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米田勲君 なかなか紳士的です、取り消すということは……。
ただいまの答弁の中にあった、二十七日の
事件だけがこの
法律案を生む基礎になったのではないというふうに言われ、一つは、
警察官が出動して、その群衆の通行を阻止した事実があるではないか、こういう答弁で私の聞いていることにかえられた。あなたの
考えからみれば、日本の
警察官はいついかなる所で何をしても常に正しいのだという頭になっておるようですが、私はそうは
考えない。
警察官だって取り締まりに行き過ぎがあったり間違いがあるということをあなたは
考えなくてはなりません。
警察官が出動して通行を阻止したら、阻止された方が悪いので、阻止した方は
警察だから、いつでも正しいという
考えは間違いであります。そのことだけあなたに言って、次に移ります。
ところで、前回の
委員会の
会議録四ページの二段目、しまいから四行目、あなたごらんになって下さい。そこでこういうことをあなたは仰せられておる。「何も、こういう
事件が起こったから、従って今度はそういうことを繰り返さないような法律を作らなければならぬというのではないのであって、あらかじめ予想されるいかなることをも想定していかなる法律を作ろうとも、それは自由だと思うのであります。」、こうあなたは言われているわけです。非常に大胆な言い方であります。これは大したものです、この言葉は。こういう
考え方に立って、
国民の
基本的人権が侵されることがあってはならないというので、わざわざ憲法の十一条には、「この憲法が
国民に保障する
基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の
国民に与へられる。」ということを書き上げてあるわけであります、あなたのようなお
考えにならないために。また十三条にも、「すべて
国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する
国民の権利については、……立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」ということになっておる。「国政の上で、最大の尊重を必要とする。」、わざわざこういうふうに憲法ではうたっているのです。
佐々木議員は、具体的にこのような事実が発生したので、再びそのようなことが繰り返されないように法律を作らなければならないというふうに、明確に発生した事実を確認をし、その事実の上に立って立法を企図されたというのであればいいのであるが、事実の追及になると、あなたは先ほどの速記録に載っておるように、「あらかじめ予想されるいかなることをも想定していかなる法律を作ろうとも、それは自由だ」、あなたに言わせると、それはあとから、憲法の範囲内ですよ、もちろんそれはと、こういうふうに答弁なさるでしょう。しかし、この言葉が自由にあなたの口から出てくるのは、あなたの立法に対する
態度、
国民の
基本的人権を抑圧しようとするような法律を作り上げるその立法者の
態度が、端的に私はこの速記録に載った言葉となって出てきたものだと思うのであります。こういうような
考え方、事実問題を全く度外視して、あらかじめ予想される、こういうことが起こるであろうと想定したこと、そういう想定によって法律がどんどん作られてよいものかどうか。私は、近代社会の法治国家で、しかもその立法府で、こういう大胆不敵なことが発言されたのを聞いたことがありません。大体、
国民の権利を押えようとするような重大な
法律案を
立案するあなたが、こういう発言をして、立法府の中でやっておるということは重大であります。しかも、あなたはわれわれの仲間だ。私はあなたに、こういう四ページ二段目、しまいから四行目、ここから言われたあなたの、「いかなる法律を作ろうとも、それは自由だと思うのであります。」というところまでの発言は、ぜひ取り消しを要求します。しかも私は、こういう
立案者の憲法に対するかまえ方、
国民の人権を
規制するような物事を
考えるときの
考え方、それがこういうことであるならば、そういう不見識な
考え方に立って提案をした本
法律案は、もう一度引っ込められてお
考えになることが至当だと思うのであります。だから、先ほどの私の指摘したあなたの発言の全部をみずから取り消され、この
法律案を引っ込めて再検討なさることが妥当と思いますが、お
考えはいかがでしょうか。