○
政府委員(
朝田静夫君) 最近のニューヨーク航路の問題につきまして、昨日
海運造船合理化審議会で御報告を申し
上げておいたのでございます。これは御
承知のように、最近におきましてニューヨーク航路にマルティシー二ーというアウト・サイダーが出て参りまして、それがそれに対抗いたしまして、同盟が、御
承知のようにニューヨーク航路はオープン・コンファレンスという、脱退も加入も自由な同盟でございまして、非常に同盟自体としては弱い同盟でありますが、それに対して、アウト・サイダーが出てきても対抗手段のないような
海運同盟にとどまっているわけにはいかないということで、同盟のメンバーでありますところのバーバーという北欧系の船主が脱退通告をして参ったのでございます。そこで、そういったことに対して、
海運同盟としては、同盟自体が
対策を講ずるのでございますけれ
ども、
政府の立場といたしましては、従来からこういった同盟に対する
状況活動に対しては不干渉主義をとるということが、各国ともとっておる政策でございますので、
日本政府といたしましても、この点につきましては、同盟不干渉主義ということであるべきだと思うのであります。従ってそういう態度はくずしておりませんが、ニューヨーク航路は、御
承知のように対米貿易の上から見ましても、
海運の定期航路におけるニューヨーク航路の地位からいいましても、きわめて
日本の
国民経済の上に重大な影響を与えるということは否定できない事実でございます。従いまして、
日本の
政府としても、同盟の対抗手段については、干渉はいたしませんけれ
ども、この航路が安定するということが
海運、貿易、両面から見ても非常に必要であり、
日本の経済全般から見ても、最も重要な問題であるというふうに考えまして、この航路安定については重大な関心を持つのだということを、去る二月二十九日に
日本船の航路担当業者の、九社の社長を
運輸大臣が呼びまして、みずから
日本船自身も自粛するように、積み取り制限その他につきましても自粛をして、外国船主と協調して、この航路の安定に
努力をせられたいということを要望されたのであります。そういうことで数日後、私が外国船主にも同様にそういった
事情を報告いたしまして、
日本政府の意のあるところを伝えておいたのでございます。ただ、そこで採用いたしました、同盟自身がアウト・サイダーに対して対抗手段として考えましたいわゆるフィデリティ・コミッション・システムというのがございますが、これにつきまして、四カ月、同盟の船に積んで、アウト・サイダーの船に積まなければ、運賃の九・五%の割り戻しをするというのが、このフィデリティ・コミッション・システムというのでございます。その方法をもって、アウト・サイダーに対抗し、
日本船は積み取り制限等も厳重に順守するということで同盟脱退を食いとめよう、そうして航路の安定をはかろうという意図があるのであります。これに対しまして、
運輸省といたしましては、海上運送法に基づいて、こういったフィデリティ・コミッションというものを承認する方針であるということをはっきり言明をいたしておるのであります。
ただ、ここに問題がありますことは、アメリカにおきますところのこのフィデリティ・コミッションの取り扱い方が、非常な独禁法的傾向の強い国でありまするし、国内
事情、米国の
事情からいいましても、なかなかこれが認められるかどうかということには疑問があるわけでございます。これにつきましても、外交機関を通じて、航路の安定について米国
政府も
協力願いたいということを、適当な方法と時期において伝えているような
状態でございます。一方、先日来この
委員会でも問題になりましたように、このニューヨーク航路の安定を阻害する、混乱するきざしと別の問題といたしまして、アメリカの独禁法的傾向の強い表われとして、
日本船の十一社がワシン
トンの裁判所に呼ばれておるわけです、召喚されておるわけであります。
世界各国七十一社に及ぶ
海運会社が、独禁法あるいは商船法の違反の疑いがあるかどうかということをきめるために、裁判所において召喚をされておるという事実がございまするし、米国の国会の上院、下院におきましても、アンタイ・トラストの小
委員会でありますセラーズ・コミティというところでも、この違反の疑いがあるかどうかという調査もされております。またボナーズ
委員会というのもありまして、これも国際慣行に従った同盟のあり方ということも検討されているような、二つの
委員会で問題を取り
上げておるということでございまして、要するに、日米両国の
海運政策なり
海運関係の法制が違うところに、非常にこの航路の安定をはかる上にむずかしい問題があるということを報告いたしたのでございます。
第二番目の、ただいま御
質問がありました
石炭専用船の問題につきましての私の報告は、最近
鉄鋼会社において、貿易の自由化等に対処されて、鉄鋼の輸出をする上におきまして、
国際競争に耐えていくために、製鉄所の石炭を運びます際に、専用船を外国の
会社から発注させて、
日本の
造船所で
建造をいたしまして、そしてそれを長期に製鉄
会社が用船をするという問題でありますが、その後いろいろな製鉄所側におきまする
考え方の推移はございますけれ
ども、当初の
考え方といたしましては、そういった米国内におきます
会社から
日本の
造船所に対して発注を、
船舶建造の発注をいたしまして
日本の
造船所は輸出入
銀行の四分の
金利で輸出金融を受けるわけでありますから、そういったものをコスト
計算をいたしますというと、非常に安い運賃で
石炭専用船を利用できる、こういうところから問題が出たのでございます。
そこで、私
どものこれに対しまする事務的な採算運賃の比較をした資料を、昨日の
合理化審議会に提出をいたしまして御
説明申し
上げたのでありますが、それによりますというと、この
計画として考えられておりますものは、
石炭専用船は四万五千
トン、デッド・ウエートにいたしまして四万五千
トン、一万五千馬力、船価が二十一億九千万円、乗り出し費用を入れまして二十一億九千万円、この際に、
石炭専用船をもし
計画造船の条件で作りますというと、
財政資金が五割、市中金融からの借り入れが五割ということで、
財政の
金利が六分五厘、市中が九分四厘九毛でありますが、
利子補給をいたしました場合には七分五厘になるわけであります。従いまして、
利子補給をいたしましたときの
計算をいたしてみますというと、平均
金利は七分一厘になるのであります。ところが、輸出船でやりますというと、輸銀の
融資は、
契約船価から、頭金の、通常三〇%でございますが、頭金の三〇%を引きまして、なお
造船所の
利益、減価償却費等を差し引いた残りの八〇%以内が、輸銀の四分の
金利で
融資を受ける対象になるわけでございます。従いまして、こういったもので
計算をいたしますというと、頭金が、前払い分としての頭金が、大体米国内におきます
金利は五分でありますから、まあそれを五分五厘と
計算をいたしましても、平均
金利は五分一厘六毛、こういうことになるのであります。そこで、
日本の
財政資金を使い
利子補給をいたしましても、平均
金利は七分一厘、輸銀の
融資を利用すれば、これは五分一厘六毛だと、こういうことで、運賃の低下ということは、外国船におきましては可能であるけれ
ども、
日本船においてはなかなか採算がとれない、こういう矛盾が起こってくるのでございます。そこで、それでいきますというと、
日本船で採算運賃をそれではじいてみますと、初年度が七ドル八十セント、五年平均でいいますると、われわれの
計算では七ドル三十六セント、ハンプ
トンローズと
日本の石炭運賃を、今申し
上げた平均
金利で採算運賃をはじいてみますというと、そういうふうに七ドルをどうしても割ることができない、こういう
計算になるわけでございます。ところが、輸出船につきましては、
先ほど申し
上げましたように、平均
金利が五分一厘六毛でありますので、初年度の採算運賃は七ドル二十六セント、五年平均でいいますと六ドル七十四セント、七ドルを切ることができるわけでございます。従いまして、製鉄所側が一万海里に及ぶ
日本とハンプ
トンローズの長距離の海上輸送におきます運賃部門というものは、鉄鋼のコストの上から見て非常に大きなウエートを持っておりますので、そういうところに着目をされたことだろうと思うのでございますけれ
ども、
日本の
海運を育成助長していく上において、こういう政策の矛盾を来たしておるのじゃないかというようなことで、
海運自身を輸出と考えないところに政策の矛盾なり不足をするところがあるのだという御
意見が、昨日の
合理化審議会で討論の際に一部の人から出た御
意見であります。
そこで、こういった点が、
先ほど相澤先生からも御
指摘がございましたように、
利子補給の九億五千万円で足りるのかという問題とも
関連いたしてくるのでありますが、こういうはっきりと数字の上で現われて参りますというと、私
どもとしては、
日本海運の
国際競争力の上においてなお不十分であるということが現実の問題になってきたと思うのであります。それに対する
対策は、
合理化審議会として、四月に入ってなお検討した上で結論を出そう、こういうことになっているのがきのうの審議会の模様でございます、