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政府委員(山崎齊君) 林野庁関係の
予算並びに政策の主要な点について御
説明いたしたいと思います。お
手元に
昭和三十五年度林業関係
予算一覧表という表がありますので、それをごらん願いながらお聞きを願いたいと存じます。
昭和三十五年度の一般会計の林業関係
予算は、前年度当初
予算額に比べまして二十五億円余の
増加要求となっておりますが、この
内容につきまして
概要を
説明いたしたいと存じます。
まず、三十五年度
予算の第一の重点であります
公共事業の拡大でありますが、要求総額百二十一億五百万円でありまして、前年度の当初の成立
予算百六億四千二百万円に比し二三%強の
増加となっており、また当三十四年度第三次
補正予算として林野関係
災害復旧費等で五千四百万円が計上されておりますが、この額を含めた補正後の林野の
公共事業費百十六億九千一百万円に対比いたしましても、一一・三%の増額要求となっております。
この大要を申し上げますと、まず第一点は治山勘定の創設でありまして、これによりまして
直轄事業、
補助事業を通じて一元的に
事業を行なうこととなり
事業量も拡大されまして五カ年計画で五百五十億円、すなわち十カ年計画千三百億円が確保される予定となったのであります。この計画は建設省と共同で本国会に提案、御審議を願う予定の治山治水緊急
措置法が成立しました暁には閣議を経て正式決定の運びになるものと考えておりますが、この計画によりますと、
昭和三十四年度末荒廃地三十一万九千ヘクタールのうち緊要なものから復旧または
防止を行ないまして、五カ年間に約その三割を、十カ年間で約七割を
実施することができまして十年後には比較的安定しておったと認められます
昭和初期の山地の状態に復するという林野庁の構想がおおむね達成できるものと考えられます。
次に、
昭和三十五年度の治山
事業計画でありますが、民有林治山につきましては、前年度当初の六十六億円に対しまして、八十七億円と
事業量は三三%
増加いたしております。この
事業費から五カ年で五百五十億円を達成するためには、年平均一二%の伸びが期待できるわけでございますので、治山
事業の計画は年とともに
拡充いたしまして、
昭和三十四年度の
災害の復旧の促進はもとより流域保全上大きな成果を期待できるものと存じます。
なお、国有林と民有林の総合的計画的遂行に資するため、国有林野
事業特別会計の中に治山勘定を設けまして、一般会計と区分して民有林
直轄治山
事業と
補助事業にかかる
補助金交付に関する経理を行なうこととした次第であります。
この
事業実施に必要の資金は、一般会計から治山勘定への繰り入れによることといたしまして、農林省所管におきまして五十三億三百万円、総理府所管
北海道分三億三千三百万円、同離島分三千五百万円、労働省所管特別失業
対策関係一億二千五百万円、
合計いたしまして五十七億九千六百万円がそれぞれ国有林野
事業特別会計治山勘定へ繰り入れられることになっております。
なお、つけ加えて申し上げたいと存じますのは、三十四年の七号、
伊勢湾台風等により発生しました荒廃林地の復旧については、被害激甚であって、財政力の貧弱な地方
公共団体が施行する三十五年度分に対しても、地方債の起債及び元利償還金につき、基準財政需要に算入する特別
措置を講ずることといたしております。
次に、造林
事業でありますが、前年度補正後に比べまして、二億五千八百万円の増額を行なって、拡大造林の
事業量の拡大をはかり、また前年度におきまして、国有林野
事業特別会計からの一般会計繰入額を引き当てといたしまして
農林漁業金融公庫に出資を行ないまして、
融資ワクを
増加し
融資条件を緩和して
融資造林の拡大をはかったのでありますが、三十五年度も同様な繰り入れ
措置を行ないまして、引き続き
実施することとなっております。
林道
事業につきましては、奥地林
開発に重点を置き、長期計画に基づいて千二百六十二キロの林道開設を行なうこととしまして、前年度補正後
予算額に比し、二億九千三百万円の増額を計画し、
新規事業である老朽木橋の永久橋へのかけかえを
内容とする林道改良
事業を含めまして、二十四億一千万円を計上いたしております。
第二に一般行政費について申し上げますと、まず、山村経済
振興及び林業
経営の合理化促進でありますが、まず、山村経済
振興については、森林
組合の育成
強化が急務でありますので、森林法に定められている常例検査を通じての
指導及び
不振組合に対しまする特別
指導を
継続するとともに、新たに
組合の
経営基盤確立のため合併を促進することとして、二百
組合を
対象に合併奨励金の交付を行なうことといたしました。
また、林業
経営合理化促進に対しましては、国及び
都道府県の試験研究機関と密接な
関連を持った林業普及
指導事業の
推進がきわめて重要でありますので、試験研究の
拡充をはかるとともに、林業改良
指導員七十八人の増員、オートバイ
整備費の増額等林業普及
指導事業の
充実をはかるとともに、新たに
都道府県林業試験
指導機関に林業青少年研修、林業
技術展示等に活用できる
技術普及設備を設けることといたしまして、所要
経費の一部を
助成するため三百七十五万円を計上いたしております。また、
振興局所管農村
振興費中に、青少年研修のための旅費を
補助する計画で百九十万円を計上いたしておるのであります。
さらに、林業
経営の指針ともなります森林計画関係
経費も
充実をはかり、森林区施業計画編成に当たり、航空写真
新規撮影二十万町歩を新たに計画する等、その精度向上に努め、成果の向上を期しております。
第三に、山村農家の所得の安定向上をはかるため、薪炭
対策を
拡充強化いたすことといたしまして、前年度より引き続き、木炭
生産合理化及び木炭出荷調整
事業の
充実をはかっております。このうち木炭出荷調整
事業は、ほぼ前年度同様の
規模となっておりますが、
実施県に対する事務費の
補助を新たに計上し、
事業の円滑な
推進を期しております。また、木炭
生産合理化
対策は、引き続き
指導費、
指導器材
整備費の
助成を
実施することといたしておりますが、特に三十五年度は、
生産性向上のため、改良がまへの転換及び切炭
生産に移行する
指導を新たに
実施することとしております。
また、最近の木炭原木の供給が、パルプ材、チップ材等の原木と競合度を深めている里山地帯において意のごとく進展しない傾向にかんがみまして、製炭現場の奥地移行を考慮しなければならなくなった
現状から、系統機関等の団体に対しまして、木炭簡易搬送
施設の
助成を行なうこととして、三十五年度において二百五十セット一千万円の
予算を計上いたしております。
これにより、製炭従事者の奥地移行による不利益をカバーするとともに、反面系統集荷を促進し、製炭世帯の所得の増大をはかることとしております。
以上のほか、治山
対策の
一環としての保安林
整備計画の
実施につきましては、前年度より計上した保安林損失補償
経費の
拡充をはかりますとともに、新たに新生荒廃地周辺地区の保安林指定を恒常的に
実施し、国土保全の全きを期することとして、指定
調査費二百万円を新たに計上いたしております。
また、造林
事業に
関連し、優良種苗確保
対策は、指定母樹等よりの公営種子採取の
事業量を拡大するとともに、三十二年度から
実施しております林木品種改良
事業を
継続実施して、造林
事業の効果向上に支障なきょう計画しております。
なお、森林資源保続の面から、森林保護の
経費を増額しておりますが、特に前年度発生しました
災害により風害を受けました地区に対するマツクイムシ駆除
経費を計上いたしますとともに、新たにイノシシによる被害防除のため、イノシシ捕獲さく
設置の
助成を計画しております。
一般会計の歳入
予算については、格別御
説明申し上げる点もありませんが、前年度におきまして国有林野
事業特別会計から十億円の繰り入れを行なって造林
融資の拡大等の引き当てといたしましたが、三十五年度におきましても同様十一億円を一般会計に繰り入れることといたしております。
これによりまして、一般会計より
農林漁業金融公庫へ出資七億円を行ない残り四億円は治山
事業の
事業拡大へ振り向けられることとなっております。
以上、簡単でありますが、
一般会計予算の概略についての
説明を終わりたいと存じます。
次に、国有林野
事業特別会計予算につきまして、主要な点を申し述べたいと存じます。前に申し上げましたように、従来一般会計で行なって参りました民有林治山
事業を国有林野
事業特別会計の中に併合して、治山勘定を設けることになり、従来の国有林野の
事業は国有林の治山
事業も含めて、国有林野
事業勘定として区分して経理することとなったのであります。
治山勘定の
予算、
事業規模等につきましては、前に申し上げましたので、国有林野
事業勘定の
予算の
内容について簡単に申し上げることといたします。
本勘定の総額におきましては、歳入において五百六十一億四千八百八十万円、歳出におきましては五百七十二億四千八百八十万円でありまして、
昭和三十四年度当初成立
予算と比較いたしますと、歳入において三十億九千八百六十三万五千円、歳出において三十一億九千八百六十三万五千円の
増加となっております。
この
予算は、前年度に引き続きまして、国有林野の林力増強をはかるための拡大造林を中心手段として策定されました
経営計画における
昭和三十五年度の収獲量と
事業量に基づいて編成されたものでありまして、これを伐採量についてみますと、国有林の伐採総量は六千六百七十四万二千石となりまして、前年度の六千五百二十五万七千石に対しまして百四十八万五千石の
増加が見込まれております。
生産力増強計画の
推進でありますが、これは、前年度に引き続き、より一そう強力な
推進をはかることといたしまして、造林については、拡大造林に必要な計画量の完遂と確実な保育の実行に、林道におきましては、奥地林の伐採、更新を計画的に行なうための自動車道の新設改良に重点を置いております。
また、国有林の新しい
事業として、公有林野官行造林
事業等のほかに三十四年度からいわゆる民有林協力
事業が
実施されておりますが、
昭和三十五年度におきましても、引き続き
関連林道
事業について八億円、薪炭林改良、共用放牧採草地改良、
海岸林
造成につきまして一億五千万円を計上し、また、林木育種支場の二カ所増設をいたしますほかに、
新規事業といたしまして、民有林用の優良種子採取とその貯蔵
施設の新設、
経費四千五百万円でありますが、これを計上いたしております。これは、種子の凶作時に対処いたしまして、備蓄用の種子を国有林で採取貯蔵して凶作時において民有林造林用として供給するためのものであります。
現在、民有林用種子は、その系統管理の必要性から、その大半を
都道府県の直営採取を建前として、その採取費の四割は国庫
補助によって行なわれておるのでありますが、種子の結実は、年により豊凶の差がはなはだしく、また、府県の採取能力などの
現状から見て、本
事業もまた民有林協力
事業として相当の意味のあるものと期待するものであります。
なお、さきに述べましたように、剰余金十一億円を一般会計に繰り入れまして、うち七億円は、三十四年度と同様に民有林の長期造林
融資に充てるため、農林
漁業等金融
公庫に出資することにいたしておりますが、これは三十四年度の損益、収支決算の見込みから見て、特別会計法第十二条による繰り入れば行なえないので、とりあえず
臨時特例として法律を制定しまして、三十五年度に限り、持ち越し現金をもって一般会計へ必要な繰り入れを行なうことといたしましたが、このことにつきましては、国有林野
事業経営の立場と、民有林協力の立場との相互の
関連におきまして、三十六年度以降においてとるべき
対策を緊急に確立する必要がありますので、関係行政機関の職員と、林業団体関係及び
学識経験者をもって構成します審議会あるいは
調査会となるかとも思いますが、これを設けまして、この問題を審議いたしまして、その答申に基づいて今後の方針を決定する予定であります。で、このための必要の
経費も計上いたしておる次第であります。また、国有林野
事業はわが国林業の中核といたしまして、
関連産業また農山村の地元経済にますます大きな地位を占め、その
経営のあり方については各方面の関心と、その合理的運営が要請されておる現在、林野庁といたしましても、先に民間有識者による国有林
経営協議会を
設置し、国有林野
事業の複雑多岐にわたる
事業経費、
予算等の主要な問題について、専門的かつ総合的な視野に立っての検討を行なっておるのでありますが、今後さらにこれら諸問題の基本的
事項についての
調査研究を
基礎的、恒常的に行なうことの必要が痛感されますので、所要の
経費を計上いたしまして
調査研究を進める考えであります。
なお、林力増強に対応いたしまして、
北海道にとりあえず三十五年度におきまして三つの営林署を増設することといたし、かつ営林署長の最近の事務の繁忙の状態にかんがみまして、営林署長を助け、重要
事項を整理するための管理官——仮称でありますが——を各営林署に設けて、
事業の運営に資していくというふうに考えておる次第でございます。
以上をもちまして、林野庁関係の
予算の
概要の
説明を終りたいと存じます。