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田口長治郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
チリ地震津波の
被害対策について、
岸総理を初め
関係各
大臣に対して御質問を申し上げたいと思うのであります。
今回の
津波は、
チリ国の沖合いに起こった大
地震によるものでありまして、
昭和八年の
三陸沖地震以上の
規模のものであり、これによって起こった
津波が、地球の裏側から
太平洋を横切りまして、約一万七千キロメートル隔たった
わが国に襲来いたしました。北は
北海道から南は
九州南部に至る
本邦太平洋岸の
各地に四百億円になんなんとする
物的損害をもたらしたばかりではなしに、死者、行方不明百数十名を含む大
被害を生じたことは、御
承知の
通りであります。私は、この際、
罹災者の各位並びに
被災地方公共団体に対し、深甚なる御同情とお見舞の言葉を申し上げるとともに、
災害の惨禍の中から雄々しく立ち上がり、郷土の
復興と
産業の
再建に懸命の努力を傾注されておる姿に対し、心からなる敬意を表する次第であります。
さて、今回の
津波に関しましては、日本に襲来する以前に、ハワイの
地磁気観測所からその
情報が通報されておりながら、いまだかりて経験したことのない事柄でありましたために、せっかくの
情報が十分に活用されず、事前に
津波警報が発令されなかった事実があるのであります。
太平洋地震地帯に位置する
わが国といたしましては、今回のような超遠距離の
地震津波が今後再び起こり得る
可能性は絶無とは申されない
事情にかんがみまして、
地震津波観測及び研究の
体制をさらに整備し、あわせて
国際通報体制を確立すべきものであると思うのでございますが、これに対する
総理の所見を伺っておきたいのでございます。
次に、
建設大臣及び
農林大臣に対してお伺いをいたします。
従来の大
災害におきましては、たとえば二十八年災の場合におきましても、また、先般の
伊勢湾台風の場合におきましても、
公共土木施設の
災害復旧に関しまして、
事業費に対する国の
負担率を引き上げ、その
復旧を促進したのでありますが、今回はその
提案を見ないのでありまして、この点は国民に誤解を招いておるようでございます。港湾、
漁港、
道路、農地、
農業施設等の
公共土木施設に関しまして
特例措置を講じなかった
理由に関しまして、
建設大臣、
農林大臣に詳細なる御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
また、今回の
災害の特性は、
個人被害が非常に多くて、しかも、零細なる
漁業者の
被害が圧倒的であり、これらの人々の死活に関する問題であるだけに、
被害の深刻さは
伊勢湾台風のそれにまさるとも劣らないものがあるのであります。
大蔵大臣及び
農林大臣といたしましては、
提出法案の
政令及び
予算を
決定されるにあたりまして、このことを深く念頭におさめ、
行政上万遺憾なき
措置をとられることを要望するのでありますが、基本的な心がまえの問題といたしまして、この点をお尋ねしておきたいと思うのであります。
次に、
農林大臣に対し、
各種法律案について具体的な問題を若干お尋ね申し上げます。
第一は、
水産業施設の
災害復旧事業に関する
特別措置法案についてであります。今回の
災害は、
真珠、
カキの
養殖物及び
施設等について百億円をこえる甚大なる
被害を及ぼしておるのであります。
真珠養殖事業は、御
承知の
通り、ほとんど輸出
産業でございまして、年間約百億円の外貨を獲得しており、また、
カキの
養殖につきましては、全般的に不況でありますところの
沿岸漁業者のはけ場として、幾分の光明を与えておる
産業であります。今回の
災害で、これらの
事業が不振に陥るとか、あるいは、せっかく光明を認めておるこの
沿岸漁業者が、光明を失って、
生活の道を失うようなことになりましては、大へんであると思うのであります。これが救済
措置は、かような観点から、相当に手厚くさるべきものであると思うのでございます。
政府といたしましては、その
助成対象経営体、
助成内容等をいかように
決定されるおつもりでございましょうか、考え方を明らかにしていただきたいのでございます。また、
天災融資はもちろんのこと、
公庫融資、系統融資についても、できるだけ融資手続を簡素化されまして、現実に
被害者に金が渡るように指導の徹底を期せられたいのでございますが、御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
第二に、
小型漁船の
建造に関する
特別措置でございます。今回は、さきの
伊勢湾台風の場合の経験に徴しまして、
被害小型漁船一隻に対しまして一隻を
建造する場合に
国庫補助が認められることになりました点は、
漁業の実態に即した適切なる
措置であると存ずるのでございますが、具体的には三トン以下の
漁船を
対象とするように聞いておるのでございます。しかしながら、今回の
被害を受けた
漁船は、三トンをこえるものが相当隻数に上っておるのでありますがゆえに、あまり窮屈にお考えにならず、多少大型をも認める等、弾力性を持った運用をはかるべきであると思うのでございます。この点、
農林大臣の御所信をお伺いいたします。
第三に、
特定漁業施設の
設置に関する
特別措置についてお伺いいたします。本制度は、
被害を受けた
漁村部落の
復興対策として今回初めて
立法されたものでありまして、被災民の熱望にこたえたものとして大いに敬意を表する次第でございますが、その
内容のおもなる部分は
政令に譲られておる
関係上、これが
内容の概要についてお伺いするとともに、若干の希望を申し上げ、
大臣の御所信をお伺いいたしたいと存ずるのであります。
すなわち、多数の零細なる
漁業者が集まり、
網組、あるいは村張り等の形をもって定置網
漁業を営んでおる場合におきましては、これらに対しまして、共同
施設として
補助対象に取り上ぐべきものであると思うのでございますが、この点に対しまして、いかなる取り扱いをいたされますか。
また、ノリ
養殖の
施設につきましては、幸いにして盛漁期ははずれておりましたが、すべての
施設、資材を流失したものも少なくなく、これらの
漁民に対し、この秋に始まるノリ
養殖事業の再
生産を確保し得るような援助の手を差し伸べていただきたいのでありまするが、御方針を承っておきたいと思うのであります。
次に、
建設大臣にお伺いをいたします。
今次の
災害現地を視察いたしますと、防災
施設のあるところは
被害を免れております。その一例といたしまして、岩手県の田老町に現われておる実際を見ますと、同地は、
津波に対しては最も
被害を受けやすい地勢にありながら、今回の
被害をこうむっていない。これは、たびたびの三陸
津波によりまして、土地の指導者が、
昭和十三年以来、当時の金で二千万円を投じまして防潮堤の完璧を期したためであります。この例から見ましても、私は、
国土保全、民生安定、
産業保護の立場から、今回の波津
対策事業に関する
特別措置法の制定はまことに画期的な施策であると考えるのでございまするが、さらに一歩を進めて、これを恒久的施策とし、高率
補助のもとに遂行する要があると考える次第でございます。この点について
大臣の所見をお伺いいたします。
また、本
事業は直ちに調査を必要とすると思うのでございますが、調査費あるいは審議会費はいつの
予算に計上されるつもりでございますか、この点、お伺いをいたします。
また、
公営住宅法の
特別措置につきましては、
地方公共団体の
建設する第二種
公営住宅についての
予算措置等の
内容はどうなっておりましょうか、お伺いするとともに、この家を建てる土地の選定につきましては、再び
津波の
被害をこうむるような場所でも困りまするが、多くの
沿岸漁業者の
住宅でございますから、
漁業経営の
実情をも考慮して、あまり不便な場所を選ばせないように特に希望する次第でありまするが、御方針はどうなっておりましょうか。
なお、
漁業者の
住宅建設にあたりましては、
住宅金融
公庫の融資について、
資金ワクの拡大が当然必要となると考えるのでございますが、この点に関する御配慮のほどを承りたいと存ずるのでございます。
次に、通産
大臣に対してお伺いをいたします。
中小企業者に対する融資の
特別措置でありますが、
中小企業金融公庫、国民金融
公庫、
商工組合中央金庫等が指定
被害中小企業者に対し貸し付ける
再建資金のうち、
被害中小企業者一人につき五十万円、かような限度だけを利子六分五厘で貸し付ける規定になっておるようでございますが、さきの
伊勢湾台風の場合は百万円となっておる
関係からいたしまして、国民の間には
伊勢湾台風を下回る印象を与えておるように考えるのでございます。これは、もちろん、
事業の
規模だとか、店舗の大きさ、さような相違によるものと思うのでございますが、その
内容と
理由について御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
また、融資の実行にあたりましては、個人の物的担保、組合の場合は全役員の保証、または都道府県の保証協会の保証、保証の再保険、かようなことが重なりまして、なかなか
被害中小企業者に
資金が浸透することが困難な
事情にあるのでございます。今回の
被害中小企業者の
復興を促進するために、通産
大臣といたされましては、各金融機関に対しまして特段の工夫と督励を必要とすると思いますが、御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
次に、運輸
関係について、運輸
大臣にお尋ねいたします。
今回の
津波の教訓は、国際的な
津波予報連絡機構の完備、国内的には
地震津波の研究機構の拡充、これが絶対に必要であるということで、さきに、本問題につきまして
総理大臣の所見をお伺いした次第でございますが、当面、とりあえずは、三陸沿岸における検潮所の増設をはかることが必要でないかと思うものであります。
大臣の所見をお伺いいたします。
また、今回は、木船の小さい造船所の
被害が非常に多いのでありまするが、これが
復興対策についての
措置をお伺いしておきたいと思うのであります。
次に、労働省
関係についてお伺いいたします。
被災された現地の
実情を見て参りますと、零細なる
漁業者等、いわゆる底辺に生きる人々の
被害が多くございました。しかも、
漁船等の唯一の手段を奪われておるものが少なくないのであります。これらの人々のその日の
生活を維持し、さらに明日への希望を持たしめ、
復興への意欲をふるい起こさせるためには、失業
対策費について被災市町村に対する高率
補助を適用し、
行政措置により処理するとともに、緊急就労土木
事業を考慮する必要がある。すでに
実施せられたものもあると思うのでありますが、この機会に労働
大臣の御
説明をわずらわします。
最後に、自治庁
関係についてお尋ねいたします。
今回の
災害により、
地方税の減免による
歳入欠陥並びに
災害救助費、防疫
対策、簡易水道
復旧等、
災害対策費の出費によりまして
地方公共団体の
財政を圧迫する結果を招来しておる次第でありますが、これに対しましては、
特例債はもちろんのこと、
起債の
対象とならない経費についても、
特別交付税によりこれが救済
措置を講ずる必要があると思うのでありますが、その
対策についての御用意のほどをお伺いいたします。
なお、
復旧事業の促進をはかるため、地方交付税概算払いの繰り上げ交付等の
措置、あるいは、つなぎ融資
措置等について積極的な
措置が望まれておる次第であります。これについては、すでに自治庁としては
実施されたものもあると思うのでありますが、この二点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
以上、私は、
被災者各位のすみやかなる
復興を念願いたし、この際、
政府は積極果敢なる勇断をもって、迅速に、かつ適切有効なる
対策の樹立と実行を期待して、質問を終わる次第でございます。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇〕