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政府委員(中川
薫治君) お答えいたします。
最初お話のありました、三十三年の十二月の二十五日に白石工業の社員の方と他の方と計二人が、この土地を管轄しております兵庫警察署においでになっております、それで、白石工業の報告書にあります
通り、一口に言えば
民事事件だから警察は関与できないと、こういう旨の報告書がありますが、そういうふうにお答えしたことは事実でございます。その
関係を今度いろいろ当
委員会で
亀田さんからお話が出ましたので、
法務省から連絡を受けまして、私も事が重大だと考えまして、さっそく調べて参ったのであります。一品に申せば、
民事事件だから警察はいかぬということは申したのは事実でございますが、その間のやや詳細にわたる、そのときのおいでになった
状況等を、私が調べた結果申し上げたいと思うのであります。三十三年十一月二十五日、これは実は警察におきましては、この方が相談においでになったと理解しておりますので、供述調書とか何とかはとっておりませんので、当時御相談に応じました兵庫警察署の警部補の鳴海国博という人物が取り扱ったのですが、そのときの記録がございませんから、鳴海警部補に詳細聞きまして、当時三十三年の十二月の下旬のことでございますので、記憶を呼び起こしてずっとたどつてみたのでございますが、大体その
状況は、次に申す
通りでございます。
夕方にその二人がお見えになりまして、「御相談に参りました。」と、こういうことでありましたので、ちょうど夕方で、
執務時間をこえておったようでありますけれ
ども、兵庫警察は御案内かと思いますが、相当
事件が多い警察でございますので、
執務時間が過ぎてももちろん残っておりますし、鳴海君ももちろんおったのであります。それで、鳴海君の係は外勤の係だったのですけれ
ども、御相談がありましたので、御相談に応じております。それで白石さんの方では、「私の方で買った土地に、建築用の砂が運び込まれているのだが、このまま黙っていると家を建てられてしまうから、家を建てられてしまわないように、警察から
一つ排除してもらえないか。」、こういう趣旨のお話があったのであります。それで鳴海警部補は、「だれが砂等を運び込んでいるのですか。」と聞きましたら、「実はその土地は私の方で買ったのですが、元の所有者から賃借している者があって、その者が運び込んでいるのです。」と、「そうすると、相手方もその土地の使用権があることを主張しているわけですね。」というて反問いたしますと、「そうです、実は土地の権利がごたごたしているので、相手方と話をつけようといっているのですが、相手方が先手を打ってきたのだと思いますそれで相手方に家を建てられてしまうと自分は困るので、相手方に、土地に関する権利について話がつくまで、警察でとめてもらえぬでしょうか。」と、こういうようなお話があったのであります。それで鳴海警部補は、「そういうことでしたら、所有権の
関係が両者の意見が違うわけですね。」と、「使用権の
関係で意見が違うわけですね。そうすると、土地所有権、管理権の問題でありますので、これは警察で権利を確定することはできませんので、
裁判所できめてもらうよりほかに
方法がありません。」と、こう答えると、「
裁判所というのは、民事
関係で結着がつくのにずいぶん時間がかかると思いますので困りますね。」と、こう言うたのですが、鳴海警部補は、「
裁判所と申しても仮処分という
制度がございますので、お話のような係争については、仮処分という
制度によって活用願って、仮処分の決定ということによって立ち入りを禁止すると、こういう
方法がありますので、
裁判所の手続をお進めになることをおすすめします。」と、こうお答えしておるのであります。そうすると、「そうですが。それでは
裁判所に行くことにいたしましょう。」というふうに答えたんですが、やはり鳴海警部補は警察官でありますので、「ところで、相手方はあなた方に暴力ざたをするとか、けんかを吹きかけるとかいうことはありませんでしたか。」というふうに聞いております。「今のところはそういうことはありません。」と言うて答えたんですが、「たとえばその砂を運んでいくときなどは暴力ざたその他をやったことがありませんか。」と聞きますと、「いいえ、暴力ざたはありません。」、「そうすると、砂などは何で運んでおるのですか。」、「トラックで運んできて、さくの破れておるところから入れておるようです。」と、「だれか見ていたのですか。」、「私の会社の者が見かけたのです。」、鳴海警部補は、「さくといいますが、何か囲いでもあるのですか。」と、こう聞きますと、「そうです。金網ようのものでさくを作ってあるのです。」と、「それはあなたの方で作ったのですか。」、「そうです。土地の権利の話がごたごたしているので、話がはっきりつくまで取りあえず私の方で作ったのですが、かまわないでしょうか。」と、「それはかまわないと思いますが、相手方はそのさくを破って砂等を運び込んだのですか。」と聞いたら、「いいえ、運んでくるところは見かけた者がいるのですけれ
ども、破っているところは見かけた者がありません。」と。「すると、破ったのはだれかわからないわけですか。」と言うと、「そうです。その土地は子供などが出入りして遊んでいるところですから、子供かもしれません。」、「そうすると、あなた方の知らない間に破れていたわけですね。」、「そうです。以前にも破れていたことがあって、それを直したこともあります。金網のことよりも、相手方に家を建てられてしまうと困るので、砂等の建築材料を持ち込んでこないようにしてもらいたいと思っているのです。」と、そういうふうに問答をしておりまして、結局は今にして考えてみれば、さらにこういう御相談を受けたときに、私
どもの警察運営の立場から見れば、民事
関係が
もとではあるけれ
ども、さくその他に関して器物損壊罪があるのではなかろうかということをもっと緻密に考えて、さらに見張りその他をするという措置を講じておれば、だれが破ったかということを明確にできたんだと思うのですけれ
ども、その相談を受けました警部補といたしましては、こういう問題を、「警察で建物とすることをやめてくれませんか。」と、こういう
質問であった
関係もございますので、「それはそうは参りません。」と。ところが、暴力ざたとか、無理に何か向こうが物を破るとか、そういうことがありました場合におきましては、
一つ警察に御連絡をいただきたい旨も申し添えて、それからそのときおいでになった方が白石工業の社員の方でありますので、仮処分その他のことも御存じなかったことでございますので、これは当然のことでございますけれ
ども、「
裁判所の権利確定の前段階として仮処分の
方法もあるので、仮処分の
方法を講じていただけばどうか。」と、こういうことを申し添えておる
状況でございます。それで、今度われわれ警察の立場の批判になるわけですが、こういう問題は兵庫県の兵庫署に起こりましたのでございますが、いつもこの不動産に対して侵奪行為、今度
改正案に予定しておるような行為等がありました場合においては、被害者に当たる方から警察に何とかしていただきたいということの申し出をあちこちで受けることが少なくないのでありますが、それはまあ事実問題として相談的の形になるわけですから、権利の確定を要するということで、今鳴海警部補が申しておられるようなことを各地で申しておると思うのですが、ところがこういう有業につきものは、よくその後暴力で人の自由を抑制して事を
処理されるとか、それからそこでけんかざたが起こるとか、こういうふうになりがちな性格がございますので、私
ども警察といたしましては、
民事事件に不介入であるということを一本はっきりするとともに、その
民事事件にからんで現行実定法上の器物損壊罪を含めて各種の犯罪に対する
処理というものは的確にやるということを十分教養に努めておるつもりでございますけれ
ども、殺人とか強盗とかいうようなことにつきましては、それほど多く抜かることは少ないのでございますが、器物損壊につきましては、事柄が親告非であるというような性格も
一つあるのでございますが、比較的そこに的確な捜査活動がこの場合におきましてもできていない、こういうことが言えようかと思うのでございます。私
ども鳴海警部補の取り扱い等について考えますことは、まず本人が会社の方でやったのでないということを一応言ったということだけをもって、その後の現場についての捜査をやっていないということは事実でございます。その点に関しまして、一応被害者に当たる人が向こうの会社がやったのでないと言うことを信用したと脅えば信用したのでございますけれ
ども、向こうで問題になっておりますように、次から次へいろんな
事件が伏在して参ることを思い合わせますと、そのときに的確に器物損壊罪であるという、親告罪であるにいたしましても、もっと的確な措置をしておくことが望ましかった、こういうふうに考えておる次第でございます。