○笹森
順造君 お話の
通りだと思いますが、第二次世界大戦のあとに、AAグループの国々で、反植民地主義や民族国家主義が盛んになって、従来世界に覇を唱えていた強大国の覇絆を脱して、それとの同調を避けて、いわゆる非同盟主義にのっとる中立主義が台頭してきておる傾向も見のがすことができない。その場合に、
日本がAAグループに入らなければアジアの孤児になるのじゃなかろうかという心配で、やはり中立主義を唱える人があるように思う。しかし、どうもそれは、やはり今
外務大臣のお話しになりましたように、この
日本を中立の方に導こうというのは、ほんとうの純粋な中立主義ではなくて、結果的には、中立ならざるものの方に誘導する中立論であろう、こういううがった話がありましたが、それが私はやはり現実であろうかと思うのであります。
そこでもう一つ、インドのお話をお述べになりましたが、インドばかりでなくて、ほんとうに中立ができるためには、私はいろいろな要件が必要だと思う。その
国民が断固として自分の国を守るという
意思決定があり、しかもまた
国民団結してこれに当たるところの実力があって、みずから自分の国を守るだけの力があるというならば、これは中立としても、スイッツランドのごとくあるいは成り立つかもしらぬ。これが
日本の国にあるか。今の
日本の中立論は、これは自主独立の中立論ではなくて、他力本願的な中立論ということに終始しておるように私には思われる。そういうのは中立の
意味をなさぬのではないか。それで今お話しの
通り、
日本という国は、地理的にも歴史的にも、あるいはまた軍略的にも経済的にも中立ができないのだという
考え方、それと、今最初に申しましたように、
日本の国が周辺の環境をなしております国々との
関係において中立となることはできないような
状態においてあるのだ、そこで、覚悟として、この
日米安保条約を結ぶならば、やはり断固としてその締盟国との間に利害を共通にするという覚悟がなかったならば、これは
意味をなさないと思う。今までの
日米安保の
条約について、この
条約が
日本のためになるのだ、
日本のためになるのだということをお話しになる、それもけっこうです。しかしたがら、こういう
条約を作って互いに助け合うという
精神的支柱は、やはりお互いが信頼して、そしてそこでお互いが安心し合うということでなければならない。その中心は、言うまでもなく
日本の防衛だということにもなるし、あるいはまた世界の平和だということにもなれば、これが力を合わすことは私は当然だと思う。そういうことを考えまするというと、一方において、核兵器を持っておる国を相手とするような国と結ぶことは危険だというような
考え方は払拭さるべきものだと私は思う。こういうような
意味で、先ほど来、
青木委員から、
ソ連が多年とって参りました中立外交政策の、実に自己の力の弱かったときにのみ中立政策をとっているが、無用になっていったときには、直ちにこの中立政策を弊履のごとく捨てたという例は、今
青木委員の申された
通りでございまして、私は結論的にはそう考える。でありまするから、この際、私はこの
安保条約の
審議にあたっては、
国民的な自覚と確信を持って、もっとはっきりさせなければならぬ。この点に向かって先ほど来いろいろお話がありましたし、
ソ連の中立に対する理論的な矛盾なり外交政策の上の撞着なりは明確に私は把握する必要があると思う。こういう
意味で、私はこれ以上この
質問を続けるわけではないのでありますが、それをやはり
国民にもっとはっきりせしめる必要を感ずるがゆえにこのことを申し上げるのであります。
そこで時間も進みましたので、私は次のことでお尋ねを終わりたいと思うのでありますが、この
安保条約案が、
衆議院の段階において
審議されました段階において、いろいろと動きがあったことは皆さん方の御承知の
通り、そのときに附帯決議の問題が起こっていたわけであります。それにはいろいろな
意味があった、そこでこれは
委員会なり
国会なりが附帯決議をするということは、これは立法機関の正当の権能でありまするが、これがこの
条約案をさらに強くし、この運用方面においてこれが強化されるものであり、しかも行政の任に当たる
内閣がこれによって力を得るものでなければならぬと私は考える。この
意味において、
国会に責任を負うところの
内閣が、この
委員会において、あるいはまた本
会議において
主張があってみんなか考えるならば、この附帯決議をつけるということは一体どういう工合のものてあろうか、しかもこれは与えられた行
政府の権能を抑制するものではない、むしろこれに対する一つの力づけであるという面において考えたならば、これはどういうものであるだろうかという
考え方であります。つまりこの問題で一番問題になりますることは、言うまでもなく事前協磯の問題であります。もとより
内閣にまかされておりましたすべてのものを、私
どもはここで附帯決議をつけるということは、
条約の修正ではむろんありません、また
内閣の行動をこれによって左右しようという考えもありません。ただ事前協議の問題がありました際に、国家の運命にかかわるような重大な問題を、ここで
アメリカから事前協議のありました場合に、私その内容は申し上げません、申し上げなくても明々白々である。この事前協議の主要問題となっているもので、国家の運命を左右するがごとき問題が提起されました場合には、これを
国会に報告せよ、報告するようにというようなことの附帯決議をかりにつけたならばどうであるだろうか。これは御承知の
通り、
条約が必らず事前において、あるいは事後において
国会に報告せられなければならないという思想と同列であります。その国家の存亡に関するような重大問題が起こったときに、これを
国会に報告するということによって
国会が当然
審議をするでしょう、それによって
国民のこれに対するところのはっきりした
考え方が明確に出てくるでありましょう、それをバツクとして
政府が堂々と確信を持って憲法に許されたる
範囲において最大な活動をすることができる。この
国会に対して責任を負うところの
内閣がそれだけのことをするということが、非常に
アメリカと協議をする上においても力が強いことではなかろうか。この事前協歳の問題についていろいろと法的にあるいは
政治的に、あるいはまた
岸総理とアイゼンハワーとの間の共同
声明等において私は詳細なことをよく承知しておりますが、それを運用する
意味において、こういうことを考えたら一体どうなのか。これは単にこの事前協議の問題ばかりじゃありません。そのほか、今の経済の条項などについてもいろいろございましょう。幾多の問題で、この
条約運用の
意味において、これを強化するようなそういう希望的な附帯決議をするということが、むしろこの
条約をほんとうに
国民が総力をあげて支持する
意味においてのそれは力になりはせぬか。これは、今
政府の
答弁を聞いてどうこうというわけではありませんけれ
ども、しかし私
どもは、
審議する上においての参考にしたいので、もしもその気持を披瀝ができまするならば御披瀝を願いたいと思うのです。