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1960-04-15 第34回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十五日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君    理事 福井 盛太君 理事 菊地養之輔君    理事 坂本 泰良君 理事 大野 幸一君       綾部健太郎君    池田 清志君       一萬田尚登君    久野 忠治君       高橋 禎一君    竹山祐太郎君       濱田 正信君    柳谷清三郎君       阿部 五郎君    井伊 誠一君       猪俣 浩三君    三宅 正一君       大貫 大八君    小沢 貞孝君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁行政局         長)      藤井 貞夫君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局審査部         長)      竹中喜滿太君         検     事         (刑事局参事         官)      高橋 勝好君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月十五日  委員世耕弘一君、中村梅吉君、吉田茂君及び伊  藤卯四郎辞任につき、その補欠として久野忠  治君、池田清志君、柳谷清三郎君及び大貫大八  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池田清志君、久野忠治君、柳谷清三郎君及  び大貫大八辞任につき、その補欠として中村  梅吉君、世耕弘一君、吉田茂君及び伊藤卯四郎  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十四日  鉄道公安職員の職務に関する法律を廃止する法  律案猪俣浩三君外十三名提出衆法第三〇  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第八〇  号)  法務行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので、これを許します。坂本泰良君。
  3. 坂本泰良

    坂本委員 最初に不動産侵奪罪の点ですが、「他人不動産侵奪シタル者ハ」ということについては、前田参考人も申しておりますように、他人土地に立ち入るという行為区別がない、従って不法占拠の実態の点についてはっきりしないじゃないか、こういうような意見があったわけであります。われわれもその点がまだ疑問なものですから、その点についこての政府見解一つお聞きしておきたい。
  4. 竹内壽平

    竹内政府委員 前田教授のお考えは、私どもが理解いたしておりますところとやや異なった独自の見解をお持ちのようでございまして、先般ここで参考人としてお述べになりましたことや、「法律時報」の昨年十月の三十一巻十一号に見解を述べておられますし、さらに「警察研究上三十巻十二号、これは昨年の十二月に発行されておる雑誌でございますが、これらの論文等を総合してみますると、前田教授不動産窃盗に関する見解は、三つに分類して考えておられます。その一つ境界侵略罪、その二つ地殻窃取罪、その第三は不法占拠罪、この三つのものについての考え方でございますけれども、前の境界侵略罪地殻窃取罪という二つは、所有領得、つまり所有意思による不動産略奪的支配内容とするものであって、民事訴訟法上の所有権確認訴えに該当する事犯である。これに対しまして第三の不法占拠罪は、占有領得、すなわち占有意思による不動産使用的支配内容とするものでありまして、民事訴訟の方からいきますと、原状回復訴えに属する事犯である、こういうふうに規定しておられるのでございます。  それで、問題は不法占拠罪でございますが、不法占拠というのは、不法なる継続的使用行為の態様とする盗犯である。不法占拠所有の僣称ではなく、そのゆえに不法占拠即時犯でなく継続犯でなければならない、こういう意見を述べておりまして、いずれも盗犯なんでありますけれども不法占拠については今のような見解を出しておられます。それから、なお、不法占拠領得意思を持ってするものに限っているようでございまして、この辺がちょっと、私ども一般に理解いたしておりますものとは異なる独自の見解のようでございまして、この不法占拠という中に不法領得意思を含めておるのでございますが、これは一般の学者も疑問にしておるところでございますし、私ども不法占拠といっただけでは不法領得意思を含めて理解することは困難であるように考えておるのでございます。こういうところからいたしまして、不法占拠罪についての見解が、前田教授考えと、私がこの議場でるる申し上げておりますところとは相反するような結果に相なっておるわけでございます。
  5. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、そういう政府答弁によりますと、前田教授も言うておる被害法益、これがはっきりしないじゃないか。従ってぼけてくるから、類推解釈余地がある。それで、この政府原案の通りの法案ができるとすれば、被害法益がはっきりしない、従って類推解釈余地が与えられて、非常に法の適用について遺憾の点が生ずるのじゃないか。従って、そういう点から推していきますと、労働運動のすわり込みとか、多少違いますが生産管理のような場合に、この法律を乱用されるおそれはないか、こういう心配があるわけです。その点についての見解を何っておきます。
  6. 竹内壽平

    竹内政府委員 前田教授は、先ほど申したような立場からいたしまして、あるいは不法侵入罪住居侵入罪あるいは毀棄罪との区別がはっきりしないということを言われるのでございますが、政府見解といたしましては、この立場とは異なりまして、継続犯といたしますことはかえって被害法益がはっきりしない、つまり逆に申しますと保護しようとする法益がはっきりしないこういうことになるわけで、これをもう少し具体的に申すならば、政府見解に従いますと、これは窃盗的な行為でございますので、むろん即時犯ということになるのでございますが、不法占拠罪にいたしますと何を保護法益としておるのか、一般考え方によれば、不法占拠という場合には、占拠されております不動産の平穏なる状態保護しようとする場合になると思うのでございますが、窃盗罪という、窃盗と同じ性質の犯罪であるということにいたしますれば、その保護しようとする法益財産権であるということがはっきりするわけでございます。それから、不法占拠継続犯と私ども考えますが、そういたしますと、むしろ、今の不法侵入との区別がつきにくい。これに反しまして窃盗的な罪質であるというふうに考えますと、不法侵入との区別はきわめて明瞭になるわけでございます。  それから、今お尋ねのすわり込み等に適用があるかどうかという問題につきましては、不法占拠という形をとりますと、ある時期まで相当な期間占拠しておりますれば不法占拠罪になるわけでございますから、すわり込みのような、ある期間すわり込んでおるという状態になりますと不法占拠ということになりますが、窃盗的な形で不法侵奪という侵奪罪という形をとりますれば、不法領得意思を持ってやるわけでございますから、すわり込みのような場合には不法領得意思はございませんから適用がない。そういう点も明確になるという考えで、私どもは、侵奪行為、つまり窃盗的な構成要件内容とした類型にいたしたわけでございます。その点は前田教授見解反対でございますが、私どもは私どもなりにそういう点を明確にし得たものと考えておる次第でございます。
  7. 坂本泰良

    坂本委員 今の問題は、結局、今度の改正案の二百三十五条の二をすなおに見れば、被害法益住居の平穏を害する行為というふうに誤解されやすいものだから、そういう問題が出てくると思います。ところが、窃盗罪の次にあるから、やはり財産犯として領得意思が必要だということになれば今の御答弁のようになると思うのです。それで、私はそれをはっきりするために、領得意思が必要だという点を明文に入れた方がいいのじゃないか、こういうような考えを持っておりますが、二百三十五条の窃取というのは領得意思のようにも考えられますが、それと並んでおるから非常に疑問ではありますけれども答弁を信頼せざるを得ない、こういうふうに考えられるわけであります。  その次に境界毀損罪の問題ですが、これは結局この法案必要性、それから所有者保護するというような経過からこの条文ができたというふうに考えますと、土地所有を結局横奪する行為が主だ、こういうふうに考えますと、結局不動産侵奪罪未遂の段階だから、二百三十五条の二の未遂罪について罰しておるから、これは必要ないじゃないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、それを特に二百六十二条の二として、財産犯から別に持っていったという点について、われわれ非常に疑問を持つ。単に、米軍基地境界を動かしただけでもこの犯罪になりはしないか、こういう危険があるわけです。従って、やはり境界毀損罪財産犯とすべきではないか。二百三十五条の二の未遂としていかなかったならば、二百三十五条の三としてこの条文を、二百三十五条のいわゆる財産犯の中に持っていくべきじゃないか。そうしますと、米軍基地の単に境界を動かしたような場合について、この法律を乱用して犯罪人を作るという危険性がなくなるのじゃないか、こういうふうに考えられます。それで、本質上は財産犯とすべきじゃないかというふうに考えるのですが、その点はいかがですか。
  8. 竹内壽平

    竹内政府委員 イタリア刑法規定は、今坂本委員仰せのような考え方が強く出ておるのでございまして、前田教授もそこら辺を頭に置かれてに、御自身の私案なるものを発表せられておるように思うのでございまして、今坂本委員の御提案のような御趣旨はそういう意味において十分理解できる点でございますが、イタリア刑法不明らかに違っておりますのは、イタリア刑法の六百三一十一条のウスルパチオーネという条文であります。これは不法領得意思を持ってする侵奪でございますが、その侵奪の中の、境界移動し変更したような形の侵奪のみをとっておりまして、しかもその未遂をも含めて一つ条文で表わしておると私は理解しておるのでございます。そうではなくして、わが刑法におきましては、この六百三十一条のように境界移動するという方式の侵奪形式は、現在の犯罪現象の中には、絶無ではありませんが、その数は非常に少ない、むしろ多いのは、境界移動という形ではなくて、勝手に家を建ててしまうというようなやり方の侵奪行為が多いのでございます。そういたしますると、イタリア刑法のように境界移動するという手段での侵奪行為のみを罰するという規定では狭いのでありまして、やはり二百三十五条の二のような規定を設ける必要があると思うのでございます。それで、一方におきまして、二百六十二条の二は当然にはこの二百三十五条の二の未遂行為規定しておるのではなくて、これは境界を不明にする——境界は明確でなければならぬということが法益でございまして、その不明にする行為を罰するのであって、侵奪未遂だけじゃないのです。侵奪意思がなくても、不明にすればそれ自体として処罰しなければならぬ、こういうのがこの二百六十二条の二の規定でございます。従いまして、境界を明確にしておかなければならぬという必要性財産犯の方に入れまして、そしてあたかも未遂もそれで含ませて、イタリア刑法のような立場をとりますことは、現状にも即しませんし、日本刑法体系的地位から申しますと、これまた適当でないというふうに考えておるのでございます。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 しかし境界損壊して不明にしたりあるいは移動もしくは除去するということは、結局は所有権侵奪になるわけです。所有権侵奪にならなければ、そういう境界標を動かしたりなんかする必要はない、境界標を動かすというのは他人土地侵奪するということになるわけですね。それでなかったら、いなかで、境界移動さしてやったり、あるいは前田参考人が申したように道路の下をもぐって、そしてそこで耕作の一部をやる、こういうようなのが問題である。そのほかは、住宅地においてもやはり境界を不明にするとか、移動するというのは、やはり他人土地侵害して自分土地を広くするというのであるから、結局財産犯になるのじゃないか、こう思うわけです。それを特に境界標を不明にするのを罰するのだと、こういうことになれば、何かこの法を作る上において、現在の日本の社会において、意図がありはしないかということが考えられるわけですね。そういうわけですから、これは法務大臣にお聞きしたいのですが、境界を不明にするというような点は、従来所有者保護するというような意味での境界標の問題ならば、これはやはり財産犯として取り扱わなければならぬ。それを取り扱わずに、ただ境界標を不明にするというのを処罰するのだ、そのための規定だということになれば、現在の米軍基地境界をとる、これは境界標をとるだけであって、何も米軍基地の中に家を建てたり、耕作をしたりするようなことはないわけです。だから財産犯とせずに、別に二百六十二条の二を設けたというのは、そこに何か魂胆があるのじゃないか、こういうふうに考えて、これは大貫委員もずいぶん質問されたところですが、われわれも非常に疑問に思うわけです。それで直接の例は米軍基地境界標をなくした場合、そういうような場合にこの法律を持っていくために作ったのじゃないか、そういうおそれがある。その点について大臣の御見解を承りたいと思います。
  10. 井野碩哉

    井野国務大臣 この前も大貫委員にお答え申し上げたのでございますが、そういったような意図は少しもございません。と申しますのは、この前、大貫委員が何かそこに隠れた意図があるのじゃないかと言われることは何があるか私にもわからなかったくらいでございますので、そういう意図がかりにあったとしますれば、ぴんと私にもすぐ頭に響くわけでございますが、全然そういう意図をもってこの改正をしておりませんので、そういう点を意図して改正するのではないということははっきり申し上げられると思うのです。そこで今、それでは財産権侵害だから、境界損壊の場合は財産権の法文の方に持っていったらいいじゃないか、こういう話でございますけれども刑事局長が答えおいたしましたように、法益自体が違うのでございますから、別の条文にこれをした、こうお答え申し上げていいと思います。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 大臣はとぼけておられるのかもわからぬですが、そこで竹内局長にお聞きしたいのは、それでは財産犯以外の被害法益があるというふうに言われるならば、実際の適用の場合に、財産犯以外にどういう場合に適用になるか、その点をお聞きしたい。
  12. 竹内壽平

    竹内政府委員 前提といたしまして、先ほど坂本委員仰せになりましたが、境界損壊罪の場合の動機といたしまして、土地を取り込もうといういわゆる不法領得意思を持って境界標を動かす場合も絶無ではございませんが、境界標を動かすのにはその取り込もうという場合だけではないと私は思います。もしも不法領得意思を持って、侵奪しようという考えでもって、境界標を動かしたということになれば、それはまさしく未遂でございますが、しかしながらその境界標を不明にしなければ二百六十二条の二の規定適用はないわけであります。それは二百三十五条の二の未遂ということになるわけでございます。従って、動かしたほかに侵奪してしまったということがございますれば、二百三十五条の二と二百六十二条の二の想像的競合になる場合もあるかと思いますが、そういうふうに二罪がここに考えられるということになる。従って不法領得意思を持たないで境界標を動かす場合があり得ると思います。この場合が二百六十二条の二の適用を受ける場合でございます。そういうことが私ども両者をはっきりと区別されておるというふうに考えておるのでございます。  それではその不法領得意思以外の場合で二百六十二条の二の適用を受ける場合はどういう場合かという御質疑にお答えをすることになりますが、不法領得意思のない場合で境界標だけを動かした、あるいは真実はそうであったかもしれぬが、不法領得意思はないというふうに否定されてしまっておる場合、しかも現実に不法領得をしておらないような場合には、この二百六十三条以外には適用の方法がないわけでございます。もっとも二百六十二条は不明にしたという結果が発生しなければなりませんから、ただ境界標損壊したにとどまる場合で不明にはなっていない場合は、単なる器物毀棄罪になる、こういうことで、先般来そういう趣旨にお答え申し上げておるわけでございます。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、例をあげてもらいたいというのに例をあげられなかったですが、やはり境界標を動かしたりなくしたりするのには、何かの意図がなければならぬのです。ただそれはコンクリートとかくいとかだから、そのものを取ってもほかに何も利益はないわけなんです。やはりそれを動かす以上は、何かそこに他人所有権侵害するとか、あるいはそういうような場合がなければならぬから、結局二百六十二条の二は二百三十五条の二の未遂でやればいいし、それ以外の場合は、今おっしゃったような器物毀棄とかそういう点でやりますから、何もわざわざこの二百六十二条の二を規定する必要はないと思うのです。その点いかがですか。
  14. 竹内壽平

    竹内政府委員 それは先ほどもお答え申し上げましたように、そういう場合もありますが、未遂にならない場合で、つまり不法領得意思を持って境界標を動かしたという場合でない、境界標だけを不明にするという行為があるわけでございます。
  15. 坂本泰良

    坂本委員 どういう場合ですか。
  16. 竹内壽平

    竹内政府委員 その例といたしましては、いろいろ種類があると思いますが、境界についていろいろ論争がありますために、勝手に境界標を抜いてしまうというようなことがありますれば、不法領得意思はございませんけれども境界を不明にするという行為はあるわけです。そういう場合には二百六十二条の二の適用を受ける。それから先ほどおあげになりました基地との境のものを損壊といいましても、境界そのものが全般的に見て不明になっていなければ、それは単なる器物毀棄なんで、二百六十一条の問題は起こらないと思います。これは昨日もその例をおあげになりましたのでお答えしたと思います。
  17. 坂本泰良

    坂本委員 それだから、今おっしゃったように、やはり境界紛争の場合、抜いてしまうというのは、境界紛争があるから、自分の方に利益を持つために相手方土地を侵食する、こういうことになるから、結局は財産犯になってくるわけですね。だから未遂で罰するなり器物毀棄で罰する。そうすると二百六十二条の二の被害法益は何ですか。
  18. 竹内壽平

    竹内政府委員 二百六十二条の二の被害法益は、境界明確性と申しますか、境界がはっきりしておるということを保護しようとする規定でございます。
  19. 坂本泰良

    坂本委員 境界明確性というのはだれの被害法益になるのですか。社会的の被害法益になるのですか。私何もならぬと思うのですよ。境界紛争の場合それを抜き取るというのは、自分土地を広く主張して相手方土地を侵食しよう、こういう場合しか私はないと思うのです。ただ境界標損壊するだけならこれは器物毀棄で十分であって、そういうのをわざわざここに二百六十二条の二を設けて五年以下の懲役千円以下の罰金にする、こういう別な法律を作る必要は全然ない、こう思うのです。その点についてはいかがですか。
  20. 竹内壽平

    竹内政府委員 だれが被害者かという点でございますが、これは私どもは、単なる個人的な被害とのみは考えていないので、境界が明確であるということの利害関係は、単なる個人的な利害関係だけじゃなくて、きのう申し上げましたように、公益だとまで断言はいたしかねるのでございますが、少なくとも公益的な性格を持ったものだというふうに考えておるのでございます。しいてだれが被害者かといえば、お互いに、隣地の人もそうでございますが、ひとり隣地だけではなくて、その近隣の人も、場合によりましてはその境界が不明確になって争いが起こってくるというようなことになって参つりますると、やはり利害関係を持つわけであります。その今利益々々とおっしゃいますが、財産的利害関係を持つということは私も理解できますけれども、すぐ所有権あるいは賃借権等につながって参りますところの財産的利益というふうにのみ限定しますことは、やや狭いように私は考えております。
  21. 坂本泰良

    坂本委員 それじゃ財産的権利以外といったら何もないじゃないですか。境界を動かすのは、やはり境界のもめごとがあって、自分利益を有利にするためにやるよりほかに、だれも物好きでよその境界を云々しないと思うのです。それをしも、よその境界を云々するといったら、これは器物毀棄でやればいいわけだから、そういうのを器物毀棄犯罪よりずっと重い五年以下の懲役に処するというのは、いたずらに犯罪者を作るということになるわけです。しかし二百六十二条に規定する以上は、やはりこれは刑法上の行き方としては個人的の法益侵害だろうと思うのです。それ以外に法益侵害というならば、法務大臣は言われなかったけれども、やはり今問題になっておる軍事基地反対闘争が非常に盛んだが、あの広い所の山の中でもどこでもくいが打ってあって、境界標が立っておりますが、そういうのを取った場合にすぐそいつを五年以下の懲役犯罪に該当するということでやってしまって、そうして正当な軍事基地反対闘争を弾圧する、こういう以外はこの法律の持っていきようがないと思うのです。境界標があるのは、やはり個人所有権を明確にするためなんでしょう。それをなくするならば、片一方利益を受け片一方侵害を受ける、だからこれは私はやはり個人法益財産権侵害である、従って財産犯である、こういうふうに考えて、それ以外の被害法益があったならば、これは一つ明確に御答弁願いたいと思うのです。
  22. 竹内壽平

    竹内政府委員 器物毀棄及び器物そのもの効用を害するという点において、その器物そのもの保護をしようという規定でありますが、二百六十二条の二は、境界標そのもの効用を害するという意味ではなくて、その境界標によって明示されておる境界を不明にするという罪なのでございまして、坂本委員のおっしゃいますのとやや法益が違うわけであります。のみならず、そういう例はないじゃないかとおっしゃいますけれども、私どもの聞いておるところによりますと、実例といたしまして、たとえば宅地の周囲に設置してあった木の柵を感情のもつれから取りこわしたとか、あるいはよく地方には見られるのでございますけれども、多くは感情のもつれのようでございますが、そういうことから境界標を取っ払ってしまって、わけのわからないようにしてしまったという事例が少なくないようであります。現状におきましては、そういう場合に境界標というようなものが器物と見られるものでありますれば器物毀棄罪、これは親告罪でございますからもし告訴があればそういうことで処理をしておるのでございますが、器物そのもの保護するというのではなくて、その場合に一番大事なことは、そういうことによって境界わけがわからなくなってしまうということを放任しておくことが適当でないので、この立法をしようとしておるわけでございます。  なお、財産罪の中に入れろというお言葉等もございましたが、これは外国の立法例によりますと、先ほど申しましたように、イタリア刑法などはそういう形をとっておりますけれども、一方またドイツ刑法やスイス刑法などを見ますと、これは逆に文書偽造罪の中に入るというようなことで、これはその国それぞれの刑法体系の中においてこれをどういうように理解するかということによって決するのでございまして、日本刑法に関します限り、この器物毀棄罪の章の中に入れますことが、体系的地位としましても適当のように私ども考えておるのでございます。
  23. 坂本泰良

    坂本委員 全例にあげられました住宅地の木さくなんかをこわすのは、これこそはっきりした器物毀棄罪ですよ。そういう例をとって、わざわざこの法律を作って五年以下の懲役に処するというならば、これは犯罪人を作ることになるのです。個人法益侵害するからというのならば、やはり不動産侵奪罪との関係でそこに軽重の問題が起こってくるでしょう。しかし、感情のもつれなんかで境界標を取ってしまったくらいでこんな五年以下の懲役に処する必要はないと私は思う。そんなばかなことをするのは、これはほとんどないと思うのですよ。そういうようにほとんどないようなものを、ドイツは文書偽造罪にしているし、イタリアは財産犯であるからといって、日本にわざわざ今ここに——もちろん刑法改正草案の関係で、刑法全般的の改正が行なわれて、そして整備されるというなら別ですけれども、今急にこの法律を作ってやる必要はないと思うのです。それを作るというのは、いろいろ心配すつるような米国基地境界に持っていってやるのじゃないか、こういうふうになるわけです。だから、今政府の御説明を聞いただけでは、私はこの法律の必要はないと思うのです。こういうのを作らぬでも、ちゃんと国家の治安は保たれていくと思う。だから、この法律を今さら持ってくる必要はない、こういうふうに考えわけですが、その点、法務大臣、いかがですか。
  24. 井野碩哉

    井野国務大臣 どうも駐留軍の基地の問題にからんでお伺いのようでありますけれども、決してその点は、立法当初から、法務省としては考えておらないわけでございます。そこで、では今刑事局長がお答えした例以外にどんな例があるかと申しますと、私は農林省に長くおりましたが、農村あるいは山林関係で、いわゆる国有林野の入会権の問題があります。部落民が入会しておりますと、反対感情を持っておる方から、入会権を妨げるために標識をこわしたりする場合も間々ありました。このような場合は、財産権に直接関係はなくても、やはり標識をこわすということに一つの罪があるわけです。そういう事例は、山林ばかりでなく、農地の方にも、それから放牧地にもございます。こういうようなのが一つの例じゃなかろうか、こう考えております。
  25. 坂本泰良

    坂本委員 そうおっしゃると、私たちも二十まで百姓したのですが、大体境界標をとったり、なにするのは、やはり土地をめぐって他人土地侵害するから、できる場合だと思うのです。今の入会権の問題も、自分がそこへ入れぬから標識を損壊する場合があるかもわかりませんが、そういうときは、やはり器物毀棄でやって、そういうふうなまれに見るようなことを対象にして特にこの重罪である法律規定を設ける必要はない、こういうふうにわれわれは考えわけです。これは対立しておりますからもちろん修正案も出すわけですが、水かけ論になってなんですから、この程度にしまして、最後に、これは大臣以外の方にはお聞きした点でありますが、この提案理由の説明によりますと、「現在問題となっております不法占拠のうちには、終戦直後の社会的混乱期に行なわれたものも少なくありませんが、国民生活もおおむね安定し、社会秩序も平穏に復した現在におきましても、なお同種の行為が跡を断たない実情にあります。」、こうあるわけです。ところが、終戦直後の混乱の際には、こういう問題が起きたことは、これはもう格委員からの質疑でわれわれも認めますし、さらに昨日の阿部委員大臣に対する質問の際にも、社会的混乱に乗じた悪質な者に対しては処置しなければならない、しかしそれに対しては、また別に持たざる者の生存権、居住権の問題があるじゃないか、その点についての考慮はどうかというような点もありましたが、さらに私は社会秩序がもう十数年たちまして平穏に復した現在においては、そういう事例はないのではないかというので、資料を要求いたしまして、そうしてそれによって資料が出ましたのが資料の六と七です。六と七が出てきたわけです。そこでこの資料の六は、最近における不動産不法侵害関係の刑事事件として、ここにこうあげてありますが、この三十五年の統計が、どうもこれは不明確です。件数は東京都が三件、大阪市が百八十三件になっておるわけですが、大阪市の百八十三件はどういうのか内容がわからないわけです。それから最初の方の不法侵害した刑事事件の例としてここにあげてあるのを見ますと、いずれも数年前の問題だけなんです。それから資料七のこの私有地の関係については、これは見ましたけれども、ほとんどないようです。だから、そういうふうに現在この法律を作りましても、提案理由の説明にもあるように、なお同種の行為が跡を断たない実情にあるということは、少なくともこの資料から私は考えられないと思う。さらにこの法律ができましても、法の不遡及の原則によりまして、従来の悪質な者に対しては、この法律適用にならぬわけです。この法律ができますと、この法律ができた後に対する者に対しての適用があるわけです。それは現在のこの資料によっては、もうほとんどない、ずっと減っている、こう言わなければならぬ。そういう場合にわざわざこの法律を作ると、過去のふらちな不法な者に対しては法の適用がありませんから、それを反射作用として正当づけることになるわけです。そして今後の事案は非常に少ないというので、こういう立法は、現在の段階では必要ないのではないか、少なくともこの法案の提案理由の説明にあるようなことはないから、この法律の必要はないのじゃないか、こういうふうに考えわけですが、その点はいかがですか。
  26. 井野碩哉

    井野国務大臣 お説のように、終戦後の状態におきましてはこういう事態も非常に多く、またその点においては同情すべき事態もあったと思いますが、今日のように社会情勢が平穏になりましたときにこういうことがあれば、これは刑法上やはり見のがせない大きな問題だと思うのであります。  そこで事例の問題でございますが、先ほどの資料にもいろいろの計数なりあるいは事例をお示ししてございますが、特にわれわれがこの必要性を痛感いたしましたのは、各地の商工会議所がこの問題で非常に困っておるということを盛んに陳情に参ります。また私ども地方へ出と張しました際にも、そういう声を多く聞きますので、社会情勢から見てこういう立法が必要だ、こう感じたわけであります。決してその後事件が起こらぬということは申せない、むしろ起こって困っておるという陳情をたくさん受けておるような次第であります。
  27. 坂本泰良

    坂本委員 それで、この大阪市長を代表とする六大都市の不法占拠対策協議会、なお東京商工会議所の特別立法の要望書、こういうのがあったから今大臣がお話しになったと思うのですが、しかしこれは日本が初めて味わったあの敗戦後のどさくさに起きた問題であるし、それはだいぶ悪質な者がおりまして非常に困った点もある。しかしそれはまた地主層あるいは権利の上に眠る者に対する侵奪であって、そういうのがほとんどなくなっている現在でもあります。しかしそれはこの法律適用にならない。従って従来の悪玉はかえってこの法律保護されて、今後この法律適用を受ける者は非常にまれであって、そして階級的地主一方の保護になる法律になってしまうのじゃないか、こういうふうに考えられるわけですが、その点についていかがですか。
  28. 井野碩哉

    井野国務大臣 私も地方から商工会議所の人たちが出て参りました際に、これは過去には及ばないのだぞ、今後の立法になるのだぞ、それでも必要かと申しましたら、最近においてそういう事例が相当に出てきて困っているのだ、こう申しておりました。また参議院の法務委員会の方々が大阪地方のこの問題についての調査に参りました。その結果、私は石黒委員から聞いたのですが、最近大阪の方ではこの問題で相当困っているぞ、だからやはり何とか処置した方がいいということも、一々例をあげてそのときお話がございましたようなわけで、決して最近においてこういう事例がなくなっておるということはない、やはり相当数起こっておるとわれわれは認識してこの立法をいたした次第でございます。
  29. 坂本泰良

    坂本委員 これで終わりますが、今大臣のおっしゃったような資料に基づいてわれわれは検討して、さらにまた現在そういう問題が起きやしないかというので、政府当局に資料をお願いしたのです。その資料によってはどうも見受けられない。それから商工会議所その他が陳情して立法を要求するけれども、その立法ができても、因っておるのは過去のことであって、この法律適用は受けない。だから提案理由に説明されているようなことと実際は違うのじゃないか。従って、結論としては、もうこの法律はおそい。作ると過去のふらちな者を擁護することになる。だから今後は民事訴訟法の促進その他の方法でこれを処理すべきものであって、あらためて不動産侵奪罪あるいは境界標損壊罪というのを認める必要はないじゃないか、こういう結論を、この審議と資料とによって出したので私は質問するわけですが、どうも大臣答弁されるのと全然違うようですが、あらためて見解を承って質問を終わりたいと思います。
  30. 井野碩哉

    井野国務大臣 今申し上げました通り、坂本委員と私とは実は見方が違うわけでございまして、私どもは、実際に地方の声なり、また実情を見まして、この法律が必要であると考えましたので、提案をいたしたような次第でございます。
  31. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 大野幸一君。——大野君に申し上げますが、お約束ですから、五分間以内にお願いします。
  32. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 他の法律と違って、刑法適用する人が第一線の巡査なんです。ですから、これはわかり切ったようなことですが、念のために一つ質問しておきたい。  この法律は、天災地変とか大火事とかいうようなことがあって、罹災者が一時的に他人土地を使用する場合、あるいは公共物に立ち入って避難、生活する場合には、領得意思がないので、当然本条は適用されないものだと思いますが、そう理解してよろしいですか。
  33. 井野碩哉

    井野国務大臣 そういう場合は、多く緊急避難の場合だと思いまするから、この法律適用はないものと解釈いたします。
  34. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私の質問はこれだけです。
  35. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 本案につきましては、理事会の申し合わせによりまして、質疑を終局いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  37. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 本案につきましては日本社会党の菊地養之輔君外六名より、民主社会党の大野幸一君外二名より、それぞれ修正案が提出されております。     —————————————
  38. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより両修正案について順次趣旨旧弁明を聴取することといたします。まず菊地養之輔君。
  39. 菊地養之輔

    ○菊地委員 日本社会党を代表いたしまして、刑法の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。  まず第一に、その案文を朗読いたします。   刑法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第二百六十二条ノ二の改正規定に関する部分を削る。   附則第二項を削り、附則第一項の項番号を削る。  以上でございます。  要するに、本案のうちの刑法二百三十五条ノ二の不動産侵奪罪に対しましては、本法案のままといたしまして、同法二百六十二条ノ二の壕界標損壊罪の規定を削除せんとするものでございます。  その修正の理由を申し上げます。  第一点は、刑法第二百六十一条の器物損壊罪によって十分その目的を達せられるから、新しく本条のごとき規定を必要としないというのが第一の理由でございます。刑法は明治四十一年十月一日より施行せられ、今日まで五十数年間何らの不都合なく経過したのであって、このこと自体、本案のごとき規定の必要つがなく、前述の器物損壊罪で十分であるということを雄弁に物語るものであるのであります。本法案規定するところの「境界標損壊移動若クハ除去シ」とあるが、いずれも器物損壊罪に該当するものである。「移動若クハ除去」も境界標の用を失わせるものであるから、法律解釈上当然損壊に該当するのであります。また法律案の逐条の説明によれば、境界標とは標識、工作物、立木等の物件をいうのであると説明せられましたが、これらも前述の器物損壊罪によって処罰せられることは疑いなく、特に工作物のごときは、ものによっては建造物損壊罪を適用せられるものであります。また、「其他ノ方法」について例示して御説明があったのでございますが、その説明によりますれば、境界を流れる川の水流を変えるとか、境界にあるみぞを埋めるなどの行為を例示しておりますが、いずれもこれは土壌の損壊をなしたもの、でありますから、現行法の二百六十一条のいわゆる「前三条ニ記載シタル以外ノ物ヲ損壊」したるものとして処罰の対象となることは明らかでございます。  以上の通り、新たに設けんとしたる第二百六十二条の二はすべて現行法によって犯罪となり、その目的が達せられるのであるから、無用の規定に帰するものであります。政府があえて本規定を置かんとする理由は那辺にあるか、われわれは納得できません。他に何らかの意図があってこの法案を作るのだというような考え方も国民の中にあり得ることでございまするが、もしそうだとすれば、これは非常なる誤った考えでありまして、これは断じて許すべからざることだと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、この法案は削除するのが正当である。  第一点は、本法案は非親告罪としたことでございます。本法案は、戦後頻発した不動産占拠事件は別といたしまして、本条で規定してある境界の問題は、多く相隣者関係に適用されるものであります。隣保相助はわが国における古来の美風である。この精神によって相隣関係が解決して参ったのであります。しかるに本法案は、当事者の意思を無視して、警察の介入を許し、これを起訴し、処罰することによって父祖数代の怨恨関係を生ずることになるので、隣保相助の関係が破壊される危険性があるのでございます。政府は運営の面でこれを救い得ると説明しておりまするが、遺憾ながら今日の警察官はその能力がない。しゃくし定木の摘発主義を唯一の信条としているのでありますから、国民はこれを信頼することはできません。  しかも本法案は著しく刑罰が重過ぎるのでございます。これは何度も政府の説明を聞きましたが、不動産侵奪罪の予備行為として見ることができないわけではございません。予備行為とするならば、窃盗罪はこれを不問に付しております。窃盗罪のいわゆる未遂は罰しますけれども、予備行為は罰しておりません。いわんや不動産侵奪罪の予備行為といたしますならば、これは当然窃盗罪罪質を同じくしている、あるいは刑罰を同じくしているのであるから、本法においても罰すべきでない。従って私はこのような法律を作ることは非常な誤りであると考えるのでございます。いわんや、先ほど申し上げましたように、非親告罪として隣保相助関係の美風を破壊するようなことでもあるということを十分考えていただきたい。  イタリア刑法は、不動産侵奪罪にさえ、暴力、脅迫を伴わない、また武器を携帯せざる者に対しましては、親告罪をもって論じておるのでございます。これは他山の石としてわれわれは参考にすべきものと考えるのであります。現行法におきましても、器物損壊罪につきましては親告罪としているという趣旨からいたしましても、本件のいわゆるこの規定は著しく刑罰が重いばかりでなく、親告罪とせず、非親告罪として、わが国古来の美風である隣保相助の精神を破壊する危険がありますので、断じて削除すべきものであるとかたく信ずるのでございます。  次に、附則第二項の削除の理由につきましては、さきに申し上げました境界標損壊罪を削除したことによりまして、当然の帰結として附則第二項も削ることになるのでございまして、これは説明の要がないと思います。  以上でございます。
  40. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に大野幸一君。
  41. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私は民主社会党を代表いたしまして、本案に対して一部修正を提案するものであります。  まず修正案を読み上げます。   刑法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第二百三十五条ノ二の改正規定中「十年以下」を「五年以下」に改める。   第三百六十二条ノ二の改正規定中「境界標」を「他人二不利益ヲ与フル  目的ヲ以テ境界標」に、「五年以下」を「三年以下」に改める。  次に理由を申し上げます。いろいろ議論がされましたが、民主社会党はこれに対して科刑の点について修正しようとするものであります。本改正案は今より十年前からすでに現在の動産窃盗とともに不動産窃盗も認めるという学説もあったにもかかわらず、五十年間それなくして、また立法の措置もとることなくして今日に祭ったのであります。そこでこれを改正しようとする場合に、動産窃盗と同じ科刑を定めることについての意義であります。またある人は動産と不動産との価値からいたしまして、むしろ動産より不動産の価格が高い場合があるという理由で、同じ十年以下の科刑を正しいと考えられる人もありましょう。それもまた一つ考え方でありますが、私たちは別の観点から動産と不動産との価値論をここで述べてみたいと思うのであります。  動産は人力によって生産もできましょうし、またその生産されたものはすべて人力によるものであります。すなわち人の労働の結果であります。しかるに本法の企図する土地につきましてはこれは自然に地球上の一部として存在し、人類のひとしく享有すべきものであって、本来ならばこれはただ管理の権利をわれわれが享有しているのみであって、その享受の権利は人類がすべて享受しなければならないという立場であります。この世に生を受けて、動産なくしても生活ができるが、われわれが地球に立つ土地、歩く土地、生活する土地、これはみなあの管理者の土地を使用しなければなりません。しかるに一寸の土地所有権も持たない国民も相当いるのであります。そういう立場から考えまするならば、動産と不動産とを区別して考えるに何の不思議がありましょうか。こういう本質的、哲学的見地からいたしましても、私たちは動産と不動産との価値において相違を認めるのであります。また、具体的にいきますれば、動産は、なるほど可動物でありまして、そうして容易にしばしば犯罪が行なわれるのであります。行なわれた結果は、被害者は回収困難なることが多いのである。またそれが摩滅、消滅してしまう場合が多いのでありますが、不動産の場合には、たとい侵奪されたといたしましても、それは一時的現象にすぎないのであって、裁判その他の民事手続によって容易に回収されるのであります。ただ、これに対しては、あるいは裁判の結果が長引くということを主張される人もありましょうし、長引くところの原因を考えてみると、やはり他に引っ越すところのないというこの土地の狭隘性からくるところのものであります。そういう立場から考えますれば、動産と不動産との区別をすることもまた一つの手であろうかと思うのみならず、日本においては無制限に私有制度を許容しているのであります。大富豪は大邸宅、大庭園、大遊戯場を持っておるかたわら、その日の居住に困る土地と建物を持っていない貧困者がまだ絶えない日本であります。そういう点などを考えますると、少なくともこの土地不動産の問題については、国家は国民に謙虚であらなければならない。こういう考え方から、わが党は動産と不動産とを社会倫理に基づきまして区別するという観点からいたしまして、本法案の二百三十五条の二に「十年以下」とあるものを「五年以下」といたして、修正を提案したのであります。  また窃盗犯につきましては、過去五十年間において、裁判の結果はいろいろの判例、先例などがあります。しかしながら、新しく制定せられ、新設されました本条が適用されるときに至っては、全国の裁判官は全部が常識に一致する人とも考えられないし、検察官もしかりであります。その場合に、今までの先例をどこに求めるかという点においては、あまりに十年以下という幅の広い裁量権を持たせることは疑いがあるのであります。そもそも刑法の新しい趨勢は、裁判官にあまり幅の広い裁量権を認るところに、控訴、上告の事件が多いのでありまして、できるならばこれからの刑法体制は段階的に裁判所の自由裁量権を狭めて、そうして国民にその納得を得せしめ、控訴、上告を少なくするという趨勢に向かわなければならない今日に、せっかくこの刑法改正するにあたりまして、従来と同じように十年以下と、段階を追うことなく、あるいは態様を区別することなく、自由裁量権をあまりに多く認めたという点であります。  また二百六十二条の二の改正規定中、冒頭に「他人二不利益ヲ与フル目的ヲ以テ境界標」をと、こういう個所を挿入いたしましたるゆえんのものは、質疑応答中に明らかになりましたように、この条文が結果犯であるか、あるいは目的犯であるか、あるいはまた私益犯罪であるか公益犯罪であるかということについて、確たる御答弁もなく、また結局ははっきりいたしませんでした。そこでわれわれは冒頭にこの字句を挿入することにおいて、あくまでもこれは私益犯罪に対するところのものであり、その反射的効果として、公益的方面を考えられたのかもしれませんけれども、とにかく私益犯罪であるという意味におきまして、「他人二不利益ヲ与フル目的ヲ以テ」と挿入したのであります。その関係から、この「五年以下」ということも「三年以下」に改めるというように、刑をほぼ半減して、そうして一時これを施行して実施をしてみる。あるいはまた不動産犯罪についても多くの五年では足りない刑が生じてくるではないかということもあるでありましょうけれども、今や日本は戦後十五年を経まして、相当治安は回復し、この初犯に当たるところの、初めて適用される事案に対して、最重刑五年をもってするならば、相当の効果はあるものと考えますし、それ以上の科刑を課さなければならないというときには、何か他の犯罪において、あるいは強盗罪が適用される場合があるでありましょう。脅迫罪が適用される場合があるでありましょう。こういうように考えていくならば、他の併合罪、牽連犯などによって十分にその目的が達せられるのであります。刑法はなるべく罪を軽くするというのが資本主義国の謙虚なる態度であらねばならないのであります。多くの犯罪は、全部ではないとしても、その大部分は資本主義の欠点からくるところのものでありましょう。社会主義に移行する国におきましては、犯罪者はそれに比例して減少してくることは世界の示すところであります。われわれは今や日本の資本主義の欠点を、謙虚に国会は反省する意味におきましても、なるべく国民に対する刑罰は安きをもって理想とする意味から本案を提出するものであります。  特に刑法は全会一致でこれが意思表示をされてこそ、私は権威あるものと認めるのであります。与党一人で刑法改正して、刑を課して、その刑法の効力、威厳というものは保たれないのでありますので、しばしば私はまじめに自由民主党の方々にも話し合いを求めたのでありますけれども、しかし、政党政治のしからしむるところが、話し合いなくして多数をもって可決されんとしておるのであります。今や裁判官も検察官も自民党のみを支持する人のみではありません。野党を支持する多くの人たちも、自民党のみの賛成によるところの刑法に対してどんな考えを持つでありましょうと思いますので、でき得べくんば、さらに皆さんの御審議を経て、本修正案の通過するように御審議をされたいと思います。不幸にして衆議院にして否決されても、ふたたび参議院において修正されることを希望しつつ、私の修正理由を終わります。
  42. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて両修正案の趣旨弁明は、いずれも終わりました。     —————————————
  43. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより原案並びに修正案を一括議題として討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。小島徹三君。
  44. 小島徹三

    ○小島委員 私は自由民主党を代表いたしまして、政府原案に賛成し、日本社会党並びに民主社会党から提出されましたそれぞれの修正案に対して反対の意を表せんとするものであります。  民主社会党修正案につきましては、窃盗罪と比較してこの刑罰が重過ぎるというようなことを言われておりますけれども、何といたしましても、今日の必要上、こういう原案を出さざるを得なかったのでありまして、窃盗罪と比較いたしましても、法案の全体から見ましても、体裁から見ましても、十年というものは必ずしも重いとは感ぜられません。従いまして、この修正について私は反対するものであります。  また二百六十二条の二の改正の問題につきましては、これを目的罪にしようとする御意向のようでございますけれども、これについては境界を不明ならしめるということであって、境界そのものをただこわすということではない点において、非常にその範囲をしぼっておる次第でございますからして、それ以上その範囲をしぼって参りますると、この法案を出した目的も達することができないようになるおそれもありまするからして、私はそういう点から見まして、この修正案に賛成することはできないのであります。  また日本社会党の修正案につきましては、境界を破壊する、損壊するということは、単に境界標をこわすということではなくして、それによって境界を不明ならしめるという行為でありますからして、単なる器物破壊行為としてこれを断ずることは私は無理だと思うのであります。ことに本改正刑法の素案におきましても、これをそれぞれ区別して制定しておるという次第でございまして、その必要性というものは、もう疑いないと私は思うのであります。そういう意味におきまして、私は、日本社会党の修正案にも反対いたしまして、政府原案に全面的に賛成いたすものであります。
  45. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に坂本泰良君。
  46. 坂本泰良

    坂本委員 日本社会党を代表いたしまして討論を申し上げます。  まず二百三十五条の二の点でございますが、現在の状態においてこの法律を作るということについては、これはいささかわれわれは疑問を持っているわけでございます。しかしながら、従来不動産窃盗罪を学説上は認めておりまするが、実際の運用として、判例においてはこれを否定しておるわけであります。従って、不動産窃盗、本案では不動産侵奪とありまするが、結局は、これは政府答弁をお聞きしましても、不動産窃盗についての明文を規定したものだ、こういうふうに了解をいたすわけであります。そういたしましたならば、現在、不動産窃盗罪を実際上判例で認めていないのでありますから、このような不動産窃盗に対してはやはり法的措置をしなければならない。しかしながらわれわれは、現在政府においても刑法改正が審議をされておりまして、早く全般的の刑法改正、いわゆる仮案が法律化することを念願しておるわけでありますから、その際においては、この不動産窃盗罪についても、刑法全般としての規定が設けられることをわれわれは予期しておる。従って、その間の不動産窃盗に対する暫定的の措置としてこの法案は認めざるを得ない、こういうふうに考えわけであります。  そこで二百六十二条の二の点でありますが、これは先ほどわが社会党からはこの必要がない、これを削除する修正案を提出いたしたわけであります。その理由は、菊地委員から提案理由として説明された通りであります。さらにここに一、二を付加いたしますならば、不動産窃盗を二百三十五条の二として認めるならば、この二百六十二条の二は、これは未遂として処置ができる。さらに不動産窃盗財産犯としてここに規定される以上は、その未遂を罰しておりますから、さらに二百六十二条の二を認めることになりますると、予備の段階までも認める、適用範囲が非常に広くなりまして、ささいなことについて五年以下の懲役を受けなければならない、こういうようなことになりまして、この二百六十二条の二は必要ない、これがなくても二百三十五条の二並びにこれによる未遂罪をもって十分処置ができる、こういう見解に立つわけであります。従いまして二百三十五条の二については賛成いたしまして、ぜひこの二百六十二条の二については自民党の諸君も一つわが社会党の修正案に賛成していただいて——少しも法の運用にはさしつかえありませんから賛成していただいて、この法律案を処置いたしたい、こういうふうに考えわけであります。
  47. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 大野幸一君。
  48. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私は本案に対して反対の討論をするものであります。  すでに修正案のときにわが党の考え方を表明いたしました。しかし、不幸にして日本社会党が二百三十五条の二について十年以下を認められたということは、今の討論中明らかでありますので、はなはだ遺憾に思います。しかし動産と不動産との本質的差異と国民の権利とを考えるならば、差異があって当然だと思うのであります。動産、不動産保護は、今の建物侵入の刑法規定によりまして、一部分は保護されておるのであります。それは建物だけではありません。邸宅に侵入したるものも保護されて、三年以下の懲役となっているのであります。本案はそれに加えて、不法領得意思があった場合を窃盗として認めているのであります。従って、不法領得意思なくして建物を侵奪し、占拠したる場合は三年で、領得意思ある場合は十年ということになるのであります。しかし先ほど修正案理由中に述べましたように、被害者立場からすれば、加害者が領得意思の有無にかかわらず、同じ立場でありまして、被害を受ける程度は同じであります。そこで訴訟法の規定によってすみやかに回収でき得る権利を持っておるのであります。それを三倍以上の刑を課するということは、新設規定としてはどうしても納得できませんので、五年の修正案がいれられない見込みを持っております民主社会党は、二百三十五条の二についても反対を表明いたしますと同時に、その権衡上二百六十二条の二についての修正のいれられない見通しがありますので、反対の表明をしておきます。
  49. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 志賀義雄君。
  50. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 共産党は、この不動産侵奪罪規定する刑法の一部を改正する法律案反対します。  当法務委員会提出された法律案がいかにずさんであり、かつ危険なものであったかは、審議によってもうすでに明らかになったところであります。  第二、そもそも不動産侵奪罪が起こる原因は何かを考えれば、住宅並びにそれに必要な土地及び農業における零細経営から起こるものであります。政府がその根本原因に対する積極的対策を講じないことが、それを助長しています。特に都市の住宅並びに土地についての他人不動産を不法に領得し、それを土地と住宅に悩む生活困窮者や低所得者に不当な金で貸し付け、売り渡す営利犯が出てくるのであります。  第三、しかるに本法案ではこういう営利犯だけを取り締まることにはならず、かえって土地と住宅の欠乏に悩む善良な人々を不法占拠を理由に苦しめる結果になるだけです。  第四、本法案窃盗罪を併科され、十年以下の懲役という各国の立法例にもない過酷きわまる重罪の範囲に入れられております。また未遂罪という各国に類例まれな条項も加えられております。さらに親告罪でないため、必ずや警察、検察の不当な干渉を招き、労働争議、小作争議、その他の民主的な運動に不当に拡張して解釈されて適用されていくことは火を見るよりも明らかであります。  第五、私の出ている選挙区の実例は、全国でも最もひどいものでありますが、バラックの二畳の権利金や一畳の借り賃が普通の家以上に想像をこえて高くついています。要するに本法案財産犯罪、営利犯罪の取り締まりとはならず、政府の住宅、土地政策の怠慢と無策の結果を善良な人民に転嫁することになるだけです。  第六、この際こうした悪結果を招くにすぎない改正は急がず、営利犯には他の刑法の条項及び単独法の適用を厳正にすることにとどめるべきです。営利犯についてだけもっと審議を尽くして他の機会に立法すべきものであると考えます。  以上六つの理由によって、私はこの不動産侵奪罪反対します。  またその理由によって、社会党の修正案にも賛成いたしかねることを表明しておきます。
  51. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  52. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより刑法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず日本社会党の菊地養之輔君外六名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  53. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 起立少数。よって、日本社会党の菊地養之輔君外六名提出の修正案は否決されました。  次に、民主社会党の大野幸一君外二名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  54. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 起立少数。よって、民主社会党の大野幸一君外二名提出の修正案は否決されました。  次に原案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  55. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 起立多数。よって、刑法の一部を改正する法律案は原案の通り可決いたしました。  この際本案の委員会報告書の作成についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  57. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に、法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 質問に先だちまして、私どもの質問いたしまする点についてちょっと申し上げたいのでありますが、新潟県西頸城郡青海町という人口一万七千の小さな町におきまして、これは富山県境に近い町でありますが、ここに黒姫山という、二百億トンを蔵しておるという石灰岩の山をかかえ、これがそもそもの事の発端であります。この町に古くから青海電化株式会社という会社がありまして、セメントの製造、肥料の製造等をやっておったのでありますが、ここに明星セメント会社というものが進出して参りましてから、この平和の町におきまして非常なあらしが吹きすさびまして、幾多奇怪なる事実が起こって参ったのであります。私は主といたしまして人権問題にわたる点につきまして調査を進めて参ったのでありますが、昨年の春の地方選挙におきまして、町の町政を壟断したいと考えました青海電化という営利会社が、極端なる選挙運動をやりましたことから、幾多の問題が起こって参っておるのであります。この点につきまして地方の訴えがありまして、法務省の人権擁護局も調査に乗り出されまして、詳細なる調査をしたと聞き及んでおるのであります。  そこで本日は人権擁護局長においでをいただきまして、人権擁護局の調査の結果について当委員会に御報告いただきたい、これが私の質問の中心であります。ごらんのように私どももたくさんこういう資料を集めております。これはまだ半分でありますが、相当詳細に研究はして参りました。およそ人権問題としても、あるいは地方の自治体のあり方といたしましても、あるいは労働行政上の問題といたしましても、まことに不可怪なる事実がたくさん起こって、これは私の選挙区でありますがために、ことに人権問題等につきまして、私自身がかなえの軽重を問われておるような始末であります。そこで私は材料なしにただいたずらに声を大にすることはいかがであろうかと思いまして、今まで当法務委員会に私自身としては質問に立たなかったのでありますが、幸いにして人権擁護局に乗り出していただきましたので、人権擁護局の御調査のなるべく詳しい御報告をいただきたい。なお今後それに対してどういうふうに処置せられるのであるか、その点についてもお考えを承りたい。  なお、最後に、地方自治体のあり方について自治庁の藤井局長、あるいは人権問題の総括的な責任者としての法務大臣の御意見も承りたいと思うのであります。  まず人権擁護局長の調査の御報告を承りたいと存じます。
  59. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 それでは私から、人権擁護局並びに新潟県の人権擁護委員との共同のもとに調査をいたしました結果を御報告いたします。これはまだ全部の調査を完了いたしておりませんので、中間的な報告と御了承願いたいのであります。  調査をいたしました人権問題は、さきに衆議院の地方行政委員会におきまして、小澤委員から「恐怖の町オオミ」という一つのパンフレットを示されまして、そしてこの中にいろいろの人権問題があるのでありますが、その一つ一つの事実を示されまして、この事実があるかないか、この事実があるとすれば、相当人権を侵害するように思われるからこういう点を調査しろ、こういうふうな御要望でございましたので、私の方では地方行政委員会において小澤委員から御指摘になりました点を重点におきまして、事実ありやなしやという点を調査をいたしました。従いまして、これから私が御報告いたしますのは、この小澤委員から指摘されました数々の人権問題についてのわれわれの調査の結果の御報告と御了承願いたいのであります。  まずこの数々の人権問題が指摘されておるのでありますが、このいろいろの人権問題が起きましたその背景を少し申し述べてみたいと思うのであります。少し詳しくなるかと思いますが、御了承願いたいと存じます。まずこの問題の起きました新潟県西頸城郡青海町と申しますのは、富山県の境に位置いたしておりまして、一方は日本海に面し、他方は山に囲まれて平地がきわめて少なく、農業と漁業もふるわず、もともと貧村であったのであります。ところが青海町の背後にございます海抜千二百二十二メートルの黒姫山は、全山が良質の石灰岩でありまして、化学工業の原料として優秀なものであります。これに目をつけまして大正十年に当時住民三千八百名の青海村に、電気化学工業株式会社が青海工場を建設いたしたのでございます。そういたしまして、青海村は電化青海工場とともに発展をいたしまして、現在は世帯数が三千五百、人口約一万七千を有する青海町となりました。右世帯の約七割までが電化青海工場に勤務いたしておるのであります。一方同町の予算はその半分以上が電化の固定資産税によってまかなわれておりますほかに、町政面では町長、町会議長とともに、町議二十六名議席のうち十四議席を電化青海工場の職員で占めており、青海町は名実ともに電化青海工場の町となっていると申しても言い過ぎではないと思うのであります。  次に人権問題が発生いたしましたその経緯と概況でございますが、この人権問題が発生いたします背後には、まず明星セメント工場誘致をめぐる一つの対立があるのであります。それは昭和電工、日本カーバイド、信越化学の三社は、西頸城郡黒姫山の石灰石、これは埋蔵量五百億トンといわれておるのでありまして、日本最大のものであります。これを採取するために、昭和三十一年に、青海町に日本石灰石開発会社を設立いたしたのでにありますが、さらに昭和三十三年五月、石灰石採取の際生ずる砕石を利用いたしまして、青海町に明星セメント株式会社の新設を計画いたしまして、農地約二十万平方メートルの買収に着手いたしたのであります。  右の動きに対しまして、電化側では青海のような小さな町に、一つの大セメント工場ができますと、必然的に過当競争を招き、共倒れの危険がある、北陸線の輸送力に限界がある、従業員の引き抜きなど、労務上多くの問題がある、電化は——電化と申しますのは青海電化工場でありますが、電化は現在明星の工場予定地から約八百メートル離れた田海地内に、メラニン、塩化ビニール製造用の有機合成工場を新設中であり、これはセメント工場の粉じんをきらうので非常に迷惑する、こういうような理由をあげまして、反対に乗り出したのであります。一方明星側は、まず日本最大といわれる青海の石灰石資源を開発するのは国家的使命である。電化側の言う企業防衛は、石灰石をひとり占めしようとする独占主義の現われである、次に輸送力については、金沢鉄道局で調査した結果、まだ相当に余裕が残っておる。次に県外にある既存のセメント会社に技術援助を求めるのであって、労務上の問題は起こらない。さらに製造工程を湿式にすれば粉じんは出ない、こういうふうな反駁で、新設計画の強行をいたしまして、まっこうから対立をするようになったのであります。  次に明星セメント側では、昭和三十二年に青海町が制定いたしました工場誘致条例に基づきまして、工場敷地のあっせんを町当局に申し入れたのでありますが、前記の通り、町政に関しましては電化が圧倒的に勢力を持っておりますので、反対意見が強く、結局結論を得るに至らず、その間昭和三十四年四月末には明屋セメント誘致反対派は十九名の町議が中心となり、明星セメント設立反対期成同盟を作りました。また賛成派は七名の町議が中心となって明星セメント工場誘致促進同盟をおのおの結成いたしました。本問題は町ぐるみの対立と紛争に発展するに至ったのであります。  さらにこの陰におきまして昭和三十三年の五月二十八日に電化青海労組の定期大会におきまして、同労組は明星セメント誘致問題を正式に取り上げまして、その席上執行部からセメント業界が操短の現状にあるとき、狭い青海町に明星が進出することは電化との間に過当競争を招き、そのしわ寄せは組合と家族にまで及ぶ危険がある、この際組合員の生活権擁護のために、電化経営者の企業防衛に同調して、明屋セメント設置に絶対反対すべきであるとの緊急動議が提出されまして、論議の末満場一致をもってこれを可決、この趣旨を機関誌、掲示等を通じて組合員に周知いたしたのであります。  このような状況の中で、昭和三十三年の十二月一日と同月二十七日の二回にわたりまして電化従業員革新同盟の名で労組の諸君に告ぐと題し、電化——電化と申しますのは電気化学工業の略でありますが、電化の横暴と御用化した電化労組に対し痛烈な批判をしたビラが青海町一帯に配布されたが、さらに職場を明るくする会という名で労組を批判した印刷物が配布されたのであります。電化労組では、これらのビラにつきまして、大会の決議を誹謗したものであると重視し、同月二十三日中央委員会の諮問機関として調査委員会を設立、右ビラの出所を調査した結果、これらの批判運動は執行委員の宮川久昭、長澤吾作、山本善一の三名が明星誘致派と気脈を通じて行なったものと断定し、統制違反者として処罰委員会に付し、昭和三十四年四月十日第九回中央委員会におきまして組合員の権利停止一カ年に付し、会社も出勤減給等の処分を行なったのであります。その後七月二十九日の電化労組の臨時大会におきまして右三名の除名を決議いたしたのであります。この除名決議に基づきまして会社側は労働協約第十条のユニオン・ショップを適用いたしまして、八月八日付で右の三名を解雇処分に付したのであります。そしてこの右の処分に対しまして被解雇者側は除名される覚えはないと主張いたしまして、同年九年三日新潟地裁に地位保全の仮処分の申請を行なって、現在新潟地裁において審理中であります。こういうふうな状況のもとにおいて、労組内において、またその労組を支援いたします総評あるいは今労等の対立もありまして、いろいろここに人権問題が起きたのであります。  次に、具体的に小澤委員から指摘されました人権問題の点に触れてみたいと思うのであります。それはまず第一点は、ばく然と申しますと、信書の秘密を侵した点でありますが、具体的に指摘されました点はこうであります。昭和三十四年の四月三日の午後電気化学工業株式会社——以下電化と申しますが、いわゆる電化の青海工場社宅のNという人のうちで中学三年の長女Uさんが母あての手紙を受け取ったのでありますが、そこに電化の守衛Kの奥さんが姿を現わしまして、その封書を渡してくれと申しました。ところがそのあて名が母となっていたので、U子さんがちゅうちょしておると、あけてみなさいと言われ、何げなしに開封すると、もう見たから持っていってもいいでしょう、こう言ってそれを持っていってしまった。そしてこういうことが社宅の軒並みにやられまして、集めた手紙はみな電化の社宅係に集められた、こういう点であります。  本件につきましては、関係者十四名を私の方で調査いたしたのであります。大体判明いたしましたところは次の通りであります。それは昭和三十四年四月三日午後三時か四時ごろ電化青海工場の社宅に居住しております電化の工員長澤吾作という方の長女陽子さんが——当時十五才であります、自宅で留守番をしておるときに、同会社の守衛の奥さんが右長澤方に立ち寄りまして、右の陽子さんに向かい、陽子ちゃん、お前さんのところへも宣伝ビラがこなかったかねと尋ねまして、おらのところにもきたよと返事すると、ちょっと見せなと言った。すると陽子は母あての封書を開封し、内容をよく確かめず、右守衛の奥さんに渡した。その奥さんはその場でその内容を見まして、同会社の悪口を書いた宣伝文であることを確かめた上、これは同会社の警備員をしている上谷という方のもとにとついでおりますねえさんの方へも見せた方がよいと思い、陽子に向かってもらってもよいかねと頼み、陽子が了承したので、その封書を受け取り、近くの同会社南社宅に住む上谷トミという方のところにおもむきまして、こんな宣伝ビラが来たよと言って、右上谷トミに手渡したというのであります。この事実は認められるのであります。ただこの封書の差出人が何人であったかにつきましては、関係者は現在これを記憶しておらないのであります。そして、右封書はその後どのように処分されたか明らかでございません。またその桑原という方、これは同会社の守衛の奥さんでありますが、桑原スエ子さんが、他の何人かの指示によって同様の封書を収集していたかどうかについても、今のところ確認することができないのであります。要するに、それは会社あるいは会社の住宅係の命令によって、そういうふうな会社を誹謗するような文書を全部集めていたかどうか、個人あてに来たそういうふうなビラを集めていたかどうか、この点はやはり確認ができないのであります。大体右の点につきましては、このような調査の結果であります。  次に、このように軒並みに行なわれ、集められた手紙は、みな同会社の社宅係に持参されたという事実の有無についてでありますが、当時、明星セメント株式会社を青海町に誘致するかどうかの問題につきまして、電化青海工場は右誘致に絶対反対立場を表明し、同会社の労働組合もこれに同調いたしましたため、右誘致賛成派と反対派が対立いたしまして、青海町民また賛成、反対の二派に分かれて紛争しております。これは先ほど述べた通りであります。これに昭和三十四年四月施行の地方選挙もからみまして、両派が互いに宣伝ビラを同町民及び右電化青海工場従業員に配付し、文書その他による活発な宣伝戦を繰り返していたのは事実であります。明星セメント株式会社誘致派から郵送等の方法により宣伝ビラ等がそのまま、あるいは封書によって電化青海工場の社宅に届けられると、これを受け取った同社宅居住の工員たちは、同工場や同工場の方針に全面的に同調しておりました同会社労働組合の立場を敏感に察知いたしまして、このような文書を受け取っても、これをそのままにしておくことができず、多くの工員は、それらの文書をみずから進んで同会社の社宅係に届けておった、こういう事実が認められておるのであります。すなわち、現在までに調査したところによりますと、同会社側の指示によって封書等の収集等が行なわれていたと認められる明確な資料はございませんが、前記社宅に居住しておる同会社の工員等は、同工場の誘致反対の方針を誹謗し、明星セメント株式会社の誘致を是とする宣伝文書を受け取りましても、これをだれにも告げないで、そのままにほうっておくと、このことがいつか会社側に知れまして、明星誘致派と何らかの連絡があるもののようにとられはしないかという畏怖心をみずから持つようになり、そこで会社側の誤解を避けるために、自分たちに二心なしという真情を訴えようとして、このような印刷物を受け取り次第、みずから進んで会社の社宅係員に差し出していた事実は認められるのであります。  その次に御指摘になりました点は、新聞の買い占めの点であります。これは、電化は新聞を絶えず注意していて、気に食わぬ記事が載っていると、これを社宅に配らせない、これまで二度も買い占めをやっておる、こういう事実の有無を調査したのであります。右の事実の有無につきまして、関係者十四名に当たってみましたが、昭和三十四年二月九日及び同月十一日付発行の新潟日報が配達されなかったといううわさがあることは判明いたしたのでありますが、右同日付の新潟日報には電化関係の記事は記載されておりませんので、結局本件事実は現在までのところこれを確認することができないのであります。  第三に、見張人に見張りをつけるという点であります。その内容は、昭和三十四年一月二日に、会社の守衛長がその部下全員を集めまして、新任のあいさつとして、部外者を監視せよと訓示しておりますが、同会社は町から社宅に通ずる入口の二カ所に守衛所を設け、投光器のあかりを強くして、風体の変わった者が行くと、社宅係に連絡して尾行する。社宅の四軒長屋の両側に見張りが立ち、だれがいつ入ってきたか、出たか、これをこまかに報告させた。これを怠ると逆に見張人が密告されるという二重スパイ制度があった、こういう点であります。この点につきましてわれわれの方で調査いたしました結果、関係者約三十五名について当たってみましたところ、昭和三十三年十二月三十日ごろ、会社正門付近守衛室におきまして、当時の警備係長からその部下である警備の責任者約六名に対し、口頭をもちまして、怪しい者を監視し、また情報を収集するよう、こういう指示をした事実はこれを認めることができるのであります。会社の南社宅に通ずる入口に社宅係員の詰所が置かれておりまして、十数名の係員が昼夜三交代制によりまして勤務に服し、通行人を監視することのできる状況にあることは認めることができるのでありますが、風体の変わった者が同所を通行した場合、右の社宅係員がこれを尾行し、四軒長屋の両側に見張員が立ち、だれが入ってだれが出たかをこまかに報告させた等の事実があるかどうかにつきましては、現在までの調査ではこれを明らかにすることができないのであります。しかし、明星誘致派と目されております者が右南社宅におもむきまして、宣伝活動等をいたしました場合、右社宅係員がこれを監視、尾行し、妨害した事実は認められるのであります。  なお本件に関連いたしまして、会社の敷地外である青海町等におきましても、漸次警備員等によりまして明星派の者に対する尾行、監視が行なわれた旨を当局に訴える者が多いので、調査いたしましたところ、明星誘致派と目される者及び昭和三十四年四月施行の地方選挙において、反電化派の候補者ないし運動者と目される者に対して、昼夜を分かたずに会社側従業員によって尾行、監視がなされた疑いが濃厚であります。  次に、第四に奥さんの分も判こ押せという表題でありますが、こういう事実が指摘されたのであります。それは、会社は昭和三十四年四月施行の地方選挙に際し、その従業員全員の判こをとった。ある職場で奥さんの名も署名してくれと言われて、おかしいんじゃないか、私は会社に勤めているから判こを押すが、女房の分まで署名はできぬと言った人が、お前は明星派だと烙印を押され、のけものにされた、こういう事実であります。この点につきまして調査をいたしましたが、関係者五名に当たりましたが、現在までのところ、このような事実を確認することはできておりません。  第五に、電化ににらまれて店がつぶれたという点であります。この内容は、青海町の商人たちは、会社のいやがらせで明日は破産させられるのではないかと戦々きょうきょうのありさまです。私たちの仲間で会社にたてついたということで、会社立ち入りを禁じられ、大損を受けた人たちがたくさんいます、年間一千万円の取引差しとめを食った小川土建、やはり年間一千万円以上の材木取引を停止された小野さん、西頸城運送など、またパチンコ屋がにらまれてつぶれたり、文具屋が店を閉めたりした、こういう事実であります。この点につきまして関係者五名を調査いたしましたが、前記小川土建でありますが、そういう人たちの申告によりますと、大体次の通りであります。まず小川建設という名前で土木建築業を営む青海町町会議員の小川正雄は、昭和二十六年十一月ころから会社の指名請負人となり、年間約一千万に上る取引をいたしておりましたところ、昭和三十三年四月ころ同町の議会におきまして、明星セメント株式会社も工場誘致条例によって誘致すべきである旨の緊急動議を、八名連名をもって提出したことなどから反電化派とにらまれまして、同年五月ころから同会社の入札指名を受けられなくなりました。そのため同会社の仕事は自然打ち切りとなったということであります。また丸田組製材所という名称で製材業を営む同町町会議員の小野正徳という方は、親の代から同会社と取引をしておりましたが、明星の誘致に賛成したため、昭和三十三年三月ころ、同会社から取引停止の申し入れがあり、同年四月か、五月ころから電化との直接取引年間約一千万円、電化の御用商人といわれる田辺建設との取引年間二千万円が停止されたというのであります。次に、西頚城運送株式会社及び株式会社双葉商会の代表取締役、同町町会議員の西山という方は、明星誘致に賛成したところ、同会社の逆鱗に触れて、昭和三十三年四月ごろ、会社との間に期間一カ年の石灰石の運搬契約を締結いたしましたが、同年六月ごろ一方的に会社から右契約破棄の通告を受け、そのころ同会社製品の販売特約店として年間約四千五百万円の取引をしていた前記双葉商会に対しても、同会社の製品を取り扱うことができなくなったとそれぞれ陳述しておりまして、その事実もわれわれの調査ではおおむね認められるのでありますが、ただこういう事情のために店がつぶれたという事実は、現在まで確認することはできないのであります。  右のように会社との取引を停止されたということ自体をもって、直ちに人権を侵害されたとは言い得ないといたしましても、右のような取引停止の事実は多数の同町民に知られております。そのほか同町政に会社が強力なる勢力を扶植している事情等もありまして、町民の多くは絶えず会社側の鼻息をうかがい、思うことも容易に口には出さず、また会社側から好ましくない人物と目されておる者との交際もみずから遠慮するという萎縮した心理状態にあった事実も、これを認めることができたのであります。  第六に医師が逃げ出すという点であります。この内容は、大光病院というのが約五年前に付近に建てられておったところ、当時診療所と称していた電化病院の取り扱いの不親切もありまして、当時はすごく評判を呼んだのであります。会社はこれが気に入らず、またかねがね病院の敷地をわがものにと思っていたから、いつものでんでいやがらせを開始した。たとえば水道を引かせない、あの病院に行ったらいかぬと社宅中に言い渡す、それでも徹底せぬと見えて、社宅との境界線に有刺鉄線の垣を張りめぐらした、これでは幾ら仕事熱心な医者でもいや気がさして逃げ出そうというもの、去年の暮れ、とうとう病院は閉鎖してしまった、こういうような事実が記載されておるのであります。ところが、この点でありますが、関係者五名について調査いたしてみましたところ、右大光病院の経営者野中忠子は、最初歯科医を雇い、同病院の経営に当たっておりましたが、成功いたし、次いで昭和三十年五月ごろ会社の南社宅隣接地に用地を求めて総合病院を建設いたしたのでありますが、開業を急ぐのあまり、病院への通路も水道施設も整備しなかったので、通路は隣接する会社所有のあき地が利用され、また水は社宅の居住者からもらい水をしていたようであります。ところで、右野中は、昭和三十一年二月ごろ、会社の社宅係長に対し、前記通路と社宅水道の病院への延長につき便宜供与方を依頼したのでありますが、誠意がないとして会社から拒絶されたのであります。その後大光病院では別に通路を開設し、町水道の延長工事をしてこの問題は解消したのであります。一方会社側では、昭和三十一年四月下旬ごろ、大光病院と社宅間の通行によってくずれた土手の修復工事をいたし、境界線に沿って有刺さくを設置した事実は認められるのでありますが、会社側が特にいやがらせや営業妨害をしたために医師が逃げ出したという事実は、現在までのところ、これを確認することができないのであります。結局大光病院は、総合病院当時の借入金や医師に対する雇用条件の違約等から医師等が長続きしませんで、昭和三十三年夏ごろになりますと、医師もいなくなったので、経営難に陥り、結局病院を閉鎖するのやむなきに至った、このようにわれわれは確認いたしたのであります。  第七は、リヤカーや松葉つえで出勤という点であります。その内容は、会社には危険な職場がたくさんあり、けがをする者がひきもきらないのでありますが、百万時間の安全競争だとかで、休みさえしなければ安全の成績に影響しないというので、家に休んでいても痛さに変わりはないだろう、ぶらぶらしていてもよいのだから会社へ出てこないかといって、にこにこぽんと肩をたたく。従業員は足親指を骨折した人も、指二本切断した人も、ひざ下骨折した人も、肋骨を折った人も、医師の休業診断が出ていても痛さにうめきながら松葉づえをつき、リヤカーに乗って通勤する。やむを得ず休む人は年休扱いで休む。顔を出せばぶらぶらしているわけにいかないから、傷の痛みに顔をしかめながら働く、このような例がこの一年間だけで、うそでも何でもない、五十件を下らない、こういうふうな事実であります。この点につきまして負傷した工員及び診察した医師、職場の上司等の関係者約三十名につき調査いたしましたところ、会社が休業の診断を受けた工員を強制的に就労させていた事実はこれを認めがたいのであります。しかしこれらの負傷者に対しまして、安全担当と称する当該職場の係員から軽作業に回してもよいからできるだけ出勤するようにとか、会社に出勤している方が幾分でも有利だから出勤するようになどと勧奨を受けまして、そのため負傷した工員においてかなり肉体的に無理と思いながらも出勤していた若干の事例が見受けられるのであります。なお、かように出勤勧奨しなかった場合におきましても、右安全担当係員の言動に影響されまして、安全週間ないし安全月間中等でありますと、それを気にいたしまして、職場における安全成績を低下させまいとして、相当の負傷を受けながら休業しないで自発的に同僚に背負われて出勤するとか、リヤカー、自転車の荷台に乗るとか、または松葉づえもしくは竹のつえを使用するとかいたしまして、出勤した工員の実例が相当あります。右のごとく自発的に出勤した工員中には、休業した場合、昇進、昇給等に対する影響を考慮して、心ならずも出勤した事例も見受けられるのであります。また負傷した工員におきまして、年次休暇よりも公傷休を選択しようとしても公傷休の場合は休業災害となり、会社の安全成績にも影響を与えるので、これまた不本意ながらみずから年次休暇を選び、また会社側において本人に連絡しないで年次休暇に振りかえた事例も見受けられるのであります。  次に、社宅道路の交通妨害の点であります。これは、会社の社宅に行く道路は一般人も通行しているのでありますが、昭和三十四年四月施行の地方選挙の際、公明選挙宣伝用の自動車を妨害して通さなかった。会社側の者が右道路にバリケードを設けたので、火事の際消防自動車も通行できず、ほかの道路をわざわざ遠回りしていかなければならない事態が起こった、こういう点であります。私の方で関係者七名を調査いたしましたところ、昭和三十四年四月九日午後四時ごろ公明選挙の幕を張りめぐらした青海町民主化クラブ同盟の公明選挙の宣伝バスを、会社の南社宅入口付近におきまして、会社側の者により小型四輪トラックを使用して、その通行を阻止した事実が認められます。また昭和三十四年十月十一日会社従業員の解雇反対総決起大会が、青海町青海川橋海岸で開催された際、そのデモ行進が会社側南社宅方面に押し寄せてくるとの情報によって、会社敷地内での双方の激突を未然に防止するため、管理上の必要から会社側はその敷地の入口二カ所にバリケードを設置いたしましたところ、たまたま会社南社宅に近接する大沢部落内の豚小屋にぼやがありまして、その際消火に向かった消防自動車は、社宅地域内の右道路を避けて、町道を通って現場に向かった模様であります。以上の事実につきましては、まず刑事上の責任の有無が問題として論じられなければならないと私たちは考えるのであります。最後に、自民党青年部結成に対する圧力という点であります。この質問の要旨は、電化青海工場経理課事務員松澤衛は、昭和三十二年暮れから同三十三年秋にかけて自民党青海町青年部の結成に努力いたしておりましたが、このことが会社の上級幹部に知られますと、さっそく呼びつけられ、種々の圧迫を加えられた。しかし右松澤は、これを押し切り、昭和三十三年十月二十六日、青海町清源寺において右支部の結成式をあげ、同支部の青年部長に就任した。ところが今度は、右松澤の妻で、当時会社の庶務係タイピストとして勤務していたミツエに対し、配置転換等のいやがらせを行ない、やむなく右ミツエは会社を退社した。こういう点であります。この点につきまして、関係者四名を調査いたしましたところ、前記の松澤衛は、昭和三十三年八月三十一日、青海町自民党青年部結成第一回準備委員会においてその準備委員長に選ばれたのでありますが、その後会社の幹部らは、同青年部結成の動きは、自民党青海支部長である明日生誘致派の加藤義平につながる反電化的行動であると判断し、右松澤衛に対し、昭和三十三年十月十日ごろより同月二十四日ごろまでの間約四回にわたり、会社の二階応接室において、同会社の経理部長、勤労係長及び社宅係長等より一時間ないし二時間くらいずつ説得されたのであります。右説得につきまして、たとえば勤労係長において右松澤に対し、自民党の支部長が明星派の加藤義平であるし、現在町は電化と明星に分かれて騒いでいるのだから、その混乱に拍車をかけてもらっては困る、君も雇員に昇格する時期が来ているが人間には信用が大切だ、従って君自身の信用を落とすような行動は避けた方がよいという趣旨のことを述べた事実があるのであります。しかし右松澤は、前記のような説得には応じないで、十月二十六日青海町清源寺において自民党青海町青年部の結成式をあげ、次いでその第一回大会を開き、同人が同部の青年部長に就任したのであります。すると同月二十九日ごろ、同会社のタイピストをしていた右松澤の妻ミツエがタイプ係の責任者に突然呼び出されて、事務の仕事をするように申し渡されたが、特に定まった仕事も与えられなかった。そのうちに会議室の掃除係を上司から命ぜられたので、くやしさのあまり同月二十六日退職願を出した事実は認められるのであります。  以上、御指摘の点について、当方においてその事実の有無を調査した結果を申し上げたのであります。以上の点につきまして、まだ全部の調査は終わっておりませんが、大体の中間報告は以上の通りであります。  ただ、私の方ではこの中間報告の結果を総合いたしましても、ある点におきましてこの会社の従業員の大半は社宅に住んでいる人が多いのであります。たとえば、具体的に申しますと、今まで読みました中の南社宅と申しますのは、会社の敷地内、工場にすぐ隣接したところに建てられてこおりまして、戸数が七百六十六戸、家族数が三千六百三十六名、こういうふうになっておりますが、社宅はほとんど無料に近く、いろいろな点において工員は非常な便宜を受けておるのでありますが、ただこの社宅に対する会社の管理権というものの限度をやや越えまして、この社宅に住んでおりまする一般の従業員の市民としての生活と申しますか、そういうものがやや制限を受けておる。こういうふうな点を認められるのであります。  さらにまた、この会社が町政についての支配的な力をもっていることは否定できないのであります。その間において多数者あるいは支配者としての一般市民に対する影響力において、その限度をやや越えたものがあるようには認められるのでありますが、まだ的確な最後の結論を出すに至っておりません。  以上の通りであります。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 今人権擁護局長のお話を承りまして、これを素材として、私どもなおこの法務委員会で調査を進めていきたいと思います。ですから、あなたの報告についてのいろいろの質疑は次会にしたいと思うのでありますが、今報告を受けただけでもわれわれはなはだ疑惑に思う点が多々ある。ただ申し上げたいことは、あなたの報告にありましたように、ここの一万七千人の人口を擁する町の一万三千名くらいは電化の従業員及びその家族であります。そこで一営利会社が地域的にその地方を独占することの弊害というものが実に象徴的にこの町に現われているというところに、私は特異性があると思うのであります。今申しましたように、ここに労働組今日もありますけれども、ほとんどこれは戦々きょうきょうとして勤めておるがごとく、いやしくも会社の職制にある人に対して、会社の守衛と称する監視人に対してすら言葉を返すことができない。それににらまれますと、必ず不利益を受けるという事実は枚挙にいとまがありません。  そこで私どもは社会党からも二回調査に行っておりますけれども、的確なる証言を得るということが困難であります。私は人権擁護局も非常に困難をされたろうと思う。みんな口をつぐんで言わない。それだけなおわれわれに疑惑を投げかける。今あなたの報告された十倍くらいの人権問題があるはずであります。しかし責任ある当局として当法務委員会に発表なさるには、今のような結論にならざるを得ないと思うのでありますが、事実はその何ぞう倍かもあるわけであります。私どもはこれを警察問題にしたいと思いましても、なかなか証拠がつかめないのです。みんな口を緘して決して言わない。そのくらい非常におそれおののいておる。仲間同士が話し合うから、それを聞いてそこへ調べに行きますと、絶対にそんなことを言うた覚えはないといって否認する。そういう状態で、ちょうど暴力団に恐喝された人たちが口をつぐんで申告しないために警察では手が出ないのと同じ状況をここに呈しておるわけであります。今労働行政問題から見ても、あなたの報告から見ても、非常に問題があるわけでありますが、百万時間安全週間とやら称しまして、これは糸魚川の労働基準局をお調べにならなかったと思いますが、ここの労働基準局でも相当調べてあるわけです。そうして相当調査を進めておる実情なのです。それはなお将来の問題となろうと思います。そこで政府委員の方も出てきていただいておりまするので、簡単にお尋ねいたしまするけれども、昨年の四月の地方選挙におきまして、町長はもちろん会社の者、二十六人の町会議員のうち実に十八人が会社に職場を持っている人たち、職制の人たちが町会議員として出ております。ですから会社と中立の立場にある町会議員というのは八人しかないという実情でありますので、全く営利会社と町政というものが渾然一体をなしておる。そこからいろいろの弊害が起こっております。私は自治庁の藤井局長にお尋ねいたしたいことは 一体自治庁としては、地方行政に対しましてどれだけの監督指導権があるのか。われわれの聞き及ぶところによりますと、たとえば会社の固定資産税その他の鉱産税——鉱石を掘り出すと、何か税金をとるわけです。そういうものを非常にみんなごまかしておる。それは税金を取り立てている町と会社とが一体をなしておるのです。そういう面は私どもの方でも相当のものがわかっておりますうるけれども、なお調査を進めております。そこに非常に問題が横たわっておる。そういうことに対しまして、これはこの町のみならず、日本全国におきまして、ある強大な営利会社がその自治体をまるで支配してしまっていることがほかにもあるようでございますけれども、そういうようにある営利会社が自治体に大量進出して、地方行政が全くその営利会社の便利のために行なわれておるというようなことは、私は大きな問題であろうと思う。こういうことに対しまして、自治庁は何らかの指導権あるいは監督権があるのかないのか。あるとすれば、この青海の町、これは新聞にも週刊雑誌にもいろいろ書かれて、今社会問題になっておるのでありますが、これに対して自治庁はどういうふうな監査をされておるのであるか、あるいはされておらないのであるか、そういうことについて局長の御答弁をいただきたいと思います。
  61. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 最初に、自治庁といたしまして地方団体の行財政の運営についてどのような指導監督権を持っておるかということでございますが、これについては、御承知のように、戦前のようないわゆる封建的監督権というものは、地方自治尊重の建前から持っておらないのであります。ただ最小限度の監督権というものはむろんこれを留保いたしておるわけでありまして、現行法上若干の点で御説明を申し上げますと、一つは、国の機関として行なう事務というのが、府県の段階にもあるいは市町村の段階にもございますが、この事務につきましては国家的な重要性がございますので、これらの事務については指揮監督権を主務大臣が持っております。そのほかに、町政自体の運営、いわゆる町固有の事務の運営につきましては、地方自治法の二百四十六条の二というのがございまして、ここに「内閣総理大臣は、普通地方公共団体の事務の処理又はその長の」この場合は町長でございますが、「その長の事務の管理及び執行が法令の規定に違反していると認めるとき、又は確保すべき収入を不当に確保せず、不当に経費を支出し、若くは不当に財産を処分する等著しく事務の適正な執行を欠き、且つ、明らかに公益を害しているものがあると認めるときは、当該普通地方公共団体又はその長に対し、その事務の処理又は管理及び執行について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」という規定があるわけであります。しかもこの場合におきましては、内閣総理大臣自身がこの是正措置を命じまする権限を直接に行使することもできまするが、普通の場合におきましては、市町村の場合は、県知事にこの権限を代行せしめるという建前になっておるわけでございます。従いまして、地方自治行政の立場から見まする場合におきましては、この条項に該当するような事実がかりにございますれば、われわれといたしましてもこの条項を発動いたしまして、是正の措置を講ずることにいたしたいということを考えております。特にこの問題は全国的にも非常に大きな問題になっておりまして、われわれといたしましてもきわめて重大なる関心を持っておるのでございます。さしあたり従来地方行政委員会その他で問題にせられました町政の運営上の問題、たとえば工場誘致条例というものがあるにもかかわらず、明星セメントの方にはそれの適用を拒否しておるというような事実、あるいはただいま御指摘にもございましたような、財産を不当に処分しているような事実があるのかないのか、さらには税金を不当に安くしておるというような事実があるのかないのか、こういうような点については、県当局をしてある程度調べさしております。その結果につきましては、なお御要求がございますれば、わかっておる限りのことについて御説明申し上げたいと思っておりますが、全般的には、町政の運営自体については、今までわれわれが調べておりますところでは、目立って違法であるというふうに断定すべき材料というものは、今のところは出て参っておりません。ただこの町が非常に特異な町である、そのこと自体が実は選挙制度ということになっておりまして、たまたまそこに住民の過半数というものが一特定会社の従業員、関係者であると申しましても、それはやはり町の住民でございますので、その結果として、議員さんがその関係の人が多くなって、くるというようなこと自体を一方的にわれわれの方でとやかく言うということはこれは今の建前から申して適当でもございませんし、結局町政の運営自体がそのことによってゆがめられる、あるいは特定の会社に対して非常に不当な運営措置をやって利益を与え、あるいは違法な事案が生じてくるということになりますれば、われわれといたしましても、町政を軌道に乗せるために適切なる処置を講じたい、かように考えておるのでありまして、現在のところではそれほど目立った違法というふうに考えられるものはございませんが、われわれといたしましては、終始今後の町政の運営についてもきわめて重大な関心を持って、これを見守って参りたい。場合によっては、自治庁から直接出かけて、町政の内容等につきましても、一度調べてみてはどうかという考え方を持っておる次第であります。
  62. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 猪俣委員に申し上げますが、実は法務大臣は所用で待っておられるのですけれども、もし質問がありましたら先にお願いいたします。
  63. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣にお尋ねしますが、一言藤井さんにお願いしておきます。今あなたが最後におっしゃったでしょう。どうも現地においてはいろいろのデマが飛んでおります。いろいろ、どうもわれわれの耳に入っておる。これは政党政派を超越いたしまして、問題になっておるわけであります。そこで、もしなければなしでいいのです。たとえばこの町の近くに、まるで人があまり通らない御幸橋という橋——これはその奥に四十戸か五十戸の部落があるにすぎない。しかるにこのコンクリートの実に莫大もない橋を町の費用で作っておる。ところがふしぎだと思っておるうちに、そこは会社が使う橋であるということがわかったわけです。一度自治庁で調査官を派遣せられまして、調査をしていただきたい。それを強くお願いいたします。これはいかがなものですか。
  64. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 最近の機会において、先刻申し上げましたように、自治庁自身としても、直接一つ調査をいたしてみたいと考えております。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣御所用のようでありますので……。今、人権擁護局長から報告がありました。私が申しましたように、なかなか事が、その会社の労働組合がまるで会社の防衛機関みたいになってしまっておりまして、会社のやり方についての証拠固めが非常に困難でありますけれども、事実といたしましては、これはもう衆目の見るところ否定しがたい、全く人権問題が多数発生いたしておるのであります。これはやはりあなたの所管であります人権擁護局から、もっと徹底的に調査していただきたい。恐怖の町青海というまるでこういううたい文句が出るくらいになっておるということは、私の選挙区であるだけに、私としては耐えがたいのであります。しかもこれは自民党も二つに分かれ、社会党もやはり、われわれの基盤である労働組合、私の選挙の応援をしてくれた労働組合が、今会社と一体となっておるわけであります。自民党もやはり二派に分かれておる形で、まことに町の治安が保たれておりません。何といたしましても、人権の擁護だけでもやらなければならぬことで、町の商人も会社の鼻息をうかがっておらぬと、あすからの営業に差しつかえるというようなことで、私どもが、社会党で調査に町の中へ行っても、昼休みに私どもを休ませてくれる旅館がない、みんな体よく断わられる。社会党の調査団というと、会社が手を回しているのかもしれませんが、昼飯を食べるところがない、かような町の実情になっております。私どもに昼飯を食わせなかったから人権問題というわけでもありませんが、実に極端なんであります。かようなことは村八分が憲法違反である、人権問題であるというごとく、商人がある営利会社の鼻息をうかがわなければ営業ができないという雰囲気それ自身が人権問題だと思うのでありますが、これは相当今言ったように、町ぐるみがもう戦々きょうきょうといたしまして事実、真実を言いませんから、なかなか容易でありません。しかし、それでも人権擁護局というお役所が行きますと、やはり相当的確なことがつかめるかと思いますが、これはなかなか一回や二回では真相がわからないと思う。それでどうか法務大臣としても、人権擁護局を鞭撻していただいて、もっと徹底的に調べていただきたいと思いますが、あなたの御意見を承りたいと思います。
  66. 井野碩哉

    井野国務大臣 青海町の人種問題につきましては、過般来いろいろ問題が起きておりますことを了承いたしました。人権擁護局からも直接調査員を派遣いたしまして、実情を調査し、その結果、今局長から御報告したような次第でございますが、今お話のように、事が電化と片一方の会社との争いでございますから、なかなか複雑な関係にございますので、お話のような調査もなかなか困難だと思います。しかし事人権に関する問題でありますから、今局長の申しましたのは、中間報告でありまして、さらに一そう新潟の本局をも督励いたしまして、調査いたしまして、そしてかりに人権侵害をするような事実があれば適切なる処置を講じたいと考えております。
  67. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうして、これを根本的に見ますると、やはり地域社会における独占形態の弊害だと思うのでございます。そこで明星セメントなるものが進出をはかっておるわけであります。私はこういう資本家たちの問題については興味がないのでありますけれども、この町の現状から見ますると、やはりある営利会社のみに独占せしめておるということに対して、いろいろの弊害が出てきておる。これは独占禁止伝違反の疑いとして、公正取引委員会でも問題になっておるはずでありますか、どうしたわけか今日まで結論を出さない。それに対してもやはりいろいろの政党屋が関係しておるといううわさがある。ところがこの公正取引委員会もやはり多少法務省、検察庁と関係のある委員会だ、これに対しましても、あなたが御関心を持っていただきたいし、なお今自治庁の藤井局長のお話を聞くと、結局地方行政の監督権は、内閣総理大臣が持っておるような形に相なっておりますので、あなたも閣僚一の一員として、なおその意味においてのこういう特殊な地方行政に対しましては特別の御関心を持っていただきたい、こう思うのです。それに対するあなたの御意見を承りたい。
  68. 井野碩哉

    井野国務大臣 御希望の点は十分了承いたしましたので、善処いたしたいと考えております。
  69. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 関連して。——先ほど人権擁護局長のお話を聞いても、数々のことがあったわけです。たとえば不休労災、けがをしても会社で休ませないように勧奨する、あるいはこわがっていてどうしても無理して出てくるということがあったわけでありますが、その中に一点、本人が休んでおるのは本人に通告なしに年次休暇にしてしまったということがたしかあったと思います。こういうのは、明らかに労働基準法違反だと思います。そのほか町の中でいろいろの業者が電化という会社にたてつくと、しまいにはいいことにならないから、口をつぐんでみんな恐怖の中におるのだということもあっりました。その中で最後に総合的にこういう判断を鈴木擁護局長は誓われたと思います。社宅の工員は三千六百三十六名おるのだけれども、会社から非常な便宜を受けておるが、その社宅の管理権については限度を越えている点がある。つまり人権が制約をされているのだ、こういうことが第一点の結論であったような気がいたします。もう一つは、これは地方行政の関係だと思いますが、支配者としての限度を越えているような点がありはしないか、これは疑問みたいな格好なんですが、こういうような工合に、今までの中間報告だけでもきわめて重大な問題があるわけですが、この中で法に違反するあるいは明らかに人権が侵害されているのだ、こういう問題については法務省としては一体どういう排除の措置なりをとられるわけですか。そういうことは直接、憲法ですか、それぞれの法律によるのですか、よくわかりませんが、排除の方法というのは一体どうやってとるのですか。
  70. 井野碩哉

    井野国務大臣 ただいままだ中間的な調査でございますから、的確な結論を得ておりませんが、今までわかった点におきまして、かりに労働基準法に違反しておるということであれば、警察の方の手をもちましてそういう方面を取り締まることもできますし、また人権を侵害しておる事実がはっきりしますれば、刑罰の問題はございませんが、勧告なりその他の措置によりまして適当なる処置をとり得るものと考えております。
  71. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 擁護局長に聞きたいのですが、この社宅の管理等は当然勧告に値するものと私は聞けたわけなんですが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  72. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 本件の全体の人権問題を見ますると、青海電化工場の幹部が今言いましたような人権問題を起こすように指揮したかどうか、その点はっきりわかりませんが、青海電化工場自体にも今御指摘のような点、やや人権問題について考慮すべき点があるように私は思いますが、青海電化に対してどういう点について勧告するか、まだ相当膨大なる調査をいたしましたので、もう少し調書その他を詳細に検討いたしまして、私どもの方のとるべき措置をきめたいと思っております。勧告をすべき段階にはまだちょっと早いように考えております。
  73. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 数々のことがあって、勧告に値するようなことがあるらしいけれども、具体的にどれを指摘して勧告するかということでまだ悩んでいるのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。大臣、そういうような状況ですが、すみやかに一つ具体的な勧告をやっていただくことを特にお願いをいたします。この点について大臣の所信を表明していただきたい。
  74. 井野碩哉

    井野国務大臣 先ほど来申し上げているのが私の所信でございますから、さよう御了承いただきたいと思います。
  75. 猪俣浩三

    猪俣委員 簡単に一つ。先ほど独占禁止の話が出ましたからお尋ねいたします。この問題が公正化取引委員会で取り上げられましてから相当時間がかかっておるが、いまだに何らの結論が出ない。これもこの町をいたずらに騒がしておる一つの一原因になっておるかと思います。公正取引委員会ではどういう審理の状況になっておるのですか。相当長い間たなざらしになっておる。その間いろいろなデマが飛んでいる。何か一部の政党人によって結論の発表が押えられている。これは農地問題でもそうです。農林省において農林大臣の許可がおりなければならぬのが、まだ農地問題でいろいろな政党人が中に入って、押えておるというようなうわさがもっぱら飛んでおる。しかしこの点については小澤委員がなお質問するでありましょうから私は触れませんが、一体今公正取引委員会はどういう実情になっておりますか。
  76. 竹中喜滿太

    ○竹中説明員 公正取引委員会といたしましてこの問題を取り扱いました今までの経過を申し上げたいと思います。  独占禁止法四十五条に基づきまして、独禁法違反の行為があるという報告が公正取引委員会に提出されましたのが、昨年の三月十四日でございます。この報告に基づきまして事務局でその内容を検討しまして、内部的にこの問題を処理いたします審査官を六名指定いたしました。それが四月の七日でございます。それから四月の十四日目から二十五日まで十一日間、四名の審査官を現地に派遣いたしまして、青海の電化工場を臨検検査する、あるいは参考人を呼んで審尋をする、そういうことをやりまして帰って参りました。その後さらに東京の本庁へ参考人を呼びまして、審尋いたしまして、それぞれ調書を作りました。そういうことで審尋いたしましたのが大体三十名ございます。それでその審尋調書その他を整理いたしまして、審査部の方から委員会へ諮ることになるわけなんでございますが、それを委員会に七日にかけまして、今まで委員会で審議しておるわけでございます。それで、事実については、大体調べる必要はもうないのではないかと思うのですけれども、ただ公正取引委員会が、独占禁止法を施行いたしましてもうすでに十三年になりますが、この種の問題は初めて起こった問題でございまして、適用法上の解釈について、二、三非常にむずかしい問題が起こっておりますので、私の方それを検討いたしまて、一、二の問題が片づいたのですが最後の一つの問題が残っておりまして、今審査部でそれを検討しておるのですけれども、これはもう近いうちに結論が出ますので、できるだけ早い機会にこれを委員会に諮りまして、最終的な委員会の態度をきめていただきたい、こういうふうに考えております。
  77. 猪俣浩三

    猪俣委員 公正取引委員会は裁判所みたいなところですから、どういう結論が出るとか、出せとかいうようなことを私どもが言える筋合いではないと思います。ただし今の御説明におきましても、一年以上たっております。もうそろそろ結論を出していただかぬと、一体審判機関のほんとうの機能というものを発揮できないのじゃなかろうか。いいにしろ悪いにしろ、白にしろ黒にしろ、結論が出ないために非常に土地の混乱を増しておるのであります。それがいろいろの方面に反響を来たしておる。しかし私どもあまり審判機関に対して催促がましいことをすることは今までは御遠慮申し上げておったのでありますけれども、少しがまんがし切れなくなってきた。幾ら慎重審議でも、もう結論が出ていい時期ではなかろうか。あなたの御説明によると、間もなく結論が出るらしい。それも期限を言うのもどうかと思われますけれども、一体今月一ぱいぐらいに出るのでしょうか、どうでしょうか。
  78. 竹中喜滿太

    ○竹中説明員 審査部の方の最後の法律の問題点の検討は、もうほとんど最終の段階に来ておりますので、それをまとめまして委員会に諮ることになるのでございますが、御承知のように、最終の決定権というものは委員会にございますので、委員会がおきめになるので、いつきめて下さるか、これは私どもからは申し上げることはできないのであります。私どもとしましても、なるべく早く結論が出るように努力いたしたいと思います。
  79. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは委員会の権限でありますから、あなたは事務当局としてやはりすみやかに結論が出るようにお急ぎなさらぬと、公正取引委員会自身がいろいろうわさの種になるのです。特に政治家が介在して何か公正取引委員会を動かしているように——私はそんなこと信用しませんよ。しませんけれども、そういうふうに長くなれば長くなるほど、そういうことになる。また農林大臣もそうです。これももう県知事からちゃんと副申が出ている。農地を転換してしかるべしという副申が出ておるにかかわらず、これが農林省に行って今日まで許可がおりない。ある代議士のごときは、おれの目の玉の黒いうちはそういう発表をさせないなんて言っていばっておる。一体そういうようなある政党人の主観によって公な行政官庁がだらだらしておるということは、許すことはできないと思う。これは農林省からおいでになっておる方に小澤委員からもっと詳しく聞くでしょうが、やるべきことはさっさとやってもらいたい。それを強く区要望しておきます。
  80. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 ついでですから公取にお尋ねしたいのですが、もうそれぞれ審査部で審査して公取委員会の方へ回したが、ただ幾つも幾つもある件の中でまだ一つだか二つだかは審査部として適用条文のわからないのが残っておる、これを近く結論を出してそれから委員会にかけるようにいたしたい、こういう御答弁だったような気がするのですが、そういうことですね。
  81. 竹中喜滿太

    ○竹中説明員 いや、そういうことじゃございませんで、私の方の適用条文というのはこれであるということは大体わかっておるのです。わかっておりますけれども、その適用条文の解釈で一体これをどう解すべきかという問題が一つございまして、それを今検討しておるわけであります。その適用条文の中の文句の解釈の問題でちょっと問題がございますので、それの検討をしておるわけであります。
  82. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 すでに七回委員会を開いたというのは、審査部からそういう報告が行って開いておるわけでしょうが、何か報告が行かなければ開けないわけでしょう。その内容は発表できないわけですね。しかし適用条文が明らかになって、これは独禁法違反だ、こういう審査部の結論が出て公取委員会の方へ送った、それだから委員会を開いているんだ、こういうような解釈ができるわけですが、そういう具体的な、条文のある個所に触れたものがあって送られているわけなんでしょう。
  83. 竹中喜滿太

    ○竹中説明員 私どもの方で委員会を開きますときは、私の方で報告書を出しまして、その報告書に基づいて検討するわけなんです。私の方が出しますのは、あくまでもこれは事務局が調べた事実であり、事務局の適用法条であり、事務局の考え方なんですね。それで委員会でそれが議論された場合に、事務局はそう考えておるけれども自分たちはそれと違う、条文についてこういう考えもあるじゃないか、こういう考えもあるじゃないかということがありますので、それではこの点はもう少し検討する必要があるじゃないかという問題が出てくるわけなんです。それが二、三ございまして、おおむね片づいたのですが、まだ一つ残っておりますので、その点を今検討しておるわけでございます。
  84. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それでは、私はしろうとなりに解釈するのですが、事務局としては独禁法のこういうところとこういうところに触れるのだということで出したけれども、公取委がどういう結論を出すかそれは別の問題として、出したことは出した、それについて委員会はすでに七回やっているんだ、しかしまだ一、二の疑問点があるから至急やりたい、こういうことでようございますね。  それでは引き続き、まず自治庁の方からお尋ねしたいと思います。先ほど猪俣先生の方から御質問がありましたが、私は、十二月ごろだと思いましたが、地方行政委員会において二回ほど具体的に御質問申し上げて、石原長官からそれに対する答弁をいただくことになっておるわけですが、藤井行政局長、その答弁はきょう持っていませんか。たとえばこういうことです。委員長、資料を配らしていただいていいですか。
  85. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 けっこうです。
  86. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 厚い方の資料の終わりから二枚目の(八)というところです。「電化青海工場は、投票に際して各職場に班をつくり一班は渡辺仁作をワたなべ仁作と書け、二班はわタなべ仁作と書け、と決めて集団投票させ『若し渡辺仁作が落選すれば何班の誰が書かなかったのかすぐ分るのだ』と云う宣伝をし有権者に不正な圧迫を加えたと云われる。」、こういうことの事実について石原長官は至急調査をいたします、よろしゅうございます、こういう答弁がこの議事録に載っているわけです。この結果についてはどういう調査をされたか、選挙局長がおらないし、また担当の方がいないからわからないかもしれませんけれども、それを一つ答弁いただきたいということと、いま一つは、先ほどお配りした「恐怖の町オオミ」というのがあるんです。この六ページ目の一番下の欄の右から六行目に、『社宅内五カ所にそなえたスピーカーを利用して、会社側の候補が来ると、「全員そとにでて聞いて下さい」、反対派がくると、「みなさん家にはいって戸をしめなさい」。社宅の人たちは障子にうつる影にも、「お前聞いとったろう」とあとでやられるので気をくばらねばならない。通行人も立ちどまれない。ビラを受けとるものがいない。子供がビラをもらうと早速スピーカーが、「子供がビラをもらっていますから、やめさせましょう」とくる。演説箇置所を指定して、そこ以外では演説させず、そこに社宅係がどかっとタムロしているの誰でも近ずけない。』、それは公職選挙法違反じゃないか、こういうようなことも具体的に質問してあるわけです。石原長官はそれも調査いたしますと、明確に議事録にあるのです。そのほかたくさん質問しておるのですが、それについてきょう御答弁いただけますかどうか。
  87. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 実は私その席上におりませんでしたが、今のような質問がございましたことについては連絡を受けて知っております。ただ、これは石原長官がお答えをいたしましたのですが、事は選挙の関係、特に選挙違反の関係で、警察の事項ではないかというふうに思われるのであります。おそらく警察の方では調べておると思いますが、その点私具体的には聞いておりませんので、私自身としてはお答えいたす資料を持っておりません。
  88. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 まだお調べになっておるかおらないか、資料を持っておらないということでありますから、この次にまた御答弁いただくことにして、その警察自体が一会社の支配下にあるわけなんです。このことを私たちは現地に行って痛切に感じたわけですが、警察そのものが会社の支配下にあるんだから、現地の警察ではとても調べられないということで、直接こっちでやっていただきたいということを石原長官に言ったわけですから、その点警察関係の人は至急連絡して、こういうふうに具体的に申し上げていますから、調査をしていただきたいと思うのです。これは選挙の票を見れば、こういう事実があったかなかったかということはすぐわかるのです。「ワたなべ仁作」と書けなんというのも、その票は今でもあるんですから、調べてみればすぐわかることですから、具体的に調べて後ほど御答弁をいただきたいと思います。  それから猪俣先生から数々の地方行政に対する一独占会社の支配について質問がありましたから、私はちょうど藤井行政局長が来ておりますときに申し上げたいと思いますが、鉱産税というものを納めておるわけです。この鉱産税をその町へ納める額等について疑念があるわけです。年々のことを言うと時間がかかりますから、たとえば昭和三十三年は五百七十八トン何がし掘っているという報告が通産省へ来ているはずです。ここの条例によると、トン当たり一円町に納めなければならないことになっているはずであります。それを四十万しか納め、てないということであります。これはたくさんありますが、一つだけ申し上げておきます。だからこの町に対する鉱産税の納め方に違法な点、条例違反あるいは法律違反がありはしないか、こういうように具体的に数字を申し上げますので、一つこのこともお調べいただきたいと思うわけです。  それから、これも一般町民だれもがどうも疑念を持っておりますけれども、この固定資産税、これは膨大なものだと思います。その町としては相当な財源になっているわけですが、固定資産税の評価員が、この会社、電化の人がやっておる。相当な経理に明るい人がやっているので、固定資産税の納め方に非常な疑念を持っているが、しろうとじゃわかりませんので、もう固定資産税のことはむずかしくてだめです、こういうわけですが、これは一つ具体的に、あやまちがないかどうかということを調べていただきたいと思います。  それから、この「恐怖の町オオミ」にもありますが、石灰石の出る山を、町から年間一千円で借りているわけです。それを、鉱業権ですか採掘権ですか私はそういうむずかしいことはわかりませんが、それを電化という会社が設定したばかりにその九牛の一毛の、端のところごく一部を、年間五百万円、五年間二千五百万円で貸してあるわけです。そういうことは、地方自治法第二百四十六条——先ほど行政局長も言われた二百四十六条の二にこういう条文があります。「又は確保すべき収入を不当に確保せず、」という条項に私は該当するような気がするわけです。そういう点。  それから、電化の工場が隣に八万坪の土地を購入して工場を立てる予定で、昭和三十二年に農林省の許可を得ました。得ましたけれども、その許可通りのようなことをやっておらない。それはあとで農地局長にお尋ねするとして、町が坪当たり四百円の補助を出しているわけです。立てかえをしているわけです。坪一千七百円で買って、四百円町で立てかえか何か補助を出しているわけです。それはどういう理由かというと、そこに工場ができたら、その固定資産税でもって埋め合わせるというようなことでやっているはずだと思います。このことは具体的に、経理的に間違いがないかどうかということです。  それから、社宅に入る道路、先ほど人権擁護局長が言われたように、これは私道ですか、公道ですか管理権で人権侵害の問題があるのです。この私道というのは、昔町道であったのを、これを廃止してそれで何かやった、こういうようななかなかむずかしいことがありますが町議会において、町道廃止なりなんなりの議決等が具体的に行なわれているか。もし行なわれていないとすれば、その町道に対する固定資産税というものは町へ納めていなければならないはずだが、この固定資産税の状況はどうかというようなこと、まあいろいろ七つ、八つあげましたけれども、私はこれだけ具体的にここで申し上げたので、先ほど藤井行政局長が猪俣委員に御答弁になったように、地方自治法第二百四十六条の二によって、事務の違法、不当処理に対する内閣総理大臣の監督権、こういうものを一つ具体的に発動をして、これは新潟県知事に頼んでおくということではなくて、先ほども直接行ってみたいというようなお考えもありますので、二百四十六条の二の内閣総理大臣の監督権を発動して、一つ御調査をいただきたい、こういうことをお願いしたいのですが、一つお答えをいただきたいと思います。
  89. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 今さらに具体的な問題の御指摘がございましたが、先刻御答弁申し上げましたように、自治庁としても、直接に本件については近く調査いたしてみたいと考えておりますので、今のような事項も念頭に置きまして、それらの点をはっきりさせた上で、監督権の発動その他のことについては総合的に考えてみたいと思っております。
  90. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それじゃ、自治庁は二百四十六条の二を発動してやっていただけそうですから、けっこうです。  次は、農地局管理部長にお尋ねしたいと思うのですが、まだ許可になっていない具体的な理由を一つお話しいただきたいと思うのです。これは許可相当と知事が認めて意見書をつけて申請したものが、なぜまだ許可になっておらないのか。実は、公取の問題とこの農地の問題から、人権侵害を起こし、町の不当支配を会社がやったという問題がみんな派生してきているわけです。もとはその農地の問題であり、公取が早く結論を出さないという問題になるわけですが、なぜまだ、許可相当と認めて知事が出したものを、農林省が握りつぶしておって許可しないのかということを、具体的に、農地法第何条第何項によって疑念があるとか、そういう具体的な答弁をしていただきたい。政治的なことじゃないですよ、事務的に御答弁をいただきたいと思います。私は、この前、伊東農地局長が来たときに、昔の許可基準の第一項、第二項はどうだ、第三項はどうだということをお尋ねして、だんだん疑念が明らかになったのですが、政治的じゃなしに具体的に、これはまだ問題がほったらかしになっているからということでは答弁にならないと思いますから、その点を御答弁いただきたいと思います。
  91. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 この明星セメントの農地の転用問題につきましては、先般来、農地局長から農林水産委員会でも御答弁申し上げましたように、いろいろな問題があったわけでございまして、また先生からも御質疑があり、それにつきましての答弁の中にもお答え申し上げた通りでございますが、現在におきましては、やはりあの当時答弁申し上げましたように、われわれといたしまして、明星セメントあるいは電化といったところの円満な話し合いがつく、また地元にもいろいろ反対がございまして、そういう面からも、農地の転用ということについて、やはりこの転用にからみまして、中には農道もあり、付近の農業等にも影響を及ぼす面があるわけでございまして、そういう面につきましても、いろいろ反対の陳情等も出ております。まあそういう点で、地元とも円満に話し合いがつくというようなことが、農地の転用をしていく場合におきまして、われわれとしては一つの大きな判断の材料にいたしておるわけでございまして、まあそういう点につきましても当時答弁いたしました。その後におきましても、事情は何ら変わっていないような次第でございまして、われわれといたしまして、まだ最終結論に到達していないという状況で、許可、不許可の点は決定いたしておりません。
  92. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 これも、だんだん時間がおそくなるので、一つ御調査を願うことだけお願しておきたいと思うのです。  一つは、去年の三月三日だと思います。これは六千坪の転用ですから、五千坪までは知事の権限で許可ができるわけですが、それをこえること一千坪であります。何か工場の方から出されたものは、八千坪なんだそうですが、知事が、この余分なところはあと回しにしてということで、わざわざ削ったりして、六千坪の転用を出しました。五千坪以上五万坪までは金沢農地局長の権限であるわけです。金沢農地局の大槻管理部長は、三月三日、青海の役場に行って、自分の権限に属することだから私が判断をいたします、結論をつけましょうと言って新聞発表をしていって、まあ青海町の役場で——泊るところも、いろいろ政治的な圧力がかからないようにということで、わざわざ遠いところに泊って、役場に行って、いろいろ結論を出そう、こういうような段階になったときに、本省の方から電話がいって、その電話がもとでついにこれだけの政治問題になった。その電話がキー・ポイントなんです。そのときに、大槻管理部長は、結論を出そうということで新聞発表までしていって、いよいよやることになって行ったところが、役場の山岸という総務課長か何かが電話の取次をして、そうして大槻管理部長が電話に出たところが、本省かどっかで電話して、きょうは結論を出さないようにということになったらしい。それ以後こういう政治問題になったわけです。そのときに、大槻管理部長は、知事の申請で、金澤局長の権限にあることだから、事務的に出そうと思っていたのを、農林省が差しとめさして、農林省の方に持ってきた、こういうことから重大な政治問題になったので、その電話のあったことは事実であるし、この前は伊東局長にもそんな質問をしたわけですが、一体本省からだれが、だれの命令によってどういう電話をかけさせたか、こういう具体的なことを、この次の農林委員会で私は質問いたしますから、お答え願いたいと思います。それが一点。  それからもう一つ、これも調べておいていただきたいのですが、三十二年に青海電化の八万坪は農地転用の許可になって、その後三年ばかりほったらかしてあるわけです。そのときに、条件をつけて許可をしてあるわけです。留保条件がついているはずです。これは一体その許可申請の通り実施されているかどうか。それから工場が、三分の一ばかり使って建てられつつあるようですが、この申請の変更はどういうように出されておるかどうか。  それから排水その他の問題等についてやはり条件等がついておりますが、一体それはどういうようなことになっておるかどうか。片方の方は、使われない八万坪をもうとうにフリー・パスみたいにして許可して、片方、たった六千坪のものをこういうように農林省でわざわざ差しとめて政治問題にしたその理由について、大へん疑念があるわけです。だからその辺を一つ詳細に調べていただいて、この次のときに御答弁をいただきたい、こういうように考えわけです。何か今の質問の点でわかっている点があったら一つ……。
  93. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 小澤委員に申し上げますが、今御質疑の点は、申すまでもなく農林水産委員会の管轄になりますので、その席で答弁をしていただくようにいたしましょう。  本日はこの程度で散会いたします。     午後一時四十一分散会