○片島港君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
電信電話設備の拡充のための
暫定措置に関する
法律案に対して反対の
討論を行ないます。
日本電信電話公社は、第一次五カ年
計画の初年度に当たる
昭和二十八年度には収支差益金七十六億円、その後漸増して、
昭和三十二年度には百九十五億円、三十三年度には二百七十一億円、三十四年度三百十八億円の収支差益金を計上しており、
政府機関による独占事業として、不況知らずの極端なる岩戸景気を継続いたしております。このように、もうけるだけもうけておりながら、本
法案において、最低二万円、最高十五万円、平均十一万円という高額なる加入者債券を押しつけようとしているのでありますから、不当きわまる
計画と申さなければならぬのであります。(
拍手)
公社は、先に発足をいたしました第二次五カ年
計画を拡大修正して、三十五年度予算において加入者三十七万戸の増設を企図し、これが建設
資金は千二百八十五億円、前年度八百五十億円に比べまして五〇%をこえる激増でありますが、そのうち、本
法案による加入者債券等、新規加入者に押しつけたものが四百八十八億円で、三八%、すなわち、一加入
当たり十二万六千円、及び、損益勘定利益金から債務償還費を差し引いた金額四百二十四億円で、三三%であります。もうけるだけもうけておりながら、申し込んで三年たっても電話をつけてくれぬという国は、日本だけでありましょう。(
拍手)お役所式で、非能率、怠慢のそしりを免れません。国民の強い要望にこたえて、
計画を拡大修正し、加入電話の増設をはからんとするのは、まことにけっこうでありますが、問題は、そのやり方であります。架設負担金制度は廃止しておりますけれども、加入者債券は、現在一加入
当たり最低ゼロ円、最高六万円でありますのに、これを一挙に最低二万円、最高十五万円に引き上げようとしております。これでは、みずからの怠慢によって生じた積滞の増加を、高額債券の引き受けという方法によって、せきとめようとするものであります。債券だから負担金ではないと
説明しておりますが、それだけの金を出さなければ電話をつけてもらえません。公社に金を貸していただくのだと
説明しておりますが、貸す金がないといえば、つけてはくれません。電話の新規需要は、中小零細企業がその数において圧倒的に多いのであります。いつつけてくれるかわからない、申し込んで三年たってもつけてくれないところもある。中小、特に零細企業は、十万はおろか、三万の金も遊んでいないことが多いのであります。二年も三年も前に申し込んで、今急につけるから金を持ってこいと言われても、間に合わぬことが多いのであります。しかも、指定の日に持っていかなければ、権利は取り消されるのであります。これではまさに、公衆電気通信法第一条にいう、「あまねく、且つ、公平に提供する」という規定に違反するものといわなければなりません。(
拍手)
法律違反であります。
問題の第二点は、債券の額面の
級別算定根拠がきわめて薄弱であるという点であります。加入者の数によって六つの
段階に区分しておりますが、この区分は、まことに安易な目の子勘定であります。
委員会において、わが党
委員の質問に答え、
利用の範囲の広狭によって区分したと言っておりますが、市内通話における度数料は、
利用の範囲の広い狭い、多い少ないによってきめてはおりません。また、市外通話におきましても、
利用の範囲ではなく、市外回線のキロ数によってきめております。債券の区分だけを
利用の範囲できめるというのは、八百代言的な言い分と断ぜざるを得ないのであります。科学的な、数字的な根拠を追及せられますと、大体とか、常識的とか、ちょうど極東の範囲の
政府答弁と選ぶところはありません。(
拍手)たまりかねた、穏健篤実なる与党の
委員長から、きびしく警告をせられたのでありますが、
委員長の警告の後、二週間もたってから、おざなりの資料を読み上げてその場をつく
ろうという醜態ぶりでありました。
問題の第三点は、収支差益金四百二十四億円をそのまま建設
資金に投入するという点であります。収支差益金は、現在の加入者からもうけた金であります。現在の加入者は、架設
資金の減価償却費と維持費を支払えば足りるはずであります。減価償却を行ない、債券償還を行ない、なおかつ四百二十四億円残るのなら、
利用者へのサービスの向上、料金制度の検討、従業員の労働条件の改善という三つの角度から、
計画を練り直すべきでありましょう。
利用者へのサービスは、設備の近代化、方式の改良によって救済されますが、一体、料金制度や労働条件の改善について、いかなる配慮を加えておりますか。従業員の処遇改善も行なわず、料金制度にも何らの検討も加えず、何百億円という利益金を、現加入者からは直接関係がないかもしれない新規建設の分までにこれを投入するということは、現在の加入者はもとより、従業員諸君を愚弄するもはなはだしいものといわなければならないのであります。
利益が激増するということは、
生産性の向上、反面から言うならば、労働強化によるものであるか、料金が高過ぎるかによるものであります。第一次五カ年
計画発足以来、電話加入者数、市外回線、事業収入、ともに、おおむね倍増しているのでありますが、その裏には、設備近代化、合理化という美名のもとに、総計一万人に近い減員が行なわれております。年々
計画が拡大されているのでありますから、表面上は首切りという形で現われず、予算上は新規増員の中から差し引かれて隠れておりますが、個々の取扱局においては、本人の意思に反して、職種転換はもちろん、半強制的に配置転換が行なわれ、合理化という言葉を聞くたびにおびえておる現状であります。先ほども申し上げました
通り、三十五年度の建設
計画は、前年に比べ五割増でありますが、これが建設に伴う
定員増はわずかに二百五十名であります。前年度に比べまして四百三十五億円の
資金増による要員増はわずかに二百五十人でありますが、これでも労働強化にならないと強弁できましょうか。設備の合理化は、公社経営の
経済化と
利用者へのサービスの改善を
目的とすることは言を待ちませんが、それと同時に、従業員の労働条件の改善という一本の柱も忘れてはなりません。公社経営の
経済化は、職員の減員と事業収入の増加によって数字で明確に現われております。また、サービスの改善は、
利用範囲の拡大、即時通話の実施、市外回線の待ち時間短縮という点で、これも明確に数字をもって現われております。ところが、職員の労働条件の改善は、どこの
計画にも現われておりません。ベース・アップは一般公務員と同様であり、労働時間も同様である。公社経営の
経済化と
利用者へのサービスの改善という二本の柱だけで、労働条件の改善という一つの柱が取り除かれておるのであります。
私は、
委員会におきまして、設備の近代化によっていかなる効果を期待するかと質問したのに対し、公社経営の
経済化と
利用者へのサービスの向上であると答え、職員の処遇は考えないのかとただしたのに対し、うっかり言い落としたが、それも考えている、と追加されたのであります。言い落としたのではなくて、考えていなかったのであります。このことは、第一次五カ年
計画においても、第二次五カ年
計画においても、また、このたびの拡大修正においても、従業員の労働条件の改善については一言半句も触れていないのを見ても明々白々であります。現に、全電通労組が労働時間の軽減と賃金問題について要求したのに対し、ゼロ回答を行なっております。組合の要求をそのままのむということは公社の立場としてできないとしても、ゼロとは何ですか。民間労組においても、組合から資料を完備して要求があった場合は、事業の経営
状態が上昇しているならば若干の色づけをするのが、常識であり、通例であります。数百億円の利益を上げておりながら、ゼロとは何ですか。百円も上げられないのでありますか。日本電信電話公社法第三十条には、ここは大事なところでありますが、「職員の給与は、その職務の内容と責任に応ずるものであり、且つ、職員が発揮した能率が考慮されるものでなければならない。」、こういうふうに書いてあります。年々目ざましい能率を上げておるのに、何らの考慮を払っていないというのは、明らかに
法律違反でございます。
新聞の報ずるところによりますれば、経団連と全労
会議との話し合いでも、
生産性の向上に伴い、労働時間は漸次短縮するということに
意見の
一致を見たとのことであります。設備の近代化に伴い、労働の質が高度に変化をすることは言うを待ちませんが、労働時間を一分間も短縮できないのでありますか。ゼロとは一体何でございますか。ゼロならゼロとして、それなら、四百八十九億円の利益を、債務償還と改良工事は別といたしまして、残り全部を建設
資金に充てることは、現在の
利用者の負担を増すことになります。現在の加入者は、縁もゆかりもないかもしれない新規加入者の分までを負担することになります。従業員の処遇改善もゼロ、労働時間の軽減もゼロなら、少しばかり現在の料金をまけてやるということを検討することはできませんか。電話のことだから、北海道から九州まで、お互いに通話をする者もありましょう。毎日長距離電話を数多く
利用する大企業もありましょうが、中小零細企業の現加入者には、おおむね縁もゆかりもないかもしれない新規建設や長距離改良の分までも含めて負担をさせるということは、断じて許すことはできないのであります。
さらに、加入者債券の問題でありますが、従来、毎年数十億円の発行でありましたものを、ここに一挙に三百五十八億円を発行して加入者に押しつける。数から言えば、新規加入者は中小零細企業が圧倒的に多いのでありますから、低金利の長期債をたんすにしまっておくわけには参りません。過去一カ年における実績を見ましても、最低と最高では十円の相場の開きがございます。過去五カ年間で見れば、最低七十六円二十銭、最高九十五円九十銭で、十九円七十銭の開きがあります。過去五カ年間は、毎年おおむね六十億円から七十億円でありましたが、三十五年度は、一挙に三百五十八億円でありますから、相当の低落が予想されます。
政府保証でない債券でありますから、加入者こそ、いい迷惑であります。
最後に、この
法律の施行期間であります。
電信電話設備の拡充のための
暫定措置に関する
法律案は、その
名称のごとく、
暫定措置に関するものであります。ところが、その施行期間は、
昭和三十五年四月一日から
昭和四十八年三月三十一日までの十三カ年間であります。
臨時的な
暫定措置に十三カ年とは驚いたものであります。十年間の安保条約の期間が問題になっておりますが、
暫定措置として十三カ年という期間を設けた
法律は、いまだかつてお目見えしたことはございません。
以上、きわめて簡単に、しかも、きわめて明瞭に反対の理由を申し上げて、私の
討論を終わります。何とぞ諸君の御賛同をお願いいたします。(
拍手)