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1960-06-17 第34回国会 参議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年六月十七日(金曜日)    午後三時五十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十二号   昭和三十五年六月十七日    午前十時開議  第一 運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)  第二 薬事法案内閣提出)  第三 薬剤師法案内閣提出)  第四 公共工事前払金保証事業に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 裁判官の災害補償に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
  4. 青木一男

    青木一男君 この際、私は、全学連国会乱入事件に関する緊急質問動議を提出いたします。
  5. 田中茂穂

    田中茂穂君 私は、ただいまの青木一男君の動議に賛成いたします。
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 青木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。青木一男君。    〔青木一男登壇拍手
  8. 青木一男

    青木一男君 一昨十五日の全学連国会乱入事件は、その様相から見て革命の前夜を思わせる凄惨なる事件でありました。これがため、日米両国修好百年を記念する米国大統領訪日という国民待望の盛事が延期されるに至ったことは、まことに痛恨の至りでございます。このことのために、わが国国際的信用は失墜し、ことに米国との経済関係等には、はかることのできない悪影響を与えることも懸念されます。また、国内的には、集団暴力が大きく国政を支配した現実に直面して、議会政治の危機を身近に感じ、今や国をあげて深き憂慮に包まれておるのであります。岸総理は、このわが国として終戦後いまだかつてなきこの重大事局にあたり、国の対外信用を回復し、また、国内治安を確保して国民の不安を一掃することは、焦眉の急務でありますが、首相はいかなる方針でこれに対処される考えであるかを伺いたいと思います。  それに先だって、私は一昨日の事件真相について治安当局から説明を承りたいと思います。この暴動事件を終始国会楼上から見ておった同僚議員の語るところによりますと、同日夕刻五時ごろから十二時過ぎまでの長きにわたり、衆議院南通用門を中心として全学連主流派波状襲撃が行なわれ、彼らは絶えず石やかわらを投げて、警察官は車の後方その他に難を避けていたけれども、なおかつ、そのため多数の負傷者を出したのであります。そうして暴徒はローブを使用して通用門を倒し、数千人が国会構内に乱入したので、ついに警察官警棒を使用して、悪戦苦闘の末、構外にこれを押し出したというのが真相であるのであります。しかるに社会党は、「狂暴化した警察官は、暴力団と共謀して野獣のごとく襲いかかり、無抵抗の学生大学教授多数に重軽傷を負わせた」と声明し、全責任警察にあるもののごとくに宣伝しているのであります。盗人たけだけしいという言葉がありますが、これぐらい事実を曲げて国民に呼びかけるのが野党第一党の常套手段であることを、われわれは銘記すべきであります。(拍手)しかし、社会党以外にも、警察官警棒を使用したことをもって行き過ぎであると非難している者もあります。私は、あのように何千人という暴徒集団的不法行為に対し、警察官警棒を使用するということは、あまりにも当然な職務行為であると思うが、当局のお考えを伺いたいのであります。私は警察用トラック十数台が暴徒によって焼かれたとき、これを防ぎ得なかったごときは、むしろ警察態度が消極に過ぎたのではないかと思うのでありますが、この間の事情も承りたいと思います。  この事件によって数百人の負傷者と一人の死亡者を出したことはまことに遺憾なことであります。ことに職務上負傷された警察官に対しては深き同情を寄せるものであります。また、死亡された女子学生はまことにお気の毒であります。ただ、あのような数千人の大混乱が起こった場合、下敷きとなって死傷者の出るということは、祭礼その他にもたくさん例があるのであります。全学連が、作戦的に、指揮者後方に陣し、女子学生高校生徒を第一線に立たせたという、非人道的な、また卑怯なやり方が、まずもって非難さるべきであります。(拍手)また、警察暴力団と共謀したなどということは、警一察を誹誇するもはなはだしきものであります。当日、事故を起こした右翼団体行動、その員数及びこれに対し警察のとった措置について説明を得たいと思います。  次に、今回の集団暴力行為が偶発的か計画的かという点が大きな問題であります。私は、暴徒指揮者前々からの言動と、門の破壊工作に必要な器具や石などをたくさんそろえていた点などから、疑いもなく計画的行動と思うが、当局見解を伺いたいのであります。  次に、政府に伺いたいのは全学連の本質とその行動目的についてであります。当日、国会構内に乱入したのは、全学連主流派であり、反主流派は警視庁や米国大使館に押しかけたのであります。主流派はその思想行動の過激であるがために共産党から除名された連中が指導権を握っているのであります。六月十日の羽田空港事件を起こしたのは反主流派であり、これが共産党正統派となっておりますけれども、両者相競って、集団暴力治安撹乱工作に没頭している点は同一であります。全学連の両派を通ずる最近の暴力行動の狙いは何であるかという点について、治安当局見解を伺いたいのであります。彼らは、安保反対岸内閣退陣衆議院解散という政治目標を掲げているのでありますが、真の狙いは、一面、日米を離間しう日本自由主義陣営から引き離すことであります。他面には暴力革命予行演習をすることであります。いずれも日本共産革命を終局の目的とするものであることは疑いなきところであります。彼らは、非合法の集団暴力運動を連続的に行なって、法秩序に対する国民の感覚を鈍らせるとともに、警察力を奔命に疲らせ、それを無力化しようとしているのであります。もし治安維持の任に当たる国家権力暴力に屈し、無力化するようなことがあるならば、これすなわち暴力革命の第一歩でありまして、議会政治民主主義も終幕を告げるのであります。  次に私の伺いたいのは、全学連背後関係についてであります。私の最も憂慮にたえないのは、彼らの日米離間運動暴力革命予行演習国際共産主義指令下に動いているという一事であります。世界の赤化を考えている国際共産主義立場から見ると、日本は九千万の優秀民族世界屈指工業力を有する国でありまして、これくらい利用価値の多い国はないのであります。日本共産主義陣営衛星国と化することによって、その人的資源物的資源をあげて自分たち目的に利用できるとともに、それだけ自由主義陣営の力を弱化することとなり、一石二鳥の効果をあげることができるのであります。安保条約の問題を契機として内外の革命勢力が相呼応して立ち上がった意味も、この点にあるのであり、全学連はその先鋭分子として踊らされているものと見るべきであります。たとえば全学連の何回となき動員には莫大な資金が使用されており、その資金の出所について世上いろいろの説が伝わっておりますけれども、当局において調査されたものがあるならば伺いたいのであります。  次に、全学連行動に対する学校当局責任について政府に伺いたいのであります。私の最も遺憾にたえないのは、一部学校当局態度であります。学長、教授などが、学生にあるまじき過激な暴力行為に参加する学生に対し、警告を与え、反省を促すことを怠るばかりでなく、もっぱら学生行動を弁護し、あるいは学生実力行動に参加するがごとき、教育者の資格いずれにありゃを疑わざるを得ないのであります。(拍手)ことに看過できないのは、今朝の新聞に現われた茅東大学長の声明であります。彼は、今回の事件の全責任警察政府に転嫁し、「こうした事態のもとでは大学学生教育の任務を果たすことは不可能である。説得その他の方法も無効である」と言い切っているのであります。まことに一万の学生を預かる学長の言として無責任のきわみであると私は思うのであります。彼は、学生行動民主主義回復のためであると弁護しているけれども、暴力民主主義の最大の敵であることを知らない学者は教師たるの資格なき者であります。(拍手全学連指導者共産党員あるいはそれ以上の過激分子によって占められております。私は、全国の善良な学生の思想を問題にしているのではありません。問題は、全国何万あるいは何十万という学生がその共産党員である指導者の命のままに集団的暴力行動にかり出されている現状に危険を感ずるものであり、何がゆえに学校当局はこれを放任しておくかという点が問題になるのであります。デモ暴力行動に動員するということ以外に、全学連がいかなる平和的な活動をしたことがあるでしょうか。私は寡聞にしてその実例を聞かないのであります。私は、大学教育目的国家社会にとり有為の人材を養成するにあると考えております。もちろん、国家社会のために有用なる人材というのは、われわれ日本人が平和にして豊かな生活をなし得るということを意味するのであります。しかるに共産党員は、日本国家日本民族のことなどよりもイデオロギーを尊しとし、日本共産主義革命を念願としておりまして、その共産党員学生運動指導権を与えておくということは、大学教育目的に沿わないものと断言できるのであります。また、国民の税金の中から莫大な大学教育の経費を負担している全国納税者の意思に反しておることも明瞭であります。文部大臣はこの点をいかに考えられるか、伺いたいのであります。  従来、学問の自由、大学自治などの名目のもとに、教員または学生行動が無軌道に陥り、ややもすれば治外法権的な錯覚すら持つような傾向があったのであります。自治ということは、国家国民に迷惑をかけないように自分の問題を処理するということであります。大学自治の乱用は厳に戒しむべきであると存じますが、政府の所見を伺いたいのであります。  次に、私は現下の時局に対処する方策について私の意見を述べ、首相決意のほどを伺いたいと思います。  米国大統領訪日の延期を請われた岸首相の胸中はまことに察するに余りあるものがありまして、党員といたしまして、私も残念しごくに考えております。世上、岸内閣引責辞任を求める声が少なくありません。しかし、首相の緊急の責任は辞任することではないと思います。何をおいても安保条約を早急に批准手続を済ませるということでなくてはならぬと私は思うのであります。米国上院は異例の手続によって批准手続を促進しているのであります。わが国もできるだけすみやかに批准の完了を期し、事態を安定することが最も急務であると思うのであります。  次に、六月十五日事件処理を進行して、同じような暴力行為を繰り返さないための対策を立てることが急務であると思います。わが国は今や、自由主義陣営にとどまり、民主主義を守って、国家の安全と国民生活を豊かにするという、繁栄の政策を持続するか、それとも、共産陣営に走って、議会政治国民の人権と自由を犠牲に供する政治体制に移行するかの分岐点に立っているのであります。そして、暴力行為を是認するか、これを否認するかという点が、わが国の方向を決定するかぎとなるわけであります。今朝の各新聞社の、暴力を排し議会主義を守れという共同声明を、私は感激をもって読みました。そして、わが国民主主義滅びずという自信を深めた次第であります。そして、その政治面責任は、あげて政府とわが党の双肩にかかっているのであります。六月十五日事件処理についてでありますが、私は騒擾罪を適用して禍根を一掃すべきであると思いますが、政府はどう考えておりますか。また、前から問題になっております破防法適用の問題についても一歩を進むべき段階に来ているように思います。この点についてもあわせてお考えを伺いたいと思います。また、今後の立法措置についても幾多研究すべき問題があることを痛感しました。私は、この点で遺憾にたえないのは、国会周辺デモを規制する法律案がつとに参議院を通過して衆議院に送付されていたのに、衆議院審議がおくれたという一事であります。今度の場合、もしあの法案が成立していたならば、事件防止に役立ったことは当然であると考えているのであります。(拍手)  私は、安保委員会において警察力の限界という問題について首相お尋ねしたのでありますが、今回の事件に遭遇しまして、いよいよその憂いを深くするものであります。警察力充実と待遇問題につきまして、政府はとくと考えねばならないと思いますが、政府見解を伺いたいのであります。  首相は今後、国会正常化について野党首脳者話し合いを進めるであろうと思います。私はその成功を祈るものであります。その場合、与党であり多数党であるわれわれも反省すべき点は反省して、議会政治の円滑な運営を心がくべきことは当然であります。しかしながら、いかなる場合にも院内暴力行為だけはぜひとも排除するように、各党と話し合いのできることを望んでやみません。  最後に、私は首相の進退について希望を申し上げたいと思います。それは暴力によって政変が起こるという先例を作らないことであります。暴力米国大統領訪日延期の原因となったことはまことに遺憾であります。もし一歩を進めて、暴力によって内閣を倒し得るという錯覚を国民に与えたならば、わが国民主主義の根底がくずれ、国家の運命を危うくするものであります。首相の御決意のほどを伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  最近の国内諸情勢から見て、国民の圧倒的多数の熱望であったアイゼンハワー大統領訪日延期しなければならぬと決意いたしまして、これをアメリカ側に通告するの余儀なきに至ったことは、まことに遺憾でございます。このことが国内外に及ぼしておる悪い影響につきましては、首相として十分に考察検討し、しかも、大局的にこの措置に出るはかなかったのでございます。  第一に国際的に考えなければならぬことは、日本が、たとえ少数とはいえ、また、それが国際共産勢力指揮のもとに狂暴な行動に出ておるとはいえ、そういうことが、大事な国賓を迎えることを実現する上において、ふさわしくない諸種の事情を作っておるということが、日本の従来とってきておる自由主義立場、これがややともすれば基礎が薄弱になっておるんじゃないかというふうな印象をいやしくも国際的に与えたとするならば、これは重大なことでございますから、私は、あくまでも日本自由主義立場を堅持し、反共の立場を明瞭にして確固不動方策で進むということを内外に明らかにする必要があると思います。それにつきましては、目下御審議中でありますところの安保改定を一日も早く批准交換によってこれを発効せしむることが、第一のとらなければならぬことであると考えております。  また、国内の問題といたしましては、治安対策を確立する必要があると思います。御指摘になりましたように、法制上の不備なものはこれを整備する必要がございます。あるいは制度上の欠陥があるならばこれを是正する必要があります。また、治安力の内容が不十分であるならばこれを充実せねばならぬと思います。また、一線において連日不眠不休活動によって日本治安を維持している警官その他の待遇の改善の問題のごときは、当然に措置すべき問題でありまして、政府としては、最近、三池の問題や、あるいは安保反対に関して、集団暴力に対して治安を維持するための経費として予備費より応急のものは支出いたしておりますが、さらに今申しましたような点に関して十分に考えていかなければならぬと思います。  さらに、六月十五日の問題に関しましては、御質問の各項目については関係大臣よりお答えをいたしますが、この処理を誤るというと、将来にかかることが繰り返される危険もございます。私は、この事件はきわめて不幸な遺憾なことでございますが、将来絶対にかかることを繰り返さないような処理をする必要があると思います。法規の適用等につきましては、それぞれ当局において検討いたしております。十分なそういう考え措置をいたしたいと思います。  次に、国会正常化の問題につきましては、私ども常々、これが与党以外の議員が議場に入ってこないという状態で、われわれから見れば議決権を放棄しているというような状態が続く事柄につきましては、国民もひとしく不安に考える点でありまして、一日も早くこれが正常化考えなければならぬと思います。これにつきまして、三党首会談について、わが党としては申し入れておりますけれども、野党社会党においては、三党首会談はしない、ただ両党首会談だけならやるというふうなことで、今日まで実現をいたしておりませんが、私は、責任ある政党はこれに参加して、これを正常化するというために誠意を尽くしていかなければならぬと思います。もちろん、私はその会談において、われわれも反省して、譲るべきものは譲って、そうして妥協の道をつけなければならぬと考えておりますが、しかしながら、今、青木議員の御指摘になりましたように、院内から将来絶対に暴力を排除するということは、民主政治議会政治を擁護するところの上から申しまして、私は緊要欠くべからざるものだと思います。この点を明確にすることは、私は、おそらく責任ある政党としてそれに反対する理由はないと思います。従来もそれが幾たびか申し合わされておりますけれども、実効を得ないということを考えますというと、単なる申し合わせでなく、これが実効を得るような点まで、今回正常化する場合においては話し合っていく必要がある、かように考えております。  最後に、いかなる意味においても、民主政治を守るという意味から申しますと、一切の暴力を排除しなければならぬことは言うを待ちませんが、特に暴力によって政変を生ずるというような慣行をもし作るならば、将来の民主政治議会政治というものは破壊される。今の日本民主政治におきまして、内閣不信任案が通れば、政府は解散するか、あるいは総辞職しなければならぬことは、憲法に明らかに示されておることであります。私は、こうした政変の問題は、あくまでも院内において論議を尽くした上において決すべきことが民主主義根底であると思います。いかなる意味におきましても、暴力に屈して政変を起こすというようなことは、絶対に私はいたさないという強い決意を持っておることを申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣石原幹市郎登壇拍手
  10. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。  今回の事件は、わが国歴史上まれな一大不祥事件でありまして、まことに遺憾きわまりないことに存じております。  第一に、今度の事件は全く計画的に行なわれました暴力行為であると認めております。全学連主流派は、当日、参議院における安保条約審議を阻止するために、議長等の登院を阻止し、それができなければ国会に突入することをあらかじめ計画していたのでありまして、これを裏づけるものといたしまして、国会周辺に集合いたしました学生の中には、鉄線を破るペンチや、あるいは、とびらを破壊するまさかりであるとか、あるいは車両を引っぱり出すロープ等を準備しておりまして、これを随所で使用しておるのでございまして、全く計画的な暴力行為と認められるのであります。本件につきましては徹底的にこれを追及捜査いたしたいと思うのでありまして、私は、あの事案を見ましたときから直ちに騒擾罪をもって問疑すべきものではないかと考え警察庁を通じまして、検察庁と十分なる連絡をただいまとらしめておる次第でございます。  次に、警棒の使用問題についてお話が出たのでございまするが、これは全く正当なる職務行為でございまして、むしろおそきに過ぎたくらいではないかと思っておるのでございます。当日の状況は、多数の学生国会構内に侵入してきましたために、警察がこれを阻止しようとしましたが、学生が激しく投石し、ことに歩道の敷石をはがしまして、これをこぶし大に砕いて、それを投石する。警察車両に対しては放火するなど、全く暴徒化しましたために、警察部隊はやむなく実力を行使してこれを国会外に排除したのであります。この騒擾にあたりまして、警察側には、重傷二十名、うち十一名が入院をいたしておりまするが、七百九名の、負傷者を出しておるのでございまして、これらの状態から考えてみまして、全く正当なる職務行為であると考えられるのであります。ことに、女子学生・樺氏の死亡につきまして、故人にとりましてはまことにこれはお気の毒なことであるのでありまするが、これをいかにも警察官暴行によって死亡たるがごとき宣伝をしておることは、言語道断なことであると考えるものであります。先刻、東京地検特捜部よりも解剖の所見について発表があったのでありまするが、一口に言えば、いわゆる圧死と見ているようであります。警察の調査におきましても、学生構内に侵入してきました際に、その周囲の圧力によりまして倒れて、ついに死亡するに至ったと考えているのであります。頭部に外傷がないというところからいたしまして、これを、あるいは警棒によってなぐって死んだのではないかというようなことを宣伝をしておることは、全く言語道断のことと言わなければならぬと思うのであります。  次は、自動車の放火等に対して、むしろ措置がおそかったではなかったか、警察の失態ではないかというお話まであったのでございまするが、あのときには、これに対して放水もし、最後には催涙弾等を使用いたしまして、いわゆる学生暴徒を散らしたのでありまするが、三千人、あるいは数千という学生が狂暴化しておった事態でありまして、まことにやむを得なかったのでありまするが、今後ともこれらの事態に対処する方策としては、さらに十分考えていかなければならぬと思います。  右翼行動についてのお尋ねがございましたが、当日は護国青年隊約百二十名ばかりの者が、バス、トラック宣伝カー等に乗りまして、午後五時過ぎ参議院付近にやって参った。たまたま全学連主流派学生デモの中に突っ込んで、いろいろの事態が起こったのでございまするが、警察は直ちに一双方の間に割って入りまして制止に当たりますとともに、現場におきまして護国青年隊員七名を暴行傷害容疑現行犯を逮捕し、八十名を麹町警察署に同行いたしまして、そのうち罪状の明らかな十九名を逮捕しておるのでありまして、警察部隊が傍観していたというような事実は全くございません。厳正なる取り締まりをしておるわけでございます。  次に、全学連行動につきましてのいろいろのお尋ねがあったのでございます。背後関係資金関係、こういうものにつきましては、むしろ法務大臣等からお答えがあると思うのでありまするが、主流派暴行ということについては、これは前々から判然として、たびたび暴行を働いておったのでございます。反主流派は、例のハガチー事件まではあまり暴行をしていなかった。それがハガチー氏のあの事件によりまして全学連主流派が非常な暴行を空港において働いた。また当時は、最も左傾しておりまする労組等の動きによりましてああいう事件が起こっておるのでございまして、このとき、いわゆる共産党、ことに国際共産党につながる一連の指導のもとに動いておるということがはっきりして参ったわけでございまして、今後これらの行動につきましては、さらに十分なる警戒査察を加えまして、今後の事案に対処していかなければならぬと思っておるものであります。  最後に、今後の治安対策としてのいろいろの立法関係の問題、あるいは警察力充実待遇等の問題につきましては、先ほど総理よりもお答えがございましたが、本日よりすでに法務当局と会合を持ちまして、法制上の問題、ことにまた、警察力充実、機構、待遇等の問題につきましては、適切なる方策を立てまして、今後の治安に万全を期するよう、でき得る限りの努力をいたしたいと思っておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣井野碩哉君登壇拍手
  11. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 青木議員お尋ねの、全学連背後関係でございますが、これは青木議員の仰せになりましたような情勢は私どもも十分に看取されるのであります、国際共産主義が、わが国の現在の親米政策あるいは平和民主主義政策を離間しようということにおきまして、猛烈な活動を続けておりますことは、私どもも十分に調査をいたしております。それによって全学連の反主流派等が十分に共産党とともに踊らされておる。また主流派は、むしろそれ以上のトロツキストの思想をもちまして、日本に一種の革命的勢力を扶植しようという動きも見受けられるのであります。従って、これらに対しまして一そうの調査を徹底して、十分なる取り締まりをしたいと考えております。  また、資金ルートにつきましては、先般来、昨年の十一月からいろいろ調査をして、相当のことはわかりかけておりますが、まだこれを発表して、そうしてお示しする段階に達しておりませんが、十分に調査をいたしたいと考えております。  それから、今回の事件に関しまして騒擾罪の適用ありゃいなやというお尋一ねでございますが、現在の段階におきまして、警察庁としましては、警察におきまして、建造物侵入罪、公務執行妨害罪の罪名で、今度百七十四名を検挙、取り調べをいたしましたが、一昨日の警察首脳部会議によりまして、今後の取り調べにより騒擾罪の適用も考えるということでありますが、私としましては、検事総長に対しまして、十分証拠固めをいたし、断固たる処置をとるよう指示いたしております。また破防法の適用につきましては、私としては、今回の行動は、破防法第四条第一項二号の騒擾罪、または公務執行妨害罪、職務強要罪に該当する疑い十分と思いましたので、公安調査庁に対しまして十分事実を調査し適切な処置をとるよう命令をいたした次第であります。(拍手)    〔国務大臣松田竹千代君登壇拍手
  12. 松田竹千代

    国務大臣(松田竹千代君) 全学連が過ぐる十日の羽田事件以来、数次にわたって、ついにこの国会に乱入してこの神聖なる国会構内で流血の惨一事まで起こして、従来から伝統的にも法の上にもきわめて神聖とされた国会をけがしたということに対しては、まことに遺憾千万という言葉をもってしてもなお足りない気持がいたすのでありまして、御同様深き関心を持ってこれらの事態に対処しなければならぬと考えておるのであります。近来、院の内外を問わず、デモに名をかりて、その実体はまさに暴力である。こうした行為が、常に平和を唱え民主主義を叫ぶ人々から、日々闘争に明けくれ、暴力行為をあえてするというような奇怪千万な事柄が行なわれて、しかもそれが日常茶飯事のごとく扱かわれてきておるところに、こうした重大な事件を起こすに至ったゆえんがあるのであろうと、私は考えておるのでありますが、それは主として、これまた全学連の名において、全大学生の名において行なわれてきておる。学生であるからといって暴力行為は許さるべきものではない。若きがゆえに許さるべきではない。純情な動機からきておるからといって許さるべきではない。いかなる場合においても、暴力破壊行動に狂奔するがごときことは、もちろん学生であるがゆえに、なおさらきびしくいたさなければならぬ、若きがゆえに許さるべきものではないということは、われわれ深く考えなければならないのだが、ついに、若き熱情、若き純情、またその精力が、幾らでもこれらの精力なり情熱を傾ける分野があるにかかわらず、それが暴力行為に向かって差し向けられるときに、ついに革命よりほかない、国家動乱のもとをなすものだということを考えざるを得ないと私は思うのでございます。また、私のいろいろ調べておりまするところによりますると、これらの学生は必ずしも多数ではない。ただ、ああしたデモ行進によって疫病のごとく移っていく、その背後に何があるかということを考えまするときに、今も法務大臣からもお答えになりましたごとく、中には、大学自治の上にあぐらをかいておる大学教官、しかも国民の税金によってまかなっておられるところの国立大学などにある教官が、みずから大学のこれら若き学生の背後にあって教唆扇動しているかのごときうわさを聞くに至っては、これまた実に言語道断のことであると存じます。文部当局といたしましては、遺憾ながら、直接にこれらのことに対してその制度上とり得る手はきわめて限られておるのである。すなわち大学の運営について指導助言する以外に手はないのであります。私は、大学学長初め、あるいは通牒をもって、あるいは個人的に、あるいはこれらの学長を集めて、学生補導に強く力を入れてもらうことをしばしば徳悪して参ったのでありまするが、これに対して大学学長の方では、努めておるが、その効果はあがらぬのみならず、今日の新聞に見られるがごとき茅学長声明のごときは、みずからの責任を全くたなに上げて、みずから学生教育の任にあるべき者がその責任を忘れて、あげてその責任を政治関係にありとして、この状態では教育はやれぬというようなことを声明するに至っては、われわれはまさにその了解に苦しまざるを得ないのであります。従って私は、明日はこれら学長を集めておりまするので、その席上でも強く所信を披瀝して、その反省を求めたいと考えておるわけでありまして、なおいろいろこれらの事柄について十分に調査を進め、その上で適当なる処置をとって参りたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 暫時休憩いたします。    午後四時四十七分休憩    〔休憩後開議に至らなかった〕 ○本日の会議に付した案件  一、全学連国会乱入事件に関する緊急質問