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1960-03-31 第34回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三十一日(木曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     杉山 昌作君    理事            上林 忠次君            山本 米治君            大矢  正君            永末 英一君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            岡崎 真一君            梶原 茂嘉君            木暮武太夫君            河野 謙三君            西川甚五郎君            林屋亀次郎君            堀  末治君            前田 久吉君            木村禧八郎君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            平林  剛君            天田 勝正君            原島 宏治君            須藤 五郎君   政府委員    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主計局法    規課長     小熊 孝次君    大蔵省主税局税    関部長     木村 秀弘君    林野庁長官   山崎  斉君    建設省河川局次    長       曾田  忠君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主税局税    関部業務課長  加治木俊道君    大蔵省為替局総    務課長     片桐 良雄君    農林省蚕糸局糸    政課長     筒井 敬一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○関税暫定措置法案内閣提出衆議  院送付) ○糸価安定特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○国有林野事業特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○治水特別会計法案内閣提出衆議  院送付)   —————————————
  2. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) これより委員会を開会いたします。  まず、関税定率法の一部を改正する法律案及び関税暫定措置法案を一括して議題といたします。  質疑のある方は御発言を願います。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 この二法案の逐条的な質問をしたいと思うのですか、その前に、少し関連がありますので、関税行政について当局の所見を少しただしたいと思うのです。御承知通り、私は専門家でありませんから、なるべくしろうとにもわかりやすいように説明をしてもらいたいと思うのです。  まず、第一の質問は、昭和二十五年度定員法以後の税関職員定員は、どのように変化しているか、それを伺いたいと思います。
  4. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 税関定員は、昭和三十四年度か五千八百七十六人ございまして、三十五年度で百三十人ばかり増員をしていただく予定になっております。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が質問したのは、昭和二十五年度から三十四年度までにどういうような変化を来たしているかということ……。
  6. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 失礼しました。昭和二十五年度が三千七百二十四人、それからその次、二十六年度が五千四百人、それから二十七年度が五千三百九十五人、それから二十八年度が五千五百六十八人、二十九年度が五千四百八十七人、三十年度が五千五百七人、三十一年度が五千五百六十七人、三十二年度が五千六百八十七人、三十三年度が五千七百五十六人、それからさっき申し上げました昭和三十四年度五千八百七十六人、来年度百三十人増となっております。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 同様に、関税事務取り扱い件数はどうなっておるのか。輸出申告輸入申告輸送申告納税告知内国消費税引き取り申告、通告、告発等の総計、どういうふうになっておるのか。
  8. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) こまかい事務は非常にたくさんございますので、税関事務のうち、一番税関仕事の量の指標となるようなものといたしまして、輸出入申告件数を申し上げておきたいと思います。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 私の質問が、二十五年度を——数をずっと出すこと困難でしたら、二十五年度を一〇〇として三十四年度ではどうなっておるか、それ……。
  10. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 実は二十五年度の数字持っておりませんので、大へん恐縮でございますが、二十五年度の数字が御必要ならば、あと資料で提出いたしたいと思います。ただいま持っております一番新しい数字昭和三十二年度でございます。昭和三十二年度で申し上げますと、輸出申告件数が全国合計いたしまして百四万三千四百九十一件でございます。それから輸入申告件数が四十五万六千二百四件でございます。あと輸入でございます。最初申し上げたのが輸出です。それから、それに対しまして、昭和三十四年度——ただいま申し上げましたのは、三十二年度と申し上げましたが、三十二年と訂正させていただきます。暦年でございます。昭和三十二年でございます。それからそれに対しまして、昭和三十四年が、これも暦年でございますが、輸出申告件数が百三十六万七千九百八十一件、それから輸入申告件数が五十二万五千百十件、こういうふうに相なっております。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が調べたところによりますと、昭和二十五年度を大体一〇〇とすると、三十三年は税関部発表では四九七となっておりますね。
  12. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいまこちらに持っております数字から申し上げますと、昭和二十八年に比較しまして、三十四年が、輸出申告件数におきましては二一六・八%、それから輸入申告件数にいたしますと一七一・五%というふうに、相当件数はふえております。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたの方に資料がないから、私の質問は十分満たされませんけれども、件数が非常にふえているということは明らかになっておるわけです。  その次は、輸出入額輸出入貨物トン数外国貿易船入出港隻数等変化を、やはり二十五年から……。
  14. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいまの御質問貿易額でございますが、これはそのパーセンテージはちょっと計算して出してございませんので、大へん恐縮でございますが……。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 もしもあなたの方になければ、僕が持っておる数をここで発表してもよろしゅうございます。発表しましょうか。
  16. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 輸出金額にいたしますと、昭和二十八年を一〇〇といたしまして、三十四年が二五九・七%、それから輸入金額にいたしますと、やはり昭和二十八年を基準にいたしまして、昭和三十四年が一五四%八というふうになっております。それから外国貿易船の入出港隻数は、やはり昭和二十八年をとりますと、一万五千三十九隻でございます。昭和三十四年が二万五千五百五十三隻。これは外国貿易船の入出港隻数でございます。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連しますけれども、もし資料がありましたら、昭和——十一年、戦前ですね、昭和——十一年のこの輸出入申告件数ですね、それから今の船舶の出入港数ですね、大体。というのは、数量からいきますと、数量指数なんかを見ますと、昭和二十八年ごろから比べると非常にふえておるんですけれども、戦前に比べるとまだふえ方があまり多くない。それで、生産なんか非常にふえておりますけれども、貿易につきましては、まだ戦前水準をこえたかこえないかという程度だと、こう言われますので、もしお手元に資料がございましたら、昭和——十一年ぐらい……。もしございませんでしたら、あと資料としてでもけっこうです。もしおわかりでしたら……。
  18. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいまの御要求資料は、できましたら、後ほど印刷をいたしまして提出いたしたいと思います。戦前のもあわせまして。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 税関部長は、二十八年からの比率を今おっしゃいましたが、私はここへ二十五年度と三十三年度の比率を持っておるわけです。これは税関部発表です。昭和二十五年度を一〇〇とすれば、三十三年度は輸出入額が三二九%です。それから輸出入貨物トン数は四二八%、外国貿易船出入港隻数は三八〇%、こういうふうにふえているわけです。なお、今木村委員からも資料要求されましたが、私も詳しいことの資料要求しようと思っております。そういうふうにお取り計らいを願います。  それから次に、同様に関税トン税消費税、諸収入等税関収入変化がどういうふうになっているか。
  20. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 何年ごろから申し上げましょうか。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は二十五年からのずっと変化調べておるわけです。
  22. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 昭和二十五年の関税額が十五億六千九百万円、それに対しまして昭和三十四年が七百三十九億七千七百万円、それから税関で徴収いたします消費税額が、二十五年が五十五億八千九百万、それに対しまして三十四年が二百十一億七千五百万、それからトン税が、二十五年が九千六百万、それから三十四年が十四億六千九百万、それからその他の収  入——雑収入でございますが、これが、二十五年が一億二百万、これに対しまして三十四年が八億七千四百万、これらを合計いたしますと、二十五年が七十三億五千七百万、それに対しまして三十四年が九百六十四億九千六百万、こういうふうになっております。
  23. 須藤五郎

    須藤五郎君 これもなお詳しいことはあとで一緒に資料として出しておいて下さい。  そうすると、定員昭和二十五年度に比して一五八%増加しております。それに対して作業量は、事務取り扱い件数で四九七%にふえておる。輸出入額は三二九%、貨物トン数は四二八%、隻数は三八〇%、こういうふうに増加しておるわけです。定員の  一・五倍に対して作業量では約五倍になっておるわけです。この事実を税関部長は認めておられるわけですか。
  24. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま御指摘いただきましたように、事務量増加に対して定員の増が追いついていけない、常に立ちおくれの状態にあるということは、われわれはなはだ微力でございまして、毎年増員要求をいたしておりますけれども、なかなかこういう増員のやかましいときでございますので、要求の何分の一かしか認めていただけないというような状況でございまして、事務量人員とのアンバランスは、御指摘通りわれわれとしても十分承知いたしております。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、この問題、このアンバランスを具体的にどういう方法で解決しておるのか。現在、あわせて将来、どういうふうな方針でこれを解決していこうとするのか、その点を伺っておきたい。
  26. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) われわれといたしましては、こういうアンバランスがそのまま職員の方に全部おっかぶさるということになりますと大へんな問題になりますので、まず第一に配置転換をいたしまして、いなかの開港等で比較的閑散なところの人を引き揚げて本関の忙しいところへ持ってくるとか、あるいは監視所等はできるだけ廃止をいたしまして、あるいは地方の警察署に兼務してもらって、そうして人員は引き揚げる。あるいは一番大きな要素といたしましては、事務簡素化をはかりまして、できるだけ手を抜くことのできる範囲は手を抜く。あるいは今まで二重、三重にチェックしておりました点を、ダブらないように、必要なところ一ヵ所に重点的に仕事責任を持たせまして、ほかのところは省くというふうに、事務合理化をはかっております。なお、そのほか事務用の機械、施設等職員労働軽減になるようなもの、たとえば、電動の計算機であるとか、あるいは移動のときに使  いますオートバイとか自動車とかというようなもの、そういうようなものに  つきましては できるだけ手当をいたしまして、職員労働量増加を来たさないように注意はいたしておりますが、なおしかし、この事務量人員アンバランスを完全に解決するというところにはとうてい至っておりません。
  27. 須藤五郎

    須藤五郎君 税関職員勤務制度というものがあると思うのですが、それを少し説明して下さい。
  28. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 税関職員勤務体系は、一般事務官庁と若干異なった点がございまして、陸務あるいは海務職員、いわゆる密貿易取り締り等の職員につきましては、三交代昼夜勤務をいたしております。それから、それ以外の職員は、大体普通の官庁職員と同じ勤務体系でございますけれども、若干違いますのは、税関は、仕事特殊性からいたしまして、二十四時間いつでも、開庁あるいは仕役の申請があるときには店を広げなくちゃならぬということが法律的に義務づけられておりますので、時間外であろうと休日あるいは日曜であろうと、民間から申請がございますと、臨時開庁いたすということになっております。この点が若干普通の官庁と違っておるかと思います。
  29. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちが聞いているのによると、税関では非常に職員強制残業をやらしておるということを聞いております。関税法九十八条で、臨時開庁ができることになっているし、同十九条の時間外仕役、第三十三条の時間外積みおろし、こういう条項をたてにとって強制残業ができるというふうにされているわけです。一体、実際に税関吏拘束時間は週何時間くらいになっておりますか。
  30. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは人事院規則で定められました週四十四時間というワクをはみ出て常時超過勤務をしいておるということではございません。ただ、時間の割り振りを、今申し上げたような税関には特殊性がございますので、時間の割り振り税関長にまかされておるということでございまして、週四十四時間の一般的なワクは守っておるわけでございます。ただ、もちろん時間外仕役とか、あるいは臨時開庁とかという申請がございますと、これは法律的に応じないわけにももちろん参りませんし、残業をいたすことになりますけれども、しかし、週四十四時間という制限をはみ出た形で税関長が、規則といいますか、労働条件をきめるということは、これは規則違反でもございますし、もちろんやっておりません。
  31. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、実際にはそういう状態ではないでしょう。やはり関税法の九十八条、十九条、三十三条をたてにとって強制労働要求している、これが実情ではないですか。組合調べです。組合調べによりますと、週六十四時間、こういうふうに発表いたしております。まさか組合がうその発表をするはずはないと思います。あなたの言うのとだいぶ違う。現在六十四時間労働要求しておるということは、はっきり組合の方から報告しておるのですが、そういう事実はありませんか。あるならば、今後はそういうことはしませんか、どうですか。
  32. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、実情を若干詳しく申し上げぬと、御理解いただけないと思いますが、最近の傾向といたしまして、月の半ばまでは非常に——非常にと申しますか、割合と閑散でございまして、月半ばを過ぎて月末に至りますと、外国貿易船の入出港が集中するわけでございます。従って、月末になりますと、最もひどい神戸あるいは横浜等におきましては、相当残業をしなければならぬという実情は今おっしゃる通りでございます。しかし、ただいまのお話のように、一週六十四時間の勤務体制をしいておるということは、これはございません。おそらく、そういう御主張根拠は、現在の超過勤務手当を時間数に換算いたしますと、大体十五、六時間から二十時間近くなる。従って、それだけのものは時間として残しておるじゃないかという御主張根拠かと思いますけれども、これは必ずしも今の超勤の配分の方法——実情はもちろん残った者に対して超勤をその時間に応じて配分するというのが原則でございます。原則と申しますか、そういうことは原則でございますけれども、しかし、必ずしも実際にそういうふうに割り切ってしまうわけにも参りませんで、時間中であっても、非常に仕事が、たて込んで労働の密度の濃い所、そういう所に対しては、相当の考え方をしなければなりません。それから場所によって、非常にひまな所と忙しい所と、先ほど申し上げましたように、時間的に忙しいときとひまなとき、これが非常にアンバランスになっております。従って、各税関では、実情に応じまして、税関長が、ひまな時期には代休等を認めるというような方法で若干の労働軽減実情に合わしてはかっておる次第でございまして、全員一週六十四時間というものを原則にしておるわけでは決してございません。
  33. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは、月の半ばまでがひまだから遊ばしておる、月の後半が忙しいから、その遊んだ分を取り返すために倍働かすというのでは、これでは私は労働基準法精神に反すると思うのですよ。一日まる休みして二日分一ぺんに働かすということは、これは労働基準法精神に沿わないと思う。あなたの答弁によると、ちょっとそういうふうに受け取れる。月の半ばまでがひまだから、月の後半が輻湊するから、そのときに超過勤務をたくさんさせるのだ、こういう意見ですが、何でそんな矛盾が起こってくるかというと、やっぱり定員が少ないところに大きな矛盾があるじゃないか。税関職員一人当たり平均超過勤務時間がどれだけあるのですか。
  34. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 確実な時間数はここに持っておりませんが、大体二十時間見当かと思います。
  35. 須藤五郎

    須藤五郎君 二十時間。
  36. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) はい。
  37. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、一日平均三時間ないし四時間ということになるわけですね。
  38. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま申し上げましたように、超過勤務手当給与単価で割りますと、そういう時間数が機械的に出て参ります。ただ問題は、監視交代勤務のように夜勤をいたす者——これは三交替で夜勤をいたす者がございまして、これにつきましては、夜間は百分の百二十五でございますか、その超勤が加算されます。そういう面もございますし、それから、先ほど申し上げましたように、必ず機械的に実績によって配分しておるかということになりますと、それは厳密には、原則はそうでございますけれども、厳密にそればかりと申し上げるわけにも参りませんので、そういう点からいたしまして、確かに人員不足ということは御指摘通り間違いございませんけれども、しかし、そうかと申しまして、一週間に六十四時間という勤務を強制しているわけではないということは申し上げられるかと思います。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 六十四時間ということを、あなたの方で、たって一週間六十四時間働かしておる方針でないということは、それはあなたがそう言うかもわからぬけれども、実際の上において拘束時間が四十何時間だと、それから超過勤務時間が平均二十時間あるんだというと、合計すると六十何時間になるじゃないですか。この説明はどうなさるか。夜は、まるで夜勤は寝て暮らしてるわけじゃないでしょう。やっぱり責任を持って夜勤してるんだから、それだって労働時間ですよ。
  40. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 超過勤務手当、先ほど二十時間と申し上げておきましたが、ちょっと間違っておりますので訂正させていただきます。月に大体三十時間程度でございまして、一週間に七時間見当かと思います。
  41. 須藤五郎

    須藤五郎君 こういう状態で、作業量がうんとふえている。五倍からになる。人員の数は一・五倍にしかなってない。このような状態をいつまでも私はほうっておくということはいけないと思いますね。この作業量定員関係をどういうふうにしてこれを解決しようとするのか、定員増加する意思があるのかどうか、制度合理化して職制を強化して職員労働強化だけでこれを解決しようとするのか、どういう方法をとろうとするのか。
  42. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 根本的な解決方法は、ただいま御指摘ございましたように、定員増加を認めていただくという以外にはないかと思います。実は三十五年度におきましても、われわれ事務当局といたしましては六百人くらいの増員要求いたしまして、それに対しまして、先ほど申し上げました百三十人の増員が認められた。しかも、それは非常に困難な交渉の結果ようやく認められたということでございまして、もちろん、われわれの希望といたしましては、できるだけ事務合理化もさることながら、絶対数として足りない部分については、できるだけ増員をお認めいただくという方向で従来とも強く主張をして参りましたところでございますが、なかなか最近の増員のやかましい事情もございまして、  ことに大蔵省主計局としましては、相当自分のところから増員を認めるというのも困難な事情にございます。そう  いう関係で、実は昨年は国税庁から若干の人を借りまして一時をしのいできたのであります。これは今後ともわれわれとしては、できるだけ増員という正規の方法で問題を解決いたして参りたいと思っております。ただ、今申し上げましたように、非常に困難な実情にございますので、この点を御理解いただきたいと存じます。
  43. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたの方で、税関の各部課整理統合は考えていないのですか。
  44. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 各部課整理統合は、現在のところでは考えておりません。これは今までに相当古い沿革のある組織になっておりまして、しかも、大体各局共通組織を持っておりますので、ただいまのところは考えておりません。
  45. 須藤五郎

    須藤五郎君 貿易自由化という問題が今日クローズアップされてきておりますが、この自由化に伴って関税定率表品目分類表の大修正を行なうと、こういうふうに言われておりますね。現状のままでやることができると考えますか。
  46. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま品目分類なり税率なりの改訂は、これは御承知のように、現在の関税率昭和二十六年にきめられたものでございまして、その当時占領下で、必ずしも全部が全部自主的に税率をきめたとは申しかねる点がございます。それから、その後の一般の産業なり貿易の様子というものも変わってきておりますので、最近この自由化に関連する関税率の再検討をするという計画で、現在準備を進めておる次第でございます。
  47. 須藤五郎

    須藤五郎君 そこで自由化が進んできたら、どういう部門が増加するのか、地域、部署による変更があると私たちは考えるのであります。たとえば、専門埠頭のようなものがふえる。石油、石炭、鉄鋼などの専門埠頭があ るいはふえるのではないかというふうに考えますが、どういう変化がこれから起こるというふうに考えておるか、こういう条件に対してどういう対策をあなたの方で考えておるか。こういう条件が起こってくれば配置転換などが起こると思いますが、その点どういうふうに考えておられるか。
  48. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 完全な自由化ということにはなるまいかと思いますが、自由化範囲が拡大いたしますにつれまして、税関としては、その仕事分量が減ってくるところ、たとえば為替課のようなところは、これは仕事がだんだん減って参ります。それから、それに反しまして、関税賦課徴収に関する事務、これはある程度ふえてくるかと思います。また、そういう問題と離れまして、貿易自由化されて貿易量が拡大いたしますと、一般事務量として税関の面には現われてくると思います。ただいま仰せになりました専門埠頭のごときものも、名港でだんだんふえてくる傾向にございます。そうなりますというと、われわれとしましては、事務分量に応じて現在の職員の再配置を行なう必要が生じてくるかと思います。
  49. 須藤五郎

    須藤五郎君 こういうことを考えてみますと、やっぱり労働者数というものが私は絶対不足だと思うんです。仕事分量、いろいろこれの関係からして、絶対不足だ。ことし百三十人ふやすと言っているが、百三十人くらいの増加では、私はこれはとてもやっていけない仕事だと、こういうふうに考えますが、この絶対量の不足をどういうふうに処置しようとしておるのか。自信があるのですか、どうですか。どういう方法で処置するのですか。
  50. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 最近、税関の人手が足りないということにつきましては、相当各方面の御認識をいただいておりまして、大蔵省全体といたしましても、減ったところはございますけれども、増員のところは税関だけでございます。そういう次第で、百三十人では足らぬと申しますと、まさしく足りませんけれども、しかし、各方面の同情なり認識というものが相当集まっておりますので、今後われわれも増員要求を根強くいたしますならば、再来年度等におきましてもある程度増員は認めていただけるのじゃないか、こういうことを期待しております。もちろん、これは従来からも税関部といたしましては増員要求を各予算の要求ごとにやっておりますけれども、今後とも強力に増員要求を推進して参りたいということを考えております。
  51. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、ずっとこの情勢を考えてみると、あなたが幾ら強制労働はさせない、六十時間労働など絶対にあり得ないということをあなたは言うけれども、こんな条件のもとではそういう無理をしなければやっていけない。そうじゃないですか。だから、私たちは今日取り上げておるわけです。だから、あなたがここではっきりと、こういう不均衡な状態にあるけれども決して六十四時間というそんな酷な労働はさせません、もしも今日させているならばそういうことは以後絶対にいたしません、こうはっきり言い切れるなら、ここで言ってもらいたい。それから、政務次官もいらっしゃるが、こういう状態なんで、今税関労働者は非常な労働過重で疲れているわけです。だから、政府当局としても、こういう状態のないように、一日も早く定員数を、百三十人なんて小刻みなけちなことを言わずに、六百なり千なり一ぺんに増員して、こういう過酷な労働で苦しめないように私はすべきものだと思いますので、両人から一つはっきりとした決意を示してもらいたい。
  52. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) ただいま須藤委員から御指摘をいただきました通関の数量定員とのアンバランスの点でございますが、この点につきましては、たしか前国会におきましても諸先生方から御指摘を受けた問題だと私は思っております。従いまして、今回の予算編成にあたりましても、相当われわれもその点を強調いたしまして、できるだけこの税関定員を確保するように実は努力したのでございますが、残念なるかなわずか百三十五名。この百三十五名を確保するにあたりましても、相当努力を要したわけでございます。そういうことを申し上げましても、あとの泣き言、繰り言になるのでございますか、大蔵省の大体の考え方というものは、すべての予算、たとえば旅費にいたしましても、あるいは定員の場合でも、率先垂範、できるだけ範を示そう、大蔵省はそんなに定員を取っておりません、また旅費も取っておりませんというふうな、そういう気持がどうも私は先に進むんではないか。非常に遠慮されておるというふうな気もするのでありますが、事税関については、前の国会でもいろいろ御指摘をいただきましたので、極力われわれも政務次官という立場におきまして、いろいろそういう主張を省議におきましてもしたのでございますが、ただいま先生の御指摘のように、まことに少ない。この少ないのをどうして補うか。結局、超過勤務でよけいに働く、これにもまた限度があるので、結局、手続の簡素化合理化といいますか、あるいは検査の回数を多少減すとか、あるいは抜き検査にする、いろいろそういう方法もあわせ考えまして、そのつじつまを合わしておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、これから自由化の時代になって参りまして、結局、国内産業を保護するのは関税以外にない。非常に通関の重要性、税関の重要性ということが倍加してきたわけでございます。でございますので、この際、抜本的に税関の陣容といいますか、人的整備といいますか、こういう点を早急に考える必要があるということを考えておりますので、御趣旨を体しまして、極力早くこういう点を善処するようにいたしたいと思います。
  53. 須藤五郎

    須藤五郎君 今後六十四時間というような、そういう過酷な労働は絶対させないということを、あなた、ここではっきり言明して下さい。さしていないというのだから……。
  54. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど申し上げましたように、月末になりますと、今外国貿易船が錯綜して参りまして、そのときには相当超過勤務を必要としますので、絶対にと申し上げることはなかなか困難かと思いますが、われわれとしましては、ただいま政務次官のおっしゃったように、できるだけ事務合理化して、また簡単にし得るところは手を省きまして、労働時間を短縮するようにあらゆる方法を講じて参りたいと思います。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。今、政務次官退席されましたが、税関ばかりじゃないのです。税関定員の問題だけじゃないのですね。この際、やはり大蔵省の方でも定員についてもっと根本的に考え直す必要があると思う。というのは、経済の成長率について、政府は予想と違っていたわけなんですね。経済成長が政府の予想以上に非常に急速であったわけです。貿易なんかも、政府の予想よりもはるかに大きくなったのです。それから、この間質問したのですが、紙幣の印刷についても、やはり経済成長率が政府の予想以上に大きかったために、紙幣の印刷能力が足りないで、超過勤務税関どころではないのですね。百時間も百五十時間も超勤をやっている。その能力もふやしませんし、定員もふやしませんものですから、非常に無理が生じているわけですね。これは全般的な問題だと思うのです。政府は経済成長の見通しを誤ったわけです。こんなに早い成長率を示すと思わなかった。ところが、この非常に急速な成長に対応したようないろいろな設備とか、能力とか、人員、それを政府は整えていないわけです。そういう点から、税関ばかりじゃないのですが、また税関定員主張する場合にも、そういう論拠にやはり一つ大蔵省は、今まで経済成長率の見通しを誤ったのですから、誤ったなら誤ったのに対応した定員というものを考えなければならないのです。そういう根拠で一つ主張をされる必要があると思う。
  56. 須藤五郎

    須藤五郎君 木村委員の言われる通りだと思うのです。定員法は根本的に考え直さなければならぬ時期に来ていると思うのです。早急に政府でも考えてもらいたいと思うのです。
  57. 平林剛

    ○平林剛君 関連。私は去年、この税関定員の問題を取り上げて、政府に増員要求しておいたのでありますか、ことしは、先ほどのお答えの中に、税関の方で要求した何分の一にもすぎなかった、百三十五名が。というお話がありましたが、実際に、あなたが今日の仕事量、これからの仕事ということを考えたら、どの程度定員を必要となさっておるのか。ことしの予算において要求された数字、これを一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  58. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今年度の要求は六百八十一人でございまして、われわれとして理想の形にもっていって、各人が普通程度労働量を分担していけばよいというような形になりますためには、大体六百人ないし七百人くらいの定員が必要かと思います。もちろん、これは数年先を見通した話ではございません。とりあえず、六百人ないし七百人あれば相当仕事の量が緩和されるのじゃないかというふうに見通しを立てております。
  59. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまの、税関当局が考えても六百名、七百名の増員が必要だというのを、わずか百三十名くらいの増員でこれから仕事をしようというのだから、私はこれは容易なことではないと思うのです。だから、須藤委員指摘をされたように、各職場ですね、税関の職場においていろいろな問題が発生をするわけで、私は、税関部長も、おそらくこれだけ定員要求をしたのに、足りなかった分を、先ほど御説明になったような配転だとか、あるいは、監視所の廃止、これはいつまでも廃止できるものではありません。限界がある。過去においてすでにやってきたのでありますし、当面必要な定員を満たすための改善措置にもこれは限度かあるわけで、あなたとしては、すでに三十五年度予算もきまってしまった、定員増加も百三十名でおさまってしまった、こういうときに、それに見合うため何かの措置を考えているのかどうかということですね。もう、自分は要求したのだから、これでもうおさまってしまった、あとはまあ職員にがまんさせるだけだというような態度だけでは、これはやはり国の行政を円滑にすることはとてもできないことですね。とういうお考を持っていますか。
  60. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 御指摘のように、絶対的な人員不足というものを根本的に解決するといういい方法を、われわれこういう方法があるというふうにお答えすることができませんのははなはだ遺憾でございますが、先ほど申し上げましたように、人員不足を多少でも緩和するということは、十分部内でもって検討いたしております。先ほど申し上げましたように、専務の機械化をはかりまして、できるだけ新しい事務能率の上がる機械を採用しております。また機動力を整備いたしまして、従来歩いておったところを自転車で行く、あるいは自転車で行ったところを自動車あるいはオートバイで行くというふうに、できるだけ機動力を増加する、そのための予算もある程度見てもらったわけでございます。  また、輸出件数相当ふえておりますので、先ほど政務次官もちょっとおっしゃったように、従来、輸出にいたしますというと、大体平均して二〇%の開披検査をいたしておりましたのを、もう少し率を下げざるを得ない。あるいは出国の場合には検査を省略するとかいうふうに、できるだけ省けるものは手を省いて参りたい。それによって必要な部面に仕事の重点を置いて、それ以外の軽微なところはできるだけ手を省いていきたいというふうに考えて、計画を立てております。
  61. 平林剛

    ○平林剛君 あなた、そういうことだけで当面を乗り切れるということは、不可能じゃないかと私は思うのですよ。今のように、検査などを省いていくことになりますと、密輸の増加と、あるいはその他不測の事態が発生したとき、あなた方はどういう責任をとられますか。私は、ただ政府に要求したけれども、これだけしか増加できなかった、あとは自転車を自動車にしたとしても、六百人、七百人の不足を補うにはもちろん足らないということは、あなたのおっしゃった通りですよ。加えて、そう検査の回数を省略し簡便にしていくということによって、密輸その他によって国家の受ける損害ということを考えたら、あるいは増加ということを考えたら、これはだれか責任を持つか、こういうことになってくるのですか、いかがですか、それは。
  62. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま申し上げましたのは、開披検査の率をもう少し下げるということにつきまして、多少誤解が起きたかと思いますが、輸入は、これは関税の問題、あるいは物品税の問題、禁制品輸入の問題等でございまして、輸入は百パーセントの検査を実施しないわけには参りません。ただ、先ほど申し上げましたように、輸出につきましては、そういう困雑な問題が比較的少ない品物がございます。あるいは特定の地域向け、あるいは特定の物品、輸出戻免税のついたような物品につきましては、犯則が起きる可能性もございますが、そういう同じ輸出でございましても問題の起きやすいような貨物、たとえば輸出戻免税のついたもの、あるいは雑貨等でもって不良品が国外に輸出されるパーセンテージが非常に多いというようなもの、それから特定地域向けの貨物で  ございまして、為林管理法違反の事例が従来ひんぴんと起きているというようなものは、これは厳重に検査いたしますけれども、しかし、従来あまり問題の起きなかったような貨物、あるいは問題の起きない地域向けの貨物、そういうふうなものにつきましては、できるだけ手を省いていきたい。また、出国の検査にいたしましても、現在為替管理法をしいておりますので、これを全部省くというわけには参りませんけれども、しかし、だんだん貿易自由化されますというと、そういう面の要請も薄くなりますので、従って、先進各国で行なわれておるように、出国に際しては、検査を省略するということも考えていいんじゃないか、そういう段階に来ておるんじゃないかというようなことから、もちろんただいま御指摘がございましたように、それによって人員不足を完全にカバーするというところまではとうてい参りませんけれども、しかし、その一助とするために、そういう方法もあるのじゃないかということで研究をしておる次第でございます。
  63. 河野謙三

    ○河野謙三君 須藤さんの質問に関連して。今の超過勤務手当の議論をする前に、議論をする前提として、私は超過勤務の実態を一つ伺いたいのだがね。今、その六十数時間の超過勤務手当を払っておる、これはその超過勤務手当を時間で割れば六十何時間になるのであって、実際の超過勤務時間と、超過勤務手当を払っている時間と、実際に超過勤務して働いている時間と、これには少し違いがあるのじゃないですか。
  64. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 原則はもちろん居残りの時間に応じて超過勤務手当を支給するということ、これはもうどこでも間違いないことでございますか、しからば、完全に機械的に時間数に限って、時間数だけから機械的に超過勤務手当を割り出すかと申しますと、必ずしもそういうふうにいかぬ部面もございます。たとえば、時間中であっても非常に密度の高い勤務をいたしておりますところと、それから居残りました場合におきましてもある程度休む時間がある、いわゆる密度の低い労働をいたします部面等がございまして、必ずしも機械的に時間数から割り出すことはいたしておりませんが、超過勤務手当の趣旨は各税関ともよく体しまして、職員労働分量に合わした手当を支給するということに相なっております。
  65. 河野謙三

    ○河野謙三君 それはね、私は意地悪くそういう質問をしているのじゃない。あなたの方は非常にその説明はしにくいと思うのです。しかし、極端な例をいうとね、私は税関超過勤務手当についてはつまびらかじゃないけれども、ある役所のある部門のごときは、超過勤務手当の予算をもらって、その予算を二十数人の課員なら課員に、あたかも定額の収入のように見積もってそうして割り振っているところがある。これは私はいいとか悪いとかいう議論は別です、これは。そういうふうに超過勤務手当を、昇給というものがなかなかうまくいかぬから、その一定の月給にプラス一定の超過勤務手当というものを月々定額でやって、そうしてその職員超過勤務に対してある程度のサービスをしているというふうに、超過勤務手当が変わっているところがあるのですよ。私は、やっぱりそういうところは多少あなたのところにも当てはまると思うのですよ。だから、私は最後に言わんとするところは、超過労働になっていることは事実だから、これを定員をふやして、今の六十数時間を五十時間にし三十時間にするというふうにしていかなければいかぬけれども、一方においては、定員はふやしたけれども、依然として超過勤務の予算は今まで通りであって、定員がふえてもやっぱり六十数時間は依然として六十数時間だと、こういうふうな形に過去においての定員増加においてはそういう形がたくさん残っている例がありますよ。そういうことではいけないのであって、定員をふやすことによって六十数時間の超過勤務手当が五十時間になりあるいは四十時間になり、ついにはゼロになったという形なら、初めて超過勤務に対する実情から割り出して定員増加したことになるけれども、必ずしもそうなっていないのですよ、役所の今までの超過勤務定員増というものは。それはまあ長年の私は慣例になっておると思う。あなたの方でも、だから、私は決して意地悪く聞くのじゃないけれども、六十数時間と言われるけれども、それは払っている超過勤務の金額を超過勤務時間で割れば六十数時間になるのであって、実際に横浜なら横浜の税関の人が、予算の六十数時間と実際の超過勤務しているというのとは、数字は違うでしょう。そうじゃないですか。
  66. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま仰せになりましたように、必ずしも機械的にその数字が同一とは申し上げられません。しかし、ただ、税関特殊性といたしまして、先ほどお話が出ましたように、時間外に仕役を申請するとか、あるいは臨時に、休日とかあるいは休みに開庁してもらいたいという業界からの申請がありますと、これは受けて立たなくちゃならぬという規則がございまして、関税法にそういう規定がございまして、そうして、その臨時開庁あるいは時間外仕役につきましては、よその役所と違いまして手数料がついておるわけでございます。この手数料が年間数億になりますので、税関仕事特殊性としまして、どうしても人員がふえてもある程度超過勤務はやらなくちゃならぬ、こういうことに相なっております。
  67. 河野謙三

    ○河野謙三君 最後にね、関連質問だから長くはやりませんけれども、要するに、私は、六十数時間というものと実際に超過勤務している時間とは、そこに多少の幅があるのだということだけについてはっきりわかれば、それを基礎にして私は議論しなきゃいかぬと、こういうことであって、それを聞きたかったのです。大体わかりましたから、けっこうです、もう。
  68. 須藤五郎

    須藤五郎君 定員の問題でずっと今議論が発展しましたが、先ほどくれぐれも言っているように、定員の足りないということは税関長も政府当局もみな認めているのですから、それからいろいろ無理が起こるわけです。無理が起これば、労働組合からいろいろな要求も出るし、問題も起こってくる。そのときに、税関長ははっきりと定員の足りないということを認めておるのだから、それから起こるいろいろな問題を今度は権力で抑えるというようなことは絶対すべきでないと思います。そういうこと、はっきりとあなたここで言明しておいてもらいたい。
  69. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) もちろん、組合からいろいろな労働条件についての申し入れ、希望等がございます場合に、これを権力で押えるというようなことは考えておりませんし、またそういう時代でもないかと思います。できるだけ希望なり意見なりを聞きまして、できるだけそのいれ得る範囲の最大限度の要求はいれていきたい。ただ、増員のように、われわれだけの手でもって自由にどうにもならないというような問題につきましては、やはり将来のことを、努力を約束するという以外には方法ございませんので、御了承を願いたいと思います。
  70. 須藤五郎

    須藤五郎君 増員については、私たちも大いに努力しましょう。  それで、この問題いつまでもやると時間がかかりそうですから、次の問題に移りますが、税関部長昭和三十四年九月十日付で蔵税一三三七号という通達を出しております。その内容を説明していただきたいと思います。
  71. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ちょっと、件名をお教え願えませんか。
  72. 須藤五郎

    須藤五郎君 この件名は、事件の内容は、神戸の税関で、税関吏が密輸入の疑いがあるといってこれを検挙した問題についてのことなんです。
  73. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 通達を出したかどうか、ちょっと今記憶にございませんが、事件の内容はよく存じております。その事件の内容は、神戸港に入りました外国貿易船の船員が、たばこを自動車のうしろに六カートンか七カートンかと思いましたが、入れて、そうして持って出たと。なお、そのときに税関職員が、たまたまそれは組合の執行委員でござしましたが、一人その場に、その自動車に同乗をいたしまして、そうしてふろしき包みの中にたばこを二カートン入れまして、そうしてその密輸の犯人と同車しまして、それが税関の門鑑でひっかかりまして、そうしてそれを調べたところが、たばこが出てきたということで、その職員を処分したことがございます。
  74. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなた、その通達を出した覚えはない、はっきりしないと言うけれども、ここにちゃんとあるのですよ。大蔵省税関部長木村秀弘、蔵税一三三七号、昭和三十四年九月十日、ここにちゃんとありますよ。その通達の内容は、あなたそんなこと覚えていないのか。それじゃ困るじゃないか。この事件の内容、今あなたの言ったのと少し内容が違うようですがね。その事件の内容、ここでずっと読み上げるというと時間が長くなりますから、そういうことは同僚諸君に迷惑をかけると思いますからやめますけれども、その事件の結果は、そういうことは税関官吏がやってはいけない、やる権利がないという判決が、大阪の高裁で下されているわけです。その大阪の高裁の判決にもかかわらず、それをあえて無視してやれという通達ですよ。わかったかね。
  75. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) わかりました。ただいまのは私ちょっと誤解しておりました。税関官吏の密輸ではございませんで、それは現行犯逮捕が関税法上できるかどうかという法律問題でございます。それで、当時大阪の高裁でございますか、税関官吏はその身柄の逮捕権はない、従って税関官吏が逮捕する場合には、現行犯逮捕ならばいいと。ただ、それがちょうどその事件のときは、犯人を逮捕いたしまして、税関のそういう専門の取り調べをする審理課というのがございますが、そこへ同行を求めたところが、それを犯人が拒否したというにもかかわらず、強制的に同行を命じたという事件でございます。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 で、それが大阪の高裁で裁判の結果、そういうことは税関官吏はやる権利がないという判決が下されたのにもかかわらず、それに対して大蔵省は、法務省、最高検察庁と協議した結果云々といって、大仮高裁で否定された、税関職員に法令上任意同行権はないとされた判決を無視した通達を出した。それがこの一三三七号という通達です。これは関税法上権限がないものとして、法律の解釈適用がはっきり司法権によって明示されたにもかかわらず、行政官庁の判断で、勝手に行政措置で、憲法で尊重されたる基本的人権侵害の危険性の最も強い、任意同行行為を税関官吏に一片の通達 で行なわせようとするものではありませんか。同時に、これは憲法違反であると同時に、公務員法の逸脱だと私たちは考えるのです。だから、こういう通達は何ら効力のないものであると考えますが、それに対してどう考えますか。
  77. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほどのこの減税一三三七号というのは、ちょうど高裁の判決が出ましてから、われわれの方としては最高検、法務省等と協議いたしまして、それで出した通達でございまして、要するに、問題は現行犯逮捕であるか、あるいは純粋の任意同行であれば適法である。しかし、今問題になっております事件は現行犯逮捕でもなく、かつ、これは任意同行でもないのだということになっておりまして、ちょっとこの論点がずれておるわけでございます。従って、通牒の内容は、あくまでも現行犯逮捕の場合は適法である、あるいは任意同行の場合も適法である、しかしながら、それ以外の場合において逮捕した場合には、司法警察官に引き波さなければならぬのだということを解明した通牒でございます。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、今後も、そういう大阪高裁の判決に対してあなたたちは賛成しているわけじゃないだろう。今後もそういう場合には、神戸であったような場合が起こった場合には、遠慮会釈なくやれという通達でしょう。もしも大阪高裁の判決に不服ならば、なぜ上告しないのですか。上告して争ったらいいじゃないですか。
  79. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) その通達のポイントになりましたのは、公務の執行であるかどうかというのが問題になりまして、高裁の判決は、事実の認定において、現行犯逮捕のことを問題にしているのでなく、任意同行を求めたにかかわらずこれを拒否された、それを無理に連れて行こうとした。これは税関官吏としては認められないということになれば、これは公務ということにならないことになるわけでございますね。従って、われわれは、もし現行犯逮捕そのものを公務執行と認めないということであれば争うつもりでおったのでございます。しかし、その判決が、現行犯逮捕そのものをとらえておるのでなく、任意同行の際に相手がこれを拒否したにかかわらず、これを強権をもってつれて行こうとしたことが、これが税関官吏としては逸脱しているという判決でございますので、その点については、われわれはこれはもう争い得ないであろう。ただし、もし現行犯逮捕そのものを公務執行でないという、そういう判決でございましたならば、争うつもりでおったのでございます。従って、その点について若干誤解があるいは生じておりゃしないか。およそ現行犯逮捕というものが税関官吏の公務の執行と認められないというように、あるいはその判決を一般に受け取られたような一二ュース等もございましたので、その点を十分誤解のないように解明するということで、この通達が出たのでございます。
  80. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、昨年の暮れ、全国税関長会議において、この点に関して関税法を改正せいという決議がされたんじゃないですか。この点についてあなたはどういうふうに考えておるか。法改正までするのか、それとも一片の通達で押し切ってしまおうというのか、どちらですか。
  81. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 決議ということではございませんで、なるほど本庁で考えているように、最高裁でもって争う、最高裁まで持ち込んで争うのが道理かもしれぬけれども、そんなことくらいならもう少しはっきり書いたらどうか、これは明らかに公務執行であるということを法律で明らかに明記したらどうかという要望もございました。しかし、われわれは、現行規定の解釈上もそういうふうに読めるという考えを持っておりますので、しいて明文を設けなくてもよろしいのじゃないかということで、もちろんわれわれはこれは今後も研究するつもりではございますけれども、解釈を明らかにするために明文の規定を設けたらどうだろうかという意味の要望もございました。しかし、これは、われわれ、しいてそうしなければ現行犯逮捕は公務執行にならないというふうに考えておりませんので、そうしなくても十分やれるというふうに考えておるわけでございます。しかし、まあ、もし誤解なり紛議が生ずるおそれが非常に多いということでございますれば、法務省と相談しなければなりませんけれども、考えてみたいとは思っております。
  82. 須藤五郎

    須藤五郎君 次に、税関の検閲に関する問題で少し質問したいのでありますが、憲法の二十一条には「検閲は、これをしてはならない。」という条項があることは御承知通りだと思います。それから、関税定率法の二十一条には、公安、風俗を害するおそれあるものは輸入を禁止するという条項があるのですね。ところが、最近税関で物を検閲しておる、ひどいのはカットをする、そういう事例があるように聞いておるのです。最近そういう事例があったならばその事例、並びに過去においてそういうことがあったらその事例を一つ示していただきたい。
  83. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) まず、最近の事例を申し上げますと、去年の十二月に入りました映画で「ニュールンベルグ裁判」というのがございます。これは現在「十三階段」かなんかそういう題名でございますが、この「ニュールンベルグ裁判」の中で、アウシュヴィッツの捕虜収容所の情景が出ておりますが、これは死体が散乱しておって、非常に何と申しますか、非常な婦女子等に対して残虐な気持を抱かせるということで、輸入映画審議会にかけまして、二十六ヵ所、百二十七フィートを削除してもらうように話をつけたことがございます。その次には、今年の一月になりまして、「ビート・ガール」という、これはイギリスのフィルムでございますが、これの中にストリップ・ガールのエロシーン、ダンスのシーンがございます。これを、この第五巻目をやはり輸入映画審議会にかけまして、全員一致で、これはあまりおもしろくないということで、この第五巻目を遠慮してもらった事例がございます。最近はこの二件でございますが、いずれの場合におきましても、税関でもって直接はさみを入れる、いわゆる戦前のような形の検閲をやっておるわけではございません。ただ、公安、風俗を害するおそれのあるものにつきましては、輸入映画審議会という民間の有識経験者だけで構成されております審議会がございまして、必ずこの審議会にかけて、そして全員一致の結論が出ました場合には、その部分について輸入業者と話し合いをいたしまして、それで遠慮をしてもらうことにしておる次第でございます。
  84. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、それはおかしいじゃないですか。税関が見て、そうしてそのものをカットするというようなことを発言すること自体が、検閲じゃないですか。それは検閲行為以外の何という行為ですか。関税定率法の二十一条では、そういうものは輸入せぬということなんでしょう。輸入を禁止するということでしょう。カットするということじゃないでしょう。それはどうですか。それをカットするということは、もうすでにこれはもう検閲ということを意味しているじゃないですか。
  85. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま申し上げましたように、税関でカットを  するのではございませんで、これを法の規定に準拠しまして正確にやるということになりますというと、今の輸入映画審議会にかけた結論が出ますというと、この部分は関税定率法二十一条の公安、風俗を害するフィルムですということを相手方に通行いたしまして、そうして引手方がそういうおそれのあるものを自発的に輸入を差しとめればそれで問題は起きませんが、それにもかかわらず、あえて持って入るということになりますと、禁制品輸入の罰則がかかります。関税法百九条の罰則がかかりますので、そういうふうにして罰則がかかるまでじっと待っておるということではなく、定率法二十一条違反の疑いのある物件であるということを相手方に通告をするわけでございます。
  86. 須藤五郎

    須藤五郎君 これは、税関のどこでこういうような見分けをすることになっておるのですか。
  87. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) どこでと申しますと、どういう課とか係とかですか
  88. 須藤五郎

    須藤五郎君 どういう機関で……。
  89. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 税関の図書調査課というのがございまして、そこで全部のフィルムを原則としては見ておるわけでございます。しかし、定率法二十一条の処分をいたします前には、必ず、そういうおそれのある物件であるという認定をいたします際には、必ず今申し上げたように輸入映画審議会にかけまして、そうしてそこで全員の御意見に従って処置をとるということになっておる次第でございます。
  90. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、その内容の判断というものは輸入映画審議会、それが判断をするのであって、税関は一切それに対してくちばしを入れない。輸入映画審議会の責任において決定するということですか。
  91. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今申し上げたのは実質的な仕事の運営の方法でございまして、責任はもちろん税関長にございます。これはこの全部のフィルムを審議会にかけるというわけには参りませんので、税関が一応目を通して、そうしてそういうおそれのあるというものにつきまして、審議会を開催してこれを見ていただくということになっております。それで、現在までの実情を申し上げますと、審議会の全員一致の結論がなければ、税関としましては輸入業者に対してそういう認定をしたということをやっておりません。たとえば、今申し上げました「ニュールンベルグ裁判」にいたしましても、最初税関でどうもまずいのではないかというのが四十一ヵ所ございましたが、輸入映画審議会ではそのうち二十六ヵ所を認定いたした。それからまた、「ビート・ガール」にいたしましても、第五巻目を、これもやはり審議会で全員一致で、うまくないということでございましたが、輸入業者が差しかえの、かわりのフィルムを持っておりまして、第五巻目だけはかわりのフィルムを入れたということで、実質的には税関が独断でもってやるということは、現在やっておりません。
  92. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  93. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) では、速記をつけて。
  94. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、こういうことはないですが、審議会がそれは入れてもいいという意見になっても、「十三階段」がカットされておるが、それは全部カットなしで入れてもいいという意見が審議会で出ても、税関長がやっぱりいかぬと思えばカットするのですか。そういうことなしに、ノーカットで入るのですか。
  95. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 審議会で反対の結論が出たにもかかわらず、税関長が違った処置を、審議会の結論とは違った認定の処置をとったということは、実績としてもございませんし、今後もそういうことはもちろんやりません。審議会のある以上は、審議会の意見、ことに全員一致の意見を尊重して、その通りにやっていくということでございます。
  96. 須藤五郎

    須藤五郎君 その審議会というのは、法的にあるのですか、私は伺っておりませんが……。
  97. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは税関長達で出ておる一種の訓令でございます。もちろん、法律にこれを将来織り込む必要があるかと思いますけれども、今までのところは、税関長達という訓令でやっております。
  98. 須藤五郎

    須藤五郎君 審議会そのものが違法じゃないですか。憲法違反じゃないですか。憲法には何ものといえども検閲は相ならぬ、こういうことがあるのに、審議会は検閲をやっておるということになって、審議会そのものが違法じゃないですか。違法なものをあなたたちが作り上げておるという、そういうことになりはしませんか。
  99. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは実は昨年でございましたか、本委員会でやはりそういう憲法上の論議が出まして、その後法制局の方とも十分打ち合わせをしまして、法律的な検討も加えたわけでございますが、この定率法の二十一条は憲法二十一条には違反しないということは結局、国内でございますというと、いろんな刑法とかその他の法律によって、この国内で作られる公序風俗関係の物品についての取り締まりができますけれども、日本の法律の及ばない外国でもって作られたものについて、これを国内に入れるについての予防的な手段ということは、これは現在世界各国あらゆる国がとっておるところでございまして、これを憲法違反ということは当たらないのじゃないかというような結論が出ております。
  100. 須藤五郎

    須藤五郎君 まだいろいろ問題がありますが、皆さんがえらいおせきのようですから、私は端折ります。私の質問時間が短いのです。答弁が長いので、皆さんいらいらするようですから、要領を得た簡潔な答弁をして下さい。その次に、定率法について尋ねます。ラードの年間消費量、輸入量、価格、特に新別表の甲ラード、乙その他のイ、ロの輸入先、輸入量、価格、これを知らして下さい。
  101. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ラードにつきましては、この輸入量を申し上げますと、昭和三十一年が六千七トン、それから三十二年か五千四百四十一トン、それから三十三年が六千百二十四トン、それから三十四年が八千九百三十八トンになっております。それから、国産のものにつきましては、国産原料によるものが三十一年、三十二年が五千トン、三十三年が六千四百トン、それから三十四年が三千トンの見込みでございます。それから、輸入した粗製のいわゆるホック・グリースから作りました、精製しましたラードが、これは国産として昭和三十一年が二千六百十五トン、三十二年が四千百二トン、三十三年が七千三十三トン、こういうことになっております。それから、その主要な相手国、日本に対する輸出国はオランダ、アメリカでございます。
  102. 須藤五郎

    須藤五郎君 オランダとアメリカからの輸入量は……。
  103. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今オランダとアメリカの内訳ば持っておりませんが、主として和製ラードばオランダでございます。それから、アメリカに対しては、現在割当制をとっておりますので、非常に少のうございますが、原料のホック・グリースは、ほとんどがアメリカでございます。
  104. 須藤五郎

    須藤五郎君 オランダ産その他の精製ラートの関税をもっと上げるわけですね。国内精製業者を関税を上げて保護するというのかこの法の建前だと思うんです。しかし、この裏から考えますと、これは、アメリカの粗製ラードを日本に入れて日本で精製しようというのだが、この法律のねらいとするところは、オランダから来るやつをとめちまって、そのかわりアメリカから来るやつを、アメリカに依存して、アメリカ一辺倒になる、日本のラード業というものはそういうことをたくらんでいるのじゃないですか。
  105. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは御承知のように、現在ラードは、オランダ等の地域に対しましてAA制をしいておりまして、自由にオランダ等からは輸入できますが、アメリカに対してだけは、いわゆるドル地域として割当制をとっている。これを同じ基盤の上において、ドル地域に対しても、ポンド地域に対しても差別をしないようにするということから生じた問題でございまして、従来の状況を見ますというと、アメリカのホック・グリースをオランダに入れまして、オランダで精製して、その高いものを日本が買っておったという格好になっております。それで、そうするくらいならば、むしろアメリカのホック・グリースを日本が直接入れて、そうして日本で精製をしてもいいわけでございまして、そういう意味で、もちろんオランダ品を締め出すというような、そういう考えは毛頭ございません。もちろん、オランダが値を下げてきますというと、アメリカのラードと比べて非常に安いということになりますというと、オランダ品も自由に入ってきますけれども、ただいまのところは、これはアメリカの精製ラードは非常に安うございますので、これがAA制になってどんどん日本に自由に流れ込むということになりますと、日本のラードなりマーガリンの精製業者がつぶれてしまいますので、それでアメリカから入ってくる安い精製ラードを関税によってあれしよう、そして国内のマーガリンあるいはショートニング、あるいはラードの精製業者を保護しようという趣旨でございます。
  106. 須藤五郎

    須藤五郎君 従来もガット協定税率が五%であったわけでしょう。それがあえて基本税率に入れたという理由は何ですか。
  107. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 従来は、基本税率が一割でございましたのを、ガットでもって五%に譲っておったのでございます。それを今回自由化する前提としましては、これを自由化に換算しまして、大体輸入品と国産品との価格差、一五%ぐらいの税率を見込みまして、国産を保護すると。ただし原料につきましては、これは国産は絶対に足りませんので、これは従来の五%をそのまま基本税率に持っていくという趣旨でございます。
  108. 須藤五郎

    須藤五郎君 精製ラードの税率を引き上げるについて、相手国との協定をどうするつもりか、日本政府の方針を伺いたい。それから、他国との関係を考慮せず、単に対米輸入の分だけ基本税率に入れてしまった措置は妥当でないと思いますが、どうですか。
  109. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これはもちろんガットで譲許しております税率でございますので、日本が独断でもって、日本だけの手で上げるというわけには参りません。従って、今年の九月から一般的な世界の関税交渉が始まりますので、その舞台にのっけて、そしてこの精製ラードの一五%の税率を相手国との協議において認めさせる、こういう方針でございます。  また、第二の、アメリカに対してだけ勝手に上げるのはと、こういうお話でございますが、これは先ほど申し上げましたように、現在日本に対するラードの主要供給国はオランダとアメリカでございまして、オランダは、ただいまのところ、日本に対しては、ガット三十五条を採用しております関係で、オランダとの協議は必要がございません。従って、アメリカと主として協議をいたしまして、それでこの税率の引き上げを認めさせるということになったわけでございます。
  110. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たち、アメリカだけにたよらずに、中国なんかからもラードが入るはずだと思うのです。それで、参考までに聞きたいのですか、中国からラードの輸入は、戦前、戦後どのくらいあったのか。またわかっておるなら、中国の日本への輸出可能量というものはどのくらいであるのか、それを伺いたい。この問題は、今後の貿易関係がありますので聞いておきたいのです。
  111. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 中国からのラードの輸入の実績を申し上げますと、昭和三十一年に五百二十一トン、三十一年に二百五十二下ン、三十三年に三百五十九トン、三十四年以降はゼロ、こういうことに相なっております。
  112. 須藤五郎

    須藤五郎君 中国から相当分量を入れようと思えば入る余地はあると思うのです。おそらく、値段も安い値段で来るはずなんです。ところが、今度のこの法改正などを見ましても、アメリカの粗製ラードをうんとこさと入れよう、ラードはアメリカ一辺倒にもっていこうというような、そういう考え方がこの法の裏に隠されているのじゃないかと思うのです。こういうやり方が、いわゆる今度岸内閣が考えている貿易自由化の見本じゃないかと私は思うのです。どうですか。
  113. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) この関税定率法の改正案そのものは、貿易の相手国を何ら指向しておりません。どこから入るものにつきましても、平等にこれがかかるわけでございまして、別にこの法案によって、中共からの輸入をとめるというようなことは毛頭考えておりません。むしろ、アメリカから安いラードが入ってきます場合に、国内のラードの精製業者等を保護するという趣旨でございまして、アメリカから精製ラードを輸入することに対して、ある程度の国内的な保護を講じようということでございますから、御了承願いたいと思います。
  114. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたがどう言おうと、これが通れば、結果的にアメリカからたくさんラードが入ってくるわけです。これまでよりもうんと入ってくる。よそのラードはほとんど入らなくなって、アメリカからのみ入ってくることになると思う。それはとりもなおさず、アメリカから押しつけられているところの貿易自由化、それの一つの現われだと私は思うのです。いろいろ理屈はつくでしょうけれども、それが真のねらいだと私は言うわけです。  その次に、国税暫定措置法について少し質問したいと思いますが、二条にいいますところの「設備の緊急な近代化を必要とする事業又は特に育成を必要とする事業」とは、どういう手業をいうのか、説明して下さい。
  115. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) いわゆる「近代化を必要とする事業又は特に育成を必要とする事業で政令で定めるもの」とありまして、政令で定めてございます。その事業は、採鉱、選鉱、運鉱及び土木、それから製鉄及び鉄鋼加工、それから非鉄金属の製錬及び加工、電線の製造、それから航空機及び部分品製造、自動車部分品製造、それから電子管又はゲルマニウムもしくはシリコンの単結晶の製造、それから燃料用ガス製造タール製品製造、肥料製造、その他でございます。
  116. 須藤五郎

    須藤五郎君 この二条の二号に「事業の主要な作業工程において欠くことができないもの」とありますね、これは独占よりの要求があれは、一号の「本邦において製作することが困難で  ある」という条件など無視してしまって、何でも免税輸入ができるという結果になりはしませんか。
  117. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは一号と二号と両方の条件をかね備えていなくてはならぬという趣旨でございまして、「新式又は高性能の産業用機械類」で本邦ではできない、しかも、その機械が、事業の主要な作業工程で必要不可欠のものだという趣旨でございます。
  118. 須藤五郎

    須藤五郎君 輸入期日を限った理由、並びにいろいろ違った期日があります。これは何のためにこういうことを  したのですか。
  119. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) この輸入期日を限りました理由は、できれはこういう重要機械類につきましても、できるだけ国産を保護育成したいということでございまして、永久にこういう立法をするということはあるいは適当でないじゃないか。ただ、現在の実情のもとでは臨時的にこういう便法を講じまして、そうして生産者の利害もさることながら、需要者である重要産業の設備近代化等に資せようということで、暫定的に期限を切ったわけでございます。それから、期限がいろいろ違っておるというお話でございますが、これは従来は全部が一年限りということでございましたけれども、今回はこの原子力研究用の物品であるとか、あるいは航空機及びその部品であるとかというようなものは、当分わが国において自主的に自立的に製造するということのめどが完全についておりませんので、大体三年くらいは継続するんじゃないかという見込みのもとに、三年といたしたわけでございます。
  120. 須藤五郎

    須藤五郎君 三条は、米国の余剰農産物、米国の残りものをもらう、それを関税免除で入れようということですが、これはただでもらうのでなしに、やはり米国から買わされておる。米国の余剰農産物を日本に押しつけるについて関税を免除するということになるのですか、これは過去においてどれだけ日本に入ったか、また今後どれほど日本に余剰農産物を入れていこうというのか、その見通しを……。
  121. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 過去の輸入数量の実績を申し上げますと、昭和二十九年が一万四千トン、それから三十年が一万四千九百、約一万五千トン近く、三十一年が二万トン、三十二年が二万六千トン、三十三年が二万二千トン、三十四年の一月から六月までで八千五百トン入っておるわけであります。来年度の、三十五年度の見通しでございますが、これは大体需要量が三万五千五百トンで、これに対しまして供給の計画といたしましては、輸入の脱脂ミルクが二万六千七十七トン、それから贈与分が八百五十七トン、それから国産脱脂ミルクが千三百五十トン、それからなま牛乳、これは脱脂粉乳に換算いたしまして七千二百十六トン、合計三十五年度三万五千五百トンということになります。
  122. 須藤五郎

    須藤五郎君 四条の原子力研究用及び発電設備となっておりますが、基本的研究でなく、この原子炉を入れろというのは発電が中心目的だと私は思うのです。ところが、原子力産業の確立を急ぐ理由は一体何なのですか。産業用には、米国でも英国でも、まだ経済的に効果かあるかどうかということになっておる原子力発電ですね、それを非常にこんなに急いで入れる理由は一体何なんです。
  123. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは私から御説明申し上げるのは不適当かと思いますが、従来原子力研究用の物品につきましては免税をいたしておりますし、原子力の発電設備につきましても、重要機械類といたしまして、実効上重要機械の免税に該当するものとして免税をいたしておったわけでございますが、今回この原子力研究用物品を暫定措置法に改めました際に、むしろその重要機械類からはずして、同じように原子力関係として一本化した方がわかりやすいんじゃないかということで、ここに一本にしたわけでございまして、従来から免税はいたしておるわけでございます。ただ、なぜこういうものに免税をするかということになりますと、あるいは私から御説明するのは困難かと思います。
  124. 須藤五郎

    須藤五郎君 では、適当な人がおるなら答えていただいて、次官、なぜこれを免税にするか。まだ原子力発電というのは有利かどうかということは、米国でも英国でも問題になっておるときに、日本は原子力発電にするんだといって、これを無税にして入れるということなんですが、その真意はどこにあるのか。私たちはこういうふうに考えておるんです。これはやはり自衛隊の核武装のために急いでこれを入れようとしているんだと、こういう見解なんです。
  125. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答え申し上げます。私も、原子力とかこういう方面はしろうとでございまするけれども、動力が原子力の方へと重点を指向しておりますおりから、しかもこの原子力の平和利用ということで、相当各国が競って平和利用に力を注いでおりまする関係上、わが国もこの原子力の平和利用におくれをとってはいかぬ、そういう点から原子力の研究用物品についても免税をいたしまして、進んだ機械を輸入しよう、そういう点にあるんだと私は考えております。
  126. 須藤五郎

    須藤五郎君 ほんとうに平和利用の目的をもってやるなら、まあ問題はないと思うのですが、しかし、今日の情勢で、私は、やはり真のねらいは自衛隊の核武装が急がれるために、急いでこういうことかなされるんだ、こういうふうに私たちは考えておるんで、あえて質問やっておるわけです。  それから、五条は、これは航空機です。これもやっぱり日本の戦力のためです。四条、五条、これは自衛隊との関係が非常に深いと思うんです。  それから、六条は農林漁業用重油を安く入れるというんですが、農林漁業用の重油を安く入れることはまことにけっこうなことだと思います。しかし、この重油の輸入量、それから輸入先は一体どこなんですか、この点をまず伺いたいと思います。
  127. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 重油のこの輸入先でございますが、A重油につきましては、アメリカ、サウジ・アラビア、シンガポール、バーレイン諸島等になっております。それから、BC重油につきましては、アメリカ、サウジ・アラビア、シンガポール、イランその他となっております。
  128. 須藤五郎

    須藤五郎君 輸入量は。
  129. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 輸入量は、A重油は、昭和三十三年で申し上げますと、アメリカ合衆国が九十万六千キロリッター、それからサウジ・アラビアが九万二千、それからシンガポールが六千、それから中東でございますが、バーレイン諸島が五万一千、その他合計して百五万八千キロ、それからBC重油につきましては、アメリカが八十九万六千キロ、それからサウジアラビアが四十一万四千キロ、シンガポール二十万八千、それからイランが二十一万一千、その他十二万九千、合計百八十五万八千キロとなっております。
  130. 須藤五郎

    須藤五郎君 大体がアメリカ及び英国系統からの輸入ですね。これは石油カルテルといえば、世界最強のカルテルだが、従って、私は値段も相当高いものだろうと思うのです。こういう農林漁業用に重油を安く入れるということも、やっぱり米英から高い重油を結局買わされるという結末になっていくと思うのですが、その前にもっとソビエトあたりから安い重油を買うということを考えておく必要があるのではないかと思うのですが、これまでソビエト地域からの輸入状況はどういうふうになっておるか、一つ聞いておきたい。
  131. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 最近の実績はございませんが、ごく最近ソビエトとの間に通商協定ができまして、来年度から相当量の原油がソ連領から入ってくるということを聞いております。
  132. 須藤五郎

    須藤五郎君 これまでもソビエトからどんどんと入ってくる情勢はあったと思うのですか、やはりアメリカの資本に押され、輸入禁止というような状態を押しつけられておったと思うのですね。これからどんどんと、自由にソビエト地域から重油が入ってくるということになれば、シベリア開発でバクーの方から鉄管引いて、シベリアまで、こっちまで石油持ってくれは、ずっと安い石油が日本にも入ってくることができるんじゃないか、そういう条件ができるのではないかと思うのですが、そういう場合に、単にアメリカからのみたよらないで、アメリカの重油を押しつけられるんじゃなく、ソビエト地域からも安い重油を買うという心がまえがあるのか、またそういう措置をとろうとしておるのか。これは税関部長じゃなしに、政務次官に伺った方が適当と考えるんですか、一体こういうことをやらないで、ただ免税、免税といっておっただけでは、農民や漁民の利益を守ることにはならないと私は考えるわけです。ソビエトであろうが、どこからであろうが、アメリカよりも、もっと安い値段で石油を買うという方針を立てていかないと、免税をしてアメリカから物を入れるということだけでは、私はものが解決しないと、こういうふうに思います。
  133. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) ただいま御指摘の、この重油をソ連から輸入するという問題でございますけれども、これにつきましては、ソ連との通商協定によりまして、相当われわれはソ連から輸入されることを期待をいたしております。先ほども申し上げましたか、このラードにいたしましても、重油にいたしましても、この法律自体は決して国によりまして差別をしようというふうな考え方は、われわれといたしましては毛頭考えておりません。ただ、あるいは重要産業、あるいはまた農業が十分その事業が発展いたしまするように、農民の負担が少なくなりますように、そういうことを念願いたしまして、こういう免税措置を講じているわけでございます。
  134. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう二点ですから……。こういうふうにアメリカから安い重油がどんどん入ってくるとなると、石炭産業と非常に関係してくると思うのですね。石炭産業との調整をどういうふうに考えられているのでございますか。現在三井三池でもああいう深刻な問題が起こっているような状態ですか。
  135. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは私からお答えするのは適当ではないかもわ かりませんが、今回の原油、重油等の税率の引き上げの一つの理由といたしましては、石炭対策等の財源としてこれが相当使われるということでございます。また、御承知のように、油が最近値下がりの傾向にございますので、石炭の方が非常に合理化を急かれておりますけれども、それにも増して油の値下がりがあるようであると、石炭の方に打撃が大きいという観点から、従来二%の軽減税率を、六%まで上げるということにいたしましたわけでございまして、もちろん、このこと自体を直接に石炭対策と結びつけるわけではございませんけれども、関接には相当の影響があろうかと思うのでございます。
  136. 須藤五郎

    須藤五郎君 今後のこの重油の輸入見込み量はどのくらい見込んでいるのですか。
  137. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 三十五年度の見込み量は、原油が二千四百七十八万キロリッター、それからガス用として四十万キロ、A重油が九十五万キロ、BC重油が百四十万キロ、その他となっております。
  138. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、本法案の各条項には、政令にまかされる部分が非常に多いと思うのですが、各条項に政府が考えている政令の内容を説明していただこうと思っておりました。しかし、これは非常に時間もかかることと思いますので、私はこれを資料としていただくことにして、説明を求めることはここで保留しておきます。大体憲法三十条に「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」とありますが、税制関係では政令委任事項が非常に多いのですね。これは憲法上許されていないはずだと私は考えます。こういうふうに行政権を拡大してはいけないと私は考えるのですが、政務次官、どういうふうに考えますか。
  139. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答え申し上げます。確かに、須藤委員の御指摘通り、でき得る限りこれは法律事項に付すべきものでありまして、政令の範囲というものは極力圧縮すべきものだと思います。しかし、何分この関税税関仕事相当手続的な部類に属しますところのものも多うございまする関係上、政令にまかせられた範囲がかなりあるやに思っております。しかしながら、こういうふうな重大な事項を政令にまかすべきではなく、できるだけ法律によっていくという御趣旨を尊重いたしたいと考えております。
  140. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 一時十五分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩    —————・—————    午後一時三十五分開会
  141. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) これより委員会を再開いたします。質疑を続けます。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ラードの関税の問題について質問いたしたいのですが、このラード関税の引き上げは、今度の貿易自由化に伴う措置でありますが、これは今後貿易自由化に対するいろいろな措置の一つとして非情に注目されるわけですが、貿易自由化に対処する措置としては、御承知のように、設備制限の問題とか、あるいは輸出入取引法の改正とか、また関税による保護とか、いろいろ政府でも考えられておりますが、その一つとして、関税による保護としてラードの問題が出てきたわけですね。これはまあラードの問題が具体的に典型的に出てきたのですが、今後為替自由化に伴う関税政策というのですが、どういうふうに基本的に考えられているのか、まずその点一つ。
  143. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 御承知のように、現在私たちが持っております関税率は、昭和二十六年に一般改正になりまして、それが現在までずっと持続されておるわけでございますが、当時の特殊事情といたしまして、まあ今御指摘になりましたように、為替管理、貿易管理が厳重にしかれておりましたために、従って、関税率を通じて輸入物品の価格に作用を及ぼす、それによって輸入の間接的な統制と申しますか、間接的な政策を行なうということが、緊急の問題としては当時必要が感ぜられなかったわけでございます。また、当時は占領当時の作業でございまして、必ずしも十分に、自主的な日本だけの考えというわけには参っておらぬものも中にはあるわけでございます。それから、当時は、いわゆる繊維を中心とした戦前からの産業構造がそのまま持続しておったというような傾向もございまして、最近の重化学工業の発展を必ずしも前提といたしておらないような税率になっております。そういう関係で、非常に現在の税率実情にそぐわぬ面がございますので、これはどうしても改訂しなければならぬというところで、たまたま自由化の機運が高まって参りまして、それで業界、あるいは民間の有識者の方々からも、税率をこのままほっといちゃいかぬじゃないかというような声が大きくなって参りまして、私たちといたしましては、この機運に乗っかって、そして従来なかなか実現できなかった関税率一般改正を行ないたいという心がまえでおります。それで、この関税率の再検討につきましては、重要な点としては二点ございまして、一点は、現在の税表分類が非常に包括的でございますので、これをブラッセルの関税表のような、非常にこまかい、しかも各商品の類別のがっちりした、国際性を持ったそういう税表分類に改めたいということが第一点でございまして、これは現在、作業が第二次草案まででき上がっております。目下これを修正増補いたしまして、着々と最終案を作りつつございます。それから次は、何と申しましても、この税表が変わって、各品目ごとに適正な税率をあんばいしなくちゃならぬということで、税率の全面的な再検討を今国会後開始する予定になっております。それには関税率審議会というのか、これは関税定率法で設けられた審議会でございまするので、これを増強いたしまして、各消費者代表、生産者代表のおもな方々に入っていただきまして、そして関税率審議会を強化拡充して、ひんぱんに開くことによって適正な税率の検討を行ないたいというふうに考えております。たまたま、御指摘のように、このラードの問題が出て参りましたけれども、今後今のままほうっておきますというと、自由化するごとにぼちぼちとこういう事例がふえてくるようなことも考えられますので、まず自由化を前提として、かりにそれが自由化されるかされないかは別といたしましても、自由化を前提といたしまして、一応あるべき関税率というものを今後盛るように作業を進めたいと思っております。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体構想はわかりましたが、これは今後自由化に伴って国内産業を保護する場合、この関税政策がこれまでと違って非常に重要なウエート、大きなウエートを持つようになり、これまでとは違った重要性を持って参りますか、そこで、ただいま伺いますと、税率の全面的再検討をすることになっているようでございますが、これは具体化して参りますとね、いろいろ各方面の利害が輻湊すると思うのですね。そういう場合に、ややもすると、やはり消費者の立場というものが無視される傾向が強いのですが、今度は、その関税率審議会というの、これは法制、法律としてできておるのですか、どうですか。それを増強されるというような、もっとこれを強化するというようなお話がありましたが、これはいつごろ強化されて、そしてこの税率の検討はいつごろ終わって、今度は国会にいつごろを目途として出されるのでありましょうか。もう少し具体的に御説明いただきたいと思います。
  145. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 関税率審議会は、できるだけ早く現在の欠員の補充を完了しまして、おそくも四月の中旬には三十五年度第一回の総会を開きたいと思っております。もちろん、今おっしゃったように、消費者あるいは労働界等の代表も含めまして、必ずしも生産者一方の考え方でなく、中立委員あるいは生産者代表、労働代表、消費代表というような均衡のとれた構成にいたしたいと考えております。それから、時間的な関係でございますが、一応われわれとしましては、次の通常国会に提案ができるように作業を進めたいと思っております。もちろん、これは大蔵省だけの作業ではございませんので、各省に御協力を得なければなりません。従って、必ずというわけには参りませんけれども、少なくとも自由化のテンポにおくれないように、できれば次の通常国会に提案をいたしたいと思っております。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは具体的にラードの関税の問題について伺いますが、これは御承知のように、提案理由にも書いてありますように、精製ラードにつきましては、このガットの係でサプライヤーと交渉しなければならないのですね。それはまあアメリカにあるということは、まあ前の御答弁ではっきりいたしましたが、その場合、御承知のように、譲許品をこちらであげなければならぬわけですね。ラードの関税は上げるけれども、他にそれにかわるべき、日本の方でアメリカから輸入するものの関税を交換的にというのですかね、引き下げなきゃならぬのですね。ところが、現在の関税は、先ほどお話ございましたように、占領時代の関税で、かなり低い。ですから、なかなか譲許品目というものを選定するのか困難で、もしそれを引き下げた場合、今度はアメリカから安く物が入ってきて日本の商品を圧迫する。ラードの方は保護されても、今度はほかの商品が圧迫されるということになると思うのです。もうアメリカの方とお話し合いをされているのではないかと思うのですか、この譲許品目としてはどういうものをアメリカから要求してきておりますか。あるいはまだその段階に入っていないのかもしれませんが、それにしても、何かこう予想されるのがあるのじゃないか。その間の事情をお伺いしたいのです。
  147. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) お話の通り、ラードを引き上げます場合には、ほかの代替物を提供しなくてはならぬということは、これは規約によってきまっております。ただ、関税交渉、実はことしの九月からジュネーブで開かれますけれども、しかし、最初にヨーロッパ共同市場の問題なんか取り上げられまして、おそらく本格的な関税交渉は来年になるかと思います。そういう関係で、まだ向こうからのリクエストも参っておりませんし、こちらから何を提供するかということもきまっておりません。しかし、品物は相当たくさん品目はございますし、もちろん引き下げるだけでなく、現在の税率を据え置くという約束も一つの譲許になるわけでございまして、そういう形で譲許を、ほかの品目について譲許をするか、あるいは適当な品目がございませんならば、アメリカは日本に対してちょうど——ちょうどというとおかしいですが、先般体温計とかあるいは金属洋食器等についてガット税率を引き上げております。そういう関係で、それをラードの対価としてこちらが考えても、そういう交渉でもできないことはないかと存じております。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですが。これはラードが今質疑の対象になっておりますけれども、今後ラード以外にもこっちの保護関税をかけていく場合に、いつもこの問題がからんでくるわけですね、コンペンセーションの品目として。今伺いますと、アメリカが、こちらからの輸出する物の関税を引き上げた場合に、それを譲許の条件にできるということになれば、これはかなりこちらとしても有利な条件になると思います。そういうことは今可能であるように伺いましたが、今後の、ラードだけではなく、全体の措置としてできるのでございますかね。
  149. 平林剛

    ○平林剛君 ちょっとそのことに関連して。ラードは、アメリカから輸入をしているときの関税率というのは、この法律でありますと五%下げるようになっていますけれども、従来からアメリカとの間においては、すでに五%になっているんじゃないですか。そうすると、今御答弁になりましたように、その体温計だとかその他で引きかえにやるなんということは、どうも計算が合わないのですよね。もうすでにこれはもう下がっちまっているのですよ。だから、この法律を出した出さないにかかわらず、アメリカとの間には五%になっているのですよ。だから、今これで特に下げるという性質のものではないのじゃないですか。そうすると、木村委員質問に答えて、いや、そのはね返りとして体温計その他あるとかいうようなことは、どうもわしは理解できないのですが、どういうわけですか。
  150. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今回の提案しております措置は、原料ラードについては現在のガット税率である五%、これを基本税率にする。しかし、精製ラードについては、現在ガットで五%になっているのだけれども、これをキログラム当たり十五円、すなわち従価に換算いたしまして一五%に引き上げると、こういうことでございますから、従って、精製ラードの一〇%引き上げ分については、これは何らかの代償を提供するか、さもなければ向こうが体温計等を引き上げておりますので、それと見合いにするかという問題が起きるわけでございます。
  151. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この自由化に対処するために、本関税で調整する場合、今のラードの場合では、やはりサプライアーズと交渉して譲許品目というものを上げて、向こうに代償を与えなければならない、そういう問題が起こってきますが、これはラードばかりではなくて、今後はほかの品目についても起こる可能性があると思うのです。その他、対外的にいろいろな多くの問題が出てくると思うのですね。  もう一つの問題は、大豆の自由化と関連しまして、これはやはりガットとの関係ですが、それで御承知のように、これがガットでは、関税以外の方法によって差別待遇をしてはならないということになっているのですか、この間農林大臣にちょっと伺ったのですが、農林大臣はばかに簡単に考えているようでしたが、この国内の大豆を作っておる農民を保護するために瞬間タッチ方式とかいろいろな形で、こちらで政府が高く買い上げる、そういう措置を講ずるようですが、そういうことは関税以外の方法による差別待遇という中に入るのじゃないかと思うのです。それで、簡単に、農林大臣が考えておるように筋単にいくものじゃないのじゃないかと思うのです。それで、農民からは高く買い上げて、そうしてその裏づけとして財源措置を講ずれば、それで一応国内の方はまかなえるとしましても、ガット関係がそう簡単にいかないのじゃないか、こう思いますですね。その点はどうなんでしょう。
  152. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど大豆のお話が出ましたが、大豆は御承知のように、従価一〇%をガットでもって約束しております。従って、大豆の税率を上げる場合はもちろんでございますが、たとえば、かりに瞬間タッチというような方式でもって、現在の税率一〇%を実質的にこえる何らかの差額を国が徴収するということになりますと、これはまさしくガットの交渉の対象になると存じます。ただし、これは関税税率ではございませんので、別のガットの規定によって交渉を行なうことになるかと存じます。ガットの規定の二条の四項に「締約国が、正式に又は事実上、この協定に附属している該当の譲許表に掲げるいずれかの産品の輸入の独占を確立し、維持し、又は認可するときは、その独占は、その譲許表に定める場合又は最初に当該譲許を交渉した当事国の間に別段の取極がある場合を除く外、平均してその譲許表に定める保護の量をこえる保護を与えるように運用してはならない。」、こうありまして、今の食管会計、すなわち国家独占の輸入というものが、一〇%の関税をこえる何らかの差益を取る場合におきましても、ガットの交渉の対象になるかと存じます。  それから、なお、現在日本がガットで譲許しております税品目数は二百七十六品目でございまして、これは今申し上げたように、税率を引き上げる場合には交渉をしなくちゃなりませんが、それ以外の大部分のものにつきましては、これは日本が日本独自で自主的に税率を決定あるいは変更することができるわけでございます。
  153. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ関税関係についてはあれですが、IMFの関係、いいですか、関連しましてちょっと簡単に伺っておきます。またあとでそういう機会を何か設けられるそうですから、簡単に伺いますが、きょうの朝日新聞にちょっと出ておりましたが、現在今日本はIMFのいわゆる十四条国なわけですね、十四条国。それで、まあ十四条国の場合、国際収支の理由によって暫定的に輸入制限をしてもよろしい、そういうことになっているわけですね。それで、だんだん自由化が進み、それから外貨の保有高が充実するに従って、八条国になってくるわけですね。これはまあ理事会で承認されてそうなるのですが、朝日新聞の報道によると、「現在はIMF加盟六十八ヵ国のうち、アメリカ、カナダなど十ヵ国が八条国で、残り五十八ヵ国が十四条国である。しかしイギリスがすでに八条国昇格を正式に表明、IMFから為替制限の廃止を勧告された西ドイツ、イタリア、オランダの三国も、すでに九〇%の自由化率となっているので、今年中には八条国になる見通しである。そこでこれらの国から、日本も為替制限を全く止めるべきだとの意見が非公式に出されている。」、こう書いてあるのですが、そうすると、今度は日本が自由化に踏み切ったということは、その一つの理由として政府があげているのは、外貨保有高がかなり潤択になってきた、十三億二千万ドル、それと景気がいいということも一つでありますが、好景気であるから、この際自由化をするのにいい条件になっていると、こう言われておるのです。そうすると、私は、この点を向こうから指摘された場合、日本が自由化に踏み切った一つの理由としては、外貨保有が十分になったことがこれは一つの理由になっているのですから、そうすれば、八条国になってもいいいじゃないか、こういうふうに向こうから言われるのじゃないかと思うのです。  ところが、最近になって、八条国になるのを防ぐために、十三億二千万ドルでは十分でない、今度はこういうふうに言い出してきているのですよ。そこのところが矛盾していると思うのですよね。そこのところがちょっと矛盾している。その点はどういうふうに、今後まあ八条国が問題になってきた場合、それが相当貿易上重要な問題になってくると思うのですがね、どういうふうに考えているのですか。新聞によると、八条国昇格急がないとありますけれども、よその国からそういうようなふうな議論が出てきた場合ですよ、一番問題になるのは外貨保有の問題でありますね。どういうふうに大蔵省としては考えられておるのですか。詳しいことはまた他の機会に御質問いたしますが、大体の大筋の考え方だけ伺っておきたいと思います。
  154. 片桐良雄

    説明員(片桐良雄君) お答えいたしますが、問題は非常にデリケートなところを含んでおりますので、私がお答えするのは適当かどうかわかりませんが、主管課長といたしまして、私の考えを申し上げたいと思います。  きょうの新聞に報ぜられておりますような、非公式にIMFから八条国に移れというようなことをサゼストされたということはございません。御承知のように、今年の夏にIMFのコンサルテーションというのが東京で行なわれますが、そのとき、その結果によってどういうことを言われるかということは、そういうことを言われる可能性はあるかとも思いますけれども、現在までのところ、非公式にしろ、そういう意思の表明はございません。  ただ、ヨーロッパの諸国は大体八条国に移ろうという気がまえを相当強く見せておりますので、私どもといたしましても、そういつまでも日本も十四条国にとどまってばかりはいれないのじゃないか。と申しますのは、八条国に移るということは、ただいま木村委員の仰せになりましたように、各種の為替制限等を漸次はずしていくということになります。いわば自由化かさらに進むということになります。私ども、これらの仲間に入りまして、わが国の貿易を伸ばしていくためには、どうしても自分の方もやることはやらなければならぬという気持でおるわけでございまして、その意味の準備は進めておるわけでございます。  外貨の準備高が適当かどうかということは、これはもちろん、八条国になりますには相当程度の外貨準備高というものを持っておりませんと、まあ不測の事態というようなことに対しましても十分適切な処置がとれにくくなるかとも思いますので、私どもとしては、外貨の準備高が相当程度ふえるということを期待し、またそのために努力いたしておるわけであります。どのくらいあればいいかということも、これもしばしば国会でもいろいろ議論もされましたし、されておるのでありますけれども、私どもといたしましては、まあ多々ますます弁ずとは申しましても、そうたくさんになるまで、私どもが外貨上の不安があるという理由のもとに八条国になるということをちゅうちょができないと思います。要は、日本の経済がりぱに運営されていけば、外貨準備高は相当程度なくてはならぬことはもちろんでありますが、そう外貨準備高の方はかりに拘泥しなくてもいいじゃないか。要は、日本の経済というものが根本的にしっかりしているということが一番大事なことじゃないかと考えております。西欧諸国の例を見ますと、大体各国が八条国になろうかというような気がまえを見せましたときに持っておりました外貨の準備高というものは、もうこれは木村委員よく御承知かと思いますが、大体輸入月割りの四ヵ月ないし八ヵ月ぐらいのところを持っておる国が多いのであります。そういう見地から見ますと、現在日本の十三億ドル何がしというものは、かりに月三億ドルの輸入があるといたしましても、約四ヵ月ちょっとになります。まあ日本はヨーロッパ諸国と違いまして、東洋に離れておりますし、特殊な国際的な環境に立っておりますので、この程度ではまだ若干不足かというふうには考えております。しかし、私どもといたしましては、お説のように、世界の先進諸国にできるだけ足並みをそろえていこうという気がまえから、今からその準備に取りかかっておるわけであります。多少申し上げにくい、ちょっと奥歯に物のはさまったような言い方かも存じませんが、それ以上私として申し上げかねますので、もう少し大臣とか上の方からお聞きいただければと思うのです。
  155. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまたあとで詳しい質問は、大臣に来ていただきましてやっていきたいと思います。いずれにしても、為替自由化に関連しまして、この対外的な問題が非常に問題になってくるのです。このほかにもまだ、日米通商航海条約の問題、それから他国との通商協定ですね、これは先進国あるいは後進国との間の通商協定との関係もあり、いろいろ出てくるわけなんですが、その一つとして今のIMFの問題がある。外貨保有については、一ころ日本の外貨危機が問題になった当時、大体九億ドルくらいあればいいという議論が出たのです、三・三・三の比率で。これが十三億二千万ドルになれば、非常にあのころの議論からいえば、かなり充実したとも言える。これはデリケートな問題になります。十五億ドルあるいは十七億ドルになれば八条国になり得るのか、これはデリケートな問題ですが、私もなお一そう研究してもらいたいと思いますが、この点はまたあとで大臣にも質問したいと思いますが、私の質問はこれで終わります。
  156. 平林剛

    ○平林剛君 私は、時間の関係もあるだろうから、関税定率法だけお尋ねをとりあえずいたしたいと思います。  先ほど、この法律案によって原材料ラードですね、これは一〇%から五%に下げられるというお話がありましたが、この原料ラードの輸入先の国が主としてアメリカであった場合には、これは全く意味がない。意味がないとはいいませんけれども、外貨割当の制限がなくなるだけ自由化されるということになるわけでありますけれども、そ の点私は少しく疑問に感ずるのです。原材料ラードの輸入国は、先ほど主たる国はオランダ、アメリカというお話がありましたけれども、どういう割合になっていますか。
  157. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど申し上げましたのは精製ラードでございまして、精製ラードは主としてオランダ、それからアメリカということになっております。精製ラードについて申し上げますと……。
  158. 平林剛

    ○平林剛君 原材料で……。
  159. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 原材料はアメリカとカナダから参っておりまして、その大体の比率は、カナダが四千トン、それからアメリカが二千六百トン。これは昭和三十四年の数字でございますか、大体そういう数量になっております。
  160. 平林剛

    ○平林剛君 そうすると、あれですね、アメリカから入ってくる原材料ラードは二千六百トンで、これは従来から五%で、カナダの四千トンは従来一〇%であったのが五%になるのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  161. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) カナダのものも現在協定税率で五%を適用しておりまして、原料ラードに関する限りは、規正の実行税率税率は変わらないわけでございます。ただ、精製ラードについてだけ上がると、こういうことになります。
  162. 平林剛

    ○平林剛君 そうすると、現在の輸入国だけを考えてみると、今回の法律の趣旨、原材料に関しては税率にはちっともあれがないのだということになりまして、ただ外貨割当の制限がはずれるかどうかというだけであると、こう理解してよろしゅうございますか。
  163. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) さようでございます。
  164. 平林剛

    ○平林剛君 それで、第一の点はほぼ明瞭になりましたが、次の精製ラードですね、これは今度一〇%から一五%に、国内産業保護の意味である、これが今まで御説明になったところですが、しかし、この関税率の引き上げというものは一方的にできない。これには外交折衝が伴う。この外交折衝をこれから行なう場合には、先ほど木村委員指摘されましたように、いろいろの関係国において了解に達するまでには取引か行なわれる。他に影響する。この影響がどういうふうに現われてくるかというのは、現段階では抽象的にしかわからないわけですね。先ほどお話しのように、体温計やその他の点、あったら、これに引きかえていいとか悪いとかということも、これは相手の立場からそれでいいというふうに言うか、言わないか、これは未確定のものですね。こういう関係がまだ未確定であるにもかかわらず、まあ日本としては主体性を持っていいわけですけれども、しかし、どういう今度は別なはね返りが来るということをわれわれが承知しないで法律を認めるということに、何かの不安を感ずるわけですね。私は、こういう関係が明瞭でないにもかかわらず、政府が今回の法律で関税率を引き上げるという措置をとられた理由、これがどこにあるのかという点がわからないのですけれども、この点はいかがですか。
  165. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今御指摘になりましたように、確かに現段階におきましては、代償として何を提供するかあるいは最終的にはどういう取りきめになるか、そういうことはもちろん交渉の結果でないとわかりません。しかし、交渉が妥結しますというと、その交渉が妥結して、かりにほかの品目で譲るということになりますというと、これはもちろん国会の承認を得なければなりません。従来も譲許税率については、条約として国会の承認を与えておるわけでございますから、従って、その交渉の結果は国会で承認を受けるということになるわけでございます。  それから、あえてこういう交渉をしてまで上げなくてはならぬ理由という御質問と思いますが……。
  166. 平林剛

    ○平林剛君 いや、ちょっと違います。もう一度言いましょう。今言ったように、この関税率の問題は、これから折衝されるわけですね。ところが日本側としては、まだ相談しない前に一〇%から一五%にする。これは私は悪いというのじゃないですよ。自主的にわが国のある産業保護のために関税率が表に出てきたわけで、そういう意味で特徴的なものですよ。しかし、まだ話がついていないですね。今あなたは、従来のやり方は、交渉をして協定ができればそれは国会の承認を求める。——これは従来のやり方でしょう。これは今回あべこべでしょう。先に一〇%から一五%にこれでもってする、しかし、まだ交渉の結果が出なければわかりません、こう言っているわけでしょう。こういうふうに先にやったのはどういうわけですかということなんです。
  167. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、ガットの協定では、国の関税自主権を否定しているわけではございませんので、たとえば精製ラードについて日本は五%を一五%にしなければならぬのだということにきめますというと、これはアメリカその他の国にいたしましても、これを否認するわけには参りません。ただ、その場合に、代償を提供するとか、あるいは代償がない場合には自国が相手国に従来譲っておった税率を取り消すとかいうことになるわけでございまして、一応日本側といたしましては、基本税率を改訂しておいて、そして相手国に自分の方はこうきめたから、さあ交渉しましょうということになるわけでございます。
  168. 平林剛

    ○平林剛君 それだから、その代償だとか、それから今度は相手国が、日本が精製ラードの関税を引き上げたということに対して別な措置に出る、これがわれわれは予想できないわけですよ、どういう形で出てくるか。われわれに今この法律を認めてくれと言われ  ても、後にどういうふうになってくるか、簡単に済むものならいいけれども、それは他の産業あるいは国民生活に深い影響のあるものが一ぱいに出てくるということになると、大へんに困るのじゃないかという心配なんです  ね。あなたの方は、これはまあ相手国のことはわからぬでしょうけれども、そういう見通しについてはどういう判断を持っておられますかということです。
  169. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、かりにラードを引き上げる交渉をいたしますというと、相手国は自国の輸出品で比較的興味のあるものを日本側に要求してくるということになるわけでございますが、向こうが一体どういう品目について要求してくるかということは、まだ今のところわかっておりません。従って、相手国が要求してきた品目の中で、日本側として当然譲っても問題ない、重大な国内産業に対する影響が及ばないというようなものを拾い上げて、それを譲るわけでございます。しかし、どうしてもそういう品物が相手国から要求してきた中にない、みな日本としては譲れない品物ばかりを要求してきたということになりますと、先ほど申し上げましたように、最終的には日本としては譲れない、どの品目についても譲れないという回答をいたします。そうすると、向こうとしては、従来日本に対して譲っておった税率のうちで、それでは大体金額がこの程度見合うから、この品物についての譲許を撤回するということになるわけでございますが、それは最終段階でございまして、おそらくたくさんの品目でございますから、日本としては譲っても差しつかえのないようなものも必ずその中には二、三含まれているものと確信いたしております。
  170. 平林剛

    ○平林剛君 その点は、あなた確信されたのだけれども、私らちょっと、今この法律を審議している場合に、不安を感ずるんですよ。岸さんは、日米経済協力と、こう言われるから、そう下手な結論にはなるまいとは思いますけれども、法律の審議にあたって、私はその点が一番疑問に感じているんです。  そこで、もう一つお尋ねしますが、精製ラードの方は主たる輸入国にオランダ、アメリカと言われましたけれども、そのパーセンテージはどうなっておりますか。
  171. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 昭和三十一、二年ごろまでは、アメリカからの輸入実績が若干ございますが、最近は、この外貨割当、ドル地域に対してだけ外貨割当をいたしておりますが、そのアメリカに対する割当をいたしておりません。従って、三十三、四年には輸入の実績はございません。
  172. 平林剛

    ○平林剛君 ということは、精製ラードの主たる輸入国はオランダであった、こういうふうになりますね。その数字がさっきお話しになった八千九百三十八トン、こう理解してよろしゅうございますか。
  173. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) その通りでございます。
  174. 平林剛

    ○平林剛君 そこでですね。今回この関税率を一方引き下げ、一方引き上げるということになりますと、これからの精製ラードの輸入先に大きな変化が起きてくるのではないか。つまり、従来アメリカには全くなかった、しかしながら、今後は輸入価格の関係でアメリカ側の精製ラード輸入が急激にふえる、こういうことが予想されているわけでありますが、その見通しはどうですか。
  175. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 従来の実情を申し上げますと、オランダはアメリカのラードの原料であるホック・グリースを入れまして、それをオランダでもって精製をいたしまして、日本に持ってきているという関係にございます。それで、今度の措置でこのドル地域に対する差別待遇をやめて、全地域AAということになりますと、これはおそらく価格の競争に入りますから、アメリカとオランダ、いずれか低い、有利な力から輸入をするということになろうかと思います。ただ、この今度の提案にも現われておりますように、わが国としましては、できるだけ原料で入れて、そうして国内で精製するという方が有利でございますので、そのために一五%の関税率をもって、あまり急激に精製品が国内に流入しないように、原料の形で入るようにということを企図しているわけでございます。
  176. 平林剛

    ○平林剛君 私の質問にまともに答えていないわけでございますけれども、今後その値段の関係でも、アメリカ製の製品ラードを輸入して日本で売る場合です、私はふえるのじゃないかと言ったが、今あなたはそれに答えないわけですね。私の承知しているところでは、アメリカの製品ラードを輸入すると、それを日本で売る場合にはトン当たりで十万三千円くらいになる。粗製ラードを原料で輸入して加工して売ることになりますと、十万九千円で、高くなる。今あなたは、いや、日本としては原料ラードを引き続き輸入していった方がいいと、こう言われるのだけれども、今後の見通しからいくと、あべこべになるのじゃないかというふうに承知をいたしております、あなたの今のお答えとですね。むしろ、アメリカ側の精製ラードか多量に輸入をされてくることになりはしないか。だから、オランダとアメリカとの輸入国バランスかくずれてくるというふうに私はお尋ねしたわけですけれども、まともな答弁がないから、もう一度一つ答弁して下さい。
  177. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 現在のところでは、アメリカの精製ラードは、今おっしゃたように、トン当たり十万二千円、大体その程度のところでございます。それから、オランダから現在輸入いたしております精製ラードの価格がトン当たり十万九千円。従って、六千円ばかりアメリカの方が安いということになっております。もしこのままで全地域同待遇ということにいたしますと、おそらくオランダのラード輸入が減ってアメリカがふえるという可能性かございますけれども、しかし、現在の貿易はいささか変則でございまして、日本がアメリカからの輸入をとめておるという前提のもとに、現在のオランダラードのトン当たり十万九千円という価格が構成されておりますので、今度同待遇にいたしますと、オランダ品の輸入価格がおそらく下がってくるだろうという見通しが立てられますので、こういう、全地域同待遇にした場合の結果につきましては、先ほど申し上げましたように、価格の安い方から、有利な方からおそらく輸入が行なわれるであろうという予想しか立たないわけでございます。
  178. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  179. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記を始めて。
  180. 平林剛

    ○平林剛君 それじゃ私は一問だけ最後にいたしますが、私は、やはりそれは輸入のいろいろな現在の各国際的な関係で、一がいに値段が安いからといって、そこの輸入量がふえるというようなことを単純には考えませんけれども、先ほどのお答えと反して、アメリカ側からの精製ラードの輸入量というのは増加するというふうに見ておるわけなんです。この場合、そうなることは今後のアメリカとの間において、精製ラード引き上げのときにはね返りがこないようにするためには、これを材料に使って、いや、今までドル地域の割当が少なくてゼロだったのだ、しかしながら、今回こういう措置をとったおかげで、アメリカからの精製ラードの輸入量がふえたじゃないか、従って、これについてわが国としては国内の産業保護のために上げた趣旨を認めて、この交渉を了解してもらいたい、こういうことをやるべきだと思いますけれども、そういうことをやるつもりがあるので、さっきの確信というのが生まれてきているのじゃないかという気かするのですよ。それは含まれておりませんか、またそういうことについて当然主張する根拠が出てくると思いますけれども、いかがですか。
  181. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今仰せになったような主張は、こちらとして当然そういう根拠かございますし、また、今度の交渉に際しましては、そういう点を強調して交渉しなくてはならぬというふうに考えております。
  182. 大矢正

    ○大矢正君 先般来、大蔵省説明の内容を聞いていると、関税関係の法律は大幅にこれを改正したい、特に定率法は明治四十三年に作られた法律であって、品目の分類においては現状に適しないところがかなりあるんで、この面については相当大幅に改正したいというような意向もあるんですが、その関税関係の法律の改正というものは、どの程度やられるものか。品目の改正だけやられるのか、あるいは抜本的に税率までもいじるのか、あるいは関税法それ自身も改正をするのか、この間の事情説明してもらいたいと思います。
  183. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいま計画しておりますのは、税表だけではなく、税率全体をもう一回見直すということでございます。それから、本法、関税法の改正につきましては、新たな制度を導入するかどうかということにつきまして、たとえば緊急関税であるとか、弾力関税であるとか、あるいはタリフ・クオータ制度であるとか、そういうような新しい制度を導入するかどうかということについて、関税率審議会によく御意見を聞きまして、その上で、もしそれが必要ということになりましたならば、本法の改正もいたしたいと思っております。
  184. 大矢正

    ○大矢正君 審議会でいろいろ検討されることはけっこうだし、その答申ももちろん政府は聞いて、関税法、定率法の改正をやられるだろうと思うのですが、一体この関税法もしくは関税定率法の改正案というものは、いつごろでき上がる見込みですか、見通しとして。
  185. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) できれば、この自由化のテンポにおくれないように、もし可能ならば、できるだけこの次の通常国会に提案をいたしたいと思っておりますが、しかし、品目数も非常に多うございますし、もちろん大蔵省だけのこれは単独の計画でございませんので、通産、農林その他各省にまたがった品目についての税率でございますので、各省の協力を得て、できるならば次の通常国会に提案をいたしたいと考えております。
  186. 大矢正

    ○大矢正君 関税の品目の分類はさることながら、税率の決定にあたりまして、やはり考え方がいろいろあると思うのですね。国の財政的な立場から考えてみて、税制確保ということが一つの大きな目的の場合もあるだろうし、それから国内産業を保護する立場から、産業保護という原則にのっとって関税というものをきめる場合ももちろん出てくるだろうと思う。そこで、今実際に大蔵省が進められている関税定率法の改正というものは、どちらにウエートを置いて考えられておるのか、この点。これは税関部長か、政務次官か、どっちでもよろしゅうございますけれども、お答えいただきたい。
  187. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答え申し上げます。関税率の全面的な再検討にあたりましては、その目的は産業の保護育成、たとえば合成ゴムとか石油化学、一例をとりますとそういうような新規産業の育成であるとか、あるいは脆弱なる産業を保護する。農業あるいは中小企業、そういうような点に重点を置きまして考えたいと思っております。
  188. 大矢正

    ○大矢正君 そうすると、政務次官の説明からいくと、税収確保などというものは問題ないとして、いずれにしても、関税というものは、どこの国でもそうだが、国内産業を保護するということが原則で、その原則にのっとって関税率というものを考えていく。もちろん、これは外国との交渉関係、通商協定の関係もあることでしょうから、まあ百パーセントできるかどうかわからぬが、基本的な原則としては、国の関税というものはそういう方向で進むということは明らかなんですね。
  189. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) 御意見のように、産業の保護育成、それが主眼点でございまして、その付随的効果といたしまして税収の確保ということも考えられると思います。
  190. 大矢正

    ○大矢正君 質問を実は集約していきますが、今度の関税定率法の改正におきましては、戦前もしくは戦後のある一定期間とられてきたような、従量税というものを大幅に取り入れる意思があるのかないのかという問題、特に今回出されている暫定措置法の中に盛られた油の関係の税金は、従来通りこれは従価税になっておるわけですが、これから新しく作られる関税定率法というものは、今までのように従価を中心として、ほんのわずかだけ従量にするという考え方なのか、あるいは今日のようにインフレがおさまって参り、品物によっては、値下がりの傾向にある段階には、やはり従量税が妥当であるという意見はかなり強いわけでありますか、そういう点の調整はどうされるつもりか。
  191. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 指摘のように、戦前は大体六割が従量税でございまして、四割が従価税。ところが、現在は砂糖と映画フィルムの二品目だけが従量税でございまして、そのほかが全部従価税ということで、まあ原則が逆になってしまっております。しかし、今御指摘のように、大量の貨物であり、規格並びに内容、品質が安定している品物である、あるいはその国際価格の短期間の騰落が非常に著しいものにつきましては、従量税が理想的でございまして、負担の公平という点から見ましても、また課税の簡素化、課税技術の簡素化という点から見ましても、従量税であるべきでございますので、今後の改正に際しましては、その品物によって当然従量税である方がいいというようなものにつきましては、大幅に従量税を採用いたしたいと思っております。
  192. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  193. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記つけて下さい。
  194. 大矢正

    ○大矢正君 油の税率引き上げを行なって、石炭との競合を、この際、たとえ一部でも国内産業の保護という立場から、競合面をこの際カバーしていくというお考えのようですが、これは依然として従価をこのまま継続されるわけですね、今回の法律は。そこで、先ほど来私申し上げている通り、油の値段というものは、昭和二十七年が一キロリッター当たり八千六百円であったものが、三十四年十二月には五千七円八十四円まで下がっているのです、実際問題として。しかも、国際的なカルテルの考え方というものは、でき得る限り油の価格というものを、これからも引き下げていこうという考え方があるようであります。さらにまた、海上運賃、保険料の問題についても、これから上がるという見込みはない。むしろ徐々にではあっても下がっていくという傾向にあるようですね。こういうように価格が実際問題として下がっている段階に、よしんば従価制の関税を採用した場合には、当初作られた石炭なら石炭と油というものとの対比というものとは、およそかけ離れた結果が出てくるのじゃないかと私は心配するのです、ここ半年、一年の間に。特に、石炭が合理化して値を下げられるということになりますと、油も勢い、特に重油はこれを下げていこう、その分は、当然油会社の利益の問題がありますから、揮発油にかかってくるだろうと思いますが、そういう傾向が必ずとられてくる。しかも、国際的に見た場合に、日本の重油というものは外国に比して高いわけですね、国内価格というものが。だから、外国と比較してみた場合に、日本の原油を下げなければならないという使命を今油会社が負っているというような現状から考えてみまするというと、依然としてここに従価方式をそのまま採用しているということは、将来、あなた方が今考えている石炭と油はこの程度でいいではないかという考え方とずれてくる危険性があるのじゃないか。この点はどう考えておられるか。
  195. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 今御指摘のありましたように、油のようなものにつきましては従量税を採用することが理想でございます。しかし、ただいま関税率の全面的な検討に着手いたしておりますので、これが今後一年内程度には結論が出て参ると思います。そのときに、基本税率を全部従量なら従量として恒久的な税率を盛っていくということで、今回は一年限りの暫定税率でございますので、とりあえず従価のまま据え置いたということでございます。なお、従来の従価二%が六%に上がります際でもございますので、相当業界等に対する影響も考えなくちゃなりません。そういう関係で、各方面の要望もありまして、今回は従価税にとどめおいたということでございます。
  196. 大矢正

    ○大矢正君 一〇%の基本税率ですか、これを六%にしか下げなかったという理由というものは、一体どこにあるのか。たとえば、従来の原油に対する二%課税を六%に課税しても、各鉄鋼業なり、あるいは電力その他これを燃料として使用する産業におけるコストの中に占めた比率というものは非常に微々たるものであるということが言われているわけですがね。そうなりますと、あと四%でありますから、基本税率通りに上げてみたところで、これを使用する会社のコストの中に占める比率というものはそう大幅なものでないと思うのだが、あえて六%というものが出されているということは、どういう理由があってやられたのか。これは、本来大蔵大臣がおれば一番いいのだが、こういう事態で、大蔵大臣もおりませんから、税関部長の答えられる範囲でこの際答えておいていただきたい。
  197. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) この六%にいたしました理由を、合理的な根拠を提示しろというふうにおっしゃられると、いささか困るわけでございますが、現在の基本税率が一〇%で、これに全部全面的に復帰するということになりますると、元来、こういう基礎動力資源でもございますし、相当の急激な影響が起こるであろうという点を考えまして、まず今の二%とそれから基本税率の一〇%の中間段階までぐらいでとどめたらどうかというのか、ざっくばらんに申し上げますと、六%にいたしました根拠でございます。  なお、石炭の価格とそれから重油の価格とを比較して、そして石炭に対する保護関税として重油の税率を盛ったということではございませんので、従って、その両者の間に直接的な因果関係はございません。
  198. 大矢正

    ○大矢正君 あなたの答弁、これは、しっぽをつかんで言うようじゃないが、それでは何のためにこの六%という数字が出てきたのかわからない。たとえば、今石炭と油との競合が激しくなってきて、石炭というのが衰微の一途をたどっておる反面、ひきかえて石油の原油の使用量といいますか、需要量というものは、年々ものすごい勢いで伸びていますね。いま少しすると、エネルギー総体の中に占める油と石炭の割合というものは逆転するのじゃないかというところまで来ているわけです。おそらく来年、再来年になったら、従来とさかさまになって、油を中心としたエネルギー政策というものが立てられるのじゃないかという事態になってくるわけですね。  そこで、関税というものは、そもそも国の財政目的のために作られているという国は例外としてはあるでしょうけれども、すべての国は、やはり国内産業保護ということが関税の目的ですね。その国内産業保護といっても、独占企業が独占価格を維持するために保護する場合もあるだろうし、あるいは零細な企業というものを保護するために関税というものを設けておる場合もあるだろうし、その目的は別として、とにもかくにも、国内産業の同種競合のものとのいわば比較において考えられる。日本の場合は、もうわずかしか油というものは出ていないのですから、日本のわずかしか出ていない油と、それから九六%も輸入する外国の油と、それだけの価格で比較するということではなくて、それと同様のエネルギーとしての石炭と油との比較において考えらるべきことは、これは当然のことなんですね。ところが、あなたの言うように、六%というものは、全然石炭なんかとは関係ないのだということになると、一体六%というのはどこから生まれてきたかということを再質問しなくちゃならなくなるのですがな、税関部長。これは非常に政治的な意味で六%ということをきめられたであろうことは、私も想像にかたくないところなんだけれども、しかし、それはそれなりに、何らかの合理性というか、何らか持っているはずだと思うが、特に、前にあなたと話したときに、油というものは基本税率一〇%とるのが当然ではないかということをあなたは言われておったようなこともあったのであります。しかし、これは産業的な見地から考えて、六%というものが生まれてきただろうけれども、それじゃ国内エネルギーとの競合というものは、六%によってどの程度の影響が出てくるかということを、関税を預かる大蔵省としても考えておかなければいかぬじゃないかと思うのですね。
  199. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど申し上げましたのは、石炭の価格と重油の価格と、その間におきまして、今度の関税率というものが直接的な因果関係はございませんと申し上げましたので、間接的な影響があることは、これはもう当然でございます。ただ、油の特殊事情といたしまして、もし石炭を完全に保護する趣旨で油の税率を盛らなければならないということになりますと、大体油に四〇%ぐらいの保護税率を盛らなくちゃならぬというような結果になりますけれども、一方、油は御承知のように、電力とか、鉄鋼とか、そういう基礎的な産業に使われるものでございまして、石炭との関係だけを見て油の税率を盛りますと、逆に非常に大きな影響がございますので、そういう点からいたしまして、大体現在の一〇%という基本税率が生まれておるわけでございますが、今回の六%にしたのはどういう理由かという御質問につきましては、先ほども申し上げましたように、数字的に、こうだからこうという、はっきりした合理的な根拠を御説明できないことは、はなはだ遺憾でございますけれども、大体今の軽減税率二%と従来の基本税率一〇%の中間ぐらいのところで一つやってみてはどうか。もちろん、これは一年間の暫定でございますので、中間ぐらいのところでやってみて、そうして物価に及ぼす影響等もよく注意して見ておって、それで、いずれ次の機会には全面的な再検討をやらなくちゃならぬのだから、とりあえずこれで一つ状況を見てはどうかというところが、六%が生まれた理由でございます。
  200. 大矢正

    ○大矢正君 あなたの問題のとらえ方が、ちょっと僕はおかしいと思うんだが、さっきも言ったように、油というものは、国内産出量というものはわずか四%足らずですかね。あとの九六%以上というものは外国に依存している。極端なことをいえば、一〇〇%近いものが外国の輸入に仰いでいるという現状ですね。これは棉花も同じだろうし、それから砂糖なんかも同様なことが言えると思うんですよ。そこで、日本の農業と、石炭産業というものは、まあ条件は同じような条件に置かれてるんですよね。非常にコストが高い。高いというのは、これはもう、たとえば石炭にしても農業にしても、あまり外国と競合しない形において従来まで経済政策が行なわれてきたし、あわせて日本の農業の場合に零細企業ということで、外国に比較にならないほど労働力を使用しているという問題、そういう意味で、日本の失業関係とは切っても切れない関係にあると思うが、石炭の場合も同様に、やはり人間を多く使用している、こういう立場にあるわけです。従って、農業の場合には、わずかに外国の輸入の価格というものと国内産価格のものとのバランスをとるために関税を作っておる。さっきのラードなんか一つのいい例ですけれども、油と関係するのは何があるかといったら、日本にわずか産出される油ではなくて石炭であるということを考えてもらわなければいかぬと思うのです。  これはあなたに幾ら言ってもしようかない話で、大臣か、少なくとも政務次官に言わなければならぬ政治的な問題なのでありまして、いつまでもこれにこだわっていてもしようがないけれども、いずれにしても、油の暫定措置というものは一年きりのものでしょう。ですから、あらためて来年の通常国会に関税定率法が抜本的に改正されてくるとすれば、その中に当然油の問題が取り上げられると思うか、その際には、ぜひ一つこの石炭との競合という問題を十分考慮されて、新しい関税定率表というものを作ってもらいたいということを、私特に当事者であるあなたにお願いしておきますし、それからまた、あらためていずれかの機会に、大蔵大臣その他に対しても、もっと具体的に実例をあげて私は質問したいと思います。きょうのところは、あなたとここでやり合ってもしようがない話でありますから、一応終わっておきますけれども、どうぞお願いします。
  201. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) これで四時まで休憩いたします。    午後二時五十四分休憩    —————・—————    午後四時八分開会
  202. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 休憩前に引き続いて、委員会を開会いたします。
  203. 平林剛

    ○平林剛君 関税暫定措置法について、私は電子計算機に関して先般大蔵大臣に質問をいたしたのであります。そのときに、IBMの日本支社、それから日本レミントン・ユニヴァク株式会社、この役員を調べていただきたいということをお願いしておきましたが、どうなっておりますか。
  204. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 調べてございます。
  205. 平林剛

    ○平林剛君 一応説明して下さい。これは資料で一つ出していただくようにして、説明もちょっとして下さい。
  206. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) いずれ資料で提出しますが、調べましたところでは、日本レミントン・ユニヴァク社、この役員は十一名でございまして、代表取締役社長が宮崎清氏、それから代表取締役冷泉弘氏、それから同じく萩原与之助氏でありまして、これらの三人の方は、社長はもとの三井物産の社長でございます。それから、代表取締役の二人は、やはり三井系でございます。それから、取締役が五人おられまして、そのうち一人は現在の三井物産の常務、それからもう一人は外国会社のスペリー会社系統の方、これは日本人の大亦四郎という方です。レミントンの会社らしゅうございます。それからトーマス・エル・ブラックモア、これもやはりスペリー系の方でございます。それから、佐藤隆弥氏は現在の東芝の常務でございます。そのほかに大 阪支店長がやはり取締役でございまして、福井均氏という人、これは三井系でございます。そのほかに監査役が三人でございますが、いずれもこう見ますというと、スペリー・ランド社、いわゆるレミントン社の系統と、三井物産、東芝の系統のように思われます。  それから、日本IBM株式会社は、これは昭和十二年に設立されておりますが、役員は、会長が水品浩氏という方でありまして、黒沢商店というところから入っておられます。それから、社長が鈴木信治氏、これは元の横浜正金銀行から入っておられます。そのほかに常務取締役が三人でございまして、安藤馨、稲崎早苗、山本麟という三人がおられます。それから、あと取締役が二人で、この人的な構成はいずれも日本IBM社設立以来の、何と申しますか、はえ抜きの方らしゅうございます。  それから、もう一点、先日最終利用者に免税の恩典が及ばぬじゃないかというお話がございまして、各レミントン並びにIBMと利用者との契約内容を調べてみましたところ、いずれも大体似たり寄ったりの契約でございますが、その内容としまして、レンタル契約をいたします場合の契約内容は、機械据付に伴う諸経費、それらの中には運送費、保険料、輸入税等一切の諸経費を含んで、そういう諸経費は購入者が機械据付後直ちにIBM宛てに支払う契約となっております。従って、関税を徴収いたしまするというと、賦課いたしますというと、その関税額を一ぺんに、最初の契約のときに一ぺんに日本IBM、あるいはレミントンに支払わなくちゃならぬ、こういう契約の内容になっております。
  207. 平林剛

    ○平林剛君 私は、昨日来この問題を指摘いたしておりますのは、第一に、電子計算機関税納税者は日本レミントン・ユニヴァク、それからIBMなどの限られた法人の組織である。従って、免税の恩典はこの二ないし四社に集中されている。第二には、免税の恩典は、昨年度八億円、今年度においては約四億五千万円の巨額に上っているのであります。しかし、この恩恵がはたして使用著たる日本の会社の契約料金決定に反映しているかどうかという点にあります。ただいまその点について若干お話がありましたが、私はそれがすべてだとは見ていないのであります。現に政府が契約している契約書を見ると、さようなことは書いてない。だから、まだあなたの方のお調べも十分でありませんから、その点、疑問を解消するわけにいきません。ここに問題点があります。  第三に、かりに日本の使用者たる会社が免税をしたと恩恵を受けていると仮定をいたしましても、私は問題があると思うのです。この使用者たる会社は富士製鉄、八幡、日立、日本鋼管、川崎製鉄、日本通運、東洋レーヨンというように相当の利潤も資本力もある法人であります。これらの会社の契約金に補助を与えるような形が今日の電子計算機免税に相なっておると思うのであります。私は、相当の利潤も資本力もある法人が、一般の国民が税負担に耐えているときに、こういう特別措置を講ずることが妥当かどうかという点に第三の問題があるわけです。  第四には、これらの電子計算機関税暫定措置法第八条別表に加えるにあたって、相当の運動があったというこです。昨年度の政治献金などを調べてみますと、私は、別に荷札がついているわけでないから、この分がこれだというような指摘はできません。また、なかなか政治献金というものがそういうふうにはっきりしたものでないことは申すまでもありませんから、具体的にこれがこうだと指摘はできませんけれども、昨年度の政党献金を調べてみると、どうも一般国民から見た場合に不明朗な感じを受ける名前が列挙されているのです。私は、そういう点でこういう不明朗な、また不当な免税措置はすみやかに廃止すべきだ、こういうことを主張いたしておるのであります。この点は佐藤大蔵大臣も、今後において検討する、政府における使用契約についても、あるいはこれを統合的にできるかどうかという問題も含めて調査し、検討してくれると言われましたから、今後に待ちたいと思いますけれども、なお、それでも私若干疑問が残りますので、少し政府にお尋ねをしておきたいと思うのであります。  関税を実際に納付しているのは、やはりこの電子計算機の場合、私が今指摘いたしましたように数社に限られていると思いますけれども、いかがでございますか。
  208. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これはIBMの場合と、レミントンの場合と多少異なっておりまして、IBMにおきましては、輸入申告者が日本IBM株式会社になっております。従って、納税義務者は日本IBM株式会社でございますが、先ほど申し上げましたように、それは最終的には利用者から再徴収をするという形になっております。また、レミントンの場合におきましては、三井物産が輸入申告者になっておりまして、従って、納税義務者は三井物産となっております。
  209. 平林剛

    ○平林剛君 この問題はまたあとで私検討を続けますが、次にお尋ねしたいのは、この免税措置を受けて輸入した電子計算機を、これを他に売買した場合どうなんです。今言うように、申告者が三井物産、それか日本IBM株式会社等が入れた場合に、これらが申告して入れる。そのあとで、これを他に譲渡した場合は一体どうなるのかということなんですが、その点どうなんです。
  210. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは一たん納税をいたしまして輸入されますというと、いかに転売されましても、関税関係はもはやなくなるわけでございます。免税の場合でも同じでございます。
  211. 平林剛

    ○平林剛君 結局、申告をして、この法律か適用されるので、六億五千万円の機械を入れたとすれば、一五%ですか、免税になる。それで、安く入るわけですね。それを他に譲渡したらどうなるかという場合は、もう免税したってだめだ。取り戻すことができるのですか、できないのですか。
  212. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは用途免税ではございませんので、このいわゆる八条で別表に掲げておる品目につきましては無条件免税でございますから、従って、その使用者の変更と関税関係は全然ないわけでございます。
  213. 平林剛

    ○平林剛君 実は、私は政府からも調べてもらったのでありますけれども、昭和三十二年に電子計算機は、IBM、ユニヴァク含めて、十一台入っておりますね。ところが、これを使用している会社というのは関西電力、福助足袋、日立、東京ガス、八幡製鉄、東洋高圧、石川島重工、野村証券の八社。どこかか重ねて持っているか、何台か持っているか、あるいはそれからさらに、あなたの方は用途外使用でないというから厳格に調べていないので、どこかに転売されたのかというような疑問を感じているのです。昭和三十三年も電子計算機は三十三台入っておるのでありますけれども、二十二社だけでありまして、あと十一台が重ねて持っているのか、他に転売されたのか、その点が明瞭でない。あなたの方は、そうなると、一たん免税をしてしまうと、あとはどこに売買されてもわしは知らないのだと、こういうことでありますと、実情は把握されておらない、こうなりますね。
  214. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、先ほど申し上げましたように、用途免税でございますと、その用途以外に使用した場合には一定の罰則かかかるなり、あるいは関税額追徴になるなりいたしますけれども、この別表の場合は無条件免税でございますから、従って、使用者か何台入れようが、だれが入れようが、免除をされるわけでございますから、税関といたしましては、一たん輸入が終われば、もう追及しないということにしております。
  215. 平林剛

    ○平林剛君 私は、そこに今この問題についてさらに問題が出てくると思うんですよ。たとえば、一台にして六千万円の免税を受けたわけです。あるいは小さいものでも三千万円、二千万円受ける。ところが、用途外使用を禁じて いないから、免税を受けた会社は今度は他に転売をして一もうけすることができるわけです。しかも、この輸入申告者が三井物産であり、それから日本IBMとかいうものに限られ、私が指摘したように、何台かが移っているとすれば、そこに新しい問題が現われるわけです。われわれは、政府の言い分のように、この電子計算機というのは産業の発展のために、また会社経営のために将来に備えて必要なものだから、一般の国民は普通通り税金をとっているけれども、これだけはまけろ、こういうふうにもう無理やりというか、多数でもって通しておいて、あとそういうような仕組みを作られるということは、これは私は税制上から見ても、社会正義からいっても、適当でないのじゃないかと思われるのです。どうです。
  216. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) この電子計算機の場合におきましては、従来はだれが入れようと免税でございますので、従って、特定の人が入れて税額をまけてもらって他に転売、いわゆる税込み価格で転売するということはちょっと考えられませんので、と申しますのは、それを買う人は、もし税込み価格でなければ売らぬということになりますと、むしろ直接この取り扱い商社から購入をいたしますので、結局、その免税額だけ利得するというものではないかと思います。どう申しますか、日本レミントン社が入れる場合には免税の恩典を受けますけれども、しかし、そのものを第三者が賃借りするなり、あるいは買うなりいたします場合は、やはり税抜きの価格でそういうものが出てきますので、これをもし税込みの  価格でなければ賃借りあるいは購入できぬということになりますと、これは直接入れるなり、あるいはIBMの方から入れるなりということになるかと思います。
  217. 平林剛

    ○平林剛君 私は、この運用化になかなか社会的問題があることも、情報として承知いたしておるのです。  それから、もう一つ、ただいまは使用者ですね、使っておる人、これは相当高い賃貸料を払っておるわけです。政府でも、先般申し上げましたように、総理本庁で千百七十七万も払っておる。通産省は千三百四十九万、文部省は二千八百八十四万、労働省三千三百万、厚生省が二千五百十三万、国鉄で九千八百万円という工合に、膨大な賃貸料を払っております。政府の買い上げたものを、政府が借りているやつを又貸しして、そうしてだれかに貸して賃貸料を取るなんということは、これは政府部内でありますからあり得ません。かって、ありましたよ。郵政省か何かで一度そういう事件かございまし  て、取り上げられて問題になったことがある。しかし、民間のこれらの商社の中には、自分で借りても四六時中使っているわけではない。そこで、最近の電子計算機の需要から見て、それらの会社はまた小さい会社に又貸しするということがあり得ると思うのですね。この場合、免税の恩典というものは、その又貸しを受ける会社に届いているかどうかという点も疑問がある。たとえば、これはなかなか高いものだから、買ったのは今日調べた幾つかの大きな法人だけでありますけれども、実際使いたい人もいる。行くと、今度は、高い契約料金を払っているものだから、そこに転嫁をするような形になる、こういうことも許されることになるのですが、この点については何かお考えはありませんか。
  218. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) この点は、その購入者あるいは賃借人の自由でございまして、あるいは場合によっては——全然自分のところに要らないものはおそらく購入しないと思います。非常に高価な何億という物品でございますから、おそらく自分のところで使う目的で購入するのだと思いますが、しかし、今お話しのように、あるいは四六時中使わないで、その余った時間をほかの会社に使わせるということも、これはしばしば行なわれているかと思います。ただ、その際に、一点免税の恩典がその転借人に及ぶかどうかという点は、これは私たち調査をいたしたこともございませんし、また、おそらく、そういうことであまり賃借料が高いということになりますと、ほかの会社に頼むとか何とかということもございましょうし、実態についてはわれわれまだ調査いたしたことはございません。
  219. 平林剛

    ○平林剛君 私は、政府においてすみやかにこういう不明朗なやつはなくしてもらいたいと思うのでありますが、最後に、一つだけ第二条と第八条との関連を聞いておきたいと思うのですが、この電子計算機は第八条の附表の中に含まれておるわけですね。これは電子計算機を附表の中に含めたというのは、たしか去年の改正で含めて、それまでは明瞭な規定がなかったわけですね。ずっとこれは入ってきたとき免税をしておりましたけれども、そのときはどういう根拠で免税をしたのか、それが第一。  それから、重要機械類免税というのと附表にある電子計算機は、一体どういうふうに区分するのか。区分する何か定義があるかどうか。附表は、中に盛られているものについては、これは何でもかんでもいいという筋合いのものではない。何か定義があると思うのですか、その定義はどういうところにあるか。  この三点をお答え願いたいと思います。
  220. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 第一の、昨年電子計算機を免税する以前の問題でございますが、これは一昨年までは穿孔カード式統計会計機というものかございまして、これは便宜電子計算機を含めて解釈をしておったわけでございます。ところが、その後カード式のものじゃなくて、磁気式のものが入って参りまして、磁気にもカードにも使えるといういろんな混合した形のものが入って参りましたものですから、実は昨年度電子計算機を特掲して、そうしてそういう解釈上の疑義をなくし、従って、免税は従来と同じように継続するということになったわけでございます。  それから、第二条の重要機械免税と別表の区別でございますが、これは第二条は、産業用に使われる重要機械類を政令で指定いたしまして、そして国産化できない、しかしどうしても輸入に待たなくちゃならぬ必要なものであるという場合に、その政令で指定したものを免税するという建前になっておるわけでございますが、この別表に掲げたものは、そのものずばりでございまして、こういう別表の品目はどういうふうに使われるかどうかというようなことではなく、このものは免税する。そういう違いでございます。
  221. 平林剛

    ○平林剛君 時間が限られているので、この辺でやめますが、さっき電子計算機輸入申請をしているのは一まとめに三井物権がやっていると言いましたが、これは一体どういうわけですか。三井物産が一まとめに輸入申請をしておるというのは、どうもふに落ちないのだけれども、特別の何か理由かあるのですか。
  222. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、三井物産は、御承知のように、輸入貿易商社でございますから、従って、先ほど申し上げたように、レミントンの会社の人的構成を見ましても、大体三井物産系統の方が重役に多いようでございますが、そういう人的なつながりもございまして、おそらく三井物産が専門に取り扱うということになっておるのじゃないかと思います。
  223. 平林剛

    ○平林剛君 本来は日本レミントン・ユニヴァク株式会社が所有権を持っておるわけで、それで賃貸しをしているわけですから、この輸入関税申請の方は日本レミントン・ユニヴァク株式会社が申請する方が筋は通るわけですが、それを三井物魔がやっているという理由は、ただ人的構成だけだという把握ですか。
  224. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、貿易のあらゆる形態といたしまして、たとえば私が輸入する場合でも、三菱商事とかあるいは三井物産に頼むとか、従って、その荷主と実際の実務を取り扱う商社とは分かれていることが往々にしてございます。従って、このレミントンの場合は三井物産に取り扱わせる、IBMの場合は自分のところで直接に荷主兼インポーターとして名前を出すということになっておって、これは単なる慣習の問題であろうと思います。
  225. 永末英一

    ○永末英一君 暫定法の五条の航空機のことですが、昭和三十八年三月三十一日までという、いわば期限が限られている。その条項に従ってロッキードも入手されるわけですね。
  226. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは機種はロッキードになりますか……。少なくとも国産の、たとえばロッキードが新三菱重工なら新三菱重工と契約して、新三菱重工でそれができるようになりますと、免税を打ち切る。しかし、できない間は免除する。別にロッキードだけではございません、あらゆる航空機について同じでございます。
  227. 永末英一

    ○永末英一君 この前のこの委員会で防衛片からいろいろ聞いたのですが、その中で、たとえばロッキードの機体部分については、本邦において製作することが困難だ、従って、ロッキードが、昭和四十年度か、一応全機、百六十機そろったとしても、その後の維持修理のためにそれぞれの輸入をしなくちゃならない、ロッキード社から買わなくちゃならぬと、こういう政府の答弁です。この暫定法案に、あたかも暫定のごとく、昭和三十八年三月三十一日と時限が限ってございましても、防衛庁の方はそれ以後もずっと続くんだ、こういうことを考えているとすれば、暫定性がなくなる。わざわざ三十八年三月三十一日と限った意味がわからないと思うのですが、その点はいかがですか。
  228. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これが、暫定措置法案の中に含まれております条項は、いずれもその基本税率として関税定率法の別表に織り込むだけの価値と申しますか、織り込むだけの意味のあるものではなくて、たとえば、今の航空機でございますように、国産が順次、逐次できるようになる、今はできなくても来年はできる、あるいは来年できなくても再来年できる、また部品におきましても同様なことが言えますので、従って、一応三年程度様子を見て、そこでもう一回また考えるという趣旨におきまして、三年間の暫定的な期間を置いたわけでございます。
  229. 永末英一

    ○永末英一君 今の御答弁を逆にとりますと、三十八年三月三十一日になってみたけれども、まだできないということであれば、また暫定措置法案ということで延ばす、こういう御用意でこの法案を作られたと解釈してよろしいですか。
  230. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これはもともと、いわゆる航空運送専業の助長をすると申しますか、その趣旨で始められた免税制度でございまして、従って、一方においては航空運送事業、他方においては航空機製造業、おのおのその利害が相反する面がございまして、どちらを優先させるかという問題は、たとえば、今のように日本航空なら日本航空がまだ基礎が、貧弱と申しましては悪いかもしれませんが、基礎がそれほど固まっていないというようなときにおきましては、むしろ航空機製造業よりも航空事業の方を保護する。それから、それが逆になって、もう相当航空運送事業が固まって参りますというと、今度は免税してまで保護する必要はないということで、おそらく三年たちまして、そのときの両事業の実情というものを見比べてみまして、それでまた新たな判断ができるかと思います。
  231. 永末英一

    ○永末英一君 この三年というような——三年みつきという言葉もありますけれども、ぼんやりした目途ではなくして、もし航空事業と航空産業というものを考えられるのなら、政府は全般的に三年なら三年の間、そういう航空機並びに部品について免税をするけれども、その間、航空産業についてはどういう手を打っていくかという総合的な計画ができたときに——関税の部分だけにそういう暫定的な措置を認めたところで、これは再び三年後に延長してくれということになるにきまっているのです。いわゆる行き当たりばったりということになるわけで、言うなれば、そういう観点から見た場合に、これは第五条は航空機だけでございますか、四条には原子力に関する問題もございます。そういう一つの総合的な計画に乗ってこういう暫定措置法案ができているかどうか、政務次官から一つお答え願いたいと思います。
  232. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答え申し上げます。この期間は、一年のものあり、あるいは三年のものあり、いろいろ——いろいろと申しますか、二通りあるわけでございますが、ただいま永末先生の行き当たりばったりといいますか、そういうような考え方ではございませんけれども、特に科学的に検討いたしまして、精密にこれは一年間、これは三年間、こういうふうにその期限を切ったわけでもございません。ただ、航空機並びに原子力等の物品につきましては、当分の間は免税を続けなくちゃいけない。その当分の間というのは三年であると。さらにまた、重要産業機械等につきましては、国内であるいは製造するというふうなことを毎年検討する必要があるという意味におきまして、一年という期限をつけたわけでございまして、特に科学的に、総合的に検討いたしまして、精密にこの期限をきめたという点は、どうも御指摘通りだと私は思います。
  233. 永末英一

    ○永末英一君 従って、たとえこの法案が出ましても、今のような政務次官の御答弁ですと、あるいはまた先ほどの木村さんの御答弁ですと、一応暫定にしてあるけれども、延びることありという含みをわれわれ持っているのじゃなくて、暫定は暫定だし、特に関税政策は国内産業に対する大きな影響があるとすれば、やはり政府としては産業政策の面に重点を置いて、いやしくも関税というものが暫定々々ということで関税体系を乱すことのないように措置していただきたいという注文をつけておきます。
  234. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、一つだけ、簡単ですから……。三条ですが、これはさっき須藤委員もちょっと御質問しましたけれども、ちょっとわからぬ点がありますので……。給食用乾燥脱脂ミルクの免税ですね、これは前にアメリカの余剰農産物として千五百万ドル、グラント分として、贈与分としてもらいましたね。これはそうでなく、アメリカからグラントでなく輸入いたします分の免税なんですか。
  235. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 両方含めます。
  236. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、グラント分というものは済んでいないはずじゃないですか。
  237. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 三十五年度のグラント分が八百五十七トン予定されております。それも含みまして、なお輸入します分二万六千七十七トン入れまして、両方とも免税ということであります。
  238. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前にアメリカから余剰農産物を輸入するとき、あれは三十二年度でしたか、一億ドル輸入するうちの、千五百万ドル贈与分の残り八千五百万ドルの七割を日本が借りる。あれは四十年間二分の利子として借りるということになっておりましたね。それを、その後アメリカからまたグラントされているのですか。その後、聞かないのですがね、千五百万ドル分以外に。
  239. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 私もこの数字については直接の担当ではございませんが、今の数字はそれを所管しております文部省のいろいろ調査したものでございます。三十五年度計画としてただいま申し上げたような数量輸入になっております。グラント分は八百五十七トン入っております。
  240. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 給食用の米国の補助があるのですがね、政府が今まで補助してきたのですが、今度補助がなくなるのですね。それは、今までのグラント分の財源がなくなっちゃったのですね。それで、今度は要保護児童、そういうものにだけは補助するのですがね。そこで給食代が高くなるのですね、三十五年度から。ですから、財源からいっても、それはもうないわけなんですがね。その点、どうも明確でないのです。  それから、そのグラントでないものも輸入するということになるというと、御承知のように、牛乳は日本に余っているのでしょう。牛乳が余っているのに、アメリカからこういう脱脂ミルクが免税によってどんどん入ってくるということは、これは競合関係になると思うのですが、それはアメリカの余剰農産物を国内で処理するには都合いいでしょうけれども、グラントでない分について免税するというのは、どうもそこの理由がわからないのですかね。日本の牛乳か一時過剰になってしまって困っていたくらいなんですから……。それだのに、アメリカの余剰農産物か、グラントでない分の脱脂ミルクを免税によって今度輸入するということは、問題じゃないでしょうか。
  241. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど申し上げましたように、三十五年度の需要量が全体としまして三万五千五百トンでございまして、今仰せになりました国内で生産いたします牛乳は、この需要量の一部として七千二百十六トン入っております。これは私の直接の所管でございませんので、責任持って御答弁申し上げかねますけれども、おそらくその不足分として、あとの二万七千トンばかりが輸入されるものと思います。
  242. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだわかりませんがね。その点がどうも納得いきませんが、これは時間がないようですから、また……。
  243. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 両案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。両案について御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  245. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっている関税定率法の一部改正法案並びに関税暫定措置法案に反対をいたします。以下簡単に反対理由を申し上げます。  一、関税定率法の一部改正は、政府のいわゆる自由化措置の手初めとして、アメリカからの粗製ラードの税率を下げて五%としようとするものであり、反対にオランダその他からの精製ラードの輸入については、一方的に一五%に関税を引き上げ、国内の精製業者の保護に名をかり、国内業界をアメリカ一辺倒に編成しようとするものであります。一方、中国その他からの安いラードの輸入は、岸内閣の中国敵視政策により一昨年より断絶された状態となっているのであります。一事が万事であって、次に述べる関税暫定措置法についても同様のことが言えるのでありますが、こういうやり方が岸内閣のいわゆる貿易自由化であり、これは全くアメリカ資本の押しつけのままに、国民の利益と考えられないやり方というほかはありません。  暫定措置法についても同様のことが言えるのでありますが、特に二条から七条に至る免税物資について見れば、二条の「重要機械類」とはほとんど米国の独占資本に対する免税であり、三条の「給食用乾燥脱脂ミルク」に至っては、学童給食に名をかりる世界周知の米国余剰農産物であります。四条、五条の「原子力、航空機」は、平和利用とか基礎的研究とは称しておりますが、これはたれの目にも軍事目的に使用されるものであることは明白であります。六条、七条の「重油」についても同様、米国の石油帝国の下請け機構として、余った重質油を日本に押しつけようとしていることは明らかであります。これらの免税物資は、いずれを見ても、アメリカの独占あるいは余剰物資の押しつけであり、これがさきに述べた定率法と同様、岸政府があわてて実施しようとしているアメリカから押しつけられた自由化の実態であります。最後に、税制の基本的な方針について触れたいと思います。憲法三十条に定められている通り、国民はすべて法律の定めるところにより納税の義務を負うものであります。しかるに、本法案は、その重要部分が手続的事項であるなどというインチキな理由で政令に委任されております。これは租税法定主義という憲法に定められた民主主義の原則を破るものであり、先ほど政務次官も認められたように、行政権の不当な拡大を意味するものであり、まことに遺徳であります。   以上、述べた点によりまして、私は反対を表明するものであります。
  246. 天坊裕彦

    ○天坊裕彦君 私は、この案に賛成いたします。が、この関税法の中の石油の税金の値上げのことについて、一応希望の意見を申し述べまして、当局の注意を喚起しておきたいと思います。  今度の石油、原油、重油の値上げにつきまして、その理由は「石油の輸入価格の推移等にかえりみ」という非常に抽象的に書いてありますが、この内容は数字的にはよくわかりませんがとにかく国際的な価格のある程度の値下がりというようなこと運賃も安いしというようなことで、石油業者も損をしないで消費者にもあまり大きな影響はないだろうというようなことで、まあかたがたこれが石炭対策の一部にもなるというようなことが重油でできているのだというような点は、すなおに解釈するのでありますが、国内価格に対する影響というようなものについて、最近石油業界の動き等を聞きますと、重油部分に対する税のはね返りというものは、実際上は値上げはできないということであります。そうして、その部分がほとんど全部ガソリンあるいは軽油の方にかぶってくるのではないかというような空気が非常に強い。そういたしますと、重油の問題で、特に石炭対策のねらいもくずれてくるのではないか。この点は十分おわかりであろうと思いますが、その理由は、とにかく国内で、原油でもって精製いたしますと、その価格が大体まあ一万二千円ぐらい。ところが、重油をそのまま入れると八千円ぐらいなんで、とてもこれ以上げるわけにはいかない。現在原油、重油がそのまま入って来ないのは、まあ外貨の割当で量が少なく押えられているからということであります。このはね返りがガソリンあるいは軽油の方に全部はね返ってくるというと、二百円から二百五十円くらいの影響で済むかと思っておったところが、現実に千円ないし七百円は少なくとも上げなければならぬという空気が非常に強いのであります。これは御承知のように、ガソリンの問題、いろいろ大衆にも影響する問題でありまして、非常に重要視しなければならぬことになると思うのであります。もちろん、この価格をどういうように上げるかという問題は、自由経済のもとで当局でどうするということもなかなか困難な問題でありましょうが、十分一つその点は監視していただきたいと思います。  また、特にこういうネエルギー資源というものの値上げを誘致するようなチャンスというようなものをおやりになるについては、十分慎重にお考え願いたいという点を、希望として申し述べておきます。それだけです。
  247. 平林剛

    ○平林剛君 私は、社会党の立場から若干の意見を申し上げておきます。  社会党はこの関税暫定措置法案に対して賛成をいたします。しかし無条件でこれが賛成をするというのではありません。この法律案審議中にも述べましたように、電子計算機に対する免税措置、あるいは重要機械類の免税など、国民的立場から見ましても適当でない免税措置が加えられておりまして、これは一日も早くもとの形に戻す必要があると思うのであります。電子計算機、また重要機械類等につきましては、しばしば私ども指摘をして参りまして、政府においても今後検討する意向も見られましたので、ぜひ次の機会にはこれを再検討をして出直してもらいたいということであります。  ただ、私ども、今回の政府の法律案でその努力を多とするところは第一に、関税暫定措置法として、従来一般の国民にわかりにくかった法律の形を整えまして、批判をしやすくなった、またわれわれも審議しやすくなった。これはそういう意味においては、将来審議の対象焦点がしぼられまして、次の段階に進む、すなわち暫定的なものにするという効果を果たすという意味は認めているのであります。同時に、原油、重油に対する免税措置を基本税率 に近づけていったということも、われわれが従来指摘しておりました主張に一歩近づいたのでありまして、これらの考え方を今後に進めるという条件的意見を付して、賛成をするものである。この点を明らかにしておきたいと思います。
  248. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ほかに御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより採決をいたします。関税定率法の一部を改正する法律案並びに関税暫定措置法案を一括して問題に供します。両案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  250. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定をいたしました。  なお、諸般の手続等については、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  252. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 次に、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のある方は御発言を願います。
  253. 大矢正

    ○大矢正君 農林省にお尋ねしますが、昨年来生糸が非常に活況を呈して参りまして、まあ養蚕農家は非常に喜んでおられると思うのでありますが、今回この会計法の一部改正で、借り入れの限度額というものを大幅に減らすということになるわけであります。そこで、生糸の市況というものが、将来まあこの借り入れ限度額を引き下げた範囲内においてやられるという見通しがあるのかどうかということ。もし、あと一年やあるいは一年半の間に再び政府が大量に買い入れなければならないというような事態かあるとすれば、今借り入れ限度額というものを実際問題として削減をするとちょっとおかしいことになるのですが、その点、あなたの方から見通しを聞かしてもらいたいと思います。
  254. 筒井敬一

    説明員(筒井敬一君) 御存じのように、一昨年の異常な状態によりまして、繭なり生糸の値段が暴落いたしたのでございますが、これには従来の繭糸価格安定法によります最低糸価——生糸の値段でございますが、それが実勢価格から見まして適当ではなかったのじゃないかということによりまして、大量に買うという事態になったのでございますが、その一昨年の事態に対しまして、やはり糸の値段というものを、専売ではございませんので、実勢に合った中で安定をして参るという趣旨の法律でございますので、そういう糸の実際の趨勢というものをにらみ合わせまして、最低糸価を大幅に引き下げまして、御存じのように、現在、一俵でございますが、十四万円が最低糸値になった次第でございます。で、今後の問題でございますが、私どももなかなか糸の値段が明年度どういうようになるかということを予断は許されないのでございますけれども、大体今までの本年なり昨年なりの糸の値段の趨勢を見て参りますというと、大体十八万円前後で昨年の後半あたりから今年の初めにかけて成立いたしております。しかしながら、今後の問題といたしまして心配になります点は、原綿、原毛等の繊維原料の自由化の問題が明らかになってきておりますので、それらに対応しまして一般的な趨勢といたしましては、繊維価格というものが低落といいますか、また弱含みの状態を続けるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。しかしながら、糸につきましては、そういうような状態を織り込みまして、現在の先物の相場などを見ましても、そう低くなるというようなこともないようでございます。従いまして、私どもといたしましては、今度の借り入れ限度程度でも十分、明年度の糸の値段をいかにきめるかということは、実は本日繭糸価格安定審議会というのが開かれておりまして、それでもって明年度の最低糸価なり最高糸価を決定することになっておるわけでございますけれども、それのいかんにもよりますが、大体の業界の空気といたしましても、まあ現在の十四万円が最低糸価としては適当じゃなかろうかというのが大勢のようでございますので、そういうような糸の値段がきまりますれば、この今度の百十五億程度の借入金でまずまずやっていけるのじゃなかろうか、こういうように考えております。
  255. 天田勝正

    ○天田勝正君 ちょっとお伺いしますか、今の質問に対する答弁で、なかなかうまい表現をしておるが、一昨年の異常事態という表現、大へん私はおもしろいと思うのですが、その異常事態というのが私は二つあると思う。一つは、確かに世界各国の景気、不景気に影響されたのもあろうし、もう一つ私は問題なのは、やはり需給関係だと思う。この需給関係の見通しを政府が誤りますと、かりに諸外国が好況であっても、なおかつ養蚕農家は大へんな不安に陥るのでありまして、それが事実、過去に一昨年の状態かそうであったということなんです。今さら指摘するまでもありませんが、三十三年のまだ春までは、政府の奨励に基づきまして、各県ともにむしろ桑を盛んに植えたはずであります。ところが、その植え切った時分には、今度は大暴落という状態になってきた。    〔委員長退席、理事山本米治君着席〕 だから、まあ今の御答弁を聞くというと、業界筋では云々ということで、糸価はそれ自体だけをとらえるならば、それはまあ一応の答弁でありますけれども、糸価のもとをなします養蚕農家の方からいうならば、この見通しを誤られては、それはとてもたまったものではない。今どういうように政府が指導しているのか私はわかりませんが、実態は、現在、今年はまだ桑を植えつつあるというのが実情でありますし、桑田は足らないということが実情であります。そこで、しかし一応繭価というものはまあ先行き多分に強含みであろう、こういう腰だめ見当をつけまして、たくさん掃き立てるという気風がある。これは気風であって、幸いというか不幸というか知りませんが、今年の冬の異常乾燥によりまして、桑の収量というものかきわめて落ちるということが、これは農業に携わる者はだれでも見通している。その時分の桑か少ないという見通しから、掃き立てをその面から制限をする、こういうことでありまして、もしこれが普通の気候であって、今の農民及び県の考え方のようにたくさん掃き立てるということになれば、これはとても繭価も糸価も強含みどころでは私はなくなるのではないか、こういうふうにまあ考えるわけですか、説明はあまり長くしないようにして、政府の方としては、特に農林当局としましては、一体どのくらいの生産の糸量及び繭を予定されておるのか。まあ少しく長期的ならば、なおさら答弁としてはよろしいと思いますが、それらの点を伺っておきたいと思います。
  256. 筒井敬一

    説明員(筒井敬一君) 新年度の繭の生産量がどういう状態になるだろうか、こういうことでございますが、現在まだ予測はなかなか困難なのでございますけれども、一般的な傾向といたしましては、ただいまお話がございましたように、桑苗の売れ行きはかなりいいのでございますが、これはむしろ新植、新しく植えるということではなしに、改植をやっているのではないかというように考えておるわけでございます。また、たとえそれが新しく植えるところも若干あろうかと思いますけれども、直ちに明年度の収穫に影響するというほどでないことは、御存じのように、桑はまず二年目あたりから本格的に収穫ができるというような特殊性からいたしまして、現在の桑の植え工合が直ちに来年には影響するということはないのではなかろうかと思います。ただ、問題は、今年の問題といたしまして、肥料の増投というのが一般的な問題としましては相当あるのではないかというように考えられるのでございます。と同時に、実は昨年の台風で、割合養蚕の地帯におきましても被害を受けた所が多うございますので、この影響がこの春にはあるのではなかろうかというように考えられるのでございまして、まず明年度は、これも正確には申しかねるのでございますけれども、本年度の約五%前後ぐらいがふえるのじゃなかろうか、繭の生産量としては五%前後ぐらいふえるのじゃなかろうかというような見込みを立てておるのでございますが、何分にもまだその掃き立ての時期にも来ておりませんし、今後いろいろの天災、毎年あるような凍霜害などがございますので、はっきりいたしませんが、そういうような見当をつけておる次第でございます。    〔理事山本米治君退席、委員長着席〕
  257. 天田勝正

    ○天田勝正君 ちょっと、答弁は私の心配とはまるでほど遠いことを答弁されて、ちょっと困る。今年の産繭の量の見通しというものがいまだわからない、こういうことだけれども、それがわかってもらはなければ困るのです。むしろ、政府の方で、今年は日本全体としてはどのくらいの繭を生産するんだ、そういう計画を立てて、そのくらいのものはまた輸出ができるのだし、内需もあるのだ、こういう見通しをいたしまして、そうして掃き立てもどれくらいのグラムを掃き立てせしめるかという工合にやらなければ、にわかには予断は許さないなどと言ったって、できてしまって、でき過ぎれば暴落ということになるのですから、そこが農林省があり、やはりこの指導している一番大きな私はねらいがあろうと思う。それが出てみなければわからないというのだったら、それはとてもかなわないし、今桑を植えておるけれども、新柏じゃないだろう、改植だろうなどと言ったって、それは今私は資料持ってきませんけれども、新値もうんとあるということです。埼玉だけをとらえたって、新植もうんとある。そういうことでもありましょうし、さればといって、まあ二年目くらいでなければ桑つみしないから、ことしの影響はないだろう、そういう桑だけに困るのです。実際いえば、四年目からであります。四年目に今植えた桑がたくさんつめるようになったときに、今度はそれだけの繭は要りません。つい昨年もその手をやったわけなんであって、春に植えさせておいて、今度はもう六月には二割抜根しろと、こう言ったでしょう。そういうふうに多年生のものだから、なおさら困るというのです。  私は、今植えたのが来年影響ないなどというのんきなことでは、とても養蚕農家は困るのでありまして、そうでなく、二年なり三年たったときは、さらに今よりも増量するのでありますから、そのときに困らないように指導してもらいたい。それに対する対策はどうかということを聞いているのでありますから、間違いないように一つ、答弁を願いたいと思います。
  258. 筒井敬一

    説明員(筒井敬一君) ただいまの御質問でございますが、実は一昨年の状態にかんがみまして、昨年と今年にわたりまして桑園の整理をして参ったわけでございました。約二万五千町歩ばかりの桑園を整理したという形になっておりまして、今後の糸の値段あるいは繭の値段を確保して参るのには、従来の面積では多過ぎるのではないかという基本的な考えに立っておったわけであります。従いまして、われわれの方では、直ちにこの桑園の面積をふやそうというようなことは、むしろ養蚕家のためにも、また生糸を製造する人々のためにも、適正じゃないのじゃなかろうかというような考え方でおるわけでございます。しかしながら、御存じのように、桑の作付、あるいはまた繭の生産そのものにつきまして、特別作ってはいけないというような強制的なものもいたしかねるのでございますけれども、考え方といたしましては、桑園の面積をふやすということは、現在の段階では好ましくなくて、むしろ生産の合理化に一つ精進していただくということに指導の重点を持っておるわけでございます。
  259. 天田勝正

    ○天田勝正君 急ぐようですから、私、さっきの平林君ではないが、油が乗らないのだが、ちょっとどうもそういう答弁では全く困るので、現実にしかし苗はどんどん生産さしているのだし、そうしてそれぞれ改植及び新植をさしているということは、政府の指導なんでしょう。一問一答で私は聞きますが、どうなんです。今お話を聞くと、好ましいことではない。さればといって、強制はできない。こう御答弁になっているのだけれども、好ましいことでなければ、行政措置として指導はできるはずなんです。少なくしろという指導はしないでしょう。この点どうなんです。
  260. 筒井敬一

    説明員(筒井敬一君) 新植の前に改植の問題でございますけれども、同じ桑園から相当古い桑を新しい桑にかえるということは、桑園の合理化という意味におきまして、これは改植をいたしていくことは、能率を上げていく上からいたしましても、けっこうなことなんでございます。しかしながら、新しく面積を拡張するということは、政府の方では奨励をいたしておらないのでございますが、これにつきましても、今おっしゃるように、すべてやっちゃいけないと申しましても、これはそれぞれ農家の方々でやれる部面の方はやられる方もあるわけでございまして、別段政府の保護とか補助とか、あるいは規制措置などはございませんのでありますが、一般的な指導としては、改植は大いにけっこうでございますけれども、新植につきましては、積極的な奨励をいたしておらないということでございます。
  261. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  262. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記をつけて。
  263. 天田勝正

    ○天田勝正君 それでは、簡単にしましょう。それなら、ことしの新植と改植がどのくらいの量になっているか、数字で示して下さい。そうすれば早い。それが知れてなければ、当てずっぽうに答弁されたってだめなんです。
  264. 筒井敬一

    説明員(筒井敬一君) 今正確な数字を持って参っておりませんので……。
  265. 天田勝正

    ○天田勝正君 正確でなくてもいい。
  266. 筒井敬一

    説明員(筒井敬一君) これは一つ資料として、正確に調べたものを、現在まで入ってわかっているものを提出さしていただきたいと思います。
  267. 天田勝正

    ○天田勝正君 しょうがない。いつも委員長に言われて泣かざるを得ないので、要望しておきますが、私が一番心配する問題は、一昨年のように、桑を植えろと春言って、六月には抜け。そうして強制はできないというけれども、そういうときは半強制なんです。指導で、半強制なんです。これは農村議員の方はおられるから、全部それは知っているのです。保守とか革新とかでなしに、その措置については反対したはずなんです。ですから、そういう見通しの立たないことは困る。しかも、麦のように半年でできるものならまだいい。桑を植えてしまったら最後、四年目になったらえらく桑がとれる。そういうことになったら、その際になったら困るので、今のうちにちゃんと計画を立ててもらわなければ困るのだが、どうも質問してみると、さっぱりそこらのところもつかぬでおらないというのが実情なんです。でありますから、さようなことでまことに困りますから、合理化すればけっこうだなんと言うけれども、合理化というのは単位当たりの収量がふえることなんです。そうでしょう。そうでなければ、ちっとも合理化ではない。  それで合理化して、結局、今指導しているのは、私の方から申し上げましょう、年間条桑育です。そうすると、女子供でも、そう夜夜中までやらなくても、繭はたくさんとれるということなんです。そうなれば、今までの反別をもってしてもなお繭は増量する、こういう見通しを立てなければならない。われわれの方は調査機関がないから知らないといったって、政府がちゃんと知っているはずですから、それらのこともちゃんとでき得る限り計算をして、将来農家が参ってしまわないように指導するということが、私は政府の役目だろうと思いますから、きょう上げるという法案に、あとから資料出されましても、お祭りが過ぎてからちょうちん下げる、あとの祭りというわけで、これはもうとても困ります。ですから、この点はきつく要望しておきまして、これでやめます。
  268. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  269. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより採決をいたします。糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  271. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御提議ないものと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  273. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 次に、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案及び治水特別会計法案を一括議題といたします。  質疑のある方は御発言を願います。
  274. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十分しかありませんけれども、能率的に一つ質問いたしますから……。  財政法十三条の第二項とこの治水特別会計との関係質問します。それは大体わかりますか、意味が。
  275. 小熊孝次

    政府委員(小熊孝次君) 今回治水特別会計を設けたわけでございますが、これが特別会計といたしまして財政法第十三条との関係はどうであるかという御質問の骨子であると思います。この治水特別会計は、これは御承知のように、直轄治水事業、それから従来多目的ダム特別会計でやっておりましたところの直轄のダム事業、これを中核といたしまして、これをわれわれは財政法第十三条第二項の特定の事業であると考えておるわけでございますが、この特定の事実につきまして、地方からの分担金をとります。それから国費も出します。その経費の関係を明らかにするということで、従来の多目的ダム特別会計その他こういう公共事業関係の特別会計と同じようなふうに考えておるわけであります。  なお、それにつけ加えまして、今回は補助金、負担金というようなものも一般会計から入れることにいたしたわけであります。この点について若干御疑問があるのじゃないかと思うのでありますが、われわれといたしましては、法律に基づきまして今回緊急治山治水十ヵ年計画というものを決定いたしまして、これを実施いたしまして国土の保全をはかる、こういうことになったわけでありますが、そういう場合におきまして、十ヵ年一兆五百億に上るところの投資というものをはっきり、予算的にも決算的にもはっきり経理をして、そうしてその実績を明らかにしていくということが望ましい、このように考えまして、法律でそういうような措置を講ずるということは、これは財政法十三条の精神に反するものではないのじゃないか、このように考えて、この特別会計法案として出したわけでございます。
  276. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この治水特別会計は財政法十三条二項に私は違反すると思うのです。というのは、第二項で特別会計を認める場合三つあるわけですね。三つ書かれている。その一つは「国が特定の事業を行う場合」、もう一つは「特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」と、三つです。この三つの場合、具体的にこれまでの例があるのですから、示していただきたい。第一の場合はどういうものであるか、第二の場合、第三の場合。
  277. 小熊孝次

    政府委員(小熊孝次君) 「国が特定の事業を行う場合」、これは御承知のように、印刷局特別会計とか国右林野事業特別会計、その他従来の多目的ダムの事業の特別会計、あるいは特定港湾事業の特別会計。  それから、「特定の資金を保有してその運用を行う場合」、これに該当いたしますものといたしましては、資金運用部資金特別会計、国債整理基金特別会計というようなもの。  それから、第三のケースでございますが、「特定の歳入を以て特定の歳出に充て」る場合、これは例のガソリン税をもって道路整備事業を行なう場合の道路整備事業特別会計というようなものが、これに該当するわけでございます。
  278. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、今まで治水事業は一般会計でやっておったわけですね。そうして普通の一般の行政事業というものに考えられておった。今の具点的な一、二、三、三つの場合の例をあげましたが、どれにも当てはまらぬと思うのですよ。無理に当てはめているようですけれども、私は非常に無理だと思うのです。それで、大体十三条は、従来の、戦前と違って、財政法では特別会計は法律をもって作ることができることになっております。原則として一般会計、特別会計、二つに分けております。しかし、それだからといって、乱用していいというものではないと思う。それだから、第二項において大体三つの場合と限定しているのでしょう。これは私は、確かにこの特別会計は、十三条二項で三つの場合を認めますが、それに該当しないと思うのです。これは大蔵省も最初反対だったように聞いておるのですよ。大蔵省はなぜ反対だったのです。反対の論拠をお聞かせ願いたい。
  279. 小熊孝次

    政府委員(小熊孝次君) 確かに、御指摘通り、当初、大蔵省としては反対しておったわけでございます。これは、やはり国の会計というものは、特にこういう公共事業的なこういうものにつきましては、従来からの建前といたしまして、一般会計でやる。しかも、それは会計統一の原則から申しまして、なるべく特別会計は作らない、こういう方針でございます。そういう見地から一応は反対しておったわけでございますが、しかし、いろいろな予算折衝の段階におきまして、とにかく十ヵ年にわたりまして、まあ治山治水あわせてでございますが、一兆五百億、こういうような大規模の国の投資をやっていく。そういうような場合におきまして、やはり先ほど申しましたような理由としまして、その予算なりあるいはその実績というものを長期に明らかにしていくということは、これはやはりその事業をするためには必要ではないか、こういうふうに考えまして、特別会計に踏み切ったというわけでございます。
  280. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がございませんから、私は意見になるかもしれませんが、これは予算単一主義の原則というのは、これは財政の民主化の非常に重要な要素ですよ、財政法の中でも。それでこういうふうにしますと、経理が明らかにならなくなって、だんだんに公債発行なんかするかもしれませんよ。非常にこの特別会計が乱用されるおそれがあるので、それだから十三条第二項の場合において三つの場合に限定してあるのですよ。だから、私は十三条二項の精神に反すると思うのです。今まで一般会計でやってきたのですから、積極的にこの特別会計を設ける理由はありませんよ。ただ、地方の負担分をあわせて運用できる程度でしょう。これは積極的の理由にならないのですね。こういうように、だんだん財政の民主主義の原則を踏みはずして、こればかりではないのです。だんだん継続費の問題でも、あるいは国庫債務負担行為の問題でも、だんだん財政法の精神を逸脱して、われわれが財政を一目瞭然として、これをいわゆる監査できなくなるのですよ、国会において。そういうことは、私は今後やるべきではない。それは意見ですが、こういう原則的立場について、大蔵省はどういうように考えていますか。
  281. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) 今回のこの治水特別会計につきまして、木村委員から御指摘の点でございますが、先ほど御指摘のように、大蔵省も最初は、一般会計で従来取り扱って参りましたいきさつもあり、また会計統一の原則といいまするか、そういう原則から、特別会計を設ける必要がないという考え方で確かに進んで参りました。先ほど法規課長が御説明を申し上げましたように、予算折衝の過程におきまして、十年間で九千二百億円、前期五ヵ年計画で四千億円というような相当膨大な事業目標が定められましたので、この際財政法第十三条の特別会計の事業としてこういう内容の会計を作ったわけでございますが、しかし、ただいま先生の御指摘のように、特別会計は乱用すべきものではございません。今後十二分に先生の御指摘の点を体しまして、乱用され、また弊害のないように努力したいと思っております。
  282. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 両案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ござ  いませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。まず、国有林野事業特別会計の一部を改正法律案について御意見のある方は、賛否を明かにしてお述べを願います。——別に御発言もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これにより採決をいたします。国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  285. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、治水特別会計法案について御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  286. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより採決をいたします。治水特別会計法案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  287. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会