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1960-03-15 第34回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十五日(火曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            小柳  勇君            田畑 金光君            村尾 重雄君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 松野 頼三君   政府委員    労働政務次官  赤澤 正道君    労働大臣官房長 三治 重信君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      澁谷 直藏君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働省労働基準   局労働衛生課長  加藤 光徳君    労働省労働基準   局労災補償部長  村上 茂利君    労働省職業安定    局企画課長   住  栄作君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○じん肺法案内閣送付予備審査) ○労働者災害補償保険法の一部を改正  する法律案内閣送付予備審査) ○労働情勢に関する調査  (一般労働行政に関する件)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではただいまから委員会を開会いたします。  じん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。これより質疑に入ります。質疑のおありの方は御発言を願います。
  3. 坂本昭

    坂本昭君 最初に一般的な問題になりますが、業務上の特殊な疾病に対する労働者保護立法、こういったものを大臣はどういうものがあるとお考えになっておられるか。それからまた、将来どういうふうなものを考慮していかなければならないか、どういうふうにお考えになっておられるか、まずそれを承りたいと思います。
  4. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 最近の——これはお医者さんにお医者さんの話をしておかしいのですが、最近の医学の進歩で相当いろいろな研究が進みまして、今までの——もちろん産業災害産業病としては、けい肺というものが今までの一番大きな問題でございました。その後、最近はベンゾールという重度な障害も出て参りました。その後やはり産業方向が進みましてエキス線とかいろいろなやはり産業に付随した新しいものが出てくる、潜水病はもちろん今日発生したわけではございませんけれども、重度から言うと相当重いものだ、そういうふうないろいろなことを考えて参りますと、けい肺はもちろん今日までは、多数の、人数から言いますればけい肺が一番多かったということでありますが、同様の障害が現われて参りますので、それもあわせて保護して、同じ産業病者の中からこれを救っていくべきだという意味で、今回の実は改正に踏み切ったわけでございます。病状の細部につきましては担当課長からお答えいたします。
  5. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) ただいま労働大臣から御説明がありましたように、職業上の疾患というものは非常に多いのでございまして、ただ現在具体的に取り扱っておりますのは、今申し上げましたようなものでございますが、そのほかに非常にたくさんのものがありますので、そういうものに対しましては逐次内容をきわめまして、そうしてそれらについて具体的な指導をやっていくという方向をとって参りたいと思っております。
  6. 坂本昭

    坂本昭君 それでは一応この労働省としても職業病といった考えはお持ちになっておられるのでありますね。これは大臣に、病といいますけれども、普通の医者の病と違って、労働行政における業務上の大事な病としての職業病という考えは明確につかんでおられるか。職業病として対策を講じなければならない、そういうふうにお考えになっておられるのでございますね。
  7. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 今日のところは明確に把握をしておりますが、将来いろいろな問題、ただいままだ出て参りましょうし、また、今日予想されるのもございますが、今日のところは的確につかんでおります。
  8. 坂本昭

    坂本昭君 職業病というものを明確におつかみになっておられることについては、私も賛意を表したいと思うのであります。少なくとも皆さん方労働衛生研究所の目的もはっきりと職業病というものを取り上げて、これを大手な研究テーマとしておられることから見ても、私は労働省がこういう方向に進んでおるということは、おそまきながらもまことにけっこうだと私は賛意を表します。ただ、まだいろいろな点で研究の仕方、予算の使い方あるいは立法的な取り上げ方、こういう点におきましてはまだきわめて不十分な点が多いと思うのであります。で、特に私は労働衛生研究所というものがこの点について研究テーマとし、鋭意検討しておられることを先般研究所の視察を通じて確認をいたしたわけであります。そこで、職業病というものを種類的にどう見ているか、まず研究的な面で労働衛生研究所では、この職業病というものをどういうふうに分類し、また、どういうふうにつかんでおられるか、これはきわめて専門的でありますから、これはやはり局長からまず一つその方針を伺っておきたいと思います。
  9. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 職業病の、現在発生しておる職業病もございまするし、今後いろいろな産業の発展に伴いまして、現在ははっきりしておらないが、将来においてまた発生が予想されるというような事態も当然考えられるわけでございまして、労働省としましては、そういった現在に発生しておる職業病に対する対策、さらには将来発生を予想される職業病に対する対策等も含めまして労働衛生の予防なり、これに対する対策重要性考えまして、労働衛生研究所を設立してこれが研究に当たっておるわけでございますが、現に本年度予算におきましても、従来二部制でありましたのに、新しく労働生理部というものを新設いたしまして、労働生理に対する研究も今後は進めていくという体制が本年度予算において確立されたわけでございます。御指摘の通り、現在の労働衛生研究所の人員、それから予算等はまだまだ十分ではございませんので、私どもといたしましては、山口所長とも常に緊密な連絡をとっておりまして、所長からの要請にこたえまして、これらの人員なり、あるいは施設等予算の充実に今後とも大いに努力をして参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  10. 坂本昭

    坂本昭君 職業病に対する研究を集中していかれることについては、先ほど申し上げました通り、私も賛意を表しますが、そこで今労働省としては職業病白書というものも出ておりますが、職業病の分数、あるいはその数、そういったものを大体どういうふうにつかんでおられるか、御説明いただきたい。
  11. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 職業病として出ておりますものの統計といたしましては、大体業務上の疾病という形でとられております。それは年間出ておりまするのは、大体最近の傾向といたしましては一万七千件くらいのものが業務上の疾病として出ておりますが、そのうちに職業病というのと、負傷などによりますものとがございますので、そのほかの職業病というものと一緒になって今の一万七千件という数字が出ておるわけでございます。その内容労災の方で見ておるものだけでありまして、そのほかのものについては統計の上に現われておりません。ただ、最近になりましてから、いろいろの方向に向かって職業病調査をいたして参っておりますので、相当な数字が出るものと思います。そうして現在のところけい肺につきましては、大体一一%くらいのものがけい肺になって感染しておるというようなこと、あるいは特殊健康診断というものをやって、十六種の業務に対しまする健康診断をやっておりますが、それについても約一二、三%くらいの異常者が出ているということになりますので、相当数のものが出ているということになります。職業病と申しましても、一定職業につくことによりまして起こってくる疾病でありまして、その一定職業の中で主として分類といたしましては、化学的な薬品の材料、あるいはその製造工程におきまする中間物資というようなものによって起こりまするものと、さらにエネルギーによりまするもの——物理的なものでございますが、そういうものについては放射線とか、あるいは潜函病とか、そういうふうに分かれております。そのほか産業形態によって起こって参りますものと普通分けて考えております。そういう方面の分け方に従いまして今調査をいたしている次第であります。
  12. 坂本昭

    坂本昭君 私は、けい肺が今後じん肺という考えでとらえられ、そうしてことにこれは歴史的にも、また、病のなおらない点、悲惨な点においてこれを筆頭に上げるものでありますが、同時に、ほかにもこれと同じような性格の疾病が確かにある。それらについてもっと明確に、今たとえばということで放射線だとか潜函病をあげておられたが、あなたが職業病白書としてあげられたもの、それらの一つ一つについて、これは職業病として将来立法的にも考えなければならない、そういうふうな明確な見解を持っておられるかどうか、そういう点でもう少し内容にわたって、たとえば従事している労働者がどの程度ある。今のこのじん肺については三十万以上の人が感染しておる。そして今の一一%ないし一二%という数、従って、これは三万人の人が管理を要するところの職業病として取り上げられ、その中でも非常に悲惨な人は、おそらく十分の一は非常に経過の悪い運命をたどらざるを得ないだろうと思う。ほかで職業病について関係労働者がどのくらいあり、そしてどれくらいのパーセントで苦しんでいるか、それらが全般として労働行政の中でどういう地位を占めているか、私はもっと明確におつかみになっていただいて、従ってそういう点でもう少し数をあげて説明をいただきたい。
  13. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 有害業務全体についての数字は古いものではございますが、約百五十万くらい有害業務についているだろうという非常に雑な数字でありますが出ております。ただ、こまかい数字になりますると、既存のところ、はっきりしたものをつかんでおりませんので、現在のところ、四月以降に対しまして、有害業務のワクにおきまする全体の数字有害業務別調査をしていこうということでございまして、重要なものにつきまして、今のようなけい肺について三十五万とか、あるいは十六種の種目におきまする特殊健康診断対象になりますものは五万事業場で五十万の労働者というものの数字は出ております。こまかい数字は今手元にございませんので資料としてあとで……。
  14. 坂本昭

    坂本昭君 職業病として検討を加えていく場合には、けい肺はもちろん筆頭であるけれども、そのほかこまかいものについて、一々のこまかいパーセントまではこの場であげていただこうとは思わぬので、その点は後日資料として出していただきたい。しかし、先日ほど大臣から、たとえばベンゾール中毒、それから放射線潜函病けい肺、少なくともこの四つはおあげになったそれ以外にも重要な疾病があると思うのです。それらについては労働者保護の面から、少なくとも大臣局長はもちろん、担当課長さんともあろう人ならば、大体のことを知っておいていただかなければ、労働省何をしているかということになります。もちろん労働省医者の省ではないけれども労働に伴うこのような深刻な病についての認識は持っておっていただかなければならないと思う。そういう点であとで資料を出さなければ御説明がいただけないという実情なんですか。
  15. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 今まで調べておりますのは、騒音とかそのほかの十六種目につきましての調査をいたしておりますが、今その数字を持っておりませんので、こまかい数字はわかりませんが、大体出ておりますものとして、ベンゾールなどにつきましては約十六万くらいの対象労働者があるようでございます。それから騒音につきましては二十万程度でございます。それから放射線に対しましても、これも正確な病院関係のものがまだ完全につかめておりませんが、一万五千という数字をつかんでおります。そういうようなので、それらについての健康診断の結果というものが出ておりますが、今申し上げました十六種目につきましてはある程度調査を繰り返しておりますが、今手元に持っておりませんので、資料として後ほど持って参りたいと存じます。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 労災法の三条には強制適用事業場のことについて触れてあります。そしてこの内容については、施行規則の中に四十以上の強制事業場の指定があげられてあります。たとえばこの中で三十二番目のところにはラジウムその他の放射性物質から発する放射線等有害光線にさらされる作業といったものもこの強制適用事業場になっております。この強制適用事業場という考えは、職業病との連関においてどういうふうに考えたらよろしいのですか。これは一つ局長に伺いたいと思います。重大なことですから。
  17. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 労働者災害補償保険法建前としましては、常時五人以上の労働者を雇用しておる作業場は原則として強制適用事業場として指定しておるわけでございますが、その他五人未満事業場でありましても、産業災害発生が起こる可能性が強いと思われるような事業場につきましては、五人未満事業場でも強制適用をするという建前をとっておるわけでございます。従いまして、この規則の第三条で四十二の事業を指定しておるわけでございますが、これはこの表をごらんいただきますとおわかりになりまするように、いずれも産業災害発生可能性が強い、また、ただいま問題になっておりまする職業病発生との関連におきましても非常にそういった可能性が多いという事業がいずれも強制適用事業としてここに指定されておるわけでございます。
  18. 坂本昭

    坂本昭君 そこで、この産業災害可能性が多いということと、それからその職業病として認定をするということとの問題について私はお尋ねをしているわけです。で、先ほど来、労働省としては研究機関を通じて職業病の概念を明らかにし、職業病対策を熱心に考究しておられると。その中で実は立法的にはなかなかこういう法律の中に出てこない。そこで、どういう形で立法的にこの職業病というものを現実の問題として扱っておられるか、その点を私はお聞きしたいので、まず、この労災法の三条の点で適用事業場、これが職業病として考えておられるのかどうかという点を伺っているわけなんです。そうすると、今産業災害可能性が非常に多い。そうすると、産業災害可能性が多いものが職業病考えられるか。少しこれは私は距離があると思うのです、考えの中に。もう少しその点を明らかにしていただきたい。
  19. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 基準法施行規則の第三十五条には、業務上の疾病として三十八の疾病を掲げておるわけでございます。そこで、労災補償保険法建前といたしましては、偶発的な事故による災害補償も、それから職務上働いておってその業務上にいわゆる職業病にかかったというものもあわせて含めまして、これらの両者もいずれも労災補償保険法によって災害補償をしていくと、こういう建前を現行の労災補償保険法はとっておるわけでございます。従いまして、私どもの今回の改正法律案におきましても、この建前をそのまま踏襲いたしまして、およそ偶発的事故によるとあるいは職業病たるとを問わず、いずれも労働者が働いておってその業務上に基因して職業病にかかる、あるいは事故発生して災害を受けたというような場合は、いずれも今度の新しい改正法律案によって補償をしていこうという建前をとっておるわけでございます。ただ、職業病につきましては、偶発的な事故による場合とその病状その他におきまして相当異なった特殊性を持っておるのは当然でございます。私どもは、そういった原則的な建前に立った上で、職業病特殊性については、この特殊性に対応する措置を講じていったらいいのではないかという考え方に立っておるわけでございます。そこで、今回の改正法律案におきましては、じん肺関係につきましては、そのじん肺特殊性考えまして、けい肺審議会の一年半にわたる慎重な討議の結論を尊重いたしまして、これの予防及び健康管理につきましては単行法を立案いたしまして御審議を願っておるわけでございます。この補償の面におきましては、これを全部労災補償保険法一本に吸収いたしまして、その吸収した中で職業病特にこのじん肺につきましては、そういった特殊性考え法案を提出したような次第でございます。
  20. 坂本昭

    坂本昭君 まだそこまでは私は議論をしていないのです。その前に、職業病考え方をお互いにもう少し明確にしておきたいと思って、労働省職業病を取り上げておられるということはわかるんだが、その取り上げ方がどうも私にピンとこないので、その点を伺っているわけです。今局長の御説明になった労働基準法は、これは三十五条じゃなくて、七十五条でしょう。七十五条の二項のところで——施行規則の三十五条ですね。施行規則の三十五条にこれは三十八まで書いてあるわけですね。この施行規則の一から三十八までとそれから労災法施行規則の今の四十二ですね、これはあまりこまかいので書いてあるものだから、なかなか一つ一つうまく検討できなかったんですがね。この二つのものはこれはどういう関連にあるのですか。
  21. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 基準法施行規則の第三十五条は、基準法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病種類を掲げたものであります。それから、先ほどの労災補償保険法施行規則で掲げておりまする作業は、これは労災補償保険法建前に立って強制適用事業としてこういう事業強制適用事業対象となるんだということを指定しておるわけでございます。
  22. 坂本昭

    坂本昭君 そうしますと、業務災害可能性が非常に多いからこそ強制事業場としての適用を命じている。そしてそのことが同時に業務上の重要な疾病として施行規則の中にあげる、だからこれは直接関係のあるもので、一々並べてみるとわかると思いますが、私は大体直接関連のあるものだと理解し、かつ、この中に基準法施行規則三十五条にあがっておる業務上の疾病の中には、従来諸外国が国際条約の中で職業病としての、たとえばILO条約の四十二号で、職業病補償に関する条約がありますが、その中に規定せられているものも、おおむね基準法施行規則三十五条の中に含まれているように理解する。従って、今日考えられる職業病というものは、この労働基準法施行規則三十五条の中に包括せられておる、そういうふうに考えてよろしいですか。
  23. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) そうでございます。
  24. 坂本昭

    坂本昭君 そうしますと、この中で職業病というものを取り上げていく場合に、施行規則三十五条の中から将来どういうふうに職業病としての規定を行なっていくおつもりですか。
  25. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 業務上の疾病につきましては、ただいま労働基準局長からお答え申し上げました通り労働基準法施行規則第三十五条の規定によりまして、ほとんどの職業病が網羅されておるわけでございますが、ただ、今後産業の進展に伴いましてどのような職業病発生するかもしれないということを考慮いたしまして、そのような場合には、労働基準審議会の議を経て労働大臣が指定するというような処置を講じ得るように、三十五条第三十七号の規定を設けております。かつまた、個別的に業務に基因する疾病ではなかろうかというようなケースがかなり多うございます。そのような場合には、個別的に業務に基因することが明らかであるというようなものは、いわゆる職業病という観点からこれを取り上げて補償をなし得るように、同じく第三十五条の第三十八号の規定で、「その他業務に起因することの明かな疾病」という項目を、ほとんどの場合にこれらの規定によって補償できるようにいたしておる次第でございます。
  26. 坂本昭

    坂本昭君 これはどうも専門部長さん、課長さんよりも、大臣に伺う方が、賢明なる大臣によく御返事いただけるかもしれないと思うのですね。今業務に基因するとか、いろいろな定義が出てきましたが、業務に基因する疾病は全部職業病ではないのですね。労働衛生研究所、ここでは工場事業場における職業病診断基準というようなものが研究の目標になっておる。別に工場事業場における業務に基因する疾病診断基準とは書いてないのです。つまり職業病というものを一体どういうふうに規定するのか。そうしないというと、一応職業病もそれから一般業務に基因する疾病も全部ごっちゃにして、この法律では規定されているが、先ほど来のお話を聞くと、確かに大臣職業病というものをはっきり考えておられるけれども、それではこの中からどれとどれとどれがいかなる理由に基づいて職業病であるかということをお尋ねすると、何かその辺がぐらぐらしてくる、もう少しその辺、私は、明確に職業病とは何ぞやということを規定していただいて、その中で同じ業務に基因しておってもなぜこれは職業病と呼ぶか、なぜこれは職業病と呼ばないか、これは医学の問題じゃなくて、私は労働行政の大事な問題だと思いますから、大臣一つ説明をいただきたい。
  27. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) お説のように、労働省としては、病状から申しますと、おっしゃるように職業病いわゆる業務病及び業務災害とは私は別だと思うのです。ただ、労働省で取り扱っておりますのは、業務というものが職務執行上における障害及びけが病気というものは、いわゆる労災で全部吸収するという立て方をとっておるわけでございます。そこで、もう少し御趣旨のように分類すると、かぜなんていうのは職業柄じゃないのじゃないか、お説の通りでございます。ただ、その業務についたために特別にできた病気という職業病、一番いい例がベンゾールを使ったために、ベンゾールのりから中毒を受けた、これは明らかに職業病だ。そのほかに事業場において上から石が落ちてきた、これはいわゆる業務上の私は障害である、しかし職業病とは言えないのじゃないか、そういうところのおそらく御質問じゃなかろうかと思うのです。職業病とは何だ——確かに私も業務上の災害職業病には差があると思います。従って、研究所では、職業病というものを今日研究して、職業病とはということで一応研究所の方でやっているわけであります。しかし、労災とか補償立場からいうと、必ずしも職業病だけを手厚く、ほかのけがはほっておくというわけじゃないわけです。だから私は、その御趣旨のように違う——職業病業務上の災害とは違う。種類は、はっきりいえば私は違うと思います。しかし、どこまでを業務上かというと、これは今後の問題です。従って、今日私たちが言います職業病というのは、今日の産業内における職業病であって、今日の産業機構の中において現われた産業病職業病として規定する以外にない。従って、いろいろお医者さんの立場から言うならば、エキス線がどうだ、いろいろ問題があるかわかりません。しかし、それも最近原子力の問題が出てきまして、原子放射線の問題、これはもちろん職業病として扱われるものです。そういうふうにいろいろに言われますと、違うといえば違う。どこまでだと言われると、これは専門家に聞いていただかないと、私が何々病と言うのはおこがましいと思います。御趣旨は、そんなことじゃないかと思いますが、質問内容は、職業病業務災害あるいは一般産業上の病気、それは私は基本的には違うと思います。しかし、私たちはそういうものをあわせて労災病一本で扱う、やはり災害病で取り扱っていきたいというところに少し質疑答弁の違いがあると思います。
  28. 坂本昭

    坂本昭君 ただいまの大臣の御答弁は、ふだんきわめて明敏なる大臣としては、まず五十点ぐらいですね。あまりにもしろうと談義に落ちておって、少なくともこの間、三池の炭鉱あたりに行かれたテレビも拝見したのですが、もう少し職業病考えを明確に持っていただかないと、先ほど来、業務上の疾病職業病と同じように労災で見てやるのだ、結論ばっかり言われるのですけれども、結論の前に職業病はかくかくのものであるから、このように見てやる、一般業務災害は、このようなものだからこの程度に見てやる、最初の定義がはっきりしてこないというと、あとのみなやり方が私は違ってくると思う。だから、これはまず労働大臣は五十点、次に一つ局長の御答弁をいただきたいと思います。もう少し明確な意見でないと、これは労働省、落第点になります。
  29. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 職業病につきましては、いろいろ定義されている面もございますが、日本におきまして、職業病の定義はまだ確立されていない点があると思います。しかしながら、外国におけるいろいろな人たちの御意見を拝聴しておりますと、一定職業に従事することにより——一定職業と申しますのは、先ほど申しましたような条件といたしましては、化学薬品のようなものを取り扱うとか、あるいはエネルギーの分野あるいは作業の方法とかいうようなものによりまして、ある一定の度合いにおいて起こってくる特殊な疾患であり、その特殊な疾患が器質的な変化を起こし、かつ、機能的な障害が起こってくるものが職業病であるというような定義を下しております。そういうような意味におきまして、大体その範囲内におきまして、職業病と申しますと、先ほどの三十五条の中の初めの方は、業務上の疾病としての普通の疾病でありますが、第三項あたりからいろいろ並んでおりますのは、大体職業病が並んでおりますので、業務上の疾病の中に、災害によりますものと、職業病とが一緒に入っておりますので、その点は、私どもといたしましても、職業病との区別ははっきりしておるつもりでございます。
  30. 坂本昭

    坂本昭君 非常にくどいようですけれども、非常に私は大事な点だと思うのです。先般、社会保障制度審議会のときにも、いろいろな議論が出て、なかなか明確になりにくかったのです。今課長の言われたように、職業病の定義というものはある。おそらくこの定義は時期とともに変わっていくと思います。もう少し私は、明確に労働省として考えていただかないというと、これは単なる医学的な学界の論争ではない、学界の論争なら簡単なことでいいのですが、現実に有害業務に従事している百五十万人の人についての致命的な問題で、これは労働省としては一番深刻に取り上げなければいかぬ点だと思う。先ほど来ずっと伺っていると、私が五十点だと言ったことは、どういうことかというと、職業病に一番大事なことは予防措置だと思う。予防措置の点において非常に不可抗力的なものがあるという点、これが私は大へん大事なんじゃないかと思うのです。その点は大臣課長さんも触れられておらない、たとえばけい肺の場合だったら、炭鉱の坑内で働いている、もちろん湿式の掘さくによってほこりの立ち方は変わってきたでしょう、あるいはマスクをかければそれによって粉塵を吸入する分量が減ってくるでしょう。ところが、完全な防塵マスクをかけて筋肉労働をやったら、これは苦しくて苦しくてとてもできない、従って、その一つ労働の中でその仕事をやる場合に、予防の措置はある、一〇〇%ある場合もあれば、五〇%ある場合もある、しかし、一〇〇%ある場合でも、その措置をすると労働能力がきわめて著しく低下する、そうすれば実際上雇い主としても、また、労働者自体としても、その予防的措置に耐えられない、従って、不可抗力的に一つの悪い影響をこうむらざるを得ない、たとえば放射線障害の場合もそうです。これは勝俣先生など一番お詳しいと思いますが、レントゲン写真をとって、そういう場合に技師がプロテクターをつけて、そうして鉛の箱のこっちから操作をする、それもいいですよ、ところが、集団検診などをやる場合、一日に五百人も千人もやる場合に、その中にきっちり入りこんでしまったままでは仕事ができないのです。どうしてもそばへ行ってからだを直してやったり、いろいろなことをしなければならない。それからもう一つ放射線——エキス線の部屋というと、散乱線が出てくる、どんなにやったって頭のてっぺんまで鉛の板をかぶるわけにいかない、そうすると、部屋に当たった散乱線をこうむる、だから百パーセント予防措置をやってもなおかつ受けざるを得ない。そういう影響というものがある。もちろん機械の中に手をはさまれて、手をもぎ取られるようなことがありますね、そういう場合は十分に気をつけておれば、その機械で業務上の災害をこうむらないで済むことが十分できる。けれども、今のような炭鉱労働者だとか、あるいは放射線に従事している人の場合には、いかなる予防的措置を講じてもなおかつ防ぐことができない、完全に防いだ場合には、労働能力が落ちる、ここが私は労働省のつかみどころじゃないかと思うのです。純然たる医師の面からいえば、病気にならぬためにはマスクをかぶってやれば完全に病気にならない。しかし、そんなことをしておったのでは、生産を向上させることができない。つまり生産との密接な関連において、労働省はこの職業病というものを取り上げざるを得ないと思うのです。私はそういう点で、この幾つかあげられた中に、今のような見地で、職業病というものをはっきり明確にする必要が生まれてくると思う。どうでしょうか。今の私の、これは一つの意見ですが、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  31. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) まことにごもっともと存じます。
  32. 坂本昭

    坂本昭君 そうしたら、私は研究所において、また、実際に労働衛生研究所では、そういう予防的な面における不可抗力性、生産向上との面における不可抗力性、そういうような面で、予防的な措置について最も重点を置いて研究をしておる。で、その点は私も正しいと思うのですが、そういうふうな面で、職業病というものを私は今後取り上げていっていただきたい。従って、私はあとでけい肺問題につきましても、取り上げる場合には、予防的な措置ということが非常に核心的な問題になってくる。また、その技術的な内容というものが核心的なものになってくる。私はそういう点で、あとで今度出された法案についてもそういう面から、職業病としてせっかく取り上げておられる以上、それでは具体的にそういう点が充足されているかという点で、あとでまたお尋ねしていこうと思うのですが、そこで、一つその前に伺いたいのは、従来までは、職業病も、業務上の疾病も、みんな十ぱ一からげにつかまえて、三年までは、いわゆる無過失賠償論で片をつけている。そうして三年までは、雇用主が責任を持ってきている。ところが、この前、けい肺法の保護法ができたときに、三年から後は、これは当時の労働次官の斎藤次官の御意見では、名前の通りに生活保護的な保護法であるというようなことから、三年までは無過失賠償論でやってきて、三年以後は、今度は国が半分を見るというふうに変わってきました。私は、職業病として取り上げていった場合に、なぜ三年後になると、こういうふうになり、三年前の場合は、無過失賠償論で根拠づけるか。ちょっとその辺の理由について御説明を願いたい。
  33. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 御承知のように、特別保護法制定前の災害補償の立法の建前は、労働基準法労働者災害補償保険法を通じまして、三年までは、使用主の責任において世話をする。三年たった以降におきましては、千二百日分の打ち切り補償を支払いまして、それ以降の補償の責任は一切免除される、こういう建前になっておったわけでございます。ところが、けい肺患者、それから脊髄障害の患者につきましては、ほとんど治癒が困難であるというような、当時としてはそういうふうな観念が支配的であったわけでございます。そういった場合に、病気がなおらない、長期間かかる罹患者に対して、千二百日分の打ち切り補償を支払って、あとはもう使用者は責任はございませんということで放置することは、人道上の見地からいっていかがであろうかという議論が非常に強く起こりました。そこで、けい肺患者と脊髄障害者につきましては、千二百日分の打ち切り補償支給後におきましても、これをめんどう見る必要があるという考え方に立って、特別保護法が制定されたわけでございます。ところが御承知のように、その特別保護法が二年間で切れる。ところが、依然として病気はなおらない。療養を必要とする状態は依然として残っている。そこで、引き続いて、臨時措置法が制定されまして、さらに二年間その病気に対するお世話をする、こういう立法措置がとられたわけでございます。そこで、その動機は、確かにあの当時人道的見地から、これを放置することは許されないということで、人道的見地ということが非常に強調されたことを私も覚えております。しかしながら、これは人道的見地というものは、あくまでも事柄の動機でございまして、これは、およそ労働保護立法を通ずる基本的な理念でございます。これは、ひとり特別保護法なり、あるいは臨時措置法だけに通用する概念ではございませんので、およそ、労働保護立法を通ずる基本的理念は、やはり人道的な考え方であろうと思うわけでございます。そこで、法律の解釈といたしましては、動機としては、確かに人道的な考え方が強く働いているわけでございますが、法律の解釈といたしましては、あくまでも労働者が、当該の事業場で働いておって、その働いておったということから病気にかかった、いわゆる職業病にかかった、あるいは、この脊髄障害のような病気にかかったということでございまして、労働に従事しておったことに基因して疾病にかかり、あるいはけがをした。従って、その業務上受けた損害に対して、使用主がこれを補償する、セキュリテーではなくて、コンベンセイションだという考え方は、依然としてこの特別保護法なり、あるいは臨時措置法を通じても、その基本的な災害補償である、コンペンセイションであるという考え方は変わっておらないと、私ども考えているわけであります。ただ、それならば、なぜ国が国庫負担をしているかという質問が出てくるわけでございますが、これは従来の基準法なり、労働者災害補償保険法で予定しておりましたこの補償部分以上に補償の範囲を拡大したわけでございます。対象も拡大するし、補償の範囲も拡大した、そういったものに対しまして、使用者だけの責任にまかせることは妥当ではない、適当ではないじゃないか。そういったものに対しましては、国もその範囲の拡大に応じて、国もその一部を負担する方が妥当じゃないかということで、国の負担が入ってきたというふうに、私ども考えておるわけでございます。
  34. 坂本昭

    坂本昭君 この国の負担の問題が入ってきたことについては、私は妥当であるという解釈を持っているのです。ただ、それらの考えの中で、労働省の中に、どうも一貫したものがないのではないか。その一番の出発は、やはり職業病というものの概念が明確になっていないということにあるのではないかということを、私一番おそれている。先ほど、私は予防の限界、そこの生産性を高めていく上における、この当該職業病の予防に限界性があるのと、それから、その職業病の深刻な、なおらない、不治の性格を持っているということ、この二つが一番大事なことであると思うのですが、従って、三年で雇用主がその責任を終わって、打ち切り補償によって免責をされるというような考え方は、大体根本的には私は間違っていると思うのです。しかし、従来、今まで取り上げられてきたことは、そういう職業病というものの概念が取り上げられていないために、打ち切り補償の制度という特殊な格好をとらざるを得なかった。過去のことは過去のこととして、私は容認せざるを得ないと思う。ただ、今局長は、人道的な面があるということを言っておられましたが、先ほど来申し上げた労働衛生研究所、この労働衛生研究所の、これは非常にこまかいことになりますが、個々の予算を見てみましても、この予算の中で、研究——この研究費が労災の特別会計から出されている。こういうことは国の責任、今の国の費用の分担という点から言っても、こういう研究費まで労災の特別会計から出すというようなことは、きわめてその首尾一貫を欠いているのではないか。当然職業病として一番大事な点が予防の問題、それから不治の深刻さを治療していく問題、さらにまた、アフター・ケアの問題だとするならば、国がその中で受け持つべき任務というものは、当然予防研究の面において受け持つべきであって、こういう研究所の特別会計の中に、労災予算が入っているというようなことは、私は非常に妥当性を欠いているのではないか、こういうところにも皆さんのお考えが首星一貫していないのではないかということを、私は疑わざるを得ないのです。この点はいかがですか。
  35. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 御指摘のように、労働衛生研究所研究費につきましては、これは当然国費によってこれを支弁していくということが当然であり、また、これは妥当な措置であるというふうに私ども考えております。従いまして、毎年度そういう線に沿って相当多額な予算要求をいたしておるわけでございますが、予算の折衝の過程におきまして、なかなかこれを一挙に国費によって全部まかなうという私どもの主張が通らないというのが実情でございます。従って、その足りない部分を労災補償保険の特別会計から一部支払われておるということが事実でございまして、私どもは決してこの現状を正しいと、あるいはこれが正当だというふうには考えておりませんので、先生の御指摘のように、できるだけ一般の国費をもって支弁するように今後とも努力をして参りたいと考えております。
  36. 坂本昭

    坂本昭君 先ほど来の討論を通じ、また、労働衛生研究所研究の成果を通じて、私たち職業病についての明確な概念を実は即刻立てていただきたい。そうしないというと、たとえこの職業病の単独立法にするにせよ、しないにせよ、あとの扱い方が出てくると思うのです。そうしないと、先ほど来、大臣業務上の疾病並びに職業病の扱いについて、その災害補償について今度こうこうした、なおるまでやった、そういう結論はいいんです。結論はいいけれども、この結論が出る前の職業病というものの考えをぜひ労働省として意思統一をしていただきたい。これは労働衛生研究所にも権威者もおられます。従って、今の問題については、次回でよろしいですが、今までのような大臣のしろうと説明じゃなしに、もっと権威のある明確な定義というものを一つ出していただき、さらに現段階では何と何と何がこれは職業病として考えるべきである、そうしてまた、それに対してはどの程度の労働者職業病で、どの程度の何といいますか、苦労をしておるということを、今の明確な考えのもとに一つ説明いただきたいと思うのです。この点、大臣お約束できますか。
  37. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) より明確にいたすように調査いたします。
  38. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連いたしまして御質問いたしますが、職業病について坂本委員質問関連いたしますが、このけい肺からさらに今回このじん肺法が提案されるのをずっと提案理由を読んでみますと、初めはけい肺労災として考えなければならぬ問題であると思っていた。ところが、類似の職業病が出た、そういうようなことで新たな提案がなされている。これから原子力など各方面に使われると、たとえば放射線による障害、その他今考えられないようなものもあるいはまた職業病として発生するのではないか。この診断の基準などを見てみますと、類型が非常に狭く類型しておりますが、こういうものでやっておっても、この法律というものが職業病の判定が非常に困難になることを予想されますが、われわれしろうとですけれども医者の側から見てこういうもので一体職業病として正確な判定ができるとお考えであるのかどうか、お答えを願いたいと思います。
  39. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 従来はけい肺だけに限定しておったのでございまするが、その後の社会情勢の変化なり、医学の進歩した結論に従いまして、けい肺だけではなしに、新たにアルミニウム肺、石綿肺といったような鉱物性粉塵の吸入によってけい肺と同じような症状が出てくるということが最近の医学の進歩に従いまして結論が出されたわけでございます。そこで、そういったものも含めてじん肺ということで新しい一つ法案にまとめたわけでございますが、ただいま御指摘のございましたこの管理区分のきめ方、これで十分であるかどうかという御質問だと思いますが、これにつきましては、けい肺審議会医学部会におきまして、これは現在の日本の医学界におきまして最高権威と言われている諸生生のお集まりをいただきまして、ここで慎重に検討を加えまして、その結論として、こういう第一型から第四型の型の区分で、この管理区分に従って、健康管理をやっていくということが最も現在の段階としては正しいやり方であるという結論に従いまして、この法律案を作成したわけでございます。
  40. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいまの発言の中に、けい肺と同じ症候というものがございましたが、けい肺と同じ徴候なりあるいは症状というものがこのけい肺法の中心にあるいわゆる職業病の観念と考えますが、けい肺病と同じ症候とか、あるいはけい肺病と同じ症状とか、そういうものは一体医学的にどういうふうに説明されるのですか。
  41. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 粉塵によりますものといたしましては、徴候といたしまして出て参りますのは、レントゲンのフィルムに現われた変化が一番大事でありまして、それによって考えられております。従来考えておりましたのは、主として、遊離けい酸によります胸の変化でありまして、そういう点から主として起こって参りますのは、粒々に出てくる粒状影の中心でございます。それと同じような、最近になりまして、石綿肺などにおきましては、それとは感じが違った異常線状影と呼ぶような影が出て参ります。これは従来のけい肺との区別をしなければならぬ。また、表面の上に変化があるということで、それに類似のものというもの、あるいはアルミニウム肺におきましては、その両方の性質をもったような変化が出てくるというようなことで、従来の読み方とは違ったような、そういう類似したものが取り上げられて参っております。
  42. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうしますと、内科的な、そういうようなレントゲンで見るというようなものがけい肺と同じような症候という言葉で表現されますが、その法文などでは、外科的なものもずっと病状が固定いたしまして、半身不随になるとか、あるいは症状第何級症というようなことになる。そういうように、初めからそういうように発生いたしました病気のところから分かれていくのですか。職業病として判定されるときに、これがずっと固まった場合には、永久にそれが適用されるものと、あるいはこれは一年か二年の間に治癒すると、初めからそういうふうに分かれていくものでしょうか。
  43. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 病気種類によって違いまするけれども、大体初めにおきましてはなおり得るものもあるわけでございます。しかしながら、三年なら三年の治療をいたしておりまする間になおらないものも出てくるので、初めからこれはこちらにいくということは断定できない面も相当ございます。
  44. 小柳勇

    ○小柳勇君 それから、今、内科的なものを話されましたけれども、いわゆる職業病の、さっき大臣などの答弁によりますると、騒音によるものとか、あるいはたとえば蒸気機関などを扱う、かま場などの仕事をやりますものは、あすこ特有のいろいろな症状が出るものと考えられますが、じん肺とは若干異なるかとも思いますが、しろうとですが、職業病の範囲の中にはそういうものも入るのではないかという、われわれとしては考えるわけです。機関車乗務員などについては、特に恩給年限などについても考えられておりますが、将来そういうものも職業病の範疇の中に入ると考えていいのかどうかお答え願いたい。
  45. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 職業病の中に入るもの、今お話にありました、たとえば例をあげて見ますると、けい肺などの場合におきましては、けい肺そのものについての進展というものは非常に軽いものから、だんだんと機能障害が起こってくるものもある。それからそういうけい肺の場合においてその進展するものにつきましては、作業いたしている範囲内におきましてはだんだんと悪化をして参る可能性がございまして、それがいい方に向かうということはまず考えられないのじゃないかというふうに考えられます。それからけい肺に結核の合併したような場合におきましては、初期のものは、従来治療が不可能であったと考えられるようなものについても、ある程度良好な成績をあげていくものもあるというので、その変化は非常に個々によって違って参るということになって参ります。それから潜水病のような場合におきましては、単なるしびれというような感じが出て参りまして、そのしびれだけでなおっている者もありますが、脊髄の変化が起こって参りまする者については、なかなかその後の治療が困難な場合がございます。しかしながら、それも早く治療をいたしますならばそれらの脊髄におきまする症状というようなものも比較的早く治療することによってなおるものもあるというので非常にバラエティに富んでおりまするので、一がいに申しかねると思います。しかしながら、職業病の範囲として考えられます場合におきましては、高熱作業によって起こります職業病もございまするし、いろんなところから、あらゆる有害な業務のところから起こって参るということは言えるのでございます。それもやはり職業病として考えていくべきものが相当あると思います。
  46. 小柳勇

    ○小柳勇君 もう少し突っ込んで具体的に質問いたしますが、蒸気機関に従事するものなどは、あるいは火が落ちましたあとにかまに入りまして、煤煙の掃除、ボイラーの掃除をいたします。非常な煤煙の中で掃除いたしますが、それが結核にかかりやすいという今まで例がございました。それが煤煙のためにけい肺的な症状を発生したといたしましても、今はそういうものの適用は蒸気機関についてはなされておりません。従って、私はそこを中心にして質問しているわけですが、そういうものでも、蒸気機関における煤煙の中に働くようなものがたとえば結核にかかりました場合に、合併症を発生した場合に、けい肺のような症状を生ずるものであるかどうか、医学的にどのような御見解であるか聞きたいと思います。
  47. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) その汽罐などにおきまするもので鉱滓あるいはその他のかすをとるような作業を毎日やっておりますると、そこに相当たくさん、非常に多いと思いますが粉塵が出て参るものがございます。そういう場合におきまして、それが胸の、その作業者におきましてレントゲン撮影をいたしまして、そうしてそこに変化がありましたもので、そうして同時に、結核が合併しているというようなものにつきましては当然職業病として考えられるべきだと思います。その中で、ただその変化が全然ないような場合、粉塵を取り扱っておりまして変化が全然ないというような場合もあるかと思いますが、あった場合にそれは職業病として考えられるべきではないかと思います。
  48. 坂本昭

    坂本昭君 どうも今の課長のお話を聞いていると、せっかくさっき職業病考え方がある程度でき上がったと思っておったのをまたくつがえすような説明だと思うのです。つまり今の小柳委員は、機関車のたとえば機関手の場合にも職業病としての扱いができ得るのかというような形で御質問された。ところが、今あなたの御説明を聞いていると、そういうような場合にも職業病として取り上げなければならないようなこともあるだろうというふうなお答えであります。私は率直に言ったならば、そんなものは職業病ではありません。たとえば、高い熱のボイラーのそばで働いておる、そうしてそのためにいわゆる熱射病というような病気を起こすこともあるでしょう。それは熱射病であって、職業病ではないのです。従って、その点非常に皆さん方、その考え方が違っているので、繰り返して私は伺っている。たとえば結核——肺結核に職業病と名づける肺結核があるとお思いになりますか、ちょっとお答えいただきたい。
  49. 加藤光徳

    説明員加藤光徳君) 現在、あの職業病としての結核というものは考えていないと思います。ただ、業務上の疾病としてのそういうものはあると思います。  それから同時に、先ほどお話のありましたように、そういうものを病気という名前で呼ぶか、あるいはそういうところに起こっておる疾患ということで呼ぶかという問題は、まあ起こってくると思います。
  50. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 今の問題に関連をして私もお尋ねをしたいのですが、先ほど来、論争を聞いておりまして、大体御当局はわかっておられると思うけれども、はっきりしてない点が私はあると思うのです。で、この業務上から起こってくる災害疾病というものに対しては、事業主に補償の責任があり、それを今日では保険制度において、労災保険でそれを補償しておるのですね。ところが、災害の方はアクシデントだから、見ればすぐわかる。業務上で機械にはさまれたとか、物が落ちてけがをしたとかということによって、大体それでもはたして業務中であったろうか、休んでいるときであったろうかということについての見解は、これはもう労働省——前から幾多の判例があって、大体の範疇はきまってきていると思うのです。だから、これについてはあまり議論にならぬと思うのです。ところが、この疾病になりますと、それが業務上から起こった疾病であるかないかということについては、これはいろいろ問題が起こってくるのです。そこで先ほど来、議論になっているように、これは当局も私はどういうふうに取り扱っておられるか、実は聞こうと思っておったのですけれども業務上で起こってくる疾病というものが職業病であるということであれば、これは割方はっきりするのです。けい肺であれば、けい肺というものは金属鉱山にしか起こりません。まあこれは石炭にもありますけれども、大体起こってくる一定の職場というものがあり、その職業につけば、まあ大体そういう病気にかかりやすい。そこで診断した結果、これは職業病けい肺であるというようなことで補償になるわけです。そこで、職業病の範囲が、はたしてその業務上から一定職業についておると、そういう特殊な病気になるかならぬかという限界というものは、これは国際的にも相当やかましい問題で、結局国際労働会議では職業病の範囲というものを条約できめて、おそらく日本も批准していはしないかと私は思うのですけれども、日本の労災——労働基準法の中にも職業病に取り扱われるものというものはチェックされている。私は大体もう国際的なものに取り入れられているというように記憶をしておる。  そこで、先ほどお話しになっているように、その職業病というものをはっきり認識しなければならぬぞということをおっしゃっているのは、職業病というのは、ほかと違って、その職場にいけばへたをするというとそういう病気になる。ですから、予防処置というものに非常に関心を持って——それも先ほど来、絶対的な予防処置というものはないわけでもないかもしれぬけれども、それでは作業ができないという痛しかゆしの点があって、現に職業病というものは発生をしているわけですね。ですから、この問題については、先ほど来、御議論になっているように、できるだけ政府の力によってなくする研究なり処置を講ぜられるということが私は当然ではないかと思うのです。先ほど小柳さんもおっしゃっているように、このボイラーについて、まあ粉塵の問題はありますけれども、高熱の作業に、密閉されたところで働いているとそのためにからだをこわして、そうしてまあ心臓麻痺とか何とかで倒れるということがある。私の実際に取り扱っている事例にある。これはあなた方の労働省関係ではない。ほかの関係で今私関係しているけれども、だんだん事情を調べてみるというと、夏の暑いときに小さい船のエンジンの中へ立てこもって、一週間も二週間も昼夜作業を続けられて、そうしてそのために心蔵麻痺で死んだ。死んだところが、今までの考え方で言うと、職業病というものは抽象的にと言っちゃ失礼ですけれども医学的に、大体どういう職場においてどういうふうにすればそういう職業病にかかるということが国際的にも研究が進み、日本でもあなた方が研究していらっしゃるから、それは下の方の事務官あたりは、すぐこれはなるほど職業病だからということで労災保険も適用されることで、あまり議論にならぬ。ところが、そういう高熱のボイラーのそばで長く続けて作業をしていたために倒れたというものは、これは職業病じゃないのだ。ないのだから即業務上の疾病でもないんだ。こういう断定を下されて拒否される。そうすると、その家族から見るというと、主人はボイラーのそばでもう何日も何日もやってそうして作業中に倒れた。倒れたんだから当然業務上のこれは疾病だから補償してもらえるものと思って当局の方へ出してみるというと、いやそれは心臓麻痺です、心臓麻痺は職業病じゃありませんよ。それですから、それは補償の必要はありませんということになる。小柳さんのお話になったのは、私はそういうふうにおっしゃったと思うんです。そこで、先ほど来おっしゃっているように、職業病というものは、どこまでも職業病というものを研究して範疇をきめ、しかもその予防措置というものを研究されてその措置をおとりにならなければならぬが、同時に、補償という問題は職業病と必ず一致した問題じゃない。業務上のために起こった障害は今のようなけがはもちろんのことですが、疾病もあり得るんですね。職業病でない疾病で倒れるということも私はあると思うんです。そこで、先ほど議論になっているように、あなた方は混同されて、それは業務上の疾病というものはとにかく補償しております、補償しておりますという結論だけをおっしゃるけれども、その結論があいまいにお考えになるというと、あなた方はあるとおっしゃっても末端へいけばそれはそんなもの考えませんよ。業務上の疾病は即職業病と、こういうふうに考える。だから、職業病以外のものは、これは業務上の疾病でないから補償しないというふうになりがちです。これはあなた方について私は言うのじゃないけれども、今厚生省の方の問題なり、そういう問題になって訴訟になっている問題があるのです。ですから、私あとで聞こうと思っているが、業務上から起こってくる疾病というものは、今言った職業病でなくても、いわゆる相関関係でそうして見て、これは業務から来たものであるという私は補償の範囲に入れてやられるべきである。しかし、職業病というものは、今言ったような別のそういう職業に従事すれば起こってくる問題ですから、これは予防措置を講じ、また、それについてはけい肺については今の特別立法を作られて保護しようとしている。これは小柳さんお話のように、このじん肺ばかりじゃない、ほかの職業についてもあり得るのじゃないか、あり得るということだったら、それについてはどういうふうなお考えを持っておられるかということを御質問になっていると私は思う。ですから、よほどこの問題は真剣にお考えにならなければならない。数は私はよけいはないと思いますけれども、受ける個人から見れば同じことです。同じことですから、よく一つ職業病職業病一つ一つをお洗いになって、そうして数は少なくても、これは非常に気の毒な病気、大体なおらないことが多いんですから、ですからこれはどういうふうな措置を講じたら予防ができるというようなことを、一つこれはまあ国費で私はやられるべきだと思うんです。おやりになって、同時に、その今の職業病がすぐ業務上の疾病と誤認されないように、職業を離れたつまり業務上からくる疾病によって倒れる場合もあるのですから、そのものについての補償はこれは同じことです。同じことですが、補償の道をお考えにならないと、混同されているように私は感じがする、ですから一言申し上げておきます。
  51. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  52. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして。  ただいまの吉武委員質問に対しまして政府の考え方があればお述べ願います。
  53. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいま吉武先生の御意見まことにごもっともだと存じます。私ども業務に基因する疾病がすべて職業病だというふうには考えておりませんので、職業病以外に業務に基因してただいま先生が御指摘になりましたような疾病が起きるということは、当然これは考えられるわけでございまして、それが業務に基因してそういった疾病発生したということがはっきりいたしますれば、当然これは労災保険で補償するのが当然でございまして、私どももそういう線で今後指導して参りたいと考えております。
  54. 小柳勇

    ○小柳勇君 私の考え一つ非常にりっぱにまとめてもらいまして感謝しますが、もう一つあったわけです。それはちゃんと判定の基準が四つの型にはまっておりますが、原子力を使う場面もありましょうし、放射能もありましょうし、判定が非常に困難な場面が出てくるのではないかということを私はもう一つ言いたかったわけです。さっき言いましたように、煤煙と結核との関係とか、あるいは放射能と結核の関係、いろいろありましょう。そういうものが、今のところではこういう判定の基準がけい肺だけなら問題なかったのです。ところが、じん肺になりまして非常にワクが広がりましたわけですから、私が今言いましたような判定の基準だけ先にきめておりますけれども、このワクに出るものがあるのじゃないか、そういうのが非常に困難ではないか、医学的には困難ではないか、そういう点が一体どうでございましょうかということを次にお聞きしたがったわけです。
  55. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 今回この新しい法律案によりまして、けい肺のみならず、じん肺全体に対象が拡大された。従って、この第二条第二号で粉じん作業の定義をしております。「当該作業に従事する労働者じん肺にかかるおそれがあると認められる作業」がこの法律でいう粉じん作業だ。しからばこの粉じん作業の範囲は一体どれであるか、これがただいま小柳先生の御質問の肝心な点だと思いますが、それはこの第二条の第二項におきまして「前項第二号の粉じん作業の範囲は、労働省令で定める。」ということで、労働省令でこれは定めることになっております。従って、これは従来の特別保護法あるいは臨時措置法でやっておりました第一表、第二表という表があるわけでございますが、当然この従来の表だけでは、範囲が拡大されましたので従来の表をそのまま使用することはできないわけでございますので、私どもはただいま先生が御質問なさいましたような点も十分その中に加味いたしまして、粉じん作業じん肺にかかるおそれがあると認められる作業は全部網羅して漏れることのないように、作業の範囲を労働省令できめて参りたい、こういうふうに考えております。
  56. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  57. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。  暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  58. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではただいまから再開いたします。  午前に引き続いて両法案を議題といたしますが、同時に、労働情勢に関する調査の一環として、一般労働行政に関する件、この二法案と、ただいま申しました労働行政全般、この両案を議題といたします。御質疑のおありの方は御発言願います。
  59. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 基準局長にちょっとお伺いしたいのですが、家内労働者の取り扱いについてどういう見解を持っていられますかということをお聞きしたいのです。
  60. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 家内労働者の問題につきましては、労働大臣からもたびたび申し上げておりますように、家内労働問題調査会を設置いたしまして、毎月一回定例的に調査会を開催いたしまして、これの実態の究明に目下当たっておるような状況でございます。先月におきましても都内の業者の典型的なものを四業種選びまして、各調査会の委員が三人ないし四人一組になりまして、現地について家内労働者作業の現状、それからその仲介人また実際その家内労働で働いておる労働者の方々ともいろいろ懇談をしたような状況でございまして、前回の調査会におきましては、その実際に視察した報告を行なっております。それから御承知のように、わが国の家内労働の実態というものは、その数においてもきわめて広範でございまするし、その作業種類におきましても千差万別といってもいいくらい非常に複雑多岐にわたっておるわけでございます。従って、これの実態を正確につかむということが、まず第一に必要なわけでございますので、調査会におきましては、今般私ども事務当局とも連絡をしまして、相当大がかりな基本的な調査を実施することにいたしまして、今月実はその調査に着手しているわけでございます。大体この調査統計の集計ができ上がりますのは五月中旬ごろと予定いたしているような状況でございまして、その全国的な調査の実態ができ上がりました上で、それに対してどのような対策が必要であるかということを漸次研究していく、こういう大体の予定になっております。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 家内労働者の実態は今調査中だとおっしゃるのであるから、それはそれで、うんと早く作業していただきたいと思うのですけれども、家内労働者が今までもそうですが、今日も非常に困っているのは、問屋との間にあてがい扶持で、内職という一つのそういう方々もございますけれども、家内労働者というのは、たとえば京都の西陣あたりのところから一つ下がって、くつ、鼻緒、袋物という二段目の段階、そこらにおられる方々は、ある一定限度から上がり切れない、そして補助者を一人置くか置かないかというような格好で、そういう人が問屋に品物を委託提供するのにしぼられて困っている方がたくさんあるわけです。そういう方々が組合を作って、この自己防衛的なものをやっておられるわけですけれども、そういう方々を今の労調法の精神で救済するということは、過去にも例があるわけですが、そういう場合にお尋ねしたいことは、一つは労調法のあの概念に、自主的にされた組織ができますれば、労働組合並みにそういうものを扱うという考え方があるかどうか。労働省としてどういう工合に、自主的に労働組合としてそれを組織した場合、どういう取扱いをするか、これは基準局とは違いますか。
  62. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 違います。
  63. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労政局ですか。
  64. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 労政局です。
  65. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  66. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして。
  67. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、今の問題は日をあらためてやりますけれども、家内労働者調査が五月中旬にできて、それからまあ議論をして、家内労働法をお作りになるというのか、大体どの辺のところを目標にして……期日ですね、作業の予定ですか。
  68. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 家内労働調査を委嘱しましてから、ほとんど毎週、それから実地調査を相当たびたびやっていただいております。ただ私どもの気持としては、なるべくこの国会中にはこの答申をいただきたい。同時に、できれば提案ができるような準備もいたしたいということまでお話をして、調査員の方に委嘱をいたしました。従って、いつまでという期限はございませんが、私どもなるべく督促をしながら、これは非常に多年懸案で、どちらかと言えば、私の気持は着手がおくれておりますので、この国会中にも一つ提案をいたしたいという気持で、実は委嘱をしたわけです。実はまだ案文とか要綱というところまでは行っておりません。
  69. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣、基準局長と打ち合わせて答弁をしてもらいたいと思うのです。基準局長はあなたがおいでになる前の答弁では、五月中旬ぐらいに今調査しているのがようやく調査資料が出るかどうかという、それから家内労働法の骨組みその他について討論をすると、こういう答弁だったのです。今の大臣の話では、この国会中というと、五月の大体中旬過ぎには終わるわけです。その国会に家内労働法を提案をする、これはどうなんですか。そこのところをもう少しはっきりして下さい。
  70. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私の申しましたのは、その通りでありまして、そういう意味で委嘱いたしましたが、進行状況は私も聞いておりませんから、あるいは今日の進行状況は基準局長が言った通りかもしれません。私の気持は最初から委嘱した通りで、そういうお話をしたわけであります。従って、日々の進行状況は基準局長が言うのが、今日の進行状況かもしれませんが、私の気持は変わっておるわけではございません。現実の進行状況と私の委嘱した当時の気持というものは、その通りであります。
  71. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、気持はわかりましたから、それではそういう作業の状態だ……私たちが行って作業するわけではないのだから、残念ながらおくれているわけですが、そうすると、大体家内労働の実態調査が出て、あの審議会で成案を作るのにどのくらいかかるのか。
  72. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 調査会の進捗状況につきましては先ほど申し上げました通りでございますが、会長にも先般お会いいたしまして、大臣が、できれば今度の国会中に提案したいという気持でおられるので、何分一つ審議を急いでもらいたいということを私から会長にもお願いしてございますが、何分先ほども申し上げましたように、家内労働対象、それからその実態というものが非常に広範であり、かつ、複雑きわまる構造を持っておるというような点から言いまして、今度の全国の調査ができ上がりました上で、それに対する家内労働法という一つの体系的な立法になるかと思われますが、そういったような点を考えますと、これはやはり一つのまとまった法律案ができ上がるまでには相当の日にちがかかるのではないか。何分調査会の方へその問題の調査審議を今お願いしておる最中でございますので、私どもの方から何月ごろまでにという答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  73. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはどうも聞こえぬ話だと思う。大臣も今国会に出すということで努力をしておられる。おのずからいつそういう注文をされたか知らぬけれども調査ができてそれからどのくらいの日数をかければ大体結論が出るという目標で出された……、目標を立てて今国会に出したいということを答弁されたと思うのです。五月の中旬にその調査の結論が出るというのに、まだあといつかわからぬということなら、半年でも一年でも二年でもわからぬということですか。だから私は、大まかにいつ幾日きちっと尺度をはかって云々ということを言っているのです。いつ中に、大体どれくらいの日数を経たら結論が出る、こういうことを聞いているのです。
  74. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 極力督促しまして、私の当初からの気持は少なくともこの国会に提案をいたしたい。もちろん審議いただく期限がないかもしれません。しかし、私もやりかけた仕事はなるべく早く提案をして、もちろん休会中の継続審議もお願いいたしましょうし、相当これは広範囲でありますから、議会にもずいぶん御調査いただくこともございましょうから、少なくともこの国会中に提案をして、休会中に御審議いただいて、そうして次に引き続いてやるというくらいな大きな仕事だと私は思っておる。それにしても法案だけは何とかまとめてこの国会に提案いたしたいというのは、今でも変わっておりません。ただいま局長の申しましたのは今日の作業状況で、委員の方と私の意見と、あるいは直接今日お会いしておりませんから、違っておるかもしれませんが、その気持で今後も重ねて督促をして、何とかこの国会のある間に提案だけは私はいたしたいと思うのです。そのあとで十分休会中でも御審議いただいてというふうにしないと、なかなか次々と延びると、これはだれでも、ごく歴代の大臣考えておったのだが、なかなか着手はできなかった。あるいはある程度不備かもしれませんけれども、とにかく一応の方向をまとめたものを提案をいたしたい、この気持に変わっておりません。また、局長の方も、事務的にはいろいろありましょうが、極力督促して、この国会中に何とか最終的にまとめたものを出したい、この気持は今でも変わらず、努力いたします。
  75. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だんだん僕はわからぬようになってきた。五月の中旬に統計——要するに実態調査がまとまるというのです。大臣は提案したいというのは、家内労働法として提案しようというお気持だろうと思うのです。そうすると、五月の中旬にその調査が終わるのですね、調査だけでは法案にならないと思うのです。それをどういうことにしたら一番家内労働者によいかという、それから法案の骨子から始めて、議論してまとめていかなければならぬのに、ただもう具体的に五月の中旬しか調査ができないということをおっしゃりながら、この国会に提案をしたいのだという、そのことが僕はよくわからぬ、そういうお話を何回聞いたって。だから、こういう工合に一つ言ってもらいたいと思うのです。調査が終わったら大体何ヵ月くらいしたら成案ができる、そういうこと。大臣のお気持はもう調査が終われば二、三日でももうまとめて提案ができるということになるのか、そこらあたりを、気持はわかりましたから、だから具体的にどういうことになってくるのか、そこを聞かせてほしいということを言っているのです。この国会にどういう工合になるのか、また、次にどういうことになるのか、そこのところあたりをもう少し具体的に……。
  76. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) なるべく急いで、この調査を急いでいただくと同時に、なるべく急いで法案をまとめる、そうしてこの国会にぎりぎりにでも間に合うようにいたしたい、こういう方向で努力いたします。  なお、法案の問題もいろいろございましょうが、やはり調査方向を見ながら私の方も十分準備をするものは、できるものはいたしますが、従って、まず一番大きな問題は、組織と範囲だと私は思う。内容についてはもちろん議論はございますが、一番議論の多いのは組織と範囲だと思います。その次には、具体的にそれではどうするか、そこで衛生、保護、賃金、加工賃という問題が出て参ります。しかし、一番議論の多いのは組織と範囲です。今日までほとんど未組織であります、概念的にはありましても。さてワクをきめるとなかなかむずかしい。そういうところは組織と範囲が第一。それからもう一つは、内容に盛ります衛生、保護面における賃金、加工賃をどう取り扱うか、もちろん衛生は当然であります。それから健康とか、いわゆる保障の問題をどう取り上げるか、相当広範囲なものたることは間違いありません。しかし、まあ今回の調査がどういう結果で出るか予想はいたしませんが、そういうところを焦点に実情を調査されておるのです。かねてから労働省もいろいろな観点から研究はしておりますので、これを合わせてなるべく早期にこの問題を解決したい。とにかく督促する。ただいま局長の言ったのは現状でございましょう。全般的に極力調査もし、督促して、何とかこの国会に提案したいという気持は変わっておりません。
  77. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、重ねて、私は気持の上では全般的な家内労働法を早くこの国会に出していただきたい。出してもらってわれわれも議論してよいものを作りたい考え方です。しかし、どうもお話を聞いていると、どういう扱いにされるのか知らぬけれども局長は五月中旬と言うのだけれども、今督促して、四月の中旬にでも結論が出るのか、四月の初めにでもそういう統計調査が完成するのか、そういうことも含んで国会に提案をする、できたらすると、こういう工合に理解してよろしいのですか。五月中旬にしかできぬというものを前提にして大臣が何回言われても、それはなかなかわれわれ納得できぬから、それで重ねて聞いているのです。
  78. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいま局長が答えましたのは、全国からいろいろな調査を取り寄せまして相当膨大なものが出てきた、これを事務的にずっとやると五月中旬ころになる、こういう報告のようです。同時に、私の方も極力督促して、私の当初からの気持は、この国会に何とかまとめたいという気持に変わりはございませんが、非常に時間的に、あるいは調査の範囲が私の当初の予想よりも大幅であるためにおくれておることは事実であります。何とか一つ今後督促をして参りたいと存じます。もし万一非常に問題が多くて提案ができない場合には、それはもちろん現状の中間を御報告して、そうして政府の方針を明らかにすることも一つの案かもしれません。私はそこまで悲観的に考えずに、極力やってみるということで、現実は、私の当初予想よりも調査が非常に膨大であった、予想以上に時間がかかったという現状だそうであります。
  79. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、この問題はこれ以上議論をいたしません。大臣のお気持の通り、この国会に、最大の努力をして、提案をされるということを期待して、この問題はこれくらいにしておきます。  しかし、もう一つこれに関連してお聞きしたいのは、昨年できた最低賃金法の中で家内労働者は最低賃金ができた。関連産業にのみ家内労働者の工賃をきめるという規制があるわけですから、やっぱりうんと急いでもらわなければならないわけです。それはそうですが、最低賃金自身が、あの法律ができてからどのくらいそれじゃ適用されたかということをお聞きしたい。
  80. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 二月末日におきまして、法律による最低賃金として公示されました件数が六十二件でございます。そこでこれが適用を受けました労働者が大体十二万でございます。そのほか業者間協定が百八十件ほど成立しておりまして、これによる適用を受けた労働者が二十万をこしております。大体そういった状況でございます。  それからなお、この業者間協定による最低賃金締結の機運が全国的に非常に盛り上がって参っておりまして、相次いでこの最低賃金の申請が出てくる。従いまして、本年中には相当程度の最低賃金が実現されるのじゃないかというふうに私ども考えております。
  81. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではこの議論はやめますが、今の最低賃金の、二月末までに十二万適用された、その調査されたのがあると思いますから、それと、これに関連して家内労働者がどれだけ工賃がきまったかということと、それから今の業者間協定が百八十件という調査——これはだいぶ多いですけれども調査がありましたら一つ資料を私いただきたいと思うのです。
  82. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまの資料は、調査したのができ上がっておりますので、すぐにこれは提出いたします。
  83. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 関連して。ただいまの藤田委員質問に対して、最低賃金の今日の審議会の状況のお話があったのですが、私これに関連してお伺いしたいのは、中央、地方を通じての最低賃金問題について、たとえば審議会の運営等についてその衝に当たられているのは、たしか中央、地方を通じて労働基準局だと思います。今日基準局予算においても、基準局行政というものは非常にわが国にとっては重要な段階にある、しかもその予算不足が今日非常に訴えられているときに、最低賃金の衝に当たって、基準局予算で中央、地方で行なわれていると思うのですが、今日これで満足に運営されていると思っているかどうか、ちょっとお伺いをいたします。
  84. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 最低賃金法の施行に要する予算の問題でございますが、昨年は約一千万円の予算が計上されたわけでございます。本年度におきましては、最低賃金法が本格的な実施段階に入りますので、前年程度の予算ではとうてい十分な活動ができないということで、私どもとしましては、大蔵省に対しまして予算の増額を折衝したわけでございます。その結果、本年度におきましては、約五割増しの一千五百万円程度の予算が計上されて現在国会で審議されているわけでございます。もちろん今後の最低賃金の申請状況その他によりまして、はたしてこれで完全に十分であるかどうかという点については、これは実施してみた上でないと、はっきりした答弁はできないわけでございますが、一応昨年の実績から見まして、本年は五割増しの予算がございますから、大体これでまかなえるのじゃないかというふうに考えております。
  85. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 そこで、その審議会の運営で少し突っ込んでお話を伺いたいと思うのですが、審議会の委員の手当ですね、これがたしか一口五百円だと聞いておりますが、それがほんとうかうそか。それと一日五百円の審議会の委員の手当では、そこに来るまでの車賃程度にすぎない、しかも最低賃金審議会の委員が分担する仕事というのは、諮問機関には違いありませんが、それ以上に、現在調査という非常に私は重要な職務を帯びておられるとこう思うけれども、そういう点いろいろ考慮いたしますと、どうも今の一日五百円——そうじやなければけっこうですが、五百円では交通費程度ですよ、それでは委員のほんとうの職能というものは果たされないのじゃないかと思う。とかく非常に重要な問題になっている最低賃金の今後の、諮問機関としての委員の任務だけでなくて、これが調査機能をうんと発揮してもらわなければならない今日において、この程度の費用で十分の仕事が遂行されるものかどうか、これまたお考えになっているかどうかを一点お伺いしたいのです。
  86. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 現在の最低賃金審議会の委員の手当は、中央と地方で若干の額の相違はございますが、大体ただいまお話しになりました程度の手当でございます。確かに、ただいま御指摘になりました通り、私どもも、最低賃金審議会が現在御審議願っておる実態から申しまして、この程度の手当では不十分であるということを痛感いたしております。本年度予算折衝におきましても、こういう程度では十分な活動をお願いできないというので、相当増額の要求を折衝いたしたのでございますが、労働省だけを見ましても審議会が十幾つございます。それから各省関係——ほとんど各省大体十前後の審議会は持っておるわけでございますが、これに対する委員の手当につきましては、中労委、あるいは地労委のような、調停とかあっせんというような、いわゆる行政執行に準ずるような仕事をやる委員会は別といたしまして、純然たる諮問機関たる審議委員の手当につきましては、大蔵省が各省を統一した一つの基準をもちまして、そこで査定をしているわけでございます。そういったようなことから、本年度におきましては私どもの主張は通らなかったわけでございますが、私どもはこの点ははなはだ遺憾に存じております。従いまして、今後、来年度予算折衝におきましては最低賃金審議会の——同じ諮問機関ではありましても、その活動の実態において非常な特殊性があるということを十分一つ説明いたしまして、手当の増額に努力いたしたいと考えております。
  87. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 もう申し上げるまでもなく、今最賃の額の決定というやつはわが国の経済、政治、特に労働面においても非常に重要な問題だと思うのです。そこで、中央、地方を通じての審議委員が、諮問機関以外の調査権というものはかなりこれは重要な私は役割を持たなければならないと思うので、今後一そうその職務が遂行されるようになお御配慮——まあ要望ですが、申し上げて、この問題はまた一つ後日いろいろとお伺いしたいと思います。
  88. 小柳勇

    ○小柳勇君 第一に労働大臣質問いたしますのは、芦屋基地が、立川並びに沖縄にアメリカ軍が移駐するために労務者が二千名ばかり首を切られることになります。大臣はかねがねその離職対策については努力していただいておりますが、細部の問題について現地からの報告がありますので、これに伴いまして大きな行政的な問題について大臣質問いたしておきたいと存じます。  第一は、三月からもう解雇が始まって参りますが、この行政協定による契約によりますと、あらかじめ首切る場合においては話し合うことができるとなっておる。もちろん労働組合と調達庁、調達庁と軍との関係でありますが、そういうものがなされないで労働者——かつて私が当委員会質問しましたように、労働者を犬やネコを捨てるような格好で、あとのことは何とか日本の政府がやるだろうというような格好で駐留軍労働者を扱っておるという印象が非常に強いわけです。こういう問題に対して、今行政協定が改定されようとしておりますが、将来のこれは問題になりますけれども、駐留軍関係の労務者に対して、解雇するような場合にはもっと親切にその職種なりあるいは員数なりをはっきり示して交渉することが妥当と思うが、そういうことが閣議で具体的に論議されたことがあるのかどうか、お聞きしておきたいと存じます。
  89. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) かつて駐留軍の対策を立てましたときにはもちろんそういう議論がございまして、駐留軍の特別な行政措置でなされたわけであります。従って、閣議としては、各省にまたがるものというわけで総理府内に離職者対策の総合的な機関を設けておるわけであります。従って、そういう機関を通じて国内の総合政策というものを立てておりますが、今回の芦屋の問題は御承知のごとく、いまだに——今回改正になれば別でありますが、直用と間接雇用と両建になっております。間接雇用は御承知のごとく、特別調達庁がいわゆる雇用者の立場になって、そうしてそのめんどうを見るわけであります。芦屋の問題の場合は両方が混同されている。そのために直用と間接雇用に対する問題が、一つところへ議論が出ております。一昨日でありましたか、調達庁長官からお話を聞きますと、この問題について米軍と交渉をしておるという話であります。それは三月、四月と、五十人、三十人と、ある程度の人数の予定者が出て参りましたので、その問題について実は調達庁長官から、米軍との交渉をしているという報告を昨日受けまして、まだその結果は聞いておりません。
  90. 小柳勇

    ○小柳勇君 赤城長官並びにバーンズ司令官にも昨日会いましたが、これは直接は、防衛庁の問題であると存じます。ただ労働大臣として、これから二千名ばかり失業者が出てくるわけでありますが、調達庁だけで、いわゆる調達庁の職業訓練だけではまかない切れない面も多々あると思うのです。そういうことで労働省に対して調達庁あるいは防衛庁から、今後の総合職業訓練などについて何らかの計画の御相談が出ておるのかどうか、そういう点について答弁願います。
  91. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 今回の芦最基地における解雇は、三月以降数回の段階にわたって実施される予定になっております。そこでただいまお話のように、大体間接だけで千五百名、その他を入れますると二千人ばかりの解雇が生ずるわけでありますので、労働省といたしましては、調達庁その他関係の機関からの申し入れもありましたので、その方面と連絡を密接にいたしまして、これに対する具体的対策を確立すべく努めております。そこで、その大体の予定を申し上げますると、詳細は芦屋における関係離職者の対策協議会におきましてさらに具体化して参りたいと思いまするが、考えておりますることは、第一に就職あっせん態勢の整備強化をはかる、それから第二に、安定所を中心にいたしまして就職あっせんの強化をはかる、それから第三番目に、ただいまお話しになりました職業訓練の拡充強化をはかる、このような基本的な考え方のもとに離職者の配置転換に摩擦の生じないように努めたい考えでございます。職業訓練につきましては、現在芦屋に直方公共職業訓練所の分室がございますが、これを拡充することを考えております。それから女子離職者、離職者家庭の主婦等に対しましては、福岡の内職補導所から内職の巡回指導等を実施すると、このような考えでおります。それからこれと同時に、現在基地内におけるこの予想される解雇後の配置転換を目ざしてトレーラー等の訓練を行なっておりますが、この四月から普通自動車、その他四課目程度の訓練を実施する、このようなことを考えております。大体以上のようなことを中心にいたしまして、これと同時に、北九州地区を特別の重点的の失業者多発地域に指定いたしまして離職者の就労の確保をはかる、以上のような基本的考え方のもとに今後逐次発生して参りまする芦屋地区の離職者の配置転換その他に遺憾なきを期したい考えでございます。
  92. 小柳勇

    ○小柳勇君 軍の計画によりますと、三月に四十五名、四月に四十五名、五月、二百七十名、六月、三百三十名、七月、三百三十五名、八月、百十名、計千百三十五名、残った三百二十八名は十二月で全部解雇だ、こういうことでありますので、私ども並びに政府も一体となって、今せめて六月まで解雇を延期せよという運動を展開いたしておりますが、アメリカ軍の意向としてはなかなか悲観的なようであります。従って、目の前に失業者が出てくる、その就職あっせん態勢の強化ということで局長御発言になりましたが、もう少し具体的に御説明を願いたいと存じます。
  93. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 第一に、職安と調達庁関係機関との連絡を密接にいたしまして、求人情報等についてすみやかに労務者に周知できるような態勢を整えるということが第一でございまして、それから第二番目に、ただいまお話しのように、逐次解雇される予定になっておりまするが、この解雇予告期間中の労務者に対しまして出張職業相談を実施する、これを実施したいと考えております。これは現在すでに実施しております。それから第三番目に、求人の開拓という意味におきまして、職安を中心として特別求人開拓班を設置いたしまして、強力な求人開拓を行ない得る態勢を整備したいと考えております。以上のようなことを中心にいたしまして、まず近い区域間におけるところの配置転換をはかっていく、それでも足りません場合には、全国的に広範囲な地域にわたる広域職業紹介を実施していきたい、こういう考えでございます。
  94. 小柳勇

    ○小柳勇君 職業訓練についてもう少し突っ込んでお聞きしておきますが、今二千名ぐらい労務者がおりますが、三分の二くらいは通勤であります。それが職場をなくしまして職業訓練を、たとえば基地内でやるにいたしましても、汽車賃を出して来なければならない。そうすると御存じのように、職業訓練の手当は二百三十円を基準にしてきめられるでしょう。そういたしますと、ほとんど汽車賃もないために、職業訓練をされるにいたしましても、半年通えばりっぱなものになるのに、一ヵ月でもうあとできないという場合もあるかもしれません。従って、炭鉱離職者対策の緊急措置法の基準が一応ありますから、これを基準として労働省としても考えられると思いますが、それでは十分な職業訓練ができないと思います。従って、今後その手当のほかに、たとえば旅費を見るとか、汽車賃を見るとか、あるいはバスを出してやるとか、そういうような特別の配慮をお考えになっておらぬと困ると思いますが、その点についていかがでしょう。
  95. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、大体離職者の大部分の方は失業保険に加入しておられると思います。そこで、この職業訓練中に失業保険が支給されまして、その失業保険受給期間中に大体技能を習得するということになるということが非常に望ましいことであります。実はこれにつきましては、失業保険法の改正に関する法律案が、目下衆議院で審議されておりまするが、これによりますると、一年間の基礎訓練の間は失業保険の受給措置を延長する、このようなことになっておりまするので、これが成立いたしますれば、ただいまお話のような事態の大部分は解決できるのではないかと思っております。なお、これとあわせまして、失業保険の受給者が移転する場合における移転料の確保をはかるというような措置を考えて参りたい。なお、事実上の措置といたしましては、ただいまお話のようないろいろの問題がございまするので、これは現地におきまして関係機関とよく連絡いたしまして、関係者の方にできるだけサービスできるような態勢を検討して参りたいと考えております。
  96. 小柳勇

    ○小柳勇君 大臣に決意を聞いておきたいと思いますが、就職にいたしましても、職業訓練にいたしましても、ちょうど失業多発地帯である炭鉱地帯で炭鉱離職者等も競合いたしておる。今芦屋の町だけでも三百名くらい失業者があると思います。そういうところの失業者でありますから、職業訓練についても施設その他非常に制約があります。職業訓練なり就職について労働省としても、相当の力を尽くしておられるようですが、大臣、この問題についてもうすぐ目の前に出る問題でありますが、大臣一つ御決意を聞いておきたいと思います。
  97. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいま衆議院で失業保険の修正案が出ておりまして、これが改正されますと、失業保険の期間中に切れたものは継続して失業訓練手当を支給するという制度になりますと、ほとんどの者がかりに失業保険が六ヵ月でも、一年間は訓練所に入所中の者には手当が出るわけでございます。これは非常に改善になります。なお、芦屋の問題は、大体芦屋地区の周辺から通勤の方が何人あるいは県外の方が何人というような調査をただいまいたしておりますから、大体八百人ぐらいは芦屋周辺の出身者のように承っております。その他県内の方、県外の方ももちろんおられるようであります。一番近い例としては、基地内における配置転換が可能かというので、調達庁を通じまして各基地が日本にありますから、立川とかいろいろの基地がありますから、そういうところに配置転換の可能な人数をまず先に調べろというので、まず、いわゆる地方の基地に対する配置転換なり、これならすぐにそのまま労働力が移動できるわけであります、そういう希望者があるのか聞いて参りましたら、二千人の中にはだいぶ希望者がある、よそでもいいから同じ代車につきたいという方もあります。そういう方は職業訓練なしに継続して住居の移動だけで可能な方もおられるわけであります。そういうふうなこともまず第一に考え調査をし、第二番目には、県内で他の職業につきたい方を調査する、次には他県に移住する力を調査する、こういうふうな段階で先般も福岡知事にも要請しましたが、知事の方もまだ明確に個人々々の希望を取っておられなかったものですから、これは早急にそういう問題が出てくるだろう。そのほかにやはり暫定的でございまするが、将来この基地を自衛隊が使うということも可能でありますから、自衛隊が使う場合、そういう方は次の自衛隊に引き継げるような、もちろん二千人という方は、かりに自衛隊がそこに入りましても、米軍と自衛隊はおのずから内容が違いますので、そういうたくさんの方は吸収できないかもしれませんが、しかし、少なくとも百四、五十人や二百人の方は大体自衛隊の移動によっておのずから職業を得られるという見通しもあるのであります。それでもなかなか工合が悪いというので、最後には暫定的にでもいいから土木工事を起こしてくれという希望もございます。ことに芦屋地区は遠賀川の下流で相当浚渫というか、土砂がたまっているというので、一つぜひあの河川の改修の工事を起こしてくれ、これは地方から要望が出ております。そういうふうないろいろなことを考えながら、職業訓練と移動を円満にやって参りたいというので、いろいろ実は調達庁ともただいま相談をいたしております。とにかく、どういう住居で、どういう職種で、どういう希望かを、まず御本人の調査をすることが大事だというふうなことでいろいろ実はやっておりまするので、まだ結論は出ておりません。とにかく二千人、人数から言えば芦屋地区では相当大きな雇用であります。人口が芦屋町が一万八千から二万そこそこのところに二千人の雇用というものは非常に大きなもので、とても解決されるものではないことはわかっております、既存のままでは。従って、何らかの新しい工夫を総合的にしたい。それにはまず三月、四月というものに対する解雇を何らか米軍と交渉するというのが昨日の実は段階であります。
  98. 小柳勇

    ○小柳勇君 御決意のほどを承りまして、一つ万全の態勢を立ててもらいたいと思いますが、これは最後に大臣にお願いしておきますが、小倉労監が非常に苦労しておるようであります。米軍との関係ですから大臣にお聞き願いたいと思いますが、基地閉鎖発表前、軍側は本年六月まで予算が確保されておるということを小倉労監に回答しておった。部隊の移動に伴い六月まで確保された労務費が移住費にしわ寄せされたこと、現地労組から軍側に対し当初予算があると言っていたのではないかと言って追及さしたのに対し、軍は現在の予算の中で移住に要する経費を出していると答えておる。こういうことでは六月まで労務費は、アメリカの年度は六月でありますから、それまで労務費はあると前は労監に言っておった。現地の組合の代表も、その労務費でとにかく六月まで雇っておくべきであるという交渉をしておった。ところが、その費用で米軍が移動を始めた。だから三月、四月とやって切られたのだ、こういうことで現地の労監と組合との交渉で非常に感情的な対立まで発生いたしておりますので、この点は昨日もただしましたが、十分な回答を得られませんでしたので、適当な機会に、大臣はこの点十分に確かめられて、今後も米軍に対する日本の調達庁あるいは労働者の不信がこういうことによって発生いたしますと満足な仕事はできませんので、確かめられて、小倉労監が一人苦境に立ちませんように直ちに何らかの指示を与えていただくことがこの際必要ではないかと思いますので、念のために申し添えておきたいと思います。  それから第二の問題は、この緊急失業対策法の十一条に関連する問題でありますが、この中で、「失業対策事業における雇入の拒否」という条項がございます。これで「失業対策事業事業主体は、公共職業安定所の紹介する失業者が、その者の能力からみて不適当と認める場合には、当該失業者の雇入を拒むことができる。」と書いてあります。この不適当だと認めるという基準を、どういうものによって職業安定所は判定されるか、お聞きしておきたいと思います。
  99. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) お話のように、緊急失対法十一条には、失対事業事業主体は、安定所の紹介する失業者がその者の能力から見て不適当だと認める場合には、当該失業者の雇い入れを拒むことができる、このようになっております。これについて別段の基準は設けておりません。要するに、その事業主体におきまして、その事業の運用にあたりまして職安が紹介した失業者が、この事業には使えない、不適当であるという判断は事業主体にまかせておる、このような状態でございます。
  100. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういたしますと、この緊急失業対策法という法律の精神に違反すると思いませんか。仕事がないので失業者というものは、最後のより場としてこの緊急失業対策法という法律でもって生活を守られております。それに事業主体の方が認定して、勝手にこの者は不適当だといって拒んだ場合には、これをこの失対法によって仕事をさせないということはこれは許せないことですが、どうですか。
  101. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 失対法の同じく第十条に、失対事業事業主体が使用する労働者は、一部のこの困難な技術者、技能者、監督者を除いては職安の紹介する失業者でなければならない、このようになっております。従いまして、事業主体はこの一部の技術者、技能者、監督者等を除きましては職安の紹介する失業者を雇わなければならない、これはもう失対法十条の規定によりまして、はっきり義務づけられておるところでございます。ただ、その場合にあたりまして、この人を使うことが客観的に見まして不適当であるという場合におきましては、その雇い入れを拒むことができるということになっておりまするが、これはもとより勝手にその主観的な判断によってどんな場合でも不適当だというような理屈をつけることはもとより許されません。これはもとより緊急失対法の精神に照らして解釈されなければならない。従いまして客観的に見てその者の能力がその事業に使用するのに不適当だと認められる場合に限られることは当然でございます。で、その場合におきましても、とにかく事業主体というものは十条の規定によりまして、職安の紹介する失業者を雇わなければならないことはこれはもう義務づけられておるわけでございまするから、ただいま申し上げました失対法の精神に照らして、この十条、十一条の規定というものは運用せられるべきであると考えます。
  102. 小柳勇

    ○小柳勇君 抽象的にはそうでしょうけれども、具体的に、職安が紹介いたしますその中で、一人これはいやだと言って事業主体から報告が来たら、その場合に、職安の方ではこの人はいいと思って紹介してやった、それを事業主体がいやだと言って返してきた、それを就労させるかさせないかという判定は何でいたしますか。
  103. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 拒否いたしまする場合には、拒否するということが職安に通知されるわけでございます。もとよりこの十一条のような規定は特例でございまして、これが一般的に動いているとは思いません。特別な場合に限られると思うのでございますが、このような場合におきましては、事業主体から職安の方にその旨の、こういう理由でこういう人は使えないというような通知があることは当然でございまするから、その場合におきましては、職安の方におきましては、失対法のあるいは二十一条、その他の措置によりまして必要な監督指導措置を講ずることができる、このように考えております。
  104. 小柳勇

    ○小柳勇君 その失対法の二十一条について具体的に説明して下さい。
  105. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 二十一条は「行政庁は、必要があると認める場合には、事業主体又は施行主体から、労働者の雇入又は離職の状況等に関し、必要な報告をさせることができる。」このようになっております。従いまして、この十一条によって拒否したような場合には、その原因等につきまして報告を求める。それが客観的に見て事業主体が不適当という判断が正しくないというような場合には、職安の方から事業主体に対してその旨を連絡する。このような措置になるわけでございます。
  106. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういたしますと、それはまだ具体的でないけれども、書類も返ってきましたと、その職安所長はその後の措置はどうするのですか。
  107. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 十七条、十八条等の規定もございます。安定所長事業主体あるいは施行主体がこの法律等に違反すると認められる場合には通知をする。それから通知を受けた日から一定日以内にそれを是正しない場合にはこの失対事業について進達を行ないまして、その事業主体に対して事業の停止または補助金の返還を命ずることができる。このように最後の措置がついているわけであります。
  108. 小柳勇

    ○小柳勇君 その方は、それは事業主体の方に対するあれでしょう。その返ってきました労務者、労働者に対しては、職安所長はどういう措置をいたしますかということをお聞きしているわけです。
  109. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 要するに、事業主体がこれが不適当であるというふうな理由をつけて拒否するという場合に、これを客観的に見まして、はたして適当であるか、不適当であるか。この点は職安所長が緊急失対法の精神に昭らして判断するわけでございます。客観的に見て事業主体が不適当であると言っておっても、これは客観的に見て理由がないというような場合には、事業主体にこの者は使っていいじゃないかという勧告をすることは当然でございます。ただし、客観的に見ましてこの人間をこの事業に使うことがどうしても無理だという場合には、これはやむを得ないことであろうと思います。
  110. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういたしますと、その返ってきました、もちろん書類もついて参りましょうが、返ってきた労務者というものは、職安所長の主観によって、その客観的な観察によってもうそれが事業主体から返ってきたから、もう君やむを得ぬと言ってしまえば、それでそれからの仕事は一切ストップですか。
  111. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これはいろいろな場合が予想されると思います。私は従って、抽象的に議論すればいろいろな場合が予想されると思います。ある失対事業の、ある事業主体のやっておりまする事業にとっては能力がなくても、その他の簡易の事業についてはあり得るという場合がございましょう。その場合には、そのような能力があると認められるような失対事業にお世話をする。このようなことになると思うのです。
  112. 小柳勇

    ○小柳勇君 今、局長は、技術的なものだけ、その仕事に適するか適しないかだけを今頭の中に描いて答弁しておられますが、たとえば事業主体の方で、こいつは少し人相が悪いから、気にくわぬというようなことで返ったといたします。その場合に、それを職安所長が一人の判決をもって、そうか、それじゃもうこれはだめだ、そういうことができるかできないかということを言っているわけです。
  113. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまお話の、人相が悪いから、もう雇わないというようなことは、もとよりこれは理由にはならぬと思います。そのような場合は問題にならないと思いまするが、具体的な場合におきまして適格であるか、適格でないかということを判断をいたしまする場合には、安定所長の一人だけの考えでは適当でありませんので、安定所におきまして適格審査委員会というものを設けまして関係者が集まっております。この審査委員会等にかけまして、具体的に適格であるか、適格でないかという意見を求めた上で安定所長が最後に判断する、このようなことになるわけでございます。
  114. 小柳勇

    ○小柳勇君 その適格審査委員会というのは、これは達しですか、何ですか、通牒ですか。
  115. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 通達でございます。通達に基づいて設置しております。
  116. 小柳勇

    ○小柳勇君 その適格審査委員会内容をもう少し詳しく説明して下さい。
  117. 住栄作

    説明員(住栄作君) 適格審査委員会は、現在県で作りまして、県下の各安定所から失業対策事業に就労せしめる場合に、適当であるかどうかという書類が出て参るのでございますが、その書類に基づいて県において設置され、県でいろいろのそういった書類を見た上で、これを適格者にするかどうか、判定する制度になっております。
  118. 小柳勇

    ○小柳勇君 そういたしますと、それで、適格審査委員会で、もうこれは不適当だと言われたら、その県では一切失業者として生活を保護されておらないのですか。
  119. 住栄作

    説明員(住栄作君) 主として適格審査委員会の機能は、新しく失業対策事業に就労せしめるかいなかということについて審査しております。ただ、今お話のように、事業主体に紹介された失業者が、事業主体側の都合によって適当であるかどうかということについては、これは安定所長が、それがはたして客観的に当を得たものであるかどうかということを判定するようにいたしております。
  120. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうすると、適格審査委員会というものはありますけれども、それからこれは不適当だといって返ってくる。そうしますと、今度は職安所長が、いやこれは一つまた使いなさいと言ってやった場合は、どうなりますか。
  121. 住栄作

    説明員(住栄作君) その場合は、結局、具体的には事業主体側と安定所との話し合いによってきまることになっております。
  122. 小柳勇

    ○小柳勇君 適格審査委員会の構成、それはどういうふうなことで、どうい、う権限があるのか、もう少し詳しく説明して下さい。
  123. 住栄作

    説明員(住栄作君) 構成は、県の労働部の職業安定課長が中心になって、県の安定課の職員及び安定所の所長というもので構成されております。
  124. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうしますと、安定所長どもそれに入っておるなら、そこで不適格ときまった者は、ほかに救済の方法がないんじゃないですか。それはどうですか。あと、これはいや間違っておったと言って、所長は無理に事業主体の方に送り返すことができますか。
  125. 住栄作

    説明員(住栄作君) いろいろのケースがあると思いますが、たとえば事業主体側の方で、道路の補修、こういうものには使えないから断わる。あるいはその者が非常に職場秩序その他の問題で不適だとか、いろいろの理由がついてくると思います。その理由について、安定所長が実情を調査した上でいろいろ判定することになると思います。そこで、それじゃその事業主体側が拒否した場合、市の事業であれば別に県の事業の方へ行って、よく働くということになる場合もあるでしょうし、その逆の場合もあり得るかと思います。また、さらには失対事業のほかに、一般の民間事業なり、公共事業等に紹介をするというようなことになろうかと思います。一がいに全然道がなくなってしまうということには、必ずしもならないのではなかろうかと思います。
  126. 小柳勇

    ○小柳勇君 あなた、非常に抽象的だから、問題がばく然としておりますが、ここに新潟県で、新潟の公共職業安定所長が処分書を出しました十二名の者がおります。御存じのように、失業者というのは、仕事を追われて、最終的に生活を守ってやるのがいわゆる失業者ですが、その失業者が、職業安定所長によって、十二名仕事を奪われて、とほうにくれておりますが、そういう労働者並びに家族を死刑の宣告にひとしいような判定を、そういうことで、職業安定所長の処分書ということでやられて、それで一体救済の道がないとするならば、どういうことでしょうか。私どもとしては、そういう法の不備があるとするならば、徹底的にもっと解明をしなければなりませんが、大臣どうお考えになりますか。具体的な問題はいいですから、一般論として大臣考えを聞いておきたいと思います。
  127. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 緊急失対法は、御承知のごとく失対事業でありますから、仕事をするという基本的な考えから失対事業法というものはできております。ただし、その階層が一番恵まれざる方に対するものであるということにワクがはまっているわけで、拒否するということは、常識的にいえば、働こうとしても能力がない、あるいは不適当だということ以外に、大体常識的な拒否の理由はないわけであります。従って、事業主体が拒否する場合は、他の事業主体に紹介する、他の仕事に持っていくということは、この法の趣旨から必然のことであります。首切ったというならば、適格者じゃなかったという意味かどうか知りませんけれども、この趣旨からいうならば、当然適格者である以上は、またこの趣旨に合う者は、あらゆる方法をもって雇用の道に私は導くべきものだ、特別なケースは別でありますが、そういう趣旨で、この法律の運営をいたすべきものと私は考えております。
  128. 小柳勇

    ○小柳勇君 具体的な問題については、きょう私は発言いたしましたから、追及はいたしませんが、新潟に起こっておりますから、御調査願いたいという点と、今の企画課長から報告のありました適格審査委員会というものについて、次に資料を出していただきたいと存じます。各県少し違う、まちまちであろうと思いますから、大体モデルになるところを二、三、各県の、たとえば排除委員会というものを持っているところもあるでしょう、あるいは適格審査委員会というものを持っているところもあるでしょう。そういうモデルになるものを二、三、われわれに資料として見せていただきたい。そうして、そのように、いわゆる失業者にしてなお仕事を奪われた者を救済する方法は、どういう方法を考えられておられるか。そういう点についても、委員会などあったら、資料として出していただきたい。これは要請でございますが、この問題については、この次にまた詳しく質問いたしていきたいと思います。  それから第三の問題は、三井三池の闘争について、基本的な考え方だけ、労働大臣から意見を聞いておきたいと思いますが、御存じのように、ロック・アウトに始まりまして、三池闘争というのは非常に困難な、日本の産業自体として不幸な事態に立ち至っておりますが、きょうのニュースなどでは、暴力団が相当立ち入って、大牟田の町がまことに悲惨な情勢にあるように思います。われわれとしては、一日も早く労使の紛糾が円満に解決することを望んでおりますが、日本の産業の再建と、労働条件の維持に対して責任のある労働大臣は、この問題に対してどのようなお考えを持っておられるか、お聞きしておきたいと存じます。
  129. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 三井三池につきましては、昨年、中労委のあっせん委からあっせん案が示されました。しかし、使用者側も、労働者側もこれを拒否されておる。また、あっせん調停に申請もございません。従って、今日の基本的労使関係というものは対等で自主解決するのが一番の基本でございます。しかし、それだけで解決できないときには、あっせん、調停という制度が設けられておるわけであります。そのあっせん案を労使ともに拒否されて、自主解決をするのだという方向に踏み切られたのが今日の立場であります。従って、私がこの立場におって、あっせんも、調停も両方ともに拒否した、また、不用だという考えの御両者に対して、私がこれ以上深入りすることは私の権限としてできませんし、また、私の今日の職権としてもこれはできないことであります。従って、その後は労使ともに自主解決という方向でもっていかれるというために、今日紛争がいまだ自主解決の道がまだ開かれていないというのが基本的な立場じゃなかろうか。私はこういう意味で、今日違法状況がないように、労働運動のあくまで正常な姿でこの自主解決というものを求めるべきだというのが私の基本的な考えであります。
  130. 小柳勇

    ○小柳勇君 もう一つ質問いたしておきたいと存じますが、今聞くところによりますと、不当労働行為並びに不当労働行為的な行為が盛んに行なわれておるように思いますが、労働省として出先機関でそのような調査をなされ、あるいは報告などが大臣のもとに入っておるかどうか、あるいは将来ともそういう問題について、労働省としてどういうような処置をされようとするか、お聞きしておきたいと存じます。
  131. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 最近までの報告では、多少のいざこざはあった。いざこざと申しますと、違法に近い行為はあったけれども、そう大きないわゆる計画的、組織的な違法というものは、今日まで私は報告を受けてはおりません。しかし、まあある作業所ある地域においては、ある程度いわゆる過激な団交が行なわれた。もちろんこれも違法だといえば違法に近い行為があったという報告は受けておりますけれども、そう大きな違法、ほんとうにこれは違法だ、世論から見てあまりに行き過ぎだという行為は、今日まで特別に私の方に報告は来ておりません。ある程度お互いに自制をしながら今日まで違法行為に踏み切らないようにやっておるというふうに私は拝聴しております。
  132. 小柳勇

    ○小柳勇君 労働者側の違法行為じゃなくて、会社側の方で、たとえば金をばらまいたり、あるいはいろいろな暴力団を使ったりなど、労使慣行として許せないような不当労働行為というようなものもわれわれは耳にしておりますが、労働大臣の方にはそういう話はありませんか。
  133. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 一部の、宣伝カーを持っていって大いに宣伝するというふうなことはこれは聞いております。しかし、それはいわゆるどういう行為かというと、それは必ずしも違法だというほど断定することはございません。主として街頭においていろいろ主義主張を発表されるという宣伝カーがある。同時に、組合は組合で、組合側からも同じように宣伝がされておるということは聞いておりますけれども、これが直ちに違法だというふうにはまだそれほど私は大きな問題は聞いておりません。
  134. 小柳勇

    ○小柳勇君 質問よりも要請でありますが、暴力団その他の介入によって、労使の紛糾しているその問題以上に要らない枝葉がつきませんように、内閣としても十分なる態勢をとってもらいまして、われわれはもちろん国会議員としても責任ございまするが、政府としては、日本の産業再建のためには早急にこういう問題が解決することが望ましいと思いますので、万全の態勢をとってもらうように要請しまして、質問を終わりたいと思います。
  135. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はさっき小柳委員から緊急失対法の問題を少し論議がありましたから、私もその問題について少しだけお聞きしておきたいと思うんです。  私は大臣にお伺いしたいんですが、今度失業対策の日雇労働者に二十八円値上げをされた。でこの労働基準法建前、それからまた賃金の問題、それから生活の問題についての緊急失対法の建前も生活を守るという原則に立って事業を起こす、こういう工合にすべり出しはいいんだが、だんだん内容に入ってくると、十条において何か値引きするようなことが書いてある、施行令に入ってくると、またもう一つ具体的に書いてある、こういうのが実態で、結局PWの何%ということによって賃金をきめられているようですが、私は今のようなこういう概念でいつまでも日雇労働者の賃金をきめていっていいのかどうか、こういう見解を大臣から承りたいと思うんです。
  136. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 今日の二十八円は、この緊急失対法に基づいてPWの改訂に応じて二十八円というものを値上げすることにきめたわけでございます。基本的にそれでは失対というものがこれでいいかと、内容にもいろいろ議論がありますが、また、基本的にこれでいいかというと、私は非常に疑問を今日持っております。ということは、緊急失対の勤続者がだんだんふえて参ります、永年勤続者がふえて参ります。元来緊急失対法の趣旨から申しましても、これはいわゆる臨時的なものでなきゃならないにかかわらず、六年以上の長期勤続者という方がもう三割以上になんなんとしている、非常にふえております。最初は一割以下でしたが、三年の間に三割にふえたということは、永年勤続はあまりありがたい立場ではありませんが、こういうものがふえてきたということは、非常に私は考えなければいけないんじゃないか。従って、この失対もそれでもなおかついろいろ問題がございます。これほど政府ではいろいろ手を変え、品を変え保護をしておりますけれども、まだまだ実はいろいろ非難が多いんです。考えてみればこの法そのもの自身がやはり基本的に考えるべき時期じゃないか。私は根本から緊急失対そのもの全部をある程度疑問に思ってきたというのが今日の問題なんです。その中にいろいろ内容を見れば切りがありません、幾らでもある、作業能力、地域、作業状況あるいは賃金差の問題、しかも軽労働、重労働、男女、地域別、考えて参りますと矛盾だらけだと私は言ってもいいくらい議論の多いところであります。しかし、緊急失対法という法律のもとにおいては今日万全を期しておりますけれども、なかなかそう良心的に万全と言えません。それにはやはり緊急失対法そのものにやはり問題があるんじゃないかというふうに非常に反省をさせられているときであります。
  137. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私もこの緊急失対法ができてから相当これに、ここへ来るまでに関係をして参りました。当時は何といっても第一条に掲げられている生活のさしあたっての保障というところから始まって、むしろその事業効果とか貢献というような問題が出発に際してはあまり強く取り上げられなかったような状態で進んできたのでありますけれども、今日ではだんだんやはり社会の中で必要な存在としていろいろ救済事業としてこれがだんだん発展をしてきて、その中には事業効果、生産に対するやはり貢献度合いというような、必要に応じて事業予算をよけいとって、事業がより効果のあるような仕事についてゆく、こういう格好で相当程度私は進んでいると思うんです。そうなってくると、単に法律一般より低くなければならぬとか、八〇%、九〇%というような間で貸金をきめるというようなことでは、私はもう理屈に合わぬのじゃないか、一部生活保障的な要素の方もおいでになると思いますけれども、自然やはり賃金というものは、労働力の提供において、基準法からいえば、対等の立場で賃金、労働条件をきめるという原則ですけれども、これは少し意味が違いますけれども、この失対事業の中で、私はそこで踏み切るような要素の仕事が、内容が相当大きいウェートを占めているのじゃないか、それにもかかわらず、こういう格好で頭から何の労働者の意見も聞かずにこういう賃金をきめているというところに、今の失対事業、要するに、日雇労働者の中に非常に不満がある、また、事実賃金も安いのですから、むろんそれとあわせて不満があるわけですけれども、これはぜひ今労働大臣のおっしゃったように、そのお気持を早い機会に実現をしてもらいたいと私は思うのです。最近、聞きますと、各地方において、やはり失対事業の非常に事業効果を、生産効果を上げて日雇労働者が働いておられる。働いておられるのに、今のきめられた賃金ではどうにもならぬということで、地方自治体で援助をして、そのカバーをしているというところがだいぶできているようであります。これもどうか一つあわせてよく見ていただいてこの処置をやってもらいたい。ところが、今の大臣の気持とは違って、そういう地方々々で援助してやっているものに、聞くところによると、これは職安局ですか、何かそういうものを非常に邪魔をしている、そういうことは絶対やったらいかぬというような格好で、せっかくその地域において事業効果を上げるように、または気持が相通じてよく働いて生活の幾らか足しにするというような地域的な要素によって行なわれているものを、それを邪魔をしているといいますか、そういうことをしたらいかぬというような、何か今大臣の言われた気持とは反対な格好で、それをやらせないようにしているということを聞くのです。これは私は非常に残念なことでありまして、そういう点どういう状態にあるのか、一つお聞かせを願いたい。
  138. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 事業主体の市町村側から常々実はいろいろ決議とかお申し出がございます。それはやはり不均衡が困ると、隣の市で幾ら、おれの市で幾らということは困る、こういうのが事業主体からの偽らざる今日の立場、そのたびに自分の方は不利な立場に立つという、町村よりも市でありますが、市側からの陳情が非常に多いのであります。従って、今回地域差是正を二十八円の中でやろうとしましたのはそういう意味でありまして、二十八円の中になるべく地域差をなくしていきたい、また、町村合併あるいは市の合併等によって不均衡を生じたものを直していきたいというのが今日の作業です。ただ、やはりこの緊急失対法という法律趣旨から申しますと、全国大体この法律に従ってもらわなければならぬ、この法律よりもよければいいじゃないか、それは人情としては一応ありますけれども、全部のものにおいて、全国見て参りますと、やはりこの法律による一つの均衡は保ってもらわないとかえって紛争が起こるという趣旨で、なるべくこの法律趣旨に合わせるように、いたずらな何はせぬでくれという意向を職安局から出したという話でありますが、それは人情から言うならば勝手にきめたらいいじゃないか、しかし、予算の立て方、法律の立て方からいうと、この趣旨に沿って、緊急失対ですから、あくまで一般雇用に進むものを邪魔するような高賃金というわけにはこの趣旨は参りません。従って、やはり一般雇用の方が高くて、失対は臨時だと、そうしてなるべく一般安定雇用に進めるこれは踏み台と申しますか、足だまりでありますから、それが非常に固定化するような高賃金を払うということはこの趣旨から言うと少しおかしい。同時に、事業内容もそんなに大きな建設、土木工事をやるような予算でもありませんし、大体軽作業あるいは重作業といいましても、そう高度なものは作業内容に選んでおりません。そういう趣旨からなるべく他の職業につくことを奨励する、あるいはつかせるようにするという趣旨をはき違えてはいけないという意味で、労使がそろえばいいじゃないかというよりは、緊急失対の法律の立て方だけは守ってもらいたいというのがおそらく通達の趣旨だと考えております。
  139. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは非常に問題のあるところで、一般の賃金というのは、組合のあるところ、ないところ、いずれにいたしましても需要供給の関係で賃金は決定されているわけです。そうしてやはり生産貢献度合いによって賃金がきめられていると私は思う。今のように緊急失対であるからというのも一つ法律的な出発に際しての要素でありましょうけれども、現実において非常に高度のものはないにしても、建設事業として一般と同じような効果を上げている事業を私はたくさん見て知っております。しかし、そういうことであっても、これは低くなければならぬという理屈は成り立たぬと思うのです。これでとにかく生活が安定をするというなら、私は失業者に対していろいろ問題はありますけれども、今五十万、五十五万というなら、なぜ五十五万人全部にそういうことをおやりにならないかという議論も一つの面から出てくると思います。だけれども一般の常用労働者に転換させるための一つの訓練期といいましょうか、そういう段階だというなら、そこでやはり労働力を提供しているのだから、その提供の労働価値といいますか、そこまで言えば言い過ぎかもわかりませんが、一般的に払われている債金と同じような効果が現われた場合にはそれを見てあげる、そういう能力をもって一般の常用に転換させてあげるという指導が必要じゃないのですか。そうでなければ、今のように賃金が安い、あれは日雇労働者は、あんな者はうちに来てもらっては困る、そういう観念を社会に植えつけてはいかぬ、だから緊急失対法関係はとにかくよそより安くてもいい、一時しのぎだからというなら、もっと国は幅を広げなければならない、しかし、それにしてもやはり労働力を提供しているのでありますから、どこの産業でもそれを手を広げて待つような、引き受けるような条件を、私はそういう足だまりといいますか、段階的に、一般に行く前の養成というか、そういう状態であるというなら、そういう工合に価値づけて、りっぱな仕事ができる労働者なんだというように価値づけてあげて、そうして一般の就労の方に、やはり就職をあっせんするというようにしてあげなければならないと思います。今の印象では、ただもう日雇失業者だということをほとんど固定させているような状態じゃないですか。だからそこらはこれはもう少し整理してもらいたいと思いますが、考え方一つ伺います。
  140. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 非常に整理しているつもりなんです。しかし、高賃金の方は民間就労、そういう雇用の方に……、もし事業主体がその人に高賃金を払いたいというなら、いわゆる常用雇用として私は他の雇用の道に前進させてもらいたい。いわゆる緊急失対の中でいつまでも閉ざすより、そのワクをこえたなら、そのこえたワクに入れてもらいたいという趣旨で高賃金を禁止しているわけじゃございません。どんどんやっていただいてけっこうですけれども、緊急失対法による失対作業については全国的にこの標準というものを守ってくれ。もしもその事業主体が非常に技術有能だという失対の方がおられるなら、失対に置くことそのものが非常に失礼であると思う。高い賃金の常用雇用ほど能力がある。しかもその仕事があるならば、そちらに吸収してくれという趣旨で、緊急失対法による失対事業事業内容と規格にはこれは当てはまりませんという趣旨でありまして、その方が高賃金を取ることを禁止する意味じゃございません。緊急失対法による失対事業というものはこういうものだという趣旨をつい先般申し上げたわけであります。非常に能力がいい、技術がいいという方は、それは失対事業による失対にならないで、常用雇用的なより以上の雇用に引き上げることが私は労働政策としては前進である。にもかかわらず、緊急失対法の中でこの法律以上な仕事、法律以上な賃金を払うということは、この失対法の趣旨からいって少し行き過ぎじゃないか、こういうところが私の考えとしてははっきりしているわけであります。従いまして、緊急失対法の中における作業ということは、御承知のごとく、これこれであると、大体作業内容がきまっております。そう高層建築を建てるようなものは、失業対策事業対象にはなっておりません。従って、軽度な建設と言えば、水だめ、プールを作るという建設とか、あるいは簡単な側溝を作るとかいう程度の作業しか実はその指定になってないわけでありますが、従って、それにはやはりPWというものに関連してやっていただきたい、こういうことが、この失対法の精神であります。それをこえる部分は別なものでやっていただきたい。また、そういう方は別な雇用に引き上げることが妥当じゃないか、こういう意味で緊急失対にすべてを当てはめるというわけには参らぬじゃないか。また、そういう趣旨じゃこの緊急失対は私はないと思う。その辺は非常に明確に私は割り切っておるわけであります。
  141. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今水だめを作るとか、側溝を作るとか、それぐらいの程度だとおっしゃいましたけれども、そうじゃないと思う。私は道路の舗装であるとか、区画整理、開拓であるとか、いろいろの事業を失対事業はやっていると思う。片一方で請負業がやるような仕事を自治体が事業主体になってやっている場合もある。そういう仕事をやって、そこへ、緊急失対事業法の中でいつまでもとどめておけというわけじゃない。常用の中に一般就職という道が開かれれば、私はそういうところにとどまっている人はないと思うのですよ。なるべくよりよい生活の中にいきたいということで。ところが、そういうところがないから、今なおとどまっているけれども、とどまっているその日雇労働者にやはり事業効果を要求する。これは、私は自然の人情だと思う。従って、効果を要求して事業の効果を上げさせるような仕事と、一方ではだんだんと能力に応じてそういう仕事をさせながら一定のワクをはめておる。こういうことでいいかという問題が疑問になって出てくる。だから一番最初に大臣はいろいろの矛盾があるから、何としてもこれは再検討してよりよいものに変えなくちゃならぬというお気持だったから、けっこうだから早くやってもらいたいと言っているのに、だんだんと聞いてくると、何か今の話を聞いていると、緊急失対事業というのはこういうものなのだから、そんな高い賃金でよりよい生活をする人はよそへ行ってもらいたい。よそへ行ってもらいたいといって行くところがあるならばまことにけっこうなんだ。大臣あなたの管轄ですから、職安を総動員して、能力のある人はどんどんと就職をあっせんして固定さすように努力してもらいたい。そうなれば問題は私は起きないと思う。よそに行くところがないのに事業効果を要求される、これは当然なことですから、そういうところで仕事をする、それにワクをはめるということではいけないから緊急失対法をやっぱりいろいろの面からも変えなきゃいかぬが、この中の十条の問題の考え方なんかも、その全部が全部と言いませんけれども、その事業内容、その他の失業者の内容に応じてやはり変えていかなきゃならぬときがきてやせぬかということを私は深く感じておるから、こういう意見を出しているわけです。そういう工合に一つ理解してやってもらわないと、結局概念的には、抽象的には非常にりっぱなことを言われるけれども、だんだん中へ入っていくと何かやっぱりワクを守るのだということじゃ私は少し困るのじゃないかと思う。
  142. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 今私が申し上げましたような趣旨で、最近は失対の方に職業訓練を実施いたしまして、そうして、優秀な方は昨年も、本年もそうでありますが、やはり職業訓練を半日、まあ半分は作業をされる、あとの半日というものを訓練所に集まっていただいて訓練をする。大体六ヵ月の訓練をいたします。そうすると、この方は大体他の産業への就職がほとんど非常に好成績であります。そういう道を私たちは聞きながらこの失対をやっていきたい。従って、失対全部を高賃金にするということは、なかなかこれはもちろん能力とか、本人の希望とか、あるいは住居とかいろいろございますが、そういう意味でいわゆる高賃金に進まれる道を開きながら私たちは実はやっているわけであります。それの中においてある程度やはり失対事業というものの地位をやはり守っていかなきゃいかぬ。これが非常に高賃金で失対が就職の立場になってしまうということは、これは私は失対法の趣旨に反する、失対に就職したのだというふうな趣旨じゃ、私は、ないわけであります。それで、新しくほんとうの雇用のためにそういう制度を開きましたり、あるいは先ほどの御指摘の舗装——舗装は現場で訓練をいたしたりしております。舗装工事というものもだいぶ進んで参りましたから、失対の方もだいぶ入っておられて、そのときは失対の現場で、舗装訓練をしながら、将来への雇用の道を開くということで、なるべく失対より以上の安定なところに御紹介する、あるいは進まれる道も開いているわけであります。それが私が先ほど申した趣旨であります。にもかかわらず、失対の中におって高賃金を得て、それが安定職業になってしまうということは、これは非常に固定化する、あるいは非常に硬直化してしまうと、失対では、これは法律の運営に支障が出てくるという意味を私は含めているわけであります。
  143. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、そこまで言っているわけじゃないのです。これはまあ生活の保障をするのが建前なんですけれども、しかし、今最後の方に申し上げたのは、地域においてやはり高能率を上げ、事業効果を上げているところに、市町村、要するに地方自治体がやはり他の一般との見合いの中で、あまり気の毒だから少しやはりカバーせにゃいかぬと言うてカバーするやつまで労働省がいかぬというようなことは、今の大臣の言った気持とだいぶはずれているのじゃないですか、全部が全部じゃないと思うのです、これは。
  144. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 非常に高賃金を払いたいと市町村から私のところへ言ってきたというのは非常に少ないのです。どちらかといえば、賃金をなるべく労働大臣が全部きめてくれという陳情の方が私のところには多く入っております。全然皆無かどうか記憶しませんが、大体一つ均衡を保ってくれ、労働大臣のところで均衡を維持してくれというのが今日の市側からのほとんどの趣旨であります。その意味でなるべく維持するように、政府の方向に沿うような賃金決定をしてくれという通達を出したわけでありまして、しかも、その方が高賃金を払いたい、どうしてもおれのところの失対はよそよりもよりいいのだというふうな話を現実にお聞きはまだしておりませんが、お聞きしましたときにはまたいろいろ御相談にも応じましょうけれども、今日の場合、やはり法律建前としては予算の制約、市町村財政というものもやはり政府予算関連のあることであります。予算建前からいうと非常に能率のあるものをこの予算以上に払うということは、これは今日の建前としてはむずかしい、従って、そういう方は別な方向でやってもらいたいということを繰り返す以外に、この緊急失対の中で断層を設けることも容易なことじゃありません。そりゃ容易なことじゃありません。なるべく緊急失対というのはそういう趣旨にあらずして、能率ももちろん作業でありますから適合しなきゃならないけれども、その中にいたずらに最高水準と最低水準を上下が多いことは、これはいいことじゃ私はないと思う。従って、それは次の段階でやっていただくというふうに、一つの水準をもってやってもらうことが緊急失対として当然じゃなかろうかと、こう考えます。
  145. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではこの議論はだいぶあるのですけれども、きょうはこれでやめますが、今の緊急失対事業法ですね、こういう法律を私はやはりもう変えなければならぬ時期にきていると思うのです。というのは、政府は三十四万、事業で救済すると言うけれども、何といっても、一つは緊急失対法というこの特別な法律を作って、一時失業されている方の、少しでも働いて生活を見ようじゃないかというのが出発点であった。ところが、今日では、そうじゃなしに、これだけの予算を組んで仕事を与えるから、できるだけ最大の事業効果を上げようという質的変化を今日来たしておる。全部とは言いませんけれども、多くのことはそういうことになってきているのです。だから、それには私はこの六条ですか、緊急失対法の六条で、事業計画をしなければならぬというのでありますから、それくらいに法律に書いているくらいですから、仕事をつけるということであるから、こういうやはり国が計画して失業救済の事業を起こすという、やはり事業の効果をねらって起こすような事業には、緊急失対の中で、賃金、そういうものにワクをはめるような格好でない要素のものを私はやはり作っていかなければいかぬのじゃないか、そういうところに今きているのじゃないかと思うのです。一般の、たとえば労働能力があまりない人で、掃除をしたりまたはそこらの使い走りをしたり、そういう格好で賃金をもらっている人もありましょうが、しかし、何といっても、順次一般職業に転換をさせていく、そういうのがやはりモットーであるなら、それが一つ。もう一つは、やはり国が失業者の救済の場がないならば、分け隔てのないような事業を、緊急失業対策事業という概念とは、これは今までの内容のような概念と離れて、私はそういう要素を分離して作らなければならぬところまできているのじゃないか、そういう気がするのです。だから、その点は一つよく労働大臣考えて、今のような格好でない、この緊急失対法に対する今のたがねをはめていくような格好のものを変えてもらいたい。
  146. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう趣旨で、今回石炭労務者の方が失対事業の中にもだいぶ入っておられた。また、入られようとするのを防ぐために、緊急就労というものを実はきめたわけであります。これは確かにほっておけば失対に入られる方、また、入っておられる方を、特に炭鉱労務者はその質的労働力から見て適当だと思う意味で緊急就労という制度を今回打ち立てたわけで、人数にしまして昨年が五千五百、三十五年度が七千五百人というものを重点的にやってみたわけであります。これも藤田委員のような御趣旨方向一つ新案を出してみようという趣旨でやりまして、これはもちろん賃金が幾らだという固定したものじゃございません。能力と作業に応じて契約をされるわけであります。それが一つの今回のテスト・ケースと申しましょうか、一つの新しい案として出したわけであります。これに続いて今後は、この次は、緊急失対そのものに何らかの改善を加えるべき時期じゃなかろうかという気が私はいたしたわけであります。
  147. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記落として。    〔速記中止〕
  148. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記起こして下さい。  両法案並びに一般労働行政に対する質疑は、本日はこの程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれで散会いたします。    午後三時三十五分散会