○
説明員(
志場喜徳郎君) 重要なむずかしい問題でございますけれども、ただいま税制
調査会でいろいろと、間接税全体のあり方を初めといたしまして、その中における物品税の地位、あり方をどうするかということについて、
検討していただいているわけでありますけれども、将来直接税、間接税、大きく分けまして両者間のウエートなり配分がどうあるべきかということから、問題はまず始まろうと思うのでございます。現在は大体、御承知の
通り、税収全体のうち約半分近くが、直接税以外の広義の間接税と申しますか、流通税も含めましたそういうもので占められているわけでありまして、この形は、世界的に比較してみますと、ちょうど
アメリカと欧州大陸との中間の、イギリス的に近いということが言われているわけでありまして、歴史的に見ましても、わが国では大体そういう傾向をたどってきているのであります。将来直接税なり間接税の税収の伸びというものがどういうふうになって参るかということが、将来の展望としてまず問題になるわけでありますけれども、いろいろ今までの税収の弾力性と申しますか、伸びというものを、国民所得の伸びというようなものと比較して、両者を見てみますと、直接税の方は、国民所得の伸びに対しまして、たとえば国民所得が一伸びるといたしますと、一・七くらい伸びるとかというように、非常に弾力性が強いという傾向を示しております。これに対しまして、間接税全体といたしましては、大体国民所得なり個人消費支出
金額の伸びとほぼ並行的な増加の傾向を示しておる、こういうことが今までの傾向でございます。それを前提にしまして、将来どうなるかは疑問ではありまするけれども、一応その傾向が続くといたしますれば、次第に直接税というものが歳入中に占めるウエートというものが広がっていく、間接税は相対的には地位を減少していくという傾向になるであろうことが予想されるわけでございます。
こういうことが、直接税として租税収入の多くを期待した方がいいのか、あるいは現在のように大体半々を確保することが、やはりいろいろな
角度からいたしまして、国民の負担からいたしましても楽ではあるまいかということから、問題が始まるだろうと思うのでございますけれども、まあ、そこはもちろん
結論は出ておりませんが、そういうふうにだんだんと直接税がどんどん伸びていくということについては、やはりかなりの抵抗があろうと思うのでございます。将来の
自由化とか資本蓄積、企業合理化というような観点からいたしましても、やはり所得税を初め法人税を通じました直接税の負担軽減、合理化ということが大きくクローズ・アップされてくるのではないか。そういたしますと、やはり依然といたしまして間接税というものにかなりのウエートを期待せざるを得ないのではなかろうかということも考えられるわけでございます。そういうふうなわけでございますので、間接税全体といたしまして、さしあたりこの減収なり減税というものを
相当規模に行なうべきかどうかということにつきましては、かなり慎重な
検討を要するんであろうと思うのでございます。そういうふうに間接税全体の将来を一応仮定いたしますとしますれば、もちろん、これは
結論は出ておりませんので、その仮定でございますけれども、その間接税の中で物品税というものにどういう地位を期待すべきかととうことが問題になると思うのでございます。
で、間接税の中の構造につきましては、世界的に比較してみまして、二つの傾向があろうと思うのでございます。
一つは、酒税とか物品税とか砂糖消費税といったように、いわゆる個別の課税物品をとうえまして課税対象とするという個別消費税というやり方と、それから広く浅く、つまり売上税的に、取引高税的に課税していくというやり方と、二つあるわけでございます。で、売上税を国税、地方税を通じましてとっていない国は、おもな国では、わが国とイギリスが見られます、
アメリカは州税で
相当ございますし、欧州諸国は間接税の大部分を売上税によって期待しているのでございます。で、イギリスとわが国は、この点につきましては個別消費税ということで進んでおります。で、これにつきましては、どういうふうに持っていくか問題でございますけれども、やはり
一般に負担が大衆的に及ぶということを避けたいという見地からいたしますれば、よほど特別の租税増徴の必要でもない限りは、今わが国といたしまして売上税というものを設けるということにつきましては、かなり抵抗なり問題が多かろうと思うのでございまして、そういうことだといたしますれば、やはり引き続き現在のような個別消費税という方向で続けられていくであろう、こういうふうに思うのでございます。その点につきましては、間接税につきましても、やはり負担の公平、応能負担ということをわが国では非常にく言われるゆえんであろうと思うのでございます。
そういたしますと、その個別消費税の中で、わが国の物品税は各国に比べてどういう地位を占めているかと申しますれば、わが国の間接税は、酒、たばこという嗜好品、このものに間接税のうちの約半分程度を占めております。
あとは物品税とかガソリン税とか、あるいは関税というものがあるわけでございますけれども、この物品税の占めております地位というものは、来年の
予算でもってもおわかりのように、約七百億足らずでありまして、非常にウエートといたしましては少ないのでございます。これは課税物品は
相当たくさん品目はあがっておりますけれども、今お話しのような大衆的なものはできるだけはずすという観点から、免税点なりというものを
相当程度のところまで引き上げて置いてあるということからいたしまして、物品税の収入といたしましては
相当低い割合を占めておるのであります。イギリスなどのごときは、仕入税というものがございます。これも物品税のようなものでございますけれども、これはかなりのウエートを占めておりますけれども、わが国の物品税のウエートの占める割合はごく少ないのでございます。それが酒、たばこというものの負担と物品税の課税物品の負担とを考えてみますれば、応能負担、租税負担の公平、能力のあるところに負担してもらうという観点から申しますると、実は酒、たばこの方が大衆課税の要素が非常に強いのでありまして、下の方には非常にきつく感ずるというものであります。そういうものによって多くを占めておる物品税は、今申しましたように、免税点の操作とか、あるいはまた物品税の対象の選び方の操作によりまして、かなり応能負担的な
趣旨を徹底することが可能なものでございます。
さようなわけで、われわれの方では、
昭和三十一年ごろの税制
調査会の答中にも基づきまして、いろいろと所得水準に応じた物品の購入状況というものを、消費支出弾力性というようなことでもって調べておりますけれども、それから考えましても、物品税の課税対象になる物品のようなものは、かなり消費所得が大きくなければ買えない、大きくなればそれに手を出してくるというものであります。さような応能負担という
関係から申しまして、物品税というものは非常に適しておるのでございます。さような観点から申しますと、酒とか、あるいはたばこのような大衆課税になりやすいものに、引き続き従来のようなウエートを求めていくよりは、負担の応能
関係から申しますれば、むしろ物品税のようなものに期待していくことが適当ではないかということも言えるわけでございます。もっとも、これに対しましては、また
反対の議論といたしまして、酒、たばこの消費というものは必ずしも
——間接税は、今おっしゃいますような消費抑制という倫理的なそういうようなものを必ずしも意図しておるわけではございませんで、あくまでも担税力、応能負担という
関係が主ではありますけれども、しかし、酒、たばこというものの消費がたとえば伸びなくても、これは国民生活なり国民の保健衛生、あるいはひいては倫理観というものからして、非難されるべき余地は比較的少ない。これに対しまして、物品税は、なるほど応能負担の面では適しておるでありましょうけれども、やはり国民生活の内容を豊かにする、また関連産業の発展をはかっていくことが国民経済全体の発展のためにも、消費生活内容の向上のためにも、望ましいという点もあるわけであります。さような点から申しまして、現在の物品税は、必ずしも奢侈ぜいたく品だけでなくて、家庭用の電気器具製品でありますとかいう工合に、一種の便益品、文明の利器と申しますか、そういうようなものからする性格がかなり多くを占めております。さような点から申しまして、将来の貿易
自由化等になった場合に、そういう関連産業をつちかうという見地からいたしますると、たとえば応能負担的には適しておっても、やはりそういう面から考えましてこの税負担を軽減すべきじゃないかという意見も出てくるであろうと思うのであります。
さような点で、いろいろな問題点を取り上げまして税制
調査会の方にも御披露し、そういうようないろいろの方面から
検討していただくことになっておりますわけでありまして、今ここで私からこういうふうにやるつもりであるというきまった方針を述べる
段階ではございませんけれども、さようないろいろな観点があると。それからまた、従いまして、この
結論の出し方につきましても、なかなか慎重にあらゆる
角度から
検討すべきものであろうと、こういうことだけをとりあえず申し上げたいと思う次第でございます。