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田中一君 それは指名競争入札の場合ですね。今のお話ですと、これは大へん
成績がいいと思うのです。
成績がいいというのは、あなたの方の談合が上手だということです。談合というのは、相手方が謙譲の美徳を発揮して、木曽さん、あなたが適当だからあなたがおやりなさいと
——談合は不正だとは思っていません。今の商慣習で、どこの
業者も話し合いをして藩札をするのが現実なんです。悪いとは思っていない。それが、
発注者が持っておる予算というものを知りながら、一億しか持っていないものを、五人なら五人で相談して一億五千万円に上げようじゃないかというのは、これは犯罪行為になります。しかし、一億円か八千万円か知らないけれ
ども、とにかく妥当なる見積りをやって、これなら木曽さんのところが一番安くてあなたのところが適当だから、あとの四人は辞退しましょうといって、木曽さんが
仕事を
契約するということになる。そういうことはこれは
業界の美徳です。これは決して悪いことではない。そうしなければならない。しいて言うならば、
法律できめたつていいと思うのです。そんなことはできないかもしれないが、そのくらいに思っております。従って、あなたの方で十件のうち一件が落札されるということは非常に
成績がいいと思うのです。私の今まで聞いておる範囲では、地方の
業者は六十ぐらいやって
一つの順番がくる。そこで、そういうことになりますと、
保証会社を否定しようという考えであるのじゃないのですよ。
発注者は一体何がために五名の
業者を指定してそれに見積りを出させるかということなんですよ。これはおそらく最良なる条件で、最良なる技術家、最良なる材料等を発見するために五名という特定の者を指定して、それに見積らせるのだと思うのですよ。少なくともこれは
発注者の
利益を守るためにやつているにすぎないと思うのです。そうなると、あなたがさっきお話しになったように、十件の入札をして
一つが取れるといって、取れるか取れないか知らないが、取れるのです。あとの九件の費用はどのくらいかかりますか、見積りをするための費用、まじめに内訳明細を作った見積りと、勘でこの辺だろうといってやる、一枚の白い紙に
金額を書き込むのと、五名で話し合って、だれか一人がこまかい見積りをして、君は、何々組は八千九百万、おれは一億、おれは九千五百万というのじゃなくして、予定価格の八千五百万というものが出た場合に、それではちょっともう少しもらわなければならぬ、九千万にしようじゃないかという話し合いの場合には、一晩飯を食って、一晩夜明かしして話をすれば、そろばんが出る。これは費用がかからないのですが、あとの九件をまじめに見積ったならば大へんなことです。一本々々材料がどのくらいで手間が
幾らとか、砂利は、神奈川県は夜は通してくれないから、輸送費が高くなる。積載量も五トンなら五トンぎりぎりだ。今までは
請負人は六トンでも六トン半でも積んでいたから
事故がある。それがなくなってくると、いろいろな意味で単価が上がってくる。そういうものを見積ったりすると大へんな費用がかかる。その費用は
発注者は何も見込んでいない。あなた方の犠牲でもって目積りをするわけです。その犠牲的見積りをする費用も、あなた方が
自分の労働によって積算をするわけです。それで出ようがないから、話し合いでもってものをしようということにならざるを得ないと思う。そこで、私はこういう
制度はどうかと思う。
工事完成保証人の点について、廃止したらいいという考えは同感です。しかし、三高さんがおっしゃるように、今の段階では、今の形ではどうにもならぬと思う。先ほど
高田君から
説明を聞くと、そういうものはしよがないと思うと、五名の特定の
業者を指定して、これに対して見積りをさせるならば、だれかが落札
契約する、四名が全部
工事完成保証人という
制度にしたらどうかということを考えている。指名されたということが栄誉であるならば、あるいは指名されたということが、次の
仕事をするためのステップとして営業上有利な立場に立つならば、四名に共同に
工事完成保証人を
義務づけるということです。これは当然
義務づけられる。そうして
前払い保証会社は
工事完成保証人とは何ら
関係がないわけです。
工事完成保証人が何名おろうといなかろうと
関係ない。少なくとも双方の
契約というものができ上がった、その
金額に対して許されている範囲の前波金をもらう
保証をしようということにすぎないから、
関係は全然ないわけです。そういうふうに理解していってよろしゅうございますね。そうなると、あなたが、
工事完成保証人というものでひどい目に何回かあったということは、まことにお気の毒に思いますが、今度の
改正の
法律というものがなると、今度は楽になりますね。そういう意味では金がこっちに戻ってきますから。そのかわり
保証会社の方は、今までおれは知らぬといっていたのが、継続して
仕事をする相手方ができたから、今度は
保証をしなければならぬことになる。
三島さんの方から、請け負った
仕事に対するところの請求権は残るということになる。そうなると
工事完成保証人というものと、指名された
業者というものが一体であれば、いろいろな問題が解決するのじゃないかと思うのですが、どういうものですか。もし、できるならば、まじめにあなた方が内訳明細を個々に作つて、それに対して
幾らかの手数料をもらう、見積り料をもらう、見積り料をくれないからあなた方は談合してしまう。談合が悪いというのじゃない、再度言いますけれ
ども。まじめに見積っていない場合は悪いのじゃないか、それではいかぬというのです。指名を受ける権利、権利はございません。この
工事は完成するであろうという見通しのもとに
——これも
発注者の独断です。国の場合には
法律でもって行政権に与えられている範囲内でもって選択しているのが実情なんです。そうして、どの場合でも予算をオーバーして、予算をこえているというような入札はまずないんです、絶無と言ってもいいと思います。まあ八千万、八千五百万のものを一万円で落札するような人もいますけれ
ども、大体同じような見当についていると思うのです。だからその場合には、
政府は、
発注者は、金は余しますから、若干ずつ余るやつは、また
工事を延ばしたり、別の方に流用する範囲の流用の仕方でもって使いこなしているのですから、それならば九件の見積りをするというこの労働と営業に対しては、当然見積料というものは払うべきであるというように考えているのですが、その点はどうお考えになります。ちょっとくどく長く言ったから、理解しにくかったと思いますが。