○
武藤武雄君 私は、
民主社会党を代表いたしまして、
三井三池に発生した
ピケ隊の
暴力による流血の惨事と、翌二十九日発生をいたしました
暴力団による殺傷
事件は、きわめて遺憾なことでありまして、取り締まり当局の不見識と怠慢を強く指摘いたすものであります。(
拍手)特に、全
国民は、テレビ、ラジオ、
新聞等の報道により、この惨事については深く胸を痛めているのであります。国会は、このような
不祥事に対して、単なる
労働争議の問題でなく、人道上、社会
治安上の問題として、重大なる関心を持たざるを得ないのであります。(
拍手)
三池鉱現地の空気が非常に険悪であり、流血のおそれがあることは、事前に報道されており、第一
組合は、公然と
暴力阻止の
方針を明らかにいたしたことは、御
承知の
通りであります。
地元警察側の予防処置は十分考慮さるべきであったにもかかわらず、旧
組合の
暴力が始まってからも、マイクで警告するだけで、衝突制止も実行しないために、惨事は拡大をしてしまったのであります。予防出動がおくれたのは何ゆえか。制止
行動がなされなかったつのは何ゆえか。特に、
労働争議に
暴力団の
介入を許したことは
警察側の全責任であって、いかなる弁解も許し得ないのでありまするが、
警察側の責任を明らかにしてりい
ただきたいと思うのであります。(
拍手)
特に私が指摘いたしたいのは、二十八日の
流血事件の際の
警察側の態度であります。私の現地視察の結果持ち帰った
現場の写真で明らかな
ごとく、第一
組合側は、鉄帽をかぶり、全員、手に
青竹、中には、先をとげて竹やりの
ごとく焼いたものを
現場の第一
組合員が持っておる写真を、私は事実として携行をいたしております。また、角棒に五寸くぎを打ち、あるいは直ちに
凶器たり得るピッケルを持っておったのであります。現に、三川支部小浜社宅分会長野口款造は、
ピケの先頭に立ちまして、ピッケルを手に持ってその指揮に当たっていることは、
現場写真で私は明らかに携行をいたしておるのであります。(
拍手)このような武装を行なったのに対して、新労側は、腰に弁当をさげ
ただけのまる腰であったことは、集合地から衝突
現場付近の行進の写真でも明らかであります。また、
事件後
重傷のため入院したものは、
ピケ隊はわずかに三名でございます。新労側は、
職員を合わせまして三十六名の多数に及んでいることでも、明らかであります。
ピケ隊の三名も、前後の事情から、混乱時の同士打ちの公算もあるとのこともいわれておるのでありまして、この結果の事実から見ましても、
暴力の責任がいずれにあるかは一点の疑いもなしと私は断定をいたしたいのであります。(
拍手、発言する者あり)また、私は、入院中の一人片々を見舞ったのでありますが、ほとんどの意見は、
ピケ隊は、正面を向いているときにはかかってこなかったけれ
ども、下を向いたときか、うしろを向いたときには、直ちに打ちおろしてきておる、と言っているのであります。写真にもあるように、
ピケ隊の多くが手ぬぐいで顔を隠しておるのと思い合わせ、あとに証拠を残さないための細心の注意が、あの混乱の最中に働いておるところを見ても、とっさの判断では不可能であるので、事前に指示されていたことは間違いないと思われるのでありまして、初めから計画的であったと思われるのであります。(
拍手)
この
事態に際して、何ゆえに
警察側はこのような危険物を取り上げなかったかとの私たち調査団の
質問に対し、現地
警察側は、場合によっては
凶器になると思ったので持たないように申し入れたところ、
ピケ隊側は、これは
ピケを強化する道具で必要であって、従来も認められていたと主張したので、しいて押さなかったのが、結果的に失敗であった、と答えているのであります。認識不足もはなはだしいと、われわれはおそれ入った次第であります。(
拍手)
ピケの合法性の
限界については、
ピケの説得以上の平和的手段を越えてはならない、あるいは、スクラムを組んで非
組合員の
就労を
妨害したり傷を負わせたりする
ピケッティングは
不法であるとの
判決は、
昭和二十七年十月二十二日の
最高裁の大法廷を初め、十指に余る高裁、地裁の
判決で明らかにされておるのであります。しかるに、手に
凶器たり得る
こん棒、ピッケル等を所持し、公然と
暴力で阻止することを主張しておる
ピケ隊に対して、
ピケ強化のために必要であると言われるに至りましては、
警察側の態度は、何と説明をしたらよいか、まことに了解に苦しんだのであります。(
拍手)
国家権力の一機関である
警察の認識がこのようで、どうして
国民の生命、身体の安全が守られるでありましょうか。
総理、
国家公安委員長の
見解と責任を明らかにされたいのであります。(
拍手)
この際、関連して、
労働大臣の認識を
ただしたいと思うのであります。憲法第二十七条には、「すべて
国民は、勤労の
権利を有し、義務を負ふ。」と明記されておるのであります。
三池新労組の場合は、正式の
団体交渉において
ストを解除し、
就労を協定いたしたのでありまして、なお地裁の
仮処分の
判決も出たのであるから、
就労は一点疑いのない合法であり、憲法に保障された
権利であると私は思うのであります。(
拍手)第一
組合は、批判派を除名して、
生活資金の対象より除外する
方針を明らかにしたのであるから、新
組合員にとっては、食うための糧道を断たれたのであって、まさに生存権の主張でもあるのであります。この国の法秩序の一切から保障されるべき新
組合員が、
暴力によって
就労を阻害され、あまつさえ、新
組合員の
家族は、近代社会の秩序のもとでは想像することのできない住宅内での非合法
暴力が日夜繰り返されておる事実であります。(
拍手)
新
組合員の
家族が、隣同士の連絡を断つ戦術のもとに、
家族が一歩外に出ても、子供に対する
暴力、
主婦に対する
洗たくデモ、これは、まわりをぎっしり囲んで、もみくちゃにしながら、その際、だれがやったかわからないように手をかんだり、つねったりする、直接
暴力が伴っておるのであります。夜はたき火をして監視をする。食糧がなくなって、やむなく買いものに出ると、すぐ、ばらばら集まってきて、裏切り者とか、犬とか、店までついていって
妨害いたしておるのであります。産気間近い婦人の家に土足で上がっていやがらせを行ない、退院をした日の婦人患者に、すぐ、いやがらせに、その家庭に上がり込んでおるのであります。これらは、住宅地域内には一切の報道人も入ることを禁止いたしました。黒いヴェールをかぶせた中で、手段を選ばぬ無法
暴力行為が平然として行なわれておるのであります。(
拍手)
すでに、
四山鉱のみで五百
家族近いものが、着のみ着のままで避難をいたしておるのであります。私は収容所を一々見舞ったのでありますが、私の顔を見
ただけで、婦人はわっと泣き伏しておるのであります。恐怖そのものの表情であったのであります。彼らは、口々に、今の
三池の
現状はこの世の姿ではありません、と泣いて訴えておるのであります。(
拍手)
三池の今日の姿は、近代的
労働運動の片りんもありません。一世紀、二世紀前の、
労働運動即
暴力の姿そのものの再現であります。(
拍手)
炭労本部は、
平和的解決の戦術転換をして、
中労委に
あっせんを依頼したといっており、
労働大臣も、
あっせんによる平和
解決は望ましいから
中労委に働きかける、と声明をいたしております。藤林会長も、職権でもやると言っておりますが、まことにけっこうであり、わが党も賛成であります。しかし、これには
前提条件があると思うのであります。中央の
炭労は、平和でやると宣伝をするけれ
ども、現地の労組は、手段を選ばぬいやがらせ、
脅迫を新
組合員に加えながら、平和
就労に対しては、公然と
暴力阻止を表明いたしておるのであります。
私は、先ほど、
負傷者の談話から見て、計画的なにおいがあると説明をいたしましたが、
暴力は二十八日初めて行なわれたのではなく、二十七日の九時三十分には、
宮浦鉱裏門より、第一
組合員二百五十名から二百名が、四列縦隊で裏門を破壊して
鉱長室に乱入、
職員控室とも
どもに、めちゃめちゃに破壊して、
鉱長の制止に対しては石を投げかけて
暴行をいたしております。三十分前の九時には、保安要員の
職員松隅、本田、古田の三名が、何の理由も、紛争の条件もなかったのに、さんざんたたかれて、みぞの中に突き落され、はい上がるところをまたたたかれて、頭部裂傷六針等、三人
重傷の上、入院のやむなきに至ったのであります。二十八日の朝も、新労の
行動開始前、すでに五時三十分、
ピケ隊は
三川鉱裏門を破壊して構内に突入、
窓ガラス等を片っ端から破壊いたしまして、
鉱長に石を投げるなどの
暴行を、先制攻撃の形で開始をいたしておることでも、明瞭に計画的
暴力であったといわなければならぬと思うのであります。(
拍手)
新労菊川
組合長は、これを解明して、
炭労は当初批判勢力を二、三百名前後と甘い判断をしていたのが、四千名に近い数になったのに驚き、全国
スト指令で、三鉱連を中心とする一斉
ストの攻撃によって攻勢に出ようとはかったのでありますけれ
ども、
三井五山が
炭労指導に批判を加え、指令を拒否するに及んで、ろうばいし、ついに、
炭労が、かつて考えてみたこともなかった、
中労委の
あっせんによる調停という、百八十度の転換を策したのでありまするが、これも、
会社側の強硬な拒否にあって、不可能と判断をするや、ついに近代
労働運動社会においては考えることのできない
暴力を行使することによって、社会混乱の中から職権による
中労委の乗り出しを策したのが、今回の
事件に至った最大の原因として、これを喝破し、声明しておるのであります。(
拍手)しかりとするならば、このままの
状態で
中労委の
あっせんが開始されるなら、将来の
労働運動にぬぐうことのできない悪例を残すこととなると思うのであります。
私は、まず、中央では平和
解決、現地は
暴力も辞せずとの二面作戦を排除させて、現地の一切の
暴力行為を
炭労みずから指令して解除せしめ、特に、
暴力による
就労阻止など、明らかに非合法
暴力である
ピケ隊を解除せしめ、中央・現地を通じて平和態勢が確立をされ、初めて
中労委の活動が開始されるべきであると私は思うのであります。(
拍手)
現状のまま、
あっせんが開始をされるとなると、
組合という名のもとに行なわれる非合法
暴力行為が治外法権的考え方で進められることに
国家自体が巻き込まれて処理される形となり、法治
国家としてはきわめて重大であると考えるが、
総理、
労働大臣の
所見を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
事件当日、いまだ公にされていない
三川鉱繰り込み場における凄愴目をおおう残虐
行為に対し、その責任を追及いたしたいと思うのであります。
すなわち、二十八日午前七時五十分より開始された新
組合の
就労に際して、
警察が傍観的立場をとったことは、先ほど指摘した
通りであるが、この衝突では、ごく少数の
負傷者にすぎなかったのであります。続いて起こった、報道人も一切寄せつけない構内繰り込み場における残虐
行為の概要を説明してみたいと思うのであります。(
拍手)
構内繰り込み場へ入った新
組合三百九十名は、ようやく
就労し得た
喜びにほっとして、全く
素手のまま、繰り込み場内で休憩をしておったのであります。このとき理性を失った
ピケ隊二百名は、直ちに追尾して構内に入り、古材置場にあった鉄棒、スコップ、ハンマー、バール等の
凶器に、めいめい得物を持ちかえたのであります。そのうち、百二十名は繰り込み場、八十名は
鉱長室を目ざして乱入を開始いたしたのであります。
鉱長室には呉比
鉱長、宮地副長ほか十一名がいたが、まず、
鉱長室のとびらの前で、第一
組合の乱入を知った三名の者が、とびらを押えて、からだでささえたのであるが、
ピケ隊は、鉄棒でガラスを破り、中の者を殴打するとともに、一隊は横の窓を破壊して乱入いたしまして、ついに鬼畜
行為ともいうべき
暴力が開始されたのであります。彼らは、口々に、殺せ、殺すぞと叫びながら、無手の者を鉄棒で乱打したのであります。完全に失心をして倒れておる被害者に対し、まだ死なないかと言って打ち続けたといわれておるのであります。また、繰り込み場において、
ピケ隊乱入の知らせを受けた新労の三百余名の人たちは、頭を下にして、スクラムを組んで、おしりをうしろにして、ちょうど北海道でクマに襲われました馬の例にならいまして、
暴力はやめろ、話し合いでやろうじゃないか、と、彼らは無抵抗のまま叫ぶのみであったそうであります。この無抵抗に対して、
ピケ隊は、裏切り者と叫んで鉄棒で乱打し、れんがで打ち続けたというのであります。そのときに、円陣の外にいた新
組合の
指導者は、どんなことをされても殺しはしまいから絶対に手出しをするな、もう一息で
警察官が来るぞ、がんばってくれと絶叫して、暴徒の一撃によって倒れてしまったのであります。そのときに、二十才前後の
炭労オルグの一人が、裏切り者をたたき殺せと叫んで、黒板を円陣のまん中に投げつけたのであります。とたんに、気違いのようにわあっと
ピケ隊は興奮
状態となり、殺せ、殺せと叫びながら激しく襲いかかって、瀕死の者も合わせて
重傷二十六名、
負傷者百四十六名、約半数の者がけがをするという一大惨事となったのであります。このようにして、彼らは、殺人も辞せずとして、仮死
状態の
重傷者になお乱打をし続けたといわれておるのであります。この間、宮地三川副長は、電話で
警察側に救援を求めると、どのくらいけが人が出たかというような
質問をして、思わず副長は怒って、何人かが殺されたと叫ぶと、そうかとは言ったが、なお二十分以上も来なかったというのであります。この目をおおう残虐
行為は前後三十分も続き、ために、宮地副長は、
警察側の無能と怠慢とを恨み、悲憤の号泣をした、といわれておるのであります。現地の話によると、初めて事の次第に驚いた
警察隊は、構内に急行しようとすると、
地元出身の議員たちが立ちふさがって、絶対に入るなととめたので、一時は入るのをやめた、というのであります。弱い者には権力をかさに着、強い者には無力にもひとしい
警察の実態を、よく現わしております。これらの真相について、
総理、
石原国務大臣の明確なる答弁を願いたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
治安対策の根本について、
総理並びに
石原国務大臣に伺いたい。
第一は、住宅内の
治安についてである。住宅内においての
暴行、
脅迫の数々については前に述べた
通りでありますが、私の現地を視察した三十日には、
四山鉱においては、社宅中央に約五百名ばかりの
警察官が警備に当たっていたが、肝心の新
組合員の
家族たちは、一人として、この警官たちが自分たちを守ってくれるとは考えていないことであります。このことについて
大牟田署に抗議すると、危険と思ったので、昨晩は、一
家族を救出するために、警官一個小隊を動員して救出した、と言っておるのであります。少なくとも法治
国家をもって任ずる
わが国において、横行自由であるべき公道において、また、生命財産の保障がなされるべき住宅地において、一
家族の救出に警官一個小隊も動員しなければ脱出できないような地域が、一時的にもせよ、存在する事実についてであります。
政府は、この
事態をいかに認識しておるか、伺いたいのであります。(
拍手)
また、現地
警察署の無定見、無能力についてお伺いをいたしたい。福岡県国警本部長ら
警察幹部に抗議の際、住宅内の
治安について追及をすると、
三池は平素から住宅内に警官の立ち入りは非常にうるさく、事実上入れなかった、従って、入れないのは今度ばかりではない、と答えているのであります。また、
大牟田署の次席は、何ゆえに
治安の万全が期し得ないかとのわれわれの
質問に対し、現在の
警職法ではどうにもならないから、国会の先生方にお願いする以外にない、と答えでいるのであります。現行法ではできませんとはっきりするなら、国会において問題にしよう、と言うと、驚いて、現行法でも人数さえ動員できるなら十分に取り締まれる、と、あわてて取り消しておるのであります。どうも、国会での
岸総理、
石原国務大臣のこの
事件に対する答弁と、現地
警察側の態度と考え合わせてみると、
政府は、何か、この機会に、
警職法改正のため意識的にこの
事件を利用しているのではないかとの疑問さえわいて参るのであります。(
拍手)
国民にこのような誤解を与えるとすれば、政治上まことに重大であるので、
総理及び
石原国務大臣の明快な説明を聞きたいのであります。
次に、今後の対策として、
政府は住宅内の住民の自由回復について、どのような対策があるか、具体的に説明してもらいたい。
また、新
組合員が、働く意思にもかかわらず、
ピケ隊の
暴力によって
就労できないとすると、
生活権にかかわる重大な問題であるが、
いかようにして安全に就業を保障し得るのか、対策を承りたいと思うのであります。昨日の現地の「夕刊フクニチ」によると、
暴力ピケ排除に対し、村井九州管区
警察局長の積極論と宮地福岡県警本部長の消極論の
対立があると報じているが、このような内部不統一によってできないとすれば
政府の責任となるが、一体どのように
政府は考えておるのか。
また、
就労の際、
ピケ隊の
暴力によって犠牲者が発生した場合、
ピケ隊の責任はどうなるのか、特に、明らかに非合法にもかかわらず、
実力阻止を指令している中央幹部の責任はどうなるのか、お伺いをいたしたと。(
拍手)
また、二十七、二十八旧両
事件の
暴力加害者は、被害者の言明によっても
相当数明らかにされておりまするが、何ゆえに責任の追及が開始されないのか、
石原国務大臣にその理由を明らかにしてもらいたいと思うのであります。
なお、
暴力ピケの排除について、各級裁判所の
判決で明らかにもかかわらず、慣行として守られない
わが国労働組合の
現状に対して、
不祥事の再発を防止するため、
ピケの
限界について、法秩序の上かちも解釈を明らかにして、
暴力行為が排除される慣行の確立を期すべきであると思いまするが、
総理、
労働大臣の
所見を伺いたいと思うのであります。(
拍手)また、私は、今回の
事件の大きな原因は、
政府の石炭政策の貧困にもあると思うのであります。今回の
政府提出の石炭合理化法案は、明らかに、なお石炭
労働者十万以上を三カ年に整理することが条件となっているのでありますが、その首切りは
労使が勝手にやれ、
ただし、切った失業者は離職者援護法でめんどうを見てやる、というのが
政府の対策であります。これで
炭労側の現在の戦術から見て、第二、第三の
三池問題が発生しないとは、だれも保証できないのであります。私は、
政府は、コ
スト切り下げ合理化政策と並行して、余剰と思われる人員に対しては、他の産業に転職の事前協力を求めるとか、新たなる
就労産業をみずから立案・計画するとか、同時に計画を立てて、余剰人員はこのようにして
解決するから
労使で話し合ってくれというならば、なおそれも反対というならば、おそらく世論がこれを審判すると私は思うのであります。
このような
事態も含めて、わが党は、さきに石炭産業
会議の設置を要求したのでありまするが、言を左右にして応じない
政府の無策が今日の
事態を促進したのであって、その責任は断じて免れないと思うのであります。(
拍手)
総理、通産大臣の
所見を伺いたいと思うのであります。
最後に、私は、
国民の代表として、今度の
事件の責任の大半は、
向坂イズムを中心とする、
いたずらなる階級
闘争至上主義に武装された
総評、
炭労中央幹部の扇動的
闘争一点張りの
指導が、
炭労自身の
組合員大衆からも批判され、不幸にも
三池労組の分裂となり、間もなく、半数にも達するといわれる
組合員が組織を離れてしまったのであります。この際、
総評、
炭労の幹部は、
エネルギー革命のせとぎわに立った石炭界の現況をよく認識し、要求はするが、生産の責任は一切
労働者にはないとする
三池方式に反省を加え、収炭率九五%というが
ごとき
日本最良の天然条件に恵まれた
三池において、一人当たり能率月十四トンというが
ごとき常識は、日の丸資本以外は通用しないことを率直に認めなければならないと思うのであります。(
拍手)また、
労働組合の団結という旗さえ立てれば、そこには
組合員の基本的
人権も、知る自由も、批判の自由も、出歩く自由も、一切が
暴力をもってしても一拘束できるとの錯覚だけは、文明国を標榜する
日本の
労働運動の名誉のためにも、この際やめてい
ただきたいと思うのであります。(
拍手)
労働運動から民主主義を取ったら、一体あとに何が残るでありましょうか。自滅か
暴力革命の前衛部隊としての性格と任務が残るのみでありましょう。
総評は、かつて
日本最良の強力なる資本であった尼崎製鋼
争議に数千人の
組合員の
職場を失わしめ、続いて、日産自動車、日鋼室蘭、王子苫小牧の
争議においても、幹部と外郭団体の暴走に批判をして立ち上がった第二
組合員によってようやく
職場が守られ、今日では完全にその
指導権を握っている事実について注目すべきでありましょう。(
拍手、発言する者あり)
労働運動は経験の積み重ねによって成長するといわれております。失敗の歴史を繰り返すのみで、成功の歴史を知らない中央幹部の無反省が、今日の
三池の惨事を生み、組織の動揺を来たしておるのであります。真に平和的に
三池問題の
解決をはかる意図であるならば、現地における
暴力態勢の一切を、中央みずから指令して解くべきである。その上で
第三者の公正なる判断に待つとの態度に出るならば、世論も耳を傾け、その反省を受け入れることでありましょう。このことを勤労
国民の名において強く要求をいたしたいのであります。
同時に、私は、
会社側の責任についても強く指摘をいたしたいのであります。今日、この
事態の責任が
労働者側にのみあるとする態度は、断じて許すことはできないのであって、経営の甘さが今日の原因を大きく作って、いることを反省しなければならぬと思うのであります。
暴力団殺傷
事件の
ごときも、現在までのところ、直接
会社側に関係があるかどうかについては疑問でありますけれ
ども、
暴力団をして将来に期待をかけしめるような、すきを見せたことは、
三井経営陣が近代経営感覚に欠けるところ大であったものと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)幸いにして、
組合側の反省が現われ、
暴力阻止の態勢が解かれるならば、行きがかりを捨て、大局に立って、
企業の整備合理化も経営の条件でありますが、
組合員の
職場の確保も、また
労働者にとっては、何ものにもまさる、必死ともいうべき生存の条件であることを深く認識いたしまして、誠意を持って
組合側に当たり、近代的
労使の慣行の確立に努力されることを強く求めて、私の
質問にかえたいと思うのであります。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇〕