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1960-04-26 第34回国会 衆議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十六日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君    理事 菊地養之輔君 理事 坂本 泰良君    理事 大野 幸一君       犬養  健君    高橋 禎一君       阿部 五郎君    井伊 誠一君       猪俣 浩三君    板川 正吾君       上林與市郎君    三宅 正一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君  委員外出席者         議     員 猪俣 浩三君         警  視  庁         (警備局参事         官)      曽我 力三君         検     事         (刑事局総務課         長)      神谷 尚男君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         最高裁判所事務         総務局事務次長 内藤 頼博君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月二十六日  委員三宅正一君及び小沢貞孝君辞任につき、そ  の補欠として板川正吾君及び吉川兼光君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十一日  裁判所書記官及び調査官の勤務時間延長反対等  に関する請願石橋政嗣君紹介)(第二五四八  号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二五四九号)  同(岡田春夫紹介)(第二五五〇号)  同(河野正紹介)(第二五五一号)  同(河野正紹介)(第二五五二号)  同外一件(中井徳次郎紹介)(第二五五三  号)  同外一件(中井徳次郎紹介)(第二五五四  号)  同(成田知巳紹介)(第二五五五号)  同外一件(成田知巳紹介)(第二五五六号)  同(成田知巳紹介)(第二五五七号)  同(安井吉典紹介)(第二五五八号)  同(安井吉典紹介)(第二五五九号)  同(山中日露史紹介)(第二五六〇号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二七二〇号)  同外三件(飛鳥田一雄紹介)(第二七二一  号)  同(石田宥全君紹介)(第二七二二号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二七二三号)  同(中井徳次郎紹介)(第二七二四号)  同(成田知巳紹介)(第二七二五号)  同(安井吉典紹介)(第二七二六号)  同(山中日露史紹介)(第二七二七号)  同(栗林三郎紹介)(第二七七四号)  刑務所の剣道防具製造反対に関する請願山口  好一紹介)(第二六一七号)  同(山本勝市君紹介)(第二六一八号)  宇都宮地方法務局間々田出張所改築促進に関  する請願山口好一紹介)(第二七二八号)  悪質泥酔犯罪者に対する保安処分法制定促進に  関する請願藤本捨助君紹介)(第二七七三  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉄道公安職員職務に関する法律を廃止する法  律案猪俣浩三君外十三名提出衆法第三〇  号)  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  鉄道公安職員職務に関する法律を廃止する法律案を議題といたします。     —————————————
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 提出者より提案理由説明を聴取することといたします。猪俣浩三君。
  4. 猪俣浩三

    猪俣議員 お手元にプリントを差し上げておきましたが、一応これを読みまして、提案理由説明にかえたいと思います。  現行鉄道公安職員職務に関する法律が、議員立法として当法務委員会立案審議に当たり、昭和二十五年八月にこれが法律として成立いたしました。  第八国会においてこれが成案となりました当時の立法目的は、当時の社会事情及びその社会実情を反映していました鉄道運輸に関する特別な犯罪の増加に対処するため、鉄道運輸当局者より要望があり、当委員会立案することとなったのであります。  この立法目的は、各条文において明らかであります。すなわち、特殊の鉄道犯罪、列車内における窃盗、車内における暴力行為等その他の不法行為に対する対策としてこれができたのであります。  ただ当時は占領中でありまして、占領政策としては、警察官の人数が限定されており、本法により鉄道職員司法警察官職務執行するということになりますと、占領政策として実施してきました警察官の定員に関する規定とどう調和するかという議論がありました。また警察官側から見た職権に関する見方も相当あったことも事実であります。結局、政府立案ということが困難となり、運輸当局とはかりまして、議員立法ということになったわけであります。  この審議のために小委員会を設置したのであるが、この小委員会においても、運輸当局警察当局等の間で議論が多かったのであります。しかし最後に当法務委員会の努力が実を結んで成立したのであります。このような成立の経緯を考え合わせても、立法目的がほぼ了察いただけるかと思うのであります。  なおこの当時の小委員会論議の模様を当時速記にとどめていなかった。これははなはだ遺憾でありますが、これがありますと立法当時の目的や法の解釈等につきましても明確であり、疑義が生じなかったのであります。当時の審査過程におきましては、ほとんどこの立法目的は明確であったのであります。  ただ、ここで申上げたい点が二つあるのであります。当時の原案の中に、労働争議にはこの法律は使わないということが入っていたのでありますが、それを削除すること、及びもう一つは、昭和二十三年法律第二百三十四号の司法警察職員等指定応急措置法第四条を削除するという条文があったのも、最後の案では削られてしまったのであります。この二つのことがあるのであります。  鉄道公安職員労働争議には出動してはならないというような条文については、当時の小委員会及び本委員会の空気は、それは当然のことであって、立法目的からしてそういう労働争議などまでには及ぼす等ということは、これは思いもよらないことであるから、そのような規定を置くこと自体、かえって誤解を生ぜしめるということで削除されたわけであります。  この削除された意味を今度は違った意味解釈する向きがあるのであります。また、司法警察職員等指定応急措置法第四条を結局この鉄道公安官職務に関する法律とダブるという意味で削除するという原案が出たのであるが、これはあまり論議にならぬうちに、この削除すること自身が成案から抜けておったのであります。かような前提でこの法案ができたものでありますが、以上のような事情より応急措置として立法されたものであり、これを法律体系として点検いたしますと、幾多の疑義が生まれておるのであります。  第一は、公安本部長というような、日本国有鉄道という国家機関にあらざる公社の職員が、国家刑罰権一つ発動としての捜査権を全国にわたって号令するというようなことは、わが国の刑罰体系刑事訴訟法体系として合理的であるかどうかという大きな問題があります。このことは第二十回国会法務労働委員会連合審査会にこの問題が出され、国有鉄道公安本部長政府委員その他に対して質疑があった際にも、われわれが納得を得るだけの合理的な説明がなされておりません。これは速記録に明らかでありますので、後日参考書類として提出したいと思います。  その上、司法警察職員等指定応急措置法という、鉄道職員に対しても、ほかの森林官あるいは税務職員に与えたと同じような、一定の範囲における捜査権司法権を与えている法律があるように、なおこのような屋上屋を重ねるような法律を作りましたのは、先ほど述べたような特殊な社会情勢、特殊な運輸行政立場から、臨時的な意味においてできたわけでありますが、今や社会情勢が違ってきております。のみならず、この法律それ自体にも、国家刑罰権発動の態様としては、合理的ならざるものがあります。なおまた、この法律を廃止しても、すでに昭和二十三年にできている司法警察職員等指定応急措置法によって十分まかない得ることから、この法律立法目的そのものはもう消滅し、刑罰請求権の変態的な状態として残っているだけで、これに加えて、すでに存在理由がなくなっている。  われわれ社会党が積極的に提案したゆえんは、現在この法律は、立法当時の精神と全く違った運用がなされていることであります。すなわち、いわゆる労働運動鉄道公安官がしきりに出動する。鉄道公安官は、現在の運用状態から見て、ほとんど立法当時に比べ職務が閑散になり、仕事がなくなってきている。その余剰エネルギー労働運動の弾圧に向けている。これは私どもの立法精神と非常に違ってきているのであります。このことをおそれまして、本委員会の小委員会において相当論議が重ねられ、絶対にさようなことはないという言質のもとに立案せられたにもかかわらず、現在鉄道公安官は全く本来の目的を逸脱して、労働争議に介入してきたという容易ならざる態勢になってきたのであります。  この法律立法当時は、ちょうど下山事件その他の奇々怪々なる事件が発生し、しかもその犯人の所在、逮捕が相当遅延していたような実情から、本委員会犯罪科学捜査に対する特別の研究を花村四郎委員長のもとで重ねたのであります。その一環として、この鉄道公安官の問題が出てきたのであります。結局鉄道犯罪科学的捜査ということ、から考えれば、鉄道運輸知識を有し、法に深い経験のある職員のうちからそういう捜査権を持つ者を選ぶことが合理的であること、また一人二人の公安官の力ではなかなか犯罪の糾明が困難であるが、鉄道に勤めている大勢の同僚の協力を得てこそ捜査が敏速かつ完全に行なわれること、それには職員の中に司法警察権を持つ者を出した方が、科学的捜査という意味からも、また協力を得てすみやかに鉄道犯罪を鎮圧するという意味からも非常に合理的であるということから、鉄道公安官法律制定が急がれたわけであります。しかるに、今やそういう意味立案された鉄道公安官そのものが、おのれの持っている武器をもって——かつて協力要請する意味においてその武器を与えた公安官によって、今度は敵味方として対立するということは、立法当時われわれの考え方と全く背反した現状だと申さねばなりません。このような意味で、鉄道公安官は、存在理由がなくなっている。  また、日本国有鉄道という一つ企業体に対し、ピストルを携帯する司法権を持つ公安官存在して、結局においては雇用者と被雇用者のトラブルである労働運動出動するということになると、日本国有鉄道という一つ企業体私兵を擁して労働運動を弾圧するという結果に陥るのであります。このようなことがすべての公共企業体に与えられたらどういうことになるか、それぞれみなピストルを持っておる兵隊を擁して、労働者を弾圧するというような形になる。それに対して法律存在するというようなことは許すべからざることであります。  このような立法当時の社会情勢が違っているのみならず、現在におきましては、立法当時の目的とまるで正反対の行動に鉄道公安官が使用されている。一企業体私兵的活動を現在やっている。法は生きるものであり、立法当時の立法目的立法精神を逸脱して活用せられることが間々あるものでありますが、民主政治の今日では、この国会において、目的によって作られた法律がいろいろの機関の手に渡りますと、全くわれわれ立法者が意図せざる目的に向かって活動するようになることは厳に戒めなければならないのであります。  私が札幌高等裁判所のある裁判に出たときに、立会検事に、政治資金規正法立法当時の委員会速記録提出して、今日立会検事の論告はこの立法当時の精神と全く違っているじゃないかと追及すると、この検事はこう答えた。法律国会で作るだろうが、できた法律を適用するのはわれわれである。当時の議員政府委員がこう言うた、ああ言うたということに束縛される必要はない。法律はわれわれが施行するのだから、われわれの解釈のもとに施行する、こういうことを放言したのであります。そこで私は、これはおそるべき検察ファッショであり、もしそのようなことになるならば、民主政治はどうなる、民主政治は、検察権裁判権あらゆるものにびまんしなければならない。国会が国権の最高機関として、国の唯一の立法機関として作ったその精神とまるで違った解釈のもとにその法が施行されるということになるならば、国会はどういうことになるのかと激しくその検事を論難したことがあります。そのような傾向が、官僚政治が盛んになるとともに起こってくるのであります。その意味において、本法立法当時いかなる意思のもとに、いかなる目的のもとに、いかなる了解のもとにできたものであるかを深く考えていただかないと、国会が全く無視される法の施行が、時の行政権検察権の御都合によって運営されることになる。  このように、本法立案当時の目的そのものもなくなり、現在は、法理的にも、実情からも、民主政治要請からも立法当時とは全く違った運営をされており、本法はすでに廃止の運命にあると考えられる。  以上の理由から本法案を提案したのであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに各位の御賛同を得たいと存ずる次第であります。
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。坂本泰良君。
  7. 坂本泰良

    坂本委員 本日は三池の争議を中心としまして、執行吏の問題、警察官問題等について御質問したいと思います。  まず執行吏任命及び職務執行に対する監督方についてお尋ねしたいと思うのですが、従来の執行吏は、動産、不動産の差し押え、いわゆる債権者代理として差し押えをして、そうしてその売得金をやるとか、あるいは仮処分におきましては、家屋の明け渡しの際にその占有名義を変更しないとか、あるいは判決が確定しましてその家を明け渡す、こういうような簡単な、また社会的にも単に個人的にわたる仕事が大体であったわけであります。従いまして執行吏任命についても、裁判所書記官などを長くしていた者が、その退職にあたって執行吏になる。またそれでその職務が勤まっていたわけであります。ところが現在におきましては、労働争議に関連いたしまして、妨害排除仮処分あるいは地位保全仮処分、こういうような社会問題的な、また働く者の生活権を守るこのストライキに関連いたしまして、われわれが予想もしなかった大きい問題が出て参ったのであります。そうしてその執行吏執行行為やり方いかんによっては、また軽率なやり方によっては、数十人あるいは数百人の死傷者も出るというのがここ数年来の労働争議に関する問題に関連しておるということは、周知の事実であるわけであります。そういうような関係にありますが、やはり執行吏は旧態依然として法律知識も少ない。また執行吏任命規則等最高裁判所規則で定められておりますが、数十人、数百人の死傷者を出すような仮処分執行行為をなす執行吏としては、まことに遺憾な点があるわけであります。その点について二、三お尋ねしたいと思いますが、その執行行為監督あるいは任命についてのことをお尋ねします前に、今執行吏行為として大きく問題になっておりますのは、三井三池の争議であります。その点について、質問の、あるいは御答弁の便宜上、この三池の問題について一、二実例を申し上げてからお尋ねをいたしたいと思うのであります。  三池争議におきましては、先般昭和三十五年三月二十八日に、三井鉱山株式会社申請人三井鉱山労働組合、いわゆる三鉱労組と略しますが、第一組合であります。この三鉱労組を被申請人として、構内立ち入り禁止、第二組合就労妨害禁止を主たる内容とする仮処分命令が発せられております。右仮処分命令の要旨は、就労妨害禁止について言えば、一つは、実力就労妨害してはならないこと、第二は、この就労の違反の場合には執行吏が適当な措置をとることができること、この二つになっておるのであります。そこで、この昭和三十五年三月二十八日の仮処分命令については、執行吏は、従前のように三カ所に分かれておりまするが、その正門を封鎖いたしました。そうして、その正門の入口に、この就労禁止を表示した表示書を立てて、執行を終了しておるわけであります。それは昭和三十五年三月二十八日に命令が出まして、三月二十九日か三十日に行なわれておると思うわけであります。  ところが、昭和三十五年四月十八日午前三時四十分ごろ、三川鉱三井病院三川分院横通用門ピケを張っていた三鉱労組ピケ隊員十三名が、いきなり多数の警官隊実力行使をされて、ピケを排除され、さらに警察官に守られつつ第二組合員が同門から入構する事件が発生しました。しかも警官隊約千五百人は、右ピケ排除と前後して、前記通用門に至る公道を完全に遮断し、第三組合員就労を阻止するため前記通用門に至ろうとした三鉱労組組合員に、なぐる、けるの暴行を加え、そのため三鉱労組員数十名が重軽傷を負う惨事が発生したのであります。右事件は、会社に委任されました中村吉次執行吏警官出動要請したために生じたものであることが、執行のあとで明らかとなったので、この中村並び吉次執行吏組合側弁護士が同日執行吏役場で面会しましたところ、中村執行吏は、左のごとく言明したのであります。執行吏門前ピケ隊十数名がいるのを見て、現実に実力妨害を受けることはなかったが、妨害を受けるであろうと考えた。そこで付近にいた階級、氏名とも不詳の一警察官ピケを排除するよう口頭要請した。その際、あらかじめピケ隊執行吏の来たこと、実力妨害しないよう警告したことはないのであります。その結果、警官隊出動し、前記措置をとったものであります。執行吏は、労働者ピケット権については勉強したことがないが、かりにピケット権があるにしても、仮処分命令の出たことにより、第二組合員就労するときは、ピケは一切張れず、その場を立ちのかねばならないと考える、こういうふうに申しておるのであります。  なお、右執行吏執行行為には、左のような重大な違法行為があります。一、三鉱労組ピケ隊員ストライキ破りに対する言論による説得、団結の示威の機会すら全く与えず、ピケット権を全く否認していること。第二は、ピケ隊員実力で防止してもいないのは、わずか十数名のピケ隊員が、百五十名の第二組合員就労実力で防止するであろうとの予見だけで、警察官出動要請しておるのであります。第三は、執行吏が適当な措置をとることができるといっても、人の進退に対する直接強制は、執行法上違法であることは明らかであるのに、これは兼子氏の強制執行法にも明らかに書いてあるわけですが、警察官をしてピケ隊進退実力によって排除せしむるがごとき違法な措置をとっているのであります。  また違法行為の問題はしばらくおくとしても、次のように著しく妥当を欠く行為があります。その一つは、執行吏が本件のごとき重大な事案につき、文書による警官出動もせず、口頭で、しかも氏名の確認もせずに、出動要請しておること。第二は、ピケ隊員執行吏として警告すらも発せず、そのおもむいて来ていることも明らかにしていない。執行吏は、執行吏が来たということも明らかにしていない。第三は、執行行為という名のもとに、警察官が交通を完全に遮断し、ピケ隊員暴力を加えていることを知りながら放置していること、以上の点は、中村吉次執行吏弁護団の方で注意を喚起していたところでもあったのであります。  ところが、今度は四月の二十日にも、前と全く同様な違法執行が今度は吉次半田執行吏によって行なわれたのであります。すなわち四月二十日午前九時、宮浦鉱正門横通称薪門前においてピケを張っていた約四十名に対し、いきなり約三百名の警官隊が襲いかかり、こん棒を振り上げてなぐるなどの暴行を加えた上で、二名の組合員公務執行妨害の名のもとに逮捕するなどの暴挙を行なってピケ隊を排除し、第二組合員を入構せしめる事件が発生したのであります。この際も、また数十名の組合員が負傷をいたしたのであります。警官隊出動は、その後、吉次半田執行吏要請に基づくものであったことが、明らかとなったのでありますが、現場にいた弁護士、これは執行吏を目撃していないのであります。現場執行吏が来ていない。右執行吏執行行為も、前記中村執行吏と同様の見解に基づくものと思われ、従って前記三つ執行行為と同様違法であることが明らかであると思うのであります。  そこでお尋ねいたしたいのは、「執行吏は、執行に際し債務者に出会ったときは、執行に着手する前任意の履行を促さなければならない。」これは執達吏執行等手続規則の第十三条に規定してあります。しかるに、ピケ隊がいたにもかかわらず、何らの告示も発していないこと。第二は、執行吏は、抵抗を受ける場合に、初めて警察上の援助を求めることができる。これは民事訴訟法第五百三十六条第二項であります。しかるに、ピケ隊抵抗も受けずに、いきなり警察援助要請したこと。第三は、夜間執行許可命令は、強制執行の際示さなければならない。これは民事訴訟法第五百三十九条に規定してあるのでありますが、この夜間執行許可命令を何ら被申請人である組合に示していない。そこでなお三十五年の四月十八日の午後零時ごろ——これは十八日の午前三時ごろの事件でありますから、午後の零時ごろ、弁護団が、福岡地方裁判所執行吏役場において、中村吉次執行吏と会ったところが、中村執行吏は、四月十八日の執行について、次のような言明をしているのであります。「私は門前ピケ隊約二十名がいるのを見て、実力妨害を受けたようでもありませんでしたが、ピケ隊がいるから妨害されるであろうと認定しました。そして付近にいた氏名不詳警官ピケを排除するよう口頭要請して帰ってきました。ピケ隊には私たちが来たことも告げませんでしたし、またピケ隊が私たちが来たことを知っているかどうかわかりません。ピケット権については、私はよく知りませんが」いいですか、「よく知りませんが、仮処分が出ているのですから、ピケットは張れないと思います。」最高裁のピケット権についての判決なんかも知らない。「労働仮処分はむずかしくて、よくわかりませんので、これからはよく勉強しようと思います。」こういうようなことを弁護団に申しておるのであります。そこで、以上三つの点についての御答弁を、監督上の立場からお聞きしたい。
  8. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘がございましたように、近ごろ裁判におきまして、また裁判執行につきまして、社会的ないろいろの問題がございまして、いろいろ重要な注目を受けておりますことは、まことにお話の通りでございます。執行吏につきましては、これは法律でございますが、執達吏規則というものがございまして、執行吏地方裁判所に属しまして、訴訟に関する書類を送達し裁判執行するということがその任務になっているわけでございます。この執行吏の一般的な監督地方裁判所が当たっているわけでございますが、執行吏職務の遂行はすべて法律に従うことになっているわけでございます。今回の仮処分執行につきましても、やはり執行吏法律に従って執行するわけでございまして、それは執行吏自身の判断と申しますか、執行吏自身仮処分そのものによって執行しているわけでございます。  先ほど執行吏任命資格等についての御意見がございましたが、執行吏任命につきましては、執行吏任命規則というのがございまして、それに任命資格をきめているわけでございます。ただいまのところ執行吏任命は、その規則によりまして裁判所書記官等の経験のある者の中から任命されているわけでございます。  強制執行につきましては、御承知のように、いろいろ専門的な法規がございまして、これに習熟するということが大切なわけでございますが、何分にも執行ということは、先ほど申し上げましたように執行吏が独立して自分の職務として執行するわけでございまして、他の機関の指揮を受けるわけではないのでございます。今回のこういう執行におきましても、やはりその法律に従ったところの執行吏職務執行として、執行吏自身が行なうわけでございまして、他の指揮なしに、仮処分命令により、あとは法律規定に従って執行していくわけでございます。今回の仮処分決定の内容は、先ほどの御指摘のような内容でございます。これにつきまして執行吏は、執行吏執行等手続規則というのがございますが、この第五十六条にございます「債務者が耐忍すべき義務を有する行為抵抗するときは、執行吏は、債権者の委任により、その執行に立ち会って債務者抵抗を排除することができる。」という規定がございまして、その第二項に民事訴訟法第五百三十六条第二項を準用しております。民事訴訟法第五百三十六条第二項と申しますのは「抵抗ヲ受クル場合ニ於テハ執行吏ハ威カヲ用ヰ且警察上ノ援助ヲ求ムルコトヲ得」という規定でございます。その債務者抵抗排除の規定によりまして、警察上の援助を求めたものというふうに考えられるわけであります。  ただいま御指摘の十八日、二十日にわたりますところの仮処分執行につきましては、実は私どもにまだその報告が参っておりませんので、詳しいことは本日お答えできませんが、仮処分命令並びに法律に定められた手続によりまして執行したものというふうに考えておりますが、私の方でも御指摘のような問題につきまして、なお報告を得まして十分に検討したいというふうに思っております。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 それからお聞きしておきたいことは、この執行に着手する前に、任意の履行を促さなければならない。これをやっていないということになれば、執行吏執行等手続規則の十三条の違反になる、こういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
  10. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 執行吏執行等手続規則十三条にございますように「執行に際し債務者に出会ったときは、執行に着手する前任意の履行を促さなければならない。」ということは、御指摘の通りと存じます。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 次にこの五百三十六条二項に「抵抗ヲ受クル場合ニ於テハ執行吏ハ威カヲ用ヰ且警察上ノ援助ヲ求ムルコトヲ得」、抵抗を受くる場合なんですね。わずか十二、三名しかいないのです。そうしたら執行吏はまず話さなければならぬ。それを話もせずにいきなり警察援助を受ける、こういうことは、やはり民事訴訟法の違反になると思うのですが、その点はいかがですか。
  12. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 全くそういうことはそのときの状況の判断によることでございまして、ただいま申し上げましたように、そのときの状況につきましてまだ報告を得ておりませんので、報告を得た上で検討したいと思っております。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 そうすると、もう一つは、午前三時ですから夜間執行命令を受けなければならぬ。執行は日の出から日没までに限られておる。それ以外は許可をもらわなければならぬ。許可をもらったならば夜中に執行するけれども、その許可命令裁判所からもらっておるのだと言って、許可命令書をまず先に示して、それから執行に着手しなければならぬ、私はこういうふうに考えるわけですが、本件は事実の調査がなかったらこれは別ですが、もし事実調査されて——われわれはちゃんと現場であれして、そうして今申しますように、執行吏弁護団に対して示していないということを言っているわけですが、やはり執行の順序としては、夜間にやる場合には許可命令書を見せて、そうしてから執行に着手しなければならぬ、こういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
  14. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 御指摘の夜間の執行については特に規定がございまして、民事訴訟法第五百三十九条によりまして「執行裁判所ノ許可アルトキニ限リ」ということと、許可の命令強制執行の際に示さなければならないというふうになっております。強制執行は何分にも権力を使いました強制執行でございますので、夜間の執行につきましては特にこういう厳重な条件をつけたものと考えております。
  15. 坂本泰良

    坂本委員 この問題については、組合の方からは執行吏の職権乱用について告訴を出しておるわけですから、これに対しては、法務大臣も来ておられますが、組合だけを——これはあとで警察にも質問しようと思うのですが、第一組合だけを五十数通も逮捕状を取って検挙しておるわけです。こういうようなことは、この執行吏についても至急調べてもらわなければならぬと思う。  それと裁判所の方にお聞きしたいのは、執行吏監督規程というのが御承知のようにあるわけであります。そうして、これには「地方裁判所は、裁判官に執行吏の事務の査察に関する事務を行わせなければならない。」とあり、そうしてそれによって査察官が地方裁判所にあるわけであります。そこで第三条の二項に「査察官は、執行吏の役場、その出張所又は執行吏職務執行する現場に臨み、その執行吏職務執行を監察することができる。」こういう規定があるわけであります。従って先般の二つ執行については、執行吏に対して厳重な交渉をして、先ほど申しましたような言質をとり、さらに告訴をし、さらに裁判所に対してこの査察の申し出をしているわけであります。しかしながらこれをまだ地方裁判所はやっていない。こういうようなときこそやはり査察官が現場に行って執行行為についての査察をすべきである、こういうふうに考えるわけですが、その点についてはいかがでありますか。
  16. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 執行吏現場における査察でございますが、これはそのときの状況に応じ、またその裁判所における執行吏の執務のあり方についての必要からくるわけでございましょうし、今度の事態につきまして査察が必要かどうかということも、先ほどから申し上げますように、まだ私どもの方に今回のことについての報告が参っておりませんものですから、その点についてはまだ何とも申し上げかねる次第であります。
  17. 坂本泰良

    坂本委員 そこで執行吏任命の問題は行政処分のうちだと思うのですが、これは形式は地方裁判所長が任命する、こういうふうになっておりますが、やはり最高裁の方の担当は民事局だろうと思うのですが、この執行吏任命に当たってはどういうようなことをやっておられるか。それから執行吏違法行為について、これは従来は汚職とか職権乱用とかで処分されたものも、あるいは執行の取り消しをしたものもあるだろうと思うのですが、この執行吏任命について、全く無能で、裁判所書記官上がりの、法律も何も忘れてしまっている、ピケット権解釈も知らない、みずからが私はわかりません、こう言っておるわけですから、そういうような執行吏をどういうふうにされる考えでおられるか、その点をお聞きしたいと思います。
  18. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 御指摘のように執行吏は各地方裁判所において任命をいたしておるわけでございますが、その任命につきましての条件等は、最高裁判所規則で定めております。執行吏任命規則というものを作りまして、任命の資格、条件等をきめておりますが、これもいろいろ条件がございますが、第一条といたしましては「成年者であること」と、それから「六箇月以上執行吏職務を修習した後試験に合格した者」となっております。また短期大学またはこれと同等以上の学校を卒業した者は、この試験を経ないで執行吏任命することができるという規定になっております。それから一般職の職員の給与に関する法律のいわゆる七等級以上の国家公務員の職にあった者は、やはり試験を経ないで任命されるということになっております。それから裁判所書記官として一定の期間の経験がある者は修習とか試験を経ないで任命することができるようになっております。  現状を申し上げますと、その基準に従いまして地方裁判所任命いたしておるわけでございますが、書記官として裁判所仕事に習熟した者の中から任命しているのが現状でございます。法律についての知識でございますけれども、裁判所におきまして長年書記官として事件を扱っておりますその経験から見まして、相当そういう執行方面の法律には習熟しておるものと見られているものと存じます。  それから、今日までにおきまして、たとえば保管金等の処理につきまして問題を起こしました例を若干私ども承知しておりますが、こういった例は今日まで若干ございましたけれども、日常の執行につきましてさほど差しつかえがあるとは考えていないわけであります。
  19. 坂本泰良

    坂本委員 そこでこの執行吏任命規定というのは、昭和二十三年六月十一日の最高裁判所規則第八号でできて、昭和三十二年の十二月五日に改正が行なわれておるようですが、今言ったように、労働仮処分がむずかしくてよくわかりませんので、これからはよく勉強しようと思います。数十名も重軽傷者を出すような場合に、こういうような執行吏で私は勤まるかと思うのです。ことに執行吏職務は、ただ金を払わぬ者の品物を差し押えをして、売得金を取って債権者にやるような昔のような場合は、今のこの規則でいいと思いますが、警察官をちょっと要請したということだけで数十名の人命が傷つく——これは執行吏としては重要な社会的な立場でもあると思うのです。こういうような場合に、旧態依然たる執行吏ではいけないと思うし、少なくとも福岡の執行吏は四人いるようですが、この四人のうちピケットがどういうものか、判例を読んでいる者は一人もいないと思います。これからよく勉強しましょうなどと言って、法律学校の一年生みたいなことを言うようでは、はたして——今後また近くあるいは大きい仮処分命令が出るかもしれません。その仮処分執行は、やはり執行吏がやるんですよ。それによって数百名、数十名の人命を傷つけるようではどうしますか。韓国では学生の百数十人のあの死傷者だけで李承晩は引退しなければならないわけです。今三池の闘争では、すでに組合側には数百名の死傷者が出ておる。ことに四月の十八日と二十日には、合わせまして、組合の方は百名近くの死傷者が出ておる。これも執行吏警察官要請をしたからなんです。だからこの任命について取り消すか、有能な者をやるかどうかの点と、さらにもう一つお尋ねしたいのは、四月の十八日の執行の際には、これをよく調査してもらわなければならないわけですが、すでに警察官は前の晩から交代員を足どめしておる。そうして午前三時、十二、三名しかピケットのいないときに大挙して警察官が出かけて道路を遮断しておる。ですから、もう前の晩から今夜の夜中の三時ごろにはあそこから会社が組合員を入れるから警察官は援護してやれ、執行吏要請したことにしておけというような、すでに前の晩から執行吏と会社と警察と打ち合わせをしてやったように見られておるわけです。そうなったならば、あの警察官は一営利会社の三池の使用人だ、こういうふうに今非難されておるが、さらに執行吏として公平で、人民の権利を守るための一番先端の執行行為をやるその者が、そういう人命を損傷するということになるわけです。だから夜間執行命令を取ったならば、それを債務者に示さなければならない。それを前の晩から打ち合わせをしてやろうなんということは、これはもってのほかです。ですから、この点調査を至急にやっていただきたい。御報告をいただくことと、このような四名の執行吏で今重大問題になっておるところのあの送炭所の仮処分命令、これは裁判所もなかなか慎重に出さないでしょう、しかし出した場合においては、これこそ重大な問題が起こるし、その執行行為をやるのは、執行吏でありますから、その点についての所見を伺っておきたい。
  20. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 今回の執行の問題につきまして、ただいま御指摘のような点につきましては、私どもにおきましても十分に調査をいたしたいと存じております。執行吏裁判執行機関として中正、公平でなければならないということは、御指摘の通りでございます。執行吏の素質、能力の向上につきましては、私どもといたしましても、今後十分努めて参りたいと存じておりますし、一方にまた執行吏制度そのものの根本にもやはり問題があるのかとも存ぜられまして、この点につきましては執行吏制度の問題として関係当局においても取り上げて検討されつつあると存じますが、何分にも裁判執行という重要な仕事でございますし、ことにその公正が担保されなければならない仕事でございますので、いろいろな面から十分に検討して参りたいと存じております。
  21. 坂本泰良

    坂本委員 もう一点だけ。そこで、問題が起きなければけっこうですが、今会社側から要請している仮処分命令がかりに出るとしたら、これは重大な問題であるし、執行行為は慎重にやらなければならぬ。それで今あの四名の、これから労働法をむずかしいから勉強しますなんという執行吏で、その執行行為ができるかどうか、私は非常に疑問なんですが、これは地方裁判所とも連絡をとられて、そうしてもっと有能な者とかえるか、あるいは査察制度をもっとやる。執行行為の際に査察官が行ってもいいと思うのです。大がい査察官というものはその地方裁判所の民事部長がなっておると思います。その民事部長が執行の際に行く。どうしても民事訴訟法上の規定にあるような警察官要請をしなければならぬような場合もあるいは起こるかもわかりません。しかし前から打ち合わせをして、そうして警察官に守られて第二組合員を中に入れる、こういう執行行為は私はないと思います。ですからその査察官の制度を至急にやられるということと、それから現在の執行吏についての問題については、何とかやはり規則を作る。執行吏任命規則あるいは執行行為規則、あるいは査察行為規則も、最高裁判所が作られた以上はそれを守らせなければいけない。ことに民事訴訟法上の規定もあるわけですから、その点について至急にやってもらいたいということを要望いたします。
  22. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 大野幸一君。
  23. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私も今坂本委員が質問された三池炭鉱の、主として裁判上のことについて御質問したいと思います。  まず第一に、本委員会を通じて最高裁判所の示されたところのピケ権の限界をここに紹介してもらいたいと思います。
  24. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 ピケ権の見解につきましては、手元に資料を持って参りませんので、調べましてお答え申し上げたいと思います。法律上の見解でございますので、正確を期して申し上げたいと思います。
  25. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私の承知している範囲では、ピケ権というのは、労働者の団結を守って、一部の脱落者を防ぐ、脱落行為労働者の不利益である、こういうことを説得するのが主眼であって、外国なんかの例を引きますると、一部のスト破りの労働者が集合をしようとすれば、それに向かって労働者の団結の必要を説き、就業自体を妨げるものではない。それですから、その就業せんとする労働者の前に立ちふさがって、それを阻止するのではなくて、その前を行ったり来たり彷徨して、その程度に労働者を説得するということに聞いているのです。日本の労働組合のあり方を見ていると、現在三池で行なわれているような、全く実力実力暴力暴力との対抗になっているようであります。これについては若干の批判がありますし、長年の間日本のピケ権が慣習として今まで存在しきたったこと、いつの時か、これが一つの権利となる場合もありましょうが、最高裁判所ピケ権の見解は、それほどまでに認めていないということを聞いているのでありますが、判例の要旨は承知していられるでしょうか、これをお尋ねしたい。
  26. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 実は今判例につきまして手元にございませんものですから、取り調べてお答え申し上げます。
  27. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 判例の要旨は、説得の範囲を出る実力行使は違法であるというように私は聞いている。そういう意味から三池争議を見ますると、その判例のよしあしはとにかくとして、相当ピケ権の行使については行き過ぎの点があるように思うのです。というのは、私も親しく大牟田市に参りまして、実情を調査して参りました。今や大げさに言うならば、大牟田は市街戦の行なわれたあとか、また今後市街戦の行なわれる前夜かというような空気がまだ今月の七、八両日あったようであります。そこでそれを解決する方法は実力実力とより以外にないということは法治国の許すべき点ではない。従っていずれかがこれを解決しなければなりません。その解決はわれわれの良識をもってすれば、裁判にかけるより以外にないのです。いかなる革新陣営の人も、最後には告訴をし、あるいはまた損害賠償をし、最高裁判所に違憲訴訟を出されておることを見れば、やはり最後には裁判の威信を認めてそれに承服するという前提のもとにやっておられるだろうと思うのです。  そこで本件について仮処分が出されました。私もその仮処分の全文を読みました。これは東京地方裁判所においても、普通仮処分と同じ仮処分であります。債務者は確かにいわゆる旧労組を債務者としているようであります。組合員一万五千人全部を債務者とするわけにはいかないので、法に許されたる法人組合として、組合債務者となっているのは当然であります。しかし、その裁判が一たび送達されれば、組合は全組合員にこれを周知徹底せしめなければならないと思う。そのことがしてあったかどうかは疑問といたしまして、とにかく、あの仮処分命令によって、いわゆる平穏裏に、平和裏に解決される一つの曙光は見出されたのであります。しかし理屈はそうであっても、現状ではなかなかそうは参りません。ただいまの坂本委員のような議論も起きるでありましょう。一つ条文もなかなか解釈がむずかしいと思うのです。たとえて言うならば、今質疑応答中にありましたように、民事訴訟法五百三十六条の第二項を見ますと、「抵抗ヲ受クル場合ニ於テハ執行吏ハ威カヲ用ヰ且警察上ノ援助ヲ求ムルコトヲ得」、こう書いてあるのであります。これは私は非常に上手に書いてある条文だと思う。一人の人は抵抗を受けた場合にのみ限るようにこれを言われる。抵抗を受けてから威力を用いたってしょうがない。抵抗を受けてしまってから警察上の援助を求めるということもこれはナンセンスだ。抵抗を受けるおそれのある場合ともまた書いてない。そこで「抵抗ヲ受クル場合」ということは、この意味が深長であります。なかなかよく表現されておると思います。「抵抗ヲ受クル場合」というのは、執行吏の職責が果たされないという場合も含むだろうと思うのです。そうならば、私は最良の常識をもってするならば、あの仮処分裁判妨害してはならないという不作為義務を債務者が負うたものと考えてよいのではないかと思うのです。現場に臨みまして、執行吏に対してさほど多くの法律知識を要求することは無理です。また全国の執行吏に労働法を研究させることも無理です。要は、善意で仮処分の内容を実現させることに尽きる、誠意を持ってやる。また労働組合員も人間としてそれを理解することに良識を持っているはずであります。こういうことは実は労働争議という特殊の問題だから起きるんであって、個人の強制執行の場合はそんなことは起きないのであります。しかし、労働争議といえども、最後の判断は第三者に求め、しかも司法権に服さなければならないという建前から、それが完全に行なわれておるかということは、反対の立場からいえばまた不平が相当あるのです。そこで、裁判の威信は害されてしまっている、執行吏現場に行っても何もできない、暴力の威力に屈服して帰ってしまう、こういうことが言われておるのであります。また、弾圧という言葉がしばしば使われますけれども、むしろ、私の実情を調査しました結果は、決して警察は労働組合弾圧の方向には向かっておりません。むしろ、警察は、あの労働争議に対しては労働争議に介入するということは絶対にいたしません、こう言っているのであります。まあ一方からいうと歯がゆいようでありますけれども、私は、その警察官の態度を賞揚して参りました。あそこの警察本部長は、昔の警察官は会社の私兵のように考えられたこともある、また今の会社側にもややそのきらいがある、われわれを私兵化しようとするような気持に対しては私たちは断じて動きません、こういうことを言われておったときには、私は本部長の誠意を認めなければならなかったのであります。そこで、今において裁判の威信は害されていると思うのです。  次に、ただいま仮処分変更の申請が出ているようでありますが、私は、この点について一つお伺いしたい。当該裁判官は、現場に臨んで、あのピケ状態と治安が危険な状態にあることを知っておいでになるにもかかわらず、いまだに仮処分裁判についての判断が下されていないのであります。私は裁判の結果について、あるいは裁判の方針について何ら言うことを持ちませんが、しかし、常に最高裁判所長官は裁判の促進ということを言われている。ついこの間法律案を出された中にも、裁判の促進のためには書記官までも職務範囲を拡張して、法令、判例その他必要な事項を調査せしめることができるというようにされたのも、裁判の促進のためだと言われておる。しかし、大きな問題になると、裁判所は何となく他からの影響を受け、裁判を確然と促進する勇気に欠けているようであります。私は、最高裁判所といえども、当該裁判官に何ら指示命令権はないことは知っているが、少なくとも、裁判の促進は最高裁判所として努力すべきだと思うのです。その仮処分について、すでに旬日を経ているにもかかわらず、当該地方裁判所裁判が下されない事情がどこにあるかということをお尋ねしたい。
  28. 内藤頼博

    内藤最高裁判所長官代理者 裁判が公正な立場でなされ、また公正な立場執行されなければならないことは御指摘の通りでございまして、それがあってこそ法治国といえるのだと私どもは考えておるのであります。  今回の仮処分については、ただいまお話がありましたように、異議の申し立てが出ているようであります。異議が出ますと、口頭弁論を開きまして、そして仮処分を認可しあるいは変更し、あるいは取り消すという判決があるわけであります。ただいまその手続をしていることと存じますが、先ほど来申し上げますように、現地からまだ詳細な報告が参っておりませんので、詳細なことはつまびらかにしておりません。訴訟の促進につきましては、まことに御指摘の通りであります。訴訟が遅延することは最も避くべきことでございまして、最高裁判所も鋭意努力しておりますことは御承知の通りであります。ただ、促進と申しましても、全く事案によることでございまして、やはり十分な審理を経まして判決をするということは、どこまでも裁判所の建前でございますので、事案によりましては、他から見ますと、どうも時間がかかり過ぎるというような感じもないわけではございませんけれども、これは全く事案によることでございまして、最高裁判所といたしましては、一般的には訴訟の促進に今後努めて参りたいと思っております。
  29. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 そこで、執行の問題でございますが、私は、執行吏の「抵抗ヲ受クル場合」という意味については、これは明らかに予見される場合に本条が適用になるものという意見を申し上げておきたい。そんな解釈は至るところに見受けられる。たとえば弁済を提供したり、これを受領せざるというような場合でも、弁済を受領せざること明らかなる場合には提供する必要がないということは幾らでもある。すでにピケをやって阻止するということを組合自体が言明しているとき、あらかじめこれに対して警察官に対し連絡し、要請して、現状においては裁判が実行できるように、執行できるようにという処置は当然できるものとこの法文解釈上も私は考えているので、この点については、立場を異にする。たとえ大法官といえども反対の解釈をする、あるいは私と若干立場が異なるからこうなるかもしれないが、そういうことは、ここにおいでになる委員は大ていは法曹出身でありますから、立場上からの御発言もあるでありましょうが、しかし、最後は最上の常識をもって法律解釈して、一日もすみやかにあそこの問題を裁判所もその一助となって解決されんことを望んでおきます。  時間もありませんので、きょうはこの程度にしておきます。
  30. 坂本泰良

    坂本委員 関連して。——ただいま大野委員の言われたのと多少事実の違う点もあると思いますつが、会社側は仮処分が出たから鬼の首をとったようなふうですが、大体仮処分というのは、本訴を起こして、その本訴を確保するために仮処分命令を出すというのが本筋なんです。ところが、こういうような労働事件仮処分というのは、まず仮処分をとってしまえば、本訴なんか出さぬで、ほったらかしておいて、仮処分を実行しろ、実行しろといって、法律知識もない執行吏にどんどんやって、そして説得行為がどういう状態にあるか、そういうようなこともはっきりせずに警察官要請して、そしていやおうなしに繰り込むというところに数十名の死傷者が出てくる。ここに非常に困難があるわけです。だから、この仮処分でも会社はまだ本訴を出していないと思うのです。ですから、第二回目の送炭場の仮処分については、さすがに福岡の裁判所もああして仮処分を出してしまったからあんな大きい社会問題にまできたからというので、今度は橋本武人氏以下日経連の弁護士団の弁護士総がかりで送炭場の仮処分にかかっていますけれども、裁判所は慎重にしているわけです。ですから、判決の公平を求めるというようなことを会社側も考えずに、仮処分をとったからこれをどんどん実行して、第一組合をぶっつぶしてしまって、会社の企業整備のあの目的を達成しようということにほかならない。それに対して、いわゆる第一組合が、そういうことをされたならば、真に憲法二十七条、二十八条に認められた労働権も何もないから、やむを得ずやっているのである。だから、法の最後判決を求めるということは、今の場合実際上大野委員の言われるようでしょうが、実際は双方ともやっていないわけです。だから、ここに大きい問題があるし、執行吏にしても、われわれは終戦後相当労働事件も起きてやったけれども、これは執行吏執行を行使するというから、あるいはむだになるかもわかりませんが、少なくともいずれにも味方しないところの執行吏職務執行にあたっては、やはり民事訴訟法に基づいて、一応は話をして、それがいかないときにやらなければならぬ。だから、仮処分執行の際は、執行吏執行して、立て札をやったりなんかするというようなときは、全然妨害も何もやっておらない。一カ月後の問題で、執行吏が要求したかどうかわからないのに、警察官が出頭して、そうして数十名の死傷者を出しておる。そういう点については、執行吏要請したから出たんだと警察は言ってがんばっておるが、その警察官要請については、やはり慎重な態度をとらなければならぬ。そうするならば、執行吏たるものは、やはり民事訴訟法規定に基づいて、そうして執行行為妨害されるかどうかという点を一応は確かめて、その上でやらなければならぬ。それを無視して何でもかんでもやっていいというなら、仮処分をとった方はそれでもう本訴が確定したと同じような結果を生ずるわけですから、その点については慎重にやらなければならぬと思う。そういう点を私は言っておるわけです。そうして、そうするのには、やはり数十名も死傷者が出るのですから、法律的にも考えてやる執行吏でなければならぬ。われわれも方々へ行っておりますけれども、会社の自動車に一緒に乗って妨害排除に来たような場合、「執達吏さん、あんたは公的立場にあるんじゃないか、会社の車に一緒に乗っていていいんですか」と言うと、「それはうっかりしてしまった、僕おりなければならぬ、そしてまた出直す」と言って、慎重にやったところもあるわけです。ですから、これはそういう慎重さが欠けておるし、そういうような場合があるので、査察官の制度もあるから、ある以上はそれを守らなければならぬ、それを執行吏は守ることが必要じゃないかということを私はお尋ねしておるわけです。
  31. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 坂本委員に申し上げますが、先ほど来最高裁判所説明を聞いておりますと、事情の報告を受けておりませんから正確な答弁ができないと言われます。本日の答弁はこのままにしておいて……。  次に板川正吾君。——板川正吾君に申し上げますが、警察庁長官あるいは江口警備局長等は本日都合によって出頭できませんので、曽我参事官が出ておりますから、そのつもりで御質疑を願います。
  32. 板川正吾

    板川委員 私は実はまず石原国務大臣にお伺いいたしたいと思っておったのでありますが、きょう所用があって出席できないということでありますので、曽我参事官にお伺いいたしたいと思うのであります。曽我さんは最近三池の現地に調査に行って、詳細な現地調査を持って帰ったそうでございますが、事実でありますか。
  33. 曽我力三

    ○曽我説明員 私、最近現地の警察管区局並びに警察本部に参りまして、さらに大牟田署について今までとったいろいろな警察の活動なりあるいはその他治安の概略につきまして調査をいたしました。またできる限り法的な問題その他についても相談に応じて帰って参ったわけであります。
  34. 板川正吾

    板川委員 現地に警察庁側の代表として出張して調査をされたそうでありますから、現地の事情に詳しいと思うのであります。警察官争議に介入しないという原則でありますが、しかし、いろいろ調査の結果、おわかりと思うのです。今回の三池争議のそもそもの原因というのはどういう点にあると御判断になっておられますか。
  35. 曽我力三

    ○曽我説明員 争議の原因につきましては、私どもの知る範囲では、非常に長い間の三井三池における労使間の問題から、いわゆる企業整備問題についての争議が根幹となって最近の事態に立ち至った、非常に長期にわたる深刻な争議である、かように見ております。
  36. 板川正吾

    板川委員 争議という場合には、普通組合が要求をする、会社がこれを拒否して、組合が要求目的を果たすために争議行為を行なうというのが、大体一般に言われている争議のあり方であります。しかし今度の争議は、組合は何も要求してないのであります。逆に会社側が千二百名の首切りを要求しておる。逆なのです。組合とすれば、組合員が千二百名首切られるということは重大なことでありますから、そこで首切られては困るということで争議になっておると思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  37. 曽我力三

    ○曽我説明員 詳しくは存じませんけれども、今お話しのように、約千二百人の整理の問題が最も問題の中心点になっているわけでありますから、その意味においては労働組合が会社の計画に対して反対するという立場をとっておる、これが中心であると考えます。
  38. 板川正吾

    板川委員 われわれの調査の結果は、組合側では、会社の指名解雇は困る、会社が純経済的に、たとえば千二百名首切らないと炭価の引き下げができなくて、会社の経理がやっていけない、従って千二百名やめてもらう、人を減らしてもらうのだということで、この争議を会社側から引き起こしておるじゃないか。千二百名首切るというだけならば、組合側は話し合いに応じようという態度をとっておる。しかし会社側の意図はそうじゃないのです。千二百名はもちろん人を減らすのだが、しかしその中で大量の組合活動家、組合運動を積極的にやった者を、会社に協力しないという立場で、千二百名の中に入れて首を切る。要するに組合活動家を全部会社が首切ってしまうということが、今度の争議の根本的な原因なのです。決して組合は人は一人も減っちゃいかぬということで反対しているのじゃない。経理が困るのなら、ある程度の話し合いに応じましょう、会社の言う通りに人を減らしもできないかもしれないが、話し合いに応じましょうという態度をとっておる。しかし会社側はそうじゃない。人はもちろん減らすが、一般のどうでもいい人を減らすのじゃなくて、組合活動家を全部首切るというのが今度の会社側の要求なのです。それでは組合側としては困る。私は民社の方々もこの争議の本質的なところを十分理解しないところがあったのじゃないかと思うのです。これは立場は異なるけれども、第二組合の幹部をみんな首切るといったら、第二組合でも全部ストライキをやります。今まで一般に行なわれておるような争議の場合には、組合が過大の要求をして会社は受け入れない。組合が徹底的に争議をやった場合には、組合はけしからぬ、無謀な要求じゃないかと世論は会社側に同情的で、組合側に悲観的になるのが普通です。今度の場合はそうじゃなくて、千二百名首切るのじゃなく、組合活動家を首切る、ほかの人じゃいけないんだという会社の横車が今度の争議の根本的な原因になっておるのです。これを一体警察側としてはどういうふうに見ておられるか、一つお伺いしたい。
  39. 曽我力三

    ○曽我説明員 先ほど非常に深刻であるということを申し上げましたが、ただいまお話しのようなわけで、企業整備反対闘争というのは、会社側の現在ないし将来にわたる一連の縮小ないし合理化の計画の案を前提として馘首なり合理化が進められる、経済的にも非常に打撃を与える、こういうことでありますから、非常に深刻であるという点は、一般の労働争議においてあまり見受けられなかったものがあった、かように私どもは見て、治安的にも関心を多大に寄せておる次第でございます。
  40. 板川正吾

    板川委員 一般の合理化というならば、これは別に希望退職を募ってもいいのです。会社は一般の合理化じゃいかぬと言うのです。組合活動家でない人を千二百人首切るのじゃ満足しない。組合活動家を全部首切りたい、ここに普通の合理化に対する反対運動と違うところがあるのです。そこが今度の争議を非常に深刻なものにし、激烈なものにし、あるいは治安的な問題にまで発展させた。今度の場合は、私は会社側の横車が九州地方における重大な治安上の影響までもたらしておるものじゃないか、こう考えておるのです。そういう点からいうと、私は現地へ行って見たのでありますが、警察官がどうもあまりにも会社側と結託をして、会社側の請願巡査のごとき態度をとっておられる。たとえば、幾つかの例を申し上げてみますと、何か第一組合と第二組合の者がけんかをした、暴力をふるったということにしましょう。その場合に、第一組合は当然のように検束されるが、第二組合の者は検束されない。もう悪い者は第一組合だというふうに警察当局は先入観をお持ちになっているのじゃないか。それから、たとえば検束して引っぱる場合にも、第一組合の人には手錠をはめる。しかし第二組合の人には手錠をはめない。そういう差別をされておる。それから坂本先生も言われたと思いますが、警察官が会社側の施設にほとんど寝泊まりをしておる。中正公平であるべき警察官が会社側の施設に寝泊まりしておる。調査によると、使用の料金を払うそうであります。料金を払うからいいといっても、これは先ほどのように首切られる立場の第一組合側の方からいいますと、警察官が会社側の施設に泊まって、会社側と通じてわれわれをめちゃくちゃに弾圧するのじゃないかという先入観を持つことは当然なんです。そういうところに警察に対する不信というものが起こっている。しかもその警察官執行吏あるいは裁判所等が法にきめられた手続を守らないで一方的にやるために、ますます裁判に対する不信、警察に対する不信というものが第一組合側に強く印象づけられて、争議が非常に激化する原因になっておると思う。こういう点を一体どういうふうに現地へ行ってこられてお考えになったのですか。
  41. 曽我力三

    ○曽我説明員 昨年夏からの三池争議に伴う不法事案その他の治安上の問題に対する警察のあり方なり、やって参りましたことをいろいろ私ども検討いたしておるわけでありますが、少なくとも、一般的にも、労働争議には絶対中立で、介入はもとより、警察としてとるべからざる行為をしてはならないという原則をもって貫くべきでありますが、今回の場合は、より以上非常に深刻であると同時に、現地において会社、旧労、また最近においては新労組というような複雑な関係もありまして、警察としては、常に冷静な判断を失わないようにということをわれわれも申し述べておりますし、現地においてもさようにいたしておると信じておるわけであります。今回向こうへ参りまして、その点もいろいろ客観的に見ましたが、ただいま御指摘のような警察と会社との間に、結託とかあるいは何かえこひいきな考え方を持っているような事実は全くない、かように私は見て参りました。当然のことでありますけれども、さよう確信いたしております。  警察に対する不信ということでございますが、いろいろな面から警察の警備実施その他が不信を買うようなことがないように、われわれの最もすぐれた警察活動を行ない得るように今後とも努めたいと思います。ただいま二、三例がございましたが、新労に対して検挙をしないで、旧労に対しては検挙をするというようなことは、私はさような事実は承知いたしておりません。同じようなケースについてさような区別があることも毛頭ない、かように考えております。  それから会社の施設について部隊の宿営その他に利用させてもらっておるわけでありますが、これらにつきましては、現地は、御承知かと存じまするが、警察署外のいろいろな建物施設その他が非常に手狭で、かつ不如意でございまして、会社との特別関係ということでなしに、頼んで、われわれとして治安上最も必要な個所ということで拝借いたしておるというのが数カ所ございます。これらにつきましては、今お話しのように、それぞれ正規の契約をいたしまして実施いたしておるわけでありまするから、形式的にももちろん私は何ら問題はないと思いまするし、また実際におきましてもやむを得ない実情ではないか、かように見て参った次第であります。
  42. 板川正吾

    板川委員 たとえば、会社に施設を借りて所定の料金を払う、形式的には決して片寄っていない、こうお考えになっても、この争議の問題からいって、これはちょっと警察の考え方は甘いんじゃないか。争議になりますと労使の対立になりますから、絶対な中立を守る警察官というのは、どちらにも片寄らない態度をとるべきなんですね。たとえば、万やむを得ずある地域を借りるならば、会社と組合の了解を得て借りるべきじゃないですか。それならあるいは誤解が少ないでしょう。(「了解するはずがないよ」と呼ぶ者あり)了解する範囲のところでやればいいじゃないか。了解しないでやるから、第一組合側が不公平な感じを受けるんじゃないですか。だから当然これは組合が了解しなかったらしない方がいいのです。一方的に借り受けて、会社側に幾ら払うかしれませんけれども、それは形式的な金でしょう。そうすれば、これは組合側からすれば、警察がまるきり会社側について、われわれを差別的に扱って、会社側に甘く第一組合側に辛い、こういうふうに思うのは当然なんです。そういうことが争議を非常に激化させる一つの原因になっておるのですよ。だから私は、これは本来ならば関係ないところを借りるべきだと思う。どうしても借りなくちゃならないようならば、その事情を言って、第一組合にも連絡し、話をした上で、了解を願った上で借りるようにすべきがほんとうじゃないか。それを連絡もしないで、借り賃を払うからいいだろう、こういってやっていることは、特にこの争議が会社側から持ち出されて、組合側は何も要求していないで、受け身の争議だという状態の中で行なわれているのですから、私は一方に片寄る印象を与えることは否定できないと思う。そう言いますけれども、きょうの新聞によると、大牟田発として、「和田三池争議警備本部長は二十五日午後三井三池鉱業所の若林所長、田坂総務部長を大牟田署に招き「警察を会社業務のために利用するような印象を与えたり、いたずらに一般を刺激するような言動を慎んでほしい」と文書で通告した。これは最近会社側が報道関係者に対し、ことさら警察立場を誤解させるような発言をしているので、これを不満としたもの。なお警備本部が会社側に文書警告を行なったのは初めて。」きょうの日経の朝刊に出ております。そういう事実はないと言うのですが、事実会社側がやっているから、警察がこういう警告を発したのじゃないですか。(「警察は公平なんだ」と呼ぶ者あり)いや、警察が公平と言ったって、それは見る立場によって違いますが、私の言う点においては警察側が公平を欠いておる。ほかはわかりません。私はほかを問題にしているのじゃない。この問題については、私は私の理由から、警察がこの点において公平を欠いておるのじゃないかという考え方を持っておるのですが、いかがですか。
  43. 曽我力三

    ○曽我説明員 ただいまの新聞に載った警告文については私まだ報告を受けておりません。ただ、会社側において警察に出てもらうとか、あるいは警察の援護のもとにというようなことをもし言われた場合に、新聞等で誤解されるような、警察が何か会社が言えばすぐ出ていくんだ、会社の立場でやっているんだという印象を与えるようなことがあってはまずい。二、三そういった感じの記事もございましたが、それで私の部内でも、そういう誤解があれば遠慮なく会社に言うべきじゃないか、こういうことを言っておったわけであります。私今の新聞の記事は存じておりませんが、言うべきことはやはりどちらに対しても警察が誤解を受けない立場を申すべきである、こういう立場をとっておるわけであります。
  44. 板川正吾

    板川委員 会社が警察官に自分の施設や何かどんどん貸す、そしてピケ隊に対して一つの行動をとらせるということは、一般的に見ると、会社は中立の警察が親切に寝泊まりして守っているんだから、当然会社が悪いのじゃない、これは第一組合が悪いんだという印象を与えてしまうのです。(「それは与える」と呼ぶ者あり)これは民社党の委員の方も同意をされておりますが、そういう印象を一般的に与えるのですね。その点は私は意識しないでそうなったのだろうと思うのです。そこで、これはいかぬということに気がついて——会社側は意識的にそういう手を使ったのです。それで争議を有利にしよう、第一組合が無謀で会社側が正しいんだという印象を与えようとして、そういうことをやったのだと思うのです。そういう点を私は、これからでもいいから、誤解を受けないように、この警告をさらに実質的に行なうように要望しておきたいと思うのです。  次にお伺いしたいのでありますが、石原国務大臣が四月五日の本会議で、三月二十八日の三川構内の事件につきましては、「先ほど、武藤委員より、るる、お話があったのでありますが、この件につきましては、目下厳重捜査中であります」と言っておる。これは主として三月二十八日の三川鉱の衝突事件に関して調査をする、こういうことでありますが、その後の調査の結果では、どういうふうに実情を把握されたのでありましょうか。この武藤武雄議員は、「事件後重傷のため入院したものは、ピケ隊はわずかに三名でございます。」ピケ隊というのは第一組合であります。「新労側は、職員を合わせまして三十六名の多数に及んでいることでも、明らかであります。ピケ隊の三名も、前後の事情から、混乱時の同士打ちの公算もあるとのこともいわれておるのでありまして、この結果の事実から見ましても、暴力の責任がいずれにあるかは一点の疑いもなしと私は断定をいたしたいのであります。」と言って、暴力の責任はすべて第一組合にありと、前後の文言からしてそういう主張をされて、自由民主党、民社党の多大な拍手を受けたのでありますが、この三月二十八日の三川鉱事件について、武藤議員の主張されておるこうした事実が正しいかどうか、そういう点をまず一つお伺いをいたします。
  45. 曽我力三

    ○曽我説明員 三月二十八日の事件につきましては、まだ未逮捕者が相当数ございまして、捜査中でございます。今まで逮捕し、捜査いたしました全体的な見地から見ますると、ただいまお話がありましたような旧労側のピケ隊暴行的事犯もございますし、新労側からのものもございます。一部被疑者の中に会社の職員もございます。これは事実をさらに捜査いたしませんと、最終的な断定はいたしかねる次第でございますし、捜査の過程でございますから、詳細を申し上げるわけには参りませんが、ただいまお話しのような旧労側だけの云々ということは今言明し得ない、かように考えております。
  46. 板川正吾

    板川委員 これは目下事実を捜査中だというのでありますから、私はあとで一つ捜査の結果を御報告願いたいと思っております。  われわれの調査によりますと、この武藤発言は、内容において事実と非常に相違している点があります。もちろんこれは事件早々現地に行かれて、一日くらいで、そうして情報は主として第二組合及び会社側からとったのでありましょうから、どうも内容が片寄っておるように思う。実は私はこの間行ってきたのですが、この武藤さんの発言が事実かどうか調査いたしました。ところが、三月二十八日の三川鉱事件というのは、第二組合就労すべく三川鉱の事務所の前にやってきた。もちろんこのときは確かにこん棒等は持っておらなかったという説もあります。ですから、それは私も否定いたしません。ただその第二組合の先頭におった暴力団が三川鉱の入口にピケを張っておった百五十名ほどの第一組合員にコショウで目つぶしをくれて、そうしてこん棒を持って、百五十名を袋だたきにぶっぱたいたのです。そうして、この百五十名ほどのピケ隊のうちで、百十名がけがをし、五十八名が入院した。三名じゃないのですよ。しかも同士打ちじゃないのです。私は、幾ら何でもこれは事実をあまりにも歪曲し過ぎると思っているのですが、そうじゃない。百五十名ほどいた無抵抗ピケ隊に、暴力団が、会社が与えたカシのこん棒で、会社が買ってくれたコショウで目つぶしをくれて行動不能にして、そこをぶっぱたいた。そうして、皆が倒れてどうしようもなくなったところで、第二組合員がへいをよじのぼって繰り込み場の方に、構内に入っていった。そこに第一組合の応援隊が来た。この場合は当然第二組合暴力団が——もちろん、新聞報道によると、暴力団が協力するというのを第二組合組合長はお断わりすると言ったと報道しております。さすがに、まさか暴力団にお願いしますとは言いませんけれども、しかしこの場合においてはお互いに共通の立場でしょう。そこで、暴力団がはたいて、ピケ隊を排除したあとで、第二組合員が構内に入ろうとした。そこへ今度はよその隊から応援に来た第一組合員が、第二組合はけしからぬということで、そこで乱闘があり、しかも中に入って繰り込み場に終結した第二組合員を中まで迫っていって、けしからぬというので乱暴を働いたということは事実でしょう。これは否定はしませんが、しかし問題は、本会議場で言われたように、第二組合が何もしないのに、第一組合がひっぱたいたのじゃないのです。第二組合暴力団が来て、暴力団が第一組合員をはたいて、それからへいの上から会社の職員が石ころや何かをどんどん第一組合ピケの上に落として、それから暴力団と二つピケ隊を完全に打ち破って、そこで第二組合が入っているところへ第一組合の応援隊がかけつけて、そこで乱闘になった、こういうのが私は事件のきっかけであり、大きな不祥事件を起こした事実だ、こう私の調査では思っておるのです。もちろんこれは警察立場からもうちょっと具体的に、私の主張が正しいか、それとも武藤君が四月五日に言った、第一組合が全部攻撃をした、そうして三名のけが人も同士打ちだ、第二組合員が三十六名も大けがをした、こういうことはあまりにも事実とはかけ離れておるので、私は事実をただしたいというつもりで発言しておるのですが、これについて今までの調査の結果からいってどういうふうにお考えになりますか。
  47. 曽我力三

    ○曽我説明員 数字的な点は、いろいろ今まで私ども速報その他で得たものがございますけれども、私は捜査の状況を見た実感から申しますと、被疑者の供述が必ずしも一致しないとかあるいは黙秘しておるとかというような面で、確実な現場を描写したところの態様というものは、もう少し時日をかしていただかなければならない、かように考えております。  ただ私はこういうふうな見方をしておるわけであります。この事件は門の外と中の二つ事件に分けられる、一連の問題でありますけれども。門の外で強行して乗り越えようとした、これに対してピケ妨害をした、その間にいろいろな問題があった。先ほど申し上げたような新労なり会社職員が、そこにいろいろな暴力事案に介在をしておるということはここで考えられるわけでございます。それから今度は中へ入ったところで、繰り込み場へ参りまして、今度は逆に新労側がいろいろな暴力を受けておる。その間にあるいは相打ちもございましょう、これらの真実の状態というものは、いま少しく捜査を進めまして明らかにしたいと考えております。
  48. 板川正吾

    板川委員 それは私も一つ公平な捜査の結果を見てまた発言をしたいと思うのです。そこで石原国務大臣も言われておるのでありますが、その後の調査の結果、会社側と暴力団の関係はどの程度に判明して参りましたか。また大牟田に集まった暴力団の名前、その勢力、そういう関係を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  49. 曽我力三

    ○曽我説明員 ただいま御質問のありました点は、実は私と同行いたしました捜査一課長が、主としてこれに関連する事件、特に三月二十九日の事件等をいろいろ検討いたしておったわけでありますが、私の承知する限りにおきましては、会社といわゆる暴力団との間に何らか関連があるということはまだ聞いておりません。これもそういう予見を持たない私どもの捜査の過程から、いろいろ判明いたすことだろうと思いますが、目下のところはさようなふうに考えております。
  50. 坂本泰良

    坂本委員 ちょっと関連して、今の問題ですが、三月二十九日は久保さんが刺殺されて、組合員が数十名重軽傷を負った日ですが、これについては第一組合、第二組合は家宅捜索その他で捜査が進められておる。会社側から明らかに暴力団に凶器を供給しているという点、これはもうあの四山のあそこにいた者が目撃しているところなんです。上からさくを越えて暴力団にこん棒を渡し、目つぶしを渡しておった。そこで私も、あの第一組合、第二組合の捜索のあった直後に参りました。なぜ会社側を家宅捜索をしないか。あまりに片手落ちじゃないか。だから、今まで会社と暴力団の間の関係が判明できないのは、会社側を家宅捜索して、関係者を逮捕して調べないからそういう結果になるのだ。それを追及すれば、任意捜査をしておるというのですけれども、任意捜査というのは、しているのか、していないのか、われわれにはわかりません。おそらくしていないのじゃないかと思います。少なくとも両方の組合本部を捜索しておる以上は、会社も、あの事務所の本部も、それから四山鉱も三川鉱も、会社側の内部を捜索して初めて公平な捜査ができると思うのです。その点いかがですか。会社を捜索されずに、あなたたちは会社と暴力団の関係をはっきりさせるという自信があるのかどうか。
  51. 曽我力三

    ○曽我説明員 二十九日の事件は、旧組合ピケといわゆる暴力団との関係の事件でございまして、従って暴力団関係、特に当日のパレードに参加した者を中心として被疑事実を洗い、かつこれに関連して参考人なり、あるいはこれに相対したところの暴力事案になるかどうかという過程から、ただいまお話のありましたような暴力団関係者と二組合関係、一組合関係というものは捜査のいわゆる被疑者の取り調べの中に入ってきておるようなことでございます。この事件から直接ある種の証拠を得られない限りは、会社まで発展する、あるいは会社と何らかあるということだけでこれをガサをやるとか、あるいは調べるということには参らない、かように考えておるわけであります。目下逮捕者は相当に上っておりまするが、今後これまた捜査の過程によっていろいろ真実が判明いたすことと考えておりますから、その時期には明らかにお示しすることもできるかと思います。
  52. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 発言者に申し上げますが、法務大臣は一時に行かなければならぬよんどころない用があるそうでありますから、もし質問があるなら法務大臣に先にやって下さい。
  53. 坂本泰良

    坂本委員 それでは法務大臣にもあわせてお聞きしたいのですが、今の問題でございます。組合側は第一、第二組合とも家宅捜査をしておる。しかし本件の場合は組合本部と何の関連もないんです。それをやっておる。そうして会社側はちっとも家宅捜査をやらないでしょう。だから警察官は五千名も来ておるが、会社の雇い兵だと言われるのはそこにあるんです。すでに被疑者は検察庁に回っておる。それから第一組合の方も、これは法務大臣には二十八日三川鉱の問題ともあわせてお聞きしたいのですが、組合員に対して五十数通の逮捕状をとって次々に逮捕しておる。そうしてほかの関係で来たのも、逮捕状が出ておるからといってそこで逮捕する、こういうようなことをやっておる。しかし、もう事件は検察庁に参っておりますから、私は検察庁の方で会社側の家宅捜査くらいはすべきじゃないかと思うのです。ちょうど東京において選挙違反で警視庁があげておるような、前総監の田中の選挙違反は、検察庁がほんとうに捜査に乗り出されて、そうして公平な捜査をされて、検察庁に対しては信頼感が出てきているわけです。そういうような関係で、私たちもあの現場にしょっちゅう行っておるんですから、法律家として見て捜査に非常に不公平な点がある。警察は会社の雇い兵で、捜査が逡巡して、やると言ってももう一カ月にもなっているわけです。それをそのうちに発表しますなんというのは、警察庁は一営利会社の御用機関だ、弁解をしておるにすぎない、こういうふうに考える。検察庁の方へ移されてからすでに一カ月にもなっていますから、その捜査の中において、私はやはり会社側の本部から捜査をしなければ、目つぶしを手に入れたこと、それからこん棒を会社側の中にたくわえていたこと、そうしてそのこん棒をかきね越しに暴力団に渡したこと、それからこの暴力団や灯をともす会なんというものが大々的に相当金のかかる行為をやっておるのに、会社側から金が出ていないということは、常識上考えられない。そういう点もあるから、一応は三井鉱業所の事務所も所長のおるところも、それから三川鉱、宮浦鉱と家宅捜査をして、そうして慎重に厳重な捜査をされることが至当じゃないか。全学連の問題にしても羽田の問題にしても、何ら関係のないようなところを、福岡までもどこまでも行って家宅捜査をしておられるのです。これは警察は会社の雇い兵化しておるからやり切れないと思うのです。だから検察庁だけはこの暴力事犯について厳正公平な捜査を進めるということで、おくればせながら会社側も捜査をして、そうして久保さんが殺されたというこの大きい問題についての厳正公平な結論を出してもらいたい、こういうふうに思いますから、この点についての御所見を承っておきたいと思います。
  54. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 今回の三池事件に関しましては、警察庁も当然だと思いますが、検察側におきましても、労働争議である以上、会社側も第一組合もあるいは第二組合も、何らの差別なく公正なる立場でやらしております。ただ事が暴力に触れて参りますれば、暴力事犯に対して、いわゆる刑事事件として検察庁がその暴力を起こした原因について、またその実情について手を加えていくことはあたりまえだと思います。そこでなぜ会社側を捜査しないかというお尋ねでございますが、これは現地の方のいろいろの事情もあって、私ここで詳しくその実情は承知いたしておりませんが、今まで受けた報告では、大体例の四山事件については、相当暴力団も検挙いたしまして、取り調べております。その結果、はたしてその凶器が会社側から出たという疑問が出て参りますれば、これは当然会社側を調べると思いますが、まだおそらくそこまで調べがいっていないのではなかろうか。その途上でございますから、捜査状態によりましては、あるいは会社を調べるということも当然あり得ると思います。しかしこれは現地の警察官やり方一つおまかせ願いたい。決して不公平なやり方をさしておりませんから、厳正公平なる立場でやらす方針に福岡の検事長にも申し伝えておりまするから、その点は疑念を抱きいただかぬようにお願いしておきたいと思います。
  55. 坂本泰良

    坂本委員 実はまだ法務大臣にも検察庁に関連してお聞きしたいことがありますけれども、検察庁の長官はなかなか出てこないので困ります。大臣はよくおいで願うので、いつでもお聞きできますから、きょうはこのくらいにしますが、お願いしておきたいことは、これは非常に重大な社会問題になっておりますから、一つ現地の、これは熊本検察庁が主として調べておると思いますが、一つ現地の方の調査をお願いいたします。もちろん捜査は慎重を期さなければならぬけれども、こういうような事件の場合は、やはり罪証隠滅が起こるのですから、何でもない組合員は二日、三日の傷で逮捕されて十日間の勾留あるいは勾留のまま起訴されておるわけですから、この点の会社と暴力団の関係については、私はまず家宅捜査をやって、この捜査を始めるべきだ。逆になっておりますけれども、一つこの点はぜひ調査を現地でされまして、当委員会に御報告を願いたいと思います。
  56. 板川正吾

    板川委員 今坂本委員も言われましたが、私も四月二十二日の大牟田裁判所で勾留理由の開示裁判に出席したのです。そうしたら、命令を下した裁判官に逮捕の理由を伺いたいと言うと、理由がどうも十分明快に説明できない。それで勾留しているのはどういう理由かといえば、証拠隠滅だ。証拠隠滅の理由をと言えば、これまたあまり明快に答弁できなかった。そうして弁護人からの質問にちぐはぐな答えで、しまいには検察官に裁判官みずから事情を聞く、こういう状態なんです。弁護人が、そういうあなたが自分で命令を下したのだから、あなたの判断はどうでしたかと言うと、ああそうですかなんて言って、さっぱり事情がわからない。休憩になって、休憩後話し合いはどうなったかというと、とても頭が混乱して判断する力がなくなったから、きょうはこれで休ませてくれ、こいうことで裁判を開かなくなってしまったんですが、それは私考えるのに、この争議——裁判官が判断する能力を失ってしまっては困るのですが、これは私が察するところでは、争議が行なわれておるが、よくわからぬ。しかし警察が会社側に宿泊したりなんかしている関係からいって、当然会社側がよくて、第一組合側ピケがすべて違法である、こういう前提があるから勾留も当然だと思っておる。しかし裁判が開かれてみると、説明がつかなくなってしまう、こういうような事実があったんです。私目の前で見てきた。ですからこういう点はやはり裁判の公平を期する意味から、また裁判の威信を保つ意味から、私はその法に照らした堂々たる理由の開陳があってしかるべきじゃないか、こう思うのですが、こういう実情一つ御調査の機会に調査をしてもらいたい、こういうことを要望しておきます。
  57. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 裁判官の問題は私の方の所管でございませんからお答えするわけに参りませんが、勾留を裁判官に申請した検察側の立場としましては、こういう多数の暴力行為の場合には、その間にあるいはいろいろの通謀がありましたり、あるいはまたいろいろな共同正犯の問題もございましたり、相当にいわゆる資料についての隠滅行為が懸念されるのでございます。ですから、従来こういったような大きな事件につきましては、相当に証拠隠滅という問題から勾留を請求している場合がございます。今度の場合はどういう理由か、私まだ詳しく聞いておりませんが、概念から申しますと、そういうことでおそらく請求しているのではなかろうかと思います。裁判官の方は私もよくわかりませんから、よくいろいろな事情を調べましてお答えいたします。
  58. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 警察庁の方からの調査はだれとだれとだれに会われて、どういう調査をするのですか。今度のあなたの調査の目的とどういう人に会われたか。全部に会われたか……。
  59. 曽我力三

    ○曽我説明員 私は事件とか警備の実施の事実をこの目で見まして、警備等について調査というよりも、その正しい運営についていろいろ私の意見も言い、将来の警察の運営に適正を期するというような意味で、連絡を兼ねて参った次第であります。従いまして、現地では警備本部に主として参りまして、いろいろ幹部とはそれぞれ話をいたしております。警察も、御承知のように、熊本県と関係がありますから、両県の首脳部はもちろんでありますが、管区警察局が、こういう重大な治安問題でありますから、いろいろこれについても事務的にも配慮いたしておりますので、それぞれ私はもう何回となく連絡検討などをいたしておるような次第でございます。
  60. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私が行きましたときの状況では、警察官労働争議に介入することを極力避けて、公平にやっておったようであります。第一、二十八日のあの不祥事は警察からいうと、会社が就業の時間すなわち行動の時間を早めて、新労働組合が行動を開始した。ですから警察官があらかじめ予防するにおくれてしまった、こう言っているのです。そのくらいですから、会社と警察との間においては連絡がむしろちぐはぐになっておる、こういうのです。警察の方からいうと、昔式に会社は警察私兵化しようとする動きがあるのじゃないかということに対しては、今の警察法は、総理大臣といえども命令を受けない、公安委員会命令を受けてやっておる、こういうように言っておりました。そうすると、まあこれは会社側ではありませんが、会社側に対してどうしてそういうことをしたのだろうかということを聞いてみますると、これは想像ですが、警察に連絡すると、警察はむしろ労組に内通されてしまうおそれがある、こういうようなことを言っておりました。これは疑心暗鬼を持っておる。これでは全体的にどっちも疑心暗鬼を持っておってはうまく治安が保たれないと思うのです。そういう意味で、私は両方非常に気の毒だと思う。なかなか捜査というものはむずかしいもので、現地においては久保さんの刺殺事件があったときに、あらかじめ町を練り歩いたときには、トラックの上に何らこん棒のような凶器はなかった。それがあの現場においてはそれがあったのだ、こういう写真を見せられると、何かその間に積み込んだかのように思える。これが現地の報告でした。ところが今度は本庁までまた帰ってきて調べると、いやそうではないのだ、それは確かにそういう写真もあるが、そのときには暴力団が全部上に乗っておって、それを初め足元で踏んでおったのだ、それで写真には写っていないのだ、初めから暴力団はそれを用意して、そして町を練り歩いたあとに現場に行った、こういうように大へんそこに食い違いが出てきた。初めのように言われると、何か途中で会社が凶器を持ち込ませたように思えるというようなことで、これは捜査過程においては、こういう曲否を決するのは非常に困難だと思うのです。そういうように公平にやっておってもらうにもかかわらず、第一組合から警察官が非常に不信をかっておるというゆえんのものは、やはりそこに何か欠けておるかと思っておった。ところがただいま質問中に明らかになりましたように、会社の施設を警察が使用しているということは、これは理屈抜きの印象として、会社に警察官私兵化されているというひがみを受けるのです。ところがただいまの御答弁中にも、使用料を払えばよいのだ、差しつかえないと思っているし、とにかくあそこにそういう施設がないのでやむを得ない、こういうように御答弁をされておるのですが、いま一つ、政治はそんなものじゃないと思うのです。そんなところにたむろしているくらいなら、むしろ野外テントを張ってでも、その警察官の気の毒さを市民に知らせる、そしてまた労組員の家族に知らせる、それだけの公平を保ちつつ誤解を生ずるというのは、いま一つ自制心がないからだと思うのです。とにかく至急にこの会社の施設物を使用しないような処置をとらなければ、これは感情上第一組合を刺激し、また第二組合といえども、われわれは決して会社の御用組合になることは好んでおるわけではない、組合組合との間に闘争方針を異にするだけのものであって、ひとしく労働者の権利を擁護しなければならぬ団体ですから、そういう意味において一つ先ほどの会社の施設物の使用をこのまま継続していくことについては、わが党としても非常に異議があるところでありますので、一つ善処していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  61. 曽我力三

    ○曽我説明員 会社の施設物の利用の問題につきましては、先ほども御意見がございまして、またただいま御質問がございましたが、現在施設で利用いたしておりますのは、公共的な建物、それから炭住などの付近におきましても、これはおそらくどちらの組合員にも関係があると存じますが、その付近の建物を、了解を得てお借りするというようなものもございます。全体が会社のものでないことはもちろんでございますが、会社のものについて客観的にも批判されるというような疑いがあるとか、あるいはそういう懸念があるということがございますならば、その点よくただしまして善処いたしたいと思いますけれども、ただいまの点は今少しく研究をさせていただきたいと思います。
  62. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 警察官の尊いのは、犠牲を一般人より多く受けるというところに実は尊さがあるのです。もしこれなくして、警察官が一般の公務員のような気持であったなら、警察官はそんなに尊敬されないものである。同時にまた一面、非常な権力を持っている。権力を持つ者は、犠牲を多くする覚悟で警察官を志願されているのです。従って私はテントを張るなりみんな夜外で二、三日することになれば、市民も許しておきません。かくして再び第一組合との間に了解を得て入ることはよろしい。それだけの決意を、気の毒だけれども警察官に求めたいと思います。この点をさらに現地に指示されんことを心からお願いしておきます。
  63. 板川正吾

    板川委員 今大野委員が非常に公平な意見を言われたので、私も率直に今の点について、ちょっと話は横道にそれますが、申し上げましょう。警察官が使っているのは、会社の施設ばかりでないというのも、たとえば市の体育館を連隊本部が使っておりますが、この場合は公共的なものですから、私はそれはやむを得ないのじゃないかと思うのです。しかし四山では社宅のあき地にある会社の集会所、保育園を全部使っております。それから三川鉱では、会社の正門前の技工室、これは会社の建物ですが、そこに警察官が百五十名ほどおります。それから保育園を全部使っております。それから宮浦鉱では、会社の人事事務所、さく内の保安講堂、クラブ、それから武道場、保育園、これを全部使っております。それから港務所では講堂、保育園、これも警官が使っておられる。こういうように会社の施設をほとんど使っておるのですよ。そしてそこから出動し、警官隊も、会社が供与しておるんだし、警察全体の方針が会社側に味方で、第一組合に敵だというふうに、警察官自身も泊まっているうちにそういう気持になり、第一組合を見れば勇往邁進、ぶんなぐりたくなるだろうし、第二組合はかわいがってやりたくなるだろうし、警察官暴力もずいぶんありますけれども、そういうところが警察官が公平でないように第一組合から見られるのも当然なんですから、今大野委員も要望されたような点は、一つ早急に十分考えてもらいたいと思います。  それで話を戻しまして、先ほど私が二つ質問したのでありますが、会社と暴力団との関係について、まだ証拠が十分にあがっていないからあるとは言えない、こういう返事でした。これは完全に、なければあると言えないということであろうと思いますから、もう少し追及を待ってみたいと思うのですが、第二の質問の、大牟田に集まった暴力団の名前、それからその勢力、これについて御答弁がなかったのですが、わかりませんか。
  64. 曽我力三

    ○曽我説明員 ただいま資料を持っておりませんので……。
  65. 板川正吾

    板川委員 灯をともす会、生産党、山代組、たくさんあるじゃないですか。
  66. 曽我力三

    ○曽我説明員 ただ、今この事件に関係のあるものとしましては、御承知だと思いますが、山代組等の暴力団、一連の土地の多数のいわゆる暴力団でございます。これは従前から会社ないし組合との間の争議に介在をしておるというふうには見られなかったと思いますが、少なくともわれわれとしては、この二十九日の事件で、これらの暴力団の出現をいろいろ具体的に見たような次第であります。それから、灯をともす会、大日本生産党、これは前からいわゆる情報宣伝活動をやっております。これは今までのいわゆる右翼と申しますか、そういったグループとしては最も顕著なものであると考えております。その他詳細にただいま記憶いたしておりませんが、いずれ詳細に御説明いたしたいと思います。
  67. 板川正吾

    板川委員 それではあとで一つ調査して、資料を出していただきたいと思います。  われわれが四日ほど行っていろいろあっちこっち当たってみると、たとえば三月二十五日に会社側は某金物店からカシの棒六百本買い込んでおります。それから二十六日には二十八日の三川鉱で使ったと思われるコショウをリヤカー一ぱい買い込んでおる、こういうものを某店が買い込んでおる。しかしそれはうちで買ったと言えば、その商店なり金物店なりは会社側からえらい圧迫を食うでしょう、ですからそれは言えないと言っておる。しかし買った事実はある。それから、そのカシのこん棒、凶器をトラックに載せて歩いておるのを組合側では写真にとっておる、写真があります。それから久保さんを殺した香月という犯人の刺殺寸前の写真も第一組合がとっておる、その写真が証拠となっておるのです。第一組合側では、暴力団なりそういった警察側の違法行為なりは口で言ったってどうしようもないから、写真でとって、それを証拠として言おうということでいろいろ写真をとってある。ところが、警察側では、組合側で明らかにそう思っておるのに、会社側のそういった点に少しも捜査の手を伸べない。だから警察はどうも会社側と共通しているのじゃないか、こういうように思われるのです。組合側でさえそういう証拠を持っている。これは写真ですから、人も格好も車も判断がつきます。映画じゃあるまいし、組合が勝手に何か作って、うその証拠を立てているわけじゃない。だからそういう点を、警察が中正で、いずれにも片寄らないというならば、第一組合の逮捕、家宅捜査、検束、そういうことばかりじゃなくて、会社側にそういうおそれがあった場合にはとにかく証拠を固める必要がある、こう思っている。一つそういう点は、資料がなければわれわれの方で十分用意しておりますので差し上げますから、公平な処置をとってもらいたいと思います。  お伺いしたいことは、警察のこの争議に対する方針ですが、炭労大会が終わった後とその前とでは、方針に大きな変化がありますか。
  68. 曽我力三

    ○曽我説明員 警察の一貫した方針は最初に申し上げた通りでありまして、炭労大会の開催と何ら関係ございません。
  69. 板川正吾

    板川委員 われわれの現地での調査によると、炭労大会の前までは、第一組合と第二組合の中間に立って比較的公平であったということを言っておりました。しかし炭労大会の後になりますと全く一変しまして、警察の態度というのは会社、第二組合私兵化している、こういう現実の動きを見ておるのでありまして、こういう点は前と変わらないというのでしたら、一つそういう線で、争議に関してはあくまでも国家権力は不介入というのが原則でありますから、中正な公平な態度を堅持されんことを要望して、私の質問を終わります。
  70. 坂本泰良

    坂本委員 関連して。——たくさんありますが、もう時間がありませんから、今のと関連したこと一つとあと一つだけ伺います。  四月十八日の問題がありまして、四月十九日の朝福岡の警察本部に宮地本部副長を社会党の山花教宣局長以下国会議員、県会議員が訪問しまして、いろいろ抗議をした際に、本部副長は、警察庁の本部の方針がきまったからやるんだ、こういうようなことを申しておるわけなんです。これはちょうどあたかも今質問がありましたように、炭労の大会が藤林あっせん案拒否に決定してそれから警察の態度がずっと変わりまして、そうして卵型と申しますか、警察官が千名ぐらい、あるいは五百名くらいのときもあるでしょう、第二組合の百名か百五十名を中心にして、それを警察官が取り巻いて、そうしてそのままピケを排除して中に繰り込んでしまう、こういう方針をとっておる。さらに白帽と言っているのですが、今までの警察官と違って白い鉄帽をかぶって、それがいわゆる先鋭部隊と称して、そうしてピケを排除して、そこに乱闘が起こって組合員死傷者がこの間もたくさん出ておる。これは私はこの前は警察庁長官に質問しました。一昨年から昨年にかけて、〇〇鉱業所というので、福岡の警察本部が訓練をしていた。その訓練部隊が今やってきたんだ。そうして強引にやっておるわけです。これは少なくとも私は警察の公正な行き方とは言えないと思うのです。仮処分についても、執行吏の要望がなかったら警察力の動員はいけない。それを前の日から準備をして、そうして卵型に包んで中に入らせる。これはあまりに会社に一方的じゃないですか。ことにそれが炭労大会の藤林あっせん案拒否に出たときから現われておる。これはいかに考えても公平とは言えないわけです。ですから、この警察庁本部からもうあまりぐずぐずせずにどんどんやっちまえ、第一組合はうんと逮捕をしていい、けがをするやつはけがをさして、そうしてこの際一挙に会社の勝利に帰するようにやってみよう、岸内閣がそうじゃないかと思うのです。それだから、そうやっておるのじゃないかということが、ゆゆしくもこの警察本部副長の、本部の方針だからやるのだと言うことに現われておるのです。こういうような指示をされたかどうか、それをお聞きしたい。
  71. 曽我力三

    ○曽我説明員 ただいまのお話の中の宮地本部副長が山花議員等の議員団に対して答えたという内容につきましてつまびらかにいたしませんが、とにかく本庁の方針なり指示によって今回の三池の争議に対する警備対策をやったという事実は全然ございません。ことに、そういう意味でなしに、従来から申し上げておりますような意味争議不介入、中立、しかも不法事案については十分に慎重を期すると同時に、その職責を遂行する、こういう面においては常時指導し、あるいは指示いたしておるのでありますけれども、ただいまのようなことは全然ございません。  十八日ないし二十日にございました会社の新労の就労の際の警備につきましては、これはあらかじめ打ち合わせということでございましたが、そうではありませんで、警察側としては将来強行就労ということが仮処分の関係で当然起こり得るということで、いろいろ警備的には内部で検討はいたしております。急に会社から就労するのだという通知がございまして、それに即応し得るような態勢がないと、いろいろな不測の事案を起こすおそれもあると考えるのでございます。ことに、御承知のように、今回の争議の態様を私も現地で見まして非常に感じたのでありますが、深刻以上でございまして、単にそこでぶつかった、警察が飛び込んだということで収拾し得る状態ではない。かような全般的な状況があるのでありまして、その中で強行就労が行なわれ、かつそこにごく面接した場所に旧労の多数の方々がおって、これに対する阻止が行なわれる、こういう状態下において警察としてとりました警備措置でございまして、これにつきましては、ただいま御指摘のような、警察がこれをやれ、あるいは就労させろ、こういう前からの強い方針である、こういう意味合いでやったものではございません。
  72. 坂本泰良

    坂本委員 それはわれわれはもう十日間も向こうに行って、朝晩よく見ておるのですよ。警察はもう明らかに会社の就労を手助けするためにあそこにおるとしか見えないわけです。だから会社の雇い兵だと言われるわけです。  そこでお聞きしたいのは、現在福岡県警から大牟田に行っておるのが二千五百名、熊本の県警から千三百名、他県から千数百名、計五千名が動員されて、二千五百名があそこに常時やっておる。なお新聞によると、中国方面から千名、近畿方面から千五百名がここに到達するといわれておる。これはやはり警察庁本部の方針と指示がなければ、こういうことは私はできないと思う。こういう方針をとっておられるかどうかという点。  もう一つは、何のために七千名、八千名もの警官をそこに動員するか。いいですか、会社のあの第一組合をぶつつぶすという方針に加担するために、この八千名の警官をあそこに集中させるのじゃないですか。何のためにやるのか。それで、そういうような警察官を動員しているから、この週刊新潮の四月二十五日号を見てごらんなさい。警察官自体も、去るも地獄残るも地獄、交番なんかからっぽになっているじゃないですか。そうして警察をなめた強盗も出ておる。放火犯も跳梁しておる。熊本北警察署なんかも、いろいろな問題が起きておる。私はきょうはこういうのを詳しく聞きたかったのだが、それから福岡の駅の前では夜の女が二十人ぐらいのが、今は百人近くもおる。何で三池の一会社を擁護するために九州全体の治安を軽率にするのですか。九州のあの一般の国民の治安をうっちゃらかして、何で三池の一会社の擁護のために警官が行きますか。警官が七千名も行けば行くほど、ほんとうに自分たち生活権を奪われる、第一組合員は死んでも反抗しなければならないという立場に立っておるのですよ。それがはたして日本の警察のやることでしょうか。何で七千名も八千名もの警官をやり、熊本あたりでは、道案内に行っても、その交番の巡査がいないからできないような状態になっているのです。こういう週刊誌なんかも、これは綿密な調査をした上で書いておるわけです。うそじゃありませんよ。真に国民の治安を守る警察が、国民の税金をとりながら、何で大牟田に七千名も八千名も集結して、常時二千五百名も置いて、そうして一営利会社に味方をして、真の日本人を何百名もなぜ傷つけますか。実際そのことが現われているでしょう。もちろん第一組合員も多少の行き過ぎはありましょう。しかし第二組合という裏切り者が出ておる。会社はその青年行動隊をどこにたむろさせておるかというと、会社のもとの三池の所長の二号の大きい邸宅が、大きい料理屋が、第二組合員の青年行動隊の宿舎になっているじゃありませんか。あなたも行ったら見ておるでしょう。大牟田の市民は見ておりますよ。そういうようにして、そういう裏切り者とか会社とかを助けて、一万名の第一組合員をみな殺しにしていいのですか、日本の警察は。しかもその反面には、治安は乱れておるでしょう。九州には、放火も多いじゃないですか。この点について、きょうは長官にとくと私は質問したかった。だから、そういうような情勢にあるのに、はたしてこの近畿あたりからも千五百名も動員する方針でおるのかどうか、中国から千名の動員をする方針でおるのかどうか、はっきりしたことを答えてもらいたい。近くあの送炭場の仮処分が出たならば、いかにあなたがうそを言っても事実が証明してきますからね。われわれは、法務委員会では、そういう事実が起こらないようにしなければならぬ。うそを言わぬようにして、ほんとうの国民のための警察立場に立って、私は御答弁を願いたいと思います。
  73. 曽我力三

    ○曽我説明員 警察官を多数現地に増援しまして、相当長期にわたって現在警備に当たっておりますことは御指摘の通りでございます。それで、これに対して新聞紙上での、中国、近畿からも応援を繰り出すというふうなことは、私どものもとでは現在は考えてはおりません。と申しますのは、ちょっと御説明申し上げますと、今九州で三池問題の発生後の治安情勢から検討いたしまして必要とする数は、関係する福岡県並びに熊本県の県公安委員会から各県に要請いたしまして、九州各県から増援を願わざるを得ない、こういうことで、公安委員会間の応援によって行なわれている。これにつきましては警察庁は関与はいたしておらないのでございます。それから中国並びに近畿につきましても同様の法律的関係になりますけれども、事柄が全国的になりますと、管区警察局が九州、近畿ないし中国にも御承知のようにございますが、管区の方で管区内の状況を勘案しまして、状況によっては、そういった治安状態がくれば、増援を願わなければならない。こういうことで、あらかじめそういった待機を願う場合がございます。今回はまだ待機という事態にも至っておりません。私現地で判断いたしまして、現在の警備力程度で大体いけるのじゃないかという一応の見方をいたしておりますけれども、今お話のように応援いたしますと、留守の方が警察官が二割、三割、はなはだしきは四割留守になります。これのあとの態勢をがっしりやらないと、この争議のために治安が他の面において非常に支障を生ずる。この問題も重視いたしまして、いろいろこの問題の調査を現地でいたさせております。そういったような結果、現在までのところ、この動員によって顕著な治安上の問題は発生いたしておらないのでありますが、将来長期化いたしますると、当然これは考えなければならない問題だと思います。そういった場合に人員をどういうふうに差し繰るかということにつきまして、適正を期したいと存じておるわけであります。  それから、これらの動員が三井争議のためにさかれるということは確かに大へんなことでございまして、私どもは従来のたとえば三月二十八日、九日の事件等にも見られましたような流血あるいは人命をそこなうというような事態、あるいは今回のような一組合、二組合の普通の争議と違った一種の感情的な問題も介在した労働争議におきましては、いろいろな場合が想定されるのでありまして、あとでほぞをかむような事態を生じたくない、何とか一人でもけがなり人命を守りたい、かような気持からこの警備の問題も検討いたしております。また半面におきまして、もしこれがそれまでにしなくてもいいという事態になりますならば、先ほど申し上げましたような線で、できる限り早く事態を警察の人数におきましても減少せしめ、正常に復帰せしめたい、かような立場で十分に見守って参りたい、かように考えている次第でございますから、御了承を願いたいと思います。
  74. 坂本泰良

    坂本委員 一般の治安を無視して、何のためにあそこに二千名、三千名の警察官を動員させているのですか。それにかかる金は幾らかかりますか。そうして警察官があそこにおるために、警察官もあるいはその他の者も重軽傷を負うわけでしょう。警察官もけがして、熊本あたりでも帰っている人があるでしょう。かぜを引いて帰った者もおるし、けがした者もあるでしょう。福岡県、九州全体にありますよ。砂川事件でも、あの守備についた警官の一人が自殺をしたことをあなたも御存じでしょう。今度もお互い日本人同士が、しかも警察官と第一組合との重軽傷問題が四月の二十日に起きておるでしょう。何で警察官は一三井のためにあそこに行って、そうして同じ貧乏人の労働者とけんかをしなければならぬか、巡査として月給をもらっておるから、命令に従ってそこに行かなければならぬ、警察官をやめれば自分のうちは飯が食っていけないのだ、そういうような状態なんですよ。全くけしからぬのは、三井の一営利会社であるけれども、それに警察官が応援するような客観的な今の状態になっておるということです。あそこに警察官が二、三千名もおるのが全部引いてしまったら、傷害は絶無とは申しませんが、第一組合警察官とのせり合いで負傷者が出るのよりも少ないのじゃないかと私は見ますよ。だから三井の営利会社を応援するために警察官が行って、貧乏人の警察官が貧乏人の労働者とお互いにいがみ合って、そうしてかぜを引いたり、病気もしたりしなければならぬ、けがもしなければならぬ、まことにみじめな状態なんです。こういうことも考えて、治安を守ると言うが、何の治安を守るのです。三井の会社がああいうばかなことを撤回して、希望退職でやってしまえば、そういう問題は解決してしまう。労働者仕事をしたいけれども、ロックアウトをやる、千二百名の首切りをやる、その中には組合活動家として組合員全体を守るための活動家がいる。それは会社側にはよくないですよ。その首切りをやる。慶応大学教授の藤林はやはり慶応大学の資本家の中の教授だ。ああいうあっせん案を出す。そうして哀れをとどめるのはやはり貧乏人のせがれである警察官と貧乏人の労働者だけじゃありませんか。警察行政は私はもっと考えてやるべきだと思う。このごろの藤林あっせん案拒否は、警察が会社側に一方的に援助するから三池はのし上がっているじゃありませんか。三池はつぶれても、日本の貧乏人はかえって生活は楽になりますよ。もっと国民のための警察なら、国民全体のための考え方に立ってやってもらいたい。その指導方針でも、藤林あっせん案前のあの警察やり方と、その後のやり方はまるで違っておりますよ。白鉄帽の者が昔の軍隊と同じように無抵抗ピケを張っておる労働組合に襲いかかって、こん棒でたたいているじゃありませんか。こういう点はしっかり考えて、今後治安の名に隠れて三井の擁護にならないように、また警察官が心ならずも、月給を取っておるがゆえに、巡査なるがゆえに、あそこに行かなければならぬということも、十分警察庁としては考えて、そうして一つやってもらいたいと思います。  なお最後に、これはきょうは時間がないから、ただ委員会で私から質問をして御返答はきょうでなくともよろしいのですが、四月二十三日の三池炭鉱労働組合の第二十四回中央委員会で公開質問状を福岡警察本部長に出しておるわけです。これは十項目あります。この公開質問状は、われわれもこれをこの通りと思うからここに質問しますが、「三池炭鉱労働組合員久保清氏が、暴力団の手によって殺されてから約一カ月、我々のいかりの前に三池の街から暴力団は表面上姿を消した。だが三池の街には新たな制服の暴徒の集団があらわれた。それは言う迄もなく警官隊である。警官隊は法と人権を全く無視し、幾多の労働者の血を流し、戒厳令下の街さながらに、暴ぎゃくの限りをつくしている。新聞紙上でも彼等を会社と第二組合私兵と呼んでいるではないか。我々はこのような警察の現状について再三にわたり抗議したのに、これについて何ら答えない。われわれはこれを黙過し得ないので、ここに公開質問状を発する。」というので発しておるわけですが、「1、三月二八日の三川鉱における会社と第二組合の計画的ななぐり込み事件について、会社と第二組合に関してはやっとおざなりの捜査をしたにすぎないのに、逆に組合員には五十数通の逮捕状を請求し続々逮捕して未だに釈放しないのはどういうわけか。2、同事件について会社については一向に捜査もせず、申しわけ的に第二組合本部を捜索しただけで計画的犯行の証拠いんめつを看過しているばかりか、逆に組合側は本部ほか五カ所を一斉に捜査したのはどういうわけか。3、これらの諸点について勾留理由開示公判において全裁判官が組合側に共謀のなかったことを認めているにもかかわらず、警察が今尚このような態度をとっているのは何故か。4、三月二十九日の久保さん刺殺事件について、暴力団が兇器をもって行動しているのを警察は目撃しているにもかかわらず、兇徒集合罪として逮捕しないばかりか、職務質問も制止もしなかったのはどういうわけか。この時の警備責任者の処分がなされたということはきいていないが、これはどうなっているか。5、久保さんを殺害し、多くの組合員に傷害を負わせた暴力団を目前に見ながら、一人も逮捕しようとはしなかったのはどういうわけか。6、このとき、会社職員暴力団に兇器を供給していたことが明らかであるのに、これの逮捕が未だになされないのはどういうわけか。7、又会社が暴力団をつかったものであることは明らかであるのに、会社に追及の手をのばさないのはどういうわけか。8、四月十八日三川鉱強行就労事件においては、深夜、執行吏夜間執行令状も示さないのは勿論、組合員の前に姿もあらわさないのに数千の武装警官を投入し、交通遮断までしたこと。またわずか十三名のピケ隊執行であると称して襲いかかり、警察の護衛の下に大量の第二組合員就労させたのはどういうわけか。9、右のような違法且つ不公正な警察の処置について強い抗議をうけたにもかかわらず、さらに警官が四月二十日宮浦鉱において全く同様の行為をとったのはどういうわけか。10、しかも右事件について、警察官暴力により負傷した組合員を逆に逮捕したのはどういうわけか。」以上十点。これはよく本部長とも協議されて、一、二日のうちに警察庁へ参りますから、その際にお返事を承りたいと思います。
  75. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本日は、この程度で散会いたします。     午後一時四十二分散会