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1960-02-04 第34回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月四日(木曜日)    午前十時二十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四号   昭和三十五年二月四日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  第二 参議院予備金支出の件     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。       ―――――・―――――
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)。  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。高田なほ子君。    〔高田なほ子登壇拍手
  4. 高田なほ子

    高田なほ子君 日本社会党を代表いたしまして、三十五年度政府施政方針に対し、内政一般について首相並びに各関係大臣に御所見をただしたいと存じます。  まず、冒頭に申し上げたいことは、首相施政演説中、行政府たる総理立法府を軽視するような御発言のあったことについて、党内では釈明の必要がないというような御意見もあったようでありますが、昨日首相は、本院において、表現がまずかったと釈明をせられましたが、その態度は一応私どもは了といたします。しかし、このような形式的儀礼によって問題の本質解決されたとは考えられないのであります。いやしくも、三権分立の建前をよく御存じの総理大臣が、立法府に対して、多数決の原則を注文されたり、審議権放棄ということの事実を故意に歪曲して、みずから国会軽視態度を示されたことは、官僚政治への逆行を示唆するものとして、はなはだ危惧の念を禁じ得ないものであります。しかも、この内容は全閣僚の承認を得たものというに至っては、民主政治に対する全閣僚認識を疑わざるを得ないのであります。岸内閣は、特に認識を新たにせられて、国民のための政治を率先実現するために、今後特段の御反省と御検討を心から御要望申し上げて質問に移りたいわけでございます。  首相民主政治の基盤として法秩序確立を強調されております。しかし、この概念が為政者の手によって歪曲された場合に、危険きわまりない独裁政治べの道を開くことは、かつてはムソリーニ、ヒトラーにその例を見、また近くはわが軍閥翼賛政治にその例を見ることができます。彼らは、民主的な社会秩序を維持するという名のもとに、法の支配を人民に強要し、政治的抑制の中で彼らの企画する社会秩序を長く維持してきました。従って、今日、岸内閣の側から法秩序国民に対して強調される場合、特にデモ規制法等安保改定の批准を控えてこの概念を明白にすることは、きわめて重要であると考えます。以下数点にわたって首相並びに関係閣僚お尋ねをいたします。  まず、法秩序根本概念はどうかという問題であります。今日、法は、国民自体が、国民の幸福な社会生活を営むために、国民みずからの手にゆだねられて立法されます。従って、法は国民みずからの手で守られるのが原則ではないかと思います。ここに初めて法による社会秩序が民主的に維持されるものだと信じます。この思想の中心は、国民が国の主権者であり、基本的人権の不可侵が主張されるゆえんではないでしょうか。この理念を貫くものが現行平和憲法であります。岸内閣は、この理念に立つならば、みずから率先して全国民とともに現行憲法を守り抜く体制を確立することこそ、最も基本的な態度ではないでしょうか。(拍手)しかるに、岸内閣は、主権者たる国民の意に問うことなく、憲法改正をねらって、政府の都合のいい法の拡大解釈のもとに、既成事実として軍備増強し、今また安保改定によって日米軍事同盟参加の道を開かんとしております。国民政治に対する不信疑惑は、今日社会混乱一大要素となっておりますが、政府はこの責任国民に転嫁して、社会秩序の維持の名において法による規制を加えんとするがごときは、断じて民主政治のとらざるところであると存じます。首相のこれに対する見解を承りたいと思います。首相は、社会混乱の禍根を一部労働運動大衆運動であるときめつけておられますが、これは本質を誤った議論ではないでしょうか。政治貧困、このこと自体社会混乱を招く第一番の要素ではないでしょうか。生活の安定のないところに社会の安定はあり得ません。政府は、貧困や病気や、あるいは戦争への不安をなくす、この政治実現にまず力点が置かれなければならないと存じますが、この点の御見解お尋ねいたします。  その第二は、清潔な政治実現であると思います。特に、主権者たる国民を金で買収したり、利益誘導によって議席を占むるがごとき社会的行為は、民主政治をじゅうりんする元凶として、徹底的に排除されなければなりません。しかるに、最近の傾向は、法定選挙費用は空吹く風のごとく、金は使いほうだい、公職選挙法違反はまさに目をおおうものがございます。昨年度公職選挙法違反によって起訴されたものだけでも二万九千三百四十五件に達しています。特に、法秩序を説かれる首相みずから、昨年山口県下の遊説において、たとえ事情はいかようにありましょうとも、当局から五たびもの警告を受けました事実は、まことに容認し得ざるところであります。(拍手)さらに、公職選挙法違反で起訴されておるものに対しましてしばしば恩赦による特典が与えられておりますが、はたしてこのような事態が民主政治への認識に立って許されるべき筋合いのものでございましょうか。あらためて首相見解をただしたいと思います。なお、公職選挙法違反事件に関しては、そのすみやかな措置を目途として今日、百日裁判制度がありますが、現実にはほとんどこれは実現されてお夢ません。さらに加えて、連座制実現は、今日ほとんど見たことがありません。このことはまことに遺憾千万のことでありますが、その原因対策について、特に法務大臣の御所見をわずらわしたいのであります。  なお、自治庁公職選挙法改正意思を持っておるようでありますが、その改正の骨格を示すとともに、しばしば問題になる、政治と政商とのつながりの中に起こってくる、いわゆる疑惑の強い政治献金問題等をめぐる政治資金規制等については、具体的な策がなければならないと存じます。これも、自治庁長官お答えを願いたいのであります。  政府は、文教制度刷新強化を述べておりますが、一体いかなる方向に刷新しようとするのです。もちろん、教育基本法は、平和憲法を土台にして、政治権力教育支配してはならないということを規定しておるのであります。また、憲法二十六条は、義務教育無償であるという原則を示しています。教育は、この二本の柱にささえられて、民主的な運営の中で発展されるものと思います。しかるに、最近の傾向は、この理想とは全く反対方向に傾いております。その一つの例でありますが、これは、文部省著作による「あたらしい憲法のはなし」、社会科読本一節であります。参考までに一節を読んでみましょう。  「いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。なにもありません。ただ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戦争人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわねばなりません。」「そこでこんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦争放棄といいます。「放棄」とは「すてましょう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に正しいことぐらい強いものはありません。」「また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戦争放棄というのです。」  これは文部省著作です。ところが、今日これが通用しますか。こういうことを教える教師偏向教師ときめつけるほど、今日の政治教育支配しているという、この事実がある。(拍手)このことを強制するための勤務評定である。この教育内容行政によって拘束しようとするのが教育課程改定であります。私どもは、こうした教育政治的な支配について特に注意をしなければならないところであると思うのですが、最近ますますこれと反対方向に行っているということについて、特に私は方針を承ろうとしておるのです。特に、先ごろの一部学生運動行き過ぎを契機にして、大学文科系国立大学ではもったいない。私立大学だけにこの文科系を集めろ。こういう暴論が党の有力者文相お話にあるようでありますが、あらためて政府文教制度確立のための基本的な方針について首相並びに文相にただしたいと思います。もし教育基本に変わりがないとするならば、事教育に関する限りは、行政の面においては強制は避けるべきであります。可能な限りの共通の広場が求められるべきでありましょう。常識人として非常に好評のある文相のこの点の御意見をただしたい。次に、教科課程改定については、指導要領国家基準にして、全国学校一律にこれに従えという、中央集権のための大変貌が来たされておりますが、政府は、さらにこれを高等学校に及ぼそうとしております。この点において、詳細に、その経過、改定の裏付けになる予算措置は一体どうなっているのかこれで中央集権が行なわれないのか、との点の御説明をお願いいたします。すし詰め教室の解消は政府の大きな公約一つであります。本年度は五カ年計画の第二年次に当たるのでありますが、中学生は本年に七十万、来年三十万、非常なふえ方であります。あわてた政府は、ついにこれに対して、第一年次計画基準はくずし、依然として中学校は一学級五十四人というすし詰め教育を行なわなければならないここになってしまいました。これは公約の破棄だと思います。来年度もはたし、これを是正し得るか、まことに問題である。一体この実情はどうなっているのか。三十六年度は一そうの混乱を予想されるが、これをどうしようとするのか。また、小学校は約七十万の児童減になるわけでありますが、この児童減に対して、政府はあらためて一学級四十人という欧米並み学級編成基半を再検討する用意はないか。お尋ねをいたします。特に、今日大問題は試験地獄であります。文字通り、今日、母子は煉獄の苦しみにあえいでおります。各級の学校はまるで予備校です。人間完成も何もまるであったものではのりません。この過当競争の中で、有名校をねらって、もぐり入学不正入学裏口入学必要悪として通用していることは問題ではないでしょうか。道徳教育本家本元不道徳教育を行なうような現状では、とても基礎学力充実どころの騒ぎではありますまい。政府は、この原因をいかに把握し、いかにすみやかに解決をされようとするのか、お伺いしたいのであります。  今日、有名校という名のもとに、学校差はますます拡大されておりますが、これと比例して、父兄負担の激増が問題であります。三十三年度東京都だけのPTAあるいは各種寄付金を総合いたしますと、実に六十五億千八百万円という巨額に達しております。おそらく全国の集積は七百億をこえるのではないかといわれております。政府は、科学技術振興等と笛を吹いておりますが、実際、今日、中学校小学校理科教室設備基準に達しているのはわずかに二〇%である。あとの八割の大穴を、これを全部父兄負担でまかなわなければならない。教育無償原則は全く崩れ、日本教育父兄の苦しい負担によってささえられていると申しても過言ではないと思います。政府はこの現状にいかに対処せんとするのか、お伺いしたい。特に許しがたいのは、半強制的寄付の問題であります。この問題は、教育上の悪影響は申し上げるまでもありませんが、これを極力改める努力が払われてしかるべきでありましょう。文相及び自治庁長官に御所見をわずらわしたいのであります。  また、学校給食については、従来の援助物資が打ち切られますので、これによる小麦粉の値上がりが予想され、ガス代値上げ等もからんで、はたして現行給食費で維持できるものか、値上がり予想に対する政府の御所見をただしたい。  政府はまた、婦人文化向上を力説されております。これはけっこうだと思う。婦人学級または婦人団体等に、前年度に比べると十三倍にも上る予算措置されておりますが、これは一部では、自民党婦人対策強化だというようなうわさもあるほどでありますので、この運営にはよほどの検討が必要ではないかと思う。優秀な婦人学級には特に二万円出すということですが、一体優劣の基準は、どこで、だれが、どのようにきめるかが問題だろうと思う。かつての国防婦人会の再現は、ぜひこれはお取り下げ願いたい。この際、その内容運営等を特に明示していただきたいのであります。  以上、要するに、文教予算は一応の増額を見ましたものの、全国家予算の膨張に比較いたしまして、その比率は前年度の一二%とほとんど同率であります。この中では、行き届いた愛情のある政治実現は困難でありましょう。今年度は僻地のためのスクール・バスの用意がされておりますが、これは全国でたった五台です。離れ島の子供教育を守るためのボートが予算化されておりますが、これは全国でたった二隻です。少年不良化防止は、これは今日教育上に大きな比重を占めておりますが、この年間予算は、なんと三十万円です、しかも、これは昨年度に二万円削ったのです。学童給食費の補助は五億円にまあなりましたが、七十三万人に及ぶ恵まれない子供の全体をこれで救うことはできない。自衛隊年度食糧費は七十九億であります。これと比べますと、子供たちのしあわせというものは、どうもあまりにも薄いのではないでしょうか。今後さらに増加される軍備政策のもとでは、子供のしあわせはまだ来そうもありません。これを守り抜く政治を立てるごとこそが岸内閣の使命ではないかと思うけれども父兄負担によらざる六三制完全実施への確信が一体文相におありなのかどうか。私はこの際あなたのほんとうの信念ある御答弁をわずらわしたいと思うのです。  社会保障充実は、本年度政府の二大政策一つといわれております。昭和二十九年度以降の社会保障費軍事費との数字を比べますと、常にこの軍事費の方が優先しております。昭和二十九年度は、社会保障費は九百三億、軍事費は千三百二十七億というふうに開いていますが、これがずっと今日まで来ている。今度若干社会保障費が上向いたようでありますが、これはロッキード国庫債務負担等を加えますと、実質的には軍備優先原則には依然として変わるところがない。政府のお説のごとく、はたしてこの中で青少年婦人たちが手放しで明るい希望に燃えることができるか。一国の文化水準のバロメーターは、その国の婦人子供老人生活を見ればわかるといわれております。以下、婦人子供老人立場と、本年度予算とを比べながら、首相以下各関係大臣お尋ねをしたいと思う。  戦争の傷跡が今なお深く残っている国民生活に対して、国民年金制度、あるいは老齢、障害、母子福祉等、一応政府の熱意を認めることにやぶさかではございません。しかし、これはいずれも発足日なお浅く、国民負担率はまことに重い。こういうような中で、女の細腕家計をささえているという母子世帯は百十五万に上るのであります。この細腕に育つ子らは二百二十七万に及んでおりますが、この、家計ほんとうに低く、月一万未満の者が全体の五一・七%を占め、生活保護を受けています者が一〇・六%を占めるいわゆる貧困階級であります。こうした親子をささえるための福祉年金とは、月にわずかに千円、母子福祉金貸打生活資金は、母親に月千円以内、子供に月五百円以内となっていますが、何しろむずかしい条件付きのために、この利用をすることができないというのが現状です。せっかくの制度が運用をはばんでいることは、実に重大問題です。千円基準ということにも問題がありますが、この実効をあげるためにどうするかということについて、政府の御意見お尋ねしたい。  不幸な母のための授産施設は忘れてならない存在です。しかるに、本年はびた一文の予算も組めていないのは、一体どんなわけか。かてて加えてその補修費を御丁寧にもわずか一万五千円ばかり削っていますが、これではスズメの血をしぼるようなものであります。母の手内職は、働いても働いても百円そこそこ、これを解決するための家内労働法の制定、わが党はつとにこれを提案し、政府協力を求めてきたのでありますが、今なお政府協力を得ることができないのはどういうわけか。この点を労働大臣にただしたい。また、対策をただしたい。母が家を出て早くから働き、こうして保育される子供は六十三万に及んでおります。その大半は、保育料さえ払うことができない貧困家庭です。この子供たちの夢は、おいしいおやつではなかったかと思う。ところが、一日五円という最低の要求も、大蔵大臣の手でこれを三円に削っちゃった。これはわずか五億の予算です。ロッキード一台相当のこういう予算を、世論にささ、にられなければ取れないというこのこと自体が、岸内閣の性格ではないかと思う。保育所の増設と整備とは全国母親の強い願いであります。粉雪さえ吹き込むような施設に背を向けてその整備費三百六十一万を削ったのは、いかなる理由に基づくのか。保育所にも行けず、おやつも食べられず、母の帰りをさびしく待ってちまたにただずむ子供は、今日全国で二十万に及んでいるのです。総理大臣はこれをどうしようとするか。児童憲章は「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活保障される。」と述べておるのであります。この際、政府保育対策を徹底的にここで計画的な施策をお示しを願いたいと思うのであります。  首相はまた母性保護の推進を強調せられておりますが、母子センターはわすか五十三カ所、しかも、この施設重要性が強調せられておるのに、ことしは七百十万円の削減をしている。煤煙の大都市において、あるいはベンゾール中毒にあえぐ工場の中において、これは国民皆保険とは違った角度から母体保護には積極的に乗り出さなければならぬ。また、家族計画の問題については、きのう御答弁があったのでありますが、私は、この家族計画予算は、五千万円足らずの中から勇敢にも六百三十二万円もの予算を削りたこの根拠というものについてわからない。これでは母性保護ということは、政府公約として私は言えないのじゃないかと思う。とにかく政府積極的政策母性保護の面にもしおありとするならばお答えを願いたい。  なお、近年青少年の不良化問題が大きく取り上げられており、児童遊び場解決はその重要さが指摘されています。一昨年、政府は、三千五百万円ほどの予算で出発したのですが、出発したとたんに五百万削った。ことしまた六百二十五万の大なたをふるっている。児童憲章には、子供たちのためによい遊び場が与えられる。悪い環境から守られなければならないと規定されております。これでどうして悪い環境から子供を守るのか。自衛隊に十億円もの弾丸費が惜し気なく予算化される政府が、子供遊び場を完備される予算がない、そんなばかな話はないと思う。この際、本問題について、法務大臣並びに厚生大臣から御所見をお伺いしたい。  一体、今日の老人はどうなっているのか。老人保障に対しては、これはほとんど抜本的対策を持たないようであります。昭和五十年には約八百万に高齢人口が増加するといわれますが、今日、高齢人口の中で五六・二%以上の者が衰えた肉体で働かなければならないというのは、これはまことに日本の悲劇ではないかと思う。この状態は、世界最低貧困国といわれておるトルコの就労率よりも、はるかに上回っているのだということを注目してもらいたいも一のであります。生命の火の消えるまで働き疲れたこの老人を救う対策について、私は政府に御所見をただしたいのであります。  以上、総括的に申し上げますと、特に岸大臣にお伺いしたいことは、母子保護において、あるいはまた女性の保護において、また低額所得者対策について、全部予算を削っておる、売春対策費も全部削っている、こういうようなことで、私は日本の国の中間階層の育成はあり得ないと思う。昭和三十年の日米共同声明において、わが国の資力のより十分な部分を防衛力増強に当てる、このことが日本政府意思であり、政策であると声明をせられましたが、こういう自民党内閣軍事政策のもとにおいては、母と子はおそらく救われないでありましょう。首相は、社会福祉制度のこの本質にかんがみられまして、どうぞこの現状をもとにして、やがで三十六年度以降軍備増強の強行される今日、母と子のためにいかにあるべきかという問題、そしてこの解決の御所見をぜひお願いしたい。同時に、大蔵大臣も、おやつ代を削ったというのでありますから、この社会保障中心健全財政確立するための御所見があるかどうかということをお尋ねしたい。  以上私の質問を終らしていただきます。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 民主政治の正しい発達のために、民主的に設けられた法律秩序を守っていくということが根底でなければならぬということをかねて申し上げておるのでございます。しかして、そういう場合において、この日本民主主義基本としておる憲法を守っていくということが絶対に必要であるということは、これは言うを待たないことであります。私自身もそういう強い決意のもとに政治を行なっていく考えでございます。  社会的な不安について、いろいろ最近における大衆運動や、その他の行き過ぎについて私が警告したことに対して、やはりその背後におけるところの社会不安を取り除かなければいかぬじゃないか、政治に対する不信を除き、また生活上の不安を除くようにしなければならないのじゃないかという高田議員お話は、私もそう思います。われわれがこの三十五年度予算におきまして、一方、国土の保全に重点を置くと同時に、社会保障制度の拡充に特に重点を置いて予算を編成しております理由もそこにあるのであります。  さらに、政治に対する信頼を確保するためには、公職選挙法に関するもろもろの問題についていろいろ御意見もございましたし、また御質問があったのでございますが、私は、やはり民主政治ということの基本として、政治公明を期し、国民信頼を得るためには、選挙自体についてわれわれは常に意を用いていかなければならぬと思います。従って、公職選挙法建前や、あるいはその運営につきましては、常に選挙が行われますに関連して平素から公明選挙が行われるような運動を進めるとともに、選挙についての違反やその他についは、公正な立場でもって公明選挙が行なわれるように努力をして参っております。また、最近の情勢にかんがみて昨年十一月に、選挙制度調査会に対して、公明選挙の確保についての意見を諮問し、その答申を得ておりますので、その趣旨を尊重して、法の改正を立案いたしております。自治庁長官より詳しくお答えを申し上げます。  また、この問題について、選挙違反恩赦についての御意見でありましたか、もちろん恩赦ということは、御承知の通り裁判によって言い渡された刑を赦免するとかあるいは軽減することか刑事政策上妥当であるという場合に、これが行なわれるのでありますか、この問題に関して、特に公職選挙法違反のものをこれから除くという御意見もあるようでありますが、私は、やはり一般の犯罪の場合に、そういう刑事政策上妥当であり適当であるという考えから、これは行なわるべきものであって特に選挙違反のものだけを除くことは適当でないのではないかと、かように考えております。また、公職選挙法に関する裁判を早くやるとか、あるいは連座制の問題を公正に適用していくということは、これは当然考えなければならぬことだと思います。  教育制度の問題について御質問でございましたが、言うまでもなく、教育基本法や、あるいは憲法の精神にのっとって民主的な教育を行なって、将来、青少年が成人して、民主的な、また平和福祉国家を作る構成員として適当な教養を学校において与えるように、また、社会において与えるように、学校教育や、あるいは社会教育というものを、内容においても運営においても考えていくということが根本の考え方でございます。  さらに、老齢及び母子の問題に関する御質問でございます。私も施政演説にも特にそういう点に触れて一言いたしておるのでございますが、三十五年度予算におきましても、特にその点についてはわれわれ留意いたしまして、社会保障全体の費用を大幅に増額一すると同時に、国民年金についてのいわゆる老齢福祉年金や、あるいは母子年金、あるいは障害福祉年金というようなものが、本年四月から全年度にこれが拡大されることになりますし、また、明年よりは拠出制の国民年金制度を実行するというような、社会保障制度の拡充によりまして、こういう恵まれない人々に対する一そうの国家的な援助を進めていかなければならないと、かように思っております。(拍手)    〔国務大臣石原幹市郎君登壇拍手
  6. 石原幹市郎

    国務大臣(石原幹市郎君) お答えいたします。  選挙法の改正の問題につきましては、ただいま総理からお答えがございましたように、昨年十一月、選挙制度調査会改正を諮問いたしましたが、年末、その答申を得ましたので、答申の趣旨を尊重いたしつつ、選挙公明化を中心に、選挙公営の拡充合理化、選挙運動の制限の緩和、選挙運動費用の適正化等を中心といたしまして、目下改正案を検討中でございます。  なお、法の整備とともに、選挙民の自覚を高めるために、話し合い運動等を中心にいたしまして、公明選挙運動をさらに活発に展開いたしたい。三十五年度には、その予算も若干ふえて計上されておるのであります。  政治資金の規正につきましては、政治資金規正法の根本的改正を要望する声もずいぶんあるのでありまするが、この政治資金の規正につきましては種種困難な問題を含んでおりまするので、現在のところ、まだ具体的な成案を得る段階に至っていないのであります。  次に、教育費の寄付の問題でございまするが、ことに父兄負担、PTAの負担などの問題につきましては、この中には、本来地方団体が公費をもって支弁すべきものが私も相当あると思っております。地方財政がよくなり、地方財政が増加する機会には、できるだけ合理化をはかりたいと思っておるのでありまして、三十五年度におきましては、私も、義務教育関係を中心といたしまして、PTA負担をできるだけ解消いたしたい。ことに、人件費その他に関連して出しておるようなものは解消していきたい。そのためには、基準財政需要額の中に計上いたしまして適当な措置をとるとともに、必要とあれば法制的措置もとりたい、かように考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣井野碩哉君登壇拍手
  7. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 高田議員の御質問に対しまして総理から大体のお答えがございましたが、補足的説明をさしていただきたいと存じます。  百日裁判及び連座制が空文であり、これが原因対策を示されたいという御質問でございますが、法二百五十三条の二の規定に基づきまして、裁判所としましても、また検察側といたしましても、百日裁判に努めておりますことは御承知の通りでございまするが、何分にも、選挙違反事件は訴訟関係人の範囲が広く、その内容が複雑でございますので、なかなかその実効があげがたいことは御了承いただきたいと思うのであります。しかし、最近、田中最高裁長官もこの点については強く決意を示しておられ、裁判長会同におきましても、百日裁判を、選挙違反のみならず、すべての裁判についてできるだけ早く裁判を終えたいということを示しておられますし、また、東京地裁におきましてもいろいろの方法におきましてその点について考慮を加えておりますので、こういう点につきましては近きうちに必ず実効をおさめ得るものと考えております。また、連座責任の規定につきましては、昭和二十九年の改正の結果、かなり強化されておりますが、連座制の適用上、総括主宰者の違反そのものが事例が今まであまりございませんので、従って連座責任の規定の適用もなかったと思うのでありますが、これらの点につきましては、今回の選挙制度調査会の答申もございますので、目下、自治庁協力いたしましてこの研究を進めております。  また、青少年対策政府の重要施策の一つでありまして、来年度予算におきましても各省にわたりまして十分考慮されておりまするが、法務省におきましても、少年警察、矯正、保護の全般にわたりまして充実強化をはかっており、非行少年をあたたかく補導して健全なる社会復帰に努力いたしますことはもちろんでございます。今後も各省と協力いたしまして、一貫した総合的青少年対策を強力に進めて参りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣松田竹千代君登壇拍手
  8. 松田竹千代

    国務大臣(松田竹千代君) 現下の教育問題について、いろいろと欠陥とも思われるような点について御指摘賜わりましてありがとう存じます。  まず第一に、教育基本原則についての問題であります。総理からもお答えになりましたが、私は、文教の府にある者として、まず今日の日本の文教の根本原則、これはもとより民主主義から来るものでありますけれども、これを何とかもう少し、一般日本国民民主主義ほんとうの根源がどこにあるかということをわかりやすくやれないものか、ということを考えておるのでありまして、私といたしましては、やはりこの教育基本法のよってくる根本精神、すなわち独立であり、自由であり、個人の尊厳であり、言いかえれば自尊心といったようなものを、もっとほんとうに各人がわかりやすくこれを体得するというような方針が打ち立てられないものか、かようにいつも考、えておるわけでありまして、むろん、これらのことは最も大事な事柄でありますけれども、私は、これを一つに、もし、しぼるとしたならば、私はこう言いたい。これはやはり人間として恥を知る心である、かように私は言いたい。恥を知る心こそ、これは人間とやはり動物との境目なんだ。私は、ここにほんとうに力を入れて、そうして教育をやっていきたい、かように考えておるわけであります。そこで、まず、教育の刷新についても、道義の高揚がやがましく言われておる今日、ほんとう日本子供人間社会においては何が一番必要であるかということを教えて参りたいと、かように考えておるような次第であります。  さらに、教育課程の問題についての御質疑であったと思いますが、これも中央集権的になるとか、文部省がまた昔のようにすべて統一的に画一的にやっていこうとするのであるかというようなお話もありますけれども、決してそうではありません。日本のような単一人種であり、そうして同一の言葉を使っておる、北海道から鹿児島の果てまで。そういう国柄では、私は、最も国が  一つ基本を示していくというようなことは、決してこれは統一的にやるということだけでなしに、きわめて便利にその効果をあげ得られると思うのであります。むろん、一地方からすばらしいやり方を発見されて、そうしてそれが直ちに日本全国を風靡するというようなものが出てくれば、あえて妨げるものではない。従って、教育の実権は地方にみな委譲されておるのでありまするから、これを決して妨げるものではないのであります。そういうふうにまあ考えておる次第であります。  また、すし詰めの問題、この点につきましては、三十五年度におきましては三十一億の予算をもって、(「それで足りないから聞いているのじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、これで大体いけます。もちろん、中学校は御承知のように急増でありますので、この点につきましては現状を維持する程度にとめざるを得ませんでしたけれども小学校においては学級で二人減らせるということにいけます。そうして三十五年度におきまして、明年度の百万の中学生の増加に対しても、多少一部先ばしって用意していくという段取りもいたしておるわけでありまするから、これも、この今年度予算を御協賛願いますならば、五カ年計画に支障を生ずるようなことなしにやっていけるということを申し上げます。  入学試験などの問題、父兄負担の問題でございますが、入学試験の問題も、世間で騒いでいるほど……。昨年三十四年度は一番その困難も軽減されてきておるわけであります。これはあまりにもいわゆる有名校に殺到する。有名校必ずしも優良校でないのでございまするから、そういう点もお考え願いまするならば、これも大した問題でないと思いますが、これらのことをこれからやはり審議会にかけてさらに検討して参りたいと考えておる次第であります。  また、父兄負担の問題でありまするが、これもだいぶやかましく言われます。むろん、教育基本原則からいって、義務教育は全部国庫でやれということも、一応それはもっともでありまするけれども、しかし、わが国は国民所得に比例して世界で一番よけい高い比率をもって教育に金を出しておるということをもってどうぞ御了承願いたいのであります。  また、給食の問題でありまするが、これは全く、私も給食を実施して、何年間かやって、相当効果をあげておると思います。この問題にいたしましても、今度は非常に悪、事情にある、従って、そこばく上げなければならないが、しかし、給食の値段が上がっても、支払い得る階層の人々に対してはこれは払ってもらうが、しかし、給食に対して支払いができないというような家庭に対しては、全部これを見ていくという建前をとっておるわけでありますから、これまたさように御了承願いたいのであります。  婦人の問題でありますが、婦人の活動によって、婦人の向上、また、それのみならず家庭の改善、さらにまた児童の福祉を増進するということは一大飛躍ができると思います。そういうわけでありまして、明年度予算におきましては、飛躍的な予算を得ておりまするので、十分な活動を推進することができると思います。(拍手)    〔国務大臣渡邊良夫君登壇拍手
  9. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 母子対策につきましては、かねてより厚生省におきましては重要施策の一つとして取り上げておるのでございます。先ほど総理からもかなり詳しくお述べになりましたけれども、私からまた補足的に少々申し上げてみたいと思います。  まず母子福祉対策といたしまして、ことしは御承知のように三月から福祉年金が始まるのでございますが、特に生活保護に対しましては、この老齢加算というものを認めておるような次第でございます。また、福祉資金の貸付でございまするが、これが多少減っておるやに思われまするけれども、しかし、従来までのいわゆる償還金を充てまするというと、昨年度よりはるかに上回っておるような状況でございます。母子保健といたしましては、保健所あるいは母子センターにおきまして十分なるところの運営を試みておりまするから、この点も御了承願いたいのでございます。中央におきまして母子センター、これを設けまして、ことしは新規といたしまして、この母子のために新しいところの講習会あるいは研修会あるいはまた健康相談、こういうものにつきまして十分な運営というものを考えておるような次第でございます。  児童対策といたしましては、非常におやつ代が不足であったとかなんとかと申されまするけれども、われわれは予算の範囲内におきまして非常な努力をいたしまして、児童関係におきましては七億五千万円増となっておりまするから、この点も御了承願いたいのでございます。  児童遊園は、ことしは不良防止化のモデル・センターといたしまして、中央にいわゆる子供の郷、子供の国というモデル・センターを作りまして、そして明年度はさらにこれを飛躍さしてみたいと考えておるのでございます。  老人対策といたしましては、これも年金制度にいわゆる生活保護者に対しますところの加算制もこれを認めることといたしましたし、有料老人ホームというものをことしは作ることにいたしまして、国からも若干の補助をいたすことになっております。さらに、今までの老人ホーム四十一カ所を、ことしは前年度より整備いたしまして、新規にこれを設けることにいたしたのでございます。御了承願います。(拍手)    〔国務大臣松野頼三君登壇拍手
  10. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 働く婦人の場を多く占めておる家内労働につきましては、これは御指摘のごとく、今日、日本で一番おくれており、しかも一番大事な労働対策の場面でございます。衛生の面において、あるいは安全の面において、なお加工賃の面において、あらゆる面におきまして、今日この問題は労働行政の最も今後進むべき大事な層だと私は信じております。従って、この問題は、御承知のごとく、「倉本の特別な社会事情と組織という広範囲な場面が残っておりますので、あらためて政府として、このために関係者二十数名に昨年調査を委嘱いたしまして、この国会中にも御報告が出れば所要の措置をとるようにいたしております。これは非常に問題が複雑でございますので、いたずらに法制によって職場を失うような逆な副作用を起こしては、これは大へんでございます。従って、上下の関係を十分調査の上、この問題はぜひ取り組まなければならない大事なことだと私は信じて、その方向をただいま準備で進行いた」ております。  なお、今後の問題といたしましては、婦人、少年の問題はもちろん大事なことでございますが、いろいろの制度、いろいろの方法がございます。今回労働省の婦人少年局の予算は、人件費を除きまして昨年に比べて四七・六%増額をいたしました。この努力のあとはお認めいただきたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  11. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。社会保障費が総体として少ないのではないか、ことに防衛関係費と比べてみて権衛がとれていないのではないかという御指摘でございましたが、三十五年度予算を編成いたします際にあたりましては、社会保障費と、治山治水、国土保全等の災害復旧費、この二つを大柱にいたしたつもりであります。この意味でごらんになりますと、社会保障費は本年は非常な増額でありまして、昨年の当初予算に比べると三百三十八億円の増、補正後に比べますと二百七十六億円の増加になっております。これを総予算社会保障費との。パーセンテージ、また、総予算と防衛関係費とのパーセンテージを比べてみますと、三十三年は社会保障の占むる割合は九・八でございます。しこうして、防衛関係費は一〇・九、防衛関係費の方が多い。三十四年は、社会保障が一〇・三、防衛関係費が一〇・六、ほぼ同額になりました。しこうして三十五年におきましては、初めて社会保障関係の費用がふえまして一一・六%、防衛関係費は九・八五%ということになっております。初めて予算の面におきましても社会保障費が大きく取り上げられるということになるのであります。ただ防衛関係費のうちで、お話のうちにもありましたように、債務負担行為等を考えると、そうはならないのじゃないかという御意見が出るかと思います。しかし、この債務負担行為のうち例年の費目で計上いたしますものが約二百億をやや上回る程度でありまして、残りはロッキード採用の関係であります。このロッキードの関係のものは、三十六年度以降四カ年で完成する考えでございますから、これを予算化する場合におきましては十分財政事情等を勘案して、そうして適当な防衛増強計画、いわゆる国力に相応したものということで予算を編成して参るつもりであります。そういう意味で、今後はこの社会保障というものを大きく取り上げて参る考えでございます。先ほどいろいろお話になりまして、老人あるいは母子、あるいは児童等について、ことに児童のおやつ代を五円要求したものを三円しか計院なかったというような御指摘がございました。しかし、この児童福祉の関係で見ますと、非常に予算措置がおくれておるようでありまして、ただいままでおやつ代は一円も出ておらない。あるいはそこの職員の期末手当等におきましても他に比べまして非常におくれておるという点等がございますので、私どもは、今回は特にこれらについても特別に工夫するということで、おやつ代なり、あるいは期末手当の増、これらを考えた次第であります。その関係の予算といたしましては増加率は二割程度になっております。大へんおくれていたことは申しわけないのでありまして、御指摘の通りでありますが、少なくとも今回三円にしろおやつ代を認めたとか、あるいは期末手当を認めたこの努力一つ買っていただきたい、かように思います。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 千田正君。    〔千田正君登壇拍手
  13. 千田正

    ○千田正君 私は、今次通常国会に際しての岸内閣総理大臣の施政方針及び三大臣の演説を承り、ここに若干の質問を試みんとするものであります。  岸総理及び藤山外相から明らかにされました岸内閣の外交政策の基調、すなわち第一に平和外交、第二には善隣外交、第三には繁栄外交という三つの命題を、しさいに検討してみるとき、しこうしてこれらの命題が今回の日米安全保障条約、日米行政協定の改定として具現したことを凝視するとき、はたして今回の安保条約が、世界の中における、また、アジアの中における日本の進路として適切であるかいなかを疑わざるを得ないのであります。私は、昨秋もまたこの議場において、日米安全保障条約の改定に関する藤山外相の中間報告に対して質問を行なったのでありますが、当時いまだ交渉中であったという事情を差し引いてみましても、首相並びに外相の御答弁は必ずしも満足すべきものではなく、みずから掲げた命題に即しての確信ある御答弁でなかったことをすこぶる遺憾とするものであります。ここに重ねて明快な御答弁をいただくよう首相並びに閣僚に強く要請いたしまして、質問に入ることにいたします。  第一にお尋ねいたしたいことは、何ゆえかくも安保改定を急いだのかという理由及びその根拠であります。すでに多くの論者は、国際情勢はそのおもむくところ次第に緊張緩和の方向を指向しつつあり、一方において科学兵器と軍事技術の異常な発達と相まって、世界は平和的共存ないし競争的共存を自明の前提とする外交が展開される情勢に進みつつあり、戦争不可能論が半ば常識と化していることを指摘しているのであります。もちろん一方において、分析の基調を依然として米ソの対立に求め、旧態依然たる世界観をもって、軍事的包囲網の確立と経済的圧迫の二つを固守する外交政策が今なお根強く存在していることは否定できない現実でありますが、しかし、ヨーロッパの危機を一瞬のうちに硬化させたドイツ統一問題についてのソ連の期限つき通告が首相会談に引き継がれ、アメリカが首脳交換訪問に賛成して以来、単なる米ソの軍事的均衡にのみその根拠を見出していたにすぎない過去の緊張緩和政策は、自滅から絶対に免れようとする共存政策に質的に転換している実情であります。首相は施政方針で述べたように、「国際間の緊張は一日にして消え去ることはできない」とお答えになるでありましょうが、それであればこそ、なおさら、緊張緩和の方向に沿って、国の安全保障についての具体的な方策を見出すために努力することが、岸内閣に課せられた最大の政治的使命であると私は考えるのであります。思うに、国連憲章第五十一条の規定に基づく日米安全保障条約の改定は、憲章第五十一条が国連の精神及び憲章の他の規定に最も矛盾する例外規定とされ、かつ旧来の二国間または多数国家間軍事同盟方式が、北大西洋条約機構についてもワルシャワ条約機構についても漸次膠着化しつつある現状を見るとき、はたして当を得たものであるかどうか。改定によって日本の安全保障はいかなる利益を受けるものでありましょうか。また、基地拡張について、フィリピン政府が米国に対して拒否権を持っている米比基地貸与協定以下の安保改定を急いで行なわねばならなかった理由及びその根拠は、一体どこにあるかをお尋ねいたしたいのであります。  第二に、総理並びに外務大臣にお尋ねいたしたい点は、従来静観政策の名のもとに、あるいは故意に交渉を引き延ばすことにより、等閑視されてきました対共産圏外交の問題について、安保改定との関連であります。安保改定は言うまでもなく、第一に極東及び日本の安全を確保し、侵略の憂いをなからしめることをもってその重要目的といたしておるのであります。しかしながら、今回の安保改定の調印を見るや、はたしてソ連、中国の態度は俄然硬化し、ことにソ連政府は、日本における外国軍隊の撤退実現を見ない限り、歯舞、色丹両島の返還に応じない旨の通告を行ない、また、ソ連極東軍司令官も軍事的観点を主としたこの問題についての見解と主張を公表しているのであります。まことに皮肉なことでありますが、本来極東及びわが国の安全を保障すべき今回の改定が、かねて予想されたように、ソ連、中国を硬化させ、早くも極東の不安を激化させることにより、逆にわが国の不安全を保障しつつあるこの現象こそ、安保改定がその名にそむき、不安を激化するという本質を内蔵していることをみずから表明するものであると断ぜざるを得ないのであります。安保改定交渉が、かつて岸総理みずから揚言したいわゆる日米新時代到来の一里塚たるべきものとして開始されてからここに一年三ヵ月、その間に行なわれた交渉内容と、その問題点に関する政府側の答弁、または多くの識者の論説は、実に多種多様にわたったのでありますが、その論争点の主要な一つでありながら、しかも具体的に論及されなかった点は、安保改定の不安全性と共産圏諸国の動向との関連、それに続いて日本の対共産圏外交のあり方についての問題であります。一体政府は、安保改定の結果、共産圏諸国との関係において極東情勢の推移をめぐり危機が招来されるということを全く予想し得なかったのでありましはうか。そういうようなことはとうてい私は信じ得ないのであります。そこで、政府お尋ねいたしたい点は、まず、日米関係において沖縄の早期返還を期待し得ざるのみか、対ソ関係において少なくとも十年間北方領土の問題をたな上げにせざるを得ないような結果を招いた安保改定とそ、極東の軍事情勢の緊迫化の直接的な原因であることを知るべきであります。かつまた一方において安保改定を強行しつつ、一方においていかなる方法によって対共産圏外交の打開に努めんとするのかという、この二点であります。あわせてお伺いしたいことは、政府は、従来も、いたずらに対米協力を強調するのあまり、わが国独自の立場からする自主的判断を基礎とした対共産圏外交に関する積極的方針と具体策とを全く欠除したのみか、ただただアメリカの対ソ・対中国外交方式の先例に従い続け、かつて鳩山内閣時代、日ソ国交回復をはかってこの問題解決への第一歩を踏み出した事例を、あたかも無視するかのごとき態度を独断的にとってきたことに対する反省であります。この対共産圏外交に関する積極的方途を見失い、国際情勢の推移を無視した外交方針こそ、とりもなおさず、安保改定によって極東の不安を醸成し、かつ極東の平和と安全を維持しているがごとき錯覚に陥っている鈍感さの原因と言わざるを得ません。なおまた、現実に派生する問題として、政府代表を派遣して行なわれようとする日ソ漁業条約問題についても、その及ぼす結果については政府は一切の責任を負わねばならないことは言うを待たないのであります。以上の諸点について、もし打開の名案があるならば、総理及び外相の誠意ある御答弁をいただきたいのであります。  質問の第三点として、外務大臣及び防衛庁長官にお尋ねいたしたい点は、今次改定の結果生じた米軍との共同行動における日本の能動的行動についてであります。政府はしばしば、従来の安保条約は自主的でなく、片務性を帯び、不平等であったことを強調し、改定の結果、これら日本にとって不利な点がことごとく解決されたと称し、これによって日本の自主独立が完成されるかのごとき見解を述べておるのであります。私もまた、従来の条約があまりにも自主性に欠け、片務的であり、不平等であることは認めるものでありまするが、しかしながら、その反面において見落としてならないことは、一例をあげて言うならば、かつての朝鮮戦争の場合のごとき、たとえ米軍が在日基地から朝鮮の戦線に向けて出動しても、その出動、その作戦行動は、米軍それ自体の必要によるものでこそあれ、そこには日本側の意思責任も含まれていないという点であります。それに引きかえて、今回の改正によれば、米軍の行動に日本側の意思責任が伴ってくるというのであります。すなわち、戦争を前提とせざるを得ないこの場合において、自衛隊の海外派遣、日本本土に対する軍事攻撃を招くのはもちろんのこと、想像するだにりつ然とせざるを得ないような不幸な事態が生ずるであろうことを予想しない者はないと思います。現実にかかる条約が存在している現在、これを仮定の問題として片づけるには、問題はあまりにも深刻であります。行動における形式的自主性の回復が、事実問題においてその逆の場合を招くであろうことが容易に想像される現在、米軍との共同行動において日本側の意思責任が伴ってくる以上、政府としては当然にその結果を予想されておられることと思われるのでありまするが、その結果を一体どのように予想しておるのかを明確に承りたいと思うのであります。  第四点として、問題の多い事前協議に関して外務大臣にお伺いいたします。事前協議が、いわゆる協議することのみを意味し、合意を要する旨の明文化された規定が存在しないがゆえに、事前協議とは実質的には単なる注意規定にしかすぎず、事前協議によって日本側の不同意の意思が明確にされても、それによって米軍の行動を制約し得るものではないことは、野党の同僚諸君が常に問題として終始追及してきたところであり、先般私もまた藤山外相の所見をただしたところであります。当時においても、政府答弁は、ひたすらに、事前協議には日本の拒否権発動の権利が法律的にも留保されており、彼我の合意なき場合は日本側の意向を無視した米軍の行動はあり得な  いという一点張りであったのでありますが、今回の日米共同声明においても、ただアメリカのこの問題に対する善意ある意向が示されたのみにとどまり、従来の首相、外相の責任ある言明に反して、日本の権利留保は何ら法律上の根拠を有する明確な規定ではなかったことが、逆に明白にされたのであります。私はこの際、はっきりとお聞きしたいことは、事前協議において、日本は明白に不同意の意思をもって米軍の行動を制約し得る根拠ありとするならば、しかもそれが法律上明文化されていないというのに、その根拠を一体いずれに求めることができるのか。さらにもう一点、政府側の解釈によって拒否権を行使し得る具体例をはっきりと示していただきたいのであります。この事前協議について言うならば、当事国は条約上明記されない権利を行使することは絶対にできないはずであります。であればこそ、この点の不安にこたえるために、日米共同声明の中に米国の善意が示されたのであります。しかるに、条約によって「極東の平和と安全を維持するため」に、  日本は米国に軍事基地を提供貸与するものである以上、米軍は、台湾であれ、朝鮮であれ、ベトナムであれ、いつでも出動し得る法律上の根拠と権利とを掌握しているのであります。事前協議において拒否権を行使し得る有効な手段の確定を欠除している改定条約は、ただ単に日本に不利であるという点のみにとどまらず、従来の政府のたび重なる言明にも反して、明らかに日本にとっては非自主的にして不平等なる条約と言うのほかなく、ここに、はしなくも岸内閣の対米隷属政策の完成された姿が露呈されていることを指摘いたしまして重ねて、事前協議に際して日本側が拒否権を行使し得る根拠及びその具体的事例を示すよう、外相の責任ある御答弁を求める次第であります。  第五点として、条約の期限と国際情勢、ことにアジアの情勢の推移について、首相及び外相にお尋ねいたします。私は、いまだかつて一度も、条約の期限を十年とした論拠を政府側の説明として十分納得し得る程度に伺ったことはなく、また世上多くの非難がこの期限十年と定められたことに向けられている事実も承知いたしておるのであります。その論難の多くは、しかして論争の中心点は、第一に、十年に定めた根拠を十分説明されておらず、すこぶる薄弱であること、第二に、変化の激しい現在、世界情勢の激変が予想されるというこの時期に際して、国家の政策を十年間も固定化するということは日本にとって著しく不利益をもたらすであろうこと、この二点であります。およそ今回の条約改定において最も不可解なるものの一つがこの期限十一年であることは、多言を要しないところであります。私はこの際、期限十年の前提となる今後十年間にわたる国際情勢の推移について、その見通しと予想される事態の変化について政府認識をただしたいと思うのであります。もちろん、いかなる人といえども今後十年間の国際情勢が現在と比較して全く同じ状態であると考える人はないはずでありますと同時に、軽率に次の時代を予想し得るものでないこともまた自明の理であると言わざるを得ません。だれが十年前今日のごときアフリカにおける民族国家の独立の続出を予想し得たでありましょうか。同様に、だれが今後十年以内に中国の国際連合加盟が実現しないと断言し得るでありましょうか。事態の進展の予測は時に全く不可能とさえ思われるような流動する現代において、特に注目すべきはアジアの情勢であります。隣邦中国は決して今後十年間現状のまま推移することはあり得べからざることであります。アメリカともども日本が中国を承認し、中国の国連加盟が実現する場合、安保条約の運命は十年を待たずして一体どこへいくのでありましょうか。さらにまた、かつて藤山外相が本院予算委員会で御答弁なされましたように、極東の平和と安全を維持するためならば沿海州まで出動し得るとする改定条約は、いたずらにアジアの不安を増加させるだけのものであり、かくして今後のアジアの情勢の推移に日本もまた重大な責任を負わねばならない点を考慮に入れるとき、この期限十年の前提となる情勢の分析とその結論は、きわめて重大な意味を持つものと言わなければなりません。  次に首相に特にお伺いいたしたい点は、今後の日米友好関係、その協力体制をどのように設定すべきかという基本的問題についてであります。私は、軍事的観点にのみ主力を置いた対米協力政策に疑問を持ち、それに対しては否定的見解を表明するものでありまするが、さればといって一切の日米協力体制を否定するものではありません。今回の安保改定にあたって、政府は軍事的色彩が強調されるのを恐れて、条文表現上に深甚な注意を払い、調印に際しても財界代表を全権団に加える等の措置を講じておりますが、現今世界の大勢は、多くの紆余曲折を経ながらも、戦争回避、全面的軍縮の方向に動きつつあり、平和的共存または競争的共存の旗のもとに、世界政治は新しい局面をようやく迎えようとしておるのであります。すなわちこれは戦争によらず、国際的競争を主として経済と社会に求めようとするものであります。国家的独立あるいは国民的統一のすべてを軍事力として表現し、戦争によって勝敗を決した時代は過ぎ去ろうとしているのであります。かつて対ソ封じ込め論者の一人言あったアメリカのジョージ・ケナン氏も、最近のある論文で、今日ではある種の資本主義とある種の社会主義の間には明確な境界線はないと述べ、またある論者は、資本主義圏の社会政策と共産圏の自由化政策がともに必然性を有していると説き、その転換の形態は何であろうとも、世界の大勢が経済競争の方向に傾いていることは、今日その端緒についたばかりとはい、え、否定できない現実であると考えるのであります。従ってわが国としても、この方向に沿うべき日米友好関係の設定とその協力体制を確立するために、主力を、加速度の再軍備と軍需生産、そうしてアジアの兵器廠化を軸とした軍事的方面ではなく、経済的、文化的協力を主軸とした日米関係の結合を求め、それを強化していかなければならないと考えるのであります。これは決して抽象的一般論や政治哲学的理念の問題ではありません。一九四七年三月のいわゆるトルーマン・ドクトリンによって、第二次大戦中の米ソの協力体制にピリオドが打たれて以来、冷たい戦争の時代、緊張緩和の時代を通過して今日に至り、恐るべき破壊兵器による自滅を避けねばならないことが至上命題として認められている今日、米ソ両国の最高首脳者によってその方向を唱道されている現実であります。首相はこの世界情勢の変化発展に対応して、この際思い匂った政策転換を行ない、日本の命運を守るべきであると思うが、明確な御所信を承りたいと思うのであります。  最後に一点、私は、今次通常国会における最大の問題は、よかれ悪しかれ、今後の日本の国是となり、その運命を制するであろうと考えられます問題、すなわち、この改定条約をめぐる諸問題についてのみ質問を行なった次第七ありますが、ここに特徴的なこととして、新条約調印のための出発に際して、全学連の一部過激分子による妨害を恐るるのあまり、異例の行動をとって、あたかも逃げるがごとく羽田を出発されまして、一国の首相としてその不面目を露呈されたことは、国民とともに深く遺憾とするものであります。もし首相が常に青年にさとす誠意と確信あらば、彼らを説得することは不可能ではないはずであります。次代を背負う青年に対して首相はいかなる見識をもって指導さるる所信かを承りたいと思うのであります。  以上、安保条約改定重要性にかんがみ、若干の苦言を呈するとともに、多くの反対論者の言論にも謙虚に耳を傾け、声なき民の声も聞き取って今や日本の運命を左右すべき巌頭に立って、あえて大胆な政策転換を行なうことが岸内閣の使命であることを指摘して、首相答弁を期待しつつ、私の質問を終わる次第であります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  質問の前提となっております国際情勢の問題をいかに把握認識するかという問題に関しましては、一昨日来しばしば申し上げております通り、いわゆる全面的な戦争というこの危険は去りつつあるが、東西両陣営の対立は依然として存しており、そうしてその対立の間において、力によらず、話し合いで懸案を解決しようという空気が醸成されておる。一面、共産主義国間におけるところの団結というものについてはいよいよこれを強化する方向に行っておるし、自由主義国間における協力関係というものもこれを強化していって、そうして、両陣営の間におけるところの今まで未解決であった幾多の問題をどんな困難があっても話し合いによって根強くこれを解決するように努力する、というのが現在の国際情勢の実情であります。そうして、それが平和的共存であるとか、あるいは競争的共存であるとかという言葉でいわれているように、共産主義の陣営と自由主義の陣営との間のものの考え方や、あるいは世界政策上の考え方というものについては、両方は根本的に違っておるけれども、しかしながら、それを力で解決せずに話し合いでやるという考えであり、その間において両陣営が団結を固め、あるいは経済面における競争であるとか、あるいは文化面における競争であるとかというようなことが、依然として強力に行なわれておるというのが実情であると私は思います。こういう情勢のもとにおいて、従来ありますところのいわゆる集団安全保障の体制というものは、依然として、自由主義の陣営におきましても、また共産主義の陣営においてもこれが維持されていっておる、というのが今日の現状である、こういう情勢に立って、一体、日本の現在ある安保条約というものが、どういう体制であり、どういう内容をもっておるかということについては、すでに千田議員も御指摘になっておるように、非常な不平等な点もあり、また、日本の自主体制の認められておらない現行制度というものを、これを合理的に改正するということは、多年のわれわれの熱望であり、また、これを、今申しましたような国際情勢において、合理的な基礎において改定するということは、日本の最近における国力の充実、国際的な地位の向上からいって、われわれは一日も早くこれを実現しなければならない問題であると、私はかように考えております。  この安保条約の改定と対共産圏に対する外交についてどういうふうに考えておるかという、根本の問題についての御質問であります。また、この改定と、日本が潜在主権を持っておる沖縄の問題はどうなるか、あるいは北方領土がどうであるか、特に最近におけるソ連の覚書等に見るがごとき、北方の領土についての非常なソ連側の強硬な申し入れに対してどういうふうに考えるかというような問題についてでありますが、沖縄の問題につきましては、言うまでもなく、われわれがここに潜在主権を持っているということは、この前、私が訪米の際に、日米共同宣言におきましても主張し、アメリカ側においてもそのことは認めております。ただ、施政権を今日の状態において直ちにこれを返還するということを情勢が許さないのであります。私は、しかしながら、この返還は国をあげての要望であり、住民の非常な悲願でございますから、これを実現するためには、やはり順を追うてこの実績を積み重ねることが適当である。  施政権を米国が持っておるといって、日本政府が全然これに関与しないということではなくして日本政府ができるだけいろいろな施策に対して関与し協力して、そうしてここに住民の福祉の向上と経済の発展に資したい、かように考えて、そのことの申し合わせを今回の会談におきましてもいたしております。現実に西表の開発計画等においてはこれが実現しつつあります。  北方の領土については、従来日ソ間の交渉におきましても、不幸にしてわれわれの主張とソ連の主張とは全然違っております。共同宣言によっていわゆる平和条約を結べなかったこともその理由であります。さらに、北方における安全操業等に関連して、依然としてわれわれの国民的の主張はソ連のいれるところになっておりません。従って、これは安保条約のいかんにかかわらず、まだ解決する状況には私はないと思います。今回の安保条約の改定に関連してのソ連の覚書は、私は、国際信義の立場からはなはだ遺憾であり、従って、そのソ連の主張は私は全く理不尽であると考えております。これに対して政府として強硬な反省を求めるつもりであります。共産圏の国々が、安保条約改定について、調印前からこの問題を取り上げていろいろと日本国内に対し、また、いろいろな声明やその他の方法によって反対の意向を示しておることは御承知の通りであります。私どもは、一国の安全保障に関する問題や外交方封の基本というものは、独立国として、その国民が自主的にきめるべきものであって、他から内政干渉を受けるへき性質のものではないと、私は強く考えております。(拍手)安保条約体制をとるということは、日本が自由主義の立場を堅持し、あくまでも自由主義の国々と手を握って世界の平和を増進しようという国の基本態度をきめたものであります。しかしながら、それが決して共産国を敵視するものでもなければ、これとの話し合いをわれわれは拒否するものではございません。あくまでもわれわれは、必要な話し合いによっていろいろな問題を解決していこう。現に貿易協定の日ソ間の改定は順調に進行しております。また、日ソ漁業交渉の問題につきましても、これは例年、御承知のように、その漁獲高については両国の意見がなかなか一致しないのでありまして、ことしは安保条約のいかんにかかわらず非常にその交渉が困難であろうということは、われわれ予想しておるのでありますが、われわれは、あくまでも科学的な基礎に基づいてこの漁業協定の交渉を委員会においてやっていくつもりであります。  安保条約の期限の問題に関して、今後アジアの情勢をどういうふうに見るかというふうな御質問でありました。こうした独立国お互いが理解と信頼の上に協力をしていく、防衛のみならず、寅るいは経済、政治、各方面について強い協力関係を作っていくというような条約が、一定の安定の期間を持つということは、これは世界の各地に見られることであり、また、それは望ましいことであると思うのであります。はたして期限十年が適当であるか、あるいは二十年が適当であるか、あるいは十五年が適当であるかというような見方につきましては、私はいろいろな見解があると思います。現に存しておる中ソの間の場合は三十年、あるいはNATOが二十年というふうな安定期間を持っておることも御承知の通りであります。ここに、現行の条約が無期限であるのに対して、われわれは一定の安定の期限を置き、同時に国際情勢の変遷等も頭に置いてこの十年ということをきめたのであります。決してこれが科学的に算術的に証明のできる問題ではないと思いますが、大体十年くらいがいろいろなものと関連して適当ではないか、こう思っております。もっとも、われわれは、あくまでも国連における安全保障機構ができるということを念願しており、それができれば、十年の間におきましてもこれが消滅することは、これは当然であります。ただ、十年の間にはアジアにおいてもいろいろな変化があるだろう、これは私どもそう思っております。中華人民共和国の国連の加入もその間には起こるじゃないかというふうな御意見もございます。これもどうなるということを今からはっきり申し上げることはできないと思いますが、しかし、私は、かりにこの中華人民共和国が国連に加盟いたしましても、私は、この安保条約というものがそのために変更しなきゃならぬという直接の関係はないと思います。あくまでもとの条約は防衛的なものであり、また、日米の協力を一そう対等の形において増進しようという性質のものでありますから、私はそういうことによって直ちに変更する必要はない、かように思っております。  経済協力の問題あるいはさらに日米間においてより一そう文化的なあるいは各方面におけるところの協力関係を進めていくべきであるという問題につきましては、私どももそう思い、また、今度の条約の二条にその意味のことを規定しておるのでありまして、しこうして、このことは、単にこの条約のうたい文句だけではなくして、日米の間に存するところの貿易関係をどういうふうに今後増進していくか、あるいはそれをスムーズにやっていくか、また、外資導入を円滑ならしめるかどうか、あるいは低開発国に対してどういうふうに日米が協力していくかというような実質的な問題に関して常に緊密な関係を持っていくことが必要であり、また、それについての機構等についても研究して参りたいと思っております。  青年対策の問題に関して、私の出発に際しての全学連の一部の学生諸君の常軌を逸した行動については、はなはだ遺憾と思うということを施政方針に亀述べまして、これらの青年、将来の長本を背負うべきこれらの有為の青年が、正常なる、正当なる学生運動、また、学生が学生として、将来の活動に備える教養を積むように強く要望をいたしておるわけでありまして、私はそういう点に関しても、一部においてはそういう過激な運動もありますが、大多数の学生諸君が、正常な学生として勉学に努め、修業に努めておられるそれらの学生が、そういう一部の過激な行動のために、いろいろな迷惑を受けておるというような実情も考えまして、将来に向かって十分反省を促していきたいと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 対共産圏外交をどういうふうにして進めるかというようなお話があったと思います。私どもは、信条の異なる国といえども、むろん共存の道を平和的にたどりますことは必要だと考えておるのでありまして、その立場から申しまして、共産圏の国々といえども国交を回復すべきものには回復をする手続をとっておるのでありまして、御承知の通り、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー等とは昨年の秋に国交の回復をいたしたような状態でございます。なお、ソ連との外交の関係につきましても、われわれは貿易の拡大というような問題については、できるだけ両国のために進めて参らなければならぬのでありまするから、今回の貿易協定の改定にあたりましても、ソ連側が長期な貿易協定を望んでおりましたので、われわれも今回は従来の一年の協定をやめまして、三年の期間に継続するような協定にいたし、なお、延べ払い等の問題についても、できるだけ日本の金融事情の許す限りにおいてその方途を開いていくことで、ただいま協議をいたしておりましておよそ一、二週間のうちに円満にこれらの協定が締結されることになろうと思うのでありまして、われわれは、ことさらに共産圏であるからといって特に何らかの前提観念を持って扱ってはおらないのでございます。  中共との関係につきましては、われわれといたしましては、できるだけ今後とも友好関係をお互いの立場を持ちながら進めて参りますことは、これは当然のことだと思うのであります。ただ、この関係におきましては、歴史的ないろいろな状況もございますし、また国際情勢の中におけるいろいろな環境もございます。また、先般申し上げましたように、中共側におきますいろいろな誤解、あるいはそういうような点もあるようにわれわれは思うのでありましてわれわれとしては、そういうことを十分考えながら、将来にわたっては、中国大陸における中華人民共和国の持っている位置というものを認めながら問題を展開していくという立場にあるわけでございます。  次に、朝鮮戦争の場合における御質問でございました。現に吉田・アチソン交換公文がございまして、国連の決議によりまして国連軍を日本が支持することになっております。今後とも国連加盟国の一員として、国連の決議に従って参りますことは当然であると思うのでありまして、それらの点についてはできるだけ支持と協力を惜しまないようにいたして参るわけでありますが、しかし、日本におります国連軍としての米軍も、新しい安保条約の規定の適用を受けることは、これは当然今回の条約改定でそういうふうになっている次第でございます。  次に、事前協議の問題でございますが、協議が成立するためには意見が一致ずるということは当然のことだと思うのであります。特に今回特定の問題に関しまして事前協議という言葉を使いましたのは、この事前協議そのものが、事前に協議をするということは、その協議がととのって一つ意思が決定されなければならないことなんでありまして、そういう意味においてわれわれは事前協議という言葉を使っておるわけであります。従って、意思の決定の際には日本側のイエスもノーも十分に入るわけなんであります。そういうことで、日本がノーと言いますれば、そういう協議がととのわないことになるので、その意味におきまして、はっきりこれは事前協議という言葉でもって条約上にも明らかにされておるのでありますが、同時に、その交渉の立場から申したその点につきまして、今回の共同声明においてさらに明らかにされておるのでございます。  次に、今後の十年間の国際情勢の見通しということでございますが、この点については、ただいま総理も御返答のありましたように、なかなか十年の今後の国際情勢を見通して参りますことはむずかしいことであります。しかしながら、本年が雪解けの出発点になるような気持でみんなが努力して参ることは必要なことでありまして、われわれとしては、平和な社会が一日も早く来るような時代を待望しながら努力をしていくというのでありまして、今後現実にそれらの問題が十年後にどうなっていくかという問題は、予測しがたい問題だと思います。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  16. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) アメリカ軍が日本防衛の目的外に、戦闘、作戦行動のために基地としての施設及び区域を使用すること、このことにつきましては、現行安保条約のもとでは、日本意思にかかわりなく行なわれるということは、御指摘の通りであります。このような日本の知らない間にこういうことが行なわれているということは、独立国としての日本としてきわめて不合理であるというようなことから、事前協議の対象にいたしたことも御指摘の通りであります。そういう場合に、日本としての意思責任が伴うのじゃないかと、こういうお尋ねでございます。そういう場合に、日本の基地の使用を認める、これにつきましては、第一に米軍の行動が国連憲章のワク内であるかどうかということの検討が必要であると思います。ワク内であるということで日本政府は使用を認めることに相なると思います。でありますので、日本政府が違法な行為に加担、したり、これについて責任負担するということは、絶対にあり得ない、こう考えます。  第二に、その使用を認める場合、わが国の安全と生存に及ぼします影響につきましては慎重な検討を加えまして、事後に起こるような事態等に対しましても万全の措置を講ずる所存であります。御指摘のような海外派兵というようなことは絶対あり得ないと申し上げて差しつかえないと思います。(拍手)     ―――――――――――――
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 野坂参三君。    〔野坂参三君登壇拍手
  18. 野坂參三

    ○野坂参三君 私は日本共産党を代表して、総理と外務大臣の演説に対する質問を行ないたいと思います。  私の割当時間が不当に短いので、私としては、ただ安保条約の問題についてだけ申し上げます。その場合、総理に申し上げたいことは、    〔議長退席、副議長着席]野坂君とは世界観が違うのだからということで答えを逃げないようにしていただきたい。違うから逃げるというならみんな違います。  一九六〇年初頭にあたって、アジアで二つの国際条約が結ばれました。一つは新しい日米安全保障条約であり、もう一つは中国とビルマの友好不可侵条約であります。この二つの条約は、今後のアジアと世界の情勢に重大な影響を与えるとともに、これらの国々の全く相反した進路を示すものであります。すなわち、中国・ビルマ条約は、平和五原則を基礎にした不可侵条約であります。この条約は、岸総理が一昨日から国会の壇上でいろいろ申されておりますが、それとは違って、平和共存と緊張緩和が、現実に、ただ希望だけでなしに、現実に力強く発展している一つの証拠です。他方、新日米安保条約は、緊張の激化と力の政策を基礎とした侵略的な軍事同盟であります。平和と繁栄の世界の大勢に逆行してわが国を破滅の方向に導くものであります。そこでわが国民は、二つの条約の示すどちらの方向に進むことを願っているか。言うまでもなく友好不可侵の方向であって、軍事同盟の方向では断じてありません。ところが岸内閣と自民党は、軍事同盟を目ざす新安保条約の批准を、今、国会に求めようとしております。私は国民の名において、政府の企図に断固反対しなければならない。次に、質問として特に指摘したい第一点は、それは、新安保条約は現行安保条約と同じく、依然として日本全土にわたってアメリカの軍事基地と軍隊の駐留を許しております。日本放棄していない小笠原、沖縄が、実質的に日本から奪い取られております。こうしてわが国の主権は重大な侵害を受け、独立は失われております。この事実を何人も否定することはできません。わが国民の悲願は、このような屈辱的な状態から一日も早く脱却して、ほんとうの、真実の独立国になりたいということです。日本人であるならば、だれでもそう考えるべきです。自由民主党の諸君もそうです。ところがこの国民の強い要望をごまかすために、首相や外相は、新条約は日米対等の立場で結ばれたのだと自画自賛されておりますが、日本がアメリカに半ば占領されていて、どこに一体対等がありますか。だからごらんなさい、自由民主党の議員のある人は、安保改定は対等に向かっての一ミリメートルの前進でもないということを、皆さん方の同僚か書いております。もし日本の独立と対等の立場を真に念願するならば、何よりもまず、この屈辱的な不平等な状態の打開に全力をあげるべきです。ところが、政府は全く逆に、今回の改定にあたって、この点に対しては指一本も触れなかっただけでなく、この状態を、いわゆる自主的意思によってあらためて確認し、その基礎の上に、軍事同盟を柱にして、政治的にも経済的にも対米従属を一そう固めようとしているのであります。これが第一点。  第二点として、この新条約の不当な性格を最もよく現わしているのは、吉田・アチソン交換公文をそのまま引き継いだことであります。この交換公文は、御承知のように、朝鮮戦争当時、アメリカがその軍事行動を国連軍という名称で合理化して、わが国に協力させるために義務を押しつけたのであります。この交換公文は“一九五〇年七月の安保理事会と翌年二月の国連総会の決議に基づいたものであります。その決議は、国連軍の行動範囲を朝鮮地域だけに限定しております。しかるにこの吉田・アチソン交換公文では、この行動の範囲を勝手に朝鮮から極東全域にまで拡大しております。これは明らかに、国連と世界人民を欺いて、アメリカと日本政府が共謀して行なった不法不信の行為であります。その目的は、アメリカの軍事行動の地域を、朝鮮からさらにアジア諸国に、特に台湾海峡にまで拡大し、中国、ソビエトを攻撃する軍事行動に日本協力させるたくらみでありました。岸政府は、このたびの安保改定にあたって、この九年前の交換公文をそっくりそのまま引き継いだのであります。つまり国連軍の名によって、アメリカが極東全域、国連の決定によっては極東とは言っておりません。朝鮮だけと言っている。ところが、この交換公文は極東にまでこの行動を広げている。特に中ソ両国に対する侵略行動が自由に行なわれ得る根拠を依然として残そうというのが、今度の交換公文の引き継ぎであります。岸総理と藤山外相は、このような不法行為を一体認めておられるのかどうか、また、この交換公文を引き継ぐことにどのような理由があるのか、明確な答弁を求めます。中国やソビエトの政府やアジア諸国の人民が、新安保条約に深刻な不安を感じ、これに抗議しているのは、この点からも当然のことといわなければなりません。  ここで、ソ連との関係について一言します。政府はソ連政府の最近の覚書を非難して、それは日ソ共同宣言に違反するものであり、また内政干渉であると抗議しております。これは全く白を黒と言いくるめようとする態度であります。共同宣言では、日ソ両国間の国交の回復は、「極東の平和と安全に役立つ両国間の相互理解と協力に貢献するもの」と、こうはっきり書いてあります。ところが岸内閣は、この共同宣言の精神を今日までことごとく踏みにじったではありませんか。たとえば平和条約を締結しようというソビエト側からの再三の申し入れに対して岸内閣は領土問題にかこつけて交渉を始めることさえも拒否し続けております。またアメリカをも含めた日本の平和と安全を保障し得る集団安全保障条約の締結を、頭から受けつけまいとしております。さらには、最近のソ連政府日本政府にあてた軍縮に関するメッセージを全く黙殺しております。これら一連の事実は、岸内閣こそが、事実上共同宣言を踏みにじり、ソ連の日本に対する友好的態度を無視し、国際信義にもとる行為といわなければなりません。  第三に、総理と外相は、施政演説の中で、新安保条約を正当づけるために、盛んに国連憲章をかつぎ出しております。ところが、新安保条約の第四条、第六条を見ますと、これでは国連憲章を事実上踏みにじっておる。これは重大な問題です。この点にこそ新条約の本質が最もよく現われているのであります。  まず国連憲章第五十一条は、「国連加盟国に対して実際に武力攻撃が発生した場合にのみ、自衛権を発動する権利がある」ことを認めております。ところが、新安保条約第四条、第六条は、実際に武力攻撃が発生しない場合でも、「極東における平和と安全の脅威が生じたとき」には、武力の発動ができるように拡大し、改ざんしております。このようにして、日米両政府が、極東の平和と安全を守るという理由で、自衛権の名のもとに侵略的な行動を起こし得るようにしております。これは、まさに国連憲章の明白なじゅうりんであります。  次に、それでは政府のいわゆる平和に対する脅威を決定するのは一体だれがやるのか。国連憲章では、安保理事会にあると明白に規定しております。すなわち極東の平和とか世界の平和に対する脅威の有無をアメリカや日本が勝手にきめるのでなくて、それは安保理事会でやるのだという趣旨であります。しかるに、新安保条約第四条、第六条によりますと、「極東における国際の平和及び安全に対する脅威」を日米両国政府だけで決定し、これに対する武力行動をも行ない得ることを規定しております。このように見てくると、政府の一枚看板である国連憲章の尊重とは、実は新条約が自衛のためではなくて侵略的な軍事同盟であるという本質を隠すためのただ隠れみのにすぎないのであります。これは国連及び全加盟国に対する冒涜であり、国民に対する最も卑劣な欺であります。これに対して総理と外相の所見をただしたい。  最後に、政府が世界の大勢に逆行し、日本国民とアジアの人民の反対を押し切ってあえて新条約を締結したのはなぜであるか、この点に触れなければなりません。これは社会主義陣営の偉大な発展と優位に抗し、世界資本主義体制の弱化と後退を防ぎとめるために、また日本国民の独立、平和、中立、民主主義の力強い戦いを抑圧するために、アメリカ帝国主義の庇護と援助のもとに、日本の反動勢力が、軍国主義、帝国主義の復活強化をはかろうとするものにほかなりません。このことはアメリカと日本支配者の強さを示すものではない、反対にその弱さとあがきを示すものであります。新安保条約は岸総理の言うような自由と平和のとりでではなくて、保守反動の独裁と侵略のための竹やりです。この竹やりはやがて人民の手によってへし折られるでありましょう。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 新安保条約の真の目的は、私がしばしば繰り返しておるように、平和と自由を守るための条約でありまして、国連憲章に違反した侵略がない限りは絶対に発動しない規定でございます。従って、これを侵略的軍事的同盟だと言われる野坂君の考えは、私は全くこの条約の本旨を誤解されておるか歪曲されておるというほかはないと思います。吉田・アチソン交換公文は、御承知のように、一九五一年の国連の決議に基づいて、朝鮮において組織されておる国連軍というものに対して支持と協力を与えるということであります。しかしてまた、朝鮮の事変は休戦の状態に行っておって最後の解決が見られておらないのであります。従って依然として国連軍の関係は続いておるのであって、これに対して同様な支持と協力を与えるとい菊ことは、これは国連のメンバーとしては当然だと思っております。  条約第四条、第六条と国連憲章との関係についての御質問でありましたが、これは条約をよくごらん下さればきわめて明瞭であるように、第四条は一定の場合において協議するということでございます。それから第六条は、施設に対する使用を許可した、いわゆる基地を供与する規定であります。決してこれが武力の行使に関する規定ではないのであります。従って国連憲章の五十一条と何ら違反するものではないのであります。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま総理がすでに答弁されましたので、私は総理答弁通りでよろしいと考えております。なお、最後にソ連の関係について言われましたけれども日本がソ連に対して信義を破ったということはございません。(拍手
  21. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 大河原一次君。    〔大河原一次君登壇拍手
  22. 大河原一次

    ○大河原一次君 私は日本社会党を代表して、岸総理施政演説に関し、農業問題を中心といたしまして、地方財政及び中小企業に若干触れ、総理並びに関係各大臣に御質問申し上げます。  最初に、農政と予算に関してお伺いいたしますが、今日、日本の農業と農政の上に強くその転換が要請されていることは御承知の通りであります。日本の農業と農民は、戦前における地主の搾取と資本主義発展の犠牲としての戦争による人的及び物的資源の荒廃により、他産業に比べて決定的な立ち遅れにあり、しかも今日といえども依然として独占資本による搾取があらゆる部面において行なわれ、今日の所得の相対的低下、農工間の不均衡拡大、従ってそれは日本経済の不安定的成長という現象を呈しているのであります。しかも今日までの農政を見るならば、一貫して救農政策であり、困苦欠乏に耐えなさいという勤労精神の押しつけであり、増産主義に立つ冷めたい物量農政であったと言わなければなりません。(拍手)農政転換の問題は、まずここに基本を置いて、いわゆる曲がり角の実相に対処すべきでありましょう。岸総理や福田農林大臣がしばしば説かれる生産性向上やその基盤確立のみでは解決にはならないと思います。要は、兼業農家や貧乏の増大する原因、農業の発展を妨げるものは一体何か。生産性向上といっても、その条件も余地もない中農・貧農をいかにすべきか等の問題は、十分反省され、究明されまして、今こそ全農民を対象とするあたたかい人間農政への転換が必要であると思うのでありまするが、岸総理大臣の農政に対する基本考え方をお示し願いたいと思うのであります。  次に、岸内閣の三大政策一つと言われております所得倍増十カ年計画であります。政府は、この政策実現し、国民の所得を倍増し、農工及び大企業、中小企業間に見られる所得の較差を是正するとしておりますが、すでに検討されたところによりますと、一般産業部面におきましては年率七%二の成長率が可能であると言われておりまするが、農業においてはその年率二・五%からせいぜい三%程度であろうと推定されているのであります。このような状態で推移するならば、農業非農業の較差はさらに増大するであろうし、農業所得の倍増されるのはおよそ二十有余年先のこととなると言われているのであります。政府はいかにこれに対処されんとするか。また所得倍増の対象は、全国民であるのか、それともある特定の階層なのか。岸総理並びに関係大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。  さらに私は、三十五年度農林予算に関してお尋ねいたします。なるほど総額千三百十九億は前年度より二百五十六億の増額でありますが、総予算との比は八・四%であり、昨年度に比しわずか一%増であります。さらに増額二百五十六億のうち、災害関係に七十三億円、食管会計の赤字穴埋めのために百三億円、農業基盤整備費として五十三億その他であります。従って、本来の農政予算としてはわずかに七十八億程度でありまして、所得倍増を指向し、生産性向上を強く推進される政府といたしましてはあまりにも少額であり、新農政の柱も新農政の芽生えもない予算であると言わなければなりません。(拍手)人口の四割以上を占め、国民の糧道を担当している農民は、国政上重要な地位でなければなりません。農政が農政として立っていくためには、少なくとも一割以上の予算は当然でなければなりません。また、所得倍増十カ年の計画予算が一体どこに組まれているか。農林大臣並びに佐藤大蔵大臣の御答弁を願いたいのであります。  さて、私は、今日当面しております貿易・為替の自由化と農業の問題に触れて御質問申し上げます。わが国農業の生産性が非常に低いということがあたかも農民の責任であるかのように指摘されまして、国際農作物価格の割高が問題視されておる際、政府は、貿易の自由化は世界の大勢なりといたしまして、昨年下期外貨予算の編成にあたって、輸入自由化の方針により、輸入制限の緩和の中に大豆の自動承認制の移行を打ち出したのであります。現在国産大豆は価格安定法により価格が支持されておりますが、今後自由化により異常な打撃を受けることが予想される際、経済企画庁からは早くも国産大豆の価格引き下げの声が出されているのであります。大豆の値下がりは、中小の製油会社を圧迫し、菜種にも響き、ひいては農民を困らせるということに相なるわけであります。しかも、これは単なる一例でありまして、今後自由化が推進されるならば、当面問題となりますラード、ミツマタ、菜種、コウゾ等々でありまするが、さらにテンサイ、イモ、澱粉、肉、乳製品あるいは米麦等、農産物全般にわたる影響が必至でありましょう。従って、今後の日本農業は全く裸の競争に立たせられるわけであります。今日までも、余剰農産物の輸入によりまして、いかに農民はその圧迫に苦しんできたことか。政府は貿易自由化にうき身をやつす前に、この点十分に反省をする必要がありましょう。今日の農業に必要なことは、貿易の自由化ではなくて、農業経営の基礎を全体的に固めまして、安定農業を六百万戸数の上に築き上げるための方策と、そのための国家投資であり、山林や原野に対する積極的な開発であり、充実した価格政策や思い切った流通機構の改革等でなければなりません。これらの諸対策がとられないままに、自由化に突入したり、低賃金、低価格の思想に立つ輸出方式等を考えられましたならば、農産物価格はもちろん、一般国内産業の混乱を来たすことが予想されるのでありまするが、これに対するいかなる立法上及び政策上の考慮が払われておりまするか。特に、今日の農業保護政策との調整をいかにすべきか。岸総理大臣並びに農林大臣及び関係大臣の御答弁をわずらわしたいのであります。  次に、私は農業基本法及び農業法人問題についてお伺いいたします。政府は、さきに農林白書なるものを発表し、五つの赤信号を掲げ、農政転換の方向を一応示したわけでありますが、その根本は生産性の低さにあると断定し、生産性向上を農政の中心課題といたしまして、生産基盤の確立という一枚看板で割り切ったわけであります。しかしながら、その具体案なり肝心の予算措置もほとんど考慮されないままの中で、さらに次男三男を中心とする農村の過剰人口、農村内におけるところの貧富の較差増大という、さらに二つの赤信号が今日つけ加えられておるわけであります。今日、農業基本法の制定「農業法人の法制化が全国農民の要求として強く叫ばれているゆえんは、すなわち、今日の現状をいかにして打開すべきか、これを切実にこいねがっておるからであります。政府はすでに昨年より農林漁業基本問題調査会を設けられまして、その作業が進められ、二カ年を迎えたわけでありますが、一体いつごろまでに調査の結果を御報告になられまするか。また、その結果といたしまして、この基本法制定をいつ国会に上程されるか。総理並びに農林大臣の御答弁をわずらわしたいのであります。  さらに私は、農業基本法制定と関連いたしましてお伺いいたしまするが、政府、自民党は、この基本法において、兼業農家を育成すべきものと除外すべきものとに区別いたしまして、後者を農政の対象外にすると言われておるが、これは重大な問題であります。一体除外される兼業農家の範囲をどの程度まで考慮されておるか。また、除外した農家と農民の上に今後いかなる対策をおとりになろうと考えられておりますか、お伺いいたします。さらに第二点は、価格政策の問題でありますが、政府は、価格対策の農政上の地位を需要にマッチした生産対策に置き、過度の支持価格はとるべきでないとしておるようでありまするが、私どもは、農産物価格の安定をはかることによって農業所得の維持増大を来たし、生産と消費の需給を計画化すべきであろうと思うのでありまするが、政府、自民党は、需給の上に立つ価格形成を考えられ、今日の支持価格制を全面的にくずそうとする思想ではないかと思うのでありまするが、以上の二つの点に対して農林大臣にお伺いするわけであります。  次に、農業法人の問題に若干触れて申し上げます。この問題も、基本法制定に対すると同様に、農民の要求する切実なる問題であることは御承知の通りであります。すでに農民は、政府の施策にのみたよれないという態度で、みずからの創意によって提起されたところにその特質があると思うのであります。なるほど当初は、自衛上、税の軽減が目的であったと思いますが、本質的には農民の人間解放と経営の安定化・近代化を指向しておることは御承知の通りであります。たまたま農地法上の制約で、徳島県等におきましては問題を惹起いたしましたが、すでに衆議院農水委員会においては昨年三月法制化の決議がなされておりまするし、農林大臣みずからも魅力あるものと断定されておるところでありますので、早期にその成案を得て、今国会上程を希望するものであります。この際、特に申し上げたいのは、農民は、この法人化によって、生産並びに経営の共同化体制を確立し、経営規模を拡大し、過小農を解消いたしまして、所得の増大を望んでいるのでありまして、当面一戸一法人をも含む特殊法人を単独法とし、自作農主義に立つところの現行農地法の原則は厳守いたしまして、いやしくも旧土地制度べの復帰を許すがごとき条件は付与せざるよう考量されるべきであると思うのでありますが、以上申し上げましたことに対しまして、農林大臣のこれに対する考え方、並びにいつごろこの法案が提出されるか、あわせてお答えを願いたいのであります。  次に私は米麦価政策に関して御質問申し上げます。政府は、昨年度米価決定にあたり生産費及び所得補償の算定方式をとったことは、価格政策の一歩前進であったと思うのでありますが、このことは、毎年のごとく全国の農民とその代表が中央に結集し、おらが作った米の値段づけには一言文句があるぞと、こういうことで、農民の食糧生産に投じた労働の値打ちをもっと正しく評価せよとの要請に一応こたえたものであったと思うのであります。しかるに、決定米価とその算式内容等を検討するとき、これは全くの意識的な骨抜き案であり、従来のパリティ方式とは本質的に何ら変わらざるものでございます。農民や農民団体の要求であり、長い間にわたる研さんによって作られました八〇%バルクラインを、これを不安定なものとして簡単に退け、三カ年の平均生産費を基準としたり、あるいは問題のある需給関係を反映せしめる調整係数を用いまして、かくして出た答えは、昨年同様、基本米価九千七百十五円でありまして、全国農民の期待と希望を裏切った行為であると言わざるを得ません。(拍手)すでに、昨年秋より三十五年度の米麦価決定の準備といたしまして米価審議会が開催されておりまして、本年六月にはその答申があろうと思いまするが、農林大臣はいかなる方針で臨まれるか。この際、昨年のごときあいまいな算定方式をやめまして、八〇%バルクライン方式による、全農民の要求であります真の生産費及び所得補償方式をおとりになるべきと思うのでありまするが、いかがでありましょう。  さらに関連してお尋ねいたしますが、すなわち、生産費補償の中に需給関係を取り入れるという思想でありますが、これには相当問題があろうと思います。昨年十一月に開催されました米審におきまして、たまたま問題になりましたいわゆる需給均衡価格なるものであります。大臣は、米価に関してかかる言葉を使用したことはないと言われておりまするが、審議の過程で明らかになったことは、生産費及び所得補償方式の中には経済事情として当然需給関係が含まれると断定されているのでありまするが、この言葉の中には、やがて米も需給均衡の価格にするのだという考え方が出ていると思うのであります。御承知のごとく、食管法の買い入れ価格の規定の中には、生産費、物価、その他経済事情を参酌し、もって再生産を確保するとされておりまして、あくまでも生産費が補償され、再生産が確保されることが基本であります。需給関係や、あるいは需給均衡価格を前面に出して参りましたことは、一面に生産者の正当なる価格を押えつけながら、一面には、食糧事情の好転を機に、統制をなしくずし撤廃を行なう政府の腹と見なければなりません。さらには、今日の貿易自由化による外米輸入の圧力を考慮されておる登のと考えられます。この際、政府は、農業所得の五〇%を占めております米価を引き上げ、所得倍増十カ年の計画に乗せ、農工の較差是正をはかり、生産農家の期待にこたえるべきと思うが、岸総理並びに福田農林大臣の御見解を承りたいのであります。次に、農業災害補償制度に関してお尋ねいたします。いわゆる農業共済制度は、農政上重要な地位を占めておるにもかかわらず、随所にその不合理性が指摘されました。三十三年に、損害評価の合理性、通常被害率に対する農家負担等の軽減がはかられましたが、いまだ農民の指向する所得補償、負担軽減の措置、あるいは賦課金の全廃、あるいはまた無事戻し制の確立等々、切実なる要請に対しては、何らの手も打たれず、そのままになっておることは御承知の通りであります。従って、法改正を待ち得ずして、組合解散及び事業休止等の姿となり、制度に対する不信と不満は全国各地にぶちまけられまして、「共済かけるより水かけろ」の声が増大しておるのでありますが、ここにも農政転換の実相が現われ、政府も、もはやこれ以上座視することもできないだろうし、抜本的な法改正の必要に迫られておると思うのでありまするが、農林大臣のお考えを伺いたいのであります。特に、東北地方を初めとする水田単作地帯は、比較的安定地でありまするため、その掛け金等はほとんど掛け捨てとなり、また災害にあっても、基本反収が低いため、全滅いたしましても、その保険金はわずか生産費の一部程度でございます。一般的に、保険が成立するためには給付と反対給付が均等であることが原則でありますが、農業共済の場合はその原則は成り立たないのであります。すなわち、災害の常襲地帯と無災害地帯とに明確化されております。しかも、いずれも強制的加入されておるという実態であり、加えて農民の貧困ということもございます。以上のごとき諸点を考慮し、かつ、その被害は天災によるものであるとするならば、当然これに対しては全額国庫負担で補償すべきであるとの意見も各地に出ておるのであります。いずれにいたしましても、実質がくずれておる今日の共済保険制度を改めまして、農民の要請にこたえ得る抜本的な法改正に踏み切るべきと思うが、農林大臣の御方針をお聞かせ願いたいと思います。なお、今国会に改正案が提出されるやに聞いておるのでありますが、農林大臣のはっきりしたお答えを願いたいのであります。  さらに、岸総理の一昨日の演説の中に最重点施策として取り上げられましたが、治山治水並びに地方財政に対してお伺いいたします。  今回、治山治水の両特別会計を新設、たしまして、三十五年度を初年度とする一兆五有億に及ぶところの十カ年計画を立てまして、前期五カ年計画において、治水事業四千億、治山五百五十億とし、初年度分に五百九十八億円を計上されまして、これによって戦後十年間における年平均二千四百億の被害額を五年後においてその半分にするということでありまするが、私はその着想のよしあしは別といたしまして、政府は真剣にこの計画を完遂されようとするかどうかということであります。すなわち、昭和二十九年より三十三年にかけ、三たびにわたる計画の変更、立て直しに迫まられ、年々の災害にも十分対処することができず、その実績もほとんど見られないままに、あの昨年の伊勢湾台風のごとき悲惨なる災害を引き起こし、国土と国民の上に甚大なる犠牲を強い、世に政治災という非難を買ったことは、御承知の通りであります。この際、岸総理は再軍備と安保体制確立の狂奔をやめられまして、真に民主政治家としての自覚に立ち、不退転の決意をもって今回の計画を遂行すべきと思うが、総理大臣の決意を伺いたいのであります。  さらに、この十カ年計画は、前期四千五百五十億で、後期は約六千億ということに相なりますので、従って一年ごとに予算の増大は必至でありましょう。このことは、今後国民年金や軍人恩給の当然増、新防衛六カ年計画による防衛庁費の急増等との競合から、財源措置の問題として増税をしないとするならば、公債発行ということも予想されまするが、総理並びに大蔵大臣の御見解を承りたいのであります。  次に、地方財政に関連してお伺いいたしまするが、今回の予算の編成において問題になりましたる三十四年度の国税減税のしわ寄せが、三十五年度住民税百二十二億の減収に対しまして、政府は三十億を特別地方交付金の名において補てんをいたしました。残り九十二億は地方財政の中に持ち込まれましたが、今後この措置は、地方交付税交付金とは別に立法措置が講ぜられ、国と地方との財源配分の改正が要請されましょうが、地方団体においては、国税に影響されない税制のあり方を要求しておるのでありまするが、大蔵大臣並びに自治庁長官はいかなる改正考えられておるかをお尋ねいたします。また、災害復旧、治山治水等の公共事業の増加につれ、その地元負担分は当然地方財政に響きまして、また、その配分等の点で、今日の地方団体間の不均衡状態をさらに進展せしめることになると思うのであります。政府は地方交付税及び地方譲与税等の配分方を十分考慮し、財源調整による富裕・貧弱の不均衡団体の是正に努めるべきと思うのであります。また、国の直轄事業の地方負担分元利償還その他地方債の発行等によりまして、負債の増大はますます地方財政を貧困に追いやるので、この際、交付公債制度を全般的に廃止し、直轄工事は全額国庫負担にすべきであると思うが、自治庁長官並びに大蔵大臣、建設大臣等の御答弁をわずらわしたいのであります。最後に、私は中小企業対策に対し御質問申し上げます。この問題も農業の場合と同様、貿易自由化のもとで、アメリカを初めとする国外産業との自由競争に入るわけでありまして、当然にこれら諸国の資本及び企業の自由な進山が企図され、わが国中小企業は今日以上の苦境に立つことが予想されるのであります。申し上げるまでもなく、中小企業並びに零細企業は、経済の好転にもかかわらず、依然としてその構造的弱体と大企業資本の重圧を受けながら低生産を続け、一面においては、向い雇用の吸収力と、さらに低賃金労働という悪条件下にあるのであります。今後、貿易自由化の影響を受けるはら、深刻なる失業問題並びに労使間の対立は今日以上悪化することも予想されるのでありますが、通産大臣並びに労働大臣はいかに対処されんとするか、お伺いいたします。  次に、政府は零細企業対策に対しまして商工会法案なるものを用意し、企業の組織化、あるいは救済、向上をはかろうとしておりまするが、さきに中小企業団体法の成立を見たが、今日のところ全く行き詰まり状態にあり、救済されたものは一体だれであったかと言わざるを得ないのであります。具体的にはいかなる構想及び方途を用意されておりますか、お伺いいたします。さらに、中小企業庁は中小企業振興法の提案を用意されておるようでありまするが、いずれにいたしましても、要は大企業と中小企業との間に思い切ったメスを入れることが必要であり、特に中小企業における産業の分野を大企業がこれを侵さない措置として、両者間の分野の調整をはかるための立法化、さらには下請け関係にある中小企業に対しては、不当なる下請け契約を規制するための下請け関係調整の立法化は、早急に準備いたしまして、これが実現を期するとともに、これにより中小企業及び零細企業の体質改善を促進し、経営の健全化をはかるとともに、全国一律の最低賃金制を確立し、真に日本経済の中核としてその成長発展を期すべきと思うが、通産大臣並びに労働大臣の御答弁を願いたいのであります。  最後に、岸総理に二点ほどお伺いいたします。まず第一は、貿易自由化に対しましてガットあるいは対外的な要請があるわけでありまするが、その対外的な要請をいかに岸総理は評価されておりまするか、非常に大事な問題でありますので、お聞きいたします。さらに第二点は、政府は貿易・為替の自由化対策といたしまして、内閣に貿易自由化対策閣僚会議が設けられるようでありますが、これは単に内閣や官僚だけではなく、各界に広く人材を求めるという意味で、農業界、中小企業界及び労働組合等の代表の参加する審議会を設置されまして、内閣の諮問機関とすべきであろうと思うが、以上二点に対して、最後に岸総理大臣の御答弁をお願い申し上げまして、私の質問を終らしていただく次第であります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第一は、農政に対する基本的方策についての御質問でありました。御指摘がありましたように、日本のこの農業に対する政策というものについては、基本的に考えなければならぬ事態にきておると思います。過去における各産業別の成長率を見ましても、また産業別の所得の状態を見ましても、また日本の農業が非常な零細企業である点から考えましても、この農政に対する基本的な方策は、これは抜本的に考えるべき時期にきておると思います。従って、すでに御承知のように、農林漁業基本問題調査会が昨年の七月以来設けられておりまして、農業基本法を初め幾多の基本的な問題について検討をいたしておるわけであります。ただ、私は何と考えてみても、目標は、農林水産業に従事する人々の所得をいかにして増大し、その生活を安定し向上せしめるか、ということに主眼を置いて各種の政策考えなければならぬと思います。従って、そのためには、いわゆる企業の体質改善の問題や生産性向上の問題であるとか、あるいは経営の合理化の問題であるとか、あるいは流通機構においての改善であり、価格の問題であるという各種の問題について、農家の所得を増大してその生活を安定し向上せしめるように、各種の政策基本的に検討して強力に進めていく必要があると、かように考えております。所得倍増計画におきまして、われわれの特に注意しなければならぬことは、全体として所得が伸びましても、その内部的な構成において、あるいは地方的な格差であるとか、あるいは産業別の格差であるとか、あるいは企業経営の形態の間における格差というものが、どういうふうに平均化され、なるべくこれの格差を縮めていくというふうにして、国民全体に所得が増大するような方策を立てることが、この所得倍増計画において最も留意しなければならぬ問題である。その場合において、いわゆる農業というものの所得が、先ほど申し上げておるように、他の産業に比して少ないというこの格差を上げていくように諸政策考えていかなければならぬと、かように思っております。  自由化の農業に及ぼす問題に関しましては、御指摘のように、自由化の問題が弱いところの産業に対していろいろな影響を及ぼすことは、われわれも十分考えて、農業あるいは中小企業であるとか、あるいはその他の弱小企業に対して、急激な悪影響を及ぼすということに対しては、十分な準備をして、そうして自由化というものを実現するという考えのもとに、すでに閣僚会議も設けております。これを民間の人も入れた審議会を作ったらどうかという御提案でありますが、私は、関係各大臣が協議をいたしまして、そうして各大臣の所管の産業につきましては、所管別に各大臣がそれぞれ民間の意見も聞き、そうしてその各産業に適するような準備をしていくことが、むしろ適当であるという考えを持っております。この自由化の問題に関して、何か外国からいろいろな要望があり、あるいはガットの問題をおあげになりましたが、言うまでもなくガットは、できるだけ貿易を増大する意味において、これを妨げているような障害を除くことを国際的に協議するところであります。為替の自由化というものは、世界の貿易を拡大し、そうして各国がそれによって繁栄していく面からいえば、自由化の方向に進めるべきであるというのが今日の一般の国際の風潮であります。別にこの問題を日本がやるについて、外国からいろいろな要望があり、その要望によってこれをやるという意味ではございません。治山治水事業について、これの重要性及び将来においてこの計画を強く変更せずにあくまでも推進する考えを持っておるかという御質問であります。私どもは、これはあくまでも基本的な里要事項として、今回の三十五年度の了算に取り上げたのみならず、われわれが立てておる十カ年計画の線に沿う、強力に推進していくつもりであります。これがために公債を発行する意思かあるかというようなお話でありますが、われわれは、一方において日本経済の拡大を、安定した成長を考えており、またそれを進めるところの方策をこっておりまして、これの治山治水の仕事は将来にあたっても最重点の仕事こして継続的にやる意思は持っておりますが、それがために特に公債を発行しなければならぬ必要というようなここは、今日においては認めておりません。(拍手)    〔副議長退席、議長着席〕    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  24. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  所得の倍増計画を策定するにあたりまして最も重大な点は、ただいま総理からもお話がありましたが、その量の点もさることながら、その質の点にあることと、かように考えております。質の点といたしまして、私が非常に困難であり、かつ重要な問題であると考えておりまするのは、農業の所得をいかに倍増するかという点でございます。過去の趨勢を見ますると、各国でもそうでございまするが、農業所得は一般の所得の伸びに比べまして大へんおくれておる。しかしながら、最近数カ年間豊作状況が続いておるというようなことで、かりに三十一年から昨年までの統計をとって見るというようなことになりますると、悪い悪いと言われる日本の農業でございまするが、四・三%の前進をいたしておるわけであります。もっとも、これは農業総生産の話でございまするから、これにさらに農村から鉱工業の方への人口の移動の要素というものを考える必要があるのでございまして、それは私ども推定するところによりますとおおむね二%ぐらいの移動が行なわれております。さようなことを考慮いたしますと、六%内外の所得の向上がこの四カ年間には行なわれてきたと、かように考えておるのでございます。私ども、今後長期計画を作るにあたりまして、どうしても農業総生産、すなわち農業の生産性を上げるということが、これがもとよりこの考え方の根幹でなければならぬと、さように考えております。しかし、同時に、やはり伸びゆく日本経済全体の中に農業人口も大いに参加していくというこの考え方も取り入れなければならぬ。かような考え方をとっていきますれば、十年で所得倍増、年率は七・二%でございます。しかも、それは総所得の話でございまするが、人口を考慮した一人当たりの年率所得の伸びというものは六彩内外である、かような程度のものは農業におきましても実現できる、またその実現のために私ども予算等を通じまして最大の努力をしていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。  予算の点につきまして、額はふえておるが、その所得倍増というものを実現するために必要な額があるかというようなお話でございます。私も、今回の農林予算を組むにあたりましては、非常に心配をいたしておったのであります。と申しますのは、災害の年でございまするから、予算がどうしても災害対策中心になりはしないか。しかるに、農林関係の問題といたしましては、すでに着手いたしておりまする農業基本問題調査会の方向考え方があるわけであります。すなわち、農業所得をこの際大いに増加するための施策をとらなければならぬ、さような時期に際会しておるその際に、さようなことになりますると、私どもといたしましても、農家のために、またひいては日本経済全体のために困りはしないかというふうに心配をいたしておったのでございまするが、結果におきましては、先ほどもお話がありましたように、三十四年度に比べて二百五十億、実質におきましては三百億円の増加を見るところの予算ができた、かように考えておるので、この予算をもちまして、農業の生産性、すなわち土地一改良政策、また酪農政策、あるいは果樹の政策だとか、あるいは農家の集団化、共同化という方向を進める。また、御質問がありましたが、農業法人問題等解決にも当たりたい、かようなこと。さらに、零細農家に対しましては、今回、開拓民、沿岸漁民等につきましては、特に配慮いたしまして、開拓問題といたしましては今まで言われているいろいろの方策ほとんどを今回の予算解決するということを企図しておるわけでございます。  なお、自由化の問題につきまして、農産物資につき特に考慮を払わなければならぬ。これはお話の通りでございまして、私どもは何も手放しで自由化ということを考えているのじゃありません。十分手段を整えた上で農林物資につきましては自由化というものを考えていきたい。また、重要な根幹的な農産物―米麦だとか、酪農製品だとか、さようなものについては毛頭自由化というものを考えておりませんということを申し上げたいのであります。  次に、農業基本問題でございます。政府におきましては、さきに農業基本問題調査会を設定いたしまして、ただいま農業、漁業、林業等にわたります農業の基本政策について検討中でございます。いつごろ結論が出るかというお話でございますが、これは御審議願いました法律によりまして、本年度並びに三十五年度年度にわたる、こういうことになっておりますので、最終的な結論が出ますのは三十五年度末ということになろうというふうに考えておる次第でございます。しかし、この農業基本問題調査会の結論が出るまでもなく、私は、転換期にある農村をどういうふうに持っていくかという問題につきましては、ただいま申し上げましたように、生産性の向上をはかる。これはあらゆる角度の努力をしなければならぬと同時に、日本全体の中における人口問題という点も考えなければならぬ。かように考えておる次第でございます。それから、農業基本問題を考える場合におきまして兼業農家をおろそかにするのじゃないかというお話がありましたが、私は毛頭そういうことは考えておりません。先ほど開拓者等につきまして申し上げました通り、いかに零細でありましても、まじめにやっている農家に対しましてはできる限りの助成をする、かように思っております。  なお、価格政策につきまして、現在とっております価格支持政策を変更するような傾向があるかどうかというお話でございますが、私どもはさような考えは毛頭持っておりません。全国的に見まして、重要な農産物につきましてはすでに価格支持政策がとられている。この運用をますます改善していきたい、かような考えをいたしておる次第であります。  それから農業法人の問題でございますが、このことにつきまして、早く法案を出したらどうかというお話でございます。私も、農業法人というものは、今日の農業の状態から見ますると、どうしても、農業の生産性を向上するという政府の施策と相待ちまして、やはり農家自体がその経営を改善していくということに待たなければならぬ、かように考えておる次第でございます。さようなことから、政府の方でも、集団化、共同化というような考え方をしておりますが、しかし、農家自体もその経営方式というものを考え、農業法人というものを考えられることは、きわめてこれは時宜に適した風潮であると、かように考えておる次第であります。ただいまこれを法制化するということにつきまして鋭意検討中でございます。できる限り今国会で御審議をわずらわしたい、かように考えております。なお、その際におきまして、その考え方につきましては、農地法の精神につきましては、これをそこなうことなしにということを基本的な考え方としておるのでございますが、これを特殊法人として単独の法律案によるべしということにつきましては、なお慎重に検討してみたい、かように考えておる次第でございます。  次に、米価の問題につきましてのお話でございますが、これは私は、米価審議会におきまして慎重御審議を願って、そうしてその結論を尊重してきめていきたい、こういう考えを持っております。数年来、米価審議会におきましては、生産費並びに所得補償方式を採用すべしという考えがあるのでございまして、昨年の米価審議会におきましてもさような勧告を受けております。その勧告に従いまして、特に今回の米価審議会に小委員会を設けまして、この所得補償方式をいかに取り入れるべきものであるかということを検討していただいておる最中でございます。私は、米の問題につきましては、統制、これはどこまでもその根幹を維持していきたいものだ、こういうふうに考えております。しかるに、米価問題につきまして、一部の方の間には、一挙にこの際、生産者米価を上げろ、極端な人の意見は、今一万三百三十三円の米価になっておるのでございますが、これを一万二千何百円まで持っていけというようなお話でございます。しかし、そういうことをしたならば、これは統制は一体どうなるかというと、私は統制は維持していけないと思うのです。統制を維持しようと思うと、どうしても生産者米価も消費者米価も、これは大きな経済常識、この線をはずれるということはなかなかむずかしいのではあるまいか、こういうふうに考えておる次第でございまして、まあ、そういうような考えをもちまして米価審議会には臨んでおりますが、とくとその結論を待って善処していきたいというふうに考えております。  最後に、農災制度の問題でございますが、農災制度につきましては、お話の通り、全国から、今や大勢といたしましてこれを改正すべしというふうにまあ私どもに来ております。この制度はまあ無事戻しということを考えたらどうかというようなこと、また防除共済というようなことをしたらどうかというような意見もある。いろいろなことがございますが、しかし、これを私ども考えてみまして、まあ百億円以上の金を政府が支出いたしまして全国の農家から喜ばれないというようなこと、これはどこかに私は非常に大きな欠点がある制度である、かように考えておるのでございます。私も農林大臣就任以来この問題を検討いたしております。大体私ども検討も終わりましたので、私ども意見も持ちまして各界の衆知を集めて、これがいかなる点をどういうふうにすべきかというふうに進めていきたいと思いますが、結論を得次第、また法律案をもって御審議をお願いしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  25. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 農林予算はどんなにして組んだかというお尋ねでございます。ただいま福田大臣から詳細に基本的な考え方をお話でありました。その所要の経費を今回計上いたした次第であります。御指摘になりますように二百五十六億の増加でありますが、そのうちに食管会計の赤字補てんがずいぶんあるじゃないかというような点を御指摘になりまして、予算計上の方針がよくわからない、こういうようなお話であったかと思います。しかし、この食管会計の赤字と申しますのは、大事な農産物価格、米麦その他農産物価格安定法等に関連いたします農産物価格維持のために必要な会計でございます。そういうことを考えていただきますと、この赤字補てんということには非常に意味のあることでございます。この点を御理解をいただきたいと思います。  その他農林省関係の予算は、ただいま申し上げますように、基本考え方について私どももこれに協力いたしたつもりであります。その基本的な考え方は、申すまでもなく、農林事業のわが国に占むるその業態、また業者の実態等から考えまして、所要の経費を私ども計上いたしたつもりであります。従前と同様でありますが、今後におきましても、さらに自由化等をはかるに際しましては、一そうその所要の予算を確保することに努力して参るつもりであります。  次に、治山治水対策についてのお尋ねがありました。今回はこの治山治水対策を特に強力に、かつ計画的にこれを実施したい、この点に力を置きまして、治山治水の特別会計を設けたのでありまして、その財源等におきましても、直轄事業に伴う地方分担金を現金で受け入れる分の財源をも加える、こういうことで財源の拡充をはかった次第であります。その意味におきまして、今回の治山治水特別会計は非常な意味のあるものだと、かように考えております。また治山治水長期計画は、経済的、財政的な面からいたしましても、これは慎重な検討を行なった後決定するものであります。この達成につきましては、財政の面からもできる限りの努力を払うことはもちろんであります。ところで、財政演説で説明いたしましたように、ただいま十カ年計画を立て、その中の緊要なものについて前期五カ年計画を立てております。ところで、財政の面から申しますならば、後年度予算を計上することは、経済の成長等を考えると比較的容易でありますが、国土保全の計画そのものから見ますると、できるだけ早い時期に工事を遂行していく必要があるのであります。そういう意味で、前期五カ年計画というものを特に緊要なものについて策定をいたしておるのであります。これらの遂行等につきましても十分努力して参るつもりであります。ところで、防衛費その他の関係から、十分できないのじゃないかというような御意見があったのでありますが、自衛力そのものについては、毎回説明いたしておりますように、国力相応の、日本の経済力あるいは財政力あるいはその他の重要施策との均衡を十分考えて、これを実施して参るつもりであります。この意味から申しまして、治山治水事業であるとか、あるいは桂会保障施設、これらのものを推進するのに支障を来たすような関係において防衛費関係を増額していくことは、これは十分私ども考えていかなければならないことだと、かように考えております。次に、地方財政との関連についてのお尋ねがございました。三十五年度におきましては、国税三税の増収に伴う地方交付税の増加がありますし、さらにまた、地方税そのものも相当の自然増加が見込まれますので、今回の特別火付金の計上三十億と相待ちまして、在民税の減税につきましては地方の財源に不安を与えるようなことはないのではないかと、かように考えております。まず、これでやっていけるのじゃないか、かように考えております。  また地方税制のあり方、及び国、地方の財源の配分につきましては、ただいま税制調査会におきましていろいろ検討を進めておりますので、その結論を待って、しかる後に処理していきたいと思います。また治山治水等の予算が増加することによりまして、地方団体の負担分が増加するということ、これは御指摘の通りでございます。当然増加して参ります。しかし、地方交付税や地方税の自然増、あるいは起債の重点化等によりましてこれに対処していく考え方であります。また、地方公共団体間の財源の調整についても言及されました。現在の制度のもとにおきましても、地方交付税の配分等の際には、この財源調整を十分考えて、ある程度の格差の調整が行なわれておると思います。しかし、御指摘の通り、まだまだこの点では不十分だと考えます。で、この不十分である主たる理由は一体何かと申せば、現行の地方税制のあり方にあるのではないか、かように考えますので、先ほど申しました税制調査会等における地方税制の検討と待ってこれまた考え対策を立てるべきではないか、かように考えております。  次に、直轄事業は全額国庫負担とせよというお話であったと思いますが、直轄事業は総合的計画に基づいて事業を行なうことが必要なために国が事業を主体としてこれをやっているということであります。その点から申しまするならば、直轄経費の負担の問題はこれは別でございます。直轄事業は全額国庫負担とすることになりますと、その実施をする当該地方公共団体が受益をするものでございますから、この当該地方公共団体が受益しているということを無視するという結果になりますし、直轄事業の遂行上非常な不公平を生ずるのではないか、かように考えますので、私どもは賛成いたしかねております。  また、交付公債制度の廃止についての御意見もあったと思いますが、特別会計にかかるものにつきましてはこれを現金納付に改めて、これに見返るものとしては、特別な地方債の別ワクを設けるということにおいて、ことしから処理して参っております。(拍手)    〔国務大臣石原幹市郎君登壇拍手
  26. 石原幹市郎

    国務大臣(石原幹市郎君) お答えをいたします。  地方財政の問題につきましては、ただいま大体大蔵大臣から答えられましたので、私の答える点も同じようなことになるのでありまするが、まず第一の、国、地方を通ずる財源配分について将来考えるべきではないかということでございますが、これはただいまお話のありましたように、目下内閣に設けられておりまする税制調査会におきまして、国、地方を通ずる税財源の調整についていろいろ検討が進められておりますので、その答申を待ちまして、地方財政のさらに独立制を強化するような方向を私としては考えて参りたいと、かように思っておるのであります。  今回の住民税の減税によります減収の穴埋めにつきましては、地方公共団体の財政状況等をも考慮いたしまして、当分の間、地方交付税の〇・三に相当する額を地方特別交付金として出されることになりましたので、これでまあ何とか穴埋めはやっていけるのではないかと私も考えておるものであります。  公共事業費の増加に伴う地方負担の増加の問題でございまするが、ことに昨年の伊勢湾台風その他の災害の結果による地方負担の増は相当大きいと思うのであります。それにつきましては、昨年の臨時国会でいろいろの特別立法が講ぜられまして、地方の負担の軽減をはかるような措置もとられたのでありまするが、三十五年度予算におきましては、災害対策に対する起債のワクも大幅に増額されておりまするので、これらによりまして財政運営に支障を生ずることはまあ大体ないと思っておるのであります。ただ、貧弱団体と富裕団体との財源均衡の問題でございまするが、これはただいま大蔵大臣からお話のありましたように、三十五年度では地方交付税並びにただいま申し述べました地方交付金を合わせますと約三百七十九億増加になっておるのでありまして、今後これらの配分につきましては、さらに態容補正その他のいろいろの方法を講じましてでき得る限り貧弱団体の方に多額の金が回りますような措置を講じていきたいと思うのであります。  また、私は、できれば後進地域、未開発地域の建設事業、公共事業、そういう事業をむしろ伸ばしていきまして、国土の均衡をはかっていかなければならぬのでありまするが、そういうところの負担につきましては、国の負担割合は補助割合をふやしていくというような、こういう特例措置をとるような方法を研究してみたい、でき得れば皆様方の御賛成を得まして、こういう制度確立してみたい、かように思っておるものであります。  交付公債につきましては、ただいま大蔵大臣からお話になりましたように、特別会計に計上される部分、これが大体公共事業のほとんど大部を占めておりまするが、これは三十五年度から全廃されることになりました。  直轄工事に対する国庫負担の問題は、大蔵大臣からお答えがありましたと同じでありまして、やはり地方も相当の受益をするのでありまするから、ある程度持つということはただいまのところでは考えていいのではないかと思っておりまするが、先ほど申し述べましたいわゆる貧弱団体、未開発地域の負担の問題については、今後さらにいろいろ検討をして善処をしていかなければならない、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣村上勇君登壇拍手
  27. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  治水事業の特別会計を設けました理由につきましては、すでに大蔵大臣からお話がありましたが、御承知のように、治水対策の強力かつ計画的な推進をはかるために、治水事業の五カ年計画確立いたしまして、この五カ年計画の実施に要する費用につきまして政府の経理を明確にするということが第一要素でありまするが、なお、一般会計の財源だけでなく、府県の負担金等の特別な資金を投入いたしましてこの事業を促進することにいたしておるのでありますが、なおまた、治水工事に関連のある諸工事の負担金としてこれを受け入れる、そしてこれを委託を受けて国が施行するということもこの特別会計を設けた理由一つであります。なおまた、五カ年計画計画的に実施するために、直轄工事と補助事業を含めて事業を行なうというようなことがこの特別会計の中に含まれておることであります。  なお、地方負担につきましては、ただいま大蔵、自治庁両大臣のお答え申し上げました通りであります。(拍手)    [国務大臣松野頼三君登壇拍手
  28. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 貿易・為替の自由化につれて国際競争的な企業に体質改善が行なわれることは必至でございましょうから、労働省といたしましても、労働の質の改善と、また、諸外国に対応して負けないだけの労働力の技能というものをまず訓練することが最大の務めだと考えております。このことは昨年の雇用審議会の答申の中にもございましたごとく、日本の雇用問題が複雑多岐の中に、中小企業の製造業を軸として雇用問題の解決をはかることは、日本の大きな雇用対策方向だと私も考えております。従って、三十五年度予算につきましては、技能検定と職業訓練というものを合わせて中小企業のおくれております生産性の向上を努めて参りたいと考えております。  なお、国内的には、ややともいたしますれば、産業の競争が行なわれるという傾向もあるやに存じまするので、この場合は基準法を完全に実施をよく指導いたしたいと考えております。賃金問題につきましては、中小企業の最低賃金法の施行が順調に伸びておりますので、今後とも最低賃金法を伸ばしまして、賃金の向上をはかって参りたい、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  29. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  貿易・為替の自由化は、わが国産業基盤を近代化し、また、流通機構を正常化しまして、経済のこの上ともの発展を促すために行なうのであります。従いまして、わが国経済の中核をなす中小企業にはなはだしい悪影響を及ぼすようなことは当然なすべきではありません。従いまして、自由化のテンポ、また業種の選定につきましては、そういう考えのもとに適正な方法で順次やっていきたいと考えております。  なお、大企業と中小企業との関係でございまするが、私はただいまのところ中小企業団体法の活用によりまして、この間のいざこざを直していけると思います。私の最も心配しておることは、いわゆる中企業、小企業でなしに、もっと下の零細企業につきましては、なかなか政治の手が伸びませんので、今回商工会法等を設けまして、零細企業の指導育成にもっともっと手を伸ばしていって、ほんとうに日の当たらないところを当たるようにする行政をいたしたいと考えております。(拍手
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ―――――・―――――
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、お諮りいたします。森元治郎君、大竹平八郎君から、裁判官弾劾裁判裁判員を、棚橋小虎君から裁判官訴追委員を、奥むめお君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。      ―――――・―――――
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、裁判官弾劾裁判裁判員並びに裁判官訴追委員及び同予備員の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
  35. 向井長年

    ○向井長年君 ただいま上程されました裁判官弾劾裁判裁判員並びに裁判官訴追委員及び同予備員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  36. 田中茂穂

    ○田中茂穂君 私は、ただいまの向井君の動議に賛成いたします。
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 向井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、裁判官弾劾裁判裁判員に棚橋小虎君、原島宏治君、裁判官訴追委員に東隆君、同予備員に柏原ヤス君を指名いたします。      ―――――・―――――
  39. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して検察官適格審査会委員予備委員、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員及び鉄道建設審議会委員の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
  41. 向井長年

    ○向井長年君 検察官適格審査会委員予備委員その他の各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  42. 田中茂穂

    ○田中茂穂君 私は、ただいまの向井君の動議に賛成いたします。
  43. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 向井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、検察官適格審査会委員予備委員に田上松衞君、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員に田畑金光君、鉄道建設審議会委員に戸叶武君を指名いたします。      ―――――・―――――
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、参議院予備金支出の件を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。議院運営委員長高橋進太郎君。    〔高橋進太郎君登壇拍手
  46. 高橋進太郎

    ○高橋進太郎君 ただいま議題となりました参議院予備金支出の件につきまして、御報告を申し上げます。  昭和三十三年度並びに昭和三十四年度の予備金の予算額は、両年度ともそれぞれ五百万円でありますが、昭和三十三年度分は、前回の常会の初めに院の承諾を得ました三百二十四万円のほか、その後百八万円が支出され、差引六十八万円が不用額となったわけであります。支出額の内訳は、在職中死亡された故議員西川彌平治君の御遺族に対する弔慰金であります。また昭和三十四年度分は三百二十四万円の支出となり、差引百七十六万円の残となっておりますが、支出額の内訳は、在職中死亡された故議員本多市郎君、松沢靖介君及び成田一郎君の御遺族に対する弔慰金であります。  以上の予備金の支出は、いずれもそのつど議院運営委員会の承認を得たものでありますが、国会予備金に関する法律第三条の規定により、ここに本院の承諾を求むるものであります。(拍手
  47. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。本件を問題に供します。本件は、委員長報告の通り承諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よりて本件は承諾することに決しました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十七分散会    ―――――・――――― ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  一、裁判官弾劾裁判裁判員並びに裁判官訴追委員及び同予備員辞任の件  一、裁判官弾劾裁判裁判員並びに裁判官訴追委員及び同予備員の選挙  一、検察官適格審査会委員予備委員、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員及び鉄道建設審議会委員の選挙  一、日程第二 参議院予備金支出の件