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説明員(倉八正君) 私の方は
貿易全般を所管しておりまして、大体の
方向は今
経済企画庁から申された
通りでありますが、私はもう少し具体的にお話し申し上げたいと思います。
われわれが今
貿易及び
為替の
自由化というのには二つ意味があります。
一つは、ほんとうの意味の
自由化でありますし、
一つは、
貿易の制限を
緩和するという二つの意味を使い分けて
施策をやっておるわけでありますが、世上往々にして全部何もかにも
自由化してしまうというように間違って伝えられまして、これが無用の摩擦を生じているという面が割合多いのでありますから、まずもって
自由化の意義というものを御
説明申し上げた方がいいかと思います。
それで今
自由化には
貿易面と
為替面の
自由化、二つの意味を含んだ
自由化があるわけでありますが、結局、第一のほんとうな意味の
自由化という意味に限界があるわけであります。それは物の面においては、たとえばドイツが十八、それからイギリスが二十二、アメリカがたしか十七だったと思いますが、こういう商品は
自由化しておりません。ほんとうの意味の
自由化をしていないわけであります。従いまして、
日本が
自由化するという場合におきましても、これこれは
自由化——ほんとうの意味の
自由化はできないというものがあろうかと思います。早い話が米麦を完全に
自由化ということは常識的にはちょっと考えられない。それから小さい物資でもいろいろそういうものがあると思います。それで
ガットの二十五条によりまして、
各国はそういう保護規定というのを
ガットの総会——三十七カ国の総会にかけまして、そういうウェーバーという、いわゆる義務免除という
措置をとっているわけであります。従いまして、
日本におきましても二つの問題が残されておるわけでありまして、物においてはどういうものが
自由化できないか、ほんとうの意味の
自由化ができないかということと、
為替の面においては何ができないかという問題があるわけであります。それで
為替の方の
自由化が私はずっと
影響が大きいと思いますが、その
為替の面では大体三つ
自由化ができないのがあると思います。今、調整
局長もお触れになりましたように、円の完全交換性の回復というのは、これはわれわれの時代はとてもできないと、私はこう考えますし、それから資本取引の完全な
自由化というのもまあできないだろう。
それから次に、非常にむずかしい問題でありまして、これは私の私見として受け取っていただきたいと思いますが、たとえば外資導入の完全な
自由化というのも、これは考えるにむずかしいのじゃないかというような感じがするわけでありまして、この三つというのが資本取引の、いわゆる
為替の
自由化の問題点だろうと思います。従いまして、この
為替の面においては、この二つというのがむずかしいだろうと思いますが、その他のものにつきましては、いわゆる制限を大幅に
緩和していくべきでありまして、たとえば資本取引の完全化はできないにしても、円
為替の導入、これは近くやりますが、それからたとえばその持ち株の制限だとか、五%、八%の制限だとか、こういうのは制限
緩和という意味においてできるのだと思います。
そのように、
為替の問題については、
大蔵省があとで話すそうでありますから私は深く入りませんが、物の面におきましても、いわゆるそういうものが
日本にも確かにあると思います。しかし、たとえばそういうものが幾らかありましても、それを今の形式で続けておっていいというわけでは毛頭ないわけでありまして、たとえばこれは一例、例が当たるかどうかしりませんけれど、ある農産物を全然輸入しないでおるというようなことは、これはいけないことだろうと思いまして、これは完全に
自由化しなくても、ある一定量を限りまして輸入する、あるいはまあよその国との協定で買ってやるというような意味の、そういう制限
緩和という意味の
自由化はこれは当然はかっていかなければならない問題であります。それで、
日本の
自由化というのが今日現在で四〇・二%でありまして、ドイツが今日現在では十七カ国のOEEC——
欧州経済共同体に対しては九八%、ドル
地域に対しては九三%の
自由化でありますし、イギリスはその十七カ国に対しては九八%、それからドル
地域に対しては九五%という
自由化でありますが、この
自由化と
日本でいう
自由化というのは非常に違いまして、最近、
日本の
自由化はごまかしじゃないかという海外からの
批判が出ておるのも、私が今お話を申し上げるような
理由で先生方おわかりになっていただくだろうと思いますが、
日本の物の
自由化というのはいわゆるポジティブ主義という主義であります。と申しますのは、御存じのように、税
品目には九百四十
品目ございます。これは商品の分け方によっては何万となりますが、この中で
日本のやり方としましては、全部輸入というのは禁止だ、禁止だがこれこれの商品は
為替の
割当を受ければ入れてもいいのですよという行き方であります、
日本は。それが現在においては
割当は七百六十三
品目、それからいわゆる自動承認制が、これは三月三十一日現在でありますが、千二百九十八、これくらいの
品目にすぎないのでありまして、残りの何万という
品目は絶対輸入させない、こういう主義であります。ところが、欧米諸国というのは逆でありまして、物の輸入は自由だ、ただこれこれを輸入する場合は
為替の
割当を受けて下さいという意味でありまして、英国においてはそれが二十二、ドイツにおいては、分け方にもよりますが、大体十八ぐらいです。それでほかは何でも自由に入れなさいと、こういうやり方でありますから、
日本が四〇といいますと、イギリスがたとえば九八といいますと、
日本はもう半分近くになっているじゃないかという議論が出ると思いますが、これはもとが違いまして、
日本は
外貨予算の中でその自動承認制の
品目が率が幾らかというのにすぎないのでありますから、
日本の
自由化というのを外国がごまかしじゃないかというような言い方をするのも、根本はこういうところにあるわけであります。
それでしからば、今後どういうふうにやってお前たちは
自由化の計画を持っているかということにつきましては、今の調整
局長の言に尽きまして、われわれは五月三十一日を目途といたしまして、それの作業を進めておりますが、今、大きい
割当の商品で残っておりますのが、米と麦と砂糖、大豆、カリ、石炭、石油、機械、これが大きい商品で残っております。しかし、その他の商品につきましては、私が今
各国との例で比較して申し上げましたように、ほんとうはもっと入れなくちゃいかぬ商品を、最初から全然入れさせないでおるわけでありますから、そういう商品を拾い上げれば無数なものになるわけであります。従いまして、われわれとしましては、何万何千という商品を取り上げまして、どれをいつからどういうふうな
自由化のやり方をするかということは、これは大仕事でありまして、たとえば一例をとりますと、これは例が当たっているかどうかしれませんけれ
ども、たとえばバター、チーズという問題をとりましても、これもいいか悪いかという議論で、
相当、何週間も費やすと思います。そういうふうな一例がありますから、何千何百の商品をあげまして、やれ、かみそりの場合どうするというような問題にまでなりますと、とてもとてもこれは短時間では実際はやれないのじゃないかというふうに考えておりますが、しかし一応、さっき調整
局長のお話のように、
閣僚会議でもきまっておりますから、昼夜その作業をやっておるわけであります。それで、この
自由化をこういうふうな格好でやりました場合に、どういう
対策を
政府は持っているかということにつきましても、さっきのお話で尽きておるわけでありますが、それは共通問題というのと、個々の物資に関する問題というものが二つあろうかと思います。
それで共通問題の
対策としましては、結局、体質の
改善と申しますか、企業力の
国際競争力増進策と申しますか、それが結局、根本であり、それからそれの横のささえ柱としては、
自由化になった暁の過当競争というのをどうするか、あるいは中小企業に対するしわ寄せをどうするかという問題が残されるわけであります。また
対策をずっと進めていきますと、たとえば
日本の金利でございますが、これは、
日本の金利は必ずしも高いわけじゃありませんけれ
ども、公定歩合からすれば高いわけでありますが、この金利のさや寄せをする、そのためには、さっきもまたちょっと触れましたように、資本の導入のある
程度の
緩和まで進むというふうに、結局、
自由化と
対策というものがうらはらになっていくような面もあるわけであります。この
対策の
一つとして関税問題が出てくるわけでありまして、さっきも調整
局長がお触れになったのでありますが、関税の問題というのは、
日本は明治四十三年の関税表をとっておりまして、さっきも申し上げましたように、九百四十の税目に分かれておるわけでありますが、これはすでにもう時代おくれということは明らかでありまして、たとえば石油化学だとか、あるいは電子工学が出た、そういう場合にどの率に当てはめて何%の関税をかけるかということは、これはもう時代おくれでありまして、税目の整理をブラッセル
方式に直して、少なくとも三千から四千くらいの
品目に直さざるを得ないだろうという問題もありますし、それから
日本の関税が安いと一般にいわれておりますが、これは必ずしも安いのじゃないのでありまして、財政関税たる酒、たばこは別としまして、普通の税の保護関税たる税というものは五〇%が最高でありまして、あとは十三
段階にそれが分かれておりますが、この税の動かし方ということにつきましては、
日本国内だけの問題ではいかないのでありまして、すでに大豆の瞬間タッチがいけないということで、先生方もすでに御存じの
通りでありまして、あの瞬間タッチすらいかないのでありまして、というのは、大豆というのは、世界
各国に
日本が譲許しておりまして、それを、たとえば現在の一〇%を幾らか上げるという場合には、
日本はかわり財源を出さなければいかないというような問題がありまして、砂糖なんかの関税は自由でありますけれ
ども、譲許されました二百七十三
品目につきましては、
日本自体の問題で上げられないのであります。従いまして、この関税の問題にも、ある
程度譲許する場合は問題があります。ただ、今申し上げましたように、代価を出せばいいわけでありますが、そういう問題もあります。しかし、もう
一つの問題というのは、関税の運用を弾力的、緊急的にできるのじゃないかというふうにわれわれは考えておるわけであります。御承知のように、アメリカ及びイギリス系統というのは、弾力条項というものを持っておりまして、大統領及び総理大臣の権限に基づきまして、固定税率の一〇%上下までは動かせるわけであります。従いまして、
日本としましても、今度
貿易を
自由化したと、その場合にどっと物が入ってくる、あるいは低賃金国からの物が入ってくるという場合には、いきなりそれをまた
自由化をやめて、
割当制に復活するよりも、税をそこで機動的に動かして輸入チェックの効果を持たせた方が、
制度を動かすよりもベターじゃないかというようなことも考えられるわけであります。
そういうふうな問題を今われわれは取り組んでおりますが、もう
一つの問題は、国会でもよく問題になります、後進国との
関係であります。後進国といいましても、後進国と
自由化との
関係がどうなるか、後進国諸
地域に
日本の輸出は出ないのじゃないかというような御懸念が皆さま方からよく——先生方はもちろんのこと、業界の方々からも聞かれるわけでありますが、これはちょっと私たちはそうは必ずしも考えてないわけでありまして、後進国から買う六大物資と申しますか、米、塩、砂糖、
綿花、木材、それから鉱産物の一部、こういうものにつきましては、
自由化したからその後進国からの物が入らないというようなのとはちょっと違いまして、それならば、今、年間二十七万六千トンの米を輸入しておるわけでありますが、米は
自由化しないでも、東南アジアから減ったわけでありまして、これは
自由化以前の問題でありまして、決して
自由化したから後進国との
貿易が萎縮するとは考えられませんが、ただ
綿花については、確かに
影響するだろうと、こういうことを考えまして、
綿花とか、一部の物資については
影響すると考えまして、われわれは今度輸出入取引法を提出さしていただきまして、そこでそういう
一つの調節弁と申しますか、
貿易振興に充てるというふうに考えておるわけであります。この
貿易の
自由化というのは、さっきも調整
局長がお話のように、決して外国から押しつけられたものじゃありませんで、私はその衝に直接当たりましたのですが、米国からの言われたという問題では決してありませんで、米国が言ったというのは、十
品目をなぜドル
地域に対して差別するか、この差別を撤廃しなさいという問題でありまして、あたかも
日本がイギリスと今交渉しておりまして、イギリスが
日本に対して六十二
品目の差別待遇をやっているのを撤廃しろとわれわれが強く要望しているのと同じ理屈でありまして、この
自由化の奥には、
産業の
自由化の
促進だとかいう一般論のほかに、結局、
日本の輸出を伸ばすためにも、相手方の物を買ってやる、いわゆる
貿易の制限をはずし、より
自由化していくというのが現実の問題だろうと私たちは考えております。
以上でございます。