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田畑金光君 私は、民主
社会党を代表し、
三井三
池争議に伴う諸般の問題について、以下数点にわたり
政府当局に
質問を行なわんとするものであります。
端的に言うならば、
三井三池の問題は、今日、労働問題というよりも、むしろ社会問題、政治問題としての側面が強く表面化しております。私は、三月末
現地を視察し、
大牟田市内から
炭住街を一巡いたしましたが、市内に漂う不穏な空気、ことに楽しかるべき
炭鉱住宅街は不気味な暗雲に包まれているということでございます。平素は労農提携、労商提携の必要を訴え、地域共闘を通じて民主化を進めるはずの勢力が、
大牟田市民と越えがたき障壁を設けて相互に相反目している姿は、民主主義のチャンピオンをもって任ずる
労働組合としては、はなはだしき自己撞着と言わなければなりません。(
拍手)
三月十七日、鉄の規律とゆるぎなき団結の歴史を誇る
三井三池
労組の中に、新しい組織が、自由にして民主的労働運動を標傍して立ち上がっております。世人の予測をはるかにこえて、新
組合に参加する者三千余名一今日すでに五千名をこえて、言語に絶する迫害脅迫にもかかわらず、日に日に組織が拡大しつつあることは、単に
会社の切りくずしなどという問題ではなくして、より深い労働運動の
あり方自体に関する問題であり、
指導理念の明確な対決から生まれたものであると言わなければなりません。(
拍手)四月四日、読売新聞の報道によれば、三
鉱連の中闘は、三日の
会議において、「三池の闘争は組織の実体を無視した暴走であり、これ以上統一闘争を組むことはむずかしい」と、三池
労組を批判する声が圧倒的に強かったと指摘しております。
三井三池新旧
労組の今後のおもむく大勢はすでにきまったと申しても過言ではないが、ここで私が特に強調し、注意を喚起したいことは、組織の
分裂、動揺、混乱を阻止するために、長年つちかわれてきた統制と鉄の規律がいよいよ狂暴化し、説得の名において数々の非人道的行為が、新
労組の
組合員、ことに無事の
婦女子に加えられているという事実であります。社宅街には、
窓ガラスを破壊され、戸板を撤去されて、人けのない家屋が幾十となく目にとまりますが、いずれも新
労働組合員の住宅であり、疎開した家屋であります一数百にのぼる世帯が着のごみ着のままで疎開し、恐怖におののいているのが’今日、
三井三
池争議に伴う悲劇でございますが、恥ずべき行為でなくして何でありましょうか。人間性の喪失であり、文明社会から暗黒社会への逆行であります。女子供に何の罪があるというのでしょうか。
組合運動の対決は、
組合員の自由な大衆討議と批判を待って堂々と対決すればいいのであります。
労働組合なるがゆえに、集会、外出の制限を行ない、批判の自由を抑圧し、特定教条主義を押しつけ、自己に反対する者はすべて裏切り者呼ばわりをして、尾行をつけ、監視することが許されているとすれば、本来人間解放の運動であるべき労働運動の許しがたき逸脱であり、偏向であると申さなければなりません。(
拍手)
総理は、このような非人道的行動が
労働争議の名において行なわれていると、う事実を御承知でございましょうか。住宅街の
治安の不良が新
組合の就労をはばむ最大の
原因でありまするが、
治安確保の当面の責任者である公安委員長から、社宅街における
治安の現状並びに危険防止のためにとられている具体的な
措置を明らかにしていただきたいと思います。
次に、
争議に伴う
ピケ行為、
ピケッティングの合法性の
限界について
政府の所信をただしたい。
ピケ行為は
争議の一形態であり、対象により、また、時と場合に応じましては多様でございまするが、
ピケの機能は、
組合員の
争議からの脱落防止であり、第三者に対するストに対する協力要請であり、使用者に対する団結の威力の誇示でございます。英米においては言論表現の自由に根拠を求めておりまするから、従って、平和的説得の
限界にとどまる一といわれております。わが国においては、
ピケの根拠は
憲法二十一条の問題ではなく、二十八条の問題であるから、平和説得プラス・アルフアという
考え方があり、この説では、
労使対等の原則確立の上からも、
争議権を広く解釈し、
ピケに伴うスクラム、すわり込み、就業阻止を肯定する
立場であります。これに対し、
争議は本来、使用者に対し、「お前たちがやれるならやってみよ」ということであり、「お前たちにやらせないぞ」ということではない。
争議権と、他の平等権、自由権、財産権の調和を期待し、この調和を破らないことが
争議権の正当性の
限界であるとしているが、この
考え方においては、
ピケの本質は平和的説得であると見ているわけであります。そこで私は、
労働大臣に、
ピケに伴う実力行使の
限界についてどのような
立場をとっておられるかを明らかにしていただきたいと思います。一つの
会社なり
企業の中に
二つの
組合が存在する場合、おのおのの持つ勤労権、団結権、団体行動権は、法のもとに平等であって、相互の権利を侵犯すべきではございません。
三井三池旧
労働組合と
会社との間には依然として
争議は存在するが、新
組合との間には存在いたしておりません。従って、旧
組合が
争議を継続することはもとより正当でございまするが、新
組合が就業することも当然の権利の行使であり、かつ、
会社に対する義務履行として何ら不当ではなく、両者の
争議権と就業権は全く対等の
立場に立つものといわなければなりません。(
拍手)この
立場に立ってみますときに、
三井三
池争議に伴い今日見られる
事態は、正当な
争議行為に伴う
ピケ行為であると
労働大臣は判断しておられるかどうか。
争議権と就業権はともに
労働者の権利として対等に尊重されるべきであるといたしまするならば、現在、事実上、新
労組の就業権は、
争議権というよりもむしろ
暴力の前に空文化しております。仮処分決定もなされておりまするが、これらの処分も有名無実に帰しております。法の執行並びに就業権の確保に関し、
労働大臣、
法務大臣、
国家公安委員長はどのように具体化される方針であるかを明確に伺いたいのでございます。
三井三
池争議の現状は、労働問題のワク内における
解決を急ぐ前に、当面、
治安をどう回復するかが、より緊急な課題でございます。二十八日、
三川鉱における
強行就労に伴う
労働者同士の流血の惨事は、目をおおわしめるものがございます。私は、ここに、当時、
三川鉱構内における集団
暴行に際し被害を受けた
人々の
手記を紹介したいと思っておりましたが、先ほど吉武議員の
質問中に引用されましたから、やめることといたしますが、この阿鼻叫喚にもかかわらず、
警察は台風が過ぎてからようやくかけつけたというのが当日の機動隊の実情でございます。二十九日、
荒尾市、四山炭住前における旧
労組、
久保清君の
暴力団による刺殺「
事件を見ても、当日の前後の事情から判断して、
警察の臨機応変の
措置がとられておりましたならば、あのような大事に至らずして、
事態はもっと変わった方向に発展していたであろうことを、まことに遺憾に存じます。この両
事件に際し、
警察は十分その責任を果たしたといえるのでありましょうか。
警察に対する不信の声は、
大牟田市民の声であり、身を切り刻む苦悩に追い回されている新
労組員、家族の声でございまするが、
警察の怠慢、無責任、無能に対し、最高責任者として
総理はいかように
考えておられるかを承りたいのでございます。
私が党を代表いたしまして、
現地において
警察当局に厳重抗議を申し入れましたところ、たまたま出席いたしました署の次席は、
警察法の不備を漏らしております。法の不備が今日の
事態を招いたかのごとき発言がございました。しかし、われわれの抗議に対し、直ちに取り消す醜態を演じておりますが、うがって観察いたしますなら、
政府を初め末端
警察機関に至るまで、この種社会不安を惹起させ、これを奇貨として警職法改悪を意図するかのごとき印象を受けまするが、もし、しかりとすれば、許すべからざる所為といわなければなりません。
総理は警職法の改正について研究しておられるという御答弁でございますが、重ねて念を押したいのでございまするが、
総理は警職法の改正について具体的にこれを取り上げられようという御意思でございましょうか。警職法第五条(犯罪の予防及び制止)によって、
警察がその気になりますならば、十分緊急の
事態に対処し得るものと私は
考えまするが、石原
国家公安委員長の
見解を承りたいのでございます。二十九日
刺殺事件における山代組、寺内組に対する犯罪
捜査、
容疑者の
逮捕は、積極的に進められているようでございまするが、今日までの経過をさらに明らかに示していただきたい。同時に、二十八日朝の乱闘流血
事件における加害者の
捜査も積極的に進め、
治安確保の万全をはかることが当局の
立場でなければならぬと
考えますが、あらためて
法務大臣の
見解を承りたいのでございます。
二十九日、四山社宅前における
刺殺事件に関し、職員二名の者が、正門横の建物の二階の窓から、
鉄棒、角材を投げ入れ、
暴力団に支援を与えたと一部の諸君は宣伝されておりまするが、いずれも事実無根、デッチ上げであり、
三井職組は名誉棄損として法廷闘争を準備いたしているわけでございます。当日、両係員は、現場から二十五メートル離れた所におって、物理的にも物を投げることができない位置にいたことが明確でございまするが、真偽のほどを
法務大臣から明らかにしていただきます。
今日、
三井三
池争議の早期
解決をはかり、平和を回復することは、当事者のみならず、
大牟田市民の声であり、
国民の声であります。
中労委はすでに藤林
あっせん案を提示いたしましたが、問題は、
現地旧
労組が
あっせんを受け入れる態勢にあるかどうかということでございます。平和的
解決は、それを受け入れる地盤の確立なしには徒労に終わるでありましょう。
労働大臣は、本
争議解決に関し、藤林
あっせん案が提示された現段階において、いかなる構想をもって対処されようとする御方針であるか、承ります。
今日、
三井争議に見られまする悲しむべき
事態は、冒頭指摘いたしました通り、向坂イズムに立つ
組合の失敗であるが、同時に、忘れてならないことは、経営者の誤れる経営上の見通しの失敗、労務対策の適切な
措置を誤ったゆえであり、同時に、
政府の
石炭対策の無策無計画が
労働者の闘争を深刻化せしめているということは否定できないのでございます。三年間に十万人の
炭鉱労働者の失業、これに対する受け入れ態勢を
政府は準備していると言うでございましょうが、この際、
政府は、
三井三池の
争議を教訓として、かかる不幸な
事態を将来にわたり防止するために、
石炭危機突破の具体的な計画を明らかにし、失業問題の
解決をはかり、
国民生活安定の道を講ずることが何よりの基本であると
考えまするが、
総理の所信をあらためて承ります。
最後に、繰り返し強調いたします。労働運動は堂々と主義主張によって対決するがよろしい。かかわりなき
婦女子まで
争議の渦巻きに巻き込むことはやめようではないか。特に
現地の
治安確保を強く要望いたしまして、私の
質問を終わることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇、
拍手〕