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政府委員(津田実君) 今回の
裁判所法六十条に付加いたしますところの第三項の
改正案でございますが、これは裁判所書記官は本来は現行六十条第二項の「裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管その他他の法律において定める事務」これをつかさどるのが本体であります。それで、今度の
改正案におきましては「前項の事務を掌る外、裁判所の事件に関し、裁判官の命を受けて、裁判官の行う法令及び
判例の
調査その他必要な事項の
調査を補助する。」裁判所の事件に関しまして法令、
判例の
調査その他必要な事項の
調査は、本来裁判官がやるべき事柄であります。「その他必要な事項の
調査」の
内容につきましては、ただいまのこの「法令及び
判例の
調査」ということが
一つの例示になっておりまするが、その
内容について申し上げますると、法律、命令、規則、告示というようなものの
調査、それからこれらのものの制定の経過に関するいろいろな資料の
調査あるいは裁
判例、学説その他参考文献の
調査それから規則に基づきまして訴訟手続が適正に法令に従って行なわれたかどうかということの
調査あるいは記録の中の書類が適式であるかどうかということの
調査あるいは複雑な計算等につきまして、本来計算も裁判官が行なうのでありまするが、その計算の照合とか、あるいは計算の手助けをするというようなこと、あるいは
犯罪一覧表等の作成されたものにつきまして、その
内容が始末書あるいは
被害届等と合致しているかどうかというような点の
調査、こういう
調査は、本来は裁判官の責任において裁判官が行なう
調査でありまして、現在においても主として裁判官が行なっておるわけでありまするが、これらの
調査につきまして裁判官を補助するということであります。従いまして、その一部を裁判官の命を受けて分担するということによって補助をする。まあ、一部と申しますか、立て割りの一部という場合もありますし、あるいは何と申しますか、補助的な
意味の一部という
意味もありましょうが、そういう
意味の補助をするということが今度加えようとする職務の
内容であります。従いまして現在の記録の作成、書類の作成ということは書記富自体の本来の独自の権限であることはもちろんであります。しかしながら、今度加える事項は、あくまでも裁判官の行なう
調査の補助でありまするが、しかしながら、
内容的に申しますると、
判例、法令の
調査というようなこと、その他記録に
一ついて書類が適式であるかどうかの
調査というような面につきましては、これはやはり相当程度の法律的素養を要するわけであります。従いまして、その面におきましては非常に裁判官に近いような仕事の
内容にタッチをするということになりますので、書記官自身の職務
内容におきましては、やはり高一度のものである、その主体性はあくまでも裁判官にありまするけれ
ども、しかしながら、
内容自体は法律的には非常に高度なものになっているというようなことから、その
意味におきまして、この事務が高度であり、従って高度な事務
内容に携わる権限を包括的に書記官に与えるということになりますので、書記官のやはり地位の向上とも言い得ると思うのであります。