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1960-02-20 第34回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十日(土曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君       青木  正君    井出一太郎君       岡本  茂君    加藤 精三君       久野 忠治君    櫻内 義雄君       田中伊三次君    綱島 正興君       床次 徳二君    橋本 龍伍君       保利  茂君    三浦 一雄君       水田三喜男君    山崎  巖君     早稻田柳右エ門君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    北山 愛郎君       島上善五郎君    滝井 義高君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    横路 節雄君       鈴木  一君    廣瀬 勝邦君       門司  亮君  出席国務大臣臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 菅野和太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   柏村 信雄君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置の件  昭和三十五年度一般会計予算  昭和三十五年度特別会計予算  昭和三十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。昭和三十五年度一般会計予算外二案の審査のため、分科会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小川半次

    小川委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお分科会の区分、分科員の配置及び主査の選定等につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小川半次

    小川委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  5. 小川半次

    小川委員長 それでは昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。島上善五郎君。
  6. 島上善五郎

    島上委員 私はただいま上程されております予算に関連して、第一には外交防衛問題、第二には岸内閣の三大公約の一つであります選挙法改正問題、第三には労働問題、そして最後に時間がありますれば、地盤沈下対策問題、大よそこの四つの問題について質問をしたいと思います。  一つ冒頭に、答弁される大臣各位にお願いしておきたいのですが、私の質問時間が制約されておりますので、私も簡潔に質問いたしますので、答弁は、御親切なのはもちろんけっこうですけれども、親切が過ぎて焦点をぼかして、今までのようにだらだら答弁されましては、はなはだ迷惑するのであります。一つ答弁は簡潔に焦点についてお答えを願いたい、かように考えます。  まず最初外務大臣にお伺いいたしますが、先般わが党の同僚委員質問に対して、いわゆる極東地域範囲について御答弁がございました。この御答弁最後横路委員に対して政府統一解釈なるものを答弁されましたが、それ以前の答弁とこの統一解釈答弁が違っておることは明白です。また北千島の問題につきましても最初は含むと答えあとでは含まないと答えておる。こういふうにはっきり違っておりますが、一体これがほんとうアメリカとの意見一致を見ておるかどうか。またこの日本解釈国会における答弁が今後にわたってアメリカを拘束し得るかどうかという問題については、はなはだ疑わざるを得ないところがあるのです。そこで伺いますが、この国会答弁されました極東範囲に関する解釈は、いつアメリカ相談をされて意見一致を見たかということをお伺いしたいのです。
  7. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この条約の締結の過程において、いろいろ条約に出てきます問題につきましては、それぞれ絶えず話し合いをいたしてきております。従いまして、どの問題についていつ幾日話をしたというようなことを確定的に申し上げるわけにいかぬことむろんでございまして、条約過程を通じて話し合いをしてきた、こういうことでございます。
  8. 島上善五郎

    島上委員 私は何も何月何日の何時ということを伺わなくともよろしい。しかし少なくともこの極東範囲に関する解釈にしましても、その他のこまかい問題にしましても、調印をする前に相談をされて意見一致をしたことは事実でしょうね。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん調印の前に、われわれが今日まで申し上げておりますように、フィリピン以北日本周辺、そしてそれを含む海域というような観念において一致いたしております。
  10. 島上善五郎

    島上委員 国会答弁は今の御答弁のようなものではなくて、もっと具体的に答弁されております。中国沿岸は含むか含まないか、沿海州は含むか含まないか、北千島はどうかということが質問されて、そうしてこの質問に対して、ここに速記録もありますけれども、私はあえて速記録を読む煩を避けますけれども最初の衆議院の本会議における答弁、参議院の亀田君に対する答弁、この中においては沿海州及び中国沿岸は含まれる、こういう解釈をいたしており、それが後に問題になって、後には含まない、こういうふうに答弁されておる。北千島につきましても、最初は北千島は含むものと解釈しておる。二月八日の横路委員質問に対しては含まないと、こう答弁されておる。こういうような明白な違いがあるのですから、外務大臣は違っておると言われることをおきらいのようですけれども、この速記録を読めば明白に違っているのですから、そこで私どもは前の答えあと答え、要するにあとで訂正された政府統一解釈との間にこれだけの違いがあるのですから、この前の答弁をされたその後、あと統一解釈をされる直前に、アメリカと打ち合わせをして意見一致したというのであるならば信用ができますけれども、そうでないならば、これは信用ができない。そうでしょう。ですから、何月何日の何時ということをお答えいただかなくともよろしいのですが、前に沿海州及び中国沿岸を含む、北千島を含むと答弁され後に、次に訂正される間において、アメリカと打ち合せをされたかどうか、これを伺いたい。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん昨年の答弁においては、私も若干言葉が足りなかった点もこの前ございましたようでございますが、戸叶さんあたりに答弁しておることが大体の真意であったわけであります。そういう意味におきまして、話し合いをして、大体の、先ほど申し上げたような見地に立って統一して、アメリカもそれに異議はないわけであります。先般来いろいろ国会等で非常にこまかい点についてお話がございました。むろんこの条約を締結いたします前に、前提として、われわれは、アメリカ侵略がなければ動かないのだ、しかもその侵略というのは、いわゆる極東範囲内において何か起こったというようなことを考えるわけでありますから、従って、その意味から申しましても大きな違いはございません。そういう関係からいいまして、われわれ実はこまかい点についてお話がいろいろありましたから、その間説明をいたしたわけであります。その説明に対して、特にアメリカ側から異議はございません。
  12. 島上善五郎

    島上委員 私は昨年の本会議、すなわち調印前の本会議答弁と今回の答弁が違っておるということも聞いておりますが、それよりも問題は、この国会に臨んで、この予算委員会に臨んでから解釈の訂正をなさっておる。これはあなたが何とおっしゃろうとも事実なんです。言葉が不十分であったとか、そういう程度のものではないのです。含むということと、含まないということとは白と黒との違いです。はっきりと総理は、きょうはおりませんけれども最初答弁では北千島を含むと言って、その次の答弁では含まないと言っておるではありませんか。これは白と黒との違い、イエスとノーとの違いです。この違いを、最後政府統一解釈なるものをする際に、二時間の予算委員会休憩をして答弁をされた。その休憩中にアメリカ相談をされて意見一致したというならば、われわれは信用ができます。そうでないならば、信用しようにも信用ができない。そうでしょう。統一解釈なるものを決定して答弁される直前アメリカ相談をして、完全な意見一致を見たかどうか、これを聞いているわけです。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん今回われわれとしては、一々の島について、アメリカとこの島はどう、この島はどうと特に話し合いをいたしたわけではございません。従いまして、御質問のありましたようなときに、若干総理としても言い間違いがあった点もございます。従って、統一解釈を最終的にいたしましたものが、政府解釈として了解していただいてけっこうだと思います。同時にそれに対しまして、アメリカ異議はございません。
  14. 島上善五郎

    島上委員 外電の伝えるところによりますと、アメリカ日本国会における極東範囲に関する答弁について、当惑の色を示しておる。アメリカは必ずしもこれと同じ考えを持っていないということを伝えております。今の御答弁だと、私は残念ながらアメリカと完全に意見一致しておる見解であるというふうには受け取りがたいのです。一々のこまかいことについては相談しなかったとおっしゃいますけれども、そのこまかいところが問題なんで、われわれは、極東における国際の安全と平和ということを名として行動する際に、どこで行動するかということが将来非常に大きな問題を残すと思うのです。だから聞いているのですが、それが、アメリカアメリカ解釈日本日本解釈、しかも国会で問い詰められて、その場しのぎのいいかげんな答弁をするということでは、これは信用ができないわけです。一体日本の、いわゆる統一解釈なる答弁で、今後アメリカを規制し、拘束することができますか。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれ申し上げておりますことは、総理答弁されました統一解釈に対してアメリカ異議がございませんから、その意味においてアメリカ一致していると申し上げて差しつかえないと思います。今申し上げた通り異議を申しません。それでありますから、われわれとしては同じような考え方で両者がいるということを申し上げる次第でございます。
  16. 島上善五郎

    島上委員 それでは、政府答弁アメリカがあらためて異議申し出てこないから、それでアメリカも承諾しているものと解釈する、こういうことですか。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りでございます。われわれとしてはアメリカがこういう解釈に対して異議を申しませんから、それで一致している、こういうことでございます。
  18. 島上善五郎

    島上委員 それではせんだっての総理答弁とも違います。先般の淡谷委員質問に対する答弁がありますが、総理は、「合意という形はとらないけれども、完全に意見一致しております。」こう答弁をしているのです。意見一致しておりますということは、両方話し合って意見一致したということであって、日本国会答弁に何も公式に異議申し出てこないから意見一致しているということは、これはほんとう意味における意見一致にはならないと思う。今は言ってこない、今は言ってこないけれども、今後言ってこないという保証がありますか。それから今後この統一解釈アメリカを規制し、拘束するという保証がありますか。保証があったらその保証根拠を示してもらいたい。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理が言われましたように、合意に達していないけれども見解一致しているのだということは、私の申したのと少しも変わっておらないのでありまして、今申し上げた通り、この表明に対してアメリカ異議を申しておらぬのでありますから、一致しておること、むろんでございます。
  20. 島上善五郎

    島上委員 そうなるとこの前の答弁とまた違っているのです。今ははっきりとあなたは相談はしないけれども日本答弁に対して公式に異議申し出てこないから意見一致したものと解釈する、これは日本の勝手じゃないですか。あなたはせんだってはこう言っていますよ。速記録を持ってきてもいいのですが、「いつどこで相談したということは言えないけれども相談をして意見一致を見ました」こう答えているのです。相談をして意見一致を見たのと、日本答弁に対して公式に異議申し出てこないから意見一致したのと、大へんな違いですよ。これはどっちですか。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、原則的には一致しておるわけであります。個々島等についていろいろ御質問がありましたから、総理がそれに対して答弁をされて、それについて特別な異議を申しておりませんのでありますから、当然それは一致していると見て差しつかえございません。
  22. 島上善五郎

    島上委員 それではもう少しはっきりしてもらいたいのですが、あなたは淡谷委員質問に対しては、いつどこで相談したということは答えられないけれども相談をした、こう言っているのです。速記録を持ってきましょうか。はっきりそう言っていますよ。しかるに今の御答弁では、相談はしてない、しかし日本国会における答弁に対してアメリカから事あらためて異議申し出がないから意見一致しているものと解釈する、こういうことでは大へんな違いですよ。このどちらですか。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、交渉過程において原則的にフィリピンの以北、日本周辺及びそれを取り巻く海域という問題について原則的に一致いたしております。ただそれは何月何日にそういう話し合いをしたということは申し上げられない。ただ今のように島についていろいろございましたから、それに対してわれわれは原則的な安保条約の基本的な立場から考えまして、総理もわれわれも答弁をいたしておるわけで、最終的には政府確定解釈になったわけでございます。それに対しまして、アメリカ側としては異議を申し立てておりません。
  24. 島上善五郎

    島上委員 私が問題にしているのは、その原則的な点とか、抽象的なフィリピン以北日本周辺ということを聞いているのではない。本委員会における質問過程で、一度は、中国沿岸及び沿海州は含む、北千島を含む、こう答弁しておいて、その後には含まないと訂正されたではありませんか。含むと答弁されたのは、おそらく今の御答弁からしますれば、調印前の話し合いでは含むことになっておったとわれわれは解釈せざるを得ない。その後、国会質問で都合が悪くなって、いろいろな外交的配慮もしたろうが、含まないというふうに訂正された。含むと答弁をしたときと、含まないという答弁をした間において、アメリカ相談をして意見一致しなければ、ほんとう一致ということに信用するわけにいかないのです。日本が一方的に解釈して、異議申し出をしないから意見一致しておるものと考える。それならば、含むと答弁したときはアメリカは含むものと解釈しておる。含まないと答弁したときは含まないとアメリカ解釈した、こういうことになりますか。私は何と強弁されようとも、この間の大きな食い違いは、おそらくアメリカ相談をしないで、そのときの思いつきで答弁したものと考えざるを得ない。そうなると、起こってくる問題は、今は公式に何も異議申し出てこないけれども、今後異議申し出てくるおそれがある。アメリカでは、すでに上院でも問題になっておるようです。今、日本予算委員会で議論しておる際だから、アメリカからそれは違うといって申し出てくると、岸内閣を窮地に陥れることになる、そういう配慮から私は今はじっとしているのだと思うのです。ちゃんとこう言っておる。「今申し上げたところが両国一致した確定的な話し合いの結果でございます。従ってどこでとか、そういうことは外交交渉で申し上げかねます。」こう言っておる。両国一致した確定した解釈ということは、一体、含むという解釈答弁された後と、含まないという答弁をしたこの間において、相談をしなければ確定した一致した解釈ということはできないではないですか。くどいようですけれどもどうですか。私は何月何日のどこでということを聞こうとしないのです。前の沿海州中国沿岸と北千島を含むと答弁をしたときと、それを含まないと修正したこの間に、アメリカ相談をして、両国一致した確定的な話し合いをされたかどうかということを聞いておるわけです。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が申し上げております通り極東範囲につきまして、交渉過程原則的に一致いたしております。従ってそれは確定的なものであるということを当然申し上げて差しつかえないと思います。むろん個々の島につきまして、いろいろお話がございました。われわれとしては個々の一々の島につきまして、この島をどう、あの島をどうという論議をしたことはございません。ただ国会等で御質問がありましたから、それらにつきまして、われわれはこの原則の上に立って、そういう話し合いをいたしたわけであります。でありますから、そういう点につきまして、政府答弁を申し上げているところに対して、アメリカ異議がないわけでありまして、特に異議を申し立てては来ておりませんし、また異議がないということ自体は、これがアメリカ一致した意見だと申し上げて差しつかえございません。
  26. 島上善五郎

    島上委員 それでは伺いますが、フィリピン以北日本周辺という原則的な点は一致しておる。これは両国の確定した意見である。しかし中国沿岸を含むか含まないか、沿海州を含むか含まないか、北千島を含むか含まないかということは、アメリカと話し合ったことがない。そうしてそれは日本総理外務大臣考え国会答弁されたもので、それに対して異議申し出がないからおそらく異存がないだろう、こう考えていられるというわけですか。
  27. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 極東の平和と安全ということは両国関心事でございます。従いまして、われわれとしては極東の平和と安全を維持するという立場から、いわゆる極東範囲内にいろいろの問題が起こりますれば、双方関心事であること当然なことなのでありまして、この条約もこの上に立っておるわけであります。でありますから、そういう見地から申し上げて、総理答弁されましたように、特定のいろいろな島その他についてお話がございました。そういう見地からも、お互いに意見食い違いはないということを申し上げて差しつかえないし、その意味においては一致いたしております。     〔「了承々々」と呼ぶ者あり〕
  28. 島上善五郎

    島上委員 了承できない。焦点をぼかすから困るのです。私が聞いているのは、アメリカ話し合いをして一致したのは、フィリピン以北日本周辺というようなばく然としたいわゆる原則の点で一致したのであって、中国沿岸を含むか含まないか、沿海州を含むか含まないか、北千島を含むか含まないかという問題については、具体的に話し合いをしていない。しかし日本国会における答弁に対して、特別に異議申し出がないから、アメリカ意見一致しておるものと思う、こういうふうに解釈されているかどうかということなんですよ。それとも、それらの地域についても話し合いをして、意見一致を見た上で答弁をされたのか、これを聞いているのです。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それでありますから、先ほど来申し上げておりますように、極東にいろいろな平和と安全を脅かすような事態が起こってくるということを一つ安保条約の筋にいたしておるわけであります。そういうものが起こってくる場所はどういうところだと申しますれば、総理答弁されたようになるわけでありまして、そういう意味におきましては、地理的と申しますか、地理的に一つ区域を限る、同時に目的的にもそういう極東の平和という意味からいって一つ区域が限られる、従ってそれは両者関心を持っておる地方であるということが言えるわけでありますから、その意味において一致いたしております。
  30. 島上善五郎

    島上委員 さっぱりはっきりしない。全く時間かせぎをされておっては、こっちはかなわぬ。  あなたの答弁から解釈しますと、中国沿岸沿海州、北千島を含むか含まぬかという問題は、アメリカとの間に話し合いをしていない。日本国会における答弁に対して異議申し出がないから、多分一致しておるだろう、こういう勝手な解釈である、こう私ども受け取らざるを得ない、私どもそういうふうに受け取ります。何といったってそれしか解釈のしようがないのですから……。  そこで心配になるのは、この国会答弁に対してアメリカが今後異議申し出てくるおそれがある。また異議申し出てこなくても——あるいは岸内閣を助けるために異議申し出てこないかもしれない。こなくても将来、国会であなた方が答弁をされたような解釈で、アメリカ軍行動を規制し、拘束することができるかできないかという心配がある。私どもはできないという心配をせざるを得ないのです。そこで、あなた方の答弁で、今後アメリカ軍行動を規制し、拘束し得るという保証がどこかにありますか。保証があったら、その根拠をお示し願いたい。
  31. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 たびたび申し上げておりますように、アメリカ軍というものは、極東の平和と安全の維持、そうして第一は、国連憲章の五十一条によってアメリカ侵略に対してしか行動をいたさないわけであります。侵略があった場合にしか行動しない、これによって範囲がもう限定されておるわけでございます。しかもそれは極東事態に対する両国関心からであります。その上になお事前協議ということによりましてわれわれはその行動を縛って参るわけでありますから、そういう意味において逸脱することはないと考えております。
  32. 島上善五郎

    島上委員 どうもさっぱり質問に対してお答え願えないのでほんとうに残念です。私が聞いておるのは、国会統一解釈などと答弁されたが、これに対してはアメリカがことさら異議申し出てこないので多分一致しておるだろう、こういうふうに一方的に、独断的に解釈しておるだけなんですから、アメリカ異議申し出てくるおそれもありますし、また公式に異議申し出てこなくても、事態が発生したときに、日本解釈とは別な行動をとるおそれもあるわけです。そこで、日本国会における統一解釈に基づいて、極東地域についてはこうであるということを、アメリカを将来にわたって規制し、拘束し得るか、拘束し得るなら得る、そうして拘束し得る根拠はどこにあるのかということを聞いているわけです。国際法の権威であります愛知大学の入江啓四郎さんの話によりますと、こう言っております。「極東範囲は、地理的概念ではなく、条約上の概念として条約で定義を与えられない限り明確にならない。日米双方解釈一致させるためには、両国合意が必要である。またこの合意条約上の拘束力を持つためには共同声明などではだめで、条約一体をなす文書を作成しなければならない。」文書を作成しなければ今後拘束力がない、こういう解釈をしておる。私もそうだと思う。しかもその統一意見の統一なるものは話し合って統一したのではなくて、日本国会答弁に対して異議申し出がないから多分一致しているだろう、こういうような独断的な解釈ですから、なおさら今後アメリカを拘束するということは不可能だと思う。拘束できないと思う。ですから拘束できるかできないか。日本統一解釈によって今後アメリカを拘束できるかできないか。拘束できなければこれは何の意味もない。どんな解釈をして、どんな答弁国会でされても、それは岸総理藤山外務大臣の勝手な解釈であって、何の価値もないということになる。アメリカ軍を今後あなた方の解釈によって拘束できるかできないか。拘束できるとすればその保証はどこにあるか。ここに入江教授が文書を作成しなければ拘束できないとはっきり言っておりますが、私もそうだと思う。拘束できるとすれば、拘束できる根拠がどこにあるか、それを聞いているわけです。ほかの答弁は要りませんからそこだけはっきりお答え願います。
  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の条約日本の平和と安全及び極東の平和と安全を維持することに寄与するのが目的であることは申すまでもないのであります。そうしてそれを相互信頼の上に立ってやっておるわけでありますし、しかもアメリカ国連憲章五十一条によりまして防衛的な性格の行動しかいたさないことなのであります。でありますから、極東という、われわれが平和と安全の維持に寄与しようとする地域が、何か他から侵略を受ける、あるいはそこで何か平和と安全を乱すようなことが起こってきた場合に初めて防衛的に出るわけなのであります。従ってそういう意味において大きな制約を受けております。その上にわれわれは、日本の基地を使って出ますときには、今申し上げておりますように、事前協議でもって協議をいたしていくわけでございます。
  34. 島上善五郎

    島上委員 どうも時間をつぶすだけでさっぱりこちらの質問にはっきりお答え願えないのです。私はとにかく今の御答弁からして、岸総理外務大臣答弁は、アメリカと完全な意見一致の上に立ったものとは解釈できない。従ってアメリカをあの解釈によって今後拘束できるという保証は何にもない、こう解釈せざるを得ないわけです。  そこで次の問題に移りますが、これは防衛庁長官並びに外務大臣にお答えを願いたいと思いますが、今度の新しい安保条約の第五条によりますれば、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」日本に対して武力攻撃が加えられた場合には、日米両国が共同の行動をとる、日本の自衛隊とアメリカ極東軍が共同行動をとるということを規定しておりますが、この場合の武力攻撃ということに対しては、武力攻撃のおそれがある場合を含んでおるかどうかということを伺います。
  35. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 安保条約の武力攻撃を受けたときというのは、武力攻撃を受けるおそれのあるのは含んでおりません。
  36. 島上善五郎

    島上委員 日本の自衛隊法には、はっきりと武力攻撃が行なわれた場合、カッコして、その「おそれある場合を含む。」こうなっておりますね。従って日本の自衛隊はおそれある場合にも出動するわけですね。しかしこの安保条約の第五条の武力攻撃には、おそれある場合を含んでいない、これははっきりしておりますね。——それでは日本の自衛隊が出動する場合のおそれある場合とは、どういう場合のことでしょうか。
  37. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 おそれある場合とは、急迫した危険があると客観的にも明白な場合、こういうふうに考えております。
  38. 島上善五郎

    島上委員 それでは、あなたの方からなかなか答えにくいでしょうから、私が例をあげて伺います。兵器の発達によってミサイル時代になりました。ボタン一つ押せば、二十分か三十分で日本へ核弾頭をつけたミサイルが飛んできてしまう。押してしまってからでは、これは手おくれになる。そうでしょう。そのボタンを押すかもしれない、押しそうだ、こういうふうに客観的に判断した場合は、当然これはおそれある場合に含まれるのでしょうね。
  39. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ボタンを押すか押さぬかという問題はありますけれども、それを私の方でキャッチして、押すであろうというときには、それはおそれがある場合であります。
  40. 島上善五郎

    島上委員 各種の情報からして、ボタンを押すおそれがあるとキャッチした場合には、これは武力攻撃のおそれあると解釈する、こういうことですね。そうすると、伺いますが、そのおそれある場合に、客観的にそう判断した場合には、自衛隊はそのボタンを押すおそれをたたかなければならぬわけですね。おそれあるときには出動するというのはそうでしょう。押してしまってからでは間に合わぬではないですか。おそれある場合には出動するのですからそうでしょう。そういうことになりませんか。
  41. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御質問は、出動と武力攻撃に対処することを混同されておるようです。出動したからといって武力攻撃に直ちに対処するわけではありません。出動の命令が、総理大臣及び議会の承認を経て出る。だから武力に対処するか対処しないかはその後の情勢によります。ですから、出動を命じられたから武力攻撃に対処するという段階には、まだ出動だけでは入っておりません。
  42. 島上善五郎

    島上委員 それではボタンを押すおそれありとはっきりキャッチした場合には——押してしまってからでは手おくれではないですか。押すおそれある場合に——武力攻撃の場合はもちろんだけれども、攻撃のおそれある場合にも自衛隊が行動できるのですから、国会の承認を得て、国会開会中でなければ承認を得なくてもいいのですから、おそれある場合にも出動できるのですから、今あげたような例の場合には、ボタンを押さないうちにその押す手をたたいてしまわないことには、これはおそれある場合の防衛にならぬではないですか。
  43. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の自衛隊はやはり自衛が目的ですから、武力攻撃の開始があれば直ちにこれに対抗します。あるいはまた安保条約によって共同で対処していくということになりますが、攻撃が開始されないで、ボタンを押すおそれがあるというだけでは、おそれがあるだけの対処をしていくだけです。
  44. 島上善五郎

    島上委員 それでは自衛隊法に「おそれのある場合を含む」というのは大した意味がないではないですか。おそれがある場合には、おそれがある場合に応ずる対処をするというのですか。そういう場合にどういう対処をしますか。
  45. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 おそれのあるときに出動を命じておけば、武力攻撃があったときには直ちにこれに対応できますから、非常に迅速果敢な行動ができるわけであります。
  46. 島上善五郎

    島上委員 それではボタンを押すおそれあるときにはどうにも対処のしようがないというわけですね。それでは伺いますが、日本の自衛隊が行動する範囲はどういうふうに限定されますか。
  47. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今の安保条約関係でございましょうか。そういうことから言いましても、また自衛隊の本質から言いましても、日本の領域内及び日本の近海の公海、領空等でございます。
  48. 島上善五郎

    島上委員 ただいまの答弁は、日本の領海なり領空なりということを言って、もう一つは近海なり公海なりと言いましたが、領空、領海、領土といえばこれははっきりしておる。領空、領海、領土以外に近海、公海にでも行動すると今御答弁になりましたが、はっきりそうですね。そうだとしたならば、その近海、公海とは一体どういう範囲を含みますか。
  49. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 特に近海、すなわち公海とか近い領空等におきましては、相手方の攻撃がなければ行動をしません。でありますから、そういう事態の発生によらなければ、あらかじめどこからどこまでは行動する、どこからどこまでは行動しない、こういうことには相ならぬと思いますが、大体において日本の近く、近海でございます。
  50. 島上善五郎

    島上委員 日本に対する攻撃といえば、私は日本の領土、領海、領空に対する攻撃、こう解釈しますが、領空、領海、領土以外に日本に近づいてくると、これは攻撃と解釈しますか、それとも攻撃のおそれある場合と解釈しますか。
  51. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そのときの情勢によらなければわかりません。近づいてくるおそれがあるかないか、攻撃するか攻撃しないかということは、具体的にそのときの情勢によって判断する以外にないかと思います。
  52. 島上善五郎

    島上委員 私が質問しておるのは、日本の領土、領海、領空に対して攻撃があれば、これは攻撃ですね。これははっきりしておる。しかし日本の領海から離れた公海、あるいは近海とも言いましたが、公海にそういう行動が起これば、これは攻撃ではなくて攻撃のおそれある場合、こう解釈するだろうと思うのです。そうすると、そういう攻撃のおそれある場合にも自衛隊が出動できるのですから、そういうときには自衛隊は対処するわけでしょう。これはボタンを押すかもしれぬという場合とはだいぶ違うと思うわけです。日本の領海でも領空でもないけれども日本の近くにそういうおそれが発生した場合には対処するわけでしょう。どういうふうに対処しますか。
  53. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 近づいてきておる、攻撃が開始されるか開始されないかということを見守って、攻撃が開始されるということであれば、近海であれば直ちに出動する。こういうことになります。
  54. 島上善五郎

    島上委員 そうしますと、見守るためには、見守るという名によって、日本の自衛隊は近海——向こうさんはどこか知りませんけれども、攻撃するおそれある国の領海の近くまで、日本の自衛隊は監視するために行動するのですか。
  55. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の自衛隊にもレーダーを装備していますから、わざわざ遠く向うの近海まで行かなくても、相当いろいろな行動範囲日本の近海においてはわかるわけであります。
  56. 島上善五郎

    島上委員 ウナギ問答みたいなものを繰り返してもしようがないので、時間がありませんから、今度はほかの問題に移ります。  官房長官に伺いますが、総理大臣のかわりに御答弁願えるでしょうね。きのう御質問の内容をあらかじめお伝えしておきましたので、その内容に関する限りは、もし総理大臣にかわって御答弁できなければ打ち合わせてほしい、こういうことをもつけ加えてお願いしておきましたが、総理大臣にかわって責任のある御答弁ができますか。
  57. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 できると思います。
  58. 島上善五郎

    島上委員 できると思いますそうですから……。まあ、できないところは、私はあらためて別の機会に総理大臣に伺うことにします。  岸総理は、昨年の地方選挙と参議院選挙が済んだ後の内閣改造直後、記者会見でこう言っております。新しい内閣の目的は、長期経済計画の遂行により国民所得を倍増すること、安保条約を改定すること、選挙法を改正することと、いわゆる三大公約の一つとして選挙法の改正を新聞記者に語っておられます。それからその後の六月二十五日の国会における施政演説の際にも、大体今申しましたこの三つのことを言って、特に最後に、「過般行なわれた中央、地方の両選挙を通じて得られた経験にかんがみて、真に公明にして合理的な選挙の実があるようにすべきものと信じ、広く各界の意見を聞いて選挙法を改正する」、こういうことを国会の本会議でも述べておられます。このいわゆる三大公約は、今日なお変わりないでしょうね。
  59. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 変わりないと思います。
  60. 島上善五郎

    島上委員 それでは伺いますが、今度の国会に選挙法改正を出されますか。
  61. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 公明選挙の問題につきましては、選挙制度調査会に諮問をいたしまして、その諮問に対する回答が昨年の十二月二十六日付をもって総理大臣あてになされたのでございます。この趣旨に沿いまして、ただいま法案の準備をいたしております。そういう段階でございます。
  62. 島上善五郎

    島上委員 答申があったのは昨年の十二月二十六日、その答申に基づいて自治庁の選挙局が法案の要綱を発表されたのは、二週間ほど前です。しかるにその後伝えられるところによりますと、自民党の七役会議なるものにかけられて、これが相当もみくちゃにされておる。おそらく選挙法改正が出されないのではないかという心配が非常にある。出しても答申とはほど遠いもの、自治庁で立案した要綱とはほど遠い、こう言ってはどうかと思いますが、大してもう役にも立たぬような、愚にもつかぬような改正案になってしまうのではないかというふうに、今各方面から心配されております。答申案を尊重して改正案を出しますか。
  63. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 七役会議の審議の際に、私が立ち会いましたが、別にもみくちゃにするというようなものではなくて、事柄がきわめて重大でありますから、なおよく検討して、そしてこの趣旨を尊重して実現を期するようにしよう、こういう慎重論だと私は解釈いたしております。
  64. 島上善五郎

    島上委員 岸総理大臣は、昨年の十二月の十七日、大体答申案が新聞に報道され始めたころですが、参議院の決算委員会で、わが党の同僚矢嶋委員の質問答えてはっきりとこう言っております。いわゆる高級公務員の立候補制限、これは総理はどのように考えるか、この質問に対して、矢嶋委員の御指摘の通り、高級公務員の立候補については制限しなければならない。「退職後二カ年という時期が適当かどうかは知りませんが、これは少し検討してみたいが、少なくとも一定の期間を置かなければ立候補ができないようにするということは私の見解であります」、こう答弁しております。そうして幸い今度は調査会からそういう答申がありました。ところが自治庁の要綱からはそれは抜けています。これは聞くところによりますと、石原長官と選挙局長はこの答申通りやるべきだと大いに主張したそうですが、ほかからの圧力があってやめてしまったということです。総理大臣がこのように国会ではっきりと答弁しておられる以上は、私は高級公務員の立候補制限を当然改正案の中に含めて出すものと期待しておりますが、いかがでしょう
  65. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 高級官吏の立候補の問題については、かねて議論のあるところでございまして、別に他から政治的な圧力があるというふうな意味ではなしに、もっぱら憲法上どの程度までいけるかということの研究においていろいろまだ論議がございまして、それを整理する段階に達しておらぬ、こういう状況のように私は了解しております。
  66. 島上善五郎

    島上委員 それでは総理大臣の考えとはだいぶ違うので、総理大臣のかわりのお答えにはならぬと思うのです。総理大臣ははっきり言っておるのですよ。二年にするのが適当かどうかは問題だけれども、一定期間制限するのは当然であると私はそう考えております、そうはっきり言っておる。そうして選挙制度調査会においてもいろいろ検討しました結果、答申の中には補助金、交付金の大幅な交付権を持っておる役所の局長と次官に限って、退職後一年間は参議院の全国区に立候補することを禁止する、こういう非常に狭められたものです。これは憲法上の問題を十分検討した上でこういう狭められた範囲に答申が出てきたものと私は解釈する。そうしますれば、この総理大臣の答えたものとこの答申は一致しておる、こう私ども考えてよろしいのではないか。それを十二月にこういうはっきりした答弁をしておきながら、今ここへきていろいろ憲法上の疑義もあって今後検討を要しますなんというのでは、これは総理大臣のかわりの答弁になりませんよ。かわりの答弁ができないのならば、できないでいいのです。とんでもない違った答弁をされるのでは、これは総理大臣のかわりの答弁ではありませんから、そういう答弁ならもう聞かぬでもよろしい。  それではほかの点を伺いましょう。この選挙法改正の最も大きな重点と申しますか、柱と申しますか、それはどこにあるでしょうか。岸さんが改正しなければならぬということを主張したのは、はっきり言っておるように、去年の地方選挙及び参議院選挙の経験にかんがみて大改正をしなければならぬとこう言っておるのです。かんがみて一体改正を要する柱、最も大きな重点は一言で言えば何でしょうか。
  67. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 公明選挙の徹底であると考えております。
  68. 島上善五郎

    島上委員 それでは私から伺いますが、私はこうだと思うのです。このごろの選挙は、岸内閣になってから、岸さんが総裁になり、総理大臣になってから特に例の三悪追放を声高らかに唱えてから皮肉にもだんだん金のかかる選挙になってきた。私はあとでちゃんと資料をあげて質問しますが、だんだん金のかかる選挙になってきた、ものすごく金に汚された選挙になってきた。そこで世論は公明選挙という言葉でもそれは言えるかもしれませんけれども、国民の世論の圧倒的な大勢は、この金に汚された選挙を金に汚されない選挙、金のかからない選撃にしたいというのが世論であり、私は岸さんが選挙法を大改正しようとするからにはそこが大きな重点でなければならぬと思う。これが重点であるかないか、そういうことはどうでもいいかどうか、それを伺います。
  69. 椎名悦三郎

    ○椎名政府委員 公明選挙という内容を分析すれば、もちろん金のかからない選挙、そうして能率の上がる選挙ということになると思います。
  70. 島上善五郎

    島上委員 それでは私はどうしても総理に聞かなければならぬことがあるので、官房長官の答弁はこのくらいでけっこうです。  それで自治庁長官に伺います。ただいましんにゅうのかかったような迷答弁をされましたけれども、金のかからないような選挙にするという、言葉をかえていえば、公明選挙の内容はそういうものだということです。私もそうだと思うのです。最も重要なところはそこにあると思うのです。今度の選挙法改正案の中に、そういう点を具体的にはどう考慮されておるか。それを伺いたい。
  71. 石原幹市郎

    石原国務大臣 お答えいたします。いろいろお話しになっていまするように、今度の選挙法の改正の眼目は、一口に言えば、選挙の公明化の徹底をはかるということであると思うのであります。選挙運動の制限の合理化であるとかあるいは公営の拡充と合理化であるとか、あるいは連座規定の強化であるとか、こういうようなことを柱といたしまして、そういう面から選挙の公明化をはかり、今あなたがおっしゃいましたように、選挙をきれいにして金のかからないものにしよう、こういうねらいを持っておるわけであります。
  72. 島上善五郎

    島上委員 そういうことも私は必要ではないとは申しません。金のかからない選挙にするために、必要ではないとは申しませんが、もっともっと必要なことが一つあると思います。それが今度自治庁の発表された改正要綱に落ちておると思うのです。去年の地方選挙、参議院選挙の事実にかんがみて、あの経験にかんがみまするならば、ものすごい事前運動が行なわれておる。たとえていうならば、後援会というものを作って、後援会の結成総会であるとか、いわゆる定期総会であるとかいって、折詰に一本つけて招待する、記念品をやる、温泉にバスを連ねて招待するといようなことがものすごく行なわれておる。私は去年の国会でその証拠品を持ってきて質問しましたが、これが一番金のかかる根源です。最大のものですよ。しかし現行法では、抜け穴だらけで取り締まりようがないのです。今度の改正案によりますると、屋内における事前の選挙運動はよろしい、こういうふうに緩和しております。緩和しておるところはよろしいけれども、しかしその屋内の集会で、折詰に一本つけて記念品を出して、あるいは余興を出してというようなことは、現行法では十分に取り締まれない。屋内の演説がよろしいとなれば、当然それに伴う、今言ったような弊害が現在よりももっともっとはなはだしくなるでしょう。これに対して、何らこれを排除しようという考えのないことは一体どういうわけですか。これで金のかからない選挙にしようということがいえますか。
  73. 石原幹市郎

    石原国務大臣 現行法でもやはり買収とかそういうことのきわめてはっきり明瞭なような行動は、これは私は十分取り締まれると思うのです。ただ後援会の組織を通じていろいろやるというようなことにつきまして、後援会も一つの政治団体になっておるものもありまするので、そういう場合にはやはりそこの問題にいろいろ触れてくるとなれば、政治資金の規正とかいろいろの問題に関連してくると思うのであります。資金の規正というようなことになると、これは島上委員も御承知のように、昭和二十九年ごろであったかと思いますが、いろいろ五党会談等を開いて非常に研究しましたが、結局結論を得られないということで、非常な問題点でありまするけれども、その点については先般の選挙制度調査会においてもまだ深い検討には入ることはできなかった、そういう意味で、極端なものは現行法でも十分取り締まれる。ただ取り締まりの徹底を期し得るかどうかという問題はありますけれども、法制の上からいえば、私は取り締まり得るものも相当ある、かように思っております。
  74. 島上善五郎

    島上委員 あなたは自治庁長官ですから、少し専門的なことを御存じだろうと思いますから聞きますが、もちろん現行法でも、選挙民に対して私はこの次に立候補するから頼むと言って金をやって買収すれば買収になりますよ。なりますが、現行法には大きな抜け穴があって、当該選挙に関して選挙民に対して寄付はできないけれども、もちろん買収はできないけれども、その区内にある政党及び政治団体、その支部に対しては無制限、野放しなんですよ。ですから今あなたが言ったように後援会も政治団体、何とか政治連盟、何とか政治連盟何とか分会というのも政治団体です。支部もそうです。ですからそこに候補者が無制限に、選挙運動期間になってからでも寄付できますよ。ましてや選挙運動に入らない事前には幾ら寄付してもいい。何とか後援会に、立候補する人が百万円寄付してもいい。そこで寄付を受けたものでもって後援会がごちそうをやったり記念品を配ったり何でもできる。こういう抜け穴をそのままにしておいて、金のかからない選挙の実をあげることができますか、それを伺っておるのですよ。
  75. 石原幹市郎

    石原国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、いわゆる政治団体その他のことに触れてきますと、政治資金の規正という問題とも関連して参りますので、ここへ入り込んでくるとなかなか容易に結論を得られないということになるのであります。それであなたがおっしゃいましたように理想という完璧なものから考えれば、まだまだいろいろ議論はあると思います。で、今回の案につきましても党の調査会なりいろいろの方面からも選挙の実情その他等から考えまして、さらに今検討をしてもらっておるわけであります。実情を勘案し、また理論的な面も勘案して、できるだけ実態に即した成案を得たいと思いまして、今極力検討を重ねておる段階であります。
  76. 島上善五郎

    島上委員 そういうおざなりの答弁では話になりませんよ。岸総理が二年前にこの予算委員会で私に今言ったような問題を指摘されて、政治資金規正法の改正あるいは選挙法にあるところの寄付制限の問題を十分検討したいと思います——二年間も検討しておる。今また同じ検討をしますという答弁で、一体どうなるか。やろうとする熱意がないからですよ。社会党はとっくに結論を得まして、政治資金規正法の改正案を出しました。もうずっと継続審議になっておる。継続審議になっておるけれども、あなたの方で審議しようとしない。意見があるならば審議して、この点をこういうふうにすべきだという意見を出されるならば、私はある程度は熱意があると認めますよ。けれども全然熱意がない。政治資金規正法の改正もそうですし、選挙法の中における寄付制限、候補者が寄付する場合、候補者が寄付を受ける場合の制限をもっとしなければ、これは公明選挙というわけにはいきませんよ。今度の予算の中には財政投融資が非常にふえました。例の外航船舶の造船に対する利子補給は十億計上されております。しかしそういうふうに具体的になれば、外航船舶の利子補給を十億計上してその会社から金をもらってもよいのですよ。選挙に関して金をもらってもよいのです。候補者がもらってもよいし政党がもらってもいい、そういうことでよろしいと思うのですか。少なくとも国の財政投融資や補助金、利子補給を与える団体からは、選挙に関して寄付を受けないようにするということは、私は当然ではないかと思う。一方で国の金を利子補給で与えておくのですから、裏に回って幾ら寄付を受けてもいい、こういうような大きな抜け穴がある。それから今言ったように候補者自体が選挙民個々に対しては寄付をしていけないけれども、政党及び政治団体、その支部に対しても、後援会に対しても、幾ら寄付してもよろしい、こういうことでは、金に汚された選挙というものは粛正されるものではありませんよ。全然これは忘れているではありませんか。これを一体検討して今度の改正案に加えようという意思がありますか。
  77. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、やはり政治資金の規正というような問題に関連してくると、先年、二十九年のころに五党会談であれだけいろいろ論議しても、結局結論を得なかった。労働組合の方の寄付金のような問題をどうするかとか、いろいろの議論が非常に出てくるのでありまして、容易に結論を得ない問題であったのであります。その他の面ではできるだけ公明な選挙ができるようにやっておりますが、政治資金の規正の面についてはまだ成案を得ておりませんので、今回の選挙法の改正にもその点を織り込むことは、おそらく困難なのではないかと私は考えております。
  78. 島上善五郎

    島上委員 私はただいまの答弁では満足しません。今言ったように、岸総理が二年前にそういうことは不合理だから改正するよう検討しますという答弁をしておいて、二年後の今日も依然として同じ答弁で、社会党が具体的な改正案を出しても、それを審議しようともしない。ですから、政治資金の規正なり寄付制限を改正して、金のかからない選挙、金に汚されない選挙にしようとする熱意が、政府及び与党に全然ないと残念ながら断ぜざるを得ないのです。  そこで、私は次の質問をしますが、今度の選挙法改正のもう一つの大きな問題は、議員と人口のアンバランスを更正することだと思います。これは大きな世論にもなっておりまして、幸い選挙制度調査会の答申にもありました区画委員会議法というものを単独で作って、国勢調査に基づいて人口と議員のアンバランスを更正するように、こういう意味の答申がございました。私は数字を一々あげる煩を省きますけれども、都会における三人が地方における一人分の権利しか持っていない。地方の参議院では、二名選挙する区よりも一名選挙する区の方が人口が多いというような例がたくさんあります。東京などは五分の一か七分の一の権利しか持っていない。国会議員は言うまでもなく人間を代表してきている、有権者を代表してきている。たんぼの広さやかかしの大きさから選び出されることでないことははっきりしている。これほど人口が——戦後の人口の移動というものは、これは普通の移動ではないのです、異常な移動です。それが十五年間も放置されておる。これを一体放置しておいてよろしいですか、どう考えますか。
  79. 石原幹市郎

    石原国務大臣 御指摘のように、議員と人口のアンバランスという問題は、確かに今生じてきておると思うのであります。この問題についてもいろいろ論議もされ、検討もされておるのでありまするが、そういう意味でこの問題を公平な第三者に検討してもらうのがいいのではないかという意味で、区画委員会という構想が生まれておるわけでございまするが、しかしこの問題も、まだ選挙制度には根本的に小選挙区制にするかどうかとか、参議院全国区の問題とかいろいろございまして、それらとも考え合わせてこの問題も考えなければいけないのじゃなかろうかということが、現在論議されておる段階ではないか、かように考えておる次第であります。
  80. 島上善五郎

    島上委員 そういうふうにいろいろ関連させるということになれば、参議院の全国区をどうする、地方区をどうする、あるいは地方議員の選挙区をどうするという問題ともそれは関連してくるでしょう。しかし衆議院の選挙法の趣旨からしましても、五年ごとに行なわれる国勢調査に基づいて更正するを例とする、こうなっている。それが、ことしも国勢調査がございますが、ことしの国勢調査ももし素通りするとすれば、三回ですよ。戦後の普通でない人口の移動の中で三回、十五年も放任することになるのですよ。そうして制度の問題とこの議員と人口のアンバランスを直すという問題は別の問題ですよ。小選挙区の問題とからましたら、これはいつまでも解決できませんよ。そこで私は、選挙制度調査会も、本質的に問題は別だから、一応今の衆議院の極端なアンバランスを更正するために、第三者による区画委員会というものを作って、公正な区割を答申する、こういう制度を考え出したものと思うのです。制度の問題とこれとは別ですよ。あれもこれも全部からみ合わしたら、これはいつまでも、おそらく岸内閣のうちにはできませんよ。そうだとするならば、これもまた熱意がないということです。伝えられるところによりますると、この区画委員会議法も今度は出さないと七役会議ではきまったそうですが、出さないというお考えですか、出しますか。
  81. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほど官房長官からもお答えがあったのでありまするが、こういうものを出すか出さないかというようなことを七役会議でまだ決定したということではございません。慎重にさらに党の選挙調査会で今具体的に検討を続けておるわけでありまして、どれを出し、どれを出さないとか、そういうことをまだ決定したわけではないのであります。十分調査会と意見の調整をはかりました上で成案を得たい、かように思っておる次第であります。
  82. 島上善五郎

    島上委員 選挙法改正に関連して、これはちょっと法務大臣にお尋ねしておきたいと思います。が、今度の改正案でも、連座制は現行法のままではいけないというので、連座制強化に対する答申があるようです。出納責任者と総括主宰者が買収、供応等で有罪になった場合には、あらためて起訴を必要とするという現行法を、あらためて起訴を必要としないで、最高裁で有罪と決定した場合には連座する、こういうようにしなければ連座制は実効が上がらぬというのが現状です。そういう答弁があったようです。私はそうするのが当然だと思う。そうするのが当然であるばかりではなく、それだけではまだ不十分だ、出納責任者と総括主宰者は飾りものにしておいて、実際の選挙運動の中枢になっている人が買収、供応をやるという場合がしばしばあるのであります。今度の選挙の場合、去年の参議院選挙の場合にもそういう例が、私があげなくとも御存じだと思う。そして沖縄まで逃亡している。こういうような事実から判断しまして、連座制をもっと強化する必要がある。ついせんだって埼玉県の県会議議員の選挙で、自分はかえ玉であったということを、判決が下る直前申し出ている人がある。かえ玉であっても、本物がほかにおっても、もう時効になってしまってどうにもならない。悪質な者については、時効をもっと延長しなければならぬという問題があると思う。私は法務大臣に、この点についての御見解を承っておきたい。
  83. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 お答え申し上げます。選挙法の改正に関しまして、連座制を強化するということは選挙制度調査会の答申にもございましたし、自治庁において今目下いろいろ研究しております。お話のように今の選挙無効の手続は行政訴訟によらなければならないということにおいて十分でない点は私も認めますが、今お話のように直ちにこれを刑事裁判として同時に出納責任者なりあるいは総括主宰者が罪になればその選挙が無効になるというふうに直ちにすることが適当であるかどうかということにつきましては、いろいろ法制上からも考慮しなければならない点もでございますので、今せっかく自治庁と相談して研究中でございますから御了承願いたいと思います。
  84. 島上善五郎

    島上委員 そうしますとあなたは選挙制度調査会の答申の趣旨には、今ここで賛成だということは言えないわけですね。もっと検討しなければ賛成とも不賛成とも言えない、こういうことですか。
  85. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 選挙制度調査会の答申は十分尊重するという気持を持っております。ですからその方向に向かって研究を進めております。
  86. 島上善五郎

    島上委員 これはそんなむずかしいことじゃないので、尊重するなら尊重する、賛成なら賛成でいいのです。その方向に向かって検討するなんというあいまいな答弁は、すでにこの改正についても熱意がないということを現わしているのです。これでは残念ながら岸内閣は選挙法の改正をしようとする熱意がない。少なくとも国民が要望している最も大事な改正をしようという熱意がないということをはっきりここで暴露しているようなものです。  そこで私は時間の催促がきたので今困っておりますが、分科会に入ってから少し詳しく聞いてもいいのですが、一つだけ自治庁長官に伺っておきます。おそらく資料を御用意だと思いますが、岸内閣になってから、さっき言ったように岸さんが総理大臣になってから、総裁になってから、ものすごく金のかかる選挙になってきた。そのものすごく金のかかる選挙になってきたという一つの事実は、自民党さんに対する財界からの献金が年々非常にふえておる。私もここに資料を持っておりますから、古いことは申しませんが、三十二年、三十三年、三十四年の……(「社会党のも言ってくれよ」と呼ぶ者あり)自民党も社会党も含めてけっこうです。一つ自治庁に届けられた数字を簡単に御報告願いたい。
  87. 石原幹市郎

    石原国務大臣 あとですぐ調査いたしまして御報告いたします。
  88. 島上善五郎

    島上委員 それじゃ私の方から発表しましょう。これは非常に大事な問題です。岸さんが三悪追放を唱えてから皮肉にも、大きくいえば幾何学的にふえている。昭和三十二年度は五億五千百三十五万六千七百九十一円、これは自民党に対する寄付、このうち八七・六%が財界からの寄付でございます。その次は昭和三十三年度は一挙に十四億六千九百六十万六千九十六円、これはうち八七%が財界からの寄付でございます。三十四年度は驚くなかれ上期だけで、一月から六月だけで十二億六千五十万六千七百三十七円、これも同様八七、八%が財界からの寄付でございます。おそらく去年は下期のが出ますれば二十億を突破するでしょう。昭和三十二年度は五億であったのが三十四年度が二十億、四倍になっておる。社会党もここにありますが、社会党は昭和三十三年度、古いことを言ってもいいと思うのですが、昭和三十三年度は自民党の十四億に対して二億四千四百五十九万、このうち党外からの寄付は三〇%でございます。(「財界は」と呼ぶ者あり)財界はスズメの涙ほどです。このほかに言うならば、自民党内の派閥の蓬庵会、宏池会、耕道会、周山会というような派閥がございますが、これもずいぶんたくさんあります。社会党より各派閥がよけいもらっておる。こういうような、私は、一方においては国の財政投融資がだんだんだんだんふえていって、外航船舶に対する利子補給も復活していって、そうしてそういうものから寄付をもらってよろしいというような抜け穴があって、そうして政党にこういうように年年年々多勢寄付がある、経済再建懇談会からは月々二千万円の経常費まで自民党さんに寄付されておる、こういう状態で一体よろしいかどうか。岸さんはこう言っています。岸さんの答弁では、政党の資金は、政党みずから政党員によってまかなうようにするのが理想でございまして、私もそのようにいたしたいと存じております、こう答弁しております。それならばその理想に一歩々々近づいて、昭和三十二年度よりも昭和三十三年度が少なくなった、三十四年度がもっと少なくなった、そうしてその中において外部からの、財界からの寄付と党員の比率は、党員の負担の比率がだんだん多くなってきたというのならば、その理想に、岸さんが答弁したように理想に一歩でも近づいているということを理解できます。ところが逆ではありませんか。逆であって、こういうような弊害の根源を法的に規正しようという熱意が全然ないということになれば、岸さんがどんなにそつのない答弁をされても、それは事実とはかくの通り全く相反するものであるということを私指摘せざるを得ないわけですよ。これでも政治資金規正法の改正をおやりになるというお考えはございませんか、自治庁長官に。
  89. 石原幹市郎

    石原国務大臣 たびたびお答えいたしましたように、政治資金の規正という問題は、かつて二十九年ごろにも非常に論議をされて、結論を得てないのでありまして、その後各党の空気にもあまり変化もないし、それから、議論すれば、社会党の方にだってやはり党外からの寄付金もあるようでありますし、総評、労働団体、こういうものもどうするかとか、いろいろの問題があるのでありまして、全然熱意も何もないというわけではございませんが、これはやはり各党で話し合いなり、一応のめどの方向の線がなければ、ただいたずらに議論しておっても仕方のない問題であります。非常に困難な問題を伴っておるということを今申し上げまして、熱意が全然ないというようなことは全然ございません。
  90. 島上善五郎

    島上委員 まあ熱意がないということを考えざるを得ないわけです。  もう一つ最後に、これは所管が法務大臣でしょうね。おとといの朝日新聞にこういう漫画があったのをごらんになったでしょうね。法務地蔵様へ選挙違反がこう拝んでいる。御出産恩赦をお願いします。皇太子殿下の子供さんが近いうちに生まれる。そのときにぜひ一つ恩赦をやってもらいたいということ、これを皮肉った漫画ですね。皇太子殿下の子供さんですか何ですか、皇孫ですか、皇孫がお生まれになった際に恩赦を行なう考えがあるかどうか。その際に選挙違反を含めるかどうか。これは前に聞くと大てい選挙違反の悪質な者は除外する、こういう答弁をしておくけれども、愛知揆一なんかそうでしたが、そのときになってからみんな含めてしまってぱあっとやってしまったのです。今度はどうでしょうか。
  91. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 漫画にございます通り、いろいろ陳情はたくさん参ります。しかし今まだ御誕生になっておらない今日において、男のお子さんが生まれればどう、女のお子さんが生まれればどうというようなことを申し上げますことは、これは私は非常に不謹慎だと思うのです。ですから、今はそういうことにつきましては私は信念は持っておりますけれども、申し上げる機会でないということをたびたび議会等の御質問においてもお答え申し上げておるのであります。
  92. 島上善五郎

    島上委員 きょうの公報を見ると、皇太子殿下の子供さんが近いうちにお生まれになるから、そのとき国会議員で参賀するものは希望を申し出てくれと今から早手回しに参賀の通知が公報に出ておる。信念を持っておるなら何もここで言えないことはないじゃないですか。
  93. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 参賀のことはどっちのお子さんがお生まれになりましてもお祝いしなければなりませんから、参賀するのはあたりまえでありますが、恩赦の問題はおのずから別でございまして、今まで皇孫に対しては恩赦した例はございませんから、そういう点も十分考慮して自分としては考えて参りたい、こう考えております。
  94. 島上善五郎

    島上委員 私は恩赦するなとかせいとかということは申しませんが、おめでたいことで恩赦されるのはけっこうです。しかし、その際に選挙違反の悪質違反まで一緒に含めるという今までのようなことはおやめになった方がよろしいと私は思います。
  95. 小川半次

    小川委員長 島上君、あなたの持ち時間がございませんからごく簡潔にお願いします。
  96. 島上善五郎

    島上委員 それじゃ簡単に伺っておきますが、自由化政策がとられるということになりますと、日本国際の貿易場裏で競争しなければならぬ、今までも日本は低賃金をもって貿易場裏で競争しておる。私は、自由化政策がとられるとますます日本の労働者に低賃金を押しつけてくるということを心配しないわけにはいかない。政府は一方では所得倍増計画、十年間に所得を倍増する、そしてきのう農林大臣が答えていましたが、その所得倍増は内容において均衡のとれた経済にする、こういう答弁をしておりました。私は、内容において均衡のとれた経済にするならば、一つには国際的に著名な日本の低賃金をどうするという問題、それから日本の国内における賃金格差をどうするという問題、低所得層の状態をどう改善するかというような問題について何らかの構想がおありだと思いますが、その構想があったらお聞かせを願いたい。
  97. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 低賃金のお話がありましたが、われわれの国民生活を向上せしめるということが経済政策の基本なのであります。従いましていつまででも低賃金で甘んずべきものではない。世界各国にだんだんと近づくように賃金を向上せしめてお互いの生活を向上せしめるということが、やはり経済政策の基本でなければならぬ、こう考えておるのであります。そこでそれじゃどうしたらいいかということは、結局日本の経済をよくする、発展せしめるということに帰着するのでありまして、そういう意味におきまして国民所得の倍増の長期経済計画を今策定いたしておるのであります。  それから国内においての賃金の格差ということは、これは御承知の通り最近におきましては、日本の経済が非常に躍進したのでありますが、その躍進の大部分は鉱工業生産でありまして、この鉱工業生産の躍進はまた生産技術の向上であります。その生産技術の向上は新技術を応用してきた結果でありますが、その新技術は大体大資本を要するものが多いということで、この生産性の向上はおのずから大企業に集中するというようなことから、大企業の方の所得が多い、中小企業の所得が少ないというような格差が現われておるのであります。これは最近における顕著な事例なのでありまして、そこで今度の国民所得の倍増の長期経済計画におきましては、中小企業のいわゆる生産性を高めるというところを中心にして今後の長期経済計画を立てたいということで、いろいろ今その具体策を策定中なのであります。そうして十年後においては大体国民所得の格差をなくするような経済を作ってみたいということでいろいろと研究いたしておる次第であります。
  98. 島上善五郎

    島上委員 岸内閣もあなたも全然責任を負わぬような遠い先のことを言っておりますが、遠い先の計画もけっこうですが、今日本の賃金は国際的に非常に低い水準にある。お話にならぬような低い水準にある。さらに国内ではまた大きな格差がある。私はここに数字も調べて持ってきておりますが、時間がありませんからこれは分科会に譲るとしまして、そういうような極端な国際的低賃金、国内における賃金格差というものをどうして改めるかという具体的な構想がなければ、これは、百年河清を待つがごとしという言葉がありますが、十年河清を待つようなものです。私はただいまのお言葉に残念ながら信頼するという気にはなれません。  時間が催足されておりますからもう一つ最後に伺っておきますが、裁判所の書記官の問題ですが、今度俸給の調整増額分八%として一億九百万円を三十五年度予算にたしか組み入れております。この一億九百万円は具体的にはどういうふうに使われるかということを伺いたいのです。というのは、これについては書記官の職務内容を変更するという問題と勤務時間を延長するという問題が条件としてついているのではないかというふうにいわれておるので、この内容についてお伺いしたい。
  99. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 裁判所の予算は、実は法務大臣の権限でございませんので、私から責任あるお答えはできませんが、大体そのときの考え方としましては、裁判所の書記官は、今の仕事よりもう少し仕事をふやさせたい、従って、いろいろ時間も多くかかるから俸給を上げようという精神からできているように思います。
  100. 島上善五郎

    島上委員 これは実は責任者に御出席をお願いしておきましたが、見えませんが、書記官の職務内容を変更するということとこの予算とは不可分のものですか、大蔵大臣でもいいです。
  101. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 三十五年度予算に三十五年度の裁判所の書記官の給与の増額予算が組んでございます。この給与の増額をいたしますことは、各省と同じような勤務状況のもとにおいて給与を支給する、こういうことでございます。その結果が、特別に超勤手当でなしに、こういう給与をもらうことによってどういうことになりますか、それは裁判所できめることでございます。各省とも同じような立場において給与の改訂をする、こういう考え方でございます。
  102. 島上善五郎

    島上委員 もう一つ念を押して伺っておきますが、これは書記官の職務内容を変更する、すなわち法律改正と不可分の関係だというものではないのですね。
  103. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いわゆる公務員の給与というものは、一定の基準といいますか、同じような条件下において支給されるものであります。そういう意味におきまして、裁判所の書記官の給与は、在来は特別な勤務状況のもとにあったということがもしございますれば、それはもちろんこの際改正していただくということでございますが、公務員に対する給与の建前から、各省とも同じような勤務状況のもとにおいて算定される給与だということを御了承いただきたいと思います。
  104. 島上善五郎

    島上委員 聞くところによりますと、書記官の勤務時間を四十四時間から五十二時間に延長するという内容があるそうです。今世界の大勢は、勤務時間を短縮する方向へ向かっていますよ。しかるに一体延長するとは何事ですか。それからこの裁判所の問題については、人員が足らないから増員してほしいという要求が出ているはずです。この一億九百万円あれば、四百人の増員ができるはずなんです。その増員をしないで時間延長と交換条件に出しているようなやり方は、私は労働基準法の精神にも反するし、世界の大勢に逆行するものだと思う
  105. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように、検察庁関係の書記官の勤務時間と裁判所の書記官の勤務時間は、ただいままでは違っておるようであります。その給与は、そういう条件の違うもとにおいては、違うことはこれは当然であります。今回給与を同額にというか、特別な扱い方でない、一般の給与を支給する算定方法による、こういうことにいたしたわけであります。いわゆる勤務時間そのものについて、従来超勤拒否というような問題があったようでございますが、起動拒否というような状況、特別勤務時間のもとにおいての給与が安いということはやむを得ないことだ、これは当然のことだと思います。
  106. 島上善五郎

    島上委員 それじゃ念を押しておきますが、労働時間の延長と、書記官の職務内容の変更ということが条件になっておりますか、なっておりませんか。
  107. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いわゆる条件ということは別だと思いますが、勤務時間を当然他の官庁と同じ並みにするということ、これは裁判所の了承のものでございます。大蔵省もそういう考え方で給与の引き上げを計画しているということであります。
  108. 島上善五郎

    島上委員 時間が五十二時間というのは一体他の官庁にありますか、検察庁だけじゃありませんか。それを率先して時間を延長するということはおかしいじゃないですか。
  109. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 検察庁は五十二時間ということで特別な給与が出ているということであります。
  110. 島上善五郎

    島上委員 私は検察庁が五十二時間なら、むしろこれを四十四時間に短縮すべきであって、労働基準法の精神からいっても、世界の大勢からいっても、労働時間を率先して延長するなんということは時代逆行ですよ。もう答弁は要りません。私はその延長するという時代逆行、労働基準法の精神を無視するやり方を変えてほしい、反省してほしい。  これで質問を終わります。
  111. 小川半次

    小川委員長 次会は明後二十二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四分散会