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1960-03-08 第34回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月八日(火曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員江田三郎君辞任につき、その 補欠として安田敏雄君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            片岡 文重君            村尾 重雄君   国務大臣    労 働 大 臣 松野 頼三君   政府委員    労働政務次官  赤澤 正道君    労働大臣官房長 三治 重信君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      澁谷 直藏君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○じん肺法案内閣送付予備審査) ○労働者災害補償保険法の一部を改正  する法律案内閣送付予備審査) ○身体障害者雇用促進法案(内閣送  付、予備審査) ○労働情勢に関する調査  (一般労働行政に関する件)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではただいまから委員会を開会いたします。  じん肺法案労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案身体障害者雇用促進法案、右三案を一括議題といたしまして、各案の細部について政府委員から説明を聴取いたします。まず、じん肺法案について説明をお願いいたします。
  3. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) じん肺法案についての逐条説明を申し上げます。  お手元に逐条説明という資料をお配りいたしておりますので、それをごらんいただきたいと思います。  第一条は、本法目的規定したものでございます。本法は、じん肺について適正な予防及び健康管理等を講ずることによって、労働者の健康の保持そのほか福祉の増進に寄与することを目的とする旨を明らかにしたものでございます。  第二条は、本法において使用される用語の定義を規定したものでございます。現行けい肺等特別保護法は、けい肺のみを規制対象としておりますが、本法けい肺のほか、石綿肺タクル肺等広くじん肺一般規制対象とすることにいたしたのであります。  第三条は、じん肺健康診断実施方法について規定したものでございます。じん肺健康診断は、現行けい肺健康診断に相当するもので、ほぼ同一内容診断を行なうこととしております。  次に、第四条は、じん肺エキス線写真像区分と、じん肺健康診断の結果に基づくこの法律による労働者健康管理区分を定めたものでございます。この区分は、けい肺審議会医学部会の答申を尊重して定めたものでございまして、エキス線写真像については石綿肺規制することといたしましたので、新たに異常線状影を主とする像についての区分を定めたこと、健康管理区分については、現行法においてはけい肺症状区分するという建前をとっておりましたが、今回はもっぱら健康管理という見地から労働者区分するという行き方に改めたことが現行法と異なっている点でございます。  第二章は、本法の中核をなすもので、じん肺予防健康管理についての使用者労働者等のもろもろの義務を定めております。  第五条でございますが、第五条及び第六条は、予防に関して新たに設けた規定でございますが、第五条は、じん肺にかかることを予防するため、使用者及び労働者に対して粉塵発散抑制等措置を講ずるように努めるべき義務を課したものでございます。  労働基準法においては、労働者保護見地から危害防止のための必要な措置最低基準が定められており、鉱山保安法においては、鉱山保安上の見地から粉塵抑制等について必要な事項が規定されております。従って、使用者及び労働者は、粉塵抑制等について最低基準を定めた両方の規定を順守すべきはもちろんでございますが、さらに、これらの規定を上回る適切な措置を講ずる義務本条により課せられるわけになるのでございます。  次の第六条でございますが、第六条は、使用者粉塵作業に従事する労働有に対して、じん肺予防及び健康管理について必要な教育を行なう義務を有することを明記したものでございます。  労働基準法及び鉱山保安法においては、それぞれ雇い入れの際等衛生教育等を行なうことを規定しておりますが、本条においては、右の規定によるほか、じん肺予防健康管理を適切に実施するために、作業の実態に応じて必要な教育を行なうことを義務づけたものでございます。  次の第七条から第九条までの規定は、常時粉塵作業に従事する労働者に対する使用者じん肺健康診断実施義務について定めたものでございます。  使用者は、常時粉塵作業に従事する労働者に対して、その新規就労の際及び三年または一年以内ごとに一回定期的に、また、新たに肺結核にかかったことが明らかになった場合等はそのつどそれぞれじん肺健康診断を行なわなければならないことになっております。このじん肺健康診断実施は、現行法によるけい肺健康診断実施と、時期、回数等につきましてはおおむね同様でございます。  次に第十条は、労働基準法に基づく健康診断と、本法に基づくじん肺健康診断との調整を規定したものでございます。  第十一条は、関係労働者について使用者が行なうじん肺健康診断の受診の義務を定めた規定でございます。  第十二条は、本法健康管理区分決定現行法同様国が行なう建前をとっていますので、その決定基礎とするため、使用者に対し、じん肺健康診断等実施結果資料提出義務づけたものでございます。  第十三条は、本法においても健康管理区分決定は、現行法において症状決定は国が統一的に行なうという建前をとっているのを引き継ぎまして、回収に国において行なうことを明らかにしたものでございます。  第十四条は、国が健康管理区分決定を行なったときの使用者に対する決定内容通知と、当該通知を受けた使用者労働者への通知義務を定めたものでございます。  第十五条及び第十六条は、使用者の法定の義務として行なったじん肺健康診断に基づく健康管理区分決定のほかに、随時、労働者及び使用者じん肺健康診断を行なって、国に対し健康管理区分決定申請することができる随時申請制度を定めたものでございます。  第十七条は、適切な健康管理実施を確保するため、じん肺健康診断に関する記録の作成及び保存の義務を定めた規定でございます。  第十八条から第二十条までは、都道府県労働基準局長が行なった健康管理区分決定について、労働大臣に不服の申し立てができる不服申し立て制度について定めたものでございます。申し立て権者申し立て手続、裁決の手続等につきましては、現行法と同様でございます。  第二十一条は、健康管理区分管理三である労働者の、粉塵作業以外の作業への転換について定めたものでございます。健康管理区分管理三である者が、引き続き粉塵作業に従事することにより、さらに健康状態が悪化することを予防するため、現行法にならい、本法においても、作業転換制度を設けることとしたものでございます。  次に、第二十二条は、前条規定に従って作業転換をした労働者に対する使用者転換手当支払い義務について定めたものでございます。本手当は、現行法転換給付に相当するもので、支給条件、金額については現行法と同様でございます。  第二十三条は、健康管理区分管理四の者は、一般療養が必要である旨を明らかにし、また、当該労働者の注意を喚起するため、使用者管理四である旨を当該労働者通知する際、療養を要する健康状態にあることをあわせ通知しなければならないことを定めたものでございます。  第三章は、じん肺審議会設置権限等について定めたものでございまして、本審議会は、現行法けい肺審議会に相当するもので、その権限組織等は、おおむね現行法と同様でございます。  次に、第四章は、使用者の行うじん肺予防及び健康管理に対する技術的援助、そのための粉塵対策指導委員制度設置けい肺罹患者に対する職業紹介職業訓練実施就労施設設置等政府の行なうけい肺に関しての労使に対する援助について定めたものでございます。  第三十二条及び第三十三条は、じん肺対策の推進をはかるために今回新設したものでございますが、第三十二条は、じん肺予防健康管理適正化をはかるためには、政府技術的援助に待つ点が多いことにかんがみまして、政府は、粉じん測定等について技術的援助を行なうように努めるべきこと。また、そのために必要な研究施設指導施設整備をはかるべきことを定めたものでございます。  第三十三条は、使用者の行なうじん肺予防に関する措置について必要な技術的援助を行なわせるために、粉じん対策指導委員制度を設けることを定めたものでございます。この粉じん対策指導委員制度は、本法において新たに設けられるものでございまして、衛生工学に関し、学識経験のある者を充てることになっております。  第三十四条は、健康管理区分管理三の要転換者で、企業内において転換ができず、やむを得ず離職せざるを得ない者に対する職業紹介及び職業訓練について、政府義務を定めたものでございます。  第三十五条は、じん肺罹患者に対する就労施設及び労働能力回復施設設置についての政府義務を定めたものでございます。現行法においても、就労施設設置義務を定めておりますが、本法では、これに合わせ、労働能力回復施設設置義務を新たに定めております。  第三十六条から第三十八条までは、転換手当に対する公課の禁止転換手当を受ける権利の譲渡等禁止、時効について定めたものでございます。その内容は、現行法における転換給付についての規定と全く同様でございます。  第三十九条及び第四十条は、じん肺診査医設置及び権能について定めたものでございます。本法の「じん肺診査医」は、現行法の「けい肺診査医」に相当するもので、設置趣旨権限等は、全く現行法と同様でございます。  第四十一条は、本法の施行に関する事務をつかさどる行政機関を定めたものでございます。  第四十二条及び第四十三条は、労働基準監督官権限を定めたものでございまして、その内容については、現行法におけるのとほぼ同様でございます。  第四十四条は、本法目的を達成するための労働大臣等報告聴取権限について定めたものでございます。  第六章は、本法の違反についての罰則を止めたものでございまして、刑の程度現行法に準じ、両罰規定を設けたことも、現行法と同様でございます。  附則に参りまして、附則第二条から第七条までは、けい肺等特別保護法の廃止、本法制定に伴う経過措置について定めたものでございます。  附則第八条から第十一条までは、本法制定に伴う関係法律改正を行なうことを定めたものでございます。  以上でございます。
  4. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、細部説明をお願いいたします。
  5. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案内容について、逐条ごとの御説明を申し上げます。  第三条の改正は、今次改正に伴い挿入される条項との形式、用語上の統一をはかる必要があるので、最近の立法例に従い、実質的には改正を加えない条文についても、用語法を改めたものでございまして、形式的な改正でございます。  次に、第十二条の改正は、現行労災保険法の一時金である障害補償費のうち、障害等級第一級から第三級までの障害補償費長期給付金に改め、これを第一種障害補償費とし、他の従来通りである障害等級第四級から第十四級までの障害補償費を、第二種障害補償費とし、打ち切り補償費を廃止することを規定したものでございます。  なお、改正された障害補償費内容は、別表第一に規定しておりまして、別表のところで御説明申し上げます。  次に、第十二条の二を新たに設けましたのは、障害等級第一級から第三級までの障害に対する第一種障害補償費が、継続して支給される長期給付金であることからして、これを受ける労働者が、その障害程度変更を生じ、他の障害等級に該当するに至った場合には、これに応じて、以後支給すべき障害補償費変更することを規定したものでございます。  第十二条の三は、現行法打ち切り補償費を廃止し、これにかえて新たに長期傷病者補償を行なうこととするために、その根拠規定を設けたものでございます。すなわち、長期傷病者補償は、労災保険から療養補償費、または療養給付を受ける労働者、あるいは本来なら、労災保険から療養補償費支給または療養給付を受けるべきところ、給付制限のため、労働基準法規定により、使用者から療養補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても、その傷病がなおらない場合に行なわれることとなるわけでございます。  なお、第二項は、この改正法律案による長期傷病者補償は、現行打ち切り補償費にかかるものでありますから、長期傷病者補償を行なうこととなった場合は、打ち切り補償を行なった場合と同様に、その後は他の一切の補償を行なわないことを規定したものでございます。  次に、第十二条の四は、長期傷病者補償として行なわれる給付種類及びそれらの各種給付給付事由規定したものでございます。  この改正法律案による長期傷病者補償は、現行法打ち切り補償費にかわるものでありますが、現行打ち切り補償費は、その給付を行なうことによって、事後、他の一切の補償、すなわち、療養、休業、障害遺族の各補償費及び葬祭料支給義務を免れさせるものであることにかんがみまして、この改正法律案による長期傷病者補償内容として、右の各災害補償に応じ、傷病給付障害給付遺族給付葬祭給付の四種類給付を行なうこととしたのであります。  それぞれの給付支給事由は、第二項以下に規定されておりますように、長期傷病者補償一般的給付事由に該当するもののうち、傷病給付療養を必要とされる場合に行なわれ、そのうち病院または診療所への入院を要しない場合には第一種傷病給付入院を要する場合には第二種傷病給付が行なわれることとなるわけであります。障害給付は、その後負傷または疾病がなおり、その際に障害が残っている場合に行なわれるのでありまして、第一種障害給付と第二種障害給付区別障害程度によるものでありまして、第一種障害補償費と第二種障害補償費区別に応ずるものであります。遺族給付及び葬祭給付は、労働者長期傷病者補償開始後六年以内にその傷病で死亡した場合に行なわれるものでございます。しかして、長期傷病者補償は、現行法打ち切り補償費にかわるものでありまして、現行法打ち切り補償費が六年間分の補償であることからいえば、これにかわる長期傷病者補償各種給付も六年間についてのみ補償すれば足りるわけでありますが、このたびの改正趣旨が三年の療養によってもなおらない労働者に対し、療養及び生活の継続を可能ならしめることにあることにかんがみまして、傷病給付及び障害給付は、特に長期給付化して必要の存する期間これを行なうこととし、それ以外の遺族給付及び葬祭給付については、その給付を行なうのは長期傷病者補償を行なうこととなったときから六年以内としたわけでございます。  第十二条の五は、長期傷病者補償である各種給付内容規定するとともに、障害給付のうち長期給付金である第一種障害給付については、同じく長期給付金である第一種障害補償費に関する障害程度変更に応ずる給付変更規定を準用することとしたものでございます。  第十三条の改正は、長期傷病者補償のうちの第二種傷病給付において給付される療養範囲を、療養補償費における療養範囲と同じくしたものでございます。  第十五条の改正は、保険給付改廃新設に伴い、それぞれの受給者規定改正したものでございます。  次に第十六条は、障害補償費のうち第一種障害補償費長期給付金化したこと及び打ち切り補償費にかえて長期傷病者補償を新設したことに伴い、これらの保険給付支給方法を明らかにするため、現行法の第十六条の改正を行なうこととしたものであります。すなわち、第一項は、この改正法律案において一時金である保険給付分割支給を、第二項は、この改正法律案により長期給付とされた保険給付としての支給方法規定したものでございます。  第十九条の二は、改正法律案による第一種障害補償費長期傷病者補償について給付制限適用除外規定したものであります。現行法においては、第十七条から第十九条までに、事業主が不実の告知をした場合、事業主故意または重大な過失により保険料を滞納した場合、事業主故意または重大な過失によって補償原因である事故を発生させた場合、労働者故意または重大な過失によって業務上負傷しまたは疾病にかかった場合には、保険給付の全部または一部の支給を行なわない旨の規定がなされておるのでありますが、この改正法律案による長期給付である第一種障害補償費及び長期傷病者補償については、労働基準法個々使用者にこのような災害補償を行なうべき義務はございませんので、もし、これを給付制限することとなれば、労働者はこれらの災害補償をどこからも受けることができないということになるわけであります。そういうことでございますので、これらの保険給付については、現行法事業主責めに帰すべき事由による給付制限は行なわないこととしたのであります。一方、労働者故意または重大過失により業務上の傷病が発生した場合につきましては、打ち切り補償費にかわる長期傷病者補償については同様の理由により給付制限を行ないませんが、労働基準法上かかる場合には使用者障害補償を行なわなくてもよいことになっておるので、第一種障害補償費については、給付制限適用を除外せず、ただ長期傷病者補償のうちの第一種障害給付との均衡上、当該業務上の傷病療養開始の日から三年以後の分については給付制限は行なわないこととしたのであります。  次に、第十九条の三は、第一種障害補償費または長期傷病者補償が行なわれることとなった場合における労働基準法上の使用者災害補償責任の免除と解雇制限の解除に関する取り扱いについて規定したものでございます。労働基準法第八十四条第一項は、労災保険から労働基準法災害補償に相当する保険給付を受けるべき場合には、その価額の限度において使用者補償責めを免れる旨を規定しておるのでありますが、この改正法律案による第一種障害補償費及び長期傷病者補償は、従来の一時金による障害補償費打ち切り補償費にかわるものであり、かつ、それらに比してより確実、かつ、一そう高度の補償であるので、かかる給付が行なわれることとなった場合には、当然の事理としてこれらの保険給付労働基準法災害補償に相当する保険給付であるとともに、その価額もこれらの労働基準法による災害補償価額にひとしいものとみなし、同一の事由について労働基準法上の使用者補償責任を完全に免ずることとしたのでございます。  第四章に入りまして、第二十七条及び第三十条の二の改正は、この改正法律案により新たに設けられた第四章の二の規定による保険給付が、労災保険加入前に発生した業務上の傷病について、特例として第一種障害補償費または長期傷病者補償を行なうものであり、かつ、一般保険料とは別に徴収される特別保険料によってまかなわれるものであるので、この特例による保険給付は、いわゆる個々事業保険料メリット制計算にあたって、その計算基礎である保険給付に算入しないこととしたものでございます。  次に、第三十四条の二について御説明申し上げます。第三十四条の二は、この改正法律案によって新たに設けられる長期傷病者補償及び第一種障害補償費は、従来の労災保険給付と異なり労働基準法上の使用者災害補償義務をこえる部分がありますので、原因である傷病特殊性使用者負担増加等をも考慮して、その労働基準法打ち切り補償または障害補償に相当する部分をこえる部分について、その一部を国庫が負担することとしたのであります。右の部分について適用する国庫負担率は、長期傷病者補償の場合は、当該補償じん肺に関して行なわれるときは、その疾病特殊性にかんがみ、特に四分の三とし、その他の傷病に関して行なわれるときは二分の一としたのであります。  次に、第三十四条の三は、労災保険に加入していない任意適用事業において発生した業務上の傷病についても、当該事業について保険関係が成立した後においてその事業主から申請があれば、特例として新たに設けられた第一種障害補償費及び長期傷病者補償給付を行なうことを規定したものでございます。  次に、第三十四条の四は、前条規定に基づく特例による保険給付の費用に充てるための特別保険料徴収について規定したものでございます。  第三十四条の五は、第三十四条の三の規定に基づき特例による保険給付が行なわれる労働者の属する事業事業主は、特別保険料徴収が行なわれる期間内は、この保険から任意に脱退することができないことを規定したものでございます。  第三十五条の二の改正は、特別保険料の額について、第二十八条第三項または第三十条第二項の規定の準用により政府がその算定を行なった場合、もし保険加入者に異議があればその者は一般保険料における場合と同じく審査の要求をなすことができることを規定したものでございます。  次に、第四十七条の改正、これは四十七条の二、第四十九条の改正は、この改正法律案によって、この法律による保険給付が従来より一そう高度かつ複雑になったことに伴い、その給付の適正を確保するため、他の社会保険に関する法律にほぼ共通して存在する規定の例にならい、保険給付関係労働者に対するエキス線写真等資料提出、指定する医師の診断を受けることの命令、診療担当者報告資料提示等行政庁権限整備をはかったものでございます。  第三十四条の六は、特別保険料算定方法、概算による特別保険料報告及び納付、確定による特別保険料報告及び納付、追徴金、延滞金徴収等について一般保険料に関する現行法規定を準用することとするとともに、その場合の必要な読みかえを規定したものでございます。  次に、別表の第一の御説明を申し上げます。  別表第一は、現行法別表を改め、障害補償費及び長期傷病者補償中の障害給付を、第一種及び第二種に区別し、さらに該当する障害等級の別にその給付内容規定したものでございます。長期給付である第一種障害補償費または第一種障害給付年額は、それぞれ、現行法の一時金である障害等級第一級から第三級までの障害補償費を六年に分割して支給する場合の一年分の額によったものであります。  一時金である第二種障害補償費または第二種障害給付の額は、現行法障害等級第四級以下の障害補償費の額の通りでございます。  別表第一は、長期傷病者補償中の傷病給付給付内容を、第一種、第二種の種別によって規定したものでございます。  第一種傷病給付年額は、労働能力を一〇〇%喪失するとともに、日常生活について常時他人の介護を要する最高度身体障害者、すなわち障害等級第一級に該当する者に対する現行法の一時金である障害補償費を六年に分割して支給する場合の一年分の額とひとしく、平均賃金の二百四十日分としたことであります。  第二種傷病給付は、入院療養を要する者に対して行なわれるものであり、入院療養に要する費用は相当に高額であることにかんがみ、必要な療養または療養の費用は別に給付することとし、この場合の長期給付金年額は、労働能力を一〇〇%喪失するにとどまり、日常生活については他人の介護を要しない障害等級第三級に該当する身体障害者に対する現行法の一時金である障害補償費を、六年に分割して支給する場合の一年分の額とひとしく、平均賃金の百八十八日分としたのであります。  別表第三は、長期傷病者補償中の遺族給付給付内容規定したものでございます。遺族給付の額は、現行法打ち切り補償費において実質的に遺族補償的機能を持つ部分に応ずるものとしたため、死亡時の下がるに従って、段階的に逓減することとしたことでございます。  なお、右の逓減する給付額は、現行法遺族補償費を六年に分割して支給する場合、その何年分かの支給をした後にその残余額を一時に全部支給する場合の給付額を定めた現行労災保険法施行規則別表第三、分割保険給付の残余額一時支給表の額によったものでございます。  次に、附則説明を申し上げます。  第一条は、この改正法律案の施行期日を定めたものでございまして、この期日を昭和三十五年四月一日としたのは、けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法が昭和三十五年三月三十一日限りで失効いたしますので、この給付について空白期間を生じさせないために、この法律によって施行期日を明定した規定でございます。  第二条は、特別保護法に規定されている事項のうち、予防健康管理についてはじん肺法に、給付についてはこの改正法律案によって、改正後の労働者災害補償保険法に吸収されることとなるので、特別保護法を廃止することとした規定でございます。  第三条は、この改正法律案の施行前に生じた現行法第十二条第二項に規定する事由に基づく災害補償については、この改正法律案の施行後においても新法の規定適用せず、従前通り現行法によって行なうこととしたのでございます。  第四条は、特別保護法及び臨時措置法の廃止または失効に伴い、これらの法律規定によって行なうべきであった給付については、経過的にこれら法律の廃止または失効後も、なお従前の例によって処理する旨を規定したものでございます。  第六条は、特別保護法の廃止及び臨時措置法の失効に伴い、これらの法律規定によって徴収すべきであった負担金については、経過的にこれらの法律の廃止または失効後も従前の例によって処理することとするとともに、この改正法律案施行後も継続する有期事業の負担金の清算及び負担金の確定清算後の還付すべき剰余額の充当等について規定したものでございます。  次、第七条は、この改正法律案の施行前、すなわち特別保護法または臨時措置法の廃止または失効前に、特別保護法による療養期間が経過した者で、この改正法律案の施行前に臨時措置法第一条第一項の都道府県労働基準局長の認定を受けなかった者に対する当該認定及び受けた認定に不服のある者の不服申し立てについて、この改正法律案の施行後も、経過的になお従前の例によって処理することを規定したものでございます。  第五条は、この改正法律案の施行の前日において特別保護法または臨時措置法の規定による給付を受けるべきであった者について、都道府県労働基準局長が、この改正法律案の施行の日以降、引き続き療養を必要とすると認定した場合には、すべてこの規定によってこの改正法律案の施行の日から長期傷病者補償を受けることができることとしたものであります。  ただ、右によって長期傷病者補償を受けることとなる者は、すでに現行法規定による打ち切り補償費千二百日分を受給しており、さらに特別保護法または臨時措置法の規定による給付を受けていたのであって、この改正法律案の施行後に新たに三年の療養補償費支給期間を経過してから長期傷病者補償を受けることとなる者よりも、少なくとも打ち切り補償費分だけは余分な給付を受けているのであるから、後者との均衡上、すでに受けた打ち切り補償費中に含まれていると見られる遺族給付及び葬祭給付は行なわず、また、その者に支給すべき傷病給付または第一種障害給付年額は、それぞれ別表第一または第二に規定する額から平均賃金の七十九日分を減ずる額とした規定でございます。  次に、附則の第十五条を御説明申し上げます。これは第一種障害補償費等の額に関する暫定措置という規定でございますが、第十五条は、新法の規定による第一種障害補償費傷病給付または第一種障害給付を受ける者が、同時に、厚生年金保険法等の障害年金または国家公務員共済組合法の公務による廃疾年金を受けることができる場合には、当分の間、長期給付金の額は、右の障害年金または廃疾年金のうち、国及び使用者の費用負担割合に相当する額(厚生年金保険法等の障害年金の額の五七・五%または国家公務員共済組合法の公務による廃疾年金の額の七〇%)だけ減じた額とすることを規定したものでございます。この改正法律案によって労働者業務上負傷しまたは疾病にかかり、療養開始後三年を経過してもなおらない場合、あるいはなおったときに障害等級第一級から第三級までに該当する障害が残った場合に、労災保険から行なわれる災害補償は、厚生年金保険法等の障害年金と全く同様な長期給付となったわけでございます。従いまして、同一の業務上の傷病に基づいて厚生年金保険法等の障害年金の支給を受ける場合におきましては、その障害年金の額のうち使用者と国の費用負担に相当する部分は、労災保険長期給付金と同一の事由につき同じ費用負担者から同じような給付がなされることとなりますので、その場合の労災保険長期給付金の額は、右の部分に相当する額を差し引くこととしたわけでございます。  次に、第十六条は、一般の賃金水準に一定限度以上の変動が生じた場合に、長期給付金の額を改訂して支給することとしたいわゆるスライド制を規定した条項でございます。  最後に、附則第十七条を設けましたのは、この改正法律案規定については、他の社会保障制度と関連する問題もあり、将来社会保障に関する制度全般の調整がなされる機会において検討を加えなければならないのでございますが、そのような見地から、特に国庫負担の規定、厚生年金保険法による障害年金等と新法による給付との調整の規定及び賃金情勢の変動に伴う長期給付金の額の改訂の規定については、そのような機会に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずべきことを規定したものでございます。
  6. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、身体障害者雇用促進法案の細目説明をお願いします。
  7. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 身体障害者雇用促進法案の細目を御説明申し上げます。お手元にお配り申し上げております身体障害者雇用促進法案関係資料中、身体障害者雇用促進法案逐条説明、これによりましてその細目を御説明申し上げます。  身体障害者雇用促進法案は六章、それから条文は二十四条に分かれております。  まず、第一章は総則でございまして、この法律目的と、この法律中に使用される用語の定義を規定したものでございます。まず第一条でございますが、これは本法目的を定めたものでありまして、本法身体障害者について、その能力に適当な職業に雇用されることを促進することによって、身体障害者の職業の安定をはかるということを目的とすることを明らかにしております。  次は、第二条でありますが、本法において用いられる用語である「身体障害者」「特定職種」「重度障害者」「職員」「労働者」という用語について定義を定めたものであります。特にこの中で問題になりますのは、身体障害者範囲でございますが、これはこの第一項にありますように、別表規定してございます。別表はお手元の資料附則の次についております別表でございますが、別表の、身体上の欠陥の範囲本法対象となる身体障害者範囲を定めたものであります。まず四号に分けまして、その対象を具体的に規定しておりますが、第一号は、視覚障害で永続するもの四種類をあげております。第二号は、聴覚または平衡機能の障害で永続するもの四種類をあげております。第三号は、音声機能、言語機能またはそしゃく機能の著しい障害で永続するものを規定いたしております。第四号は肢体不自由五種類規定しております。以上の規定によりまして身体障害者福祉法別表に掲げるものと、恩給法の別表第三款症以上の外部的障害に該当する者は、原則として包括されることになります。その他就職に著しい困難があると認められる身体上の欠陥につきましても、ただいま申し上げましたものと同程度作業能力を妨げるものであることが明らかなものにつきましては、第五号におきまして労働省令で定めて、本法対象となし得ることを規定しております。  次に、本文に戻りますが、第二章関係について説明申し上げます。第二章は、公共職業安定所が職業安定法等に定めるほか、身体障害者の雇用を促進するために行なうサービス活動を規定したものでございます。  まず第三条は、公共職業安定所が行なう職業紹介についての規定であります。すなわち第一項は、公共職業安定所は、身体障害者であるという理由だけで身体障害者を、求人の対象としないような申し込みにつきましては受理しないことができる旨を規定したものであります。第二項は、身体障害者の能力に適合する職業についての求人であるにもかかわらず、身体的条件がきびしいために身体障害者を紹介することができないというような場合のごとく、身体障害者にその能力に適合する職業を紹介するため必要があるときは、公共職業安定所は求人者に対して、身体的条件その他の求人の条件の緩和等について指導する旨を規定したものであります。第三項は、公共職業安定所は、身体障害者について職業紹介を行なう場合において、求人者からその身体障害者の職業能力に関する資料を求められたときは、資料を提供すべき旨を規定したものであります。  第四条は、就職後の指導でありまして、身体障害者は、通常その障害のため職場環境に心理的にまた身体的に適応することが困難でありますので、公共職業安定所は、その紹介を受けて就職した身体障害者に対して、就職した後も、作業の環境に適応させるために必要な指導を行なうことができる旨を規定しております。  第五条は、身体障害者の雇用主に関する助言でありまして、身体障害者の雇用につきましては、その労働能力を十分に活用させるようにするため種々の配慮を必要としますので、公共職業安定所は、現に身体障害者を雇用している者またはこれから身体障害者を雇用しようとする者に対して、能力の検査、配置、作業設備、作業補助具等身体障害者の雇用に関する技術的な事項について助言することができる旨を規定したものであります。  次に、第三章は、身体障害者に対する適応訓練について定めたものであります。  まず第六条第一項は、都道府県が求職者である身体障害者の就職を容易にするため必要があると認めるときは、身体障害者の能力に適した作業の環境に適応させるために適応訓練を行なう旨を規定いたしました。第二項は、適応訓練は、身体障害者の能力に適した作業であって、その作業が標準的な環境のもとに行なわれている事業所の事業主に委託して実施する旨を規定したものであります。ここに、標準的な作業環境を有する事業主に委託するといたしましたのは、適応訓練の成果を、委託を受けた事業所のみならず、他の同種の事業所においても生かすことができるよう考慮したものであります。  第七条は、公共職業安定所は、求職者である身体障害者に対して、適応訓練を受けることについてあっせんを行なう旨の規定であります。  第八条第一項は、身体障害者に対して行なう適応訓練は、無料である旨を規定いたしました。第二項は、都道府県は、適応訓練を受ける身体障害者に対して手当支給することができる旨を規定したものであります。  第九条は、経費の補助に関する規定でありまして、都道府県が事業主に委託して適応訓練を行なう場合には、国はその都道府県に対し、予算の範囲内で、その委託に要する経費の一部を補助することができる旨を規定したものであります。  第十条は、訓練期間、訓練内容等適応訓練の基準に関し必要な事項は、労働省令で定める旨を規定したものであります。  以上申し上げました適応訓練の実施によりまして身体障害者の雇用の促進と訓練の実施後の職場への定着の効果を規定したものであります。詳細は省令で規定する予定になっておりますが、訓練の期間は大体六カ月、委託に要する費用の二分の一を国が補助し、残り二分の一を都道府県が負担する予定といたしております。  第四章は、身体障害者の雇用促進のための雇用比率の設定を中心とする規定であります。  十一条、十二条は国等に関する規定であります。十一条は身体障害者の雇用を促進するためには、まず、国等が率先して身体障害者を職員として採用する体制を確立することといたしました。国及び地方公共団体のそれぞれの任命権者、日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社の総裁は、それぞれの機関の職員総数に対して、身体障害者である職員の数の占める割合が、政令で定める身体障害者雇用率未満である場合には、職員の採用にあたって、身体障害者雇用率以上となるようにするため、政令で定めるところにより、身体障害者を採用する計画を作成しなければならない旨を規定したものであります。  第十二条第一項は、国等の任命権者及び総裁は、前条規定によって作成した身体障害者採用計画及びその実施状況を労働大臣へ、または市町村の任命権者にありましては都道府県知事へ、それぞれ政令で定めるところに従って通報しなければならない旨を規定したものであります。  また、第二項は、労働大臣は、前条規定によって作成された身体障害者採用計画を十分に実施していない任命権者及び総裁に対して、計画を適正に実施するように勧告することができる旨を規定したものであります。  第十三条、第十四条は、民間の雇用比率の設定に関する規定であります。まず十三条は、民間の一般雇用主が労働者を雇い入れるにあたっての身体障害者雇用義務について定めたものであります。すなわち、第十一条に規定する国等の機関を除く常時労働者を使用する事業所の雇用主は、労働者を雇い入れるにあたって、その事業所に常時使用する労働者の総数に対して、常時使用する身体障害者である労働者の数の占める割合が、それぞれの事業種類に応じて労働省令で定める身体障害者雇用率以上となるように身体障害者を雇い入れるよう努力しなければならない旨を規定したものであります。  第十四条第一項は、公共職業安定所長は、身体障害者の雇用を促進するため特に必要があると認める場合には、労働省令で定める身体障害者雇用率未満であり、常時百人以上の労働者を使用する国等を除く一般事業所であって身体障害者である労働者の数を増加するのに著しい困難を伴わないと認められる雇用主に対して、身体障害者雇用率以上となるようにするため身体障害者の雇い入れに関する計画の作成を命ずることができる旨を規定したものであります。  第二項は、国等を除く一般雇用主が前項の身体障害者の雇い入れに関する計画を作成し、または変更したときは、遅滞なくこれを公共職業安定所長に提出しなければならない旨を規定したものであります。  第三項は、身体障害者の雇い入れに関する計画が計画を作成した事業所の状況から見て著しく不適当であると認めるときには、公共職業安定所長は、その雇用主に対してその計画を変更するように勧告することができる旨を規定したものであります。  次に、第十五条は重度障害者に関する規定であります。身体障害者の中でも、その障害が重い者の就職は特に困難でありますので、重度障害者に適する職種を指定して、一般身体障害者雇用率よりも高い比率を定めて、その雇用を促進するための措置規定したものであります。  第一項と第二項は、国、地方公共団体、公社等に関する規定であります。また、第三項、第四項は民間事業所に関する規定でありまして、いずれも前に述べました雇用比率に関する規定に準ずることとしております。この対象といたしましては、これも政令もしくは省令で規定する予定にしておりますが、さしあたり、盲人それから適職といたしましてはあんま、マッサージ職というものを指定したらどうかという考えでおります。  次に第五章でありますが、第五章は、身体障害者の雇用の促進に関する重要事項について調査審議するため、労働省に身体障害者雇用審議会を置くことを規定したものであります。  十七条は、審議会権限を定めたものでありまして、審議会労働大臣の諮問に応じて身体障害者雇用率と、身体障害者の雇用の促進に関する重要事項について調査審議するとともに、これらに関し必要と認める事項について関係行政機関に意見を述べることができる旨を規定したものであります。  第十八条、第十九条、第二十条、第二十一条は、審議会の組織、委員及び専門委員、会長、庶務についての規定であります。  身体障害者雇用審議会は、その特殊性にかんがみ、委員の構成を労働者、雇用主、学識経験者のほかに身体障害者を代表する者を加え四者構成といたしまして、その他につきましては、各種の審議会における立法例にならった規定を設けております。  第二十二条は、審議会の運営に関する事項の労働省令への委任について定めたものであります。  第六章は雑則であります。  まず、第二十三条第一項は、身体障害者の雇用の促進について、事業主その他国民一般の理解を高めるため、政府は広報活動等について必要な措置を講ずる旨を規定したものであります。  第二項は、労働大臣は、身体障害者に適当な職業、作業設備及び作業補助具その他身体障害者の職業安定に関し必要な事項について、調査、研究し、かつ、それらに関する資料整備に努めることを規定したものであります。  第二十四条は、身体障害者に対する援護の機関である福祉事務所、身体障害者更生相談所その他の援護機関と公共職業安定所とは身体障害者の雇用の促進をはかるため、相互に密接に連絡し、協力しなければならない旨を規定したものであります。  次は附則でありますが、附則の第一項は、本法の施行期日を昭和三十五年四月一日とする旨を規定しております。  附則の第二項は、この法律の施行に伴い、労働省設置法の一部を改正することを定めたものであります。すなわち、労働省の権限として、身体障害者の雇い入れに関する計画の作成を命ずることを規定するとともに、身体障害者の採用または雇い入れに関する計画に関することその他本法の施行に関する事務を職業安定局の所管としたこと、本省の付属機関として身体障害者雇用審議会を置くこと及び公共職業安定所の所掌事務及び権限として本法に定めた事項を追加する旨を定めたもの  であります。  以上をもって身体障害者雇用促進法案に対する説明を終わります。
  8. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記を落として下さい。    〔速記中止〕
  9. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。  三案に対する質疑は、次回以後にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。   ━━━━━━━━━━━━━
  11. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) この際、委員の異動を報告いたします。  三月八日付をもって江田三郎君が辞任し、その補欠として安田敏雄君が選任されました。右御報告をいたします。  暫時休憩いたします。    午前十一時三十七分休憩    —————・—————    午後二時二十九分開会
  12. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは午前に引き続いて会議を開きます。  労働情勢に関する調査の一環として、一般労働行政に関する件を議題といたします。  御質疑の向きは御発言を逐次お願いいたします。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、きょうは今年度の労働雇用の見通しについて、大臣、経企長官を初めとして質疑を行ないたいと思っておりますが、いずれ大臣が見えると思いますから、きょうはそれに入るまで局長からいろいろ具体的なお話をお伺いしたいと思います。  まず第一点にお聞きしたいのは、三十五年度の経済見通しと経済運営の基本的態度という経済企画庁から出しておりまするこの資料というのは、労働省は作成にあたってどの程度参画しておられたのか、大臣でなければわからなければ聞きませんが、当局としてはこの作成にどういう工合に参加されたかお聞きしたいと思います。
  14. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 昭和三十五年度の経済見通しと経済運営の基本的態度、これは閣議で決定されたものでございますが、閣議で決定される前に経済企画庁から労働省に連絡がありまして労働省として、経済企画庁と相談いたしまして経済企画庁は労働省を含む関係各省と連絡の上、この案を作成いたしまして閣議に提出の上、決定されたものでございます。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、この企画に参加されていたのでございますから、きょう資料をここにもらいましたが、本年度の雇用というのはどういう工合に具体的になるか、たとえば雇用労働者は二千二百六万ということが出ておりますけれども、一般の農業労働者がどうなっておる、自営業者がどういう工合になる、失業者がどうなるかという、こういうことも、参加されておりましょうと思いますので、その辺の本年の雇用の関係について一つお聞かせを願いたい。
  16. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) まず第一に、昭和三十三年と昭和三十四年度の四月から十一月、これを対照して見ますると、その結果は全産業の就業者は前年同期に比べて七十七万の増加を示しておるわけでございます。これを農林、非農林に分けますると、農林業就業者が十八万の増加であるのに対し、非農林業者は五十八万の増加を示しておるわけでございます。就業上の地位別でございますと、経済の好況を反映いたしまして、雇用者が農林業では十三万、非農林業では七十万と増加しておるのに対しまして、家族就業者はそれぞれ五万、十四万の減少を示しております。自営業者は農林業では九万の増、非農林業では一万の減少を示しておりまして、この面から見ると、就業構造の近代化が進んでおるということが言えると思うのでございます。  そこで、昭和三十四年度全体としてはどのような見通しになるかという問題でございます。これからあと申し上げますのは一応の見通しでございまして、また、いろいろな労働力調査その他の調査のその調査方法等による技術的に問題もございまして、この通りぴたりと当たるかどうか、これは今後の推移を見なければわからない問題でございます。一応今までの調査等を参考にした見通しを企画庁で立てたわけでありますが、それについて申し上げますると、雇用者は昭和三十四年度は昭和三十三年度に比べまして百四万の増加という見通しを立てております。そのうち農林、非農林に分けますと、非農林が九十八万、農林が六万という見通しに一応なっております。  それから次に、業種、家族就業者について申しますと、昭和三十四年度は昭和三十三年度に比べまして、十二万の減少、こういう見通しになっております。農林が六万の減、非農林が六万減、それから就業者でございますが、結局ただいまの雇用者それから業主、家族就業者の増減を反映いたしまして昭和三十四年度は九十二万の増加ということに相なっておるという見通しを立てております。これは非農林業で九十二万の増、農林は横ばい、こういう関係でございます。  そこで完全失業者について申しますると、昭和三十四年度は三十三年度に比べまして、二万減の五十七万、こういう見通しを立てておる次第でございます。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、昨年度から、三十三年度から三十四年度に対してのこれは実績見通しですか、三十四年度百四万ふえるということは。実績見通し━━大体あまり違わないという推定ですね。
  18. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 従来の労働力調査等の資料、それから毎月勤労統計によるところの雇用指数等を参考にいたしましての推定でございます。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、三十五年度の雇用見通しはどうなるわけですか。
  20. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 三十五年度につきましては、雇用者は九十四万の増という推定をいたしております。農林で五万増、非農林で八十九万の増ということでございます。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 失業者はどうなっておりますか。
  22. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 完全失業者は三十五年度は五十五万、従いまして、三十四年度に比べて二万の減という見込を立てております。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこでお尋ねをいたしますが、先日もらいましたこの新規学校卒業者就職希望者見込という数字を見ますと、百十六万二千という数字が出るわけですけれども、これの学卒者は━━今の九十四万雇用が伸びるというわけですけれども、これは学卒者ばかりをあてておられるとは思わないわけですけれども、ここらの就労関係を、今の失業者が就労するところの数との比率、現状というのはどういう工合になっておりますか。
  24. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 新規学卒者につきましては、三十五年三月卒業者中、就職を希望するとみられます者は、ただいまお話のように、百十六万二千人という見込みでございますが、この就職希望に対しますところの求人の状況は現在のところ、非常に好調でございます。従いまして、この就職新規学卒者中の就職希望者はそのほとんど全部に近いものは就職するであろう、このような見通しを立てております。ただ、地域的な問題、あるいは産業的な問題、あるいはその求人側の希望する職種等もございますので、その間食い違いが、求職と求人の間の食い違いも予想されますが、大体この百十六万二千人のうちの大半、相当部分は就職するであろう、このように考えております。従いまして、雇用はこの学卒の就職希望者を産業界が受け入れることによりまして、この方は増加するという考えでございます。また、それと反対に雇用者から脱退する者が、これは毎年出て参ります。そういう関係を見込みますと、新長期計画では交代補充の面は男が一%、女が五・五%、大体こういうような見通しを立てまして、その上に立ちまして、まあただいまのように新規学校卒業者のうち、就職して労働戦線に入ってくるというもの、これと反対に雇用から脱退するというようなもの、総合いたしまして、先ほど申し上げましたような見通しが立っておるわけでございます。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この卒業見込み者と就職希望者との数字はどういう調査をされて、こういう数字が出たかということが一つです。  それから今のお話のように、先ほど、三十五年度は九十四万雇用が伸びると言われたが、百十六万の学校卒業者はほとんど求人から言って就職する、こういうことになると、百十六万足す九十四万という二百万の雇用の期待が今年度はできる、こういうことですか。
  26. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 就職希望者の推定でございますが、これは卒業見込み者、これは文部省の調査でございます。現在の在学生数に卒業数を乗じて算出しております。そして就職希望者数は昨年度の卒業者の帰趨見込み調査を行ないまして、その雇用労働希望率を乗じまして推定したものでございます。それで、学卒者のうちの就職希望者につきましては、先ほど御説明いたしましたように求人数というものが非常に多い好調の状況でございますので、このほとんど全部が雇用労働者として就職するであろう、こういう見通しでございます。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の聞いているのは九十四万、今年は三十五年度の経済見通しでふえるということです。九十四万農林、非農林でふえる。それで百十六万の学卒は就職をする。そうすると二百万になる、プラスすると。それで失業者が五十五万だというのだから、そういうところはどういう工合に行ったらいいのか、それを聞いているのです。
  28. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) その点につきましては、この新規卒業者が就職を希望いたします。それで産業界がこれを受け入れるということになりますと、雇用者として伸びるわけでございます。そういうようなものも反映いたしまして、それに雇用者から脱退するものを差し引きまして、結局九十四万伸びるであろうということでございまして、ただいまの百十六万に新たに九十四万が追加されるということではありません。百十六万の新規学校卒業者が出てくる。百十六万というのは、正確に申せばやや違いまして、そのうちの求人側との食い違い等による若干の洩れは出て参りますが、百十六万中の大部分が、これは雇用者として産業界に入ってくる、その分の増加、それからそのほかに従来の傾向としても見られましたが、あるいは就業者から雇用者に転換する者もございます。また、逆に申せば、雇用者から家族就業者あるいは自営業種等への転向する者もございます。それから全然脱落するという者も出て参りましょう。これらのプラスの面とマイナスの面を差し引きまして、雇用者は九十四万の増加になる、こういう推定でございます。
  29. 高野一夫

    ○高野一夫君 関連して、この就職とか就業というのはどういう意味ですか。学校を出た者が何らかの仕事について、それで自営でもあるいは雇われでも月給をもらう、あるいは経営していく、それが就業でしょうかね。私は実はそう思わぬので、たとえばそれぞれ特に科学振興と関連して私は考えたいので、これは労働省それから今後通産省というのが連繋して雇用対策を立ててもらいたい。ということは、せっかく専門の学問をおさめても、自分の専門の畑で仕事ができないで、やむを得ず専門の学問を殺す別な会社へ勤める、これも就職率の中に入るのですよ、それは私はおかしいと思う。たとえばせっかく長い何年かかかって染料化学をやる、ところが、染料会社に入れない、しょうがない、今度は製紙会社に入ってしまう、こういう例はざらにある。そうすると、政府の統計というものは、これは全部就業率、就職率に入って、もういわゆる一〇〇%片がついたということになる。特に私は科学振興の建前からいって、自分の専門の学問技能を生かす就業でなければほんとうの私は就業にはならないと、こう思っているのだけれども、この点についてはたとえば労働省側の考え方と、それでそういう点について文部省側、通産省関係と何らかやはり打ち合わせ、相談をされることがあるかどうかを一つ伺っておきたい。
  30. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、ただいま先生御指摘の通り、形式的な雇用統計によりますると、自分の専門の学校で専攻した知識を生かせるところについた者でなしに、それ以外の職種についたという者も就職ということで統計に出て参ります。この点につきましては、最近求人が非常に好調であるということを申し上げましたけれども、やはりその内容をいろいろ分析してみますると、やはり技術系に対するところの求人は非常に多いわけでございます。事務系はそれほどでもないというようなことでございます。そうしてまた、同じ技術系の中につきましても、いろいろな食い違いが出て参るということでございます。そこで今後の問題といたしましては、これはただいま御指摘のように、文部省、通産省、労働省、この三者がよく相談をしまして、今御指摘のように、それぞれの適職に応じて就職するという状態が望ましいわけでございまするので、その方向に何とか向けていこうじゃないかということで、三省相寄りまして計画を立てております。結局この問題は学生のただいまの学校のいろいろな授業のあり方、それから専攻種目のあり方、そういうものにも関連する問題でもございます。この点は文部省にも、労働省といたしましてはただいまの産業界の需要するものが何であるかということをそのつど連絡いたしまして、参考にしてもらっております。また、労働省といたしましては、そのほかに学校を卒業いたしまして就職することはいいわけでございますが、現在の産業界の需要しているところの技術関係の職種を充足し得ないという面がございますが、これは労働省といたしましても、現在の職業訓練、この計画を総合的に立てまして、職業訓練の計画の網を、学卒者であっても今後通していくということが必要ではないかと思います。現在の状況では、大体離職者であるとかあるいは中年層であるとか、そういうものが職業訓練所を受ける場合も相当あるわけであります。それはそれで離職対策としての意味はあるわけでございますが、やっぱり学校卒業者につきましても今後はそのような観点で考えていきたいということで、職業訓練の計画を年次を追いまして総合的に立てまして、これによってただいまの産業の需要、それから現在また新規に出てくる労働力との調整を円滑にはかっていきたいというふうに考えております。
  31. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは委員長、あとで大臣が見えましたら……。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私も重要な関係は大臣見えたらと思って控えておるのですが、ただ、さっきお話にありました交代補充は男一%、女五・五%というのは、大体両者、数にしたらどのくらいになりますか。
  33. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 交代補充は二百九十一万人という見込みを立てております。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで今の理解の仕方は……。
  35. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 失礼いたしました。二百九十一万、新長期計画でこのような推定をいたしております。ただいま私の申しましたのは六年間でございますから、一年平均にいたしますと、これを六で割るということに相なります。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで今の理解の仕方は、先ほどの説明では、新規学卒者はほとんど就職すると言いながら、九十四万であると言うからああいう尋ね方をしたわけです。そうすると、今の交代者━━定年その他で交代をしていく方々は九十四万、そのウエートは学卒者に置かれるから、大体学卒者のほとんどの、九〇%近くの者は就労できるであろう、こういうことですね。そこで今度は、その労働者が今就職されている中に、現状の中で非常に低賃金で困っている人が多いわけでございます。だから労働省というのは、失業者というのはどの範囲のものを失業者と考えられているかということなんです。今の労働力調査からいくと、一時間でも働いたら失業者の中に入っていないわけですが、失業者というのはどういう工合に見ておられますか、これをまず先に伺いたい。
  37. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、御承知のように、わが国における産業構造それから労働力の構造の特殊、複雑な性格からいたしまして、いろいろな数字が出ているわけでございます。そこでまず第一に、完全失業者という問題につきましては、先ほど御指摘になりましたように、労働力調査の定義がございまするから、それでその定義に合うものが完全失業者になるわけでございます。従いまして、これだけで、失業者を五十何万という数字を見込めば十分かと申しますと、これは決して十分ではないわけでございます。そこで問題は、いわゆる不完全就業者もしくは潜在失業者、このような者が大体どのくらいになるであろうかということが問題になるわけでございます。  そこでまず第一に、いろいろの取り方がございますが、一つは、総理府統計局の労働力調査の臨時調査によりまして、就業をしていても収入の不足等から転職または追加収入を希望する者、それから非就業者中の就業希望者のうち、就業の緊要度が特に高いと見られる者というものを合計いたしますと、昭和三十四年三月で大体二百四十万人と、こういう数字が出ております。これらの者が今後の労働対策上やはり考慮しなければならないものではないか、このように思っておるわけでございます。それからまだそのほかに、たとえば雇用審議会等におきまして、一定の所得未満であればこれは本人の転業もしくは追加収入を希望というような意思を全然考慮しないで、一律に全部これを不完全就業者というようなことにして推定した数字がございますが、それによりますと、大体昭和三十四年五月の推定でありますと、六百八十万人ばかりが不完全就業になるのじゃないか、こういう推定をいたしております。これにつきましてはいろいろな問題もございます。たとえば所得が標準未満であるというような者について、本人の意思を考えないで、一律に不完全就業にするということ自体にも問題がありますけれども、これも一つの推定でございます。いろいろな数字がございますが、結論として申し上げられますことは、完全失業者だけではなしに、そのほかに相当の数に上る潜在失業者が存在するということはこれは事実でございます。これらに対しては不完全就業状態を改善することをやはり労働政策の一つの目標にしなければならないわけでございまして、これに対しましては、先ほど申し上げました労働力の質的向上をはかるために職業訓練あるいは科学技術教育の拡充、職業紹介事業の強化ということを考えること、あるいは最低賃金制の拡充、その他による社会保障制度の拡充を行なう、こういうようなことを総合的に考えていかなければならないのではないか、このように考えておる次第でございます。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうしますと、そこのところの項でございますが、きょうもらいました常用雇用指数と臨時日雇雇用指数という数字が出ているわけでございますが、ここでふえておりますのは小売業、第三次産業のサービス業が中心であって、鉱業とか建設業とか基幹産業の労働者がふえていっていない、これは何を物語るかというと、私はやはりこのオートメーション━━機械化の問題で、生産力との関係では非常に労働力が要らなくなってきているということを考えなければいかぬと思います。ものすごい勢いで生産力が去年から二七%も伸びている、所得の面からいっても、昨年からは標準所得が四五%も伸びている。こういう状態の中でサービス業、自営業的な小さいところがふえて大企業が伸びない。こういうことはこの労働省の数字を見ても多少ふえているところがありますけれども、おもにふえているのはサービス業、金融とかそういうところがふえておりますが、基幹産業がふえていないのはどういうように見ておりますか。
  39. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 最近の毎月勤労統計によります雇用指数の伸び方を考えてみますると、ただいま御指摘のように、金融保険、卸小売というような面についてはやはり相当な増加になっております。三十四年四━十一月を平均いたしまして、三十三年の同期と比べますると、金融保険では一二・三%の伸び、卸、小売では八・八%の伸び、このようになっているわけであります。しかし、それと並びまして基幹産業的なもの、第二次産業的な産業におけるところの雇用もやはり伸びているわけでございまして、ここにありますように製造業については九・三%増、建設業については一〇・八%増、このようなことに相なっているわけでございます。半面、鉱山業は石炭の不況を反映いたしまして、九六・五%でございますから、大体三・五%の減少ということになりまして、全体の数字と逆行するような数字を示しております。ただいまの建設業、製造業というような基幹産業につきましても、これを三十三年度当時の伸びに比べますと、三十四年は前年に比べまして相当な増加を示しておる。やはりこれは一般的な好況を反映するものであろう、このように考えております。なお、機械、技術革新とその雇用との関係につきましては、これは大体の大局的な結論でございますが、機械の導入あるいは技術革新あるいはオートメーションの導入というようなことによりまして、雇用が減退する要素は確かに出て参ると思います。ただ、今までの推移を見てみますると、たとえば電気機械器具であるとか、自動車というような成長産業では技術革新が導入されたにもかかわらず、生産は飛躍的に増加したため雇用の著しい増加を示しておるわけでございます。それから鉄鋼、化学というような基礎産業部門では、やはり技術革新が大規模に導入されましたが、生産も著しく増大しておるため、雇用は増加しておるという状況でございます。これに反して、一部の停滞的な産業におきましては、技術革新の導入とともに生産が著しい増大を見なかったので雇用の減少を見ておるような部面があるわけでございます。特に不況産業、炭鉱関係におきましては、御承知のように、離職者が非常に出ておる、こういう状況でございます。なお、第三次産業その他の関連産業につきましては、大局的に申しまして、生産が増加し、経済の規模が拡大するということによりまして、やはり全体として雇用は関連して伸びて参る、このような考え方でございます。従いまして、この技術革新、オートメーション等の導入による生産方法の改善は、全体としてただいまのところは雇用の増加にプラスになる面が非常に出ておるわけでございますが、先ほど申し上げました停滞的な産業、不況産業等におきましてはこれによる摩擦が出て参る。従いまして、今後におきましては、この間の労働力をいかに円滑に配置転換して参るかということが非常に労働政策として大きな問題になってくるであろうと考えております。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私ちょっと臨時工の方を見ておったんですが、常用工の方も相当な数字が各産業、ふえておりますが、これは減っておるところがないわけですから、これでいきますと、常用雇用の指数からいくと相当な数が、この毎勤の四月から十一月というのだから、一番いいところだけをとったところですね。あとの十二月から三月という間が出ていないでよくわかりませんけれども、しかし、これでいくと、常用工の方を見ると、相当なふえ方をしている。これだけの就労というのは百万やそこらじゃないと私は思うのですがね。これ具体的にどれだけふえたという、労働者がふえた数は出てこないのですか、これは。
  41. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 御承知のように、毎月勤労統計の雇用指数は一定部分をサンプルいたしまして、それによって指数として統計いたしておるわけでございます。従いまして、毎月勤労統計を使いまして、直ちにこれで雇用がどれだけ伸びたかという実数を推定することは統計上いろいろな問題がありますので、そのような推定は公表しないことになっております。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはとんでもないことじゃないの。ここで製造業が三十三年の四月から十一月より一〇%ふえている。製造業で働いている人が何ぼおるのですか。三百万や四百万おるでしょう。そうすると、そこで四十万ふえるわけですね。九%ふえている。建設業が一〇%、それから卸、小売が八%、金融はそうたくさんおらぬにしても一二%という数字を合わせて見ますと、二百万も三百万もなるのに実数はわからぬ。推定だといってみて、失業者が去年と同じだという理屈はどこから出てくるのです。
  43. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま申し上げましたのは、この毎月勤労統計というものは、雇用指数、要するに指数によって発表しておるということを申し上げたわけでございます。これによりましていろいろ推定することは可能でございます。たとえば昭和三十年度における常用雇用者の限界雇用係数というものをとりまして、そうして、これと鉱工業生産上昇率との相関関係から見て参りますということも一つの推定方法だろうと思うのでございましてこのような角度から、三十四年度の常用的雇用指数の増加がどのくらいになるであろうかというようなことを、これは先ほどお断わりいたしましたように、非常に統計的な誤差がありまするので、一がいにそれをもって結論づけることはできませんけれども、考えてみますると、大体百三十万程度になるであろう、こういう考え方でございます。
  44. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 百三十万に、いずれ積算していただきたいと思うのですが、指数というのはやり実在の上に、それが指数として現われてこなきゃ空の指数なんてあり得ないと思う。だから一〇%、九%、一二%も各層がふえるということはそれだけ雇用の機会がふえたから出てきたという、単に雇用限界係数というようなことでその年の生産にかけて雇用云々なんていうようなことをやるなんていうのはとんでもないことですよ、生産はどんどん上がったって、機械化、オートメーションで生産は上がったって、雇用とはマッチしていない。むしろ生産が上がっている化学工業ほど雇用指数は減っている。だからそういうことで、これ発表するというのは、私は大へんなことだと思うのだが、どういう工合に理解したらいいのですか。
  45. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま申し上げましたように、私は今の百三十万ということは、それで推定できないかという御質問でございましたので、かりにそういう計算をしてみればそういうことになると申し上げたわけでございまして、従いまして、その百三十万というような数字を発表はいたしておらないわけでございます。かような統計の毎月勤労統計の雇用指数というものはあくまでも指数として発表しておる、こういう状況でございます。
  46. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 雇用指数でしょう。雇用されたから、そういう工合に雇用の状態がこういう工合に指数的に上昇しているというのならば、これは裏づけは実在です。そうでしょう。実在なしにただ指数だけ作るのですか。そうはいかぬのでしょう。やはり雇用がどれだけ伸びたから雇用の指数というものは、ここに現われてくるのじゃないですか、どういうことですか。
  47. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、毎月勤労統計というのは御承知のように、抽出調査でございます。全体の産業のうち規模別に抽出をいたしまして、そうして推定しておるわけでございます。従いまして、毎月勤労統計の雇用指数というのは雇用の推移を見る指標として使われておるわけでございます。従いまして、このサンプルされたものを基礎にして全体の母集団を推しはかるということはいたしておらないわけでございます。従いまして、毎月勤労統計というものの雇用指数はただいま申し上げましたように、月別あるいは年次別に雇用の傾向を推しはかるものである。それをそのまま実数として還元することは統計的に申しまして不備があるという考え方で、実数は発表しておりません。これは労働省におきましても統計研究会その他民間の統計の権威者の御意見を伺ってその統計を実施しておるわけでございますが、毎月勤労統計の雇用指数というものはあくまでも傾向を見る、指数で発表する。こういうことになっておるわけでございます。
  48. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だからこれはあなたの方が、あなたの方の解釈で発表されるのはいいけれども、この製造業から区別をして、これだけ指数が伸びているということを見れば、どこにその失業者が——、これでいったら私は百三十万や百五十万じゃないと思うのだ。傾向だけだというふうな、だれが見てもこれはこういう工合に雇用が伸びたと推定を、しろうとが見るとするわけでしょう。それでいて、こういうことで、あなた、失業者が去年と同じだということには、理屈はこれと並べてみなさいよ、そりゃなりませんよ。だから、もう少し資料というものは正直に作るように努力してもらわなければ、もうほんとうに見る者が混乱するような格好で私は資料なんか出してもらっちゃ困ると思うのですよ。実際問題として、一つのある一定の地域をつかまえて、推定でそこのところだけの指数を、傾向だけを見るのだ。これを発表すると、常用雇用指数という格好で、労働者の雇用失業関係指標として発表されるわけでしょう。だから、私はその点は、今だんだん話が進むに従って、こういうやり方については、非常に不満を持ちます。実態というものはつかめない、実態というものをつかまないと、こういうやり方というのは、われわれにしたって現在の労働力の配置がどうなっているかということがつかめないわけじゃないですか、つかめますか。  もう一つ、ついでに聞きますが、一番目に臨時・日雇雇用指数というものが出て、建設業、鉱業は別としましても、電気・ガス・水道業というようなところが順次減っているというのは、これも傾向で見るというと議論にならぬわけですけれども、これでたとえば雇用関係が健全になったとか、なってないとかいうことを、こういうもので推定されるわけですか、全体の雇用関係を。
  49. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 臨時日雇いの雇用指数につきましては、お手元にお届けしてある企業別の数字でございます。従って、これのみをもって、近代化したとか健全化したとかいうようなことを推論することは、非常に早計であると思います。一がいに言えますことは、この全産業の総数を見まするときに、常用雇用の指数も相当伸びておりますが、臨時日雇いの雇用指数というものは、それを上回って伸びておる、こういうことでございます。これは好況時におきましては、日本の産業界におきましては御承知のように、その好況を反映して、臨時日雇いの数というものが増加する傾向にあるということを、やはり三十四年の四月から十一月の傾向も反映しておるところであろう、このように思っております。
  50. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 先ほどからお話を聞いていると、雇用が伸びているとおっしゃるが、あなたの方からお出しになった失業者の状況を見ても、三十三年の失業者が五十九万、三十四年が五十七万、三十五年が、今おっしゃった通り五十五万なんです。それで、学卒の、要するに就職希望者が百六十万ですね。そうなると、今のような、アルファ何万か何十万か知りませんが、これだけ傾向として伸びておるとしたら、ここで失業者が五十五万というのは、片一方ではこんなに伸びているというけれども、ことしの推計で二万じゃないですか。そこで交代する人が、年に四十万もあるわけでしょう。それで失業者がたった二万しか減らないということが結論づけられるわけでしょう、片方の面からは。そうすれば傾向を、何ぼくらい画にかいたもちをやってみたところでどうなるんですか。
  51. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、完全失業者というものは、ただいま御指摘がありましたが、労働力調査の一つの定義に当てはまるものをさしておるわけでございます。そのほかにいわゆる不完全就業的な形態、潜在失業的な形態の者が相当いるということを先ほど私は申し上げたわけでございます。来年度におきましても、本年度に引き続きまして経済規模は拡大し、それから生産は伸びるという予想になっております。雇用も伸びることになっておりますが、この反面、このような完全失業者の増につきましては、やはり景気がよくなるというような状況を反映いたしますると、今までの潜在失業的な階層の中でも、職安に職を求めて出てくるという者がまたふえてくる、潜在失業的なものが顕在化するという傾向もあるわけでございます。最近の、ここ数年間の数字を見てみますと、完全失業者の数というものは、従いまして景気の好況、不況というようなものを必ずしも忠実に反映いたさない。もとより多少の増減はございまするが、正確に反映はいたさない、こういう傾向もあるわけでございます。従いまして、来年度におきましては、本年に引き続きまして、さらに完全失業者は二万減少するであろうが、それよりは減少することはない。それはただいま申し上げましたように、完全失業者のほかに、不完全就業者的な者も相当ある。これらのものが顕在化してくる要素もあるというような面を反映いたしまして、この完全失業者の数につきましては、三十五年度におきましても、本年度に引き続き二万の減ということを見込んだわけであります。
  52. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、今の不完全就業、潜在失業者が、今の状態では雇用関係にあるから、完全失業者にならぬわけですね、大体雇用関係にあるから。それじゃその潜在失業者が雇用の中の職場転換をすると、それをもって伸びた━━よりよい職業につくということで伸びたと、こういうことでしょうね、おそらくあなたのおっしゃっているのは。伸びたと言われるなら、ぜひ一つ労働省は、各産業ごとに、今までの労働者が何人で、そうして、どういう工合にそれの生産の問題は……、それまで出してくれとは言いませんから、できたら生産の関係と、それからどの産業でどういう工合に、一年の間に伸びたか減ったかということの調査はどうですか、できませんか。
  53. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、指数による傾向の推移はお出しすることができます。ただいまここにお出しいたしましたもの以外にも、さらにもう少し分類しました表はお出しできると思いますが、実数の面につきましては、これはただいま申し上げましたように、毎月勤労統計というものは、毎月もしくは各年々の雇用の推移というものを把握するための資料でございますので、実数の把握というものは危険であると考えております。その意味におきまして、ただいま総理府統計局等におきまして、労働力調査等も実施いたしております。この労働力調査等をもう少し実数を反映できるように検討することが必要なのではないかと考えまして、労働省、経済企画庁から総理府統計局に検討の依頼をしておるところでございます。今後におきましてさらに細分いたしまして、いま少し精密な分類をすることの必要性は考えられますので、この点につきましては、企画庁、労働省、総理府統計局とよく相談し合いまして、今後さらに、もう少し精細な分析を行なうための資料整備して参りたいと考えております。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえば交通関係なら、運輸省に三カ月ごとですか━━の毎月の雇用関係報告をせなければならぬ義務がある。交通関係でも相当なものです。通産省の関係においても、おのずからそういう工合に各産業ごと、会社ごとに、生産の問題と、雇用指数の問題との関係の届け出という義務が私はあると思うのです。それを集約すれば、労働省だって、そういうものを、会社が出す数字が間違っておるというなら別です、そういう見方をするなら別ですが、一応の表面に現われている、会社が届け出ている数字というものは、集約するのにそうひまがかかるものじゃないと私は実数調査で思うのです。それを一定の毎勤の傾向だということで一〇%も伸びているというなら、日本の潜在失業者なんて、二年も続けば一ぺんに飛んでしまいますよ。だから、そういうことじゃなしに、実数を調査した上で、どういう工合に伸びているか、伸びていないかということを把握するよう努力をされないとわれわれはわからぬと思うのです。こういう数字だけ持ってこられても、中枢の傾向推定だということでうんと伸びているということだけでは、私はこれはわからぬ。だから、それはぜひ一つお願いをしたいと思うのです。  そこで問題は、その雇用関係が、たとえば常用と臨時・日雇と、こう書いていますけれども、どういう傾向でたとえば雇用関係が伸びているか、そういうことはどうですか。
  55. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 常用と臨時・日雇に分けまして傾向を見てみますると、これは常用の伸びも相当出ておりますが、それより以上に臨時・日雇の伸びの方が著しい、こういう最近の傾向でございます。
  56. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 日雇いというのは、今私の言ったのは社外工のことですね、日雇い、要するに臨時と、本工と社外工の関係ですね。この三つについて、本工より社外工、臨時工の方が伸びがきつい、こういうことですか。
  57. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいまお話しのように、社外工としてどのくらい伸びておるかということにつきましては、このような毎月勤労統計のような総合的な統計はとっておりません。ただ造船業ではどうなっておるか、鉄鋼業ではどうなっておるかというような、いわゆる臨時工、社外工的なものが多い業種がございますが、それらのものについては最近の傾向を実数で示して数字が基準局の方で推定しております。それらのような個別的な数字はございますが、全体としての総合的な統計調査は出ておりません。
  58. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまお尋ねのございました社外工の数字でございますが、全体としての統計の数字はないわけでございますが、社外工が最も多いと思われる造船業につきまして、昭和三十四年四月に二十四社を対象にしまして運輸省の船舶局で調べた数字がございますので、これを申し上げます。二十四社でございますが、本工が八万七千九百六十六人、それに対しまして臨時工が一万四千三百二十七人、請負工、これがいわゆる社外工になるわけでございますが、二万二千二百三十一人という数字になっております。
  59. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それじゃそこで、先ほどのお話を聞いてみますと、ことしの雇用計画の中に農業労働者転換ですか、そういう問題はゼロだと、こうおっしゃっておったのですが、今農業労働者、農業の事情というものはよく御承知だと思うのですが、どうなんですか、農業労働者が雇用労働者転換するのはことしはゼロだと、そういう推定をされる根拠はどういうことですか。
  60. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 農業労働者につきましては、いろいろな推定があるわけでございますが、三十四年度におきまして農林業の就業者は三十三年度と同じ千五百二十二万人、このように見込んでおるところでございます。この間において、それ以外の非農林的なものに転換する者も考えられまするし、逆に非農林業から農林業に入る者もあるわけでございます。これらについてはいろいろな問題がございますけれども、農林省等と御相談を申し上げまして、結局今までのここ数年来の傾向を見てみまして、農林の就業者の数というものは横ばいで推移するであろう、こういう考え方で一応ゼロという増減の見込みを立てておるわけでございます。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで私は、その農業労働者の今の現状を見ますと、生活が苦しいので自然に他に求めていこうとする潜在失業者といいますか、そういう要素が多分にあると思うのです。それをゼロと見るという冒険さですか、経済が幾らかでも上昇すれば、自然にそういうところに転向していく、三反百姓では食えないから、何か生活の道を開いていくというのは、私は、もう経済回転がよくなればなるほど非常に強い傾向として現われてきようと思うのです。来年度この政府の経済見通しからいくと、百万、今九十四万とおっしゃったが、経済の成長率が非常に高い成長率を予想される中で、農民はきめられた土地できめられたものしかとれない、生活の低所得者、低水準の農民、農業労働者が、より強く雇用労働者の中に入ってくると私は推定をするのです。それがゼロというのはどうもうなずけないのですがね。何か大臣見解ありますか。
  62. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) ちょっとただいまの局長の答弁と藤田さんの質問と食い違っておるのではなかろうか。それは農林業の中で、いわゆる労働力としては千六百万くらいおります。千六百万の中で大体五百万がいわゆる業主、家主です、戸主です。千万が家族労働者、そのほかに雇用者として五、六十万人の者がおるわけです。ただいま局長の答弁は、その中の五、六十万の雇用者について申し上げたのです。家族労働者というのが大体一般他の産業への雇用者にかわるのです。これは毎年々々減っております。三十一年が約一千二十一万、三十二年が九百七十九万、三十三年が九百五十二万、三十四年が九百三十万、三十五年は、私は四十万くらい以上私は減ると思います。そこが減ってくるわけで、雇用者というのと家族労働者と戸主と三つが労働力になるわけです。この三つ合わせたものが千六百万の農村の労働力でありまして、家族就業者というのが二男、三男ですね、これがやはり雇用者にかわることが日本の農村の一つの人口問題、農業問題の大きな基礎にならなければならぬ、この労働者の五、六十万というのは、これは主として森林業とか、一時、非常に農繁期とか田植え時期とか労働力が要るのですから、これはなかなか私は減らない、五、六十万の者は減らない、要するに、減るのは二、三男の家族就業者というのが一番大きな間口を占めます。今後減らなければならないし、また、一次産業、二次産業、三次産業と、労働力の配分のときはこれが減らなければならぬという趣旨と、ただいま雇用者という答弁が少し食い違っております。従って、家族労働者はうんと減るにきまっている、減らなければならぬ、また、毎年減ってきております。世界でも日本が一番高い方ですから、農業の労働力、これは減らなければならぬ、また、減らなければ農村の所得というものは、一農家当たりの所得というものは上昇してきません。これが今度の経済計画では、農村の所得は一〇%からなかなかふえないけれども、そのかわり労働力を減らせば、頭割りにすればふえるじゃないかという計算を立てなければいけないという趣旨から今回はやっておりますから、その数字の根拠、その辺が少し食い違っておるのではないか、農村の労働力は確かに減らなければいけません。また減らしたい、雇用者というものは、これはある限度必要だ、ゼロにはなかなかならない、減るのは家族労働者だという趣旨が少し食い違っているのではないかと考えます。
  63. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の言っているのは、農業の中の特定な季節労働的な雇用、ほんのわずかな雇用者を言っているわけではなしに、農業労働者、家族従業員、まあ家族の中には、二、三男というのは今ここに現われているように、義務教育の中学を経て転換していく。これは農業労働者と言えるかどうか。これは私は言えないと思う。これは転換をしていく。しかし、農業自身の零細化によって、農業自身が廃業をして、そうして雇用労働者転換をしていくということが、私はゼロだという環境にはならない、私はそう思う。そこを尋ねている。
  64. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま大臣が御答弁いたしましたように、農林業に従業する家族従業者、自営業者というような層につきましては、減少するという見通しを立てておるわけでございます。業主、家族従業者について見ますると、三十四年度は六万減少、それから三十五年度は二十五万減少ということで、ただいまお話しになりましたような減少傾向を見込んでおるわけであります。その反対に農林関係の雇用者、これは数は大した数ではありません。五十万程度の数でございますけれども、これは林業関係の伸びというようなものも考え合わせまして、三十四年度が六万の増、三十五年度が五万の増、これは大体雇用者でございます。そういうことを推定しております。これらを合わせまして就業者全体として三十四年度においては横ばい、三十五年度は二十万の減少。雇用者は伸びますけれども、家族従業者、業主はさらに減る。これを反映しまして、雇用者の伸びを勘定に入れれば二十万減少する、こういう見通しを立てておるわけでございます。
  65. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、本年は、農業労働者が二十五万に減って、そうしてそれは雇用者に転換をする、こういう推定ですね。転換をするというのか、機会をねらっているというのか、そういう状態にある、こういうふうに認識するわけですね。それにしては二十五万とは非常に少ないじゃないですか。先ほどの雇用者の伸び、その他から言って二十五万というのはえらい少ないが、どういうもので二十五万という数字を出したか。
  66. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、農林省におきまして、過去の数年間の実績を見まして、その傾向が続くであろうということで、二十五万減という推定をいたしておるわけです。
  67. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、農林省の推定で二十五万と、こう見ているということですね。
  68. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 農林省、労働省等の意見を徴して、企画庁がこのような見通しを立てておるわけであります。
  69. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは次に、先ほどのお話になりました労働力調査の臨時調査で、就職の希望者、転職をしたい、または収入が減って就職を希望する人が二百四十万、その他の低水準収入者の人が六百八十万人だと言われましたが、これは何で押えて六百八十万になったのか。
  70. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは三十四年度に雇用審議会が行なった試算による数字でございます。これを詳細申し上げますと、所得が標準未満の仕事がおもな雇用者、標準と申しますのは十八才以上七千円、十八才未満五千円ということでございますが、この標準未満の仕事がおもな雇用者三百十六万、次に農業所得が年額二十万円未満、耕地面積一町歩未満であって、家計をまかなえない専業的農業経営の従事者、これを百五十五万人と推定しております。第三に、非農林業の所得が年額十四万円未満の仕事がおもな業主、これを百六十二万人と推定しております。第四に、非農林業所得が年額二十万円未満の仕事がおもな業主についている家族従業者、これを五十四万人と見込んでおります。以上、四つを合わせまして、六百八十七万、こういう推定をいたしております。
  71. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 わかりました。これはどういう工合に調査されたのですか。
  72. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは雇用審議会におきまして、専門調査員を設けまして、そうして労働力調査あるいは農業センサス等の臨時調査の数字をもとにいたしまして、試算を行なったわけであります。
  73. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ありがとうございました。そこで、私の見ているのとは、だいぶこの調査は、実態とはズレがあるような気がするのです。これは雇用審議会で、あなたの方の問題じゃないと思うので、これは雇用審議会との間で調べて参りますけれども、いずれにいたしましても、私はもっと深刻だと思うのです。もっと低所得者階層というのは深刻だと思います。そこで労働省として、今のたとえば潜在失業者の概念をどこに置くか、週に一時間働くとか、十時間働くとか、二十時間働くということだけでは、潜在失業者ということの推定はなかなかむずかしい問題だから、結局、私は収入の面、生活の手段としての収入の面から、一定の規制をしなければならないと思うのです。そういう格好で、潜在失業者といいますか、この調査をおやりになる考えはないかということをお聞きしたい。
  74. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、要するに、対策上の見地からいろいろな数字を利用しなければならないと思います。先ほど申し上げました通り、不完全就業ないし潜在失業者の推定数字というものには、いろいろな資料があるわけでございます。転職追加就業を希望する者に対して、これに対して適職をあっせんするというような職業紹介的な見地、狭義の雇用政策的な見地から考えますと、先ほど申し上げました総理府統計局において、就業していても収入の不足する等の理由から、転職追加就業を希望する者というような数字を合計してみまして、大体二百四、五十万人というものが利用されると思います。それから、その雇用されている内部の問題として、現在の所得をさらに高めていくという問題につきましては、ここにただいまも申し述べました雇用審議会が行なった試算の、不完全就業者というようなものを利用していくということが考えられると思います。それら、いろいろな現在ある資料を参考にいたしまして、総合的な見地から、あるいは労働力の配置転換の問題の政策を考える、あるいはその雇用されているところの事業所内部における所得の向上をはかる。このような総合的な政策が必要であろうと考えております。
  75. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今おっしゃったけれども、雇用審議会の調査を見ても、労働力調査、その他の臨時調査によって試算をやってみた。そうしたらこういうことになった。これは至って私は基礎になる調査が推定調査です、推定抽出統計の調査を基礎にして、また画をかいてみたということですから、私はあなたの方を責めるわけではないけれども、あまり当てにならない。みずからが実態に触れて、それで調査をしてみないことには、こういう問題が出てこないと思うのです。ですから、私が今言っているのは、みずからがやはり標準的な地域を厳密に調査し、それからせめて八、九〇%ぐらい実態に合っているというような調査をやらなければ、私は意味がないと思っているのです。そういう調査をおやりになるつもりはありませんかという質問なんですよ。
  76. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これはなかなかむずかしい問題でございまして、全国総合いたしましての調査につきましては、現在総理府の統計局が専門の調査員を多数持ちまして、そうして全国を地域的にサンプルいたしましてやっておる労働力調査及び一年に一回の労働力臨時調査というものがあるわけでございます。従いまして、全国的な推定をいたしますには、やはり現在やっておるベースの上に立って、これに注文をつけまして、もう少し内容を精密に分析できるような検討をしてもらうことが必要だと考えまして、先ほど申し上げましたような労働省、それから経済企画庁から総理府統計局に検討を依頼をしているところでございます。これと並びまして、しかしお話のように、部分を限定しまして、もう少し掘り下げた調査を実際に行なおう、これはやはり並行して行ないますと非常な意味が出てくると思います。その点につきましては、労働省といたしましても、よく検討いたしまして、全国的な調査というものは、やはり現在ある土台の上に立って、これを改善していくことが一番手っ取り早い方法であろうと考えますが、それと並行して、もう少し掘り下げた実態の調査ということはすることが必要であろうと考えますので、ただいまの御趣旨をよく検討しまして、今後とも一つ検討したいと考えます。
  77. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、労働大臣にお尋ねしたいのですが、この経済企画庁がお出しになった経済見通しの基本的態度、これについて労働省は作業に参加したと、こういう工合におっしゃっていた。しかし、私はこの作業に参加されたというならば、もう少しこれだけの経済が伸びているときに、労働省として、たとえば就労の、雇用の拡大の面から、もう少し発言力を強くして、この経済計画というものをお立てになぜなれなかったかという疑問を持っているのです。と申し上げますのは、三十四年度はもう実績見通しですけれども、三十三年度から三十四年度にかけての経済の伸びというのは、非常に私は五・五%の見通しに対して、一三%も伸びている。鉱工業生産についても二七%も伸びている。所得の面に至っては、法人所得は四五%も伸びている。こういう条件の中で今年の三十五年度の上半期には、もはや設備投資の計画は、今の生産設備に対して、三五%の計画がもうできている。これは一面おのおのの製造業者が持つ資金その他もあるけれども、やはり何と言っても政府は財政投融資の面から、金融の面からめんどうを見ていることだと私は思うのです。それでいてだんだんと近代化、オートメーション化してきてそういう所は、雇用が伸びていない。産業の二重構造と言われている中で、中小企業や零細企業やそういうところに経済的な面からも、しわ寄せされて、また、雇用も二重構造的な要素になってきている。だからここで私はやはり何を言っても世界の国と日本が正常な貿易をしようと思えば、ただ企業が金をもうけるだけでは世界のおつき合いの幅というものは私はだんだんせばまっていくのではないかと思うのです。いかなる人権が尊重され、いかなる条件のもとに日本の経済というものが伸びていくかどうかということが、今後の私は貿易の重要なポイントになってくると、そういう工合に見ているわけです。そういうことになると、今のようなもう機械で労働者が要らなくなったとか、もう生産は何倍上がっても労働者はふえない、こういうものに対して私は近代国として外国と……、それから経済を伸ばし貿易を伸ばしていかなければならぬから、何とか指導的な面で、たとえば時間短縮の問題をどうしていくとか、国内の需要の問題をどうしたら…、雇用拡大という勤労の面から、国内需要、購買力という面を伸ばしていって経済の成長に合わせていくとか、そういう問題。ほんとうに機械によって、生産というものだけはここへ出てくるけれども、労働それから勤労、国民の生活という面のやつが、ただ、今までのお座なりの、経済の成長の中において本年は百万くらいだろうというまるでお供えに雇用問題というものがなっているような━━労働省が参加されたと言われるけれども、━━なっているような気がしてならないのですよ。そういう点はどういう工合に労働大臣は発言をして、どういう工合にこれに参加されたかということを私はお聞きしたいのですよ。
  78. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 今回は三十五年度の見通しだけを経済計画にあげまして、長期経済計画は引き続いて今後方針を立てておるわけであります。私は、雇用の問題は、あに私のみならず、世界じゅうが、国民生活の向上と経済という中では雇用が最重点になっております。世界じゅうその傾向であります。その一つの現われとしては、先般のガット協定の前文には雇用ということがはっきり書いてある、それからまた、つい先般のヨーロッパの共同経済圏についても同様なことが言えましょうし、また、日本が加入しております国際基金協定の第一条にも、高水準の雇用と産業の発展ということが同じ文句で書いてある。従って、雇用というものは今日はどっちかというと、産業の一つの柱である。金融と同じくらい私は雇用と国民所得というものは同じ程度になって重要視される、そういうのが世界の趨勢だと私も思っております。従って、将来十年間の見通しというならば、労働省としても十年間の見通しを立てるということで、私は相当この案には参画し、今日までたびたび発言をしておって、まだ成案は得ておりませんが、発言をしております。また、労働時間につきましても、もちろん四十八時間というのは世界の一応の水準でありますが、この水準に甘んずることなく、私は十年計画くらいでやはり四十時間という見通しを立てまして、やはり十年くらいの計画を立てていきたいと思っております。やはり労働時間というのは一年や二年で区切ることはできません、産業の実態とかいろいろな面で。やはり四十八時間を獲得するには五十年くらいかかっている、世界の歴史で。しかし、もう歴史も進歩しましたから、私は五十年も待つ必要はないけれども、十年を目標にして、一応四十時間ということを目標にしながら立てる必要があると私は思います。十年計画のあれにおいてやりたい。それで賃金はどうか、賃金はもちろん上昇を過激に、幅を広げるべき時期がくると思う。これにはあくまで支払い能力、生産性という前提なしにはできません。一番いいが例がただいま藤田委員の御指摘の、卑近な例をとりますと、政府の財政投融資をしております鉄鋼━━鉄鋼の例を一つとりますと、雇用は御承知のごとく相当伸びております。三十年を基準にしますと一三三になっております。鉄鋼は御承知のごとく、ある程度政府が基本産業として保護をする、そのために鉄鋼の生産と価格が安定する、鉄の生産と価格が安定すれば機械工業に響きます。機械工業は一四七であります。これは全部三十年の基準です。機械工業は一四七になっております。その鉄のやはり製品から第二次として電気機械産業というものが出て参ります。輸送用機械器具、これは一四〇雇用がふえております。同じような精密機械が一七五、そういうふうに関連を見て、そういうふうに関連を持った機械━━非常に政府の保護が、鉄鋼に投資したから鉄鋼だけの雇用ももちろんふえておりますけれども、それに関連する━━ただいま列挙しましたのはみな鉄に関連がある。従って、鉄を安くして豊富にするならその関連産業は自然に、直接政府の財政投融資がいかないにしても伸びていることは事実です。従って、九千万の国民全部の声を考えるときに、鉄鋼だけとると議論がありましょうが、しかし、関連をとると相当実は伸びているわけであります。こういうことを私は経済計画のときに特に発言をしているわけなんです。従って、全部が悪いならばこれもいろいろ言えますけれども、今日かりに貿易自由化という議論が出ましても、一応生産が伸びている。雇用が伸びている。従って、ある程度の生産競争というものは、雇用の場面から言うと有利になるわけです。倒産するような生産競争は困ります。しかし、ある程度生産競争ということは雇用の奪い合いであります。奪い合いのときには必ず条件がよくなる。最近一番目立ちましたのは、昨年の暮れ以来いわゆる繊維産業に女工の奪い合いが起こりました。今日はおそらく、何十人、何百人という女工さんの引き抜き競争というときには必ず前よりもいい条件が出てくるわけです。従って、私は、ある程度生産競争というのは雇用面にはいい刺激になる。しかし、あまり生産競争が過激で倒産するとかあるいは閉鎖するという状況はこれは困ります。その意味で、私は貿易自由化の議論のときには、今日程度の自由化と競争はかえって雇用にはいい刺激になる状況だ、ことに日本のような労働力の多いところは、ある程度こういう状況が持続するときには、雇用はおそらくもっと条件がよくなるのではないかという気持でずうっと雇用統計を私は見ているわけです。  で、特に私が目立って悪いと思うのは、石炭産業であります。一番代表的なのは石炭であります。これは援護法というものを作ったわけであります。従って、その他の産業は、雇用面においてはその悪い状況は出ておりません。従って、今回の経済計画を立てるときにも、この状況をなるべく維持拡大することに私は尽力をしたい。十年、この程度でずっと拡大しますならば、雇用はおそらく倍ぐらいの質の改善の問題が出てくるだろう、必ず倍ぐらいに改善ができる、そういうことを考えながら今後の問題、その間に時間の問題━━四十八時間が永遠に続くとは私は考えておりません。なるべく短い時間に能率を上げて、いい賃金をとるということが世界の趨勢であります。どんどんいわゆる機械が最高度に発達して参るならば、労働時間をうんと短縮して労働力を上げて、質のいい労働力になって、賃金を今までより多くとれるというのが労働界における理想だと思う。その段階における今日の段階であるから、私はその方向に進むというものをもう少し速度を速めていきたい。時間の問題ももちろん将来考えなければいけません。しかし、時間を短縮さえすればすべてがよくなるかといえば、そうはいきません。すべての条件を整えた上で勤務時間というものを短縮して労働力をよくしていく。そのためには生産性も上げなければいかぬ、労働力の質の向上もはからなければならない。従って、労働省のやることは、基本的には労働の質の向上のために技能、技術というものを早く植えつけて高級な労働力に仕立てていくということが私は労働省の務めだと思う。重い荷物をかつぐだけが労働力という時代はもう過ぎて、今日では計算機を見ながらものを生産するという時代になってきた。それに合うような労働力を私は育てていきたい。そうすれば賃金も時間もよくなるにきまっている。その方向にこの十年計画を持って参りたいというのが私の構想で、今日まだ成案を得ておりませんが、そういう趣旨から私は進めていきたいと思っております。
  79. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、最後に言われたことは私も賛成なんです。人間の能力によって機械化、オートメーション化して、そしてできるだけ人生を幸福に暮らすというところへ人類全体がいくということは、私はその抽象的なことだけは賛成です。しかし、今あげられました鉄鋼の分析を一つしていただきたいと私は思うのです。雇用は伸びています。鉄鋼とそれから造船というのは、今の雇用傾向の中で臨時雇、社外工として本工に対して二対八か七対三ぐらいの格好で、臨時工や社外工という格好で伸びていく、これは御承知の通りであります。そこに働いている伸びた分の人たちが非常に安い賃金で働いておる。基準法からも問題があるような労使関係にあることも事実だと私は思うのです。だからそういうところにおいては、人権尊重とか購買力、経済改善の要素が今の雇用関係にはほとんど考慮されていないと言えるのじゃないかと私は思うのです。この繊維にしたってそうですよ。この前の神武景気以後ほとんど平均四割操短して相当首を切った。少し経済がよくなってきてから、一ぺん帰農してしまって、結婚したとか何とかで、今度はさしあたり労働者が足りなくなったから奪い合いをしている。こういう関係で労使関係が持たれておるわけです。これは経済の傾向の問題ですけれども……。ですから私は、今の問題点として、今度のような景気が伸びていくときには、やはりそういう伸びていくと言われるときにおいては、この計画、この程度にあなたはおっしゃいますけれども、私の意見に賛成だと言われたけれども、そういうにおいがこの経済企画庁の計画の中にどこに出ているのですか、出てないじゃないですか。それを私は言っているわけです。ことしは経済の傾向から見て、短期経済景気循環の終わりの年だと言われている。まあ、どういう工合になるか私は知りませんけれども、しかし、その中でも大きいところといいますか、大法人、大企業はどんどん伸びて、生産設備が伸びていくけれども、雇用の問題というのは出てこない。たまに雇用するというと、伸びたところは、たとえば不安定な労使関係になって、結局先ほど言われた潜在失業者、不完全就業者という位置へ自分自身で追い込んでいるような状態の関係のものが今報告された鉄鋼や造船の問題じゃなかろうかと私たちは思っているのです。だから根本的な問題としてやはり生産が伸びれば、生産に応じて国内需要がふえる。そしてやっぱり働こうとする者は働いている人自身が幸福な生活をするという、これは経済の計画の中の需要にウエートを置いていこうとすれば、むずかしい短縮の問題も出て参ります。重要な問題として出て参りますけれども、やっぱり正常な労使関係━━社外工や臨時工ということでなしに、正常な労使関係というものを作って、一面には社会保障もありましょうけれども、そういう形で経済計画というもの、雇用計画、国民の生活水準を引き上げる計画というものが、やっぱりここでマッチしなければほんとうに平均的には上がるかわかりませんけれども、その恵みを受ける者、その潤いを受ける者は、国民のほんの少数の者を頂点として受けているという、こういう格好のものを私はやっぱり労働行政の面から征服していくところに労働大臣の私は任務があるのじゃないかと、こういう工合に見てきますと、生産の問題、この計画の問題から見ると、私は何かことしは百万ぐらいだ、一面、経済の成長率なんというのはものすごい勢いで伸びている中で、このくらいの雇用が伸びるのだということでは私は終わらないと思う。近代国家の工業国の仲間入りをしようという日本がそれでやっていいかどうかというのが私は非常に疑問なんです。だから十年計画という中で労働時間もやっていこうと、何もやっていこうということについては、その熱意は私は敬意を表します。具体的にことしの問題だけを見ても、もっと熱意が入って、この基本的態度、政府の基本的態度に熱意が入ってよかったんじゃないか。これ自身が裏を返せば、純経済的な面から言って、日本の経済というものが外国に伸びる条件を、やはり裏を返せば作らなければならぬのじゃないかという感じを持つ。最近貿易自由化の問題が出て参りました。この問題との関連においても、たとえば私は神武景気から不景気に、三十二年に不景気になったときに、日本と同じようなといいましょうか、アメリカをどけた欧州の工業国なんかの景気循環というものの影響なんというものはほとんどないのですね。日本だけがあんなひどい目にあっている。今度また不景気がきたらどうなるか、不景気という状態がきたら日本はどうなるかということをわれわれは心配しているわけです。それはやはり企業条件、国民生活、国民購買力を上げてやっていこうという、そういうところにこの経済計画自身の視点が置かれていないから、また、今度景気循環で、ことし終われば、とんでもないことに追い込まれはせぬかということを私たちは深く心配をしているのです。そういう意味からいっても、ことしのような成長をするときに、大胆に労働省としては、この経済計画の中に大きな発言権を持たれて、そういう意向を、不景気といわれるときにはできませんから、ことしのような条件のときになぜもっと強い発言をこの中にお入れにならなかったかということを私は痛感をしているのですが、何か御所見があったら……。
  80. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 経済計画と雇用計画を三十五年度の見通しを見ますと、心理的にいうと私はもっと伸びると思う。ただ、統計はこういう統計しか出てこないという、どちらかというと、ある程度安全度を見た統計だと私は思います。私は個人的にいえば、もっと経済も伸びるだろうし、雇用も伸びるだろう。しかし、統計はこういう見通ししかできないというのが三十五年度の見込みだ、おそらく三十六年度に決算を見れば、もっと伸びるだろうと私は思うのです。しかし、今日統計は一応安全度を見てこういうものだというのが計画ですから、必ずしもこれが経済計画のようにぴしゃっとするわけじゃなくて、一応の経済の見通しだ。私はおそらくそういうことがより日本の国民にはいいことなんだ。これより上回ることを私は大いに期待するわけであります。と同時に、先ほどもお話のように、三十二年度の不況から考えてみると、私も日本は輸出産業というものにばかり依存する産業は成り立たない、国内消費をあわせた産業でなければ安定産業と安定雇用に私はならないと思う。諸外国の上下にばかり影響されるのは非常に不安定であります。一番いい例は生糸、生糸はおそらく相場によって左右されます。そうすると、製糸工場は常に不安定なアメリカの相場によってのみ上下する。これでは産業の安定も雇用の安定もできないということを考えると、やはり国内に安定というものを持った上で輸出というものを積み重ねていくという方向に日本の経済は進むべきものだ、また、雇用はそうあるべきだと私は考える。従って、なるべく賃金の上昇を望みまして、消費は健全な消費をふやしたいということは、これは本質的に一致しております。ただ、賃金の上昇の度合いの問題、度合いは何できめるのだといえば、やはり生産性とか、そのものの質とかいうものによってきめなければ、単に賃金は、お前は、この会社は幾らだと決定するわけにはいきません。しかし、方向はおっしゃるように賃金の上昇を期待しながら生産性に合わせていかなきゃならないというのが私は基本的な考えであります。どの会社どの会社と一々指定することはこれはできません。方向はおそらくその方向に私は本年は向かう。それには賃金の上昇はもちろん私も期待すべきものであるということから経済計画を立てて、輸出ももちろんその中の大きなファクターですが、輸出ばかりにたよると、生糸の悪例に日本全産業が陥るというので、生糸には安定帯価格というものを作ったわけなんです。しかし、やはり国際的には非常に大きな影響は受ける。肥料の例がいい例です。肥料が非常に諸外国の相場に左右される。これも困ったものです。やはりある程度国内の安定というものの上に輸出を考えていく産業が安全産業のように私たちは考えますので、藤田委員のおっしゃるように、本質において私もそう変わっておりません。ただ、統計といえば一応統計帰趨というものと安全度を見なければならない。  もう一つ大きな問題は、雇用がほとんど固定化してしまっておる、産業は年中動きます。非常に鉱工業生産が一八〇になったり、一七〇になったり動く、しかし、日本の雇用は非常に固定しておるもので、産業の縮小に応じて雇用の縮小をされるということは、これは不可能であります。そこにまた雇用の問題の大きな問題がある。急に産業の縮小に応じて雇用の縮小をする、それはできません。同時に、産業の隆盛に応じて賃金の上昇はできても、かりに産業によって決算が赤字だから、賃金カットする、これもできません。そこに雇用と産業の違いは、非常に雇用条件が固定化しておる、そこにまた問題点が一つあるわけです。これが年がら年じゅう会社の決算にあげていくというのなら、もっとあげていい、それが下がるときに下げるのは困る、そこにやはり安定度というものが雇用の中になければ、これはできない。従って、もっと実は数字を高く見ても不可能じゃ私はないと思っております。しかし、安全度を見ると、雇用というのは、一回拡大した雇用が縮小されて首を切られることは、これは非常に大きな社会問題になります。そこで私は、雇用と産業の相違点は何だといえば、産業は上下が非常に大きいが、雇用及び賃金の上昇とかは幅というものは狭いけれども、安全度は非常に強いものである、また、そういう性質のものだというところに経済の伸びの割に雇用はその比率で伸びるべきじゃないかと、おっしゃる通りと思うのです。それから逆に下落するときに雇用はなかなか下落しません、そういうところに経済と雇用の相違点があるわけで、車の両輪ではございますけれども、同じ速度で進んでいかないという特殊性は、私は雇用と賃金にはあっていいのじゃないか、それを計算しますと、こういうふうな計算になる、私は非常に消極的だと、御趣旨通りであります。しかし、安全度は雇用に見なきゃならぬということも御了承いただけるのじゃなかろうかと思います。
  81. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣がおっしゃいましたけれども、その政府の発表しておるものだけでも、法人所得が四五%利益が伸びているでしょう、所得が。そうでしょう、実態は知りませんが、実態はもっと多いと私は思うのだけれども、法人所得が四五%、昨年から、三十四年度の実績見通しがふえている。四五%といったら大体五割です。これだけ法人の所得が伸びている。それがどういう工合に転換されておるのか知らぬけれども、労働者の方の面にいかないで設備投資━━設備投資といいましょうか、設備投資したあとは生産調整といいますか、それは会社が都合悪くなってきたらどうなるかというと、繊維のように五割も操短して首を切る、そういうことが平気で行なわれておるじゃないですか、首切りやすいように今の社外工や臨時工というような格好で雇用関係を結んでいくという傾向、ちょっとでもその利益が少なくなったらそういうところは整理していく、膨大な利益が上がっておるときには社外工や臨時工というような格好で雇用条件を結んでいく、こういうのが今の傾向じゃないですか。あなたは雇用と産業とのつながりはあるとおっしゃいましたけれども、そういうなまやさしいものではないわけですよ。それはまあ賃金の問題はその他でからむのかもしれませんけれども、この問題はいろいろの見方があるでしょうけれども、そういう関係で今の労使関係というものは動いているわけです。だからそういう今の大臣のお気持からいえば、この社外工について労働大臣の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  82. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 先ほど法人税の問題ですが、あの統計の中じゃたしか個人企業が減少しております。同じ統計で個人企業が減少しているのは、個人企業が法人組織に変わったのもあるのです。税金のお話の……。同じ統計の中で見ますると、そういう統計で、必ずしも私は四五%否定はしませんが、同じ統計にたしか個人企業が減少しておるということは数が減少し、法人にずっと入れ代っておるという傾向も含まれておると私は思います。一番はっきりしておりますのは、勤労所得を国民所得にあわせてお考えいただけばわかる。この五、六年間ずっと変わっておりますが、全国民所得の中で勤労所得というのは大体四八%です。約五年前です。今日は約五三%であるのです。一番はっきりしますのは一九五一年四二%、一九五八年五三%です。国民所得の中に占める勤労所得の比率です、日本の場合。これを見ていただけば、確かに勤労所得は全国民所得の中でふえておる、確かにふえております。まあ諸外国をずっと見れば必ずしも日本はまだ上の方じゃありません。西ドイツあたりは勤労所得が六三%です。フランスが五八%、アメリカが七〇%、日本はまだまだ実は足らぬ方かもしれません。しかし、逆に言えばフィリピンは四一%ぐらい。だから世界で一番下だという意味じゃございませんが、一番上じゃございません。(「しかしこの統計はあやしいからな」と呼ぶ者あり)これが一番日本で獲得し得る最高の統計です。これ以外にありません。これは世界年鑑の一番正しいものを私拾いあげたものです。そうして見るとやはりおっしゃるように、だんだん国民所得よりも勤労所得がふえておる。これは確かに雇用の質と量の改善だと私は思う。そういうふうにお考えいただくと、法人の例をお引きになりますけれども、逆に勤労所得を国民所得の中に割ってくると、この八年間なりの間に四二から五三になっている、約一一%上がっている。これは膨大なものです。全国民所得の中でですから、国民所得が毎年々々上がっているのですから、その中でなおかつ上がっているのですから、従って、雇用の量と質に関係しましょう。雇用の量と質が相当前進していることは事実です。これでいいということは、もっと諸外国を見ればもっと上にいかなければならぬということは、私の理想です。やはり日本だって六〇%ぐらいまでは十年間ぐらいでいきたいなと、これは私の考えです。もう一つは、日本国内だけで国民所得の伸びと勤労所得とを、三十年から比較します。昭和三十年です。三十一年は日本の国民所得は一一%━━一二%ふえております。勤労所得は一四%ふえておる。三十二年国民所得は八%ふえておる、勤労所得は一一%ふえておる。三十三年は国民所得は三%、勤労所得は八%、そういうふうに国民所得よりも勤労所得の伸びが多いから、ただいま説明しましたように、四一%からだんだん比率がふえてきている。そういうのが今日の傾向ですから、私は満足とは言いませんが、こういう傾向を伸ばすことが今後の国民長期経済計画の一つの目標になると私は言えると思う。従って、悪い例ばかりお取りにならないでいい例もあるのですから、いわば両方で研究していただかないと。
  83. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の言っているのは、これをお出しになるときにちゃんと統計が出ておって、それで法人所得が四五%、勤労所得が一一%伸びてきたということをちゃんと前提として、この案を作っておられるのですよ。今年の、それを僕は言っておるのです。そういう条件のもとにこういう計画をお作りになる。今年のようなときになぜもっと雇用計画の本質的な問題を、国民生活を向上するということをなぜこの計画の中にお入れにならぬか。皆さんこの前の委員会で、去年の委員会で、みんなで労働大臣しっかりやっていただきたいと激励した。激励をしたのにこれを見るとそういうことじゃない。そこを私は言っておる。だから皆さん方の方の事務当局にしてもそういう基本的な方針がここに出てこないから今の勤労毎勤ですが雇用が伸びている、雇用が伸びていると、えらいこれだけの統計を見ると三百万も四百万も伸びているような統計を出して、これは一定の傾向を見ただけだというようなことで、こういう資料しか作ることができないということで雇用対策というものをお立てになるのには、少し私は片手落ちじゃないかということを言いたいのです。
  84. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 今の、藤田さんの、この数字を見ますと、三十五年は法人所得が一〇八・三、勤労所得が一〇九・〇、これが三十五年の見通しになっております。今のは三十三年と三十四年の比較の御議論ですが、三十五年はちょうどその方向が変わってきて、法人所得は一〇八、勤労所得は一〇九というのが、今回作りました企画庁の三十五年度の見通しであります。従って、今回はまあ非常に伸びた、積極的な考えはここに出ておるわけです。
  85. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 三十三年と三十四年の伸びですね、所得の伸びは一四六ですか。ね。来年は見通しとして一〇八にすると、こういうことなんですがね、そうでしょう。
  86. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) はい、そうです。
  87. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから私の言っておるのは、こういう勤労所得というものと賃金所得が一一%しか伸びてないでしょう、ここで。そうでしょう。こっちは一四六も伸びておるという状態で、来年度の見通しだけはつじつまを合わせておくということで、実際問題としてどうなるかという問題が、来年度出てくるわけですけれども、ことしこそこういう実態の上に立って経済計画を立てることにこそなぜもっと力を入れないか。労働省としてはもっとしっかりとがんばる年であるということ言えばいいんですよ、労働大臣。そうでなければ事務当局はまだまだ案を出せないんじゃないですか。
  88. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) その法人所得の中には勤労所得があるわけです。法人所得から勤労所得を支払うんですから。従って、法人所得とこの所得は、法人が取ってしまってどっかに持っていくわけではない。この中からやっぱり勤労所得というものも払うわけですから、従って、この中に勤労所得の占める歩合を計算すれば、相当私は伸びておる。歩合を調べれば伸びておる。もちろん法人所得が伸びることは勤労所得も伸びることであります。従って、法人所得の伸びがいかにも罪悪だという感じではありません。その中から職員の俸給給与というものを、この伸びから払うんですから、従って、私はこれはあれじゃないですか、もう少し内部をよく検討しますけれども、そうその藤田さんの言っておること、私の言っておることはそう狂った統計ではありません。そう狂ってはおりません。
  89. 坂本昭

    ○坂本昭君 法人所得の伸びるのは、やっぱり罪悪なんですよ。こういうことを労働大臣がはっきり認識していただかないというと、労働政策の基本というものが私はできないと思う。それはこの前も前大臣から、総理、大蔵大臣にも質問したんですけれども労働政策の基本は何か。先ほど来この賃金の問題を出しておられるわけで、ところが、第一番目に立つものは生産性、それから支払い能力、そういうものに左右せられて賃金というものをきめなければならぬ。これは労働大臣の御意見のように。ところが、私はこのほんとうの政治というものは、やはり賃金を一番最初にきめるところから出発するんじゃないか。それは例のアメリカのニュー・ディール政策ですね。これは十分に一つ皆さんにも検討していただきたいんです。これは今から三十年ほど前の、まあ三十年前というと、アメリカの三十年前と今の日本と民主主義の発達の段階やいろいろな点で、どう一致するか。これは疑問ですけれども、ニュー・ディールのあの政策の中で私は三つの点をあげれると思う。  第一は、先ほど来の法人所得の問題と関連して来ますけれども、減税の問題、それから賃上げの問題、それから社会保障の問題、先ほど来労働大臣言っておられる。社会保障の中であの当時とられたのは、年金と失業保険です。結局この三つを通してやったのは、購買力を増大していく。つまり内需を固めて、あの第一次世界大戦直後の過剰生産恐慌を乗り切ろうとした。ところが、この三つの減税、賃上げ、それから社会保障の前に、一番先に着手したのが最低賃金制の確立なんですよ。あれは、私は一九三八年だと思いますがね。一時間二十五セント。あれをやったときは、アメリカの憲法に違反してルーズヴェルト大統領が最低賃金制を強行してやった。言いかえれば、これは目をつぶって、むしろ労働政策というよりも、国民の生活の基本として最低賃金を強行実施し、その後あれはもちろん憲法に合致するようにアメリカの労働基準法ができたのですけれども、これが私はやはり労働政策の基本じゃないかと思うんです。先ほど来伺っていますと、なるほど経済政策に見合った労働問題、特に雇用ということを大臣はるる述べておられるので、それは前の大臣より一歩前進ですけれども、一番の基本のところのつかみ方がたいへん違うんですよ。藤田委員と意見はそう違わないというけれども、意見はほんとうは徹底的に違っておる。やはりこの賃金の問題、たとえば法人所得のことについて言うなら、租税特別措置法というふうなもの、あれは三十四年度を計算すると、八百七億ありますよ、八百七億。だから、やはりこの法人の所得の問題なんかについては、われわれとしては神経質にならざるを得ない。それと関連して賃金や雇用の問題を上げてこざるを得ない。しかも一番大事なのは、何といっても賃金だと思うんですね。これは労働大臣が、最低賃金のことについて、一応最低賃金法ができたからいいと言って素通りされては困る。これは毎年々々考え直していってもらいたい。そういう点で、まあ前大臣よりは一歩前進されたということは認めますし、それからなかなか統計を上手に使われて、勤労所得の伸びが国民所得よりも伸びたというようなことをうまく使われる。去年は、それを私は運用して、例の失対賃金の伸びが非常に低くて、そしてその勤労所得の伸びよりもあまりに低い。もっと勤労所得の伸びに近いくらいに伸ばしたらどうかということを議論したけれども、ことしはあの三百六円が三百三十四円ですか、だいぶ上がった。これはまあ一応認めますが、何といっても最低賃金に対する基本的な考えを大臣として明確にしていただきたい。これを考えない労働大臣は、これは労働大臣じゃありませんよ。せっかくりっぱな労働大臣ができておりますから、一つさらに推進していただきたい。最低賃金について、もうちょっと明確な御所見を承りたい。
  90. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 藤田委員及び坂本委員からのお話のように、私たちもずいぶん考えたんです。賃金上昇によって経済の歯車にしようじゃないか。おっしゃるように、ニュー・ディール等でアメリカの輸出もできません。どこにも金がなかったということから、まあああいう制度ができた。日本の場合、やはり輸入しなければいかぬ物資があるものですから、そこに多少私は日本が貿易に依存しなきゃならないという一番大きな問題は、輸入に物資を依存するから、輸出というものにある程度経済が左右されるという問題が出てくるんだろうと思います。最近はおっしゃるように、世界じゅうその傾向が見えて参りました。その証拠には、最近諸外国に対する経済援助という形が、なるべく未開発国を開発して、そして消費をふやすという方向に世界じゅうきておるように私は考えます。日本もおくればせながら、アジアに経済協力というものと合わせながら、あるものは賠償という形でもいっておりましょうし、ある場合には協力基金という形でアジアに投資をしながら、その国の消費水準を上げながら日本の貿易と結びつこうというのが、やはり日本のみならず、世界各国やっておるというのが、多少事態が変わってきたように考えます。それにつきましても、やはり国内の消費水準を上げるということは、これはやはり基本です。私は経済拡大の基本はそうだと思います。国内の消費水準を上げることが一番経済拡大の大事なことである。これを抜きにして、貿易だけでの経済拡大は、これはできません。今日のように、世界の貿易競争のときに、貿易ばかりでやるということは、これはできません。ということは私も実は考えながら、やはり国内経済拡大の基本は何だといえば、国民の生活水準、消費水準を上げることだと思う。それには賃金の上昇だ、これは当然私も考えております。それを少しも否定するものではありません。同時に、それにはいろいろの御意見のうち、最後には私は最賃法だと思うんです。最賃法にかからない方は、実はどちらかといえば余裕があるとは言えませんけれども、また別な問題である。私たちが最賃法を考えて、どれくらいかといえば、さしあたり今日大きく組織された労働組合、労働組織というものは大体八百万、これに付随するものを合わせますと、千二百万くらいは一応ある程度の安定帯といえる。二千万おりますから、残余の八百万は、まあ私たちが政府として、てこ入れしなければならない一応の対象であると思います。そのうち約二十万、今日実施いたしました業者間協定を入れますと三十万、最賃が十万、そのほかに二十万、約三%くらいはやったわけです。しかし、影響はずいぶんあると思います。この三%実施した影響は、やはり十倍くらいあると思います。あれがこうならおれもこうだ、だからみずから見習って賃金上昇が期待されます。やはり最後になれば最賃法にかかるようなものをなるべく引き上げていきたいということが、やはり坂本さんがおっしゃるように一つの目標です。高いところばかり幾ら上げても、これは国民所得の増大になりません。低い層を上げると大きな上昇になる。低い層を百円上げるならば、高い層を一万円上げる以上に上がっていく。なるべく低い層に最賃法を実施したいという趣旨で、昨年以来いろいろ御批判がありましたけれども、私は相当本年は進められる。始めましたのは昨年七月ですから、それ以来最賃法で告示したのは十万を越しました。十一万、業者間協定が二十万、約三十万のものが実施されておる。従って、少なくとも本年は三倍くらい出てくるだろうと思う。そうすると、実は相当の影響力が私はあると思います。私も最賃法には特に熱を入れて熱心にやりました。基準局長会議においても、すべてに非常に促進をしております。非常に促進をしておりますが、正直にいって、なかなか私とあなたと話をしておるようにほんとうにいきません。しかし、その苦労は一生懸命やっておるわけです。いろいろ組合側が出席しないのにやったとか、批判はありますけれども、いずれにしても前進なんです。おれは十歩前進したいのに五歩じゃないかという議論はありますが、前進はしておるんですから、やはりその意味で最賃法で一生懸命今年もやります。それがやはり経済の一つの大きな目標にもなる。その意味で家内労働法にも手をかけて、一番元は最賃法で、そのもとにこれをやらなければ、ざるに水を注ぐような気がしますから、家内労働法に踏み切ろうということで、実は一番の最低賃金は何かといえば、家内労働工賃です。これが最低賃金といえば賃金じゃなかろうか。その上に最賃があり、その上に臨時工、日雇いとか、あるいは失対というものがずっと上に並んでいる。そういう趣旨で、私のねらっておることと、そう違っておりません。そのほかに、今回は身体障害者雇用促進法というものを出しましたから、温情あることも認めていただいて、そういう意味で御協力いただきたい。私もそうわからぬことばかり言っておりません。やはりお話しすれば、ねらいはそう違っておりません。ただ歩み方が藤田さんのおっしゃるように、最初にきめてくっつける。しかし、私は下から順次上げていきたいということであって、私の方向も同じなんです。
  91. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、私はこの今の経済見通しの問題、計画の問題について問題点を指摘したのであって、何といっても、やはり労働時間と最低生活保障の最低賃金をどうするかという、これがこういう経路を経て私は国内の購買力を伸ばしていくということでないと、仕事を与えないでは生活ができぬから、乏しいわずかのものをくれてやるんだというような式の政治というものは、もう今日の世の中には通らぬということを言いたい。あまり時間がかかるから、その問題はもっともっと労働大臣や厚生大臣というものが、国の経済計画に力を入れて、そうして私らは日本だけの現状を言っているわけじゃない。今日の工業国と言われ、近代国家と言われ、また、後進国でもそういう方向で政治をやっておるというのが現実の姿だから、そこへもっと力を入れてほしいということです。  そこでこの問題はいずれ議論することがありましょうけれども、社外工の問題なんですよ。さっき言いました臨時工、社外工という問題ですが、今の労働大臣が言われるものの中のほとんどを占めておる。そしていつも首が切れるという状況です。繊維のように操短をして首を切るというところもありますけれども、傾向としては、不安定な状態に労使関係を置いておいて、いつでも自分のふところ工合で首を切るというような不安定な労使関係というものを、やはり安定した労使関係という方にもっていくのが、労働行政の筋だと思いますけれども、最近の造船や鉄鋼あたりの雇用傾向を見ますと、七割も八割もそういう不安定な傾向で、雇用が伸びたと言ったってそういうことになっておる。これは労働省としては、私はこの問題に根本的にメスを入れてもらいたいと思います。それは理屈をつければ、純然たる請負的な材料を持ち込み、技術と道具を持ち込んでおるのもございます。そこまで一ぺんに入れないにしても、せめて私は職安法の四十四条違反、これの明確なやつだけでも一つ手を入れてもらいたい。第一段階です。これを一つ手を入れてもらいたい。あわせて基準法の六条の、要するにピンはねをやろうとする、やっておる現実に対して、どういう工合にチエックを入れるかという問題が出てくると思います。私は、そういう点の労働大臣の決意を一つ聞きたいのであります。
  92. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) お話のように、造船、鉄鋼というような産業におきましてこのような臨時工もしくは社外工というような制度があることは事実でございます。そこで問題はこれらの臨時工、もしくは社外工というものが身分関係がはっきりいたしませんから、一般の常用工と比べますと、いろいろな面で不利益があるという問題でございます。それがさらに進みますと、いわゆる貸し工というような形態になりまして、これは基準法の六条違反でございます。あるいは今お話のような職安法の四十四条違反になるということでございます。そこで労働省といたしましては、職安と、基準と、両局で共同をいたしまして、特にこういうような社外工、貸し工というような弊害の多いと見られます鉄鋼とか、造船とか、化学肥料というような業種を選びまして、これを直用に切りかえる、あるいはほんとうに純粋の請負形態に切りかえるということについて強く要望をしておるところでございます。この三業種におきましては、労働省の意向を了としまして逐次切りかえつつあります。ただその過程におきまして先日も御指摘のありましたような一部の事業において、まだ非常に不明確な形が出て参りまして、これが明るみに出たというような問題もありますから、これらにつきましては職業安定局、労働基準局と共同いたしまして、基準法もしくは職安法違反と認められるようなものについては、厳重な態度で望むということで今後も進んで参りたい考えでございます。
  93. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働基準局でもそうですけれども、特に職安局は知事の監督下にあるので、監督権行使について相当な私はブレーキがかかっているといいますか、監督行政について十分にやらないといいますか、ようやらぬ、そういう面が多分にあると思います。私らが回って見て、これは歴然たるものだということがわかりながら申し出をされない、回り回って直接間接に地域の、地方の圧力に屈して手をつけ得ないものも、場合によったら会社の御用を勤めるような監督官がいる。悪いことといいますか、間違っていることをやっている会社の御用を勤めるような監督官もいる。こういうことではなんぼ本省の局長、大臣ががんばってやるやる言われても、それはなかなか私はできないことなんだ、そういう感じを持っているのです。だから、そういう点は何か方法を一つ改めてみたらどうかという感じを持つのです。コネクションがつき過ぎているのか、そういう点を非常に心配していますから、そういう点はぜひ一つ改めると言ったってどういうふうに改めたらいいか、私もよくわかりません。もっと監督行政が正常に行なわれるという条件を一つ作ってもらいたいと思います。これはお願いをしておきます。
  94. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  95. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。  それでは一般労働情勢について藤田委員、坂本委員等の御質疑がございましたが、本件に関する本日の質疑はこの程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会    —————・—————