○占部秀男君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
地方税法の一部を
改正するこの
法律案に対し、反対の意見を明らかにいたしたいと
思います。
今回
改正さ駒ます内容は、
委員長の
報告にもありましたように、昨三十四年における
所得税の減税に対応して地方税である
市町村民税のうち、個人についての
所得割の準拠税率を引き下げるとともに、
所得税法の
改正に伴い、地方税である個人
事業税について被災たなおろし資産の損失の繰り越しについての
規定を設けるほか、法人税法の
改正などに伴う地方税の
規定の
整備を行なうものでございます。すなわち、内容の中心は、昨年の国と地方を通ずる減税に伴い、当然行なわなければならないところの地方税に関する諸般の
整備を行なったまででありまして、従って、
改正点そのものについては何らの問題点もない、いわば単なる事後
措置的な
改正案にしかすぎないのでございます。しかしながら、
国民の立場からいいますならば、
かくのごときおざなりの
改正案を、今日の時点において
政府がぬけぬけと出したところに、実は大きな問題点を感ずるのでございます。
具体的に言うならば、今回の
改正にあたって、第一に、
国民が渇望をいたしております地方税の減税が全く無視されているということ、第二には、国の
施策による地方税の減税により引き起ごされた
地方団体の減収分についての
財政補てんがほおかぶりされてい一るということなど、大きな批判の余地が残されていると信ずるのであります。
まず第一の点について考えますと、もともと地方税は、
負担する住民の立場から見まして、その性格上、国税に比べ応益的な
課税の
傾向がはるかに強いものでございます。それだけに、反面、納税義務者の
所得別の分布
状態から見ましても、
課税標準のとらえ方からいいましても、あるいは税率の押え方から考えましても、大衆
課税の要素が前者に比べてきわめて顕著であることは言うを待たないところでございます。しかも、全国的な
負担の
状況を見ますならば、今日、府県や
市町村の現場では、すでに
負担の限度まできている
実情でございまして、逆にここ数年来、地方減税を望む声は世論とさえなっている次第でございます。特に現行の税目の中でも、住民税については、均等割の再検討を要望する声が熾烈でありますし、
事業税に関しても、個人分の基礎控除の引き上げや、法人分の特別法人並びに小
規模法人に対する標準税率の引き下げ等を望む
傾向がきわめて強まりつつある
現状でございます。さらに、これ以外の今日世論となっております問題点を指摘しますならば、一般家庭を
対象とする電気
ガス税について、現行百分の十の定率を引き下げる必要のあることや、街灯などの公共用については無税の扱いをすべきであることや、また固定資産税に関しては田畑についての
課税標準の減額是正を要望する声が特に農村部に強いこと、さらに多年の懸案となっている遊興飲食税に関しては、大衆飲食の免税点を引き上げるとともに、大衆宿泊料金の免税点の改善をはからねばならないこと、自動車税に関しても、中小企業の
合理化と農村の近代化に伴い、自家用トラックや三輪小型自動車の標準
税額の引き下げが渇望されているなど、枚挙にいとまがない
状態でございます。またこの反面、毎年莫大な損害を生む火災に対しましては、消防
施設の機械化、充実化をはかるために、消防
施設税の創設が、
市町村を中心に全国的な論議の的となっている事実もございます。
すなわち減税を中心とした地方税の体系的な再
整備は、今日当面の急務とされていることは、今さら論ずる必要のないところでございます。こうした地方減税の声の中で、
政府が発表いたしました本年度の
地方団体の運営
状況、特に
財政関係の見通しを考えてみますならば、これらの減税の問題の解決は、ことしこそ絶好の機会であると思われるのでございます。なぜかなれば、
政府が策定いたしました本年度の
地方財政計画では、地方税収の伸びは前年度当初
計画に比べまして八百二十一億円の増加という未曽有の数字を示しているのであります。さらにこれを決算の場合として見込んでみましても、ここ十年あまり地方税収の伸びは例外なく決算額が
計画額を上回っているのが
実情でございまして、従って、決算期において増収実績が
計画額を下回るような
事態は、
政府の見解の通り万々ないものであると考えられるのであります。しかも昨三十四年度におきましては、
地方財政計画上の税収の伸びは、前三十三年度に比べて三百四億しか見込まれていなかったのでありますけれども、地方税は国税とともに御存じのように減税されているのであります。従って、今回は当然に新しい減税
措置を伴った
改正案が
提案されるものであると期待をいたしておったのでございますが、この点が全く無視されたことは、わが党の絶対に納得できないところであるとともに、
国民負担の軽減を旗じるしとしている岸内閣の欺瞞的な本質を暴露したものと言わざるを得ないと考えるのでございます。この点に関しまして、
委員会におけるわが党の追及に対して、石原
国務大臣は、本年度の地方
対策においては
災害復旧に重点を置き、
国土保全に大きく緊急な経費を要したので、減税は見送らざるを得なかったと答弁されておるのでありますけれども、かりに、これをそのまま是認したとしても、
政府として減税に対する熱意さえあるならば、減税を実現する余地は
現状においても十分にあるものと考えられるのであります。何となれば、
政府の本年度の地方税に対する方針には、非
課税措置の整理の問題が故意にサボられていると私どもは見ております。すなわち、電気
ガス税を初め、多くの税目において、大産業に対する業務用の減免を中心とした非
課税措置は、三十三年度現在、都道府県税で年額八十億、
市町村税で二百八十九億円を数え、実に年間三百六十八億円に上っているのであります。しかも、それ以外に、国税にリンクした地方税の非
課税措置分としては二百八十一億円がありますので、これを合わせますと実に六百五十億円に近い地方税が非
課税として
地方団体の収入圏から漏れ流れているのが現在の
実情でございます。しかも、注目すべきことは、国税についての非
課税措置はほとんどすべてが年限を切っての
措置であるにもかかわらず、地方税に関しては年限を切らず、いわば永久的に非
課税の特典を一部の者に与える仕組みになっているのでありまして、わが党の黙過し得ないところでございます。国といわず
地方団体といわず、非
課税措置を整理せよとの声は数年来
政府に対する非難となって現われましたので、さすがの岸内閣も世論に抗しがたく、昨年は小部分ではありましたが国の分についての整理を実行したことは、まだ記憶に新しいところでございます。従って、本年度は当然地方においても非
課税措置の整理を断行すべきであるにもかかわらず、これまた、ほおかむりのまま
国民の目をごまかそうと企図しているのでありますが、かりにこの一部を整理しただけでも、今問題となっております二、三の税目分についての減税財源は十分にまかない得るのでございまして、特に大衆
課税の最たるものであるといわれる電気
ガス税の引き下げや、大衆飲食についての免税点の引き上げ等は容易に実現できるところでございます。すなわち、減税はできないのではなくて、
政府はしないのでありまして、この無誠意きわまる
政府の態度に対しては、わが党は
国民とともに断固糾弾せざるを得ないのでございます。(
拍手)わけて遊興飲食税に関しましては、飲食店、喫茶店等における免税点を現行の三百円から五百円以下に引き上げ、さらに旅館の宿泊料の免税点を現行八百円から千円に引き上げることにつきましては、昨年三月二十七日の本院の地方行政
委員会におきまして、三十五年度すなわち本年度より減税を
実施すべきであるとの
決議が行なわれましたし、同二十八日の本院本
会議におきましても、
地方税法の
改正案に対する附帯
決議として満場一致可決されております。さらにまた、石原
国務大臣も自治庁長官に就任当時の昨年七月四日の地方行政
委員会において、新大臣としての方針を述べられた際に、特にこの
決議の
趣旨を必ず実行するとの旨を明らかにしておる次第でございます。その減税総額は、飲食、旅館合わせて三十八億円でありまして、地方税の自然増収の伸びが
かくのごとき現在の段階におきましては、減税を実行するかいなかはもはや単なる技術上の問題にしか過ぎないとも思える程度の問題でしかないのであります。それにもかかわらず、これまた今回見送られましたことは、単に
国民に対する公約の無視であるばかりでなく、本院の
決議の権威にもかかわる問題でございまして、この問題が取り扱われて参りました過去の歴史的な経緯から考えましても、言語道断といわざるを得ないのでございます。
第二の問題点は、減税に伴う地方減収に対する
政府の方針についてでございます。わが党は、原則として、国の
施策による地方税の減税に関しましては、これによって起こる地方の減収分に対し国から
財政補てんの
措置をすべきものと考えておるのでございます。なぜかなれば、法の
範囲内で
地方団体が独自に減税をします場合には、当該団体の
財政状況とにらみ合わせてこれを
実施するのでありますけれども、国の
施策による法
改正によって地方税が減税をされる場合は、
地方団体自体としては自身の
財政的な
状態への配慮をするいとまもなく、好むと好まざるとにかかわらず、他動的に減税すなわち減収を押しつけられるものでありまして、地方行政の円滑な運営のためには当然財源補てんの責任は
政府にあることは明らかでございます。しかるに、今回この
改正案による通り、国の
所得税税率の引き下げに伴う
市町村民税の
所得割の引き下げによるところの府県民税及び
市町村民税の減収は、年間百二十二億に上ると見込まれております。従って、それだけの減
税額については、国から当然補てんがなさるべきであるにもかかわらず、わずか三十億円に足りぬ額を臨時特別交付金として創設し、これをいわゆる貧乏団体にのみ手当して、すべてを無視しようとかかっていることは、わが党としてとうてい納得できないところでございます。三十億円というその金額についても、補てん財源としての計算の基礎が不分明であり、さらに、交付金そのものの性格がこれまた明らかでないのでありまして、いわば、どんぶり勘定、つかみ銭のたぐいでもあり、終戦以前の時代ならいざ知らず、地方自治法下の民主的な運営の中では許しがたい反時代的な扱い方と言わざるを得ないのであります。
以上、二つの
理由から、
地方税法の一部を
改正するこの
法律案に対しまして、絶対に反対の態度を表明いたします。(
拍手)
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