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1960-03-29 第34回国会 参議院 建設委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十九日(火曜日)    午前十一時二十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小平芳平君辞任につき、その 補欠として北條雋八君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            稲浦 鹿藏君            松野 孝一君            武藤 常介君            田中  一君    委員            太田 正孝君            小山邦太郎君            櫻井 三郎君            田中 清一君            米田 正文君            内村 清次君            武内 五郎君            永岡 光治君            田上 松衞君            北條 雋八君            村上 義一君   国務大臣    建 設 大 臣 村上  勇君   政府委員    自治政務次官  丹羽喬四郎君    自治庁財政局長 奥野 誠亮君    経済企画庁総合    開発局長    藤巻 吉生君    大蔵政務次官  前田佳都男君    農林政務次官  大野 市郎君    林野庁長官   山崎  斉君    建設政務次官  大沢 雄一君    建設省河川局長 山本 三郎君    建設省河川局次    長       曾田  忠君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○治山治水緊急措置法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  前回に続き、治山治水緊急措置法案を議題といたします。御質疑の方は順次御発言を願います。
  3. 田中一

    田中一君 山本さん、河川局長にちょっと伺いますが、美和ダムが昨年の災害上流が決壊し、そうして推定三十年分の土砂が一夜にしてたまってしまったという事実ですね、これはまあ発電はたしか県営だと思いますけれども工事建設省直轄工事として行なったものである。その際にダム地点湛水区域は当然のこと、それから湛水外上流渓流砂防というものはしなければならない。ところが、しておらぬからああいう結果になったんではないかと私ども推定しておるのです。そこで、美和ダムに対する砂防工事計画というものはどうなっておったのか、伺いたい。  それから、将来——将来と申しますか、現在もやっておりますところの多目的ダムあるいは補助ダム等上流砂防についてはどういう対策を立てておるか。またそれらの費用というものが、私の考えとしては発電を担当するあるいは県営あるいは電力会社等々、それらの者に負担をさせてもよろしいではないかという点であります。むろんそのためには国民負担する料金という問題にもかかって参ります。かかって参りますけれども、そういう形で電力会社等負担するか、もう一つの問題は、上流砂防というものがダム築造して多目的目的を持っておるという場合には、当然その水域のある地点まで科学的にこれは調査して、悪影響を及ぼさないという地点まで国が当然砂防工事をすべきである。これらのものが途中でダムでカットされて、下流におけるところの災害も守るということならば、それらに対するアロケーションというのですか、負担という問題をどう考えるか。  同時に、美和ダム上流には林野庁所管しているところの山も相当あるはずでございます。従ってこれらの山腹に対する砂防というものが、どういう形で美和ダム築造と相見合って話し合いができておったか、こういう点について経緯を詳細にお述べになると同時に、今私の質問した点について御答弁願いたいと思います。
  4. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) まず美和ダム埋没状況上流砂防の現在までの実施状況及び今後の計画を申し上げます。  美和ダム計画といたしましては、堆砂の予定量とそれからその上に使わない水としてヘッドを取るために、デッド・ウォーターというのを取っておりますが、それと合わせますると千百九十三万四千立方メートルというこの上砂がたまっても差しつかえない量があるわけでございます。これに対しまして、三十四年の十二月末現在までにたまりました量が四百二十五万六千立方メートルになっております。そのうち七号台風でたまったと推定されるのが約三百万立方メートルでございます。そういうような現状でございますが、この計画を立案するにあたりましては従来の実績等から考えまして、流域面積の一平方キロ当たりから一年にどのくらいの土砂が出るだろうかという推定をいたしておりまして、これは五百三十立米くらい出てくるだろうということで計画をいたしまして、流域面積が約三百十平方キロでありますので、三百万立方メートルというと大体二十年分ということに相なるわけでございます。計画といたしましては、結局四十年分の堆砂を見てこの堆砂量は六百五十八万六千立方メートルでありますが、その上に死水を入れまして、先ほどの千百九十三万四千立方メートルということになっております。従いまして、土砂の堆砂量の六百五十八万六千立方メートルのうち、七号台風で三百万立方メートル、その前に出たものを合せますと、四百二十五万六千立方メートルのすでに堆砂が進んだということでございまして、現在の機能といたしましては、従いまして洪水調節発電等機能を阻害をしておるというような状況ではございません。ただ計画でとった堆砂量相当程度号台風までの出水によりまして堆砂を来たしたというような状況でございます。  それから砂防堰堤でどのくらいのことを計画しているかということでございますが、現在までに砂防施設といたしまして、三峯川の流域に投入いたしました経費が一億八千万円でありまして、三十四年度は三千四百九十万円、三十五年度は四千五百万円を入れる予定でございまして、堰堤を一番ひどい渓流に三基作る予定であります。  それから今後行ないます五カ年計画、十カ年計画の問題でございますが、全体計画といたしましては約十億必要とする。その内容といたしましては堰堤が四十二基でございますが、そのうち五カ年計画、十カ年計画の問題でございますが、十カ年計画では約五億三、四千万円入れまして工事を続行しようということに考えておる次第でございます。  それからこの美和ダム計画にあたりましては、先ほど堆砂の予定推量もございましたが、これが土砂がたまりますと、天龍川の河床上昇を助けるわけでございますので、砂防にかわる施設ということでアロケーション対象にいたしておりまして、従って公共事業費土砂堆積分に対しての費用を持っておるような実情でございます。  以上のような現況でございますが、美和ダム築造にあたりましては上流にもっと砂防をやっておかなければならなかったということは、今回の出水によりましてもよくわかったわけでございます。ただ非常に大きな出水が参りますと、一年で平均の流砂量の十倍あるいは二十倍の土砂が流れてくるということは、普通ほかの堰堤でも期待されるところでありましてまあこういうような大出水が何年に一度くるかというような問題が非常に問題でございましてこれがたとえば去年のような出水がまた来年きますと、計画してとっておりました堆砂量が二年で一ぱいになるということになりますけれども、まあわれわれが考えるところでは去年の七号台風というような洪水は、計画洪水にほとんど匹敵するような洪水でございましてまあこの間も本会議で御質問が、ございましたようにわれわれの確立でいいますと、まあ少なくとも五、六十年に一ぺんのような洪水ではないかというふうに思っておりますが、そういうようなものが去年参りまして三百万立方メートルの堆砂をきたしたわけでございますが、こういうのがまた近くありますると、堆砂容量というものが二年でだめになってしまうというようなことも想像されるわけでございますが、まあ全国に平均いたしてみますと、やはりまあわれわれの考えておりまする五、六十年あるいは六、七十年の堆砂をとっておきまするならば、洪水調節あるいは利水の面で平均いたしますと支障のないように運営できるのではないかというふうに考えております。しかし先ほど申し上げました五百三十立米に抑さえるということは相当砂防を促進した上でこういうことにできるわけでございますので、これらの点につきましては極力堰堤機能を伸長することが必要でございますので、その方面施策を行ないたいというふうに考えております。  それからいつも、この前からもお話がございますように、電力会社等の持っておるダムに対して非常に砂防工事は役立つのであるので、これらの費用を持たしたらどうかというようなお話もございます。これらの点につきましては、われわれといたしましても積極的に考えなければいかぬわけでございますが、ある地区等におきましては堰堤を作ったために被害を及ぼすものにつきましては、堰堤施行者に持たしておるような例もございますが、まだ砂防施設まで発電業者等に持たしておる例はございません。ただ水利使用料等相当の額を取っておりますので県におきましてもそういうふうな方面砂防工事は促進してやるようにということは示唆しておりますが、発電業者等から金が取れるというようなことになりますれば、もっともっと促進できるように考えられますので、この点につきましては今後よく発電業者とも話し合いをいたしまして、協力をしてダムの寿命を延ばすように努力しなければならぬじゃないか、というふうに考えておる次第でございます。
  5. 山崎斉

    政府委員山崎斉君) お話美和ダム地域につきましての建設省考え方、今後どういうふうになっているかという点を十分にお聞きいたしまして、山腹治山につきましてもそれと総合化され、バランスのとれた形で重点的に実施していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  6. 田中一

    田中一君 今、河川局長が一昨年、あのダムができるまでに使った金を説明しておったわけです。従って林野庁はその上流ダムができるまでにどれくらいの砂防費用を投入しておるかという点を聞いておるのです。  それから昨年の災害後における山腹保全のための事業はどれくらい行なわれておるか、将来はどうしようとするのか、この三点について伺っておるわけです。
  7. 山崎斉

    政府委員山崎斉君) この災害前までにどの程度の投資をしたかという点は、まあ今すぐ御説明する資料を持ち合わせませんので、調査の上でお答えいたしたいと存じます。今後につきましては、先ほど申し上げました通り、重要な地点であると思いますので、重点的に実施をしていくということで計上いたしたと思います。
  8. 田中一

    田中一君 あなたの方にも建設省が持っておる三億程度緊急砂防費用があるはずです。従って、災害というものは昨年発生したのでありますから、災害復旧事業としてもどういう仕事に金を使っておるか、また現在までどういう施策をしたかどうかをもう一ぺんお伺いいたします。
  9. 山崎斉

    政府委員山崎斉君) この美和ダムの点につきましては今お話を伺ったばかりでございますので、詳細な資料を持ち合わせませんので調査の上でお答えいたしたいと思います。
  10. 田中一

    田中一君 それでは富士川の支流の早川西山部落、あそこの西山ダム砂防堰堤という形の補助工事で県が行なったというふうに聞いておりますが、むろんあなたの方の所管でしょうね。
  11. 山崎斉

    政府委員山崎斉君) 砂防堰堤としてやりましたものは林野庁所管ではないのであります。
  12. 田中一

    田中一君 では河川局長から、西山ダムが昨年の台風災害ですっかり埋没してしまったというふうに報告を受けておりますけれども、その点の事情を御報告願いたいと思います。
  13. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 早川西山発電所ダム建設事業埋没状況を御説明申し上げます。  これは砂防堰堤として計画をいたしまして、その砂防堰堤を使いまして発電をいたす計画施行いたしたものでございました。砂防堰堤計画といたしましては、高さが一二・五メートルでございます。それを発電に使うために二十五メートルに高さをいたしたわけでございます。従いまして、二一・五メートルの高さの砂防堰堤補助対象にいたしたわけでございますが、それ以上高くする分につきましては県が電気資金を借りまして施行したわけでございます。砂防堰堤事業費は二一・五メートルの分に対しましては一億四千七百万円でございます。それも含めまして全体の発電所、あるいは砂防堰堤も加えましての全体の費用は五億三千万でございますので、その差額の三億八千三百万円が県の電気資金でございまして、その費用をもちまして発電所等事業を行なうほか、砂防堰堤かさ上げを県の事業として施行したわけでございます。そういうふうな施行状況でございまして、砂防目的は昨年の災害にあたりまして十分果たしたわけでございまして現在の埋没状況共同施行と申しますか、今二十五メートルの高さに砂防堰堤かさ上げして作ったわけでございますが、その天端まで堆砂をいたしまして、堆砂量は二百七十万立方メートルという状況でございます。もう一つ付加して申し上げますと、砂防堰堤計画貯砂量は百四十五万七千立方メートルでございますので、それ以上、発電費用かさ上げした分まで堆砂をいたしまして、砂防目的はそれ以上果たしたという実情でございます。
  14. 田中一

    田中一君 なるほど砂防目的は達したけれども発電目的機能を失ってしまったということになるわけですが、その点はどうですか。
  15. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 砂防堰堤目的は十分果たしたわけでございまして、われわれが補助事業対象として取り上げた以上の砂防目的を果たしたわけでございます。片っ方におきまして発電といたしましては、まあ貯水量という点においては今先生のおっしゃるように貯水量がなくなったわけでございますが、ヘッドを取る、落差を取る役目は十分果たしているわけでございますので、発電調節ができなくなったわけでございますけれども、多少その調節でたくさん発電しようというときにできないわけでございまして、水路式というような発電所ということに現状はなっているわけです。
  16. 田中一

    田中一君 そこで、その上流砂防計画はどうなっていますか。
  17. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 昨年の台風によりまして非常にその上流が荒れまして、発電所目的はもちろんのこと、その上流地帯におきましても非常に被害が多くなっておるわけでございますので、昨年の緊急砂防で県の工事といたしまして三カ所砂防堰堤を着手いたしておりますが、これはまあ三十五年度からは直轄区域に編入いたしまして引き続いて施行をして参りたい、さらに三カ所以外にも今はっきり個所数申し上げられませんけれども、さらに追加をいたしまして、砂防堰堤工事を促進して参りたいというふうに考えております。
  18. 田中一

    田中一君 そこで、企画庁藤巻総合開発局長に伺いますが、治山治水計画というものは国土保全であって、総合的な利益というものはなくてもいいのだというような考え方に立つべきであるか。と申しますのは、国土総合開発におきましては利水の面を相当強く強調しております。少なくとも総合開発というものは、国の利益経済効果ということが主眼となって追求されてきておるのが現状であろうと思います。今山本河川局長から伺うと、なるほど砂防目的は達した。しかし利水の面においては少なくとも、これが砂防ダムであるから砂さえたまればほかの機能はいいのだということであるばかりじゃ、私は総合開発としての経済効果というものを発揮させようということにはならぬと思うのです。そこで、幸いにしてそれが砂防ダムであったので——まあ多少良心の痛みも感じておるかもしれませんけれども、前段に申し上げた美和ダムは、あなたの推定によると二十年分の土砂がたまったという。私が行って見ましても上流相当荒れております。昨年のような七号台風程度の半分以下のものでも相当出水があるのではないかと思うくらい荒れております。  そこで伺いたいのは、国土総合開発法、これが目的とするところの問題で、治山治水はその一環でございます。治山治水一環でございますけれども、そこにやっぱり経済効果なり利水の面が強調されなければならぬと思うのです。で、国土総合開発法治山治水緊急措置法案と対比してみて、全然異なっている目的にいってもいいのかどうかという点が非常に疑問になるわけです。国土保全のために、今伺ってみても五億以上の金を投入されておるところの西山ダム埋没する。あるいはそれだけの金で上流渓流に小規模の砂防堰堤を作って、そうして西山ダムが多目的ダムであるならば、これは山本局長もこれに対しては反対しないであろうと思うのです。その方がいいのだというような見解を持たれると思うのです。で、一切の今後の事業というものは経済企画庁話し合いながら計画を練っていくということになっておりますけれども、一体、過去のあなた方がやっておる経験失敗は非常に高価な経験です。もう得られないところの経験です。それらを考えながら、将来数億もかかるようなダムをかりに作る場合には、保全のためのダムであるという考え方に立つのが正しいと思うのか、あるいは多目的総合性、いわゆる利水の面にも相当考慮してやるのがよろしいのか、どちらをとろうとするのか。これは企画庁局長並びに山本さんから一つ答弁していただきたいと思います。この二つの法律関連性を説明して下さい。
  19. 藤巻吉生

    政府委員藤巻吉生君) 国土総合開発法は、災害防除その他いろいろな経済的な利益を生む施設につきましても、総合的に開発計画を立てる法律でございますから、治水関係ダムもその総合的な開発計画一環として取り上げられる場合がございます。私どもといたしましては、水が非常に貴重なものとなりつつございますので、でき得れば一つダム国土保全効果だけではなくてその水を利用する利水の面も含めたダムにしていただきたいというふうに考えておりますが、これはダムのできます場所等にもよりまして、さような目的をも含めて計画が立てられるかどうか具体的な問題になって参りますので、一々その場所に当たって考えなければならぬことであろうかと思いますが、抽象的な考え方としてはなるべく多目的ダムになってほしいとは存じます。ただ国土保全目的だけで砂防ダムを作られましても、これはやはりそのダム目的を達しておれば一つのマイナスの損害を防ぐという意味利益のあることでございますので、一がいに多目的でなければならないということは言えないわけでございます。でき得ればいろんな方面に水の使えるようなダムの方が総合開発意味からは望ましいとは言えると考えます。
  20. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) ダムを作りまして、その目的治水の面で私どもは主として計画をいたしておりますけれども利水の面もただいま総合開発局長からもお話がありましたように、非常に水の資源というものは重要なものでございますので、その水の資源が長く使えるように計画をし、その他の施設、その存命を長くするような施設も並行してやりまして、長く利水目的も果せるように考えるべきものであるというふうに考えております。
  21. 田中一

    田中一君 むろんこの法律の中には多目的ダムというものも含まれておりますが、目的のうたい文句というものはこれはもう利水を考慮されておらないのです。法律を見ますと、「治山治水事業の緊急かつ計画的な実施を促進することにより、国土保全開発を図り、もって国民生活の安定と向上に資することを目的とする。」国土総合開発法には非常に経済的利用の面を強く出しておるのです。「国土自然的条件を考慮して、経済社会文化等に関する施策総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、並びに産業立地適正化を図り、あわせて社会福祉向上に資することを目的とする。」こうなっておるのです。そこでこれは私ども日本のような限られた国土に、ネズミ算とは言わないけれども相当出産率を持っておる日本の民族の発展の経緯から見ても、やはり単なる保全だけでなくして、利用という面が相当強調されなければならないと思うのです。西山ダム上流相当な、小規模でもよろしいから数の多い保全施設があったならば、西山ダムが単なる砂防ダムにとどまらず、ある場合の水の調節役目も果たすであろう、同時にそれは現在では電源開発の場合におきましても、水路式的な機能をいまだに持っておるということでもって足れりとすべきものじゃないと思います。おそらく出力は今までのような完全湛水しておる場合とは、相当な能率の低下はいなめないと思うのです。従ってこの緊急性というものをここで強調しておるということは、今まで国土保全に対する熱意がなかったということも言わなければならぬと思うのです。今後この法の運営で、すなわち六月ごろでき上がる十カ年計画ないし五カ年計画等について、この治山治水緊急措置法のねらっている目的と、国土総合開発法でうたっている目的が、ある面では同じでございますけれども利水の面については全然触れておらぬという現状から見て、今後どういう話し合いのもとに計画を策定するか、また現在までどういう話し合いが持たれてこの法律の提案となったか、その経緯を話して下さい。これはむろん事務的なものでけっこうです。
  22. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) お説のように国土総合開発法におきましては、国土総合開発をはかるわけでございまして、治水利水はもちろんのこと、その他の公共施設を中心として計画立案されているわけでございます。従いましてすでに国土総合開発法によりまして特定地域開発計画とか、あるいは地方計画等も逐次決定されておりますので、われわれが今回の法案を御決定いただく上におきましては、ダムとか砂防等計画につきましては、すでに決定しておりまする総合開発計画と十分マッチした計画にしなければならぬということを考えているわけでございまして特にダム等の問題につきましては治水だけでなく利水の問題が非常に大きなウエートを占めて参るわけでございますのですでに決定しております国土総合開発計画との調和につきましては、従来も十分注意をいたしておりますし、また特定多目的ダム法におきましては、ダム基本計画を立案するにあたりましては、関係各省協議をして基本計画を作るということに相なっているわけでございますので、今後取り入れようとするダム計画につきましても、一応各省協議準備的段階への話し合いをいたしましてこの計画に組み入れて参りたいと考えているわけでございます。基本計画を全部決定いたしまして、この五カ年計画に入れるということはあるいはできぬかもしれませんけれども、そういうことを前提といたしまして話し合いの上で組み入れて参りたいというふうに考えている次第でございます。
  23. 藤巻吉生

    政府委員藤巻吉生君) 国土総合開発法によります開発計画と、この治山治水緊急措置法によります計画との関係につきましては、ただいま河川局長からお話のございましたようなことでございまして、今までも私どもこういう点につきましては十分緊密な連絡をとって仕事をしておりますが、今後も具体的に十分相談してそつのないようにやっていきたいというふうに考えております。
  24. 田中清一

    田中清一君 ただいまの関連でございますが、今砂防だけでなく利水の問題ということがるる述べられましたが、アメリカのテネシーなどでは堰堤道路に使っております。ですからその付近を道路に使うことが必要欠くべからざる場合には、右岸から左岸へ、また左岸から右岸に渡るという道路を初めから設計に組み入れることは、今後の開発相当貢献することになると思いますから、その点も一つ考慮に入れて、法律ができるときにはそういうことを考えていただきたいと思います。
  25. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) できるだけそういうことにしたいというふうに考えております。
  26. 田中一

    田中一君 藤巻さんに伺うのですが、一体あなたの所は何をしているのです、何の仕事をしているのです。昭和二十五年にでき上がったところの国土総合開発法というものが生まれ、そして過去十年間に日本の民族がどのくらい死に、傷つき、そして日本国民の持っている富を失い、国費の天文学的な災害復旧費用というものを負担し、まして個人の負担というものなんかは全然国は当然のこと見るものではございません。国土総合開発法には今回の法律目的となるものが含まれておるのですか。一体今まで十年間何をしておったか。政府は今度これに対して緊急措置法という言葉を使っております。国土総合開発法経済的な効果だけを追求するものではないのです。宿命的な日本の地形上からいっても、国土保全というものは緊要なものであるということをうたわれて今日まできておるにかかわらず、まあ計画屋とはいいますけれども、プラン・メーカーとはいっても、実施権はないのだというような欠点はあろうとも今まで何をしておったか、あまりにも……経済企画庁の中の他の局は比較的動いておるように私は見受けておるのですが、総合開発局だけは各省のうば捨て山みたいになって、ちょっと局長という身分をとるためにそこに転出してそしてまた元へ戻ってくる。職階の一つの階段にすぎないというような現状では、このように十カ年計画というものを一応策定されて、どうやら戦後十五年たって初めて第一歩、いわゆる災害復旧の査定を終えた計画性ある国土保全仕事が出発しようとしているのです。これは経済企画庁国土総合開発局の無能からくるものなんですよ。こう言ってあなたをいじめてもしようがないのですが、昨日も参議院の本会議では、中国総合開発の決議案が上程されております。主として衆議院の同僚議員の名において、四国総合開発だ、九州だ、何だかんだと言って、あなた方の担当しているこの仕事にあきたらないというところに、そうした数々の地方的な計画が生まれてくるのです。しかしあなたの方には少なくとも十九ないし二十の特定地域としての地方的計画がたっておるはずです。なぜその上に四国とか九州とか……今度中国が出るでしょう、山陰が出るでしょう、北陸が出るでしょう、あらゆる所にそういう州的な——府県ではなくて州ブロック的な計画を出すということは、これは屋上屋を架すようなものであり、かつあなた方経済企画庁総合開発局に対するところの否定なんです。あなた方を否定する思想なんです、これは。それでもって、ここにこうして歴年の災害からようやく目をさましたのが今の内閣であって私どもは野党でありながらも、ずいぶんこの計画性ある国土保全には協力したものでございます。つい、四、五日前にも国土総合開発審議会があるので、私はこっちも重要な委員会がございましたが、あなたの方へ行っていろいろ伺っても、あなた方が否定されているのですよ、経済企画庁が。少なくとも国土総合開発というこの法律が否定されている現状、これを見て一体あなたはどう考えますか。私はこれはあなたが菅野長官のところへお帰りになって十分にお話願いたいと思うのです。一面、同じこれは企画庁ですが、東南アジアに対する五十億円そこそこの開発基金などというものを二年前に予算を計上し、そうして法律がようやくこの国会にやっと出た、一体あなた方は何をしているのかと思うのですよ。経済企画庁日本の民族のためにある役所なんです。それが十年間何にもしない——私は何にもしないと言います。今あなたの方に要求したいのは、全国計画というものをお持ちでございますかと言うのです。国土総合開発の全国計画、これをお持ちでございますかという点を伺いたいのです。そうしてその全国計画の中には、今回の上程されておりますところのこの治山治水緊急措置法に織り込んであるところの思想、事業、こうしたものが相当勘案され、そうして十年後の日本国土のあり方——大体寄り合い所帯のあなたの方でございますから、林野庁の方からも出向している者もございましょうし、あるいは農林省の方からも出向している者もございましょうし各省から来ておるでしょう、それらと、今回緊急措置法案と銘打ったものと対処して国土保全計画を立てること、これによって次にくる経済効果利水の点を考慮されながら、全国的な国土総合開発の青写真をお作りになるおつもりがあるかどうか。こんなことじゃおやめなさい、あなたのお役所は何にも用はないのです。せめて数々の法律のうち、経済効果をあげるという面について余地が残っておりますから、それらに対する地図なり青写真なりを当委員会にお出し願いたいと思うのですが、お帰りになったら菅野長官とも相談して、作るつもりがあるかないか。それからどうしようとするか、一つ委員会に答弁してほしいと思います。これにつきまするあなたの見解、ちょっと言葉が荒ら過ぎたかもしらぬけれども、せんだっても国土総合開発審議会に行ってみるとまことにお粗末きわまるもので、私はおそく行きましたけれども、三十何人かの委員がいながら来ているのはばらばらと四、五人来ているきりです。そうして委員会にも諮らないで、ものを議決しようなんという考え方に立っているので、まことにおそろしいものである。このような役所があるために歴年の災害も招き、そうしてこういう治山治水緊急措置法などという法律が出なければならなくなったと思うわけなんです。御見解をお示しを願いたい。
  27. 藤巻吉生

    政府委員藤巻吉生君) 国土総合開発の今までの通常につきましておしかりを受けたわけでございますが、私どもも、この法律ができましてからすでに十年もたっておりますのに、まだこの法律に基づくいろいろな開発計画の基本となるべき全国開発計画ができておらないことを、はなはだ申しわけなく存ずるわけでございます。なぜできなかったのか、いろいろ過去におきましてそれにはそれだけの事情もあったかと思いますが、しかし、ともかく全国開発計画というものは、国土総合開発法に基づく地方計画特定地域計画、あるいは特定の計画等の基本となるべきものでございまして、できるだけ早くこれを作らなければならないわけでございます。従いまして私といたしましては、まあ従来のことはともかくといたしまして大いに今までのいきさつを反省いたしまして、ことしは企画庁で考えております所得倍増計画の長期経済計画と並行いたしまして、全国開発計画を何とか作りたいというふうに考えておるわけでございます。ただいま企画庁計画局の方とも密接に連絡しながらその構想を練っておるところでございます。大臣もそういうようなお考えでございますので、その点は事務当局からお答えいたしましても、大臣との間に意見の違いはございませんし、企画庁、特に開発局といたしましては、ことしは何とかして今までの、まあ怠慢でもございませんと思いますが、それを取り返しまして、全国開発計画を作りたいというふうに考えておるわけでございます。
  28. 田中一

    田中一君 今度は山本君に伺っておきますがね。今度国土保全のために計画される各河川の計画洪水量というもの、これをどういう何といいますか計算の起点から——むろん、これは計画そのものを立てるには、それがなくちゃ、ならぬと思うのですよ。今までの経験、それから今後の見通し等を勘案して立てると思うのです。その際にどういう構想で計画洪水量というものをきめるか。それから、どこでだれがどういう機関で決定しようとするのか。と申しますことは、あなたの計画されたもの以上の災害というものに対しては、責任はだれが負うかということを聞きたいのです。理論的にはこれが正しいんだという一つ計画を持ちながらも、経済的な理由でそれが実施できなかった場合の責任はだれが持つかという点を追及したいので、これはこの追及は大臣にするから、一つあなたが今後考えられる計画洪水量の策定というものはどういう構想でいくか、お示し願いたいと思います。
  29. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 計画洪水量の決定が主としてダムあるいは河川の改修計画の基礎でございますので、これにつきましては、いろいろと現在もほんとうに理論的にこれがいいという結論には到達していないのが実情でございます。これは偽らざる状況でございますが、従来におきましては、やはりある河川のある地点におきましていろいろ流量を調べまして、そこに到達して参りました記録を調べまして、一番大きな洪水が参りましても安全であるように、というのが従来の理論方式でございます。しかし、その後上流開発が進み、あるいは上流の改修工事が進んで参りますと、下流の地点に参ります流量は、同じ雨が降りましてもやはり大きくなってくるというような、実際問題といたしましてそういう結果が出て参っておりますので、最近におきましては、山間部に降る雨はどのくらいの雨が降るかという一番もとに入って参りまして、雨の確率というようなところまで入っております。従いまして、この流域では何年に一度ぐらいはこのぐらい以上の雨が降るだろう、というような点を基本的な問題としていろいろと調査をいたしておるわけでございますが、そういうことをもとにいたしまして計画水量というところに計算を持って参りまして、そういうふうな計画水量というものは、従来の統計によりますと何年に一ぺんぐらいは起こるだろうというふうな計算をいたしております。そういう計算と、それからもう一つは明治以来の記録でございますが、その記録の中で一番大きな雨が降って一番大きな流量が出たのはいつかというような点をあわせて調べます。まあ流域の住んでいる方々は、やはり絶対切れないものを要望いたしますけれども、それではなかなか土地もつぶれますし費用も非常に多くかかるし、しかも計画をいくら大きくいたしましても、工事が完成いたしませんと目的は達せないというのが実情となるわけでございます。従いまして、私どもの現在考えておる段階といたしましては、まず明治以来の記録を調べまして、そのうちの一番大きな洪水、降雨、それを対象にしてやろうという一番初めのとっかかりをいたします。しかしその降雨なり洪水を調べまして、それがどうも計算してみたところが千年に一ぺんだとか二千年に一ぺんというような、非常にとっぴな洪水であったということになりますと、非常に大きな費用もかかりますので、まず第一は既往で一番大きな洪水というものを対象にしたいということで進めますけれども、非常に大きなものでとてもどうもならんというようなことが生じて参りました場合には、これを確率的に計算をいたしまして、まあ現在の段階におきましては同河川で非常に経済的にも関連が大きいというようなものにつきましては、八十年ないし百年に一ぺん起きる程度のものに一応おさえて計画をしなきゃならぬということにいたしております。従いまして、どの河川につきましても、どの地点でどれだけの洪水量が来たときに一番安全な計画ということになっておるわけでございまして、従いまして、それ以上の洪水が参りますと、川が切れるというようなこともあるわけでございますので、この川についてこれだけの洪水が来ても安全な計画を何年かでやるんだということに、今度はきめたいというふうに思っております。  それから今のお話の中に、だれがきめるかというようなことでございますが、これはもちろん建設大臣がその責任者でございますので、大河川の直轄工事につきましては建設大臣がずばりそのものをきめるわけでございますが、県の受け持つ河川につきましては、建設大臣だけがきめるというのもあれでございますから、県知事が河川の管理者でございますので、それがこういうふうな計画でやりたいという申し出をいたします。それにつきまして、建設省といたしましては、それではどうも直轄河川等の基準に照らしますと少し小ちゃいじゃないかあるいは大き過ぎやせんかというようなことを議論いたしまして、できるだけ建設省の方針に合うようにいたしておりますけれども、中には県や地元の関係から、そんな大きな洪水対象では困るというような問題があるときがあります。そういうような場合には流域の方々あるいは管理者である知事が、これでもって一つやらしてくれという最後的の意向の表明がございましたときには、建設省といたしましても、これは県のやる事業でもありますし、地元の方々がそれで十分であるというふうな意思表明がございました際には、やむを得ずまあそういうふうな計画も容認するというふうなことはございますけれども、基本的の考え方といたしましては、先ほど申し上げました方針で進みたい、今までも進んでおりますけれども、今後におきましてもそういう方針で進みたいというふうに考えておりまする。
  30. 田中一

    田中一君 ここに御承知のように、昭和二十二年にできた国家賠償法がございます。国家賠償法にはこう書いてあります。第一条に「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」となっておるのです。少なくともこの計画洪水量というものは今のような機関決定をしそうしてそれ以上の水が出た場合には、人命あるいは財産等を失った場合には、この国家賠償法の条文に適合するであろうということは考えておられるでしょうね。今、河川局長が説明されたような経緯で決定された国の意思、地方公共団体の意思というものが過失であろうと故意であろうと、少なくとも決定されたその意思を、他の条件によって越えて、国民に損害を与えたという場合には、当然国があるいは地方公共団体がその責に任ずることは明らかですね。
  31. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 国家賠償法の解釈の問題でございますが、私もその点非常にエキスパートではございませんので何でございますが、第一条には「故意又は過失」と書いてございますので、その点が故意に、堤防が弱いのを知っておりながら金もあるのにやらなかったという点等がありまするならば、そういうことになるわけでございますが、計画があるのに金が、予算がなくてできなかったというような場合には、これに該当しないのではないかというふうに考えております。
  32. 田中一

    田中一君 第二条には「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する賞に任ずる。」ということになっておりますから、一体、国家が計画洪水量というものをきめるということは、まあ一定の計画、八十年ないし、百年という計画洪水量をきめて、それをオーバーしたような水量になった場合には破堤する。破堤した場合には国民が損害を受ける。その際には当然ここに書いてある通り、責任は国にあるという工合に見られないでもないが、どうですか。
  33. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) この第二条の瑕疵という問題も、善意によって瑕疵があるということを知っておりながら、欠点があるということを知っておりながらやらなかったというような場合にはそういうことになると思いますが、そういうふうなことを悪意があってやつた場合にはそういうことになると思いますけれども、善意の場合にはそういうことにはならぬじゃないかというふうに考えます。
  34. 田中一

    田中一君 瑕疵ということは善意、悪意という判定を下すもんではないんです。悪意もなければ善意もないのです。しかしそれによって他人に害を与えた場合には、当然その責めは追及されます。従って、計画洪水量というものをきめるそのきめ方が悪いということにならざるを得ないのです。またきめたというその水量をオーバーした場合には、これは当然責任があると思うんです。これは善意ですよ、悪意とは決して言いません。
  35. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 計画洪水量のきめ方が小ちゃくて、それ以上の水が出てやられたというような際には、やはりこれは国の財政なりあるいはその面の制約からそういうことになったということでございまして、そういうふうに国家責任が出てくるということになりますると、われわれといたしましても、うんと大きなものを、どうしてもどんな水が出ても切れないような計画を立ててやらなければならぬということに相なるわけでございまして、そうなりますと、幾らまあ金がかかりましても、あるいは土地を大いにつぶしてもいいということになりますれば、そういう計画も立案できると思いますけれども、いかなる降雨、いかなる洪水がございましても、被害が生じないというようなことは、われわれといたしましては実際問題として計画することもあるいは実施することも困難ではないかというふうに考えている次第でございます。
  36. 田中一

    田中一君 金があるとかないとかいうけれども、金はあるのじゃないか。たとえば自衛隊、こんなものは正しい支出じゃないと思うんですね、われわれは。一応現在あるところの二十万なら二十万というものはかりに現在あるんだからという認め方をしようとしても、それを漸増させるなんという金は認められない。これも将来日本が攻撃を受けるであろうという見方のもとにそういう非生産的な人を雇い、そうしてこれに給与を与えているんです。われわれも今回の計画の上に計画洪水量というものはあるいは八十年だ、百年だときめても、百二十年ということもあり得るのです。六十年ということもあり得るのです。河川によりまた今までの過去の経験から見てそういう河川もあり得ると思うんです。金がないからどうこうという問題じゃないと思うんです。だからそのきめ方の問題なんですよ。もしもそうして災害はやむを得ないのだ、天災地変というものはやむを得ないのだという前提に立つならば、何をか言わんやです。われわれの国は戦争をしない国なんです。平和国家なんです。平和な日本国土のよさというものを享受しながら、平和に生きる権利があるんです。建設大臣がきめた流量によって災害を受ける。一つの卑近な例を言えば、伊勢湾の台風が農林省あるいは運輸省あるいは建設省築造する堤防に段差があったために、同じ国家でございます建設省のものはコンクリートですっかり巻いてきれいになっている。運輸省のものはそう巻かないでおった。それはなぜか、金がなかったからだと言って破堤した場合、五千名の人員を失った場合、当然これは国家の賠償の責めがあると私は見るわけなんです。予算がないとは言わせない。予算はあります。たとえば今度の東南アジアの開発基金五十億なんという金は何のためにするんですか。あるいは貿易上あるいは条約上あるいは賠償等にそうしなければならぬということがあるならばいざ知らず、国が出しておりますところの外務省が出しておりますところの「国際情報」にも、低開発国、未開発国の国際開発グループなんというような見出しで、アメリカの指導と申しますか、アメリカの命令に従ってそれに参加しようなんという考え方がある。こんな五十億の金を出す必要はございません。それよりも、もっと、伊勢湾の例をとるならば、堤防を、せめて、同じ国の機関でございますから、農林、運輸、建設ともども、同じような築造の基準をもってやらなきゃならぬと思うんです。従って、今後十カ年計画で数々の施策をなさいましょう、事業を行なうでしょう。その場合に何々県の知事と何々県の知事とが、その堤防のかさ上げに対して、一律のものでないこともあり得ると思うんです。その場合に低かった方が破堤した。破堤の事実はわかるんです、洪水が出る。そして国民被害を受けるのです。命をも失うのです。私はこの点については山本さんに幾ら聞いてもだめだから、採決の前に、総括的な質問で大蔵大臣に、または建設大臣に聞くわけですけれども、非常に危険でございます。人間の持つ知恵、経験というものは浅いものです。従って、全部が全部、自然災に対して政府が責任を負えとは言いたくない。言いたくないが管理上、設計上、洪水量の決定の問題等を含めて、十年間で行なわれるという治山治水事業が、国民に大きな被害を与えようとする意図でないことは明らかでございますけれども、実際の実害というものがあった場合、国が賠償の責めに任ずるのは当然であろうと私は考えておるのです。決定するのは国でございます。従って、あとであなたから建設大臣に——これはまああなたに答弁してもらわんでもいいから、一つよく話して、この問題に対して十分に、この治山治水緊急掛魔法の採決の前に、態度を明らかにしておいていただきたい一つでございます。
  37. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) それでは暫時休憩いたしまして、再開は一時半にいたしますから御了承願います。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後二時三十三分開会
  38. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  委員の異動について報告いたします。三月二十九日付け、小平芳平君が辞任せられ、北條雋八君が選任せられました。  以上であります。   —————————————
  39. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 治山治水緊急措置法案について質疑を続けます。御質疑の方は順次御発言を願います。
  40. 田中一

    田中一君 建設大臣に伺っておきますがね。この二十八年に閣議の了解事項として策定されておりますところの治水計画、これが今回の十カ年計画の基本をなすものであるという説明を今まで聞いておりますが、当時から今日までのダム砂防、河川その他のものの伸び方に、最初に計画されたものよりも進度のおくれているものが相当ございます。それらは今度の策定する計画においては、二十八年度の計画を元として、今日までおくれておるものは優先的に余分に伸ばして、それで一応二十八年度の計画が同じスタート・ラインについてから、それが一年あるいは二年かわかりませんが、実際の計画を立てようとするのか、あるいはその進捗度というものが最初の計画に比較してみておくれているものはおくれているもの、進んでいるものは進んでいるものとして現在の時点で、ある進捗度によってそのまま認めて、そこから新らしい計画を立てようとするのか、どちらをとるつもりでございますか。
  41. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 二十八年に策定したもの、これがまあ大体基本になっていくと思いますが、しかしその後災害その他によって緊急な復旧等をいたしておる点もありますので、まあ今回の場合は実情に即した治水の方針をとって、事業方針は実情に即したもので、もとより二十八年の計画というものを十分加味しながら現状に即してやって参りたいと、かように思っておる次第であります。
  42. 田中一

    田中一君 当然それは実情に即してやるのが当然ですけれども仕事というものは全部関連性を持っております。たとえばダムを作ろうとする場合に、先ほども大臣は予算委員会におられて当委員会には出席なかったのですけれどもダム地点並びに水没地点、水没地上流渓流に対する砂防工事を先行して施行しないと、西山ダムのように、あるいは美和ダムのように目的が半減することがままあるわけなんです。従って現在考えておりますのは、すべて砂防工事がおくれている。従って砂防工事を施さぬと河川のかさ上げをいたしましても、結局その機能というものは減殺される。かさ上げした効果、効率というものが砂防工事がおくれたために所期の効果を上げ得ないということがあり得るのです。そこでその場合には砂防工事そのものを先に先行して、各渓流並びに支川の、枝になっている小河川のせめて流入するとば口あたりでも、まあまあ一河川ごとというよりも別々に一本ずつずっとつけて、それが先になって初めて流量の整備とか、それからダム築造というものにかかるか。今までの進捗度と同じようにすれば砂防が非常におくれてきている。おくれているままでダムなりあるいは河川改修を行なおうとするのか。それを伺いたいのです。というのは現状のままでどういう形でいくかということですね、結局現状のままならば。少なくとも砂防工事はおくれております。上流渓流砂防がおくれているから災害を招くことが多いわけなんです。でありますから二十八年度の基本計画から今日まで施行されましたところの工事量というものは、砂防工事が一番低いということを言うのですね。それを取り返して全体計画の中のスタート・ラインを、あるいは三十六年度に首をそろえて出発するということになるか。今までのアンバランスというものをどこかで調整しなければならぬと思うのです。そうしなければ今までのような進捗度で計画を立てて参りますと災害待ちの河川となる、災害待ちのダムとなると言わなきゃならないのです。重点的に何を先行されてその保全の実を上げようとするか伺いたいのですよ。これはまあ大臣ちょっとそういうこまかい問題はわかりませんというなら、それは河川局長でもいいですよ。
  43. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 御指摘のように、河川災害の一番おもな原因と申しますのは——やはり山を治めるということが大事であります。従いまして、二十八年にどういうふうな計画を立てておりましょうとも、具体的な問題を取り上げて、個々の渓流あるいは砂防の問題は、それはどうしてもほうっておけないというような所は、十分調査ができておるはずでありますからそれを積極的に行なう。砂防をやるから堤防の方はゆるがせにしてもいいというものでもありません。従いまして、砂防のピッチを早めていくということは、もう私ども十分取り入れていかなければならぬと思っております。従って、従来のおくれがあるとすれば、それは再検討いたしまして、十分土砂の崩壊、流出を防止するだけの措置を講ずる必要があろうと思っておりますので、その計画にあたりましては、なお、どの程度のパーセンテージにあたるか知りませんが、ともかくも私どもは今御指摘のような点について十分検討いたしまして、そしてこれらの被害を未然に防ぐための唯一の方法を講じていきたい、かように思っておる次第であります。
  44. 田中一

    田中一君 私は十年この国会へ出ておりますけれども、今の村上建設大臣のように、その実態というものをお知りになり、理解し、推進しようという意欲をお持ちの大臣は知りません。まことにいい大臣を今の時代に持ったものと思います。どうか今のお言葉を実際にあなたのおやめになった——やめないかもわからぬけれども、やめたあとでも、どうか河川局長なり何なりにあなたの意思を十分伝えておいていただきたいと思うのです。なかなか今まで官僚出身の大臣ばかり参りまして、やはりどこかしらぬけれども、そういう一番重点的にしなくちゃならぬ問題が等閑視され、政治的な、部分的な河川の改修等が行なわれておりました。これは一つ十分に——今の御答弁で十分過ぎるくらい十分でございますが、どうかそのようにやっていただきたいと思います。  そこで、先ほど河川局長に質問しておいたのですが、計画洪水墨というものの策定をどういう基準で、どういう責任のもとに決定するかという点であります。山本君から大臣の方にそのことを伝えておいてくれということを言っておいたのですが、伝えてございますか。要点を申しますと、計画洪水量というものが決定されて、すべての河川計画が立てられるわけでございます。大自然の災害が来た場合にその計画を越えるものであった場合には、水害が起きるのは当然でございます。そうした災害が来た場合その責任はどこにあるかという点でございます。むろん、その上流の農林大臣が所管しておりますところの山腹砂防もむろん責任はございましょう。今まである法律はすべて予算の範囲内ということをきめておりますけれども、今度の場合には、はっきりと十カ年計画事業量、事業の規模、事業の仕方等は大体においてきまっておるわけでございます。予算があるとかないとかということではない。予算のつけ方が適か、不適かという問題に尽きると思う。で責任は重大でございます。もしも計画洪水量よりも越えた場合が起きた場合には、その責任はだれが負うかということは、国家賠償法にもはっきりと規定してございます。従って建設大臣がきめる計画である以上、政府が国が賠償の責任に立つのは当然だと思う。で国家賠償法の第二条には「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」とこうなっております。従って技術的にも、それから政治的にも今回確立しようとするところの十カ年計画の責任というものは、一にここにいられるその担当の建設大臣にある。国家賠償法には善意とか悪意とかいうことは言っておりません。その現象を言っておる。だからこの計画の策定にあたっては相当慎重に、同時に責任を負う建前に立たなければならないと思うが、これに対する責任の所在ということに対して、建設大臣はどうお考えになりますか。
  45. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) ただいまの計画洪水量というものをきめる場合には、これはもう既往の大体一番大きなものをとって、それを下回らないようにその計画をするということは当然でございますが、しかし場合によれば、必ずしもそういうことも言えないのでありますが、大体においては、その河川の雨量の最高のものを標準にして、その程度の、最高のものがあっても十分たえ得るような設計をすることが当然でございます。そういう措置をいたしておるにもかかわらず、それ以上の雨量があったりして堤防が決壊したという場合には、これは常識的に見ましても、国がその賠償をする責任はないと私は思います。たとえまた土砂崩壊による流木等のために非常に水位が上がり、あるいは上の橋等を連れて、その水がある部分の永久橋に蓄積し、その永久橋が落ちねば両側の堤防を破り、それによって鉄砲水的な力によって崩壊した場合の被害、こういう場合には私は非常にこれは複雑だろうと思うのでありますが、その土砂の崩壊を予知することができなかった、砂防をやる必要がないと思っておった場合に、あるいは砂防をやっておかなければならなかったという場合に、実際そういう場合にこれに直面した、この場合には、これは不可抗力であったのでありましてこの場合は国は賠償する必要はないと思います。ただ土砂の崩壊が確かにあるのだ、だれが見てもまた設計上もある、しかしその土砂の崩壊を砂防に力を入れないで放置しておったところがたまたま計画雨量というようなものよりも下回る雨量ではあったけれども、その土砂の崩壊のために大きな被害を与えたという場合には、これは私はよほどそこには責任、賠償というようなものが問題になってくると思います。そういう場合には、それはまた具体的な問題を取り上げて検討するということになるのでございましょうけれども、全く不可抗力的なものには賠償する必要はありませんけれど、そういうようなやるべき施設を、施すべきことを当然計画をしておきながら、何にもそこには、予算もありながらその予算もそこへ入れなかったというようなことになりますと、これは私はまあ問題が残ると思いますけれども、まあこういう施設災害の際には大体において国はまあ賠償する必要はないというように私は、まあ従来の例から申しましても、何か非常に国のその施設に対して、設計よりも非常な手抜きがあって、ごまかし仕事がしてあって、そうしてそのために人を殺したとかあるいはどうしたという場合には、国は責任を負わなければならないと思いますけれども、大体国のそのときそのときの財政のあらゆる力をあげて事業を遂行したところが、たまたまその事業施設以上の雨量等のために被害があった場合に、直接一つ一つ国が取り上げて賠償するという責任はないものと、かように思っております。
  46. 田中一

    田中一君 一体この計画洪水量が、八十年あるいは百年というきめ方をだれがするのですか。最高の安全率を見て築造した堰堤なら堰堤ということはいえるけれども、最高の安全率を見たという認定をだれがするのですか。計画洪水量がこれでよろしいという認定をだれがするのですか。学問的にも実際の面においても、その最高なるものであるとだれが決定するのですか。それを建設大臣がきめるそれの限度というものを正しいとだれが立証するのですか。その裏づけはどういう法律でやるのですか。
  47. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) これは非常にむずかしいところでありますが、大体に明治以来、あるいはまたの遠い昔の統計がありますならばその統計を基礎として、そうしてその統計による最高のものに対する施設をする。しかしそれが決して今御指摘のようにそれは建設大臣がそれをかりに計画を樹立いたしましても、あるいはそれ以上のものが出るかもしれない、そういう場合にはこれは私は、やむを得ないという言葉はちょっと間違っているかもしれませんが、少なくとも不可抗力であった、天災不可抗力であったということはいえると思います。と申しますのは、統計によるところの最高の雨量というものを取り入れておるのでありますから、それよりまた最高なものが出た場合には、これはやはりその地域の人たちにはお気の毒だが、これははかり知ることができなかった。これは私は建設省にあるいは政府に瑕疵があったとは考えられません。政府において瑕疵があった場合は、これはもちろん賠償の責任をとらなければなりませんけれども、こういう統計によって最高のものをとった場合には、これは必ずしもこれが絶対のものではないと思いますけれども、やはりそのときそのときの国の財政等を勘案しながら事業は行なわなければなりませんので、何ぼでも金をかけていいということはいえないのでありますから、最も適切な、経済的にもまたその治水の上にも最も上手な、うまいやり方をしていくということが大事でありますので、経済を無視してもいけないので、非常に安全率を多くとるということも困難な情勢ですから、そういう意味で私はやはり計画というものは結局まあある程度安全本をとったもので作っておる、その上になおそれ以上に大洪水が起きたという場合には、これはどうも天災不可抗力だというように私は解釈しいきたいと思っております。
  48. 田中一

    田中一君 むろん人間の知恵にも限界があります。しかし衆目の見るという言葉がいいか、いろいろあるでしょうけれども、われわれは少なくとも金がないとは言わせない、なぜならばわれわれは先ほども河川局長にもはっきり申し上げたのですが、自衛隊なんというものはある限度以上のものを必要とするような段階ではないということがいえるのです。これは人為的なものです。従って金がないとは言わせないのです。まあいろいろ国際間の問題よりも国内にもいろいろな問題がありますから、ある程度そうしたものが現在あるのだから、あるという現実に対しては認めざるを得ないでしょうけれども、増強するなんということは考えられないのですよ、これは一つの例です。絶対のものというのはわれわれの人類の知恵では求められないということはいえるのです。月の裏側の見えるようなことになったらしいのですから、そういうようになってもなおかつ絶対ということはいえない。そこで国家賠償法の思想というものは何かというと、善良な国民の権利を守ろうという点です。もしもアメリカと安保条約の改正をして、日本が極東の防衛の責務に任ずるような批准をしなかったならば、戦争があってもそれに巻き込まれないで済むであろうということは予知される。国民の半分ぐらいはそれを信じている。けれどもこの条約によって日本国民が戦争に巻き込まれることは、これは決して偶然でなくして、人為的な作為的なものです。従ってわれわれがそうした面におけるところの金の使い方に対して反対するのは、もう各委員会でやっておりますから申しませんが、国家賠償法の精神というものは、やはり日本の人間の持つ権利を不当におかした場合には、それに対して補償しなければならぬ、賠償しなければならぬというような思想に尽きているのです。あまりに国家賠償法という法律を使って国並びに公共団体に対して訴訟等を起こさないのは、強大なる権力と、使用し得るところの金を持っているところの国家とけんかをしても負けるということです。権力に負けるということです。だからそうした争いが出てこないのですよ。そこで書いたのは、今度の特別会計となり、かつ計画的な事業計画を立てようとする、今度のこの法律案の内容に対しましては、十分なる責任を感じて立てなきゃならぬということです。絶対に政治的な配慮のもとに技術的な良心を侵してはならない、という点を強調するのが一つと、もう一つは、宿命的に日本の立地条件というものは、南洋に発生するところの台風圏に入っている。これはアメリカにもおそらくそういう箇所があると思いますけれども日本の場合には宿命的なものです。日本の地形、日本の位置、自然だから、天災だからやむを得ぬということであきらむべきものではないのです。  第二に伺いたいのは、それらの災害を受けても、人知を尽した保全事業を行ない、この国土を守ろうとし、国民の生命財産を守ろうとしながらも、それらの天災地変によって侵された場合のために、天災地変に対し相互保障的な損害保険を考えられる点はないであろうかという点でざいます。これは相互扶助的なものです。ただ残念なのは日本の現行法にもある通り日本国土というものに対する台風の襲来というものは常襲地帯があるという問題でございます。現在損害保険会社は千二百億程度の準備金を持っておる。これはむろん営利企業として繁栄をしております。私は、この資金が火災保険を中心とするその他の保険事業の保障の基金になっておりますけれども、これに国がてこ入れをして、裏づけをして、天災地変に対する損害保険制度的なものを持ったらどうであろうかという点も考えられるわけなんです。ただ天災地変であるから五千人死ぬのもやむを得ないという態度はよい政治じゃございません。われわれ社会党の人間が政権をとった場合は、これは別の考え方を持つであろうと思いますけれども、少なくとも現在の現行法の数々の範囲において行ない得る施策というものがあるのではないか、という気がするわけでございます。むろん今回のこの十カ年計画によるところの保全施策というものは、災害を未然に防ごうというところにねらいがあると同時に、受けた災害に対するところの施策も加味することまで触れなければ、万全の策とはいえないのではないかと思います。午前中にも河川局長に申し上げたのは、農林省の所管か運輸省の所管か存じませんが、同じ海津線の堤防で裏側にコンクリートを巻いてない堤防があった、これは予算がないから本年度は間に合わなかった、そこから大破堤の糸口ができてあの災害を大きくしたということもあったということは、建設大臣であったか、運輸大臣であったか災害の特別委員会でもそういう答弁をしておりました。一面、国土保全をはかるとともに災害による犠牲を少なくするのは当然であろうと思う。命はかえがたい、これは生命保険で、一応現在の民間の機関でもございますが、財産等を守る方法はあろうと思うのですが、それらの点についてはどういうお考えを持っておるか、伺っておきます。
  49. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) お説のように日本台風の常襲地帯でありまして、年々災害がどこへくるか、必ず幾回かの災害をこうむっておることはまことに遺憾千万であります。従いましてどこへくるかわからないのでありますが、まあただいまの御指摘の災害に対してまず保険制度でも設けておこうという考えはないかということでありますが、私どももこれは賛成のできる、納得のできることではありますけれども、またその半面に非常にめんどうな問題があろうと思います。趣旨としては私は賛成いたしますし、また十分このことを考慮に入れて参らなければなりませんが、とにかくまあいわゆる農家の米麦に対する補償の保険というようなものでさえも、なかなかある地域では果して収穫が半減するか、皆無になるか、はっきりわからないのに保険金をかけていくのはいやだというような、掛金を大儀がって、こういうりっぱな施策がありながらそれを使わない人もあるそうであります。災害の場合には、やはり九州は常襲地帯だというように多年いわれておりましたが、昨年のように九州にはほとんど災害がなくて、その災害がどこへいくかわからないということになりますと、あらかじめ予想のできないところに保険金をかけておくということは、なかなか被保険者がそれを理解していけばいいのですが、やはりもっと保険金を安くしてただのようにしていけば別でありましょうが、そういうような点で非常に困難があろうと思っております。しかし、こういう問題については、これからいろいろと社会保障等いろいろなこれらの問題が強化されてきつつあるのでありますから、十分研究をして、災害があった際にただ単に施設の復旧は国やあるいは公共団体で復旧いたしましても、その災害を受けた人たちが立ち上がることのできないような状態であることは遺憾でありますから、こういう点について立ち上がり資金等についての、まあ非常に安い保険料金による災害保険というようなものを研究する必要があろうと思います。私は今日の場合、私としては趣旨においては全く賛成できますが、しかし今すぐこれをどうという取り上げて実施に移すという点については、幾多の角度から検討しなければならぬと思いますので、こういう点につきましても十分研究をし、そして何らか具体的な方法を講じて検討してみたいと思っております。
  50. 田中一

    田中一君 地盤沈下のこの現象に対しまして、社会党のわれわれは、衆議院に法案を提出してございます。それは、どうもこれは災害ではないという立場に建設省並びに政府は立っているらしい。そうすると、これに対するところの保全事業というものは、この当法案には含まれておらない。これはどうするのかという点を考えますと、これには運輸大臣の所管のもの、あるいは農林大臣の所管のもの、建設大臣の所管の部分はございます。新聞では、政府は地盤沈下対策の法律案を用意すると言っておりますが、いまだに出てこない。私は、この法律案の採決の前に、それらの施策が出なければ、われわれは納得できぬという態度をとっておりましたけれども、閣内におきますところの、政府内におきますところの、これに対する態度はどうなっておりますか。これは大野農林政務次官からも、農林省としての立場を明らかにしていただきたいと思うんです。
  51. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 地盤沈下対策につきましては、経済企画庁の中に地盤沈下の対策の審議会等もできて、十分研究いたしておりますが、社会党においても、また自由民主党におきまし  ても、それぞれその成案を得て立法措置ができておるようであります。今、与党自民党の成案につきましては、企画庁方面でこれを検討いたしておるように私承っておりますが、ともかくも、地盤沈下の対策は、私は、少なくともこの法律とまあ並行して出す、あるいはそれ以前に出してしかるべきものだと思っております。これは刻々に地盤が沈下していくのでありますから、日をおくに従ってその地盤の沈下は取り返しがつかないものになる。私どもも非常にこの点を憂慮いたしておる次第であります。従いまして、関係方面におきましては、また、やはり、私が急ぐと同じように相当急いでおるように聞いておりますが、その取り扱いにつきましては、ただいまのところ、はっきりしたお答えができないことを遺憾に存じます。
  52. 大野市郎

    政府委員(大野市郎君) 政府部内におきます地盤沈下対策の法案の準備の状況につきましては、ただいま建設大臣からお答え下さいました範囲のことしか申し上げられないのは、残念に思う次第でございます。農林省といたしましては、たとえば、新潟の亀田の付近の二万町歩からの地盤が沈下して困っております。この問題で、とにかく今年度は一千万以上の予算で調査、まず、調査そのものもおくれておりまして、独自の原因判断その他に資料が足らない点がございますので、とにかく法案の準備いかんにかかわらず、農林省としましては、地盤沈下の調査に全力をかけて、独自の原因究明をいたさねばならぬ、こういう形で、三十五年度予算にお願いをいたしておるような状況でございます。
  53. 田中一

    田中一君 これは建設大臣、本国会中に提案するようなことになっておるんでしょう、与党内部では。その点はわかりませんか。
  54. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) なると思います。私の聞いている範囲ではなると思っております。
  55. 田中一

    田中一君 この緊急措置法が採決になる前にそれが出なきゃならないのです。期待しておったのです。そうして、まず、衆議院のわれわれの同僚からも、いろいろ与党にも話しかけておるのですが、何と言っても人災的なにおいもするものだから、自然災というような、あれは災害というふうには見られないし、といって他の原因で、自然現象であろうということにも見られないために、与党内部にいろいろ問題があると思うのです。一番ガスを利用している会社等に与党の諸君も、株主や重役としてだいぶ参画しているように伺っておりますから、それらの点、なかなか踏み切りがつかないと思う。大野さんが一番詳しく御存じだろうと思うのですけれども、あなたは株主じゃないかもしれませんけれども、こういう点は非常に私ども、こういう法律案を審議しながら、中にあるこれは全然除外されておるのです。災害でもないのだ、といって、これを守るべき必要がないのだというのが、今度現われた法律案の提案です、結局。この現象は、革に新潟市ばかりじゃございません。各地にございます。少なくとも臨海工業地帯というものは宿命的にそうした現象が起こることになっておるわけなんです。これに対する対策が出ないことは非常に遺憾ですから、これはどういう形で——それが出なければ採決に応じないという態度をとるべきが正しいと思います。しかし、それじゃ因ると思いますから、建設大臣、もう少し、社会党が昨年法律案を出し、自民党がこれに同調して、自分の方と一緒になって、一応最善なる法案を出そう、だから取り下げてくれというので取り下げてあったのでございます、昨年は。そしてぎりぎりになって、どうにもならぬから、じゃそっちの方の案を出してくれというので、社会党は出しております。今、自民党さんの方でいろいろ練っているのは、昨年経済企画庁の連中を使って作った法律案を自民党が取り上げて、今案を練っているようでございますけれども、これは一日も早くしなきゃならぬのです。建設大臣、どうか一つ今国会中に必ず提案するというくらいな、提案させるように努力するぐらいな、一つ答弁を願えれば、採決に応じてもいいのではないかと、こう考えるのですが、その点一つ御答弁願いたいと思います。
  56. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 私も全く同感でありまして、この国会中にはぜひとも——これは私の所管ではないのですけれども、しかしわれ参われには非常に関係が深い法案でありますので、どうしても提出してもらわなければならないと思っております。従いまして、十分、企画庁その他、与党の関係方面とも相談しましてこの提出を急がすようにいたしたいと思っております。
  57. 田中一

    田中一君 大野さんに伺っておきますが、実は昨日農林大臣が見えないので、建設大臣だけに申し上げたことですが、御承知の国土保全事業として先に進まなきゃならぬような事業砂防事業でございます。これは昭和三年になわ張りを内務省、幾時の内務省と農林省でもって話し合って、協定書を作った。ところが、これでもまだ不十分であるというので、昭和四年に、それに対する解釈、それから限界等をこまかく協定したのでございます。ところが、それが現在まだ、その方向では進んでおるけれども、行なわれておらぬという事実が一つと、それから砂防事業というもの、砂防工事というものは、別々にやったのではちっとも効果が上がらないという点です。われわれ参議院の建設常任委員会というのは、非常に砂防に熱心でして、災害を守るのは砂防が先行しなければならぬ、こういう考え方を持ちまして、昨年も一昨年も、単独の決議をいたしまして、関係各省に提出してございます。ところが相変わらず不十分な施策しか行なわれておらないようです。たとえば林野庁は、河川の砂防をするばかりじゃございませんが、土砂の崩壊を守るための山腹砂防をしなければならぬということになっております。ところが、私どもが考えますのに、林野庁という独立したところの特別会計のお役所は、かつての天皇陛下の直属の職員というか、官吏であるかのごとき間違いは犯していないと思いますけれども、どうもそういう印象があって、造林事業を守るための山腹砂防という考え方に立っているのじゃなかろうかと邪推をするわけです。昨日も建設大臣に申し上げましたが、建設省がしようと、農林省がしようと、災害を守る、土砂の崩壊を守る、防護工事というものは一元的におやりなさい、こう申し上げたのであります。国家賠償法に規定するところの過失というものは、河川でなくても、山腹にある場合があります。当然しなければならないものをうっちゃっておくということは、やはりこれは過失です。ことに最近の山の状態というものは、戦争中、戦後、乱伐、それから保全の維持管理をしなかったという点から荒廃のきわみです。昭和三、四年ごろに協定したものと区域は同じであっても、実態が違っておるという点も多々あるのではなかろうか。建設大臣とよく話し合い、そうして官僚的なセクトを捨てて、十分にその実をあげるような話し合いをしたらどうであるかという提案を、昨日建設大臣にしたのでございます。大野さん、山のことなんかあまり興味ないかもしれないけれども、これが一切の問題を招く、災害を強める原因なのです。従って農林大臣に聞くと、自分はくわしくないから、十分に関係事務当局と話し合って善処しますということきり言わない。なかなかいいところがあります。知らぬことは知らぬと言いますから。大野さんも知らぬことは知らぬと言ってかまいませんけれども、建設大臣はよく知っておりますから、十分に協議して、その実をあげるというような方向に実際進むかどうかという点を明らかにしていただきたいと思います。
  58. 大野市郎

    政府委員(大野市郎君) 私も専門家ではございませんので、山のことはくわしいとは申しかねますけれども、前回能登の災害に際しましても、実は現地でずっと砂防状況、その他被害状況を視察して参りました。なお、山梨の災害あるいは兵庫県の北側の方の今回の災害などの状況を見ましても、御指摘の通りに、まさに雨量も画期的な量であったとは思いますが、原因は砂防の根幹的な措置を要することをよく見て帰っておる次第であります。現実の末端の行政の状況などにつきましても、よくこれは冗談がましくいわれる言葉でありますが、堤防がこわれると、関係の選挙民が多いので、大へん手っとり早く手にかかるが、砂防の必要な場所は、人間がたくさんおらぬものだから、あと回しだなどということを、われわれもよくやゆを受けるのでありますが、しかし現実の被害状況を見ますと、相当ないわゆる重要河川、その上流渓流あたりに土砂くずれがあって材木なども、能登の被害などでは一谷全滅で、木材が流れて、それがダムみたいになって、その下に被害が起きたような状況もございますので、この砂防治山関係が緊密な連繋を要することは十二分に承知をいたしております。もし、末端で連絡が不十分のために御迷惑をかけるような事態がままございまするならば、この点はその認識の上に立ちまして、行政上の措置として十二分の連携をいたさせるようにしまして、この問題はやはり造林と河川の保護という問題は一体をなすけれども、分野は大まかにいうと分けてしかるべきもののように思われますので、その本体はそのままにして、末端行政にあたっての個々の問題で緊密な連携をとることによって、その御指摘のようなものがございましたならば善処して参りたいと思います。
  59. 田中一

    田中一君 末端の調整が取れないからこういうことを申し上げるのですきのうも申し上げたのですが、私は夏になりますと三週間ぐらい山を歩くのです。山の実情を見て歩くのですそうしてつぶさに山復砂防の施してないという山は災害が多いということをよく知っております。たとえば、町に降りて県に行って県の方々を呼んで、農林の補助砂防をやっておる担当者、それから建設の補助工事をやっておる担当者と話し合いをしたことがあるか、ありません。一人の土木部長のもとに山林砂防山腹砂防渓流砂防と区分けしている方々が、話し合いをしてないのです。こういう実態をどうするかという問題をきょう私は皆さんに質問しているのでございます。あなたは御存じないと思いますが、この昭和三年、昭和四年の協定というもの、この協定は今ここではっきりと再確認する、この通り守るということを一つおきめ願いたいと思うのです。私はそんなことはやめて、造林のための山腹工事林野庁が勝手におやりなさい。しかしながら、河川に続く面については全部建設省が行なうのであるということでもいいのです。あなたの方の林野庁は山を守って洪水がこないようにするのは当然のこと、また、木を切って、国民に払い下げて、利潤じゃないけれども、国庫に入れているから利潤でしょう、そういうものをあげるというような仕事もしているわけです。しょせん帝室林野局時代からの森林業者であり、木を売る業者、木材業者なんです。従って渓流沿いの山腹工事も、昭和三年、四年の協定をもう一ぺん御相談になりながら、建設省に全部まかしてしまおうという方が、ほんとうに河川に面接続くところの砂防工事というものを施す効率が多いのです。これらの点についてはどうか。末端の話し合いが行なわれておらないのです。林野庁河川局長とは事務的にいろいろな折衝があるかもしれません。それは向こうの方で今度砂防費を何十何億取ったらば、おれの方もそれくらいのものは当然予算に取らにやならぬというような話し合いしかやっていないのじゃないかと思うのです。実によく似ているのです、事業としては。たとえば一つ比率を調べてみますと、昭和十六年には農林砂防一に対して建設が三くらい取っておった、予算は。ところが戦後は安本というものが君臨したころ、農林一に対して建設一、それが最近農林一に対して建設は〇・八なんというような状態であったのです。ようやくこの一、三年来、自民党、社会党、緑風会、無所属等、総長が立ち上がって、どうやら本年度も事業量としては百九億五千万程度仕事が建設砂防についてあるわけですよ。この問題については、どうか建設大臣ももう一ぺん今までの協定というものを読み返し、そうしてこうした十カ年計画が策定されるのですから、農林省の方でどうもやりにくいような仕事は全部建設省の方にまかしたらどうだろうか。そうして水系に直接続くものは全部建設省へ持ってくる。林野庁が持つところの造林のための砂防は、たくさん剰余金も出るでございましょうし、輪伐もやっていますし、収入があるんだから、山を守り木を守るためのお仕事はその方で担当したらどうだろうか。こういう一つ私見を申し上げて、建設大臣ただいま答弁できぬならば、きのうは非常に謙虚に、何も自分の方で仕事を全部取ろうという考えじゃない、ほんとうに国土保全のためには、いかようなる制度でもやってよろしいではないかというような意見も持っておるというような答弁を建設大臣はされておったのです。大野さん、一つこの点は十分省内で話し合いを願いたい。そうして六月ごろといっておりますが、この十カ年計画というものができる前に、われわれ国民が安心する形の施策を確立していただきたい、こう存ずるわけでございます。よろしゅうございますか。
  60. 大野市郎

    政府委員(大野市郎君) 建設大臣もただいまのお話で、そういう気持でお進みになられることを承知いたしました。私どももその意味で、先ほどは末端の調整が足らないで御指摘があったと思いましたので、その問題の善処方を型通り申し上げたのでございますが、それだけでなくて、通牒自体の内容に対してもいろいろ問題点があるようでございますので、この通牒の再検討もかねまして、御趣旨のように善処をいたす次第でございます。
  61. 田中一

    田中一君 今度の計画を見ると、地方財政は相当苦しくなるのではないか。いわゆる事業に圧倒されるのではないか、財政面がですね。という点を非常に心配しておるのです。先だっての委員会にも奥野局長にきていただきましてその点をただしたのですが、これからそうしたこまかい点については話し合い、そしてこの法律の第四条にあるところのその点は十分にやるのだという意思が織り込んであるから話し合っていくのだ、こういうことを言っておりますが、実はその点が不明確であるから、各党と話し合いのもとに附帯決議をつけようということになっておりますが、その内容について今申し上げますから、自治庁の見解をお示し願いたいと思うのです。それはしょせん、政府が立てる十カ年計画というものは、閣議決定になりますと、一応それらの資料としては、地方からの計画が上がって参りまして、それをもとにして、国としての立場から十カ年計画ができ、これを閣議決定すると思います。これは不動なるものであろうと思います。しかしながら、実態というものは、財政的に貧しい府県の方が、国土保全事業をやっておりませんから仕事が多い。そうして富裕な県の方は、公共事業に使う場合には比較的県議会等も反対しません。同時にまた、国の方でもそれだけの負担力があるならばといって補助金も出し仕事を進めている。この今度の治山治水緊急措置法の精神というものは、国土の恒久的な計画性ある保全事業に手を染めようということになったのでございますから貧しい県に対するところの事業量が相当殺到するのではないかということにならざるを得ないと思います。その際に、何とか地方財政が——治山治水事業十カ年計画的なものが、地方計画として各府県は持たれておるのです同時にこれに財政的な裏づけの計画が並行して持たれるはずでございます。しかし、貧しい県はなかなか実行できないから、国が考える計画よりも締まるようなおそれが多分にあるのではなかろうか。その際に、国は、どういう方途でこの法律第四条に示しているところの実行をさせるかという点でございます。われわれ各党と話し合った末に、御承知の道路整備五カ年計画には、道路法によらないで、補助率は道路整備緊急措置法によって自由になるのだ、いわゆる増額できるのだということになっておりまするけれども、この法律にはそれがないのです。基本法の補助率をそのまま踏襲するのだということになっております。臨特も廃止になっております。従って地方財政に対するいろいろな困難件が加わるのではないか。私としては、せめて道路整備緊急措置法並みの条文をここに入れるべきであるという主張をしているのですが、なかなか与党の諸君は承知してくれません。そこでそういう措置ができないならば、地方交付金でもってそれをカバーするか、あるいは治山治水十カ年計画というものを、そのものに対して自治庁が自治庁としての見解でもって、それは何々県については困る、何々県はもっとやってよろしいというようなお考えを持っているのかどうか、明らかにしてほしいと思うのです。
  62. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいま治山治水緊急措置の問題に関しまして、いろいろ地方団体の財政とのにらみ合わせで、いろいろの御質問でございましたが、御趣旨は私どもも同感でございまして、もとより、国の国土保全開発のために、そしてまた、それがために今回十カ年計画を策定されるということは、最も望ましいところでございますが、お話のように、いわゆる後進団体につきましては、その事業量に伴いまして、団体の財政カが伴うかどうかということは、私どもも非常に懸念をしているところでございます。私どもといたしましてはできる限りやはり国庫負担率の引き上げ、その他の点につきまして、十分考慮していただきまして、そうして地方財政の圧迫にならぬように、そうして、事業の完全な遂行ができますように取り計らわなければならないことは当然でございます。将来の問題といたしまして、その具体的な団体につきまして、事業量と財政力の問題につきましては、事業官庁と十分に協議を整えまして、地方団体の財政の圧迫にならないようにはかって参りたい、円満な遂行ができるようにはかって参りたいということをいたして参るつもりでございますが、また一面におきまして、国庫負担率の地方団体との分担の割合につきましても、さらに協議を続けて参りたい、こう思っている次第であります。
  63. 田中一

    田中一君 私は、各地方が率直に、財政の面を考えないで、どうしてもこれはしてほしいという積み上げが望ましいのです。どうも最近の日本の財政は——金がもとになって仕事を進めていこうというような考え方があるのです。しかしながら、われわれから見れば、全く違憲的な軍隊なんかには、それを作って、既成事実を作って、予算を流すというようなことをしている。そんなことをすべきじゃない。どうしても必要な治山治水計画国土保全のためにはこの事業をしなければならないのだ、だからこれに予算をつけるのだという形が望ましいのです。今は悪い政治の現われであって、私どもが常に反対しているところの予算の配分をやっておりますから、自治庁としては、今建設省が地方にしてほしい地方計画ですね、これを全部持ってこいというような作業をしておると思います。また、建設省も歴年の災害等でもって、十分に国土のあり方は知っていると思います。で、それらのものは、金があろうとなかろうと、十カ年間にこれをしなければ、国土保全ができないのだという計画をまず確立することです。金の問題ではございません。そこで、これに対して財政当局は、当然その裏づけをしなければならないという点でございます。この点については、おそらく建設大臣も同感だろうと思います。従って自治庁としては、建設大臣農林大臣が経済企画庁と相談をして定めますところの、この十カ年計画というものに対する裏づけをしなければならぬ点です。その一つの行き方として、現行法であるところの道路整備緊急措置法にそうした特例があるにかかわらず、この治山治水緊急措置法にはないというところに、われわれは不満を感ずるわけです。しかし、これは与党の諸君も修正に応じてくれないから、これはやむ得ず、そこで丹羽さんがおっしゃっているように、すべての事業を勘案してというのではなくて……前田さん、今私が質問しているのは、治山治水緊急措置法によって、一応地方的な計画が国の計、画と並行してあるいは先行してでも、どっちでもいいですよ、確立される。十カ年でこれこれの仕事をしたいのだということ、この計画は、私はこの法律が出た以上、財政を考慮しないで、県財政、地方財政を考慮しないでその計画を立てていただきたいという点が一つ。そうしてこれはむろん建設大臣は賛成でありましょう。そこでそれをもとにして国が作るところの十カ年計画が策定され、そして閣議決定になると思うのです。その際に自流庁が持つべき役目は、国土保全のための事業でありますから、これに対する各府県の実態に応じて、この仕事の完遂するだけの財政の裏づけを考慮しなければならぬということです。一つの方法としては、道路整備緊急措置法にあるように特例を設けることをしてはどうであろうか、この問題は、おそらく与党、政府内でもってずいぶん問題になった点だと思うから、せめて附帯決議でそういうことを申し入れをしたいのですが、その点は一向大蔵省としては差しつかえなかろうと思うのです。その点はどうですか。
  64. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答え申しあげます。ただいまの田中委員御指摘の点でございますが、まず、国の計一画を作って各府県の実情、実態に応じてやるべきであるというようなお考え、そうしてそれに基づきまして各府県の実態に応じて特例で補助率を勘案せよというお考えでございますけれども、現在の十カ年計画は、そういう地方財政の状況等も十分勘案いたしまして立てたものでございますので、特に補助率をどうする、こうするということは、現在のところ考えておりません。
  65. 田中一

    田中一君 これは国民の要請、民族の要請だ、これは。一体金が先行するのですか、事業が先行するはずですよ。あなた方は金を払えばいいんだ、何もそんな、金によって仕事を進めるなんということだから五千人でも死ぬんだよ。そんなばかな話はありませんよ。大蔵省は三十五年度の予算は立っております。総額として前期四千億の事業費としては了承しているでしょう十分にやっているといっても、やってやっていないじゃないですか。五カ年間で四千億というワクをきめ、十年間のワクをきめ、将来の問題を、あなた方がはっきりきめているのは、三十五年度の予算だけをきめているにすぎないのです。できないならしないでよろしいという意見ですか、政務次官、金がなければするなということですか。
  66. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答え申しあげます。決して大蔵省も金が先行するというような、そういう考え方は毛頭持っておりません。事業というものを十分考えまして、この計画に賛同したわけでございます。ただしお言葉を返すようでありまするが、財政的にやはり見通しのつかないといいますか、財政的に破綻を来たすといいまするか、そういうふうな観点からも考えまして、どうも賛成しかねるというような点は、一つごかんべんを願いたいと思います。
  67. 田中一

    田中一君 私は、あなたが賛成するとか、しないとかいうことの問題を今ここで聞いておるのじゃない。それは閣議でやりなさい。われわれは、この法律ではっきりきめておるように、第四条「政府は、治山事業十箇年計画及び治水事業十箇年計画実施するため必要な措置を講ずるものとする。」ということをきめておるのですよ。必要な措置を講ずることは当然じゃないか。まだ治山治水十カ年計画の内容は閣議決定になっておらぬ。なった場合には、当然措置をするのはあたりまえじゃないか。今なってない段階じゃそう言うかもしれないけれども、なった段階では当然措置するのがあたりまえじゃないか。法律にそう書いてあるじゃないか。
  68. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) そのことにつきましては、必要に応じまして予算の措置を講ずるという考え方でございまして、特に補助率をアップするとか、そういうようなふうには考えていないわけでございます。
  69. 田中一

    田中一君 補助率を上げるとか何とかいう問題は、方法論なんですよ。原則はここにある。どういう方法をとろうとも、それに必要な措置をするということはきめておる。補助率を上げるということも一つの方法である。地方交付金によって仕事をできるようにするのも一つの方法である。従って十カ年計画価が先行するのか、国の財政が先行するのか、どっちなのか。当然事業が閣議決定になった場合に、それに対する裏づけをするのは当然じゃありませんか。もし国の財政規模でもってできない場合には、その十カ年計画そのものが改訂されるべきものである。
  70. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) 「政府は、治山事業十箇年計画及び治水事業十箇年計画実施するため必要な措置を講ずるものとする。」といいますのは、十カ年計画が策定されたときに、それに必要な財政的措置を講ずるという意味にわれわれは解釈しておるわけであります。
  71. 田中一

    田中一君 それていいのだよ。そう言えばいいのですよ。僕はどうも前田君とこんな大きな声を出して、やり合うのもいやなんだ。そういう答弁をすればいいのだ。金が余分にかかりそうだったら計画を縮めればいい。しかしそんなことはわれわれ承知しませんよ。了承しませんよ。一応前期四千億というワクをきめておるのだから、これに対する実施できる措置ということは、たとえば現行法であるところの道路整備緊急措置法のごとく補助率の特例を設けるとか、地方交付金によってこの事業が完遂されるような裏づけをするとか、まだあるか知れませんよ。そういう方途を講ずるということを言明しなければならないのですよ。従って自治庁にしても、地方財政の破綻というものは、非常にこの事業遂行には障害になる。貧乏県ほど事業が多く残っておるのです。であるから、これは私は賛成する、賛成しないは別でございますが、一つの案としては、貧乏な県に補助率を余分にやるとか、いろいろな方法があるではないかと言うのです。それらのことを完全にするという言明をまず大蔵当局から聞きたいのですよ。そうして、こうした今までにない画期的な踏み切りをしたという現実から見て、閣議決定になった計画というものは、完全実施をするということの言明がほしいわけです。だから、自治庁長官はいいのですが、自治庁長官は、あなたはいい答弁をします。大蔵大臣、佐藤君に来いと言うんだよ。われわれは何もこんなことを言って、政府、与党の太鼓をたたいているんじゃないんですが、これがほんとうに国民的な要求であるという点から言っているんです。だから前田さん、何もあなた、法律通りやればいいんです。私は方法論を言っているんです、方法論をね。事業計画ができた、金がない。仕事ができない場合には、仕事のできるような措置をいたしますという答弁をすればいいんですよ。それが地方交付金であろうと、道路整備緊急措置法と同じような特例を設けるんであろうと、あるいは別の方法をとっても、少なくとも全体計画としては、四千億というものは事業費として見ておるけれども、府県によって違うんですよ。あまり豊かでない府県の方が事業最がたくさんあるという事実を知らなければならぬのですよ。これは宮崎君、君おわかりでしょう、あなた専門家じゃないか。そうすれば、それに対する裏づけは必ずいたしますという言明を聞けばいいんです。
  72. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) ただいまの田中委員の御指摘の点でございまするが、現在の神助率をもっていたしまして、毎年テン・パーセントずつ伸びるものといたしまして、四千億のこの計画は必ず実施するという見込みを持っております。さらにまた、地方財政全体の姿等も考えまして、健全性ということも考えつつ、十分その計画を遂行するように考えております。
  73. 田中一

    田中一君 山本君に聞いておきますがね、今地方に、二十八年度のときにあなたが地方から吸い上げられた資料、要求資料というものが、一応二十八年のときの基本要項として発表されましたね。大体そのうち仕事ができたもの、あるいは災害にかかったものは、これは除外して、なおかつその次にくるものとしてのものを集約した資料を作りつつあると思うんですよ。これに対しては、お前の県は貧乏だからほどほどにしておけとかいう指令とか、あるいはそうした実態にそぐわない手心を加えた資料を要求しておりますか。私はそうでなく、実際に緊急に、これは緊急措置法ですから、緊急にどうしてもしなければならぬという事業を出せというので要求しておりますか、どっちです。
  74. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 今あとの方でございまして、緊急性に応じて出してくれということにしております。
  75. 田中一

    田中一君 その際に、後進県である、いわゆる貧しい県であるから、それに対して全体の計画を、貧しい県であるからという理由で、その計画を切り捨てるようなことは万ないと思いますが、どうでございますか。
  76. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 貧しいという理由ではそういうことはしないつもりでございますが、四千億の中におさめるわけでございますから、緊急性に応じて緊急度の高いものから、本省といたしましては、出てきたうちから取り上げて参りたいというふうに考えております。
  77. 田中一

    田中一君 大野政務次官に伺いますが、あなたも今私が河川局長に質問したと同じような立場で、考え方でそうした地方計画を要求しておりますか。
  78. 大野市郎

    政府委員(大野市郎君) 同様なる方法で資料を出さしております。
  79. 田中一

    田中一君 それじゃ前田君、もういいやね、そうでしょう。方法はどうであろうとも、少なくともこの事業は、仕残し工事のないように、計画的な事業実施を裏づけるという点について、そのように理解してよろしゅうございますね。
  80. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) 仰せの通りでございます。
  81. 田中一

    田中一君 それじゃ自治庁の政務次官に伺います。このような裏づけがございますから、どうか金によって仕事を縮めたりしないようにしていただきたいと思います。そうして実態というものが、くどく申しますけれども、貧しい県ほど国土保全費用の出し場がなくておりますから、その点に対する補助率等もいろいろな面から、地方交付金なり何なりでもカバーして、完成させるような努力をすることは間違いありませんね。
  82. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいま田中委員のお説の通りでございまして、私ども全然同感でございます。さよう努力いたしたいと、こう考えます。
  83. 田中一

    田中一君 大体総括的な質問はこれで終わりましたが、まだお互いに各党で話し合っている附帯決議案がまとまりませんから、あなたの方で、与党の方で譲歩してくれるならば、すぐまとまりますけれども、譲歩いたさんとまとまりませんから、しばらく休憩にしておいて、この話の調整をしていただきたいと思います。そこで、何ならば、別に理事会でもって相談するようにしていただきたいと思います。
  84. 田上松衞

    ○田上松衞君 自治庁関係にお尋ねいたしまするが、まず憲法との関係です。御承知の通り、本案を決定いたしますると、少なくとも向こう十カ年というものは、都道府県知事が行ないまするところの治山治水事業も、ことごとく本法によって影響されるわけなんです。言うまでもないことです。で内容からいいますると、事業計画事業予算も、予算の執行も、ことごとく本法によって拘束されるわけなんです。そこで、まあくどいようですが、第二条でこれを明らかにしているわけです。田中さんが触れた問題の前提をなすものでございまするが、結局第二条に明らかにしているように、事業費の一部を国が補助したり、または負担したり、そうした残りの大部分というものは、言うまでもなく自治体が負担するわけになるわけです。ところで、このように十カ年もという長期にわたりまして、地方自治体の予算というものが拘束されるのであるならば、それだけ地方財政の自主的な運営は阻害されてしまう、これは実際問題として明らかです。従って地方財政の単独事業のワクというものが狭められてしまうということに帰結するわけなのです。こうなってきますると、憲法との関係ですが、第九十二条の地方自治に対するところの基本原則というものがそこなわれてくるということに落ちつくわけですが、これに対しての御見解を明らかにしておいていただきたい。
  85. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいまこの緊急事業と憲法との関連の御質問でございますが、具体的の問題になりますると、十カ年計画の大幅をきめておりましても、財政的には事業量の問題につきまして、建設省と地方団体と十分協議をいたしまして、そして年度内の調整をはかってやっていくということに相なろうかと思う次第であります。十分その間におきまして、地方団体の自主的意見というものを取り入れられることができると思う次第であります。また、ただいま田中委員の御質問にお答え申し上げました通りに、財源の補てんにつきましては、あらゆる程度から検討いたしまして、地方団体に圧迫を加えることのないように、ことに後進県につきましては十分な財源措置を講じていきたい、こう思っている次第でありますので、九十二条に相反することはないと、こう確信をする次第であります。
  86. 田上松衞

    ○田上松衞君 どうも私が的確に明らかにしてもらいたいというのは、憲法に抵触する心配はまるまる出てこないのか、今のあとの財源措置の問題については、そんなことは第四条で明らかにしているのですよ。今、大蔵省との関係で、田中さんとのやりとりがありましたが、こんなことは私から言うとこっけいな話だ。第四条の説明を建設大臣がされたときに明らかにしておるように、こんなことはやってみて足りなかったら、そこはそんなばかなことじゃなくて、初めからはっきりしているわけなんです、その点については……。すなわち、第四条を建設大臣が説明されたときに、言うほどばかくさいことですが、治山事業十カ年計画及び治水事業十カ年計画実施を確保するためには、財政上はもちろん、」と言っている。財政上はもちろん、行政上の見地からも諸般の措置を講ずる必要があるので、政府はこれらの計画実施するため必要な措置を講ずるものだ、こう説明しておるわけなんです。私はその点については、これはよけいなことを申し上げまするが、基本的な考えですから、これは当然なことであるけれども、その奥に隠れている必要な措置があるのではないかということを、本会議でも質問したのでありますけれども、その後に繰り返して建設大臣は、及び総理も、これ以外にはないのだということだから、この点についての私の心配は一応去っておるわけなんです。今大蔵政務次官のような、あなたの考えるような、足りなくなってから措置するというような、そんなばかげたことを、それこそ口はばったいことを申し上げますけれども、衆議院はそんなことで承知したかもしれませんけれども、われわれの場合は、地方利益金のどうのこうの、そんなことを考えて質問しているのじゃないから、もっと根本的なことについて質問しているのですから、この際はちょっとあきれちゃったということで、ただし、あとで田中さんとのやりとりの中で訂正されてはっきりしておるのですから、まあそれはこれ以上追及しないということなんですが、この必要な措置を、建設大臣の説明の通りに、まともに、これ以外に隠されたものはないという範囲内において私は今お聞きしているわけなんです。自治庁に対してもそのつもりでしておるわけです。  ただ一点心配なのは、九十二条との関係における違憲性という心配は出てこないのかということ、それはこうするからということでは追っつかない話があると、根本的に実は考えておる。しかし、わかるように、次にして今度は角度を変えまして、地方自治庁が地方自治体になさるところの政府の指導方針、これに触れて金の問題じゃなしにですよ。本質的な、根本的な問題についてお伺いしておく必要があると思うのですが、違憲性の心配についてはまずないといたしましても、そういうことのないようにという努力はされる、まあこれはこの程度で一応この場においては了解しておくということにいたしまして、いずれにいたしましても、地方財政の関係においていろいろな単独事業費のワクが狭くされてくる。これはもう明らかですから、そうすると、一方、今度は地方財政は、これを負担することのために、当然地方債発行のワクを大きくしていかなければならぬという結果になってしまうわけです。これはもう言うまでもないことです。そうしますると、この点においては、自治庁がなさっている地方行政、その方針がこういうものとの食い違いが出てくるのじゃないのか。なるべく地方債の発行を拡大しないように、みだりなことをしないように、これはさるべきだし、また、そういうことを常に指導されなければならぬ立場におありだ、私はこう了解しておりまするから、そうなってきますると、そこで相反するものが生まれてき、しかも、こういうような工合に、十カ年という長い間にわたることなんですから、今からその点についての十分なこの腹がまえというものがなければならぬはずですが、これについてあなたの方では、いかように地方自治体にこの点についての指導をなされようとするのかと、この点をお聞きしておきたい。
  87. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいまの御疑念でございますが、法律的に申しますれば、もし、地方団体におきまして、自分でこれは遂行ができぬと思えば、これは拒否することができる。今回の法律もそこまで拘束をしておりません。できるわけであります。その点は、決して憲法違反でないと思っております。実質的には、やはり緊急事業でございますから、どうしてもその事業量だけは確保しなければならぬということになる次第でございますので、私どもといたしましては、十分関係各省協議をいたしまして、地方財源の確保のために、十分な措置を講じて参りたいということを思っておる次第でございまして、ただいまもすでにその努力を続けております。将来とも十分努力を続けまして、この事業によりまして、たとえば単独事業等に圧迫を加えることのないように、十分な配慮を加えていきたい、こう思っておる次第であります。
  88. 田上松衞

    ○田上松衞君 私がお尋ねしておるところとはずいぶん食い違ってくるんですよ。私は、今の前段の、この十カ年計画をこれを完遂していくというためのことは、これはもう了解しておるんですよ。ただ、その反対に、地方自治体がみずからなすところの単独事業について、これをカバーすることのためには、どうしたって地方債の発行というものをこれは拡大していかなきゃならぬという、そこへ落ちついてしまうんです。そういうことについて、あなたの方は、常に地方財政の——地方債の発行をみだりにしないようにということで注意をされ、そういう指導をなされておるはずなんだが、その面においてどうお考えになるか。もっと突っ込んで申し上げまするならば、こういうような大きな矛盾がここへできてしまうんですが、長い間にわたってこのことのために地方財政を拘束してしまうのだと、こういう矛盾があなたの立場から言うと生まれくるんですが、この矛盾をどういう工合に——もう現実ですから、これはお考えになっておるのかということとあわせて、従って、これについて、さっき申し上げたような、こういう場合についてはこういうような指導方針をもってかかろうという、的確な御自信をお持ちにならないと不安だ、こういうことなんです。
  89. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいまも単独事業を圧迫しないような財源措置をできるだけ考えるということを申し上げたわけでございますが、私どもといたしましては、国の緊急必要と認めるところのこの事業量は、できるだけやはり確保しなければならぬ。それがために、起債によるべきところは起債によらなければならないでございましょうが原則といたしまして、私どもは、地方財政の健全化のために財源措置を講じたい。具体的に申しますると、先ほども申しましたような国の負担率の問題も、ここに生まれてくることでございますし、先ほど来の御質疑もございました通りに、道路に対する負担率と、河川治水事業に対する負担率との不均衡というような問題もございますし、これが不均衡でいいかどうかという問題もございます。しかも、いわゆる後進県に対しましては、ただ一律の負担率でいいかどうかということもございまして、私の方といたしましては、ただいま負担率の増加とにらみ合わせましていわゆる後進地域における、未開発地域における公共事業に対する国庫負担率の漸増方式による解決策ということも、ただいま考慮している最中でございます。そういったいろいろな事案を勘案いたしまして、単独事業——財政の窮乏化による団体の自主性を失わさないように努めて参りたい、こう存じているわけでございます。
  90. 田上松衞

    ○田上松衞君 私は、その地方債発行の問題のことを気にして言っておるのですよ。私は、これは生まれてくるのだ。それをさせないように、あなたの方で縮小させようとして、常に指導されなきゃならぬ立場にあるはずなんだ。現にその方針をとっておられるのです。これは実際にはやっていく。ことに、さっきの田中委員との話において、この第四条に関する財政措置の問題から、どういうところでもこれはやるのだという約束をされたのだ。どっちも、三万ともされたのだ、はっきり。いやでもおうでもしなきゃならぬということになるのですよ。従って、それはいずれの地方においても、これをカバーすることのために、地方債発行という問題が、これだけじゃなくしても、この影響を受けて生まれてくるわけなんです。常には地方債の発行は拡大しちゃいかぬぞと、こうやらなきゃならぬ。ところが、今度はもう実際目に見えて出てくるのですよ。その納得を、どういう方法において地方自治体においてなしていくのかということなんです。させないから、させないからと言うたってさせることも仕方がない。静岡県が神奈川県の金庫を破って持っていくわけにはいかぬのですよ、それは。当然静岡県は静岡県において地方債発行という問題が出てこなきゃならぬのだ。それをどういう工合にして指導されていくのかということなんだ。
  91. 丹羽喬四郎

    政府委員丹羽喬四郎君) ただいまの田上委員の御質問でございますが、地方債の点につきましても、格別これを押えていこうという必要のないのにもかかわりませず、押えていくというような意図は全然ございません。私たちは、しかしながら、地方団体の健全化のためにも、将来のためにも、漸次経済好転に伴いまして、地方税収入の増加であるとか、あるいは交付税の増加というような方面で、できるだけ財源を充実させていく、それに伴いまして、今度は事業量を勘案いたしまして、単独事業その他につきまして、地方債の必要な場合におきましては、それを十分考慮して参りたい、こう思っておる次第であります。
  92. 田上松衞

    ○田上松衞君 まあ責任のある大臣でないわけだから、これ以上言ったってしょうがないのですけれども、それじゃ私はこの点で希望を申し上げておきます。  私は、初めからこの計画については大賛成なんです。常にこの前提に立って考えておるわけです。ただ、心配になったのは、この四条に関する必要な措置だけの問題だったのです。そこにくる問題ですから、これは。そこで、この点について私どもはわかっておるのですけれども、政府側において、ほんとうにこのことについて確信を持って国民に対処する腹がまえができておるのかどうかということが心配なんです。この点については、各関係閣僚において、十分一つお打ち合わせをされて、そういう心配のないように特にお願いを申し上げておきます。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  93. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もなければ、質疑は終了したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  94. 田中一

    田中一君 私は、日本社会党を代表して、治山治水緊急措置法案に対して賛成の意を表しますが、その際、附帯決議をつけたいと思います。案文を読み上げます。    治山治水緊急措置法案に対する附帯決議   政府は、治山治水事業計画の策定ならびにその円滑なる実施を確保するため、すみやかに左の措置を講ずべきである。  一、計画樹立に際しては、地方団体の独自の計画との調和をはかるとともに、年次計画の確実かつ効率的な遂行が可能なるよう措置すること。  二、事業実施が地方財政に与える圧迫を除くため、事業量に対応する地方財源の確保につき充分なる配慮を加えること。  三、補助負担に関しては、地方財政の実情に則応して改善をはかること。  四、砂防事業は、治山治水の根本の要諦であるからこれが徹底的遂行と機構を充実すること。  右決議する。  内容につきましては、もはや審議の過程で十分に意を尽くしておりますが、どうかこの附帯決議に対して各党の一つ御賛成を得ながら、本法案に賛成することをお願いしながら、本法案に対して賛成の意を表明いたします。
  95. 田上松衞

    ○田上松衞君 この際、民主社会党を代表いたしまして、本附帯決議案に私の気持は全部盛られておりますから、満幅の賛意を表しまして、政府がこの附帯決議の精神を十分一つくみ取って、なおこの文句の中に漏れております点がありましょうとも、今までの質疑の過程において尽くされておることでありますから、十分尊重していただくことを願いまして、附帯決議案、そして本案に賛成することを申し上げておきます。
  96. 稲浦鹿藏

    稲浦鹿藏君 私は、自由民主党を代表して、本法律案に賛成の意見を述べます。  この法律案を実施することによりまして、昭和一十八年に立てられました治山治水基本対策がようやく日の目を見ることになったのでありまして、多年の懸案が一応解決した感じがいたすのであります。従って、この計画を確実に実施されたならば、災害防止の目的相当達成できるものと思います。しかしながら、本事業実施の裏づけとなっておるところの予算の財源が、道路整備事業におけるように、ガソリン税収入のような確定した財源がございません。その財源は、主としてわが国の経済の伸長率に伴ってくるところの一般財源をもって充てられておることとなっておりますから、この実施にあたっては、相当の工夫と努力が必要であると思うのであります。従って、ただいま田中君が提案しました附帯決議の趣旨を十分考慮して、円滑に実施をはかられんことを希望いたしまして、本案に賛成いたします。
  97. 北條雋八

    北條雋八君 私も本法案につきましては、附帯決議を含めまして賛成いたします七  ただ、この運営にあたりましては、農林、建設、緊密なる連絡をとりまして、どこまでも治山治水の根本の目的を達成されるようにお願いいたしたいと思います。
  98. 村上義一

    村上義一君 国土保全開発国民生活の安定向上のために、治水特別会計法案とともに、この画期的な立法である治山治水緊急措置法案を策定せられましたことは、深く敬意を表するとともに、私は本案に賛成の意を表するものであります。また、本法運用の見地におきまして、田中委員から提出せられた決議案にも、もとより賛成の意を表するものであります。  私はこの際、一、二の希望をなお付したいのでありますが、第一は、第四条の運用についてでありまするけれども、これは前刻、田中委員の質問に対する政府当局の応答で明瞭になりました。これは見合わせまして、第二に私は、治水の要諦は全く砂防にあるということを固く信じておるものでありまするが、本法案審議の過程におきまして、建設大臣も、治水の要諦は砂防にあるという趣旨を言明せられた次第であります。しこうして、昭和二十八年にあらゆる角度から検討し、策定せられましたこの治山治水基本対策要綱によりまして、各事業別の進捗率は、河川局調査資料によりますれば、河川が一六・六、ダムが三〇%、しかるに砂防は二・七%という今日までの事業量でありまして、いろいろの事情がもとよりあったことと推察しますけれども砂防が著しくその進捗度が鈍かったということは明瞭であるのであります。一方、基本対策要綱で決定しております治山費と砂防費との割合は、一対一・九〇ということであります。そうして農林省の治山費は、前期五カ年分として五百五十億という予算がまさに決定せんとしておるのであります。この割合から見ますれば、砂防費は千四十六億円を必要とするはずであります。さらに二十九年から三十四年まで六カ年間の治山費は三百七十三億であります。これに対応する砂防費は、ただいま申しました率でいえば七百九億円になるはずであります。しかるに過去六年間に進捗しました事業量は四百六十四億円でありまして、その差額二百四十五億円がアンバランスになっておるという実情でありまして、要するに、砂防は河川事業に比較しましても、またダム事業に比較しましても、さらに治山事業に比較しましても、すこぶるおくれておるということは明瞭であるのであります。  私は結論としまして、少なくとも前期、後期各五カ年の治水費は、各種の残事業量、今日の残事業量に応じて計画実施せられるということを強く要望いたしまして、本法案に賛成の意を表するものであります。
  99. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) ほかに御発言もなければ、討論は終結したものと認め、これより本案の採決を行ないます。  治山治水緊急措置法案内閣提出衆議院送付)全部を問題にいたします。  本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  100. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました田中君提出の附帯決議案を問題といたします。  田中君提出の附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  101. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 全会一致と認めます。よって田中君提出の附帯決議案は、全会一致をもって治山治水緊急措置法案について本委員会の決議とすることに決定いたしました。  それではただいまの附帯決議について、建設大臣の所見をお聞かせ願いまする
  102. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 長い間にわたりまして、この治水事業の基本的な問題を解決する法案についての御審議をいただきましたことを深く感謝いたす次第でございます。  ただいま法案通過にあたりまして、全会一致をもって附帯決議、しかもその附帯決議の内容は、私どもがこれなくしてはとうてい、ただ単に絵にかいたもちに終わるおそれがあるだろうと心配しておった点を、一々列記いたしまして、われわれ政府に対するいわゆる非常な激励と申しますか、これを実施するようにという、いわゆる最高の機関である国会の御命令であります。私は、この御趣旨をあくまでも尊重いたしまして、この五カ年計画あるいは十カ年計画を完全に実施いたしまして、この年々歳々の災害から、これを防除いたしまして、少なくとも民生の安定、経済基盤の確立を期したい、かように思っている次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
  103. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会