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説明員(
聖成稔君) 水俣病につきましては、前国会の当
委員会におきましてもいろいろ御
質疑のありました問題でございますが、今までにはっきりいたしておりますことは、昨年十月に、
厚生大臣の諮問機関であります食品衛生
調査会におきまして、水俣病の原因物質は水俣並びにその周辺に生息いたします魚介類中に含まれておる有機水銀化合物であるということの答申が出まして、これを
厚生大臣が認めまして、一応水俣病の原因物質は有機水銀化合物であるということははっきりしたわけなのであります。それまでの段階におきましては、あの付近の魚介数を多量に食べますると、人間もあるいはネコも水俣病にかかるということだけは明確でございましたけれ
ども、一体魚介類の中のいかなる物質が有毒であるかということが不明確であったものが、あれによって主として熊本大学を
中心とする研究によりまして、あのような結論が出たわけであります。従いまして、このことをもって直ちに、現地にございます工場が水銀を触媒として生産過程に多量に使っておるという事実も一方にあるわけでございますけれ
ども、それとこれとが直ちに結びつくということにはまだなっておらないわけでございます。そこで、あの発表以後におきまして、経済企画庁が
中心になりまして、水産庁、通産省、それから私
どもの方の
厚生省、これらが
連絡協議会を
持ちましてこれによって今後の最終的な究明を続けてやっていく。つまり通常持っていない多量の有機水銀化合物をどうして水俣並びにその周辺の魚介類が体内に保有するに至ったかということを今後究明する。それには単に医学だけの問題でなくて、水産学であるとか、あるいはそのほかの範囲の学問と共同してやらなければならないということで、ただいま先生御指摘の明年度
予算に計上されております原因究明費も、この有機水銀化合物とは申してもいろいろたくさんあるわけでございますので、その有機水銀化合物の中のいかなる物質であるかということを主として今後究明していくのが
厚生省の担当する分野でありまして、それに必要な経費は一応計上しておるわけであります。
なお、つい一作目きまった問題でありますが、三十四年度の予備金からも約四百万円程度支出いたしまして、この原因物質の有機水銀化合物とはいかなる物質であるかという化学的に明らかにいたしますために必要な器具を
東京の国立衛生研究所に新しく購入いたします経費も要求支出で認められたようなことでございまして、もっぱら今後はその線に沿って
厚生省側はやって参る。それから通産省側は、工場の廃液の
処理問題、特にまた、類似の工場がこの水俣以外に全国に約二十カ所程度ございまするので、そちらにおける廃液の
処理状況、なぜ水俣だけにかような問題が起こったかということを裏づけるための
調査研究を通産省がやる。それから経済企画庁では、海水の化学的な
検査、こういった面を担当してやって参ることに
話し合いがついてそれぞれ
予算に計上されているわけでありまして、むしろ水俣病の原因究明の段階は最後の追い込みの段階に入りまして、各省の総力をあげてやるような態勢に目下進んでおるような情勢にあるわけであります。従いまして
厚生省関係に計上されております以外に、いろいろまた他に
予算も計上されておるということを御了承願いたいのであります。従いまして、先ほど先生の
お話の問題にありました――今私が申し上げたことによりまして、まだ工場廃液と魚介数の体内にある有毒なる水銀化合物との関連は、最終的にははっきりしていないわけでございますけれ
ども、たまたま現地の工場が水銀を触媒として多量に使うようになりましてから水俣病患者の発生もほとんど時を同じゅうして発生している。そうしてまた、水銀の使用量が上昇するに従って患者の発生数もふえておるといったような事実から、
両者の関連性がきわめて濃厚という見方も非常に強く行なわれておりまして、特に現地におきましては、もうほとんど何人もそれを疑わないというような状態にまで
関係者が思い込むというようなことにもなって参ったようであります。昨年の
厚生省のあの発表を契機といたしまして、熊本県
知事は、一昨年成立いたしました公共用水域における水質の汚濁防止法に基づきまして、
紛争の
調停員――法律に基づく仲介員を任命されまして、この仲介員の方々といろいろ工場側、あるいは漁民側と相談をされまして、先ほど先生
お話のような一応の
調停案が出て、そして話がまとまったと、こういうような段階を経ておるわけでございます。従いまして大体私
どもが一
承知いたしておるところでは、まあ工場側ははっきり自分のところの廃液が原因であるということは認めない、認めないけれ
ども、工場の廃液によって漁業に甚大な悪影響を与えたという事実は認めるというようなことで、相当の補償なり何なりの経費を出したように
承知をいたしておるわけでありまして、従って、その辺から、まあこれ以上明確になっても、さらにもうこれ以上の要求はしないということも
話し合いに出てきたのではなかろうか、かように私は想像いたしたわけであります。
なお、その排水の問題につきましては、昨年十二月の二十四日に、ほとんど完全な浄化装置が完成いたしまして、今後はその浄化装置を、除害施設を通過しなければ、工場廃液は水俣の海域に放出しないといったように私
ども報告を受けておりますし、通産省側もその線に沿っての
指導、監督をいたしておることになっておるわけでありまして、その点からも将来この問題につきましては、私はこれ以上の問題はないのじゃなかろうか、かように
考えておるのであります。問題は水俣湾の湾底にありますが、海底の泥土が多量の水銀を含んでおる。従って、この海底の泥土をどうするかということがやはり今後の
一つの最終的な
解決の
方法になるのじゃなかろうか。しかし、これ以上水銀を多量に含んだ廃液が水俣湾に放流されるということは、この除害施設によって私は今後あり得ない、かように
考えております。