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竹中恒夫君 私は最初に総理にお伺い申し上げようと思っておるわけでございます。
お尋ね申し上げることは、いわゆる時代の脚光を浴びたようなきわもの的なものではなく、大へんじみな問題を取り上げてお聞きしたいわけですが、事柄はきわめて重大でございまして、
国民生活の基盤になる問題でございまするので、どうかあるいは質問の
内容が少しく総理には不向きな点もあるかもわかりません。申し上げますることはやや専門的なことになるかもわかりませんが、
一つ率直にお答え願いたい、かように存ずるわけであります。
最近、私いろいろな問題について私なりにものを見ておるわけでございまするが、環境衛生の立場から見まして、非常に重大な不祥事件が続発しておるのでございます。そこであるいは厚生
大臣にお聞きすべき筋合いのものもあるわけでございまするが、お聞きいたしまする
内容が
各省所管にもわたる問題でもございます。従いまして一応総理から概括的なお考え方を承りまして、もし時間があればこまかく厚生
大臣あるいは社労等で、あらためてお聞きしたい、こういう気持でございますので、そのつもりでお聞き願いたいと思います。
頻発しておりまする不祥事件━━環境衛生に関する不祥事件でございまするが、それに対しまして、ただいま申し上げましたように、
各省所管がそれぞれございまして、従いましてこれの防止、予防的な対策、あるいは不祥事が勃発いたしましてからの緊急対策等も、どうもわれわれが見ますと、隔靴掻ようの感がいたすわけでございます。これは政治機構の上から言うてやむを得ないのだと言えばそれまでのものでございまするが、
各省の所感に対しまして運営よろしきを得まするならば、当然緊急対策が完全に行われるというような
事項も多々あると思うわけであります。従いましてそういう点において私はなお一そうの創意工夫を必要と存ずるわけでございます。具体的に申し上げて参りまするが、わが国の産業が、いわゆる産業革命によりまして非常に工業の発展を来たして参りました。これはまことに喜ぶべきことでございまして、国力の増進あるいは
所得の確保、あるいは雇用
関係と、まことに喜ぶべき問題でございまするが、残念なことには、工業の発展に伴いまして人口の都市集中ということが当然の現象として起きてくるわけでございます。そこで環境衛生の問題が多々出てくるわけであります。で、もうそれは御
承知の
通りでございまするが、煤煙の問題にいたしましても、あるいは煤塵の問題にいたしましても、一平方キロに一月に二十トンから五十トンというような煤塵がわれわれの肩に振りかかってきておる。目に見えないのでございますからして、一向に皆さんが感じを持たないわけでございまするが、これは保健衛生上、実にゆゆしき問題であるわけであります。あるいはまた大気の汚染、いわゆる有毒ガスの放出、スモッグのような問題が出てきておりまするし、都会における騒音の問題、あるいは機械等によるところの土地の震動の問題、あるいは交通機関等によるやはり震動の問題ははなはだしきは放射能の問題、あるいは汚水の問題等が、それぞれ公害があるわけでございます。この公害の害毒というものに対しましては、それぞれ各府県によって、あるいは各市町村等によって対策を立てられる節もございまするし、また国がやるといたしましても、
各省にそれぞれの所管があるわけでございます。そういうことによってこの公害が取り除かれないということは、はなはだ私は残念に思うわけでございまして、これはやはり総理がよろしく采配を振るわれることによりまして、ある
程度の私は公害は取り除き得るとかように考えるわけであります。これを
国民自身の責任において防ぐというようなことは、少しく筋が違うのでございまして、あるいは事業そのものがこれに対する予防策を講ずるということは当然でございますが、一般の市民がそういう公害をみずからの力によって取り除かなければならないというような筋合いではないと思うのであります。従いまして、総理の絶えずおっしゃいまする福祉国家の建設という点から考えますというと、健康で文化的な国土の保全ということは、治山治水に限りませず、健康の保全ということも、これは非常に重大な問題であるわけであります。とかくこの点が等閑に付されることを私は遺憾に思っておるわけであります。
最初にお聞きしたいことは
河川の汚染の問題でございます。水を取り上げまして考えましても、飲料水はいわゆる厚生省の所管になっておるわけです。工業用水は通産省が所管する。あるいはまた農業用水は農林省がやる。あるいはまた魚介の保護的な問題は農林省の水産庁が所管すると、こういうようなことでございまして、水
一つを取り上げましても、その用途によって所管が違うわけなのでございます。ところがその公害を受ける
国民とすればひとしく同じであるわけでございます。
もとより
河川の管理は建設省がなさっておるのでございましょうが、
一つの川を取り上げましても、その源であるところの山奥におきましては、やはり防水あるいは砂防というような見地から農林行政にこれが大きな
発言権と申しまするか、施策が必要でございます。一たんその源を発して水が流れ出しますというと、建設省が堤防を築くというようなことになって参るわけでございまするし、その間に流れておりまする水質の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、厚生省並びに科学技術庁等がやっておる。川の口に参りますというと運輸省がこれを所管する。あるいはまた厚生省が所管する。終末的な岸壁はまた建設省がやるというようなことでございまして、
河川一つを取り上げましても、これはやむを得ないことでございまするが、そういう機構になっておるわけであります。こういう事柄は平時は一向差しつかえないようでございまするが、今申し上げましたように、伊勢湾台風が起きるとか、あるいは
河川の汚染による伝染病が続発するというような場合に、
各省々々がそれぞれ所管によってものを考えられるというと、緊急な対策ができないわけでございます。そこで今これらの水質の問題でも、
昭和三十三年に水質の保全法というものができております。同時に工場排水の規制法という法律もできておるわけでございまして、これに基づいて
経済企画庁が水質保全課という専門の課を作っておられるわけでございますが、この
経済企画庁の作っております水質保全の課がどれだけの権限を持ち、
各省にわたってのにらみと申しますか、
各省所管のそういう事柄についての指導力と申しますか、あるのかないのかということが
一つの問題だろうと思うわけでございます。そういう見地から、あるいはまた、同じ水の問題を科学技術庁が最近に取り上げまして、資源調査会でもってこれを取り上げておるというように、新しく続々と、水質問題
一つにいたしましても、
各省がなわ張りを広げるようなことになっておりまして、非常に混乱しておるように思う。こういう問題につきまして、行政的な一元的な運営をするということについての可否、あるいは御所見をまず第一に承りたいと思うわけであります。