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鈴木壽君 私は、日本社会党を代表いたしまして、この
二つの
法案に反対の意思を表明するものであります。
まず最初に、
臨時地方特別交付金に関する
法律案でございますが、この
法案は、言うまでもなく、昨年行なわれました
国税の減税による住民税へのはね返りのその減収を補てんしようという立場から出てきたわけでありますが、御承知のように、三十五
年度におきます住民税の減収は、百二十二億を見込まれておるわけでございますが、それに対して、今回の政府の
措置は、わずかに三十億にとどまっておる、
国税三税の〇・三%というまことに少ない額でこの減収補てんをしようといたしておるわけでございまして、額の点からいいましても、また、従来の政府、特に
自治庁の主張からいたしましても、また、
地方団体の
実情あるいはそれに基づくところの要望等からいたしましても、まことに不合理であり、私どもは遺憾にたえないのでございます。国の施策によっていやおうなしに押しつけられたこの
地方税の減収でありますから、当然これの補てんにつきましては、国が責任をもって
措置されなければならないというふうに
考えますし、さらに、現在の
地方団体の
財政の
状況からいたしましてこの減収は、非常な大きな
財政事情の圧迫となって出てきておるわけでございます。こういう点からいいまして、私どもは、今回のこの政府の
措置、従ってこの
法案に対しては、反対をいたすものでございまする
なお、政府は、
地方税の
増収がある、こういうようなことを言ったり、あるいは、全体として
一般財源が増加するではないかというようなことを言って、完全な補てん
措置は不必要だということをしばしば言っておるわけでございますけれども、しかし、かりに、税収のいわゆる自然増あるいは
一般財源の増というようなものは、
地方自治団体全体としての総計という点においては、あるいは相当な大きな額には上っておりますけれども、
個々の
団体等におきましては、必ずしもその
団体の
実情とは一致しないのでございます。特に税の
増収等の問題につきましては、これは、私今さら申し上げるまでもなく、現在見込まれておりますところの自然
増収は、いわゆる先進地あるいは工業地帯、いわゆる富裕
団体というような所に非常に片寄った税の
増収が見込まれるのでございまして、後進地域なりあるいは貧弱
団体といわれるような所は、これはきわめて少ないことは、
自治庁が出した資料からも
指摘できるのでございます。たとえば、府県税
増収の中での大きなものは、法人事業税に関するもの、あるいは住民税のうちの法人税割についてのもの、遊興飲食税あるいは自動車税等でありまして、これらはいずれも、先に私が申し述べたような地域に集中する
財源でございます。市町村税等におきましても、やはり法人税割あるいは電気ガス税、こういうものが主となり、固定資産税においても相当な
増収を期待しておるようでございますが、これもしかし、いわゆるいなかの後進地域の
団体等においては、大きな期待の持てる税収の自然増とはなってこないことは、これは明らかでございます。特に今回の住民税の引き下げが、貧弱
団体において用いられておるところの第二方式、第三方式の税率の引き下げ等によるものであるということを
考えまするならば、やはりどうしても、こういう
団体に対する減収の補てんというものは真剣に
考えて、十分な手当をすることが、私は国の当然の
措置としてとられなければならないというふうに
考えるものでございます。一方、その
地方自治団体は、三十五
年度におきまして、給与関係費なり、あるいは国の施策によるいわゆる公共事業費の増大、その他いわば
義務的な支出が非常に大きくなっておるのでございますし、さらにまた一方、赤字をかかえておる
団体も相当な数に依然として上っておる。こういうふうに、幾多の不健全な要素をかかえておるときでもありますから、一般的な
地方自治団体の
財政健全化のためにも、今回の減収補てんの
措置というものは、まことに不十分なものだと言わなければならないのであります。
さらに、この特別交付金の配分の問題においても、私どもはやはり納得できないものがあるわけでございます。今申しましたような観点から、やはりこの減収補てんの金は、その
地方自治団体の減収に見合うような補てんの仕方をしなければならないということは、これは、私から今さら申し上げるまでもないと思いますが、今回は、おそらくこれは額がきわめて少ない三十億ということになったための苦しまぎれの
措置であろうと思いますけれども、これを
交付税の中にぶち込んで、そうして他の
一般財源との見合いにおいて配分をするというような、
一つのすっきりしない
措置をとっておるわけでございます。もちろん私どもは、
一般財源の見合いによってやるということも全然否定をするわけではございませんけれども、そういう
やり方は第二次的なことでありまして、ともかく今回の減収の補てんにつきましては、その減収の補てん額をできるだけ完全な姿で補てんしてやるというような
考え方に立っての
措置でなければならぬと思いますが、今回の配分等におきましても、そういうことが、先ほど申しましたように、もちろん額が少ないという点からでもありましょうけれども、とられておらないことは、私どもは賛成のできないところでございます。
以上の点から、この
臨時地方特別交付金に関する
法律案には反対でございます。
次に、
交付税の一部を
改正する
法律案でございましたが、今私が前の
法律案について触れましたように、
地方財政の現況というものは、なお非常に不健全な要素を含んでおる。従って、
行政水準の引き上げをよく言われますけれども、その
行政水準の引き上げをはかり、住民の福祉を、さらに民生の安定をというふうなことになりますと、なかなか手が回らないというのが現在の
状況でございます。こういう点につきましては、これは、今さら私が申し上げるまでもなく、すでに
自治庁においてもしばしばこういう見解を発表いたしておりますから、これは否定し得ないところであろうと思います。ただ、三十五
年度の
地方財政計画を見ますと、約二千億もの規模の膨張が見られます。ですから、こういう点だけを
考えてみますと、一見、
地方財政は相当な改善をされる、あるいは好転を見るというようにも思われるのでございますが、しかし、これは形の上での、
地方財政計画の上でのそういうことであって、
実情は必ずしもそうではないということは、これは否定し得ない事実であろうと思うのでございます。たとえば、景気変動によって、景気の上昇によって、その影響を受ける
団体は、それは著しく好転というふうなことも言い得られると思いますけれども、一方、その景気変動によるいわゆるよい影響を受けることのできないところの、いわゆる日の当たらざる所にあるところの
地方自治団体というものは、数からいくとこれは圧倒的に多い。そういうものを
考えてみます場合には、なかなかこの数字的なふくらみによって
地方自治団体がみんなよくなるんだということは、これは期待できないのでございます。多くの
団体が、今なお
地方税の
超過課税を余儀なくされておる。こういう事実、あるいはいささかの法定外
普通税を廃止すべきであるといいながら、それすら廃止に踏み切れないでおるようなこういう
団体、なお、すでにしばしば問題になっておりますように、多額の税外負担を住民に背負わせておる。こういう現況からいたしましても、私は、現在の
地方自治団体の
財政状況というものは、
言葉で、あるいは一見したこういう数字だけでは、好転をし、あるいは健全化に一歩踏み出したということにはやはり遠い現実であろうと思います。こういうことを
考えます場合に、私どもは、もちろん
ほんとうの
意味での
地方団体の
財政の健全化あるいは軌道に乗るというようなことを期待いたします場合には、いろいろ国、
地方を通ずるところの税体系の問題、あるいはその他の
地方自治団体に対する
財源の配分の問題等を根本的に
考え直さなければならないことは、これはもちろんでございますが、しかし、とりあえず、そういうことができるまでの間は、私どもは、当面の
地方交付税のこの繰入率の引き上げによってまかなうことしか
方法がないではな」か。この繰入率を引き上げることによって
基準財政需要額の引き上げを行ない、標準的な
行政水準を確保できる、そういう
財源を与えることこそが当面必要な問題になってきておると思いますので、私は従来、そういう観点から、
交付税率の引き上げ、現行二八・五%を三〇%に引き上げることを主張し、要望をいたしてきておるのでございます。そういう
建前からいっても、今回は税率の引き上げはそのまま据え置く、こういうことになっております今度の
改正案については反対をいたすものでございます。
なお、これは、今申し上げましたことは、私どもの根本的な反対の
態度でございますけれども、特に三十五
年度におきましては、かりにそういう私どもの強い主張を一歩譲るとしても、先ほど申しましたように、
地方住民税の減収補てんというようなことを
考えましても、この際、そういうことを含めた
意味での
交付税率の引き上げということも
一つの
方法ではないか、こういうことを
考え、それをまた一方において期待もいたしてきたわけでございますが、そういうことにつきましても、先ほど前の
法案につきまして触れましたように、わずかな金でお茶を濁されるということになっておりますので、こういう点からいっても、今回の
改正案は、根本において賛成をいたすわけに参らないと思います。
以上、
地方交付税法の根本的な反対の理由でございますが、なお、内容についていろいろ検討いたしますと、二、三やはり問題のあることは、
指摘をしておかなければならぬと思います。
税外負担の解消の問題でございますが、これは、先ほど私ども、附帯決議におきましても、そのことは強く要望しておるわけでございますが、今回の
措置は、
地方交付税の中において、総計八十七億の解消ができるようないわば
財政的な
措置をいたしておるわけでございますので、従来からしますと、この点は一歩前進したと言うべきでありましょう。しかし、税外負担の問題は、これをもってしては何分の一か、五分の一か、せいぜい四分の一かの解消の額にしかならぬのでございますから、こういう点についても、もっともっと強く解消できるような
措置を講じていくべきであるというふうに
考えられます。また、今回の
改正によりまして、従来私ども問題として
指摘しておきましたが、いわゆる公債費の償還
財源が、利子補給というような形において、また
交付税の中で見られていくというような形が出てきておるのでございますが、公債費対策を
交付税によってやっていくというようなことにつきましては、この
交付税の本来のあり方からいって、問題があるのではないかというふうに
考えられるのでございます。これは前に、公債費対策として八十六億を
交付税でやったことがある。で、その次の年には
交付税の中にぶち込んできておったのでありますが、政府の従来の主張からいっても、別途にそういうものは必ずやるのだといったことをしばしば当時の田中長官も言っておるのです。そういうことが、いつの間にやら大きな額が
交付税の中に入ってきて、その中でいわゆる公債費対策というのが見られていくということは、私はこの際、先ほど申しましたように、
交付税本来のあり方からしておそらく
交付税の本来というのは、普通のいわゆる
地方の
行政水準あるいはいろいろな仕事の維持のための
財源の不足分を確保していくということに私はなければならぬと思いますが、そういう点からいって、これはやはり再検討すべき問題であろうと思います。
念のために申し上げておきますが、
昭和三十三
年度あるいは三十四
年度におきまして、
交付税で見ておるいわゆる公債費対策の額は百十億をこしております。こういう大きな額が
交付税の中でいわゆる公債費対策として配分されるということは、もちろん、
地方自治体の現状からしますと、何とかの
措置で見られなければならぬという、そういう窮状はわかるのでございますけれども、しかし、それは別途政府が
措置すべき問題であって、こういうことは、私は、今後こういう機会に再検討をすべきであろうというふうに思うわけでございます。
いま
一つの問題として、私はやはり反対の強い意見という
意味ではありません、問題として
指摘をしておきたいことは、今回の
交付税の
算定にあたりまして、
基準財政収入額の中に、従来見なかった軽油引取税、それから道路譲与税が算入せられることになってきたのでございます。これは、一面筋の通ったような
やり方だとも
考えられます。確かに
地方のこれらの税によってのアンバランスというようなことも
考えられますから、そういうものの是正ということで
考えていく場合には、確かに一応筋が通ったようにも感じられるのですが、私、この際あらためて注意を喚起いたしたいことは、いわゆる
団体間の
財源調整という問題を今後一体どう
考えていくのか。私は、今回のこの
措置によって、今まで特に
自治庁が否定しておきながら、大蔵省あたりが強く主張し続けてきたいわゆる
団体間の
財源調整の問題に一歩足を踏み込んでしまったのではないか。これは最後のとりでであるならともかく、これは大蔵省のペースに巻き込まれる第一歩ではないかというようなことも実は私心配をいたすわけでございます。
それから、いま
一つは、この
基準財政収入額の算入によって、これは根本的に
考え直さなければならないことは、たとえば、道路関係の費用は今度算入されるわけですが、現在の道路関係の費用のいわゆる
財政需要の
算定の仕方が、これで
ほんとうに必要な
財源を確保できるようになっておるかということなのであります。それが確保できるという
前提に立って、初めて今の
二つの税の算入も可能になろうと私は思うのでありますが、これは私は、率直に言って、現在の
基準財政需要額のいわゆる道路費だけ
考えてみても、
算定においては必ずしも
実情に沿っておらないというふうに思うわけです。こういう点から申しましても、この点は問題の残る点ではないかというふうに思うわけでございます。
先にも述べましたように、この点は、私今回の
法律案に反対の強い意見として申し上げるのではなしに、これは、こういう
法案が出た場合に、
一つの
自治庁の、政府の慎重な今後の検討を望むというような
意味で付加させてもらったことでありますが、いずれにしても、今回の
地方交付税法等の一部
改正案につきましては、冒頭述べましたような理由から私は反対いたすわけであります。