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1960-02-23 第34回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十三日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君       青木  正君    井出一太郎君       江崎 真澄君    加藤 精三君       久野 忠治君    倉石 忠雄君       小坂善太郎君    田中伊三次君       綱島 正興君    橋本 龍伍君       古井 喜實君    保利  茂君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       山口六郎次君    山崎  巖君     早稻田柳右エ門君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       北山 愛郎君    河野  密君       島上善五郎君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       横路 節雄君    鈴木  一君       廣瀬 勝邦君    門司  亮君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         農 林 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         人事院総裁   淺井  清君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         総理府総務長官 福田 篤泰君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十三日  委員木原津與志君滝井義高君、鈴木一君及び  廣瀬勝邦辞任につき、その補欠として多賀谷  真稔君、小松幹君、大貫大八君及び松尾トシ子  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  木原津與志君議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算  昭和三十五年度特別会計予算  昭和三十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。質疑を続行いたします。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 最初に、外務大臣にちょっとお聞きしておきたいのですが、これは事実かどうかということははっきりしませんが、ここに「新安保早わかり」という「日本週報」の冊子があります。その冊子の劈頭に、こういうことが書いてあります。羽田へお帰りになっての言葉の中に「こんどの交渉ほどその過程において国会論議の対象となったものはないでしょう。その論議を通じて、ずいぶん意見を聞きましたし、また逆にそれが交渉を困難ならしめたことも事実です。」こういうことを言われております。  それで私の聞きたいのは、交渉を困難ならしめたというのはいろいろな意見だ、こういうことになろうかと思いますが、どういうものが一体交渉を困難にしたものであったかということをこの機会に明らかにしておいていただきたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何と申しましても、一年四カ月にわたります交渉でございます。従いまして、その間いろいろな御意見も承りましたし、またそういう国会等論議がわれわれの交渉の、バックをしていただいたこともむろんでありまして、そういう意味においては力強く考えておりますけれども、しかし、われわれとしていろいろな苦労もあったということを申しておるのでございます。
  5. 門司亮

    門司委員 これは普通の言葉として受け取れば受け取れないこともないわけです。しかし問題は大臣も言われておりますように、このくらい国内でやかましく議論されたのは大体少なかろうと思います。従って、その意見の中には野党側意見もありましたし、またあなた方政府与党内部にも政府意見と必ずしも一致した意見はなかったと私は思う。そういう意見ではなかったかと思うのですが、ただ苦労であったという言葉が、こういうことになったのだということでなくて、どういうものがほんとう苦労になったのだということをお話し願えませんか。そうしませんと、あと条約審議する場合の私どもの心がまえにも関係があるように考えられるのです。その点どうでしょう、もう少し具体的にお話し願えませんか。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように長い交渉でございましたから、いろいろ各方面で意見があったこともございます。また私自身としてできるだけこの条約を十分なものにして進めていく過程におきましては、私自身のやり方についてもいろいろな批評もございましたし、そういう意味におきまして私としてはやはり一年四カ月の過程でございますから、相当な苦労があったということを申しておるわけでありまして、特別に何か特殊の意見があって、そのために非常な困難をしたという意味で申しているわけではございません。
  7. 門司亮

    門司委員 そういう通り一ぺんでお逃げになるようですけれども、やはり、この意見は何もあなただけにいろいろな意見が伝えられたわけではないので、そうした国内の与野党の意見というものが相手国にかなり伝えられて、それからあなたがお困りになった、私はこう察しているのです。それ以外に私はないと思う。従って、条約交渉過程の中において、たとえば具体的に今一つ、二つ言いますと、期間が長いとか、あるいは拒否権がないというような問題について与党内部にもいろいろ意見があったのです。そういうものがやはりアメリカ側を刺激して、かなりめんどうな問題になったのじゃないですか。私はどうもそういうふうな気がするのです。そのほかいろいろあったと思いますが、そのほかになかったですか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 門司さんと同じ選挙区ですから、決して形式的な御答弁を申し上げているわけではないのでありまして、交渉過程におきまして、いろいろな意味において御意見がありまして、それがたとえば条約の期限の問題等について、長い、あるいは短いという両方の意見があったわけです。そういうものはむろん交渉相手としてのアメリカにも反映しておったと思います。それはないとは決して申し上げません。しかし、大局を通じてずっと見て参りまして、やはりいろいろ国内的に御議論がありましたことは、なるほど日本にもそういう議論があるんだ、従ってアメリカとしても、そういう観点のいろいろな議論があるならば、相当考えなければならぬじゃないかというような意味において、私は国内的ないろいろな御議論が、この条約交渉をそう妨げたとは考えておりません。ただ、私自身交渉をやっておりまして、その意味においては、初めてこれだけの大きな交渉をやったことでございまして、一昨年の警職法以来のいろいろな状態もございますし、従って相当に苦労があったということを実は感慨深く申したわけでありまして、正直に申してそういうことでございます。
  9. 門司亮

    門司委員 どうも私はそういう答弁だけでは納得ができないのですが、いずれまた機会もあろうかと思いますから、なおよく聞きただしたいと思います。  この際、大臣に聞いておきたいと思いますことは、今修正権の問題がいろいろ議論になっておりますが、私はこれに触れようとは考えておりません。これはごく普通の概念であって、だれでもわかっておることだと思います。条約国内法とはどういう関連性を持っておりますか、この点もしおわかりでしたら一つ……。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一般的な国際法規と申しますか、国際法規というものは、慣習法がおもだと思います。そういうものはやはり国内法に優先しておると思う。しかし、二国間で締結いたしますような場合には、憲法範囲内で締結していきまして、国内法に抵触しないように、従って、それによって国内法を直すという場合もございましょうし、抵触しないようにしていく、こういうことであります。
  11. 門司亮

    門司委員 抵触しないように、あるいは直すように言われておりますが、条約国内に持ち込まれますと、われわれの概念では国内法と同じような効果、同じような作用をして、ある程度国民権利と自由というものを束縛するであろうということは当然いえると思う。そうすると、条約についても国会審議はやはり国内法と同じような概念でこれを取り扱うことが、私は正しいのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話しのように、条約締結にあたりましては、むろん国内法と抵触しないように、またそうした取りきめが国家のために必要でありますれば、国内法のその部分を訂正するということによりまして、それに対応していく、こういうことで進めて参ることは当然だと思います。しかし国際的な取りきめでございますから、その限りにおきましては、そういう取りきめをしたならば、むろんそれは憲法範囲内でやらなければならぬことでありますが、いろいろな取り扱いの事項につきましては、訂正する場合があることは当然でございます。
  13. 門司亮

    門司委員 はっきりしておきたいのですが、私はさっき申し上げましたように、国内法と同じような効果、同じような作用をするということは当然だと思うのです。従って国会審議をいたします場合には、やはり国内法と同じような概念のもとにこれを取り扱いませんと、条約がもし法律に優先するような場所がかりにあるといたしますと、これは非常に大きな問題です。国会は少なくとも立法権を持っておる。行政権をゆだねた政府行政権範囲において締結してきた条約が、法律に優先するような形が出てきたら、これは大へんなことです。全く国会の存在というものがなくなるような形がその部面には現われてくる。従ってこの関係は非常に大事な関係でありますから、もう少し詳しく一つ話してくれませんか。私が聞いておりますのは、条約国内法との地位を一体どういうふうにお考えになっておるかということです。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げた通りでございますが、なお詳しく条約局長から御説明いたさせます。
  15. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 補足してお答え申し上げます。ただいまの御指摘の点でございますが、やはり御承知のように一般国際法個別国際法という観念がございまして、条約なんかは個別な国際法だと考えられております。そこで憲法の条章によりますれば、一般国際法、これはやはり憲法に優先するものである。しかし条約のような、いわば個別国際法考えられるものは、われわれ政府におきましても、締結のときは国内法憲法に矛盾しないように、十分注意して締結は行なわれるし、国会においてもその点で十分審議が行なわれる。従いまして、これが矛盾しないように締結が行なわれるということでございます。ただその国内上の取り扱いの問題でございますが、やはり条約と申しますのは国内法とは性質が異なっておりますから、その点におきまして、国内法と全く同じように取り扱うというわけにはいかないかと考えております。これは御承知通り条約締結します場合には、相手国交渉いたす問題でございますので、相手国との交渉及びその交渉が妥結するかどうかということにかかっておるわけでございまして、従いまして国内法と同じように取り扱うというわけにはいかない。そこにはやはり性質上おのずから相違があるのではないか、こういうふうに考えております。また法律の点でございますが、条約締結いたします場合に、これは一般論でございますが、われわれとして一般的には、条約締結しました後でも国内法律を必要とする場合には、やはり条約に適合した法律を制定するというふうに行なっている次第でございます。
  16. 門司亮

    門司委員 実は今のお話通りだと思います。条約は一面において日本国内法と同じような作用をする、一面においては、そのことのために国内法を直さなければならぬようなことになるのであります。従って国会権限行政府権限というものがそこで交差する面が出て参ります。今の答弁ほんとう通り一ぺんの、それだけの話であります。私の聞いておりますのは、そういうことがありますから、当然これを概念として、国内法と同じような概念で取り扱うことが正しいんじゃないか、こういうことであります。だからその点はどうなんですか。私は国内法と同じような概念で取り扱わないと、これは行政権が優先して、そうして行政権締結してきたものが、国会審議したかつての法律をさらに変えなければならない、あるいは変えなくても、それがある程度、さっき申し上げましたような国民権利あるいは自由を束縛する、こういう作用をいたします。その概念はどうなんですか。
  17. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、条約締結いたします場合には、憲法はもちろん、現在国内法ではどういう国内法があるかということを十分にわれわれ考慮いたしました上で外交交渉を行ない、その条約締結するわけであります。従いましてその効果その他の点につきましては、たびたび同じことを申し上げるようでありますが、条約相手国との交渉の結果でございますので、やはり国内法と全く同一に扱うわけにはいかない。性質上はやはり条約条約としての特質があるものと考えております。従いましてすべての点において全く国内法と同一視することはできないと考えております。
  18. 門司亮

    門司委員 相手国との交渉だとおっしゃるけれども、交渉が妥結して締結されておるわけではないのです。これから締結されるのですね。それは政府権限において政府を代表して向こうに行かれて、そうして条約草案——と言う方が私はこの段階ではよいと思います。批准がしてありませんから、これを拒否するかどっちにするかわからないのです。従ってそうコンクリートされたものではないと私は思います。しかしそれ以上の議論はきょうここでいたしません。  次にもう一つ聞いておきたいと思いますのは、そうだといたしますと、その条約に基づいて政府国内法を直しますね。今度も幾つかの法律が用意されておるはずです。法律に関して国会がもしこれを修正する、あるいはこれを否決するというような場合には、条約との関係は一体どうなりますか。
  19. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 今の点はやはり条約国内法との関係でございますが、われわれといたしましても条約の結果、国内法が必要といたしましても、条約で認められた範囲内における法律というふうな場合もございますし、そういうふうに矛盾がしないような関係におきまして、法律条約もそういう立場で考えまして、条約を結ぶわけでございます。従いましてその条約を結んだあと立法と申しますものは、条約範囲内で行なわれる場合もございます。従いまして、その法律否決になったとかそういう場合よりも、その内部範囲内の問題で特に国内法令考えられておる、こういうふうに考えております。
  20. 門司亮

    門司委員 それは行政府のものの考え方で、国民を代表する立法府が、こういう法律をこしらえるということは迷惑だと思って否決する場合もあり得る。また現実にそれをやらなければならないと考えております。そうするとその条約効果というものはどうなりますか。もし条約があるからといって押しつけられてくると、結局行政権立法権を侵すことになりはしませんか。その辺の観点を一体外務大臣はどうお考えになりますか。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げておりますように、国内法実施過程でいろいろ修正したりあるいは新しく作ったり、そういうことをしなければならぬ場合があると思います。そういう場合でも、むろんわれわれはこの条約実施にあたって、従来の国内の全体の法規その他をも考えながら締結しておりますので、それは抵触しないものというふうに考えております。従って条約に関連する国内法扱い方によってどういうふうに効力が出てくるかこないかという問題は、その実際の問題として考えてみなければならぬことでありまして、にわかにそれを申し上げるわけにはいかないと思います。
  22. 門司亮

    門司委員 実際の問題としてにわかに答えられないというお話ですが、実際問題としてあるでしょう。実際問題としてある一つの例は、例の行政協定の十八条を見てごらんなさい。現行の行政協定に基づけば、日本人に与えた損害は、すべて一応調達庁が中間に立ってアメリカ側交渉するようになっている。ところが今度の十八条では、海の方の小さな舟艇であるとか、あるいは沿岸の漁業に対する損害だとかいうようなものも除かれているでしょう。そういう一つの大きな穴があいているでしょう。だからこれは裏から考えると、これは足りないからこっちの法律で補わなければならぬということを何か農林大臣が閣議で発言されたと聞いておりますが、そういう条約にないものを国会できめて、それとの関連性がどうなるかということについて私も多少の疑問を実は持っております。条約にないものを国内法だけできめて、条約の中に織り込んだと同じような効果を持つかどうかということについても、私は多少の疑問を持っております。そのことを今ここで議論しようとは考えておりませんが、それを逆に考えますと、その逆のことが私はあり得ると思う。そこにやはり問題がどうしても残されるというふうに考えるわけです。従って条約を今のお話のように、政府のものの考え方のように考えておれば、もう条約ができてしまえば、国内法が整わなくても、条約を発動して、国民の自由と権利を束縛する、また条約に脱落しているところは、日本国民はいかんともしがたいというようなことになれば大へんなのです。だから私は最初から聞いておりますように、国内法と同じような概念でやはり条約を取り扱うべきである。そうしませんと、そういういろいろな出過ぎたところ、あるいは足らないところを補うことができないんじゃないでかす。私はそう考えるのです。その点はもう一度大臣からお答えを願っておきたいと思います。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん条約締結いたしまして、国内関係のありますものにつきましては、お話のように国内法を制定すると同じような気持で条約交渉をやらなければならぬことは当然のことでございまして、われわれとしてはそういう態度で今日までもやってきておるわけでございます。むろん条約交渉後にそれを実施する段階で、いろいろ国内法を整備して参らなければならぬことも多々ございます。むろん条約あるいは法律だけではなくて、政令等でも補わなければならぬところがあります。そこいらのところは万全を期して参る必要があることはむろんでございます。そういう点についてはできるだけ注意をしながら、われわれもやってきたつもりでございます。
  24. 門司亮

    門司委員 もう一点だけ念を押しておきたいと思います。  今のお話だとちっともわからぬのです、私が聞いておっても。おそらくお答えになっておる大臣もおわかりになっておるかどうかということは疑わしいと思うのです。問題になりますのは、さっきから言っておりますように、付随した国内法をどうしてもこしらえなければならない。もしその国内法国会否決をされ、あるいは修正をされた場合に、条約だけが生きているということになります。そうすると生きている条約だけが法律と同じような効果を持って、何度も申し上げておりますように国民作用することは大体おわかりだと思います。そうだといたしますと、やはり法律を取り扱う概念と同じ考え方条約も取り扱わぬと、これはえらい問題をこしらえると思う。その関連性はどうなりますか。もしも関連法規国会否決したという場合には、その関連法規はなくても条約がかりに生きているといたしますと、その関連法規に定められなければならなかった条項については、やはり同じように作用するのでしょうか。そうすると法律はなくても条約が生きておればやれるということになると、これは全く行政権立法権を侵すものである。今の日本憲法の建前からいえば非常に大きな問題にならざるを得ない。だから率直に聞いておきますが、関連法規その他が出て、これが修正をされ、あるいは否決をされるといった場合に、締結された条約はやはりそういう法律はなくても、あるものというような形で作用するかどうか、これはごくしろうとの議論でありますが……。
  25. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの問題でございますが、これは法律技術的にはいろいろそういう問題があるいはあるかもしれません。しかしわれわれといたしましては、ある条約締結のためにその承認をお願いするために国会に提出するわけでございます。従いましてその承認内容は、その条約案内容でございます。そのときに承認をする場合に、そういう一切の問題を御考慮願った上で御承認になるものと考えております。従いましてその実施部面においても、その条約実施できないようないろいろな法規ができるというふうなことは考えておりません。
  26. 門司亮

    門司委員 どうもその辺がわからぬのです。そういたしますと、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。関連法規その他が修正され、あるいは否決された場合は、条約条約として締結はできなくなるのだというふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。
  27. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 条約条約といたしましてそういうことを御考慮の上に御承認を願うわけでございますから、御承認願った以上は、正規の手続で最終まで締結をいたすわけでございます。
  28. 門司亮

    門司委員 締結を願うといったところで、関連法規が出てきた場合には、国内法規国会修正権があるとかないとかいう余地はないのです。それすらあなた方の方では否決することもできなければ修正することもできないというような考え方ですか。私の聞いておるのは、そういう関連法規国会権限否決されたり修正された場合は、一体条約はどうなるかということなのです。その場合批准ができるのかできないかということなのです。
  29. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そういう面を考えまして、私はそういうことは起こらないようにするものだと思いますが、法律技術的にそういう問題が起こりますれば、それは政治責任の問題ではないかと思います。たとえばある条約ができ上がりまして、でき上がった後にその施行の細則の国内法が必要だとする場合に、その国内法否決となったならば、条約は、条約として有効でございますが、それが実施できないというふうなことは、あるいは技術的には起こるかもしれません。そうしますと、その問題は、条約は有効でございますが、国家政治責任、そういう問題が起こってくると思います。
  30. 門司亮

    門司委員 外務大臣に聞いておきますが、そういう関連法規がかりに今度の国会否決され、修正されても、政府はこの条約をやはり批准するお考えですか。形の上では国会関連法規を完全に承認いたしません。私の考え方では承認しない形が出てくると思うのです、今の御答弁のようなことでは。関連法規国会承認しない、これを否決する、あるいはこれを修正する、これは国会権限なんです。そうした場合でも条約が生きているということは言えないはずでしょう。そうした場合に条約が生きていると言ったところで、今調印してきただけであって、批准しておりません、批准前なんですから、それでもおかまいなしに条約批准はできるんだということ、それからもう一つ、あなた方の考え方の中には、何でもかでも出した関連法規国会がのまなければならないというようなお考えがもしあるとすれば、これはとんでもない間違いだと思います。
  31. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約が否認されれば別ですけれども、条約そのものが承認されるということであれば、その条約は生きております。ただそれを実施する国内法が、適当なものが政府から提出されてないあるいは修正される、その範囲内においてその条約実施ができますれば、それは条約は生きておりますから、当然実施されていくと思います。しかし条約実施されないような非常に大きな修正が起こってくれば、今申しましたように条約は生きておりますけれども、やはりこれは政治責任として残っていくということだと思います。
  32. 門司亮

    門司委員 私はもう少し突っ込んで聞きたいのですけれども、時間がかなり制約されておりますから、長くこの問題をつくわけに参りませんが、いずれこの次の機会があればよく聞いておきたいと思うのです。私どもの考え方では、条約承認を求められるといっておりますが、やはり形の上では付属した法律すべてが完了しなければ、これを認めたものというわけには参らぬと思うのです。あなた方の方はそれを別々にお考えになっておるから、国会否決しようと修正しようと条約承認さえすればいいのだというようなお考えでは、非常に国民が、さっきから申し上げておりますように迷惑をするということなんです。その点だけはあとに残しておきます。  次に、私は、大蔵大臣に一応聞いておきたいと思いますことは、今度の予算で大蔵大臣の説明書を見てみますと、地方財政は非常に豊かになったようなことが書かれておって、そうして当然配付される七百億の減税に伴う分の百二十二億を補てんすべきものを三十億ばかり補てんして、それで何か鬼の首でもとったようなことが書いてありますが、一体大蔵大臣は地方財政というものをどうお考えになっておりますか。今までで十分だとお考えになっておりますか。
  33. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今の地方財政で十分だと考えるか不十分だと考えるかということでは、直接のお答えにはならないかわかりませんが、最近の地方財政そのものは、国、地方を通じての財政の健全化、これは順次その効果を示して参りまして、全体といたしましては行政水準等を高めるについて、ただいまよほど改善されてきたと思います。ことに三十四年、三十五年の歳入状況などは、私ども考えますのに、国からの交付税もふえますが、地方税の増収は相当期待できるのではないか、こういう点が在来の努力と相待ちまして、今後とも地方財政は健全化の方向をたどり、なおまた行政水準等の向上も期待できるのじゃないか、かように考えております。
  34. 門司亮

    門司委員 大蔵大臣はそういう今のような御答弁ですが、ここで問題になりますのは、今大臣お話しになりました、行政水準なんですが、日本の行政水準というのは一体どの辺を大臣はお考えになっておりますか。どういう姿であればよろしいかということです。そのアウトラインがもしおわかりでしたら一つお話を願っておきたいと思います。
  35. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 この点はなかなかそう簡単には表現できないだろうと思います。いろいろ行政水準のあり方は、生活環境なりあるいは物価なりあるいは通貨なり各面から所得とあわせて、そうしてやはり適正な規模というものを考えていかなければならない。今の状態がいいとか申すわけではもちろんございませんが、さらに地方の負担も軽減し、もっと事業も拡大され、いわゆる生活向上がはかられるようにしなければなりませんけれども、どの程度がいいかということはなかなか申し上げかねることだと思います。
  36. 門司亮

    門司委員 今聞けばどの程度がいいか申し上げかねると言っておいて、そうして行政水準は上がっている、こう言うのです。一体地方自治体の行なう行政水準のあるべき姿、たとえば教育にいたしましても、環境衛生にいたしましても、あるいは道路や橋梁にいたしましても、一体あるべき姿というものはどの程度のものを国はお考えになっているか、この点を一つ私は聞いておきたい。国の方はいろいろ計画を立てられておりますが、地方の状態を見てごらんなさい。これは文部大臣に聞けばすぐわかると思いますが、不正常教授はまだどのくらいあるか、あるいはこれは建設大臣に聞けばわかるだろうと思いますが、道路、橋梁、県道、市町村道の改修を要するものがどのくらいあるか、あるいは環境衛生としての下水、上水道というようなもの、屎尿の処理というものはどのくらいあるのか、これは厚生大臣に聞けばわかるだろうと思います。そのくらいのことは政府で一応何かの目安をお立てになっていませんと、今のようにむやみやたらに行政水準、行政水準という言葉を使われても、行政水準というものはどの程度かと聞けばわからぬと言う。これでは議論にならない。政府の立てている行政水準というものは一体どの程度か。日本国民生活の行政上の水準としてあるべき姿だというようなことぐらいはおわかりになって、その上で地方財政計画というものを立てられなければ、いつまでたっても完全な地方財政計画にはなりません。だから私はその点を聞いている。政府の行政水準のあるべき姿というものを、今申し上げました幾つかの問題だけについても一応お答えを願いたい。どのくらいが一体行政水準のあるべき姿かということです。
  37. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 どのくらいかと言われるが、ただいまあげられましたような点について現在の状態で、不十分な点はもちろんございます。しかし、たとえば、教育の制度にしてもすし詰め教室がなくなるとか、あるいは先生が一応充実されるとかいうようなことが一応の目標になるでございましょう。あるいは道路の整備につきましても、地方道についての整備をさらに充実するということ、あるいは舗装をふやすとか、あるいは幅を広げるとか、幾つもあるだろうと思います。あるいは下水道の整備というようなものもそれぞれ考えていかなければならない。そういうような諸種の事業を遂行していきます場合に、地方住民の負担を非常に重くするということがあっては相ならない。そういうものと相待ちまして、今指摘されますような諸事業をそれぞれ達成していく、その努力を払っていくということでございます。過去におきまして、とにかく事業遂行の方が非常に必要だからそのために借金してでもやったらどうだというような議論も出て参りますが、やはり地方財政も健全でなければ困る。その健全の線を維持していく、そうしてただいま指摘されましたような各種の事業を順次整備して参る。たとえば教育についていわれますことは、いわゆる税外負担が非常に多いじゃないか。そういうものをなくしろというような御要望も非常にございます。そういう事柄は今までの地方財政収入では十分期待に沿うことができなかった。しかし、三十四年、三十五年というような税収等の状況から見ますと、税外負担等についてもある種の処置はとり得る、こういうようなことに進んでいく、こういう点が何%上がったとか、あるいは何割の水準を目標にするとか、あるいはどこそこの状態にするとかいう基準はなかなか立てにくいと思いますが、順次そういう方向に進んでいくということを申し上げておるわけでございます。
  38. 門司亮

    門司委員 どうも大臣の言うことは私にはぴんとこないのですがね。国の予算を見てみますと、健全な予算であって、税外負担があったり、あるいはその他のものはちっともない。地方は、今大臣も話されたような、後ほどお聞きしようと思いますが、いろいろな住民の負担があります。それでもなおかつ今日の農村あるいは市町村に行ってごらんなさい。道が悪かったり重量制限をした橋が幾つあるというようなこと、学校の二部教授あるいは老朽校舎がどのくらいあるかということ、これは地方住民の法律できめられた以外の負担によって補われております。そういう状態であって、国の方には何らの財政上の問題がない。地方にはそういうやるべき仕事がたくさんある。にもかかわらず、今のようなお考えで、大体地方財政がふえるからそれでよかろうというようなお考えですけれども、これはなかなかそういかないのじゃないですか。そうだとすれば、私はまず聞いておきたいと思いますが、今日税外負担とし、今大臣お話のようなPTAその他の負担は一体どのくらいされておりますか。国の見込みは一体どのくらいですか。
  39. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 税外収入、税外負担というものは、言葉が表わしておりますように非常に調査することが困難な数字だと思います。従いまして、いろいろな数字が出ておると思いますが、ここに参考に取り上げましたのは、三十三年十月に自治庁で調べたものでございます。自治庁の調べによる税外負担でございますが、PTA寄付金は百三十九億、あるいは校友会寄付金四十五億、部落会等の会費五十七億、その他一般寄付金百三億かような数字で計三百四十四億というものが出ております。
  40. 門司亮

    門司委員 政府のはそういう税外負担になっておりますが、私の手元にあります昭和三十四年度の六月一日付の文部省の統計を見てみますると、こういう統計が出ております。公費と地方費とのもので、住民負担として考えられるものの中に、地方で借金をした分が一つあります。これは普通の地方債と異なった、いわゆる教育のために借金をしたもの、さらに公費に組み入れられたもの、PTAの寄付金、その他公費に組み入れることのできなかったもの、これのパーセンテージがずっと出ておりますが、これを全部合わせてみますると、大体教育費総額の七・四五%という数字が出て参ります。そういたしますと、教育費総額が四千三百五十五億二千四百五十二万二千円と書いてある。これの七・四五%ということになりますると、大体三百二十四億四千四百七十五万という数字が出てくるのであります。文部省だけでもこういう数字が現われております。あなたの言われておるのは、公費に組み入れた分だけじゃありませんか。公費に組み入れた分、それと地方債として教育のために何か金を借りているというようなものが約二・二九%ありますから、そういうことをお考えになっているのじゃないですか。  それからもう一つ、ついでだから言っておきましょうか。ここについ一週間ばかり前に農林省の出してきた統計表が一つありますが、この統計表を見てごらんなさい。農村負担がどういうことか書いてある。これにははっきり種目までずっと書いてありますが、たとえば北海道だけを見ましても、ごく小農の問題としてわれわれが考えておる——北海道だから特に小農といっても二町歩未満と書いてありますが、北海道が一番小農だと考えられる二町未満の農家の租税と、さらに市町村に対する寄付金との割合は一体どういう数字になっておるかというと、全市町村税の総額が七千九百円になっておる。市町村に対する寄付の総額が千八百四十二円、そのほかに御承知のように青年会の費用、婦人会の費用、赤十字共同募金その他という数字を入れて参りますと、結局こういうものを入れて参りますと、国税、県税、市町村税を合わせたものよりも公課諸負担という方が約倍の数字が出ているのですよ。税金よりも倍の負担をしているとこう書いてある。数字がちゃんと書いてある。これは一体何を物語るのか。この中には当然公課と見るべきものが私はあると思う。しかし、今申し上げたように、大体市町村の寄付金だけが約二千円ある。そして市町村の税金というものは七千九百円である。約二〇%というものがざっと税外負担になっておる。この率は、時間があれば詳しく全国の統計をずっと申し上げてもよろしいのですが、小農にいくほど、小さな農家にいくほど、この負担がふえているのです。そして大きな収入を持っている人ほ、どこの税外負担の割合というものは減っておるのです。これは私は当然だと思う。従って今あなた方がお考えになっているような、単に自治庁が出した三百幾らというようなもの、私の手元にもありますが、二百五十何億ですかというようなものがありますが、こういうものだけを見ておられたのでは、私は大きな間違いだと思う。この割合でもし都道府県税あるいは市町村税の平均して約一割五分くらいが税外負担といたしましても、本年度はどうなります。七千億の地方税だといたしますると、これの一割五分ということになりますとどういう数字が出てきます。とうてい今のあなたのお考えのような数字ではないと私は思うのです。これは現実に政府機関で調べた数字がこうなっているじゃないですか。あなた方はこれは税金でないとお考えになっているかもしれないが、地方の住民はこういう負担をしなければ、なおかつ現状の維持すらできない。これについて大蔵省は一体どう考えておりますか。それでもよろしいのだ、地方は苦しんでもよいのだ、国家財政だけ健全ならそれでよろしいのだというようにお考えになっておるのでございますか。
  41. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もちろん地方の税外負担、これは文字そのものが示しておりますように、調べ方は非常にむずかしいと思います。全部の寄付金といいますか、支出を合計する、その計算方法もあるだろうと思いますが、やはり私どもがここで問題にするのは、いわゆる公費として計上すべきものが税外負担の形でまかなわれておる、こういうものをまず取り上げるべきじゃないか、実はかように考えます。国の財政と地方の財政との考え方でございますが、国自身も、御承知のように最近の地方に対する補助率等も、災害等については特に高率にいたしておりますし、また交付税率等も、それぞれ地方に対する育成といいますか、そういう意味の金額等もふえております。私は、国と地方との間に均衡を保つということ、これは当然考えなければならぬと思いますが、ただいま御指摘になりましたような、いわゆる公費をもって本来まかなうべき性質のものが、寄付その他の名目でもって地方の負担になっている。こういうことは今後是正していくべきじゃないか。こういう点が今回の地方財政法の改正等でも取り上げられる。また国自身におきましても、国債等の償還については特別な償還計画を持ちますが、地方におきましても、やはり地方財源をもってそういうものを考えていくとか、あるいはまた国自身は、自然増収があれば、ことしは、三十五年は減税を計画することはできませんでしたけれども、やはり減税を計画していく。やはり地方においても自然増収があれば減税を計画していく、こういうような考えがあってしかるべきではないか。今、国と地方との歳入歳出の規模がどのくらいが適当かどうかはこれは別でございますが、三十五年度の規模をお比べになりましても、総体といたしましてはあまり差がなくなってきている。一兆五千億台のやはり歳出規模を持ってきている。問題は、同じ地方と言っているが、地方の中にある富裕県とあるいは後進県との間、あるいはまた富裕地方団体としからざるものとの間の行政水準というようなものに相当差を生じている。そういうものを今後いかにすべきかということであって、一がいに地方財政そのものとして取り上げることは、あるいは実情に合わないのではないか、こういうような感じが実はいたしております。
  42. 門司亮

    門司委員 私は、今の答弁答弁にならぬと思うのです。地方の自治体の財政が均衡でないとかあるとかいうことはあと議論なんです。そんなことをあなたはおっしゃるけれども、東京を見てごらんなさい。教育行政は東京が一番悪いでしょう。一番日本の富裕団体と言っておりますが、下水において見てごらんなさい。東京がパーセンテージとしては一番悪いでしょう。これが一番富裕団体ですよ。あなたはそういうことを言うけれども、その事業と予算と比較してごらんなさい。ただあなた方が言う表面的の、そういう事業というものを一切なくしてしまって、そしてここにはこれだけの人口があってこれだけの収入があるといえば、これは東京が一番いいのです。一割の人口を持っておって、納税の額からいえば二〇%から二三%くらい東京に富が集まっている、というくらい納税の額から調べればできておる。だから東京が一番いいのだとおっしゃるかもしれませんが、しかし、やっていることを見てごらんなさい。東京といってもまだたくさんの仕事を持っている。神奈川県が富裕府県といってもまだたくさんの仕事を持っている。これはわれわれが考える行政水準のあるべき姿にまだ達していない。少なくとも首都と言ってみたり、あるいは文化都市と言ってみたりしたところで、都市の十何%しか下水施設がないというふざけたことが、それで一体行政水準がよろしいのだ、そういう東京が富裕都市だということが一体言えますか。やるべき仕事をたくさん持っておる。やるべき仕事をやらせないで、ただ表面的なものの考え方だけで議論されることは、地方の財政にとって非常に迷惑なんです。そういうあなた方のお考えは、一体どこから出てきているかということです。  その次に私は聞いておきたいことは、地方の自治体の中にあります税外負担の問題と法定外普通税を一体どうお考えになります。国に法定外普通税がありますか。法律できめられた以外に税金を取っておいでになりますか。地方には、法律できめられた以外の都道府県や市町村の条例によって住民から吸い上げておる税金があるのです。この税を大蔵大臣はどうお考えになります。それでよろしいのだというふうにお考えになりますか。
  43. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そういうものはもちろん整理していかなければならないことだと思います。それにはやはり徴税といいますか、徴税の成績が一体どうなっているか、そういうこともやはり比較して検討していかなければならぬ。だからいろいろ関連するものが広いのですから、一部だけ取り上げて言われてもいかぬ。たとえば先ほど東京都は一番富裕県だというが、しかし下水道の整備はできない、教育も不十分である、こういうようなお話がありました。なるほどそういう見方もございましょうが、個人当たりの負担なり、あるいは個人当たりの事業量というものを考えてみると、これは問題にならないほど後進県との間に懸隔がある。そういうことはやはり行政水準を高めるという上からは大事な事柄じゃないか、私はそのように考えます。
  44. 門司亮

    門司委員 答弁にならぬのです。私の今言っている法定外普通税というものは、全国ごく大ざっぱに勘定して参りましても、約八億五千万円とられております。この税金の種類は、牛に税金がかかっている。馬に税金がかかっている。豚に税金がかかっている。ヤギに税金がかかっている。羊に税金がかかっている。ミシンに税金がかかっております。こういう都道府県、市町村の住民の生活に直接関係のある農村の牛馬にまで税金をかけている。果樹税などを見てごらんなさい。果実に税金をかけるなら、収益が上がるから多少税金をかけるということも言い得るかもしれない。しかし基本のカキの木が生えておるから税金をかけるという理屈がありますか。そういう税金が現実に日本にあるのです。しかも、それはいずれも非常に困っている東北地方に多いのです。犬税というものは全国にありますよ。これは法律できめた税金ではないけれども、みなとられている。こういう住民の負担というものは、あなた方の想像以外のものがたくさんある。今聞いておりますのは法定外普通税というものをなくするかどうかということです。  それからもう一つ、時間もございませんから、ついでに聞いておきたいと思いますことは超過税率です。国に超過税率というものはありますか。自治庁の長官はよく知っているから、自治庁の長官には聞かなくてもいいので、あなたに聞きたい。国に超過税率がありますか。法律できめた以上の税率をかけて取る税金が国にありますか。地方にはこれがあるのです。青森県に行ってごらんなさい。県民税の人頭割は百円なんですよ。これを六百円取っているのです。六倍でしょう。この税金の種類、この税金の総額をどのくらいあるか一応調べてごらんなさい。私が調べただけでもかなりたくさんのものが出されておる。これを総計いたしますと、大体こういう税金で取られているのが八十億二百十万円ばかりの数字が、私の計算では出てきておる。地方は現実にこういう税金を取られているのです。こういう状態にあるときに、地方財政は裕福だから百二十二億の補てんもしなくてもいいのだというのがあなた方の考え方でしょう。もしあなた方の考え方がそういうことだとするならば、こういう税金はやめたらどうです。これは日本国民ですよ。国と地方の税制にはそういう大きな開きがあるということです。国が所得税にこういう税金をかけてごらんなさい。お前さんはこうだからといって法律以上の税率をかけて取ったらどういう問題が起こるか。地方は、道路をよくしなければならない、学校をまずよくしなければならない、橋梁をかけかえなければならないということで、泣き泣きでも住民はこういう負担をさせられているのです。そういうものをそのままの姿に置いておいて地方の財政はこれだけゆとりがあるとかなんとかということが一体言えますか。この点をもう一応大蔵大臣からはっきりお答えを願っておきたいと思います。
  45. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そういうお話になりますから、最初に申し上げた全体の国の歳入と地方全体の歳入というものの比較がやはり必要になってくるのであります。いわゆる富裕県と後進県との間に非常に差がある。そういうものを一体どういうふうにしてまかなうか。そのために交付税等があるわけでありますから、そういうもので一体どれだけ見れるものか、これは配分の問題だと思います。ただいま言われるような特殊の税については、かつて自転車税を廃止いたしましたように、私はやはり順次整理されるべき筋のものだと思います。そうしてそういうものは、国から出して参りますところの交付税の適正なる配分——私どもは絶えず、態容補正ということを強く主張しておりますが、やはり態容補正によって交付税が分けられることが適正になるゆえんじゃないか。あるいは特別交付税の扱い方等においても工夫の余地があるじゃないか。あるいはまた税源そのものについても非常に問題を起こしておりますが、やはり過去の消費税等の譲与税化等も行なっていくとか、とにかく後進県についての補助は、国もめんどうを見ますけれども、地方財政全体の規模と比較した場合に、一応地方自治体のお互いに協力する態勢が必要じゃないか。そしてただいま御指摘になりましたような特殊な税というものは整理されることが望ましいことだ、かように大蔵大臣としては考えております。
  46. 門司亮

    門司委員 お考えになっているだけでおやりにならないでしょう。もしそういうお考えがあれば、七百億減税に伴う百二十二億は当然お出しになればいい。そして穴を埋められればいい。埋められないでしょう。だから自治庁としても、これを交付税で配付しようたって配付しようがない。もともと配付税が足りない。少ないのです。同時に考え方を直してもらわなければならぬことは、富裕県と何との関連があるということで、地方の自治体をならして貧乏にしようという大蔵省のものの考え方はやめてもらいたい。あなた方のお考えは、何でも足りないものをみんな分け合って、ならしてみんな貧乏にしよう、こういうものの考え方は行政官としてとるべき姿でない。一応役人としてはみんなならしておけば気持がいいかもしれない。しかし地方自治体はそれではかなわない。地方の自治体自身は成長し発展している。住民は必ずそういうことを希望している。だから、足らないところは国の施策なんです。こういう貧乏県に行っても、やはり国からいろいろ仕事を、言いつけてきておる。その仕事はやはりしなければならぬ。そういう国から言いつかった仕事ができない、自分の仕事もできない、従って住民はこういう迷惑をかけている、その点大蔵大臣の今のような答弁では答弁にならぬでしょう。こういう問題はどうされるのですか。もう一応、はっきりこういう問題はなくするというような御答弁ができれば、この機会にやっておいてもらいたい。
  47. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私は、先ほどのような基本的な考え方を持っておりますが、自治庁には自治庁の考え方があるだろうと思います。また、地方の団体そのものも自治体としての考え方がありますので、従いまして、税自身の整理ということは、これは望ましい税ではないと思いますが、今直ちにどうこうということはなかなか申し上げかねるのではないか。なおまた今、大蔵省の考え方はみんなを貧乏にする考え方だ、こういうことを言われますが、私はそれは当たらない。一体非常な甲乙があります場合に、お互いに、国自身が地方に対して財政的援助をするということ、この気持がやはり富裕県においても後進県に対してあってよろしいじゃないか。これは当然のことじゃないか。だから一体どの程度までしんぼうができるか。全然しんぼうしないで、それはおれの方はめんどうを見ない、全部国で見ろという考え方はどうも当たらない。今の自治体のあり方から見ましても、もう少しそこらは考え方があってしかるべきじゃないか、かように思います。
  48. 門司亮

    門司委員 考え方ではものは解決つかないので、考え方だけでものが解決するのならとっくに解決している。しかし、地方の財政というものはそういうわけには参りません。当然地方に出さなければならなかった百二十二億というようなものがことしは削られているというところに大蔵大臣の、あるいは大蔵省のものの考え方に誤まりがあるのではないか。しかし、その問題は一応——きょうはほとんど答弁になりませんが、時間の関係がありますからその次の問題に移りたいと思います。  その次にお聞きしておきたいと思いますことは、国庫支出の問題ですが、補助金の問題を大蔵省は一体どうお考えになっておりますか。今の状態でよろしいとお考えになっておりますか。
  49. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 毎回予算編成の際に補助金の問題が取り上げられます。私どもは、補助金として一旦支給いたしましても、その効果をあげたものは一応整理の対象になってしかるべきだ、あるいはまた非常に小額な補助金等は十分その効果もあげかねるもの、だろう、こういう点から補助金全体としての効用等をも考えて、それを進めていくか、あるいは整理すべきか、それぞれの個々のものについて考えて参って、できるだけ国の費用を十分効果の上がる方向で補助を流すようにしたい、かように実は努めております。
  50. 門司亮

    門司委員 効果の上がるようにという御答弁でありますが、私はそういうことを聞いておるのではありませんで、考えていただきたいと思うことは、地方財政の中で税収の次にウエートを占めておるのは、御承知のようにこの補助金であります。そうして補助金の種類というのは、補助金、負担金あるいは委託費というような政府から出ているものをずっと勘定して参りますと、千四百幾つかあります。このためたくさんの補助金——ここにはっきりした数字がありますが、千四百三十二ですか、この千四百三十二種類という補助金は一体地方の行政にどういう作用をしているかということ、この点を大臣はお考えになったことがあるかどうか、金額は別にいたしまして。私がお聞きをいたしますことは、こういうふうに千四百三十二種類も、補助金とか負担金とかあるいは委託費とか、国から出る金がたくさんある。それがことごとくと言っていいほど地方の独自の行政についてはみんな作用をしているのですね。そうしてそれが行政の混乱を導いておるのです。まず補助金のつく仕事をどうしても先にやりがちになってくる。地方の自治体の当然やるべき仕事、特に急がなければならない仕事、重要な仕事というものはあと回しになっている。補助金が災いをして結局地方自治体の行政の混乱を導いておる。そのことのために地方の自治体はよけいに負担をしなければならない、あるいは地方の行政がそのためにびっこになっていくというような作用をしておるのです。だから私がお聞きいたしたいのは、こういう補助金はできるだけやめて、そうして地方の自治体の自主財源をふやしていくということが、自治行政の上には最も望ましい姿だと私は考えるのだが、大臣はどうお考えになりますか。
  51. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 たとえば公共事業について申し上げますと、直轄事業あるいは補助事業という区分がある。そういう場合に、直轄事業というものをふやして、地方は公課を取らない、地方には負担させない。あるいはまたいわゆる補助事業というものをやめて、その金額に相当するものだけを地方へ回すとか、こういう議論だろうかと思いますが、直轄事業の場合だと、公共事業については受益者の負担というものがあるわけでありますから、やはり地方が一部負担せざるを得ないだろう。また公共事業そのものとして国、地方を通じての総合計画等もございますから、国が補助金を出す仕事にひもをつけることもある程度やむを得ないかと思います。しかし、もちろん地方が好まない補助事業を計画することはないはずであります。また今の地方の歳入は、各府県の団体等を見まして、いわゆる後進県というものが国の資金にどの程度たよっておるか、こういう事実をごらんになると、あるいは八〇%あるいは九〇%も国からの資金にたよっておる。地方財源によって地方財政をまかなっておるものが二割であるというような非常に率の低い場合に、ただいま言われるような自治体としての単独事業、いわゆる自治体としての形の行政を強く要望することが可能かどうか。ここらに一つ基本的な問題があるのじゃないかと思います。私は、今国の補助金という制度をやめて、これを全部地方財源に分けて、地方団体において自由に使えという考え方には直ちに賛成をいたしかねます。今日までのところでは、いわゆる交付税の範囲内において地方自身が自由に使えるものがあるのだ、こういうふうに実は考えておりますので、そういう点で按配していただきたい。地方団体の歳入歳出の割合が、自己の本来の収入による部分と、国の財源によってまかなわれる部分、これらの点をも十分考えてみますと、地方自治体としてはなかなか仕事がしにくいことになってきている。これは現状がそういう財政状態であるという結果ではないかと思います。御提案になりましたような点については、これはなお研究の余地があるかもわかりませんが、ただいまこの際にどう考えるかと言われれば、私は早急には賛成いたしかねる、かようにお返事を申し上げます。
  52. 門司亮

    門司委員 補助金の問題一つ考えましても、この間山形市の市長さんが、例の地方制度調査会に来てお話を願いましたときに、山形市に九十五円という補助金があると言っておりました。一体今の時代に山形市に九十五円の補助金をやって何をするのですか。そういうものがあるのですよ。あなた方、国がめんどう見ている、めんどう見ていると言われるけれども、今日の地方の行政の状態を見ますと、すでに小さな町村はございません。町村合併で一応適正規模になっていると申し上げてもあるいはいいかと思う。そういたしますと、町村は財政さえあれば私はかなり行政能力を持っていると思う。行政能力を持っているとすれば、この行政能力に見合った財源を付与するということは当然だと思う。その財源を付与しないでおいて、いかにも行政能力がないのだというものの考え方の上に立って、そうして何でもかでも補助金でこれをやっていこうという今日の大蔵省のものの考え方に誤まりがあるのだろうと思う。行政能力がなければやむを得ませんが、行政能力のあるところに財政さえつけてやれば、都道府県や市町村は仕事をしていくのです。一体なぜ財政をつけないのです。たとえば一つの例を言いましても、たばこ消費税を三〇%地方に出しなさいということを地方制度調査会が政府に勧告したのは四年も五年も前です。これをかりに三〇%地方に出してごらんなさい。どれだけ地方に自主財源がふえるか。財源さえふやしてやれば、行政能力を持っている地方自治体は仕事をしていくと思う。行政能力がなければこれはどうにもならない。今日の自治体はそういうものじゃないと思う。そういうものの考え方でおられたのでは、いつまでたっても地方の自治体というものは完全なものにならない。同時にこのことは、あなた方口を開けばよく行政の簡素化と言われるけれども、行政の簡素化にならぬでしょう。国と地方の行政の簡素化をしようとするなら、この補助金に手をつけるということです。地方の財源をふやして自主財源をやり、地方の行政能力に応じた仕事をさせておいて、そうして国がそういうことにあまり口出しをしない。補助金に手をつけない限りは、どんなことを言われても行政の改革はできはしますまい。これについてはことごとく各省は内部監査といって地方の監査に出かけていっているでしょう。法律憲法で地方の自治体が独立しているような形は示しておりますが、行政の面から見れば決して地方の自治体は独立していない。はしの上げおろしまで一切国の指図を受けなければ、地方の自治体はやっていけません。しかも行政能力がなければいいけれども、今日の自治体は行政能力を持っている。やらせればやれるのである。こういうところに大蔵省のものの考え方の誤りがあるのではないかと考える。  その次に聞いておきたいと思いますことは公債費の問題です。御承知のように借金がたくさんふえて、そうして再建整備法ができておる。また、たな上げされた借金がかなりある。それでも約六十億近い借金を今日地方の自治体はみんな持っております。この公債についてごく率直に聞いておきたいと思いますことは、もう少し利息を安くするお考えはないかということであります。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 一般の金利から見ますと、現在のところ適正な金利であります。
  54. 門司亮

    門司委員 適正な金利と仰せられておりますが、私の言葉が少し足りなかったのですが、御承知のように、地方の借金の中には公募公債というやつがありますね。公募公債は八分五厘で借りておりますが、これは政府との契約ですから、これを全部この際国の六分五厘の公債に切りかえることはできませんか。
  55. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 交付公債を現金支払いにかえるということは三十五年度では、一部いたしました。これは国の財政ともにらみ合せた上で、さらに続いて三十六年度以降においてはこれを範囲拡大する方向で検討中であります。
  56. 門司亮

    門司委員 私の聞いているのは交付公債じゃない、公募公債ですよ。公募債が約五百億から大体一千億ありますよ。これは八分五厘の利息を払っている。国から借りれば六分五厘か六分三厘で済むのです。
  57. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 公募公債につきましては、ただいま適当な金利だと考えております。
  58. 門司亮

    門司委員 どうもそういう答弁でははなはだ迷惑するのですが、それならその次に聞いておきたいと思いますことは、この公債について、地方の自治体のあり方をもう少し詳しくお話をしておかなければならぬと思います。大臣はそういうことをおっしゃっていますが、公募公債だけではありません。大蔵省から出しております書類を見てみましても、どういうことを書いておるかといいますと、三十四年の十二月末日現在で、地方自治体が一時借り入れとして借り入れております金は、全部で九百三十六億に上っております。この中で市中銀行から借りていると考えられる、いわゆる十一月末大蔵省地方資金課の地方資金月報によってこれを見てみますと、銀行から借りておりまする金が三百六十五億、こう書いてあります。そのほかのものは大体一時借り入れとして公営企業分であるとか、あるいは簡保資金であるとかいうようなことで大体借りられております。これの利息は六分三厘、こう書いてあります。この三百六十五億という一時借り入れの、市中銀行その他の借り入れ等は一割以上に私はついておると思います。地方の自治体はこういうやり繰りをしているのです。こういう金を現実に借りているのです。そのほかにさっき申し上げました八分五厘の金が約千億くらい残っている。こういうものはやはり国が見てやるべきだと思いますが、その点は、これは今の大蔵大臣考えておくという程度でよろしいのでございますか。
  59. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そういう点になりますと、これは行政の処理の問題に実はなってくるわけであります。私どもも、市中銀行からの借り入れが容易だからといって、そういうことをされることはあまり望ましいことだとは思いません。やはり市町村自身が、計画のもとに地方市町村財政を遂行していくということであってほしいわけであります。そのためにはいろいろやりたい仕事もうんとあることだろうと思います。しかし、やはり金のやり繰りをつけることの方が先であって、事業の方が先行いたしますと、どうしても無理な資金集めになってくる。こういう点はやはり双方で——金利も、なるほど市中から借りれば高い、こういうことは避けてほしいのですが、計画自身に無理があるのではないか、こういうことに実はなってくるだろうと思います。市中から借りられる場合に、市町村だから特に安くしろという指図もできる筋のものでもございません。こういう点は、やはり財政遂行の計画の問題だとお考えをいただきたいと思います。
  60. 門司亮

    門司委員 どうも大臣考え方は、計画だとかなんとか言っておりますけれども、もう少し地方の自治体を見てごらんなさい。借りなければ給料も払えないとか、あるいは借りなければ年越しができないという、実際上の財政上の行き詰まりがこういうことになっておるのです。地方の自治体だって、そう無方針で、無計画で放漫な財政をとっているわけではないと私は思う。これは国が負担しなければ全部地方の住民の負担になるのですから、今日の地方の住民は、そういう放漫政策を黙って見ていないと思う。それほど地方の自治体を信用されなければどうにもならぬ。国が地方の自治体というものを信用しないということになると、日本の行政はどうなるのです。これは行政上の大きな問題です。信頼できない地方自治体があったのでは、幾ら補助金を出したって、何をやっているかわからぬようなことになりはしませんか。  その次に私が聞いておきたいことは、この公債について、償還年限を延ばす意思はございませんか。
  61. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ものによると思いますが、そういう点で研究の余地がある、かように考えております。
  62. 門司亮

    門司委員 研究の余地があると言われておりますが、私はもう少しはっきりした答弁一つ聞いておきたいと思うのです。  日本の償還というのは、大体普通のもので平均すると十七、八年ぐらいですね。ここに私の手元にあります書類を見てみますと、大体一般のものとしては十八年半ということになっておる。それから公営企業分については大体十五年くらいになっておる。電車やその他のものはもっと短い。これでは地方の自治体の仕事は私はできないと思うのです。ことに地方財政法にも明らかに、この公債は耐用年数をこえて償還するようなことは避けなければならない、こう書いてあります。これは裏を返しますと、大体耐用年数ぐらいの償還期間を認める、こういうことに私はなろうかと思います。そうすると学校の起債にいたしましても、政府が老朽校舎として建てかえを認めようというのは三十五年から四十年なんですね。起債を返せというのは十五年で返せ、こういうのです。こういうことでは地方財政は非常に困難になる。コンクリートの建物でも、日本ではここに三十年と書いてあります。償還期限の一番長いのは三十年です。今日コンクリートの建物が三十年の耐用年数だとは、私はだれも考えてないと思う。英国の例を見てみましても、コンクリートの建物なら七十年から八十年です。六十年、七十年、八十年という数字が大体出ております。日本のコンクリートだけ三十年でこわれるという理屈はないでしょう。大体耐用年数に合った——私はこれをこえてはならぬと思いますが、大体耐用年数に合った起債の償還期間というものをつけべきではないか、ことに公共事業としてやっております水道だとかあるいは交通関係だとかいうようなものについても、やはり非常に短い償還期間では、それだけ地方住民の負担が私はふえてくると思う。できるだけこれを軽くしていくには、そうして仕事を広くさせていくには、今日の非常にたくさん、何千億——現状では再建整備でたな上げした以外のものでも約六千億くらいあるのです。これを全部合わせると一兆近いものがありはしないかと私は思う。こういうたくさんの地方の起債に対して、償還年限が短過ぎる。政府はこれを延ばされることが当然だと思うのですが、延ばされる御意思はございませんか。
  63. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまお答えした通りでございます。一がいに全部がどうこうということを申すわけではございませんが、その償還年限を、やはりその債務によりまして考えていくということが望ましいことだと思います。そういう意味で、ただいまの御意見、私ども十分伺いまして、なお研究してみたいと思います。
  64. 門司亮

    門司委員 今の答弁だけでは私はほんとうに了承はできないのです。この問題は地方にとっては非常に大きな問題でありまして、こういう形でいっておりますと、借りた金は即時政府に払わなければならぬような事態がきて、何にも仕事ができないような事態が私はきやしないかと思う。だからこの公債費の利息の問題、償還期間の問題は、ぜひ政府一つはっきりした態度を出してもらいたい。これが地方財政を災いする一つの大きなガンになっておると思います。  それからその次に聞いておきたいと思いますことは、国と地方との関係にあります会計年度の問題でありますが、これを変更される御意思はございませんか。これはたびたび私は申し上げておるのであります。御承知のように国の会計年度と地方の自治体の会計年度が一緒になっておる関係から、地方の自治体では非常に迷惑をしておる。従来のように地方の自主財源の非常に多いときは別でありますが、今日のように中央からくる補助金で仕事をしなければならないような事態、同時にその補助金の決定が大体六月から七月くらいになる。この申請の時期が、ずっと私ども調べてみますと、大体五月から六月に補助金を申請せよということになっておる。そうして補助金がきまって、出るのは八月か九月にならざるを得ない。これでは東北や北海道のようなところは、私は、その年度予算ではほとんど仕事ができないと思う。従ってこの年度を一つ変えたらどうです。それが一つと、もう一つは、地方自治体が今ちょうど各自治体ともおそらく予算を審議しておると思いますが、補助金がどれだけくるだのか、交付税がどれだけくるのだかわからない。三分の二の財源が不確定であるという中で地方の予算を編成しなければならない。これは地方の自治体にとりましては非常にやっかいな問題であります。確定しない財源の中で予算を組ませられるということは非常に迷惑だと思います。従って地方の自治体が、大体骨格予算というようなことを申し上げておりますが、骨組みだけの予算を組んで、そうして事業予算はあとで追加予算として、国の補助金なりあるいは交付金なりがきまったときにこれを行なっていこうというような、きわめて自主性のない自治行政が行なわれておるということが今日の状態であります。これをなくしようとするには、やはり会計年度を変えるということが私は一つの大きな問題だと思う。これはぜひ一つ会計年度を変えるということに踏み切ってもらいたいと思うのです。
  65. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 国の会計年度を変えろということは、これは門司さんの多年の主張のように伺っております。おりますが、これは経過があるものですから、そう簡単に賛成だと実は申し上げかねます。問題は地方財政が非常に自立しにくいということでございますが、二回の予算編成に当たりましての私自身の経験から申しまして非常に困りますのは、地方の歳入というものがなかなか立ちにくい。これは非常に困ることです。責任を持った官庁としての自治庁はございますけれども、なかなか歳入の見通しが立ちかねるということが一つ。もう一つは、国の公共事業等の予算の編成がどうしても最後に残る。この国の事業がきまらないと地方の歳出の面でもなかなか立ちにくいものがある。こういう意味で、地方財政、予算編成の際にはなかなかの困難に当面するわけであります。それが、ただいま申される時期を変えることによってそういうような点が解決できるかと考えてみますと、私は一そう困難になりはしないか、実はかように思います。やはり国の歳入の時期と地方の歳入の時期は同一である方が予算編成上は望ましいのじゃないか。先ほど来の質疑で御了承いただいておると思いますが、いわゆる富裕県でありますと、国の資金にたよる依存度が非常に小さいですから、これは比較的容易だろうと思います。しかし、後進県になれば、それだけ国の予算に依存することが大きい。そういう意味で、早く国の予算を作れというお話も出て参りますが、同時に後進県の自己歳入というものが幾らになるのかということもやはり見当をつけないと十分予算ができかねるという問題がございます。全然研究しないというわけではございませんが、ただいまの考え方自身から申しますと、二回の予算編成等の経験から申すと、時期を別にすることは一そうむずかしい結果にならないかという感じが私にはしております。
  66. 門司亮

    門司委員 どうもその点も納得がいかぬのです。国の予算のことばかりお考えになっているからそういうことになろうかと思いますが、今日、別に財政収入は国の付加税をとっているわけでもありませんし、地方は地方でちゃんと独立し税財源を持っているのですから、そんなに昔のようにこっちの税金がきまらなければ地方の税金もどれだけかわからぬじゃないかという理屈は、今日は成り立たぬと思うのです。だから歳入の面もおのずからきまってくると思う。そうやかましい問題ではないと私は思います。  実は時間がないと委員長から今催促を受けておりますから、これ以上あまりやかましいことは言いませんが、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、通産大臣と同時に御答弁願いたいと思いますけれども、今日の地方財政の中で、先ほどから大蔵大臣がしばしば申されておりますように、地方の自治体の財政が不均衡を来たしているということは認めざるを得ません。これをなくするには一体どうすればいいかということが、一つのものの考え方の中に出てこようかと思います。今日の地方の自治体の財政上の不均衡というのは、いわゆる経済の集中が至るところに行なわれておって、貧弱県と称されるところには経済的の基盤が非常に薄いということに私はなろうと思います。従って、経済基盤の問題をどう配分するかということが地方の財政を均衡化する一つの大きな問題であり、同時に農村の次三男対策等に対しましても一つの仕事ではないかと私は考える。時間がございませんから詳しく申し上げる時間を持ち合わせておりませんが、たとえば、英国で一九四五年と五〇年にこしらえた例の工業配置法という法律があります。この法律を見てみますと、過大都市ができたり、一部に多発的の失業者ができたりするような場合には、国が責任を持って工場を配置していくということ、いわゆる適正なところに適正な工場を国が配置するという形で、一部には工場の分散をとっていこうというものの考え方、一部にはそうした失業者を救済しようということ、ことに最近は農村の次三男をここに集中するということ、一面には地方財政の均衡化をはかっていくこと、こういうような国内の経済分布の公平化といいますか、平均化をはかっていこうというものの考え方をこの際私はなさるべきだと思う。そうしませんと、いたずらに人口も経済も集中して、日本の行政というものはますます非常にびっこになっていく。これをなくすというためには、端的に申し上げますと、今申し上げましたような、工業を配置するための特別の思い切った立法がこの際必要ではないかというように考えますが、これは単に大蔵大臣だけでなくして、産業関係でありますから、通産大臣からも一つ答弁を願いたいと思います。
  67. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話のごとく、全国的に所得の地域差ということが一つの大きい問題でございます。これが是正のためには、集中主義でなしに、地方にも工場の設立をわれわれ望んでおるわけであります。今の状態は、どちらかといえば集中主義の方が非常に多い。昔のように、労賃が違うわけではございませんし、経営の合理化からいったら、大工場に集中した方がいいという考え方が民間にもある。われわれは、先ほど申し上げたような状況で、なるべく地方分散ということを考えまして、一つには既設の工場地帯の隘路をなくすと同時に、片一方では、全国的に工場の適地——どういう産業にどういう土地が向くかということを今調べまして、できれば地方への工場の分散というふうに指導していきたいと考えております。
  68. 門司亮

    門司委員 指導すると言われておりますが、指導だけではこの問題は片づかない、やはり立法措置が必要だと私は思う。そうするには、やはり国土の総合開発の問題もありましょうし、いろいろこれに関連した法律もあろうかと思います。しかし、一方でいろいろな開発事業というものが方々で行なわれておって、それからもう一つの問題としては、地方自治体はおのおの工場誘致条例などというものをこしらえて、そうして盛んに工場誘致をやっておる。こういう不統一のものでなくして、やはり国がある程度産業の分布状態というものを十分見きわめて、国民所得にそう大きな不均衡のないようにしていく処置はやはり当然とらるべきだと思う。もう今にして日本はそういう処置をとらなかったら、過大都市はますます過大都市になっていく。そうしていろいろな社会問題ができて、どうにもならぬものができはしないかと思う。私は、今の通産大臣の御答弁のように、考えておくという程度ではなくて、もう立法する段階だと考えておりますが、もう一度一つ答弁願いたいと思います。
  69. 池田勇人

    ○池田国務大臣 全国的に工場適地——どういう産業にどこの土地が向くかということを調査するのが先だと思います。調査ができましても、法律で、今度ここにはどういう産業を置け。——置いてはいかぬということは楽でありますけれども、置けと言うことは、政治的になかなかむずかしい問題でございます。そういうことをいたすにいたしましても、まず工場の立地条件の調査が必要であるというので、昨年来調査を進めておるわけでございます。
  70. 門司亮

    門司委員 昨年来調査を進めておるというお話ですが、私は、先ほどから申し上げておるように、調査をするというような段階ではないと思いますが、これも今時間の関係をやかましく言われておりますから申し上げませんが、ついでに通産大臣にもう一つ聞いておきたいと思います。  例の四十億ばかり中小企業の金融公庫に予算をふやしていただいておりますが、問題になりますのは、今日の零細企業の金融をどうするかということが問題になろうかと思います。ことに最近の状態では、銀行その他が、どうしても担保がなければ貸し出しを渋っておりますし、ほとんど担保がなければやらないといっていいくらいなんです。担保に非常に事欠いております零細企業の金融というものは、単に中小企業金融公庫の金がふえただけでは、私はなかなか行き渡らぬと思うが、これについては、はっきりしたワクか何かを設けて、借りることのできるような特別の制度がこの際必要ではないかと考えるのですが、こういう点について、一つ通産大臣の御意見を伺っておきたいと思うのです。
  71. 池田勇人

    ○池田国務大臣 零細企業の金融のために、御承知通り、信用保険公庫を設けまして、昨年の暮れに十億円特別に出しました。今回も十八億円ふやしまして、大体三、四百億円の貸し出しの保険ができることに相なります。私は相当の担保力を与えると思います。またそういう金の問題でなしに、零細企業の協力態勢を作る、あるいはまた指導育成のための商工会法を本国会に出しまして、零細企業の育成に当たっていきたいと考えております。
  72. 門司亮

    門司委員 今お話のありました指導員や、それからもう一つ何か制度として設けて、調査員をふやすというお話がございましたが、これもやはり資金の裏づけがないと、ただ人間だけふやして、診察だけして歩いたところで実際は効果がない。やはりこれも資金の裏づけが必要だと思うが、それはそれとしまして、こういうものについで幾つか、中小企業に対しまする保護立法がありますが、それが今日十分に動いておらないということが私は一つの大きな問題ではないかと思う。たとえば、百貨店法の九条には、いろいろ百貨店の販売を制約することがたくさん書いてあります。そうしてただ勧告する、こう書いてありますが、一体政府は勧告した例があるかないかということになると、おそらく勧告されていないと思います。これは法律があるだけで、何にもなっておらぬ。従って、業者の仲間では大体中小企業の保護立法というのはざる法だという悪名をとどろかしておりまするが、これをざる法でないように、一つ改正する御意思はございませんか。
  73. 池田勇人

    ○池田国務大臣 百貨店なんかにつきましても、増設その他につきましては、審議会の審議を経ることに相なっております。また、今回の商工会法の制定によりまして、私は相当育成ができていくことと考えております。また中小企業振興資金助成法、その他中小企業ことに零細企業の育成につきましても、適切な法の改正をいたしたいと思います。
  74. 門司亮

    門司委員 どうもお考えになっているだけで、たとえば百貨店法にしてもさっき言いましたように、ちっとも勧告も何もしておらない。現実の問題としてはなかなかそういうものじゃないと思う。それからもう一つは、今三千平方メートルですかの床面積以上を百貨店にするという一応の定義があるようですが、この定義等についても——名前をはっきり言えといえばはっきり指摘してもよろしゅうございますが、店を二つに分けて、二つの店が入れば一つの百貨店じゃないのだというものの考え方、あるいは幾つかの同業者が集まって仕事をしておるのだから百貨店ではないのだという考え方で開店しているものが幾つかある。そういうものについても、何らの勧告もしていなければ、何もしておらない。私はもう少し通産省にほんとうに中小企業を保護されるという意思があるなら、ざる法と言われておりまするが、今の法律でも十分活用されていけるなら、ある程度この問題の解決はつくのじゃないかと考えられる。こういう点等については、特に通産省でもってお考えを願っておきたいと思います。  それから、時間がございませんから、最後に建設大臣一つお聞きしておきたいと思います。国土総合開発がずっと行なわれておりますが、それも私はけっこうだと思います。しかし、そのことのためにダムがたくさんできておりますが、従来できておりますダムの利用効率の問題について、どのくらい土砂で埋没されておって、その利用効率がなくなっておるかということの調査をされたことがございますか。もしおわかりでしたら、その表を一つ出していただきたいと思います。国土総合開発は産業と非常に大きな関連を持っておりますので、この表がございますか。
  75. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。ただいままで、建設省所管のダムにつきましては、堆積土砂のためにダムの効果が非常に減殺されておるということは、まだございません。大体多目的ダム等の建設にあたりましては、その基準を百年間ぐらいは手をかけなくても十分効果が発揮できるような設計をいたして参っておりますので、ただいまのところは別に心配な点はないと思っております。しかし、御指摘のように、上流の砂防等の、いわゆる山くずれ等によりまして土砂がダムに非常に埋没をするおそれがないとしないのであります。これは十分検討いたして参りたいと思います。
  76. 門司亮

    門司委員 もう一つ建設大臣に聞いておきたいことがありますが、それは日本の基本的なものの見方でありますが、日本の地籍の詳細な調査をされたことがございますか。私は実際はこれはないと思うのです。各都道府県や市町村に、少なくとも六百分の一くらいの地図があって、そして地籍というものが明確になるということが、やはり国の産業計画その他を立てるのに一番大事な問題だと思う。かつて農林省でやりました御承知の一筆調査をやる、農業センサスをやる、あるいは登記のものを調べるということをやるたびに地積が違ってくる。一体日本の地積というものは、山がどれくらいあるんだか、畑がどれくらいあるんだか、何がどれくらいあるんだか、わかっていないと私は思う。こういうことではほんとうの国土の総合開発がやれない。まず国土の総合開発をやられようとするなら、こういう資源の調査をかねて、一応の森林資源がどのくらいあるかとか、あるいは水の資源がどのくらいあるかということが面積と両方はっきり出るような地籍の調査というものと、それから同時にこれに伴ってそういう正確な地図をこしらえるというようなことは、建設省では考えられておりませんか。
  77. 村上勇

    ○村上国務大臣 いわゆる六百分の一等の地図につきましては、企画庁の所管になっておるようでありますが、この方も私は完全にできておるとは考えておりません。しかしながら、このいわゆる六百分の一の地図の基本になる五万分の一、あるいは二万五千分の一、あるいは一万分の一というような精密な地図につきましては、建設省の地図調査部におきまして十分精密なものができております。しこうして、ただいま御質問のありました正確な地図を作成するための基準点につきましては、大体昭和二十六年から再検討いたして参りましたが、一万九千二百二十六ヵ地点に完全なベンチマークができ上がっております。なお三十五年度には九百五十カ所のベンチマーク——基準点を作りまして、国内の地図につきましては万事遺憾のないようにいたしたい、かように思っている次第であります。
  78. 門司亮

    門司委員 最後に自治庁の長官に聞いておきたいと思いますが、いろいろの問題があろうかと思いますが、今日の地方財政の中で、ことに町村財政の中で問題になりますのは、例の固定資産税の問題であります。この固定資産税の問題についての考え方の中にはいろいろ問題があるが、これからそれを議論する時間がございませんが、最後に聞いておきたいと思いますことは、固定資産税を正確化することのために、地方の町村には建設大臣に申し上げましたような精密な地図を一応こしらえさせる、そして地籍というものを明確にするということ。これはもう大体御承知だと思いますが、山林等になりますと、今日住宅計画等で山林の売買が非常に行なわれておりますが、これは実測と帳簿面とはかなり大きな開きを持っております。こういうことではやはり固定資産税の関係等についてもうまくいかぬと思う。従って、固定資産税を正確化することのためにも、各市町村にかなり綿密な、だれが見ても地籍が明確になるというような地図と台帳を一応こしらえさせる。昔の単なる登記台帳が今市町村役場に来ておりますが、そういうものでなくて、新たにそういうものをこしらえていくという、そうしてこれがさっき建設大臣が話しましたような、国の地籍の大体基礎になっていくというようなことが、私は行なわれてしかるべきだと思う。これについてかなりの大きな費用も要ろうかと思いますが、自治庁の長官として、固定資産税の基礎をはっきりすることのために、地籍の再検査をされる御意思はございませんか。
  79. 石原周夫

    石原国務大臣 お答えいたします。固定資産税の問題につきましては、ただいま評価を中心として固定資産評価制度調査会でいろいろ検討しております。ただいま御指摘になりました点は、これはなかなか重大な問題と思いますので、ただいま自治庁でいろいろ地番、地籍の問題などの検討も始めかけておりますし、それから土地調査というようなこともいろいろ行なわれておりますので、それらの問題とからみ合わせまして、御意見として拝聴いたしまして、さらに検討を加える、そういう方向にできるだけの努力をいたしたい、かように考えております。
  80. 門司亮

    門司委員 今の自治庁長官の答弁で、できるだけと言われますけれども、地方の自治体に行ってごらんなさい。これはかなり大きな不平——というと問題がありましょうが、不公平があります。それから、まごまごしていると、地籍がどこの地籍かわからぬものがあって、町村役場ではかなり困っているところがある。これは国の費用もたくさんかかると思いますが、一応の税金をとっておりまする以上は、はっきりした地籍の検査をされるということは当然だと思います。そういうことは一つ至急にやっていただいて、都会もそうですが、ことに農村地帯において不公平のないようにしていただきませんと——固定資産税の問題はこれから議論をすると長くなりまするし、時間もありませんから議論をいたしませんが、基礎になりますこれだけは、ぜひ一つ来年度の予算で、できれば次の予算にでも、大蔵大臣考えてもらって金を出してもらい、国の一つの事業としてぜひこれをやってもらいたい。このことを私は強く希望いたしておきます。大蔵大臣、金を出しますか。
  81. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今予算を、きわめて少額でございますが、つけております。地番、地積の調査、これは絶対に必要なことであります。ただいま抜き検査的に地番、地積の整理をやっておると思いますが、正確に申せば調査の調査という程度のものだと思いますので、財政的に財源を見つけた上で実施したい、かように考えております。
  82. 小川半次

    小川委員長 この際午後一時まで休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  83. 小川半次

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡良一君。
  84. 岡良一

    ○岡委員 私は今度の国会で、政府がしばしば局地戦争ということを申されておりますので、この局地戦争とは具体的にどういうものか、また新しい安保条約が求めて日本がこの局地戦争に巻き込まれるおそれはないか、また極東の局地戦争は核兵器の投入、こういう心配はないか、この三点にしぼって、主として戦略面について、防衛庁長官を中心にお尋ねをしたいと思います。  そこでまず第一に、政府の申される局地戦争とは具体的にいかなる事態を想定されてのことでございますか、具体的に御答弁を願いたい。
  85. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 申し上げるまでもなく、局地戦争ということは、全面戦争に対応する言葉だと思います。地域的に限定され、あるいは当事国も限定されておる戦争でありますが、その戦争の様相は、場合によって種々異なる様相をとると思われます。兵器としては、一般に通常兵器をもってする戦争である、こういうふうに考えております。しかし今お話のように、状況によっては戦術核兵器の使用も絶無とは言えないかと思います。しかし一般的には、通常兵器をもってする、局地に限定され、当事国も限定されている戦争、こういうものに巻き込まれない、またこういうものを抑制しようという意味を、安保条約において持っておるものと私どもは解しております。
  86. 岡良一

    ○岡委員 赤城長官は、今月六日の今澄委員に対する御答弁で、はっきりと「局地的な紛争、局地的な戦争、これは起きないという保証はありません。局地的に対立する基本的な問題が解決しておらないから、その解決のない限り、局地戦争の起こらないという保証はありません。」と繰り返して局地戦争を力説しておられる。それでは、具体的に、極東における基本的な問題が解決しておらないところ、局地戦争の発火点となるところは、一体どこであるとあなたは想定をしておられるか。
  87. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この間申し上げましたように、世界的に見ましても、東西両ドイツ等が対立を続けておりますが、この問題も解決ができておりません。あるいはまたアジア・アラブ等におきましても、局地的な紛争が最近においてなかったわけではございません。極東といいますか、日本の周辺におきましても、たとえば朝鮮でありますが、朝鮮の統一という問題がこれは解決いたしません。三十八度線を境といたしまして、対立の状況にあります。あるいは台湾の問題等につきましてもそういう解決を見ておらぬという状況になっておると思います。あるいはまた、少し離れましても、いわゆる対立している国が、ラオスとかあるいはまたベトナムとか、こういうところもあろうかと思います。こういう問題が平和的に解決することが日本にとっても非常に望ましいことだ、こう思っております。しかしまだその解決を見ないということでありますから、それが局地戦争に展開するとは私は申し上げませんが、局地戦が全然ない、将来もう全然なくなるのだという保証は、これはちょっと得られないのではないか、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  88. 岡良一

    ○岡委員 極東の範囲の中には、朝鮮半島の三十八度線内外とかあるいは金門、馬祖とかいうものは、特別に指定されて含まれております。そこで防衛庁長官としては、台湾海峡あるいは朝鮮三十八度線に局地戦争の起こる可能性はある、望ましくはないが可能性はある、こう想定をしておられますか。
  89. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 特にそこにあるという見通しをしておるわけではありません。ただ、表現がちょっと違うかもしれませんが、局地戦が起きないという保証は、まだ世界的に見ましてもないのではないか、保証を得られるまでには至っていないのではないか。こういうふうに考えられるわけであります。
  90. 岡良一

    ○岡委員 私は世界的にどこにどうということを聞いておるのではございません。ただ、局地戦争が極東において起こり得るとするならば、三十八度線あるいは台湾海峡はその可能性が濃厚であると見ておられるのかということでございます。
  91. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そこに起きないという保証はない、こういうふうに考えております。
  92. 岡良一

    ○岡委員 そこで、言葉じりをとらえるわけではございませんが、大事な問題なので重ねて長官の議事録を引用いたしますと、やはり六日の御答弁で、「日本アメリカの基地を与えておるということは、戦争に巻き込まれるおそれがあるのじゃないか、こういう御議論があります。私どもは戦争抑制力としての考え方からいたしますならば、基地を置くことがむしろそういう局地戦とか全面戦争になることを押える力になっておるので、そのことが戦争に巻き込まれないことだ、こういうふうに確信をしておるのでございます。」こう答弁をしておられます。そういたしますと、要するに、新しい安保条約というものは、こうした三十八度線あるいは台湾海峡における局地戦争というものを想定しているものであると私は解釈をいたすのでございますが、そうでございますか。
  93. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 特に想定をしているというふうには私は考えておりません。ただどういう原因から局地的な紛争が起きるかということにつきましては、なかなか見通しといいますか、そういうことを断定するわけには参りませんけれども、そういうような事態に対処してその局地的な紛争を未然に防ぎ、あるいはそういうものが日本に波及してきた場合には、これを最小限度にとどめて、日本の平和と安全を守る、こういう意味において、この間申し上げましたように基地を持つといいますか、与えるといいますか、日本の自衛力によって十分に達成できない面を、基地の供与等によって補充して、そうしてその問題が起きないように、また起きたならばこれを最小限度のうちに解決する、こういうことが日本の平和と安全のためだ、こういう見方をしておりますので、基地の供与が戦争に巻き込まれるというよりは、私は戦争に巻き込ませないための日本の今の現状としては適当な措置だ、こういうふうに考えております。
  94. 岡良一

    ○岡委員 巻き込まれるか巻き込まれないかということではございません。ただこの御発言は、基地を置くことが局地戦とか全面戦争を押える力になることを確信をしておる、こう言っておられる。してみれば局地戦争というものを想定してこの新安保条約というものの締結の必要がある、こう私どもはとらざるを得ないわけであります。巻き込まれるか巻き込まれないかは別として、想定をして新安保条約というものを締結されなければならぬ、こういう御意見でございましょう。
  95. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 安保条約につきましては、しばしば外務大臣や総理からも申し上げておりますように、やはり世界の平和機構としての国連、こういう平和機構のもとで世界の平和と安全に寄与しよう。日本の立場から言いますならばそういうワク内で、そうしてまた今申し上げましたように戦争抑制力としての力を持ちたい。それは大国は大国なりに、また日本日本のような国としての戦争を抑制し、戦争に拡大しないための役割を果たすべきだ。それについては日本の立場からいえば、大国のような戦争抑制力というようなものを持つ必要はないけれども、分に応じたまた地理的に必要なものを備えておくべきだ。これが局地戦を未然に防ぎ、あるいはそういう局地戦のようなものが起きた場合にはそれを最小限度にとどめる、それが日本の防衛力だけではそういう機能にはならぬ。従ってアメリカの力によってそれを補う体制が必要だ。具体的にどこに局地戦が起きるからそれに対応するというふうなことよりも、もっと広く局地戦、局地紛争に対処する、こういうふうに考えているわけであります。
  96. 岡良一

    ○岡委員 失礼でございますが、実はあとにまた質問者もございますし、できるだけ時間を切り詰めてポイントをイエスかノーかはっきりお答えを願いたいと思います。  それでは今の御答弁、それから先般の会議録等を総合いたしまして、赤城長官の局地戦争観というものは、要するに大国には巨大な報復力があるから全面戦争の抑制は、これに期待する。しかし日本の場合、万一にも日本をめぐってその周辺に紛争が起こったならば、自衛隊をフルに活用してこれを抑制をし、またその発展を押える、しかしそれでは足らないのでアメリカに基地を与える、そうしてこれをも合わせて局地戦争の抑制力とし、あるいはまたその発展を押えることにしたい、これがあなたの局地戦争というものに対する御認識だ、こう私は総合して判断いたしますが、そうでございますか。
  97. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話通り考えています。ただ局地戦争が全面戦争になるおそれもありますから、全面戦争にならないように対処するということも考えなくちゃならない問題だと思います。
  98. 岡良一

    ○岡委員 そこで赤城長官の局地戦争に対するお考えが、くしくもアメリカの世界戦略としての局地戦争戦略と全く一致しておるということです。まあ事々しい文献をあげないまでもよく御存じと存じますが、すでに一九五七年に大陸間弾道弾なり、あるいは原水爆の実験なり、スプートニクの打ち上げなりということで、原水爆戦争における双方の力が均衡してきた。そこで五八年の春ロックフェラー報告がアメリカ政府に提出され、このロックフェラー報告の骨子、そうしてその後アメリカ政府がとっておる世界戦略というものは、要するに全面戦争を抑止するためには自国の巨大な報復力をもってする。しかしユーラシア周辺の連合国に対し、いわば自由主義諸国に対しての脅威、影響というものを阻止するには、どうしてもアメリカとそれらの国々というものが軍事的に結合しなければならぬということが、アメリカのその後の大きな政策の骨組みになっておる。そういたしますと、今赤城長官のおっしゃられる局地戦争に対する認識は、そっくりそのままアメリカの世界戦略としての局地戦略というものと全く一致しておると、私はそう考えざるを得ないのでございますが、長官の御所信を承りたい。
  99. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 アメリカの世界戦略と局地戦との関係と私の考え方が似ておると言いますか、これはその通りだと思います。しかし同時に私はソ連等においてもそういうことに相なっておるではないか。すなわちフルシチョフ、アイゼンハワーの会談、あるいは軍縮というような問題も、これは初めは原水爆あるいは大陸問弾道弾等によって相手方に対する報復力とするか、あるいは占領するか、こういうことであったのですけれども、両方がそういう面の力の均衡からこういうものを使うべきでない、こういうようなことから軍縮というような話し合いも両者においてこれは進めているような段階になってきているのではないか。それからまたソ連等においても局地戦争というものが全面戦争に波及するということは極力避けなくちゃならぬ、こういう考え方は強く持っておると思います。でありますから、アメリカの世界戦略と似ておりますけれども、やはりソ連等におきましてもそういう考え方が出てきておるし、これは世界的にそういうふうに考えてきておるのではないかというふうに私は思います。
  100. 岡良一

    ○岡委員 私は別にアメリカの立場に、ソ連の立場にという立場ではなく、日本人としての立場から申し上げているのであります。  そういたしますと、結局防衛庁長官としての局地戦争に対する認識は、アメリカの世界戦略としての近年のいわゆる局地戦争戦略に一致するということになれば、新安保条約というものは、あるいはNATOまたはバグダット機構あるいはSEATO、こうしたものといわば同系列のものである、日本という立場から見ればなんでございますが、これはアメリカの世界戦略として見るならば同系列のものであるということをお認めになりますか。
  101. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 態様は同じような系列といいますか、そういうものに近いと思います。しかし御承知のように、私から申し上げるまでもなく、日本の特殊な事情といいますか、相互防衛的な条約と、こう申しましても、この条約の区域が、現に日本の施政下にある場所というふうな制約もありますし、たとえばアメリカの施政下にあるところに攻撃を受けても、日本がその共同の危険に対処するというようなことで出動するというようなことはない、こういうふうに非常に他の条約と違った面が多いのであります。これは日本の立場からいってそうだと思います。ただ自由国家群としての条約であるという点におきましては、共通の点が相当あると思います。
  102. 岡良一

    ○岡委員 私は問題を提供する程度にとどめまして、あとあとまた特別委員会等でおそらく十分な審議が繰り返されると思います。  それでは、具体的な条約にお触れになりましたので、これは外務大臣にお尋ねした方がいいかもしれませんが、交換公文を拝見いたしますと、アメリカの戦闘作戦のために使用する基地として日本が自発的な同意を与え得るということになっておるわけです。そういたしますと、在来の安保条約あるいは行政協定における基地と新安保条約における基地というものは、性格がかなり著しく違ってくるのではないかということでございます。と申しますのは、国際法上作戦地域も戦闘地域も私は同断であると存じます。でありますから、たとえば米台条約なり米韓条約に伴って米軍が武力行使をやるというようなことになれば、当然わが国の米軍もこれに即応した出動態勢をとることは常識上明らかだと思う。そういう場合に当然相手国とすれば、日本に先制攻撃を加え得るという口実が成立してくるのではないかという懸念を感じておるのでございますが、この点外務大臣の御答弁をお願いしたい。
  103. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 別段現行安保条約と変わっておるところはないと思うのでありまして、御承知通りアメリカ軍は武力の攻撃がなければ国連憲章五十一条によりまして反撃をしないわけであります。従って武力行動というものは国連憲章に準拠してとられるわけでありますから、その意味におきまして、アメリカ軍が防衛のため以外には出て参らぬ、こういうことになっております。
  104. 岡良一

    ○岡委員 それではなお具体的にお伺いをいたしますが、最近は移動というものは協議の主題にならない、こういうことで解釈していいのでございますか。
  105. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 移動というものは事前協議の対象にはなりません。
  106. 岡良一

    ○岡委員 それでは具体的に、たとえば現在日本には米国の駐留軍が相当いる。そこで作戦空輸師団が局地戦争に備えて、この局地戦争に兵力を投入する目的を持っておっても、もちろん作戦上の極秘事項でございますから、これを秘匿してハワイなりあるいは米本土に移動すること、これは協議の主題にならない、あるいは日本にいる第五空軍、戦術空軍、これがやはり局地戦争に備えて出撃をする目的をもって台湾なり沖縄なりあるいは韓国の飛行基地に移動する、あるいは横須賀や佐世保にいる第七艦隊が基隆等に集結する目的をもって移動する、これは事前協議の対象にならない、こういうことでございますか。
  107. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたように、日本から移動します場合には事前協議の対象になりません。
  108. 岡良一

    ○岡委員 そういたしますと、今申しましたような具体的な事例は事前協議の対象にならない、こういうことでございますか。
  109. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話のありましたように、日本からハワイに移動するとかあるいは台湾に移動するというようなことは、事前協議の対象にはなりません。
  110. 岡良一

    ○岡委員 そういたしますと、日本の基地というものはやはり事実上は戦闘作戦の基地であると相手国が判断することは相手国とすれば自由である、こういうことでございますか。
  111. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本におります在日米軍が日本の基地を使って出動するわけでございませんから、そういうふうにはならぬのであります。
  112. 岡良一

    ○岡委員 そこに大きな一つの抜け穴があるということでございます。  それではさらに、グアムに待機する戦略空軍、この日本への飛来というものが今後非常に心配な事態を起こし得る。というのは、先般のハーター国務長官のお話を見ても、全面戦争は誤認、誤算で起こる。でありますから、戦略空軍の飛来というようなものがレーダーにおいてその目的が察知できるはずのものでもございません。こういう戦略空軍が日本の基地に飛来することは、これは協議の対象にやはりならない、こういうことでございますね。
  113. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 配置の重要な変更になります場合には、事前協議の対象になります。
  114. 岡良一

    ○岡委員 戦略空軍が、全面戦争ではない、何らかの意図を持って飛来することはあり得ると思う。これは事前協議の対象にならないのですか。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それが重要な配置の変更になりますれば、日本に飛来することも事前協議になります。
  116. 岡良一

    ○岡委員 戦略空軍が日本に現われることは極東の緊張を示唆するものだということがよくいわれておるわけであります。でありますから、そういう戦略空軍がやってくるというようなことは、しかも最近の全面戦争への危険として誤認あるいは誤算というものがあげられている以上、私は非常に懸念される事態であると思います。しかしそれは外務大臣の御答弁のままにいたしましょう。  もう一つお聞きしたいことでございますが、アメリカ憲法では、大統領が三軍の指揮権をとっておる、こういう建前になっております。そこでこの統帥権に属する重大な事項といえば、何といいましてもやはり武力の出動の決定であると思います。もしこういうアメリカ政府が大統領の権限に属する武力の出動を決定する事前に、日本政府のウィッシェズ、願望によってこれを拘束することがはたしてできるものか、この点アメリカ側との交渉においてどういうお取りきめになっておりますか。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それはむろん今回の事前協議の対象になって、日本の基地から——アメリカの大統領の出撃命令そのものを制限しているわけではございませんが、日本の基地から出ます場合には、日本の基地を使ってもらいたくないということは今のようなウィツシュとして言えるわけでございますし、またそれが通っていくと思います。
  118. 岡良一

    ○岡委員 御存じのように、これまで朝鮮動乱の初期でも、また台湾海峡のあの危機でも、すべて大統領の決定で在日米軍は出動しておると私は聞いておる。ところが事前協議というのは、外務大臣、それに米国大使、それにまた太平洋地区の司令官あるいはその代理者、これで構成されるということをお話しになった。してみれば、大統領の憲法に保障された統帥の大権にかかわる事項が、地区の司令官に委任されるなどということは、日本だってアメリカだって考えられないではございませんか。出撃を決定する、これは大統領の権限に属することであって、第三国政府が、たとえ事前協議であろうと何であろうと、これを拘束するなどということは考えられないと私は思うのでございますが、できるのですか。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 事前協議によりまして、この条約で約束をいたしております。従いまして、大統領の出撃命令というものは、よそからやってもらえばいいので、日本の基地からは困ると言うことはできるわけでございます。
  120. 岡良一

    ○岡委員 基地からであろうとどこからであろうと、もし極東に局地戦争が起こる、あるいは武力衝突が起こる、その場合米軍が韓国あるいは中華民国との条約に基づいて出動しなければならない。その出動が日本基地から出動しなければならない、最初の武力行使を日本基地から始めなければならないという決定は、これまでの例から見て大統領が下すと私は思う。これをあらかじめ日本政府に相談をして、その上でよかろうという決定になる、戦争というものはそんなのんきなものではないと思うし、憲法上の建前からいっても、大統領の権限、統帥の大権に属する重大事項だ。これが日本政府のウイッシュによって拘束されるなどということは考えられません。アイクの決定で日本基地から出るときでも、そういうことも相談の対象になる確信があなたはあるのか。またそういう確信が持てる根拠が、交渉過程においてあったら、その点率直に、この機会一つお示しを願いたい。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げました通り、事前協議によって話し合いをし、日本の意思、政府の意思というものを尊重するということでございますので、大統領としては、尊重しない前に、日本の基地から飛び出すというような命令を出すことはない。ほかの日本以外の基地からは幾らでも出せると思います。
  122. 岡良一

    ○岡委員 そこにも大きな問題があると思います。聞くところによれば、アメリカは年間三十億ドル近い金を投入して十万の人員を動員して、CIAなり陸海空三軍の情報機関なりあるいは国家安全保障機関が、あらゆる情報を全世界から収集し、これを整理し科学的に分析をして最後の結論に達しておるということを私は聞いておる。ところが日本には、おそらくそういうような情報機関などというものはあり得ない。ということになれば、結局、協議すると言われますが実際は講義を受けるという程度にしかなり得ないのではないかということを私は心配をいたしておるのでございます。いずれこれはまたあとあと問題として他の機会十分審議されるでございましょう。  そこで私は最初に申し上げました、このような局地戦争に核兵器が使用されるのではないかという点でございます。この点が一番心配なのでございます。先般この委員会の公聴会で、ある公述人が具体的な事実をあげて、すでに日本週辺においていわば核兵器原子戦体制に対する準備が着々と進められておるのであるということを指摘しておられました。あの事実について、防衛庁長官としては肯定をなさいますか。
  123. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この間ある公述人が、日本の自衛隊においても小型核装備をしているかのようなことを言われたふうに私聞いています。日本ではそういうことは絶対にございません。日本の週辺におきまして、アメリカの軍においてやっておるか、やっておらないか、こういうことははっきりいたしません。はっきりいたしませんが、まあ想像されるところは、ある程度核の装備もしておるというふうに考えられます。
  124. 岡良一

    ○岡委員 私は公述人の陳述をそのままに申し上げるのではございませんが、それでは具体的に新聞紙などで報道されておる事実について、その有無を一つお聞きをいたしたいと思います。  第一は韓国、台湾、沖縄、ここにはすでにナイキ・ハーキュリーズがあるということであります。これは核弾頭を持つことができます。それから第七艦隊は、これは司令官が何回も言明しておるのを、私は新聞紙上で拝見をしておるのでありますが、原子爆弾を投下し得る、あるいは核爆雷を投下し得る艦載機を持っておるということです。それから日本にいるアメリカの作戦空輸師団はハワイからいわゆる原子装備の部隊を極東に投入することができる、これが一つの任務になっておる。その上グアムを基地とする戦略空軍がある。こういういわゆる原子戦争への準備が、西側においても着々進められておるということについては、この事実を御承認になりますか。
  125. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のような、原子戦争とその準備ということに定義づけることはどうかと思いますが、原子兵器の装備を、今お話のような地域あるいは艦隊等において持っておる。しかし現実にそれを常時持っておるか、こういうことははっきりいたしませんが、大体今お話のような情勢であるということを申し上げて差しつかえないと思います。
  126. 岡良一

    ○岡委員 なおこの機会に、今度は東側の原子装備でありますが、大陸の沿岸あるいは南樺太にも弾道弾の基地がある。ミサイルの基地が構築されておるというようなことを、しばしば新聞は報じております。先般も二月十五日のアメリカのミサイルズ・アンド・ロケッツという専門雑誌で、沿海州のニコライエフスクにはICBMの基地がある。コムソモリスク、樺太のホロブイスク、コルサコフにはICBMの基地がある、従って三沢、横田、立川、厚木、岩国、板付及び自衛隊の千歳、松島、宇都宮、浜松、小牧等の飛行基地も、その射程距離におさめられておるということが発表になったということを、最近の新聞は伝えております。この筆者は、特派員の記事によると軍事評論家として、特にその道の権威者として高く評価されておる方だということでありますので、私どももこの事実については相当の信憑性があるものではないかと思っておるのでございますが、この点の具体的な事実についてはどのように認識をしておられますか。
  127. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 東の陣営、ことにソ連等におきましては、今お話のようなことを公表しておりません。アメリカの方では相当公表しておる面もありますが、ソ連の方では公表しておりませんから、私どももそれを承知しているというわけには参りません。しかし評論家や新聞等にそういう記事があることは私どももよく知っております。ただ今お話のように日本の飛行基地が、向こうに基地があるとすれば射程内に入ることは事実だと思います。しかしよけいなことかと思いますが、やはりICBMとかIRBMを日本に使う、こういうことは万々一ないものだ、こういうものを日本に使用するということになれば、先ほど申し上げましたように単なる局地戦ではおさまらず、全面戦争に展開するおそれがあるので、そういうものを使う可能性というものは非常に少ないのではないか、こういうふうに私は見ております。
  128. 岡良一

    ○岡委員 いずれにしても、東の側にしても西の側にしても、こうして原子兵器の装備、あるいはそれを発射するミサイル装備というものを事実上進めておるということになれば、万一極東に局地戦争が起こった場合に、それが核兵器を用いる原子戦争にならないという保証はないと私は思う。大いにあり得ると思いますが、防衛庁長官はいかがでしょうか。
  129. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 局地戦におきまして核兵器を使わないという保証はないと私も思います。それが絶無だということはないと思います。しかし、むしろ局地戦が不幸にして起こるといたしますならば、やはり核兵器は使わない公算の方が多い。現にイギリスのこの間の国防白書等を見ましても、局地戦が起きるとするならば通常兵器によって戦われるだろう、こういうふうに見ておりますし、私どもも先ほど申し上げましたように、局地的な紛争が起きた場合に核兵器を使用していくということに相なりますと、どうしてもこれは全面戦争、世界戦争に波及するおそれが非常に多いので、これは両陣営とも差し控えるようなことで今進めておるのではないかというふうに考えられます。でありますので、局地戦におきまして核兵器を使わないという保証はありませんけれども、使う公算は非常に少ない、こういうふうに見ております。
  130. 岡良一

    ○岡委員 英国の例を引かれましたが、なるほど英国は在来兵器重点という方向転換をしております。御存じの通り、英国はもしヨーロッパに核兵器の戦争が起こったら壊減をするという、いわば認識の上に立って、また同時にいま一つは経済的な事情もあり、アメリカとの原子兵器の協力もでき上がったというもろもろの事情から、予算面においては核兵器予算より在来兵器予算に転換しておる。だから英国の例を直ちにお引きになることも妥当ではないと思う。むしろ日本が引くならば、英国の経験に学ぶべきだと私は思う。そこでたとえば現に一昨々年、一九五七年十月フォーリン・アフェアーズで、なくなられたダレス国務長官は、局地戦争においても核兵器の使用をすべきである、そのためには核兵器の供与をすべきであるというような意見を発表しておられたことは、これも御存じだと思う。たまたまこれと符節を合するように先般アメリカのアイク大統領は、原子力法の思い切った改正を発表せられておる、国会通りませんが。一昨年潜水艦等についての若干の機密情報を英国に与えるという改正をして、今度は連合与国に対しても核兵器そのものを供与しようというような原子力法の改正をしたいという意思を漏らされて、今相当アメリカで問題になっているようです。しかしダレス長官のあの論文といい、また原子力法改正によって核兵器の連合国への供与に踏み切ったという、このアメリカの政策の大転換というものは、アメリカ政府自体が局地戦において核兵器をいよいよ使用しようという意思に傾いてきたものと私は判断せざるを得ない。従って万々あるまいではなく、きわめて核兵器の使用はあり得る、こう私は判断をせざるを得ないのでございます。あらためて局地戦争における核兵器の使用見通しについて、長官の御所見を承りたいと思います。
  131. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 アメリカが自由国家群に基地を持ち、あるいはまた核兵器を供与する、これは全面戦争抑制力としてのIRBM等の基地、そういう面では非常に進めておると思います。しかし局地戦争に核兵器を使うために連合関係の国々へ供与するということではなかろうと私は思っています。やはり御承知のように、核につきましては、非常に厳重な管理をいたしております。でありますから、核を使うことができるような装置をいたしましても、核弾頭とか、そういうものに対しましては厳重な管理をして、それを容易に使わないようにしておるのが現状だと思います。そういうことから考えますならば、局地戦争があるのだ、局地戦争に核兵器を使うのだということではなくて、やはり局地戦争を起こさせたくない、そのために核の供与ということもあり得るけれども、これは戦争を起こすためでなくて、戦争を起こさないためだ、こういう考え方でなかろうかと思います。それを使うことが人類に対して容易な問題でないというような観点から、それを現実に供与しても使わないようなことにしたいという意図であるというふうに私は考えます。しかし、何にいたしましても、これはアメリカ考え方でありますから、私がいろいろ注釈してもそれは当たっておるか当たっていないかわかりませんが、私はそういうように考えております。
  132. 岡良一

    ○岡委員 赤城アメリカ国防長官の高説をも拝聴したわけですが、しかし御存じのように、もう核兵器といってもだんだん小型になってきておる。経済性というものを無視すれば、一キロトンの核兵器でもできるとさえいわれておる。しかも、サイドワインダーS式のように、もう小規模のミサイルでも核兵器を装備できるというふうにどんどん進んでおるわけです。いわば在来兵器化しようとしておるという傾向にあることはいなめないと思う。従いまして、私はアメリカのこのような原子力法の大改正、連合国に対する核兵器の供与という意図は、将来はやはり局地戦争においても核兵器の投入を予定した政策転換だと判断をせざるを得ない。なお、アメリカの局地戦争戦略については、その理論的な支柱といわれておるH・A・キッシンジヤーなどは、五百キロトンの核兵器までは相手が使うなら使おうじゃないかということさえ公表しておる。キッシンジャーは、個人としてでなくて、十八カ月間もアメリカの科学、軍事、外交のタレントが討議したその討議を集約した結論として申しておる。これはアメリカ政府の国防政策として大きく採用されておるように私は聞いておる。そういう事実を総合してみると、局地戦争における核兵器の使用の危険は非常にあると思います。  それから、次には、一体防衛庁はミサイルの計画について、現在どういう計画あるいは見通しを持っておられますか、簡潔にお答え願いたいと思います。
  133. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、有人飛行機がミサイルに移行する傾向は世界的であります。日本といたしましてもやはり防空等の点からミサイルの方へ移行したい、こういう考えをもちまして研究は相当続けてきたわけでありますが、現実の問題といたしましても、先ほどからお話がありましたように、戦闘機に積むサイドワインダー、これはすでに予算も通りまして現実に導入しております。それからこの間からこの予算委員会で問題になりました警備艦に積む地対空のミサイル、ターターというものの装備を考えております。それからまた地上から空に対するミサイルとして、ナイキ・アジャックス、これを導入したい。このためには訓練を必要といたしますので、本年度の予算におきましても四十数人の訓練生を送りたい、こういう計画をしております。それ以上のいろいろなミサイルにつきましては、研究はいたしておりますが、どういうものを導入するかということはまだ検討中でございます。ただ御承知のように核弾頭のついたもの等については、これを導入するというような考え方は全然持っておりません。
  134. 岡良一

    ○岡委員 今言われたナイキ・アジャックスの操作訓練のためにアメリカに派遣をされる自衛隊の諸君でございますが、ナイキ・アジャックスというのはもうアメリカの制式からはずされ、生産もことしで中止になったと私は聞いておるのでございますが、そうではございませんか。
  135. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ナイキ・アジャックスはミサイルといたしましてはあまり進んだものではございません。しかしまだ日本といたしましてはナイキ・アジャックス程度のものを研究し、またこれはパッケージ・トレーニングというようなシステムによりまして導入もできるということでありますので、今ナイキ・アジャックスを導入したい、そのために訓練をしたい、こう考えておるわけであります。
  136. 岡良一

    ○岡委員 ナイキ・アジャックスを買い込んで、解体をして研究するというのなら話はわかりますが、もうすでにアメリカでは制式からはずされ、生産が中止されたナイキ・アジャックスの操作訓練のために、自衛隊の諸君が行かれるということになると、将来古いナイキ・アジャックスというミサイル、いわばアメリカではもはや使用にたえなくなったものを買おうというお考えなのか。それとも核装備、核弾頭をつけることのできるハーキュリーズのようなものの操作訓練でもされるのかという点を、私は疑わざるを得ないのでございますが、いかがでございましょう。
  137. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ナイキ・アジャックスをまだ使っている部隊がアメリカにあります。ハーキュリーズの方に相当変わっておるようではございますが、まだ使っています。それを買うのか買わないのかということでございますが、まだはっきり交渉はいたしておりませんけれども、訓練が済みますと一つのパッケージ・トレーニングといいますか、供与の形でこれを渡されるというような制度にもなっておりますので、十二分に日本としては用が足りると考えられます。核弾頭はつけられないナイキ・アジャックスのミサイルの導入をしたい、こういうふうに考えております。
  138. 岡良一

    ○岡委員 内閣調査室で監修された「国際情勢資料」の最近号にこういう記事が出ておる。「安保条約はバンデンバーグ決議を織りこむことになっているが、同決議は米国と相互援助関係を結ぶ国にたいして、近代戦を遂行するのに十分な軍事的能力を保有することを要求するものである。つまり、日本も核兵器保有国にならなければならない、ということを意味するものと考えられる。」これはロバーツ記者の想像でございます。また岸総理も憲法上は小型の核兵器ならばその保有も差しつかえはなかろうという意味のことを先般横路委員に答えておられる。しかもこうして日本もどんどんミサイルを開発し、またミサイルを買い込んで日本の周辺には原子力戦体制が事実上進められていっておるというような状況の中で、私どもは日本が局地戦争に巻き込まれ、またそれが原子戦争であるということが万一にも起こったならば、それは大へんなことだということを真実心配をいたしておるのでございます。  そこで中曽根原子力委員長もおられますので私は重ねてお伺いをいたしますが、午前中の質疑応答を聞いておりますと、条約法律に優先するというような御意見も出ておりました。一般的な通念としては私もそういうことは承知しておりますが、日本には原子力基本法がある。原子力基本法では原子力の研究開発は平和目的に限るとはっきりうたってございます。従って政府の政策としてではなく、原子力基本法の存在する限り、いかにバンデンバーグ決議に従って日本の軍事的能力を増強しなければならないとしても、日本が核兵器を持つことは許されない。研究開発その全野にわたって、原子力の平和目的、従ってノン・ミリタリーでございますから、絶対に軍事的目的には利用してはならないという信念を持っておられるかどうか、この点を私は原子力委員長と防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思います。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 原子力基本法によりますと、日本における原子力の研究利用開発等は平和目的に限ると書いてありますから、日本政府日本の機関等が行なう場合には、平和目的だけに限定されて、軍事目的に行なうことは現行法では許されていないのであります。
  140. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 中曽根長官が答えた通りであります。バンデンバーグ決議によって増強するということは、核装備というようなことではないと思います。日本憲法上の制約というものは安保条約にもうたわれております。しかし先ほど申し上げましたように、憲法上の解釈としてはいろいろありますけれども、とにかくそういうこともありますし、今の平和利用という法律上の規定もありますので、そうい点で中曽根長官の答弁のように、核兵器を装備したり持ち込ませないということは当然だと思います。
  141. 小川半次

    小川委員長 岡君、通産大臣に御質問があるのですか、あなたの持ち時間があまりないのですが……。
  142. 岡良一

    ○岡委員 実は今ミサイル計画について防衛庁長官から承りました。これもある雑誌の記事でございますが、実はこういうことがうたわれておるのでございまして、この点について通産大臣の御所見をこの機会に承っておきたい。  防衛産業研究会というものがあることは御存じの通りであります。これが防衛庁装備品の長期国産化計画を練って、昨年中間報告を発表しておる。この数字を簡潔に申しますと、アウト・ラインだけを申しますれば、防衛庁の第二次装備計画の最終年度における軍需生産の総額は千四百二億円、三十四年度の推定が五百六十五億円、計画初年度の七百四十二億円の倍増を予定しておる。この中で主力を占めるものは航空機部門ではあるが、四十年度をピークとして航空機部門は低下する、そしてミサイル部門が三十八年度から急激なカーブを伝って上昇する、こういうことが数字をもって示されておるわけでございます。こういう形で、しかもこのミサイルの調査のために三月には防衛産業界の代表がアメリカ等へ出張される、それには通産省の川田航空機武器課長も帯同される、こういう事実があるのでございますが、私はこういう事実に即して考えますことは、むしろ日本の防衛計画の推進者がだれであるかということ、なるほどこの中間報告は防衛庁とは無関係なものではございましょうが、しかし作業の過程においては緊密な共同があったことは私はいなめないと思う。それに、そのための調査団に通産省の航空機武器課長が帯同していかれるということになると、ミサイル計画の推進力は通産省ないし防衛産業界ではないか、局地戦争の推進者は日本の防衛産業界ではないかという印象を受けるわけでございます。この点について通産大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  143. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ミサイルに関する研究は高度の技術水準であって、一般産業の技術向上に非常に役に立つとわれわれ考えておるのであります。従いましてミサイルに対しまする研究は民間においても相当始めております。従って三月の二十日に予定しておりますのは、民間の十二、三社の関係者がアメリカあるいはヨーロッパ各国を回りまして、ミサイル産業についての研究をしよう、こういうことであるのであります。従いまして通産省はその計画に即応いたしまして、各業界の代表者と通産省の航空機武器課長を一緒に視察に二カ月間の予定で行かすつもりでおります。
  144. 岡良一

    ○岡委員 お約束守って質問をこれで終わります。     …………………………………
  145. 小川半次

  146. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は二点だけ質問をいたしたいと思います。第一点は、ILO条約八十七号批准国家公務員法並びに地方公務員法との関連について。第二点は、公務員の給与の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  そこで、ILO八十七号の批准をするためには、どうしても公労法四条三項、すなわち職員でなければ、組合の役員または組合員になることはできないという規定が現在ありまして、この規定の削除が要望されておるわけでございますが、公務員関係におきましては、職員でなくても職員団体の役員または組合員になれるのでしょうか。この点をお聞かせ願いたい。
  147. 松野頼三

    ○松野国務大臣 現行の国家公務員法の解釈にはいろいろな問題がございます。ただし基本的には八十七号条約国家公務員にも及ぶわけでございます。
  148. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現在国家公務員には職員団体の登録制度がありまして、職員でなければその役員または職員団体の組合員になることができないということが実質上行なわれておる。その登録制度というものは、国家公務員法のどこにも私はその精神を見出すことができないのですが、一体どの条文の適用を受けてそういう登録制度がしかれたのですか。
  149. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 お答えいたします。その点に関しましては、御承知通り人事院が解釈の権限を持っております。人事院から説明いたしたいと思います。
  150. 小川半次

    小川委員長 それでは多賀谷君、人事院の者を今要求していますから、来るまで他の部門にわたっての御質疑を続けていただけませんか。
  151. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし給与と両方とも人事院ですから——来てないのですか。
  152. 小川半次

    小川委員長 あなたの要求には人事院の方の要求がなかったのです。
  153. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 人事院は政府でないという話ですから、だれでもけっこうです。一つ答弁願いたい。
  154. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。これは国家公務員法の九十八条の人事院の定むる手続に従い、それによって登録に関する人事院規則が制定せられておりまして、それによってやっておるのでございます。
  155. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは交渉の場合に「人事院の定むる手続に従い、当局と交渉することができる。」と、交渉の場合ですよ。
  156. 淺井清

    ○淺井政府委員 その交渉の条件として登録を要する、こういう広い意味法律を解釈いたしております。
  157. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 登録制度は、いわば団結権に関する問題でしょう。登録しなければ届出ができないですよ。そうするとその存在が認められないというわけになるでしょう。一体どこの条文なのですか。
  158. 淺井清

    ○淺井政府委員 人事院は適法に登録の申請をされたものを拒否したことはございません。
  159. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は制度のことを言っておるので、適法であるか違法であるかはどういうことで区別されますか。
  160. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいまの現行法におきましては、公務員の職員団体は職員のみに限るという原則だけがございますので、非職員を含みません場合は、これはもはや適法と認めております。
  161. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その職員団体は職員のみに限るという規定は、どこでありますか。
  162. 淺井清

    ○淺井政府委員 九十八条の最初にありまする「職員は、」ということでございます。
  163. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういうことを書いてないです。「職員は、組合その他の団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」これは非職員であれば職員団体の構成にならないということが書いてない。公労法には書いてありますよ。地公法にも書いてあります。そういう規定は国家公務員法にはないですよ。どうして法律に根拠のない、そういう手続をとられたのですか。
  164. 淺井清

    ○淺井政府委員 九十八条は職員のみの団体であるという前提でこれまで解釈を統一して参っております。公労法はそれを一そう明確にするためにおくれてそこに入っておるのでございまして、その趣旨は相反するものとは認めません。
  165. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では今まで——従来と言われましたが、従来ずっと法律が施行されてから、制定されてから、そういう解釈でしたか。
  166. 淺井清

    ○淺井政府委員 御説の通りでございます。
  167. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は労働問題懇談会の国際労働条約委員会の議事録を提示したい。これはすなわち国家公務員法ができたときは、職員でない、非職員の者が入ってもいいということを人事院は言っておった。当時人事院はそういう解釈を流したことがある。国家公務員法には、その制定当時人事院が出した解釈の中には、職員のみに限定した趣旨でないことをしばしば言っておるのですよ。それは政府の役人が国際労働条約委員会で言っておる。一体どういうわけですか。
  168. 淺井清

    ○淺井政府委員 御指摘のところはその条文のもう少しあとにあります、みずから代表者を定めて——そのところの問題だろうと思います。
  169. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ついでに読んでみますと、これは結局最初できた当時は、職員でなくとも役員に入れたわけです。ところがその後——この飼手審議官の説明によりますと、その後司令部から圧力がかかって、解釈を急速に変えたのですよ。そういうことがはっきり書いてある。国家公務員法ができたときは、非職員でもよかったということを、人事院みずからしばしば言っておったのですよ。ところがその後、司令部の圧力によって急速に解釈を変えざるを得なくなった。そこでこれを変えて、今の登録制度というものを作ったのです。でたらめを言わないで下さい。これは違いますか。
  170. 淺井清

    ○淺井政府委員 御指摘のところは、「代表者を自ら選んで」、つまり交渉の代表者等になる人が非職員であることを認めていたというならば、われわれはそういうふうなことがあった。後に至りまして、これは組合員のみに限る、こういう解釈をとったことは事実でございますが、構成員そのものについては、私の記憶では終始一貫していたと思います。
  171. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは両方のことを言っているわけですね。すなわちこの役員の場合も組合員の場合も、両方言っておるわけですよ。そうしますと人事院の方は、最初交渉相手については組合員でなくともよかったわけですか。すなわち交渉相手というのは、組合の役員であれば、それは非組合員でもよかったのですか。
  172. 淺井清

    ○淺井政府委員 御指摘の文書はだれが言ったのか存じませんが、私の言っていることをお信じ願いたいのですが、ただいま御指摘のところはその通りでございます。
  173. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 人事院が勝手に解釈を変えるということはけしからぬと思う。法律を直さないで、解釈だけ変えて、そうして手続を変えていくというやり方は、私は言語道断だと思う。現行法では、当然公労法の四条三項のような制限は公務員にはないのです。法律はないけれども、解釈で変えて、途中でひっくり返しておるわけですね。そういうことになりますと、一体今までやってきたのは、どういう法律の根拠に基づいてやってきたのですか。
  174. 淺井清

    ○淺井政府委員 解釈を変えたと仰せられますけれども、法律の解釈というものは、変えることもしばしばある。ゆえに裁判所の判例というものも変わることがあるわけでございますから、解釈だから変えてはいかぬということはいかがかと思います。
  175. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 当時の制定者並びに当時の人事院みずからが、そういう解釈をして、非職員でも役員やあるいは組合員になれるのだ、こう言いながら、途中で解釈を変える。しかし法律を変えればいいですよ。私は法律を変えて、立法の手続をとっておやりになるなら言いません。しかし勝手に解釈を変えるなんということはけしからぬ。しかも百五十万という相手がいるのですね。国家公務員だけでなくて、地方公務員も同じですから。ですから、そういったことをやること自体が、政府並びに人事院に対する不信の念を公務員に植え付けるわけです。一体官房長官は、こういう解釈を勝手に変えるということに対して、どういうふうにお考えですか。
  176. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 浅井人事院総裁の方の意見に私は賛成であります。
  177. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が言っているのは、政府みずからが、労使の正常なる運営の慣行をやるのだと言いながら、勝手に法律の解釈を変えるようなことではどうなりますか、こう言っておる。ですから、これは公務員に不信の念を抱かしておるのだ、人事院というものはこういうことをするのだ、こういうふうに植えつけておるがどうか、こういうことを聞いておるわけです。浅井さんは答弁してないです。
  178. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 間違いを是正する場合もありましょうし、それから時勢の進展に沿う意味において、それから関係者の利益を十分考慮して解釈を変えるということは、一向差しつかえないと思います。
  179. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今度はILO八十七号を批准するわけでしょう。そうすると今度は国家公務員法は、この点においては解釈を変えれば、何も改正する必要はないのですね。どうですか。
  180. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 解釈を変えるのも限度がありまして、そうむやみに解釈を変えて国民を惑わすというようなことは、もちろんいけません。それはおのずから限度があるだろうと思います。  それから今度のILO条約批准に伴って、公務員の地位、身分がどうなるかという問題については、きわめて重大な問題でありますので、ただいま慎重に検討中であります。
  181. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 人事院総裁にお尋ねしますが、あなたも、法律ができた当時とその解釈を変えて、扱いを変えられたわけですね。ですからもとに返せばいいのですよ。立法当時に返せば、ILO八十七号は何ら抵触しないのですね。これはまた変更されますか、どうですか。
  182. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えの点はいろいろ問題を含んでおると思うのです。しかも重大な問題が含まれておる。第一の点は、非職員が組合員になれるかという問題。第二には、組合員は職員に限るけれども、代表者は非職員でもよろしいという点があると思うのでございます。この点につきましては、これは国家公務員法のみならず、地方公務員法にも及ぶ問題でございますから、政府においては今慎重に考慮中であると承知しております。
  183. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ILO八十七号条約の問題が出てからもう二、三年になりますよ。政府批准をする、国内法を整備するのだということを言明してから、一年以上になる。しかるにまだ国家公務員法の関係がはっきりしないなんということがありますか。一体どういうわけですか、官房長官。
  184. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 ただいま申し上げましたように、きわめて重大な問題でありますので、研究中であります。
  185. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはもう批准をするのだということを言明するときに、検討しておかなければならぬでしょう。一体公務員というのをどういうようにお考えになっているのですか。公務員は、もうILO八十七号条約の適用を受けさす必要もないし、もうこんなものは争議権もなくなっておるのだし、協約締結権もないのだ。だからもうじたばたしないからほうっておいたっていい、こういうお気持ですか。
  186. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 そういう投げやりな気持は一つもないです。いろいろ関係法令等の整備も必要であります。なお、公務員の問題をどっちにきめるかという問題に派生して、いろいろな関係、影響を生ずることがありますので、それらの問題を総合的にただいま研究中であります。
  187. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長官、いつまで研究されるのですか。とにかくこれはもう二年前から、少くとも政府が八十七号条約批准すると言明したときから、決定しておかなければならない問題です。それを今になって、まだ研究中であると言う、それは条文の若干の技術上の修正あるいは整理なら別です。基本方針もきまらぬということが一体許されるでしょうか。どうです、長官。
  188. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 研究中の経過につきましては、ただいまこの場所で申し上げる段階に達しておりません。
  189. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、まだ本委員会も相当ありますし、関係委員会もありますから、さらにこれは追及いたしたいと思います。  そこで私は公務員の給与について、ことに人事院勧告に関連して質問いたしたいと思います。  まず第一に、人事院は公務員の給与をきめる場合に、何を基準としておきめになるのですか。
  190. 淺井清

    ○淺井政府委員 お尋ねの点は、公務員法に明記してございまして、民間賃金、生計費その他の要素を考慮してきめることになっております。
  191. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では私は、昨年勧告をされました人事院勧告について質問いたしたいと思いますが、御存じのように国家公務員は労働協約の締結権を持たない、すなわち協約を結ぶことができないという点は、現在の公企労の労働者と違うわけです。同じ公務員でも現業の公務員として扱われている人々とはまた異なる。それだけに私は人事院の任務というものは重大でなくてはならぬと思うのです。いわば人事院というのは、公務員の味方として政府に対して勧告をしなければならぬ。それが最近は、中立どころか、あるいは公正どころか、政府の隷属機関のような調査方法をなされておる。その一例をあげますから御答弁願いたい。第一には、民間給与の調査をいたします場合、その調査対象に、民間の場合には臨時職員とか臨時労働者を含んでおる。ところが公務員の場合には定員内職員だけを対象にしておる。それで比較しておる。一体これはどういう理由ですか。民間が臨時職員あるいは臨時労働者を含めておるならば、当然給与の低い定員外職員も公務員においては含めるべきです。しかも定員外といいましても常勤です。これが七年も八年も放置されておる。一体どういうようにお考えですか。
  192. 淺井清

    ○淺井政府委員 一番先に仰せられたことにお答えいたしたいと思いますが、なるほど人事院は公務員の保護機関で、団交権を奪われた者の味方であるべきは当然でございますけれども、また公務員の給与というものが国民の租税でまかなわれておる、つまり人事院の勧告は、一般国民、納税者を満足せしめなければならぬというように思っております。そこでわれわれとしては、十分その点を考慮して勧告いたしておる次第でございます。  第二点といたしまして臨時工云々のお話がございましたが、実はこれは申しわけないのでありますが、誤まって調査表の中にさようなものが追加されておりますけれども、実際の指導におきましては、そういうふうなものはなるべく入れないようにやったつもりでございます。でございますから、実際の結果といたしましてはさような不均衡は生じていないように思っております。
  193. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 長い間役人生活をされておる官房長官、大蔵大臣にお聞きいたしたいと思うのでありますが、率直に言って今の公務員の給与は高いと思いますか、安いと思いますか。
  194. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 高いか安いかというお尋ねでございますが、私も官吏をやめて十年になっております。従いましてちょっと感じが出ておりません。
  195. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 給与の問題につきましては、大体人事院の方に研究、調査をおまかせいたしまして、信頼してその勧告の線に沿うてやっておりますので、その点を御了承願いたい。
  196. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は感じでけっこうですから、安いか高いか、どういう感じを持っておられるかということを聞いておるわけです。率直に御答弁願いたい。しかし低いと思うけれども、国家財政上そうはいかぬという話ならばまた別です。しかし、長い間役人生活をされておる方々が現在の公務員の給与を見て、大体感じはわかるはずです。ですからそれをお答え願いたい。——答えにくかったら時間がありませんから、次の質問を続けたいと思います。  そこで今人事院総裁は、なるべく臨時職員とか臨時労働者とかは民間の分は含まないようにしておるのだと言われましても、三十四年の三月一日から三十一日までの職種別民間給与実態調査要領というのは、ちゃんと含むようになっておるのですね。含むならば、一方の定員外職員の方も含めなければバランスがとれません。民間の臨時職員あるいは臨時工員あるいは臨時労働者というのは、非常に賃金が安いのです。御存じのように臨時工問題といわれておるけれども、これは賃金が非常に安い。これを一方においては膨大にかかえながら、一方においては定員内だけを対象にしておる。これは全くバランスのとれていないものだと思うのですが、もう一度御答弁願いたい。
  197. 淺井清

    ○淺井政府委員 先ほどお答え申しました通り、それは実は当方の手落ちでありまして、調査表にさような文句を入れたために、さようにお考えになっておると思いますが、実際の指導におきましてさようなものは入らないように十分注意をいたしておりますので、そんなにたくさんは入っていないと思います。そこで今年度はさようなことがないように厳重にやりたいと思っております。
  198. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、勧告が低い額でなされておるという一例を、さらに調査の分析において述べてみたいと思います。  なぜ三月の時点を基準にされておるか。三月というのは非常に問題の月なんです。なぜかといいますと、民間は月給者だけではありません。ですから民間は二月の給料がほとんど三月に支払われるのです。二月二十八日しかない、本年は二十九日ありますけれども。ところが官公労の方は御存じのように月給制がほとんどです。ほとんど月給制でしょう、ですから三月に三月分の給料が支払われる。二月はどの統計をとってみましても、労働省の統計をとってみましても、非常に給与が低い。すなわち三月に支払われる給与というものは低いのです。なぜ三月をとらえておるか、ここに私は一つの大きな問題があるのではないかと思います。
  199. 淺井清

    ○淺井政府委員 御説の点はまことにごもっともだと思っております。この三月の統計をとりますことは、八月に予算が編成されるというところから逆にきておるのでありまして、人事院が勧告いたしましても予算編成期に間に合わなければだめだという声がありまして、そこで七月に勧告をいたす。そうするとどうしても四月では間に合わぬ。三月とこういうことになるのでございます。ところがただいま御指摘通りでございまして、三月は、どうも日数が少ない二月のが三月に払われてきますために、低くなるのでございます。これはあたかも人事院が故意に低いところでとっておるかのような誤解を与えておりますので、今年はこれを二月にするか四月にするかということは目下研究中でございまいます。
  200. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 故意にしなくても、統計のとり方が私は非常に低目に低目にとるような統計の仕方をされますと、何かしらん給与を安いと思うのだけれども、内閣や国会に答申があるときには、大して民間と差がないではないかというようななにが出てくるわけです。たとえばこれは労働省官房の統計調査部から出た労働経済資料ですね。本年のだけを見てみますと、昭和三十四年の二月です。これはほとんど一月分の給与が二月に支払われるのです。きまって支給する給与、常用労働者、これを見ますと、二月が一万八千二百十八円、ところが三月になりますと逆に下がっている。下がって一万七千八百九円、四月になりますと逆にふえて一万八千四百三十八円、そしてずっとふえて参りまして、本年十一月には一万九千四十九円、一万九千円台に上がっております。そうしますと三月と十一月というのではここに千二百円くらいの差が出てきておる。ですから人事院は三月が低いということは、これは専門家ですから知っている。しろうとがやっているのではないですから。なぜ毎年三月をとったか。しかも何年間、いつも三月をとっているわけですね。一体どういうわけですか。私は故意にしか考えられない。
  201. 淺井清

    ○淺井政府委員 さいぜんお答え申し上げましたように、人事院は公務員法二十八条で毎年一回どうしても報告及び勧告をしなければならぬ。その一年は前の勧告から一年という解釈は、これは変えておらぬのであります。そこでそういたしますれば、どうしても毎年三月になるのでございまして、何も故意に低いところをとっているという趣旨ではございません。しかし御趣旨もごもっともでございますから、今年度はどこにとるか一つ研究させていただきたいと思います。
  202. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 給与の時点を三月に調査するというのは、二月の日数が少ないというだけではありません。これは民間の賃金がアップされるのはほとんど四月からです。ですから三月という時点は一年間に一番低い時点です、実質的に。こういう点に時点を合わすということは、しかも公務員の方は月給制ですからね。ですから私は非常に問題があると思うのです。一体この点について給与担当の関係では総務長官、どういうようにお考えですか。
  203. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 調査の時点を三月にするということにつきましては、いろいろ御指摘通り、いろいろの問題があろうと存じます。しかしその点につきましてはただいま人事院総裁お答えした通りの事情があろうと思います。
  204. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それでは本年度から改められることを期待して、次の質問に移りたいと思います。  さらに分析に誤っている点は、五十人以上の規模別の事業所を民間の対象事業とされておる。ところがいわば高給者といいますか、少し高いレベルの方は、五百人以上という企業の規模を対象にして点をとられているわけですね。そこに私はやはり問題があると思うのです。率直にいいますと、五十人以上というところの労働者の質、たとえば年令であるとか勤続年数であるとかあるいは学歴であるとか、いろいろなものはこれは現在の国家公務員とは層が合わないのです。それを五十人以上で大体とられておるところに問題があるのではなかろうか。一方高級官僚といえば語弊があるかもしれませんが、上の方は今度は逆に五百人以上とられている。こういった点私は矛盾をしておるのではないかと思いますが、それについて御答弁願いたい。
  205. 淺井清

    ○淺井政府委員 今のお尋ねの五十人ということでございますが、これは五十人くらいの会社ならちっぽけなものではないか。そういうところを比較してどうかと仰せられますけれども、この五十人というのは事業所でございまして、会社自身意味していないのでございます。従いまして大きな会社の支店とか工場がありますれば、それが五十人以上でありますればそれも入っておる。従って五十人限度の会社もあればそれ以上のものも入っておる。これはおそらく半々もしくは大きな会社の支店の方が多いのでございます。でございますから五十人くらいなものと公務員の給与を比較しているということにはならないと思っております。  それから第一に、官民の比較をいたしまする場合には、やはり職務と責任に合わせて比較をいたしておるのでございまして、その職務と責任に合わせまする以上、これはだんだんと違いが出てくる。それから学歴、勤続年数もそれはちゃんとあとで一定の方式を用いて調整をとっておりまするから、決して民間を低くとっているということにはならぬと思います。  なお高級官吏のことを仰せられましたけれども、実はずっと上の方の公務員は、最近二年間何らの給与改善がなされていないということをつけ加えておきます。
  206. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はいわば高級官吏といわれる人が給与が高いということを言っておるのではないのですが、その調査方法が間違っていはしないか、こういうことを言っておるわけです。事業所はなるほど経営規模とは違います。しかし現在五百人以上という事業所をとるか、五十人以上の事業所をとるかによって、給与の差が非常にあるということは御存じの通りであります。ですから私は経営規模を言っておるのではない。しかし事業規模でも、これは五十人以上というのは、一方において五百人以上をとるならば、なぜ同じにしないか。あるいは一方において五十人以上をとるなら全部五十人以上をとらないか、こういう点についても非常に疑問を持っております。  さらに続いて、同じように民間との比較において今まではフィッシャー方式という、これは専門的になりますが、方式をとられておりますね。そうしてラスパイレスというのを今度は採用されておる。ところがあなたの方で——これは給与局長ですか、瀧本さんというのは。あなたの方が書かれている本には、要するにこのラスパイレスというのは低いのだ。だからフィッシャー方式をとった方がいいのだということを言っておる。ですから本年になって、がらっと変わっておる。こういう点も私は問題じゃないかと思う。  さらに次に私は質問いたしたいのは、期末手当です。これはきわめて私は不合理だと思うのです。なぜかといいますと、この出す根拠、期末手当を勧告されておりますが、その勧告によりますと、民間では昭和三十三年度において平均月額の二・九一カ月が支払われておる。だから〇・一カ月を増額する必要がある、こういうことなんですが、第一には私は時期の問題です。民間は昭和三十三年に払ったでしょう。ところが、今勧告が出されたのを政府実施しようとするのは昭和三十五年ですよ。二年間のずれがある。少なくともどんなに早くしても二年間のずれがあるのでしょう。あなたのように七月の十六日に勧告されたのでしょう。そうすると六月に払えというのですから、その年は払いようがないというので、政府はそれをいいことにして三十五年度の六月、こういうことですから、そういたしますと二年間のズレがある。この二年間のズレはどうしてカバーするのですか。総務長官、どうですか。
  207. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 従来勧告の時期と実施の時期の食い違いにつきましては、いろいろ問題がございます。期末手当の問題が出ましたが、この点も一応関連性があるわけであります。しかしこの点は財政上の当該年度における調達の問題その他等がありまして、どうしてもズレが来ておることは現実の通りであります。
  208. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その勧告の仕方について人事院総裁、どうですか。
  209. 淺井清

    ○淺井政府委員 勧告の仕方と仰せられますれども、人事院といたしましては、勧告はできるだけすみやかに実施していただきたいということになっておるのでございます。ただ実際問題としてこれが御指摘のようにおくれている。これは私としてはまことに遺憾だと思っております。
  210. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 公務員の給与は民間の賃金とその水準においてきめるというのですが、民間は上がっていますよ。昭和三十三年から三十五年に比べれば二年間のズレがあるのです。ですからあなたの方はこの勧告が三十五年度に実施されると考えるならば、その二年間を推定しておやりになるのが当然でしょう。三十五年度に二・九をもらっても、三十三年度の民間とやっと均衡を保つのですよ。どうですか。
  211. 淺井清

    ○淺井政府委員 民間は上がっていると仰せられておりますれども、その上がり方には二つある。第一はべース・アップで上がっている。第二は定期昇給で上がっている。これは公務員におきましても同様でございます。ただいま国会に出ております給与法の改正案においても中級職員その他は上がるのでございます。べースは総平均でございますから、中級職員が上がればべースは上昇するということでありますから、これはべース・アップといえばべース・アップになる。ただ御希望のような一律べース・アップではないということであります。一律べース・アップをとるかどうかは、これは人事院というものがあります以上、われわれの判断にまかしていただくより仕方がないと思っています。
  212. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総裁は私の質問を十分理解して答弁をされておるのか。そうとすれば私は不届きな答弁だと思うのですよ。あるいはあなたは給与というものをお知りにならないのか。なるほど私は月額の二・八であるとか二・九という議論をしております。そこでベース・アップというものは平均給与ですから、同じ〇・一でも違いますね。そのことは私は定期昇給であろうとべース・アップであろうとよく承知している。ところが現在の傾向はどうかというと、あなたの方が指摘されておるように、昭和三十二年度には民間においては二・八七であった。昭和三十三年度においては二・九一であった。すなわちその月額の内容はともかくとして、支給月数が違っておるのです。それを言っておるのです。私は内容のことは当然前提として承知しておるわけです。あなたの方の調査でもずっと月数が違っておる。それを言っておるわけです。三十五年度は一カ月の内容も違うけれども月数も違ってくるはずではないか、こういうことを私は質問しておる。
  213. 淺井清

    ○淺井政府委員 ちょっと言葉が足りませんでしたが、ただいま期末手当がおくれるではないかという御指摘であるのでございますけれども、そこで期末手当といわず給与の改善一般といわず、同じことであるという意味お答えをしたわけでございます。でございますから、それの実現がおくれていることは遺憾であると私は期末手当も含めて申し上げているわけでございます。
  214. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間があまりないので、どうも理解をされないままで答弁で逃げようとされているような気がするのです。私は今後さらに追及していきたいと思うのですが、当然人事院としては今の経済の趨勢、ことに所得倍増論を政府は言っているのですから、消費水準が上がると言っているのですから、そういう傾向を見ながら、やはり三十二年が二・八、三十三年が二・九という上がり方をしているのだから、三十五年にはこのぐらい上がるだろうということを推定して勧告をすべきではないか、こういうことを言っているのですよ。
  215. 淺井清

    ○淺井政府委員 先を推定して適切な勧告をしろ、こういうことに帰着すると思うのでございますが、この推定は非常に危険でございます。私といたしましては、ことに民間は景気変動が激しいところでございますから、公務員の給与のように安定はいたしておりません。そこでさような推定はできないのであって、人事院の勧告が国民の納得を得るためには科学的でなければいかぬと思いますから、われわれといたしましては現実の民間の賃金でやるのであって、推定ではできかねると思います。
  216. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 人事院総裁淺井さんがおられる間は、どうも官民の比較といいましても、あなたのそういう考え方ならば、実際ほんとうの実質的のものは出ませんよ。とにかくずれている。それだけではありませんよ。二・九というのは何かといいますと、職員は三・四五と言っている。民間平均の職員は昭和三十三年に三・四五、こういうことをあなたの方は言っている。工員の方は二・一二だ、こう言っている。ところが給与を比較する場合には、あなたの方は民間の職員と比較している。ところがなぜ期末手当の場合にその単純平均をとっておりますか。単純平均をとっているのはおかしいでしょう。だから公務員の人々は民間の方が給与がいいのだとみんな言っているのですよ。正確なデータは知らないかもしれないけれども、同じ学校を出て、そうして民間の連中と会う。お前どのくらいもらっているのだと言っても、みんな低いというのだ。しかし人事院の方は、いやそんなことはない、民間と合っているはずだ、こう言っている。それは給与のとり方は職員でとって、今度は期末手当のときには工員、しかも算術計算、単純平均をしている。こういうことは言語同断ですよ。数字の魔術でごまかしている以外にない。一体どういう考えか。
  217. 淺井清

    ○淺井政府委員 期末手当のお話でございますけれども、そもそも民間の給与と公務員の給与とを比較する場合には、これはいろいろなことがあるのでございます。第一に、民間にない職種はどうして比較するか。たとえば警察官であるとか税務職員であるとか、そういうものは民間と比較しようがないのでございます。あるいは民間より低いものもあれば高いものもあるわけでございます。ですから結果において大体ここら辺だといって合せるわけでございますから、期末手当におきましてこれを合わせるといったって別におかしくはない。ことに職員だけで比較すると言われますけれども、民間の方でも工員も一緒に中に入れてやっているわけでございます。
  218. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 とにかくこの平均の仕方は単純平均しておるでしょう。こういう平均の仕方は間違っておる。それからさらに私が不思議に思うのは、自衛隊だけは超過勤務二十時間を含んで本俸の中に入れて、そうして給与を出している。一体こういうことが同じ公務員として許されるのですか。どうです、官房長官。
  219. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 防衛庁長官がこの席におりませんが、やはり防衛庁の特別の性格によってしかるべきものと考えますが、よく研究いたします。
  220. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 防衛庁の性格と言いましても、私はやはり防衛庁の予算が臨軍費的な性格があるとかなんとか言われておるのは、こういう点にも出ておると思うのですね。とにかく防衛庁、自衛隊の職員は超過勤務の時間二十時間分を含んで本俸の中に繰り入れて、昨年末その一・九カ月なら一・九カ月を出しておる。そういうところに私は非常な問題があると思う。時間がありませんからこれ以上質問をいたしませんが、私が指摘いたしましたように、どの点をとらえましても、一般民間と同じような給与の均衡を保つといいながら、それだけ差がついておる。私は、これは政府として十分考えていただかなければならぬと思うのです。今公務員の諸君は給与を上げてもらいたいというので、二十五日にはその意思を表明しようという動きがあるそうです。私はこういった際にも、これはやはり長い間の人事院の勧告、その実施についての政府の態度、こういった点がその不満になって現われておる、かように考えるわけです。ですから一つ人事院の方も公務員のことを十分考えて、今言いましたように、単に数字の魔術で国会やあるいは内閣に勧告され答申をされても、われわれはなかなか細部にわたって研究することができないのですよ。しかし私が一、二指摘いたしましたように、それだけの矛盾があるのですから、今後は十分注意をしてやっていただきたい。このことをお願いしまして私の質問を終ります。      ————◇—————
  221. 小川半次

    小川委員長 この際御報告申し上げます。先日委員長に御一任願いました分科会の区分及び主査の選任につきましては、次の通り決定いたしました。  第一分科会、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、経済企画庁を除く総理府、法務省及び大蔵省所管並びに他の分科会の所管以外の事項、主査早稻田柳右エ門君。  第二分科会、外務省、文部省、厚生省及び労働省所管、主査北澤直吉君。  第三分科会、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管、主査綱島正興君。  第四分科会、運輸省、郵政省及び建設省所管、主査岡本茂君。  以上であります。  なお、分科員の配置は公報をもってお知らせいたします。  明二十四日より二十七日まで四日間分科会の審査を行なうことといたし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十三分散会