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1960-04-05 第34回国会 衆議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月五日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十六号   昭和三十五年四月五日     午後三時開議  第一 行政書士法の一部を改正する法律案渡海元三郎君外二名提出)  第二 中小企業業種別振興臨時措置法案内閣提出)  第三 農地買収者問題調査会設置法案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  三池炭鉱就業妨害事件に関する緊急質問大坪保雄提出)  三池争議に関する緊急質問赤松勇提出)  三池炭鉱争議流血事件に関する緊急質問武藤武雄提出)  日程第一 行政書士法の一部を改正する法律案渡海元三郎君外二名提出)  日程第二 中小企業業種別振興臨時措置法案内閣提出)  日程第三 農地買収者問題調査  会設置法案内閣提出)     午後三時九分開議
  2. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  三池炭鉱就業妨害事件に関する   緊急質問大坪保雄提出
  3. 天野公義

    天野公義君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、大坪保雄提出三池炭鉱就業妨害事件に関する緊急質問赤松勇提出三池争議に関する緊急質問、及び、武藤武雄提出三池炭鉱争議流血事件に関する緊急質問を順次許可せられんことを望みます。
  4. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  まず、三池炭鉱就業妨害事件に関する緊急質問を許します。大坪保雄君。     〔大坪保雄登壇
  6. 大坪保雄

    大坪保雄君 私は、自由民主党を代表して、去る三月二十八日早朝、三井鉱山三池炭鉱において、その新旧二つ労働組合員の間で発生しました、暴行傷害を初めとして、ついに死者までも出すに至った、一連の悲しむべきできごとに関して、政府の所信をたださんとするものであります。(拍手)  この事件の概要は、一月下旬以来無期限ストに入っている、日本一戦闘力強く、団結強固を誇っていた三池労働組合が、去る三月十五日ついに分裂するに至って、新たに結成された新労働組合が、会社団体交渉の結果、生産再開をすることになり、就労のため隊伍を整えて会社の構内に入らんとするのを、新組合員就労に反対し、実力をもってこれを阻止せんとする旧労働組合、第一組合員集団が、炭労総評から送り込まれてきている多数のオルグ団と一緒になって、青竹こん棒、ピッケル、鉄の棒などの凶器を持って待ち受けて襲いかかり、一方、みずから戒めて、身に寸鉄を帯びず、全く素手であった新組合員に、打つ、ける、突くの暴行を加え、乱闘となり、ついに、職員をも加えて、入院を要する程度の重傷三十七、軽傷約二百、合わせて二百二十余の負傷者を出すに至ったものであります。  この暴行ざたはただに新組合員の入門の際に行なわれたばかりでなく、入構した後、繰り込み場において人員点呼をしておる新労働組合員にもなぐり込みをかけ、さらにまた、鉱長室にも闖入をして、当直をしていた鉱長、副長以下十数人の職員にもなぐり込み、多数の気絶者を出すほど、言語に絶する暴行を加えたものであります。何の凶器も持たぬ素手の者に対して、多数の者が危険な凶器を持って襲いかかった、この残虐無比暴力ざたは組合員及びその応援オルグ団の、組織的、計画的なものであったことは、重傷者三十七人のうち三十四人までが職員または新組合員であり、旧組合員ただの三人にすぎなかった事実からも明瞭であり、これは、わが党調査団現地調査の結果でも明らかになっているところであります。(拍手)この三川鉱における惨劇を初めとして、三池炭鉱争議に関連しての暴行傷害器物毀棄人権じゅうりん等不法事犯は、四山鉱宮浦鉱、あるいは本所、または炭住街等に、二十八日、九日の両日だけでも二十数件に上っております。ことに、社宅等に押し寄せて、あるいは石で窓ガラスを破り、あるいは戸を破って土足で屋内に侵入し、器物をこわし、バケツで水をまき散らし、あるいは家人を一人一人呼び出しては多数で暴言を浴びせ、ときに洗たくデモをかける等、従業員家族に対する暴力ざたは、陰険にして残忍きわまるものがあります。これらの暴力ざたを一つ一つここに述べる余裕はありませんが、以下、二、三の点について政府の御所見を伺いたいのであります。  三池炭鉱は、もともと、炭質優秀、埋蔵量豊富、それに採炭条件もよく、わが国最良と称せられる、働く人にとっては最も恵まれた炭鉱であります。それが、国立九州大学向坂元教授らのいわゆる向坂教室による十数年の長期にわたって熱心な学習指導によって、組合幹部はもちろんのこと、一般組合員、さらに主婦会員に至るまで、マルキシズムの洗礼を受けて、革命的闘争至上主義組合にまで育てられ、会社がつぶれても山は残るとか、会社がつぶれれば、それだけ社会主義革命が早く実現するという考え方に意識統一をなされ、高賃金低能率を合言葉にして闘争を積み重ね、他の会社に例のないほどの好条件の労働協約を獲得し、賃金は最高、しこうして出炭能率は最低の経営状態にあるありさまであります。世界的にいわゆるエネルギー革命といわれる炭界不況情勢下に、低能率の山をかかえて、会社企業整備を余儀なくされた。向坂教室の永年の薫陶に筋金の入った組合幹部は、炭労総評応援を得て、企業整備反対闘争を推し進める。会社が生き残るか、組合管理の山ができるか、両者の戦いは深刻なるまま、いつ果てるという見通しも立たぬありさまであります。  三池炭鉱によって立つ大牟田市民にとっては、争議現状とその前途は重大なる関心事であります。良識ある市民がついに立って、大牟田再建市民運動を起こしたことも、また、純真なる青年たちが決起して、大牟田に繁栄の灯をともし続けるためとして、「灯をともす会」を作って、ときに争議早期解決生産再開労使双方に呼びかけてきたことも、事情は十分に察することができるのであります。(拍手)  組合員にしましても、一万円生活、すなわち、平素の生活の三分の一の生活、その苦しさや前途の不安から、見通しのない闘争に批判的になるのは、無理のないところでありましょう。ことに、この組合は鉄の結束を誇っていたのであります。それは、すなわち、組合員に対するきびしい統制であります。組合員は、私生活においても、すなわち、家族ぐるみ自由がなかったのであります。「外出も地域分会に届け、行き先や帰宅時間まで黒板に書かれる」、「映画見物魚ツリに行くのもままならなかったという、また、「主婦が町に買い物に行くにも、一人でなく、隣り近所がつれ立って行くように仕向けられた」、「その〃鉄の統制〃の厳しさから〃大牟田ソビエト地区〃といわれる」ほどであった。(拍手)これは、去る二十六日の朝日新聞の「天声人語」が伝えている言葉であります。かようにまで自由が押えられていたとしたら、これを脱却して、自由の天地を求めるのは、これは人間自然の欲求でございましょう。今回の第二組合の結成は、まさに自然発生的に、この革命主義組合革命が起こったものであります。由来、労働者職場を愛します。働くことは労働者喜びである。労働者の働く自由と喜びとを集団暴力をもって阻止しようとしたのが今回のできごとであります。  そこで、私、まず伺いたいのはピケについてであります。ピケッティングは、労働争議の場合に、スキャッブ、すなわちスト破りに備えてなされる争議手段として一般に認められていますが、それは、あくまでも平和的説得の域を脱してはならないものである。しかるに、わが国では、ピケの名によって多くの集団的暴行脅迫がなされています。今度の三池の場合がそうであり、一昨年の王子製紙苫小牧争議の場合もそうであったし、また、昨年じゅう東京その他に頻発した中小企業労働争議においても、争議暴力化したのは、多くこのピケからであったのであります。明らかに違法なピケ行き過ぎが全く放置されてきた、その結果が、かかる行き過ぎ行動も違法ではないかの印象を国民に与えているきらいはないか。世界に例のない、まさに文明国日本に恥ずべき珍現象といわざるを得ません。(拍手ピケ行き過ぎ違法状態を放置して、乱闘傷害等不祥事を発生するにまかせておくことは、もはや許せないと思います。イギリスのごときは、十九世紀の中葉から、ピケの取り締まりについてたびたび立法措置を講じておることは、御承知通りであります。労働省は、すでにピケ限界について公式の見解を天下に明らかにしておるのにかかわらず、この見解は、実践においては完全に無視されておるのに、これを放置しておる。行政措置で実効を上げることができないならば、不祥事件の原因をなすこと明らかなこのピケ行き過ぎの違法なることを法律をもって明らかにする措置を講ずべきではないかと思うのでありますが、この点に関して労働大臣の御所見を伺いたい。  第二は、労働争議における第三者介入の問題であります。最近は、労働争議に関係して、いわゆる暴力団介入が少なくなく、これが問題を起こしております。今度の三池争議でも、ついに、第三者、すなわち暴力団殺人行為までいたしました。まことに憎むべき所業であります。暴力横行のこの風潮は、今日において、すみやかに絶滅する方途を講ずるのでなければ、ついには収拾すべからざる事態となることが憂えられます。このことは、しかし、労働争議についても同様であります。ところが、争議の場合の暴力は、いわゆる町の暴力団によるよりも、組合上部団体または友誼団体と称せられるものから派遣されてくるオルグと称せられる者による場合が多く、かつ悪質であります。(拍手)もちろん、争議に際して、組合上部団体から争議指導援助等のためにオルグが派遣されることはあり得ることであるし、また、当然あっていいのであります。しかしながら、オルグと称せられる者が数百人、数千人の多きに達する場合には、彼らはもはや暴力団の様相を呈するのであります。(拍手)彼らは、ピケの中核をなし、あるいはデモの先頭に立って、各種暴行をあえてするのであります。これがまた会社側を刺激し、ひいては会社側に町の暴力団を利用せしめるに至るのであります。このたびの三池争議について見ましても明らかであります。炭労総評は、このたびも、多数のオルグ団をつぎ込んでおります。日教組がある。国労がある。全逓がある。鉄鋼労連がある。さらにまた、某組と称する解放同盟の数百名の参加も伝えられております。オルグと称するこれら応援団員の数は、今日、七千をこえるであろうといわれておる。総評九州共闘会議は、四日からそれをさらに増強するときめたと報道せられております。彼らは、おそらくは、ピケに、デモに、乱闘に、幾たびか実践の経験を積んだ、暴力選士でありましょう。彼らは、単に多数の威力を示すだけにとどまらず、争議団員青竹こん棒を持つことを教え、会社職員や新組合員の入構を実力をもって阻止することを教え、洗たくデモのやり方を教えるのであります。去る三月二十八日朝の三川鉱における乱闘の状況を見まして何人もひとしく感ずることたとい、いかに分裂したための不満や恨みがあったとしても、同じ職場で働く者同士の行為としては、あまりにも残虐であります。本来第三者であるこれら応援オルグ団所業と察せられるのであります。すなわち、争議応援のために送り込まれる数百、数千という多数のオルグ団は、もはや、事実上、暴力団以外の何ものでもないと断定せざるを得ません。(拍手争議正常化のために、かかる暴力団は、また強く排撃しなければなりません。世上、往々にして、暴力団といえば、いわゆる町の暴力団のみをさして、このオルグと称する暴力団を見のがさんとすることがあるのは、遺憾でございます。町の暴力団たると、オルグと称する暴力団たるとを問わず、同様に排撃せねばなりません。政府のこれに対する御所見を伺いたい。  第三に、かように日々深刻化し、かつ多くの社会問題をはらむ三井三池争議は、いつ、いかようにして解決するかは、私どもの大きな関心事であります。炭労は、去る二十七日、ついに大きく戦術を転換して、三池の指名解雇問題及び賃金闘争の件は中労委あっせんを申請いたしまして、世人を驚かせました。実力主義炭労も、組織の動揺に耐え得なくなったのだ、これをきっかけに日本労働運動一つの転機を迎えるであろうと、ある新聞は評しておる。炭労は、その十日前に強硬な闘争方針をきめ、四月一日からは三井系各山の時限ストを始め、四月十一日からは大手十四社全社全山の無期限ストまでも計画したのでありますが、このストの指令は、三池以外の三井の五つの山全部から返上されて、かねて炭労行き過ぎに批判的であった三井鉱山職員組合、すなわち三社連からは脱退を通告されるという羽目に陥ったのであります。かくて、中労委あっせんを求めるに至ったのでありますが、一面、平和的解決のためにあっせんを申請しながら、他面、依然として暴力的ピケは続け、新組合就労実力をもって阻止すると声明をして、オルグ団応援の増強をはかっておるのであります。多数の負傷者死者までも出した争議であります。町には今なお不穏の空気がみなぎっております。新労働組合員就労を開始すれば、必ずや、第一組合員暴力をもって阻止するでありましょう。阻止すれば、再び乱闘となり、不祥事をかもしましょう。総評炭労幹部諸君は、新組合員就労をやめれば不祥事は起こらぬといって、痛い目にあわせて就労をやめさせようと宣伝をいたしております。これは暴力による威嚇であります。幹部諸君は、争議指導を誤ったがために多数の負傷者死者まで出したことについて何らの責任を感ぜず、かえって、これをことごと会社や新労組に転嫁いたし、てんとして恥じていない。見通しのない泥沼闘争をさらに激化して、あげくの果ては、多数の労働者生活を破壊してしまうのでありましょうか。私どもは義憤にたえません。(拍手)  三池には、今、人権侵害不法状態が続いております。そこで、これを排除して治安を確保することが先決問題であります一会社及び新組合生産再開を決意してから早や十日にもなんなんとする四月五日の今日、なお就労は中止されておるようであります。これは第一組合員暴力をおそれたためではないでありましょうか。もしそうだとするなら、これは明らかに集団暴力によって人権がじゅうりんされ、警察の持つ国家の権力が無視されたことになる。三池争議でまず何よりも大切なことは、すみやかにこの違法状態を排除し、人権を守り、治安を確保することであります。(拍手)違法なピケはやめさせることであります。私どもは、争議のすみやかなる解決を望みますが不祥事にからませて、ただいたずらに急ぐことのあまり、問題の核心を突き得ない中途半端の解決をはかることは、かえって災いを将来に残すことにもなり、とるべき策ではないと存じます、(拍手当事者間に十分に話し合いの機会を持って、真に労使協力して、企業の安定と従業員生活を守り得る解決条件を見出すべきものであると思いますが、労働大臣のこの点に関する御所見を承りたいと思います。  最後に、私は、石原国家公安委員長にお伺いいたします。  三池炭鉱争議に対処しての警察の処置に対しては世上では、きびしい批判があります。一部には警察不信の声さえ聞かれます、私どもも、去る二十八日早朝の三川鉱における衝突のごときは、警察がいま少し誠意を持って事態を察し、勇気を持って現場に臨んだならば、不祥事もあるいは防ぎ得たのではないかと思うのであります。警察のことは、申すまでもなく、あらかじめ戒めて、事故未然に防ぐことにある。不祥事既発の後にかけつけて負傷者の収容に奔走したり、犯人の跡を追いかけ回すことは、警察本来の仕事ではないと思う。地元警察不信の声が起こっておることを報じておるある新聞は、不法介入と見られることを避けようとする消極的方針警察軽視の機運が高まってきた、このことは、争議に直接関係のない地元暴力団体が公然と争議介入する結果を招いた、また、二つ組合対立から、炭住街の新組合家族がしばしばつるし上げや投石など各種の圧迫を受け、警察にはすでにこれらの人々から身辺保護が二百件近くも依頼されていたが、警察はこれら争議対立に巻き込まれた人々の安全にほとんど手を打たなかった、というような町の声を伝えておる。私は、現場で日夜苦労しておられる警察官諸君に対しては同情もいたし、また、その御労苦に深く感謝の意を表するものでありますが、今日の警察の実情は、労働争議介入することを避けようとすることのあまりに、争議に関連して起こるもろもろの警察事故にまで触れまいとする消極的な風潮あるいは方針があるのではないかと疑われる。(拍手)もちろん、争議介入して労使双方の間に立つことは、警察は極力避くべきでありましょう。しかしながら、争議に関連して行なわれる人権侵害とか、あるいは暴行脅迫傷害建物損壊器物破棄業務妨害等犯罪行為に対しては敢然として立ち向かい、公共の安全を保持し、良民の安心と信頼とをかち得るようにすべきであると思います。(拍手)現在ではすでに立ち入り禁止及び妨害排除仮処分決定されておるのであるから、生産再開のための第二組合員入坑を阻止することは明らかに違法として取り締まられるものと思いますが、その措置はとっておられますか。会社、新組合は、妨害せられることなく生産再開のできるような状態にありましょうか。今回のような入坑妨害は明らかに違法であることは、すでに最高裁昭和三十三年五月二十八日の大法廷の判決においても示されております。不当に威力を用いて会社業務妨害した者は威力業務妨害罪になるとして、これに有罪の判決を下しております。もし、それ、法律不備等によって十全の予防措置等が困難であるというならば、必要な立法措置を遅滞なく進めなければならないと思う。今回の事件に関連して、ピケ隊の持つ青竹こん棒など、いつでも凶器になるような物件の所持は現在の法規上、これを捨てさせたり、あるいは頂かったりすることができないといわれておるのであるが、ほんとうにそうでありますか。しからば、警職法ごときものもすみやかに改正すべきではないかと思うのでありますが、この点については、私は、岸総理大臣及び石原国務大臣の御所見を伺いたいと思います。  以上、私は、三池争議現状から、その違法状態をすみやかに解消して、国民人権を守り、地方の治安を確保し、これを契機として、今日わが国において曲げられて指導されつつある労働運動正常化すべき方途について意見を申し述べ、政府の御所見ただしたのであります。岸総理松野労働大臣石原国務大臣のそれぞれの御答弁をお願いしたいと思います。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  三井三池炭鉱労働争議がついに暴力ざたを伴い、多数の負傷者死者までも出すに至ったことは、まことに憂慮にたえない次第であると思います。いかなる意味においても、労働運動暴力を伴うということは違法であり、私は労働運動の正常なる範囲を逸脱するものであると思います。従って、第三者であろうとも、あるいはオルグという名であろうが、そのいかんを問わず、また、組合自体も、いかなる意味においても、この暴力を断固として排除しなければ、私は、真の労働運動はできないと思います。(拍手)この意味におきまして、三井三池労働争議が、労使間におきまして、平和的な方法によって一日も早く解決されることを心から願うものであり、また、この石炭業の不況なり、あるいは日本産業に持っておる重要性というものを労使ともによく冷静に認識して、平和的な解決の一日も早からんことを願っております。  今回の騒擾事件争議におけるところの暴力行為、また、三池におけるところのいろいろな事態を見て、警察官行動について警職法改正が必要であるのじゃないか、この点についてどう考えておるかということでございますが、私は、いかなる意味においても、集団的暴力がこの民主社会からは絶対に排除されなければならぬという強い信念のもとに、そういう事態未然に防ぐように警察行動というものが行なわれていくというのが望ましいと思います。その意味において、現在の警職法において十分でない点があることは、かねて公安委員会においても検討されて、そういう結論が出ていることであります。今回の事態を見ましても、なお、この警職法改正につきましては、政府として十分一つ検討して善処したいと考えております。(拍手)     〔国務大臣松野頼三君登壇
  8. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 労働問題と治安の問題とを混合することは断じて避けなければなりません。いかなる暴力があろうと、正しい労働運動をこれによって曲げるようなことは厳重に慎まなければならないと存じます。  ただいま御質問ピケの問題は、御承知ごとく、最高裁判例にもありますごとく、ピケ平和説得であります。いたずら実力という名のもとに暴力を用いて、しかも、他の自由な権利を阻害することは、断じて許されません。(拍手最高裁判例の中に、暴力行為をもってこれを妨害するがごと行為はもちろん、不法使用者側自由意思を抑制し、あるいはその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されない、という判例がございます。(拍手)  なお、今回の場合に、ピケ限界を越えたものは、ピケにあらずして、私は封鎖だと思う。正しい自由な交通を妨げ、あるいは正しい権利を妨げる、これは、ピケにあらずして、もう封鎖行為で、明らかに労働法の保護するところではございません。  第二番目のオルグの問題は、もちろん、これは労使争議当事者にあらずして、第三者であります。労使当事者でさえも暴力は厳に慎まれておる。労働法のもとにおいて、第三者暴力はまことに遺憾なことだと私は考えます。将来の解決の問題につきましては先般以来、平和機関としての中労委あっせんが進行しております。中労委あっせんを真に期待するならば、その前提として、まず暴力を排し、治安を維持することがその前提でございます。第二番目には、やはり、あっせんを依頼する以上、そのあっせんを尊重するという基本的な態度が、このあっせんの成否を私は位置づけるものだと信じます。従って、政府におきましては、中労委あっせんを期待し、推進し、そうして、その成功を今日希望しておるわけでございます。(拍手)     〔国務大臣石原幹市郎登壇
  9. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 三井三池の今回の事態につきましては、まことに残念に思っております。労働争議に伴いまする不法、違法の行為につきましては、厳に取り締まるべきことを従来よりも指示し、ただいまも厳に指示いたしておるところでございます。  今回のピケにつきましては、すでに福岡地方裁判所仮処分決定を見ておる現在、この決定に反するようなピケは違法なものと考えております。実大をもって就労を阻止しようとするような場合には、断固ピケ排除に当たりたいと考えております。  なお、去る二十八日のいろいろ乱闘事件につきましては、目下捜査進行中でございまして、近く相当数逮捕者も出ることと思っております。  警職法改正につきましては、ただいま、総理よりもいろいろお答えがあったのでございますが、かねがねその必要性を明らかにしてきた通りでございまして、今後も検討を続けて参りたいと思っております。(拍手)      ————◇—————  三池争議に関する緊急質問赤松勇提出
  10. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 次に、三池争議に関する緊急質問を許します。赤松勇君。     〔赤松勇登壇
  11. 赤松勇

    赤松勇君 私は、日本社会党を代表して、三池争議に関する緊急質問を行なわんとするものであります。  私は、党の決定によりまして、三月二十日、現地におもむいて、つぶさに争議の実情を調査して参ったのであります。その結果、三つの点が明らかになったのであります。その第一は、今次争議における三川及び四山事件発生の原因は、生産再開をあせる会社側暴力団を使用したことにあること、第二は、会社側暴力団に対し凶器を提供し、脅迫傷害、殺人などを教唆扇動したこと、第三は、警察が、わが党の事前の警告にもかかわらず、これらの凶器を持つ暴力団を抑制するなど、事態未然に防止する適切な措置を怠ったこと、などにあるのであります。(拍手)これらの点は、三月二十九日午後発生した久保清君刺殺事件を見ても明らかであります。  当日、大牟田の町においては、昼ごろから、山代組、寺内組などのテキ屋、暴力団が、市内の人夫、土工二百三十名をかり集め、貸し切りバス二台、ハイヤー十五台、トラック一台、計十八台に分乗して、各炭鉱住宅街やピケ隊などを脅迫して回り、午後五時ごろ、四山鉱の正門前のピケ・ラインに集結をして、短刀、ピストル、こん棒、まき割り、手おのなどを持ってピケ隊に襲いかかり、最前列にいた久保清君の胸を三カ所刺し、ついに死亡せしめるに至ったのであります。私は、この事件会社側が計画的にピケ隊に対し集団暴力を加えたものであるということを、事実をもってこの際指摘しておきたいと思うのであります。(拍手)  すなわち、事件の直前、四山鉱正門から約十メートル離れたへいの上から、構内より新品のつるはしの柄、カシの棒、四束、百二十本、その他鉄棒を暴力団に渡した事実があるのであります。会社側はこれを強く否定しておりますが、会社側の長浜採炭主任、白谷機械係員がその容疑者として殺人幇助罪で告訴をされ、また、熊本南警察署で取り調べを受けておりまする熊本市の興行師上野組組長上野富志雄外一名は、四月二日に至って、ついに包み切れず、会社側より凶器を手渡された事実を自白し、熊本県特捜本部は、この凶器を手渡した犯人を共同正犯あるいは教唆の疑いがあるとして、目下厳重に取り調べを行なっておるのであります。(拍手)この事実に徴しても、この事件会社側の教唆扇動により発生したものであることは、まさに明々白々たる事実であるといわなければなりません。(拍手)  また、この事件の際、約五十名の警察官は、これを制止せず、事件後、全員を荒尾警察署に連行したにもかかわらず、その夜全員を釈放してしまい、主犯と見られる寺内忠雄、山代清敏などは今なお逃亡しておる実情でありますが、わが党の山花代議士、阿具根参議院議員は、事件発生の二時間前、事態の険悪化を憂慮して、荒尾警察署に対し厳重警戒を要請していたにもかかりわらず、かような不祥事件を発生せしめたその原因は、一つ会社並びに警察側にあるといわなければなりません。(拍手)  また、三月二十八日発生した三川鉱門における乱闘事件は、強行就労の先頭に暴力団が配置され、この暴力団凶器を持ってピケ隊を襲撃、会社は、構内より、へいの上から、つけもの石大の石をピケ隊に投げつけ、このため暴力団会社側の挾撃にあったピケ隊は、防衛上、やむを得ず、これに向かったのが事実でありまして、この乱闘事件は、三鉱労組と新組合の衝突というよりは、会社及び暴力団の挾撃により発生したものであって、明らかに防衛上やむを得ざる正当防衛の行為であったのであります。(拍手)かように事実をつぶさに検討すると、大半の責任は会社側及び職務怠慢であった警察にあるということができるのであります。  私は、三月三十一日、久保清君の葬儀に参列いたしましたが、特にこの際総理に言っておきたいのは、その際、五才になる由美子ちゃんは、おばあさんのまきさんのひざですすり泣き、九才になる啓二君は、奥さんの博子さんのそばで終始泣きじゃくっておりました。その痛ましい情景は、総理もおそらくテレビでごらんになったと思います。私は、調査によって明らかになった事実をあわせ考え、心からの憤りを覚えたのであります。この葬儀の際、炭鉱主婦会の代表は、次のような弔辞を述べております。「久保さん、あなたの死体を、奥さんは、一晩じゅう、はだで暖めていました、そのはだの暖かさを、あなたはきっと感じ取られたと思います。だが、久保さん、その体温は、奥さんだけの体温ではありません。日本じゅうの働く人々の体温なのです。久保さん、あなたは国民の命を守るべき警察官の前で殺されました。会社暴力団がぐるになって、あなたを殺したのです。これに対する全国民の怒りの声が、久保さん、あなたに聞こえますか。私たちは、あなたの死を決してむだにはさせません。このあだ討ちは、首切りをやめさせることです。私たちは、かたい決意で戦い抜きます」と、こう言ったのであります。  久保君の死によって現地の空気は一段と硬化し、もし、現状のまま強行就労を行なうならば、取り返しのつかない重大事態が発生することは、火を見るより明らかであります。よって、政府は、この現実の事態を十分に直視し、強行就労を回避せしめ、中労委あっせん等により事態の円満解決に努力すべきであると考えるが、総理労働大臣国家公安委員長はどのようにお考えになっているのか、この際、その所見を伺いたいのであります。(拍手)  最近における暴力団争議介入の事実は、目をおおうものがあります。たとえば、メトロ交通、主婦生活社などの争議から、安保阻止運動等、一連の大衆運動に至るまで、公然と暴力団国民権利に挑戦しておるのであります。先般、毎日新聞社を襲撃した暴力事件などは、報道機関の公正なる言論を暴力で圧迫するものであって、断じて許してはならない事犯であると思うのであります。(拍手岸総理は、政府の重大施策の一つとして三悪追放を叫び、わけても、暴力は勇気を持って追放すると今まで公約して参りました。しかるに、岸内閣になってますます暴力事犯がふえつつある事実を、総理は何とお考えになるか、公約違反の責任をどのようにとろうとするものであるか、この際、見解を明らかにし、もって国民の不安と社会の不信にこたえていただきたいと思うのであります。  次に、四月一日の閣議に関する新聞報道によれば、仮処分命令が出た以上、ピケは違法である、との意見が述べられたとのことであるが、たとい仮処分が出ても、直ちにピケが違法になるなどとは、三百代言的言辞もはなはだしいといわねばなりません。(拍手)また、同日、労働大臣は、新聞記者会見において、ピケ限界は説得であって、力の対決は行き過ぎである、こう言っておりますけれどもピケ限界をかように画一固定的に考えることは、一方的に労働組合側に不利益をしいる結果になることは、古河雨龍炭鉱事件における旭川地裁判決のいう通りであります。すなわち、この判決によれば、労働組合のなす争議行為の態様なるものは、使用者の施す対抗策との折衝面において相対的に流動してこれに対抗せんとするものであるから、この具体的な態様を無視して、常に固定的に争議行為の手段方法の正当性の範囲を限ろうとする考え方は、往々労働組合の側にのみ不利益をしいる結果となり、労働組合法第一条第一項に明定する、この法律の根本理念であり、かつ基本目的である労使対等の立場を失わしめ、労働組合の団結権を不当に圧迫するおそれが多分にあるといわねばならない、このように判決文はいっております。(拍手労働大臣の発言は、労働大臣として、すなわち、労働者を保護するというサービス省の大臣として、きわめて不穏当であると思います。また、三友炭鉱事件に関する最高裁判決その他幾多の判例においても、ある程度の有形力の行使は正当なピケット権の範囲として認められているところであります。この際、あらためて労働大臣所見を承りたいと思います。  また、今回の事件に関連し、警職法改悪の動きが出ております。ただいまも、総理は、検討するということを、ここで答弁をされましたが、久保君の刺殺事件を見ても、当日現場に居合わせた警察官の態度は、全く怠慢の一語に尽きるものであり、先年、暴力事犯取り締まりの目的で制定された刑法の凶器所持集合罪によって取り締まるべきにもかかわらず、拱手傍観していたのであります。もともと、警職法は、個々の警察官の職務執行に関するものであって、この事件を口実に、先般世論の猛反撃にあってついえ去った警職法改悪を問題にするがごときは、明らかに政府の政治的謀略であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)この点に関し、総理及び国家公安委員長の所見を、この際あらためてお伺いをしたいと思うのであります。  次に、本争議に海上保安庁が介入した事実について、総理並びに運輸大臣に質問したいと思います。  会社は、三月二十七日午後三時半、強行就労のため、新組合員三百名を長洲から漁船五隻に乗せ第二人工島に向かったのでありますが、三角海上保安部は、巡視艇「いそちどり」等三隻を動員、また、福岡、長崎海上保安部から巡視艇「いそゆき」等を動員し、強行就労に協力したのであります。特に、上陸の際は、第二人工島北側に接岸し、保安庁の船が桟橋の役割を演じ、また・九州電力の岸壁から物資を運ぶため漁船二隻が三往復したが、これまた、保安庁の船が援護した事実があるのであります。この事実について、二月二十八日、わが党の田中代議士、吉田参議院議員が鳥丸三池海上保安署署長に抗議したところ、同署長は、同日は海上がしけていたので漁船保護の目的で出動したと答弁をしておりますが、当日は、風速四メートルで、海上きわめて平穏であったのであります。風速四メートルをしけと断ずるのは、おそらく、この海上保安署だけでございましょう。越えて三月二十九日、衆議院社会労働委員会において、同じくわが党の多賀谷真稔君の質問に対し、海上保安庁長官は、会社人事課の要請で出動したと、現地とは異なった答弁を行なっておるのであります。経営者の要請で労働争議に海上保安庁が介入するということは、国家機関の争議介入の原則に反するものであり、これが許されるとするならば、将来、争議弾圧に自衛隊出動の危険なしとしないのであって、きわめて重大な問題を含んでおると思うのであります。(拍手)この際、運輸大臣より、そのことの真相を明らかにするとともに、この点に関する総理の明確なる御見解をお伺いしたいのであります。  以上のごとく、会社側暴力団使用の事実等、一連の行動によって、組合同士の衝突と殺傷事件の起きたことは、もはや明確なる事実でありますが、ここで、私は、第二組合発生の原因について政府所見を伺いたいと思うのであります。  会社は、争議の長期化に伴い、組合員生活困窮を見越し、組合活動家の排除、賃金遅欠配の意識的な実施による組合の去勢等によって希望退職者の増加をはかり、他方では、組合の分裂による組合活動家の孤立化を目的として長期計画を行なってきたのであります。この点については、昨年十二月、衆議院社会労働委員会におきまして、滝井義高代議士は、その不当労働行為性を指摘したのでありますが、その際、労働省も、不当労働行為の疑いがあると答弁し、二回にわたって会社側へ警告を発しているのであります。その後、会社はロックアウトの実施を行ない、組合の内部分裂に一段の圧力をかけてきたのでありますが、私は、まさに、この点に第二組合発生の原因があると思うのであります。第二組合の発生については、労働組合の組織の問題等、幾多の問題があるのでありますが、私は、この三池の問題については、会社側の明確な組合分裂工作を指摘せざるを得ないのであります。これは明らかに三井鉱山が不当労働行為を行なっておると私は考えるのでありまするが、労働大臣はどのようにお考えでありますか。  最後に、岸内閣のエネルギー政策、石炭産業政策の欠陥と、その責任について、お尋ねをしたいと思います。  エネルギー政策は、国民経済発展の基本的な土台として、きわめて重要な問題でありますが、その抜本的な対策については、わが党の早くから強く主張してきたところであります。しかるに、政府のエネルギー政策ないしは石炭政策なるものは、単に労働者の首切りに重点を置く、いわゆる合理化政策にすぎず、根本的な産業発展策なるものは何ら見られないのであります。すでに今日まで十五万人の首切りがなされているにもかかわらず、さらに今後四年間になお十万人を上回る首切りを予定しておるのでありますが、一口に言えば、岸内閣の石炭産業政策は単なる労働者首切り政策であり、積極的、発展的な要素は何らないのでございます。私は、これが今回の争議の大きな背景をなしておると思うのでありまして、その責任の大半は政府が負うべきものであると思うのでありますが、これに関しまして総理並びに通産大臣の御答弁を要求いたしまして、私の緊急質問を終わりたいと思います。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えいたします。  先ほども申し上げたように、三井三池争議は、最近の事態はまことに遺憾とする状態でありまして、一日も早くこれが平和的に解決することを、私どもは心から願っておるのであります。こういう労働争議政府が不介入の立場をとるということは、終始変わらず、われわれは介入すべきものだとは考えません。しかし、これが自主的に解決されなければならないし、また、暴力を用いて地方の治安を乱したり、あるいは平和な人々人権がじゅうりんされるというようなことがあれば、治安を維持すべき政府がこれについての必要な措置を講ずることは当然でありますが、労働争議そのものは、やはり、自主的に労使の間で話し合いできめるということが、何といっても一番望ましいことであることは、申すまでもありません。しかし、それができない場合に、中労委あっせんによりましてこれが平和的に解決するということは、また望ましい平和的解決の方法であると思うのであります。  いずれにいたしましても、政府としては、いかなる場合があっても、労働争議暴力介入する、用いられるということのないように、また、それが地方の治安を害することのないように最善を尽くしていかなければならぬ、かように考えております。暴力の排除につきましては今お話しのように、いろいろな、あるいは労働争議の名において暴力が行なわれたり、あるいは、その他の方面におきまして、いわゆる暴力団というものがいろいろ平和な社会生活を脅かすというようなことに対しましては、従来も、われわれとしては、これを排除するのに努力をしてきておりますけれども、なおそれが絶えない状態にあることは、はなはだ遺憾であります。今後、政府としても、強力にこれが排除については全力を尽くして参りたいと思います。  次に、警職法の問題でございますが、これは先ほど大坪君に答弁したことで御了承願いたいと思います。  海上保安庁が介入したということでございますが、私の聞いておる報告では、事実が違っておるようであります。詳しくは運輸大臣からお答え申し上げます。  エネルギーの総合対策の問題につきましては、私ども、できるだけ国内のエネルギーを第一次に使っていく、足らないところのものを輸入に待つ、そうして、その意味から申しまして、石炭というものは国内エネルギー資源として大事なものであることは言うを待ちません。ただ、価格の点、いわゆる経済性において、あるいは最近の科学技術の革命というような点から、石炭業は非常に苦しい立場にある、これに対する対策につきましては、政府としても万全を期しておるわけでありまして、詳しくは通産大臣よりお答え申し上げます。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇
  13. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  最近のエネルギー革命に対処いたしまして、政府におきましては、昨年来、石炭政策につきまして根本的対策を講じておるのでございます。すなわち、ただいま御審議願っておりまする石炭産業の合理化、または競合エネルギーに対しまする関税政策、ボイラー規制法、あるいはまた、産業の合理化によって起こりまする離職者に対しましての特別対策等、あらゆる方面からこれが対策を講じておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣松野頼三君登壇
  14. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ピケ限界については、先ほど申しましたごとく、平和説得でございます。暴力を伴うものは労働法上の保護はございません。これは最高裁のあらゆる判例に明確になっております。あらためて繰り返します。  先ほどの御質問の中に、会社が不当労働行為の疑いがあるというがごときお話がございましたが、この論点は、労働省で警告を発しておるというわけではございません。会社側は、会社業務阻害者の解雇であります。これを、もしも組合活動家ということによって解雇した場合はどうかという仮定の議論に関して、委員会において質疑がございました。会社側会社業務阻害者の解雇、これは労働法の不当労働行為ではございません。なお、両者の間にもし疑義があるならば、所定の労働委員会及び裁判所において事例を弔って判定をすることが一番正しいことだと考えております。  新組合の発生につきましては、新組合は、当然、合法組合でございます。従って、当然、労働法の保護を受けられる組合でございます。新組合は、今日、ストライキをしておりません。会社側もロックアウトをしておりません。従って、新組合は、当然、正規の就労に対する権利というものが今日存在するわけでございます。この権利侵害することが、争議一つの原因となることは明らかでございます。私は、第一組合であろうと、第二組合であろうと、あるいは新であろうと旧であろうと、労働法上の権利はともに尊重して守ることが、正しい政府のあり方だと考えております。(拍手)     〔国務大臣楢橋渡君登壇
  15. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今回の争議におきまして、海上保安庁のとりました態度について説明を申し上げたいと思うのであります。  現地の海上保安庁の出先機関におきましては、警察並びに新聞等の情報によりまして、三月二十七日の夜、第二組合員の海上輸送が強行されることはほぼ確実であり、これに対し、第一組合員による海上及び上陸地点における上陸阻止の公算が大であるという判定をいたしましたので、海上における紛争の防止並びに衝突等に対し、海難防止の立場から、救助のために、船艇九隻による警備態勢をとったのであります。なお、二十七日の午後十時二十分に、会社側の人事部の谷口某から、二十七日の午後八時三十分に有明海の長洲を出港し、第二人工島に向かった第二組合員約四百名を乗せた漁船十三隻がいまだ未着である、遭難したのではないかという捜索の願いがあったので、そこで、三池保安署におきましては、海上保安庁の当然の責任として捜索に当たらしめた事実があるのであります。「ありあけ」は、捜査中の漁船が到着しているかどうかということを調査するために第二人工島桟橋に到着し、搭乗保安官三人は調査のため上陸をいたしました。「ありあけ」には船長外一名が残留して防舷作業中、大牟田港を出港した「さらし丸」が突如として「ありあけ」の左舷に接舷し、船長の制止を聞き入れず、「ありあけ」を足場として強行上陸したのであります。従って、海上保安庁におきましては、今日、海上における治安というものを考えます場合において、暴力行為その他を行ないます場合におきましては、会社側といわず、あるいは第二組合側といわず、断固として取り締まる所存でありますので、この点は、私たちの態度としては、あらゆる不介入主義をとって、海上の治安をあずかっておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣石原幹市郎登壇
  16. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 暴力、ことに集団的、組織的暴力の取り締まりは、徹底を期して参りたいと思っております。四山鉱事件の場合には、警察官も中に入って制止をしておるのでございまして、このため警官も五名負傷いたしております。本件につきましては、五十四名に逮捕状の発行を求めまして、すでに二十五名を逮捕し、厳重に捜査中でございます。  警職法改正の問題につきましては、さきに大坪議員にお答えしましたところで御了承願いたいと思います。      ————◇—————  三池炭鉱争議流血事件に関する緊急質問武藤武雄提出
  17. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 次に、三池炭鉱争議流血事件に関する緊急質問を許可いたします。武藤武雄君。     〔武藤武雄登壇
  18. 武藤武雄

    武藤武雄君 私は、民主社会党を代表いたしまして、三井三池に発生したピケ隊暴力による流血の惨事と、翌二十九日発生をいたしました暴力団による殺傷事件は、きわめて遺憾なことでありまして、取り締まり当局の不見識と怠慢を強く指摘いたすものであります。(拍手)特に、全国民は、テレビ、ラジオ、新聞等の報道により、この惨事については深く胸を痛めているのであります。国会は、このような不祥事に対して、単なる労働争議の問題でなく、人道上、社会治安上の問題として、重大なる関心を持たざるを得ないのであります。(拍手)  三池鉱現地の空気が非常に険悪であり、流血のおそれがあることは、事前に報道されており、第一組合は、公然と暴力阻止の方針を明らかにいたしたことは、御承知通りであります。地元警察側の予防処置は十分考慮さるべきであったにもかかわらず、旧組合暴力が始まってからも、マイクで警告するだけで、衝突制止も実行しないために、惨事は拡大をしてしまったのであります。予防出動がおくれたのは何ゆえか。制止行動がなされなかったつのは何ゆえか。特に、労働争議暴力団介入を許したことは警察側の全責任であって、いかなる弁解も許し得ないのでありまするが、警察側の責任を明らかにしてりいただきたいと思うのであります。(拍手)  特に私が指摘いたしたいのは、二十八日の流血事件の際の警察側の態度であります。私の現地視察の結果持ち帰った現場の写真で明らかなごとく、第一組合側は、鉄帽をかぶり、全員、手に青竹、中には、先をとげて竹やりのごとく焼いたものを現場の第一組合員が持っておる写真を、私は事実として携行をいたしております。また、角棒に五寸くぎを打ち、あるいは直ちに凶器たり得るピッケルを持っておったのであります。現に、三川支部小浜社宅分会長野口款造は、ピケの先頭に立ちまして、ピッケルを手に持ってその指揮に当たっていることは、現場写真で私は明らかに携行をいたしておるのであります。(拍手)このような武装を行なったのに対して、新労側は、腰に弁当をさげただけのまる腰であったことは、集合地から衝突現場付近の行進の写真でも明らかであります。また、事件重傷のため入院したものは、ピケ隊はわずかに三名でございます。新労側は、職員を合わせまして三十六名の多数に及んでいることでも、明らかであります。ピケ隊の三名も、前後の事情から、混乱時の同士打ちの公算もあるとのこともいわれておるのでありまして、この結果の事実から見ましても、暴力の責任がいずれにあるかは一点の疑いもなしと私は断定をいたしたいのであります。(拍手、発言する者あり)また、私は、入院中の一人片々を見舞ったのでありますが、ほとんどの意見は、ピケ隊は、正面を向いているときにはかかってこなかったけれども、下を向いたときか、うしろを向いたときには、直ちに打ちおろしてきておる、と言っているのであります。写真にもあるように、ピケ隊の多くが手ぬぐいで顔を隠しておるのと思い合わせ、あとに証拠を残さないための細心の注意が、あの混乱の最中に働いておるところを見ても、とっさの判断では不可能であるので、事前に指示されていたことは間違いないと思われるのでありまして、初めから計画的であったと思われるのであります。(拍手)  この事態に際して、何ゆえに警察側はこのような危険物を取り上げなかったかとの私たち調査団の質問に対し、現地警察側は、場合によっては凶器になると思ったので持たないように申し入れたところ、ピケ隊側は、これはピケを強化する道具で必要であって、従来も認められていたと主張したので、しいて押さなかったのが、結果的に失敗であった、と答えているのであります。認識不足もはなはだしいと、われわれはおそれ入った次第であります。(拍手)  ピケの合法性の限界については、ピケの説得以上の平和的手段を越えてはならない、あるいは、スクラムを組んで非組合員就労妨害したり傷を負わせたりするピケッティングは不法であるとの判決は、昭和二十七年十月二十二日の最高裁の大法廷を初め、十指に余る高裁、地裁の判決で明らかにされておるのであります。しかるに、手に凶器たり得るこん棒、ピッケル等を所持し、公然と暴力で阻止することを主張しておるピケ隊に対して、ピケ強化のために必要であると言われるに至りましては、警察側の態度は、何と説明をしたらよいか、まことに了解に苦しんだのであります。(拍手国家権力の一機関である警察の認識がこのようで、どうして国民の生命、身体の安全が守られるでありましょうか。総理国家公安委員長の見解と責任を明らかにされたいのであります。(拍手)  この際、関連して、労働大臣の認識をただしたいと思うのであります。憲法第二十七条には、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と明記されておるのであります。三池新労組の場合は、正式の団体交渉においてストを解除し、就労を協定いたしたのでありまして、なお地裁の仮処分判決も出たのであるから、就労は一点疑いのない合法であり、憲法に保障された権利であると私は思うのであります。(拍手)第一組合は、批判派を除名して、生活資金の対象より除外する方針を明らかにしたのであるから、新組合員にとっては、食うための糧道を断たれたのであって、まさに生存権の主張でもあるのであります。この国の法秩序の一切から保障されるべき新組合員が、暴力によって就労を阻害され、あまつさえ、新組合員家族は、近代社会の秩序のもとでは想像することのできない住宅内での非合法暴力が日夜繰り返されておる事実であります。(拍手)  新組合員家族が、隣同士の連絡を断つ戦術のもとに、家族が一歩外に出ても、子供に対する暴力主婦に対する洗たくデモ、これは、まわりをぎっしり囲んで、もみくちゃにしながら、その際、だれがやったかわからないように手をかんだり、つねったりする、直接暴力が伴っておるのであります。夜はたき火をして監視をする。食糧がなくなって、やむなく買いものに出ると、すぐ、ばらばら集まってきて、裏切り者とか、犬とか、店までついていって妨害いたしておるのであります。産気間近い婦人の家に土足で上がっていやがらせを行ない、退院をした日の婦人患者に、すぐ、いやがらせに、その家庭に上がり込んでおるのであります。これらは、住宅地域内には一切の報道人も入ることを禁止いたしました。黒いヴェールをかぶせた中で、手段を選ばぬ無法暴力行為が平然として行なわれておるのであります。(拍手)  すでに、四山鉱のみで五百家族近いものが、着のみ着のままで避難をいたしておるのであります。私は収容所を一々見舞ったのでありますが、私の顔を見ただけで、婦人はわっと泣き伏しておるのであります。恐怖そのものの表情であったのであります。彼らは、口々に、今の三池現状はこの世の姿ではありません、と泣いて訴えておるのであります。(拍手三池の今日の姿は、近代的労働運動の片りんもありません。一世紀、二世紀前の、労働運動暴力の姿そのものの再現であります。(拍手)  炭労本部は、平和的解決の戦術転換をして、中労委あっせんを依頼したといっており、労働大臣も、あっせんによる平和解決は望ましいから中労委に働きかける、と声明をいたしております。藤林会長も、職権でもやると言っておりますが、まことにけっこうであり、わが党も賛成であります。しかし、これには前提条件があると思うのであります。中央の炭労は、平和でやると宣伝をするけれども、現地の労組は、手段を選ばぬいやがらせ、脅迫を新組合員に加えながら、平和就労に対しては、公然と暴力阻止を表明いたしておるのであります。  私は、先ほど、負傷者の談話から見て、計画的なにおいがあると説明をいたしましたが、暴力は二十八日初めて行なわれたのではなく、二十七日の九時三十分には、宮浦鉱裏門より、第一組合員二百五十名から二百名が、四列縦隊で裏門を破壊して鉱長室に乱入、職員控室ともどもに、めちゃめちゃに破壊して、鉱長の制止に対しては石を投げかけて暴行をいたしております。三十分前の九時には、保安要員の職員松隅、本田、古田の三名が、何の理由も、紛争の条件もなかったのに、さんざんたたかれて、みぞの中に突き落され、はい上がるところをまたたたかれて、頭部裂傷六針等、三人重傷の上、入院のやむなきに至ったのであります。二十八日の朝も、新労の行動開始前、すでに五時三十分、ピケ隊三川鉱裏門を破壊して構内に突入、窓ガラス等を片っ端から破壊いたしまして、鉱長に石を投げるなどの暴行を、先制攻撃の形で開始をいたしておることでも、明瞭に計画的暴力であったといわなければならぬと思うのであります。(拍手)  新労菊川組合長は、これを解明して、炭労は当初批判勢力を二、三百名前後と甘い判断をしていたのが、四千名に近い数になったのに驚き、全国スト指令で、三鉱連を中心とする一斉ストの攻撃によって攻勢に出ようとはかったのでありますけれども三井五山が炭労指導に批判を加え、指令を拒否するに及んで、ろうばいし、ついに、炭労が、かつて考えてみたこともなかった、中労委あっせんによる調停という、百八十度の転換を策したのでありまするが、これも、会社側の強硬な拒否にあって、不可能と判断をするや、ついに近代労働運動社会においては考えることのできない暴力を行使することによって、社会混乱の中から職権による中労委の乗り出しを策したのが、今回の事件に至った最大の原因として、これを喝破し、声明しておるのであります。(拍手)しかりとするならば、このままの状態中労委あっせんが開始されるなら、将来の労働運動にぬぐうことのできない悪例を残すこととなると思うのであります。  私は、まず、中央では平和解決、現地は暴力も辞せずとの二面作戦を排除させて、現地の一切の暴力行為炭労みずから指令して解除せしめ、特に、暴力による就労阻止など、明らかに非合法暴力であるピケ隊を解除せしめ、中央・現地を通じて平和態勢が確立をされ、初めて中労委の活動が開始されるべきであると私は思うのであります。(拍手現状のまま、あっせんが開始をされるとなると、組合という名のもとに行なわれる非合法暴力行為が治外法権的考え方で進められることに国家自体が巻き込まれて処理される形となり、法治国家としてはきわめて重大であると考えるが、総理労働大臣所見を伺いたいと思うのであります。(拍手)  次に、事件当日、いまだ公にされていない三川鉱繰り込み場における凄愴目をおおう残虐行為に対し、その責任を追及いたしたいと思うのであります。  すなわち、二十八日午前七時五十分より開始された新組合就労に際して、警察が傍観的立場をとったことは、先ほど指摘した通りであるが、この衝突では、ごく少数の負傷者にすぎなかったのであります。続いて起こった、報道人も一切寄せつけない構内繰り込み場における残虐行為の概要を説明してみたいと思うのであります。(拍手)  構内繰り込み場へ入った新組合三百九十名は、ようやく就労し得た喜びにほっとして、全く素手のまま、繰り込み場内で休憩をしておったのであります。このとき理性を失ったピケ隊二百名は、直ちに追尾して構内に入り、古材置場にあった鉄棒、スコップ、ハンマー、バール等の凶器に、めいめい得物を持ちかえたのであります。そのうち、百二十名は繰り込み場、八十名は鉱長室を目ざして乱入を開始いたしたのであります。鉱長室には呉比鉱長、宮地副長ほか十一名がいたが、まず、鉱長室のとびらの前で、第一組合の乱入を知った三名の者が、とびらを押えて、からだでささえたのであるが、ピケ隊は、鉄棒でガラスを破り、中の者を殴打するとともに、一隊は横の窓を破壊して乱入いたしまして、ついに鬼畜行為ともいうべき暴力が開始されたのであります。彼らは、口々に、殺せ、殺すぞと叫びながら、無手の者を鉄棒で乱打したのであります。完全に失心をして倒れておる被害者に対し、まだ死なないかと言って打ち続けたといわれておるのであります。また、繰り込み場において、ピケ隊乱入の知らせを受けた新労の三百余名の人たちは、頭を下にして、スクラムを組んで、おしりをうしろにして、ちょうど北海道でクマに襲われました馬の例にならいまして、暴力はやめろ、話し合いでやろうじゃないか、と、彼らは無抵抗のまま叫ぶのみであったそうであります。この無抵抗に対して、ピケ隊は、裏切り者と叫んで鉄棒で乱打し、れんがで打ち続けたというのであります。そのときに、円陣の外にいた新組合指導者は、どんなことをされても殺しはしまいから絶対に手出しをするな、もう一息で警察官が来るぞ、がんばってくれと絶叫して、暴徒の一撃によって倒れてしまったのであります。そのときに、二十才前後の炭労オルグの一人が、裏切り者をたたき殺せと叫んで、黒板を円陣のまん中に投げつけたのであります。とたんに、気違いのようにわあっとピケ隊は興奮状態となり、殺せ、殺せと叫びながら激しく襲いかかって、瀕死の者も合わせて重傷二十六名、負傷者百四十六名、約半数の者がけがをするという一大惨事となったのであります。このようにして、彼らは、殺人も辞せずとして、仮死状態重傷者になお乱打をし続けたといわれておるのであります。この間、宮地三川副長は、電話で警察側に救援を求めると、どのくらいけが人が出たかというような質問をして、思わず副長は怒って、何人かが殺されたと叫ぶと、そうかとは言ったが、なお二十分以上も来なかったというのであります。この目をおおう残虐行為は前後三十分も続き、ために、宮地副長は、警察側の無能と怠慢とを恨み、悲憤の号泣をした、といわれておるのであります。現地の話によると、初めて事の次第に驚いた警察隊は、構内に急行しようとすると、地元出身の議員たちが立ちふさがって、絶対に入るなととめたので、一時は入るのをやめた、というのであります。弱い者には権力をかさに着、強い者には無力にもひとしい警察の実態を、よく現わしております。これらの真相について、総理石原国務大臣の明確なる答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)  次に、治安対策の根本について、総理並びに石原国務大臣に伺いたい。  第一は、住宅内の治安についてである。住宅内においての暴行脅迫の数々については前に述べた通りでありますが、私の現地を視察した三十日には、四山鉱においては、社宅中央に約五百名ばかりの警察官が警備に当たっていたが、肝心の新組合員家族たちは、一人として、この警官たちが自分たちを守ってくれるとは考えていないことであります。このことについて大牟田署に抗議すると、危険と思ったので、昨晩は、一家族を救出するために、警官一個小隊を動員して救出した、と言っておるのであります。少なくとも法治国家をもって任ずるわが国において、横行自由であるべき公道において、また、生命財産の保障がなされるべき住宅地において、一家族の救出に警官一個小隊も動員しなければ脱出できないような地域が、一時的にもせよ、存在する事実についてであります。政府は、この事態をいかに認識しておるか、伺いたいのであります。(拍手)  また、現地警察署の無定見、無能力についてお伺いをいたしたい。福岡県国警本部長ら警察幹部に抗議の際、住宅内の治安について追及をすると、三池は平素から住宅内に警官の立ち入りは非常にうるさく、事実上入れなかった、従って、入れないのは今度ばかりではない、と答えているのであります。また、大牟田署の次席は、何ゆえに治安の万全が期し得ないかとのわれわれの質問に対し、現在の警職法ではどうにもならないから、国会の先生方にお願いする以外にない、と答えでいるのであります。現行法ではできませんとはっきりするなら、国会において問題にしよう、と言うと、驚いて、現行法でも人数さえ動員できるなら十分に取り締まれる、と、あわてて取り消しておるのであります。どうも、国会での岸総理石原国務大臣のこの事件に対する答弁と、現地警察側の態度と考え合わせてみると、政府は、何か、この機会に、警職法改正のため意識的にこの事件を利用しているのではないかとの疑問さえわいて参るのであります。(拍手国民にこのような誤解を与えるとすれば、政治上まことに重大であるので、総理及び石原国務大臣の明快な説明を聞きたいのであります。  次に、今後の対策として、政府は住宅内の住民の自由回復について、どのような対策があるか、具体的に説明してもらいたい。  また、新組合員が、働く意思にもかかわらず、ピケ隊暴力によって就労できないとすると、生活権にかかわる重大な問題であるが、いかようにして安全に就業を保障し得るのか、対策を承りたいと思うのであります。昨日の現地の「夕刊フクニチ」によると、暴力ピケ排除に対し、村井九州管区警察局長の積極論と宮地福岡県警本部長の消極論の対立があると報じているが、このような内部不統一によってできないとすれば政府の責任となるが、一体どのように政府は考えておるのか。  また、就労の際、ピケ隊暴力によって犠牲者が発生した場合、ピケ隊の責任はどうなるのか、特に、明らかに非合法にもかかわらず、実力阻止を指令している中央幹部の責任はどうなるのか、お伺いをいたしたと。(拍手)  また、二十七、二十八旧両事件暴力加害者は、被害者の言明によっても相当数明らかにされておりまするが、何ゆえに責任の追及が開始されないのか、石原国務大臣にその理由を明らかにしてもらいたいと思うのであります。  なお、暴力ピケの排除について、各級裁判所の判決で明らかにもかかわらず、慣行として守られないわが国労働組合現状に対して、不祥事の再発を防止するため、ピケ限界について、法秩序の上かちも解釈を明らかにして、暴力行為が排除される慣行の確立を期すべきであると思いまするが、総理労働大臣所見を伺いたいと思うのであります。(拍手)また、私は、今回の事件の大きな原因は、政府の石炭政策の貧困にもあると思うのであります。今回の政府提出の石炭合理化法案は、明らかに、なお石炭労働者十万以上を三カ年に整理することが条件となっているのでありますが、その首切りは労使が勝手にやれ、ただし、切った失業者は離職者援護法でめんどうを見てやる、というのが政府の対策であります。これで炭労側の現在の戦術から見て、第二、第三の三池問題が発生しないとは、だれも保証できないのであります。私は、政府は、コスト切り下げ合理化政策と並行して、余剰と思われる人員に対しては、他の産業に転職の事前協力を求めるとか、新たなる就労産業をみずから立案・計画するとか、同時に計画を立てて、余剰人員はこのようにして解決するから労使で話し合ってくれというならば、なおそれも反対というならば、おそらく世論がこれを審判すると私は思うのであります。  このような事態も含めて、わが党は、さきに石炭産業会議の設置を要求したのでありまするが、言を左右にして応じない政府の無策が今日の事態を促進したのであって、その責任は断じて免れないと思うのであります。(拍手総理、通産大臣の所見を伺いたいと思うのであります。  最後に、私は、国民の代表として、今度の事件の責任の大半は、向坂イズムを中心とする、いたずらなる階級闘争至上主義に武装された総評炭労中央幹部の扇動的闘争一点張りの指導が、炭労自身の組合員大衆からも批判され、不幸にも三池労組の分裂となり、間もなく、半数にも達するといわれる組合員が組織を離れてしまったのであります。この際、総評炭労の幹部は、エネルギー革命のせとぎわに立った石炭界の現況をよく認識し、要求はするが、生産の責任は一切労働者にはないとする三池方式に反省を加え、収炭率九五%というがごと日本最良の天然条件に恵まれた三池において、一人当たり能率月十四トンというがごとき常識は、日の丸資本以外は通用しないことを率直に認めなければならないと思うのであります。(拍手)また、労働組合の団結という旗さえ立てれば、そこには組合員の基本的人権も、知る自由も、批判の自由も、出歩く自由も、一切が暴力をもってしても一拘束できるとの錯覚だけは、文明国を標榜する日本労働運動の名誉のためにも、この際やめていただきたいと思うのであります。(拍手労働運動から民主主義を取ったら、一体あとに何が残るでありましょうか。自滅か暴力革命の前衛部隊としての性格と任務が残るのみでありましょう。総評は、かつて日本最良の強力なる資本であった尼崎製鋼争議に数千人の組合員職場を失わしめ、続いて、日産自動車、日鋼室蘭、王子苫小牧の争議においても、幹部と外郭団体の暴走に批判をして立ち上がった第二組合員によってようやく職場が守られ、今日では完全にその指導権を握っている事実について注目すべきでありましょう。(拍手、発言する者あり)  労働運動は経験の積み重ねによって成長するといわれております。失敗の歴史を繰り返すのみで、成功の歴史を知らない中央幹部の無反省が、今日の三池の惨事を生み、組織の動揺を来たしておるのであります。真に平和的に三池問題の解決をはかる意図であるならば、現地における暴力態勢の一切を、中央みずから指令して解くべきである。その上で第三者の公正なる判断に待つとの態度に出るならば、世論も耳を傾け、その反省を受け入れることでありましょう。このことを勤労国民の名において強く要求をいたしたいのであります。  同時に、私は、会社側の責任についても強く指摘をいたしたいのであります。今日、この事態の責任が労働者側にのみあるとする態度は、断じて許すことはできないのであって、経営の甘さが今日の原因を大きく作って、いることを反省しなければならぬと思うのであります。暴力団殺傷事件ごときも、現在までのところ、直接会社側に関係があるかどうかについては疑問でありますけれども暴力団をして将来に期待をかけしめるような、すきを見せたことは、三井経営陣が近代経営感覚に欠けるところ大であったものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)幸いにして、組合側の反省が現われ、暴力阻止の態勢が解かれるならば、行きがかりを捨て、大局に立って、企業の整備合理化も経営の条件でありますが、組合員職場の確保も、また労働者にとっては、何ものにもまさる、必死ともいうべき生存の条件であることを深く認識いたしまして、誠意を持って組合側に当たり、近代的労使の慣行の確立に努力されることを強く求めて、私の質問にかえたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  三月三十八日、二十九日に三池で発生しました事態は、まことに遺憾でございます。政府としては、事態の推移を考え、この地方に相当な警察力も集中して、そういう事態の起こらないように万全を尽くす処置を講じてきたのでありますが、結果においてこういう事態が起こったのでございますから、この点におきまして、私は、今後、治安の維持、一切の暴力行為の排除、並びに、こういう犠牲が再び繰り返されないように、警察当局として万全を尽くしていかなければならぬと思います。  特にお話がありました、住宅街の人心の不安を取り除いて、そうして、新組合員家族等が、他から脅迫されたり、いやがらせのために不安を抱くことのないように、十分、パトロールその他の方法によりまして、これらの地域の治安の回復に全力をあげていくべきであると思います。  また、いかなる場合におきましても、先ほど来御議論がありましたように、暴力を伴うところのピケ——ピケには一定の限界があるのでありますから、その限界を越えたようなピケに対しましては、これを違法行為として排除していかなければならぬ。いわんや、新組合員の当然正当なる就労権利をそういう暴力で妨げるような事態に対しましては、これは、警察当局としても、今後、断固そういう暴力は排除して、就労する権利を保護していかなければならぬと思います。警職法改正を、この事件を何か口実にするとか、利用して云々とかいうお話がございましたが、私どもは、そういう考えはございません。ただ警職法自体の問題としては、いかなる意味においても、集団的暴力はこれを未然に防いで、平和な生活を維持するために、はたして現行法でいいかどうかということについては、十分検討しておることであります。  なお、石炭対策の問題につきましては、先ほどもお答え申し上げたのでありますが、われわれとしては、この石炭業というものは、日本の国内のエネルギーとして大事なものであるばかりでなく、雇用の問題としてもきわめて重要な意義を持っておるものでありますから、これを合理的に将来維持していくということにつきましては万全を尽くしていかなければならぬと思いますが、その点については、先ほども通産大臣から申し上げましたような諸政策を総合的に行なっていく考えでございます。(拍手)     〔国務大臣松野頼三君登壇
  20. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 新組合員労働組合の結成は、労働法上における成規な手続と正規な方法を経ました合法組合でございます。しかも、この新組合は、労働協約を結び、生産再開の話し合いもできているわけであります。従って、当然就労する権利があるわけであります。にもかかわらず、ピケ限界を越えた旧労の暴力的ピケというものにおいて、この正しい労働組合の主張が曲げられることは、まことに残念なことであります。労働組合権利を主張する以上は、他の同じ意味労働組合権利も守ることが、正しい組合の主張だと私は考えます。(拍手政府は、もちろん、労使問題に基本的に不介入ではございますが、しかし、これは労働法で守られた範囲内における労働争議であって、保護のないものについては断じて取り締まることにちゅうちょすべきではございません。昨日も、新労働組合家族の方の実情を聞いて、その圧迫の現状は、心深く涙を禁じ得ませんでした。このような状況にあることは、明らかに労働問題の逸脱です。政府は進んでこれに対処する考えを強く持つべきであろうと信じます。(拍手)     〔国務大臣石原幹市郎登壇
  21. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。  二十八日の三川鉱事件に際しましては、警察当局といたしましても、事態重要性にかんがみまして、千五百名ばかりの警察官を付近に動員をいたしたのであります。それまでに得ておりました情報等の食い違い等によりまして、結果的にああいう事案になりましたことは、まことに残念なことであります。その後、状態にかんがみまして、さらに警察力を強化いたしまして、九州各県より応援を得まして、目下、炭住街を中心にパトロールを強化し、検問所を強化いたしまして、不安一掃に努めておるのでございます。疎開されました家族の方々も相当数帰っておられるようでございまして、あの地帯から暴力を一掃いたしたいと思いまして、こん棒その他のものの供出をさせておる次第でございます。  二十八日の構内の事件につきまして、先ほど、武藤委員より、るる、お話があったのでありますが、この件につきましては、目下厳重捜査中でありまして、先ほども申し上げましたように、近く相当数逮捕者が出ることと思っておるのでございます。今後とも厳に捜査を続行いたすつもりでございます。  先ほどの争議に伴いまする不法行為につきましては、これは労働運動としての争議と違いまして、厳に取り締まるべきことを強く指示しているのでございまするが、先般、民主社会党の調査団が行かれました際に、現地当局におきまして、いろいろ、何か、本部長あるいは警察署長等において、言葉の行き違いがあったようでございます。さっそく私も先刻調べたのでございまするが、本部長は、そのようなことはなかったと言っておるのでございます。他の圧力によりまして行動が制約されるようなことがありましては断じてならぬと思います。さようなことがありましたならば、これは非常な問題であろうと思います。さらに厳に指示して参るつもりでございます。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇
  22. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えを申し上げます。  今回の石炭に関しまする一連の施策は、石炭鉱業の合理化と、また、雇用関係からきておるのでございます。私らとしましては、できるだけ職場の確保をはかりつつ、それでもなおかつ離職なさる方につきましては、予算上の措置を講ずることはもちろん、関係業者あるいは一般財界人に呼びかけまして、離職者の対策につきまして万全を期する考えでございます。(拍手
  23. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これをもって緊急質問並びにこれに対する答弁を終わります。      ————◇—————  日程第一 行政書士法の一部を改正する法律案渡海元三郎君外二名提出
  24. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第一、行政書士法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  25. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事渡海元三郎君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔渡海元三郎登壇
  26. 渡海元三郎

    渡海元三郎君 ただいま議題となりました行政書士法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、行政書士法のその後の運用状況にかんがみ、従来任意設立とされておりました行政書士会及びその連合会を義務設立とし、その自主的指導力を強化整備するとともに、業として行政書士の業務を行なう者は、必ずこれに加入すべきものとして、その業務執行の適正化をはかろうとするものでありまして、さきに、第二十八回国会においても同趣旨の法案が提出され、衆議院を通過したのでありますが、参議院において審議未了となったものであります。  本案は、三月十八日当委員会に付託され、三月三十九日、提出者を代表して、私、渡海元三郎委員より提案理由の説明を聴取し、三月三十日質疑を終了、四月一日、討論を省略して採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  27. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 採決いたします。  本案は委員長報告の通りに決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 中小企業業種別振興臨時措置法案内閣提出
  29. 清瀬一郎

  30. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長中村幸八君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔中村幸八君登壇
  31. 中村幸八

    ○中村幸八君 ただいま議題となりました中小企業業種別振興臨時措置法案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  貿易及び為替の自由化を初めとするわが国経済情勢の変化に対応して、中小企業の一そうの振興をはかるためには、従来からの金融、税制、組織化等の諸対策をさらに推進すべきことはもちろんでありますが、同時に、業種、業態に即応した、きめのこまかい対策を浸透せしめることが特に肝要であると考えられ、このような見地から本案は提出されたのであります。  本案の内容は、第一に、業種を指定し、これについて経営の合理化等に関する改善事項を定めるとともに、要旨の公表及び必要な指導を行なうこと、第二に、競争の正常化または取引関係の改善のため、特に必要がある場合には、主務大臣が、中小企業者、関連事業者等に対し勧告をすることができること、第三に、諮問機関として中小企業振興審議会を設置すること、第四に、特に必要がある場合には、中小企業または関連事業者から報告を徴収することができること、第五に、本法を五カ年の臨時法とすること、以上であります。  本案は、三月一日当委員会に付託され、四日政府委員より提案理由の説明を聴取し、十五日より質疑に入りましたが、三十一日に至り質疑が終局いたしましたので、四月一日採決を行ないましたところ、全会一致をもって可決すべきものと決した次第であります。  なお、採決後、各党共同提案による附帯決議を付したのでありますが、その骨子は、勧告にあたっては消費者または関連事業者に犠牲をしいることのないよう配慮すること、及び、十分な予算措置を講ずることであります。  以上、御報告を申し上げます。(拍手)     —————————————
  32. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) お諮りいたします。  本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 農地買収者問題調査会設置法案内閣提出
  34. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第三、農地買収者問題調査会設置法案を議題といたします。     —————————————
  35. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長福田一君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔福田一君登壇
  36. 福田一

    ○福田一君 ただいま議題となりました農地買収者問題調査会設置法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案の要旨を申し上げますと、戦後行なわれた農地改革は、正当な法律に基づいて行なわれたものであるから、これを是正する意味における補償は考えられないが、この農地改革の副次的な結果ともいうべき被買収者に関する社会的な問題について、その実情を明らかにするとともに、これに対して何らかの措置を講ずる要があるかいなかを二年間にわたって調査審議させるため、内閣総理大臣の諮問機関として、総理府に農地買収者問題調査会を設置しようとするものであります。  この調査会は、委員二十人以内で組織し、専門の事項を調査させるため専門調査員十人以内を置くことができることとし、委員及び専門調査員は、学識経験者のうちから内閣総理大臣が任命することといたしております。  本案は、さる二月九日本会議において趣旨説明を聴取した後、本委員会に付託され、二月十一日提案理由の説明を聞き、自来、委員会を開くこと七回、また、農林水産委員会と連合審査会を開くなど、きわめて慎重に審査を行なったのであります。この間、久保田豊君、中村時雄君、田万廣文君、受田新吉君、石田宥全君、芳賀貢君、角屋堅次郎君の各委員より、各般の事項について詳細に熱心な質疑が行なわれたのであります。これに対し、岸内閣総理大臣初め佐藤大蔵、福田農林の両大臣、その他政府委員等よりそれぞれ答弁がなされたのでありまするが、これを要約いたしますと、岸内閣総理大臣よりは、「農地改革は適正に行なわれたものであり、これを憲法違反でないとする最高裁判所の判決はあくまで支持し、旧地主に対して、当時行なった補償を修正するような考えは毛頭ない。しかし、農地改革という大変革によって各種の複雑な社会問題が起こっていることは事実であり、政治の立場から考えるならば、合憲であるからといってこれを放置することはできないので、これを公正に解決する必要を認め、その実態を調査することを目的として、本調査会を設置しようとするものである」旨の答弁がなされました。佐藤大蔵大臣よりは、「農地転用税または転売税とかの目的税を創設する考えはない。本調査会より何らかの措置を必要とする旨の答申がなされ、これに伴って財政的支出を必要とする場合においては、これを一般財源に求めたい」旨の答弁がなされました。福田農林大臣よりは、「本法が成立しても、農地法の精神はあくまで維持し、農地改革の成果は、これをますます発展させたい。また、昭和三十年の調査は、農政の観点から行なったものであり、本調査会は、社会的観点から調査しようとするものである」旨の答弁がなされたのであります。  かくて、四月一日質疑を打ち切り、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して久保田委員が、民主社会党を代表して田万委員が、それぞれ反対の意見を述べられ、自由民主党を代表して淺香委員が賛成の意見を述べられたのであります。採決の結果、本案は多数をもって原案の通りこれを可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  37. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 討論の通告がありますから、順次これを許します。久保田豊君。     〔久保田豊君登壇
  38. 久保田豊

    ○久保田豊君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました農地買収者問題調査会設置法案に対しまして強く反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)  まず第一の反対理由は、本法案によりまする調査会そのものが、いまだかつてその例を見ないほど、ひどい、インチキなものであり、かつ、ふまじめきわまるものであるという点であります。  政府の提案理由と、これに対しまする説明によりますると、第一に、この調査会の目的とするところは、農地改革によって農地を買収された旧地主に関する社会的問題を調査審議し、その結果によっては、要すれば何らかの政策的措置を講ずるということにあるというのでありまするが、最も肝心な地主に関する社会的問題ということの内容については、岸総理を初め多くの政府の答弁者のだれ一人も、これを具体的に明らかにすることができなかったばかりでなく、その言うところが一人一人食い違うというありさまでありまして、結局のところ、この調査会が具体的に何を目的とするものかは、ついにわからずじまい、こういうふしぎな調査会であることであります。(拍手)  第二に、この調査会の調査対象でありまするが、これについては、ただ旧地主というだけで、あるときは、政府の答弁は、被売収地主の全員である約百七十六万戸であるといい、また、あるときは、そのうちの不在地主だけの約三十六万戸であるといい、またあるときは、その中間の約百万戸だという体たらくでありまして、両岸内閣の特徴が最も遺憾なく発揮されたのであります。結局のところ、政府自体が、この点については何もわかっておらないということが、はっきりいたしたのであります。(拍手)  第三に、この調査会は、いかなる具体的事項について調査をするのかということでございますが、これについても、本案がすでに三年近くも前から懸案になっているのにもかかわりませず、政府には、まだ何らの具体的な考え方ないしは計画が全然ないということが、はっきりいたしたのであります。  第四に、この調査会がいかなる具体的な調査方式をとるかということでございますが、これについては、単に、この調査会に対しまする予算総額一千万円のうち三百八十八万円をもって、この種の調査にはほとんど未経験で、しかも、社員がわずかに五十人の中央調査社というものに一括調査委託をいたしまして、百七十八万戸の旧地主のうちから、わずかに一万五千戸だけを抽出調査しようというのでございます。旧地主の全く主観的ないろいろの不平や不満を、単に、いわゆる世論調査風に寄せ集める、こういうことだけならばいざ知らず、少なくとも、旧地主の経済、生業、生活から、解放農地の移動までも含めて、その実態を、正確に、かつ具体的に、かつ科学的に調査しようというのに、こんな貧弱な経費と、人員と、ずさんな方法でやれるわけのないことは、三つ子でもわかることであります。しかも、現地におきまするところの農地改革の結果の事務的整理は、御承知通り、市町村農業委員会においても、まだ一人々々の地主についての名寄せ整理さえできておらない実情でありまして、こういう実情を基礎にしてやりまするならば、専門家の意見では、この調査にふさわしい信憑性のある結果を得るには、少なくとも、約二万人の調査人員と、約半年の調査日子と、約五億円の金が、ぜひ必要であるというのであります。それを、わずかに四百万円で、そして、五十人でやろうというのですから、全くあきれ返ったものだと申さざるを得ないのであります。(拍手)  第五に、この調査審議の結果、何らかの実際的な措置をとるのか、また、とらないのか、とるとすれば、その具体的な方向は大よそどのようなものを考えているか、こういう点についても何もわからない、こういうのであります。  このように、本調査会はいずれの部面より検討してみましても、全く支離滅裂、文字通りのインチキ調査でありまして、一片の真実性も持っていないのであります。戦後、たくさんの調査会ないしは審議会が設けられ、また、この国会にも数多くの調査会設置法案提出されておりまするが、こんなひどい調査会法案というものは、いまだかつてその例を見ないのであります。もし、政府にして、まじめに旧地主の実態を調査し、必要な実際的措置を公然と行なうというのであるならば、何ゆえに、農林省あるいは大蔵省、厚生省その他政府各機関の、より完備いたしておる調査機能を総動員し、信憑性のある科学的、客観的な調査資料を得た上で、それに基づく実際的政策を打ち出して、堂々とその実施を主張することをしないのでありましょうか。この公明な正道を選ばずして、本調査会のごときインチキな権道を選ぼうとする政府の意図は、はたしてどこにあるのか、われわれは疑わざるを得ないのであります。  この点につきまして、旧地主の中でも心ある人たちは、次のように言って憤慨をいたしております。すなわち、政府・与党のこの調査会に対し当面意図するところは、第一に、国民、特に生産農民大衆の目をごまかしながら、次の段階における国家補償の実現の足がかりを作って参ろうとすることであり、第二に、今まで選挙にさんざん使いまくり、そうした中で抜き差しならない悪因縁に結ばれましたところの旧地主団体の下かちの急追をこれによってはぐらかしていこう、第三に、うまくいけば、本調査会をおとりにいたしまして、この上とも旧地主団体を自民党の選挙に利用しよう、第四に、逆に、全くまずくいきまするならば、そのときは本調査会の作られた結論を口実として、旧地主団体との縁切りをはかるのが、本法案の真のねらいだというのであります。これは当たらずとも遠からずだと私どもは存じます。公党としてまことにふまじめな態度だと申さざるを得ません。  第二の反対理由は、本法案が、政府がしばしばきれいな公の言明をしておるにもかかわりませず、依然として、生産農民の新たなる負担において、解放農地に対しまする旧地主への国家補償を形を変えて実現しようとする危険なる意図をもって貫かれておるという点であります。政府は、本問題に対しまする基本的態度として、従来より、しばしば、農地改革当時地主に支払われた農地の対価は正当なものであり、従って、これを補正する意味での国家補償は行なわないと言明してきており、さらに、今国会におきまするわが党の追及に対して、岸総理と佐藤蔵相は、旧地主に対する国家補償の財源とすることを目的とする農地の増価税または転用転売税を新設することには反対である旨を新たに追加言明いたしておるのでありまするが、最も肝心な問題点でありまするところの見舞金、給付金、交付金、その他、補償という名は使わないが、何らかの形におきまする実質上の補償ないし補償類似の措置をやるのかやらないのかという一点に関しましては、終始一貫、言を左右にして、言いのがれと、ごまかしに狂奔して参ったのであります。  しかも、旧地主団体の公表文書によりますると、岸総理みずから、自民党幹事長として、昭和三十二年に、旧地主団体の代表者に対しまして、この補償実現の支持を確約し、その運動を激励されておるのであります。一方、また、これを裏書きするように、岸総理以下各大臣の国会におきまするこの点に関する答弁は、回を重ねるにつれて一歩々々ぼやけて参ってきておるのであります。  一方、与党たる自民党を見ますると、前回の総選挙には、旧地主団体の全国的統一体であるところの全国農地解放者同盟から、自民党候補者百六十八名の推薦を受け、この団体をフルに活用されているのみならず、現に、田中萬逸氏の会長を初め、有力なる自民党の国会議員二百余名がこの同盟の各種の役員に就任いたしておられ、同盟本部事務所は、ついこの間まで衆議院内の自民党民情部の中に置かれておるという実情であります。さらに、このような関係を背景といたしまして、自民党内には、党議をもって特設されました農地問題調査会というのがありますが、これが昭和三十三年の十一月二十三日に同党の政策審議会に対して行なった農地問題に関する答申の第一項において、補償問題解決を目的として、この調査会と全く同様の調査会を政府に設置することを勧めております。続く第二項におきまして、この補償財源として、新たに農地の転用転売税を設けることを決定いたしておるのであります。一方、これに相呼応するがごとく、旧地主団体は、当面の運動の重点を補償実現一点にしぼりまして、これに狂奔すると同時に、半ば公然と、解放農地一反歩当たり十万円、総額約二兆円、あるいは、反当たり五万八千円、総額約一兆二千億円、または、つつましく、反当三万円、総額約六千億円などと、補償額についての論議を盛んに行なっており、また、農地の転用転売税だけで優に年間六百億円の補償財源は確保できるなどという、威勢のいい皮算用をやっておるという実情であります。  岸内閣、自民党、旧地主団体の三者間におけるこのような関係と状況とを考え合わせまする場合、本法案が一たん成立するなら、好むと好まざるとにかかわらず、次の段階において、何らかの形における実質上の補償並びにその財源としての農地の増価税または転用転売税の形におきまする生産農民の新しい重い負担が現実に登場するであろうことは、何人もこれを疑わざるを得ないのであります。なぜならば、本法案の成立は、第一に、旧地主団体の熾烈な補償実現運動に対しまして、文字通り火に油を注ぐものであります。第二に、この運動に強力な支持を与えておられる自民党内の多数の補償賛成派の諸君に、そのための明躍暗躍のための好個の足がかりを提供するものであります。しかも、大へん失礼な言い分でありますが、たがのゆるみ切ったところの岸内閣には、これを押え得る力がほとんどなくなっているからであります。  わが党は、あくまで生産農民大衆の立場に立つものであり、農地改革当時地主に支払われたところの農地対価は、いかなる意味におきましても全く正当なものであり、従って、いかなる名目と形式によるにせよ、実質上の補償ないしこれに類するものを今になって再び旧地主に支払うこと、まして、そのために農地の増価税、転用転売税等、いかなる形によるにせよ、生産農民の新たなる負担を招来するがごときことに対しましては、絶対に反対であり、また、従って、そうした疑いと危険を多分に内蔵しておりまする本法案に対しましては、どうしても賛成ができないのであります。  第三の反対理由は、本法案は、単に旧地主への補償実現の危険を内蔵するだけでなく、さらに加えて、現に深刻な危機に直面していますわが国農業の前向きの発展を大きく阻害する、うしろ向きの危険なる要素を多分に内包しているということであります。本法案の真の推進者であります旧地主団体の運動目標は、単に補償実現にとどまるものではありません。その最高目標は、土地の取り上げ、小作料引き上げの自由をおもな内容として、現行の農地法を根本的に改悪し、これを土台として、旧地主を主人公とする農村の旧秩序を復活再現するにあることは彼らの公表しておる宣言、事業計画等によって明らかであるばかりでなく、数年前、彼らによって香川県、石川県、その他全国各地に公然と繰り広げられた集団的土地取り上げ運動等の実績によって見ましても、一点疑いの余地のないところであります。(拍手)本法案が成立するならば、旧地主団体は、自民党内の支持勢力の暗黙の応援のもとに、一方においては、政府に対し、補償実施と並行いたしまして、農地法改悪の猛運動を再開することは明らかであります。また、他方において、全国各地の農村において、再び、集団的土地取り上げ、あるいは、やみ小作料の引き上げ等の猛運動を始めるであろうことも、火を見るよりも明らかなところであります。かくては、農地改革以来十年を経た今日、ようやく大地に足をおろし始めました、生産農民を主体とする、平和にして民主的な新しい農村秩序は、根本から動揺混乱を余儀なくされ、農村は再び旧地主対生産農民の激しい階級闘争の場と化する危険があるのであります。のみならず、こうした時代逆行の情勢の展開が、戦後におきまする国内経済情勢の急変と、その中での大資本の農民への収奪強化、さらには、最近における貿易自由化による安い外国農産物の圧迫等によって、現に深刻なる構造的危機に直面しているわが国の農業と、これに対処する農政の前向きの大転換を円滑に進行させる諸事業に対し、これを阻害する大きなブレーキになることは必至であります。すなわち、今日の構造的危機から、わが国農業を前向きに脱却させるためには、作物の転換整理あるいは経営類型の合理化、農業経営の機械化、共同化、法人化あるいは流通の改善、山林、原野の総合的開発利用、農協、市町村の民主化等の諸事業の積極的推進がぜひとも必要でありまするが、こうした前向きの諸事業が、本法案を足がかりといたしまする、旧地主の文字通り時代逆行的な諸要求と諸運動の復活とによりまして強く大きく阻害をされ、ないしは停滞を余儀なくされることは、何人もこれを否定し得ないところでありまして、日本農業の前進と農民の地位の向上のために、その先頭に立って戦っておりまするわれわれ社会党といたしましては、この立場からも、本法案には絶対にくみし得ないのであります。  さらにまた、もし本法案が成立し、これを足場として、近い機会に旧地主への国家補償が実現するようなことになれば、これに刺激されて、学徒動員、強制疎開、戦災家屋、預貯金封鎖、あるいは強権供出等々、戦争ないし戦後の緊急政策の結果に対する損失補償の問題が次から次へと巻き起こり、国の政治と財政が収拾すべからざる混乱に追い込まれる危険のあることは、本案の核心であります旧地主補償の問題が、直接には海外引揚者への交付金の実現、さらにさかのぼれば、旧軍人恩給の復活に刺激されて出て参った経緯等から見ても、一目瞭然であります。このような点からも、われわれは、本法案に反対せざるを得ないのであります。  以上申し上げてきました諸事由により、われわれ社会党は、はっきりと、しかも強く本法案に反対するものであります。  最後に、私は、賢明なる自民党の皆さんに心からお訴えをいたしたいのであります。それは何かといいますと、皆さんは、この法案によって旧地主に対する皆さんの同情を公然と表明し、それによって二百万近い旧地主層とその家族を皆さんの政治的な味方につなぎとめることを心ひそかに期待されておるようにも推測されるのでありますが、それはおそらく的はずれに終わるのではないかと思われるのであります。その理由は、第一に、かりに、本法案によって、近い将来、幾らかの実質的補償が実現するといたしましても、それによって現実の利益を得、従って、本法案に大きな期待を寄せているのは、多数の旧地主のうち、ほんの少数の旧大地主だけにすぎないからであります。なぜならば、農地被買収者たる旧地主総数のうちの約九二%までは、解放面積わずかに一町歩未満の極小地主であり、かりに幾らかの補償が実現したとしましても、それによってこの人たちが現実に利益するのは問題にならない僅少額であり、また、これら極小旧地主の大部分は、すでに過去のこととなり切った十年前の改革当時のことを持ち出してとやかくしようなどという関心はほとんど持っておらないのが、現在の実情であります。むしろ、これら旧小地主の大部分は、現在、一般農民よりもはるかに上位の専業農家または第一種兼業農家として生計を立てております関係上、これらの人々が今日真剣に政府・与党に望んでおりますることは、現在、日夜これらの人々を苦しめておるわが農業の深刻なる構造的、危機から、できるだけ早く前向きに脱却できるような、思い切った積極的農政の樹立・推進であって、決してみみっちい補償実現ではないのであります。こうした生きた実情から見て、皆さんが本法案のごとき悪法にこれ以上執着されるならば、皆さんは、わずか二、三十万の旧大地主を味方につなぎとめる代償といたしまして、圧倒的多数の旧小地主を含む六百万の生産農民全体を敵に回す危険を冒すの愚をなすものと言うべきでありましょう。そんなばかげたやり方は、少なくとも、近代的保守政党を自認する皆さんのとるべき道でないことは明らかであります。この際、私は、皆さんのすぐれた英知と勇断とをもって、田中会長以下、旧地主団体からの自民党国会議員たる役員の総引き揚げを断行して、従来よりのくされ縁をすっぽりと切られ、同時に、彼らに対するところのあいまいな思わせぶりをあっさりとやめる意味におきまして、われわれに同調いたしまして、本法案をすみやかに撤回されんことを心から要望いたしまして、私の反対討論を終わりにいたします。(拍手
  39. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 淺香忠雄君。     〔淺香忠雄君登壇
  40. 淺香忠雄

    ○淺香忠雄君 私は、自由民主党を代表しまして、ただいま上程されました農地買収者問題調査会設置法案に対しまして賛成の討論をいたさんとするものであります。終戦直後の占領治下において行なわれましたあの農地改革が、従来の社会的、経済的基盤を急激にかつ大幅に変更した点におきましては、おそらく、わが国空前のできごとかと思われます。それは占領治下という特殊な状況のもとに行なわれたものでありましても、それが連合国軍総司令部の強力な指導ないし命令によって遂行されましたことは、周知の事実でありましょう。しかして、政治、経済、社会、思想等の激動の渦中において断行されました結果、全国的に見て著しい無理が多数にあったことは、何人も否定すべくもありません。しかしながら、この大改革が自作農を急速かつ広範に創設し、農業生産力の発展と農村における民主化を促進いたしましたことは大なる成果でありまして、まことに喜ばしい限りでありますが、ここに忘れてならないことは、この陰に、自己の意思によらずして、命と頼む田畑を強制買収された約二百余万の農地所有者と、五万に近い神社、寺院のあった事実であります。一つは、所有権ないし生活権に関する基本的人権の問題であり、一つは、信仰につながる問題であります。  たとえば、所有関係について見ましても、諸外国の農地改革と異なって、九九%までは十ヘクタール未満の中小地主でありまして、彼らは、地主であるとともに、自作農として、しし営営、農地を盛り立ててきたところの篤農家であり、さらに、祖国の危急に際しては応召し、やむなく一時自作地を小作に出し、あるいは戦後何年間も海外に抑留されたまま不在地主として取り扱われた者が、いかに数多くあったことか。農地改革にあたっては、これらの事情は一顧だにもされなかったのであります。ことに、買収処分の決定時と対価の支払時との時期的ずれのため、その間、インフレの急激な進行等により、実際支払いを受けたときは、ほとんどただにもひとしい結果となり、全く買収の名に値しないものとなったことは、虚心に考えれば何人も否定し得ない事実でありましょう。  ここに至って、旧農地所有者はその生活の基盤を根底からくつがえされ、経済的、社会的、心理的にきわめて深刻な打撃をこうむったのであります。かくて、子女の教育はもちろん、日々の生活にも困窮を来たし、あるいは自殺し、あるいは発狂する等、随所に悲劇を生じ、朽ち果てた古い家屋は、売らんと欲して買手とてなく、雨は漏り、壁は落ち、見るも無残なありさまは、心ある人々の涙を誘わずにはおかないのであります。また、この家屋敷が固定資産税の対象となり、いかに窮すればとて、生活保護の適用からも除外され、いよいよ深刻の度は頂点に達し、まことにゆゆしき社会問題をかもしておりますことも、周知の事実であります。  野党の諸君の中には、今さら何の善後措置ぞ、困窮者は生活保護で救えばよいではないか、と冷たい意見を述べる人もありますが、要保護者が一人でもふえることは、真の政治ではありません。これを最小限度に食いとめ、もって再起発奮の機会を与え、万人をしておのおの所を得せしめてこそ、民主政治のあたたかさ、平等性があると信じます。  さらに、ここに見のがすことのできぬことは、解放農地の転用転売の問題であります。元来、自作農創設特別措置法は、耕す農民に耕作地を所有せしめ、自作農として、よりよき農業家計を立てしめるとともに、食糧の自給度を高めるための措置でありまして、同法により所得した農地価格は、全国平均して、田は一反七百六十円、畑四百五十円くらいになっており、しかも、この法律の性質上、解放農地は、二十年間転用、転売を厳に禁止するの措置がとられていたのでありますが、昭和二十七年に現行農地法が施行された結果、現在では、ほとんど自由売買同様となっており、相手次第では、今日、ちょっと想像もつかないような高値で取引が公然と行なわれていますことも、周知の事実でありましょう。正直に国の要請に服し、法を信じ、秩序を守り、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで協力した旧農地所有者が、その後、解放農地農地として耕作されているならばまだしものこと、このように農地以外の用途に供され、法外な価格で転売されている事実をまのあたり見せつけられるにつけ、よし、農地改革が合憲であるといたしましても、釈然とできないものがあることも、また当然といわなければなりません。(拍手)  しかし、これだけならば、われわれは、今回提案されたような調査会設置法が用意なされなくとも済むと思うのであります。しかし、この大改革後には、不満と不安から、あるいは精神病患者となり、あるいは自殺した者さえあります。しかも、その日の生活にも脅かされている者が数限りなく続発し、まことに憂慮にたえない幾多の社会問題が派生しているのであります。これらもろもろの社会問題を放置しておくならば、やがて農村の平和、安定をも脅かすおそれあるのみならず、思想的に及ぼす影響は、けだし大なるものありと考えるのであります。(拍手)  政府は、ここに思いをいたし、旧農地所有者の生活の実態、これをめぐる社会問題を的確に把握するために、総理府にその調査会を設置して客観的な調査をしようと、本法案を再提出されたものであると思うのでありますが、しかるに、野党の諸君は、あの農地改革とその買収対価が合憲的、合理的であることを主張することに急なるあまり、農地改革によって派生した大きな社会問題にはことさらに目をおおい、問題を、イデオロギー的に、階級意識的に反対することは、まことに残念であります。(拍手)しかも、政府が、農地改革の基本精神は絶対にくずさぬ、収用土地の再補償はしないとの再三の言明をことさらに無視し、その疑いありとして、調査会の設置すら反対する態度をとることは、遺憾千万にたえません。特に、常々あたたかい政治、涙のある施策を強調、宣伝されている野党の諸君こそ、むしろ、かかる問題を超党派的に賛成されてしかるべきものであると私は考えるのであります。(拍手)  かかる意味において、農地被買収者に関する今後の問題を解決するために、さしあたり、この程度の調査審議をすることは、最小限必要であると考えられますので、ここに賛意を表し、賛成の討論を終わるものであります。(拍手
  41. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 中村時雄君。     〔中村時雄君登壇
  42. 中村時雄

    ○中村時雄君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました農地買収者問題調査会設置法案に対して反対の意見を述べんとするものであります。(拍手)  御承知ごとく、この法案は、三たびにわたり、旧農地解放者補償方式を問題として本院に提出されたものであり、いかに現在の保守政党が政党としての識見と本質を冒涜したかのよい例を示すものであろうと思うのであります。(拍手)すなわち、農地解放者同盟と称する旧地主中の一部不半分子の圧力団体と、自民党農地問題調査会の威嚇の前に、政府は何らなすこともなく屈服し、その醜態を天下に示した情けない法案が、この法案であります。以下、私は、その実態を明確にとらえていきたいと思う次第であります。終戦後の日本は、一時はその進路さえ失おうとしたのでありますが、その中において、私どもの得た唯一のものは、平和を基調とする民主憲法、並びに、奴隷的、封建的な農地制度の解放であったのであります。日本の地主は、戦前、世界でも類を見ない高額な小作料をとり、小作人を牛馬のごとくあしらい、その上に君臨していたのは、きのうのごとく記憶になまなましいものがあるのでございます。  農地改革は、これらの非道な地主制度を打ち破り、日本の長い歴史の中に初めて農民らしい生活を約束する自作農主義を打ち立てたのでございます。これは、戦後の食糧増産、国民の食糧確保のため、また、傾斜生産の大きなささえとなったことは、皆様方周知の事実でございます。端的に言うなれば、戦後のこの目ざましい日本経済の成長は、日本農業に負うところが甚大であり、それは、農地改革によって再編成された自作農がささえとなっておるということでございます。従って、農地改革の成果は今日なお高く評価されておることは、何人もこれを否定するがごときことは考え得ないことなのでございます。  しかるに、最近において、旧地主の人たちは、軍人の恩給復活並びにこれがべース・アップや、軍人遺家族、引揚者問題における補償制度問題等に伴って、旧地主だちも、自民党と連携し、これに便乗して、団体としての強化が進められてきておるのでございます。また、一方、政府もこれに呼応するかのごとく、旧地主の国家補償要求に力を入れて参ったのでございます。私たちも、旧地主の人たちが、戦争あるいは占領によって深刻な打撃を受け、切実に、補償を要求している心情は、わからぬことはないのでありますが、しかし、戦争犠牲者としてこれを認めるならば、戦争のために家や財産を焼かれた戦災者や、学徒動員で強制労働させられた、当時の青少年、あるいは強制疎開で立ちのきを命ぜられた疎開者等、国民の大部分が、多かれ少なかれ戦争犠牲者だといって過言ではないでありましょう。また、引揚者や遺家族に対する援護は当然であるといたしましても、軍人恩給に至っては、二十八年恩給復活以来、ほとんど毎年のように恩給費は増額されているが、いまだ兵と将官の格差はあまりにも大きく、失権者問題は手をつけることもできず、内部の調整すらできていない今日、再びこのような問題を取り上げることは、不可解といわざるを得ないのであります。  言うまでもなく、これら地主団体は、農地解放によって失った農地国家補償を要求するためのものであります。農地改革は農村の平和を乱したときめつけ、失地回復を目ざし、根強い運動を展開しておるのであります。すなわち、全国農地解放者同盟のスローガンを見てみますと、農地解放者は占領政策行き過ぎによる政治犠牲者である、あるいは土地の強制収用価格は、実際の買収した時価とするのが正当であるとか、最高裁判決は農村の常識からはずれているとか、農地改革は農村平和を乱す禍根となった等々をあげているのでありますが、これらの点については、岸総理も、再三再四にわたり、国家補償は行なわないと表明している。また、担当の福田総務長官も、補償の意思のないことを明確にはされているのでありますが、にもかかわらず、地主団体は、一向にその勢力を弱めることなく、最近ますますその強化がはかられていることは、全く私たちは驚きにたえないのであります。もちろん、幹部である職業ボスの力もあるでしょうが、政治的、経済的にそれが存在するだけの背景を持つからにほかならないのであります。  これら旧地主団体の要求の中心を今要約いたしますと、一つには、旧地主に対する補償を要求するものであり、いま一つには、小作地取り上げの合法化を目ざすものとがあって、これに内部抗争も手伝って、三つの団体に分かれていたものでありますが、最近に至って、農地法の改正は当分の間不利だという情勢の判断のもとに、補償金要求一本にしぼって足並みをそろえ、統一するに至ったのであります。その結果、補償要求の基本を、農地改革の際不当に安い価格で農地を買い上げられたが、最近のインフレによって土地価格が上がり、その差額をよこせということと、農地改革は占領政策によるもので、旧地主は戦争犠牲者だという建前から、国に補償せよとしぼってきたのでございます。今淺香議員もそのことをおっしゃいましたが、しかし、ここで考えていきたいのは、この要求の第一の点は、あたかも戦争直後に売却したところの家が非常に安くなって、現在はインフレの結果高くなったから、今の物価水準に照らして計算をし直し、その差額を支給せよということと少しも変わらないことであり、私は、その錯誤もはなはだしいといわざるを得ないのでございます。(拍手)しいて言えば、第二の、旧地主の農地、強制力によって不当に安い価格で買い上げられたかどうかという点でありましょう。これに関して、内閣委員会における質問の結果から見ても、農林省当局がしばしば繰り返しているように、農地改革は、戦前から一貫してとられてきた自作農創設政策の延長であり、当時国会の審議という正当な手続を経て定められた価格であるということを、われわれは忘れてはならないのであります。政府・与党の言われる、農地改革に責任を負わすとか、あるいは占領軍による強制、つまり、戦争による被害に基因するものであるということは、理論的にははっきりと成り立たないことであり、その詭弁は断じて私たちは納得できないのであります。(拍手)しかも、その上、最高裁判決は、妥当なものであり、これを支持する、また、衆議院農林水産委員会における三十一年六月三日の決議は正しいと、政府も明確にその態度を明らかにしておられるのであります。このことは、その妥当性と正しさを裏づけるものであり、農地改革の精神に抵触するような点は、この法案では一切行なわないということになるのであります。このことをすなおに考えてみますと、補償の観念からはすでに離れて、ごく一般的な困窮者の救済ということに焦点がしぼられて参るのであります。それなれば、何も特別の調査会を設ける必要はごうもなく、社会保障のワクの中でやればよいという結果が生まれてくるのであります。(拍手)  しかるに、政府は、明確にその論拠の正しきを認めながら、旧地主にしぼって内閣に調査会を置くんだとがんばっているのでありますから、政府のこの考え方は、論理の一貫性を欠くことおびただしく、このようなことでは、政府の言う農地改革の成果を維持し、最高裁決定を支持するという態度も、きわめてあいまいとならざるを得ないのであります。このような二面的作戦が、いわゆる両岸政策といわれるのでありましょう。従って、私どもは、このような疑義を持った本案に対しては絶対に賛成がしかねるのでございます。(拍手)  第二点は、内閣委員会における質疑によって明らかになったことは、旧地主に対して一律に補償を行なわんとすることであります。解放農地に対して一律に補償をするということは、言いかえれば、旧大地主層の利益が大きくなることを意図するものであり、反面、現実の問題としては、旧地主中の農村に残って農業に従事しているところの中小地主層が、そのため、補償よりも小作地の回収案、農地改正をねらいとして、旧地主団体が深刻な対立をしてきた事実は、御承知通りであります。すなわち、解放地主の金銭的要求は、裏を返せば、農地制度の改正というところまで波及する性質を持っていると見なければならないし、また反面、小作料の引き上げ案を内包されると見なければならないと思うのであります。われわれは、部分的なわずかな欠点がかりにあったといたしましても、戦後の農地改革を、歴史的な土地制度の近代化の過程として高く評価するものであって、この補償問題の是認を含みとしたこの法案に反対する第二点の理由はここにあるわけであります。(拍手)もし皆様方がそうでないとするならば、見込みのほとんどない補償に期待をかけさして、それに責任を持てず、いたずらに旧地主的意識を温存させ、農村内部に社会的対立と農業の後退をもたらす疑いのあるこの法案をすみやかに撤回すべきであろうと思うのでございます。(拍手)福田農林大臣は、農村における生産性向上を一枚看板にいたしておられますが、このような農政の前途を暗くし、階層分化に拍車をかけつつある今日、これにいかに対処するかということの方が、より重大な問題であることを知らなければ、一枚看板が夜泣きをするでありましょう。  次に、第三点といたしまして、農地補償の動きについて、さらに問題となることは、明らかに自民党による選挙票目当ての意図が含まれているということであります。  すなわち、三十一年、下條氏の国家補償連合会から日本農地犠牲者連盟が誕生したのでありますが、分裂の原因は、下條氏が独断で運動資金の中から三千万円を使用したことにあるといわれておるのであります。当時の地主団体の財源の多くは、一部の幹部が旧地主からいかに巧言をもって取り上げていたかを示すものであり、最近におきましても、また当時と同様に、この法案が通過すれば反当り五万円をもらえると宣伝し、全国の旧地主三百万を対象に百円、二百円を集めているのが実情でございます。さきの参議院選挙にからんで、下條氏の当選が四十一万票の実績から見て、三十三年の衆議院総選挙では、全国農地解放者同盟は百六十名に上る自民党の推薦候補者を新聞に発表したのでありますが、これによりますと、現在の福田農林大臣、中曽根国務大臣、楢橋運輸大臣、農林政務次官、さらには本法案担当の福田総務長官の名前が載っており、これら多数の自民党議員が団体の顧問、役員に参加しているのが実態であります。その圧力に押されて、自民党は、ついに農地問題特別委員会を作り、これを農地問題調査会に発展せしめているのが実情であります。政府、自民党は、事あるたびに、社会党は総評のひもつきだと批判をしておりますが、これを是なりとしても、自民党といえども、これら圧力団体に屈し、政府の言うことと全く違った解釈を自民党の大多数は支持しているということを、よく知らなければならないと思うのであります。(拍手)私どもがその全容をつかむにあたって、そのことがますます明白になってきているのであります。外郭に種々な団体を作ることは非常に重要なことで……(発言する者あり)あとしばらくでありますから、お静かに願います。——今日の民主主義下において否定するものではありませんが、だからといって、その金力や権力の圧力に政党が左右されるならば、その政党としての本質や価値はもはや認められないといっても過言ではないでありましょう。  以上のごとく、自民党との関連から、末端旧地主は、あたかも国家補償ができるかのごとき錯覚に陥ることは当然のことといわざるを得ないのであります。しかも、その上、地主団体の本部が自民党の民情部の中に置かれ、また、一方、直接担当者である福田総務長官に至っては、選挙の際、喜んで推薦を受けたと明言しているのであります。それも数日後にはあわてて取り消したといわれておるのでありますが、これは笑い話ではありません。何ゆえならば、これらの地主団体の掲げるスローガンが、農地改革の精神を否定するばかりでなく、最高裁判決をも否定し、その運動を進めようとしており、その推薦を喜んで受けるがごとき態度は、少なくとも担当責任者としては全く非常識であり、このようなことからも、この法案提出の真意が全く不明朗なものであると私はいわざるを得ぬと思うのであります。  かくのごとく、自民党、地主団体、ボス、末端旧地主の関係が、全くの悪循環の関係に陥っていることは、もはや天下周知の事実となって現われているのであります。この関係上より提案されたこの法案をそのまま承認するわけには参らぬのであって、これが反対の私の第三点であります。旧地主を欺瞞しないためにも、この際、国家補償ができるとか、旧地主制度が復活されるとか、小作地の取り上げも可能である等々の虚偽の宣伝のもとに資金をかき集め、ばらまき、着服するがごときこれら団体に対して、善良なる全国の農民にかわって糾明し、きぜんたる態度をもって関係を断絶してこそ、岸総理の真価は大いに認められるべきものであると信ずるものであります。  次に、政府は、法案提出の根拠を求めるために、自民党内に農地問題特別委員会なるものにすべての責任をかぶせ、国会審議の争点をぼかそうと努力しているようであります。しかして、同調査会が答申した事項は、前に述べた全国農地解放者同盟の要求に基づくものであります。すなわち、答申は、農地解放者の処遇のための審議会の設置並びに解放農地補償のために転用税的なものを充てようとしており、この答申の一つは今回の法案で生かされているのでありますから、次にくるものは当然農地補償に入るわけであります。しかし、これを採用するかしないかは自民党内でもいろいろ意見があると聞いており、岸総理農地改革には触れないと言明しておりますが、この点については、閣僚の中でも意見の一致を見ないといわれておるのであります。むしろ、政策の方向としては、転用を押えることが大切であり、厳重な規制こそ行なうべきであろうと考えるのであります。  このように、国の農業基本政策の根幹をもゆさぶるほどの地主団体でありますので、わが党といたしましては、その責任者に参考人としての国会出席を要求したのでありますが、与党のために、実現が困難のまま、いきなり質疑打ち切りの動議により、自民党多数によって採決を強行され、現在に至ったのであります。  委員会審議の過程を見ても、本案はその根拠を欠き、政府の答弁並びにその取り扱いに対しまして民主的議会のルールに全くはずれた無責任な答弁に終始して参ったのであります。われわれは、全国民にこれを訴えるとともに、明確に反対の意思を表明するものであります。  次に、本法案の内容について見ますならば、調査会は旧地主のどれを対象にしているのか、また、その調査の目的等、明確になっている点は何一つありません。たとえば、百七十万戸の旧地主のうち百万戸について調査すると言いながら、ついには全部の百七十万戸を対象にすると訂正したり、その目的がどこにあるか、さっぱり私たちにはわからない。ちょうど目下安保特別委員会での極東の範囲と似て非なる答弁であろうと思うのであります。  最後に、言うまでもなく、農民にとりまして何よりも大切なものは農地であります。この農地の保障を規定するものが農地法であります。農地法は農民の憲法であるといっても過言ではないのであります。従って、この農地法の根幹に疑いを差しはさむがごとき本案は、その提出の動機においてすでに大きな誤りを犯しているといわざるを得ないのであります。農地買収の問題は、申し述べた通り昭和二十八年の最高裁判決、あるいは農林省の見解、あるいは農林水産委員会の決議が示すように、これは合憲的買収であり、補償という言葉さえも差しはさむ余地がないのであります。この最高裁判決を、国民を裏切るもの、あるいは非常識ときめつける旧地主団体の要求に、わが国農地行政が動かされるならば、国会は、全国農民の信頼を失い、その協力を得られなくなることは、自明の理なのであります。政府は、もっと基本的な問題と積極的に取り組んでいただきたい。今日、いわゆる農業生産性向上の課題は大きく、果たすべき多くの仕事をわれわれは持っているのであります。国際市場に耐え得る農業をいかに作るか、貿易自由化にいかに対処せんとするか、こういった当面する具体的問題をたな上げし、農民の憲法たる農地法、農地改革に疑念を差しはさましめるがごとき問題に多くの時間とエネルギーを消費することは、本末転倒もその極といわざるを得ないのであります。農政の前進こそ、現在の政治に負わされた責任であり、これに逆行せんとするような本案の提出は、まさに反動の上に超をつけたところの政府と断ぜられても、一言半句の抗弁をもできないでありましょう。  以上の趣旨から申しまして、本案に対しましては絶対に反対を表明するものであります。(拍手
  43. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  44. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通りに決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  45. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  46. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会      ————◇—————  出席国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣  楢橋 渡君    労 働 大 臣 松野 頼三君    国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員      法制局次長 高辻 正巳君    総理府総務長官 福田 篤泰君    警察庁刑事局長 中川 董治君    警察庁警備局長 江口 俊男君    労働省労政局長 亀井  光君