○
政府委員(
今井善衛君)
繊維工業設備臨時措置法の一部を
改正する
法律案につきましては、その
提案の
趣旨につきましては
提案理由によりまして明らかでございますが、若干補足的に
説明さしていただきますとともに、
衆議院で
修正になりました点につきましてもかわりまして
説明さしていただきたいと思います。
繊維工業設備臨時措置法の
趣旨につきましては、これは御
承知のように、
繊維工業は
わが国の非常に重要な
輸出産業でございまして、
ところが
過剰設備を過去におきましても、また現在におきましても非常にたくさんかかえておりまして、それがあるいは
輸出品の安売りとなり、あるいは国内につきましても
繊維不況を繰り返しておるという原因になっておるわけでございます。そこで、この
法律は、そういった
過剰設備を適当に処理いたしますことによりまして、
繊維工業を長期的に見て安定的な発展を遂げさしたいというのがこの
法律の目的でございます。
ところで、私
ども繊維産業に対する
行政といたしまして、ただいま申しましたこの
法律によります
設備規制と、それからもう
一つは
原料正面に対する
ところの
為替割当、この
二つを二本の柱として運営して参っておるのでございますが、
原料面に対する
為替割当ということは、
貿易の
自由化という世界的な趨勢から見まして長くは続けられない。また
繊維工業自体の
立場から申しましても、この
綿花、
羊毛を自由に輸入させることによりまして、
企業全体の体質は改善されることでございましょうし、あるいは
コストが安くなる、こういった
輸出面に貢献する
見地からいたしましても、あるいは
消費者に対しまして豊富低廉な
繊維製品を供給するという
見地から申しましても、あるいはまたこの
機屋さん等の
中小企業に対しまして安い原糸が入手できる。それによりまして従来
中小企業の宿命といわれました
ところの
原料高の
製品安という悪い環境を打破するという
見地から申しましても、いずれの
見地から申しましても、この際
綿花、
羊毛の
自由化に踏み切るということは、これは長い目で見まして、
繊維産業にとりまして長期的に発展させる道であるというふうな
観点からいたしまして、
政府といたしましては、昨年の暮れ以来、
繊維総合対策懇談会で慎重に検討いたしました結果、この際
綿花、
羊毛の
自由化に踏み切る方がいいということで、来年の四月から
綿花と
羊毛につきましては
貿易自由化に踏み切るという旨を昨年の暮れに発表した次第でございます。
そうなりますと、先ほど申しましたように、この
繊維行政は今まで
設備面の
規制と
原料血の
規制という二本の柱でやっておりましたものか、一本の柱が抜けまして、あと一木のこの
法律によりまる
ところの
設備規制だけでもってささえるということに相なるわけでございまして、従いましてその面に非常にロードがかかる。この
現行法のままでやります場合におきましては、過渡的に非常な
混乱が予想されるのでございます。つまりこの
綿花、
羊毛の
自由化を行ないますることによりまして輸入がふえる。その結果、たとえば
過剰生産になる。それからひいては
市況が不安定になり、あるいは
コストを割るようなことが起こる。この場合におきまして
企業に対しておもしろくない影響がありますほかに、関連いたしまる
ところの
中小企業あるいは
従業員に対しましても不測の迷惑をかけるというふうなことが予想されますので、従いまして、どうしてもそれらの
混乱を回避いたしますためには、過渡的に
設備面に対する
規制を
最小限度に
強化しなければならぬというのが、一言に申しますとこの
法律の
内容でございまして、例をもって御
説明いたしますと、たとえば
繊維工業におきまして
市況の安定ということが非常に大事な要素でございますが、従来この
市況の安定につきましては、この
法律によりまする
格納等によりまする
設備規制と、それから
行政措置によりまする
勧告操短というような
制度を併用して参ったのでございますが、
ところが今後
貿易の
自由化によりまして
原料割当ということがなくなりますと、これは俗な言葉で申しますと、
政府のにらみがきかなくなるというふうな
関係になるわけでございまして、従いまして、どうしても今後の
青給調整は、この
法律に基づきます
ところの
設備規制一本で行なわざるを得ない。さような
観点からいたしまして、今回この
法律の
改正の要点といたしまして、従来
設備規制は、主として
長期的観点から行なっておりましたものを、
長期的観点のほかに短期的なこの
需給調整の
観点も入れる。またこの
設備規制に対しまして
協力をしてくれない
ところのたとえば
アウトサイダーがあります場合には、この
アウトサイダーに命令を出しまして、
アウトサイダーにも
協力をしてもらうというような面も織り込んでございます。また、従来はこの
法律に対する違反という問題につきましても、
原料割当というふうなことからにらみをきかせておったのでございますが、さようなことができなくなるということで取り締まりの
強化というようなことも織り込んでおるわけでございます。
それからこの
法律の期限は、今度の
改正案によりまして四年間延長していただきたい、それによりまして、この
繊維産業の安定の
目標時点というものを
昭和四十
年度にいたしたいということにいたしておりまして、それによりまして、
貿易自由化に伴う
混乱をできるだけ避けまして、円滑に新しい秩序に導いていきたい、かように考えておる次第でございます。昨年の暮れに
貿易自由化を発表しまして、まだ現在は
自由化になっていないのでございますが、その発表によりまして、
市況と申しますか、
業界の方はすでに
貿易自由化になかば踏み出したような
態勢でございまして、そのためにこの
市況は
低迷に
低迷を重ねておる次第でございまして、従いまして、私
どもといたしましては一日も早くこの
改正案を施行いたしまして、この
改正案の施行によりまして
市況の安定をはかりたいと、かように考えておりますので、ぜひこの会期中に御可決をお願いしたいと思うのでございます。
次に、
衆議院におきましてこの
改正案は
全会一致で採択せられたのでございますが、その際に三党の
共同提案による
修正案がございまして、これも可決されたのでございますが、お手元にございますのが
修正案でございまして、この
内容は、第三十一条の三といたしまして、「(
苦情の申出)」という一条を追加すると、前の方にございますのは、これは単なる
条文整理でございます。この「(
苦情の申出)」の
規定は、
共同行為、
設備処理のための
共同行為の
指示に関しまして、たとえばこの
事業者の方でそれに従事いたします
従業員の
労働条件を
低下させるとか、あるいは
首切りが行なわれるというふうなことが万一ありました場合に、
通産大臣に対しまして
苦情の
申し出をすることができる。それによりましてこの
関係の
従業員を保護し、
通産大臣といたしましてもそれに対して善処したいという
規定でございます。
もう少し詳しく申し上げますと、先ほど申しましたように、この
法律によりまして、現在非常に過剰になっております
繊維工業の
設備、それを
一定の
時点、この
法律では
目標年度と申しておりますが、で、この今度の
改正案によりますと
目標年度は四十
年度ということになるのでございますが、その将来の
一定時点を考えまして、その際なお現在持っておりまる
設備が過剰であるというふうに考えられます場合は、その
目標時点の
設備の過不足と比べまして
過剰分というものを
格納なり、あるいは封緘なり、さような
措置をすることになっておるわけでございます。そういたしますと、
企業といたしましては、百分の持っております
設備を若干たな上げいたしまして、動かすことができない、さような事態におきましてはまま
労務者に
しわが寄りやすいということになるわけでございます。私
どもといたしましては、この
法律の運用によりまして、たとえば
格納なりする、それによりまして
労務者に
しわが寄るというふうなことは絶対に避けたいということから、この
共同行為の
指示を
通産大臣の
告示で行ないます場合に、さような
首切りなり、あるいは
労働条件の
低下をさせてはならないということを
告示ではっきり示しておるのでございますが、それによりましてさような
首切り、あるいは
労働条件の
低下ということは、これは十分避け得ると考えるのでございますが、万が一にもそのために
しわ寄せがありまして、たとえばこの
労働条件の
低下というふうなことがあります場合に、それに対する
救済手段を認める必要がある。で、その
救済手段といたしまして、この
条文にありますように、
苦情の
申し出を
通産大臣にしまして、そして
通産大臣といたしましては、それを受けまして、
設備審議会におきまして三
者構成よりなる公正なる
委員会でもって両者の言い分を聞きまして善処すると、かような
趣旨でございまして、私
ども趣旨におきましてはしごくごもっともであると考えるのでございます。
以上簡単に
補足説明並びに
修正案の
説明をさしていただまました。