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1960-02-03 第34回国会 参議院 本会議 第4号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十五年二月三日(水曜日) 午前十一時四十七分
開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程
第三号
昭和
三十五年二月三日 午前十時
開議
第一
国務大臣
の
演説
に関する件(第二日) ━━━━━━━━━━━━━
松野鶴平
1
○
議長
(
松野鶴平
君) 諸般の
報告
は、朗読を省略いたします。
松野鶴平
2
○
議長
(
松野鶴平
君) これより本日の会議を開きます。
日程
第一・
国務大臣
の
演説
に関する件(第二日)。 昨日の
国務大臣
の
演説
に対し、これより順次
質疑
を許します。
羽生
三七君。 〔
羽生
三七君登壇、
拍手
〕
羽生三七
3
○
羽生
三七君 私は、
日本社会党
を代表して、
岸内閣
の
施政方針
に関し、
岸総理
並びに
関係閣僚
に質問を行ないます。 昨日の
施政方針
を総括的に
批判
いたしますと、第一に、
外交
にあっては、依然
たる力
の
政策
の過信と
緊張緩和
に対する
具体的方針
の欠除、第二に、
経済
にあっては、
手放し
の
楽観論
と
日本経済
の
現状認識
の
不足
、第三に、
民主政治
のあり方については、
少数意見
を軽視する
独善的解釈
、以上の三点に尽きると思いますが、以下順次具体的に
お尋ね
いたします。 私がここにあらためて言うまでもなく、今日の
世界情勢
は、かつてない大きな転換期に直面いたしております。久しきにわたって
原子兵器等
を含む
軍備競争
を続けてきた
世界
の大国は、これら
兵器
の
想像
を絶する
発達
によって、
戦争
が、
交戦国
はもとより、
人類
を
破滅
に導く結果を招来することを自覚し、今、
核兵器
問題を手始めに、
完全軍縮
の
方向
を真剣に指向していることは御
承知
の
通り
であります。これらのことは、昨年九月の
フルシチョフ
・
ソ連首相
の訪米と、
アイゼンハワー米大統領
との会見、さらに、
フルシチョフ首相
の
国連総会
における
完全軍備撤廃
の
提案
、これに引き続く
国連総会
における
全面的完全軍縮
の
決議等
に表われております。
世界
は確かに
雪解け
の
方向
にあります。もちろん、われわれは、それが完全な
雪解け
だというのではありません。それが完全に実現されるまでには、多くの困難が横たわっていることは当然であります。しかし、それにもかかわらず、
世界人類
が生き残るためには、この
完全軍縮
の
方向
以外にほかの道はないのであります。その
意味
で、この
雪解け
の
方向
は絶対に正しいし、かつその
方向
をあらゆる
努力
を払って生かされなければなりません。
世界
が一般的に言ってこのような
方向
にあるときに、
岸内閣
ば、
日米
新
安保条約
を締結し、
日米
の
軍事同盟
を強化し、
緊張
をやわらげるどころか、かえってそれを激化する道を歩んでいることに、
世界
の
大勢
に逆行するものとして、われわれはその
時代錯誤
の
政治感覚
を疑わざるを得ないのであります。(
拍手
)
日本
の
運命
に重要な
関係
を持つこの新
安保条約
を、
岸総理
は、みずから渡米して強引に調印してきたのでありますが、かかる重要問題については、国会の
承認
を求める前に、衆議院を解散して
国民
の世論に問うべきであると信じますが、まず第一に、この点について
お尋ね
いたします。 次に私は、
外交
防衛
問題について
所見
を伺います。
さき
にも触れましたように、
世界
は、
大量殺戮兵器
の
発達
に伴って、力の
対決
が
人類
の共滅を
意味
するということから、
米ソ首脳
の
交換訪問
や、さらに近くは
東西首脳会談
が持たれようとする
情勢下
にあることは
周知
の
通り
でございます。
原子兵器
や
宇宙科学
の
発達
は、
世界
の
外交
や
防衛
問題に新しい路線を策定せざるを得ない客観的諸
条件
となって現われているのでありますが、かかる
世界情勢
に応じて、
日本
の
外交
・
防衛政策
が新しい角度から再検討されなければならぬこともまた当然でございましょう。今日のように
大量殺戮兵器
の出現した
時代
、また、
世界
のいかなる地点をもその
射程目標
に選べるほど高度に
発達
した
ロケット兵器
の
時代
、このような
時代
における一国の
安全保障
は、
戦争
になったらどうするかということではございません。問題は、
戦争
の
原因
、
戦争
を誘発しそうな客観的諸
条件そのもの
を、平和的な
外交交渉
によって取り除くことでございます。その
意味
で、古い
時代
におけるような
戸締まり論的立場
でどのように
防衛
問題を論じても、絶対に問題の解決にはならないし、かつ、今日の
段階
における
兵器
の問題を離れての
防衛
・
戦略論議
は全く無
意味
だということであります。
岸総理
及び
藤山外相
は、
施政演説
において、新
安保条約
は、
国連憲章
によって否認された
侵略行為
が発生しない限り決して発動されることはないと言っておりますが、問題は、
日本
が
外国
から理由のない直接の
侵略攻撃
を受ける
危険性
よりも、
安保条約
に規定されている「極東の平和と安全」の名において、
日本
と全くかかわりのない他国の紛争、
戦争
に
日本
が巻き込まれ、その
犠牲
となる
危険性
の方がはかるかに多く予想されるということであります。(
拍手
)さらにまた、このような危険を排除するためといわれる、いわゆる
事前協議
の問題にしましても、
条約
上
拒否権
のないことはすでに明白となったし、従って、わが方が合意しない場合、
米軍
を規制する
保証
はどこにもなく、また、吉田・
アチソン交換公文
の
存続
によって抜け道もあるという結果となったのであります。それでもなお
日本
の安全といわれるのかどうか。
総理
、
外相
の
見解
をただしたいのであります。この場合、
日米共同声明
の中に、「
米国
は
日本国政府
の
意思
に反して行動する意図はない」という字句を挿入することによりまして能事終われりとしているようでありますが、事と次第によっては国の
運命
に関するような重大な問題を、ただ
相手国
の
善意
だけに託し、
条約
中これを明記することのできないような
外交
は、完全な
敗北外交
と言わなくてはなりません。それとともに、われわれは、
岸総理
、
藤山外相等
の
善意
に全く驚きを禁じ得ないのであります。このように見てくると、新
安保条約
は、
日本
の安全に役立つどころか、かえって危険な道であり、かつ、
世界
の
大勢
である
緊張緩和
の
方向
に逆行し、特に、
ソ連
、
中国等
との今後の
外交
にとって重大な障害となることは必至であります。また、中ソのみならず、
東南アジア諸国
にしましても、たとえば、フィリピンの
新聞デイリー
・ミラーは、新
条約
について、「
東南アジア諸国
は、ワシントンとともに新
条約
を喜ぶわけにはいかない」と、きびしく
批判
しております。
政府
のいう低
開発諸国
に対する
経済協力
という問題も、案外期待に反することになるのではありませんか。これらの問題について、
総理
、
外相
はどのように
考え
られるか、
お尋ね
いたします。 次に伺いたいことは、今度の新
条約
は、明白に
憲法違反
と思うがどうかということであります。
政府
は、
憲法
の
自衛権
を際限もなく拡大解釈しているが、今回の
条約
に盛られた
バンデンバーグ決議
の
趣旨
はいわゆる自助及び
相互援助
を義務づけるものであって、どのように説明しようとも、これは明白な
憲法違反
と断ぜざるを得ません。
岸総理
は、なおこれを合憲と
考え
られるかどうか、この際、あらためて具体的に説明されたいのであります。 なお、この
機会
に、
岸総理
は
憲法
第九条を守る
意思
を持っているのかどうか、あわせて
お答え
をいただきます。もちろん私どもも、固有の権利たる
自衛権
を認めます。それは疑いもなく
確固
として存在いたしております。しかし、自衛の
手段方法
は、特に
戦争放棄
を
憲法
で規定した
日本
の場合においては、
わが国
の置かれた地位、国際的客観的諸
条件
、
地理的条件
、
国民
の
願望等
、多くの
要素
の
総合的判断
の上に求められるべきであります。そういう判断の上に立って
考え
るとき、
日本
の真の安全の道は、
東西
いずれの国とも特定の
軍事同盟
を結ばず、中ソに対しては、中
ソ友好同盟条約
の対
日軍事条項
の削除を求め、しこうして
日本国憲法
を前面に押し出して断固として中立の道を歩むことであると
確信
をいたします。(
拍手
)かかる
意味
において、この
機会
に、
岸総理
の
安全保障
に関する
基本的見解
をただしたいのであります。 さらに、これと関連して
お尋ね
したいことは、
完全軍縮
に関する
岸総理
の
見解
、及び
軍縮
が
具体的日程
となった場合、
日本
の
自衛隊
はどうなると判断されるのかということ、さらにいま一つ、今日の
世界情勢
に照応して、
自衛隊
の増強を即時停止する
考え
はないか。この際あわせて
総理
の
見解
を承りたいのであります。 次の問題に移ります。
総理
は、
施政演説
において、
世界
の趨勢は、
東西
両
陣営
が共存し得るための
最小限度
の
共通
の場を見出そうとする
方向
にあることをうたいながらも、すぐその
あと
で、この気運は両
陣営
の
軍事的均衡
のもとにかもし出されているという結論を引き出し、依然として力の
政策
に
重点
を置き、
外務大臣
はまた、それゆえに、
政治
的にも
経済
的にも
共通
の基盤に立つ国との間の
集団安全保障
という、一種の
イデオロギー外交
の
立場
をとっているのであります。この場合、いわれるところの
雪解け
の
原因
が、
人類
を
破滅
に導く
兵器
の出現や
軍事的均衡
に存するという
原因
のせんさくだけにとどまってはなりません。問題の所在は、
世界観
の相違にもかかわらず、力の
対決
によらず、共存の
可能性
をいかにして求めるかにあるのであります。ましてや、
平和憲法
を持ち、
戦争
を放棄し、また、
核兵器
の保有も認めない
日本
が、これから力の
政策
に一枚加わって
軍事的均衡政策
に
安全保障
の道を求めようというのは、進行する
世界情勢
にマッチしない
時代逆行
の
方向
といわなければなりません。しかも、
自由陣営
との提携、力の
均衡
をうたうだけで、具体的な
緊張緩和政策
を何ら示していないのであります。単に
日米共同防衛体制
を強化し、
軍事力
だけを増強すれば事足りるというのでありましょうか。
総理
は、
さき
の
日米共同声明
の際、
国際緊張緩和
にあらゆる
努力
を払う決意を表明した
アイゼンハワー米大統領
に、この決意に対し全く同感であり、これを支持することを表明されたのでありますが、
日米軍事同盟
の強化と
緊張緩和
という、この相反する、かつ全く相異なった二つの
条件
の上に立って、それを可能にするいかなる
方針
と
確信
があるのか。
岸総理
のまじめな意見を伺いたいのであります。これを具体的に言うならば、
今新安保条約
に対してわれわれが反対であることは、あらためて言うまでもございませんが、われわれのこの
基本的立場
は別として、
政府
はこの新
安保条約
を背景に、つまりこれを通じて
西陣営
との
関係
を強固にし、これを足がかりとして、次に東側に窓を開く
方針
との説も伝えられておりますが、
総理
の真意はどうか。これについては、先般、
中国外交筋
から、「新
安保条約背景
に日中の調整は論外」と手きびしい
批判
が加えられておりもまた、
ソ連
も新たな
意思表示
を行なったことは言うまでもありません。しかし、それはそれとして、
岸総理
としては、そういう
矛盾
をどのように調整していくつもりなのか、この困難に直面しての
経綸
をお聞かせいただきたいのであります。
中国
問題につきましては、現に
自民党
と
政府部
内でも、日中打開し得る者が
次期政権
の
担当者
というスローガンがあるようでありますが、まさにその
通り
だと思います。また、国際的に見ましても、
中国
の
承認
は、
軍縮協定
、
核兵器実験禁止協定等
が国際的な課題となったときには、
中国承認
という問題が
世界的課題
となることは必然でありましょう。また、現に先ごろ
陳毅中国外相
が、
中国
が加わらない
軍縮協定
には
中国政府
は縛られないとの
見解
を表明したのに対し、
アメリカ国務省
は一月二十一日、
中国
の
軍縮参加
を示唆する含みある発言が行なわれており、
中国
問題に対する
アメリカ国内
の動きに新たな
方向
を示すきざしが見え始めております。このほか、あるいは
コンロン報告
、
マクスウェル報告
、スチーブソンの
見解等
、
米国
の有力な機関・人士の
中国承認
の主張はますます拡大しております。このようなときに、
日本政府
は、
アメリカ
の
中国政策
が
変化
を生じたときは、事前に
日本
に通告してもらうとか、もらわないとかいうような、
自主性
のない、情けない
外交
はやめて
確固
として
日本
の
方向
を策定し、その
方針
に基づいて、むしろ
関係各国
を説得し、動かし、新しい
外交路線
を
日本
のイニシアチブにおいてみずから築くべきであると思いますが、どうですか。現に
自民党
の三大武夫氏も、
中国
問題に対する対
米打診
を不見識きわまるものとして
岸総理
の態度を
批判
しているではありませんか。私は
アメリカ
と話し合うのが悪いというのではありません。
アメリカ
に限らず、
関係各国
と理解を深めるのはよろしいと思います。問題は、それがあくまで理解を深め、わが方の真意を相手に納得させるためのものであって、
外国
の
あと
に追随していいということではありません。 さて、重ねて言及いたしますが、
岸内閣
は、新
安保条約
の推進、
自由陣営
との
提携強化
ということ以外に、何らの
政策
もないのでありますか。新
安保条約
と中ソとの
外交交渉
という二つの異なった
要素
の調整が
岸総理
によって可能かどうかは別の問題であります。その可能、不可能は別として、
岸総理
として、何らかみずからの構想、成算があるのでありますか。
防衛力増強
以外には何らの
対策
もなく、依然として
国際情勢
待ち、静観という
立場
であるならば、今日の
世界情勢
に対処する
政治家
としては、その見識、資格を疑わざるを得ないのであります。(
拍手
)
局面打開
の
経綸
なくば、むしろこの際、国家百年の大計のために、すみやかに退陣さるべきであると思いますが、
総理
の所信はいかがでありますか、
お尋ね
いたします。
後任総裁
の候補は、だいぶそこに並んでおるようでありますが……。 次に、
ソ連関係
について
お尋ね
をいたします。 先般の
ソ連側
の覚書は、根本的には新
安保条約
の取りきめにかかっており、これを推進する
政府
の
方針
と、新
安保
が
国際関係
に及ぼす影響についての
政府
の見通しの甘さは、きびしく
批判
されなければなりませんが、同時に、歯舞・色丹は、
わが国固有
の
領土
であり、
情勢変化
によって左右される性質のものでないことを、この際明白にしておきたいと存じます。いずれにしましても、
日ソ両国
当面の事態は、懸案の
平和条約
はもとより、さしあたっての
漁業交渉等
いよいよ困難となってきたことは確実であります。この局面を
政府
はどのようにして打開せんとするのか、先ほどの対
中国
問題とともに
国民
の知らんと欲する問題でございます。これは根本的には、ただいまも申しましたように、新
安保条約
にかかる問題ではありますが、この際、
局面打開
の一方法として、
日ソ不可侵条約
を含む
平和条約
の締結を考慮し、返還される
領土
が
外国
の基地として使用されることのない
政治的保証
のもとに一ここが重要であります。
外国
の基地として使用されることのない
政治的保証
のもとに、
領土
問題の
合理的解決
をはかることを
提案
いたします。要するに、返還される
領土
が軍事的に利用されないという
政治的保証
を与えることが重要なのであります。それとともに、当面、
日ソ文化協定
、見本市の
開催等
、平和の実績を積極的に積み上げることなどの必要は言うまでもございません。このような
方向
においてのみ
領土
問題も当面の
漁業交渉
も正しく解決されるものであると
確信
をいたします。そうでない限り
安保条約
の
存続
中、なかなか本格的な
局面打開
は困難でしょう。ただいまの
提案
も含めて、
対ソ外交
の今後についての
政府
の明確な
見解
をただしたいと存じます。 次に沖縄問題でありますが、この問題については、
アメリカ国内
にも、いわゆる
コンロン報告
に示されたようないろいろな
要素
がありますが、とにかく沖縄を
日本
に返還することを前提として、その間、行政は文民によるという
趣旨
の
方向
が現われておるようであります。
米国
内にもこのような動きがあるときに、
沖縄島民
の熾烈な
日本復帰
の願望と関連して、この問題について
政府
はどのような
方針
を持っているのか、お伺いをいたします。 以上で
外交
問題を終わり、次の問題に移りますが、これを要するに、われわれに必要なことは、今日の
世界情勢
に対処して、
日本
がみずからのためにもまた国際的にもどのような貢献をするかということであります。その
意味
で「
雪解け
」、「
完全軍縮
」という問題と、「非現実的」とか、「
実現性
の乏しい
理想論
」とか言って故意に過小評価すべきではなく、まずもってこの
方向
が正しいかどうかを確認することであります。そして、もしそれが正しいと確認されるならば、それに到達するための手段、方法、
手続等
、いわば順序の問題は、提起された目的を実現するための技術的な問題であることを悟るべきでありましょう。今日、
兵器
や科学の分野における革命的な
変化
は
想像
を絶するものがありますが、今や必要なことは、われわれ
政治
に携わる者の
頭脳そのもの
の革命であります。抽象的な理念だけにとらわれてはなりませんが、同時に、
世界
の動向、歴史の流れを正しく把握し、人間の英知と創造的な思考を最大限に働かせて、
人間世界
に、力の
対決
でなく、
国民生活
の水準で競争するような
時代
を築かなければならぬと信じます。
岸総理
はかかる
時代
に対処するいかなる
経綸
を有されるや、あえて一言を呈して
外交
問題を終わります。 次に、
明年度予算案
、
財政投融資計画
及び
経済全般
について、われわれの
批判
を加えながら
政府
の
見解
をただしたいと存じます。 なお、この
政府案
の内容の
質疑
に入るに先だって一言触れておきたいことは、
予算編成過程
における驚くべき混乱と無統制であります。その不手ぎわは実に醜態をきわめたものであり、
新聞等
もこれを
ゴネトク予算
と評しております。
予算編成
というものがこのような形であってよいのかどうか、この際、
総理
、蔵相の
所見
を伺っておきたいと存じます。 さて、
明年度予算案
は、
一般会計
において一兆五千六百九十六億円余、
財政投融資
にあっては五千九百四十一億円、
実質規模
で五千九百八十六億円となっておりますが、しかし、これは形式上の数字でありまして、実質的には、
さき
に触れました
予算編成過程
におけるぶんどり競争の結果、大蔵省は窮余の策として、原案の規模を形式上維持するために、
復活要求
のうち約百億円余を本年度すなわち三十四年度の一
補正回し
としたのでありますから、
実質規模
はこの分をプラスしたものと同様であります。さらにまた、
明年度
は
国民
の疑惑と
批判
の的となっている
ロッキード機
を総額約七百億円の
国庫債務負担行為
で採用しようとしており、なお、これに関連する
機材費
及び
艦船建造
の
継続費等
を含めると、
国庫債務負担行為
の総額は一千億円に近いものとなり、その結果、三十六年度以降の
防衛費
は飛躍的な
増額
を必至としているのであります。なおまた、公債は発行しないと言いながら、
開発銀行
、
電電公社等
で、計五千万ドルの
外債発行
も予定されているのであります。そのほかにも予定はありましょう。またその反面、税の
自然増収
を二千百億円以上も見込みながら、減税は
国民
の切実な要求にもかかわらず全然見送りとなったし、そうかと思えば、一方において
ガス料金
は一月から
値上げ
、また
電気料金
、
地下鉄運賃等
の
値上げ
も予想され、
通運料金
も七日から
値上げ
になることは、もう、すでに御
承知
の
通り
であります。また、
国際情勢
が
雪解け
、
軍縮
の
方向
にあるときに、これと逆行して、
防衛費
は、
さき
に触れた
国庫債務負担行為
と別に、
防衛支出金
の繰り回し分を含めて実質百二十五億円の増加となっているのであります。また、額は十億円足らずではありますが、問題の多い
造船血利子補給
を、しかも
海運界
が昨秋以来好転し、船株も上がってきたと言われるこのときに、大資本のために復活することは、容認しがたい問題と言わねばなりません。また、
財政投融資
にしましても、
中小企業
や
農業等
には申しわけ的な
増額
をしているものの、依然として大
企業中心
であることは、あらためて指摘するまでもなく明瞭でございます。これを要するに、
明年度政府案
は、
軍事費
の
増額
と大
資本中心
の
政策
を根幹とした、しかも
日本経済
及び
国際情勢
の
現状認識
を欠いた
放漫予算
の性格と言うことができましょう。もちろんわれわれも停滞的な
消極政策
を是認するわけではありません。かつ
国民生産
や所得が増加すれば、それに比例して
予算規模
もある程度ふくらむのは当然でありますから、必ずしも
予算
の総ワクだけを問題にするわけではありません。問題は、むしろ
軍事費
の増顧という
世界
の
大勢
に逆行する
国際認識
、並びに
日本経済
の特質、
産業構造
上の
欠陥等
、いわば、
わが国経済構造
上のひずみ、
矛盾
に対する
政府
の
現状認識
の
不足
、及びその
構造
上の
矛盾
を克服解決するために必要な
政策
があまりにも貧困であるということであります。この場合、
政府
は、
経済活動
を強化すれば間接的に
国民生活
に寄与するという
立場
をとると思いますが、この
考え
方は、もちろん一定の
条件
のもとにおいては肯定されます。しかし
経済活動
の波動が間接的にも及ばない
階層
、また、逆にかえってこの
経済活動
の
犠牲
となる
階層
にとっては、国の
予算面
における直接的な
援護措置
が絶対に必要であることを、この際あらためて強調したいのであります。 さて、
わが国経済
は確かに三十四年度において一二%という高い
成長率
を示し、
成長率
に関する限り、昨日の
総理
の
演説
のように
世界
の驚異かもしれません。しかしながら
日本経済
は、それにもかかわらず重要な
矛盾
を内包しているのであります。すなわち、国全体としての
経済成長率
は高度であっても、各部面における富裕と貧困、
先進性
と
後進性
、いわゆる
階層較差
はその嘱が狭められるどころか一そう顕著になりつつある事実であります。しかもこの
較差
は、
階層較差
という単純なものではなく、
農工較差
、
地域較差
、
企業較差
と言われる形で、
わが国産業構造
、
国民生活
上の重大な
欠陥
となって現れております。三十四年度の
厚生白書
によれば、要
生活援護者
のほか、
生田保護
の適用こそ受けないが、そのすれすれの線にある低
所得者層
が百六十九万世帯という多きに上っている事実を指摘しておりますが、実際にはその似は一千万人くらいと
想像
されます。さらにこの白書は、
世界
で最も高い
経済成長率
を示した
わが国
が、
自殺者
、特に
一家心中
の数においても世外で最も高率にある事実をあげております。統計によれば、三十二年の
自殺者数
は、未遂を含めて三万一千八百三十八人であります。
大蔵大臣
の
自画自責
と
手放し
の
楽観論
にもかかわらず、これが
わが国産業経済
の
特異性
であり、
国民生活
の実態であります。また実にこれこそ
わが国経済
の繁栄の陰に隠された暗い断面と言うことができます。(
拍手
)このように見てくると、
政府
の
施策
は平面的な
経済成長中心主義
であって
安定的成長
を確保するための
予算
と
施政演説
ではうたっておりましても、実際には
安定的成長
に対する考慮があまりにも不十分であり、かつ欠除していると
考え
られるが、
政府
は、
わが国経済
のこのような
特殊性
についてどのような
現状認識
を持っているのか、また正しい
意味
での
安定的成長
に今後の
施策
の
重点
を移す
考え
はないか、
お尋ね
をいたします。これはまじめに
お答え
をいただきたい。 さて、
わが国経済
がこのような
矛盾
や
欠陥
を持っているときに、国際的な要請にも押されて、
わが国
も
貿易
・為替の
自由化
を迫られる
段階
となったのであります。今、
予算
問題の際に、私が唐突にこの
自由化
問題を持ち出したのは、ほかでもございません。実はこの
貿易
・為替の
自由化
の実施にあたって、もしその
対策
に欠けるならば、先ほど来触れてきた
わが国経済構造
上の
矛盾
、
欠陥
は、一そう激化すること必至となるからであります。実にこの
自由化
は、
国際的弱肉強食時代
に入ることを
意味
するものと言えましょう。しかし、
自由化
は必然の
方向
であります。その
意味
で、
政府
がこの
自由化
の
方向
に踏み切る場合には、当然、
明年度予算
及び
投融資計画
の中にその
対策
が頭を出していなければならないのに、それについての具体的な
施策
が十分講ぜられておらないことは、先ほど来触れて参りました
安定的成長
の問題と関連して、
明年度政府案
の重大な
欠陥
と言わなければなりません。(
拍手
)本年は
世界
的に好況の年と言われておりますが、しかし
世界
には、今、
国際市場競争
の激しい冷たい風が吹き始めており、英国の
貿易自由連合
、欧州の
共同市場
など、
ブロック別
、
カルテル化
も進み、しかも、
世界
的に
技術革新
による
設備更新
と相待って、
過剰生産
の要因をはらむ
情勢
となっていることは
周知
の
通り
であります。
自由化
を実施する場合には、もちろん実情に応じての
段階順序
があるべきですが、この場合、
世界
的にもある程度通用し、かつ
日本
の実情に応じての
自由化
のスケジュールを具体的に示されたいのであります。通産大臣にお願いをいたします。この
自由化
の一般的スケジュールとともに、何よりもまず抵抗力の最も脆弱な部分に対して十分な配慮がなされなければならないと思います。端的に言えば、
わが国
の現状においては、国際競争に対応できる体質改善や基幹産業の育成も大切でありますが、同時に、
経済
の二重
構造
の改革にメスを入れるような積極的な
施策
が重要だということであります。それに基づいて、
中小企業
、農業の育成強化、合理化に伴う失業
対策
、雇用の拡大及び労働者の給与改善等を
重点
的に
施策
することが、当面最も重要かつ喫緊の課題と思います。なお、一部企業において雇用増加が伝えられておりますが、最近の傾向はその大部分が臨時工である事実を見のがすべきではないしまた、三十五年度の
経済
計画においては、
明年度
の雇用は〇・七%減少することになっているのであります。また、失業問題については、炭鉱ですでに十一万人の整理が発表され、一部においてはロックアウトにより死闘が展開されている等の事実を認識すべきであります。さらにまた、ガット会議において
日本
農業の保護
政策
についての
批判
が出るのではないかということから、農民は今後の成り行きに不安を感じておりますが、広大な耕地を持つ諸
外国
の農業と、わずか七、八反歩の零細耕地しか持たぬ
日本
農業とを、絶対に同一視すべきでないことを付言をいたしておきます。(
拍手
) さて、これら諸問題について
政府
はいかなる
対策
を持っているのか、具体的に
関係
大臣から答弁を求めます。なお、時間の
関係
で、以下は単純に項目だけをあげて
お尋ね
をいたします。 その一は、
明年度
における
国民
の税負担総額の
国民
所得に対する比率は二〇・五%となり、本年度より〇・六%とわずかではあるが重くなりますが、これは
政府
の宣伝してきた所得倍増計画と
矛盾
するし、かつ、三十七年度までに税負担率を一八%に下げるという長期
経済
計画に逆行すると思うがどうか。なお、
明年度予算案
には
明年度
計画に照応する所得倍増計画をどのように織り込んであるというのか、年度別の計画を具体的に説明されたいのであります。また、所得倍増計画の作業はどうなっているのか、これは
経済
企画庁長官に伺います。 第二は、
明年度予算
の歳入は、いわゆる隠し財源までほとんど吐き出してしまったのであるが、三十六年度における減税は可能かどうか。後年度ということでなしに、明確に
お答え
いただきたい。 第三は、
政府
は、
明年度予算
の膨張と民生安定費の不十分を、災害
関係
費に籍口するかもしれませんが、しかし、その反面、当面緊急性もなく、かつ
国際情勢
にも逆行する
防衛費
を
増額
し、さらに一千億にも上る
国庫債務負担行為
をあえてしております。このような災害時等をも想定して、MSA協定第八条には、「自国の
政治
及び
経済
の安定と
矛盾
しない範囲において」云云と、りっぱに規定されておるのであります。われわれはこの場合、
防衛費
、特に
防衛支出金
の不用分及びロッキー下生産費等を他の民生安定費に回すことを要求いたしますが、
政府
の
所見
はどうか、
お尋ね
いたします。 第四に、
貿易
自由化
を契機として、
外国
資本の
日本
進出が相当激しくなるものと予想されているが、これについての
対策
いかん。 以上で質問を終わりますが、残された諸問題は同僚議員の
質疑
に譲ります。ただ、この際、議会
政治
のあり方に関する
総理
の独善的
見解
には徹底的に抗議するとともに、行
政府
が立法府に対して不当な容像をすることは容認しがたい問題であることを特に付言をいたしておきます。 質問を終わるにあたって触れたいことは、先ほども申しましたように、
世界
の大局、歴史の流れを一正しく把握し、科学の分野の発展に立ちおくれぬよう、料亭の中でコップの水をかき立てておるような古い型の政・治を一掃し、
雪解け
の
方向
に寄与し得るような
外交
と、
国民生活
の安定を確保するための平和
経済
構造
をすみやかに確立することの急務を指摘し、
政府
の誠意ある答弁を期待して、
日本社会党
を代表しての私の質問を終わります。(
拍手
) 〔
国務大臣
岸信介君登壇、
拍手
〕
岸信介
4
○
国務大臣
(岸信介君)
羽生
君の御質問に
お答え
をする前に、一言申し上げます。すなわち、昨日の私の
演説
中、国会の審議に関し必ずしも適当でなかった表現のありましたことを釈明します。
羽生
君の
外交
に関する御質問に
お答え
をいたしますが、全体についての私の
考え
を申し述べておきたいと思います。すなわち、いろいろな御議論がございまして、具体的の問題については順を追うて
お答え
を申し上げますが、根本において
国際情勢
をどういうふうに見るかという問題について、私の
見解
を明らかにしておく必要があると思います。 言うまでもなく、この
雪解け
というこの
国際情勢
がどういう実態を持っているかということを、お互いに冷静に正しく把握していくことが必要であろうと思います。私は、
東西
両
陣営
というものの間の
緊張
を緩和するために、それは今日御指摘になりましたように、
科学
兵器
が非常に
発達
をして、そうしてこれがもしも全面的に用いられるというような場合は、
人類
の
破滅
を来たすのであります。また、こういう軍備を
増強
していくことが、おのおのの国にとって非常な負担であるという
意味
から、
政治家
ができるだけこの軍備のこういう状況に対して、
軍備競争
というものをやめて、そうして話し合いによってこの問題を
解決
しようという
努力
をしなければならぬということを、
東西
両
陣営
ともその首脳部において
考え
られているということは、これは御指摘の
通り
であります。また、その
方向
は、私どもも
人類
の一人として強く願っていることであります。従って、
日本
の
外交
政策
としてもその線に沿うてあらゆる
努力
をすべきことは、私は当然であると思います。しかしながら、問題は、現実の状況がそれではすべてこの
雪解け
になっているかという、この事態の認識であります。今日、
東西
両
陣営
間におけるところの大きな問題として、あるいはドイツの問題があげられており、あるいは
軍縮
の問題が取り上げられておって、巨頭会談においても主要な題目として話し合いが行なわれようとしております。しかし、この話し合いにおきましても、前途は必ずしも私は容易にこれが妥結されるものとは思いません。しからばというて、話し合いの
努力
を続けていく、力強くあくまでも続けていかなければならぬことは言うを待ちませんし、また、そのために、話し合いの糸口が困難であるからといって、糸口をふさぐようなことをしてはならぬと思います。しかし、現実の問題として、
東西
両
陣営
がその根本的な社会・
政治
に対する理念を異にしておって、その
考え
方は、両方が両方とも互いに相侵さず、そうして共存の道を見出していく、内政に対しては不干渉であり、また
考え
方自身を変えるというようなことを、根本的の
考え
方を変えるということをお互いに求めるというようなことではなくして、おのおのの
立場
というものをはっきりして、そうしてその
立場
をお互いが
理解
し合い尊重し合って、力を、武力を用いることなく、話し合いで
解決
していこうという、この
情勢
が生まれつつあるというのが私どもの
見解
であり、またそれを推進していくことがいいのであります。しかし、今申し上げるような、この
国際情勢
の状況を見まするというと、御
承知
のように、共産主義の国々がしっかりした団結のもとに立っておって、そうして自分たちの主張をこの話し合いにおいて実現するように
努力
している、これに対して自由主義の国々もまた協力して、そうして自分たちの
考え
方に基づいての主張を尽くしていく、この話し合いがどういうふうにつくかというのが今後の国際の
情勢
の推移であると思います。従って、こういう
意味
において、私は、共産主義の国々もその団結をゆるめることは絶対にありません。同様に、自由主義の国々もまたこの協力を強固にしていくことが、この話し合いを進める上において必要であり、またそれが
世界
の平和をもたらす根拠になると思います。この
意味
におきまして、私どもが今回
考え
ておる
安保条約
というものがその一部である。これは御
承知
のように、
世界
の各地をごらんになりますというと、今日まだ、
完全軍縮
が一方に唱えられておるけれども、
軍縮
が実際行なわれておるかというと行なわれておらない。
ソ連
も
アメリカ
も、また、その他の国々も、現実に
軍縮
をまだ実行しておりません。たとえば最近
ソ連
において百二十万の兵力を減ずるということを明らかにすると同時に、
フルシチョフ首相
が同じ
演説
のうちに、これによって
ソ連
の
防衛
力であるとか
軍事力
というものは少しも弱まっているのじゃない、最近の
科学
兵器
の
発達
からいって、こういう
人間
は減らしてもわれわれの火力は少しもこれを損じておらないのだ、ということを強く
国民
に訴えておることから見ましても、これをもって直ちに
軍縮
が実行されておるというふうに
考え
ることは間違いであります。こういう
意味
に立ちまして、私どもは、今回の
安全保障
条約
というものは、御
承知
のように現在存在しております。しかも、それが結ばれたときの特殊な事情から見て、
日本
の
国民
感情に合わず、また
日本
の独立と
自主性
を傷つけるものが非常に多いのでありまして、これを合理的に改めていこうというのが私どものこの
安保条約
の改定の
真意
でありまして、これを何か非常に
軍事同盟
というふうな言葉で表現されますが、その
軍事同盟
という言葉自身もどういう内容を持っておるか、これは非常にその言葉自身が私は疑問があると思う。これの内容を検討されますならばわかるように、
国連憲章
に違反しての
侵略行為
が行なわれない限り、この新しい
安保条約
の
防衛
に関する規定は発動しないということはきわめて明瞭でありまして、あくまでも国連の精神に沿って運営されることは当然であります。こういうものを
軍事同盟
という言葉で呼ぶことは非常な誤解を生ずるゆえんであると
考え
ております。(
拍手
) そこで、具体的の御質問の内容につきまして順次
お答え
申し上げますが、第一に、
事前協議
の点についての御質問であります。これは交換公文において明らかにいたされました事項については
事前
に協議する、
事前協議
をするということを明らかにいたしております。そうして、これはしばしば国会においても、協議ということが成立することを前提としており、それが成立するためには
日本
の同意を必要とすることは、協議というものの性質上言うを待たないのであります。従って、そういう
日本
の
意思
に反しての行動はとらないということは、従来交渉の途上においても両者の間に
意見
の一致したここでありまして、これもまたしばしば国会で申し上げた
通り
であります。それを今回のアイゼンハワー大統領と私の会談の際に再確認して、これを共同声明に盛ったという性質のものでございます。次に、東南アジアの低開発地域に対してわれわれが開発に協力する、特に米南アジア方面に対してこの新
安保条約
が一つの脅威を与えておらないかという御質問でありますが、私どもは東南アジアに対して、いろいろな
意味
において今日までも開発に協力をいたしておりますし、いろいろな折衝もいたしておりまして、今お話のような御懸念がこの問題に対して起こっておるとは
考え
ておりません。 次に、
憲法違反
じゃないかというお話でありますが、この
条約
にも明らかにいたしております
通り
、私どもの負う義務はあくまでも
憲法
の範囲内でありまして、決して
憲法違反
の条項はございません。あるいは
バンデンバーグ決議
等に対して
防衛
力の
増強
の義務を負うのじゃないかというお話でありますが、要するに私どもは、あくまでも
日本
の
防衛
につきましては、国防会議においてきめております
方針
によって、
日本
の国力と国情に応じてこれを漸増するという
方針
を自主的にきめておりまして、それ以上に何らの義務を負うものではございません。
憲法
九条に対しての御質問でございましたが、これを守ることは従来といえどもわれわれは守ってきておりますし、将来といえども私どもは
憲法
の九条の精神を守っていくことは、これは当然でございます。しこうして、この解釈については、従来いろいろな議論がございましたが、私どもが国会において明確に私どもの
考え
を申し述べている
通り
であります。 次に、
完全軍縮
と
自衛隊
の問題についての御質問でございます。いわゆる
完全軍縮
というものが、軍備を一切撤廃するということが私は究極の目的であると思いますが、まだまだこの国際の現実から見まするというと、すべての国がすべての軍隊をすべて撤廃するということに至るまでは、相当な時日がかかると思います。これは
羽生
君も御
理解
いただけると思います。そうすれば、その途中において、ある
軍縮
の
段階
的な問題が
考え
られなければならぬと思います。その
段階
的な問題として、今、
軍縮
会議が行なわれていることも御
承知
の
通り
であります。これには、その途上において各国の間に
均衡
のとれた
軍事力
というものがどういうふうにして維持されるか、また、これの違反をなくするための監視制度をどうするかという問題について、なかなか各国の間に
意見
がまとまっておらないことも御
承知
の
通り
でありますが、こういうことは、やはり今後われわれは、国連を通じ、国連の内外において、このいわゆる十カ国会議というものが結実するように
努力
をしていかなければならぬし、また、その前提である核実験禁止の問題に関する三カ国の会議に対しましては、
日本
が強くこれを主張し、また、これの
世界
的な空気を盛り上げてきている
関係
から申しましても、
軍縮
問題の前提としても、まずこの
核兵器
の実験禁止の問題が実現するように今後とも協力をいたして参りたいと、かように思っております。 共産圏との
関係
についてはどう
考え
るか。一方において自由主義の
立場
を堅持し、
日米
の協力によって
日本
の平和と安全を守り、
日本
の繁栄を作っていくという
立場
をとる以上、一体、共産圏との間の
関係
はどうなるのだという御質問でございます。私は
日本
がどういう
外交
方針
をとるかということについては、いろいろな
考え
もありましょう。しかし、私自身、
日本
の
国民
の真の繁栄と安全は、
日本
が
政治
の目的として、中心の理念として
考え
ている自由民主主義の
立場
を堅持し、同じ
考え
を持っている国々と
提携
していくことが、私は
日本
の繁栄と平和を守る上からいって一番必要であり、その中核をなすものは、やはり
日米
の真の協力の上に
日本
の繁栄と平和を守っていかなければならぬという
立場
を私はかたくとるものであります。で、その
考え
方がいいか悪いかということは、要するに
日本
の
国民
がこれを決定すべきものであることは言うを待たないのであります。各国ともいかなる
外交
政策
をとるかということは、その国の
国民
がきめる問題でありまして、他から干渉を受けたり、あるいはこれに対していろいろな難くせをつけられるべき性質のものではないと思います。この
意味
から申しまして、
日本
が
確固
たるそういう
立場
をとっているけれども、しかしながら、私どもは、私の
演説
のうちにも申しました
通り
、決して共産圏を敵視するものではございません。また、あくまでも話し合いによっていろいろな問題を
解決
していこうということは、これは当然であります。今日、いわゆる
世界
の
雪解け
といわれる米ソ両首脳部の
交換訪問
や話し合いということを見ましても、私から申し上げるまでもないことでありますが、
ソ連
が共産主義の
立場
を変更して自由主義の方へ行こうという
考え
でもなければ、また、
アメリカ
が自由主義を変更して共産主義の方へ行こうというものでもないのであります。おのおのがおのおのの
政治
的理由に立ってはっきりとした
立場
をとって、そうして話し合いでものを
解決
するというのであります。従って、
日本
が今申し上げますような自由主義の
立場
をはっきりととって、自由主義の国々とはっきりした協力を作って、その上に、私は、そういう
立場
において、
確固
たる
立場
に立って、共産主義の国々とも話し合いによってすべての問題を
解決
していくということが根本だろうと思うのであります。(
拍手
) そうして、
ソ連
との問題につきましては、最近の覚書の問題に関しましては、私が今申し上げました
趣旨
から申しまして、私は、
日本
のとるべき
外交
方針
に対して、この
ソ連
の覚書は、一面においては内政干渉的な
意味
を持っており、この点についてはわれわれは同意するものではないのであります。また、
領土
問題については、すでに両国の間に正当にきめられたところの共同宣言に反して、一方的に新しい
条件
をつけてくるということは、私は、国際信義の上から許すべからざることであるという
立場
をとっております。(
拍手
)これは
ソ連
政府
の十分な反省を促さなければならぬと思います。ただ、この
ソ連
との問題におきましては、こうした
領土
問題、歯舞、色丹のみならず、われわれは
日本
の
固有
領土
の
日本
への返還を一貫して求めておりますが、この問題がきまらない限り、実は
平和条約
が結び得ないことは、日ソ交渉の経過から見まして御
承知
の
通り
であります。従って、私は、この問題を、やはり
領土
問題に対して、
ソ連
が
日本
人の
考え
ておることを正当に
理解
し、これに対して十分な
理解
に立った
領土
問題
解決
ということを促していかなきゃならないが、それは現在の
段階
では、まだその
段階
ではない。そこで
貿易
の問題を進めるとか、あるいは文化交流をするとか、その他、人の交流を盛んにして、われわれの
考え
が決して政党政派の
立場
や、あるいは思想的な
立場
でもって、
領土
的の
見解
が違うのじゃなしに、
日本
国民
全体がそう
考え
ておるということを
ソ連
が十分に
理解
して、そうしてこれを
日本
に返すというふうなことを進めていく必要があるし、また同時に、
東西
両
陣営
の間の国際的
緊張緩和
という、この
情勢
をさらに推進することによって、この問題を
解決
すべきものであって、今御
提案
になりました
日ソ不可侵条約
を結んだらどうだというお話がありますが、私はこの点に関しては、
日本
の
国民
感情から申しましても、
日ソ不可侵条約
というものはとうてい成り立ち得ないものだと
考え
ております。 さらに、対中共の問題でありますが、この問題は、昨日の
外務大臣
の
演説
にもありましたように、一面、日中の長い
関係
から申しまして、
日本
の
立場
からこれを
解決
していかなきゃならぬ部分があります。また同時に、
世界
政治
の流れにおいてこれを
解決
しなければならぬところの国際的な問題もこれにからまっておることは御
承知
の
通り
であります。従って、
日本
の
立場
から
考え
るべきこと、また、
日本
が最も深い
理解
を持っておるという
立場
から
世界
の各国に呼びかけていかなければならぬ事柄は、もちろん
日本
が主導的な
立場
をとってやるべきことは当然であります。しかしながら、同時に、
世界
の
政治
の流れにおいて
解決
しなければならぬような問題につきましては、私は、
アメリカ
初め
関係各国
と話し合いをしていくことは、これは当然必要であり、また、そういう
考え
でございまして、決して
アメリカ
に追随するような
考え
ではございません。(
拍手
) それから、こうした問題に
関係
して
局面
を打開するために解散をしたらどうだとか、あるいは私が退陣したらどうだというような御
意見
がございましたが、この点に関しましては、解散をする
意思
がないことをしばしば申し上げておりますし、また、私自身の責任から申しましても、この際、退陣というような無責任なことは絶対に
考え
ておりません。 なお、
沖縄
問題に関しての御質問でありましたが、
沖縄
については、御指摘のように、
沖縄
の住民の気持、また、
日本
国民
全体の
考え
から申しまして、施政権の返還を求めることはこれは当然のことであります。ただそれには、
段階
、事情があることも御
承知
の
通り
であります。そこで私どもは、今回の問題におきまして、特に
沖縄
に対する住民の生活の向上や福祉の増進、また、その
経済
の発展のために、
日本政府
が協力をすることが有効であり適切であるというような問題に対しては、
日米
協力して各種の
施策
を行なう。たとえば最近行なわれます西表の開発のようなこういう事態をだんだんと積み重ねていくことが、現在の
沖縄
の福祉の増進の上からも望ましいことであり、将来これが復帰を求める上からいいましてもそういう実績を固めていくことが適当であると
考え
まして、そういう
方向
で進めております。 次に、
予算
の編成の問題について御質問がありましたが、言うまでもなく、
予算
の編成は
政府
が行ないましてこれを国会に
提案
することに
憲法
の規定にもはっきりあります。ただ御
承知
の
通り
、政党内閣制をとっておる
日本
のごとき
立場
から申しますというと、
予算
の編成その他の問題もありますが、
予算
の編成のごときものについては、政党が
国民
に公約しておる事項をどういうふうに盛り込むかという問題については、政党が非常な関心を持つことは私は当然だと思います。従って、その過程において政党と
政府
とが十分話し合いをしていくことはこれまた必要なことである、そういうふうに
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
藤山愛一郎君登壇、
拍手
〕
藤山愛一郎
5
○
国務大臣
(藤山愛一郎君)
羽生
議員の御質問に対しまして
総理
から相当詳細に御説明がありましたので、私といたしましてその補足的な
意味
で
お答え
をいたしたいと思います。 今日、対ソの
外交
につきまして御質問がございましたが、われわれといたしまして、むろん先月二十七日に参りました覚書につきましては、
ソ連
の
見解
に同意をいたしかねるのみならず、
ソ連
のああいう覚書自身が誤った
見解
の上に立って問題の
判断
をいたしておるのみならず、それが国内各般に影響を及ぼすような形において出て参りましたことは、まことに遺憾に思っております。しかし、そういう
立場
に
ソ連
が立っておりましても、われわれとして通常の
外交
に対しましては十分話し合いの上で進めていくことはこれは当然でありまして、現に行なわれております通商協定につきましても、今回は期限を三年にいたし、あるいは延べ払い等につきましてもお互いに話し合いをいたしておるのでありまして、現にこれらの話し合いは順調に進んでおるわけでございます。また、来たるべき
漁業交渉
にあたりましても、われわれとしては、これを純漁業上の
経済
問題として、十分
科学
的検討に立ちました実績に従いまして、
日本
側の十分な主張を
ソ連
に納得してもらうように、力強く交渉いたして参るわけであります。そうした
経済
の問題につきましては、当然われわれの合理的な主張というものが
ソ連側
にも十分納得してもらえるものと私どもは
考え
ております。従って、そういう
意味
におきまして、
ソ連
に対する
外交
も力強く、そうした「
日本
の
立場
を主張しながら進めて参りたいと思うのでありまして、
政治
問題等につきましては全く違った
立場
に立った議論でありますから、われわれとしては同感し得ないところでございます。 また、中共との
関係
につきましても、私が先般の
外交
方針
において申し上げましたように、中共の問題が今日国際社会において次第に表面に出てきておることは、これは明らかな事実でありまして、
軍縮
問題あるいは核実験等の問題、そうした問題を
考え
ます場合に、中共の問題を
考え
て参らなければならぬことは、国際社会においても次第に起こりつつあることは当然でございます。また中共が今日すでに十数年をたちまして、
経済
建設その他
中国
大陸において進んでおります事実も認めて参る必要があると思います一・ただ
総理
も言われましたように、今日
中国
大陸との
関係
につきましては、一面では、ただいま申し上げましたように国際的な中における処置の問題がございます。他面では、
日本
と
中国
大陸との
関係
があるわけであります。それらのものをどう調節していくかという
二つ
の問題があろうかと思います。われわれといたしまして、
日本
はアジアに国を持っておるわけでありますから、
中国
大陸と長年の交流を持っております。従って、民族的な感情においても、アジア人同士が同感し得る、あるいは
共通
な民族的な心理というものを持っておることはむろんでありまして、これらのことが、あるいは西欧の諸国あるいは共産
陣営
を含めて
世界
の各国でわからないような点もあろうかと思います。
日本
としては、やはり自主独立の
立場
に立ってこの問題を扱います場合には、われわれがアジアの一員として見ております点において、十分西欧各国の人たちに対しまして、これらのわれわれの見ている見地というもの、われわれの
考え
方ということを十分に申し述べて、そうして、たとえば誤解がありますならば、その蒙を開いていくことも必要であろうかと
考え
ております。そういう
意味
におきまして、われわれとしては、先般
外交
方針
の
演説
でも申し上げましたように、自主的な
立場
に立ちまして、漸進的に問題の
解決
をはかっていかなければならぬと思うのでありまして、
世界
政治
の中におきましても、また両国の中におきましても、この問題は将来とも十分
努力
をする必要があると思います。ただ今日まで、
日本
側だけがこれは悪いのではないのでありまして、
中国
大陸側におきましてもわれわれに対する誤解、不信が相当にあることは、これは明らかな事実だと思います。従いまして、そういう
意味
においては、
日本
側も十分
考え
なければならぬ点があるかもしれませんけれども、中共においても、私はこれはやはり十分
考え
て参らなければならぬ点があると思うのでありましてそういう点についてはお互いに反省して参らなければならぬと思います。 また、われわれとして
軍縮
等の問題についてどういうふうに対処しているかということの御質問があったわけでありますが、われわれとして
完全軍縮
を理想として希望することはもちろんでございます。しかし、今日その
段階
に入りておりませんことも
総理
が言われた
通り
であります。ただ今日十カ国委員会ができまして、しかもこの
軍縮
問題が国連で扱われますことが一番適当であったと思いますけれども、
ソ連
の主張する。パリティ方式によって十カ国委員会ができたわけでありますから、国連と十カ国委員会との
関係
というものは、これは現実の問題として十分われわれは考慮しながら、国連の意向を十カ国の委員会に反映せしめて、これは一日も早く十カ国委員会が何らかの結論を得るように
努力
して参らなければならぬのでありまして、国連の一員として特にわれわれとしてはそういう
軍縮
問題の具体的
努力
をして参りたいと
考え
ております。特に
核兵器
の禁止問題等は、今日まで相当にジュネーブの会議におきまして、
アメリカ
側も
ソ連側
も歩みよりをいたしてきておるのであります。でありますから、これが一日も早く決定いたしますことが、
軍縮
の
段階
的進歩の上にも非常に貢献するところでありますので、その一点につきましては、われわれもできるだけ国連を通じての協力を惜しまないで進めて参ることを願っておる次第でございます。(
拍手
) 〔
国務大臣
佐藤榮作君登壇、
拍手
〕
佐藤榮作
6
○
国務大臣
(佐藤榮作君)
予算編成
の過程について、ただいま
総理
から
お答え
がございましたので、私は省略さしていただきます。ただ
予算編成
にあたりまして、相当長期にわたりましたためにいろいろな誤解を受けましたことは、まことに遺憾に思っております。
予算
内容についてのいろいろ御
批判
がございまして、今回の
予算
は
放漫予算
ではないか、非常な積極性を持つ
予算
ではないか、こういう積極性を持つ
予算
、
放漫予算
は、今後の
経済
に対して悪影響を及ぼすのではないか、こういうような御懸念からの
お尋ね
があったように伺ったのでございます。で、
政府
におきましては、現在の
経済
並びに今後の
経済
の見通し等を十分研究の上、見通しを立てまして、これに基づいて
予算
を編成いたしたのでありまして、私は御
批判
のような点は、さらに詳細に御説明いたしますれば、当たらない点が御了承がいただけるのではないかと思います。 概数で申しますと、
予算
の
規模
が
国民
の
所得
に対してどういう割合であるかということをしばしば申しますが、三十三年度の
国民
所得
に対する
一般会計
予算
の比率は一五・八であります。三十四年度の当初は一五・九であります。今回の三十五年度の
規模
は一五%でございます。この点からお
考え
になりますならば、最近の
経済
の成長は予想以上に拡大しておる、こういう
意味
におきまして、
予算規模
としては私はまず適当な
規模
ではないか、かように
考え
ております。ことに最近の
経済
の動向等にかんがみまして、特に私ども留意して、公債の発行あるいはインベントリーの取りくずし等、いわゆるインフレ・マネーは使わない。歳入は通常の歳入を基礎として歳入
予算
を立てるということを堅持いたしまして、いわゆる健全財政の線を貫いたと、かように
考え
ております。 ところで、今回の
予算編成
にあたりまして、特に私どもが
重点
を置きました点は、昨日も御説明いたしましたように、今回は昨年の災害等にかんがみまして、特に災害復旧、さらにこれに関連して抜本的な国土保全
対策
を立てるということ、さらにまた社会保障
関係
の
施策
を推進していく、この
二つ
を
予算編成
の
重点
といたしたのであります。この
意味
においての詳細な数字はすでに説明をいたした
通り
でございます。 問題になります
防衛費
等につきましては、
羽生
さん御指摘の
通り
百二十六億円、従いましてこの点では、
予算
の面では、昨年のものに比べまして、
防衛
庁費そのものも比較的例年の例に比べますと少額の増加にとどまったということであります。
防衛
関係
費といたしましてはわずかに当初
予算
に対して九億円の増でございます。ただ問題は債務負担行為が相当多額に上っておる、こういう
意味
で、これを
予算
化する三十六年度以降において非常に負担が多くなるのではないかという御
意見
であったかと思います。この約一千億近い債務負担行為、そのうちロッキード採用のための債務負担行為は七百数十億でございまして、その他のものは一般の例年計上いたします債務負担行為でございます。そういうことを
考え
て参りますと、今回の債務負担行為は特に多かったと言われますけれども、ロッキードに関する限り、三十六年度に全額これが
予算
化されるものではなくて、今後三十六年以降四カ年にわたりましてこれを
予算
化いたすのでございます。従いまして、その年々の財政参状態を十分勘案して、これを
予算
化して参るつもりでございますので、特にそのために、必要な社会保障費あるいは減税等の
施策
について、これを見送るというようなことはしないように、十分注意して参るつもりでございます。御
承知
のように、
防衛費
の増加、
防衛
力の増加については、国力相応にこれを漸増していくという基本
方針
を立てております。この観点から十分工夫をこらす
考え
でございます。 なお、三十五年度の
予算
を編成いたしました結果、財源を使い果たしたではないか、そういう
意味
で、二千百億の税の
自然増収
を見たにかかわらず減税が行なわれておらないという御指摘があり、三十六年度以降においても減税は非常に困難ではないか、こういう御指摘があったと思います。
予算
の財政
演説
でも御説明をいたしましたように、今回は減税を見送りました主たる理由は、
自然増収
二千百億円に上りますが、いわゆる前年度の剰余金その他歳入として計上さるべきものが八百数十億減を来たしておりますので、それらの観点と同時に、また国土保全、災害復旧費等の多額の支出を要することと、また健全財政の線を貫く、この三点から、減税は今年は見合わせざるを得なかったのでございます。しこうして三十六年度以降につきまして、先ほど来言われますように
予算
の当然増もございます。そういう
意味
で
予算
の支出の当然増も
考え
られる、こういうことがございますが、ただいまの
経済
の
情勢
等から見ますと、税の
自然増収
を相当見積り得ると思いますし、災害復旧費等が減額されます。これらのことを
考え
て参りますと、三十六年度
予算
そのものは、ただいまそれについての見通しを立てることはまことに困難でございますが、ただいま申し上げるような支出増の面もあるが、さらに歳入増の面もあるというようなことを勘案いたしますと、
国民
の待望しております減税の処置等については、十分私ども
考え
て参らなければならないと思います。ことに一昨年来始めました税制調査会も順次結論を出しつつございますから、この結論ともにらみ合わせまして、
国民
待望の減税につきましても工夫して参りたい
考え
でございます。 ところで、
貿易
為替
の
自由化
と
予算
との
関係
についていろいろお話がございました。確かにこの
自由化
はなかなか困難な問題であり、各方面にいろいろな影響を与えるものだと思います。その点で、農村あるいは
中小企業
の面におきましては相当の影響のあるものだと
考え
ますので、私どもこれが実施にあたりまして、
政府
として十分慎重に
対策
を立てて、しかる上でこれを実施して参るつもりでございます。 次に、
外国
資本
の対日進出
対策
について申し上げますが、外資導入につきましては、
日本経済
の健全な発展や国際収支の改善に貢献する、いわゆる優良なもの、こういう優良な外資の導入は積極的に私ども歓迎するつもりであります。そういう
意味
では優先的にこれを取り扱って参るつもりであります。しかし外資導入がワクなしに無制限に入って参りますと、いわゆるホット・マネーが国内に入って来る、そのために
経済
が撹乱するということも十分注意しなければならないことでございます。そういう
意味
で、外資導入については、今申すような優良な外資は積極的にこれを歓迎いたしますが、いわゆる
資本
導入全般についてこれを
自由化
するという点については、なお
対策
を考究し、十分検討を続けて参るつもりであります。従って、
為替
の
自由化
の
方向
としては、
資本
の点ではいわゆる正常取引の
自由化
、これをまず取り上げるつもりでございます。この正常取引の
自由化
を進めて参りまして、そうして国際収支等の面における影響等も勘案いたした結果、差しつかえないという十分な見通しが立ち、さらにまた国内の金融
経済
情勢
等も
資本
導入について積極的にこれに対する
対策
が立てられる、こういう見通しが立った後に
資本
導入についてもこれを進めていく、こういう
考え
方に取り計らって参るつもりであります。(
拍手
) 〔
国務大臣
菅野和太郎君登壇、
拍手
〕
菅野和太郎
7
○
国務大臣
(菅野和太郎君) 昨年来から
日本
の
経済
が非常に発展したについていわゆる産業の二重
構造
がだんだん激化するじゃないかというようなお話があったのでありますが、もちろんわれわれもその
通り
に
考え
ておるのであります。従いまして、この
経済
の発展を単に量的のみで発展をはかるのみならず、質的にこの
経済
の発展をはかるべきであると、こう
考え
ておるのであります。お話の
通り
、
経済
が発展するに従いまして、いわゆる
所得
の格差というものが各方面に現われております。たとえば農業と非農業産業との格差、あるいは同じ産業でも
規模
の大小による格差、大企業と
中小企業
との格差、またあるいは地域的な格差、こういう格差が現われて参りますので、従いまして、これらの格差をなくすことがすなわち質的の
経済
発展になるというように
考え
ておりますので、そういうような点につきましては、それぞれの
関係
の省においてそういう格差をなくするような
予算
が計上されておると思うのであります。私どもの
関係
から申しますと、地域的な
所得
の格差でありまして、これの問題につきましては、たとえば東北開発の促進、あるいは九州の開発の促進、あるいは四国の開発促進というようなことで、これに対する特別な金融措置をとるとか、あるいはその他の補助の
方法
をとるとかいうような
方法
をとりまして、この地域的な格差をなくすような
方針
をとっておるのであります。 それから
貿易
為替
の
自由化
につきましては
大蔵大臣
からお話がありましたから、私からもはや説明する必要はないと思いますが、お話の
通り
、
貿易
為替
の
自由化
が実現することによって、ただいま御心配になっておられた産業の二重
構造
が激化されるという心配はもちろんあるのであります。従いまして、
貿易
為替
の
自由化
は慎重にこれを取り扱わなければならぬということで、
政府
におきましては
貿易
為替
自由化
の促進閣僚会議を設けまして、そこで慎重にこれを取り扱うことにいたしたのであります。すなわち、
自由化
の目標とか、あるいは時期とか、あるいは所要の
対策
などにつきましては、これを慎重に取り扱いまして、できるだけ
貿易
為替
の
自由化
によって各産業に及ぼす打撃を少なくして、
国民
全体の福利増進になるような
自由化
をはかりたい、こう存じておる次第であります。それから
所得
倍増のことで、来年度の
予算
に
所得
倍増についての何か
予算
が計上されてあるかというお話がありましたが、
所得
倍増につきましては大体目標をきめておるのでありますが、なお具体的に
所得
倍増の長期
経済
計画はただいま
経済
審議会においていろいろ策定中でありましてそこで大体
昭和
四十四年を目標にしてこの
所得
倍増の計画を立てておるのであります。それを実現するがためには、まず初年度三十五年度からこの
所得
倍増の計画を立てる必要がありますので、従いまして、さしあたり、たとえば
科学
技術の向上発展とか、あるいは産業基盤の
強化
の費用を計上するとか、あるいは輸出を盛んにする
意味
において海外
経済協力
基金の制度を設けるとか、あるいは、ただいま申し上げました
所得
の格差をなくするというような、いろいろの
予算
が各省に計上されてあるのであります。なお、
国民
所得
倍増の事業は今どういう状態にあるかというお話がありましたが、ただいま申し上げました
通り
、
経済
審議会においてただいま策定中でありますが、さしあたり問題になりますのは、
経済成長率
を一体どの点できめたらいいかということが問題になるのでありまして、今までのところでは、
経済成長率
を七・二%で、十カ年すれば大よそ
国民
所得
が倍増になるという一応の計算はできておりますが、その七・二%がはたして適正であるかどうかということがただいま考究されておるのであります。御
承知
の
通り
、今までの経過から申しますと、
昭和
三十三年の
経済成長率
は四・四%、また、
昭和
三十四年は一三%と計算しております。
昭和
三十五年は六・六%というように計算しておりますが、これを平均しましても大体八%になるのであります。でありますからして、七・二%が適正であるかどうかということを目下研究中でありまして、それが決定すれば、大体具体的な
国民
所得
の倍増計画はでき上がることに相なっておるのであります。(
拍手
) 〔
国務大臣
池田勇人君登壇・
拍手
〕
池田勇人
8
○
国務大臣
(池田勇人君)
お答え
申し上げます。 ただいまわれわれの置かれた
経済
上の最も重要な問題は、
貿易
為替
自由化
の問題でございます。しこうして、
貿易
為替
の
自由化
につきましての原則、並びに、ただいまそういう措置をとるべきであるということにつきましては、大体世論は一致しております。しからば、いかなる
方法
でやっていくかという問題でございます。御
承知
の
通り
、国内
経済
は自由でございますが、国際
経済
について見ますると非常に不自由でございます。今、自由に物を輸入し得る額というものは、総体の輸入額の三割二分でございます。しこうして、またその制限されたうちにおきましても、対ドル
関係
では制限しましてポンドその他では自由になっているもの、たとえば銑鉄、くず鉄、大豆、牛脂、牛皮、アバカ繊維、ラワン、こういう十品目につきましては、全体の一〇%余りを含めております。しこうして私は、対ドル
関係
でのただいま申し上げましたような原材料につきまして、これをほかの地域と区別するということはよくございませんので、まずこの十品目に手をつけました。しこうして、十品目のうち四品目はこの一月から自由にいたしております。それからまた、残り六品目の、一番やっかいな問題の大豆、銑鉄につきましては、おおむね十月といたしております。大豆につきましては相当の困難な問題がございますので、なるべく先に、しかも、その間に十分準備をしてやる
考え
でおるのであります。なおまた、大豆、銑鉄はそうでございまするが、鉄くず、牛皮あるいは粗製ラードにつきましては四月からいたします。精製ラードはおくらせます。また原皮は御
承知
の
通り
中小企業
が多いので、四月からやるということは困難でございまするから、三十五年度の上半期中というところでやっておるのであります。こういたしまして、とにかく、いろいろな過去の実績または現状を
考え
まして、移り変わりをうまくやっていこう。たとえば全体の輸入額の二十数。パーセントを占めます原綿、原毛につきましては、繊維
関係
各方面の意向を聞きまして、昨年末に、三十六年の七月にこれを施行すると、一年半近くの余裕期間を置きました。その間にいろいろな法律並びに
手続等
につきましての準備をいたしたいと
考え
ておるのであります。で、今までのそれと、対米十品目を
自由化
し、そうして繊維
関係
をやると同時に、消費財また規制品等につきましても徐々に
実情
を調べまして、すでに昨年の秋から今年にかけまして五、六百品目自由にいたしております。今後また業界の様子を見ましてやりまして、繊維その他をやっていきますと、大体
昭和
三十六年の四月くらいから全体の七十数パーセントまで
自由化
し得ると思います。残る問題は、大きいのは石油と石炭と砂糖、その他、銅等がございまして、二四、五%でございます。 私は、理論的にも、また実際的にも、また
日本
の
経済
をほんとうに力強くし、
世界
貿易
を
発達
さすためには、ぜひ
通り
抜けなければならぬ関所と
考え
ておりまするが、いたずらに急いで、角をためて牛を殺すのそしりを受けないよう十分な準備をいたして行なっていく
考え
でおります。(
拍手
) 〔
国務大臣
松野頼三君登壇、
拍手
〕
松野頼三
9
○
国務大臣
(松野頼三君)
貿易
の
自由化
に伴いまして、企業の国際
競争
が強まるということも予想されます。従って労働の質の向上を
考え
なければならない。技術の向上、技能検定あるいは職業訓練というものによって労働力の質の向上をはかりまして、生産性を上げて、そうして労働者の生活を上げていきたいという
方向
を、私は特に留意すべきだと
考え
ます。第二番目には、国内に労働者にしわ寄せになるような過当
競争
が行なわれるということも予想されますので、労働基準法あるいは最低賃金法、退職共済という現行のものを、特に労働者保護の
立場
からこの運営に万全を期して参りたい。なお、新たな問題といたしましては、家内労働に手をつけて、家内労働の保護ということも検討しなければならないと、私はこう
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
福田赳夫君登壇、
拍手
〕
福田赳夫
10
○
国務大臣
(福田赳夫君)
お答え
いたします。
自由化
につきまして、農産物に注意を払えと、かようなお話でございまするが、その
通り
に
考え
ておる次第でございます。すなわち、お話のように、
日本
の農業はきわめて零細な農家によって作られておるものでございますので、
自由化
をいたす場合におきましても、それが生産者たる零細農民に与える影響、これにつきまして万全の準備を整えてやっていきたい、かように
考え
ている次第でございます。そこで、重要産物であります米麦や、または酪農というようなものにつきまして
自由化
をいたす
考え
はございません。また、大豆につきましては、今までのような価格で
政府
が買い上げるというような準備をいたした上これを実行したいと、かように
考え
ております。(
拍手
) ―――――――――――――
松野鶴平
11
○
議長
(
松野鶴平
君) 杉原荒太君。 〔杉原荒太君登壇、
拍手
〕
杉原荒太
12
○杉原荒太君 自由民主党を代表して、主として
岸総理
に対し質問いたします。 質問の第一点は、
国際情勢
の動向についてであります。キャンプ・デービッドにおける
米ソ首脳
会談において、
国際関係
は「力づくでなく話し合いで」という原則が打ち出されて以来、特に、いわゆる
雪解け
についてさまざまな論議が行なわれております。
アメリカ
の大陸間弾道弾アトラスが十四回目の試射を行なった結果、射程八千キロに対し目標の三・二キロ以内に命中するという精度を示し、また、
ソ連
の長距離ロケットも一万二千数百キロを飛んで目標に対し二キロの誤差にとどまったと言われるように、最近における長距離ロケットによって代表される新
兵器
の開発はまことに目ざましいものがあります。そこで一方においては、こういう状態になってみると、もはや
戦争
は不可能である、
雪解け
は
必然
的にやってくるとして、きわめて楽観的な
見解
を持つ者があります。また一方においては、たとえば「
資本
主義を埋葬しよう」というような
フルシチョフ
の発言にもうかがわれる
通り
、
ソ連
は依然として
世界
革命の戦略目標はこれを捨ててはいないのであって、いわゆる平和共存の呼びかけのごときも一種の戦術にすぎないというのが
ソ連
の基本的な
立場
であるから、
雪解け
などというまほろしにだまされてはならないという警戒論もございます。この
二つ
の
見解
は、米ソ
関係
を中心とする
国際情勢
の動向に関する
見解
の両極の傾向を示すものでありますが、われわれは、
国際情勢
の動向については、特に冷静に、現実の事態の推移を実証的に把握しながら、大局の趨勢の
判断
に誤りなきを期せなければならないと思うものであります。そこでお伺いしたいのは、
岸総理
は、今回
アメリカ
を訪問してアイゼンハワー大統領と親しく会談し、
国際情勢
を検討されたのでありますが、
総理
は、大統領との会談を通じて、今後における
わが国
内外
施策
の前提をなすところのこの
国際情勢
の動向、なかんずく
軍縮
問題や
東西首脳会談
の見通し等についていかなる感想を持ってお帰りになり、いかなる御
所見
を持って国政に当たらんとしておられるか。先ほど
羽生
議員の質問に対する
お答え
の際お述べになりましたところで私は大体了承しておるのでありまするが、私の今申し述べましたような角度からしての質問に対して付加さるべき部分があったならば、その点お述べ願いたいと思います。 第二に
お尋ね
いたしたいことは、今回署名せられました
日米
両国間の相互協力及び
安全保障
条約
に関する去る一月二十七日付の
ソ連
政府
の覚書についてであります。
ソ連
の覚書の内容を見ますると、全般にわたってまことに乱暴きわまるものであります。その内容の一部を摘出いたしますれば、たとえば、「新
条約
によって
日本
国の事実上の占領が永久化され、
日本
国の領域を
外国
の支配の下に置くことになった」とし、また、「新
条約
を締結することによって、
日本
国はみずからの手で主権国としての権利の著しい部分を
外国
に譲り渡し、自国の国家的独立を失ったという事態に立ち至っている」と言っている。また、「この
条約
による
日本
の再武装計画の中において、
日本
の軍隊をロケット
核兵器
によって装備することが特に要点を占める」というようなことを言っている。さらにまた、「現代のロケット
核兵器
戦争
の下においては、
領土
が狭く、人口が秘密で、しかも
外国
の軍事
基地
の散在する
領土
を持つ
日本
全土が、最初の瞬間に広島・長崎の悲劇的
運命
を見るおそれのあることは明らかである」というようなことを言っている。そしてまた、「この
条約
が
日本
の独立を失わしめ、
外国
軍隊が
日本
領土
に駐屯を続けることになったので、歯舞、色丹を
日本
に譲り渡すという
ソ連
政府
の約束の実現を不可能とする新しい事態が作り出されている」として、「
ソ連
政府
は、
日本
領土
から
外国
軍隊の撤退及び日ソ間
平和条約
の調印を
条件
としてのみ、歯舞、色丹が
日本
に引き渡されるであろうということを声明することを必要と
考え
る」と言っているのであります。われわれ
日本
国民
は、かくのごとく事実を歪曲し、あまつさえ脅迫的言辞を弄した
外国
の干渉と、理不尽きわまるところの申し出は、断じて許すことはできません。(
拍手
)
政府
としては、
ソ連
に対し、近く所要の措置をとられることでありまするが、その際、
政府
の
立場
を宣明せられることは当然でありますけれども、それと同時に、われわれ
日本
国民
の反応をも率直に
ソ連側
に伝えられるということが、かえって私は両国
関係
のため適当だと思う。また、この種のやり口は、権謀術数を弄する国の
外交
において、ことさら作為的に交渉の障害となるべき難題を作り出し、これを
外交
取引の具として運用せんとすることが往々にして見られるのでありまするが、わが方として、
相手
方の術策に陥ってならないことは申すまでもありません。むしろ、わが方としては、この
ソ連
覚書を
機会
として、積極的、自主的な
外交
を展開していくべきものと存じます。そこで、ここに本件に関する
政府
の
確固
たる所信をこの国会を通じて
国民
の前に明らかにしていただきたいのであります。 第三に、
わが国
の
外交
の基本
方針
に基づく具体的
外交
施策
の若干について
お尋ね
いたします。
わが国
外交
の基本
方針
は、その目標の上から見まして、独立完成の実をあげることを目標とするところの独立
外交
の柱と、
戦争
の防止、平和の維持と国の安全を守ることを目標とするところの平和
外交
の柱と、
国民
の暮らし向きをよくすることを目標とするところの
経済
外交
の柱を根幹とすべきものと信じます。今回の「
日米
新
条約
の締結によりまして、独立国としての
わが国
の地位と
国民
感情に「そぐわぬ点が是正されましたことは、独立
外交
の上から見まして、一つの画期的意義を持つものであります。しこうしてこの点はわれわれの単なる主観的解釈ではなくして、
アメリカ
側も、新
条約
の内容及びその運営については、
日本
側の自主的
立場
を十分尊重する
趣旨
において新
条約
が作られていると思うが、その点、念のためはっきりしていただきたいのであります。 平和
外交
の面において、その一環として
日米
新
条約
の占むる地位とその意義は、われわれの正当に評価するところであります。本
条約
が、もっぱら平和を目的とする
安全保障
機構であることは一点の疑いをいれません。ただ私は、ここに
二つ
の点について
政府
の
見解
を確かめておきたい。 その一つは、本
条約
第五条の発動と国会の権能との
関係
であります。
条約
第五条にいう「
憲法
上の規定及び手続に従う」という中には、
わが国
について言えば、
自衛隊
法等の国内法上の
要求
を満たすことを
条件
とするということを含んでおり、従って
防衛
出動と国会の権能との
関係
は、
条約
においてもこれを当然認めた前提に立っていると解すべきものと思うが、はたしてそうであるか、念のため確かめておきたい。 もう一つは、本
条約
全体を読んでみますると、結局、本
条約
で
日本
領域の
安全保障
について
日米
両国が言っておりますことは、どこの国に対してでも、お前の方からしかけてさえこなければ、こちらから先にしかけることはないのだから、お前の方は安心しておってよろしい。そのかわり、お前の方で
日本
を侵略しようと企てる場合には、
日本
の反撃だけでなく、
アメリカ
の大きな報復力による反撃を受くることを覚悟せよ、ということをはっきりと宣言しておるのであって、そこに侵略を夫然に防止するという
政治
的効果のねらいがあるものと私は思うが、そういうふうに解してよいか、
政府
の
見解
を確かめておきたいのであります。 今後の平和
外交
の推進に関し、その重要項目の一つとして
政府
が
軍縮
問題を取り上げておられますことは、この問題が大国間の
国際緊張緩和
の中心問題であるという
意味
合いからいたしましても、われわれの十分
理解
し得るところであります。しかしながら、
軍縮
問題の今日までの経緯をしさいに点検してみますると、この問題が実際上いかに国際
政治
上の難物であるかは、だれしも痛感するところであります。また今日までの
軍縮
交渉の中には、
軍縮
を目的とするよりは、むしろ冷戦
外交
の政略
手段
として利用せられた面もあったことは、これを否定できません。しかし、それにもかかわらず、大国間対立の中心問題たるこの
軍縮
問題の重要性というものは、こうも減じているわけではありません。さればこそ
政府
においても、近くジュネーブにおいて開催予定の十カ国
軍縮
委員会に対し、国連の内外においてあらゆる支持と協力を与える所存であるということを言明しておられる。その点、われわれも希望するところでありますが、ただ、その支持と協力を与え、他国と連携をとって、外部から推進の空気を作り上げていく
外交
工作を進めていくためには、
軍縮
の直接の
提案
者たる
立場
にはないにせよ、
日本
は
日本
なりの構想と方式というものを持つということが必要であると思う。そうしてそれは、あまりに理想に走った全面
軍縮
の方式などというよりも、第一
段階
の部分的
軍縮
として、たとえば西欧側の
軍縮
案中にも含まれておりますような、武力侵略を受けた場合、
自衛
措置として必要ある場合のほか
核兵器
を使用しないというような方式だとか、一昨年十月以来、米英ソ三国の間で交渉中の核実験中止の方式だとか、各般の
実情
から見て比較的
実現性
の公算の多い実際的な方式をもって当たることが適当であると思う。かつて小国を代表しながら、ポリチスやベネシュなどが、建設的、実際的な
提案
方式をひっさげて、そうして国際
外交
界においても非常な重きをなしておったごとく、また、
わが国
自身一昨年の中東危機の際発揮したような主導性をもって、今後の
外交
において
わが国
は大国間の対立緩和と大戦防止に寄与する
趣旨
をもって、
外交
上、この
軍縮
外交
において積極的な役割を果たしてもらいたいと思う。この点について
総理
の率直な御所信をお伺いいたしたいのであります。 次に、
経済
外交
の面につきまして、ここには問題の範囲を限定して
お尋ね
をいたしますが、今回署名せられた
日米
新
条約
において
経済協力
の条項が設けられたことは、
経済
外交
推進の上から見ましても意義のあることであり、また、今後その意義を具体的に発揮せしめていかなければなりません。まず、この点について
政府
の
考え
ておられるところを示していただきたいのであります。次に、
経済
外交
の面において、特に太平洋諸国との
経済
関係
を常に総合的ににらみながら、具体的
施策
を現実的に
考え
ていくというような態度がとれないものか。ある
外国
の有名な学者が予言しているような、太平洋地域において。パン・パシフィック・ユニオンの形成というようなことは、軽々に言い得ることではないでありましょうが、新国是というようなことが言われる際でもあり、
総理
において何らかこういった点について御構想があって、お差しつかえがなければお示し願いたい。 最後に、
国民
所得
倍増計画の策定と多少新
予算
案に触れて、ごく簡単に
お尋ね
いたします。 今後おおむね十カ年間に
国民
所得
を倍増するという計画は、今日までの
経済
成長の実績等から見ても、必ずしもその目標において無理ではないと思われるし、また、相当長期の計画を策定してやっていくということは、現代
政治
の行き方としてもよいことだと思う。むろん長期計画の策定については幾多の問題があるわけでありまするが、ここには二、三の問題だけに限定して
お尋ね
いたしたい。
経済
規模
の拡大をはかるにあたって、戦後の復興
段階
と異なって、今後は全体の大きさもさることながら、特に中身における
矛盾
、格差の是正等について特段の配慮を要することは申し上げるまでもありません。
総理
もその
施政方針
演説
において各種産業間の破行的発展の是正などに十分意を用い、適切な
施策
を講じていく所存であると申しておられる。しこうして、
わが国
の現状から見まするというと、一地方べの過度の集中、各地域間の格差の
調整
も大きな問題である。そうしてこれがためには特に交通
政策
べの配慮が基本的に大事であると思われるのでありまするが、この点、
政府
はいかなるお
考え
をもって
施策
を講じていかれるのであるか 次に、
所得
倍増計画の策定に伴って、
政府
自身のやること、すなわち、財政に相当の計画性を持たせなければ、結局長期計画そのものがぼやけてしまつて、ややもすれば一片の作文化するおそれがあると思われるが、
政府
はこの倍増計画については本気で熱意を傾けてやっていかれるおつもりであるか。さらに目標の達成を期するためには、長期的に見まして、
科学
技術を身につけた生産的な堅実な
人間
を作るということが基本であると思われるのであります。いわゆる
所得
倍増計画に照応して、
科学
技術の人材養成の教育面について
政府
はいかなる
方針
のもとに
施策
を講じていく
考え
であるか、これらの諸点について、新
予算
案における配慮との
関係
にも触れて
政府
の御
所見
を明らかにしていただきたいのであります。 以上をもって私の質問を終わるわけでありまするが、簡明率直に御答弁をお願いいたします。(
拍手
) 〔
国務大臣
岸信介君登壇、
拍手
〕
岸信介
13
○
国務大臣
(岸信介君)
お答え
をいたします。 第一の
国際情勢
の
判断
につきましては、すでに
羽生
君の質問に対して
お答え
をした
通り
でありますが、御指摘のように、最近の
国際情勢
を見るのに、おあげになりましたような
二つ
の極端な見方が存在しておることは事実であります。私はいかなる場合においても、この
国際情勢
の
判断
において、われわれの希望と現実と混同してはならないということを基礎に
考え
なければならないと思います。われわれは、国際間の
緊張
を緩和するということ、また平和的ないわゆる
雪解け
の
情勢
を促進したい、またしなければならないというこの希望、われわれの念願というものと、現実が雪・解けになっておるというように見ることとの間におきましては、非常な危険が存すると思うのであります。キャンプ・デービッドで米ソ両巨頭が話し合いをして、この
東西
両
陣営
の間の懸案を、力によらずして話し合いで
解決
しようということを申し合わされたということは、私は非常なけっこうなことであり、ぜひそうならなければならない。ことに最近軍事
科学
の
発達
によるところの
大量殺戮兵器
のとどまるところを知らないような発展から見ましても、これがもし全面的に用いられるということになれば、それは
人類
の
破滅
であります。従って話し合いで
解決
しよう、これは非常に望ましいことであり、ぜひ話し合いで
解決
されるようにしなければならないと思います。巨頭会談が行なわれ、またいろいろな首脳者の間の往来がしげくなることも、お互いの
理解
を深める上において望ましいことだと思います。しかし、現実に、はたして巨頭会談において主題とされるところのドイツ問題が、あるいは
軍縮
の問題が、一回の会談でもって結論が出るというふうな安易な
情勢
ではないと思う。両方の主張の間において非常に大きな隔たりがある、非常な困難がある。しかしながらわれわれの努めることは、どんな困難があっても、どんなに主張が違っておっても、いかなることがあっても話し合いで
解決
するという、このキャンプ・デービッドの
考え
方は、あくまでもこの
考え
方は貫いていかなければならない。そうしてどんなに困難であってもこれの
解決
に向かって行かなければなりませんが、しかしその途上において、
雪解け
であるからあらゆる今までの
情勢
をすべて
解決
していいという問題ではないと思う。たとえば
軍縮
の問題にしましても、これが全面
軍縮
はわれわれの最後の目標であります。しかしそれが全面的な軍備撤廃にすぐなるというような
情勢
ではないことは言うを待たないのであります。その
段階
におけるところの
均衡
のとれた
軍縮
がどういうふうな
方法
でやれるか、また責任ある有効な監視制度がどうしてとられるかというようなことが、この
東西
両
陣営
で話し合いがつくかつかないかということを
考え
ますと、私はまた非常に困難がある。そうして各国がいずれも一面においては
軍縮
を成立させなければいかぬということを
考え
、
努力
はしておりますが、現実は少しもまだ
軍縮
の実はあがっておらないというのが現実の姿でございます。そういう際に際しまして、一方、共産国は強固な団結でその会談に臨んでおります。自由主義国もこれに対して十分な協力の体制をとって、そうして自由主義国の主張を貫いていこうという
努力
をすべきことが現在のこの
国際情勢
の現実である。こういう
情勢
に立ちましてわれわれは今後においても処していく必要がある、かように
考え
ております。
ソ連
の覚書についての御質問につきましては、私はかねて申し上げておる
通り
、われわれがいかなる
外交
政策
をとり、またわれわれが
安全保障
についてどういう
方法
を選ぶかということは、
日本
国民
自体が決定すべきものであって、内政干渉を受くべき性質のものではない。いわんや他から脅迫によってわれわれがこの
方針
を動かすべき性質のものではない、こうかたく信じております。なおまた、
領土
問題について、歯舞、色丹を
外国
の軍隊が撤退しない限り返さないということは、言うまでもなく国際信義に反するものであり、国際
条約
を忠実にお互いが守っていく上からいきまして、きわめて遺憾なことであると思います。
日本政府
の
考え
は近く
ソ連
に明らかにして、そうしてその反省を求めるつもりでありますが、十分
国民
におかれてもこの間の事情を冷静に正しく
判断
していただきたいと思います。 次に、
外交
の問題として、独立
外交
、平和
外交
、
経済
外交
を柱とすべきものであるというお話につきましては全く同感であります。そうして今回の
安保条約
の改定が、現行の
安保条約
にあるところの
日本
の
自主性
・独立性にそぐわない点を、真に
日米
対等の
立場
から
日本
の自主独立の
意味
をはっきりさせるという
意味
を持っておることは、御指摘の
通り
であります。われわれがすでに
国民
の前に申し上げた
通り
であります。また平和
外交
の
意味
から申しまして、この新しい
安保条約
が決していわゆる軍事的な目的から、何か
戦争
誘発の危険があるというふうな性格のものではなくして、第五条が明らかにいたしておりますように、あくまでも
防衛
的なものである。従って、国連の憲章に違反した侵略が
日本
及び
日本
の周囲に起らない限り絶対に発動することはないのであります。また、
自衛隊
が
防衛
出動する場合におきましても、
日本
の
憲法
の規定及び手続に従うことでありまして、
自衛隊
法によることも当然でございます。また、こういう
防衛
的な
安保条約
というものが、侵略を未然に防ぐという、この
意味
がその主要な目的であることは、これまた御指摘の
通り
でありまして、この
意味
において、われわれは自由と平和の防壁としてこれを設けておるということを申しておるのも、その
趣旨
にほかならないのであります。
軍縮
問題の前途につきましては、過去の経緯から見ましても、また、最近における軍事
科学
の
発達
の
段階
から見ましても、ぜひやらなきゃならぬ問題でありますが、前途におきましては相当な困難がなお存しておるということをわれわれも十分
考え
なきゃならない。特にわれわれが強く要望し、その要望に従って話が進められております核実験の中止の問題に関しましても、相当な話し合いが進んでおりますけれども、なおしかし、監視制度についての両方の
意見
の間には、まだ一致を見るのには今後
努力
を要すると思います。しこうして、これがさらに全面的の
軍縮
の問題になりますというと、さらに困難があると思いますが、ぜひ
日本
としても、積極的に国連の内外を通じて今後
軍縮
問題の
解決
に
努力
すべきことは、御指摘の
通り
当然に
考え
ていかなきゃならぬと思います。 今度の新しい
条約
の二条でありましたか、いわゆる
経済協力
の点を明らかにいたしておりますが、これは、具体的な内容としては、今後
日米
間に存在するいろいろな
経済
の問題、たとえば、
日米
間の
貿易
をいかにして拡大していくか、それの支障になるのはどういう点であって、これをいかに
調整
すべきであるか、あるいは、
日米
間における外資の導入をいかにスムーズにして、そして繁栄をしていくかというような問題もあろうかと思います。また、最近問題になっておる低開発地域に対して先進工業国が進んで開発に協力するという問題に関しまして、
日米
が一そう密接な連携を持ってこれが開発に協力するという問題もあろうと思います。今回のアイゼンハワー大統領と私との会談の際に、この
経済協力
問題については、ただ単にここで協力しようということを誓い合うだけではなくして、今後継続的に
日米
の間においてこの話し合いを続けていくようにしたいという希望を述べ、アイゼンハワー大統領もこれに同意をいたしまして、今後
日米
の間の
政府
レベルにおいても話し合いをすることは当然でありますが、さらに実体的に、民間レベルにおいてこの話し合いを有効に続けていく仕組みなり機構なりを
考え
たい。こういう
意味
において、足立全権は数日
アメリカ
に残って
関係
方面と話し合いをし、それについての考究を今後続けていって、有効な一つの仕組みを
考え
ていきたい、かように
考え
ております。 それからさらに、太平洋を取り囲んでおる国々の間における
経済協力
の問題について、あるいはヨーロッパにおける共同体その他のブロック的な
考え
方や、あるいは中南米を含んでのラテン・
アメリカ
ン・カントリーズの間の共同体的な
考え
方、これに対して太平洋を取り巻くところの国々の間で一つ
考え
たらどうかという
考え
方もございます。また、アジア地域全体を
考え
て、AAグループの間においてそういう一つのブロック的、共同体的な
考え
方をしたらどうだろうという
考え
もございます。今日直ちにそういうことについて結論を出すことは早いと思いますが、私は、
アメリカ
をたずね、さらにカナダをたずねまして、ディーフェンベーカー首相その他と会った際に、最近。ハリで行なわれた十三カ国会議に対して、域外の国として、カナダは、
日本
と同じような
立場
において、ヨーロッパにおいて域外諸国が差別待遇を受けることのないように
努力
をしておるが、将来とも、そういうことについては緊密に一つ連絡をとろうという話もいたしたわけでございます。何といっても、太平洋を取り囲んでおる地域におきましては、利害
関係
も密接であり、
経済
繁栄を続けていく上におきましても協力すべき点が非常に多いと思います。同時に、
日本
がアジアの一国として、アジアにおけるところの低開発地域の開発に協力して、その繁栄に力を添えるという必要もございますので、すでに御
承知
のコロンボ会議のごときはほとんど太平洋を取り囲んでおる国々、それに英国が加わって、これが開発に協力をいたしております。こういう機構に今日においてはやはりわれわれは参加しておりますが、さらにその協力を積極化するというような
方法
によりまして、将来アジア地域の間のこの問題、太平洋を取り囲む国々の間の協力をどうしていくかということを研究して参るべきである。かように
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
菅野和太郎君登壇、
拍手
〕
菅野和太郎
14
○
国務大臣
(菅野和太郎君)
国民
所得
倍増計画の策定と新
予算
案との
関係
について御質問があったのでありますが、申し上げるまでもなく、
国民
所得
を倍増するについては、
経済
人自身の活動を一そう盛んにする必要があるのでありますが、同時に、
政府
自身がこれに対して相当
施策
をしなければならない問題があるのであります。たとえば、産業基盤の
強化
、すなわち道路、港湾あるいは通信、治山治水とかいうような事柄は、これは
経済
人自身ではやれないことでありまするし、これはやはり
政府
自身でやらなければならないのでありまして、そういうような公共事業は、来年度の
予算
には相当今まで以上に多額に計上されております。また今後とも、そういう産業基盤の
強化
ということにおきまして、
政府
は毎年相当の経費を計上いたしまして、そうして民間人の
経済活動
をより容易に、より活発にできるようにしたい。こう存じておる次第であります。 それから、
科学
を身につけた人材の養成におきましても、最近における
日本
の
経済
の発展のその
原因
はどこにあるかと申しますと、生産技術の向上にある、こう思うのでありまして、その生産技術を向上せしむるがためには
科学
技術の発展ということになるのでありますからしてそこで、
国民
所得
を倍増するにつきましては、やはり
科学
技術を向上しなければならぬということで、来年度の
予算
につきましても、
科学
技術の向上については今まで以上の
予算
が計上されておりまするし、またあるいは、理工
科学
生をより多く収容するような文部省の
予算
も計上されておるような次第であります。(
拍手
) 〔
国務大臣
松田竹千代君登壇、
拍手
〕
松田竹千代
15
○
国務大臣
(松田竹千代君)
国民
所得
をふやすために、
科学
技術の振興について
政府
はどういうふうに
考え
ておるか。私どもとしては、まず第一に、
科学
技術の基礎研究に力を入れたい。そうすることによって
科学
技術の新分野を開拓し、また、技術全体の水準を最高度に持っていきたい。それとともにまた、高度の技術を身につけた技術者を大量に養成していかなければならぬ。
経済
五カ年計画に伴って文部省においてもこれら人材八千人を養成して参ったのでありまするが、ちょうど三十五年度をもって、その八千人を大体完璧にほぼ養成し終えると思います。これだけでは、むろん今日のこれから拡大していく産業に必要な技術員は十分であるとは言えませんので、今後さらに長期計画をもってこれらの人材を養成して参らなければならぬと思っております。さらにまた、こうした高度の上層の技術員のみならず、どうしても、もっと幅の広い、層の厚い技術員を大量に養成していかなければならぬ。そのためには、文部省としては、さらに小学校、中学校、高等学校程度の教育課程の上において技術面に多くの科目をふやし、時間をふやし、そうすることによってこれらの要員をふやしていきたい。また、家庭科に力を入れ、日常生活を通じて
国民
ひとしく
科学
技術を身近なものに感じ、これに親しむようにして参らなければ、画期的な飛躍的な技術の向上、
科学
技術の発展ということは期し得られない。かように
考え
ているわけでありまして、これらに対して、いろいろこれから御協賛を仰がなければならない三十五年度の
予算
におきまして、二百数十億の
増額
をいたしておりますが、主として絶対必要な公立文教施設と、そうしてこの
科学
技術の振興のために、その大部分が使われていくのであるということをもって御了承を願いたいと思います。(
拍手
) ―――――――――――――
松野鶴平
16
○
議長
(
松野鶴平
君) 松浦清一君。 〔松浦清一君登壇、
拍手
〕
松浦清一
17
○松浦清一君 私は、先般新たに結党いたしました民主社会党を代表いたしまして、
総理
、外務、大蔵及び通産、厚生、労働、農林の各大臣に対し、昨日の
施政方針
演説
をもとにいたしまして、
国民生活
安定
施策
の問題、人口と雇用の問題、
予算
と
経済
計画、
貿易
と
為替
の
自由化
、さらに、
日米
安全保障
条約
と
ソ連
の態度に対する
外交
問題、この五点について質問を行ないたいと存じます。 まず第一に、
国民生活
の安定方策についてお伺いをいたします。
わが国
の現状は、昨日来の各大臣の
施政方針
演説
にもかかわらず、産業
経済
の拡大速度に比べまして、失業者と低額
所得
者が多過ぎ、特に農漁業労働者にその例がはなはだしいのであります。高層近代ビルの陰に庶民の住宅が
不足
し、社会保障がきわめて不完全であります。今の
日本
で
アメリカ
のまねごとはできないといたしましても、この国では年収四千ドルないし一万ドルを中級
所得
者といたしましてこれが全世帯数の六〇%を占め、残る上下の四〇%を合わせた平均
所得
が六千二百ドルといわれているのであります。英国もまた、戦後、労働党
政府
の適切なる
施策
によりまして、その七〇%が中産階級化されております。さらに西ドイツもまた、完全雇用の
経済
政策
が打り立てられまして常傭熟練工の月収は千マルク、
日本
円にして八万六千円平均が保障され、
日本
のように失業対束事業など必要はないとのことであります。これらの国々に比べまして、
わが国
の現情は、三十三年度の国税庁の実態調査によりますると、民間産業における勤労
所得
は、年収五万円以上四十万円以下の低
所得
層が民間産業
関係
のみで八四%を占め、五十万円以上百万円以下の中級
所得
者と見られるものがわずかに一三%ということであります。私どもはこの比率を、英、米、西独並みに引き上げる必要を痛感するのであります。現在の
日本
の消費物価から算定して、一体幾らの
所得
を中産階級とするか、これは、その人、その人の
判断
によるところであって、にわかにこれを定額づけることはできないといたしましても、まず、英、米、西独並みに、自分の家を持ち、電気洗濯機、テレビ級の文化生活を営むよう、これを一挙に実現することは不可能といたしましても、漸進的にこの程度を目標とした
施策
を講ずべきだと思います。これに対する
総理
の基本的な
見解
を伺いたいと思います。 また、この中産階級化には、低きを高め、高きを押える
施策
が必要であります。
資本
に対する無制限配当を一定限度に制限し、一定額以上の財産相続には高率の税金を取り、高額
所得
者には税を高率に累進賦課するようにして、低額
所得
者の減税を行なうよう税場制の根本的改正を行なわなければなりません。ところが、三十五年度の
予算
案では、しばしば問題になりましたように、二千百億円余の税の
自然増収
を計上しながら、一銭の減税も行なわず、逆に
国民
の租税負担率は三十四年度の一九・九%から二〇・六%に上昇するとのことであります。
所得
とは、実際に身につける
経済
的な価値のことであります。
岸内閣
の
所得
倍増論は、伊勢湾台風やロッキードとともに消えてきわめてあいまいになってきたのであります。
大蔵大臣
は、昨日の
演説
におきまして、今後抜本的な税制改革を行ない、減税の実現に努めて参りたいと言っておられまするが、
政府
は、一月二十六日の閣議において、次期戦闘機二百機を購入するため、三十五年度
予算
で六百九十八億円を
国庫債務負担行為
に計上することをきめております。この結果、三十五年度
予算
における
防衛
庁
関係
の
国庫債務負担行為
は九百十八億円の多きに上り、その他、艦艇建造費五十七億円の継続費を含めますると、約一千億円の
予算
が後年度負担分として計上されておるのであります。これでは三十五年度はおろか、三十六年度におきましても減税はむずかしく、
岸内閣
の
所得
倍増論は空文となり、わが党の中産階級化
施策
とも全く対立することになるのであります。財政、
経済
、税制面から見た
国民生活
の安定方策を佐藤
大蔵大臣
から承りたいと存じます。 第二に、完全雇用と
所得
に
関係
の深い人口問題について質問いたします。
わが国
の人口は昨年十月一日現在におきまして九千二百九十七万人に達したと言われております。戦後十四年間に、ビルマ、タイ国の総人口に相当する二千八十万人がふえ、さらに三十三秒間に一人の割合でふえつつあると言われております。この総人口は
世界
第五位となり、その密度においては、オランダ、ベルギー、台湾に次いで第四位となっておるのであります。今や
わが国
の人口問題は、このままに放任できない
段階
にきておると思うのであります。さらにまた、農村における労働人口はすでに過剰となり、二三男坊の
対策
に苦慮している現状は御
承知
の
通り
であります。都市における産業も、ただいまの現状においては、年ごとに増加する労働人口を全部吸収する能力を持ってはおりません。進学期を控えた学校もまた血の出るような狭き門であります。加うるに、
世界
近代産業の
大勢
として、その生産性がだんだんと技術化され、機械化されて、その産業
規模
と需要労働力との比はますます反比例の傾向をたどっておるのであります。
わが国
の
経済
力を
強化
することを目的として生産の拡大をはかる必要はここでは論外といたしましても、人口問題の面から
考え
てみまして、あるがままの自然に放置することは、もはや許されなくなっておるのであります。従って、これが
解決
をはかる
方法
としては、徹底的な産児制限を行ない、これ以上の増加を食いとめるか、ブラジルその他の国々との話し合いによって海外移民を増加させるか、労働時間の短縮を立法化して労働人口の完全消化をはかるよりほかに道はないのであります。このうち第一の点は、
世界
のいずれの国でも、国策として産制を行なって繁栄をしたためしはないのであります。第二の海外移民もまた対外的に
相手
のあることで、無制限というわけにはいかないのであります。
政府
の
意思
によってやろうと思えばできることは、思い切った労働時間の短縮を立法化して雇用の増大をはかり、過剰人口を吸収することだと思うのでございまするが、
岸総理
は、基本的な人口問題の
解決
策として、いずれの道を選ばれようとされるか、所信を聞きたいのであります。また、厚生大臣は人口問題の打開策について、労働大臣は雇用と労働時間短縮の問題について、それぞれ所管されているところの
方針
を承りたいと思うのであります。 第三に、三十五年における
わが国
の
経済
計画とその見通しについて、
大蔵大臣
、場通産大臣、農林大臣の所信を承りたいと存じます。
政府
は、一月二十六日の閣議において三十五年度の
経済
計画をきめ、これを
予算
審議の参考資料として提出される由であります。この内容を見ますると、すでに昨年十月二十三日に
経済
企画庁から発表された計画の数字を
予算
案に見合うように修正したものであります。
政府
から発表される
経済
計画というものは、いわば今後の
経済
政策
をどのように運営するのか、それによって今後の
経済
がどのような形になるのかを示すものであって、
政治
的な意図をもってその内容が簡単に変更されるべき性質のものではありません。特に注目すべきは、三カ月前の計画に比べて、今度は景気過熱の危険には一顧も与えられていないことであります。しかも、前回の見通しでは、
予算
の
規模
を拡大することによって財政面から景気を刺激し、設備投資の増大が景気過熱の
原因
となることが強調されておったのであります。ところが今度の計画では、年末から年始にかけて
予算
の編成にいろいろな事情が起こり、基幹産業に対する設備投資が増大したので、本来ならば、いよいよ景気過熱の警戒を強め、金融面における厳格な態度を強調すべきが本筋であるにかかわらず、この点がきわめてあいまいになってきたのであります。
政府
の説明によりますと、設備投資の増加により生産能力は
増強
され、あわせて
貿易
と
為替
の
自由化
による供給
不足
を一掃して物価上昇の心配はないというのであります。しかしながら、最近のガス
電気料金
等の
値上げ
の
関係
で物価は上昇気配を示しており、輸出もまた、
貿易
の
自由化
に伴う国際
競争
等の関連から、しかく楽観は許されないものと
考え
ます。
大蔵大臣
は、昨年の秋、渡米された際、
アメリカ
人が
日本
からのトランジスターラジオやライター等に対し強烈な警戒の目を向け始めていることは御
承知
の
通り
であります。このように、
予算
にからんで数字を合わせたような
経済
計画では、私ども信用するにも信用することができないのであります。
予算
とは別に、すなおに
世界
経済
の
大勢
をながめ、純粋な気持で
日本経済
の計画と見通しを、この際、
大蔵大臣
より御説明を願いたいものであります。 さらにまた、
経済
運営の基本的態度につきましても、単に通貨価値と物価の安定を中心として
経済
の安定成長をはかると述べているのみであります。昨日の
演説
においても、この辺がきわめてあいまいとなっておるのであります。いやしくも国の
経済
計画は長期にしてかつ
科学
的であるべきであります。少なくとも三十五年度以降の、基幹産業のほか、治山、治水、道路、港湾等、国土保全の計画などを含めて、総合的かつ具体的な見通しを
国民
の前に示してもらいたいものであります。われわれ
国民
は、神武景気の
あと
のみじめさを再び繰り返したくないのであります。たとえば、農林
予算
一つをとってみましても、食管会計における赤字補てんが百十二億円、伊勢湾
対策
費が七十一億円で、
実質
上の
増額
はございません。全体の
予算規模
に対する比率は、
昭和
三十四年度の9一七三%に対し、三十五年度は〇・七一一%とむしろ減少をいたしているのであります。 さらにまた、
大蔵大臣
を中心として
お尋ね
いたしたい第三点は、
貿易
及び
為替
自由化
の促進についてであります。昨日の
総理
の
演説
でもこの点は特に強調されましたが、一月十二日、
貿易
為替
自由化
促進閣僚会議の決定によりますと、「内外諸
施策
の整備と相待って
貿易
及び
為替
の
自由化
を急速に推進する」として、鉄鋼くず、牛脂、ラードを本年四月から、また原皮を上期中可及的すみやかに、銑鉄、大豆等はおおむね十月から完全にAA化し、その他、毛くず、コーヒー豆等の三百品目を四月からAAに移行するというのであります。これに綿花、羊毛等を加えると、
わが国
貿易
の約六〇%が
自由化
される勘定となるのであります。これが実施には、
貿易
為替
管理法の改正、関税定率法の改正など、国会自身できめねばならぬ問題もあり、かつ、制限
貿易
による半独占的な業者等の思惑などもあって、
政府
の
方針
通り
実施されるかどうかはわかりませんが、私は原則として、
貿易
・
為替
の
自由化
には賛成であります。ただ、しかし、戦後引き続いて行なってきた
為替
管理による国内産業の保護
政策
を、今後は、新しい産業秩序
政策
、新しい金融財政
政策
に転換する等、国内体制を十分整備してかかりませんと、非常に大きな混乱の起こることが予想せられるのであります。輸入の激増、価格の混乱、外貨の流出、特に国際的に見て生産性の低い
わが国
の農林漁業に対しては、その生産性を高める
施策
を講じ、価格の支持制度等を
強化
し、輸入の増大による圧迫を排除するための強力な措置を講ずる必要があります。このことに関し、
わが国
の
経済
に及ぼす影響と新たなる保護
政策
については
大蔵大臣
にお伺いしたい。あわせて、
自由化
するそれぞれの品目についての大体の輸入予想量及び
為替
関係
については通産大臣、
わが国
の農産物に与える影響とその
対策
については農林大臣に、それぞれ御答弁を願いたいのであります。 最後に、
総理
大臣及び
外務大臣
に、
日米
安全保障
条約
改定調印に関連する諸般の問題についてお伺いをいたします。
日米
安全保障
条約
の改定が、極東の平和と安全を保障するといううたい文句にかかわらず、その影響するところはまことに深刻であり、かつ広範であります。このことは、前国会以来われ一われがたびたび指摘をしてきた
通り
であります。先ほどからすでに問題になっておりまするように、今回の
ソ連
の覚書は、二十八日の近藤情報局長の談話、また昨日来からの
外務大臣
の説明等のごとく、三十一年十月の日ソ共同宣言の
趣旨
に反するかもしれません。日ソ
平和条約
が締結された後、歯舞、色丹を
日本
に引き渡すという共同宣言における日ソの
関係
と、
日米
間における
安全保障
条約
は、表面的にはそれ自体何の
関係
もございません。あるいはまた、
ソ連側
の
日本
向けの
政治
的な戦術であることも
想像
にかたくありませんりしかしながら、
日本
に
基地
を持つ
米軍
の行動範囲が沿海州沖合いにまで及ぶという、純然たる
軍事同盟
としての
日米
安全保障
条約
が、中ソに大きな刺激を与えるということも結果としては当然であります。一国の行政首班たる
総理
や、一国の
運命
を背負って国際舞台に立つ
外務大臣
が、この事態の起こる
可能性
を全く予想し得なかったとすれば、その責任はまことに重大であります。歯舞、色丹が古来より
わが国
の
領土
であることは歴史の証明するところであります。三十一年、今はなき鳩山元
総理
が、
国民
的な支持を
背景
として、病躯をひっさげて訪ソし、
領土
の返還を含む
平和条約
の窓口を開かれたのであります。その
あと
を受けた
岸総理
や藤山
外務大臣
は、事ここに至るまでに、
ソ連
との
関係
打開のためにどのような
努力
をしてこられたか、百それがきわめて不明確であります。今日の時点において、
ソ連
の無理は無理として、このまま放任のできる事態で由ないことは申すまでもありません。この事態は、
総理
や
外務大臣
が太平洋の空模様ばかりを気にされて、北方大陸の氷雪の激しさにあまりにも無関心過ぎたことに基因していると
考え
られるのであります。(
拍手
)このことに対し、
政府
として正式の抗議的な回答が考慮されているとのことでございますが、それが万一にもいれられず、昨日から開かれた漁業問題にまで万一にも悪い影響が及ぶとしたら、その後にどういう打開の道があるのか。
岸総理
は、昨日衆議院において、きわめて高い姿勢で、そのような理不尽な態度は断じて許せないと答弁をしておられます。その断じて許せないというお
考え
を行為で表現すれば、たとえばどういうことであるのか、お知らせを願いたいのであります。 昨日来、
総理
大臣並びに
外務大臣
は、その内容についてはたびたび御説明がございましたが、
日米
安全保障
条約
の改定は、だれの目から見ても、
日米軍事同盟
の
強化
であります。
米軍
出動の
事前協議
にいたしましても、今までもたびたび議論されました
通り
、文章上では協議となっておりましても、
アメリカ
の一方的な押しつけになる
可能性
は十分であります。米ソを中心とする
世界
の
戦争
兵器
は、残念ながら、もはや
日本
の
経済
力では手の届かぬところにあるのであります。
アメリカ
の側に片寄り過ぎて中ソを硬化せしめる思想は、平和を求める
外交
としては絶対にとるべきではありません。また、中ソを
背景
として
アメリカ
を敵視する態度も、十分慎重を期すべきであります。
日本
はあくまでも自主独立の中立
外交
を推進して日、米、中、ソの同意による完全な平和を目ざして全力を傾倒すべきであります。
総理
大臣、
外務大臣
の御所信を承りたいと思います。(
拍手
) 〔
国務大臣
岸信介君登壇、
拍手
〕
岸信介
18
○
国務大臣
(岸信介君)
お答え
をいたします。 第一に、
国民生活
の安定の点から、
日本
の産業
政策
として、いわゆる中産階級化の
施策
をとるべきじゃないかという御
意見
でございます。
経済
の発展を
考え
ます上において非常に注意しなきゃならぬことは、御指摘のように、その繁栄が
国民
全体になるべく平均化していくというふうに
考え
ないと、いたずらにいろいろな点において格差を生ずる、大企業と
中小企業
、あるいは農業とその他の産業、あるいは都会とその他の地域というような方面に大きな格差を生ずるというようなことがあってはならぬことは、これは、われわれが
経済
政策
を立て、これを施行する上において、特に留意しなければならぬと思います。ただ、欧米の諸国のいわゆる
所得
と
日本
の
国民
の
所得
との間におきまして、現在相当な差異のあることは御指摘の
通り
でありますが、これはやはりいろいろな社会
情勢
やあるいは生活環境とあわせて
考え
なければならぬ問題であって、ただ単に、金額で表わされた数字だけで比較することは適当でないと思います。 [
議長
退席、副
議長
着席〕 いずれにしても、われわれが
経済
政策
を施行していく上に、ことに
国民
所得
の倍増計画というようなものを施行する場合におきまして、今申しました格差を生ずることのないように、あらゆる
施策
を
考え
ていくということには、特に留意する必要があると思います。 次に、人口問題についての御質問でございました。御
承知
のように、近年
日本
の出生率は戦前や
戦争
直後の状態とは変わってきております。しかし、同時に、一般の
国民
の平均年令が非常に高まっておりますので、人口の増加の全体から見まするというと、人口増加に対してどういうふうに職業を与えていくかという大きな問題があるわけでございます。この問題につきましては、私はやはり根本の
考え
方としては、
日本
の産業
経済
を拡大して、そうしてこれによってたくさんの人口を養い得るような
経済
環境を作っていくということであろう、根本はそうであろうと思います。しかしながら、同時に、最近各方面で、いわゆる家族計画の合理的な
方法
が講ぜられていることも事実でありますし、あるいは海外移民であるとか
経済協力
というものを推進していくことも当然でございます。また、労働者の就労
条件
等につきましても合理的なことを
考え
ていかなければならぬと思いますが、根本はやはり
日本経済
を拡大していくというところに主眼を置いて人口問題に処していくのが必要である、かように
考え
ます。 次に、
安保条約
に関連して、
ソ連
の覚書に対する御質問でございます。言うまでもなく、この
ソ連
の覚書そのものが非常に不当な内容を持っていることは、おそらく松浦議員におかれましても御
承認
になることだと思います。われわれは、
外交
政策
をきめていくということなり、あるいは
安全保障
の道を選ぶということは、各独立国が自由に決定すべき問題であって、他から内政干渉を受くべきものではない。また、すでに有効に成立しているところの
条約
、両国間の
条約
が、一方的にこれの廃棄やあるいは変更ができるものでないことは、国際
条約
の本質からいって当然であります。こういうことが国際信義の上からきわめて遺憾なことであることは言うを待たないのであります。私どもは
日本政府
として、
ソ連
のこれらの点に関して、十分な反省を求めるところの
方法
を今後講じていかなければならぬ、かように
考え
ております。言うまでもなく、いろいろな誤解でありますか、あるいは特に内容を歪曲していろいろなことが覚書に言われておりますが、
安保条約
の
安保
体制というものは、今度の新しい
条約
で初めてできるわけではございませんで、御
承知
の
通り
、すでに
安全保障
条約
が存在しておって、これによって
外国
軍隊も駐留をしておるのであります。ところが、今日までの
安保条約
で見まするというと、全然
アメリカ
が一方的にすべての行動ができる、たとえば、極東の平和云々の問題に関しましても、現在の
条約
にも同じ文句がある。そうして、その出動の場合においては、
アメリカ
軍が何ら
日本
に相談なくしてできる状態になっております。これを今度の
条約
においては、われわれは
事前協議
の対象として、
日本
の
意思
に反して行動しないというふうな制約を設けておるわけであります。また、いろいろな点におきまして、現行制度以上にわれわれが軍事的な義務を負うとか、あるいは
日本
及び
日本
の周辺に対して脅威を与えるような条項は一切設けておらないのであります。従って、これを口実としていろいろな事態を言ってくることは、実は全く理不尽であると私は
考え
ております。こういうことに対しては、
政府
が強く
ソ連
政府
の反省を促すのみならず、
日本
国民
としても十分にこの事態を
理解
して、
政府
のこの態度に対して御支持を得るようにしなければならぬと、かように
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
佐藤榮作君登壇、
拍手
〕
佐藤榮作
19
○
国務大臣
(佐藤榮作君)
お答え
いたします。 最近の
経済
の見通しにつきまして、財政
演説
で私どもの見るところを明確にいたしました。最近の
経済
の拡大はまことに目ざましいものがありますし、鉱工業生産の上昇率を見ましても、これも大へんすばらしい発展を遂げております。しかし、この鉱工業生産の上昇率を四半期ごとに調べてみますと、第一・四半期では、年率にして約四〇%、第二・四半期は三二%、第三・四半期は一九%というように、順次実は拡大の
規模
が落ちております。そのテンポがゆるくなっておる。で、こういう鉱工業生産の上昇率、また物価について見ましても、昨年の秋ごろまでは相当強い変動がございました。しかし、暮れになりますと、一応物価も安定を見ることができた。これらのこういうような趨勢をたどりましたことについては、いろいろの見方があると思いますが、これは、一つは、台風災害の影響も一応おさまったことと、あるいは公定歩合の引き上げ、あるいは
貿易
、
為替
の
自由化
の
方針
が明確になる、あるいはまた、健全財政堅持の
予算
案が出てくるとか、こういうような点が
経済
界に落ちつきを与えたと、かように私どもは見ておるのでございます。そこで、今後の
経済
の見通しにおきましても、
手放し
で楽観するわけにはもちろん参りませんが、適時適切な方策をとって参りますれば、今日の好況を長期にわたって持続することができるのではないか。今日御審議を願っておりますこの
予算
について、あるいはまた、私どもが今後随時に適時に採用して参ります金融諸
政策
、こういうことによりまして、景気を過熱に導くことなく、堅実なうちにも
経済
の拡大をはかっていく、こういう処置をとって参るつもりでございます。ところで、
経済
は申すまでもなく安定成長ということが第一に堅持されなければならないことでございます。ただいま申し上げるような
考え
方で、この安定成長、これを長期にわたって持続していく、これを私どもの目標として
考え
ていくわけであります。同時にこの
経済
が安定成長していくということは、別な表現をいたしますれば、
国民生活
をやはり安定し向上していく、ここに私どもの
政治
の
努力
目標があるわけであります。こういう基本的観点に立ちまして、ただいま御審議をいただく
予算
案を上程いたしたわけでありますが、そこで問題になりますのは、三十五年度に二千百億円にも上る税の
自然増収
を見ておるのに
国民
負担の軽減である減税をやっておらない、この点は先ほど
羽生
議員の
お尋ね
にも
お答え
をいたしたのでございますが、ことし減税をいたすことができませんでしたのは、これは申すまでもなく、過去の剰余金等が大幅に減少いたしておりまして、歳入の面で八百五十八億円にも上る歳入の減がございます。一面に歳出においては、
国民
年金の平年度化であるとか、あるいは災害復旧あるいは国土保全の費用であるとか、こういう
予算
の増加もございます。そういう点で本年は減税は見送らざるを得なかった、こういう事情でございますが、この点はおそらく
国民
の皆様も御了承がいただけるのではないかと思います。ただいま申し上げるように、必要な歳出があり、また、歳入の面で剰余金等が大幅に減少しておる、しかも一面に健全財政を貫く、こういうことで、ことしは減税を一つしんぼうしていただく、こういうことで御了承をお願いいたしたいのでございます。ところで、こういうような三十五年度
予算
は、ただいま申し上げるように減税はできませんでしたが、
お尋ね
のうちにもありましたように、一面、
防衛
関係
の
予算
額といたしましては、前年度に比べて九億の増加にすぎませんけれども、一面、御指摘になりましたように、相当多額の債務負担行為がございます。しかし、この債務負担行為は、例年も二百四、五十億の債務負担行為はあるわけでありますが、ことし特に多いのは、ロッキード戦闘機を採用するということで、これが必要な経費を計上したということでございますが、このロッキードの
関係
は今後四カ年、五カ年のうちにこれを作るのでございますので、
予算
化いたしますのはその年々の財政計画と十分にらみ合わせまして、他の支出、たとえば社会保障であるとか、あるいは減税であるとか、こういうような
国民
の要望するものに圧迫を加えないように十分勘案をいたして
予算
を編成して参るつもりでございます。ところで、ただいま申し上げるような債務負担行為があると、今後はこの減税が困難ではないか、三十六年は困難ではないかという疑問が生ずるかと思いますが、最近の
経済
の伸び、先ほど説明いたしますような安定成長の
政策
を持続して参りまして、幸いにしてその効果を上げますならば、また最近も成績が上昇いたしておりますので、三十六年においては税の
自然増収
は相当の金額を見込み得ると、かように私どもは
考え
ております。もちろん三十六年のことでございますから、ただいまから想定する性格のものではございませんが、一般的に見ましてまず相当の
自然増収
が
考え
られるだろう、一面に災害復旧費の方は減ずるだろう、それらのことなどを勘案して参りますと、ただいま税制調査会で審議をいたしております減税の基本的な
考え
方というもの、これを具体化するような状態にもなり得るのではないか、かように実は期待いたしておる次第であります。 最後に、
貿易
・
為替
の
自由化
についての
お尋ね
がございました。
貿易
の面は通産大臣の
お答え
に譲ることといたしまして、私は
為替
の面につきまして少し申してみたいと思います。申すまでもなく、御指摘になりましたように、
自由化
が国内産業に与える影響、これは軽視はできない、いな非常に重大なものでございます。御指摘の
通り
でございます。そういう
意味
におきまして、
政府
におきましてもこれの取り扱い方については、十分基礎的な
条件
を整えた上でこれを実施に移す、こういうことで慎重な取り扱い方をいたしておるわけであります。そこで
為替
の面におきまして問題になりますのは、非居住者の自由円勘定の創設、あるいは
為替
集中制の緩和であるとか、あるいは海外渡航、海外送金等の緩和等の措置を講ずる等、いろいろ問題があるのでございます。で、これらのうちで、交互計算制度の適用対象の拡大、あるいは海外渡航、海外送金等の緩和は、本日その一部を実施することにいたしまして発表いたしたばかりでございます。しこうして非居住者の自由円勘定であるとか、あるいは
為替
集中制の緩和であるとか、こういう点になりますと、なお私どもとしては準備を遂げなければならない点があるようでございますので、
日本
銀行等ともただいまいろいろ話し合いを進めておりまして、準備ができ次第、これらにつきましても緩和の
方法
をとりまして、そうしてこの
自由化
を促進して参る
考え
でございます。(
拍手
) 〔
国務大臣
渡邊良夫君登壇、
拍手
〕
渡邊良夫
20
○
国務大臣
(渡邊良夫君) 最近の人口動態を申しまするならば、終戦直後におきましては、人口は増加率が非常に多かったのでございまするけれども、ここ二、三年来は出産率というものが非常に低下いたしまして、また、一面におきまして薬剤の進歩その他もございまする
関係
からか、死亡率も非常に低下いたしました。この傾向を続けて参りまするというと、生産年令人口というものは
明年度
以降におきましては非常に大きくなり、また、
昭和
五十年におきましては、老齢人口というものが総人口の一割二分というような傾向に相なるのでございます。こういたしますというと、まず生産年令人口に対しまする
対策
といたしましては、
経済
の膨張とともに雇用率というものを
考え
ていかなければなりませんけれども、厚生省の面から老齢人口に対しまするところの
対策
といたしましては、いわゆる老齢年金の
強化
拡充、あるいはまた、ことしから新設いたしまするところの生活保護者に対しまするところのいわゆる加算制度というもの、養老年金の加算制度というものを
考え
ておるような状況でございます。 産児制限の問題がただいま御質問になったのでございまするけれども、産児制限の問題は、きわめてこれはむずかしい問題でございまして、先ほど
総理
が申しましたように、いわゆる家族計画による妊娠調節、私どもは人工妊娠中絶ということをできるだけ避けまして、妊娠調節ということを
考え
ていきたいと、かように存じておる次第でございます。(
拍手
) 〔副
議長
退席、
議長
着席〕 〔
国務大臣
松野頼三君登壇、
拍手
〕
松野頼三
21
○
国務大臣
(松野頼三君) ただいま厚生大臣から
お答え
がございましたように、今後十年間は相当に生産年令人口、労働力人口がふえる傾向がございます。ただ、来年度は生産年令人口に達する者がちょうど終戦当年に出生した者になりますので、来年度は必ずしもそれほど大幅なものではございませんが、この十年間、特に前の五年間には相当大幅なものがあるやに存じますので、これにあわせて、やはり
経済
計画というものを長期に安定いたしまして、雇用の吸収ということを
経済
計画の大きな柱とすべきであるというのが、今日の
政府
の
方針
でございます。労働時間の問題でありますが、三十三年は月百九十八時間くらいの平均でございましたが、三十四年度は
経済
の活動が活発でございまして、労働時間も大体月二百時間平均になって、多少労働時間が延びております。御
承知
のごとく、労働時間はあくまでも生産に関連がある。また、これが賃金に影響するところも多大でございます。なお、生産性にもこれは関連がございます。その三つの関連が適切に行なわれまするならば、労働時間の短縮というのは、原則的にはこれはけっこうなことだと、こう
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
池田勇人君登壇、
拍手
〕
池田勇人
22
○
国務大臣
(池田勇人君)
お答え
申し上げます。
貿易
自由化
につきましては、先ほど
羽生
先生に
お答え
した
通り
でございます。別に申し上げることはございませんが、誤解があってはいけませんので、簡単に
お答え
申し上げます。輸入の制限につきましては、原料と製品と、こう
二つ
に分けて
考え
るべきだと思います。で、原料、製品につきまして、今計画しておるので一番重要な問題は、大豆と原綿、原毛でございます。大豆につきましては国内産が非常に高うございます。今、一割の関税をかけておりますが、なお一割の関税をかけても国内の大豆が非常に高うございますから、この点はいろいろなことで調節しなければなりません。それから、問題の原綿、原毛は、これはもう輸入額の二割以上を占めております。しかも切符制でございますから、二割あるいは三割の眠り口銭があるというような状態でございます。従って、これを
自由化
いたしますると、繊維製品は相当下がって参ります。そこで問題がいろいろあるのでございます。従って、予告期間一年四ヵ月を置いております。この間に輸出入取引法あるいは繊維工業設備臨時措置法等々、いろいろな法律の改正をいたします。また、
予算面
におきましても、織機、紡機の調査につきまして、あるいはまた検査につきまして、今年度の
予算
に六百万円ほどの費用を見ております。あらゆる
方法
で準備
施策
を講じております。他の原材料につきまして、とにかく対米
関係
の問題は問題はございません。私はスムーズにいくと思います。しこうして、
中小企業
等に非常に
関係
がありまする、いわゆる消費財製品の輸入につきましては、これはもう全般的に今ストップしておるのでございますが、できるだけ早い
機会
に、影響のないものから徐々にはすしていこうといたしております。即座にAA制に移してもよろしゅうございまするが、まだ状況を見なければ完全にAA制に移せぬというものは、自動割当制という制度を設けまして、自由に輸入の申し込みをしまして、そしてその状況を調べつつ徐々にやろうといたしております。一月末に相当の品目の自動割当制をやりましたところ、大へんな申請が出ておるようでございます。これを念査いたしまして、将来のAA制に移る準備の資料にいたしたいと思います。そういうふうに、あらゆる面からいろいろな
施策
を講じまして、円滑にこの
政策
が実行できるようにやっていきたいと
考え
ておるのであります。しかしてまた、過渡期におきましても、御
承知
の
通り
、
昭和
三十三年度には
政府
の当初の予想よりもよほど外貨事情がよくなりまして、五億六千万ドルの黒字でございます。
昭和
三十四年度におきましても、予定よりもうんとふえまして、
実質
で少なくとも二億五千万ドル、
形式
収支、普通の
為替
収支で申しますると四億六、七千万ドルになります。また、三十五年度の予想にいたしましても、
政府
は一億五千万ドルの黒字、
形式
収支で四億四千万ドルの黒字、こう言っております。また、私見といたしましても少なくともこれ以上にいくと思います。従って、私は、こういう外貨の事情から申しまして、外貨
予算
を組んでおりまするが、
昭和
三十五年度の当初外貨
予算
の組み方も、
自由化
を前提といたしまして、今までのようなきついことをせずに、
自由化
になった程度とは申しませんが、相当ゆるく組みまして、あまり輸入々々ということに今までのように業者が頭を使わぬように、こういう態勢も整えていきたいと
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
福田赳夫君登壇、
拍手
〕
福田赳夫
23
○
国務大臣
(福田赳夫君)
お答え
いたします。 先ほども
お答え
申し上げたのでございますが、
日本
の農業はきわめて零細である。
外国
と大へん事情も違いますので、
手放し
でどうも
自由化
を受け入れていくというわけにも参らぬと思うのでございます。従いまして、
自由化
を適用するという場合におきましても、これに対する影響等を
考え
まして、十分の準備をしてやっていく、これが基本的な
方針
でございます。そこで、自由で
外国
から輸入される農産物、これにつきまして、国産の農産物と競合するという
関係
で重要なものは、米麦、砂糖、大豆、酪農製品、かようなものでございます。米麦につきましては、これは
自由化
する
考え
はございません。また、酪農製品についても同様に
考え
ております。それから大豆につきましては、すでに
自由化
されております。ところが、ドル地域だけ差別的に
自由化
していない、かような
関係
になっておりますが、これは近く
自由化
をしなければならぬと、かように
考え
ております。しかしながら、その際におきましても、国産大豆は従来の価格をもって
政府
が責任をもって買い上げる、かような準備を整えた上でこれを実行したい、かように
考え
ておる次第でございます。砂糖につきましては、これは
自由化
した際の影響等を十分慎重に検討した上、結論を得たい、かように
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
藤山愛一郎君登壇、
拍手
〕
藤山愛一郎
24
○
国務大臣
(藤山愛一郎君) 対米一辺倒の
外交
ではいけないじゃないか、こういう御
趣旨
かと思いますが、むろん、われわれは、自分の国の
外交
方針
をきめ、また
外交
施策
をやりますときに、独自の
立場
でやることは当然でございます。ただ、われわれは自由主義を信奉し、民主主義の体制をとって国を立てております。従って、その
意味
において、自由主義諸国とは非常にすべての点において
共通
な
考え
方を持ち、あるいは
共通
の利益を持っております。また、
経済
的にも、そういう
意味
において、十分な連絡、通商の
関係
を打ち立てるわけでありまして、そのこと自体は、われわれが当然あるべき姿である、こう
考え
ております。(
拍手
) ―――――――――――――
松野鶴平
25
○
議長
(
松野鶴平
君) 常岡一郎君。 〔常岡一郎君登壇、
拍手
〕
常岡一郎
26
○常岡一郎君 私は参議院同志会を代表いたしまして、
総理
並びに
関係
大臣に
お尋ね
をいたします。 一国の
総理
や
外務大臣
が
世界
の
情勢
を誤って
判断
したがために、その国を
破滅
のふちに追いやり、幾百万の人の命を失い、国土を廃墟にした実例は、枚挙にいとまありません。
岸総理
はこのたび新しき
日米
安保条約
を結んでお帰りになりましたが、この
条約
が
日本
を不幸に陥れないように切に願いながら、以下数点について
お尋ね
をいたします。 第一、
総理
は現下の
世界情勢
の
動き
をどう
判断
しておられるかという問題であります。この質問は、昨日衆議院本会議において、社会党の鈴木委員長が質問第一番にただされた問題であります。何といっても、本国会は、
日本
の興亡盛衰の岐路に立つと言われるほどの新
安保条約
審議の議会であります。論争する人は
政府
と野党との両巨頭の
外交
論戦でありましたから、私も熱心にこれを拝聴いたしました。しかし、この
雪解け
問題についてはどうしてもわからなかった。一方は、
雪解け
時代
である、そうは思わないか、どう認識するかと詰め寄られましたが、
総理
はこれに対して、これから
雪解け
に向かいたいのだ、希望と現実とは違うものだと言っておられました。雪が解けたのか、解けないのか、解けかけているのか、まだ解けかけてもいないのか、はっきり認識をつかみ得なかったので、ここにお伺いをする次第であります。雪が解けるかどうかということは雪の方をただ見ているだけではとても
判断
はつかないと
考え
ます。雪を解かすには解かすだけの力が要ります。たとえば、太陽が出たならば雪は必ず解ける。南極のように太陽に遠ければ雪もなかなか解けない。太陽が出たか出ないか、もし出たとすれば雪はきっと解けると
判断
しても誤りは少ないと思います。太陽は雪を解かすように、人と人との心のしこり、これを解くもの、民族と民族との永い冷たいそのしこりを解くものは、それは何といっても心の
理解
とあたたかい親しみでなければならぬと思います。人は互いに語り合っておるときに、なるほどとうなずけば
理解
がわく。真理ならば人はなるほどとうなずく。今や
世界
の指導者たちは、平和に通ずる真理をつかんでおるかどうか、という見きわめが根本問題ではないかと
考え
るのであります。民族と民族との心にできたしこりを解いていくものは、親しみにまさる力はないということではないかと
考え
ます。力ずくの
時代
はすでに終わったと見るか見ないかの問題であります。天下の横綱がいかに強い力を持っておりましても、指からわずか一分離れたマッチ一本を動かすことはできない。その間に一分のすき間なき親しみがあってこそ、これが楽々と動かせる。力にまさるものは親しみであります。
ソ連首相
が
アメリカ
を初めて訪問して各地を歩き、遠慮会釈なく語り歩いたことは、久しく凍りついたと言われた米ソの
雪解け
を始めさせたと言われております。
総理
はみずから
ソ連
や中共に行く
考え
はお持ちでないでしょうかということであります。今までは
総理
も
自由陣営
に気がねがあったためかもしれませんが、あるいはまたふらふら腰だと疑われるおそれがあったかもしれません。しかし今は新しい
安保条約
を結んだ。腰もすわったはずであり、自由主義
陣営
の信用もできた。もう行けるのではないかと
考え
ますが、この点はいかがでしょうか。
日本
の安全を守るものはひとり
安保条約
だけではありません。逆にみずから進んで
ソ連
や中共とのお互いの
理解
を深めるために
努力
し、どんなに激論してもかまわない、命を投げ出してもいとわないだけの
決意
を持って乗り込んで行かれることが、
安保条約
は平和の守り手であると言われる、その首相の
考え
方を実らせるものではないかと
考え
ますが、かねて
総理
は中共にはずいぶんきらわれておられるようでありますから、みずから積極的に乗り出して行って、この問題の
解決
に当たっていただく
考え
はあるかどうか、ということとを
お尋ね
いたします。 第二問。このたび
ソ連
が
日本
に差しつけました覚書の中に強く言っておりますことは、
ソ連
フルシチョフ首相
は、国際連合総会で全
世界
の軍備を四年間に全部撤廃すると言っているではないか、
世界
じゅうがこれを
拍手
かっさいをして歓迎したではないか、それに
安保条約
を改定したのはけしからぬといっておりますが、この
世界
の軍備撤廃という大問題がそんなに早くできるならば、
人類
のしあわせこれにすぎません。しかしながら言うはやすく行なうはまことにかたい。全
世界
は旱天に慈雨を求めるごとく平和を望んでおりますために、
拍手
はいたしましたが、あれほど
演説
で大みえを切った
フルシチョフ
が、その後その言葉の
通り
に軍備撤廃にどれほどの
決意
を持って
努力
しているか、どれほど賢明なる
方法
を見つけ出しているか。ただ
努力
するだけでは、
方法
を誤ったらできない。われわれはこれを見詰めて参ったのであります。しかし今日までそのうなずくような
方法
をいまだ聞かない。かえって逆に、中部太平洋に
ロケット兵器
をぶち込む、また、
科学
兵器
は減らさないと宣言するに至っては、まことに了解に苦しむものであります。(
拍手
)軍備なき平和の
世界
の平和を望むにはそれを生み出すだけの母体がなければならぬ。生まれる者には生み出すだけの環境が先に作られなければならない。母なくして子は生まれぬ。春の暖かさなしに桜は咲かぬ。ほんとう「の軍備撤廃を生み出すものは、何といっても第一に恐るべき
兵器
の出現であります。この武器を使えば戦う者はことごとく亡びる、とても危なくて使えないというような武器が出現したことが、これが
軍縮
の第一の環境であったと
考え
ます。今そのときに来たと
考え
ます。しかしながら、その武器をどこが管理するか、だれが管理するか、
世界
の
軍縮
の姿を真に監視するにはいかなる機関を作るか、この問題がこの軍備撤廃の最大の目標でなければならぬと思うのであります。これをきめるものは、米、英、ソいずれの国だけでもいけない、すべての国をこえて、超国家的な、
世界
でただ一つしかないような機関を作って、それに強力なる支援を与え、全
世界
がこれを支持して、そうして管理と監督をさせることが、これがただ一つの軍備撤廃の根本ではないかと
考え
る。この点について首相の御
意見
を承りたいのであります。また、こういう機構を首相は
考え
られて、米英首脳と会談せられたときに、こういう問題に触れて話し合いをされたことがあるかという問題を
お尋ね
いたします。また、
ソ連首相
がこういう問題についていろいろ方策を立て、あるいは動いておられるということを、お聞きになったかどうかを
お尋ね
するわけであります。 次に青少年
対策
について
お尋ね
申し上げます。 首相は、第二十八国会以来、国家の将来を背負う青少年に希望を持たせて明るく育て上げねばならぬと説いておられ、そうして、
政府
は、各地に青年の家の設置や育英資金制度の活用などに
努力
せられることは多といたします。しかしながら、全
日本
の青少年の数がら言うならば、これはわずかに九牛の一毛とさえ思われます。大多数の青年男女の中には、希望も理想も失ったように、すさんでいく人が非常に多いのが現状であります。これは、一方には、利益本位の不良な出版物や、映画、テレビの中に、かなりいかがわしい表現があったりして、身も心も虫ばまれいくまことに気の毒な青少年の多くなった一つの理由ではないかと思います。一方には、落ちついて勉強もできないような現在の世の中の変りいく波動を受け過ぎて、刺激され過ぎて、勉学よりも
政治
運動に巻き込まれておる多くの学生があることを
考え
なければならぬ。ことに、全学連三十万に近いといわれる会員は、全国学生の自治の会であって、断じて
政治
団体ではないはずであるのに、一部の指導者が
政治
的に
動き
出し過ぎて、国会乱入の挙に参加したり、羽田空港の不法占拠など、天下の憂いとひんしゅくを買っております。純なる青年学徒の多くは、静かに勉学のできる環境を願っております。それを、今の
時代
の、世の波動に刺激され過ぎて、これに巻き込まれることは、まことに気の毒にたえません。国家百年の大損失であると思います。この学生たちによき勉学の環境を与えるために、この全学連などに対する
対策
を、首相、文相に
お尋ね
いたします。 さらに、青年にいかにして夢と希望を与えるか、これについて
お尋ね
いたします。尊敬とあこがれ、これが青年に夢と希望を与える大事な道であると信じます。一国の指導的
立場
にある人人の一挙手一投足は、感じやすい青年の心に強い影響を与えます。尊敬や信頼炉裏切られたら青年は絶望します。国権最高の機関たる国会でまことに醜い乱闘をやったり、金権
政治
のにおいがしたり、親分、子分の派閥があるようにいわれることは、これは事実まことに悲しい姿であり、これが青年の心をすさます大きな
原因
であることは強く自粛自戒しなければならぬと思います。 従って、国会正常化について
お尋ね
をいたします。国会が正常でないということは、レールを踏みはずしておるということになりますが、
総理
は非常にこの点を心配せられて、
施政演説
の最後にも特に国会の正常化について述べられましたが、確かに全
国民
あげて国会正常化を切望してやまないのであります。
総理
は、
民主政治
の正しいあり方は、各政党が国会という
共通
の場で十分審議を尽くし、最後は多数決によって決定する、これが議会主義の根底だと言っておられます。これが正常化の根本だと言っておられます。もっともな御
意見
ではありますが、しかしながら、これくらいのルールのわからない人は国会議員の中には一人もいないと思います。それにもかかわらず、国会が正常にならず、
国民
に疑惑とふんまんと軽蔑の念すら与えるに至りましたのは、まことに悲しいことでありますが、
日本
じゅうで一番わけのわかったことばっかりいって選挙に臨み、そのわけのわかったことをいうがために選挙され、そのわけのわかった人が集まって、朝から晩まで、わけのわかったことばかりいって、とうとうわけがわからなくなって、(笑声)そうして不正常になった。これはまことに
国民
にとって申しわけのない姿ではないかと
考え
るのであります。こんなわけのわからないことがなぜ起こってきたか、そこで
総理
に
お尋ね
いたします。
総理
は、各党が十分審議して最後は多数決できめるのが民主国会の正常なルールであるとおっしゃいましたが、これは
考え
方が違うのではないでしょうか。これは政党
政治
の正常化であって、国会の正常化の根底にはならないと
考え
るものであります。申すまでもなく、
日本
の国会は、衆議院と参議院と
二つ
から成り立っておることは、これはだれでもわかっておることでありますが、この二院制度の正しいあり方こそ、これが国会正常化の根底をなすものではないかと申し上げたいのであります。今のように
自民党
が両院ともに絶対多数となりましたならば、どんなに正しい議論を吐きましても、結局は議論倒れになります。
国民
のほんとうの利益を踏みにじるようなことがもし通過しようとする場合に、これをとどめる道は解散よりほかにありません。与党は何にも言わないで、野党だけがお互いにしやベって、言うだけ言って、どうせおれたちの思う
通り
になるのだというような姿になったならば、与党、多数党は勉強を怠り、少数党はついに絶望せざるを得なくなります。少数党だけの絶望なら、大体わけのわかった人ですから、そこで話せばわかって折り合いもつくでしょうけれども、しかしながら、天下の世論がこれを許しません。はけ口のない不満はやがて革命に通ずるのは、歴史が教えております。
人間
もまた、はけ口がなければ生きられません。たくさんの毛穴を持ち、いろいろの穴を持って発散するところに生命の守られる道がある。
政治
は生きものでありますから、このはけ口を正しく持たなければならない。この議会
政治
、政党
政治
のふんまんに対するはけ口はただ一1つ、参議院の正しきあり方ではないかと
考え
ざるを得ないのであります。衆議院で十分に審議したことが、それがもし正しくないといたしましても、参議院で否決されますから、そこによりどころがあります。衆議院の多数決、それが正しく行なわれるということは、その多数決に破れた反対党といえども、正しく述べておけば、参議院において天下の良識はこれを
判断
してくれるというゆとりが出てくることであります。それに、参議院まで政党化して、衆議院が本家のようになり、参議院は何か隠居所か政党の出店のように、もしなったといたしますならば、そうなったならば、そのときは全く二院制度の
意味
は失われるものと
考え
ます。同じものを
二つ
も持つ必要は断じてありません。二院制度の確立、参一議院の独立、不偏不党の良識こそ、
国民
が安心して議会
政治
に頼り、国会正常化の基本をなすものであると信じます。野党も勉強して、あくまでも審議を尽くし、たとえ破れても安心のできるゆとりができて参ります。目の前の食物に目くらんで何にも真理を悟れないのが野獣の姿である。
人間
だけは真理を悟り、悟った真理を離さず、その真理を積み重ねて、ついに今日の文明を作り、翼なくして大空も自由にかけり、そうしていながらにして千里の遠くに目や耳を広げるテレビ、ラジオの
時代
を作っております。物理
科学
の
世界
では真理に一分の狂いも許しません。
政治
のあり方もかくのごとく折り目正しく、あくまでも筋目の通ったものでなければ、真に
国民
の信頼を得ることはできないものであると
考え
るものであります。宇宙の正常なる秩序は、常に全く異なった性質のものが相対して、お互いに助け合いつつ、お互いに押えつつ、平均をとっております。太陽系の運行に幾億年狂いがないのは、求心力と遠心力の助け合いによって押え助け合っているからであることを
考え
ますときに、真理が教える根本は、これは何といっても、この正常なる
二つ
のあり方であります。すべての宇宙の秩序を真理は支配しております。たとえ一時的には苦しいことがありましても、妥協を排して、真理に向かって邁進する人は、歴史とともに光るものであることを信じます。衆議院は政党が対立してみがき合い、参議院は政党をこえて不偏不党、
国民
の
立場
に常に立って、公平に政党の行き過ぎを是正する、この国会正常の真理を見つめて、参議院議員全体が党籍を離れて、
国民
の
立場
に立って、公平にものを
考え
るようなことになったならば、それこそ国政の危機を打破する新風ではないかと
考え
ざるを得ないのであります。この私の国会正常化の基本的観念と
総理
の観念とに開きがあるようでございますが、この点をお伺い申し上げます。 私たちが参議院同志会を結成し、この国会正常化の一点を正しく見詰め、思いをこめて参りましたのも、たとえ、そのわれわれの今の集まりは小さくとも、目標は高く、この真理の光は大きく
背景
として持っております。必ず天下有識の人々、具眼の方々の院内外の賛同を得て、この参議院の正しきあり方、国会の正常化に必ず到達し得るものであると信じて、私の質問を終わります。(
拍手
) 〔
国務大臣
岸信介君登壇、
拍手
]
岸信介
27
○
国務大臣
(岸信介君)
お答え
をいたします。
国際情勢
の
判断
につきましては、しばしば
お答え
を申し上げた
通り
であります。今日の軍事
科学
の非常な
発達
によって、原水爆その他の
科学
兵器
が全面的に用いられるようになれば、
人類
の
破滅
になる、どうしてもそういうものを用いずに、問題を話し合いできめなきゃならぬということが、キャンプ・デービッドで話をされたことは御
承知
の
通り
でありまして、これがいわゆる
雪解け
といわれるものの実体であると思う。今日、どんな
意味
においても、
世界
のどこにおいても
戦争
を起こしてはならないし、また、それを未然に防いで、すべての問題を平和的に
解決
する、それには話し合いによって
解決
する、こういう
方向
に向かってわれわれが
努力
していかなきゃならない。今日、すべての問題が話し合いでたやすく
解決
するというような
情勢
には、まだなっておらないのであります。今おあげになりました
軍縮
の問題を取り上げてみましても、軍備縮小をしなきゃいかぬ、あるいは軍備の撤廃ということは、われわれの目標であります。これはだれも異存ないことであります。しかしながら、直ちにそれでは目標の全面的の撤廃ができるかといえば、前途はなかなかそんなことが容易にできるとは思いません。また、それを主張した
ソ連
自体の状況を見ましても、決して軍備を全廃はおろか、これを縮小するということではなくして、むしろ、
ソ連
が持っておる
科学
兵器
が非常な優秀であり、偉大な破壊力を持っておるということを
世界
に誇示し、
国民
に対して誇示しておるという
実情
でございます。従って、この
軍縮
の問題を、今後これはどうしても恒久的平和を作り出すために、われわれが
軍縮
という問題について、われわれの希望するような結果をもたらさなきゃならぬ。そこで、国連を中心とし、また、われわれの国連においての従来の活動がその点に向けられてきたことも御
承知
の
通り
であります。現在、いわゆる十カ国会議においてこの問題が取り上げられており、また、それと並行して
核兵器
の実験中止の問題が三カ国の間において話言いをされおります。その場合において、最も議論が違い、また必要なことは御指摘のように、監視制度その軍備が誠実に行なわれておるかどうかということを、ほんとうに中正公正な
立場
で監視するところの有力な機構が設けられなければ、安心して
軍縮
というものは行なわれないと思う。この監視制度の問題につきましては、まだ不幸にして
東西
の間における
意見
が一致をいたしておりません。しかし、われわれは、どうしても
軍縮
という、この
人類
全体の念願であるところのものを達するためには、困難であっても、この問題について今後
努力
を続けて、結論を得るように努めなければならぬと
考え
ております。
日本
もそういう
意味
において積極的に協力をする
考え
であります。 青少年に対して希望を持たせ、さらにこれが将来りっぱな社会人として、国及び民族の
運命
をになうようなりっぱな者に育て上げていくということは、私どもの大きな任務であると思います。その
意味
から言って、今日の学生の一部、全学連の
動き
に対しましては、御指摘のように、私どもこれは正常な学生の運動として、その範疇を越えておるものだ。また多数の学生から見まするというと、その学習や修養の道に対して、いろいろな支障をきたしておるという
実情
もございますから、十分これに対して反省を求め、学生運動として正しいあり方に立ち帰るように、あらゆる面からわれわれは反省を求めていきたい、かように
考え
ております。 国会の運営の正常化につきましていろいろお話がございました。特にそのうちにおいて、二院制度のあり方、参議院のあり方についての御
意見
でございます。二院制度は、言うまでもなく、一院制度の行き過ぎや間違い等を是正して、全体として民意が正しく伸びるためにとられておる制度であります。ただ二院制度の真の意義を発揮するために両院の構成をどうするかという問題は、どこの二院制度におきまし ても非常に意を用いられておるところであり、また、二院制度におけるいろいろな権限の問題等につきましても、各国において、二院制度をとっておる国国においては非常に研究されております。私は二院制度のあり方として、参議院がいわゆる良識でもって、中正な
立場
から、国政の円満な、また正しい運営がされるように、この参議院自体が運営せられるということは、きわめて望ましいことであると、こう
考え
ております。ただ、現在の
日本
のこの参議院の構成から申しますというと、御
承知
のように、すべて選挙によって
国民
の間から選出されております。また、その選挙制度のあり方から申しましても、衆議院の選挙の場合ときわめて似通った選挙制度でございます。多少その選挙区の大きさ等については差がありますけれども、根本においては同じだ。こうなれば、当然私は政党というものがその選挙においてどうしても重要な働きをするようになることは、これは各国どこにおきましても自然の勢いであり、そういうことから申しますというと、今日のようなこの参議院も、やはり政党の力が入ってくるということは、これを否定することはできないと思います。その問題に、もしも根本に触れて
考え
ると、構成の問題、選挙の問題に触れて
考え
なければならない問題である。いずれにいたしましても、私はかねて申し上げているように、やはり国会というところは、お互いにこの重要案件についての審議は十分に尽くして、その場合において、各政党はもちろん、各議員の良識と寛容の精神をもって審議を尽くして、そうして、その結果は多数決によってものをきめていくということが、やはりこういう制度の根底であって、それの運営を円滑にしていくように心がけることが必要である、かように
考え
ております。(
拍手
) 〔
国務大臣
松田竹千代君登壇、
拍手
〕
松田竹千代
28
○
国務大臣
(松田竹千代君) 常岡さんがただいま
わが国
の青少年の将来を憂えられての御質問でございましたが、
総理
からも
お答え
になりましたが、私はやはり青少年の健全なる育成、そうして将来有為な人材として活動するといなとは、一に家の
運命
もそれにかかっておることでありますから、最も重要な問題であります。これはいずれの国においても最も今大きな問題になっておるのであります。特に
わが国
においては、近年青少年の不良化の防止問題をやかましく言われておりまするが、なるほどお話のように、テレビやあるいは映画、その他悪い環境から特殊の刺激を受けて、青少年の不良化する者の多数あることを認めざるを得ません。また大学というような、そうした特殊の地帯においてさえ、全学連の一部の行き過ぎた行動が最近において発生したことを、われわれは非常に遺憾とするものでありますが、そうした面のみを見まするならば実に心配でありますけれども、しかしまた一面、健全にして明かるい方面を見まするならば、今日の
日本
の青年は、決して悲観しているものでもなければ、きわめて明かるい希望を持って将来に向かっておるものと私は
確信
いたしておるのであります。何と申しましても一番われわれが心がけなければならぬことは、青少年の補導については、ひまな時間をくだらぬことに使わせないで、ひまな時間をフルに活用して、健全な方面に、いろいろの活動に持っていくということでなければならぬ。これは、われわれ壮年、老人でも、あまりひまがあり過ぎては、ろくなことはないことはしばしばあるのでありますが、しかしながら、活力の旺盛な青年に対しては、特にこの点に力を入れて、そうしてその補導を完璧なものにしていかなきゃならぬ。すなわち、青年の家も、あるいは青年学級も、あるいは公民館のごとき、あるいはその他いろいろの社会施設のあるのも、またスポーツその他の方面においても、何としても健全なる方面に青少年の活力を十分に持っていくという
方向
に持っていかなけりゃならぬ。かように
考え
ておる次第でございます。(
拍手
) 〔常岡一郎君発言の許可を求む]
松野鶴平
29
○
議長
(
松野鶴平
君) 常岡君、もう時間が切れておりますが、何ですか。
常岡一郎
30
○常岡一郎君 答弁漏れがありましたから……。第一の、首相は中共や
ソ連
に行くか行かぬか、それを伺いたい。 〔
国務大臣
岸信介君登壇、
拍手
〕
岸信介
31
○
国務大臣
(岸信介君)
ソ連
や中共を訪問する
意思
があるかという御質問に、答弁漏れがありましたので
お答え
申し上げます。私は、できる限り今日の
世界情勢
を
雪解け
の
方向
べ進めていくためには、お互いにできるだけ個人的にも接触して、そうしてお互いの不信、誤解を少なくし、
理解
を深めていくことが必要である。かように
考え
ております。従って、その点におきましては、友好国のどこに対しましても、適当な
機会
におきましてはこれを訪問するのが適当である。かように
考え
ております。(
拍手
)
松野鶴平
32
○
議長
(
松野鶴平
君)
質疑
はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松野鶴平
33
○
議長
(
松野鶴平
君) 御異議ないと認めます。 次会は明日午前十時より開会いたします。
議事日程
は、決定次第、公報をもって御通知いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時三十四分散会 ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件 一、
日程
第一
国務大臣
の
演説
に関する件(第二日)