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1960-02-25 第34回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十五日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席分科員    主査 北澤 直吉君       藤本 捨助君    山崎  巖君       岡本 隆一君    木原津與志君       田中織之進君    滝井 義高君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       松尾トシ子君    兼務 八木 一男君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣審議官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 大島 寛一君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     熊崎 正夫君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     和田 勝美君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      澁谷 直藏君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君         建設事務官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政局         財政課長)   松島 五郎君         総理府事務官         (調達庁労務部         次長)     阪本  実君         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  東郷 文彦君         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         文部事務官         (大学学術局大         学課長)    春山順之輔君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  聖成  稔君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    加藤信太郎君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         農林事務官         (振興局参事         官)      橘  武夫君         農林事務官         (振興局振興課         長)      二子石揚武君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    中野 正一君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君     ————————————— 二月二十五日  分科員木原津與志君委員辞任につき、その補欠  として滝井義高君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員滝井義高委員辞任につき、その補欠と  して岡本隆一君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  分科員岡本隆一委員辞任につき、その補欠と  して木原津與志君委員長指名分科員に選  任された。 同日  第一分科員八木一男君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算厚生省及び労働  省所管  昭和三十五年度特別会計予算厚生省及び労働  省所管      ————◇—————
  2. 北澤直吉

    北澤主査 これより会議を開きます。  本日は昭和三十五年度一般会計予算厚生省及び労働省所管昭和三十五年度特別会計予算厚生省及び労働省所管について審査を行ないます。  まず労働省所管について質疑を行ないます。質疑通告順にこれを行ないます。辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原分科員 労働大臣同和対策の問題について、労働省所管にかかる特に失業対策についての同和対策上必要な配慮というような点について伺いたいと思います。  予算を見ますると、本年度の失業対策については、金額は約二十八円増額をしておりまするが、人員については一万八千人減員をしております。御承知のように、最近の経済的な状況からいいますると、完全失業者の数というものは、都会地においては若干減っておりますが、しかし特定の地域、たとえば炭鉱離職者の問題、これは失業対策だけの問題ではありませんけれども、その地帯、さらにはこれは半永久的に常に問題になっているのは、いわゆる部落の存在する同和地区であります。この同和地区については、ほとんど半永久的であると同時に、経済動向いかんにかかわらず、たえず失業者の数というものが漸増の傾向にある。これに対してどういうような失業対策考えるか、さらに進んで職業訓練を施していくか、さらにはまた就職機会をどういう形で与えるか、これはきわめて重要な問題であると思います。それについて最も必要なことは、政府は当面の失業対策費でもってできるだけ吸収をしていくという形に問題を取り上げていかなければならぬと思うのでありますが、実情を見ますると、必ずしもこの失業対策の中に、これらの地区の問題がほとんど解決されておるとは考えられません。でき得べくんばこの失業対策の中で、これらの地区に対しては特別な方法を講ずる必要があるのではないか、こういった点について何かお考えがないか、これを労働大臣に伺います。
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 雇用全般的統計は、御承知のごとく三十年以来相当雇用の指数は上昇しております。ただ御指摘日雇い労働市場一般雇用と同じようなカーブで上昇しておるかというと、これはやはり日雇い特殊性からいって必ずしも同一ではございません。一応この労働統計を御説明申し上げますと、最近特に目立っておりますのは、日雇い労働者民間就職が非常に伸びております。三十年が平均いたしまして百三十五万、三十三年が百五十二万、約二十万ばかりこの三年間で伸びております。三十四年の資料を見ますと、月平均が百九十万から二百万、相当日雇い労働市場というものが伸びておることは事実であります。ただこの中でいわゆる一般失対の問題はなかなか統計上出て参りません。一般失対がそれでは減ったか、そんなに激減したとは私たちはまだそう楽観は許しません。完全失業者は御承知のごとく六十八万から昨年は五十六万、その後ずっと五十二、三万になって参りました。その意味で来年は予算の中から一万八千人減員いたしましたが、これは統計上からいうともう少し減を見ても可能な統計も出て参りますが、ある程度安全率を見て一万八千人にしたわけで、これは大体安全度合いの中に入る。そこで一番問題になるのは、同和地区という地域別お話をされますと、辻原委員のおっしゃるように、最近は地域別の問題が問題だ。日本の総合的な問題は大体ただいまの御説明のように一応の筋が通ってきた。問題はあと地域別の、ことに日雇い、一般失対というものになりますと、統計ばかりでそう楽観するわけには参りません。従って今度は労働省として地域日雇い労働者の問題をどうするかということが、実はことしの一番大きな問題であります。ことしの労働行政の中で一番難問題の焦点はそこだと私も考えております。従ってこれは各地域々々においてその実情に沿うように予算配分計画をきめなければならないというので、二十八円の賃金アップは、これはPWできめますから、そういう統計と現在の労働市場統計を各基準局職安ごとに一月以来最近のものをとり直しております。三月までにはこれがきまって、四月からは二十八円の賃金アップもしなければなりませんから、それまでには賃金の問題、物価の問題、労働市場の問題というものをあわせて一番正確なものをとり直して、重点施策というものを来年度三十五年度からやることが一番大事なことだと私も考えております。  その中で特にまた同和問題と言われますと、もう一歩目がこまかくなってむずかしいのでありますが、おっしゃるように同和地区といわれるところが問題の多いところになるわけであります。同和が問題だという意味ではございません。偶然ですけれども、労働市場を探してみますと、同和地区というところが労働市場としても重点地区ということになってくるのじゃなかろうか。過去の統計から見るとそうなって参ります。特に同和地区という意味で言うのじゃありません。公平な統計をとると必然的に同和地区がやはりいろいろな関係失業問題の焦点に出てくるのじゃなかろうかという意味で、ことしからは実はそういうふうなことを考えまして、同和地区対策と特別に銘打って職業紹介はいたしておりませんけれども、一応職業紹介協力員というものを設置いたしまして、約二千人、これは農村にも置きます。今までなかったところに今度は二千人の協力員予算を組んであります。この中の五百人くらいはいわゆる同和地区といわれる地域におそらく当てはまるのじゃなかろうか。私は特に同和地区と言うのじゃありませんけれども、自然にやはり労働市場の問題として同和地区というものが出てくるでしょうから、それに合わせて五百人くらいのものは、そういう労働市場の非常に窮屈なところに職業紹介協力員を置いて、そうしてなるべく広い意味職業紹介をして参りたい。その地域だけで職業を求めるということはなかなかむずかしい問題であります。今日はなるべく広い意味職業紹介ということをやっていきたいというのが、同和地区とおっしゃれば同和地区になってくるのじゃなかろうか。そう考えて、特に私の方は同和地区限定はしておりません。自然にそういう統計がおそらく同和地区に出てくるのじゃなかろうかという意味で五百人を予定いたしております。
  5. 辻原弘市

    辻原分科員 この地域日雇い、いわゆる地域の一般失対の問題について特別に考える必要があるのじゃないかというお話ですが、これは私今までの一般的な失業対策から一歩前進をした御意見であろうと思います。このことは私どもも前から指摘をいたしまして、労働省に対してもたびたびそういう意見を申し上げてきたわけでありますが、今大臣の話のごとく、ただ単に同和地区だけが問題じゃなくて、たまたま歴史的な背景をになっておるこの同和地区が、経済的にもまた環境からいいましても、あらゆる悪条件がここに重なっておる。そういう点から失業問題あるいはその他の経済的な諸条件というものも、他に比較して非常に劣悪であるという傾向が生まれておる。そうした意味で私は申し上げておるわけであります。従いまして従来のようないわゆる一般失業対策やり方では、非常に一般的ではあるが、ほんとうに失業者はんらんをして、またその地方財政力等も非常に貧困であるといったような場合には、従来のやり方ではどうも手が届かないといううらみが非常に多いわけであります。たとえば今私が申し上げたいわゆる同和地区ももちろんそうであるし、さらに最近の経済情勢から考えて参りますと、都会及び都市の周辺においてはかなりそういう機会にも恵まれますけれども、しかしながら一歩奥地に入りますと、山間地帯においては見えざる失業問題が発生しておる。これは最近の山林関係、特に木材関係不況というものから山持ちが山を切らせない。そういたしますと大体その地域においての生業というものは八割山に依存しておる。さすれば結局その生業を失ってしまって、ほとんど半失業状態になる、こういう傾向山間僻地に参りますと非常に多いのであります。ところがそういうところではなかなか一般的な失業対策は起こせない。公共事業はどうかといっても、それはたまたま災害が発生したとか、あるいは特殊な公共事業で、奥地であれば林道を開発するとか、そういう機会にしか新しい公共事業による恩恵は受けられない。どうしても何らかの形において、こういう地域失業対策考えていかなければならない。ところがその付近の公共団体にしてみましても、財政力が非常に貧弱であるためにとうていこの負担にたえられない。また失業対策その他の厳密な解釈によれば、あながち完全失業とはいわれない、またもう一つ失業対策事業を起こすには、公共職業安定所が非常に遠隔の地にある、こういった法的ないろいろな欠陥のために、現実失業者はんらんをしておっても、これに対する救済の手は差し伸べられないといううらみがある。ここらに私は何か改善を要する点があるのじゃないかということを考えるわけです。今お話しのそれぞれの地域による特殊な失業状態から勘案した地域日雇いに対する対策をどうするか、こういう問題が起こってくるわけです。これをどう具体的に解決するか、この点について何かお考えがあれば、同和地区の問題も含めて一つ承りたいと思います。
  6. 松野頼三

    松野国務大臣 辻原委員の御指摘のように、ただいま失対事業というものを公共事業にかみ合わせる場合には、建設省公共事業がうまくあるところにはこれは順調にいっております。しかし公共事業は御承知のように特別失対といえば道路、あるいは臨就にしても舗装、主としてこれは一級国道とかあるいは重要県道になりますから、御指摘のような山間地にはたしてそういう公共事業特失臨就がいくかというと、なかなかそうはいかないところに私は問題があるのじゃないかと思います。これは実は奈良及び和歌山の先般の災害のときにも非常に問題が起こりまして、一番身近なものは農林省林道治山——これは治山といっても相当大きな予算を持っておるのでありますが、治山とか林道とかいうものがうまく山間地帯失業雇用状態とマッチすることが私は必要だと思うのです。先般の災害のときには特に両省打ち合わせをしまして、なるべく林道及び治山について失業者を吸収してくれというのでこの消化をはかりまして、今日そう大きな問題はなくなりました。今後も私は恒久的に、つまり林道治山というものは公共事業の中での相当なワクを占めますから、これと失対事業というものをかみ合わせたい。今までは労働省建設省特失臨就とばかり雇用を組み合わせた。しかしこうなってくると、今回はやはり重点的な、農林省とも組み合わせるような運営が必要じゃなかろうかと私は考えておるのです。そのほかに一番身近なものは、炭鉱地帯には緊急就労というものをやります。これはやはり公共事業にうまくマッチしませんから、労働省緊急就労という予算をもらって、道路であろうが、河川であろうが、都市計画であろうが、何でもいいように、炭鉱地帯に合うような臨時就労というものを昨年の予算で起こしたのは、実はその意味だった。従って炭鉱地帯には特別な事業が起きてきた。もう少し山間僻地というとおかしいのですけれども、ある程度一級国道重要県道が行かない地域失業問題が出てきたということになれば、これは農林省とも予算の組み合わせを考えて、治山治水事業をもう少し話をするべき時期が来たのではなかろうか。こういうことでもちろん予算の中で、向こうも林野特別会計もありますから、話をしながら重点的に施策やり方を変えてもらいたい。労働省から農林省予算をこの地域へ配ってもらいたいということは、両省で連絡すべきだと思っております。たまたま災害でやりまして今後も私はこの問題は恒久的に進めて参りたい。重点的な予算配分というものと雇用がかみ合わなければいけない。最近は非常に目がこまかくなりましたから、そういうところに私は注意すべきだと三十五年度予算には考えております。もちろん農林省労働市場というものを考えて、山林雇用というものは農林省に深い関係がありますから、私はこれは両省で話ができるものだ、こう考えております。
  7. 辻原弘市

    辻原分科員 松野大臣がそういう点に非常に着目をされておるということについては、われわれもこれは期待をいたすものです。最近の傾向は言わなくてもおわかりのように、もちろん都会地においても失業問題は重要な問題でありますが、政府施策の面から見ると、どうも都会地農村、山村というものの間には非常に大きな落差が生じてきている。これは一般の失対から考えても相当落差がある。そういう点から考えてみれば、やはりきめのこまかいそういう施策を絶えず留意してやってもらわぬといかぬと思います。ただしそれが今お話しのごとく、農林省と相談をされていくことも一つ方法であろうと思うが、現実の問題としてはなかなかいろいろな隘路があるわけです。たとえば特別失対あるいは現在建設省がやっている特別就労対策、こういうものでも実際の仕事を請け負うものはだれかといえば、これは請負業者なんです。そうすると、その請負業者はそれぞれ自分が平素かなり技術的に習得をさせた雇用者というものを持っている。失業が発生している地域での事業であっても、その地元の雇用に対して、はたして役立っておるかといえばそうではないのです。ここに一つの問題がある。そうなればどうしても一般失対というものもそういうところまでかなりやり得るような方法も講じなくては救われないのです。そのために私が言うのは、たとえば地域的なそういう事情もかなり配慮して、そうしてやれないような地区に対してはやれる方法を講ずる。たとえば町村が非常に貧弱であるために、現在の一般失対負担割合でもってはどうしても不可能だという場合には、国費の補助率を引き上げるということも一つ方法だろうと思うし、また地域に対する配分等についても、非常に全般的に失業者が多いという地域は、これは生業もないのですから、たとえば男一人だけが働くということでは生計が成り立たない、場合によれば奥さんも働かなくちゃならぬ、そういったときに、現在職業安定所なら職業安定所でやっているあれについては登録をかなり厳密にしている。もちろんこれは無制限にすれば問題がありましょうが、しかしかなりの配慮が必要じゃないか。そうすれば私はいわゆる失業地帯といわれるようなところでも、一般失対によって救われる道があると思う。だから地域によってある程度やはり補助率等も勘案し、またそれに対する登録人員あるいは配分、こういったものについてまでかなり弾力性を持たすような運用ができないものかどうか、この点については一体どうでしょう。
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 いろいろ御指摘のような不便がございましたから、緊急就労では約八五%、手持ちは一五%ということで厳正にきめまして、今年の予算補正予算事業——先般も視察しましたが、大体八五%、請負業者は不平もございましたが、全部入札を済ませて、今日仕事をしておりました。これは厳密に八五%が炭鉱離職者限定をしております。従ってこれは八五%を守っておる。ただ一般公共事業はというと、一応の基準がございまして、五五%から六五%は、いわゆる職業紹介による労働者を雇えという規則になっておりますけれども、現実はやはり特殊技能者がいないあるいはその労働の質が合わないというので、今日は三〇%前後が平均じゃないかと思います。五五%完全にはなかなかいっておりません。そういうわけで、できれば五五%ということを基準にしておりますが、御指摘のように必ずしもその通りいっていないことは事実であります。これでいけば非常に消化率がいいのですが、なかなか今日そこまではいっておりませんが、毎年努力して引き上げつつあります。  もう一つ運用をうまく弾力的にやれぬか、これは御趣旨から言うと私の方も非常に考えなければいけないところでございます。今日予算編成で大蔵省とそこまで一致はしておりません。非常な貧弱町村には一般失対補助率を引き上げたらどうか。これは非常に弾力的な、運営の側から見れば一つの大きな新しい提案だと思います。ただ逆に私の方は、今のところは地方財政の方で弾力性を持っておるわけです。非常に貧弱町村には地方財政起債特別平衡交付金でやっております。一番いい例は、昨年の炭鉱緊急就労につきましては特別平衡交付金と合わせまして、三十四年度の下期、三十五年度も特別平衡交付金または特別起債でこの穴を見るということで、地方財政の方に弾力性を与えて運用をしたわけでございます。それは非常に重点的な、炭鉱労務者が多い、地方財政貧弱負担ができないじゃないかというので、政府補助率は五分の四までやりまして、あとの五分の一を特別平衡交付金で三十四年度の下期は運用いたしました。三十五年度は特別平衡交付金または特別起債でやるように予算を組んだわけであります。そういう意味で片一方では非常に弾力を持っておるわけですが、補助率というものは、この地域だけに補助率を上げるとか下げるとかいうと、そのたびに、災害じゃありませんけれども特別指定地域みたいなものをきめないと工合が悪いわけです。特別指定地域をきめるたびに動揺するのでは困るものですから、従って地方財政の方に逆に弾力的な運営を持っていきたい。御指摘のようにもう少し目がこまかくなれば、特別指定地域みたいにきめまして一般の失対事業雇用労働者が何%以上のところは補助率を上げるということも一つの案かもしれませんが、一般の失対の場合は今日そこまでは目がこまかくいっておりません。従って逆の意味地方財政の方に弾力性を持たせて、地方負担をあれするという方向に今年もやったわけであります。
  9. 辻原弘市

    辻原分科員 地方財政弾力的にやっている点についても若干救われていることは事実なのですけれども、しかしそれだけでは、現在やられているいわゆる一般失対なら一般失対を起こしているところは、従来よりは地方財政の面で特別平衡交付金でもって若干のカバーはされますから、今までよりはいいわけです。ところが起こそうとしても全然起こせないような地域に、ある程度補助率をはっきりしないと、問題が具体的にならないわけであります。そこで今非常にむずかしい問題であるけれども、できればそういう地域別指定なら指定、あるいはある基準を設けて、補助率を高くするというような方法をこの際もう少し考究されてきめたらどうかと思うのですが、これは今度の石炭対策だけじゃなしに、二、三年前やはり石炭不況の際に北九州地帯補助率五分の四でもって石炭離職者に対する緊急失業対策事業としておやりになった。これは非常に効果があったと思うのですが、それに類似した対策を、石炭のみならず現在失業者が多いにかかわらず対策事業が起こし得ない地域に対してそれを及ぼしていく必要があると考えます。そういう意味から申しまして、いわゆる完全失業者の数が統計上減ったからといって、簡単に人員を減らしているわけですが、こういう行き方は私はどうも感心できない。わが国特有潜在失業者に対しては、少なくとも現在の失業対策については現実にあまり考慮されていない。ところがその潜在失業六百万、八百万あるいは一千万といわれる。この中にはほとんど名目的に職業は持っているけれども、事実は先ほど言ったような山間山林労働者のごとくほとんど失業している。そういう階層があるわけです。そういうものに対しては、やはり完全失業者と同じような一般失業対策というものの中で解決するような方法をぜひとも考慮する必要があるのじゃないか、こういうように私は考える。この点については、これは少しこまかくなりますけれども、御参考に申し上げておくと、いろんな労働者あるいは失業者がおりますが、山林労働者、これは日本の奥地に参りますと、どこにでも非常に数としては多いわけなんです。ところがこれに対する労働政策というものはきわめて貧困であるということを気づくのです。今申し上げました失業対策もそうであればあるいは労災保険などというものはほとんど適用されていない。失業保険についても同様なことが言える。なぜそういうことになっているかというと、きわめて形式的なんですね。それは雇用関係が通例に言ういわゆる労働者雇用者という関係になっていない。ある場合においては請負制、こういうことが原因をいたしまして、今日労働者の保護政策としてとられておる失業保険とか労災保険あるいは失業対策、こういった点についてもほとんどその恩恵に浴していない。ですからその貧困の度合いとか、その困っておる状況というのは想像以上のものがある。ですからこういう点を今後の労働政策としてはやはり十分考慮していく必要があるんじゃないか、さしあたってこの失業対策を何かの形においてこういう地域にでも起こせるような方法を講じていただかぬと、山間における最近の生活状況というのは、これは経済一般的な好況、不況にかかわらず常にコンスタントな形で失業者がふえておる、このことが言えると思うのです。それについて一つ十分お考えを持っていただきたいと思うのであります。何か今まで労働省としてそういう点について考えられたこと、あるいは気づかれたことがありましたならば、この機会一つ承りたいと思います。
  10. 松野頼三

    松野国務大臣 先ほども一般失対の高率適用は、実はある意味においては五分の四まで五つの県でやっております。それは地方財政の中で千分の四十でしたか、一定率以上の失対事業をやっている県は三分の二を五分の四に高率適用する、昨年はたしか五つの県、市はよく記憶しておりませんが、ある程度やっております。しかしそれをもう少し目をこまかくやれという御趣旨ですが、そこまでなかなか手が回りませんが、昨年は幾らかやっております。  それから山林ともう一つ問題になるのは漁村が多いのです。山林、漁村の失業問題というものが毎年出てきておりますが、これは法律では一応強制適用になっておりません。しかし今日の問題として雇用事情が非常に似通った形、あるいはぜひ必要になるなら入れたらいいじゃないかというので、これは認定をしまして農林及び漁業におきましても、失業保険及び労災保険の適用をしております。ただ問題は、その認定の問題だろうと思うのです。認定をもっと大幅にやれという御趣旨のようです。この認定はいろいろ私の方も考えながらやっておりますが、一番問題は、失業保険は非常に少ない。労災保険は割に希望が多い。なぜかと言えば失業保険は掛金があるし、労使の協調の掛金が多いものですから、必ずしもありませんが、労災は災害だから何とかして一つこれをやってくれという御希望があるので、労災の方が失業保険よりも加入者が今日多いのは多いのです。多いのは多いが、パーセンテージからいえば非常に微々たるものであるとおっしゃればその通りでありますが、もう少し雇用関係とかあるいは労使間の協力を得て、その責任が明確になって、その制度がはっきりすれば、私はなるべく入れたらいいと思います。ただその掛金をだれが払うかわからぬということは、保険事業として困る。そういうことをもう少し明確にして、本年は私の所信としてもぜひ広げて参りたい。なるべく多く入れてあげたい、やはり掛金はだれが負担するかという制度と方法をもう少し確立をして、本年もなるべく適用を広げて参りたいという方向には変わっておりませんが、まだ全部にはなかなかいけないと思いますが、逐年少しずつそういう方向をたどっていきたい、こういうふうな考えで、雇用者にも御協力を願って、一年とか、半年だけ雇って、あとはほったらかす、来年雇うのか、それはわからぬということでは困る。なるべく長期雇用の形をとっていただきたい。漁村にいきますと大体半期というのが多いのです。半年が雇用、半年が帰農といいますか、自分の仕事をする、翌年雇うかというと翌年はまた別だ、そういう制度が非常に多いものですから、これでは雇用形態の継続とは認められない。できれば長期雇用の中で一時帰休という格好の雇用形態をもう少しとっていただきたい、そうすれば私どもの方もなるべくその雇用というものを認めてこの制度を普及していきたい、そういうことでただいまやっております。全部はなかなか参りませんが、逐年ふえておることは事実でございます。
  11. 辻原弘市

    辻原分科員 今申し上げたような点を一つしさいに検討していただいて、そうしてできればその地域においてともかく何がしの公共的な失業対策事業というものが営めるような形に早く一つ持っていっていただきたいというのが私の希望であります。  それから話は最初の同和地区に戻りますが、現在やっておる補助率に対して特別な考慮を払った地区、これにはまだ相当量の失業者を含んでおる同和地区が該当しておりません。やっておるところもあります。それをもう一歩進めて、少なくともことしは、政府の総合施策としてモデル地区というものが設けられて、かなり強力な同和政策を進められようとしておるさなかでありますから、少なくともその一番の、そういった問題の中で当面しておるこの失業問題を解決するという意味において、配分上考慮するということも、もちろんこれは必要でありますけれども、できれば同和地区に対しては、在来の失業対策という形ではなくて、配分数においても、また補助率等においてもこれを考慮したらどうかと私は思うのでありますが、この点について一体どの程度の考慮が今日払われているか。またそのモデル地区内における失業対策というもの、これについても何か特別の考慮を政府としては考えておるか、これを承りたいと思います。
  12. 松野頼三

    松野国務大臣 所管局長から今の点はお答えいたさせます。
  13. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま辻原委員の御指摘の点はまことにごもっともでございまして、先ほど大臣から御説明がありましたように、全国的に見ますと、民間就労の伸びが非常に大きい。たとえば昨年の四月から十一月を平均して前年と比べてみますと、民間就労の伸びは、その前の年が一カ月百五十六万程度でありましたのが、二百二万に、大体一カ月平均四十五万伸びておる、こういう状況でございます。従いまして、全国的なワクといたしましては、民間就労の伸び、それから公共事業その他への就労の伸びというものを比べまして全国的には一万八千の減少がありましても、これは補い得るというふうに考えております。ただ地区によりまして特に同和地区を含むような失業者の滞留する地域につきましては、ただいまのようなお話があることは事実でございます。そこで来年度におきましても、本年度からとっております施策をさらに強化して参りたい、たとえば政府関係機関に労働対策連絡協議会というのがございます。これに建設、農林その他関係各省の係官にも出てもらいまして、ここで来年度の事業の実施につきまして具体的詳細に打ち合わせをいたしまして、失業者の滞留するような地域については重点的に配分して参りたい、その意味におきまして、たとえば一般失対配分あるいは特別失対の配分等につきましても十分実情を加味いたしまして割り当てて参りたい、このように思っております。なお補助の点につきましてこれもお話の点、ごもっともでございますが、やはりただいまの状況では、この地区は特に率をこうするというふうに固定することがまだ困難な状況でございます。従いまして、地方財政の状況を見まして、一定の基準以下であるというようなところにつきましては、現在の高率補助の制度、これを活用していきたい、このように考えております。  なお、詳細につきましては、労働対策連絡協議会その他で各省とも相談いたしまして、また各県から、今の失業者の滞留しておる地域の状況を聞きまして、具体的に問題のないように、配分その他の問題については十分考慮して参りたい考えでございます。
  14. 辻原弘市

    辻原分科員 そうすると、今の段階で考慮されておるのは、数なんですね。数について、どの程度の配分を重点的にやるか。この点は、従来もやっておられましたが、さらに実情に合うような数の配分をやる。補助率については、現在一定の財政収入以下の地域については考慮される、こういう意味であったと思うのです。これも私から申し上げなくとも、なぜ補助率の引き上げが必要かといえば、これは先ほど大臣から御説明のあった、特別平衡交付金でもってかなりカバーされればいいようなわけでありますけれども、なかなか他の事業との関連もあって、それが十分、失業対策にだけ活用されるとは考えられない。そこで、失業対策についての補助率の引き上げということが問題になる。極端な例を申し上げますと、ある同和地区を持っておる市においては、その市の事業の六割というものは失業対策、従ってほかの事業というものはほとんど何もやれない、こういう状況が生まれてきておる。これではいかにも、失業対策だけはどうしてもやらなくちゃならぬから、うんと金をつぎ込んで、どんなに苦しくとも地方財政でまかなっておるけれども、しかしそのために、ほかの事業がやれないということでは、これはまた別の問題が発生をいたします。そういうことを救済するのには、どうしても失業対策失業対策として、そう地方財政の重荷にならないような形で解決してやらなければならぬという、このことなんです。そうでなければ、同和地区なら同和地区の問題について、総合的に同和対策を推進すると言いながら、逆の面が同和対策の中でも出てきておる。ほかの同和事業がやれない。こういうことでは、私は非常にへんぱなやり方であると思います。ですから、まず、一番大きな負担のかかって、一番また大きな問題をかかえておるこの失業問題について、やはり労働省としては解決するような手当をしていただきたいというのが、私のこれは願いであります。  次に、今の失業対策に関連をしてちょっとお聞きしておきたいのであります。それは労災保険の支払いの方法なんです。私どももいろいろ実情を調べてみますと、やはり一つの問題は、労災保険における支払いの給付の場合の基準賃金の取り方ですね。賃金の取り方について何か問題はありはしないか、こう思うのです。たとえば、非常にむずかしい作業に従事する、たとえば奥地林道であるとか、あるいは電源開発であるとか、こういった事業に従事する労働者、これはもちろんその技術なり、非常に困難な度合いというものを勘案されて、現在公共事業では引っぱりだこですね。そういたしますと、勢い、その支払われる日当というものは、他の地域あるいは他の職種に比較してべらぼうに高い場合がある。たまたまそこで事故が発生をする。そうすると、その賃金基準になって支払われる。ところが、それを他の業種、他の地域に当てはめてみますると、他の地域においては、場合によれば、現在失業対策で支払われている賃金よりも安い賃金で働いている職種も相当いる。あるいは中小企業はどうか。中小企業もそれと大同小異ではないか。中小企業に従事する労働者賃金、高いのもありますけれども、非常に低いのもある。そうして、そういうなにが事故を起こしたというときに、片やは非常に賃金が高いために、あるいは医療の補償にしてもあるいは遺族に対する給付にしても、相当な高額になる。たとえば賃金の高いものが指の先をちょっとやったというこれに対する補償と、それから非常に賃金の低い労働者が非常に大けがをした、あるいは生命を失ったといったような場合、その比較をとってみると、問題はないかということを私は考える。これについて、何かお考えはございませんか。
  15. 松野頼三

    松野国務大臣 おっしゃるように、逆に病気の立場から言うならば、同じけがをした、賃金が高くても安くてもその被害の度合いというのは同じじゃないか。ただ、この労災でやっておりますのは、失業保険も同じように、当然取得すべき収入の補償という考えですね。病気をなおすということよりも、まずその所得の補償というのが、失業保険の六割ということになっている。労災もやはり、過去一定期間の平均賃金をにらみ合わせて、その休業期間中の補償を払うという、やはり過去の所得によってその補償を払うという建前になっているものですから、同じような病気じゃないか、平等に扱え、これは病気の方からいえばおっしゃる通りですが、労災保険、失業保険の建前からいうと、将来取得し得べき収入に対する補償及び治療というものが、その補償の対象になるものですから、制度としてはやはりこういう制度をとる以外にない。またそれに合わせていわゆる徴収率というものもきまっているわけです。徴収率というものは、どの産業については、危険率の多いものはおのずから掛金を高くする、危険の度合いの少ない業種においては率を少なくするというので、その被害を受けた、けがをされた当人から言うならば、不公平だという議論も成り立つかもしれませんが、しかしやはり総体的な産業災害に対する制度からいうと、やはり補償を、その産業の危険度合いというもので補償するという建前でありますので、そこに少し立て方が違うのじゃなかろうか、こういうふうな意見で、私の方も辻原委員のおっしゃることはわかりますけれども、制度としては、やはりそういう制度をとっております以上、その制度を私は守る以外になかろう。何か問題は、ただいまの基準賃金というものが、それは議論になってくるかもしれない。しかしそれは別として、立て方は、やはり基準賃金を基礎にして補償するという立て方を、変えることはできないのであります。
  16. 辻原弘市

    辻原分科員 私も、労働問題として、あるいは社会保障の一つの観念としては、これは理解をしておるわけなんです。ただし、特に失業保険の場合は、これは明らかに今大臣の言った、所得補償ということが優先すると思うのですが、労災の場合には、多少現実的には観念が違ってもいいのじゃないかという気がするのです。労災を受ける場合は、やはり病気になって、それを早くなおさなければならぬ。そうして早く産業戦線に立たなくちゃならぬ。それを国が補償する。また不幸にして仕事のためにその生命を失った。その遺族については、これはある意味においては社会保障なんです。だから、そういう観念から言うならば、もちろん私は、高い場合に引き下げろという議論はいたしません。しかし非常に低くて、その病気あるいはけがをなおすのもほとんど不可能なようなそういう給付を受けなければならぬ。また遺族が、その賃金が非常に低いために、少ないものでもってがまんしなくちゃならぬ。こういうようなへんぱな事情が生じた場合に、やはり何か解決する方法考える必要があるのじゃないか。そのために私は、公正な最低基準賃金というものを設けたらどうかということを考える。そうなれば、現在の労災保険なら労災保険というもののいわゆる基本的な考え方、観念というものをくずさずに、そうして労災保険の目的を十分全うすることができる。賃金というものは、特に零細な雇用関係から見ていくと、これはほとんどその業種のそのときそのときの状況によって賃金が支払われている。非常に不安定な状況にあるわけです。特に私が問題としておるのは、低い賃金の場合を言っている。大企業等それらの場合は、ほとんどそれはかなり科学的なベースによってきめられておりますから、これはあまり問題は出ないでしょう。しかし非常に低い、特に日当、それによる労働者の場合には、何といっても賃金そのものが不安定です。ある場合においては、その賃金自体は何ら科学性を持っていない。その企業の経営状態、そういうものからやられておるわけなんです。それでは労働者の受ける補償というものが、非常に不安定じゃないか。そこで同一職種なら同一職種、あるいはその技能の程度、こういうものを勘案をした一定の標準賃金とでもいいますか、あるいは最低標準賃金とでもいいますか、そういうものを設定して、それに近づけるような努力を労災の場合にやるという方法も、これは一歩前進した姿ではなかろうか。そうすれば、私は具体的には申しませんけれども、たしかいろいろ問題があるはずなんです。出先機関等において、現実の問題としていろいろ問題があることも私は聞いております。またそういうことについて実地にも見ましたが、そういう非常に不公平な問題というものが、一つ基準を設けることによって解決していくのではないか。そうすれば、かなり低い方面も引き上げられてくる。こういう点について、検討はできないかどうか、お考えがあれば承っておきたいと思います。
  17. 松野頼三

    松野国務大臣 辻原委員のお意見を伺っておると、私も大いに参考になるところがたくさんあるのです。それをあまり私が答弁してしまうとあれですから、政府委員から実情を説明さして、なお私も聞きながら勉強したいと思います。
  18. 村上茂利

    ○村上説明員 ただいま辻原先生から御質問がございましたが、たとえば和歌山の林道開発であるとか、奈良の林道開発というような、非常な山間僻地で工事を行ないます場合に、労働者を得がたいものでございますから、相当な高額の日当を払いまして作業を行なったという例があるわけでございます。ところがその賃金日額がかなり変動いたしまして、低いときにたまたま災害が起こったならば、補償費が低くなるという点について非常に矛盾を感じられて、御質問いただいたものと思うわけでございます。そういう補償費の基準となるべき賃金をどのように把握するかという点につきましては、社会保障的な見地から、一定の生活費補償という建前に立った賃金補償と申しますか、その補償費の算定ということも考えられるかと存じますが、何分にも労災補償制度におきましては、先生御承知のように、使用者の無過失責任という建前に立っておりまして、災害発生時における損失を補てんするという建前になっておりますので、勢い現行制度のように、災害発生時前三カ月間における平均賃金というものを、基準にとるという制度を採用しておるわけでございます。三カ月という期間の中におきまして、賃金の多少の上がり下がりがございましても、三カ月間の賃金をならすことによりまして、大体その当時において通常受けておる賃金状態が把握できますので、そういったものを基準にいたしまして、補償費の額を算定いたしておるわけでございます。先生の御質問の中で、賃金が用いられますのは、休業補償と遺族補償でございます。療養補償につきましては、これは賃金の多寡にかかわらず、必要な医療は全部補償する、こういう制度になっておるわけでございます。いろいろ問題があると思いますが、一つには、できるだけ災害発生時における賃金を的確に把握するということがさしあたり問題でございまして、中には賃金の把握がなかなか困難でありますために、協定賃金のような形式で、一定の賃金額を推定するというような方法をとらざるを得ない場合もございます。これは賃金を算定しがたい場合でありますが、そういった場合におきましては、できるだけ実情に沿うように第一線機関を督励して処理しておるような次第でございます。
  19. 辻原弘市

    辻原分科員 私は、このことは基本的な問題だと思うのです。今までいろいろ考えておりましたけれども、しかし基本的にこのことを考えてみなければ問題は解決しないと、私自身の結論に到達したわけです。それは今村上さんが御説明のように、現行の建前からするとあくまで所得補償であって、その災害発生時における所得というものが基準で、その所得に対してあるパーセントを補償していくというのが、現在の労災の考え方であり、またそれに類する他の社会保障についても、同様な考え方を採用しておるのですが、私はそのことが必ずしも労働者全般の福祉にはマッチしていないじゃないかという疑問を持つのであります。特に最近の、いわゆる低所得層といわれる人人の労働問題を考えるときには、どうも高い場合の方が少ないわけです。それも季節的に違っておるという問題があって、コンスタントの状態じゃない。ですから、先ほど申し上げましたように、現在業種によって最低賃金制を、それぞれの協定によってきめることを政府の方として推進されておるので、そういうことも可能な段階ですから、業種により基準賃金というものが支払われる、その賃金と無関係であっても設定することができるのじゃないか。それに対して地域性、それから技能の度合い、経験、いろいろな要素を、あるいは計数としてスライドすれば、私は同一業種であれば、その企業の実態いかんにかかわらず、ある程度労働者として持っている力に応じた一つの補償を受けられる賃金が算定できるのじゃないか、そうすることの方が現実的ではないかと思うのです。これは日常支払われる賃金と無関係になりますから、そこらあたりに、一つ考え方として基本的な問題が発生するわけですけれども、そういう考え方に近いものを加味してやれば、現在失業対策事業よりも少ない、一日三百円とかあるいは三百五十円とかいったような、そういう非常に金額の低い職種に従事している人たちも、自分が不幸にして事故に遭遇して、あるいは働けなくなった、あるいは、場合によれば遺族が路頭に迷うというふうな問題も、かなり改善されるのじゃないか、こういうふうに考えます。これはなかなか問題はむづかしいのですから、すぐさまあなた方にまとまったお考えを聞けるとは私も存じませんけれども、しかし研究に値する問題だと思います。それは、最近のことをいろいろ調べられたらよくおわかりだと思います。ですから、これは十分出先機関の意見等も徴されて、研究していただきたいと私は思います。私と同じような意見を持っている方々が、相当いるはずです。それで私はかなり自信を得たわけです。ただ問題は、従来やっておりたやり方と多少違った観念が出てくるから、そこが問題です。しかし、それは従来と違うからなかなかできないのだという、観念の上の問題として解決されないで、現実の問題として、一体ほんとうに補償するにはどうしたらいいのかということから、問題を検討していただきたいということを希望しておきたいと思います。  時間がございませんので、それではあとILOの問題について労働大臣に伺っておきたいと思います。この間時間がなくて簡単に大臣にお伺いをいたしましたが、その後新聞紙上の報ずるところによりますと、大体四月をめどにして法案その他の整備を済まして国会に提出するという報道がなされておりますが、その方針がおおむねきまったのでありますか。
  20. 松野頼三

    松野国務大臣 先般総理がお答えになりましたように、四月を目途として各省推進するという特に督励をいただきました。
  21. 辻原弘市

    辻原分科員 その場合に国家、地方公務員の取り扱いについては、適用するという方針がこれも大体定まったのですか。
  22. 松野頼三

    松野国務大臣 国家公務員に対して基本的に適用があるかといえば、基本的に適用はございます。ただ法律を改正する必要がありやなしやということがただいま議論になっております。法律を改正しなくても適用あってもよろしいという解釈は成り立ちます。適用があるならば法律を改正して、なおより以上明確にしたらいいじゃないかという議論もございます。従って適用という問題はもちろん基本的な問題でありますが、法律を改正するかしないかということは、ただいま実は調整中でございます。
  23. 辻原弘市

    辻原分科員 これはあるいは大臣所管ではないかもわかりませんが、法律を改正する必要があるかないかという議論は、たとえば国家公務員法でいえば九十八条ですか、地方公務員法でいえば五十二条ですか、いわゆる「職員は、」という概念、これについて疑問があるから改正する必要があるのではないかという意見が出ておりますが、その辺のところはいかがですか。
  24. 松野頼三

    松野国務大臣 もちろんそれも一つ意見ですが、先般の労懇の答申をお読みいただくとわかりますように、国家公務員というもののやはり特殊性というものをILO条約では認めておるわけであります。ただ八十七号で認めておるかどうか、これはもう一つ議論がございます。しかし九十八号は明らかに公務員というものの特殊性を認めて、団体交渉の問題は国家公務員は特別扱いしているわけであります。八十七号の団結権という問題と団交権という九十八号との関連もございます。これはやはりILO自身においてもなかなか議論が多いところでございます。労懇でも議論の多いところでございます。従って今回の改正にあたっては、八十七号問題についてやはり議論の多いところもそういう問題でありまして、まだ明らかにこうだという明確のものではございません。
  25. 辻原弘市

    辻原分科員 今大臣が国家公務員についてはILO条約の中で別に考えている点もあるというお話が出ましたが、これについてはわれわれは異論がある。今御指摘の八十七号の関係については何もないと思います。だからその関係から特別に国家公務員、地方公務員の法律の整備ということであれば、これは一般的な定説とは別に、政府が従来とってきた解釈、たとえば国家公務員、地方公務員の先ほど私が申し上げたいわゆる職員団体の結成の項の場合に、職員という概念の中に、職員以外の者を含んでいいのか、それともそれを含んでも法律上疑義がないのか。今まで少なくとも政府地方公務員についても職員というものは厳密な意味での職員だという解釈をとってきておる。そういう意味で八十七号を批准した場合に、当然職員以外の者が加入脱退の自由というものが生まれてくる。その項が一つは問題になってくるというふうに、これは政府の方で考えられるかもしれない。われわれは少なくとも現在の法律においても何らそれは差しつかえないという理解を持っておる。ですから八十七号に関する限りその問題だけだと理解しておる。九十八号について今お話がありましたが、その中で、たとえば六条の解釈についてもこれはいろいろ議論のあるところなのです。政府の解釈は少なくともこの第六条においては、いわゆる公務員たる者は、九十八号の適用は排除するものと今日まで解釈されておりますけれども、しかし原文その他を見ての一つのこれに対する解釈というものは、私はニュアンスが違うと思うのです。六条についてわれわれはこう理解しておるのです。ここでいういわゆる公務員排除というのは明らかに上級公務員を意味していると思う。非常に国の行政権をを左右し得る地位にある、そういった公務員を意味しておる。少なくとも原文上は簡単に一般公務員を排除するとは私は書いてないと思う。従ってこれを排除しているからという前提において、八十七号を批准する際に何らかの制約を設けようというのは、これは少し御都合主義の解釈ではないか、こう私は理解するのですが、その点についてはどうですか。
  26. 松野頼三

    松野国務大臣 この六条の解釈は、これは明らかに公務員というもの総体を含んでおるのであります。ただ各国においては公務員そのものが、上級官吏を公務員として取り扱う公務員法というものができておるところは、上級官吏しか公務員には入りません。しかし日本の場合は、公務員というものは上級であろうが、下級であろうがいわゆる公務員という職権を持つ者すべて公務員という国内法がある以上は、公務員というものは上級だけと限るわけには日本の場合はできません。各国の例を見ると、権限とか職能とかいうものに応じて高級だけの公務員を限定しておる国がだいぶあるわけです。それはおっしゃるように上級公務員を公務員に当てはめたのです。日本の場合はそういう上級とか中級とかいうものを抜きにして、公務員法というものは公務員全般を規定しておりますから、ここにいう第六条の公務員は日本のいう公務員に該当するものが当てはまるということは常識であるし、今日まで政府はその見解をとってきておる。いろいろ御意見はありましょうが、これはILOに参りましても同じような解釈を統一的にとられる、こういう意味で九十八号条約を批准したわけであります。九十八号のときにすでにこの問題は解決しておるのであります。  それからもう一つは今の八十七号の問題です。ただ国家公務員法の九十八条の「職員は、」というのは職員にきまっておること、これはだれも異論はありません。ただ全般的に読んで、非職員が入ったときにはこれはいけないのかというところが問題であります。職員の議論はないのですが、それでは四条三項のような禁止規定はないじゃないか、職員は職員であるが、非職員が入ったときにはだめなのかという議論が問題ではあります。先般人事院総裁が人事院の見解としてお答えになっておりますが、一応人事院の見解をとることが私どもは今日の解釈としては妥当ではなかろうか、しかしこれも政府全般で決定したものではありません。人事院は、先般予算委員会では明らかに職員以外の者は排除するんだという御発言がございました。人事院の解釈としてはそうである。また私どもの労働省労働省としてなおこの問題は研究をいたしておるわけであります。国家公務員法九十八条の問題についてただいま政府部内で調整をしておりますので、まだ明確にここでどうだこうだとは申し上げられません。人事院の解釈は先般人事院総裁からも拝聴いたしました。従ってその問題は政府部内でも研究する余地があるのではなかろうかということで、一応は人事院の御意見が見解だ、こう申し上げるのが正しいのではないかと思います。
  27. 辻原弘市

    辻原分科員 九十八号の六条解釈について、これはわれわれと見解を異にするわけです。各国の行政組織というものはそれぞれの形を持っておりますから、それをすぐ日本のそれに比較するというのは非常に困難だと思うのです。しかしわれわれの知るところでは、少なくとも日本のような厳密にすべての公務員を含んで労働関係を律しておるというのは少ないのじゃないか、おおむね律しておるところは上級公務員じゃありませんか。この点は世界の状況から見て特異な例がありますか。日本の解釈でいった場合には、すべてどんな公務員といえども、普通にいうデスク・ワークの公務員は条約批准の後において労働関係の制約を受けておる。政府の解釈からはそういうことになりますが、各国にそういう例がございますか。
  28. 亀井光

    ○亀井政府委員 各国の例は、実は私ども所管省でございませんのでこまかいことは存じませんが、今御質問の中で上級官吏だけで構成されておる、あるいは上級官吏だけを適用するという御見解でございましたが、そういう事実はないようでございます。そこでILO九十八号条約を批准の際にも、公務員の範囲について議論のあったことは御承知の通りであります。こういう条約を決定する際におきましては、公務員の範囲は各国の公務員制度の実情に応じて、その国において適用していくというふうなことが審議の経過できまっておるわけでございます。従いまして日本のように、労務職まで入れた広い意味一般公務員という制度は、外国においては例も少ないかと思いますけれども、一応日本の国家公務員制度というものの上に立って九十八号条約というものを適用することについては、ILOとしても何ら異議はないわけでございます。
  29. 辻原弘市

    辻原分科員 私の申し上げたのは、制限をする場合、諸外国における制限というもの、またILO九十八号の制限というものは、いわゆる権力を行使する公務員を意味しているのだ、従って各国において制限を受けている部分については、権力を行使する公務員だから、それ以外の者についての労働関係は、この九十八号の精神によって条約は適用されるもの、そう理解している。これは見解が分かれますけれども、それを日本にあてはめた場合には、少なくとも現在の、俗に言われる管理職というものがこれに相当するのではないか。だから一般公務員については、この六条の制限というものは何らかかわっていないのではないか、私はそういう解釈をしているのです。これは私のみならず、かなりのILOに対する学者の見解を通じてみてもそういう解釈が多いようであります。それはすらっと、いわゆる公務員という中には——この原文にも出ていないはずです。そういう意味で、現在九十八号条約を一般公務員に対して適用していないということについても、これは少し日本の側の得手勝手な解釈から制限をしているのではないか、私はそういう感じを強く受けるのです。だから九十八号でもそんな問題があるのですから、八十七号においては制約がないのだから、条約の精神から当然、政府も今までの労働者ということについての観念は、これは一般公務員も含めて少なくとも統一をしているのですから、それならば、八十七号はその労働者という規定の上において全部に対して適用すべきが趣旨だ、こういうふうに理解する。  もう一つの問題は、先ほど松野大臣は、日本はそういうふうに公務員法がある、そしてILOの六条の解釈については、今言ったようにそういう議論もあるけれども、大体日本の実情というものを、その条約の施行にあたって認められるのではないかということを言われておりましたが、私は条約の精神からずっとくれば、これは当然国内法を改正すべきじゃないか。その意味においてはまた国内法をそういう条約精神に照らして解釈すべきじゃないか、こういうふうに理解するのです。それは困難ですか。
  30. 松野頼三

    松野国務大臣 御意見ですが、これは非常に困難なことであります。なぜかというならば、九十八号条約批准のときに、そういう解釈のもとに批准をしたわけです。しかも両院とも満場一致であります。従ってILOのそういう精神であるということは、事前によく調整の上入ったのであります。今後国家公務員法がILOによって異動するかどうか知りませんが、国家公務員法そのものが何らかの形で変わるときには、おのずからその問題は解決されると思います。ただ九十八号によって国家公務員法を改正しろということは、これは非常にむずかしいのではないかと思います。またそういう必要性は今までにおいて——ILOで先般も八十七号の問題が出ましたが、その問題でまだ何ら議論は出ていない。日本の国家公務員法というものはよくないのだという議論は一回も出ておりません。ほかの問題は、いろいろ九十八号の問題で論議されたことはございますが、国家公務員法の範囲内において疑義を生じたことはありません。従って私の方は、九十八号は今日の国家公務員法に何ら抵触するものでもなければ、今後ともこの法律は不動のものだ、私はこの問題を少しも疑っていないわけであります。
  31. 辻原弘市

    辻原分科員 ILOの精神の中にはやはりかなり各国の事情というものも重んじていく、そういう考え方がありますから、だから日本の側が少なくともそういう解釈をとって説明すれば、それに対して強く反発を受けるということは現実の問題としてあり得ない。そういうことから九十八号批准の際には、比較的大きな問題とならずに私は認められたのではないかと思います。しかしおいおい八十七号を批准し、さらに百五号という形に問題が進んで参りますと、ここにやはり公務員の範囲というものが大きな議論として浮かび上がってくると思うのです。だから今、現実に批准をされたから非常に困難であるというけれども、ほんとうに条約の精神をずっと貫いていこうとするならば、私はもう一度この問題を再検討する必要があるのではないか、こういうふうにも考えるのです。しかしこれは議論になりますから、これ以上はいたしません。  それからもう一つ、先ほど言われた国家公務員法九十八条、それから地方公務員法の五十二条ですか、その関係でいう職員——私はその職員だけを問題にしているわけではありません。やはり全体を通じて解釈をした場合に、排除していないということ、この議論はわれわれは従来からたびたび繰り返しておる。しかし政府は人事院の解釈というものをとって、そうしてここでは明らかに厳密な意味を規定しておる、こう言ってきておる。ところがILOの小委員会ですか、そこらでの検討の際にも、この点については特別な疑義がないのではないかと言っておるのです。また常識的に法律を見た場合には、どうもそういう特別な疑義が生まれる余地はない。また特に地方公務員法なんかの成立の過程、労働関係が従来の労働組合法の適用から地方公務員法あるいは国家公務員法に切りかえられたその過程を見ても、これは必ずしも厳密な意味で排除していなかったと私は思うのです。ところがその後において政府はこれを排除しておる、排除する解釈をとってきている。ですからこの部分に関しては、排除されているという形で、それを前提に持っての法律の改正というものは必ずしも要しないのじゃないかという理解を持つのですが、今検討中であるということでありましたからそれ以上のことは申し上げませんけれども、まあここらあたりで政府も、従来の無理な解釈があった点については、こだわらずに、率直にやられた方がいいのじゃないか。どうもしろうとが見ても疑問が生ずるような、そういうおかしな解釈は、やはりすべきではないと私は思うのです。以上のことを八十七号について申し上げておきます。  次に関連をして、百二号についての批准はどういうふうに考えられておりますか。
  32. 松野頼三

    松野国務大臣 百二号は御承知のごとく社会保障の問題で、労働省としては、この中に失業保険とか、失業問題が一条ございます。失業保険の日本の制度は大体ILOの水準に達しておると私の方は思いますが、その他の部門がございまして、社会保障の厚生省関係のものが多数ございます。これらはまだ厚生大臣から連絡を受けておりませんけれども、その中の失業保険についてはILOの水準に達しておる、私はそう思っております。まだ批准にはその他の要件がございまして、その他の要件は厚生省関係の深いものがございますから、厚生省で御検討をいただいておるわけであります。
  33. 辻原弘市

    辻原分科員 三部門のうち、業務災害、疾病を除いて、失業の問題は水準に達しておるからその点はいい、しかし他の部門は厚生省関係もあるから、労働省としては今直ちにこれについては言えないということであります。しかしわれわれは一般的に考えてみて、これは厚生省にもわれわれ聞きたいのですけれども、もちろん水準に達していない点もありましょう。しかしある意味においては、私はかなりな水準にきていることも事実だと思うのであります。だからさらにレベル・アップをするためにも、思い切って踏み切った方が、わが国の社会保障推進のあれからいっても得策ではないかというふうな考え方を持つのです。その点についてはどうです。
  34. 松野頼三

    松野国務大臣 やはりILOの水準に達しておれば、百二号の批准ということもやはり政府として考えなければならぬことだと思います。もう少し明細に調べまして——やはり批准します以上は、その域に達しておるものを批准しなければなりません。一応水準を上げてさえおけばあとで間に合うじゃないかというわけにはなかなかいかぬのじゃなかろうかと思いますので、一応水準に達しておるかどうか、よく検討した上で、この百二号の問題も私は真剣に検討すべき時期だと考えております。ただ労働省関係としては、今日のところ水準に達しておりますが、特にその問題でどうだこうだということは、ILOと国内法の関係については、失業問題だけは達しておる、私はこういうふうな考えでおります。
  35. 辻原弘市

    辻原分科員 そうすると、百二号の関係では労働省は問題はない、こういうことだと承りました。  次に、百五号について承っておきたいのでありますが、この強制労働の禁止の条約についても、わが国にとっては国際的な水準から考えて非常に必要な条約だとわれわれは考えております。これももう八十七号条約に引き続いて批准をすべき段階に到達しているのじゃないか。この点についてはどう判断なされますか。
  36. 松野頼三

    松野国務大臣 なお百二号にもう一つ労災問題がございます。これはなお検討すべき問題が少し残っておりますが、失業保険の方は一応水準に達しております。  百五号の強制労働のことですが、たしかもう一つ強制労働の条約がILOにございまして、これは日本がすでに一九三三年ごろたしか批准をしておるわけでありますが、百五号という新しい国際条約が実はできたわけであります。これについての問題は強制労働という定義であります。いかなるものも刑罰は強制労働に値するのかしないのかということは、いろいろ議論のあるところであります。刑罰というものはすべていけないのか、あるいはどういう程度までは強制労働の刑罰規定の中に入るのか入らぬのかという強制労働の定義というのが、実は各国ともまだ問題が多いわけであります。ILO自身においてもその定義、いわゆる有権的解釈がまだはっきりできておりません。従ってこれは諸外国からの要請もございまして、一九六一年にこの問題についての各国の特別な会議が催されるわけであります。そういうところで昨年以来日本としては強制労働の定義についてILOに照会をずっとしておりますが、いまだに返事が参りません。先般政府の代表が行ったときもこの問題についての定義を明確にするように要請しておりますが、この定義がきまらなければ国内法との関連の調査ができないわけであります。実はこのことについてまだILOから返事が参りませんので、明確な解釈が来ましたならばこの問題もぜひ一つ解決いたしたいと考えております。定義そのものがまだ明確でありませんので、その問題が明確になり次第この百五号という問題は促進して参りたいと考えております。
  37. 辻原弘市

    辻原分科員 百五号に関する国内法には私はいろいろ問題が多いと思うのです。おそらく各国の労働関係あるいは各国の身分法等々を見てみましても、日本の労働関係あるいは身分法ほどいろいろな制約あるいは刑罰を課している法律はないのじゃないか。その中で特に罷業に関する刑罰、それから政治行為に対する刑罰、私は明らかにこれは条約の精神に矛盾しておると思うのです。それらはもちろん国際的な一つの定義というものも必要でありましょうけれども、しかし国際的な一つのレベルから判断をしてみても現在抵触をしておる、そういう刑罰はかなり多いと私どもは判断される。極端な例は、国家公務員法における人事院規則によるいわゆる政治的行為の制限、これなどは明らかにそれに抵触するだろうと思いまするし、あるいはストライキに対して法律をもって刑罰を課していく、こういうことは少なくともこの条約の精神とは相反していると理解しております。それだけ日本の労働者というものは、国内法において労働関係が非常に大きな制約を受けている、そうした意味において私はこの百五号をすみやかに批准をして、国際水準に近づける必要がある、こういうように考えておるわけです。今ILOに問い合わせをされてその回答を待って検討せられるということでありますが、そういたしますとかなりの時間を要すると考えますが、一体どの程度のめどにこの百五号批准の方向に踏み切られるか、またその回答があって大体の基準というものが定まれば、その国際的な基準に照らしてそれ以下のものを国内法の整備をやって提出をするというような方向だけは、政府としてもはっきりお考えになっておられるのでしょうね。その点はどうです。
  38. 松野頼三

    松野国務大臣 百五号の精神は、制限をするからいけないのだという趣旨ではございませんで、いわゆる強制労働を課するかどうか、強制労働の罰則というものが議論になっているわけであります。従って争議権を制限することは何ら百五号に抵触するものではありません。その罰則の結果として強制労働までやるかどうか、この強制労働がいかなるものかということが議論の焦点になっておる。それで、日本の国内法で百五号に違反しておる条項というものはほとんどないのじゃないか。すべて労働法をごらんいただけばわかるように、労働法の中にはそんなに罰則というものは入っておりません。制限はしておりますけれども、特に懲役だとかなんとかいうふうなものはほとんどございません。従って私は労働法については百五号の問題はそう大きな問題はないと思いますが、ただ強制労働の定義をきめませんと、どこまでが強制労働なんだ——すべて強制労働なんだという解釈ならば、これは広範囲になって参ります。そういう趣旨は百五号には含まれていないのだ。いわゆる強制労働を課する問題というのは、それでは強制労働とは何だということがわかりませんと、強制労働の定義において議論があっては、これは批准もできません。批准後において国内が紛争するようなことは避けなければいけません。従ってその問題は各国問題があるように思っております。従って諸外国の例を見ても、相当大きな刑罰規定があるのもあるわけであります。それでも百五号の問題については議論の多いところであります。制限を禁止する意味は百五号にはございません。強制労働労働問題で課するというところに問題があるわけであります。それでは強制労働とは何だ、禁固はどうなんだ、罰金はどうなんだ、科料はどうなんだというふうな解釈が出てくるわけであります。そこに問題点があって、いわゆる刑罰というものがどこまでが強制労働に入るかというところが議論の焦点で、制限をすることは百五号の趣旨には何ら抵触するものではない。当然国内法で制限するものは制限しても、百五号では問題はない。問題は強制労働というものの定義がわかりませんと、やはり国内法の整備の場合に困るのじゃないか、そういう意味で今照会しておりまして、この返事が来ましたら、私はなるべく早急に批准して参りたいというだけであって、特に大きな問題は国内法にはないと思っております。
  39. 辻原弘市

    辻原分科員 どうも労働大臣のニュアンスからいいますと、労働法及び公企業体その他のいわゆる労働関係法だけの問題を取り上げられているように受け取れるのですが、そうじゃなくて、公務員を含むいわゆる労働者という考えから、日本の全労働者がどういう刑罰を、強制労働を課せられておるか、この点から判断すべきじゃないか。一歩下がって、その強制労働とは一体何だ。常識的にはこれは法律上にいう刑事罰だ。それがはたして日本の労働関係あるいは労働関係をも含んでいる身分法の中にないかといえば、これは非常に多い。政治行為に対して刑事罰を課しでおる。ストライキに対して刑事罰を課しておる。また単独法で、たとえば教職員をあげれば、かつて問題になった教育二法の刑事罰、いろいろある。それは懲役何年と規定されているのですから、明らかに条約という強制労働の範囲に入るということは常識的です。少なくともそれらの点は抵触するのでありましょう。だから制限についてはいろいろ議論のあるところでありますけれども、刑事罰そのものについてこれを考えてみただけでも相当の問題があると思う。そのことを私は申し上げておりますので、だから日本の場合に国内法的に問題が少ないという認識では、私はこの問題を取り扱うについては非常に誤まった方向になる心配があると思うのです。私はかなり抵触している面があると思う。この点についてはいかがでしょうか。
  40. 松野頼三

    松野国務大臣 これはだいぶ御意見が違いますけれども、そういうものはないのです。要するに正当な労働運動を行なった場合に刑事罰はいけない。禁止されておる争議行為に対しての刑事罰というのは各国あるわけです。どこの国でもございます。かりに言うならば、労働運動じゃなしに、正常な業務の運営を阻害した場合には、これはだれだって、どこの国だって、そこの刑法というものの適用があるわけであります。これを直接言うわけではありません。いわゆる法律で許された範囲内における労働運動についての罰則、刑事罰というのは強制労働じゃないかというのが議論になっている。もちろん違法な争議行為をした場合に解雇するということは、何も強制労働に抵触するものでもなければ、諸外国どこでもあることで、許された範囲内における罰則として、刑事罰というのが強制労働に当たるのじゃなかろうかというのが議論であって、法律で禁止しているものは諸外国も刑法があり、あるいは治安上の問題があり、これはみなその意味においての罰則があるのは、これは当然であります。その意味とは違うわけです。従ってそこに大きく最初の議論がこれほど分かれるのでありますから、ましてこれは世界中でも議論が分かれております。それだけによく明快にしておかないと、国会においても、たった目の前のようなものでさえも、辻原さんと私とでこんなに違いが出てくるわけであります。ですからこれは明快にしておかなければならない。それは刑事罰として一切禁止されておるものは、あくまで禁止であります。
  41. 辻原弘市

    辻原分科員 どうも見解がだんだん分かれてくるようでありますが、そう違わぬと思うのですよ。ただ私の言っている観念、これは国内法に制約がある。大臣のおっしゃっているのは国内法できめている制限行為、それに罰則をかりに課しておっても、それはいいんだというふうに私は聞こえるのです。そうじゃなしに、国際的に労働権として認めている行為で、これを制限し、さらにその制限の中にいわゆる罰則というものを法律上課しておる刑法、その他一般的なスタンダードに立つ法律の制限ではなしに、法律の刑罰ではなしに、労働関係として正当に行使するその行為に対して、刑事罰を課しているというのが私は強制労働だと思う。それは現実にある。あなたは労働運動と限定されますが、条約そのものは必ずしも労働運動だけではないと思います。これは労働者の広範な個々の権利を含んでおる。明らかに条約の中にも政治行動の自由ということも書いてあります。この範囲についても議論が出てくるでありましょうけれども、原則として政治行為その他労働関係として行動する労働者の権利というものについて、いわゆる強制労働を課してはならぬというのが条約の精神であると思います。だからその精神に立って考えてみたならば、私は国内法で抵触する面が相当あると申し上げておる。議論の場ではありませんから、それ以上のことは申し上げませんけれども、もう少しその前提を広く考えていただきたい。現在回答を求められておるという段階であるなれば、その回答を待たれるのもけっこうだと思いますが、できるだけ早くその範囲を確立されて、この批准ということに踏み切られるのが、やはり今の日本の労働情勢としては大いに必要なことだと考えますので、この点は主管大臣である労働大臣には特に要望しておきたいと思います。  時間もだいぶたちましたので、以上で終わります。
  42. 北澤直吉

  43. 木原津與志

    ○木原分科員 今度のこの労働省予算を見てみますと、先ほど大部分辻原君が触れましたが、失業対策費に計上されておる予算を見ると、労務賃金の単価が二十八円上がった、これはけっこうなことだと思いますが、この二十八円上がったのは、物価の値上がりからくる値上げか、それとも一般公務員並びに労務者の賃金のベース・アップに見合って二十八円という数字が出たのか、その点をお尋ねします。
  44. 松野頼三

    松野国務大臣 これは緊急失対法に規定してございますように、屋外労働者賃金基準にいたしましてPWを設定いたしました。そのPWの基準に従って改定をいたしました。なお屋外賃金とPWとの関係は、関係局長から御説明申し上げます。
  45. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失対就労者の賃金の問題につきましては、緊急失対法十条第二項の規定によりまして、同一地域において同一職種に従事する労働者に通常支払われる賃金よりも幾分低くする、こういうことになっております。そこで現在までの失対労務者の賃金の単価は、さきに昭和三十二年四月に屋外労務者賃金の調査の結果に基づきまして、改訂を行なったものでございますが、その後昭和三十三年及び昭和三十四年の八月に、屋外労務者の職種別賃金調査を労働省において行なったわけであります。今回の予算編成にあたりましては、三十四年八月の屋外労務者の賃金調査のまだ具体的な職種別の集計はできておりませんけれども、その中で失対事業の就労者に関係のあるような職種につきまして重点的に集計をいたしました。その結果を勘案いたしまして、それを現在まで行なっておりますPW方式によりまして試算してみますと、大体九・一%くらいの上昇になるわけでございます。これを基礎にいたしまして、現行三百六円の予算単価を三百三十四円と二十八円アップいたした、こういう次第であります。
  46. 木原津與志

    ○木原分科員 このPW方式によって値上げした一方、一般失業対策人員が昨年度は二十一万だったのを二十万に減らした。一方に賃金を値上げしておいて、それから人数を一万人減らしておるが、これでは何にもならぬ。それはどういう理由から減らすようになったのですか。
  47. 堀秀夫

    ○堀政府委員 これは最近における労働市場の状況を見て参りますと、一般的な景気の伸び、それから公共事業その他の就労者の伸びを反映いたしまして、たとえば昭和三十四年の四月から十一月という最近の統計をとってみますと、就労人員数は月平均にいたしまして民間事業では、三十三年四—十一月平均が百五十六万であるのに対して、三十四年四—十一月は二百二万、一カ月平均四十五万八千の伸びになっておる。公共事業につきましても、四十万八千が四十六万七千で五万九千の伸び、このような状況になっておるわけでございます。明年度におきましても、この景気の順調な発展に伴うところの民間就労の伸びが予想されます。またそれと並びまして公共事業及び財政投融資関係予算も大幅に増大されておりますので、それを見込んだわけでございます。しかし登録日雇い労務者につきましては、これはやはり最近停滞もしくは微増の傾向にあるわけでございます。この傾向は勘案しなければなりませんので、この登録日雇い労務者数の見込みにつきましては、昭和三十四年度は約五十三万四千人を見込んだわけでありますが、明年度におきましてはさらに六千人をふやしまして五十四万人の登録労務者がおる、このように広げる考えでございます。ただし、それにつきまして二一・五日を稼働させますために、民間事業等の求人の見込み、公共事業等の求人の見込みが反映してくるわけでございます。これは先ほど申し上げましたように考えますと、これは当然減少が見込まれるわけでございます。その点から機械的に、数学的にはじきますと、一万八千人の減少よりももっと多くなるわけでございます。しかしこれは先ほど大臣も言われましたように、やはり登録日雇い労務者の実数、それからいろいろな景気が順調に伸びておりますが、この間において産業労働あるいは地域労働等における摩擦等も出て参りますので、安全率を見込みまして一万八千人に計上いたしまして、一般失対就労人員それから特別失対策事業臨時就労対策事業、これを合わせまして二十四万人ということを見込んだわけでございます。
  48. 木原津與志

    ○木原分科員 要するに一口に言うと、経済が好転しておるから、その伸びによって失業者の数が減る見込みだ、そういうことのようですね。登録失業者が五十三万というようなことを言っておられますが、登録人員でなくて、政府としては実際の失業人員が幾らかということに立ってその失業者の総数を目途としてこの対策の中に繰り込んでこそ初めて雇用の万全を期すことができる。ただ、今登録人員がこれだけだから、それでこういうことだというようなことでは、これは行政にはなるかもしれぬけれども、これは政治じゃないですよ。そんなことではなくて、全体の見通しに立って、全失業者を対象にして、その中からできるだけ一般あるいは特別の失業対策の中に吸収していくという方途をとらなければならぬと思う。ことに経済の伸びが、明三十五年度は六・六%だといたしましても、それだけの率で失業者が吸収されるかというと、決してそういうものではない。一方において六・六%の経済の伸びがあれば、そのはね返りを受けて、さらに中小企業その他で倒産するものが多くなってくる。そこからはみ出してくる失業者もふえる。そうなれば経済は大幅にかりに六・六%伸びても、失業者はかえってそれから増大をしていくということもあり得る。過去においてそういう例もあるわけです。だから、あなたのおっしゃるような登録人員だけを対象にしないで、また経済の伸び、経済の好況というようなことだけを目標にしないで、常に実際の失業者人員を把握してこれに対処していくということが肝要なことだと思うのですが、労働大臣、そういうふうに考えられませんか。
  49. 松野頼三

    松野国務大臣 今日産業で一番はっきりしておりますのが石炭、これは確かに雇用が伸びるというわけには参りません。離職者の問題がある。従って、この二十万以外に、石炭には石炭対策緊急就労が七千五百人、これはほっておけば一般失対に落ちる可能性が多い方です。そういう方をなるべく一般失対のワクに入らないように、二十万以外に七千五百人という、そういう目立った産業に対する失業対策考えましたのが緊急就労でございます。これが約七千五百人別に組んでおります。そういうふうに産業で目立ったところは一般失対に落ちないような予防策を講じながら、一般失対の人間を考えなければいけないということは、木原委員のおっしゃる通りでございます。そういうことで、この二十万以外になっております。従ってそういうものは、ほっておけば一般失対になる可能性が多い産業の方は、特別に対策を立てたのが緊急就労という別ワクであります。これが二十万の中に入っておりません。従って一万八千減らしましたが、七千五百人は明らかに別の方に吸収できるようになっております。そのほかに、一般的に申しまして完全失業者の数が来年は約二万くらい本年よりも減る予定であります。一番新らしい統計で二万くらい減ります。昨年は五十六万、今年は五十四万くらいの統計がはっきり出ております。そうすると、もう少し安全率を見て一万八千という数をはじいたわけであります。一万八千削ったのは不合理じゃないかと言われるけれども、そのほかに予算上におきましても、三十四年度は名古屋の災害の緊急失対を既存の予算から使いました。従って昨年の予算はある程度下半期及び全般的に景気が上昇した一つの証拠にはなっております。そのほかに昨年は五千五百人約二億円の予算石炭補正予算で組みかえました。従って昨年の実績から推しましても、本年は五十四万という完全失業の数の減少から見ましても、二十万というのは相当安全率を見て私の方は申し上げているわけでありまして、現実にはもっと少なくてもやれるだろうという数にはなりますが、やはり一般失対はそう景気ばかりではいきません。安全率を見たのはそういう統計から見たわけであります。
  50. 木原津與志

    ○木原分科員 登録失業人員を五十四万と見ておられるようですが、実際上の全国の完全失業者労働省では何万と見ておりますか。
  51. 堀秀夫

    ○堀政府委員 完全失業者の数を労働力調査によりまして算出してみますと、昭和三十四年の四月から十一月平均で五十二万人でございます。これを前年の同期の平均五十四万人に比べますと、完全失業者は二万人の減少になっております。ただ労働力調査というものはいろいろな基準を設けておりまして、完全失業者の定義をきめておるわけでございます。これをもって実勢を直ちに推しはかることはできないと思うのでございます。そこで実際問題としわれわれの方といたしましては、昨年職安に対して求職を行なったいわゆる日雇い労働者数ということを参考にしなければならないわけでございますが、これは昭和三十四年の四月から十一月、同じく平均してみますと五十二万一千、こういう実数になっております。前年に比べましてやや伸びておるような状況でございます。これらの状況を見込みまして、明年度におきましてはさらにこれを増加いたしまして五十四万人、このようにいたしたわけでございます。なお、そのほかに失業者統計につきましては、いわゆる不完全就業者というような測定方法もございます。これはたとえばいろいろな人によってはかり方がございまして、所得の額を基準にしてきめる方法もざいます。あるいはそういうものも勘案しながら、追加就業あるいは転職希望というような本人の主観的意思をもとにして推定する方法もございます。いろいろな統計方法はございまするが、失対事業の算出の基礎といたしましては、われわれといたしましては、現実に職安に対して職を求めて出てきている労働者諸君がどのような傾向にあるか、これを一つの参考といたし、それを最近のいろいろの公共事業あるいはその他の関連事業の求人の状況等を予測いたしまして予算を編成したわけでございます。
  52. 木原津與志

    ○木原分科員 不完全いわゆる潜在失業者というようなものについてはいろいろな見方がございましょう。しかし現実にとにかく昨年度、一昨年度の統計を見ますと、わが国の労働就業人口は百二十万という膨大なものです。この百二十万の人たちが就労人口に一年一年当分の間入っていく。あとからまた減るような計算になっておりますが、入っていくという中で、これはもう経済の伸びをどのように見ても、就労問題いわゆる完全雇用というような問題は一番大きな日本の政治問題になるだろうとわれわれは思うのですよ。経済がかりに六%伸びるとか五%伸びるとかいうようなことで、この膨大な毎年ふえる就業人口を吸収するというようなことは、おそらくもう不可能に近いのじゃないかと思う。そうしてくると、結局失業者がどんどんふえてくる。五十万、六十万というようなものではなくて、見通し得る将来における統計でも、膨大な登録失業者というものは年々減るどころじゃない、ふえていくのじゃないかという見通しさえわれわれは持つわけです。ですからこの辺で失業対策というものについての労働省の基本的な考え方を考え直して、従来の失業対策ということが曲りかどにきて、これから転換していかなければならぬ時期じゃないかと思う。そういう将来の見通しについて労働大臣はどういうふうに考えておられるか。なお、今のような失業対策事業によってこれを解決できると見ておるか、あるいは別に卓抜した構想でも持っておられるかどうか、その点大臣にお答え願いたい。
  53. 松野頼三

    松野国務大臣 最近の雇用は非常に生産年令人口、労働力がふえて参ります。統計上は百五、六十万生産年令人口がふえて、労働力が八十万から百万というものがこの四、五年の趨勢だと私も考えております。ただ最近の雇用市場を見ますと、若い方たちは就職が楽なんです。若い方は就業はほとんど最近はそう大きな問題がない。問題は、やはり特別の階層が非常に問題になる。かりに言うならば、失対の登録者の平均年令が四十七、八才に当たりますか、相当高年令層です。もう一つは身体障害のあるという方が雇用市場になかなか消化し切れない。身体障害者の雇用促進法を出そうというのはその趣旨であります。  もう一つは、一般失対は多年問題の多いところであります。特にそのやり方、方針、すべてに問題の多いところであります。特に地方財政に縛られることも問題である、地域が縛られることも問題である、しかも再雇用が非常にむずかしいことも問題である、一般民間に必ずしも円滑にいかないことも問題である。従って、これはいろいろな大きな問題点を含んでおりますので、雇用審議会に諮りまして抜本的な方策を諮問したいと実は私も思っております。労働省だけで見解を発表するのは少し問題が大きいと思いますので、雇用審議会に諮りまして、一般失業対策事業というものを近々のうちに諮って、しかる後にこの問題は再検討するべき問題じゃないかと私は思っております。従ってこの問題は、はっきり申し上げますと問題が多いところであります。改善できる時期は近いうちにくるのじゃないか。その意味労働省だけで独走するわけに参りませんから、雇用審議会の有沢会長にお願いして、雇用審議会で総合的な中に一般失対事業を取り扱ってもらいたいという話を実は申し出ておるところであります。
  54. 木原津與志

    ○木原分科員 繰り返して述べますように、これはもうこれからの一番大きな問題になろうかと思いますから、一つ労働対策が曲りかどにきたという意味で抜本的な解決の方法を考究してもらいたいと思うのです。  時間がありませんので、今度は炭鉱離職者の問題に入りたいと思います。ことしの予算を見てみますと、炭鉱離職者予算に計上されておるのは、補助金と炭鉱離職者就職促進費、こういったものを合わせて二十三億三千百九十二万という数字が出ております。この前の臨時国会のときでありましたか、私どもはこの炭鉱離職者に対する救済費として六十億の予算をもって徹底的にやれということを政府に要求いたしましたが、それに対して七億二千万ですか対策費が組まれたのですが、三十五年度の予算では二十三億となっておりますけれども、大体炭鉱の離職者を現在及び今年度どのくらいに見ておられますか、その点を最初に質問いたしたい。
  55. 松野頼三

    松野国務大臣 今回の対策は、人員といたしまして三万一千人を予定し、なお予算には二十三億でございますが、このほか特別会計の総合訓練所の費用もやはり離職者対策に広い意味で含まれますので、一般会計としては二十三億出ておりますが、そのほかに特別会計として総合訓練所の経費として二億が追加されます。そのほかに鉱害復旧というのが通産省所管においてある。これもやはり離職者地帯でありますので二十三億以外に加えられる予算であります。
  56. 木原津與志

    ○木原分科員 現在三万の離職者を対象にしておるということですが、今年度あるいは来年度にかけて炭鉱の離職者は、炭鉱労働組合方面の計算を基礎にすれば、炭鉱の不況による合理化あるいは炭界の不況、こういうもので首切られる人員は七万から十一万だというように見ているわけですが、そうすると二十三億や特別会計から福祉事業団にくる一億九千七百万というようなものを含めても、この予算はまだ相当不足する。おそらく臨時国会でも開いて補正をしなければならぬという事態に立ち至ると思うのですが、そういう点についてどういう見通しを持っておられるか。
  57. 松野頼三

    松野国務大臣 七万とか八万とかいわれるのは、おそらく三十八年という長期的な計算をされた数字ではないかと思います。これは一応の予想でありますから、何も私もそれが正しい正しくないと議論するものではありません。しかし、それは三十八年度までの予想ではないかと思います。来年度は三万一千というのは実は十分とは申せませんが、一応の対策は立てられる。なお三十四年度の補正の中で援護会への三億円繰り越し明許をいたしまして三十五年度にも使えるように予算の御審議をいただいたばかりでございます。従ってこれらを合わせますと、来年は三十四年度補正で二万一千、三十五年度で三万一千、約十五カ月の間に五万人の対策を立てております。これは労使間の問題で、何人ということは予想できません。しかし相当安全率を見ながらいろいろな場合を想定して、これだけあれば人数としては十分余裕をみておるというふうな感じで今年度三万一千を出したわけであります。
  58. 木原津與志

    ○木原分科員 そこで、先ほど失業対策費についての補助金の問題で辻原委員からもこれを増額してはどうかという質問が出ておりましたが、私も全く同意見なのであります。失業対策事業費というのは、これは全額国庫で負担してやらなければ、これはどうにもならぬような事態に立ち至っておるのじゃないかと思う。先ほど大臣は、それによって地方公共団体が非常に財政的に困っておる、そういうものに対しては特別交付金のようなものによって特別措置をするようになって、それで地方財政を圧迫していないのだというようなお話でありましたが、大臣も御承知のように、今三池炭鉱で長い争議をやっておりますね。あそこの調査に社会党の調査団として行ってきまして、大牟田、荒尾両市の市長とも会ってこの実情を聞いてびっくりしたわけなんですが、何と大牟田市では総予算が十九億なんです。この十九億の予算の中でこの失対関係事業費が四億、それから生活保護費で三億五千万、合わせて十九億のうちで失対事業とそれから生活保護のもので七億五千万の費用がかかるというんですね。荒尾市の場合においても、ほぼ率は同じなんです。三億五千万足らずの予算の中で三三%以上は失対と生活保護費で食っておるわけです。地方財政が何のことはない、これは社会事業団と一緒ですね。全体の総予算の三五%が生活保護費とこの失対の事業費に食われてしまう。これではもう地方の行政というのは何にもできないし、これはたちどころに財政は行き詰まってしまう。三池炭鉱という特別な大きな炭鉱の所在地で、そういう人たちとの関連の産業によるものが市のおもな財政収入だと思うのですが、そういうところでは、今言うように、三五%がこういった事業費に食われてしまう。これでは私は、地方団体は、こういった炭鉱あるいは失業者のたくさん出るところでは財政的にやっていけないと思うのです。こういう実情を勘案し、さらに失業対策事業を万全にあなた方が遂行していくという上においては、これはもう地方に、貧弱な市町村の財政にまかせないで、全額を国庫で負担してやるということにしないと、補助金だけやっても事業費のまかないができないから、結局地方では完全な失業対策事業が行なえないというようになる時期が近いのじゃないかと思うのです。ですからこれはどうしてもあなた方せっかく御努力なさって失業対策をやっておられるのですから、これが地方にいって完全な失業対策事業ができ、それによってあなた方が予想されておる就業人員をここで安んじて収容させるのだというお気持ならば、これはすみやかにこの辺で——またこれも頭打ちのところにきていると思いますから、全額を国庫負担するかどうかしなければやれないし、失対事業は行き詰まってしまっておるという実情にあるということを認識していただきたいと思うのですが、その点についてどのようにお考えになっておりますか。
  59. 松野頼三

    松野国務大臣 失対事業地方財政の非常に大きな場面を占めつつあることは各府県によって相当ございます。従って今日の場合は非常に多いところは五分の四までの高率適用を実施して補助率の引き上げをやっております。なお問題の多い福岡県の財政がたしか三百億ちょっとこすかと思います。そのうちに、逆に地方財政を見ますと、政府からの補助が福岡県では約半分なんです。従ってやはり非常に大きな場面を占めるけれども、補助率の方も、地方財政の中に占める位置は福岡県でも半分ぐらいは国庫からの補助金で県財政は立っているわけです。従って場面も大きいかわりに補助率も大きな場面を占めている。これはやはり地方財政全般の問題で議論しませんと、失対だけ取り抜いてどうだということは全国的に及ばないのじゃないか、その中にはやはり生活保護もございましょう。地方財政全般の議論のときには、失対ももちろん大きな場面を占めておりますから、これは議論の対象になりますけれども、地方財政から失対だけ切り抜くということは、地方の財政配分とか、いろいろな問題でむずかしいのじゃなかろうかということで、高率適用というのが今のところとっておる措置でございます。将来地方と国との財政措置のときは問題になりましょうが、今直ちにこれを引き抜けばいいじゃないかということは、なかなか国の建前からむずかしいのじゃないか。従って今日は高率適用、地方財政の一定率で三分の二を五分の四までやっております。おそらく荒尾とか大牟田はもちろんそういう高率適用に入っておるわけであります。私は、県は五つ、市は何十か入っていると思います。そういうところでやっているわけで、三十三年が府県五つ、市が五十二、町村が四十二、計九十九が高率適用をやっております。これは三十三年度でございます。府県が千分の四十五、市町村が千分の百四十九という基準でやりまして、昭和三十三年はこういうふうになっております。これはやはり地方財政と国の財政の問題のときでないと、これだけ切り抜いてやるということはなかなか議論が多いのではなかろうかと思います。
  60. 木原津與志

    ○木原分科員 時間がないそうですから、最後に労働政策をちょっと大臣にお聞しておきますが、今御承知のように三池で争議をやっておりますね。これは先月の二十四日に会社がロックアウトをやって、対峙して数カ月になります。このロックアウトは先制攻撃的なロックアウトで、普通ロックアウトというのは、われわれの争議常識からいえば、労働組合がストライキに入る、そのストライキに入ったときに、あるいはそれを予測して作業場閉鎖をやるというのが労使間の普通のケースなんです。ところが三池炭鉱の場合は、労働者がストライキに入っていない。きわめて低姿勢で戦いをして、なるべく合理的な解決をはかろうという対策に出ているのに、会社側の方でいわゆる先制的ロックアウトということをやった。そのために事態が非常に紛糾している。こういう状態ですが、一体労働省は、こういったものの指導的な労働対策を講ぜられる上において、こういうような三池のやった先制的なロックアウトというものに対してどういうふうな考えを持っておられるか、また今後どういう指導をされるのか。労使対立している場合においては、資本家が先制的にロックアウトをかけるというようなことでもかまわないというので、労働省は手をこまねいて何らこれに対する指導対策をやらぬか、こういうことをやるのが資本家としては当然な措置だと思っておられるのか。このロックアウトについて労働省の見解をお伺いしたいと思う。
  61. 松野頼三

    松野国務大臣 基本的には、労使問題はなるべく平和的に解決してもらいたい。そのために調停委員制度あるいはあっせん委員とか、あるいは中労委とか、いろいろな機関を作ってあるわけであります。三井の場合は、御承知のように労使ともに第三者の介入を拒否しております。従って第三者の入るべき余地はないというので、基本的には、労使で解決をするというのでありますから、これに特に強権を発動したりあるいは強制あっせんをしたりするわけには参らないケースなんです。なお、ロックアウトの問題は、私の方に報告を受けておりますのは、週に二回全面的にストライキを長期にやっておられたという、その中においてロックアウトを行なったというふうな報告は聞いておりますが、これがいいとか悪いとか言うには、私は今日は適当でないと思います。従って、非常に違法なものであるならば労働大臣として警告を発しますけれども、いずれにいたしましても、今日組合のストライキ権と会社側のロックアウト権というものが合法的に行使されるならば、これについて私は批判は避けたい。しかし、二日間ストライキをやっておられたあとでロックアウトをされたという報告は私は受けております。どちらがいいとか悪いとか言うには、こういう問題は第三者がまだ介入すべき余地もございませんし、また労使ともに介入を拒否されておる今日でありますから、労働大臣としては、違法な行為がないように監視するという以外にはなかろうかと思います。
  62. 木原津與志

    ○木原分科員 法的には、違法であるかどうかということについてはいろいろ議論がありましょう。しかし、これからの炭鉱の争議において、三井のロックアウトというようなことが全般的にすべての炭鉱あるいはその他の事業所において、使用者側の常套手段として行なわれるということになれば、これは日本の争議史上、労働秩序の上に大きな問題がこれから展開するということを私は労働大臣に申し上げたい、だからそういう場合に、ただ労働省が、これは労使間で解決すべき労働問題であるから、労働省はそういう問題に介入しないんだというようなことであればこれはまた何をか言わんやです。しかし、これはおそらく日本の産業界の大問題、労働問題の大問題になる一つのきざしをここで現わしておるのです。こういう場合には、あなた方も労働省として、特に労働大臣としてこれに対する所信を明らかにし、そういうようなものに対しては政府としてどういう労働対策をとり、労使間の秩序あるいは労使間の円満解決のためにどういう方法をとることが望ましいかということについての、こういったロックアウトに対する有権的な態度をこの際とられるということが、私は望ましいんじゃないかと思うのだが、その点どうお考えになりますか。
  63. 松野頼三

    松野国務大臣 労働省としては、ストライキもなくロックアウトもなく、なるべく調停機関あるいは円満な機関でやってもらいたいというのが本心であります。ただ、三井の例をとられますと、この問題はやはりストライキ権とロックアウト権、いわゆる権利と権利が四つに組んでしまっておるので、第三者が入ることは両方とも拒否されておるのですから、私にこの三井の問題について答えろと言われても、私としてはむずかしい問題です。一般的にストライキ権とロックアウト権というのは、両方とも権利と権利ですから、なるべくこれが衝突しないことが一番いいのであります。その権利を片一方が使った、片一方がこれに応じたということに、一々私が、片一方がいい片一方が悪いという軍配を上げる立場にはないのじゃないだろうか。少なくとも、第三者の調停機関を通じて円満に解決をはかることが労働行政の基本でありますけれども、ストライキもしてはいけない、ロックアウトもしてはいけないという禁止規定の権限も私にはない。同時に合法的に使われるものは、私は個人的には意見はあっても、労働大臣として言うべき言葉では今日はなかろう。将来大いにストライキとロックアウトの問題は研究すべき問題でありますが、一方的にどちらがいい、悪いというわけには今日は参らない、こういう意味であります。
  64. 木原津與志

    ○木原分科員 労働大臣としてはそういうお話ももっともだと思う。しかし、これは深刻に考えていただかないと、こういう事態が発生する場合が予想されるのです。というのは、こういうふうにロックアウトで資本家の方から先制攻撃をかげてきて、炭鉱の場合作業所閉鎖をやるというような場合においては、保安要員の問題が起こってくるのですね。現在、会社が作業所を閉鎖しておりますけれども、保安要員だけは組合の方が出しておるのです。しかし、これは労働法上の理論からいけば反対の説もあるかもしれぬが、そういう会社が先制攻撃をかけたロックアウトのときには保安要員も出す必要はないのだという見解に立つわけなんです。そうすると、もし今日の事態が長引いて悪化する場合には、会社がロックアウトを先に宣告してきたのだから、われわれとしては保安要員を出さないのだというような事態が起これば、これはやがて炭鉱の爆発になるのです。こういう炭鉱の爆発という事態まで、今後の炭鉱争議において起こるということになれば、これはもう労働省として黙過すべからざるところだろうと思う。こういうようなことに対処するということも考えられて、この際、あなた方はただ単に労働争議については第三者的な立場を持つ中労委の解決が望ましいということでありますが、それが正常なときにはそれでもいいのですが、今のような異常な形態をとってくるような場合のあることも予想されて、これには労務行政の担当者としてやはり一応の考え方を持って、確信を持って、松野労政はこういう場合にはこうするのだ、こうあるのが望ましいのだという指導的な立場をここに確立されて、労使双方に勧告をされて、円満な解決のきざしを作ってやるというのが、あなた方のとるべき態度だと思う。これについてどうお考えになりますか。
  65. 松野頼三

    松野国務大臣 特に炭鉱問題につきまして法律で保安要員というものを明確にいたしましたのは、やはり職場というのは会社のものでもあると同時に、そこの雇用者の将来の働く場でもあるわけであります。従って、保安ということは労使ともどもに問題のあるところだと私は思う。ともに保護しなければならないという意味で、法律でこれを規定してあるわけであります。従って、争議行為以外に、炭鉱だけは特にそういう危険がありますから、これは労使の争議のらち外において保安というものを考えなければならぬ。炭鉱が爆発してしまうというならば、会社も大きな被害でありますが、労働者も将来の働く場所を失うのであって、こういうようなことは私はやるべきでないと思う。こういうことで、保安要員というものが炭鉱の場合特に法律で規定された理由はそこにあるのではないかと私は思うわけであります。従って、いきなり先制攻撃されたという話も聞いております。同時にまた、週に二日間ずっとストライキしておったのだという話も聞いております。従って、どちらが先制ということは、現実に報告の内容を厳密によく調査しませんと、これまた判断がいろいろと誤るといけない問題でありまして、いずれにいたしましても保安ということだけは大きな目で考えて、労使ともどもに、この問題は同じ目で考えなければならない問題だと私は思います。そういう意味で保安要員というものが法律で規定してあるわけであります。
  66. 木原津與志

    ○木原分科員 いずれ、こういう問題については大臣に直接問いただしたいことがありますが、他の機会にいたしまして、本日はこれで終わります。
  67. 北澤直吉

    北澤主査 他に御発言はありませんか。——なければ労働省所管についての質疑は終了いたしました。  午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時二十四分開議
  68. 北澤直吉

    北澤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管予算について質疑を行ないます。辻原弘市君。
  69. 辻原弘市

    辻原分科員 この際総合的に同和対策の問題についてお伺いをいたしたいと思います。午前中は失業対策の具体的な方法についてのみ労働大臣にお伺いをいたしましたので、その他の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思いますが、最初に総合的に内閣の方からこの問題についての方針をただしておきたい。  かねてわれわれの方から、同和対策の問題については従来のやり方ではいけない、総合的な施策を内閣が全責任を持って推進していくという形をとらなければならぬということを強調いたしまして、すでにそれに伴う機構についての法案をわれわれは国会に提出いたしておりますが、いまだ政府にはわれわれの要望するような形における行政機関の設置を見ていないのであります。ところが、この点についてはたびたび予算委員会あるいは社会労働委員会等で、岸総理を初めそれぞれの担当大臣から私どもは明確な回答をいただいておる。それによれば、昨年も、これはたしか昨年の三月十四日の社会労働委員会であったと記憶をいたしますが、わが党の八木委員に対して、岸総理は必ず部落対策のための審議会を設置をするという約束をいたしております。いまだにこれが実現を見ないのは、これは政府の怠慢であるのか、あるいは特段の理由があるのか、この点についての内閣の御意見を承りたいと思います。
  70. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。同和問題につきまして総合的な対策を立てるという意味合いにおきまして、内閣に関係閣僚の懇談会が設置されておる次第でございます。その懇談会におきまして、この問題を総合的な高度な見地から今検討されている次第でございます。
  71. 辻原弘市

    辻原分科員 それは違うので、こういうふうに言っておるのです。閣僚懇談会は、そういう審議会についていつ設置するか、設置をするなれば、どういうような機構あるいはどういうような権限をもってやるか、こういう点についての検討をする——もちろんそれだけでございませんけれども、ここでそういうことも十分検討した上で、それとは全然別ないわゆる行政機関という形になるか、それは政府の判断にもよりますが、われわれは行政機関をぜひとも設けてもらいたいという希望を持っておるのでありますが、専門のそういう審議会、いわゆる内閣に直属する審議会の設置を検討してもらいたい。こういうことで、それにこたえて閣僚懇談会で検討いたしましょうという、これが今までの政府の答弁であります。従って今審議室長の言われたような閣僚懇談会があるから、私どもが希望し、また政府も言っておる審議会にこれがかわるものだということになれば、これは大いに認識が違う。その点は一体どうなんですか。
  72. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。ただいまお尋ねの点につきましては、先般来の御答弁にもございますように、今日の段階におきましては、なお関係閣僚の懇談会におきましてもう少し問題を具体的にしていく必要があり、それが最も適切であろうという方針と私どもも存じておるわけでございます。
  73. 辻原弘市

    辻原分科員 審議室長が設置云々について明確なお答えができないのも私は当然だと思いますので、あなたに対してこの問題をやかましく言うつもりはございませんけれども、しかし、閣僚懇談会というのは単なる懇談会で、その他随時設けられる政府部内の機関にすぎません。われわれが言っておるのは、あくまでも恒久的な、少なくとも同和対策に関する各般の施策を立案し、しかもその実行に当たるという強力なものを期待しておるので、その点については今の答えでははなはだ不十分であります。そこで厚生大臣にその点について聞いておきたいのでありますが、従来の同和対策の中で、各省にまたがっておりまするが、比較的各省に先行してこの問題に対する具体的な政策を立てておったのは厚生省です。そういう意味からも、やはりこの同和対策についての中心は、私は何といっても厚生省にあるのじゃないか、こういうふうにも考えられますから、厚生大臣というよりは国務大臣として、たびたび閣僚懇談会においても議論が出ておると思うので、どういうふうにこの問題が進捗しておるか、また政府としてはほんとうに作る意思があるのかないのか、その辺のところをお伺いしておきたいと思います。
  74. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 審議会を早急に作ったらどうか、こういう御要望もありまするので、私ども十分それらの御趣旨は尊重しておりますが、現在関係各省の間におきまして同和問題閣僚懇談会というものを作っておりまして、あらゆる方面の意向等も総合いたしまして、まず大綱よりも実際的に、下水をどうするかとか、隣保館をどうするとか、あるいはまた共同浴場をどうするとか、こういう面がやはり先行しなければならぬ。こういうことでありまして、厚生省といたしましても、昨年よりも二・六倍くらいの予算を獲得することに成功いたしたような次第でございまして、漸次われわれはこれを範囲を拡大していきたい、いわゆる名より実を取るといった主義でやっていきたい、かように考えている次第でございます。
  75. 八木一男

    八木一男分科員 辻原分科員の御質問中でございますが、特に御了解を得まして関連質問をごくわずかだけやらしていただきたいと思います。  先ほど辻原分科員が御質問になりました部落問題の内閣に直属する強力な審議会の点でありまするが、この問題の担当省の事務的な衝に当たっておる大島政府委員が理解が少ないようでは非常に困ったことなので、大島政府委員は速記録を全部調べて読み直していただきたいと思う。一昨年の三月十一日だと思いまするが、社会労働委員会において岸内閣総理大臣から私に対して確約がありました。それは数点にわたっております。  その第一点は、このような差別と貧乏を生んだ部落問題については、これは徳川時代以来の歴代政府の責任である。従ってこれからのあらゆる政府、いかなる政党の政府といえども、あらゆる政府がこれを早急に解決すべきものであるというふうに岸さんの方から特に積極的に発言があって、そういう確認をお互いにしたわけであります。これが第一点であります。  その次に、そういう問題を解決するためには、今までとられたいわゆる同和対策であるとか、環境改善などではいけない。生活の根源を直すための農業政策、あるいは通産行政、あるいはまた雇用、社会保障、それからまた実際的には地方行政の問題、教育の問題、建設の問題もありますけれども、そういうすべての問題について対策を立てなければならない。これを解決するためには国家から強力な国庫支出をやってこれを解決しなければならない。もちろん今までの環境改善対策も十分に早く促進しなければならないけれども、そういう生活の根源を作っている貧乏、差別をなくすところのブレーキになっている貧乏をなくさなければいけないということの確認をいたしました。  その次に、その問題はずっと永続的に——永続的じゃありませんけれども、至急に解決するにしても時間がかかる。従って、これからが大事であります。内閣がかわったり閣僚がかわることによって方針が変わるようなことがあってはならない。恒常的にその政策を研究し、そしてそれを振興させるために内閣直属の強力な審議機関を置いて、閣僚がかわって、北海道出身の閣僚で何もわけもわからずそれをほったらかすというようなことが起こらないようにしなければいけない、それが重大な点であります。その前に、各省にわたることであるから総合的なことをしなければならないというのがその前段でありまするけれども、それとともに時代的に継続してやらなければならないというのも非常に大きな点であります。そういうことで、内閣に強力な審議会を置くということを岸内閣総理大臣が確約をした。その後の運行については、政党政派を超越して、政党意識を出さないで、この国民的な問題を解決するように持っていこうということを、お互いに誓い合ったわけであります。  ところで閣僚懇談会という制度が起こったときに、一昨年の十二月、社会労働委員会で再び岸信介君に私は質問をいたしました。そして岸君からはっきり返事があったわけであります。あなた方の最高責任者からはっきり返事があって、その春に約束した内閣に強力な審議会を置く約束をほごにする考えはない閣僚懇談会を置いたのは、その閣僚懇談会で、いかなる審議会を置くかを考え、至急に置くつもりであるという答弁を総理大臣がしておられるわけであります。その総理大臣がしておられる理由は、総理大臣は比較的この問題に理解が深い。岸さんがいかに長期内閣を希望しておられても、岸さんの寿命にも限りがある、内閣は早晩にしてかわらなければならない。そのときに、この問題に理解の浅い主宰者が出たならば、この問題はストップすると思うから、恒久的な審議会を置くことに積極的に賛意をその三月から示しておられる。そのようなことを衝に当たっておる方が理解をせずに、閣僚懇談会をもって足れりということでは、問題があなた方の怠慢によっでストップするわけである。これははっきりと総理大臣から積極的に約束されたことであって、これが長い間ストップになれば岸内閣の重大な公約違反である。岸さんがもし政治家であれば、それができないのならば、それのみをもって職を辞するが当然なくらいの公約であるはずである。岸内閣総理大臣は、このような公約違反をする人でないと、閣僚であり政府委員であり与党である人たちは思われるでありましょう。そうであれば、そのようなことにならないようにあなた方が努力をなさらなければなりません。それを、助けなければならないあなた方が、そういう経過も知らずしてそのようなでたらめないいかげんな返事、場当たりの返事をしていることは許されません。あなたの上司である官房長官、あるいは総務長官、その人たちはみんな理解が少ない。だからあなたばかりを責めるわけではありません。歴代の官房長官は、かわってからそれがわかるまでに半年一年かかる。実に怠けております。しかし比較的長期間その地位にすわっておられる大島審議室長は、そういう官房長官のふなれあるいは怠慢、それをカバーして、この問題の総理大臣が約束したことが至急に推進されるように補助をされなければならないと思います。また閣僚の中で最も部落問題の中枢的な点である厚生大臣はそれを推進していただきたいと思います。厚生大臣のお返事には環境改善の返事しかありませんでした。生活の根源を立てるということには、生活保護が実質的に見て部落解放に非常に重大な意義がある。それを言葉に現わされないようだったら、渡邊さんのこの問題に対する理解が完全に深いとは言えません。本年度も環境改善しか組まなかったから、そういうところだけ言うということであってはならないと思う。そういうことも内閣の方針に従ってやっていく強い決意がなければならないと思います。  大へん関連質問で恐縮でありましたが、渡邊さんと大島さんのはっきりとした御答弁を願いたいと思います。
  76. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 総理大臣があなた方にそういう公約をされたということは、私は今初めて聞いたわけなんであります。私としましては、閣僚懇談会において、将来どのように部落対策を完全なものにするか、それから現実的にはまずどこから始めていくか、こういうことを審議しておるのでございまして、あなたが今までお述べになりましたような環境施設あるいは貧乏をなくす、病気をなくす、いわゆる同和対策に関するあらゆる諸問題を取り上げてやっているわけでございまするから、その点は、あなた方どうしてもその審議会を欲し、またそうなければならない、こういうことが理想的なものであるとするならば、われわれ閣僚懇談会としましても、そういう方向に向かって努力いたすことをお約束いたします。
  77. 大島寛一

    ○大島政府委員 私どもといたしましては、ただいま厚生大臣がお答えになりましたような政府の御方針に基づきまして処理を進める考えでございます。
  78. 八木一男

    八木一男分科員 実はこの前大原委員の質問に関連して社会労働委員会で申し上げましたときに、そのことを私申し上げたと思います。もう一回一つ速記録を読んでおいていただきたいと思います。一昨年三月十四日の社会労働委員会の速記録、それから一昨年の十二月の社会労働委員会の速記録、その二つであります。それから社会局長一つそういうことを、今までの経過を厚生大臣によく御連絡になっていただきたいと思います。生活保護の点については、部落対策についてお考えになる人は少ない。これは辻原さんの御質問ですから、これ以上申し上げませんが、環境改善だけではなく、生活保護についても、福祉年金についても、すべてについて関係があるのですから、そういう今までやったことだけでいいというのではなしに、もっと積極的にやっていただかなければならないと思います。御答弁はけっこうです。
  79. 辻原弘市

    辻原分科員 今、前にこの問題についてただして、総理からかなりはっきりした答弁を得ておる八木委員の方からお話がありましたので、その点重ねては申しませんが、この問題についての政府の答弁をただしたのは、ただ単に社会労働委員会だけではありません。岸内閣成立直前、私の記憶によりますと、石橋内閣の当時、岸さんが臨時に総理の代理をやっておられたときにも、私自身もこれを予算委員会でただして、かなりはっきりした答弁を得ております。従って、そういう経過から考えてみますと、どうも審議室長なり厚生大臣のお考えは若干テンポがおくれているような感じを免れません。このことは同時に、私は岸内閣の同和対策に対する政策であるというふうに、もし関係地区なり一般が認識するということになれば、これは片やにおいて非常に同和対策を推進するんだと称しておりますけれども、実態はこうなんだということを一般に暴露する大きな証拠になる問題ではないか、こういうふうに思うので、もう少し一つ単にそのときどきの答弁ということではなしに、なぜ総合機関を設けろと一般が要望しておるか、このことについて研究をいただきたい。それはなぜか、多くを申し上げませんけれども、現にこれは長い間、何十年同じようなことを繰り返してきているのです。しかしいまだに大した実効は上がっておりません。それでどこに欠けるところがあったかというと、今も八木君が触れられましたように、この部落問題というのは、長い歴史の背景に生まれて、今日そのしわ寄せがいわゆる貧乏あるいは環境の不健全、こういうところにきているわけなんです。だからこの根源を正していくことは容易なことではないわけです。単に環境改善だけじゃなしに、教育面において、あるいは経済的な諸問題を解決するための経済政策の上において、総合的な施策をとらなければ解決しないのです。ですから各省ばらばらのそのつどつど問題を取り上げるという行き方では、これは百年河清を待つにひとしい。ですから今、少なくとも時代が進展をいたしまして、どこにもこういったあらゆる悪条件が重なっている地区というものは見当たらない今日において、部落だけが取り残されておるということについては、これは今日における日本の一大悲劇なんだ。それを解決するために政府が強力な施策をやるということは当然のことじゃないか。そういう意味合いにおいて、われわれは総合的な強力な機関を設けなさい、各省がその年度年度の予算の中の端っぽをちょっとつまんではこれを同和対策だと称するがごときやり方ではだめなんだ、だから早く総合機関を作って強力にこの問題を進展させなさいというのが私たちの本旨なんだ。どうかこの点については、閣僚懇談会でいろいろ検討しているならば、まっ先にこの総合機関設置についての有無、時期あるいはその内容を検討していただきたいと思います。  次に、私は同和対策に対する考え方も厚生大臣あたりと議論をいたしましたならば、非常に私も参考になりますし、大臣も参考にしていただけると思いますが、遺憾ながらその時間がございません。ただしかし、先ほどちょっとお言葉の端にございました、いろいろやっているのだ、予算もこれだけ取りました、下水、水道あるいは隣保館、共同浴場、共同便所、こういった問題を解決するというお話がありましたが、私の頭の中には、この問題の取り上げ方が、ただ単なる環境改善だけに終始しているように聞こえる。それではいかぬと思います。根本的な問題はやはり経済生活の向上にあるのです。失業の解決にあるのです。そういう認識のもとに大臣としても、所管の問題はもとより、その他の問題についても関連をして取り上げていただきたいということを希望いたしておきます。ことしの予算面から見ますと、かなり最近与党である自民党の側でも、この同和対策を大きく取り上げるというので、同和対策特別委員会を設けられ、当初私どもが聞くところによりますと、本年度モデル地区を設定して、それを中心に約六十億ぐらいの予算でもって強力に進めようという話であった。期待をして待っておったのでありますが、結果落ちついたのは、いろいろ予算案をひっくり返して総合してみますと、金額にいたしますと六億五千万約十分の一になっている。こういうところにもこの問題に対する熱意のほどがうかがわれると思います。与党内部において熱心な推進者もおりましたけれども、政府全体の熱意のほどはこういう程度にとどまっているということを慨嘆せざるを得ません。しかも先ほども言いましたように、その予算たるや、ほとんど環境改善であって本質的な問題には触れていない。これを各省別に見ますと、予算上はっきりしておるものは、厚生省で一億三千万円、農林省においてはわずか二千四百十万円、それから文部省においては五百九万円、建設省においては住宅対策として千百戸分、これだけがはっきりしている。その他は一般的な施策費の中に組まれているようであります。概括してみれば以上の点にすぎません。  そこで、これらの問題よりもさらに根本的に重要な施策である雇用の問題、それから職業訓練の問題、零細企業の対策の問題あるいは農漁村の人口問題、こういう各般の経済的諸条件を解決するについていかほど政府は努力しているかということについて、具体策があるならば一つ取りまとめて審議室長から伺いましょう。なお関係各省が出られておるようでありますから、それについて各省の所見があればこの機会に承りたい。
  80. 大島寛一

    ○大島政府委員 同和問題につきまして予算額についてお話がございましたが、前年に比べますればいろいろな面におきまして相当大幅に増加していることが第一点でございます。さらにそのほか雇用問題、零細企業問題あるいは住宅の改善等いろいろお話もございましたが、それらすべて各省にわたっておりますが、それぞれの所管において一そうの努力をしてきておる次第でございます。詳細につきましては各省から御聴取願いたいと思う次第でございます。
  81. 高田正巳

    高田(正)政府委員 厚生省予算につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、同和関係として特に掲げてありまするのは一億三千万円ほどでございます。ただこれは先ほど辻原八木分科員からも御指摘がございましたように、この問題はいろいろな施策が各面から行なわれて初めて目的を達成し得るわけでございますので、厚生省にありまするいろいろな予算というものが、例をあげて申しますると、私どもの方からいえば、生活保護法の予算であっても、あるいはまた保育所の設置の予算でございましても、児童遊園の設置の予算でございましても、あらゆる予算というものがその意味ではみな同和地区にも関係があるわけでございます。それで各方面の予算の執行にあたりまして、同和問題を頭に置いてその執行に当たるということが非常に大事なことになるわけでございます。そういう一般予算の中に入れにくいもの、そういう予算の費目の立っておらないもの、それをかき集めて特別に同和関係ということで計上をいたしておるのが、今の一億三千万円でございます。従ってその他につきましても、いろいろな予算の執行の際におきまして、その各地区実情に応じまして、できるだけさような地区を重点に、優先性を持たして執行をいたしていく所存でございます。
  82. 稗田治

    ○稗田政府委員 建設省の住宅関係について、予算関係を申し上げますると、本年度は不良住宅地区の改良事案に二千戸、項目を新たにいたしまして計上いたしてあるわけでございます。この改良住宅の建設に七億八千万円の補助金を計上してございまして、なお古い住宅を買収し除去する清掃費でございますが、これが千九百万円計上してあるわけでございます。このうち同和対策関係に、改良住宅のうち千百戸を充当いたしたいというように考えておるわけでございます。金額にいたしますと、清掃費それから改良住宅の補助金等合算いたしまして、これは実施計画で多少変更がありますから正確ではございませんけれども、七億九千九百万円のうち、四億五千万円程度が同和対策関係に使われるというように考えておるわけでございます。
  83. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 三十五年度の同和地区におきます都市計画事業でございますが、これは都市改造事業もありますし、また街路事業及び下水道事業、これらの都市計画事業にまたがっておりますが、都市計画法が適用されております市町村のこれらの地区におきまする予定事業量は一億八十二万円ということになっております。これに見合いまする国費は五千三百二十万、こういうふうに予定されております。もとよりこの都市計画事業は、その大宗をなすものは街路整備でございまして、道路整備五カ年計画の中で実施するものでありますけれども、これらの地区におきましては、一般的に都市施設の整備がいまだ未整備の状況でありますので、国庫補助の採択基準につきましても、特別の考慮を払う必要があるというふうに考えまして、たとえば全般的には、五カ年計画では街路幅員十一メートルの道路を構築する場合にのみ補助の対象にいたしておりますけれども、これらの地区に関しましては八メートル以上を対象とする。また下水道につきましても、口径一メートル以上のが普通の採択基準でございますけれども、三十センチメートル以上までも採択基準とする、こういう方針のもとに事業計画を関係の市町村と協議をして立てて、今後年度計画を都市計画事業のもとに実施いたしていく考え方でございます。
  84. 橘武夫

    ○橘説明員 農林省関係同和地区につきましての対策について簡単に申し上げます。先ほど御指摘になりましたように、同和地区につきましての特別の対策費として二千万円余りのものを組んでおります。一般的に農林漁業関係の生産性を高める、そういう経済的な対策といたしましては、それぞれの一般予算運用に待つわけでございますし、特に農村建設というふうな問題につきましては、昭和三十一年以来農林省は新農山漁村の建設という仕事を毎年三十億余り補助金を使って進めております。そういう中には、もちろん同和部落その他の部落を含めました一般的な農山漁村が対象となっておるわけでありまして、そういう一般的な対策運用に待つ部面と、別にそれに加えまして、特に同和地区を対象といたしまして、その同和地区における生産性を高めて参るために、それぞれの地区の実態なり規模なりを勘案いたしまして、その地区の環境なり条件に応じた農業なり漁業の生産性を高めて参るために必要な、たとえばその地区の事情によりまして、農業機械を購入いたしますとか、あるいは共同の畜舎を建てますとか、そういうふうなその地区における農山漁民の共同の利用によって生産性が高められるような共同利用施設に対します補助というものを一千五百万円出す。それからそういうものと一緒に、何と申しても農業におきましては、その土地の条件を整備して参るということが非常に重要なことでございますので、そういう意味で、その土地に農道を作る、あるいは灌漑排水施設を設ける、そういう土地整備という問題につきまして、やはり六百万円余りの補助を特に同和地区に対する特別の対策として考えておりまして、一般の施設と相待ってその効果を期しておるわけであります。
  85. 辻原弘市

    辻原分科員 今各省からそれぞれの説明があったわけでありますが、従来に比較して金額もそれぞれ若干増額をされておりますし、今までよりはややはっきりしてきたということは言えると思います。従ってこれらの問題について——具体的な方法についてはいろいろ意見もありますけれども、総体としておやりになるということについては、できるだけわれわれも協力いたしたいと思っております。ただ、ほかにやっていただきたいこともたくさんある。一例を申し上げますと、きょうは文部省お見えになっておりませんが、文部省から当初予算要求しておりました各部落に対する小さな集会場、こういうものについては全然触れていない。事は非常に小さいように見えるが、実際の効果というものはどういうところに上がるかといえば、たとえば地区内における教育問題で不就学が非常に多い。なぜか、それは貧困だから。これはしかし一言で片づけられない。そして不就学が多いということは、その子供たちの家庭生活あるいはそこの社会生活が、教育的に行なわれていないということも言える。だからこれを何とか改善して、せめて学校に行けない子供のために、それぞれ点在している部落の中に小さな集会所でもいいから作って、そこに集めて夜間勉強させよう、あるいはそこである程度の社会教育も施そう、こういう心組みから私は非常に要望されておると思うのです。ところが、これも今日見られていないんです。自力でそういうものを作った地方において、非常に効果が上がっていることは私も知っている。だから、そういう非常にこまかい問題になりますけれども、えてしてそういう点にも、この同和対策としてはなかなか捨てがたいいろいろな問題があるわけです。たとえば今計画局長お話しになりました都市計画の問題なんかでも、本来都市計画でありますからこれは都市における問題の解決なんですが、たまたまこれを地方におろして、これはたしか二十八年の災害あとであったと思うのですが、従来限定されておった都市計画法を改正して、範囲を広めた。非常にけっこうだと思いますが、特に部落の場合には、今お話しのようにかなり配慮されておりますけれども、実際部落の中を通っておる道路なんかで、幅員八メートルあるいは十一メートルという道はきわめて少ないわけです。ですからこれをやるには、もう少し実態に近づけた方法を考究する必要があるわけです。そういう意味で現行の都市計画法だけでは、いわゆる都市環境の整備、主として道路、下水、排水、こういうものを解決するにはやや力が不足なんです。批判をいたしますといろいろあります。だからそういう点についてもう少し各省の連絡がぜひとも必要だという意味で、一つ全般を見て、どういうことをやればいいかというようなことは、やはり総合的に見る目がなければいかぬということを先刻の審議会の問題でも申し上げた。  次にお尋ねをいたしますが、ことし十六カ所のモデル地区を設けられた。最近モデルというのははやりで、いろいろな政府のやる政策の中にはずいぶんモデルというのが出てきますが、これを特徴的に上げられて推進されることも、あながちいけないということは言えないと思います。ただそのやり方なんです。われわれが期待しておりましたのは、少なくともこの地域指定して推進する以上、この地域内においてこそは総合的にやられるだろうということが一つ。もう一つは、そういう部落でありますから非常に財政負担も乏しい。だから国費を最大限支出するということが前提でなければならぬ。ところが、結果は二分の一ということになっております。あとの二分の一は市町村に負わしておる。都道府県は素通りしておる。そこらにも一つの問題がありましょう。もちろん都道府県も従来取り上げてやってきた。地方改善費とかいろいろ組んでおりますから、都道府県でも一生懸命やっておる。ところがモデル地区に関しては、都道府県は関与はするけれども直接これにはタッチしない。勢い今後の都道府県と市町村同和問題の推進に若干問題が起きてきはしないか。都道府県がやや冷ややかな立場に立つという傾向が生まれてきはしないかということを心配いたしますのが一つ。それから二分の一をおっかぶせるということはどういう問題を惹起するか。部落の問題のためにその二分の一を一般経費で負担しなければならぬという空気、風潮をひそかに生んではきはしないか、そのことを懸念いたします。ですから、やるなら少なくとも高率補助ないしは全額負担でもってこれを推進すべきものであると考えます。そして地方に対しては、その上にさらに同和対策というものを地方の力の範囲内応おいて協力をしてもらう。今度のモデル地区に対するやり方を見ておりますと、中には三分の二というのもありますけれども、全体としては二分の一を地方に、率直にいえば無理やりにおっかぶせる結果になるわけです。そういたしますと、ほんとうに気持よくどの地方もモデル地区を推進しようというような心がまえになるか、どうかここに疑問があります。十六カ所という大した数ではないのでありますから、なぜ全額負担でやらなかったか、このことについては一体どうでしょう。
  86. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私からお答えを申し上げるのが適当かどうか若干疑問がございますが、便宜お答えいたします。  第一点の総合的に行なわれるモデル地区ということにすれば、各省の施策が総合的に行なわれるはずであるが、それがさほど総合的に行なわれてもいなさそうだというふうな第一点の御指摘がございましたが、これは私ども内閣を中心に、各省たびたび会合をいたしまして、計画等も、また予算の折衝等につきましても、連絡をとりながらやっておりまするので、私どもといたしましては、総合的な施策を講じていくつもりでおりますが、なお不十分な点は十分自戒をいたしまして、いま少し連絡を密にいたしたいと考えております。  それから第二点の財政負担の問題でございますが、これは確かに御指摘の点ごもっともなところもあるのでございます。ただしかし、全額国が持つというようなことは、これはやはり地区の問題というのは、国の問題であると同時に地方地域社会の問題でもあり、また地方公共団体の問題でもあるわけでございますから、全額ということにつきましては、これはいろいろ問題があろうかと思いますが、しかし、少なくとも補助率は高いにこしたことはないと私どもは実は考えておるわけでございます。従って、従来の補助率より高い補助率で御実施になるような事業も中にはあると承知をいたしておりますが、私ども厚生省関係は従来と同じような補助率でございます。ただこの点につきましては、いろいろ補助率の問題まで触れますると、なかなか問題がむずかしくなりまするし、また同時に地方負担の問題につきましては、関係の自治庁等におきまして、いろいろ地方負担の問題について御配慮をいただけることにもなっております。従いまして、補助率が高いにこしたことはございませんけれども、ただいま予定をいたしておりまする補助率によりましても、今の自治庁等の御配慮によりまして事業が円滑に施行し得るものと、私どもはかように考えておるわけでございます。
  87. 辻原弘市

    辻原分科員 補助率の点については円滑にできるという期待を持たれておるようでありますが、決して円滑にこれが実施できるんじゃなしに、地方としては、国が二分の一出してやむにやまれぬから、ともかく実情からみてやらなくちゃならぬというので、ないそでを振って出すというのが実情なんです。当然そのくらいのものは持てるだろうという認識ではありません。私どもも地方当局者たちからいろいろ意見を聞きますが、非常に重要な問題であるし、一歩前進をする問題であるから、何とかやり繰りをしてみましょうというのが現状なんです。しかし一斉に言っていることは、落胆いたしました、これはもっと高率の補助でもって国が責任を持ってやっていただけるものだと思ったけれども、結果はこうなって、だいぶ予算が狂いましたというのが言い分なんです。ですからこれは渡邊さんも二分の一で足れりということじゃなくて、将来この点については、やはりこの地区実情あるいは地方財政の現状という面から、せめてモデル地区ぐらいは補助率を引き上げていくという方向に努力していただきたいと思います。  もう一つ、モデル地区を作っていただくのはけっこうであるけれども、問題は、全体としていわゆる部落をなくすというのが基本原則なんです。これはよく聞いておいてもらいたいのですが、下手をやれば、モデル地区設定というのは、これは部落の中に部落を作るという再生産の結果が生まれはしないかという懸念を持つのです。いいことをやりながら、結果的にはどうもモデル地区になった部落は非常によくなったけれども、そのために同和対策というものはそこへ集中してしまって、それ以外のところはテンポが非常におそくなる。そして部落々々間のいわゆる断層というものができてしまって、道一つ隔たった隣のところはモデルに指定されていない。全国六千部落といわれている中でわずか十六カ所しかないのですから、部落の中に部落を作るような傾向ならばこれはとんでもないことです。そういうことにならないように、モデル地区のところはモデル地区として推進もするが、同時にそれ以外の地区に対する対策というものも、これがそのためにしわ寄せがそこへきたということにならないように、これは一つ渡邊さん、十分御配慮になっていただきたいと思います。そういうことをお感じになっておりませんか。
  88. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 辻原さんのお説の通りでございまして、モデル地区だけに特別な高率補助の適用ということになると、逆にほんとうに部落中の部落を作るというような結果にもなりまするので、まずただいまのモデル地区というのはただ総合的な見地に立ちまして一応こういうふうなモデル地区ができ上がるといったような、そういう観点からやったことでございまして、将来は全部落というものを対象にしていきたいというような考え方のもとに私どもはおるわけでございます。それでありまするから、できるだけ高率補助の適用は平等に同和対策としてやっていきたい、かように考えております。
  89. 辻原弘市

    辻原分科員 次に、通産省にちょっと伺いたいと思うのですが、直接通産省の関係予算は、これは目立ったものはないのですけれども、いわゆる職業を与えていくといいますか、部落特有の職業があるわけです。たとえば皮革とか、あるいは竹細工であるとか、あるいはわら工業であるとか、いろいろあると思うのです。そういう点について、先ほど農林省のあれでいわゆる部落における農漁業を振興するために特別な助成を本年初めて行なわれた。これなんかはやはり本質的な問題にやや触れかかっていると思うのです。そうした問題はやはり積極的に取り上げていただかなければならない。最近の経済状態の中から、もう昔からの皮革とか、そういった手工業を中心にしていたものがどんどん成り立たなくなってきておる。唯一の生業としてたよっておったものが、部落全体だめになってしまうという傾向から生業を失っていっている。そして失業問題、いわゆる失業対策、こう発展していくわけです。だから雇用の根本である今言ったような点に対する手当、これを何とか保護助成するというか、そういうような具体的な問題を取り上げられたことがありますか。また何か方法考えておられますか。この点だけ伺っておきたい。
  90. 中野正一

    ○中野説明員 お答えいたします。通産省といたしましても、同和対策につきましては、うちの大臣関係閣僚会議に出ておられまして、常日ごろ通産省の政策でもこれは十分意を用いてやれということを言っておられます。われわれといたしましても、今御指摘のありました部落における産業の振興、特にこれは中小企業の振興の一環といたしまして十分意を用いておるつもりでございます。ただ、具体的にそれではどの地区の産業をどういうふうにするかということにつきましては、個々の問題として取り上げていきたい。特に来年度につきましては、零細企業といいますか、小規模事業者といいますか、こういうものに対する対策が従来不十分であったという観点から、そういう方面に対する——これは部落対策ということではございませんが、一般の中小企業対策として助成の方法を講ずる。特に御指摘のありましたような部落にいろいろな産業がございますので、こういうものにつきましては、たとえば共同施設に対する補助等の際に十分考慮する。また、中小企業が最近の経済情勢からいろいろなしわ寄せを受けてむずかしい問題に逢着をしておる。こういう問題につきましては、業種別に一つ対策を具体的にいろいろ府県とも相談いたしまして処理していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 辻原弘市

    辻原分科員 最後に自治庁にちょっと伺っておきますが、特別交付金を、地方における地方改善費といいますか、あるいは同和対策、そういった面に向けて——これは正確かどうか、私もちょっとはっきりいたしませんけれども、三十二年に約一億六千万、三十三年に二億七千万、それから三十四年度に三億五千万、これを予定して特別交付金を配分いたしておるようでありますが、聞くところによると、三十四年度からこの配分した金額については、一応その使途を明示して配分をせられておる、こういうふうにも聞くんですが、それは事実かどうか。  それからもう一つ、現在百万円以下のいわゆる補助事業に対する起債は認められておりませんけれども、この部落対策については、百万円以下の起債についても認めよう、そういう方針であるように聞いておるわけですが、それも決定をいたしましたかどうか、この点承っておきたいと思います。
  92. 松島五郎

    ○松島説明員 ただいま御指摘のございました第一の特別交付税の問題でございますが、私どもは三十二年、三十三年、三十四年度に同和対策に対します経費でそれぞれの市町村、県において必要であります事業を考慮いたしまして配分いたしました額は、三十二年度で一億六千三百万円、三十三年度で二億五千六百万円、三十四年度はただいままだ決定はいたしておりませんが、予定では三億四千五百万円を予定をいたしております。なお、これについて使途を明示して配分しているかどうかというお尋ねでありますが、御承知の通り、交付税には使途を指定してはならないということに相なっております。従いまして、算定をいたします場合には、特別交付税についてどういう項目をあげて、たとえば災害の場合はどういうふうに計算をするとかいうような、計算方法としては一応同和対策事業にこの程度ということで計算をいたしておりますけれども、交付税の性質上、これを必ずここに使わなければならないという使途の指定はいたしておりません。  それからなお小額の起債の問題についてのお尋ねでございますが、起債の限度額は町村においては百万円となっておりますので、これをそのままの形で百万円以下について起債を認めるということは考えておりませんが、一つ地区において、たとえば同和対策事業といたしまして二つ三つの仕事が行なわれますような場合には、それらを一括いたしまして、同和対策事業債というような名称を立てまして、起債の取り扱い上、一つ一つでは百万円以下でも、合算をいたしまして百万円以上になるものは起債の対象となり得るような措置を講じたいと思いまして、検討中でございます。
  93. 辻原弘市

    辻原分科員 そこで、その三億四千五百万円というものは、県と市町村両方含むと思うのですが、県分は幾ら、それから市町村分は幾ら。今の御説明によれば、三十二年度以降の取り扱いと同じなんですね。算定の基礎では明らかにするけれども、しかし交付をする場合、使途については、一般交付税と同じようにその使途は依然として特別にひもはつけられない。しかし、それは何がしかの行政指導その他でそういうことをやられるようなお考えがその後におありなのかどうか。  それからその百万円以下の起債について、合算すればよろしい。これは他の起債であっても、同種の公共事業であれば合算して取り扱っておりますから、何も同和対策として特別にやったということは言えないと思う。ただ、同和対策事業的な起債という形で認めようというお話ならば、当然それじゃそれに伴う起債のワクというものをどの程度予定されておるかということをわれわれは聞かなければならぬ。その点、一応あらかじめこの同和対策事業債というようなものについてのワクというものを予定されておりますか。その三点をちょっと……。
  94. 松島五郎

    ○松島説明員 三十四年度のただいま予定しております県、市町村配分の予定額は、県におきまして二億四百万円、市町村におきまして一億四千五百万円の予定でございます。計算方式は多少本年度はやり方を変えておりまして、従来は部落の人口段階別を基準にいたしましてそれぞれ単位額を出しまして、それに部落数を乗ずるというようなやり方でやっておりましたが、今年度はそれに同和人口というようなものを総括的に基準一つとりまして配分をいたしたいと考えております。なお市町村に対します分は、市町村全体としてそういう計算をいたしまして、県別に一応のワクを配分をいたします。さらに県におきましては、それぞれの市町村で行います事業の実績等をも勘案して多少配分の仕方を変えてもいいという取り扱いにいたしておりますので、同和対策事業に投ぜられます市町村の経費等も参酌いたしまして、県で配分をいたしております。  それから第二点の起債の問題でございますが、合算をして一件幾らならば他の起債と同じではないかということでございますけれども、他の起債につきましては、一件々々につきましてそれぞれ金額を出しまして起債の対象にいたしております。たとえば公共事業の場合でございましても、最近は、いわゆる一般公共事業に対する起債は非常に幅を狭めております。災害関連事業とかあるいは災害関係とかいうもの以外はほとんど起債の対象にいたしておりません。ただいま問題となりました同和対策事業につきましては、一般単独事業債と称せられる部類に入るものが大部分でございまして、それらについては、たとえば公民館でありますならば一件幾ら、あるいは隣保館なら幾らというふうに一つ一つ詮議の対象にいたしております。しかしそれでは御指摘のように小さいものが落ちるという問題もございますので、今やっております唯一の例外は、新市町村の建設事業に対します起債につきましては、新市町村建設事業として行なわれますものは、道路もあるいはその他の施設も一括して起債の対象といたしておりますので、同和対策事業につきましても、小規模のものについてはそういう取り扱いをいたしたいと検討いたしておる次第であります。  それから起債のワクの問題でございますが、これは特別に同和対策事業の分としてワクは予定はいたしておりませんけれども、一般的な中からそういう点を来年度は重点的に考えて参りたい、かように考えておる次第であります。
  95. 辻原弘市

    辻原分科員 その問題についてもう一つだけちょっと自治庁にお伺いしておきますが、そういたしますと、この起債というのはいろいろなものがあると思うのです。種類によって限定はいたしておりませんね。たとえば先ほど文部省から同和問題のあれとして要求しておった小さな集会所、これは単独事業として同和対策としてやりたいといったような場合に、小規模のものであっても合算すれば、それも対象になるということですね。
  96. 松島五郎

    ○松島説明員 起債の中にはいろいろ種類、項目を分けて許可の対象にいたしておりますことは御承知の通りでございます。たとえば同和対策事業として行なわれますものの中にも、簡易水道というようなものにつきましては、いわゆる準公営企業債というワクの中から許可いたすことにいたしております。それから街路整備とかそういった補助事業につきましては、一般公共事業のワクの中から考えるようにいたしたいと考えております。それから今お述べになりましたような隣保館、公民館、集会所、こういったものにつきましては、それが相当の金額に上りますものは一件々々許可をいたしますが、こまかいものがたくさん集まっているというような場合には、先ほども申し上げましたように、一括して同和対策事業に必要なこういう建設事業地方債ということで考えて参りたいと、かように考えておる次第でございます。
  97. 辻原弘市

    辻原分科員 では、他の問題をちょっとお聞きして終わりたいと思います。私いろいろお聞きしたいのですが、時間がございませんので、一つだけ厚生省に伺ってみたいと思います。それは厚生省の今度の予算の二十二の項目にある精神薄弱者の援護費ですが、従来この精神薄弱者に対する対策の重点というのは、いわゆる精神薄弱児童あるいは未成年者に置かれてきておった。ところが社会問題としてこれを考えた場合に、もちろんこの精神薄弱児対策というものは、将来の問題として非常に重要だ、そのことはもちろんそうであります。ところが、いわゆる成年に達した者についてのこの対策がいかにも少な過ぎた観がある。ところが、社会問題また家庭の悲劇というものはそこから起こってきておる例が非常に多い。なぜかとなれば、子供のうちはいろんなそういう教育施設あるいは親の庇護のもとにある、また社会も子供という見方でもってかなり愛護していきます。ところが一たび成年に達しますと、教護施設もなければ収容施設もない。野放しにされる。ここに重要な問題がある。去年からそれぞれ三カ所、今年の予算を見ましても三カ所作っておりますが、私はこれはもう少し拡充をして——成年というのはこの場合年令的にどこで切るのか、ちょっと私もはっきりいたしませんが、まあ十九才まで、あるいは少年院の場合には十八才ですか、かりに十九才以下といたしましても、今であれば、十九、二十というのは、成年とはいいつつも、まだ教育期間の範囲内に入ります。そういうさ中に、もういわゆる保護施設から突き放されてしまう。職にもつけなければ、収容施設もない、こういうことでは非常に困る。だから何かしら生活と教育と補導、こういうものを兼ねた恒久的な施設を作る必要があると思います。時間がありませんので、いろいろ私も意見を持っておりますけれども、それは申し上げませんが、ともかくこの今作っておる施設でも私は不十分だと思う。それはどういう意味かというと、年限を区切っておるでしょう。これでは意味をなさぬと思います。だからその程度に応じて、要するにその中には、ある程度の環境を与えていけば、その範囲内で多少の仕事もできるという人もおります。あるいはその中で訓練を施せば社会に立てる人もあります。しかしそうでない、また重症でもって、一生社会的に野放しにできない者もある。だからその期間というものは一年や二年、三年と区切ったのではおよそ意味がない、無責任な保護施設だということになる。ですからここで保護施設を作るというなら、去年からようやく緒についたばかりですから、短期間のものも必要でしょうが、同時に長期にわたって、たとえば百姓仕事でもいいでしょう。そこで生活ができ、今言った補導も受けられ、職業訓練も受けられ、また教育もやられていくというふうな生活環境をともに与えるというような施設ができないものかどうか、この点について意見を承っておきたいと思います。
  98. 高田正巳

    高田(正)政府委員 精薄の問題につきましては、今辻原先生お述べになった通りでございまして、私どもも非常に同感でございます。それでここに二十二番に計上しておりまする五千万円足らずの金でございますが、これは今御指摘の十八歳以上の精薄者に対する経費がこの中の大部分でございます。十八歳未満の児童の精薄につきましては、児童関係の方に金が入っております。それでここに約五千万円ほどの予算を計上いたしますが、今辻原先生の御指摘のようなこともいろいろ考えあわせまして、実は精神薄弱者福祉法案という法律案をこの国会に御提案申し上げております。その法律案の裏づけとなる若干の費用がここに計上されておるわけでございますが、その法律案の中には、今御指摘のようなこの精神薄弱者を援護いたしまする施設等につきましても規定を設けて、それらの財政負担がどういうふうなことになるかというふうなことにもわたりまして、詳細に規定を設けまして、今御指摘のような施設を今後大いに伸ばしたい、かように考えておるわけでございます。
  99. 辻原弘市

    辻原分科員 今の点で私が申し上げた長期にわたってやられるような施設、ここで三カ所の施設を作るに対する補助として約二千四百万円計上いたしておりますが、これは期間を設けるわけですか。
  100. 高田正巳

    高田(正)政府委員 期間を設けるということはきまっておりません。期間と仰せになるのは多分在所期間のことだと思います。まだ施設が少うございますので、当面といたしましてはできるだけ社会復帰が可能なような方々を中心に運営して参りたいと思いますけれども、しかしこれは御存じのように精薄のことでございますから、そう二年や三年で社会復帰ができないという人もたくさんあると思います。従って何年で必ず出ていかなければならぬというふうな施設にはいたさないつもりでございます。
  101. 辻原弘市

    辻原分科員 病院のようなものであってはいかぬと思うのです。そういう形のものはぜひ認識を改めていただきたい。病院は現在進んだ医術のもとに社会復帰を考えてやっているわけなのですから、厚生省で扱う一つの援護的な措置というものは、たとえば病状がかなりよくなったからといってほうり出されたら一体どうなるか。もう大体よくなったのだからこの人間を雇ってやろうかという、そこまで親切な社会通念というものはなかなか生まれてこない現状なのです。そういうことを考えた場合には、ほうり出されたら、それはほんとうに家庭の負担になるか、本人が一生苦しむあれになるかどっちかなのです。たまたま家庭の負担でいけるような家庭ならいいのですが、そうでない家庭が比較的多いのです。ずいぶんわれわれもそういうのを見てお気の毒にと思います。ですから、復帰ということをあまり前提にしないで、場合によっては、その収容所の何カ所かは少なくとも復帰しなくてもそこで生活が送れるというようなものが、理想的じゃないか。これはいろいろなケースが必要だと思うのです。今までそういうものが全然皆無であったわけですから、そういう点に着目して作っていただきたいということを希望いたしておきます。時間がございませんので終わります。
  102. 北澤直吉

  103. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 私は厚生省所管事項のみに限って、大臣その他の方にお尋ねをいたしたいと思います。  最初にお尋ねしたいのは、先ほど大臣もおっしゃられましたように、今年度は非常な努力を傾けて二六・二%、金額にして三百四十一億七千百八十九万円と予算のワクを大きく広げることができた、こうおっしゃいましたけれども、この三百四十一億何がしの中には、おそらく遺族年金のように当然増になるものもたくさんあると思うのですけれど、それら当然増のものを除いて、ほんとうに予算が増になった分はどのくらいになるか御見当がつきますか。と申しますのは、拝見いたしますと、二十に近いものを新しく御計画なさっている。これは大へんいいことですけれども、その御計画が年々ずっと続けてやっていけるかどうかと思って、そのあたりの心配がありますので、ただいまのような数字を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  104. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 それでは松尾先生の御質問に対しまして、おもだった項目だけを御説明申し上げまして、詳細な数字につきましては説明を……。
  105. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 それはいただいておりますからわかるのです。いわゆる三百四十一億円というのは、新規の分が完全にふえたのではなくて、継続的なものを抜かしたらどのくらいが新になりますか。
  106. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 それではほんとうに新規のものだけを御説明いたします。国立がんセンター設立準備費、原爆対策費中医療手当、交通手当、関連疾病手当、ポリオ・ワクチン等買上費、心配ごと相談所、精神薄弱者対策——これはただいま申し上げました収容所を除きます。同和対策中モデル地区分、保育所の間食費、児童収容施設の修学旅行費、母子福祉センター、国保の団体連合会補助金、これらのものがいわゆる新規要求となって現われております。数字につきましてはただいま政府委員の方からお答え申し上げます。
  107. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ただいま松尾先生の方からの御質問は、当然増的なものが幾らで新規増的なものが幾らになるかということでございますが、実は当然増の解釈につきましては非常に数字の計算上いろいろ問題がございまして、詳細に検討すれば、どの程度のものが当然増であるかということはなかなか判定しがたいわけであります。ただ一応大ざっぱな数字を申し上げますと、私ども事務的に検討いたしまして、当然増的なものが三百四十四億の増のうち二百四、五十億くらいで、その他は、これまでの予算上の措置が大幅に拡大されたとか、あるいは先ほど大臣から申し上げられましたような新規増といったものが含まれる、こういうふうに解釈いたしております。
  108. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 数字的にはそういう算定基礎はむずかしいとおっしゃるから、それだけまずお伺いをいたしておきます。  次には、今大臣がおあげになりました新しい計画の一、二の内容に触れて一つお尋ねをいたしたいと思います。最初に先ほどお触れになりましたいわゆる心配ごと相談所ですが、低所得者層の対策ともいうべきこの心配ごと相談所にわずかに一千万円の予算が計上されている。これは三分の一の補助ということになっておりますから、結局この三倍の資金で百五十五カ所の相談所を設けるというふうに私は解釈しているのです。そうしますとこれは一カ所当たりの経費ともいうべきものは十九万三千円くらいです。一年は十二カ月ですから、どうやってこの相談所の運営をするのかというこまかいことを御説明願いたい。そうしないと、お茶くみの女の子を雇っても七千円ぐらいとりますから、この金はわずかに一千万円とはいうものの、三倍になると三千万円ですから、まごまごしているうちにむだに使われるという可能性が強いわけです。この点一つ御説明をお願いします。
  109. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この心配ごと相談所というのは、実は新しく建物を建てて、そこへ新しく人を置いてというような考え方をいたしておるわけではございません。なるほど一カ所当たりといたしますと今御指摘の二十万円がらみのものになるわけです。この考え方は、今日すでにそういうことをやりまして、相当成績を上げておられるところが方々にあるわけでございますが、公民館の一室とか、それは民家でもよろしゅうございますが、一部屋を借りまして、そこで若干の相談に当たりますので、相談のカードを整備するような準備をしたり、電話を引いたりという程度のいわゆる初度費と、それからそこで使います若干の事務費みたいなものが計上されております。しからばだれが相談に当たるかというと、これは主として民生委員さんがここの相談に当たっていただく。御存じのように民生委員制度は奉仕をしていただくわけでございますので、この方々にもちろん無給でここで相談に当たっていただく。実際に行なわれております例によりますると、熱心な方々が人をきめて交代でおいでをいただいておるのが実際の例でございます。そういうふうな例によりまして、経済的な問題のみならず生活をしていく上においていろいろな悩みごとがあるであろう。それをそこでいろいろ聞いてあげまして、そうして一緒に聞いてあげることだけでも、その人の心中したり何かするようなことについては相当力づけになる。さらにいろいろな役所なりあるいはその他の関係に連絡をいたし、あっせんをいたすことによってその悩みごとをさばいてあげる、そういうことのねらいを持った予算でございます。それでこの予算は都道府県市町村を通じまして、市町村に社会福祉協議会というのがございますが、それに流しまして、その相談所は社会福祉協議会の経営ということに相なる予定でございます。社会福祉協議会というのは、御存じのようにいろいろな社会福祉関係の施設なりあるいは人たちなりで組織されておるものでございまして、民生委員もその有力なメンバーの一つになっておるわけでございます。大体以上申しましたようなねらいでございます。
  110. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 御説明伺っておりますと、どうも心配ごと相談所と民生委員の活動強化とはつなげて御質問しないとまずそうですから、これはつなげて御質問をすることにいたします。民生委員が非常に御熱心で隣保館やその他福祉協会に行って、これらの新しい計画の心配ごと相談に当たる熱心な人もずいぶんいるから成果を上げている。けっこうな話です。ところが私が聞くところによりますと、地方によって何か名目的な仕事といいますか肩書きをつけまして、民生委員にお礼というか、手当を出しているのが現状なんです。民生委員といいましても人間ですから、絶えず労力を惜しまずにやるという人ばかりはないと思うし、今日の生活状態あるいは経済状態、社会状態を見ましても、必ずしもそういう熱心な人ばかりではないので、地方的にはそういう面が出ているのが現状だと思うのです。それで心配ごと相談所ができたりすると、今おっしゃられたようにまじめな人はばかを見ちゃってその人ばかりにこの仕事が押しつけられるという格好になる。今の私の言いました地方的現象を見たときに、やっぱり厚生省は民生委員の待遇というものを黙ってみているのはまずいのじゃないかと私は思います。それにもかかわらず、この下の方に、これも新しいのらしいですが、民生委員の活動強化をするためにと題目は大へんいいのです。ところが聞くところによりますと、これは民生委員のよく働く人に表彰状を出したり、あるいはバッジを買って与える。バッジと表彰状ではそんな強化にならぬと私は思うのです。それも六百五十万というわけですが、これとつなげて一つ説明して下さい。
  111. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごもっともな御質問でございます。民生委員は十分に御活動を願うためには、費用弁償といいますか、電車賃とかなんとかいう程度のものはやはり差し上げなければならぬ。それから非常に失礼でございますが、民生委員をいろいろトレーニングするためにいろいろな集会を催したり、研修会みたいなものもやらなければならぬ、かようなことの費用がさっぱりないじゃないかというお話であります。実は私の記憶によりますと、十年くらい前まではさような経費が非常にわずかでございましたが、国の予算として計上されておったわけでございます。ところが例の二十五年でございましたか、六年度からでございましたか、平衡交付税制度の平衡交付金制度というものができまして、それ以来今日ではさような経費は地方負担をするというふうなことに制度が変わりまして、従って民生委員に要する経費は、今日では地方負担ということになっておるわけでございます。それで今御指摘のように、いろいろなさような経費を地方負担をしておると思います。その財源措置は、今の交付税の算定等で基準財政需要額の中に見込まれておるような関係でございます。さような関係で、国の予算としましては直接の民生委員の経費はなかったのでございますが、来年度は今御指摘になりました記章を差し上げる経費、それから特別な方についての顕彰費が、ほんのわずかでございますが計上されたわけでございます。これは一般の経費と違いまして、民生委員さんは厚生大臣が直接委嘱をするという法の建前にもなっておりまするので、さような経費を特にお願いをいたしまして計上したわけでございます。大体こういう関係になっておりますので御了承願います。
  112. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 そうすると、今までなかったものを、たとえ六百五十万でも取ったから、これから民生委員強化については、ますます来年度は予算をふやしてやっていく、こういうふうになるのですか。  もう一つ地方負担がまかせてあるから、いわゆる民生委員の身分というが、弁償といいましても、でこぼこが全国的に非常にあったのではまずいという声を聞いております。一応限度の指示をした方がいいのじゃないかという気がするのですが、そういうことは厚生省地方にまかせたから、そういう指示をしたら行き過ぎなんでしょうか。
  113. 高田正巳

    高田(正)政府委員 第一の点でございますが、民生委員の活動を促進するような施策は、従来でもそうでございますが、今後ますます、いろいろな御批判もございますので、私どもとして十分力を入れて参らなければならぬことと存じております。ただこの経費が新しく計上されたから、直ちに活動が促進されるというものでもなかろうかと思いますが、しかしさような意図の一端の現われとおくみ取りをいただいてもけっこうかと存じます。  それから第二点の、地方でばらばらになっておるからそれを若干調整をする必要はないかという御指摘でございますが、民生委員であるということに名をかりて、非常に多額の経費等を支出しておるところは、私ほとんどないと思っておりますが、ばらばらではあることは、これは事実であろうかと思います。その辺は若干調査をしてみた上で極端なことがございませんならば、地方の方にまかしておいてけっこうだと思いまするが、あまりに極端なようなものがありました場合には、何か中央からアドバイスをいたしたい、かように考えておる次第であります。
  114. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 先ほど申しましたように民生委員の手当、それだけならば、私どうということはないのです。他の名目を何とかかんとかつけまして、一万五千円ももらっている人もあると聞いたですよ。そうかと思うと、五百円か千円で社会のためにやっているのだといばっている人もいますし、その数字の差を聞きますと、多分一カ年じゃないかと思うのですが、一カ年に一万何千円、それは大したことじゃないからそう問題にしないといえば何ですけれども、表面は社会のためにやるのだということになっていても、必ずしも親切でないという評判の人もあるのです。ですから、今おっしゃられましたようにその点はよく調査をなさいまして、ほんとうに今社会の世話役になるという人を選ぶのがほんとうじゃないかと思います。  次にもう一つ、それと似たようなものですけれども、今度新しく児童の不良化防止に児童会館か何か子供の国みたいなものをお建てになるというお話がございましたけれども、これはどういう構想でお建てになり、どういう運用をするのか、どういうワクなのか、そういった点を一つ御説明願いたい。
  115. 大山正

    ○大山政府委員 お答えいたします。ただいまお尋ねにありました予算は、中央児童厚生施設、私どもかりにこれを子供の国と呼んでおりますが、それについての御質問と存ずるのであります。これは予算額といたしましては七千万円で、国の費用で建設するという考えでございまして、考え方といたしましては、子供に健全なレクリエーションの場を与えるということで、従来考えられておりました児童館あるいは児童遊園を総合したような施設というように考えております。こういう計画をいたしましたのは、子供を大事にする一般の国民の気持を特に現わし、また地方でそのような施設ができるような機運を醸成する、あるいはそれらのモデルにするというような趣旨で、国に一カ所、中央にそういうものを作ることが適当ではないか、かような考え方でございます。これは建設費でございますので、運営等につきましては、さらに何らか団体等を作りましてこれに運営を委託するかどうか、今後さらに検討して参りたいと思います。
  116. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 それではお役所が運営するのじゃなくて、民間団体に頼むということもあり得るというわけですね。  子供の問題についてもう一つお尋ねしたいのですが、今度は間食費が要望五円のところを三円まで厚生省のお骨折りで認められた。これは大へんいいことですし、今までにない間食費が認められたので喜んでいるはずなのです。ところが私はこの間ある機会を得まして保育園へ見学に行ったのです。そのときにいろいろ尋ねてみましたら、大へんそれは貧弱な内容でありまして、いわゆる間食費を三円もらっても給食費の中に突っ込んでしまうと思われるような貧弱なものです。ここに一つもらってきたのですが、三才以下の子供なんかですと、一日に、一月十五日月曜日なんかは七円十一銭でまかなっている。十六日が八円四十七銭という工合で、九円なんてかかっているところはどこもない。私がこれから言うべきことはほかに筋があるためですから、これをちょっと聞いていて下さい。そういったようなわけで、全体の給食費をまぜましても一日の分が二十九円六十銭というのが一番上なんです。そんな調子ですと、せっかくいただいたこの三円というものも給食費の中に入り込んでしまうという程度であるけれども、間食という問題について子供の関心が非常に強いので私はちょっと涙がこぼれるようでした。というのは、全部使っても八円ですから、高いときにはミカン一個が買えない。ミカンの一個を自分で持って食べたことがないという子がいた。半分に分けてみんなに上げるという調子です。ちょっと大きなケーキだったら一つは求められないからそれを切って与えている。ばら菓子をやるとかいうふうに、非常に私聞かされました。ともかくこんなに聞かされたのでは、同情して寄付をするという人もいるだろうけれども、それは一時のことで、やっぱり政治として取り扱ってやらなければいけないのじゃないかということを非常に深く感じたわけです。  ついでに申し上げるのですが、こんなような給食並びにおやつの状態でありながら、最近になってというより昨年の十月に、わが国の社会福祉協会の方に一つの通達があったそうです。これはおそらく厚生省は御存じだと思うのですが、これらの貧弱な給食をしている保育園の給食状態は、そのおもなるものがアメリカのCAC団体から脱脂粉乳を寄付されて、日本で金を出すのはわずかに運賃だげだ、こういうような格好が、昨年の十月から、第三・四半期からこれを打ち切ってもらいたいというような、寄付をしないというような通達があったそうです。このようなことになると、貧弱な給食状態がますます貧弱になるのじゃないか。しかも数字で見てみますと、保育園の園児は一日一人当たり脱脂粉乳を二十二グラムを要しているわけです。これが運賃をかけて二十九銭に該当するものなんだそうですが、もしこれらを市中で買うと五円八十銭もかかるのだそうです。してみると八円未満、これから五円八十銭を引いてしまうとどうにもやり繰りがつかない。加えて三円の間食費をもらったところで、この脱脂粉乳の寄付がなくなってしまったならば何ともいたし方ないという格好になるのです。厚生省としては、いましばらくこの期間を延ばしていただいて、その間に別な方法を講ずるようなことをおっしゃっていたそうですが、これほど追い込められている保育園の給付状態、給食状態、これと三円の間食費を認められた、こういった何か非常に複雑な感じがするわけなんですけれども、この点一つ大臣なり関係官庁の方方の御存じの範囲、アメリカの脱脂粉乳の打ち切りあるいは今後の給食に対する御構想並びにできそうなところを一つ御発表願いたい。
  117. 大山正

    ○大山政府委員 第一点の間食費、それから保育所の給食費につきましては、保育所の給食費は従来三才以上の幼児につきましては、一日八円十銭の副食費が計上されておったのでございまして、来年度からただいまお話のありましたように、一日当たり一人三円の間食費をさらに給付する、こういうことに相なっております。ただいまお話のありました七円十一銭しか給食がなされていなかったということでありますが、期間を通じまして、おそらく現在の八円十銭という予算でありますが、その日その日によりまして材料その他の関係で今御指摘のような現象が起こっているかと思うのであります。来年度の間食費につきましては、私どもはあくまで八円十銭の昼間の給食とは別に、三円の間食費を給するという建前で運用して参りたい、かように考えております。  それから第二点のCACの問題がございますが、これは現在CACから収容施設並びに保育所に対しまして小麦粉と脱脂粉乳の援助を受けているのでございまして、これはお話にありました通り、運賃だけを払って、物資に対する価格はこちらで持つ必要がないというようなことに相なっておるものでございます。この小麦粉と脱脂粉乳のうち、特に脱脂粉乳につきまして、アメリカ側といたしまして大体日本の経済も復興して参ったし、あるいは向こうの物資も足りないので打ち切るという旨の通知が参ったことは事実でございますが、それは向こうの会計年度における本年度についての一応の通知ということでございまして、それによりますと、収容施設につきましては向こうの会計年度の終わりであります六月までは大体確保できる見込みでございます。脱脂粉乳の保育所の分につきまして本年の三月までしか今のところ手持ちがないということでございまして、本年の四月から六月までの分が、ただいまのところはっきり見通しがついておらないのでございます。ただ、その四月から六月につきましても、なお絶対入らないということじゃございませんので、逐次入る見込みもありますので、今その状況を向こうで調べてもらっております。それから向こうの会計年度で来年度以降である七月以降の問題につきましては、現在CAC団体からアメリカ大使館を通じまして本国の方へ折衝中でございまして、全社協の方からもこれを強力に推進しておるのでございますが、大体四月に入りませんと、これの来年度の見通しが立たないということでございますので、私どもといたしましてはこれが急に打ち切られるということでは非常に保育所並びに収容施設の給食について欠陥と申しますか、支障を来たしますので、できるだけこれを続けて参りたい。ただ、いつまでも外国の援助を受けるというわけにも参りませんので、若干の期間を置いて私どもの方で予算措置を講ずるなり、逐次国内の方に転換して参る。ただ、急激に打ち切られることは非常に困るという旨を申しておるのでございます。今後ともしばらくの間継続してもらうように努力する考えでございます。
  118. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 今の御趣旨よくわかりましたけれども、万が一どうしても打ち切るということになったらば、これらの保育所の給食の内容、これを別途に本年度中にお考えにならなければならない思いますけれども、そういう場合には別にお考えがある余裕というか、余裕というより、考えなくちゃならなくなるわけですから、どうにかできますか。しなくちゃならないことでしょう。
  119. 大山正

    ○大山政府委員 ただいま直ちにいかなる措置をとるということをお約束いたしかねますが、事態がはっきりいたしましたところを十分検討いたしまして、何らか国内の物資で代替できるか、あるいはさらに予算措置を要するかというような点につきまして検討したいと思います。
  120. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 それはどのくらい年間いただいていたんですか。脱脂粉乳と小麦粉……。
  121. 大山正

    ○大山政府委員 ただいまちょっと数字を手元に持っておりませんので、後ほど調べてお答えするようにいたします。
  122. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 これは生命にかかわることですし、厚生省仕事としてはほんとうに大切なことですから、この委員会におきまして、もしこれが打ち切られましたら絶対責任を持って今までの状態を、むしろもっとよくと言いたいのですが、今までの状態を責任を持ってやっていくという御確約ができないですか、していただけないですか。
  123. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 十分にその措置を検討いたします。
  124. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 もう一点。有料老人ホームというのを今度お作りになるそうですが、厚生保険特別会計ですか、これでお貸しになってお作りになるそうですが、四千八百五十万。ですけれども、これは有料ホームというくらいですから、だんだんと金が入ってくるし、こういうのを最初貸すのに予算に組むというのはよろしいものでしょうか。私はしろうとでわからないけれども、これは金貸しみたいなもんでしょう。金を貸してやって、そして有料ホームを厚生省が今度は指導して作らせるというお話を聞いておるんですがね。
  125. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 今度厚生保険特別会計の年金部門におきまして有料老人ホームを全国に一カ所やりたいということで予算を御審議わずらわしております。これは厚生年金の福祉事業一つといたしまして実施いたしたいのでございます。御承知の通り厚生年金保険は会社、工場に働いておる人たちが老後の生活保障をするために、平素からその賃金に応じて幾分かの掛金をしております。老後になりましてこの保険をもらってそれで老後の生活のささえにする、こういう制度でございます。その場合の福祉施設といたしましてその人たちがやはり最近の家族の、家庭の状況その他の変化から、家庭の中でもって老後を養うというほかに、そういう老人ホームでもって生活したいという方が相当出て参っております。そこで大体このテスト・ケースとして、明年一カ所建てたいということで御審議をわずらわしておりますが、それは、そこから大体四千八百万ほどのものを出しまして一カ所建てまして、そこにおける管理費及びその建物の償却費は保険の方で持つ、そうしてそこに入った被保険者の方の身にかかわる、生活に関する部分だけ、たとえば衣食費の問題あるいはそれに伴うお医者さんなり、お年寄りでございますから、衛生の面、そういう身の回りに関する経費だけを御本人に負担していただく、そういたしますと、私どもの今の感じでは一カ月五千五百円から六千円以内でもって何とかできるのではないか。その場合に厚生年金保険の被保険者でございますと、ただいまのところでは大体月にして約三千五、六百円の平均の年金があるわけでございますので、あと二千円ほど自分がちょっと足していただければ、一応そこでもって、老人ホームでもって一生送れる。御承知の通りただいままでは老人施設というのは生活保護法でもってやっておる施設がございまして、それ以上の、いわゆる有料老人ホームは民間でやっておるものはございますが、これが相当割高についておりまして、そういう方々がそこに入ろうと思いますと、老後入りたいとは思うけれども経費が高いというような御批判がしょっちゅうあるわけでございます。そういうふうにいたしますれば、先ほど申し上げたようなことでございますならば、厚生年金保険の被保険者の方は、老後にそう大きな無理をしないでそこに入れるのではなかろうか、こういうことで福祉施設としてやっていく。これもいざやってみると、なかなかこまかいところまで、手がどの辺まで届きますか、いろいろの問題があると思いますが、やはりテスト・ケースとしてこれをやっていく、かようなことにいたしたいと思います。
  126. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 会費はとらないのですね、入会金は。
  127. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 さようなものは……。
  128. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 あとがつかえておるそうですから、もう一点だけ、これは厚生大臣に特にお伺いしたいのですが、三十五年度一ぱいで岸内閣は国民皆保険を達成される予定になっておりますね。それでこの国民皆保険が達成されますと、その次にくる問題は何かというと、これは保険ではなくして、皆保障ということの精神をもって進まなければならないと思うのです。そうしないことには福祉国家の実現は期すことはできませんし、その内容の向上と被保険者の負担の軽減なりということもはかることができないと思うのです。この目標について、大臣はもちろん異議はないでしょうけれども、一つ大臣の御意見を伺わしていただきたいわけです。
  129. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 三十五年度中に国民皆保険が一応達成されるということに相なっております。国民皆保険ができますれば、一応医療保障としてのこの体系は整うのじゃないか。しかしまた、皆保険が実施されました後におきまして、いろいろの面におきまして、たとえば給付の面であるとか、あるいは保険料の面であるとか、いろいろな現在問題になっている面もございまするけれども、一応今のところは、私どもが皆保険制度というものを達しつつ——現在のところはやや順調に進んでいる、かように存じておる次第でございまして、何分の御協力をお願いいたします。
  130. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 いわゆる皆保険が成り立って、そのあとへ来るものが皆保障ということになりますと、もう保険業務というものを、財政の面にばかり目をつけていて、内容の充実をはからないということは最も危険じゃないかと私は思うのです。ところで、予算上保険財政が相当余ってきているから——余ってきているというと表現がおかしいですが、余ってきている。積み立てが多くなってきたから今年度は五億に切ったというのは、どういうわけで切ったのですか。それで先ほど国民皆保険に対する皆保障という定義をお開きしたわけなのです。
  131. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 いろいろ説もございまするけれども、一応ことしは——そう言いますると、また皆さんからいろいろ御批判を受けるかもしれませんけれども、社会保障の予算というものも相当とれて参りましたし、それから五億円に削ったという政府管掌の健康保険というものが一応黒字になってきてはおる。しかしながら、私どもは、これが将来におきましてまた赤字になった場合におきましては、これは法律の基づくところによりましてこれを埋め合わせることはやぶさかではないのでございまして、私どもといたしましては、今年やむを得ない措置であろう、他の保険制度ともいろいろ調整をとりまして、そうして今後処置していきたい、かように存じております。
  132. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 ますます時代が進んで参りますので、医療技術というものも相当向上させていかなくちゃならない。そういうときにあたりまして、保険財政というもののワクを、限界をきめてしまいますと、新しい技術というものを取り入れることができなくなると思うのです。こういう点で被保険者の方でも相当に御不満もあるし、またその状態は黒字になったといって安心していられるばかりでなく、内容というものはまだまだ改善すべきところがあると思うのですが、一たん保険証でかかりましたときに、差額の問題が相当やかましく言われているのですけれども、この保険財政が限られた中にあるために特別の治療を受けることができない。また特別にいろいろした場合には差額をとられるような格好になっているのですか。そこのところがはっきりしないのですけれども、厚生省の指令としては差額徴収を認めるというふうなことはできないでしょうか。そうするともっと医療の新しい技術も取り入れられるし、大へんよくなると思うのです。
  133. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 日進月歩進歩いたしまするところの医療技術、あるいは新しい薬剤等もございまするので、これは差額徴収ということは一応考えられる線ではございまするけれども、ただ差額徴収をやるということになりますると、国民皆保険というものが総くずれになるおそれもありますので、この方式あるいは限度というものについて目下検討いたしておるような次第でございます。
  134. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 そうしますと、限定された一つの保険財源の中でやるから、日本の場合には、いわゆる医療技術の革新とか向上というものははかれなくなってしまう。そこに医者なんかの不満も出てくるし、病人にも迷惑がかかるし、また国民皆保険の、今大臣は、ある程度進行しているし、達成できるという目標があると言ったけれども、なかなか批判があるところだと思うのです。そこに原因があると思うのです。これはもっと弾力性に富んだものである。これは岸内閣が背骨としてやる仕事だと発表しているのですから、限られた財源というものにばかりとらわれないで、ほんとうに新しい医療技術の取り入れをして、医者の待遇にしても、一点単価の問題とか、あるいは保険の率、こういったものを引き上げるとか、給付内容の引き上げをするとかいうところに目を向けておやりになるのが、ほんとうの意味の国民皆保険、日本人全体の保険という趣旨に沿うものではないか、こういうふに考えられるのですけれども、一つこの点で一そう大臣に御努力を願いたいと思うのです。
  135. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 御意見として十分参考にいたしたい、かように考えております。
  136. 松尾トシ子

    ○松尾分科員 これをもって終ります。
  137. 北澤直吉

  138. 滝井義高

    滝井分科員 健康保険組合の給付費臨時補助金一億円が予算にも計上せられているわけですが、この健康保険組合給付費の臨時補助金一億円に関連して、多分これは昨年度において対象になった駐留軍労務者の健康保険問題ですが、駐留軍の労務者は、最近日米安全保障条約の改定を契機として、日米新時代の到来と申しますか、そういうことを契機として急激に減少をしつつあります。かつては二十万台を数えておったものが、現在は多分六万台になるという、こういう状態でございます。この駐留軍労務者の減少の過程の中で、労務者の健康保険が非常に大きな痛手を受けている点は、健康保険法の五十五条に関連をする問題でございます。これをいわゆる継続給付と申すわけですが、ちょうどやめる時期に一つの病気をしている、その病気をしている人が、その病気になる前に少なくとも一年以上被保険者であったならば、そのやめるときの病気については、結核ならば三カ年間療養給付を受けられるわけです。これをいわば継続給付と言うわけですが、この継続給付の問題が非常に大きく駐留軍の健康保険の財政を圧迫しているわけです。まず保険局長にお尋ねをいたしたいのは、駐留軍健康保険組合の実態は、一体現在どういう状態になっているのか、この点でございます。
  139. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 お尋ねのように、駐留軍健保組合の被保険者が年々減ってきておりまして、三十一年度では二万三千人ほど減り、三十二年度で三万一千人、三十三年度も二万六千人減って参ってきております。ただいまのところでは、そういうふうにだんだん減りまして、六万四千ほどが被保険者でございます。平均標準報酬月額は割に高いのでございますが、給付費の方の段におきまして、お尋ねのように継続給付の割合が他の保険などと比べて非常に高い。医療費の三割以上も出ているというようなことでありますので、この点がこの駐留軍健康保険組合の財政的な一つのネックになっておる、かように私どもも考えておるところでございます。
  140. 滝井義高

    滝井分科員 昨年度において、政府は駐留軍の健康保険組合にどの程度の補助金を交付いたしましたか。
  141. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 二千万円でございます。
  142. 滝井義高

    滝井分科員 その二千万円を交付するときに、何か条件をつけておると思うのですが、その二千万円を交付するにあたってどういう条件をおつけになっておりますか。
  143. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 その詳細はちょっと存じておりません。
  144. 滝井義高

    滝井分科員 いやそこが大事なところだと思うのですが、多分料率の引き上げをおやりなさいという条件をつけておるのではないかと私は思うのですが、どうですか。
  145. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 お話のように、料率を三十四年度から引き上げるということをついでに要望してございます。
  146. 滝井義高

    滝井分科員 私の調べたところによりますと、その要望によって健康保険組合は、千分の五八であったと記憶しますが、千分の五八から千分の六〇・五くらいに引き上げの議決をしておるはずです。ところが現在あなた方が二千万円を交付する条件として五八から六〇・五に引き上げることを言ったのだが、これが実現できないでおるのです。これは一体どこに実現できない隘路があるのか。組合の方は上げましょうと言っておるのだが、実現できない。これは当然厚生省がそれを許可すれば実現ができるはずなんです。今申しますように、駐留軍の労務者の健康保険組合というものは、継続給付があって財政的に政府から補助金をいただいておる。同時に組合自体でも内容をよくしなければならぬというので、六〇・五にこれを引き上げましょう、こう言っておる。これをあなた方の方がぴしっと許可をすれば、それで済むわけです。ところがこれがなかなかできないという実情は、原因は一体どこにあるのかということです。
  147. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 便宜私からお答え申し上げます。御指摘のように、現在駐留軍健康保険組合の料率は千分の五八でございます。そして昨年度二千万円の補助金を交付いたしますときには、健康保険の基準料率でございまする千分の六〇以上に上げることを条件にして、上げない場合には返還させることがあるという条件がついております。それから三十四年度において、駐留軍健康保険組合において千分の六〇・五まで上げるように御努力になっていることは、私どもも聞いております。ただし事業主と被保険者で、代表を出してお作りになっている健康保険組合の組合会において御審議の際、事業主さん方の御意見もありまして、米側の承諾を得た場合には、六〇・五に上げるという附帯決議、停止条件付の決議をされまして、その決議は停止条件が解除しないので、いまだに効力を発生しないと聞いております。
  148. 滝井義高

    滝井分科員 厚生大臣、今お聞きの通りでございます。厚生省自身が、財政を健全にするために千分の六〇・五に引き上げなさい、引き上げなければ二千万円のお金は取り戻しますぞ、こういう約束のもとに、二千万円のお金を出しておるわけです。そこで組合会の方としては、厚生省の方から二千万円もいただいたのだから、われわれ自身が健全化をしなければならぬということでやったわけです。ところがこれが今できない。それは一体どこに原因があるかというと、今の御説明の通り、米軍がなかなかうんと言わないわけです。これは厚相のあなたにも責任がある。これは前に一ぺん川崎君が厚生大臣のときに取り上げたら、川崎君は勇躍胸をたたいて、よし滝井君、自分が引き受けたと言ったが、どっこいこの壁が破れなかった。自来この問題は当時多分千分の五〇か五五であったのを、五八に引き上げるときであったと思うのです。これは渡邊さん、あなたは一体これをどういう工合に交渉されておるか、それから調達庁なり外務省は、この問題を一体どういう工合に米軍と交渉しておるか。それぞれお答え願いたい。
  149. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 これは調達庁におまかせしてありますので、厚生省が率先して今やっておるような状況ではございません。
  150. 阪本実

    ○阪本説明員 料率の変更につきましては、昨年組合会で軍の了承を得たならばという付帯条件付で六〇・五という料率を一応決議をしたわけであります。事業主でございます調達庁といたしましては、組合会の決議をもちろん尊重いたしまして、これを大前提として対米交渉を何回となく行なって参りました。長官あるいは事務的担当者であります総務部長、あるいは契約担当官が、あるいは統合司令部等に出向きまして、折衝を重ねているわけであります。しかしながらその後軍といたしましても、組合財政という点につきましていろいろ検討を加えられ、現在その問題について軍の了承がいまだに得られないというのが実情でございます。
  151. 滝井義高

    滝井分科員 岸さんは、三十二年でしたか、岸、アイク共同声明で日米新時代が到来した、アメリカと日本は対等の立場である、こういうことに言ったわけです。そこで当然国内法で日本の政府が千分の六〇・五に引き上げなさい、そうしなければ二千万円は取り戻しますぞという厳重な条件を与えたところで、アメリカがやらないということになると、これでは対等ではない。日本の国内法におけるところの健康保険の料率というものを組合が民主的に決定し、日本の政府が一応条件をつけて二千万円の金をやっているというときに米軍だけがなかなかイエスと言わない。だから実行ができない。こういう場合には調達庁だけにまかせておくわけにはいかぬ。当然外交交渉でやらなければならぬ。この点、日本がアメリカと対等に主権を発動していくという点に大きな欠陥ができているのです。外務省の安保課長さんですか、そちらの方で当然安全保障条約の改定交渉の中でこの問題は重要な問題として出てきているはずだと思うのですが、この点あなたの方では一体どういうふうにお考えになり、どのように進めていこうとしておられるか伺いたいと思います。
  152. 東郷文彦

    ○東郷説明員 この問題は、今日までのところはもっぱら調達庁に御交渉願ってきたわけであります。また行政協定の交渉に関してはもっぱら協定自身の話をしておりましたので、協定の改定の話の中の一つとしては特に出なかったわけであります。しかし調達庁とは日ごろ非常によく連絡してやっておりますから、今後もあるいは合同委員会の中で、あるいは外で、できるだけ解決するように持っていこうと思っております。
  153. 滝井義高

    滝井分科員 今の答弁では、これは調達庁にまかせておった。調達庁は、調達庁長官以下が再三にわたってやるけれども、できないのだ、こういうことになれば、当然私は外交交渉に移すべき問題だと思う。外務大臣の方に問題が移っていかなければ問題にならぬと思う。どうですか、調達庁はこの問題を予算委員会が終わるまでぐらいに交渉をして結末を出せる自信がありますか。
  154. 阪本実

    ○阪本説明員 実は六〇・五の料率につきましては、先ほどから申し上げております通り、なかなか軍側の了承が困難であるということであります。特にその理由といたしましては、従来千分の五十八である、それを六〇・五に上げる、その増加分はすべて軍側で負担をする、こういうような料率の負担割合の変更を含んでおる、こういう内容でございます。そういうことのため、特に軍側の方では、政府管掌の健康保険については料率が国と労務者と半々である、あるいは国家公務員の共済組合は半々である、そういうようなことから、料率を上げるかどうかということと、さらに料率の負担割合をどうするかというふうなこと等もからみ合いますので、非常に難色を示しておるわけでありますが、それが一つ特に軍側の了承を得られない、またわれわれが説得にきわめて困難を生ずる事由でございます。と同時に、駐留軍労務者の健康保険組合でありますので、組合員、被保険者の減少が財政的に非常に影響するわけでありますけれども、本年度の減少の度合いというものはある程度鈍化をいたして参ってきております。そのために、非常な赤字というふうな点につきましても、何とか過ごせるというような状況にもなってきておる、そういう状況で、私たちが対米交渉をするのに若干鈍らざるを得ないというような状況もございまして、現在この問題の解決はなかなか困難であります。対米折衝は、今後見通しとしてはそういう内容における交渉というものはむずかしかろうというふうに考えておるのでございます。
  155. 滝井義高

    滝井分科員 この問題は、調達庁としては簡単に言えば手に負えないという結論のようでございますから、あとはまだ外務省関係予算のときがありますから、もう一回外務大臣に、調達庁ではどうもさじを投げておる、一体外務大臣として米国にどういう交渉をやるのだということで、その点はあらためて質問をしたいと思います。  次には、現在ハウス・メード、ハウス・ボーイを除く直接雇用の労務者が、多分一万五千から一万六千人ぐらいおると思うのです。これは太宰さん、現在全部政府管掌の健康保険に入っておりますね。
  156. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 その通りでございます。
  157. 滝井義高

    滝井分科員 現在この一万五千ないし一万六千の直接雇用の労務者が、間接雇用に切りかえられようとする運命にあるということでございますが。それは間違いありませんか。これは調達庁の方から……。
  158. 阪本実

    ○阪本説明員 御審議をいただいております新安保条約の締結、発効に伴いまして、その新協定の発効を見ますれば、原則としてそれらの方々は間接雇用に切りかえられるというふうにわれわれは考えております。
  159. 滝井義高

    滝井分科員 これも新しい安保条約にどうも関連をしてきたようでありますから、そこらのこまかいことを抜きにして、とにかくきょうは健康保険だけに関連をしていきますが、そうしますと、もう安保は国会にかけられておりますから、この直接雇用労務者の一万五、六千人の人たちが、現在は政府管掌ですが、これが間接雇用に切りかえられると、駐留軍の健康保険組合に入れますかどうか。
  160. 阪本実

    ○阪本説明員 現在政府管掌でやっております直接雇用の労務者の方々は、かつて昭和二十七年、平和条約発効以前はやはり間接雇用であったと記憶をいたしております。それがその後直接雇用になり、さらに今回間接雇用に相なるといたしますれば、やはり現在の健康保険組合に返ってくるというのが自然だというふうに考えておりますけれども、さらに実際の使用者であります軍、つまり保険料を支払っておりまする軍、あるいは監督官庁の厚生省ともよく相談申し上げまして処置いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  161. 滝井義高

    滝井分科員 二十七年以前は、この一万五、六千人の直接雇用労務者というものは、駐留軍労務者の健康保険に入っておった。ところがそれが今度は直用になると同時に健康保険に入った。今度また間接雇用になるから、当然調達庁の意見としては、駐留軍の健康保険組合に入るべきだ、しかしその際、軍の意見厚生省意見もあるというのですが、厚生省どうですか、これは健康保険組合に入るんでしょう、日本政府意見としては……。
  162. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 まだ実は私どもはっきりした結論を出しておりませんが、調達庁の方から、先ほどいずれ相談するということでございますので、相談がありましたならば十分検討をいたして善処いたしたいと思います。
  163. 滝井義高

    滝井分科員 調達庁が、大体間接雇用になったら駐留軍に入るべきだという意向で、その意見を十分検討をして善処する、こうおっしゃいましたので、それを信頼をしておきたいと思います。この問題はいろいろ問題もありますが、ある程度私も満足の答弁をいただきましたから、このくらいにしておきたいと思います。調達庁と外務省どうも済みませんでした。  次はいわゆる世にいう第二薬局の問題です。第二薬局と言うと大臣お知りにならないかもしれませんので、文部省の方に先にお尋ねいたしたい。春山さんいらっしゃっていますから……。春山さんには、前に私は大学病院における事務の簡素化の問題と研究費の問題で一、二回社会労働委員会に来ていただきましたけれども、きょうは幾分予算に関連をしますので、ここでお聞かせを願いたいと思うのです。現在大学病院に、大学病院自身の調剤所、薬局と申しますか、それ以外に大学病院と関係のない薬局を作って、大学病院の中でやらしておるところが全国の大学病院に何カ所ありますか。
  164. 春山順之輔

    ○春山説明員 ただいまの御質問の、大学本来の薬局のほかに、そういう施設があることはあるようでございますが、実際は調べたことがございませんので、どこの大学に、幾つの大学にあるかということは今記憶をしておりません。
  165. 滝井義高

    滝井分科員 いや、それは関係してくるのです。どうしてかというと、昭和三十五年度の文部省主管歳入予算明細書、これは会計課長に来てもらったら一番よくわかるのですが、雑収入三十二億五百十二万一千円の中で、土地及び水面の貸付料、大学の土地の中に薬局を建てておれば、これは地代を取っておるのです。それから建物及び物件貸付料、大学の病院の一部を貸しておれば、建物貸付料が取れておるわけです。土地及び水面の貸付料が九百七十四万八千円、建物及び物件貸付料が二千九百三十一万九千円、こういうように文部省の歳入の中に出ておるわけです。そこで私がものの本で読んだのでは、二十一カ所あるらしい。そうしますとこれは当然貸付料か何か取っておらなければならぬはずです。とっておれば、それは病院の収入になってくる、収入でも病院が自由に使うんじゃなくて、予算書の一般会計に当然出てきておるものだと思うのです。こまかいようではあるけれども、これは非常に重要な問題をはらんでおるのです。そこらあたり全然おわかりになりませんか。これは第二薬局の問題だと文部省は言っておったんですがね。数その他がおわかりにならなければけっこうでございますから、これはあと一つお調べになっていただきたいと思うのです。原則的なことを、課長さん、お尋ねしたいんですが、貸しておればその貸付料をとってこの予算の歳入の中に入るのが当然だと思いますが、原則的には入るということが確認できるのでしょうね。
  166. 春山順之輔

    ○春山説明員 ただいまの点は、これは薬局のようなものじゃなく、食堂とかその他いろいろ厚生施設なんかありますので、確かに借料はとるようになっております。ただお尋ねの点、それははっきりいたしません。
  167. 滝井義高

    滝井分科員 ではあと一つお調べ願いたいと思います。  こういうように大学の構内なり建物の一部を個人なりある特殊の団体に貸すことは、大学の学長なり病院長の管理権の中で自由に行使できるものなんですね。
  168. 春山順之輔

    ○春山説明員 大臣の許可を受けて実施するわけです。
  169. 滝井義高

    滝井分科員 大臣の許可を受けるのですか。そうすると大学の学長なり病院長、いわゆる管理者の自由裁量によってできるものではない、こう考えて差しつかえありませんか。
  170. 春山順之輔

    ○春山説明員 はい。
  171. 滝井義高

    滝井分科員 実は文部省にお尋ねをしておる書類があるのです。それによると大学側で開設せしめて差しつかえないということであれば学長の権限で開設させることができるこういうことになっておるのです、文部省の見解は。そこでこれは今の春山さんの御見解では文部大臣の許可が要る、こういうことでございますが、この点はおそらくどうも各大学やっていないと私は考えるのです。  そこで今度は医務局です。医務局長いらっしゃっていますか。今うしろでお聞きの通り、大学病院の中に新しく大学の調剤所とは別個の薬局ができておるわけです。これは一体医療法の薬局と言えるかどうかという点です。一つの病院という機関の中に別の商売をする薬局というものが一体開設を許可できるものかどうかという点です。
  172. 川上六馬

    ○川上政府委員 病院では調剤所として一々の調剤をやっておるわけでありまして、大学病院が薬局をやるということは医療法にも規定をいたしておらないわけです。これは一般普通の人に対して調剤するというような一般の薬局と違いはないわけでありまして、病院で薬局をやるということは、建前としても考えていないわけです。そういう規定はないわけであります。
  173. 滝井義高

    滝井分科員 病院で薬局をやることはいかぬのですよ。医療法で病院の中にそういう薬局、個人なり他の団体が独立の薬局を作ることができるかどうかということです。できるかできないかだけでいいんです。
  174. 川上六馬

    ○川上政府委員 これは医療法でそれを禁止しておるわけではありませんけれども、好ましくないと考えておるわけであります。御承知のように、医療機関が営利事業をやるということは好ましくないわけでありますから、そういう面で一般の人を対象とした薬局を病院内に開設するということは、法律では禁止しておりませんが、私の方は好ましくないというように考えております。
  175. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと医療法から申しますと、大学病院の建物の中に薬局を作ることは、法律的にいうと違法ではない。違法ではないけれども、医務行政の上からいうと、これは好ましくない、こういうことなんですね。そうしますと、好ましくないものが現実に動いておるということは、あなた方はこれは一体どうするおつもりなんですか。そのまま見過ごすのですか。
  176. 川上六馬

    ○川上政府委員 まあそれは調剤所でその用を足してもらうように、私どもとしては指導していきたいと思っております。
  177. 滝井義高

    滝井分科員 春山さん、今お聞きの通り、医務局の見解は好ましくない、法律的には違法ではないかもしれないが、好ましくない、こういうことなんです。一体これはどういう理由でこういう薬局が病院の中に——大学固有の調剤所を持っておるほかにその中にできるということ。これはおそらく医務局も調査されておるはずです。どういう御見解をおとりになっておりますか。そういう薬局が大学の病院の中にどうして特にできなければならぬのか。それは原因がどこにあるのか。
  178. 春山順之輔

    ○春山説明員 そういう薬局ができておりますことは、先ほど申しましたように、調査が届いておりませんが、そういう事実はあるのでございます。文部省といたしましては、この解消に努めておるわけであります。できました事情というのはいろいろございましょうが、予算関係その他がございまして、大学の薬局でまかない切れない分がございまして、そういう結果が出てきたと考えられるわけであります。
  179. 滝井義高

    滝井分科員 私は、大学は、本来研究機関だと思うのです。大学というものは、もちろん研究もやるが、治療もやるのだ、同時に教育もやる、いわゆる三足のわらじをはいておるわけです。ところが研究をやる部面の薬品、特に医薬品というものは非常に欠乏しておる。少ない。だから診療の部面は、これはあとで健康保険の方にも関係してきますが、高貴薬を使うというのは、大学に独立採算の建前をとらしておることから赤字が出る。だから高貴薬は患者にみんな負担せしめてしまわなければならない。そうすると、このことは何を一体意味するかというと、患者に全部負担せしめるということは、健康保険に対して大きな損害を与えておるということ、みんな健康保険ですから、健康保険経済に大きな損害を与えておる、こういうことなんです。あるいは自由診療ならば、患者自身に負担を与えておる。国家か患者かどちらかにこの制度というものは損害を与えておるのです。その原因は一体どこからきておるかということは、結局大学病院というものは、多く甲表を採用しておる。そうすると、甲表は——これは春山さんにそれを言ってもわからぬと思いますので、これは大臣の方に聞いてもらわなければならぬが、甲表のお薬は、六十円以下のお薬は十七円なんですよ。だから六十円の薬を使ったって十七円ですから、大学はそんなものに手出しはできない。だから患者さんに処方せんを書いてあげるから薬局で買いなさいということになっても、ほかの薬局に大学病院の患者さんが行くわけにいかない。だから大学の病院の中に薬局ができる。そこで高貴薬だけ、いわゆる十七円で損をするような薬だけをやらせてしまう。いわゆる甲表というものが生んだ鬼子がここに出てきたわけです。注射だって同じです。注射は甲表は皮下は二十三円、静脈は三十四円ですよ。ですから二十三円以下の注射、三十四円以下ならばこれは大学はどんどん使えます。それ以上のものは損をする。だから予算で切り詰められておるから足を出してまでそんなものを使うわけにいかぬ、こういうことです。いわば大学の学術的な良心を貫こうとすると保険経済が赤字になる。赤字になってもかまわないということになると、あなた方から病院長が怒られる。いわば進退きわまっておるというのが大学の姿です。こういう制度に大学病院を追い込んではいかぬと私は思うのです。そこでこういう制度を早く直すためには、今度は保険局になるわけです。これはもう健康保険の問題を審議するときに私は再々にわたって論議したのですが、大学は全部保険医療機関になっているでしょう。どうですか。
  180. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 全部保険医療機関になっております。
  181. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、ここにある薬局は健康保険の処方せんを取り扱っておるわけです。従って、これは保険薬剤師なんです、保険薬局なんです。太宰さん、一体保険医療機関とは何ですか。
  182. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 平たく申しますれば保険診療を希望いたしまして、そうして知事にその旨申し出たことによって保険の診療を担当する機関、かように考えております。
  183. 滝井義高

    滝井分科員 実は橋本厚生大臣は何と説明したかというと、こういう説明をした。保険医療機関とは、土地と建物とそれからその建物の中にある医療器械、器具の設備と、そこに従事をする人間と、そうしてそれらのものをひっくるめたものに健康保険法という経済立法が作用する、それらの総合体を保険医療機関という、こうやったのです。こう私に説明したのです。なるほどこれはいい説明だと、私自来それをまねてどこへ行っても話している。そういうことなんです。そうしますと保険医療機関の中に今度は保険薬局というものが入ってしまったのです。一体そういうことを健康保険の立法者は企図しておったかどうかということです。企図していないです。われわれはそういう議論はしたことはない。だからこういう形が白昼公然と大学の名において許されるとするならば、たとえばここに太宰病院というものを作って、その病院の中に今度はもう一つ滝井診療所というものを作ったらいいです。これはできるでしょう。もし保険医療機関の中に保険薬局というものが重なって二重に置かれるということになれば、三重にも置かれる、四重にも置かれる、こういうことができるわけです。一体こういうものについて保険局長はどう対処されるつもりなのか。私はこの前から申し上げておる。健康保険法というものは、公的医療機関の大学のようなものについてはこれはどうにもならぬのだ、あなたの方がこれは健康保険法の違法だといって取り消そうとしたって、厚生大臣の権限では取り消せない。文部大臣の協力を得なければどうにもならぬ。無力です。だからこの点は実態を調査になると、東大病院以下全部あります。信州大学、北海道大学、大病院みな薬局を持っています。それらの薬局は、さいぜんも言ったように、全部健康保険の甲表ができたからますます全国的にできようとしている。だから保険医療機関の中に保険薬局ができるならば、保険医療機関の中にもう一つ保険医療機関を作っても違法ではないということになる。そうすると、監査の立ち入り検査ということになると、一体どこまでが甲という病院か、どこまでが乙という病院かわからなくなってしまう。これは当然保険薬局を申し出さしたときにはここからここまでが保険薬局でございますといって、保険薬局と保険医療機関と切り離して薬務局に届け出なければならぬはずです。そういう厳密なものが一体出ておるかどうかということです。国家の財産である国立病院の一部を個人とか特殊な団体に貸してやっていいのかどうか、私は、こういう法の盲点をつくような行き方は医療行政ではとってはならぬと思う。そうしてどうしても大学がそれではいけないならばそれだけの予算を組まなければならぬ。こういう抜け道をさして、善良な医師、善良な患者に迷惑をかけてはいかぬと私は思う。このままいけば、これは公然と行なわれて全国に広がる情勢にある。この点は保険局長、あなたの方だって知っておるはずです。その後これは一体どういう処置とどういう指導をとられたのか。医療協議会にかけておるから——医療協議会は認めておりますよ。各地の医療協議会はこれを認めておる。これは保険局長の方ではどういう処置をとられておりますか。
  184. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私の方は薬事法に基づいて薬局を許されておる者が保険薬局として申し込んで参りました場合においては、法律の定める条件を具備しておりまする限りは許す、こういう建前をとっておるわけでございます。この辺はまたあまり変な考慮を加えることはかえって悪い場合が起こると思うのでございまして、この辺はどちらかといえば割にしゃくし定木といわれるくらい法律のあれにおいて実施しておると思います。大学薬局は一体どういうような形でやっておるか、実は私まだ承知しておらないのでありまするが、やはり薬事法で認められておるものであることは間違いないと思います。まさかやみでやっておるのじゃないと思います。そういうものが出て参りました場合には、私の方では特別の事由がない限り指定する、こういうことであります。
  185. 滝井義高

    滝井分科員 問題は、あなたの方の保険医療機関と保険薬局が重複しても差しつかえないかということです。法律解釈ですよ。これは健康保険法を審議するときには一回だってそういう議論はしたこともない。全く予想もしてないものが出てきたわけです。だからこういう形が許されるとするならば、さいぜん言ったように、あなたの病院の中にもう一つ子供の診療所、孫の診療所を作ってもいいことになる。そうでしょう。調剤所なんか共通にしてやっておってもいいことになる、理論的に言うと。だからそれは今度あなたの方の保険局には保険局の見解があるはずですよ。医務局なり薬務局が許しておれば私の方は全部許ますというものじゃないと思う。健康保険法という法律を持っておって、医務局が何と言おうと、おれの方は健康保険法でやっていくんだという——今まで保険局はそうやってきたんだから……。それならば、旧健康保険法ではこれを使用する者でやっておるのです、これは健康保険法を改正する必要はちっともなかった。ところがこれを使用する者ということになると開設者です。開設者は一体どこが所管するかというと医務局所管です。だからあなた方は医療機関を取り消そうと思えば一応医務局に相談なしにはできないのです。ところが保険医療機関になったら医務局に相談する必要もない。あなたの方独自でできることになった。いわばあなたの方の権限を拡大して、医務局の権限の一部を奪った形を作ったのです。旧健康保険法はこれを使用する者で、使用する者は開設者です。開設者は医務局の所管である。ところが今度はそれを保険医療機関というように何かわけのわからないものを取り出して保険局はがちっとしたわけです。保険医療機関をすぱっと取り消したらどういうことになるかというと、それは同時に、保険医の登録指定を取り消したならば、皆保険のもとでは医師の免許を取り消されたと同じ結果が出てくる。医務局はただ抜けがらだけをとって、実は保険局がとったというのが今度の健康保険法の改正です。ところが今度はそのとった実の中にもう一つ子供ができたのです。孫でも子供でもでき得るという形になった。だからそんなばかなことはないのですね。薬局ができるようになれば、今度のは大学病院の中にもう一つ診療所を作ることができるでしょう。一つの保険医療機関というものに薬局を作り診療所を作ることができる。そして大学の先生が医局で見て、どうもこれはちょっと重いからわしの診療所に行けということで診療所へやることができますよ。調剤も、大学の調剤はできぬから君はあそこの特設の薬局に行きなさい、こういうことになる。これは考えようによっては、明らかに大学の収入に大きな損害を与えておるから背任ですよ。別な言葉で言えば背任を構成しますよ。法律的に見るとそういう重大な要素をこれは含んでおるものなんです。ただ表面的に見ると、なるほどこれはどうも普通の状態できちっと書類を整備して届け出なければならぬ。届け出て許可を得ればそれは薬局になるでしょう。それならば大学病院の廊下は天下の公道であるかどうかということになるのです。薬局というものは、不特定多数の人に自由にそれが販売ができるところに薬局の重要な要素があるわけです。ところが、大学病院の中におって外から自由に行けるということになれば、大学の廊下というものは天下の公道だということを文部省が宣言しなければならぬということになる。しかし大学の入口には受付があって自由に入れませんよ。うさんくさいのが行けばちょっとお待ちなさいと言われますよ。文部省が大学の廊下を公道と認めるということになれば、これは薬局を作ってもよろしい。ところがそれは大学は大へんなことですよ。認められない。こういう多くの要素を含んでおりますので、私はこれ以上言いませんが、厚生大臣これは十分一つ善処をしてもらわなければ、大学の学術の研究を毒し、しかも患者には損害を与え、国家の保険経済にも損害を与え、そして医療行政というものを混乱せしめるわけです。法律の遂行というものが非常に隘路にぶつからなければならぬという事態を生ずるのです。大臣どうですか。この際、勇断をもってすみやかに文部大臣と話合いになりまして、こういうものはおやめになって、そしてできなければ、その分のお金は文部省に出すように、研究費なり治療費なり、薬剤を出すようにあなたから要請ができますか。どうです。
  186. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 大へん御説ごもっともな点、私も今までうっかりしておりましたが、なるほどお話を聞いてみますると、私どもは十分検討しなければならぬ点がありますので、この点につきましては文部当局とよく話し合ってみたいと思っております。
  187. 滝井義高

    滝井分科員 ぜひ一つそうしていただきたいと思います。この問題はこれ以上追及いたしません。しばらく様子を見させてもらいますので、すみやかに文部省と厚生省お話し合いになりまして、大学病院をいじめないように順調に金を出してやって、研究ができ薬局で高貴薬も使えるようにしてやっていただきたいということを同時に要望いたしておきます。  次は公衆衛生関係ですが、この前予算委員会で私は水の問題をちょっとやったのです。同時に、この水の問題が日本の政治における、特に経済基盤を強化する点における一つの隘路になっているということで、きょうは建設省、通産省、厚生省、できれば大蔵省の主計局を呼んで総合的に質問してみたいと思いましたが、うっかりして、私の方でも言い忘れておったとみえまして、他の省が見えておりませんので、厚生省だけに一つお尋ねをしたいと思います。  厚生省は、水道についても下水道の終末処理についても長期の計画を立てられております。現在水道の長期整備計画なり下水道終末処理の十カ年計画というものは一体どういうようになっておるのか。これを一つ簡単に御説明を願いたい。
  188. 聖成稔

    聖成説明員 水道並びに下水道終末処理の計画でありますが、一応昭和四十二年度末を目途といたしまして、水道の普及率を総人口の八二%まで持って参りたい。終末処理につきましては百六十都市に終末処理場を作りたい。その場合、終末処理場によりまして処理の行なわれます人口は総人口の約二〇%に達する。かような計画で進んでおるわけでございまして、現状は、水道につきましては御承知のように上水道と簡易水道と二つに分かれるわけでございますが、上水道は都市部の総人口に対しまして現在五六・八%で、給水人口は約三千二百万人になっております。簡易水道の方は農村部人口に対して現在一五・九%の普及率、給水人口は五百六十万。上水道、簡易水道合わせまして、総人口に対する水道の普及率は現在四四%になっておる状況であります。  なお、終末処理場につきましてはすでに運転を開始いたしておりますのが十四都市でありまして、これによる処理人口は四百十五万人、比較的大都市が大きいために、将来計画に対する普及率は約二五%ということになっております。
  189. 滝井義高

    滝井分科員 私がお尋ねしたいのは、あなたの方が水道の長期計画をお立てになったが、一体その進捗率はどうなっておるのかという点。それから下水道の終末処理十カ年計画の進捗の状態というものは、あなた方が十カ年間に完成しようとする目標に何パーセントぐらい達しておるのか。こういうことをお聞きしたいのです。だから、やり方としては、たとえば昭和三十六年なら昭和三十六年までに全部完成するものと仮定した場合に、過去からどういう工合になってきておるのか。三十六年までに実際にやった仕事が百パーセントの目標に対して五〇%しかいっていないということになれば、半分しかいっていないということになる。それをお聞かせ願いたいのです。金額と進捗の状況です。
  190. 聖成稔

    聖成説明員 私どもが十カ年計画と申しておりますのは、昭和三十三年度を初年度といたしまして、従いまして昨年度でございますが、そうして四十二年度末を目標といたしまして、先ほど申し上げたような十カ年計画を持っておるわけでございます。従いまして、本年度はまだ二年度目に入ったところなのであります。そこで、現状は先ほど申し上げたようになっているということを申し上げたような次第でございます。
  191. 滝井義高

    滝井分科員 少し具体的に申し上げますと、たとえば補助関係で簡易水道は二十二億円要求したのでしょう。それを十二億円、五割八分認めてくれておるのですね。それから終末処理は二十二億円要求したら七億円、三割四分です。それから公共水道が六十八億要求して十四億ですから二割。それから起債は上水道が三百七十億要求して二百四十五億ですね。下水道は、これは建設省ですが、二百六億で九十億、四割三分です。一体こういうように最高のもので、これは起債ですが六割六分、大がいが二割から五割という状態です。第一年度三十三年は、これは私は計画の当初だから予算がつかぬのはやむを得ないと思うのです。それから三十四年度も、いわば実施二年度といっても予算はそうつかない。しかし三十五年度ともなると、大体長期計画の土台が固まる年だと思うのですよ。従ってこの三十五年には、予算としては相当のものが出てきてなければならぬわけですよ。ところが、どうも調べてみるとそれが出ていないんですね。一体これで十カ年計画とか長期の整備計画の完成ができるだろうかということを心配するのですが、私はこれをお聞かせを願いたいわけなんです。
  192. 聖成稔

    聖成説明員 要求予算額に対しまして、一応現在国会で御審議中の予算案には、先生が御指摘のような金額があげられておるわけでございます。しかしながらこれは前年度と比較してみますと、簡易水道の補助金にいたしましても、あるいはまた上水道の起債額あるいは下水関係起債額それぞれかなりの増額を見ることができた、かように思っておるのであります。しかしこの程度では、先ほど私が申し上げたような十カ年計画が計画通りいくかどうかという先生の御心配でありますが、私どもは、まだあと八年あるわけでございまして、従いまして全体的な機運の盛り上がり、これもやはりいろいろ考えてみまするのに、国の方で幾ら予算をつけましても、地方の機運がほんとうに盛り上がって参りませんと、実行上にもなかなか困難な問題が出て参るかと思います。いよいよ第三年度に入るわけでございますが、次第に、全国的に水道建設の機運も非常に盛り上がってきておりますので、私どもの考え方としましては、逐次しり上がりに、後年度になるに従いまして予算額なりあるいは起債のワクを拡大していただいて、そして所定の目標に達したい、かように考えておるわけであります。
  193. 滝井義高

    滝井分科員 今の御説明ではっきりしたことは、結局水道の長期計画なり下水道の終末処理十カ年計画というものは、今のような状態ではとても目標の達成は困難である、しかしあと残りが八年間あるんだから、未来に夢を託して、地方の啓蒙宣伝もやって、下から盛り上がる力でやりたい、こういうことなんです。ところが、聖成さん、予算全般をごらんになると、来年度以降こういうところに金が回る情勢じゃないんですね。それは、すでに下水道の緊急整備五カ年計画というのを建設省で作っておるんですよ。きょう建設省がきておってもらったら一番よくわかるのですが、これはもう達成できません。三十六年、三十七年と二年間で、千五百億計画だとするとこれは莫大な金が残っておる、千百億くらい残っておりますよ。従って、これを三十六年、三十七年ではできぬから、もう一年延ばして三十八年まででしょう、ところが三十八年に延ばしても、三十八年に五百四億もなるんですね。ところが下水道の起債その他を見ておっても、そんなにどんどん伸びるという情勢はないですよ。だから下水道の五カ年計画も、これをもう一年延ばさなきゃいかぬ、延ばして一体達成できるかどうかということは疑問ですよ。そうするとあなたの方でも、これはなかなかなまやさしいことではいかぬのじゃないかという感じがするのです。  実は、私が上水道から下水道それから工業用水までずっと聞きたいのは、この前も予算委員会でちょっと申しましたように、日本のこれらの水の問題というのが、治山治水から利水にわたって一貫をしたものの考え方がないんですね。それぞれ各省が計画を立てれば、それにわずかの金と起債をつけてやる。そうすると工業用水なんかはなはだしく縁故的な公募債を二十八億もつけておるのですけれども、こんな公募債は今の状態になってくると集まりやせぬですよ。計画だけはやるけれども、それが実行できないのが最近の状態です。なるほど最近は、終末処理の問題については、相当各地で熱が上がっております。しかしこれは国が積極的に計画的な予算を出すという機運が燃えてこないと、これは地方自治体で予算を組んでも、国がそれだけ組んでくれるかなという杞憂があるためになかなか出さないということになる。そこで私はある新聞を読んでおったら、こう書いてある。長期整備計画とは、理想的目標にして実現せざるものであると書いてある。まるっきり、とんち教室じゃないけれども、長期計画とは、これはもう絵にかいたもちである、こういうことですよ。結局これはそういう点で、今度の治山治水十カ年計画も私は怪しいものじゃないかという気もしますけれども、とにかくあれはこういう時代に十カ年間保障して、予算書にまで一兆五百億のものを計上したんですね。ああいうものが先取りされていくと、こういうものはますますあと回しになるという可能性があるわけですね。そういう意味で、これはぜひ一つ厚生省としては一貫をした水の行政をお考えになるとともに、こういう点を少しテコ入れをしなければいかぬのじゃないかという感じがするんですね。大臣どうですか、こういう点もう少し——医療保障の問題も大事、年金の問題も大事ですが、やはりオリンピックを控えて日本の下水とかそれから水道とかが——水道の水を飲んだら赤痢が爆発的に起こるということではどうにもならぬのですね。こういう盲点になっている、しかも局としては公衆衛生局の環境衛生部という、これは厚生行政でも児童局とこういうところは一番弱いところです。そういう点で、これは僕らも年金とか国民健康保険とかというようなものは力を入れますが、こういうのはだれもやり手がいないから、私が毎年やらなければいかぬと思ってやるのですが、大臣一つふんどしを締めて、この辺は長期計画をほんとうに推進しなければいかぬと思いますね。
  194. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 御指摘受けるまでもなく、私どもは厚生行政の大きな柱の一つとして、環境衛生特に水道の問題につきましては、力を入れているような次第でございます。いかんせん実力がなくして、あまり大した予算がとれませんでしたが、あらゆる機会に環境衛生局の昇格ということを考えまして、そうしてその局にした上で、オリンピック対策もあることであるから、来年はどうしても水道、特に一般大衆の喜ぶ上下水道、それからオリンピック対策といたしまして、先進国のような顔はしているけれども、本所、深川に行きますと下水問題、終末処理場というのがまるでおくれておるものでございますから、どうしてもこれらの面について重点を置いた施策を明年度はやりたい、かように考えておるわけでございまして、総理にもそれから関係閣僚にも常々これは私が申しておるところでございますから、何分の御協力を一つお願いいたす次第でございます。
  195. 滝井義高

    滝井分科員 これは厚生省だけではだめなんですね。やはり終末処理なり下水道の長期計画なりそれから工業用水とも飲料水というのは密接に関連してくるのです。だから池田通産大臣と村上建設大臣と渡邊厚生大臣と三者が、やはり連合軍を組んでお互いにきちっと計画を立てて、これだけは絶対に今年はとろうじゃないかということで三者歩調を合わして、総合的な大局的な見地から考えた上で私はやってもらいたいと思うのです。厚生省だけが抜けがけしたってこれはだめなんですから、ぜひ一つ関係各省が有機的な連携をとって、高い見地からこの水の問題を推進していただく、こういうことを要望して終わります。
  196. 北澤直吉

  197. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 お疲れでしょうからきょうはやめようかと思ったのですが、続きにやれということですから、もう少しごしんぼうをお願いいたします。  最初に、健康保険の問題でお伺いしたいと思うのですが、昭和三十年に健康保険が七十億の赤字であったのが、だんだん黒字が出て参りまして、昨年は四十九億、三十三年度は四十九億の黒字と聞いておるのでございますが、ことしはどれぐらいの黒字になる見通しを持っておられるのか。さらにまたことしの当初の積立金が百八十二億あると聞いておりますが、来年度の当初はどれくらいの積立金を持って出発できるというような見通しなのか、その辺のところを伺いたいと思います。
  198. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 数字の点につきましては政府委員から説明いたさせます。
  199. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 三十三年度の決算につきまして健康勘定の積立金が、累計百八十二億ほどの剰余でございます。三十四年度は、御承知の通りまだ年度途中でございますが、ただいま少しかぜがはやっているようでございますが、でも大したことでなくなりますれば、予備費約三十億ほど組んでございますが、おおむねその程度が残るんじゃなかろうか、かように考えております。
  200. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そこで、保険財政に相当ゆとりができてきたからという理由でもって、ことしは政府の国庫補助金が五億に減らされております。先ほどの松尾さんへの御答弁によりますと、保険財政もゆっくりしてきたんだから赤字財政を補うために出したなには引っ込めることになったんだというふうな御趣旨の御答弁でございましたけれども、しかし、そのときはもともとそういう考え方と少し違っておったのでございます。赤字補てんのためだけに出すのではない、健康保険そのものをよくするために出すのだ、こういうふうなことをいつも繰り返して、神田厚生大臣は、当時、健康保険法の改正のときにお答えになっておられましたし、さらにまたそのときには何度か口ぐせのように、政府は三十億出します、三万一両損でいくんだ——政府も、被保険者も療養担当者もみんな一つしんぼうして出し合って、健康保険をよくしていくということにしよう、そこで、政府が三十億出すから、被保険者も一部負担が増加することはしんぼうしてもらいたい。だから初診時の一部負担金が五十円から百円になり、さらにまた入院料が三カ月間三十円徴収されるというふうなことになったわけです。また療養担当者にもいろいろな行政措置の強化が行なわれるのもしんぼうしてもらいたい。みんなして三万一両損でもって政府管掌の健康保険をよくしていこう、こういうふうなことを繰り返し私たちは当時聞かされた。ところが、ただいまのお話でありますと、そういうことによってみんなでもって出し合ったなにが、こうして少し保険財政がよくなってきたら、政府だけは財政がよくなったという理由でもって片棒をかついでいた肩をはずしていく、こういうふうなことだとその当時の政府の説明とお話ががらりと変わってきていると思う。その当時被保険者からも猛烈な反対がございましたし、療養担当者からもはなはだしい反対があって、それは健康保険の改悪であるというふうなことでもって非常な強い反対の中を、あの健康保険法の改正案を成立させるときには三万一両損なんだ、みんなでよくすることにしよう、こういうふうな政府の説明であったのに、今度はそれが財政事情が好転したから五億にもう減らすのだというふうなことだとお話が全く違うのでありますが、どういう理由でもってそのように方針が変わってきたのか、一つ渡邊厚生大臣から御説明願いたい。
  201. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 決して今までとり来たったところの、神田厚生大臣時代の言明というものを曲げたわけではないのでございまして、私どもは赤字になってくれば、また埋め合わせることにやぶさかではないのでございます。ただことしは社会保険全体の立場から考えてみましても、たとえてみまするならば、国民健康保険の事務費等もちょっと値上げをいたしまして、九十五円から百円にいたしました。それから社会保障全体の予算というものをまあまあというところで幾らか上昇いたしましたもので、そういうようなことからいたしまして、十億から五億に減った、こういうことでございまして、決して今までとり来たりましたところの方針を全面的に趣旨内容において変えておる、こういうわけじゃございません。
  202. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 事務費をふやしたから、片方で国庫補助金を減らしたというふうな御説明でございますが、事務費というものはこれは法律にりっぱにちゃんと書いてあるのです。これはもともと全額国庫が負担することになっている。それを今まで政府の方で十分負担しなかったのである。だからそういうふうなことは五億に減る理由にならないと思うのです。だから政府の方で今までみんな出し合いましょう、みんな持ち寄ろう。政府の方の持ち寄りを減らすのなら、やはりそのときに一番大きな犠牲を払ったのは被保険者である。保険料は全面に値上げになっている。さらにまた一部負担金を増徴されるというふうな大きな負担を持っておった被保険者の負担を、これはそのときに増徴された一部負担を減らすこと、そのことでもって、三万一両損をもとの形に戻すということになると思う。ところが手前の方だけ遠慮なしに引っ込めておいて、そうして被保険者の側の一部負担はそのままでほおかむりしておるというのじゃ、あんまりこれは虫のいい言い分で、しかも、それを、当然の義務である事務費を政府の方でよけい出しているからと言う。こんなことじゃ理屈は通らないと思うのですがね。どうですか、今度はそのときは三万一両損で出し合おうということだったのだから、そのときに出させた被保険者の側の入院料であるとか、初診時の一部負担金が倍に増額されたというふうな、こういうことこそまず引っ込めて、——三十億出したのだと言われても、それをいつの間にやら十億に減らし、さらに五億に減らす、こんなずるい話はないですだからこれはもともと三十億のままにしておいて、それでもってまず被保険者の、病気になったときに収入が減りしかも支出がふえるのが病気なんです。収入が減って支出がふえる、その中からなおかつ入院料を負担していかなければならぬというふうな、このような一部負担こそ先に切りはずして、しかる後に余裕ができたなら五億に減らされようと五億がゼロになろうと、私は何にも申しません。だから、五億に減らされる限り、来年度——本年度といってもこうしで予算も出ておることですから、これは次は必ず早急にそういうふうな手を打つというふうなことを言明していただかない限り、私は納得できないと思うのですが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  203. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 一部負担の問題はお説の通りでございまして、他の社会保険等との調整をとりまして、なるべくそういう方向に努力いたさせていただきたい、かように存じております。
  204. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 なるべくというふうなことではなまぬるいのですが、時間をとりますから、それ以上の議論は避けますが、御努力をお願いしたいと思います。  なお、政府は今度保険料の引き下げをやろう、こういうふうなお考えの模様でございます。財政上のなにがよくなったから、一つ政府の方も同時に保険料の料率の引き下げをやろうというふうな計画を立てておられる模様でございます。そういうふうな形で予算も組んでおられる模様でありますけれども、しかしながらこれは被保険者のほんとうの希望じゃないですね。そのことはもう審議会その他ですでに聞いておられると思うのです。被保険者側は、少々保険料は高くても給付内容をよくしてもらった方がむしろいい、こういうふうな説が強い。保険料率の引き下げを希望しておるのは事業主側なんです。事業主が料率の引き下げを希望しておるからといって、非常に多数の人を包容しておる被保険者の希望というものを無視して料率引き下げに向かわれるということは、これはちょっと厚生行政の名にふさわしからざる姿だと私は思うのですが、大臣これはどのようにお考えですか。
  205. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 保険料率の引き下げにつきましては、ただいま社会保険審議会の答申を待っているわけでございまして、きょうも保険審議会があったはずでございます。まだその結果については伺っておりません。しかし空気といたしましては、保険料率引き下げにつきましてある程度の御了解が得られる人が多いのではなかろうか、かような空気のようでございます。あくまで社会保険審議会の答申を待った上で処理いたしたい、かように思っております。予算上に組みましたのは、これは予算編成の組み方でございまして、すでにこれを決定いたしたというわけじゃございませんので、その後において審議会の意向を尊重いたしまして、そして処理いたしたい、かように存じておる次第でございます。
  206. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 予算に組んでおるのは決定じゃないと言われますけれども、これはもう大きな既成事実なんです。既成事実をいつも積み上げてはそれを強引に押し切っていくのが今の自民党政府の姿であるから、渡邊厚生大臣もそれを踏襲して当然だと思っていられるのであろうと思うのですが、やはりそういうようなものを予算に組むには、審議会にかけて、審議会の承認を得てから予算に組むのが順当なんですね。それを先に省議できめて厚生省の方針として打ち出して、こういうふうにやりますからというふうなことなら、これは社会保険審議会も官制の一つの諮問機関でありますから、あなたの方もその委員の選考その他にあたっては、なるべく厚生省に同調してくれそうな人をよってなされる。それは一部には被保険者の代表であるとか、あるいはまた療養担当者の代表であるとかいうようなのは簡単にはあなたの思うようにはならないかもしれませんが、しかしながら審議会の傾向そのものが厚生省で方針をおきめになれば、やはりそういう方向にどうしてもこれはなびきやすいと思うのです。だから、そういうふうな機関におかけになる場合には、もともと白紙の状態でこういうふうにしたらどうでしょうというふうな形でおかけになるならいざ知らず、予算にまで組んでしまい、非常に大きな既成事実を作ってしまってから諮問される、こういうことでありますと、これは厚生省としては自分の考えを押し通す方針、こういうふうに言われても仕方がないと思います。今後そういうことはないようにもちろんしていただきたいと思うのでありますけれども、しかしながら私は今からでもおそくはないと思うのです。これはやはり方針を切りかえでいただくべきだと思います。また方針をかりに、料率を下げてさらにその上に給付内容をよくされるならかまいませんよ。だから料率を下げられるのも、被保険者は幾分か助かるのですから下げるのもかまいません。しかしそれに優先すべきだ。料率の引き下げよりも、被保険者がほんとうに望んでおるところの給付内容の向上ということにこの際大臣は勇断を持って踏み切っていただかなければならないと思うのでありますが、それについての厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  207. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 給付内容の改善につきましては、できるだけ他の社会保険等とも調整をとりまして、目下検討いたしております。
  208. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど保険料率の引き上げを社会保険審議会に諮問するのを、予算を組む前にやったらどうか、こういうような御意見がちょっとあったかと思いますが、御承知の通り、料率を下げるかどうかということにつきましては、そのときの状態において、医療の状態なり保険財政の状態なりというものをにらみ合わせまして、そして時期をきめて、それについて諮問することになるわけであります。できましたならば、予算を組む前にそういうことをした方がいいという御意見でございますけれども、御承知のように、今日の国家予算の組み方というものは、まず予算の審議にいたしましても三カ月間はかかります。国会に提出いたします前に政府案を決定いたしますが、事実問題として、政府でもって案を決定いたします数カ月前に予算書というものは出して、相当積み重ね式において議論しておるわけです。その前にさらに審議会に諮問する。そして審議会といえども、きょう出してあした返事というわけにも参りませんから、一週間、二週間早くてもかかるといたしますと、やはりそこに諮問いたしましてからこれが現実に動き出すというまでにはやはり相当期間が事実かかるだろう。その間にはやはり季節の移りもございまして、私どもも趣旨はよくわかるのでございますけれども、遺憾ながら今日の状態といたしましては、これを事前にかけてその結論を待ってから初めて予算を組んで、これを国の予算に現わして云々ということはちょっと困難であろうか、そういうことでございますので、御了承いただきたいと思うのでございます。
  209. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 保険財政が黒字になってきたのは去年、ことしじゃないんです。もう昭和三十一年から黒字になり始めて三十二年には七十九億という黒字を出しております。健保の政府管掌の保険財政が好転して明るくなったという見通しは、ここ四年来続いておるわけであります。だからそれじゃそういうふうな情勢が続いていくとすれば、次にどういうふうなことをやっていこうかというふうな将来への見通しというものは、もう二、三年前から当然あなた方の頭の中には去来しておると思う。だから今おっしゃるように予算の編成の手続上、そうは急にできないのだというふうなことでは私は納得することはできないと思います。好転してくれば、一体どうしましょう、どういうふうな形でもって被保険者の給付内容をまず向上させるべきか、あるいはまたその料率を引き下げるべきか、どういう方針をとるべきかということについて、審議会に幾らでも相談する機会は私はゆっくりあったと思うのです。差し迫って今この問題としてすぐきめて下さいというふうな形でもって御相談なさらなくても、方針として、いずれをとるべきかというふうな形で、もう昨年に、あるいは一昨年にそういう問題については十分論議されてしかるべきで、しかもそれを何ら論議にかけないで、方針を政府の方ですでにおきめになってから御相談なさるというふうな形は、一方的にリーダー・シップをとって審議会を引きずっていくというふうな行政の姿であると言われても私は仕方がないと思うのです。だからこれはもう——これから御答弁があれば御答弁願ってもけっこうでございますけれども、しかしながら私は、今後はこういう方針をやめていただいて、各方面の意見を十分に聞いた後に運営の姿をきめていくという方針をとっていただくように大臣に特に私はお願いしておいて、次の問題に移っていきたいと思うのです。  そこで一部の健康保険組合の中では、予防給付を始めております。たとえば人間ドックなんかを認め出しております。健康保険では予防給付はしないという建前になっている。ところが組合管掌の方は予防給付を許しておられる。これはどういうことなんですか。
  210. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 確かに一部の組合で、いわゆる予防給付といいますか、人間ドック式なものを始めておるところはございます。これは例の健康保険の保険施設としてやっていることでございます。
  211. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 健康保険の組合の保険施設としてやっておる。だから組合の保険財政がゆっくりしておれば、それじゃどのような付加給付をやってもかまわぬ、こういうことなんですか。予防給付という形でやっていいのなら、どんなふうなことをやってもかまわぬということなんですか。
  212. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 この根拠は健康保険法の第二十三条で「保険者ハ被保険者及被扶養者ノ疾病若ハ負傷ノ療養又ハ被保険者及被扶養者ノ健康ノ保持増進ノ為必要ナル施設ヲ為シ」ということでございまして、まあお尋ねの趣旨もそうむちゃな給付ということを予想してのことじゃないと思います。当然疾病を予防するのに役立つような施設、あるいは平素から健康の保持、増進に貢献するような施設というものが入ってくるわけです。その範囲は、いろいろそのときによってまた多少のあれはございましょうが、全般的に申しますれば、今の範囲を出ないでしかるべきものだと考えております。
  213. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 私は人間ドックであるとか、そういう給付に反対であるということを申しておるのではございません。非常にけっこうなことだと思うのです。しかしながら組合管掌のなにでもって、そのようにして健康の保持増進に役立つことを給付として給付することを認めておられるなら、政府管掌においても、私は財政の許す範囲においてそういうことをお始めになるべきだ、やっていただかなければならない、こういうふうに思うのでございますけれども、それについて、これは大臣から一つ御答弁願いたいと思います。健康保険政策の一つの転換になる問題でございますから、大きな問題でございます。ここまで黒字が出てきて保険料率まで下げようというふうな状態になっておるときに、被保険者は給付内容の向上を望んでおるのです。こういうときには、その料率を引き下げるよりも、むしろ進んでそちらに行かれるべきが当然であるのに、それを顧みずに、被保険者の願いを振り捨ててそれでもって料率引き下げに進む、それで予防給付はやらない、こういうふうなことじゃ私はいけないと思うのです。だからこの際、料率を引き下げてもまだ財源的にゆとりがあるのなら、料率引き下げを思いとどまってでも予防医療給付というものに、たとい一部でもぼつぼつ踏み切らるべきである、このように思うのですが、大臣のお考えを承りたい。
  214. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 私も就任当時そういう御説を方々から伺ったこともございました。保険財政が許し、あるいは国民医療体系というものの向上をはかるということ寝れば、私は将来——今直ちにというわけにも保険財政の方からむずかしいだろうと思いますけれども、なるべくそういう方向に向かって将来は努力していくことが国民体位の体質改善あるいは疾病予防、そういうふうなことになるのではなかろうか。今はっきりしたお答えはできませんけれども、さような思想のもとにおいて考えております。
  215. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 局長にお伺いいたしますが、料率二%引き下げとしてどれだけ費用がかかるのですか。
  216. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 二%じゃありません。千分の二でございます。大体二十六億くらいでございます。たぶんお尋ねはそれを下げるよりもそれをしろということであろうと思いますので、そのお答えをいたしますが、今度千分の六十五から二を下げるということを私ども念願して社会保険審議会に諮問いたしました趣旨は、御承知の通り健康保険の料率というものは現在の千分の六十が恒常料率になっておりますが、いろいろなことでもって足らなくなる場合がありあるいは余る場合があるということで、全部千分の五ずつ上下に差を設けまして、その間において厚生大臣がそのときに応じて処置してよろしい、こういうことになっておるわけでございます。その法律上認められた権限の範囲内において厚生大臣は今日どうしておるかと申しますと、先般お尋ねの赤字時代のときに料率を緊急分の五を使いまして、千分の六十五にいたしました。千分の六十五で今ぎりぎりのところにきておるわけでございまして、これでもし今後かりにまた医療の進歩とかあるいは大疾病でも起こりまして、なお財政が苦しくなるといたしますと、もうこれ以上げることができませんので、おのずから法律改正をお願いするということになりまして、手間もとるわけでございます。そこで私どもといたしましては、少なくとも千分の六十というものは恒常料率であるという現行の建前のもとにおきましては、六十五の満度まで持っておったのでは、どうも今後の対策にゆとりがない。こういうことで、幸いにいたしまして若干の黒字ができたこの機会に、少しゆとりを持っておきたいということで、二だけを下げるということでございます。これは将来、先ほど大臣がお答えをいたしましたように、給付内容の改善ということも、お話しのように、私どもいよいよ皆保険になったあとは一そう考えて参らねばならないと思います。しかし、それは何も健康保険だけでございません。これからはやはり各種の社会医療保険のの各制度とのバランスを考えながら調整しつつ持って参らねばなりません。そういうようなことによって内容をよくする。そのためにまた料率を上げるということが参りましたならば、私はこれをまた上げるということもいいじゃないか、あるいはまた赤字時代が参りましたならば、これは上げる、料率は少し調節弁としてこれを使いたい。こういう考えでございまして、ただ、今日のところではそれが満度にきておるために調節弁の役目を果たしておりません。上がりっぱなしということでございまして、この点がどうも私ども実際の行政に当たる者としては心配でございまするので、この機会に若干下げさしていただきたい。こういうようなことでございまして、御指摘のように、給付の内容の改善、あるいはそういう保険施設をよくしていくということにつきましては、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、私どもこれは考えて参らなければならぬ、かように考えております。
  217. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 千分の二の料率の引き下げは調節弁だ、こういうふうな御答弁でございます。ところが、先ほど大臣は私に三十億を五億に減らしたのは、保険財政がきつくなればまたふやすのだ、こういうふうな御答弁でございましたが、これは調節弁だというのですね。だから二つの調節弁ができたわけでございまして、私は二つの調節弁は要らないと思う。調節弁はすでに大臣の先ほどの御答弁であるのでありますから、この際はもうそのような調節弁を二重にツー・クッションを置かなくても、すでに調節弁はあるのだから、財源一ぱいに給付内容の向上その他に努力していただいてしかるべきだと私は思うのでありますが、大臣のお考えはどうですか。
  218. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 二つながらに考えられますので、その点につきましては、十分御意見を尊重いたしまして、検討いたしたいと思います。
  219. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そこで給付内容の向上でありますが、もう一つその前に保険局長にお伺いしたいのですが、入院料の一部負担の三十円の徴収ですね、これをやめると、どのぐらいの財政的な支出を招くのでしょうか。
  220. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 三十三年度の決算で大体二億三千万でございます。三十四年度もそれより若干ふえて、大体二億六千万ぐらいかと今のところ思っております。
  221. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 それからもう一つ、初診のとき五十円引き上げになった分をもとへ戻すと、どれくらいになるのですか。
  222. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 初診だけですね。
  223. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 初診だけです。
  224. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 三十三年度のあれでは、推定でございますが、約七億六千万、三十四年度で約九億二千万と推定しております。
  225. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 この初診のときの五十円が百円になっておるのは、このごろの物価のことでございますから、これは私はまだいいとも思うのですけれども、しかし入院料、これは一週間くらいの入院ならそれほどこたえませんが、一月、二月になってくると、相当負担になると思う。と申しますのは、入院いたしますと、傷病手当金は六割に減ってしまう。だから、平生よりも収入は四割欠損になる。四割欠損になって、しかも食事の給与が病院でかりにあったといたしましても、病院へのお見舞その他でもって相当雑費がかかる。だからこの点は、入院料の一部負担を廃止するということは、これは政府が三十億から五億に飛躍的に政府負担を少なくされるという場合には、せめてこれくらいはもとに戻すのがまず当然ではないかと思うのです。それは給付内容の向上ではございませんが、もう一つ、給付内容の向上の一つとしてかなり大きな問題になりますけれども、この際二十六億の今の料率引き下げの財源をやはり給付内容の向上に向けていただいて、助産の給付に踏み切っていただくべきではないかと思います。私はそういう時代にきていると思うのです。助産の給付を今まで言われながら、やはりこれは病気でない、生理現象だ、こういうふうな理由をもって助産の給付に踏み切られなかったと思うのでありますが、私は助産の給付というものは、必ずしも医療の給付でないとは言えないと思うのです。これは生理現象であるとのみ言い切ることはできないと思いますが、これについては、局長なり、あるいは館林さんあたりの御意見でもけっこうでございますが、それについての見解を承りたいのであります。
  226. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 最初の入院の一部負担でございますが、御承知の通り、一カ月間を限って三十円ずつ毎日取る。これまた岡本委員御承知のように、大体これを取りました趣旨は、今日病気になりまして入院を要するという場合におきましても、ある地域に住んでおる方々は、病院がそばにあるから、そこへ入りますと、給付としては、被保険者の場合にはまるがかえ病院で見ていただく。食事までも病院の方で出してもらう、特別な食事でなくても出してもらう。それから同じような疾病状態にある人も、たまたまその地域に病院がないために自宅でもって療養せざるを得なくなる。そういう場合におきましては、医療の方はお医者さんがして下さいますけれども、食事の方は手前で持たなければいかぬ。こういうふうに、同じ医療保険の恩恵を受ける場合におきまして、患者相互間におきましても、今日の日本の状態におきましては遺憾ながらそこに若干の差がある。このことはしょうがないじゃないかといえばそれきりでございますけれども、またそこには少しバランスというものも考えまして、せめてその食費代の一部ということで三十円ということがきまったと思う。三十円必ずしもそれでバランスがとれているとも思えませんけれども、そこは気は心と申しますか、そういうようなことをしておるわけであります。従いまして、この点については、先ほど大臣からも御答弁ございましたように、私ども今すぐにこれを廃止するということは考えておらないわけでございまして、将来皆保険になりました場合において、保険の内容をよくするということにはわれわれ従来以上に真剣に取っ組んで参らなければなりません。その過程におきまして、他の制度の改善等ともにらみ合わせてこれを考えて参る、かように考ております。第二の点の助産の給付の点でございますけれども、確かにただいまの健康保険におきましては、助産の方は現物給付に相なっておりません。国民健康保険法の方は、これは条例によって現物給付をなし得るような余地が開かれておりますが、これは私どもとしては今後検討して参らなければならないところかと考えております。
  227. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 この出産の経済的な負担は被保険者にとって大きな問題なんです。ことに女子の勤労者が相当賃金です。標準報酬を調べるとすぐわかると思いますが、今、政府管掌の女子従業員の標準報酬というものは相当低いのです。その半額が給付されるわけでございます。だから、相当大きな赤になるわけで、しかも助産行為以外に、出産に伴ういろいろの費用が必要なものでありますから、勢い出産によるところの経済的な負担というものは被保険者に大きな重圧になっているのです。そのことを解除するためには、やはり助産の現物給付というものをこの際踏み切っていただいた方がいいのではないか。もう一つは配偶者の場合には千円ぽっきりです。だから勢い非常に出産というものが大きな経済的な負担になっておるわけでございます。同時にまたもう一つ、このごろ都市では自宅で出産をやらないで病院で出産をやるようになって参りました。そういたしますと、病院で出産をする場合にいろいろな矛盾があるのです。たとえていえば、正常分べんであれば給付対象にならないのです。何かちょっとした事故が起これば給付対象になるのです。そこに非常な大きな患者の負担の開きが出てくるわけです。しかもそれが、どこからどこまでが一体給付の対象になるような異常の経過なのか、そういう限界の置きどころが非常にむずかしいのです。だから療養担当者の側でも、その限界の置きどころに非常に苦慮しますし、また被保険者の側にとっても、ある場合には医療の給付の対象になる、ある場合にはならない。甲の被保険者は給付対象になって給付されている、乙の方は給付されておらない。助産の経過が大して違いない。どちらもかりに非常に順調にいった。ただ少し裂傷が入ったから縫合をやるということだけでもって給付対象なる。あるいはそのあとで膀胱炎を起こして少し熱を出した。それでもって給付対象になる。片一方は順調にいったから給付対象にならない。そうなって参りますると、順調に分べんして、順調に産褥期が経過する方が患者のためにしあわせなのやら、あるいはちょっとくらい異常があった方が患者のために都合がいいのやら、変な現象があって、非常に大きな矛盾をはらんでいるのです。こういうような矛盾を解消するための努力というものはしていただかなければならないと思いますし、出産そのものは、私自身いつも思うことですが、これはりっぱな医療の対象であると思うのです。なるほどあなた方はそれは自然現象だ、こういうふうに言っておられます。しかしながら、ことしの厚生白書を見ましても、出産一万人に対して十五人のお産に関係のある死亡率が出ている。その中にはたとえば妊娠前期のいろいろな病気というものもございます。しかしながらそういうものを差し引きましても、出産と関連して死亡する率は出産一万に対して十人を割らないと思うのです。だから言いかえますと、千のお産に対して一人の産婦が死ぬのです。こういう大きな危険をはらんだことが、これが生理現象だ、そんなものは医療の対象にならないのだというような考え方の中に、私は大きな人命軽視があると思うのです。千人のお産に一人死ぬのだ。しかもそのほかに、医療行為でもってようやく危ない命を助かっているという人がまだたくさんいる。千人に何人の人が医者のごやっかいにならなければならないかわからない。しかもそのうち一人は死んでいる。これほど大きな危険をはらんだ出産の行為というもの、これが生理現象だ、だから医療の対象にならないのだ、こんなものの考え方の中に、あなた方の出産というものに対する大きな認識の不足があると思うのであります。これは私は厚生大臣のお考えを承りたいと思うのですが、私の今言う考えは間違いでしょうか、あなたから教えていただきたい。
  228. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 助産に対する給付ということは、今の保険経済から見まして、あるいは従来取り扱った保険制度から見まして、なかなか重大なことであろうと思います。しかし、お説の通り一万人に十何人もの死亡があるということになりましたり、あるいは出産時におきましての余病の併発等を考えますならば、十分これから検討いたしてみたい、かように考えます。
  229. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 ちょうど三日前に皇孫殿下が御誕生になって、世をあげて皇孫ブ—ムでお祝いがされております。私はあのテレビを見、また新聞の記事を見て、国民の多くが一人の皇孫殿下の誕生を喜ぶと一緒に、その出産の安全をみんなして祈っておったと思うのです。しかし、片一方ではこのような出産が行なわれているのに、社会の片すみでは、ほんとうに見捨てられたような姿で、さびしく陋屋の不衛生な不潔な中で子供が生まれて、ボロにくるまれているというふうなことがあるのです。少なくも、すべての人間がこの世に出てくるときに、その母子ともの健全を願ってやるということは、厚生行政の中の大きな願いでなければならぬと私は思うのです。だから、ことしは皇孫殿下が生誕されたという一つの記念事業として、厚生行政の中に分べん給付というものを取り入れるというふうな方針を打ち出していただくことを、特にこの機会にお願いしておきたいと思います。またそういうような一つの大きな財源が要りますが、しかしながら、そういう大きなことを踏み出すには、何か一つの踏み切りがなくちゃならないですから、一つこういうおめでたい年でありますから、そういう機会厚生省もぜひそれを取り上げて考えていただきたいと思うのです。もうちょっと、今の出産の問題についてなんですが、出産を給付対象にすると、保険財政の上にどのくらいの影響がくるというふうなお考えを持っておられますか。計算してみられたことがあるでしょうか。
  230. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これはまだしかと計算しておらないわけですが、とり方をどうとるか、やはり検討してみると、いろいろとり方いかんにもよります。すべての人が病院かもしくは産院に行くと仮定すれば、相当な額になる。今の日本においては、お話しのように、最近は都市ではだいぶ入院出産というのが多うございますけれども、いなかでは自宅あるいは里に帰って出産するというような者があるわけです。その現実から言いますと、家庭分べんというようなもの、その辺のところがちょっとつかめませんので、まだ数字にはいたしておりません。その額の差は相当大きいかと思いますが、まだしかとした数字は持っておりません。
  231. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 社会保障年鑑の裏の表の十六ページのところを、もし持っておりましたら見ていただくといいと思いますが、政府管掌の健康保険について、私は自分でどれくらい財源が要るのか計算してみたのですが、分べん費の支出が五八年、つまり三十三年ですが、三十三年では分べん費の件数が四万四千六百六十になっている。それから出産手当金の支出の件数が五万一千百六十三になっております。それからその数字でもって計算して参りますと、病院での分べんあるいは助産婦に往診してもらって分べんしていただくというふうなものを平均いたしましてかりに七百点、これはかなり私は費用がかかるように計算しています。ゆとりを見て計算しているつもりですが、かりに七百点と仮定いたしますと、四万四千六百六十に七千円をかけると三億千二百万円になる。それから出産手当金をもらっている家族の方の何は五万一千ですから、大体それと少し多いくらいのお金で、その半額になる。だから結局五、六億のお金でもって、政府管掌の分については分べんの給付ができることになるわけですが、どうですか館林さん。
  232. 館林宣夫

    ○館林説明員 妊娠がきまりまして出産までの間には、相当期間があるわけであります。その間ときどき診察を受ける。また、先ほど局長からお話がありましたように、入院であれば入院料が要るわけであります。この入院の期間が幾日であるか、そういうようなこと、あるいは自宅分べんいたしましても、助産婦が分べん後におきましても再々通ってくるわけでございまして、そういう回数がどのくらいであるかというような点を考えますと、必ずしもこまかい計算ができにくい事情にございます。感じとして申し上げますと、七百点ではなかなかむずかしい面もあるかというような感じを受けるわけであります。
  233. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 ここにある看護婦の家計表の中から、出産費用をずっと抜いた表がありますが、これはたしか社会保障講座という、大内兵衛さんの編集せられる書物でありますが、その中の表を見ますと、六日間の入院費にプラス分べん費でもって八千円要ったというふうに書いてございますが、これはおそらくその看護婦が、自分のところあるいはどこか公立病院、そういうところへ分べんのときに入院して、それでもって一応そういうふうな保険点数に近い単価で払った診療費であろうと思います。しかしながら、これは自費で入っておるのでありますから、やや高くついているのじゃないかと思うのです。もしあなた方が給付の対象として点数をおきめになる場合には、とてもこんなになるような点数はおきめにならない。だから私は、これはこれプラス五カ月以後の定期の診察を二回受けた——病気のときには、この人は健康保険に当然かかっていくのですから、だから定期の診察を二回受けて八千二百円相当分が一応七百点になるだろう。つまり八千二百円ですから八百二十点ですが、その八百二十点が七百点くらいになるだろう。しかしながら、これにさらに自宅分べんという考え方をその中へ取り入れていけば、もっと減るのです。しかし物事を計算していく場合には、やはりややゆとりを見た計算をしなければならないというのでそういう計算をして、結局六億か七億程度でもって政府管掌の健康保険については分べんの給付ができるという見通しが立ったから、そんなことならいとやすいことじゃないか。少なくも政府管掌に関する限りはやさしいことじゃないか。しかしながら保険財政があまり楽じゃない。日雇い健保になれば負担が重くなろうし、さらにまた問題は国民健康保険であると思うのです。しかしそういうふうなことも、少なくとも今時世が、このように医療保障の問題が焦点を浴び、さらにまた保険財政もやや好転しつつあって、予防給付を始めてもいいというふうな段階になって、組合管掌の中へは現実にそれが取り入れられてきて、人間ドックというようなものが、長期給付の形に見られておる。一方では組合管掌のような比較的平生高賃金を受け、勤労者の中では割合ゆとりのある生活のできる人たちの間では、そういうふうな十分な医療の給付が受けられるにもかかわらず、政府管掌のように、日ごろ低賃金であえぎ、出産の費用の準備もできないという一連の貧しい人たちが、不健康な状態の中でその日その日を過ごさねばならぬということであるなら、これはやはり政府は全体的な均衡の中から考え——先ほど保険財政、他の保険経済との均衡も考えてというようなことでございますが、やはり財政的な均衡だけではなしに、給付の上での均衡ということも考えていただきたい。これは財源的にやればやれないことはない。ただやろうという意欲を持っていないからやれないのであって、やろうという気で計算していったらきっとやれるという数字が出てくるだろうと思うのです。一つこの際大臣の勇断を望んでやまないのですが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  234. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 私も、この社会におけるところの婦人対策というか、厚生行政としてできるだけそういうような考え方を持ちたい、かように考えております。しかし、これはなかなか面積が広いものでございますから、十分これから検討してみたいと思っております。
  235. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 お約束の一時間という時間が参りましたので、健康保険についてもう一問だけお伺いをしておきたいと思います。  それは、最近私の属している事業所へ、健康保険委員というものを出してくれ、こういうふうに社会保険出張所から申して参りました。健康保険に私の方の事業所が加入いたしましてから五、六年になるのですが、こういうことを言ってきたのは初めてでございますが、これはどういう目的を持って発生し、どういう意図で運営をしておられるのか、一つ承りたいと思います。
  236. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 政府管掌の健康保険の事業所は、御承知の通り大体中小事業所でございますので、せっかくこういう社会保険の制度がありましても、そこの中において被保険者の人たちによく制度の趣旨が徹底しないというきらいなしとしないのでございます。これはもちろん役所の方でも指導せねばなりませんことは申すまでもございませんけれども、同時にその中におきまして、そういう被保険者の人たちに、社会保険のいろいろな制度というものについて、こういう制度があるのだということをPRをしていただいたり、また社会保険というものにおけるいわゆる相互扶助というようなものがいかに大事であるかということ、あるいは病気になったときの受療手続その他というようなものをいろいろ相談相手になってやる。そういうような啓蒙とか相談、指導というようなことのために置いておる制度であります。ただこれは、そこの会社の多分どなたか適当な方にお願いして、なっていただいているのであろうと思うわけです。別段法律の根拠があるわけではございませんで、これはやり方いかんによっては、今のような政府管掌の事業所においては非常に効果が上がっていくということで、実施をいたしておるわけであります。これはだいぶ前から実施をしておると思いますが、今のお話のようなのは、どういうことで出せといってきたのかちょっとわかりませんけれども、置いておるのはそういう趣旨であります。
  237. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 私も健康保険委員というものがあるということを知ったのはつい最近なのです。ところが聞きますと、地域によってはこれが相当活動しているというふうに聞きます。最初政府の方で赤字対策で、受診率を下げるために被保険者の指導をやるというふうななにで設けられた制度の模様でございますけれども、これは非常にいい制度であると私は思います。いい制度であるだけに、これを今までなぜもっと活用しなかったか。もっとこれを地域的に立派な組織に作り上げて、それでもってもっと被保険者の福祉の向上をお考えにならなかったのか。ことに今まで私の方では五、六年もたって一ぺんも出せと言ってこなかったのを、今度初めて出せと言ってこられたくらい、今までは運営が等閑視されておったと思うのです。しかしながら実際的には、こういうふうな組織があれば、これがやはり被保険者の中の代表になると思う。その職場から一人ずつ健康保険委員を出してくるということは、被保険者の代表と、地方でいえば保険課、究極的にいえば保険局と被保険者代表のつながりであると思うのです。そしてまた被保険者の代表の中から、保険診療をああもしてもらいたい、こうもしてもらいたいという意見が被保険者の声として出てくると思う。今までそういうような制度を作りながら、単に上から政府の方針を流していく、昔でいう戦争中の上意下達といいますか、そういうような一方的な機関であるという考え方においてこの制度をおもちになったところに、この制度がうまく運用されなかった原因があるのではないかと思うのですが、その点についていかがお考えでしょうか。
  238. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは赤字の問題のために設けたのではございません。その前からある制度でございます。お話しのように、これが非常に活躍しておるところでは相当の実績が上がっておるわけでございますし、私どもといたしましては、皆保険が中心になって参りました今後、いろいろ保険の内容を重視して参り、また保険の運営を効率的に運営して参らねばならぬときがもう来たというふうに考えて、今せっかくいろいろと検討しておるところでございます。その一つといたしまして、やはり必要なものには憎みなく給付をすると同時に、またお互いが平素から注意いたしまして、むだな病気になって出さぬでもいいような支出はしないようにするということは、健康保険制度の全体的の被保険者の方々にもよくその点は考えていただいて、そうして十分健康にも留意していただくための指導をやっていただくことが職場々々に必要だと思う。そういう点から御指摘の健康保険委員というものについては、従来の点について御批判があれば、私どもも至らない点があったと思いますが、これはこういう機会にさらに活用を強化して——これは何も赤字対策なんていうことに使うつもりは毛頭ございません。制度自体がよく理解され、そしてそれがうまくその職場で運用されるように、被保険者の方々の指導もしまた場合によっては、むずかしい法規なり手続でございますから相談相手にもなってやる。こういう方面でやっていただきますならば、健康保険制度というものはその職場々々で喜ばれるものになる、かような考えで参ります。ちょうど今御指摘を受けたということは大へん私どもはありがたいことでありますので、その線に沿って十分検討して参りたいと思います。
  239. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 今のお答えの中の指導もし運営もうまくやっていくという言葉の中に、私は足りないところがあると思います。今度は被保険者の気持を直接じかに聞いてやる。そしてそれをまた保険行政の中に生かしていく、こういう下からくみ取っていくという気持が、あなたの御答弁の中になかったところに、やはりこれの運営の欠陥がそのままあるのじゃないか、私はこう思うのです。それで令強制適用になるべき事業所でもって、まだ健康保険に加入されておらないというのがどれくらいあり、それはつかめていないのだからわからないといえばそれまでですが、推定どのくらい被保険者数があるべきだというふうに推定しておられますか。
  240. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 三十四年といいますから、昨年の八月ごろを現在として、私どもの推計で約六十三万人ほどが未適用であろう、こういう推計をいたしております。
  241. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そういたしますと、六十三万人というお説でございますが、ある人の推計でありますと百三十万というような数字を出しておりますけれども、これはあなたの方のなにをそのまま受け取ったといたしまして、一応七百三十万という政府管掌の被保険者の現数から見たら、それの約一割に該当する人たちが、当然健康保険の適用を受けられるべきなににありながら、今度国民皆保険ということになりますと、今度は国保の中へ押し流されていくということになるのでございますけれど、政府の方ではそれに対してどういう手を打って、どういう網をもってそれをすくい上げていく方針であるのか、その方針を一つ承りたいと思います。
  242. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 数字がこまかくなりましたので、便宜私からお答えさせていただきます。  先ほど局長が申し上げましたように、昨年の八月が約六十三万でございます。現在その中で最も多いと見込んでおりますのは東京でございます。東京都は十二月一日から国保を実施いたしまして、この機会に東京都では医療保険の適用を受けていない人の悉皆調査をいたしました。その中で相当数の未適用者があるという見込みを立てまして、関係労働基準監督署その他とも打ち合わせまして、現在努力してこれを一掃するように努めております。見込みといたしましては、本年度三月末までに約三十万、それから努力してもあと十万くらいは四月以降に残るだろうという予想を立てております。それからその他のものにつきましては、私どもの見通しでは、おもに五大市と福岡のような大都市にあるものと考えておりますので、この辺を三十五年度中に、皆保険を実施する機会をとらえまして、できるだけこれを解消する予定で、予算もそういうものが全部入ってくる場合のことを予想して編成しております。
  243. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 今健康保険のいろいろな代理業者といいますか、そういうふうなものがばっこして、この未適用の事業所へ行って、お前のところは健康保険へ入っておらぬが、それはけしからぬ。もしめっかったらひどい罰金を食うから、一つ運動してやるから、無事になにをするから、手続をみなおれがしてやるからというふうなことで、手数料を相当高額にふっかけて、それで社会保険出張所へ行ってこの手続をして歩いておるというふうなのが相当出てきておるというようなことを聞くのです。また一面では、医療担当者のところへ行って、その請求書をかわりに書いて、それでもっていろいろな手続の代行をやるというふうなものも出てきて、その健康保険の事務の煩瑣、あるいは政府が健康保険によっていろいろな点をなおざりにしておったことを逆に利用して、それでもって生活の資にするというような、健康保険にとっての寄生虫というふうな存在が相当ふえてきておるということを、私は見聞きするのですが、局長はそういうことを御存じですか。
  244. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 いやそういうちゃっかりした者がおるであろうということは、また実際何人かおるというふうなことも聞いたことはございます。もちろんはっきりつかめればそういう者を許しておくわけにいきませんから、処置いたしますが、まあ東京都の方でも、やはりそういう点に対して都庁として心配しておりまして、今聞いたのですが、都民の時間などを利用してそういうことをみんなにひっかからないようにということでやっておるそうでございます。とにかくこういうことは、ひっかけられる方がやはりうしろめたいものを持っておるために、なかなか表に出てこないというのでずるずるになっておるのが、こういう種類のものを発生したことの常でございます。その点は何と申しましても早く保険の方に入ってくれればいいのでありますけれども、これはこっちはそう思っておりましても、そちらの事業所の方はいろいろな都合があって、逃げようというふうなことをするのがある。しかし、最近は被保険者の人たちもだいぶ自覚して参りまして、その職場に健康保険制度がなければ行かぬというふうなことも間々聞くことがあるので、これは私は一つの大へんけっこうな進歩であると思う。幾ら上の方からどうこう言いましても、なかなか漏れというものはあるのであります。肝心の被保険者の人たちが、制度を適用してくれないようなところには働かぬということは労働者の自覚でありまして、これは非常な進歩であります。これもいわゆる雇用市場が売手市場か買手市場かということで違うと思います。しかし何といたしましても、そういう方向に自覚が進むということは基本であろうかと思いますが、この点につきましてはどうしたらよいか、今すぐお答えできませんけれども、十分に注意して参りたいと思います。
  245. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そういうふうなブローカ—のようななにが出てくるということの中にも保険行政の——結局私はやはり人手の問題だと思う。社会保険出張所に人が足りないから勢いいろいろな事業所に十分目が届かない。たとえば監督署、基準局なんかと十分に連絡をとれば、五人以上の適用事業所があるということは、それは努力をすればすぐ発見できるし、発見できれば、そこへ行ってあなたの方は一つ入りなさいというふうな指導をやれば、これはもう簡単に指導ができることを、あなたの方で今までそういう指導をなさらなかったから、そういうふうななにが出てきたと思うのです。しかし、定員法とか予算とかいうような関係でそういうことが今まで困難であった事情もわかる。そういうようなことが困難であれば、やはり今の保険委員の制度なんかを利用して、不適用工場なんかを、ある事業場の隣、下請工場というふうに、保険委員を出しているところの事業場、その周辺、あるいは関連産業の中にそういうふうな不適用事業場があれば、そういう人たちを通じて指導して、今まで網の目から漏れていた人たちをこの制度の中に拾い上げていくという努力が、今まで幾らでもできたと思うのです。だからこれから後も、こういうふうな保険委員の制度を、これは被保険者の声を聞く、また被保険者が自主的に健康保険をよくしていこうというふうな形の存在となって将来伸びていくように、あなたの方でもこの制度をよく利用し、この制度をいかに活用するか、またできればそれに何らかの法的な根拠を作って被保険者の手によっても——もちろんこれは保険者と被保険者と療養担当者の三者によってこの制度をよくしていかなければなりませんが、今まで被保険者をその中に入れていくという点については一つの盲点があった、抜かりがあったと思うのです。だから被保険者の代表もこの制度の中に入れて、今後うまく運用されるよう希望いたしまして、大へんおそくなりましたが、きょうはこの程度で打ち切ります。
  246. 北澤直吉

    北澤主査 残余の質疑は明二十六日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十二分散会