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1960-03-17 第34回国会 参議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中野 文門君    理事            増原 恵吉君            村山 道雄君            伊藤 顕道君            横川 正市君    委員            伊能繁次郎君            大谷 瑩潤君            木村篤太郎君            小柳 牧衞君            下村  定君            松村 秀逸君            鶴園 哲夫君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            辻  政信君   国務大臣    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省航空局長 辻  章男君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   参考人    地方公務員   森口 幸生君    国家公務員   藤井  務君    明治大学講師  藤本  武君    三井金属鉱業株    式会社労働部事    務長      石橋  大君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家公務員制度及び恩給に関する調  査  (公務員給与に関する件) ○国の防衛に関する調査  (航空自衛隊機全日本空輸機の衝  突事故に関する件)   —————————————
  2. 中野文門

    委員長中野文門君) これより内閣委員会を開会いたします。  国家公務員制度及び恩給に関する調査を議題とし、公務員給与に関する件の調査を進めます。本日は、本件につきまして参考人の万々から御意見を伺うことになっております。参考人方々には、御多忙中のところ、本委員会のためにわざわざ御出席いただきまして、まことにありがとう存じます。種々御意見もあろうかと存じますが、議事の都合上、発言時間は一人十五分程度にお願いいたしたいと存じます。なお、各委員より参考人方々に対する質疑は、参考人方々の御意見開陳か全部終了してからお願いいたします。それでは最初埼玉県庁職員森口幸生氏にお願いを申し上げます。
  3. 森口幸生

    参考人森口幸生君) 私埼玉県庁勤めております森口でございます。本日参考人として公述の機会を与えられましたことについて非常に感謝いたしております。  まず初めといたしまして、埼玉県の状況について簡単にお話しておきたいと思うわけでございますが、埼玉県は人口二百四十二万三千百八十八人でありまして、大体予算規模は百七十六億ぐらいでございます。それでそのうち県税収入は四十三億でございます。従いまして大半の主要な歳入といたしましては国庫支出金の五十二億、地方交付税の三十八億というのが主要な財源となっておるのでございます。特に埼玉県におきまして最近非常に変わってきました現象としまして、従来は大体泉南の地帯を除きましては、ほぼ農村地帯であったわけでありますけれども、最近県南の農村地帯に、いわゆる東京のベッド・タウンと申しますか、公団住宅が非常にできて参りまして、そういう意味東京との交流というものが非常にひんぱんになって参りまして、また東京都に勤め先を持っておられる方で、埼玉県に居住されておられる方が相当ふえて参ったわけでございます。私ども埼玉県の職員といたしまして、私ども給与の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、県の収入大半国庫支出金あるいは地方交付税にたよっております関係上、いわゆる県単独給与引き上げるというようなことは非常にむつかしいものでございまして、従いまして、私どもとしましては全国的な国家公務員なりの、また国家公務員給与水準引き上げというようなことについて非常に期待を持っておるわけでございます。そういう意味で、これから私自身の、非常に恐縮でございますけれども生活実態をお話しいたしまして、何らかの御参考にしていただけたらと思うわけでございます。  私は、学歴旧制高等学校でございますが、旧制高等学校を出まして十一年、学校を出ましてすぐ入りまして、現在本俸が一万七千三百十円でございます。家族状況といたしましては、私と一緒に住んでおりますのは妻が一八、それから長女が二才でございます。それでそれ以外に母が一人おりますが、住宅事情等もございまして別居いたしております。それからもう勤めております弟がございますが、現在一応私の、何と申しますか、扶養と申しますか、そういうふうな関係になりますのは東大の二年に在学中の弟が一人ざいます。そういう意味で私の収入だけではこれらの者について扶養する、あるいは生活していくということは非常に不可能でございます。先ほど申しましたように、大体収入としまして、本俸暫定手当扶養手当を含めまして一万八千九百三十円でございますけれども、天際は手取りとしましては、一万六千三百十一円くらいにしか当たりません。従いまして国家公務員の一人世帯、かりに母なり弟なりを全然以外視いたしましても三人世帯のいわゆる人事院勧告水準二万一千百十円の標準生計費には及びませんし、まに私どもの県の人事委員会でも浦和市におきまする標準生計費を出しておりますけれども、それにいたしましても二人世帯で一万九千四百六十円、これを後ほど申しますけれども、きわめて低い数字でございますけれども、それすら及ばない。従いまして、私の生活といたしましては、妻がおりますけれども、私と妻と共かせぎで生活をしております。妻は同じく埼玉県庁勤めておりまして、その収入は大体本俸が一万四千円でございまして、暫定手当がつきまして合計一万五千八百十円でございますが、手取り一万四千三百七十六円ということになっております。この私と妻の収入を合せますと三万六百八十七円になるわけでございます。大体三万でございますけれども、そのうち母と弟に二千円ずつ仕送りをいたしております。もちろん二千円だけでは足りませんので、それ以外の母及び弟の学資あるいは生計費につきましては、静岡で高等学校の先生をしております弟が一人、それから中外製薬会社の研究所におります弟、それと学校の教員をしております妹、この三人でそちらの方を足しておる、こういうことになっておるわけでございます。従いまして、以下大体私の世帯、つまり住居を一にしております三人世帯状況について、収入が四千円を差し引きまして二万六千六百八十七円ということで、その内容についてお話をしていきたいと思うわけでございます。  私ども公務員生活につきまして、本日もこういう参考意見を申し述べる機会を与えていただきましたし、また、人事院初め政府がいろいろ御配慮いただいておるという点については感謝いたしておるわけでございますけれども、しかしながら、人事院の、特に昨年勧告をしております額については、私どもの実際の生活に比べまして非常に低いということを言わざるを得ないわけでございます。それを具体的に一つずつ私の生活比較しながら申し上げていきたいと思うわけでございますけれども、まず最初食糧費でございますけれども人事院では大体食費単身の場合三人月額三千六百六十円、三人の場合に九千六十円というふうになっております。特別に世帯によって調査をいたしておりませんので、単身世帯一つの基礎になっておると思うわけでございますけれども単身世帯の場合の食費の一日積算というのは百二十一円、一食四十円、こういう数字になっているのでございます。私ども実際に県庁勤めておりまして、大体昼飯は、これは人によって弁当を持ってくる者あるいはパンを食べる者、うどんを食べる者と、いろいろございますけれども、四十円では大体パンか、うどんでありまして、タヌキが四十円でございます。あるいはキツネ程度パンでは、パンを大体半斤とジャムをつけまして、かりに牛乳一本を飲む、これが大体四十円くらいの食費になっているのでございます。従いまして、非常に客観的に見ても、決して昼飯としては十分ではない。そういう状態でございます。でありますけれども、いろいろ生活実態としまして、昼飯の場合それで済むといたしましても、やはり家へ帰っての生活というものが、実際に四十円平均では非常にやはり家庭生活というものも、食生活というものも貧しい感じがするわけであります。私自身もいろいろ生活をいたしております中で、過去のいろいろな経費について一応調べてみたわけでございますけれども、私の家の場合には、共かせぎでございますので、なお、先ほど若干落としたわけでございますけれども子供が一人いるわけですが、子供は、近所にたまたま妻の祖父母がいるものでございますから、朝起きてすぐ子供をつれて、あずけてくる、夕方勤めから帰って迎えにいく、こういう生活をいたしているわけでございます。従いまして、子供の昼は大体祖父母の家に食費を出して、そこで食事をさしてもらっている。従いまして、昼間はたれも家にはいない。従いまして、日曜日が非常に、何と申しますか、いろいろ片づけものの日になりまして、実際には日曜日は妻あるいは私にとっても、家内の洗濯であるとか、そういうふうなものが五時間程度、そういう洗濯とか片づけものに追われている。こという状態でありまして、決して共かせぎという生活状態が現在の日本、これは決して女が家庭に帰るべきだというようなことではございませんけれども、実際に現在の生活実態からして、私としてもこの共かせぎの生活というものは、決して永続きしないと思っているわけでございまして、一応共かせぎという実態からいたしまして、かなり食費等も、若干はふくらむ部分もあると思うのでございますけれども、しかしながら、いろいろ内容等を見ますと、決してぜいたくなものではございません。大体食費が一カ月に一万二千二百四十円でございます。その内容も一応調べてございますけれども、時間の関係で省略いたしますけれども、大体概算しまして、朝が三十五円程度、それから夜が六十円程度食糧費生活になるわけでございます。昼は二人とも職場で大体パンうどんで済ます、こういうふうな状態になっております。  それから次に住居光熱費の問題でございますけれども人事院では一人の場合一千三百七十円、三人世帯の場合二千九百四十円というふうにいっているわけでございます。私現在借家をいたしておりますけれども家賃が六畳一間で三千円でございまして、これは一応独立家屋になっておりますけれども、間どりは六畳一間しかございません。そこで親子三人非常に窮屈な思いをいたしているわけであります。しかしながら、埼玉の特に浦和大宮等状況から言いますと、大体家賃は二間で四千五百円から五千円、三間で六千円から七千円くらいかかるのが普通でございます。県の公営住宅にいたしましても、二千八百円から三千円、こういう状態であります。従いまして非常に人事院住居費では十分どころか、これでは住める家はないというふうに言っていいのではないかと思うわけであります。  時間の関係で簡単に申しますけれども被服費につきましても、定際人事院勧告通りでありますと背広一着買うのがやっとでございます。従いまして、私どもの方も現在非常に切り詰めておりますけれども人事院勧告以上のと申しますよりも、それ以上、倍程度支出する必要があるので、月平均四千円程度で、あとは期末手当に自然おぶさっていかなければいけない、こういう状態であります。  その他の費用でございますけれども、その他の費用にしましても、大体私ども公務員としていろいろな修養、文化を営むに、人事院生活費では、テレビはもちろん持っておるようなところは非常に少ないわけでございますけれども最小限公務員として職務を維持できるような図書等も購入できないような状態でございます。  以上、大体私ども生活実態を申し上げましたわけでございますけれども、さらに私のここで強調いたしたいのは、私は学校を出て入って現在申し上げましたような生活でございます。私の給料は、現在の給料表から言うとちょうどそっくりそのままなんです。ところが、現在の公務員給料表と申しますのは、実際には最高給与になっておるわけであります。と申しますのは、大体前歴、つまりほかに勤めを持っておって入ったものは、そこの水準より低くなる、こういう仕組みになっております。しかも、現在の公務員給料表が、人事院標準生計費と比べてみた場合には、人事院標準生計費よりもさらに下回っております。と申しますのは、年令を見ますと、たとえば二十七才では、普通埼玉県でも平均結婚年令が二十七才でございますけれども、二十七才では大学卒で一万三千五百三十円であります。ところが人事院の場合には、標準生計費の二人世帯というのは、それより上回っておるわけでございます。それから給料表の問題にしましても、このいわゆる最高水準と申し上げますのは、今申し上げました前歴換算、つまり一番端的に申しますというと、家で農業を十年やっておりまして、それで役所へ入った場合に、その間の期間は一号しか見られない。つまり一緒に卒業したものに比べて九号もおくれる、約九千円程度低くなる、こういうふうな状況であります。従いまして現在大多数の人方は、昨年人事院勧告による給与改訂ございましたけれども、一万七千三百円以下のものが埼玉におきまして大体七〇%を占める、こういう状況でございます。従いまして退職いたしますときにも大体恩給をもらいますが、恩給ども大体埼玉最高にいたしましても、平均支給率としましては九万九千円、月八千円程度恩給しか退職する際にはもらえない、こういうふうな状況になっているのでございます。  しかもさらに、なお私どもの方で強調いたしたい点は、県の職員大半がそのような状態であるという点で、調査をいたしましたときにも二三・五%が食うに困る、食うにやっとというのが四五・九%、食えるが生活をもっとよくしたいというのが二六・七%こういうようなことで大半のものがもっと大幅に給与引き上げていただかない限り、とても暮していけない。従って大半が共かせぎあるいは内職をする、こういうふうな状況で軽うじて暮している状況でございます。  さらに、県の職員よりも低いものは市町村の職員でございます。これについては現在私も若干の資料を持っておりますけれども初任給四千円とかというのはざらでありまして、二十才でも五千円、六千円というぐらいの給与しかもらっていない実態であります。平均いたしましても一万二千円という数字が出て参りますけれども、これも村長さんや町長さんまでひっくるめて一万二千円、こういうようなところが大半でございます。  これからなお申し述べたいこともございますけれども、時間の点もございますので、省略いたしますけれども、以上のような私ども実態であるという点を十分御了察いただいて、私ども全国公務員が望んでおります一律三千円の給与引き上げにつきまして、皆さん方の御厚意ある御配慮をお願いいたしまして私の意見開陳を終わりたいと思います。(拍手)
  4. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、農林省職員藤井務君からお願いいたします。
  5. 藤井務

    参考人藤井務君) 国税庁関係勤めております藤井でございます。国家公務員関係賃金実態いつきまして、貴重なる日程の割愛をいただきまして、公務員生活実態についての関心を得せられましたことについて厚く御礼を申し上げたいと思います。
  6. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。    〔速記中止
  7. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  先ほど農林省職員藤井務君と申しましたが、誤りでありまして、国税庁職員藤井務君であります。どうぞ御発言を続けて下さい。
  8. 藤井務

    参考人藤井務君) 貴重なる時間を割愛をいただきまして、厚くお礼を申し上げたいと思います。  まず、公務員生活実態につきまして、私たち賃金が妥当かどうかという点につきまして考える場合に、最も端的に表現できる方法として、その賃金生活ができるかどうか、このような観点で私たち賃金妥当性を検討いたしたいと考えます。  そのような観点から私たち公務員組合におきまして調査いたしました内容を、ごく、一、二の事例で申し上げますと、全農林におきます調査では、総数三千五百八十四名の調査の中で、給料生活できるというものが六百四十七名、一八・一%になっております。やっていけないというものが二千七百十一名、七五・六%、次に全商工の組合調査いたしました対象で、四千五十四人の調査対象の中で、給料でやっていけるというのが六百五十七名、一六・一%、やっていけないのが三千二百六十名、八〇・四%というふような数字を示しております。いずれも八〇%前後の職員が現在の給料では生活ができない、そのような実態を表明している次第でございます。  やっていけない層の赤字につきまして調査をいたしますと、大体二千円より八千円に及んでおります。この層はどのような方法赤字補てんを行なっておるか、この実態調査いたしますと、農林の場合、本人内職九十五人、家族内職四百九十九人、家族給料による補てん三百二十六人、農漁業による補てんが二百五十六人、仕送りを受けておるもの二百七十五人、その他五百九十六名、このような内容生活をささえておる、このような実態でございます。で、なおこのような実態でございますので、全職員の中で四五・二%に当たるものが借金をかかえておる。その負債の内容は二万円ないし七万円という数字が多数を示めておる、このような実態を示しております。  次に、私たち賃金妥当性比較いたします場合に、現在の公務員賃金構成からいたしまして、民間賃金との比較ということが非常に重要視されるわけでございます。現在の賃金体系を考えてみますと、学歴あるいは年齢勤続年数等のいわゆる序列年功別賃金体系が主流をなしておるわけでございますが、公務員実態企業規模五百人の一般民間職員との比較をいたしました場合に、公務員の場合は平均年齢が三十三・五才で一般の場合は、三十丁六才、勤続年数は、公務員が十一・九年に対して、一般が八・一年、このような状態になっております。従って、年齢で二才、勤続年数では三年、五百人以上の規模企業よりはそれぞれ長いということが示されております。  さらに、学歴におきましては、公務員の場合が大学卒一〇・九%に対して、民間が三・六、旧高専卒業あるいは短大卒業生が一四・四に対して民間は四・一、新高、旧制中学卒業が、公務員四四・二に対して一般は二四上、逆に新制中学もしくは高等小学校卒業生の場合は、公務員は三〇・五に対して、一般は六八・二、このような数字を示しております。  しかしながら、このような数字比較いたしまして、賃金実態調査いたしますと、実質的にいわゆる小企業に該当する二万百九十円以下の人が総数の六五%、いわゆる中小企業以下に該当する二万四千三百七十七円の平均賃金以下の人が八三%。従いまして、残りの一七%がようやく大企業内容に入るというような状況でございます。  このような状況で、一方、戦前賃金と現在の初任給との比較を試みてみますと、戦前の場合、昭和十三年ごろの数値をとりますると、大学卒業で高文官学出身者で八十五円、最高八十五円から六十円というふうな範囲が出ております。旧制中学卒業生では、最高四十二円から三十五円、そういうような数字になっております。これをそれぞれ現在の物価指数三百二十倍を乗じますと、大学卒業生の場合は、二万七千二百円ないし一万九千二百円、中学卒業の場合は、一万三千四百四十円から一万一千二百円という数字が現われております。現在の初任給は、大学卒が一万六百八十円、高校卒業生が六千八百三十円というような数字になっております。従いまして、いずれも戦前比較いたしまして、三分の一ないし半分以下の初任給というふうなことが明らかにされておるわけでございます。これを、一般の現在の民間企業採用条件を考えてみますと、大学卒業で一万四千ないし一万八千円、新制高校卒業で一万円ないし二万二千円というのが大体現在現われておる数字でございます。従って、民間との初任給較差におきましても、五千円ないし七千円の較差が示されております。現在の賃金体系を考えてみました場合、初任給のこのような較差は、そのまま全体の賃金の低さを証明しておる。このように考えられるわけでございます。  以上のような状態の中で、私たち税務職員事例を御紹介いたしたいと思います。  ごく二、三の事例として申し上げますと、まず実例の一といたしまして、別制高校卒業後、税務署の場合は約十八ないし十五人に一人の率で相当きびしい選考試験の上、税務講習所という託へ入所を許可されるわけであります。税務講習所で一年の教育を受けて、現在この調査該当になっておる人は、実務を八ヵ月やっております。年齢は二十才七ヵ月、現在は徴収事務に従事しております。適用されます俸給が、税務の七等二月俸で、本俸が七千九百九十円になります。以下申し上げますのは、いずれも中都市の俸給生活実態実例でございます。従って収入合計が、若干の超勤を含めまして八千四百十円、これに共済掛金の六百円、職場の諸会費その他四百二十円、合計千二十円を差し引きまして、手取りが七千三百九十円ということになっております。この人は、親元を離れまして、下宿料が五千五百円、月賦代金、洋服の一部八百五十円、昼食代として九百円程度予算を立てておるようでございます。その他散髪代、若干の教育費等を千二百円程度みて、八千四百五十円というような数字が概数として出ております。差し引き赤字が毎月千円程度出る。これは親元より仕送りを受ける。このような実態になっております。特に申し上げたいのは、税務講習所を出た職員で、徴収事務に従事しておりますが、この職員は、大体毎日滞納処分等出張あるいは収納督励等出張にあたりまして、少ない日でも数万円、多い日には数十万円の税金を扱う。かような相当責任のある仕事を現在すでに担当しておるわけでございますが、そういう職員が月々このような赤字実態になっておるということでございます。  実例の二といたしましては、勤続年数が十年九ヵ月、年齢二十九年十一カ月、従って、税務署職員としてはいわゆる上級係員でありまして、相当熟練しております。この本人青色担当ということで、相当責任のある調査、決定をする仕事に従事しております。この人が本俸一万四千四百七十円、その他合計いたしまして一万五千八百四十円、結婚いたしまして約半年になります。妻一人でございますが、従って、扶養手当等を含めてそういう数字でございます。これの控除額が、共済掛金千八十五円、市民税あるいは諸会費等を入れまして千六百九十五円の差引が行なわれます。差引手取り一万四千百四十五円、これの生活実態を見ますと、食費七千七百四十円、住宅光熱費が四千二百八十三円、被服費の二千四百三十円、その他三千五百八十八円、通勤費大体四百五十円を含めまして一が八千四百九十一円、これも赤字が四千三百四十六円、これは昨年の十一月の実績でございますが、このような数字が現われております。これは、年末の手当より充当と父よりの若干の仕送りを受けておるようである。特に結婚年齢も若干ずれておりますけれども、結婚してこのような状態でありますので、本人としては、現在の生活の打開に苦慮をしておる。このような実態が現われております。  次に、実例の三として申し上げたいのは、これは、旧制中学卒業税務講習所高等科等を経て勤続十九年で三十九歳四カ月、妻子扶養家族三人で、家族四人の法人税係長、これは相当責任ある職務をしておるわけでございまするが、これの本俸が二万六千二百二十円、超勤等が千八百円、その他家族手当等含めまして合評三万二十円、これに諸掛金が三千五百三十七円控除されまして、手取り二万六千四百八十三円、これも赤字が大体三千円程度出ております。内容については時間がありませんので省略いたしますけれども、このような責任ある職務の人においてすら、そのような赤字が現実の問題として出ておるということでございます。  以上申し上げました三例は、税務職員としてはむしろ最も典型的な出世コースといいますか、それを歩んだ人の俸給実態でございます。ちょうどこれと同じ状態におきます施設職員、自動車運転手の例がございます。これは免許証を取りまして十五年、国税局に勤務して十一年になります。年齢が三十九歳二ヵ月、同じく家族四人、妻子三人をかかえております。この人の俸給は、行政(二)の三の八で本俸は一万四千三百七十円、その他朝晩の送り迎え等の超勤手当等が千五百円と、毎月ある程度一般職員よりは多額につけられております。合計一万七千八百七十円の所得から差引四百三十円の諸控除が行なわれまして、手取りで一万六千四百四十円でございます。これの食費の一例を申し上げますと、一万七百二十円でございまして、人事院の標準四人家族食費一万二千十円よりもさらに切り詰めた生活をせざるを得ない。このような実態になっております。従って、全体として四千円以上の赤字が出ておりますが、これは奥さんの内職によってささえておる。このような実態でございます。従って、特定の職種の施設職員の方が非常に生活に困窮しておられるというような実態が、如実に現われておるかと思います。そのほか、私たち関係しております公務員組合の中で厚生職組等の内容に若干触れてみますと、たとえば一万円以下の職員が全体の六八%を占めておる。このような状態になっております。従って、この職場では外食等におきましても、ほとんどの人が昼はうどんで済ましておるというような実態が現われております。特にこれは臨時職員というふうな人が多数職場の中に占めておる。そのような関係でこのように非常に低い数字平均数字として現われております。現在公務員全体の数約四十万の中で、さらにその別ワクとして臨時職員が六万ないし七万いるといわれておりますが、この実態すら正確に把握されていないわけでございますけれども、このようないわゆる臨時職員は実質的には定員内職員と変わらない仕事をしておりながら、受けている給料はほとんど半失業状態にしかならないというような実態がございます。あわせて公務員給与の御審議にあたりましては、この点十分一つ御審議をいただきまして、これらの人々の全体的な引き上げについても御協力いただきたいと考えるわけでございます。  最近、これは最後に申し上げることなんですが、きわめて端的な事例としてあまり事件というほどのことではございませんが、比較給与の高い大蔵省食堂におきまして、最近ごく一週間ばかりの間共済組合事業の食堂経営において若干の利益剰余金があったために昼食に卵一個あるいはシューマイ一個サービスしたことがございます。ところが、これに対して従来の利用者の約倍数以上の人がえんえんの行列を作って並ぶというような実態が現われております。これは要するに一応服装はそれぞれみえを張るわけでございますけれども、やはり食生活の不足がこういうふうな一端にも現われてくるかと思うわけでございます。  国家行政に従事する全体の奉仕者としてこのような状態に置かれておる実態を十分一つ御審議いただきまして、私たちの現在最低限として要求いたしております三千円賃上げについて、格段の御協力をいただくことを特にお願いいたしまして公述を終わりたいと思います。(拍手)
  9. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、明治大学講師の藤木武君からお願いいたします。
  10. 藤本武

    参考人(藤本武君) 私、藤本武でございます。本職は労働科学研究所というところにおりますのですが、明治大学の方の講師もしておりまして、賃金問題について勉強をしておりますので、公務員給与につきまして若干感じておるところを申し上げたいと思います。  公務員給与が低いということがよく言われるのでございますが、いろいろな意味合いで検討する必要があると思います。  第一に、私がまずいと思っておりますのは、人事院勧告が出ましていつでも約一年おくれて、つまりデータが発表されてから一年おくれて実施されるということ、それはっまり人事院勧告を実施しないということにひとしいのじゃないかというふうに私感ずるわけでございます。最近の統計を見ましても、去年の三、四月ごろから数パーセント賃金がもう上昇しておりますし、物価も現在ではおそらく二%くらい政府の統計でも上昇しておるのではないかと思いますが、そういうように元になりました勧告が現実からずれてしまって実施になる、こういうことが続いていきますと、いつでも公務員給与が実質的に人事院勧告より低い、こういうことになるのじゃないかと思います。その点が第一点でまずいと思います。  それから第二点は、人事院勧告も若干低めにしたいというような意向が、中ににじみ出ておるような感じがいたすのでありますが、去年の勧告を見ましても五%に満たないからということで、事実三%くらい民間給与より低いというような実情が出ておるのでございますが、全体としての改訂はしない。まあ中だるみといいますか、中堅職員についてのみ勧告が出た。そういうようにいたしますと、たとえば年間に物価だとか、民間給与が数パーセント上るので、またその分で三%ほどプラスされてしまう。その分だけ一般より低いというようなことが起こってくる、こういう点も非常にまずいと思っております。  それから労働組合の方からいろいろ反駁が出たり、あるいは人事院の方で回答が出たりしておりますのですが、そういう内容をいろいろ考えてみますと、どうもデータというものの取扱いが使用者側、つまり国家側と組合の側でいろいろめんどうな論争点になっているということがわかるのでありますが、これは外国でもございまして、フランスあたりでもデータというものにつきましては、どういう過程で作成したかということでもめるのでございます。で両者が一緒になって調査をするということも一つの手でございますけれども、実際に末端まで両方の代表者が行って調査をするということは、事実上不可能なんであります。そういうことから考えますと、やはりデータできれいに割り切ったものを出すということは非常に困難じゃないか。むしろ、人事院というようなものはもうやめちゃって、団体交渉権というものを完全に認めるというような形の方が、かえってさばさばするのじゃないかというように私は個人的には考えております。  それから先ほどもある方から民間給与に比べて低いという御説明があったわけでございますが、これは民間給与というものを一体どういうところに置くかということでもって考え方も違ってくるわけでございます。で、おそらく人事院勧告の基礎になっておりますのは、五十人以上というような企業を主としておとりになっているのでございますが、日本は非常にまずいことには一般的な賃金というものは実はないといってもいい。つまり外国でありますと、労働組合が非常に発達しておりますし、しかも、一つの産業ごとに統一的な団体交渉を行ないまして、大体一つの産業でございますと、企業規模間の較差というものが非常に少ない。スエーデンのごときは、大企業と零細企業の間でわずか一〇%ぐらいな賃金較差しかございませんので、賃率はつまり基本給でいいますとほとんど同じ、こういうような国さえもあるのでありますが、ところが、日本の場合は企業ごとにみな違っている。産業ごとにも違っている。それでありますから、一般的な賃金というものに合わせるのだといいましても、実は合わせようがないというのが実情なんです。漫然と平均賃金をとるということも一つの手のように考えられますが、事実そういう賃金構造を持っております場合は、単純な平均をとることは、あまり実際は意味がないのであります。それではどういうところに合わせるかということになりますと、これはいろいろ議論の分かれるところだと思いますけれども、私は国家企業といえば、企業ではございませんですが非常に大きな組織である、といいますとやはり大企業というものに主として、これは主としてと申し上げたいのですが、それに合わせてやはり賃金というものを考えていくということにならざるを得ないのじゃなかろうかと思います。特に私が強調したいのは、実は労働市場の関係でございますが、これは皆さんも御存じのことと思いますが、たとえば大学を出た人を考えてみますと、どこへ行くかという場合には、国家公務員になるかあるいは大企業へ行くかというそういう選び方をするわけであります。零細企業まで行こうというつもりで大学を出た人は一人もおらぬ。それでありますから、行こうとする人が選びます場合には、大企業国家公務員という形で選ぶ。そうしますとそごのところで、先ほどもどなたかお話がございましたが、実際賃金統計を見てみますと、初任給に数千円の違いがございます。そうしますと、結局国家公務員にならずに大企業の方へ行ってしまう。実は私、学術会議の方から頼まれまして、私が所属しております社会政策学会で科学者生活実態調査委員会というものを組織いたしまして科学者の実態調査したわけでございますが、それは学術会議から科学者生活白書というような名前で数十ページのパンフレットが発表されておりますので、御審議の過程でもそれを御利用していただきたいと存じますが、その中で国立大学のいろいろな先生がおっしゃっておる問題の最大のものは、もう今助手が学校に残ってくれないということでございます。つまりかすしか助手として残ってくれない。そうでなければ、特別に家の事情がよくって、低い助手の給料でもいいからがまんする、こういう特殊な人しか残らない。非常に困ったという訴えが自由欄にたくさん記入してございます。そういうことを見ますと、国家公務員に来る人は優秀な人が来ないということになりまして、今後の国家の立場から見ますと、非常に重要問題じゃなかろうかと思います。そういう点でぜひこの問題を慎重に御審議いただきたいと思うのでございます。  それから第三点に、生活水準の方から見てみますと、私、生活費の問題でいろいろ調査しました結果の一部でございますが、この最低生活費どれくらいありますれば、大体健康で文化的といいますか、それの最低限度の生活ができるかというようなものといたしまして、東京では、ちょっとめんどうになりますけれども、成人男子一人当たりといいますか、厳密にいいますと消費単位当たりと言うのでございますが、現在では八千五百円ぐらい必要だということになっておりますが、この水準東京の官公の職員の方で満たしておるのが大体六〇%くらいでございまして、四〇%ぐらいの方は満たしておりません。それから労務者に所属する方を取り上げてみますと、満たしておる方は四〇%ぐらいで、六〇%ぐらいは満たしておりません。しかしこれは東京といいますと、比較給料の高い地域でございます。で、これからあとは推定でございますが、おそらく全国で見ますと、官公職員の方の五〇%はおそらく最低生活費を満たしていないのじゃないかと思っております。それから労務者の方になりますと、七〇%はおそらくそれを下回っておるのじゃないか、まあこういうような実情でございます。むろん、この日本の労働者の中でも相当最低生活費に満たない方は非常に多いのでございます。ですから、日本全体の賃金の低いということもむろん言い得るのでございますが、官公職員というような地位の方があまりにも賃金が低いと、汚職だとかそういう忌まわしい事件を起こしやすい、必ず起こすという意味じゃございませんですが、起こしやすいということも一方で考えるべき事項じゃなかろうかと思います。  それから次は第二の問題で、賃金水準全体の問題じゃございませんですが、一般論として申し上げますと、地域差が大き過ぎるというように私は思っております。総理府の地域差物価指数を見ましても、大体地方都市は東京に比べまして九二、三%ということになっておりますが、それからいなかの方へ行きますと、あるいは米ぐらいは安いかもしれませんが、被服費だとかそういったものは高くなるので、私は最低限度地域差は一〇%程度じゃなかろうかと思うのであります。そういう点から見ますと、現在は二〇%プラスという形になっておると記憶しておりますが、そういたしますと、一六%余りの地域差になっております。非常に地域差が大きい。外国ではこんな大きな地域差は認めていない。しかもフランスのごときは年々この地域差を縮小しておりまして、終戦直後は二五%ぐらいな地域差だったのですが、現在は八%に縮めておる。遠からずこれをゼロにしよう、こういうふうな方向が出ておりますが、そういう点から見ますと、日本の地域差はどうも大き過ぎるのじゃなかろうかというように思っております。事実大企業を見ますと、最大のところでも一〇%に満たない程度でありまして、企業によりますと、地域差の全然ないところもございます、これは日本の場合ですね。そういう点から、一つ地域差の問題を相当御考慮いただく必要があるのじゃないか  それからもう一つ、地方自治体の給与が非常に低過ぎるということに気がついております。特に村なんかに行きますと、どうもとてつもない低い給与にぶち当たることがありますが、その点から見ますと、国家公務員の方がまだいいと、そういう問題と、これはいろいろむずかしい地方財政の問題なんかも関連いたすと思いますけれども、この問題をやはり相当御考慮いただかないと、村の中に残っておる地方公務員なんかがかすっぽの人しか残らぬ、こういうようなことになってまずいのじゃなかろうかと思います。  それからもう一つは、一般職務門の賃金較差が諸外国に比べて大きいように感じております。これはILOの資料で前に発表になりましたのですが、まあ一番下の給仕さん程度のところから、気象台長でございましたか、ちょっとはっきり記憶しておりませんが、その辺の間の較差は、先進諸国、ヨーロッパとかアメリカあたりになりますと、四、五倍というような較差のところが多いのでございますが、まあ日本はたしか八倍くらいあったと思います。で、そういうような地域差がまあ諸外国に比べますと非常に大きいので、やはりこの問題も公務員給与をお考えになる点では、やはり外国の事例なんかも御参照いただきまして御検討いただくといいんじゃなかろうか、こういうように感じます。  以上私の感じておりますことを申し上げました。(拍手)
  11. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、三井金属鉱業株式会社労働部事務長の石橋大君からお願いいたします。
  12. 石橋大

    参考人(石橋大君) 私三井金属鉱業株式会社労働部の事務長の石橋でございます。関東経学者協会の賃金委員会の副委員長を務めております。ただいまから、民間企業の立場から公務員給与はどう考えなきゃならぬか、どうあってほしいかということを述べさしていただきたいと思います。  公務員給与決定の問題は、本来国家財政上の問題といたしまして、国会の審議にゆだねらるべき性輿のものでございますが、私どもがこれに対する考え方をここであえて表明するゆえんのものは、これら公務員給与の決定いかんということが、物価とかあるいは民間賃金はもちろん、この国の財政経済全般に大きな影響を及ぼすものといたしまして、きわめて重要でございますし、また、納税者としての国民的な立場からも無関心であり得ないわけでございます。特に近年国家活動というものは、ますます質的にも量的にも拡大強化が要請されておるようでございまして、これに伴いまして行政機構も逐年複雑化、拡大化の傾向を示しておりますし、国民全体の奉仕者でございます公務員の経済社会に果たす役割は、ますます重要性を増大しつつある実情にかんがみまして、可能な限り有用な人材を公務に誘致いたしまして、公務の民主的かつ能率的な運営がはかられることが望まれているわけでございますが、このためには、まず公務員の待遇改善をはかることが緊要な問題でございます。たとえば、昨年人事院勧告に示されましたような中級職員の中だるみの是正の問題とか、あるいは研究職員とか医師その他専門技術職員の待遇改善をはかることは望ましいことでございます。むしろ有用な、有能な公務員に対しましては、これにふさわしい給与とか待遇の改善を積極的に進めるべきではないかと考えております。  しかしながら、私どもは無条件にこのような賛意を表するというものではございませんので、以上のような措置を可能ならしめる基本的な条件といたしましては、敗戦後の占領政策の特殊事情のもとに、行政民主化の一環といたしまして測定実施、せられました現行の公務員制度の改革というものに、根本的なメスを加えなければならないのじゃないかというように考えておるわけでございます。すなわち、国と地方を通じますところの行政事務の整理再配分及びこれらの事務をつかさどりますところの行政機構の整理簡素化とこれに要する公務員の定員の合理化など、また行政事務処理方式の改善措置なども合わせて講ずる必要があるのではないかというように考えておる次第でございます。  以上、公務員給与問題に対します基本的な考え方を申し述べたわけでございますが、なお、技術的な問頭点につきまして若干述べさしていただきたいと思います。  まず、財政面に与える影響に関してでございますが、たとえば昨年の給与改訂勧告によりますと、その所要財源は四十九億円とされておったようでございますが、この経費は直接経費だけでございまして、その他の給与項目にはね返りますところを考えますと、膨大な経費が必要となるのではないかと考えられるわけでございます。また一般職の方の給与改訂は当然特別職の方を初め、地方公務員と三公社五現業の給与に影響してくるのでありましょうし、これらを総合勘案いたしますると、相当巨額の財源を要することが予想されるわけでございます。従いまして、国家財政上著しい負担の増大をもたらすようになるのではないかと考えられるわけでございます。  納税者の立場といたしましては、公務が業務の簡素化、あるいは事務の能率の向上などによって、必要人員というものを最低限に抑えまして税負担の軽減がはかられることが望ましいわけでござまして、このような人件費の増大というのは、国の重要な諸政策遂行の障害ともなるでありましょうし、ひいては国民全体の利益に反するものではないかと考えておる次第でございます。  次は、俸給表の改訂の持つ意味合いというものについて若干触れてみたいと思います。公務員の方には、すでに毎年民間大手企業並みの平均約四%程度の昇給が確保されてきておるようでございますが、三十一年には俸給表の全面合理化ということで実質約六%のベース・アップが実施されております。また、三十三年には初任給引き上げと、これに続きますところの在職者の一部の給与改訂が実施されたわけでございます。昨年の改訂勧告にございましたように、一昨年初任給引き上げを行なった結果、中級職員給与の中だるみが生じた、従って、これを理由といたしまして俸給表の調整を行なおうという御趣旨であったと思いますが、これは約平均三・九%の給与増額に相当するというようなことになっておったようでございます。この初任給を増額いたしますると中だるみが生ずるということは当然のことでございます。民間企業におきましても、初任給を上げますればそれに続くところの給与というものに中だるみが来るということは当無でございまして、まあこのような事態が起こるということは、勧告をされる際に当然予想されたことであるのじゃなかろうかというようにも考えられますし、このような考え方からいきますと、順を追って逐次改訂が実施されなければならないということになるのではなかろうか。そういたしますと逐年累進的なベース・アップをやらなければならないというようになるように考えられます。このような事情は人事院の方で、三十年度以降とってこられましたベース・アップは行なわないのだという前提と矛盾しておるように考えられますし、公務員に、先ほど申し上げましたように、毎年民間大手企業並みの昇給が確保されておるということを考慮いたします場合、毎年このような給与改訂を必要とするかどうか、いささか疑問に思っておるところでございます。  次は期末手当についてでございますが、昨年の勧告を例にとりますと、現行の期末手当及び勤勉手当の年間合計支給額二・八ヵ月分に対しまして、これに相当する三十三年度の民間特別給与が二・九一ヵ月になっておるから、今回〇・一ヵ月分増額するという御趣旨であったように記憶しておりますが、民間企業の特別給与というのは、御承知の通り景気の好不況に対応する調整機能を持っておるのでございまして、企業の業績の消長に即応して増減される性質があるわけでございます。この事情を考慮いたします場合、たまたまその年度の民間企業の特別給与の増額があったからといって、半ば恒久的に公務員の特別給与の改善を行なうということは当を得ていないのではないかというように考えるわけでございまして、むしろ民間企業の景気動向とか、経済の安定化状況を長期に見通した上で初めて改訂を行なうべきではないか、かように考えるわけでございます。  次は、公務員給与の決定の方法について若干触れてみますと、公務員給与の有力な決定要因は、これは法律にきまっておるわけでございまして、生計費民間賃金ということになっております。しかしながら、現行の公務員法制定の当時はともかくといたしまして、経済が安定成長下にございます現段階においては、生計費との比較方式というものは、単に最低者の生活保障を検討するという程度の消極的な意味しか持ち得ないのではないか、かように考えるわけでございます。人事院の方では生計費などは法に規定されておるためにやむを得ず検討しておるので、最終的には民間賃金を基準に勧告を作成しておられるように見受けられるわけでございますが、民間賃金公務員給与との比較という問題は、この両者の性格の本質的な相違とか、あるいは労務構成、労働時間、作業環境の差異、それから付帯的給与、たとえば実物給与とか福利施設とか退職手当とか、そういうようなものの較差などを総合的に判断した上で行なわるべきでございまして、両者相互の比較対象となる役職、たとえば公務員の方の本省の課長さんとそれから民間企業の課長さんと同列に置くのかどうかというような問題です。あるいは職種の選定の面からも比較技術上におきまして、いろいろと困難な問題が伴っておると考えるわけであります。それから公務員の場合は定年制がございません。また恩給制度はございます。そういうような実質的な労働条件におきましては、民間の場合よりも優位に立っておられるのではないかと判断されるわけでございます。以上の通り生計費とかあるいは民間賃金との比較方式がいろいろ問題を含んでおるといたしますれば、現状では、むしろ人事院の報告並びに勧告というのは、それが国会あるいは内閣に提出される前に、民間代表を含めた、たとえば審議会のような機関で、その内容を慎重に検討するという手続は当然必要ではなかろうかと考えておるわけでございます。  次は、公務員給与実態について若干触れさしていただきます。先ほど申し上げましたように、近年国家の行政機構は複雑拡大の傾向を示しておるようでございまして、人件費総額も相当巨額に上っておるというように考えられますし、その上公務員には、先ほども述べましように、恩給がございまして、しかもこれは逐年その総額が累増していくのみならず、退職一時金というのは、一般民間並みでございますし、恩給は年金化するということになりまして、民間企業の実情とは比較にならない好条件の改善が行なわれたことも見逃してはいけないのじゃないかというように考えられるわけでございます。それにもかかわらず、公務員は、身分上も給与上も国家に保障されております。民間企業のような好不況によるところの逼迫した合理化の要請というようなものもないという、民間企業の場合とは全く違った事情にあるという点などから、幾多の疑問が残らざるを得ないと判断しておるわけでございます。公務員給与が、このような実態の上に編成され、運営されております以上、いかに周到に整備されました給与改訂勧告でございましても、国民一般の納得性とその合理性を十分発揮することはできないのではないかと考えるわけでございます。  最後に、まとめ的なものとしまして、公務員給与のあり方について触れさしていただきます。公務員給与は、行政をつかさどる責任と義務に基づきまして、適正かつ公平に決定せらるべきでございます。民間の納税者の立場からいたしましても。簡潔で能率のよい行政管理機構と、それから良識のある有能な公務員の存在につきましては、むしろこれにふさわしい給与、待遇の改善を積極的に支持することはやぶさかではございません。しかし、それは国家予算のワクとか、あるいは財政の国民経済に占める比重を考慮の上、当然行なわなければならないわけでございまして、国家公務のサービス向上とか、あるいは冗費の節減、機構の簡素化、能率化に、なお一そうの努力が払われてこそ、初めてこれに伴う公務員給与の向上も、国民一般の納得と支持を得られるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  なお、民間賃金との比較につきましては、たとえ民間賃金が労使対等の二原則に立ちまして、団体交渉できめられたといたしましても、本来企業単位は生産コストに織り込まれるべきものでございますから、このことからしまして公務員給与の性格とは根本的に異なっているわけでございますから、単に民間賃金の振り合いできめられるといった方式はやめまして、公務員の国民経済に果たす役割にかんがみまして、何らか別個の観点から再検討をする必要があるのではないかと考えている次第でございます。  取りとめもございませんでしたけれども、以上で私の公述を終ります。(拍手)
  13. 中野文門

    委員長中野文門君) 以上で参考人方々の御意見の御開陳は終了いたしました。参考人方々に御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  14. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 藤木さんにちょっとお伺いいたします。いろいろ御研究になられているわけでありまするが、この賃金と物価との関係でありますが、賃金が幾ら上がっても、物価が高騰すれば差し引きそのままになってしまうのですから、何としても物価の安定ということは一番大事なことであります。そこで大多数の公務員の、給料引き上げにわれわれ賛成でありますが、一挙に引き上げた場合にそれが物価に対する影響ですね、購買力が増大していく、従って物価がはね上がってくる、そうすると、給与は上がっても、結局実質賃金は上がらぬじゃないか、そういう心配があるようにわれわれ考えるのですが、その点いかがですか。
  15. 藤本武

    参考人(藤本武君) お答えいたします。賃金が上がって、それが物価にすぐ反映するかどうかということは、私はないのじゃないかというふうに思っているわけであります。たとえば賃金を上げますと、企業の場合ですとその分だけ利潤が減るということになりますから、ですからその場合に、その企業が独占的な企業でございますと、価格を上げる、こういうようなことをやると思います。しかし、競争的な企業の場合には利潤がその分だけ減っていくということで処理されまして、別に物価には直接影響がない。ただ独占価格の場合ですと、その大資本家が価格を上げていく、そういうことは事実問題として起こっておりますけれども、経済学の上からいきますと、一般論的にそういうことは考えられない。それからもう一つは、国家公務員の場合には、それを公債でまかなうというような方式をとりますれば、これは物価の方へ影響して参りますが、しかし、国家公務員給与を上げてほかの支出をその分だけ下げれば、そうしましたら購買力という点ではプラス・マイナス・ゼロでございますから、別に影響はないと考えます。
  16. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 それでもう一つお尋ねいたしたいのですが、この一般の自由職業者との関係ですね、御承知の通り自由職業者は、大企業の労働者、国家公務員に比して、何らの福利施設も持っていないのです。厚生施設も持っていない。そうして恩給もつかない。これとの関係ですね、それはどうなんでしょうか。バランスがとれないのじゃないか、一方において、どんどん大企業その他の賃金が上がる。公務員賃金が上がる、ところが、一般自由職業者では好不況によって非常に影響してくる。これは一方において福利施設も厚生施設も持っていない、また御承知の通り退職金ももらえない、恩給もつかない、一方だけ上げるというと、一般自由職業者はそれに対する非常な反感といっちゃ語弊がありますけれども、これは不公平だという感じが起こるわけです。現に私は起こっていると思う。それらについては、あなたはどうお考えになりますか。
  17. 藤本武

    参考人(藤本武君) お答えいたします。御質問の趣旨はこういうことじゃないかと思いますが、たとえば山村なんかで非常に貧乏な農家がある、そういう人たちが非常に苦しい生活をしておるのに、国家の公務員の方だけどんどん給与が上がっていったりするのはまずいじゃないか、こういうような御趣旨だと思います。
  18. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 そうです、その通りです。
  19. 藤本武

    参考人(藤本武君) 確かに私そういう形は、現実としますと実はまずいと思っております。それは私は国家政策として、そういう貧乏な人をもっと積極的に救済をしたり、高めていくという政策を、一方に必ず実施していただきたい。これは私の個人的な見解です。そういうようなことがぜひ国会でも御審議いただきたい。今のままの状態では、やっぱりそういう人たちの不満というものが若干あり得ると私は存じておりますので、その方はそれとして御審議していただきたいと思うわけでございます。
  20. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 それと同時に、一般小売業者とかいろいろありますね。世の中にいわゆる中小企業者というより、むしろ下の層があるわけですね。これはずいぶん苦しんでおるわけですね。これらに対する対策をそのままにしておいて、片一方だけ上げるということになると、それらの人の不平が非常に起こってくるので、国家的に見て考えなくちゃならぬ、これは私は当然なことだろうと思うのですね。そのバランス、それらの点については大幅に見れば、対策も十分講じた上で、片一方の賃金の問題も論じなくちゃならぬ、片一方だけ論じておいて片一方論じないということは、非常に不公平になってくる。それらの人の不平がいっか爆発しやしないか、こう考えられるわけですが、そういう点はどうでしょう。
  21. 藤本武

    参考人(藤本武君) 確かにそういう問題は重要な問題でございまして、その政策を確立していただきたいと私は思いますが、ただ現実の問題といたしますと、先ほども私が労働市場との関係というようなことを申し上げたんですが、国家公務員には優秀な人がもうあまり入らなくなってきているという現実でございます。このままにしておきますと、二級クラス以下の人が国家公務員に入ってきて、一級クラスはほとんど全部が大企業へ行ってしまう、こういう事態に現在私は直面しておると思います。ですから、一方でそういう貧乏な方が確かにあるということは、私は否定する意味じゃございませんですが、そういうものがあるので、それはそれとして早急に私は社会保障の拡充とか、合理的な農業政策の実施だとか、中小企業対策といったものを、ぜひ一日も早く確立していただきたいと思うのですけれども、また一方そういう国家の職員給与が総体的に低いために、将来の国家の運営というものが非常に危惧される状態なんですね、どんどん始まっておるということであります。これは一年先に急に現われてくるということはございませんですけれども、私の知っております試験場関係の方でも、優秀なのは民間企業へ途中からどんどん抜けていく。事実上電気試験所ああいったところは、民間の大企業の優秀な人を養成しておる何か機関みたいな面もあるんだというようなことを聞いておるんですが、ですから先ほど大学卒業生の方につきましては、ちょっと申し上げましたので繰り返しませんが、そういうような事態が一方では起こっておりますので、やっぱり何か手を打たなければまずいのじゃないかというように私も考えます。
  22. 横川正市

    ○横川正市君 石橋さんにお伺いしたいと思うのでありますが、大体公務員給与関係をいたしまして、消費物価と納税者の立場という点から第一点として伺いたいわけでありますが、戦後の日本の経済の拡充、それから生産機構の安定化という状態から、設備も近代化をはかって、ヨーロッパ市場に対しても立ちおくれのないだけの立場というものはとれつつあるわけです。これに伴って私は消費物価というものが、上昇して参りました年次的な経過を見ますと、昭和二十年のあの混乱期から、二上七、八年ごろまでの間にベースと物価とのイタチごっこがずっと続いて、それが顕著なものがある。当面大体生産の何といいますか、近代化をはかって経済の安定化の中で、逐次この問題についてそれほど急激な影響力を与えない限り、現状は維持するのではないだろうか。その現状維持をするという建前から見た場合、公務員の現在の賃金ベースというものを検討されて、これはいささか要求が出ておりますが、その要求がすぐ消費物価に影響するという過去のイタチごっこと同じ状態を繰り返すものかどうか。この点は私は幾らか違ってきて、かえって生産の設備化に伴って、消費の伴わない状態というものが、現在でも、国の経済に出てきているのではないだろうか。消費の伴わない状態というのは、低所得階層が大体一千万といわれているのですが、そういうような人たちの非常に低い生活状態、これに対しては先ほど藤井さんからおっしゃったように、私は施策が必要だと思う。同時に零細企業とか、あるいは小企業なんかの体質改善の問題、これもまた政策的に必要になってくる。そうしてその政策的に必要なことは、経済に刺激を必要とするという程度で、決して悪い政策ではない、救済をするということそれ自体は。こういうふうに考えられているわけでありますが、そういう点と、あなたの先ほど言いましたように、やはり一面イタチごっこをするというような考え方との間に時期的にだいぶ安定してきているのではないかという問題、その点どのようにお考えになるか。  それから第二の問題は、納税者の立場ということ、これを私は行政機構の問題とか、それからの可能な限り有能な人材をかかえていきたい、こういうことに私は直結するのではないかというように思うのであります。この行政機構と、可能な限りの人材ということになれば、当面の公務員賃金というものの一体妥当かどうかという点が出て参るのでありまして、その納税者という立場からは、私は最近はこの点が喫緊の要務になってきているのであって、ベースを上げてもらつちゃ困るのだということは、何か政治的に、政策的にこう言われていることであって、実質的にはあなたたちの立場に立って見ても、今の行政機構というものに対しての意見を持ちあるいはまた人材の問題についても意見を持たれる、こういう点が先行するのではないかというふうに私は考えるのですが、この点は一体どうなのか、この二点についてお伺いいたしたい。
  23. 石橋大

    参考人(石橋大君) お答えいたします。第一点のイタチごっこの問題でございますが、イタチごっこと私が申し上げました趣旨は、イタチごっこをするしないという問題でございませんで、これは私ども民間企業におります者は、いろいろと会合で寄りまして、やはり公務員の、まあ御存じのように公務員給与が上がったということになりますと、何かそれが、その印象というのはやはり公務員給与も上がってきたのだから、民間企業の方の給与も上がらなければならないというような印象を与える作用をする。これは心理的にございます。しかし今おっしゃったようなイタチごっこと、そういうような消費物価その他の関係からのイタチごっこというようなことを申し上げているのじゃございませんで、公務員給与民間企業にはね返ってくるから、なるべく押えていただきたいという趣旨でなくて、有能な公務員の方には相応の給与を払っていいのじゃないか。ただ、技術的な問題点として申し上げたように、民間企業のいろいろの役職とか、職種と比較される場合には、もう少し慎重に検討していただいた方がいいのではないかということを申し上げましたので、ただその納税者の立場から考えても、非常に結果的には税負担が大きくなるから、国民一般が納得するようなところで、ということで、なるたけ行政機構なんかも簡素にしていただきたい。そして能率も上がるようにしていただきたい。民間企業の場合は、結局はそれぞれの企業以外の方から助けてもらうわけにいきませんので、結局民間企業に働いております使用者も労働者も、結局はその企業の浮沈にかかわっておりますので、ほかに助けてもらうすべはないわけでございますので、従ってどうしても民間企業の場合でも待遇を改善するためには、生産性の向上ということで、みずからまかなっていかなきゃならぬ、民間企業での、そういうような考え方をとらざるを得ないというのを、それに準じたように国家の行政機構においても考えていただきたい、という趣旨でございます。
  24. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 時間がございませんので藤本先生に一点だけお伺いしますが、先ほどの先生から御指摘がございましたが、二十三年に公務員の基本権を剥奪ないしは制約して、その代償として人事院ができたわけですが、その公務員の利益を守る立場の人事院が、二十三年から昨年の勧告まで、十二年間経過しておりますけれども、この間に勧告したのはわずか六回です。しかも、十九年以降については一回のベース・アップも勧告していない。しかも十二年間に六回勧告したと申し上げましたけれども、ときの政府によってこれが完全に実施されたのは、御承知のように六千三百七円ベースだけであって、他についてはあるいは無視されあるいは削減されておる、これが実情であろうと思う。さらに加えて今回の勧告の場合は、昨年三月の民間実態調査して、それから今回この勧告案が実施されたとしても、もう一年以上経過しておる。このことは毎年繰り返されておる。しかも、この三月というのは民間給与で年間を通じて一番低いときの実態であろうと思う。民間給与で一番低い三月をとらえて調査しておる、こういうようなこと、さらにはまた、生計費の面についても、日本の人事院勧告はまことに、生活できない独身の生計費を基準にしておる。で、お伺いしたいのは、外国の場合は夫婦の生計費を基準にしておるのは相当あるのじゃないか、こういうような点についても、含めて、こういうような幾つかの原因が基本的に公務員給与が非常に下回っておる、そういうことの根本的な原因なのではなかろうかと、こういうふうに考えられるのです。こういう点について一つお教えいただきたいと思います。
  25. 藤本武

    参考人(藤本武君) お答えいたします。例をイギリスにとりますと、イギリスでは一般の労働者の賃金をきめます場合に、大体二十一才以上という成人男子を考えまして、その人たち賃金をきめるのに、おおむね夫婦と子供一人くらいな人の最低生活費というものを頭の中へ入れてきめておるようでございます。オーストラリアは、これははっきり法律でそういうようにきまっておりますのですが、そのことは家族手当最初の一人目には出さないというところでもおわかりになると思うのですが、それで一般の労働者は、そういうような形で最低賃金はきまっておりますが、公務員の場合には、大体それより高いのが普通であります。ですから公務員給与をきめるときに、具体的にどういう生活費をもとにしておるかということは、私ははっきり知りませんですが、イギリスとしますと、生活費を、マーケット・バスケットを組みまして議論をするということは少ない。一般にそういうルールによって問題を考えると、こういうふうに御了解いただきたいんですが、ですからむろん公務員の場合でも、二十一才以上の年令に当たる人の給与につきましては、一般賃金労働者と同じ考えで、それに労働の質と量というものを考えましてプラスが何らかあると、こういうような形に成り立っておると思います。ですから、ほかの国でもまあフランスの場合もございますが、フランスの場合をちょっとつけ加えますと、フランスでは法律上の最低賃金というのは、全産業に一率に定められておりますが、これは国家公務員につきましては、若干職務というものを考えまして、職務が少し格づけが上にされるという傾向があるように存じております。以上お答え申し上げます。
  26. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まず三井金属の労働部事務長さんに若干一つお尋ねしたいと思いますが、本日はせっかく参考人として来ていただきましたことで、ずいぶんお伺いすることがたくさんあるのですが、時間の関係で三つだけお尋ねしたいと思うのですが、最初にいろいろとお話しになって、先ほど横川委員に対するお答えの中にも繰り返えされたのですが、国家行政事務、これは地方の場合も一緒に含めて行政事務については能率を上げるための、これは民間で言えば生産増強といいますか、そういう形のものが必要でなかろうか、こういう御意見だった。そこで、われわれも国家公務員あるいは地方公務員実態を十分に調べておるのですが、一般民間の事業事務と、それから行政事務とは本質的に違うことがあると思うのです。と申しますのは、行政事務はすべてを法律によってやられるものですから、一つのほんのわずかな間違いがあっても、法律上の責任というものがあるのです。またそれによって刑罰を科せられるというものもある。民間の方では、間違いがあれば、金銭上の損害とか、そういうものがあるといたしましても、そういう刑罰上のものまでというのは不正をやらない限りないと思う。そういうところから、どうしても事務については入念にやらなければならぬという潜在的なものがあると思うのです。従って、石橋さんが民間の代表として言われることは十分わかるのですが、そういう事態を考えると、簡単に民間の産業のような生産能率を考えて事務の合理化ということだけでは判断できないものがあると思うのですが、その点について民間との行政事務との相違について、石橋さんがどういうふうにいろいろお調べになったかという点を最初にお聞きしたい。  それから民間ではいろいろ首切りといいますか、整理をやられる。公務員には定年制がないと、こういう話ですが、民間ではなるほど組合とそれから経営者との間に団体交渉で、協約でそういうものがあることも知っておりますが、公務員の場合も、法律ではまだ今できておりませんが、しかし、現実の問題としては定年制がないけれども、ある年令が来ればこれは、強制です。ほとんど強制を伴うようなやめ方をされておるというのが実例でございますので、従って、法律はないけれども公務員はもう幾才までも黙っても、いつまでもいけるというようにお考えになっているのかどうか、この点も一つお聞かせ願いたいと思います。  それから期末手当の問題は、一般民間の産業では業績手当も、一応そのときの業績が上がった場合には多く出し、またないときには少ないというお話でございますが、私は過去、戦後ずっとと、中小企業まではよう調べませんけれども、おもだった銘柄の産業を調べますると、戦後、前年度より下った期末手当を受け取ったということはほとんど聞かない。従って、ある一つの相場というものが異常にずっと上がっておると思うのです。なお、国家公務員の場合でも、民間のこの期末手当を見ますると、人事院勧告は、私はきょうは参考人方々でございますので、人事院との話は申しませんが、人事院期末手当民間調査というものは、広範な中小企業まで含めていますから、これはもう千人以上の大企業から比較すると、国家公務員はもうほとんど問題にならゐ較差がある。これは数字をもって示してもよろしゅうございますが、石橋さん十分御存じと思いますのでこの点は触れません。従って、これはまあ業績手当と申しますが、そういうものでありましょうけれども、日本の今のいわゆるこの労働者の給与体系から見ると、実際の問題として、期末手当、これについてはもう固定的な給与として考えておるのじゃないかと思うのです。石橋さんの言われるように。しからば会社の方では利益がなければ現金がなければ一銭も出さないというわけにはいかないと思います。日本の生活現状から申しますと。従って、その点は若干私と意見が迷うので、国家公務員には期末手当の問題を別に考えるべきだったという意見でございますが、しからばどういう基礎で考えたらいいかということをお聞かせ願いたいと思います。そのほかいろいろございますが、時間の関係でその三点だけ。
  27. 石橋大

    参考人(石橋大君) お答えいたします。第一点の、国家公務員のやっておられるお仕事というものと、民間企業に働いておりますものの仕事の、まあ責任が重いか軽いかということでございますね。それぞれの組織の中における。民間企業の場合、まあ公務員の場合は、刑罰を科せられる場合もあるという御意見でございましたけれども、まあ私が考えますところは、民間企業におきましても、やはり就業規則なんかありまして、たとえば刑法に触れるような犯罪をやりますれば、これはもう何も民間企業の内部の問題ではございませんけれども仕事をやる上で、いろいろ会社の命令、指示というものに違反したようなことをやっておりますれば、それに応じた企業の中での一つの附則というものは厳然としてございますので、しかも、国家の場合もそうでございますが、企業の場合も同じようにやはり十分責任と義務というものを感じて働いてもらわなければ困りますので、その点のまあ軽重と申しますか、国家の場合は非常に立場が大きくなりますので、高いようにも感じますけれども、私個人といたしましては、私企業に働く昔も国家の行政機構の中で公務員として働かれる方も自分の仕事に対する責任感というものの度合い、あるいは、その責任を追及されるという度合いは同じでなければならないのじゃないか、かように考えます。  それから第二点の、この期末手当民間企業のボーナスというものとの関連でございますが、なるほど、終戦後から統計的に見ますと、民間企業の賞与というものも、傾向といたしましては上がっております。これはまあ事実でございます。それじゃ終戦後からその通り業績がただ伸びっぱなしに伸びたのかということになるのかということになると、必ずしも、そうではないと私も考えます。で、やはり、まあわかりやすく申しますと、世間一般水準といいますか、相場といいますか、それがございますので、たとえ一つの会社の中で、まあ最近よく言われます年間リンク制度というような一定の方式がございまして、利益にリンクしてボーナスが出るというようなことがございましても、その一定方式のボーナスが算定されます、益金との関連で算定されますその算定の基準自体を引き上げるというか、まあ基準の修正でございますね。一般の相場が上がってくれば、やはりその中で、支払能力がもちろんなければだめでございますけれども、一応生産性も上がってきたという中で、徐々に、やはり自分のところと、まあ卑近な例でございますが、競争相手になっている会社との間において、自然関連性をもって上がっていくという傾向は、これは必ずあると思いますけれども、それはただ短期間の間にそういうふうになるということでございませんで、長期にわたってながめると、次第に賃金でもボーナスでも上がっているというわけでございまして、ある一定の短い期間の間においては、その中で業績によって上がり下がりしておるということじゃないかと思います。で、何といたしましても、ボーナスを、公務員の場合と考えますと、企業の場合のように、業績というものが出て参らないのじゃないかと思いますので、民間の場合のようなボーナス・システムということはできないと思いますけれども民間企業の場合は、要するに、ボーナス・システムというものがなければ、まず、賃金のベースというものが、なかなかこれは、労務管理上、一たんきめたものを下げるということは、それはよくせきな場合でなければやっていけないことでございますし、一応賃金というものはなかなか下げられない。そのためには、相当景気の好不況に左右されるという、され方の大きい企業ほど、やはりボーナスというものにたよらざるを得ないということになるわけでございます。そういう意味ではやはり民間企業の場合は、たとえば十年間をとったら、自然に各産業のボーナスが上がってきておるという現実はございましても、その中で、やはり上下しながら自然に上っているという姿じゃないか、私はそういうふうに見ております。  これでお答えを終わりますが、先ほどの御質問に対してちょっと申し忘れておりましたが、公務員給与、これはもう有能な方に、それにふさわしい処遇をされるということに対しては、いささかも反対じゃございませんけれども、たとえば月々払われる給与というものだけで見ていただかないで、ただいまお話の出ました期末手当とか、あるいは恩給関係でございます。特に恩給関係では、われわれが見ますところでは、一時金については、やはり大下並みに支給されているんじゃないか、その上に、一般企業にはない恩給というものが相当ついておるというように認識しておるわけでございます。従って、そういうようなものもひっくるめて、民間企業比較なさる場合はやっていただきたいということを考えておるわけであります。
  28. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 次に、明治大学の藤本先生にちょっとお伺いしたいのですが、その前に、石橋さん、ちょっと私の最初の第一問についてはお答えが違っておると思うのです。私の言うのは、本人責任の度合いという感じ方を言っておるのじゃない。たとえて言いますと、選挙事務なんかほんの一字漏っただけでも大きい問題を起こす、そうすると、そういうことであるから、普通の会社であれば間違ったら訂正すればいいんじゃないか、こういうことになるから、そうそれに対して十分の人員をかけなくても、一度書いて、一度調べておけば、それでもいいが、選挙名簿なんかを作成する場合には、多数の人が何回も何回も調べなければならない。単に選挙事務だけでなく、税務関係、あるいは行政事務にそういうものが多い。従って、民間から見られると、あんな事務に、罫紙一枚にそうたくさん要るのかという感じを起こされますけれども、そういうのではないということを私は言ったのであって、本人責任の度合いは、会社におろうと、役所におろうと同じでありますから、そういうことでありますから十分一つお考えを順いたい。
  29. 石橋大

    参考人(石橋大君) ちょっとお答えいたします。
  30. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もうそれはいいんです。それさえおわかり願ったらいいんです。
  31. 石橋大

    参考人(石橋大君) 会社の中でも個々の仕事についても考えますと、今おっしゃったような、あとで訂正がきかないという仕事もございますので、その点は御了解願いたいと思います。
  32. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 藤本先生に一つ。これは実はちょっとこまかい問題になると思いますが、これは人事院当局と実は内閣委員会給与の問題について相当論争した点の一つなんです。実は今度の国家公務員給与勧告について人事院は、独身成年男子の食糧費、マーケット・バスケット式の表を実は出してきているわけです。その出してきた資料の元を言いますと、日本食品標準成分表というものと、それからもう一つは食品栄養価要覧、それから補足的に食糧数値要覧、こういうものから、いろいろ出して、先ほど森口さんですか、藤井さんが御説明になった成年男子の一ヵ月の生計費を出しておる。食料費として三千六百六十円というものを出してきているのですが、私はそれをいろいろと調べますと、これは私、はかりをもってみずから調べたのですが、人事院当局は、この成年男子で二千五百三十カロリー要るということに一応出しておる。このカロリー数はいいといたしまして、その内容を見ますと、最後に人事院も言ったのですが、ネット・カロリーである。たとえば一つの例をとりますと、玉ねぎが総重量で二十五グラム取るべきで、これは一つの例でございます、二十五グラム。それが百グラム当たりのたまねぎの市価が六円五銭と出ておる。それが二十五グラムであるから一円五十一銭というものを出してきておる。ところがこれをいろいろ調べますと、玉ねぎというものは、あれはそのまま全部ネット・カロリーにならない。食べるときには皮をむいてしまう。そうすると、ロスがある。そういうものが全部この価格の中に含められて、これがずっと積算されてしまっておる。それが総額、食糧費の中で、全部で千二百三十七円になっておるのですが、これを積算してくると、捨ててしまうものもこの価格に入っているから、従って、実際にこの表から出てきたところの食料費というものの何%とかいう金銭上のロスは見ておらぬのじゃないか、これが二人家族なり三人家族なりそういうものが積算されると大きい開きが出てきておるのだから、いわゆる独身男子の一ヵ月の食糧費三千六百六十円というものは何割か下回っておる、それが積算された七千九百三十円という一ヵ月の生計費そのものも低いのだ、こういう点を論争したのです。そういう意味においてこれは質問するということで、先生も検討されてきておらないのですけれども、私の言ったことがそのままであれば正しいのであるかどうか、先生の御研究の上のやつを一つお答え願いたい。
  33. 藤本武

    参考人(藤本武君) じゃ、お答えいたします。私案は、その人事院の計算のこまかい内容につきましては知りませんのですが、今お聞きしましたのがその通りだといたしますと、非常におかしいということであります。普通マーケット・バスケットで飲食物なんかを算定いたします場合には、可食率というものを用います。これはこれまでの栄養学者がいろいろ実際を調べまして定めたものでございまして、玉ねぎの場合には何十%の可食率とか、お米やパンなんかこれはほとんど一〇〇%ほど、中には捨てる人があるかもしれませんが、これは個人的な事情で食い残して捨てるというので、これはまあ度外視しましても、お魚なんかになりますと、これは骨が非常にたくさんございまして、ひどいのになりますと、貝類なんかですと、二、三〇%しか栄養にならないというものもございます。玉ねぎが何%かということは知りませんが、そういう点は先生のおっしゃるのが正しいのでございまして、もし人事院が可食率を考慮しないとしますれば、これはマーケット・バスケットの作成方法について正確なことを知らないか、ないしはどうもあまり高くなるので、少しこの辺ネットでいこうということでなすったのか、私そこのところはわかりませんですが、何しろ間違いであることは事実であると思います。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 石橋さんにお伺いをいたしたいのでありますが、先ほどのお話の中に、三十年に人事院がベース・アップはやらないというようなことを言っておるにかかわらず、何か人事院がベース・アップをやっておられるようなふうにとったのでありますが、実は私これを聞きましてびっくりしたのですけれども人事院がベース・アップはやらないということを言明したことがあるのかどうか、調査の結果として、ベース・アップはやらない形に毎年なっているわけでありますけれども、ベース・アップはやらないということを言明したというようなことは私はないというふうに思っているわけですが、そういう言明があったのかどうか、非常に実は関心を持って聞いたのです。それからベース・アップの点についてでありますが、人事院は御承知のように五十人以上の企業、日本全部の五十人以上の企業三万数千の中からランダム式に五千九百というものを選びまして、毎年調査をやるわけです。ですから日本の五十人以上の企業の全体をつかまえているというふうに人事院は言っているわけです。その日本全体のことから言いますと、三十三年度でございますね、一昨年になりますが、これは一番新しい資料だったわけです。これは民間の五百人以上の企業の場合は四二・六%ほど、ですから約半分近い企業はベース・アップをやっているわけですね。それからその前の年の三十二年、これは四六%ほど五百人以上の企業はベース・アップをやっているわけです。ですから人事院が言っております五十人以上の企業をとりますと、三十三年は二二%ほどべース・アップをやっているわけです。ですから民間の場合におきましては五十人以上の企業をとりますと、半数近いところがべース・アップをやっている、こういうふうに思うわけです。ですから、何か民間もベース・アップをやっていないような感じを受けましたし、また、人事院がベース・アップを行なわないというような言明をやったようにとれたものですから、この点にちょっと私関心を持ったわけです。  それからもう一つ、実は私も昨年の五月まで農林省に勤めておったのです。昭和十五年に入りまして約二十年近い間農林省本省に勤めておったわけでありますが、その観点から申し上げまして、先ほどお述べになりました諸点について、若干いろいろな点について、ちょっと御理解の不行き届きな点があるのじゃないか、こういうふうに思うのであります。その一つは、恩給というのが出まして、また定年制という問題が出まして、また退職金というものが出まして、今官庁の場合におきましては、国家公務員の場合は定年制はありません。しかし、実質上大体五十五でやめるように勧告を受けるわけです。そしてその前後に大体やめるわけです。大学を出た、法科を出た人たちは、大体これは四十七、八でやめさせられます。次官がちょうど四十九くらいです。その前後の人たちはやめるということになるわけです。ですから、この定年制の問題は、実質上はそういう形で行なわれておるのだということを御理解をいただきたい。それから恩給は、恩給という言葉ですが、戦争前の恩給はおっしゃる通り意味があったと思いますが、今日の恩給は、これはお話しにならない状態であります。詳細申し上げてもよろしゅうございますけれども、これはとてもお話しにならないし、その恩給は御承知の通り今度は年金制度に変わりまして、負担率も二・二倍に上がって、保険システムでやっておるわけです。それから退職年金が出ましたが、これも民間の場合とお話しにならないと私は思っておるのです。私二十年ほど勤めまして昨年の五月やめましたが、三十五万円、民間に話しますと、そんなばかな話はない、こういうのですが、三十五万足らず。ですから、退職金とかそれから恩給とかあるいは定年制という問題等の御理解が十分行き届いていないのじゃないかという感じを受けます。  それから給与の問題でありますが、これは私今の公務員の能率とか、あるいは公務員のいろいろな執務状態という点についていろいろなお考えがあろうと思ったのですが、いろいろなものがありますが、私は今の公務員は、これは給与は第一低いと思っております。これも私の友人を、これは私ども同じ年でありますが、私案は大学を出た年に農林省に入って、私紹介をして読売新聞にこの人を入れたのです。今も読売の記者でありまするが、私は本俸が三万六千円でありました。同じ年なんですけれども、ちょっと二倍なんです。どうしても信用しないのです。本俸二万六千円かと、そんなはずはないのじゃないか、大体役所というのは二倍くらい取るのじゃないかというのですけれども、そうじゃないのです。  それから非常に給与が低いために、先ほども藤本先生おっしゃったのでありますが、公務員の試験を通って、その資格を持って民間に就職される方々が一ぱい出てきておるわけですね。受けるけれども入らない、公務員になりたがらない、こういう現象です。これは今の公務員全体の空気です。御承知かと思いますが、今の公務員平均年令は三十五・七才なんです。非常に高い。それは昭和二十三年以来大学卒を除いて採用していないのです。だから平均年令がずっと上がっておる。ですから昭和二十三年に高農を出たという人たちが一番最後、この人たちはいつまでたっても下が出てこない、万年一等兵というのです。いつも万年一等兵で、この人たちが三十三くらいになっておりますが、いつもガリ版を刷ったり、そろばんをはじくとか、そういう仕事をやっておる、下がありませんから。そういうように平均年令が上がって、仕事がなかなか思うような仕事がやらせられないというような非常にいびつな形、あるいは政治活動というものが禁止される、あるいは厳重な服務規律が課せられておる、あるいは労働運動もほとんど全面的に禁止されておるというような職場の実情、そういう中で非常に私はいつもへこんだゴムまりみたいにいつもへこまされておる。私役人をやめまして、政治活動が自由になった、あるいはのびのび何でも言えるのだ、ストライキも思うようになったのだというような非常な解放感を味わうのです。公務員というのはそういう意味でいつもへこまされたような、月給は低いわ、服務は厳重にきびしく締めつけられておるわ、平均年令は上がって、万年一等兵の仕事はあるわ、さらに誘惑がある、大へんな誘惑があるわけです。そういう中で生活をしているのですから、事務能率なんかについては、いろいろな意味公務員が非常に不満を持っておる、こういう実情なのじゃないかと思っておりますが、そこでさしあたって、この給与の問題が今問題になっておりますが、やっぱり上げていく、こういう方法をとらなければならぬのじゃないかと思うのです。その辺について一つ御理解の不行き届きな点があるように思いましたので、意見をまじえてお伺いいたします。
  35. 石橋大

    参考人(石橋大君) お答えいたします。まず最初に御質問いただきました人事院の方はベース・アップを行なわないということを言明したのかというような御趣旨でございましたが、これは決してそうじゃございません。三十年以降の報告書を読ましていただきますと、その中のまあ考え方と申しますか、それが民間企業の方がだんだんベース・アップ方式というものから定期昇給方式に移行してきておるようだから、公務員の方にもその定期昇給というようなものを考えなければいかぬのじゃないかというような御趣旨が含まれておるというようにわれわれは読んでおったということでございます。そういうように読んでおりました関係で、中だるみの問題もございますけれども、これはまあベース・アップじゃないのだという御解釈もあるかと思いますけれども、われわれ民間企業では、定期昇給以外、従ってまあこまかく申しますと、賃金を支払うところの形態というものに変更が来るという場合は、すべてベース・アップだという見解をとっておりますので、そういう見解から、ここで中だるみを是正する問題もベース・アップだという解釈に立っておるわけでございます。  それから次の公務員に定年制がないという問題でございますが、これは法律でないという建前で、われわれはそういうようなことを唯一の事実だということで考えておるわけでございますが、もし先ほどおっしゃったように、事実上、法律上は定年制はないけれども、事実上は退職を勧告されてやめていくのだということでありますれば、その点は訂正いたします。  それから恩給の問題でございますが、去年でございましたか、一昨年でございましたか、改正されたわけでございますけれども、なるほど公務員の方の恩給というものも、これは昔と比べれば十分でないかと思いますけれども、同じような事情は民間企業にもございまして、戦前のサラリーマンならサラリーマンというものの退職後の保障というものは、とうてい比較にならぬようになっております。その点においては同じような悩みがあるのじゃないかと考えるわけでございます。それともう一つは、先ほど藤木先生がおっしゃいましたように、民間企業と申しましても、戦前だと、大体大手企業というものは給料にしましても、ボーナスにしましても、大体相場というものがございまして、大体ならされておったわけでございますが、現在はわれわれ民間企業のいろいろな会合でも問題になりますのですが、賃金較差といいますか、業種により、あるいは大手とか、中小の関係で非常に較差が拡大しておりまして、実は問題にしているわけでございますが、そういうふうな関係で、大手の中でも日の当たる産業、当なない産業、それから非常にオートメーション化された産業、そうでなしに、依然として、極端に言いますと、原始産業方式をとっているところ、非常に開きがございまして、たとえば民間産業の中で大体規模は同じだ、従って、Aという会社の部長とBの会社の部長は同じであっていいということで見比べてみましても、相当違うわけでございますね。そういふうなわけで、公務員方々民間企業のある企業比較されますと、相当違っていると思います。民間企業の方が相当それぞれの職階別に比べますと、民間企業の方がいいというのも出て参りますし、そうでないものも出て参ると思いますが、そういうような意味で、技術的問題点として、民間企業との比校が非常にむずかしいということを申し上げたわけでございます。大体さようなことで…。
  36. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 森口藤井参考人並びに石橋参考人に一、二点伺いたいと思います。簡単にお答えいただきたい。まず森口藤井参考人ですが、あなた方の御家庭並びに同僚を含んで家計簿つけていらっしゃいますか、どうですか。
  37. 森口幸生

    参考人森口幸生君) お答えいたします。人によってでございますが、私自身は家計簿というほどのものではございませんけれども、領収書その他の類、そういうものについては一応記録にとどめてございます。それから私どもの周囲でこまかく家計簿をつけておるものもございますけれども、中にはつけ出してあまりにも低いのでいやになったというような形で投げ出してしまうというような実例もあるのでございます。
  38. 藤井務

    参考人藤井務君) 大体同じようなお答えになると思いますが、やはり家計簿は一応家内は相当こまかくつけております。しかしながら、今のような格好でつじつまが合わないというようなことで、途中で放棄するというようなことが月半ばでよく見受けられるような状況でございます。友人も聞いてみますと、家計簿をつけておるという割合というのは非常に少なくなっておる。むしろ計画的な生活ができないような状態に陥っておる、このような状態実態であるかと思います。
  39. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 引き続いて公述していただきますが、森口参考人並びに藤井参考人の個人の御家庭で、簡明率直に申して現在のサラリーに、およそ全額でどのくらいプラスしたらまあまあ何とかやっていけるという数字を持っていらっしゃいますか。
  40. 森口幸生

    参考人森口幸生君) こまかい数字を申してもよろしいのでございますけれども、私の家計で三千円から四千円くらい不足いたしております。それについては期末手当にもらいました分のうちから大体補てんする分の貯蓄分と、あと、かけ買い払い、それから旅費とかあるいは超勤などでまかなっておる、こういうふうな実態でございますので、少なくとも三千円はなければ月々の暮らしがやっていけないというのが私の実際の考え方でございます。
  41. 藤井務

    参考人藤井務君) 率直に申し上げまして私の家内はミシンをやっております。内職なんですが、大体五千円ないし六千円の収入がございます。これでようやくとんとんというような実態でございます。
  42. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 続いて伺いますが、あなた方は公務員の立場から見た場合に、人事院は信頼できるというような、頼んまっせというような気持でいらっしゃいますか、それとも人事院は全くたよりにならぬというような、そういう不信感でおられるか、率直なところを簡明に公述願いたい。
  43. 森口幸生

    参考人森口幸生君) お答えいたします。私どもも、初め公務員からストライキ権を取りまして、そのかわり公務員生活を保障するのだという形で人事院が置かれましたときには、率直に申し上げまして人事院は何か私ども生活を保障するのではないかというようなことを、大多数の公務員が抱いておったわけでございますけれども、特にここ数年来、特に昨年の勧告などを見ますと、もはやわれわれとしては実際よりも低い生活実態を、われわれ公務員に押しつけていくと、何か人事院政府のつい立てになっておるような感じがいたしまして、私どもとして、現在大多数の公務員人事院に対して信頼することができないという感じを抱いております。その証拠に、現在全国で各地にそのような行動が起こってきていることは、その具体的な立証であると私は思います。
  44. 藤井務

    参考人藤井務君) 申し上げます。大体同様のお答えになると思いますが、まあ二十九年以降、全然ベース・アップが行なわれていない、私たちは結果として人事院が現在信頼できないというようなことになったわけでありまして、もちろん過程におきましては、再三にわたって人事院に対して勧告をしてもらいたい、そのような要請を何回か繰り返しました。昨年の勧告にあたりましても、そのような行動が昨年の夏まで持たれたわけでございますけれども勧告が出された後それを分析するにあたって、あまりにも信頼できない数値が多い。そのような過程から、もはや人事院をたよりにしたのでは、われわれの賃金は上がらないのではないか、そのような結論に到達しておる、このような状況でございます。
  45. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 引き続いて伺いますが、具体的に自衛官、それからわれわれ国会議員を含んでの特別職の給与ですね、一般職の公務員の両参考人から、どのようにながめておられるか、参考に承っておきたいと思う。
  46. 森口幸生

    参考人森口幸生君) 私ども地方公務員でございますので、自衛官については具体的には聞いておりませんけれども、ただ退職年金等に際しても、自衛官についてのみに年金の掛金に相当する分を引き上げたいというような話を聞いておるわけでございます。それからさらに議員報酬の点でございますが、一般公務員が昨年給与改訂されたということを理由に、五千円ないし一万円の、地方議会においても議員歳費の引き上げが行なわれております。私どもの昨年の引き上げ最高でわずかに千円でございまして、最低が百円全然上がらない人もございまして、それに比べて、私どもは決して上げるのがいけないということではございませんので、せめてその程度までいかないにしても、われわれの給与についてももっと大幅に引き上げていただきたい、そういう感じがするのでございます。
  47. 藤井務

    参考人藤井務君) 自衛官につきまして昨年共済年金の改正にあたりまして、私どもも何度か給与課長と交渉する中において、自衛官においては一号アップという方法で、実質的に掛金の値上分が埋められた、このような群雲をキャッチしたわけでございます。実質的に公務員はそのような過程におきましても、先ほど鶴園委員がおっしゃられましたように二・二倍の掛金率を、現在われわれの承認なしにすでに強行差っ引きされておる、このような実態が事実でございます。従って自衛官等の給与につきましては、全体の軍事費の占める割合、さらに定員の増加等につきまして、私たちとしてはやはり国家予算全体の中でその占める位置、そうしたものについてきわめて疑問に思っておるわけでございます。国会議員各位の歳費値上げ等につきましては、先ほど森口参考人から言われましたように、われわれのいわゆるベース・アップなるものは、最低百五十円から最高七千円というような相当較差のあるものが、いわゆるベースとして千円値上げというような格好で出されますが、そういうふうな状態に比べまして、議員諸公の値上げが最低一万五千円ないし二万円という状態につきましても、率直に私たちは疑問を持っております。しかしながら、そういうふうな歳費によって十分御活躍をいただくということについては、何ら異議はないわけでございますけれども、同時に特別公務員でありましても、一般公務員でありましても、やはり全体に俸仕するという観点では変わりないわけでございますので、そういう点では特に御配慮をいただきたい、かように考えるわけでございます。
  48. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、石橋参考人に公述していただきたいと思うのですが、ちょっと私見を申し述べて公述していただきたいと思いますが、私は日本の企業家、資本家は、ベースを上げるのを抑止しよう抑止しようという動きが一、二あるような感じがする。で、公務員のベースを上げるということは、民間企業家に影響するから関心を払うことは当無かと思う。しかし一部には民間企業家、資本家が、その政治ルートを使ってまでして日本の公務員のベースの上がるのを抑止しようと、こういう私は政治的な動きさえあると思うのですが、これは次、私は意見なんですが、これは公務員にしても民間勤労者にしても、その所得を浪費するかしないか、それからその所得によって自分の生活環境、勤労環境というものをよくして、努力するかしないか、創意工夫をこらして行政事務能率の向上とかあるいは生産性の向上に努力するかしないかということが大きな問題であって、ベースを上げることによって、今食えない公務員民間労働者ですね、そういう人がささやかな生活をして、自分の能力を発揮できるような状況になると、そうすることに努力をする、サービス精神も旺盛になり、行政事務能率も上がる、それから生産性も向上する。購買力もつく。こういうことになれば、私はその企業の競争意欲というものも盛んになるでしょうし、購買力が盛んになることによって、浪費しては困りますが、そうでなければ、国の経財活動というものは活発になり、経済規模の拡張、発展になりますし、国内的にも競争力がつくし、国際競争力という立場においても、私は強化されると思うのです。そういう意味で、私は日本の資本家、企業家が非常に利用追求と企業を守るということを心配するあまりか、非常に物を安直に考えて、積極性に欠けて、そしてやがてわれわれに響くであろうというので、公務員のベースを不当に抑制している。公務員諸君は希望もなく、創意工夫をこらすこともなく、朝九時に出て午後五時になるかならかいか、待ちかまえて出て行くということは、こういうようなことではかえって私はマイナスじゃないか。だから企業家、資本家にしても、ベースを上げるということにそう神経質にならぬでもいいのじゃないか。むしろ神経質になり過ぎているのじゃないか。これが日本の経済を発展、拡大し、経済活動を活発にし、国内的にも国際的にも競争力を強化していくためには、そういう積極的な考え方があってしかるべきではないかという私は持論を持っているわけなんです。きょうのあなた様の公述を承っておりましても、やはり僕が今まで先入主といいますか、持っておった中で、ありありと出てこられるわけですが、先ほど森口藤井参考人から承っても、現に食えない、三千円ないし五千円の赤字である。そういうことであれば、なかなか創意工夫をこらすような思欲も起こってこないだろうし、家庭内でもそういうことでいざこざがある。そういう気持で職場に出て行っては、なかなか事務能率を上げられないだろう。これはお宅の企業内でも同様だと思うので、そういうところから、日本の生産はこれだけ伸びてきた、抵抗力もかなり出てきたとなれば、給与の問題に関する日本の企業家の考え方は、もうちょっと積極的に前進してしかるべきではないか。決して心配ないのじゃないか、むしろ、それはプラスになるのじゃないか。こういう感じを持っているのですが、以上若干私見を申し述べて、参考意見を承っておきたいと思うのです。
  49. 石橋大

    参考人(石橋大君) お答えいたします。公務員の先ほどの御質問にも関連してお答えしたようでございますが、公務員給与を、民間給与にはね返りが来るから押えるというような考えは持っておらぬわけでございます。適正にきめていただきたいということでございまして、冒頭に申し上げましたように、有能な公務員の方がおられるという、有能な人材を公務員に採用されるということが民間企業としても希望でございますし、そういうような優秀な方を採用されるためには、それにふさわしい処遇をされるということは望ましいことだということを申し上げておるわけでございます。ただ、そのためには、現状の行政機構なんかについても御配慮いただきたいということでございます。民間企業の場合に、御質問がありましたように、賃金を抑えるということに、極端に申しますと、きゅうきゅうとしているじゃないかというような、極端に表現しますと、そういうような御質問であったわけでございますが、少なくとも近代的な経営者が経営しております会社におきましては、戦後労働組合もございまして、自分のところの企業をいかによりよく発展さして、そこの中に働く労働者の処遇も上げていこうかということを、真剣に労使で話し合っているというのが現状じゃないかと思いますが、そうではない会社があるとすれば、経営者側とか、あるいは労働者側に、何か近代的なルールがないのじゃないかといういうな感じがいたします。従って、ただ現実のお話を申し上げますと、やはりそれは、食えないというようなときにベースをまず上げるということも現実にございます。ベースをまず上げて、引き上げることによって、コスト高になった分を、その後の生産性向上という方策によりまして、労使で話し合って吸収していくということもございます。従って、すべての場合、生産性向上というのがまず先行いたしまして、そのあとで賃金その他処遇を上げるということには必ずしもなっていないと思いますけれども、ともかくどちらが先行しようと、生産性向上というものが、民間企業の場合に、その企業の中の労働者の処遇改善の唯一の原資になるわけでございますから、そういうような考えで経営をやっているんじゃないかと、私はそう判断しております。
  50. 中野文門

    委員長中野文門君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  参考人方々には、長時間にわたり、きわめて貴重なる御意見の御開陳をいただきまして、本件の調査に重大なる参考になりましたことを、委員一同にかわって厚く御礼申し上げます。  速記をとめて。    〔速記中止〕   —————————————
  51. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  次に、国の防衛に関する調査を議題とし、自衛隊機と全日本空輸機の衝突事故に関する件の調査を進めます。  政府側出席の方々は、赤城防衛庁長官、楢橋運輸大臣、加藤防衛庁防衛局長、山下防衛庁経理局長、辻運輸省航空局長、以上の方々であります。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  52. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 小牧におけるF86Dと旅客機の衝突事故によりまして三名の死者と八名の負傷者を出したということは、まことに痛恨事と言わなければなりません。この問題に関連して二、三緊急質問をやりたいと思いますので、それぞれのお立場でお答えいただきたいと思います。  いろいろその後の詳報については、それぞれ大臣のもとに御連絡があると思いますが、何といってもここで考えられることは、根本的な原因は、一つの飛行場を民間と自衛隊で、しかも同時に使用し、さらにまた、その発着の度数が相当多かったということも確認されておるわけであります。この辺に大きな原因があったのではなかろうか。しかも、このことはあらかじめその危険が予測されたと考えられる。そこでお伺いいたしますが、両大臣におかれては、それぞれのお立場で十分この問題については考えられてきたと思いますので、この点についてお伺いしたいと思うのですが結論としては、このような危険が予測されたにもかかわらず、今日までこれを放置してきたということについては、まことに無責任と言わざるを得ないと思うわけであります。この点それぞれのお立場で一つお答えいただきたい。
  53. 楢橋渡

    ○国務大臣(楢橋渡君) 今回の小牧の空港における事故につきましては、運輸大臣といたしまして、まことに責任を痛感いたしておる次第でありまして、この犠牲になられた方々に対しても申しわけなく存じておる次第であります。  御指摘のように、あの空港は民間と自衛隊と両方で使っておりますが、民間航空の立場から申し上げますれば、やはり民間航空として独立したああいう空港がほしいのでありますけれども、現在の日本の財政その他諸般の情勢上、今日併用の事態になっておるのでありますが、今回のこういうような事件を契機といたしまして、できるだけやはり民間航空と自衛隊の練習機との間の分離といいますか、そういうことができれば、そういう方向に持っていきたいと思うのでありますが、御承知のように航空の基地には膨大なる資金等も要ります関係等もありまして、できるだけ自衛隊と、当面の問題といたしましては防衛庁と運輸省との間におきましてこれらの事故の起こらないような一つの管理方法等につきまして協議をいたしていきたいと、こう思うのであります。運輸省といたしましても、今朝来次官以下各局長を集めまして急迫に事務次官を長とする対策本部を設けまして、諸般にまたがって、この跡始末はもちろんのこと、今後の民間航空のあり方響についての校訂を命じているような次第でありまして、そういう点につきまして御指示のようなことは痛感をいたしている次節でありますから、そういう方向に向かった努力をいたしたいと存ずる次第であります。
  54. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 今回の事故につきましては、まことに遺憾でありまするし、特に被災者に対しましては、まことに申しわけない事態であると深くお悔やみいたし、遺憾の意を表している次第であります。今お話の点でありますが、お話のように民間機と航空自衛隊の飛行機とが一つの飛行場を共用しないということは私どもも理想であると思います。できればそういたしたいと思いますが、わが国のような地理的な条件からいたしまして、あるいは財政的の問題等からいたしましても共用せざるを得ないのが現状である、こういうふうに申さざるを得ないと思うのであります。共用しておるから、こういう事故が予見されておったではないかということでありますが、そういうことは私はないと思います。こういう事故は今度が初めてでございます。共用しておるから、事故の原因となるということではありませんで、やはり航空管制が適正に行われるということであれば、これは問題はなくなるといいますか、非常に減る、こういうことではないかと思います。理想を言えば共用をしないのがいいんでありますけれども、共用しているからこういう事故が発生したということではなくて、やはり管制がよければ共用しても事故の発生を防げるのじゃないか、こういうふうに考えております。しかし、いずれにいたしましても、現地にもそれぞれ私の方で見舞及び調査の者を出しておりますし、今後こういう事故を起こさないために運輸当局ともよく協議をいたし、私の方としてもとくと検討を進めていきたいと思います。
  55. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今回のような衝突事故については、外国ではほとんどその例を見ないと、そういうふうに言われている。それは外国では同一飛行場を民間また自衛隊というように同時に使用する、そういうようなむちゃはやっていないからだと思うわけであります。今、事故の跡始末等についてさらにまた今後の対策についてというようなお考えを述べられたわけでありますけれども、そこで大事なことは、もうこういうようなことは今後絶対に起きないようなそういう措置を講ずることが願わしい、そういうことに尽きると思う。もちろん、亡くなった、あるいは負傷された方々は十分なる手厚いあとの処置が必要でありましょう。これは言うまでもありませんけれども、今後こういうことを二度と繰り返さない、そういう基本的な考え方に立つならば、それは今も防衛庁長官も言われたように、同一飛行場を共用しない、これは理想だ、なぜそういう理想に向かって努力しないか。こういう点がまだほかにもあるようですが、こういう機会に緊急に根本的対策を講じて、共用するような飛行場については、早急にこれを廃止すべきであろう、そういうふうに思うわけです。その点についてのお考えはいかがでしょうか。
  56. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 今度の航空法の一部改正等にあたりまして、そういう問題につきましては、政令に移す面もあります。よく運輸当局と相談をいたしていきたい、こう考えております。
  57. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 このような共同飛行場については、この小牧を初め千歳その他、全国を見渡すと大体八カ所くらいあるように伺っております。もし数字が間違ったら御訂正をいただきたい。こういうふうにまだまだほかにもあると思われる。ところが、その大部分は、いわゆる管制、正式な管制官がおらないところもある。そういうふうに聞いておるわけです。そこで、どことどこに管制官がおって、どこにいないのか。そうして、実際、いない場合には、実際の管制は、いわゆる自衛隊でこれを管制しておる、自衛隊の管制下に置かれておる、こういうことになると、いわゆるもぐり管制ということも指摘せざるを得ないわけです。こういうことでは、人命にかかわるこういう大事な立場にある飛行場としては、きわめて遺憾であると思うわけです。この点はいかがですか。
  58. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 実情につきましては、私の方の防衛局長から申し上げます。
  59. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) ただいまのお尋ねでございますが、民間航空機と自衛隊の航空機と共用しておりまする飛行場は、千歳、松島、小牧、美保……
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 八つというのは米軍の共用しているのも入れてだ、それも言わなくちゃ……。
  61. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) それも申し上げましょう。こういうことでございます。米軍と共用しておりますのは、三沢が米軍と民間航空とが共用しておるのでございます。岩国が米空軍、これは自衛隊も使っております。民間航空機も入っております。板付が米空軍と民間航空機とが共用をいたしております。そのほかに北海道の旭川、丘珠、北千歳、帯広、こういうところに陸上自衛隊の航空隊がおりまして、民間のローカルの航空線も入っておるのであります。  それから次に管制のことでございますが、笹制は現在の航空法におきましては、航空交通管制区及び航空交通管制圏は運輸大臣が管例をしておられるわけであります。その航空交通管制圏及び管制区に相当いたしますところは、運輸省の所管でございます。自衛隊の飛行場はそれに該当しないのがほとんどでございまして、そちらは自衛隊の方で管制をいたしておるわけでございます。
  62. 辻章男

    政府委員(辻章男君) ただいま防衛庁の方から御説明がございましたが、補足いたしまして申し上げておきたいと思います。航空交通管制に関しましては、現行法のもとにおきましては、公共の用に供する飛行場その他につきまして、運輸大臣が、ただいま防衛局長からお話がありましたように、管制圏なりあるいは管制区というものを指定いたしまして、その管制圏、管制区の中におきましてのみ航空交通管制を行なう建前になっております。それで、防衛庁が専属に使っておられますような飛行場に関しましては、これは現行法のもとにおきましては、管制圏、管制区をしいておりません。従いまして、そういう飛行場で防衛庁の管制部隊が、実は私どもがやっておりまする管制と同じ仕事をやっておられるのでありますけれども、法制的には飛行場において飛行機の、自家用機の整備をされておるというのが、現行の法制の延前でございます。で、実はこの介国会に提案したいということで、後日国会に提案になると思うのでございますが、航空法の改正におきまして、なるほど今申し上げたような防衛関係の飛行場につきましては、そういうふうな見方もございますが、また一面、航空機の飛びかいます空全体の問題を考えられますれば、たとえ防衛庁のみが使っておられる飛行場の周辺といえども、全体の航空の見地からするならば、やはり管制が必要であるというふうに考えまして、そういうふうな地域につきましても管制区、管制圏を設定し得るようなふうに改正をしていきたい、かように考えておる次第であります。
  63. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 時間がございませんので最後に一点だけお伺いしますが、時にここで問題視されまするのは、速力あるいはまた航続距離の関係から、ジェット機に優先権を与える、ジェット機優先、こういう原則が決定なされたその後、旅客機が大ぜいのお客を乗せて着陸寸前に、着陸禁止の管制があって、二十分ないし三十分と、長時間上空を迂回して、そうしてジェット機の着陸を待つ、ジェット機が着陸した後に初めてようやく著陸できた、そういう例もあったとこれは確かに聞いておるわけです。ここに大きな問題があるのではなかろうか。で、結局ですね、ジェット戦闘機は、多くの場合、まあ一人で操縦しておるわけです。旅客機の場合は、今通常の場合で三十数名はいつも乗っておるわけです。そこで、一名の操縦士の乗っておるジェット機を優先にするのが正しいのか、三十数名の旅客を乗せた旅客機を優先的に考えるのが正しいのか、これが一つの大きな問題点であろうと思うのです。こういうようなことでは、人命軽視のそしりは免れないと思うのです。こういう大原則はこういう際にはっきりと決定すべきではなかろうか。このことに対して運輸大臣、または防衛庁長官それぞれのお立場で明確に一つ立場を表明していただきたいと思います。
  64. 楢橋渡

    ○国務大臣(楢橋渡君) 防衛庁のジェット機と民間航空のことは、ジェット機を優先というふうにはしておらないのでありまして、両方とも使えるということになっておりますが、今おっしゃいましたように、まあ運輸大臣の立場から、しかも定期航空として今日重要な公共性を持っておるこの航空の問題におきましては、こういう事態が起こりましたことを契機といたしまして、防衛庁長官とも後日相談を申し上げまして、できればやはり定期航空路というものの安全を確保するということをやはり十分に考慮してもらう。そうしてもちろん、自衛隊の練習その他についても、これは別の意味においてまた重要性もありますから、その辺の調節をやって、でき得べくんばやはり定期航空路、しかも、最近非常な国際性等も持っておりますし、現実にいろいろ国民の上にも大きな、定期航空路というものは経済的その他において大きな力を発揮している関係等もありますので、できるだけやはり定期航空路の確保、安全を期するということについて、防衛庁との間にもいろいろ話を進めて調節したい、こういうように考えるのでございます。
  65. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 運輸大臣から御答弁申し上げたことで尽きると思いますけれども、ただお話の中に、ジェット機を着陸さして旅客機を着陸させないでおいた例が相当あるというお話しでございます。私どもはむしろその逆の話を聞いております。すなわちジェット機等において油がなくなっておる。着陸しなければならない、着陸する時間もあるんだと、ところが、ジェット機の着陸を管制上許さないために、そこに着陸できないで、油が切れ切れになって、ほかの飛行場に着陸した、輸送機を先に着陸させたと、実は自得隊としては困ったものだという話も聞いているくらいに、旅衣機を先に着陸させるというようなことにいたしておるように私も聞いております。しかし、お話のようなこともまたあると思います。運輸当局ともよく相談して、人命尊重についての十分措置ができるようにいたしたい、こう考えます。
  66. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 時間の関係で簡単に二、三御質問いたします。本日の新聞に出ておりますこの事故、まことに遺憾しごくのことでございます。被災された方々には、何とも申し上げようがないわけでございますが、ただいま伊藤君も御質問されましたように、こういう問題についての主眼は、被災の方方、その他に対する措置をまずりっぱにやっていただくとともに、原因を的確にすみやかに究明をしていただくということであることはもとより、原因の究明の必要なことは、こういう事故が将来再び絶対に起こらないようにという意味合いであることはもとよりでございます。新聞に報道されておりますところでは、原因がはっきりしておるという事態でないようでございまするから、原因について、今までのところ、運輸大臣の方へ新聞等に出ておる、大体出ておる以上に明確になっておる点がございましたならば簡潔にお聞かせ願いたいと思います。
  67. 楢橋渡

    ○国務大臣(楢橋渡君) この事故の問題は、名古屋空港の管制塔の指示が適切でなかったか、あるいは管制塔から適切な指示があったものを、航空機がその指定通りに行動しなかったか、いずれかの原因によるものと推定されるのでございますが、現在までのところでは管制塔の指示に錯誤があったのじゃないかという疑いが出て参っておるような次第でありますので、目下航空局、防衛庁、検察当局、警察と四者が共同いたしまして、本日の午前六時から現場の調査等を行なっておるような次第でございまして、今日の昼過ぎも、まあ今名古屋の方にその後の経過を問い合わせておるような次第であります。従って今、増原委員がおっしゃられたように、この原因をあくまでも責任を回避することなく追及して、再びこういうことが起こらないようにしなければならないというわけで、私昨夜からこちらから人を派遣しましたし、今朝来事務次官以下各幹部を集めまして、運輸省の中にも対策本部を設けまして、今起こっておる事態に対する問題はもちろんのこと、ひいてこういう問題の起こってくる根本的原因をやはり追及して、徹底的にこれを洗って、今後再びこういう災害が起こらないような対策を立てなければならぬと、こう思っているような次第でありまして、その後の情報はまだ入っておりませんが、大体今のところでは、管制塔の指示に錯誤があったのではないかという疑いがある、こういうことだけを御報告申し上げておきます。
  68. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 こうした飛行場を、自衛隊の飛行機と定期航空その他民間の飛行機とが共用することの望ましくないことは、だれも承知をしているところでございます。私どもも可能ならばこの使用を分離をする、自衛隊の飛行機は専用の訓練飛行場を持つことにぜひしてもらいたいと考えますが、まあ現状を考えますると、なかなかそうはいかないという面もまた推測にかたくないのでございまして、こうした問題についての可能な行き方は、管制の方法を的確にしていただいて、再びこういう事故が起こらないようにするということが現実の問題ではないかと考えるわけでございます。非常にスピードの早いジェット機と旅客機その他との共用でありまするから、管制もなかなか技術的にもむずかしい点があるし、具体的な管制に当たる人の困難も推察されまするが、しかし、諸外国における飛行場の使用等を見まするならば、その頻度その他において、小牧における状態よりもより以上のものが幾らもあるわけでございまして、現実のわれわれの能力として、適正な管制の方法と訓練をされた担当者をもってするならば、私は十分にこうした事故を何来未然に防止し得るのではないかというふうに考えるわけでございます。従いまして、現在まで私どもが承知をするところでは、運輸省の管制の当局と自衛隊の方では、こうした面については十分緊密な連絡をとり、ことに小牧飛行場というようなところでは、管制の件を運輸省当局の系統で把握されて、しっかりした管制の方法が現実に行なわれておると承知をしておったわけであります。原因がまだ的確に究明をされていないということでありまするから、その点については本日は深く追及をいたしませんけれども、管制の方法を、広くあらゆる事態を条件にした管制の方法を、介特別の何ですか委員会をお作りになってさらに至急御検討下されるということでございますけれども、そうした面については、一刻も早く一つ衆知を完全に集めて、将来再びこういう問題のないようにやっていただきたい。自衛隊の方面の、こうした事故についての将来の予防についてのお考え方についての所信をお伺いしたいと思うのであります。
  69. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 自衛隊といたしましては、訓練に十分力を入れることはもちろんでありますが、やはり航空管制の適正化がもたらされることがやはり事故をなくすることだと思います。そういう点におきまして、管制は今運輸大臣の権限になっておりますが、このもとで、よく統一された形で私ども協力して、この管制が適正にされることを希望し、また、そういう方向に持っていきたいと考えております。
  70. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 この事故によって被災をされました方々に対するお見舞その他の適切な措置を、新聞等で見ましても、いわゆる全日本空輸機責任、あるいはその会社の責任を解しがたいところもあるようでありまするが、これはまあ原因の究明を急いでいただくとともに、すみやかに適当な方法で被災された方々に対する措置を遺憾なくやっていただいて、責任が明らかでないから被災者に対する措置が延び延びになるというふうなことのないように、これはまあいわば便宜の措置としてでも早急に適切な措置を一つおとりを願いたいと思うのであります。そうして原因の究明とともに、繰り返して、すみやかに運輸当局と自衛隊当局とが最も適切なすきのないりっぱな管制の措置をとっていただくこと、そうしてその状況を適当にお知らせをいただくことを要望をいたして、私の質問を終わります。
  71. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 世界の珍しい事故だと、今後起こらないようにと、初めて起こった事故だというような言葉が出ましたが、私は起こるべくして起こったと思うのです。矢嶋が予言しておきますが、今後も起こりますよ、こういう事故は。まことに国際的に考えて恥ずかしいことだと思うのです。日本のことが外国の新聞に出る場合は、船が沈んだ場合、汽車が転覆して人がたくさん死んだ場合、台風でやられた場合、それから国会がときどきもめた場合、大体その程度が外国で報道されるというのですね。今度の事故などこれは国辱ものですよ。何も天変地異でなくこれは起こるべくして起こったのです。もし、これが羽田空港で起ったら、さらに国際的にまことに恥ずかしいことだと思うのです。これだけの前言を申して承りますが、あなたはなんですか、この今度の事故の責任の所在は、今のところ防衛庁長官でなくして運輸大臣側にあるらしいと、こういう判断を防衛庁長官もされておられるのか、お答えいただきます。
  72. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 目下原因については、調査中でありますが、管制が当を得ていなかったのではないかという公算はありますが、今どうということを申し上げるだけの調査の結果の報告を受けておりません。
  73. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 管制塔の指示をされる方は、これは全部運輸省の公務員だけでなくして、防衛関係職員も従事しているはずです。一体総員何名で、そうしてその身分は運輸省関係防衛関係は何人と何人の比率になっているのか。それから当日の直接の責任者は、いずれの大臣の部下であったのか、その点お答え願いたい。
  74. 辻章男

    政府委員(辻章男君) 名古屋空港におきまする管制関係の配置人員でございますが、これは運輸省から十四名派遣いたしておりまして、それから防衛庁の方からは四名派遣されております。それで、防衛関係の四名は、いずれも管制補助という形で派遣されております。従いまして、この管制の指揮、責任はすべて運輸省関係職員がとっております。それで、この事故が起こりました当時の管制塔におりまする配置は三名でございまして、運輸省から出ておりまするベテランの管制官がそれの責任者となりまして、私どもの方からの職員が一名、それから防衛庁から出ておられまする補助の方が一名、その三名で管制塔の運営に当たっておった次第でございます。
  75. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それから飛行機のパイロットに直接指示を出されたのは、いずれの省の所属の方ですか。
  76. 辻章男

    政府委員(辻章男君) これはただいままでの情報によりますと、運輸省の職員の身分を持った職員であると考えられます。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 局長に伺いますが、こういう形態でこのデリケートなコントロールタワーの勤務なんかできるのですか。飛行機が一マッハ、ロッキードなんか二マッハですが、しかも頻度が多く離着陸をやるのですが、そういう場合に、所属の違う職員で構成して、はたしてそれがうまくいくのですか。指揮命令系統はぴしゃりといきますか。また精神的に融和できるでしょうか。普通の事務をとるというような仕事とこれは違いますよ。パリ、ロンドン、ローマに行っても、あの飛行場にはあれだけの頻度で離着陸をしておる。しかも、水の流れるごとくきれいに事故を起こさずにいっている。ところが、日本のような比較的に飛行場の施設、設備の不十分で狭いところでその速度の非常に違う、しかも、十分習熟していない、身分関係の、所属も違うような人で管制なんかに勤務してうまくいくと考える方が間違っておるのではないか。こういうことで今後十分やつていけるというお考えですか。やはり事故が起こると、しまったなあ、これは十分意思の疎通等ができないで、こういう形態では不十分だなあという反省が現在あるのではないか。いかがですか、伺います。
  78. 辻章男

    政府委員(辻章男君) これはどういうふうな職場にございましても、同一の育ちと申しますか、そういうところの人ばかりが集まりまして仕事をやる方が、そういう環境の違う方が入るよりも円滑にいくということは、一般論として言えるかと思うのでございます。この管制関係につきましては、そういうふうに自衛隊の方の人が入りまして一体的に今日までやって参りました。これらの運営につきましては、常時職員間で意思の疎通をはかることはもちろんでございまするが、現場におきまする運輸省関係の出先機関、防衛関係の出先機関とも常時連携を保ちまして、現在までのところにおきましては、そういう融和を欠くとか、あるいはそのために事務が非常に不円滑だということはなく今日まで来たった次第でございます。将来も運営によりましては、こういうことでもいけるのではないかと、かように考えておる次第であります。
  79. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなた無責任ですよ。そういう認識がこういう事故を起こすのですよ。その認識を改めない限り、不吉な予言ですが、矢嶋は予言しますが、また起こってきますよ。必ず起こりますよ、そういう認識でやられるのだったら。  ちょっと質問の方向を変えまして、時間がありませんから、数点伺いますが、もしさっき運輸大臣が答弁されたように、管制塔の指示が十分でなかった、こういうことが明確になったならば、国家賠償法に基づきまして、全日空に対して国家が賠償しますのが当然だと思いますが、いかがですか。
  80. 楢橋渡

    ○国務大臣(楢橋渡君) 管制塔の管理官の過失によってそういう問題が起こった場合は、これは当然に国家がこれに対して補償を与えるのは当然と思います。賠償の問題は。
  81. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それから滑走路上ですからね、しかも、自衛隊のF86D、これは一マッハを越えたスピードを持った飛行機ですよ。そうして着陣姿勢ですから一秒の問題ではない。何分の一秒の問題です。だからこういう形でおるということ自体にもう根本原因がある。だから今の体制を改めない限り必ず起こる。昭和三十二年、三十三年にF86の墜落事故が起こったときに、今の源田空幕長は当時の長官の指示を受けて全国の飛行場を調査して、そうして滑走路は九千フィート、一万フィート必要だと長官に復命をしておるはずです、源田さんは。最近は、ロッキードを買うにあたっては、八千フィートで大丈夫だと言っておりますが、ロッキード買ったら、こういう問題はもう少し大きな頻度をもって起こりますよ。先般アメリカにロッキード購入に行った場合に、四人のパイロットの一人の人はあやうく命を落としかけた、ひっくり返りかけたら、やっとささえたということを聞いております。懐旧談を私は承っておるのです。そして八千フィートあれば大丈夫だと、そして日本のパイロットでF86FあるいはF86Dこれに習熟したパイロット、三、四ヵ月訓練すればF104のロッキードを乗りこなせるといっておりますけれども、訓練が高い程度のものを要求して無理をするから、今後こうした事態が起こってきますよ、改めなければ……。この事件を契機に防衛庁長官どうですか、ロッキードの購入計画を再検討をするというようなお考えありませんか。むしろ安全というより、こういう事故を起こしますよ。私は八千フィートで日本のパイロットが乗りこなせるとは思わない。そして共用しておったならば、必ずこの事故が起こるのですよ。F86Dはやっと一マッハしか出ていない、ロッキードになったら二マッハでしょう。そしたら離陸、着陸の場合、しかも、この前の国会の答弁では、滑走路の拡張をしないというのです。そういう状況下で、しかも今局長が言うように、防衛庁と運輸省の両省から出た職員でやっても意思の疎通等十分いく、それでいいと思います。こういう感覚でやったら今後何ですよ、日本航空にしても、全日空にしても、この民間航空というものは、オリンピックもあるが、これを契機にますます航空網というものは充実していくわけです。そして旅客もふえるでしょうが、離着陸の頻度というものも多くなるのですよ。そういうことをあわせ考えるときに、こういうことはまれに起こった奇跡であって、今後起こならないであろうなんて考える方が、私は間違いだと思うのです。起こりますよ。いかがですか、お答え願いたい。
  82. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) せっかく御親切な御提案でありますけれども、ロッキードをやめるというわけにはいきません。
  83. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それはまた他日論じますが、当面緊急な問題を伺いましょう。それは羽田国際空港です。東京国際空港です。あれを最近何ですね、自衛隊の定期便に使っているようですね。自衛隊は今まで立川を使っておったはずです。ところが、九州から北海道を結ぶ物資輸送もあるでしょう。また、自衛隊の関係者が視察とか、転任等に動かれるのに往復されておる。従来立川飛行場を使われておったが、最近東京国際空港を使われておるようですね。当初岩田空港長は、ときたまならいいだろうということでオーケーを与えたところが、最近自衛隊が非常にたび重なって使うようになった。しかも二、三日前の新聞にも出ておりましたが、P2V7ですね、あの大型の対潜哨戒機、それがちょちょっと来て係留されておる。さなきだに国際空港として係留場が狭くて困っておるのに、非常に危険である。外国の航空会社から東京空港の岩田港長に対して抗議が出ているということを先日新聞でも報ぜられておりました。これはさっそくやめたらいいと思うのです。あの東京空港は、日本の玄関としてずいぶん最近ジェット機も入って離着陸が多いのですね。確かに保留場等は狭い。それがちょちょっと自衛隊関係の飛行機があすこに入られては迷惑すると思うんですね。迷惑のみならず、私は事故が母こると思うんです。そういう新聞報道があったとたんにこの事故が起こったんですね。だから防衛庁としても必要でしょう、必要ならば、従来通り、立川の飛行場を使われたらいいと思う。それで米軍と日本の自衛隊も、どちらもまあ軍ですからね。その点はうまくいくと思うんです。あの東京空港を自衛隊が定期的に使われるのは、さっそく私はやめられたらいいと思う。いかがですか。
  84. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 羽田空港使用に対しましては、こういうことになっています。新聞にも出ておりましたが、羽田空港は、御承知のように公共用飛行場でありますので、自衛隊機が離着陸することには、別に制限さるべき法的根拠はないわけでございます。ただ、空港に着陸してパーキング・エリアを使用することもあり、その使用の統制管理につきましては、東京航空保安事務所が担当しているのでありますので、その事務所の了解を得る必要があります。そこで海上自衛隊では、今お話がありましたが、昭和三十三年の四月に、海上幕僚監部航空室長と、東京航空保安事務所長との間に、昭和三十三年度から海上員術隊所属のSNB機が一週間に二、三機東京国際空港を使用することについて口頭で了解がついているわけであります。それがR4D機が海上自衛隊に所属することになりました。SNB機のかわりにR4D機を連絡輸送川機として使用することになったため、三十四年の五月に前記了解事項のうち、機種をR4Dに変えることにあらためて了解をつけております。この前記以外の場所に他の機種が離着陸をして、パーキング・エリアを使用する場合、あるいは使用回数を臨時に増加する場合には、航空保安事務所航務課長の事前了解を得て使用している、こういう事情であります。航空自衛隊では定期的に使用することがありませんので、海上自衛隊のように原則的取りきめはしておりません。ただ、臨時のものにつきましては、そのつど連絡しておりますが、その場合においても、誘導ジープの使用につきまして航務当局から制限を受けている以外に、別段の制限は受けておりません。岩田空港長の名で防衛庁に対して厳重な自粛を求めるように言われたというふうに出ておりますが、こういう事実はございません。  しからば今後東京空港を利用するについてどういうふうに考えるかということでございます。一つは木更津があるのでありますが、木更津を使うということは非常に不便であり、またあぶなっかしい点もあります。ことに夜間は閉鎖いたしております。従いまして、将来とも一般民間航空事務に迷惑をかけない範囲におきまして、極力利用さしてもらうようにさしたいと、こういうふうに考えております。この間、新聞に記事が出ましたので、自衛隊といたしましても、この空港使用によって、民間航空に具体的な不便を与えているかどうかということを東京空港の航務当局に意見を聞いてみたのでありますが、そういう事実はない、パーキングにつきましても、自衛隊では所定の場所に正規の係留をしてあるので、民間機が正規のコースを動く限り、何ら支障なしという回答もあります。でありまするから、今のところ正規の係留をしておりますので、民間機に対しまして迷惑をかけておらぬというふうな回答はあります。しかし、お話の点もありまして、事故等を生ずることは、これは極力避けなくてはなりませんから、よく注意もいたしまして、事故などが起きないようにいたしたいと、こう考えております。
  85. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一、二点運輸大臣に伺いますが、東京国際空港は、広さとしては、あなた所管大臣として十分だとお考えになっておられるのか、やや最近狭隘になりつつあると把握されておるのか、お答え願います。
  86. 楢橋渡

    ○国務大臣(楢橋渡君) これは矢嶋委員も御存じのように、世界の、たとえばアメリカにしましても、フランスにしましても、あるいはロンドンにしましても、それから見れば、話にならない狭い国際空港でありまして、図面等によりましても、あまりにも実は貧弱なのであります。しかし、最近になりまして、御存じのように、極東の中心といいますか、世界各国のジェット機が東京国際空港に入ってくる関係等もありまして、非常なあの空港それ自体としては狭隘を感じ、しかも、あすこを拡大することはなかなか困難な事態になっておるのでありますから、今矢嶋委員が言われますように、あすこの事故が起こらないように、ことにジェット機が入りましても、いろいろ危険も伴いますから、安全を確保するということについて、十分に考えなければならぬと実は思うのでありまして、ただいま御指摘のような、自衛隊の飛行機があすこへどんどんおりてくるということは、これは今防衛庁長官が申したように、保安事務所等において了解を得て、ある程度まで、何といいますか、不満足ではあるけれども、やっておるような状態でありますが、今後、こういうような事態が起こりましたことを契機といたしまして、防衛庁長官ともよく御相談申し上げまして、できるだけその方面のことは規制をし、かつまた、あすこの空港としての安全確保について、諸般の一つ対策を講じていきたいと、こういうふうに思うのであります。
  87. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 航空局長に伺いますが、外国の航空会社から、東京国際空港は狭い、そのパーキングエリアも狭いから、だから、最近よく自衛隊の飛行機が係留されているが、危険でもあるから、その点を考慮してほしいという意味の申し入れが、岩田空港長にあったのでしょう。あなた報告聞いておりませんか。
  88. 辻章男

    政府委員(辻章男君) そういうふうなことの話があったということは聞いております。
  89. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 運輸大臣は、その話は今初めて聞きましたか。新聞には大きく出ていましたよ。
  90. 楢橋渡

    ○国務大臣(楢橋渡君) 私は、その話は実は今聞いたのですが、大体赤城さんとも話を前々からやっておりまして、やはり千歳とか、あるいは東京国際空港とかいう問題について、自衛隊の方の側との間に、これを何とか調節したいという話を先般もやっておるような次第でありまして、今回のような問題等が起こりました以上は、その点について、強く安全確保のために進めたい、こういうふうに思います。
  91. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あの新聞記事を書いた記者は大殊勲ですよ。私はあの某紙の記事を見たときに、なるほどなあと思った。大へんいい警告だと思った。ところが、さっそく小牧に起こった。これは各大臣もごらんになっておるはずです。だから防衛庁長官が、合言葉はにごされておられますが、立川あるいは木更津のあれもあるのですから、あんな狭い国際空港に自衛隊機が割り込むというのはやめた方がいいと思うのですよ。万一の事故が起こったらどうしますか。国際的な問題になりますよ。のみならず国際的な恥ですよね、日本の。さなきだに東京国際空港というのは狭い。僕らしろうとから見ても危険感さえ感ずるほどです。だからここで運輸大臣は、あなたに遠慮して明言しないが、防衛庁長官に御遠慮願おうというお顔色がありありとここから見える。防衛庁長官、検討することをはっきりお約束して下さい。
  92. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、自衛隊の飛行機は、指定の場所に正規の係留をしておるので、民間機が正規の航路を動く限り、何ら支障ない旨の回答をいたしております。でありますから、現在もじゃまいたしておりません。先ほど申し上げましたように、お話のような事故を起こすことがあってはいけませんから、大いに協議をする、こういうことを申し上げた通りであります。
  93. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、よほど厳粛に反省して何しないと、事故は続発しますよ。それは小牧の場合、どこに原因があったというようなことは、今検討中でありますから、即断めいたことは申しません。しかし、いやしくも防衛庁長官並びに空幕長の叱咤激励のもとに、航空自衛隊のパイロットという身分を与えられておりますと、やはりわれわれとちょっと感じが違うと思うのです。訓練というようなものはきびしいと思うのです。だからあのパイロットはおそらく優秀な人でしょう。未熟のために起こした事故とは思いません。しかし、ほんとうに民間機と、狭いところに同居しているのだ、用心にも用心をせねばというような気持が、もし今まで持たれている以上にあったならば、あるいは防がれたかもしれません。きのうの夜録音を聞いたのですが、前にランプが見えた、あらっと思ったが、あそこで工事している、その工事のランプだろうと思って離陸してよろしいというコントロール・タワーからの指示があったから、ランプは見えたけれどもスタートを切ってみた、そうしたところが飛行機だったのがわかったから急に対処したけれども間に合わずに、ついに衝突した、こういう録音を放送されておりました。だからパイロットは、おそらく優秀な方で、十分用心なさったのでしょうから、軽々に云々ここでするわけにいきませんけれども、ああいう狭いところに、軍隊として肩書きのあるパイロットとして、そういう使命とそういう決意を持ってそうした訓練にいそしんでおれば、ああいう何十分の一秒というズレというものは、私は折々起こると思うのです。だから究極のところ、やはり憲法に違反して——話は飛躍するが結局私はそうだと思う。憲法に違反して背伸びした防衛計画、訓練をするところに、そういう無理なところから、こういう事態が起こってくるわけです。お忘れにならないでしょう、昨年の一月に、F86Fジェット戦闘機四十五機、アメリカに返したじゃありませんか。その後パイロットの訓練が間に合わなかったから、だから返す、軍事顧問団を通じてアメリカから要請があったから国内で一方では生産しながらも四十五機を返した。この例なんかは、分不相応の背伸びをした姿がここに出ているのであります。そういうことは、私は飛行場の施設、整備も十分整わず、それからパイロットの方々の訓練度、習熟度というものも整わずに、やはり背伸びをしているところに無理が出てくる。そういうところからこういう事故が起こってくるのだと思うのです。だからそういう点を十分反省されて、責任の所在を明確にして対処しなければ、私はこの奇跡でなくて、今後もおりおりこういう不幸な、まことに不幸ですが、事態が起こるであろうという私は心配をいたしております。予言をいたしておきます。ましてや、ロッキードを今の計画で購入したならば、衝突、墜落、こういう事故が頻発するであろうという私は予感がいたします。だから、それらも含めて今度の事件を契機に、十分再検討していただくことを強く私は要望して、本日の質問を終わります。
  94. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 事故の原因が、憲法違反とか背のびだとか、こういう御意見は御意見でありましょうが、そういうことではないと私は思っています。しかし、事故を起こさないことにつきましては、お話の点をよく考えて、これからも十分注意していきたいと、こう考えております。
  95. 中野文門

    委員長中野文門君) 他に御発言もなければ、本件はこの程度にとどめます。  それではこれにて暫時休憩いたします。    午後一時四十三分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕