○国務大臣(
石原幹市郎君) ただいま議題となりました
地方公営企業法の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案の理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
地方公共団体が経営いたしております企業は、水道事業、
交通事業、電気事業その他数多くありますが、これら公営企業のうち比較的規模の大きいものには、
地方公営企業法が適用されているのでありまして、その団体数は漸次増加しつつあり、成果は見るべきものが少なくないのであります。現在この
法律の適用団体の数は、水道事業百三十九を初めとして合計三百十四で、昭和三十三年度の決算状況は、総収益九百八十三億円、総費用九百二十五億円、差引損益計算上は五十八億円の黒字となっており、同年度末における資産総額は四千四百五十六億円、職員数は十万人をこえております。このほか、水道事業、
交通事業、電気事業及びガス事業で、同法の適用を受けない公営企業の総数は約八百に達しております。
地方住民の福祉を向上させるためには、今後ますます各種の公営企業の普及拡充をはかる必要があるのでありまして、その一段の発展が期待されるところであります。しかして公営企業の健全な発展を期するには、企業の適正かつ能率的な運営を確保することが肝要でありまして、これがためには、これまで
地方公営企業法の適用を受けない企業についても、企業会計方式による財務制度の採用をはかることが適当と
考えられますとともに、公営企業運営の実際にかんがみ、若干
規定を
整備する必要が認められるので、この
法律案を提出いたした次第であります。
次に、この
法律案の
内容について、その概要を御
説明申し上げます。
第一は、
地方公営企業法の適用を受ける事業のうち、従来水道事業の中に含まれていた工業用水道を独立の事業とし、常時雇用される職員の数が三十人以上のものにこの
法律の
規定を適用しようとするものであります。工業用水道事業は、現在まで
地方公営企業法上は独立の事業とせず、水道事業に含めて扱って参ったのでありますが、その発展は著しいものがあるのでありまして、この際その経営の適正化を期するために、工業用水道事業を独立の事業として
地方公営企業法を適用することにいたしたいのであります。
第二は、地方公共団体の経営する水道事業、工業水道事業、軌道事業、
自動車運送業、地方鉄道事業、電気事業及びガス事業で、これまで
地方公営企業法の
規定が適用されない一定規模未満のもののうち常時雇用される職員の数が二十人以上のものについても、
地方公営企業法の
規定のうち企業会計方式による財務に関する
規定等を適用しようとするものであります。
従来これらの事業については、たとえば、水道事業は常時雇用される職員数五十人以上軌道事業は百人以上というように、一定規模以上のものに
地方公営企業法の
規定の全部を適用し、他は地方公共団体の条例によって
規定の全部または一部を適用することができるものとされているのであります。しかしながら、これらの事業は、その性格から見て、漸進的に
地方公営企業法の適用を受けることとすることが適当であると
考えられるのであります。従って、従来、地方公共団体の条例で同法の
規定を適用することができることとしているもののうち、企業会計処理の実施が適当であると
考えられる中規模
程度の企業に対しても、この
法律の
規定のうち企業会計方式による財務
規定等を適用して、複式簿記による会計方式をとることとし、もって、資産の把握を容易ならしめるとともに、経営状況を明らかにする等、企業の合理的、かつ、能率的な運営を助長しようとするものであります。
第三は、地方公営企業を経営する地方公共団体には、各事業ごとに管理者を置く
建前とされておりますが、水道事業及び工業用水道事業をあわせて経営する場合または軌道、
自動車運送及び地方鉄道の
交通事業のうち二以上の事業をあわせて経営する場合には、事業の類似性にもかんがみ、組織をなるべく簡素にするために、特別の事情のない限り、一人の管理者を置くことを
建前としようとするものであります。
以上のほか、公営企業運営の現況をも
考え、財務に関する
規定に若干所要の
改正を加えようとするものであります。
なお、この
法律の施行期日につきましては、従来の官公庁会計方式による財務制度を、企業会計方式による財務制度に切りかえることとなりますため、準備期間を必要といたしますので、事業規模に応じて昭和三十六年四月一日から三十七年四月一日までの間に
改正法が適用されるように所要の調整を加えることといたしました。
以上、
地方公営企業法の一部を
改正する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御
説明いたしました。何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。