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1960-04-13 第34回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十三日(水曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   委員の異動 四月五日委員上林忠次辞任につき、 その補欠として館哲二君を議長おい て指名した。 四月六日委員梶原茂嘉辞任につき、 その補欠として高橋衛君を議長おい て指名した。 四月七日委員館哲二辞任につき、そ の補欠として上林忠次君を議長おい て指名した。 本日委員高橋衛辞任につき、その補 欠として梶原茂嘉君を議長おいて指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     杉山 昌作君    理事            上林 忠次君            山本 米治君            永末 英一君            天坊 裕彦君    委員            大谷 贇雄君            岡崎 真一君            梶原 茂嘉君            木暮武太夫君            河野 謙三君            西川甚五郎君            堀  末治君            前田 久吉君            木村禧八郎君            野溝  勝君            平林  剛君            天田 勝正君            須藤 五郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君   政府委員    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵局主計局法    規課長     小熊 孝次君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○租税及び金融等に関する調査  (貿易及び為替自由化に関する諸  問題並びに財政金融一般に関する  件)   —————————————
  2. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ただいまから委員会を開きます。  まず、御報告を申し上げます。理事上林君が去る四月五日付で委員辞任いたされましたが、四月七日付で再び大蔵委員に選任されました。  つきましては、委員長は、前例に従い、成規の手続を省略し、この際、理事上林忠次君を指名いたします。   —————————————
  3. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) これより、貿易及び為替自由化に関する諸問題並びに財政金融に関する件について、大蔵大臣に御質疑を願いたいと存じます。  御質疑のある方は、順次、御発言を願います。
  4. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 貿易為替自由化に対しまして、大蔵大臣に御質問いたしたいのですが、まあ御承知のように、貿易為替自由化の問題は非常に広範にわたるわけですが、そうしてまたその影響につきましても非常に複雑で、ある面につきましては非常に好影響もある面もありましょうが、またある面では非常な打撃を受ける面もあり、すでに繊維関係なんかでは具体的な影響が出てきておるような状態です。そこで、最初大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、主として大蔵省関係についてお伺いするわけでありますが、その前提としまして、まず、政府は、政府方針としまして、この為替自由化に対するこの基本的な方針というものは大体きまっておるのかどうか。新聞なんかで伝えられるところ、あるいは今度の国会での審議を通じて、一応大まかに大体三年間に九〇%くらいまで自由化率を高めるというように言われておるのでありますが、しかし、自民党内部でも自由化に対していろいろな意見もあるようでありますが、政府の方は、この自由化に対しましてこの基本的な方針というものが大体まとまっているのかどうか。五月中に大体具体策を作って発表するというようなお話がございましたが、しかし、大体の基本的な方針というものはおきまりになっているんじゃないかと思いますので、一応その点から御質問したいと思います。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村さんのお尋ねにお答えする前に、ちょうど国会中でもございますが、人事を少し異動いたしまして、為替局長賀屋君、また主税局長に村山君ということになりましたので、今までベテランで、皆さんに大へん指導もいただいておりましたが、新しい政府委員、それぞれの担当者がきまりましたので、今後どうかよろしく御指導を願いたいと思います。  そこで、ただいまの自由化の問題でございますが、自由化は、御指摘通り非常に広範、その影響度も非常に複雑であります。従いまして、自由化という基本的な考え方はさることながら、自由化を進めていきます場合にはその影響度を非常に考えていかなければならない、かようにもう御指摘の点は十分私どももよくわかっております。  ところで、この自由化が、最近になりまして非常に自由化がやかましく  一部では宣伝されておりますが、申すまでもなく、一昨年と申しますか、一昨年欧州コモン・マーケットが出発して以来、自由化に備えないと日本は非常におくれるのじゃないかということが、一昨年の国会などでも論議の中心であったと思います。当時、政府におきましては、自由化方向をするにしても、なかなかそう容易ではございませんし、またコモン・マーケットあり方どもよく検討して、しかる上でと、こういうことを申したのでありますが、この欧州コモン・マーケット自由化方向はよほど急テンポに進んできたと思います。当時予想された以上だと思います。  で、基本的なものの流れから申せば、先ほど木村さんから御指摘になりますように、ある面においては非常に利益するという、その点を実は非常に強く取り上げておる。だから、原材料にいたしましても、あるいは製品にいたしましても、良質でそして安いなら、そういうものをどんどん取り入れて、国民生活を向上さすということが望ましいのじゃないか、そうすることが経済発展をもたらすゆえんであり、そうして経済発展ができ、生活が向上すれば、そこにまあ平和が確保できるのじゃないか。もう少し突き進めば、国際的な分業というような考え方でもいいじゃないか、こういうような、いわゆる自由経済主義に立っておる人たちに非常に耳ざわりのいい考え方が支配的になってきている。  これには、一面、国際機構それ自身も、IMFにいたしましても、あるいは世銀にいたしましても、ただいま申し上げるような、経済を一国経済じゃなくて国際的視野に立って開発発展させていく、こういう考え方国際機構であるIMF並び世銀は活動してきている、この線がいわゆる自由化の線とぴったり実は合うわけであります。そこで、IMF等会議におきましても、しばしば、各国に対して自由化方向を進めろ、こういうことを非常に強く推進してきたわけであります。しかしながら、なかなか各国には各国産業状態がございますし、国際環境等から見ましてそう簡単ではないので、なかなか世銀IMF考え通りにも進まない。ところが、先例をつけたものが先ほど申す欧州共同体の出発であります。しかし、これが、欧州共同体は出発したが、同時に、これと競争の立場にある自由市場というものもやっぱりそこに出てきている、こういうことでありますから、その自由化だけで欧州を席巻している、こういうわけでも実はないと思いますが、少なくとも国際経済の動きとして看取されるものは、ただいま申し上げるような方向だと思います。  で、わが国おいても、昨年一年を主たる準備期間だと、かように実は思って、貿易為替自由化を進める場合にどういうふうにしていったらいいか、それにはまず第一に、国内では産業体質改善だということで、強く体質改善を叫んでき、同時にまた、為替管理方式についても検討を加えていくということをいたして参ったわけでありますし、また、金融の面においても、できるだけ、国内金融という狭い考え方でなしに、国際的視野に立っての金融調整をはかっていく、こういう考え方で昨年一年を経過したと思います。そこに自由化の基本的な方向というものは一応考えてきたということが言えると思います。  ところで、昨年ごとに強く問題になりましたものは、申すまでもなく、ドル地域に対する貿易差別待遇の問題で、このドル地域に対する差別待遇は、ただいまのように各国通貨交換性を回復して参った現状においては、過去のようなドル地域に対してのみ特別な差別待遇をすることが意味をなさなくなってきた。わが国国際決済上から見ましても、これは意味がないし、また貿易の実態から見ましても、ドル地域に対してのみ特別な制限をしておることは意味をなさなくなってきたというので、これを、まずドル地域に対する差別待遇撤廃をはかっていく、こういうことを実は考えて、昨年まずその点を発表いたしたわけであります。  しかし、ただいまのそのドル地域に対する基本的な差別撤廃するということ、これは建前の上からは一応当然差別がなくなってもしかるべきだと、こういうようには考えられましても、ドル地域に対する差別のありましたことは、ただ単にドル決済という面からのみの差別とも言えないのでありまして、数量的に見ましても、大へんこれは考えなければならぬ点が多いわけでございます。しかし、とにかく一定の地域に対してのみ差別待遇をいたしておる限り、わが国の商品についてドル地域からの差別を受けることにもなる。貿易を伸張さす観点に立てば、これはドル地域に対する差別待遇撤廃すべきであるということでございますので、影響度は非常に大きいが、まずとにかくある地域を限って差別をしておることはこれはどうもよろしくないから、これを取りはずそう、いわゆるドル地域に対する十品目というものが問題になるわけであります。ただいま残っておるのが、六品目というものが実は残っておるということになっておるわけであります。  ところで、このドル地域に対する差別待遇自由化方向としての一番最初に手がけたものがこれでございますが、このうちで一番問題になっておる大豆、あるいは銑鉄、また五月時分に実施しようとしておりますラード等の問題、あるいは皮——牛皮というようなことになりますと、これは国内に対する影響度はなかなか強いのでありますから、ただいま申し上げるような理論だけの、差別待遇をなくするという勇ましい理論だけでもなかなか実行しかねておる。ことに、現実に大豆の問題については、これはまだ結論が出ておりませんが、大体の目標は十月ということを申しましたが、今の審議経過等から見ると、十月実施は非常に困難だと言わざるを得ない状況に実はなっております。そういうように、この一応の目標はきめましても、なかなかそううまくいかない。そこで、政府といたしましては、自由化に踏み切るその第一段として、ドル地域に対する差別撤廃を取り上げる。その他の品種については、五月の半ば過ぎまでに、国会関係もございますので、国会審議が一応終了したというところを目標にして、今後の進め方をきめていく、こういうように実は考えておるのであります。  ところで、非常に問題になりますのは、ただいまのお話にもありましたように、三年間に九〇%自由化する、こういうことが一応の非常にはっきりした目標であるかのように言われておる。この点が一番問題が強く財界にも印象づけておるようであります。民間の団体で研究したところでは、四ヵ年間だと言っておるにもかかわらず、政府は三年間だ、さらに一ヵ年短縮して自由化をしようとしておる。はたしてそれまでに準備ができるのか、こういうことを申しておるようであります。この点は、私ども説明を加えておかないと、誤解を受けるのではないかと思いますが、民間で言っております自由化の四年間で実施したいというものの中には、これはほんとうにいわゆる完全自由化とでも申しますか、主食ももちろん自由化対象になっておるようでありますし、為替の面におきましても、完全な通貨交換性を付与するということ、これはちょっと私どもただいまの状況では考え得ない実は問題であります。農林大臣もしばしばこの国会を通じて申し上げておりますように、主食についての自由化はもちろん考えておりませんということをはっきり実は申しておりますが、これは三年や四年でそういう問題になろうとは考えれらません。あるいはエネルギー資源についての問題にいたしましても、この国会では石炭の問題について非常に、政府も、また財界おいても、また国会おいても、これも石炭問題が大へんな問題だということで慎重に審議しておる最中であります。そういうことを考えてみますと、エネルギー資源に対する自由化ども容易なものでないと考えられる。しかし、政府はしかも三年と言っておるではないか、こういうことで、ここに非常なポイントを置かれ、これを強行するというか、三年間にそういうことまでやるということをもし政府の一部が考えておるかと言われまするならば、そういうことを考えておりませんということを、はっきり実は申し上げたいのであります。  ただいま一応見当をつけておりますのは、今のドル地域に対する十品目——もう十品目でなくなっておりますが、六品目自由化、それから来年の四月を目途として今計画しておる原綿原毛、そういうところをやれば一応大きな自由化はそれで動き出すのだ、こういう考え方でございまして、それまでにいろいろの品種によりまして、影響度の小さいものについては貿易自由品目につけ加えていく。いわゆるコーヒー豆その他の三百五十品目を加える。あるいはまた、やや影響度のあるものについては、まず先にグローバル化していくとか、いろいろな処置をとっていくということでありますが、具体的に今問題になっておりますのは、ドル地域に対する制限撤廃、それに対する対策、さらに原綿原毛というものを大体の目標をきめておりますので、それに対する諸準備を進めていく、こういうことであります。  本来から申しますと、こういうものが三カ年とかあるいは四ヵ年で計画的に遂行できれば、これは一応よるところがあるということでいいことだと思いますが、私どもの実際の実務の上から申しますと、為替の面でも、貿易の面でも、この影響度が複雑であり広範であるというところから見ると、いわゆる急激な変動は与えたくない。そういう意味から申せば、漸を追うて影響度の少ない方法で進めて参りたいと、奥はかように考えておるわけであります。  たとえば為替の面で申せば、為替自由化の問題にいたしましても、まず最初に取り上げられるのは経営取引であり、資本取引の問題はこれは第二にする。これは資本取引についての自由化というものは最後までつきまとっていくだろうと思いますが、経営取引の面におきましても、まずその範囲を少しずつ拡大していく。最近までとりましたものには、たとえば外国へ出て参ります場合の持ち出しのドル制限緩和する。言葉緩和でありますから、非常にけっこうのようでありますが、わずか在来一日三ドルであったものを五ドルだけ緩和したので、いわゆる制限緩和というのにしてはあまりにも少額ではないか、こういうことになると思いますし、あるいはまた外国送金等についての範囲等も、これはまだそれを、緩和という言葉は使っておりますが、その緩和度合いたるや、まことに期待に、反するものがあるのではないかと思います。しかし、これは私ども考え方で、なしくずし的にこの自日化方向に進めていくことが政治の実際として、経済あり方としては望ましいことじゃないか。こういうことでないと、今の実情から申しますと、なかなか実情に耐え得ないのじゃないか。  一例をとって申せば、たとえば、ことしの一月からラワン材自由化するということにいたしました。このラワン供給地域が非常に限られておるものだから、こういうものを一月に自由化したからといって、影響は大してないだろうと、こういうことで、政府は相当楽に見ておりましたが、自由化した結果どうなったか。一時的ではあったが、原産地においてはラワンの値段は非常に高くなった、買いつけが非常に活発になったと。そういうような事態も起こることを考えて参りますと、これは十分考えていかなきゃならない。非常に程度の低いものから順次拡大していくということでなきゃならぬと、かように実は考えておる次第であります。  そういう意味で、今非常に誤解を受けておりますのは、三ヵ年に九〇%という言葉が非常に問題を引き起こしておりますが、三ヵ年という期間についても、民間で言っておる四ヵ年とは模様が違う。それから、非常にわかりにくいのですが、私にもいわゆる自由化率というものの感じがびんとどうしても来ないのです。専門家に、一体自由化率というのはどういうことか、九〇%とか九五%と言っておるが、これは一体何を意味するのか、これはどうもよくわからないと、こういうことを実は申しておるのですが、これなども非常に誤解を受けておる点じゃないかと思います。問題は、自由化方針ははっきりさせますが、ただいま申し上げるように、実施にあたりましては、順次漸を追うて範囲を拡大していく。これはただ、範囲を拡大すると申しますか、品種を取り上げるばかりでなく、その取り扱い方の内容においても漸を追うていくと。これはただいま御披露いたしました送金の自由というような範囲緩和というようなものでも、非常に程度の低いものからやっていくということを御了承いただきたいと思います。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今、大蔵大臣の御説明で、政府貿易為替自由化に対する考え方につきまして、ややわかってきたようなんでありますが、今の御答弁を伺ってみまして、当初の考え方と最近の考え方の間には、相当な変化が生じてきておると思うのです。具体的にいって、当面は非ドルAAグローバルAAに切りかえる、対米の差別品目ですか、これを自由化する、それが来年の四月ごろまでですが、それからの問題につきましては、かなり慎重に段取りをつけていかなきゃならぬというように変わってきているように思うのです。当初は非常に何か、実はアメリカからの、よく普通外圧と言われておりますが、強い要望があって、特にIMFガット総会等自由化を非常に強く要望されて、政府は非常にあわてて、急遽自由化に対する態度をきめなきやならなくなったという点が、自由化を促進せしめている要因である。国際的側面国内的側面を十分に検討する余地がなくて、一応自由化に踏み切らざるを得なくなった。そこで、あとでだんだん検討してみると、そんな簡単なものではないということがわかってきたのじゃないかと思うのです。まだ、政府態度も、積極的に進めるのか、あるいは消極的なのか、そのふんぎりがやはりついていないと思うのですよ。  そこで、もう少しその辺伺っておきたいのですが、たとえば自民党自体でも、意見はまとまっていないように新聞に伝えられているのです。自民党貿易為替自由化専門委員会におきましても、まだはっきりした結論が出ていないように聞いております。一番自民党対策がよそよりもおくれております。その事情は、新聞に伝えられておるように、河野氏がヨーロッパ諸国をずっと回って見てきた結論として、世界経済欧州共同体に見るようなブロック化傾向をたどっている、自由化アメリカ圧力にすぎない、こういう判定に基づいて、アメリカ圧力によるものならば、何もそんなに急いでやる必要はないのじゃないか、こういう意見があって、そうして今までの政府の急ピッチで自由化をやるというその考え方に、一つの何というのですか、ブレーキをかけたような感じを与えているのです。  私も、いろいろ専門家に聞いたり、調べてみたのですが、大体ヨーロッパの方は、御承知のように、一九四四年のブレトン・ウッヅ、四七年のガットですね、そこでブレトン・ウッヅの方は為替自由化ガットの方は貿易自由化というものを促進することをきめたわけですけれども、それに基づいて、急速にいわゆる自由化の段階を終わって、最近では関税政策中心になっている、そうしてブロック化傾向にある。共同市場もそうですし、イギリスの方のいわゆる自由貿易連合についてもそうである。そうなると、自由化は世界的な態勢であるということを、今まで何とかの一つ覚えのように言ってきておるのですが、なるほど世界的態勢ではあるのですけれども、世界的な情勢はもうかなり変わってきておる。ただ一本調子に自由化方向へ進んでいるのじゃなくて、一応自由化は完了して、ヨーロッパの方では、今度は関税政策中心にしてブロック化傾向にある。そういう世界経済における自由化の問題に対して、十分に検討されていなかったのじゃないか。ですから、河野氏の意見一つの着想です。これはやはり参考にすべき点はあると思うのです。そういう認識が十分でなかった。最近になってこの点に気がついてこられた。そうして態度をきめるについて、そういう意見一つ要素として、これを織り込んで考えるようになったのじゃないか。  また、国内的な要素につきましても、これまでいわゆる貿易、特に外貨割当ですね、FA制より関税に変わって、非常に厳重な保護政策をとってきた。あるいは為替、あるいは外資等について保護政策をとってきました。その保護政策自体がまた矛盾に逢着しまして、通産省でいただいた資料の中にも適切に表現されております。その保護政策に伴う非経済性、すなわち価格のひずみ、生産資材消費資材の割高、輸入制限物資の差益の拡大、こういう従来の保護政策による日本経済の非経済性矛盾ということが出てきて、特に設備過剰の問題とか、あるいは原料高の問題、そういうことから、国際経済競争力が非常に弱くなってきている。また、自由化するにつきましても、さらに国内的条件としてのマイナス面は、御承知のように、金利高である、あるいは企業の資本構成におきましても他人資本が非常に多い、自己資本は少い、あるいはまたヨーロッパと違って共同市場というものがない。そういう非常なマイナス面がある、国内的条件、見ましても。  そういう国際的な、あるいは国内的な、自由化に対する最近の情勢変化等、あるいは国内面におけるいろいろな自由化をやる場合にマイナスになる諸要素というものを、十分に検討されていなかったと思いますね。ところが、最近になってだんだんと各省においてもよく検討し、財界の方からもいろいろ意見が出て、あるいはまた労働組合の方からも、農村からも、中小業者からも、いろいろまあ意見が出て参りまして、そんなに簡単にこの為替貿易自由化というものは、従来言っていましたように、三年間に九〇%の自山化に持っていく、そうして為替面おいても円為替の導入を、通貨交換性をやる、あるいはまた資本取引自由化につきましても、外資法為替管理法に吸収していわゆる対外経済法というものを作る、そういうふうに簡単になかなかいかないじゃないかと思うのです。  そこで、御質問いたしたいのですが、この自民党内でも、なかなか意見調整が十分につかないで、そして自由化に百反対とまではいかなくても、非常に消極的な態度をとる、そういう人たちに対していろいろ説得工作をやって、このために企画庁案のうち、二年間で七〇%の自由化を実現する線までは認めるが、それ以後、つまり三年目から自由化対象となっている品目、すなわち農業、石炭、石油などについては十ヵ年計画くらいの長い期間で処理していく、それから第二は、また自由化のしわ寄せを受ける部門に対しては、毎年千五百億円くらいに上る関税収入相当部分をはたいて保護政策をとるなどの案も用意して、その自由化反対ないし消極論者説得を試みていくというように新聞では伝えられておるのです。こういう事情もあって、一応政府では自由化に対する態度がきまっているように見えますけれども、まだしっかり私はきまっていないと思うのですね。非常にまだ動揺していると思うのですよ。これは動揺するのがあたりまえだと思うのです。自由化の問題が起こってから初めて、国民はその影響が非常に広範であるということに気がついて、大体昨年の九月以前あたり、財界なんかでは自由化なんという言葉一つも出ていなかったのですよ。景気が過熱するのじゃないかとか、それで産業界、金融界、自主的に調整して、過熱しないように、あまり行き過ぎた投資をしないように、そういうことが論議の中心であったのですね。それで、九月ごろからIMFの総会、カットの総会あたりから急速に自由化の問題が出てきた。従って、なるほど政府は、一昨年十二月にヨーロッパ通貨交換性を回復してから、一応自由化に対する方針審議されたようでありますけれども、しかし、その後具体的には何ら手を打っていない。実際には手を打ち出したのは、アメリカから非常に強く要請されたということが根拠になっていると思うのですね。ですから、私たちが心配するのは、まだ政府自由化によってどういう影響が出てくるかということを十分に、各産業別に、農業なり、あるいは工業なり、あるいは中小企業なり、あるいは労働者なりに、どういう影響が来るかということをまだ十分に読んでいない。読みはまだできていない今は段階ではないかと思うのですね。そういう実情ではないかと思うのですが、その辺はどうなんですか。そうして五月中に大体具体的なスケジュールを組んで発表されるということを言われましたが、それはどの程度まで今段取りがついて、大体五月中に具体的なスケジュールを組んで発表されるのか、特にその中で大蔵省関係につきましては、もうかなり作業も進んでいるんじゃないかと思われますので、その点についてお伺いしたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府の決意のほど、いろいろ聞かれるようでございますが、そこで一昨年来の経過をやっぱり、少し長くなりますが、もう一度振り返ってみたいと思います。  今御指摘になりますように、影響度が非常に大きいと。たとえば、その一つの例をとってみましても、原綿原毛等の自由化をやる、こういった場合に、繊維関係も、原綿原毛を使っておるだけならよろしゅうございますが、直ちに化繊は一体どうなるのか、パルプはどうなるのか、硫黄はどうなるのか。パルプの自由化をはからなければ、化繊関係は困る。しかし、今の日本のパルプ産美は自由化可能なりや、こういう問題になってくる。そんなもの自由化されたら、日本のパルプ産業はみなつぶれてしまう、こういうことで、これはすぐ足踏みをするというか、ブレーキの方の問題があるわけです。あるいはまた、その糸を作っておる方の紡績、十大紡初め新々紡程度のものなら、自由化に対処するだけの資力があるか知らないが、今度は製品を扱う方は一体どうなるか。幸いにして糸安の製品高で推移してくれれば、いわゆる中小企業は主として織物の方をやっておりますから、その方には比較的楽だと言えますが、とにかく中小企業が、繊維関係の方はそうはいかないだろう。ことに新しい技術を導入する、中小企業がこれから技術を導入して拡大していくという場合に、技術導入は中小企業の手にはなかなかおえない。大企業でやる。そうすると、せっかく国内の中小企業をこれから拡大していこうというのに、技術導入の結果非常な影響を受けて中小企業はつぶれてしまうんじゃないか、こういうような議論もある。その自由化影響度の大きいことは、非常に広範であり複雑なんです。  そこで、この自由化を進めることについては、一部非常に憶病な面もある。なるべくそういうことはやらないでくれ、言いかえますならば、今の制度は非常に温室育ちというか、これだけめんどう見てくれる、そうして経済事情によって為替の方で制限してくれれば非常に楽だ、こういうような話になってなかなか、自由化の抽象的議論には賛成されても現実はなかなか踏み切らない、いわゆる卵が先か鶏が先かという問題で、しょっちゅう議論している。これが昨年中における大きな争いであったと思います。これはもう木村さんはその方の専門家だから、そういう事情のあったことはよく把握されておるに違いないと思います。  で、また自由化を進める方の一番強い点は、必ず言っていることは、原材料も、安いものがあればとにかく原材料を持ってくればいいじゃないか。そうしてその原材料の安いものをどんどん入れる、進んだ技術があればそれを取り入れて、そうして拡大方向へ役立たせればいいじゃないか。自由化をやらないばかりに、原材料も安く入れたものが国内ではみんなプレミアムつけてやられておるじゃないか、大豆しかり、あるいは原毛だってそうだ、そういうプレミアムというものは一体どうなるのか、だれが利益を取るか、こんなのも自由化しないからなんだ、こういう話です。あるいはまた、自由化をしないと、こちらから出ている品物が必ず、報復関税とまではいかぬでも、対抗関税を課せられる、これでは産業の拡大に役立たないじゃないか、こういう意味で非常に強い主張が出てくる。  そこで、政府は、一体、卵が先なのか鶏が先なのか、そんな議論をいつまでしておってもしようがないじゃないか、とにかく政府が踏み切って方向を示すことが先なんだ。そこで、準備がなるほど不十分だ。不十分だが、とにかく大よそこの程度期間、半年なり一年なり、一年数ヵ月先の目標を立てれば、財界も必ずそれに協力できるんじゃないか。それは、もしも日本自由化に踏み切らなかった場合に、一体どういう処置を受けるだろうか、そのことを考えると非常な危険がある。今のような国際経済で推移していくなら、これは国内産業としては非常に楽なんだから、このままの方が楽だが、もしも自由化に踏み切らない場合に、その大勢に押し流されたときに一体どうなるのか。日本経済の孤立化ということが考えられる、そういうものを考えざるを得なくなる。それではいかぬ。孤立化はもう絶対に避けなければならない。そこで、われわれも意を決して自由化方向へとにかく踏み切る、それで一つ財界にも決意していただきたい、こういうのが昨年の暮れの政府態度でございます。  そこで、今言われますように、自由化に踏み切ったというが、内容がないじゃないか、こういう点を今木村さんからいろいろ御指摘を受けておる。その通りでありますと申し上げるのが、現段階であります。  そこで、政府は、そういう意味で、まず政府の思想統一をする、こういう意味から、三十五年度の予算を編成する場合に、やはり編成の基本方針には自由化方向へ行くんだということが一つの前提になって、予算の編成の柱の一つにしたつもりでございます。自民党自身の内部におきましても、そういう意味では相当の賛成をいただいておる。そこで、おそまきではありますが、ことしの一月十二日に政府自身は自由化に対する態度をはっきりさした。それが、先ほど申し上げますように、対ドル地域に対する十品目自由化方向、さらにまたコーヒー豆やその他について三百五十一品目ばかり、これを四月以降に、これはまだ発表しておらないのもございますが、比較的軽微なものをFAからAAにするということですでに発表した。また、一部のものはグローバル化するということ、それからその他の処置についてはいかに処理するか、国会が済んだ後にさらに相談していこうという一応の段取りをきめておるわけです。  そこで、さしあたっての問題として、政府は予算の面では一体どうなったのか。ただいま申し上げるような自由化の基礎的な問題としての予算は、財政投融資と予算とあわせて一応考慮しておる。ことに新年度になります外貨予算等については、自由化を予想いたしまして、一応、今の替為管理の間ではあるが、予算は相当たっぷりつけておこう、そうして将来自由化された場合にも、あまり市場に混乱を来たさないようにしようということで、外貨予算の計画も上期予算を一応作ったわけであります。今後の問題としていろいろのことを考えていかなければなりませんが、基本的にはただいま申しますような考え方。  そこで、ただいま河野君の話が出て、河野君の考え方一つのやっぱり卓見じゃないかと言われる。なるほど、欧州コモン・マーケットの姿を見ますと、自由貿易市場といいましたか、あの方との関係から見ると、これは競争の立場にある。しかしながら、コモン・マーケット内部においてある程度の国際分業が進みつつあることは、その事態は承認せざるを得ない。それをもっと拡大していきたいというのが、コモン・マーケット考え方のようであります。また、最近アデナウアー総理が参りましての話等を通じて見ましても、もちろんあれだけでじっとしている考えは毛頭ない、世銀、第二世銀の構想については積極的な協力の意図を持っておる、こういう意味で、私ども考え方とも実はこの点は一緒のように思う。  もう一つは、世銀やあるいはIMFが、先ほど、ブロック化でなしに、その協調の面を非常に強く主張しておるということを申しましたが、これはまあいろいろな言い方があると思いますが、それはお前の考え方甘いと言われるかわかりませんが、少なくとも第二次大戦は経済ブロック化が大きな戦争誘発の原因だったということ、こういうことまで指摘して私は差しつかえないんじゃないか、間違いないんじゃないか。今世界の平和を確保しようという面から見ると、経済ブロック化ということは、これは非常に警戒しなければならないことだ、かように私どもは考えております。そういう意味で、まず昨年のIMF総会等おいても、そういう意味の発言を私自身もいたして参ったつもりでございますが、これはあすこに集まっている連中の考え方も、そういうブロック化、あるいは強い者勝ちというこの考え方には、お互いに自粛自制しようという気持のあることは見のがせない事実だ。そこで、第二世銀のような考え方が出てくると思う。  政治的な関係から、あるいはわが国産業自身のことを考えて参りました場合に、非常に極端な、突き進んだ自由化に耐え得ないことは、今の状況から見ると、私どももその事実を認めます。ことに農産物、農業関係、あるいは中小企業の面では、それは強いものもありますが、いろいろ考えさせられるものがある。そういうようなことを考えてくると、いわゆる自由化だといって、米だろうが何だろうが、安いものがあれはどこからでも買ってこいという議論には、どうしても賛成しかねる。これは自由化をいたしました欧州共同市場内でも、農産物市場についての自由化は最後まで残ってきたものなんです。あるいは酪農製品等についても、幾ら他のガット加盟国等から要望をされても、これは簡単にそういうものを自由化するということはなかなかない。もしもそれを自由化するなら、国内の所得なり、あるいは産業育成のために、特別な助成保護政策をとる、とらざるを得ない、こういうことに、みなどこの国でもやってきているのです。河野君の、一部の見方として自由化々々々言っているけれども、それは強い者の勝手な言い分なんだ、そんなものについていけば大へんひどい目にあう。——これは、対策の面から、もちろん私ども注意しなければならないことだと思います。がしかし、少なくとも大勢自身は自由化方向へ強く行っていることなんです。これだけは間違いない。もしもこれを無視し、そうして今のままで続けてやっていき得る、こういう自信を持つ人があるなら、これは別でございますが、これは私は絶対にないと思う。それこそ反対にひどい目にあっちまうというのが、今の状況だと思います。  今の貿易関係等から見ましても、ただいま木村さんが関税政策に触れられましたが、現にもう対米貿易でも、日本商品がたくさん行くといえば、日本商品に対して数量制限をしたり、あるいは特別な関税措置をとろうという動きが、アメリカ自身にもあるのですから、一国の産業を拡大していくというか、保護すること、これはもちろんだが、同時に、国際経済協力といいますか、そういう面からはやはり自由化方向へ行くということにならざるを得ない。私は、河野君の考え方を別に批判するつもりはございません。ただ注意を喚起される意味おいての話としては、これはもちろんそういう点は対策の面から考えべきことだと思います。河野君自身は、むしろ過去においては非常な自由主義者で、かつて農林大臣時分には、米だって外国から買ったらいいじゃないかとまで言って、これはどういう環境のもとで言われたかわかりませんが、新潟でそういう話をされたというので、当時私どももいろいろ党内で論議したことまであるけれども実情等から見ると、今はそういうものじゃない、こういうように私は思います。  だから、その準備ができるというか、国内産業を強化する、こういう意味で過去努力してき、今日それが強化される。ただいま申したような弱い面については、どうしても保護していかなければならない。今大豆についての問題が残っておりますのも、大豆については、これはもうアメリカ大豆と、日本大豆と比べれば、品質も問題にならない。用途にもよりますが、これは非常に品質も違っている。製油——油をとるのには、これはもう絶対にアメリカ大豆でなければ、日本大豆じゃだめだ。値段も、これは非常に日本大豆は高い。しかし、今まで為替管理をやっている姿から見れば、大豆はどうなるか、いろんな批評が出ておりますが、私どもがよく聞くところでは、小さな製油業者、——油をとっておる業者などは、正直に大豆を輸入して油をとるよりも、その大豆をプレミアムつきで売った方がよほど楽だと言っておる。大体トン当たり一万円オーバーするか前後くらいのプレミアムがついているのじゃないか。そういうことを考えてみますと、自由化の弊というのはそこらにある。しかし、こんなものを簡単に自由化したら、一体日本の国産大豆、農家収入がどうなるのか。この農家に対して特別に大豆の価格を支持価格として維持してやって、農家の収入の確保をはからなければならない。ことに、大豆については非常に苦しい思いをしたことがございます。かつて、この前の神武景気の際ですが、大豆自由化をはかるということで、そうして関税を一〇%課す、そうして大豆品種改良その他を指導する、こういうことで、あれは一割関税を課した。ところが、その後国際収支か非常に悪くなったということで自由化を取りやめたということで、大蔵省としては、関税を一〇%とっているという状況にはなっておりますが、この自由化は取りやめた。一ぺん決定したことであります。  ただいま、自民党内は自由化については非常におくれているのじゃないか、こういうお話でございますが、私は必ずしもさようには考えておりません。自民党自身も自由化については積極的にいろいろ相談を進めておりますし、基本的に自由化するという、もしも自由化しないときにはとんでもないことになるということで、いろいろ考えておられるようであります。ただ、主食だとか、あるいは最近ようやく採算点に上がったとみられる酪農製品については、これを自由化することは非常に危険だ、これについての対策は十分考えろというのが強い、要望だと思う。そういう点も今後ほぐしていくことになるだろう。従って、十ヵ年計画による自由化というようなお話、あるいは千数百億に上る保護資金を出せというような話は、まだ具体的になっておるとは思いません。  政府にいたしましても、ただいまから十ヵ年計画を立てるということは、私は自由化方向としては望ましいことじゃないのじゃないか、実はかように考えております。今やるような方法、いわゆる対ドル地域に対する十品目なり、また一月十二日に予定いたしました自由化品目の追加なり、あるいはグローバル化の品目の追加、こういうようなことがまず行なわれるべきじゃないか。比較的そういうことは五月末の政府会議おいては取り上げて実施に移していける、かように実は思っております。今一番問題になりますのは、何と申しましても、銑鉄の方も原料炭等の関係があり、これも考究しなければならない問題があると思いますが、銑鉄より以上に大豆の扱い方が一番の問題だ。  大豆は、御承知のように、ことしの大豆といえば十月まで大体収穫が終わり、市場に出回るということで、ことしの大豆についてはあまり影響のない時期というので、一応十月を予定したわけでありますが、もしもこれをやるとすれば、どうしても特別な関税措置をとるか、あるいは関税措置をとった上で、しかも国内の農村の収入確保の道を講じなければならない。そういうことになると、場合によれば予算措置を必要とする。場合によればではない、必ず予算措置を必要とするということになりますが、そうすると、やはり国会審議をいただかなければならぬ。この国会中にそれではそういうものを出す考えがあるかというと、ただいま——農林大臣もきょうソ連に出かけるばかりであります。農林大臣の不在中にこの重要な問題が結論が出るとは考えられない。そういうことを考えて参りますと、大豆についての自由化は非常に困難な状況になるということを私ども考えるわけでございます。  ただいま言われますような諸点について考えていきます場合に、とにかく方向を踏み出さないことには、今の温室経済というか、非常に働きいい状態から出ていくことはまず困難だ。しかし、出ていかなければ一体どうなるのか。いよいよふやけてしまうのじゃないか。おふろからいつまでも出てこないで、ふやけてしまう。それじゃ困るから、出ていくという方針だけはきめる。出ていっても、かぜをひかないようにしようというのが今の考え方であります。そこで、貿易そのものについてのAAに取り上げる品目の追加なども、そういう意味で拡大して参りますし、上期の外貨予算でもそういうものを一応想定して外貨予算を作っております。なお、FAのもの等についても、今後自由化方向に行くのに差しつかえないように、一応相当たっぷり実は予算は見たつもりであります。ただ、予算はたっぷりつけてありましても、国内実情等からその予算を使わないということになると、今の自由化方向に支障を来たすじゃないか、実はかように考えるわけであります。  ところで、貿易の問題は別として、そのうらはらをなす為替の面でございますが、為替自由化についても、方針は一応すでにきめて、一部実施したものがある。しかし、実施はしたものの、項目としてはいかにももっともらしく聞こえますが、程度は非常に低いものであります。たとえば、為替集中制の緩和ということを申しましても、ただ単に一旬の期間を延ばした、わずか十日延ばしただけであり、あるいは交互計算についても、これを利用できる範囲を拡大するという方針はきめましたが、これは支店があることが前提で、これまたよく実情を見てやっておりますから、支店その他がそう簡単に進出ができるという状況でもございません。まだまだ程度の非常に低いもので項目は取り上げた。また、経営取引の一面にいたしましても、非居住者円勘定の設定という問題がございますが、これは取り上げるということは申し上げておりますが、まだまだ具体的にはその内容は決定されておらないという状況であります。これが一部決定をいたしますれば、さらに自由化方向に強く踏み出したということになるだろうと思います。あるいはまた、国内の株式取得、あるいは社債の取得等について、またその取得したものの送金、あるいは配当送金等についての緩和方法をまず採用することにいたしましたが、これは、ただ政府が関与しないというだけで、日銀自身がそういうものを取り扱っておる。たとえば在来の株式の取得については五%までということを言っていたのを、今度一〇%、在来五%と八%という二つがありましたが、今度それを一〇%と一五%ということにするとか、あるいは社債の方は一口一万ドルというようなことで、一応項目としては取り上げておりますが、金額の自由な範囲は非常にまだ制限されておる、こういう実情でございます。そういう方向で順次拡大していく。ケース・バイ・ケースでやっていくということであります。  それで、もう一つ今のお話の中にありましたので私どもが今後取り上げていかなければならない重要点は、関税政策の面でありますが、関税の問題も、この前予算委員会等でお尋ねを受け、お答えをいたしましたように、今度は関税品目も全面的に改正していく、ブラッセル方式を採用しようということで今検討を始めましたし、また関税率そのものについても全面的に一つ検討を加えていく。そのためには、関税審議会を中心にして、そして常任委員会制度で十分検討していきたい、かように実は考えておる次第でございます。  お話のように、非常にむずかしい問題であることは私どももよく承知いたしております。軽率なことはするつもりは毛頭ございません。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの大豆につきまして、やはり予算措置をする必要があると言われましたが、それはどういう予算措置をするか。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大豆は結局、国内大豆外国大豆との値開きが相当ひどいと思います。それで、これを自由化いたしました場合に、外国産の大豆がうんと入れば、国内大豆は価格維持は困難になる。そういう意味から、そういうことがあっては農村に対してその所得確保という点に支障を来たすわけでありますから、それに対する対策を考えなきゃならない。いかなる方法をとるがよろしいか。それが直接この価格維持の意味おいても、支持価格で政府買い入れというようなことにでもなるなら、これはまた特別な食管会計等の処置が必要でありましょうし、あるいは積極的な補てん方法でも考えられれば、またそこに一つの問題が起こるわけです。いずれにいたしましても、まだ結論は出ておりませんが、その結論の出方によってはそういう予算措置を必要とするんではないか、実はかように考えております。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に稲田農林大臣は、この大豆自由化の場合、三つの案を考えているということを言われましたが、いわゆるその中で瞬間タッチ方式なんていうこともあったのですが、それはやっぱりガット等の関係でいろいろ問題があると思うのですよね。そこで、結局、賦課金をとってそれを財源として政府日本の農村の大豆を買い上げると、こういう処置ではなく、さっき補助金というようなことを言われたようですが、そういう形で別途予算措置を講ずるということなんですか。それで、今度の国会には間に合わないから、次の国会にその予算措置をつけて出すと、大豆自由化をやるのは来年の四月以降になるわけですな。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会審議にはどうせ、この関税といいますか、関税引き上げという方向へ行けば、関税定率法の御審議をいただかなきゃならぬでしょう。これは今瞬間タッチ云々という議論が出ています。まだ、関税引き上げでいくか、瞬間タッチ方式でいくか、それはまだきまらない。きまりませんが、そのいずれにいたしましても、ガット関係を生ずるといいますか、相手国との話し合いをしなきゃならぬ問題であることは、これはもう先刻御承知だろうと思います。しかし、そういう立法手続を必要とすることがありゃしないか、また支持価格維持、農村の所得確保というような方法の場合にどんな結論を出されるか、ここに一つの問題がある。その結論の出し方いかんによっては、やはり予算的措置を必要とするだろう、こういうことを実は考えるわけであります。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、大へん懇切丁寧に御答弁せられるので、非常に時間がなくなってしまったのですが、あんまり僕ばっかり質問しているの恐縮なんですがね。そこで、なるべく集約的に御質問いたしますが、結局、自由化は全体日本経済にとってプラスなのかマイナスなのか、どういうふうに読んでいるのか。一応短期内にはこれは苦痛があるけれども、これを忍べば、長期的に見ると日本の輸出が伸びるので、これはプラスになるんだと、こういうふうに説明されておりますが、私はそんな簡単なものじゃないと思う。先ほど大蔵大臣も言われましたが、もしここで日本自由化しなければ孤立化する、そこに問題があると思うのですね。結局、これをやらなければ、アメリカ日本の商品に対してまた輸入制限する。アメリカばかりでなく、ヨーロッパ共同市場等も日本品について制限する、そういうふうに思うのですが、ですから、自由化をやっても今よりも貿易が減らないということであって、積極的にふえるということは、やはり私はここであまり期待を謝せることができないと思うのです。  それで、積極的にふやすためには、やっぱり、たとえばガット三十五条の問題もあるように、日本の低賃金の問題をやはり解決していかなければ、日本の輸出は、三十五条の撤回も困難だし、イギリスだってイタリアだって、日本の低賃金、チーフ・レーバーを理由にして差別待遇をしているのです。もっと積極的に日本の市場を伸ばそうとするには、私は国内の方の低賃金の問題を解決しないといけないのじゃないかと思いますがね。それから、もっと積極的には、この日中貿易、こういうものを打開をはかるとか、そういうことをしていかなければならないのじゃないか。このままの、さっき大蔵大臣の言われたようなスケジュール、考え方自由化をやっていたのでは、現存日本のいわゆる一番ガンである経済の二重構造というものは私は深まると思うのです。深まりますよ。  で、自由化を通じて二重構造を打開する、あるいは所得倍増計画を通じて二重構造を打開すると言いますけれども、それは逆であって、むしろ私は今のようなやり方だったら、これは二重構造はかえって深まります。そして結局、自由化のしわはどこに行くか、中小業者と労働者ですよ。日本の今までの産業家の企業努力によってコストを下げるといっても、それはそういうふうになっていないのです。結局、もう下請の方にしわ寄せする、下請が中小業者の方にしわ寄せする、中小業者もやはり労働者にしわ寄せして低賃金になっていく。結局、最後はそういう形におい自由化の問題を解決されていく。そうしますと、日本が低賃金だと、そういうことで自由化をやったが、じゃ貿易は伸びるかというと、今やらなければアメリカや諸外国日本に報復的に輸入制限するからやらざるを得ない。これはやらざるを得ないでしょう。しかし、やったからといったって、積極的にそれはプラスになるというふうには私は考えぬ。積極的にプラスにするためには、こういう今のようなやり方の自由化ではいけないのじゃないかと思うのです。  そこで、今後この自由化をやっていく押合に、特に大蔵省関係は非常に重要な役割をしなければならないと思うのですね。国際収支が赤字にならないように、円価を堅持するために、一般的に財政金融政策というものが非常に重要になる。また、具体的には関税政策でしょう。為替管理の問題、あるいは税制の問題、あるいは資本取引自由化の問題、非常に広範にわたる。ですから、大蔵省の役割というものは非常に重大なものですね。そこで、たくさん問題はございますが、私ばかり質問しても恐縮ですから、そういう点に関連しまして、今後大蔵省が財政金融政策をやる場合に、それか、具体的には関税なり、あるいは為替管理なり、それから資本取引自由化を進めるについても、税制を進めるについても、今私が申し上げたような二重構造を是正するという線においてやらなければいけないのじゃないかと思うのです。税金の問題でも、歳出面においては、税制の問題がある。税制面から二重構造をあれしていかなければならぬ。歳出面については社会保障の問題、そういうものがある。それと関連して、防衛費の問題も出てくるわけですが、そういう点について大蔵省の今後の役割というものは非常に、自由化と関連して、重要なのでありますから、そういう点について大蔵大臣の御所見を承っておきたいのです。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、いろいろございますが、先ほど来の問題は大体政府考え方の経過の説明ですが、大へん長く説明いたしましたが、恐縮でございます。これから先の問題になると、今の木村さんの問題になれば、だいぶこれは私ども考え方と違っておる点もございます。  まず、問題の違わない方から申しますと、この税については、すでに御承知のように、一昨年から始めております税制審議会がございまして、全面的に税制に検討を加え、ことに企業課税のあり方については一つの重点を置く施策として検討を進めております。それで、この結果についての一つ御批判をいただきたいと思います。  それから、第二の関税については、先ほど申し上げますように、関税品目並びに関税率について再検討をしていきたい。これはもう大がかりのものとしてやっていくつもりであります。  金融の問題といたしましては、最近の傾向といたしまして自由化方向から見れば、中央銀行の持つ機能を拡大してくれという非常に強い主張がございます。しかし、金融についての最後の責任は政府が持たざるを得ないだろう、かように思いますから、中央銀行法の改正そのものについてはまだ結論は出しておりません。いろいろ評論家等は、今の中央銀行法自身は戦時中の遺物であるし、これは政府が中央銀行を自由に左右するという考え方で作っておるが、最近の傾向から見れば、金融の自由性、中立性というものをもっと大きく取り上げろということを言われますが、最終的に政府が責任を持つということで、この金融あり方について政府は無関心ではあり得ない、こういうふうに思います。この金融あり方で一番問題になりますのは、今中火銀行にまかせてくれといういわゆる金利の問題、あるいは公定歩合等の問題ですが、この金融の問題自身は、これはもちろん中央銀行の意見を十分尊重する、民間意見を尊重するとはいいますものの、最後には政府が責任を負わざるを得ないのですから、政府の積極的なやはり指示というものはどうしても必要なのではないか。ただ、政府自身は中央銀行自身からの意見を聞いてイエス、ノーを与えるだけではないのであって、場合によっては政府自身が一定の積極性を持ったものでないと困るのじゃないか、こういうふうに実は思います。だから、その量の問題、あるいはその質の問題としての金利のあり方というものが、自由化を進めていく場合に非常な問題になるに違いない。  最近、幸いにいたしまして、量の方の問題では、積極的に欧米の金融等の協力を得るような態勢が漸次できる。これは積極的に進めて参るつもりであります。今までは主として技術導入の形による資金の供給がございましたが、今後は技術導入以外の面でも積極的な支援を得たい、かように実は思っております。来月はアメリカ金融業者が日本に一行二十数名来ることになっております。そういう機会に国内経済もよく見ていただいて、そうして今後の協力を得るという方向に持っていきたいものだ、かように考えておりますが、これはまだ十分ではありません。今の外資が入って来やすいというか、そういう場合には、やはり日本の高金利というものが外資の方にも一つの魅力のようであるが、そのことは逆に日本産業を高金利のもとに縛りつけるということでございますから、これは私ども自由化を進めていく以上、やはり今までしばしば申し上げておるように、国際金利にさや寄せするという基本方針は、これは機会あるごとに進めていかなければならないと思います。  金融そのものは、ただいま申すような量と質の問題で、やはり政府はもちろん責任を持ってその適正なあり方に留意すべきことだ、かように実は考えております。ただ問題は、この金利自身が経済の調節的機能を持っておりますから、その基本方針だけで卸し通すというわけにはなかなかいかない。だから、今後の問題としては、経済情勢の変転というもの、一時のものにどうこうすることはございませんが、やはり十分実情を把握してそれに対処していく、その心がまえは絶対に必要だ、かように実は考えております。  これらの点は、おそらくただいま申し上げた点で御了承いただけると思いますが、産業の二重構造だとかあるいは低賃金制という問題になりますと、私はやや立場も違っておりますが、考え方が少し違っておると思います。けれども、いつまでも低い賃金でよろしいという、これにくぎづけするという考え方ではございません。経済発展なり、政治のあり方としては、国民生活の向上ということ、これが私どもの政治の主眼点でございますから、これはやはり労働者の生活向上が満たされないような状況で満足すべきではございません。この低賃金という問題もそういう観点に立って進めていきたいと思いますが、ただ単に、賃金と生産性との関連だけで賃金がきまるというような乱暴なことを申すつもりはございませんが、やはり賃金がきまっております生活環境なり、政治環境なり、税制環境なり、そういうものを全部包含して考えた上で、しかる上にそれぞれの国の賃金制度ができておりますから、これは一朝一夕にアメリカ水準の賃金ということにはなかなかならないだろうということを実は申し上げたいのであります。アメリカから見れば日本は低賃金、しかし欧州諸国ももちろん低賃金、あるいは共産圏との賃金の比較の方法は一体どうなるか。そういうことを考えてみると、これは今の状況でソ連の労働者は幾ら取っているかということを比べてみることは、ナンセンスに近いと実は思いますので、今まで言われておるいわゆる低賃金という議論については、私は、まあ木村さんはどういうふうに言っておられるか、ただ低賃金というだけですから内容はわかりませんけれども、私はちょつとこの低賃金の問題については、ただいま申すような内容から判断すべきだと思うので、簡単な議論ではないように思います。  産業の二重構造という問題につきましても、ちょうど国際関係でも同じですが、国内産業の保護育成という立場が、その意味おいては各国競争の立場に置かれますが、同時に、協調の面が非常に大きく取り上げられてくる。これはもう絶えず申しておるわけであります。ことに、経済の先進国と後進国との関係等を考えてみますと、お互いに競争だけならば後進国が全部負けだということになりますが、そういうものじゃなくて、やはり国際協力という面があって、後進国の経済発展も期していくということを絶えず考えるわけであります。国内おいては、やはり強い者と弱い者との関係が、一面競争の立場にもありますが、一面相互協力の立場にもあるということを実は考えて参って、この二重構造の問題についても、ただ単に強い者が弱い者を食うというだけでなしに、解決の方法は私どもはあるのじゃないかと思います。ことに、今政府並びに党が主体になって考えております所得倍増計画というものと、あわしてこの経済自由化、これが一つの基本として進んでいく場合に所得倍増計画がどういうふうになっていくか、必ずその所得倍増計画の場合にも産業の構造ということ、これも念頭に置かざるを得ないということになりますので、実は理論的に非常にむずかしいというものではない、また実際的にもこれが解決のできない問題だとは、実はかようには私は考えておらないつもりであります。
  14. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ちょっと述記をとめて。    〔速記中止〕
  15. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記をつけて下さい。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど大臣が、来月ですね、アメリカ金融業者がこちらへ来られるというようなお話、御答弁ございましたが、これはどういうような銀行の人たちが来て、そうしてどういうような目的で来られるのでございますか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あした材料を持って来てお話ししてよろしゅうございますか……。  大体の話の起こりは、こういう経過でございます。経過だけ申し上げますと、昨年日本の証券業者が向こうへ参りまして、そうして証券関係でいろいろ日本へ投資するというような場合には、証券会社が協力したいということを実は申したようです。で、向こうの方も、日本に積極的に協力するという考え方があるという際でありますから、これはそういう機会があれば出かけてもいい、こういうことで、それを世銀のブラック総裁と相談をして、ブラック総裁がいろいろ人選等をして、一流の銀行業者並びに金融業者一行が来月日本に来る、こういうようになっておる、かように思います。そのリスト等は、明日の会議のときにもう少し詳しく御説明させていただきたいと思います。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうように、アメリカから前にも日本にまあ大会社の人たちが参りましたが、今度アメリカ金融業者も来られるということですが、この為替貿易自由化で、やはり資本取引自由化ですね、そういうものが、時期的にはおくれるでしょうが、最後には資本取引自由化というものも日程に上るわけですが、新聞その他でも報道されておりますが、結局、アメリカ資本はやはり日本の投資を非常に望んでおる。アメリカはコスト・インフレで商品輸出が困難になってきておりますので、資本輸出を非常に期待している。日本ばかりでなく、ヨーロッパにもずいぶん進出しておりますが、その場合、アメリカ日本に対する資本輸出を非常に希望している理由としてあげられているのは、一つ日本の賃金が安いということです。これが一つ非常な魅力になっているわけです。いわゆる低賃金であるということですね。先ほど大蔵大臣は低賃金についての御意見開陳されましたが、これは魅力です。それから、従って、非常な高利潤であるわけですね。また金利も非常に高い。それからまた、今度の安保条約によりまして、十年間アメリカとの間に共同体みたいなものがここででき上がるわけです。そしてアメリカは、資本を安心して、非常な高い収益を得られるということで、非常に日本アメリカ資本が魅力を持って、かなり積極的に投資をしようとしているように聞いておりますが、それでアメリカ資本が入ってくるときにいろいろな形態があると思うのです。合弁会社の形態とか、子会社、あるいは下請、あるいは長期契約、いろいろ形はあると思うのです。  で、外資が入ってくる場合に、今一番心配されているのは、そしてこの自由化の一番の最後に大きな問題になることは、アメリカ資本がどんどん入ってきて、日本の企業を支配するのではないか。あるいはまた、企業支配をしなくても、入り方によって、たとえば国際カルテルなんかが問題になってくると思うのですが、日本と提携して、マーケットはアメリカが握るとか、そういうようないろいろな問題が起こってきます。そこで、日本の企業支配の問題と、それから結局、日本の低賃金に魅力があるのでありますから、どうしても日本の低賃金がそれによって固定化されるという危険があるのじゃないか。これが労働者の中でも、それから中小企業方面でも、非常な関心を持たれているわけですね。その点が非常に重要でないかと思うのです。ですから、外資を入れる場合に、やっぱりその点は、どうしてもわれわれの立場としては排除しなければならないと思うのですが、最近のアメリカのこの銀行なり、証券業者なり、その他アメリカの事業家の日本に対する、投資に対する態度ですね、最近の状況でもおわかりになりましたら、その点を、大蔵省でお調べになった範囲でけっこうですが、具体的に、どういうような態度を示しておるか、それから今の外資を入れる場合にいろいろな悪い影響があるわけでありますから、企業支配の問題、それが低賃金の固定化、あるいは労働運動に対して干渉をしてくるというようなことがあったら、これは非常に重要だと思うので、そういう点について最後に伺っておきたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、だいぶ木村さんの御心配の点が明確になりました。私どもも、外資が入ってきて、ただいま言われるような結果が出ては相ならぬと実は思っております。そういう意味で、実は非常な警戒をしている。で、一部申しますのは、ただ単に資本投下だけで、そうして経営に参加しないということなら、相当進めたらどうだと、こういう話もあります。それは当方には非常に都合のいい話だが、はたしてそうなるかどうか。そういうものでもないだろう。そこで、先ほどちょっと申しましたように、株式の取得や社債の取得の範囲は、在来五%、八%と二通りのものがありますが、それを一〇%、一五%にするとか、あるいは社債は一口一万ドルと、こういうような金額をきめているということは、実はそういう意味でございます。  ところで、あまり積極的には外資、その気配だけというか、相当人気は立っておるようでありますが、なかなか条件は合わない。今まで成功しているというか、話が非常に順調に進んで参り、また実際にやっておるものは、御承知のように、石油精製業関係で、それぞれのアメリカの、石油業者と提携しているとか、外国業者と提携しているとか、そういうものはございますが、それ以外にはあまりございません。これは結局、石油業の場合は、アメリカの強い資本力というものと提携することが日本の石油業発展のためにも役立つという、双方利害一致しているという関係で、比較的協力態勢ができていると思いますが、これもまあ資本は五〇、五〇、一、三のものが五五%ぐらい持っておるものもございます。けれど、その他のものの外資が入ってくる場合は、多くの場合に技術導入、新しい技術を入れる、そういう形の場合に外資が入っておるというのが現状でございまして、これはそれぞれの会社、ロイアルティその他の問題ございますが、それを十分検討した上で、業界自身がそれに賛成するということを前提にして、これを許しておる。しかし、技術導入をいたしました場合に、先ほど来申しますように、中小企業に非常に悪影響があるとか、あるいは既存事業に非常な悪影響があるというような場合だと、その技術導入も成功しておらない。ただいままでのところは、許可をしておらないという状況でございます。  それから、まあ今後におきましても、資本導入については、そういうような意味で、企業を支配するという、経営に参加すると、こういう場合の問題は、よほど政府自身も慎重にするつもりでございますが、おそらく国内の事業経営者自身も、株主との関係がありまして、そうなかなか簡単にはいかないようであります。これは必ずしも、そういう道があると申しましても、なかなか積極的にはいかないのじゃないかと思います。しかし、アメリカ側の希望としては、株式もどんどん持ちたい。ただいまのところは、もちろん自分たちは経営に参加するつもりはないが、いわゆる善意の投資は日本も引き受けるようにしてもらえないかと。ニューヨークの株式市場には世界各国の株式の建値が出るが、日本の会社の株式の建値は絶対に出ない、こういう状態ではまずいじゃないかというようなことを言っておりますが、そこまではなかなか会社は進みませんし、私どももまだそういう段階では実はないと思います。  また、今の形で、木村さんも御指摘になりますように、たとえば、ミシンあたりで、シンガーミシンその他で経験されたように、日本で生産をすれば非常に利潤が高い。それはまあ生産性が高い、言いかえれば低賃金もございましょうが、そういう意味だとか、あるいは原材料の入手が日本の方が容易だというような場合に、日本で生産をして、それをアメリカに持って行く。その方が利潤が大きい、こういう場合もあると思います。あるいは、今までのトランジスター等の関係から見ましても、その技術導入の形において、そうして資本的協力というものが一部にあるだろうと思いますが、こういうものはそのつど実は考えていかなきゃならぬと思います。  で、今まで言われておりますのが、アメリカの、これはその資本的の形じゃないと思いますが、私がまあ昨年参りましたときの話をいろいろ聞いてみると、日本アメリカで同種のものを作ったら、日本品には競争はできない。それで、アメリカの製造業者が、もう自分のところで、アメリカで作るのはつまらない。むしろ製造業者というものをやめて、今度はアメリカの方がディーラーになりたい、こういうような話をしばしば聞きますが、これなどはどういう形で資本が参加しますか、その内容は私は知りませんが、ただ単に日本商品を向こうに持ち込む、ただ商標その他で何か提携できるとか、あるいはどういうような相談ができるのか、ディーラーとして向こうで扱うというようなことはあるようです。今までのところは、資本導入の結果非常な悪影響はただいままでは来たしておらない。しかし、今後の問題として、自由化された場合には十分考えていきたいと思います。  ただ、私ども、これは一面、資本が入ってくる場合に、資本を投資する方側の意思をまあ十分確かめることは必要だろうと思いますが、ただ単に共同経営はいかぬと言っちまうことは、あまりにも考え方が小さい。何かこだわり過ぎているのじゃないかという気がします。今、まあ先ほど共同市場の話があり、日本の立場だと東南アジア諸国というものがいつも問題になりますが、今東南アジアの諸国は、日本との共同経営にいたしましても、これはもう絶対に、インドネシアなどはそれはお断わりすると、こういうことを実は申しておりますが、こういう形、まあインドネシアの経済力と日本経済力はそう窮屈にならぬでもいいんじゃないかというような気もしますが、よくその実情を見きわめないと、一がいに申し上げることは非常に危険だと、かように私ども思いますので、今御指摘になりましたような点は十分考えていきたいと思います。資本導入はどこまでも、私どもの、日本経済が拡大されるということに役立つのでなければ意味をなさないことだし、また、その経済の拡大は同時に国民生活向上だと、そういう意味おいては労働者の賃金も順次改善されていくということでなきゃならないことは、もう御指摘通りであります。それらの点は十分注意して参るつもりであります。
  20. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) それでは、本日はこの程度で散会いたします。    午後零時四十九分散会