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1960-03-18 第34回国会 衆議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十八日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十一号   昭和三十五年三月十八日     午後一時開議  第一 臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案内閣提出)  第二 経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律案内閣提出)  第三 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 住宅地区改良法案内閣提出)  第六 公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第八 漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣提出)  第九 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会承認を求めるの件  第十 失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案(第三十三回国会齋藤邦吉君外二十五名提出)  第十一 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  第十二 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  第十三 船員保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  小牧飛行場における自衛隊機全日空機衝突事件に関する緊急質問太田一夫提出)  全日空機衝突事故に関する緊急質問塚本三郎提出)  自治庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑  日程第一 臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案内閣提出)  日程第二 経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律案内閣提出)  日程第三 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 住宅地区改良法案内閣提出)  日程第六 公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第八 漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第九 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会承認を求めるの件  日程第十 失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案(第三十三回国会齋藤邦吉君外二十三名提出)  日程第十一 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  日程第十二 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  日程第十三 船員保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出)     午後一時十七分開議
  2. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  小牧飛行場における自衛隊機、全   日空機衝突事件に関する緊急   質問太田一夫提出
  3. 天野公義

    天野公義君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、太田一夫提出小牧飛行場における自衛隊機全日空機衝突事件に関する緊急質問、及び、塚本三郎提出全日空機衝突事故に関する緊急質問を順次許可せられんことを望みます。
  4. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。小牧飛行場における自衛隊機全日空機衝突事件に関する緊急質問、これを許可いたします。太田一夫君。     〔太田一夫登壇
  6. 太田一夫

    太田一夫君 私は、日本社会党を代表しまして、一昨十六日発生いたしました、名古屋小牧空港における全日空旅客機自衛隊ジェット戦闘機が衝突いたしました惨事につきまして、政府緊急質問を行なうものであります。この事故は、月影のない暗い夜の飛行場で、航空自衛隊の第三航空団所属全天候ジェット戦闘機ノースアメリカンF86Dが訓練を行なっている最中に、全日本空輸ダグラスDC3型プロペラ旅客機着陸したところに、この想像もつかぬ大惨事の突発する原因がひそんでいたのであります。旅客三十名を乗せて羽田を飛び立った全日空機は、十九時四十五分、何事もなく名古屋小牧空港滑走路着陸、機は、滑走を終えると、管制塔の指示によって向きを変え、ターミナルに向かう誘導路に入らんとしたその瞬間に、離陸しようとして滑走路を発進してきた航空自衛隊ジェット戦闘機と衝突したものでありまして、常識をもってしましても不可解千万であり、航空法規の建前から見ても、奇怪千万な事故と申さなければなりません。  私は、ここに、この不測にして不幸きわまる大惨事によって、とうとい生命を失われました三人の方々、その御遺族並びにその他多数の重軽傷者諸氏と御家族の方々に、心からの弔意を表し、お見舞を申し上げますとともに、かかる惨事を引き起こしました原因や、その背後にある諸事情を徹底的に究明いたしまして、二度と再びかくのごとき不幸を繰り返さないように、この際あらゆる努力を払わなければならないことを痛感するものであります。(拍手)  まず、最初に、岸総理お尋ねをいたします。それは、飛行場共同使用の問題でございます。民間機軍用ジェット機とが同じ飛行場の同じ滑走路共用しているところに今回の事故発生の重大なる原因があると思うのであります。(拍手)今回の事故原因究明に当たっていた関係者は、管制官ジェット戦闘機離陸OK指示を早く出し過ぎたことに基因をしていると発表していますけれども、それは原因のすべてではないはずであります。羽田国際空港におきましても、昨年の夏以来、猛烈な自衛隊機の乗り入れにあって、民間航空は、日本といわず、外国といわず、非常な脅威にさらされ、各社こぞって抗議を行なっていたことは、御承知の通りであります。特に地上衝突の危険があることにつきまして、保安事務所は大いなる抗議と苦情を突きつけられていたことを、この際、特に指摘しておかなければならないと思います。  一つの飛行場民間機自衛隊機共同使用するとき、自衛隊機発着が多ければ多いだけ、民間機に対しまして優位性を持つようになりまして、いつしか軍用飛行場の姿に変わっていくことは、否定できない事実であると思います。小牧空港におきましても、民間機一に対し自衛隊機八の割合で離着陸しているといわれているのであります。特に、F86D全天候ジェット戦闘機七十機が、最近のように全機出動のごとき演習を繰り返されていたのでは、民間飛行機はどうしてもじゃま者扱いをされるようになりがちであります。特に、現内閣は、日米軍事同盟にひとしい新安保条約の批准を急いでおります。航空自衛隊戦闘力は、これによって一段と強化拡充されるに違いございません。かくなりました暁には、共用飛行場はますます軍用飛行場の姿を濃くすること、想像にかたくないではありませんか。この際、政府は、断固として民間飛行場自衛隊飛行場とを分離、区別すべきであると思うが、岸総理のお考えを承りたいのであります。(拍手)  次にお尋ねをいたしたいのは、民間機優先自衛隊機優先かの原則の問題であります。公式的には、緊急出動以外には、自衛隊機民間機より優先的に扱われることはないといわれておりますし、運輸省航空局もまた、民間機が優先することになっておると言うておりますけれども、事実は、ジェット機優先原則が唱えられておるのでありまして、この結果、自衛隊練習機戦闘機ともに、民間航空機に優先して離着陸扱いを受けておると見なければなりません。そのような節が見られるのでございます。小牧空港今回の惨事もまた、管制官の頭の中には、民間機を軽視し、自衛隊ジェット戦闘機の発進に重点を置いたと想定される節がうかがわれるのでありますが、この点につきまして、岸総理の明確な答弁をお願いいたしたいのであります。  なお、本問題につきましては、楢橋運輸大臣赤城防衛庁長官との間に意見相違があり、運輸大臣は、飛行場共用に問題があるとの前提に立って、当面、民間機優先のルールを確立し、自衛隊機練習回数を規制するよう申し入れをすると言い、赤城防衛庁長官は、飛行場共用は差しつかえない、航空管制のやり方で解決する、と、消極的に自衛隊中心主義を言っていると伝えられております。この食い違う考えこそが、今回の大事故の遠因であり、かつは、将来の禍根と思うのでありますが、総理は特にこの点に注目をしてお答えをいただきたいのであります。(拍手)  次に、死傷者並びに本事故によって被害を受けられた者の国家補償についてであります。本事故の直接の原因が、管制官の過失、ジェット戦闘機操縦者ミスと判明いたしました以上、政府はできる限りの弔慰見舞損害補償をいたすべきであると思います。すでに、全日空におきましては、死者に対して百四十万円、負傷者には十万円、乗客には三万円の見舞金が出されておると承っておりますが、政府のお考えと御措置を伺いたいのであります。  次に、赤城防衛庁長官お尋ねをいたします。  まず第一に、飛行場共用自衛隊基地の設定の問題であります。小牧の場合を例にとってみますると、昭和三十三年、米軍から返還された当時、自衛隊基地にするのではない、民間飛行場にするのだといって、土地を農民から買い上げ、拡張したのでありますが、その後、次第に自衛隊は増強されまして、今日、飛行場使用は、その九割近くが航空自衛隊ジェット機でございます。民間飛行場にするどころではありません。逆に自衛隊が取り上げようとしているようにすら見られるのは、いかなる意図に基づくものでありますか、了解に苦しむものであります。今国会提出されております航空法の一部改正に際しましても、防衛庁は、小牧、千歳両飛行場航空管制権まで自衛隊の手におさめようとねらっております。管制と管理とを運輸省航空局が行なうことになったのは、民間航空の発達と助成をはかるためではなかったのでございますか。その当初の基本方針にもかかわらず、飛行場は次々と自衛隊にとられ、民間機は次第に肩身を狭くして、飛行場共用という名の、たよりなき空名のもとに、身をふるわしているという実情でございます。自衛隊に軍の意識が芽ばえたといわれたり、自衛隊国民生命を軽視しているといわれたり、自衛隊共用飛行場を占拠するつもりだろうといわれているのも、決してゆえなしとしないのであります。防衛庁は、共用飛行場、特に、都心にあるものや、都市周辺飛行場は、すみやかに民間に返し、共用飛行場自衛隊基地化するような行動は即時中止されることこそ、今次事故を将来二度と繰り返さない保証と思うが、赤城防衛庁長官のお考えを、しかと承りたいのであります。(拍手)  なお、石川県小松など、新しい自衛隊基地を設定するにあたりまして、地元の反対を緩和するために、民間航空との共用を打ち出している例もありますけれども、今度の事件を見ても、軍民共用基本方針は変えないつもりか。既定の飛行場においては分離の必要が痛感されている際において、ことさらに民間との共用を強調するのは、一時的な便法であり、ごまかしであるとも思われるけれども、一体、長官として、基本的な態度はいずれをとられているのか、明らかにされたいのであります。(拍手)  次に、自衛隊機民間機との無線波長相違についてでありますが、なぜ短波の波長航空自衛隊機民間旅客機と異なっておるのでありますか。波長が違うがゆえに、コントロール・タワーからの指示は、民間機に対するものは自衛隊機にわからない、自衛隊機に対するものは民間機にはわかっておりません。全体の飛行機にわかる統一した電波を使用していたならば、このような事故は未然に防止できたと思われるが、その点、なぜ改善しなかったのであるか、どうしてそのような措置がとられなかったのであるか、この点、お伺いをいたしたいと思うのであります。  最後に、楢橋運輸大臣お尋ねいたします。  まず第一に、小牧空港管制官空港掌握の問題であります。承りますと、当日は暗かったから視界がきかず、全日空機がどこにいるかわからなかった、多分誘導路に入ってしまっただろうと思ったというような管制官の話が伝わっておりますけれども、暗夜といえども、管制官は、その指示に必要な諸条件は完全に掌握し、確認できるはずのものでなければならないと思うのでありますが、何か具体的な機械施設において欠陥があったのではありませんか。  第二に、源田空将指摘されているところでありますが、なぜ、全日空機に対し、着降後、滑走路Uターン指令をしたのであるか。全長二千七百四十メートル、日本では最も優秀な滑走路を持つ小牧飛行場にしては、ターミナルに至る誘導路つけ方が非科学的であり、非合理的になされているためではないのか、われわれもまた、この点、不審にたえないのであります。  なお、この点に関連をして、小牧空港の拡張はまだ残っているように聞いておりますが、今後いかにする所存であるか、あわせて伺いたいのであります。  第三に、管制用語の問題であります。指令英語をもって行ない、時には日本語を使うとも聞いておりますが、英語ではぴったりこないと同時に、聞き違いもまた生じやすいのでございます。なおさら、日本語英語混合使用では、弊害こそあれ、利するものはないと考えます。この際、管制用語日本語に統一すべきであると考えますが、運輸大臣の見解はいかがでありますか。  第四は、管制官素質向上労働条件の問題であります。管制権航空局から自衛隊に取り上げようという動きの強い中で今回発生しました事故が、見習管制官ミスという、常識上あり得るべからざる原因によって発生したことは、今後管制権運輸省のもとに置くべきであるという、われわれ国民の希望に暗い影をさしたものと言えるのでありますが、航空交通管制がいかにあるべきかという基本問題は、この際、技術的にも組織的にも徹底的に検討し、航空運輸の発展に努めなければならないと信じます。その意味におきまして、管制官質的向上をはかるとともに、常時緊張と不規則な生活に心身をすり減らしている管制官の保護のためにも十分意を用うるところがなくてはならないと思うのであります。小牧空港管制官は四人一組でありまして、七時三十分から十三時三十分までの者と、十三時から十九時までの者と、それに十八時三十分から翌朝八時三十分までの三交代制であります。徹夜しても仮眠も許されないという勤務制度は、おそらく、管制官にとっては死の苦しみでありましょう。(拍手運輸大臣はすみやかにこの人たち待遇を改善する必要があると思うのでありますが、お考えのほどを承りたいのであります。(拍手)  世間では、このたびの事故を目しまして、役に立たぬ戦闘機で役に立つ旅客機をこわすとは何事かと非難を浴びせているのであります。(拍手)私たちは、この国民の声に耳をそむけることはできません。  以上、私は、今回の大惨事契機とし、政府は真剣に施策を改め、災いを転じて福となすよう反省、善処されることを要望しまして、質問を終わる次第であります。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  今回の小牧飛行場における事故は、まことに遺憾でございまして、この事故によって犠牲を受けられた方に対して心から弔意を表するとともに、原因を徹底的に追及して、二度とかくのごとき事故を起こさないように処置しなければならぬという太田君の御意見には、私、心から全然同様に考えております。  飛行場共用問題についての御質問でありますが、理想的に申しまして、これの共用を廃止することは、私は望ましいと思います。ただ、遺憾ながら、わが国の現状から見まして、用地の取得やあるいは予算の点からの困難がありまして、ある程度の共用もやむを得ないと思います。この場合において、共用するということが必然的に危険をもたらすというようには考えられないのでありまして、この点に関しましては、航空交通管制その他の点におきまして、危険防止の点について万全を期すべきものであると考えます。  共用する場合に、民間機に対して宿衛隊機を優先して使用せしめておるじゃないかという御質問でありましたが、自衛隊機が優先するというようなことは絶対に考えておりません。今回の原因航空交通管制の問題に関連して、現在原因を追及しております。まだ確定的の原因をここで明確に申し上げることはできませんが、今日までのところにおきまして、航空管制上において遺憾な点があったのではないか、こういうふうに考えられるのでありまして、この点につきましては、十分さらに原因を明確に検討し、これに対する処置を明確にきめて参りたいと思います。  国家補償の問題についての御質問でございましたが、今回の原因は、まだはっきりしたことは申し上げられませんが、大体において、全日空の方の原因ではないように考えられます。従って、国家としまして、法律の許す限りにおいてできるだけの弔慰補償をすべきものだと考えております。     〔国務大臣赤城宗徳登壇
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) このたびの事故に対しましては、まことに遺憾でございまして、犠牲者に対しまして心からお悔やみ申し上げます。  御質問の第一でありますが、飛行場民間から取り上げておるのじゃないか、こういうことでありますが、そういうことは全然ございません。  第二に、飛行場都心から外の方に移したらいいではないか。これはごもっともでございまして、そういうふうに移したいと考えておりますが、何しろ、日本地理的状況経済的の関係で、それを十分にやるというわけにいかないのは、まことに遺憾でございます。そこで、現在の状況といたしましては、共用もやむを得ない、こう考えております。ただ、このたびの事故、その他諸外国事故等をよく検討いたしましても、管制に万全を期すことによって相当事故は防ぐことができると考えます。一そうこのために努力をいたしたいと思います。  それから、飛行基地の獲得に、民間共用というか、民間も入ってくるということで、たとえば、小牧のような場合にそういうことをやっておるではないかということでありますが、これも御指摘と違っております。そういうことはいたしておりません。  それから、波長が今度の場合も違っておりまして、全日空飛行機に対する波長自衛隊機に対する波長が違っておりましたので、その連絡が十分でなかったのじゃないか、これを統一したらどうか、こういうことでありますが、これは飛行機上に無線機を備えておりますが、自衛隊機に備えておりますのは、その使用目的から、多数のチャンネルのUHFというのが有利でありますので、これを一般のVHF、こういうことにするのは非常に困難であります。そういうことでありますので、やはり、波長といたしましては、自衛隊ではUHFの方を採用するということに相なっておりますので、この点は、そういう点で御了承願います。     〔国務大臣楢橋渡登壇
  9. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 今回の小牧衝突事件は、主管大臣といたしまして、まことに責任の重大を感じておるのでありまして、今回のこの衝突事件契機といたしまして、抜本的な方策を立てたいと実は思っているような次第であります。従いまして、今お尋ねになりました点でありますが、管制官誤認をしたということは、今のところ、間違いない事実のようでありまして、現在、検察当局はおいて逮捕されておりますし、いろいろとテープ・レコーダー等によって調べました結果、やはり、その点に誤認があったということが明らかになっておるのであります。従いまして、その点につきまして、Uターンの点をどうして命じたかという点でありますが、これは、おそらく、管制官が、むしろUターンさせた方がいいと誤認した形跡があるのでありますが、この点も、肉眼をもって見てやっておるいろいろな関係等があると思われます。また今申されました、おそらく、心理的には、ジェット機を早く立たせたい、ジェット機があまり地上におることは燃料を食うから困るということを感じたような次第であろうと思うのであります。  第三番目に、英語をもってしておるということはどうだというお話でありますが、原則的には、国際空港等関係がありまして、昨年の七月から管制権をこちらへ移譲を受けましてから英語をもってやっておりますけれども、場合によっては日本語をもって回答を与えています。併用の問題は、やはり、研究すべき問題として、今日これを研究させておりまして、併用の問題についても、ぜひ取り上げてみたいと思っておるような次第であります。  なお、管制官待遇の問題は御指摘通りでありまして、この重要なる空の管制官が、今日のような待遇なり、ああいう精神的過労によってやるということは、まことにこれは妥当でない、今回の災害契機といたしまして、管制制度に対する根本的な問題を取り上げて解決いたしたいと思いまして、昨日、運輸省の中におきましても、運輸次官中心として、この問題の善後措置並びにこれらの災害が起こらないような抜本的な方策を今樹立しつつあるような次第であります。      ————◇—————  全日空機衝突事故に関する緊急質問塚本三郎提出
  10. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 次に、全日空機衝突事故に関する緊急質問を許可いたします。塚本三郎君。     〔塚本三郎登壇
  11. 塚本三郎

    塚本三郎君 私は、民主社会党を代表しまして、一昨十六日小牧名古屋空港滑走路における自衛隊機全日空機との衝突事故について質問をいたさんとするものであります。  この事故は、全日空機が満員の三十名を乗せて、南から北に向かって着陸、一滑走路の北方でUターンして誘導路へ向かおうとしたところへ、離陸するため同一滑走路を走ってきたジェット機と正面衝突したものであります。  事故犠牲者各位に対しては心から哀悼の意を表するとともに、負傷者各位に対しては一刻も早く全快されるよう心から祈って、このような事故の根絶を期するために、次の数点について質問を試みんとするものであります。(拍手)  小牧空港は、一昨年九月、米軍から返還されたもので、その半年前から三空団が移駐し、運輸省管制下のもとで自衛隊民間共用しており、事故を危ぶまれながらも、これまで事故はなかったと新聞は伝えており、あたかも、事故があることはすでに予想されていたかに受け取れる節が多々あるのであります。  その第一の理由は、民間機軍用機とは、その使用目的が全く異なるにかかわらず、同一飛行場で、しかも、同一滑走路を常時使用することは、便宜的とはいえ、あまりにも無謀であったといわなければなりません。(拍手)時速一千キロをこえる最新式ジェット戦闘機ノースアメリカンF86と、わずか二百五十キロの老朽ダグラスDC3型機が同一滑走路から常時発着していることは、われわれしろうとの考えからしても、危険この上もないと思うのであります。最近、わが国航空自衛隊機数が増加するに比例して、訓練回数も増加し、おのずから飛行場の不足を来たし、そのことが民間空港へとしわ寄せされ、軍用基地が主となって、民間空港が従となりつつある傾向は、否定できないのであります(拍手)たとえば、小牧のごときも、その発着度数民間機二十回に対して自衛隊機が約百六十回と、実にその数八倍と新聞は伝えております。それのみか、羽田空港でさえも、最近、自衛隊飛行機が割り込んできて、民間機発着に支障を来たしているといわれるではありませんか。さらに、ジェット機は、その速度とガソリンの大量消費という立場からして、滞空のための最低速度百八十ノット、すなわち、約二百五十キロでありまして、その速度は全日空の最高速度とひとしく、それよりおそければ飛行することができぬという性能であります。かくして、一秒のむだも許さない高速のジェット機が、着陸を待つために飛行場の上でぐるぐる回るというのんきな芸当はやれないのでありまして、共用の場合、民間空港でありながら、必然的に軍用優先とならざるを得ないのであります。飛行場が足りないからとの理由で、今後とも、このような危険をなおも続けていかれるお考えかどうか。航空法の改正により管制官に対する運輸省防衛庁との円滑なる連絡のみでは決して解決し得る問題ではないと信じますが、総理のお考えはいかがでありましょうか。ただいま、総理は、原因を徹底的に追及すると述べられましたが、原因ははっきりとわかっておるのであります。共用を廃止する以外にないと思うが、いかがでありましょうか。(拍手管制に万全を期するというだけでは問題の解決にはならないと思うのであります。  次に、都市周辺の軍事基地に対する問題であります。今回小牧空港に起きた事故の直接の原因はともかくといたしまして、名古屋市という大都会に接する空港は、当然、人員の輸送がその使命として必要とされるものでありまして、自衛隊機が高性能であればあるほど、事故を起こす危険率は高く、さらに、異常な爆音を伴い、さらに発着訓練を主とする基地として共用することは絶対に避けるべきでありまして、都市周辺空港は今後民間のみとして、特殊の使命を目的とする軍用機使用は、都市をはるかに離れた飛行場に移すべきであると考えるのであります。速力、航続距離の関係から、ジェット機優先の基本原則がきまっておるので、着陸寸前の民間機が、突然着陸が不可能となって、二十分、三十分と飛行場上空を旋回して、ジェット機着陸に順位を譲った例もあるということであるが、一人で操縦するジェット飛行機が大切か、三十人の旅客全員の生命を預かる全日空機が大切か、判断してほしいと、現場で民間機自衛隊機との感情的対立のあったことを、はたして担当大臣は御存じでございましょうか。一日平均、民間機約二十回に対して自衛隊機百六十回の発着は、小牧空港の性格が軍用飛行場ではないかと疑われても仕方がないのでありまして、航空局内部でも問題になっているといわれるが、これをどう解決されるお考えか、運輸大臣お答えを願いたいのでございます。  次に、今回の事故は、管制官が誤った指示を出したためと関係当局は断定されたようでありまするが、当の管制官は、任官して一年半足らずの、正式資格を持たない練習生だった、と運輸当局の手落ちを認めているようでありまして、きわめて重大な業務に関し、当小牧空港誘導路に誘導燈がついていないので、滑走路Uターンせしめるという、きわめて危険な運用をしている上に、さらに、北側の川にふたをする工事をしているという悪条件が重なってのものと説明されているのでありまして、かくのごとき悪条件の重なっている中を、正式資格のない管制官にまかせたこと自体に問題があり、大きな手落ちがあると思うが、いかがでありましょうか。(拍手管制官は、その能力においておよそ短大出程度の英語能力を有し、その上、六カ月の研修を積み、さらに九カ月の実習を終えて、初めてその実務につくという、高度の技術と、注意力と、精神力と、さらに経験等を要求しているにかかわらず、その待遇及び給与に至っては、一般公務員と何ら異なるところなく、国際的業務でありながら、世界各国に比してきわめて低い給与であるのみならず、その手当たるや、何と一時間十円であり、さらに、それさえも本三十五年度は八円にと削り取らんとしておられると聞いておるのであります。そのことは、ひとり管制官の職責に対する問題というよりも、運輸・大蔵両当局者のこの職責に対する認識の浅さを物語っているといわなければならないのであります。(拍手)この事故が起こるや、全国の管制官は異常な精神的ショックを受けたと聞いているが、これらの管制官が勇気を出して職責に自信を持ち得るための処置を講ずる必要がありはしないか、この点、加えてお尋ねしておきたいのであります。(拍手)  次に、犠牲者に対して、全日空は、事故に対する直接の責任がないにかかわらず、いち早く見舞いの処置を講じて誠意のほどを示したと伝えられているのであります。しかし、遺憾ながら、事故の直接の責任者である運輸省及び防衛庁が、いまだにこれに対して何らの手段を講じたと聞いておりません。直接の責任当局は格別の弔意を表すべきであると思うが、一言お聞きしておきたいと思います。  最後に、科学の進歩と比例して、航空機の利用者は年とともに増加し、国内線の利用者も当然並行して増加しつつあるのであります。しかるに、全日空は、不運とはいえ、その事故がたび重なっております。空の旅は全日空のみに依存するわれわれ中京地区の住民は、何かしら心さびしい気持をぬぐい去ることはできないのであります。被害者の親が、飛行機だけは乗るではないと、出発にあたって注意をしておいたと伝えられるが、この気持は、遺憾ながら、全日空を利用する者の偽らざる心理であります。今回の事故は、全日空にはもちろん何らかかわりのないものといたしましても、航空事業の発展とスピード化の時代に備えて、国内線には何か一本くぎの抜けたような不安がいたすのでありますが、これが育成と安全化のため、利用者の不安をぬぐうために、責任大臣の御決意のほどを伺って、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の事故にかんがみて、同一飛行場民間航空機自衛隊の航空機とが共用するということは非常な危険を伴うことであって、これを廃止すべきではないかという御意見でございます。先ほどもお答え申し上げましたように、理想としては、共用は望ましくないことは言うを待たないのであります。ただ、日本の現状から見まして、事実上、飛行場の土地の獲得ということも、日本の情勢から見ますと、なかなか困難でございます。予算の関係もありますので、ある程度の共用は、これはやむを得ないと思います。しかしながら、この共用から生ずる危険をいかにして防止するかという点に関しまして、いろいろな点で今度の事故が教訓を与えておると思います。これを徹底的に究明しまして、将来に対して万全の措置を講ずるように、政府としては真剣に検討して対策を立てるつもりでございます。(拍手)     〔国務大臣楢橋渡登壇
  13. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) ただいまの塚本さんの質問でありますが、ジェット機の点は、御存じのように、やはり、非常なスピードがありますし、民間航空の輸送機はそれと比較にならない点があるのでありますから、危険が非常に伴うことは、全くお説の通りであるのでありまして、従って、理想的に申せば、民間航空と、ことにジェット機時代の自衛隊の航空機とを分離してやるということが、私は民間航空主管大臣としては望ましいことでありまして、そういう線に沿うて努力をしたいと思うのでありますけれども、ただいま総理も申されたような諸事情等もありまして今日に至っておるような次第であります。しかし、管制上の問題は、十分に、自衛隊、ことに防衛庁長官と協議をいたしまして、こういうような間違いがないように、また、将来の理想といたしましては、一元化する方向へ次第に持っていくということに努力いたしたいと思う次第であります。  また、待遇の問題は、先般もお答えいたしましたが、管制官待遇というものは、他から見ますると驚くべき精神的な労働でありまして、しかも、狭隘な建物の中で非常な努力をしてやっておる等のこともありますので、この機会に、どうしても、根本的に、管制官待遇、精神的なゆとりのあるような物的な方向についても裏づけをするということが必要である、一方に、やはり、科学的にもっと掘り下げて研究する必要があるというわけで、運輸省の中に、昨日、次官を長といたしました委員会を作りまして、この点を急速に解決いたしたい、また、大蔵当局その他の関係方面にもお願いを申したいと思っておるような次第であります。  なお、弔慰金の問題は、今事件等が明白になれば、さいぜんもお答えしましたように、国家の責任があれば、国家がこの責任をとることは当然であると思うのでありますが、とりあえず、運輸大臣といたしまして、昨日、政務次官等を向こうにやりまして、御慰問その他を申し上げておるのであります。また、弔慰金の問題等も、問題が明らかになれば、できるだけ早く解決いたしたいと思うのであります。  なお、今回の事故につきまして、全日空が、非常に不運と申しますか、問題になりましたが、今回の事件に関します限りは、全日空側は責任がないと見られるのでありまして、この点は、むしろ、全日空に対してお気の毒に存じておるような次第であります。同社が、一昨年の八月、事故にあいましてからは、極力航空機の安全性の確保等に努力せられまして、機材の整備あるいは要員の確保等に全力をあげておるような次第で、その業績は見るべきものがあると思うのでありますが、政府といたしましては、事故の起こらざるよう、全日航に対しましても一段と指導いたしたいと思う次第であります。(拍手
  14. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これをもって緊急質問は終わりました。    ————◇—————  自治庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  15. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) この際、議院運営委員会の決定により、内閣提出自治庁設置法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。国務大臣石原幹市郎君。   〔国務大臣石原幹市郎君登壇
  16. 石原幹市郎

    国務大臣(石原幹市郎君) 自治庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由と要旨を御説明申し上げます。  申し上げるまでもなく、地方自治は民主政治の基盤でありまして、その健全な発達をはかることは、わが国民主政治の根底をつちかうゆえんであると存じます。しこうして、地方公共団体は、その本来の公共事務を処理するほか、国の行政もその大半は地方公共団体の手を通じて行なわれ、国税及び地方税を合わせた租税総額の六割以上は、これらの行政を遂行するために、地方公共団体の責任で使用しているのでありまして、地方財政の規模は国家財政に比肩する大きさを持っておるのであります。このように、地方自治はまことに重要な役割を果たしており、その伸張と運営のいかんは、国政の上にもきわめて重大な関係を持っておるのであります。従いまして、中央各省と地方公共団体との間の連絡協調を一そう緊密にし、国政と地方自治との調和を保って、地方自治の健全な発達と国政の適切なる遂行をはかることがすこぶる緊要でありまして、これがためには、地方自治に関する行政を担当する国の行政機関として、現在のような総理府の一外局では適当とは認めがたく、責任ある一省を設けることが必要であると存ずるのであります。  また、消防行政につきましては、その重要性にかんがみ、かねてその強化充実をはかる必要が痛感されておるのであります。現在、これをつかさどる国家消防本部は、国の行政組織上の地位が明確でないのでありまして、自治体消防の本質とその地方公共団体の一般行政との深い関連にかんがみ、これを地方自治を所掌する責任者に統合し、その責任体制を確立することが、消防行政を伸張させるゆえんであると考えられるのであります。これがため、自治庁に国家消防本部を統合して自治省を設け、国家消防本部はその外局としようとするものであります。  以下、本法案の内容について御説明申し上げます。  第一は、自治庁設置法を改めて、自治庁を自治省とし、国家消防本部をこれに統合して、自治省の外局として消防庁を置こうとするものであります。自治省の権限は、現行の自治庁及び国家消防本部のままでありますが、ただ、省の設置に伴い、従来、内閣総理大臣の権限に属していた事務が自治大臣の権限に移ることになりますので、これがため必要な条文の整理を行なうことといたしました。なお、消防庁の組織、所管事務及び権限は、従前の通り、消防組織法の定めるところによるものといたしたいのであります。  第二は、自治省の機構につきましては、内部部局はすべて現在の自治庁のままとし、付属機関として、従来の自治庁の付属機関のほかに、これまで総理府の付属機関であった奄美群島復興審議会を移管し、自治省を置くことといたしたいのであります。  第三は、自治省の設置に伴い、職員の引き継ぎ、その他、従前の処分等に関する経過措置を定めるとともに、関係法律の整理を行なうことといたしたいのであります。  以上が自治庁設置法の一部を改正する法律案の提案理由及び要旨でございます。(拍手)      ————◇—————  自治庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  17. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) ただいまの趣旨の説明に対しまして、質疑の通告があります。順次これを許します。佐野憲治君。     〔佐野憲治君登壇
  18. 佐野憲治

    ○佐野憲治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま御説明になりました自治庁設置法の一部を改正する法律案に対し、若干の質疑を行なわんとするものであります。(拍手)  本法案は、現在の自治庁に国家消防本部を加え、自治省に昇格せしめんとするもので、形式的にこれを見ますれば、きわめて単純な行政機構の一変革にすぎないのであります。しかしながら、国民の多くは、この法案が意図する目的は一体どこにあるのかと、深い疑惑を抱いているのであります。(拍手)真のねらいは、政府が当面している貿易の自由化、再軍備増強など、重大政策の実現にあたって、これに応ずる行政機能を合理化するため、政府が地方行財政の運営に対する干渉及び支配を強化し、さらに行政的統制と監督の範囲を拡大せんとするのが、本法案のねらいであり、まさしく自治権を抑圧せんとする法案であるという点に対して不安を抱いておるのであります。(拍手)私は、これら国民の不安と疑惑を解明するために、この点に重点を置いて質疑を進めんとするものであります。  まず第一にお尋ねいたしたい点は、政府の行政機構改革の具体的な方針と内容についてであります。  行政機構の整備あるいはその簡素化は、かつて鳩山内閣の三大公約の一つであったわけであります。自来、歴代の内閣は、常に選挙の機会のあるごとに、行政機構の改革、その決意を国民に訴えて参っておるのでありますが、現在に至るまで、一度も行政機構改革に対するところの全貌をお示しになっていないのであります。ですから、岸総理もしばしば国民に訴えておられますけれども、実際に行政機構を改革する決意を持っておられるのかどうか。単なる選挙のためのキャッチ・フレーズとして、中身は全くからっぽなんだ、と、こういう流言すらも国民の間に行なわれておる状態なのでありまして、総理及び行政管理庁長官は、この機会に、岸内閣が一体どういう行政機構の改革に対するところの審議を経てきておるか、あるいはまた、その全貌に対して、本議場を通じて明らかにしていただきたいのであります。(拍手政府が今まで行政機構の内容を明らかにされていないのに、今回、突如として、自治庁本来の目的と性格を変えるおそれのある、しかも、憲法に保障されている地方自治の本旨をゆがめる重大な改正を行なわんといたしておるのはなぜであるか。また、政府は、全般的な行政機構改革の構想と切り離して、この法案のみを突如として提案いたした、その理由を説明していただきたいのであります。(拍手)  第二の質問は、昭和三十一年四月二十三日、第二十四国会におきまして、政府から内政省設置法案が提案されておるのであります。これに対する関連性についてお尋ねしたいわけでありますが、内政省設置法案は、自治庁と建設省の全部局を包括するところの法案であったのであります。しかも、その上に警察行政を加えまして、戦前の内務省を復活せんとする意図のあったことは、明らかな事実であります。それゆえにこそ、世論はあげてこの法案に反対を唱え、衆議院もまた、政府や一部与党幹部の強引な横車を退けまして、二十六、二十七国会におきましてはそれぞれ継続審議と相なり、ついに二十八国会におきまして廃案に帰したのであります。しかるに、今回、自治庁設置法の一部を改正する法律案として、名称を変えてここに提案になったのでありますが、さきの国会における世論の動向や野党の勧告をくみとったごとき装いをこらして、慎重な配慮を加え、現在の自治庁を自治省に昇格させ、消防庁を外局として置くことにいたしておりますが、政府の意図する方向は、内政省設置の場合と同じものであるのかどうか。総理及び行政管理庁長官から、この両法案のそれぞれの目的並びに相違点につきまして、率直に述べていただきたいのであります。  第三の質問は、私は、自治省への昇格より、むしろ、窮迫している地方行財政問題の解決こそ政府の責任であると思うのであります。(拍手)地方行財政の現況と問題点について、二、三お尋ねしたいと思うのであります。  その一つは、地方財政計画についてであります。政府は、一カ年間における地方公共団体の収入及び支出の見込表を作成いたしまして、地方財政の計画的な運営を確保する手段とし、さらに地方財政については、国が最終的責任を負っていることを明らかにするために、国会にこれを提案し、一般国民にもこれを公表いたしておるのであります。しかしながら、ここ数年間におきまして、常に、この地方財政計画とその決算の間に大きな狂いを来たしておるのであります。たとえば、三十二年度では、歳入において二千四十六億円、歳出におきましては一千七百八十五億円の狂いが出ておるのであります。昭和三十三年度でも、歳入におきまして一千九百五十六億円、歳出におきましては二千二百億円と、計画を大きく上回っているわけであります。もちろん、地方財政計画と決算とが相違することは、地方財政計画の性格から見ますならば、あるいはやむを得ない面もあるでありましょうけれども、一カ年間における計画と決算が二千億円も違っておる、こういう原因につきましては、私は、真剣に考えなければならない問題点を含んでおると思うのであります。自治庁長官は、この狂いは何によってできて参っておるか、この点につきまして、その見解を述べていただきたいのであります。地方計画がこのような狂いを来たしているといたしますならば、この計画を国会提出する、一般国民にこれを公表する、地方自治団体が財政の計画的運営を確保するには、何らの役に立たない表となってしまうわけであります。私は、このような原因につきまして、いろいろな問題はあるでありましょうけれども、真に大きな問題として考えさせられますことは、朝鮮動乱の勃発、これに伴うアメリカの対日政策の転換並びに日本政府の国内施策の変転によって、地方行財政政策もまた、これまでひたむきに進んで参りましたところの行政の民主化、地方自治の伸張から、反民主化へ、中央集権化への方向に大きく転換し始めたことが、地方財政の上におきまして、数字をもって明らかに現われて参ったものだと考えるのでありますが、どのように長官はお考えになっておられますか。(拍手)  その二点は、行政の責任制についてであります。政府は、地方財政を再建し、地方自治の健全なる発展をはかり、かつ、内政全般の総合的、能率的な運営を期することを、自治庁昇格の理由の一つに、ただいま石原長官はあげておられるのでありますが、従来から進められておる行政の中央集権化と、地方団体に対する監督権を強化することをねらっているこの法案を、私どもは断じて許すことができ得ないのであります。  今日、地方自治体は、国税・地方税を通ずる総額二兆一千二百七十八億円に達しておるわけでありますが、石原長官も述べられましたように、この二兆一千億円のうち、六二%が、実は、地方公共団体がこの仕事を実施いたしておるわけであります。いかに中央各省がその仕事を地方団体に押しつけているかということを、この数字は証明いたしておるわけでございます。たとえば、明年度の予算書の中で、中央各省の補助金の種類を調べてみますと、八百八十一の項目に分かれておるわけであります。総額は四千一百億円にも及んでおります。しかしながら、これは項、目だけであります。節に入りまして、細目を見て参りますならば、驚くなかれ、一千四百三十二の種類に分かれておるわけであります。この中には、わずか一府県に五万円以下、一万五千円の補助金を与えて、国の仕事を押しつけておる、こういうのも政府の資料の中にはっきりと出て参っておるわけであります。しかも、補助金の整理、補助金の効率化を述べておられますけれども、前年度と比較いたしますならば、四十八の種類が逆にふえて参っております。その金額は六百億円にもなっておるのであります。  今日における地方行政の運営の中に、戦争前よりもなおさら強い中央集権化が現われて参っておりますことは、私が今ここで例をあげて説明するまでもなく、現在の東京都におきまして、全国の道府県の事務所が設けられております。幾多の職員がここに常駐しておることを通じて見て参りましても、このことを雄弁に物語っておるものと考えるのであります。  一面、地方財政計画による歳出の面を見て参りましても、一兆五千三百八十一億円と明年度は見込んでおるわけでありますが、そのうち、法律上、事実上、どうしても県や市町村役場が使わねばならない経費は、給与費の六千億円、国庫補助の伴う一般行政費一千四百十一億円、直轄地方負担金及び国庫補助の伴うもの三千三百六十二億円、公債費が八百四十一億円、これらを合わせますと一兆一千七百十五億円に相なるわけであります。ですから、これらを引いてしまいますと、残りはわずか二四%にしか達していないのが現状であります。このうち、物件費と消耗品費に一千百四十五億円、これを差し引きますと、わずか八%であります。さらにその上に、町の道路、県の道路であっても、現在国が道路五カ年計画をもって実施しているもの、あるいはまた、文教施設費等の国の施策に基づくものを除きますと、県や町村が行なう公共事業はわずか五%であります。おそらく、閣僚各位のお生まれになった故郷における町役場や村役場は、膨大な予算は持っておりますけれども、わずか五%の経費をもって、子供たちのことや環境衛生のこと等をやろうとしてでき得ない苦衷を、どのようにお考えになるでありましょうか。(拍手)全く地方公共団体の行政権能を無視し、一方的に仕事を押しつけ、これが執行を監督するという工合に、まるで県や市町村を準禁治産者扱いにして、その機関を下請機関たらしめている、かように申し上げましても過言でなかろうかと考えるのであります。(拍手)私がおそれますことは、自治庁が自治省に昇格することによって、さらにこの傾向が強化されると思うが、この点に関しまして、一般の国民も地方公共団体の諸君も、この法案に対して疑惑と不安と危惧を持っているのであります。ですから、総理大臣並びに自治庁長官は、この点に対する明確なる見解を述べていただきたい、かように考えるのであります。私は、国、地方を通ずるところの事務を再配分する、国は国、県は県、市町村は市町村の受け持つ仕事を明確にするということ、このことこそが、今最も必要な問題だと考えるのであります。そうすることによって、地方財政の運営に対しまして、地方自治体がみずからの責任を持つようになる、こういうことが目下の急務であると考えるのでありますが、どうでありましょうか。  その三点といたしまして、税財源についても私述べてみたいと考えるのであります。  さきに申し上げましたように、あるいはまた石原長官が述べられましたように、国、地方を通ずる税金は二兆一千億円に達しておるわけであります。しかしながら、この税財源を見て参りますと、国は一兆五千四十八億円で、実に七割一分、七一%を占めているわけであります。ところが、県、市町村はわずか六千二百三十億円、二九%にすぎないわけであります。このために、地方団体は、七百億円に及ぶところの、税金外による、PTAの寄付金、その他の寄付金や負担金に依存いたしておりますし、このほかにも、超過課税、あるいはまた零細なる独立税を設けまして、その上に、現在、地方団体は、もはや、一般会計だけでも六千億円をこえるところの起債を発行いたしておるわけであります。これらによってようやくやりくりをしているというのが、地方自治体の偽らざる現状だと考えるのであります。(拍手)  しかも、ここに私は指摘しておかねばならないと思いますことは、わが国の地方税は、従来から特に応益原則が強調されて参っております。地方税負担分任の精神がよく説かれて参っております。この応益原則からすれば、地方が税金を取るというのは、地租だとか、家屋税、あるいは住民税の人頭割り、これらが適当なものとされておりますし、また、税の負担につきましても、国税におきましては担税能力が問題になって参っております。現在、所得税におきましては三十三万円、事業所得におきましては二十七万円をもって免税点といたしておるわけでありますが、しかしながら、地方の場合におきましては、そういう税金の取り方ではなくて、地方公共団体からサービスを受けておる、これに応じて取るのがよいということが、日本政府の伝統となって参っておるのであります。この結果、封建制下におけるような古い型の課税が、いつまでも地方税に適した租税とされて、さらに、税負担の逆進性——累進ではなくて逆進性、大衆課税の性格を帯びてくるのは当然視されているのが、今日の大蔵省の考え方であろうと思うのであります。これは、逆に言えば、地方税における人頭税的な性格、あるいは大衆課税的性格は、国が国税を優先的にこれを取り上げる、その結果としてこれを合理化するために、特に地方税の場合におきましては応益原則、あるいはまた、分任の精神が説かれているところに、私たちは問題があると考えるのでありますが、私は、窮迫した地方財政の問題を解決しようとするならば、何よりも最初に、国と地方の税財源の配分を真剣に考えなければならないと思うのであります。総理のこれに対する所見を承りたいのであります。総理は、昨年から設けられた税制審議会、ここにおいて十分審議を現在願っておる、その答申を待って検討したいと、たしかお答えになるだろうと思うのであります。しかし、もしそうであるとするならばなおさらのこと、地方自治の健全な発展のために、その答申を待って自治庁の機構やその役割について十分に検討されるのが本筋だと考えるのでありますが、いかがですか、お伺いいたすわけであります。  第四点といたしましては、後進地域、未開発地域についてであります。日本の資本主義の戦後における特異なる発展と、政府の大資本育成政策の結果として、各地域における所得の格差、あるいは職業別所得の格差、各階層別における所得の格差は、毎年、年を追って拡大いたしておるのであります。このことは、私がここに統計や数字を引き合いに出すまでもなく、政府自身の手によって作られました資料によっても明らかな事実であります。真に、日本における民主主義の成長と、地方住民の繁栄と幸福を守る愛情と熱意があるといたしますならば、これまでのような、資本家のために奉仕し、その犠牲国民大衆の生活に当てるという今までの政策を大胆に転換して、後進地域の開発と、その住民の生活水準の向上、並びに、特に後進地域における地方自治体の破産状態を解決するための抜本的対策を立てるべきだと思うが、総理及び関係閣僚の決意と、その対策をただしたいのであります。(拍手)  最後に、私は、以上述べましたように、国と地方団体、公共団体相互の連絡調整をはかり、地方自治の伸展をはかる道は、本案が意図するがごとき、自治庁の権限を拡大し、政府の監督権を拡大し、政府の監督権を強化するという、戦争前の中央集権的官治方式に戻るべきでないことを強く訴えたいのであります。  わが日本社会党は、自治庁を、本来地方自治体の行政事業に円滑なる援助と協力をし、自治体の要望を政府に取り次ぐ窓口であると考えておるのであります。この見地から、自治体の自主性を尊重し、その行政行動を保障するために、中央に地方審議会を設け、現在の自治庁をその事務局にすべきであると主張いたしておるのであります。私は、日本の民主化と地方分権を確立するために、この主張は最も正しい道であると確信いたすのであります。  岸総理は、日本社会党の主張を取り入れ、本法案を撤回する意思がないかどうかをお尋ねするとともに、さらに、私は、二十二年地方自治法が施行されました年に県議会に席を置いたものといたしまして、自来今日まで地方自治の伸張を願い、その成長に深い愛情を持って見守って参ったのであります。今日における教育と警察行政における混乱を見まして、深い悲しみと憤りを覚えるのであります。現在の教育と警察行政の正常化をはかるために、この二大行政を地方自治体に再び戻す考えがあるかどうかにつきましても、総理の見解をお尋ねいたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  行政機構改革に関して、その内容の全貌を示せという御質問でございます。行政機構の改革ということは、歴代の内閣考えておりますし、私どももこれを真剣に考えておりまして、すでに政府における行政審議会にこれを付議して、その答案の一部を得ております。また、党内にもこれに関する特別委員会を設けて、鋭意検討をいたしております。要は、行政機構をできるだけ簡素化してその能率を上げるという目標を置いて、そうして、各種の行政機構を検討して、具体的な結論を得たものからこれを実施するという考えでございます。今回御提案申し上げておりますように、自治庁設置法の一部を改正して自治省を作るという問題につきましては、私ども、最も時宜に適したものとして提案をし、御審議を願っている次第であります。  次に、この案は、かつてあった内政省設置法案、廃案になりましたこれと、どういうふうに違うかという御質問であります。もちろん、規模、内容等が、ごらんになります通り、非常に違っておるのであります。内政省設置法におきましては、建設省や自治庁あるいはその他の北海道開発庁等々、相当膨大な規模をもってこれを設置しようという考えでありまして、これに対しましては、いろいろな方面から非常な御意見があり、これを廃案にいたしたのでございますが、今回の案は、従来の自治庁と、消防の関係の消防庁をその外局に置くという案でございますから、全然違っているわけであります。  地方財政の健全化、地方財政の問題についてのいろいろな御質問がございました。言うまでもなく、地方財政の健全化をはかり、また、後進地域の開発をはかるということは、きわめて大事なことでございまして、この点については政府がいろいろと施策をしており、また、予算の御審議におきましても、この点を明らかにいたしておる通りでありまして、今後もそういう点に特に留意する必要があると思います。  地方に対していろいろな補助金を出しておって、そうして、国の事務をこれに委託し、地方の自治体に非常な負担をかけているじゃないかというお話でございます。確かにそういう一面があることも、私はいなむことはできまいと思うのです。従って、補助金につきましても、できるだけ効率的な見地からこれを整理していくという必要があると思います。また、これがため地方の自治体の健全な発達を阻害するようなことのないように考えていくべきことは当然であります。  国と地方自治体との間における事務、また、御指摘になりました、特に財源の分配の問題、税関係の問題等につきましては、私ども、十分国と地方との間の均衡をとり、かつ、地方の中におきましても、後進地域とそうでない地域との間の不均衡を是正していくということ、さらに、地方にできるだけ独立の財源を持たして、自治体としての機能を十分に発揮せしめるようにしていくということにつきましては、私どもも同感であります。そういうような趣旨におきまして、税制調査会におきましても、税について国税、地方税を通じての検討を命じておるわけであります。ただ、御指摘になりましたように、その案を得るまでは、自治省の設置というような本案については、むしろ撤回したがいいじゃないかという御意見でございましたが、私どもはそう考えておらないのであります。十分、社会党の御意見等につきましても、本案の御審議に際して御検討を願って、そうして、これによって、一面、大事な地方自治の健全な育成と、そうして、国と地方との関係を十分明確にしていくというような点につきまして、私どもの考えておることを御検討いただくことをお願いいたしておきます。(拍手)     〔国務大臣益谷秀次君登壇
  20. 益谷秀次

    国務大臣(益谷秀次君) お答え申し上げます。  今回の、ただいま提案いたしておりまする案は、思いつきの案ではないのであります。すなわち、昨年、国民年金保険制度が発足いたしまして、これの実施機構のために行政機構の改革をいたしました。それに次いで行なわれるものであります。すなわち、第四次行政審議会の答申に基づいて——地方行政の振興のために、中央機構の整備強化をするのが必要であるという答申があったのであります。それに基づいて今回の提案をいたした次第であります。  なお、二十四国会のときに提案いたしました内政省の案とどう違うのかという御質疑でありますが、これは非常に審議が難航いたしましたので、御承知の通り、二十八国会で撤回いたしました。このときの内政省の案は、第三次の行政審議会の答申に基づいたものであります。すなわち、地方行政に関する中央機構を設けて、そうして地方自治の発展をはかり、なお、国土の開発、建設をはからなければならぬというのでありまするので、自治庁、建設省、北海道開発庁もそうだったと思います。首都圏整備委員会、あるいは南方連絡事務局でありますか、これらを総合いたしました相当大規模の機構改革であります。しかして、今回の機構改革は、第四次の行政審議会の答申に基づくものでありまして、御承知の通り、先ほど申しました、地方自治の発展をはかり、そうして、中央機構を整備して、強化していかなければならぬ。主として地方自治の発展というところに思いをいたして提案したのでございます。(拍手)     〔国務大臣石原幹市郎君登壇
  21. 石原幹市郎

    国務大臣(石原幹市郎君) 第一の行政機構改革の問題につきましては、総理、副総理からすでにお答えがありましたので省略をいたします。ただ、前回の鳩山内閣当時の提案には警察の機構を含んでおったのではないかということがございましたが、これは全然誤解でございまして、それは含まれておりません。また、ただいまも、そういう意図は全然持っていないのでございます。  それから、地方財政計画の策定にあたって、計画と決算とがあまりにも違い過ぎるじゃないかという御指摘があったのでございまするが、これは、御承知のように、地方財政計画は、全地方団体を通じまして作り上げるものでありまして、都道府県も市町村も一緒にして作り上げられるものでありますから、大体平均的の数字、通常の水準の数字をあげていくのでありまして、特殊なものや臨時なものはこれに載せないのであります。決算にはそれらが全部現われてくる。それから都道府県を通じて市町村にいろいろ金が流れる場合に、重複しているものは、財政計画の際は省くのでありまするが、決算にはそれが全部載ってくるということで、計画と決算とが非常な違いを生ずるわけでございます。そこで、ある程度の開きはやむを得ないと思います。しかし、今後なおこういう問題について、開きの内容等について検討して、御期待に沿うように努力をいたしたいと思います。  それから、この問題は、ただいままで答えがありましたように、自治の尊重と中央・地方の連絡を緊密にしようということで、自治権を、地方の自治を抑制したり、そういうことではないのでありまして、政府内部の行政機構の問題でございます。自治を押えるとかどうとかいうことは、実体的の地方自治法であるとか、そういうものの改正の場合に問題となる問題ではないかと私は考えておるのでございます。  それから、地方財政には、単独の、独自のなにが少ないということは、これは、御指摘通り、直轄事業や補助事業が多くて、単独事業が少ないのであります。そこで、われわれは、できるだけ地方財源を獲得いたしまして、ことに後進地域、未開発地域には、そういうところの事業がしやすいように、できるだけの財源を配っていきたい。それには、やはり、政府部内に強力な責任機構の自治省をむしろ作って、その発言力を大きくしていくのが、真の地方自治尊重であり、育成ではないか、こういうことから今回の自治省を提案しておる次第でございます。  大体、以上で答弁といたします。     —————————————
  22. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 門司亮君。     〔門司亮君登壇
  23. 門司亮

    ○門司亮君 私は、わが党を代表いたしまして、きわめて簡単に、総理大臣に私の所信をお伺いするものでございます。  まず最初にお聞きしておきたいと思いますことは、この法案の提出の順序であります。これは、自治庁設置法を一部改正する、こういうことになっておりますが、行政機構の明らかな改革であって、当然これは行政管理庁からここに説明さるべきものだと私は考えておった。ところが、これを担当大臣である自治庁の大臣から説明を受けたことを実は奇怪に感じておりまして、このことは、一体どういうわけでこういうことになるのか、御説明を一つ先にお願いしたいと思います。  それから、あとは、この説明の中にはこういうふうにいわれております。「地方自治の健全な発達と国政の適切な遂行をはかることがすこぶる緊要でありまして、これがためには、地方自治に関する行政を担当する国の行政機関として現在のような総理府の一外局では適当とは認め難く、責任ある一省を設けることが必要であると存ずるのであります。」、こう書いてあります。この問題は、文章をそのまま読めば別に不思議はないようですが、一体どっちに向けてほんとうに責任を負おうとするのか。今の自治庁でどういう不都合があるのか。私は、今の自治庁でも何ら不都合はないと考える。ことに、自治庁を設置されました経過については、総理大臣もよく御存じだと思います。日本のかつての政治が、内務省を大本山とする、いわゆる官僚政治であって、そうして、日本のあらゆる部面に民主主義がなかった。戦後の新しい民主主義行政を打ち立てるためには、この官吏行政を破壊することが最も喫緊な要素として、内務省が廃止されたことは、御承知の通りであります。(拍手)従って、今日のこの自治庁の性格というものは、あくまでも地方の自治体を尊重して、いわゆる憲法の九十二条以下に書いておりまするように、地方の自治体が、その自覚と責任において、一方においては都道府県、市町村という団体が責任を持って行政を行なう。さらに、地方住民が、みずからの自覚と責任においてこの行政を執行するという、二つの建前によって、今日の地方行政が打ち立てられていることは、御承知の通りであります。ところが、これに対して、これを昇格させるという意図が一体どこにあるかということを私どもは非常に疑うのであります。もし省に昇格して、そうして、格づけといいますか、そういうものを非常に強くすることが、今日の自治行政を改革するものであるということは、私どもには考えられない。(拍手)もし、政府が、ほんとうに地方自治をわが国の民主主義政治の基盤として、そうして、福祉国家を建設する最末端の最も重要な行政機構として、行政、財政ともにこれを育てていこうとする意思があるならば、この自治庁を設置されたところの趣旨を十分体して、これが内部的に完全に行なわれまするならば、私は今の制度でも何ら差しつかえないと思う。(拍手)ところが、現在は一体どうなっておるか。この法案の出てくる背景にあるものは、あるいは言い過ぎかもしれませんが、どうも自治庁の大臣が伴食大臣と言われるような大臣であっては困る、やはり、これは、閣内で十分に発言のできるような、言うならば大蔵大臣のような、あるいは通産大臣のような、一つ格式のあるものにしないと、どうも工合が悪かろうというようなことが、大体この案の考え方ではございませんか。(拍手)そうだといたしますと、いたずらに官僚機構だけを強くするということであって、地方の行政には何らのプラスにならないということになろうと私は存じます。(拍手)この辺の事情を一つ大胆率直に御説明を願いたい、こう考えております。  それから、それ次にお聞きをしておきたいと思いますことは、ごく簡単に私申し上げますが、この法案の中に、自治省の外局として消防庁を設けるということでございます。これは、現在、消防本部が国家公安委員会に所属しておることは、御承知の通りであります。ところが、国家消防本部だけを自治省の外局にして持ってくるということは、一応私はそれでよろしいかと思いますが、問題になりますのは大臣の所管であります。現在の自治庁の長官は公安委員長を兼ねられております。この公安委員長を兼ねられております自治庁の長官が、省になっても、同じように公安委員長にもしすわられるということになりますと、かつての内務省と大して変わりのないものができはしないかと思います。従って、この機会にはっきり聞いておきたいと思いますことは、今度かりにできるといたしましても、自治庁の大臣は公安委員長を兼ねないという御答弁を、ここにはっきり願いたいと思うのでございます。(拍手)  それから、最後に、もう一つだけ、この機会に総理大臣によくお聞きをしておきたいと思いますことは、内閣の機構の中で、今、庁として持っておりまするものが、この自治庁と防衛庁がございます。そうすると、この自治庁が省になるということは、あるいは現在の防衛庁が国防省というような名前になって、日本の軍国主義がもう一ぺん復活するのじゃないかという、国民は危惧を持っておると考える。そういうことは断じてないという御答弁ができるならば、この際一つはっきりしておいていただきたいと思います。(拍手)  その他のことにつきましては、いずれ委員会その他で御質問を申し上げまするので、以上三点について、総理大臣から明確に御答弁を願いたいと思います。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問お答えします。  本案の提案を自治庁からやっておって、行政管理庁からやらないのはどういうわけだ、こういうことでございますが、自治庁設置法の一部改正の形をとっておりますから、自治庁から提案するのが適当と考えておるのであります。  第二に、本案の必要はどこにあるのだという御質問でございます。その点は、すでに先ほど自治庁長官から本案を提出しました理由を説明し、ただいま門司委員がお読み上げになりました通りの理由に基づいて出しておるわけでございます。問題は、こういう国の行政機構を改正することが地方自治そのものの内容とは関係ないじゃないか、要は、地方自治という自治団体を健全に育て上げ、自治体のやる自治行政というものを充実し、円満にやっていくということが目的じゃないかというお話でございます。私は、その御趣旨につきましては少しも異存はございません。日本の自治体の現状を見ますると、この自治体を健全に育て、また、その間において非常に格差が生じておることも、御承知の通りであります。これらの間の均衡をとって全体が発展していく、その機能を十分に発揮せしめていくためには、国家行政の上における自治行政というものがやはり振興してこなければならぬと思います。いろいろ財政の上から申しましても、国家から相当な補助もしなければならぬし、これに対して援助も立てなければならぬ。また、地方の開発、後進地域の開発というようなものの計画を立て、その計画を推進するというようなことにおきましても、国の行政があずからなければならぬことは、御承知の通りであります。そういう意味におきまして、国における自治行政を施していく上において、責任ある大臣というものを明確に置いて、その責任においてやるということが、われわれが究極の目標としておる地方自治の内容を充実するゆえんになる、かように考えておる次第であります。  公安委員長との兼任の問題につきましては、私は、政府として、これを兼任するとか兼任しないとかと考えるものではなくして、そのときの内閣が、人間的に最も適任であるという人をこれに命ずるということを考えていくべきである、こう思います。  また、そのことが、防衛庁を国防省にするということの前提ではないかという御質問でありますが、防衛庁を国防省にすることが必要であるかどうかということは、全然この問題とは関係ございません。別個の見地からこれは検討さるべき問題であると思います。
  25. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  日程第一 臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案内閣提出)  日程第二 経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律案内閣提出)  日程第三 補助金等臨時特例等に関する法律の一部孝改正する法律案内閣提出
  26. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第一、臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案日程第二、経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律案日程第三、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。     —————————————
  27. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長植木庚子郎君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔植木庚子郎君登壇
  28. 植木庚子郎

    ○植木庚子郎君 ただいま議題となりました臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案外二法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を報告申し上げます。  まず、臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案について申し上げます。  臨時受託調達特別会計と申しますのは、日米間の相互防衛援助協定、すなわち、いわゆるMSA協定に基づきまして、米国政府がその対日軍事援助計画の一環として、二千三百トン級の警備艦二隻を日本国内で調達し、それをわが国に無償で譲渡することとなりましたので、その受託調達契約の実施に関する経理を明らかにするため、昭和三十二年度から設けられた特別会計であります。  ところが、このたび、本昭和三十四年度中に右の二艦船の建造と引き渡しが終了する段階となりましたので、本年度限りでこの特別会計を廃止いたしますとともに、本会計に属する権利義務を一般会計に帰属させる等、特別会計の廃止に伴い必要な経過規定を設けようとするのが、この法律案の内容であります。  本案は、去る二月一日大蔵委員会に付託となりまして、審議の結果、三月十五日、質疑を終了し、採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  次に、経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、政府が、経済及び技術協力のため設置いたします海外技術センター等で必要な物品を、外国政府または国際連合等に対して無償または時価よりも低い対価で譲渡することができることとしようとするものであります。ところが、国の所有に属する物品を時価によらないで処分する場合は、財政法第九条の規定により、法律に基づくことを要しますので、この法律案提出せられた次第であります。  本案は、去る一月二十九日本委員会に付託せられ、慎重に審議いたしましたところ、昨十七日、各派共同による修正案が提出せられました。  修正の趣旨は、本則中の「外国政府」なる用語は、日本政府以外のすべての国の政府を意味するため、広範に過ぎて適当でなく、提出者たる政府の意図も、開発途上にある外国政府を意味しておりますので、「外国政府」とある部分を「開発途上にある外国政府」と改めようとするものであります。  次いで、本法律案及び修正案について質疑を終了し、直ちに採決を行ないましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はそれぞれ全会一致をもって可決となり、すなわち、修正議決をいたした次第でございます。  最後に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、補助金等の整理合理化の一環として、昭和二十九年度以降昭和三十四年度まで毎年度実施して参りました特例措置を、引き続き昭和三十五年度においてもこれを踏襲することとし、その有効期限を、三十六年三月三十一日までさらに一年間延長することといたそうとするものであります。  なお、漁船損害補償法並びに外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法に基づく補助金につきましては、別途今国会提出せられております漁船損害補償法の一部を改正する法律案並びに外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案によりまして、それぞれ本特例法の趣旨にのっとった実体法の改正を行ない、その改正規定の施行と同時に、本法中の当該規定を削除することとなっておりますので、この点、つけ加えて申し上げておきます。  本案は、去る二月二十四日大蔵委員会に付託となりまして、外航船舶の利子補給及び補助金行政の実態等について質疑があり、その他審議の結果、三月十七日、質疑を終了し、採決を行ないましたところ、起立多数をもって原案の通り可決となりました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  29. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一及び第二の両案を一括して採決いたします。  日程第一の委員長の報告は可決、第の委員長の報告は修正であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。  次に、日程第三を採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。よって本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  31. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————  日程第四 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出
  32. 天野公義

    天野公義君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、日程第四とともに、内閣提出市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案を追加して両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  33. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  日程第四、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————
  35. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長濱地文平君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔濱地文平君登壇
  36. 濱地文平

    ○濱地文平君 ただいま議題となりました公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案並びに市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。  まず、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案の内容は、第一に、公営企業金融公庫の資本金を増額しようとするものであります。すなわち、昭和三十二年六月に設立された本公庫は、地方公共団体の経営する水道、交通等の公営企業の整備のために低利かつ安定した資金を供給することを目的とするもので、発足以来、順調な運営を行ない、所期の目的を果たしつつありますが、今後さらに地方公共団体の公営企業を円滑に推進するため、本公庫の業務運営の基礎を一そう充実する必要がありますので、今回、政府は、産業投資特別会計から三億円を出資し、現在の資本金十五億円を十八億円に改めようとするものであります。  第二は、昨年度より造林のための資金を国が農林漁業金融公庫に出資し、公有林にかかる分についても同公庫より関係地方公共団体に貸付を行なうことになったのでありますが、地方公共団体に対する資金の融通を行なう機関として公営企業金融公庫が設置されており、地方公共団体との関係において、窓口事務の一元化をはかる上からも、その事務は本公庫において取り扱うことが適当であると思われますので、昭和三十五年度より当分の間は、公営企業金融公庫が農林漁業金融公庫の委託を受けて、地方公共団体の行なう造林に必要な資金の貸付業務を行なうことができることとしようとするものであります。  本案は、二月十五日本委員会に付託され、慎重に審査いたしましたが、詳細は会議録によって御承知を願いたいと思います。  三月十五日、質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案について申し上げます。  現行の市町村職員共済組合法規定におきましては、市町村職員共済組合の、いわゆる付加給付及び短期給付に要する費用についての市町村の負担金に関する特例が昭和三十五年十二月三十一日まで認められているのでありますが、目下、地方公務員を通ずる統一的な共済制度について検討が進められている情勢でもありますので、政府は、今回、本案を提出して、これらの特例期間を昭和三十六年十二月三十一日までさらに一年間延長しようとするものであります。  本案もまた慎重に審査いたしましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。  本十八日、質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  右、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  37. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 両案を一括して採決いたします。  両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 住宅地区改良法案内閣提出)  日程第六 公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出
  39. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第五、住宅地区改良法案日程第六、公営住宅法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————
  40. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。建設委員会理事木村守江君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔木村守江君登壇
  41. 木村守江

    ○木村守江君 ただいま議題となりました住宅地区改良法案及び公営住宅法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  初めに、住宅地区改良法案について申し上げます。  不良住宅が密集する地区は、保安上、衛生上その他危険かつ有害な状態にありまするが、現行の不良住宅地区改良法は昭和二年に制定されたものであり、事業施行方法等について法的に整備されていない点が少なくなく、最近の実情に適合しない状況にかんがみまして、現行法を廃止して、新たな構想のもとに住宅地区の改良事業を実施し、地区の環境の整備・改善をはかるとともに、住宅の集団的建設を促進しようとするものであります。これが本法案の提案された理由であります。  そのおもなる内容は、概要次の通りであります。  すなわち、その第一は、住宅地区改良事業は、不良住宅が密集し、保安、衛生等に関して危険または有害な状況にある相当規模の一団地で、建設大臣が指定するものにつき、原則として市町村がこれを施行することとしたのであります。  第二に、施行者は事業計画を定め、建設大臣の認可を受けなければならないといたしまして、事業計画においては、住宅地区改良事業の実施計画のほか、改良地区を健全な住宅地区に形成するため、改良地区内の土地の利用に関する基本計画を定め、この基本計画に住宅、公共施設、地区施設等の用に供する土地の配置、規模等を定めることとし、事業計画の策定にあたっては、関係のある公共施設の管理者や、住宅経営を行なう地方公共団体等とあらかじめ協議することといたしたのであります。  第三に、施行者は、改良地区内にある不良住宅をすべて除却した後、健康で文化的な生活を営むに足りる、耐火性能を有する構造の改良住宅を建設することとし、改良地区の居住者で、改良住宅への入居を希望し、かつ、住宅に困窮すると認められる者を改良住宅に入居させなければならないことといたしたのであります。  第四に、国は、改良住宅の建設については、その費用の三分の二以内を、不良住宅の除却に要する費用については、その二分の一以内を補助することとし、改良住宅の入居者が低廉な家賃で居住することができるようにいたしたのであります。  以上のほか、住宅地区改良事業の施行のため必要がある場合の土地等の収用または使用、建築行為等の制限、一時収容施設の設置等について所要の規定を設け、住宅地区改良事業の円滑な施行を確保すること等が本案の要旨であります。  次に、公営住宅法の一部を改正する法律案について申し上げます。  公営住宅法第八条の規定によれば、国は、地震、暴風雨等の異常な天然現象により滅失した住宅に居住しいた低額所得者に賃貸するため、事業主体が第二種公営住宅の建設をするときは、災害により滅失した住宅の戸数の三割に相当する戸数の範囲内で、その建設に要する費用の三分の二を補助しなければならないことになっております。この場合の国の補助は、災害により滅失した住宅の戸数が被災地全域で五百戸以上、または一市町村の区域内の住宅戸数の一割以上であるときに限られておるのでありますが、一方、災害のうちでも火災の場合には、滅失した住宅の戸数が被災地全域で二百戸以上あるときは国の補助の対象といたしておりますので、これらとの均衡をも考慮いたし、地震、暴風雨等の異常な天然現象により滅失した住宅の戸数が一市町村の区域内で二百戸以上である場合を新たに災害の基準に加え、この基準に該当するときは、国の補助の対象としようとするものであります。  両法律案は、去る二月二十九日本委員会に付託され、慎重に審査を進めて参ったのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくて、三月十六日、質疑を終了し、討論を省略、直ちに採決の結果、両法案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたした次第であります。  なお、その際、二階堂進君から、住宅地区改良法案に対し附帯決議を付すべき旨の動議提出され、同君より提案の理由の説明があり、採決の結果、全会一致をもってこの附帯決議を付すべきものと決定いたしたのであります。  附帯決議は次の通りであります。    住宅地区改良法案に対する附帯決議   本法の施行にあたり、政府は左の点に留意し、所期の目的達成に遺憾なきを期すべきである。  一、本法の対象地区居住者は、おおむね低額所得者なることにかんがみ、改良住宅の家賃が入居者の負担を過重ならしむることにより、本法の円滑な運営を阻害しないよう適切なる行政指導等を行うこと。  一、将来出来得る限りの予算措置を講じて改良住宅の新築戸数を増加し、すみやかに不良住宅の解消を図ること。  右決議する。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  42. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 両案を一括して採決いたします。  両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第七 重油ボイラー設置の   制限等に関する臨時措置に関す   る法律の一部を改正する法律案   (内閣提出
  44. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第七、重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  45. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長中村幸八君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔議長退席、副議長着席〕     〔中村幸八君登壇
  46. 中村幸八

    ○中村幸八君 ただいま議題となりました重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  現行の法律は、石炭鉱業合理化臨時措置法の姉妹法として、昭和三十年に五カ年間の限時法として制定せられたものでありますが、石炭鉱業につきましては、今後引き続き強力に合理化を推進する必要があるのでありまして、このためには、なお石炭の安定需要の確保が望まれるのであります。  以上の理由によって、本法の期限をさらに三年間延長しようというのが、本案のおもな趣旨となっております。ただ、小型ボイラーにつきましては、中小企業対策の観点から、本法の規制対象から除外することといたしております。  本案は、三月一日提案理由の説明を聴取し、自来、参考人の意見を聞く等、慎重な審議を行なったのでありますが、質疑の概要は委員会議録を御参照願います。  三月十六日、質疑を終了しましたので、採決に付しましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決しました。  なお、採決後、自由民主党、社会党、民主社会党共同提案になる次のような附帯決議を付しました。    政府は、本法の施行にあたっては、その厳正な運用を期するとともに、石炭鉱業の合理化の推移を充分考慮しつつ、特に次の諸点に留意すべきである。   一、石炭新需要の拡大について積極的施策を講ずること。   二、火力発電用重油専焼ボイラーの設置については、石炭需要の確保の観点から、必要止むを得ないもののみにこれを止めるよう措置すること。  三、本法律の失効後も、急激な石炭需要の減少を来たさないよう、適切な対策を講ずることとし、特に電気事業について此の点十分配慮すること。  以上、御報告を申し上げます。(拍手)     —————————————
  47. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 採決いたします。  本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第八 漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣提出
  49. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 日程第八、漁船損害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  50. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長吉川久衛君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔吉川久衛君登壇
  51. 吉川久衛

    ○吉川久衛君 ただいま議題になりました、内閣提出漁船損害補償法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。  今回の改正案は、漁船保険の料率体系の合理化をはかるため、保険料率及び再保険料率の算定基準を法定するとともに、このことにより料率が従来より上昇することになる小型船階層に対しては、自己負担を軽減するため、純保険料の国庫負担の方式を改めて、小型船に対する国庫負担を増額することとし、また、小型船に特に多い異常危険に対応する純保険料を全額国庫負担とし、あるいは、集団加入制度を新たに設けて、保険料の一部国庫負担の道を開く等、小型漁船の保険加入を促進し、零細な沿岸漁業者の経営安定に資することに重点を置いて提案されたものであります。  農林水産委員会におきましては、去る三月一日以来、委員会及び水産に関する調査小委員会において、保険料率の算定方法、再保険料の延滞金等を中心として審査が行なわれましたが、去る三月十六日、質疑を終了し、討論を省略して採決いたしましたところ、全会一致をもって政府原案の通り可決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対しましては、全会一致をもって、再保険料の分割払い制度の樹立、再保険料の延滞金の利率の最高限度の抑制及び漁船損害の発生防止対策の確立に関する附帯決議を付することに決した次第であります。  以上、御報告を終わります。(拍手)     —————————————
  52. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 採決いたします。  本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第九 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会承認を求めるの件
  54. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 日程第九、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————
  55. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長佐藤洋之助君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔佐藤洋之助君登壇
  56. 佐藤洋之助

    ○佐藤洋之助君 ただいま議題となりました、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会承認を求めるの件に関しまして、逓信委員会における審査の経過と結果とを御報告申し上げます。  本議案は、日本放送協会の昭和三十五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、国会承認を求めるために、去る二月二十二日内閣より提出されたものであります。  本議案の内容につきましては、あるいは委員会の経過につきましては、会議録に譲ることとしまして省略をいたします。  かくして、昨日委員会を開きまして、討論を省略して採決の結果、満場一致本案は承認すべきものと議決しました。  なお、その際、委員会は、民主社会党の大野幸一君の動議により、本件の審査の過程における論議の動向に照らしまして、次の附帯決議を全会一致をもって可決したのであります。    放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会承認を求めるの件に対する附帯決議   政府並びに日本放送協会当局は、左に揚げる事項の実施に努むべきである。  一、農山漁村等における有線放送によるラジオ受信者の特殊な事情にかんがみ、その受信料につき半減の措置を講ずること。  二、ラジオ受信料金の減収対策並びに受信料について調査研究すること。  三、経営の合理化、経費の節減を図り、協会従業員の待遇の改善に努めること。  右決議する。  これをもって報告を終わります。(拍手)     —————————————
  57. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 採決いたします。  本件は委員長報告通り承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告の通り承認するに決しました。      ————◇—————  日程第十 失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案(第三十三回国会齋藤邦吉君外二十三名提出)  日程第十一 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  日程第十二 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出)  日程第十三 船員保険法の一部を改正する法律案(第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出
  59. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 日程第十、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案日程第十一、厚生年金保険法の一部を改正する法律案日程第十二、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案日程第十三、船員保険法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。     —————————————
  60. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長永山忠則君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔永山忠則君登壇
  61. 永山忠則

    ○永山忠則君 ただいま議題となりました、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案、厚生年金保険の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果の大要について御報告を申し上げます。  第三十一回国会において、新国民健康保険法並びに国民年金制度が創設され、わが国の社会保障制度も一応体系が整うことになったのであります。しかしながら、独自の沿革と、それぞれの特殊なる事情に基づいて創設され、発展して参った既存の各種社会保険制度は、その適用対象、給付の内容、財政状態等においては相当の差異がありますので、これらの内容を充実するとともに、各制度間の総合調整を行ない、全体として均衡のとれた社会保障の育成強化をはかることが今後ますます必要となって参った次第でございます。  今回、船員保険法等四法案につき、保険料、国庫負担等の財政面を検討して所要の改正を行なおうとするのも、かかる意味において社会保険関係法律の調整の第一歩を踏み出したものでありまして、この際、最近の失業情勢に対処して失業対策の効果を上げるため、あわせて職業安定法の一部をも改正いたすことといたしたのでございますが、四法案の内容については省略させていただきます。  以上の四法案は、第三十三回国会以来継続審査となったのでありますが、本国会において、三月一日審議に入り、四法案と政府提出法案との関係、各社会保険に対する国庫負担及び給付内容の改善、船員保険における災害補償等の諸問題について連日質疑を行ない、また、昨十七日には、特に岸内閣総理大臣の出席を求め、各種社会保険の総合調整、厚生年金積立金の運用等の問題についてきわめて熱心なる質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録にて御承知願いたいと存じます。  昨日の委員会において質疑を打ち切りましたところ、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党及び民主社会党共同提案にかかる修正案が提出せられ、五島委員よりその趣旨の説明がありました。その要旨は、傷病手当金の待期四日を一日短縮して三日とするとともに、出産手当金の支給期間十四日を二十一日に延長しようとするものであります。  次いで、討論に入りましたところ、日本社会党及び民主社会党を代表して、八木委員より、厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び修正案を含めての日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に賛成、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に反対の意見が述べられたのであります。  かくて、四法案並びに日雇労働者健康保険法の修正案について順次採決に入りましたところ、厚生年金保険法の一部を改正する法律案は原案の通り日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決すべきものと議決せられ、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案はいずれも多数をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。  続いて、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に対して自由民主党の大坪委員より、また、船員保険法の一部を改正する法律案に対して自由民主党の柳谷委員より、さらに、厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対しては三派共同提案にて同じく柳谷委員より、それぞれ次の附帯決議を付すべきであるとの動議提出せられ、その趣旨の説明がありました。  これを朗読いたします。    失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   失業保険は被保険者が失業した場合にその生活の安定を図ることを目的とするものであること及び最近における賃金の実情にかんがみ、政府は一般失業保険の低額保険給付及び日雇労働失業保険の失業保険金日額について、すみやかに検討の上、その引き上げについて成案を得るよう努力すべきである。    船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、厚生年金保険及び失業保険の改善の検討に併せ、船員保険についてもこれに見合う検討を行い、すみやかに成案を得るように努力すべきである。    厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   厚生年金保険が勤労者のための年金制度の中核たることにかんがみ、政府は、将来これが給付内容の改善に努めるとともに他の年金制度との通算調整を含む総合調整についてなるべく速やかに結論を得るようにすべきである。   また、政府は、厚生年金保険の運営に関し、特に、次の諸施策の実現に努力すべきことを要望する。  一、適用範囲を従業員五人未満の事業所へ拡大すること。  二、積立金の管理運用については、特に拠出者の意向を反映しうるものとするとともに、還元融資の枠を拡大すること。  三、老人ホーム等の福祉施設を増設し、年金受給者が年金により老後の生活を営みうる方途を講ずること。  四、年金受給権を担保とする金融の途を講ずること。  次いで、これら動議について順次採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもって附帯決議を付することと議決いたしたのであります。  なお、第三十一回国会以来本委員会に付託せられておりました内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案は、以上の四法案が議決せられた結果、議決を要しないものと議決いたした次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  62. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 日程第十に対して討論の通告があります。これを許します。五島虎雄君。     〔五島虎雄君登壇
  63. 五島虎雄

    ○五島虎雄君 私は、日本社会党及び民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました自由民主党提案の失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に対して反対の討論をいたします。(拍手)  御承知の通り政府は、過ぐる三十四年四月に船員保険法等の一部を改正する法律案を提案していたのであります。これは、船員保険法という表題で、厚生年金保険法日雇労働者健康保険法及び失業保険法の四法律の改正でありまするが、このように四法を一括して、しかも、重要度の高い失業保険法厚生年金保険法を陰に隠して、どさくさまぎれに改悪しようとしたことは、まことに狡猾きわまりないやり方であるといわなければなりません。(拍手)このような欺瞞的な法案に対しまして、われわれは今日まで強く反対して参ったのでありまするが、昨年末に及んで、自由民主党は、ついに、この一括法案をばらばらにいたしまして、四つの法律案分離して提案してきたのであります。そのうちの一つが、この失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案でございます。  そもそも、失業保険の本質は、第一に、給付期間といたしまして、現にニュージーランドその他の国々においてすでに実践しておりまする通り、失業労働者が再就職できるときまで給付するのが筋道でなければなりません。しかるに、現行法は、九十日、百八十日、二百十日、二百七十日と、それぞれ四つの段階に分かれておりまして、あまりに給付期間が短過ぎると考えざるを得ません。  第二点として、憲法第二十五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定し、さらに、失業保険法第一条には、「失業保険は、被保険者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的とする。」と規定している通り、失業保険金額は失業したときの生活を維持できるものでなければなりません。しかるに、現行法の給付率は賃金の百分の六十でありまして、しかも、わが国労働者の賃金が、周知のごとく、イギリスの三分の一、西ドイツやフランスの二分の一、アメリカの八分の一という劣悪きわまりない状態であるのであります。なお、日雇失業保険におきましては、一級でさえ二百円、二級では百四十円の給付金額でありまして、一級二百円の給付でさえも月五千円程度の給付額で、もしそれ、二人以上の家族を持つ者では、生活保護よりも下回る状態でありまして、生活を維持することもまことに困難であります。これはわが国の低賃金構造を全く無視したものでありまして、政府の怠慢といわなければなりません。(拍手)  現在、失業保険特別会計は六百億円の黒字を示しており、なお、黒字基調はこれから先もずっと続くものと思われます。これと並行いたしまして、政府の宣伝する雇用政策が軌道に乗るものとするならば、ますます黒字基調は拡大するのでありまするから、このときこそ、保険給付を拡張できる絶好のチャンスであるといわなければなりません。(拍手)また、かねて、政府は、所得倍増論を唱え、宣伝これ努めておるのでありまするが、その宣伝からも、当然失業者の所得増大を考えねばならないところであるにもかかわらず、政府は黒字財政を理由といたしまして、今度は逆に、国庫負担の割合を三分の一から四分の一に引き下げて参りました。社会保障の成長をここに完全に遮断しようとする大きな逆行政策を採用したものといわなければなりません。(拍手)  また、政府は、千分の十六から千分の十四に保険料率を引き下げることを、まことに善政であるかのごとく説明するのであります。しかし、これは社会保障制度を知らない者の言でありまして、社会保障否定論に通ずるものといわなければなりません。その幼稚さは噴飯ものといわなければなりませんけれども、その陰には、政府の意図には、老獪にして、反動性がじっと隠されていることを見のがすことはできません。保険料を下げて得をするものは一体だれか、それは資本家であります。その値下げに最も熱心なものはだれであったか、それは日経連であったということであります。政府がその意図を受けて踊ったものであるということは、今や明らかになっておるのであります。失業者が、低い保険給付の状態から、家族の生活をささえるために、自分に最も適した職場を探すことをあきらめて、涙をのんで労働の安売りをしなければならないという羽目に追い込むような意図さえも包蔵しているといわなければなりません。  かくして、巧みにカムフラージュいたしました改悪案を自民党に多数をもって押し切らせ、引き続き劣悪な低賃金と収奪方策を継続し得る基盤を確保しようとしているものであると言いたいのであります。このように、一面では資本家擁護、一面では労働者圧迫の性質を持つ世紀の悪法でありまして、われわれは断じて賛成することはできません。このような政府案の上に、自由民主党案は、職業訓練施設入所者に関する給付延長の制度、給付日数の延長に関する特別措置、就職支度金給付制度の新設など、三点を追加したのでありまして、この部分については、われわれたりとも異論はないのでありますが、しょせん、これは九牛の一毛にすぎないのでありまして、前述のごとく、政府案の極端なる反動性は、このようなもので隠しおおせるものでは決してないのであります。  日本社会党は、この給付改善の絶好機にあたって、給付期間の延長、給付金額の引き上げ等の措置を当然講ずべきであると考えまして改正案を提案したのであります。その内容は次の七点であります。  その第一点は、二年以上の被保険者に対する給付期間をそれぞれ三百六十五日に引き上げ、第二点は、月収約一万円、日額三百三十円までの賃金部分に対しては百分の八十をもって計算し、それをこえる部分につきましては、現行通り百分の六十をもって計算した合算額を給付金額としております。第三点として、日雇い保険日額を一級二百二十円、二級百八十円まで引き上げ、第四点に、日雇い失業保険の待期日数をそれぞれ一日減少して、継続三日、通算五日にすること、第五点に、職業訓練中の失業者に対して、一定の条件のもとに給付期間を延長し、第六点に、広域職業紹介活動により職業あっせんを受ける者に対し、一定の条件のもとに給付日数を延長すること、さらに第七点として、失業給付期間中に再就職した場合、一定の条件のもとに就職支度金を支給する等の内容を持つものであります。  この改正に要する失業保険特別会計の支出増は年間二百九十四億円でありまして、社会党は、国庫負担の割合を現行通りの三分の一とし、保険料率を千分の十六に維持することによりましてこれを実施せんとするものであります。これは、雇用拡大の政策が続けられ、失業者が減少すればするほど、特別の財源措置をしないでも十分に収支が償うものであります。  かくのごとく現実的な日本社会党の案でありまして、しかも、失業保険の本来の姿に従いまして、その内容の改善を相当程度実現し得るところの日本社会党の改正案こそが、まさに適切妥当なものであることを、われわれは確信するものであります。与党の各位も日本社会党案に思いをいたされて、これと全く対照的で反動的な自由民主党案に対しては、国民の名においてここに強く反対の意を表明しまして、私の反対討論を終わりたいと思います。(拍手
  64. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  65. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) これより採決に入ります。  まず、日程第十及び第十三の両案を一括して採決いたします一  両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  66. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り可決いたしました。  次に、日程第十一及び第十二の両案を一括して採決いたします。  日程第十一の委員長の報告は可決、第十二の委員長の報告は修正であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り決しました。      ————◇—————  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出
  68. 天野公義

    天野公義君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  69. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  71. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 委員長の報告を求めます。文教委員長大平正芳君。     —————————————     〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————     〔大平正芳君登壇
  72. 大平正芳

    ○大平正芳君 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につき、文教委員会における審議の経過と結果について御報告申し上げます。  まず、改正案の内容でありますが、第一は、新たに京都大学に薬学部を、岡山大学に工学部を、それぞれ設置することであります。第二は、北見工業短期大学を新設するとともに、夜間に授業を行なうものとして、新たに室蘭工業大学に室蘭工業短期大学部を、香川大学に香川商業短期大学部を、それぞれ併設することでありまするそのほか、若干の旧制の医科大学の廃止に伴い、これに関する規定を整理するとともに、国立学校における授業料等の免除及び猶予について法定しようとするものであります。  本案は、去る二月三日委員会に付託となり、以来、慎重に審議して参りましたが、その内容は会議録に譲ります。  かくて、三月十八日に本案に対する質疑を終了し、討論を省略の上、採決いたしました結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  73. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 採決いたします。  本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  75. 中村高一

    ○副議長(中村高一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         農 林 大 臣 福田 赳夫君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         労 働 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 益谷 秀次君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         法制局長官   林  修三君         法制局第二部長 野木 新一君         自治庁長官官房         長       柴田  護君         厚生省保険局長 太宰 博邦君         通商産業政務次         官       原田  憲君         運輸省航空局長 辻  章男君         郵政省電波監理         局長      甘利 省吾君         建設政務次官  大沢 雄一君