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高橋衛君 次に、国内の財政経済問題についてお伺いいたしたいと思いますが、
総理は施政方針演説におきましてこう言っておられます。わが国の経済が最近きわめて順調に発展している事実を認め、かつ米国及び欧州の経済の見通しから、今後対策及び運営のよろしきを得れば、わが国の経済は堅実な安定成長を来たし得るというふうに言っておられます。問題は、その対策及び運営がよろしきを得るためにどういう施策が今
年度の
予算において行なわれているかという点であります。また、
佐藤大蔵大臣は、経済運営についての
考え方の一環として、財政面から経済に刺激を与え、その均衡を破ることを厳に避ける
意味において、財政の健全性を維持することを基本方針としたと述べておられるのでありますが、はたして
政府が述べられている
通りになっているかどうか、国民はその点について少なからざる疑問を持っていると思うのであります。その点を解明していただきたいのが私の第一の目的。
さらに、
総理は、新しい経済計画の策定にあたって、「各種産業間の跛行的発展の是正などに十分意を用い、経済全般が均衡のとれた発展を遂げるように留意することはもちろんであります。」、こう述べておられる。また菅野
長官は、「国民生活と所得の格差を是正するなど、経済の体質を改善し、経済成長力の質的な充実をはかる」、こう言っておられるのであります。各産業間、また産業の中におきましては、大企業と中小企業の間、また地域的に都市と農村等の間、それぞれ国民生活と所得の格差が大きく存在することは現実の事実でございますが、この格差を是正することが、今日わが国の経済の均衡ある発展をはかる上からはもちろん、民主政治の健全な発達をはかるためにも、ぜひとも必要な事柄であると思うのであります。ところで、この所得の格差の是正が各地域間において、または各産業間において、または大企業と中小企業の間において、三十五
年度の
予算を通じてどの程度是正することを期待していいかどうか。これが私の第二の
質問の目的でございます。この点に関連いたしまして、以下六点について
質問を申し上げたいと存じます。
まず第一に財政の健全性についての問題でございます。三十五
年度の
予算は、歳出面を見ますると、相当にバランスのとれたいい
予算になっていると思うのでありますが、財政の規模全般から見ますると、私ども非常な危惧の念を持つのでございます。すなわち三十五
年度の
予算はごろのいいところの「日ごろ苦労なし」でございますか、財政投融資じゃ「ごくよい」と読むのだそうでございますが、そういうような非常にけっこうな
予算になっておるようでございます。しかしながらその
予算規模を見ますると、今年は一兆五千六百九十六億円、三十四
年度は一兆四千百九十二億円、比較いたしまして千五百億円、一割余りの増加でございます。三十四
年度におきましては経済の成長が大体経済企画庁の予想では一三%程度である。しこうして三十五
年度におきましては六・六%と予想しておられる。そういう点から関連いたしまして、ある程度まあやむを得ないようにも思われるのであります。しかしながら財政の国民経済に及ぼす影響は、単に国の財政規模をもってのみ判断すべきものではございません。何となれば財政の経済に及ぼす影響、刺激は単に国の財政のみならず、地方財政もまた同様の影響を持つからでございます。もちろん地方財政は理論的にはそれぞれ独立の
編成、運営が行なわるべきものでございますけれども、現実の問題といたしましては、わが国においては今日残念ながら、財政面からは地方自治体は完全に国庫依存財政であるのであります。貧弱府県におきましては、国庫の丸抱えと言っても差しつかえないものもあるのでございます。従って国の施策いかんによりましては地方財政は大きくその
性格を変えるものでございます。ころで自治庁の発表されました
昭和三十五
年度の地方財政計画によりますると、総額が一兆五千三百七十六億円、そのうち国の財政に依存するものは地方交付税の二千八百六十五億円、国庫支出金四千二十四億円、合計六千八百八十九億円と相なっております。換言すれば国、地方を合計いたしまして財政規模は、総計で三兆一千六十二億円でございますが、国から
通り抜け勘定になっているものを差し引きますると、総計は二兆四千百七十三億円ということになります。しかもそのうち地方財政が占める割合は全体の大体三分の二、こう申し上げていいかと思うのであります。しかも地方財政の前
年度との数字を比較いたしてみますると、相当大幅な一六・六%という
増額になっておる。一方
昭和三十二年の十二月に
政府が新長期経済計画というものをお立てになった。いわゆる五カ年計画でございます。この新長期経済計画においてどういうことを書いておられるかと申しますと「国、地方を通じて健全財政の維持に努めるとともに、国民の租税負担の現状にかんがみ、財政規模の拡大を極力抑制して減税を行ない、もって民間資本の蓄積を推進する。」こう
決定しておられるのでございます。
昭和三十五
年度の国民負担は国民所得に対しまして、
政府の推算によりますると、国、地方を通じて二〇・五%ということに相なっております。三十四
年度が一九・九%でございますから〇・六%の
増額ということに相なります。
昭和三十三
年度からいわゆる新長期経済計画が始まったのでございますが、三十三
年度から三十四
年度に変わります際には〇・六%の減少でございます。それが三十五
年度の
予算においてたちまち元のもくあみに逆戻りいたしたのでございます。
昭和三十五
年度におけるところの租税の増収は二千三百億円、ずいぶんいまだかつてないような大きな自然増収が見込まれるわけでございます。もちろん三十五
年度におきましては前
年度剰余金の額が相当減少した。またあの不幸なる伊勢湾台風が起こりました結果、これについて大きな財政需要を必要とするという点等から、あるいはやむを得ないのじゃないかというふうにも
考えられますが、しかしながらこういうふうな大きな増収のあったときに減税をしなければ、なかなか減税の機会というのはっかみ得ない、というのが実情じゃないかと思うのであります。これでまた一方経済に対して過熱的な刺激を与えるおそれがないと言えるかどうか。
大蔵大臣はとにかく経済に対して総元締であります。地方財政は自分に
関係がないというふうには言われないと思うのであります。従ってこの点につきましても
大蔵大臣は財政演説におきまして「地方団体におきましても、さらに経費の重点的配分及びその効率的使用をはかり、財政の一そうの健全化に努められるよう希望いたします」そう言っておそれるのでございます。財源を出しておいてこういうふうに希望されて、果してその
通り実行できるかどうか。現に最近は知事や議員の報酬の引き上げというふうな、ひんしゅくすべき事件が新聞に報道されているのが実情でございます。さらに
考えなければならぬことは、一たん財政の規模を増大いたしますと、後
年度でこれを圧縮するということが非常に困難でございます。
政府は税制調査会におきまして抜本的な税制の
改正を諮問しておられました。ただいまその検討をしておる最中でございますが、
大蔵大臣はまたその演説におきまして「今後、減税の実現に努めて参りたい所存であります」とこう言っておられる。
〔
委員長退席、
理事館哲二君着席〕
この
大蔵大臣の所存が果して三十六
年度において大幅に実現できるかどうか、これが口頭禅に終わるようなことになっては困ると思うのであります。
先ほど申し上げました、いわゆる新長期経済計画におきましては、
最終年度であるところの
昭和三十八
年度におけるところの国民負担の割合を、一応一八%と
政府は
予定されて発表されておるのであります。
昭和三十五
年度において二〇・五%であり、それが
昭和三十七
年度において一八%にできるかどうか、もちろんその後の経済情勢の変化その他を勘案して、多少の異動はやむを得ないかと思うのでありますが、そういうふうな
考え方を根本にお変えになったのかどうか。変えないとすればそれが実現できる見通しがおありなのかどうか、その点は財政投融資の規模がふくらんでおる点とも
考え合わせて、
一つ、
総理、
大蔵大臣並びに自治庁
長官から御
答弁を願いたいと思います。