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1960-02-27 第34回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十七日(土曜日)     午前十時二十八分開議  出席分科員    主査 早稻田柳右エ門君       青木  正君    三浦 一雄君       井手 以誠君    石村 英雄君       河野  密君    中嶋 英夫君       横路 節雄君    大貫 大八君    兼務      茜ケ久保重光君    田中織之進君       山本 勝市君  出席国務大臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  木村 三男君         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奧野 誠亮君         総理府事務官         (自治庁税務局         長)      後藤田正晴君         検     事         (大臣官房経理         部長)     大澤 一郎君         法務事務官         (矯正局長)  渡部 善信君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         大蔵事務官         (大臣官房長) 宮川新一郎君         大蔵事務官         (大臣官房会計         課長)     牧野 誠一君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      船後 正道君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         国税庁長官   北島 武雄君  分科員外出席者         衆議院参事         (庶務部長)  知野 虎雄君         衆議院参事         (管理部長)  藤野 重信君         大蔵事務官         (大臣官房地方         課長)     根本  守君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村上孝太郎君         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      川村博太郎君         大蔵事務官         (印刷局長)  亀岡 康夫君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      白石 正雄君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      泉 美之松君         最高裁判所事務         総長      横田 正俊君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      栗本 一夫君     ————————————— 二月二十七日  分科員岡良一君及び河野密委員辞任につき、  その補欠として石村英雄君及び中嶋英夫君が委  員長指名分科員に選任された。 同 日  分科員石村英雄君及び中嶋英夫委員辞任につ  き、その補欠として岡良一君及び河野密君が委  員長指名分科員に選任された。 同 日  第二分科員茜ケ久保重光君、田中織之進君及び  第三分科員山本勝市君が本分科兼務となつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画  庁を除く)、法務省及び大蔵省所管  昭和三十五年度特別会計予算総理府及び大蔵  省所管  昭和三十五年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 これより第一分科会を開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣経済企画庁を除く総理府法務省及び大蔵省所管昭和三十五年度特別会計予算中、総理府及び大蔵省所管昭和三十五年度政府関係機関予算中、大蔵省所管を議題といたします。これより質疑を行ないます。河野密君。
  3. 河野密

    河野(密)分科員 簡単なことを二つほどお尋ねいたしたいと思います。一つは、大蔵省印刷局特別会計の問題でありますが、この特別会計において、新しい印刷機械購入することになっておるのでございますが、この新しい印刷機械購入する目的と申しましょうか、そういう点はどういうところにあるのでございましょうか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 印刷局機械相当老朽化しており、また、最近の日銀券発行が非常に枚数がふえております。そういう関係で、この要求にこたえるために、機械の整備をしよう、こういうことでございます。
  5. 河野密

    河野(密)分科員 印刷局の現在の予算によって見ますと、歳出の面において、職員の俸給というのは、昨年に比べて一億六千八百余万円ふえておるわけであります。これと見合って超過勤務手当が非常にふえておるのでありますが、四億七千万円ほどの超過勤務手当が計上されておりますが、この印刷局機械購入によって時間外労働をなくすというお考えでありますか、これをちょっと伺いたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 印刷局長からお答えいたさせます。
  7. 亀岡康夫

    亀岡説明員 私からかわりましてお答え申し上げます。ただいまお尋ねのございました超過勤務手当につきましては、本年度とほぼ同額計上されておりまして、増額ということはございません。それから機械購入に伴って超過勤務を少なくする考えかどうかという点でございますが、この機械購入につきましては、先ほど大臣からお答え申しました通り日銀券生産増加に伴います機械購入と、従来古くなっております機械を更新する、こういう意味でございまして、それによって別段超過勤務が影響されるという性格のものでございませんので、超過勤務につきましては、従来通り考えております。
  8. 河野密

    河野(密)分科員 従業員の方では、こういうように計算しておるようでございます。今度の印刷局でお買い求めになる機械は、非常に性能の高いものである。その性能の高いものでフルに運転するようになれば、現在の超過勤務というようなものはほとんどなくなっていくのではないか。そこでどういう年次計画によってこの超過勤務をなくしていくつもりであるか。現在は少し過重な超過勤務になっておるが、しかし、その超過勤務がどの程度に、たとえば超過勤務が二分の一に減るのはいつになるかというような、そういう年次計画というか、見通しを立てておられるに違いないが、それを一つはっきりしてほしい、こういう要求があるのですが、これはどうでしょうか。
  9. 亀岡康夫

    亀岡説明員 お答え申し上げます。ただいま超過勤務を減らしていく計画があるかどうかというお尋ねでございますが、この点につきましては、もちろん機械購入人員増加、こういう問題と関連して考えるべきであるとは存じますが、三十五年度におきましては、先ほど申しましたように、日本銀行券生産増加に伴う分と、従来の古い機械の更新、こういうものでありまして、来年度におきましては、超過勤務の漸減ということは考えておりません。ただ、将来におきまして日本銀行券生産数量がどうなるか、また印刷局の定員がどうなるか、これをにらみ合わせまして、超過勤務の問題も考えて参りたい、こういうように考えております。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのお尋ねは、今後の印刷機械の交替によって超勤をどうするかという、具体的な計画があるかというお尋ねでございましたが、印刷局長答弁は不十分でございますが、おそらくまだそこまでの計画ができていないのだ、かように思います。  ところで、超過勤務という問題は、いろいろ問題がございます。だから超過勤務定例勤務にならない、いわゆる勤務時間を縮小するということ、これは一つ考え方で、同時に、現従業員収入にも多分に影響があります。私どもは今日計画をいたしておりますのは、先ほど来申し上げますように、機械が非常に古いために、非能率といいますか、でき上がりの成績が非常に悪い、一ぺんで規格に合わないものが相当出てくるような現状なんであります。しかも、最近の通貨量は非常にふえておりますから、そういう意味から、その方の需要があり、しかも今の機械を使ってはどうもロスが非常に多い、両面で因っている。どうしてもこれは新しくしていかなければならぬ。しかして新しくしていきますと、ただいまお尋ねになりましたように、必ず超勤が順次減っていくだろうし、また当局もそう考えるだろう、これは当然でございますが、私どもただいまのところは、さしあたり機械をかえると申しましても、人員整理の方向ではもちろんございません。しかし、今のように超過勤務定例になっていることは、労務管理の面から見まして、これが通常の状態だとは考えられない。しかし超勤による収入の増というものもございますから、その辺を十分にらみ合わせて処置して参りたい。ただ、今お尋ねになりましたように、今後どのくらいの期間に超勤をなくしていく計画かと言われますと、まだただいまそこまで持っておらない、こういう事情でございます。
  11. 河野密

    河野(密)分科員 日本銀行券発行がふえておるということは、よくわかっておるのでありますが、新しい機械を入れる趣旨の中に、政府としてデノミネーション計画があるのではないか、こういうことも一般考えられておるのでありますが、一時盛んにいわれましたデノミネーションの問題を、印刷機械の方から言うのも変なものですけれども、これはどういうふうにお考えになっているか、これを一つお尋ねいたします。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 デノミネーション考え方はただいまございません。一時、選挙の当時でしたか、一昨年だいぶん問題が起こりましたが、これに対して政府の態度をはっきり明確にいたしました。基本的に申しますと、使いなれている通貨をかえるということは、よくよくでないとしてはいかぬ、かように考えておりますので、政府意見は非常にはっきりいたしております。
  13. 河野密

    河野(密)分科員 そうすると、印刷機械を更新して、新しい性能の高い機械を入れる、しかも、債務負担行為の方にも機械購入が入っておりますが、これは決してデノミネーションと関連を持っているものではない、こう考えてよろしいのですか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その通りでございます。
  15. 河野密

    河野(密)分科員 次に、私は管財局の方にお尋ねしたいと思うのですが、これは管財局長よく御承知のように、一昨年のこの分科会でもお尋ねをし、それから大蔵委員会で両度にわたってお尋ねをした問題でありますが、赤羽駐留軍のおりました兵器廠の跡のがけくずれ、一昨年の台風で、がけくずれによって死者八名、被害者相当数を出したという問題について、この国有財産所有主である国家において賠償責任があるのじゃないかということを、たびたび私はここで申し上げたのでありますが、その最後の別れと申しますか、最後結論は、判例にそういう事実があるならば、国家としても考えるべきものである、管財局長のそういう答弁があった。判例を調べたのでありますが、判例にそれと同じようなのがあるわけであります。賠償責任ありという判例があるわけでありますので、一つ大蔵省の見解を承りたいと思うのであります。これは古いのでありますけれども大審院の時代の判決でありますが、土地工作物とその所有者賠償責任、こういうので昭和三年六月七日の大審院判決にあるわけであります。「土地工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アルニ因リテ他人ニ損害ヲ生シタルトキハ其工作物所有者ハ過失ナキ場合ト錐カ賠償責ニ任スヘキモノトス」こういうのが大審院判決の要旨であります。そのあれは、「土地ニ接着シテ人工的作業ヲ為シタルニ依リテ成立セル物」は、すなわち工作物であって、その工作物瑕疵によって損害を生じたる場合においては、これはその所有者賠償責任がある、過失なき場合といえども賠償責任がある、こういう判例があるわけであります。これに対して、おそらく大蔵当局においてもこういうことは御存じのはずだと思うのでありますが、判例があったならば考慮しようということでありますので、調べました結果、判例があったわけでありますが、これは大蔵当局としてはどういうふうにお考えでありますか。
  16. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 御指摘の法律的な賠償責任の問題は、民法七百十七条によるいわゆる無過失責任規定によって、国が公的に損害賠償責任があるのではないかという点でございますが、その点の判例は、実は私の方でも調査をいたしたのでございますが、今回の事件にぴったり当てはまるような判例は実は見つからなかったのでございます。ただいま御指摘判例をもう少し私の方で勉強させていただきまして、結論を出したいと思うのでございますが、ただいままで私ども法務省と打ち合わせました結果によりますと、一昨年の赤羽のがけくずれにおきましては、いわゆる工作物瑕疵によるものではない、こういう結論になっております。がけ地そのもの工作物でないことは、これはまあ常識的に考えましても、当然そういうふうに考えられるのでございます。しからば土どめはどうかということでございますが、もともとこの条文によります工作物といいますのは、土地に接着して人工的な作業をなしたことによって成立したものかということでございます。土どめはその点に該当するわけでございますが、土どめ自体は、もともと危険防止のためにいたすものでございまして、ここに本条でいっております工作物は、他人に対して特に危険を及ぼすような可能性の大きいもの、そういう工作物を持っておった、あるいは所有しておったか、ないしは占有しておった場合に、過失有無を問わず責任を負わせるという規定でございまして、この土どめ自体は、もともとそういった危険性を防止するために設けたものでございまして、そういった意味合いからいたしましても、ここにいう工作物には該当しないと、法務省とも打ち合わせました結果、そういう結論になっておりまして、ただいまの判例とは、そういった点において多少違うのではないかというふうに解釈しておるわけでございます。
  17. 河野密

    河野(密)分科員 どこまでが土どめで、どれからが工作物かというその程度の問題は、非常にデリケートであると思うのでありますが、たとえば、ここに写真がありますが、レールを入れてあるという事実が証明されているし、それからコンクリートの一部が証明されておる、それからその上に排水溝のようなものがそこに設けられておった。その排水溝の残骸も残っておる。こういうような事態で、はだしてこれは工作物でないかどうかということは、検討の余地があると思うのであります。上どめであるから工作物でないとは私は言えないと思うのですが、これはその限界の問題になるのかもしれませんが、私は、これはことさらに大蔵省がこういう点を強弁されることは、少し不本意だと思うのでありまして、人命を損傷した以上は、相当責任を負わるべきはずのものである。しかも、その保存、それから補修等において非常に遺憾の点があったことは、駐留軍がそこに駐留しておったのでありますから、これはわれわれとしては、非常に遺憾の点が多かったと思うのでありまして、ここに写真もありますから、一つごらんいただいて、この点について十分お考えをいただきたいと思うのですが、いかがでありましょうか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 去る三十三年九月二十六日だったと思いますが、ただいま御指摘のような事故を不幸にして惹起し、十六戸の民家を破損し、八名の方のとうとい生命を失った。私も大へん同情申し上げております。ところで、国自身責任があるかどうかという問題になって参りますと、私どもは、災害をこうむられた方に対しての御同情という問題とは別に、やはり筋のある方法処理して参らなければならないのであります。先ほど判例もあるじゃないかというお話でございます。無過失責任によるその種の判例があることは存じておりますが、問題は、三十三年に起きたあの災害事故、これにぴったり合うようないわゆる条件が十分整備されているかどうかということが、実は問題ではないかと思います。今、土どめとか排水溝の話が出て、それは工作物であるとかどうとかという問題もさることですが、これが通常考えられるような豪雨において発生したのか、そこに責任があるかないかという問題に、重点があるのではないか、実はかように思います。もちろん、当時の異常豪雨がかかる災害を惹起したということが言えるでありましょうし、かような異常豪雨でも、十分に堅牢な工作物というか、土どめ方法が講ぜられたら、かような災害も起こらなかったであろう、かようなこともいわれるだろうと思いますが、普通民法で申しておりますのは、通常予見し得る範囲のことかどうかというところに、問題があるのじゃないかと思います。私どもも、事柄の性質上、被災者の方に非常に御同情申し上げましたので、何か処置すべき責務ありやいなやということで、学識経験者等を招致して、現地について実情をよく調べたわけであります。結局それらの結論では、異常豪雨に対する設備としては不十分だと思うが、普通考えられる状況の設備としては十分であった、こういうような判定を実は受けておるわけであります。御承知のように、国が賠償をいたします場合においては、国自身はり国債務は、それぞれの国民負担において実はできるものでございますので、ただ気持、感じだけで処理のできないものもございます。そういう意味では、やはり正確を期していかないと、私ども財政支出上の責任もあるわけでございますから、そういう意味で、大へんきゅうくつな話のようなことを申し上げて、いかにも御同情の点において薄いのではないかというような非難もあるのではないかと思いますが、決してそういうものではないことを御了承いただきたいと思います。国におきましては、一応の処理をいたしました。きわめて少額のお見舞いだけをいたしましたが、これは普通考えられる程度のものでございます。責任があるとすれば、もちろんそういうことでは済まないわけであります。ところで、十分責任有無を最終的に判定するのには一体どうなのだということになれば、これはもう裁判以外に方法はない。そういう場合に、大蔵省自身訴訟の当事者には今日はならないといいますか、国の代表者というものをはっきりきめまして、そうして訴訟手続をするわけですが、それをいたしますには、ただいま申し上げた、国の歳出国民負担につながっておるのだ、そういう意味で、いやしくも国の支出に関する限り、はっきりした根拠に基づかなければならない、疑わしき場合に適当にという処置ができない、こういうきゅうくつさのあることを、ぜひ御了承いただきたいと思います。
  19. 河野密

    河野(密)分科員 学者意見を徴したというのですが、学者は、このごろはどうも必ずしも公平な意見ばかりも吐かないのですし、もう少し一つ実情についてちょっと調べていただきたいと思うのであります。これは地元人たちの非常に強い要望でもあるし、国がこれだけ明確なこと——しかも駐留軍が占有しておったのですから、駐留軍過失があったことだけは、地元の人は十分認めているのです。そこに排水溝が全く埋まっておったとか、あるいは石炭がらをやたらに捨てたとかいうような問題がはっきりしておるので、ただ土どめであるとか工作物であるとかいうような、抽象的な議論ばかりではなしに、ぜひとも一つもう一ぺん御検討願いたい、こう思うのであります。材料は差し上げますから、これを一つ御検討願いたいと思うのであります。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまさらに検討しろということでございますから、この点は検討いたします。また、前回、河野議員から、自後の対策について強く御要望されました。そのときにも、私はお約束いたしまして、現地について直接実情を調べ、所要の処置をとるということを申しましたが、その方の工事は順調に進んだ、かように私は考えております。
  21. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 引き続きまして、石村英雄君。
  22. 石村英雄

    石村分科員 三十五年度税収見積もりに対して、少しお尋ねしてみたいと思います。これは大臣に御答弁いただければそれに越したことはありませんが、事務当局でけっこうであります。実はこの税収見通しというものは、われわれ野党のしろうとには手のつかないもので、幾らつついてみたってわけがわからないので、従来私はさじを投げておったのです。昨年も少し調べてみたいと思って、いろいろやったところが、やはり経済企画庁が出す国民所得見通しについても、暦年度、あるいは四半期ごとの三十五年度の予想というようなものでも出していただかないと、われわれには手がつかない、こう考えて、たしか宮川さんが企画庁官房長でおられたと思うのですが、当時のことですから、三十四年の暦年の見通し企画庁は立てておるかと、非公式ですが、こう聞きましたら、いやそんなことはしておりませんという話で、それじゃ処置なしだというので、やめてしまったこともあるわけなんです。しかし今年は、そうはいっても調べてみなければならぬと思って、いろいろやってみましたが、やはりわかりません。結論は、ちょうどいいようにも思われるし、過少のような数字も出てくるし、一方では過大な見積もりだというような数字も、数字のとり方によっては出てくるわけなんです。それで私は、今後政府は、来年度からでも、もっとこういう統計について、予測についても、あんな企画庁の三十五年度見通しという一本でなしに、四半期ごと見通しというようなものを、また今でいえば、三十四年度四半期ごとの実績あるいは見込みというようなものを、やはり国会にお出しになる必要があるのではないか、こう考えまして、それはぜひ出しましょうという大臣の御答弁をいただく意味で、お尋ねしたいと思います。まず、適当であると見られる数字から申し上げますと、三十四年度の当初予算編成当時の、三十四年度国民所得は八兆九千二百八十億円、これに対する一般会計関係税収、つまり、印紙収入及び専売益金を含めての話ですが、それは一兆二千四百十三億です。そこでこの負担率を見ますと、一三・九%、これに対して三十五年度予算は、国民所得を十兆四千六百億見て、今の専売益金を含めた一般会計税収と一口に申し上げますと、それは一兆四千七百三十億、負担率は一四・〇八%、わずかながら負担率が高く、〇・一八程度増加いたしております。世間では、この負担率が少し高くなっておるというので、いろいろ論議があるようですが、これは税制を改正しない、減税をやらない以上、所得がふえれば、今まで税金がかからぬ部面にかかってくるというようなこともあって、この程度増加ということは、減税しないのがいいとか悪いとかという点は別として、当然生まれる増加ではないか、こうしろうととしては考えられる。そうすると、この三十四年度の当初予算編成当時の租税負担率と、三十五年度予算を今編成されての租税負担率とは、まあ大体似たようなもので、ある程度増加は、税制改正をやって減税しない以上当然のことで、あまり見積もりに急激な変化はないというように受け取れるのです。そうすると、これは大へん政府見通しはごもっともでございますという結論になるわけですが、まずこの点どうお考えですか。私のあげた数字から見て、そういう判断が許されるかどうか。所得がふえれば当然税金はかかってくるから、負担率が高くなるのは当然だという解釈が妥当かどうか、お尋ねいたします。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 端的に表現すれば、御説の通りだと思います。先ほど来伺っておりまして、しろうとだとおっしゃいますけれども、とんでもないしろうとで、私自身非常にわからないことが多いのでありますから、御勉強していらっしゃると思います。ただいま御指摘通りです。税率がそのままであって、所得がふえたといえば、負担率がふえる、こういうことになるのは当然です。
  24. 石村英雄

    石村分科員 ところが、これだけでは当然だという結論が出ますが、次の数字から見ると、今度は税収は過小であるという結論が生まれるのです。それはどういう点の数字をあげるかというと、限界租税負担率というような言葉があるかないか、私は知りませんが、つまり、三十四年度の当初予算のときの国民所得の推定が八兆九千二百八十億、それに対する税収が一兆二千四百十三億、一方三十三年度の当初予算国民所得見積もりが八兆四千七百五十億、税収が一兆一千四百二十九億、そこで国民所得増加額を見ると四千五百三十億、一方税収増加額は九百八十四億、これもそろばん違いがあるかもしれません。その点自信を持って、責任を持ってこうだときめつける考えはありませんが、違っておれば違っておるとおっしゃっていただきたいのですが、そうすると、この四千五百三十億の国民所得増加に対する税収増加九百八十四億を割ってみると——それを私は便宜上、限界租税負担率という言葉で言っておるのですが、これもそういう言葉が適当な言葉であるかどうか知りません。そうすると、これは二一・七二%強、約二二%の負担率になるわけなんです。ところが、三十五年度の当初予算に対して、同じように国民所得の当初見積もりというものと、三十四年度の分とを比較してみますと、昭和三十五年度は、国民所得は一兆五千三百二十億増加で、税収は二千二百十七億増加、そこで負担率を見ると一五・一二四%、まあ一五%程度、三十四年度のときには限界租税負担率を二二%弱と見、今度は一五%わずかの強ですが、一五%程度しか見ないということになりますと、三十四年度の当初見積もりのときの見通しが正しいと考えると、二二%が一五%に下がるというのは、三十五年度税収見通しが過小ではないかという疑問が生まれてくるわけなんです。この点はいかがでございますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だんだんくろうとのお尋ねになりますので、しろうとの私に十分答えられないかと思います。従いまして、詳細は当局から説明させますが、ただいまおあげになりました限界負担率、さらにまた、私ども税でよく使っております弾力性係数、こういうようなものは、ただいま言われますように、国民所得と税との関係で、限界負担率というような言葉を使っておりますが、いわゆる国民所得が出た、課税所得が出たときと、実際に課税をするそのときの時期的なズレ、その他内容的な相違が相当あるわけでございますから、これを一律に申し上げるわけにはいかない。言いかえますと、その単年度だけについてそういう比較をすることは不適当じゃないか。この限界負担率が持ちます内容等から見まして、相当のズレのあることをやはり考えていただかなければならぬのじゃないか、実はかように私しろうとなりに考えております。  なお、この点は専門家に説明させますから、お聞き取りいただきたいと思います。
  26. 原純夫

    ○原政府委員 補足して申し上げます。限界租税性向とか租税係数といいますものは、非常に興味の多い、また検討しなければならぬ問題でありますが、ある年度から次の年度へという短い期間に使うものとしては、非常に不確かなものであります。これは石村委員も御存じだろうと思いますが、景気の波によりまして、国民所得の伸び、国民生産の伸びに比較しての税収の伸びというものが、やはり相当大きく変動いたします。その中心は、法人税、申告所得税であって、その税収生産物価の伸びと違う伸び方をする。われわれこれを所得率と呼んでおりますが、景気の上昇期、下降期における超過的な利潤、その他悪いときにおけるマイナスの現象というものが出て参ります。そういうようなわけで、限界租税係数というものも、長い期間をとりますと、まあ大体一・五前後に参りますけれども、短い期間ではかなりに動く。今も二二という数字がお話があったようでありますが、これはおそらく売買益金をお入れになっておらないと思いますけれども、いずれにいたしましても、二二ですと——大体国税の負担率は、専売益金を入れまして一四%ぐらいでありますから、一・五くらいということになって参りますが、いずれにいたしましても、そういうものを一年の比較、また一年の中での当初予算と補正予算の比較というふうに使ってお尋ねありますと、実はこれは私どもとして、こまかい期間の目盛りを読む者としては、それはちょっと使えないというふうに思っておりますので、大へん重要なことではありますが、むしろ実際に三十四年度の課税原因といいますか、課税対象がどういうふうになっきているかということから読んでいかざるを得ないというふうに思って、やっておるわけであります。
  27. 石村英雄

    石村分科員 まあ私の数字に間違いがあるかもしれませんが、実は自分としては、専売益金を入れたつもりです。もっとも、国税である入場税とかなんとかいうものは、一般会計関係ありませんから、これを除いて、普通の税収印紙収入専売益金を入れて私は計算してみたのですが、しろうとのひまひまにやることですから、数字の間違いはもちろんあるかもしれません。なるほど、こういう係数を使う場合には、長期的に見た大勢を見なければならぬということはわかりますが、それにしても、二二と一五とはあまり開き過ぎるという感じがするわけなんです。あなた方の御説明の国民所得というものは、四月から三月まで、税収は、法人税なんか、三月期のものは翌年度にならなければ入らないという、税収のズレがあるということは、もちろん私も今までお教えを願って知っておるわけですが、それにしても、一般的な国民所得との関係というものを見たときに、このように開きがあるのはどうであろうかと、こう考える。私は今、これは過小であるという数字として出てくるのだと申し上げたのですが、実は次の数字は、今度は過大であるという判断が生まれる数字なんです。従って、私は今、これだから過小だとあなたへきめつけておるわけではありません。とにかくわからないのだから、もっとわかるような資料を今後出してもらいたいという趣旨で、お尋ねしておるわけなんです。実は、過大であるという数字の方を調べてみますと、三十四年度の補正予算、また国民所得の推定の改訂、それは九兆六千七百八十億、それに対して税収が一兆三千十一億、これに対して三十三年度の実績を見ますと、国民所得は八兆四千四百八十七億で、税収は一兆一千五百八十一億、そこで国民所得の伸びは一兆二千二百九十三億、税収の伸びが千四百三十億、租税限界係数という言葉で御説明になったのですが、この限界係数を見ますと一一・六%強、これに対して三十五年度予算及び国民所得を見ると、先ほども申しましたように、国民所得が十兆四千六百億で、税収が一兆四千七百三十億、これに対照する三十四年度の改訂の補正予算並びに改訂の国民所得を見ますと、国民所得は三十四年度の改定は九兆六千七百八十億、補正予算税収は一兆三千十一億、そこで国民所得の伸びが七千八百二十億、税収入の伸びが千七百十九億で、この限界係数は約二二%、三十五年度は二二%強となり、三十四年度の補正に対して実績との係数は一一・六%、あまりにもこれは高過ぎるのではないか、こういう数字に一応なってくるわけなんです。今度は逆になるわけですね。  そこでさらに、個人と法人の分配所得と、所得税と法人税とについてそれぞれ見ますと、三十四年度の改訂と三十三年度の実績個人所得、これは勤労、業者、利子所得あるいは賃貸料所得を含めたものですが、三十四年度の改定分と三十三年度の実績との開きは八千六百三十二億、一方税収の伸びは百五十五億二千万円、これは係数は約一・八%、三十五年度の個人の分について、同様政府の資料で見ますと、三十五年度見通しと三十四年度の改定との伸びは、国民所得は六千七百三十億の伸びに対して税収の伸びは五百六十億四千四百万円、その率は八・三%、三十四年度の場合は一・八%、三十五年度は八%強、法人関係で見ますと、三十四年度が一八%の伸びで、三十五年度は驚くなかれ六〇・七五%と約六一%、非常によけい率が上がってくるわけなんです。何としても片方は、短期間の比較は無理だと申しましても、法人について前年度は一八%、三十五年度は六〇%、まあ六一%と言った方がいいくらいだと思います。こんなにふえるのはどうだろうかという疑問が、短期間とはいえ、出てくるわけなんです。  それで、あまりこんな論議で時間を長くとってもしようがありませんから、申し上げますが、いろいろこういう矛盾した数字を検討して考えてみたのは、三十四年度の補正予算のときの税収見積もりが少な過ぎるのではないか。それが少ないから、こういう結果になるのじゃないかという結論が一応出てきたわけです。正しいかどうか、それは知りません。そうして、これはおそらく法人税が最も大きいわけですから、法人の三十四年度所得が伸びるというのは、九月以降が大きい。こう考えると、三月期のものは三十五年度に入ってしまう。だから三十四年度国民所得で見た法人所得の伸びというものの税収に影響するのは、三十五年度になってしまって、三十四年度には幾らもないから、このように少なく見られたのじゃないか。これはなるべく政府は間違ったことをおやりにならぬという前提で、理由をくっつけてみたわけです。そういうことになってきたのですが、これはどうですか。
  28. 原純夫

    ○原政府委員 いろいろ御勉強いただきまして、私どもも大へんありがたいと思うのであります。一番歳入見積もりの中で大事なところであります。それは租税係数、今のような比率ではじくのが大事だということでなしに、景気の変動に応じて、法人税、それから申告所得税、特に法人税ですが、これが大きく波を打つところを読み取るのが、一番むずかしいという意味において、私どもも年来ずいぶん勉強しておりますが、ぜひ一つ御研究を願いたいと思います。そういう意味で、今第一に、三十四年度の補正の伸び、五年度の伸びのあたりを御指摘になり、さらに第二に、各個人所得税、それから法人税というものを分けての御検討のお話がございましたが、前者について申しますと、やはりそういう比率で私どもは必ずしも見ておりません。そういう比率といいますか、景気の波に応じてどういうふうに所得が動くだろうということは、これは全体的な客観としてチェックいたしますけれども、反面やはりそのものずばり、つまり、九月期の法人の利益がどうなるだろうかということは、千社くらいのものを調べるということにいたしますと、大体法人税の半分くらいは勝負がつくわけです。あと中小のものは数が多いですからできませんが、そういう場合には、千社くらいの大きなものが仕上がりますれば、中小のものについての推定は、よりやりやすくなる。大法人と中小法人との間には、所得の伸びというものがあるので、中小法人には全然データがとれないわけではありませんが、ある程度のチェックをやって推計するというようなことで、つまり、全体的なおっしゃるような検討と、それから個々に積み上げた検討とを表裏させて、見積もりを立てていくわけであります。実際問題としては、九月の決算の実績を見当をつけます場合に、この三月期、四月期、あるいはさらにできれば九月期まであたりの見込みというようなものを、担当の者にはいろいろ聞いてみるわけです。その場合には、三月、四月は、大体暮れくらいまでのところになりますと、会社の経営当局に聞きますと、大体の勝負はわかる。現に御案内のような上場法人についての収益率のなにが、各新聞に出るというような状況でありますから、つまり、積み上げ計算では相当しっかりしたものができるわけです。来年度の税の四分の一以上は、三月期で勝負がつくわけです。その他の月も大体トレンドというものがわかりますので、積み上げ計算が相当確かなものであり得る。そうして、過去の実績に徴しての景気の波と所得の変動の趨勢というようなものをにらみながら、表裏してきめて参るというのが私どものやり方でありますので、いろいろ今のような係数でごらんになりますと、違うなにが出て参りますが、御参考に、過去十年くらいの間で今申された係数を年度別に調べますと、平均は一・五くらいになりますが、高いところは実に二・二になる。低いところはO・一くらいというような変動があるわけです。それだけに限界性向、今の係数でやられるというのは、非常に危険であるというふうに考えております。  なお、各税について御検討の結果、最後にお話しになりました三十四年度の補正が少な過ぎるというお話、これはまさに御明算の一つのファクターであります。私どもも、三十四年度収入が、第三次補正でぎりぎり一ぱい見ておるという気持ではございません。昨年の秋の伊勢湾台風のときは、もう一生懸命見たつもりでありますが、その後・九月期の実績が案外よかったというようなこと、その他ずっと来まして、災害の方の減自体は立っているにしても、一方復旧費等でかなり経済活動が、別な意味で活発になったというようなことがございまして、ネットではそう大きく減らないというようなこともあると思いますが、三十四年度第三次補正の額でこれでぴったりであるとは思っておりません。これは、最終のときに財源のあるだけはたいて予算を組むという筋合いのものでなくて、三十四年度に出すべきものを出したということでございます。従って、当然のことでありますが、今いろいろごらんになって、そういう傾向がありはせぬかとおっしゃるのもごもっともと思います。たとえば所得税にすれば、配当その他の源泉関係がいいというような状況が入っておりますから、やはり三十四年度のいわば土台が、もう少し高くなる。従って、三十四年度の率がふえて、三十五年度の率の動きがなだらかになるということはありますが、お願いしたいのは、過去のある実績値をもって、すぐ次の期間はそれで計算するということは、あらましの御見当としてはよろしいのですけれども、それで歳入見積もりの当否を御判断になるという筋合いには、直ちにはならないと思うのです。やはり実際の課税の対象について、その動きをもっとほかでつかみ得るということがあれば、それもお考えになる。今のように法人の収支の実績が明らかにわかるということになれば、そういうような点も十分含んで私どもやっているということを、お考えいただきたいというふうに思うわけでございます。
  29. 石村英雄

    石村分科員 そうすると、結局私どもは、大蔵省当局がいろいろ実際を調べられた、それを信用しろということになるわけなんですね。おれの方では一々実績を調べて、来年度見通しなり、また三月期、あるいは二月の決算のものもあるだろうし、そんなものを一々調べて、積み重ねておるのだから、国民所得で比率を出してどうじゃこうじゃと言うなと、こういうことになるわけなんで、それじゃわれわれは手がつかぬのです。おれはこういうふうに調べて出したのだから間違いありませんぞ、その通りに承認しなさいじゃ困ると思う。それは私たちも、そんな調査機構を持って一々調べれば、それに対してそれは間違いだということはできます。ところがそんなものはこっちにあるわけはありません。やはり国会に出した経済の見通しとかなんとかいうものを、過去の分を拾い集めて、そして対照して見ていって、政府のそういう実績、見通しなりなんなりのお調べになったものと矛盾しないかどうかを見て、論議するよりほかに、かりに論議するとすれば、それよりほかに手がないのです。それは間違いだ、そんなものやっちゃいかぬ、だめだ、こうおっしゃたら、もう国会税収見通しなんというものは論議する必要はないということになる。それじゃ困りますから、こういう三十五年度の経済見通し——去年は三十四年度の経済見通しというものをお出しになっておる。そしてこの中に、そういう税収国民所得の時期のズレがあるとすれば、やはりこの見通しも、四半期別とかなんとかいうものを出して、ある程度われわれの方でそういうズレを考えて計算してみるとか、そして政府見通しが客観的にいいか悪いか、——一銭一厘も違わぬとはだれも言うわけではありません、われわれが要求するわけでもありませんので、大勢においていいか悪いかという判断だけです。かりに国会税収の是非を論じるとすれば……。もう一つは、明年度の景気がどうだこうだということの論議、それしかありません。明年度の景気というものをいっても、それは今大恐慌でもきておれば、こんな恐慌がきておるのに、お前のは恐慌の前の見通しだから、間違いじゃないかと言えば言えますが、それでなしに、明年は八%ぐらい伸びるだろうと言われたら、そうかもしれぬし、そうでないかもしれぬ、よくはわかりませんというような論議しかできない。過去の実績との対照で論議する。一応政府の三十五年度なら三十五年度見通しをもとにして、過去の実績等から論議をするという手しか残らないわけです。それが税収のズレがあるから、そんなものをやってもだめだということになると、三十四年度税収が少ないという前提に立って、それはずれるだろう、こう私も考えたのですが、やはり三十五年度も三十六年度も、同じようにずれ込むわけですね。だから、ズレがあるといっても、それは似たようなものじゃないかという結論、むしろズレは、三十五年度は経済が成長するのだから、よけいずれ込む、こう見なければならない。そうすると、三十四年度分のずれ込みというものは、三十三年度から三十四年度にずれ込んだよりもはるかに大きい、比較にならぬほど大きいのだという数字が出てこないと、なるほど三十四年度見通しが少ないのもやむを得ぬという判断は生まれない。そこの資料が出てこない。三十四年度国民所得関係で、三十五年度税収がずれるというずれ方は、政府見通しのように、三十五年度はやはり順調に発展するとすると、ずれ込みは、むしろ三十四年度が三十五年度にずれ込むよりも、三十五年度が三十六年度にずれ込む方が大きいはずなんです。従って、三十四年度が少ないのは、ずれ込みが大きいからだといえば、三十三年度のずれ込みはほとんどない、三十四年度のずれ込みはうんと大きかったのだという判断を下さなければ、政府のおっしゃることがなるほどその通りだという同感はできないわけです。無条件で、黙って無批判に承認しろと言われればそれっきりだ。もちろん手はないのです。もう資料が出ないのだから……。だから私は、今後こういう点の資料を出していただいて、われわれが判断できるようにしていただきたいということをお願いするわけなんです。この点は大蔵大臣どうお考えですか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来のお話を伺っておりまして、大へんよく御研究になっていらっしゃると思います。私どもも、そういう意味では、いろいろの御意見、今後の問題にも非常に参考になる、かように厚く御礼を申し上げます。ところで、問題になりますのは、税の収入は、先ほど来申されたような資料、これが根本になることは当然でありますが、それに景気のズレと申しますか、税収と課税対象の所得との時期的ズレ、そういうもの、これが一番むずかしいところなんでございましょうが、やはり経験が母体になって出てくるだろうと思いますが、そういうものがある。ことに最近の経済は、この三十三、三十四、ことに三十四年に非常な成長率を示しておる。そういうところに大きなズレがきているというのでございまして、それを単年度で云々ができないというのが、そういうところに実はあるわけであります。私考えますのに、先ほど来、適当だという議論も立つし、あるいは多いということも言えるだろうし、また少ないということも言えるというようなお話でありましたが、問題は数字でございますから、意欲を持たないでその数字を積算していただくと、一通りその規模が出てくる。たとえば、先ほど来の石村さんのお話のうちに、三十四年度税収見積もり相当まだ余裕があるのではないかという御指摘がありましたが、第三次補正をいたしますまでは、あるいは第二次以後どういうことになるのだろうかというので、ずいぶん心配いたして、もし歳入の見積もりができぬなら、第二次補正に計上すべきものも、実は少し手控える。しかし今日になりますと、第三次補正をいたしましても、十分歳入を確保できるという見当がついておりますが、なお、ただいま言われますように、さらにもう少し三十四年の歳入があるだろう、こういうようなことも言えるだろうと思います。何にいたしましても、一兆三千億というような大きな数字でございますから、それはきわめてぴったり合わすということはなかなか困難なことだと思います。ある程度変動のあることはお許しを得たいと思います。三十三年の決算では、たしか二十一億程度の赤字が出たと思います。こういうことがあってはまことに困りますが、それにしても、一兆一千億以上のそのときの税収でございますから、その二十一億とか二十二億とかいう金額、これはパーセンテージにすればきわめて小さいわけです。比較的この税の見積もりというものは、そういう意味で正確なものが生まれつつある、かように私ども考えております。問題は、私どもが何か意欲的に税収見積もりを手かげんするというようなことがあれば、それこそいろいろ大きな波紋を描き、影響をもたらしますから、これは厳に慎まなければならぬ、かように考えますが、意欲的でなしに、ただいま言われますような基本的な数字、さらに最近の経済の変動というものを加味して考えていく。最後のところは、ある程度経験がものをいう、こういうものもございます。しかし、先ほど来御議論なさいました点は、それぞれ私は十分傾聴すべきポイントだ、かように考えております。私ども予算の歳入の御審議をいただきまして決定いたしますと、今度歳入状況を、月々にどういうように入ってくるか、それを実は絶えず注意いたしておるわけであります。将来の三十五年度の歳入を第一、第二、第三、第四と四半期くらいに分けて、そういう資料は出せないかというお話でございますが、ただいま申し上げる会社の決算その他の問題等がございまして、なかなか第一、第二、第三、第四と四期に分けることは困難かもわかりませんけれども、大まかに今予算ができ上がってしまうと、今度は月々にどういうような予定になるだろうかということは考えられることでございますから、全然できない数字ではございません。しかし今日ただいま、そういう資料を出せと言われましても、それまでの用意はないと思います。そういうような今後税収の適否を判断する上に必要な基礎的資料については、私どもの方もできるだけ努めて御審議に便するように協力したい、かように考えております。
  31. 石村英雄

    石村分科員 私の求めているのは、税収の四半期別の見通しということもなんでしょうが、国民所得見通しについて、四半期ごと見通しを出していただいておれば、ある程度税収のズレというものとの関係考えて計算してみる、判断するということができるわけなんです。そのことを私は特に求めているのです。  それから、大体これで終わりますが、一つごく技術的なことですが、出納整理期間中の税収というのは、あれはいつのことですか。
  32. 原純夫

    ○原政府委員 三月末までに調定いたしました租税債権は、四月一ぱい入って参りますれば、それは三月末までの年度に入るということになります。そういう意味で、四月に入りましても、前の年度分の税収がある程度入ってくるということになっております。若干あと、国庫、日本銀行あたりの整理等の関係で、五月にもごくわずかな額が入るということが通例になっておりますが、これはごくわずかであります。
  33. 石村英雄

    石村分科員 それから同様に技術的なことですが、会社の決算の一月期の分は、かりに三十四年度なら、三十四年に入りますか、入りませんか。
  34. 原純夫

    ○原政府委員 一月期の法人税の申告の納期は、三月の末日でありますから、三月末に申告されて納めらるべきであります。もちろん、この申告のない部分は決定になりますから、それは調定が四月以降になって新しい年度に入りますが、当節は申告率も相当高いですから、大部分は三月末に申告される。しかし御案内の通り、申告して納めます場合に、半分納めれば、あとの半分は三月の猶予ができるということがありまして、これを利用する法人が相当多うございますので、正確に半分というわけには参りませんけれども、まず三割五分から四割くらいまではあとに回る、つまり、五月末でよろしいということになりますので、一月期のは、まず四割かその前後がその年度に入って、残りは次の年度に入るというようなことになります。
  35. 石村英雄

    石村分科員 それから所得税は、暦年度で計算するようになっておりますが、申告所得はもちろん暦年度の分しか入ってこないと思うのです。源泉の分はやはり一、二、三はやっぱりその年度にちゃんと入ってくることになるわけですか。
  36. 原純夫

    ○原政府委員 源泉所得税は、ある月に源泉徴収いたしましたものを翌月の十日を納期として納めますから、二月分までの源泉徴収が三月に納まるということで、ある年度の源泉徴収税額は、その年度の終わりの二月分まで、ということは、三月分は前の年度の三月が入るということになります。若干官吏の俸給等で三月にぴしゃっと入ってしまうという例外がありますけれども、概して申してそういうようであります。
  37. 石村英雄

    石村分科員 いま一つお尋ねしますが、この収入は、予算の今度の説明でも、法人税で三十四年の十月までの申告税額を基礎にして計算しておられますが、この中で増加の割合を、生産が三一%増加、物価が二・五%高騰、その相乗、また所得率の向上による調整というようなことで、三七%の増加、こういうような数字が出ておりますが、この三七%の増加は、この三十五年度の場合には、三十四年の十月までの申告税額、つまり、三十四年の八月までに事業年度を終わった分を基礎にして、そのあとの一年分に三七%の増加がある、こういう意味の三七%なんですか。
  38. 原純夫

    ○原政府委員 基礎はおっしゃる通り、三十四年の八月期までの一カ年間の事業年度の分であるということであります。そのあと三七をかけてきますのは、三十五年の二月期以降三十六年一月期までの決算期の分が、三七%になるということでございます。
  39. 石村英雄

    石村分科員 そうすると、つまり、これはかけ算すればすぐわかることですが、ここに書いてある十ページの約三千億円の申告税額に、三七%ただかけたのではないということなんですか。それにあとの十月以降の分、つまり、九月以降の分をある程度見て、三七%がかけてある、こういう意味なんですか。
  40. 原純夫

    ○原政府委員 八月までの分をもとにいたしまして、見積もろうとする三十五年度の申告税額を推定するわけでありますから、その見積もりの対象の時期は、今申しましたように、三十五年の二月期以降三十六年の一月期までということになります。従って、間の九月期以降一月までは、そういう意味では、間は抜けておるということになりまするが、それはその間の趨勢が、ここにあります生産、物価に乗って伸びていって、二月期以降の数字になって参るということであります。抜けておりましても、それでもって三十五年の二月以降三十六年一月までの申告税額がはっきりわかる。あとは徴収猶予等によりまして、前からの分がどう動く、また来年の一月期までを見ましても、一月期までの分のうち、先ほど申しましたように、十一月、十二月、一月分は半分近い額が徴収猶予で次の年度に回りますので、そういうのは後の方で、ただいまごらんのページのまん中のちょっと下に、前年度よりの徴収猶予額を加え、そして翌年度へ徴収猶予額を差し引くというような形で出ておりますが、そういう点に出て参ります。ただいま申しましたような事由で、間の月は飛ばしておりますが、それは生産、物価の指数の伸びでつながっておるということに相なるわけでございます。
  41. 石村英雄

    石村分科員 どうも御説明がよくわからないのですが、ここの書き方は、三十四年十月までの申告税額二千九百八十八億八千六百万円、これを基礎にして、ずっと所得の発生期間、月別決算ということを書いて、三七%とあるから、何だからょっとこれを見ますと、三十四年の十月までの申告税額、その申告税額の生まれてきたのは、三十四年の八月以前までに事業年度の終わったものだというのですから、三十四年の九月以降の伸びの率というものが三七%で、それを二千九百八十八億にかけておるのだというように受け取れるのですが、そうではないのですか。今の御説明を見ると、この三七%というのが出てくるのは、そういう一カ年間の三七%ではないというような御説明のようにもとれたのですが、ちょっとわかりにくかったですから、もっと……。
  42. 原純夫

    ○原政府委員 実績をもとにして将来のある期間の税収を見込むといいます場合に、その期間の直前に付接するまでの実績を得ますれば、そこに飛びがなくて、すぐ前の一年、続く一年、その一年の見積もりができるわけですけれども、御案内のような事情で、実績数字というものは、どうしてもある一定期間さかのぼったところまでしかわからないということになるわけです。それですから、見積もろうとする年度と、それからその基礎とする実績の間にあきがあるということは、これはいつもあることです。この法人の場合、従いまして基礎としているのは、おととしの九月から去年の八月までの一年間の実績数字が、この見積もりをするときには、かっちりした数字としてあったわけです。それをスタートとしよう、そして目標といいますか、はかるべき最後の期間は、三十五年度税収になってくる期間である。それは三十五年の二月期以降三十六年一月期までである。そうすると、その時期の決算期にくる経済といいますか、経済活動は、どういう生産、物価の伸びになるか、少し御説明が足らなかったかもしれません。たとえば三十五年の二月期の経済活動というのは、半年年度であれば、それにさかのぼる六カ月間でありますから、九月から二月までということになるわけです。その二月期の分については、九月から二月までの生産、物価の動きが、今申した八月までの事業年度の基礎になるそういう経済活動の指数に対して、どう伸びるかということをまず置いてみる。次に三月期はどうか、四月期はどうかというように、ずっと置いて、累積して集計しました数字がこれであります。つまり、この数字はあらためて申しますれば、一昨年の九月期から昨年の八月期までの事業年度分の所得のべースとなった経済活動を表わす生産、物価の指数というものを、ずっと集計したものを分母に置いて、そうして三十五年度に入ってくる各事業年度の法人の経済活動の広がっております期間の生産、物価の指数というものを、加重平均といいますか、総合したものを分子に置いて、それを生産、物価について示しましたのが、こういう数字で、それに所得率をかけて三七になった。従いまして、この二千九百八十八億円に対しまして一三七%を乗じて、そうして三十五年度の申告になる税額の見込みが四千九十四億円、こういうように推定したわけであります。
  43. 石村英雄

    石村分科員 どうもわかったような、わからないようなお話なのですが、この三七%伸びるというのは、いつからいつまでの期間に三七%伸びるのだという、それをはっきり説明していただいたらわかりいいと思うのです。
  44. 原純夫

    ○原政府委員 ごく簡単に申しますれば、三十三年の九月期から三十四年の八月期までの一カ年間に終了した事業年度分の申告税額を一〇〇として、三十五年度に申告さるべき決算期の分の見込み税額、これは一三七%になるであろうということでございます。
  45. 石村英雄

    石村分科員 そうすると、これは逆なんですね。三七%というのは、結果で出てきたということになるのですね。あとの税収見通しをして、そうしてこう割ってみると、三七%になるのだ、こういうことなんですね。いろいろ経済活動なんかの伸びを見ると、三七%伸びるから、それで三七をかけてこれが出たというのではなくて、税収を見積もって出てきた答えを、八月までの分についてのもので割ってみて、三七に結果がなったという説明なんですね。逆なんですね。ちょっとこれを見ると、約一兆の申告税額に対して三七をかけたからこれが出た、だから先に三七%というものが計算せられて、そうしてこれが出たように受け取ったわけです。そうではなしに、あとの税収見積もりを作って、割ってみたら、三七になったという説明なんですが、これはどうも逆のように思うのです。
  46. 原純夫

    ○原政府委員 そこがなかなか微妙なところでありまして、そうではございませんとも言い切れないし、そうですとも申せない。まあ両方だということです。この文章では、ずっともとの基礎の、過去の実績をもとにして伸ばしたということになっておりますけれども、それはなかなかむずかしいので、先ほど申したように、それもいたしました。しかし同時に、サイド・チェックというか、積み上げ計算というようなものもやっております。両方にらんで最終の腹をきめます。その腹をきめた数字がこれですから、あらためて言えば、これはずっと上から計算して自然にこうなったのだという言い方もできないでもありませんけれども、それでは少し実際と違う。やはりこの数字が出てくるについては、この生産と物価あたりは、企画庁でずっと実績をとってこられ、今後の経済の見通しを立てられる。この数字にぴったり合わしてございます。月別見込みまでは企画庁はそう精細にきちんきちんといいますか、出しておられませんから、私どもがそれを大体推測してつける。推測が入りますけれども、それを今申したように、月別に置いてみる。この辺はどういじりようもあまりないものでありますが、同上の相乗の次に所得率というものが入って参ります。これは景気の波によって、生産の伸び、物価の伸びの相乗積以上に税収見込みが伸びたり、あるいは以下になったりすることが、御案内のようにありますが、ここがむずかしいところであります。ここのむずかしいところをはかるのに、過去の生産、物価の波と所得の波との相関関係をずっと一生懸命読んで、そうして何度か山あり谷あって、今上り坂であるわけでありますが、これがどういうふうになっていくか、そうしてその場合に所得がどういう関係に立つかというあたりが非常にむずかしいところで、そのむずかしいところを見るについては、過去の実績その他を分析し、理屈を考えてやりますが、それだけでやるのはあぶないから、先ほど申しましたように、実際に何百社というものを調べて、おもな法人の帰趨を見る。中小法人あたりについても、できる限りのチェックをしてみて、今の全体的な作業と積み上げ的な作業との調和点を、この所得率というところに出してくるわけであります。そういうような意味で、あえてこれが上から自然にずっときたとも申し切れませんが、逆に四千九十四というのがぼっと出ていったのでも決してございませんということなんであります。どうかそういうふうに御承知を願います。
  47. 石村英雄

    石村分科員 どうも四千九十四億がでたらめに出た、こう言っておるわけじゃないのですが、三七%というものが先に出て、四千九十四億が出たのかと思ったら、必ずしもそうでないということなんですね。三七%というのは、こっちの方で見ると、ちょっと高過ぎるのじゃないかという気がしたので、二十四年の九月から三十五年の八月までとすると、三七%は、こちらの鉱工業生産指数の見通し等から見ると、少し高過ぎるのではないかという気もしたのですが、どうもそういう出し方でもない。そういう点もある。こういう、まことにヌエのようなわけのわからぬ数字ですから、われわれがこれの是非を論ずる対象にはなし得ないということなんですね。結局わかりませんと手を上げるよりほか手はないのです。それで手を上げて質問を終わります。
  48. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 引き続きまして茜ケ久保重光君。
  49. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 実は国会関係の質問をするのでありますが、昨年もしたのですが、どうも国会というのはおかしなところで、自分の足元のことは、一般の議員に全然検討する機会を与えていないのでございます。私どもの仕事をアドバイスしてくれる重要な役割を持っている国会職員の諸君が、いろいろな問題がありましても、その問題を国会で私ども一般の議員が適宜問題にしていく機会がないということは、私はまことにおかしいと思うのであります。現在の国会の運営の仕方はそうなっていますから、きょうのこの予算の第一分科会で、私どもは一年に一回発言する機会を持ったということであります。これは議運の庶務小委員会でやるようでありますが、議運というものは、国会の運営についていろいろやるのでありまして、国会職員の給与、職制、そういったことについては、議運でなくて、内閣委員会とかそういったところでやることが、私は望ましいと思うのであります。これは一つ懸案として今後検討していただきたいと思うのであります。  同時に、きょうは実は事務総長に出席を要求したのでありますが、どうも何か忙しいという口実で出て参りません。非常に遺憾であります。私はどうしても事務総長に出席を要求したいのでありますけれども、あまり強く言うと、職員の諸君、委員部の諸君が、やはり上司に対して強く言えないという立場もあるようでありますから、遠慮をいたしましたけれども、私は、やはりきょうは事務総長が出まして、国会内におけるいろいろな問題を聞いて、所信のあるところをはっきり出すべきだと思うのであります。きょうは私、いわゆる折衝に当たっている委員部の職員の気持をくんで、強く言わなかったのでありますが、分科会主査としても一つお聞きを願って——事務総長が忙しいといったところで、きょうここに二十分や三十分出てこられないことはないと思う。私どものこういう審議権に対して、何かしら遺憾の気持を払拭できないのであります。庶務部長管理部長がおいででありますから、以下端的に質問いたします。一つ時間をとらないように、さっぱりと御答弁を願いたいと思います。  私先ほど指摘しましたように、一般国家公務員あるいは地方公務員の諸君は、いわゆる組合活動を通じて、あるいはまた私ども国会のいろいろな委員会における活動を通じて、かなり公務員諸君の要望なり意見が、自分たちの待遇の改善や職制上のいろいろな問題に対して反映をしまして、逐次解決する機会が多いのであります。ところが先ほど言ったように、国会職員というものは、国会という国権の最高機関の中におりながら、いわゆる組合活動においてもかなり不自由な点があるようでありますし、また、自分たちのいろいろな要望を提出するにつきましても、議運の庶務小委員会という特異な存在の場所でしかこれが論議できないという実態、これは私は先ほど言ったようにおかしいと思うのです。一つ庶務部長、こういう点で、国会職員の身分、給与等についても、議運でなくて、いわゆる一般の公務員諸君は内閣委員会でやっておりますので、やはり国会の職員のそうしたことについても、今後内閣委員会にこれを付託して、適時解決に当たるということが、私は望ましいのじゃないかと思うのですが、国会側としてどのような見解を持っておられるか。
  50. 知野虎雄

    ○知野参事 国会職員につきましては、法律の建前が、たとえば任命につきましても、議長の同意または議院運営委員会の承認というような格好になっておりましたし、その他の給与規程というようなものも、議長が議運の承認を得て許可するというような法律の建前になっております。そういう意味で、現在の建前が普通ではなかろうかと思います。ただ内容につきましては、内閣委員会でおきめになります一般職の給与の法律でございますとか、そういうものに大体準拠した内容のものをそのまま取り入れられておりますものですから、実質的には今のままでいいのではなかろうかと思っております。
  51. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 あなたのおっしゃることはわかっておりますが、しかし実り際に具体的な問題があった場合に、議運の庶務小委員会で扱うことが決して簡単でないようです。と同時に、議運の諸君が、国会職員のいろいろな問題を適時キャッチして、それを適宜解決していくということが、今まであまりなかったかと思うのであります。給与などは、一般公務員と同じでありましょうからいいといたしましても、私はやはり国会職員として特殊な立場があると思う。そういう点を考えると、私は、議長が任命したり、議長がいろいろとやる、これはいいと思います。いいと思いますが、その基礎を作る職制なりあるいは給与の点をいろいろと勘案することは、むしろ一般公務員と同じように内閣委員会等でやった方が、私の過去の経験からいうと、いいように思うのであります。これはここであなたにそうする方がよろしいと言ってみても、法の建前もありますからあれでありますが、そうしたことも検討をして、なるたけ——私が見ていますと、国会の職員というものは、一般の公務員の諸君よりも、何かしら窮屈な思いをしておるような気がするのであります。これはいわゆる議員という絶対権力を持った諸君が五百人近くもいるのですし、その上また上司がたくさんいるのでありますから、やはり何といっても国会の職員というものは、そういった面のかなり大きな負担を持っていると思うのです。それに対して、私はやはりそれだけのことを考えてやる必要があると思うのでありますが、残念ながら、どうもいろいろな意味で、一般の公務員とはむしろ逆な面があるような気がするのであります。この点は一つ御検討を願っておきたいと思う。  そういうような見地から考えまして、現在私は、国会の職員の諸君が不平不が多かったり、一般の公務員諸君よりも仕事自体において何か差があったり、そういう悪い環境——と言っては語弊がありますが、そういう重圧を非常に感ずるような中にありながらも、非常にまじめに、勤勉に働いてくれる実態をよく知っておるのであります。それでありますから、私どもは、一年に一回の機会であるこの分科会を通じて、やはりそういった人たちの気持を反映したいと思うのでありますが、この点を実は事務総長にお聞きしたかったのであります。事務総長は衆議院の事務局の総責任者として、現在の衆議院の職制、給与、人事等について、ほんとうに適正に、しかもだれもが不満なく、喜んで自分の職責を尽くしておるという自信を持っておるかどうかということを、私は事務総長に聞きたかったのです。あなたは事務総長でありませんけれども、しかし当面の責任者は庶務部長でありますから、あなたはその責任者として、責任を持って、自信を持って、一般の職員諸君は喜んで自分の職務をやっているという確信あるお答えができるかどうか、この点を一つ伺いたい。
  52. 知野虎雄

    ○知野参事 個々の具体的な問題については、職員の中にはいろいろ意見のある人もあると思います。しかし全体としましては、私どもは、その問題につきましてはもちろん誠心誠意を持って努力しておりますし、国会職員が一般政府職員に劣るなどとも思っておりませんから、その点では一生懸命に努力しておるつもりであります。
  53. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 そういう御答弁をされることと思うのでありますが、それじゃ一つ具体的な問題に入って参ります。私内閣委員として、長い間一般の公務員の問題と取り組んで参りましたが、一般の公務員の中にも、もちろん非常勤職員とか、いろいろ定員の中に入っていない者もありますけれども、特に衆議院は行政二の職種が多いようなんです。これは仕事によりましていろいろありましょうけれども、やはり働いている者からすると、いろいろな意味で、行政一に繰り入れることが非常に望ましいと思う。そこで、行政一にしてみてもそう差しさわりもないだろうしするので——ほかの官庁に比較して、行政二の職種にある諸君が比率として非常に多いので、今庶務部長は、それぞれみんな自信を持っているとおっしゃるけれども、私どもが始終接触する過程においては、やはりこういう問題もかなりくすぶっておるようであります。それがやはり私が先ほど言ったように、それをじかにというか、あるいは組合活動を通じて、なかなか上司のところに要求できない実態があると思う。組合はありますけれども、衆議院という特殊なところでは、組合活動はやりにくいと思う。これはわかります。議員だって、自民党、社会党あるのです。社会党の諸君はわかったとしても、自民党の方にはなかなか組合なんかはおわかりいただけない。何か職員が赤旗でも立てると、えらいお怒りになって当たり散らしておることもあるようでありますから、組合活動をしたくてもできないということがある。従って、自分たちの要求もなかなかスムーズに出ないという点があるのです。それで、あなたに直接こういう点はぶつかってはいきませんでも、実際は内部にかなり複雑な様相をとってきておる。そこで端的に申し上げるのですが、これは私どもももちろん協力するのでありますから、できるだけこの行政二の職種を行政一に振りかえて、そういう面でも職員の諸君が非常に明朗な気持で働き得るというような状態を作ることに、当局として力を入れる意思があるかどうか、この点を一つ
  54. 知野虎雄

    ○知野参事 ただいまの行政の二の該当職員が衆議院で非常に多いということは、茜ケ久保先生が今おっしゃられた通りでございます。ただし、昭和三十二年の一般職の法律が改正になりましたときに、先生も内閣委員でおられましたからよく御承知通りでございますが、普通の官庁でございましたらばおそらく行政の二に入ったであろうと思われるような職員も、われわれの方はかなり人数も多うございましたものですから、大蔵省とも折衝いたしまして、大幅に行政の一の方に繰り入れておるわけでございます。ただ現在行政の二に該当しております者は、自車の運転手でございます。これは他の官庁と違いまして、ここは百何十台いう台数の自動車を持っておるわけでございます。それからタイピストにいたしましても、電話交換手にいたしましても、普通の官庁とは違いまして何しろ大きい設備でございますから、そういうふうな職員がかなり多いの事実でございます。ただ、そういうふうなきわめてはっきりした職員につきまして、よその官庁では当然に行政の二に入るように法律上規定されております運転手を、この役所だけが行政の一に繰り入れるというふうな事柄の困難性があるわけでございます。そういう意味で、どちらにか話し合いなり法律のワクの中で、行政の一に持っていけるというふうな問題がありますならば、私どもはできるだけそういうふうに今までやっても参りましたし、これからもそういうふうにしていきたいと考えております。
  55. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 事務当局の立場もわかるのです。特に運転手の場合は昨年のこの委員会で、庶務部長に強く要望したことで、さっそく非常に多の職員が行政一になりまして、運転手の諸君は非常な感激をしておりますこれは私も、去年の当委員会における私の発言に対して、できるだけの期に沿ってもらったことと喜んでおったわけであります。いろいろ看護婦さとか、あるいは交換手さんとか、運転手さんとかいうような特殊なあれもりますが、ほかの官庁がそうであるからということでなくて、これはやはり私は国会という特殊な立場にあるところだと思うのであります。ほかのとろにはとうてい考えられないこともあるところですし、よくいろいろな意に国の最高機関ということを言われながら、その中で働いている職員が常に恵まれない。とてもはなやかな政治の舞台の裏面に、恵まれない諸君が多くの不平や満たされない気持を持っておることは、私はいかぬと思うのです。従って、もちろんほかの官庁との関係もありましょうけれども、やはここは立法の府でありますから、私どもが協力すればできるのであります。さらに、ここで範を示して、ほかの官庁がそれに右へならえするということは大へん望ましいことでありますから、これは当局でも、今おっしゃった一般の官庁の例もありましょうけれども、そういった意味で、まず国会からそういう問題を逐次率先して解決するという努力をされるならば、私どもはれに全面的に協力することにやぶさかではないのであります。でありますら、ぜひその点の御努力を願いたいと思う。  さらに続いて、これも国会の特殊な事情でありますが、私どもがよく聞くのは、臨時職員が非常に多いです。現在も私の調べによると、百三十数名の者が臨時に入っておる。衛あるいは女の人たち、そういった人でありますが、よく調べてみると、この人たちはほとんど何年か引き続いて勤務していらっしゃる。いわゆる臨時して、毎年繰り返して勤務していらっしゃる。いいときには六カ月以上勤めて、失業手当をもらってやっておるという状態、これもあなたの立場からいえば、ほかの官庁との関係もあるとおっしゃるかもしれぬけれども、今の行政二の問題もそうですが、この臨時職員の諸君を正規の職員にすることは早急にやってもらいたいと思う。私の調べによると、失業手当をもらっても、給与の面では大した差はないと思うのです。失業中には六割もらうでょう。給与の面からいきますと、そう財政的に大きな負担じゃないと思うのです。しかも五年、六年、長いのは十年近い人もいるということになりまと、やはり私は早急に定員化することに努力してもらわなければいかぬと思う。よく見ますと、みんなまじめに、非常によく働いている。これは特殊、今言った行政二と同じように、国会のこういう状態は、脱法行為みたい行為です。半年雇って、やめさして、失業手当をもらって、またその次に年、これははっきりいえば、脱法行為的な状態である。そういうことが私国会の中であってはいかぬと思う。財政的な負担もそう大きなものじゃなのだから、こういうものもなるべく早く、一度でなくても、逐次定員化しいく必要があると思う。ここに働いていらっしゃる速記の人たちも、休会は割合時間に余裕があると思う。一般の受付をしている人たちも、衛視も休会中は割合ひまなんです。しかし開会中は忙しい。衛視とか女の人たち簡単に採用できるから、あるいはそれで済むかもしれぬけれども、速記のとか、委員部ないしは常任委員会の人たちは、それぞれ適当な仕事を持ち腕を持っておるから、これは簡単に雇い切れぬから、閉会中の忙しくない場合も常置しておくということになろうと思う。それは雇う方の立場であっ、働く方の立場は、たといそれがどういう職種であろうとも、やはり年間じゅう雇われて、安定して働くという立場にならなければならない。これもほかの官庁にもたくさんありますが、私ども逐次定員化する方向へ努力すべきあるという主張をしてきております。そういう意味においても、まず国で、定員外の非常に変則的な臨時職員を定員化する努力をすべきだと思うのだが、一つ庶務部長の腹がまえをお聞きしたいと思います。
  56. 知野虎雄

    ○知野参事 今の衆議院の臨時職員の問題でございますが、うちの臨時職は、先生御承知通り、幾つも態様があるわけでございます。  まず第一、先ほどお話がございました臨時衛視の問題でございますが、これは昔、国会法で、議長が開会中だけ議長警察権を持っておった時代の遺物だと私ども思っております。現在のように、開会中、閉会中を問わず、議長が警察を持つ場合におきましては、開会中だけの臨時衛視でなくて、当然に年間普通の衛視に切りかえるのが順当であろうと存じまして、来年はぜひその点は法律上の建前でございますので、実現いたしたいと考えております。  それから一般の常労というのがございます。これは一般公務員と関連しまし、全部の官庁につきまして、今かなり大きい問題になっておる職員でございますが、これの定員化の問題は、内閣委員会でもたびたび論議がありましように、大体において全官庁ともある程度の率をもって逐次解消しようという線に向かっておるようでありますし、これはやはりそういった一般の基によるだろうと思います。  さらに、この役所で非常に特殊なのは、議会いわばアルバイトでございます。これはほかの官庁と違いまして、今お話ございましたように、開会中と閉会中とでは、職場によりまして、かなり著しい繁閑があることは事実でございまして、常時おらなければならない職のほかに、議会中だけ手伝ってもらえば済むというふうな職種の人も幾らはあることは事実でございます。それで私どもの方でも、先ほどお話しになりましたように、全部合わせますと百三十何名おります。純然たる国会中だけの臨時職員というのは、百名ばかりおるわけでございますが、こういうの中でも、ある程度定員化した方が便利じゃないかと思われる人もおりま。しかし、ほんとうに国会中だけで間に合うような人もいるわけでございまして、私どももできますならば、少しずつでも定員化していきたいという気持は持っております。
  57. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 臨時衛視が近く全員定員化されるということであります。これは私ども見ましても、常置は要らぬという者もあるかもしれませんが、しかしそれはわずかであって、大部分の者はやはり常置しておいた方が、あなたの方でもよいでしょうし、私ども国会活動をする上においてよいことは当然であります。きょうは自民党の三浦、青木両先生がおられますが、やはり国会は率先して範を示すことが必要だと思います。自民党の先生方もこれには反対はなかろうと思います。従ってあなた方も、職務の場上あまり強く言えない点もありましょうが、何と申しましても、あなた自身が率先してそういう気持を持って、そういう方向に努力しなければ、私どもが協力していく場面がなかなか出てこないわけでありますから、私どもも自民党の先生方とも協力して、できるだけ早くそういうことが実現する方向に努力したいと思っておりますので、一つ当局としても十分に検討して、今言ったようなことが一日も早く実現するような努力をお願いしたいと思います。  時間もございませんから、根本的なことだけにとどめますが、これは私が組合の諸君と懇談したときに出た問題ですが、ここの職員の諸君の苦情処理と申しますか、勤務条件に関する行政措置要求というものが一般の公務員にありますね。これはここの職員にもあるようでありますが、何か規程を見るとその中に議員が入り、組合代表も入って、いろいろな苦情処理をすることになっておるようでありますが、これがあまり実際活用されておらないようであります。これは中に議員が入っていい場合と悪い場合とあると思います。話のよくわかる議員ならいいでしょうが、話のわからない議員だっているわけでありますから、そんな人が入った場合には大へんです。従って私は、これは一般の公務員の場合は人事院の中にあるのですから、こういうものと関連してやることがよくはないかと思います。これは私の一存ですが、やはり国会の組織上そういうことはできませんか。苦情処理の問題はいかがですか。
  58. 知野虎雄

    ○知野参事 国会職員は、人事管理の面におきましては、人事院の監督というようなものは受けておらないわけであります。それで、今の苦情処理の問題でありますが、一応国会職員法に基づく苦情処理規程というものがありまして、当局側、組合、それに第三者という意味で、特にここでは議員さんが苦情処理委員会の中に入ることになっております。御承知のように、先ほども申しましたように、非常に特殊な職場でありまして、外部の第三者が入られましてもわからないことがあるのであります。そういう意味で、議員さんが一番よく職員のことを知っておられるわけでありますから、今の苦情処理委員会の規程には若干不備があるかもしれませんが、今まであまり活用したことがないものでありますから、大体今までのところは、組織としては公平な組織で、議員さんが入っておられるという意味でこういうことになっておるのじゃないかと思っております。
  59. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 管理部長に伺いたいのですが、去年庶務部長に、ここの運転手の行政二を一にすることについて要望したのでありますが、幸いかなりの人数が認められまして、先ほど言ったように喜んでおります。ところが最近——私も実は自動車運転の経験がありまして、自動車運転手としての心がまえや気持もよくわかるわけでありますが、どうも少しここの運転手に対する規制が強過ぎるような気がする。事故があった場合に過酷な処置がなされてはしないか。もちろん事故はあってはならないし、人命ももちろん大事だし、国の財産を傷つけてはいけません。今御承知のように、特に東京の狭い道で、あれほどたくさんの自動車が動いておる実態の中で、本人はかなり慎重に注意しておりましても、本人の意思にかかわらず、いろいろな事故が起きてくる。これはあなたもわかると思う。もちろん、泥酔してやった事故とか、あるいは自分の不注意でやった事故に対しては、私も決して容赦することはないと思うのです。しかし、私が自分で運転をやったという立場から、衆議院の運転手の事故に対する処置を見ておりますと、どうも少し過酷であるという点が多々ある。実例をあげればたくさんありますよ。私は今ここで実例を申し上げませんけれども管理部長として、自動車運転手に対するそういった処遇をもっと思いやりのある立場で——もちろん悪い者は信賞必罰でけっこうです。しかし、どうも私の見たところでは、本人の過失というにはあまりにも気の毒過ぎるような実態の中で、かなり重い処罰を受けて、非常に困っている立場の者があるということを、私は実際見ている。この点一般論として、当面の責任者として、これに対する管理部長のお考え方を承りたい。
  60. 藤野重信

    ○藤野参事 ただいまの御質問でございますが、御趣旨まことにごもっともと思います。私も実はそういう観点から、現在の取り扱いというものをよく注意して見ておるわけでございます。ところで、私どもの取り扱いといたしましては、実は過酷と仰せられましたけれども、一昨年四月一日以前の内規におきますと、三千円以上の事故を起こした場合、もちろん本人の不注意による場合に限られますが、そういう場合には昇級を一回停止する、三月おくれるということになるのですが、そういう制裁規定がございまして、これは現在のあれからいきまして、三千円というような額は非常に軽微であるにもかかわらず、昇給がたとい三月でもストップされるということは、過酷であるというような運転手の諸君の申し出がございましたし、また客観的に見て、そういう事態でありますので、ここでどういうふうにして取り扱いを改めていったらいいかということにつきまして、組合、特に運転手の代表と管理者側とで何度も会合を持ちまして、その結果として、両当事者の調印による協定書というものができまして、その結果、従来三千円であったのが、二万円というところにまで緩和してきたわけでございます。もちろん今度は階段を設けまして、五万円以下のときはどうとか、十万円以下のときはどう、それから人命に損害を与えたときにはどうという段階的なことがございますが、その結果といたしまして、改正前におきましては、三カ年間にこの制裁といいますか、取り扱いの適用を受けたという者が、約三十数件ございました。しかしながら、その後におきまして約二年間になりますが、その結果として、現に適用されたのは二件でございまして、まだ適用されないが、適用されるであろうと予想されるのが三、四件ございます。そういう状態でございまして、過酷とおっしゃれば過酷でございますが、とにかく緩和の方向にはいっておりますし、両当事者の取りきめられた協定に従ってやる成果も、まだ今のところ緒についたばかりでございまして、その結果を見まして、過酷なところがあればまた話し合いの機会もあろうと思いますが、この程度のことは、現在の交通事情等を考えまして、まだその成果を見守るという段階でないか、かように考えております。
  61. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 その事故の金額等については、私別に触れませんけれども事故の内容の検討に重点を置いてもらいたいと思うのです。同じ二万円の故障をしましても、ほんとうにその運転手はまじめな運転をしておったのに、いわゆるカミナリ族とかはたの者がぶっつけて、全然不可抗力ということがありますから、そういう事故の内容について検討願いたいと思う。どこかに線を引かなければなりませんが、金額でもそれはいろいろあると思う。それは話し合いでいいと思うのです。私が指摘しているのは、運転手が事故を起こしたときの状況をよく検討して、これはほんとうに本人の不注意かどうかということに重点を置いて処置してもらいたい、こういうわけです。この点について万全のあれをしてもらわないと、私ども運転手諸君にからだを預けておる者としては、非常に感じております。衆議院の運転手は非常に慎重です。一例をあげます、勤務中に一ぱいどうかと言うと、断わって、非常に勤勉にやっております。従って、運転も非常に丁重で、安心して乗っております。しかし、運転手諸君も人間ですから、その気持の中にはいろいろの不平不満があります。従って、ひいては乗っておる議員諸君にも問題がかかるということもなきにしもあらず。幸いにして現在のところございませんが、そういうことでありますから、事故の内容についてあたたかい思いやりのある検討をして、なるべく運転手諸君が安んじて業務につけるような状態を管理部長がとってもらいたい、こういうわけなんです。  それから、私のところに資料がありますが、これは要望しておきますけれども、入った年月日の差によって、同じ経験年数あるいは年令の相当上の者が、かなり低い給料を取っておるということがあるようです。これは私が調べた資料ですから、間違いないとも限りませんが、しかしその点も、できるだけ経験年数あるいは年令、いろいろな点を考えて、遺憾なきを期してもらいたい。これは要望でございます。  それから、これは国会とは直接関係はございませんが、これも気になって調べたのでありますが、院内に食堂、理髪その他の業者が入っておりますね。こういったものの監督なりいろいろな処置は、どこでやっていらっしゃいますか。
  62. 藤野重信

    ○藤野参事 特別の場合、たとえば院内の食堂については、警務部長というような特例はございますが、原則的には、院内営業としては管理部長が監督しております。
  63. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 これは直接の職員ではありませんが、調べてみると、非常にひどいのです。国会内にある業者に使われている労務者ですね。ひどいところは、盆暮れの手当も出ませんし、退職手当も出ないし、あるいは健康保険もない。給料が安い。しかも、時間が非常に無制限である。私は全部調べてありますが、ここでは出しません。管理部長責任を持って調べてもらいたいと思う。もし食堂において食べものが安過ぎて、退職金が出ないのならば、値上げの方法も必要だし、理髪屋その他にしても、料金が安過ぎて払えないならば、料金を上げなければならないと思う。国会に全く前時代的な雇用関係があるということは、もってのほかだと思った。それを聞いた当時は憤慨した。憤慨してみてもやむを得ないが、これは私は許せないと思う。しかも見ると、いろいろ今おっしゃったように、管理において、熱資源やらいろいろ無料なところがある。そういう理髪や食堂その他を調べて、従業員の待遇やいろいろな処置をつぶさに調べていただいて、この点について、私はこの国会会期末に議運庶務小委員会に出て参りまして、この結果をお聞きするから、早急に調べて、一つひどいところがあったら、すぐあなたから業者に指示して、ちゃんと従業員の待遇改善と安心して働けるような実態を作ってもらうよう要望しておきます。  それから次に、中央食堂なんか、聞くと、警務部だそうですね。これもおかしいと思う。これは何か昔の遺物らしいが、中央食堂なんか警務部の所管というのはおかしい。早く管理部に直して、厚生課で適当にやってもらう。これは非常に問題がある。これを一つ要望しておきます。  それから、庶務部長にもう一つ最後に、去年、あなた方は用人の諸君に退職勧告をなさいましたね。それはいろいろありましょう。私はこれは反対ですが、だんだん年も低下してきた。私の調査によると、かなり高年者がいわゆる上級の職にはすわっていらっしゃる。用人には低い年令で退職勧告しているけれども、かなり地位の高い人には、同じあるいはそれ以上の人でも、何らの退職の勧告をしていらっしゃらない。これは調べればわかる。これはおかしいと思うのですよ。用人なら私はかなりの年令に達しても働けると思う。そういう人たちには、生活が苦しいのだから、長く働いていただきたい。だれだっていつまでもそう年をとるまで働こうとは思っていないけれども、やはり自分の生活から考えれば、働かざるを得ないで働いている諸君が多いと思う。その家で隠居仕事で、その人が働かなくても、その家の家計が十分というなら別でしょうが、私の調べでは、あなたも調べればわかるが、かなりの高給者には、退職勧告を受けた用人の年令よりもかなり高い人が、依然としてその職にいらっしゃる。そういう人は一度も退職勧告を受けたことがない。これはおかしいと思う。上に厚く下に薄いというか、上には温情で下には過酷、これは私は絶対に納得できない。私どもは、用人さんにしろ、去年も言ったけれども、事務総長が事務総長としてすわっているのは、とにかく千何百人の職員の諸君が一生懸命に働くからすわっておれる。ところが、上の者はのほほんとして、下の者だけ自分の犠牲を払わなければいかぬ。この間会いましたが、職名を言ってもいいが、そこまで言う必要はないでしょう。もちろん、病気や何かで働けないとか、勤務状況が悪くて、だれが見てもやめてもらう以外にはないという人は別だが、普通のものならば、私は、できるだけ働かして、皆さんの生活を安定させることが望ましいと思うのだが、庶務部長、いかがでございましょう。
  64. 知野虎雄

    ○知野参事 お答え申し上げます。今の用人さんのことですが、用人さんだけ勧奨退職して、そうでない者には一切しなかったとおっしゃられましたが、これはちょっと事実と違っております。この役所は、御承知のように、議事運営というような特殊な仕事がございまして、なかなか年期のかかる職種もあるわけでございますから、そういう余人をもってかえがたいような人も一人や二人はいるわけでございます。そういうふうな人は、例外というのはあるわけですから、やむを得ませんが、昨年出しました中で、三十四年の一月から三十五年の一月まで実際に退職いたしましたのは、事務系統におきまして三名、用人さんが九名ございました。これは事実でございます。これは用人さんの年令が非常に高かったということに基づいております。なお三十五年の三月、すなわち、今年度一ぱいでやめる予定になっております者、すなわち、すでに話がついておりますす者は、用人さんで十一名、用人さん以外の、たとえば事務系統でございますとか、警務でございますとか、そういうふうなものを合わせて十二名でございまして、必ずしも用人だからといってやったということではございません。
  65. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保分科員 かえがたい人がないことはないでしょう。しかし、国会には部長課長たくさんいると思いますが、あとの部課長は何をしているのですか。この人は得がたいが、あとの部課長は無能ということですか。衆議院の部課長諸君は、その人をやめさしたらどうにもならぬのかと笑われますよ。私はそんなことはないと思う。一番下で苦労している職員をやるなら、かえがたい人でもかえられますよ。またかえなければなりません。何で高禄をはんでいるのですか。私は言いのがれだと思う。そういうことは事務総長に言いたかった。事務総長は、自分の都合のいい者だけ並べて、一番末端の苦労している者に対しては、そういうむごいことをしている。これはあなたに言うのじゃない。事務総長に言いたかったのです。事務総長は、大きな部屋でああいう状態でいいでしょう。しかし、その陰に苦労している者の気持は全然そんたくされない。まだたくさん問題がある。業者の問題にしても、配置転換の問題にしても、自動車の運転手にしても、特定の職についている運転手は、年数は少なくとも行政一に回っておるのがある。この部課長の承認にしても、そこに衆議院の人事面に不明朗なものはないと言われても、そういう点があるから、私は言っているのです。これは庶務部長に言う言葉でないかもしれませんが、残念ながら総長も次長も出てこないで、あなたがかわってきたから、あなたに言うのです。今のことも、普通の答弁ならそれで通りますよ、私はその答弁では納得できない。去年十人も二十人も退職さしておいて、特殊なケースもあったでしょうが、これもあなたにこれ以上言ってもしようがないから、私は、このことも含めて、本国会中に議運に出てやります。  関連して、これも一つ宿題にしておきますが、交換手の勤務が延びている。宿舎が十二時まで、本院が開会中十一時まで、これは長いのはけっこうです。私が調べたところによると、もう宿舎の十一時過ぎの通信とか——本院でも、開会中といえどもあまり国会はもめないし、十一時までいる人はないようです。この点は、私どもからすれば、時間を長くやってもらうことはいいにきまっているけれども、十一時、十二時というときの用途は、急な場合は別な方法があるだろうから、この勤務時間というものを検討してもらいたい。  それから、宿舎に看護婦さんがいるが、これは強制的に宿舎に泊まっておるようですね。私は、この人たちもやはり自分の住居が持ちたいという気持が多分にあると思う。二人とも泊まっていなくともいいわけです。交代に泊まればいい。こういうようなことは小さい問題だけれども、私は、いわゆる人権を尊重するという意味において、看護婦さんでも、外に泊まって、自分の居住を持って、落ち着いた生活をしながら通ったらいい。こういうような点も考えてもらいたい。いろいろあげて参りますと、たくさん院内にも問題がありますが、そういうこまかいこともぜひ気をつけて、皆さんが先ほど言ったように、安んじて喜んで働く、さすがに国の最高機関である衆議院に働く人たちの実態というものは、ほかの官庁のもって範とするというものがあっていいと思う。そのためには、あなたも遠慮しないで、予算要求なり制度の改廃を思い切ってやってもらいたいと思う。自分が安定した位置にいるからいいのではない。この点もさっきの管理部長と同じように、会期末に参りまして、いろいろ実績をお聞きいたしますから、早急に調べて一つ適当な措置をやってもらうことを強く要望して私の質問を終わります。
  66. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 法務大臣が出席しておられますので、午後所用の関係で、この際、法務大臣に対しての質疑をお続けいただきたいと存じます。大貫大八君。
  67. 大貫大八

    ○大貫分科員 私は、主として人権擁護に関連してお尋ねをするつもりであります。  法務省予算の上から見ますと、人権擁護に対しては非常に冷淡なような気がするのです。私は、根本的には、人権擁護という仕事を法務省に管掌させるということ自体に問題があると思うのですが、しかし、いやしくも主管する以上は、おざなりでなく、もっと熱心に人権擁護ということを考えてもらわなければならぬと思うのです。人権擁護というのはやはり民主主義の柱にもなることなんですが、大体、政府が憲法を大事にするという考え方が乏しいようです。従って、どうも法務省あたりも人権擁護に冷淡じゃないか、こういうふうにすら疑えるのであります。  そこで、予算の上に現われたものを追ってお尋ねいたしたいのですが、この予算の説明によりますと、最近人権侵犯事件が特に多いので、ことしは専門調査官を三名置くとあるようですが、一体専門調査官というのは何をやるのですか。
  68. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 御承知のように、人権の重要なことは、憲法によって保障されている問題でございますし、法務省としましても、決してお説のような軽視した扱いはいたしておりません。人権擁護局まで設けまして、人権擁護のためには大いに尽くしておるつもりでございます。ただ、予算が少ないじゃないかという御指摘でございますが、予算も、法務省予算としてできるだけ多くとっておるわけでございますが、本年は、人権擁護の調査官も、今まででは不十分でございましたので、三名増員をいたしたような次第でございます。どういう仕事をするかと申しますと、各府県に法務局がございまして、各法務局の、人権擁護の仕事をしております、それを監督指導し、並びに人権のいろいろな問題を調査する仕事を調査官はやっております。
  69. 大貫大八

    ○大貫分科員 この説明書によりますと、専門調査官といかめしくなっておりますが、一体、専門調査官というのは何を——しかもたった三名です。その三名くらいで専門調査官は一体全国的にどういう仕事をやるのかというふうに思います。特に、今まではこれはなかったでしょう。こういう専門調査官というのは初めて設けられたのでしょうか、その点もあわせて一つ……。
  70. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 今まで五名おりましたが、今度八名にしたわけでありまして、今までもおったわけであります。官制上は専門調査官というものはございません。ただ、予算で申しておりますのは、人権擁護の問題を専門的に調査するという意味を表わしたものと考えております。
  71. 大貫大八

    ○大貫分科員 これは官制上の名前かどうか知らぬが、人権擁護管理官というのが、職員録によると、出ておりますが、これはどうなんですか。これは一名あるようです、しかも兼務で。
  72. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 お答え申し上げます。それは、従来、人権擁護局には三課ございまして、行政整理の結果、その課を減らしまして、同じような仕事をする管理官というものを設けた次第でございます。大体、人権擁護に関する広報関係、それから法律扶助に関する事項、そういうものを扱うことになっております。
  73. 大貫大八

    ○大貫分科員 そうすると、人権擁護に関して専門的に仕事をしておる職員というのは、全国にどのくらいあるのですか。実は法務局に人権擁護課というものがあるようですが、普通、地方法務局の課というのは名ばかりで、課長と、課員がたしか二人か三人しかおらないのが常態じゃないかと思うのですが、その辺のところを明らかにしていただきたい。
  74. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 地方におります職員は約二百名ございます。その下——と申しては、なんですが、民間に人権擁護委員というものがありまして、それが昨年末で七千六百七十三人ということになっております。
  75. 大貫大八

    ○大貫分科員 今、人権擁護委員というものが出ましたから、お尋ねいたしますが、なるほど、数は全国的に多いようです。多いが、しかし、実際の活動はほとんどしていないというのが実情じゃないかと思うのです。ほとんどしていないというのは、任命にも問題があると思うのです。しかし、実際はこれが予算的に何ら裏づけがないということ、一体、人権擁護委員が七千人もあって、これの活動するための予算はどのくらい見ておるのですか。
  76. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 委員の活動が不十分である、ほとんど活動していないじゃないか、こういう御意見のようでありますが、私は必ずしもそう思っておりません。もちろん、七千名のうちには名前ばかりの人がおられることは想像できるのでありますが、相当の活躍をしておられるように私は観察いたしております。ただ、人権擁護委員は全く無報酬でありまして、給与を受けないのであります。その活動費として実費弁償金が与えられるにすぎないのであります。そのほかに、委員が各協議会あるいは連合会を結成しておりますが、その協議会に出る委員旅費というものも認められております。総計いたしまして、大体国の予算から委員の活動のために出されております費用が、約千七百万円程度ではないかと思っております。
  77. 大貫大八

    ○大貫分科員 これは実際の人権擁護委員の訴えを聞きますと、年に一回、何か協議会が開かれるが、それも年に一回だけだ、あとの費用がないということで協議会も開かれていないというように聞いておりますけれども、大体そんな状態なんですか。
  78. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 国の予算面におきましては、全国の委員が年に一回半ほど協議会を開催する旅質が入っております。そのほかに、もっとも、国の予算が足りないせいでございましょうけれども、推薦母体である各市町村から助成金を受けております。そういう費用によりまして、市町村によりましては相当活発に研修会、そういうものを開いております。けれども、正直なところ、その委員の会合あるいは研修の機会、そういうものは必ずしも十分ではないと私は考えております。
  79. 大貫大八

    ○大貫分科員 必ずしも十分でないどころか、実績から見ると、全く不十分のように私は見ております。去年私は北海道に調査に行ってきましたけれども、特に人権擁護の関係で委員からの熱心な陳情がありました。これはもう北海道のような非常な不便なところにおいては、活動したくても、実際に旅費も出ない、こういうふうな実情の陳情がございました。そんな状況では、全くこれはおざなりで、これは人権擁護課の手足だといってみたところで、ほとんど手足の役をなさぬと思う。法務省としてはこれでいいのか、つまり、人権擁護委員に実費弁償をするというだけでいいのか、委員手当なども考えてみるということはないのでしょうか。
  80. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 お説のように、法務省関係予算は、ほとんど人件費と営繕費でございますので、従来からの法務省予算として決して私どもも十分だとは思っておりません。自分が法務大臣になりましていろいろな話を聞きますと、各地方における民間のそういった仕事をしておられる方々は、ほとんど名誉職で、俸給も出していない。保護司のごときもしかり、また、人権擁護委員のごときもしかりでありまして、何とか予算をふやしたいと思っていろいろ努力いたしておりますが、何分にも人件費だものでありますから、十分な予算がとりにくいという実情であります。しかし、これであっては私どももいかぬと思います。ですから、今後できるだけそういう方面にも予算を増していきたいという努力はいたしたいと思いますが、建前が名誉職になっておりますので、なかなか予算もとりにくいという実情は御了承いただきたいと思います。
  81. 大貫大八

    ○大貫分科員 もう一つ、人権擁護委員の任命ですが、先ほどの人権擁護局長の御答弁では、りっぱな人が多い、これは立場上そうおっしゃられるのでしょうが、実際は、地方の人権擁護委員の実態というものは、ほんとうに人権に対する感覚などというものはまるでゼロな、前時代的なボスを任命したりする場合があるのです。全く活動できないのは、すでに人権擁護に対する感覚がない、そういう委員を何ぼ任命しても、どうにもならぬ。動脈硬化で動かぬのですが、一体、任命に対しては、どういう配慮で、どんな手続でやっているのですか、どんなことを考えてやっているのですか。
  82. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 各地方に法務局がございまして、また、その支部もございますので、そこらで人選をいたしまして推薦をしてきたものを任命しているのでございます。今おっしゃるようなきらいもございますので、今後は一つ十分注意して参りたいと思います。
  83. 大貫大八

    ○大貫分科員 最近、人権侵犯事件が非常に起こっております。特に最近はなはだしいのでは、確定判決になりましたが、静岡県下の三つの強盗殺人事件、二俣事件、小島事件、もう一つ幸浦事件といいますか、これはいずれも私の記憶では無罪が確定しておると思うのですが、これらの被告人というのは、大体数年間獄中につながれているわけなのです。今日の刑事補償法でいえば、こういう無罪になった者に対しては、一日二百円ないし四百円の範囲で刑事補償をするという建前になっておるようですが、一体、法務省としてはこれで人権の擁護は足れりと思っているのかどうか。つまり、金にはかえられない——これらの例をとってみましても、精神というのは金にはかえられないのは、申すまでもない。こういう人権の侵害によって数年間獄に投ぜられて出てきたというような場合に、単に今の刑事補償の一日二百円ないし四百円ということで一体よろしいのかどうか。何かもう少し、こういう回復のできないような人権侵犯に対して、法務省として積極的な考えはないのかどうか、その点をお尋ねします。
  84. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 静岡県の三つの事件のうち、幸浦事件はまだ控訴になっておりまして、確定しておりません。あと二件は、お説の通り無罪に確定いたしました。こういった刑事裁判のために長年刑務所につながれておる人々にとりまして、今の刑事補償法が適当であるかどうかということは、これは別でございますが、法律ですでにきまっておりますので、その限度において補償はいたして参っております。なおまた、それで足りない点があれば、もし公務員の故意もしくは過失によれば、国家賠償法の規定もございます。この両方の規定で償いをしているわけでございますが、これをもって私どもも償いが十分できたとは思いません。その原因が、人権侵害のために非常にひどい目にあったということでございますれば、これではもちろん足りないのでございます。しかし、法律は今そうなっておりますから、やむを得ない。ただ、そういったことを起こさないように、もともとの人権を侵さないようなことに十分今後も注意していかなければならぬと思います。この三事件につきましては、いろいろ人権擁護の上から問題があると思って、私どもも現在例の紅林問題を十分に調査いたしておりますが、事実があれば、また適切なる処置をとって参りたいと思います。その根本を除くことにおいて、こういったことのないようにしていくことが適当であると考えております。
  85. 大貫大八

    ○大貫分科員 今の法律がそうなっているから、仕方がないというのではなくて、私のお尋ねしたいことは、人権擁護という大きな仕事を管掌される法務省として、一体今のままでいいのかどうかということ、これは取り扱いの上において十分注意することもけっこうなことなんですが、人権をこんなに深刻に侵された者に対する国家の補償というものが、現行のままでいいのかどうか。私は、もちろん悪いと思うのです。もっと積極的に、たとえば刑事補償の問題も、現在の生活状況なんかから見て、もっと上げなくちゃならぬじゃないか、二百円ないし四百円というのは少な過ぎるんじゃないか、そういうこともありますけれども、人権を侵害されたことに対して、たとえば、国家みずからが、これは全く無罪だったんだということを公告して多くの人に知らせるとか、人権を回復する方法について法務省として何か積極的な考え方がないかどうかをお尋ねしたい。
  86. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 刑事補償法によります金額が十分でないことは、われわれも認めております。これは予算に余裕ができますれば、これらの増額も考えていかなければならぬと考えております。また、賠償金のみならず、今お話のように、無罪になった者を広く世間に知らせるということも非常にけっこうなことでございますので、そういうような点についてもいろいろ研究をいたしまして、適当な方法があればそういう措置をとって参りたい。要するに、法務省としましても、こういった人権を侵害されましたことがもしもありとしますれば、それに対しての償いを十分にしたいという気持を持って、今後も善処して参りたいと考えております。
  87. 大貫大八

    ○大貫分科員 そこで、静岡の事件を申し上げましたが、この静岡の三つの事件は、いずれも紅林という、現在警部になっておる男が、警部補時代に取り扱った事件です。しかも、この三つの事件とも、当時の紅林警部補の拷問によって自白をさせられたということを被告が訴えており、そういう被告の自白が信用できないということで一審、二審は死刑なり無期になったこれらの事件が、無罪になったと思うんです。この紅林警部という男に対して、人権擁護局としてはどの程度調査が進んでおりますか、その点を承りたい。
  88. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 紅林警部補の問題につきましては、その当時から世間でもいろいろ問題になったことでございますので、法務省でも十分な調査をしております。しかし、何分にもその一件記録が非常に膨大なものでございまして、その当時の事情を詳細にいたしておりますので、まだ十分な結論を出す調査になっておりません。ことに、まだ幸浦事件が係争中でございますので、直ちに結論を出すことも、そういう意味においても差し控えておるわけでございます。
  89. 大貫大八

    ○大貫分科員 幸浦事件はまだ係争中であっても、すでに二俣事件、小島事件、ともに確定しておるのですから、この二つだけでも、結論を出されていいんじゃないかと私は思う。というのは、法務大臣はごらんになったかどうか知りませんけれども、「週刊文春」の十二月二十一日号で、今では静岡県蒲原警察署次席ということで、紅林というのが特別手記を書いております。「犯人だけが知っておる」という手記を書いております。その手記によりますと、無罪になったのは、弁護人のでっち上げだということを書いておる。しかもはなはだしいのは、弁護士に対する大へんな誹謗がこの中にありますが、特にひどいのは、当院の議長になりましたところの清瀬氏に対する誹謗もあります。たとえば、その一節に「清瀬氏や海野氏のようなベテランの弁護人のサル知恵で」こういうことを書いてあります。清瀬さんがサル知恵なんです。これを一々見ましたら、大へんな悪口を書いています。要するに、弁護人のサル知恵で無罪に作り上げたんだ、有能な弁護士を頼めば犯罪人も無罪になるのだ、こう言わぬばかりの、それだけを見ましても、改俊の情なんか毛頭ない、反省なんかこの男にはみじんもない。この手記にあります人相を見まして、私は人相見じゃありませんけれども、なるほど、この人相じゃまさに拷問なんかやりかねないと思うくらいの、冷酷無情な顔つきをしています。こういうふうに、確定したものだけでも二つの拷問事件を犯しておる。しかも、堂々と清瀬弁護士のサル知恵で無罪になったというようなことを発表しておる。改俊の情はみじんもない。これに対してどうして結論が出せないのでしょうか。人権擁護の建前から、こういうものは法務省としてはもうちょっと早く結論を出して、拷問の事実があるならあるとして、天下に、人権を侵したこういう不当な者に対しては、かくのごとく十分な処置をするのだということを私は示してもらいたいと思うのです。私はそれが人権擁護局の仕事じゃないかと思うが、その点はどうですか。
  90. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 お説のように、拷問の事実がありますれば、これはりっぱな人権侵害でございます。今までいろいろ膨大な資料を調べておりまして、まだ拷問ありという結論に達しないものですから、できるだけ詳しく調べて、実際の事件というものは古い事件で、そのときの実情は書類によってのみ調べるほかはないものでございますから、今その膨大な書類を調べつつありますが、今のところ、まだはっきりした拷問をしたという事実がその書類によってはつかめないので、そういうことがあるのではないかということを十分探究いたしまして、あれば、適当な処置をとりたいというふうに考えております。ですから、本人も、ないといって、そういう手記を出しておりますけれども——改俊の情はないといわれますけれども、本人は、ないつもりでおるのでございますから、だから改俊の情はないと思います。ですから、法務省といたしましても十分調べまして、御期待に沿いたいと思います。
  91. 大貫大八

    ○大貫分科員 これは希望ですけれども、早急に結論を出していただきたい。この点が私は日本の官僚制度の、責任一つも負わぬ一番悪いところだと思う。少なくともこれだけの事件を犯して、自分の調べた被疑者が、もう二人は無罪が確定している。しかもその被疑者から、犯人に仕立てられた者からは、いずれも拷問だと言われている。それほどの衝に当たった警察官が、当時警部補だったのが、いつの間にか栄進して、今日では警部になっている。そういうことでは、日本の官僚制度というものを根本的に改めなければ、民主主義なんか育ちません。人権擁護なんかできませんですよ。もう責任を葬ったのも幾つもありますよ。たとえば、数年前に小菅の刑務所から、たしか死刑が確定しておる犯人が逃亡したことがあるはずです。菊地という、栃木県で三人くらい人を殺した事件で、死刑が確定した。これが小菅刑務所を堂々と脱走しております。これはあとでつかまりましたけれども。こういうことに対して、一体当時刑務所長はどういう責任をとったんだか、さっぱり世間はわかりません。おそらく始末書くらいとられたかどうか知らぬが、私は、少なくとも民主主義というのは、やはり責任を負うことだと思う。たとえば、自分が所長として死刑犯人を逃がしたというような場合には、これは即刻辞表を提出して、やめるべきだと思う。そのくらいの責任をとる体制ができなければ、私は民主主義なんて育たぬと思う。やはりこれだってそうなんです。何とかして、拷問の事実がないように官僚組織の中で始末をしようという考え方がおそらくあるんじゃないかと思う。だから、その点では法務省あたりはきぜんとして、やはり人権擁護の建前からこれを天下に明確にして、憲法に定める人権というものは健在だということを示すべき義務があろうと私は思う。ぜひ一つその点は——これは無罪になってからもうずいぶん日がたっているんですよ。早く結論を出していただきたい、こう思うのです。これは希望です。  次に、法律扶助協会に対する補助金というのが、ことしの予算ではわずかに八百万なんですね。これは去年と同じでふえてない。一体この八百万というのはどういう基礎で計算をされておるのでしょうか、それをちょっと……。
  92. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 法律扶助協会に対しましては、お説の通り、八正百万円の補助金を出しておりますが、これはその会が十分な人も置けないというようなこともありまして、この補助金を出して、また三人も人を置いて、今日五人ですか、専任職員を持ったというようなことでありまして、そういったような人件費でございますとか、あるいはその他の経営費を考えまして大体八百万円を補助しているわけであります。
  93. 大貫大八

    ○大貫分科員 法律扶助協会に対する補助金というのは、そうじゃないんじゃないですか。貧しくて、つまり貧困のために権利の主張ができない、それで訴訟をやるにも弁護士を頼めない、そういう人に実は弁護士を頼んでやるために、その費用としてこれはできているんじゃないですか。
  94. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 確かにその通りであります。訴訟援助の費用のための国家の補助金でございます。
  95. 大貫大八

    ○大貫分科員 そうすると、一体どういう基礎でこの八百万という数字ができておるのでしょうか。たとえば、一件に対して幾らというようなことでも考えているあれでしょうか。何百件の件数を補助するとか、そういうことなんですか。
  96. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 この八百万円になりました経緯につきましては、大蔵省の査定によりますので、私はよくわからぬのであります。ただ、最初この法律扶助協会に対する補助金が入りましたのは、一昨年に一千万円入ったのであります。その後、昨年は八百万円に減らされまして、それから今年度予算におきましても八百万円ということになっておったのでありますが、これは必ずしも明確な根拠のもとに大蔵省が査定したとは私考えておりません。弁護士会あるいは法律扶助協会の方では、非常に少ないという不満が生まれておることは事実であります。ただ、八百万円では、おそらく四百件程度の事件の訴訟援助しかできないのではないかと私たち考えております。
  97. 大貫大八

    ○大貫分科員 一体法務省としては、何ですか、今、大蔵省の査定だと言うだけなんですが、幾ら要求されたんでしょうか。しかも、弁護士会の方からはどのような要求というか、申請があったんでしょうか、それをお示し願いたい。
  98. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 私の方は、三十五年度予算といたしまして、約千三百万円ほどの補助金の要求をいたしました。弁護士会の方では、これは明確な計算に基づいたものでございません。ただラフな気持で、せめて二千万円ほどという希望はございました。
  99. 大貫大八

    ○大貫分科員 ここにも人権擁護に非常なおざなりな点があると思うのですが、大体、刑事事件については、今日ではいわゆる国選弁護制度というものが確立されて、少なくとも、犯罪を犯した者に対して、弁護人をつけられない貧困の者に対しては、御承知のように、国が弁護士をつけてやる、その国選弁護のための費用が、裁判所の方で本年度予算に見積もっておるのが三億九百万です。少なくとも、犯罪人の人種を擁護するのに、これだけの金を使っているのですよ。三億九百万の金ですよ。犯罪人の人権ですよ。ところが、犯罪人でなく、自分の権利が侵害された、そういう人が権利を回復し、それを主張をするにも、貧困のために弁護士を頼めない、泣き寝入りしてしまうというような問題が世の中にはたくさんあると思うのです。現に数日前の新聞によりますと、何か弁護士が金をやらないために十分働いてくれないので、自分の主張が通らないといって自殺をした奥さんがあるというようなことが記事に出ておりました。そんな深刻な問題はきわめてまれでありましょうけれども、少なくとも、金がないために、主張すべき権利も主張できないという人がたくさんあるはずなんです。犯罪を犯した者に対してすら三億九百万の補助をするのに、自分の正しい権利を主張する者に十分な国家補助ができないというのはおかしいと思うのですが、どうでしょうか。この点もう少し、たとえば弁護士会の方では何か二千万程度と言っておりますけれども、実際はそうじゃないんじゃないですか。弁護士会の方からは、数字を基礎にして、少なくとも七千五百万程度予算を組んでもらいたいという要求があったんじゃないでしょうか。
  100. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今の御質問でございますが、その前に、七千万円ほど弁護士会から要求があったという点でございますが、私ども予算を組みます場合には、そういう要求はございませんでした。これははっきり申し上げられると思います。  それから、先ほど、刑事事件については、三億円ほど国家の費用が出ている。民事事件については一千万円程度の補助金しか出ていない。人権擁護局として考えが違っているのではないか、熱意が足りないのではないかという御質問です。ただ、私は、最初からこの補助金の問題にはタッチいたしておるのであります。世界のいろいろの事情も調べて参りました。確かに、この民事事件に関する国の態度、あるいは公共事業団体の態度については二つの態度があると思うのであります。イギリスのように二十何億と申しますか、それほど国の予算をこの法律補助のため投じておる国もございます。またアメリカのように国からの補助を受けるということは、その民間団体である法律扶助協会の自主性を失うという考えのもとに、全然国の補助を受けないで、民間からのコントリビューションといいますか、そういう寄付のもとにやっておる国もあるのであります。私はその中間をとりまして、補助金という形式をとったのです。もちろん現在の状況におきまして、全国の貧困者の訴訟援助のためにわずか一千万円というのは確かに表面的には僅少のような感じがいたすのであります。もう少し、一億ほどの金を出せというふうな意見もあるのであります。けれども、私は、やはりこういうふうな民間の法律扶助事業というものは、堅実な歩みを持たなければならないと思うのであります。現在の法律扶助協会の事務能力、あるいはその受け入れ態勢のもとにおいて、今、膨大な金がつぎ込まれましても、必ずしもいい結果を上げるものではないと思うのであります。やはり、これは漸進主義でいくべきではないかと思うのであります。それで、今年度も綿密な計算のもとに一千三百万円の補助金を要求をいたしたのでありますが、遺憾ながら、八百万円に削られたのであります、これはぎりぎりの私の要求でございます。非常に私は遺憾に思っております。けれども国家の財政上、これはやむを得ない点もあるかとがまんはいたしておるのであります。もう一つは、現在、法律扶助協会の支部は各地の弁護士会に設けられておりますが、必ずしもその成績は上がっておるとは言えないのであります。場合によりますと、支部に一件もそういう申し出がない、あるいは援助していないというふうなところもあるのであります。それは各弁護士会の熱意にもかかると思うのでありますが、ただ、こういうことは言えると思うのであります。刑事事件と違いまして、貧困者に対しましては訴訟の形態になったときの援助をする件数というものは、これは日本のみならず、各国でも非常に少ないのであります。むしろ、訴訟になる段階の前の補助ということが非常に貧困者には効果があるのであります。アメリカにおきましても、この法律相談件数というものは非常に多いのでありますが、貧困者の実際の訴訟になる件数というものは、法律相談を受けました約二割程度しかないのであります。従いまして、この貧困者の貧困の水準にもよりますけれども、貧困者の訴訟援助というケースというものは、そうわれわれの考えるほど多くはない。むしろ、訴訟になる前の、いわゆるコートの関係いたす前の弁護士活動を依頼するというふうな費用の方が必要ではないか、こういうふうに考えております。私は、この貧困者の訴訟援助に対する補助金につきまして、その額、また、国の補助金と法律扶助協会が自己で集めてくる基金との関係につきましては、やはり協会とよく相談をいたしまして、ほんとうに貧困者の訴訟援助の機関に育成できるように一つ検討いたして参りたい、こういうふうに考えております。決して貧困者の訴訟援助の補助金について軽く見ておるわけではございません。
  101. 大貫大八

    ○大貫分科員 今、人権擁護局長は、貧困者ということにこだわっているようですが、私もこれは聞き方がまずかった。しかし、必ずしもそれは貧困者じゃないのです。いわゆる貧困者という定義にもよりましょうけれども、ほんとうに貧しい者、国の補助を受けているような者は、もう訴訟によって権利を回復するなんということはありません。実際は、お説の通り、確かにその前に生活の援助を受けるということなのです。そうでなく、私の言うのは、つまり、生活を犠牲にしなければ訴訟をやれないような人、これはたくさんあるはずなのです。だけれども訴訟をやってまでやると、そろばんをはじいても損する、また、生活費にも食い込んでくる、そんなことならあきらめてしまえという式のもの、これは必ずしも貧困者とは定義できないと思う。こういうものがたくさんあるはずなのです。たとえば日本弁護士連合会で取り扱った扶助申請件数が昨年度だけで一千件あります。実際それに扶助をいたしましたのが五百三十件という数字が出ていますけれども、これは何も公費の扶助を受けるような貧困者じゃないのです。今言うように、生活を犠牲にしなければ訴訟費用を作れないという程度の人、これに対して扶助を与えておるのが——一千件の申請件数全部に与えたかったのでしょうけれども予算がありませんから、こういう結果になっている。幸いにして、刑事事件については国選弁護制度というものが確立したわけなのですが、犯罪人の人権を保障するくらいならば、民事事件においての権利を侵害された者に対する、あるいは権利を主張する者に対する援助というものは、もっと積極的にやらなくてはならぬじゃないか。いわゆる民事事件に対する国選弁護制ということを一つ研究なさったらどうでしょうか。そういうことに対して、もうちょっと伺いたい。
  102. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今、御質問の点は、私もよくわかるのであります。はっきり申しますと、現在の民事訴訟、いわゆる弁護士を頼んだ訴訟というものにおきましては、現在の日本人の給与を受けておる階級は、むしろその点につきましては全部貧困者といってもいいかもしれないと思うのであります。けれども、どの程度までの所得のある者を国の費用によってその訴訟を援助するかということが非常にむずかしい問題ではないかと思うのであります。現在国から出しております法律扶助協会に対する補助金は、一定の基準を設けております。必ずしも生活扶助を受けておる人には限っておりません。もう少し程度の高い方にも適用して、補助金を出しておるのであります。今おっしゃいました中産階級的なものに対しても、訴訟の面から見れば貧困者と見られる人たちに対して、もう少し国の予算による訴訟援助のとびらを開くべきではないか、こういうお考えであります。私も、その点は考慮いたすべきだと思うのでありますが、ただ、イギリスの例なんかで見ますると、ある程度収入のある——これは非常に明確に収入、財産を限定いたしておりますが、特定の水準以上のものにはある程度の手数料をとるというふうに、いろいろと取り扱い方を変えておるようであります。私も、今申しました現在の日本の中産階級の実情から見ますれば、この訴訟援助の補助金の対象になるものはもう少し上げていいのじゃないかと思うのであります。ただ、その上げ方によりまして非常な数字の開きが出て参りますので、この点は、やはり大蔵省におきまして、あるいは一般の国全体の方々が民事訴訟というものに対して正しい認識を持っていただきまして、できるならばもう少し現在の補助対象の水準を上げていきたい、こういうふうに考えております。けれども、これは補助金の額との見合いがございますので、私たちとして、ただ一人の考えできめていくわけにも参りません。この点は、今後とも大貫先生たちの御協力を得なければならぬと私は考えております。
  103. 大貫大八

    ○大貫分科員 実は、もっといろいろお尋ねしたいことがあるのですが、時間がありませんから、あと二、三点にしぼって最後の質問といたしますが、法務大臣にお伺いしたいと思います。  最近、司法修習生の中から検事を志望する人が非常に減っておるということを聞いておりますが、その通りですか。
  104. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 そういう傾向はございます。
  105. 大貫大八

    ○大貫分科員 これは、見方によっては非常にゆゆしき問題だと思うのですが、検事の志望者が少ない傾向にあるというのは、一体どこに原因があるのですか。その辺は法務省として検討されておるのでしょうか。要するに、検察事務を担当する者に優秀な人材を迎えられないということになると、これは人権擁護の建前からも非常にゆゆしき問題になると思いますが、一体どうして検事の志望者が少ないのか、そこらの原因を探究されたことはありますか。
  106. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 むろん、探究もいたしております。弁護士、裁判官に比べて検事の仕事が若い人の気持に合わないという点もございましょうが、しかし、検事自体のほんとうの職務を十分に知らせれば、検事になりたいという希望者もふえてくるのであります。ですから、その点はもっと検事の実務修習を多くさしていけば検事志願がふえてくると思いますが、今までの行き方では、そういう点に多少欠けている点があったのではないか、こう考えております。
  107. 大貫大八

    ○大貫分科員 検事の志願者が少なくなってくるというのは、いろいろな原因があると思うのですが、その原因の一つとして、やはり、最近人権侵犯事件が非常に目立って多いのです。そういう場合に、検事というものが非常に悪役になるわけなんです。だから、私は、これは法務省の運営が悪いと思う。たとえば、先ほどの静岡の事件にしろ、あるいはまた、もっと別な事件にいたしましても、やっぱり警察なりの持ってきたのが少し怪しいなと思ったら、無理に検事は犯罪者を作り上げる必要はごうもないのですから、これは間違ったなと思ったら、間違ったということで、率直に起訴の見送りでも何でもすればよろしいと思う。そういう態度がなくて、警察から持ってきた人権侵犯の事実も訴えられておるような事件、それをあくまで何か意地になって有罪に持っていこうというような、不必要な努力を検事がしているのじゃないかと私は思う。そういうことから、世間的に見ると、検事というものは非常な悪役に見える。そうすると、若い、希望に満ちた、せっかく法曹界に身を投じようとした者も、あんなに新聞でたたかれ、ラジオでたたかれる悪役はやりたくないというので、弁護士になったり、裁判官になったりする者が多くなっているのじゃないか。どうですか、そういう点について考えられたことはありますか。
  108. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 現在の検事は、自分一人で起訴するかしないかをきめるような場合はほとんどございません。大体検事正の指揮を受けてやっておりますし、ことに、重大でありますれば、検事総長の指揮を受けてやっておりますので、その事件について誤りのないように、検察庁としても十分な注意を払っておるわけであります。ただ、検事というと悪役だというふうに世間ではお考えになっている方もあるかもしれませんが、検事は決して国民を悪い者にしようとして一生懸命にやっているのじゃなくて、実際の証拠によってやっておるのでございますが、刑事訴訟法もいろいろ改正になりまして、証拠の収集についても、従来のように十分できない点もありまして、そのために検事の方が負けたということがございます。ことに、最近検事の起訴しましたことが、とかく裁判で破れますのは、刑事訴訟法ができた当時の、いわゆる検事が訴訟法になれないために起こった事件が今ごろやっと判決になっておるようなわけでございまして、最近におきましては、検事もそういう点については十分注意して参っておりますから、今後現われる裁判においては、そういうことは少なくなってくる、こういうふうに考えております。
  109. 大貫大八

    ○大貫分科員 だから、法務省の最高の指導的な考え方として——これは法務省というか、検察庁なんでしょうが、要するに、無罪をとられた検事は、その成績に関係するというようなことが今でもあるのじゃないでしょうか。だから、第一線の検事は——第一線ばかりでなく、何とかして無罪になったのを取り返そうというような努力をするので、かえっておかしなものになってしまう。私は、間違ったのは間違ったで、あっさりかぶとを脱いでいいと思う。そういうルールを法務省、検察陣営に確立すれば、私は、世間から検事が悪役と見られることはなくなると思うのです。むしろ、国家の意思を代表して犯罪を追及するというところに魅力を感ずる者も出てくると思う。もっと第一線の検事というものを大きな目で見て、何も無罪になったからといって、それで成績に影響を及ぼすような扱い方をしないようにされたらいいと思うのですが、その点どうでしょう。
  110. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 第一線の検事がやりましたことが裁判で無罪になりましても、決してその検事の成績にどうするということはいたしておりません。先ほど申した通り、第一線の検事だけで起訴しているのじゃございません。検事正の指揮も受けておれば、最高検の検事総長の指揮も受けてやっております。共同の責任でやっておりますので、むろん、罪がない者を無理に罪をでっち上げるようなことは今までもいたしておりません。
  111. 大貫大八

    ○大貫分科員 最後に、最近、非常に暴力団体の活動が目立って参りました。この二十五日に、安保阻止の国民大会のちょうちんデモがありました。これに対して、愛国党員と称する暴力団がこのデモ隊に突っ込んでおります。これなんかも、新聞によりますと大へんひどいと思うし、目撃者に聞いても、実際にデモ隊の中に六十キロくらいのスピードでもって突っ込んでおる。これは、さすがに警視庁も運転手だけについては殺人未遂というような容疑で検挙したと新聞には出ておりますけれども、このような暴力的な傾向というものが、ちょうど満州事変の直前に暴力団が横行したあの時代に何か最近似てきておるような気がする。私も暴力団に襲撃された経験を持っております。昭和六年であります。ちょうどそのときと同じ傾向だ、各所における暴力団の動きを見ますと、そのように思えるのですが、一体この暴力団に対する取り締まりに対して、法務当局としてどのようなお考えを持っておられるか。
  112. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 暴力に対する取り締まりにつきましては、左翼でも右翼でも、法務省としては決して区別をいたしておりません。ことに、暴力がひどくなって参りまして、いわゆる破壊行為に及ぶような場合には、破防法の適用もございます。破防法の適用につきましても、右翼たると左翼たるとを区別いたさない方針で進んでおります。
  113. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 次は山本勝市君。
  114. 山本勝市

    山本(勝)分科員 私は時間の関係で、ごく簡単に十五分ばかりお伺いしたいと思います。  問題は、この予算の中での、刑務所の作業費に関連する問題であります。刑務所内の囚人の作業が、既存の民業をひどく圧迫するという事実が起こってきて、問題になっておるのでありますが、これについて、法務大臣として、従来は一体どういう方針でこられたのか、また、今後はどういう方針でいくかということについて、はっきりした決意を私は聞かしていただきたいと思うのです。私がここで法務大臣に伺うまでには、実はいろいろ手を尽くしてみた結果、これはとてもこのままではいかぬということで、最後にここへ持ち出してきたわけです。法務委員会の諸君にも訴えてみました。請願も出ました。いろいろやりましたけれども、こういうじみな問題で、なかなか問題が取り上げられない。話は十分わかりますけれども、話半分でみな終わってしまうということから、ここで法務大臣に直接申し上げます。  この経費で見ますと、大体刑務所の作業費というものが十二億五千何万円か組まれております。また、一方歳入の方を見ますと、これは刑務所の作業収入だけではない、ほかのものも多少入っているかもしれませんが、政府収入として二十五億円ばかりのものを納めております。結局は、囚人に働かして利益をあげて、そしてその経費の倍くらいのものを政府に納めておるような仕組みになっておるのだと思うのです。まあ、それはそれでいいですけれども、とにかく刑務所でああいう特殊な状況に置かれて、幾らか労賃を払っておるかもしれませんが、しかし、まともな俸給は払っておるわけはない。これはずっと前からやっておるならいたし方ありませんけれども、そうじゃない。古くからある日本の中小企業の存在を脅かすようなことが、新しく刑務所の仕事で出てくるということは、私は非常な問題だと思う。だから、もし刑務所の囚人の教育とか、訓練とかいうことで経費が要るなら、国は堂々と予算を取って、それで作業訓練をすべきものではないか。それをその予算をわずか取っておいて、国に十数億のものを出しておる、全体で二十五億円ばかりのものを出しておるというような仕組みの結果、結論として、民間の事業が非常な圧迫を受ける。これは政治的に考えたら、問題の余地はないと思うのですけれども、どういうものですか。事務的にここでそういうことを言いたくないのですけれども、いろいろ交渉した経過では、自由競争だからいいじゃないかというような、そういう言葉すら責任者の中から出た。それはもう本気でそういうふうに信じておるから、そういうように考えられておるのだと思いますが、しかし、刑務所の囚人の品物を一般に売り出して、それが民間の事業と競合した場合に、それは自由競争だと考え考え方は、およそわれわれとしては考えられないことじゃないかと思うのです。実はこういう問題なんです。時間もございませんから、私は具体的な事実だけ申し上げて、それに対する大臣の今後の決意が問題なんですから、善処していただきたいと思うのです。  かつて、国会で印刷の関係で問題を起こしたことがありましたけれども、最近はどうなっておりますか、私は直接知りません。私が直接問題をぶっつけられて困っておるのは、剣道具の業者、メーカーが小さいですから、同時に販売もやるわけでありますが、この剣道具というものは、申し上げるまでもありませんが、きわめて零細な企業であります。零細な企業であるが、急に最近に起こった仕事ではなくして、もう日本の歴史の中では、何百年か前からずっと日本の一つの特殊の国技として伝わってきたものでありますから、これは零細ではあるけれども、長い伝統を持った企業であります。だから、簡単につぶしてもいいというふうなものではないと思う。そういう伝統的なものでありますから、占領治下では一時、公の学校などでは剣道はやられぬということで、停止されたことがありますけれども、しかし、製造を禁止されたこともなし、また個人的な使用を禁止されたこともなくして、細々とその連中がその技術を保存して今日に至った。それで、占領が解けましてから、ことに日本の防衛庁などが大きな需要者となって、長い間伝統を守ってきた連中が、ようやくその祖先以来の仕事に光を見出して、一生懸命にやっておる、こういう実情であります。国としても、これは戦争前もそうですが、戦争中でも、たとえば物品税というようなものは、ほかのほとんど全部の品物にかかった時代でも、剣道具だけは物品税をかけないできたのであります。これはきわめて零細な、きわめてユニークな、特に保護すべき必要があるので、物品税をかけないで今日に来たっておるような事業であります。この事業が、刑務所、ことに徳島の刑務所が具体的に問題になってきたのですが、刑務所が相当大きな規模で撃剣道具を作って、そうして全国の学校にカタログを送って募集をした。それで、栃木県のある中学校ですが、そこでは値段は非常に安いから——普通の業者じゃないですからコストは安いのですが、買うたというようなことがある。その上に、その剣道具の業者としては、よく聞いてみますと、防衛庁関係が最大の需要者であって、これで生き返った、命をつないでおるというふうな状況らしい。各学校でも剣道が再びだんだん盛んになってきた、青年団などでも盛んになってきましたから、愁眉を開いておるところですけれども、しかし、防衛庁というものは大きな需要者である。その防衛庁の需要までとってしまおうということになって、実は法務省の係が防衛庁の役人を案内して、徳島の刑務所まで見にやった。何とかして刑務所で作ったものを防衛庁に買わせろ。しかし、聞くところでは、防衛庁自身では、何しろああいうぜひとも必要なものが、細々ながら孤塁を守ってきてくれたために、自分たちは非常に感謝しておる、それを今ここで非常な打撃を与えるというようなことは、防衛庁としてはしたくない、こういうふうにきわめて常識的に考えておるようであります。それから法務省の方では、やはり自分の方の立場から、何とかして刑務所で作ったものを買わしたいということでやるものですから、業界では大へんなことだということで、業者としては、生きるか死ぬかの問題で訴えてきておるわけであります。私も実は法務省へも行って次官にも会い、次官にも努力してもらって、その結果どうもこれでは——大臣は、この問題が具体的な今の剣道具の問題として御存じかどうか知りません。しかし、おそらく大臣までは、それほど具体的な問題として行っていないではなかろうかと思いまして、ここでお願い申し上げるわけです。私は剣道具だけの問題と申し上げるわけではありませんけれども、ほかにもあるかもしれませんが、具体的に私の前に現われてきたのはこれなんです。こういうようなユニークな伝統を守ってきた事業を、刑務所作業によって存立を脅かすということは、重大な問題だ、こういうふうに考えるので、どうしても刑務所の費用が要るのなら、もっと予算に堂々と請求されてやるべきではないかと思うのですが、大臣はどう考えますか。
  115. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 刑務所の作業が、民間の、ことに中小企業を圧迫するのではないかという問題がございます。これは私も法務省へ参ります前から伺っておりました。従って、法務省へ参りましてから、係のものにいろいろ事情を聞いてみました。かつて印刷の問題であったことも聞きましたが、今日はほとんど解決しております。何分にも刑務所におります者に仕事を与えるということは、刑務所を出ましてからその者が社会へ出て一人前の仕事ができるようにしてやらなければ、完全な人間にして帰すことになりませんから、こういういろいろの仕事を与えるということは必要でございます。しかしながら、今のお話のように、必要は認める、だから金を国家が大いに出して——できたものはどういうふうにするのか、山本さんの御意見ではわかりませんが、あるいは捨ててしまってもいいというお気持かもしれませんが、そうも参りませんので、できたものは適当な方法処置していくということで、今まではやってきておるわけであります。そこで、自由競争で勝手にやらしていいじゃないかということを法務省の者が言ったという話でございますけれども、そういう考えは私は持っておりません。やはりできたものは、中小企業を圧迫しないような方法で処分していくことが適当だと思いますが、全体の仕事の内容から見ますると、刑務所でやっております仕事というものは、数量から見まして、中小企業のやっております仕事の千分の六くらいしかないのです。ですから、民間企業を圧迫するという程度のものじゃないということは、私どもも感ずるのです。ただ部分的に、ある地方におきまして、そういう問題が起こるということは、これはあり得ると思うのです。そこでいわゆるケース・バイ・ケースで、そういう事実があれば、できるだけ中小企業を圧迫しないように、そのものをほかに向けるとかということについては、十分努力していかなければならぬと考えております。  今お話しの剣道具の問題も私は聞いております。これは全体の剣道具の製造量から見ますと、刑務所で作っておりますものは一・六%でございます。ですから、商売を奪ってしまうというほどの問題ではないことは明らかでありますが、売り先によっては衝突する向きもあり得ると思います。ですから、中小企業を圧迫しないように、できたものは適当に処理していくように十分考慮していますし、大体最近におきましては、刑務所の作業を大企業と結びつけて、下請企業のようなものをやらせるとか、官公署の仕事をやらせるとか、一般の市販に多く出さないようには努めさしておりますけれども、できたものを捨ててしまうわけにも参りませんから、できたものを売らしておる。その値段も大体が一割程度安いものだろうと思います。ところが品物が、刑務所で作ったものでございますから、民間の企業者が作ったものより悪いので、刑務所の方が安いからといって、民間では必ずしも歓迎しているとも申されない。こういう点とか、全体の数量的の見地からごらんいただきまして、民間企業への圧迫の問題もお考えいただきたい。ただ具体的なある地方においてのそういう問題につきましては、十分法務省としても注意して参りたいと考えます。
  116. 山本勝市

    山本(勝)分科員 私は時間の関係でやめるつもりですが、まだ私は不満です。というのは、大臣がやはり事務当局の話を聞いてこられて言っておる。私は与党ですから、どういう質問をするのだというものですから、実はこういう質問をするということを申し上げました。しかし、事務当局では片づかぬから聞くのであって、中小企業の何%でなんということは、政治家の言うべきことじゃない。平均数字ではいかに微細なものであっても、その何%の中に当たった者から見れば、これは生きるか死ぬかの問題です。平均数字で扱っていくならば、笑う者と泣く者と平均すれば、泣きも笑いもない。世の中には泣くも笑うも両方なくなってしまう。しかし、泣いたり笑ったりするのが現実の面です。その泣いた者、笑った者を平均して両方キャンセルしてしまうような、全体の中小企業の中で何%にすぎないというようなことは、事務当局考え方で、大臣の言うべき言葉じゃないのです。ほんとうにそこに当たった人々にとっては百パーセントなんです。ことに今言うように、防衛庁の注文まで取ろう、中学校までカタログを送るというようなことをやってきたから、問題になったのであって、従来のパーセンテージ、撃剣道具の中で、現在何%作っているというような数字事務当局が出してきましても、それだけでとどめますというなら問題ないのです。そうでなくて、新しくカタログを送ったり、防衛庁に働きかけてくるということになると、それがだんだん実現していけば、その。パーセンテージはすぐ変わってくる。そういういいかげんなことで業者がこれだけ真剣に言うてくるわけがない。私は、あなたは事務当局数字や話を聞いて、それをここで話される大臣とは思わなかった。だから私は大臣に申し上げたのです。ただ、あらかじめ何も言わないと因るというので、私はこういう話をした。常識的に考えて、刑務所で訓練しなければならぬこと、仕事を与えることもわかります。しかし、刑務所で仕事を与えるために、一方で民間の仕事を奪ってしまうというようなことがあるべきでない。ですから極端な場合には、小さな業界でありましても、その業界がもし大打撃を受ける場合には、そういう仕事をやらせないで、まず刑務所の中の人が食う米を作るとか、みんなが着るものを縫わせるとか、あるいは刑務所にたくさん人がいるのですから、そういう人のくつを作るとか、そういうことをまず考えるべきだろうと思います。しかしそれでも足りない場合には、訓練のためにやるのであれば、作ったものをまたこわして訓練するということも考えられないことはない。経済的には不経済のようですけれども、そのために世の中の生業に大打撃を与えるということと比べれば、そういう場合すら考え得られないではないと思う。鉄砲のたまをどんどん演習で使って訓練していくのと一緒で、訓練のためならばそれも考えられる。とにかく現在のようなことをやって、一般に打撃を与えると同時に、政府作業費をもらって、もらった倍くらいの益金を納入するなどということは、根本的に一ぺん考え直してみよう、こういう答弁を実は私は期待しておったのです。時間がないなら私はこれで打ち切りますけれども事務当局の話を聞かれて、ちょっとそれに最後に言葉を一言づけたくらいでは、私は不満です。
  117. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 事務当局の言うことばかりについて、それに従っておってはけしからぬというおしかりを受けたわけでありますが、決して事務当局の言うことのみを私はとってはおりません。ただ数字的の御説明だけは一応したのでございますが、個々の場合におきましては、御説のようなことがあってはいかぬと思います。そのために一般の中小企業者が死活の目にあうということまでして刑務所の物を売ろうとは私ども考えておりません。ですから、そういう場合には、そういうものをやめさしてもいいということも起こってくると思います。売り先につきましても、無理に自衛隊に売っていかなければならないということはないと思います。ただ、そういった問題につきましては、個々の場合につきましてよく実情を調べまして善処して参りたい。ただ、一般的の数字を申し上げますと、さっき申し上げたこういう数字だということを申したのでありまして、また、収入を上げるためにそういうことを無理にやらしておるのではなく、自然にそういうふうにやらせまして国庫収入となっておりますので、そういう金で刑務所のいろいろのこともやっておる、こういうことにすぎないのでありますから、その点は十分御了承いただきたいと思います。
  118. 山本勝市

    山本(勝)分科員 そうすると、こういうことは言われますか。現状以上には拡大しないということだけは答えられましょうか。今、どんどんカタログまで送って、いろいろ活動してくるから、このままいかれたら大へんだということが大きな理由です。ですから、すでに設備をしてしまっておるとか——もっとも、設備はしておりましても、撃剣道具なんというものは、材料費がそう要るわけではなし、設備もごくわずかなものですから、投資したものは非常にむだになるというものではない。刑務所の囚人はしょっちゅうかわっていくのです。何も失業者が出るといったような問題があるわけではない。けれども、これ以上どんどん売って、どんどん拡大して、打撃を与えるというようなことは少なくともしないということを言ってもらえるかどうか。言ってもらえれば、私はここできょうの質問を終わりますけれども……。
  119. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 刑務所の全体の仕事につきましては、性質によってまたふやすものもあるかもしれませんが、剣道具につきましては、そんなにふやそうと考えておりません。
  120. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 この際、二時三十分まで休憩いたします。     午後二時三分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  121. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  理事会の申し合わせにより、本日をもってこの分科会を終了することに相なっておりまするが、ただいま主査の手元へ多数発言のお申し込みがあります。時間の関係上、恐縮でございまするが、質疑はなるべく簡潔にお願いをいたしたいと存じます。なお、政府委員におかれましても、要点のみを簡潔にお答えいただくようにお願いいたしたいと思います。  質疑を続行いたします。大貫大八君。
  122. 大貫大八

    ○大貫分科員 裁判所お尋ねいたしたいと思うのです。主査から簡潔にという御注意がありますので、その線に沿うて、できるだけ簡潔にお尋ねをしてみたいと思います。  第一審強化の建前として、二十名の判事の増員を要求しておりますが、たしか昨年も二十名の判事補の増員があったと思うのです。私は、第一審強化のために、人数をふやすということはもちろん異議はないのですけれども、どういうふうな根拠から二十名という増員を要求しておるか、その点を御説明願いたいと思います。
  123. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 第一審強化の目標といたしましては、御承知のように、訴訟が非常に遅延いたしておりますることと、単独制がかなり多く用いられておりまして、合議の事件が少ない。この合議の事件をできるだけふやすということと、それから審理期間を、少なくとも現在の半分くらいにしたいというのがわれわれの念願でございまして、その観点からいろいろ計算をいたしますと、大体判事百名、それに伴いまする一般職の書記官以下の職員が、数百名という数字が出て参るわけでございます。今まで判事にも非常に欠員がございますような関係で、現在以上の定員を、大蔵省で認めてもらいますことが従来は非常に困難でございましたが、ことしの春あたりからだんだん判事の補給源もふえて参りますので、やっと今年度におきまして、判事二十名ということを認められるに至りました。もちろん、これでは、先ほど申しました目標からははなはだ遠いのでございますが、まず暫定的な措置としては、この程度でやむを得ないではないかということで考えておるわけであります。
  124. 大貫大八

    ○大貫分科員 判事の欠員が非常に多いということを聞いておるのですが、現在の定員に対して、判事の欠員はどのくらいなんですか。
  125. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 ちょっと正確に記憶しておりませんが、判事が約数十名、それから判事補は満たされていますが、やはり簡易裁判所判事にも相当な欠員がございまして、大体毎年春ごろになりますと、百名近くの欠員が出て参る状況でございます。ただし、ことしは、先ほど申しましたように、何年か前から計画いたしまして、だんだん司法修習生を多く採るようになりました。その結果がことしの春やっと現われて参りまして、ことしの春は大体九十名近く判事の資格を得る者ができますので、判事につきましてはほぼ定員一ぱい、あるいはそれより少し上回るくらいの人が採れる計算になるわけでございますが、簡易判事の方につきましては、相変わらず欠員がございます。
  126. 大貫大八

    ○大貫分科員 もう少し正確に数字をおっしゃっていただけませんか。判事については数十名、判事補は手一ぱいとか、ちょっとわからぬですな。もう少し、すぐわかるのじゃないですか。
  127. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 判事は四十名、判事補が二十七名、簡易判事で四十一名、これは昨年の十二月末現在でございます。
  128. 大貫大八

    ○大貫分科員 そうしますと、今度修習生の新規採用によって大体埋まるとおっしゃるのですが、修習生は、任用は判事補ですね。判事補は埋まるかもしれぬが、判事の四十名欠員というのは、どうして埋める計画ですか。
  129. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 先ほどの御説明が不十分でございました。先ほど申しましたのは、修習生に採りまして、判事補になって十年たちますと判事になる資格がございますが、その人が、先ほど申しましたように、ことしは十年目の判事補の方が非常にたくさんできますので、その人々によりましてほぼ欠員が埋まる、こういう計算になるわけであります。
  130. 大貫大八

    ○大貫分科員 第一審強化ということは、言うまでもなく、第一線に立つ判事に優秀な人を配置するということだと思うのですが、定員はこれでどうやら埋まるとしても、一体、第一審強化の線に沿う人事配置ができるのですか。
  131. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 ここに非常な一つの悩みがございますのは、御承知のように、判事の資源は、今申しました修習生から上がって参りました人がこの大部分の資源でございます。もう一つは、在野法曹、すなわち、弁護士会あるいは検事、検察陣営の中から優秀な人を裁判所へ迎え入れるということが一つの大きな道になっているわけでございますが、残念なことに、特に在野法曹から優秀な方を招くという点にはいろいろな支障がございまして、ごくわずかな人しか迎えられない、そこに非常な隘路がございます。もちろん、第一審の方にできるだけいい人を配置いたしますようにいろいろ工夫はいたしておりますが、今申しました道が必ずしも十分に開かれていないということが、かなりの支障になっておるように思われます。
  132. 大貫大八

    ○大貫分科員 実際の状況は、大都会にだけ人材が集まってしまって、地方に出たがらないというのが、私は司法部の実情だと思う。実際の姿だと思う。それはいろいろ原因があると思うのですけれども一つには、子弟の教育ということも問題でありましょうし、もう一つは、待遇の問題だと思う。これは、第一線に出ていくと手当が幾らか少なくなる。それから市民税が逆に高くなるというような実情もあって、遠隔の第一線に人を得ようとしてもそんなことが隘路になって、しかも、裁判官というのは、その意に反して転勤なんかはできないという建前になっておるから、そこでいよいよ人事の配置が困難になっておる、こういう実情だと思うのですが、こういうことに対して、対策は何か考えておりますか。
  133. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 仰せの通り、転職の保障もございますので、なかなか、普通の行政官のように、簡単に転任をしてもらうことができないことは、御指摘のようでございます。またその理由が、今申し上げましたようないろいろな点にあることは事実でございます。ただ、われわれといたしましては、外に出ますために特に給与上の不利益ということはございませんので、外に出てもらいます場合には、特に昇給等も考慮いたしますし、あるいは将来、何年かたちました場合のその先のことにつきましても、ある程度の話し合いをいたしまして、できるだけ進んで、ことに優秀な人が、進んで外に出てもらうというふうに工夫をいたしておる次第であります。
  134. 大貫大八

    ○大貫分科員 ところが実際は、私は実例を知っておるのですが、大阪から北海道のある果ての方の裁判所に転勤した判事なんですが、実際は、なるほど級は一級か上がったけれども、行ってみたところが、勤務地の手当が非常に格差があって、大阪の場合と大へん違う。さらに、市民税は逆に非常に高くなる、大阪の倍以上も高くなっておるというようなことで、実際の手取りは、こんな遠隔な地に来てかえって少なくなったということで、裁判所人事当局にだまされたというて憤慨しておった裁判官に私は出会っておるのですが、そういう実情があるんじゃないですか。実際に級を一級くらい上げても、北海道の果ての方に行くと、むしろ逆に収入は下がってしまう。それを何か裁判所は伏せて、一級上げたんだから行けというようなことを言って、実際はそうじゃない。だから、そういうことがわかって、だまされたという感じで、そういうことがずっと浸透しますと、なかなか二度はだまされぬということになって、いよいよ人事の配置が困難になっておるというのが裁判所実情じゃないですか。
  135. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 私も去年北海道に参りまして、仰せのような話を聞きました。もちろん、そういうことを伏せて行っていただいたわけではございません。網走でございましたけれども、何か土地の税が非常に高いということは、私も行きまして初めてわかったようなことであります。そういうことが事前にわかっておりますれば、またいろいろ考え方もあったと思います。今後は、もう少しそういうようなことにも細心の注意を払いまして、できるだけ進んで転任していただくようにいたしたいと思います。
  136. 大貫大八

    ○大貫分科員 もう一つ、第一審強化の問題に関連するのですが、一カ所に十年以上も在任する判事が相当多いはずです。これは、特に地方などではいろいろ弊害も出てくると思う。こういう長期にわたって一カ所に在任する裁判官に対しての配置がえについて、何か対策がありますか。これも第一審強化の一つの重要な問題になっておると思うが、どうですか。
  137. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 実は、御承知通り、裁判官は、新憲法下におきましては任期が十年ということになっておりますので、先年、ある程度の転任をしてもらったのでございますが、いよいよやってみますと、やはりそう簡単に配置がえということもできませんままに十年を過ぎてしまったようなことがございまして、御指摘のように、ある地方に非常に長くおられる方もあり、特にその土地の弁護士会から、いろいろやかましく言って参られるような事例もないではないのでございます。これにつきましては、特に長期の方につきましても今後ともいろいろ考えまして、できる限り動いていただくようにいたしたいと考えております。
  138. 大貫大八

    ○大貫分科員 法曹一元化ということがだいぶ叫ばれております。先ほども弁護士からの裁判官任用ということが、実際上はなかなかうまくいってないという御説明があったのですが、これはいろいろの問題があると思う。給与の問題もあるでしょうし、恩給の問題等もありまして、なかなか在野法曹から優秀な人を裁判官に迎えられないというのが、実情じゃないかと思うのです。具体的にこういう問題について、法曹一元化の問題として裁判所で何か考えていることがありますか、それをちょっと伺いたい。
  139. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 この問題は、ずいぶん前からいわれておることでございまして、ことに弁護士会方面では、かなり熱心に研究を続けておられますが、仰せのごとく、給与の問題、裁判の制度上の問題もいろいろございますし、弁護士会から迎えました方がおやめになります際には、今の制度では退職金がつかないというようなことや、また一方、おやめになりましてから帰られたあとの問題もございます。御承知のように、一度裁判所に来られますと、帰られましても、もとのような地位にはなかなかお帰りになれない、お得意さんがなくなってしまうというような、あれやこれやのことがありまして、なかなか入ってこられないのであります。これは弁護士の事務所の制度とか、あるいは裁判所の制度そのもの、いろいろの点でかなり抜本的な改正をしなければ、この法曹一元化ということが実現いたさないのでございます。裁判所の方の問題といたしましては、われわれは、できる限りいろいろ今後とも考えてみたいと思いますが、そのほかの問題、特に弁護士事務所のあり方というようなものにつきましては、これは弁護士会の方でも考えていただきまして、両々相待ちまして法曹一元の理想に——かなり遠い理想とは思いますが、歩一歩近づいて参りたいと考えております。
  140. 大貫大八

    ○大貫分科員 次に、非常にこまかいことなんですが、訴訟の第一審強化の一つとして、訴訟促進協議会出席旅費などとして五百二十一万三千円を計上しておる。これは何に使うのですか。第一審の強化というのは、小田原評議をやることじゃないと思うのですけれども……。
  141. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 協議会は、裁判所、検察庁、弁護士あるいは学識経験者に入っていただいているところもあると思いますが、中央にもございますし、各地方裁判所管内にございまして、ここでいろいろお打ち合わせをいたしまして、その具体的に打ち合わせました事項に基づいて訴訟を進めていくというようなことで、これはかなりひんぱんに開いておられるところもございます。そういう会議の費用をそこに見積もったものと考えます。
  142. 大貫大八

    ○大貫分科員 次に、事務能率器具等、これは一億三千万も要求していますが、どんなものですか。
  143. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 これはこまかいことでございますが、たとえば謄写機、あるいは備付帳簿のカード化とか、記録の整理箱とか、タイプライターとか、こういうようなものの内訳でございます。
  144. 大貫大八

    ○大貫分科員 次に、待遇改善の問題でお尋ねをいたしたいのですが、待遇改善について、裁判所書記官及び家庭裁判所調査官の俸給の調整を八%から一六%に増額するということで、一億九千万円を見積もっておるようですが、これは、書記官、調査官のみに限ったのはどういうわけなんでしょうか。
  145. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 これは結局、裁判官に一番近い、裁判官の真の補佐役である書記官と調査官に、まずこの一六%の調整をつける。できますれば、われわれといたしましては、もっと広い範囲においてこの調整をつけたかったのでございますが、まずこの範囲に一応とどめまして、将来、だんだんその他の方へも伸ばして参りたいというふうに考えております。
  146. 大貫大八

    ○大貫分科員 待遇改善の対象とすれば、一番先に、やはり下級の職員の低額の給与を受けている者、こういう人を、まず待遇改善の対象としなくちゃならぬじゃないか。裁判所というのは、特に書記官補あるいは調査官補、事務官、雇、用人、これは非常に低賃金だと思うのです。こういう低額所得者に対する待遇改善というものを、どうして考えられなかったのでしょうか。
  147. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 そういう低額の人々のベース・アップということも当然考えなければならぬと思いますが、今回、われわれが大蔵省と折衝いたしまして一六%の調整をつけましたのは、要するに、御承知のように、裁判官が非常に多忙な、困難な仕事をやっております。その観点からいたしまして、その補佐役である書記官、調査官につきまして、特にその待遇を考える必要があるという観点からいたしたのでございまして、もちろん、その他の職員について、どうでもいいというようなことを考えておるわけではございません。これは将来の問題として十分に考えたいと思っております。
  148. 大貫大八

    ○大貫分科員 裁判官の補佐役という点になると、ちょっとこれは問題があると思うのですが、一体書記官にしたって、裁判所法から見れば独立して、何も裁判官の事務を補佐することが書記官の職務じゃないと私は思う。法律的なものの言い方でなく、単に裁判所というものを一体に見て、裁判に対しての補佐をするのだということになれば、これは何も書記官だけじゃない。書記官補もしかり、あるいは事務官、用人、これは全部、そういう広い意味では、補佐をやっておるということは同じだと思うのです。用人の廷吏だってそうでしょう。裁判の一役を廷吏が買っておるのです。やはり呼び出しや何かをする仕事をやっているのですから、いずれも補佐だと思うのです。だから、書記官と調査官だけを、裁判官の補佐役として待遇改善をしてやるということは、私は筋が通らぬと思うのです。大体あなたも御存じでしょうけれども裁判所の職員というのは、一般的に見て非常に低賃金です。これはお認めになるでしょう。大蔵省が出しておる統計要覧を見ますと、政府一般職員三十八万四千八百四十人の平均の給与というのが二万四百四十円、ところが裁判所は、一万九千七百三人の職員に対して平均給が一万七千六百五十二円、この大蔵省から出しておる統計によりますと、裁判所職員というのは非常な低賃金ということが明白なんですけれども、なぜもう少し、こういう数字の基礎の上に立って、裁判所の全職員の待遇改善をなさろうとしないのですか。
  149. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 裁判所の職員には、一般職といたしまして、書記官等でも、むしろ一般行政官よりも非常に恵まれた給与体系を受けておる者もございますが、何分にも、その他のいわゆる低賃金といわれる階層の人々の数が相当多い関係から、平均をいたしますと、仰せのような数字が出て参るのだろうと思います。
  150. 大貫大八

    ○大貫分科員 それならば、こういう数字が厳として出ておるのですから、もっと積極的に待遇改善という立場に立つならば、書記官、調査官という狭い範囲に限らずに、なぜ全職員の——これはなかなか大蔵省の折衝も困難なんでしょう。困難なんでしょうけれども、こういう数字が出ておるのですから、裁判所としては、やはり同じ政府職員であって、こんなでこぼこがあるのはけしからぬじゃないか、なぜ裁判所は、積極的に全職員の待遇改善というのをなさらないのですか。
  151. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、この点は、他の行政官とのつり合いもございますし、大蔵省との関係もございまして、実現にはかなりむずかしい点があると思いますが、先ほども申し上げましたように、一般職の給与につきましては、できる限りの改善策を講じたいと考えます。
  152. 大貫大八

    ○大貫分科員 先ほどから事務総長のお答えを伺っておりますと、書記官と調査官だけの待遇改善をしたことは、裁判官の職務を補佐するからだということで、その点に力を入れて答えておられるようですが、この書記官と調査官の待遇改善について、何か条件でもついているのですか。
  153. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 その点は、二つの面からお答えできると思います。一つは、先ほど説明が不足しましたが、書記官、特に裁判所書記官につきましては、これをほんとうの意味の裁判官の補佐役ということにいたしますために、今回この国会裁判所法の改正案の御審議をお願いいたしたいと考えております。その内容は、裁判所法の六十条にございます書記官の権限を定めました規定に一項を追加いたしまして、裁判官の命によって書記官がいろいろな調査をすることができるという規定を入れることにいたしております。結局、名実ともに裁判官の補佐役という地位を確保いたすと同時に、裁判官は多数の事件を抱えまして現在非常に苦労をいたしておりますので、その補佐役たる意味の書記官と調査官につきましては、勤務時間を延長いたしまして、その補佐役たる責務を全うしてもらいたい、こういう二つの条件があるわけであります。
  154. 大貫大八

    ○大貫分科員 これはゆゆしき問題だと思います。第一に、裁判所法の六十条の改正をする意図だというのですが、これは相当問題のある改正だと思う。どの程度のことを書記官にやらせようとするのかわかりませんけれども、裁判というものが独立しておる、その裁判官の仕事の補佐というと、ある程度裁判にも介入するようなことにもなると思うのです。これは裁判の独立という問題からでも問題が非常に多いと思うのですが、今裁判所考えておるのは、どの程度の補佐役としての権限を書記官に広げようとしておるのですか、それを伺いたい。
  155. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 法案は大体近日中にでき上がるようでございますが、内容といたしましては、法令、判例調査その他必要な事項の調査ということに限られておりまして、今御心配になりますような判断的な、裁判そのものに非常に接着いたしましたような事柄は、書記官にはいたさせないというようになっております。もちろん、書記官制度につきましては、今回の改正が最後ではございませんで、御承知かと存じますが、書記官制度の委員会というものがございまして、これで長年かかりましていろいろ研究いたしておりまして、現在裁判官がやっております権限のうちで、比較的軽微なものは、あるいは書記官にやらせるべきではないかという問題がまだ残っておりますが、今回の改正はその点には触れておりませんで、その権限の拡張の範囲は、いわゆる調査というところにとどまっております。
  156. 大貫大八

    ○大貫分科員 これは非常に重大な問題でありますので、いずれ法務委員会で十分にお尋ねすることにして、次にお尋ねいたします。  今の御答弁だと、裁判官の補佐役として時間を延長するのだ、こういうことが待遇改善の条件になっておるようですが、これは大へんな問題じゃないかと思うのです。というのは、少なくとも裁判所職員に対しての勤務時間というものは、これは法令できまっているはずであります。労働法の精神からいっても、勤務時間を延長することと引きかえに給与を上げるというようなやり方は、明らかに私は労働法の精神にも違反することだと思う。労働基準法によれば、八時間労働ということがきめられておる。ところが、政府職員に対しては労働基準法は適用されないにしても、やはり労働基準法の精神というものは生きているはずなんです。そういう点からしますと、八時間労働という原則を破って時間を延長するということになりますと、どんなふうに延長されるのか知らぬが、これはゆゆしき問題だと思うんです。どういうふうに時間を延長するお考えなんでしょうか。
  157. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 大体、現在の裁判所書記官、と申しますよりも、裁判所実情から考えまして、まだどういうふうに延長するかということにつきまして確定的な案はございませんが、一応われわれが現在考えておりますることは、普通の日に一時間、それから土曜日の午後に何時間かという割り振りになりまして、現在の四十四時間が一週五十二時間になる、大体そういう延長の予定でございます。
  158. 大貫大八

    ○大貫分科員 そうしますと、これは労働時間が毎日九時間になるわけですね。そして土曜日が八時間ということになりますか、これは非常に重大な問題だと思うんです。労働法の精神に明らかに違反しておると思うんですが、法を守ることを建前としておる裁判所が、みずから法を破るような制度を打ち立てるというのは、非常にけしからぬことだと思うんです。この点、どうお考えですか。
  159. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 労働時間の延長ということは、仰せの通り非常に慎重を期さなければならぬ問題でございますが、御承知のように、公務員につきましては、一般の労働関係と違いまして、若干の取り扱い上の差を設けることができるようになっております上に、職種によりまして、特殊のものについては、四十四時間という普通の公務員の労働時間を延長することができることになっております。この点から、われわれといたしましては、裁判所書記官と裁判所調査官、こういうきわめて特殊な立場にある者につきましては、この程度の労働時間の延長もやむを得ないというふうに考えております。
  160. 大貫大八

    ○大貫分科員 この程度の時間の延長はやむを得ないというのは、たとえば法的根拠はどこからくるのですか。
  161. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 これは、公務員法が大体裁判所に準用になっておりまして、裁判所職員につきましては、公務員法上の特別な規定に基つきまして、裁判所において特例が設けられるという形になっております。
  162. 大貫大八

    ○大貫分科員 それを具体的に聞いているんですが、それじゃ私の方から申し上げましょう。公務員については、一般職の職員の給与に関する法律の第十四条によりますと、「職員の勤務時間は、休憩時間を除き、一週間について四十時間を下らず四十八時間をこえない範囲内において、人事院規則で定める。」こういう原則になっておるわけです。しかも、これを多少変更する場合には、人事院の承認を得なければならないということになっておるのだが、裁判所の場合は、法的にどうなんですか。
  163. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 ただいま仰せになりました法律上の規定は、裁判所の暫定の法律がございまして、大体公務員法その他の規定を準用いたしておるわけでございますが、その中で、今申されました人事院というのを、最高裁判所というふうに読みかえることになっておりまする結果、裁判所でそういう特別の体系をとることができるようになっております。
  164. 大貫大八

    ○大貫分科員 事務総長のお答えとしては、もう少し正確にお答えを願いたいのです。たとえば、今の法律の名前すら正確に申しておらないのですが、何という法律の何条によって準用するなら準用する、これを一つお答え願いたい。裁判所なんですから、正確なお答えを願いたい。
  165. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 先ほど申しましたのは、裁判所職員の臨時措置法という法律でございます。それに、大体公務員法その他一般の公務員に関する規定で、ことに裁判所にそのまま当てはめられないものを除きまして、準用することになっております。その中で、準用の場合に、人事院とありますのを最高裁判所、人事院規則とありますのを最高裁判所規則というふうに読みかえることになっております。
  166. 大貫大八

    ○大貫分科員 どうも、事務総長ともある者が、法律をもう少し正確に言っていただきたい。今のお答えでも、裁判所職員の臨時措置法と言っておりますが、そんな法律はないはずですよ。裁判所職員臨時措置法じゃないですか。「の」なんて、入ってないでしょう。裁判所なんだから、もう少し正確にお答え願いたい。  そこで、この臨時措置法では、大体おかしいのじゃないですか。というのは、人事院の承認を得なければならぬということは、勝手に各庁の長官が、自分のところの職員の勤務時間を変更するということは、ややもすれば、それは職員に対する不当なる圧迫にもなるから、公平な第三者的な機関である人事院にこれの承認を求める、これが一般職の職員の給与に関する法律の精神だと思う。だから、もし裁判所職員臨時措置法によって、人事院というのは最高裁判所と読みかえるのだとすると、これは非常に不当な——最高裁判所がみずから提案してみずから承認するというの、ちょっと変じゃないですか。もしそう読みかえるとすれば、この法律はおかしいですよ。
  167. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 これは裁判所の制度そのものに関連する非常にむずかしい問題でございますが、御承知のように、三権分立の建前からいたしまして、一般職につきましては人事院というものがございますが、さて裁判所職員につきましては、それではどういうものをもって人事院的な役割を果たさせるかということは、非常にむずかしい問題でございますが、現在の法制は、大体において裁判所というものの独立という観点からいたしまして、人事院的な仕事を最高裁判所自体が行なうという建前で、すべてができ上がっておるようでございます。この点は、批判的に申しますればいろいろ議論があろうと思いますが、少なくとも現在の建前は、裁判所の独立という観点からいたしまして、こういう給与その他の問題につきましても、裁判所にそういった意味の独立制を与えておるというふうに私どもは解しております。
  168. 大貫大八

    ○大貫分科員 裁判所の独立ということは、申すまでもなくわかっておりまするけれども、少なくとも、一般職の職員の給与に関する法律の第十四条の、この人事院の承認を得なければならないという精神からすれば、最高裁判所がみずから改正をしてみずから承認するというのは、やはり間違いじゃないですか。くどいようですけれども、人事院の承認というのは、これはやはり、みずから第三者的な機関の公平な判断を受けるというのが、この法律の精神のはずです。自分がきめて自分が承認するといったら、まるで意味ないじゃないですか。こういう場合は、私は、準用するといっても、みずから定めてみずから承認するというようなことは、許されないのじゃないかと思うのですが、それでも最高裁判所はいいという御見解なんですか。
  169. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 繰り返して申しわけないのですが、要するに、そういう場合に、それでは何をもって人事院にかえるかという問題に帰着するわけでございます。先ほど申しましたように、人事院の支配を受けないという建前をとりますと、結局、裁判所自体に持ってこなければならない。全然別なものをまた作れば別でございますが、そういうことになるわけでございまして、少なくとも現在の法律はそういう建前でできておりまするし、また、今度書記官その他につきまして勤務時間の延長をはかるわけでございますが、それもこの規定によりまして、われわれはできると解しております。
  170. 大貫大八

    ○大貫分科員 これは法律の解釈ですから、いつまで言ってもきまりませんからよしますけれども、一体そういうことで待遇改善をしたといっても、時間割りにしてかえって待遇改善にならぬのじゃないですか。時間単価ではかっていくと、どんな結果になりますか。一時間よけいに労働するということになれば、八%の待遇改善になったって、実際は逆に労働強化ということだけで、待遇改善の実はあがらぬじゃないですか。
  171. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 勤務時間の延長と、それに見合います調整額という点だけから申しますと、仰せの通り、はなはだ不満足な給与になるわけでございますが、御承知のように、俸給に組み入れられましたこの調整額というものは、期末手当、勤勉手当その他一切の手当、並びに退職の場合の退職金その他の基準になりまして、それらをすべて総合いたして考えますと、かなりの待遇改善になるというふうに私ども考えております。
  172. 大貫大八

    ○大貫分科員 私は、法を守る殿堂である裁判所が、こんなこそくな手段をとるべきではないと思うのです。ほんとうに職員が足りないならば、増員を要求したらよろしいじゃないですか。少なくとも、先ほど申し上げましたように、給与の平均からいたしましても、一般の職員と比べて非常な格差があるわけなんです。こういう数字なのですから、この数字を突きつけて、裁判所の方では、自分の職員にほんとうに実質的な待遇改善をするような親心をなぜ使えないのですか、それが私はわからないのです。わずか八%調整したから勤務時間を一時間延長する、しかも、それはごくわずかの書記官と調査官だけに限るというような、そんなこそくな手段をとらずに、こういう数字があるのですから、大蔵当局にどんどん要求して、必要なだけの人員をとるという、そういう大局的な点から人事をなぜ考えていかないのですか。自分の職員に、あたたかい恩情をもってやるということは考えられないのですか。
  173. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、書記官、調査官だけの待遇改善を考えているわけではございません。さしあたりその改善をいたしまして、その他の問題は、将来を期したいと考えております。
  174. 大貫大八

    ○大貫分科員 最後に、もう一つお尋ねしておきますが、代行書記官といわれておりますのがたくさんおりますね。いわゆる書記官の職務を行なう書記官補ですか、俗に代行書記官といわれております。この代行書記官については、一体今度のあれは適用するのかしないのですか。
  175. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 代行書記官につきましては、先ほど申し上げました裁判所法の改正による職務権限の拡張ということもいたしませんし、勤務時間の延長ということもいたしません。従いまして、待遇は現在のままでございます。ただし、将来の問題といたしまして、これらの人々の待遇改善を当然に考えなければなりません。将来の問題として、いろいろな方法をただいま考えております。
  176. 大貫大八

    ○大貫分科員 裁判所に対しては終わります。
  177. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 大貫分科員の質問にちょっと関連して、横田事務総長にきわめて簡潔に、二、三点お伺いしたいと思います。  ただいま大貫分科員から質問申し上げました、今回の裁判所の職員中の一部の書記官の給与改訂と勤務時間の延長に関する問題でありますけれども、先ほどからの質疑を、断片的でありますが、伺っておりまして、納得ができないのであります。何でも裁判所の方で、こういう処置をとられることになったことについて、先般、本予算委員会の一般質問で、わが党の島上委員からだったと思いますが、質問申し上げましたときに、裁判所の職員につきましても、他の官庁の職員と勤務条件、その意味勤務時間が同一だという観点に立って今度行なわれることになったんだ、こういう意味合いの答弁が、ここにおられる大蔵大臣からあったと思うのであります。その例といたしまして、検察庁の職員のうちで、今度裁判所計画されているように、五十二時間の勤務の代償として、先年給与の一部引き上げが行なわれた事例があるのを援用されておるようでありますけれども、先ほどの大貫分科員の質問の過程では、その関係指摘されておらないのでありますが、実際の関係は、やはり検察庁に行なわれているということを、裁判所の方で安易に、だから裁判所の職員についてもこうしたらいいじゃないか、こういうような見解の上に今度の計画を立てられたのではないかという疑惑を持っておるのでありますが、その点、総長、いがですか。
  178. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 この問題は、実は今回初めて起こったことでございませんので、歴史的に申し上げますと、今仰せになりました検察事務官の待遇問題と、むしろ同時に発足いたしました問題でございまして、ただ検察事務官の方は、昭和二十九年にそれが実現されまして、その後だんだん変わって、現在の特別の給与体系になっておるようでございます。裁判所の方は、いろいろの事情がございまして、ついにそれが今日まで延び延びになって参りました。ことしになりまして初めてこういうような形になったわけでございまして、決して検察事務官の形を、ただ形式的にまねたというようなことではないのでございます。
  179. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういうように伺いますと、形式的に検察事務官のやつをまねたのではないというお答えになると思うのでありますが、先ほど大貫委員から指摘をいたしましたように、こういう時間延長——これは待遇改善が先に行なわれて、時間延長が行なわれるというような結果になった問題ではなくて、やはり裁判事務の遂行上どうしても時間延長しなければならぬ、どうしても時間延長によらなければ、現在の人員では仕事の量が処理できないということから始まったのと違うのですか。その点はいかがなんです。
  180. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 先ほども申しましたように、そういう面は十分あるわけでございまして、時間延長いたしますことは、いろいろな面で、私どもとしましてもいろいろ考えさせられるのでございますが、やはり現在の裁判制度というものを少しでもよくいたします意味において、練達堪能な書記官に、今申しましたような補佐的な役割を十分に果たしてもらいたいという観点から、今回の問題が出たと思うのでございます。
  181. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 結局、横田総長は語るに落ちたと私は思う。従って、裁判所の事務を遂行する関係から、端的に言えば、仕事の量がふえて、従来の勤務時間内ではそれが処理できないからということで、それの解決のために、今度書記官についての給与の引き上げを行なった、その反対給付のもとに、通常の公務員よりも勤務時間を延長する、こういうことをやった、私ども指摘しているようなこういう事情であるということを、今の横田総長の答弁で裏書きをしたように私は思うのであります。  そこでお伺いをいたしますが、今総長の端的に認められましたように、裁判事務の円滑なる遂行、帯積しておる事務の迅速なる処理という関係から、いかにすべきかということになれば、書記官の人員をふやす、その他の裁判所の職員をふやすというような関係でこの問題の解決をはかる、そういう御努力をなさったのですか、どうですか。
  182. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 その点につきましては、毎年度予算におきまして相当多数の増員を大蔵省要求いたしておりますが、それがなかなか思うにまかせない状態でありまして、先ほども申しましたように、本年度におきましても、数百名の職員の定員増員を要求はいたしておりますが、ごく一部が認められたにとどまった次第でございます。しかし、この点は勤務時間の延長と並びまして、今後といたしましては、やはり書記官の増員ということも当然考えなければなりませんが、われわれは、現在定員をどういうところで押えているかということが非常に問題になるわけでございまして、実際の裁判所の事務量、それからそれに対する適正な定員というのを今後多少科学的に調査して参りまして、これだけの数は絶対要るという数をつかみました上で、もう少し強力に大蔵省の方に折衝したいというふうに考えています。
  183. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これは予算の面で、公務員のいわゆる定員の数を縛ることができるから、定員法を全廃したらどうかということで、政府部内にもそういう意見があるということを先般新聞で拝見いたしたのでありますが、やはり今、横田総長が、人員をふやしてもらうということのために、具体的なデーターをそろえて、強力に今後大蔵当局と折衝するということを約束せられたので、これ以上私は追及をいたしませんが、しかし、今総長が言われたように、裁判所の事務の関係で、絶対的にこれだけは必要だという資料を作るというようなことは、あなたは事務総長になられてからまだ間もありませんが、そんなことは不可能だと思うのです。しかし常識的に考えまして、民事の裁判にいたしましても、刑事裁判にいたしましても、裁判がもう十年裁判というようなことが通例になってきておるのです。  最近、特に先年のメーデーの皇居前事件等についても、もうかれこれ十年になります。だから、その間に、まだ東大の学生というような関係で事件に関連をした、こういうような者が、この事件が係属して判決がおりないために結婚することもできない、就職について自由な選択をすることもできない、こういうような人権問題が起こっているという形で、弁護団から、あらためて、これらの事件が、もう五年以上も、十年近くもこういうことをしていることは、その意味から見ても、人権を尊重しなければならぬ、裁判所においてこの事件を公訴棄却すべきではないか、こういう申し立てがなされておることは、総長御承知通りであります。  それから、きょうは、時間があればこの問題についても、非常に重要な問題でありますから聞きたいのでありますけれども、先年、部落差別に基づく結婚誘拐罪の問題で、部落民であるということを隠したことによって結婚誘拐罪の罪を問われて、懲役一年の体刑を課せられた事件が、広島の高裁から現在最高裁に係属いたしております。これだって、すでに上告理由書を提出いたしまして、ことしの来月の二十四日が参りますと、ちょうど満三年になります。ことにこれは結婚に関連した事件でありますために、その部落の青年が、いまだに結婚することもできないような状態にあります。  私は、民事事件等におきましては、もう十年裁判ということは通常のような状況にあると思う。こういうようなことについては、裁判所自体としても、事件のすみやかなる処理、それから権利関係をすみやかに確定するということを念願とせられておると思うのです。そういう立場に立って、これは国民の権利義務、人権に重大な関係がある問題でありますから、裁判所の必要な職員の増員というような問題につきましては、大蔵大臣もお聞き下さっておりますけれども、あなた方が、ほんとうに裁判の事務の円滑なる処理という観点に立って、熱意を持って大蔵当局と折衝すれば、私は、それはできないことはない問題だと思うのです。その意味で、今度の約一億一千万円の、書記官に対する七%の給与の増額で、われわれの手元に届いておる資料では、四百人、現在の書記官の給与に相当する人員をふやすことができるんだ。従って、労働基準法の精神、国家公務員法の精神に反する、五十時間以上の時間延長を行なうというような暴挙をやめられて、むしろ人員増加によりまして事務の円滑なる処理をはかる、こういうことにお考え直しを願わなければならぬと思うのでありますが、そういう点について、再考慮をせられる用意がありますかどうか、総長にお答えを願いたいと思います。
  184. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 ただいま裁判の適正かつ迅速な処理ということについて、きわめて御理解のあるお言葉をいただきまして、感銘いたす次第でございます。私どもも、その観点からすべての問題をいろいろ考えておるわけでございまして、今度の給与の問題も、やはり今おっしゃいましたその線につながる問題でございます。ただし、今回の大蔵省から認められました調整額というものは、そういうことでつけられておりますので、今おっしゃいましたその他の増員等によりまする事務の能率の増進、裁判の適正、迅速化ということにつきましては、また別途考えたいと存じます。そのほかにも、またいろいろ考えておることもございますが、今回、この形で一応お認めを願いたいというのが、私どもの念願でございます。
  185. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 根本的には、やはり滞積しておる裁判を円滑かつ迅速に処理するということがねらいでありますから、必要な人員をふやしてもらうために、大蔵当局の理解を深めていただくように御措置願いたい。わずかばかりの賃金を上げて、労働強化をしているというようなことを、法の番人である裁判所はやるべきではないと思う。率先してその点をやっていただきたいということを希望します。  それから、もう一点総長にお伺いいたしたいと思います。これは大蔵大臣もよくお聞きをいただきたいと思うのでありますが、最近、各官庁ともに、戦後のいろいろなバラックその他が、本建築に向かって改装されております。裁判所関係におきましても、東京の地裁等の改築が相当進んできておるのをわれわれ日常見受けるわけでありますが、全国的に見ますと、裁判所の庁舎ほど古色蒼然としておるというか、非常に老朽をしているものはない。これは好むことではございませんが、一たび地震等が起こるということになれば、裁判所に従事しておる職員、裁判官等の生命にも関することで、非常に条件の悪いところにあると思うのであります。その意味で、本年度予算にも裁判所の修築、改築に要する経費が、若干前年度よりも増額されて計上されておりますけれども、私は、裁判所当局としては、各地方裁判所あるいは支部の裁判所の庁舎に至るまで、非常に庁舎の改築については強い希望を持っておると思うのであります。そういうことについては、大蔵大臣もおられるわけでありますが、ほかの官庁に比べますと、まるっきり私はおくれておるように思う。これを優先的に扱っていただかなければ——まあ建物というものが、裁判の権威にどうこうということではないと思うのですが、裁判の内容いかんによって、司法権の独立というものに対する国民の信頼が得られるわけでありますけれども、やはり裁判所に従事しておる職員も同じ人間でありますから、そういう健康管理、一朝問題がある場合のことを考えますと、それを考えなければならぬ問題だと思うのであります。その点について、裁判所当局が、本年度予算に落ちつくような結果になったことについては、どういういきさつがあるのか。また、この点については、今後大蔵省として、裁判所側の要求に対しては、十分の理解を持って当たっていただきたいと思うのでありますが、その点、大蔵大臣の御所信等、あわせて伺いたいと思う。
  186. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 裁判所予算は、御承知のように、人件費、営繕費というようなものがかなり大きな比率を占めております。この営繕費につきましては、毎年予算請求といたしまして約四十数億の数字を出しておりますが、結局昨年は十億、ことしが二億伸びまして、十二億若干というところにとどまったのでございます。裁判所は非常にたくさんの庁舎をかかえておりまして、御指摘のように、三百年もたちました建物すらあるような、非常に老朽のものが多いのでございまして、われわれが毎年四十億を要求いたしますのは、必ずしも不当ではないのでございますが、やはり今までのいろいろないきさつもございます。そう急にこの額がふえるわけでないのを非常に残念に思っておりますが、しかし最近におきましては、一昨年度の八億、それが十億になり、さらに十二億になるということで、かなり大蔵省としてもわれわれの立場を認めていただくようになったことを非常に喜んでおりますが、われわれといたしましては、約二十億を年に使わしていただければ、御指摘のような、はなはだみっともない建物は、約十年たちますればほとんどなくなるというような計算にもなりますので、この二十億の線にできるだけ近づけたいというのが、われわれの念願でございます。今後とも大蔵省の理解ある措置によりまして、われわれの念願がかなえられますことを特に希望いたしておるわけであります。
  187. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だんだん落ちついて参りますと、行政官庁その他の官庁営繕というものが、非常にやかましくなって参ります。特に、裁判所あるいは検察庁あるいは登記所、これらがおくれておるのじゃないか。ただいま非常に御理解あるお話でございますが、私どもも、予算編成に際しまして、ただいまあげますような比較的支援されない面というか、そう言いますと語弊があると思いますが、大へんおくれておる官庁営繕については力を入れるつもりでございます。ただ、何を申しますにも、総予算支出関係がございまして、予算的な制約を受けることはやむを得ないのでございますが、ただいま事務総長からお話しいたしましたように、ことしは前年度に比べまして相当ふやしたつもりでございます。しかし、ただいま申されるような、役所の建物が非常に老朽化しておる、これが非能率であり、同時にまた、何らか問題を残しておる、これらはよくわかっておりますので、財政の許す範囲内において、ただいま御指摘になりましたような点をさらに努めて参る所存でございます。
  188. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 具体的に営繕の関係で伺いたい点もありますが、それはいずれ別の機会に会計課長と当該の人から伺うことにします。私も一昨年法務委員をしばらくやりまして、休会中に国政調査裁判所へ参りましたときに、近畿地方が主でありますけれども、各地方裁判所で、営繕関係の促進についての裁判官諸君からの切実なる要請を受けておりますので、どうかその点につきましては、今横田総長から、年間今の倍額程度に見てもらえれば、十年くらいで大体裁判所の庁舎の面目も一新することができるんじゃないか、こういうきわめて控え目な希望を述べておられるわけでありますから、希望が達成せられるように大蔵大臣において引き続き努力せられることを要望いたしまして、裁判所に関する私の質問は終わります。
  189. 大貫大八

    ○大貫分科員 大蔵大臣に二、三質問をいたします。時間もあまりないようでありますし、質問者も非常に多いようですから、いずれこまかいことは大蔵委員会お尋ねすることにして、本日は所得税、特に申告所得税だけについて、二、三お尋ねをしておきたいと思います。  予算によると、申告所得税は七百九十二億と見込んで、昨年度より八十億の増収を見込んでおりますが、申告所得税について、八十億の増収を見込んだ根拠はどういうところにあるのですか。
  190. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 申すまでもなく、申告所得税を構成いたしております各業種について、生産あるいは物価等を勘案いたしましてそれぞれを積算いたしております。ものによりましてはふえたものがあり、また減ったものがあるということで、その集計の結果、ただいま御指摘になりましたような八十何がしの増になったわけでございます。
  191. 大貫大八

    ○大貫分科員 今の御答弁だと、業種によっては減ったものがあるとおっしゃるのですが、現実にそんなのがあるのですか、それをお聞かせ願いたい。
  192. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 たとえば、農業所得の面でございますが、三十五年の米作の収穫量が大体平年作、七千八百五十万石、そして二十四年に対して、これは生産の減少三・八%ということになります。同時に、物価等を勘案いたしまして、大体三・八%程度所得が減少するんじゃないか、こういうことを見込んで計算をいたしました。そういたしますと、前年度に対しまして十七億の減、こういうような計算でございます。これなどは、減の非常な著例でございます。
  193. 大貫大八

    ○大貫分科員 減ったのは、農業の方で減っておるというお話なんですが、私のお尋ねしたいことを申し上げますと、今、実は確定申告をしておる。ところが、実際は、申告制度というものは有名無実なんです。これは申告者の通りにパスしたためしが、おそらくないはずなんです。必ず税務署の窓口において、お前の方は今年度はこのくらいの収入がある、お前の方はこのくらいの収入があると言うて、事実上は、国民を信用しないのが今の税務行政の末端の姿なんです。農業は減らしておるというのですが、大蔵当局としては、もっと各業種について何%かくらいずつ、おのおの増収を税務署長に指令しておるんじゃないですか。
  194. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘のようなことはございません。どこまでも、各業種によりまして積算をいたすわけでございます。それで申告がいれられないということは、全部悪意でやっておることではございません。なかなか法令がこまかいし、また、善意に忘れておるものもあるように思います。私などもやはり申告いたしますと、雑収入の部類では、ずいぶんわからないものがあります。原稿料あるいは講演料、そういうようなものがどうしても落ちがちでございます。そういうものを、やはり税務署といたしましてはファイルがよくできておると見えまして、なかなか正確に実態をつかんでおるようでございます。その点は、税務署があながち悪意で接しておる、かようにはおとり願わないで、また、ただいま御指摘になりましたように、各税務署に対して税額を割り当てる、そういうようなことは絶対いたしておりませんから、御了承をいただきたいと思います。
  195. 大貫大八

    ○大貫分科員 私は、税務署が悪意だと申すのじゃないのですけれども、実際は、窓口の税務行政を担当しておる者は、業者が、たとえば理髪業なら理髪業が行って、お前のところは去年よりも一〇%よけいだぞということを言われて、そんな収入はありません、こう言うてそれにいろいろ弁解をしても、最後は、いや、そんなことを言っても、上司から取れと言われておるのだという税吏すらあるのです。実際あるのですよ。だから、やはり内々には、たとえば理髪業は何%、ふろ屋は何%、あるいは自由業で医者は何%、弁護士は幾らというように内示をしておるのじゃないですか。
  196. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 内示をしておることはございませんが、同一業種でございますと、甲の業者、乙の業者の申告が、あまりにも開きがあるというような場合だと、その内容についていろいろ事情を聞いておる、こういう実例はございます。よく問題が起こりますのは、そういうような同種の事業の場合に、甲の取り扱い量と乙の取り扱い量を比べてみると、甲の場合は非常な利益が出ておる、乙の場合は、取り扱い量から見てももう少し出なければならないと思うが、どうもあまり出ていない、こういうような場合に、いろいろ伺っておることはあるだろと思います。しかし、業種において一定の所得基準などを考えてはおりません。
  197. 大貫大八

    ○大貫分科員 大蔵大臣は大へんきれいなことを言っておるのですが、実際は見込み課税です。いろいろな実例を示せというなら私は示せるのですが、たとえば理髪業に例をとってみますと、毎年ふえておるのです。何%かふえておる。これは一般的にふえておるのですよ。個人片々でなくて、その業種がふえておるのです。ところが、それはもう国民所得というものは、経済の成長によって伸びるものもあるし、全然伸びないものもあると思うのです。たとえば、今理髪のことが出ましたから申し上げますけれども、景気がよくなったから、よけいに床屋へ行くなんという例はないと思う。ふろ屋だってそうでしょう。そういうような、つまり経済の成長によって所得があまり左右されない。何年間か固定しておる職業、業種がたくさんあるはずです。医者だってそうでしょう。たとえば、景気がよくなったから病人がふえるという理屈はないのですから、これは経済の成長に何らの影響なしに、所得というものは大体固定する。弁護士しかり、代書しかり、自由業なんというものはみんなそうです。それを毎年、税務署は何%かこれをふやしております。一般的にふやしておるのですよ。だから必ず大蔵省は、やはり申告所得については、国民の経済の成長率などを基準として、何%ふやせという内示をしているんじゃないでしょうか。
  198. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げる通りで間違いないと思いますが、国税庁長官が参っておりますので、実際の扱い方を申し上げます。
  199. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。私は今の御質問を拝聴いたしておりまして、なかなか、やはり納税者の方にわかっていただくのは大へんなことだなという気がいたします。よくそういう御質問を受けるのです。国税庁税金を割り当てているのではないか、各国税局ごとに幾らを割り当てる、国税局からさらに税務署に幾らを割り当てる、そして課税しているのではないかということを、ほんとうに納税者の方から聞かれるのです。事実納税者の方も、そういうふうな疑心暗鬼の念を持っておられる方が非常に多い。私はこれは非常に残念であります。税務署へ行っても決して納税者の言うことを聞いてくれたことはない、こういうお話から、実際は上から割り当てて、それによって署長が責任を持って徴収しているんじゃないか、こんなお疑いでございますが、まず申告納税制度が戦後わが国に取り入れられまして、まあ時期も実は悪かったのでございますが、その当初におきましては、非常に税務行政の混乱時期がございました。昭和二十四年、ちょうど今から十一年前、国税庁ができました当時におきましては、今の申告所得税の全国の人員は約七百五十万人おりました。ちょっと数字は多少違うかもしれませんが、約七百五十万、そのうち三分の二の約五百万人の人が、更正決定を受けていたような状況でございます。更正決定を受ける、それによって納税者が審査請求をするというような悪循環を繰り返しておったのですが、これではいかぬというわけで、実は昭和二十七年ごろからでございましょうか、事業所得者につきまして、お知らせという制度を作りました。これが実は、いろいろ批判もございましたが、税務行政の混乱を収束せしめるに大いにあずかって力があったと私は思います。それは、その前までは、一応納税者の申告を指導しないでおいて、納税者が申告されるあとからぽかりと大きな更正決定をやる、審査請求を受ける、こういう状態をなくすために、税務署で調べまして、そして書面でもって税務署で見るところではあなたの所得は幾らでございます、こういうお知らせをいたしておりました。それによって税務署と納税者の間の話し合いが行なわれまして、もし税務署の見方が間違っておれば、税務署で直すこともございます。また、税務署の言い分通り従う場合も相当あったわけでございます。これが税務行政の一時の混乱をおさめるのに非常に役に立ったと思いますが、ただ、これは何と申しましても、申告納税制度の本旨からは遠いものでございます。そこで一昨年から、こういったお知らせということによりまして、納税者に税務署の調査額を内示し、これを押しつけるような印象を与えることはできるだけ避けるということで、お知らせ制度を廃止することにいたしまして、本年で三年目でございます。そのやり方は、もちろん納税者といたしましては当初非常に不安でございまして、税務署は一体どれぐらい自分のふところを見ているのか、自分が、たとえば五十万円と申告しても、税務署がはたしてそれを受け入れてくれるのか、あとで更正決定がくるんじゃないだろうか、こういった非常な御心配がありまして、一昨年あたりは、むしろ窓口でもって積極的に知らせてほしいというような要望が相当ございました。そこで私どもといたしましては、もし納税者から、一体自分の所得は幾らぐらいに税務署で見ているか、こういうお尋ねがあれば、これは見ておるところを申し上げるのはできるということをいたしておりまして、昨年と一昨年その方針でやりました。ただし、その場合におきましても、税務署の調査額を押しつけるというような印象を与えるのはやはり工合が悪い、税務署が積極的に、進んでそういうような所得額をきめることはいたすべきではない、こういう指示をいたしております。  それから、ただいまのお話で、各業態によって毎年々々ふえておるのではないかというお話でございますが、必ずしもそういうことではございません。ただ、何と申しましても、事業所得につきましては、課税漏れはやっぱり相当あるものと思わなければなりません。これは税務署の職員の調査能力が向上するにつけまして、やはり正しい所得の把握ということが次第にできつつある、こういうことも言えると思いますが、全般的に考えて、ことしは何業は何割増すというふうな方針を、決して中央で指示しているわけでも、地方で指示しているわけでもありません。ただ、もちろん税務署におきましては管内の状況を常に調査している、管内のある特定の業態が、昨年中どんな状況だったかということは、担当者は常に調査をいたしておるわけでございますから、その調査に基づきまして、納税者から御相談があった場合に、税務署としては、あなたの業態は昨年は大体こうあったはずだ、そういう一般的な状態はもちろん御説明いたしております。それとともに、個人の特殊事情についても、納税者の方々のお話を承って、納税相談に応じているわけでございます。全体として、決して国税庁が割り当てをし、国税局でさらに税務署に割り当てる、こういうふうなことは絶対にいたしておりませんから、一つどうぞ御信用を願いたいと思います。
  200. 大貫大八

    ○大貫分科員 実際にそういうことはないのですか。くどいようですが、信用しろといっても、実際の税務行政の末端における扱い方はそうなっています。それは、毎年々々、各業種についていろいろな苦情を私は聞いている。実例を持ってこいと言ったら、持ってきてお示しすることができます。  そこで最後に、くどいようですが、もう一ぺん確かめておきたいのです。たとえば、申告所得税について、八十億の増収を見込んでおるのでしょう。この八十億は、それぞれ業種によって、去年よりも収入が伸びるという見通しをつけて、増収を見込んでいるのではないですか。それを結局、地方の税務署に割り当てるということを、おやりになっているのではないですか。そうでないというなら、また現場においての考え方があるのですが、いろいろそういう相談を受けておりますので、くどいようですが、確かめておきたいと思います。
  201. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国税庁なり本省から、また地方の国税局が各税務署に、そういうものを指示したことはございません。もしありましたら、絶対に私の方で直させます。  そこで、ただいま八十億の増収の問題のお話がございましたが、先ほど申しましたように、生産だとか物価、その動向を見て、積み重ねて結果を出すのであります。先ほど、農業部門についてはこれが安くなるという見通しだということを申しました。もう一つの例として営業所得について申しますと、二十四年度に対して、生産量あるいは販売量の増加、これが大体七・三%程度と見ておる、また物価の若干の上昇、二・三%という程度のものを見ております。そうして八・六%程度所得増加するものと見込んで、そうして当年分の予算では四十九億円の増、こういうことを見積もって、先ほどの農業部門はマイナスでありますが、そういうふうなもので八十億の増収の見込みを立てておるわけであります。これは別に、各業種部門についてどうして八十億がふえたのだということでもし聞かれれば、各業種部門について、その算定の基礎があるわけでございます。けれども、こういう基礎だということを、各業種に出すわけではございません。これは、先ほど農業は減ると申しましたが、これが幸いに豊作でございますれば、私どもの立てたのは平年作でありますから、またそこで変わってくるわけでございます。だから、実際の徴収と、予算に計上しておるものとの間には、違いはございます。変わってくるだろうと思いますが、八十億がどうしてふえたのだろうかと言われますと、申告所得税を形成している各業種について、一応こまかに実情を勘案して、そして積算をいたしました結果が、先ほど申したような数字になっておるわけであります。
  202. 大貫大八

    ○大貫分科員 けっこうです。詳しいことは大蔵委員会で尋ねます。
  203. 早稻田柳右エ門

  204. 中嶋英夫

    中嶋分科員 国有財産の払い下げに関して、関東財務局横須賀出張所において汚職の発生を見たことは、非常に遺憾なことだと思うわけであります。本来、国有財産国民の財産である、そういう考え方からいきますならば、その払い下げは公共の福祉に役立つかどうか、そういう観点が持たれるべきだと思うのであります。たとえば土地、施設、物資、そういうものの効用が、産業の発達とか、公共の福祉に大きく発揮されるという場合、また異例としては、国の財政の逼迫の際に非常手段として行なわれる、そういうことは私どもは十分理解がつくわけです。しかし、実際には、一企業や一個人にのみ利益がもたらされるような形における払い下げが行なわれている、そういう危惧を持たざるを得ないと思う。その現われとして、汚職の発生があると思うのです。正しい払い下げならば、裏面工作とか、よこしまな運動等は必要ないわけでありまして、払い下げの動機そのものに不純なものがあるから、贈収賄などの不祥事件が起きるということになると思うのです。従って、今国民は、国有財産の払い下げというと、それだけで何か暗いもの、あるいは不純なものを直感的に感ずる、そういう傾向があるわけです。こういう点から、今回の横須賀出張所における汚職事件の発生後における当局の態度、特にこの出張所の態勢の刷新とか、補充とか、そういう点についてどのようにお考えになり、どのように対処されておるか、それをお伺いしたい。
  205. 宮川新一郎

    宮川政府委員 お答え申し上げます。御指摘になられました横須賀管財出張所の汚職事件につきましては、私どもまことに遺憾に思っておるわけでございます。事務の渋滞を避けるため、直ちに人事の刷新をはかることといたしまして、すでに逮捕、起訴されました管財二課長並びに管財二課の係長の補充を発令いたしております。なお、これに関連いたしまして、管理処分の実態を調査いたしまして、第二課所掌事務の応援をいたしますために、本局であります関東財務局所属の国有財産監査官七名を派遣いたしております。さらに引き続きまして、先日管財第二課長並びに係員二名が逮捕されました。これにつきましては、応援といたしまして、とりあえず同出張所の管財第二課より係員一名を配置いたしますとともに、本局より二名を応援派遣いたしております。なお、今後国有財産処理につきましては、適正に執行いたしまするよう十分注意を加えていく所存でございます。
  206. 中嶋英夫

    中嶋分科員 この汚職事件の内容については、昨日参議院の決算委員会で相澤委員からいろいろ追及なり、質問があったようでありますが、私はこの汚職事件の内容の問題はしばらくおいて、この事件の発生した横須賀出張所は、今非常に重大な役割を持っておるわけです。それは、横須賀の追浜地区における国有財産の払い下げ問題に取り組んでおり、しかも、その最終段階になっておるわけなんです。この払い下げ問題は非常に重要な意義を持っておるわけでありまして、昭和三十二年以降、駐留米軍の事情によって、駐留軍労務者が大量に職場を失ったわけであります。しかも同地区の富士モーターとか、あるいは日飛、そういう会社関係の解雇を合わせますと、一万数千名をこえる失業者がきわめて急激に、しかも、狭い地区に集中的に発生をしておる。従って、非常に重大な社会問題として、各市あるいは地元の商工会議所、労働組合等は、これに対しては重大な関心を持ち、対策のための機関を作って、いろいろ努力をして参ったわけです。御承知のように、横須賀は、戦前からの軍港でありまして、現在でも基地としての性格を持っておるわけでありますから、他に見るべき産業、失業者を吸収するに足る事業所というものが、ほとんどないと言っていい状態であります。従って、接収解除された追浜地区の国有財産、この場所は失業者の諸君が数年前まで、あるいは昨年まで働いておった地域であります。そういう場所であるだけに、この地区に対して企業誘致運動を起こそう、企業誘致によって離職対策の効力を上げていこう、こういうことで県の方でも離職者対策本部を設け、市もまた、みずから市議会あるいは商工会議所、労働組合等、広範な市民組織として、失業対策協議会というものを持って努力をしてきたわけであります。幸い、各方面の協力の中でこの企業誘致はどんどん進みまして、すでに二十七社の企業進出がほとんど決定的である。なお、加えて、十二社の誘致の見通しも立ったというところまで進んだわけです。そしてこの確定的な決定というものは、大体二月の中旬までに払い下げの価格がきまる。これがきまることによって工場はどんどん進出してくる、こういうところまで進んだわけであります。ところが、今回の事件が起きて、市長が出張所へ行っても、出張所の中は混乱の状態で、全然連絡がつかない。責任者である所長も、責任問題があるでありましょうし、本省との連絡に、あるいは財務局との折衝の関係で、ほとんど席におらぬ。進出しますところの企業の方でも、一番大事な価格の問題が、決定まぎわで相手がいないという状態なんです。従って、まさに一頓挫という状態になっているわけです。今、態勢を補充したということでありまするが、補充だけではなく、この問題を三月の初旬中には解決していただかないと、一カ月、二カ月のずれではなくなってくる。と申しますのは、三月になりますと県の議会も始まるし、市の議会も始まってくる。そうすると、長期間の間、この運動の中心になっておる市長、関係課長というものは、それに忙殺される。おそらく五月以降になってしまうであろう。地元新聞も、五月以降になるんじゃないかという、悲観的な報道をしておる状態であります。こうなると、緊急で、しかも重要な意義を持つ払い下げの問題が、ワイヤー・ロープをかじったかどうか知りませんけれども、不純な払い下げのために妨害を受けた、こういう事態になったということを考えなければならない。これは、責任は非常に大きな問題であると思います。従って、この際、払い下げ確定の時期の見通しを伺っておきたい。そうして企業進出の全体計画へどのような影響を与えたかということを、責任ある立場においてお答えを願いたい。それから三月初旬中に決定できるかどうか、これはもう横須賀の市民、財界、労働組合等を含めての重大関心事でありますので、これに対して、決定的にはどうかということのお答えをいただきたい。それをお伺いいたします。
  207. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 お答えいたします。追浜地区の処理がおくれておりますことは事実でございまして、まことに申しわけございませんが、当初の予定より若干おくれておりますことは、今回の事件とは、直接関係は全然ございません。追浜地区の処理にあたりましては、一番問題は評価の仕事でございまして、これが建物等も非常に多いのでございまして、評価にあたっては、相当な時日を要したわけでございます。しかし、これにつきましても本省並びに他局からも応援を出しまして、極力急がせておったわけであります。仰せのごとく、二十七社に払い下げの方針を決定いたしておりますが、一挙にというわけにも参りませんので、そのうちのまず第一に四社程度を選びまして、この四社に払い下げる土地、建物につきまして第一次の評価をいたしておりますが、これは残りの二十三社にも影響する問題でもございますので、評価にあたりましては非常に慎重な態度でもって臨むということで、本省も関東財務局も、もちろん相談にあずかりまして、鋭意検討をいたしておったのでございます。この第一次の評価は、内部的には決定をいたしまして、関東財務局でただいま計数整理をいたしておりまして、これは来週早々にも、業者の方に内示をいたす段取りに相なっております。  その後の事務の手続でございますが、幸いこの価格の交渉が成立いたしますれば、できるだけすみやかに、まず幹事会を開きまして——幹事会と申しますのは、旧軍港市転換法に基づく国有財産処理審議会がございまして、その幹事会でございますが、その幹事会を経まして、中央におきまして審議会を開くわけでございます。ただいまのところでは、上旬中ということの御要望でございますが、ちょっと上旬をはみ出るのではないかという気がしておりますが、これもできるだけすみやかにいたす考えでおりまして、残りの数社につきましても、引き続き評価を続けておる次第でございます。半分以上のものは年度内に、三月末までに、若干の会社が四月にわたるという程度の進行状況で、この評価、それから売り払いの手続を完了する、こういう心組みでございまして、当初の予定からは多少進行がおくれておりますが、決してこれは、今回の事件がございましたために、おくれたというわけではございません。
  208. 中嶋英夫

    中嶋分科員 今回の事件の関係でおくれたのではないという御答弁なんですが、しかし、関係の市当局、あるいは横須賀市内の人々はそう思っています。というのは、企業誘致即雇用の勧奨の運動があるわけです。これは同じ京浜地帯でも、最近川崎、鶴見方面で、土地の造成をすると、各社が殺到して、三倍、四倍の申し込みがある、そういう性格と違って、若干工業立地の条件は弱さがあるのです。水の問題とか、業種の幅が狭いのです。そういう場所だけに、むしろ市、県関係者が一生懸命探して歩いて、これは通産省方面からの協力も得たわけでありますけれども、一生懸命こっちへ来てくれという運動をやったわけです。ですから、その次の運動は、来ていただいて、この地区におるたくさんの失業者を一つ雇用してくれ。事業主によっては、新しく学校を卒業する人々を採用したいという希望もあるわけです。それを押して頼む、こういう運動をしておるわけなんです。ところが、これがどんどんおくれると、事業体の方との折衝というものが行き悩みの状態に落ち込む、こういう現象も今度の事件で現われた。現に、市の関係者がその問題を打ち合わせに行くと、またこんな事件が起きたんじゃ行くのも悪いかなということが起こる。でも連絡なしではおれぬというので、行くと相手がいない、こういう状態があったのです。非常に重大な時期にあったのです。これだけの事件を起こして、関係課長二人が引っぱられて、このことで全然影響を受けませんでしたという答弁は、私はないと思うのですよ。その点、どうですか。
  209. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 お話のような事情があったかもしれませんが、この二十数社に対する払い下げで一番問題になりましたのは、評価の事務でございまして、会社を選定するというのは、普通の場合には、どういった会社が適当であろうかという点を決定するのは相当に時間がかかるわけでございますが、今回の場合におきましては、昨年の十一月九日に、まず方針だけを決定する審議会を開きまして、七十数社の希望会社の間から二十数社を決定したわけでありまして、この会社の決定にあたりましては、御指摘のような駐留軍の労務者で、解雇された方が非常に多いわけでございますから、雇用の吸収をできるだけ多く望めるという会社を頭に置いで選んだわけでございます。また、県、市当局の御意向も十分尊重して決定したわけでございまして、こういうふうに会社の選定はきまっておりまして、あとは、その会社に売ります財産の評価ということでございますが、この評価は、もちろん横須賀出張所の課長関係はいたしますが、別に鑑定官という制度がございまして、関東財務局からも、本省からも応援を出しまして、鋭意進めておったわけであります。全然なかったかと仰せられますと、あるいはこの事件のために、多少テンポが鈍ったということはあろうかと思いますが、まあ大筋はそういうふうな事務態勢で進んでおりますので、この事件のために、特におくれたということはないという考えでございます。
  210. 中嶋英夫

    中嶋分科員 少なくとも進出希望の各社にしても、不安は持ったんですね。その不安を持つ時期が、ちょうど大体おきまりになるようだから、この地区の失業者を採用してほしいという運動をする時期だったんです。非常にまずかったと思うんです。その今お話しになったような、内容についてはそうなっておるということは、その地区に進出を希望する会社は知っているだろうと思う。知ってはおるが、しかし、地元の出張所の見解というのは、全然無縁であるというように思い込んでおるかどうかは、私は問題があると思う。やはり関係があると思っておるのです。そこが壊滅状態になっておる。ということから、たとえば資金繰りその他にしても、スタートをいつに見るか、スタートをどうしたらいいかということが問題になっている。こういうことが、また雇用問題に対しても影響してくる。こういうことから、無縁であったということではないと思う。それは、あとの仕事をてきぱきやってもらえば、無縁であってもよろしい。私は無縁でなかったという立場から、責任を持つという立場から、今後の処置を進めていただきたいと思うわけです。特にこの価格の問題、評価の問題ですが、地元ではこう言っているのです。汚職事件があって延びてきた。その遷延した理由の一つとして、評価の問題に籍口しているのではなかろうか、こういうことを言っておる地元の人々の意見というものは、当たらないものか知らぬけれども、そういう議論が出るのも、やはり当局責任があったと思う。そういうことを十分考えて、あとの処理をてきぱきやっていただきたいと思う。時間がないようですから、私はくどく言いませんけれども、ただ三月中旬にはみ出すというお話なんですが、これはちょうど市議会が始まるころなんです。市の議会が三月の初旬から始まるのです。中旬は非常に大事な時期なんです。幹事会には、当然横須賀の市長も出るわけですね。横須賀の関係者も出るわけですね。県も、やはり議会が始まっておる時期です。ちょうどこういう時期なんです。だから、こういう点も考えて、一つ進めていただきたい。特に今度の問題のように、非常に意義のある問題で、みんなが関心を持っている問題は汚職が起きるのですよ。みんなが見ているのですから。そういう問題の金が非常に窮屈で、不純な動機、一個人や一企業の利益のためになされるような払い下げの問題は、むしろ価格を安くしてもらうから、わいろも贈るのです。こういうようなことがあるという場合、この問題の重大な意義を考えて、評価の問題で、内示はしたけれども、また一カ月、一カ月かかったというようなことが絶対にないように、そういうことを含めた意味での迅速な処理を期待して、私の質問を終わります。
  211. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経過は御承知通りであります。出張所で汚職の起こりましたこと、まことに遺憾に思っております。ただいま管財局長が説明いたしておりますように、この旧軍港都市の整備について、基本的には審議会が中心になってやっています。それは関東財務局が中心でございますので、もちろん本省、管財局もこれに関与して、事務の円滑な遂行をするつもりでございます。先ほど来中嶋委員の御指摘通り、非常に意義のあることだし、またできるだけ早くやらないと、最近土地の値上がり等がある、こういうような状況等でもありますし、また、失業者に対して将来の道をきめるという意味からも、できるだけ早くやらなければならない、また一面におきまして、国有財産でございますから、管理、またこれの払い下げ等において、適正を期さなければならないことはもちろんでございます。そういう意味におきまして、お話の趣旨はよく私ども理解いたしておるつもりであります。従いまして、第二次あるいは第三次、それらのものがややおくれ、おそらく第三次になれば四月末までになるかもわかりませんから、できるだけ業界なり、また各種団体、あるいは自治体等の協力も得まして、できるだけ早目に、また円滑に、また、十分この目的を達するように処理するつもりでございます。
  212. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 山本勝市君。
  213. 山本勝市

    山本(勝)分科員 私は簡単にお尋ね申しますが、一つ大臣、よく耳に入れておいてもらいたい。これは、ふだんほかでも話す機会があるようなものですけれども、そうではないので、ぜひともしっかり耳に入れて、記憶してもらいたいことだけを一つ申し上げるわけであります。ほかの局の方も、よく聞いておいてもらいたいのです。  ポイントは、こういうことです。実は私は、先般第三分科会企画庁の長官にも申し上げたけれども、まだどうもぴんとこないので、あらためて大蔵大臣に申し上げるわけですが、御案内の通り、日本では国民年金制度というものが出発いたしまして、ただいまのところは無拠出でありますけれども、やがて拠出制が実施されるわけであります。これは大臣答弁などは要らぬのですから、一つよく聞いておいてもらいたい。今問題になっておるのは、郵政省の方で、簡易保険の限度額を、二十五万を三十万にしてもらいたい、三十二年に十五万から二十万になり、三十三年に二十万から二十五万に上がったのですが、また今度三十万に上げられる。審議会は、五十万に上げろというのを遠慮して、三十万に上げろ、こういうことで、われわれの財政部会では反対した。郵政部会は強く主張して、決議をしてきておるような、こういう問題に当面しておるわけです。この国民年金制度が、よかれあしかれ出発した前提は、通貨価値というものは変わらないという前提の上に立っておるのだと思う。また零細な簡易保険で長期の資金を集めるということも、通貨価値は変わらない、金の値打は変わらないという前提の上に、国民から政府は集めておるのだと思う。ところが、ここでぜひ聞いておいていただきたいのは、経済企画庁が出しました来年度、三十五年度の経済の見通しを見ましても、卸売物価、小売物価は一・一%上がる見込みだということは、通貨価値が一・一%下がる見通しだということです。その前の三十四年度は、三十三年度に比較してみますと、卸売物価においては二%幾ら、小売物価は一・三%上がったという。こういうことでありますが、今どうも一般考え方の中に、通貨価値安定は必要だということはみんな言います。これは言葉の上でも、また文字の上でも言いますけれども、その通貨価値の安定に対する気持が非常にルーズであって、急激に上がってはいかぬけれども、まあ一%や一・五%くらいの物価水準の上がることなら、これは各国に比べても決して高い物価の上がりようじゃない。だから、それくらいなら横ばいだという考え方がある。現に企画庁の説明を聞いても、今のように年々一%ないし二%、朝鮮事変のときなどは、もっとはるかに上がりましたけれども、それくらいの上がり方の説明には、これは横ばいだという。だから心配は要らない、まだ外国に比べればいい方だという感覚であります。これは予算編成当時、大蔵省は、大臣初め必死になって通貨の安定のために努力されたことは、私も承知しております。承知しておりますが、周囲の情勢がそういう情勢でありますから、よほどの決意と、それから何らかのことで機構を持たなければ、忍び寄るインフレーションというものは防げないという見通しであります。つまり急激なるインフレは問題になりませんけれども、徐々にずっと、だんだん上がっていくという物価水準の上がり方、通貨価値の減少、これは世界各国がそうであるために、日本もこれは防げない。もちろん、急激な上がり方でないですから、これを俗にいうインフレと言うべきか、言うべからざるか、これは私は問題だと思います。いわゆるインフレとして問題にする必要はないと思いますけれども、少なくとも一方で、われわれが三十年、四十年という長期にわたって、一度に払うわけではありませんけれども、その前々から零細な金を政府が集めておって、そうして一方で、同じ政府が、わずかくらいの上がり方は仕方がないのだし、かえっていいところもあるのだという人もあります。国民所得がふえていく、国民生産がふえていく。景気がよければそれでいいのだ。その面から言えばプラスの面もありましょうけれども、私は、こまかいことは申しませんが、簡易保険やあるいは国民年金を考えなくても、貨幣経済において、貨幣の価値が、国民の知らぬ間に下がっていくというようなことは、これは脊髄が腐ったようなものだということをたびたび申し上げて、もっと厳粛に通貨価値の維持に本腰を入れてもらいたい。かつて予算委員会で、私は通貨憲章というような、憲法に準ずべきような通貨憲章でも作って、そうしてその通貨価値の安定というものに本腰を入れる必要はないかということまで申し上げたことを、今日まで一貫して繰り返しておるわけであります。油断をしておりますと、忍び寄るインフレが進んでいく。それで所得倍増論も、御承知通り、十年間に倍にするためには、一年に七・二%の所得増があれば、十年間では二倍になる。一年に一割ずつ増さなくても、前の年に比べて七・二%増していけば、十年で倍になる。ですから、一年で、前年に比べて一・二%とか、一・三%ずつ上がっていくというようなことを平気で見のがしておりますと、五割の通貨価値の減少を来たすのに、決して五年かかるわけじゃありません。おそらく二十年か二十五年くらいで、計算を置いて見ないとわかりませんけれども、三割、四割という通貨価値の下落を来たす。そういうことを国民にはっきりさらけ出せば、おそらく国民は、そんなに三割も四割も下がってから受け取るようなのなら、入らないと言うだろうと思うのです。ですから、どうしてもその国民年金を、よかれあしかれ実施する、あるいはこの簡易保険の零細な金を集める制度を続けていく限りは、その点だけから考えても、私は、通貨価値の安定というものを真剣に内閣全体で考えてほしい。ところが、先ほど申しましたように、どうも一般に、急激なインフレは困るけれども徐々にわずかずつ上がっていくのは差しつかえないという考え方があります。ことにケインズが非常に流行しておるために、少しずつ上がっていくのがいいんだという考えすら、一部には学者の中にもあるわけです。それで心配をするわけなんですが、今度貿易・為替の自由化というものが当面の問題となってきました。この貿易・為替の自由化が物価水準にどう影響するだろうかということも、そういう意味で、私は通貨価値ということを重視する点から考えてみるのであります。これは貿易がふえ、安いものが入ってもくるから、物価は下がるのだというような考え方も一方では立ちますけれども、しかし私は、日本の情勢で輸出するものは、品物が出ていって金が入ってくるのだから、輸出がふえれば、どちらかと言えば、物価を上げる要因になる。輸入がふえてくれば、安い品物が入ってくるのですから、普通ほっておけば、物価は下がる要因になるわけなんです。ところが、やはり入ってきた場合に、いろいろな打撃を受けたところでは、救済費が出るのじゃないか。また救済しろという声は、猛然と起こってくるのじゃないか。失業者が出てきた、それ救わなきゃならぬ。相当大きな事業ですと、大量に失業が出てくる、これも何とかせにやならぬ、あれもせにゃならぬ、これもせにゃならぬ、そこに救済費というものが出て参りますと、せっかく安い品物が入ってきても、その入ってくる輸入の方は物価を下げる要因にならなくて、出る方だけは、むしろ物価が上がる要因になるということになって、物価水準が上がるというようなおそれも起こってきはしないかということを心配するわけであります。ですから、その点も、決して私は、政治的にすべて打撃をほっておけというわけじゃありません。それはどうしてもほっておけない事態もありましょうけれども、安易に救済に出ますと、そういう結果を引き起こすと思うのです。ことにインフレで物価が上がるのは、非常に簡単に上がってくる。通貨価値が下がるのも簡単に下がりますが、通貨価値が上がるのは非常にむずかしい。これは数字で言ってもわかりますが、百円のものが倍に上がるのは——二百円に上がれば、まあ倍になるわけです。一〇〇%上がれば倍になるわけですが、下がる方は、一〇〇%下がったらゼロになるわけです。物価がゼロになるということはあり得ない。ですから、物価が五〇%下がったときには半分になって、そうして一〇〇%上がったときは倍になる。だから、倍と半分というものは両方対応しておるようですけれども、実際は、一〇〇%上がったのと一〇〇%下がったのが対応するのじゃなくて、五〇%下がる場合と一〇〇%上がる場合がコレスポンドしておる。対応しておるわけです。一〇〇%上がることは容易に上がりますが、一〇〇%下がってゼロになるということはないことだし、また、あってはならぬ。だから、下げるということは非常な弊害も持ってきますから、従って、上がらぬように努力しておかぬと、上がったらなかなか下げられない。下げたらまた非常な弊害を持ってきます。ところが、上がる要因の方は非常に多いものですから、非常に努力しておっても徐々に上がっていって、何か朝鮮事変かあるいは戦争でもあれば、一挙に上がる。ずっと忍び寄ってといいますけれども、それは一年に一%ずつ進んでいけば、三十年たてば四割とか、四割五分で済みましょうけれども、その間に何かあるとぱっと上がって、なかなか下がらないし、下げれば経済界に非常な打撃を与えますから、下げられないということを考えると、上げないということの非常な苦心をしてもらわぬといかぬ。それで下がるのを好む一つの要因をはらんでいくのは、借金を奨励することです。借金をしておる人が、あるいは滞納をしておる人が、その借金の重みを解決するものはインフレだ。これはもう日本の農村の問題でも、大臣も御承知通り、シナ事変前に各農村は借金でどうにもならなかった。その借金がどこから出てきたかというと、すべて低利資金で出てきた。代議士諸君が、低利資金を出すことをきめておいては、地方に行って、低利資金は安いのだから借りろ借りろと言って勧めて借りた。ところが、なかなか農家は払えない。それがたまりたまってきて、どうにもならなかったのが、戦争後のインフレで一挙に片づいた、こういうことがあります。ですから、私は選挙区でも、借金をしたいと言えば、なるべくするな、もうよくよくの場合か、あるいははっきり計算が出る場合以外には——同じ苦しむのならば借金しないで苦しめ、借金して苦しむよりも、借金しないで苦しむ方がなんぼ楽かしれない、こういうことを、ことに農家の諸君には勧めておるのですが、政策が、一般に借金をさすこと、農家にまで借金をさすことがどうも受けがいいと見えて、借金をさすことを言いますが、結局借金をしたが払えない、そして借金だけが残る、それがだんだんたまっていきます。もうどの農村も借金という戦前のような状況になったり、あるいは中小企業にしても、借金の利子の払いに追われてくるようになりますと、これはどうしてもインフレで解決する以外に、もう解決できないような事態が起こってくる。金の値打を安くインフレでやってもらって、ちょっと米一俵も売れば、それで借金が何十万でも払えるインフレでもあればいい、そういうことになりますから、非常にイージーにインフレになる。インフレになる要因というものが、だんだん重なって、作り上げていっておるといってもいいかと思います。ですから、大臣に私は、インフレ、通貨価値安定のために大蔵省の中に一つ部局でも作って、通貨価値安定をはかるために専門に考えて、なぜ通貨が下がるかという原因を、みんなの知能をしぼって、どういうふうにしたらこれが防げるかということを、うんと力こぶを入れて考えてほしいわけですが、この点について、大臣の決意を聞いてみたいと思うのです。
  214. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま山本さんのいろいろのお話ですが、全く、私ども基本的な立場に立って考える場合に、お話の通りでございます。私どもが健全財政を貫くとか、あるいはまた、事業についても事業内容のいわゆる体質改善をはかるということ、これ自身は、ただいま申し上げるように、健全化、いわゆる借金しないという、そのことが実質的には通貨価値を維持する、また経済そのものが成長することにもなる。また、通貨価値が安定するということは、言いかえれば、物価自身に変動がないということだ、それこそ強い経済だということで、私ども今日まで努力をしておるわけでございます。ところで、今の通貨価値を、それではどういうような方法で判断しておるか。現在では、国際交換レートといいますか、それが基準として一番とりやすいものだと思うのです。ところが、これ自身も、相手の国がインフレーションになっておればこちらも同じようになっているので、率が同じだといっても、これは内容的には十分検討しなければならないということであります。先ほど、物価が一%あるいは一・二%、その程度は横ばいだ。これはなるほど、横ばいだという表現はできるでございましょうが、お話にもありますように、一%あるいは一・二%ずつでも毎年上がってきたら、十年たてば四〇%にもなるだろう、こういうような計算がすぐ出てくるわけです。そういうことを考えて参りますと、わずかでも上がるということは、非常に危険な要素を持つものです。ただ、上がる割合が非常にわずかである場合だと、まだ下がる可能性もあるだろう、こういう意味で、一応物価の変動もわずかのことであると、これを見のがしやすいという形ではあります。また同時に、ただいまお話のありましたように、忍び寄るインフレーションというものは、受ける方から申しますと、これは春風が吹くような気持がするもののようでありまして、非常に楽なものであります。だから、どうしてもそういうものに対しての警戒は怠りがちだ、こういう点を十分考えていかなければならぬ。通貨価値を下げるというような政策をとることは、もちろんないでございましょうが、過去の経済発展をずっと見ましても、通貨の価値を維持する政策を貫いて参りましても、やはり長い期間にわたりますと、その間には相当の変化というか、変動がある。これはもう同じ米一升なら一升というものの考え方、これは戦後の大きなインフレーションの時期を経た通貨は別といたしまして、それ以前のものにいたしますと、同じ米一升を買うについて支払われている金というものは、明治の初期から見てよほど変わってきている。それでは、その間に、いわゆるインフレ的な政策がとられてきたのかというと、必ずしも私はそうではないと思う。また、経済の健全性を貫く場合においても、ある程度の変動はやむを得ない、かように私は思いますが、とにかく健全性を維持し、それに努力いたしましても、なおかつ、通貨の膨張と同時に、通貨価値のやや低落というものが、やはり数量的な問題からも出てくるのじゃないか、こういう感じが実はいたします。そういう意味では、御指摘通り、私どもは絶えず気をつけていかなければならない。ただ問題は、いわゆる通貨価値、あるいは個々の物価の関連を考えます場合に、物価を形成しておる全体の総体のものとしての考え方で、通貨価値ということが云々されるべきだと思いますが、この個々の物価の変動そのものが、一波万波を生むとでも申しますか、非常な影響を持つものでございますから、そういう意味において、これは非常に大事なことだと思う。昨年の暮れあたり、あるいは繊維関係なり、あるいは鉄素材などはやや下がる、こういうことで、これが物価形成上好影響をもたらすだろう、こういうことで一時私どもはほっとした。しかし、その後において、また順次他の面、あるいは公共料金と考えられるものがだんだん上がっていく、こういうことになりますと、やはり物価を維持するというのは、よほど強い決意のもとに取っ組んでいかないと、ともすればその目的を達しにくいものじゃないか、実はかように思います。しかし、ただいま特に、通貨価値を維持するために特別な部局でも設けてはというお話でございましたが、その部局を設けることもさることですが、私ども考え方——ただいま山本さんのお話しになっておるような考え方、とにかく健全性を貫くということ、ことに基本的財政の面においてはそういう決意でなくてはならない、また、その線は守り抜かなければならない、ことに貿易の自由化等がいわれておる今日、この政策こそが貿易自由化にも対処し得る基本の問題である、かように私は考えております。
  215. 山本勝市

    山本(勝)分科員 まあ大臣の決意はなかなかかたいようで、これはだいぶ安心しましたが、しかし、これは決意だけでは決して守れないし、今時間のないのに、議論にわたることは私は一切省略いたします。省略いたしますが、今大臣が言われた範囲でも、いかにしてこれを防ぐかということで、私はもう少し大蔵省の役所の連中が頭をしぼって、みんなで検討して——今大臣が仰せられたのは、大蔵省結論ではなかろうと思う。それが結論なら、これは大いに私の不安が増すわけです。それは外国との為替レートという意味で私は申し上げておるのじゃなしに、貨幣価値というものは貨幣の購買力をさしておるのだから、直接に言うと、金で買えるものでも、一般消費者の場合は、消費財を買える貨幣価値のことをさしておるのであって、国際的な貨幣比率を、私が通貨価値と言っておるのではないんです。これは言い出すと時間をとりますが、ほんとうにその金の値打、物にかえたときの購買力の価値というものが、知らぬ間に下がっていくということでは困る、こういうことなんです。大体私が非常に不満なのは、いかに努力しても、結果においてどうも上がったというなら、これはまだ恕すべき点があると思います。しかし今日、三十五年度の予想を立てるときに、一・一%は上がるものだというような予想を立てておるというところに——三十五年度見通しというときに、それから所得倍増の十年間の計画を立てるというときにでも、絶対に通貨価値の維持はしなければならぬと書いてある原案に対しては、絶対は困るという意見当局から出てきた。それは事実問題として守れない。そういうことで、来年度の予想をするときには、どうしても上がるというのなら、通貨価値というものは風が吹いてくるようなもので、自然現象と考えられるなら、人力ではいかんともできないという判断なら、来年度の予想は、去年も上がった、ことしも上がった、来年はまたこれくらい上がるだろう、これは許せると思う。そうでない。来年度どうするかということは、まだこれからわれわれの力で防ぎ得るでしょう。明治時代から、日本の場合はこれは確かに上がっていますけれども、しかし、ヨーロッパの先進国の場合には、第一次戦争で上がりましたけれども、その前にはむしろ下がっているんです。下がっているというのは、金本位制の場合は金の産出額がふえなければ、物がふえるのに金の方がこれにおくれてくるということになれば、物価水準は下がってきます。しかし、今日は金本位制でないですから、通貨量というものが——単なる数量説を言うわけじゃありませんけれども、市場に出てくる物の数量がふえていくのに対して、貨幣の数量の方が多ければ物価は上がりまするし、少なければ下がってくる。金の場合は、金のふえ方が少なくて物の方が早く進んだから、かえって第一次大戦前には物価が下がった。そこは政府の決意で、物のふえ方は技術の変化もありましょうし、また民間が作るものですから、政府でどうにもならぬでしょう。しかし、通貨面だけは政府が握っておるのですから、通貨面で調節することはできる。これはここで議論をするのはやめますが、決意だけしっかり持ってもらえば——これは非常に重大な問題であって、今の年金制度で長期の金を集めておいて、一方で三十年間に五割も六割も下げるようなインフレ政策をやったとしたら、これは収奪だ。あの戦後の農地解放の問題などでも、あれは非常に私は日本の社会にとってはいい結果を生んだと思いますけれども、ただ、地主がかわいそうなのは何かというと、要するに、農地証券で代金を払った。その間にインフレをやって、そうして、まるでただみたいになってしまった。結果はインフレの影響であって、相当の価格を払っておるのですけれども、そのインフレ自身をやった政府が、いかにやむを得なかったとはいいながら、これは何も政府自身がその連中に向かって補償はせぬでもいいけれども、知らぬ顔をして、政府が悪いのじゃないというような顔をすることは許されない。それは民間の保険会社と簡易保険と比べますと、民間保険会社もインフレでもうけています。もうけているけれども、しかし民間の会社としては、インフレを自分でやったのじゃないのです。今の地主の場合も、いやと言うやつを無理に買い上げておいて、これは非常に社会的に効果はあったでしょうけれども、買い上げておいて、そうしてインフレを一方のところでやって、ただのようにしたときに、あれはインフレの影響であってということは許されない。インフレが自然現象で、雨が降ってきたからぬれたのだという説明で済ませるようなものならいいのですけれども、そうでなしに、現に同じインフレにしても、国によって非常にインフレの程度が少ない国もあれば、ほぼ安定しておる国もあるのです。だからそういう点で、どうしても通貨価値の安定については、もう少し決意と同時に工夫をお願いしたい。これはお願い申し上げておきます。  もう一つ、ちょっと伺いたいのですが、中小企業の金融に関する問題、政府は中小企業対策というので、今度も、たとえば設備転換資金だとか、いろいろな金を貸して、三分の二は利子補給する、こういうことをやっておりますけれども、これが実際に中小企業者の手に渡るときに、非常に経費がたくさんかかる。たとえば、二百万円借ろうと思うと、利子のほかに十三万円くらいとられる。どうしてそれをとられるのか。だんだん聞いてみますと、担保を入れるについて担保の登記料、それから調査費、それから商工中金から借りれば商工中金の歩積み、これは歩積みはいかぬいかぬと言っていますけれども、ちゃんと商工中金では四分の歩積みをとっている。そして結局、二百万円借ろうと思えば十三万円かかるというので、借りた連中が驚いておるということです。それにもかかわらず、どうして借りるのか。これはよほど注意していただかなければならぬのは、結局借りた金で借金の肩がわりをしておる。これが全国でどのくらいあるか。それほど中小企業は苦しんでいる。結局、百万借りたら、八十万は普通銀行の借金を払う。そのうち今度は、はたして設備したかどうか調べに行くでしょう、そのとき初めて設備していないということがわかるでしょうが、そういうことは、おそらく、お調べになれば全国にあります。そこで、三浦さんも簡単にやれと言うから簡単にやりますが、中小企業の実態というものは、金利が高い。大企業の、おそらく二倍、三倍という金利を実際払っている。なぜそんなに高いか。中小企業は信用が薄いから、自然にまかしても、幾らか金利が高いというのは当然でしょうが、二倍も三倍も金利が高い原因は、どこにあるかということです。これは大蔵省の仕事でなくて、通産省の仕事かもしれないが、大蔵省予算全般について熱心にやっているから、お願いするのです。歩積みはいかぬ、両建てはいかぬということを大蔵委員会でもやかましく言われておりながら、相変わらず歩積みをやっている。歩積みがなくなったと思ったら、両建てをやっている。この根本原因を突き詰めてほしい。これは、こういうところに一つの原因があるという説があるのですが、参考のために聞いておいていただきたい。それは、一億借りた人も、十万円借りた人も、今は金利は同じなんだ。中小企業でわずか十万円借りた人も、五千万、一億借りた人も、金利の率は同じなんです。そうしますと、銀行はどうしたって、同じ手数でたくさんの金利が入るのですから、大口に貸したがるというのは自然の勢いです。中小企業の小さいのは貸したがらない。幾ら表面は貸すといっても、同じ手数で、一方は五倍も、八倍ももうかるということになれば、小さい方には貸しません。結局、大口に物を買った方が安いというのは、自然の理です。大口で借りた人の金利の率が安いということは、小口の人に非常に不親切のように見えますけれども、かえって逆なのであって、小口に借りる人に親切にして、金利を安くしていることのために、大口の方へ資金が流れてしまって、逆に中小企業を苦しめているという。これは貸出金利が、均一になっているということが一つの自然に反した現象ですが、それが自然に反しておっても、中小企業の利益になっておればいいのですけれども、逆な結果を出している。これは中小企業者の中で、そういう説が出てきている。もう一つは、預金の金利、これは多少の差はありますけれども、しかし、中小の銀行も大きな銀行も、そうひどい金利の差はございません。そうすると、どうしても預金者は、小さな不確かなところに預金しないで、確実な大きなところに預金したがる。そうすると、大きな銀行へ預金が集まって、それは大口に貸す。中小企業者を相手にする小さな金融機関は、資金が集まらないから、自然ないしょで両建てだの、あるいは歩積みだの、何らかの形で高利で貸す以外にない。また、それ以外に借りられないという現象が起こっている。形の上だけ親切であっても、実質的には、そういうことが起こっております。そういう点は、簡単にさっさっとはいきません。それは非常にむずかしい問題ですけれども、長年の中小企業と大企業との間の金利の大きな差というものを解決するには、そういう点も一つ研究してほしい。私の方は与党ではありますし、またお願いだけですから、ほかの場合にでもお願いできるのですけれども、なかなか真剣に聞いてもらうチャンスがないから、きょう特に時間をいただいているのですが、きょう申し上げたことだけは、お忘れにならぬだろうと思って、お願い申し上げたのです。一つ御感想を承っておきたいと思います。
  216. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘のように、金利を安くする、そういう意味で資金コストを下げるということを、私ども指導目標にしておるわけでございます。そういう意味で、政府機関でございますと、政府の出資があったり、あるいは低利資金が融資されたりするということで、比較的貸出金利を算定することが楽であります。ところが、民間の場合でありますと、民間の場合には、指導として安い資金コストといいますか、金利をできるだけ合理化をはかるということをするにいたしましても、高い資金を獲得しておりますと、やはり貸す場合もむずかしくなるということでございます。しかし、これがいいというわけではございません。そういう意味で、今後私ども、ただいま御指摘になりましたような点について、一そうの努力をはかって参りたいと思います。そういう意味で、やはり具体的な名案、またはお教えをいただきたい、かように思います。  それから、最初のお話の、物価と通貨の問題でありますが、通貨価値を維持するということに最善の努力を払わなければならぬことは、先ほどのお話でよくわかります。ことに、最近の年金制で拠出制度ができるということで、あるいは所得倍増論にいたしましても、十年たって所得が倍になったら物価も倍増した、それだけ価格は落ちたということなら、これは何のための所得倍増論かわかりません。また年金にしても、一般の保険と同様ですが、そういう意味で、今日かけるものと、それを受けるときとの通貨価値が違っておれば、これは大へんな問題でありますから、年金の場合は、五年くらいたてばもう一度事情を調査してみるということが必要だと思います。  先ほど来、土地の解放のお話が出ておりましたが、これは片一方でインフレをしたわけではない。これは国家財政の破綻、その結果インフレ現象が起きた、かように思います。だから、これは特別の例として考えてしかるべきじゃないか。ただいま農地制度の調査会を設けたのも、そういう意味においての考え方だろうと思います。これは法律的な問題じゃないと思います。  それからまた、私どもが努力しておりながら、なおかつ、予算編成にあたっては、三十五年度の物価を一応見て、ある程度上げているじゃないか、こういう点は非常に不満だと御指摘になったと思いますが、努力が十分そこまで効果を発揮していない、そういう意味で、予算編成では、私どもも努力は努力としていたしますが、ある程度の経済の実勢といいますか、それはこういう方向をたどるだろうというような意味で、予算を編成しておるわけでございます。そういう意味では、幸いに大へんな強い主張を持っておられる山本分科員のことでございますし、与党でもありますし、さらに私ども、時を得て具体的にもいろいろ御相談いたしたい、かように考えております。
  217. 早稻田柳右エ門

    早稻田主査 横路節雄君。
  218. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣に、賠償魯特殊債務処理特別会計についてお尋ねしたい。  特別会計の百三十九ページでございますが、この中に、前年度剰余金受け入れ五十八億五千六百五万三千円、こうなっているわけですが、これはもちろん、三十三会計年度分の剰余金でございますね。まずこの点、最初に確かめておきたい。
  219. 石原周夫

    ○石原政府委員 三十五年度の歳入予算に計上しております剰余金は、三十四年度の剰余金の受け入れ見込みであります。
  220. 横路節雄

    ○横路分科員 それは、三十四年度の決算上においてできた剰余金を、三十五年度で受け入れるのですか。
  221. 石原周夫

    ○石原政府委員 三十四年度におきます賠償特別会計で、剰余金が生じました場合には、御承知のように、特別会計法によって歳入に受け入れます。従いまして、前年度の三十四年度の剰余金が三十五年度の歳入を受け入れられるわけであります。
  222. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、これは三十四年度における決算上の剰余金見込額を、本年度において受け入れる収入を予定したものですね。そうすると、これは動くということはないのですか。三十四年度についてはまだ相当の月日があるのに、ここに五十八億五千六百五万三千円と、こういうように確定金額を出している。しかし、あなたの方の説明は、決算上の剰余金の見込額だと言われる。決算上の剰余金の見込額というものが、まだ決算が済まないのに出せますか。これは動くのではありませんか。
  223. 石原周夫

    ○石原政府委員 御承知のように、各特別会計におきましては、前年度における剰余金を歳入へ受け入れるわけであります。従いまして、各特別会計が、前年度における収支の見込みを出しまして、その受け入れ見込額が歳入に立つわけであります。これは三十四年度におきましても、二十三年度の剰余金の受け入れ見込額を立てるのであります。横路分科員の御指摘に相なりますように、実行上まだこの数字は動き得るものでありますが、私どもといたしましては、現在として見込み得ますベストの推定をいたしまして、それによりまして、この程度の剰余金の見込額が出るというふうに考えるわけであります。
  224. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、これはまだ不確定な財源ということになりはしないかと思うのです。不確定な要素を含んでいる財源ということになると、これはなかなか問題があとにあろうと思うのです。この点、大蔵大臣どうですか。
  225. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そこにはっきり断わっておりますように、決算見込みとして私どもは計上したものでございます。これは決算見込みでございますから、不確定じゃないかということを言われますが、見込みというものは、観念的には不確定なものだと思います。しかし、数字的には、私ども今日までの状況から見まして、いわゆる決算見込みとして計上したものは、非常に確度の高いものであります。
  226. 横路節雄

    ○横路分科員 五十八億五千六百五万三千円とは、これはずいぶん剰余金が出たものですね。初めから過大見積もりをしたわけですか。それでは主計局長から、五十八億五千六百五万三千円というのは、何々がどういうように残ったのか、詳しい数字でゆっくりお話をして下さい。
  227. 石原周夫

    ○石原政府委員 三十四年度におきます剰余金の受け入れ見込みが、三十三年度から二十八億、一般会計から三百二十三億、合計いたしまして三百五十一億というものが、実行上の受け入れ見込みになるわけであります。これに対しまして、ビルマの賠償が七十八億五千万円、フィリピン賠償が九十億、インドネシアが七十二億、ベトナムが十二億、カンボジアが七億、ラオスが七億、オランダが七億、デンマークが四億、タイの特別円が十一億、連合国財産補償費が四億——端数を端折って申し上げます。合計いたしまして二百九十三億。この際ちょっと端数を申し上げますが、四千百万円。先ほど申し上げました三百五十一億三千七百万円から二百九十三億四千百万円差し引きました五十八億五千六百万、これが数字として出るわけであります。主として今申し上げましたベトナムの関係、そういう関係におきまして前年度の剰余金の受け入れがふえ、並びに実行額が予想よりも下回りましたから、それで剰余額が出たわけであります。
  228. 横路節雄

    ○横路分科員 どうして賠償金について、支払いの予定額よりは実行額がそういうふうに減ったのですか。詳しく一つ話して下さい。今私の方でも、速記ばかりでなしに、あなたの話を聞きながら数字を書いてみたいと思うのです。三百二十三億も一般会計から受け入れしているのに、二百三十九億で済んだのであれば、わざわざ一般会計からこんなに持ち出しをしなくてもよかったのです。だから、なぜこういうように違ったのか。当初の計画と、それから実際の支出した額と、その違いを丁寧に言っていただきたいと思うのです。
  229. 石原周夫

    ○石原政府委員 今こまかい数字につきましては、ちょっと時間を拝借いたしまして申し上げますが、荒筋から申し上げますと、たとえば、ベトナム賠償というようなものにつきましては、大体の金額の見込みに基づきまして、ある程度の見込みを立てております。従いまして、年度内に賠償が成立をいたしますれば、それに応じます措置をいたします。従いまして、それに応じた金額を計上いたすわけであります。御承知のように、いろいろな事情がございまして、成立の時期がおくれるということになりますと、年度当初に立てました見込みに対しまして、支出がおくれるという事態が起こるわけであります。それが三十三年度の問題として起こりましたものが、前年度剰余金の受け入れに影響し、当該年度として出て参りましたものがまた次に影響する、そういうような筋道であります。その数字につきましては、今ちょっと時間を拝借いたしまして計数的に申し上げます。
  230. 横路節雄

    ○横路分科員 これは賠償金の支払いの問題ですから、ぜひ一つ、恐縮ですが、時間をかけて、具体的な数字をお聞きしたい。今主計局長が言ったのは、ベトナムの分については、三十四年度内で支払いをしようとしたが、これは批准その他がおくれたために、三十五年度になって、その分が余ったというのですか。金額はあとで教えてもらいますが、そこのことを言えば、それにしては、五十八億はあまり金額が違い過ぎはしないかと思うのです。
  231. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいま申し上げましたのは一つの例でございます。従いまして、ベトナムの関係がおくれましたために、予想の金額を下回ったというのが一つの理由だということを申し上げました。それ以外に、同じような理由が三十三年度にございまして、三十三年度からの剰余金がふえておるというのが、また一つの理由でございます。その数字につきましては、今ちょっと時間を拝借したいと思います。
  232. 横路節雄

    ○横路分科員 今のあなたの説明だけだと、どうもふに落ちないのです。三十三年度の決算の剰余金受け入れが二十八億だ、一般会計では三百三十三億だ、そこで合計三百五十一億だ。それが三百九十三億四千万の支払いをする。従って、五十八億幾ら残るんだ。こういうことになれば、一般会計の三百二十三億円というものは、初めから過大の金額になるのですよ。そのことは、これから数字を承って議論をしますが、初めはじいた三百五十一億というのはこういう数字でありました、それが二百九十三億四千万になりましたのはこういう数字です、その点を一つ言うてもらいたい。きょうは分科会ですから、大へん恐縮ですけれども数字をきちっと話していただいて、お互いに納得できるようにしてもらいたいと思います。    [主査退席、三浦主査代理着席〕
  233. 石原周夫

    ○石原政府委員 三百五十一億を予定いたしましたのは、賠償の金額につきまして、これから申し上げますような予定をいたしましたほかに、先ほど申し上げましたことと関連して申し上げておきたいのは、三十三年度におきまする剰余金、この見込みを十億というふうに計上いたしました。それが三十四年度におきまする事情と類似の事情がございまして、三十三年度から四年度に持って参りました金額が二十八億、これが十八億ふえました。
  234. 横路節雄

    ○横路分科員 それで主計局長、私が一番最初に御指摘をしたのは、前年度剰余金の五十八億五千六百五万三千円、これは動くでしょうと話した。あなたは、ほとんど確定で動かないと言った。今あなたから、三十三年度から三十四年度に持っていった剰余金は、当初十億と予定しておったけれども、二十八億になった。そこで十八億違うではありませんか。ここに前の年度予算書を持ってきておりませんが、剰余金は十億としてあるでしょう。それが二十八億になったということは、十八億動いた。現に去年動いておる。だから私は、五十八億五千六百五万三千円は動くではありませんか、こう聞いた。今度は絶対に動かないというなら別ですよ。そこでどうも積算の基礎というものが非常にあいまいであって、不確定な要素を含んでおる。だから心配して先ほど申し上げた。それじゃ、これから数字をお伺いします。
  235. 石原周夫

    ○石原政府委員 数字を申し上げます前に、今の点申し上げておきますと、やはり予算編成をいたしますにあたりまして、去年も本年も、当局といたしまして、一番可能な限りの数字を出しております。ただ今年は、これから申し上げますように、いろいろな数字が煮詰まってきておりますから、不確定ファクターが少なく、今後における動きが小さいのじゃないかと思われますので、これが一銭一厘違わぬということを申し上げるつもりはございません。しかしながら、その意味において、実行の結果は非常に見込みに近いつもりだということを申し上げます。  三十四年度のビルマの賠償につきましては、七十二億と見込んだのが、六億五千万増加をいたしております。フィリピンは九十億と先ほど申し上げたが、そのままであります。インドネシアも七十二億、そのままであります。ベトナムは三十六億を予定をして、十二億であります。従って、二十四億そこで違うのであります。それからカンボジアが七億で、そのままであります。それからラオスの七億も、そのままであります。オランダが七億二千万、これが四百万ほど端数がついておりますが、大体同じだとお考えいただきたい。それからあとは、デンマークが、七億に対して四億二千三百万、それからタイが十一億で、十一億であります。連合国財産補償は、ごく小さな金が動いておりまして、四億二千七百万円が四億三千三百万円でありますから、大体同じと考えております。予備費十七億ございまして、これが使用をしないということであります。それで今申し上げました前年度剰余金の流用等の関係で、十八億減少いたしております。なお、それ以外に、引き当てにイギリス等を考えておりました三億という金が出ておりません。以上が実行上の食い違いを生じました差額でございます。
  236. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、五十八億が動いたというのは、もう一ぺん私の方でお尋ねしますが、ビルマについては予定よりも六億五千万円よけい出した、それからベトナムについては二十四億円予定よりも少なかった、デンマークについては三億円少なかった、予備費を予定していた十七億は支出しなかった、こういうわけですね。そこで、差し引き勘定は、支出しなかったのが四十億である。そうすると、三十三年度から三十四年度に剰余金として当初十億考えておったのが、そこで二十八億ふえた。それで合わせて五十八億ということになるのですか。そういうことになるわけでしょう。そうすると、重ねてお尋ねしますが、十億が二十八億になるということは大した数字ですね。約三倍近い数字が動いたわけです。これは決して少なくないわけですね。まさかこういう計算ではいかないでしょうが……。そうすると、去年の予算委員会でどなたかお尋ねしていれば別ですが、おそらくお尋ねしているのだろうと思いますが、御答弁をしているときには、つじつまを合わせて、一般会計から出した三百二十三億、それに十八億ということになるから、実際には、三百四十一億にふさわしい計算はここでなさったのではないのですか。私のお尋ねしているのは、主計局長こうですよ。十億だけ三十二年度から三十四年度に決算剰余金として繰り越す見込みだ。だから十億は、一応確定財源である一般会計から三百二十三億持っていったのだから、そうすると三百三十三億ですね。三百三十三億はこれこれに払いますと言って、答弁をなさったでしょうね。その点はどうなのですか、去年の国会においては。私ども、あらためて去年の予算委員会の会議録を調べてみなければなりませんが、その点は、去年はどういうようにお答えなさったのか。初めからここで動いているものとすれば——まあベトナムについては動いたかもしれませんけれども、その点はどういうようにここで御説明なさっているのですか。
  237. 石原周夫

    ○石原政府委員 私の記憶しておりますところでは、昨年の実行につきましてのお尋ねがあったとは記憶いたしておりませんが、予算を組みますときには当然実行を洗ってみたわけです。ただ繰り返して申し上げますように、賠償特別会計におきまして支払います幾多の項目につきましては、年々未確定部分が固まってきているわけです。従いまして、そういうような実行の見込みを立てまして、さらにその実行の結果がこれと食い違うということの可能性は、年々非常に縮減をしております、だんだん少なくなってきておりますから、私どもといたしましては、昨年に比べまして本年は、ただいま具体的に、詳細に申し上げましたように、おそらく結果にきわめて近いと思われるような数字が今日は考えられるのでありまして、これは三十二年、三十三年、三十四年というように、未確定ファクターがだんだん減ってきているということによるものであります。
  238. 横路節雄

    ○横路分科員 去年は予備費に十七億とっていたのが、ことしはとっていないですね。本年度の二百九十八億七千九百四十万円についてはあとで私の方でお聞きしますが、今年はないですね。その点はどうなっているのですか。まず予備費の点です。
  239. 石原周夫

    ○石原政府委員 本年は五億の予備費でございます。ちょっとつけ加えて申し上げます。先ばしったお答えになりまして恐縮でありますが、先ほど申し上げましたように、未確定のファクターが減っておるという関係もありまして、本年度は予備費を少なく計上しております。
  240. 横路節雄

    ○横路分科員 主計局長お尋ねしますが、去年予備費を十七億とられたのはどういう根拠からですか。
  241. 石原周夫

    ○石原政府委員 当時における状況から見まして、まだ未確定のクレームが相当ございまして、それらのクレームにつきましての決着の際におきます、先ほど一応予定いたしましたものに対する予備費の関係と——これはもう一度本年度におきます予備費の計画とも関連をいたしておりますが、連合国財産補償関係におきまして未解決の案件が相当ございます。これらは依然として現在もまだ未確定でございますから、本年度も同様、予備費をもちましてそれに対処いたしたい、そういうような関係を見まして、十七億の点を検討いたしたのであります。
  242. 横路節雄

    ○横路分科員 今こうやってお聞きすると、なるほど五十八億五千六百五万三千円が昭和三十四年度から三十五年度に剰余金として繰り越されてくるということはわかりますが、三十三年度から三十四年度に繰り越すときに、十億が、やってみたら二十八億になった。予算書をお作りになられるのだって、やはり一月に最終確定をして出された。予算の審議をしたのは二月です。ちょうど今の時間です。それが十億のものが十二億だったとかいうなら私もわかるのだが、十億のものが二十八億であったということは、一体どこに原因があるのですか。きょうは別に、私も大きな声を出して主計局長お尋ねしようとかなんとかいうのじゃないのですから、その間のことだけは、一つきちっとしていただきたいのです。
  243. 石原周夫

    ○石原政府委員 今三十三年度予算と実行の数字を持っておりませんので、今のような詳細なお答えは申し上げられないのでございますが、全体といたしましては、三百億に上る額がございました当時においては、御承知のように、インドネシアという関係もまだ不確定なファクターでございました。それ以外のクレーム関係におきましても、不確定なファクターがあったわけであります。従いまして、前々年度、すなわち、三十二年からの剰余金の関係で、ある程度の差額があったかもしれません。そういうようなことから考えまして、私どもは、そういう結果が生じたのだというふうに考えておりますが、全体から見ますと、三百億くらいのものの大きさの会計でございますので、この三十三年度のごとくに相当不確定なことが多かった、その程度の差が生じたというふうに考えております。
  244. 横路節雄

    ○横路分科員 主計局長、今あなたのお話で、大体三百億くらいの金の中だから、十億を予定したものが二十八億に動いても仕方がないではないか、こういうように今おっしゃったのですが、私は午前中、文部省の予算についていろいろただしたのです。御承知のように、たとえば小学校、中学校の子供が学校給食を受けておる。今度は、いわゆる余剰農産物協定による小麦が打ち切られた。そこで九十三銭だけ父兄の負担になる。しかし、これははね返って、一カ月に二十日にしても、やはり二十円近くになる。子供一人、そのために三百円くらいになる。小学校、中学校に、三人おれば九百円になる。これをあなたの方に要求したかと聞いたら、要求した、しかし、十七億円ほどよけい要求したが、大蔵省に削られてしまった、こういって答弁をしておるわけです。ですから、三百億の金だから十八億くらい動くのはやむを得ないでないかということは、これはちょっと、主計局長の言葉としては妥当でないと思いますよ。そこで実はこの問題は、資料として詳細に——これはこちらにおります田中委員から、あとで総括質問のときに、その点については重ねてお尋ねしますが、ほんとうはお昼ごろからやれば、もっとゆっくり、何ぼでも資料を出してもらってやれてよかったのですけれども、まあ時間もだいぶ過ぎておりますから、これはぜひ一つ——こういうように十億を予定したものが、一年も先のことならいいです。わずか一月ないし二月に論議していることが、三月末のことが予言できない。なぜ十億が二十八億のような、そういうことになったのか。今お話によりますと、去年の予算委員会では、どうもどなたもお聞きになったようでないというように主計局長は御答弁なすっていますが、今私にここで御答弁いただいたように、去年の三十四年度予算の中で、当初どういうような見積もりをして、三十三年度が初めなぜ十億と考えたのか、それがどうして二十八億になったのかという、その数字の経過だけは、今私に御答弁されたような数字の経過を、主計局長大蔵大臣も、ぜひ月曜日のお昼までに出していただきたいと思います。よろしゅうございましょう。主計局長、ここでまた御答弁なさいますか。
  245. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほど私の申し上げました表現が適切ではなかったと思うのでありますが、相手があることでございまして、未確定なファクターたが多かったから、食い違ったという意味のことを申し上げたかったおけであります。差額が生じましたのは、ビルマ賠償におきまして六億五千万の差が生じた、連合国財産補償費におきまして十一億八千万の差が生じた、合計いたしまして十八億三千七百万という差が生じた。
  246. 横路節雄

    ○横路分科員 主計局長、先ほどからあなたの答弁では、二通り答弁をしている。二通りというわけじゃないですが、あなたは、三十四年度のときは、ビルマに対しては六億五千万プラスで七十二億円払ったんだ、今のは、三十三年度のは六億五千万がプラスになったというのかマイナスになったのか、連合国財産については、当初の見込み額よりは十一億八千万よけい払ったというのか払わなかったというのか、もしもビルマの方がプラス六億五千万で、連合国の方がマイナス十一億八千万ならば、差引勘定はマイナス五億三千万、そうすれば、十億に対して五億三千万しかふえない。そこら辺のところ、はっきり数字だけお話ししていただいても、よけい払ったか少なく払ったか、プラスとマイナスで違ってくるでしょう。だから主計局長、私が今言ったように、私今ここでたくさん聞きたいのですが、あなたがまた、私に指摘されて訂正されてもあれですから、なんでしたら、二十九日の正午までに、本委員会に出していただいていいですよと言っておるのです。今ここで、すぐ御答弁なさるというならなされてけっこうです。
  247. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答えいたしましたついでと申し上げてはあれですが、引き続きでございますから、お答えを申し上げておきますが、ビルマ賠償におきまして、予定の八十八億に対して八十一億五千万、それで六億五千万円の差が生じた。それから連合国財産補償費が、十七億六千九百万であったのが五億八千二百万で、十一億八千七百万の残を生じたという次第であります。
  248. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、またお尋ねしなければならない。ビルマについて、一月以降支払いをしたのですか、連合国財産についても、一月以降支払いをしたのですか。当初はビルマについても八十八億払おうと思った。連合国財産補償についても十七億六千万払おうと思ったが、この支払いは、一月以降に払うことになっていたのですか。もしも十二月までの支払いであるならば、当然これは三十四年度のところへ出てきていなければならない。これはいつ払ったのですか。
  249. 石原周夫

    ○石原政府委員 支払いをいたしました分につきましては、ビルマにいたしましても、連合国財産にいたしましても、一回でございませんから、支払い時期は何回かに分けられると思いますが、予算を編成いたしました当時におきましては、そういうような支払いが、あるいは起こり得るのではないかということを考えまして、今申し上げたような見当をつけ、それに対しまして、今申し上げたような実行に相なった、そのために差額が生じたというわけであります。
  250. 横路節雄

    ○横路分科員 ビルマについては、八十八億の予定であったのが八十一億五千万で、六億五千万の残が出た。私が聞いておるのは、予算の執行の問題もあるのですが、当初の計画ということになれば、何月にはどれだけ、何月にはどれだけ、連合国財産の補償についても、何月にどれだけ、何月にどれだけ、こういう予定があるでしょう、予算の執行ですから。あなたの方では、各省についてそうではありませんか。第一・四半期どう、第二・四半期どう、第三・四半期はどう、年度内はどうとなっておるではありませんか。大蔵省だけ、そういうように当初の予定がなかったというのですか。それとも、第四・四半期に払おうと思っておったのが払わないで済んだというのですか、その点はどうですか。
  251. 石原周夫

    ○石原政府委員 普通の費目の場合と賠償その他の場合、多少違っておる。賠償につきましては、御承知のように、実施計画というものがあって、その実施計画に基づきまして、実施計画を現実に行ないました現実の支払いじりが支出になるわけであります。従いまして、実施計画に基づきまして考えまして、支払い計画を作る、あるいは最初に予算を組みましたときには、実施計画以前の推定数字に基づきまして予算を組む、それが実施計画で動いて参る、こういう段階に相なるのであります。連合国財産補償につきましては、これはまだ未確定のファクターがありますので、その未確定の部分につきましては推定を立て、その推定によりまして、年度内に支払いが起こるのではないかという分につきましては、これは当該年度予算に計上するということに相なるわけであります。
  252. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、ビルマについて、昭和三十四年度に当初の計画よりも六億五千万円よけい払ったというのは、昭和三十三年度に八十八億払おうと思ったが、八十一億五千万円であった。その点、六億五千万少なかったから、三十四年度では六億五千万プラスして七十二億払った、こういうことですか。
  253. 石原周夫

    ○石原政府委員 今申し上げましたように、実施計画の実行におきまする数字の動きでございまするので、今横路委員の仰せになりましたように、三十四年度の不用、三十主年度におきまする不用といいますか、支払いを要しなかった額、それから三十五年度におきまする不用額との間には、今申しましたように、毎年度の実施計画に基づきます支払いのズレという関係ももちろんございますが、実施計画年度というのは、必ずしも会計年度と一致しておりません。その点は、正確にどういうような関係になるということにつきましては、実施計画は会計年度建てになっていないものでございますから、ズレの関係が起こって参るわけであります。
  254. 横路節雄

    ○横路分科員 今の主計局長のお話で、賠償についての支払いは会計年度になってはいない。会計年度になっていなければ、なぜ昭和三十五年度大蔵省所管賠償等特殊債務処理特別会計、こう出してくるのですか。これが会計年度と一致していないものであるならば、今の主計局長のお話はおかしいですよ、会計年度とこの賠償等特殊債務処理特別会計年度が違うということになったら、予算の審議はできませんよ。そうじゃありませんか。それは大蔵大臣も今お聞きの通り主計局長、今のお言葉はちょっと当を得ないものだ。
  255. 石原周夫

    ○石原政府委員 賠償におきましては、年平均額というものを一応きめておるわけです。その金額に従いまして実施計画を立てておるわけであります。その実施計画を立てますのが、必ずしも四月一日から翌年三月三十一日までという実施計画を立てないものでありますから、年度間におきまして、正確にそういうような会計年度とマッチした関係に相ならぬということを申し上げたわけであります。
  256. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣、ちょっと今の主計局長答弁は、この賠償については、四月一日から三月三十一日までの実施計画はとっていないのだ。とっていないものを、何で三十五年度特別会計として出すのか。四月一日から三月二十一日までが、われわれはその年度の会計年度だと思うから、一般会計予算についても、特別会計予算についても審議している。それを、賠償等特殊債務処理特別会計だけは、四月一日から三月三十一日までの一般会計年度とは違うのだ。大蔵大臣、よろしゅうございますか。私も初めて聞くのです。
  257. 石原周夫

    ○石原政府委員 こういうことを申し上げたわけであります。会計年度予算を組みますのに、当該年度中に起こりまする支払額を予定いたしまして、予算を組むわけであります。賠償は、御承知のように、相手の国があることでございますから、相手の国が、実施計画のワク内におきまして実施をいたすわけであります。従いまして、その実施計画のワク内におきまして実施をいたしますれば、年度に計上いたしました予算の範囲内にとどまるべき筋合いでありまするが、これは実行上相当な動きがございます。その間に、必ずしも会計年度の四月一日から三月三十一日までが実施計画年度になっておりませんので、その間のズレが起こり得るということを申し上げたわけであります。
  258. 横路節雄

    ○横路分科員 主計局長、それならば、ここへ出してきたこの予算の金額というものは、意味をなさないのではありませんか。
  259. 三浦一雄

    ○三浦主査代理 ちょっと横路君に申し上げますが、先ほどお尋ねの点を、大蔵省側から資料として整理してお出しするということでございますから、その点御了承の上に、一つ質疑を進めて下さい。
  260. 横路節雄

    ○横路分科員 私は途中で、資料を出していただいていいんですよと言うたのに、主計局長が、いや今答弁するからといって答弁するものですから、今私が聞いているわけです。それがまた、今三浦さんから、出しますからというので、ちょっと私、念を押しておきたいのです。出しますというのが、ずっと問題が発展してきたものですから、もとへ戻してちょっとお尋ねしておきたいのですが、それは、先ほど私が申し上げた三十三年度から三十四年度への剰余金の繰り越しが、初め十億と予定した、それが二十八億になった、そこでなぜそういうように数字が動いたかという点について資料としてお出しになる、こういう意味ですね。ではその点は、大蔵省の方でお出しになるというのですから出してもらうのですが、しかし、大蔵大臣は、今の主計局長答弁で了解なさるのですか。私、もう一ぺん言います。ここに予算書が出ている以上、この予算書に出ている以上は、われわれは三十五年の会計年度予算をやっている。もちろん、これは四月一日から三月三十一日までのものを予定してやっている。ところが、相手のあることだから、実施計画その他は、四月一日から三月三十一日までにはならないのだということでしょう。だからこの予算の金額というものは、今年の四月一日から来年の三月三十一日までに支払いを予定しているものの金額ではないのだということになると、これは大問題だ。この点はどうなのでしょう。主計局長、そうならそうだと言えばいいし、あなたは、相手のあることだから動くというからおかしくなる。
  261. 石原周夫

    ○石原政府委員 予算年度予算に基づきまする賠償の実施計画、これは予算の実施計画でございませんで、いわゆる賠償の実施計画というものは、毎年度の平均額がきまっておりまして、それに基づいて実施計画がきめられるわけです。毎年度予算におきましては、四月一日から三月三十一日までにおきまする毎年度の予定を予算に組みます。それに基づきまして実行いたします。その実行いたしますのに、今申し上げましたような相手国との間の実施計画というワクがございまして、それに基づきまして実施をいたすのだということを申し上げたのであります。
  262. 横路節雄

    ○横路分科員 それはわかります。主計局長、それはあたりまえのことです。四月一日から三月三十一日までにこれだけ支払いをしようと思って予算上の計画を立てた。しかし、相手があるから、払おうと思ったところがいろいろな都合で払えなくなった。だから、それは翌年度に剰余金として繰り延べをしていくということなら、そんなことはきまっています。ただあなたは、さっきから、四月一日から三月三十一日までの会計年度が必ずしもそうでないと言うから——これは速記を見てごらんなさい。必ず違っています、あなたの言うことは。しかし、今そういうように御答弁になったら、それで了解して進みますが、それではことしの二百九十八億七千九百四十万円、これはどういう内訳になっているのですか。
  263. 石原周夫

    ○石原政府委員 ビルマの分が七十二億です。フィリピンが九十億、インドネシアが七十二億、ベトナムが三十六億、カンボジアが七億、ラオスが三億、オランダが七億二千、連合国財産補償が一億五千九百万、その他五億、予備費が五億ということであります。
  264. 横路節雄

    ○横路分科員 その他が五億、予備費が五億、その他の五億というのは何ですか。
  265. 石原周夫

    ○石原政府委員 イギリスその他の、まだクレームの片づかないものがございます。それに対しまして引き当てをいたしておるわけでございます。
  266. 横路節雄

    ○横路分科員 イギリスその他と言われても、こういうことになれば、私の方でも、言いたくないけれども言わなければならぬ。たとえば保育所に六十五万の子供がおる。これに一日五円やってくれというのに、三円にした。この三円で二億幾らでしょう。こういう金額で、文部省とか厚生省とか、国民生活に関係の深いところは一日三円だ。一食五十三銭のパン代が八十三銭にはね返って、これが幾らだという計算を片一方でやっておいて、片一方は、五億円はイギリスその他だでは済まされませんよ。同じ国民税金なんですから、主計局長、もっとそういう点は具体的に話して下さい。大蔵大臣、そうでしょう。
  267. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今イギリスその他のクレームということを申し上げましたが、いろいろクレームがあちらこちらから参っております。そのどれとどれを予定したというのは、まだ未確定の状況でございますから、なるべくその他として処理させていただきたい。最後に支払うときに、いつまでもそれだけでおくわけには参りませんから、それははっきりするわけでございますから、今これは予定しているとか、これは予定していないとかいうことになりますと、いろいろ問題もありやしないかと思います。そういう点から、いわゆるクレームに関する金額、かように御了承いただきたいと思います。
  268. 横路節雄

    ○横路分科員 ちょっと問題をもとに移しますが、昭和三十四年度のビルマの七十二億、フィリピンの九十億、インドネシアの七十二億、ベトナムの十二億、カンボジアが七億、ラオスが七億、オランダが七億二千万、デンマーク四億、タイ十一億、連合国財産の補償が四億三千万、これらはすでに昭和三十四年度で支払い済みなんですね。
  269. 石原周夫

    ○石原政府委員 現在の推定を含んでおりますから、全部が支払い済みではございません。
  270. 横路節雄

    ○横路分科員 これからまだ支払いをするのですかと聞いておるのです。まだ幾分か残っていますかと聞いておる。
  271. 石原周夫

    ○石原政府委員 若干残っております。
  272. 横路節雄

    ○横路分科員 主計局長、そうすると、去年のようなことが起こりませんか。去年だって、おそらく予算委員会で聞かれれば、支払いは済んでいます、予定通りです、ですから十億です、去年聞けばきっとこう言ったろうと思う。それがあとになって十八億もふえたというようなことが、この五十八億五千六百万円のところで、いや、やってみたら八十億になりましたなんということにはなりませんか。それでは主計局長、これもあらためて資料を要求したいと思うのです。それならば、もうこれで間もなく三月に入るところですから、一月三十一日現在で昭和三十四年度賠償等の債務処理はどれだけなのか、この点は出せますね。
  273. 石原周夫

    ○石原政府委員 提出いたします。
  274. 横路節雄

    ○横路分科員 次に、主計局長お尋ねします。あと、これから予定している賠償等特殊債務処理に関する、昭和三十五年度はわかりましたが、三十六年度以降は、まだどれだけ残っておるのですか。
  275. 石原周夫

    ○石原政府委員 資料でお出しをしたかとも思いますので、それでごらんをいただきたいと思います。ビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、おのおのの評定額がございますから、それを差し引きました額が出るわけでございます。出してなかったら月曜日にすぐ出します。
  276. 横路節雄

    ○横路分科員 実はこの間、外務省の賠償部から「賠償実施計画について」というのでいただいたのです。もちろん、私たちは賠償等特殊債務処理特別会計に関連していただいたのだが、実際にはその賠償の分しかないわけです。そこで私は予算委員会の専門員の諸君にお願いをして、私だけ、一体ことしどれだけになるかという資料をもらいました。しかし、今あなたが、渡したはずだから、差し引いたらわかるだろうと言うのは、ちょっとどうですか。
  277. 石原周夫

    ○石原政府委員 差し引いたらわかるだろうということを御答弁申し上げたつもりはございませんので、お配りをいたしたかと思っておりまする資料は、債務額と今までの実行額と差引残額とございますから、差し引いたらわかるだろうということでなくて、差し引いた額も全部出ている表を差し上げてあると思います。
  278. 横路節雄

    ○横路分科員 どうも数字が動きますので、私たちもよくわかりにくい点もありますから、委員会で幾らだと言っていただいておくと、表を見てそうだなとわかるので、もしもここで言えたら言ってもらいたい。私がここで今あなたのお話を聞いておるのと違って、たくさん専門家がいらっしゃるのですから、三十六年以降は幾らになるか……。主計局長、それでは三十五年以降は幾らか、それならわかるでしょう。
  279. 石原周夫

    ○石原政府委員 三十五年度以降の数字は、ビルマにおきまして三百六十億であります。フィリピンにおきまして千六百五十億であります。インドネシアにおきまして六百五十九億であります。ベトナムにおきまして百二十八億であります。合計いたしまして二千七百九十七億、オランダ、クレームが七億、カンボジアが八億、ラオスが三億、合計いたしますと二千八百十五億でございます。
  280. 横路節雄

    ○横路分科員 実は大蔵大臣に私から一つ申し上げたいと思うことがあるのです。私も、この一般会計並びに特別会計について、できるだけこの予算書を詳細に調べてお尋ねをしたい、こういう気持で見ておるわけです。それからさらに、分科会に出されました各省の明細書についても、私は拝見をいたしたのであります。ところが大蔵大臣、これは予算編成の技術上の問題ですか、それとも各省ごとにまちまちなのか、これは一つの例ですが、たとえば北海道の石炭手当について、総理府のある庁は、新しくなった甲地域で何人、乙地域で何人、丙で何人、単価が出ています。そうして合計を出している。ところがある省は、全くそれがなくて、ただ一万六千六百人、合計幾らと出ている。こういうのがまちまちなんです。まず予算書をお出しになるときに、これをぜひ一定の方式で出していただきたいと思う。やはりわれわれが見てわかりやすくしていただきたいということと、それから、これはあとでもうちょっと聞きますが、たとえば防衛庁の予算にしても、一つ何々百三十九億円、一つ何々四十八億円というような出し方では、ここの予算の審議に私はならないと思う。この点は大蔵大臣に十分一つ考えおきをいただきたい、こう思うのです。賠償の問題については、これは田中委員が、大蔵省からお出しいただいた資料に基づいて、総括質問でさらにお尋ねいたすことになろうと思います。  次、主計局長お尋ねしておきたいのです。防衛庁に聞いた方がよかったかもしれませんけれども、防衛庁は、ロッキード問題ですっかりこまかな数字の計算ばかりやっておるものですから……。そこでお尋ねしたいのは、防衛庁の経費のうち、まず昭和三十二年度から昭和三十三年度への繰越額は幾らなのか、この点一つお聞きをいたしたいと思います。
  281. 石原周夫

    ○石原政府委員 九十四億七千二百万円であります。
  282. 横路節雄

    ○横路分科員 次、同じく防衛庁の予算ですが、昭和三十二年度の不用額、昭和三十三年度の不用額、これは幾らになっているのか、この点、お尋ねしたいと思います。
  283. 石原周夫

    ○石原政府委員 昭和三十二年度の不用額は三十二億一千百万円、三十二年度が五億六千三百万円であります。
  284. 横路節雄

    ○横路分科員 次、これは一々計算をするといいのですけれども、こういう機会ですから、お聞きしておきたいと思います。同じく防衛庁予算で、翌年度への繰越額、すでにきまっていることですからお尋ねしたいのですが、三十一年度から三十二年度への繰り越し、三十二年度から三十三年度への繰り越しは幾らであったのか、その点、一つお尋ねしたいと思います。
  285. 石原周夫

    ○石原政府委員 三十一年度から二年度に繰り越しました額は二百三十六億六千百万円、三十二年度から三十三年度への額は、先ほど申し上げました九十四億七千二百万円であります。
  286. 横路節雄

    ○横路分科員 三十三年度から三十四年度への繰り越しはどうなっていますか。
  287. 石原周夫

    ○石原政府委員 七十五億三千四百万円であります。
  288. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、防衛庁予算以外は、大蔵省は、繰り越しというのはなかなかやかましいわけです。これも私、実は文教委員会に行って教科課程の研究集会の予算を聞いてみると、大蔵省からは、この予算は絶対繰り越してはならぬ、それは全部召し上げてしまう、こういうわけです。どうしてもやらなければならぬ、こういうのですが、防衛庁の予算はずいぶん翌年度に繰り越している。それは発注その他の関係もありましょうが、この点は、他の省との関係において、私は著しく違うところだと思うのですが、この点についてはどうでしょう。
  289. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、発注その他継続費が相当多いという特質からきておるわけでございます。
  290. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵省お尋ねしますが、実はきのうは防衛庁を呼んで、けさ私は外務省に行って聞いておったのです。そうしましたら、日本に対するアメリカのいわゆる対日軍事援助額について、どうもまちまちなんですね。御承知のように、この第一分科会における防衛庁の経理局長の答弁は、昭和三十四年の九月の終わりまで、第二・四半期までの金額は四千四百二十三億円になっておる。しかし、この三十五年の三月三十一日までの見込み額は、三十四年度に限ってどうですかと聞くと、三百六十九億だときのう答弁されている。その第二・四半期までの分を差っ引いて入れますと、約四千六百億くらいになるのです。正しくは四千五百八十億円くらいになるから、四千六百億円くらいになる。ところが、アメリカの議会において公表された日本に対する軍事援助額というのは、千八百億円だという。五億六百万ドルだという。ずいぶん金額が合わないので、私たちはお聞きした。そうしますと、ここで防衛庁は、いわゆる船舶貸与協定でいただいたのが五百九十億円あるという。警察予備隊当時にもらった武器その他を金額にかえれば、約千五十億円だという。そこでかりにそれを全部見たとしても、千六百四十億円くらいになるわけですね。しかし、四千六百億円と千八百億円の違いというものは二千八百億円、かりに船舶貸与協定を五百九十億円、警察予備隊当時の千五十億円を見ても、差っ引いてなお千億円ないし千二百億円違う。この点、大蔵大臣に私は明らかにしておいていただきたいと思うのは、こちらの方では四千六百億円もらったのだという、向こうは、いやそうではない、千八百億円しかやらないのだという、これはずいぶんな違いです。この問題は、きょうの第二分科会でも質問したが、はっきりしない。第一分科会で質問してもはっきりしない。この点は大蔵大臣、あしたは日曜日で大へん恐縮ですけれども一つ政府部内の統一された意見を月曜日の正午までにぜひ出していただきたい。これでは何のことかわからぬですよ、あまりにも金額が違うのですから。この点、大蔵大臣どうですか、お出しいただければ、私はその問題はあとに譲ることにいたします。
  291. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 即答いたしかねますが、資料を出すことにいたしましょう。
  292. 横路節雄

    ○横路分科員 それでは自治庁関係、どうぞ前に出ていただいて、大蔵大臣のおられるところで一つお聞きをしておきたいと思います。  この一般会計予算書の百九十四ページの自治庁のところの固定資産税特例債元利補給金ですが、本年度分の利子相当額を関係町村に交付するために必要な経費である、これは固定資産税の制限税率を二三%から二一%に下げた、そこで地方公共団体の財政に赤字を生じたというので、昭和三十五年度に限っていわゆる起債を認め、その元利償還は国がするということになった金額だと思うのです。その点が、そうなる、それでよろしゅうございますと御答弁いただきたいのと、三十五年度以降はどうなさったのか。三十五年度以降は同じような措置をなさったとも聞いておるが、それは三十五年度だけに限ったのか。三十五年度以降当分の間に限ったのか、その点一つ一緒にお答えいただきたい。
  293. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 お答え申し上げます。三十五年度の三千何百万の利子補給の関係は、三十四年度の固定資産税の制限税率引き下げに伴う減収分の特例債の利子補給の関係の分でございます。明年度以降の分につきましては、三十五年度以降は当分の間、従前と同じような起債の特例によりまして元利補給をする、こういうことに相なっております。
  294. 横路節雄

    ○横路分科員 固定資産税の制限税率を二三%から二一%に下げた、それに対して国が元利について見てくれるということは、当該市町村の財政からいって、非常にけっこうなことだと思う。ただ、起債を認めて元利償還をさらに認めるというやり方、これは大蔵大臣、どうなんですか。
  295. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうなのかとおっしゃいますが、大へん苦心を要したところであります。
  296. 横路節雄

    ○横路分科員 今大蔵大臣から大へん苦心をしたというので、私も大蔵大臣が苦心をされたであろうと思う。特に三十五年度を三十五年度以降当分としたということです。これは自治庁の方にお尋ねしますが、法律の一部改正をやるわけですか。するのかということと、もう法律案をお出しになったのか、これから出すのか、その点、ちょっとお尋ねしておきたい。
  297. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 法律改正をいたします。提出をいたしております。
  298. 横路節雄

    ○横路分科員 開発庁の方に一つお尋ねしておきたい。篠津地域の泥炭地の開発事業費は、昭和三十五年度予算はここに出ているからわかりますが、昭和三十五年度予算を除いた残はどれだけあるのか。その残については何年計画でやるのか、その点だけお尋ねしておきたい。
  299. 木村三男

    ○木村(三)政府委員 篠津の計画は、世銀借款当時は総事業費八十六億でございましたが、その後精査いたしまして、現在では総事業費百二十五億円になっております。そのうち国費が百五億円であります。そこで三十四年度までに入りました国費が四十億でございます。百五億から四十億を引きますと、六十五億という数字が出て参ります。そこで目標といたしましては、まず国営事業でありますところの排水、客土、灌漑施設などの根幹工事を三十六年までにやり遂げたい。そうしますと、本年が、篠津の関係で工事事務費を入れて十三億五千万入っております。それで三十六年までに、今のように根幹工事をやりますには全額八十億かかると思いますので、それを引きますと四十億、四十億のうち、ただいま申しました十三億五千万を引きますと二十六億五千万、これが予算化されますならば、予定通りに根幹工事の方は三十六年に完成して、三十七年以降付帯工事が道営の工事に移るわけでございますが、本年度といたしましては、一応予算のいろいろな関係もございまして、十三億五千万で引き続き事業をやりまして、あと三十七年度につきましては、やはりこの目標通りに、三十六年で根幹工事を終わり、それから残余の付帯的な工事につきましては、最末端が全部完成いたしますのが四十一年くらいの計画になっております。百二十五億の事業費のうち、地方負担、団体負担などありますが、その事業がすみずみまでできますのは、四十一年ということを目標に置いております。ただ、根幹工事につきましては、ただいま申し上げましたように、三十六年に篠津運河の通水をはかるというようなところを目標にして、事業を進めております。
  300. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、今のお話で、三十六年度に二十六億五千万の金を出せば根幹工事だけはできる、こういうわけですね。
  301. 木村三男

    ○木村(三)政府委員 さようでございます。
  302. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣、今お聞きのように、毎年大体十二、三億なんですが、今年は十三億五千万だが、三十六年度に二十六億五千万出す、それで根幹工事が終わる、大蔵大臣、この点はどういうようにお考えになりますか。
  303. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 開発庁の方は、そろばんが合うのです。三十六年のことは、十分歳入歳出に比べて、しかる上で処置して参ります。
  304. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣、これは非常に計画が延び延びになっておるのです。計画が延び延びになっておるということは、一方においては、受益者負担分については返していかなければならぬというのですが、しかし、実際には収穫が思うように上がってきていない。まだですね。それで、延びれば延びるほどふえてくるのです。この点は、大蔵大臣一つ寒冷地に住む農民のことをお考えになられて、来年度予算については、ぜひ増額をされるようにしてもらいたいと思う。  最後一つ、千歳の飛行場がアメリカの軍から返還になった。これは大蔵省所管になっておるのですが、どうなさるおつもりですか。
  305. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 お答えいたします。千歳の飛行場は、まだ一部分返還になっておらない場所もございます。この飛行場につきましては、防衛庁が全域を使用したいという御要望もございますが、一方におきまして、運輸省から、民間航空の飛行場として使いたい、こういう御要望もございます。両者でただいま協議中でございまして、私どもといたしましては、両者で共用をしていただくという方針で、具体的な使用方法、利用区域等をできるだけ早くきめてほしい、こういうことを言っておる次第であります。
  306. 横路節雄

    ○横路分科員 管財局長お尋ねしますが、そうすると、所管としては大蔵省所管、そして防衛庁と運輸省と両方で共用、こういうことになるのですか。その点だけはっきりしておいて下さい。
  307. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 どの程度をどちらに使うということがはっきりきまりましたら、その部分に応じまして、防衛庁と運輸省にそれぞれ所管がえをいたします。
  308. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣に、最後賠償問題について。これはベトナムの賠償問題についても、終わったことですけれども、しかし相当国民が、疑問を持っている点が多々あるわけです。しかも、賠償の支払いについて、どうも見積もりと実際とが合わないということでは、大へん国民も疑惑の目をもって見るであろう、こう思いますので、その資料については、ぜひ詳細なものを出していただきたい。それから、先ほど申し上げましたアメリカの対日軍事援助の額にしましても、それほどの大きな違いというものが一体どこから生まれてきているのか、その点も一つ明らかにして、お出しいただきたい。これで終わります。
  309. 三浦一雄

    ○三浦主査代理 田中織之進君。
  310. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 だいぶ時間も経過しておるのと、私は一日に締めくくりの質問をやるので、相当部分はそのときに持ち越すつもりでありますが、大蔵省関係で、分科会で一、二ぜひ聞いておきたい問題があるわけであります。それは、主として政府機関としての開銀と輸銀に関する問題でありますが、現在、開銀、輸銀で貸し付けておる金の総額は幾らか。本年度の新たなる貸付資金計画は資料で出ておりますが、そのうち、自己資金の部分も数字は出ておりますけれども、回収状況はどうなっているかということは、この予算を審議する上で関心を持たれる問題なので、その関係について、数字がお手元にあれば御説明をしていただきたいと思うわけです。
  311. 石野信一

    ○石野政府委員 お答えいたします。開銀が、三十三年度末で四千六百二億円であります。輸銀は、三十三年度末で六百五十九億円であります。延滞の関係は、そのうちで開銀の方は四十二億五千万円、それから内入れ猶予というのがございまして、それが百五十二億、輸銀の方は、延滞扱いになっておるものはございません。
  312. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そうすると、三十三年度末で、開銀の貸し出し残は四千六百二億六千四百二十三万ということになるわけですか。
  313. 石野信一

    ○石野政府委員 はい。
  314. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そのうちで、四十二億が延滞、支払い猶予をいたしておるのが百五十二億。この四十二億は、回収の見込みがあるのでしょうか。それから百五十二億の支払い猶予を認めたのは、これは大蔵大臣の権限事項になっていると思うのですけれども、大体いつごろまで猶予を認めておることになるのでしょうか。
  315. 石野信一

    ○石野政府委員 四十二億の方も延滞扱いになっておりますけれども、回収の見込みを持っておるものでございます。それから内入れ猶予の方は、これは海運関係で、海運は好況、不況の影響を特に受けやすいという関係で、こういう制度をやっております。これはそういう意味において、今は待っておりますけれども、好況に伴って返ってくる、こういう前提であります。
  316. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そうしますと、三十五年度の財政投融資計画の中にある開銀の自己資金二百三十億の中には、この延滞あるいは内入れ猶予というような関係のものが、含まれているのですか、いないのですか。
  317. 石野信一

    ○石野政府委員 それは入っておりません。
  318. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この延滞の部分については、本年度中にこれを支払わせる、返還させる見込みがありましょうか。
  319. 石野信一

    ○石野政府委員 本年度中にこれを返させるということはできない、そういう見込みはないと思います。
  320. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それでは、その点については延滞関係の四十二億と内入れ猶予の百五十二億の明細を、これは私の質問が一日の朝ですが、二十九日一ぱいでいいですから、資料として出していただきたいと思うのですけれども、できないでしょうか。
  321. 石野信一

    ○石野政府委員 一般的に延滞の内容とか、内入れ猶予の内容等につきましては、業務上の関係がございますので、一般的な資料としてはごかんべん願えれば、何か抽象的な形なり何なりにしていただいた方がけっこうだと思うので、今までもそういうお願いをして、そういうふうに御了承いただいていることが多いのでございますが、出し方につきましてはあとで御相談させていただくことにして、できるだけ御希望に沿うようなことにいたしたいと思います。
  322. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点は、この間、一億以上、開銀の方は五億以上の貸出先等をいただいたときの例もありますから、その例でよろしゅうございます。  そこで、開銀の関係では、三十四年の四月一日から三十五年の三月三十一日までの、これはその意味において見込みでありますけれども、貸し倒れ準備金繰り入れ損として二十五億四千六百六十二万五千円が予定されておるのでありますが、こういうようなものの内訳、これは資料として全般的に出すことはあるいは不可能かもしれませんけれども、こういうようなものも、内訳はわかっておるのでしょうね。
  323. 石野信一

    ○石野政府委員 貸し倒れ準備金は、残高に対して幾ら積ませるかということでございまして、百分の三に持っていく計算をいたしておると思いますが、その差額になります。累積額で総残高の百分の三になるように予定しておりますので、内訳というものはございません。
  324. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それは貸し出し額に対する百分の三ですか。
  325. 石野信一

    ○石野政府委員 貸し出し残高に対して百分の三になるように予定をいたしております。
  326. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、貸し倒れ準備金の合計が、やはり三十三年度末の貸借対照表で、百五十三億二千九百六十一万円あるわけでありますが、開銀の方は、この毎期の損益計算で、この点は「貸倒準備金繰入損」、こういうことでこの予算書はなっておりますね。ところが、同じ性質のものだと思うのですけれども、輸出入銀行の関係は、ただ「貸倒準備金繰入」、こういう形になっておるのですが、これは意味が違うのですか。厳密に言えば、「繰入損」として損益計算の上に出すのが通常じゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  327. 石野信一

    ○石野政府委員 それは全く同性質のものであります。言葉が損の方に繰り入れとしてありますから、「繰入損」としたわけであります。
  328. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点は、先ほど横路委員からもお話がありましたが、たとえば石炭手当等のトータルを入れて計上している中にも、役所によって、その内訳を明示しているのと、総額で入れているのとあるというような形になりますから、この点も、やはり用語はどちらが正しいのか、私も会計学上のなにはありませんけれども、開銀の方が「繰入損」としておれば、輸銀の方もやはり同じ取り扱いをさせるようにしてもらいたいと思うのであります。その点は要望だけにしておきます。  そこで次に、輸出入銀行の関係で一点だけ伺いたいのであります。輸出入銀行関係予算によりますと、本年度は、貸付金の金額も前年度よりふえる予定になっております。その点から当然貸付利息もふえますし、同時に、これは別途預金部等からの資金の受け入れをやるのでありますから、貸付金に対する借入金の利息を支払わなければならぬ関係が銀行の予算として出てきておるのでありますが、輸銀の関係で、いわゆる貸付金の利息収入が、三十五年度が四十九億四千百万円で、三十四年度より七億五百五十八万円の増加になる予算が出ております。それに対する支出として、いわゆる支払い利息の関係が四十七億二千三百万、これは前年度と借入金の額も違うわけでありますから、金額は違うわけでありますが、前年度の三十五億六千七百万円よりも、十一億五千六百万円の増加という形になってきておるのであります。それで輸銀の貸出利率は、開銀よりも安いのがあることは私も承知しておりますので、貸付金利と借入金の金利との差引額が銀行の収入になるわけでありますけれども、それが四十九億四千百万円から支出四十七億二千三百万円を差し引きますと、二億余りしか収入にならないということは理解できるのでありますけれども、私は支払い利息の四十七億二千三百万円というものが、借入金額の増加割合に比して急激にふえておるように思うのですが、何か輸銀の方は、借入金のコストが、三十五年度において特に高くなるというような事情があるのでしょうか、その点はいかがですか。
  329. 石野信一

    ○石野政府委員 その点は、別に金利が上がるというようなことはございません。ただ予定いたしております金額がふえます関係で、借入金の金額がふえる関係で利息がふえることになるわけであります。
  330. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点からいいますと、開銀の関係も、相当年度において貸付金額がふえる。従って、借入金もふえる。これは開銀と輸銀とは数字のけたが違って参りますけれども、しかし、その借入金の増加割合に比して、いわゆる支払い利息の額のふえる率というものは、私、厳密に計算しておりませんけれども、輸銀の方がはるかに高くなっているように思うのです。開銀の関係と借入金に対する支払い利息というものは同率だと思うのですが、特に輸銀の関係が、支払い利息がふえる計算になっているのは、何か利息の利率、その他の関係からきているのじゃないですか。
  331. 石野信一

    ○石野政府委員 その点は、開銀の方は、御承知のように出資金、いわゆる自己資金が非常に大きいわけであります。そういう関係で、支出合計といたしましては割とふえない。借入金がふえても、ただの部分が大きいわけですから、輸出入銀行に比べて合計としての金額はふえない、こういう関係であります。
  332. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 開銀の方は、自己資金が多いから支払い利息はかさばってこない、輸銀の方は、借入金に対するいわゆる利息を払わなければならぬ、借入金に依存している部分が大きいからだ、こういうようにおっしゃるわけですか。
  333. 石野信一

    ○石野政府委員 お尋ねの点が支出の合計という関係意味のことでありましたので、そのようにお答えしたわけでありますが、要するに、資金コストの関係で、開銀の方が資本金が大きいという関係でふえない、ただ支払い利息の方は、特に両銀行とも変更しているわけではありません。それ相応に、利息は借入金の増加とともにふえていると思います。
  334. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 私の申し上げるのは、この関係の十一億という差額は、やはり貸付金利と借入金の金利の差額が出てきておると思うのですが、そういう理解は間違いですか。
  335. 石野信一

    ○石野政府委員 そういうことでございますが、ただ、三十三年度末の金額に対してずっと利息がかかります。それから、年度の中間以降、だんだん平残がふえて参ります。その関係で両年度において差がございますので、必ずしも一致しない、こういうことであります。
  336. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 どうも私は頭が悪いのか、その点が理解できないのですけれども政府機関の予算の一番終わりに近い二百二十九ページに、輸出入銀行の三十五年度の「収入支出予定額科目別表」というのがありますが、それの下から三番目に、やはり借入金利息で、私が申し上げたように、十一億一千四百七十二万九千円というものが、三十四年度より三十五年度にふえる予定になっておるのであります。どうもただいまの説明では理解できないのですが、やはり三十四年度より貸付金がこれだけふえて、借入金がこれだけふえるから、金利がこれだけの数字増加になる、こういうふうに具体的にお答え願えませんか。
  337. 石野信一

    ○石野政府委員 ただいまの御指摘数字は、当初予算関係の相違でございますが、損益計算の方の数字をごらんいただきますと、もっと開いておるのでございます。これは、三十三年度末が二百八十億六千七百万円ございまして、年度中十七億円しかふえておらないわけです。それから三十四年度末、が五百億円、三十四年度中に二百十億円ふえるわけでございます。そういう関係で平残がだんだんふえる部分が多いのと、それから年度末の残高が多いのと、そういう関係で、非常にふえる数字が出るわけでございます。今の十一億の数字は、当初の計画で計算をいたしましたものでございます。それから実際はもっと減っておりますから、その差が大きくなっておるわけでございますが、考え方としては同じでございます。
  338. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 どうもその点が納得いかないのでありますけれども、なお次の機会までに、私ももっと、今御説明になったことに基づいて計算をしてみます。  それから、輸銀の方の貸し倒れ準備金の繰り入れも、これは率は同じ、貸付残高の百分の三でございますか、そのように理解していいですか。
  339. 石野信一

    ○石野政府委員 三十五年度で百分の三になるような計算を考えております。
  340. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、三十四年度の損益計算書によりますと、三十四年度の輸銀の貸し倒れ準備金の繰り入れが八億五千三百六万円、三十三年度の六億五千九百八十七万円よりもうんとふえていますね。ところが、三十五年度は、予定損益計算書でありますけれども、貸し倒れ準備金の繰り入れが二億一千三百八十一万円にしか予定されていないのでありますが、三十五年度末は、これは期末の貸付残が減る見込みなのですか。それでなければ、こういう数字にはならないと思うのですが、その点はいかがですか。
  341. 石野信一

    ○石野政府委員 貸し倒れ準備金は、必ず百分の三ということではございませんで、そのときの資金コスト等との関係もございまして、大体百分の三ということにしておりますけれども年度によりましてはそれ以上積ませる場合もあるし、それ以下にしか積めないというふうになる場合もあるわけでございまして、従って、出資の額を幾らにするかというのは、貸し倒れ準備金をどれくらいにするかということを考えながらやるわけでございますが、三十五年度は、累積で百分の三になることを予定しておるわけであります。
  342. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、三十三年度の六億五千九百八十七万円というのは、これは貸付残高の百分の幾つに当たるのですか。それから、私が今申し上げました三十四年度の八億五千三百六万四千円というのが、やはりこの下の予定貸借対照表から見ると、九百十四億二千三百万円の貸付金の残高になっておりますけれども、比率は、今おっしゃられるように毎回違うのですか。毎年度、そのときの資金コストによって変えていくことになっておるということは、それはまた法律上根拠のあることなんですか。
  343. 石野信一

    ○石野政府委員 貸し倒れ準備金累積額で、三十四年度予算で期末残高に対し百分の三・二、三十三年度のときは百分の四・二まで積めるような計算になっております。それから三十二年度が百分の三・三というようなふうにやっておりますが、累積額で大体百分の三をねらって、そのときの出資の残高によって、年度により差がつくわけでございます。
  344. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういうように、そのときの資金のコスト等の関係で貸し倒れ準備金を積ませる率というものをきめる権限は、銀行自体にあるのですか、大蔵大臣がきめるのですか、法律上どうなっておりますか。
  345. 石野信一

    ○石野政府委員 政令に基づいて大蔵大臣が定めることになっております。実際問題としては、その輸出入銀行に対する出資を幾らにするかというような関係は、どのくらい積めるかという見込みとの関係になりますので、それを見込んで、出資を幾らにするかということがきまるわけであります。
  346. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 資金コストとの関係で、政令で定めるところによって大蔵大臣がきめるということでありますけれども、何か、やはり一貫した方針を立てた方がよいのじゃないかと思います。私もその点はもう少し研究してみます。  そこで、もう一点お伺いをいたしたいのですが、この輸出入銀行の関係にあります東南アジア開発協力基金勘定が、今年の九月からでありますか、海外経済協力基金に振りかえになるということが予算書に出ておるのであります。実は昨日も第二分科会で、外務当局にもこれは関係がありますから伺ったのでありますけれども、内容は明確ではないのでありますが、先年五十億ここに繰り入れておったものを、今度振りかえて、いよいよ九月から経済開発協力基金として具体的に動き出すわけです。私はその点から見て、従来これをたな上げした形で、金利だけ計上してある東南アジア開発協力基金勘定、輸銀の基金勘定のようなわけにはいかないと思います。これは九月からにしろ、この予算年度内において、五十億を、従来のように金利を受け入れて銀行が管理していくということではなしに、貸付あるいは出資等の関係でこれが具体的に動いていくのでありますから、本年度予算案といたしましては、少なくともこの海外経済協力基金の具体的に動き出す構想というものが、すでにここにきめられておらなければならぬ。輸銀に特別勘定を設けるときに国会の承認を得ておるのだから、それはもう必要がないのだというわけにはいかないと思うのでありますが、これらの詳細な構想等を今度予算に明確にしなかった理由はどこにあるのですか。これは大蔵大臣からお答えを願いたいと思います。
  347. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 海外経済協力基金の構想、最近ようやく固まりまして、法律案を提案して御審議をいただくことにいたしております。その考え方といたしましては、独立の法人格を有する海外経済協力基金を設ける。また、基金に関する主要な点は次の通りでありますが、取り扱い対象地域は主として東南アジアとする、運用については、通常の輸出入銀行の金融べースに乗らないものを扱うこととするが経済性を無視した貸付にならないよう運用方針を定める、役員は、総裁一名、理事二名、うち一名は輸出入銀行理事の兼任、監事一名とし、職員は、事務局長一名のほか極力簡素なものとする、窓口その他の事務は輸出入銀行に委託する、基金の管理事務及び基金の運用に関する政府と基金との連絡上の庶務的事務は、経済企画庁においてこれを行なう、基金の監督大臣企画庁長官とし、重要事項については、企画庁長官は、その監督にあたって外務、大蔵、通産の各大臣と相談して行なう、というような基本的な考え方に立ちまして、ただいま法律案の御審議をお願いする段階になっております。
  348. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、その海外経済協力基金というのは、いわゆる政府機関として、その予算は毎年国会の審議を経るようなことになるわけですか。その点はいかがですか。
  349. 石原周夫

    ○石原政府委員 輸出入銀行にありまする間は、ごらんになりまするように輸銀の中の勘定に相なりまするので、輸銀の勘定の一部として入れるわけであります。法律によりまして、新しい法人基金ができますると、それは収入支出関係、あるいは貸借対照表の関係を、予算上に計上することには相ならないわけであります。
  350. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 法律に基づいて新しく特殊法人としてできた場合には、予算あるいは損益計算というようなものを、国の予算と一緒に出すことにはならないという法律上の根拠はどこにありますか。これは全額政府出資で、今大蔵大臣答弁にありましたように、輸銀のべース等に乗らない関係のものをやるということになれば、基金として出れば、もちろん東南アジアの低開発地域に経済的に協力するという使命は果たしまするけれども、これは国民の血税をその方面へ振り向けるものなんです。そういうものは、もちろん法律に基づいて、監督官庁としての大蔵省等の監査はやられると思うのでありますけれども、今言われるように、理事のうち一人は輸銀の理事が兼任する。輸銀はやはり政府機関だとして、国の予算の審議を経るということになれば、私は、これはやはり政府機関として、この基金の収支の予算については毎年国会の承認を経るようにしなければならない性質のものだと思うのですが、その点で、国会予算審議とは関係がないという、今の主計局長答弁では納得ができないのです。そういうようにしていいという根拠は、どこに求めようとするのですか。
  351. 石原周夫

    ○石原政府委員 この基金につきましては、法律をもちましてどのような運用をいたすかということの御審議はいただくわけでありますが、政府が全額出資をいたしておるものにつきまして、必ずしも政府関係機関予算において御議決を仰いでいるわけではないわけでございます。たとえば公団でありまするとか、あるいは先般、いわゆるたな上げ資金の一部をもって出資をいたしました基金の関係でありますとか、そういうものにつきましては、従来からもいわゆる収入支出なり、あるいは貸借対照表というような形において、政府関係機関予算に載せるという扱いにはいたしていないわけであります。今回もその扱いに従った次第であります。
  352. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 くどいようでありますけれども、これは五十億の、現在まで輸銀に特別勘定として、たな上げしていたものだけで済むわけのものではないと思うのです。私は、これは将来も強化していく傾向になければならぬと思うのです。そういう点から見て、大蔵省の方では、これを政府機関ということではなしに、特殊法人として、法律で大蔵省の監督権限だけ確保しておけばいいという考え方ではなしに、予算、決算については当然国会の承認を経ることにすべきだ、政府機関として入れるべきだと思うのですが、その点について、どうもほかの公団、あるいはこの前の経済基盤のためのたな上げ資金等の関係でできておる基金等と同一に扱うことについては、私はちょっと同列に扱う根拠は薄いと思う。ただし、対外的な関係で、あまり国家機関としての性格が明確では相手方に対して困る、そういう関係があれば別でありまするけれども、その点については十分議論があると思うのですが、これは大蔵省だけの考え方なんですか、それとも、この点については、もちろん政党内閣でありまするけれども——私は、これは今のところ、五十億の、すでに輸銀に特別勘定として置いておった問題ではありまするけれども、今後、これが増額される傾向にあるということになれば重大な問題だと思うのですが、その点についての大蔵大臣の所信を伺います。
  353. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私どもは、どうしたらいいか、いろいろ研究いたしました結果、ただいま主計局長がお答えしたような方針で、ただいま法律案の御審議をいただいております。従いまして、もちろん十分御審議はいただきたいと思いまするが、この種の基金の性格から申しますれば、ただいま主計局長が申しましたように、その点はまかせていただく方が、仕事はしよいのじゃないかというふうに実は考えております。
  354. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この点については、なお私、問題があると思いまするので、私らの方の党においても検討を加えて、一日に重ねて大蔵大臣、総理等の所見を伺う機会がありますから、そのときに重ねて伺うことにいたします。  なおほかにも質問いたしたい問題がたくさんありますが、ずいぶん時間が経過しておりますので、これで私の質疑は終わります。
  355. 三浦一雄

    ○三浦主査代理 これにて本分科会所管予算各案に対する質疑は全部終了いたしました。      ————◇—————
  356. 三浦一雄

    ○三浦主査代理 この際お諮りいたします。本分科会所管予算各案についての討論、採決は、予算委員会に譲るべきものと決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  357. 三浦一雄

    ○三浦主査代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。分科員各位の御協力によりまして、円満に議事を進行することができましたことを深く感謝いたしますとともに、厚くお礼を申し上げます。  これにて第一分科会を散会いたします。     午後七時十八分散会