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1960-03-17 第34回国会 参議院 議院運営委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)    午前十一時三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員村上春藏君及び永末英一君辞 任につき、その補欠として仲原善一君 及び相馬助治君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            塩見 俊二君            田中 茂穂君            阿部 竹松君            光村 甚助君            向井 長年君            北條 雋八君            加賀山之雄君    委員            天埜 良吉君            石谷 憲男君            鹿島 俊雄君            北畠 教真君            後藤 義隆君            佐野  廣君            鈴木 恭一君            徳永 正利君            仲原 善一君            鍋島 直紹君            松野 孝一君            占部 秀男君            椿  繁夫君            豊瀬 禎一君            安田 敏雄君            米田  勲君            相馬 助治君         —————    議長      松野 鶴平君    副議長     平井 太郎君         —————   衆議院議員            佐々木盛雄君            長谷川 峻君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君   政府委員    警察庁長官官房    長       原田  章君    警察庁警備局長 江口 俊男君   事務局側    事 務 総 長 河野 義克君    事 務 次 長 宮坂 完孝君    議 事 部 長 海保 勇三君    委 員 部 長 岸田  実君    委員部副部長  若江 幾造君    記 録 部 長 佐藤 忠雄君    警 務 部 長 渡辺  猛君    庶 務 部 長 小沢 俊郎君    管 理 部 長 佐藤 吉弘君   法制局側    法 制 局 長 斎藤 朔郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○本会議における議案趣旨説明聴取  及び質疑に関する件 ○国会審議権確保のための秩序保  持に関する法律案(第三十三回国会  衆議院送付)(継続案件)   —————————————
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより議院運委員会開会いたします。  まず、本会議における議案趣旨説明聴取及び質疑に関する件を議題といたします。  理事会において協議いたしました結果、先般、内閣から送付されました治山治水緊急措置法案につきましては、本会議においてその趣旨説明聴取することとし、なお、治山治水緊急措置法案及びさきに本委員会において本会議における趣旨説明聴取決定いたしました商工会組織等に関する法律案につきましては、次の要領により質疑を行なうことに意見が一致いたしました。  すなわち、治山治水緊急措置法案につきましては、時間は社会党及び民主社会党おのおの十五分、人数各派おのおの一名。順序社会党民主社会党の順。また、商工会組織等に関する法律案につきましては、時間は社会党二十分及び民主社会党十五分、人数各派おのおの一名。順序社会党民主社会党の順。  以上の通りでございますが、右理事会において申し合わせの通り決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  4. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 次に、国会審議権確保のための秩序保持に関する法律案議題といたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。    〔椿繁夫君「議事進行」と述ぶ〕
  5. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 椿君。
  6. 椿繁夫

    椿繁夫君 私は前回もお願いをいたしたのでありますが、国会審議権確保のための法律審議する前に、理由のないのに長期にわたって国会を欠席しておる人がある。こういう人たち出席を督促して、国民の負託にこたえるように、審議を十分に尽くしてもらう必要があると思うが、そのために、私は、衆議院で十人程度、本院にれいて五名程度でけっこうでありますから、長期欠席者を順位をつけて、一つ委員会資料として提出をしてもらいたいということをお願いをいたして参りました。今日まで実はまだ出ませんので、これはいつごろ出ることになっております。事務当局から一つ早く出してもらいたい。
  7. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 委員長からお答えいたします。本件につきましては、それぞれ衆議院並び参議院にそり事務的の手続をとりましたので、そり間の事情事務総長から説明いたします。
  8. 河野義克

    事務総長河野義克君) ただいまの資料でございますが、実は、国会議員か、ゆえなくして、あるいはゆえある場合もありますが、登院しているか、していないかということは、国会職員か勤務しているかどうかということとは全然違いまして、本会議のない日、あるいはその方の所属している委員会かない日に、国会に来られないというような場合、直ちに不登院ということにはきめにくいというような、いろいろな事情もございまして、この二年間における各議員登院、不登院ということを、その所属委員会開会日数、また、いかなる委員会に所属しておられたかというようなことも関連して調査をいたし、しさいに検討をして誤りなきを期しておりますので、提出がおくれて恐縮しておりますが、もう一つには国会議員登院状況がどうであるかういうことは、正確な上にも正確を期さなければなりません。と申しますのは、やはりそういう資料が公表されるということは、議員の身上にも関することにもなりますし、また議員名誉守に関する関係もあろうということから、従来両院におきまして、議院運営委員会理事会あるいは庶務小委員会等において、秘密確保される方法においては論議したことはございますが、そういう保証のない場合においては、軽々に論議すべからずということが、当初の国会から堅持されてきている方針でございます。調査の正確を期しておりますとともに、そういう事情もあるということを委員長にも申し上げておる次第でございます。
  9. 椿繁夫

    椿繁夫君 伝えられるところによりますと、この法律審議も、新聞によると、きょうでも審議打ち切りそうなことが伝えられておるのであります。私が資料要求をいたしましたのは、この法律審議と並行して必要でありますから、資料要求お願いしたのであります。そういうつもりはないと思いますけれども、この法律審議中に要求しております資料提出をぜし私はお願いしたいと思うのです。  で、一昨日でありますか、この委員会で、議長は、両院議長が連名をして、公安委員会なり警視総監に対して要請をするということになっておるのであるが、衆議院が解散となって、本院のみの緊急集会が行なわれる際に、両院議長というのは、一方の議長がおでにならぬのでありますから、たとえば緊急集会中の場合は本院の議長がこれを行なうというふうに読みかえるとか何とか相談をした上で、あらためて議題とするということを委員長宣告されておるのでありますが、いまだにそのお諮りがないのでありますが、これはどういうふうにお取り計らいになるつもりでありますか。
  10. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 委員長から申し上げます。実は総理出席を十時半から十一時ということで求めております。きょうはその総理質問をまずやる予定でございました。他の委員会との関係もあり、若干おくれておりまするが、総理質問が終わったあと、今、椿委員お話の点も十分取り上げまして、そして、この前のお話もありますから、提案者からも解明がございますので、そういうふうなことで御了解を願っておきたいと、こう存じます。  そこで、椿君にお諮りいたしますが、実は、きょう相馬君から議長及び副議長に対する質問要求がございますので、議事進行はいかがでしょうか、この程度にして……。
  11. 阿部竹松

    阿部竹松君 関連して。椿委員資料要求要請に対しての関連質問ですが、確かに河野事務総長がおっしゃった通り、なかなかむずかしい問題ではあろうと察することができます。しかし、これが椿委員要求後三日あるいは五日であれば、事務総長のような御答弁でもよろしいだろうと思いますが、すでに椿委員から要求があってから三週間になっておる。三週間の問いかに慎重に調査したからといって結論が出ないはずはない。そこで、その資料というものはどういう資料になるかわからぬけれども、委員会最終的質疑打ち切り動議の前に出すのが事務当局のお仕事であろうかと考えるわけであります。単なる弁解ではこれは困りますので、そういうことは事務当局として責任をもってやはり資料要求に対しては出していただかなければ、われわれ委員長に協力して議事進行する係の理事として立場上困ります。従って、そういうことは明確にしていただかなければならぬ。私どもが常識的に考えても、衆議院で一番休んでいるのは誰かということになれば、ナンバーワン吉田茂さんでなかろうか。ナンバー・ツーは石橋湛山さんでなかろうか。参議院においては、ナンバーワン西田隆男さんでなかろうかと、こう考えるけれども、これはきわめて常識的な話ですから、委員会に何回出たかということは明確にわかる、本会議も何回あって何回出たかということも明確にわかることなのですよ。これはきわめて簡単です、数字的に。しかし、これは議員の名誉にかかわるとか何とかということになれば、委員長委員に諮って秘密会にかけるということもできると思う。ただそれを議員の名誉に関するとか何とかいって三週間もたって結論が出ないというようなことでは、まことに要請した側としては困りますので、これは明確に本案の審議の前に出していただかなければならぬ、こういうふうにあわせて申し上げます。
  12. 光村甚助

    光村甚助君 この法律は、国会周辺デモが来たり陳情があると、国会審議ができない、国会議員登院できないといって、こういう法案をお出しになっているのですね。いかにも社会党とかあるいは民社党、そういう党が国会審議のじゃまをしているかのごとき印象世間に与えて、そしてこの法律が出されているということを印象ずけようとしている。しかるに、そういう事態というのは年に一回か二回しかない。今、国会は年中平穏なんです。国会集辺は平穏で、いつでも議員登院できて審議できる状態なんです。それにもかかわらず、一年の間に一回か二回しか出て来ぬ議員があるということは、これは国民の前に当然発表していいと思うのですよ。そういうことを議員秘密だからどうだこうだと言って事務当局逃げるということは、私は与党の議員だけに対してそういうようなことの事務当局資料を作らないということは、もってのほかだと思います。きょうの新聞によると、きょう打ち切りというような、そういう国民の前に不明朗なことでなくして、審議打ち切りの前にこの資料をぜひ出していただくことを強く要求しておきます。   —————————————
  13. 相馬助治

    相馬助治君 私はこの際、本法内容関連して、議長に対して一点お尋ねすると同時に、次にあらためて、再三前にも質問してありますけれども、議長責任についてお伺いいたし、次に、これを補佐する副議長責任について若干お尋ねしたいと思います。  まず第一に、議長本法成立を深く期待しているかどうか。この一点を伺いたいと思うのです。御承知のように、本法衆議院における議員立法の形をもって提案されております。審議して参れば参るほど、この法律というものは実に不可思議な内容を持つものであり、ある意味では全く効果のないものであるということもできるし、ある意味では非常なる威嚇法案であるというふうにも言えると思うので、実は、かりにこれが成立した場合には、その取り扱い解釈というものは非常に多くの問題をはらんでくると思うのです。そこで議長に尋ねたいことは、本法成立後、議長要請権というのが非常に大きな問題になってくるのです。今までと違いまして、集団デモが行なわれようとしている、議長がこれに対して警察権の発動を要請しておいたといたします。何ら問題なしに平穏にこれが解散されたとします。そうすれば、何がゆえに警察権を発動してものものしい警戒をいたしたかということが、この議運においてさっそく問題になってこようと思います。  次に、議長はその集団デモの性格というものを、ある解釈を施して、今回は警察権を発動しない、要請をしないということになっておりますれば、本法があることによって警察が自発的に動いて警戒に当たるということの熱意が少なくなっていると思うのです。その場合に突如として予想外の問題が起きたといたします。そうすれば、直ちにこの議運において、議長は何がゆえに要請をしなかったのか、どういう情報をあなたは集めていたのだということが、先の場合と逆の意味責任を追及されると思うのです。従いまして、先般の十一月二十七日の問題については、あれは外に起きたことだから、警察のことだから、まことに遺憾なことではあるけれども、わしは知らぬというようなことを議長は言って、また、その言いのがれがある意味では通ったのですが、本法成立すれば、そういうことは言い得ないことに相なります。すなわち、議長には新たなる権限が付与されておりまするから、事件発生のときには新たなる責任が発生していることになっていると思うのです。かかる法案議長は積極的に成立を期待しておりますか。それとも、しからざるという見解をお持ちですか。その点を明確に承りたいと思います。
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) お答えいたします。なるほど相馬君の御心配のような点もあると思います。しかしながら、私がその当時、事件直後、このままではいかない、一つこういうことの起こらないように何かの措置をとっていただきたい、こういう声明をいたしましたが、結局はこの法案となって参りました。この法案必ずしも絶対とは思いませんけれども、ないよりはある方がよかろう、こういうことが議長の心境であります。それから責任問題に対しましても、やはり法律成立いたしますと、いかに議長が困難であっても、その責任を負うことはこれまた当然であります。私は、先日のような事件が起こらないように、一つ皆さんの十分な御考慮を願いたいということを議長立場から申し上げましたが、この法案成立するやいなやということは、皆さんの御審議の結果に待つよりほかありません。
  15. 相馬助治

    相馬助治君 ただいまのお答えの後段は、かりにそういう不祥なる問題が起きたときには、責任議長として負うべきであると考えるというふうな意味合いのように私は了解をいたします。それから前段の問題は、まあ、ないよりはあった方がいい、こういうお話ですが、これは実に聞き捨てならない言葉です。その辺の何ら関係のない者が、第三者の立場からそういうことをおっしゃるのならばよくわかりますが、議長は、本法成立によって明確に一つ権限を与えられると同時に、責任を生じておるのです。御承知のように、警職法五条によれば、個人の危険が予想され、あるいは犯罪がまさに行なわれようとする具体的な現象が起きたときにおいてのみ、警官制止権を持つのですが、本法五条2の規定によりますれば、四条2に規定した場合における「おそれ」というものを広範に解釈して、警官が第一線において制止権限を持っておるのです。これは非常に本法において問題になったところであって、各委員が今まで熱心に質疑を繰り返されたことは速記録に明らかであります。そうしますと、警官が行き過ぎた制止を行なって、そこに不祥なる事件が起きたということ自体は、警察そのものの問題であるから、警視総監責任ですが、かかることを要請した議長責任というものも当然免れ得ないというふうに私は考えるのでございます。従いまして、仮定の事実ではございまするけれども、当然予想される問題なのでありまするが、警官の行き過ぎた制止及びこれに関連して起きる不祥事件、あるいはまた取材をするカメラマンの諸君新聞記者諸君に対して、デモ隊の一員と心得違いをして、これをなぐった、けったというような、そういうような、あるいは起きるであろうと予想される問題、それら広範なものにいて、議長はその際、警視総監とともに責任を負うべき筋のものと本法の真意に照らしてお考えでありますか。それは問題が別だというふうに御判断でございますか。
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 先刻私の答弁した言葉が足りなかった点があると思いますから、足りなかった点をまず第一に申し上げます。相馬君の御指摘の通り、いろいろこの法案に対しましては、おのおの皆さん意見があると思います。それで、なるほどこの法案成立いたしますと、議長責任が、あらためてこういう場合にも加重されて、今よりもむしろ議長責位がめんどうになってきやしないか、議長はそれでもなお可としておるか、こういう意味の御質問だったと思います。私は、結局この法案皆さんの御審議の途中でありますから、その皆さんの御審議の途中において、私がきまったものと仮定して、これに対して御答弁申し上げるわけにはいかない。これがいかなることに最後において決定するか、決定を待つまでは、議長自身意見を申し上げるべきものでないと思います。しかしながら、決定いたしますと、相馬君の御質問通り責任が倍加されて、議長は職務上非常に困る場合があるじゃないか。はたしてそういうときがあったとすれば、これは議長としては、すでに法律でありますから、今よりも議長責任が倍加されて、議長立場が困難になるではないかと言われても、これは仕方がない。議長責任において責任をとるのほか仕方がない。ただいま御審議の途中におきまして、私が先刻申し上げたような言葉の足りないことは、むしろ私は、諸君審議を尊重すべきものでありますから、これは決定の結果を待つ以外にお答え申すことはないと思います。
  17. 相馬助治

    相馬助治君 議長としての御見解、それから審議の過程においてその結果を予測して、断定的な、本法は悪いとか、あるいは絶対よろしいというような見解は付すべきでないという御意見については、私もさもあらんと、かように考えます。ところが問題になることは、松野議長は単なる議長でないということです。それは不思議な表現を私がしているようで恐縮ですが、御承知のように、責任政党内閣の中において、参議院自民党の中においても松野議長実力を疑うものはない、もう巨大なる実力を持っておるとうわさされておる。従って、これが党の意思決定というものに対して、重要な案件については何らかの形で議長という立場を離れて御相談を受けていられると思いますし、党においてあなたは顧問であると私は承知をいたしております。そういうことになると、野党諸君の必死の反対にもかかわらず、また、常に是々非々をもってこの参議院の中に存在価値を示しておる同志会諸君も多大なる疑念を本法に感じておるこの問題に関して、とにかく自民党自身が強引に本法を提案して、他院審議をあれこれ言うべき筋のものではないけれども、もう短時日のうちにこれを押し通して本院に回してきた。良識の府といわれる本院においては、これを慎重に慎重を加えて審議をして、その可否を決すべき責任をわれわれは持っていると同時に、議長自身が持っているはずである。従って、自民党とのその関連において、私は、本法が今日に至る経過の中において、阻止すべき積極的な動きが、裏面においてでもよろしいから、松野議長にあるべきことを期待していたんですが、不幸にして私はそういう情勢を知らないので、一体どのようにお考えであるかということをお尋ねをいたしたわけでございます。  そこで私は、次にあなたの責任について再度伺いたい。民社党国会対策委員会を開きましてあくまで正副議長責任——十一月二十七日問題について責任ありという立場に立って同僚永末向井両氏から質問をいたして参ったわけでありますが、速記録によりますると、衆議院加藤議長辞任のいさつについては詳しく知らないというような逃げを打った答弁議長がなされておる。また衆議院提案者であります佐々木君は、加藤議長辞任はこれに直接関連がないというようなことも速記録発言に見えておりますが、世上そんなことを信ずるものはだれ一人ない。加藤さんの辞任は、明らかにこの十一月二十七日の問題に関連して責任をとられたというふうに理解をされておるわけです。それで、古い歴史をたずねるまでもなく、法隆寺が燃えたときに、文部大臣責任が追及された、当然やめるべきであるといって新聞に非常にたたかれた。そのときの文部大臣は今日われわれの同僚である下條氏であると記憶いたしまするが、ほおかぶりしてやめなかった。その後における下條氏の政治的経歴というものは若干不遇であったということを皆さんはお知りである。次に、国鉄の問題について桜木町事件というものが起きた、そのときに、ここに列席している加賀山氏は、直ちにその責任をとって天下にこれを謝した。もちろん立法府と行政府では違います。違いまするけれども、長という責任にある者は、自分が犯した罪でなくとも、そこに起きた問題に関しましては、これをわしの知ったことではないなどという逃げを打たずに、その地位に伴う道義的責任というものはあるはずなんです。たまたまその席にあるところのりっぱな人がいて、そうして引責辞職をした、しかし、あの人は気の毒であるという判断、あの人は正しいという判断は、その後に世間がこれを決定する。少なくともその席にいた者は、その責任を道義的に感ずる必要がある、こういうふうにわれわれは考えておるのです。それで、松野さんの本院における答弁を聞くと、遺憾であったということを言っておる。しさいに見ると、自分がその職責を尽くし得ずして遺憾であったというのではなくて、このような問題が起きたことは遺憾だと言っておる。そうして自分は非常に済まぬというような発言がないのでありまするが、この加藤辞任の真相を今日はどういうふうに把握され、これに関連して議長はどのような責任を新たに痛感されておるか。それとも、前言通りでのるかどうか。あらためて伺っておきたいと思います。
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) お答えいたします。今も加藤君の辞任理由を、私はこれを把握する必要なしと考えております。それから、私の責任に対しましては、たびたび委員会で申し上げました通り、また相馬議員のただいま言われた通り、まことに遺憾なできごとであるということは深く感ずると同時に、将来こういうことの起こらぬように十二分に注意しなきゃならぬという覚悟を、十分に持っております。それと同時に、今、相馬君の言わるる通り責任ありとしてその職を辞すると、それがいかにも議長の当然な責任のごとく、また、それが政治家として非常な良心的の行動なりというような意味の御発言に対しましては、私は、遺憾ながらあなたと所見を異にしております。
  19. 相馬助治

    相馬助治君 私の引いた実例が必ずしも適切でなかったので、松野議長に対して、あなたはやめなさいという、私の最終的な意思であるというように御判断されたようですが、私はそういうことは申していない。やめるかやめないかという問題ではない。この問題に関して、参議院側最高責任者である議長は、どういうふうに十一月二十七日の問題を判断し、その責任を感じておるか、ということを私は承りたかったので、あなたがどうもまずかったと言えば、それならやめなさいと、こういうふうなたたみかけ方をしようという、底意地の悪い立場に立って私は質問をしておるのではないのです。どこまでも、今問題になっておる本法成立することによって、議長責任というものは問題になるから、とにかく私は、議長がこの問題に対してどのようにお考えになっているかということを承っておきたいという真意なわけです。  それで、ただいまの答弁は必ずしも私を満足させるものでありませんが、次に進みまして、党籍離脱のことについて再度触れておきたいと思います。松野議長は、就任以来、非常に大きな、問題が本院にあったにもかかわらず、どうにかこれを乗り切ってこられた。それは多数の与党を擁して、そして、あなたが自民党の党員であったからであったかもしれない。私はやっぱりこの今のような立場において、力なき議長が、基礎も成り立たないうちに軽々しく党籍を離脱するということが、必ずしもいいというふうには判断していないのです。責任政党内閣、そういう中においては、政党をバツクとして十分に信念を押し通せるだけのそういうバックを持って、一個の見識を持って参議院を運営していくというのも、一つの道であろうと私は思うのです。ところが、問題は、良識の府といわれるところの参議院においては、あくまでも、議長、副議長は党籍を離脱することが望ましい。そうなれば、あなたのような実力者が自民党から出ているこの際において、私は、はっきりと党自体をそういう方向に持っていって、動かして、そうして、議長が党籍を離れても次の選挙に心配のないような一つの仕組みを作って、前例を作っても党籍を離脱すべきことであり、そういう前例を作るのにあなたこそふさわしい議長であると、私は、過去の政治的経歴実力から見まして考えるのです。そういう意味で、そのように積極的に仕組みを作ってこの問題を作り上げていくというような御意図があるかないか。一点承りたいと思うのです。  なお、次に平井さんに一点聞いて終わりますから。
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) お答えいたします。党籍離脱の問題でございますが、私は党籍を持っておりますけれども、幸いにこの議長の職責が勤まっておりますことは、ひとり党籍を持っておる同志の自民党の擁護によってのみとは考えておりません。私は、皆さん全員の議長の私に対するできる限りの好意と、そうして、参議院議長としてあやまちなからしめて、そしてりっぱに職責を尽くさせなきゃならぬ、こういう全員のお気持で、私は今日自分の職責を果たしておると信じております。それで私は、党籍問題のごときは私の職務を遂行する上において、これが絶対のものとは考えておりませんと同時に、また党籍を離脱する必要なしと考えております。
  21. 相馬助治

    相馬助治君 それについては意見もありまするが、時間の都合もあるので、いずれの日か、適当なときにその問題を取り上げたいと思います。  私は最後に、平井副議長に一点伺っておきたいと思うのです。剛議長は、議長を補佐してその職責を全うするのであって、実に微妙にしてむずかしい立場だということは私も十分考えております。しかし、その責任、その権威というものは、非常に高いものであるということも疑いを入れません。ところが、十一月二十七日の議会の様子を見ますと、議長議長室にがんばって、請願その他を受ける態勢をしき、そして当日は総長がかわって請願を受けております。議長はその日はおそくまで本院に登院しております。しかるところ、平井副議長は、その間ずっと当日お留守であったようであります。これはいろいろな都合があると思いますけれども、きわめて私は遺憾なことだと思っております。それから、平井さんは非常に剛直にして公正な方であって、まありっぱな方ですが、はなはだ個人的なことを言うようですが、私は、参議院の良識と権威のために、あなたの口を通じて一点、さようなることなしという御見解を承っておく方がよいと思うので、あえてお尋ねをしますが、ある方面の情報によると、四国電力に対するセメント納入に関しまして、脱税の容疑があって、関係方面が四国電力に対して強力に動きつつある。(「問題が違うよ」と呼ぶ者あり)いや、待って下さい。しかも、それに平井氏が重大な関係があるというようなことが、新聞記者諸君の問においてかなり強くうわさされている。私はさようなことはないと思いまするし、しかも、この平井氏の場合に限って、そういう出所進退はきわめて明瞭であるということも私は信じておるのであって、この際さようなること——あれば仕方がないが、ないとするならば、なしと、本院を通じて明快に申され、議長を助けて十分あなたは副議長としてやるべき責任があると思う。当日のことをあえて一点伺って、その所見をただします。
  22. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 御答弁申し上げます。  副議長の職責の重大なことは、私はよく考えておるのでございます。御指摘の昨年の十一月二十七日のデモ当日におきましては、私は午前中登院をいたしました。午後になりまして、私のからだが少し悪かったので、議長並びに事務総長にいろいろ協議をして、私は副議長公邸で待機をいたし、病院の医者に来てもらって治療をいたしました。その間、私の職責といたしましては、議長を補佐する私の職責がございまするので、たえず議長とは電話連絡をとり、また事務総長とは密接な連絡をとりまして、私の職責の重大さを十分痛感しての行動をとっておったと私は信じておるのでございまして、この点につきましては、私といたしましては万遺漏のない行動をとった、かように考えております。  なお、最後の御指摘の、四国電力のセメント問題につきましては、私は何ら関知をいたしておりませんから、この席ではりきりとその点を申し上げておきます。   —————————————
  23. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) お諮りいたします。委員の御要望により、本日は特に岸内閣総理大臣出席を求め、ただいま出席されたわけでございますが、時間の関係もございますので、これより総理に対する御質問お願いすることといたしたいと存じます。時間の都合もございますから、委員長において適宜議事を整理することにいたしたいと存じます。その旨さよう御了承を願いたいと思います。それでは御質疑のある方は順次御発言を願います。
  24. 占部秀男

    ○占部秀男君 山房総理に、この法律案関連して御質問いたしたいのでありますが、その前に委員長に一言お願いしておきたい。それは、本日の予定では、十時半から岸総理に来ていただいて開かれる予定になっておりました。もうすでに十一時四十分、このおくれた理由は、岸総理衆議院の方に出られておったということと、今の相馬さんの問題を委員長が挿入された、こういうことからおくれておるのであって、従って、そういう時間的な点については十分に配慮をしていただかぬと今後の審議に困りますので、その点を一つ念のためお願いをしたいと思います。  岸総理にお伺いをいたしたいことは、この法律の運用に伴い、内閣の行政責任関連する問題一点だけであります。言うまでもなく、行政の最高の責任内閣にあります。従って、現行の国会法においては、御存じのように、立法府の静穏と秩序を保つために、議長がかりに警察官の出動を要求いたします場合にも、内閣を通じ、内閣から警察官が派遣される、かようになっておるわけであります。この趣旨は、立法と行政のおのおのの責任を明確にしておるというところにあることは明らかでございます。しかるに、今度のこの法律案は、議長内閣を除外といってはおかしいのですが、除いて、直接、都の公内委員会や都の警視総監要請をし、地方団体の固有事務としての警察力を発動させることによって立法府の静穏と秩序を保とうとしておる。これが内容になっておると思うのであります。そこで、事は、立法府の秩序を保つために国民の基本的な権利を制約する場合でありますから、行政上の責任を明確にするためにも、当然この場合には、議長要請内閣を通じて行なわれるべきではあるまいかと私は考えるのでありますが、総理の御見解を伺いたいと思います。また、内閣を通ぜずに、特定の地方団体の警察力のみで国民の基本的な人権を制約しようとする、そうした議長のこの要請権といいますか、要請に対して、内閣として行政的な責任が持てるのかどうか、そういう点についてお答えを願いたいと思うのであります。
  25. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 本法の目的とするところは、国会の秩序といいますか、国会の解義というものを平穏に公正に行なっていこうということでございますから、それに支障を来たすような事態ができておるかどうかということは、私は議長判断すべきものだと思います。しこうして、その、警視総監あるいは都の公安委員会要請されるという場合におきましては、事はやはり緊急である事態に処する議長考え方から出ているであろうと思います。そう緊迫していない時期においてこういう権限を行使して要請すべきものでない。事態がきわめて緊急な時期の場合であろうと思います。それと同時に、警察については、できるだけ地方の自治体の意向を尊重すべきものであろうと思います。そういう意味から、議長がそういうふうに必要な場合と認定して、そうして都の公安委員会警視総監に対して直接その要請をするということが建前だろう、こう思っております。
  26. 占部秀男

    ○占部秀男君 私の御質問をいたしておるのは、内閣を通ぜずに、特定の地方団体の警察力のみで国民の基本的人権を制約しようとするような、こうした議長要請、この要請に対して、内閣として行政的な責任が持てるのかどうか。結局、警察行政といっても、最高の責任はやはり内閣にあると私は思うのであります。そういうような意味合いから責任は持てるのかどうか、こういう点をお尋ねいたしておるのであります。
  27. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 現在の警察の建前から申しますと、都の公安委員会というものが責任を持っておるわけでありますから、これに対して要請するということであって、都の公安委員会がそれについては責任を持つべきものである、かように考えております。
  28. 占部秀男

    ○占部秀男君 総理は、都の公安委員会責任を持っておるから、かように仰せられるのでありますが、そうすると、この問題については内閣は行政的な責任は一切持たない、こういう意味合いでおっしゃっておるのかどうか、その点を。
  29. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) この問題について直接に内閣責任を持つということは私はないと思います。しかし、もちろん内閣は国全体の政治のあらゆる面について最後の責任を持っていることは当然でございますけれども、この権限の発動及びその行動につきましては、それぞれ責任の部門は明らかで、ありまして、内閣がそれに対して直接の責任を負うということはないと思います。
  30. 占部秀男

    ○占部秀男君 内閣が直接の責任を負うということはない、こういうことは一体どういうような理由から仰せられるのか。つまり、こういうような事態が起こる、こういうような警察権の発動によって、こういうような規制を国民にしよう、そういうこと自体は、国の公安の問題じゃなく、いわば東京都における公安の問題である。そこで、都の公安委員会なり警視総監なりが責任を持てばそれで済むのか。かようなことでありますか、どうですか。その点を。
  31. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 現在の警察法の建前から申しまして、東京都の警察については東京都の公安委員会及び警視総監責任を負うことになっておりますから、そのことを私は申し上げておるのでございます。
  32. 占部秀男

    ○占部秀男君 実はそれだけではなかなか済まない問題であると思うのであります。というのは、この議長要請という、この要請の性格を見ますと、すでに提案者が述べられたように、この要請をすることによって、この法律によって、現行法のワクを越えて国民の権利を拘束し、義務を課する、新しい権能を警察官に与えるのであります。しかも、規制される対象となっておる国民の基本的な人権を、新しく加わった権能でこれを制約しようという場合でありまして、単に東京都だけの地域的な問題とは別である、国の公安に関する問題であるから、ゆえにこの法律案国会関係法であるということを提案者は言われておるのであります。どうも岸総理の言われることは、地方的な問題であるがゆえに、これは内閣の行政責任はない、かようなことを言われているように私は受け取れるのでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  33. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 申し上げるまでもなく、東京都の公安委員会というものが東京都の治安なり秩序の維持の警察責任を持つのでございますが、同時に、それが国の公安に関係があるという場合において、国の公安についてもやはり警察上の責任を負うということは、これは当然であろうと思います。従って、問題が発生した場合において、それが単に東京都だけの問題であるか、あるいは国の公安にも関係する問題であるかということは、そのときの事態から判断すべきものであって、そういう場合において、両方についてその公安委員会責任を持つということは、これは差しつかえない、こう思います。
  34. 占部秀男

    ○占部秀男君 直接の責任は都の公安委員会なり警視総監なりにあるとしても、やはり警察行政であるという意味における責任は、内閣にも、間接的にか何か、これはあるべき問題だと思います。その点はいかがでございますか。
  35. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほども申し上げましたように、内閣は国全体の政治上のあらゆる問題の最後の責任を持っておるわけでございます。従いまして、もちろん国の公安が乱されるとか、あるいは、たとえそれが地方的であっても、重要な地域におけるところの公安が乱されるというようなことに対して、それに対する処置の全体についての政治的責任というものは内閣は持たなければならない。おれは知らないのだ、あるいは、だれにまかしてあるから、おれは何にも知らないのだというふうな問題ではないと思います。しかしながら、そのときの警察の行動なり、警察権が発動するとかいうような問題については、直接に政府としては責任を持つものじゃない、こういうことを申し上げているわけであります。
  36. 占部秀男

    ○占部秀男君 直接に政府としては責任を持たない、かように言われるのでありますが、この議長要請が、かりにかような事態が起こらないのを誤って判断をして要請をした、そのことによってこの法が発動されたというような場合には、内閣として何らこの問題に対して、議長の誤った要請に対する調整の方法がこの法案にはうたわれていない。ところが、対象はやはり国民の権利義務である。従って、そういう点については、あまりに内閣を通じないこと自体が一つの無責任な体制になっていくんではないか、かように感ずるのでありますが、その点が第一点。それからもう一つは、総理の今言われたようなお話を聞きますと、事はやはり東京都の公安委員会なり警視総監が直接責任を持つ範囲であるから、内閣としては直接の責任はないのだ、かように言われておること自体は、これは東京都という特定の地方団体の公共平務——警察権も公共事務ですから、公共事務に関するものであるから、内閣としては責任を直接持たなくてもいいのだ、かように私としては解釈できるわけでありますが、それでよろしゅうございますか。
  37. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御質問の第一点は、これは私は、議長責任をもって判断すべきことであって、内閣の関与すべき問題じゃないと思うのであります。この事態自身が、国会審議権であるとか、あるいは議員の権利であるとかというものを対象としておるわけでありまして、内閣判断すべきものではなしに、議長責任を持って判断すべきものじゃないか。今、占部委員お話のように、それが誤ったらどうするかというようなお話でありますが、かりに内閣の方では誤っておると考えても、議長があくまでもこれはこうだ、議会というもののなにに対してこうだと言われることに対して、内閣があれこれ言うべき筋じゃないと思う。その点は議長判断にまかせ、議長の良識にまかせ、議長がこの権限を運用するにあたって、それは議長としては非常な慎重な態度であるべきことは当然であり、十分な確信から判断されることで、その誤りがあるということを前提として考えることは私は適当でないと、かように考えます。それから第二の点に関しましては、御質問の御趣旨を、あるいは私、正解しておらないのでありますれば、さらに御質問を願いたいと思いますが、私が申し上げておるのは、東京都におけるところの警察権の問題については、直接、都の公安委員会なり警視総監というものが責任を持つということになっておりまして、従って、その意味において、われわれ政府としては責任がないと、こういうことを申しておるのであります。しかしながら、先ほども申し上げますように、最後の政治的の責任というものはもちろん全部政府が負わなければならぬものであることは、これは当然でございます。それを私はのがれる意味じゃございませんが、直接の責任者はだれだれという意味ならば、その責任は明確である、こう考えております。
  38. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 先ほど占部君に申し上げました通り、時間の都合があって委員長が調整することになっておりますので、相当時間が過ぎておりますから。——豊瀬君。
  39. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私どもが本法案について、今日まで十数回の経過を通じて、たびたびただして参りましたこの法案のねらいとするもの、あるいは意図するものが、憲法違反の疑いがあるという点について、特に表現の自由を侵すものであるという角度から、総理質問をいたしたいのであります。  三月十日の委員会におきまして、私は数時間を費やしまして、特に表現の自由の問題に関して、第四条の事前抑制の問題について提案者にただして参りました。また警視総監等にもその意見を聞きましたけれども、質問の過程を通じて次第に明らかとなって参りましたのは、国会審議権確保とかあるいは登院を守るというような美辞麗句のもとに、表現の自由に対して、特に第四条に書いてありますように、著しく影響を与えるおそれのある場合という、いわゆる事前抑制までしようとしておるところは、きわめてこれは重大な問題であると思います。そこで、憲法の十二条によるところの基本的人権と公共の福祉について、主として総理にただしたいのですが、その前に一、二憲法との関係を明らかにするために、まず総理に、人権に関する世界宣言についてただしておきたいと思います。  まず第一は、この世界宣言は、人種を越え、あるいは国境を越えて、全人類が到達すべき基準を設定したものである、このように私は判断するのですが、総理はこの点についてどういう御見解をお持ちですか。
  40. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私も全然同感でございます。
  41. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、この人権宣言の骨格というものを総理はどういうふうに把握しておられますか。
  42. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ちょっと骨格と言われる御質問の趣旨が了解いたしかねますから。
  43. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私は、前文にうたってある通りに、人間の固有の尊厳と平等という基本的権利を高く主張したものであるというふうに、この人権宣言の精神を考えておるのですが、総理も同様に判断されますか。
  44. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これは、言うまでもなく一つの宣言でございまして、この趣旨につきましては、先ほど申し上げましたように、私も同感でございます。しかし、これが条約とか何とかというような性格のものでないことは御承知通りでございます。
  45. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 冒頭に申し上げましたように、提案者も、またその他の答弁者も、憲法にする「公共の福祉に反しない限り、」とい言う言葉をとらえて、ある人は、公共の福祉と基本的人権が同位の価値を持って憲法で保障されておるかのごとき答弁がありましたし、また、ある場合には、公共の福祉が基本的人権に優先するかのごとき印象を与える答弁があったと思うのです。私は、この憲法十三条の、「公共の福祉に反しない限り、国政または立法の上で最大の尊重を必要とする」というのは、両者が並立して存在するのではなくして、基本的人権が国政並びに立法の上で最大の尊重がされるということを強訴しておるけれども、その配慮として、あるいは条件として、公共の福祉に反しないということが考えられなければならない、こういうふうに判断するのですが、国政の最高責任者総理として、この「公共の福祉に反しない限り、」という憲法の用語を、基本的人権との関係においてどのように配慮しておられますか。
  46. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今御質問の御趣旨のように考えて差しつかえないと思います。すなわち、基本的人権はこれを尊重すべきことは当然でございますが、それは公共の利益に反しない限りで、もし反するような場合におきまして、この公共の利益上やむを得ないところの制限を付するということは、条件として差しつかえないのではないか、かように考えます。
  47. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 公共の福祉に反するような場合において制限するということがねらいではなくして、反しない限りできるだけ最大限度に基本的人権は保障され、開放されなければならないというのが、真のねらいではないか、制限を一つも意図してはならない、このように判断するのですが。
  48. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) もちろん、この条文が直接にねらっておるところは、公共の福祉に反する場合にはどんどん制限してもよろしいということを考えているわけじゃございませんで、あなたのおっしゃるように、国民の基本的人権というものは最大の尊重をしなければならない、しかしながら、その前提として公共の福祉に反してはならぬぞと、反しない限りにおいてという、この条件がついておるのでありまして、従って、その条件がついておるから、問題は、公共の福祉ということを理由にどんどん基本的人権を制限してもいいかというと、そういうものじゃない。しかしながら、公共の福祉を維持するために必要な限度においては、やはり基本的人権というものもその制約は受けるのであるという前提に考えていくべきものである、かように考えております。
  49. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そこで、公共の福祉に反しない限りの最低限度ということは、それに基礎を置いて基本的人権を制限しようとする場合、特に私が冒頭にお尋ねした表現の自由を制限しようとする場合には、少なくとも、明白にして現在の危険という原則が整然と守られる必要があると思うのですが、このことに対しては総理はどう考えられますか。
  50. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 抽象的の御議論ではちょっと私も理解しかねるのでありますが、本法に規定されておる内容といたしましては、その公共の福祉としてどうしてもこれだけのことは確保しておかなきゃいけないという必要最小限度のことを規定しておるもののように私は理解いたしております。
  51. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 総理警察官ではないので、具体的の法の執行の内容の問題でなくして、憲法並びに憲法と本法との基本的な関係において私はただしているのですが、先ほども申し上げましたように、第四条をごらんになると、「公正な行使に著しく影響を与えるおそれがあると認められる場合」で、いわゆるまだ事件も発生していない、集会も行なわれていない数日前に、提案者の表現を借ると、その集会に集まる人の思想や、掲げておる政策や、あるいは人数等ではなくして、有形無形の心理的な作用を配慮して、事前にこれを抑制するというのがねらいであるということです。こういうねらいを持っておるとすれば、今総理答弁されたように、「公共の福祉に反しない限り、」という制限が、この条項が適用されると、著しく侵されて、いわゆる明白にして現在の危険という事前抑制の、原則が、この法の適用によってくずれていく、このように判断するんですが、これは明らかに基本的人権を公共の福祉に反しない以前において表現の自由を抑制するものであると、こういう危険性を持つのですが、総理はどう考えられますか。
  52. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これは四条の一項の解釈の問題でございまして、私からお答えするよりも提案者から御説明を申し上げた方が適当であると思いますが、私自身の考えでは、「国会議員登院国会審議権の公正な行使に著しく影響を与える」という、この「著しく影響を与える」ということが条件になっております。従って、ただ都合が悪いとか、どうも望ましくないとかいうようなことでこれを制限すべきものでないことは、この表現から明らかであると思います。具体的内容については、提案者から御説明した方が適当であると思います。
  53. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 いや、私が聞いておるのは、今総理答弁されたのと少し違うのですが、この法案内容なり具体的な発動についてお聞きしておるのではないのです。「著しく影響を与える場合」と総理答弁されましたけれども、その文書をごらんになるとよくわかりますように、「おそれがある場合」です。そうしてこのことは、提案者答弁によっても議事録で明らかなように、数日前に届けの書類を見て、それに書かれておる人の思想とか、あるいは政策とか、あるいは集会する人員等が問題でなくして、有形無形の心理作用を配慮して抑制することがある、こういう事前抑制がねらいだと、こう言ってあるのです、提案者は。このことは、先ほど総理が私の質問に答えられた、少なくとも憲法の基本的人権の中で、表現の自由というものは、ほかの基本的人権に比して、人権宣言を例に引いてお尋ねしたように、できるだけ最大限度に開放されておる必要がある。それを、まだ事態が起こらない前に事前抑制するということは、あなたが先ほどから答弁された、憲法にうたっておる基本的人権、なかんずく表現の自由を侵すものである、このように私は判断するんです。一国の総理として、行政の責任者として、こういうことが望ましいかどうか、また憲法の精神を逸脱していないかどうかについての見解をお尋ねしておる。
  54. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 公共の福祉に反しない限りということは、現実に何か事態が起こっておる、危険があるという場合だけじゃなしに、やはり事前にそういうことが明白な危険があると考えた場合において、それ以前に防ぐという場合においても、もし必要がありとすれば、そういうときにおきましても、私は、それが表現の基本的人権を害するものだ、そこなうものだとは考えておりません。従って、そういう意味において憲法違反だとは考えておりません。
  55. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、総理は、具体的に指摘できるような内容を持たなくとも、公共の福祉という用語によって概括される内容さえあれば、事前に抑制することも、十三条の趣旨あるいはその他憲法の諸条章にあげている基本的人権の侵害にならない、そうして、そのことは明白にして現在の危険という原則も侵さないものだ、こういう御趣旨ですか。
  56. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ただ私は、先ほどからお答えを申し上げているのは、公共の福祉という抽象的の概念をきめて、その概念を引用したらどういうこともできるということではもちろんないのであります。具体的にそのことは、はっきりと明白にきめなきゃならない。その具体的にきめている事態がはたして公共の福祉に害があるかどうかということは、もちろん検討しなきゃならぬと思う。私は、抽象的に公共の福祉というような名前で、いかなる場合においてもそれに関連を持たして制限ができるという考え方ではございません。具体的なものをあげるという場合において、今豊瀬委員の御質問では、事前のものは公共の福祉というものに入らないじゃないか、事前措置ということは入らないじゃないかというふうに御質問の御趣旨があるかと思いますけれども、しかし、そういう意味じゃなしに、具体的に、事前であってもある種の公共上の福祉が害されるということの明白な場合においては、私は、そういう具体性を持ったものであるならば、事前のものでも入る、かように解釈いたしております。
  57. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 申し上げますが、あとに椿君その他質問者がおりますから、この程度でいかがでしょうか。
  58. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大体もう一つ、二つで終わろうと思っております。ただいまの答弁についてもずいぶん不満があるのですけれども、これはもっと提案者にただすことにして、さらに質問いたしたいのは、総理は先ほど、私が申し上げましたように、基本的な人権というものは、憲法で明らかに示す通り、国政、立法の上で最大限度の尊重がされる。従って、具体的な、先ほどたびたび申し上げております明白な事態ないしは事例がない限りは、法律でこれを制限するということは当然避くべきだと思う。ところが総理は十分御承知通り総理責任ではありませんけれども、十数年にわたる終戦後の立法の歴史を見ておりまして、憲法の精神、特に基本的人権が、あるときには争議権の剥奪となり、あるいは政治活動の自由制限となり、いろんな諸法規の制定という歴史を通じて、次から次へと破壊されてきた。剥奪されてきておる。そして、そのことが常にすりかえられてきた言葉は、公共の福祉あるいは公共の秩序ということだと思うのです。これはやはり、単に一つの、たとえば提案者が強調している昨年の十一月二十七日の一事件のごときをとらえて表現の自由あるいは請願権というものを特に事前抑制しようとする考え方でなくして、もっと具体的な国民の基本的人権、福祉とつらなる政治を改善していくことによって、その事態が起こらないようにするのが、基本的な為政者としての考えであるべきで、法律諸制度によってこれを事前に抑制するということはできるだけ避くべき問題であると思うのですが、この点に関しまして、総理はどういう見解をお持ちですか。
  59. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) もちろん、憲法で保障されておる基本的人権が制限されるというような立法をいたす場合におきましては、きわめて慎重であるべきことは私は当然であると思う。そういうことを、公共の福祉であるとか、あるいは公共の秩序であるとかいうようなことに名をかって、どんどん制限していくというようなことは、これは私は許すべからざることであると思います。しかしながら、先ほど来お答え申し上げているように、これは皆様の御判断でありますが、ここにあがつたような事例の場合において、これは言うまでもなく、この点については私は御異議ないだろうと思うのですが、国会が最高の機関として、われわれが国政を審議する、これは冷静に、良心に従って、平静にそれが審議されるということは確保しなきゃならぬと思います。また議員がその審議権を行使するというのは、国民から選ばれておって、当然これは国民のためにやるべきことであって、それが何らかの力によってできないような状態に置かれるというようなことは、これは私は、公共の福祉から見、国民全体の利益の上から言って、そういうことは許せない。しかし、ここにあがっているところのものがはたしてそういう重大な意義を持っているかどうかということは、この法案内容解釈の問題であり、それについて十分御審議を得れば明確になる問題であって、そういうことであるならば、その事態が現実に発生し、審議ができなくなっておるとか、審議権が行使できないという事実が発生しなければこれはいいんだ、発生するおそれがもうきわめて顕著に現われておる、このまま放置しておけばそうなるのが当然だというような事態のときにも、事態が起こるまではだまって見ておらなきゃならぬ。それでなければ公共の福祉というのは憲法に言っているのに当たらないのだと、こう解釈することは、私はあまりに制限がきびし過ぎると、かように考えております。要は、この条文に書いておるところの字句なり、あるいは表現なり、内容なりがそれに当たるかどうかということで、これは審議の対象になるべきものだと、こう思っております。
  60. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 椿君。
  61. 椿繁夫

    椿繁夫君 提案責任者でない総理が御多忙のところ御出席いただいて、まことに感謝しておりますが、この法律は東京都の公安条例のあることを前提として立案されておりますことは御承知通りであります。ところが、東京都の公安条例は東京地裁において違憲の判決を四つも受けております。それで、各府県で持っております公安条例を一括して、最高裁は、この四月の二十二、三日のころに裁断を下すような予定になっておると聞いております。そういう時期に、この万一の可能性を予想して、こういう法律を作って、都の公安条例に法律をもって根拠を与えるというような結果になるわけですが、こういう際に、この時期にこの法律成立させることが、時期として適当かどうか、この点について総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  62. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これはまあ形式的な議論でございますが、一審の判決があったからといって、これでもって直ちに政府なり何なりはその判決を尊重してどうするという問題ではないので、最高裁の最終判決があるまでは、やはりすべてのその問題になっておる法律や条例等も有効なものとして考えていかなきゃならぬというのは、これは形式論でございます。そう考えざるを得ないと私は思いますが、実質的問題から申しますると、実は、これはいろいろ提案者がその必要を認められたことでありましょうが、私がタッチしておる限りにおきましても、実は一昨年でありましたか、党首会談におきまして、あの当時、警職法の問題の直後であったと思いますが、鈴木委員長と会って、この国会審議というものは大事なことなんだから、これを何か外部からの力でいろいろな影響を受けるようなことになっては、これは望ましくないから、適当な方法でそういうことの起こらないように一つ両党において研究しようじゃないかという話をしたことがございます。さらに、昨年のいわゆる国会デモが入ってきたという事態に関しまして、当時の国会はもちろんのこと、ずいぶん国民的にも強い批判のあったことでざいまして、そういうことがもしも万一繰り返されるようなことがあってはこれは大へんである。従って、これに対してはやはり適当な立法措置をする必要があろうということが、その当時、いろいろな方面で言われまして、その結果として、この法案は提案されておるものであると思います。従って、そういう実質的な経緯をとっておるのでございまして、特に何らの今までの沿革なしに、唐突としてこの問題が提案されたというものではありませんので、やはり十分に御審議をいただいてその結論を得ることが適当じゃないか、かように考えております。
  63. 椿繁夫

    椿繁夫君 今の問題については、総理とは若干見解が違いますが、次に進みたいと思います。  憲法の第十四条では、すべて国民は、法律の下に平等であるという原則を立てておりますが、集団示威運動が国民の基本的な権利である、憲法に保障された基本的な権利であるということは、お認めになることは、これは聞くまでもないと思うのでありますが、都道府県で公安条例をもって集団示威運動等の規制をいたしておりますものが二十四府県で、二十一県にはございません。市では四十一の市にこの種の公安条例がございまして、五百十三の都市には公安条例がないのです。この場合、憲法十四条との関係から言いまして、集団示威運動等は憲法の保障する基本的権利であるから、公安条例のない府県市町村におきましては、これは自由無届けでやりほうだい、こういうことになってよろしいとお考えでございますか。
  64. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 地方自治団体がその地方の事情に応じまして、地方自治団体としての権限に基づいていろいろの、取り締まりの条例やその他の条例を定めるということは、別に、ここに言っている法の前にすべてのものが平等であるということの原則を乱すものと、かようには私は考えておりません。
  65. 椿繁夫

    椿繁夫君 こういう公安条例のない府県市町村におきましては、集団示威運動は基本的な国民の権利として自由にやってよろしいということでありますね。
  66. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 別段、条例がなければ、条例上の制約がある所のような手続であるとか制限を受けるというようなことはなしにやれる、こう考えていいと思います。
  67. 椿繁夫

    椿繁夫君 内閣が御提出になりまして、道路交通法というのが、今、地方行政委員会審議中でございます。これの六条、七条、七十七条におきましては、所轄警察署長が交通上の見地から制限を加えることになっておりますので、私は、この法律ができれば、公安条例がある府県、とかない府県というようなことではなくて、公共の安寧を保持する見地から、この法律によって一本で取り締まりができるのじゃないかと思っているのでありますが、その点について総理はどうお考えになりますか。
  68. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 道路交通法の規定は、私、詳しく各条を検討いたしたのではございませんが、おそらく交通の安全と秩序を保つために、あるいは歩行者の危険をなくするようにするために、いろいろな制限であるとか制止するとかいうようなことが規定されているのじゃないかと思います。これは、目的が道路交通の安全を確保し、そこに受ける歩行者その他の危害を未然に防ぐということのためでありますが、そういう趣旨から出ているものでありますから、公安条例等とのねらいといいますか、目的が全然違っているので、従って、道路交通法ができればそれでいいのだ、こう一がいに言いきることはできないと、かように思います。
  69. 椿繁夫

    椿繁夫君 地方自治法で、自治体は法令に違反しない範囲において条例を定めることができることを定めております。ところが、法律がないのに条例が先にできましたのが御存じの公安条例であります。しかも、この公安条例は、府県によって、あるいは市町村によって、それぞれ違っておりまして、合憲判決、違憲判決というのが出るくらいでありますから、非常にまちまちなんであります。そこで、前回も政府委員から、公安条例というものを何かの法律一本にして規制を加えるような方法を確立する必要があるという御見解が述べられたのでありますが、私も、道路交通法のごとき今内閣から出されているのでありますから、これによって一本にすべきじゃないかという考えを持っているのでありますけれども、重ねてお尋ねいたしますが、公安条例のない府県市町村におきましては、公安条例と道路交通法とは目的がまるきり違うのだから、集団示威運動等は自由である、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  70. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 道路交通法と、この公安条例というものは先ほども申し上げましたように、目的が違っているから、一方で他方の目的まで、企図しているところまで、これでおおいかぶせていくのに十分である、かようには考えておりません。もし、公安条例が地方まちまちであり、もしくは全然ないところにおいては公安条例の制限を受けないのでありますから、勝手にやれる、あるところでは勝手にやれないというふうな不統一が、全国においてそういうことがまちまちになっていることが望ましくない、むしろ統一すべきであるということであるならば、公安条例の目的を持った統一した立法をする、それがいいか悪いか、またその必要があるのかどうかということは、もちろん別として、すべきもので、道路交通法にこれをかぶせて、道路交通法でやるからもう公安条例の方は要らぬと、こういうふうには私は考えておりません。
  71. 椿繁夫

    椿繁夫君 総理、私、先ほど憲法の十四条を読みましたがね、公安条例のある所では、ない所よりも特別な条例によって規制、制限を受けるわけなんであります。それのない所とある所とが同じ国民でありながら、取り締まりを受ける法律なり条例がある所とない所があるということは、これは憲法十四条の精神、すべての国民法律の前に平等であるという原則に反しませんか。
  72. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これは先ほどもお答え申し上げましたように、地方自治体が地方自治法に基づいて持っておる権限内において、その地方の情勢なり社会状態なり、いろいろな事柄、それに応じて必要と認められるところの条例を設けるということは、自治法で私は当然権限があると思います。そういう範囲内においてやる事柄は、別に私は、先ほども申し上げましたように、憲法上のいわゆる法の前に平等であるというこの考え方とは矛盾するものではない。かように考えております。
  73. 椿繁夫

    椿繁夫君 聞けば聞くほど、これはわからなくなりますが、この法律は、東京都の公安条例があって、それで公安条例によって警察力を発動いたします際に、この法律ができることによって規制の範囲が非常に緩和されておりますからね、これはさらに緩和されておるのです。ですから、公安条例の全然ない府県の国民、次に公安条例の設けられておる府県の国民本法成立することによって、さらにその上に、憲法で保障された表現の自由、集団示威運動等を、東京都におきましては、この法律によってさらに規制される。国民の基本的権利の制限と規制というものが当然段階がついてくるのであります。そのことはもう提案者はちゃんと説明しておられるのであります、そういうことを、法の前にすべての国民が平等であるという御解釈は成り立ちませんよ。なるほどこの地方自治法によって、法令に違反しない範囲において条例を作ることができるということを定めておるのでありますけれども、大体その公安条例の根拠となるべき法令というものはないのであります。地方自治法において法令に違反しない範囲で条例を作ることができると、こう定めているのですが、何を根拠にして地方団体は公安条例というものを定めておるとお考えになり、そのままにしておいて、これの画一化、統一させていくというお考えが行政府の長としてないということは、憲法に忠実な態度じゃないと私は思う。重ねて御見解を承りたい。
  74. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 地方の自治権を、地方公共団体の自治の権利を認めて、その地方に合ったような処置をとらしめることがいいか、あるいは全国画一的に規定をした方がいいかということは、私は問題によってよく事情考えないというと、一方からいうと、われわれはやはり民主政治の本体として、地方自治団体というものを、これがその地方の利益であるとか、あるいは社会状態とかいうものに一番密接な関係を持っておるわけでありますから、やはりこの自治権というものは相当な範囲において認めていくことが、民主政治を国民の生活の実態に即して発達せしめるゆえんであると思います。従って私は、何でもかんでも中央において画一的にこれを定めることの方が——形式的にそれによって日本国民というものが法の前に平等であるということが貫かれるから、その方がいいというふうなことではないと思うのであります。従って、この問題に関して、地方において、地方自治法に基づいての範囲内で、その権限に基づいて、その土地に最も適合する、適当であるということを自治団体として考えたところの条例を作っていくということの制度を今すぐ変えるということが、はたしていいかどうかということは、私はよほど検討を要する問題であるように思います。今回のこの提案によってどういうふうになるかということについて、提案者からどういう説明をいたしておるか、私つまびらかにいたしませんので、その点については提案者より一つ御説明を願いたいと思います。
  75. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 椿君に申し上げますが、時間の都合がありますので、問題の要点をしぼって御質問を願います。
  76. 椿繁夫

    椿繁夫君 自治体が今日持っております条例制定権というものを制限しようじゃないか、そういう意思はございませんかとお聞きしておるのではない。これはまちまちに条例を作っておりますと、同じ公安条例でも必ず内容が違う。合憲判決、違憲判決というものが出て参ります。しかも、その公安条例がある府県、ない府県がある。こういうことでいいものであろうか、憲法の趣旨からいって。特に条例制定権の問題で、私は地方団体の平等であることを保障しようとしておりますのが、憲法第九十五条の趣旨であろうと、こう思う。  そこで、時間がございませんから私はちょっと急ぎますが、この法律は、国会審議権確保のための秩序保持に関する法律でございますが、総理大臣は自民党の総裁でもあられます。私は前回から、何も登院することに障害になるような条件がないのに、病気でもないのに、長期にわたって国会を休んでおる人がある。この法律によって国民の基本的権利を規制して審議権確保まではかろうとする国会、しかも大政党の幹部として、外国に行っておることは新聞にたびたび出るのでありますが、国会には一向に顔を見せないという人があります。先ほども吉田茂君、石橋湛山君、本院では西田隆男君というような人が、その最たるものであろうという同僚議員の御発言がございました。私もなるほど常識的にはそうだなと、こう思ったのでありますが、国民の権利を制限してまで審議権確保しようとする国会、しかも行政府の長、自民党の総裁、あなたは、こういう長期欠席者に対して、病気ではありませんよ、どんな手続がなされておるか知りませんけれども、外国に行けるのですから、国会に来れないはずはない。こういう人々の国会への出席審議権を公正に行使できるような措置について、どういうことをお考えになっておりますか。
  77. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 議員として持っておる審議権は、いうまでもなく、国民のために、国民によって与えられておるものでありまして、これを行使するということは、一方から言えば権利であるけれども、一方から言えば崇高な義務であると考えます。従って、議員たるものが理由なくしてこの審議権を勝手に行使しないというようなことは、これはきわめて遺憾なことでありまして、最後のそれに対する審判は、主権者たる国民が選挙の際に明確に表示されるものと信じて疑いません。党員のうちについていろいろのことをお話がございましたが、私は党の総裁として、党員ができるだけ理由なくしてそういうことをしないように、常時注意をいたしております。
  78. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 向井君。
  79. 向井長年

    向井長年君 私は二点質問をしたいと、こう考えておりましたが、重複いたしますので、一点にとどめます。  その一点は、本法が出されたゆえんのものは、何をおいても昨年の十一月二十七日のあの国会への乱入事件、これが基因になったと思うんです。まことにこれは、自民党諸君だけじゃなくて、われわれも非常に遺憾とするところであります。そういう点につきましては同感でございますけれども、岸総理にお尋ねしたいことは、この法案を作って、そういうことが防止できるか、あるいはまた、それによってああいう問題はなくすることができるかという点をまずお聞きしたいと思います。ほかに方法があるかどうか。
  80. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) もちろん私は、すべて法律万能主義で、法律さえ作ればすべてのものが意のままになるというふうには考えておりません。やはり何といってもこういう問題については、国会自身にも考えなきゃならぬことがありましょう。また国民自体も国会というものに対して十分な信頼と尊敬を置いて、そうして民主政治というものを発達せしめていくというような、すべての方面からの、広くいえば社会道義といいますか、社会の通念と申しますか、そういうものを高めていく必要があることは言うを待ちません。しかしながら、最近のこの目立った事態から、そういう事態に処するためにこの法律を制定するということも、またやむを得ないことじゃないか。この民主主義の発達しておる諸国の例を見ましても、そういう民主政治が完成してそういう事態がなくなっておるようになるためには、いろいろな歴史的の経過をとっておって、あるいは国会周辺デモというようなものを規制するについて、この法律よりもさらにきびしい条項を定めておるところもあるようでございます。従って、法律だけではできるとは思いませんが、法律を作ることが無意味であって、またそういう場合において、一般のなにがよくならない限りはできないじゃないか、ほっとけと、こういうようなものではないと思います。
  81. 向井長年

    向井長年君 ただいま総理は、国会自身も考えなければならぬと言っておりますが、政府自身も考えなきゃならぬ点が多々あるのじゃないかと思うのです。そこで私は、まずわれわれ衆参両議院とも議員みずから反省しなきゃならぬ点もあると思います。あるいはまた、先ほど申しました政府自身も反省をしなければならぬ点が多々ある。なお政党政治でございますので、党自体も大きな反省を要する、こう私は思うのでございます。そこで、いろいろ国会におきまして、法案なり、あるいは予算なり、あるいは条約なり、その他いろいろ審議をいたしておりますけれども、本日までのいろいろな審議を見た中において感ずることは、政府、特に岸総理自民党の総裁もされております、こういう関係から、特に私は質問いたしたいのでございますが、今衆議院におきましては三、参議院におきましては五つの党と申しますか、会派があるわけでございますが、こういう中で、あらゆる審議に対しまして、多数、いわゆる数にものを言わせて強引にあらゆるものを押し切っていこう、こういうところに、国民のいろいろな不満なり、あるいはまた意見があると思います。私は、こういう態度こそが国会の本来の審議をやはり妨げる、あるいはまたそういう事態を起こさしめる原因を作っている、こういうように考えるわけであります。そこで、少なくとも、多数を占めておる自民党にいたしましても、あるいはまた政府にいたしましても、国民の声を率直に聞き入れる、あるいはまた少数派の意見に耳を傾けてこれをとり入れる、こういう度量があってこそ、初めて民主政治というものは成り立つと思うのです。また公正な国会審議ができ得ると、こう私たちは信じておるのであります。しかしながら、この点につきましては、今日までのあらゆる審議をながめましても、非常に遺憾の点が出ておると思います。なお、本法に対しましても、聞くところによると、自民党は結束してこれを押し切ろうとしている。先般、同志会加賀山委員の方から修正を要望いたしましたけれども、修正に応じないというような態度を持っている。まことにこれは遺憾でございます。こういうことでは、やはり国会周辺のいわゆる静穏とか、あるいはまた公正なる審議というよりは、国会内部の審議が、公正な慎重な審議ができ得る態勢を作るために努力しなければならぬ。この点について、総理としても、あるいは自民党の総裁としてどう考えるか、聞きたいのであります。
  82. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私は政府の責任者として、予算案初めいろいろな条約、法律等を提案して御審議を額っております。これらの問題につきましては、しばしば申し上げておる通り十分に一つ審議を尽くしていただいて、そうしてわれわれの考えておること、政府もその所信を最も率直に述べるし、これに対して疑問があり、もしくはいろいろな懸念のある点についての質疑応答というものを通じて、国民がその案件をできるだけ理解し、そうして国民の世論というものが正しく、あるいはわれわれから言えば、政府のものに支持をしてもらいたいということがわれわれの考えであります。しかし、不幸にして国民の世論が政府のことを支持しないというようなことであるならば、もちろんわれわれが反省していくということが政府としての考え方でございます。  それから、私は自由党の総裁として、党の国会対策の面におきましても、今申しました政府の責任者としての考えをできるだけ審議の上に表わすように、いわゆる今お話がありました多数を頼んで無理押しに何するというようなことは私は考えるべきものじゃないと思います。と同時に、国会政治の結論は、やはり国民が最後の主権者として最後の審判をされるわけであって、その投票の結果多数を得てきておるという党の多数というものは、やはり最後において尊重してもらわなければ、少数の方が強いのだ、こういうことでは、一体、選挙において多数の国民の投票を得て信頼を得るということと相矛盾するわけですから、要は、できるだけ多数党の人は謙虚な気持で少数党の意見を聞いていくけれども、少数党の人も、ただ自分たちの立場からだけあくまでも審議を妨げるとか、もしくは審議をさせないということではなくして、十分に審議を尽くして、そうして、私どもやはり多数といえども、少数党の意見のうち聞くべきところ、見るべきところがあるならば、謙虚な気持でとり入れていくということが審議内容であり、そういうことをすることによって初めて審議がその目的を達するわけでありまして、そうして、最後においてはやはり多数決というものを尊重していただく。ただ、そういうことが、国会政治の運営の上からこれが非常な間違いがある、何かあるということであるならば、主権者たる国民が非常なきびしい批判を与えられ、次の選挙において、一時多数党であっても結果は逆になる。しかしながら、またあまりにも少数党ががんこであるというような印象国民に与えるというと、その政党がいかに正しい理想を持たれても、国民の信頼を得ることができないというふうになるのであります。その基礎になるような審議を、この国会において、国会を通じて国民の前に明らかにしていくことが必要であろうと思います。
  83. 向井長年

    向井長年君 今総理が言われました点につきましては、私も了といたしますけれども、しからば、本法の問題について、これは私たちから言うならば、非常にずさんな法律であります、法体系が。各所に不備な点がたくさん現われているのでございます、具体的に審議する中で発見いたしましたことは。従ってこれに対して、特にこれは自民党のいわゆる議員立法の形で出されております。政府提案ではございません。そういう中で、修正とかあるいはまた撤回とか、こういう問題については、特に総理は総裁でございますので、そういう意思があるのかないのか。明確にお聞きしたいと思います。
  84. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私自身は、実は大へん何でありますが、細かくこの法律を政府提案の法律のごとく検討はいたしておりませんので、内容的にどういう点において不備があるかとかどういう点において疑問があるかとかというようなことは、御審議の際にいろいろ御議論があったことだと思いますが、その一々は承知いたしておりません。従って、私自身がこの修正に応ずる意思があるかないかということをお話になりましても、これは具体的の点を十分に検討しないと、私の意見は申し上げかねると思います。それから撤回するという問題につきましては、私は先ほど来申し上げたような経緯から見まして、やはり適当な内容を持っている案であるとするならば、この国会審議というもの、及び国会議員審議権というものを確保するに必要な立法であると、かように従来の実例からも考えているわけでありまして、今直ちに撤回するというような考えは持っておりません。
  85. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 向井君に申し上げます。時間の都合がございますので、どうぞその点……。
  86. 向井長年

    向井長年君 これで終わります。今直ちに撤回とか、あるいはまた修正といっても、総理が詳細にどうということは言えないということも、私どもはわかります。しかし、これは自民党議員立法の形で出されて、それが現在参議院におきましていろいろ審議しておりますけれども、特に自民党としては、このまま修正せずして押し切ろうというような気持が濃厚であろうと思うのです、これは想定でございますが。そういうような状態の中で、総理が総裁として、一応これを検討しよう、党として検討しよう、こういう意図があるかどうかということを私は聞いておるのです。
  87. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これは御承知通り衆議院の方は通過して、参議院の方へ送付されている案でございまして、一応、党といたしましてはこの案が適当であるという考えに基づいております。しかし、参議院におけるその後の御審議によりまして、はたしてこれが適当であるか、さらに御意見によって修正した方がいいか等の点に関しましては、十分御審議の経緯等を私も検討いたしまして御返事しないと、今どうだということを申し上げることはできません。
  88. 向井長年

    向井長年君 総理は何ですか、今後これを参議院審議される中で、総裁の立場において一応検討して返事をしてくれるわけですか。
  89. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私の申し上げていますことは、今これを再検討する意思があるかどうかというような御質問であったわけであります。党としては、一応衆議院を通過する際にも、この案についての審議は、当時私としては、必要だという結論を得てこれに賛成をいたして参っているのであります。従って、その後において、何か参議院においての御審議の結果、衆議院審議の際と違うような事態があり、考慮しなくちゃならぬような事態があるとするならば、私は考慮することにやぶさかでない。しかし、私はその点については、何にもわが党の諸君から、こういう点は考慮しなければならぬと、提案者からも何も聞いておりませんから、私としてはこれで差しつかえないのじゃないかと一応は考えますけれども、決して、御審議の結果、私がさらに再考しなければならぬというような点がある場合において、それを再考しないんだ、それでも再考しないんだというようなことを申し上げているつもりはございません。
  90. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 阿部君。
  91. 阿部竹松

    阿部竹松君 岸さんは、総理であると同時に自民党の総裁ですから、おそらく御相談になってよく御承知だと思うのですが、この法案は政府提案でございませんので、議員立法ですから、佐々木盛雄君ほか五名の方々が提案されるとき、総理相談にあずかっているかどうか、そこをまずお尋ねいたします。私は法文の内容提案者から伺っているので、総理から法文の内容は聞こうと思いませんけれども、相談にあずかっているかいないか、この点まずお伺いしたい。
  92. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 大体の趣旨は相談にあずかっております。
  93. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうしますと、提案者からいろいろ説明を受ける過程において、この法律を作らなければならなかった原因の二、三点を承ったわけですが、まあ今も各委員から話が出ておったように、十一月二十七日の問題、あるいはまた一昨年の警職法のときに、四者会談でこういう四つの条項を申し合わせた。しかし、なかなか社会党が賛成してくれぬので、国会周辺の規制法を作ろうとしたけれどもできなかった、こういうように言われているわけです。岸さんと社会党の鈴木委員長、あるいは両党の幹事長、入って、これをまとめたことだと思うのですが、総理がまとめられたこの四項目の中に、「国会に対する集団的要請行動の規制については、両党による特別委員会を設けて慎重に検討すること」ということを、総理は、鈴木委員長あるいは書記長、幹事長と会って約束してございますね。そうしますと、この法律がもし衆参両院を通ったとすれば、一応この四番目の目的はこれは遂げることになるわけです。そこで私が総理にお尋ねしたいのは、そういうことになりますと、同じ三十三年十二月十日に、「正副議長の選挙については、両党一致の議決によること」、「参議院の自主性を尊重するも、この申合せに従って運営するよう要望する」、こういうふうにあるのです。しかし、参議院はこれを守っておらぬのです。参議院は全然守っておらぬ。従って、これはまあ総理という立場より総裁というお立場で御答弁いただくのが至当かもしれませんけれども、とにかくこれを守っておらぬわけです。片方はでき上がる、あなたの思う通り。これは今後どうなるかわかりませんけれどもでき上がる。この残った方は一体どうなるか。こういうことをまずお尋ねいたします。
  94. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 国会周辺の秩序、静穏を維持するのについて、適当なる方法を定める必要がある、警職法のときの経験にかんがみて、何らかこれについて両党で特別委員会を作って一つ審議しようじゃないかということを両党の党首が申し合わせたことは、今お話通りであります。しかし、この点については、再三自民党側から社会党に、そういう特別委員会を作るように申し入れたのでありますけれども、不幸にしてそれは実現しなかったのであります。問題は、全然別個の新しい事態に処するために、議員の一部から議員提案の形においてこの案が提案されたということでありまして、実はあの申し合わせのように、両党が委員を出して特別委員会において審議して、そうして成案を得たということであるならば、おそらくこの案が提案され、その結論通りに出ているならば、この案が提案されて一週間もたたぬうちに両院を通過したのであろうと思います。しかし、不幸にしてそれが実現できなかったために、なかなか御審議もいろいろ御議論が出ているわけでありまして、そういうことから申しますというと、あの条項が全部私は実現されたとも思いません。それから、議長、副議長の問題についてあのときに印し合わせをいたしましたことも、実は、もちろん私は自民党の総裁として、鈴木委員長はおそらく社会党委員長として会われたのでありますけれども、両党とも、この参議院というものについては、一方からいえば自民党であり社会党であるけれども、やはりある程度の独自性というものが認められている、両党とも私はそうだと思う。そうでなければ、両院制度というもののやはり意義がなくなって、全然もう社会党あるいは自民党の総裁が言うままに、衆議院参議院も全部動くのだ、それは動く問題もあります。しかしながら、いろいろ議事の運営であるとか、あるいは議案に対する意見であるとか、その他審議の過程においてのいろいろな問題については、やはり参議院参議院の独自の立場を持っておって、それを尊重することによって、私は両院制度というものが円満に運用ができるのだ、意義を発揮できるのだ、こういう意味において、社会党でもそうであったようでありますが、私の方でもそういう意味において、あのときの申し合わせを全部そのままこの参議院に、すぐ、ここで申し合わせたからこれでやろうという結論を出すという情勢ではなかったわけであります。従って、今お読みになりましたように、やはり参議院の自主性というものは認めて、しかもその趣旨をなるべく達するように努力しようじゃないか、こういう申し合わせになったわけでございます。まあ、そういうことでございます。その後両党の党首で申し合わせたのでございますが、いろいろまた政治的の政党の間の変遷もございまして、ただ鈴木委員長と私とが申し合わせたことについて、それが全然関係のない会派の人々をもこの通りやるということは、まずむずかしい事情も最近起こっている状況でございます。しかし、私は趣旨として、これがそのまま実現できるかどうかは別として、この申し合わせた趣旨というものは、国会政治というものの公正な運営及びその信用を高むる上から、やはりその精神は尊重していきたいというのが私の念願であります。ただ、それが形式的にそのままいけるかどうかという、すぐいけたかどうか。その後の事情を一切無視して、そのまま、こういう申し合わせがあるのだから、形式的にこれを押しつけるということは考えずに、そのように盛られている精神をお互いに尊重していくようにしていきたいと、こう思っております。
  95. 阿部竹松

    阿部竹松君 委員長が最前から各委員質問に対して、時間がない、時間がないと言うから、僕は単刀直入に端的にお尋ねしているんです。総理が私の質問しないところまでのんびりお答えになるところを見ると、これは十分に時間があるんだろうと思う。何も参議院衆議院の違いなどは、岸さんから聞かなくてもわかっております。あなたが答弁しなくてもいいところをのんびりやるところを見れば、一つきょうはゆっくりお尋ねいたします。  そこで総理、書いてあるのは、おっしゃる通り両院の相違、おのおの自主性があるということは言うを待ちません。あなたのおっしゃる通り言うを待たない。しかし、これをきめたときは、「参議院の自主性を尊重するも、この申合せに従って運営するように要望する」とある。あなた、これを鈴木さんあるいは川湯さん、浅沼さんと一緒に話したときは、参議院に全然相談せずにやったのですか。うちの方は鈴木委員長が、うちの方の責任の会長と会って、衆議院はこの通りやるから、参議院はどうかということで、よろしいということになったのです。ですから、両院自主性はあるけれども、お互いにまとまってやろうという場合、両方とも責任がなければならない。あなたの方のそのときの議員会長さんはどなたか知りませんが、あなた独断でこれはやったのですか。そういうことになるのですか。
  96. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 独断でやったとかやらないかという問題ではございませんが、そこに書いてあるように、また、さっき説明いたしましたように、参議院立場というものは、やはりこれを尊重していかなければならぬということを考えておりまして、平素、私の党におきましては、先ほど私が申し上げたような趣旨で党の運営をいたしているわけでございます。
  97. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうすると、岸さん、その連絡したとかしないとかいう問題でなくて、そこが問題ですよ。あなたが単独でやって、参議院のことは知りませんというのだったら、こんなことは書く必要ないのです。これは提案者からもお話がありましたが、今の岸さんの答弁の中でも、特別委員会でやろうと言ったけれども、どうも社会党が賛成しなかったやのお話ですが、社会党は特別委員会に賛成しないという最大の理由は、ここにあったのです。やるなら全部やりましょう、一緒に……。特別委員会がただいやだというのではございませんよ。やるのだったら、全項目にわたってお互いに実行しようじゃないか、こういうことならば——しかし、あなた、四番目に書いた参議院の自主性云々で逃げてしまった。だから全部パーなので、こういうことでまとまらなかったのですが、今はしかしどういうお考えですか、たとえば衆議院の方はずいぶんと問題があるようですが、このときの約束に基づいて加藤さんなり、正木さんが党籍を離脱した、あるいは副議長社会党に譲った。現在はどうなんですか。あなたの方のお考えは、参議院の方はこれは自主性にまかせるということですか。衆議院参議院とどちらがいいとお思いですか。
  98. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 現在は、衆議院議長、副議長は党籍を離脱いたしておりません。従って、参議院衆議院と同じような形になっておると思います。ただ、副議長が同じ派から出ておるか違うかという点が違っておりますけれども、これは私は十分一つ、新しい議長、副議長のお考えもあることでありますし、さらに慎重に検討していきたい、こう思っております。
  99. 阿部竹松

    阿部竹松君 もう一つ。現在も総理は、「参議院の自主性を尊重するも」、この申し合わせば、今申し上げましたその両党一致の議決、まあ参議院の場合は会派が多いわけですが、こういうお気持があるかどうかということをお尋ねしておるわけです。
  100. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私は、この精神は、やはり参議院衆議院も通じて、審議を公正にやっていくという意味からいうというと適当なことであると思います。ただ、申し合わせにもありますように、この気持は、参議院に対するのには、「参議院の自主性を尊重するも、この申し合わせに従って運営するよう要望する」と、こう言って、この「するも」、本来いうと、「この申し合わせに従って運営する」と、こう言い切らずに、「要望する」というところに、やはりこの自主性を認めるという感じが出ておるわけでありまして、われわれも、この申し合わせをした後において、わが党の運営に関しましては、国会の運営等に関しましては、参議院のわが党の人々に対してこの趣旨を伝えて、なるべくこの趣旨に従って運営するように要望はいたしております。ただ、そのうちで実現しておるものと実現されないものが出ておることは御指摘の通りでございます。
  101. 阿部竹松

    阿部竹松君 その総理の言わんとするところはわかるんですが、確かにきめつけておりませんよ。しかし、現在でもあなたは、この参議院の自主性を尊重しても、その党籍離脱とか、あるいはまた第二党なり第三党なりに副議長のいすを渡すとか、議長の選挙は一致した意見による、こういうようなことを参議院に要望する気持があるかないかという簡単な質問なわけですよ。
  102. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私、先ほど来お答え申し上げているように、この精神は、衆議院といわず、参議院といわず、尊重していくことが望ましいと、こう考えておりますから、党に対しても要望をいたすつもりでございます。
  103. 阿部竹松

    阿部竹松君 それでは次にお尋ねいたしますが、この法律の中身は、さいぜん申し上げました通り提案者から伺いましたが、ともかく政治がよくなければ、これは万里の長城を築いたって、これは外から破れずとも中から破れるわけです。なるほどデモで押しかけた全学連の諸君はいけないことかもしらぬけれども、しかし、その前に、今言った通り、政治が悪ければ、いかなる法律を作っても、これはなかなか鉄さくをめぐらしてもうまくいかない。政治の根本のあり方、日本の政治というものはこれでいいのかどうか。押しかけてきたのはけしからぬ、決していいとは言っておらないのでありますが、ああいうことをやらせる要素というものはどこにあったかということを、総理みずからじっくり反省したかということは言いませんけれども、じっくり最高責任者としてお考えになったことがあるかどうかということをお尋ねしたいわけです。そういうことは、あなたは昭和十六年の十二月八日ですか、鬼畜米英といって、枢軸国内で大詔換発の判を押した人なんです。しかし、巣鴨に入ったでしょう。あなたは巣鴨から出てきた。あなたと一緒に十六年の十二月八日に大詔換発に判を押した東条さんは、絞首台の露と消えた。同じ大臣でも、あなたは日本一の幸福な人です。そうでしょう。東条さんの娘さんは四十になっても四十五になってもお嫁にいけない。新聞で見ると、ようやくこの間結婚なさったように承っている。東条さんはいいけれども、そういうことになれば、娘さんは気の毒だと思った。岸さんは、同じ判を押しても、娘の婿さんは国会議員だ。息子さんはあなたと一緒にパリへ行ってパリの市中を馬に乗って見物した。こういうわけで、あなたを責めようとは思いませんけれども、あなたは当時のことを考えて、日本の政治を直すとおっしゃっているのですから、全学連が押しかけてくるのはけしからぬ、それを法律を作って取り締まり、鉄のとびらを立てるのだ、城壁を築くのだということでなしに、やはり政治のあり方について総理考えていただきたい。ここに警視総監が来ておったのですが、警視庁で調べた選挙違反の件数ですね、毎回選挙違反は二万とか、一番多いときは四万八千五百なんです。こういう選挙違反がある。これは純真な学生が怒るのはあたりまえですよ。選挙違反を起こしているのは、まあどっちの党がやった、どの議員がやったということは申しません。この辺でもおるかどうかわかりません、該当者が。これは警視庁にお世話になった人がおるかもしれない。それを黙っておいて、ただ外からばかり学生諸君国会周辺に来たやつを法律でもって押えるということは、本末転倒もはなはだしい。僕はこう思うのですが、総理は、過去がどうあったということは言いません。しかし、今後総理はしっかりやってもらわなくちゃいけないから、あの鉄のとびらもいい、城壁もいいけれども、政治をどうするかということを、一つこの際、総理にお伺いしておきたい。
  104. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、昨年の全学連のデモ国会に乱入したという事件は、その事件として非常な遺憾なことであると思います。しかしながら、同時に私は、われわれも大いに反省しなければならぬという意味を、まあ国会においても考えなければならぬということを申し上げたのでありますが、今阿部委員お話のように、さらに大きくいえば、政治そのもののに携わっておる者が考えなければならぬ。特に政治の最高責任にある私において、私が大いに反省しなければならぬことは御指摘の通りであります。私は、ただ単に、全学連の連中だけをその鉄のとびらを設けて、取り締まれば、それで事足れりとは考えておりません。それはお話通り政治の問題が根底をなすことです。ただ考えなければならぬことは、かつてわれわれはいろいろな誤りを犯してきておる。一つの実例として、かつて軍部の一部における二・二六とか五・一五というような事件が起こった場合に、やはりああいう事態そのものは、これに臨んだ者に対しては、私は厳に臨まなければならぬと思う。そういうことをしておかなければ、防がなければ一ただ、これらの若い純真な青年将校の諸君がそういう極端な行動をとるに至った社会事象なり、いろいろな政治情勢なり何なりというものは、やはり十分に反省をし、是正をしていかなければならぬが、それを理由に、ああいうことをややもすれば是認するような、あるいは看過するような考え方というものが、だんだん私は間違いを深めてきたことを考えてみまするというと、やはり全学連の諸君がそういうふうなことになった原因であり、それにはわれわれが大いに反省しなければならぬことがあるけれども、それを理由として、あの行為そのものをやや是認するような考え方は、私は将来の日本のために望ましくないと思います。従って、これはこういう際にやはり適当な法制を定めて、そういう違反する場合における人々に対して、そういうことのないように未然に防ぐところの処置を講じておくことも必要であろう。これは先ほど申し上げましたように、各国の立法例等もそういう長い民主主義政治の発達の道程においてはあるわけです。従って、私はこの内容が適当であるかどうかは十分御審議をいただきたいと思いますが、ここにおいてこれを設けて、それでもって私は責任だとか、私の反省を棚上げしておこうというような考え方は、毛頭持っておらない、十分考えていかなければならぬ、こう思っております。
  105. 阿部竹松

    阿部竹松君 全学連と五・一五当時の青年諸君と私は一緒に見ておりませんけれども、しかし、一応私も全学連があそこを破ったのがいいと言っておるわけではないのです。それは一応総理の言がうなづけたとしても、そちらはそちらとしてこしらえる反面、たとえば国会で選挙法が出ておる。それをずたずたにしてしまって、それはさっぱり選挙法を改正するといっても名目だけである。きれいな選挙ができるような政治にならなければならぬ。この法律でも、衆議院を通過してきたといっても、これはあなたの方の党だけが一方的に集まって、社会党民社党を入れないで、そして今度は一丁上がりといって上げてしまった。これは予算とか何とかで、何月何日までに上がらなければ地方自治体も困りますという法案であれば、それはいざ知らず、百歩譲ってですね。しかしこの法案は、半年かかったって一年かかったって、みんなで納得のいくように話し合ってやってもいい法律じゃありませんか。そうではありませんか。それを年の十二月一ぱいで、衆議院の方では社会党は反対してもよろしいということで、あなたの党だけで賛成と、こういうことで上げる。総理の言わんとするところはわかるけれども、行動が違うじゃないですか。そうでしょう。それは政治は、一党独裁とは言わぬけれども、そういう政治をやっておきながら、口でりっぱなことを言ってもだめじゃないですか。こういう法案は各会派が十分よろしいという審議の時間を、かけてもいいでしょう、一カ月論議してもニカ月論議しても、国会議員自身のことですから。それを一方的にやるということは、総理の言わんとするところと違うじゃないか。ということは、これは総理責任だけではない。副総理、幹事長の責任かもしれませんが、あなたが最高責任者だから、あなたにたださなければならぬ。そういう点でどうも疑問がある。あなたはりっぱなことを言うが、一カ月やるなら一カ月、社会党は上げますと、各会派もそうだと言ったら、あなたはどうもそれは委員会のことですから委員会でとうまく逃げる。総裁として責任を負いましょうと言いますか。
  106. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私は、この法案が提案される前に、衆議院議運におきまして、各党の理事諸君の間においていろいろと論議もされ、その結果こういう提案の形になったように承知しておるのであります。今これの審議にあたって社会党民社党を入れずにというお話がありましたが、当時の事情から申しまして、われわれの方でこれをロックアウトしたというようなことではなくて、むしろ野党の諸君がそり審議に加わることをいさぎよしとしないというような意味において、審議にお入りにならなかったというのが、三時の実情であろうと思うのです。しかし、そういうことがいいか悪いかは別でございます。私はそういうことがしょっちゅう行なわれているとは決して考えておりません。またこの問題についての審議の状況につきましては、実はごく率直に申しまして、私自身がきょう呼び出されて聞かされるということで少しとまどったわけでありまして、御審議は、これはもちろん、それから委員会から要求がありますれば実は出て参るのでございますが、議員提案のものであり、提案者からじっくり一つ事情を明らかにされまして、そうして御審議を尽くした上で御結論を得られるように。私の方でいついつまでに上げてくれとか、それは要望といいますか、望みは申します、われわれの政府で提案をしたところのものについては。しかし、それは決して委員会を拘束するものでもなければ、またこれにどういう条件をつけてどうするというようなことを申し上げるべきではなく、それは私は決して逃げ口上ではございませんが、委員会がおきめにならないと、政府なりあるいは政党の首領がそういうことを言ったということになると、これはまあ私は非常に問題だと思うのです。そういうことを申しておるのではありません。十分に一つ審議を、願いたいと思います。
  107. 高橋進太郎

  108. 加賀山之雄

    加賀山之雄君 ただいまの阿部君の質問関連して簡単にお伺いしたいと思うのでございます。今度のこの法律は、御承知のように、国会審議権確保のための秩序保持に関する法律ということになっておりますから、これは私は、院の中、院の外、両方に問題があると思うので、われわれ自体が院の中で審議権確保のための秩序保持をすると責任がある。これは国会議員自体の責任が非常に重大だと思う。先ほど同僚議員から、相馬向井議員初め、われわれは大いに考えなければならぬ、反省しなければならぬというお話もございましたが、全く私はさように考えておるわけです。で、この三十一国会で警職法のときに不祥の事態が起きた。そういうことで四者会談が行なわれて、両党間に非常に重要な申し合わせができたわけです。特に私はその中の一、二を重視するもので、「正副議長の党籍離脱の慣行を樹立すること」、「院内に於ける議事の円滑なる運営を図る為、法規、慣例、申合せ、決議を厳に尊重し、必要により国会法の改正を考慮すること」、こういうふうになっている。ところが先ほどの阿部委員の御質問に対して、一については、せっかく前の正副議長は党籍を離脱された、ところが今度はまだだ。ここには、その当座だけ離脱するのだとは書いてない。「慣行を樹立すること」とはっきり書いてある。これは一体、総裁としてどう考えられるか。もう一回こっきりでそれでよろしいのかどうか。それから参議院の自主性のお話がございました。もちろん参議院は自主的に運営されなければならぬことは当然でございますが、どうも実情は、都合のいいときだけの自主性であって、場合によっては全く従属したような感じを持つのは、これは私のひがみかもしれません。この正副議長党籍離脱については、われわれは非常に強い意見を持っておりまして、ぜひそうあらねばならぬ、その慣行を樹立しなければならぬと思うので、これは遠く粕谷議長のときにそういう慣行が一ぺんできたにかかわらず、その後無視せられて、ようやくこの前できたと思ったら、もう一回こっきりでそうなっておる。はなはだ遺憾と思います。一体この公党の四者会談というふうになっておりますが、有力者がこれだけ集まられて厳に申し合われたこと、これを一体今後どう実施せられていこうとなされるか。内部でせっかく申し合わせたことを、それをその場限りの一片のほごにするようでは、この国会の運営の秩序を保つのだ、審議権確保するのだと申しましても、みずから相談しておきながら、それを簡単に破って守らないでどうして院の秩序が保てるか。私はそれを心配するから、総裁としてのお考えを承りたい。
  109. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほど来この問題に対しましていろいろ御質問がありまして、その当時それに対してお答えを申し上げておるのでありますが、これは言うまでもなく、警職法ののちに、国会の正常化をはかる意味において、私と鈴木委員長、それに幹事長、書記長をまじえて四者で話をしたものでございます。私はこの精神は、今もなおその精神としては生きておると思います。形式的に申しまして、その後におけるところのいきさつであるとか、あるいは一項目ができなかったからこれは全部どちらか破棄したものであるとか、いろいろな議論もあるようでありますが、私はそう思っておらない。私どもがお話したことは、私どもはそれが実現するように今後努力していきたいと思います。ただ、このうちの一つができなかったからあとはもうないのだ、というようなことは私は実は考えておらないのでありまして、やはり一項目、一項目それを実現するように努力していくということが必要である、かように考えております。
  110. 阿部竹松

    阿部竹松君 最後もう一つ重ねてお尋ねしておきたいんですが、議長警視総監に、デモが来たからといって、直ちに議長要請するわけですね。要請するだけで、もう警視総監の方では、これは議長の言うことを聞こうと聞くまいと、どっちでもいいわけですね。これはまあ偉い人の言うことだから、聞かなければならんだろうと、なおざりにしないでしょうと提案者は言っておるが、ともかく、議長要請しても、警視総監はどちらでもいい。こういうようなべらぼうな法律を作ってしまっては、どうも国会の権威に関するという心配と、都条例を中心として、そういうものを頼りとして作った法律は日本国に一つもないわけです。ですから僕は、政府提案じゃございませんから、総理責任云々は言いませんけれども、多数党の総裁であり、総理である岸さんが、自民党議員立法として賛成するというのは、どうもおかしいような気がするんですがね。もう少し配慮する余地があるような気がするのですが、なかなか佐々木さん、うんと言わんわけです。どうも競馬馬と一緒で、前に真っすぐ来たらもう全然だめ。ですから、あなたと話をしなければこれは解決できない。提案者は、悪い言葉で言えば、もうばかの一つ覚えで、よい言葉で言えば純情いちずだ。ですから、これはあなたから明快な回答をもらわんと、佐々木提案者では全然だめなんだ。お隣りにおる長谷川提案者に聞いたら、佐々木君と同じでございます。(笑声)あとの三人に出て来なさいと言ったって、おそれをなして出て来ない。従って総理は、そういうような法律が、社会党は反対、自民党は賛成ということでやるけれども、百歩譲って、法体系上でめちゃくちゃなことであれば、後世に残るものですから、直す用意が総理としてあるかどうか。あなた今初めてお伺いしたんですから、おわかりにならんでしょう。ですから、あすでもあさってでもよろしいですが、あなたは社会党相談する用意はございますか。たとえば、僕は一委員ですから、うちの鈴木委員長とでも浅沼書記長とでもけっこうですから、そういう用意はございますか。
  111. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ちょっと御質問の要点が私はのみ込めなかったのでありますが、この法律において、議長がその必要を認めて、都の公安委員にその要請を出した。そういう場合に、都の公安委員会が、それは、要請通り従わなければならんかどうかということを覇束しておるかといえば、覇束はしておらなくて、要請があったときには五条で必要な措置をとる。公安委員会として考えて、必要な措置を講じなければならないということになっておる。要請をもちろん尊重することになるでしょう、それは要請するということを認めておるんですから。ただ要請した場合に、都の公安委員会は機械的にこれをすぐのみ込んで、その通りのことを口移しにやるということではなしに、委員会としての権限に基づいて必要な措置を講ずる。こういうことの建前になっておるのでありまして、私はそれが適当な建前じゃないかと思います。そういう場合に、必ずその要請通りにもうやれというようにすることは適当でないのじゃないか。それかといっても、ただ要請があったなら、何もしないでいいのだということでなしに、やはり公安委員会がそれを受けて必要な措置を講ずるという建前が最もいいんじゃないか。こういうふうに私自身は考えております。
  112. 阿部竹松

    阿部竹松君 もう一言、岸さん、私のお尋ねする方法が悪かったと思います。例をあげましたから。しかし今までいろいろ提案者から伺って、これを作ったのは衆議院の法制局が立案の衝に当たったと思うのですが、社会党の言い分と自民党の言い分はこれは違うかもしれません。しかし、私どもの聞いた範囲内では、お作りになった衆議院の法制局の意見参議院の法制局の意見を聞いてみても、若干食い違うような気持がする。ですから、社会党の言い分が通るかどうかわかりませんけれども、私どもと自民党と話し合うと、見解の相違ということで分かれてしまうから、もう少し時間をかけて、両方の法制局の一致した見解を示して、それでやるというような方法はないものか、こういうことなんです。私は、別に条項がいいとか悪いとかでなくて、やはり食い違っておりますよ。しかし、賛成、反対の以前の話として、いろいろな法制局同士で違っておる点もあるようにぼくたちは聞いている。どうしても同じでない。そうすると、両方の法制局があって、統一した法律を作る。それには若干時間がかかる。佐々木さんは、それを言ってもなかなか受けつけない。ですから、総理がその衝に当たって、そういう話し合いをする用意があるかどうかということなんです。
  113. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 抽象的に、改正すべき点があり、また野党の言われることがもっともであるのにかかわらず、これに耳をかさぬつもりか耳をかすつもりか、こういう抽象的に話があれば、私は、さっきから申しております通り、それに耳をかさないというむちゃなことは申しません。私は十分に耳をかすにやぶさかでないということを申し上げておきます。ただ、具体的になりまして、どの事項についてどうしろとかこうしろとかいう御議論を聞かないというと、私自身として、抽象的に言って、ただそう申し上げたからといって御満足もいきますまいし、また私としては、何だかそれでは阿部委員の御質問にまともに答えているような気持にもなれないのです。しかし、先ほど一例におあげになりました点については、先ほど申し上げたような、私自身の見解をお聞きになればおわかりになると思います。その他の点につきまして、何かそういう点があり、また問題があるというようなことは、実は各委員から私は今日まで何も聞いておりませんので、その必要はないものじゃないか、こういうふうに考えております。
  114. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは、総理大臣に対する質問はなおあると存じますけれども、約束の時間もとうに過ぎておりますので、総理に退席をお願いして、さらに提案者その他の関係者もおられますので、質問を続行願いたいと思います。
  115. 占部秀男

    ○占部秀男君 質問じゃなく、議事進行で提案したいんですけれども、もうだいぶ時間が過ぎておりますから、そろそろ昼飯にしなければ、これは人権問題ですから、率直に取り上げてもらいたい。(「休憩々々」「続行々々」と呼ぶ者あり)
  116. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) ただいま占部君より休憩の動議がございますが、これに賛成の諸君の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  117. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 少数と認めます。しばらく続行いたします。——それでは私から申し上げますが、椿委員から、衆議院が解散せられた場合におきまして、その間の衆議院議長の職権はどうなるのか、こういう御質問があり、これは前の委員会でも問題になっておりますので、この際、提案者から、それに関する御説明を願いたいと存じます。
  118. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 前回もお答えをいたしたわけでありまするが、参議院緊急集会中におきましてはどうなるかということでありまするが、(「休憩々々」「続行々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)国会法の第七条によりまして、事務総長衆議院議長の職務を行なうことになっておりますので、緊急集会中に要請する必要が生じました場合には、参議院議長衆議院事務総長の連名によって行なうことになっております。
  119. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) お諮りいたします。ただいま塩見君から、委員長のもとに、賛成者連名の……(「賛成々々」「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)動議は採決されました。  暫時休憩いたします。    午後一時三十六分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕