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野村吉三郎君 すでに同僚の各位から
質問せられまして、私は多少重複しまして、二番せんじのところが多々あると思いまして、御迷惑でもあると察しますが、しばらくがまんを願いたい。
私は防衛に関して一般的に必要なる事項四問題を選びましてお尋ねしたいのであります。私は、この国の安全、治安というような問題に非常に関心を持っておりまして、
日本にも思想の対立がありますし、こいねがわくは、思想の三十八度線ができないことを熱望している次第でありますが、最近はむしろそういう方面に向こうように思って、非常に憂慮にたえないのであります。この懸隔は同じ
日本人だからして、これはどうしても埋めなければならぬと思いますが、それには時日を要するであろうと思います。そういうよりな観点に立ちまして、次の
四つについてお尋ねしたいのであります。
最初に
総理大臣にお尋ねしたいのであります。これは、いずれも精神的の面になりますが、国の安全というのは、どうしても私は精神が統一しておらなければならぬというような観点でお尋ねをするのでございますが、最近の歴史の教訓によれば、
日米安保のような
安保条約あらば、まず
戦争は起こらない。平和を保ち得る。しかも
日本の自由と民主主義は守られる。これと反対に
安保条約のようなものがなければ
戦争の危険が多くなり、その上間接侵略も起こるし、平和革命も起こり得るというふうに私は思っているのであります。これは、
政府の方でもそうお感じになっておって、始終そういう意味で発表されておるように思っております。それを実例をもって申せば、八年前
日本は平和
条約を結んだ、同時に
安保条約も結んだ。安保のおかげで、当時わずか七万五千の警察予備隊を建設中であって、自衛力はまことに貧弱なりしにかかわらず、
日本では隣りに起こった朝鮮
戦争のような
戦争も起こらなかった。これに反して韓国では、その少し前に米軍が急遽撤退をしたので、北鮮からして少数の精鋭数師団に侵入せられて、たちまち釜山附近まで席巻された。私らは、その当時
アメリカ軍がひいたらあぶないんじゃないかというようなことを軍事的に見ておりまして、まあ
アメリカ人なんかにもそういうことを言うてみたのですが、存外、楽観的でありました。私の友人の、師団長をやった人で、ロシヤの武官をしていたものが、スターリンの観兵式に行ったら、朝鮮人の中隊か大隊があった、そのうちの一兵に聞いてみるというと、共産主義になるのかと聞いたら、いや士官になるのだ、こっちへ来たら士官になれるから来たと、
日本語で答えたということを聞いておりまして、北鮮には精鋭の師団があった、南鮮には警察の予備隊と言うたら失礼かもしれませんけれ
ども、警察じみた軍隊であったということで、直ちにやられてしまった。それで、そういう事例を見ても、
日本が
安保条約のおかげでそういうふうなことは
日本になかったというふうに思っております。
日本は平和で
経済は
戦前以上に回復し、自由と民主主義、これもまあマッカーサーに言わせればまだ十二才、それから七年ほどになりますから十八、九才ですが、かなり成長した、こう私は思っております。歴史的に見ても安保の成立は賢明であった、新安保は
ただ在来のものに修正を加え
ただけである、要するに、
日本の進歩に伴い、在来の不備の点に、不平等の点等を修正して、そうして十年の期限にしたというものであります。その目的は従来通り、
ただ自国のみを守る、よその国を攻めるなんということは絶対に
考えておらない、夢にも
考えておらない。また、極東において、
日本に近火があった場合に関心をもって、延焼をせざるように、利害関係がありますことは当然であります、しかしながら、
日本はそういう場合には出兵はしない、在
日米軍が
日本におりますが、それは
日本だけにおって、
アメリカの兵隊がここから外へ出て行くなというのは無理な注文でありましょう。それだからして
アメリカの兵隊はある程度動くというとになっております。それで、相互協議にはこれらの点についていろいろ話し合うのでありましょうが、外相、大使、それからまあ軍司令官ですかの最高会議のほかに、今度はだんだん専門家の幕僚会議もできる、下級の会議もできるのだということは、もうほとんど確実になっておるというふうに聞いておりますからして、これらのものがこの常設機関になって、絶えず話し合っておれば、双方協議をしていろいろやることが割合に円満にいくのじゃないかというふうに
考えております。
日本人は何人も
戦争はまっぴらだと
考えており、軍閥というものは昔の夢であったと私は思っております。
ただ、安保プラスわが自衛力によって
戦争発生を抑える力、抑制力、ディタレントというものができる、元来、
日本人は一般に徳義を重んじ、正しい道を進んで諸
産業を開発し、文化を
向上し、
生活水準を高めんとしておるのでありまして、この際他より脅威せられては国の独立、個人の自由というものが得られないのですからてし、それによってそういう自由、民主主義は失われることになるのでありますから、他より侵略されざるよう、脅迫されざるよう望んでおる次第であります。この希望を達成するのには、現状の
世界においては、防波堤として自分の国情の許す自衛力を持つとともに、その自衛力はまた
世界的に見て弱小であるから、自由国たる米国と
安保条約を結んで防波堤を補強する、あるいは安全を確保するというのは、これは無理のないことだと思います。
日本は他国の脅威になるとか、あるいは他国の内政に干渉するというようなことは、いろいろ他国からして批評もありますけれ
ども、しかし、一九五六年、鳩山
総理が調印した日ソ共同宣言には、相互に個別的また集団的自衛の固有の権利を持っておるということを確認しておるのであります。そのときすでに
安保条約があったのであります。なおまた同宣言は、
経済的、政治的、思想的のいかなる理由を問わず、直接、間接に他国の
国内事項に干渉しないという確約をしておるのであります。こういう次第でありますからして、
日本は
安全保障条約により自国を守る足元を固めて、
世界のあらゆる国と仲よくやっていこうというのでありまして、そうして決してこれは間違った政策ではない、正しい政策だと私は信じて疑わぬのであります。
政府は、
わが国民のこの平和の熱意、
わが国民の真実の姿を国の内外に対して局知せしむるのにもっともっと骨を折ったらどうかと思うのです。私は
国内に対しては精神統一と申しましたが、精神動員というものは必要だと思います。今日は国を愛し国を守らなければならぬということは大体心得ておるのじゃないかと思いますが、自衛力がなかったらいくさが起こらないのだ、兵隊さんや水兵さんかなければもう天下泰平なんだという
考えは相当識者の間にもあるのじゃないかと思うのです。こういうところがちょっとわれわれとしては養うべき
現象じゃないかというふうに感ずるのであります。
そこで、こういう点については、共産主義の国は非常に力を注いでおって、憲法にもそういうことははっきり書いておるし、この間、ロシアから帰ってきた人の話を聞くというと、学校なんかでもそういう問題については非常に教育を厳格にやっておる、先生と生徒との間は非常に規律厳正である、礼儀を正しくしてやっておるということを聞きましたのですが、
日本の方は必ずしもそうはいっておらぬように思うのであります。こういう点を直そうと思ったならば、自由諸国では、今シヴィル・ディフェンス——民防というものを盛んにやっておる、
アメリカでも非常に盛んにやっておりますが、
日本ではそういうことを一向着手しておらないという関係でありまして、
国民の国の安全ということに対する知識が非常に欠除しておるんじゃないかというふうに私は
考えるのであります。これは将来にとっても
考えなければならぬ問題じゃないか。軍備がなければ、兵隊、水兵がなければもう天下泰平だと言っておるような
考えは、これはどうしても、何か教育して直さなければならないのじゃないかというふうに思うのです。
ただし、平和を維持するためにはそれではいかぬのじゃないかというふうに思っておる。これを放擲していくわけにはいかぬのじゃないかと思っております。また、
外国に対してもいろいろ
日本を中傷してくる国があるのですが、もっと広報機関が活発に動かなければいかぬのじゃないかというふうに私は感じております。これは
外国にはプロパンタ・ミニスターとか、最近プレセス・セクレタリーというものがあって相当の機関を持って、そうして国の内外に対して、そういうときに善処しております。
日本の方はそういうところで、まあ非常に機関も少ない、予算もないでしょうが、私は最近の議会のいろいろの動きに対しての
説明が、
政府が後手々々と出、一週間前に出たらもっと効果があるのに、もっと早く
国民の了解をかち得たのにと思うのが非常にたくさんあるのです。そこで、安保の問題も、そういう点において、この場合ばかりじゃなく、この
安保体制で十年間いくのですからして、この方面に対して十分力を注いで、そうして
国民に十分納得せしめるという努力が必要じゃないかというふうに感ずるのであります。私は、きょうは答弁としてお願いするのは、ここへ請願あるいは陳情に何万人して来る。あれがみな、その安保の内容をわかって、安保が国のために反対だと思ってやってくるのか、ずいぶん疑わしいと思うのであります。それで、
ただいま
総理大臣をわずらわし御答弁を願うのは、そういう方々あるいは労働者の方では安保反対なんてやっておるのですが、私らは、労働者諸君の内容いかんによっては自分で首をくくるような、自分の立場が安保を失ってやったら非常に困るような人もその中に参加しておって、事態をわからぬのじゃないか。
国民が主権者である今日、そういうこと言うたら失礼かもしれませんですが、
総理大臣から、なるべく明瞭で簡単で、そういう人にもわかるようなお答えを願えたらけっこうだと思います。私は、内外に対する
日本の
説明がすこぶるもの足らぬ。
国内の精神教育というのですか、精神統一というのですか、国を愛し国を守るということは、これはもう当然のことでありますし、そういう点において
国民が十分に統一されなければならぬというふうに思っておりますので、若い青年少女にわかるように
一つ御
説明を願います。