の三月に国会法改正になったのですが、それまで、国会法の九十九条で、両院法規委員会設置が認められておったことを御存じでございますか。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 承知いたしております。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、この国会法に基づく法規委員会において、昭和二十三年の二月二十六日に、両院に対して予算修正増額に対する勧告をやっておりますが、この点を御承知かどうか、私がまず聞きたいのです。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私正確にその内容はよく承知いたしておりません。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 それであれば岸総理修正限度については、非常に私は軽率な御答弁衆議院でなされておると思うのであります。この両院法規委員会は、衆議院十名参議院八名の国会議員によって構成されておったわけでありますが、その委員会が、少なくとも予算増額修正に関する勧告両院にしております。その中身を見ますと、予算についての国会増額修正に関する憲法解釈は左のごとく決定するよう両院において措置されたい。こういうようにまあございます。もちろん新憲法が制定されまして、いろいろ国会でこの修正権の問題について疑義があったことは事実のようであります。従って、この両院法規委員会で検討した結果勧告を出したものは、こう書いてある。国会は、予算増額または予算費目の追加もしくは削除等、すべて内閣提出した予算に従って最終かつ完全な権限を有する。新憲法のもとにおいて、国会は国権の最高機関として、予算増額修正その他について最終かつ完全な権限を有する、こういうふうに解釈する、こういうふうに出ておるわけであります。そうしますと、あなたのおっしゃるような、限度があるということは私は当たらないと思うわけであります。この点はいかがでございますか。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法上いろいろな議論があるということは今御指摘になった通りでありまして、私は、政府として、この憲法解釈上こういうふうに解釈するという考え方を申し述べておるわけであります。この問題に関する国会権限として最後に御決定になることは、これは国会で御決定になることに従うべきことは当然であると思います。私は、先ほど申したように、憲法の、編成して提出する権限政府だけにあるという建前になっておる憲法から見ますというと、その根本と相いれないような点については、やはり制約があるというのが私どもの解釈でございます。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 この問題は、今問題になっております条約の批准の問題、要するに条約修正権の問題とは私は別におきますが、それとは違いまして、少なくとも国内において、編成権はなるほど政府にあるでしょう。そうしてそれを提出する権限もございます。これは、憲法国会法に基づいて。しかしながら国会最高議決機関であるし、国会が、その政府提出されたこの予算案に対して修正を加え、増額削除をするということは、私は制限があってはおかしいと思うのですね。当然国会意思に対して、――それはやり方はいろいろあるでしょう、あるでしょうが、そのやり方は別としても、少なくとも国会最高意思決定内閣が従えないということはないはずでしょう。ですから、当然国会がそういうことになればやれるということは私は当然だと思うのです。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん国会がさようにおきめになれば、それに政府として従うべきことは当然でございます。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、あなたのおっしゃるような限度といっても、これはなかなか解釈はむずかしいと思いますが、少なくとも制約というものはないというふうに理解していいでしょう、こいつは。国会がこうきめろといったら、やり直さなけりゃならぬわけですから。それはその通りでしょう。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げております通り、もちろん国会がそういうふうにこの憲法のもとにおいておきめになられるならば、これに政府が従うことは当然でございますが、私は、憲法解釈として、先ほど来申しておるような見解を一応とっておるということを申し上げておるわけであります。(「委員長進行進行」「大事なところだ」と呼ぶ者あり)
  22. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行。私は……。(「まだ大蔵大臣答弁が」と呼ぶ者あり)
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 財政法二十八条の規定はただいま御指摘通りでございます。政府におきましても、この条文に規定されておるところに従いまして、できるだけ早く出すことのあらゆる努力をして参っております。最近なかなか広範にもなっておりますし、これが厳守できておらないことまことに遺憾に思います。ことに三十五年度予算に際しましては、安保条約調印等の問題があり、年内に編成を終えることができませんで、そういう意味提出の時期がおくれました。今後この点につきましても一そう努力するつもりでございます。
  24. 鈴木強

    鈴木強君 もう一問。
  25. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 これは法律ですからね、この財政法二十七条は。ですから、国会といえども、国民といえども、内閣といえども、これは法律に従うというのが建前でしょう。あなた方はよくそう言っているのですから。ですから、十二月中に出すというのが常例であるというように書いてあるにかかわらず――ことしはいろいろ災害問題もあったでしょうから、そういう年度によっては多少おくれる理由がわかればわれわれはそう追及はいたしません。しかし、二十八年以来、少なくともこう見てみますと、一月二十九日、二十七日、一月三十日、二月一日、一月二十九日、一月二十三日、ことしが一月二十九日、こういうふうに、一月に出すのが常例となっておる。これはおかしいじゃありませんかというのです。少なくとも、法律に従うという建前をとるならば、「常例とする。」というならば、やはり十二月中に出して、国会審議支障がないようにしていただくというのが建前でしょう。だから、財政法二十七条も十二月中ということを規定していると思うのです。特殊な条件は、大蔵大臣のおっしゃるように、その場合によっては理解できることもありますけれども、常例常例になっていない。これは法律が悪いのか、あなた方のやることが悪いのか、(「法律が悪いわけはない」と呼ぶ者あり)法律は正しいので、あなた方がやっているのが悪いのでしょう。現実に即さないというならば、法律改正ということもあるかもしれません。しかし、法律改正もせず、法律に従わずにやるところにやっぱり問題があるということを私は言っているのです。これは一つ大いに陳謝をしてもらわなければならぬし、来年から少なくともこういうことのないようにはっきりしてもらわなければ困るのです、大蔵大臣
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申し上げましたように、「常例とする。」と書いてございますので、提出時期も、常例とするように、法律で定めておるようにするのが当然でございます。それがそうできないことはまことに遺憾でございます。  なお実質的な問題で、御指摘になりますように、国会開会の時期を一応十二月上旬と定めておる。そういうところから、財政法でただいまのような二十八条の規定があるわけでございます。(「大臣、二十七条」と呼ぶ者あり)そういうことから、二十七条の規定があるわけでございます。その点がはたして、実情に合うか合わないか、これは別の問題でございますが、あわせてそういう点も研究を要するかもわかりません。一応御了承いただきたい。(鈴木強君「法律に違反していることは明らかですよ」と述ぶ)
  28. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村禧八郎君。(小林孝平君「委員長、まだ発言していない」と述ぶ)議事進行ですか。
  29. 小林孝平

    小林孝平君 そう。  この委員会における今後の運営を円滑に行ない、審議の促進をはかるため、審議に入るに先だちぜひ明確にしておかなければならない重大な問題があります。それは、政府委員としての内閣法制局長官資格権限並びに委員会における言動についてであります。事実現に今林長官は、われわれがこれから申し上げようというような行動をやりましたから、これから申し上げます。  従来、国会委員会において、われわれ委員総理あるいは国務大臣質疑を行ない、それらの人々から直接に責任ある答弁を求めているとき、林修三法制局長官は、われわれが同長官代理発言を不適当と認め、これを拒否している場合においても、しゃにむにかわって答弁をされている場合がしばしばあるのであります。その問題がきわめてささいな、また単なる事務的な事項である場合は大なる支障はないのでありますが、そうではなく、その問題がきわめて高度の政治性を帯びている場合は、そういうやり方は、国政審議の立場からきわめて不都合であります。特に最近の委員会における同長官態度は目に余るものがあって、これをこのまま放置するにおいては、その弊害はまことに重大なるものがあると存ずるのであります。現行憲法下においては単なる一行政官にすぎない法制局長官が、あたかも国務大臣と同格の態度で、現にあなたは閣僚席にすわっているじゃありませんか。おかしいじゃないですか。しかもわれわれの制止を排して発言することは何といっても誤りであります。一体総理はいかなる方途、いかなる根拠に基づいて法制局長官にかかる特権的地位を与えておられるのか、現に旧帝国憲法下における法制局長官と新憲法下におけるそれとはその性格権限において大いなる違いがあることは総理自身も御承知のはずであると存じます。法制局長官自身もそんなことは十分承知の上で、あえてそういう行動をされておる。現にあなたは最初はその席にすわっておらないで、向こう政府委員の席にすわっておったのです。ところが、総理がこういう態度だから、現に農林大臣は、長官向こうにすわっておるにもかかわらず、林君、ここに来いとあなたが言った。そんな、あなた方は法制局長官地位が何であるかわからないからそういうことをやる、なぜこういうことになったか、こういう錯覚に陥っているかというのはいろいろの理由もあります。その一つ理由は、内閣認証式記念撮影を行なう、その際に一行政官である長官がその記念撮影の中に顔を出している。従って一般は、閣僚自身もこれが国務大臣に準ずる地位であるという錯覚に陥っている結果、こういう国政審議に重大な支障を及ぼす。そこで、そもそも旧法制局官制明治十八年十二月に公布施行されたのでありますが、この官制による長官衆議院議員を兼ねることができるように規定され、その性格は単なる行政官ではなく、いわゆる政務官であります。これと違い今の長官特別職ではありますが、国会議員を兼ねることができず、国家公務員法建前からすれば、その性格人事官、検査官と同様であると言わなければなりません。従って、以前は法制局長官はその内閣進退をともにしております。もちろん例外はあります。一、二の例外はあります。たとえば横田千之助氏は、原内閣並びに高橋内閣のそれぞれ法制局長官として就任している。馬場鍈一氏加藤内閣……
  30. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、発言中でありますが、議事進行は簡単に願います。
  31. 小林孝平

    小林孝平君 重大なことだからやっているのじゃないですか。しかもあなたがそうおっしゃっているから、私は簡単にやるために特にメモまで書いて審議に協力しておるのです。
  32. 小林英三

    委員長小林英三君) 議事進行について御発言を願います。
  33. 小林孝平

    小林孝平君 やっているじゃないですか。こういうような特別の例外はありますけれども、いずれも内閣進退をともにしている。ところが、これに対して戦後はどうであるかといいますと、林長官昭和二十九年十二月に第一次鳩山内閣の成立とともに就任し、自後第二次、第三次鳩山内閣石橋内閣、第一次、第二次岸内閣と実に六代の内閣、五年三ヵ月にわたってその地位にあるのであって、明治十八年以来かってない記録を示しておる。しかもその間内閣は、第一次鳩山内閣日本民主党内閣から自由民主党にかわっておるのであります。前長官佐藤達夫氏の例を見れば、同氏は昭和二十二年六月片山社会党内閣のときに長官に就任し、翌二十三年二月法制局廃止とともに一たん退官し、さらに同二十七年法制局復活とともに第三次吉田内閣のもとに再び長官に就任しておるのであります。この経緯から見ても、法制局長官地位が純然たる行政官であることを物語っておるのであります。また憲法第六十六条の規定によれば「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」とあります。一行政官である林法制局長官が、いかなる権限に基づいてこの連帯責任を負う地位にあるかのごとき行動をしているか。われわれはそういう人々を相手にしているのではありません。  以上述べたところからすれば、林法制局長官委員会における最近の態度がいかに誤りであるか、いかに越権であるかということは明らかであります。何でもかんでも出張ってきて、きわめて重大な発言をする。またしばしば三百代言的言辞を弄し、審議を混乱させる。世間ではあなたのことをクイズの王様と言っている。何でもかんでも即答しなければならぬ。むしろ法制局長官のごときは、この問題は慎重に検討しなければならぬというように内閣意見を具申して初めてあなたの責任が達成できるのであります。そういう軽卒な態度こそは、非常に国会審議を混乱させて迷惑千万であります。従ってわれわれは、この際この問題について明確な態度をとり、もって国会審議に誤まりなきを期したいと存じます。  そこで委員長に申し上げますが、この際岸総理からはっきりとお考えをお聞きしたいと存じます。すなわち、今後われわれ委員が特に法制局長官発言を求めないで、われわれは、われわれといえども単なる法律的な解釈あるいはささいな問題は法制局長官から意見を聞きます、何も出席するなと言っているのじゃないのです。しゃべるなと言っているのじゃないのです。われわれが、これは重大な問題だ、重大な政治的の問題であると、こう考えて、明確に長官答弁を拒否した場合には、同長官発言を行なわないようにしたいと存じます。総理はそういう方針をとられるお考えかどうか、委員長から総理にただしていただきたいと思います。私は先ほどから委員長制止にもかかわらず申し上げましたけれども、これを総理がお聞きになれば、当然われわれの要求を入れられると思うのであります。どうです。もしこれがはっきりしなければわれわれは今後質問をやることはできない。はっきり言っておきます。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 法制局は御承知のように内閣所属の機関でありまして、法制局設置法に基づいて設置され、その権限を付与されております。従って閣議に提出をし、また国会に提案をいたしております法律案及び条約等は法制局が審議しておるわけでございます。従いまして、総理大臣としあるいは国務大臣として質疑に対してお答えをする場合におきまして、法律的な問題や条約解釈等につきまして、その補助機関として法制局政府委員である法制局長官をして答弁せしめることも議事によってはあることは、これはむしろ審議を促進し、円滑にするためにはそういう必要がある場合もございます。従って一切何もしないというわけには参りませんので、もちろん議員の方から法制局長官答弁をお求めになる場合においては、政府委員としてお答えすることは当然であります。またわれわれが責任をもってお答えをする場合におきまして、今申し上げましたような法律の問題や条約の問題について、解釈について明確に申し上げるために、特に私の方で責任をもって法制局長官をして答弁せしめますという場合にはそれを御聴取願いたいと存じます。
  35. 小林孝平

    小林孝平君 私はそういうことを言っているのじゃないのです。従来政府はそういうことをしばしば言って言いのがれられております。法制局設置法も私は知ってます。「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること。」こういうふうにその権限は十分わかっております。だからそれは内閣の中で解決をされて、この責任ある答弁内閣総理大臣がすべきである。しかもわれわれは何でも総理大臣答弁してくれと言っているのじゃないのです。この問題は直接総理大臣から答弁してもらいたい、法制局長官答弁ではかえって国会審議が渋滞する、こう言っている際に、それを押して法制局長官答弁しておるのであります。だからそれをやめてくれ、私は長くなるから例を申さなかったのですけれども、現にこの条約修正権のごときはまさにその好例であります。これは昨年の暮参議院の外務委員会においてもこれを取り上げまして、この条約修正権の問題は国会審議権に関連する問題だ、政府国会審議権を尊重するのかどうかという立場でわれわれは総理の御意見を聞こうとしたのです。総理がおいでにならなかったから外務大臣にこれをただしたところ、林法制局長官答弁されようとした。私はこれを制止したにもかかわらず長官答弁をされた。私は長官答弁ではこれは不満だから、いずれあらためて総理からこれは答弁を聞くというのでそのままになっておって、今度衆議院であらためて行なわれた場合に、あなた方は打ち合わして法制局長官に一切の答弁をさせておるのです。私は、これが今の条約修正権審議の混乱のもとになっておるのです。こういう問題は法制局長官の当座の思いつきでなく、十分閣内において意見を調整し、自由民主党の内部において調整をして答弁をされるのが当然なんです。そういうことを私は申し上げておるのです。従って、今後もこういうことが起こりますから、これから木村委員を先頭にしてわれわれが質問をいたしますことはこういうことが多いのです。従って、これを明らかにしておかなければ質問ができませんので、総理は、そういうことではなくて、その通りにいたしますという御答弁をいただかなければ困ると存じますので、もう一度御答弁をお願いします。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 特に質問者が総理大臣答弁を求められ、あるいは外務大臣その他の主務大臣のなにを明示して回答を求められる場合におきまして、総理初め国務大臣答弁をすることは当然でございます。しかし、その答弁をする内容につきまして、この法律解釈の問題やあるいは条約の問題あるいは数字の問題、その他の面につきまして、特にこの問題につきましては政府委員をして答弁せしめるということを申し上げた場合においては、御了承いただくようにお願いをします。
  37. 小林孝平

    小林孝平君 それでは了承できないのです。従来、そういうやり方をやってしばしば問題を起こしておるのです。これははっきりしなければならぬ。もし総理がどうしてもお答えにならなければ、これは国会法の七十条によりましてこの政府委員発言委員長が許可をすることになっておる。従って、委員長はそういう場合に今後許可をしないようにしてもらいたい。あなたはすぐ答弁をできないなら理事会においてこれを決定して、そういう取り計らいをするとかなんとか、いずれにしてもはっきりしてもらわなければ、これから審議に入りますが、とても委員長の思うようにはこの審議ははかどりませんから、あらかじめはっきりしておかれた方がいいのではないかと思ってお願いしておきます。
  38. 小林英三

    委員長小林英三君) 法制局長官は、国会法第六十九条によりまして議長の承認を得ておる政府委員であることは申し上げるまでもございません。本委員会におきましては、従来から閣僚席に着席されておったのでありますが、この慣例に、今の小林君の議事進行に関する御意見によりまして、こういう慣例において疑義を持たれておるということでございますならば、本件に関する問題といたしましては、後刻理事会等においてよく相談をいたしたいと思います。  なお、法制局長官に対する委員長発言許可の問題につきましては、委員長におきまして、法制局長官にこの際発言を許すことは当然だと思うときにおきまして委員長は許可いたしたいと思います。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと質問します。  前段の、理事会を開いて相談するというのはそれでもいいでしょう。しかしあとの、委員長の言われる委員長において必要があったと認めたときにはやる、こういうことですが、小林君の言っているのは、今まで法制局長官は、たとえば何々大臣と、こう指定するわけです。ところが大臣がやらぬものだから、のこのこと出てきてそこでやらかしてしまう。そういうことは委員長の方でも気がついておるかつかないか知らないが、小林委員長は名委員長だから私はしないと思うが、往々にして錯覚を起こして委員長は指名してしまう。しまえば向うへ行ってしまう。指名してしまうのです、今まで見ておると。演壇のところに立ってしまうのです。そういうことのないように、岸総理が言ったように、この問題については政府委員をして答弁せしめます、こういうことがあったときに許すのであって、そこのところをはっきりしてもらえば僕はいいと思います。その通りでいいですか。
  40. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長におきましては、ただいま岸総理大臣から御答弁の中にありましたように、この問題に対しは政府委員のだれそれに答弁さすというような場合におきまして発言を許すのがいいと思います。(小林孝平君「そこで委員長」と述ぶ)
  41. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君まだ発言を許しておりません。議事進行ですか。
  42. 小林孝平

    小林孝平君 ええそうです。
  43. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君。
  44. 小林孝平

    小林孝平君 そういうことでは今後うまくいかないのです。従来長い間うまくいかないからわれわれはこういう提案をしたのです。そういうことをなるべく言いたくないのだけれども、やむを得ずやっておるのだ。そこで委員長答弁も不満足でありますけれども、総理に、もう一度間接的にお尋ねいたしますが、総理はわれわれの今日申し上げたことをお聞きになって、もっともだと考えられて、今後従来と違った立場で法制局長官を指揮し行動させられる御意思かどうか。結局話を聞いたら今まで通りだ、こういうのか、どっちですか、はっきりお尋ねしておきます。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は先ほどお答えを申し上げました通りに、総理大臣及び国務大臣として議員の御質疑に対しては責任をもって答弁する考えでございます。政府委員をして答弁せしめる場合におきましては、特に今申しましたような限った点において指名してそうしてお答えをするようにいたしたいと思います。(秋山長造君「議事進行でもう一つ」と述ぶ)
  46. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山長造君。
  47. 秋山長造

    ○秋山長造君 木村委員質問の始まる前に、木村委員質問の前提として一つ解決していただかなければならぬ問題がありますから、議事進行で私から申し上げたいと思います。それは木村委員質問のためにも必要だが、同時にこの予算委員会審議のためにどうしても必要だと考えて、私どもは幾つかの資料を今日まで政府に要求してきておるわけです。その幾つかの資料の中で一番問題にされておるのは日米合同委員会に基づく各省別の日米合意書の資料ということが一つと、それからもう一つは、安保条約審議にからんで非常に問題になっております極東というものを地図の上で明示してもらいたい。新安保条約で言っておるところの極東というものを、アジアの地図の上で明示してもらいたい。そういう明示した資料を出してもらいたい。この二つの資料要求が先般来ひっかかっておるわけです。外務省としては、あるいは政府としては、この二つの資料要求に対しては二つとも言を左右にされて今日まで出そうとされないのであります。私どもはその理由が那辺にあるのか、どうしても納得に苦しむわけであります。従いまして、この際なぜこの二つの資料についてのみ政府側が資料の提出を渋られるのか、私はこの点を明確にしてもらいたい。委員長委員長の方から外務大臣に聞いていただきたい。
  48. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま秋山君から御意見のありました極東の地図ですか、それから日米合同委員会に基づく各省別の日米合意書ですか、その資料の問題につきましては、去る二十九日の委員長理事打合会におきまして、秋山君も御承知のように理事会におきましては必ずしもその意見の一致を見なかったわけであります。そこで本件につきましては、さらに明日午前九時三十分から委員長理事打合会を開いて協議することになっておるのでございます。秋山君も御承知のように、資料要求という問題につきましては、国会法第百四条及び参議院規則第百八十一条によりまして委員会で議決し、議長を経由して要求することになっておるのでございますが、予算委員会におきましては、従来委員長理事打合会におきまして、資料の要求を相談して決定することになっておるのでございますが、今秋山君の議事進行についての御意見につきまして、一応政府意見を聞いてみてもらいたいということでございますから、委員長から政府意見をお聞きいたします。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日米合同委員会の記録は、従来不公表になっております。従いまして、今私から米側もしくは政府部内の各省との関係を打ち合わせいたしませんければ、出す、出さないと、ここで申し上げるわけには参らないと思います。何か内容等について、特定のものについてお聞きがあればできるだけのことはいたして参りたいと、こう存じております。また極東に関する地図ということであります。一般的な地図ならお出しすることがこれはできると思いますが、そういう意味じゃなく、何か線を引いた極東の地図というものは、これは総理答弁されておりますように、そういうものはございません。従って提出するわけには参りません。
  50. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の第一点のお答えですがね、これはそうしますと、外務省としては絶対に出せぬというわけではないのですか。出すか、出さぬか、出せるか、出せぬかもまだ相談していないというお話しなんですか、その点もう一度。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 従来御承知通り不公表になっておりますから、現在の段階において、(「非か不か」と呼ぶ者あり)非じゃございません。不でございます。不公表になっておりますので、自来出しておりませんし、また出せないことになっております。しかし、ただいま申し上げたように、何か特定の問題で御審議がありますときに、その内容等につきまして、各省その他と話し合いの上で出し得るものがありますれば出したいと思っております。
  52. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点ちょっとどうも納得いきかねるのですがね。従来から不公表になっておるというのは、ただ政府がその便宜上公表しなかったということなんですか。それとも各省の間で相談をすれば公表し得るということなんですか。あるいはアメリカとの何か約束があって公表せぬということになっておるのですか。そこいら、もっとはっきりして下さい。ただ不公表になっておったから公表せぬということでは、どうも根拠がはなはだあいまいだと思うのです。
  53. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通りに日米合同委員会でございますから、合同委員会の記録というものが不公表でしていくということは、両国の間で話し合いができておる問題でございます。また同時に、内容等につきましては各省にわたっておる問題でございますから、各省等の意見もあるわけでございます。そういうことを申し上げたわけでございます。
  54. 秋山長造

    ○秋山長造君 どうもその点はっきりしないのですが、もう少し簡単明瞭にはっきり答弁をして下さい。どうも大臣のお話を聞くと、アメリカとの約束で公表しないことになっていると言いながら、また、各省との問で相談をして発表してもいいようなものは発表してもいいようなお答えなんですね。いかぬとか、いくとか、どっちかはっきりしているはずなんですね。しかも、われわれの見解では、日米合同委員会で扱われている問題というのは、これは行政協定の二十六条で設置されている委員会ですが、その委員会で扱う問題はいろいろあるでしょうけれども、特にその中心問題は、日本の国内の施設または区域を決定する協議機関ということで、やはり日本の国民の権利義務に関係した問題が中心のようです。そういう問題ならなおさらこれを全然非公開にする、公表しないという約束をするというのもおかしいと思うんです。たとえば作戦の打ち合わせというようなことなら話はわかるんです。合同委員会はそういうことを扱う機関じゃないと思うんですね。いろいろな物資の調達だとか、あるいは損害の補償だとか、あるいは用地の買収だとか、そういうような問題が中心のようにこの条文にも書いてあるし、われわれもそういうように承知してきている。そういうことならなおさら逐一国民の前に明らかにすることは、これは当然のことだと思う。いわんや、国会において、その内容を報告されるということは、私はこれは当然過ぎるほど当然じゃないか。どこに差しつかえがあるのか、もう一度明確にしていただきたい。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 合同委員会の記録というものは、これは外交文書でありますから出せません。従来不公表の取り扱いでございます。しかし、その結果から出てきます問題について直接取り扱います場合には、それはたとえば施設、区域の問題等について、どこの施設をどうするとかいったようなことは、それは公表されなければ出てこないわけでありますから、そういうものは各省でそれぞれ扱っているわけでございます。そういう意味でございます。
  56. 秋山長造

    ○秋山長造君 いや、そういう意味だといっても、そういう意味というのはちっともわからぬじゃないですか、外交文書は秘密といっておいて、それから直接出てくるものについてはその都度公表してもかまわぬというようなことを言っておられる、さっぱりわからぬです。しかも、さっき外交文書であるから秘密だと言いながら、さっきのお話では、各省と問題別に相談をして出せるものは出すというような御答弁もあったのですがね。どうなんですか。これははっきりして下さい。特に、ここで従来の行政協定というものは一応ひと区切りつくわけですからね、この条約と協定が調印されたことによって。ですから、なおさら、従来この七カ年の間に、この行政協定に基づいて日本の国民の権利義務関係がどういうことになってきているのかというようなことを、われわれとしても、新しい安保条約並びに協定を審議する場合に、当然過去七年間のこの実績というものを重要な資料として再検討してみる必要があると思うんですね。そういうような必要から言いましても、この日米合同委員会において、この行なわれたところのいろいろな合意書並びに決定事項というようなものは、この際逐一国会の資料として出していただいて、そうしてわれわれの条約あるいは協定審議の重要な資料素材にしてもらいたいというこの要求を持つことは、これは当然だと思う。木村委員もこれから質問を始めるにあたっても、そういう問題にこれは触れて質問を展開していきたい、こういうことで資料要求をしているわけですからね。だからそれに対してぜひ答えていただきたい。  それから地図の問題は、この第二段として申し上げますが、まずこの点をもう少しはっきりして下さい。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、日米合同委員会の記録というものは、これは従来不公表で話し合いをすることに話し合いをいたしておりますので、公表はいたすことが今日できません。しかし、そのきまりました結果を各省がいろいろ実施するということになる場合に、それは実施するということは表に出てくることなんでありますから、そういう範囲内において各省と相談した上で、各省から出せるものは出すということを申し上げておるわけでございます。
  58. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点をはっきりしてもらわなければ困る。ちょっと多少の混乱があると思うのですがね、日米合同委員会の記録といいますと、これは国会でいう会議録、議事録のようなものも含むと思うのです。われわれはそこまで要求しているわけじゃない。そのいろいろな経過をたどって、話し合いの結果合意書ができるわけでしょう、最終的に。その合意書というものをこの際一まとめにして出してもらいたい、こういうことなんです。だから、その合意書というものが各省に関係のある合意書ならば、各省それぞれを通じてこれは実施に移されていくでしょうが、やはり外務省の方が元を握っておられるわけでしょうからね、だからその外務省の手元で一まとめにして出してもらいたい。外務省が出せぬというならば総理大臣から出してもらってもいい。いかがですか。
  59. 小林英三

    委員長小林英三君) 今秋山君の議事進行についての御質問は、先ほども申し上げましたように、理事会においてまだ未決定になっておるのでありますから、政府におかれましては、秋山君の聞かれておる実情を十分そんたくされまして、出せるなら出す、出せないものなら出せないということをはっきりこの機会に御答弁願いたいと思います。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、日米合同委員会の書類というものは、(「合意書だ」と呼ぶ者あり)合意書を含んで、その文書というものは今日まで不公表のことになっておりますので、ただいまは出せません。
  61. 小林英三

    委員長小林英三君) わかったでしょう。合意書は出せないという……(「違う、そうじゃないんだ」「議事進行」と呼ぶ者あり)
  62. 秋山長造

    ○秋山長造君 簡単に片づかぬ問題ですよ。やはりこういうものをどうして出ししぶられるのかということがわれわれにははっきりしない。従来不公表だ、不公表だと言いましても、あるいは問題によっては、今までこの委員会の席上でも出されたこともある。ある日時において行なわれた合同委員会の合意書というものを出されたこともあるのですからね。ですから、ただこの際一まとめに出すことはいかんいかんと言っても、それは政府の都合でいかんのか、ほんとうに出せないのかということがどうもはっきりしないのです。だからその点は、もう一度はっきりしてもらいたいと思う。(「前例はない」と呼ぶ者あり)なお資料を要求しておられる木村委員発言をも、委員長この際許していただきたいと思う。これはもう少しはっきりして下さい。この七ヵ年何をしたのかわからないようなことのままで新しい条約なり協定なりを審議しようといっても、それは無理です。やはり一区切りつけたいから新しいものを作ったということをあなた方も今まで言ってこられたのですから、その今までやってきたことの一区切りをつけるためには、今までどういうことをやってきたのか、日米合同委員会でどういうことをきめてきたのかということくらいの資料をまず明らかにした上で新しい協定なり条約審議に取りかかるのが私は順序だろうと思う。だからその点をもう一ぺんはっきりさして下さい。
  63. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山委員に申し上げますが、議事進行について発言されておるわけです。そうでしょう。(「その通り」と呼ぶ者あり)あなたも事情を御承知のように、この資料要求の問題については、理事会で決定してないのです。従って予算委員会では要求を決定していないわけです。あなたからせっかくの御意見がありましたから、私は政府意見を聞かしておるわけです。ですからして、資料要求は、まだ当委員会において決定していないわけなんです、正式には。そのことをよくお含みの上でお願いしたいと思います。
  64. 秋山長造

    ○秋山長造君 委員長のおっしゃることはわかりますが、しかしそれは委員長は形式論ですよ。といいますのは、私委員長のおっしゃる通りのまともな経過をたどっておるならば、今ここでこれほど発言はしないのですけれども、これは自民党理事の皆さんだって、ほかの会派の皆さんだって御承知になっていると思うのです。一昨日の理事会において、この問題は一応ペンディングになったことはおっしゃる通りです。ところがその一昨日の午後、自民党の西田理事と私連絡する機会があった。そのときに西田さんの方からも、これはもう政府として出せない、だからかんべんしてくれよと、こういう話があった。そこで私は、これは公式の政府側の返答であるか、自民党としての正式の意思表示であるかということを念を押したら、それはもうその通りだと、こういうわけなんですね。地図に関しても同様です。それからきのうまた委員部を通じて、政府側の方からこの二つの資料については出せないという返事があったわけです。だからそういう報告があれば、これはもう明日理事会を開いてやることになっているのだから、あすにしたらどうだとおっしゃることは、一応は筋道としてはそうであるかもしれぬが、それはいわば形式論にすぎぬのです。だから私どもは審議を能率的に進めていくためには、実質を取り上げて実質的に私は解決していくべきである、そういう意味議事進行について発言を求めて、政府が出せぬというなら、なぜ出せぬのか、納得できるだけの理由を説明してほしいということを発言しているのですから、当然だと思う。
  65. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山委員、今のあなたのおっしゃった自民党の西田君との間の云々というような問題は、これはあなたと西田君との個人的な非公式な問題だろうと思うのです。公式の予算委員会としての取り扱いにつきましては、私が先ほど申し上げましたように、まだこれは未解決の問題です、今日は。明日午前九時半からこれを取り扱うということになっておる。
  66. 秋山長造

    ○秋山長造君 形式論です。
  67. 小林英三

    委員長小林英三君) これから質問を始めていくのです。ですから、これは質問の中でおやり下さればいいじゃないですか。
  68. 秋山長造

    ○秋山長造君 水かけ論をやっておったら時間がたってしょうがない、質問をするのに資料を要求しているのだ。
  69. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 ただいまの秋山君の御議論の資料要求の二点は、大臣答弁によって明瞭なので、明日の理事会を待つ必要はない。日程の通り木村君の質疑に入ってもらいたい。
  70. 秋山長造

    ○秋山長造君 明瞭じゃない。
  71. 小林英三

    委員長小林英三君) 今委員部から秋山君に出せないというような話があったということは、課長から聞いたら、そういうことはないそうですよ。ですから、非公式なことは、個人的な問題は、ここで公開の席上ではおっしゃらないでいただきたい。たまたまあなたの御意見がありますから、私は政府意見を聞いただけなんですから、大体木村君の質疑中においてやっていただけばいいと思います。
  72. 秋山長造

    ○秋山長造君 質疑をやるのに要るのだ、これは個人的なことを公の席で言うなというが、それは個人的なことじゃないですよ、資料の問題ですよ。何もあなた個人的にどうしたこうしたとかいうような問題を、公の席でやるということじゃない。
  73. 小林英三

    委員長小林英三君) 資料の取り扱いについてのあなた方の談合は、個人的な問題だと言っているのです。
  74. 秋山長造

    ○秋山長造君 実質論を言っている。それはもう単なる形式的な手続きだけの話なら、それは委員長のおっしゃる通りでしょう。しかしきょうその二つの資料が絶対必要だと言っておられる木村委員質問は、きょうあるのですよ。きょう質問をやつて、質問が済んで、あとから資料を出すか出さないかという議論をしてもらっても、木村委員にとってちっともありがたいことも何もありゃしない。だからこれを実質的に解決するために、この席をかりて議事進行発言を求めて、委員長から政府の意向を伺っていただきたい、手っとり早くやってもらいたいということです。私の言うことの方が能率的でしょう。
  75. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長もその通り取り扱っているわけです、現在。
  76. 秋山長造

    ○秋山長造君 だからそういう点をもっとはっきりして下さい。資料関係で、出せるような出せぬような、あいまいなことでなくして、はっきりして下さい。
  77. 小林英三

    委員長小林英三君) 外務大臣から、もう一回はっきりと一つ答弁願いたいと思います。
  78. 秋山長造

    ○秋山長造君 その合同委員会の記録の問題と、それからもう一つは、極東の地図の問題ですが、これも合わせて申し上げておきますが、そういうものは出せぬというのはおかしいと思う。あなた方は去年の秋の臨時国会以来、この予算委員会の席上においても、公式に、総理大臣にしても外務大臣にしても、その極東の範囲をわれわれの前に口答で言ってこられたわけです。あるいはフィリピン以北だとか、沿海州を含むとか含まぬとか、あるいはまた最近は金門、馬祖を含むとか、含まぬとか、そういうことをそのつどネコの目が変わるように変わってはきたが、とにかく具体的な地域を名ざして言ってこられたわけなんですからね、これは将棋のこまを動かすのとはわけが違いますから、将棋のこまを動かすのだってルールがあるのだから、そうでたらめには動かせぬのだ、やはり碁盤の目という一つの地理的なものがそこにあってこまが初めて動かせるのですからね。ですから極東のどの島が入るとか入らぬとか、どの地区というようなことを口頭で言えるのなら、それをもっと正確を期する意味で具体的な地図の上にこれを表わすということは、これは当然やらなければならぬことだ。また具体的に地図というものを目の前に置いて発言をされないから、ただ口頭で適当なことを言われるから、ネコの目の変わるようにそのときそのときでふくれたり縮んだりするような、でたらめとは申しませんけれども、われわれ率直に言って、でたらめなその場のがれの発言だと思うが、そういうことになると思う。だから責任をもって正確を期するためには地図というものを掲げて説明をされるということはあたりまえなことじゃないですか。極東極東といって、これだけ重大問題になっている極東ということを、口先ではいろいろに言えるけれども、具体的に地図の上に現わせぬという、そんなばかな話はないですよ。アジアの地図というものを離れて、極東というようなものはこれは全くナンセンスだと思う。ですからそれを記入したものを、アジアの範囲をはっきり明示するものを、具体的に明示した地図というものを出して下さいよ。それが出せぬならどうして出せぬか、どうして出せないかというその理由を、もう少し納得いけるまで説明していただきたいと思う。
  79. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山君に申し上げますが、あなた今出して下さいとおっしゃるけれども、出して下さいということは委員会として決定していないのですよ。決定していないのですよ。そういうことを出して下さいといって今私からたびたび申し上げている、理事会においてまだ決定していないのです。保留になっている問題なのです。ただあなたが、大臣においてどういうような意向だということをお聞きになっているから、委員長答弁を求めているのです。
  80. 秋山長造

    ○秋山長造君 委員長はそんなにおっしゃるけれども、委員長はそんなにおっしゃるけれども、じゃ、この極東の地図にしても、さっきの合同委員会の記録にしても、これに異議を唱えておられるのはほかの会派じゃないのですよ。与党だけでしょう。しかもその与党の方がこれに異議を唱えられるその理由というものは、政府が出してくれんかもしれん、政府の意向をそんたくしてやっておられる。ですから、その政府の意向を離れて、理事会で独自できめるということは実際問題としてはあり得ぬことです、今の状態では。だからこう単刀直入に、その一番根本を握っておられる政府の意向というものを、この席上ではっきりと納得のいくだけの説明をしてもらいたい、こう言っているのですからね、私の言うことは。
  81. 小林英三

    委員長小林英三君) 理事会において与党の理事がこれにまだ了承していないということはこれはその通りでありますけれども、政府の意向をどうだこうだというようなことはまだ理事会には出ておりません。
  82. 秋山長造

    ○秋山長造君 言い直しましょう。言い直します。委員長がそういう誤解をあえてなさるのなら言い直しましょう。だから政府に対してお尋ねするのですが、委員会を通じて要求したら出せるのかどうか。出すのかどうか。委員会を通じてわれわれが要求したら、極東の地図は出すのかどうか。合同委員会の記録は出すのかどうか。合同委員会の合意書です、出すのかどうか、はっきりしてもらいたい。
  83. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいままで申し上げておりますように、合同委員会の記録というもの、文書というものは、(「合意書だ」と呼ぶ者あり)合意書を含めた文書でございます。(「合意書だ」と呼ぶ者あり)合意書でよろしゅうございます。合意書は出せません。不公表でありますから出せません。それから極東の範囲を地図で線を引けというようなことは、今回の場合に当てはまらないことでありまして、そうして地図で出すわけには参りません。
  84. 秋山長造

    ○秋山長造君 それみなさい。だから私が言わんことじゃない。だから今のこの問題は、理事会でやるやらぬよりも、政府自身がもとからそういう態度なんだから。ですからそういうことならば、政府はなぜ出せないのかということを、私はさっきから繰り返し聞いておるんですから。私の聞くのは当然だと思うんですよ。委員長から要求して下さい。
  85. 小林英三

    委員長小林英三君) この理事会の内容政府答弁とは別個の問題ですから……。
  86. 秋山長造

    ○秋山長造君 それは形式論ですよ。
  87. 小林英三

    委員長小林英三君) 別個の問題です。(「委員会が要求して出せないのか」「委員長はもっと権威を持ってやれ、政府の代弁をしていてはだめだ」と呼ぶ者あり)木村禧八郎君、御質疑を願います。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今私の要求しておる資料について大へん手間どっておるようですが、一応私は、なぜこの資料を要求しているかという理由を述べまして、政府側の答弁をもう一度わずらわしたいと思う。合理的にどうして政府が拒否するかということが納得できなければ、私は質問に入れません。  この新安保条約第六条を審議する場合に、これは行政協定に関係してくるんです。そうして先ほど秋山君も言われました通り、現在の行政協定は新しい行政協定によって終わるんです。ですから昭和二十七年以来やってきた、もうすでに過去のものなんです。過去に属するその合意書を――合意書は各省と打ち合わせれば出せないわけはないと言うんですから、ものによっては出せるんです。それが合意書を見なければ、実際に行政協定というものはどういうふうに行なわれてきたか、国民はわからぬじゃありませんか。それでこの新しい安保条約において、対等であるとか自主性が確保できたと言いますけれども、合意書を見なければ対等であるかあるいは自主性が確保されているかわからないんです。この合意書は重大な資料であります。聞くところによりますと、アメリカ側も今度は、今の現行条約が終わるんだから、公表してもいいのではないかと、アメリカ側は言っておるように伝えられておるんです。ところが外務省はアメリカに頼んで、どうかこれは公表しないようにお願いします、合意書につきましては。そうして公表を差し控えることにしたというやに聞いております。もしこれが公表されましたならば、日本の自主性なんというものはないということがはっきりわかると思う。だから国民に、具体的に行政協定というものはどういうものであるかということを理解させるためには、各省の合意書がなければ、たとえば郵政省関係についてどういうことが行なわれておりますか、これを見なければ実態がわからないんです。自主性とか対等とか言っていますけれども、具体的な資料に基いて質問しなければ質問のしょうがないじゃありませんか、水かけ論になってしまう。どうしてこれが秘密なんであるか、過去に属することです。これから過去に属するものを、それから実施した結果のこの合意書をどうして公表できないのですか。それが公表されなければ具体的に質問できない、抽象論になっちゃうんですね。ですからどうして、アメリカ側がいけないというのか、あるいはこちらでそれを公表したんでは、新安保条約に自主性があるとか、対等性というけれども、それがわかれば自主性も何もないということが国民に明らかになるので出せないんではないですか。明らかに、もしこの対等性あるいは自主性が確保できるというなら公表されたらどうですか、この通りである、対等であるということが明らかになるじゃありませんか、それがなければ私は質問に入れない。ですから私は決していじ悪く要求しているんじゃないんであります。この審議を具体的に、抽象論ではなく、ほんとうに日本の民族の今後の運命に関する重大問題ですから具体的な資料を要求しておる。もう一つ、行政協定の実施の結果につきましての資料を要求しているんです。特に二十五条の2の(b)項による施設提供費及び補償費についての、二十七年以降今日までの実績の資料を要求しているのであります。そういうものの出てこないで審議に入ったって無理じゃありませんか、常識から言いまして。この点委員長におきまして、賢明なる委員長におきまして一つ御了承願いまして、もう一度差しつかえない範囲において、この合意書を、各省と相談すれば実施した分については出してもいいやに言われておるんですから、その点を政府にそういう意味でもう一度要求しているのでありますから、出せるか出せないかを、もう一度政府へ問うていただきたい。
  89. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君に申し上げますが、行政協定実施以後最近まで日本国民のこうむりました損害、影響の各省別の報告は本日中に出るそうですが、それでいいんですか、それとは違うんですか。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 本日中……、私が質問する前にどうして出せなかったんですか。よほど前に私は要求しておったんですよ。
  91. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君の今のあなたの御要求が、今委員長から申し上げました本日中に出るという資料でいいんですか。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の行政協定の影響、それは今私が質疑する間に早くいただきたい。そうすればそれを見ながら質疑もできますが、それから、もう一つの合意書につきましては違いますよ。合意書は別でございます。
  93. 小林英三

    委員長小林英三君) 今質問者の木村君から、資料の問題についてお話がありました問題について外務大臣から一つ……。
  94. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、日米合同委員会の合意書を含めた文書というものは、両国で不公表ということにいたしておりますので出せません。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行について。  出せないと言っておりますけれども、これは三年前の一九五七年だと思うんですが、決算委員会で岸根の軍事基地に関する日米合同委員会の合意書、この内容、これは私はもらっておる、それは調達庁がはっきり出しておりますよ。そういう事例があるので、そういうこと言いますと、そのときは出している、今度は出せない。こういうことになれば、全くこれは政府の統一した方針ということはないということになる。そういう点からいって、これは当然要求に応じて出さなくちゃならない。今木村委員の全般的な審議に必要な資料としてこれは要求されている。当然これは出すべきだというふうに思うのですが、一体どういうわけですか。一方では出したそういう事例がある。調べてごらんなさい。一九五七年岸根の軍事基地の問題が決算委員会で非常に問題になった。約二時間くらいこの問題で質問したことがある。そのときこれははっきり出している。そういう時代があるのに出さないということは、これは全く不統一というほかはない。こういう点で明決な答弁をして下さい。
  96. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 不公表になっておりますので出せません。しかし何か特定な問題がおありになりまして、あるいは過去においてアメリカ側と協議の上で、これだけはいいというような問題がありましたならば――そういうときの事例であったと思います。
  97. 千田正

    ○千田正君 さっき委員長から、理事会のまとまった結果によってこの問題は解決しようということをおっしゃられましたけれども、これは明日……、現実においてはただいま木村委員質問されようとしていること、木村委員としてはそういう資料がなければ質問できない、こういう社会党さんの方の非常な要求のようであります。時間もそれに十二時になっている、こういうことで堂々めぐりにお互い議論しておっても結論がつかないじゃないですか。それで一たん休憩されて、理事会を招集して、今後の運営をどうするかということを決定される。あるいは政府に要求するものは要求する、そういう角度に立って休憩されてはいかがですか。私は休憩の要求を申し上げます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後一時に再開することにいたしまして、この際暫時休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十五分開会
  99. 小林英三

    委員長小林英三君) 休憩前に引き続きまして、委員会開会いたします。  休憩中に開きました委員長及び理事打合会の協議の結果について、御報告申し上げます。  日米合同委員会に基づく各省別の合意書は提出できない旨、外務大臣から答弁がありましたが、合意書に基づき実施いたしました事項については、関係方面と協議の上、できるだけ早く提出してもらうことに意見の一致を見ました。また、極東の範囲を明確にした地図につきましては、協議が一致いたしませんので、さらに協議を行なうことといたしました。  以上御報告いたしました通り取り扱うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。   ―――――――――――――
  101. 小林英三

    委員長小林英三君) これより、総括質問に移ります。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで、午前中、日米の合意書につきまして、政府にその資料の提出を求めましたが、提出することができないというお話でございました。しかし、その合意書に基づいて実施しつつある、今日まで実施してきた事項については提出するというお話でございますから、私はこれから質疑に入りますが、しかし、合意書がわからないで、この実施事項というのがわかるのですか。合意書と同時に実施事項を御発表願わなければ、できない。  それで、私は具体的にお尋ねします。先ほど外務大臣が、具体的に質問をされるならば、それに応じて答弁してよろしいというお話でありましたから、一つ伺います。  NHKが合意書に基づいて海外放送をやっていると思います。その海外放送をやる場合の合意書及びそれに基づいてどういう放送をしているか、内容、これを御答弁願いたいと思います。
  103. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定の三条二項によりまして、合同委員会でお話し合いをいたしまして、そして現在NHKがインフォーメーション・サービスとして海外放送をやっております。(「内容内容だよ」「内容を言わなければだめだ」と呼ぶ者あり)私の聞いておりますところでは、三十分はニュースで、その他音楽あるいは解説等をやっておるようでございます。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その放送の内容です。それから、どう合意書に基づいて、何を根拠にして、そういう海外放送をやっておるか。
  105. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こまかい点につきましては、政府委員から御答弁願います。
  106. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 合意書の内容は、合衆国軍隊の放送及び広報業務に必要な放送は、アメリカ軍で必要とする。そこで、NHKの施設を今まで――今までと申し上げますのは行政協定発効まででございますが、それまで全面的に米軍が使っておったけれども、今後は午後十一時以前に使用したものはNHKに返す。午後十一時後に一定の時間アメリカ側が必要とする時間をNHKとの協定によって使わしてもらいたい、こういうことでございます。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その、質問に答えていないと思うのですね。どういう内容を放送しているかですね。
  108. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 内容は、ただいま外務大臣からお話がございましたように、三十分間はニュース、このニュースはAPとかUPIとかその他一般の通信社からとったニュース、十分間はニュース解説、その他の時間、これは全部で一時間半だそうでございますが、その他の時間は演芸放送、こういうことが私どもの入手しております情報でございます。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、まだほかに、NHKだけでなく、合意書に基づいていろいろなことがなされていると思いますが、これは、これから新安保特別委員会もございますから、そういう委員会を通じて具体的に逐次要求して参りたいと思います。時間がございませんので、この点は質問を保留しまして、本論に入りたいと思います。  私は、新しい安保体制を前提として編成されました新安保予算とも称すべき三十五年度予算案性格を明らかにするために、岸総理大臣を初め関係大臣質問をいたしたいと思います。これから、私たち社会党委員は、この予算案性格を具体的に徹底的に究明して、こうした性格予算案がいかに日本の平和と民主主義と国民生活の安定向上に反するものであるかということを、質問の前に明らかにしていきたいと思うわけであります。  そこで、まず岸総理大臣にお伺いいたします。岸首相は憲法改正論者でございますが、新安保条約の締結によりまして憲法改正を急ぐのではないか。この新安保条約に盛られた義務を果たすためには、軍機保護法とか、あるいは海外派兵の問題とか、あるいは将来は強制徴兵の問題とか、そういう憲法改正をしなければならないような事態が起こってくるのではないか。そこで岸総理は、憲法改正の問題につきまして、私は時期を急ぐようになるのではないかと思われるのでありますが、御所見をまず伺いたい。
  110. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法改正の問題につきましては、法律で定められております憲法調査会において調査審議をいたしております。この安保条約の改定と憲法改正には、何らの関係がございません。私はそう考えております。従って、これを急ぐ意思は持っておりません。調査会の結論を待って処置したい、かように考えております。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで、政府はすでに憲法に違反して自衛隊の増強等をやってきておるのでありますが、今度の新安保条約を実施する、そうしてこの新安保条約に基づいていろいろ義務を負うわけでありますが、特に相互防衛の義務を負うわけであります。今の憲法をそのままにしておいて、この新安保条約に基づく相互防衛の義務を負う場合には、これは現在の憲法を依然としてやはりカンニングをしてやっていくつもりですか。
  112. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の安保条約の改定のうちのいわゆる相互防衛という内容は、日本の領土内におります米軍が、攻撃をされた場合に、日本の自衛隊もこれに対して防衛をするということでございまして、それは日本そのものに対する武力攻撃にほかならないのでありますから、われわれは新しいここに実質的な義務を負うものではございませんと、われわれは信じております。かのいわゆる相互防衛条約のように、他の領土に、締約国の相手方の領土が侵害されておる場合に、これに対して防衛の義務を負うというようなものとは、意味が違うのでありまして、従って、私どもは、憲法の現在の自衛権の範囲において当然なし得る防衛をすることにほかならないのでありますから、憲法規定と違反するものではない、かように考えます。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、相互防衛の問題、あるいは集団的自衛権の問題につきまして、あとでまた具体的に御質問をいたします。この新安保条約の中で一番重要な問題と思いますので、あとでまた御質問いたしますが、今の憲法をそのままにしておいて、私はこの新安保条約の義務を果たすことはできないと思います。それは、前に重光外務大臣がダレス氏と交渉したとき、憲法改正しないで海外派兵等をできないのではないか、それではこの相互防衛ができないというので、防衛分担金を負けてもらえなかった経緯もあるのであります。従って、現在の憲法のままでやるとすれば、どうしても私は、憲法を現在以上にカンニングをしていくことになると思います。  そこで、赤城防衛庁長官にちょっと伺いたいのですが、今回この防衛力を増強していく場合、いろいろな近代兵器を国産化していくと思いますね。たとえばナサールとか、あるいはサイドワインダーとか、あるいはホークとか、ナイキ・ハーキュリス、こういうものをだんだん国産化していくのではないのでしょうか。その点、伺いたい。
  114. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今お示しの兵器等につきましては、研究はいたしておりますが、まだ国産化するというような段階には行っておりません。供与を受ける程度で、国産化のまだ方針等は立てておりません。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日経連あたりでは、財界あたりでは、サイドワインダーは来年秋ごろに国産化したい、また地対空のホークなどは三十八年から三十九年ごろ国産化したい、こういうような計画であるやに聞いておりますが、御承知でありますか。
  116. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) サイドワインダーにつきましては、今年の予算におきましても購入するといいますか、供与を受ける、こういう予算になっています。それから、ホーク等につきましては、まだ防衛庁としては計画は立っていません。地対空のミサイルにつきましては、ナイキのアジャックスの訓練に人を派遣する、こういうことで、ことしの予算も御審議をお願いしております。その点で、武器等につきましては、まだ何らの方針をきめておりませんのでありますので、従って、経団連でございますか、そういう方面でいろいろ計画はあるかと思いますけれども、それは防衛庁とまだ話し合いをしているわけでもありませんし、こちらの計画に乗ってやっておるというわけでもございません。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 サイドワインダー等を国産化していくような場合に、今の秘密保護法の範囲でまかなえますか。
  118. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) サイドワインダー等につきましては、供与を受け、また研究をしていますから、今の武器の秘密保護法の範囲でまかなえると思います。しかし、その他につきましては、まかなえないものが相当あると考えております。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 従いまして、秘密保護法の改正、軍機保護法というものを、この新安保条約の締結に従って、そういう状態が生じてくるのじゃないですか。
  120. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今のところ、兵器に対する機密保護法を提案しなくてはならぬというようなことに相なっておりません。この点は考えておりません。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今のところと言いますが、将来はどうなんですか。
  122. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 将来につきましては、兵器の種類等につきましてなお検討を要するものがあると思いますが、当分その必要はなかろう、今のままでよかろうというふうに考えております。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 当分というのは、第二次防衛計画の期限内においてはどうですか。
  124. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) (第二次計画は昭和四十年を最終年度予定しておりますので、その間においては、あるいは秘密保護法の必要を生ずるようなものが出てくるかもしれません。しかし、これは御承知のように、一般的の機密でありませんで、兵器に対する機密でございます。四十年が第二次計画の最終年度になっていますから、その間においては、あるいはそういう必要が生じてくるということに相なるかとも考えられます。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に重大な御答弁でございましたが、次に、私は、この三十五年度予算案の前提となっております新安保条約について、特にそのうち、わが国の財政経済、国民生活に重大な関連を持って第二条、第三条、第五条について、総理大臣、外務大臣に御質問いたしたいと思います。  まず、第二条につきまして、第二条はいわゆる経済協力の条項でありますが、現在の条約にはこういう条項はないわけですね。経済条項というものをどうして今度入れたのであるか。ある外国人の観測でありますが、財界人が、こういう軍事条約を締結するにあたりまして、全権団の一員となって調印したということについては、非常に割り切れない感じがするという批評を聞いておるのであります。この経済協力条項を設けた理由ですね、その意図はどこにあるかを、まずお伺いしておきます。
  126. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この相互安全保障条約は、言うまでもなく、日米両国の理解と信頼の上に協力を規定しているものでございます。これは防衛の根拠をなすところの政治的、経済的の基盤において共通なものがあり、密接な関係にある両国の関係を、一そう緊密にし、相互協力をすることが、両国の繁栄と、ひいては世界の平和に貢献するゆえんである、こういう見地から、いわゆる経済条項を入れたわけでございます。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな抽象的なものではないと思うのですね。この条約によりまして、日本全土をアメリカの対ソ防衛の基地として提供する、引き続いてですね。さらに、われわれの税金をもってアメリカ防衛のための自衛隊を増強する、その代償としてアメリカの援助を得たい、そういうことがこのねらいになっているのではないのでありますか。取引ではないのですか。アメリカに日本を軍事基地として提供する、日本の独立を売り渡す、その代償としてアメリカからより多くの経済援助を得たい、こういうところにほんとうのねらいがあるのではありませんか。
  128. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 木村委員の御質問でありますが、私どもは、この安保条約性格、また日本の自衛隊というものの性格につきまして、アメリカを防衛するためにこういう犠牲を払っているとは、われわれは全然考えておりません。そうではなくして、日本自身が他から侵略されることを未然に防ぐという意味において、自衛隊を逐次国情、国力に応じてこれを漸増して参っており、また、自衛隊だけでは足りない部分を補完する意味において、日米が共同して日本の安全を守り、また日本の安全と不可分の関係にある極東における平和と安全を守るということでございまして、この本質そのものが木村委員のお考えとは違っておるわけであります。いわんや、従って、この二条が何かアメリカに対するわれわれは代償として援助を求めるというような意味ではございませんので、先ほど私がお答えした通り考えております。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本の自衛隊がアメリカの防衛のためでない、また岸総理はよく自主的にこの防衛力は増強できるのだということを言われますが、この点についてはあとで具体的に証拠をあげて御質問いたします。  それでは、この条約内容について伺いますが、第二条の「締約国は、その自由な諸制度を強化する」ということがありますが、この「自由な諸制度を強化する」ということは、具体的にどういう意味でございますか。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれは自由主義の立場を信奉いたしております。従いまして、日米共通、自由主義の経済の上に立っておるわけでありまして、二条から申しますれば、主として経済の面においてやはり自由な立場において経済を考えていくということでございます。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、その自由とは何ですか。何からの自由であり、だれのための自由です。何からの自由であり、何のための、だれのための自由な制度なんですか。
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、自由主義と申しますと、人間が自分の個人の創意工夫の発揮が自由にできるような制度だと思います。これはおそらく、主義主張が変わりますれば別でありますけれども、だれのためといえば、やはりそれぞれの人たちの、個々の人たちの自由のためであります。しかし、むろん、そういうような上に立って国の経済政策が立っておれば、やはり強圧的な指導のものでなしに、個々の総意をできるだけ果たせるような工夫をこらした自由主義の経済制度の上に立っていくわけでありますから、そういう面をますます発揮さしていくように努力していくということに相なろうと思います。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この規定は、そんな抽象的なことじゃないと思うんです。非常にはっきりしているんです。社会主義に対抗するための規定だと思う。自由なる制度を強化する、強めるということは、日米の独占資本主義を強化するということは、社会主義に対抗する意味を持っておるのです。そうでしょう。それで、社会主義の経済に対して、日米共同して対抗していくということを意味していると思うんですが、そうじゃないんですか。
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申しました自由主義経済を強化していくということは、社会主義経済とは反対の進み方であることはむろんでありまして、そういう意味におきましては、自由主義の経済を強化していく。ただ、われわれは、自由主義即資本主義的制度だとも考えてはおりませんし、そういうふうにわれわれとしては考えておるのでございます。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは議論になりますから、次に伺います。  その次に、「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除く」とありますが、これは具体的にどういう意味ですか。
  136. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済の国際的な運営あるいは見方、そういう問題については、経済の問題でありますから、いろいろ各国の置かれております事情、そのときの情勢等によりまして、同じ自由主義を信奉いたしておりましても、自由主義経済のもとにありましても、それぞれ若干違いが起こってくる場合があろうと思います。たとえば、今回――あるいは今回と申しますか、昨年以来問題になっておりますヨーロッパ共同体というような問題と域外との関係、それをどう見ていくかというような問題については、これはやはりいろいろ各国その立場で違っておると思います。従って、そういう問題についても、できるだけ話し合いをしていくと。同じような考え方で、そうして世界の経済の問題を解決していこう、こういうことでございます。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな抽象的なことではないと思うんですがね。  それでは、次にまた伺います。この「両国の間の経済的協力を促進する。」とありますが、この経済協力というのを具体的に御説明願いたいと思います。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済協力につきましては、むろん、二国間の経済を円滑に推進するということでできるだけ協力していくということと、先ほど申し上げたような世界的な経済、たとえば、具体的に申せば、低開発国の開発というようなものに対して協力をしていくというような、二つの面があると思います。そのいずれの面につきましても、できるだけ円滑にそれらの協力ができていく、また協力していくことが適当であろうと思うのでありまして、二国間においても、貿易振興等についてはできるだけ協力して参なければならぬことは当然だと思います。そういうことであります。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ重要な面を落としておられるんじゃないですか。日米経済協力の問題が起こってきたのは、今ではないと思うのです。講和条約、現在の安保条約ですね、これを結ぶ前にダレス氏が日本に参りましたときに、この問願が起こったと思うんです。その点、御承知だと思うんです。
  140. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ダレス長官が平和条約締結のときに日本に参りまして、どういうことがあったかということについては、詳細は私は存じておりません。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昭和二十六年一月に参りまして、ダレス・吉田会談が開かれました。二十六年二月六日の朝日新聞にこう書いてあります。「日米共同防衛の見地から、まず両国間に広範な経済協力体制を整えることについて原則的な了解ができた」と、こういうふうに朝日新聞は伝えております。そうして、ダレス氏に要望書というものが提出されております。この要望書は、「日米両国の永久的な経済協力体制が完成によって、日本がアメリカの防衛局面の一角とならねばならぬ緊急事態が起こった際には、日本工業の原動力が総動員され、アメリカとともに一体となって強化され得るに至るであろう」、こういう要望書なんですよ。従って、この新安保条約の第二条における経済協力というものは、先ほど言われた点も否定はいたしません。あるでしょう。もう一つは、こういう軍事的面、米ソ戦が起こったときに日本の工業力を総動員する、そういう面も含まれているんではないですか。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) おそらく当時の事情からいえば、日本は敗戦後の経済復興をいたさなければならぬ時期だったと思います。従いまして、経済上の諸般の協力をアメリカに求めますことは、これは当然なことでありまして、その協力があったればこそ、ある意味からいえば、今日の復興もすみやかにできてきた一つの原因だと思います。そういう意味において、日本としてはこの経済協力を非常に重大視しておったわけでございましょう。結果において、あるいは日本の工業力が伸張発展いたしますれば、アメリカにも利益になることは、これは当然のことでございまして、私は、単にそれは軍事的な何か目的のためにやったというよりも、日本の経済力の復興そのものが、全体としてアメリカにいい影響を与えたということは、これは否定することはできないと思います。ただ、何か特定の軍事的目的のために日本の復興が援助されたということではないと考えております。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この経済協力は、何か具体化いたしましたですか。
  144. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、実は、はなはだ申しわけないわけでありますけれども、吉田・ダレス会談というものを詳しく存じておりませんし、それから引き続き何か具体的に出てきたとは考えておりませんし、またそういうことを承知いたしておりません。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃない。新安保条約の第二条によるこの経済協力は、何か政府間の具体的な、合同委員会を作るとか、そういう話があったはずであります。何か具体化いたしたことがありますか。
  146. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約の第二条のことから、何か日米合同委員会とか、経済に関する合同委員会ができるかという御質問のようでありますが、現在、日米協力の、経済的な協力の面につきましては、通常外交ルートをもって、十分絶えず連絡協調を保ちながらいっております。そうしてお互いに意見の交換をし、意思の疎通をしておりますので、特別に何か専門的な委員会を作ることは、必ずしも現在必要ではないと思っておりますが、しかし、やはりたびたび会合いたしますということは必要なことでもあろうと思いますので、将来、もしさらにそういう問題を取り上げていくことも考えられないわけではございません。ただ、この結果として、何かすぐに経済委員会等のものが設置されるという結論にはまだ達しておりません。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に政府考えは甘いといいますか、あるいは失礼ですが、おめでたいといいますか、この前ダレス氏が来たときに、一億円の日本開発会社というものを、日米折半でそういう機関を作るという案があったんです。ところが、アメリカから拒否されているんですよ。これは私は政府間では具体化しっこないと思います。アメリカの経済協力というのは、それは国民経済の面もありましょうが、前にダレス氏が来たときに、ダレス・吉田会談で意見が一致したように、これは非常に軍事的な面、防衛的な面があるんです。だから、アメリカとしては、前にダレス氏が始終言っておりましたように、日本の経済力、人的資源と日本の工業力というものをアメリカが軍事動員できればいいのでありまして、そんなに簡単にアメリカが政府間の機関を作って、日本に経済援助をすぐそれでくれるなんて考えたら、私はおめでたいと思うのです。  そこで次に、時間がございませんから第三条、日本の財政経済、国民生活と密接な重大関係にある第三条について伺います。第三条に「継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を」、「維持し発展させる。」とありますが、これは現在の安保条約あるいはMSA協定よりもさらに積極的な日本の防衛義務というものを規定したものと思いますが、そうじゃございませんか。
  148. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の安保条約あるいはMSA協定よりもさらに一そう強力なということには考えておりません。
  149. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その理由です。
  150. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日米両国と申しますか、それぞれの防衛の能力を進めていく、これは独立国として日本が自分の防衛能力を維持していきます、または進めていくことは、私は当然のことだ思っております。そういう意味においてお互いに独立国が自分自身の防衛をいたすような力を維持させるということについて、お互いにそれを宣明し合いますことは、特別に具体的な何かの約束をいたしておるわけではないのでありまして、それぞれの国が財政経済上の理由によってきめていくことなのでありますから、そういう意味におきまして何か特に付加されたものがあろうということは考えておりません。
  151. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その防衛能力を増強するのは、お互いに当然だから、こういうこの第三条に規定された「継続的かつ効果的」なディフェンス・キャパシティを維持、発展させるとあるでしょう。当然なことを条約にこういうふうに明確に文字に表わしているのです。これは現在の安保条約、MSA協定と違うのですよ。特別に負わなければ、現在の文字の通りでいいじゃないですか。何のための条約なんですか。「継続的かつ効果的」という言葉は、具体的にどういうことでありますか。継続的という言葉は、減らしてはいけないんでしょう。毎年々々防衛力を増強しなければならぬ義務がある。効果的というのは、武力攻撃に抵抗し得るだけの効果的でしょう。そういう条約を結んだんじゃないですか。その内容を聞いているんです。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、自分の防衛力を維持していく、それを継続的にと申しましても、むろん自分の防衛能力を今日の状態において日本の立場としてもある程度充実をさしていかなければならない点がある。ただ継続的という言葉が文字通り毎年々々ということになりますと、あるいは二年置きなりにふやしていくことになりますが、そういうことは別といたしましても、日本としても防衛力を現在の段階で充実していくということは、これは当然なことであろうと思うのであります。そういう意味において当然なことを宣明したのであります。むろん国際間の雪どけが来まして、防衛能力がそれほど必要でない、国連等で保障ができますれば、むろんそういう場合には、そういう見地からそれぞれの国が考えていくことに相なろうと思います。
  153. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の質問だ対してはっきり答えていただきたいのです。現在の安保条約なりMSA協定では、漸進的となっているでしょう。それが「継続的かつ効果的」、非常に現在の規定よりも積極的じゃないですか。その点どうですか。
  154. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ漸進的という言葉が積極的か継続的という言葉が積極的かということになりますと、なかなかむずかしい問題ではないかと思います。われわれとしては、今回の条約を作ります場合に、日本の自衛力をある程度維持していくことは、当然日本としてやるべきことであるのでありますから、そういう意味においてその決意を宣明したということでございます。
  155. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に不満足でありますが、じゃ次に、その「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」とありますね、どういう武力攻撃を想定しているのですか。
  156. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約は、御承知通り全面的に国連憲章第五十一条に準拠しております。従いまして、武力によります侵略的な行動が起これば、それに対して抵抗をしていかなければならぬということであることむろんでございます。
  157. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この抵抗する能力を維持、発展させる場合には、限界があるはずです。何か想定敵がなければ、その武力攻撃に抵抗する能力を維持、発展できるはずがないのです。何を標準にして維持し発展させるのですか。ソ連あるいは中国という想定敵があって初めてその武力攻撃に抵抗する能力ということがはっきりしてくるわけです。想定敵があるわけでしょう。なければその限界がわからぬじゃありませんか。
  158. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約におきまして特段に仮想敵国を設けておるわけじゃございません。従いまして、日本としては、日本の経済能力が許す限りの自衛力というものを持って参るわけで、おそらく日本が日本自身の力でやって参ります抵抗能力というものには、非常な現在の何と申しますか、武器が発達した時代には、非常に弱いものだろうと思っております。
  159. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その限界というのは、どこにあるのですか。この武力攻撃に抵抗する能力を維持、発展させる場合の限界をどこに置くわけですか。
  160. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは日本を別にいたしましても、おそらく世界のどの国でも防衛力の限界というものは、やっぱりそのときのいろいろな事情によってみんな考えていくことだろうと思います。それは防衛力自身の機械化の程度でありますとか、そういういろいろなその国の地勢の状況でありますとか、いろいろな問題があると思います。でありますから、そういう見地から防衛庁方面が判断されることであろうと思います。
  161. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理大臣に伺いたいのです。この規定によりまして、現在の安保条約あるいはMSA協定よりも一そう防衛力の増強を義務づけられたと私は思うのですが。
  162. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はそうは考えておらないのであります。あくまでも日本の防衛力というものは、国防会議においてきめておる、防衛計画について基本方針というものにのっとって自主的にこしらえる、作っていくということであります。特にその条文にも、憲法に従うことを条件としてということを入れておりますが、御承知のように日本の憲法というものが、自衛のための必要やむを得ない程度の実力しか持たないという憲法になっておりますから、その意味においてこれによってその憲法規定に反するような義務を負う、あるいはまた、従来われわれが国防会議においてきめた防衛力漸増の方針を動かすような義務を負うというような考えは毛頭持っておりません。従って、この条約によって将来予算上防衛力を急増するというような義務を負うものではないと、かように考えております。
  163. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま総理大臣が国防会議の決定に基づいて自主的にきめることができる、そうして義務づけられたものではない、こういう御答弁になっているのですね。それではお伺いたしたい。ターターの問題です。これは衆議院で民社党の今澄議員が質問いたしましたが、ターターをアメリカから購入することによって費目を転用されました「むらさめ」「ゆうだち」  「ゆきかぜ」「はるかぜ」、この四艦の主砲やレーダー装置はそのままにしておくのでありますか。防衛庁長官にまずお伺いしたい。
  164. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そのままにしておきます。
  165. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは最初三十四年度予算に、二十二億の予算を何のために組んだんですか。
  166. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいま御指摘の、警備艦のレーダーとか、あるいは主砲を換装するつもりで予算を組んだのであります。昨年の暮れごろに至りまして、新しい警備艦が予算要求できるような段階に来まして、そしてまたターターを据え付けるにつきましての費用の分担といいますか、援助があるということでありましたので、それの方に前の予定しました予算及び国庫債務負担行為を振りかえる、こういうことに相なっております。
  167. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことを聞いているんじゃないのです。最初「むらさめ」「ゆうだち」「ゆきかぜ」「はるかぜ」の大砲を取りかえよう、装備を取りかえようとしたのでしょう。古くなったからでしょう、近代的なものにしたいとアメリカに頼んだんでしょう。ところが、アメリカから来なかったわけですよ。そこで、予算が余ったのでタ一夕ーを買うことになった。そうしたら、今「むらさめ」「ゆうだち」「ゆきかぜ」「はるかぜ」はそのままにしておくというのですが、そんな古い装備で、換装しなきゃならぬものを、そのまま取りかえないでおいていいんですか。三十六年度再び器材費として要求するのかどうか。今そのままにしておくというのですか。使いものにならぬような装備で、それでよろしいのですか。
  168. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 使いものにならないわけじゃありません。十分に使える主砲であり、あるいはレーダーであります。スロー・フアイアですが、これをラピッド・ファイアの方にかえよう、レーダーはそのまま少し改良して、改良したものを据え付けようということであります。でありますから、今のままで十分間に合うんでありますが、いずれはこれもかえていきたいと思っておりますが、現在のままで十分間に合うわけであります。
  169. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 換装しなきゃならなかったので三十四年度予算にわざわざ組んだんじゃないですか、予算を。こちらの都合じゃないのですよ。アメリカからそれは来ないので、NATO諸国の方へそういう器材を送らなきゃならないので、日本に供給するのが間に合わないというので、それで換装できなかったんじゃないですか。これで自主性がありますか。日本の防衛力の増強に、こういうことで自主性がありますか。ターターを購入した際に、これを塔載すべき警備艦の建造計画がありましたか。
  170. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) アメリカからそういう主砲あるいはレーダーが来ないからかえたというわけじゃありません。それとは別に、新しくターターに向くようなふうに主砲及びレーダーを据え付る、こういうものに対してアメリカの方でもし必要ならば援助がある、こういう話があったわけであります。それでありますので、その費用を振りかえてターターの方の装備にしよう、それからレーダーに対する警備艦につきましては、昨年の暮れごろに財政当局と話し合いたしましたところ、三十五年度、本年度予算に計上できるというような情勢に相なりましたので、急を要するといいますか、必要度の方へこれを回そうということで、今度の予算に要求をいたしているわけであります。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この本年度予算に要求される二千六百トン型のこの警備艦、完成はいつごろですか。
  172. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十八年の第二・四半期に相なっております。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この四年後というのに、五年も前に、三十四年度の歳出でこれを支出する必要があるのですか。
  174. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十五年度のことしの予算に警備艦を要求しているわけであります。でありますので、その警備艦に積むところの主砲をスロー・ファイアをラピッド・ファイアにする、あるいはレーダーを改良したものをそれに据え付ける、こういうことでありますから、ちょうど警備艦の三十五年度要求と、それに載せるものとが大体時期を同じゅうしてくると、こういうことでありまするから、その方を急いだわけであります。
  175. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなら国庫債務負担行為ではできないのですか。
  176. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十四年度のものも予算は七億、それから十四億でしたか、正確な資料を持っておりませんが、これは国庫債務負担行為になっております。
  177. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 だって、ミサイルに三十四年度は二十二億充てたのでしょう。それは国庫債務負担行為でいいのじゃないですか。
  178. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 二十二億は予算に計上されているものと債務負担行為との両方寄せたものが二十二億であります。
  179. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それだから、自主性がないというのですよ。最初、この大砲とレーダーを換装するということで予算を組んだのでしょう、ね。結果としてこういうことになるのならば、そういう予算を組まなくてもよかったわけなんですよね。アメリカの都合によって、こういうことになっているのです。ですから、それが日本の防衛力を自主的にきめるとかなんとか言っていますけれども、実際には自主的にきめられていないじゃないですか、この一つを取り上げてもですよ。さらに、時間がありませんから、さらに、いかに自主性がないかをですよ、私はもっと質問してみたいと思います。岸総理は、先ほどこの国防会議の決定に基づいて自主的に日本の防衛能力はきめることができるのだと、義務づけられたものじゃないと、こういうふうに言っております。それでは伺いますが、MSA協定第一条に規定があります米国の対日軍事援助終了、ターミネイトですね、終わらせるという意味です。終了の条件について伺いたい。どういう条件によってこの軍事援助は終止されるか、これは重要な問題ですから、総理大臣に伺いたい。
  180. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) MSA協定の終了の規定は、アメリカの法律に、次のようになっております。「大統領は援助の提供が次の場合に該当すると認めるときは援助の全部又は一部を終了させねばならぬ。  (1) 合衆国の国家的利益若しくは安全又は外交政策に合致しなくなったとき。  (2) 援助が提供される目的に効果的に寄与しなくなったとき。  (3) 国連憲章に基づく合衆国の義務及び責任に合致しなくなったとき。」  そうして「大統領は軍事援助を受けている国が自国の防衛又はその国がその一部である地域の防衛に十分な寄与を行っていないと認めるときは、かかる援助の全部又は一部を終了させなければならぬ。」  (三)として「相互安全保障法に基づく援助は両院の併行決議により終了させることができる。」、こういう規定になっております。
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは総理大臣に伺いたいのです。この規定によればアメリカ合衆国の国家的利益と安全保障に役立たないと大統領が認めたときには軍事援助が取り消されるのです、大統領が判定したときですよ。それでどうして自主性があるということが言えますか。
  182. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は先ほど申し上げましたのは、日本が独立国として日本の自衛力をどういうふうに増強していくかということは、日本が自主的にきめるということを言ったのであります。今の問題になっております点は、アメリカが日本に対して援助するというその援助をやめる、これはアメリカの援助でありますから、アメリカとしてはアメリカの都合によって、今読んだような条件によって、アメリカの立場でこれを存続するかやめるかをきめるわけでありますけれども、私どもの日本の自衛力の増強というものは、そういう援助だけでやっておるわけではもちろんないのであります。私は根本方針を自主的にきめるということを申し上げたのでありまして、少しも矛盾はいたしておらないと思います。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 防衛長官に伺いますが、アメリカの軍事援助なくして日本の防衛力は維持、発展できますか。
  184. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) アメリカの援助なくても、程度によりますが、維持、発展はできますが、援助があった方がなおより維持、発展ができます。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今日まで――この間アメリカで日本に対する軍事援助を発表しましたアメリカの数字と政府の数字と非常に違っておりますが、政府では十年間に四千四百億援助を受けてきておるのですよ。さらに今後また無償援助を期待しておる。あるいはまた有償援助を期待しておるのです。実際問題として、アメリカの援助なくして日本の防衛は成り立たぬでしょう。これからミサイルの問題とか近代化があるのですから、今サイドワインダーのこともお話に出たわけじゃありませんか。実際問題として、アメリカの軍事援助を取り消されたら、日本の防衛は成り立たないでしょう。その点いかがですか。成り立つのですか。
  186. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 援助なくても成り立たせなくちゃいかぬと思います。しかし、お話のように、無償援助はだんだん減ってきておる傾向であります。でありまするので、有償援助といいますか、コスト・シェアリングといいますか、費用分担方式でアメリカも負担する、こういう形で続けていきたいと、こう考えております。
  187. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、アメリカの援助なくしては成り立たいのですよ。常識問題です、この問題は。ところが、今、防衛長官お読みになりましたアメリカの相互防衛援助法四百五条及び相互安全保障法の五百十一条ないし五百二十九条を見ますると、大統領が援助を与えたその国が自衛またはその国がその一部である地域の防衛に十分に寄与していないと認めたときに取り消すのですから、日本は主観的に、自主的にきめるきめるといったって、アメリカ大統領が寄与していないと認めたときには取り消されるのでありますから、いかに国防会議でどういうことをきめようと、それは実際問題としては、自主的にきめられないのです。そうじゃありませんか。
  188. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、防衛長官お答えを申し上げましたように、実際上、アメリカの援助というものは、日本の防衛力増強の上におきましては非常に貢献して役立っておることは事実であります。これを援助をもらおうとすれば、そういう条件に、アメリカ側の言っているような条件に、その範囲においては従わなければならぬことは、これは援助をもらう立場、向こうは援助を与える立場から、当然であろうと思います。しかし、日本がどれだけの防衛力を持つか、自衛力を持つかということは、私は国防会議においてきめ、そうして国力及び国情において云々と、漸増していくということを申しておりますから、もしも援助をもらわないとするというと、そのテンポが非常におそいものになります。これはそうなると思います。今日までの日本の防衛力、自衛力の増強につきましても、援助に属するものが相当部分あることは事実であります。従って、この程度できておるが、もしも自力だけでやるとすれば、そのテンポが非常におそくなって、その国防会議の方針を実現されるのに年月を要するという結果に私はなるだけであって、自主的にきめるということは、やはりこの国防会議できめた方針にのっとっていくべきものである、かように考えます。
  189. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 テンポがおそくなれば、継続的かつ効果的な維持、発展にやはり矛盾するわけですよ。  それからもう一つ重要な点がございますから伺っておきたいのですが、外務大臣に伺いたいのです。このアメリカの援助を終了させる場合ですね、これは事前協議の対象になるのですか。
  190. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ちょっともう一度伺わせていただきたいのですが、今のはMSA協定の援助をやめるということですか。
  191. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうです。
  192. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) MSA協定の運営につきましては、絶えず防衛当局とアメリカ側と話をしておられるのでありまして、別に事前協議とかなんとかいう問題ではございません。
  193. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外務大臣は、このMSA協定の援助を受けるその条件とか資格ですね、これを終わらせる場合の法律を御存じなんですか。ちゃんと規定してあるのですよ。
  194. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一々の条文について全部記憶はいたしておりませんけれども、今お話がありましたようなふうにMSA援助を受けますにつきましては、絶えず両国が相談をしながら、こういうものが必要であろう、ああいうものが適当であろうという相談は、これは当然いたして参るわけでありまして、従って、そういう範囲内で協議をしていきますので、今のこの事前協議ということが、今回の安保条約意味における事前協議とは違うのではないかと、私は考えております。
  195. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、事前に協議をされると……。私は終了される場合をさしているのですよ。アメリカは軍事援助をストップする、そういう場合には、日本の防衛力に重大な影響がありますから、そういうときは事前に協議するのかというのです、アメリカ側と。
  196. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんMSA協定によりまして援助をしてきたものが、それをやめる場合には、これこれの事由でもってアメリカ側としてはやめるということは、当然向こうから言ってくるわけだと思います。言わなければ理由はわかりません。そういうことがMSA協定でもあることは、それは事実であります。
  197. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質問に答えていただきたいのです。やめるときはやめると言ってくる、そんなことは子供みたいだ。そのときに協議をして、その協議の結果においてやめるかどうかです。そういうとき、やめるという場合には協議をするかしないかなんです。
  198. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、MSA協定でもってこういう援助をするかしないかということは、絶えず協議をしているのでありますから、それは協議が必ず行われます。
  199. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですが。必ず協議をされると答弁されましたね。それはもうその通りでよろしいですか。もう一度念を押しておきます。
  200. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議をしなければ、どういうものを援助してもらうか、日本側の……。
  201. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やめるときです。やめるときを言っているのです。ターミネイトするときです。
  202. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) やめるときには、向こう側からやはり、こういうことでやめたいのだというようなこ  とを言ってくるだろうと思います。われわれとしては、それについて意見を言う場合もありましょうし、そのときの事情によっては意見を言わない場合もございましょうし、やめる事情等に  ついては、一方的にアメリカ側が判断したところが適当でないと思えば、そういうことは事実に違っているのじゃないかというようなことは、当然友好関係でありまする両国では話し合いをすることは当然だと思います。
  203. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理大臣にお伺いします。総理大臣は、新安保条約は、現在の安保条約とか、あるいは行政協定が戦争中に結ばれたものであって、非常な不利な点がある。従って、今度の新しい安保条約、行政協定によってその不利な点をカバーする、直していく、そうして自立性と対等性というものを回復していくのだということを新安保条約締結の理由としてお述べになってきている。大体NATO諸国の条約協定と同じである、同じになったのだということを言われておりますが、そうでございますか。
  204. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約改定の趣旨は、今、木村委員がお述べになりましたように、私は申しております。ただNATO協定と同様だということは、行政協定の内容について主として申し上げておるのであります。
  205. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、いわゆる安保体制ですね、安保体制というのは、安保条約とか行政協定あるいはMSA協定も一環として含むだろうと思うのです、安保体制をささえるものとしては。そういう安保体制は、NATO諸国がアメリカと結んでいるのと同等になってきたのだ、自立性と自主性を回復できたのだ、できるのだ、こういうように御答弁になっているでしょう。ですから、行政協定はもちろん中に入る、条約もMSAも私は入るべきだと思うのです。その点どうなんですか。
  206. 岸信介

    国務大臣岸信介君) なにの精神からいえば、今、木村委員のお話しになっているように言って差しつかえないと思います。ただ、言うまでもなく、日本の憲法が特殊の憲法でございますから、日本の軍隊、日本の持っておる自衛隊というものは、いわゆる国際的の軍隊というような扱いをしておりませんから、そういう点において両者の間に食い違いがあるというようなことはございますが、精神の、条約体制そのものの基本に関する考え方においては、私は同様だと、こう思います。
  207. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、そうではないのです。この新安保条約はしり抜けになっているのです。ただいま外務大臣は、MSA協定によってアメリカが日本に軍事援助をするとき、そうしてこれをやめる場合に、やはり協議をするということを言われた。コンサルテーションをする。ところが、そうではないのです。差別をされている。ヨーロッパ諸国と日本との間に、MSA援助をやめるときに非常な差別待遇があるのです。それは一九四九年相互防衛援助法の四百五条(d)項にこう書いてある。「北大西洋条約のいずれかの国の場合には、」NATO諸国の場合には「大統領が北大西洋理事会と協議した後、その国が北大西洋地域の共同の防衛に対し、すべての実行可能な形での自助及び相互援助を通じて充分に寄与していないと認定したとき」には軍事援助を取り消すのです。ところが、日本の場合にはそうではないのです。「その他の国の場合には、大統領がその国が自衛またはその国が一部である地域の防衛に充分に寄与していない」と認定した場合に取り消すのです。さっきの外務大臣答弁と逆なんです。NATO諸国の場合には、アフター・コンサルテーション、協議した後に取り消すのです。ですから、寄与しているかいないかは相談してきめるのです、NATO諸国にはアメリカが。ところが、日本の場合は相談がないのです。大統領が認定した場合には取り消すのです。そうして、大統領がすみやかに取り消さない場合には、議会の両院の共同議決によって終止させることができるようになっているのですよ。こういうきつい条件がついているのです。アメリカから軍事援助を受ける場合に、そうしてアメリカの軍事援助がなくなれば日本の自衛隊は成り立たないのです。日本の防衛力は成り立たない。それであるのに、国防会議で自主的にきめられても、自主的に日本の防衛力を決定できるとか、そういうことはこのMSA協定を変えない以上はできないのです。しり抜けですよ。しかも、さっき防衛庁長官も言われましたように、アメリカの国家的利益と、アメリカの安全保障に役立たないと認めた場合には、軍事援助を取り消すのですよ。日本の国家的利益、日本の安全保障というものは一言も書いてないのです。こういう条件で軍事援助を受けているのです。従って、このMSA協定を改正しないで、今度の安保条約の改定だけでは日本の自主性はないのだ。防衛力を自主的にどうしてきめられますか。しり抜けなんです。どうしてこのMSA協定を変えなかったのです。
  208. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申し上げましたように、援助を受ける、MSA援助というものが日本のこの防衛力の漸増に寄与していることは、これは事実であります。しかしながら、これは日本自体から考えるならば、日本が何としても憲法の九条の一項によって持っておる自衛権、この自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力というものは、自力でこれを作っていく、その方針は国力及び国清に応じて漸増する、効果的に漸増すると、こういうことをきめておるわけでありますから、そのなにに対して寄与しておる、プラスされておるMSA協定というものを、これを無視はできませんけれども、これ自体は、実はアメリカが日本に対して与えている援助でありますから、アメリカ側においては、アメリカの立場からこれが不必要であり、その意義を持たない、こういった場合におきまして、やめるということになることはこれはやむを得ぬと思います。ただ、日米の間の協力関係から申しまして、MSA協定の執行につきましては、常時、先ほど外務大臣が申しておるように、協議をいたしております。十分両方のこの間においてそれぞれの機関において協議されておるということは、これは事実であります。それによって日本が不意に、全然関知しないようなときにこれが取り消されるというような事態は私は起こらない、かように考えております。
  209. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいつもアメリカの信頼ということですね、アメリカを信頼しているからということを言われておりますが、それならなぜこういう条約を結ぶ必要があるのです。ちゃんと条約にこういう規定があるのです。これは結ぶときに外務省は一体検討されたのですか。こういう条項について問題が起こったときにこれがものをいうのです。アメリカは日本の防衛努力は、アメリカの国家的利益と安全保障が役立たぬと大統領が認定したら取り消されると、そういう前提にあることを知っておられますか。重大問題じゃありませんか。しかも、自力で日本の防衛力を増強することは望ましいと、それは望ましいかもしれませんが、実際問題として、これから無償援助及び共同生産方式によって約千九百四十一億、それから有償援助によって二千五百二十二億、このくらいなものを昭和四十二年ごろまでアメリカに期待するわけなんです。日経連においてはこういう算定をしているわけなんです。これを考えれば、日本の自力だけの防衛なんていうことは子供だましですよ、常識から考えたって。どうしたってアメリカの有償援助あるいは無償援助あるいは共同生産方式による援助にたよらざるを得ない。そうすればどうしたってアメリカの条件をのまざるを得ない。これでどうして自主性があると言えますか。もう一度伺いたい。外務大臣はさっきこの事前協議ということがあり得るということをはっきり言われた。ところが、これにはない。NATO諸国にはあるけれども、日本にはないのですよ。それでよろしいのですか。
  210. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り、NATO多角的な集団防衛の機構でございます。従いまして、NATOの理事会等におきまして、いろいろな協議をするということは条文に出ていることで、当然だと思います。それぞれのNATO加盟国との間の個別の問題といいますよりも、NATO全体としての協議にかからなければならぬわけであります。二国間の間におきまして、お互いにこういうものを一つ援助してくれないか、こういうものをそれじゃ援助しようということは、これは話し合いがなければ、協議がなければ進んで参らないことは当然でございます。従って、日本におけるこういう事実があるから、援助はできないんじゃないかというようなことも、当然話し合いができるわけでありまして、言われるような何か事前協議というものはございませんけれども、これらのものを運営していくためには、協議が行なわれることは当然でございます。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも政府の御答弁は信頼できません。ちゃんとこう条約に書いてあるんですから。それを事前協議できるなんということを反対のことを言っているんですから、実際われわれは信頼できないのです。それで今の、当面の事態を糊塗するだけに、言葉で一時のがれしようとしているんです。これは重大な問題です。今後やはり、これをさらに私は問題にしなければならぬと思いますが、時間がありませんから次に移ります。  第五条の、武力攻撃が行なわれた場合の「共通の危険に対処するように行動する」いわゆる共同防衛です。この場合、日本の領土が攻撃されたときには、アメリカは、集団的自衛権に基づいて日本を防衛すると思うのです。行動すると――日本にあるアメリカの基地が攻撃されたときに、日本の自衛隊は、いわゆる集団的自衛権に基づいて行動するのであるかどうか、この点を伺いたい。
  212. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 個別的自衛権で行動いたします。
  213. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどういうわけですか。集団的自衛権で行動したのではいけないんですか。
  214. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いけないとかいいとかいう問題ではございません。日本の基地が攻撃されますことは、日本の領土、領空、領海が、日本自身が攻撃されることでありますから、当然日本の個別的自衛権が発動いたします。
  215. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第五条は、共同防衛なんですね。集団的自衛権というと、憲法違反になるおそれがあるから、個別的自衛権、そういう御答弁なんじゃないですか。
  216. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り、他の防衛条約みたいに、日本の自衛隊その他が、アメリカに日本が出て参りまして、そうして外国の領土に攻撃があったのを守る、こういうことは集団的自衛権だと思います。しかし、日本の領土、領空等が侵されることでありますから、当然これは個別均自衛権が発動するのであります。その発動するのに対して協力するということは当然なことだと思います。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この五条をだれが読んだって、これは集団的自衛権による行動規定としか解釈できませんよ。個別自衛権というなら。じゃ、それは日本を守るためなんですね。日本を守るための行動である、そう解釈してよろしいんですね。日本を守るための行動であると。
  218. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の自衛隊が、今お話のように行動いたしますことは、たとえば基地におりますアメリカの飛行機がやられる。それは日本の領土、領空、領海を侵さないで、日本を攻撃しないで動けません。やれません。従いまして、日本としては、当然、個別的自衛権の発動する事態になっておるのでありますから、個別的自衛権を発動いたしまして一向に差しつかえはございません。
  219. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのときは、アメリカ軍と一緒になって行動するんでしょう。そのときの指揮権がどうなるか、これも問題になりますが、その指揮権はどうなりますか。
  220. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その場合、単一司令官のもとで行動するのではございません。両方の司令官が話し合いながら行動をいたすわけであります。
  221. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 両方で話し合いながら、それで軍事行動というのはできるのですか。
  222. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は軍事専門家でございませんからあれでございます、できると信じております。
  223. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃあ軍事専門家に伺います。軍事専門家の権威ある御答弁を願います。これは重要です。両方でお互いに相談してやるなんて、そんな戦争ってありますか。はっきりこの点を伺いたい。指揮権の問題、どちらが指揮をとり、どちらの配下に入るのか。これはあとで重要な問題になろうと思うのです。
  224. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お互いに協議をしながら、お互いに分担をきめてやることは、これは当然できると思います。
  225. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは個別的自衛権で説明しようとするから、そういうことになるのですよ。これは非常な無理です。で、日本を守るだけに行動するのだということになれば、MSA協定違反になるんですよ。この矛盾をどういたしますか。アメリカの国家的利益と安全保障のために役立たないと認めたときには、軍事援助を取り消されるのでしょう。ですから個別的自衛権で日本だけを守るという行動であったならば、MSA協定違反なんです。それから、集団的自衛権で行動するというのは、憲法違反ですよ。どちらなんです。
  226. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) MSA協定違反だとは考えておりません。
  227. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どちらであるかを聞いているのです。集団的自衛権による行動か、個別的自衛権による行動かですね。
  228. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、個別的自衛権が発動し得るのでありますから、それによって行動するわけであります。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点は時間がありませんので、議論になりますから、また、同僚委員からもっと突っ込んで問題にしていただきたいと思います。私はここで問題を提起する程度にとどめておきたいと思うのですが、非常に今の御答弁は無理な答弁だ、第五条の解釈としては。集団的自衛権の規定であるのに、個別的自衛権で対処しようとしている。  そこで次に、私は今までの質問を続けまして、政府は、自主的に、国防会議の決定によって日本の防御力は増強できるとかできないとか言っておりますが、実際問題としてこれはできないということが明らかになったと思うのです。また、この第五条の問題は、やがてこれは集団的自衛権ということになると、憲法違反の問題も起こってくると思うのです。実際は、これは集団的自衛権の発動になりますので、自衛隊の性格が変わってくると思うのです。この安保条約によれば、自衛隊の任務が変わってくるのです。自動的に変わってくる。ですから自衛隊法を改正しなければなりません。集団的自衛のための任務というものは規定されてないのですから、そういう行動をする自衛隊の予算というものは、これは憲法違反の予算になるのですよ。  そこで時間がありませんから、次に、政府はただ憲法違反を犯しているだけでなく、財政法違反の事実もあるのです。財政法規定及び精神に違反している点を質問いたしたいのです。  まず大蔵大臣に、三十五年度予算の第三次内示額は幾らでございましたか。
  230. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 主計局長からお答えをいたさせます。
  231. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 今手元に持ち合わしておりません。
  232. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第三次内示額がわからないでどうしますか。第三次補正のときにも問題になっているじゃありませんか。
  233. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 予算折衝の過程におきまして、折衝は継続的にいたしておるものでございまするから、第二次、第三次というふうにはっきりけじめのついていない面もございます。従いまして、第三次内示額が幾らであるという点につきましては、これはこうであるということは、はっきり申し上げられない点もありますので、その点もあわせて御了承願います。
  234. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 はっきりわかっているのですから、答弁されるまで私は待っております。
  235. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行について……。今の主計局長答弁はおかしいと思いますね。さっきは、今手元に持っておりませんから答弁できない。手元にありませんということは、どっかに行ったらあるということでしょう。そして今二回目の答弁は、そういうものは本来なかったという答弁です。どっちがほんとうですか。でたらめなことを言いなさるな。
  236. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 先ほど申し上げましたのは、第一次、第二次、第三次というようなはっきりした限界のない、折衝の過程ということでもございまするから、これが第三次内示額と申し上げられる数字はございませんということを申し上げたのであります。その前に、手元にないと申し上げましたのは、復活折衝の数字なら今手元にございませんので、その意味で申し上げたのでございます。
  237. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵省の財務官がちゃんと書いたものがあるのですから、示してもらえないと困ります。それじゃなければ質問ができませんよ。そんなばかにした答弁ではごまかされませんよ。
  238. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお話、ちょっと私、お尋ねの要旨を伺いたいのでございます。第一次に予算案を内示いたしまして、そして年内にまとめるということで、直ちにかかったわけでございますが、なかなかそれがまとまらなかった。その後、各省からそれぞれ復活要求が出ております。そのつど折衝いたしておりますので、ただいま申し上げたように、いわゆる第二次内示幾ら、第三次内示幾らというように、全部の省にそういうような方法では内示をしておらないということでございます。ただ、最終決定の直前の交渉の金額が一体どうなのか、こういうような意味だと思います。これは各省について申し上げなければならない、そういうような表は作っておりませんから、その点は御了承をいただきたいと思います。
  239. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれ予算委員をばかにしないで下さい。そういう数字はあるはずですよ。
  240. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういう数字があるはずだとおっしゃいますが、ございません。私、在来ですと、よく二次査定、三次査定ということを申しましたが、今回は、暮れに非常に急いでおりましたので、第一回は出しましたが、それからそれであともう詰めようということで、いわゆる二次だとか三次、こういう名前をつけた内示はいたしておりません。
  241. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 名前は譲歩してもよろしい。ここに証拠があるから。最終の内示額は幾らですか。
  242. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今お手元にどういうものを持っていらっしゃいますか、私ちょっとわかりませんが、いわゆる各省にまとめまして、これが第三次最終予算だといって出したものはないわけでございます。最終的に決定したものはもちろんございますが、その決定の段階におきまして、各省と個別に折衝いたしております。それで大へん時間がかかったわけでございます。
  243. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは時間をとりますから伺います。最終のいわゆる第三次内示額は一兆五千八百七十三億じゃありませんか。
  244. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最初から予算の総ワクは変えたことはございません。従いまして、一兆五千六百九十六億、この金額に変わりはありません。
  245. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あまりわれわれをばかにしないでもらいたい。第一次内示では、一兆五千四百六十六億、第二次は一兆五千七百二十億、第三次が一兆五千八百七十三億、これに対して予算のワクが一兆五千六百九十六億で第三次査定より百七十七億ワクをはみ出た。そこでこのワクをどうして調整しようとしたか。そのうち百二十億は三十四年度の補正予算に織り込んだ、残りの二十億は予備費を削った、百億を八十億にした、それから二十四億は賠償を削った、その他十三億でつじつまを合わせた。これまで第三次補正のときに三十五年度予算のワクをはみ出ないように第三次補正に繰り上げた、繰り上げたということを、われわれが再三質問したのに、そうじゃないと言っておる。ところが、百七十七億を今お話した通り百二十億繰り上げておる、その点どうなんですか。
  246. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお示しになりました数字はおそらく要求の数字じゃないかと思いますが、要求の数字もずいぶんそのときそのときに変わっております。党側から最終的に参りました金額は相当多額の金額でございます。その強い要望があったことは事実でございます。しこうして、ただいま予備費もちろん百億そのままの第一次案を、これを確保することはできなかった、その点は御指摘通り二十億減らしました。しこうして、第三次補正予算は、ただいまこういうことでつじつまを合わせたのじゃないかと言われますが、あれは内容もはっきり義務的支出のものが大部分でございまして、財源さえありますならば、できるだけ早い機会に予算化するのが当然でありますから、そういう意味で三十四年度予算の補正を組んだわけであります。いろいろ予算編成のときにおきまして、私ども財源とにらみ合わせて歳出をいろいろあんばいしていくことは当然でございます。ございますが、大蔵省は当時から一兆五千六百九十六億という、この予算規模の数字は増加しておらないのであります。いろいろ各省からの要求の数字、それはずいぶん過大なものもございます。それと御一緒じゃないか、かように私思います。いわゆる大蔵省の第三次査定案というようなものはございません。
  247. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は差しつかえがあるといけませんから、これは紹介しませんが、資料があるのです。それは書いた人が大蔵省の役人なんですよ。ですから、差しつかえがあるといけませんから申しませんが、ここにちゃんと書いてある。こういうやり方がいわゆる単一予算主義の原則に反する。だんだんどうもこの財政法規定とか精神に反したような予算の組み方が行われてきているので、こういう点はやはりわれわれとしても厳重に追求しなければならないと思います。ターターの問題がそうでありますし、あるいはまた、国庫債務負担行為、それから継続予算、だんだん臨軍費的な傾向にある。特に継続費につきましては、昭和二十七年の予算を組んだときに財政法改正した、そのときのこの改正案を審議する場合、こういう継続費は軍事的予算に使わないということを当時の大蔵大臣の池田通産大臣は言われておる。速記録があるのです、ここに。ところが、継続費予算の大部分は防衛費なんです。軍事的なものなんです。池田通産大臣、当時大蔵大臣をやっておられましたが、御記憶があると思う。ずいぶん私はしつこく、速記録がありますが、質問した。そうしたら、軍艦なんか作る意思は全然ないということを言われたのですが、いかがですかその点は。速記録がありますから……。
  248. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) だいぶ前のことでございます。長くやっておったから、どういうことが起こったかよく記憶がございません。必要ならば速記録を調べまして、またお答えいたします。
  249. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ速記録を調べて御答弁を願いたい。そういう継続費予算も最初は軍事的に使わぬと言いながら、だんだんふえて臨軍的なものになって、こういう財政法的な精神もだんだん違反しているわけです。  それで次に、時間ありませんから、大蔵大臣にもう一つ伺いたい。大蔵大臣は、今度のこの予算性格は、防衛費の計上が少ない、社会保障費の計上が多いんだ、だから軍事的性格予算じゃないと、こう言っておられますが、私はそうじゃないと思うのです。第一に、今の防衛費というものの性格が、さっきお話したようなMSA協定を見ましても、日本を防衛する軍隊じゃないです。アメリカから軍事援助を受けて、アメリカの国家的利益とアメリカの安全保障にどうして役立つかという訓練をしているのが自衛隊なんです。そのためにたくさんの予算を、われわれは税金を使わされている。そこで伺いますが、昭和二十五年から三十五年までの――この前はもう聞きましたが、今度は二十五年にさかのぼって、防衛費と社会保障費と文教予算、治山治水対策費、災害費、この総額、これは通告しておきましたから御答弁願いたいと思います。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。二十五年から、予算総額、それから防衛費、総額に対する防衛費の比率、社会保障費、社会保障費と予算総額との比率、文教費、また、その比率、災害費、その比率、治山治水費、それからその比率と、こういうものを読み上げます。二十五年から三十五年まで。  二十五年は予算総額が六千六百四十五億七千六百万円、二十六年、七千九百三十七億七百万円、二十七年、九千三百二十五億三千六百万円、二十八年、一兆二百七十二億五千一百万円、二十九年、九千九百九十八億八千万円、三十年、一兆百三十三億千四百万円、三十一年、一兆八百九十六億五千二百万円、三十二年、一兆千八百四十六億千四百万円、三十三年、一兆三千三百三十億八千三百万円、三十四年、一兆五千百二十億九千万円、三十五年はただいま御審議をいただいております一兆五千六百九十六億七千四百万円。  防衛費は、千二百九十二億六千二百万円、千二百五十四億三千四百万円、千八百一億六千百万円、千二百三十一億一千万円、千三百二十七億六千五百万円、千三百二十七億六千五百万円―二十九、三十年同額であります。千四百七億六千五百万円、千四百十一億六千五百万円、千四百六十一億六千五百万円、千五百三十三億千八百万円、千五百四十五億七千七百万円。総予算に対する比率は、一九・四%、一五・八%、一九・三%、二十八年一二%、一三・三%、一三・一%、一二・九%、一一・九%、一一%、一〇・一%、九・八%。  社会保障費の関係です。これは恩給関係並びに住宅及び環境衛生対策費、それを全部含んだものを申し上げてみたいと思います。五百二十四億五千九百万円、七百十二億五千三百万円、千三億八千四百万円、千五百五十八億千八百万円、千九百十九億九千万円、二千六十七億六千万円、二千二百十一億八千万円、二千三百三十二億八千七百万円、二千五百三十億四千六百万円、二千九百五十四億七百万円、三千二百七十四億三千三百万円。総予算に対する割合は、七・九%、九%、一〇・七、一五・二、一九・二、二〇・四、二〇・三、一九・七、一九、一九・五、二〇・九。  文教費でございます。文教費は、平衡交付金に入っておった関係の義務教育費は入っていないのが二十五年から二十七年まででございます。従いまして、金額は特に小そうございます。百八十七億七百万円、二百六十億七千六百万円、三百三十一億五千三百万円、それから二十八年以降制度が変わっております。その結果、千二十三億五千九百万円、千百三十三億八千万円、千百九十四億九千六百万円、千二百四十四億八千三百万円、千三百九十二億二千二百万円、千四百八十六億七千六百万円、千六百四十七億千三百万円、三十五年は千八百三億一千万円。総予算に対するパーセンテージ、二・八、三・三、三・六、一〇、一一・三、一一・八、一一・四、一一・八、一一・二、一〇・九、一一・五。  災害費でございます。  災害費は、三百六十四億九千七百万円、二百二十九億六千五百万円、四百六十五億七千六百万円、七百九億千八百万円、六百四十三億千八百万円、それからその次は災害復旧費と治山費と両方が入っておる数字のようですが、五百七億三千九百万円、四百四十億六千七百万円、三百九十八億六千二百万円、四百三十四億九千六百万円、六百二十億二千二百万円、五百八十一億九百万円。パーセンテージ、五・五、四・二、五、六・九、六・四、五、四、三・四、三・三、四・一、三・七。  治山治水費を申します。治山治水費は、二十五年が百六十億四千八百万円、二百十六億四千百万円、二百六十八億三千三百万円、三百四十億千百万円、三百三十二億三千万円、三百十七億六千百万円、三百三十三億八千七百万円、三百四十九億九千六百万円、三百六十三億五千八百万円、四百七十七億九千百万円、六百二億五千万円、割合は二・四、二・七、二・九、三・三、三・三、三・一、三・一、三・〇、二・七、三・二、三・八、かようになっております。
  251. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あとでそれは資料として提出していただきたいと思いますが……。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 差し上げます。
  253. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の御報告のように、全体を通じて見れば防衛費というものは非常に大きいわけですよ。社会保障、文教予算、治山治水、災害復旧等に比べてですね。そういう防衛費に非常にたくさん使っていることが、民生安定を阻害しておることはもう言うまでもないのですが、しかもその防衛費にそれだけたくさんわれわれの税金を使ってきましたけれども、それは日本の防衛じゃない。これはMSA協定を見ましても、はっきりアメリカの国家的利益と安全保障のための軍隊のためにこんなにたくさん金を、われわれの税金を使わされてきたのです。それで民生安定を非常に阻害している。そこで、民生安定関係について具体的にお尋ねしますが、岸総理大臣に伺いたいのですが、この憲法二十五条につきまして、岡山国立療養所に結核患者で入院しています朝日さんという方が厚生大臣を今訴えているわけです。この問題を御存じでありますか、総理大臣
  254. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私承知いたしておりません。
  255. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 岸総理は貧乏追放とか、あるいは社会福祉は自分の念願であるということを言っておられまして、しかしこれは初めてのケースですよ。憲法二十五条に対して今の生活保護の人が入院しているのです、結核患者で。その保護費が月六百円なのです。現在は六百七十円になっていますが、六百円。これを千円に上げてもらいたいという訴えなんです。これは日本で初めてのケース、憲法違反の訴えなんです。憲法九条に対する再軍備に対しては憲法違反の問題はずいぶん論議されていますが、初めてのケースなんですよ。憲法二十五条に違反しているというので訴えているのですよ。それを総理大臣が知らないという。厚生大臣は御存じですか。
  256. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) そういう事件のあることは聞いておりますが、詳しいことは存じません。
  257. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 厚生大臣にちょっと、おかげんが悪いそうで、あまり長く質問いたしませんから……。それで、この今審議されておるのですが、朝日さんのこの六百円の内容ですね、おわかりになったら、事務当局でもいいのです。それと現在の生活保護費ですね、それの内容を伺いたい。  それからさらにまとめて御質問いたしますが、厚生省は保育所の子供のおやつ代一円を五円に値上げを要求した、それを大蔵省が三円に切り下げた。それから生活保護基準を厚生省は六・七%引き上げを要求した、ところが、二・九%に大蔵省は削っているのですね。そこで、厚生省は一円を五円にどうして値上げしなければならなかったかというそのおやつ代の理由、それから生活保護費につきましては六・七%をどうして引き上げなければならなかったか。大蔵省が二・九%に切り下げたのですけれども、その引き上げの理由と、生活保護費の内容をお聞きしたい。
  258. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 第十五次の生活保護費の引き上げにつきましては三・二%、このたびの予算措置におきまして三%引き上げたわけであります。漸次私どもはこれを引き上げるべく、これは栄養審議会の答申に基づいてやっているわけでございます。それでありまして、これが実際は六%に私どもは考えておったわけでございますが、三%引き上げたことによりましてかなり最低生活水準というものの限度にまで近づいた。かように私どもは考えておるわけでございますが、第十七次の改訂におきましてもまだ私どもは引き上げることを考えております。ただいま一級地におきましては九千三百四十六円、二級地におきましては八千五百五円、三級地におきましては七千六百六十四円、四級地におきましては六千八百二十二円でございます。これを一級地を一〇〇としますというと、二級地は九一、それから三級地は八二、四級地は七三という、こういうような順になっておるわけでございます。
  259. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 端的に伺いますが、まだ答弁漏れがあるでしょう。保育所の一円を五円要求したのをどうして三円にしたか、五円に上げる理由です。
  260. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) おやつ代につきましては、最初五円の要求でございましたが、三円に決定いたしました。ところが、この保育所におきますところのおかず代というのが八円十銭でございます。それで、それと子供たちが自宅から持参します主食を合わせますと所要カロリーの四〇%ということになりまするので、まずこの程度で大体第一次の改訂をいたしたいと思うわけであります。
  261. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その予算は幾らあるのですか。五円に上げるとして幾らあるのですか。
  262. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 約三億円ちょっと足らずでございます。
  263. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三円にして二億ですね。
  264. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 三億です。
  265. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういうわずかなものを、予算を上げられないで削っているのですね。ロッキードは一機四億八千万円と聞いている。それで貧乏追放とか、社会福祉と言っているのですが、朝日さんのこの入院患者の日用品の費用は、これはあとで資料として出していただきたいのですが、私の計算では、私の得た資料では一カ年にちり紙が十二束で、月に二十円なんですよ。結核患者の人が月に二十円、こういう内容なんです。それは惨たんたるものなんですよ。厚生大臣、実際今六百七十円でやっていけるかどうか。千円に引き上げを要求しているのですよ。これはどうお考えですか。過大な要求ではないのですから。
  266. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) これは入院中は入院加算であります。
  267. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことを聞いているのじゃないですよ。ちり紙月に二十円一束で一体生活保護に値するか。それからさっき生活保護法の内容を伺いましたが、これを見ましても生活保護じゃありませんよ。生存保護、あるいは存在保護ですよ。生存費だけでも今の二千円幾らではとてもやっていけません。この実態をどう思いますか。貧乏追放、社会福祉の建設と言っているじゃありませんか。その社会保障費の内容が今言ったような状態で、一体よろしいのですか。
  268. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) これは、入院中の一切の食費、それから医療給付を除きましての六百何十円という、その数字につきましては、これはほんの小づかいでございます。
  269. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは生活扶助費なんです。入院患者の日用品ですね。とにかく、血が通っていないですよ。厚生大臣たるものの答弁がですよ。もう少し人間らしい御答弁をしたらどうですか。これでやっていけるかどうかというのです。あなたは岡山療養所へおいでになりましたか。あなたは訴えられているのですよ。見に参りましたか、現地調査に。御答弁願いたい。
  270. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 事務当局は再三調査をいたしております。(「あなたはだ」と呼ぶ者あり)私は参りません。
  271. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう不誠意きわまるものです。私は、時間がありませんから、最後に重要な問題が二つありますから、この点はまたあとで質疑いたします。同僚議員からもまた十分追及されると思いますので、次に私は、為替貿易の自由化の問題について、まず総理大臣から伺います。三月三日の毎日新聞によりますと、河野一郎氏が福岡でこういうことを述べているのですね。「貿易の自由化は米国から押しつけられたものである。岸首相はさきの大阪談話でそういうことはないと言っているが、否定できないだけの確かな理由がある。」、こういうふうに述べているのですね。これはアメリカ側から押しつけられたのだと、こう言っているのです。そこで、為替貿易の自由化の必要性をどういうふうにお考えになっているか、そうして、これからのスケジュールですね、どういう段取りで自由化をしていくお考えであるか、この二点についてお伺いしたい。
  272. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 木村委員は、経済のことはよくおわかりでありますから、この自由化の問題がアメリカから押しつけられたとか何とかいう性質の問題でないことは、よく御了承いただけると思います。これは、世界的に見て、一つの世界の経済の動きの目ざしているところであり、また日本経済として、特に貿易に依存する度の多い日本としましては、将来貿易為替が自由になっていくことが、日本経済の発展の上からいって望ましいことであると存じます。ただ、この問題につきましては、今御質問がありましたように、これが日本経済に及ぼすところの影響はきわめて甚大なものがございますから、これに対して十分な準備を慎重に整えていく必要があると思います。これが影響するところにつきましては、各種の産業の種類によりまして、その影響の度合い、もしくは態様等も違っているわけでございますから、これらについて十分な慎重な準備をして当たるべきことは当然であると思います。私の内閣におきましても、すでに昨年の春以来、この自由化の方針で進んでいくという基本方針を定め、いろいろな国際会議等におきましても、この主張をいたして参ったのでございます。しこうして、このスケジュールにつきましては、今申しましたような、慎重にこれを行なう必要がございますので、関係閣僚をもって内閣の中に連絡会議を作りまして、これがスケジュールを、約本年の五月ごろまでに、どうふうにしてやっていくかというような全体のスケジュールを作りたいと思っております。すでに一部自由化したものもございますし、またすでに準備が十分できるという見通しのもとに、大体一月、また四月ごろにおいて一部自由化するものもあることは、御承知通りでありますが、全面的に進めるべく、スケジュールを五月一ぱいくらいに作りたいと、かように思っております。
  273. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体の構想はわかりましたが、なるほど、この自由化はアメリカだけから要請されておるのでないことは、明らかでありますね。ヨーロッパ共同市場の方面からもあるのです。しかし、特にアメリカから非常な圧力がかかっておることは、福田農相もアメリカから特に要請されたのです。あなたも御承知のように、マッカーサー大使から、池田通産大臣、福田農相に対して、対ドル差別の撤廃要求が正式の文書で行なわれておるということが伝えられておる。だから、アメリカの圧力があったということも否定できないですね。なかったとも言えない。非常に急がなければならぬ理由は、やはりアメリカの圧力であると思う。そこで、総合官庁である経済企画庁では、今どういう段取りで作業を進めておりますか。新聞などでは、大体三年を目途としまして、そうして九〇ないし九五%程度の自由化率に持っていきたいと、こういうふうにこれまで伝えられておりましたが、そういう方向で作業をしておられるのですか。
  274. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいま総理からもお答えがありました通り、大体五月中にスケジュールを作ることになっているわけであります。そうして、ただいまのところでは大体自由化が四〇%でありますが――ただいまではございません、今度の十品目が自由化になりますと四〇%、綿花と羊毛の自由化が来年の四月一日ということにしておりますから、従いまして、そうなりますと、大体七〇%の自由化という見通しをいたしております。そこで、閣僚会議でも迅速に自由化を実現するということが決定いたしたのでありますが、そのときに、私の希望といたしましては、迅速とはいつまでかというお尋ねがありますので、まあ大体私としては、三年くらいに一つこれは完了してもらいたいという希望を申し上げたのであります。がしかし、御承知通り、石炭などでは、まだ自由化はできないという事情もありますので、そこで三年間で大体九〇%くらい自由化ができればまあ非常によいのではないかという私の希望を申し上げた次第でありまして、これもしかし、決定しておるわけではありません。今、五月中にスケジュールを作りまして、それによって大体の方針をきめまして、そうして何はいつから自由化するならすると、またそれに対する準備はどうするかということを五月中に決定したいと、こう存じておる次第であります。
  275. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 決定しておらないということでございましたが、今まで政府が、大体三年を目途として、そうして九〇%程度まで自由化率を高めていくという、これで大体財界は大へん動揺しているのですよ。それで、私は池田通産大臣に御質問したいのです。池田通産大臣は、また記者会見で、「貿易の自由化を今後三年間で完了、そのためのスケジュールを五月までにきめると経済企画庁で言っておるが、そう簡単にはきめられないと思う。残された機械などの製品、砂糖、石油、石炭などをいつ自由化するかについては、国内の態勢を考えてもっと慎重にやる必要がある。来年四月からの原綿、原毛の自由化でスケジュールは一段落したと見るべきだ。」と、こういう御見解なんです。非常に見解が違います。すでに経済企画庁の言われた三年を目途というのは財界ではそれに非常にショックを受けております。池田通産大臣の所見を伺いたいのです。
  276. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の見解は記者会見で申し上げた通りでございます。で、菅野さんも三年とはっきりきめられたわけじゃないのであります。そういう御意見は承りましたが、なかなかそうはいかぬのではないかということは菅野さんにも言っております。
  277. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府意思統一ができていないのですよ。非常に動揺しているのです。そこで、私は時間がなくなって参りましたから、特に今度の自由化は農村関係に非常な大きな影響がくると思う。それで福田農林大臣に農村関係についての自由化の影響です、特にこれにつきまして……。
  278. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君に申し上げますが、時間が終了いたしましたからそのつもりで……。
  279. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああそうですか。それじゃ、もう農林大臣とそれから労働関係ですね、ことにこの外資導入ですね、資本取引の自由化が行なわれるようになると外国資本が入ってき、労働運動にも相当な影響がくると思うのです。いわゆる経営の方面にもいろいろな干渉が、今の日米通商航海条約建前では非常な干渉がくると思いますから、その点農林大臣とそれから労働大臣に伺います。それからあともう一問だけ……。
  280. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間は一つ厳守を願います。あなたは特別にいたしましたから……。
  281. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林関係の物資につきましては、日本の農業がきわめて零細であるということを考えまして特に慎重を期したいと、かように考えております。ただいまのスケジュールといたしましては、昨年十二月末でAAになっておるものが五百五十品目の中で百九品目あるのです、それで三一%、それから一月からラワン、アバカ等二十七品目の自由化をいたしましたが、これで三九・一%、それから四月から牛脂、粗製ラード、これなども自由化いたしまして四二・二%、それから十月に大豆をいたしますということになりますると五三%と、こういうことになるのです。品物を見ますると、一月から自由化したというのはラワン材ですね、アバカ、それから大風子、たけのこ、すいかの種、球根、アジワンシード、天然テグス、剛毛、天然香料、玉繭、苗、くらげ、松の実、そういうようなもの、れいし、白瓜の種、まくわ瓜の種、春雨、虫ろう、豚のひずめとか、そういうようなものでございまして、わが国の農産物にはいささかも心配はないのであります。それから四月から自由化されるものは牛脂、粗製ラード、コーヒー豆、兎の毛皮、それから酵素、カロチン、ジエルトンそれからくずの皮、台湾帽体、サンゴ、そういうようなものでございます。これまたいささかも国内の農産物には心配はございません。さようなことでございまするが、特に大豆はこれは重大な影響がある、こういうふうに考えております。そこで、大豆につきましては、ただいま三つの案を検討中でございまするが、そのいずれの案を採用する場合におきましても、現在の農家の所得、これを維持する程度に価格支持をいたす、すなわち政府が買い取るか、あるいは政府の代行機関に買い取らせるかということを考えたいと存じております。ただいまその財源をどうするかということで、まだ政府におきまして検討中である。いずれにいたしましてもその措置がきまらない限り、大豆のAA制は実行しない、かように考えております。
  282. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 貿易自由化に関しては主としては、今までは原料でございます。代表的な品目を一つ二つあげますと、三十三年に鉄鉱石、それから鉄鉱石が、昨年の雇用がどうなったかということを御説明申し上げれば一番端的だと思います。鉄鉱石は三十三年十二月にAAなりました。このときの指数を一〇〇といたしますと、雇用はただいま一二三であります。それからもう一つ代表的なものは生ゴム、これは三十四年になりましたが、生ゴムの雇用を調べてみますと、三十年以来一〇〇が三十四年一三四の雇用指数になっております。従って原材料の輸入の場合には、雇用は増加する傾向であって、しかしながら、将来いろいろな問題がございましょうが、今までは主として原材料でありまして、八百品目は原材料、従って雇用面は逆に相当伸びておるいとう結果が出ておりますが、手放しで将来ともこれが続くとは私は断定いたしませんけれども、今日までのところは、順調に自由化によって雇用だけは逆に伸びておるという結果が出ております。また、外国資本、外国会社ができましても、労働三法は同じように適用いたしますので、その点は、外国だからといって特別扱いはいたしません。外国商社であろうと、外国人であろうと、日本におります以上は労働三法は適用いたします。
  283. 小林英三

    委員長小林英三君) 木村君、時間が参りましたので、もう一問だけに、それで御遠慮願います。
  284. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは最後に、時間がなくなりましたから簡単に自由化について、石油の自由化は非常に重大だと思います。たとえば三十八年度の自由価格をキロ八千三百円と仮定すると、それと競合し得るまで炭価を引き下げるというので大手十八社が七万名の人員整理をするといわれておる。もし、これが自由化によって重油が七千円まで下落したら、さらに炭価を下げなければならない。さらに、この石炭との関係で非常に重大だと思う。ですから、特に石油の自由化について通産大臣にお伺いしたい、それが一つ。  それからもう一つは、造船利子補給につきまして、最後にお伺いします。先ほど法制局長官は、三件を除いて予算関係法案提出ないし閣議決定しているといわれておりますが、利子補給の方の改正案はもうきまったのかどうか、提出されておるのかどうか。これにつきましては、きょうの産経新聞によりますというと、五年の時限立法であるのを、期限をつけないで恒久立法に変更されたと聞いているが、そういう法律案となって恒久立法として提案せられたか。もし、恒久立法として提案になりますと、予算総則には期限が付してある、三十五年度予算総則には、「昭和三十五年度以降八箇年度間を通じ、二十七億四千百四十八万五千円と定める。」と、予算総則ではそうです。だから、予算総則では期限が付してある。ところが、この法律案がもし恒久立法になりますと、予算総則に違反してくる、矛盾してくる。この点が私は非常に重要ではないかと思う。どういう法案提出の形になっておるか、最初五カ年の時限立法といっておったのだが恒久立法として提案されたように聞いておりますが、その間の事情を、それを運輸大臣に伺いたい。この利子補給はどうして今回これを復活したか。われわれがいただいた資料を見ますると、海運界の景気はよくなってきておる、そうして利益はふえてきておる。償却を引いても黒字が出てきて、そういう海運界の景気がよくなってきておるのに、どうして利子補給を復活したか。この点は、また前のような造船疑獄の疑いも持たれないとは言えないと思うのです。なぜ日本の海運は絶えずこのように利子補給というものを要求するのか、その根本原因はどこにあるか、私は一番その根本の原因は、今度八幡製鉄が外国の船舶にアメリカから持ってくる鉄鉱石の積み取りの契約をした、ところが外国の船には、外国船を作るには安い金利で貸して外国の船を作らしている。そういうことが外国船を有利にしているということがほんとうの原因でないか、それよりもっと根本の原因は計画造船が全く失敗しているということです。高いときに船を作らしている、高いときに船を作らしているのですから、当然それでは、外国は日本で安いときに船を作っているのですね。ですから競争できっこないですよ。高いときにトン当たり幾らであるか、安いときトン当たり幾らであるか、船価は。その点です。計画造船が失敗している。この場合に全く失敗している。この点を根本的に改めなければ絶えずこのような利子補給の問題が起こってくる。それに関連して疑獄、汚職の問題が起こってくる。今度の予算編成過程におきまして、国民の血税を食い荒らしたといわれているのでありますが、その根本の原因を洗っていけば計画造船の失敗にあると思う。  それともう一つは、大きな会社に補助金を与えて中小船舶を圧迫しているのです。ちょうどデパートに補助を与えて小売商との競争力を激化しているような結果になっていると思う。大きい海運会社は外航船ばかりでなく、国内の近海船もやっているのです。そういう場合に大きい会社に補助すれば、結局外航船をやらない中小業者ですね、そういう人との競合になるわけです。非常に不利になる、中小業者いじめになる。この点を最後に伺いまして私の質問を終わるわけです。
  285. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  まず、原油並びに重油の自由化につきましては国内の石炭との関係もございます、また、外国の原料炭も国内の原料炭との関係もございます、なかなかそう早くはできないと思います。御承知通り、重油ボイラー規制法も三年延ばすことにいたしております。私はこういう意味でなるべく急いでやりまするが、そのために国内産業に非常な悪影響を及ぼすようなことは避けたいという気持で進んでおります。
  286. 林修三

    政府委員林修三君) ただいまお尋ねの外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部改正法案、これは閣議決定をしまして昨日提案になっております。内容につきましては、これは運輸大臣から申し上げるのが筋だと思いますが、ただその法律の形式でございますが、形式の点だけ申し上げますが、これは御承知通り、もともと時限立法ではなかったのでございまして、ただここ数年間新しい利子補給契約を結ぶ国庫債務負担行為のワクがなかったのでございます。これを今度予算に組んでまた新しくやるわけであります。その機会に今後の利子補給契約をやる、年間を五年間に限るかどうかという議論があったのでございます。これは一応その点については現行法通り、期限をつけないままにしようということになっております。現実に毎年の予算でどの程度に利子補給の契約がされるか、これは別問題だと思っております。先ほど予算総則のことをおっしゃいましたが、これは私の察しておる範囲では、本年度契約すべき造船の利子補給の総額そのことじゃないかと私は思っております。
  287. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 海運の利子補給の問題でありますが、これは外航船舶の国際競争という立場から申し上げますと、木村さんも御存じのように、アメリカは造船した価格の半分は国家が補償を与えておりまして、残りの四分の三は三分五厘の利子をもって外航船舶には適用いたしておるのであります。また英国も御存じのように、戦時補償を全部払って、非常な低金利で国際競争に勝つようにやっておりますし、ドイツも千三百億の金を海運業者に与えまして、一方にやはり利子の補給をやっておるような状態でありまして、日本は御存じのように戦時補償――現在の価格で申しますというと約五千億近くの民間の金を国家目的のために徴用しながら戦時補償を払っておらないために、全部借金で海外の外航船舶というものを作っておりまして、それが市中金利で九分五厘、開銀で六分五厘という高利の金利でもって船を作っておるために、船会社というものが今日でも二千五百億近くの借金をしょい、二百億近くの利子を払っておるという状態でありまして、国際競争力を強化する上におきまして、海運の持つ日本経済への立場から申し上げますと、どうしても利子補給をしてやる必要があるという海運政策から、この制度を主張したのでありまして、ごもっとも、御指摘のように、高いときに作った船等もありますが、現在会社その他に対しましても経営の合理化ということを三十三年度に運輸大臣通達を発しまして、経営面あるいは一般管理、運航費等にも厳重な規制を加えまして、約八十億近くの経費の節減をやっておるのであります。今日、償却前の利益等をあげていますけれども、一般の償却の予定から見ますると、なお五百億近くの償却ができない状態、金利も五百億近くいろいろなものが延滞しておるというような情勢でありますので、国際競争を強化する上から利子補給を今回敢行したわけであります。
  288. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これで私の質問を終ります。今までいろいろな角度から三十五年度予算性格質問して参りましたが、要するに、これまで明らかになったことは、この予算案は新しい安保体制に即応するために編成されておる、そうして内外の情勢に逆行しておるし、自主性のない予算であることは明確になりました。また憲法財政法の精神にも反しておるし、軍事的性格も強い、民生の安定と向上を犠牲にしており、長期政策の裏づけのない、場当たり的予算であり、さらに派閥、圧力団体に屈しまして国民の血税を食い荒らしておる不明朗な予算であるということが大体わかって参りましたが、これ以上は同僚の委員からさらにまあ、深めて徹底的に追及していただきますので、私の質問はこれをもって終ることにいたします。(拍手)   ―――――――――――――
  289. 小林英三

    委員長小林英三君) 高橋衛君。
  290. 高橋衛

    高橋衛君 三十五年度予算案に関しまして、まず最初に安保条約に関するところの問題について質問を申し上げたいと存じます。  安保条約を論議する際に、やはり一番前提となり、重要な問題は、国際情勢がいかにあるかという点にあろうかと考えるのであります。御承知のように昨年の九月の下旬にキャンプ・デービッドにおきましてアイゼンハワーとフルシチョフの両巨頭が会談をいたしまして以来、わが国におきましては、これは世界各国においては必ずしもそうでないのでございますが、わが国におきましては、いわゆる雪解けの時代に入ったという見方が広く行なわれておるのでございます。他方、ところが今年に入りましてから、アイゼンハワー大統領は、その一般教書におきまして、またモスコーにおきましてはフルシチョフ首相以下最高幹部が、ソ連の最高会議におきましてそれぞれ演説をいたしておるのでございますが、いずれもそれぞれ精鋭な新兵器の威力を誇示しておるのでございます。特にソ連の最高会議におきましては、フルシチョフ初め幹部が、軍備の重要性というものを強く強調しておるように承知いたしておるのでございます。しかも最近フルシチョフはインドネシアにおきまして、露骨な日本攻撃の演説を行なっておる状態でございます。現在の国際情勢は、はたして雪解けの時代に入ったものと見ていいかどうか。特にこの問題に関連いたしまして、アジアにおけるところの日本の周辺、日本を囲む各国におけるところの軍備の状況その他についても、政府の見るところを御発表を願いたいと思うのでございます。フルシチョフの、先ほど申し上げましたような言動は、一体何を意味するものであるか、現下の国際情勢をどう把握しておられるか、その点についての総理並びに外務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  291. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年九月にフルシチョフ・ソ連首相がアメリカをたずねまして、いわゆるキャンプ・デービッドにおいてアイゼンハワー大統領と会談をいたしました。その際、今後東西両陣営の間における、従来懸案となり紛争となっておるところのものについては、これを力によらずして、話し合いで解決することにしようという原則が両首脳によって意見が一致した。これに基づいて本年春には巨頭会談が行なわれるというような運びになっておりまして、そうしてその場において、従来問題となっておる東西ドイツの問題及び軍縮の問題を主として巨頭会談において取り上げて会談されるだろうということが予想されておる状況であります。これをもって直ちに東西両陣営の間の緊張が緩和したものであるという、冷戦に最後的なピリオドが打たれたのである、こう見ることは、私は早計であると思います。もちろん、今日の発達した科学兵器、大量殺戮のおそるべき兵器が発達した今日におきまして、これが用いられるような戦争が再び起こるということになれば、これは人類全体の破滅を来たす問題でありまして、いかなることがあっても、そういう事態の起こらないようにわれわれは考えていかなければならぬ。このためには、世界のあらゆる国々が協力してそういう事態を防止しなければならない。この意味から言って、こうした懸案が話し合いによって解決されるというふうな機運が動いてきたことは、きわめて望ましいことであると思います。しかし、その話し合いの基礎となっているところの両国の主張というものは、東西両方とも少しも譲る気配はまだ見えておりません。従って、なかなか一回や二回の会談でもってこれが一つの解決を見出すようにあってほしいと思いますけれども、なかなかそれは期待できないのではないか。一面、フルシチョフ首相は、国連の会議において全面軍縮の演説をしております。しかし、軍縮についてのいわゆる十カ国会議の前途を見ましても、この問題については、なお困難がいろいろと予想されている状況であり、両陣営とも、現在において現実に軍備を縮小するという事実はどこにも見当たっておりません。また、両陣営ともさらに、地域的な、あるいは二カ国あるいは数カ国の間におけるところの防衛安全保障に関する条約機構というものは、御承知のように、あるいは中ソ同盟条約であるとか、ワルシャワ条約機構であるとか、あるいはNATO、SEATO等のこういう安全保障機構というものは、東西両方とも少しもゆるめておらないのであります。また、共産国側におけるところの団結は鉄の団結といわれているくらい強いものがございます。これに対して自由主義の国々が、十分な理解と信頼の上に協力を進めていこう、そうして東西の話し合いにおいて、この自由主義国側の主張を実現するように努力しようというのが、今日の世界の情勢でありまして、こういう情勢のもとにおいて、私どもは、従来あるところの日米安全保障条約というものは、これを存続すべきである。一部にいわれているように、これを廃棄するとか何とかというような情勢では絶対ない。しかして、これが最初から持っておったところの不合理性を合理的に改めるということは、これは絶対にわれわれの独立の完成の上からも、日本の国際的地位や国力から言って当然のものである、かように存じております。  また、日本を取り巻くところのアジア諸国におけるところの防衛の状況につきましては、機会を見て防衛庁長官の方からお答えすることにいたします。
  292. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体総理がただいま述べられた国際情勢の関係は、その通りにわれわれも考えておるわけであります。雪解けを望むことは、各国ともぜひとも雪解けを招来させたい。しかし招来させたいということと、現実に今もう雪が解けているのだということとは違うのであります。従ってわれわれといたしましても、おそらく、この春、アイゼンハワー大統領がソ連を訪問をされまして、そうして懇談もされると思います。これが雪解けをほんとうに招来させようという意欲をもって努力されることだと思うのでありますが、しかし、それだけの努力をされる必要があるだけに、現在なお雪解けがきているのだということは申し上げられないと思うのであります。そういう意味合いで国際情勢を把握をして参りたいと考えております。
  293. 高橋衛

    高橋衛君 次に、お伺いいたしたい点は、およそ独立国である以上は、国民みずからの責任において、何らかの方法において国の防衛をはからねばならぬことは、これは当然でございます。その方法といたしましては、たとえば米ソのごとく強大なる軍事力を築き上げるか、または国連の機能が不十分な――国連の目的はまことにけっこうでございますが、この機能を発揮することが必ずしも十分でないというふうな現在におきましては、これを補充する意味において集団的防衛の取りきめを締結するというふうな外交的な措置をとるということが、どうしても必要であろうと思うのであります。ところで、社会党は先般、本年度、三十五年度予算案に対して予算の組みかえ案を提案されたのでございますが、この予算を通じて見られるところは、要するに日本は無防備で中立をやれということのように感じられるのであります。全くまる裸の中立、こう申し上げていいかと思うのであります。しかしながら、現実に世界の各国の状況を見てみますると、無防備で中立を保持しているところはどこにもございません。永世中立国であるところのスイスが、御承知のように、財政の四割を国防費に充てる。またインドが、これは割合に少ないのでございますが、一七%、社会福祉国家として有名なスエーデンが二〇%をこれに注いでいるというこの事実をもって見ても、このことは名瞭であると思うのであります。言いかえれば、はなはだ現実から浮き上がったところのお考えではないかと、かように考えておるのでございます。  ところで、日本におきましても、今日、安保条約締結以来、大体財政に対しては一割前後の防衛費をもってまかなって参ったのでございますが、この一割前後の防衛費をもって日本の安全を保障し、独立を確保してこれるというその根本の原因はどこにあるかと申しますると、これはやはりこの安保条約にあるのじゃないかと私どもは考えておるのでございます。言いかえますると、安保条約あるがために、日本の世界に驚異されておるところの戦後の復興がこれだけ急速になし得た、こう考えても差しつかえないんじゃないかと思うのであります。旧条約と新しい条約とは、その根本的な点におきましては何も変わっておることはございません。要するにこれを合理化したものと、私どもは考えをいたしておるのでございますが、しかしながら、国民は、この安保条約の存在したところのありがた味というものをあまり認識していないように思うのであります。空気や水が人間の生存に非常に大切であるにかかわらず、人々に気づかれないというと同じように、安保条約の存在のありがた味というものが何かわかっていないような感じがしてならぬのでございます。そういうふうな点からいたしまして、国民がこういうふうな点について十分認識をされれば、この安保条約についての国民の考え方も相当変わってくるのじゃないか。言いかえれば、十分にこの安保条約の合理性を認識し得られるのではないかというふうに考えるのでありますが、政府のこの点についてのPRと申しますか、啓発がきわめて不足のような感じがするのでございますが、この点について、総理のお考えをお聞きいたしたいと存じます。
  294. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれの独立国として存し、そうして他から不当な侵略を受けず、平和のうちに国民の繁栄を期していくというこの念願を達する一番理想的な世界の情勢は、言うまでもなく、私は、国連においてそういう安全保障の機構が完成され、これにわれわれは国の安全と平和を一切託し得るというような事態がくるならば、これは一番望ましいことである。従って、これに向かって国連の機能を強化し、そういう方向に進んでいくように、国連における将来を持っていくように努力をしていかなければならぬと思います。しかし、それが現実においてまだ完備しておらないという場合において、どうしてそれでは一国が安全を保障していくかということについては、言うまでもなく、これはいろいろな外交、すべての国家活動というものを、世界の平和を乱したり、あるいは戦争が起こったりすることを防止するように、あらゆる政治活動を向けなければならぬことは当然でありますが、同時に、われわれ自体が、そういう不当な侵略を受けない、また、そういうものが不幸にしてあった場合においては、これを排除するという、この最小限の力を持つということも、これは現実からいってやむを得ないところだと思います。しかして、日本の憲法がいわゆる戦争放棄であるけれども、自衛権は、これは独立国として持っているものであり、自衛権を裏づける最小限度の実力は、これは持たなければならぬという建前で進んできていることは、御承知通りであります。しかし、それだけでもって、国民が安心して、日本が他から侵略されない、それぞれの職域において落ちついて全力を発揮できるかというと、現在の国際情勢は、私は現実はそうでない。そこに日米安全保障体制というものが生まれたゆえんである。しかして改正も、新しい条約の形をとっておりますが、要するに日米安保体制というものは、現在ありますことをそのまま存続し、これを合理的ならしめるだけの違いでありまして、根本は同じであります。すなわち、これによって、日本で足りない、またアメリカと共同して日本を防衛するという、他から侵略されることを未然に防止するという、こういう建前でできているわけでございます。  先ほどもMSA協定の問題において、日本の防衛力というものがアメリカの援助によってできているという点についての質疑がございました。その点も確かにございます。しかし、より大きな問題は、日本のいわゆる国力、国情に応じて日本の防衛力、自衛力をふやすということは、きわめて限度があるのでありまして、この日本を取り巻く国際情勢に対処するために、アメリカ軍が駐留して、そうして日本に不当な侵略が起こらないように、これを未然に防止しているという力が大きく働いているのでありまして、このために、今おあげになりましたように、戦後における日本の防衛費というものがだんだん減少してきている。最近は一〇%前後の、本年は特に九%台におりておりますことは、世界においてどこにも見られない状態であります。これは私は、一面において、日本の憲法上からくる自衛力というものの限度というものを示していると同時に、日米安保条約によってこういう状態が出ている。従って、財政のこの力を主として、経済の発展や国民生活の向上や、その他の文化施設に向け得るということになってくるのでありまして、この上に安全保障条約というものが非常に大きく役立っているということは、これは否定できない事実であると考えております。ただ、国民に対してそういう点について、政府が十分にPRしていないのじゃないかという御意見につきましては、足らざるところは私どもも認めております。今後できるだけ努力して、国民に十分に理解していただくように努めたい、かように考えております。
  295. 高橋衛

    高橋衛君 次にお伺いいたしたい点は、安保条約の第二条に規定しておりますところの経済協力についての点でございます。先ほど木村議員からも、この点についての質疑がございましたが、この種条約において、経済協力がうたわれていることは、これは一つの非常な特色だと私ども考えるのでございます。御承知のように、一昨年ヨーロッパにおいてはヨーロッパ共同市場ができ、さらに昨年になりまして、欧州自由貿易連合でございますかができ、また、アメリカにおいては、南北アメリカを通ずるところの米州開発銀行が発足せんといたしております。そういうふうな点から、ややともすると、日本が東洋の孤児になるのではないかというふうなおそれすら私どもは抱いているのでございますが、そういう際に、安保条約とともに日米の経済協力の条項がここに規定され、さらにその結果として生まれたかのように、後進地域の経済協力に、経済援助についての会議が最近ワシントンで開かれる際に、欧州共同市場を中心としたところの八カ国と同様に、日本も正式なメンバーとしてこれに招待されるということになったということは、わが国のためにきわめて喜ぶべき点じゃないかと考えているのでございます。しかしながら、この経済協力の点についての、具体的な成果というのはどういう点にあるかという点について、いま少しく総理からその間の御所見を伺いたいのでございます。すなわち、全権団の一人として行かれました足立全権は、総理よりも残られて、その後交渉に当たられた。その後それがどの程度に発展して参っているか。アメリカではやはり日本の米国に対する輸出品について、依然として関税の引き上げ、輸入阻止の動きも米国の中には起こっているのでございますが、これらに対して、どういうふうな関係を持っているか、そういうふうな点について総理の御所見を伺いたいと思います。
  296. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 戦後日本の経済復興の点におきまして、いろいろの点において、日米両国の間の経済協力がある程度それに寄与していることは、これはもう否認のできないことでございますが、さらに、今回の新しい条約におきましては、特に経済条項といわれる第二条の規定を置いて、今後日米の経済協力を一そう促進するような規定を設けております日米の経済協力ということにつきましては、しばしば御説明申し上げているように二つの面があるだろうと思います。一つは、日米間の経済交流の問題であり、一つは、この日米が協力して、日米以外の、たとえば後進国の経済開発に協力するとか、あるいはヨーロッパ共同市場におけるところの、いろいろな問題に協力して参加していくとかというような、いろいろの問題が私はあると思うのであります。特に、日米間の経済交流の問題につきましては、御指摘のありましたように、日米の間の貿易関係は、日本にとって、またアメリカにとって、よほど重要な地位を占めているものでありまして、特に最近は、ようやく戦後初めての日本にとっての輸出入のバランスが黒字になるというような状況に、日本の輸出が伸びております。そういうことが反面においてアメリカの産業に相当急激な影響を及ぼすという問題が出てきておりまして、日本品に対して輸入制限をするとか、関税を上げるとかというような動きも見られておりまして、こういう問題を、すでにアメリカの国会の問題となってからこれを処理するということは、私は両国は友好親善の上から言っても、これはまずいと思います。できれば事前にそういうものに対する適当な措置を講じて、そういうことが表に表面化さないようにしていく必要がある。一面には、ずいぶん日本の商品の輸出は、ある特殊の品物に集中されて急激に伸びていくというようなことを、いわゆる秩序のある輸出ができるような自制的な方法も講じていくということが必要な場合もあると思います。  こういうような事柄を日米の間において十分話をしていく。従来はこの日米の間の政府間の関係は、いわゆる正常な外交ルートを通じて、どの国よりも緊密に協議が行なわれ、協力関係が行なわれてきております。ただ、それだけで十分かといいますと、私はやはり民間のレベルにおいてもこういう協力ができることが望ましいじゃないか。現にアメリカとカナダであるとか、アメリカとメキシコの間には民間の間のそうした協議の機関が設けられております。足立日商会頭は過般ワシントンに全権として行かれまして、アメリカの財界の各方面の人とも会って懇談をいたし、また、今申しました先例になっているカナダやメキシコ等の事例に関する資料、また、その実績等も十分持って、これを検討して、日本とアメリカとの間にどういう形にしたら適当であるかということを検討していると聞いております。私どもは、民間の間にそういうことができることは、なお一そう円滑ならしめる上において適当である、政府としても、そういうもを民間のレベルでできるように醸成をして参りたい、かように思っております。
  297. 高橋衛

    高橋衛君 次に、国内の財政経済問題についてお伺いいたしたいと思いますが、総理は施政方針演説におきましてこう言っておられます。わが国の経済が最近きわめて順調に発展している事実を認め、かつ米国及び欧州の経済の見通しから、今後対策及び運営のよろしきを得れば、わが国の経済は堅実な安定成長を来たし得るというふうに言っておられます。問題は、その対策及び運営がよろしきを得るためにどういう施策が今年度予算において行なわれているかという点であります。また、佐藤大蔵大臣は、経済運営についての考え方の一環として、財政面から経済に刺激を与え、その均衡を破ることを厳に避ける意味において、財政の健全性を維持することを基本方針としたと述べておられるのでありますが、はたして政府が述べられている通りになっているかどうか、国民はその点について少なからざる疑問を持っていると思うのであります。その点を解明していただきたいのが私の第一の目的。  さらに、総理は、新しい経済計画の策定にあたって、「各種産業間の跛行的発展の是正などに十分意を用い、経済全般が均衡のとれた発展を遂げるように留意することはもちろんであります。」、こう述べておられる。また菅野長官は、「国民生活と所得の格差を是正するなど、経済の体質を改善し、経済成長力の質的な充実をはかる」、こう言っておられるのであります。各産業間、また産業の中におきましては、大企業と中小企業の間、また地域的に都市と農村等の間、それぞれ国民生活と所得の格差が大きく存在することは現実の事実でございますが、この格差を是正することが、今日わが国の経済の均衡ある発展をはかる上からはもちろん、民主政治の健全な発達をはかるためにも、ぜひとも必要な事柄であると思うのであります。ところで、この所得の格差の是正が各地域間において、または各産業間において、または大企業と中小企業の間において、三十五年度予算を通じてどの程度是正することを期待していいかどうか。これが私の第二の質問の目的でございます。この点に関連いたしまして、以下六点について質問を申し上げたいと存じます。  まず第一に財政の健全性についての問題でございます。三十五年度予算は、歳出面を見ますると、相当にバランスのとれたいい予算になっていると思うのでありますが、財政の規模全般から見ますると、私ども非常な危惧の念を持つのでございます。すなわち三十五年度予算はごろのいいところの「日ごろ苦労なし」でございますか、財政投融資じゃ「ごくよい」と読むのだそうでございますが、そういうような非常にけっこうな予算になっておるようでございます。しかしながらその予算規模を見ますると、今年は一兆五千六百九十六億円、三十四年度は一兆四千百九十二億円、比較いたしまして千五百億円、一割余りの増加でございます。三十四年度におきましては経済の成長が大体経済企画庁の予想では一三%程度である。しこうして三十五年度におきましては六・六%と予想しておられる。そういう点から関連いたしまして、ある程度まあやむを得ないようにも思われるのであります。しかしながら財政の国民経済に及ぼす影響は、単に国の財政規模をもってのみ判断すべきものではございません。何となれば財政の経済に及ぼす影響、刺激は単に国の財政のみならず、地方財政もまた同様の影響を持つからでございます。もちろん地方財政は理論的にはそれぞれ独立の編成、運営が行なわるべきものでございますけれども、現実の問題といたしましては、わが国においては今日残念ながら、財政面からは地方自治体は完全に国庫依存財政であるのであります。貧弱府県におきましては、国庫の丸抱えと言っても差しつかえないものもあるのでございます。従って国の施策いかんによりましては地方財政は大きくその性格を変えるものでございます。ころで自治庁の発表されました昭和三十五年度の地方財政計画によりますると、総額が一兆五千三百七十六億円、そのうち国の財政に依存するものは地方交付税の二千八百六十五億円、国庫支出金四千二十四億円、合計六千八百八十九億円と相なっております。換言すれば国、地方を合計いたしまして財政規模は、総計で三兆一千六十二億円でございますが、国から通り抜け勘定になっているものを差し引きますると、総計は二兆四千百七十三億円ということになります。しかもそのうち地方財政が占める割合は全体の大体三分の二、こう申し上げていいかと思うのであります。しかも地方財政の前年度との数字を比較いたしてみますると、相当大幅な一六・六%という増額になっておる。一方昭和三十二年の十二月に政府が新長期経済計画というものをお立てになった。いわゆる五カ年計画でございます。この新長期経済計画においてどういうことを書いておられるかと申しますと「国、地方を通じて健全財政の維持に努めるとともに、国民の租税負担の現状にかんがみ、財政規模の拡大を極力抑制して減税を行ない、もって民間資本の蓄積を推進する。」こう決定しておられるのでございます。昭和三十五年度の国民負担は国民所得に対しまして、政府の推算によりますると、国、地方を通じて二〇・五%ということに相なっております。三十四年度が一九・九%でございますから〇・六%の増額ということに相なります。昭和三十三年度からいわゆる新長期経済計画が始まったのでございますが、三十三年度から三十四年度に変わります際には〇・六%の減少でございます。それが三十五年度予算においてたちまち元のもくあみに逆戻りいたしたのでございます。昭和三十五年度におけるところの租税の増収は二千三百億円、ずいぶんいまだかつてないような大きな自然増収が見込まれるわけでございます。もちろん三十五年度におきましては前年度剰余金の額が相当減少した。またあの不幸なる伊勢湾台風が起こりました結果、これについて大きな財政需要を必要とするという点等から、あるいはやむを得ないのじゃないかというふうにも考えられますが、しかしながらこういうふうな大きな増収のあったときに減税をしなければ、なかなか減税の機会というのはっかみ得ない、というのが実情じゃないかと思うのであります。これでまた一方経済に対して過熱的な刺激を与えるおそれがないと言えるかどうか。大蔵大臣はとにかく経済に対して総元締であります。地方財政は自分に関係がないというふうには言われないと思うのであります。従ってこの点につきましても大蔵大臣は財政演説におきまして「地方団体におきましても、さらに経費の重点的配分及びその効率的使用をはかり、財政の一そうの健全化に努められるよう希望いたします」そう言っておそれるのでございます。財源を出しておいてこういうふうに希望されて、果してその通り実行できるかどうか。現に最近は知事や議員の報酬の引き上げというふうな、ひんしゅくすべき事件が新聞に報道されているのが実情でございます。さらに考えなければならぬことは、一たん財政の規模を増大いたしますと、後年度でこれを圧縮するということが非常に困難でございます。政府は税制調査会におきまして抜本的な税制の改正を諮問しておられました。ただいまその検討をしておる最中でございますが、大蔵大臣はまたその演説におきまして「今後、減税の実現に努めて参りたい所存であります」とこう言っておられる。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕 この大蔵大臣の所存が果して三十六年度において大幅に実現できるかどうか、これが口頭禅に終わるようなことになっては困ると思うのであります。先ほど申し上げました、いわゆる新長期経済計画におきましては、最終年度であるところの昭和三十八年度におけるところの国民負担の割合を、一応一八%と政府予定されて発表されておるのであります。昭和三十五年度において二〇・五%であり、それが昭和三十七年度において一八%にできるかどうか、もちろんその後の経済情勢の変化その他を勘案して、多少の異動はやむを得ないかと思うのでありますが、そういうふうな考え方を根本にお変えになったのかどうか。変えないとすればそれが実現できる見通しがおありなのかどうか、その点は財政投融資の規模がふくらんでおる点とも考え合わせて、一つ総理大蔵大臣並びに自治庁長官から御答弁を願いたいと思います。
  298. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ御意見が出て参りましたので、あるいはお答えが万一お尋ねの点から、はずれておる点がございましたら重ねてお尋ねを願いたいと思います。  ところで、ことしの予算編成いたしましたにつきましては、財政方針で明示いたしておりますように、予算の中立性と申しますか、あるいは健全性ということに特に留意をいたしたのでありますが、従いまして財源として歳入に計上いたしましたものが、税収その他通常の歳入、あるいはまた財政投融資の原資にいたしましても、通常考えられる資金と適正な民間の資金との協力によっておるわけでございます。ところで、これを一般会計あるいは地方財政それらを合わせて考えまして、その健全性を通じて表現いたしますのにいろいろの方法があると思います。ただいま御指摘になりましたように、前年の予算と三十五年度予算との予算の伸び率、それと最近における経済の成長率と、そういうふうなのを比較勘案するのも一つの方法だと思いますが、比較的わかりいい方法で申しますならば、いわゆる国民所得に対してどの程度の規模の予算になっておるかということが、比較的わかりいいことじゃないかと思います。そこで、その数字を一応御披露してみたいと思いますが、一般会計、地方財源、この純計と国民所得との比較をいたしてみますと、昭和三十四年度は国民所得に対しまして二四・二%というふうになっておりますが、さらに三十四年の補正後におきましては、これが二三・四%ということになっております。ところで、今回の三十五年度予算一般会計、地方財源合計いたしましたものが国民所得に対しまして占める割合は二三%ということであります。三十四年に比べまして国民所得に対する。その比率は下がっておる。特にそういう意味では私どもの方は健全性を主張し得るのじゃないか。また適正なる規模だということが言えるのじゃないかと思います。ところで、この予算の規模が適正であり、なおかつ財政投融資においても、その原資等において通常の原資資金を考える、こういうことになりまして、これが時期的に十分効果を上げるように支出されますならば、経済に対していわゆる刺激を与えるということはなくて、健全な成長に寄与するということが言えるのではないかと思います。しかしもちろんこの経済の動きはわが国自身あるいはまたわが国の経済をめぐる国際経済の動向、それを年間を通じての見方でなくて、その時期的な動向を十分勘案いたしまして、それに対処しての財政投融資計画の遂行なり、あるいは一般金融のあり方なりを十分指導していく必要があるだろう。経済を健全に、また世界の趨勢に負けないで成長さしていくというために、ただいま申すような健全財政を貫き、同時に経済自身の健全性を維持していくと、こういうことを考えて参りますと、ただいまお話しするような経済、金融自身の調節的機能ということも十分考えて、時期的に効果のある方法をとらなきゃならぬと、かように考えます。  ところで、しばしば言われますことですが、この金融自身は一体金利がどうなのか、大体高いんじゃないか、もっと安くする方法はないかということをしばしば指摘されるのでございますが、貿易為替の自由化等が漸次拡大されていき、貿易が拡大し、またわが国のように貿易依存度の大きい経済状態から見ますと、金利自身が国際金利水準、これにさや寄せしていく基本的方針、またその間に大きな開きがあってはならないということがよくわかるのでございますので、私ども絶えず申し上げておりますように、金利自身は国際金利にさや寄せするというその基本的方針を堅持する、さようにいつも説明をして参っております。しかしながら、この金利のあり方にいたしましても調節的機能ということを度外視することができませんから、一時的現象としては時に金利、公定歩合等にいたしましても引き上げ等がございますが、長期に見ればその基本的な考え方に変わりがない。また先ほど来申しますように、健全な経済の発展を確保するという観点に立てば、この財政計画の実施にあたりまして、また予算の遂行にあたりましても十分その時期的な考慮をはらっていかなければならぬ、かように実は考えております。  また今日の好況――昨年来の好況から見まして、地域的な格差が出たり、あるいは産業間にも非常に格差が出てくるだろう、そういうものに対してどういうふうに対処していくか。主として地方団体の格差の問題について考えてみますと、最近の地方財政が大きくなりましたことは、法人関係の税収が非常に拡大しておる。そういう原因がありますだけに、地方の地方団体相互間の格差というものが一そう大きな影響を受けるということになっております。これを特別に何か調整する方法はないかというお話も出ておりますが、私どもが現在の状態のもとにおきましては、地方交付税並びに譲与税等、これがある程度調節的な機能を持っておるわけでございますから、現在のもとにおきましてはこれらの調整財源を十分生かしていくように工夫してみたいものだとかように思いまして、自治庁ともいろいろ相談をいたしておるわけでございます。  またこういうような好景気になりまた歳入も非常に増加する、そういう際にはぜひとも減税を行なえという御主張のように伺いましたが、本年減税を行ない得なかったことは、財政方針の演説でも申しましたように、まことに私どもも残念に思っております。特に私ども今年減税ができなかったことを弁解がましく申すわけではございませんが、昨年の台風の被害が非常に大きいとか、あるいは治山治水等の特別な予算を計上するとか、あるいは社会保障の前進であるとか、相当出費を必要とする事業面もございますので、それらをまかないますためにやむを得ず減税を実施することができなかったのでございます。しかし社会保障関係の費用を増額いたしましたことは、税に対する国民負担を社会保障の推進の形の上で国民に還元いたすことにも実はなるのでございますが、減税をしなかったが幾分かそういうような意味合いを持つものじゃないか、実はかようにも考えております。  ところで三十六年度以降において減税を実施するかどうかという問題でございますが、    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕 政府は、御承知のように、税制調査会を設けまして、税制のあり方の基本的問題を検討いたしております。先ほど触れました地方財政、地方団体相互間の税源確保というような問題から見まして、国と地方との税源の再分配の問題であるとか、あるいはまた企業課税のあり方であるとか、あるいはまた全般といたしましての国民負担が適正なりやいなや、こういうことで全般的な税制の調査会を設けてせっかく検討中でございます。これも順次結論が出て参ることだと思いますので、この線に沿いまして減税を実施して参りたい、かように実は考えております。ところで一面三十六年度以降において減税をすると政府が申しておりますが、必ず一面に歳出の面で当然増が非常にあるだろう、果してそれをまかない得るように、それをまかない、しかも減税可能かと、こういうような疑問が一部にあるようでございます。もちろん三十六年の歳入歳出のことでございますから、ただいま三十五年度予算の御審議を願っておる際でございますので、三十六年の総体についての見通しを云々するわけには参りません。しかし私どもが計画いたしておりますところは、何とかして今日の経済の好況を維持して参りたい、そこによって自然増収も相当のものを期待し得るように、この経済の横ばいを続けて参りたい、また災害等が起こらないならば、災害復旧費などは相当これは減額することが可能だ、また国費全般にわたりましての節約も十分協力していただきまして、そうして国民の希望しているような減税、税制調査会の結論とも相待ってこれをぜひとも実施して参りたい、かように実は考えておる次第でございます。先ほど国民所得倍増計画等から見て、国民負担の率を一八%程度に考えておるというようなお話がございましたが、今年などは税率の変更を一切見ておらない現状におきまして、おそらく二一%程度の国民負担にはなっておると思います。これは税法で税率を改正して重くしたわけではございませんが、収入がふえるという際にはそういう現象が起きてくるわけであります。大体二〇%前後のところでとめるというのが、わが国の経済の現状から見ますと、まずその程度の財政状態また経済状態、かようにも実は考えるわけでございます。長期にわたりましては、さらに国民負担を一九%、一八%、かように下げて参りたいと思いますが、いずれにいたしましても、率がどの程度になりまするかは、十分歳入と歳出とにらみ合わせて、しかる上できめたいと思う次第でございますので、何としても減税を実施に移したい、かような意気込みで行くことを御了承いただきたいと思います。
  299. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 地方財政の面についてお答えしておきたいと思います。  地方財政の問題は、御指摘のように地域間に非常に不均衡があるということ、これが私はやはり困難を伴っておる一番大きな原因じゃないかと思っております。それからなお、御指摘になりましたように、現在の状態では国に依存していることが非常に大きいということでございます。そこで私はただいま国と地方の仕事の分配あるいは地方団体の間の地域の問題、現在のような状態でいいのかどうか、それから税制上の問題で、税財源の国と地方を通じて配分が果して適正に行なわれておるかどうか、こういうような問題につきまして、地方制度調査会なり、ただいまお話のありましたような税制調査会等でいろいろ検討が行なわれておるのであります。この結論の一刻も早く出ることを非常に期待し希望しているわけでございます。現在におきましては、先ほどお話のありましたように、地方交付税制度の運営によりまして、この地方団体間の不均衡の是正に努めておるわけでありますが、これは各地方団体、都道府県の一人当たりのいわゆる地方税の税額を比べてみまするというと、非常に一人当たり大阪、東京都五、六千円ぐらい、あなたの福井県であるとかその他は一千円そこそこぐらいであります。税額においてはそれぐらいの開きであります。ところが交付税とか譲与税その他によりまして調整した結果を見ますと、かえって福井県が六千円近くなって、大阪は五千円少々であるというふうに、交付税制度の運営によりまして相当の是正は行なわれておるのでありまするが、何分にも、弱小県、貧弱県、そういう地域は根本的にほとんど税財源の基本がないのであります。この問題については、さらにもっと掘り下げていかなければならぬ。幸い三十五年度の地方財政計画においては、相当の財源を持っておりますので、この機会にわれわれはさらに一そう地に着いたものにしたいと思いまして、地方交付税の配分方式等につきましても、もっと傾斜的に配分ができるように別途交付税法の改正を御審議願って、さらに地方財政法等も改正いたしまして、税外負担その他の解消に努めるというようなこともやっていきたいと思います。  なお、地方財政にも相当の自然増が期待されておりますが、国と同じように現在は一応これらを見送って、公約に基づく住民税の減税だけで、他の減税はおそらくできないと思いますが、これは非常にまだ低い行政水準を、こういう機会に引き上げるのが、むしろ適当ではないか、国の施策に即応する災害対策、国土保全対策に即応するのはもちろんのこと、行政水準の引き上げ等にあたりまして、三十五年度は地方においてもおそらく減税は困難ではないか。さらに三十六年度以降の問題につきましては、国の方策に沿いまして減税をやっていきたいと思っております。  なお、ちょっとお触れになりました歳費の引き上げの問題は、ほとんど全国的に今おそらく今回は自粛しておると私は思っております。
  300. 高橋衛

    高橋衛君 政府は、先ほども木村君から質問のありました通り、貿易・為替の自由化を、一定の計画をもって、これを実施に移そうとしておられるわけであります。ところで貿易及び為替の自由化に関連して、国として一番準備しなければならぬことは何かと申しますと、結局国の関係からいたしまして、原価の引き下げによって国際競争力を培養するという点にあろうかと思います。その面で私はどうあっても減税の問題と、それから金利の引き下げ問題、この金利の引き下げ問題については、先ほど大蔵大臣からお述べになりましたが、この二つが政府として一番準備しなければならぬ大事な問題じゃないか、かように考えておるのであります。ところで先ほど大蔵大臣から、財政規模について国民所得と財政規模と比較の数字をお述べになりました。大体これでそう過熱的な影響を与える心配はないのだという御説明がございましたが、必ずしも、これはなかなか国民の心配はその御説明だけでは去らぬだろうと思います。要するにそういうふうな点があるからでございましょう。大蔵大臣は、あるいは経費の支出についての時期的な調節をやりたい、またはそれの補完的な意味において金融の操作によって、これをうまくやっていきたい、こういうふうに述べているわけです。今日御承知のように、まだ金融が正常化いたしておりません。オーバー・ローンの状況です。財政がある程度ふくらめば、どうしても金融にしわ寄せがくる、金融がある程度引き締めざるを得なくなる。金融の引き締めということは、要するに需要供給の関係で申しますと需要が多くて供給が少ない自然の傾向として、金利は上がらざるを得ないのは当然の傾向でございます。あるいは表面金利そのものは上がる傾向がチェックされるかもしれませんけれども、しかしながら借りる身分から申しますと、借主から申しますと、どうしても引き締めをやられれば、いろいろな苦労をしなければならぬ、その間に、目に見えぬところのコストがかかる、そういう意味におきまして、大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますが、先ほど長期的に何とかして金利を引き下げる方向に努力したい、こういう抽象的な御所見の開陳があったのでございますが、私は、かりにこの金利についての戦前と最近との調べをしたのであります。日本銀行の調査によりますると、昭和十年の上期におけるところの普通銀行の支払預金利率――これは平均利率でありますが、これが三・〇六九%であります。これに対して平均運用利回りは四・八一三%、その差が経費並びに利益に当たるのでありますが、それが一・七四四%であったのであります。ところが昭和三十四年度の上期、この数字をとってみますると預金利率は四・三六五%に上がっております。ところが平均運用利回りは、さらにこれを大きく上回って七・八六五%という数字でございます。その差は実に三・五%ということになっていて、戦前に対して、この差が倍になっておるわけであります。この点はおそらくは預金の総量がまだ十分に伸びていないという点、または過当競争というふうなことが、あるいは原因になっておろうかと思うのでありますが、しかしながら先ほど申しましたように、減税とともに金利の引き下げ、国際水準に近寄せるということが絶対的な要請であると私どもは考えるのでありますが、ここに、やはり、大蔵大臣としては、何らかの措置を講じられるという必要があるのではないか。  また、こういうふうな銀行自体の問題以外に、全般として、先ほど抽象的にお述べになった金利水準を、今後何とかして引き下げていきたいというお話でございますが、それが具体的に、どういうふうにして、それを実現する考えであるのかということを、もう少し御所見の御解明を願いたいと思う次第であります。
  301. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか金利の問題は、むずかしい問題でございます。と申しますのは、今日の金利は、一朝一夕にしてできたものではない。過去の経済活動の集積のようなものでございますので、これを一つの方針をもちましても、一時にこれに非常な、一般的に、そう大きな影響を与えないで、金利自身を自由にいじるということが困難である、実はかように思います。  従いまして、相当の期間を要する。だから制度そのものから見ますと、一面に準備預金制度を発動させる、あるいは公定歩合の操作をする、いろいろ方法はあることでございますが、いずれにいたしましても、金融機関自身が、預金あるいは融資について、その態度が、もっと正しく正常化されていくということが、まあ一番大事なことだと思います。そういう意味におきまして、私ども、もっぱら金融機関のあり方について、ただいま指導いたしておりますが、しかしこの金利そのものは、国際金利にいたしましても、一時相当開きがあるように考えられたものが、日本の金利自身には、あまり変化のない今日、アメリカの金利が高くなるとか、あるいは欧州においても、公定歩合はもう引き上げるというようなことをいたしておりますので、最近の金利の格差というものは、別に処置をとらなくても、やや近付いていくという感じが実はするわけであります。最近の道路借款や、あるいはアメリカ等で外資の計画を進めております場合も、昨年国債を発行しましたときから見ますと、相当高い利回りになっておるという実情でございます。  ところで、外国の制度がどうであろうとも、外国が、そういうような処置をとりますことは、これは結局、申すまでもなく景気に対する一つの調節的な作用、それを見て、公定歩合の上下をするわけでございます。日本におきましても、そういう意味の事柄をいたしましたのが、昨年十二月において公定歩合を一厘いじったということでありますが、これが私どもは警告的な措置だと、かように申しましたが、十分効果をあげたように実は考えております。ことに年末金融等についても、予測したよりも貸し出しは、日銀券の発行もそう大きく出なかった。一兆億は超しましたけれども、それも、私どもが予想した金額の内輪であった。またその後の還流状況なども非常に順調でございます。これなどは一部経済に対する過熱を心配しておられる向きも、最近のこの金融のあり方等からごらんになりまして、物価等があまり変動しないという点から、まず過熱の心配は、ここ暫く遠のいたのじゃないかというように見ている方が多いのじゃないかと、実はかように思っております。  しかして、金利をさらに具体的に下げていくという場合に、金融機関自身が、金融機関自身の努力に待つと申しましても、ただいまお触れになりました預金金利のあり方というものが、最後には問題になってくるだろう。今日は、さらに資金を必要とする時期でございますから、いわゆる預金金利をどうこうするということを申すわけではございませんが、今後の資金の需給の状況等を勘案すれば、そうして金利総体を引き下げるということになれば、預金金利をそのままにしておくということは困難な状態になってくる、これは理論的に申し上げられるわけでございます。で、高橋議員の御指摘になりますように、今日いわゆる預金金利が相当高くなっているということが、戦後のわが国経済から見まして資金の獲得、これをまず第一にやるという意味で、よほど預金奨励の金利というように考えられる筋のものだと思います。しかし金融自身を抽象的に議論して参りますと、国際金利にさや寄せするという具体的な方法とすれば、そういう点に触れざるを得ないだろう、かように実は思います。  しかしこの点は、誤解のないように願いたいのでありますが、金利自身が、預金金利といい、また融資金利といい、その二つともが、経済に対する調節的作用を持つものだと、こういう点がございますので、具体的に実施するかどうか、どういうように取り扱うかということは、よほど慎重に扱っていかなければならぬ、かように実は考えております。
  302. 高橋衛

    高橋衛君 私も、今日財政並びに金融の調節操作によりまして、過熱的な影響が今日出ているというふうには見ておりません。しかしながら貿易及び為替の自由化という方向に踏み切られた以上、その方向に政府としては、何らかの確たる方針を確立していただきたいというのが私の念願でございます。  どうあっても、その方向に行かなければならぬ。財政をふくらましておいて、そうして金融は引き締める、そういう状況のもとにおきましては、どうしたって金融は繁忙になり、需要供給の関係から、利子は上がらざるを得ない、従って預金利率も下げるなんて、とんでもない話だということになろうかと思います。その点は私の考えだけを申し述べまして、お答えは要求いたしません。  それから次に、先ほど大蔵大臣、自治庁長官から御答弁がございましたけれども、地域的な所得の格差の是正、これは総理大臣が、やはり産業の均衡のある発展ということを言っておられますが、その均衡ある発展ということは、地域的なことも含めて言っておられるものだと、私はそう考えるのでありますが、そういう意味で昨年の八月、企画庁が発展された数字によりますと、国民生活の地域的な分析によりますると、東京では、一人当たりが全国平均の二倍、鹿児島県は六六%ということで、ずいぶん大きな開きがございます。また国の支出も、地方の支出も、勢いこれは都市に集中しがちでございます。言いかえれば、財政の地域的な所得の格差についての影響は、むしろ是正の方向じゃなしに、これを拡大する方向に動いているような感じがいたします。先ほど交付税、または特別交付税の経済的な配分の方法等によって、これが是正をはかりたいということを自治庁長官は言っておられますが、また今年は、これを相当努力しておられることは私どもも十分知っているのでございますが、しかしながらそれで、なかなか十分じゃないように私ども思うのであります。そういう点から、これは聞くところによりますると、自治庁長官は、三十五年度予算に関連いたしまして、未開発地域に対するところの建設事業に対して国庫の補助率を増額をするような特別な法律考えたいというようなことを言っておられたように聞いているのでありますが、これはもちろん、予算増額を伴う法律になるのでございますから、おそらくは今国会の問題にはなり得ないのじゃないかというふうな感じもいたしますけれども、しかしとにかく、それが三十五年度予算編成の際において、その点から論ぜられ、そうしてそれが、その方向にいくのだというふうな考え方のもとに、予算編成されたというふうにも承っておりますので、その点について、要するに国民所得、国民生活の地域的な格差の是正の方向について、大蔵大臣並びに自治庁長官は、今後どういうふうな方向で、どんなふうに考えているかということを一つお聞きいたしたいと思います。
  303. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど一般的には税制調査会による財源の分配の問題ということを申しました。これはただいま税制調査会で研究している問題でございます。  ところで、それまでの段階において、一体どうしたらいいか、いろいろのことが言われております。未開発地域に対する公共事業についての国の補助率ということも言われておりますが、私どもは、まず第一に調整財源を、そういう意味で十分適用する方法はないか、使う方法はないか、いわゆる態容補正というものを、もう少し大幅にとり上げることはできないかということを実は申し上げておるのであります。譲与税等についても、何かと調整的な作用を行なっているようでございますが、さらに態容補正について、もう少し分け方があるのじゃないか、あるいは基準財政収入の取り方についても、今までの率を少し変えてみるというような方法が現在の制度の下において、一応できるのじゃないかということを実は考えております。いずれにいたしましても、なかなか地方財政の問題は、各府県とも、それぞれの団体が、それぞれ自治体としての十分の機能を発揮したいと考えておるのでございますから、相互間の問題なり、国との、調整の問題にいたしましても、いろいろむずかしい問題がある。だから一般的な理論だけでは、なかなか解決ができない問題である、こういうふうに思います。  しかし、ただいま申し上げるような点などが工夫されてしかるべきじゃないかというふうに思っております。
  304. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。  先ほど、ちょっと申し上げたのでありまするが、住民一人当りの、その地方の税収入と、それから交付税制度を運営いたしまして、財源調整した後の一人当りの額を、ちょっと参考に一つ申し上げてみたいと思うのでありますが、大阪と、あなたに関連の深い福井県、この例をとってみたいと思うのであります。大阪は一人当りの税収入は五千五百五十九円、福井県は千六百五十三円、これほど違うわけであります。交付税制度その他で補正した後の計算をしてみまするというと、大阪は一人当り五千六百五十三円、福井県は五千八百七十円というふうに、福井県の方がむしろ多くなるようになっております。それで大蔵大臣からもいろいろお話がございましたけれども、交付税制度には、いろいろの傾斜的配分の要素を取り入れまして、もう配分方法としては、大体まあこの程度で、限度がきておるのじゃないかと私は思うのでありますが、ただ交付税というのは、その地方の財源にすっぽり入る感じでありまして、こういう目的のために使うのだったらどうだ、とかいうことにはならない、いわゆる財源調整が行なわれるものであります。  先ほど指摘になりました未開発地域のいろいろな開発事業というこういう公共建設事業になりまするというと、やはり何と申しましても、後進地域は、財源に乏しい、一人当たりは少々ふえても、全体の額というものは、きわめて貧弱なものでありますから、財源が非常に乏しいわけであります。なかなか消化し切れない。現に三十四年度も、いろいろ公共土木事業が、臨時特例法の廃止によりまして、消化が非常に困難になってきて、弱小県は非常に困難になってきましたので、特例債二十一億を本年度認めてもらいまして、どうやら消化できたようなわけであります。三十五年度は、御承知のように、公共事業が非常にふえた、災害対策あるいは国土の保全が非常にふえておるわけであります。私どもが一番心配しておりますのは、こういう事業を一番やらなければならない後進地域、貧弱地域が消化できるかどうか。予算は、目の前にぶら下がっておりましても、地方は負担のために、これが消化し切れないのじゃないかというような心配の念を持つのであります。  そこで考えられましたのが、いわゆる未開発地域の開発促進といいますか、事業量とその地方の財政力を比べまして、財政力に比して財政が貧弱なのに、事業をたくさんやらなければならない、こういう所に国庫補助の率をかさ上げしてほしいという意味のことで、これは現に東北総合開発、引き続いて九州開発、さらに四国開発、北陸開発、山陰開発というように、ほとんど全国に及んでおるのでありますから、私はむしろ、この際、こういう何地域ということでなしに、後進地域、未開発地域の開発建設事業に、国庫の補助を少し割り増しするようなことをして、それらの事業を伸ばす。これによって、初めて国土の地域的開発の均衡がとれるのじゃないかと思いまして、三十五年度予算編成にあたりましても、このことを非常に要望したのでありますが、遺憾ながらこれは実現しなかったのであります。しかしこういう考え方は、三十五年で行なった事業の政府補助という形でいくのでありまするから、まだまだ今後研究いたしまして、ことしの予算に関連のない問題でありまするので、目下、大蔵当局その他等の調査会等で、いろいろ検討願っておるわけでございます。  決して私ども、まだ希望を捨てておるわけではないのでございます。今後、一段の御声援をお願いいたしたいと思います。
  305. 高橋衛

    高橋衛君 ただいま石原長官から、非常に力強いお言葉がありまして、心強く感ずるのでありますが、もちろん国の税制全般とのにらみ合わせもございましょうが、るる御説明はありましたが、必ずしも地域間の格差の是正という面に確たることが実現できるかという問題については、なかなかそこまで自信を持ち得ないというのが実情じゃなかろうかと思いますが、時間もございませんので、次に、今度農業関係について質問いたします。  昭和三十五年度におきまして、従来食糧増産費といっておりましたのを、農業基盤整備費というふうに名前を変えて、そうしてそういうふうなところから、また別途畜産振興とかその他いろいろな特色を添えまして、農林関係予算というものは、相当新味を添えたというように思われますが、しかしながら、いわゆる曲がり角にきているところの日本の農政に対して、これを今後どうすべきかという点については、ずいぶん問題が多いと思いますが、もちろんこの問題は、問題が簡単ではございません。非常に重大な問題でありますので、昨年から農林漁業基本問題調査会をお作りになって、ここで鋭意検討をしておられる最中でありますので、なかなか具体的な御答弁はしにくいかと思うのでありますが、私は二、三点についてお伺いをいたしてみたいと思うのであります。要するに根本は農林漁業所得と他産業との所得の較差が非常に大きい、この較差をどうしたら狭めることができるか、また、この三十五年度予算において、この較差を幾分でも狭めることができる見通しがあるかどうか、その点が根本でございます。しこうしてこれをなす方法として、たとえば農林漁業に従事しておる人がもっと他の産業に移動してくるということができれば、それも一つの道でありましょうが、これはここ数年間の人口の情勢を見てみますと、なかなか困難じゃないかと思われるのであります。価格支持政策は、もちろんそれぞれ適切にやっていかなければならぬと思いますが、要するに残された一番大きな方法は、結局生産性の向上、これに期待する以外にないのじゃないかと思うのであります。総理はよく二、三男対策というものの重要性を強調されまして、これに対する方策を述べておられ、または青年に夢を与えよということを言っておられます。農村に参りますると、農村の青年、家業を継ぐべきところの農村の青年に、なかなか夢を持たせることが現実の問題として困難のように思います。ちょうど現在は卒業の時期でございますが、農村の高等学校の卒業生、この卒業生の男子においては、ほとんど三、四百人の卒業生がある場合おいて、二、三人の人が農業にとどまるという、就職の希望を出しておるところが相当あります。そういう現実においてそういう状況でございまして、なかなか農村青年に夢を与えるということは、口では言えても、現実の問題として非常に困難でございます。単に二、三男の問題だけじゃないと私は思うのであります。今日いわゆる農家経営規模というものは非常に零細化している。三反歩、五反歩の程度の農家も相当多数ございます。  ところで、それに関連してお聞きいたしたい点は、こういうふうな零細経営の規模であるところの農業というものを、いわゆる通俗の言葉で言えば、農業構造改善という面において政府はどういうふうに考えておられるか。その点についてまず第一にお尋ねいたしたい。現在の農地法によりますると、農地を買い得る人は三反歩の耕地を持っている人か、またはその土地を買うことによって三反歩になるところの人が農地を買い得ると、こういうことになっております。自作農維持創設資金融通法、この法律によりますと、やはり三反歩以上の農家を対象として、それらの人が資金の融通を受ける。しかもその平均融資金額はわずかに十一万円。今後ほんとうに自作農として育てていきたいと思う農家が、そういうふうな小さな規模から始まったのでは、これはなかなか将来農業問題は困難じゃなかろうかと思います。もちろん、どの程度以上が適切かという問題については、非常に問題がありましょう。ありましょうが、今日これから作っていく農家が三反歩程度の農家であるというこの法律建前、この法律建前考え方には、根本から考えねばならぬことがあるのではないか。今後五年間では人口がふえて、なかなかそう楽にはならぬかもしれぬが、それらの青年というのは、とにかく十年、二十年の先のことも考えて、そうして計画を立てていかなければならぬと思いますから、まあそういう場合には、こういうふうな法律改正についてどう考えておられるか。さらにまた、スイスとかフランスとかドイツ等においては、前例があるのでございますが、相続の場合において、農地並びに農業資産はなるべく分割しないような法制的な措置が講ぜられている。まあ、そういうふうな点についても、何かお考えがあるかどうか、この点についてまずお伺いいたしたいと思うのであります。
  306. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日本の農業の非常に困難な根源がその零細化にあるという御指摘は、私もさように考えるわけです。この零細性を克服するということが、私は今後の農政の基本的な考え方でなければならぬというふうに存じておるわけであります。まあ海外の移住でありますとか、あるいは干拓、開拓いろいろ努力をいたすわけでありまするが、しかし、この零細農家のこの姿を一挙に解決するということはなかなかむずかしい。そこで、今後の農政の中心といたしまして、私はどうしてもこの小さい農地の生産性を、できる限り上げていくというところに求めなければならぬというふうに考えておるわけです。さような意味合いをもちまして、一方におきましては、予算措置をもちまして、あるいは農業基盤の整備をやる、あるいは流通の改善、需給の調整というようなことまで含めまして農地対策を講じなければならぬというふうに考えておるわけでございますが、同時に、私は農家の経営自体についても、お話しのような考え方でいろいろ考えなければならぬ問題がある。それは一つは、農家の経営の共同化、集団化という問題であり、また、農家の間に最近起こりつつある法人化の傾向、これに対しましても政府は十分こたえていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。  まあ、あらゆる努力を尽くしまして、土地の生産性というものの向上に努力をいたすわけでございますけれども、私はしかし、それだけでは事は解決しないのであって、やはり日本の農業政策というもののはけ口というものは、これは農業政策自体の中に求めるということの努力のほかに、日本経済全体に、この中に求めていくという考え方を大幅に取り入れなければならぬというふうに考える次第でございます。すなわち、政府が所得倍増計画を企図しておるというふうなことの大きな意味は、農家をどういうふうに今後伸ばしていくかという点にあるわけでございます。私は経済がだんだんと伸びていく、そうして農業従事人口というものが他の分野におきましても活躍し得るという基盤、受け入れ態勢というものを作っていたのだということがこれは必要であり、また農業政策の面におきましても、それに順応いたしまして、そうして農村子弟の就業に便益を与える意味のいろいろな施策というものがとられなければならぬ。さような意味におきまして、三十五年度予算におきましても、いろいろな案件を御審議いただくということになっておる次第でございます。  で、土地の零細性という問題、さような考え方でやっていかなければならぬというふうに考えまするが、ただいま具体的に御意見のありまするこの三反歩中心のいろいろな問題、これも今直ちにというわけにはなかなかいかぬと思うのです。ただいま申し述べましたようないろいろな施策と並行いたしまして、これもぜひとも解決していかなければならぬ問題である、かように考えて、ただいま検討いたしておるところであります。
  307. 高橋衛

    高橋衛君 次にお伺いいたしたい点は、農業災害補償制度の問題でございます。日本の農業共済の制度は、理論的にはきわめて精微にできておりまして、一応説明を読んでみますと感心をするのでございますが、しかしながら農民の間には、これほど評判の悪い制度はない。私ども予算時期になりますると、ずいぶんとこの農業共済についての予算増額についての陳情を受けます。ところが、一たん農村に帰って陳情と聞いてみますと、農民のほとんど多くはこれを希望しておりません。むしろ廃止を希望しておる。しかも職員の方に聞いてみましても、職員でまじめな人であればあるほど、たとえば災害の査定において厳格な査定をすれば農民の不満を買う。掛金の徴収をしっかりやれば、これまた不満を買うということで、非常に良心的に悩んでおられるというのが実情でございます。従ってこの農業の共済の制度については、どうしても抜本的に変えなければいかぬという事態に立ち至っておると思うのであります。農林大臣もその点いち早くお考えになって、農業災害補償制度についての研究会を持たれ、またできるだけ早くこれが改正案を出したいということを言明しておられるのでございますが、この問題について、しからばどんな方向で改正するのかということをお聞きいたしたいのでございますが、準備調査費等を来年度に計上しておられるところから見ましても、まだなかなかお答えしにくいのじゃないか、かように考えますので、私は、農林大臣お答えになりやすいように、一つ私自身の考え方を申し述べまして、そうしてそれについての、大体その方向でいいかどうかということについての大臣の御所見を伺うことにいたしたいと思います。  私の大体の考え方は、まず第一に、先ほど質問において私の考えを申し述べましたように、どこまでも経済的に、自立できるところの農家というものをまず対象にして考える。いわゆる自給農家または兼業が主たる農家というものは、対象にしない考えでいきたいというのが、まず根本でございます。そこで、農業共済の加入資格者といたしましては、従って、専業農家であるか、または兼業農家であっても、一定規模以上の耕地を持っている者、そうして、現在は全部強制加入でございますが、市町村単位に強制加入にする。と申しますのは、市町村単位にその加入資格者の三分の二以上がこの共済をやろうということであれば、その市町村は全部強制加入にして、その現在の制度を少し改善いたしまして、共済制度を実施していく。それを選択しない市町村に対しては、それをそのまま放置することは困りますから、これに対しては現在の天災融資法を改正いたしまして、そうして現在保険金として支払っている程度のものを融資でもって供給する。もちろん、これは低利の金でなければいかぬと思いますが、たとえば二分程度、七年くらいの年賦償還の金であれば、大体いいんじゃないかと思うのです。その程度の融資をしてそれにかえる、そうして問題は、やはり災害査定の点が問題になろうかと思うのでありますが、これは国の事務として市町村に委任してやる、こういうような方法でやる、こういうことに一応考えてみたのでございます。そういたしますると、これはそろばんで恐縮でございますけれども、過去十カ年間の保険金の支払額が、平均いたしまして一年平均で九十億円になる、そういうように任意加入の制度を市町村単位にとってみますと、非常に不評判であるということから、私の見当は大体五分の一くらい残るのではないか。そうすれば、それに必要な国の経費は、二十億円程度で済む。そうして、さらに、あと利子補給する場合の利子補給の金額は、七年で最高のときをとりまして、約二十億円前後で足りる、そうすれば現在九十億円程度所要しているのが、五十億円だけ余裕ができる、こういうことになると思うのでございます。もちろんこの問題は、農業災害共済に従事しておるところの職員は二万五千人ぐらいございます。その職員の問題も合わせて考えなければならぬと思います。従って、何らかの職場の転換その他の措置を講ずるのに相当の経費が要ることもあわせて考えなければなりませんが、大体そういうような方向で私はこの農業災害共済を改善していくことが、この際とるべき措置だと私は個人として考えておるのでございますが、またその残ったところの余剰金、約五十億円全部の余剰金を後に申し述べますところの農業金融の問題に活用していきたいというのが私の考え方でございます。以上について農林大臣から何らかの御所見をお伺いいたしたいと思います。
  308. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農業共済制度につきまして、農家の間で大へん不満があるということにつきましては、私もかねがね非常に頭を悩ましておるわけであります。私もこの制度は国におきまして百十数億円の財政支出までしてやっておるのでございますけれども、農家で一向これを歓迎しないというようなことにつきましては、これは何かどこかに欠陥があるのではないかというふうに考えるのであります。それでいろいろ検討するのでございますが、結局あのような全国的画一的な制度をやる、さようなことに対しまして、災害の態様というものが区々まちまちである。それからもう一つ問題になってきます点は、農家の負担という点ですね、これを非常に農家におきましては苦にするわけでございます。この点の検討ということも必要ではないか。またさらに、ただいまお話しのような、強制加入になっておりまするが、その点につきましても検討すべきではないか。それからさらに、最近農薬等が非常に発達いたしまして、必ずしも災害という、予想されたような災害がむしろだいぶ災害態様といたしまして変わってきておるのです。その辺に対する調整が必要ではないかというような諸問題があるわけであります。これは非常に大きな制度改正の問題でありますので、私もいろいろ制度の欠陥は認めておりますが、その改正につきましては、今後は農家みんなが歓迎してくれるような制度にしていきたいというので、慎重にやっていきたいというふうに考えております。しかし慎重と申しましても、事は急ぐ必要がある、こういう認識も持っておるわけであります。全国の権威のある方にも御検討をお願いいたしまして、今月一ぱいにはそういう人たちの御意見を伺えると思うのです。その後におきまして、私の考えをまとめまして、衆参両院のこれに関心のある各位にも御参加願いまして、一つの協議機関を持ちたい、その意見調整をすみやかに終わりまして、この国会改正法案を提案いたすことにいたしたいと、かように考えております。  ただいまお話しの構想につきましては、私は市町村ごとの任意加入とすべきであるという点につきましては、市町村ごとの任意制というただいまの具体的な御提案がいいかどうかわからぬ。しかし、ある程度の任意制的要素をこの制度に加えることが私といたしましては適当ではあるまいかというふうな感じを持っている次第でございます。また、たとえば任意制を加えるという考え方といたしまして、あなたは市町村ごとの任意制と言われるが、たとえば基礎的な部門につきましては強制だと、しかし、その上積みになるプラスアルフア、これは任意制だというような考え方もこれは検討する余地があるのではあるまいかというふうにも存じている次第でございます。また、災害の保険のタイプを今日のように画一的なものにしないで、たとえば台風常習地帯においてはこういう保険がいいじゃあるまいかとか、あるいは一般の地域ではどういう形があるだろうか、それをみんなに選択してもらうという意味の任意制というようなことも検討の余地があるのではあるまいかというふうな感じもいたしているわけでございます。いずれにいたしましても、さような段階にあるわけでございまして、すみやかに結論を得たいと存じておりまするが、その検討に際しましては、ただいまの御提案は十分私も参考にさしていただきたいと、かように存ずる次第であります。
  309. 高橋衛

    高橋衛君 先ほど申し述べましたように、農業と他産業との較差の是正、これに関して一番大切なことは、やはり農業生産性の向上であろうかと思います。さきに申し述べました、いわゆる新長期経済計画、三十二年度に作りました計画でありますが、この計画によりますると、五年間に二千三百億円の行政投資をやるということになっております。そして政府の御答弁によりますと、三十五年度予算もこの線に沿ってやったのだという御説明でございます。それで、これによって大体年間三%程度の伸びを見たいということに相なっております。それで問題は、生産性の向上ということは、結局その産業にいかに生産性向上のための投資が行われるかということにかかっておるかと思うのであります。農業においては他の産業と異なりまして、いわゆる補助金またはその他の政府の支持によって行われるもの以外にはほとんどとるに足るものはございません。そういう意味で、この二千三百億円の行政投資が大きく実をなすのでありますが、これのみにたよったのでは、とてもこんな生産性の向上は期待できないと思うのでございます。ところが、一方農村におけるところの貯蓄の状況というのは、なかなかこれはいいのであります。農林中金の資料をとってみますと、昨年末におけるところの信連からの預金が千九百九十一億円になっております。これは十二月末現在でございます。それから農中債券の発行による資金が四百六億、これの合計二千三百九十七億ということに相なっておるのであります。ところが、このうち系統内の農林水産団体に対する貸し出しはどれだけかと申しますと、わずかに四百八十九億円、しかも、この四百八十九億円のうち約三分の一近くが実は制度金融からの利子補給その他の支持のあるものにかかっておる。従って農林中金自体のつまり農業に対するみずからの努力による投資は、ほとんどゼロであると言っていい、こう申し上げても過言じゃないかと思うのであります。農林中金に関する、農林中金の民主化と申しますか、そういう点についてずいぶんと要請が多くて、農林大臣も農林中金法の改正を意図しておられるやに聞いておるのでありますが、問題はその聞いておりますような民主化という目的に沿うところの役員の選任の方法の改善、そういうふうなことではなかなか片づかぬのであります。根本はどこまでも、せっかく農村から集まった農民の貯蓄したその金が、農村に再投資されないで他の産業に使われておるというこの金を、どうしたら農村に還元投資をさせるかという点にあるのじゃないか、かように考えるのであります。この問題についても農林大臣なかなか、しからばこの農林金融の今後のあり方をどうするかということについて抜本的な方策はただいまの段階でお答えしにくいのじゃないかと思います。しかし何といっても、この問題については、ある程度の考え方と申しますか、今後の改善していくところの方向だけは明示していただきたいと思うのであります。農林大臣は三十五年度予算編成の際にも、この系統資金の活用ということをずいぶんお考えになって努力されたことを私ども承知いたしております。しかし、なかなか現在の制度のもとにおいては、これは実現しにくいというのが実情でございます。  そこで、また一方において、私どもは農業投資をふやすために、いわゆる財政投融資の農林漁業関係のワクの増大ということを相当強く主張して参りました。やって参りましたが、これも結果から見ますると、年間わずかに五十億とか百億とかいう程度でございまして、農林漁業全体の姿から見ますると、まことにわずかな金額である、こう申し上げなければならないと思うのであります。そういうふうな点から、私はこの問題についても、一体制度金融と系統金融の調整をどうするか、また農林中金を初めとして、信連、農協、その他のいわゆるあり方をどういうふうに持っていくかという点について、どうしても根本的に考えなければならぬ段階にあると思うのでありますが、それをどうしたらいいかという点について、私は自分で一つ意見を持っておりますので、これもまことにつたない意見かもしれませんが、大臣お答えになりやすいようにという趣旨をもって、私の考えを一応申し上げてみたいと思います。  もちろん、農村で集まった金を農村に再投資するためには、農民自体の努力が必要でございます。農協関係の方々が、もちろんこれは資金コストの関係もありまして、必ずしも単に利ざやかせぎとか、または金融機関としての利益の追求ということに走るということじゃないと思いますけれども、しかし、はたして結果としてはそうなっている、それを是正するためには、やはり農民並びに農業団体自体も大いにこれに対して考え直し、努力してもらわなければいかぬと思うのでありますが、同時に政府の方でも、これについて抜本的の方策を講じなければならない、こういうふうに考えるのであります。それで、その方法として私の考えましたのは、まず第一に、農林関係の金融機関に払い戻し準備預金の制度を今回始めたらどうかという点でございます。これは御承知のように、昭和十五年の十二月からでございますか、開始されまして、そうして、その当時の建前は、農協の段階におきましては貯金の一〇%、信連の段階におきましては二分の一というものを農中に強制的に預託させる。しかも、その金利は三分五厘というふうなことに相なっておったのでございます。その当時の議論におきましても、農協というものは員外の預金を求めておらぬ相互金融である。相互金融であるから、そういうふうな払い戻し準備的なものは必要がないのだという議論も相当あったようでございますが、しかし、とにかくそれに踏み切った一つの歴史を持っておる。ただこの集まった金が、その当時は戦争目的のための国債の買い入れに充当されたというふうな点から、また農業団体全般の機構の改正の際に、これが廃止されたのでございますが、やはり農業に還元投資をするため、金利の安い金を集めるということが、農民自身の努力によって必要であるという面、並びにいま一つは、農協等におきましても金融機関であるという関係上、一たんこれが破綻をし、または重大な欠損を生じた場合におきましては、相当農民が困る。現実に私ども見ておるのが、間々あるのでございますが、農気はほとんど全財産と申してもいいくらいなものを農協に預けておる。ところが、小さな農協でもって、二千万、三千万という穴をあけますると、結局何とか再建の方策は、信連その他の方面から協力いたしまして立てますけれども、ある程度これを切り捨てるとか、または当分たな上げにするというようなことで、農民は非常に悲惨な状況になっておるのが実情でございます。従って、そういうふうな場合に対処するために、特に信用力の低いところの農協のことでございますので、こういうふうな払い戻し準備預金の制度をこの際お考えになるということが、やはり非常にいいことじゃないかと、私はこう考えるのでございます。  それからいま一つは、まあこの場合に、一体どの程度の預金を集めるか、準備預金をさせるかということが問題になるかと思いますが、これは、具体的な問題になって、はなはだむずかしい点であろうかと思いますが、私は、金利も、戦前は三分五厘程度でありましたけれども、それよりも幾分上回る程度で差しつかえなかろう、また金額も、そういうふうな一割二分の一というふうなことでなしに、もう少し緩和された程度でけっこうじゃなかろうかと思いますが、とにかくこういう制度をお始めになるということがどうしても必要じゃないかと、かように考えておるのであります。  それから、いま一つ次の点は、農業にいろいろ投資をいたします際に、今日障害になっている問題は、結局資金コストが非常に高くて、長期が低利を必要とするところの農林漁業に流れにくいということが根本の原因でございます。従って、事業別に、どの程度の金利になれば農業に投資ができるか、貸し出しができるかという点を検討いたしまして、資金コスト等、そのあるべき貸し出し利率というものの差額は、先ほど申しました農業災害共済制度でもっておそらくは浮いてくるのであろうところの余剰金をもって、これをもって利子補給をやっていく、そういうことにすれば、今日約二千億に近いところの金がいつも農村から集まって他の産業に流れる、これを農村に還元いたしまして、農村の生産性の向上に尽くし得るのではないかと、かように考えるのであります。大蔵大臣もおいででございますが、一つせっかく農業共済制度を合理化して、もしもそこから相当の余剰ができたならば、そういうふうなところにこそ、そういうふうな金は、単に財源の節約ということで絞め上げるのじゃなしに、ぜひ使うという方向にお考え願わなければいかぬと思うのでありますが、そういうふうなことにしたらどうかというふうに考えておるのであります。  なお、払い戻し準備預金として農中に集められた金、この集められた金をどうするかという問題。これは準備預金でございますから、やはり預金部に預託するとか何とかいうようなことが普通のやり方でございます。しかし、これを預金部を通じて、たとえば農林漁業金融公庫に回す。そうしてそこから、先ほど申しました、たとえば天災融資法その他の関連で必要な資金源とするということも一つの方法でなかろうかと、かように考えるのであります。この問題については、その他非常にむずかしい問題がたくさんございます。先ほども申しましたように、制度金融と系統金融との交通整理の問題、その他どの段階でどういう仕事をさせるかというような問題、いろいろたくさんございますが、とにかく根本は、二千億に近いところの金をどうして農業に再投資させるかという点から考えたわけでございます。  これらの点について農林大臣から、将来の方向について何とか、こうすればこれができるのだという何らかの御所見を御開陳願えれば幸いだと思います。
  310. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林省におきまして、農家の生産性を向上するということを考えておることは、申上しげた通りでございますが、これを推進する手段として、私は段階的にいろんな考え方があると思うのです。今日の段階におきましては、どうしても財政支出というものが中心にならなければならぬ。金融ベースになかなか乗りにくいという大局的な事情があるわけでございます。さようなことで、今日までの財政金融施策の中心、ウエートというものは、これは財政支出に置かれておる。しかし、私が申し上げましたように、大いに今後生産性を向上さして、そしてまた企業的な農家に持っていくというようなことにいたしますためにも、また、そうなった暁におきましては、さようなものに対しまして金融的な便益を大いにはかっていかなきゃならぬというふうに考えておるわけであります。私といたしましては、農村金融というようなものをさような角度から根本的に検討しなきゃならぬ。また、その時期に来ておるというふうに考えておりまするが、その考え方の方向といたしましては、一つは、お話のような、公庫と中金との間の調整という問題があると思うのです。公庫で融資をしておる対象というものの中に、逐次農中においてこれを受け持っていいというものが出てきておるわけで、これをまあそっちの農中の方へ持っていくという考え方、それからもう一つの点は、農中に預金が集中いたしまして、しかもこれが農村に還元されてないと、これは御指摘通りでございます。この問題を解決する必要があるのではあるまいか。こういうことでございます。私は、そういうような問題につきましては、まあ根本的な改正を待たずとも、これをやった方がよかろうと言って、三十五年度の財政投資計画におきましてもそれをやろうということを一度考えたことがあるわけなんです。すなわち、豊富な農中資金というものを公庫にこれを回すということでございます。まあその際に、利子補給の問題というような問題もありまするが、ともかく公庫がまだ企業化段階に入らない農業分野に対しましてその融資を受け持つという態勢を作る問題、この問題が第二点かと思います。それからもう一つの問題は、これは中金の内部の機構の問題であります。いわゆる民主化というふうに言われております。この問題も、私は、解決すべき時期にきておる。ただいま最後的な検討をいたしておる次第でございます。そういうような方向で、今後農林金融全体にわたって根本的な改訂をいたさなきゃならぬというふうに存じまするが、具体的な御指摘でありまする払い戻し準備金ですね。これも一つの有力な私は考え方である。またさらに私は、今、三段階制の農村金融の系統金融制度、これにつきましても、よく検討する必要があるのではあるまいかというふうに考えておる次第でございます。その他農業諸団体、たとえば、共済関係とかというようなところの基金の蓄積が逐次たまってきておる。この金も、ただいま申し上げました一環として、これを活用する方途を考えたらよかろうというふうに考えておる次第であります。今後の差し迫っての私どもの課題といたしまして、御指摘の点、私おおむね同感のところでございますので、十分そういうふうに考えていきたい、かように考えております。
  311. 藤岡進

    ○藤岡進君 関連。高橋委員質疑に関連して、農林大臣にお伺いいたしたいと思いますが、農業共済の問題についてであります。御説明もございましたが、かなり認識の程度において私どもと違うということを感知いたしましたが、災害常襲地帯あるいは無災害地域を通じて、農業共済については各種の非難がむしろありまして、私どもの手元にも、すでに今国会数万になる改正に関する熱烈な要望が来ておるところであります。掛金の差し押えまで行かなければならないという地域も出てきたし、その団体自体の解散決議をしたところも出てくるということなので、これについての御答弁を承りますと、協議会のようなものを設けて、改正に着手をし、提案したいとのことでありますが、今国会に農民が期待しておる、すなわち現金収入の乏しいのに、教育、医療その他生産手段による現金支出のきわめて多事多端なときに、この農業共済法の改正については、大きな期待を持っていると私どもは見ております。あわせて私どもも、場合によれば議員提出も考慮いたして、用意をいたしております。  そこで、お伺いいたしたいのは、第一点として、この改正案を政府提出にせられるとするならば、この国会両院審議を議了いたしまして、成立するという目途に提案される意図なのかどうか。今次国会における議了を目途とされているのかどうか。  第二点は、これに前置する提案準備手段とされて、協議会等を持ちたいということですが、この協議会の性格についてであります。いわゆる行政審議会になるのか、あるいは、そうではないがこれに準ずるような性格を持たせるということなのか。時間的に考えてみて、第一の質問との関連において農相が答弁せられたようなことも一つの方法でしょう。前置される手段方法はありましょうが、タイムリーに考えてみて、はたしてそのようなことが神ならぬ身であろうかと思われるあなたにできるだろうか、部内調整もいろいろありましょうから。  従って、この二点を明確に一つしていただきたい。
  312. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 第一点の、今国会に提案するかどうかという点でございますが、これは、今国会に提案して成立するがごとく今全力を尽くしております。  それに関連いたしまして、協議会というような性格のものを作って、そんなのでいくのであろうかというようなことでございますが、私が今検討いたしておりまするのは、これは、いろんなさような方面の大家と申しますか、専門家と申しますか、学識経験者にいろいろ意見を伺ったり、また、私どもの頭を練ったりしておる段階であります。そういうことで、私どもの考え方がまとまりますれば、この問題は、私は、なるべく超党派的にきめていきたいという考えを持っておるのです。さようなことから、適当な国会内の有識者の意見も求めたい。そういう意味の、すなわち意見調整というか、さような性格の協議会を持ちたいというふうに考えておるわけであります。その調整の終わり次第、国会の御審議をわずらわすということであります。
  313. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は、これをもって終了いたします。明日は、午前十時より委員会を開きます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十四分散会