○濱地文平君 ただいま議題となりました
道路交通法案及び
消防法の一部を改正する
法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、
道路交通法案について申し上げます。
御承知のように、現行の道路交通取締法が制定されましたのは
昭和二十二年のことでありまして、その後、交通事情は画期的な変化を遂げ、とりわけ、大都市における道路交通は異常なまでに発達、変貌し、しかも、近き将来におきまして、その一そうの複雑と困難とが予想される次第であります。他方、これに伴い、交通事故もまた急激に増加し、この結果、現行法令によりましては、もはや道路交通の実情に著しく適合し得ないばかりか、相次ぐ弥縫的な法改正の結果として、法体系の上にも幾多不整備の個所を生じてきているのであります。
本案は、このような現実に立脚して、道路交通における危険を防止し、その安全と円滑をはかるため、法体系の整備はもとより、現下の新しい交通事情に即応した道路交通の基本法として、現行の道路交通取締法及び同施行令にかわり、新しい立法
措置として
提出されたものでありまして、その要旨は大要次のごとくであります。
すなわち、第一に、法の目的として、単に道路における危険を防止し、その他交通の安全をはかることのみでなく、積極的に交通の円滑をもはかるものであることを明らかにし、その名称も、現行の道路交通取締法から道路交通法と改めております。
第二に、法体系を整備し、あわせて、
国民のだれでもこの
法律を容易に理解できるよう、たとえば、罰則のごときも、それぞれの
関係条文ごとに明記するなど、用語及び表現の平易化をはかっております。
第三には、交通規制のための道路標示の
設置に関する規定のほか、交通の規制に関する規定を整備したことであります。
第四には、歩行者の通行につきまして、その通行方法の基本を明らかにするとともに、規定を整備し、歩行者の保護の徹底をはかったことであります。
第五に、最近における道路交通の実情にかんがみ、現行の規定に全面的な検討を加え、車両等の交通方法の合理化に必要な規定を整えたことであります。
第六に、道路における車両等の通行の停滞のため交通が著しく混雑するおそれがある場合における混雑緩和の
措置、あるいは酒気帯び運転の禁止等、交通の円滑をはかり危険を防止するための
措置を強化したことであります。
第七に、最近における交通事故及び交通法令違反の
原因には、単に運転者の責めに帰すべきもののみならず、むしろ、その雇用者ないし車両運行管理者の責任と思われるものが少なくない実情にかんがみ、雇用者等の義務についての規定を設け、それらの者が運転者とともに交通
秩序の確立に責任のあることを明らかにしたことであります。
第八に、運転免許の種別を整理して、その簡素化をはかっておりますが、そのうち、運転免許の年令につきましては、
政府原案において、普通車の免許年令を十六才、第一種原付免許にあっては十四才となっておりましたものを、
参議院において、現下の交通事故の激増及びこの問題に対する世論の動向にこたえ、免許年令をそれぞれ二才引き上げております。
そのほか、各都道府県における運転免許
関係事務の斉一化、適正化のため、全国的な基準を命令で定めることとする等、運転免許制度の合理化をはかったことであります。
最後に、罰則につきましては、現行法制定以後の社会情勢の変化及び現行各種法令に規定する罰則との均衡を考慮して、全面的にこれを改正するとともに、過失犯の規定及び両罰規定を整備し、また、運転者が交通違反を犯した場合において酒気を帯びていたときの刑の加重についても規定したこと等であります。
本案は、去る二月十七
日本委員会に予備付託となり、二月二十六日石原
国務大臣より提案理由の説明を聴取いたしましたが、三月三十一日
参議院で修正議決され、本付託となりました。当委員会におきましては、本法案が全文百四十余条よりなる道路交通の基本法であり、かつ、一般
国民の日常
生活にも
影響する
ところまことに大なるものがありますので、前後十回余にわたって委員会を開き、また、特に
道路交通法案審査小委員会を設け、その間、運輸委員会との連合審査会を開会するほか、参考人の出席を求めてその意見を聞き、あるいは実地
調査を行なうなど、熱心かつ慎重に審査を行なったのであります。
その詳細につきましては
会議録によって御了承をいただきたいと存じますが、あとにも述べますような本法案に対する修正案及び附帯
決議におきまして取り上げられた諸問題のほか、熱心に論議された事項のうち二、三の点について御
報告申し上げますと、まず、「本案の目的とする道路交通の安全と円滑も、道路交通行政の一元化ないし総合化をはかることなくしては、とうてい達成し得ないのではないか」との
質問に対しましては、
政府側より、「
警察庁ほか交通に
関係を有する行政機関相互間の連絡調整を徹底して、総合的な道路交通行政の実現を期するため、内閣に強力な機関を
設置するよう推進したい」との答弁があり、また、「本法の
趣旨を徹底するための方策いかん」との
質問に対しましては、「交通道徳の確立と交通法令の普及をはかるため、
国民運動を展開するほか、学校教育を通じ交通知識を普及するなど、法の
趣旨及び内容の周知徹底に努めたい」旨の答弁がありました。
五月十七日、本案につきまして、相川勝六小委員長より、右小委員会における審査の経過及び結果について
報告があり、次いで、質疑を終了いたしました
ところ、小委員会の結論に基づき、自由民主党、
日本社会党、民主社会党の三党共同提案にかかる修正案が
提出され、
日本社会党川村継義委員よりその
趣旨説明が行なわれたのであります。
その要旨は、第一に、公安委員会は、信号機
設置の権能を有するにとどまらず、いやしくも必要と認められる場所については、積極的にその
設置に努力しなければならない旨を規定して、その責任と義務を明確にしたことであります。
第二は、児童または幼児の登下校の際における交通事故の頻発にかんがみ、特に誘導、合図等の
措置をとる必要があると認められる場所については、
警察官のみならず、緑のおばさんのごとき人々も、これらの
措置をとることによって学童、幼児の保護に当たることが強く要請される旨を法的に規定したことであります。
第三は、公安委員会の行なう道路の交通に関する
調査につき、これを単に
調査にとどめず、必要と認めるときは、公安委員会は意見を付してその
調査の結果を道路の管理者または
関係行政庁に通知することにより、道路交通の安全と円滑に資そうとするものであります。
以上が修正案の要旨であります。
次いで、採決に付しました
ところ、全会一致をもって三党共同修正案の
通り修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、自由民主党纐纈彌三委員より、自由民主党、
日本社会党、民主社会党共同の附帯
決議案が
提出されましたが、これまた全会一致をもって可決いたしました。
決議文を朗読いたします。
附帯
決議
本法の制定に伴い、
政府は、次の諸点についてすみやかに適切な対策を講ずべきである。
一、
警察庁、運輸省、建設省、文部省、労働省、通商産業省等交通に
関係のある行政機関相互間の連絡調整を徹底して、総合的な道路交通行政の実現を期するとともに、これら関連行政の調整のために内閣に強力な機関を
設置すること。
一、交通道徳の確立と交通法令の普及を図るため、とくに次の方策を講じてその徹底を期すること。
1 遵法精神を高揚するための
国民運動を展開すること。とくに車両の運転者、道路の使用者等本法に
関係の深い者に対しては、法の
趣旨及び内容の周知徹底につとめること。
2 学校教育を通じ、学童に対して交通知識の普及を図ること。
一、道路交通の円滑、事故の防止並びに危害の予防を徹底するため、とくに次の事項について積極的な対策を樹立し、その実現を期すること。
1 学童、幼児の登、下校の際における保護の徹底を期するため、所要の行政
措置を講ずること。
2 都道府県単位又は地区別に交通事故防止のための組織あるいはモニター制度を採用する等、
国民の協力
態勢を確立すること。
3 泥はねによる被害を防止するため、道路の補修の促進、徐行運転の励行、泥よけ器の装置等につき積極的に
措置すること。
一、信号機、道路標識等の
設置を促進し、交通上必要と認められる箇所については、必ずこれを
設置するようにつとめること。一、安全運転の一般原則に関する基準を設定してその運用に慎重を期すること。一、乗車定員の規制については、実情を勘案し、その運用につき慎重を期すること。一、
自動車教習所の指定基準の設定については、その規模、要員の資格要件、教習の内容等をとくに考慮して適正な基準を確立し、積極的に
自動車教習所の質的向上を図ること。
一、交通に関する行政処分等についての苦情処理機関の
設置を検討すること。
一、飲酒運転の危険性にかんがみ、本法の運用を通じてその防止の徹底を期すること。
一、交通
警察の充実及びその運営の合理化を図るため、交通
警察官の資質の向上及びその増員ならびに交通
警察に関する予算の増額等の
措置を講ずること。
一、雇用者及び車両等の運行を管理する者の義務に関する規定については、この規定の
趣旨を実現しうるようその運用の適正を期すること。
右
決議する。
以上でございます。
次に、
消防法の一部を改正する
法律案について申し上げます。
本案は、火災防止の徹底を期するため、従来の防火責任者の制度を改め、一定の防火対象物に防火管理者を設けさせ、その資格及び職務内容等について整備をはかり、また、火災の拡大の危険の著しい物品の貯蔵または取り扱いの技術上の基準を市町村条例で定めることとし、なお、消防の用に供する
設備等に関する技術上の基準は、これを政令で定めることとし、地方的実情により、市町村条例でその基準以上のものを付加することもできるようにするなどの改正を行なおうとするものであります。
本案は、二月二十九
日本委員会に予備付託となり、三月八日石原
国務大臣より提案理由の説明を聴取しましたが、四月二十
日本付託となり、慎重に審査を行ないました。その詳細につきましては
会議録によって御承知いただきたいと存じます。
五月十八日質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないました
ところ、全会一致をもって原案の
通り可決すべきものと決しました。
以上、御
報告申し上げます。(
拍手)