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説明員(
石倉秀次君) ただいまの御
質問につきまして御返答申し上げます。
御
承知のように、戦後にいろいろ新しく合成されました農薬が出ておりまして、最近ではおそらく農薬の種類は化学化合物の成分といたしましては、約三百種類くらいのものがあると存じます。御
承知のように農薬が害虫なりあるいは病原菌を殺すということを目的としておりますので、その中には
かなりやはり人畜に毒性の高いものがございます。この毒性の高いものは御
承知のように、毒物及び劇物取締法という
法律がございますので、当然その
法律の対象になるわけでございます。しかし、現在用いられております農薬のうち毒物になっておりますもの、それから劇物になっておりますもの、それから劇毒物に入らないものというふうに分けますと、品目の種類といたしましては、劇毒物に入らないものが多いのでございます。ところが、使用しております絶対量から申しますというと、
かなり毒物あるいは劇物に入るものが多うございまして、ちょっと
統計が古いのでございますが、一昨年三十三年度の使用実績で申しますというと、毒物のうち特に毒性が多いものが、これは生産数量及び金額のうちの金額で分類いたしますというと、特定毒物になりますものが一九・七%それから毒物になりますものが三三%、それから劇物が八・三%普通薬が三八・八%というような形になっております。問題はこの特定毒物あるいは毒物に入ります農薬の取り扱いが不適切でございますというと、ただいま御
指摘のような中毒が起こります。それで、このような特定毒物あるいは毒物ないしは劇物に入りますおそれのあります農薬をどのように
農林省といたしまして取り扱っているかと申しますと、先ほど申しました毒劇物の取り締まりは
厚生省の方の所管になっておりますが、ところが、農薬の販売あるいは製造取り扱いというような面は
農林省の方の所管になっております。この聞の
事務調整といたしまして
昭和二十七年の四月に私
どもの方と
厚生省の薬務局との間におきまして農薬の取り扱いについてこのような取りきめをしております。農薬として販売いたしますには、農薬取締法の規定によりまして農林大臣の登録を受けなければならないのでございますが、新しい農薬が入って参りましてそれが毒物及び劇物に
相当する毒性があると思われるものは、輸入またはそれを製造する際に、先だちまして農薬として登録
申請をやるわけでございます。この登録をおろします前に、私の方から
厚生省の
薬務局長あてに、この農薬の製造をいたそうとする者に対して見本及び
資料を出させまして、
厚生省の方におきましてこれを国立衛生試験所その他の
関係機関で毒性を検討していただくというような形にいたしてございます。その後の取り扱いは、
厚生省におきまして毒物あるいは劇物というような指定が行なわれますと、毒物及び劇物取締法にきめられました
手続によって
管理されるわけでございます。これにつきましては、
管理者の資格そのほかがこの毒物及び劇物取締法の中に詳しく規定されてございます。
それからなお、そのようにして規制されます農薬が現実に農家において使われ、その段階において中毒ということが起こるわけでございます。この点につきましては、先ほど申しました特定毒物、これがただいま化合物の種類といたしましては五種数の殺虫剤があるのでございますけれ
ども、この使用法について毒物及び劇物取締法の施行規則によりまして非常にこまかい制限をつけておるわけでございます。その
概要を申しますというと、こういうような危険な農薬は個人の使用を許さない。御
承知かと思いますけれ
ども、たとえば最近は病害虫の防除というものが
かなり共同的に行なわれております。たとえば町村あるいは農業協同組合というような段階での共同防除が行なわれますので、そのような共同防除に限って使用を許す。それから保管につきましては、個人の保管を許さない。それから、使用上の詳しい点、たとえばどのような散布器具を使うとか、どのような服装をするとかいうようなことを指導をしておるわけでございます。先ほど農薬の中毒が毎年出るということは御
指摘の
通りでございますが、このように数年前に比較いたしますというと、取り扱いあるいは販売、
管理の点につきまして規制を加えたこと、それから
農林省の面におきましては使用上のそのような詳しいこまかい制限を加えましたために、農薬全般の使用量は非常に増大しておりますけれ
ども、事故の点につきましてはだいぶ減少いたしております。長くなって恐縮でございますが、たとえばこの特定毒物のうちのパラチオンというものがございますが、これがまあ前々から一番農薬の中毒としては問題にされております殺虫剤でございますけれ
ども、これによります中毒が
昭和二十八年、九年には千五百から千八百台の数が出ております。そのパラチオンの使用量は、最近は二十八年、九年の約倍になっておりますが、事故といたしましては昨年度は四百八十二というような形に減ってきております。